特表2020-519484(P2020-519484A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2020-519484レーザーリソグラフィによる3D構造の製造方法、及び対応するコンピュータプログラム製品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-519484(P2020-519484A)
(43)【公表日】2020年7月2日
(54)【発明の名称】レーザーリソグラフィによる3D構造の製造方法、及び対応するコンピュータプログラム製品
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/393 20170101AFI20200605BHJP
   B29C 64/124 20170101ALI20200605BHJP
   B29C 64/273 20170101ALI20200605BHJP
【FI】
   B29C64/393
   B29C64/124
   B29C64/273
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2019-559052(P2019-559052)
(86)(22)【出願日】2018年2月7日
(85)【翻訳文提出日】2019年10月29日
(86)【国際出願番号】EP2018053016
(87)【国際公開番号】WO2018206161
(87)【国際公開日】20181115
(31)【優先権主張番号】102017110241.8
(32)【優先日】2017年5月11日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】511206401
【氏名又は名称】ナノスクライブ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Nanoscribe GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】タンギー、ヤン
(72)【発明者】
【氏名】リンデンマン、ニコル
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AR08
4F213AR11
4F213AR12
4F213AR20
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL12
4F213WL44
4F213WL45
4F213WL76
4F213WL85
4F213WL92
4F213WL95
(57)【要約】
本発明は、レーザーリソグラフィによって3次元全体構造(10)を製造する方法に関し、全体構造(10)は、少なくとも1つの部分構造(14)によって近似され、部分構造(14)を書き込むために、多光子吸収を利用しながらレーザー書き込みビーム(28)の焦点領域(26)においてリソグラフィ材料に露光量が照射される。ここで、部分構造(14)では、製造される全体構造(10)の外部表面(12)に直接隣接するそれらのエッジ部分(20)における露光量は、残りの部分構造(14)と比較して修正される。本発明はまた、本方法に適合されたコンピュータプログラム製品にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リソグラフィ材料におけるレーザーリソグラフィによる3次元の全体構造(10)を製造する方法において、
前記全体構造(10)が、少なくとも1つの部分構造(14)が前記全体構造(10)に近似するように前記少なくとも部分構造(14)が画定されるように画定され、
前記部分構造(14)を書き込むために、多光子吸収を利用しながらレーザー書き込みビーム(28)の焦点領域(26)において前記リソグラフィ材料に露光量が照射され、
製造される前記全体構造(10)の外部表面(12)に直接隣接するエッジ部分(20)における前記少なくとも1つの部分構造(14)における残りの部分構造(14)と比較して前記露光量が変更される、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記全体構造(10)が、複数の部分構造(14)を順次画定することにより画定され、前記部分構造(14)が、前記全体構造(10)に一体に近似する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記エッジ部分(20)における前記露光量が、前記残りの部分構造(14)と比較して増加する、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