【実施例】
【0051】
実施例1:組換えMV
麻疹ウイルス(MV#1)を、以下のアミノ酸置換(配列番号1に関して):H17S、D149N、S189P、G211S、E235G、N238D、S240N、L249P、L276G、V280I、N282K、G302R、E303G、Y310C、Q311R、Q334H、A359T、K364N、R377Q、M378K、P397L、N405S、D416N、T420A、V421A、L423P、F476L、N481Y、K488E、G491D、H495R、D505T、R533G、S546G、R547G、F552V、V562T、D574A、K576R、I594L、G603E、T609N、G613E、及びT614Aを有する改変型Hタンパク質(配列番号3)を有するように作製した。この改変型Hタンパク質(配列番号3)は、野生型MVi/Madrid.SPA/50.10 (遺伝子型H1)株の麻疹ウイルスヘマグルチニンタンパク質(配列番号9)に19個の点変異を導入することにより作製した。その19個の点変異は、S189P、E235G、N238D、L249P、G302R、Y310C、Q311R、R377Q、M378K、D416N、N481Y、K488E、G491E、H495R、D505T、R533G、S546G、R547G、及びF552Vである。
【0052】
MVワクチン株(MV#2)及び組換えMV#1を、96ウェルプレートに播種したVero/hSLAM細胞の感染前に、
図1に示すmAbとともに37℃で1時間インキュベートした。感染したeGFP陽性巣の数を感染48時間後に4回重複でカウントし、nAbの非存在下での感染したEGFP陽性巣の数の割合として表した。MV#1は、複数の抗原部位を標的とする中和抗体を回避した。MV#1の回避中和(escaping neutralization)に寄与したHタンパク質の改変を
図1に示す。
【0053】
MV#1のヒト抗麻疹抗血清に対する抵抗性を調べるため、MV糖タンパク質特異的抗体(例えば、H反応性及びF反応性)抗体を麻疹免疫ヒト血清から枯渇させた。血清サンプルを培養培地(ウシ胎児血清(FBS)を含まないRPMI 1640(CORNING, Manassas, VA, USA))で1:10に希釈し、続いてMV糖タンパク質を発現する又は発現しないMel-JuSo細胞の単層上で4日間培養した。上清を回収し、安定的にトランスフェクトされたヒトメラノーマ細胞Mel-JuSo/MV-H又はMel-JuSO/MV-Fを標的細胞として使用して、FACS測定免疫蛍光アッセイによりH又はF又はVCA特異的抗体の存在について1:100最終希釈で試験した。エプスタインバーウイルス(EBV)VCA特異的抗体は、市販のELISA(IBL International, Hamburg, Germany)によって定量化した。MV#1は、麻疹免疫ヒト血清中のF反応性抗体によって効率的に中和された。蛍光プラーク減少微量中和アッセイを使用して、ワクチン接種時に誘導される抗MV-H免疫を決定した。MV#1は、ヒト抗麻疹抗体反応のH反応性成分に抵抗性であった。
【0054】
MV Hタンパク質特異的抗体とは別に、MV Fタンパク質特異的抗体もMV中和に重要であることを確認するために、別の野生型Edmonton株麻疹ウイルス(MV#3)は、野生型Edmonston株MVのMV Fタンパク質を野生型Ondersterpoort株CDV Fタンパク質で置き換えることにより作製した。他の2つの麻疹ウイルス(MV#4及びMV#5)を作製した。MV#4は、野生型Edmonston株MVのMV Hタンパク質を野生型CDV Hタンパク質で置き換えることにより作製した。MV#5は、MV#4のMV Fタンパク質を野生型(すなわち、Ondersterpoort株)CDV Fタンパク質で置き換えることにより作製した。MV#3、MV#4及びMV#5ウイルスの概略図を
図2に示す。MV#2、MV#3、MV#4及びMV#5ウイルスを次のように試験した。Vero/cSLAM細胞にさまざまなウイルスを感染させ、感染の48時間後に顕微鏡写真を撮影した。中和アッセイを実施し、MV HとMV Fの両方が中和抗体を誘発することが明らかとなった。
【0055】
CDV Ondersterpoort及びMVH#1の増殖性の異型融合。MV受容体を発現する又はしないCHO細胞を24ウェルプレートに播種し、MVH#1(1μg)及びFタンパク質(1μg;MVワクチン株、MVF;Ondersterpoortワクチン株、CDV F)をコードするプラスミドを同時トランスフェクトした。合胞体形成は24時間後に評価した。合胞体形成活性の結果は、CDV FがMVH#1指向的に共発現された場合、合胞体形成を損なわずに融合を誘発できることを実証している。MVH#1及びCDV Fの両方をコードするウイルスをレスキューし、CD46を発現する細胞の単変性(monotropism)を確認した。
【0056】
MV受容体の表面発現パターンは、フローサイトメトリを使用して調べた。感染の2日後、増殖性感染を顕微鏡で評価した。これらの結果は、MV#1及びCDV FをコードするMVがCD46受容体を発現する細胞上で効率的に増殖することを実証した。
【0057】
C57BL/6マウス(Jackson Laboratories, Bar Harbor, ME, EEUU)を、MV#1由来のMVHタンパク質をコードするpCGプラスミド(5μg)を用いた流体力学的送達により免疫した。生成された抗体の中和能力は、頸静脈からの採血の4週間後に評価した。マウス血清を熱で不活化し、Opti-MEMで連続希釈した。異なるMVH遺伝子タンパク質をコードする等量の各ウイルスを、30PFU/ウェルで96ウェルプレート(Costar Corp., Cambridge, MA, USA)で2倍連続の様々な希釈でそれぞれのポリクローナル抗体と混合し、37℃で1時間インキュベートし、80〜90%コンフルエントなVero/hSLAM細胞に接種した。2日間の培養後、eGFP自家蛍光を蛍光顕微鏡で可視化し、ウイルス感染性を100%ブロッキングする高希釈として中和力価を与えた。これらの結果は、MV#1が、MVの野生型株を交差中和するH糖タンパク質に対する中和抗体反応を誘発したことを実証している。
