特表2020-520403(P2020-520403A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2020-520403インクジェットインク用途用のアクリルポリマー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-520403(P2020-520403A)
(43)【公表日】2020年7月9日
(54)【発明の名称】インクジェットインク用途用のアクリルポリマー
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/322 20140101AFI20200612BHJP
【FI】
   C09D11/322
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2019-563388(P2019-563388)
(86)(22)【出願日】2018年5月4日
(85)【翻訳文提出日】2020年1月8日
(86)【国際出願番号】US2018031029
(87)【国際公開番号】WO2018213020
(87)【国際公開日】20181122
(31)【優先権主張番号】62/508,207
(32)【優先日】2017年5月18日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】391010758
【氏名又は名称】キャボット コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】CABOT CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】リウ ティアンチー
(72)【発明者】
【氏名】シュー ジンチー
【テーマコード(参考)】
4J039
【Fターム(参考)】
4J039AD09
4J039BC28
4J039BC56
4J039CA06
4J039EA10
4J039EA29
4J039EA43
4J039EA46
4J039GA24
(57)【要約】
1,2,3−ベンゼントリカルボン酸のカルシウム指数値より大きいカルシウム指数値を有する、少なくとも1つの結合した有機基を有する少なくとも1つの顔料;少なくとも150の酸価および1,000〜15,000の範囲の重量平均分子量を有する少なくとも1つのアクリルポリマー;および水性液体媒体、を含むインクジェットインク組成物が本明細書で開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,2,3−ベンゼントリカルボン酸のカルシウム指数値より大きいカルシウム指数値を有する、少なくとも1つの結合した有機基を有する少なくとも1つの顔料;
少なくとも150の酸価および1,000〜15,000の範囲の質量平均分子量を有する少なくとも1つのアクリルポリマー;および
水性液体媒体
を含むインクジェットインク組成物。
【請求項2】
前記酸価が、150〜400の範囲にある、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記酸価が、少なくとも160である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記分子量が、1,000〜13,000の範囲にある、請求項1から3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1つのアクリルポリマーが、前記水性液体媒体中で自己分散性または可溶性である、請求項1から4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1つのアクリルポリマーが、アルカリ金属および有機アミンのうちの少なくとも1つの塩である、請求項1から5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1つのアクリルポリマーが、コポリマーである、請求項1から6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1つのアクリルポリマーが、少なくとも20mol%の量の少なくとも1つのアクリルモノマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1つのアクリルポリマーが、20mol%〜75mol%の範囲の量の少なくとも1つのアクリルモノマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1つのアクリルモノマーが、アクリル酸、メタアクリル酸、クロトン酸、エタクリル酸、プロピルアクリル酸、イソプロピルアクリル酸、イタコン酸、フマル酸、およびそれらの塩から選択される、請求項8または9に記載の組成物。
【請求項11】
前記少なくとも1つのアクリルモノマーが、アクリル酸およびメタアクリル酸から選択される、請求項8または9に記載の組成物。
【請求項12】
アクリル酸、メタアクリル酸、クロトン酸、エタクリル酸、プロピルアクリル酸、イソプロピルアクリル酸、イタコン酸、フマル酸、およびマレイン酸の、エステル、アミノエステルおよびアミド;油および脂肪酸とオキシラン構造を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとの間の付加反応生成物;3個以上の炭素原子を有するアルキル基を含有するオキシラン化合物と(メタ)アクリル酸との間の付加反応生成物;スチレン;アクリロニトリル;アセテート;ならびにアリルアルコールから選択される少なくとも1つの第2のモノマーをさらに含む、請求項8から11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
前記少なくとも1つの有機基が、少なくとも2つのホスホン酸基、そのエステルまたはその塩を含む、請求項1から12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
前記少なくとも1つの有機基が、少なくとも1つのジェミナルビスホスホン酸基、そのエステルまたはその塩を含む、請求項1から12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
前記少なくとも1つの有機基が、式−CQ(PO322またはその塩を有する少なくとも1つの基を含み、式中、Qが、H、R、OR、SRまたはNR2であり、Rは、同じでも異なっていてもよく、H、C1−C18アルキル、C1−C18アシル、アラルキル、アルカリール、およびアリールから選択される、請求項1から12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
前記少なくとも1つの有機基が、式−(CH2)n−CQ(PO322またはその塩を有する少なくとも1つの基を含み、式中、nは1〜9の範囲の整数である、請求項1から12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