記エッジ部分(20)における前記露光量が、前記残りの部分構造(14)と比較して減少する、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記露光量を変化させるために、前記レーザー書き込みビーム(28)の照射出力が変更される、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記部分構造(14)を書き込むために、前記レーザー書き込みビーム(28)の前記焦点領域(26)が、前記リソグラフィ材料を介してシフトされ、前記焦点領域(26)のシフト速度が、前記露光量を変化させるために変更される、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記部分構造(14)を書き込むために、前記レーザー書き込みビーム(28)の前記焦点領域(26)が、複数の直接隣接する曲線部分を有する前記リソグラフィ材料を通る走査曲線(22)を通過し、2つの連続して横切る曲線部分を通過する間の待機時間だけ待機され、待機時間の間、露光量が照射されない、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記部分構造(14)を書き込むために、前記レーザー書き込みビーム(28)の前記焦点領域(26)が、複数の直接隣接する曲線部分を有する前記リソグラフィ材料を通る走査曲線(22)を通過し、各部分構造(14)の前記エッジ部分(20)における前記露光量が、前記エッジ部分(20)における直接隣接する曲線部分が互いに有する平均距離が直接隣接する曲線部分が各部分構造(14)の他の部分において互いに有する平均距離とは異なるように変更される、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記部分構造(14)を書き込むために、前記レーザー書き込みビーム(28)の前記焦点領域(26)が、前記リソグラフィ材料を通る走査曲線(22)を通過し、それにより、前記エッジ部分(20)における前記露光量が、前記エッジ部分(20)内で前記走査曲線(22)を複数回通過することにより変更される、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記部分構造(14)が、一組の体積要素(24)から構成され、前記レーザー書き込みビーム(28)が、所定のパルスレートで照射される一連のレーザーパルスとして形成され、各レーザーパルスが体積要素(24)を書き込むために使用され、前記パルスレート及び/又はパルス長を変化させることにより前記露光量が変更される、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記全体構造(10)を表すデータセットが提供され、これから、前記少なくとも1つの部分構造(14)を表す少なくとも1つのさらなるデータセットが生成され、さらに、前記全体構造(10)から前記少なくとも1つの部分構造(14)の偏差(18)を表す第2のさらなるデータセットが決定され、前記露光量の変化が、前記エッジ部分(20)における局所偏差(18)に依存して生成される、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記依存が、前記局所偏差(18)によって前記露光量が単調増加する関数によって与えられる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記依存が、前記局所偏差(18)によって前記露光量が単調減少する関数によって与えられる、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記全体構造(10)の前記外部表面(12)を表すデータセットが提供され、前記外部表面の局所的な傾斜及び/又は曲率が決定され、前記露光量の変化が、前記部分構造(14)の前記エッジ部分(20)に隣接する前記外部表面(12)の領域(36)の局所的な傾斜及び/又は曲率に依存する、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
コンピュータによって実行されると、請求項1から請求項14のいずれか一項に記載の方法をコンピュータに実行させる命令を含むコンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に記載のレーザーリソグラフィによる3次元全体構造の製造方法、及び請求項15に記載のそれに適合したコンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