【0058】
実施例2:さらなる組換えMV
この実施例2では、MVはMeVと称し、MV#1はMeVΔ7、Δ7又はΔ8と称し、MV#2はMeV#1と称し、MV#3はウイルス3と称し、MV#4はMeV#4と称し、MV#5はMeV#2と称する。これらのいくつかの合成は、実施例2で再び説明し、実施例1で提示されたデータの一部は実施例2でも提示する。さらに、MeVΔ7を使用してΔ8ウイルスを生成した。
【0059】
細胞及びウイルス
Vero細胞(CCL-81, ATCC)、安定にトランスフェクトされたVeroヒト(Vero/hSLAM)(Ono et al., J. Virol., 75(9):4399-401 (2001))及びイヌ(Vero/dogSLAM)(von Messling et al., J. Virol., 77(23):12579-91 (2003))SLAMを5%(vol./vol.)の熱不活化ウシ胎仔血清(FBS)(Gibco)及び0.5mg/mLのジェネティシン(G418; Corning)(Vero/hSLAM)又は1mg/mLのゼオシン(ThermoFisher, Walthman MA)(Vero/dSLAM)を添加したダルベッコの修正最小必須培地(DMEM)(HyClone, GE Healthcare Life Science)で増殖させた。チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、CHO-CD46(Nakamura et al., Nat. Biotechnol., 22(3):331-6 (2004))、CHO-SLAM(Tatsuo et al., Nature, 406:893-6 (2000))、及びCHO-N4(Liu et al., J. Virol., 88(4):2195-204 (2014))を記載のとおりに培養した。ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)を、DMEM-10%FBSで維持した。ウイルスは他で説明されているように増殖させた(Munoz-Alia et al., J. Virol., 91(11):e00209-17 (2017);Munoz-Alia et al., PLoS One, 13(2):e0192245 (2018))。
【0060】
組換えMeVの構築物及びレスキュー
組換えMeVは、p(+)MeV
vac2(EGFP)Nプラスミドに含まれるMoraten/Schwartzワクチン株の分子cDNAクローンに基づく(del Valle et al., J. Virol., 81(19):10597-605 (2007))。このプラスミドでは、強化型緑色蛍光タンパク質(EGFP)をN遺伝子の上流に挿入した。細菌内での増幅時のプラスミド不安定性を回避するために、2つのアプローチに従って段階的にプラスミド骨格をpSMART(登録商標)LCkanベクター(Lucigen, Middleton, WI)に置き換えた。最初のアプローチでは、SacII及びNotI制限酵素を含むマルチクローニングサイトをベクターに付加した。次に、最適なT7プロモーターとそれに続くハンマーヘッド型リボザイム(HHrbz)(
図7)を、フォワードプライマーに直接配列を挿入することによりウイルスゲノムの上流に挿入し、P遺伝子の開始に位置する特有の内部制限部位SacIIまでMeVゲノムを増幅した。次に、p(+)MV
vac2(EGFP)NプラスミドのSacII-NotI断片を、同様に消化されたpSMART(登録商標)LCkanベクターに挿入した。2番目のアプローチでは、ヒト伸長因子1αコアプロモーター、キメライントロン、T7 RNAポリメラーゼプロモーター、HHrbz及びクローニングサイトを含むカセットを合成し、ベクターに連結した。すべてのプラスミドの増殖は、30℃で増幅させた大腸菌Stbl2
TM細胞(Invitrogen, 10268019)で行った。
【0061】
エンベロープ交換MeVを生成するために、元はpCGプラスミドに含まれていたCDV Ondersterpoortワクチン株H(CDV-H)及びF(CDV-F)遺伝子(von Messling et al., J. Virol., 75(14):6418-27 (2001))を使用した。MeV骨格からMeV-Hを置き換えるために、部位特異的変異誘発(QuikChange部位特異的変異誘発キット、Agilent)を最初に使用してCDV-HのSpeI部位を除去し、次にヒト血清中の交差反応性中和抗体による結合を減らすためにY537D置換を導入した(Zhang et al., Virology, 482:218-24 (2015))。PacI及びSpeI制限部位(下線)は、それぞれフォワードプライマー5’-
ttaattaaaacttagggtgcaagatcatcgataatgctcccctaccaagacaagg-3’及びリバースプライマー5’-
actagtgggtatgcctgatgtctgggtgacatcatgtgattggttcactagcagccttaatggtggtgatggtggtggctcccccttgcggccgcggccggctgggccgctctaccctcgatacggttacatgagaatcttatacggac-3’を使用するポリメラーゼ連鎖反応により遺伝子の開始と終了に導入し、非翻訳領域(UTR)は変更しなかった。PCR産物をPacI及びSpeIで消化し、MeV骨格にクローニングした。MeVアンチゲノムプラスミドからMeV-Fを置き換えるために、pCG-CDV-FをHpaI/SpeIで消化し、同様に消化されたpCG-MeV-Fに挿入した。次に、このプラスミドのNarI/SpeI断片を使用して、MeVのものを置き換えた。
【0062】