前記少なくとも1つの有機基が、式−CR=C(PO322またはその塩を有する少なくとも1つの基を含み、式中、Rが、H、C1−C6アルキル、アリールから選択される、請求項1から12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
前記少なくとも1つの有機基が、少なくとも1つのホスホン酸基またはその塩、および前記少なくとも1つのホスホン酸基またはその塩にビシナルまたはジェミナルな、少なくとも1つの第2のイオン性、イオン化可能な、または塩基性の基を含む、請求項1から12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
前記水性液体媒体が水である、請求項1から18のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
少なくとも1つの顔料および少なくとも1つのアクリルポリマーを含むインクジェットインク組成物が、本明細書で開示される。
【背景技術】
【0002】
例えば普通紙上に堆積したときに、適切な光学濃度を有する顔料系インクジェットインク組成物が求められている。
【発明の概要】
【0003】
1,2,3−ベンゼントリカルボン酸のカルシウム指数値より大きいカルシウム指数値を有する、少なくとも1つの結合した有機基を有する少なくとも1つの顔料;
少なくとも150の酸価および1,000〜15,000の範囲の質量平均分子量を有する少なくとも1つのアクリルポリマー;および
水性液体媒体
を含むインクジェットインク組成物が本明細書で開示される。
【発明を実施するための形態】
【0004】
普通紙上の水性インクジェットプリントでは、基板の親水性の性質および高い気孔率のため、顔料粒子が紙繊維網状構造に浸透することが一般的である。これにより、紙の上面上で低い光学濃度(OD)および/または裏面上で高いシースルーが生じ得る。インクジェット用途では、いくつかのグレードの普通紙は、遊離で可溶性の2価/3価のイオン、例えば、カルシウムおよび/またはマグネシウムを用いて処理される。2価/3価の金属イオンは、顔料と共に凝固して、より大きい凝集物を形成する。その結果、繊維への顔料の浸透は減少し、より高い顔料濃度が上面に残る。しかし、この紙処理は、製紙業者、印刷設備、および最終的に消費者にとってコスト増になり得る。
水性インクジェットプリントに対する別の望ましい属性は、汚れおよび画像転送を避けるための紙上のインク液滴の速乾性である。しかし、より速い乾燥を可能にする(例えば、インクジェット液体が、紙繊維網状構造中により速く浸透することを可能にする)インク配合アプローチでは、顔料が紙繊維または炭酸カルシウムと相互作用する時間が十分ないため、光学濃度が低下する。
あるポリマーと顔料の組み合わせが、少なくとも、普通紙上のインクジェットプリントによる光学濃度を高めることができることが見いだされた。したがって、一実施形態は、
1,2,3−ベンゼントリカルボン酸のカルシウム指数値より大きいカルシウム指数値を有する少なくとも1つの結合した有機基を有する少なくとも1つの顔料;
少なくとも150KOH/gの酸価および1,000〜15,000の範囲の質量平均分子量を有する少なくとも1つのアクリルポリマー;および
水性液体媒体
を含むインクジェットインク組成物を提供する。
一実施形態では、少なくとも1つのポリマーは、アクリルポリマーである。一実施形態では、アクリルポリマーは、少なくとも1つのアクリルモノマーを含む。一実施形態では、少なくとも1つのアクリルモノマーは、エチレン性不飽和カルボン酸およびその塩を含む。
一実施形態では、少なくとも1つのアクリルモノマーは、その酸価(AN)により特徴付けられる。少なくとも1つのアクリルポリマーの酸価は、次式から算出することができる。
AN=(COOH含有モノマーのモル数×56.1mgKOH×1000)/(モノマーの総質量(g))
一実施形態では、COOH含有モノマーは、アクリルモノマーおよび任意選択で他のCOOH含有モノマーを含み得る。別の実施形態では、COOH含有モノマーは、アクリルモノマーである。一実施形態では、アクリルポリマーは、少なくとも150KOH/g(アクリルポリマー)の酸価を有する。別の実施形態では、酸価は、少なくとも160、少なくとも175、または少なくとも200KOH/gアクリルポリマーである。別の実施形態では、酸価は、150〜400、例えば、160〜400、175〜500、200〜400、150〜300、160〜300、175〜300、または200〜300KOH/gアクリルポリマーの範囲にある。
一実施形態では、少なくとも1つのアクリルポリマーは、1,000〜15,000、例えば、1,000〜14,000、または1,000〜13,000の範囲の質量平均分子量を有する。
【0005】
普通紙の製造では、スターチを接着剤としてベースシートに添加して、無機粒子を結合し、印刷機の操業性のためのシート剛性を付与する。スターチは、水に高感度であり、水と接触後に劇的に膨張し得る。理論に拘泥するものではないが、水性インク組成物中のある種のポリマーは、スターチの湿潤および膨潤のプロセスを促進して、OD性能を改善し得る。膨張したスターチは、普通紙の気孔率を低減し、したがって、顔料粒子の紙繊維網状構造への浸透を阻害することができる。
理論に拘泥するものではないが、低分子量および高い酸価(親水性に寄与する)を有するポリマーは、比較的流動性があり、普通紙表面内/上でのスターチの湿潤および膨潤を促進することができる。生じる紙の気孔率減少は、例えば普通紙では紙繊維マトリックスによる、または処理した紙に存在する2価/3価の金属イオンによる顔料粒子のより効果的な捕捉を可能にし得る。このため、顔料粒子が、紙の上面に残り、光学濃度性能への寄与における顔料の使用を最大限にすることが可能になる。
【0006】
一実施形態では、少なくとも1つのアクリルポリマーは、少なくとも20mol%の量の、例えば、少なくとも25mol%の量の少なくとも1つのアクリルモノマーを含む。少なくとも1つのアクリルポリマーは、コポリマーとすることができる。別の実施形態では、少なくとも1つのアクリルポリマーは、20mol%〜75mol%、例えば、25mol%〜75mol%、20mol%〜70mol%、25mol%〜70mol%、20mol%〜65mol%、または25mol%〜65mol%の範囲の量の少なくとも1つのアクリルモノマーを含む。
一実施形態では、少なくとも1つのアクリルモノマーは、アクリル酸、メタアクリル酸、クロトン酸、エタクリル酸、プロピルアクリル酸、イソプロピルアクリル酸、イタコン酸、およびフマル酸、およびそれらの塩から選択される。一実施形態では、少なくとも1つのアクリルモノマーは、アクリル酸、メタアクリル酸、およびそれらの塩から選択される。
【0007】