そのような方法は、製造される構造に高精度と設計の自由度との両方が望まれる分野でのマイクロ又はナノ構造の製造に特定の用途を見出す。レーザーリソグラフィの分野、特にいわゆる直接レーザー書き込みでは、所望の構造に全体的に互いに補完する一連の部分構造を連続して書き込むことによって所望の全体構造が製造されることが知られている。通常、全体構造は、レイヤ又はスライスで書き込まれる。
【0003】
個々の部分構造は、通常、既知の全体構造から数学的に決定される。この目的のために、グリッド構造に全体構造を計算的に記録し、それを部分構造に分割することが知られている。部分構造が再びグリッド構造で決定され、したがって、全体構造の正確な経過を正確に再現しないという問題が発生する。さらに、レーザーリソグラフィは、特に焦点領域の空間的範囲によって与えられる特定の解像度限界を本質的に有する。その結果、異なる部分構造から構成される構造では、ステップ状の表面コースが発生する可能性がある。このいわゆる「ステップ」効果は、連続的な表面進行を有する全体構造を製造することを問題にする。他の問題は、非常に密集した構造を製造するときに、いわゆる「バルジング」効果が発生する可能性があるということである。この場合、特定の構造領域が不必要に拡大又は膨張する可能性があり、これは、構造の詳細が次々と隣接して書き込まれると、リソグラフィ材料への効果的に過剰なエネルギー入力に起因する。全体として、既知のレーザーリソグラフィ方法では、書き込まれる構造と、複合部分構造から実際に生じる構造との間に望ましくない偏差が生じる可能性がある。
【0004】
従来技術において、言及された問題及び不正確さを扱うための様々な方法が知られている。特に、より小さな部分構造に分解することにより、精度の向上が達成され得る。しかしながら、これはまた、製造される部分構造の数を増加させるため、この手順は時間がかかる。また、輪郭の変化が激しい領域でのみ、全体構造のより細かいスクリーニングを行うことも考えられる。これは、部分構造を製造する際の計算量を増加させ、したがって、同様に時間がかかる。
【0005】
ステレオリソグラフィ法は、米国特許第4,575,330号明細書又は米国特許第5,247,180号明細書から知られており、部分構造の所望の構造が、書き込みビームによる局所露光により、液体リソグラフィ材料の浴中にブロック状又は層状に構築される。この場合、書き込みビームは、リソグラフィ材料の浴の表面上の層において直接それぞれの場合に局所露光により構造領域を硬化する。リソグラフィ材料の浴内でキャリア基材を段階的に降下させることにより、構造は、その後に層状に積み上げられる。この方法では、大量のリソグラフィ材料に所望の構造を直接構築することはできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上述したレーザーリソグラフィ法における望ましくない不正確さを補償し、製造される構造に関して設計の自由度を高めることである。さらに、目的は、プロセス時間を可能な限り短縮することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1に記載の方法により達成される。これは、大量のリソグラフィ材料又はリソグラフィ材料で満たされた体積でのレーザーリソグラフィ装置によるレーザーリソグラフィ法、特にいわゆる直接レーザー書き込みである。全体構造は、少なくとも1つの部分構造を定義することにより(すなわち、レーザーリソグラフィ装置によってリソグラフィ材料に「書き込む」ことにより)リソグラフィ材料に書き込まれ、少なくとも1つの部分構造は、所望の全体構造に少なくとも近似する。
【0008】
部分構造を書き込むために、露光量は、2光子吸収又は一般に多光子吸収を利用して、レーザー書き込みビームの焦点領域において空間分解された方法でリソグラフィ材料に照射される。結果として、リソグラフィ材料は、このように局所的に修正されて構造化される。構造の最終的な定義の後に、例えば、全体構造に寄与しないリソグラフィ材料の領域をトリガーしたり又は全体構造を硬化したりするための現像ステップが続くことができる。
【0009】
目的を達成するために、特に、部分構造の他の領域と比較して、製造される全体構造の外部表面に直接隣接する(及びこれまでのところ、外部表面自体によって区切られる)エッジ部分の少なくとも1つの部分構造において、露光量が変更されることが提案される。
【0010】