組換えMeV(rMeV)の回収は、Lipofectamine LTX/PLUSトランスフェクション試薬(Invitrogen)を使用して、MeV分離株遺伝子型B3.1(Munoz-Alia et al., Virus Res., 196:122-7 (2015))由来のプラスミドを支持するrMeVアンチゲノムプラスミド構築物N、P及びLの同時トランスフェクションと、コドン最適化T7 RNAポリメラーゼ(Behur Leeより入手、Addgene plasmid 65974)により行った。トランスフェクト細胞はVero/hSLAM細胞と共培養し、その後ウイルスを増幅した。組換えMeVの身元(identity)は、感染細胞からのRNA抽出後のサンガー配列決定により確認した。
【0063】
融合アッセイ
細胞(6ウェルプレートで5×10
5/ウェル)にFugene HD(Promega)を使用して、ワクチン株MeV-Fをコードする(1μg)pCGプラスミドと適切なMeV-HをコードするpCGを同時トランスフェクトした。Hema-Quik染色(Fisher Scientific 123-745)の24時間後に融合活性を評価した。
【0064】
細胞融合を定量化するために、他で記載されているようにデュアルスプリットルシフェラーゼアッセイを使用した(Saw et al., Methods, 90:68-75 (2015))。簡単に説明すると、黒色96ウェルプレート中のエフェクターBHK細胞(3×10
4)に、それぞれ33ngのMeV-H及びMeV-F発現プラスミドと、スプリットルシフェラーゼプラスミドの1つDSP
8-11(Z. Matsudaより入手)を同時トランスフェクトした。対照として、MeV-F及びDSP
8-11プラスミドのみをトランスフェクトした。標的細胞、CHO細胞、及びそれぞれの麻疹ウイルス受容体を発現するCHO細胞の6ウェルプレートのウェルあたり2×10
5個の細胞に、1.5μgの他のデュアルスプリットレポータープラスミド(DSP
1-7)をトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、標的細胞をVersene(Life Technologies)で剥離し、1:1000希釈の細胞透過性ルシフェラーゼ基質EnduREN(Promega)を添加したFusion培地(フェノールレッドを含まないDMEM-F12+40mM HEPES)中でエフェクター細胞と共培養した。細胞融合及び標的細胞とエフェクター細胞間の細胞質含有物の混合から生じる発光を、示された時点でTopcount NXT Luminometer(Packard Instrument Company, Meriden CT)でモニターした。データは、各Hプラスミドの3回の重複の平均及び標準偏差を表す。
【0065】
細胞表面分子のFACS分析及び定量
細胞を洗浄し、Versene(Gibco)を使用して剥離し、すぐにフィコエリトリン結合抗体抗SLAM(FAB1642P; R&D Systems)、抗CD46(FAB2005P; R&D Systems)、及び抗nectin-4(FAB2659P; R&D Systems)、又は対照アイソタイプ抗体(IC0041P; R&D Systems)と共にインキュベートした。4℃で1時間インキュベートした後、細胞を再度洗浄し、FACSCantoフローサイトメトリシステム(BD Bioscience)で蛍光を測定した。細胞あたりの受容体の数は、較正ビーズ(BD QuantiBrite; BD Biosciences)を参照して推定した。
【0066】
組換えタンパク質及び結合アッセイ
CD46エクトドメイン(残基35〜328)のコード配列をPCRによりpGEM-CD46ベクター(Sino Biologicals Inc., HG12239-G)から増幅し、In-Fusionクローニングキット(Clontech)を使用してマウスIgκ鎖リーダー配列及びFc領域の5'末端にある3Cプロテアーゼ切断配列とインフレームでpFUSEベクター(pfc1-hg1e3; Invivogen)に挿入した。CD46-Fc、SLAM-Fc、及びnectin-4-Fc(Munoz-Alia et al., PLoS One, 13(2):e0192245 (2018))組換えタンパク質はExpi293細胞(Gibco)で発現し、他で記載されているように培養上清から精製した(Munoz-Alia et al., PLoS One, 13(2):e0192245 (2018))。組換え可溶性MeV-Hの発現及び精製は、他で記載されているように行った(Munoz-Alia et al., J. Virol., 91(11):e00209-17 (2017))。受容体-FcのMeV-Hへの結合は、他で記載されている酵素結合免疫吸着アッセイによって決定した(Munoz-Alia et al., PLoS One, 13(2):e0192245 (2018))。450nmでの吸光度をInfinite M200Proマイクロプレートリーダー(Tecan)で測定した。Prismソフトウェア(GraphPad)を使用してデータを分析し、一部位結合飽和モードに調整して、半飽和濃度(見かけのKd値[解離定数])を決定した。報告された値は優れた適合性を示した(R
2>0.99)。
【0067】
ウイルスタンパク質含量
ウイルス調製物をDTTの存在下で加熱し、4〜12%のビス-トリスポリアクリルアミドゲルに分画し、PDVF膜にトランスファーした。次に、ブロットを、コンジュゲート二次ウサギ抗体(ThermoFisher, #31642)でプローブした抗GFP、抗MeV-Hcyt、抗MeV-N及び抗MeV-Fで分析した。ブロットは、SuperSignal Wester Pico化学発光基質(ThermoFisher)で明らかにし、ChemiDocイメージングシステム(BIO-RAD)で分析した。
【0068】
血清学的アッセイ
ウイルス中和アッセイは、他で説明されている蛍光ベースのプラーク減少微量中和(PRMN)アッセイに基づいて実施した(Munoz-Alia et al., J. Virol., 91(11):e00209-17 (2017);Munoz-Alia et al., PLoS One, 13(2):e0192245 (2018);及びMunoz-Alia et al., Virus Res., 236:30-43 (2017))。各アッセイは、アッセイごとに4回重複して異なる日に少なくとも2回繰り返した。GraphPadソフトウェア(Prism 7)を使用してS字型用量反応(可変勾配)にデータをフィッティングした後、50%阻害濃度(IC