一実施形態では、少なくとも1つのアクリルポリマーはコポリマーである。少なくとも1つのアクリルモノマーに加え、少なくとも1つのアクリルポリマーは、少なくとも1つのアクリルモノマーと共重合可能である少なくとも1つの第2のモノマーをさらに含むことができる。一実施形態では、少なくとも1つの第2のモノマーは、アクリル酸、メタアクリル酸、クロトン酸、エタクリル酸、プロピルアクリル酸、イソプロピルアクリル酸、イタコン酸、フマル酸およびマレイン酸の、エステル、アミノエステルおよびアミド;油および脂肪酸とオキシラン構造を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとの間の付加反応生成物;3個以上の炭素原子を有するアルキル基を含有するオキシラン化合物と(メタ)アクリル酸との間の付加反応生成物;スチレン;アクリロニトリル;アセテート;およびアリルアルコールから選択される。一実施形態では、少なくとも1つの第2のモノマーは、スチレンから選択される。
【0008】
例示的な第2のモノマーは、(メタ)アクリル酸エステル、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート(actylate)、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ベンジルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、トリデシルメタクリレート、およびベンジルメタクリレート;油および脂肪酸とオキシラン構造を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとの間の付加反応生成物、例えば、ステアリン酸とグリシジルメタクリレートとの間の付加反応生成物;3個以上の炭素原子を有するアルキル基を含有するオキシラン化合物と(メタ)アクリル酸との間の付加反応生成物;スチレン、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、およびp−tert−ブチルスチレン;イタコン酸エステル、例えば、イタコン酸ベンジル;マレイン酸エステル、例えば、マレイン酸ジメチル;フマル酸エステル、例えば、フマル酸ジメチル;およびアクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、アミノエチルアクリレート、アミノプロピルアクリレート、メチルアミノエチルアクリレート、メチルアミノプロピルアクリレート、エチルアミノエチルアクリレート、エチルアミノプロピルアクリレート、アクリル酸のアミノエチルアミド、アクリル酸のアミノプロピルアミド、アクリル酸のメチルアミノエチルアミド、アクリル酸のメチルアミノプロピルアミド、アクリル酸のエチルアミノエチルアミド、アクリル酸のエチルアミノプロピルアミド、メタクリル酸アミド、アミノエチルメタクリレート、アミノプロピルメタクリレート、メチルアミノエチルメタクリレート、メチルアミノプロピルメタクリレート、エチルアミノエチルメタクリレート、エチルアミノプロピルメタクリレート、メタアクリル酸のアミノエチルアミド、メタアクリル酸のアミノプロピルアミド、メタアクリル酸のメチルアミノエチルアミド、メタアクリル酸のメチルアミノプロピルアミド、メタアクリル酸のエチルアミノエチルアミド、メタアクリル酸のエチルアミノプロピルアミド、ヒドロキシメチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシメチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、N−メチロールアクリルアミド、およびアリルアルコールを含む。
【0009】
一実施形態では、少なくとも1つのアクリルポリマーは、水性液体媒体中で自己分散性または可溶性であり、例えば、水性液体媒体に分散または溶解するためにさらなる界面活性剤または分散剤を必要としない。一実施形態では、少なくとも1つのアクリルポリマーは、アルカリ金属および有機アミンのうちの少なくとも1つの塩である。一実施形態では、塩は、ポリマーのカルボン酸含有基と、1つまたは複数の有機アミン、アルカリ金属および塩基との反応から生じる。少なくとも1つのアクリルポリマーとアルカリ金属との塩の例は、リチウム、ナトリウムまたはカリウムの塩を含む。そのような塩は、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムとの反応から調製することができる。少なくとも1つのアクリルポリマーと有機アミンとの塩の例は、アンモニア、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、およびモルホリン、ジエタノールアミン、およびトリエタノールアミンの塩を含む。
【0010】
一実施形態では、少なくとも1つのアクリルポリマーは、組成物の総質量に対して、0.5質量%〜5質量%の範囲の量で、例えば、0.5質量%〜4質量%、0.5質量%〜3質量%、1質量%〜5質量%、1質量%〜4質量%、または1質量%〜3質量%の範囲の量で存在する。
一実施形態では、ポリマー/顔料の比は、0.05〜2、例えば、0.05〜1、0.05〜0.5、0.1〜2、0.1〜1、0.1〜0.5、0.15〜2、0.15〜1、または0.15〜0.5である。
【0011】
一実施形態では、顔料は、自己分散顔料であり、例えば、顔料は、自己分散性である。一実施形態では、自己分散顔料は、少なくとも1つの結合した有機基を有する改質型顔料である。一実施形態では、「結合した(attached)」有機基は、数時間のソックスレー抽出(例えば、少なくとも4、6、8、12または24時間)で結合した基が顔料から除去されないという点で、吸着した基と区別することができる。別の実施形態では、出発有機処理材料を溶解することができるが、処理した顔料を分散することができない溶媒または溶媒混合物を用いた反復洗浄(例えば、2回、3回、4回、5回、またはそれ以上の洗浄)の後に有機基を除去することができない場合は、有機基は、顔料に結合している。さらに別の実施形態では、「結合した」は、共有結合などの結合を指し、例えば、有機基に結合または共有結合した顔料である。
【0012】
一実施形態では、組成物は、カルシウムに結合する能力がある、すなわち、1,2,3−ベンゼントリカルボン酸のカルシウム指数値より大きいカルシウム指数値を有する、少なくとも1つの結合した有機基を有する少なくとも1つの顔料を含む。一実施形態では、その開示内容を参照により本明細書に組み込む米国特許第8,858,695号に記載されているように、カルシウム結合能は、カルシウム指数値により定量化することができる。「カルシウム指数値」は、溶液中で有機基がカルシウムイオンに配位または結合する能力の測定値を指す。カルシウム指数値が高いほど、基はカルシウムイオンにより強くまたは有効に配位することができる。カルシウム指数値は、他の2価の金属イオン、例えば、マグネシウムの結合能を示すために使用することもできる。