部分構造を生成するために、レーザー書き込みビームの焦点領域がリソグラフィ材料を介してシフトされ、それにより露光量を導入する。焦点範囲をシフトするために、レーザー書き込みビームは、例えば、ビーム誘導装置によって、制御された方法で偏向させることができる。しかしながら、リソグラフィ材料又はリソグラフィ材料を有する基材は、位置決め装置によってレーザー書き込みビームに対して制御された方法でシフトされることも考えられる。両方の概念はまた、シフトするために一緒に使用され得る。露光量は、特に放射エネルギーの体積線量である。焦点領域が各エッジ部分にシフトされると、本発明に従って露光量が変更される。
【0011】
多光子吸収による露光量の導入は、現在使用されているタイプの3Dレーザー書き込みにおいて特に有利である。この目的のために、リソグラフィ材料は、好ましくは、複数の光子の吸収によってのみリソグラフィ材料の変更(例えば局所重合)が可能になるようにレーザー書き込みビームがリソグラフィ材料に合わせて調整されるように設計される。この目的のために、例えば、レーザー書き込みビームの波長は、リソグラフィ材料の変更に必要なエネルギー入力が2つ以上の量子の同時吸収によって達成されるのみであるように選択され得る(それゆえに、割り当てられた量子エネルギーは寸法決めされ得る)。そのようなプロセスの確率は、強度に依存し、書き込みビームの残りの部分と比較して焦点領域において著しく増加する。基本的な考慮事項は、2つ以上の量子を吸収する確率は、放射強度の2乗又はより高い出力に依存することができることを示唆している。対照的に、線形吸収プロセスの確率は、特に放射強度のパワーが低い場合、異なる強度依存性を有する。レーザー書き込みビームがリソグラフィ材料に浸透すると減衰が発生するため(例えば、ビールの法則に従って)、リソグラフィ材料の液面下の深い線形吸収プロセスを使用した焦点領域への書き込みは、最高の吸収確率が減衰自体に起因して焦点領域の表面下に焦点を合わせても、必ずしも存在しないため、問題があろう。対照的に、多光子吸収のメカニズムは、所望の露光量を大量のリソグラフィ材料の内部に導入し、リソグラフィ材料を局所的に修正することを可能にする。したがって、当該技術分野で知られているように、リソグラフィ材料の浴内で支持構造を段階的に降下させるための装置は不要である。
【0012】
露光量を照射することにより、リソグラフィ材料は、局所的に化学的及び/又は物理的に変化し、例えば硬化又は重合する。リソグラフィ材料の変更された領域又は「ボクセル」のサイズは、露光量に依存する。したがって、露光量を変えることにより、各構造領域又は「ボクセル」の空間範囲を変更することができる。したがって、露光量の変化の適切な寸法決定により、書き込まれた領域は、所望の全体構造と部分構造との間の欠落領域が補償されるようにサイズが調整され得る。
【0013】
これは、全体構造が1つ以上の部分構造に近付いたときに発生する可能性のある冒頭で説明した不正確さを補償することを可能にする。レーザーリソグラフィで一般的に発生する他の問題もまた、上記の手順によって解消され得る。例えば、ネガ型レジストを使用すると、望ましくない収縮効果が発生する場合がある。ネガ型レジストは、放射エネルギーにさらされた領域で硬化する。収縮効果は、例えば、リソグラフィ材料が、元の(例えば、粘性)状態よりも硬化状態で占める空間が少ないという事実によって引き起こされる。これは、露光量の目標とする変動によって補うことができる。
【0014】
しかしながら、露光量の変動はまた、目標とする方法で所望の表面構造を直接生成することも可能にする。この場合、後に全体構造の表面を提供するエッジ部分の露光量は、定義されたパターンに従って変化する。これは、エッジ部分に書き込まれたボクセルが異なる膨張を有し、したがって、所望の表面構造化に寄与するという事実につながる。
【0015】
好ましくは、露光量は、エッジ部分のみで変更される。他の部分、特に部分構造の内部領域では、露光量の変動が生じないことが好ましい。これにより、レーザーリソグラフィ装置の制御に必要な演算を簡素化することができる。
【0016】
記載された方法は、部分構造を介した比較的粗いスクリーニングによって全体構造を近似することを可能にする。同時に、短いプロセス時間が達成され得る。
【0017】
本文脈において、「リソグラフィ材料」という用語は、基本的に、例えば、リソグラフィレジストとして知られる、レーザー書き込みビームの照射により化学的及び/又は物理的材料特性を変化させることができる物質を指す。書き込みビームによって引き起こされる変化の性質に応じて、リソグラフィ材料は、いわゆるネガ型レジスト(照射が現像媒体における局所硬化又は溶解性を生じさせる)及びいわゆるポジ型レジスト(照射が現像媒体への溶解性を局所的に増加させる)で形成され得る。
【0018】