50)を計算した。
【0069】
ウサギ抗MeV-H抗血清は、ワクチン株からのMeV-Hを発現するアデノウイルスによる免疫によって生成された(Lech et al., PLoS One, 8(1):e52306 (2013))。
【0070】
以下の試薬は、BEI Resources、NIAID、NIHから入手した:ポリクローナル抗イヌジステンパーウイルス、Lederle無毒(抗血清、フェレット)、NR-4025;及びポリクローナル抗麻疹ウイルス、Edmonston(抗血清、モルモット)、NR-4024。
【0071】
マウスモノクローナル抗ヘマグルチニン抗体は、他で記載されているように作製し特性解析した(Munoz-Alia et al., Virus Research, e00209-17 (2017);Ziegler et al., J. Gen. Virol., 77(Pt 10):2479-89 (1996);Fournier et al., J. Gen. Virol., 78:1295-302 (1997);Ertl OT. Immunodominant regions and novel functional domains on the measles virus hemagglutinin protein. Germany: Eberhard Karls University; 2003;Hu et al., Virology, 192:351-4 (1993);及びMasse et al., J. Virol., 78(17):9051-63 (2004))。ポリクローナル抗体は、20μgのプラスミドDNAによるC57BL/6マウスの遺伝子ベースの流体力学的注入(Liu et al., Gene Ther., 6(7):1258-66 (1999))によって生成した。
【0072】
17〜18歳の健常対象のErasmus MC血清バンクからヒト血清を収集した(de Swart et al., J. Virol., 79(17):11547-51 (2005))。彼らはおそらく野生型MeVに決して曝されず、14ヶ月齢で一価麻疹ワクチン接種を受け、9歳で麻疹-おたふく風邪-風疹ワクチン接種を受けた。すべてのポリクローナル血清及びmAbを含む腹水は、試験前に熱不活化(30分、56℃)した。
【0073】
エプスタインバーウイルス(BCA)IgG力価は、市販のアッセイ(IBL International GMbH、カタログ番号57351)によって決定さした。MeV特異的IgGレベルを決定するためのアッセイは、他で説明されているように実施した(de Swart et al., J. Virol., 79(17):11547-51 (2005);及びde Swart et al., J. Virol. Methods., 71:35-44 (1998))。
【0074】
構造モデリング
MeV-Hステルスのモデルは、プログラムPhyre2を使用して90%を超える信頼度で生成された(Kelley et al., Nat. Protoc., 10(6):845-58 (2015))。次に、GlyProサーバ(http://www.glycosciences.de)を使用したin silicoグリコシル化のために構造を提出した。これは、無秩序な領域の部分である、N168及びN187を含む予測されるすべてのN-グリコシル化部位で複雑な五分岐N-グリカンモデルを生成した。PyMOLソフトウェア(http://pymol.org)を使用してMeV-H/CD46結晶学的共構造(PDB 3INB)のCD46受容体を重ね合わせ、操作した。
【0075】
統計学的解析
統計学的有意性は、適切な統計学的検定に従ってGraphPad Prism 7で計算した。
【0076】
結果
MeV-Hへの抗原ドリフトのモデリング
MeV-Hには7つの主要な抗原部位があり、これらの部位のうち4つまでの複数の破壊はポリクローナル抗体の中和を無効にしない(Munoz-Alia et al., J. Virol., 91(11):e00209-17 (2017);Lech et al., PLoS One, 8(1):e52306 (2013);及びMunoz-Alia et al., PLoS One, 13(2):e0192245 (2018))。B細胞の免疫優位性の欠如により、すべての抗原部位の除去により、中和不可能な変異体が生成される可能性がある。これを調査するために、MeV-Hについて記載されているすべてのエピトープを体系的に破壊した。実験計画は、遺伝子型H1のMeV-H背景に自発的中和mAbエスケープ変異体選択を組み込むことに基づいている。この特定の株は、最も抗原的に高度なMeV-Hの1つであるという以前の観察に基づいて選択され(Munoz-Alia et al., PLoS One, 13(2):e0192245 (2018))、これは、それ以外の場合は剛性のMeV-Hタンパク質の変更を最小限にし得る(Fulton et al., Cell Rep., 11(9):1331-8 (2015))。nAb結合領域のリストを作成し、それらの領域の破壊を、ここではΔ7という名前(実施例1ではMV#1としても知られる)の単一のMeV-Hと合わせた(表3)。
【0077】
【表3】
【0078】
MeV-Hへの向性(Tropism)の操作
抗原部位III(受容体結合部位、RBS)の変異は野生型向性(SLAM及びnectin-4)と互換性がないため、いくつかのアミノ酸置換:N481Y(Lecouturier et al., J. Virol., 70(7):4200-4 (1996))、H495R(Okada et al., J. Virol., 83(17):8713-21 (2009))、及びS546G(Shibahara et al., J. Gen. Virol., 75:3511-6 (1994))を介して受容体特異性をCD46にスイッチする計画とした。受容体依存性融合活性におけるアミノ酸置換の影響を評価するために、ワクチン由来のMeV-Fと組み合わせてMeV-H変異体の一過性発現を行った。明らかな合胞体形成がなくても細胞間伝播が起こる可能性があるため、対応する組換えMeVは逆遺伝学によってもレスキューした(Langedijk et al., J. Virol., 85(21):11242-54 (2011))。結果を
