(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
細胞表面にキメラ抗原受容体(CAR)コンストラクトを発現するように操作されたゲノム編集細胞を作製するための材料及び方法、並びに細胞における1つ以上の免疫腫瘍学関連遺伝子の発現、機能、又は活性を調節するゲノム編集のための材料及び方法、並びに操作されたゲノム編集細胞を使用して患者を治療するための材料及び方法。
(i)抗CD19抗体断片を含むエクトドメイン、(ii)CD8膜貫通ドメイン、及び(iii)CD28又は41BB共刺激ドメインと任意選択でCD3z共刺激ドメインとを含むエンドドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸の挿入によって破壊されたT細胞受容体α鎖定常領域(TRAC)遺伝子;及び
破壊されたβ−2−ミクログロブリン(B2M)遺伝子
を含む操作されたT細胞
を含む細胞集団であって、前記操作されたT細胞の少なくとも70%が検出可能なレベルのTCR表面タンパク質を発現せず、且つ検出可能なレベルのB2M表面タンパク質を発現しない、及び/又は前記操作されたT細胞の少なくとも50%が検出可能なレベルの前記CARを発現する、細胞集団。
前記CARが、前記抗CD19抗体断片と前記CD8膜貫通ドメインとの間に位置するヒンジドメイン、任意選択でCD8ヒンジドメインを更に含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の細胞集団。
前記CARが、N末端からC末端に、以下の構造配置:抗CD19抗体断片を含む前記エクトドメイン、CD8ヒンジドメイン、前記CD8膜貫通ドメイン、及びCD28又は41BB共刺激ドメインとCD3z共刺激ドメインとを含む前記エンドドメインを含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の細胞集団。
前記CARが配列番号1316のヌクレオチド配列によってコードされる、及び/又は前記CARが配列番号1338のアミノ酸配列を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の細胞集団。
前記操作されたT細胞の少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%が検出可能なレベルのTCR表面タンパク質を発現しない、請求項1〜10のいずれか一項に記載の細胞集団。
前記操作されたT細胞の少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、又は少なくとも75%が検出可能なレベルのCARを発現する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の細胞集団。
前記操作されたT細胞の少なくとも50%が検出可能なレベルのCARを発現し、且つ検出可能なレベルのTCR表面タンパク質又はB2M表面タンパク質を発現しない、請求項1〜12のいずれか一項に記載の細胞集団。
前記操作されたT細胞をCD19+ B細胞と共培養すると、前記CD19+ B細胞の少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、又は少なくとも75%の溶解が生じる、請求項1〜13のいずれか一項に記載の細胞集団。
破壊されたプログラム細胞死タンパク質1(PD1)遺伝子を更に含み、任意選択で前記操作されたT細胞の少なくとも80%が検出可能なレベルのPD1表面タンパク質を発現しない、請求項1〜16のいずれか一項に記載の細胞集団。
破壊された細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA−4)遺伝子を更に含み、任意選択で前記操作されたT細胞の少なくとも80%が検出可能なレベルのCTLA−4表面タンパク質を発現しない、請求項1〜17のいずれか一項に記載の細胞集団。
TRAC遺伝子を標的とする前記gRNAが配列番号83〜158のいずれか1つのヌクレオチド配列を含む、及び/又は配列番号7〜82のいずれか1つのヌクレオチド配列を標的とする;及び/又は
B2M遺伝子を標的とする前記gRNAがいずれか1つの配列番号458〜506のヌクレオチド配列を含む、及び/又は配列番号409〜457のいずれか1つのヌクレオチド配列を標的とする、
請求項19に記載の細胞集団。
PD1遺伝子を標的とする前記gRNAが配列番号1083〜1274のいずれか1つのヌクレオチド配列を含む、及び/又は配列番号891〜1082のいずれか1つのヌクレオチド配列を標的とする、請求項22に記載の細胞集団。
PD1遺伝子を標的とする前記gRNAが配列番号1086のヌクレオチド配列を含む、及び/又は配列番号894のヌクレオチド配列を標的とする、請求項23に記載の細胞集団。
CTLA−4遺伝子を標的とする前記gRNAが配列番号1289〜1298のいずれか1つのヌクレオチド配列を含む、及び/又は配列番号1278〜1287のいずれか1つのヌクレオチド配列を標的とする、請求項25に記載の細胞集団。
CTLA−4遺伝子を標的とする前記gRNAが配列番号1292のヌクレオチド配列を含む、及び/又は配列番号1281のヌクレオチド配列を標的とする、請求項26に記載の細胞集団。
前記細胞集団の操作されたT細胞が非修飾T細胞と比べて前記TRAC遺伝子における配列番号76のヌクレオチド配列の欠失を含む、請求項1〜27のいずれか一項に記載の細胞集団。
前記破壊されたB2M遺伝子が、少なくとも1ヌクレオチド塩基対の挿入及び/又は少なくとも1ヌクレオチド塩基対の欠失を含む、請求項1〜28のいずれか一項に記載の細胞集団。
前記操作されたT細胞の破壊されたB2M遺伝子が、配列番号1560;配列番号1561;配列番号1562;配列番号1563;配列番号1564;及び配列番号1565からなる群から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む、請求項29に記載の細胞集団。
前記細胞の少なくとも16%が、配列番号1560のヌクレオチドを含むように編集されたB2M遺伝子を含み;前記細胞の少なくとも6%が、配列番号1561のヌクレオチドを含むように編集されたB2M遺伝子を含み;前記細胞の少なくとも4%が、配列番号1562のヌクレオチドを含むように編集されたB2M遺伝子を含み;前記細胞の少なくとも2%が、配列番号1563のヌクレオチドを含むように編集されたB2M遺伝子を含み;前記細胞の少なくとも2%が、配列番号1564のヌクレオチドを含むように編集されたB2M遺伝子を含み;及び前記細胞の少なくとも2%が、配列番号1565のヌクレオチドを含むように編集されたB2M遺伝子を含む、請求項30に記載の細胞集団。
対象の腫瘍容積を低下させる方法であって、請求項1〜32のいずれか一項に記載の細胞集団を含むある用量の医薬組成物を前記対象に投与すること、及び前記対象の腫瘍容積を対照と比べて少なくとも50%低下させることを含み、及び任意選択で前記組成物が1×105〜1×106細胞の前記集団を含む、方法。
対象の生存率を増加させる方法であって、請求項1〜32のいずれか一項に記載の細胞集団を含むある用量の医薬組成物を前記対象に投与すること、及び前記対象の生存率を対照と比べて少なくとも50%増加させることを含み、任意選択で前記組成物が1×105〜1×106細胞の前記集団を含む、方法。
前記CARが、前記抗CD19抗体断片と前記CD8膜貫通ドメインとの間に位置するヒンジドメイン、任意選択でCD8ヒンジドメインを更に含む、請求項35〜39のいずれか一項に記載の方法。
前記CARが、N末端からC末端に、以下の構造配置:抗CD19抗体断片を含む前記エクトドメイン、CD8ヒンジドメイン、前記CD8膜貫通ドメイン、及びCD28又は41BB共刺激ドメインとCD3z共刺激ドメインとを含む前記エンドドメインを含む、請求項35〜40のいずれか一項に記載の方法。
前記CARが配列番号1316のヌクレオチド配列によってコードされる、及び/又は前記CARが配列番号1338のアミノ酸配列を含む、請求項35〜41のいずれか一項に記載の方法。
TRAC遺伝子を標的とする前記gRNAが配列番号83〜158のいずれか1つのヌクレオチド配列を含む、及び/又は配列番号7〜82のいずれか1つのヌクレオチド配列を標的とする;及び/又は
B2M遺伝子を標的とする前記gRNAがいずれか1つの配列番号458〜506のヌクレオチド配列を含む、及び/又は配列番号409〜457のいずれか1つのヌクレオチド配列を標的とする、
請求項35〜41のいずれか一項に記載の方法。
PD1遺伝子を標的とする前記gRNAが配列番号1083〜1274のいずれか1つのヌクレオチド配列を含む、及び/又は配列番号891〜1082のいずれか1つのヌクレオチド配列を標的とする、請求項45に記載の方法。
PD1遺伝子を標的とする前記gRNAが配列番号1086のヌクレオチド配列を含む、及び/又は配列番号894のヌクレオチド配列を標的とする、請求項46に記載の方法。
細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA−4)遺伝子を標的とするgRNAを前記組成物に送達することを更に含む、請求項35〜47のいずれか一項に記載の方法。
CTLA−4遺伝子を標的とする前記gRNAが配列番号1289〜1298のいずれか1つのヌクレオチド配列を含む、及び/又は配列番号1278〜1287のいずれか1つのヌクレオチド配列を標的とする、請求項48に記載の方法。
CTLA−4遺伝子を標的とする前記gRNAが配列番号1292のヌクレオチド配列を含む、及び/又は配列番号1281のヌクレオチド配列を標的とする、請求項49に記載の方法。
前記RNAガイド型ヌクレアーゼが、Cas9ヌクレアーゼ、任意選択で化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)Cas9ヌクレアーゼである、請求項35〜50のいずれか一項に記載の方法。
非修飾T細胞と比べてキメラ抗原受容体(CAR)と配列番号76のヌクレオチド配列の欠失とを含むように修飾されたT細胞受容体α鎖定常領域(TRAC)遺伝子を含むように操作されたT細胞。
(i)抗CD70抗体断片を含むエクトドメイン、(ii)CD8膜貫通ドメイン、及び(iii)CD28又は41BB共刺激ドメインと任意選択でCD3z共刺激ドメインとを含むエンドドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸の挿入によって破壊されたT細胞受容体α鎖定常領域(TRAC)遺伝子;及び
破壊されたβ−2−ミクログロブリン(B2M)遺伝子
を含む操作されたT細胞
を含む細胞集団であって、前記操作されたT細胞の少なくとも70%が検出可能なレベルのTCR表面タンパク質を発現せず、且つ検出可能なレベルのB2M表面タンパク質を発現しない、及び/又は前記操作されたT細胞の少なくとも50%が検出可能なレベルのCARを発現する、細胞集団。
前記抗CD70抗体断片が配列番号1475又は1476のヌクレオチド配列によってコードされる、及び/又は前記抗CD70抗体断片が配列番号1499又は1500のアミノ酸配列を含む;
前記抗CD70抗体断片が、配列番号1592のアミノ酸配列を含む重鎖を含む;及び/又は
前記抗CD70抗体断片が、配列番号1593のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項67〜71のいずれか一項に記載の細胞集団。
前記CARが、前記抗CD70抗体断片と前記CD8膜貫通ドメインとの間に位置するヒンジドメイン、任意選択でCD8ヒンジドメインを更に含む、請求項67〜73のいずれか一項に記載の細胞集団。
前記CARが、N末端からC末端に、以下の構造配置:抗CD70抗体断片を含む前記エクトドメイン、CD8ヒンジドメイン、前記CD8膜貫通ドメイン、及びCD28又は41BB共刺激ドメインとCD3z共刺激ドメインとを含む前記エンドドメインを含む、請求項67〜74のいずれか一項に記載の細胞集団。
前記CARが配列番号1423、1424、又は1275のヌクレオチド配列によってコードされる、及び/又は前記CARが配列番号1449、1450、又は1276のアミノ酸配列を含む、請求項67〜75のいずれか一項に記載の細胞集団。
前記操作されたT細胞の少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%が検出可能なレベルのTCR表面タンパク質を発現しない、請求項67〜76のいずれか一項に記載の細胞集団。
前記操作されたT細胞の少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、又は少なくとも75%が検出可能なレベルの前記CARを発現する、請求項67〜77のいずれか一項に記載の細胞集団。
前記操作されたT細胞の少なくとも50%が検出可能なレベルの前記CARを発現し、且つ検出可能なレベルのTCR表面タンパク質又はB2M表面タンパク質を発現しない、請求項67〜78のいずれか一項に記載の細胞集団。
前記操作されたT細胞をCD70+ B細胞と共培養すると、前記CD70+ B細胞の少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、又は少なくとも75%の溶解が生じる、請求項67〜79のいずれか一項に記載の細胞集団。
破壊されたプログラム細胞死タンパク質1(PD1)遺伝子を更に含み、任意選択で前記操作されたT細胞の少なくとも80%が検出可能なレベルのPD1表面タンパク質を発現しない、請求項67〜82のいずれか一項に記載の細胞集団。
破壊された細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA−4)遺伝子を更に含み、任意選択で前記操作されたT細胞の少なくとも80%が検出可能なレベルのCTLA−4表面タンパク質を発現しない、請求項67〜83のいずれか一項に記載の細胞集団。
TRAC遺伝子を標的とする前記gRNAが配列番号83〜158のいずれか1つのヌクレオチド配列を含む、及び/又は配列番号7〜82のいずれか1つのヌクレオチド配列を標的とする;及び/又は
B2M遺伝子を標的とする前記gRNAがいずれか1つの配列番号458〜506のヌクレオチド配列を含む、及び/又は配列番号409〜457のいずれか1つのヌクレオチド配列を標的とする、
請求項85に記載の細胞集団。
PD1遺伝子を標的とする前記gRNAが配列番号1083〜1274のいずれか1つのヌクレオチド配列を含む、及び/又は配列番号891〜1082のいずれか1つのヌクレオチド配列を標的とする、請求項88に記載の細胞集団。
PD1遺伝子を標的とする前記gRNAが配列番号1086のヌクレオチド配列を含む、及び/又は配列番号894のヌクレオチド配列を標的とする、請求項89に記載の細胞集団。
CTLA−4遺伝子を標的とする前記gRNAが配列番号1289〜1298のいずれか1つのヌクレオチド配列を含む、及び/又は配列番号1278〜1287のいずれか1つのヌクレオチド配列を標的とする、請求項91に記載の細胞集団。
CTLA−4遺伝子を標的とする前記gRNAが配列番号1292のヌクレオチド配列を含む、及び/又は配列番号1281のヌクレオチド配列を標的とする、請求項92に記載の細胞集団。
前記破壊されたB2M遺伝子が、少なくとも1ヌクレオチド塩基対の挿入及び/又は少なくとも1ヌクレオチド塩基対の欠失を含む、請求項67〜94のいずれか一項に記載の細胞集団。
前記操作されたT細胞の破壊されたB2M遺伝子が、配列番号1560;配列番号1561;配列番号1562;配列番号1563;配列番号1564;及び配列番号1565からなる群から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む、請求項95に記載の細胞集団。
前記細胞の少なくとも16%が、配列番号1560のヌクレオチドを含むように編集されたB2M遺伝子を含み;前記細胞の少なくとも6%が、配列番号1561のヌクレオチドを含むように編集されたB2M遺伝子を含み;前記細胞の少なくとも4%が、配列番号1562のヌクレオチドを含むように編集されたB2M遺伝子を含み;前記細胞の少なくとも2%が、配列番号1563のヌクレオチドを含むように編集されたB2M遺伝子を含み;前記細胞の少なくとも2%が、配列番号1564のヌクレオチドを含むように編集されたB2M遺伝子を含み;及び前記細胞の少なくとも2%が、配列番号1565のヌクレオチドを含むように編集されたB2M遺伝子を含む、請求項96に記載の細胞集団。
対象の腫瘍容積を低下させる方法であって、請求項67〜97のいずれか一項に記載の細胞集団を含むある用量の医薬組成物を前記対象に投与すること、及び前記対象の腫瘍容積を対照と比べて少なくとも50%低下させることを含み、任意選択で前記組成物が1×105〜1×106細胞の前記集団を含む、方法。
対象の生存率を増加させる方法であって、請求項67〜98のいずれか一項に記載の細胞集団を含むある用量の医薬組成物を前記対象に投与すること、及び前記対象の生存率を対照と比べて少なくとも50%増加させることを含み、任意選択で前記組成物が1×105〜1×106細胞の前記集団を含む、方法。
前記抗CD70抗体断片が配列番号1475又は1476のヌクレオチド配列によってコードされる、及び/又は前記抗CD70抗体断片が配列番号1499又は1500のアミノ酸配列を含む;
前記抗CD70抗体断片が、配列番号1592のアミノ酸配列を含む重鎖を含む;及び/又は
前記抗CD70抗体断片が、配列番号1593のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、
請求項101〜103のいずれか一項に記載の方法。
前記CARが、前記抗CD70抗体断片と前記CD8膜貫通ドメインとの間に位置するヒンジドメイン、任意選択でCD8ヒンジドメインを更に含む、請求項101〜105のいずれか一項に記載の方法。
前記CARが、N末端からC末端に、以下の構造配置:抗CD70抗体断片を含む前記エクトドメイン、CD8ヒンジドメイン、前記CD8膜貫通ドメイン、及びCD28又は41BB共刺激ドメインとCD3z共刺激ドメインとを含む前記エンドドメインを含む、請求項101〜106のいずれか一項に記載の方法。
前記CARが配列番号1423、1424、又は1275のヌクレオチド配列によってコードされる、及び/又は前記CARが配列番号1449、1450、又は1276のアミノ酸配列を含む、請求項101〜107のいずれか一項に記載の方法。
TRAC遺伝子を標的とする前記gRNAが配列番号83〜158のいずれか1つのヌクレオチド配列を含む、及び/又は配列番号7〜82のいずれか1つのヌクレオチド配列を標的とする;及び/又は
B2M遺伝子を標的とする前記gRNAがいずれか1つの配列番号458〜506のヌクレオチド配列を含む、及び/又は配列番号409〜457のいずれか1つのヌクレオチド配列を標的とする、
請求項101〜108のいずれか一項に記載の方法。
PD1遺伝子を標的とする前記gRNAが配列番号1083〜1274のいずれか1つのヌクレオチド配列を含む、及び/又は配列番号891〜1082のいずれか1つのヌクレオチド配列を標的とする、請求項111に記載の方法。
PD1遺伝子を標的とする前記gRNAが配列番号1086のヌクレオチド配列を含む、及び/又は配列番号894のヌクレオチド配列を標的とする、請求項112に記載の方法。
細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA−4)遺伝子を標的とするgRNAを前記組成物に送達することを更に含む、請求項101〜113のいずれか一項に記載の方法。
CTLA−4遺伝子を標的とする前記gRNAが配列番号1289〜1298のいずれか1つのヌクレオチド配列を含む、及び/又は配列番号1278〜1287のいずれか1つのヌクレオチド配列を標的とする、請求項114に記載の方法。
CTLA−4遺伝子を標的とする前記gRNAが配列番号1292のヌクレオチド配列を含む、及び/又は配列番号1281のヌクレオチド配列を標的とする、請求項115に記載の方法。
前記RNAガイド型ヌクレアーゼが、Cas9ヌクレアーゼ、任意選択で化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)Cas9ヌクレアーゼである、請求項101〜116のいずれか一項に記載の方法。
前記ベクターが、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、任意選択でAAV血清型6型(AAV6)ベクターである、請求項101〜117のいずれか一項に記載の方法。
(i)抗BCMA抗体断片を含むエクトドメイン、(ii)CD8膜貫通ドメイン、及び(iii)CD28又は41BB共刺激ドメインと任意選択でCD3z共刺激ドメインとを含むエンドドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸の挿入によって破壊されたT細胞受容体α鎖定常領域(TRAC)遺伝子;及び
破壊されたβ−2−ミクログロブリン(B2M)遺伝子
を含む操作されたT細胞
を含む細胞集団であって、前記操作されたT細胞の少なくとも70%が検出可能なレベルのTCR表面タンパク質を発現せず、且つ検出可能なレベルのB2M表面タンパク質を発現しない、及び/又は前記操作されたT細胞の少なくとも50%が検出可能なレベルのCARを発現する、細胞集団。
前記抗BCMA抗体断片が配列番号1479又は1485のヌクレオチド配列によってコードされる、又は前記抗BCMA抗体断片が配列番号1503又は1509のアミノ酸配列を含む;
前記抗BCMA抗体断片が、配列番号1589又は1524のアミノ酸配列を含む重鎖を含む;及び/又は
前記抗BCMA抗体断片が、配列番号1590又は1526のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、
請求項127〜131のいずれか一項に記載の細胞集団。
前記CARが、前記抗BCMA抗体断片と前記CD8膜貫通ドメインとの間に位置するヒンジドメイン、任意選択でCD8ヒンジドメインを更に含む、請求項127〜133のいずれか一項に記載の細胞集団。
前記CARが、N末端からC末端に、以下の構造配置:抗BCMA抗体断片を含む前記エクトドメイン、CD8ヒンジドメイン、前記CD8膜貫通ドメイン、及びCD28又は41BB共刺激ドメインとCD3z共刺激ドメインとを含む前記エンドドメインを含む、請求項127〜134のいずれか一項に記載の細胞集団。
前記CARが配列番号1427、1428、1434、又は1435のヌクレオチド配列によってコードされる、及び/又は前記CARが配列番号1453、1454、1460、又は1461のアミノ酸配列を含む、請求項127〜135のいずれか一項に記載の細胞集団。
前記操作されたT細胞の少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%が検出可能なレベルのTCR表面タンパク質を発現しない、請求項127〜136のいずれか一項に記載の細胞集団。
前記操作されたT細胞の少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、又は少なくとも75%が検出可能なレベルの前記CARを発現する、請求項127〜136のいずれか一項に記載の細胞集団。
前記操作されたT細胞の少なくとも50%が検出可能なレベルの前記CARを発現し、且つ検出可能なレベルのTCR表面タンパク質又はB2M表面タンパク質を発現しない、請求項127〜138のいずれか一項に記載の細胞集団。
前記操作されたT細胞をBCMA+ B細胞と共培養すると、前記BCMA+ B細胞の少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、又は少なくとも75%の溶解が生じる、請求項127〜139のいずれか一項に記載の細胞集団。
破壊されたプログラム細胞死タンパク質1(PD1)遺伝子を更に含み、任意選択で前記操作されたT細胞の少なくとも80%が検出可能なレベルのPD1表面タンパク質を発現しない、請求項127〜142のいずれか一項に記載の細胞集団。
破壊された細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA−4)遺伝子を更に含み、任意選択で前記操作されたT細胞の少なくとも80%が検出可能なレベルのCTLA−4表面タンパク質を発現しない、請求項127〜143のいずれか一項に記載の細胞集団。
TRAC遺伝子を標的とするgRNA、B2M遺伝子を標的とするgRNA、及びCas9タンパク質を更に含む、請求項127〜144のいずれか一項に記載の細胞集団。
TRAC遺伝子を標的とする前記gRNAが配列番号83〜158のいずれか1つのヌクレオチド配列を含む、及び/又は配列番号7〜82のいずれか1つのヌクレオチド配列を標的とする;及び/又は
B2M遺伝子を標的とする前記gRNAがいずれか1つの配列番号458〜506のヌクレオチド配列を含む、及び/又は配列番号409〜457のいずれか1つのヌクレオチド配列を標的とする、
請求項145に記載の細胞集団。
PD1遺伝子を標的とする前記gRNAが配列番号1083〜1274のいずれか1つのヌクレオチド配列を含む、及び/又は配列番号891〜1082のいずれか1つのヌクレオチド配列を標的とする、請求項148に記載の細胞集団。
PD1遺伝子を標的とする前記gRNAが配列番号1086のヌクレオチド配列を含む、及び/又は配列番号894のヌクレオチド配列を標的とする、請求項149に記載の細胞集団。
CTLA−4遺伝子を標的とする前記gRNAが配列番号1289〜1298のいずれか1つのヌクレオチド配列を含む、及び/又は配列番号1278〜1287のいずれか1つのヌクレオチド配列を標的とする、請求項151に記載の細胞集団。
CTLA−4遺伝子を標的とする前記gRNAが配列番号1292のヌクレオチド配列を含む、及び/又は配列番号1281のヌクレオチド配列を標的とする、請求項152に記載の細胞集団。
前記破壊されたB2M遺伝子が、少なくとも1ヌクレオチド塩基対の挿入及び/又は少なくとも1ヌクレオチド塩基対の欠失を含む、請求項127〜154のいずれか一項に記載の細胞集団。
前記操作されたT細胞の破壊されたB2M遺伝子が、配列番号1560;配列番号1561;配列番号1562;配列番号1563;配列番号1564;及び配列番号1565からなる群から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む、請求項155に記載の細胞集団。
前記細胞の少なくとも16%が、配列番号1560のヌクレオチドを含むように編集されたB2M遺伝子を含み;前記細胞の少なくとも6%が、配列番号1561のヌクレオチドを含むように編集されたB2M遺伝子を含み;前記細胞の少なくとも4%が、配列番号1562のヌクレオチドを含むように編集されたB2M遺伝子を含み;前記細胞の少なくとも2%が、配列番号1563のヌクレオチドを含むように編集されたB2M遺伝子を含み;前記細胞の少なくとも2%が、配列番号1564のヌクレオチドを含むように編集されたB2M遺伝子を含み;及び前記細胞の少なくとも2%が、配列番号1565のヌクレオチドを含むように編集されたB2M遺伝子を含む、請求項156に記載の細胞集団。
対象の腫瘍容積を低下させる方法であって、請求項127〜157のいずれか一項に記載の細胞集団を含むある用量の医薬組成物を前記対象に投与すること、及び前記対象の腫瘍容積を対照と比べて少なくとも50%低下させることを含み、任意選択で前記組成物が1×105〜1×106細胞の前記集団を含む、方法。
対象の生存率を増加させる方法であって、請求項127〜158のいずれか一項に記載の細胞集団を含むある用量の医薬組成物を前記対象に投与すること、及び前記対象の生存率を対照と比べて少なくとも50%増加させることを含み、任意選択で前記組成物が1×105〜1×106細胞の前記集団を含む、方法。
前記CARが、前記抗BCMA抗体断片と前記CD8膜貫通ドメインとの間に位置するヒンジドメイン、任意選択でCD8ヒンジドメインを更に含む、請求項161〜165のいずれか一項に記載の方法。
前記CARが、N末端からC末端に、以下の構造配置:抗BCMA抗体断片を含む前記エクトドメイン、CD8ヒンジドメイン、前記CD8膜貫通ドメイン、及びCD28又は41BB共刺激ドメインとCD3z共刺激ドメインとを含む前記エンドドメインを含む、請求項161〜166のいずれか一項に記載の方法。
前記CARが配列番号1316のヌクレオチド配列によってコードされる、及び/又は前記CARが配列番号1338のアミノ酸配列を含む、請求項161〜167のいずれか一項に記載の方法。
TRAC遺伝子を標的とする前記gRNAが配列番号83〜158のいずれか1つのヌクレオチド配列を含む、及び/又は配列番号7〜82のいずれか1つのヌクレオチド配列を標的とする;及び/又は
B2M遺伝子を標的とする前記gRNAがいずれか1つの配列番号458〜506のヌクレオチド配列を含む、及び/又は配列番号409〜457のいずれか1つのヌクレオチド配列を標的とする、
請求項161〜168のいずれか一項に記載の方法。
PD1遺伝子を標的とする前記gRNAが配列番号1083〜1274のいずれか1つのヌクレオチド配列を含む、及び/又は配列番号891〜1082のいずれか1つのヌクレオチド配列を標的とする、請求項171に記載の方法。
PD1遺伝子を標的とする前記gRNAが配列番号1086のヌクレオチド配列を含む、及び/又は配列番号894のヌクレオチド配列を標的とする、請求項172に記載の方法。
細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA−4)遺伝子を標的とするgRNAを前記組成物に送達することを更に含む、請求項161〜173のいずれか一項に記載の方法。
CTLA−4遺伝子を標的とする前記gRNAが配列番号1289〜1298のいずれか1つのヌクレオチド配列を含む、及び/又は配列番号1278〜1287のいずれか1つのヌクレオチド配列を標的とする、請求項174に記載の方法。
CTLA−4遺伝子を標的とする前記gRNAが配列番号1292のヌクレオチド配列を含む、及び/又は配列番号1281のヌクレオチド配列を標的とする、請求項175に記載の方法。
前記RNAガイド型ヌクレアーゼが、Cas9ヌクレアーゼ、任意選択で化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)Cas9ヌクレアーゼである、請求項161〜176のいずれか一項に記載の方法。
前記ベクターが、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、任意選択でAAV血清型6型(AAV6)ベクターである、請求項161〜177のいずれか一項に記載の方法。
前記ドナー鋳型が配列番号1401、1402、1408、又は1409のいずれか1つのヌクレオチド配列を含む、請求項161〜180のいずれか一項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0040】
配列表の簡単な説明
配列番号1〜3はsgRNA骨格配列である(表1)。
配列番号4〜6はホーミングエンドヌクレアーゼ配列である。
配列番号7〜82はTRAC遺伝子標的配列である(表4)。
配列番号83〜158はTRAC遺伝子を標的とするgRNAスペーサー配列である(表4)。
配列番号159〜283はCD3E遺伝子標的配列である(表5)。
配列番号384〜408はCD3E遺伝子を標的とするgRNAスペーサー配列である(表5)。
配列番号409〜457はB2M遺伝子標的配列である(表6)。
配列番号458〜506はB2M遺伝子を標的とするgRNAスペーサー配列である(表6)。
配列番号507〜698はCIITA遺伝子標的配列である(表7)。
配列番号699〜890はCIITA遺伝子を標的とするgRNAスペーサー配列である(表7)。
配列番号891〜1082はPD1遺伝子標的配列である(表8)。
配列番号1083〜1274はPD1遺伝子を標的とするgRNAスペーサー配列である(表8)。
配列番号1275はCTX−145bのCARのヌクレオチド配列である(表36)。
配列番号1276はCTX−145bのCARのアミノ酸配列である(表36)。
配列番号1277〜1287はCTLA−4遺伝子標的配列である(表10)。
配列番号1288〜1298はCTLA−4遺伝子を標的とするgRNAスペーサー配列である(表10)。
配列番号1299はTRAC遺伝子標的配列である(表11)。
配列番号1300はPD1遺伝子標的配列である(表11)。
配列番号1301及び1302はAAVS1標的配列である(表11)。
配列番号1303及び1305はCD52標的配列である(表11)。
配列番号1305〜1307はRFX5標的配列である(表11)。
配列番号1308はAAVS1遺伝子を標的とするgRNAスペーサー配列である。
配列番号1309〜1311はRFX5遺伝子を標的とするgRNAスペーサー配列である。
配列番号1312はCD52遺伝子を標的とするgRNAスペーサー配列である。
配列番号1313〜1338は抗CD19 CAR T細胞の生成用のドナー鋳型成分配列である(表12を参照)。
配列番号1339は4−1BB共刺激ドメインのヌクレオチド配列である。
配列番号1340は4−1BB共刺激ドメインのアミノ酸配列である。
配列番号1341はリンカー配列である。
配列番号1342〜1347はB2M、TRAC、及びAAVS1に対する化学的に修飾された及び未修飾のsgRNA配列である(表32を参照)。
配列番号1348〜1386は様々なドナー鋳型のrAAV配列である(表34を参照)。
配列番号1387〜1422は様々なドナー鋳型の左相同性アーム(LHA)から右相同性アーム(RHA)までの配列である(表35を参照)。
配列番号1423〜1448は本開示のドナー鋳型のCARヌクレオチド配列である(表36を参照)。
配列番号1449〜1474は本開示のドナー鋳型によってコードされるCARアミノ酸配列である(表37を参照)。
配列番号1475〜1498は本開示のCARのscFv核酸配列である(表38を参照)。
配列番号1499〜1522は本開示のCARによってコードされるscFvアミノ酸配列である(表39を参照)。
配列番号1523〜1531は抗BCMA軽鎖及び重鎖配列である(表39を参照)。
配列番号1532〜1553は本開示のプラスミド配列である。
配列番号1554〜1559はddPCRアッセイで使用されるプライマー配列である(表25を参照)。
配列番号1560〜1565はB2M遺伝子における遺伝子編集された配列である(表12.3)。
配列番号1566〜1573はTRAC遺伝子における遺伝子編集された配列である(表12.4)。
配列番号1574及び1575はPD1に対する化学的に修飾された及び未修飾のsgRNA配列である(表32を参照)。
配列番号1576〜1577はITR配列である(表12)。
配列番号1578〜1582はCTX−139.1〜CTX−139.3に使用される左相同性アーム及び右相同性アームのヌクレオチド配列である(表12)。
配列番号1586はCD8シグナルペプチド配列である(表12)。
配列番号1587及び1588はTRACに対する化学的に修飾された及び未修飾のsgRNA配列(エクソン1_T7)である(表32を参照)。
配列番号1589〜1597は重鎖、軽鎖及びリンカー配列、例えば抗BCMA、抗CD70、及び抗CD19 scFv分子である(表39)。
配列番号1598は抗CD19 CARのリーダーペプチド配列である(表12)。
配列番号1599はリンカーのないCD8a膜貫通配列である(表12)。
配列番号1600はCD8aペプチド配列である。
配列番号1601はCD28共刺激ドメインペプチド配列である。
配列番号1602はCD3−ゼータ共刺激ドメインペプチド配列である。
【0041】
治療手法
CRISPR編集細胞、例えばCRISPR編集T細胞などには、複数の疾患状態に治療用途があり得る。非限定的な例として、本開示に提供される核酸、ベクター、細胞、方法、及び他の材料は、癌、炎症性疾患及び/又は自己免疫疾患の治療に有用である。
【0042】
遺伝子編集は、レンチウイルス送達及び組込みを通じた標的遺伝子発現カセットの導入など、既存の又は可能性のある療法に優る重要な改善をもたらす。遺伝子活性及び/又は発現を調節する遺伝子編集には、正確なゲノム修飾及び低い有害作用、並びに正常な発現レベルの回復及び一時的制御という利点がある。
【0043】
本明細書に提供される材料及び方法は、標的遺伝子の活性の調節において有用である。例えば、標的遺伝子は、宿主対移植片反応に関連する遺伝子配列、移植片対宿主反応に関連する遺伝子配列、免疫抑制因子(例えば:チェックポイント阻害因子)をコードする遺伝子配列、又はこれらの任意の組み合わせであってもよい。
【0044】
標的遺伝子は、TRAC、CD3イプシロン(episolon)(CD3ε)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される移植片対宿主反応に関連する遺伝子配列であってもよい。TRAC及びCD3εはT細胞受容体(TCR)の成分である。遺伝子編集によってこれらを破壊すると、T細胞は移植片対宿主病を引き起こす能力を奪われることになる。
【0045】
標的遺伝子は、B2M、CIITA、RFX5、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される宿主対移植片反応に関連する遺伝子配列であってもよい。B2MはMHC I複合体の共通の(不変の)成分である。遺伝子編集によってこれを取り除くと宿主対治療用同種異系T細胞反応が防止され、同種異系T細胞の持続性の増加につながり得る。CIITA及びRFX5は、MHC II遺伝子の発現に必要な転写調節複合体の成分である。遺伝子編集によってこれらを破壊すると宿主対治療用同種異系T細胞反応が防止され、同種異系T細胞の持続性の増加につながり得る。
【0046】
標的遺伝子は、PD1、CTLA−4、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるチェックポイント阻害因子をコードする遺伝子配列であってもよい。PDCD1(PD1)及びCTLA4は、活性化T細胞において上方制御される免疫チェックポイント分子であり、T細胞応答を弱め又は停止させる働きをする。遺伝子編集によってこれらを破壊すれば、より持続性の高い及び/又は強力な治療用T細胞応答につながり得る。
【0047】
標的遺伝子は、細胞の薬理学的調節に関連する配列であってもよい。例えば、CD52は、リンパ枯渇治療用抗体アレムツズマブの標的である。遺伝子編集によってCD52を破壊すると、治療用T細胞がアレムツズマブ抵抗性となり、これはある種の癌セッティングで有用となり得る。
【0048】
上記の遺伝子の欠失は、小規模(<5)〜中規模(>50)スクリーニングで選択されたガイドRNAによって実現することができる。本明細書に提供される例は、標的遺伝子の破壊、例えば遺伝子発現及び/又は機能の低下又は消失を生じさせるインデルの作成に有用な様々な標的領域及びgRNAの選択を更に例示する。本明細書に提供される例は、ゲノム(genone)へのドナー鋳型の挿入を促進するDSBの作成に有用な様々な標的領域及びgRNAの選択を更に例示する。移植片対宿主病、宿主対移植片病(host versus graph disease)及び/又は免疫抑制に関連する標的遺伝子の例。一部の態様において、ガイドRNAは、本明細書に開示される配列を含むgRNAである。
【0049】
本方法は、ガイドRNA/Cas9を使用することによりゲノム遺伝子座に挿入されるキメラ抗原受容体コンストラクト(CAR)を使用して二本鎖切断を誘導し、それが切断部位の周囲に相同性を有するAAV6送達ドナー鋳型を使用したHDRによって修復される。
【0050】
キメラ抗原受容体(CAR)は、T細胞シグナル伝達ドメイン又はT細胞活性化ドメインに連結した抗体の抗原結合ドメインを含有する人工的に構築されたハイブリッドタンパク質又はポリペプチド(例えば、単鎖可変断片(scFv))である。CARは、モノクローナル抗体の抗原結合特性を利用して、T細胞特異性及び応答性をMHCの制約を受けない形で選択の標的に向かってリダイレクトする能力を有する。MHCの制約を受けない抗原認識により、CARを発現するT細胞には抗原プロセシングと無関係に抗原を認識する能力が付与され、ひいては主要な腫瘍エスケープ機構が回避される。更に、CARは、T細胞における発現時に、有利には内因性T細胞受容体(TCR)α鎖及びβ鎖と二量化しない。
【0051】
本明細書に提供される材料及び方法は、標的遺伝子の少なくとも一部分を永久に欠失させて、CARをコードする核酸を挿入することにより、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸を標的遺伝子の遺伝子座又はその近傍にノックインする。本明細書に提供される材料及び方法で使用されるCARは、(i)抗原認識領域を含むエクトドメイン;(ii)膜貫通ドメイン、及び(iii)少なくとも1つの共刺激ドメインを含むエンドドメインを含む。CARをコードする核酸はまた、プロモーター、1つ以上の遺伝子調節エレメント、又はこれらの組み合わせも含み得る。例えば、遺伝子調節エレメントは、エンハンサー配列、イントロン配列、ポリアデニル化(ポリ(A))配列、及び/又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0052】
相同組換え修復(HDR)によって挿入されるドナーは、アニーリングを可能にする小型又は大型隣接相同性アームを有する修正された配列を含む。HDRは、DSB修復時に鋳型として供給された相同DNA配列を使用する本質的に誤りのない機構である。相同組換え修復(HDR)率は突然変異と切断部位との間の距離に応じて変わり、そのためオーバーラップした又はすぐ近くの標的部位を選ぶことが重要である。鋳型は、相同性領域が隣接した余分な配列を含んでもよく、又はゲノム配列と異なる配列を含んで、ひいては配列編集を可能にしてもよい。
【0053】
標的遺伝子は対象の免疫応答に関連してもよく、ここでは標的遺伝子の発現の破壊によって免疫応答が調節されることになる。例えば、標的遺伝子に小さい挿入又は欠失を作成する、及び/又は標的遺伝子の少なくとも一部分(a protion)を永久に欠失させる、及び/又は標的遺伝子に外因性配列を挿入すると、標的遺伝子の発現を破壊することができる。標的遺伝子配列は、宿主対移植片反応に関連してもよく、移植片対宿主反応に関連する遺伝子配列、チェックポイント阻害因子をコードする遺伝子配列、及び/又はこれらの任意の組み合わせであってもよい。
【0054】
移植片対宿主(GVH)反応に関連する標的遺伝子としては、例えば、TRAC、CD3イプシロン(episolon)(CD3ε)、及びこれらの組み合わせが挙げられる。これらの遺伝子の少なくとも一部分を永久に欠失させる、これらの遺伝子に小さい挿入又は欠失を作成する、及び/又はCARをコードする核酸を挿入すると、対象のGVH反応を低下させることができる。GVH反応の低下は部分的であっても、又は完全であってもよい。
【0055】
宿主対移植片(HVG)反応に関連する標的遺伝子としては、例えば、B2M、CIITA、RFX5、及びこれらの組み合わせが挙げられる。これらの遺伝子の少なくとも一部分を永久に欠失させる、これらの遺伝子に小さい挿入又は欠失を作成する、及び/又はCARをコードする核酸を挿入すると、対象のHVG反応を低下させることができる。HVG反応の低下は部分的であっても、又は完全であってもよい。
【0056】
免疫抑制に関連する標的遺伝子としては、例えば、PD1、CTLA−4、及びこれらの組み合わせなどのチェックポイント阻害因子が挙げられる。これらの遺伝子の少なくとも一部分を永久に欠失させる、これらの遺伝子に小さい挿入又は欠失を作成する、及び/又はCARをコードする核酸を挿入すると、対象の免疫抑制を低下させることができる。免疫抑制の低下は部分的であっても、又は完全であってもよい。
【0057】
標的遺伝子は細胞の薬理学的調節に関連してもよく、ここでは標的遺伝子の発現の破壊によって細胞の1つ又は薬理学的特性が調節されることになる。
【0058】
細胞の薬理学的調節に関連する標的遺伝子としては、例えばCD52が挙げられる。これらの遺伝子の少なくとも一部分を永久に欠失させる、これらの遺伝子に小さい挿入又は欠失を作成する、及び/又はCARをコードする核酸を挿入すると、細胞の1つ又は薬理学的特性を正又は負に調節することができる。細胞の1つ又は薬理学的特性の調節は部分的であっても、又は完全であってもよい。例えば、これらの遺伝子の少なくとも一部分を永久に欠失させること及びCARをコードする核酸を挿入することにより、CAR T細胞に正の影響を及ぼし、又は別様にその生存を可能にすることができる。或いは、これらの遺伝子の少なくとも一部分を永久に欠失させること及びCARをコードする核酸を挿入することにより、CAR T細胞に負の影響を及ぼし、又は別様にそれを死滅させることができる。
【0059】
CARをコードする核酸コンストラクトに使用されるドナー鋳型はまた、ミニ遺伝子又はcDNAも含み得る。例えば、ミニ遺伝子又はcDNAは、細胞の薬理学的調節に関連する遺伝子配列を含み得る。遺伝子配列はHer2をコードしてもよい。
【0060】
Her2遺伝子配列は、CARコンストラクトをコードする核酸が挿入される遺伝子座と標的遺伝子中の異なる遺伝子座又はゲノム中の異なる遺伝子座に永久に挿入することができる。
【0061】
本明細書には、標的遺伝子に小さい挿入又は欠失を誘導して標的遺伝子の破壊(例えば:遺伝子発現及び/又は機能の低下又は消失)を生じさせるDSBに至る方法が提供される。
【0062】
また、本明細書には、標的遺伝子の範囲内又はその近傍にDBSを作成する、及び/又はそれを永久に欠失させる方法、Cas9及びsgRNAによって標的配列に二本鎖切断(又は2つの適切なsgRNAを使用して一対の二本鎖切断)を誘導することにより、CARコンストラクトをコードする核酸コンストラクトを遺伝子に挿入する方法、及びドナーDNA鋳型を提供して相同組換え修復(HDR)を誘導する方法も提供される。一部の実施形態において、ドナーDNA鋳型は、短鎖一本鎖オリゴヌクレオチド、短鎖二本鎖オリゴヌクレオチド、長鎖一本鎖又は二本鎖DNA分子であってもよい。これらの方法は、各標的に対するgRNA及びドナーDNA分子を使用する。一部の実施形態において、ドナーDNAは、対応する領域に対する相同性アームを有する一本鎖又は二本鎖DNAである。一部の実施形態において、相同性アームは、TRAC(chr14:22278151〜22553663)、CD3ε(chr11:118301545〜118319175)、B2M(chr15:44708477〜44721877)、CIITA(chr16:10874198〜10935281)、RFX5(chr1:151337640〜151350251)、PD1(chr2:241846881〜241861908)、CTLA−4(chr2:203864786〜203876960)、CD52(chr1:26314957〜26323523)、PPP1R12C(chr19:55087913〜55120559)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される遺伝子のヌクレアーゼ標的領域に向けられる。
【0063】
本明細書には、標的cDNA又はミニ遺伝子(1つ以上のエクソン及びイントロン又は天然若しくは合成イントロンを含む)を対応する遺伝子の遺伝子座にノックインする方法が提供される。これらの方法は、標的遺伝子の第1のエクソン及び/又は第1のイントロンを標的とする一対のsgRNAを使用する。一部の実施形態において、ドナーDNAは、選択されたHer2遺伝子のヌクレアーゼ標的領域に対する相同性アームを有する一本鎖又は二本鎖DNAである。
【0064】
本明細書には、1)標的遺伝子の範囲内又はその近傍にDSBを作成して小さい挿入、欠失又は突然変異を誘導すること、2)標的遺伝子又は標的遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の範囲内又はその近傍を欠失させて、ノックインCARコンストラクトをコードする核酸を標的遺伝子又は標的遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の範囲内又はその近傍にHDRによって挿入すること、又は3)標的遺伝子の範囲内又はその近傍にDSBを作成し、HDRによって標的遺伝子の範囲内又はその近傍に核酸コンストラクトを挿入することによる、ゲノム操作ツールを使用してゲノムに永久的な変化を作成するための細胞的方法(例えば、エキソビボ又はインビボ)方法が提供される。かかる方法は、CRISPR関連(Cas9、Cpf1など)ヌクレアーゼなど、エンドヌクレアーゼを使用してエクソンの1つ以上又はその一部分を永久に欠失させ、挿入し、編集し、修正し、又は置換し(即ち、コード配列及び/又はスプライシング配列の範囲内又はその近傍における突然変異)、又は標的遺伝子若しくは標的遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列のゲノム遺伝子座に挿入する。このように、本開示に明らかにされる例は、単回の治療で(可能性のある療法を患者の生涯にわたって送達するのでなく)遺伝子のリーディングフレーム又は野生型配列を回復し、又はその他、遺伝子を修正する。
【0065】
本明細書には、医学的病態を有する患者を治療する方法が提供される。かかる方法の一態様は、エキソビボ細胞ベース療法である。例えば、末梢血単核球が患者から単離される。次に、それらの細胞の染色体DNAが、本明細書に記載される材料及び方法を用いて編集される。最後に、ゲノム編集細胞が患者に植え込まれる。
【0066】
また、本明細書には、対象の腫瘍容積を低下させる方法も提供され、この方法は、本開示の細胞(例えば、操作されたT細胞)の集団を含むある用量の医薬組成物を対象に投与すること、及び対象の腫瘍容積を対照(例えば、未治療の対象)と比べて少なくとも50%(例えば、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、又は少なくとも75%)低下させることを含む。
【0067】
更に本明細書には、対象の生存率を増加させる方法が提供され、この方法は、本開示の細胞(例えば、操作されたT細胞)の集団を含むある用量の医薬組成物を対象に投与すること、及び対象の生存率を対照(例えば、未治療の対象)と比べて少なくとも50% %(例えば、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、又は少なくとも75%)増加させることを含む。
【0068】
一部の実施形態において、本組成物は1×10
5〜1×10
6細胞を含む。一部の実施形態において、本医薬組成物は1×10
5〜2×10
6細胞を含む。例えば、本組成物は1×10
5、2×10
5、3×10
5、4×10
5、5×10
5、6×10
5、7×10
5、8×10
5、9×10
5、1×10
6、又は2×10
6を含み得る。一部の実施形態において、本医薬組成物は1×10
5〜5×10
5細胞、5×10
5〜1×10
6細胞、又は5×10
5〜1.5×10
6細胞を含む。
【0069】
エキソビボ細胞ベース療法の別の態様は、例えば、ドナーからT細胞を単離することを含み得る。次に、それらの細胞の染色体DNAが、本明細書に記載される材料及び方法を用いて編集される。最後に、ゲノム編集細胞が患者に植え込まれる。
【0070】
特定の態様において、T細胞は2個体以上のドナーから単離される。それらの細胞が、本明細書に記載される材料及び方法を用いて編集される。最後に、ゲノム編集細胞が患者に植え込まれる。
【0071】
エキソビボ細胞療法手法の一つの利点は、投与前に療法薬の総合的分析を行うことが可能なことである。ヌクレアーゼベース療法薬には、あるレベルのオフターゲット効果がある。遺伝子修正をエキソビボで実施することにより、修正後の細胞集団を植え込む前に完全に特徴付けることが可能になる。本開示は、修正された細胞のゲノム全体をシーケンシングして、オフターゲット効果があるならば、それが患者にとって最小限のリスクを伴うゲノム位置にあるよう確実にすることを含む。更に、クローン集団を含む特異的細胞集団を植え込む前に単離することができる。
【0072】
かかる方法の別の実施形態はまた、インビボベース療法も含む。この方法では、患者の細胞の染色体DNAが、本明細書に記載される材料及び方法を用いて編集される。一部の実施形態において、細胞は、CD4
+T細胞、CD8
+T細胞、又はこれらの組み合わせなど、T細胞である。
【0073】
また、本明細書には、細胞の標的遺伝子をゲノム編集によって編集するための細胞的方法も提供される。例えば、患者又は動物から細胞が単離される。次に、細胞の染色体DNAが、本明細書に記載される材料及び方法を用いて編集される。
【0074】
本明細書に提供される方法は、一部の実施形態において、以下のうちの1つ又は組み合わせを含む:1)標的遺伝子又は標的遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の範囲内又はその近傍にインデルを作成すること、2)標的遺伝子又は標的遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の範囲内又はその近傍を欠失させること、3)ノックインCARコンストラクトをコードする核酸を標的遺伝子又は標的遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の範囲内又はその近傍にHDR又はNHEJによって挿入すること、又は4)標的遺伝子の少なくとも一部分の欠失、及び/又は標的cDNA又はミニ遺伝子(1つ以上のエクソン又はイントロン又は天然若しくは合成イントロンを含む)をノックインすること、又は外因性標的DNA又はcDNA配列又はその断片を遺伝子の遺伝子座に導入すること。
【0075】
ノックイン戦略では、相同組換え修復(HDR)又は非相同末端結合(NHEJ)においてドナーDNA鋳型を利用する。いずれの戦略におけるHDRも、1つ以上のエンドヌクレアーゼを使用することによってゲノムの特異的部位に1つ以上の一本鎖切断(SSB)又は二本鎖切断(DSB)を作ることにより達成し得る。
【0076】
例えば、ノックイン戦略は、標的遺伝子の1番目の又は他のエクソン及び/又はイントロンの上流又はそこを標的とするgRNA(例えば、crRNA+tracrRNA、又はsgRNA)又は一対のsgRNAを使用して標的cDNA又はミニ遺伝子(天然又は合成エンハンサー及びプロモーター、1つ以上のエクソン、及び天然又は合成イントロン、及び天然又は合成3’UTR及びポリアデニル化シグナルを含む)を遺伝子の遺伝子座にノックインすることを含む。ドナーDNAは、標的遺伝子のヌクレアーゼ標的領域に対する相同性アームを有する一本鎖又は二本鎖DNAであってもよい。例えば、ドナーDNAは、TRAC(chr14:22278151〜22553663)、CD3ε(chr11:118301545〜118319175)、B2M(chr15:44708477〜44721877)、CIITA(chr16:10874198〜10935281)、RFX5(chr1:151337640〜151350251)、PD1(chr2:241846881〜241861908)、CTLA−4(chr2:203864786〜203876960)、CD52(chr1:26314957〜26323523)、PPP1R12C(chr19:55087913〜55120559)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される遺伝子のヌクレアーゼ標的領域に対する相同性アームを有する一本鎖又は二本鎖DNAであってもよい。
【0077】
例えば、欠失戦略は、一部の態様において、1つ以上のエンドヌクレアーゼ及び1つ以上のgRNA又はsgRNAを使用して標的遺伝子の1つ以上のイントロン、エクソン、調節領域、標的遺伝子の部分的セグメント又は標的遺伝子配列全体を欠失させることを含む。
【0078】
別の例として、欠失戦略は、一部の態様において、1つ以上のエンドヌクレアーゼ及び1つ以上のgRNA又はsgRNAを使用して1つ以上の標的遺伝子の1つ以上の核酸を欠失させて、小さい挿入又は欠失(インデル)を生じさせることを含む。
【0079】
上記のゲノム編集戦略に加えて、別の例示的編集戦略は、調節配列における編集によって標的遺伝子の発現、機能、又は活性を調節することを含む。
【0080】
上記に挙げた編集選択肢に加え、Cas9又は同様のタンパク質を使用してエフェクタードメインの標的を、編集に同定され得る同じ標的部位、又はエフェクタードメインの有効範囲内にある追加的な標的部位に向けることができる。標的遺伝子の発現を改変するために様々なクロマチン修飾酵素、メチラーゼ又はデメチラーゼ(demethlyase)を使用し得る。1つの可能性は、突然変異が活性低下につながる場合、標的タンパク質の発現を増加させることである。この種のエピジェネティック調節は、特に起こり得るオフターゲット効果の点で限られているため、幾らか有利である。
【0081】
コード配列及びスプライシング配列における突然変異に加えて、幾つもの種類のゲノム標的部位が存在する。
【0082】
転写及び翻訳の調節は、細胞タンパク質又はヌクレオチドと相互作用する幾つもの異なるクラスの部位が関わるとされている。多くの場合に転写因子又は他のタンパク質のDNA結合部位が、部位の役割を研究するための突然変異又は欠失の標的となり得るが、それらはまた、遺伝子発現を変化させるための標的にもなり得る。部位は非相同末端結合NHEJ又は相同組換え修復(HDR)による直接的なゲノム編集を通じて付加することができる。転写因子結合のゲノムシーケンシング、RNA発現及びゲノムワイド研究の利用が増し、それらの部位がどのように発生上の又は一時的な遺伝子調節につながるかを同定できる可能性が増している。これらの制御系は直接的であることもあり、又は複数のエンハンサーからの活性を統合する必要があり得る広範な協調的調節を伴うこともある。転写因子は、典型的には6〜12bp長の縮重DNA配列に結合する。個々の部位がもたらす特異性レベルは低く、結合及び機能的帰結には複合的相互作用及び規則が関与していることが示唆される。縮重性の低い結合部位ほど単純な調節手段を提供し得る。人工転写因子は、ゲノム中に類似配列が少なく且つオフターゲット切断の可能性が低い、より長い配列を指定するように設計することができる。この種の結合部位はいずれも、遺伝子調節若しくは発現の変化が可能となるように突然変異させ、欠失させ、又は更には作成することができる(Canver,M.C.et al.,Nature(2015))。
【0083】
これらの特徴を有する別のクラスの遺伝子調節領域は、マイクロRNA(miRNA)結合部位である。miRNAは、転写後遺伝子調節において重要な役割を果たす非コードRNAである。miRNAは、全哺乳類タンパク質コード遺伝子のうちの30%の発現を調節し得る。二本鎖RNAによる特異的且つ強力な遺伝子サイレンシング(RNAi)が、追加的な小さい非コードRNAと共に発見された(Canver,M.C.et al.,Nature(2015))。遺伝子サイレンシングに重要な非コードRNAの最も大きいクラスがmiRNAである。哺乳類では、miRNAは初めに長いRNA転写物として転写され、それが転写単位、タンパク質イントロンの部分、又は他の転写物に分かれ得る。この長い転写物は、不完全に塩基対合したヘアピン構造を含むプライマリmiRNA(pri−miRNA)と呼ばれる。このpri−miRNAが、Droshaが関わる核中にあるタンパク質複合体であるマイクロプロセッサによって1つ以上の短い前駆miRNA(pre−miRNA)に切断される。
【0084】
pre−miRNAは、成熟19〜25ヌクレオチドmiRNA:miRNA
*二重鎖に輸送される2ヌクレオチドの3’−オーバーハングを有する約70ヌクレオチド長の短いステムループである。低い塩基対合安定性のmiRNA鎖(ガイド鎖)は、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)に負荷され得る。パッセンジャーガイド鎖(