カルシウム指数値は、当技術分野において公知の任意の方法により決定することができる。例えば、カルシウム指数値は、可溶性のカルシウムイオンおよび変色指示薬を含有する標準溶液中で化合物が配位したカルシウム量をUV−可視分光法を使用して測定する方法により測定することができる。あるいは、強い色を有する化合物では、カルシウム指数値は、NMR法を使用して測定することができる。
【0013】
一実施形態では、その開示内容を参照により本明細書に組み込む米国特許第8,858,695号に記載されている方法、例えば、第29欄45行〜第31欄37行の方法Aまたは方法Bに従い、「カルシウム指数値」を決定する。使用するいずれの方法でも、試験される所望の有機基に対応する化合物を選択した。試験化合物では、カルシウムイオンへの結合に関与する原子が、少なくとも2つの結合により残基から分離される限り、少なくとも1つの有機基は、任意の残基に結合することができる。残基は、水素、(置換または非置換の)C1−C10アルキルまたは(置換または非置換の)C4−C18アリールを含み得、またはからなり得、例えば、試験される化合物は、水素、(置換または非置換の)C1−C10アルキルまたは(置換または非置換の)C4−C18アリールに結合する有機基を含み得る。例えば、3,4,5−トリカルボキシフェニル官能基およびその塩に対しては、1,2,3−ベンゼントリカルボン酸を選択することができる。この実施例では、残基は水素であり、カルボン酸の酸素原子は、水素残基から離れた少なくとも2つの結合である。
【0014】
一実施形態では、カルシウム指数値への参照は、値が標準物質の値以上であることを意味する。一実施形態では、標準品は、1,2,3−ベンゼントリカルボン酸である。したがって、少なくとも1つの有機基は、1,2,3−ベンゼントリカルボン酸のカルシウム指数値より大きいカルシウム指数値を有する。別の実施形態では、標準品は、1,2,3−ベンゼントリカルボン酸である。一実施形態では、以下でより詳細に記載するように、カルシウム指数値は、UV可視分光法(または方法A)を使用して評価し、2.8以上、3.0以上、または3.2以上である。
方法A.この方法では、0.087mMコンゴーレッド指示薬、5mM塩化セシウム、1質量%MW350ポリエチレングリコールメチルエーテル、および0〜7mM(0.2、0.5、1、2、3、4、4.5、5、6および7mM)の範囲の濃度の塩化カルシウムを含有したpH9の一連の溶液を調製した。これらの溶液のUV−可視スペクトルは、UV−2501PCを使用して、その調製から1時間以内に記録した。520nmでの吸光度とカルシウム濃度を関連付ける検量線を作成するためにこれらのスペクトルを使用した。
【0015】
次いで、0.087mMコンゴーレッド指示薬、1質量%MW350ポリエチレングリコールメチルエーテル、5mM塩化カルシウム、およびpH9でのイオン濃度が5mMであるような目的の化合物のセシウム塩を含有した試験溶液をpH9で調製した。検量線との比較により、非錯化カルシウム濃度を決定した。次いで、log10((0.005−非錯化カルシウム)/((非錯化カルシウム)2))としてカルシウム指数値を算出した。測定を繰り返して行い、平均化した。
【0016】
方法B.高いレベルの色を呈し、したがって、方法Aの使用が困難な化合物に対して、第2の方法を開発した。この方法では、0.01Mの43CaCl2、0.01MのNaCl、10%D2OおよびpH8または9の水溶液を43CaCO3、HCl/D2O、NaOH/D2O、D2Oおよび水から調製した。検討する化合物をイオン化し化合物を溶解するためのpHを選択した。約0.65gの溶液を5mmNMR管に添加し、0.001g刻みの近似値で秤量した。非結合43Caの化学シフトをプロトン共鳴周波数400.13MHzのBruker Avance II分光計を使用して測定した。調査中の化合物(配位子)の0.2〜1.0M溶液を連続的に増加させて添加した。各添加後に、43Ca化学シフトを測定し、試料と非結合カルシウムの化学シフトの差δを算出した。Lo/Cao比が、0.25、0.5、1、2、3、4、6および8になるように連続的に増加させた(ここで、Loは、配位子からの錯化、プロトン化および遊離アニオンの総濃度であり、Caoは、存在するすべての種中のカルシウムの総濃度である)。カルシウム指数値(NMR)をlog10(X)として算出し、ここで、Xは、データと等式から予想される化学シフトとの間のRMS差が最小になるように、等式のパラメータXおよびδmをフィッティングすることにより決定し、
【数1】
式中、
δは、試料の43Ca化学シフトと遊離の水性43Ca2+の化学シフトの差であり;
δmは、無限L/Caにおける43Ca化学シフトと遊離の43Ca2+の化学シフトの算出した差であり;
oは、配位子からの錯化、プロトン化および遊離アニオンの総濃度であり;
Caoは、存在するすべての種中のカルシウムの総濃度であり;
Xは、フィッティングパラメータであり;および
aは、配位子LHのプロトン解離定数である。
【0017】
一実施形態では、少なくとも1つの有機基は、少なくとも1つのホスホン酸基(例えば、少なくとも2つのホスホン酸基)、その部分エステルおよびその塩、例えば、ジェミナルビスホスホン酸基、その部分エステルおよびその塩から選択される。一実施形態では、少なくとも1つの有機基は、少なくとも1つのジェミナルビスホスホン酸基、その部分エステルおよびその塩を含み得、すなわち、少なくとも1つの有機基は、同じ炭素原子に直接結合する少なくとも2つの、ホスホン酸基、その部分エステルおよびその塩を含み得る。そのような基は、1,1−ジホスホン酸基、その部分エステル、またはその塩とも呼ばれ得る。したがって、例えば、少なくとも1つの有機基は、式−CQ(PO322、その部分エステルおよびその塩を有する基を含み得る。Qは、ジェミナル位置に結合し、H、R、OR、SRまたはNR2であってもよく、式中、Rは、同じでも異なっていてもよく、H、飽和または不飽和で分枝または非分枝のC1−C18アルキル基、飽和または不飽和で分枝または非分枝のC1−C18アシル基、アラルキル基、アルカリール基、またはアリール基である。例えば、Qは、H、R、OR、SRまたはNR2であってもよく、式中、Rは、同じでも異なっていてもよく、H、C1−C6アルキル基、またはアリール基である。一実施形態では、Qは、H、OHまたはNH2である。さらに、少なくとも1つの有機基は、式−(CH2n−CQ(PO322、その部分エステルおよびその塩を有する基を含み得、式中、Qは、上記の通りであり、nは、0〜9、例えば、1〜9、0〜3、または1〜3である。一実施形態では、nは、0か1のどちらかである。また、少なくとも1つの有機基は、式−Y−(CH2n−CQ(PO322、その部分エステルおよびその塩を有する基を含み得、式中、Qおよびnは、上記の通りであり、Yは、アリーレン、ヘテロアリーレン、アルキレン、ビニリデン、アルカリーレン、アラルキレン、環式、またはヘテロ環基である。一実施形態では、Yは、アリーレン基、例えばフェニレン、ナフタレンまたはビフェニレン基であり、これはさらに、任意の基、例えば1つまたは複数のアルキル基またはアリール基で置換されていてもよい。Yがアルキレン基である場合、例は、これに限定されるものではないが、置換または非置換のアルキレン基を含み、これは、分枝または非分枝でもよく、1つまたは複数の基、例えば芳香族基で置換され得る。例には、これに限定されるものではないが、メチレン、エチレン、プロピレンまたはブチレン基などのC1−C12基が含まれる。