図8に示す。MeV-Hワクチン株(A)を使用した場合、SLAM、CD46、又はnectin-4のいずれかを発現するCHO細胞でウイルスの侵入と細胞融合の両方が観察された。同様に、MeV-H H1は、SLAM及びnectin-4発現細胞でのウイルス侵入と合胞体形成を可能にした。後者の背景にN481Y、H495R、又はH495R/S546Gを導入しても、一過性トランスフェクションアッセイで見られるように、CD46依存性の融合活性は有意に増加しなかった。しかし、N481Y及びH495R/S546G変異体の合胞体形成がない場合、ウイルスの侵入が観察された。N481Y変異体にH495Rを含めると、CD46依存性融合のレベルがMeV-H Aで観察されるレベルにまで回復した。この変異体にS546Gを追加すると、CD46依存性融合がほぼ2倍に増強され、同様の増加がN481Y/S546G変異体で観察された。それにもかかわらず、トリプル変異体(N481Y/H495R/S546G)が使用された場合にのみCD46依存性増強感染が観察されたため、この組み合わせをnAbエスケープ変異の背景として選択した。
【0079】
MeV-Hは、30種の既知マウスモノクローナル抗体による中和に対して全身的に抵抗し得る
表3は、MeV-H球状ドメインエスケープウイルスを生成するための基礎として最初に使用した。この情報とトリプルCD46向性置換を一緒に使用して、Δ7ウイルスを直接操作し、これまでに説明された7つの操作上の非重複抗原部位をすべて破壊する(Φ、Ia、Ib、IIa、IIb、III、及びIV)(
図9A)。導入された変異の数が各部位に特異的な他のnAbの中和を無効にするのに十分かどうかを判断するために、MeV-HA、H1及びΔ7を有するウイルスの中和感受性を30種のmAbのパネルに対して決定した。結果を
図9Bに要約し、これは、Aウイルスが試験した30種のnAbすべてで中和されたが、この数はH1ウイルスでは18種に減少したことを示す。反対に、Δ7ウイルスはnAb BH030によってのみ中和された。
【0080】
Δ7及びH1ウイルスの両方がBH030によって同様に中和されたという事実は、Δ7に導入された変異がこのnAbエピトープを排除しなかったことを示した。しかし、両方のウイルスは、Aウイルスと比較した場合、中和に対する感受性の18倍低下を示した(IC
50 1312ng/mL 対 71.6ng/mL)。
【0081】
この表現型が他の野生型特異的MeV-Hタンパク質に適用できるかどうか、又は使用したH1遺伝子型バックグラウンドの特性であるかどうかを判断するために、以下を実施した。中和分析は、A、B3.1、C1、D4、D6、D7、D8、D9、F、及びGウイルスと比較して、H1ウイルスがBH030による中和に対して実際にある程度の抵抗性を保持していることを示した。ただし、C2ウイルスは中和感受性の完全な欠如を示した(
図10A)。MeV-Hのアミノ酸配列の配列分析と分子構造に基づいて、E471K変異がnAb抵抗性の候補として同定された(
図10B)。これらの予測を確認するために、E417K変異をΔ7ウイルスに挿入し(この新しいウイルスを「Δ8ウイルス」と称する)、nAb BH030に対するΔ8ウイルスの中和感受性を評価した。Δ7ウイルスとは異なり、Δ8ウイルスはBH030を介した中和からの完全な回避(エスケープ)を示した(
図10C)。興味深いことに、E471は抗原部位IIbに割り当てられた領域(Tahara et al., J. Virol., 87(1):666-75 (2013)においてII、Tahara et al., Viruses, 8(8): pii:E216 (2016)において「糖に覆われたエピトープ(sugar-shielded epitope)」)内にあり、これはいくつかの遺伝子型に存在するN416結合糖によってマスクされていると規定されている(
図10D)。N416結合糖がBH030中和から保護されないことを確認するために、D416N変異Aウイルス(Munoz-Alia et al., PLoS One, 13(2):e0192245 (2018))の中和感受性を試験した。Δ7ウイルスもN416糖を有していたため、中和に対する抵抗性は観察されず、このことは、BH030が、操作上重複しない新しい抗原部位(ここではVとして設計され、おそらく抗原部位IIbとIIIの間に広がる可能性がある)を標的とし得ることを示唆している(
図10D)。これらの結果は、主要な抗原部位の重要な残基の変異を組み合わせて、30種の中和抗体の大きなパネルの中和回避をもたらすことができることを示した。
【0082】
MeV-Hへのエピトープ排除は交差中和を廃止する
MeV-HのB細胞エピトープ破壊がその抗原性に影響するかどうかを判断するために、以下を実施した。マウスにMeV-Hをコードするプラスミドの流体力学的注射を与え、1ヶ月後に抗体反応を評価した(
図11A)。中和アッセイにより、MeV-HΔ7で免疫したマウスはMeV-HAよりも中和抗体の力価が低いことが示されたが、おそらく変動のために統計的有意性に達しなかった(
図11B)。それにもかかわらず、MeV-HΔ8は検出可能なレベルを生成することができなかった(
図11C)。MeV-HΔ8がΔ8ウイルス自体の中和活性を調べることにより、新しいエピトープに対する非交差反応性抗体を生成しているかどうかを評価するために、以下を実施した。
図11Cに示す結果は、MeV-H Aとは異なるが共通のエピトープを有することについて、Δ8ウイルスが、抗MeV- H H1及びΔ7によるのと同様に、同型抗体、すなわちMeV-HΔ8による免疫化によって引き起こされる抗体によって中和されたことを示した。MeV-HA免疫によって誘導された中和抗体は、Δ8ウイルスに対する中和活性を発揮しなかった。次に、複数の抗原部位を除去すると交差中和が無効になり、ウイルスは抗MeV-Hポリクローナル反応から回避することができる。