*印が付される)は機能性であり得るが、通常は分解される。成熟miRNAは、主に3’非翻訳領域(UTR)内に見られる標的mRNAの部分的に相補的な配列モチーフにRISCをテザー係留し、転写後遺伝子サイレンシングを誘導する(Bartel,D.P.Cell 136,215−233(2009);Saj,A.& Lai,E.C.Curr Opin Genet Dev 21,504−510(2011))。
【0085】
miRNAは、発生、分化、細胞周期及び成長制御において、並びに哺乳類及び他の多細胞生物の事実上全ての生物学的経路において重要である。miRNAはまた、細胞周期調節、アポトーシス及び幹細胞分化、造血、低酸素症、筋肉発生、神経形成、インスリン分泌、コレステロール代謝、加齢、ウイルス複製及び免疫応答にも関与する。
【0086】
単一のmiRNAが数百の異なるmRNA転写物を標的とし得る一方、個々の転写物が多くの異なるmiRNAの標的となり得る。最新リリースのmiRBase(v.21)においては28645個を超えるマイクロRNAがアノテートされている。一部のmiRNAは複数の遺伝子座によってコードされ、そのうちの一部は、タンデムに共転写されたクラスターから発現する。こうした特徴により、複数の経路及びフィードバック制御を伴う複雑な調節ネットワークが実現する。miRNAは、それらのフィードバック及び調節回路の不可欠な部分であり、タンパク質産生を限度内に保つことにより遺伝子発現の調節の助けとなり得る(Herranz,H.& Cohen,S.M.Genes Dev 24,1339−1344(2010);Posadas,D.M.& Carthew,R.W.Curr Opin Genet Dev 27,1−6(2014))。
【0087】
miRNAはまた、異常なmiRNA発現に関連する多数のヒト疾患においても重要である。この関連性は、miRNA調節経路の重要性を強調する。最近のmiRNA欠失研究では、miRNAが免疫応答の調節と関連付けられている(Stern−Ginossar,N.et al.,Science 317,376−381(2007))。
【0088】
miRNAはまた癌との強い関連も有し、様々な種類の癌において役割を果たし得る。幾つもの腫瘍でmiRNAが下方制御されることが分かっている。miRNAは、細胞周期調節及びDNA損傷応答など、主要な癌関連経路の調節において重要であり、従って診断に使用され、臨床で標的とされている。マイクロRNAは血管新生のバランスをきめ細かに調節し、全てのマイクロRNAを枯渇させる実験では腫瘍血管新生が抑制されることになる(Chen,S.et al.,Genes Dev 28,1054−1067(2014))。
【0089】
タンパク質コード遺伝子について明らかにされているとおり、miRNA遺伝子はまた、癌で起こる後成的変化も受ける。多くのmiRNA遺伝子座がCpG島に関連し、DNAメチル化によってその調節機会を高めている(Weber,B.,Stresemann,C.,Brueckner,B.& Lyko,F.Cell Cycle 6,1001−1005(2007))。これらの研究の大多数は、後成的にサイレンシングされたmiRNAを明らかにするためにクロマチンリモデリング薬物による治療を用いている。
【0090】
RNAサイレンシングにおけるその役割に加えて、miRNAはまた翻訳も活性化することができる(Posadas,D.M.& Carthew,R.W.Curr Opin Genet Dev 27,1−6(2014))。これらの部位をノックアウトすると標的遺伝子の発現の低下につながり得る一方、これらの部位を導入すると発現が増加し得る。
【0091】
個々のmiRNAは、結合特異性に重要なシード配列(マイクロRNAの塩基2〜8)の突然変異により最も効果的にノックアウトすることができる。この領域の切断と、続くNHEJによる修復誤りにより、標的部位への結合が遮断されるためmiRNA機能を効果的に無効化し得る。miRNAはまた、パリンドローム配列に隣接する特別なループ領域の特異的ターゲティングによっても阻害することが可能であり得る。触媒不活性Cas9もまたshRNA発現の阻害に使用することができる(Zhao,Y.et al.,Sci Rep 4,3943(2014))。miRNAによるサイレンシングを防ぐため、miRNAのターゲティングに加えて、結合部位もまた標的化して突然変異させることができる。
【0092】
キメラ抗原受容体(CAR)T細胞
キメラ抗原受容体とは、腫瘍細胞が発現する抗原を認識してそれに結合するように操作される人工の免疫細胞受容体を指す。概して、CARはT細胞向けに設計され、T細胞受容体(TcR)複合体のシグナル伝達ドメインと抗原認識ドメイン(例えば、抗体の単鎖断片(scFv)又は他の抗体断片)とのキメラである(Enblad et al.,Human Gene Therapy.2015;26(8):498−505)。CARを発現するT細胞は、CAR T細胞と称される。CARは、T細胞特異性及び反応性をMHCの制約を受けない形で選択の標的に向かってリダイレクトする能力を有する。MHCの制約を受けない抗原認識により、CARを発現するT細胞には抗原プロセシングと無関係に抗原を認識する能力が付与され、ひいては主要な腫瘍エスケープ機構が回避される。更に、CARは有利には、T細胞における発現時に内因性T細胞受容体(TCR)α鎖及びβ鎖と二量化しない。
【0093】
CARには4世代があり、その各々が異なる成分を含む。第1世代CARは抗体由来のscFvをヒンジ及び膜貫通ドメインによってT細胞受容体のCD3ゼータ(ζ又はz)細胞内シグナル伝達ドメインにつなぎ合わせる。第2世代CARは追加的なドメイン、例えばCD28、4−1BB(41BB)、又はICOSを取り入れて共刺激シグナルを供給する。第3世代CARは、TcR CD3−ζ鎖と融合した2つの共刺激ドメインを含む。第3世代共刺激ドメインは、例えば、CD3z、CD27、CD28、4−1BB、ICOS、又はOX40の組み合わせを含み得る。CARは、一部の実施形態において、一般に単鎖可変断片(scFv)に由来するエクトドメイン(例えばCD3ζ)、ヒンジ、膜貫通ドメイン、並びにCD3Ζ及び/又は共刺激分子に由来する1つ(第1世代)、2つ(第2世代)、又は3つ(第3世代)のシグナル伝達ドメインを有するエンドドメインを含む(Maude et al.,Blood.2015;125(26):4017−4023;Kakarla and Gottschalk,Cancer J.2014;20(2):151−155)。
【0094】
CARは、典型的にはその機能特性が異なる。T細胞受容体のCD3ζシグナル伝達ドメインは、会合時、T細胞を活性化し、その増殖を誘導することになるが、アネルギー(体の防御機構による反応の欠如、末梢リンパ球トレランスの直接的な誘導をもたらす)につながり得る。リンパ球は、それが特異的抗原に応答できないとき、アネルギー性であると考えられる。第2世代CARでは共刺激ドメインが加わったことにより、修飾T細胞の複製能力及び持続性が改善された。同様の抗腫瘍効果がインビトロでCD28又は4−1BB CARによって観察されるが、前臨床インビボ研究からは、4−1BB CARが優れた増殖及び/又は持続性を生じ得ることが示唆される。臨床試験からは、これらの第2世代CARが両方ともインビボで実質的なT細胞増殖の誘導能を有することが示唆されるが、4−1BB共刺激ドメインを含むCARの方がより長く持続するように見える。第3世代CARは複数のシグナル伝達ドメインを組み合わせて(共刺激)効力を増強する。
【0095】
一部の実施形態において、キメラ抗原受容体は第1世代CARである。他の実施形態において、キメラ抗原受容体は第2の世代CARである。更に他の実施形態において、キメラ抗原受容体は第3世代CARである。
【0096】
CARは、一部の実施形態において、抗原結合ドメイン(例えば、scFvなどの抗体)を含む細胞外(エクト)ドメインと、膜貫通ドメインと、細胞質(エンド)ドメインとを含む。
【0097】
エクトドメイン。エクトドメインは、CARのなかで細胞外液に露出している領域であり、一部の実施形態では、抗原結合ドメイン、及び任意選択でシグナルペプチド、スペーサードメイン、及び/又はヒンジドメインを含む。一部の実施形態において、抗原結合ドメインは、短いリンカーペプチド(例えば、配列番号1591、1594、又は1597のいずれか1つ)でつながった免疫グロブリン(immunoglobin)の軽鎖及び重鎖を含む単鎖可変断片(scFv)である。リンカーは、一部の実施形態において、可動性のためのグリシン及びセリンのストレッチ並びに溶解度向上のためのグルタミン酸及びリジンのストレッチを有する親水性残基を含む。単鎖可変断片(scFv)は、実際には抗体の断片ではなく、むしろ、10〜約25アミノ酸の短いリンカーペプチドでつながった免疫グロブリンの重鎖(VH)及び軽鎖(VL)の可変領域の融合タンパク質である。リンカーは通常、可動性のためグリシンリッチであるとともに溶解度のためセリン又はスレオニンリッチであり、VHのN末端をVLのC末端につなぐか、又はその逆かのいずれであってもよい。このタンパク質は、定常領域が除去され、且つリンカーが導入されているにも関わらず、元の免疫グロブリンの特異性を保持している。一部の実施形態において、本開示のscFvはヒト化である。他の実施形態において、scFvは完全ヒトである。更に他の実施形態において、scFvはキメラ(例えば、マウス及びヒト配列の)である。一部の実施形態において、scFvは抗CD70 scFv(CD70に特異的に結合する)である。本明細書に提供されるとおり使用し得る抗CD70 scFvタンパク質並びに重鎖及び/又は軽鎖の非限定的な例としては、配列番号1499(scFv)、1500(scFV)、1592(重鎖)、又は1593(軽鎖)のいずれか1つを含むものが挙げられる。
【0098】
シグナルペプチドは、CAR結合の抗原特異性を増強し得る。シグナルペプチドは、抗体、限定はされないがCD8など、並びにエピトープタグ、限定はされないがGST又はFLAGなどに由来することができる。シグナルペプチドの例としては、MLLLVTSLLLCELPHPAFLLIP(配列番号1598)及びMALPVTALLLPLALLLHAARP(配列番号1586)が挙げられる。他のシグナルペプチドが使用されてもよい。
【0099】
一部の実施形態において、CARの細胞外ドメイン(抗原結合ドメインを含む)と膜貫通ドメインとの間、又はCARの細胞質ドメインと膜貫通ドメインとの間にスペーサードメイン又はヒンジドメインが位置する。スペーサードメインは、膜貫通ドメインを細胞外ドメイン及び/又は細胞質ドメインにポリペプチド鎖で連結する働きをする任意のオリゴペプチド又はポリペプチドである。ヒンジドメインは、CARに、若しくはそのドメインに可動性を提供し、又はCARの、若しくはそのドメインの立体障害を防ぐ働きをする任意のオリゴペプチド又はポリペプチドである。一部の実施形態において、スペーサードメイン又はヒンジドメインは、最大300アミノ酸(例えば、10〜100アミノ酸、又は5〜20アミノ酸)を含み得る。一部の実施形態において、1つ以上のスペーサードメインがCARの他の領域に含まれてもよい。一部の実施形態において、ヒンジドメインはCD8ヒンジドメインである。他のヒンジドメインが使用されてもよい。
【0100】
膜貫通ドメイン。膜貫通ドメインは、膜にまたがる疎水性αヘリックスである。膜貫通ドメインはCARの安定性を提供する。一部の実施形態において、本明細書に提供されるとおりのCARの膜貫通ドメインはCD8膜貫通ドメインである。他の実施形態において、膜貫通ドメインはCD28膜貫通ドメインである。更に他の実施形態において、膜貫通ドメインはCD8及びCD28膜貫通ドメインのキメラである。本明細書に提供されるとおり他の膜貫通ドメインが使用されてもよい。一部の実施形態において、膜貫通ドメインは、任意選択で5’リンカーを含むCD8a膜貫通ドメインである。
【0101】
エンドドメイン。エンドドメインは、受容体の機能的末端である。抗原認識後、受容体はクラスター化し、細胞にシグナルが送られる。最も一般的に用いられるエンドドメイン成分はCD3−ゼータであり、これは3つのITAMを含む。これは抗原の結合後にT細胞に活性化シグナルを送る。多くの場合、CD3−ゼータは完全にコンピテントな活性化シグナルを提供しないものであってよく、従って共刺激シグナル伝達が用いられる。例えば、増殖/生存シグナルを送るため、CD3−ゼータ(CD3ζ)と共にCD28及び/又は4−1BBが使用されてもよい。従って、一部の実施形態において、本明細書に提供されるとおりのCARの共刺激分子はCD28共刺激分子である。他の実施形態において、共刺激分子は4−1BB共刺激分子である。一部の実施形態において、CARはCD3ζ及びCD28を含む。他の実施形態において、CARはCD3−ゼータ及び4−1BBを含む。なおも他の実施形態において、CARは、CD3ζ、CD28、及び4−1BBを含む。本明細書において使用し得る共刺激分子の非限定的な例としては、配列番号1377(CD3−ゼータ)、配列番号1336(CD28)、及び/又は配列番号1339(4−1BB)のヌクレオチド配列によってコードされるものが挙げられる。
【0102】
ヒト細胞
本明細書に記載及び例示されるとおり、遺伝子編集の主要な標的はヒト細胞である。例えば、初代ヒトT細胞、CD4+及び/又はCD8+が編集されてもよい。これらは末梢血単核球単離から単離することができる。
【0103】
遺伝子編集は、標的表面タンパク質発現の変化並びにPCR及び/又はシーケンシングによるDNA解析によって確認することができる。
【0104】
編集された細胞は選択的優位性を有し得る。MHC−I及び/又はMHC−II並びにPDCD1又はCTLA4ノックアウトT細胞は患者においてより長く持続し得る。
【0105】
編集された細胞は、オフターゲット遺伝子編集並びに転座に関してアッセイすることができる。こうした細胞はまた、サイトカイン不含培地で成長する能力に関しても試験することができる。編集された細胞が低いオフターゲット活性及び最小限の転座を呈するとともに、サイトカイン不含培地で成長する能力がない場合、それは安全と見なされることになる。
【0106】
初代ヒトT細胞は、leukopakから単離した末梢血単核球(PBMC)から単離することができる。T細胞は、PBMCから、抗CD3/CD28抗体カップリングナノ粒子又はビーズでの処理によって拡大することができる。活性化T細胞に、sgRNAと複合体化したCas9を含有する1つ又は複数のRNPを電気穿孔することができる。細胞は次に、HDRに必要な場合には、例えばCARコンストラクトをコードする核酸の挿入用のドナー鋳型DNAを含有するAAV6ウイルスで処理することができる。細胞は次に、液体培養で1〜2週間拡大させることができる。TCR陰性細胞が必要な場合、編集された細胞を例えばMACSなどの抗体/カラムベースの方法によって選択することができる。
【0107】
治療すべき医学的病態を有しない、又はそれを有する疑いがないドナーに由来する同種異系細胞で遺伝子編集を実施することにより、患者に安全に再導入することのできる、且つ患者の疾患に関連する1つ以上の臨床状態を改善するのに有効な細胞集団を有効に生じる細胞を生成することが可能である。
【0108】
必要としている患者に由来する、従って既に完全に免疫学的に適合した自己細胞で遺伝子編集を実施することにより、患者に安全に再導入することのできる、且つ患者の疾患に関連する1つ以上の臨床状態を改善するのに有効な細胞集団を有効に生じる細胞を生成することが可能である。
【0109】
前駆細胞(本明細書では幹細胞とも称される)は、増殖能力及びより多くの前駆細胞を生じる能力の両方を有し、ひいては多数の母細胞を生成する能力を有し、ひいては母細胞が分化した又は分化可能な娘細胞を生じることができる。娘細胞それ自体は、親の発生能を有する1つ以上の細胞もまた保持しつつ、増殖して、続いて1つ以上の成熟細胞型に分化する子孫を産生するように誘導することができる。次に用語「幹細胞」は、特定の状況下でより特殊化した又は分化した表現型に分化する能力又は潜在能を有し、且つある状況下では実質的に分化することなく増殖する能力を保持している細胞を指す。一態様において、用語の前駆細胞又は幹細胞は、その後代(子孫)が、例えば胚細胞及び組織の発育上の多様化において起こるとおりの完全に個別化した性質の獲得により、分化によって多くの場合に異なる方向に特殊化する一般化された母細胞を指す。細胞分化は、典型的には多くの細胞分裂を通じて起こる複合的な過程である。分化細胞は、それ自体が多能性細胞に由来する多能性細胞に由来し得る等となる。これらの多能性細胞の各々は幹細胞と見なされ得るが、各々が生じ得る細胞型の範囲は大きく異なり得る。一部の分化細胞はまた、より高い発生能の細胞を生じる能力も有する。かかる能力は天然であってもよく、又は様々な因子による処理を受けて人工的に誘導されてもよい。多くの生物学的例では、幹細胞はまた、2つ以上の異なる細胞型の子孫を産生することができるため「多分化能」でもあるが、これは「幹細胞性」であることの要件ではない。
【0110】
自己再生は、幹細胞のもう一つの重要な側面である。理論上、自己再生は、2つの主要な機構のいずれか一方により起こり得る。幹細胞は非対称に分裂し、一方の娘細胞が幹細胞状態を保持して、他方の娘細胞が他の何らか異なる特異的機能及び表現型を発現し得る。或いは、集団中の幹細胞の一部が2つの幹細胞に対称に分裂し、従って全体として集団中に一部の幹細胞を維持する一方で、集団中の残りの細胞は分化した子孫のみを生じ得る。概して、「前駆細胞」は、より原始的な(即ち、完全に分化した細胞と比べて発生経路又は発育に沿ってより早い段階にある)細胞表現型を有する。多くの場合に、前駆細胞はまた、顕著な又は極めて高い増殖能も有する。前駆細胞は、発生経路に応じて、並びに細胞が発生及び分化する環境に応じて、複数の異なる分化細胞型を生じることも、又は単一の分化細胞型を生じることもある。
【0111】
細胞個体発生の文脈では、形容詞「分化した」又は「分化している」は相対的な用語である。「分化した細胞」は、それが比較の対象としている細胞よりも発生経路上更に先まで発育している細胞である。従って、幹細胞は系統限定的前駆細胞に分化することができ(筋前駆細胞など)、ひいてはこれが経路上更に先の他の前駆細胞型に分化して(筋形成細胞など)、次に、ある種の組織型で特徴的な役割を果たす、且つ更なる増殖能を保持していることも、又は保持していないこともある筋細胞などの末期分化細胞に至り得る。
【0112】
用語「造血前駆細胞」は、赤血球系(赤血球(erythrocyte)又は赤血球(red blood cell:RBC))、骨髄系(単球及びマクロファージ、好中球、好塩基球、好酸球、巨核球/血小板、及び樹状細胞)、及びリンパ系(T細胞、B細胞、NK細胞)を含めた全ての血球細胞型を生じる幹細胞系統の細胞を指す。
【0113】
末梢血単核球の単離
末梢血単核球は、当該技術分野において公知の任意の方法により単離されてもよい。例えば、白血球は、液体試料から遠心及び細胞培養によって単離し得る。
【0114】
GCSFによる患者の治療
患者は、任意選択で、当該技術分野において公知の任意の方法において顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)で治療されてもよい。一部の実施形態において、GCSFはプレリキサホル(Plerixaflor)と併用して投与される。
【0115】
動物モデル
有効性試験には、NOG又はNSGマウスを使用することができる。これらのマウスにヒトリンパ腫細胞株を移植し、続いて編集ヒトCAR−T細胞を移植することができる。リンパ腫細胞の喪失/防止は、編集T細胞の有効性を示すものであり得る。
【0116】
TCR編集T細胞の安全性は、NOG又はNSGマウスで評価することができる。これらのマウスに移植されたヒトT細胞は致死性の異種移植片対宿主病(GVHD)を引き起こし得る。遺伝子編集によってTCRを除去すれば、この種のGVHDは軽減されるはずである。
【0117】
ゲノム編集
ゲノム編集とは、概して、ゲノムのヌクレオチド配列を好ましくは正確な又は予め決められた方法で修飾するプロセスを指す。本明細書に記載されるゲノム編集方法の例には、部位特異的ヌクレアーゼを使用してゲノムの正確な標的位置でデオキシリボ核酸(DNA)を切断し、それによりゲノム内の特定の位置に一本鎖又は二本鎖DNA切断を作成する方法が含まれる。かかる切断は、近年ではCox et al.,Nature Medicine 21(2),121−31(2015)によりレビューされたとおり、相同組換え修復(HDR)及び非相同末端結合(NHEJ)などの天然の内因性細胞プロセスによって修復されてもよく、通常はそれによって修復される。これらの2つの主要なDNA修復プロセスは、代替的経路のファミリーからなる。NHEJでは、二本鎖切断によって生じるDNA末端が直接つなぎ合わされるが、時にヌクレオチド配列の喪失又は追加を伴い、それが遺伝子発現を破壊又は増強し得る。HDRでは、切断点に定義付けられたDNA配列を挿入するための鋳型として相同配列、又はドナー配列が利用される。相同配列は姉妹染色分体などの内因性ゲノムにあってもよい。或いは、ドナーは、ヌクレアーゼ切断遺伝子座と高い相同性の領域を有するが、切断された標的遺伝子座に取り込まれ得る追加的な配列又は欠失を含めた配列変化もまた含み得る、プラスミド、一本鎖オリゴヌクレオチド、二本鎖オリゴヌクレオチド、二重鎖オリゴヌクレオチド又はウイルスなどの外因性核酸であってもよい。第3の修復機構は、「代替的NHEJ」とも称されるマイクロホモロジー媒介末端結合(MMEJ)であり、ここで遺伝的結果は、切断部位に小さい欠失及び挿入が起こり得る点でNHEJと同様である。MMEJでは、DNA切断部位に隣接する数塩基対の相同配列を用いてより有利なDNA末端結合修復結果がドライブされ、最近の報告ではこのプロセスの分子機構が更に解明されている;例えば、Cho and Greenberg,Nature 518,174−76(2015);Kent et al.,Nature Structural and Molecular Biology,Adv.Online doi:10.1038/nsmb.2961(2015);Mateos−Gomez et al.,Nature 518,254−57(2015);Ceccaldi et al.,Nature 528,258−62(2015)を参照のこと。一部の例では、DNA切断部位における潜在的なマイクロホモロジーの分析に基づき、起こり得る修復結果を予測することが可能であり得る。
【0118】
これらのゲノム編集機構の各々を用いて所望のゲノム改変を作成することができる。ゲノム編集プロセスのステップは、標的遺伝子座において意図される突然変異の部位の可能な限り近くに1つ又は2つのDNA切断(後者は二本鎖切断として、又は2つの一本鎖切断として)を作成することである。これは、本明細書に記載及び例示されるとおり、部位特異的ポリペプチドの使用によって実現することができる。
【0119】
DNAエンドヌクレアーゼなどの部位特異的ポリペプチドは、核酸、例えばゲノムDNAに二本鎖切断又は一本鎖切断を導入することができる。二本鎖切断は細胞の内因性DNA修復経路(例えば、相同性依存的修復又は非相同末端結合又は代替的非相同末端結合(A−NHEJ)又はマイクロホモロジー媒介末端結合)を刺激することができる。NHEJは、相同性鋳型の必要性なく、切断された標的核酸を修復することができる。これは時に標的核酸の切断部位に小さい欠失又は挿入(インデル)を生じさせることがあり、遺伝子発現の破壊又は改変につながり得る。HDRは、相同性修復鋳型、又はドナーが利用可能な場合に起こり得る。相同ドナー鋳型は、標的核酸切断部位に隣接する配列に相同な配列を含む。概して姉妹染色分体が、細胞によって修復鋳型として使用される。しかしながら、ゲノム編集の目的上、修復鋳型は多くの場合に、プラスミド、二重鎖オリゴヌクレオチド、一本鎖オリゴヌクレオチド、二本鎖オリゴヌクレオチド、又はウイルス核酸など、外因性核酸として供給される。外因性ドナー鋳型では、隣接相同性領域間に追加的な核酸配列(トランス遺伝子など)又は修飾(単一又は複数の塩基変化又は欠失など)を導入して、標的遺伝子座に追加的な又は改変された核酸配列もまた取り込まれるようにすることが一般的である。MMEJでは、切断部位に小さい欠失及び挿入が起こり得る点でNHEJと同様の遺伝的結果が生じる。MMEJでは、切断部位に隣接する数塩基対の相同配列を用いて有利な末端結合DNA修復結果がドライブされる。一部の例では、ヌクレアーゼ標的領域における潜在的なマイクロホモロジーの分析に基づき、起こり得る修復結果を予測することが可能であり得る。
【0120】
従って、一部の実施形態では、非相同末端結合又は相同組換えのいずれかを用いて標的核酸切断部位に外因性ポリヌクレオチド配列が挿入される。外因性ポリヌクレオチド配列は、本明細書ではドナーポリヌクレオチド(又はドナー又はドナー配列又はポリヌクレオチドドナー鋳型)と呼ばれる。一部の実施形態において、ドナーポリヌクレオチド、ドナーポリヌクレオチドの一部分、ドナーポリヌクレオチドのコピー、又はドナーポリヌクレオチドのコピーの一部分が標的核酸切断部位に挿入される。一部の実施形態において、ドナーポリヌクレオチドは外因性ポリヌクレオチド配列、即ち天然では標的核酸切断部位に存在しない配列である。
【0121】
NHEJ及び/又はHDRに起因する標的DNAの修飾は、例えば、突然変異、欠失、改変、組込み、遺伝子修正、遺伝子置換、遺伝子タグ付加、トランス遺伝子挿入、ヌクレオチド欠失、遺伝子破壊、転座及び/又は遺伝子突然変異につながり得る。ゲノムDNAを欠失させて非天然核酸をゲノムDNAに組み込むプロセスは、ゲノム編集の例である。
【0122】
CRISPRエンドヌクレアーゼシステム
CRISPR(クラスター化した規則的間隔の短鎖パリンドロームリピート)ゲノム遺伝子座は、多くの原核生物(例えば、細菌及び古細菌)のゲノムに見出すことができる。原核生物では、CRISPR遺伝子座は、ある種の免疫系として働くことによりウイルス及びファージなどの外来性侵入者から原核生物を防御する助けとなる産物をコードする。CRISPR遺伝子座機能には3つの段階:CRISPR遺伝子座への新規配列の組込み、CRISPR RNA(crRNA)の発現、及び外来性侵入核酸のサイレンシングがある。5種類のCRISPRシステム(例えば、I型、II型、III型、U型、及びV型)が同定されている。
【0123】
CRISPR遺伝子座は、「リピート」と称される幾つもの短い反復配列を含む。発現時、リピートは二次構造(例えばヘアピン)を形成し、及び/又は構造化されていない一本鎖配列を含むことができる。リピートは通常はクラスター化して存在し、種間で異なることが多い。リピートは、「スペーサー」と称されるユニークな介在配列を間に挟んで規則的な間隔を置き、そのためリピート−スペーサー−リピート遺伝子座構成となる。スペーサーは既知の外来性侵入配列と同一であるか、又は高い相同性を有する。スペーサー−リピート単位はcrisprRNA(crRNA)をコードし、これがプロセシングされて成熟型のスペーサー−リピート単位になる。crRNAは、標的核酸のターゲティングに関与する「シード」又はスペーサー配列を含む(原核生物における天然に存在する形態では、スペーサー配列が外来性侵入核酸を標的化する)。スペーサー配列は、crRNAの5’又は3’末端に位置する。
【0124】
CRISPR遺伝子座はまた、CRISPR関連(Cas)遺伝子をコードするポリヌクレオチド配列も含む。Cas遺伝子は、原核生物においてバイオジェネシス及びcrRNA機能の干渉段階に関与するエンドヌクレアーゼをコードする。一部のCas遺伝子は相同性二次及び/又は三次構造を含む。
【0125】
II型CRISPRシステム
天然でのII型CRISPRシステムにおけるcrRNAバイオジェネシスには、トランス活性化CRISPR RNA(tracrRNA)が必要である。tracrRNAは内因性RNアーゼIIIによって修飾され、次にpre−crRNAアレイ中のcrRNAリピートにハイブリダイズする。内因性RNアーゼIIIが動員されてpre−crRNAが切断される。切断されたcrRNAはエキソリボヌクレアーゼのトリミングに供され、成熟crRNA形態(例えば、5’トリミング)を生じる。tracrRNAはcrRNAにハイブリダイズしたまま残り、tracrRNA及びcrRNAが部位特異的ポリペプチド(例えばCas9)と会合する。crRNA−tracrRNA−Cas9複合体のcrRNAがこの複合体を標的核酸にガイドし、この標的核酸は、それにcrRNAがハイブリダイズすることができるものである。crRNAが標的核酸にハイブリダイズすると、Cas9が標的核酸切断のため活性化される。II型CRISPRシステムにおける標的核酸は、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)と称される。天然では、PAMは、部位特異的ポリペプチド(例えばCas9)による標的核酸への結合を促進するのに不可欠である。II型システム(Nmeni又はCASS4とも称される)はII−A型(CASS4)及びII−B型(CASS4a)に更に細分される。Jinek et al.,Science,337(6096):816−821(2012)は、CRISPR/Cas9システムがRNAプログラム可能ゲノム編集に有用であることを示したとともに、国際公開第2013/176772号パンフレットは、部位特異的遺伝子編集に対するCRISPR/Casエンドヌクレアーゼシステムの数多くの例及び応用を提供する。
【0126】
V型CRISPRシステム
V型CRISPRシステムは、II型システムと比べて幾つかの重要な違いがある。例えば、Cpf1は、II型システムとは対照的に、tracrRNAを欠く単一のRNAガイド型エンドヌクレアーゼである。実際に、Cpf1関連CRISPRアレイは追加的なトランス活性化tracrRNAの必要なく成熟crRNAにプロセシングされる。V型CRISPRアレイは42〜44ヌクレオチド長の短い成熟crRNAにプロセシングされ、各成熟crRNAが19ヌクレオチドのダイレクトリピートで始まり、その後に23〜25ヌクレオチドのスペーサー配列が続く。対照的に、II型システムの成熟crRNAは20〜24ヌクレオチドのスペーサー配列で始まり、その後に約22ヌクレオチドのダイレクトリピートが続く。また、Cpf1はTリッチプロトスペーサー隣接モチーフを利用し、Cpf1−crRNA複合体は短いTリッチPAMが前にある標的DNAを効率的に切断することになり、これはII型システムで標的DNAの後にGリッチPAMがあるのと対照的である。従って、V型システムはPAMから離れた点で切断し、一方、II型システムはPAMに隣接する点で切断する。加えて、II型システムと対照的に、Cpf1は、4又は5ヌクレオチドの5’オーバーハングを伴い付着末端型のDNA二本鎖切断によってDNAを切断する。II型システムは平滑末端二本鎖切断によって切断する。II型システムと同様に、Cpf1は予測RuvC様エンドヌクレアーゼドメインを含有するが、第2のHNHエンドヌクレアーゼドメインを欠いており、これはII型システムと対照的である。
【0127】
Cas遺伝子/ポリペプチド及びプロトスペーサー隣接モチーフ
例示的CRISPR/Casポリペプチドは、Fonfara et al.,Nucleic Acids Research,42:2577−2590(2014)の
図1にあるCas9ポリペプチドを含む。CRISPR/Cas遺伝子の命名方式は、Cas遺伝子が発見されて以来、大々的な書き換えを被っている。Fonfara、前掲の
図5は、様々な種由来のCas9ポリペプチドについてのPAM配列を提供している。
【0128】
部位特異的ポリペプチド
部位特異的ポリペプチドは、ゲノム編集においてDNAの切断に使用されるヌクレアーゼである。部位特異的なもの(the site−directed)は、1つ以上のポリペプチド、又はポリペプチドをコードする1つ以上のmRNAのいずれかとして細胞又は患者に投与されてもよい。
【0129】
CRISPR/Cas又はCRISPR/Cpf1システムのコンテクストでは、部位特異的ポリペプチドはガイドRNAに結合することができ、次にはガイドRNAが、ポリペプチドの対象となる標的DNA中の部位を特定する。本明細書におけるCRISPR/Cas又はCRISPR/Cpf1システムの実施形態において、部位特異的ポリペプチドはDNAエンドヌクレアーゼなどのエンドヌクレアーゼである。
【0130】
一部の実施形態において、部位特異的ポリペプチドは複数の核酸切断(即ちヌクレアーゼ)ドメインを含む。2つ以上の核酸切断ドメインがリンカーによって一体に連結されてもよい。例えば、リンカーは可動性リンカーを含む。一部の実施形態において、リンカーは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40アミノ酸長又はそれ以上を含む。
【0131】
天然に存在する野生型Cas9酵素は2つのヌクレアーゼドメイン、HNHヌクレアーゼドメイン及びRuvCドメインを含む。本明細書では、「Cas9」は、天然に存在するCas9及び組換えCas9の両方を指す。本明細書で企図されるCas9酵素は、HNH又はHNH様ヌクレアーゼドメイン、及び/又はRuvC又はRuvC様ヌクレアーゼドメインを含む。
【0132】
HNH又はHNH様ドメインはMcrA様の折り畳みを含む。HNH又はHNH様ドメインは2つの逆平行βストランド及びαヘリックスを含む。HNH又はHNH様ドメインは金属結合部位(例えば二価カチオン結合部位)を含む。HNH又はHNH様ドメインは、標的核酸の一方の鎖(例えば、crRNAの標的となる鎖の相補鎖)を切断することができる。
【0133】
RuvC又はRuvC様ドメインはRNアーゼH又はRNアーゼH様の折り畳みを含む。RuvC/RNアーゼHドメインは、RNA及びDNAの両方への作用を含め、多様な一組の核酸ベースの機能に関与する。RNアーゼHドメインは、複数のαヘリックスに囲まれた5つのβストランドを含む。RuvC/RNアーゼH又はRuvC/RNアーゼH様ドメインは金属結合部位(例えば二価カチオン結合部位)を含む。RuvC/RNアーゼH又はRuvC/RNアーゼH様ドメインは、標的核酸の一方の鎖(例えば、二本鎖標的DNAの非相補鎖)を切断することができる。
【0134】
部位特異的ポリペプチドは、核酸、例えばゲノムDNAに二本鎖切断又は一本鎖切断を導入することができる。二本鎖切断は細胞の内因性DNA修復経路(例えば、相同性依存的修復(HDR)又は非相同末端結合(NHEJ)又は代替的非相同末端結合(A−NHEJ)又はマイクロホモロジー媒介末端結合(MMEJ))を刺激することができる。NHEJは、相同性鋳型の必要性なく、切断された標的核酸を修復することができる。これは時に標的核酸の切断部位に小さい欠失又は挿入(インデル)を生じさせることがあり、遺伝子発現の破壊又は改変につながり得る。HDRは、相同性修復鋳型、又はドナーが利用可能な場合に起こり得る。相同ドナー鋳型は、標的核酸切断部位に隣接する配列に相同な配列を含む。概して姉妹染色分体が、細胞によって修復鋳型として使用される。しかしながら、ゲノム編集の目的上、修復鋳型は多くの場合に、プラスミド、二重鎖オリゴヌクレオチド、一本鎖オリゴヌクレオチド、又はウイルス核酸など、外因性核酸として供給される。外因性ドナー鋳型では、隣接相同性領域間に追加的な核酸配列(トランス遺伝子など)又は修飾(単一又は複数の塩基変化又は欠失など)を導入して、標的遺伝子座に追加的な又は改変された核酸配列もまた取り込まれるようにすることが一般的である。MMEJでは、切断部位に小さい欠失及び挿入が起こり得る点でNHEJと同様の遺伝的結果が生じる。MMEJでは、切断部位に隣接する数塩基対の相同配列を用いて有利な末端結合DNA修復結果がドライブされる。一部の例では、ヌクレアーゼ標的領域における潜在的なマイクロホモロジーの分析に基づき、起こり得る修復結果を予測することが可能であり得る。
【0135】
従って、一部の実施形態では、相同組換えを用いて標的核酸切断部位に外因性ポリヌクレオチド配列が挿入される。外因性ポリヌクレオチド配列は、本明細書ではドナーポリヌクレオチド(又はドナー又はドナー配列)と呼ばれる。一部の実施形態において、ドナーポリヌクレオチド、ドナーポリヌクレオチドの一部分、ドナーポリヌクレオチドのコピー、又はドナーポリヌクレオチドのコピーの一部分が標的核酸切断部位に挿入される。一部の実施形態において、ドナーポリヌクレオチドは外因性ポリヌクレオチド配列、即ち天然では標的核酸切断部位に存在しない配列である。
【0136】
NHEJ及び/又はHDRに起因する標的DNAの修飾は、例えば、突然変異、欠失、改変、組込み、遺伝子修正、遺伝子置換、遺伝子タグ付加、トランス遺伝子挿入、ヌクレオチド欠失、遺伝子破壊、転座及び/又は遺伝子突然変異につながり得る。ゲノムDNAを欠失させて非天然核酸をゲノムDNAに組み込むプロセスは、ゲノム編集の例である。
【0137】
一部の実施形態において、部位特異的ポリペプチドは、野生型例示的部位特異的ポリペプチド[例えば、化膿レンサ球菌(S.pyogenes)由来のCas9、米国特許出願公開第2014/0068797号明細書の配列番号8又はSapranauskas et al.,Nucleic Acids Res,39(21):9275−9282(2011)]、及び様々な他の部位特異的ポリペプチドと少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、部位特異的ポリペプチドは、野生型部位特異的ポリペプチド(例えば、化膿レンサ球菌(S.pyogenes)由来のCas9、前掲)と10連続アミノ酸にわたって少なくとも70、75、80、85、90、95、97、99、又は100%の同一性を含む。
【0138】
一部の実施形態において、部位特異的ポリペプチドは、野生型例示的部位特異的ポリペプチド(例えば、化膿レンサ球菌(S.pyogenes)由来のCas9、前掲)のヌクレアーゼドメインと少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0139】
一部の実施形態において、部位特異的ポリペプチドは、野生型部位特異的ポリペプチド(例えば、化膿レンサ球菌(S.pyogenes)由来のCas9、前掲)と10連続アミノ酸にわたって多くても:70、75、80、85、90、95、97、99、又は100%の同一性を含む。一部の実施形態において、部位特異的ポリペプチドは、野生型部位特異的ポリペプチド(例えば、化膿レンサ球菌(S.pyogenes)由来のCas9、前掲)と部位特異的ポリペプチドのHNHヌクレアーゼドメインにおける10連続アミノ酸にわたって少なくとも:70、75、80、85、90、95、97、99、又は100%の同一性を含む。一部の実施形態において、部位特異的ポリペプチドは、野生型部位特異的ポリペプチド(例えば、化膿レンサ球菌(S.pyogenes)由来のCas9、前掲)と部位特異的ポリペプチドのHNHヌクレアーゼドメインにおける10連続アミノ酸にわたって多くても:70、75、80、85、90、95、97、99、又は100%の同一性を含む。一部の実施形態において、部位特異的ポリペプチドは、野生型部位特異的ポリペプチド(例えば、化膿レンサ球菌(S.pyogenes)由来のCas9、前掲)と部位特異的ポリペプチドのRuvCヌクレアーゼドメインにおける10連続アミノ酸にわたって少なくとも:70、75、80、85、90、95、97、99、又は100%の同一性を含む。一部の実施形態において、部位特異的ポリペプチドは、野生型部位特異的ポリペプチド(例えば、化膿レンサ球菌(S.pyogenes)由来のCas9、前掲)と部位特異的ポリペプチドのRuvCヌクレアーゼドメインにおける10連続アミノ酸にわたって多くても:70、75、80、85、90、95、97、99、又は100%の同一性を含む。
【0140】
一部の実施形態において、部位特異的ポリペプチドは、修飾された形態の野生型例示的部位特異的ポリペプチドを含む。一部の実施形態において、修飾された形態の野生型例示的部位特異的ポリペプチドは、部位特異的ポリペプチドの核酸切断活性を低下させる突然変異を含む。一部の実施形態において、修飾された形態の野生型例示的部位特異的ポリペプチドは、野生型例示的部位特異的ポリペプチド(例えば、化膿レンサ球菌(S.pyogenes)由来のCas9、前掲)の90%未満、80%未満、70%未満、60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、又は1%未満の核酸切断活性を有する。一部の実施形態において、修飾された形態の部位特異的ポリペプチドは実質的な核酸切断活性を有しない。部位特異的ポリペプチドが、実質的な核酸切断活性を有しない修飾された形態であるとき、それは本明細書では「酵素的に不活性」と称される。
【0141】
一部の実施形態において、修飾された形態の部位特異的ポリペプチドは、それが標的核酸上に一本鎖切断(SSB)を(例えば、二本鎖標的核酸の糖−リン酸骨格の1つのみを切断することにより)誘導し得るような突然変異を含む。一部の実施形態において、突然変異により、野生型部位特異的ポリペプチド(例えば、化膿レンサ球菌(S.pyogenes)由来のCas9、前掲)の複数の核酸切断ドメインのうちの1つ以上における核酸切断活性が90%未満、80%未満、70%未満、60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、又は1%未満になる。一部の実施形態において、突然変異により、複数の核酸切断ドメインのうちの1つ以上が、標的核酸の相補鎖を切断する能力は保持しているが、標的核酸の非相補鎖を切断するその能力は低下したものになる。一部の実施形態において、突然変異により、複数の核酸切断ドメインのうちの1つ以上が、標的核酸の非相補鎖を切断する能力は保持しているが、標的核酸の相補鎖を切断するその能力は低下したものになる。例えば、Asp10、His840、Asn854及びAsn856など、野生型例示的化膿レンサ球菌(S.pyogenes)Cas9ポリペプチドにおける残基が、複数の核酸切断ドメイン(例えばヌクレアーゼドメイン)のうちの1つ以上を不活性化するように突然変異される。突然変異させる残基は、野生型例示的化膿レンサ球菌(S.pyogenes)Cas9ポリペプチドの残基Asp10、His840、Asn854及びAsn856に対応することができる(例えば、配列及び/又は構造アラインメントによって決定されるとおり)。突然変異の非限定的な例としては、D10A、H840A、N854A又はN856Aが挙げられる。当業者は、アラニン置換以外の突然変異が好適であり得ることを認識するであろう。
【0142】
一部の実施形態において、DNA切断活性を実質的に欠く部位特異的ポリペプチドを生じさせるため、D10A突然変異が、H840A、N854A、又はN856A突然変異のうちの1つ以上と組み合わされる。一部の実施形態において、DNA切断活性を実質的に欠く部位特異的ポリペプチドを生じさせるため、H840A突然変異が、D10A、N854A、又はN856A突然変異のうちの1つ以上と組み合わされる。一部の実施形態において、DNA切断活性を実質的に欠く部位特異的ポリペプチドを生じさせるため、N854A突然変異が、H840A、D10A、又はN856A突然変異のうちの1つ以上と組み合わされる。一部の実施形態において、DNA切断活性を実質的に欠く部位特異的ポリペプチドを生じさせるため、N856A突然変異が、H840A、N854A、又はD10A突然変異のうちの1つ以上と組み合わされる。1つの実質的に不活性なヌクレアーゼドメインを含む部位特異的ポリペプチドは、「ニッカーゼ」と称される。
【0143】
RNAガイド型エンドヌクレアーゼ、例えばCas9のニッカーゼ変異体を使用して、CRISPR媒介ゲノム編集の特異性を増加させることができる。野生型Cas9は、典型的には、標的配列における特定の約20ヌクレオチド配列(内因性ゲノム遺伝子座など)とハイブリダイズするように設計された単一のガイドRNAによってガイドされる。しかしながら、ガイドRNAと標的遺伝子座との間には幾つかのミスマッチが許容され得るため、標的部位における要求される相同性の長さを例えば13ntほどの短い相同性に有効に低下させて、それにより標的ゲノムにおける別の場所でのCRISPR/Cas9複合体による結合及び二本鎖核酸切断−オフターゲット切断としても知られる−の可能性を高めることができる。Cas9のニッカーゼ変異体は各々が1本の鎖のみを切断するため、二本鎖切断を作成するには、一対のニッカーゼがごく近接して標的核酸の逆鎖上に結合し、それにより二本鎖切断と同等の一対のニックを作成する必要がある。これには、2つの別個のガイドRNA−各ニッカーゼに1つずつ−がごく近接して標的核酸の逆鎖上に結合しなければならないという要件がある。この要件のため、二本鎖切断が起こるのに必要な相同性の最小長さが本質的に二倍になり、ゲノムの別の場所で2つのガイドRNA部位が−それらが存在する場合に−二本鎖切断の形成を可能にするのに十分に互いに近接している可能性は低く、従ってそこで二本鎖切断イベントが起こるであろう可能性は低下する。当該技術分野で記載されるとおり、ニッカーゼはまた、NHEJに対してHDRを促進するためにも使用することができる。HDRは、所望の変化を有効に媒介する特異的ドナー配列を用いてゲノムの標的部位に選択の変化を導入するために使用することができる。遺伝子編集に使用される様々なCRISPR/Casシステムの説明については、例えば、国際公開第2013/176772号パンフレット、及びNature Biotechnology 32,347−355(2014)、及びそこに引用される参考文献を参照することができる。
【0144】
企図される突然変異には、置換、付加、及び欠失、又はこれらの任意の組み合わせが含まれる。一部の実施形態において、突然変異により、突然変異するアミノ酸はアラニンに変換される。一部の実施形態において、突然変異により、突然変異するアミノ酸は別のアミノ酸(例えば、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、ヒスチジン、リジン、又はアルギニン)に変換される。一部の実施形態において、突然変異により、突然変異するアミノ酸は非天然アミノ酸(例えば、セレノメチオニン)に変換される。一部の実施形態において、突然変異により、突然変異するアミノ酸はアミノ酸模倣体(例えば、ホスホミメティクス)に変換される。一部の実施形態において、突然変異は保存的突然変異である。例えば、突然変異により、突然変異するアミノ酸は、突然変異するアミノ酸のサイズ、形状、電荷、極性、コンホメーション、及び/又は回転異性体に類似したアミノ酸に変換される(例えば、システイン/セリン突然変異、リジン/アスパラギン突然変異、ヒスチジン/フェニルアラニン突然変異)。一部の実施形態において、突然変異により、リーディングフレームのシフト及び/又は未成熟終止コドンの生成が生じる。一部の実施形態において、突然変異により、遺伝子の調節領域又は1つ以上の遺伝子の発現に影響を及ぼす遺伝子座に変化が生じる。
【0145】
一部の実施形態において、部位特異的ポリペプチド(例えば、変異体の、突然変異した、酵素的に不活性な、及び/又は条件的に酵素的に不活性な部位特異的ポリペプチド)は核酸を標的とする。一部の実施形態において、部位特異的ポリペプチド(例えば、変異体の、突然変異した、酵素的に不活性な、及び/又は条件的に酵素的に不活性なエンドリボヌクレアーゼ)はDNAを標的とする。一部の実施形態において、部位特異的ポリペプチド(例えば、変異体の、突然変異した、酵素的に不活性な、及び/又は条件的に酵素的に不活性なエンドリボヌクレアーゼ)はRNAを標的とする。
【0146】
一部の実施形態において、部位特異的ポリペプチドは1つ以上の非天然配列を含む(例えば、部位特異的ポリペプチドは融合タンパク質である)。
【0147】
一部の実施形態において、部位特異的ポリペプチドは、細菌(例えば化膿レンサ球菌(S.pyogenes))由来のCas9と少なくとも15%のアミノ酸同一性を含むアミノ酸配列、核酸結合ドメイン、及び2つの核酸切断ドメイン(即ちHNHドメイン及びRuvCドメイン)を含む。
【0148】
一部の実施形態において、部位特異的ポリペプチドは、細菌(例えば化膿レンサ球菌(S.pyogenes))由来のCas9と少なくとも15%のアミノ酸同一性を含むアミノ酸配列、及び2つの核酸切断ドメイン(即ちHNHドメイン及びRuvCドメイン)を含む。
【0149】
一部の実施形態において、部位特異的ポリペプチドは、細菌(例えば化膿レンサ球菌(S.pyogenes))由来のCas9と少なくとも15%のアミノ酸同一性を含むアミノ酸配列、及び2つの核酸切断ドメインを含み、ここで核酸切断ドメインの一方又は両方は、細菌(例えば化膿レンサ球菌(S.pyogenes))由来のCas9からのヌクレアーゼドメインと少なくとも50%のアミノ酸同一性を含む。
【0150】
一部の実施形態において、部位特異的ポリペプチドは、細菌(例えば化膿レンサ球菌(S.pyogenes))由来のCas9と少なくとも15%のアミノ酸同一性を含むアミノ酸配列、2つの核酸切断ドメイン(即ちHNHドメイン及びRuvCドメイン)、及び非天然配列(例えば核局在化シグナル)又は部位特異的ポリペプチドを非天然配列に連結するリンカーを含む。
【0151】
一部の実施形態において、部位特異的ポリペプチドは、細菌(例えば化膿レンサ球菌(S.pyogenes))由来のCas9と少なくとも15%のアミノ酸同一性を含むアミノ酸配列、2つの核酸切断ドメイン(即ちHNHドメイン及びRuvCドメイン)を含み、ここで部位特異的ポリペプチドは、核酸切断ドメインの一方又は両方に、ヌクレアーゼドメインの切断活性を少なくとも50%低下させる突然変異を含む。
【0152】
一部の実施形態において、部位特異的ポリペプチドは、細菌(例えば化膿レンサ球菌(S.pyogenes))由来のCas9と少なくとも15%のアミノ酸同一性を含むアミノ酸配列、及び2つの核酸切断ドメイン(即ちHNHドメイン及びRuvCドメイン)を含み、ここでヌクレアーゼドメインのうちの一方はアスパラギン酸10の突然変異を含み、及び/又はヌクレアーゼドメインのうちの一方はヒスチジン840の突然変異を含み、及びこの突然変異は1つ又は複数のヌクレアーゼドメインの切断活性を少なくとも50%低下させる。
【0153】
一部の実施形態において、1つ以上の部位特異的ポリペプチド、例えばDNAエンドヌクレアーゼは、一緒になってゲノムの特異的遺伝子座において1つの二本鎖切断を達成する2つのニッカーゼ、又は一緒になってゲノムの特異的遺伝子座において2つの二本鎖切断を達成する、若しくはそれを生じさせる4つのニッカーゼを含む。或いは、1つの部位特異的ポリペプチド、例えばDNAエンドヌクレアーゼが、ゲノムの特異的遺伝子座において1つの二本鎖切断を達成する。
【0154】
ゲノムターゲティング核酸
本開示は、関連するポリペプチド(例えば、部位特異的ポリペプチド)の活性を標的核酸内の特異的標的配列に向けさせることのできるゲノムターゲティング核酸を提供する。ゲノムターゲティング核酸はRNAであってもよい。ゲノムターゲティングRNAは、本明細書では「ガイドRNA」又は「gRNA」と称される。ガイドRNAは少なくとも、目的の標的核酸配列にハイブリダイズするスペーサー配列と、CRISPRリピート配列とを含む。II型システムでは、gRNAはまた、tracrRNA配列と呼ばれる第2のRNAも含む。II型ガイドRNA(gRNA)では、CRISPRリピート配列とtracrRNA配列とが互いにハイブリダイズして二重鎖を形成する。V型ガイドRNA(gRNA)では、crRNAが二重鎖を形成する。両方のシステムにおいて、二重鎖は部位特異的ポリペプチドに結合し、ガイドRNAと部位特異的ポリペプチドとが複合体を形成することになる。一部の実施形態において、ゲノムターゲティング核酸は、部位特異的ポリペプチドとのその会合のおかげで複合体に標的特異性を付与する。従ってゲノムターゲティング核酸は部位特異的ポリペプチドの活性を指図する。
【0155】
例示的ガイドRNAは、その標的配列のゲノム位置及び関連するエンドヌクレアーゼ(例えばCas9)切断部位に伴い配列番号83〜158、284〜408、458〜506、699〜890、1083〜1276、1288〜1298、及び1308〜1312におけるスペーサー配列を含む。当業者は理解するとおり、各ガイドRNAは、そのゲノム標的配列と相補的なスペーサー配列を含むように設計される。例えば、配列番号83〜158、284〜408、458〜506、699〜890、1083〜1276、1288〜1298、及び1308〜1312におけるスペーサー配列の各々は、単一のRNAキメラ又はcrRNAに(対応するtracrRNAと共に)まとめることができる。Jinek et al.,Science,337,816−821(2012)及びDeltcheva et al.,Nature,471,602−607(2011)を参照のこと。
【0156】
一部の実施形態において、ゲノムターゲティング核酸は二重分子ガイドRNAである。一部の実施形態において、ゲノムターゲティング核酸は単一分子ガイドRNAである。
【0157】
二重分子ガイドRNAは2本のRNA鎖を含む。第1の鎖は、5’から3’方向に、任意選択のスペーサー伸長配列、スペーサー配列及び最小CRISPRリピート配列を含む。第2の鎖は、最小tracrRNA配列(最小CRISPRリピート配列と相補的)、3’tracrRNA配列及び任意選択のtracrRNA伸長配列を含む。
【0158】
II型システムにおける単一分子ガイドRNA(sgRNA)は、5’から3’方向に、任意選択のスペーサー伸長配列、スペーサー配列、最小CRISPRリピート配列、単一分子ガイドリンカー、最小tracrRNA配列、3’tracrRNA配列及び任意選択のtracrRNA伸長配列を含む。任意選択のtracrRNA伸長部は、ガイドRNAに追加的な機能性(例えば安定性)を与えるエレメントを含み得る。単一分子ガイドリンカーは最小CRISPRリピート及び最小tracrRNA配列を連結してヘアピン構造を形成する。任意選択のtracrRNA伸長部は1つ以上のヘアピンを含む。
【0159】
V型システムにおける単一分子ガイドRNA(sgRNA)は、5’から3’方向に、最小CRISPRリピート配列及びスペーサー配列を含む。
【0160】
sgRNAは、sgRNA配列の5’末端に20ヌクレオチドスペーサー配列を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の5’末端に20ヌクレオチド未満のスペーサー配列を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の5’末端に20ヌクレオチド超のスペーサー配列を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の5’末端に17〜30ヌクレオチドの様々な長さのスペーサー配列を含み得る(表1を参照)。
【0161】
sgRNAは、表1の配列番号1にあるように、sgRNA配列の3’末端にウラシルを含まないものであり得る。sgRNAは、表1の配列番号1、2、又は3にあるように、sgRNA配列の3’末端に1つ以上のウラシルを含み得る。例えば、sgRNAはsgRNA配列の3’末端に1個のウラシル(U)を含み得る。sgRNAはsgRNA配列の3’末端に2個のウラシル(UU)を含み得る。sgRNAはsgRNA配列の3’末端に3個のウラシル(UUU)を含み得る。sgRNAはsgRNA配列の3’末端に4個のウラシル(UUUU)を含み得る。sgRNAはsgRNA配列の3’末端に5個のウラシル(UUUUU)を含み得る。sgRNAはsgRNA配列の3’末端に6個のウラシル(UUUUUU)を含み得る。sgRNAはsgRNA配列の3’末端に7個のウラシル(UUUUUUU)を含み得る。sgRNAはsgRNA配列の3’末端に8個のウラシル(UUUUUUUU)を含み得る。
【0162】
sgRNAは未修飾でも、又は修飾されていてもよい。例えば、修飾されたsgRNAは1つ以上の2’−O−メチルホスホロチオエートヌクレオチドを含み得る。
【0163】
【表1】
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【0164】
例示として、CRISPR/Cas/Cpf1システムにおいて使用されるガイドRNA、又は他の小型RNAは、以下に例示され、及び当該技術分野において記載されるとおり、化学的手段によって容易に合成することができる。化学合成手順は絶えず拡大しているが、高速液体クロマトグラフィー(HPLC、これはPAGEなどのゲルの使用を回避する)などの手順によるかかるRNAの精製は、ポリヌクレオチド長さが増して100ヌクレオチドほどを大きく超えるようになると、一層難題となる傾向がある。より大きい長さのRNAの生成に用いられる一つの手法は、一体にライゲートした2つ以上の分子を作製することである。Cas9又はCpf1エンドヌクレアーゼをコードするものなど、はるかに長いRNAは、より容易には酵素的に生成される。RNAの化学合成及び/又は酵素的生成の最中又はその後に、当該技術分野で記載されるとおり、各種のRNA修飾、例えば、安定性を増強し、自然免疫応答の可能性又は程度を低下させ、及び/又は他の属性を増強する修飾を導入することができる。
【0165】
スペーサー伸長配列
ゲノムターゲティング核酸の一部の例では、スペーサー伸長配列が活性を修飾し、安定性を提供し、及び/又はゲノムターゲティング核酸の修飾用の位置を提供し得る。スペーサー伸長配列はオンターゲット又はオフターゲット活性又は特異性を修飾し得る。一部の実施形態において、スペーサー伸長配列が提供される。スペーサー伸長配列は、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、220、240、260、280、300、320、340、360、380、400、1000、2000、3000、4000、5000、6000、又は7000ヌクレオチド又はそれ以上を超える長さを有し得る。スペーサー伸長配列は、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、220、240、260、280、300、320、340、360、380、400、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000ヌクレオチド又はそれ以上に満たない長さを有し得る。一部の実施形態において、スペーサー伸長配列は10ヌクレオチド長未満である。一部の実施形態において、スペーサー伸長配列は10〜30ヌクレオチド長である。一部の実施形態において、スペーサー伸長配列は30〜70ヌクレオチド長である。
【0166】
一部の実施形態において、スペーサー伸長配列は、別の部分(例えば、安定性制御配列、エンドリボヌクレアーゼ結合配列、リボザイム)を含む。一部の実施形態において、部分は核酸ターゲティング核酸の安定性を減少又は増加させる。一部の実施形態において、部分は転写ターミネーターセグメント(即ち転写終結配列)である。一部の実施形態において、部分は真核細胞で機能する。一部の実施形態において、部分は原核細胞で機能する。一部の実施形態において、部分は真核細胞及び原核細胞の両方で機能する。好適な部分の非限定的な例としては、5’キャップ(例えば、7−メチルグアニレートキャップ(m7G))、リボスイッチ配列(例えば、安定性の調節及び/又はタンパク質及びタンパク質複合体による接触可能性の調節を可能にするため)、dsRNA二重鎖(即ちヘアピン)を形成する配列、RNAを細胞内位置(例えば、核、ミトコンドリア、葉緑体など)に標的化させる配列、追跡を提供する修飾又は配列(例えば、蛍光分子への直接的なコンジュゲーション、蛍光検出を促進する部分へのコンジュゲーション、蛍光検出を可能にする配列等)、及び/又はタンパク質(例えば、転写活性化因子、転写リプレッサー、DNAメチルトランスフェラーゼ、DNAデメチラーゼ、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ、ヒストンデアセチラーゼなどを含めた、DNAに作用するタンパク質)の結合部位を提供する修飾又は配列が挙げられる。