有利な実施形態によれば、全体構造は、複数の部分構造を次々に定義することによって定義され、部分構造は、全体構造をともに近似する。この場合、特に、生成される全体構造の外部表面に隣接する部分構造でのみ説明されるように露光量が変更されるように準備が行われる。この場合、各部分構造において、外部表面に直接隣接するエッジ部分の部分構造の残りの部分と比較して、露光量が再度変更される。所望の全体構造に応じて、部分構造もまた、エッジ部分として完全に設計され得、すなわち外部表面に完全に隣接することもできる。
【0019】
部分構造は、例えば、全体構造が層状に互いに隣接する(互いに疑似的に重なり合う)複数の部分構造によって近似されるように層状である。しかしながら、原則として、部分構造はまた、異なる形状を有することもできる。例えば、全体構造は、複数の線状の隣接領域、又はいわゆるボクセルに分割され得る。さらに、部分構造の複雑な形状も有利とすることができる。
【0020】
エッジ部分の露光量の変更は、基本的に様々な方法で行うことができる。
【0021】
部分構造の残りの部分と比較して、露光量がエッジ部分において増加することが考えられる。この手順は、上述した「ステップ効果」を補うことを可能にする。この点で、露光量を増加させることにより、周辺空間領域は、より大きな体積を効果的に取得し、全体構造のグリッド状の近似に起因して不要なステップ又は欠落領域を埋めることができる。このようにして、連続的に伸びる曲面又はアーチ状面を有する全体構造を近似することもできる。
【0022】
しかしながら、部分構造の残りの部分と比較して、露光量がエッジ部分において減少することも考えられる。この手順により、例えば、露光過多の影響を抑えることができ、これは、迅速に連続して書き込まれた小さな書き込み構造において発生する可能性がある。特に、近接して迅速に連続して書き込まれた部分構造の熱蓄積に起因して、書き込まれた領域の望ましくない拡大をもたらす、いわゆる「バルジング効果」を打ち消すことができる。
【0023】
露光量は、例えば、レーザー書き込みビームの放射力を変えることにより、局所的に変えることができる。したがって、レーザー書き込みビームの強度は、例えば音響光学変調器によって変更することができる。
【0024】
他の態様では、部分構造の書き込みは、リソグラフィ材料を介して焦点領域を走査することにより達成される。そして、焦点領域のシフト速度をそれに応じて変化させることにより、露光量を変更することができる。結果として、特定の空間領域における焦点領域の滞留時間が効果的に変化し、したがって(空間的及び時間的平均で)照射された露光量が変化する。
【0025】
一例として、部分構造の書き込みは、焦点領域がリソグラフィ材料を通る走査曲線に沿ってシフトされるように行われ、走査曲線は、複数の直接隣接する曲線セグメントを有する。有効露光量を変えるために、連続して横切り且つ直接隣接する2つの曲線部分を通過する間に露光量が照射されない待機時間を待機することが可能である。特に、待機中はレーザー書き込みビームが無効になる。曲線部分が互いに隣接して走る領域では、有効露光量は、待機時間の長さに依存する。したがって、内部構造の残りの部分と比較して曲線間の延長又は短縮された待機時間をエッジ部分に適用することにより、エッジ部分において有効な(特に時間的に平均化された)露光量を変更することができる。
【0026】
露光量はまた、エッジ部分における直接隣接する曲線部分が各部分構造の他の部分とは互いに異なる平均距離を有するプロセスによって効果的に変更することもできる。曲線部分が平均で互いに近い場合、空間的及び時間的平均において増加した露光量が効果的に導入される。曲線部分が平均においてさらに離れている場合、有効露光量は減少する。
【0027】
部分構造を書き込むとき、露光量はまた、焦点領域がリソグラフィ材料を介して走査曲線を通り且つ走査曲線がエッジ部分内で少なくとも2回以上横断するように効果的に変更することもできる。
【0028】
したがって、全体として、露光量は、一方ではレーザー書き込みビームの放射出力を制御することにより、他方では露光パターンを変更することにより変更することができる。
【0029】
レーザー書き込みビームは、基本的に連続波レーザー又はパルスレーザーとして設計され得る。パルスレーザーは、特に固有のパルスレート(例えば、MHz範囲)と固有のパルス長(例えば、フェムト秒範囲)とによって特徴付けられる。(平均経時的に)有効露光量を変更するために、レーザー書き込みビームは、例えば音響光学変調器によってさらに時間的に変調され、したがって、変調パルスが生成され得る。変調パルスもまた、変調パルス長と変調パルスレートとを有する。上記説明したように、パルスレーザー書き込みビーム又は連続波レーザーは、リソグラフィ材料を介して走査曲線に沿ってシフトされ得る。
【0030】