【0083】
Δ7ウイルスは、MeV-F特異的抗体を欠いている場合、ポリクローナル麻疹ワクチン誘発中和抗体を回避し得る
異なる動物モデルは、異なる抗体レパートリーを示す可能性がある(Nachbagauer et al., Nat. Immunol., 18(4):464-73 (2017))。MeV-H A免疫後のウサギで生じた抗体の呼気を中和分析により評価した。ウイルスΔ8は中和の傾向を示したが(
図12A)、ワクチンウイルスと比較してND
50力価の8倍(3 log
2)の減少を示した。4倍の差(2 log
2又は抗原単位(Smith et al., Science, 305(5682):371-6 (2004))以上の場合、ヒト季節性インフルエンザワクチン(Russell et al., Vaccine, 26(Suppl 4):D31-4 (2008);及びGarten et al., Science, 325(5937):197-201 (2009))のアップデートを保証するため、ウイルスΔ8はワクチンウイルスと抗原的に有意に異なると考えられた。一方、親前駆体が(H1)であったため、即時前駆体ウイルス(Δ7)は抗原的に区別できなかった。K471E変異はΔ7をΔ8ウイルスと区別し、抗原変異をもたらしたため、抗原の違いはすべてのmAbエスケープ変異体選択の組み合わせの結果であり、優性変異体の存在ではないことを確認したいという要望があった。したがって、他の遺伝子型特異的MeV-H遺伝子タンパク質を有する組換えMeVの以前のパネルを試験した(Munoz-Alia et al., J. Virol., 91(11):e00209-17 (2017);及びMunoz-Alia et al., PLoS One, 13(2):e0192245 (2018))。特に興味深いのは、MeV C2がK471E変異を有していたためである。しかし、PRMN力価の差は全体にわたって2倍未満であり、したがって重要ではないとみなされた。全体として、これらの結果は、麻疹ウイルスの抗原変異には、増分成分とパルス成分の両方があることを示唆している。すなわち、抗原の閾値を超えた場合、アミノ酸置換は累積的な効果を有する可能性がある。
【0084】
Δ8ウイルスではなくΔ7ウイルスが移行抗体を有する小児のプレワクチンとして使用し得る可能性があるため、Δ7の抗原変異が麻疹ワクチンを受けた患者の血清による認識の低下につながるかどうかを試験するために試験を行った。これには、最初に、血清採取時に17歳から23歳のオランダ人個体の6つの血清サンプルを試験するための選択が含まれた。中和力価とオランダでの麻疹の発生の記録に基づいて、ヒトのサンプルは麻疹ワクチンの2回投与レシピエントに対応している可能性が高い。Δ7ウイルス及びワクチン株ウイルスは、ヒト血清#126、#128、#129、#134、#136及び#137を用いたPRMNによって試験した。Δ8ウイルスの平均ND
50力価は、ワクチン株の相同力価の1.41倍(0.50抗原単位)低く、このことは2つのウイルス間の抗原変異の欠如を示している。MeV-H特異的抗体とMeV-F特異的抗体との間に相関関係が見い出された(ピアソンR=0.54、p<0.05)。MeV-F特異的が潜在的な抗原変異をマスクしているかどうかを試験するために、MeV-F特異的抗体を枯渇させ、アッセイを繰り返した。
図12Bに示すように、模擬トランスフェクト細胞とのヒト血清のインキュベーション(条件1)では、未処理サンプル(条件0)と比較してMeV-F特異的IgG抗体の減少は生じなかった。逆に、MeV-F発現細胞とのインキュベーションではMeV-F特異的抗体の枯渇が生じたが、MeV-H特異的抗体レベルは変化しなかった。異なる枯渇条件で導入された小さな希釈因子を説明するために、ヒト集団で広く存在しているエプスタインバーVCA IgG抗体をさらに試験し、それらを使用する抗体レベルの対照として使用した(
図12C)。次に、非枯渇及びMeV-F枯渇のヒト血清の両方の中和能力を再試験した。MeV-Fが枯渇したヒト血清は、ワクチンウイルス(1抗原単位)に対してわずかに中和力を喪失したが、Δ7ウイルスをワクチンウイルスと比較すると、減少は有意(7倍)となった(
図12D)。
【0085】
これらの結果は、ヒトでのワクチン接種がウサギよりも狭い中和抗体反応を誘発し、Δ7ウイルスが、抗MeV-F抗体を欠いている場合には、幼児のワクチン接種のギャップを潜在的に狭めることができることを示している。
【0086】
MeV-H及びMeV-Fは中和抗体を誘発する
麻疹免疫ヒト血清中のMeV-Fに対する中和抗体は、MeV-Hの蓄積的抗原置換の効果を緩衝し得る。ウイルス中和に対する2つのMeV糖タンパク質の寄与に関する洞察をさらに得るために、2つのアプローチを使用した:1)MeV-H及びMeV-F特異的抗体の枯渇(
図13A)、並びに2)3つの異なる糖タンパク質交換を伴うウイルスキメラの同質遺伝子セットの中和感受性の研究。このエンベロープ交換ウイルスは、HとFを除くMeVに由来するすべての遺伝子を有し、それらを関連するが非交差反応性のイヌジステンパーウイルス(CDV)H及びFと単一及び二重のいずれかで交換した(Miest et al., Mol. Ther., 19(10):1813-20 (2011);及びZhang et al., Virology, 482:218-24 (2015))。したがって、CDV由来の遺伝子とのMeV-H及びMeV-Fタンパク質遺伝子の二重スイッチングによりMeV#2が生成され、MeV-H又はMeV-Fのいずれかでの単一スイッチにより、それぞれMeV#3及びMeV#4が生成された(