【0167】
スペーサー配列
gRNAはスペーサー配列を含む。スペーサー配列は、目的の標的核酸の標的配列(例えば、ゲノム標的配列などのDNA標的配列)を定義付ける配列(例えば20塩基対配列)である。「標的配列」はPAM配列に隣接し、RNAガイド型ヌクレアーゼ(例えばCas9)によって修飾される配列である。「標的核酸」は二本鎖分子である:一方の鎖が標的配列を含んで「PAM鎖」と称され、他方の相補鎖が「非PAM鎖」と称される。当業者は、gRNAスペーサー配列が、目的の標的核酸の非PAM鎖に位置する標的配列の逆相補体にハイブリダイズすることを認識している。従って、gRNAスペーサー配列は、標的配列のRNA等価物である。例えば、標的配列が5’−AGAGCAACAGTGCTGTGGCC−3’(配列番号76)である場合、このときgRNAスペーサー配列は5’−AGAGCAACAGUGCUGUGGCC−3’(配列番号152)である。gRNAのスペーサーはハイブリダイゼーション(即ち塩基対合)によって目的の標的核酸と配列特異的に相互作用する。従ってスペーサーのヌクレオチド配列は、目的の標的核酸の標的配列に応じて異なる。
【0168】
本明細書におけるCRISPR/Casシステムでは、スペーサー配列は、システムに使用されるCas9酵素のPAMの5’側に位置する標的核酸中の領域にハイブリダイズするように設計される。スペーサーは標的配列と完全にマッチしてもよく、又はミスマッチを有してもよい。各Cas9酵素は、標的DNA中においてそれが認識する特定のPAM配列を有する。例えば、化膿レンサ球菌(S.pyogenes)は、標的核酸中において、配列5’−NRG−3’[式中、RはA又はGのいずれかを含み、Nは任意のヌクレオチドであり、及びNは、スペーサー配列が標的とする標的核酸配列のすぐ3’側にある]を含むPAMを認識する。
【0169】
一部の実施形態において、標的核酸配列は20ヌクレオチドを含む。一部の実施形態において、標的核酸は20ヌクレオチド未満を含む。一部の実施形態において、標的核酸は20ヌクレオチド超を含む。一部の実施形態において、標的核酸は少なくとも:5、10、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30ヌクレオチド又はそれ以上を含む。一部の実施形態において、標的核酸は多くても:5、10、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30ヌクレオチド又はそれ以上を含む。一部の実施形態において、標的核酸配列は、PAMの1番目のヌクレオチドのすぐ5’側にある20塩基を含む。例えば、
【化1】
[この文献は図面を表示できません]
を含む配列において、標的核酸は、Nに対応する配列[式中、Nは任意のヌクレオチドであり、及び下線のNRG配列が化膿レンサ球菌(S.pyogenes)PAMである]を含む。
【0170】
一部の実施形態において、標的核酸にハイブリダイズするスペーサー配列は、少なくとも約6ヌクレオチド(nt)の長さを有する。スペーサー配列は、少なくとも約6nt、少なくとも約10nt、少なくとも約15nt、少なくとも約18nt、少なくとも約19nt、少なくとも約20nt、少なくとも約25nt、少なくとも約30nt、少なくとも約35nt又は少なくとも約40nt、約6nt〜約80nt、約6nt〜約50nt、約6nt〜約45nt、約6nt〜約40nt、約6nt〜約35nt、約6nt〜約30nt、約6nt〜約25nt、約6nt〜約20nt、約6nt〜約19nt、約10nt〜約50nt、約10nt〜約45nt、約10nt〜約40nt、約10nt〜約35nt、約10nt〜約30nt、約10nt〜約25nt、約10nt〜約20nt、約10nt〜約19nt、約19nt〜約25nt、約19nt〜約30nt、約19nt〜約35nt、約19nt〜約40nt、約19nt〜約45nt、約19nt〜約50nt、約19nt〜約60nt、約20nt〜約25nt、約20nt〜約30nt、約20nt〜約35nt、約20nt〜約40nt、約20nt〜約45nt、約20nt〜約50nt、又は約20nt〜約60ntであってもよい。一部の実施形態において、スペーサー配列は20ヌクレオチドを含む。一部の実施形態において、スペーサーは19ヌクレオチドを含む。
【0171】
一部の実施形態において、スペーサー配列と標的核酸との間のパーセント相補性は、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%である。一部の実施形態において、スペーサー配列と標的核酸との間のパーセント相補性は、多くても約30%、多くても約40%、多くても約50%、多くても約60%、多くても約65%、多くても約70%、多くても約75%、多くても約80%、多くても約85%、多くても約90%、多くても約95%、多くても約97%、多くても約98%、多くても約99%、又は100%である。一部の実施形態において、スペーサー配列と標的核酸との間のパーセント相補性は、標的核酸の相補鎖の標的配列の最も5’側の6連続ヌクレオチドにわたって100%である。一部の実施形態において、スペーサー配列と標的核酸との間のパーセント相補性は、約20連続ヌクレオチドにわたって少なくとも60%である。一部の実施形態において、スペーサー配列及び標的核酸の長さは1〜6ヌクレオチドだけ異なり、これは1つ又は複数のバルジと考えられてもよい。
【0172】
一部の実施形態において、スペーサー配列はコンピュータプログラムを用いて設計することができる。コンピュータプログラムは、予測融解温度、二次構造形成、予測アニーリング温度、配列同一性、ゲノムコンテクスト、クロマチン接触可能性、%GC、ゲノム発生頻度(例えば、同一又は同様であるが、ミスマッチ、挿入又は欠失の結果として1つ以上のスポットが異なる配列のゲノム発生頻度)、メチル化状態、SNPの存在などの変数を用いることができる。
【0173】
最小CRISPRリピート配列
一部の実施形態において、最小CRISPRリピート配列は、参照CRISPRリピート配列(例えば、化膿レンサ球菌(S.pyogenes)由来のcrRNA)と少なくとも約30%、約40%、約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、又は100%の配列同一性を有する配列である。
【0174】
最小CRISPRリピート配列は、細胞の最小tracrRNA配列にハイブリダイズすることのできるヌクレオチドを含む。最小CRISPRリピート配列と最小tracrRNA配列とは、二重鎖、即ち塩基対合した二本鎖構造を形成する。一体となって、最小CRISPRリピート配列及び最小tracrRNA配列は部位特異的ポリペプチドに結合する。最小CRISPRリピート配列の少なくとも一部が最小tracrRNA配列にハイブリダイズする。一部の実施形態において、最小CRISPRリピート配列の少なくとも一部は、最小tracrRNA配列と少なくとも約30%、約40%、約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、又は100%の相補性を含む。一部の実施形態において、最小CRISPRリピート配列の少なくとも一部は、最小tracrRNA配列と多くても約30%、約40%、約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、又は100%の相補性を含む。
【0175】
最小CRISPRリピート配列は約7ヌクレオチド〜約100ヌクレオチドの長さを有することができる。例えば、最小CRISPRリピート配列の長さは、約7ヌクレオチド(nt)〜約50nt、約7nt〜約40nt、約7nt〜約30nt、約7nt〜約25nt、約7nt〜約20nt、約7nt〜約15nt、約8nt〜約40nt、約8nt〜約30nt、約8nt〜約25nt、約8nt〜約20nt、約8nt〜約15nt、約15nt〜約100nt、約15nt〜約80nt、約15nt〜約50nt、約15nt〜約40nt、約15nt〜約30nt、又は約15nt〜約25ntである。一部の実施形態において、最小CRISPRリピート配列は約9ヌクレオチド長である。一部の実施形態において、最小CRISPRリピート配列は約12ヌクレオチド長である。
【0176】
一部の実施形態において、最小CRISPRリピート配列は、少なくとも6、7、又は8連続ヌクレオチドのストレッチにわたって参照最小CRISPRリピート配列(例えば、化膿レンサ球菌(S.pyogenes)由来の野生型crRNA)と少なくとも約60%同一である。例えば、最小CRISPRリピート配列は、少なくとも6、7、又は8連続ヌクレオチドのストレッチにわたって参照最小CRISPRリピート配列と少なくとも約65%同一、少なくとも約70%同一、少なくとも約75%同一、少なくとも約80%同一、少なくとも約85%同一、少なくとも約90%同一、少なくとも約95%同一、少なくとも約98%同一、少なくとも約99%同一又は100%同一である。
【0177】
最小tracrRNA配列
一部の実施形態において、最小tracrRNA配列は、参照tracrRNA配列(例えば、化膿レンサ球菌(S.pyogenes)由来の野生型tracrRNA)と少なくとも約30%、約40%、約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、又は100%の配列同一性を有する配列である。
【0178】
最小tracrRNA配列は、細胞の最小CRISPRリピート配列にハイブリダイズするヌクレオチドを含む。最小tracrRNA配列と最小CRISPRリピート配列とは、二重鎖、即ち塩基対合した二本鎖構造を形成する。一体となって、最小tracrRNA配列及び最小CRISPRリピートは部位特異的ポリペプチドに結合する。最小tracrRNA配列の少なくとも一部は最小CRISPRリピート配列にハイブリダイズすることができる。一部の実施形態において、最小tracrRNA配列は、最小CRISPRリピート配列と少なくとも約30%、約40%、約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、又は100%相補的である。
【0179】
最小tracrRNA配列は約7ヌクレオチド〜約100ヌクレオチドの長さを有することができる。例えば、最小tracrRNA配列は、約7ヌクレオチド(nt)〜約50nt、約7nt〜約40nt、約7nt〜約30nt、約7nt〜約25nt、約7nt〜約20nt、約7nt〜約15nt、約8nt〜約40nt、約8nt〜約30nt、約8nt〜約25nt、約8nt〜約20nt、約8nt〜約15nt、約15nt〜約100nt、約15nt〜約80nt、約15nt〜約50nt、約15nt〜約40nt、約15nt〜約30nt又は約15nt〜約25nt長であってもよい。一部の実施形態において、最小tracrRNA配列は約9ヌクレオチド長である。一部の実施形態において、最小tracrRNA配列は約12ヌクレオチドである。一部の実施形態において、最小tracrRNAは、Jinek et al.、前掲に記載されるtracrRNA nt23〜48からなる。
【0180】
一部の実施形態において、最小tracrRNA配列は、少なくとも6、7、又は8連続ヌクレオチドのストレッチにわたって参照最小tracrRNA(例えば、化膿レンサ球菌(S.pyogenes)由来の野生型tracrRNA)配列と少なくとも約60%同一である。例えば、最小tracrRNA配列は、少なくとも6、7、又は8連続ヌクレオチドのストレッチにわたって参照最小tracrRNA配列と少なくとも約65%同一、約70%同一、約75%同一、約80%同一、約85%同一、約90%同一、約95%同一、約98%同一、約99%同一又は100%同一である。
【0181】
一部の実施形態において、最小CRISPR RNAと最小tracrRNAとの間の二重鎖は二重らせんを含む。一部の実施形態において、最小CRISPR RNAと最小tracrRNAとの間の二重鎖は少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10ヌクレオチド又はそれ以上を含む。一部の実施形態において、最小CRISPR RNAと最小tracrRNAとの間の二重鎖は多くても約1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10ヌクレオチド又はそれ以上を含む。
【0182】
一部の実施形態において、二重鎖はミスマッチを含む(即ち、二重鎖の2本の鎖が100%相補的でない)。一部の実施形態において、二重鎖は少なくとも約1、2、3、4、又は5又はミスマッチを含む。一部の実施形態において、二重鎖は多くても約1、2、3、4、又は5又はミスマッチを含む。一部の実施形態において、二重鎖は2個以下のミスマッチを含む。
【0183】
バルジ
一部の実施形態において、最小CRISPR RNAと最小tracrRNAとの間の二重鎖に「バルジ」がある。バルジは、二重鎖内にあるヌクレオチドのうち対合していない領域である。一部の実施形態において、バルジは二重鎖による部位特異的ポリペプチドへの結合に寄与する。一部の実施形態において、バルジは、二重鎖の片側に非対合5’−XXXY−3’を含み[式中、Xは任意のプリンであり、Yは、逆鎖上のヌクレオチドとゆらぎ塩基対を形成し得るヌクレオチドを含む]、二重鎖の他方の側に非対合ヌクレオチド領域を含む。二重鎖の2つの側にある非対合ヌクレオチドの数は異なり得る。
【0184】
一部の実施形態において、バルジは、バルジの最小CRISPRリピート鎖上に非対合プリン(例えばアデニン)を含む。一部の実施形態において、バルジは、バルジの最小tracrRNA配列鎖の非対合5’−AAGY−3’を含む[式中、Yは、最小CRISPRリピート鎖上のヌクレオチドとゆらぎ対合を形成し得るヌクレオチドを含む]。
【0185】
一部の実施形態において、二重鎖の最小CRISPRリピート側のバルジは、少なくとも1、2、3、4、又は5個又はそれ以上の非対合ヌクレオチドを含む。一部の実施形態において、二重鎖の最小CRISPRリピート側のバルジは、多くても1、2、3、4、又は5個又はそれ以上の非対合ヌクレオチドを含む。一部の実施形態において、二重鎖の最小CRISPRリピート側のバルジは1個の非対合ヌクレオチドを含む。
【0186】
一部の実施形態において、二重鎖の最小tracrRNA配列側のバルジは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個又はそれ以上の非対合ヌクレオチドを含む。一部の実施形態において、二重鎖の最小tracrRNA配列側のバルジは、多くても1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個又はそれ以上の非対合ヌクレオチドを含む。一部の実施形態において、二重鎖の第2の側(例えば、二重鎖の最小tracrRNA配列側)のバルジは4個の非対合ヌクレオチドを含む。
【0187】
一部の実施形態において、バルジは少なくとも1つのゆらぎ対合を含む。一部の実施形態において、バルジは多くても1つのゆらぎ対合を含む。一部の実施形態において、バルジは少なくとも1個のプリンヌクレオチドを含む。一部の実施形態において、バルジは少なくとも3個のプリンヌクレオチドを含む。一部の実施形態において、バルジ配列は少なくとも5個のプリンヌクレオチドを含む。一部の実施形態において、バルジ配列は少なくとも1個のグアニンヌクレオチドを含む。一部の実施形態において、バルジ配列は少なくとも1個のアデニンヌクレオチドを含む。
【0188】
ヘアピン
様々な実施形態において、3’tracrRNA配列における最小tracrRNAの3’側に1つ以上のヘアピンが位置する。
【0189】
一部の実施形態において、ヘアピンは、最小CRISPRリピートと最小tracrRNA配列との二重鎖における最後の対合ヌクレオチドから少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、又は20ヌクレオチド又はそれ以上3’側から始まる。一部の実施形態において、ヘアピンは、最小CRISPRリピートと最小tracrRNA配列との二重鎖における最後の対合ヌクレオチドの多くても約1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10ヌクレオチド又はそれ以上3’側から始まる。
【0190】
一部の実施形態において、ヘアピンは、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、又は20連続ヌクレオチド又はそれ以上を含む。一部の実施形態において、ヘアピンは、多くても約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15連続ヌクレオチド、又はそれ以上を含む。
【0191】
一部の実施形態において、ヘアピンはCCジヌクレオチド(即ち2連続シトシンヌクレオチド)を含む。
【0192】
一部の実施形態において、ヘアピンは、二重鎖化したヌクレオチド(例えば、一体にハイブリダイズした、ヘアピン内のヌクレオチド)を含む。例えば、ヘアピンは、3’tracrRNA配列のヘアピン二重鎖内のGGジヌクレオチドにハイブリダイズするCCジヌクレオチドを含む。
【0193】
ヘアピンのうちの1つ以上は、部位特異的ポリペプチドのガイドRNA相互作用領域と相互作用することができる。
【0194】
一部の実施形態では、2つ以上のヘアピンがあり、他の実施形態では3つ以上のヘアピンがある。
【0195】
3’tracrRNA配列
一部の実施形態において、3’tracrRNA配列は、参照tracrRNA配列(例えば、化膿レンサ球菌(S.pyogenes)由来のtracrRNA)と少なくとも約30%、約40%、約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、又は100%の配列同一性を有する配列を含む。
【0196】
3’tracrRNA配列は約6ヌクレオチド〜約100ヌクレオチドの長さを有する。例えば、3’tracrRNA配列は、約6ヌクレオチド(nt)〜約50nt、約6nt〜約40nt、約6nt〜約30nt、約6nt〜約25nt、約6nt〜約20nt、約6nt〜約15nt、約8nt〜約40nt、約8nt〜約30nt、約8nt〜約25nt、約8nt〜約20nt、約8nt〜約15nt、約15nt〜約100nt、約15nt〜約80nt、約15nt〜約50nt、約15nt〜約40nt、約15nt〜約30nt、又は約15nt〜約25ntの長さを有することができる。一部の実施形態において、3’tracrRNA配列は約14ヌクレオチドの長さを有する。
【0197】
一部の実施形態において、3’tracrRNA配列は、少なくとも6、7、又は8連続ヌクレオチドのストレッチにわたって参照3’tracrRNA配列(例えば、化膿レンサ球菌(S.pyogenes)由来の野生型3’tracrRNA配列)と少なくとも約60%同一である。例えば、3’tracrRNA配列は、少なくとも6、7、又は8連続ヌクレオチドのストレッチにわたって参照3’tracrRNA配列(例えば、化膿レンサ球菌(S.pyogenes)由来の野生型3’tracrRNA配列)と少なくとも約60%同一、約65%同一、約70%同一、約75%同一、約80%同一、約85%同一、約90%同一、約95%同一、約98%同一、約99%同一、又は100%同一である。
【0198】
一部の実施形態において、3’tracrRNA配列は2つ以上の二重鎖化した領域(例えば、ヘアピン、ハイブリダイズした領域)を含む。一部の実施形態において、3’tracrRNA配列は2つの二重鎖化した領域を含む。
【0199】
一部の実施形態において、3’tracrRNA配列はステムループ構造を含む。一部の実施形態において、3’tracrRNAにおけるステムループ構造は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15又は20ヌクレオチド又はそれ以上を含む。一部の実施形態において、3’tracrRNAにおけるステムループ構造は、多くても1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10ヌクレオチド又はそれ以上を含む。一部の実施形態において、ステムループ構造は機能性部分を含む。例えば、ステムループ構造は、アプタマー、リボザイム、タンパク質相互作用ヘアピン、CRISPRアレイ、イントロン、又はエクソンを含み得る。一部の実施形態において、ステムループ構造は、少なくとも約1、2、3、4、又は5個又はそれ以上の機能性部分を含む。一部の実施形態において、ステムループ構造は、多くても約1、2、3、4、又は5個又はそれ以上の機能性部分を含む。
【0200】
一部の実施形態において、3’tracrRNA配列におけるヘアピンはP−ドメインを含む。一部の実施形態において、P−ドメインはヘアピンに二本鎖領域を含む。
【0201】
tracrRNA伸長配列
一部の実施形態において、tracrRNAが単一分子ガイドのコンテクストにあるか、それとも二重分子ガイドのコンテクストにあるかに関わらず、tracrRNA伸長配列が提供される。一部の実施形態において、tracrRNA伸長配列は約1ヌクレオチド〜約400ヌクレオチドの長さを有する。一部の実施形態において、tracrRNA伸長配列は、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、220、240、260、280、300、320、340、360、380、又は400ヌクレオチド超の長さを有する。一部の実施形態において、tracrRNA伸長配列は約20〜約5000ヌクレオチド又はそれ以上の長さを有する。一部の実施形態において、tracrRNA伸長配列は1000ヌクレオチド超の長さを有する。一部の実施形態において、tracrRNA伸長配列は、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、220、240、260、280、300、320、340、360、380、400ヌクレオチド又はそれ以上に満たない長さを有する。一部の実施形態において、tracrRNA伸長配列は1000ヌクレオチド未満の長さを有する。一部の実施形態において、tracrRNA伸長配列は10ヌクレオチド長未満を含む。一部の実施形態において、tracrRNA伸長配列は10〜30ヌクレオチド長である。一部の実施形態において、tracrRNA伸長配列は30〜70ヌクレオチド長である。
【0202】
一部の実施形態において、tracrRNA伸長配列は機能性部分(例えば、安定性制御配列、リボザイム、エンドリボヌクレアーゼ結合配列)を含む。一部の実施形態において、機能性部分は転写ターミネーターセグメント(即ち転写終結配列)を含む。一部の実施形態において、機能性部分は、約10ヌクレオチド(nt)〜約100ヌクレオチド、約10nt〜約20nt、約20nt〜約30nt、約30nt〜約40nt、約40nt〜約50nt、約50nt〜約60nt、約60nt〜約70nt、約70nt〜約80nt、約80nt〜約90nt、又は約90nt〜約100nt、約15nt〜約80nt、約15nt〜約50nt、約15nt〜約40nt、約15nt〜約30nt、又は約15nt〜約25ntの全長を有する。一部の実施形態において、機能性部分は真核細胞で機能する。一部の実施形態において、機能性部分は原核細胞で機能する。一部の実施形態において、機能性部分は真核細胞及び原核細胞の両方で機能する。
【0203】
好適なtracrRNA伸長機能性部分の非限定的な例としては、3’ポリ−アデニル化テール、リボスイッチ配列(例えば、安定性の調節及び/又はタンパク質及びタンパク質複合体による接触可能性の調節を可能にするため)、dsRNA二重鎖(即ちヘアピン)を形成する配列、RNAを細胞内位置(例えば、核、ミトコンドリア、葉緑体など)に標的化させる配列、追跡を提供する修飾又は配列(例えば、蛍光分子への直接的なコンジュゲーション、蛍光検出を促進する部分へのコンジュゲーション、蛍光検出を可能にする配列等)、及び/又はタンパク質(例えば、転写活性化因子、転写リプレッサー、DNAメチルトランスフェラーゼ、DNAデメチラーゼ、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ、ヒストンデアセチラーゼなどを含めた、DNAに作用するタンパク質)の結合部位を提供する修飾又は配列が挙げられる。一部の実施形態において、tracrRNA伸長配列はプライマー結合部位又は分子インデックス(例えばバーコード配列)を含む。一部の実施形態において、tracrRNA伸長配列は1つ以上のアフィニティータグを含む。
【0204】
単一分子ガイドリンカー配列
一部の実施形態において、単一分子ガイド核酸のリンカー配列は約3ヌクレオチド〜約100ヌクレオチドの長さを有する。例えば、Jinek et al.、前掲では、単純な4ヌクレオチド「テトラループ」(−GAAA−)が使用された、Science、337(6096):816−821(2012)。例示的リンカーは、約3ヌクレオチド(nt)〜約90nt、約3nt〜約80nt、約3nt〜約70nt、約3nt〜約60nt、約3nt〜約50nt、約3nt〜約40nt、約3nt〜約30nt、約3nt〜約20nt、約3nt〜約10ntの長さを有する。例えば、リンカーは、約3nt〜約5nt、約5nt〜約10nt、約10nt〜約15nt、約15nt〜約20nt、約20nt〜約25nt、約25nt〜約30nt、約30nt〜約35nt、約35nt〜約40nt、約40nt〜約50nt、約50nt〜約60nt、約60nt〜約70nt、約70nt〜約80nt、約80nt〜約90nt、又は約90nt〜約100ntの長さを有することができる。一部の実施形態において、単一分子ガイド核酸のリンカーは4〜40ヌクレオチドである。一部の実施形態において、リンカーは、少なくとも約100、500、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、又は7000ヌクレオチド又はそれ以上である。一部の実施形態において、リンカーは、多くても約100、500、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、又は7000ヌクレオチド又はそれ以上である。
【0205】
リンカーは種々の配列の任意のものを含むが、ガイドRNAの他の部分との相同性領域が広範囲に及ぶ配列は、ガイドの他の機能性領域に干渉し得る分子内結合を引き起こす可能性があり、一部の例ではリンカーはそうした配列を含まないであろう。Jineketal.、前掲では、単純な4ヌクレオチド配列−GAAA−が使用されたが、Science、337(6096):816−821(2012)、より長い配列を含め、数多くの他の配列を同様に使用することができる。
【0206】
一部の実施形態において、リンカー配列は機能性部分を含む。例えば、リンカー配列は、アプタマー、リボザイム、タンパク質相互作用ヘアピン、タンパク質結合部位、CRISPRアレイ、イントロン、又はエクソンを含め、1つ以上の特徴を含み得る。一部の実施形態において、リンカー配列は少なくとも約1、2、3、4、又は5個又はそれ以上の機能性部分を含む。一部の実施形態において、リンカー配列は多くても約1、2、3、4、又は5個又はそれ以上の機能性部分を含む。
【0207】
標的遺伝子の範囲内又はその近傍にある1つ以上の核酸又はエクソンの欠失、挿入、又は調節によって、及び対応する標的遺伝子の遺伝子座へのcDNA、発現ベクター、又はミニ遺伝子のノックインによって細胞を編集するゲノム操作戦略
一部のゲノム操作戦略は、標的DNAを欠失させること及び/又はcDNA、発現ベクター、又はミニ遺伝子(1つ以上のエクソン及びイントロン又は天然若しくは合成イントロンを含む)をノックインすること及び/又は一部又は全ての標的イントロンによって分断されたcDNAを対応する遺伝子の遺伝子座にノックインすることを含む。これらの戦略は、疾患状態を治療し、及び/又は緩和する。これらの戦略は、よりカスタマイズされた手法を必要とし得る。HDR効率はドナー分子のサイズに反比例し得るため、これは有利である。また、サイズ制限のあるウイルスベクター分子、例えば、有効なドナー鋳型送達手段であることが示されているアデノ随伴ウイルス(AAV)分子にドナー鋳型が収まり得ることも期待される。また、非限定的な例として、血小板及び/又はエキソソーム又は他の微小胞を含めた、サイズ制限のある他の分子にドナー鋳型が収まり得ることも期待される。
【0208】
相同組換え修復は、二本鎖切断(DSB)を修復するための細胞機構である。最も一般的な形態は相同組換えである。HDRには、一本鎖アニーリング及び代替的HDRを含め、更なる経路がある。ゲノム操作ツールは、研究者が細胞相同組換え経路を操作してゲノムに部位特異的修飾を作成することを可能にする。トランスで提供される合成ドナー分子を用いて細胞が二本鎖切断を修復できることが分かっている。従って、特異的突然変異の近傍に二本鎖切断を導入し、好適なドナーを提供することにより、ゲノムに標的とする変化を作ることができる。特異的切断により、相同ドナー単独を受け取る10
6個の細胞につき1個の比率を1,000倍超上回ってHDR率が増加する。特定のヌクレオチドにおける相同組換え修復(HDR)率は切断部位までの距離の関数であり、従ってオーバーラップする又は最も近い標的部位を選択することが重要である。インサイチューでの修正では残りのゲノムが乱されないままであるため、遺伝子編集は遺伝子付加と比べて利点を提供する。
【0209】
HDRによる編集用に供給されるドナーは著しく異なるが、概して、ゲノムDNAへのアニーリングを可能にする小さい又は大きい隣接相同性アームを伴う意図された配列を含む。導入される遺伝子変化に隣接する相同性領域は、30bp以下であるか、又はプロモーター、cDNA等を含有し得る数キロベースにも上る大きいカセットであり得る。一本鎖及び二本鎖の両方のオリゴヌクレオチドドナーが使用されている。これらのオリゴヌクレオチドはサイズが100nt未満〜数kbを上回るまでの範囲に及び、しかし更に長いssDNAもまた生成及び使用することができる。多くの場合に、PCRアンプリコン、プラスミド、及びミニサークルを含め、二本鎖ドナーが使用される。一般に、AAVベクターがドナー鋳型の極めて有効な送達手段であることが分かっているが、個々のドナーについてのパッケージング制限は<5kbである。ドナーの活性転写によりHDRが3倍に増加したことから、プロモーターを含めると変換が増加し得ることが指摘される。逆に、ドナーのCpGメチル化は遺伝子発現及びHDRを減少させた。
【0210】
Cas9などの野生型エンドヌクレアーゼに加えて、いずれか一方のヌクレアーゼドメインを不活性化させたことにより一方のDNA鎖のみの切断を生じさせるニッカーゼ変異体が存在する。HDRは、個々のCasニッカーゼから、又は標的範囲に隣接するニッカーゼ対を使用して導くことができる。ドナーは、一本鎖、ニック入り、又はdsDNAであってもよい。
【0211】
ドナーDNAは、ヌクレアーゼと共に供給されるか、又は独立に、種々の異なる方法、例えばトランスフェクション、ナノ粒子、マイクロインジェクション、又はウイルス形質導入によって供給されてもよい。HDRへのドナーの利用可能性を高めるため、様々なテザー係留オプションが提案されている。例としては、ドナーをヌクレアーゼに取り付けること、近くに結合するDNA結合タンパク質に取り付けること、又はDNA末端結合又は修復に関与するタンパク質に取り付けることが挙げられる。
【0212】
修復経路の選択は、細胞周期に影響を与えるものなど、幾つもの培養条件、又はDNA修復及び関連タンパク質のターゲティングが指針となり得る。例えば、HDRを増加させるため、KU70、KU80又はDNAリガーゼIVなど、重要なNHEJ分子を抑制することができる。
【0213】
ドナーが存在しない場合、DNA切断からの末端又は異なる切断からの末端は、接合部に塩基対合がほとんど又は全くなくDNA末端がつなぎ合わされる幾つかの非相同修復経路を用いてつなぎ合わされ得る。標準的なNHEJに加えて、代替的NHEJなど、同様の修復機構がある。2つの切断がある場合、介在するセグメントが欠失し得るか、又は逆位になり得る。NHEJ修復経路は、接合部での挿入、欠失又は突然変異につながり得る。
【0214】
NHEJを用いて、染色体及びドナー分子の両方のヌクレアーゼ切断後にヒト細胞株の定義付けられた遺伝子座に遺伝子発現カセットが挿入された(Cristea,et al.,Biotechnology and Bioengineering 110:871−880(2012);Maresca,M.,Lin,V.G.,Guo,N.& Yang,Y.,Genome Res 23,539−546(2013))。
【0215】
NHEJ又はHDRによるゲノム編集に加えて、NHEJ経路及びHRの両方を用いる部位特異的遺伝子挿入が行われている。恐らくはイントロン/エクソン境界を含むある種のセッティングにおいて、組み合わせ手法が適用可能であり得る。NHEJはイントロンにおけるライゲーションに効力を発揮し得る一方、エラーフリーのHDRはコード領域に良好に適し得る。
【0216】
標的遺伝子は幾つものエクソンを含む。エクソンのうちの任意の1つ以上又は近隣のイントロンが標的となり得る。或いは、様々な医学的病態に関連する様々な突然変異があり、これは標的を不活性化させるという共通の効果を持つ挿入、欠失、ミスセンス、ナンセンス、フレームシフト及び他の突然変異の組み合わせである。不活性な標的を回復させるため、これらの突然変異のうちの任意の1つ以上が修復されてもよい。別の選択肢として、ゲノム又は標的遺伝子にcDNAコンストラクト、発現ベクター、又はミニ遺伝子(天然又は合成エンハンサー及びプロモーター、1つ以上のエクソン、及び天然又は合成イントロン、及び天然又は合成3’UTR及びポリアデニル化シグナルを含む)がノックインされてもよい。一部の実施形態において、本方法は、cDNAコンストラクト、発現ベクター、又はミニ遺伝子をノックインするためポリヌクレオチドドナー鋳型からの新規配列の取込みの促進に使用することができる1つのgRNA又は1対のgRNAを提供し得る。
【0217】
本方法の一部の実施形態は、一方のgRNAが1つ以上の突然変異の5’末端で切断し、且つ他方のgRNAが1つ以上の突然変異の3’末端で切断して遺伝子を2回切断することにより、ポリヌクレオチドドナー鋳型からの新規配列の挿入による1つ以上の突然変異の置換を促進する欠失を作り出すgRNA対を提供し、又は欠失によって突然変異アミノ酸又はそれに隣接するアミノ酸(例えば未成熟終止コドン)が除去され、機能タンパク質の発現につながるか、又はオープンリーディングフレームが回復し得る。切断は、各々がゲノムにDSBを作る1対のDNAエンドヌクレアーゼによるか、又は一体となってゲノムにDSBを作る複数のニッカーゼによって達成されてもよい。
【0218】
或いは、本方法の一部の実施形態は、ポリヌクレオチドドナー鋳型からの新規配列の挿入による1つ以上の突然変異の置換を促進する1つの二本鎖切断を1つ以上の突然変異の周りに作り出す1つのgRNAを提供する。二本鎖切断は、単一のDNAエンドヌクレアーゼ又は一体となってゲノムにDSBを作り出す複数のニッカーゼによって作られてもよく、又は単一のgRNAが欠失につながってもよく(MMEJ)、これによって突然変異体アミノ酸(例えば、未成熟終止コドン)が除去され、機能タンパク質の発現につながるか、又はオープンリーディングフレームが回復し得る。
【0219】
標的遺伝子内の例示的修飾には、特定のc突然変異から上流又は下流に3kb未満、2kb未満、1kb未満、0.5kb未満の領域内など、上記で言及した突然変異の範囲内又はその近傍(その近位)における置換が含まれる。標的遺伝子に比較的幅広い種類の突然変異があることを所与とすれば、上記で言及した置換の数多くの変形例(限定なしに、より大きい並びにより小さい欠失を含む)が標的遺伝子の回復を生じさせると予想し得ることが理解されるであろう。
【0220】
かかる変異体は、問題の特定の突然変異よりも5’及び/又は3’方向に大きい、又はいずれかの方向に小さい置換を含む。従って、特異的置換に関連して「近く」又は「近接」とは、所望の置換境界(本明細書ではエンドポイントとも称される)に関連するSSB又はDSB遺伝子座が、指示される参照遺伝子座から約3kb未満の領域内にあり得ることが意図される。一部の実施形態において、SSB又はDSB遺伝子座はより近接し、2kb以内、1kb以内、0.5kb以内、又は0.1kb以内にある。小さい置換の場合、所望のエンドポイントは参照遺伝子座にあるか、又はそれ「に隣接している」のであり、隣接しているとは、エンドポイントが参照遺伝子座から100bp以内、50bp以内、25bp以内、又は約10bp〜5bp未満にあることが意図される。
【0221】
より大きい又は小さい置換を含む実施形態は、標的タンパク質活性が回復する限り、同じ利益を提供するものと予想される。従って、本明細書に記載及び例示される置換の多くの変形例が医学的病態の改善に有効であろうことが予想される。
【0222】
別のゲノム操作戦略はエクソン欠失を含む。特異的エクソンの標的化した欠失は、単一の治療用カクテルによる大規模な患者サブセットの治療に魅力的な戦略である。欠失は、単一のエクソン欠失又は複数のエクソン欠失のいずれであってもよい。複数のエクソン欠失の方がより多くの患者に達し得るが、欠失が大規模になると、サイズの増加に伴い欠失効率は大きく低下する。従って、欠失範囲は40〜10,000塩基対(bp)のサイズであり得る。例えば、欠失は、40〜100;100〜300;300〜500;500〜1,000;1,000〜2,000;2,000〜3,000;3,000〜5,000;又は5,000〜10,000塩基対のサイズの範囲であってもよい。
【0223】
欠失は、遺伝子発現の上方制御につながるエンハンサー、プロモーター、1番目のイントロン、及び/又は3’UTRに起こってもよく、及び/又は調節エレメントの欠失を通じて起こってもよい。
【0224】
欠失後にプレmRNAが適切にプロセシングされることを確実にするため、周りのスプライシングシグナルを欠失させることができる。スプライシングドナー及びアクセプターは、概して隣接イントロンの100塩基対以内にある。従って、一部の実施形態において、方法は、目的の各エクソン/イントロンジャンクションに対して約±100〜3100bpを切断するあらゆるgRNAを提供し得る。
【0225】
ゲノム編集戦略のいずれについても、遺伝子編集はシーケンシング又はPCR分析によって確認することができる。
【0226】
標的配列選択
特定の参照遺伝子座に対する5’境界及び/又は3’境界の位置のシフトを用いると遺伝子編集の特定の適用が促進又は増強され、適用は、一部には、本明細書に更に記載及び例示されるとおりの、編集に選択されるエンドヌクレアーゼシステムに依存する。
【0227】
かかる標的配列選択の第1の非限定的な例では、多くのエンドヌクレアーゼシステムが、CRISPR II型又はV型エンドヌクレアーゼの場合におけるDNA切断部位に隣接する特定の位置のPAM配列モチーフ要件など、潜在的な標的切断部位の初期選択の指針となる規則又は基準を有する。
【0228】
標的配列選択又は最適化の別の非限定的な例では、標的配列と遺伝子編集エンドヌクレアーゼとの特定の組み合わせについてのオフターゲット活性の頻度(即ち選択の標的配列以外の部位に起こるDSBの頻度)がオンターゲット活性の頻度と比べて評価される。一部の実施形態において、所望の遺伝子座で正しく編集された細胞は、他の細胞と比べて選択的優位性を有し得る。選択的優位性の例示的な、しかし非限定的な例には、向上した複製率、持続性、ある種の条件に対する抵抗性、患者への導入後のインビボでの生着成功率又は持続性の向上、及びその他の、かかる細胞の数又は生存能力の維持又は増加に関連する属性など、属性の獲得が含まれる。他の実施形態において、所望の遺伝子座で正しく編集された細胞は、正しく編集された細胞の同定、選別又は他の選択に用いられる1つ以上のスクリーニング方法によってポジティブ選択されてもよい。選択的優位性及び定方向選択の両方の方法が、修正に関連する表現型を利用し得る。一部の実施形態において、意図した細胞集団の選択又は精製に用いられる新規表現型を作成する第2の修飾を作成するため、細胞が2回以上編集されてもよい。かかる第2の修飾は、選択可能又はスクリーニング可能マーカー用の第2のgRNAを加えることにより作成されてもよい。一部の実施形態では、cDNAを含み、また選択可能なマーカーも含むDNA断片を使用して、細胞を所望の遺伝子座で正しく編集することができる。
【0229】
具体的な場合において任意の選択的優位性を適用可能であるか、それとも任意の定方向選択を適用すべきかに関わらず、適用の有効性を高めるため、及び/又は所望の標的以外の部位で望ましくない改変が起こる可能性を減らすため、標的配列選択はまた、オフターゲット頻度の検討が指針となる。本明細書及び当該技術分野において更に記載及び例示されるとおり、オフターゲット活性の発生は、標的部位と様々なオフターゲット部位との間の類似性及び相違性、並びに用いられる詳細なエンドヌクレアーゼを含め、幾つもの要因の影響を受ける。オフターゲット活性の予測を助けるバイオインフォマティクスツールが利用可能であり、高頻度でかかるツールはまた、最もオフターゲット活性の可能性が高い部位の同定にも用いることができ、次にはそれを実験的セッティングで評価して、オンターゲット活性に対するオフターゲットの相対頻度を判定することができ、それにより相対的にオンターゲット活性が高い配列の選択が可能になる。かかる技法の例示的な例は本明細書に提供され、及び当該技術分野では他の例も公知である。
【0230】
標的配列選択の別の態様は相同組換えイベントに関する。相同性領域を共有する配列は、介在配列の欠失を生じさせる相同組換えイベントの焦点となり得る。かかる組換えイベントは、染色体及び他のDNA配列の正常な複製経過中に起こり、またある時には、二本鎖切断(DSB)の修復の場合など、DNA配列が合成されているときにも起こり、DSBは正常な細胞複製サイクルの中で常時起こるが、様々なイベント(紫外光及びその他のDNA切断誘導物質など)の発生又はある種の薬剤の存在(様々な化学的誘導物質など)によってもまた増強され得る。多くのかかる誘導物質がDSBをゲノムに無差別に発生させ、正常細胞においてはDSBは常時誘導され、修復されている。修復時、元の配列は完全な忠実度で再構成され得るが、しかしながら、一部の実施形態ではDSB部位に小さい挿入又は欠失(「インデル」と称される)が導入される。
【0231】
DSBはまた、本明細書に記載されるエンドヌクレアーゼシステムの場合のように、具体的な位置に特異的に誘導されてもよく、これを用いて選択の染色体位置に定方向の又は優先的な遺伝子修飾イベントを引き起こすことができる。DNA修復(並びに複製)のコンテクストで相同配列が組換えを受け易い傾向は、幾つもの状況で利用することができ、所望の染色体位置に目的の配列を、但し「ドナー」ポリヌクレオチドの使用によって挿入するために相同組換え修復が用いられるCRISPRなどの遺伝子編集システムの一つの適用の基礎である。
【0232】
特定の配列間の相同性領域は、僅か10塩基対以下を含み得る小さい「マイクロホモロジー」領域であってもよいもので、これもまた所望の欠失をもたらすために使用することができる。例えば、隣接配列とマイクロホモロジーを呈する部位に単一のDSBが導入される。かかるDSBの正常な修復経過の中で、高頻度で起こる結果は、DSB及び同時の細胞修復過程によって組換えが促進される結果としての介在配列の欠失である。
【0233】
しかしながら、状況によっては、相同性領域内の標的配列を選択すると、遺伝子融合(欠失がコード領域にあるとき)を含め、はるかに大きい欠失が生じることもまたあり、具体的な状況を所与としてこれが所望されることも、又は所望されないこともある。
【0234】
本明細書に提供される例は、標的タンパク質活性の調節を生じさせる置換を誘導するように設計されるDSBを作成するための様々な標的領域の選択、並びにオンターゲットイベントと比べてオフターゲットイベントが最小限となるように設計されるかかる領域内における特異的標的配列の選択を更に例示する。
【0235】
核酸修飾
一部の実施形態において、細胞に導入されるポリヌクレオチドは、例えば活性、安定性又は特異性の増強、送達の改変、宿主細胞における自然免疫応答の低下、又は本明細書に更に記載するとおりの、及び当該技術分野において公知の他の増強のため、個々に、又は組み合わせて用いることのできる1つ以上の修飾を含む。
【0236】
一部の実施形態において、修飾されたポリヌクレオチドはCRISPR/Cas9/Cpf1システムにおいて使用され、その場合、ガイドRNA(単一分子ガイド又は二重分子ガイドのいずれか)及び/又は細胞に導入されるCas又はCpf1エンドヌクレアーゼをコードするDNA又はRNAが、以下に説明及び例示するとおり修飾されてもよい。かかる修飾されたポリヌクレオチドは、CRISPR/Cas9/Cpf1システムにおいて、任意の1つ以上ゲノム遺伝子座の編集に使用することができる。
【0237】
かかる使用の非限定的な例示を目的としてCRISPR/Cas9/Cpf1システムを用いると、ガイドRNAの修飾は、単一分子ガイドであっても、又は二重分子であってもよいガイドRNAとCas又はCpf1エンドヌクレアーゼとを含むCRISPR/Cas9/Cpf1ゲノム編集複合体の形成又は安定性を増強するために用いることができる。ガイドRNAの修飾はまた、又はそれに代えて、ゲノム編集複合体とゲノムにおける標的配列との間の相互作用の惹起、安定性又は動態を増強するために用いることもでき、それを用いて、例えばオンターゲット活性を増強することができる。ガイドRNAの修飾はまた、又はそれに代えて、特異性、例えば他の(オフターゲット)部位における効果と比較したときのオンターゲット部位における相対ゲノム編集率を増強するために用いることもできる。
【0238】
修飾はまた、又はそれに代えて、例えば、細胞に存在するリボヌクレアーゼ(RNアーゼ)による分解に対するその抵抗性を増加させて、それにより細胞におけるその半減期の増加を生じさせることによりガイドRNAの安定性を増加させるために用いることができる。ガイドRNA半減期を増強する修飾は、編集しようとする細胞へのCas又はCpf1エンドヌクレアーゼの導入が、エンドヌクレアーゼを生成するため翻訳される必要があるRNAを介する態様において特に有用であることもあり、なぜなら、エンドヌクレアーゼをコードするRNAと同時に導入されるガイドRNAの半減期の増加を用いて、ガイドRNAとコードされるCas又はCpf1エンドヌクレアーゼとが細胞に共存する時間を増加させることができるためである。
【0239】
修飾はまた、又はそれに代えて、細胞に導入されるRNAが自然免疫応答を誘発する可能性又は程度を低下させるために用いることができる。かかる応答は、以下及び当該技術分野において記載されるとおりの低分子干渉RNA(siRNA)を含め、RNA干渉(RNAi)のコンテクストで十分に特徴付けられているものであり、RNAの半減期の低下及び/又はサイトカイン若しくは免疫応答に関連する他の因子の誘発と関連付けられる傾向がある。
【0240】
また、細胞に導入されるエンドヌクレアーゼをコードするRNAに、限定なしに、RNAの安定性を(細胞に存在するRNアーゼによるその分解の増加によるなど)増強する修飾、結果として生じる産物(即ちエンドヌクレアーゼ)の翻訳を増強する修飾、及び/又は細胞に導入されるRNAが自然免疫応答を誘発する可能性又は程度を低下させる修飾を含め、1種以上の修飾が作られてもよい。
【0241】
前述のもの及びその他など、修飾の組み合わせも同様に用いることができる。CRISPR/Cas9/Cpf1の場合、例えば、ガイドRNAに1種以上の修飾(上記に例示されるものを含む)が作られてもよく、及び/又はCasエンドヌクレアーゼをコードするRNAに1種以上の修飾(上記に例示されるものを含む)が作られてもよい。
【0242】
例示として、CRISPR/Cas9/Cpf1システムにおいて使用されるガイドRNA、又は他の小型RNAは、以下に例示され、及び当該技術分野において記載されるとおりの、幾つもの修飾の容易な取込みを可能にする化学的手段によって容易に合成することができる。化学合成手順は絶えず拡大しているが、高速液体クロマトグラフィー(HPLC、これはPAGEなどのゲルの使用を回避する)などの手順によるかかるRNAの精製は、ポリヌクレオチド長さが増して100ヌクレオチドほどを大きく超えるようになると、一層難題となる傾向がある。より大きい長さの化学的に修飾されたRNAの生成に用いられる一つの手法は、一体にライゲートした2つ以上の分子を作製することである。Cas9エンドヌクレアーゼをコードするものなど、はるかに長いRNAは、より容易には酵素的に生成される。酵素的に作製されるRNAで用いるのに利用可能な修飾の種類は概して少ないが、それでもなお、例えば、安定性を増強し、自然免疫応答の可能性又は程度を低下させ、及び/又は以下及び当該技術分野で更に説明されるとおりの他の属性を増強するために用いることのできる修飾があり;及び新種の修飾が常時開発されている。
【0243】
各種の修飾、特により小型の化学的に合成されるRNAで高頻度に用いられるものの例示として、修飾は、糖の2’位で修飾された1つ以上のヌクレオチド、一部の実施形態では、2’−O−アルキル、2’−O−アルキル−O−アルキル、又は2’−フルオロ−修飾ヌクレオチドを含み得る。一部の実施形態において、RNA修飾は、ピリミジンのリボース上の2’−フルオロ、2’−アミノ又は2’O−メチル修飾、脱塩基残基、又はRNAの3’末端における逆位塩基を含む。かかる修飾はオリゴヌクレオチドにルーチンで取り込まれ、これらのオリゴヌクレオチドは、2’−デオキシオリゴヌクレオチドと比べて所与の標的に対するTmがより高い(即ち、標的結合親和性がより高い)ことが示されている。
【0244】
幾つものヌクレオチド及びヌクレオシド修飾が、それを取り込むオリゴヌクレオチドのヌクレアーゼ消化耐性を天然オリゴヌクレオチドと比べて高めることが示されている;こうした修飾オリゴは、非修飾オリゴヌクレオチドよりも長い間インタクトに生き残る。修飾オリゴヌクレオチドの具体的な例としては、修飾骨格、例えば、ホスホロチオエート、リン酸トリエステル、メチルホスホネート、短鎖アルキル又はシクロアルキル糖間連結又は短鎖ヘテロ原子又は複素環式糖間連結を含むものが挙げられる。一部のオリゴヌクレオチドは、ホスホロチオエート骨格を有するオリゴヌクレオチド、並びにヘテロ原子骨格、特にCH
2−NH−O−CH
2、CH,〜N(CH
3)〜O〜CH
2(メチレン(メチルイミノ)又はMMI骨格として知られる)、CH
2−−O−−N(CH
3)−CH
2、CH
2−N(CH
3)−N(CH
3)−CH
2及びO−N(CH
3)−CH
2−CH
2骨格[ここで天然リン酸ジエステル骨格はO−P−−O−CHと表される]);アミド骨格[De Mesmaeker et al.,Ace.Chem.Res.,28:366−374(1995)を参照];モルホリノ骨格構造(Summerton and Weller、米国特許第5,034,506号明細書を参照);ペプチド核酸(PNA)骨格(ここでオリゴヌクレオチドのリン酸ジエステル骨格はポリアミド骨格に置き換えられ、ヌクレオチドはポリアミド骨格のアザ窒素原子に直接又は間接的に結合している、Nielsen et al.,Science 1991,254,1497を参照)を有するものである。リン含有連結としては、限定はされないが、ホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、リン酸トリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、メチル及びその他の、3’アルキレンホスホネート及びキラルホスホネートを含むアルキルホスホネート類、ホスフィネート類、3’−アミノホスホルアミデート及びアミノアルキルホスホロアミデート類を含むホスホルアミデート類、チオノホスホロアミデート類、チオノアルキルホスホネート類、チオノアルキルホスホトリエステル類、及びボラノホスフェート類であって、通常の3’−5’連結を有するもの、これらの2’−5’連結類似体、及びヌクレオシド単位の隣接対が3’−5’から5’−3’又は2’−5’から5’−2’に連結されている逆極性を有するものが挙げられる;米国特許第3,687,808号明細書;同第4,469,863号明細書;同第4,476,301号明細書;同第5,023,243号明細書;同第5,177,196号明細書;同第5,188,897号明細書;同第5,264,423号明細書;同第5,276,019号明細書;同第5,278,302号明細書;同第5,286,717号明細書;同第5,321,131号明細書;同第5,399,676号明細書;同第5,405,939号明細書;同第5,453,496号明細書;同第5,455,233号明細書;同第5,466,677号明細書;同第5,476,925号明細書;同第5,519,126号明細書;同第5,536,821号明細書;同第5,541,306号明細書;同第5,550,111号明細書;同第5,563,253号明細書;同第5,571,799号明細書;同第5,587,361号明細書;及び同第5,625,050号明細書(これらの各々は、本明細書において参照により援用される)を参照のこと。
【0245】
モルホリノベースのオリゴマー化合物について、Braasch and David Corey,Biochemistry,41(14):4503−4510(2002);Genesis,Volume 30,Issue 3,(2001);Heasman,Dev.Biol.,243:209−214(2002);Nasevicius et al.,Nat.Genet.,26:216−220(2000);Lacerra et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,97:9591−9596(2000);及び1991年6月23日に取得された米国特許第5,034,506号明細書に記載されている。
【0246】
シクロヘキセニル核酸オリゴヌクレオチド模倣体について、Wang et al.,J.Am.Chem.Soc.,122:8595−8602(2000)に記載されている。
【0247】
そこにリン原子を含まない修飾オリゴヌクレオチド骨格は、短鎖アルキル又はシクロアルキルヌクレオシド間結合、混合ヘテロ原子及びアルキル又はシクロアルキルヌクレオシド間結合、又は1つ以上の短鎖ヘテロ原子又は複素環式ヌクレオシド間結合によって形成される骨格を有する。これらは、モルホリノ連結(一部がヌクレオシドの糖部分で形成される);シロキサン骨格;硫化物、スルホキシド及びスルホン骨格;ホルムアセチル及びチオホルムアセチル骨格;メチレンホルムアセチル及びチオホルムアセチル骨格;アルケン含有骨格;スルファミン酸塩骨格;メチレンイミノ及びメチレンヒドラジノ骨格;スルホン酸塩及びスルホンアミド骨格;アミド骨格を有するもの;並びに混合N、O、S、及びCH
2成分部分を有する他のものを含む;米国特許第5,034,506号明細書;同第5,166,315号明細書;同第5,185,444号明細書;同第5,214,134号明細書;同第5,216,141号明細書;同第5,235,033号明細書;同第5,264,562号明細書;同第5,264,564号明細書;同第5,405,938号明細書;同第5,434,257号明細書;同第5,466,677号明細書;同第5,470,967号明細書;同第5,489,677号明細書;同第5,541,307号明細書;同第5,561,225号明細書;同第5,596,086号明細書;同第5,602,240号明細書;同第5,610,289号明細書;同第5,602,240号明細書;同第5,608,046号明細書;同第5,610,289号明細書;同第5,618,704号明細書;同第5,623,070号明細書;同第5,663,312号明細書;同第5,633,360号明細書;同第5,677,437号明細書;及び同第5,677,439号明細書(これらの各々は、本明細書において参照により援用される)を参照のこと。
【0248】
1つ以上の置換糖部分、例えば2’位における以下のうちの1つもまた含まれ得る:OH、SH、SCH
3、F、OCN、OCH
3、OCH
3O(CH
2)
nCH
3、O(CH
2)
nNH
2、又はO(CH
2)
nCH
3[式中、nは1〜約10である];C1〜C10低級アルキル、アルコキシアルコキシ、置換低級アルキル、アルカリール又はアラルキル;Cl;Br;CN;CF
3;OCF
3;O−、S−、又はN−アルキル;O−、S−、又はN−アルケニル;SOCH
3;SO
2CH
3;ONO
2;NO
2;N
3;NH
2;ヘテロシクロアルキル;ヘテロシクロアルカリール;アミノアルキルアミノ;ポリアルキルアミノ;置換シリル;RNA開裂基;レポーター群;インターカレーター;オリゴヌクレオチドの薬物動態特性を改良する基;又はオリゴヌクレオチド及び同様の特性を有する他の置換基の薬力学的特性を改良する基。一部の実施形態において、修飾としては、2’−メトキシエトキシ(2’−0−CH
2CH
2OCH
3、別名2’−O−(2−メトキシエチル))(Martin et al,HeIv.Chim.Acta,1995,78,486)が挙げられる。他の修飾としては、2’−メトキシ(2’−0−CH
3)、2’−プロポキシ(2’−OCH
2 CH
2CH
3)及び2’−フルオロ(2’−F)が挙げられる。同様の修飾がまた、オリゴヌクレオチド上の他の位置、特に3’末端ヌクレオチド上の糖の3’位及び5’末端ヌクレオチドの5’位に作られてもよい。オリゴヌクレオチドはまた、シクロブチル類など、ペントフラノシル基の代わりに糖模倣体を有してもよい。
【0249】
一部の実施形態において、ヌクレオチド単位の糖及びヌクレオシド間結合の両方、即ち骨格が、新規の基に置き換えられる。適切な核酸標的化合物とのハイブリダイゼーションのため、塩基単位は維持される。一つのかかるオリゴマー化合物である、優れたハイブリダイゼーション特性を有することが示されているオリゴヌクレオチド模倣体は、ペプチド核酸(PNA)と称される。PNA化合物では、オリゴヌクレオチドの糖骨格がアミド含有骨格、例えばアミノエチルグリシン骨格に置き換えられている。核酸塩基は保持され、骨格のアミド部分のアザ窒素原子に直接又は間接的に結合する。PNA化合物の調製について教示する代表的な米国特許は、限定はされないが、米国特許第5,539,082号明細書;同第5,714,331号明細書;及び同第5,719,262号明細書を含む。PNA化合物の更なる教示については、Nielsen et al,Science,254:1497−1500(1991)を参照することができる。
【0250】
ガイドRNAはまた、それに加えて又は代えて、核酸塩基(多くの場合に当該技術分野では単に「塩基」と称される)修飾又は置換も含み得る。本明細書で使用されるとき、「非修飾」又は「天然」核酸塩基には、アデニン(A)、グアニン(G)、チミン(T)、シトシン(C)、及びウラシル(U)が含まれる。修飾核酸塩基には、天然核酸ではまれにしか又は一過性にしか見られない核酸塩基、例えば、ヒポキサンチン、6−メチルアデニン、5−Meピリミジン類、特に5−メチルシトシン(5−メチル−2’デオキシシトシンとも称され、及び多くの場合に当該技術分野では5−Me−Cと称される)、5−ヒドロキシメチルシトシン(HMC)、グリコシルHMC及びゲントビオシルHMC(gentobiosyl HMC)、並びに合成核酸塩基、例えば、2−アミノアデニン、2−(メチルアミノ)アデニン、2−(イミダゾリルアルキル)アデニン、2−(アミノアルキルアミノ(aminoalklyamino))アデニン又は他のヘテロ置換アルキルアデニン、2−チオウラシル、2−チオチミン、5−ブロモウラシル、5−ヒドロキシメチルウラシル、8−アザグアニン、7−デアザグアニン、N6(6−アミノヘキシル)アデニン、及び2,6−ジアミノプリンが含まれる。Kornberg,A.,DNA Replication,W.H.Freeman & Co.,San Francisco,pp75−77(1980);Gebeyehu et al.,Nucl.Acids Res.15:4513(1997)。当該技術分野において公知の「ユニバーサル」塩基、例えばイノシンもまた含まれ得る。5−Me−C置換は核酸二重鎖安定性を0.6〜1.2℃増加させることが示されており(Sanghvi,Y.S.,in Crooke,S.T.and Lebleu,B.,eds.,Antisense Research and Applications,CRC Press,Boca Raton,1993,pp.276−278)、塩基置換の実施形態である。