【0018】
Yは、これに限定されないが、R’、OR’、COR’、COOR’、OCOR’、カルボキシレート、ハロゲン、CN、NR’2、SO3H、スルホネート、サルフェート、NR’(COR’)、CONR’2、イミド、NO2、ホスフェート、ホスホネート、N=NR’、SOR’、NR’SO2R’、およびSO2NR2’から選択される1つまたは複数の基でさらに置換されていてもよく、式中、R’は、同じでも異なっていてもよく、独立に、水素、分枝または非分枝で置換または非置換で飽和または不飽和のC1−C20炭化水素、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、置換または非置換のアリール、置換または非置換のヘテロアリール、置換または非置換のアルカリール、または置換または非置換のアラルキルである。
【0019】
一実施形態では、少なくとも1つの有機基は、式−Y−Sp−(CH2n−CQ(PO322、その部分エステルまたはその塩を有する基を含み得、この場合、Y、Qおよびnは、上記の通りである。Spは、スペーサ基であり、本明細書では、2つの基の間の結合である。Spは、結合または化学基とすることができる。化学基の例には、これに限定されるものではないが、−CO2−、−O2C−、−CO−、−OSO2−、−SO3−、−SO2−、−SO224O−、−SO224S−、−SO224NR’’−、−O−、−S−、−NR’’−、−NR’’CO−、−CONR’’−、−NR’’CO2−、−O2CNR’’−、−NR’’CONR’’−、−N(COR’’)CO−、−CON(COR’’)−、−NR’’COCH(CH2CO2R’’)−およびそれからの環式イミド、−NR’’COCH2CH(CO2R’’)−およびそれからの環式イミド、−CH(CH2CO2R’’)CONR’’−およびそれからの環式イミド、−CH(CO2R’’)CH2CONR’’およびそれからの環式イミド(これらのフタルイミドおよびマレイミドを含む)、スルホンアミド基(−SO2NR’’−および−NR’’SO2−基を含む)、アリーレン基、アルキレン基などが含まれる。R’’、は、同じでも異なっていてもよく、水素または有機基、例えば、置換または非置換のアリールまたはアルキル基を表す。上記の構造により示されるように、少なくとも2つのホスホン酸基およびその塩を含む基は、スペーサ基Spを介してYに結合する。一実施形態では、Spは、−CO2−、−O2C−、−O−、−NR’’CO−、または−CONR’’−、−SO2NR’’−、−SO2CH2CH2NR’’−、−SO2CH2CH2O−、または−SO2CH2CH2S−であり、この場合R’’は、HまたはC1−C6アルキル基である。
さらに、少なくとも1つの有機基は、式−CR=C(PO322、その部分エステルおよびその塩を有する少なくとも1つの基を含み得る。Rは、H、C1−C18飽和または不飽和、分枝または非分枝のアルキル基、C1−C18飽和または不飽和、分枝または非分枝のアシル基、アラルキル基、アルカリール基、またはアリール基とすることができる。一実施形態では、Rは、H、C1−C6アルキル基、またはアリール基である。
【0020】
一実施形態では、少なくとも1つの有機基は、2超のホスホン酸基、その部分エステル、およびその塩を含み得、例えば、1超の(例えば、2つ以上の)タイプの基を含み得、ここで、基の各タイプは、少なくとも2つのホスホン酸基、その部分エステルおよびその塩を含む。例えば、少なくとも1つの有機基は、式−Y−[CQ(PO322]p、その部分エステルまたはその塩を有する基を含み得る。YおよびQは、上記の通りである。一実施形態では、Yは、アリーレン、ヘテロアリーレン、アルキレン、アルカリーレン、またはアラルキレン基である。この式では、pは1〜4であり、例えば、pは2である。
【0021】
一実施形態では、少なくとも1つの有機基は、少なくとも1つのビシナルビスホスホン酸基、その部分エステルおよびその塩を含み得、これらの基が、互いに隣接していることを意味する。したがって、少なくとも1つの有機基は、隣接するまたは近隣の炭素原子に結合する、2つのホスホン酸基、その部分エステルおよびその塩を含み得る。そのような基は、1,2−ジホスホン酸基、その部分エステルおよびその塩とも呼ばれることがある。2つのホスホン酸基、その部分エステルおよびその塩を含む基は、芳香族基でもアルキル基であってもよく、したがってビシナルビスホスホン酸基は、ビシナルアルキルまたはビシナルアリールジホスホン酸基、その部分エステルおよびその塩であってもよい。例えば、少なくとも1つの有機基は、式−C63−(PO322、その部分エステルおよびその塩を有する基であってもよく、この場合、酸、エステルまたは塩の基は、互いにオルトの位置にある。
一実施形態では、少なくとも1つの有機基は、少なくとも1つのホスホン酸基またはその塩、ならびにホスホン酸基およびその塩にビシナルまたはジェミナルな少なくとも1つの第2のイオン性、イオン化可能な、または塩基性の基を含む。
一実施形態では、少なくとも1つの有機基は、−C(OH)(PO322、−CH2C(OH)(PO322、−CH2CH2C(OH)(PO322、−CH2CH2CH2C(OH)(PO322、−CH(PO322、−CH2CH(PO322、それらの部分エステル、およびそれらの塩から選択される。
【0022】
結合した有機基の量は、改質型カーボンブラックの所望の使用および結合した基の種類に依存して変動し得る。例えば、有機基の総量は、窒素吸着(BET法)により測定して約0.01〜約10.0マイクロモル(基)/m2(顔料表面積)であってよく、例えば、約0.5〜約5.0マイクロモル/m2、約1〜約3マイクロモル/m2、または約2〜約2.5マイクロモル/m2である。本発明の種々の実施形態で記載されるものと異なる、さらなる結合した有機基も、存在することができる。
【0023】