図13B)。使用されたCDV-Hタンパク質遺伝子は、ヒト血清によるCDVの潜在的な交差中和を低減することが示されたため(Munoz-Alia et al., J. Virol., 91(11):e00209-17 (2017);Zhang et al., Virology, 482:218-24 (2015))、Ondersterpoortワクチン株を意図的に意図したY537D置換を有していた。親MeV(MeV#1)と3つのキメラ(MeV#2、MeV#3、MeV#4)はすべて、Vero細胞で区別できない合胞体を形成し、このことは異型の補完性を実証している(
図13B)。
【0087】
MeV H又はMeV-F特異的抗体については、約60〜80人のアメリカ人ドナーから構成される市販のヒト血清プールを使用した。このプールの抗体価は高いため、主に野生型ウイルスへの曝露によって誘導された可能性が高い(Itoh et al., J. Clin. Microbiol., 40(5):1733-8 (2002))。
図13Aは、枯渇プロセスを示す。MeV-H発現細胞による血清吸収(条件2)は、MeV-Hタンパク質に対するすべてのヒト血清結合活性を完全に除去したが、MeV-F特異的抗体レベルは影響を受けなかった。対照的に、MeV-Fによる吸収(条件3)は、MeV-Fに結合するヒト血清を特異的に除去した一方、MeV-H特異的抗体は影響を受けなかった。親細胞株による血清吸収は、元のヒト血清材料(それぞれ条件1及び0)と比較して、MeV-H及びMeV-Fの両方へのヒト血清結合の減少を生じなかった。
【0088】
次に、MeV-H及びMeV-F反応性抗体の中和効力を麻疹免疫ヒトで測定した。PRMNアッセイは、MeV-F又はMeV-H成分のいずれかの吸収は、MeV(MeV#1)に対するヒト血清の中和活性に実質的に影響を及ぼさないことを示した。一方、MeV-FとMeV-Hの両方による血清吸収は、ヒト血清からの中和活性の完全な喪失をもたらした。したがって、MeV-H特異的抗体及びMeV-F特異的抗体の両方がMeVの中和に等しく重要であった。予想通り、麻疹免疫ヒト血清は、血清処理に関係なく、MeV#2に対して中和活性を示さなかった。一方、MeV#1、MeV#3及びMeV#4は、非吸収血清と区別されることなく効率的に中和された。単純な交換(MeV#3及びMeV#4)を伴うウイルスキメラに関しては、ウイルスに存在するものと一致するMeV特異的抗体成分が枯渇した場合にのみ、中和に対する抵抗性を示した。これらの結果は、MeV-FとMeV-Hの両方が免疫原性であり、それらが協力して抗原変異を緩衝することを示している。
【0089】
抗原新規性は適合性(fitness)を犠牲にしない
次に、両方のMeVエンベロープ糖タンパク質に対する抗体反応の幅が、MeVの抗原的に静的(staticity)であると仮定した。この仮説に対処するために、完全に抗原的に異なるウイルスの代用として、異型CDV-F(このウイルスを以後ステルスと称する)と組み合わせてΔ8ウイルスのレスキューを進めた。MeVレスキューシステムの堅牢性が改善されるまで、MeVステルスは得られなかった。親の組換えMeV Moratenワクチンのレスキューとは異なり、MeVステルスは、複数の独立したレスキューの試みの後に観察された単一のGFP陽性細胞から分離及び拡大された。5回の半盲検継代後、ウイルスは細胞単層を介して伝播した(
図7)。ウイルスをさらに増殖させてウイルスストックを生成し、サンガー配列決定及びウェスタンブロット分析のために試験した。精製ビリオンのイムノブロッティングにより、ステルスが同型MeV-Fタンパク質を欠損し、それ以外の点ではワクチン株と同様のタンパク質含有物を示すことが実証された(
図14B)。さらに、配列決定の結果は、糖タンパク質をコードする配列のいずれにも補償的変異を示さず、このことは、CDV-Fと組み合わせたMeV-HΔ8をコードするステルスウイルスの生存率をさらに確認した。
【0090】
MeVステルスが適合性(fitness)のトレードオフに関連しているかどうかを判断するために、MeVステルスの増殖動態(growth kinetic)を培養細胞で調べた。これらの動態を、MeV-H A、MeV-H H1、及びMeV-HΔ8を有する組換えMeVの動態と比較した。MeV Aは、ステルス及びΔ8ウイルスよりも12及び48hpiで高い力価に複製された(
図14A)。これらの2つのウイルスは、24時間遅れの力価のピークを示した。MeV H1は、経時的に他のどのウイルスよりも低い力価で複製された。MeVΔ8はMeV-H H1に由来するMeV-Hを有していたため、これらの結果は、MeF-Hに導入された変異が、異種Fタンパク質とのより良い補完に協力することを示している。
【0091】
次に、15のヒト血清サンプルを使用して、ステルスウイルスが麻疹ワクチン(ウイルスA)によって引き起こされるヒト抗体による中和に実際に抵抗性があるかどうかを判定した。高力価は、遺伝子型特異的中和抗体のさまざまなレパートリーを誘発した可能性のある麻疹ウイルスへのさまざまな曝露履歴を示すため、以前に使用したプールされたヒト血清は回避した(de Swart et al., J. Gen. Virol., 90:2982-9 (2009);Tamin et al., J. Infec. Dis., 170:795-801 (1994);及びMunoz-Alia et al., Virus Research, 236: 30-43 (2017))。ステルスの抗原ドリフトはワクチンウイルスにより誘導されたモノクローナル抗体によってモデル化されたため、これは将来の解釈を複雑にする可能性がある。CDVワクチン接種フェレットは、それぞれ、ワクチンとステルスウイルスの中和の陰性及び陽性対照として使用した。
図12で使用した血清#126、#128、#129、#134、#136及び#137は、材料不足のため試験できなかった。試験したサンプルのNT
50値は、ステルスウイルスに対する中和効力が3.12倍から10.9倍の範囲で、全体の幾何平均が5.39倍(2.43抗原単位)低いことを示した(
図14C)。血清152は、ステルスウイルスに対するND
50力価が4倍未満(1.64抗原単位)であり、血清131及び157のND
50力価は閾値(4倍)であった。試験したすべての血清のうち、血清152はステルスウイルスに対する防御レベル(430mIU/mL)を示す唯一の血清であり、ワクチン株に対して試験したすべてのヒト血清の中で最高のNT