【0251】
修飾核酸塩基は、5−メチルシトシン(5−me−C)、5−ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2−アミノアデニン、アデニン及びグアニンの6−メチル及び他のアルキル誘導体、アデニン及びグアニンの2−プロピル及び他のアルキル誘導体、2−チオウラシル、2−チオチミン及び2−チオシトシン、5−ハロウラシル及びシトシン、5−プロピニルウラシル及びシトシン、6−アゾウラシル、シトシン及びチミン、5−ウラシル(プソイドウラシル)、4−チオウラシル、8−ハロ、8−アミノ、8−チオール、8−チオアルキル、8−ヒドロキシル及び他の8−置換アデニン及びグアニン、5−ハロ、特に5−ブロモ、5−トリフルオロメチル及び他の5−置換ウラシル及びシトシン、7−メチルグアニン(methylquanine)及び7−メチルアデニン、8−アザグアニン及び8−アザアデニン、7−デアザグアニン及び7−デアザアデニン、並びに3−デアザグアニン及び3−デアザアデニンなど、他の合成及び天然核酸塩基を含む。
【0252】
更に、核酸塩基は、米国特許第3,687,808号明細書に開示されるもの、‘The Concise Encyclopedia of Polymer Science And Engineering’,pages 858−859,Kroschwitz,J.I.,ed.John Wiley & Sons,1990に開示されるもの、Englisch et al.,Angewandle Chemie,International Edition’,1991,30,page 613によって開示されるもの、及びSanghvi,Y.S.,Chapter 15,Antisense Research and Applications’,pages 289−302,Crooke,S.T.and Lebleu,B.ea.,CRC Press,1993によって開示されるものを含む。これらの核酸塩基の特定のものは、本開示のオリゴマー化合物の結合親和性を増加させるのに特に有用である。それらとしては、5−置換ピリミジン、6−アザピリミジン並びに2−アミノプロピルアデニンを含むN−2、N−6及び0−6置換プリン、5−プロピニルウラシル及び5−プロピニルシトシンが挙げられる。5−メチルシトシン置換は核酸二重鎖安定性を0.6〜1.2℃増加させることが示されており(Sanghvi,Y.S.,Crooke,S.T.and Lebleu,B.,eds,‘Antisense Research and Applications’,CRC Press,Boca Raton,1993,pp.276−278)、塩基置換の態様、更により詳細には、2’−O−メトキシエチル糖修飾と組み合わせたときの態様である。修飾核酸塩基については、米国特許第3,687,808号明細書、並びに同第4,845,205号明細書;同第5,130,302号明細書;同第5,134,066号明細書;同第5,175,273号明細書;同第5,367,066号明細書;同第5,432,272号明細書;同第5,457,187号明細書;同第5,459,255号明細書;同第5,484,908号明細書;同第5,502,177号明細書;同第5,525,711号明細書;同第5,552,540号明細書;同第5,587,469号明細書;同第5,596,091号明細書;同第5,614,617号明細書;同第5,681,941号明細書;同第5,750,692号明細書;同第5,763,588号明細書;同第5,830,653号明細書;同第6,005,096号明細書;及び米国特許出願公開第2003/0158403号明細書に記載されている。
【0253】
このように、用語「修飾された」は、ガイドRNA、エンドヌクレアーゼ、又はガイドRNAとエンドヌクレアーゼとの両方に取り込まれる非天然の糖、リン酸、又は塩基を指す。所与のオリゴヌクレオチドの全ての位置が均一に修飾される必要はなく、実際には、単一のオリゴヌクレオチドに、又は更にはオリゴヌクレオチド内の単一のヌクレオシドに、前述の修飾のうちの2つ以上が取り込まれてもよい。
【0254】
一部の実施形態において、ガイドRNA及び/又はエンドヌクレアーゼをコードするmRNA(又はDNA)は、オリゴヌクレオチドの活性、細胞分布、又は細胞取込みを増強する1つ以上の部分又はコンジュゲートに化学的に連結される。かかる部分は、限定はされないが、コレステロール部分などの脂質部分[Letsinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86:6553−6556(1989)];コール酸[Manoharan et al.,Bioorg.Med.Chem.Let.,4:1053−1060(1994)];チオエーテル、例えばヘキシル−S−トリチルチオール[Manoharan et al,Ann.N.Y.Acad.Sci.,660:306−309(1992)及びManoharan et al.,Bioorg.Med.Chem.Let.,3:2765−2770(1993)];チオコレステロール[Oberhauser et al.,Nucl.Acids Res.,20:533−538(1992)];脂肪族鎖、例えばドデカンジオール又はウンデシル残基[Kabanov et al.,FEBS Lett.,259:327−330(1990)及びSvinarchuk et al.,Biochimie,75:49−54(1993)];リン脂質、例えばジ−ヘキサデシル−rac−グリセロール又はトリエチルアンモニウム1,2−ジ−O−ヘキサデシル−rac−グリセロ−3−H−ホスホネート[Manoharan et al.,Tetrahedron Lett.,36:3651−3654(1995)及びShea et al.,Nucl.Acids Res.,18:3777−3783(1990)];ポリアミン又はポリエチレングリコール鎖[Mancharan et al.,Nucleosides & Nucleotides,14:969−973(1995)];アダマンタン酢酸[Manoharan et al.,Tetrahedron Lett.,36:3651−3654(1995)];パルミチル部分[(Mishra et al.,Biochim.Biophys.Acta,1264:229−237(1995)];又はオクタデシルアミン又はヘキシルアミノ−カルボニル−tオキシコレステロール部分[Crooke et al.,J.Pharmacol.Exp.Ther.,277:923−937(1996)]を含む。米国特許第4,828,979号明細書;同第4,948,882号明細書;同第5,218,105号明細書;同第5,525,465号明細書;同第5,541,313号明細書;同第5,545,730号明細書;同第5,552,538号明細書;同第5,578,717号明細書、同第5,580,731号明細書;同第5,580,731号明細書;同第5,591,584号明細書;同第5,109,124号明細書;同第5,118,802号明細書;同第5,138,045号明細書;同第5,414,077号明細書;同第5,486,603号明細書;同第5,512,439号明細書;同第5,578,718号明細書;同第5,608,046号明細書;同第4,587,044号明細書;同第4,605,735号明細書;同第4,667,025号明細書;同第4,762,779号明細書;同第4,789,737号明細書;同第4,824,941号明細書;同第4,835,263号明細書;同第4,876,335号明細書;同第4,904,582号明細書;同第4,958,013号明細書;同第5,082,830号明細書;同第5,112,963号明細書;同第5,214,136号明細書;同第5,082,830号明細書;同第5,112,963号明細書;同第5,214,136号明細書;同第5,245,022号明細書;同第5,254,469号明細書;同第5,258,506号明細書;同第5,262,536号明細書;同第5,272,250号明細書;同第5,292,873号明細書;同第5,317,098号明細書;同第5,371,241号明細書、同第5,391,723号明細書;同第5,416,203号明細書、同第5,451,463号明細書;同第5,510,475号明細書;同第5,512,667号明細書;同第5,514,785号明細書;同第5,565,552号明細書;同第5,567,810号明細書;同第5,574,142号明細書;同第5,585,481号明細書;同第5,587,371号明細書;同第5,595,726号明細書;同第5,597,696号明細書;同第5,599,923号明細書;同第5,599,928号明細書及び同第5,688,941号明細書もまた参照のこと。
【0255】
糖及び他の部分を使用して、カチオン性ポリソーム及びリポソームなど、ヌクレオチドを含むタンパク質及び複合体を特定の部位に標的化することができる。例えば、肝細胞特異的トランスファーがアシアロ糖タンパク質受容体(ASGPR)によって媒介されてもよい;例えば、Hu,et al.,Protein Pept Lett.21(10):1025−30(2014)を参照のこと。当該技術分野において公知の、及び常時開発される他のシステムを使用して、この場合に有用な生体分子及び/又はその複合体を目的の特定の標的細胞に標的化することができる。
【0256】
これらのターゲティング部分又はコンジュゲートは、第一級又は第二級ヒドロキシル基など、官能基に共有結合的に結合するコンジュゲート基を含み得る。本開示のコンジュゲート基には、インターカレーター、レポーター分子、ポリアミン、ポリアミド、ポリエチレングリコール、ポリエーテル、オリゴマーの薬力学的特性を増強する基、及びオリゴマーの薬物動態特性を増強する基が含まれる。典型的なコンジュゲート基としては、コレステロール、脂質、リン脂質、ビオチン、フェナジン、葉酸塩、フェナントリジン、アントラキノン、アクリジン、フルオレセイン、ローダミン、クマリン、及び色素が挙げられる。薬力学的特性を増強する基としては、本開示の文脈では、取込みを改良する基、分解に対する抵抗性を増強する基、及び/又は標的核酸との配列特異的ハイブリダイゼーションを強化する基が挙げられる。薬物動態特性を増強する基としては、本開示の文脈では、本開示の化合物の取込み、分布、代謝又は排出を改良する基が挙げられる。代表的なコンジュゲート基は、1992年10月23日に出願されたPCT/US92/09196号明細書、及び米国特許第6,287,860号明細書(これらは参照により本明細書に援用される)に開示されている。コンジュゲート部分としては、限定はされないが、脂質部分、例えば、コレステロール部分、コール酸、チオエーテル、例えば、ヘキシル−5−トリチルチオール、チオコレステロール、脂肪族鎖、例えば、ドデカンジオール又はウンデシル残基、リン脂質、例えば、ジ−ヘキサデシル−rac−グリセロール又はトリエチルアンモニウムl,2−ジ−O−ヘキサデシル−rac−グリセロ−3−H−ホスホネート、ポリアミン又はポリエチレングリコール鎖、又はアダマンタン酢酸、パルミチル部分、又はオクタデシルアミン又はヘキシルアミノ−カルボニル−オキシコレステロール部分が挙げられる。例えば、米国特許第4,828,979号明細書;同第4,948,882号明細書;同第5,218,105号明細書;同第5,525,465号明細書;同第5,541,313号明細書;同第5,545,730号明細書;同第5,552,538号明細書;同第5,578,717号明細書、同第5,580,731号明細書;同第5,580,731号明細書;同第5,591,584号明細書;同第5,109,124号明細書;同第5,118,802号明細書;同第5,138,045号明細書;同第5,414,077号明細書;同第5,486,603号明細書;同第5,512,439号明細書;同第5,578,718号明細書;同第5,608,046号明細書;同第4,587,044号明細書;同第4,605,735号明細書;同第4,667,025号明細書;同第4,762,779号明細書;同第4,789,737号明細書;同第4,824,941号明細書;同第4,835,263号明細書;同第4,876,335号明細書;同第4,904,582号明細書;同第4,958,013号明細書;同第5,082,830号明細書;同第5,112,963号明細書;同第5,214,136号明細書;同第5,082,830号明細書;同第5,112,963号明細書;同第5,214,136号明細書;同第5,245,022号明細書;同第5,254,469号明細書;同第5,258,506号明細書;同第5,262,536号明細書;同第5,272,250号明細書;同第5,292,873号明細書;同第5,317,098号明細書;同第5,371,241号明細書、同第5,391,723号明細書;同第5,416,203号明細書、同第5,451,463号明細書;同第5,510,475号明細書;同第5,512,667号明細書;同第5,514,785号明細書;同第5,565,552号明細書;同第5,567,810号明細書;同第5,574,142号明細書;同第5,585,481号明細書;同第5,587,371号明細書;同第5,595,726号明細書;同第5,597,696号明細書;同第5,599,923号明細書;同第5,599,928号明細書及び同第5,688,941号明細書を参照のこと。
【0257】
それほど化学合成に適していない、且つ典型的には酵素合成によって作製される、より長いポリヌクレオチドもまた、様々な手段によって修飾することができる。かかる修飾には、例えば、ある種のヌクレオチド類似体の導入、分子の5’又は3’末端における特定の配列又は他の部分の取込み、及び他の修飾が含まれ得る。例示として、Cas9をコードするmRNAは約4kb長であり、インビトロ転写によって合成することができる。このmRNAに修飾を適用することにより、例えば、その翻訳又は安定性を増加させることができ(細胞による分解に対するその抵抗性を増加させることによるなど)、又は外因性RNA、特にCas9をコードするものなどのより長いRNAの導入後に細胞で観察されることの多い自然免疫応答を誘発するRNAの傾向を低下させることができる。
【0258】
数多くのかかる修飾が、ポリAテール、5’キャップ類似体(例えば、アンチリバースキャップ類似体(ARCA)又はm7G(5’)ppp(5’)G(mCAP))、修飾5’又は3’非翻訳領域(UTR)、修飾塩基の使用(プソイドUTP、2−チオ−UTP、5−メチルシチジン−5’−三リン酸(5−メチル−CTP)又はN6−メチル−ATPなど)、又はホスファターゼ処理による5’末端リン酸の除去など、当該技術分野において記載されている。これら及び他の修飾は当該技術分野において公知であり、RNAの新規修飾が常時開発されている。
【0259】
修飾RNAの商業的供給業者は、例えば、TriLink Biotech、AxoLabs、Bio−Synthesis Inc.、Dharmacon及び他多数を含め、数多くある。TriLinkによって記載されるとおり、例えば、5−メチル−CTPを使用して、ヌクレアーゼ安定性の増加、翻訳の増加又は自然免疫受容体とインビトロ転写RNAとの相互作用の低下など、望ましい特徴を付与することができる。5−メチルシチジン−5’−三リン酸(5−メチル−CTP)、N6−メチル−ATP、並びにプソイドUTP及び2−チオ−UTPもまた、以下で参照するKormann et al.及びWarren et al.による発表に示されるとおり、翻訳を増強しつつ、培養下及びインビボで自然免疫刺激を低下させることが示されている。
【0260】
インビボで送達される化学修飾mRNAを使用して治療効果の向上を実現できることが示されている;例えば、Kormann et al.,Nature Biotechnology 29,154−157(2011)を参照のこと。かかる修飾は、例えば、RNA分子の安定性の増加及び/又はその免疫原性の低下のために使用することができる。プソイドU、N6−メチル−A、2−チオ−U及び5−メチル−Cなどの化学修飾を使用すると、ウリジン及びシチジン残基の僅か4分の1をそれぞれ2−チオ−U及び5−メチル−Cに置換するだけで、マウスにおいてToll様受容体(TLR)媒介性のmRNA認識の大幅な減少が生じたことが分かった。自然免疫系の活性化の低下により、こうした修飾を用いてインビボでのmRNAの安定性及び寿命を有効に増加させることができる;例えば、Kormann et al.、前掲を参照のこと。
【0261】
また、自然抗ウイルス応答を回避するように設計された修飾を取り込んだ合成メッセンジャーRNAを反復投与することにより、分化したヒト細胞を多能性に再プログラム化できることも示されている。例えば、Warren,et al.,Cell Stem Cell,7(5):618−30(2010)を参照のこと。一次再プログラム化タンパク質として働くかかる修飾mRNAは、複数のヒト細胞型を再プログラム化するのに効率的な手段であり得る。かかる細胞は人工多能性幹細胞(iPSC)と称され、5−メチル−CTP、プソイドUTP及びアンチリバースキャップ類似体(ARCA)を取り込んだ酵素的に合成されたRNAを使用して細胞の抗ウイルス応答を有効に逃れ得ることが分かった;例えば、Warren et al.、前掲を参照のこと。
【0262】
当該技術分野において記載されるポリヌクレオチドの他の修飾としては、例えば、ポリAテールの使用、5’キャップ類似体(m7G(5’)ppp(5’)G(mCAP)など)の付加、5’又は3’非翻訳領域(UTR)の修飾、又はホスファターゼ処理による5’末端リン酸の除去が挙げられ−、新規手法が常時開発されている。
【0263】
本明細書で使用される修飾RNAの生成に適用可能な幾つもの組成物及び技法が、低分子干渉RNA(siRNA)を含め、RNA干渉(RNAi)の修飾に関連して開発されている。siRNAは、それがmRNA干渉によって遺伝子サイレンシングに及ぼす効果が概して一過性であり、それにより反復投与が必要になり得るため、インビボで特定の課題を提示する。加えて、siRNAは二本鎖RNA(dsRNA)であり、哺乳類細胞は、多くの場合にウイルス感染の副産物であるdsRNAを検出して中和するように進化した免疫応答を有する。従って、dsRNAに対する細胞応答を媒介することのできる哺乳類酵素、例えば、PKR(dsRNA応答性キナーゼ)、及び潜在的にレチノイン酸誘導性の遺伝子I(RIG−I)、並びにかかる分子に応答してサイトカインの誘導を惹起することのできるToll様受容体(TLR3、TLR7及びTLR8など)がある;例えば、Angart et al.,Pharmaceuticals(Basel)6(4):440−468(2013);Kanasty et al.,Molecular Therapy 20(3):513−524(2012);Burnett et al.,Biotechnol J.6(9):1130−46(2011);Judge and MacLachlan,Hum Gene Ther 19(2):111−24(2008)によるレビュー;及びそこに引用される文献を参照のこと。
【0264】
多種多様な修飾が、RNA安定性の増強、自然免疫応答の低下、及び/又は本明細書に記載されるとおりの、ヒト細胞へのポリヌクレオチドの導入に関連して有用であり得る他の利益の実現のため開発され、適用されている;例えば、Whitehead KA et al.,Annual Review of Chemical and Biomolecular Engineering,2:77−96(2011);Gaglione and Messere,Mini Rev Med Chem,10(7):578−95(2010);Chernolovskaya et al,Curr Opin Mol Ther.,12(2):158−67(2010);Deleavey et al.,Curr Protoc Nucleic Acid Chem Chapter 16:Unit 16.3(2009);Behlke,Oligonucleotides 18(4):305−19(2008);Fucini et al.,Nucleic Acid Ther 22(3):205−210(2012);Bremsen et al.,Front Genet 3:154(2012)によるレビューを参照のこと。
【0265】
上述のとおり、修飾RNAの商業的供給業者は幾つもあり、その多くはsiRNAの有効性を改善するように設計された修飾に特化している。文献に報告される様々な知見に基づき種々の手法が提供される。例えば、Dharmaconは、Kole,Nature Reviews Drug Discovery 11:125−140(2012)によって報告されるとおり、siRNAのヌクレアーゼ耐性を改善するため非架橋酸素から硫黄(ホスホロチオエート、PS)への置換が広範に用いられていることを注記している。リボースの2’位の修飾は、二重鎖安定性(Tm)を増加させつつインターヌクレオチドリン酸結合のヌクレアーゼ耐性を改善することが報告されており、これはまた免疫活性化からの保護を提供することも示されている。中程度のPS骨格修飾と小さい十分に許容される2’置換(2’−O−メチル、2’−フルオロ、2’−ヒドロ)との組み合わせは、Soutschek et al.Nature 432:173−178(2004)によって報告されるとおり、インビボでの適用に極めて安定性の高いsiRNAと関連付けられており;及び2’−O−メチル修飾は、Volkov,Oligonucleotides 19:191−202(2009)によって報告されるとおり、安定性の改善に有効であることが報告されている。自然免疫応答の誘導の減少に関連して、2’−O−メチル、2’−フルオロ、2’−ヒドロによる特定の配列の修飾が、概してサイレンシング活性は維持しつつ、TLR7/TLR8相互作用を低下させることが報告されている;例えば、Judge et al.,Mol.Ther.13:494−505(2006);及びCekaite et al.,J.Mol.Biol.365:90−108(2007).を参照のこと。2−チオウラシル、プソイドウラシル、5−メチルシトシン、5−メチルウラシル、及びN6−メチルアデノシンなどの追加的な修飾もまた、TLR3、TLR7、及びTLR8によって媒介される免疫効果を最小限に抑えることが示されている;例えば、Kariko,K.et al.,Immunity 23:165−175(2005)を参照のこと。
【0266】
同様に当該技術分野において公知であり、且つ市販されているとおり、本明細書で使用するRNAなどのポリヌクレオチドに対し、例えば、コレステロール、トコフェロール及び葉酸、脂質、ペプチド、ポリマー、リンカー及びアプタマーを含め、その送達及び/又は細胞による取込みを増強することのできる幾つものコンジュゲートを適用することができる;例えば、Winkler,Ther.Deliv.4:791−809(2013)によるレビュー、及びそこに引用される文献を参照のこと。
【0267】
コドン最適化
一部の実施形態において、部位特異的ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、目的の標的DNAを含む細胞において発現させるため、当該技術分野において標準的な方法によりコドン最適化される。例えば、意図される標的核酸がヒト細胞にある場合、Cas9をコードするヒトコドン最適化ポリヌクレオチドがCas9ポリペプチドの産生に使用されることが企図される。
【0268】
ゲノムターゲティング核酸と部位特異的ポリペプチドとの複合体
ゲノムターゲティング核酸は部位特異的ポリペプチド(例えば、Cas9などの核酸ガイド型ヌクレアーゼ)と相互作用し、それにより複合体を形成する。ゲノムターゲティング核酸が部位特異的ポリペプチドを標的核酸にガイドする。
【0269】
RNP
部位特異的ポリペプチド及びゲノムターゲティング核酸は、各々が別個に細胞又は患者に投与されてもよい。他方で、部位特異的ポリペプチドは、1つ以上のガイドRNA、又はtracrRNAと併せた1つ以上のcrRNAと予め複合体化されてもよい。予め複合体化された材料が、次には細胞又は患者に投与されてもよい。かかる予め複合体化された材料は、リボ核タンパク質粒子(RNP)として知られる。
【0270】
核酸コードシステム成分
本開示は、本開示のゲノムターゲティング核酸、本開示の部位特異的ポリペプチド、及び/又は本開示の方法の態様を実行するのに必要な任意の核酸又はタンパク質分子をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。
【0271】
本開示のゲノムターゲティング核酸、本開示の部位特異的ポリペプチド、及び/又は本開示の方法の態様を実行するのに必要な任意の核酸又はタンパク質分子をコードする核酸はベクター(例えば組換え発現ベクター)を含む。
【0272】
用語「ベクター」は、それが連結されている別の核酸を輸送する能力を有する核酸分子を指す。ベクターの一つのタイプは「プラスミド」であり、これは、追加的な核酸セグメントをライゲートすることのできる環状二本鎖DNAループを指す。別のタイプのベクターはウイルスベクター(例えばAAV)であり、ここでは追加的な核酸セグメントをウイルスゲノムにライゲートすることができる。ある種のベクターは、それが導入される宿主細胞において自己複製能を有する(例えば、細菌性複製起点を有する細菌ベクター及びエピソーム哺乳類ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳類ベクター)は宿主細胞への導入時に宿主細胞のゲノムに組み込まれ、従って宿主ゲノムと共に複製する。
【0273】
一部の実施形態において、ベクターは、それが作動可能に連結される核酸の発現を指図する能力を有する。かかるベクターは、本明細書では「組換え発現ベクター」、又は更に単純に「発現ベクター」と称され、これらは同等の機能を果たす。
【0274】
用語「作動可能に連結された」は、目的のヌクレオチド配列がそのヌクレオチド配列の発現を許容する形で1つ又は複数の調節配列に連結されていることを意味する。用語「調節配列」は、例えば、プロモーター、エンハンサー及び他の発現制御エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むことが意図される。かかる調節配列は当該技術分野において周知であり、例えば、Goeddel;Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185,Academic Press,San Diego,CA(1990)に記載されている。調節配列には、多くの宿主細胞型でヌクレオチド配列の構成的発現を指図するもの、及びある種の宿主細胞においてのみヌクレオチド配列の発現を指図するもの(例えば、組織特異的調節配列)が含まれる。当業者によれば、発現ベクターの設計が、標的細胞の選択、所望の発現レベルなどといった要因に依存し得ることが理解されるであろう。
【0275】
企図される発現ベクターとしては、限定はされないが、ワクシニアウイルス、ポリオウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、SV40、単純ヘルペスウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、レトロウイルス(例えば、マウス白血病ウイルス、脾臓壊死ウイルスをベースとするウイルスベクター、及びレトロウイルス、例えば、ラウス肉腫ウイルス、ハーベイ肉腫ウイルス、トリ白血病ウイルス、レンチウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、骨髄増殖性肉腫ウイルス、及び乳癌ウイルスなどに由来するベクター)及び他の組換えベクターが挙げられる。真核標的細胞に企図される他のベクターとしては、限定はされないが、ベクターpXT1、pSG5、pSVK3、pBPV、pMSG、及びpSVLSV40(Pharmacia)が挙げられる。真核標的細胞に企図される更なるベクターとしては、限定はされないが、ベクターが挙げられる。宿主細胞と適合性がある限り、他のベクターが用いられてもよい。
【0276】
一部の実施形態において、ベクターは1つ以上の転写及び/又は翻訳制御エレメントを含む。利用される宿主/ベクター系に応じて、幾つもの好適な転写及び翻訳制御エレメントの任意のものが、構成的及び誘導性プロモーター、転写エンハンサーエレメント、転写ターミネーター等を含め、発現ベクターに用いられてもよい。一部の実施形態において、ベクターは、ウイルス配列又はCRISPR機構の成分のいずれか又は他のエレメントを不活性化する自己不活性化ベクターである。
【0277】
好適な真核生物プロモーター(即ち、真核細胞で機能性のプロモーター)の非限定的な例としては、サイトメガロウイルス(CMV)前初期、単純ヘルペスウイルス(HSV)チミジンキナーゼ、初期及び後期SV40、レトロウイルス由来の長末端反復(LTR)、ヒト伸長因子−1プロモーター(EF1)、サイトメガロウイルス(CMV)エンハンサーがニワトリβ−アクチンプロモーター(CAG)に融合したものを含むハイブリッドコンストラクト、マウス幹細胞ウイルスプロモーター(MSCV)、ホスホグリセリン酸キナーゼ−1遺伝子座プロモーター(PGK)、及びマウスメタロチオネイン−Iからのものが挙げられる。
【0278】
Casエンドヌクレアーゼに関連して使用されるガイドRNAを含め、小さいRNAを発現させるためには、例えばU6及びH1を含め、RNAポリメラーゼIIIプロモーターなどの様々なプロモーターが有利であり得る。かかるプロモーターについての説明及びその使用を増強するためのパラメータは当該技術分野において公知であり、更なる情報及び手法が常時記載されている;例えば、Ma,H.et al.,Molecular Therapy−Nucleic Acids 3,e161(2014)doi:10.1038/mtna.2014.12を参照のこと。
【0279】
発現ベクターはまた、翻訳開始用のリボソーム結合部位及び転写ターミネーターも含み得る。発現ベクターはまた、発現の増幅に適切な配列も含み得る。発現ベクターはまた、部位特異的ポリペプチドに融合した、ひいては融合タンパク質をもたらす非天然タグ(例えば、ヒスチジンタグ、ヘマグルチニンタグ、緑色蛍光タンパク質等)をコードするヌクレオチド配列も含み得る。
【0280】
一部の実施形態において、プロモーターは誘導性プロモーター(例えば、熱ショックプロモーター、テトラサイクリン調節性プロモーター、ステロイド調節性プロモーター、金属調節性プロモーター、エストロゲン受容体調節性プロモーター等)である。一部の実施形態において、プロモーターは構成的プロモーター(例えば、CMVプロモーター、UBCプロモーター)である。一部の実施形態において、プロモーターは空間的に制限された及び/又は時間的に制限されたプロモーター(例えば、組織特異的プロモーター、細胞型特異的プロモーター等)である。
【0281】
一部の実施形態において、本開示のゲノムターゲティング核酸及び/又は部位特異的ポリペプチドをコードする核酸は、細胞への送達のため送達媒体の中又はその表面上にパッケージングされる。企図される送達媒体としては、限定はされないが、ナノスフェア、リポソーム、量子ドット、ナノ粒子、ポリエチレングリコール粒子、ヒドロゲル、及びミセルが挙げられる。当該技術分野で記載されるとおり、種々のターゲティング部分を用いてかかる媒体と所望の細胞型又は位置との優先的相互作用を増強することができる。
【0282】
細胞への本開示の複合体、ポリペプチド、及び核酸の導入は、ウイルス又はバクテリオファージ感染、トランスフェクション、コンジュゲーション、プロトプラスト融合、リポフェクション、電気穿孔、ヌクレオフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリエチレンイミン(PEI)媒介性トランスフェクション、DEAE−デキストラン媒介性トランスフェクション、リポソーム媒介性トランスフェクション、パーティクルガン技術、リン酸カルシウム沈殿、直接のマイクロインジェクション、ナノ粒子媒介性核酸送達などによって行うことができる。
【0283】
送達
ガイドRNAポリヌクレオチド(RNA又はDNA)及び/又は1つ又は複数のエンドヌクレアーゼポリヌクレオチド(RNA又はDNA)は、当該技術分野において公知のウイルス又は非ウイルス送達媒体によって送達することができる。或いは、1つ又は複数のエンドヌクレアーゼポリペプチドは、電気穿孔又は脂質ナノ粒子など、当該技術分野において公知のウイルス又は非ウイルス送達媒体によって送達されてもよい。一部の実施形態において、DNAエンドヌクレアーゼは、単独か、又は1つ以上のガイドRNA、又はtracrRNAと併せた1つ以上のcrRNAと予め複合体化されるかのいずれかで、1つ以上のポリペプチドとして送達されてもよい。
【0284】
ポリヌクレオチドは、限定はされないが、ナノ粒子、リポソーム、リボ核タンパク質、正電荷ペプチド、小分子RNAコンジュゲート、アプタマー−RNAキメラ、及びRNA融合タンパク質複合体を含めた非ウイルス送達媒体によって送達されてもよい。一部の例示的非ウイルス送達媒体について、Peer and Lieberman,Gene Therapy,18:1127−1133(2011)に記載されている(これはsiRNA用の非ウイルス送達媒体に焦点を置いているが、これは他のポリヌクレオチドの送達にもまた有用である)。
【0285】
ガイドRNA、sgRNA、及びエンドヌクレアーゼをコードするmRNAなど、ポリヌクレオチドは、脂質ナノ粒子(LNP)によって細胞又は患者に送達されてもよい。
【0286】
LNPは、1000nm、500nm、250nm、200nm、150nm、100nm、75nm、50nm、又は25nm未満の直径を有する任意の粒子を指す。或いは、ナノ粒子は、1〜1000nm、1〜500nm、1〜250nm、25〜200nm、25〜100nm、35〜75nm、又は25〜60nmのサイズの範囲であってもよい。
【0287】
LNPは、カチオン性、アニオン性、又は中性脂質でできていてもよい。融合性リン脂質DOPE又は膜成分コレステロールなどの中性脂質が、「ヘルパー脂質」としてトランスフェクション活性及びナノ粒子安定性を増強するためLNPに含まれてもよい。カチオン性脂質の制限としては、低い安定性及び急速なクリアランスに起因する低い有効性、並びに炎症反応又は抗炎症反応の発生が挙げられる。
【0288】
LNPはまた、疎水性脂質、親水性脂質、又は疎水性脂質及び親水性脂質の両方を含んでもよい。
【0289】
当該技術分野において公知の任意の脂質又は脂質の組み合わせを使用してLNPを作製し得る。LNPの作製に使用される脂質の例は、DOTMA、DOSPA、DOTAP、DMRIE、DC−コレステロール、DOTAP−コレステロール、GAP−DMORIE−DPyPE、及びGL67A−DOPE−DMPE−ポリエチレングリコール(PEG)である。カチオン性脂質の例は、98N12−5、C12−200、DLin−KC2−DMA(KC2)、DLin−MC3−DMA(MC3)、XTC、MD1、及び7C1である。中性脂質の例は、DPSC、DPPC、POPC、DOPE、及びSMである。PEG修飾脂質の例は、PEG−DMG、PEG−CerC14、及びPEG−CerC20である。
【0290】
LNPを作製するために、脂質はいかなるモル比で組み合わされてもよい。加えて、LNPを作製するために、1つ又は複数のポリヌクレオチドが1つ又は複数の脂質と幅広いモル比で組み合わされてもよい。
【0291】
これまでに述べたとおり、部位特異的ポリペプチド及びゲノムターゲティング核酸は、各々が別個に細胞又は患者に投与されてもよい。他方で、部位特異的ポリペプチドは、1つ以上のガイドRNA、又はtracrRNAと併せた1つ以上のcrRNAと予め複合体化されてもよい。予め複合体化された材料が、次には細胞又は患者に投与されてもよい。かかる予め複合体化された材料は、リボ核タンパク質粒子(RNP)として知られる。
【0292】
RNAはRNA又はDNAと特異的相互作用を形成する能力を有する。この特性は多くの生物学的過程で利用されているが、これはまた、核酸リッチな細胞環境において無差別な相互作用となるリスクも伴う。この問題の一つの解決法はリボ核タンパク質粒子(RNP)の形成であり、ここではRNAがエンドヌクレアーゼと予め複合体化される。RNPの別の利益は分解からのRNAの保護である。
【0293】
RNPにおけるエンドヌクレアーゼは修飾されていても、又は非修飾であってもよい。同様に、gRNA、crRNA、tracrRNA、又はsgRNAは修飾されていても、又は非修飾であってもよい。数多くの修飾が当該技術分野において公知であり、使用することができる。
【0294】
エンドヌクレアーゼとsgRNAとは、概して1:1のモル比で組み合わされてもよい。或いは、エンドヌクレアーゼ、crRNA及びtracrRNAは、概して1:1:1のモル比で組み合わされてもよい。しかしながら、RNPの作製には幅広いモル比を用いることができる。
【0295】
組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターが送達に用いられてもよい。送達しようとするポリヌクレオチドを含むパッケージングされるAAVゲノム、rep及びcap遺伝子、並びにヘルパーウイルス機能が細胞に提供されるrAAV粒子の作製技法は、当該技術分野において標準的である。rAAVの作製には、単一細胞(本明細書ではパッケージング細胞と称される)の中に以下の成分:rAAVゲノム、rAAVゲノムと別個の(即ちその中にない)AAV rep及びcap遺伝子、並びにヘルパーウイルス機能が存在する必要がある。AAV rep及びcap遺伝子は、限定はされないが、AAV血清型AAV−1、AAV−2、AAV−3、AAV−4、AAV−5、AAV−6、AAV−7、AAV−8、AAV−9、AAV−10、AAV−11、AAV−12、AAV−13及びAAV rh.74を含め、組換えウイルスが由来することのできる任意のAAV血清型からのものであってもよく、rAAVゲノムITRと異なるAAV血清型からのものであってもよい。シュードタイプrAAVの作製が、例えば、国際公開第01/83692号パンフレットに開示されている。表2を参照のこと。
【0296】
【表2】
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【0297】
パッケージング細胞の作成方法は、AAV粒子作製に必要な全ての成分を安定に発現する細胞株を作成することを含む。例えば、AAV rep及びcap遺伝子を欠くrAAVゲノム、rAAVゲノムと別個のAAV rep及びcap遺伝子、並びにネオマイシン耐性遺伝子などの選択可能マーカーを含むプラスミド(又は複数のプラスミド)が細胞のゲノムに組み込まれる。AAVゲノムは、GCテーリング(Samulski et al.,1982,Proc.Natl.Acad.S6.USA,79:2077−2081)、制限エンドヌクレアーゼ切断部位を含む合成リンカーの付加(Laughlin et al.,1983,Gene,23:65−73)などの手順によるか、又は直接的な平滑末端ライゲーション(Senapathy & Carter,1984,J.Biol.Chem.,259:4661−4666)によって細菌プラスミドに導入されている。パッケージング細胞株は次に、アデノウイルスなどのヘルパーウイルスに感染させる。この方法の利点は、細胞が選択可能であり、且つrAAVの大規模作製に好適であることである。好適な方法の他の例では、プラスミドよりむしろアデノウイルス又はバキュロウイルスを利用してrAAVゲノム及び/又はrep及びcap遺伝子がパッケージング細胞に導入される。
【0298】
rAAV作製の一般的原理については、例えば、Carter,1992,Current Opinions in Biotechnology,1533−539;及びMuzyczka,1992,Curr.Topics in Microbial.and Immunol.,158:97−129)にレビューされている。様々な手法が、Ratschin et al.,Mol.Cell.Biol.4:2072(1984);Hermonat et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6466(1984);Tratschin et al.,Mo1.Cell.Biol.5:3251(1985);McLaughlin et al.,J.Virol.,62:1963(1988);及びLebkowski et al.,1988 Mol.Cell.Biol.,7:349(1988).Samulski et al.(1989,J.Virol.,63:3822−3828);米国特許第5,173,414号明細書;国際公開第95/13365号パンフレット及び対応する米国特許第5,658,776号明細書;国際公開第95/13392号パンフレット;国際公開第96/17947号パンフレット;PCT/US98/18600号明細書;国際公開第97/09441号パンフレット(PCT/US96/14423号明細書);国際公開第97/08298号パンフレット(PCT/US96/13872号明細書);国際公開第97/21825号パンフレット(PCT/US96/20777号明細書);国際公開第97/06243号パンフレット(PCT/FR96/01064号明細書);国際公開第99/11764号パンフレット;Perrin et al.(1995)Vaccine 13:1244−1250;Paul et al.(1993)Human Gene Therapy 4:609−615;Clark et al.(1996)Gene Therapy 3:1124−1132;米国特許第5,786,211号明細書;米国特許第5,871,982号明細書;及び米国特許第6,258,595号明細書に記載されている。
【0299】
AAVベクター血清型は標的細胞型に合致させることができる。例えば、以下の例示的細胞型は、数ある中でも特に、指示されるAAV血清型によって形質導入されてもよい。表3を参照のこと。
【0300】
【表3】
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【0301】
アデノ随伴ウイルスベクターに加えて、他のウイルスベクターを使用することができる。かかるウイルスベクターとしては、限定はされないが、レンチウイルス、アルファウイルス、エンテロウイルス、ペスチウイルス、バキュロウイルス、ヘルペスウイルス、エプスタイン・バーウイルス、パポーバウイルス(papovavirusr)、ポックスウイルス、ワクシニアウイルス、及び単純ヘルペスウイルスが挙げられる。
【0302】
一部の実施形態では、Cas9 mRNA、標的遺伝子の1つ又は2つの遺伝子座を標的とするsgRNA、及びドナーDNAは、各々が脂質ナノ粒子に別個に製剤化されるか、又は全てが1つの脂質ナノ粒子に共製剤化され、又は2つ以上の脂質ナノ粒子に共製剤化される。
【0303】
一部の実施形態では、Cas9 mRNAは脂質ナノ粒子に製剤化され、一方でsgRNA及びドナーDNAはAAVベクターで送達される。一部の実施形態では、Cas9 mRNAとsgRNAとは脂質ナノ粒子に共製剤化され、一方でドナーDNAはAAVベクターで送達される。
【0304】
Cas9ヌクレアーゼをDNAプラスミドとして、mRNAとして又はタンパク質として送達する選択肢が利用可能である。ガイドRNAは同じDNAから発現させることができ、又はRNAとして送達することもできる。RNAは、その半減期が改変され若しくは向上するように、又は免疫応答の可能性若しくは程度が低下するように化学的に修飾することができる。エンドヌクレアーゼタンパク質は送達前にgRNAと複合体化することができる。ウイルスベクターは効率的な送達を可能にし;分割バージョンのCas9及びCas9のより小さいオルソログを、HDR用のドナーについてできるのと同じく、AAVにパッケージングすることができる。これらの成分の各々を送達することのできる様々な非ウイルス送達方法もまた存在し、又は非ウイルス方法及びウイルス方法をタンデムで利用することができる。例えば、ナノ粒子を使用してタンパク質及びガイドRNAを送達することができ、一方でAAVを使用してドナーDNAを送達することができる。
【0305】
エキソソーム
リン脂質二重層が結合する一種の微小胞であるエキソソームを使用して、核酸を特異的組織に送達することができる。体内の多くの異なる種類の細胞が天然でエキソソームを分泌する。エキソソームは、エンドソームが陥入して多胞性エンドソーム(MVE)を形成すると細胞質内に形成される。MVEが細胞膜と融合すると、エキソソームが細胞外空間に分泌される。30〜120nmの直径の範囲で、エキソソームは様々な分子をある細胞から別の細胞へと細胞間コミュニケーションの形態でシャトル輸送することができる。マスト細胞など、天然でエキソソームを産生する細胞は、特異的組織を標的とする表面タンパク質を有するエキソソームを産生するように遺伝子改変することができ、或いはエキソソームは血流から単離することができる。操作されたエキソソームの中に電気穿孔によって特異的核酸を置くことができる。全身的に導入されると、エキソソームは核酸を特異的標的組織に送達することができる。
【0306】
遺伝子修飾細胞
用語「遺伝子修飾細胞」とは、ゲノム編集によって(例えば、CRISPR/Cas9/Cpf1システムを使用して)導入された少なくとも1つの遺伝子修飾を含む細胞を指す。本明細書の一部の例(例えば、エキソビボの例)において、遺伝子修飾細胞は遺伝子修飾前駆細胞である。本明細書の一部の例において、遺伝子修飾細胞は遺伝子修飾T細胞である。外因性ゲノムターゲティング核酸及び/又はゲノムターゲティング核酸をコードする外因性核酸を含む遺伝子修飾細胞が本明細書で企図される。
【0307】
用語「対照処理済み集団」は、ゲノム編集成分の追加を除けば同一の培地、ウイルス誘導、核酸配列、温度、コンフルエンシー、フラスコサイズ、pH等で処理された細胞集団を記載する。標的遺伝子又はタンパク質発現又は活性の回復の測定には、当該技術分野において公知の任意の方法、例えば標的タンパク質のウエスタンブロット分析又は標的mRNAの定量化を用いることができる。
【0308】
用語「単離細胞」は、それが当初見出されていた生物から取り出された細胞、又はかかる細胞の子孫を指す。任意選択で、細胞はインビトロで、例えば限定条件下又は他の細胞の存在下に培養される。任意選択で、細胞は後に第2の生物に導入されるか、又はそれ(又はそれが子孫となった元の細胞)が単離された元の生物に再導入される。
【0309】
単離細胞集団に関連して用語「単離集団」は、混合又は異種細胞集団から取り出され、且つ分離された細胞集団を指す。一部の実施形態において、単離集団は、細胞が単離され又は集積された元の異種集団と比較したとき実質的に純粋な細胞集団である。一部の実施形態において、単離集団は、ヒト前駆細胞の単離集団、例えば、ヒト前駆細胞及びヒト前駆細胞が由来した元の細胞を含む異種細胞集団と比較したとき実質的に純粋なヒト前駆細胞集団である。
【0310】
用語「実質的に増強された」は、特定の細胞集団に関連して、既存のレベル又は参照レベルと比べて特定の種類の細胞の出現が、例えば医学的病態を改善するためのかかる細胞の所望のレベルに応じて、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも400倍、少なくとも1000倍、少なくとも5000倍、少なくとも20000倍、少なくとも100000倍又はそれ以上増加する細胞集団を指す。
【0311】
用語「実質的に集積された」は、特定の細胞集団に関連して、全細胞集団を構成する細胞に関して少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%又はそれ以上の細胞集団を指す。
【0312】
用語「実質的に集積された」又は「実質的に純粋な」は、特定の細胞集団に関連して、全細胞集団を構成する細胞に関して少なくとも約75%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%の純度の細胞集団を指す。即ち、用語「実質的に純粋な」又は「本質的に精製された」は、前駆細胞集団に関連して、本明細書でこれらの用語により定義されるとおりの前駆細胞でない細胞が約20%、約15%、約10%、約9%、約8%、約7%、約6%、約5%、約4%、約3%、約2%、約1%、又は1%未満より少数しか含まれない細胞集団を指す。
【0313】
患者に細胞を植え込む
本開示のエキソビボ方法の別のステップは、細胞を患者に植え込むことを含む。この植込みステップは、当該技術分野において公知の任意の植込み方法を用いて達成し得る。例えば、遺伝子修飾細胞が患者の血中に直接注入されるか、又は他の形で患者に投与されてもよい。遺伝子修飾細胞は、選択されたマーカーを使用してエキソビボで精製されてもよい。
【0314】
薬学的に許容可能な担体
本明細書で企図される前駆細胞を対象に投与するエキソビボ方法は、前駆細胞を含む治療組成物の使用を含む。
【0315】
治療組成物は、細胞組成物と共に生理学的に許容可能な担体、及び任意選択で、その中に活性成分として溶解又は分散させた、本明細書に記載されるとおりの少なくとも1つの追加的な生物活性剤を含有する。一部の実施形態において、治療組成物は、そのように所望されない限り、哺乳類又はヒト患者に治療目的で投与されたときに実質的に免疫原性でない。
【0316】
一般に、本明細書に記載される前駆細胞は、薬学的に許容可能な担体と共に懸濁液として投与される。当業者は、細胞組成物に使用されるべき薬学的に許容可能な担体が、対象に送達しようとする細胞の生存能を実質的に妨げる量の緩衝剤、化合物、凍結保存剤、保存剤、又は他の薬剤を含まないであろうことを認識するであろう。細胞を含む製剤は、例えば、細胞膜完全性の維持を可能にする浸透圧緩衝液、及び任意選択で、細胞生存能を維持し又は投与時の生着を増強するための栄養素を含み得る。かかる製剤及び懸濁液は当業者に公知であり、及び/又は本明細書に記載されるとおりの前駆細胞との使用向けにルーチンの実験を用いて適合させることができる。
【0317】
細胞組成物はまた、乳化させるか、又はリポソーム組成物として提供することもでき、但し乳化手順が細胞生存能に悪影響を与えないものとする。細胞及び任意の他の活性成分は、薬学的に許容可能で活性成分と適合性のある、且つ本明細書に記載される治療的方法における使用に好適な量の賦形剤と共に混合することができる。
【0318】
細胞組成物に含まれる追加的な薬剤には、その中の成分の薬学的に許容可能な塩が含まれ得る。薬学的に許容可能な塩としては、例えば塩酸又はリン酸などの無機酸、又は酢酸、酒石酸、マンデル酸のような有機酸などと形成される酸付加塩(ポリペプチドの遊離アミノ基と形成される)が挙げられる。遊離カルボキシル基と形成される塩もまた、例えば、水酸化ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム又は第二鉄などの無機塩基、及びイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインのような有機塩基などから誘導することができる。
【0319】
生理学的に許容可能な担体は当該技術分野において周知である。例示的液体担体は、活性成分及び水の他にいかなる材料も含有しないか、又は生理的pH値のリン酸ナトリウムなどの緩衝液、生理食塩水又はリン酸緩衝生理食塩水などの両方を含有する滅菌水溶液である。なおも更に、水性担体は、2つ以上の緩衝塩、並びに塩化ナトリウム及びカリウムなどの塩、デキストロース、ポリエチレングリコール及び他の溶質などを含有することができる。液体組成物はまた、水に加えて、及び水の他に、液相も含有することができる。かかる追加的な液相の例はグリセリン、綿実油などの植物油、及び水−油エマルションである。特定の障害又は病態の治療において有効な細胞組成物中に使用される活性化合物の量は、障害又は病態の性質に依存することになり、標準的な臨床技法により決定することができる。
【0320】
投与及び有効性
用語「投与する」、「導入する」及び「移植する」は、1つ又は複数の所望の効果が生じるように、傷害又は修復部位などの所望の部位において導入された細胞の少なくとも部分的な局在化を生じさせる方法又は経路によって細胞、例えば前駆細胞を対象の体内に入れるという文脈で同義的に使用される。細胞、例えば前駆細胞、又は分化したその子孫は、植え込まれた細胞又は細胞の成分の少なくとも一部が生存し続ける対象における所望の位置への送達を生じさせる任意の適切な経路によって投与することができる。対象への投与後の細胞の生存期間は、数時間、例えば24時間ほどの短期間から、数日間、数年間に至るまでの長期間、又は更には患者の一生涯、即ち長期生着であってもよい。例えば、本明細書に記載される一部の態様では、有効量の筋原前駆細胞が腹腔内又は静脈内経路などの全身投与経路によって投与される。
【0321】
用語「個体」、「対象」、「宿主」及び「患者」は、本明細書では同義的に使用され、診断、治療又は療法が所望される任意の対象を指す。一部の態様において、対象は哺乳類である。一部の態様において、対象はヒトである。
【0322】
用語「ドナー」は、患者ではない個体を指して使用される。一部の実施形態において、ドナーは、治療すべき医学的病態を有しない、又はそれを有する疑いがない個体である。一部の実施形態において、複数のドナー、例えば2個体以上のドナーが使用されてもよい。一部の実施形態において、使用される各ドナーが、治療すべき医学的病態を有しない、又はそれを有する疑いがない個体である。
【0323】
予防的に提供される場合、本明細書に記載される前駆細胞は、医学的病態の任意の症状に先立って、例えば、γ/δT細胞拡大によるα/βT細胞リンパ球減少症、重症サイトメガロウイルス(CMV)感染症、自己免疫、慢性皮膚炎症、好酸球増加症、発育不良、リンパ節腫大、脾腫大、下痢及び肥大肝の発症前に対象に投与することができる。従って、造血前駆細胞集団の予防的投与は医学的病態を防ぐ働きをする。
【0324】
治療的に提供される場合、造血前駆細胞は、医学的病態の症状又は徴候の発生時に(又は発生後に)、例えば疾患の発生を受けて提供される。
【0325】
一部の実施形態において、本明細書に記載される方法により投与されるT細胞集団は、1個体以上のドナーから入手された同種異系T細胞を含む。一部の実施形態において、投与される細胞集団は、同種異系血球細胞、造血幹細胞、造血前駆細胞、胚性幹細胞、又は人工胚性幹細胞であってもよい。「同種異系」は、1個体以上の同じ種の異なるドナーから入手された細胞、細胞集団、又は細胞を含む生体試料を指し、ここでは1つ以上の遺伝子座の遺伝子がレシピエントと同一でない。例えば、対象に投与される造血前駆細胞集団、又はT細胞集団は、1個体以上の無関係のドナー、又は1個体以上の非同一同胞に由来することができる。一部の実施形態では、遺伝的に同一のドナー(例えば、一卵性双生児)から入手されたものなど、同系細胞集団が使用されてもよい。一部の実施形態では、細胞は自己細胞であり;即ち、細胞(例えば:造血前駆細胞、又はT細胞)が対象から入手又は単離され、且つ同じ対象に投与され、即ちドナーとレシピエントとが同じである。
【0326】
用語「有効量」は、医学的病態の少なくとも1つ又はそれ以上の徴候又は症状の予防又は緩和に必要な前駆細胞又はその子孫の集団の量を指し、例えば医学的病態を有する対象を治療するため所望の効果をもたらすのに十分な量の組成物に関する。従って用語「治療有効量」は、医学的病態を有する又はそのリスクがある対象など、典型的な対象への投与時に特定の効果を促進するのに十分な前駆細胞又は前駆細胞を含む組成物の量を指す。有効量にはまた、疾患の症状の発症を予防し又は遅延させ、疾患の症状の経過を変化させ(例えば限定はされないが、疾患の症状の進行を減速させ)、又は疾患の症状を好転させるのに十分な量も含まれ得る。いずれの場合にも、適切な「有効量」は当業者によってルーチンの実験を用いて決定され得ることが理解される。
【0327】
本明細書に記載される様々な態様における使用について、前駆細胞の有効量は、少なくとも10
2個の前駆細胞、少なくとも5×10
2個の前駆細胞、少なくとも10
3個の前駆細胞、少なくとも5×10
3個の前駆細胞、少なくとも10
4個の前駆細胞、少なくとも5×10
4個の前駆細胞、少なくとも10
5個の前駆細胞、少なくとも2×10
5個の前駆細胞、少なくとも3×10
5個の前駆細胞、少なくとも4×10
5個の前駆細胞、少なくとも5×10
5個の前駆細胞、少なくとも6×10
5個の前駆細胞、少なくとも7×10
5個の前駆細胞、少なくとも8×10
5個の前駆細胞、少なくとも9×10
5個の前駆細胞、少なくとも1×10
6個の前駆細胞、少なくとも2×10
6個の前駆細胞、少なくとも3×10
6個の前駆細胞、少なくとも4×10
6個の前駆細胞、少なくとも5×10
6個の前駆細胞、少なくとも6×10
6個の前駆細胞、少なくとも7×10
6個の前駆細胞、少なくとも8×10
6個の前駆細胞、少なくとも9×10
6個の前駆細胞、又はその倍数を含む。前駆細胞は1個体以上のドナーに由来し、又は自己供給源から入手される。本明細書に記載される一部の例において、前駆細胞は、それを必要としている対象への投与前に培養下で拡大される。
【0328】
医学的病態を有する患者の細胞に発現する機能的標的のレベルの緩やかな漸進的上昇は、疾患の1つ以上の症状の改善、長期生存の増加、及び/又は他の治療に伴う副作用の低減に有益であり得る。かかる細胞をヒト患者に投与したとき、機能的標的のレベル上昇を生じさせる造血前駆細胞が存在することが有益である。一部の実施形態において、対象の有効な治療により、治療される対象の全標的に対して少なくとも約3%、5%又は7%の機能的標的が生じる。一部の実施形態において、機能的標的は全標的の少なくとも約10%になり得る。一部の実施形態において、機能的標的は全標的の少なくとも約20%〜30%になり得る。同様に、著しく上昇したレベルの機能的標的を有する細胞の比較的限定されたサブ集団であっても、その導入は様々な患者において有益であってよく、これは、ある状況では正常化した細胞が罹患細胞と比べて選択的優位性を有することが理由である。しかしながら、機能的標的レベルが上昇した造血前駆細胞は、レベルが中程度であっても、患者における医学的病態の1つ以上の側面の改善に有益であり得る。一部の実施形態において、かかる細胞が投与される患者における造血前駆細胞の約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%又はそれ以上が、機能的標的レベルの上昇を生じるものである。
【0329】
「投与された」は、少なくとも部分的に所望の部位における細胞組成物の局在化を生じさせる方法又は経路による対象への前駆細胞組成物の送達を指す。細胞組成物は、対象において有効な治療を生じさせる任意の適切な経路によって投与することができ、即ち投与によって対象における所望の位置への送達が生じ、そこで送達された組成物の少なくとも一部、即ち少なくとも1×10
4個の細胞が所望の部位へとある期間送達される。投与様式としては、注射、注入、点滴、又は摂取が挙げられる。「注射」としては、限定なしに、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、脳室内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、脊髄内、脳脊髄内、及び胸骨内注射及び注入が挙げられる。一部の実施形態において、経路は静脈内である。細胞の送達には、注射又は注入による投与が行われてもよい。