結合前の非改質型顔料は、当業者により従来使用される任意の種類の顔料、例えば、青、黒、茶、シアン、緑、白、紫、マゼンタ、赤、オレンジまたはイエロー顔料を含めた黒顔料および他の着色顔料であり得る。様々な顔料の混合物を使用することもできる。黒顔料の代表例は、種々のカーボンブラック(Pigment Black 7)、例えば、チャネルブラック、ファーネスブラック、ガスブラック、およびランプブラックを含み、例えば、Cabot Corporationから入手可能なRegal(登録商標)、Black Pearls(登録商標)、Elftex(登録商標)、Monarch(登録商標)、Mogul(登録商標)、およびVulcan(登録商標)カーボンブラック(例えば、Black Pearls(登録商標)2000、Black Pearls(登録商標)1400、Black Pearls(登録商標)1300、Black Pearls(登録商標)1100、Black Pearls(登録商標)1000、Black Pearls(登録商標)900、Black Pearls(登録商標)880、Black Pearls(登録商標)800、Black Pearls(登録商標)700、Black Pearls(登録商標)570、Black Pearls(登録商標)L、Elftex(登録商標)8、Monarch(登録商標)1400、Monarch(登録商標)1300、Monarch(登録商標)1100、Monarch(登録商標)1000、Monarch(登録商標)900、Monarch(登録商標)880、Monarch(登録商標)800、Monarch(登録商標)700、Regal(登録商標)660、Mogul(登録商標)L、Regal(登録商標)330、Regal(登録商標)400、Vulcan(登録商標)P)として販売されているカーボンブラックを含む。他のサプライヤーから入手可能なカーボンブラックを使用することができる。適切な分類の着色顔料は、例えば、アントラキノン、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ジアゾ、モノアゾ、ピラントロン、ペリレン、ヘテロ環イエロー、キナクリドン、キノロノキノロン、および(チオ)インジゴイドを含む。そのような顔料は、BASF Corporation、Engelhard Corporation、Sun Chemical Corporation、Clariant、およびDianippon Ink and Chemicals(DIC)を含めた多くの供給元から粉末またはプレスケーキの形態で市販されている。他の適切な着色顔料の例は、Colour Index,3rd edition(The Society of Dyers and Colourists,1982)に記載されている。一実施形態では、顔料は、シアン顔料、例えば、Pigment Blue 15、Pigment Blue 15:3、Pigment Blue 15:4、またはPigment Blue 60、マゼンタ顔料、例えば、Pigment Red 122、Pigment Red 177、Pigment Red 185、Pigment Red 202、またはPigment Violet 19、イエロー顔料、例えば、Pigment Yellow 74、Pigment Yellow 128、Pigment Yellow 139、Pigment Yellow 155、Pigment Yellow 180、Pigment Yellow 185、Pigment Yellow 218、Pigment Yellow 220、またはPigment Yellow 221、オレンジ顔料、例えば、Pigment Orange 168、緑顔料、例えば、Pigment Green 7またはPigment Green 36、または黒顔料、例えば、カーボンブラックである。
【0024】
一実施形態では、顔料は、インクジェットインクの性能に悪影響を及ぼすことなく所望の画質(例えば、光学濃度)を提供するために有効な量で存在することができる。一実施形態では、顔料は、インクジェットインク組成物の総質量を基準にして、0.1%〜20%、例えば、1%〜20%、1%〜10%、または3%〜8%の範囲の量でインクジェットインク組成物中に存在する。
【0025】
分散液およびインクジェットインク組成物
一実施形態では、分散液は、水性分散液、例えば、水とすることができる水性液体媒体を含むインクジェットインク組成物である。一実施形態では、分散液またはインクジェットインク組成物は、少なくとも40%の水、例えば、少なくとも45%の水または少なくとも50%の水を含む。
【0026】
一実施形態では、分散液またはインクジェットインク組成物は、インクジェットインク組成物の総質量に対して1%〜50%の範囲の量で存在する、または本明細書で開示される他の量で存在する、少なくとも1つの有機溶媒を含む。一実施形態では、有機溶媒は、水に可溶性または混和性である。別の実施形態では、有機溶媒は、水性加水分解条件(例えば、エステルおよびラクトンの加水分解を含めて、例えば、熱老化条件下での水との反応)に対して化学的に安定である。一実施形態では、有機溶媒は、水より低い誘電率、例えば、20℃で約10〜約78の範囲の誘電率を有する。適切な有機溶媒の例は、低分子量グリコール(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルまたはモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、およびテトラエチレングリコールモノブチルエーテル);アルコール(例えば、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、およびtert−ブチルアルコール、2−プロピン−1−オール(プロパルギルアルコール)、2−ブテン−1−オール、3−ブテン−2−オール、3−ブチン−2−オール、およびシクロプロパノール);約2〜約40個の炭素原子を含有するジオール(例えば、1,3−ペンタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、2,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール)、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、およびポリ(エチレン−co−プロピレン)グリコール、ならびにそれらの、エチレンオキシドを含めて、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドを含めてアルキレンオキシドとの反応生成物);約3〜約40個の炭素原子を含有するトリオール(例えば、グリセリン(グリセロール)、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオールなど、ならびにそれらの、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、およびそれらの混合物を含めてアルキレンオキシドとの反応生成物);ポリオール(例えば、ペンタエリスリトール);アミド(例えば、ジメチルホルムアルデヒドおよびジメチルアセトアミド);ケトンまたはケトアルコール(例えば、アセトンおよびジアセトンアルコール);エーテル(例えば、テトラヒドロフランおよびジオキサン);ラクタム(例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、およびε−カプロラクタム);尿素または尿素誘導体(例えば、ジ−(2−ヒドロキシエチル)−5,5、−ジメチルヒダントイン(ダンタコール(dantacol))および1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン);分子内塩(例えば、ベタイン);およびヒドロキシアミド誘導体(例えば、アセチルエタノールアミン、アセチルプロパノールアミン、プロピルカルボキシエタノールアミン、およびプロピルカルボキシプロパノールアミン、ならびにそれらのアルキレンオキシドとの反応生成物)を含む。