部分構造を決定するために、全体構造は、計算によってスクリーニングされることが好ましく、特に体積要素又は「ボクセル」に分解され、部分構造は、それぞれ、好ましくは連続するボクセルのセットによって形成される。この点で、部分構造は、形状が同様の又は形状が同一の体積要素(ボクセル)のセットから構成される。
【0031】
例えば、レーザー書き込みビームは、変調パルスレートと変調パルス長とを有する一連の変調レーザーパルスとして形成される。変調レーザーパルスが体積要素を書き込むためにそれぞれの場合に使用されることが提供され得る。しかしながら、体積要素は、複数の変調パルスによって定義され得る。有効な(特に時間的に平均化された)露光量は、例えば、変調パルスレート及び/又は変調パルス長を変えることにより変更することができる。ここで、変調パルスレートは、特に時間単位あたりの変調パルスの数を示し、変調パルス長は、特にパルスあたりの照射の持続時間を示す。レーザー書き込みビームのパルスは、例えば音響光学変調器を用いて、例えばレーザーの強度を一時的に変調することにより実現され得る。上記説明したように、パルスレーザー書き込みビームは、リソグラフィ材料を介して走査曲線に沿ってシフトされ得る。
【0032】
原則として、全体構造の部分構造又は複数の部分構造への分解は、ソフトウェア工学及びコンピュータによって実行されることが好ましい。この点で、全体構造を表すデータセット(例えば、CADデータ)が提供され、必要に応じて、データキャリア又は揮発性メモリ装置に記憶される。これから、さらなるデータセットがコンピュータによって決定される。特に、部分構造又は複数の部分構造を表すさらなるデータセットが決定される。好ましくは、ソフトウェアが使用され、全体構造の部分構造への非重複分解を実行する。しかしながら、異なる部分構造間に重複領域を設けることも有利であり得る。重複領域では、露光量を変化させることで、前述の方法で滑らかな移行が達成され得る。全体として、全体構造を表すデータセットは、プロセッサ及びメモリを備えたコンピューティングデバイスにおいて提供され、メモリに記憶される。これから、コンピューティングデバイスによってさらなるデータレコードが決定され、また、メモリに記憶される。好ましくは、さらなるデータセットを決定するとき、全体構造が近似されるグリッド精度が使用される。説明したように、分解中に前述のグリッド精度でステップ及び/又は欠落領域が発生する可能性がある。これは、全体構造が湾曲及びアーチのある連続した表面コースを有する場合、最初に説明された問題につながる可能性がある。
【0033】
この問題を解決するために、特に、前記データセットからのさらなるデータレコードが決定され、場合によっては(コンピューティングデバイスによって)記憶されることが提案される。このさらなるデータレコードは、全体構造からの部分構造の偏差又はいくつかの部分構造の全体の偏差を表す。これは、エッジ部分における局所偏差の関数として、露光量の変化を決定することを可能にする。例えば、実際の全体構造には存在しないスクリーニングに起因するエッジ部分に段差が発生した場合、これは、急激な偏差の増加をもたらす。そして、ステップを完了するために、この範囲で露光量を増やすことができる。
【0034】
典型的に使用されるレーザーリソグラフィ装置は、光学系(ビーム誘導手段、集束手段、レンズなど)を備える。そのような光学系は、例えば、像面湾曲、収差又は非点収差などの撮像誤差を受けることがある。撮像誤差はまた、所望の全体構造と少なくとも1つの部分構造によって近似される実際の構造との間に望ましくない偏差を引き起こす可能性がある。説明されている方法を使用すると、偏差が修正され得る。例えば、撮像誤差は、キャリブレーション測定によって位置に依存して決定され、特性データセットの形態で記憶され得る。そして、偏差を最小化するために、位置依存的な方法で特性データセットに応じて露光量の変化を決定することができる。
【0035】
偏差から露光量を決定する関数は、異なる特性を有することができる。例えば、単調増加関数の使用が検討され得る。説明したように、それにより、不要な欠落領域を埋めることができる。しかしながら、例えば、露光過多の影響を補償するために、局所的に単調減少関数を使用することも有利であり得る。さらに複雑な関数が有利である可能性がある。
【0036】
露光量を変更する他のアプローチは、全体構造の外部表面を表すデータセットを最初に提供し、それをメモリに記憶することであり、計算機は、外部表面の局所的な傾斜及び/又は曲率を決定する。そして、露光量の変化は、好ましくは、各エッジ部分に隣接する外部表面のその領域の局所的な傾斜及び/又は曲率の関数として起こる。換言すれば、特に、全体構造の表面の曲率、傾斜又は曲率の変化に起因して、少なくとも1つの部分構造を介したアプローチが所望の全体構造から大きく逸脱している場合、露光量が変化する。同様に、原則として、単調減少関数又は単調増加関数が使用され、傾斜及び/又は曲率の露光量の依存性を反映することができる。