【0330】
細胞は全身投与される。語句「全身投与」、「全身投与された」、「末梢投与」及び「末梢投与された」は、標的部位、組織、又は器官への直接投与以外の前駆細胞集団の投与であって、代わりにそれが対象の循環系に入り、従って代謝及び他の同様の過程に曝されるような投与を指す。
【0331】
医学的病態の治療用組成物を含む治療の有効性は、熟練した臨床医が決定することができる。しかしながら、治療は、一例に過ぎないが、機能的標的レベルの徴候又は症状のうちのいずれか1つ又は全てが有益な形で変化した(例えば、少なくとも10%の増加した)場合、又は他の臨床的に認められている疾患の症状又はマーカーが向上又は改善した場合に「有効な治療」と見なされる。有効性はまた、入院又は医学的介入の必要性によって評価したとき個体が悪化しないこと(例えば、疾患の進行が止まる又は少なくとも減速する)によって測定されてもよい。こうした指標の測定方法は当業者に公知であり、及び/又は本明細書に記載される。治療には、個体又は動物(一部の非限定的な例としては、ヒト、又は哺乳類が挙げられる)における疾患の任意の治療が含まれ、(1)疾患を阻害すること、例えば、症状の進行を止める、又は減速させること;又は(2)疾患を緩和すること、例えば、症状の軽減を生じさせること;及び(3)症状の発症可能性を予防又は低減することが含まれる。
【0332】
本開示に係る治療は、個体における機能的標的の量を増加させることにより、医学的病態に関連する1つ以上の症状を改善する。医学的病態に典型的に関連する初期徴候としては、例えば、γ/δT細胞拡大に伴うα/βT細胞リンパ球減少症、重症サイトメガロウイルス(CMV)感染症、自己免疫、慢性皮膚炎症、好酸球増加症、発育不良、リンパ節腫大、脾腫大、下痢及び肥大肝の発症が挙げられる。
【0333】
キット
本開示は、本明細書に記載される方法を実施するためのキットを提供する。キットは、ゲノムターゲティング核酸、ゲノムターゲティング核酸をコードするポリヌクレオチド、部位特異的ポリペプチド、部位特異的ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、及び/又は本明細書に記載される方法の態様の実施に必要な任意の核酸又はタンパク質分子、又はこれらの任意の組み合わせのうちの1つ以上を含み得る。
【0334】
一部の実施形態において、キットは、(1)ゲノムターゲティング核酸をコードするヌクレオチド配列を含むベクター、(2)部位特異的ポリペプチド又は部位特異的ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むベクター、及び(3)1つ又は複数のベクター及び/又はポリペプチドを再構成及び/又は希釈するための試薬を含む。
【0335】
一部の実施形態において、キットは、(1)ベクターであって、(i)ゲノムターゲティング核酸をコードするヌクレオチド配列、及び(ii)部位特異的ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むベクター;及び(2)ベクターを再構成及び/又は希釈するための試薬を含む。
【0336】
上記のキットのいずれかの一部の実施形態において、キットは単一分子ガイドゲノムターゲティング核酸を含む。上記のキットのいずれかの一部の実施形態において、キットは二重分子ゲノムターゲティング核酸を含む。上記のキットのいずれかの一部の実施形態において、キットは2つ以上の二重分子ガイド又は単一分子ガイドを含む。一部の実施形態において、キットは、核酸ターゲティング核酸をコードするベクターを含む。
【0337】
上記のキットのいずれかにおいて、キットは、所望の遺伝子修飾に影響を及ぼすため挿入されるポリヌクレオチドを更に含む。
【0338】
キットの成分は別個の容器内にあってもよく、又は単一の容器に組み合わされてもよい。
【0339】
上記に記載されるいずれのキットも、1つ以上の追加的な試薬を更に含むことができ、ここでかかる追加的な試薬は、緩衝液、ポリペプチド又はポリヌクレオチドを細胞に導入するための緩衝液、洗浄緩衝液、対照試薬、対照ベクター、対照RNAポリヌクレオチド、DNAからのポリペプチドのインビトロ産生用の試薬、シーケンシング用のアダプターなどから選択される。緩衝液は、安定化緩衝液、再構成用緩衝液、希釈用緩衝液などであってもよい。一部の実施形態において、キットはまた、オンターゲット結合若しくはエンドヌクレアーゼによるDNA切断の促進若しくは増強、又はターゲティング特異性の向上に使用することのできる1つ以上の成分も含む。
【0340】
上述の成分に加えて、キットは、方法を実施するためのキットの成分の使用説明書を更に含む。方法の実施説明書は、概して好適な記録媒体に記録される。例えば、説明書は、紙又はプラスチックなどの基材に印刷されてもよい。説明書は、キットにおいて添付文書として存在する、キットの、若しくはその成分の容器のラベル表示に存在する(即ち、包装又は部分的包装に関連付けられる)等であってもよい。説明書は、好適なコンピュータ可読記憶媒体、例えば、CD−ROM、ディスケット、フラッシュドライブ等に存在する電子記憶データファイルとして存在することができる。一部の例では、実際の説明書はキットに存在するのではなく、説明書を遠隔配布源から(例えばインターネット経由で)入手する手段を提供することができる。この場合の一例は、そこで説明書を閲覧することのできる、及び/又はそこから説明書をダウンロードすることのできるウェブアドレスを含むキットである。説明書と同様に、このような説明書を入手する手段も好適な基材に記録することができる。
【0341】
ガイドRNA製剤
本開示のガイドRNAは、詳細な投与様式及び剤形に応じて、担体、溶媒、安定剤、アジュバント、希釈剤などの薬学的に許容可能な賦形剤と共に製剤化される。ガイドRNA組成物は、概して生理的に適合性のあるpHを実現するように製剤化され、製剤及び投与経路に応じて約3のpH〜約11のpH、約pH3〜約pH7の範囲をとる。一部の実施形態において、pHは約pH5.0〜約pH8の範囲に調整される。一部の実施形態において、組成物は、本明細書に記載されるとおりの少なくとも1つの化合物の治療有効量を、1つ以上の薬学的に許容可能な賦形剤と共に含む。任意選択で、本組成物は本明細書に記載される化合物の組み合わせを含み、又は細菌増殖の処理若しくは予防に有用な第2の活性成分(例として、及び限定なしに、抗細菌剤又は抗微生物剤)を含んでもよく、又は本開示の試薬の組み合わせを含んでもよい。
【0342】
好適な賦形剤としては、例えば、タンパク質、多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマーアミノ酸、アミノ酸共重合体、及び不活性ウイルス粒子など、大型の、ゆっくりと代謝される巨大分子を含む担体分子が挙げられる。他の例示的賦形剤としては、抗酸化剤(例として、及び限定なしに、アスコルビン酸)、キレート剤(例として、及び限定なしに、EDTA)、糖質(例として、及び限定なしに、デキストリン、ヒドロキシアルキルセルロース、及びヒドロキシアルキルメチルセルロース)、ステアリン酸、液体(例として、及び限定なしに、油、水、生理食塩水、グリセロール及びエタノール)、湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝物質などを挙げることができる。
【0343】
他の可能な治療手法
遺伝子編集は、特異的配列を標的とするように操作されたヌクレアーゼを使用して行うことができる。現在までのところ、4つの主要なタイプのヌクレアーゼ:メガヌクレアーゼ及びその誘導体、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、及びCRISPR−Cas9ヌクレアーゼシステムがある。これらのヌクレアーゼプラットフォームは、特にZFN及びTALENの特異性がタンパク質−DNA相互作用を通じたものである一方、RNA−DNA相互作用が主としてCas9をガイドするとおり、設計の難しさ、ターゲティング密度及び作用様式が異なる。Cas9切断はまた、隣接モチーフ、PAMも必要とし、PAMはCRISPRシステム毎に異なる。化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)由来のCas9はNRG PAMを用いて切断し、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)由来のCRISPRは、NNNNGATT、NNNNNGTTT及びNNNNGCTTを含むPAMを有する部位で切断することができる。幾つもの他のCas9オルソログが、別のPAMに隣接するプロトスペーサーを標的とする。
【0344】
本開示の方法においては、Cas9などのCRISPRエンドヌクレアーゼを使用することができる。しかしながら、治療標的部位など、本明細書に記載される教示は、ZFN、TALEN、HE、又はMegaTALなど、他の形態のエンドヌクレアーゼに対して、又はヌクレアーゼの組み合わせを用いて適用することが可能である。しかしながら、本開示の教示をかかるエンドヌクレアーゼに適用するためには、とりわけ、特異的標的部位に向けられるタンパク質を操作することが必要となり得る。
【0345】
追加的な結合ドメインをCas9タンパク質に融合して特異性を高めてもよい。こうしたコンストラクトの標的部位は、同定されたgRNAによって指定される部位に位置付け得るが、ジンクフィンガードメインの場合のように、追加的な結合モチーフが必要であり得る。Mega−TALの場合、メガヌクレアーゼをTALE DNA結合ドメインに融合することができる。メガヌクレアーゼドメインは特異性を増加させ、切断をもたらすことができる。同様に、不活性化又はデッドCas9(dCas9)を切断ドメインに融合することができ、融合したDNA結合ドメインにsgRNA/Cas9標的部位及び隣接する結合部位が必要であり得る。これには恐らくは、触媒不活性化に加えて、追加的な結合部位のない結合を減少させるためのdCas9の何らかのプロテインエンジニアリングが必要になり得る。
【0346】
ジンクフィンガーヌクレアーゼ
ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)は、操作されたジンクフィンガーDNA結合ドメインがII型エンドヌクレアーゼFokIの触媒ドメインに連結したものを含むモジュラータンパク質である。FokIは二量体としてのみ機能するため、一対のZFNが対向するDNA鎖上のコグネイト標的「ハーフ部位(half−site)」配列に、それらの間に正確な間隔を置いて結合して触媒活性FokI二量体の形成を可能にするように操作されなければならない。それ自体は本質的に配列特異性を有しないFokIドメインが二量化すると、ゲノム編集における開始ステップとしてZFNハーフ部位間にDNA二本鎖切断が生成される。
【0347】
各ZFNのDNA結合ドメインは、典型的には豊富なCys2−His2構成の3〜6個のジンクフィンガーを含み、各フィンガーが標的DNA配列の一方の鎖上にあるヌクレオチドのトリプレットを主に認識するが、4番目のヌクレオチドとの交差鎖相互作用もまた重要であり得る。DNAとの主要な接触をなす位置にあるフィンガーのアミノ酸が変わると、所与のフィンガーの配列特異性が変わる。従って、4フィンガージンクフィンガータンパク質は12bp標的配列を選択的に認識することになり、ここで標的配列は、各フィンガーが寄与するトリプレット優先性の混合体であるが、トリプレット優先性は隣接フィンガーによって様々な程度に影響を受け得る。ZFNの重要な側面は、単に個々のフィンガーを修飾することによってZFNをほぼいかなるゲノムアドレスにも容易に再標的化できる点であり、しかしながらこれを上手く行うには相当の熟練が要求される。ZFNのほとんどの適用で4〜6個のフィンガーのタンパク質が使用され、これはそれぞれ12〜18bpを認識する。従って、一対のZFNが、ハーフ部位間の5〜7bpスペーサーを含まずに、典型的には24〜36bpの組み合わされた標的配列を認識することになる。結合部位は、15〜17bpを含め、より大きいスペーサーで更に分離することができる。設計過程で反復配列又は遺伝子ホモログが除外されると仮定すれば、この長さの標的配列はヒトゲノムにおいてユニークである可能性が高い。それにも関わらず、ZFNタンパク質−DNA相互作用はその特異性に関して絶対ではないため、実にオフターゲット結合及び切断イベントが、2つのZFN間のヘテロ二量体、又はZFNのいずれか一方のホモ二量体のいずれかとして起こる。後者の可能性は、FokIドメインの二量化界面を操作して、互いとのみ二量化することのできる、自己二量化はしない、絶対ヘテロ二量体変異体としても知られる「プラス」及び「マイナス」変異体を作成することにより有効に取り除かれている。絶対ヘテロ二量体を強制することにより、ホモ二量体の形成が妨げられる。これにより、ZFN並びにこうしたFokI変異体を採用する任意の他のヌクレアーゼの特異性は大いに高まった。
【0348】
種々のZFNベースのシステムが当該技術分野において記載されており、その修飾は常時報告され、数多くの参考文献が、ZFNの設計の指針とするため用いられる規則及びパラメータについて記載している;例えば、Segal et al.,Proc Natl Acad Sci USA 96(6):2758−63(1999);Dreier B et al.,J Mol Biol.303(4):489−502(2000);Liu Q et al.,J Biol Chem.277(6):3850−6(2002);Dreier et al.,J Biol Chem 280(42):35588−97(2005);及びDreier et al.,J Biol Chem.276(31):29466−78(2001)を参照のこと。
【0349】
転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)
TALENは、モジュラーヌクレアーゼのもう一つのフォーマットに相当し、これによれば、ZFNと同様に、操作されたDNA結合ドメインがFokIヌクレアーゼドメインに連結され、且つ一対のTALENがタンデムで働いて標的化したDNA切断を実現する。ZFNとの主な違いは、DNA結合ドメインの性質及び関連する標的DNA配列認識特性である。TALEN DNA結合ドメインは、当初植物細菌病原体キサントモナス属種(Xanthomonas sp.)TALEにおいて記載されたものであるTALEタンパク質に由来し、33〜35アミノ酸リピートのタンデムアレイを含み、各リピートが、典型的に最大20bp長であって、最大40bpの合計標的配列長さとなる標的DNA配列中の単一の塩基対を認識する。各リピートのヌクレオチド特異性は、12位及び13位に2アミノ酸だけを含む反復可変二残基(RVD)によって決まる。塩基グアニン、アデニン、シトシン及びチミンは、主に4つのRVD:それぞれAsn−Asn、Asn−Ile、His−Asp及びAsn−Glyによって認識される。これはジンクフィンガーと比べてはるかに単純な認識コードを成し、従ってヌクレアーゼ設計上、後者に優る利点を呈する。それにも関わらず、ZFNと同様に、TALENのタンパク質−DNA相互作用はその特異性の点で絶対でなく、TALENもまた、オフターゲット活性を低下させるため、FokIドメインの絶対ヘテロ二量体変異体の使用から利益が得られている。
【0350】
その触媒機能が不活性化されるFokIドメインの更なる変異体が作成されている。TALEN対又はZFN対のいずれかの片方が不活性FokIドメインを含む場合、標的部位においてはDSBでなく、むしろ一本鎖DNA切断(ニッキング)のみが起こることになる。この結果は、Cas9切断ドメインの一方が不活性化されているCRISPR/Cas9/Cpf1「ニッカーゼ」突然変異体を使用するのと同等である。DNAニックを用いてHDRによるゲノム編集をドライブすることができ、しかしDSBと比べて効率が低い。主な利益は、NHEJ媒介性の修復誤りを受け易いDSBと異なり、オフターゲットニックが迅速且つ正確に修復される点である。
【0351】
種々のTALENベースのシステムが当該技術分野において記載されており、その修飾が常時報告されている;例えば、Boch,Science 326(5959):1509−12(2009);Mak et al.,Science 335(6069):716−9(2012);及びMoscou et al.,Science 326(5959):1501(2009)を参照のこと。「ゴールデンゲート」プラットフォームをベースとするTALENの使用、又はクローニングスキームが複数のグループによって記載されている;例えば、Cermak et al.,Nucleic Acids Res.39(12):e82(2011);Li et al.,Nucleic Acids Res.39(14):6315−25(2011);Weber et al.,PLoS One.6(2):e16765(2011);Wang et al.,J Genet Genomics 41(6):339−47,Epub 2014 May 17(2014);及びCermak T et al.,Methods Mol Biol.1239:133−59(2015)を参照のこと。
【0352】
ホーミングエンドヌクレアーゼ
ホーミングエンドヌクレアーゼ(HE)は、長い認識配列(14〜44塩基対)を有し、且つDNAを高い特異性で−多くの場合にゲノム中のユニークな部位で−切断する配列特異的エンドヌクレアーゼである。HEには、その構造によって分類されるとおりの、LAGLIDADG(配列番号4)、GIY−YIG(配列番号5)、His−Cisボックス、H−N−H、PD−(D/E)xK(配列番号6)、及びVsr様を含む少なくとも6つの公知のファミリーがあり、これらは、真核生物、原生生物、細菌、古細菌、シアノバクテリア及びファージを含めた広範囲の宿主に由来する。ZFN及びTALENと同様に、HEは、ゲノム編集の初めのステップとして標的遺伝子座にDSBを作成するために用いることができる。加えて、一部の天然の及び操作されたHEはDNAの単一の鎖のみを切断し、それにより部位特異的ニッカーゼとして機能する。HEの大きい標的配列及びそれがもたらす特異性により、HEは部位特異的DSBを作成するのに魅力的な候補となっている。
【0353】
種々のHEベースのシステムが当該技術分野において記載されており、その修飾が常時報告されている;例えば、Steentoft et al.,Glycobiology 24(8):663−80(2014);Belfort and Bonocora,Methods Mol Biol.1123:1−26(2014);Hafez and Hausner,Genome 55(8):553−69(2012)によるレビュー;及びそこに引用される文献を参照のこと。
【0354】
MegaTAL/Tev−mTALEN/MegaTev
ハイブリッドヌクレアーゼの更なる例として、MegaTALプラットフォーム及びTev−mTALENプラットフォームは、TALE DNA結合ドメインと触媒活性HEとの融合体を用いるものであり、TALEの調節可能なDNA結合及び特異性、並びにHEの切断配列特異性の両方を利用する;例えば、Boissel et al.,NAR 42:2591−2601(2014);Kleinstiver et al.,G3 4:1155−65(2014);及びBoissel and Scharenberg,Methods Mol.Biol.1239:171−96(2015)を参照のこと。
【0355】
更なる変形例では、MegaTev構成は、メガヌクレアーゼ(Mega)とGIY−YIGホーミングエンドヌクレアーゼI−TevIに由来するヌクレアーゼドメイン(Tev)との融合体である。2つの活性部位はDNA基質上で約30bp離れて位置し、適合性のない付着末端を有する2つのDSBを生成する;例えば、Wolfs et al.,NAR 42,8816−29(2014)を参照のこと。既存のヌクレアーゼベース手法の他の組み合わせが進化し、本明細書に記載される標的化したゲノム修飾の実現において有用となるであろうことが予想される。
【0356】
dCas9−FokI又はdCpf1−Fok1及び他のヌクレアーゼ
上記に記載されるヌクレアーゼプラットフォームの構造的特性と機能的特性とを組み合わせると、固有の欠陥の一部を潜在的に解消し得る更なるゲノム編集手法がもたらされる。例として、CRISPRゲノム編集システムは、典型的には単一のCas9エンドヌクレアーゼを使用してDSBを作成する。ターゲティングの特異性は、標的DNAとワトソン・クリック型塩基対合を起こすガイドRNA中の20又は22ヌクレオチド配列(加えて、化膿レンサ球菌(S.pyogenes)由来のCas9の場合には隣接するNAG又はNGG PAM配列中の追加的な2塩基)によって左右される。かかる配列は、ヒトゲノム中でユニークであるのに十分に長く、しかしながら、RNA/DNA相互作用の特異性は絶対でなく、時に著しい無差別さが、特に標的配列の5’側の半分において許容され、特異性を左右する塩基の数が事実上減少する。これに対する一つの解決法は、Cas9又はCpf1触媒機能を完全に不活性化し−RNAガイド型DNA結合機能のみを保持して−、代わりにFokIドメインを不活性化Cas9に融合することとされている;例えば、Tsai et al.,Nature Biotech 32:569−76(2014);及びGuilinger et al.,Nature Biotech.32:577−82(2014)を参照のこと。FokIは触媒活性になるためには二量化しなければならないため、2つのFokI融合体が二量体を形成してDNAを切断するようにそれらを近接して係留するには、2つのガイドRNAが必要である。本質的にこれによって組み合わされる標的部位の塩基の数が二倍になり、従ってCRISPRベースのシステムによるターゲティングのストリンジェンシーは増加する。
【0357】
更なる例として、TALE DNA結合ドメインと、I−TevIなど、触媒活性HEとの融合体は、オフターゲット切断が更に低減され得ることを見込んで、TALEの調節可能なDNA結合及び特異性、並びにI−TevIの切断配列特異性の両方を利用するものである。
【0358】
追加的な態様
本明細書には、非限定的な例として、癌、炎症性疾患及び/又は自己免疫疾患など、医学的病態の治療に用いられ得る、標的遺伝子の範囲内又はその近傍にある1つ以上の核酸又はエクソン又は標的遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の欠失、挿入、又はその発現若しくは機能の調節、又はcDNA、発現ベクター、又はミニ遺伝子のノックインにより、ゲノムに永久的な変化を作成するためのエキソビボ及びインビボ方法において使用される核酸、ベクター、細胞、方法、及び他の材料が提供される。また、本明細書には、かかる方法を実施するための成分、キット、及び組成物も提供される。また、かかる方法によって作製される細胞も提供される。
【0359】
以下のパラグラフもまた本開示に包含される:
【0360】
1. ノックインキメラ抗原受容体(CAR)コンストラクトをコードする単離核酸であって、ノックインCARコンストラクトが、(i)抗原認識領域を含むエクトドメイン;(ii)膜貫通ドメイン、及び(iii)少なくとも1つの共刺激ドメインを含むエンドドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸に作動可能に連結された標的遺伝子の少なくとも一部分を含むポリヌクレオチドドナー鋳型を含む、単離核酸。
【0361】
2. プロモーター、1つ以上の遺伝子調節エレメント、又はこれらの組み合わせを更に含む、パラグラフ1の単離核酸。
【0362】
3. 1つ以上の遺伝子調節エレメントが、エンハンサー配列、イントロン配列、ポリアデニル化(ポリ(A))配列、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、パラグラフ2の単離核酸。
【0363】
4. 標的遺伝子が、宿主対移植片反応に関連する遺伝子配列、移植片対宿主反応に関連する遺伝子配列、チェックポイント阻害因子をコードする遺伝子配列、又はこれらの任意の組み合わせを含む、パラグラフ1〜3のいずれか1つの単離核酸。
【0364】
5. 移植片対宿主反応に関連する遺伝子配列が、TRAC、CD3イプシロン(episolon)(CD3ε)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、パラグラフ4の単離核酸。
【0365】
6. 宿主対移植片反応に関連する遺伝子配列が、B2M、CIITA、RFX5、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、パラグラフ4の単離核酸。
【0366】
7. チェックポイント阻害因子をコードする遺伝子配列が、PD1、CTLA−4、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、パラグラフ4の単離核酸。
【0367】
8. 標的遺伝子が、細胞の薬理学的調節に関連する配列を含む、パラグラフ1〜3のいずれか1つの単離核酸。
【0368】
9. 標的遺伝子がCD52である、パラグラフ8の単離核酸。
【0369】
10. 調節が正又は負である、パラグラフ8の単離核酸。
【0370】
11. 調節がCAR T細胞の生存を可能にする、パラグラフ8の単離核酸。
【0371】
12. 調節がCAR T細胞を死滅させる、パラグラフ8の単離核酸。
【0372】
13. ミニ遺伝子又はcDNAを更に含む、パラグラフ1の単離核酸。
【0373】
14. ミニ遺伝子又はcDNAが、細胞の薬理学的調節に関連する遺伝子配列を含む、パラグラフ13の単離核酸。
【0374】
15. 遺伝子配列がHer2をコードする、パラグラフ14の単離核酸。
【0375】
16. 標的遺伝子が、TRAC、CD3ε、B2M、CIITA、RFX5、PD1、CTLA−4、CD52、PPP1R12C、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される遺伝子を含む、パラグラフ4の単離核酸。
【0376】
17. 標的遺伝子が、TRAC、B2M及びPD1からなる群から選択される遺伝子を含む、パラグラフ4の単離核酸。
【0377】
18. 標的遺伝子が、TRAC、CD3ε、B2M、CIITA、RFX5、PD1、CTLA−4、CD52、PPP1R12C、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される2つ以上の遺伝子を含む、パラグラフ4の単離核酸。
【0378】
19. 標的遺伝子が、TRAC、B2M及びPD1からなる群から選択される2つ以上の遺伝子を含む、パラグラフ4の単離核酸。
【0379】
20. ドナー鋳型が一本鎖又は二本鎖のいずれかのポリヌクレオチドである、パラグラフ1〜19のいずれか1つの単離核酸。
【0380】
21. 標的遺伝子の一部分が、TRAC、CD3ε、B2M、CIITA、RFX5、PD1、CTLA−4、CD52、PPP1R12C、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、パラグラフ20の単離核酸。
【0381】
22. 標的遺伝子の一部分が、TRACの一部分、B2Mの一部分、及び/又はPD1の一部分を含む、パラグラフ20の単離核酸。
【0382】
23. 抗原認識ドメインがCD19、BCMA、CD70、又はこれらの組み合わせを認識する、パラグラフ1〜22のいずれか1つの単離核酸。
【0383】
24. 抗原認識ドメインがCD19を認識する、パラグラフ1〜22のいずれか1つの単離核酸。
【0384】
25. 抗原認識ドメインがCD70を認識する、パラグラフ1〜22のいずれか1つの単離核酸。
【0385】
26. 抗原認識ドメインがBCMAを認識する、パラグラフ1〜22のいずれか1つの単離核酸。
【0386】
27. 抗原認識ドメインがscFVである、パラグラフ1〜26のいずれか1つの単離核酸。
【0387】
28. scFVが、配列番号1333を含む核酸配列又は配列番号1334を含むアミノ酸配列によってコードされる抗CD19 scFvである、パラグラフ27の単離核酸。
【0388】
29. scFVが、
1)配列番号1475を含む核酸配列又は配列番号1499を含むアミノ酸配列によってコードされる、又は
2)配列番号1476を含む核酸配列又は配列番号1500を含むアミノ酸配列によってコードされる
抗CD70 scFvである、パラグラフ27の単離核酸。
【0389】
30. scFVが、
1)配列番号1477〜1498を含む核酸配列又は配列番号1501〜1522を含むアミノ酸配列によってコードされる、又は
2)配列番号1485を含む核酸配列又は配列番号1509を含むアミノ酸配列によってコードされる
抗BCMA scFvである、パラグラフ27の単離核酸。
【0390】
31. 共刺激ドメインがCD28共刺激ドメイン又は4−1BB共刺激ドメインを含む、パラグラフ1〜30のいずれか1つの単離核酸。
【0391】
32. エンドドメインがCD3−ゼータ(CD3ζ)ドメインを更に含む、パラグラフ1〜31のいずれか1つの単離核酸。
【0392】
33. エクトドメインがシグナルペプチドを更に含む、パラグラフ1〜32のいずれか1つの単離核酸。
【0393】
34. エクトドメインが抗原認識領域と膜貫通ドメインとの間にヒンジを更に含む、パラグラフ1〜33のいずれか1つの単離核酸。
【0394】
35. ヒンジがCD8ヒンジ領域を含む、パラグラフ34の単離核酸。
【0395】
36. 抗原認識ドメインが単鎖可変断片(scFv)であり、ヒンジ領域がCD8ヒンジ領域を含み、及びエンドドメインがCD28共刺激ドメイン及びCD3ζドメインを含むか、又は4−1BB共刺激ドメイン及びCD3ζドメインを含む、パラグラフ1〜35のいずれか1つの単離核酸。
【0396】
38. CARコンストラクトが、N末端からC末端に以下の構造配置:抗原認識ドメインscFv+CD8ヒンジ+膜貫通ドメイン+CD28共刺激ドメイン+CD3ζドメイン、又は抗原認識ドメインscFv+CD8ヒンジ+膜貫通ドメイン+4−1BB共刺激ドメイン+CD3ζドメインを有する、パラグラフ1〜36のいずれか1つの単離核酸。
【0397】
39. ドナー鋳型配列が、配列番号1387〜1422からなる群から選択される配列を含む、パラグラフ1〜38のいずれかの単離核酸。
【0398】
40. ドナー鋳型配列が配列番号1390の配列を含む、パラグラフ1〜38のいずれかの単離核酸。
【0399】
41. ドナー鋳型配列が、配列番号1394〜1396からなる群から選択される配列を含む、パラグラフ1〜38のいずれかの単離核酸。
【0400】
42. ドナー鋳型配列が、配列番号1397〜1422からなる群から選択される配列、例えば、配列番号1398、1401、1402、1408、又は1409を含む、パラグラフ1〜38のいずれかの単離核酸。
【0401】
43. パラグラフ1〜42のいずれか1つの単離核酸を含むベクター。
【0402】
44. ベクターがAAVである、パラグラフ42のベクター。
【0403】
45. AAVベクターがAAV6ベクターである、パラグラフ43又は44のベクター。
【0404】
46. ベクターが、配列番号1348〜1386からなる群から選択されるDNA配列を含む、パラグラフ43又は44のベクター。
【0405】
47. ベクターが、配列番号1354のDNA配列を含む、パラグラフ43又は44のベクター。
【0406】
48. ベクターが、配列番号1358〜1360からなる群から選択されるDNA配列を含む、パラグラフ42又は43のベクター。
【0407】
49. ベクターが、配列番号1362、1365、1366、1372、及び1373からなる群から選択されるDNA配列を含む、パラグラフ42又は43のベクター。
【0408】
50. パラグラフ43〜49のいずれかのベクターを含む単離細胞。
【0409】
51. 細胞がT細胞である、パラグラフ50の単離細胞。
【0410】
52. T細胞が、CD4
+T細胞、CD8
+T細胞、又はこれらの組み合わせである、パラグラフ51の単離細胞。
【0411】
53. 遺伝子を編集するための1つ以上のガイドリボ核酸(gRNA)であって、
(a)TRAC遺伝子を編集するための1つ以上のgRNAであって、配列番号83〜158の核酸配列からなる群から選択されるスペーサー配列を含む1つ以上のgRNA;
(b)B2M遺伝子を編集するための1つ以上のgRNAであって、配列番号458〜506の核酸配列からなる群から選択されるスペーサー配列を含む1つ以上のgRNA;
(c)CIITA遺伝子を編集するための1つ以上のgRNAであって、配列番号699〜890の核酸配列からなる群から選択されるスペーサー配列を含む1つ以上のgRNA;
(d)CD3ε遺伝子を編集するための1つ以上のgRNAであって、配列番号284〜408の核酸配列からなる群から選択されるスペーサー配列を含む1つ以上のgRNA;又は
(e)PD1遺伝子を編集するための1つ以上のgRNAであって、配列番号1083〜1274の核酸配列からなる群から選択されるスペーサー配列を含む1つ以上のgRNA
からなる群から選択される1つ以上のgRNA。
【0412】
54. 1つ以上のgRNAが1つ以上の単一分子ガイドRNA(sgRNA)である、パラグラフ53の1つ以上のgRNA。
【0413】
55. 1つ以上のgRNA又は1つ以上のsgRNAが1つ以上の修飾gRNA又は1つ以上の修飾sgRNAである、パラグラフ53又は54の1つ以上のgRNA又はsgRNA。
【0414】
56. パラグラフ53〜55のいずれか1つの1つ以上のgRNA又はsgRNAと1つ以上の部位特異的ポリペプチドとを含むリボ核タンパク質粒子。
【0415】
57. 1つ以上の部位特異的ポリペプチドが1つ以上のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼである、パラグラフ56のリボ核タンパク質粒子。
【0416】
58. 1つ以上のDNAエンドヌクレアーゼがCas9又はCpf1エンドヌクレアーゼ;又はその相同体、天然に存在する分子の組換え、そのコドン最適化された、又は修飾されたバージョン、及びこれらの組み合わせである、パラグラフ57のリボ核タンパク質粒子。
【0417】
59. 1つ以上のDNAエンドヌクレアーゼが、1つ以上のgRNA又は1つ以上のsgRNAと予め複合体化される、パラグラフ57又は58のリボ核タンパク質粒子。
【0418】
60. パラグラフ1〜42のいずれか1つの単離核酸とパラグラフ56〜59のいずれか1つの1つ以上のリボ核タンパク質粒子とを含む組成物。
【0419】
61. 標的遺伝子がTRAC遺伝子であり、抗原認識領域がCD19を認識し、及びドナー鋳型がTRAC遺伝子の少なくとも一部分を含む、パラグラフ60の組成物。
【0420】
62. 標的遺伝子がB2M遺伝子であり、抗原認識領域がCD19を認識し、及びドナー鋳型がB2M遺伝子の少なくとも一部分を含む、パラグラフ60の組成物。
【0421】
63. 標的遺伝子がPD1遺伝子であり、抗原認識領域がCD19を認識し、及びドナー鋳型がPD1遺伝子の少なくとも一部分を含む、パラグラフ60の組成物。
【0422】
64. 標的遺伝子がTRAC遺伝子であり、抗原認識領域がCD70を認識し、及びドナー鋳型がTRAC遺伝子の少なくとも一部分を含む、パラグラフ60の組成物。
【0423】
65. 標的遺伝子がB2M遺伝子であり、抗原認識領域がCD70を認識し、及びドナー鋳型がB2M遺伝子の少なくとも一部分を含む、パラグラフ60の組成物。
【0424】
66. 標的遺伝子がPD1遺伝子であり、抗原認識領域がCD70を認識し、及びドナー鋳型がPD1遺伝子の少なくとも一部分を含む、パラグラフ60の組成物。
【0425】
67. 標的遺伝子がTRAC遺伝子であり、抗原認識領域がBCMAを認識し、及びドナー鋳型がTRAC遺伝子の少なくとも一部分を含む、パラグラフ60の組成物。
【0426】
68. 標的遺伝子がB2M遺伝子であり、抗原認識領域がBCMAを認識し、及びドナー鋳型がB2M遺伝子の少なくとも一部分を含む、パラグラフ60の組成物。
【0427】
69. 標的遺伝子がPD1遺伝子であり、抗原認識領域がBCMAを認識し、及びドナー鋳型がPD1遺伝子の少なくとも一部分を含む、パラグラフ60の組成物。
【0428】
70. ドナー鋳型が一本鎖又は二本鎖のいずれかのポリヌクレオチドである、パラグラフ61〜69のいずれか1つの組成物。
【0429】
71. 1つ以上のリボ核タンパク質粒子が、1つ以上のDNAエンドヌクレアーゼと、TRAC遺伝子を編集するための1つ以上のgRNAであって、配列番号83〜158の核酸配列からなる群から選択されるスペーサー配列を含む1つ以上のgRNAとを含む、パラグラフ60、61、64、67又は70のいずれか1つの組成物。
【0430】
72. 1つ以上のリボ核タンパク質粒子が、1つ以上のDNAエンドヌクレアーゼと、B2M遺伝子を編集するための1つ以上のgRNAであって、配列番号458〜506の核酸配列からなる群から選択されるスペーサー配列を含む1つ以上のgRNAとを含む、パラグラフ60、62、65、68又は70のいずれか1つの組成物。
【0431】
73. 1つ以上のリボ核タンパク質粒子が、1つ以上のDNAエンドヌクレアーゼと、PD1遺伝子を編集するための1つ以上のgRNAであって、配列番号1083〜1274の核酸配列からなる群から選択されるスペーサー配列を含む1つ以上のgRNAとを含む、パラグラフ60、63、66、69又は70のいずれか1つの組成物。
【0432】
74. 1つ以上のリボ核タンパク質粒子が、B2M遺伝子を編集するための1つ以上のgRNAであって、配列番号458〜506の核酸配列からなる群から選択されるスペーサー配列を含む1つ以上のgRNAを更に含む、パラグラフ71又は73の組成物。
【0433】
75. 1つ以上のリボ核タンパク質粒子が、PD1遺伝子を編集するための1つ以上のgRNAであって、配列番号1083〜1274の核酸配列からなる群から選択されるスペーサー配列を含む1つ以上のgRNAを更に含む、パラグラフ71又は72の組成物。
【0434】
76. 1つ以上のリボ核タンパク質粒子が、TRAC遺伝子を編集するための1つ以上のgRNAであって、配列番号83〜158の核酸配列からなる群から選択されるスペーサー配列を含む1つ以上のgRNAを更に含む、パラグラフ72又は73の組成物。
【0435】
77. パラグラフ43〜49のいずれか1つのベクターと、パラグラフ56〜59のいずれか1つの1つ以上のリボ核タンパク質粒子とを含む組成物。
【0436】
78. 標的遺伝子がTRAC遺伝子であり、抗原認識領域がCD19を認識し、及びドナー鋳型がTRAC遺伝子の少なくとも一部分を含む、パラグラフ77の組成物。
【0437】
79. 標的遺伝子がB2M遺伝子であり、抗原認識領域がCD19を認識し、及びドナー鋳型がB2M遺伝子の少なくとも一部分を含む、パラグラフ77の組成物。
【0438】
80. 標的遺伝子がPD1遺伝子であり、抗原認識領域がCD19を認識し、及びドナー鋳型がPD1遺伝子の少なくとも一部分を含む、パラグラフ77の組成物。
【0439】
81. 標的遺伝子がTRAC遺伝子であり、抗原認識領域がCD70を認識し、及びドナー鋳型がTRAC遺伝子の少なくとも一部分を含む、パラグラフ77の組成物。
【0440】
82. 標的遺伝子がB2M遺伝子であり、抗原認識領域がCD70を認識し、及びドナー鋳型がB2M遺伝子の少なくとも一部分を含む、パラグラフ77の組成物。
【0441】
83. 標的遺伝子がPD1遺伝子であり、抗原認識領域がCD70を認識し、及びドナー鋳型がPD1遺伝子の少なくとも一部分を含む、パラグラフ77の組成物。
【0442】
84. 標的遺伝子がTRAC遺伝子であり、抗原認識領域がBCMAを認識し、及びドナー鋳型がTRAC遺伝子の少なくとも一部分を含む、パラグラフ77の組成物。
【0443】
85. 標的遺伝子がB2M遺伝子であり、抗原認識領域がBCMAを認識し、及びドナー鋳型がB2M遺伝子の少なくとも一部分を含む、パラグラフ77の組成物。
【0444】
86. 標的遺伝子がPD1遺伝子であり、抗原認識領域がBCMAを認識し、及びドナー鋳型がPD1遺伝子の少なくとも一部分を含む、パラグラフ77の組成物。
【0445】
87. ドナー鋳型が一本鎖又は二本鎖のいずれかのポリヌクレオチドである、パラグラフ78〜86のパラグラフいずれか1つの組成物。
【0446】
88. 1つ以上のリボ核タンパク質粒子が、1つ以上のDNAエンドヌクレアーゼと、TRAC遺伝子を編集するための1つ以上のgRNAであって、配列番号83〜158の核酸配列からなる群から選択されるスペーサー配列を含む1つ以上のgRNAとを含む、パラグラフ77、78、81、84又は87のいずれか1つの組成物。
【0447】
89. 1つ以上のリボ核タンパク質粒子が、1つ以上のDNAエンドヌクレアーゼと、B2M遺伝子を編集するための1つ以上のgRNAであって、配列番号458〜506の核酸配列からなる群から選択されるスペーサー配列を含む1つ以上のgRNAとを含む、パラグラフ77、79、82、85又は87のいずれか1つの組成物。
【0448】
90. 1つ以上のリボ核タンパク質粒子が、1つ以上のDNAエンドヌクレアーゼと、PD1遺伝子を編集するための1つ以上のgRNAであって、配列番号1083〜1275の核酸配列からなる群から選択されるスペーサー配列を含む1つ以上のgRNAとを含む、パラグラフ77、80、83、86又は87のいずれか1つの組成物。
【0449】
91. 1つ以上のリボ核タンパク質粒子が、B2M遺伝子を編集するための1つ以上のgRNAであって、配列番号458〜506の核酸配列からなる群から選択されるスペーサー配列を含む1つ以上のgRNAを更に含む、パラグラフ88又は90の組成物。
【0450】
92. 1つ以上のリボ核タンパク質粒子が、PD1遺伝子を編集するための1つ以上のgRNAであって、配列番号1083〜1275の核酸配列からなる群から選択されるスペーサー配列を含む1つ以上のgRNAを更に含む、パラグラフ88又は89の組成物。
【0451】
93. 1つ以上のリボ核タンパク質粒子が、TRAC遺伝子を編集するための1つ以上のgRNAであって、配列番号83〜158の核酸配列からなる群から選択されるスペーサー配列を含む1つ以上のgRNAを更に含む、パラグラフ89又は90の組成物。
【0452】
94. ドナー鋳型が配列番号1387及び1390からなる群から選択される配列を含み、及びgRNAが、配列番号1342又は1343の配列を含むTRAC遺伝子を編集するためのsgRNAである、パラグラフ77、78、81、84、87、88又は93のいずれか1つの組成物。
【0453】
95. ドナー鋳型が配列番号1394〜1396からなる群から選択される配列を含み、及びgRNAが、配列番号1342又は1343の配列を含むTRAC遺伝子を編集するためのsgRNAである、パラグラフ77、78、81、84、87、88又は93のいずれか1つの組成物。
【0454】
96. ドナー鋳型が配列番号1398、1400、1401、1402、1408、及び1409からなる群から選択される配列を含み、及びgRNAが、配列番号1342又は1343の配列を含むTRAC遺伝子を編集するためのsgRNAである、パラグラフ77、78、81、84、87、88又は93のいずれか1つの組成物。
【0455】
97.配列番号1344又は1345の配列を含むB2M遺伝子を編集するためのsgRNAを更に含む、パラグラフ94〜96のいずれか1つの組成物。
【0456】
98. ドナー鋳型が配列番号1387及び1390からなる群から選択される配列を含み、及びgRNAが、配列番号1342又は1343の配列を含むB2M遺伝子を編集するためのsgRNAである、パラグラフ77、79、82、85、87、89、91のいずれか1つの組成物。
【0457】
99. ドナー鋳型が配列番号1394及び1395からなる群から選択される配列を含み、及びgRNAが、配列番号1342又は1343の配列を含むB2M遺伝子を編集するためのsgRNAである、パラグラフ77、79、82、85、87、89、91のいずれか1つの組成物。
【0458】
100. ドナー鋳型が配列番号1398及び1400からなる群から選択される配列を含み、及びgRNAが、配列番号1342又は1343の配列を含むB2M遺伝子を編集するためのsgRNAである、パラグラフ77、79、82、85、87、89、91のいずれか1つの組成物。
【0459】
101.パラグラフ1〜42のいずれか1つの単離核酸と、パラグラフ56〜59のいずれか1つの1つ以上のリボ核タンパク質粒子とを含む単離細胞。
【0460】
102.標的遺伝子がTRAC遺伝子であり、抗原認識領域がCD19を認識し、及びドナー鋳型がTRAC遺伝子の少なくとも一部分を含む、パラグラフ101の単離細胞。
【0461】
103. 標的遺伝子がB2M遺伝子であり、抗原認識領域がCD19を認識し、及びドナー鋳型がB2M遺伝子の少なくとも一部分を含む、パラグラフ101の単離細胞。
【0462】
104. 標的遺伝子がPD1遺伝子であり、抗原認識領域がCD19を認識し、及びドナー鋳型がPD1遺伝子の少なくとも一部分を含む、パラグラフ101の単離細胞。
【0463】
105. 標的遺伝子がTRAC遺伝子であり、抗原認識領域がCD70を認識し、及びドナー鋳型がTRAC遺伝子の少なくとも一部分を含む、パラグラフ101の単離細胞。
【0464】
106. 標的遺伝子がB2M遺伝子であり、抗原認識領域がCD70を認識し、及びドナー鋳型がB2M遺伝子の少なくとも一部分を含む、パラグラフ101の単離細胞。
【0465】
107. 標的遺伝子がPD1遺伝子であり、抗原認識領域がCD70を認識し、及びドナー鋳型がPD1遺伝子の少なくとも一部分を含む、パラグラフ101の単離細胞。
【0466】
108. 標的遺伝子がTRAC遺伝子であり、抗原認識領域がBCMAを認識し、及びドナー鋳型がTRAC遺伝子の少なくとも一部分を含む、パラグラフ101の単離細胞。
【0467】
109. 標的遺伝子がB2M遺伝子であり、抗原認識領域がBCMAを認識し、及びドナー鋳型がB2M遺伝子の少なくとも一部分を含む、パラグラフ101の単離細胞。
【0468】
110. 標的遺伝子がPD1遺伝子であり、抗原認識領域がBCMAを認識し、及びドナー鋳型がPD1遺伝子の少なくとも一部分を含む、パラグラフ101の単離細胞。
【0469】
111. ドナー鋳型が一本鎖又は二本鎖のいずれかのポリヌクレオチドである、パラグラフ102〜110のいずれか1つの単離細胞。
【0470】
112. 1つ以上のリボ核タンパク質粒子が、1つ以上のDNAエンドヌクレアーゼと、TRAC遺伝子を編集するための1つ以上のgRNAであって、配列番号83〜158の核酸配列からなる群から選択されるスペーサー配列を含む1つ以上のgRNAとを含む、パラグラフ101、102、105、108又は111のいずれか1つの単離細胞。
【0471】
113. 1つ以上のリボ核タンパク質粒子が、1つ以上のDNAエンドヌクレアーゼと、B2M遺伝子を編集するための1つ以上のgRNAであって、配列番号458〜506の核酸配列からなる群から選択されるスペーサー配列を含む1つ以上のgRNAとを含む、パラグラフ101、103、106、109又は111のいずれか1つの単離細胞。
【0472】
114. 1つ以上のリボ核タンパク質粒子が、1つ以上のDNAエンドヌクレアーゼと、PD1遺伝子を編集するための1つ以上のgRNAであって、配列番号1083〜1274の核酸配列からなる群から選択されるスペーサー配列を含む1つ以上のgRNAとを含む、パラグラフ101、104、107、110又は111のいずれか1つの単離細胞。
【0473】
115. 1つ以上のリボ核タンパク質粒子が、B2M遺伝子を編集するための1つ以上のgRNAであって、配列番号458〜506の核酸配列からなる群から選択されるスペーサー配列を含む1つ以上のgRNAを更に含む、パラグラフ112又は114の単離細胞。
【0474】
116. 1つ以上のリボ核タンパク質粒子が、PD1遺伝子を編集するための1つ以上のgRNAであって、配列番号1083〜1274の核酸配列からなる群から選択されるスペーサー配列を含む1つ以上のgRNAを更に含む、パラグラフ112又は113の単離細胞。
【0475】
117. 1つ以上のリボ核タンパク質粒子が、TRAC遺伝子を編集するための1つ以上のgRNAであって、配列番号83〜158の核酸配列からなる群から選択されるスペーサー配列を含む1つ以上のgRNAを更に含む、パラグラフ113又は114の単離細胞。
【0476】
118. 1つ以上のリボ核タンパク質粒子が2つ以上の異なるリボ核タンパク質粒子集団を含む、パラグラフ101〜118のいずれか1つの単離細胞。
【0477】
119. 1つ以上のリボ核タンパク質粒子が、1つ以上のDNAエンドヌクレアーゼと、
(a)TRAC遺伝子を編集するための1つ以上のgRNAであって、配列番号83〜158の核酸配列からなる群から選択されるスペーサー配列を含む1つ以上のgRNA;
(b)B2M遺伝子を編集するための1つ以上のgRNAであって、配列番号458〜506の核酸配列からなる群から選択されるスペーサー配列を含む1つ以上のgRNA;
(c)CIITA遺伝子を編集するための1つ以上のgRNAであって、CIITA遺伝子を編集するための配列番号699〜890の核酸配列からなる群から選択されるスペーサー配列を含む1つ以上のgRNA;
(d)CD3ε遺伝子を編集するための1つ以上のgRNAであって、配列番号284〜408の核酸配列からなる群から選択されるスペーサー配列を含む1つ以上のgRNA;
(e)PD1遺伝子を編集するための1つ以上のgRNAであって、配列番号1083〜1274の核酸配列からなる群から選択されるスペーサー配列を含む1つ以上のgRNA;
(f)TRAC遺伝子を編集するための1つ以上のgRNAであって、配列番号1299の核酸配列を含むスペーサー配列を含む1つ以上のgRNA;
(g)CTLA−4遺伝子を編集するための1つ以上のgRNAであって、配列番号1277の核酸配列を含むスペーサー配列を含む1つ以上のgRNA;
(h)AAVS1(PPP1R12C)遺伝子を編集するための1つ以上のgRNAであって、配列番号1301〜1302の核酸配列からなる群から選択されるスペーサー配列を含む1つ以上のgRNA;
(i)CD52遺伝子を編集するための1つ以上のgRNAであって、配列番号1303〜1304の核酸配列からなる群から選択されるスペーサー配列を含む1つ以上のgRNA;及び
(j)RFX5遺伝子を編集するための1つ以上のgRNAであって、配列番号1305〜1307の核酸配列からなる群から選択されるスペーサー配列を含む1つ以上のgRNA
からなる群から選択される2つ以上の異なるリボ核タンパク質粒子集団とを含む、パラグラフ118の単離細胞。
【0478】
120. パラグラフ1〜42の単離核酸及びそのうちの1つと、パラグラフ56〜59のいずれか1つの1つ以上のリボ核タンパク質粒子の第1の集団とを含む単離細胞であって、単離核酸が第1の標的遺伝子の範囲内又はその近傍にある遺伝子座でゲノムに挿入され、その結果、第1の標的遺伝子の範囲内又はその近傍における永久欠失及びCARをコードする単離核酸の挿入が生じる、単離細胞。
【0479】
121. 単離細胞が、パラグラフ56〜59のいずれか1つの1つ以上のリボ核タンパク質粒子の第2の集団を更に含み、1つ以上のリボ核タンパク質粒子の第1の集団が、第1の標的遺伝子を編集するための1つ以上のgRNAを含み、及び1つ以上のリボ核タンパク質粒子の第2の集団が、第2の異なる標的遺伝子を編集するための1つ以上のgRNAを含む、パラグラフ120の単離細胞。
【0480】
122. パラグラフ1〜42のいずれか1つの核酸によってコードされるキメラ抗原受容体を発現する、且つTRAC、CD3ε、B2M、CIITA、RFX5、PD1、及びCTLA−4から選択される1つ以上の遺伝子に欠失を含む、単離細胞。
【0481】
123. パラグラフ1〜42のいずれか1つの核酸によってコードされるキメラ抗原受容体を発現する、且つTRAC、B2M及びPD1のうちの1つ以上に欠失を含む、単離細胞。
【0482】
124. パラグラフ1〜42のいずれか1つの核酸によってコードされるキメラ抗原受容体を発現する、且つTRACに欠失を含む、単離細胞。
【0483】
125. B2Mに欠失を更に含む、パラグラフ124の単離細胞。
【0484】
126. B2M及びPD1に欠失を更に含む、パラグラフ124の単離細胞。
【0485】
127. キメラ抗原受容体がTRAC遺伝子座から発現する、パラグラフ101〜126のいずれか1つの単離細胞。
【0486】
128. キメラ抗原受容体が、配列番号1334、1499、1500、1501、及び1502からなる群から選択される配列を含む、パラグラフ127の単離細胞。
【0487】
129. キメラ抗原受容体(CAR)が、配列番号1316、1423、1424、1425及び1426からなる群から選択されるCARをコードする配列を含む、パラグラフ127の単離細胞。
【0488】
130. キメラ抗原受容体(CAR)が、配列番号1338、1449、1450、1451及び1452からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、パラグラフ127の単離細胞。
【0489】
131. 配列番号1348、1354、1358、1359、1362及び1364からなる群から選択される核酸を含むベクターがトランスフェクトされた、且つTRAC、CD3ε、B2M、CIITA、RFX5、PD1、及びCTLA−4から選択される1つ以上の遺伝子に欠失を更に含む単離細胞。
【0490】
132. 配列番号1348、1354、1358、1359、1362及び1364からなる群から選択される核酸を含むベクターがトランスフェクトされた、且つTRACに欠失を更に含む単離細胞。
【0491】
133. 配列番号1348、1354、1358、1359、1362及び1364からなる群から選択される核酸を含むベクターがトランスフェクトされた、且つTRAC及びB2Mに欠失を更に含む単離細胞。
【0492】
134. 配列番号1348、1354、1358、1359、1362及び1364からなる群から選択される核酸を含むベクターがトランスフェクトされた、且つTRAC、B2M及びPD1に欠失を更に含む単離細胞。
【0493】
135. 核酸配列が、TRAC遺伝子に永久に挿入されてTRAC遺伝子発現を破壊するドナー鋳型を含む、パラグラフ127〜134のいずれか1つの単離細胞。
【0494】
136. B2M遺伝子に欠失を更に含む、パラグラフ135の単離細胞。
【0495】
137. PD1遺伝子に欠失を更に含む、パラグラフ136の単離細胞。
【0496】
138. パラグラフ131〜137のいずれか1つの単離細胞であって、
a)1つ以上のリボ核タンパク質粒子がTRAC標的遺伝子において1つ以上の一本鎖切断又は二本鎖切断を達成することにより、TRAC遺伝子に永久欠失が生じ、リボ核タンパク質粒子が、配列番号1342又は1343の配列を含む1つ以上のsgRNAと、1つ以上のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼとを含み;及び
b)1つ以上のリボ核タンパク質粒子がB2M標的遺伝子において1つ以上の一本鎖切断又は二本鎖切断を達成することにより、B2M遺伝子に永久欠失が生じ、リボ核タンパク質粒子が、配列番号1344又は1345の配列を含む1つ以上のsgRNAと、1つ以上のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼとを含む、単離細胞。
【0497】
139. 単離細胞であって、以下を含み:
a)パラグラフ1〜42のいずれか1つの単離核酸、単離核酸はTRAC遺伝子の範囲内又はその近傍の遺伝子座で相同組換えによってゲノムに挿入され、その結果、TRAC遺伝子の範囲内又はその近傍に永久欠失が生じる;
b)第2の標的遺伝子の範囲内又はその近傍における永久欠失、第2の標的遺伝子はB2Mである;
c)TRAC遺伝子へのCARをコードする単離核酸の挿入、CARはCD19抗原認識ドメインを含む;及び
d)CARが細胞の表面に発現する、
単離細胞。
【0498】
140. 単離細胞であって、以下を含み:
a)パラグラフ1〜42のいずれか1つの単離核酸、単離核酸はTRAC遺伝子の範囲内又はその近傍の遺伝子座で相同組換えによってゲノムに挿入され、その結果、TRAC遺伝子の範囲内又はその近傍に永久欠失が生じる;
b)第2の標的遺伝子の範囲内又はその近傍における永久欠失、第2の標的遺伝子はB2Mである;
c)TRAC遺伝子へのCARをコードする単離核酸の挿入、CARはCD70抗原認識ドメインを含む;及び
d)CARが細胞の表面に発現する、
単離細胞。
【0499】
141. 単離細胞であって、以下を含み:
a)パラグラフ1〜42のいずれか1つの単離核酸、単離核酸はTRAC遺伝子の範囲内又はその近傍の遺伝子座で相同組換えによってゲノムに挿入され、その結果、TRAC遺伝子の範囲内又はその近傍に永久欠失が生じる;
b)第2の標的遺伝子の範囲内又はその近傍における永久欠失、第2の標的遺伝子はB2Mである;
c)TRAC遺伝子へのCARをコードする単離核酸の挿入、CARはBCMA抗原認識ドメインを含む;及び
d)CARが細胞の表面に発現する、
単離細胞。
【0500】
142. 第3の標的遺伝子の範囲内又はその近傍に永久欠失を更に含み、第3の標的遺伝子がPD1である、パラグラフ139〜141のいずれか1つの単離細胞。
【0501】
143. パラグラフ139〜142のいずれか1つの単離細胞であって、
a)単離核酸が、配列番号1348、1354、1358、1359、1362及び1364のヌクレオチド配列を含み;
b)1つ以上のgRNAが、配列番号83〜158から選択されるスペーサー配列を含み、1つ以上のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼがTRAC遺伝子において1つ以上の一本鎖切断又は二本鎖切断を達成することにより、TRAC遺伝子に永久欠失が生じ;及び
c)1つ以上のgRNAが配列番号458〜506から選択されるスペーサー配列を含み、1つ以上のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼがB2M遺伝子において1つ以上の一本鎖切断又は二本鎖切断を達成することにより、B2M遺伝子に永久欠失が生じる、
単離細胞。
【0502】
144. パラグラフ143の単離細胞であって、
a)単離核酸が、配列番号1348〜1357からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含み;
b)1つ以上のリボ核タンパク質粒子がTRAC標的遺伝子において1つ以上の一本鎖切断又は二本鎖切断を達成することにより、TRAC標的遺伝子に永久欠失が生じ、リボ核タンパク質粒子が、配列番号1342又は1343の配列を含む1つ以上のsgRNAと、1つ以上のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼとを含み;及び
c)1つ以上のリボ核タンパク質粒子がB2M標的遺伝子において1つ以上の一本鎖切断又は二本鎖切断を達成することにより、B2M標的遺伝子に永久欠失が生じ、リボ核タンパク質粒子が、配列番号1344又は1345の配列を含む1つ以上のsgRNAと、1つ以上のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼとを含む、
単離細胞。
【0503】
145. パラグラフ143の単離細胞であって、