さらなる例には、サッカリド(例えば、マルチトール、ソルビトール、グルコノラクトンおよびマルトース);約2〜約40個の炭素原子を含有するスルホキシド誘導体(対称および非対称)(例えば、ジメチルスルホキシド、メチルエチルスルホキシド、およびアルキルフェニルスルホキシド);および約2〜約40個の炭素原子を含有するスルホン誘導体(対称および非対称)(例えば、ジメチルスルホン、メチルエチルスルホン、スルホラン(テトラメチレンスルホン、環式スルホン)、ジアルキルスルホン、アルキルフェニルスルホン、ジメチルスルホン、メチルエチルスルホン、ジエチルスルホン、エチルプロピルスルホン、メチルフェニルスルホン、メチルスルホラン、およびジメチルスルホラン)が含まれる。有機溶媒は、有機溶媒の混合物を含み得る。
【0027】
溶媒の量は、溶媒の諸特性(溶解度および/または誘電率)、着色剤の種類ならびに得られるインクジェットインク組成物の所望の性能を含めた種々の要因に依存して変動し得る。溶媒は、インクジェットインク組成物の総質量を基準にして、1%〜30%の範囲の量、または1%〜20%の範囲の量を含めて、1%〜40質量%の範囲の量で使用することができる。別の実施形態では、溶媒の量は、水性分散液またはインクジェットインク組成物の総質量を基準にして、約5%以上および約10質量%以上を含めて約2質量%以上である。
【0028】
一実施形態では、インク組成物(例えば、インクジェットインク組成物)は、例えば、顔料が自己分散性でない場合、少なくとも1つの界面活性剤を含む。少なくとも1つの界面活性剤は、組成物のコロイド安定性を高めることができ、またはインクと印刷基板、例えば、印刷用紙との、またはインクプリントヘッドとの相互作用を変えることができる。種々のアニオン性、カチオン性および非イオン性界面活性剤は、本発明のインク組成物と共に使用することができ、これらは、ニートでまたは水溶液として使用することができる。一実施形態では、界面活性剤は、インクジェットインク組成物の総質量に対して、0.05%〜5%の範囲の量で、例えば、0.1%〜5%、または0.5%〜2質量%の範囲の量で存在する。
【0029】
アニオン性界面活性剤の代表例は、これに限定されるものではないが、ヒドロキシル化またはアミノ化誘導体を含めて、高級脂肪酸塩、高級アルキルジカルボン酸塩、高級アルコールの硫酸エステル塩、高級アルキルスルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、アルキルナフタレンスルホネート、ナフタレンスルホネート(Na、K、Li、Caなど)、ホルマリンポリ縮合物、高級脂肪酸とアミノ酸の縮合物、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、アルキルスルホスクシネート、ナフテネート、アルキルエーテルカルボキシレート、アシル化ペプチド、α−オレフィンスルホネート、N−アクリルメチルタウリン、アルキルエーテルスルホネート、2級高級アルコールエトキシサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート、モノグリシルサルフェート、アルキルエーテルホスフェートおよびアルキルホスフェート、アルキルホスホネートおよびビスホスホネートを含む。例えば、スチレンスルホネート塩、非置換および置換ナフタレンスルホネート塩(例えば、アルキルまたはアルコキシ置換ナフタレン誘導体)、アルデヒド誘導体(例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒドなどを含めた非置換のアルキルアルデヒド誘導体)、マレイン酸塩およびそれらの混合物のポリマーおよびコポリマーは、アニオン性分散助剤として使用することができる。塩は、例えば、Na+、Li+、K+、Cs+、Rb+、および置換および非置換のアンモニウムカチオンを含む。カチオン性界面活性剤の代表例は、脂肪族アミン、四級アンモニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩などを含む。
【0030】
本発明のインクジェットインクで使用することができる非イオン性界面活性剤の代表例は、フッ素誘導体、シリコーン誘導体、アクリル酸コポリマー、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン2級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンスチロールエーテル、エトキシ化アセチレンジオール、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、アルキルフェノールホルマリン縮合物のエチレンオキシド誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルポリオキシエチレン化合物の脂肪酸エステル、ポリエチレンオキシド縮合型のエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、ポリグリセロールの脂肪酸エステル、プロピレングリコールの脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミドおよびポリオキシエチレンアルキルアミンオキシドを含む。例えば、エトキシ化モノアルキルまたはジアルキルフェノールを使用することができる。これらの非イオン性界面活性剤または分散剤は、単独でも、前記のアニオン性およびカチオン性分散剤との組み合わせでも使用することができる。
【0031】
一実施形態では、インクジェットインクは、少なくとも80のヒドロキシル価を有する少なくとも1つの水溶性化合物をさらに含み、この場合、少なくとも1つの水溶性化合物は、エトキシ化C3−C20ポリオール、例えば、エトキシ化トリオール、エトキシ化テトラオール、エトキシ化ペンタオール、およびエトキシ化ヘキサオールから選択される。一実施形態では、エトキシ化C3−C20ポリオールは、エチオキシル化(ethyoxylated)グリセロール、エトキシ化ペンタエリスリトール、エトキシ化トリメチロールプロパン、エトキシ化グルコシド、およびエトキシ化グルコースから選択される。別の実施形態では、少なくとも1つの水溶性化合物は、3個以上のヒドロキシル基(例えば、キシリトールおよびソルビトール)、およびポリエーテルポリオールを有するポリオールから選択される。少なくとも1つの水溶性化合物は、インクジェットインク組成物の総質量に対して、1%〜60質量%の範囲の量で存在することができる。