【0037】
説明したように、本発明は、好ましくはコンピュータによって実装される。この点で、レーザーリソグラフィ装置の制御装置は、好ましくは、上述した方法に従ってレーザーリソグラフィ装置の制御機能を実行するコンピュータプログラムが実行可能なコンピュータを備える。
【0038】
したがって、冒頭で述べた目的はまた、請求項15に記載のコンピュータプログラム製品によっても達成される。さらに、目的は、対応するコンピュータプログラムが記憶されるデータキャリア及び/又は対応するコンピュータプログラムを表すデータストリーム(例えば、インターネットからダウンロード可能)によって達成される。
【0039】
以下、図面を参照して本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1図1は、複雑な外部表面が形成された全体構造のスケッチ例を示しており、前記構造は、レーザーリソグラフィで製造されるものである。
図2図2は、例示的な外部表面の湾曲領域及び近似部分構造のスケッチを示している。
図3図3は、不要なステップ形成を説明するためのスケッチを示している。
図4図4は、エッジ部分における露光量の変化を説明するためのスケッチを示している。
図5図5は、エッジ部分における露光量を変化させるための代替手順を説明するためのスケッチを示している。
図6図6は、露光量の変化を説明するためのスケッチを示している。
図7図7は、構造化された外部表面によって形成される構造のスケッチを示している。
図8図8は、露光量の露光変動によって形成される構造を説明するためのスケッチを示している。
図9図9は、斜視平面図で露光変動の他の適用例を示している。
図10図10は、図9にかかる構造の断面を示している。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図面及び以下の説明では、同一の又は対応する特徴について、それぞれの場合に同じ参照符号が使用されている。
【0042】
図1は、大量のリソグラフィ材料に3Dレーザーリソグラフィによって書き込まれる全体構造を示している。そのような構造は、通常、マイクロメートル又はナノメートルの範囲の測定値を有する構造的特徴を有する。全体構造の寸法は、例えば、マイクロメートル範囲、ミリメートル範囲又はセンチメートル範囲とすることができる。
【0043】
全体構造は、参照符号10によって示されており、異なる傾斜と場合によっては曲線も備えたコースを有する外部表面12を有する。これらの領域は、上記説明したように、書き込みにおいて問題になる可能性がある。図示の形式は、一例にすぎない。本明細書で説明される利点はまた、特に湾曲及び曲線を有する形状によって達成され得る。
【0044】
リソグラフィ製造の場合、全体構造10又はこの構造を表すデータレコードは、例えば、複数の部分構造14又は対応するデータセットに分解される。これは、通常、コンピュータ化される。
【0045】
図2は、複合部分構造14が所望の全体構造10にどのように近似するかを示している。この目的のために、全体構造10の一部のみが図2に示されている。層状部分構造14への図示された分解は、例示である。原則として、部分構造14は、自由に選択され得る。
【0046】
実用上の理由から、部分構造14への分解は、通常、ある程度のスクリーニングによって行われるため、全体構造10の所望の外部表面12と大量の組み立てられた部分構造14との間に欠落領域16があり、外部表面12は、部分構造14からの偏差18を有する。原則として、これらの偏差18は、これらのエッジ部分20は、達成される全体構造10の所望の外部表面12に隣接するため、部分構造14のエッジ部分20でのみ生じる。特に、図2の上部に配置された部分構造14は、この部分構造14が外部表面12に完全に隣接しているため、全体としてエッジ部分20とみなすことができる。
【0047】
図3に描かれているように、部分構造の書き込みは、対応するレーザーリソグラフィ装置(図示せず)のレーザー書き込みビーム28の焦点領域26がリソグラフィ材料の体積(全体構造を囲む)を介して導かれるように行われる。焦点領域26では、露光量がリソグラフィ材料に導入される。
【0048】
本方法の可能な一実施形態では、リソグラフィ材料の部分構造14は、各部分構造14を通る走査曲線22を通過する焦点領域26によって書き込まれる(図2及び図3では、走査曲線22は、部分的に描かれている)。
【0049】