a)単離核酸が、配列番号1358及び1359からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含み;
b)1つ以上のリボ核タンパク質粒子がTRAC標的遺伝子において1つ以上の一本鎖切断又は二本鎖切断を達成することにより、TRAC標的遺伝子に永久欠失が生じ、リボ核タンパク質粒子が、配列番号1342又は1343の配列を含む1つ以上のsgRNAと、1つ以上のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼとを含み;及び
c)1つ以上のリボ核タンパク質粒子がB2M標的遺伝子において1つ以上の一本鎖切断又は二本鎖切断を達成することにより、B2M標的遺伝子に永久欠失が生じ、リボ核タンパク質粒子が、配列番号1344又は1345の配列を含む1つ以上のsgRNAと、1つ以上のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼとを含む、
単離細胞。
【0504】
146. パラグラフ143の単離細胞であって、
a)単離核酸が、配列番号1362及び1364からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含み;
b)1つ以上のリボ核タンパク質粒子がTRAC標的遺伝子において1つ以上の一本鎖切断又は二本鎖切断を達成することにより、TRAC標的遺伝子に永久欠失が生じ、リボ核タンパク質粒子が、配列番号1342又は1343の配列を含む1つ以上のsgRNAと、1つ以上のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼとを含み;及び
c)1つ以上のリボ核タンパク質粒子がB2M標的遺伝子において1つ以上の一本鎖切断又は二本鎖切断を達成することにより、B2M標的遺伝子に永久欠失が生じ、リボ核タンパク質粒子が、配列番号1344又は1345の配列を含む1つ以上のsgRNAと、1つ以上のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼとを含む、
単離細胞。
【0505】
147. パラグラフ101〜146のいずれか1つの単離細胞を含む医薬組成物。
【0506】
148. 遺伝子編集細胞を作製する方法であって、(i)パラグラフ1〜42のいずれか1つのノックインキメラ抗原受容体(CAR)コンストラクトをコードする単離核酸、(ii)1つ以上のsgRNA及び(iii)1つ以上のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼを細胞に導入するステップであって、第1の標的遺伝子の範囲内又はその近傍において1つ以上の一本鎖切断(SSB)又は二本鎖切断(DSB)が達成されることにより、a)第1の標的遺伝子の範囲内又はその近傍における、第1の標的遺伝子の発現又は機能に影響を及ぼす永久欠失であって、任意選択でPAM又はsgRNA標的配列にある、且つ任意選択で20ヌクレオチド欠失である永久欠失、b)第1の標的遺伝子の範囲内又はその近傍へのCARコンストラクトの挿入、及び、c)細胞の表面上でのCARの発現が生じるステップを含む方法。
【0507】
149. 細胞の1つ以上の生物学的活性の調節方法であって、(i)パラグラフ1〜42のいずれか1つのノックインキメラ抗原受容体(CAR)コンストラクトをコードする単離核酸、(ii)1つ以上のsgRNA及び(iii)1つ以上のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼを細胞に導入するステップであって、第1の標的遺伝子の範囲内又はその近傍において1つ以上の一本鎖切断(SSB)又は二本鎖切断(DSB)が達成されることにより、a)第1の標的遺伝子の範囲内又はその近傍における、第1の標的遺伝子の発現又は機能に影響を及ぼす永久欠失であって、任意選択でPAM又はsgRNA標的配列にある、且つ任意選択で20ヌクレオチド欠失である永久欠失、b)第1の標的遺伝子の範囲内又はその近傍へのCARコンストラクトの挿入、及び、c)細胞の表面上でのCARの発現が生じるステップを含む方法。
【0508】
150. gRNA及びエンドヌクレアーゼがリボ核タンパク質粒子を形成する、パラグラフ148又は149の方法。
【0509】
151.1つ以上のgRNA及び1つ以上のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼを細胞に導入するステップであって、第2の標的遺伝子の範囲内又はその近傍において1つ以上の一本鎖切断(SSB)又は二本鎖切断(DSB)が達成されることにより、第2の標的遺伝子の範囲内又はその近傍に第2の標的遺伝子の発現又は機能に影響を及ぼす永久欠失が生じるステップを更に含む、パラグラフ148〜150のいずれか1つの方法。
【0510】
152. gRNA及びエンドヌクレアーゼがリボ核タンパク質粒子を形成する、パラグラフ151の方法。
【0511】
153. 永久欠失により、1つ以上の生物学的活性の調節が生じる、パラグラフ148〜152のいずれか1つの方法。
【0512】
154. 生物学的活性の調節が、第1の標的遺伝子、第2の標的遺伝子、任意選択で第3の標的遺伝子、又はこれらの組み合わせの生物学的活性のノックアウトを含む、パラグラフ153の方法。
【0513】
155. 生物学的活性が、宿主対移植片反応、移植片対宿主反応、免疫チェックポイント反応、免疫抑制、又はこれらの任意の組み合わせである、パラグラフ153又は154の方法。
【0514】
156. 生物学的活性が移植片対宿主反応であり、及び第1の標的遺伝子、第2の標的遺伝子、又はこれらの組み合わせが、TRAC、CD3イプシロン(CD3ε)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、パラグラフ153又は154の方法。
【0515】
157. 生物学的活性が宿主対移植片反応であり、及び第1の標的遺伝子、第2の標的遺伝子、又はこれらの組み合わせが、B2M、CIITA、RFX5、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、パラグラフ153又は154の方法。
【0516】
158. 生物学的活性がチェックポイント阻害因子であり、及び第1の標的遺伝子、第2の標的遺伝子、又はこれらの組み合わせが、PD1、CTLA−4、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、パラグラフ153又は154の方法。
【0517】
159. 生物学的活性が細胞生存の増加又は細胞生存能の増強であり、及び第1の標的遺伝子、第2の標的遺伝子、又はこれらの組み合わせが、TRAC、B2M、PD1、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、パラグラフ153又は154の方法。
【0518】
160. 遺伝子が、CAR Tの薬理学的対照を調節する配列をコードする、パラグラフ153又は154の方法。
【0519】
161. 遺伝子がCD52をコードする、パラグラフ160の方法。
【0520】
162. 調節が正又は負である、パラグラフ160の方法。
【0521】
163. 調節がCAR T細胞の生存を可能にする、パラグラフ160の方法。
【0522】
164. 調節がCAR T細胞を死滅させる、パラグラフ160の方法。
【0523】
165. 第1の標的遺伝子、第2の標的遺伝子、又はこれらの組み合わせが、TRAC、CD3ε、B2M、CIITA、RFX5、PD1、CTLA−4、CD52、PPP1R12C、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される遺伝子を含む、パラグラフ153、154、又は163のいずれか1つの方法。
【0524】
166. 第1の標的遺伝子、第2の標的遺伝子、又はこれらの組み合わせが、TRAC、B2M、PD1及びこれらの組み合わせからなる群から選択される2つ以上の遺伝子を含む、パラグラフ153、154、又は163のいずれか1つの方法。
【0525】
167. 第1の標的遺伝子、第2の標的遺伝子、又はこれらの組み合わせが、TRAC、B2M及びPD1を含む、パラグラフ153、154、又は163のいずれか1つの方法。
【0526】
168. ドナー鋳型が一本鎖又は二本鎖のいずれかのポリヌクレオチドである、パラグラフ153又は154の方法。
【0527】
169. 標的遺伝子の一部分が、TRAC、CD3ε、B2M、CIITA、RFX5、PD1、CTLA−4、CD52、PPP1R12C、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、パラグラフ168の方法。
【0528】
170. 標的遺伝子の一部分が、TRAC、B2M、PD1及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、パラグラフ169の方法。
【0529】
171.標的遺伝子の一部分がTRACの一部分を含む、パラグラフ169の方法。
【0530】
172. 標的遺伝子の一部分がTRACの一部分及び/又はB2Mの一部分を含む、パラグラフ169の方法。
【0531】
173. 標的遺伝子の一部分がTRACの一部分、B2Mの一部分、及び/又はPD1の一部分を含む、パラグラフ169の方法。
【0532】
174. 1つ以上のDNAエンドヌクレアーゼが、1つ以上のgRNA、任意選択で1つ以上のsgRNAと予め複合体化される、パラグラフ153又は154の方法。
【0533】
175. ドナー鋳型がウイルスベクターによって送達される、パラグラフ153又は154の方法。
【0534】
176. ウイルスベクターがアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである、パラグラフ175の方法。
【0535】
177. AAVベクターがAAV6ベクターである、パラグラフ176の方法。
【0536】
178. 細胞が初代ヒトT細胞である、パラグラフ153又は154の方法。
【0537】
179. 初代ヒトT細胞が末梢血単核球(PBMC)から単離される、パラグラフ178の方法。
【0538】
180. 細胞が同種異系である、パラグラフ178又は179の方法。
【0539】
181. 1つ以上のDNAエンドヌクレアーゼが、Cas9、又はCpf1エンドヌクレアーゼ;又はその相同体、天然に存在する分子の組換え、そのコドン最適化された、又は修飾されたバージョン、及びこれらの組み合わせである、パラグラフ148〜180のいずれか1つの方法。
【0540】
182. 1つ以上のDNAエンドヌクレアーゼをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを細胞に導入することを含む、パラグラフ181の方法。
【0541】
183. 1つ以上のDNAエンドヌクレアーゼをコードする1つ以上のリボ核酸(RNA)を細胞に導入することを含む、パラグラフ182の方法。
【0542】
184. 1つ以上のポリヌクレオチド又は1つ以上のRNAが1つ以上の修飾ポリヌクレオチド又は1つ以上の修飾RNAである、パラグラフ181又は182の方法。
【0543】
185. DNAエンドヌクレアーゼがタンパク質又はポリペプチドである、パラグラフ184の方法。
【0544】
186. 医学的病態を有する患者を治療するためのエキソビボ方法であって、
i)患者からT細胞を単離するステップ;
ii)T細胞の標的遺伝子又はT細胞の標的遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の範囲内又はその近傍で編集するステップ;及び
iii)ゲノム編集されたT細胞を患者に植え込むステップ
を含む方法。
【0545】
187. 医学的病態を有する患者を治療するためのエキソビボ方法であって、
i)ドナーからT細胞を単離するステップ;
ii)T細胞の標的遺伝子又はT細胞の標的遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の範囲内又はその近傍で編集するステップ;及び
iii)ゲノム編集されたT細胞を患者に植え込むステップ
を含む方法。
【0546】
188. 単離するステップが、細胞分画遠心、細胞培養、及びこれらの組み合わせを含む、パラグラフ186又は187の方法。
【0547】
189. 医学的病態を有する患者を治療するための方法であって、
i)T細胞の1つ以上の標的遺伝子、又はT細胞の標的遺伝子の調節エレメントをコードする1つ以上の他のDNA配列の範囲内又はその近傍で編集するステップ;及び
ii)ゲノム編集されたT細胞を患者に植え込むステップ
を含む方法。
【0548】
190. 編集するステップが、(i)パラグラフ1〜42のいずれか1つのノックインキメラ抗原受容体(CAR)コンストラクトをコードする単離核酸、(ii)1つ以上のgRNA及び(iii)1つ以上のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼをT細胞に導入することを含み、第1の標的遺伝子の範囲内又はその近傍において1つ以上の一本鎖切断(SSB)又は二本鎖切断(DSB)が達成されることにより、a)第1の標的遺伝子の範囲内又はその近傍における、第1の標的遺伝子の発現又は機能に影響を及ぼす永久欠失であって、任意選択でPAM又はsgRNA標的配列にある、且つ任意選択で20ヌクレオチド欠失である永久欠失、b)第1の標的遺伝子の範囲内又はその近傍におけるCARコンストラクトの挿入、及び、c)細胞の表面上でのCARの発現が生じる、パラグラフ186〜189のいずれか1つの方法。
【0549】
191. 1つ以上のgRNA及び1つ以上のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼを細胞に導入するステップであって、第2の標的遺伝子の範囲内又はその近傍において1つ以上の一本鎖切断(SSB)又は二本鎖切断(DSB)が達成されることにより、第2の標的遺伝子の範囲内又はその近傍に第2の標的遺伝子の発現又は機能に影響を及ぼす永久欠失が生じるステップを更に含む、パラグラフ190の方法。
【0550】
192. 植え込むステップが、ゲノム編集されたT細胞を移植、局所注射、又は全身注入、又はこれらの組み合わせによって患者に植え込むことを含む、パラグラフ189〜191のいずれか1つの方法。
【0551】
193. T細胞が、CD4
+T細胞、CD8
+T細胞、又はこれらの組み合わせである、パラグラフ189〜192のいずれか1つの方法。
【0552】
194. 医学的病態が癌である、パラグラフ189〜193のいずれか1つの方法。
【0553】
195. 癌が、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B−ALL)、B細胞非ホジキンリンパ腫(B−NHL)、慢性リンパ球性白血病(C−CLL)、ホジキンリンパ腫、T細胞リンパ腫、T細胞白血病、腎明細胞癌(ccRCC)、甲状腺癌、鼻咽腔癌、非小細胞肺(NSCLC)、膵癌、黒色腫、卵巣癌、膠芽腫、子宮頸癌、又は多発性骨髄腫である、パラグラフ194の方法。
【0554】
196. 医学的病態を有する患者を治療するためのインビボ方法であって、患者の細胞における第1の標的遺伝子、又は標的遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列を編集するステップを含み、編集するステップが、(i)パラグラフ1〜42のいずれか1つのノックインキメラ抗原受容体(CAR)コンストラクトをコードする単離核酸、(ii)1つ以上のgRNA及び(iii)1つ以上のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼをT細胞に導入することを含み、第1の標的遺伝子の範囲内又はその近傍において1つ以上の一本鎖切断(SSB)又は二本鎖切断(DSB)が達成されることにより、a)第1の標的遺伝子の範囲内又はその近傍における、第1の標的遺伝子の発現又は機能に影響を及ぼす永久欠失であって、任意選択でPAM又はsgRNA標的配列にある、且つ任意選択で20ヌクレオチド欠失である永久欠失、b)第1の標的遺伝子の範囲内又はその近傍におけるCARコンストラクトの挿入、及び、c)細胞の表面上でのCARの発現が生じる、方法。
【0555】
197. 1つ以上のgRNA及び1つ以上のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼを細胞に導入するステップであって、第2の標的遺伝子の範囲内又はその近傍において1つ以上の一本鎖切断(SSB)又は二本鎖切断(DSB)が達成されることにより、第2の標的遺伝子の範囲内又はその近傍に第2の標的遺伝子の発現又は機能に影響を及ぼす永久欠失が生じるステップを更に含む、パラグラフ196の方法。
【0556】
198. T細胞が、CD4
+T細胞、CD8
+T細胞、又はこれらの組み合わせである、パラグラフ196又は197の方法。
【0557】
199. 医学的病態が癌である、パラグラフ196〜198のいずれか1つの方法。
【0558】
200. 癌が、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B−ALL)、B細胞非ホジキンリンパ腫(B−NHL)、慢性リンパ球性白血病(C−CLL)、ホジキンリンパ腫、T細胞リンパ腫、T細胞白血病、腎明細胞癌(ccRCC)、甲状腺癌、鼻咽腔癌、非小細胞肺(NSCLC)、膵癌、黒色腫、卵巣癌、膠芽腫、子宮頸癌、又は多発性骨髄腫である、パラグラフ180の方法。
【0559】
201. 配列番号1348〜1357からなる群から選択される核酸配列を含む単離核酸。
【0560】
202. 配列番号1358〜1359からなる群から選択される核酸配列を含む単離核酸。
【0561】
203. 配列番号1361〜1364からなる群から選択される核酸配列を含む単離核酸。
【0562】
204. 対象の癌の治療方法であって、パラグラフ101〜146のいずれか1つの単離細胞を含む組成物を対象に投与するステップを含む方法。
【0563】
205. 対象の腫瘍容積を低下させる方法であって、パラグラフ101〜146のいずれか1つの単離細胞を含む組成物を対象に投与するステップを含む方法。
【0564】
206. 癌を有する対象の生存を増加させる方法であって、パラグラフ101〜146のいずれか1つの単離細胞を含む組成物を対象に投与するステップを含む方法。
【0565】
207. 単離核酸が、配列番号1348〜1357、1358〜1359、1362及び1364からなる群から選択される核酸配列を含む、パラグラフ60〜100のいずれか1つの組成物。
【0566】
208. ドナー鋳型が、配列番号1390、1394〜1395、1398及び1400からなる群から選択される配列を含み、及びgRNAが、配列番号1342の配列を有するTRAC遺伝子を編集するためのsgRNAである、パラグラフ60〜100又は207のいずれか1つの組成物。
【0567】
209. ドナー鋳型が、配列番号1390、1394〜1395、1398及び1400からなる群から選択される配列を含み、gRNAが、配列番号1342の配列を有するTRAC遺伝子を編集するためのsgRNA及び配列番号1344の配列を有するB2M遺伝子を編集するためのsgRNAである、パラグラフ60〜100、207、又は208のいずれか1つの組成物。
【0568】
用語「〜を含んでいる(comprising)」又は「〜を含む(comprises)」は、本発明にとって必須の組成物、方法、及びそのそれぞれの1つ又は複数の構成要素に関して使用されるが、更に未だ特定されていない要素の包含も、それが必須であるか否かに関わらず受け入れる。
【0569】
用語「〜から本質的になる(consisting essentially of)」は、所与の態様に必須の要素を指す。この用語は、その発明の当該の態様の基本的な及び新規の又は機能的な特性に実質的に影響を与えない追加的な要素の存在を許容する。
【0570】
用語「〜からなる(consisting of)」は、本明細書に記載されるとおりの組成物、方法、及びそのそれぞれの構成要素を指し、これはその態様の当該の説明に記載されていないいかなる要素も排除する。
【0571】
単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上特に明確に指示されない限り、複数形への言及を含む。
【0572】
本明細書において提示されるある種の数値には、その前に用語「約」が付く。用語「約」は、用語「約」が前に付く数値、並びに近似的にその数値である数値に文字上の裏付けを提供するために使用され、即ち、近似的な記載されていない数値が、それが提示される文脈においては、具体的に記載される数値の実質的な均等物である数であり得る。用語「約」は、記載される数値の±10%以内の数値を意味する。
【0573】
本明細書において数値範囲が提示されるとき、その範囲の下限と上限との間にある各中間値、その範囲の上限及び下限である値、及びその範囲と共に明記される全ての値が本開示の範囲内に包含されることが企図される。範囲の下限及び上限の範囲内で可能な全ての部分範囲もまた本開示によって企図される。
【実施例】
【0574】
本発明は、本発明の例示的な非限定的態様を提供する以下の実施形態を参照することにより一層完全に理解されるであろう。
【0575】
本実施例は、標的タンパク質活性を回復するゲノム遺伝子座における突然変異の永久的修正、又は異種遺伝子座における発現につながる、本明細書において「ゲノム修飾」と称される定義付けられた治療的ゲノム欠失、挿入、又は置換を標的遺伝子又はその近傍に作成するための、例示的ゲノム編集技法としてのCRISPRシステムの使用について記載する。定義付けられた治療的修飾の導入は、本明細書に記載及び例示されるとおりの様々な医学的病態の改善可能性に向けた新規治療戦略に相当する。
【0576】
実施例1−gRNAのスクリーニング
コグネイトDNA標的領域を編集可能な幅広いgRNAを同定するため、インビトロ転写(IVT)gRNAスクリーニングを行った。スペーサー配列を骨格配列に取り込んで完全長sgRNAを生成した。骨格配列の例は表1に示す。遺伝子破壊に使用すべきスペーサー配列のリストを作成するため、各標的遺伝子について、タンパク質コードエクソン、特に開始ATGスタートコドンを含むもの及び/又は決定的に重要なタンパク質ドメイン(例えば、DNA結合ドメイン、細胞外ドメイン等)をコードするものを選択した。関連性のあるゲノム配列を、gRNA設計ソフトウェアを使用した分析にかけた。得られたgRNAのリストを、配列のユニークさ(ゲノムの他の場所に完全なマッチを有しないgRNAのみをスクリーニングした)及び予測されるオフターゲット効果が最小限であることに基づき約200個のgRNAのリストに絞り込んだ。この一組のgRNAをインビトロ転写し、Cas9を構成的に発現するHEK293T細胞にメッセンジャーMaxを使用してトランスフェクトした。トランスフェクション後48時間で細胞を回収し、ゲノムDNAを単離し、及び分解によるインデルのトラッキング(Tracking of Indels by DEcomposition:TIDE)分析を用いて編集効率を判定した。結果は
図1〜
図5及び以下の表に示す。
【0577】
当該技術分野においては、PAM配列に隣接するDNA標的(例えばゲノム)配列の文脈でgRNAスペーサー配列を記載することが慣習的である。しかしながら、本明細書における方法及び組成物で使用される実際のgRNAスペーサー配列がDNA標的配列の等価物であることは理解される。例えば、AGAGCAACAGTGCTGTGGCC(配列番号76)を含むと記載されるTRAC gRNAスペーサー配列は、実際はRNAスペーサー配列AGAGCAACAGUGCUGUGGCC(配列番号152)を含む。
【0578】
TRAC gRNAスクリーニング
TRACについては、最初の3つのタンパク質コードエクソンを含むゲノムセグメントをgRNA設計ソフトウェアの入力として使用した。ゲノムセグメントはまた、隣接スプライス部位アクセプター/ドナー配列も含んだ。所望のgRNAは、1つ又は複数のフレーム外/機能喪失アレルにつながるTRACのアミノ酸配列を破壊するコード配列における挿入又は欠失につながり得るものであった。TRACを標的とする全76個のインシリコで同定されたgRNAスペーサーをIVTスクリーニングに使用した。73個がTIDE分析によって計測可能なデータを生じた。9個のgRNA配列が、二次スクリーニングに好適であり得る50%を上回るインデルパーセンテージを生じた。
【0579】
配列番号152を含むTRAC gRNAの相同性依存評価により、このガイドがオフターゲット部位で0.5%未満のインデル頻度を有したことが示された。このデータが、更なる分析にこの特定のTRAC gRNAを選択する指針となった。
【0580】
【表4】
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【0581】
【表5】
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【0582】
【表6】
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【0583】
【表7】
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【0584】
一部の実施形態において、gRNAは配列番号83〜158のいずれか1つの配列を含み、又は配列番号7〜82のいずれか1つの配列を標的とする。
【0585】
CD3ε gRNAスクリーニング
CD3ε(CD3E)については、5つのタンパク質コードエクソンを含むゲノムセグメントをgRNA設計ソフトウェアの入力として使用した。ゲノムセグメントはまた、隣接スプライス部位アクセプター/ドナー配列も含んだ。所望のgRNAは、1つ又は複数のフレーム外/機能喪失アレルにつながるCD3Eのアミノ酸配列を破壊するコード配列における挿入又は欠失につながり得るものであった。CD3Eを標的とする125個のインシリコで同定されたgRNAスペーサーをIVTスクリーニングに使用した。120個がTIDE分析によって計測可能なデータを生じた。9個のgRNA配列が、二次スクリーニングに好適であり得る50%を上回るインデルパーセンテージを生じた。
【0586】
【表8】
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【0587】
【表9】
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【0588】
【表10】
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【0589】
【表11】
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【0590】
【表12】
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【0591】
一部の実施形態において、gRNAは配列番号284〜408のいずれか1つの配列を含み、又は配列番号159〜283のいずれか1つの配列を標的とする。
【0592】
B2M gRNAスクリーニング
B2Mについては、最初の3つのタンパク質コードエクソンを含むゲノムセグメントをgRNA設計ソフトウェアの入力として使用した。ゲノムセグメントはまた、隣接スプライス部位アクセプター/ドナー配列も含んだ。所望のgRNAは、1つ又は複数のフレーム外/機能喪失アレルにつながるB2Mのアミノ酸配列を破壊するコード配列における挿入又は欠失につながり得るものであった。B2Mを標的とする全49個のインシリコで同定されたgRNAスペーサーをIVTスクリーニングに使用した。全てのgRNAがTIDE分析によって計測可能なデータを生じた。8個のgRNA配列が、二次スクリーニングに好適であり得る50%を上回るインデルパーセンテージを生じた。
【0593】
配列番号466を含むB2M gRNAの相同性依存評価により、このガイドがオフターゲット部位で0.5%未満のインデル頻度を有したことが示された。このデータが、更なる分析にこの特定のB2M gRNAを選択する指針となった。
【0594】
【表13】
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【0595】
【表14】
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【0596】
【表15】
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【0597】
一部の実施形態において、gRNAは配列番号458〜506のいずれか1つの配列を含み、又は配列番号409〜457のいずれか1つの配列を標的とする。
【0598】
CIITA gRNAスクリーニング
CIITAについては、3型プロモーターの下流のATGエクソン、IV型プロモーター/選択的エクソン1、及び次の3つの下流エクソン(ここではエクソン3〜エクソン5と称される)を含むゲノムセグメントをgRNA設計ソフトウェアへの入力として使用した(CIITA遺伝子アノテーションについては、Muhlethaler−Mottet et al.,1997.EMBO J.10,2851−2860を参照のこと)。これらのゲノムセグメントは、タンパク質コード領域及び隣接したスプライシングアクセプター/ドナー部位並びに潜在的遺伝子発現調節エレメントを含んだ。所望のgRNAは、1つ又は複数のフレーム外/機能喪失アレルにつながるCIITAのアミノ酸配列を破壊するコード配列における挿入又は欠失につながり得るものであった。ゲノムの他の場所に完全なマッチのないgRNAのみをスクリーニングした。CIITAを標的とする合計約274個のgRNAスペーサー(インシリコで同定された)から、196個のgRNAスペーサーがIVTスクリーニングに選択された。180個のsgRNAがTIDE分析によって計測可能なデータを生じた。81個のgRNA配列が、二次スクリーニングに好適であり得る50%を上回るインデルパーセンテージを生じた。
【0599】
【表16】
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【0600】
【表17】
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【0601】
【表18】
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【0602】
【表19】
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【0603】
【表20】
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【0604】
【表21】
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【0605】
【表22】
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【0606】
【表23】
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【0607】
【表24】
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【0608】
一部の実施形態において、gRNAは配列番号699〜890のいずれか1つの配列を含み、又は配列番号507〜698のいずれか1つの配列を標的とする。
【0609】
PD1 gRNAスクリーニング
PDCD1(PD1)については、最初の3つのタンパク質コードエクソンを含むゲノムセグメントをgRNA設計ソフトウェアの入力として使用した。ゲノムセグメントはまた、隣接スプライス部位アクセプター/ドナー配列も含んだ。所望のgRNAは、1つ又は複数のフレーム外/機能喪失アレルにつながるPDCD1のアミノ酸配列を破壊するコード配列における挿入又は欠失につながり得るものであった。PDCD1を標的とする192個のインシリコで同定されたgRNAスペーサーをIVTスクリーニングに使用した。190個がTIDE分析によって計測可能なデータを生じた。40個のgRNA配列が、二次スクリーニングに好適であり得る50%を上回るインデルパーセンテージを生じた。
【0610】
【表25】
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【0611】
【表26】
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【0612】
【表27】
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【0613】
【表28】
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【0614】
【表29】
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【0615】
【表30】
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【0616】
【表31】
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【0617】
【表32】
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【0618】
一部の実施形態において、gRNAは配列番号1083〜1275のいずれか1つの配列を含み、又は配列番号891〜1082のいずれか1つの配列を標的とする配列を含む。
【0619】
SpCas9/HEK293T細胞及びT細胞におけるPD1スクリーニング
HEK293T細胞及びT細胞における更なる分析に、5個のPD1 gRNAを選択した。5個のガイドのうち3個が陽性対照(PD1対照)より良好な性能(より高いインデルパーセンテージ)を示した。意外にも、最も高いインデルパーセンテージ(編集頻度)を生じさせたガイド(ガイド2)が最も大きいレベルのPD1タンパク質発現ノックダウンを生じさせたわけではなかった(ガイド3〜5との比較−表9を参照)。
【0620】
【表33】
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【0621】
表9のPD1 gRNAの相同性依存評価により、PD1ガイド5(配列番号1276を含む)がオフターゲット部位に20%のインデル頻度を有した一方、PD1ガイド4(配列番号1086)がオフターゲット部位に2.0%未満のインデル頻度を有したことが示された。このデータが、更なる分析にPD1ガイド4を選択する指針となった。
【0622】
T細胞におけるCTLA−4スクリーニング
100万個のT細胞に1000pmol gRNA及び200pmol Cas9タンパク質を電気穿孔した。電気穿孔後48〜72時間で、細胞をPMA/イオノマイシンカクテル溶液で刺激し、同時にCTLA4抗体(1:100希釈、Biolegend #349907)で染色した。刺激後4時間で、FACS分析のため細胞を収集した。2個体の異なるドナーを使用した(ドナー46及びドナー13)。タンパク質発現をフローサイトメトリーによって測定した。結果を表10に示す。ガイド5(スペーサー配列番号1292を含む)を使用すると、一貫して最も低いタンパク質発現となった(例えば、8.6%)。ガイド2(スペーサー配列番号1290を含む)及びガイド9(スペーサー配列番号1297を含む)を使用してもまた、低いタンパク質発現となった(それぞれ11.9%及び12.2%)。
【0623】
【表34】
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【0624】
実施例2−細胞における遺伝子型及び表現型レベルでの遺伝子ノックアウト
本例は、初代ヒトT細胞における遺伝子型及び表現型レベルでの移植片対宿主(GVH)又は宿主対移植片(HVG)又は免疫チェックポイント遺伝子のCRISPR/Cas9による効率的なノックアウトを実証する。
【0625】
EasySep DirectヒトT細胞単離キット(Stemcell Technologies、Vancouver、Canada)を使用して末梢血(AllCells、Alameda、CA)から初代ヒトT細胞を単離した。細胞を0.5×10
6細胞/mLで大型フラスコにプレーティングした。ヒトT−アクチベーターCD3/CD28 Dynabeads(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA)を再懸濁し、PBSで洗浄した後、細胞に加えた。5%ヒト血清(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO)、50ng/mLヒト組換えIL−2(Peprotech、Rocky Hill、NJ)、及び10ng/mLヒト組換えIL−7(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA)を補足したX−vivo 15造血無血清培地(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA)中で細胞をヒトT−アクチベーターCD3/CD28 Dynabeads(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA)と共に1:1のビーズ対細胞比でインキュベートした。3日後、細胞を15mLチューブに移し、そのチューブを磁石上に5分間置くことによってビーズを取り除いた。次に細胞を移し、ペレット化し、0.5×10
6細胞/mLでプレーティングした。
【0626】
ビーズを取り除いてから3日後、4D−Nucleofector(プログラムE0115)(Lonza、Walkersville、MD)及びヒトT細胞Nucleofectorキット(Lonza、Walkersville、MD)を使用してT細胞を電気穿孔した。ヌクレオフェクション混合物は、Nucleofector溶液、10
6細胞、1μM Cas9(Feldan、Quebec、Canada)、及び5μM 2’−O−メチル3’ホスホロチオエート(MS)修飾sgRNA(TriLink BioTechonologies、San Diego、CA)を含有した(Hendel et al.,2015:PMID:26121415に記載されるとおり)。MS修飾は5’末端及び3’末端の両方の3つのヌクレオチドに取り込んだ。安定したCas9:sgRNAリボ核タンパク質(RNP)形成を可能にするため、ヌクレオフェクション混合物を加える前にCas9をsgRNAと1:5のCas9:sgRNAモル比で37℃で10分間プレインキュベートした。多重編集実験のため、個々にsgRNAと予め複合体化した各1μM(最終濃度)のCas9を電気穿孔緩衝液混合物に加えた。各実験の典型的な対照には、以下が含まれた:非電気穿孔細胞、RNPのない1回のモック処理、Cas9単独による1回の処理及びトランスフェクション効率をモニタするためのMS修飾AAVS1 sgRNAによる1回の処理。ヌクレオフェクション後、細胞を37℃で4〜7日間インキュベートし、表面タンパク質発現に関してはフローサイトメトリーにより、及びゲノムDNA上の挿入又は欠失(インデル)に関しては分解によるインデルのトラッキング(Tracking of InDels by Decomposition:TIDE)により分析した。
【0627】
TIDEは、ガイドRNA(gRNA又はsgRNA)によって決まる標的遺伝子座のCRISPR/Cas9によるゲノム編集を迅速に評価するウェブツールである。2つの標準的なキャピラリーシーケンシング反応からの定量的配列トレースデータに基づき、TIDEソフトウェアが編集有効性を定量化し、標的細胞プールのDNAにおける優勢なタイプの挿入及び欠失(インデル)を同定する。
【0628】
この例及び以下の例では、RNPによって送達したsgRNAを試験した。sgRNA配列は、20ヌクレオチドスペーサー配列(各例で指示される)と、それに続く骨格配列を含む。表11は、Cas9タンパク質と複合体化したとき初代ヒトT細胞に指示のインデル%を生じさせた合成の修飾された形態のsgRNAとして使用した、指示遺伝子に特異的な標的配列を一覧にする。表11は、指示遺伝子を標的とする合成の及び/修飾されたsgRNA配列(RNPとして送達した)についての初代ヒトT細胞におけるインデル頻度及び標的配列を一覧にする。
【0629】
骨格配列の例は表1に示す。
【0630】
【表35】
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【0631】
実施例3−細胞におけるTCR成分の編集
本例は、TCR成分(TCRa及びCD3ε)を編集することの初代ヒトT細胞におけるインビトロでの機能的影響を実証する。この結果は
図6A及び
図6Bに示す。
【0632】
フローサイトメトリー実験のため、電気穿孔後4〜6日で約0.5×10
6〜1×10
6個のRNPトランスフェクト細胞を培養物から取り出し、清浄なエッペンドルフ管に移した。細胞を1,200rpmで5分間遠心することによりペレット化し、100μL FACS緩衝液(0.5%BSA/PBS)に再懸濁した。細胞を染色するため、試料に適切な抗体カクテルを加え、続いて室温で10〜15分間インキュベートした。UltraComp eBeads(Ebioscience、San Diego、CA)を使用してコンペンセーション対照を、必要な場合には特異的コンジュゲート抗体と共に調製した。コンペンセーションビーズを実験に使用した個々の特異的一次抗体によって1:100で約5分間染色した。染色した試料(コンペンセーション対照を含む)を1mL FACS緩衝液で洗浄し、1,200rpmで遠心し、吸引して緩衝液を取り除いた。コンペンセーションビーズを200μL FACS緩衝液に再懸濁し、セルストレーナーキャップ(Corning Inc.、Corning、NY)を備えた5mL FACSチューブに通した。1:1000 7AAD(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA)を含有する200μL FACS緩衝液に細胞試料を再懸濁し、セルストレーナーキャップを備えた5mL FACSチューブに通した。次にNovoCyte ACEA 3000フローサイトメーター(ACEA Biosciences、San Diego、CA)で自動コンペンセーションソフトウェアを使用して試料を調べ、データをFlowjo10.1r5で分析した。使用した抗体には、BV510抗ヒトCD3(UCHT1、BioLegend、San Diego、CA)、PE抗ヒトTCRαβ(BW242/412、Miltenyi Biotec、Auburn、CA)、PE/Cy7抗ヒトCD8(SK1、BioLegend、San Diego、CA)、及びAPC/Cy7抗ヒトCD4(RPA−T4、BioLegend、San Diego、CA)が含まれる。
【0633】
理論によって拘束されるものではないが、治療用T細胞のTCRを破壊する理由は、こうしたT細胞が上流刺激を通じてTCRにシグナルを送らないため、従ってレシピエントペプチド/抗原と反応せず、しかしTCRノックアウト後であっても下流TCRシグナル伝達に応答するその能力は維持し得ることであった。フィトヘマグルチニン(phytohemagglutanin)(PHA)及びホルボールミリステートアセテート(PMA)/イオノマイシンは、インビトロT細胞活性化に一般的に使用される2つの刺激レジメンであるが、これらは互いに異なる機構で作用する。PHAは、TCR/CD3複合体並びに他のグリコシル化膜タンパク質の架橋結合によって細胞を活性化するマイトジェンレクチンである。逆に、PMA/イオノマイシンは、TCR下流経路を直接活性化することによりT細胞を刺激して、表面受容体刺激の必要性を回避する。従って、TCR/CD3欠損T細胞は、PMA/イオノマイシンに応答するが、PHAには応答しないものと予想された。
【0634】
TCR除去T細胞の機能を評価するため、初代ヒトT細胞をCRISPR/Cas9で編集してTCR成分TCRα又はCD3εを破壊し、2つの刺激レジメンで処理し、以下に記載する一連のアッセイを用いて活性化、増殖、脱顆粒、及びサイトカイン産生に関して試験した。初めに初代ヒトT細胞に、Cas9又はAAVS1(GGGGCCACTAGGGACAGGAT(配列番号1301))、TRAC(AGAGCAACAGTGCTGTGGCC(配列番号76))、若しくはCD3ε(GGGCACTCACTGGAGAGTTC(配列番号226))を標的とするCas9:sgRNA RNP複合体を電気穿孔した。トランスフェクションの6日後、細胞をCD3ε染色し、CD3εレベルが低い又は存在しない細胞のパーセンテージをフローサイトメトリーによって評価した。結果から、Cas9:TRAC sgRNA又はCas9:CD3ε sgRNAのトランスフェクションによってCD3の表面提示が大きく低下したことが示された。Cas9:TRAC sgRNA及びCas9:CD3ε sgRNAトランスフェクト細胞におけるCD3
−集団は、それぞれ89%及び81%であった一方、Cas9単独又はCas9:AAVS1 sgRNAトランスフェクト細胞では、そのパーセンテージは10%及び5%であった。これにより、CRISPR/Cas9編集細胞が欠損TCR/CD3複合体を有したことが確認された。これらの細胞を、続くアッセイ実験における評価用の入力として供した。本実施例で使用したgRNAは、以下のスペーサー配列を含む:AAVS1 gRNAスペーサー(GGGGCCACUAGGGACAGGAU(配列番号1308))、TRAC gRNAスペーサー(AGAGCAACAGUGCUGUGGCC(配列番号152))、及びCD3ε gRNAスペーサー(GGGCACUCACUGGAGAGUUC(配列番号351))。
【0635】
CD69活性化アッセイ
CD69は、マイトジェン及び抗原刺激に対するT細胞応答性の代用マーカーであり、T細胞活性化の尺度として用いられている。トランスフェクションの7日後、細胞をPHA−L(Ebioscience、San Diego、CA)又はPMA/イオノマイシンのいずれかで刺激し、更に2日間成長させた。次に細胞をAPCマウス抗ヒトCD69抗体(L78、BD Biosciences、San Jose、CA)で染色し、CD69のレベルをフローサイトメトリーによってアッセイした(
図6A)。PHA処理もPMA/イオノマイシン処理も受けなかった対照細胞ではCD69発現がほとんどなかったことから、T細胞活性化がなかったことが示唆される。インタクトなTCR/CD3複合体を含む細胞(モックトランスフェクト群[−]、Cas9単独群、及びCas9:AAVS1 sgRNAトランスフェクト群)は、程度は様々ながら、PHA処理後又はPMA/イオノマイシン処理後のいずれにおいてもCD69の誘導発現を呈した。対照的に、Cas9:TRAC(AGAGCAACAGTGCTGTGGCC(配列番号76)を標的とする)で処理した細胞も、Cas9:CD3ε(GGGCACTCACTGGAGAGTTC(配列番号226)を標的とする)で処理した細胞も、PHA処理後に誘導CD69発現を示さなかったことから、これらの細胞内でTCR/CD3ε複合体が破壊されたことが指摘される。しかしながら、両方の処理群とも、PMA/イオノマイシン処理後にCD69の強力な発現を呈した(
図6A)。このことから、TCR/CD3欠損T細胞はTCRアゴニストに対する応答の鈍化を示すが、TCRの下流のシグナルによって活性化される能力は保持したことが実証された。
【0636】
CFSE増殖アッセイ
TCR/CD3欠損細胞における細胞増殖を更に調べるため、TCR/CD3欠損細胞におけるPHA及びPMA/イオノマイシンに対する応答を評価した。カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)は、リンパ球増殖のモニタリングに使用される細胞透過性フルオレセイン系色素である。トランスフェクション後、細胞を500nM CFSEによって37℃で15分間標識した。洗浄後、細胞を血清及びサイトカイン不含培地に4日間プレーティングした。CFSEレベルをフローサイトメトリーによってFITCチャンネルで測定した(
図6A)。PHA処理もPMA/イオノマイシン処理も受けなかった対照細胞は、非分裂細胞で予想されるCFSE強度を示した。モックトランスフェクト細胞(Cas9単独)及びCas9:AAVS1 sgRNAトランスフェクト群ではPHA処理及びPMA/イオノマイシン処理の両方がCFSE強度のシフトを引き起こしたことから、細胞表面TCR及びCD3を有する細胞において細胞増殖が刺激されることが指摘される。予想どおり、Cas9:TRAC sgRNA(AGAGCAACAGTGCTGTGGCC(配列番号76)を標的とする)、及びCas9:CD3ε sgRNA(GGGCACTCACTGGAGAGTTC(配列番号226)を標的とする)トランスフェクト細胞はPHA処理後に細胞増殖を呈しなかったが、PMA/イオノマイシン処理後には強力な増殖を呈した。この結果は、Cas9:TRAC sgRNA及びCas9:CD3ε sgRNA処理がTCR/CD3複合体を通じた細胞シグナル伝達を破壊するという本発明者らの以前の観察と一致した。
【0637】
CD107a及び細胞内サイトカインのフローサイトメトリー判定
他の2つのT細胞活性化イベント、脱顆粒及びサイトカイン産生についてもまた、フローサイトメトリーを用いて調べた。トランスフェクト細胞は、血清及びサイトカイン不含培地中で未処理、PHA処理又はPMA処理のいずれかであった。一斉に、細胞をGolgi Plug(BD Biosciences、San Jose、CA)、Golgi Stop(BD Biosciences、San Jose、CA)及びPE−Cy7抗ヒトCD107a抗体(H4A3、Biolegend、San Diego、CA)と共にインキュベートした。処理の4時間後、細胞を以下の抗体、抗ヒトCD3(UCHT1、BioLegend、San Diego、CA)、PE/Cy7抗ヒトCD8(SK1、BioLegend、San Diego、CA)、及びAPC/Cy7抗ヒトCD4(RPA−T4、BioLegend、San Diego、CA)で表面染色し、BD Cytofix/Cytoperm Plusキット(BD Biosciences、San Jose、CA)を使用して固定及び透過処理した。最後に、細胞を細胞内サイトカインに関してFITC抗ヒトTNFα抗体(Mab11、Biolegend、San Diego、CA)、APCマウス抗ヒトIFNγ抗体(25723.11、BD Biosciences、San Jose、CA)、及びPEラット抗ヒトIL−2抗体(MQ1−17H12、BD Biosciences、San Jose、CA)で染色し、洗浄し、フローサイトメトリーによって分析した。
【0638】
表面発現CD107aは、刺激後のCD8+ T細胞脱顆粒のマーカーである。PHA処理もPMA/イオノマイシン処理も受けていなかった対照細胞は、最小限のCD107表面発現しか示さなかった。モックトランスフェクト群、Cas9単独群、及びCas9:AAVS1 sgRNAトランスフェクト群ではPHA処理及びPMA/イオノマイシン処理の両方がCD107a発現を誘導した。この場合もやはり、TCRα又はCD3ε欠損細胞は、PHA処理後にはベースレベルのCD107a発現を示したが、PMA/イオノマイシン処理後にCD107a発現レベルは大きく上昇した(
図6B)。このことから、PMA/イオノマイシンはTCR/CD3欠損細胞において脱顆粒を誘導可能であったが、PHAは可能でなかったことが実証された。
【0639】
同様に、モックトランスフェクト、Cas9単独、及びCas9:AAVS1 sgRNAトランスフェクト細胞では、PHA処理後又はPMA/イオノマイシン処理後のいずれにおいても細胞内サイトカインTNF、IFNγ、及びIL−2のレベルの亢進が観察された(
図6B)。
【0640】
まとめると、これらの実験から、細胞増殖、脱顆粒及びエフェクターサイトカイン産生によって示されるとおり、遺伝子編集細胞においてTCR/CD3複合体が破壊されるとともに、TCR/CD3欠損細胞ではTCRの下流のシグナル伝達がインタクトなまま保たれることが実証された。
【0641】
実施例4−細胞におけるMHC II成分の編集
本例は、MHC II成分(CIITA又はRFX5)を編集することの初代ヒトT細胞におけるインビトロでの機能的影響を実証する。結果は
図7に示す。
【0642】
初代ヒトT細胞に、AAVS1(GGGGCCACTAGGGACAGGAT(配列番号1301))、B2M(GCTACTCTCTCTTTCTGGCC(配列番号417))、CIITA(GGTCCATCTGGTCATAGAAG(配列番号546))、RFX5−1(TACCTCGGAGCCTCTGAAGA(配列番号1305))、RFX5−5(TGTGCTCTTCCAGGTGGTTG(配列番号1306))、及びRFX5−10(ATCAAAGCTCGAAGGCTTGG(配列番号1307))を標的とする合成sgRNAを含有するRNPをトランスフェクトした。トランスフェクション後4〜6日で細胞をPMA/イオノマイシンによって一晩処理し、MHC−IIの表面レベルをフローサイトメトリー(Tu39、PE−Cy7コンジュゲート、Biolegend)によって評価した。試験試料当たりのMHC−II誘導の量(蛍光強度中央値[MFI]によって評価される)を、対照(AAVS1)トランスフェクト細胞に存在するMHC−IIの量に対して正規化した(
図7)。トランスフェクション及びPMA/イオノマイシン誘導後に残ったMHC−II+細胞のパーセンテージが左のパネルに示される。データは、それぞれ単一又は二重sgRNAトランスフェクト細胞について、4又は3個体の生物学的ドナーからのものである。統計的有意性はANOVAとチューキーの事後補正を用いて評価した。
【0643】
加えて、Cas9と、CIITA又はRFX5を標的とするsgRNAとを含有するRNPが、誘導された初代ヒトT細胞におけるMHC−IIの表面レベルを減少させる。
【0644】
本実施例で使用したgRNAは、以下のスペーサー配列を含む:AAVS1 gRNAスペーサー(GGGGCCACUAGGGACAGGAU(配列番号1308));B2M gRNAスペーサー(GCUACUCUCUCUUUCUGGCC(配列番号466));CIITA gRNAスペーサー(GGUCCAUCUGGUCAUAGAAG(配列番号738))、RFX5−1 gRNAスペーサー(UACCUCGGAGCCUCUGAAGA(配列番号1309))、RFX5−5 gRNAスペーサー(UGUGCUCUUCCAGGUGGUUG(配列番号1310))、及びRFX5−10 gRNAスペーサー(AUCAAAGCUCGAAGGCUUGG(配列番号1311))。
【0645】
実施例5−細胞における免疫チェックポイント成分の編集
初代ヒトT細胞に、PD−1(CGCCCACGACACCAACCACC(配列番号916)を標的とし且つ配列番号1108のスペーサー配列)を含む合成sgRNAを含有するRNP又は対照をトランスフェクトした。トランスフェクションの4〜6日後に細胞をPMA/イオノマイシンで処理し、PD−1の表面レベルをフローサイトメトリー(EH12.2H7、BV421コンジュゲート、Biolegend)によって評価した。試験試料当たりのPD1誘導量(蛍光強度中央値[MFI]によって評価される)を、未治療の対照トランスフェクト細胞に存在するPD1の量に対して正規化した。データは、それぞれ単一又は二重sgRNAトランスフェクト細胞について、3個体の生物学的ドナーからのものである。統計的有意性はスチューデントt検定を用いて評価した。
【0646】
加えて、Cas9と、PD1を標的とするsgRNAとを含有するRNPが、誘導された初代ヒトT細胞における表面PD1レベルを減少させる。
【0647】
実施例6−細胞における多重編集
本例は、初代ヒトT細胞における効率的な多重編集及び標的タンパク質ノックアウトを実証する。結果は
図8に示す。
【0648】
初代ヒトT細胞に、指示遺伝子を標的とする合成sgRNAを含有するRNPをトランスフェクトした。同じ細胞における2つ以上の遺伝子及びそのタンパク質産物のノックアウト(多重編集)のため、個々にsgRNAと予め複合体化した各1μM(最終濃度)のCas9をヌクレオフェクション混合物に加えた。指示タンパク質の表面レベルをトランスフェクションの4〜6日後にフローサイトメトリーによって測定した。使用した抗体には、BV510抗ヒトCD3(UCHT1、BioLegend、San Diego、CA)、PE抗ヒトTCRαβ(BW242/412、Miltenyi Biotec、Auburn、CA)、APC抗ヒトB2M(2M2、Biolegend)、FITC抗ヒトCD52(097、Biolegend)が含まれる。各記号が個々の生物学的ドナーからのデータであり、ここでは試験RNP処理細胞を対照RNP処理細胞と比較している。統計的有意性はスチューデントt検定によって評価した。
【0649】
本例で使用したガイドを、それぞれの標的及びスペーサー配列と共に以下に挙げる:
TRAC AGAGCAACAGTGCTGTGGCC(配列番号76);
AGAGCAACAGUGCUGUGGCC(配列番号152)
B2M GCTACTCTCTCTTTCTGGCC(配列番号417);
GCUACUCUCUCUUUCUGGCC(配列番号466)
CD3ε GGGCACTCACTGGAGAGTTC(配列番号226);
GGGCACUCACUGGAGAGUUC(配列番号351);
CD52 TTACCTGTACCATAACCAGG(配列番号1303)
UUACCUGUACCAUAACCAGG(配列番号1312)
CIITA GGTCCATCTGGTCATAGAAG(配列番号546)
GGUCCAUCUGGUCAUAGAAG(配列番号738)
AAVS1 GGGGCCACTAGGGACAGGAT(配列番号1301)
GGGGCCACUAGGGACAGGAU(配列番号1308)
【0650】
CRISPR/Cas9を使用した三重ノックアウトの実現可能性を評価するため、初代T細胞(5×10
6)に、3つの別個の遺伝子:TRAC、B2M、及びCIITAを標的とする予め形成したRNPをトランスフェクトした。AAVS1を標的とするsgRNAを含有するRNPを陰性対照として供した。4日後、細胞を半分ずつ2つに分けた:一方の半分は抗CD3/抗B2Mビオチン抗体で処理し、続いてストレプトアビジンマイクロビーズ(Miltenyi Biotec、Cambridge、MA)を使用して精製し、他方の半分は処理しないままとした。精製した(pur)及び未精製の(un)細胞を両方ともTIDEによって分析した。TIDE分析から、この手法により対照群と比較して約36%の三重ノックアウトインデル頻度が生じたことが示され、単一の実験でCas9:sgRNA RNPを使用して3つの遺伝子を同時にノックアウトすることが可能であることがDNAレベルで判明した(
図15)。
【0651】
加えて、
図15のデータは、Cas9:合成sgRNA(RNP)をトランスフェクトした初代ヒトT細胞で効率的な単一、二重、及び三重遺伝子ノックアウトを達成し得ることを実証している。
【0652】
実施例7−細胞におけるHDR媒介性トランス遺伝子挿入
本例は、AAV6ドナーDNA鋳型を伴うCas9:sgRNA RNP媒介性二本鎖ゲノムDNA切断による相同組換え修復(HDR)を用いた初代ヒトT細胞における効率的なトランス遺伝子挿入を実証する。
【0653】
実施例2に記載されるとおり、初代ヒトT細胞を単離し、抗CD3/CD28ビーズで活性化した。3日後にビーズを取り除いた。4日目、T細胞(5×10