50力価(1344mIU/mL)を示した。そして、同型ワクチンに対する抗体反応の大きさが、ステルスウイルス感染に対する防御レベルが達成されたかどうかを決定したと推測したくなる。相関分析は仮説の支持を示し(ピアソンr=0.9112;p<0.0001)、このことはステルス感染に対する防御の926mIU/mLの最小NT
50力価レベルと、ワクチンウイルスに対するセロコンバージョンの予測因子を使用した現在の210mIU/mLを示唆している(Haralambieva et al., Vaccine, 29:4485-91 (2011))。
【0092】
抗体反応の幅と大きさがどの程度ステルスウイルスに見られる抗原変異に影響したかを判定するために以下を実施した。モルモットモデルで抗原変異を測定したところ、マウス又はフェレットよりも高い力価のインフルエンザウイルスに対する交差反応性抗体を誘導することが示された(Nachbagauer et al., Nat. Immunol., 18(4):464-73 (2017))。MeVの状況では、モルモットは3584mIU/mLのNT
50値を有する相同ワクチンウイルスに対する高度に中和する抗体反応を有した(mounted)(
図14D)。逆に、異種ステルスウイルスに対するND
50力価は約6倍低く(NT
50=563)、したがって抗原的に有意であった。これらの結果は、免疫優性が種間で大部分が保存されており、ワクチン接種時に誘導された防御レベルを回避するために抗原変異が生じ得ることを示している。
【0093】
ステルスはCD46向性(CD46 tropic)のみである
インフルエンザAウイルスでは、受容体結合アビディティと抗原変異は密接に関連しており(Hensley et al., Science, 326:734-6 (2009);及びLi et al., J. Virol., 87(17):9904-10 (2013))、ウイルスの適合性(fitness)の損失を補うことができる(Kosik et al., PLoS Pathog., 14(1):e1006796 (2018))。nAbエスケープ変異が存在する場合に受容体特異性が影響を受けるかどうかに対処するために、MeV受容体を単独で発現するCHO細胞に感染させた。予想外に、CD46及びnectin-4の密接な構造的及び機能的相互作用を考えると(
図15)、ステルスウイルスは非常に効率的なCD46依存性融合を生成することが証明されたが、nectin-4を発現するCHO細胞では何も示さなかった(
図16A)。細胞表面の分子数がそれら2つに匹敵し、SLAMを発現するCHO細胞の分子数(約20,000)の10倍多かったため、受容体密度の違いは、nectin-4の使用に対するCD46の識別の潜在的な説明として除外した(
図16B)。CHO細胞のパネルにステルスと同じMeV-HΔ8をコードするΔ8ウイルスを感染させた場合も同様の結果が得られ、これは原因としてMeV-HΔ8とCDV-Fの間のアロステリック相互作用に反対するものである。しかし、MeVマトリックスタンパク質(MeV-M)とのさらなる相互作用は、依然として受容体結合相互作用に影響を与える可能性がある。次に、一過性トランスフェクションに基づく融合アッセイを、ウイルスの状況で観察された結果と並行するかどうかを研究した。このアプローチは、MeV-FをMeV-H A又はMeV-HΔ8と組み合わせて使用することであった。MeV-HΔ8は、CD46依存性融合に有意な影響を与えることなく、nectin-4を識別したことが示された(
図16C)。同様のCD46依存性融合活性は、ヒト及びアフリカミドリザル細胞の両方で観察された(
図17)。ELISAにより様々な組換えMeV-Hタンパク質(A、H1及びΔ8)の受容体結合解離定数を調べた(
図18)。対照として使用された抗FLAG抗体とは異なり、組換え細胞受容体はMeV-Hタンパク質に対して異なる結合アビディティを示した(
図16D)。MeV-HΔ8は、MeV-H A及びH1よりもCD46に約4000倍良好に結合し、見かけのK
dは190pMで、MeV-H Aは819μMであった(K
dは不明であった)。nectin-4の結合値は3つの受容体すべてで最悪であり、使用した最高濃度では飽和に達しなかった。組換えMeV-Hタンパク質に対するnectin-4の見かけのK
dに有意差は見られなかったが、MeV-HΔ8のB
max値は、MeV-H A及びH1と比較しておよそ半分低下した(それぞれ1.56、1.14、及び0.74)。予想どおり、MeV-HΔ8はSLAM-Fcへの無視できるほどの結合を示した。MeV-H H1は、MeV-H AよりもSLAM-Fcへの結合が低く、K
dは10.43μM及び2.68μMであったが、B
max値も低かった(それぞれ2.09及び1.19)。まとめると、これらの結果は、MeV-HΔ8が、nectin-4については低下するがCD46とのアビディティ相互作用の増加を介して、nectin-4よりもCD46の使用を区別することを示している。
【0094】
本明細書に記載のように、30個の既知の抗体エピトープが麻疹H糖タンパク質から体系的に排除された。麻疹H糖タンパク質を有するウイルスは、麻疹免疫ヒト、マウス及びウサギ血清に存在する抗H抗体による中和に対する抵抗性を実証した。さらに、麻疹F糖タンパク質の関連モルビリウイルスの相同Fタンパク質による置換を使用して、麻疹免疫ヒト血清による中和に抵抗性の組換えMeVであるMeVステルスを生成した。ウイルスは完全に融合性を維持し、ウイルス適合性(fitness)に費用はかからずにCD46陽性細胞でのみ増殖することが示された。これらの結果は、MeVステルスプラットフォームを麻疹免疫がん患者の腫瘍溶解性ウイルス療法に使用し得ることを示す。
【0095】
他の実施形態
本発明をその詳細な説明と併せて説明したが、前述の説明は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を例示するものであり限定するものではないことを理解されたい。他の態様、利点及び修正は、添付の特許請求の範囲の範囲内にある。