例えば、部分構造14は、走査曲線22を通過し、定義されたパルスレート及びパルス長を有する一連のレーザーパルスを放射する焦点領域によって書き込まれることができる。結果として、走査曲線22に沿って、部分構造14を形成する一連のボクセル24又は体積要素24が定義される。ボクセル24は、形状が類似又は同一である。上記説明したように、書き込まれたボクセル24のサイズは、リソグラフィ材料に導入される露光量に関係している。
【0050】
個々の部分構造14が局所的に同じ露光量で空間平均において書き込まれた場合、結果は、図3に描かれた画像になる。特に、個々のボクセル24は、同じサイズになるであろう。結果として、これは、図2で説明した不正確さをもたらすであろう(領域16の欠落、偏差18)。
【0051】
これに対抗するために、本方法によれば、部分構造14のエッジ部分20における露光量は、部分構造14の内側領域の露光量から逸脱するように変更される。
【0052】
図4の例では、部分構造14のエッジ部分20内にある部分構造14のボクセル24’(又は体積要素24’)において露光量が増加する。結果として、ボクセル24’は、より広い空間的範囲を有する。結果として、欠落領域16又は偏差18を低減することができ、表面12をより良く近似することができる。
【0053】
外部表面12のコースに応じて、部分構造14によるより良好な近似はまた、エッジ部分20における露光量を低減することによって達成され得る(図5を参照)。
【0054】
図6は、外部表面12に近付くにつれて部分構造14における露光量を着実に低減することにより、傾斜面が高精度で近似され得る例を示している。面12は、特に部分構造14の延在方向に対して傾斜して延在する。
【0055】
しかしながら、本発明にかかる方法の一般的な考え方は、エッジ部分20における露光量を減少させるか又は増加させるだけのいずれかとすることができるという事実に限定されるものではない。基本的に、本発明の一般的な態様は、所望のパターンを生成又は可能な限り再現するために、外部表面12に隣接又は画定するエッジ部分20における露光量を定義されたパターンに従って局所的に変更することである(部分構造が全体的に構成されている場合)。
【0056】
この点で、本発明の有利な適用分野はまた、各部分構造14のエッジ部分20における露光量の変動により、外部表面上に所望の全体構造を生成することでもある。これは、リソグラフィ材料に書き込まれるレンズ本体30を示す図7の例によって描かれている。レンズ本体30の外部表面12は、複雑な構造を有する。説明したように、レンズ本体30は、レンズ本体30に近似する複数の部分構造14を連続して書き込むことにより書き込まれることが好ましい。輪郭付きの外部表面12を達成するために、部分構造14のエッジ部分20において、必要に応じて露光量を局所的に変化させる。例えば、外部表面12の膨らみは、周辺領域に増加した露光量を導入することにより達成され得、したがって、リソグラフィ材料に空間の説明された拡大体積を生成する。
【0057】
例えば、図8は、その外部表面12がフレネルゾーンプレート又はフレネルレンズの輪郭を表す構造の製造を示している。個々のボクセル又は体積要素24を生成するための露光量は、外部表面12が可能な限り正確に近似されるように選択的に変更される。
【0058】
他の適用例が図9及び図10に概説される。この場合、外部表面12は、構造化領域32を有し(図9を参照)、外部表面12は、顕著な高さプロファイル34を有する。そのような構造は、例えば、顕微鏡の較正、特に原子間力顕微鏡に使用され得る。
【0059】
エッジ部分20における露光量の変化は、特に、その入力変数が全体構造10の外部表面のコースから、場合によっては部分構造14を介したスクリーニングのフレームワーク内の全体構造の分解結果から決定される関数に応じて生じる。図2では、例えば、部分構造14の1つは、実際の外部表面12に直接隣接する領域36を有する。外部表面12の傾斜及び/又は曲率は、領域36において計算により決定されることが考えられる。そして、各部分構造14のエッジ部分20における露光量の変化は、領域36に局所的に存在する傾斜及び/又は曲率の関数として生じることができる。結果として、特に外部表面12が顕著な傾斜及び/又は曲率を有する領域において生じる欠落領域16又は偏差18を補償することができる。スクリーニングから生じる偏差18が計算されることも考えられる。これらの偏差18は、外部表面12によって形成される所望の表面と、エッジ部分20における部分構造14によって画定される実際の表面との間の差異を表す。そして、上記詳細に説明したように、露光量の変化は、偏差18の関数として起こることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】