6)にCas9単独又はCas9:AAVS1 sgRNA(GGGGCCACTAGGGACAGGAT(配列番号1301)を標的とする)RNPを電気穿孔した。トランスフェクションの45分後、1×10
6個のCas9処理又はRNP処理細胞をモック形質導入するか(対照)、MND−GFPカセットが隣接する400(HA 400)又は700(HA700)bpのいずれかの長さのAAVS1相同性アームを有するAAV6−MND−GFPウイルスベクターで形質導入するかのいずれかとした(
図10)。AAV6による形質導入は50,000ウイルスゲノム/細胞のMOIで実施した。陰性対照として、B2M遺伝子を標的とするsgRNA(GCTACTCTCTCTTTCTGGCC(配列番号417)を標的とする)を含有するRNPを細胞にトランスフェクトした。AAV6−MND−GFPウイルスはB2Mゲノム切断部位の周りの相同性を含まないため、B2M RNP処理細胞で観察される任意の組込みは、非HDR媒介性挿入の結果であり得た。AAVS1による切断後にGFP発現が観察された一方、B2Mガイドの使用ではバックグラウンドを上回るものは観察されなかったことから、非HDR媒介性挿入はないことが指摘される。
【0654】
AAV6/RNP媒介性HDRの効率を評価するため、PCR分析(
図11)を実施した。RNP切断部位に隣接するフォワード及びリバースプライマーを使用して2.3kbの領域を増幅した。PCR産物をアガロースゲルで分離した。4kbのバンドが、HDRの結果としての遺伝子座へのMND−GFP配列(1.7kb)の挿入を示す。AAVS1遺伝子座を標的とするRNPの存在下においてのみ4kbバンドが明らかであったことから、HDRによるトランス遺伝子の挿入の成功が指摘される。AAVS1遺伝子座に対する700bpの隣接相同性アーム(HA700)を含むMND−GFPコンストラクトは、400bpの相同性アーム(HA400)よりも効率的なHDRにつながるように見えた。これらのデータは、Cas9:sgRNA RNP及びAAV6送達ドナーDNA鋳型によって初代ヒトT細胞へのトランス遺伝子挿入のターゲティングを実施することの実現可能性を実証している。本実施例で使用したgRNAは、以下のスペーサー配列を含む:AAVS1 gRNAスペーサー(GGGGCCACUAGGGACAGGAU(配列番号1308));及びB2M gRNAスペーサー(GCUACUCUCUCUUUCUGGCC(配列番号466))。
【0655】
実施例8−細胞におけるHDR媒介性同時トランス遺伝子挿入
本例は、初代ヒトT細胞におけるHDRを促進するためのCas9:sgRNA RNP(二本鎖切断誘導用)及びAAV6送達ドナー鋳型による効率的なトランス遺伝子挿入及び同時の遺伝子ノックアウトを実証する。
【0656】
初代ヒトT細胞をCD3/CD28磁気ビーズで活性化した(上記のとおり)。3日後、活性化ビーズを取り除いた。翌日、5×10
6細胞に、AAVS1(1つのRNP)、TRAC+B2M(2つの別個に複合体化したRNP)、又はTRAC+B2M+AAVS1(3つの別個に複合体化したRNP)のいずれかを標的とするsgRNAを含むRNP複合体を電気穿孔した。電気穿孔の1時間後、細胞に、MND−GFPカセットに隣接する700bpの長さのAAVS1相同性アームを有するAAV6−MND−GFPウイルスベクター(AAV6(HA700−GFP)を感染させるか、又は感染させなかった(
図11)。操作後7日で細胞を以下の抗体、PE抗ヒトTCRαβ(BW242/412、Miltenyi Biotech、Auburn、CA)、APC抗ヒトB2M(2M2、Biolegend)及びGFP検出で染色することによりフローサイトメトリーによって分析した。TRAC+B2Mを標的とするRNPで処理した細胞は、AAV6−HA700−GFPに感染させたとき、単一ノックアウト又は二重ノックアウトのいずれの細胞においてもTRAC及びB2M表面発現の喪失を示したが、GFP発現の喪失は示さなかった。TRAC+B2M処理細胞にAAV6−HA700−GFPと共にAAVS1を標的とするRNPも電気穿孔したとき、単一ノックアウト及び二重ノックアウトの両方の細胞でGFP発現は明らかで、これはMND−GFPトランス遺伝子のHDR媒介性部位特異的挿入を示すものであった。最後に、AAVS1単一RNPトランスフェクト細胞は高レベルのトランス遺伝子発現を示したが、TCR又はB2M表面発現の喪失は示さなかった。3個体の互いに異なる生物学的ドナーから単離した活性化T細胞で同じ実験を繰り返した(
図12)。このデータは、Cas9:sgRNA RNPの誘導による二本鎖切断及び続くAAV6送達DNA鋳型(切断部位との相同性を含む)からのHDRによる高効率トランス遺伝子挿入が、最大2つの標的遺伝子の同時ノックアウトと、続く単一細胞レベルでの表面タンパク質発現の喪失と共に起こり得ることを示している。
【0657】
本例で使用したガイドは、以下の配列を標的とする:
TRAC:AGAGCAACAGTGCTGTGGCC(配列番号76)
B2M:GCTACTCTCTCTTTCTGGCC(配列番号417)
AAVS1:GGGGCCACTAGGGACAGGAT(配列番号1301)
【0658】
本明細書で使用されるsgRNA配列:TRAC配列番号686、B2M配列番号688及びAAVS1配列番号690、及び以下のとおり修飾することができる:TRAC配列番号685、B2M配列番号687及びAAVS1配列番号689。本実施例で使用したgRNAは、以下のスペーサー配列を含む:AAVS1 gRNAスペーサー(GGGGCCACUAGGGACAGGAU(配列番号1308));TRAC gRNAスペーサー(AGAGCAACAGUGCUGUGGCC(配列番号152));及びB2M gRNAスペーサー(GCUACUCUCUCUUUCUGGCC(配列番号466))。
【0659】
実施例9−CRISPR/Cas9媒介性のTCR及びMHC I成分ノックアウト並びにキメラ抗原受容体コンストラクトの発現
本例は、TCR及びMHC Iの発現を欠く、且つCD19+癌を標的とするキメラ抗原受容体を発現する同種異系ヒトT細胞のCRISPR/Cas9及びAAV6による作製について記載する。
【0660】
CRISPR/Cas9によって生成される同種異系CAR−T細胞の概略的描画を
図13A及び
図13Bに示す。
【0661】
CRISPR/Cas9を使用してTCRa定常領域遺伝子(TRAC)のコード配列を破壊(ノックアウト[KO])した。この破壊によってTCRの機能喪失がもたらされ、遺伝子編集されたT細胞が非アロ反応性且つ同種異系移植に好適なものとなり、移植片対宿主病のリスクが最小限となる。TRAC遺伝子座におけるDNA二本鎖切断を、キメラ抗原受容体カセット(±遺伝子発現用の調節エレメント)が隣接するTRAC遺伝子座に対する右及び左相同性アームを含むAAV6送達DNA鋳型による相同組換え修復によって修復した。宿主対移植片(宿主対CAR−T)を低下させ、及び同種異系CAR−T産物の持続性を可能にするため、CRISPR/Cas9成分によってB2M遺伝子を破壊した。まとめると、これらのゲノム編集により、それぞれGVH及びHVG病を低下させるTCR及びMHC Iの喪失に加えて、CD19+癌を標的とするCARの表面発現(TRAC遺伝子座から発現する)を有するT細胞が生じる。
【0662】
Cas9誘発性部位特異的DNA二本鎖切断のHDRによるCAR発現カセットの標的化したゲノム挿入を促進するためドナー鋳型を担持するAAVベクター(vetor)ゲノムの概略図を
図14に示す。
【0663】
【表36】
[この文献は図面を表示できません]
【0664】
【表37】
[この文献は図面を表示できません]
【0665】
【表38】
[この文献は図面を表示できません]
【0666】
【表39】
[この文献は図面を表示できません]
【0667】
【表40】
[この文献は図面を表示できません]
【0668】
【表41】
[この文献は図面を表示できません]
【0669】
【表42】
[この文献は図面を表示できません]
【0670】
【表43】
[この文献は図面を表示できません]
【0671】
【表44】
[この文献は図面を表示できません]
【0672】
【表45】
[この文献は図面を表示できません]
【0673】
CTX−131(配列番号1348)は、その発現がMNDプロモーターによってドライブされる、且つピコルナウイルス2A配列によって任意の潜在的下流転写物(この例ではGFPが示される)に翻訳的に連結されている、合成3’ポリアデニル化配列(pA)を有するCAR(FMC63−CD8[tm]−CD28[共刺激ドメイン]−CD3z)コンストラクト(配列番号1316)を含む。CTX−131は、AAVS1遺伝子座におけるゲノムCas9/sgRNA標的部位に隣接する相同性アームを含む。CTX−132(配列番号1349)はこのコンストラクトと同じだが、AAVS1に対する相同性アームを欠くバージョンである。
【0674】
CTX−133(配列番号1350)は、その発現がEF1aプロモーターによってドライブされる、且つピコルナウイルス2A配列によって任意の潜在的下流転写物(この例ではGFPが示される)に翻訳的に連結されている、合成3’ポリアデニル化配列(pA)を有するCAR(FMC63−CD8[tm]−CD28[共刺激ドメイン]−CD3z)コンストラクト(配列番号1316)を含む。CTX−133は、TRAC遺伝子座におけるゲノムCas9/sgRNA標的部位に隣接する相同性アームを含む。CTX−134(配列番号1351)はこのコンストラクトと同じだが、TRACに対する相同性アームを欠くバージョンである。CTX−138(配列番号1354)は、2A−GFP配列を欠くバージョンのCTX−133であり、及び500bp隣接相同性アームが800bp隣接相同性アームに置き換えられている。CTX−139(配列番号1355)は、TRAC左相同性アームを678bp相同性アーム(TRAC−LHA(680bp))に置き換えたバージョンのCTX−138である。
【0675】
CTX−140(配列番号1356)は、その発現が内因性TCR調節エレメントによってドライブされる、且つピコルナウイルス2A配列によって任意の潜在的上流TCRa転写物に翻訳的に連結されている、合成3’ポリアデニル化配列(pA)を有するCAR(FMC63−CD8[tm]−CD28[共刺激ドメイン]−CD3z)コンストラクト(配列番号1316)を含む。CTX−140は、TRAC遺伝子座におけるゲノムCas9/sgRNA標的部位に隣接する相同性アームを含む(CTX−133、CTX−138、及びCTX−139とは異なる)。CTX−141(配列番号1357)はCTX−140コンストラクトと同じバージョンであり、また任意の潜在的下流配列にも追加的な2A配列によって翻訳的に連結されている(この例ではGFPが示される)。
【0676】
CTX−139.1コンストラクト(配列番号1583)はCTX−139コンストラクトと同様のバージョンであり、しかしながら左相同性アーム(LHA)配列が代替的800bp TRAC−LHAに置き換えられており、相同組換え時に一層大きい欠失を作成する。CTX−139.2はCTX139.1と同様であり、しかし相同配列をエクソン1_T7ガイド切断部位のより近くに持っていくが、エクソン1_T7ガイド標的配列が欠損している伸長20bp LHA及び105bp RHAを有する。CTX−139.3はCTX−139.2と同様で、追加的な21bpがLHAに付加され且つ20bpがRHAに付加されている。CTX−139.2は全てのエクソン1_T7ガイド標的配列を含むが、対応するPAM配列に突然変異を有する。
【0677】
CTX−135(配列番号1352)は、その発現が内因性CD3E調節エレメントによってドライブされる、且つピコルナウイルス2A配列によって任意の潜在的下流転写物(この例ではGFPが示される)に翻訳的に連結されている、合成3’ポリアデニル化配列(pA)を有するCAR(FMC63−CD8[tm]−CD28[共刺激ドメイン]−CD3z)コンストラクト(配列番号1316)を含む。CTX−135は、CD3E遺伝子座におけるゲノムCas9/sgRNA標的部位に隣接する700bp相同性アームを含む。CTX−136(配列番号1353)はCTX−135の一つのバージョンであるが、CD3Eに対する相同性アームを欠いている。
【0678】
CRISPR/Cas9媒介性のTCR及びMHC I成分ノックアウト、キメラ抗原受容体(CAR)コンストラクトの発現、及び保持されるエフェクター機能
本例は、TCR及びMHC Iの発現を欠く、CD19+癌を標的とするキメラ抗原受容体を発現する、及びT細胞エフェクター機能を保持している同種異系ヒトT細胞のCRISPR/Cas9及びAAV6による作製について記載する。
【0679】
Cas9:sgRNA RNAによる相同組換え修復(HDR)を用いた初代ヒトT細胞におけるトランス遺伝子挿入及び同時の遺伝子ノックアウトを上記の実施例8及び9に記載したとおり実施した。初めに初代ヒトT細胞に、TRAC(AGAGCAACAGTGCTGTGGCC(配列番号76))、B2M1(GCTACTCTCTCTTTCTGGCC(配列番号417))、又はAAVS1(GGGGCCACTAGGGACAGGAT(配列番号1301))を標的とするCas9又はCas9:sgRNA RNP複合体を電気穿孔した。本実施例で使用したgRNAは、以下のスペーサー配列を含む:AAVS1 gRNAスペーサー(GGGGCCACUAGGGACAGGAU(配列番号1308));TRAC gRNAスペーサー(AGAGCAACAGUGCUGUGGCC(配列番号152));及びB2M gRNAスペーサー(GCUACUCUCUCUUUCUGGCC(配列番号466))。
【0680】
T細胞染色を上記の実施例3に記載したとおり実施し、但し1:5希釈のビオチン標識された抗マウスFab
2抗体(115−065−006、Jackson ImmunoRes)によって細胞を4℃で30分間染色した点は変更した。次に細胞を洗浄し、ストレプトアビジンコンジュゲートで染色した。フローサイトメトリー結果は
図17A及び
図17Bに示す。
【0681】
次に、操作された細胞がRajiリンパ腫細胞を溶解する能力、及びインターフェロンγ(IFNg又はIFNγ)を産生する能力を細胞死滅アッセイ及びELISAを用いて分析した。簡潔に言えば、細胞死滅アッセイ及びELISAは、黒色壁付き96ウェルプレート、100ugスタウロスポリン(Fisher 1285100U)、細胞刺激カクテル(PMA)(Fisher 501129036)、トリパンブルー(Fisher 15250061)、PBS、及びRaji培地(10%熱失活ウシ胎仔血清(Sigma F4135−500ML、15L115))及びRPMI 1640(Life Technologies 61870036))又はK562培地(10%熱失活ウシ胎仔血清(Sigma F4135−500ML、15L115)及びIMDM(Life Technologies 12440061)を使用して実施した。
【0682】
T細胞及びCAR−T試料を4.0×10
5/100μLの希釈となるように適切なRPMI/10%FBS中に再懸濁し、ルシフェラーゼ発現細胞を1.0×10
5/100uLで再懸濁した。再懸濁後、全ての試料を示されるとおりウェル当たり200uLの最終容積でプレーティングした。プレートを一晩インキュベートし、24時間後、プレートを10分間スピンダウンした。30μLの上清培地を収集し、新しいプレートでのIFNγ ELISA(RD Systems SIF50)に使用した。次に残りのプレート容積をルシフェラーゼアッセイ(Perkin Elmer 6RT0665)に使用した。
【0683】
AAVS1遺伝子座(AAVS1 RNP+CTX−131)又はTRAC遺伝子座(TRAC RNP+CTX−138)のいずれかから抗CD19 CARコンストラクトを発現するT細胞は、共培養アッセイにおいてRajiリンパ腫細胞を溶解させることが可能であった(
図16A、左パネル)。CAR−T細胞はRajiリンパ腫細胞の存在下でインターフェロンγ(IFNγ又はIFNg)を産生することが可能であったが、CAR陰性対照は可能でなかった(
図16A、右パネル)。CRISPR/AAVによって生成された抗CD19 CAR−T細胞は、CD19発現陰性の細胞株であるK562細胞と共培養したとき、IFNγを産生しなかった。K562をCD19を過剰発現するように作製して、AAVS1遺伝子座(AAVS1 RNP+CTX−131)又はTRAC遺伝子座(TRAC RNP+CTX−138)のいずれかから抗CD19 CARを発現するCAR−T細胞と共培養すると、CAR−T発現細胞はIFNγ産生を誘導した。
図16B(左のパネル)は、抗CD19 CARを発現するCAR−T細胞が、CD19を欠くK562細胞においてIFNγを誘導しないことを示す。しかしながら、CD19を発現するK562細胞においては、抗CD19 CARを発現するCAR−T細胞のIFNγレベルが刺激される(
図16B、右パネル)。
【0684】
図17Aは、CARコンストラクトを発現し且つTCR及びB2Mの表面発現を欠くように操作された単一細胞が、細胞をTRAC及びB2Mに対するRNPで処理し、且つTRAC遺伝子座に対する相同配列が隣接したCARコンストラクトを含むドナー鋳型によって媒介されるCARコンストラクトの部位特異的組込み及び発現を送達するAAV6(CTX−138)に感染させたときのみ、それを行ったことを実証する。
図17B及び
図17Cに示されるとおり、CAR
+TCR
−B2M
−であるCD4及びCD8 T細胞の正常な比率が観察された。操作された細胞は、
図17Dに示されるとおり、電気穿孔及びAAV6感染の8日後に生存能を有したままであった。
【0685】
図18A及び
図18Bは、操作された細胞が、T細胞をCD19発現K562細胞と共培養したとき、B2Mのノックアウトを含む又は含まないTRAC遺伝子座に組み込まれた抗CD19 CARを発現するようにされた細胞においてのみ、インターフェロンγ(IFNg又はIFNγ)を産生し、その産生レベルを増加させたことを実証する。
図18Cは、CD19+ Rajiリンパ腫細胞株と指示のとおり処理したT細胞との共培養における増加したIFNγ産生を実証する。
【0686】
種々のTRAC sgRNAを有するrAAVコンストラクトを使用したCAR発現
本例は、TCR及びMHC Iの発現を欠く且つキメラ抗原受容体を発現する同種異系ヒトT細胞においてドナー設計及びガイド選択がCAR発現に及ぼす効果について記載する。細胞は以下のsgRNAを使用して調製した:TRAC gRNAスペーサー「エクソン1_T32」:AGAGCAACAGUGCUGUGGCC(配列番号152);sgRNA(配列番号1345);TRAC gRNAスペーサー「エクソン1_T7」(GAGAAUCAAAAUCGGUGAAU(配列番号88);sgRNA(配列番号1588)、及び以下の表に示すrAAVコンストラクト。
【0687】
AAVコンストラクトに使用される相同性アームは、一層効率的にgRNAと対になり及び/又はトランス遺伝子挿入後に標的遺伝子座(例えば:TRAC遺伝子座)に欠失又は突然変異を誘導するように設計することができる。例えば、相同性アームは、1つ以上のスペーサー配列に隣接してHDRによるトランス遺伝子挿入後に1つ又は複数のスペーサー配列の欠失が生じるように設計することができる(例えば:CTX−138)。或いは、相同性アームは、塩基対変化を生じさせてPAM又はスペーサー配列に突然変異を生成するTRAC配列の改変を伴い設計することができる。特定のガイドRNAと対になった特異的ガイド設計は、CAR発現を向上させ得る。
【0688】
【表46】
[この文献は図面を表示できません]
【0689】
【表47】
[この文献は図面を表示できません]
【0690】
実施例10−T細胞におけるオンターゲットインデルプロファイルの分析
以下のガイドを使用した遺伝子編集後にTRAC及びB2M遺伝子座のオンターゲットアンプリコン分析を行った:
B2Mスペーサー:GCUACUCUCUCUUUCUGGCC(配列番号466);sgRNA(配列番号1343
TRACスペーサー:AGAGCAACAGUGCUGUGGCC(配列番号152);sgRNA(配列番号1345)
【0691】
遺伝子編集後、TRAC−/B2M−/抗CD19 CAR+細胞におけるTRAC及びB2M遺伝子座の周りのオンターゲットアンプリコン分析を行った。
【0692】
2×Kapa HiFi Hotstart Mastermix(Kapa Biosystems、Wilmington、MA)を使用して初期PCRを実施した。50ngの入力gDNAを300nMの各プライマーと組み合わせた。TRAC遺伝子座についてはTRAC_F及びTRAC_Rプライマーを対にし、B2M遺伝子座の増幅にはB2M_F及びB2M_Rプライマーを対にした(表##)。
【0693】
【表48】
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【0694】
TRAC
−/B2M
−/CAR+ T細胞を生じさせるための遺伝子編集後におけるT細胞集団中のB2M遺伝子座の分析の結果、B2M遺伝子座において以下のインデル頻度及び編集された遺伝子配列が得られる(欠失はダッシュ記号とし、及び挿入は太字である)。
【0695】
【表49】
[この文献は図面を表示できません]
【0696】
TRAC
−/B2M
−/CAR+ T細胞を生じさせるための遺伝子編集後におけるT細胞集団中のTRAC遺伝子座の分析の結果、CAR挿入のないT細胞のTRAC遺伝子座において以下のインデル頻度及び編集された遺伝子配列が得られる(欠失はダッシュ記号とし、及び挿入は太字である)。
【0697】
【表50】
[この文献は図面を表示できません]
【0698】
実施例11−B細胞悪性腫瘍に対するCRISPR−Cas9による部位特異的同種異系CD19 CAR−T細胞の作製
CRISPR/Cas9技術は、CD19陽性悪性腫瘍の治療に向けた移植片対宿主病(GVHD)の可能性が低下し且つ拒絶反応の可能性が低下した抗CD19同種異系キメラ抗原受容体T細胞(CAR−T)の開発に適用されている。CRISPR/Cas9システムの効率は、予めスクリーニングされた健常ドナーからの均一なCAR−T産物の迅速な作製を可能にし、従って患者への効率的な送達のための「既製」療法として開発できる可能性がある。CD19を標的とする自己CAR−T療法薬はB細胞悪性腫瘍において目覚ましい奏効を示しているが、現在のところ多大な個別化された製造労力を要し、製造不良を被り得る。加えて、こうした自己CAR−Tはレトロウイルス又はレンチウイルスを使用して作製され、それらについての組込みのばらつきのある性質が不均一な産物につながり得る。遺伝子編集技術で生成された部位特異的CAR組込みを伴う同種異系又は「既製」CAR−T産物は、自己産物に見られるこうした重要な難題のうちの幾つかに対処し得る。
【0699】
初代ヒトT細胞においてCRISPR−Cas9技術を利用して、多重ゲノム編集によって同種異系CAR−T細胞を作製した。Cas9リボ核タンパク質(RNP)及びAAV6送達ドナー鋳型による相同組換え修復(HDR)を利用することにより、単一T細胞におけるCARの部位特異的組込み及び同時の多重遺伝子編集のためのロバストなシステムが開発されている。
【0700】
CRISPR/Cas9編集技術では、移植片対宿主病(GVHD)を大幅に減じることを目的とした、健常ドナーからのヒト初代T細胞におけるTCR表面発現の約98%の低下を伴うTCRα遺伝子(TRAC)の定常領域の高頻度ノックアウトが実現した。全体的な効力の増加につながる可能性のある患者における持続性の増加を目的とした、β−2ミクログロブリン(B2M)遺伝子の高頻度ノックアウトもまた達成することができた。約80%のT細胞で、いかなる後続の抗体ベースの精製又は集積もなしにTRAC/B2M二重ノックアウト頻度が達成されている。B2M遺伝子のノックアウトに加えて、AAV6送達ドナー鋳型を使用した相同組換え修復によって作製された、破壊されたTRAC遺伝子座の範囲内からCD19特異的CARを発現するヒトT細胞が、一貫して高効率で作製されている。この部位特異的CAR組込みは、可能性のあるCD3
+CAR
+細胞のアウトグロースから保護し、GVHDのリスクを更に低減する一方、レトロウイルス又はレンチウイルス送達機構に関連する挿入突然変異誘発のリスクもまた低減する。このような操作された同種異系CAR−T細胞は、CD19依存的T細胞サイトカイン分泌及び強力なCD19特異的癌細胞溶解を示す。
【0701】
本発明者らは、CRISPR−Cas9システムによるゲノム編集を用いて、CD19発現ヒト癌の患者に対して強力且つ特異的な抗癌効果を実証する同種異系又は「既製」CAR−T細胞産物(例えば:TC1)を効率的に作成することが可能である。より具体的には、及び本明細書において実証されるとおり、高効率編集(例えば、50%超のTRAC
−/B2M
−/抗CD19CAR+T細胞効率(efficiciency))(
図39)、CD19特異的エフェクター機能(
図35及び
図41)を呈し、CD19
+白血病又はリンパ腫細胞をインビトロ及びインビボで死滅させ(
図35及び
図42)、及びサイトカインの非存在下で増殖しない(
図23)同種異系抗CD19 CAR−T産物(
図40)の作製。加えて、オフターゲットプロファイルは、開発中の他の遺伝子編集T細胞療法薬からの結果と一致している。
【0702】
実施例12−NOGマウスでの皮下Rajiヒトバーキットリンパ腫(Burkett’s Lymphoma)腫瘍異種移植片モデルにおけるCAR−T細胞の有効性を決定するための用量漸増試験
本例では、NOGマウスにおける皮下Rajiヒトバーキットリンパ腫(Burkett’s Lymphoma)腫瘍異種移植片モデルに対するCAR−T細胞の有効性を判定した。Cas9:sgRNA RNAによる相同組換え修復(HDR)を用いた初代ヒトT細胞におけるトランス遺伝子挿入及び同時の遺伝子ノックアウトを上記の実施例8〜10に記載したとおり実施して、TCR及びB2M表面発現を欠く細胞を作製し、同時に抗CD19 CARコンストラクトを発現させた(TRAC
−/B2M
−CD19CAR+細胞)。初めに初代ヒトT細胞にCas9又はTRAC(AGAGCAACAGTGCTGTGGCC(配列番号76)及びB2M1(GCTACTCTCTCTTTCTGGCC(配列番号417))を標的とするCas9:sgRNA RNP複合体を電気穿孔した。TRAC遺伝子座におけるDNA二本鎖切断を、キメラ抗原受容体カセット(±遺伝子発現用の調節エレメント)に隣接するTRAC遺伝子座に対する右及び左相同性アームを含有するAAV6送達DNA鋳型(CTX−138;配列番号675)による相同組換え修復によって修復した。結果として得られた修飾T細胞(TC1)はTRAC
−/B2M
−CD19CAR+である。CD19+リンパ腫細胞株(Raji)によって引き起こされる疾患を修飾TRAC
−/B2M
−CD19CAR+ T細胞が改善する(ameleriote)能力について、Translational Drug Development,LLC(Scottsdale、AZ)が採用している方法を用いてNOGマウスで判定した。端的には、試験開始の5〜7日前、換気付きマイクロアイソレーターケージで無菌条件下に維持した12匹の5〜8週齢雌CIEA NOG(NOD.Cg−Prkdc
scidI12rg
tm1Sug/JicTac)マウスを個別に飼育した。1日目にマウスは5×10
6個のRaji細胞/マウスの皮下接種を受けた。マウスを表13に示されるとおりの3つの治療群に更に分割した。8日目(Raji細胞の接種から7日後)、表13に従い治療群2及び群3がTRAC
−/B2M
−CD19CAR+細胞(TC1)の単回200μl静脈内投与を受けた。本実施例で使用したgRNAは、以下のスペーサー配列を含む:TRAC gRNAスペーサー(AGAGCAACAGUGCUGUGGCC(配列番号152));及びB2M gRNAスペーサー(GCUACUCUCUCUUUCUGGCC(配列番号466))。
【0703】
【表51】
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【0704】
腫瘍容積及び体重を測定し、腫瘍容積が≧500mm
3になったとき個々のマウスを安楽死させた。
【0705】
18日目までに、データは、TC1細胞に応答して、未治療のマウスと比較したとき腫瘍容積の統計的に有意な減少を示す(
図19)。腫瘍容積に対する効果は用量依存的であった(表14);高用量のTC1細胞を投与されたマウスは、低用量のTC1細胞又は無治療のいずれを投与したマウスと比較したときも、腫瘍容積の有意な低下を示した。治療群では生存の増加もまた観察された(表14)。
【0706】
【表52】
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【0707】
上記に記載したCT1に加えて、抗CD19 scFvを含む細胞外ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)を発現し且つTRAC及びB2M遺伝子の二重ノックアウトを更に含む更なる修飾T細胞が、本明細書に記載される本例及び他の例での使用に企図される。TRAC
−/B2M
−CD19CAR+細胞の特定の実施形態において、TRAC欠失は、本明細書に記載されるTRACスペーサー配列のいずれか1つを使用して達成し得る。TRAC
−/B2M
−CD19CAR+細胞の特定の実施形態において、β2M欠失は、本明細書に記載されるB2Mスペーサー配列のいずれか1つを使用して達成し得る。
【0708】
実施例13−NOGマウスでの静脈内播種モデルにおけるCAR−T細胞有効性の評価
静脈内播種Rajiヒトバーキットリンパ腫(Burkett’s Lymphoma)腫瘍異種移植片モデル
本例では、NOGマウスにおけるRajiヒトバーキットリンパ腫(Burkett’s Lymphoma)腫瘍細胞株を使用した静脈内播種モデル(播種モデル)を使用してTRAC
−/B2M
−CD19CAR+細胞の有効性を更に実証した。このモデルに使用したTRAC
−/B2M
−CD19CAR+細胞(TC1)の生成については上記の実施例に説明しており、Translations Drug Development,LLC(Scottsdale、AZ)が採用している且つ本明細書に記載される方法を用いて播種モデルで判定した。端的には、試験開始の5〜7日前、換気付きマイクロアイソレーターケージで無菌条件下に維持した24匹の5〜8週齢雌CIEA NOG(NOD.Cg−Prkdc
scidI12rg
tm1Sug/JicTac)マウスを個別に飼育した。試験の開始時、マウスを表15に示されるとおりの5つの治療群に分割した。1日目に群2〜5のマウスが0.5×10
6個のRaji細胞/マウスの静脈内注射を受けた。マウスに静脈内接種して播種性疾患をモデル化した。8日目(Raji細胞の注射から7日後)、表15に従い治療群3〜5がTC1細胞の単回200μl静脈内投与を受けた。
【0709】
【表53】
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【0710】
試験の経過中はマウスを毎日モニタし、体重を週2回測定した。有意なエンドポイントは死亡前後までの時間であり、T細胞生着の効果もまた評価した。試験の全ての群について動物死亡率及び死亡までの時間を記録した。マウスは瀕死状態に至る前に安楽死させた。マウスは、以下の基準のうちの1つ以上を満たした場合に瀕死と定義され、犠牲にされ得る:
20%以上の体重減少が1週間を超える期間にわたって持続する;
摂食、飲水、移動並びに排尿及び/又は排便能力など、正常な生理学的機能を妨げる腫瘍;
過度の体重減少(>20%)につながる長引く過度の下痢;又は
持続的な喘鳴及び呼吸窮迫。
【0711】
動物はまた、虚脱、背弯姿勢、完全麻痺/不全麻痺、腹部膨張、潰瘍、膿瘍、発作及び/又は出血など、臨床所見により定義されるとおりの長引く又は過度の疼痛又は窮迫があった場合にも瀕死と見なした。
【0712】
皮下異種移植片(xenograph)モデル(実施例12)と同様に、播種モデルは、
図20に示されるとおり、TRAC
−/B2M
−CD19CAR+細胞(TC1)で治療したマウスにおいて統計的に有意な生存優位性を明らかにした、p<0.0001。播種モデルにおいてTC1治療が生存に及ぼす効果はまた用量依存的であった(表16)。
【0713】
【表54】
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【0714】
上記に記載した静脈内播種モデルを使用して第2の実験を行った。
【0715】
1日目に群2〜4のマウスが0.5×10
6個のRaji細胞/マウスの静脈内注射を受けた。マウスに静脈内接種して播種性疾患をモデル化した。4日目(Raji細胞の注射から3日後)、表17に従い治療群2〜4がTC1細胞の単回200μl静脈内投与を受けた。
【0716】
【表55】
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【0717】
この場合もやはり、播種モデルは、
図42Aに示されるとおり、TRAC
−/B2M
−CD19CAR+細胞(TC1)で治療したマウスにおいて統計的に有意な生存優位性を明らかにした、p=0.0016。播種モデルにおいてTC1治療が生存に及ぼす効果はまた用量依存的であった(表18)。
【0718】
【表56】
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【0719】
TC1治療に対する脾臓応答の判定
Raji注射の2〜3週間後にマウスから脾臓を採取し、脾臓におけるTC1細胞の持続性及びRaji細胞の根絶に関して組織をフローサイトメトリーによって判定した。
【0720】
フローサイトメトリー分析手順
脾臓をCチューブ内の3mLの1×DPBS CMFに移し、MACS Octo Dissociatorを使用して解離させた。試料を100ミクロンスクリーンに通して15mLコニカルチューブに移し、遠心し(1700rpm、5分、中断有りART)、1mLの1×DPBS CMFに再懸濁することにより、Guava PCAを使用してカウントした。骨髄を遠心し、1mLの1×DPBS CMFに再懸濁することにより、Guava PCAを使用してカウントした。細胞を1×DPBS CMF中に10×10
6細胞/mLの濃度で再懸濁することによりフローサイトメトリー染色した。
【0721】
標本(50μL)を1mL 1×Pharm Lyseに加え、室温(RT)で10〜12分間インキュベートした。試料を遠心し、次に1×DPBS CMFで1回洗浄した。試料を50μLの1×DPBSに再懸濁し、ヒト及びマウスTruStainと共にRTで10〜15分間インキュベートした。試料を1mL 1×DPBS CMFで1回洗浄し、50μLの1×DPBS CMFに再懸濁することにより染色した。表面抗体を加え、細胞を暗所下RTで15〜20分間インキュベートし、次に1mL 1×DPBS CMFで洗浄した。次に試料を125μLの1×DPBS CMFに再懸濁することによりフローサイトメーターで収集した。
【0722】
細胞は以下の表面抗体パネルで染色した:
【0723】
【表57】
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【0724】
電子的ゲーティング(Pl=全白血球)によって前方散乱対側方散乱に基づき細胞集団を決定した。初期機器セットアップ時にThermo FisherからのUltra Compビーズを使用して、1つのチャンネルから別のチャンネルへのスピルオーバーに対処するためのコンペンセーションを実施した。フローサイトメーターは、各チューブに10,000 CD45+イベントを収集するように設定した。フローサイトメトリーによるデータ収集はFACSCantoll(商標)フローサイトメーターを使用して実施した。データはBO FACSDiva(商標)ソフトウェア(バージョン6.1.3又は8.0.1)を使用して収集した。フローサイトメトリーデータ分析は、各細胞型の相対的割合を計測するために作成されるグラフ表示であるフローサイトグラムの形態であった。
【0725】
本例は、TC1細胞治療後に、治療上有益なTRAC
−/B2M
−CD19CAR+細胞が脾臓で持続し、組織からRaji細胞を選択的に根絶することを実証する(
図21A)。加えて、TC1細胞による治療は細胞集団のRaji誘導性の増加を呈しない(
図21B)。更に、
図22は、TRAC
−/B2M
−CD19CAR+細胞で治療したマウスの脾臓における残存ヒト細胞がCD8+であることを示している。このCD8+ T細胞はまたCD3陰性でもあり、このモデルにおける持続性のT細胞がTCR/CD3陰性のままであって、従って編集されていることを証明している。
【0726】
静脈内播種Nalm−6ヒト急性リンパ芽球性白血病腫瘍異種移植片モデル
本例では、NOGマウスにおけるNalm−6ヒト急性リンパ芽球性白血病腫瘍細胞株を使用した静脈内播種モデル(播種モデル)を使用してTRAC
−/B2M
−CD19CAR+細胞の有効性を更に実証した。このモデルに使用したTRAC
−/B2M
−CD19CAR+細胞(TC1)の生成については上記の実施例に説明しており、Translations Drug Development,LLC(Scottsdale,AZ)が採用している且つ本明細書に記載される方法を用いて播種モデルで判定した。端的には、試験開始の5〜7日前、換気付きマイクロアイソレーターケージで無菌条件下に維持した24匹の5〜8週齢雌CIEA NOG(NOD.Cg−Prkdc
scidI12rg
tm1Sug/JicTac)マウスを個別に飼育した。試験の開始時、マウスを表20に示されるとおりの5つの治療群に分割した。1日目に群2〜4のマウスが0.5×10
6個のNalm6細胞/マウスの静脈内注射を受けた。マウスに静脈内接種して播種性疾患をモデル化した。4日目(Nalm6細胞の注射から3日後)、表20に従い治療群2〜4がTC1細胞の単回200μl静脈内投与を受けた。
【0727】
【表58】
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【0728】
試験の経過中は上記に記載されるとおりマウスを毎日モニタし、体重を週2回測定した。
【0729】
Raji静脈内播種モデル(上記)と同様に、Nalm6モデルもまた、
図42Bに示されるとおり、TRAC
−/B2M
−CD19CAR+細胞(TC1)で治療したマウスにおいて統計的に有意な生存優位性を示した、p=0.0004。TC1治療がNalm6播種モデルの生存に及ぼす効果はまた用量依存的であった(表21)。
【0730】
【表59】
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【0731】
実施例14−TC1増殖はサイトカイン依存性である
TRAC
−/B2M
−CD19CAR+細胞、TC1の作製により望ましくないオフターゲット編集が生じ、有害な特性を有する細胞が生成され得る。こうした有害な特性の1つは、無制御な細胞成長であり得る。この実験では、本発明者らは、TC1細胞がサイトカイン及び/又は血清の非存在下で成長する能力を評価した。
【0732】
作製後約2週間で1×10
6個のTC1細胞をプレーティングした(0日目)。完全培地、サイトカイン(IL−2及びIL−7)不含5%ヒト血清、又は血清及びサイトカインを含まない基本培地のいずれかにおけるプレーティング後7及び14日で生細胞数を計数した。サイトカインを含まない培養液にプレーティングした細胞は14日の時点で検出されなかったことから、ゲノム編集に起因したいかなる潜在的オフターゲット効果も、TC1細胞に成長因子非依存的成長/増殖をもたらさなかったことが示唆される。
図23に示されるとおり、TC1細胞はサイトカインの存在下(例えばサイトカインを含有する完全培地)においてのみ増殖し、血清単独の存在下では増殖しなかった。従って、インビボでは、TC1細胞は任意のオフターゲットゲノム編集に起因したサイトカイン、成長因子又は抗原刺激の非存在下では成長しない可能性が高い。
【0733】
実施例15−CRISPR/Cas9媒介性のTCR及びMHC I成分ノックアウト及びCD70キメラ抗原受容体コンストラクトの発現
本例は、TCR、又はTCR及びMHC Iの発現を欠く、且つCD70+癌を標的とするキメラ抗原受容体を発現する同種異系ヒトT細胞の、CRISPR/Cas9及びAAV6による作製について記載する。
【0734】
CRISPR/Cas9によって生成される同種異系CAR−T細胞の概略的描画を
図24Aに示す。
【0735】
上記の実施例9と同様に、CRISPR/Cas9を使用してTCRa定常領域遺伝子(TRAC)のコード配列を破壊(ノックアウト[KO])した。この破壊によってTCRの機能喪失がもたらされ、遺伝子編集されたT細胞が非アロ反応性且つ同種異系移植に好適なものとなり、移植片対宿主病(GVHD)のリスクが最小限となる。TRAC遺伝子座におけるDNA二本鎖切断を、キメラ抗原受容体カセット(±遺伝子発現用の調節エレメント)が隣接するTRAC遺伝子座に対する右及び左相同性アームを含むAAV6送達DNA鋳型による相同組換え修復によって修復した。宿主対移植片(HVG)(例えば:宿主対CAR−T)を低下させ、及び同種異系CAR−T産物の持続性を可能にするため、CRISPR/Cas9成分を使用してB2M遺伝子もまた破壊した。まとめると、これらのゲノム編集により、それぞれGVHD及びHVGを低下させるTCR及びMHC Iの喪失に加えて、CD70+癌を標的とするCARの表面発現(TRAC遺伝子座から発現する)を有するT細胞が生じる。このT細胞は、TRAC
−/B2M
−CD70CAR+細胞と称することができる。
【0736】
以下の例に記載する特定の実験のため、単一ノックアウトTRAC−CD70 CAR+細胞もまた作製及び試験した。
【0737】
Cas9誘発性部位特異的DNA二本鎖切断のHDRによるCAR発現カセットの標的化したゲノム挿入を促進するためドナー鋳型を担持する組換えAAVウイルスの作製用DNAプラスミドコンストラクトの概略図を
図24Bに示す。
【0738】
【表60】
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【0739】
CTX−142及びCTX−145はCTX−138に由来するが、抗CD19 scFVコード領域の代わりに抗ヒトCD70 scFVコード領域を含むようにCARが修飾されている(
図24B);加えて、このCARは、CTX−138によってコードされるCARと比較したとき別のシグナルペプチド(例えば:CD8;MALPVTALLLPLALLLHAARP(配列番号1586))を含むように修飾される。CTX−142及びCTX−145はCTX−138に由来するが、抗CD19 scFvコード領域が抗ヒトCD70 scFvコード領域に置き換えられている(
図24B)。CTX−142とCTX−145とは、抗CD70 scFv可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)の向きが異なる。CTX−142(配列番号1358)は、その発現がEF1aプロモーターによってドライブされる合成3’ポリアデニル化配列(pA)を伴う抗CD70 CARコンストラクト(抗CD70A:CD8[シグナルペプチド]−VL−リンカー−VH−CD8[tm]−CD28[共刺激ドメイン]−CD3z)(配列番号1423)を含む。scFvは、VL鎖がVH鎖のアミノ端側にあるように構築される。CTX−142(配列番号1358)はまた、TRAC遺伝子座におけるゲノムCas9/sgRNA標的部位に隣接する800bp相同性アームも含む。CTX−145(配列番号1359)はCTX−142と同様であるが、しかしながら抗CD70 CARコンストラクト(抗CD70 CARコンストラクト(抗CD70B:CD8[シグナルペプチド]−VH−リンカー−VL−CD8[tm]−CD28[共刺激ドメイン]−CD3zを含む)(配列番号1424)はVH鎖とVL鎖との向きが入れ替わり、VHがVLのアミノ端側(animo terminal)にある。
【0740】
記載されるとおり(本明細書)、CRISPR/Cas9及びAAV成分で抗CD70 CAR T細胞を作製した。Cas9:sgRNA RNAによる相同組換え修復(HDR)を用いた初代ヒトT細胞におけるトランス遺伝子挿入及び同時の遺伝子ノックアウトを上記の実施例8及び9に記載したとおり実施した。初めに初代ヒトT細胞に、Cas9又はTRAC(AGAGCAACAGTGCTGTGGCC(配列番号76);sgRNA(配列番号1343)含有及びB2M1(GCTACTCTCTCTTTCTGGCC(配列番号417);sgRNA(配列番号1345)含有を標的とするCas9:sgRNA RNP複合体を電気穿孔した。本実施例で使用したgRNAは、以下のスペーサー配列を含む:TRAC gRNAスペーサー(AGAGCAACAGUGCUGUGGCC(配列番号152));及びB2M gRNAスペーサー(GCUACUCUCUCUUUCUGGCC(配列番号466))。
【0741】
sgRNA配列は以下のとおり修飾することができる:TRAC配列番号1342、B2M配列番号1345。
【0742】
TRAC遺伝子座におけるDNA二本鎖切断を、AAV6送達DNA鋳型(CTX−142又はCTX−145)による相同組換え修復によって修復した。
【0743】
実施例16−TRAC−CD70CAR+及びTRAC−B2M−CD70CAR+細胞を作成するための細胞におけるHDR媒介性同時トランス遺伝子挿入
本例は、初代ヒトT細胞におけるCas9:sgRNA RNP(二本鎖切断誘導用)及びCD70 CARコンストラクトを含有するAAV6送達ドナー鋳型(CTX−142又はCTX−145)による効率的なトランス遺伝子挿入及び同時の遺伝子ノックアウトを実証する。
【0744】
初代ヒトT細胞をCD3/CD28磁気ビーズで活性化した(先に実施例2に記載したとおり)。3日後、活性化ビーズを取り除いた。翌日、TRAC単独、又はTRAC+B2M(2つの別個に複合体化したRNP)のいずれかを標的とするsgRNAを含むRNP複合体を細胞に電気穿孔した。操作の7日後、先に本明細書及び実施例2に記載したとおり、細胞をフローサイトメトリーによって分析した。
【0745】
本例で使用したガイドは、以下を標的とする:
TRAC:AGAGCAACAGTGCTGTGGCC(配列番号76);及びTRAC sgRNA(配列番号1343)を含む
B2M:GCTACTCTCTCTTTCTGGCC(配列番号417);及びB2M sgRNA(配列番号1345)を含む
【0746】
本実施例で使用したgRNAは、以下のスペーサー配列を含む:TRAC gRNAスペーサー(AGAGCAACAGUGCUGUGGCC(配列番号152));及びB2M gRNAスペーサー(GCUACUCUCUCUUUCUGGCC(配列番号466))。
【0747】
sgRNA配列は以下のとおり修飾することができる:TRAC配列番号1342、B2M配列番号1344。
【0748】
図25Aは、TRAC sgRNA含有RNP及びCTX−145 AAV6で処理した細胞がより高いレベルのCARコンストラクトの発現を生じた一方、TRAC sgRNA RNP及びCTX−142 AAV6で処理した細胞がCD70 CAR発現細胞の作製においてそれほど有効でなかったことを示している。
図25Bは、TRAC sgRNA含有RNP及びCTX−145 AAV6で処理した細胞からのTRAC陰性CAR+画分で維持された正常な比率のCD4/CD8 T細胞サブセットを実証し、遺伝子操作された抗CD70 CAR T細胞の発現がT細胞サブセットの比率に影響を与えることが示唆される。
【0749】
加えて、CTX−145をコードするAAV6単独を感染させた細胞は、高レベルの抗CD70 CARを発現しない。抗CD70 CARの表面発現には、TRAC sgRNA含有RNPによって誘導される二本鎖切断及び続くCTX−145ドナー鋳型を使用したHDRによる修復が必要である(
図26)。従って、CTX−145コンストラクトはTRAC遺伝子への組込み後にのみ発現し、TRAC RNP及びAAVベクターの両方で処理しなかった細胞では発現しないものと思われる。
【0750】
図27は、上記に記載される方法を用いたTRAC遺伝子座に組み込まれたトランス遺伝子からのCD70 CARの同時発現を伴うTCR及びB2M表面発現を欠く単一ヒトT細胞(TCR−/B2M−CD70CAR+)の作製の成功を実証する。
【0751】
CD70 CAR−T細胞の作製時には、CD70を発現する細胞のパーセンテージをトラッキングした。0日目ではCD70を発現するT細胞の割合は低く、主としてCD4+である(
図36A)。これらの割合は、CD70CAR+になる細胞を除き、AAV6による電気穿孔/感染の4日後にも一貫している。CD70CAR+培養物は、CD70を発現する細胞を欠く。抗CD70−CAR+培養物におけるCD70発現の欠如と併せたCD70CAR+細胞の高い頻度は、CD70+ T細胞が抗CD70−CART細胞の標的として働き、それが抗CD70−CAR−T細胞の拡大と併せたCD70+ T細胞の兄弟殺しにつながることを示唆している(
図36B−上のパネルは
図36AからのCD70−細胞に対応する;下のパネルは
図36AからのCD70+細胞に対応する)。
【0752】
実施例17−CD70発現細胞株の生成
EF1aプロモーターの制御下にあるヒトCD70 cDNA並びにピューロマイシン発現カセット(Genecopoeia)をコードするレンチウイルス粒子にK562細胞を感染させた。細胞を2mg/mLピューロマイシンで4〜7日間選択し、Alexa fluor 647コンジュゲート抗CD70抗体(Biolegend、355115)を使用してCD70表面発現に関してアッセイした。
図28Aは、CD70を過剰発現するK562細胞(CD70+K562)における親K562細胞と比較した高いCD70表面発現、及びRaji細胞株に発現する天然CD70と同等の発現レベルを実証する。
【0753】
他の細胞株のパネルもまたCD70表面発現に関してフローサイトメトリーを用いて試験した:Nalm6(リンパ系)、293(胚腎臓)、ACHN(腎臓)、Caki−2(腎臓)、Raji(リンパ系)、Caki−1(腎臓)、A498(腎臓)、及び786−O(腎臓)。結果は
図28Bに示す。このアッセイでは、Raji、Caki−1及びA498細胞株が最も高いCD70表面発現レベルを呈した。これらの細胞株及びCD70発現K562細胞を使用してTCR−/抗CD70 CAR+及びTCR−/B2M−/抗CD70 CAR+のエフェクター機能及び特異性を判定することができる。
【0754】
実施例18−CD70キメラ抗原受容体(CAR)を発現するCRISPR/Cas9修飾T細胞におけるエフェクター機能の判定
CD70 CARを発現する遺伝子操作されたT細胞によるインターフェロンγ刺激
操作された細胞が標的細胞においてインターフェロンγ(IFNγ)を産生する能力について、上記及び実施例10に記載するとおりELISAアッセイを用いて分析した。
【0755】
TRAC遺伝子に組み込まれたCD70 CARを発現する遺伝子修飾されたT細胞の特異性をインビトロELISAアッセイで判定した。細胞共培養の上清からIFNγを測定した。TRAC
−/抗CD70 CAR+細胞のみが、CD70+K562と培養したとき高レベルのIFNγを分泌する。表面CD70を過剰発現するように操作しなかったK562細胞と共にTRAC
−/抗CD70 CAR+細胞を培養したとき、IFNγ分泌は検出されなかった(
図5A)(4:1のCAR−T細胞対標的比)。
【0756】
同様に、TRAC
−/抗CD70CAR+細胞はIFNγ CD70+ Raji細胞のみを刺激し、CD70−Nalm6細胞は刺激しなかった(
図29B)(2:1のCAR−T細胞対標的比)。TRAC
−/抗CD70 CAR+ T細胞は、標的細胞の非存在下で単独で培養したとき検出可能なレベルのIFNγを分泌しなかった(
図29C)。
【0757】
グランザイムBアッセイ
TRAC−/抗CD70CAR+細胞のエフェクター機能を更に評価するため、代用細胞溶解アッセイで標的細胞における細胞内グランザイムBレベルを測定した。グランザイムB+である標的細胞にパーフォリン含有膜細孔を形成させて、続いて細孔からグランザイムBを注入してTRAC−/抗CD70CAR+細胞によるアポトーシスを惹起した。Raji細胞(CD70陽性細胞)又はNalm6細胞(CD70陰性細胞)のいずれかで、製造者の指示(Oncoimmunin Inc.)に従いGranToxiLuxアッセイを実施した。蛍光標識した標的細胞をグランザイムB(GranzymbeB)基質中において試験T細胞と2:1の比(例えば:TRAC
−/抗CD70CAR+:標的細胞)で37℃で2時間共培養した。次に細胞を洗浄し、グランザイムB(GranzymbeB)活性が陽性の標的細胞の%をフローサイトメトリーによって定量化した。他の対照試験細胞もまた同様の比で判定した(未編集T細胞(TRC+)及びTRAC
− T細胞)。
図29Bは、Raji細胞(CD70+)のみにおける、及びNalm6細胞(CD70
−)にはないTRAC
−/抗CD70CAR+細胞による効率的なグランザイムB挿入及び活性を示す。試験した他の対照細胞は、いずれの標的細胞型においてもグランザイムB挿入及び活性を誘導しなかった。従って、TRAC
−/抗CD70CAR+細胞はCD70陽性標的細胞の溶解を誘導することができる。
【0758】
接着性腎細胞癌における細胞死滅アッセイ−CD28共刺激のコンテクストにおいて
CD70 CARを発現するCRISPR/Cas9修飾T細胞がCD70発現接着性腎細胞癌(RRC)由来細胞株を死滅させる能力を評価するため、細胞死滅アッセイを考案した。接着細胞を96ウェルプレートにおいてウェル当たり50,000細胞で播種し、37℃で一晩放置した。翌日、T細胞を標的細胞が入ったウェルに2:1の比で加えた。指示されるインキュベーション期間の後、T細胞を培養物から吸引によって取り出し、プレートの各ウェルに100μLのCell titer−Glo(Promega)を加えて残存生細胞の数を評価した。次にプレートリーダーを使用してウェル当たりの放たれる光量を定量化した。TRAC
−CD70CAR+細胞は72時間のコインキュベーション後に腎細胞癌由来細胞株の強力な細胞死滅を誘導し(
図30A)、一方で対照試験細胞(対照T細胞:TCR+又はTRAC−)は効果を有しなかった。予想どおり、TRAC
−CD70CAR+細胞は、CD70陰性ヒト胎児腎臓由来細胞株(HEK293又は293)を溶解させるいかなる能力も呈しなかった。スタウロスポリン(Tocris)を陽性対照として使用して、小分子によって誘導される細胞死滅レベルが試験した3つの標的細胞型間で同等であったことを示した。これらの結果は、TRAC
−CD70CAR+細胞によって誘導される細胞溶解が、表面CD70を発現する標的細胞に特異的であることを実証する。加えて、CD70 CARを発現するCRISPR/Cas9修飾T細胞は、一連のCD70発現腎細胞癌由来細胞株の強力な細胞溶解を呈した(
図30B及び
図30C)。
【0759】
抗CD70 CAR T細胞における共刺激ドメイン41Bb及びCD28の判定
CTX145b(配列番号1360)はCTX145に由来し、ここではCD28[共刺激ドメイン]が41BB[共刺激ドメイン]に置き換えられている(
図61)。4−1BBドメイン配列は以下である
【化2】
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KRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCEL(アミノ酸−配列番号1340)
【0760】
TRAC、B2M二重ノックアウト抗41BB−CD70 CAR−T細胞の効率的な作成
本例は、初代ヒトT細胞におけるCas9:sgRNA RNP(二本鎖切断誘導用)及びCD70 CARコンストラクトを含有するAAV6送達ドナー鋳型(CTX−145b(配列番号1360))による効率的なトランス遺伝子挿入及び同時の遺伝子ノックアウトを実証する。同種異系ヒトT細胞の作製は、実施例16に記載されるとおりである。高い効率は、AAV6送達ドナー鋳型CTX−145(配列番号1359)及びCTX145bを使用したとき同様である(対照(ドナー鋳型なし)での2.38%CAR+細胞と比較して、CTX−145を使用すると89.7%CAR+細胞、それに対してCTX−145bを使用すると88.6%CAR+細胞)。
【0761】
図62は、TRAC及びB2M sgRNA含有RNP及びCTX−145b AAV6で処理した細胞からのTRAC−/B2M−/抗CD70(4−1BB共刺激)CAR+画分において維持された正常な比率のCD4/CD8 T細胞サブセットを実証し、4−1BB共刺激ドメインを有する抗CD70 CARを発現する遺伝子操作されたT細胞の発現がT細胞サブセットの比率に有意な影響を及ぼさないことが示唆される。
【0762】
4−1BB又はCD28共刺激ドメインを含む、PD1、TRAC、B2M三重ノックアウト抗CD70 CAR−T細胞の効率的な作製
本例は、初代ヒトT細胞におけるCas9:sgRNA RNP(二本鎖切断誘導用)及び抗CD70 CARコンストラクトを含有するAAV6送達ドナー鋳型(CTX−145又はCTX−145b)による効率的なトランス遺伝子挿入及び同時の遺伝子ノックアウトを実証する。同種異系ヒトT細胞の作製は、実施例24に記載されるとおりであり、ここではCTX−138がCTX−145(CD28共刺激)又はCTX−145b(4−1BB共刺激)に置き換えられた。
【0763】
高い効率は、AAV6送達ドナー鋳型を使用したとき同様であった(CTX−145及びCTX145bを比較)(
図63)。操作されたT細胞の80%が、CD28共刺激ドメインを有する抗CD70 CARを発現した一方、82%が、4−1BB共刺激ドメインを有する抗CD70 CARを発現した。
【0764】
図64は、PD1、TRAC及びB2M sgRNA含有RNP及びCTX−145b AAV6で処理した細胞からのPD1−/TRAC−/B2M−/抗CD70 CAR+画分において正常な比率のCD4/CD8 T細胞サブセットが維持されたことを示し、遺伝子操作されたT細胞における4−1BB共刺激ドメインを有する抗CD70 CARの発現がT細胞サブセットの比率に有意な影響を及ぼさないことが示唆される。
【0765】
接着性腎細胞癌における細胞死滅アッセイ
抗CD70 CARを発現するCRISPR/Cas9修飾T細胞がCD70発現接着性腎細胞癌(RRC)由来細胞株を死滅させる能力を評価するため、上記に記載したとおり細胞死滅アッセイを考案した。TRAC−/B2M−/抗CD70 CAR+細胞は、両方の共刺激ドメインCD28及び41BBのコンテクストで、対照試験細胞(対照T細胞:TCR+)と比較して24時間のコインキュベーション後に腎細胞癌由来細胞株(A498細胞)の強力な細胞死滅を実証した(
図65)。PD1−/TRAC−/B2M−/抗CD70 CAR+細胞は、4−1BB共刺激ドメインで(二重KO細胞と比較して)A498細胞の同様の強力な細胞死滅を誘導したが、CD28共刺激ドメインでは効力が低くなった(
図65)。
【0766】
図66は、TRAC−/B2M−/抗CD70(4−1BB又はCD28)CAR+細胞及びPD1−/TRAC−/B2M−/抗CD70(4−1BB又はCD28)CAR+細胞が、3:1の比のT細胞:標的細胞でCD70発現接着性腎細胞癌(RRC)由来細胞株ACHNの強力な細胞死滅を誘導したことを示す。
【0767】
実施例19−抗BCMA CAR T細胞
CRISPR/Cas9媒介性のTCR及びMHC I成分ノックアウト及びBCMAキメラ抗原受容体コンストラクトの発現
本例は、TCR、又はTCR及びMHC Iの発現を欠く、且つBCMA+癌を標的とするキメラ抗原受容体を発現する同種異系ヒトT細胞のCRISPR/Cas9及びAAV6による作製について記載する。
【0768】
CRISPR/Cas9によって生成される同種異系CAR−T細胞の概略的描画を
図31Aに示す。
【0769】
上記の実施例9及び15と同様に、CRISPR/Cas9を使用してTCRa定常領域遺伝子(TRAC)のコード配列を破壊(ノックアウト[KO])した。この破壊によってTCRの機能喪失がもたらされ、遺伝子編集されたT細胞が非アロ反応性且つ同種異系移植に好適なものとなり、移植片対宿主病(GVHD)のリスクが最小限となる。TRAC遺伝子座におけるDNA二本鎖切断を、キメラ抗原受容体カセット(±遺伝子発現用の調節エレメント)が隣接するTRAC遺伝子座に対する右及び左相同性アームを含むAAV6送達DNA鋳型による相同組換え修復によって修復した。宿主対移植片(HVG)(例えば:宿主対CAR−T)を低下させ、及び同種異系CAR−T産物の持続性を可能にするため、CRISPR/Cas9成分によってB2M遺伝子もまた破壊した。まとめると、これらのゲノム編集により、それぞれGVHD及びHVGを低下させるTCR及びMHC Iの喪失に加えて、BCMA+癌を標的とするCARの表面発現(TRAC遺伝子座から発現する)を有するT細胞が生じる。このT細胞は、TRAC
−/B2M
−/抗BCMA CAR+細胞と称することができる。
【0770】
以下の例に記載する特定の実験のため、単一ノックアウトTRAC−BCMA CAR+細胞もまた作製及び試験した。
【0771】
Cas9誘発性部位特異的DNA二本鎖切断のHDRによるCAR発現カセットの標的化したゲノム挿入を促進するためドナー鋳型を担持する組換えAAVウイルスの作製用DNAプラスミドコンストラクトの概略図を
図31Bに示す。
【0772】
【表61】
[この文献は図面を表示できません]
【0773】
CTX−153(配列番号1362)及びCTX−155(配列番号1364)はCTX−145に由来するが、CTX−145の抗CD70 scFvコード領域が抗ヒトBCMA scFvコード領域に置き換えられている(
図31B及び
図14)。CTX−152(配列番号1361)及びCTX−154(配列番号1363)は、それぞれCTX−153及びCTX−155とピコルナウイルス2A及びGFP配列の付加が異なる。CTX−152、CTX−153、CTX−154、及びCTX−155は全て、TRAC遺伝子座におけるゲノムCas9/sgRNA標的部位に隣接する相同性アームを含む。CTX−152及びCTX−153は800bp相同性アームを含み、一方CTX−154(配列番号1363)及びCTX−155は500bp相同性アームを含む(
図31B)。CTX−152(配列番号1361)とCTX−154とは、抗BCMA scFv可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)の向きが互いに異なる。CTX−152(配列番号1361)は、その発現がEF1aプロモーターによってドライブされる合成3’ポリアデニル化配列(pA)を伴う抗BCMA CARコンストラクト(抗BCMA(ヌクレオチド配列(配列番号1425);アミノ酸配列(配列番号1451)):CD8[シグナルペプチド]−VH−リンカー−VL−CD8[tm]−CD28[共刺激ドメイン]−CD3z)を含む。scFvは、VH鎖がVL鎖のアミノ端側にあるように構築される。CTX−154はCTX−152と同様であるが、しかしながら抗BCMA CARコンストラクト(抗BCMA CARコンストラクト(抗BCMA(ヌクレオチド配列(配列番号1426);アミノ酸配列(配列番号1452):CD8[シグナルペプチド]−VL−リンカー−VH−CD8[tm]−CD28[共刺激ドメイン]−CD3zを含む)はVH鎖及びVL鎖の向きが入れ替わり、VLがVHのアミノ端側(animo terminal)にある。
【0774】
抗BCMA scFvの構築に使用したVH鎖及びVL鎖は、それぞれBCMA_VH1(配列番号1523)及びBCMA_VL1(配列番号1525)である。これらの鎖はマウス抗体に由来した。ヒト化バージョンのVH配列が構築されており(配列番号1524)、2つのヒト化バージョンのVL配列が構築されている(配列番号1526及び1527)。これらを使用して、上記に記載した方法を用いてヒト化抗BCMAコンストラクトscFv BCMA−3、scFv BCMA−4、scFv BCMA−5及びscFv BCMA−6(配列番号1503〜1506)を構築した。これらのscFvのいずれか1つを使用して先述のとおりのCARコンストラクトを構築することができる。ヒト化scFv CARコンストラクトはGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号1341)のリンカー配列を有する。
【0775】
上記に記載した方法を用いて更なる抗BCMA scFvを構築した。例えば、VH鎖及びVL鎖BCMA_VH2(配列番号1528)及びBCMA_VL2(配列番号1529)を使用して抗BCMA scFvを構築することができる。これらの可変鎖を使用して抗BCMAコンストラクトscFv BCMA−7(VH−VL;配列番号1507)及びscFv BCMA−8(VL−VH;配列番号1508)を構築した。これらのscFvのいずれか1つを使用して先述のとおりのCARコンストラクトを構築することができる。
【0776】
別の例において、VH鎖及びVL鎖BCMA_VH3(配列番号1530)及びBCMA_VL3(配列番号1531)を使用して抗BCMA scFvを構築した。具体的には、これらの可変鎖を使用して抗BCMAコンストラクトscFv BCMA−9(VH−VL;配列番号1513)及びscFv BCMA−10(VL−VH;配列番号1514)を構築した。これらのscFvのいずれか1つを使用して先述のとおりのCARコンストラクトを構築することができる。記載(本明細書に)されるとおりのCRISPR/Cas9及びAAV成分で抗BCMA CAR T細胞を作製した。Cas9:sgRNA RNAによる相同組換え修復(HDR)を用いた初代ヒトT細胞におけるトランス遺伝子挿入及び同時の遺伝子ノックアウトを上記の実施例8及び9に記載したとおり実施した。初めに初代ヒトT細胞に、Cas9又はTRAC(AGAGCAACAGTGCTGTGGCC(配列番号76);sgRNA(配列番号1343)及びB2M1(GCTACTCTCTCTTTCTGGCC(配列番号417);sgRNA(配列番号1345)を標的とするCas9:sgRNA RNP複合体を電気穿孔した。
【0777】
sgRNA配列は以下のとおり修飾することができる:TRAC配列番号1342、B2M配列番号1344。
【0778】
TRAC遺伝子座におけるDNA二本鎖切断を、AAV6送達DNA鋳型(CTX−152、又はCTX−154)による相同組換え修復によって修復した。
【0779】
抗BCMA CAR−T細胞を作製するためのCRISPR/Cas9による高効率多重編集
多重編集によってTCR及びMHC−Iの表面発現の低下、並びに高いCAR発現が生じた。60%を超えるT細胞が、全3つ(TCR−/β2M−/抗BCMA CAR+)又は4つ(TCR−/β2M−/PD1−/抗BCMA CAR+)の所望の修飾を有した(
図58A)。二重又は三重ノックアウトで同程度の編集効率が観察された。多重編集された抗BCMA CAR−T細胞において、CD4/CD8比は同程度のままであった(
図58B)。多重編集された抗BCMA CAR−T細胞は、多重CRISPR/Cas9編集後の成長に関してサイトカイン依存性のままであった(
図58C)。
【0780】
本例では、以下のgRNAスペーサー配列を使用した:
TRAC:AGAGCAACAGUGCUGUGGCC(配列番号152)
B2M:GCUACUCUCUCUUUCUGGCC(配列番号466)
PD1:CUGCAGCUUCUCCAACACAU(配列番号1086)
【0781】
本例で使用したドナー鋳型は、配列番号1434を含む抗BCMA CARを含む配列番号1408(CTX−166のLHA〜RHA)であった。
【0782】
多重編集された抗BCMA CAR−T細胞は抗癌特性の向上を示す
抗BCMA CAR−T細胞が4時間細胞死滅アッセイでBCMA発現MM細胞株MM.1Sを効率的且つ選択的に死滅させた一方、BCMA陰性白血病株K562は免れさせた(
図59A)。二重及び三重ノックアウト多重編集間で低いT細胞濃度ほど応答の違いが顕著であった。細胞はまた、BCMA+ MM.1S細胞による誘導にのみ応答して上方制御されるT細胞活性化サイトカインIFNγ及びIL−2も選択的に分泌した(
図59B)。
【0783】
PD1 KOは長期インビトロ培養においてLag3消耗マーカーの発現を低下させる
培養下で1週間後に二重(TCR−/β2M−/抗BCMA CAR+)又は三重(TCR−/β2M−/PD1−/抗BCMA CAR+)KO抗BCMA CAR−T細胞の間でLag3消耗マーカーの変化は観察されなかった。しかしながら、培養下で4週間後、三重KO抗BCMA CAR−T細胞においてLag3発現が低下したことから、PD1 KOを有する細胞が消耗しにくかったことが指摘される。
【0784】
【表62】
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【0785】
表24に提供されるコンストラクトの任意の1つについて、CARのscFv断片が表24に掲載される任意の他のscFv断片に置換されてもよいことが理解されなければならない。
【0786】
実施例25−TRAC−B2M−BCMA CAR+細胞を作成するための細胞におけるHDR媒介性同時トランス遺伝子挿入
本例は、初代ヒトT細胞におけるCas9:sgRNA RNP(二本鎖切断誘導用)及びBCMA CARコンストラクトを含有するAAV6送達ドナー鋳型(CTX−152又はCTX−154)による効率的なトランス遺伝子挿入及び同時の遺伝子ノックアウトを実証する。
【0787】
初代ヒトT細胞をCD3/CD28磁気ビーズで活性化した(先に実施例2に記載したとおり)。3日後、活性化ビーズを取り除いた。翌日、TRAC又はB2M(2つの別個に複合体化したRNP)を標的とするsgRNAを含むRNP複合体を細胞に電気穿孔した。操作の7日後、先に本明細書及び実施例2に記載したとおり、細胞をフローサイトメトリーによって分析した。
【0788】
本例で使用したガイドは、以下を標的とする:
TRAC:AGAGCAACAGTGCTGTGGCC(配列番号76);及びTRAC sgRNA(配列番号686)を含む
B2M:GCTACTCTCTCTTTCTGGCC(配列番号417);及びB2M sgRNA(配列番号688)を含む
【0789】
本実施例で使用したgRNAは、以下のスペーサー配列を含む:TRAC gRNAスペーサー(AGAGCAACAGUGCUGUGGCC(配列番号152));及びB2M gRNAスペーサー(GCUACUCUCUCUUUCUGGCC(配列番号466))。
【0790】
sgRNA配列は以下のとおり修飾することができる:TRAC配列番号1342、B2M配列番号1345。
【0791】
FACS分析から、TRAC sgRNA含有RNP及びB2M sgRNA含有RNPによる処理後に77%のT細胞がTRAC−、B2M−であったことが実証された(
図32−上のパネル)。加えて、遺伝子編集細胞は、陽性GFP発現及び組換えBCMA結合からも明らかなとおり、CARコンストラクトを発現した(
図32−下のパネル)。
【0792】
図32は、上記に記載される方法を用いたTRAC遺伝子座に組み込まれたトランス遺伝子からのBCMA CAR(TCR−/B2M−BCMA CAR+)の同時発現を伴うTCR及びB2M表面発現を欠く単一ヒトT細胞の作製の成功を実証する。
【0793】
実施例21−BCMAキメラ抗原受容体(CAR)を発現するCRISPR/Cas9修飾T細胞におけるエフェクター機能の判定
BCMA発現細胞における細胞死滅アッセイ
TRAC
−/B2M
−/抗BCMA CAR+ T細胞が浮遊細胞株を死滅させる能力を評価するため、フローサイトメトリーベースの細胞死滅アッセイを設計した。TRAC
−/B2M
−/抗BCMA CAR+ T細胞(使用したCARの表については実施例19を参照)を、BCMA発現RPMI8226(ATCCカタログ番号ATCC−155)ヒト形質細胞腫標的細胞株の細胞、BCMA発現U−266細胞株の細胞、又はBCMAを発現しないK562細胞株の細胞(まとめて「標的細胞」と称される)と共培養した。標的細胞を5μM efluor670(eBiosciences)で標識し、洗浄し、及び様々な比のTRAC
−/B2M
−/抗BCMA CAR+ T細胞との共培養下(0.1:1〜8:1T細胞対標的細胞)、U字型底の96ウェルプレートのウェル当たり50,000標的細胞で一晩インキュベートした。翌日、ウェルを洗浄し、1:500希釈の5mg/mL DAPI(Molecular Probes)を含有する200μLの培地に培地を交換した(死細胞/瀕死細胞の計数のため)。最後に、各ウェルに25μLのCountBrightビーズ(Life Technologies)を加えた。次に細胞をフローサイトメトリーによって処理した。
【0794】
次に、分析したフローサイトメトリーデータから1μL当たりの標的細胞を計算した:
細胞/μL=((生存標的細胞イベント数)/(ビーズイベント数))×((ロットの割り付けビーズカウント(ビーズ/50μL))/(試料容積))
【0795】
標的細胞総数は、細胞/μL×細胞総容積の乗算によって計算した。
【0796】
次にパーセント細胞溶解率を以下の式により計算した:
%細胞溶解率=(1−((試験試料の標的細胞総数)/(対照試料の標的細胞総数))×100
【0797】
図33A、
図45B、及び
図46B(左のグラフ)は、TRAC−/B2M−/抗BCMA CAR+ T細胞がRPMI 8226細胞を低いT細胞対BCMA発現標的細胞比で選択的に死滅させたことを示し;
図46A(左のグラフ)は、TRAC−/B2M−/抗BCMA CAR+ T細胞がU−266細胞(ATCC(登録商標)TIB−196(商標))を選択的に死滅させたことを示し;及び
図46C(左のグラフ)は、TRAC−/B2M−/抗BCMA CAR+ T細胞がK562細胞(BCMA発現を欠く)に対して特異的毒性を示さなかったことを示す。これらの結果は、本明細書に記載されるCRISPR/Cas9修飾T細胞がBCMA発現形質細胞腫細胞株において強力な細胞溶解を誘導することを示している。
【0798】
BCMA CARを発現する遺伝子操作されたT細胞によるインターフェロンγ刺激
操作された細胞が標的細胞においてインターフェロンγ(IFNγ)を産生する能力について、上記並びに実施例10及び18に記載するとおりELISAアッセイを用いて分析した。
【0799】
TRAC遺伝子に組み込まれた抗BCMA CARを発現する遺伝子修飾されたT細胞の特異性をインビトロELISAアッセイで判定した。細胞共培養の上清からIFNγを測定した。RPMI8226細胞を、抗BCMA CARを発現する遺伝子操作されたT細胞、又は対照と培養した。
図33Bは、TRAC
−/B2M
−/抗BCMA CAR+ T細胞(CTX152又はCTX154を発現する細胞)が、抗BCMA CAR(RNP/AAVなし)を発現しないT細胞と比較して、RPMI8226(ATCCカタログ番号ATCC−155)細胞と培養したときより高いレベルのIFNγを分泌することを実証する(0.2:1、1:1、2:1、及び4:1のCAR−T細胞対標的比)。同様に、
図46B(右のグラフ)及び
図47Bは、TRAC
−/B2M
−/抗BCMA CAR+ T細胞が、対照と比較してRPMI8226(ATCCカタログ番号ATCC−155)細胞と培養したときより高いレベルのIFNγを分泌することを実証する。
図46A(右のグラフ)は、TRAC
−/B2M
−/抗BCMA CAR+ T細胞もまた、U−266細胞と培養したときより高いレベルのIFNγを分泌することを示す。対照的に、
図46C(右のグラフ)及び
図47Aは、TRAC
−/B2M
−/抗BCMA CAR+ T細胞が、K562細胞(BCMAを発現しない細胞)と培養したときIFNγを分泌しないことを示す。従って、本開示の抗BCMA CAR T細胞はIFNγを産生するのみならず、BCMA発現細胞の存在下ではそれを特異的に行う。
【0800】
実施例22−CRISPR−Cas9によって作製されたCD19 CAR−T細胞におけるHDR頻度の評価
TRAC遺伝子座へのCARコンストラクト(CTX−138)の組込み効率を測定するため、ドロップレットデジタルPCR(ddPCR)アッセイを設計した。ddPCRアッセイに使用したプライマー及びプローブを表25に示す。配列番号1554〜1556を使用してCARコンストラクトの組込みを検出し、配列番号1557〜1559を使用して対照参照ゲノム領域を増幅した。
【0801】
ddPCR反応に40ngのゲノムDNAを使用し、ドロップレットを生成し、次に表26及び表27に示される条件下でサーモサイクラーにかけた。
【0802】
フローサイトメトリーによってCD19 CAR+染色された細胞のパーセンテージを、4つの健常ドナーTRAC−B2M−CAR−T細胞からの組み込まれたCARコンストラクトに関して陽性であった細胞のパーセンテージに対してプロットした(
図34)。ddPCR結果はCD19 CAR発現とHDR頻度との間の強い相関を示し(R
2=0.88)、本発明者らがCRISPR遺伝子編集を用いてT細胞のTRAC遺伝子座へのCD19 CARコンストラクトの部位特異的組込み及び高発現レベルを実現したことを示すものである。
【0803】
【表63】
[この文献は図面を表示できません]
【0804】
【表64】
[この文献は図面を表示できません]
【0805】
【表65】
[この文献は図面を表示できません]
【0806】
実施例23−B−ALL細胞株に対するTRAC−/B2M−/抗CD19 CAR+ T細胞のエフェクター機能の判定
本例では、Nalm6ヒトB−ALL細胞株と共培養したときのTRAC−/B2M−/抗CD19 CAR+ T細胞のエフェクター機能を評価した。
【0807】
グランザイムBアッセイ
TRAC−/B2M−/抗CD19 CAR+ T細胞のエフェクター機能を更に評価するため、代用細胞溶解アッセイで標的細胞における細胞内グランザイムBレベルを測定した。グランザイムB分泌を実施例18に記載されるとおり評価した。TRAC−/B2M−/抗CD19 CAR+ T細胞又は対照細胞をNalm6細胞株と共培養した。
図35Aに示すとおり、TRAC−/B2M−/抗CD19 CAR+ T細胞は、Nalm6ヒトB−ALL細胞株と4:1の比で共培養すると効率的なグランザイムB挿入を呈し、これはTRAC−/B2M−/抗CD19 CAR+ T細胞がCD19陽性Nalm6 B−ALL細胞株の溶解を誘導できることを示している。
【0808】
CD19 CARを発現する遺伝子操作されたT細胞によるインターフェロンγ刺激
操作された細胞が標的細胞においてインターフェロンγ(IFNγ)を産生する能力について、本明細書及び実施例10のとおりELISAアッセイを用いて分析した。
【0809】
細胞共培養の上清からIFNγを測定した。
図35Bに示されるとおり、TRAC
−/B2M
−/抗CD19 CAR+ T細胞は、CD19陽性Nalm6細胞と培養したとき高レベルのIFNγを分泌する。
【0810】
浮遊細胞株の細胞死滅アッセイ
TRAC
−/B2M
−/抗CD19 CAR+ T細胞が浮遊細胞株を死滅させる能力を評価するため、フローサイトメトリーベースの細胞死滅アッセイを設計した。細胞をNalm6ヒトB細胞急性リンパ芽球性白血病(B−ALL)標的細胞株と共培養した。Nalm6標的細胞を5μM efluor670(eBiosciences)で標識し、洗浄し、及び様々な比のT細胞との共培養下(0.1:1〜8:1T細胞対標的細胞)、U字型底の96ウェルプレートのウェル当たり50,000標的細胞で一晩インキュベートした。翌日、ウェルを洗浄し、1:500希釈の5mg/mL DAPI(Molecular Probes)を含有する200μLの培地に培地を交換した(死細胞/瀕死細胞の計数のため)。最後に、各ウェルに25μLのCountBrightビーズ(Life Technologies)を加えた。次に細胞をフローサイトメトリーによって処理した。
【0811】
次に、分析したフローサイトメトリーデータから1μL当たりの細胞を計算した:
細胞/μL=((生存標的細胞イベント数)/(ビーズイベント数))×((ロットの割り付けビーズカウント(ビーズ/50μL))/(試料容積))
【0812】
細胞総数は、細胞/μL×細胞総数の乗算によって計算した。
【0813】
次にパーセント細胞溶解率を以下の式により計算した:
%細胞溶解率=(1−((試験試料の標的細胞総数)/(対照試料の標的細胞総数))×100。
【0814】
図35Cは、TRAC−/B2M−/抗CD19 CAR+ T細胞が低いT対標的細胞比でNalm6細胞を選択的に死滅させたことを示す。これらの結果は、本明細書に記載されるCRISPR/Cas9修飾T細胞が、CD19を発現する急性リンパ芽球性白血病細胞株において強力な細胞溶解を誘導することを示している。
【0815】
実施例24−PD1、B2M、TRAC三重ノックアウト抗CD19 CAR−T細胞の作成
本例は、TCR、MHC I、及びPD1の発現を欠く且つCD19+癌を標的とするキメラ抗原受容体を発現する同種異系ヒトT細胞のCRISPR/Cas9及びAAV6による作製について記載する。
【0816】
CRISPR/Cas9及びAAV6を上記のとおり使用して(例えば、実施例8〜10及び12を参照)、TCR、B2M及びPD1の発現を欠くと同時にCD19を標的とするCARコンストラクト(CTX−138;配列番号675)を使用したTRAC遺伝子座からの発現を伴うヒトT細胞を作成した。本例では、TRAC(例えば:配列番号76)、B2M(例えば:配列番号417及びPD1(CTGCAGCTTCTCCAACACAT(配列番号916))を標的とするsgRNAを含有する3つの異なるRNP複合体を活性化T細胞に電気穿孔した。本実施例で使用したgRNAは、以下のスペーサー配列を含む:TRAC gRNAスペーサー(AGAGCAACAGUGCUGUGGCC(配列番号152));B2M gRNAスペーサー(GCUACUCUCUCUUUCUGGCC(配列番号466));及びPD1 gRNAスペーサー(CUGCAGCUUCUCCAACACAU(配列番号1086))。電気穿孔から約1週間後、細胞は未処理のままとするか、又はPMA/イオノマイシンで一晩処理するかのいずれかとした。翌日、細胞をフローサイトメトリー用に処理した。
図58Aは、PD1 sgRNA含有RNPで処理した細胞のみが、一晩のPMA/イオノマイシン処理に応答してPD1表面レベルを上方制御しないことを示す。
【0817】
実施例25−CD70 CAR+ T細胞の有効性:NOGマウスにおける皮下腎細胞癌腫瘍異種移植片モデル
NOGマウスに5×10
6個のA498腎細胞癌細胞を皮下注射した。接種後10日目、マウスは未治療のままとするか、又は1×10
7若しくは2×10
7個の抗CD70 CAR−T細胞の治療用量を静脈内(I.V.)注射するかのいずれかとした。試験期間中(31日)、2日毎に腫瘍容積を測定した。抗CD70 CART細胞の注射は、両方の用量で腫瘍容積の減少につながる(
図37)。これらのデータは、抗CD70 CART細胞がインビボでCD70+腎臓癌腫瘍を退縮させることができることを示す。
【0818】
Cas9:sgRNA RNAによる相同組換え修復(HDR)を用いた初代ヒトT細胞におけるトランス遺伝子挿入及び同時の遺伝子ノックアウトを上記の実施例16に記載したとおり実施して、TCR表面発現を欠く細胞を作製すると同時に抗CD70 CARコンストラクトを発現させた(TRAC
−/抗CD70CAR+細胞)。初めに初代ヒトT細胞に、Cas9又はTRAC(AGAGCAACAGTGCTGTGGCC(配列番号76)を標的とするCas9:sgRNA RNP複合体;TRAC gRNAスペーサー(AGAGCAACAGUGCUGUGGCC(配列番号152))を電気穿孔した。TRAC遺伝子座におけるDNA二本鎖切断を、キメラ抗原受容体カセット(±遺伝子発現用の調節エレメント)が隣接するTRAC遺伝子座に対する右及び左相同性アームを含有するAAV6送達DNA鋳型(CTX−145;配列番号1359)による相同組換え修復によって修復した。結果として得られた修飾T細胞は、TRAC
−/抗CD70CAR+である。修飾TRAC
−/抗CD70CAR+ T細胞が、CD70+腎癌細胞株によって引き起こされる疾患を改善する能力について、Translational Drug Development,LLC(Scottsdale、AZ)が採用している方法を用いてNOGマウスで判定した。端的には、試験開始の5〜7日前、換気付きマイクロアイソレーターケージで無菌条件下に維持した12匹の5〜8週齢雌CIEA NOG(NOD.Cg−Prkdc
scidI12rg
tm1Sug/JicTac)マウスを個別に飼育した。1日目にマウスは5×10
6個のA498腎癌細胞/マウスの皮下接種を受けた。マウスを表26に示されるとおりの3つの治療群に更に分割した。10日目(A498細胞の接種の9日後)、表26に従い治療群2及び群3がTRAC
−/抗CD70CAR+細胞の単回200μl静脈内投与を受けた。
【0819】
【表66】
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【0820】
2日毎に腫瘍容積を測定した。18日目までに、両方の用量で抗CD70 CART細胞による治療が腫瘍容積の減少を示し始めた(
図37)。腫瘍容積は試験期間にわたって減少し続けた。これらのデータは、抗CD70 CART細胞がインビボでCD70+腎臓癌腫瘍を退縮させることができることを実証する。
【0821】
実施例26.−抗BCMA CAR発現及び細胞傷害性
同種異系抗BCMA CAR T細胞を上記に記載されるとおり生成した。抗BCMA CAR発現は、ビオチン化BCMAに結合し、続いてストレプトアビジン−APCを使用したFACSにより検出された細胞の割合を決定することにより測定した(
図47)。
【0822】
次に抗BCMA CARコンストラクトについて、RPMI−8226細胞を死滅させるその能力を判定した。≧10%発現の抗BCMA CAR T細胞は全て、エフェクター細胞に対して強力な細胞傷害性であった一方、CARを欠く同種異系T細胞は細胞傷害性をほとんど示さなかった(
図48)。
【0823】
実施例27.−遺伝子編集後の細胞の健康維持
同種異系抗CD19 CAR T細胞を上記に記載されるとおり生成した。遺伝子編集の21日後、以下のプロトコルを用いることにより指示マーカーの発現に関して細胞を染色した:
以下の抗体によって細胞を4℃で30分間染色する。
抗マウスFab2ビオチン115−065−006(Jackson ImmunoRes)1:5
細胞をFACS緩衝液で1回洗浄する。
100μLの細胞に1μgの正常マウスIGG(Peprotech 500−M00)を室温で10分間加える。
細胞をFACS緩衝液で1回洗浄し、100μLのFACS緩衝液に再懸濁する。
以下のカクテルによって細胞を室温で15分間染色する。
【0824】
本例で使用した抗体は以下のとおりである:
【0825】
【表67】
[この文献は図面を表示できません]
【0826】
このデータは、遺伝子編集後21日目にTRAC−/B2M−/抗CD19+CAR T細胞の健康が維持されている(細胞は正常な(編集されていない)細胞として挙動する)ことを示す。
【0827】
実施例28.−集積前及び集積後の遺伝子編集細胞におけるTCR遺伝子型の比較
TRAC−/B2M−/抗CD19+CAR T細胞(TC1)細胞を作製し、TCRab抗体及びProdigyシステム(Miltenyi Biotech)を使用して枯渇させた。95.5%TCRab
−細胞の出発入力から、全集団中>99.5%純度のTCRab
−細胞が実現した。
【0828】
実施例29.−同種異系抗BCMA CAR T細胞ターゲティング
本例は、CRISPR/Cas9ゲノム編集を用いた同種異系抗BCMA CAR−T細胞の生成を実証する。高効率編集が達成され、60%を超える細胞が3つの所望の編集を有した。CAR−T細胞は正常なCD4/CD8比、並びに特徴的なサイトカイン依存性を維持し、CAR挿入からの異常な緊張性シグナル伝達も、編集プロセスに起因する形質転換も起こらなかったことが示唆される。CAR−T細胞はBCMA発現細胞に遭遇した後、BCMA
+細胞を選択的に死滅させ、T細胞活性化サイトカインを分泌した。CAR−T細胞は皮下RPMI−8226腫瘍異種移植片モデルにおいてMM細胞を根絶させたことから、インビボでの強力な活性が裏付けられる。
【0829】
CRISPR/Cas9による高効率ゲノム編集
実施例19に記載される方法を用いてTRAC
−/B2M
−/抗BCMA CAR+細胞を生成した。
図52Aは、遺伝子編集後1週間におけるβ2M及びTRAC発現のFACSプロット(左)及びTRAC遺伝子座へのノックイン後のCAR発現の代表的なFACSプロット(右)を示す。
図52Bは、遺伝子編集後におけるTCR及びMHC−Iの両方の表面発現の減少を示すグラフである。これは、高CAR発現と併せて、60%を超える細胞が所望の修飾全てを有することにつながる(TCR−/β2M−/抗BCMA CAR+)。
【0830】
編集後のT細胞CD4+/CD8+比
遺伝子編集後2週間で、以下のプロトコルを用いることにより指示マーカーの発現に関してTCR−/β2M−/抗BCMA CAR+細胞を染色した:
以下の抗体によって細胞を4℃で30分間染色する。
組換えビオチン化ヒトBCMA(Acro Biosystems カタログ番号BC7−H82F0、100nMの濃度
細胞をFACS緩衝液で1回洗浄し、100μLのFACS緩衝液に再懸濁する。
以下のカクテルによって細胞を室温で15分間染色する。
【0831】
本実施例で使用した抗体はCD4及びCD8であった(表27を参照)。このデータから、編集されたT細胞が未編集のT細胞と同じCD4+/CD8+比を有したことが示された(データは図示せず)。
【0832】
編集及び抗BCMA CARノックインから2週間後、成長培地から血清及び/又はサイトカインを取り除いた。予想どおり、サイトカインの非存在下ではT細胞のそれ以上の増殖は観察されなかった(
図53)。加えて、T細胞は長期インビトロ培養後に増殖の低下を示した。
【0833】
同種異系抗BCMA CAR T細胞はインビトロで強力且つ特異的な活性を示す
TRAC
−/B2M
−/抗BCMA CAR+ T細胞がBCMA発現多発性骨髄腫細胞株(MM.1S)を選択的に死滅させる能力を評価するため、実施例21に記載されるアッセイと同様の、フローサイトメトリーベースの細胞死滅アッセイを設計した。TRAC
−/B2M
−/抗BCMA CAR+ T細胞(使用したCARの表については実施例19を参照)をBCMA発現MM.1S多発性骨髄腫細胞株の細胞又はBCMAを発現しないK562細胞株の細胞(まとめて「標的細胞」と称される)と共培養した。
【0834】
次に、分析したフローサイトメトリーデータから1μL当たりの標的細胞を計算した:
細胞/μL=((生存標的細胞イベント数)/(ビーズイベント数))×((ロットの割り付けビーズカウント(ビーズ/50μL))/(試料容積))
【0835】
標的細胞総数は、細胞/μL×細胞総容積の乗算によって計算した。
【0836】
次にパーセント細胞溶解率を以下の式により計算した:
%細胞溶解率=(1−((試験試料の標的細胞総数)/(対照試料の標的細胞総数))×100。
【0837】
図54Aは、TRAC−/B2M−/抗BCMA CAR+ T細胞がMM.1S細胞を選択的に死滅させたが、K562細胞(BCMA発現を欠く)に対しては特異的毒性を示さなかったことを示す。これらの結果は、本明細書に記載されるCRISPR/Cas9修飾T細胞がBCMA発現多発性骨髄腫細胞株において強力な細胞溶解を誘導することを示している。
【0838】
操作されたTRAC−/B2M−/抗BCMA CAR+ T細胞が標的細胞に応答してインターフェロンγ(IFNγ)及びIL−2を産生する能力について、上記並びに実施例10、18、及び21に記載されるとおり、ELISAアッセイを用いて分析した。
【0839】
TRAC遺伝子に組み込まれた抗BCMA CARを発現する遺伝子修飾されたT細胞の特異性をインビトロELISAアッセイで判定した。細胞共培養の上清からのIFNγ及びIL−2を測定した。MM.1S細胞を、抗BCMA CARを発現する遺伝子操作されたT細胞、又は対照と培養した。
図54Bは、TRAC
−/B2M
−/抗BCMA CAR+ T細胞(CTX166を発現する細胞)が、抗BCMA CARを発現しないT細胞(未編集のT細胞)と比較してMM.1S細胞と培養したときより高いレベルのIFNγ及びIL−2を分泌することを実証する。対照的に、TRAC
−/B2M
−/抗BCMA CAR+ T細胞は、K562細胞(BCMAを発現しない細胞)と培養したときIFNγ又はIL−2を分泌しない。
【0840】
MM.1Sと比較してより高いレベルのBCMAを発現する多発性骨髄腫細胞株H929を加えて細胞死滅アッセイを繰り返した(
図54C)。
図54Dは、MM1s細胞と比較してH929細胞の死滅の加速が観察されたことを示す(D)。細胞死滅効率は1:1のエフェクター対T細胞比を用いて示される。
【0841】
従って、本開示の抗BCMA CAR T細胞はIFNγ及びIL−2を産生するのみならず、BCMA発現細胞の存在下ではそれを特異的に行う。
【0842】
同種異系抗BCMA CAR T細胞はインビボで強力な活性を示す
本例では、NOGマウスにおける皮下RPMI−8226腫瘍異種移植片モデルに対するCAR−T細胞の有効性を評価した。端的には、試験開始の5〜7日前、換気付きマイクロアイソレーターケージで無菌条件下に維持した12匹の5〜8週齢雌CIEA NOG(NOD.Cg−Prkdc
scidI12rg
tm1Sug/JicTac)マウスを個別に飼育した。1日目にマウスは10×10
6個のRPMI−8226細胞/マウスの皮下接種を受けた。マウスを2つの治療群に更に分割した。RPMI−8226細胞の接種から10日後、第1の治療群(N=5)が10×10
6個の編集されたTRAC
−/B2M
−/抗BCMA CAR+ T細胞の単回200μl静脈内投与を受け、第2の治療群(N=5)が20×10
6個の編集されたTRAC
−/B2M
−/抗BCMA CAR+ T細胞の単回200μl静脈内投与を受けた。
【0843】
腫瘍容積及び体重を測定し、腫瘍容積が≧500mm
3になったとき個々のマウスを安楽死させた。18日目までに、データは、未治療のマウスと比較したとき、TRAC
−/B2M
−/抗BCMA CAR+ T細胞に応答した腫瘍容積の統計的に有意な減少を示す(
図55)。
【0844】
PD1、B2M、TRAC三重ノックアウト抗BCMA CAR−T細胞
本例は、TCR、MHC I、及びPD1の発現を欠く且つBCMA+癌を標的とするキメラ抗原受容体を発現する同種異系ヒトT細胞のCRISPR/Cas9及びAAV6による作製について記載する。
【0845】
CRISPR/Cas9及びAAV6を上記のとおり使用して(例えば、実施例8〜10及び12を参照)、TCR、B2M及びPD1の発現を欠くと同時にBCMAを標的とするCARコンストラクト(配列番号1434)を使用したTRAC遺伝子座からの発現を伴うヒトT細胞を作成した。この例では、TRAC(例えば、TRAC gRNAスペーサー配列番号152)、B2M(例えば、B2M gRNAスペーサー配列番号466)及びPD1(例えば、PD1 gRNAスペーサー配列番号1086)を標的とするsgRNAを含有する3つの異なるRNP複合体を活性化T細胞に電気穿孔した。電気穿孔から約1週間後、細胞は未処理のままとするか、又はPMA/イオノマイシンで一晩処理するかのいずれかとした。翌日、細胞をフローサイトメトリー用に処理した。
図38は、PD1 sgRNA含有RNPで処理した細胞のみが、一晩のPMA/イオノマイシン処理に応答してPD1表面レベルを上方制御しないことを示す。
【0846】
実施例30.−同種異系抗CD70 CAR T細胞ターゲティング
同種異系抗CD70 CAR−T細胞を作製するための高効率CRISPR/Cas9遺伝子編集
本例は、初代ヒトT細胞におけるCas9:sgRNA RNP(二本鎖切断誘導用)及びCD70 CARコンストラクト(配列番号1424)を含有するAAV6送達ドナー鋳型による効率的なトランス遺伝子挿入及び同時の遺伝子ノックアウトを実証する。ここに記載される実験は、実施例16に記載されるものと同様である。
【0847】
初代ヒトT細胞をCD3/CD28磁気ビーズで活性化した(先に実施例2に記載したとおり)。3日後、活性化ビーズを取り除いた。翌日、TRAC単独、又はTRAC+B2M(2つの別個に複合体化したRNP)のいずれかを標的とするsgRNAを含むRNP複合体を細胞に電気穿孔した。操作の7日後、先に本明細書及び実施例2に記載したとおり、細胞をフローサイトメトリーによって分析した。
【0848】
本例で使用したガイドは、以下を標的とする:
TRAC:AGAGCAACAGTGCTGTGGCC(配列番号76);TRAC sgRNA(配列番号686)
B2M:GCTACTCTCTCTTTCTGGCC(配列番号417);TRAC sgRNA(配列番号688)。
【0849】
本例で使用したgRNAは、以下のスペーサー配列を含む:TRAC gRNAスペーサー(AGAGCAACAGUGCUGUGGCC(配列番号152));及びB2M gRNAスペーサー(GCUACUCUCUCUUUCUGGCC(配列番号466))。
図56Aは、TRAC及びβ2M遺伝子座において高編集率が実現した結果、TCR及びMHC−Iの表面発現が減少したことを示す。TRAC遺伝子座からの抗CD70 CARの極めて効率的な部位特異的組込み及び発現もまた検出された。データは3つの健常ドナーからのものである。
図56Bは、同種異系抗CD70 CAR−T細胞(TCR−β2M−CAR+)の産生がCD4及びCD8比率を維持することを示す。
【0850】
抗CD70 CAR−T細胞は多発性骨髄腫細胞を死滅させる
TRAC
−/B2M
−/抗CD70 CAR+ T細胞がCD70発現多発性骨髄腫細胞株(MM.1S)を死滅させる能力を評価するため、実施例21及び29に記載されるアッセイと同様の、フローサイトメトリーベースの細胞死滅アッセイを設計した。TRAC
−/B2M
−/抗CD70 CAR+ T細胞をBCMA発現MM.1s多発性骨髄腫細胞株の細胞と共培養した。
図57は、同種異系抗CD70 CAR−T細胞(TCR−β2M−CAR+)がMM.1S多発性骨髄腫由来細胞株に対して強力な細胞傷害性を示すことを示す。
【0851】
実施例31.−抗BCMA(CD28)CAR及び抗BCMA(4−1BB)CARの比較
CAR発現
CD28共刺激ドメイン(CTX−160又はCTX−166によってコードされる)又は4−1BB共刺激ドメイン(CTX160b又はCTX166bによってコードされる)のいずれかを有する同種異系TRAC−/B2M−/抗BCMA CAR T+細胞を上記に記載されるとおり生成した。抗BCMA CAR発現は、ビオチン化BCMAに結合し、続いてストレプトアビジン−APCを使用したFACSにより検出された細胞の割合を決定することにより測定した(
図67)。60%を超える細胞が細胞表面にCARを発現した。
【0852】
細胞傷害性
同じTRAC
−/B2M
−/抗BCMA(CD28対4−1BB)CAR+ T細胞がBCMA発現多発性骨髄腫細胞株(MM.1S)を選択的に死滅させるを評価するため、実施例21に記載されるアッセイと同様の、フローサイトメトリーベースの細胞死滅アッセイを設計した。TRAC
−/B2M
−/抗BCMA CAR+ T細胞をBCMA発現MM.1S多発性骨髄腫細胞株の細胞と共培養した。
【0853】
次に、分析したフローサイトメトリーデータから1μL当たりの標的細胞を計算した:
細胞/μL=((生存標的細胞イベント数)/(ビーズイベント数))×((ロットの割り付けビーズカウント(ビーズ/50μL))/(試料容積))
【0854】
標的細胞総数は、細胞/μL×細胞総容積の乗算によって計算した。
【0855】
次にパーセント細胞溶解率を以下の式により計算した:
%細胞溶解率=(1−((試験試料の標的細胞総数)/(対照試料の標的細胞総数))×100。
【0856】
図68は、全てのTRAC−/B2M−/抗BCMA CAR+ T細胞がMM.1S細胞を死滅させたことを示す。これらの結果は、本明細書に記載されるCRISPR/Cas9修飾T細胞がBCMA発現多発性骨髄腫細胞株において強力な細胞溶解を誘導することを示している。
【0857】
インターフェロンγ分泌
操作されたTRAC−/B2M−/抗BCMA(CD28対4−1BB)CAR+ T細胞が標的細胞に応答してインターフェロンγ(IFNγ)を産生する能力について、上記並びに実施例10、18、及び21に記載されるとおりELISAアッセイを用いて分析した。
【0858】
遺伝子修飾されたT細胞の特異性をインビトロELISAアッセイで判定した。細胞共培養の上清からIFNγを測定した。MM.1S細胞を、抗BCMA CARを発現する遺伝子操作されたT細胞、又は対照と培養した。
図69は、全てのTRAC
−/B2M
−/抗BCMA CAR+ T細胞が、抗BCMA CARを発現しないT細胞(未編集のT細胞)と比較してMM.1S細胞と培養したときより高いレベルのIFNγを分泌することを実証する。対照的に、TRAC
−/B2M
−/抗BCMA CAR+ T細胞は、K562細胞(BCMAを発現しない細胞)と培養したときIFNγ又はIL−2を分泌しない。
【0859】
従って、本開示の抗BCMA CAR T細胞はIFNγを産生するのみならず、BCMA発現細胞の存在下ではそれを特異的に行う。
【0860】
細胞死滅アッセイ
TRAC
−/B2M
−/抗BCMA(4−1BB)CAR+ T細胞が浮遊細胞株を死滅させる能力を評価するため、フローサイトメトリーベースの細胞死滅アッセイを設計した。TRAC
−/B2M
−/抗BCMA CAR+ T細胞を、BCMA発現RPMI−8226(ATCCカタログ番号ATCC−155)ヒト形質細胞腫標的細胞株の細胞、BCMA発現U−266細胞株の細胞、多発性骨髄腫細胞株H929の細胞、又はBCMAを発現しないK562細胞株の細胞(まとめて「標的細胞」と称される)と共培養した。標的細胞を5μM efluor670(eBiosciences)で標識し、洗浄し、及び様々な比のTRAC
−/B2M
−/抗BCMA CAR+ T細胞との共培養下(0.1:1〜8:1T細胞対標的細胞)、U字型底の96ウェルプレートのウェル当たり50,000標的細胞で一晩インキュベートした。翌日、ウェルを洗浄し、1:500希釈の5mg/mL DAPI(Molecular Probes)を含有する200μLの培地に培地を交換した(死細胞/瀕死細胞の計数のため)。最後に、各ウェルに25μLのCountBrightビーズ(Life Technologies)を加えた。次に細胞をフローサイトメトリーによって処理した。
【0861】
次に、分析したフローサイトメトリーデータから1μL当たりの標的細胞を計算した:
細胞/μL=((生存標的細胞イベント数)/(ビーズイベント数))×((ロットの割り付けビーズカウント(ビーズ/50μL))/(試料容積))
【0862】
標的細胞総数は、細胞/μL×細胞総容積の乗算によって計算した。
【0863】
次にパーセント細胞溶解率を以下の式により計算した:
%細胞溶解率=(1−((試験試料の標的細胞総数)/(対照試料の標的細胞総数))×100
【0864】
図70は、TRAC−/B2M−/抗BCMA(4−1BB)CAR+ T細胞がRPMI 8226細胞、U−266細胞、及びH929細胞を選択的に死滅させ、K562細胞(BCMA発現を欠く)に対する特異的毒性はなかったことを示す。これらの結果は、CRISPR/Cas9媒介性T細胞がBCMA発現形質細胞腫細胞株において強力な細胞溶解を誘導することを示している。
【0865】
インターフェロンγ及びIL−2刺激
TRAC−/B2M−/抗BCMA(4−1BB)CAR+ T細胞が標的細胞においてインターフェロンγ(IFNγ)を産生する能力について、上記並びに実施例10及び18に記載するとおりELISAアッセイを用いて分析した。
【0866】
TRAC遺伝子に組み込まれた抗BCMA CARを発現する遺伝子修飾されたT細胞の特異性をインビトロELISAアッセイで判定した。細胞共培養の上清からのIFNγ及びIL−2を測定した。標的RPMI−8226、U2261、H929、又はK562細胞を、抗BCMA CARを発現する遺伝子操作されたT細胞、又は対照と培養した。
図73及び
図74は、TRAC
−/B2M
−/抗BCMA CAR+ T細胞が、K562細胞株を除き、抗BCMA CARを発現しないT細胞(RNPなし)と比較して、標的細胞株の各々と(0.5:1、1:1、1.5:1、2:1、及び2.5:1のCAR−T細胞対標的比で)培養したときより高いレベルのIFNγ(
図71)及びIL−2(
図72)を分泌することを実証する。従って、本開示のTRAC−/B2M−/抗BCMA(4−1BB)CAR+ T細胞はIFNγ及びIL−2を産生するのみならず、BCMA発現細胞の存在下ではそれを特異的に行う。
【0867】
TRAC−/B2M−/抗BCMA(4−1BB)CAR+ T細胞を使用して、TRAC−/B2M−/PD−1−/抗BCMA(4−1BB)CAR+ T細胞と比較して上記と同様の試験を繰り返した。編集された細胞について、細胞傷害性、IFN−γ刺激、及びIL−2刺激に関してMM.1S細胞又はK562細胞でアッセイした。結果は
図74に図示し、ここでは編集された細胞がBCMA発現K562細胞株において特異的に強力な細胞溶解を誘導し、及びBCMA発現細胞の存在下で特異的にIFNγ及びIL−2を産生することが示される(
図74)。
【0868】
実施例32−PD−1ノックアウトのコンテクストにおける抗BCMA CARについてのインビボ腫瘍モデル
NOGマウスにおける皮下RPMI−8226腫瘍異種移植片モデルに対するTRAC−/B2M−/抗BCMA(CD28共刺激)CAR+ T細胞及びTRAC−/B2M−/PD−1−/抗BCMA(CD28共刺激)CAR+ T細胞の有効性を判定した。端的には、試験開始の5〜7日前、換気付きマイクロアイソレーターケージで無菌条件下に維持した35匹の5〜8週齢雌CIEA NOG(NOD.Cg−Prkdc
scidI12rg
tm1Sug/JicTac)マウスを個別に飼育した。1日目にマウスは10×10
6個のRPMI−8226細胞/マウスの皮下接種を受けた。RPMI−8226細胞の接種から10日後、マウスを6つの治療群に分割し(N=5)、表30に指示するとおり投与した。
【0869】
【表68】
[この文献は図面を表示できません]
【0870】
腫瘍容積及び体重を測定し、腫瘍容積が≧500mm
3になったとき個々のマウスを安楽死させた。18日目までに、データは、未治療のマウスと比較したとき、TRAC−/B2M−/抗BCMA(CD28共刺激)CAR+ T細胞及びTRAC−/B2M−/PD−1−/抗BCMA(CD28共刺激)CAR+ T細胞に応答した腫瘍容積の統計的に有意な減少を示す(
図73)。
【0871】
実施例33−CD28又は41BB共刺激ドメインと併せたTRAC−/B2M−/抗CD70 CAR+ T細胞又はTRAC−/B2M−/PD1−/抗CD70 CAR+ T細胞の有効性:NOGマウスにおける皮下腎細胞癌腫瘍異種移植片モデル
NOGマウスに5×10
6個のA498腎細胞癌細胞を皮下注射した。腫瘍が約150mm
3に達したとき、マウスは未治療のままとするか、又は1×10
7個の抗CD70 CAR−T細胞の治療用量を静脈内(I.V.)注射するかのいずれかとした。試験期間中、2日毎に腫瘍容積を測定した。抗CD70 CART細胞の注射は腫瘍容積の減少につながり(
図75)、その後腫瘍は再び成長する。これらのデータは、CD28又は41BB共刺激ドメインと併せたTRAC−/B2M−又はTRAC−/B2M−/PD1−抗CD70 CAR+ T細胞が、インビボでCD70+腎臓癌腫瘍に対して同様の抗腫瘍活性を有することを示す。
【0872】
抗CD70 CAR+T細胞を上記の実施例18に記載されるとおり生成した。更に実施例25に記載されるものと同様にインビボ研究を行った。CD28又は41BB共刺激ドメインと併せた修飾TRAC
−/B2M−又はTRAC−/B2M−/PD1−抗CD70CAR+ T細胞が、CD70+腎癌細胞株によって引き起こされる疾患を改善する能力について、Translational Drug Development,LLC(Scottsdale、AZ)が採用している方法を用いてNOGマウスで判定した。端的には、試験開始の5〜7日前、換気付きマイクロアイソレーターケージで無菌条件下に維持した5〜8週齢雌CIEA NOG(NOD.Cg−Prkdc
scidI12rg
tm1Sug/JicTac)マウスを個別に飼育した。1日目にマウスは5×10
6個のA498腎癌細胞/マウスの皮下接種を受けた。マウスを表31に示されるとおりの5つの治療群に更に分割した。腫瘍が約150mm
3に達したとき、表31に従い治療群2、3、4及び5がTRAC
−/抗CD70CAR+細胞の単回200μl静脈内投与を受けた。
【0873】
【表69】
[この文献は図面を表示できません]
【0874】
2日毎に腫瘍容積を測定した。これらのデータは、CD28又は41BB共刺激ドメインと併せたTRAC−/B2M−又はTRAC−/B2M−/PD1−抗CD70 CAR+ T細胞がインビボでCD70+腎臓癌腫瘍に対して同様の抗腫瘍活性を有することを実証する。
【0875】
図75は、CD28又は41BB共刺激ドメインと併せたTRAC−/B2M−又はTRAC−/B2M−/PD1−抗CD70 CAR+ T細胞を有するA498腎細胞癌細胞株を皮下注射したNOGマウスの治療後の腫瘍容積(mm
3)の同様の減少を示すグラフである。全てのNOGマウス群について5×10
6細胞/マウスで注射した。群1はT細胞治療を受けなかった。群2のマウスは、腫瘍が約150mm
3に達したとき、1×10
7細胞/マウスのCD28共刺激ドメインと併せたTRAC−/B2M−抗CD70 CAR+ T細胞によって静脈内治療した。群3のマウスは、腫瘍が約150mm
3に達したとき、2×10
7細胞/マウスのCD28共刺激ドメインと併せたTRAC−/B2M−/PD1−抗CD70 CAR+ T細胞によって静脈内治療した。群3のマウスは、腫瘍が約150mm
3に達したとき、1×10
7細胞/マウスの41BB共刺激ドメインと併せたTRAC−/B2M−抗CD70 CAR+ T細胞によって静脈内治療した。群4のマウスは、腫瘍が約150mm
3に達したとき、2×10
7細胞/マウスの41BB共刺激ドメインと併せたTRAC−/B2M−/PD1−抗CD70 CAR+ T細胞によって静脈内治療した。
【0876】
【表70】
[この文献は図面を表示できません]
【0877】
【表71】
[この文献は図面を表示できません]
【0878】
【表72】
[この文献は図面を表示できません]
【0879】
【表73】
[この文献は図面を表示できません]
【0880】
【表74】
[この文献は図面を表示できません]
【0881】
【表75】
[この文献は図面を表示できません]
【0882】
【表76】
[この文献は図面を表示できません]
【0883】
【表77】
[この文献は図面を表示できません]
【0884】
【表78】
[この文献は図面を表示できません]
【0885】
【表79】
[この文献は図面を表示できません]
【0886】
【表80】
[この文献は図面を表示できません]
【0887】
【表81】
[この文献は図面を表示できません]
【0888】
【表82】
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【0889】
【表83】
[この文献は図面を表示できません]
【0890】
【表84】
[この文献は図面を表示できません]
【0891】
【表85】
[この文献は図面を表示できません]
【0892】
【表86】
[この文献は図面を表示できません]
【0893】
【表87】
[この文献は図面を表示できません]
【0894】
【表88】
[この文献は図面を表示できません]
【0895】
【表89】
[この文献は図面を表示できません]
【0896】
【表90】
[この文献は図面を表示できません]
【0897】
【表91】
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【0898】
【表92】
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【0899】
【表93】
[この文献は図面を表示できません]
【0900】
【表94】
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【0901】
【表95】
[この文献は図面を表示できません]
【0902】
【表96】
[この文献は図面を表示できません]
【0903】
【表97】
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【0904】
【表98】
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【0905】
【表99】
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【1053】
説明的な例に関する注記
本開示は、本発明の様々な態様及び/又はその潜在的な適用可能性を説明するため様々な具体的な態様の記載を提供するが、当業者には変形例及び改良例が想起されるであろうことが理解される。従って、本明細書に記載される1つ又は複数の発明は、少なくともそれが特許請求されるのと同程度に広義であるものと理解されるべきであり、本明細書に提供される特定の説明的態様によってより狭義に定義されるものと理解されてはならない。
【1054】
本明細書に特定される任意の特許、刊行物、又は他の開示資料は、特に指示されない限り全体として本明細書に参照によって援用されるが、但し、援用された資料が既存の記載、定義、表明、又は本明細書に明示的に示される他の開示資料と矛盾しない範囲に限るものとする。従って、及び必要がある範囲において、本明細書に示されるとおりの明示的開示が、参照によって援用される任意の矛盾する資料に優先する。本明細書に参照によって援用されると言われるが、既存の定義、表明、又は本明細書に示される他の開示資料と矛盾する任意の資料、又はその一部は、当該の援用される資料と既存の開示資料との間に矛盾が生じない範囲に限り援用される。本出願人らは、参照によって本明細書に援用される任意の主題、又はその一部が明示的に記載されるように本明細書を補正する権利を留保する。
前記操作されたT細胞の少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%が検出可能なレベルのTCR表面タンパク質を発現しない、請求項1〜5のいずれか一項に記載の細胞集団。
前記操作されたT細胞の少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、又は少なくとも75%が検出可能なレベルのCARを発現する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の細胞集団。
前記操作されたT細胞の少なくとも50%が検出可能なレベルのCARを発現し、且つ検出可能なレベルのTCR表面タンパク質又はB2M表面タンパク質を発現しない、請求項1〜7のいずれか一項に記載の細胞集団。
前記操作されたT細胞をCD19+ B細胞と共培養すると、前記CD19+ B細胞の少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、又は少なくとも75%の溶解が生じる、
前記操作されたT細胞をCD70+ B細胞と共培養すると、前記CD70+ B細胞の少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、又は少なくとも75%の溶解が生じる、又は
前記操作されたT細胞をBCMA+ B細胞と共培養すると、前記BCMA+ B細胞の少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、又は少なくとも75%の溶解が生じる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の細胞集団。
破壊されたプログラム細胞死タンパク質1(PD1)遺伝子を更に含み、任意選択で前記操作されたT細胞の少なくとも80%が検出可能なレベルのPD1表面タンパク質を発現しない、請求項1〜9のいずれか一項に記載の細胞集団。
破壊された細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA−4)遺伝子を更に含み、任意選択で前記操作されたT細胞の少なくとも80%が検出可能なレベルのCTLA−4表面タンパク質を発現しない、請求項1〜10のいずれか一項に記載の細胞集団。
前記操作されたT細胞の破壊されたB2M遺伝子が、配列番号1560;配列番号1561;配列番号1562;配列番号1563;配列番号1564;及び配列番号1565からなる群から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む、請求項13に記載の細胞集団。
前記細胞の少なくとも16%が、配列番号1560のヌクレオチドを含むように編集されたB2M遺伝子を含み;前記細胞の少なくとも6%が、配列番号1561のヌクレオチドを含むように編集されたB2M遺伝子を含み;前記細胞の少なくとも4%が、配列番号1562のヌクレオチドを含むように編集されたB2M遺伝子を含み;前記細胞の少なくとも2%が、配列番号1563のヌクレオチドを含むように編集されたB2M遺伝子を含み;前記細胞の少なくとも2%が、配列番号1564のヌクレオチドを含むように編集されたB2M遺伝子を含み;及び前記細胞の少なくとも2%が、配列番号1565のヌクレオチドを含むように編集されたB2M遺伝子を含む、請求項14に記載の細胞集団。
TRAC遺伝子を標的とする前記gRNAが配列番号83〜158のいずれか1つのヌクレオチド配列を含む、及び/又は配列番号7〜82のいずれか1つのヌクレオチド配列を標的とする;及び/又は
B2M遺伝子を標的とする前記gRNAがいずれか1つの配列番号458〜506のヌクレオチド配列を含む、及び/又は配列番号409〜457のいずれか1つのヌクレオチド配列を標的とする、
請求項19〜24のいずれか一項に記載の方法。
PD1遺伝子を標的とする前記gRNAが配列番号1083〜1274のいずれか1つのヌクレオチド配列を含む、及び/又は配列番号891〜1082のいずれか1つのヌクレオチド配列を標的とする、又は
PD1遺伝子を標的とする前記gRNAが配列番号1086のヌクレオチド配列を含む、及び/又は配列番号894のヌクレオチド配列を標的とする、請求項26に記載の方法。
CTLA−4遺伝子を標的とする前記gRNAが配列番号1289〜1298のいずれか1つのヌクレオチド配列を含む、及び/又は配列番号1278〜1287のいずれか1つのヌクレオチド配列を標的とする、又は
CTLA−4遺伝子を標的とする前記gRNAが配列番号1292のヌクレオチド配列を含む、及び/又は配列番号1281のヌクレオチド配列を標的とする、請求項28に記載の方法。
前記RNAガイド型ヌクレアーゼが、Cas9ヌクレアーゼ、任意選択で化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)Cas9ヌクレアーゼである、請求項19〜29のいずれか一項に記載の方法。
非修飾T細胞と比べてキメラ抗原受容体(CAR)と配列番号76のヌクレオチド配列の欠失とを含むように修飾されたT細胞受容体α鎖定常領域(TRAC)遺伝子を含むように操作されたT細胞。