【0032】
一実施形態では、インクジェットインク組成物は、1−25cPの範囲の粘度を有する。種々の方法より粘度を調整できることが理解される。インクジェットインク組成物の粘度を調整するための例示的レオロジー添加剤は、これに限定されるものではないが、アルカリ膨潤性エマルション(例えば、BASF製のRheovis(登録商標)ASレオロジー−改質添加剤)、疎水性改質型アルカリ膨潤性エマルション(例えば、BASF製のRheovis(登録商標)HSレオロジー−改質添加剤)、疎水性改質型ポリウレタン(例えば、BASF製のRheovis(登録商標)PUレオロジー−改質添加剤)、および疎水性改質型ポリエーテル(例えば、BASF製のRheovis(登録商標)PEレオロジー−改質添加剤)を含む。
一実施形態では、インクジェットインク組成物は、カラーバランスを修正し光学濃度を調整するために、染料をさらに含み得る。例示的染料は、食用色素、FD&C染料、酸性染料、直接染料、反応染料、銅フタロシアニン誘導体を含めたフタロシアニンスルホン酸の誘導体、ナトリウム塩、アンモニウム塩、カリウム塩、およびリチウム塩を含む。
【0033】
一実施形態では、インクジェットインク組成物は、組成物の安定性を維持しながら、いくつかの所望の特性を付与するために、1つまたは複数の適切な添加剤をさらに含むことができる。他の添加剤は、当技術分野で周知であり、保湿剤、殺生物剤および殺菌剤、pH調整剤、乾燥促進剤、浸透剤などを含む。特定の添加剤の量は、種々の要因に依存して変化することになるが、一般にインクジェットインク組成物の質量を基準として、0.01%〜40%の範囲の量で存在する。一実施形態では、少なくとも1つの添加剤は、インクジェットインク組成物の総質量に対して、0.05%〜5%の範囲の量で、例えば、0.1%〜5%の範囲の量で、または0.5%〜2質量%の範囲の量で存在する。
【0034】
例えば、ノズルの目詰まり防止目的、ならびに紙浸透(浸透剤)、乾燥の改善(乾燥促進剤)、およびコックリング耐性を提供するために、保湿剤、および少なくとも1つの有機溶媒以外の水溶性有機化合物を、本発明のインクジェットインク組成物に添加することもできる。一実施形態では、保湿剤および/または水溶性化合物は、0.1%〜50%の範囲の量で、例えば、1%〜50%、0.1%〜30%、1%〜30%、0.1%〜10%、または1%〜10%の範囲の量で存在する。
【0035】
使用することができる保湿剤および他の水溶性化合物の特定の例は、低分子量グリコール、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールおよびジプロピレングリコール;約2〜約40個の炭素原子を含有するジオール、例えば、1,3−ペンタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、2,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール)、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ポリ(エチレン−co−プロピレン)グリコールなど、ならびにそれらの、エチレンオキシドを含めて、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドを含めてアルキレンオキシドとの反応生成物;グリセリン、トリメチロールプロパン、1,3,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオールなどを含めた約3〜約40個の炭素原子を含有するトリオール誘導体、ならびにそれらの、エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびそれらの混合物を含めたアルキレンオキシドとの反応生成物;ネオペンチルグリコール、(2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール)など、ならびにそれらの、広範な分子量を有する材料を形成するための任意の望ましいモル比のエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドを含めたアルキレンオキシドとの反応生成物;チオジグリコール;ペンタエリスリトールおよび低級アルコール、例えば、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、およびtert−ブチルアルコール、2−プロピン−1−オール(プロパルギルアルコール)、2−ブテン−1−オール、3−ブテン−2−オール、3−ブチン−2−オール、およびシクロプロパノール;アミド、例えば、ジメチルホルムアルデヒドおよびジメチルアセトアミド;ケトンまたはケトアルコール、例えば、アセトンおよびジアセトンアルコール;エーテル例えば、テトラヒドロフランおよびジオキサン;セロソルブ、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルおよびエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチル(またはモノエチル)エーテル;カルビトール、例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、およびジエチレングリコールモノブチルエーテル;ラクタム、例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドンおよびε−カプロラクタム;尿素および尿素誘導体;分子内塩、例えば、ベタインなど;1−ブタンチオールを含めた上記材料のチオ(硫黄)誘導体;t−ブタンチオール1−メチル−1−プロパンチオール、2−メチル−1−プロパンチオール;2−メチル−2−プロパンチオール;チオシクロプロパノール、チオエチレングリコール、チオジエチレングリコール、トリチオ−またはジチオ−ジエチレングリコールなど;アセチルエタノールアミン、アセチルプロパノールアミン、プロピルカルボキシエタノールアミン、プロピルカルボキシプロパノールアミンなどを含めたヒドロキシアミド誘導体;前記材料とアルキレンオキシドとの反応生成物;およびそれらの混合物を含む。さらなる例には、サッカリド、例えば、マルチトール、ソルビトール、グルコノラクトンおよびマルトース;多価アルコール、例えば、トリメチロールプロパンおよびトリメチロールエタン;N−メチル−2−ピロリドン;1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン;ジアルキルスルフィド(対称および非対称のスルホキシド)、例えば、ジメチルスルホキシド、メチルエチルスルホキシド、アルキルフェニルスルホキシドなどを含めた約2〜約40個の炭素原子を含有するスルホキシド誘導体;および約2〜約40個の炭素原子を含有するスルホン誘導体(対称および非対称のスルホン)、例えば、ジメチルスルホン、メチルエチルスルホン、スルホラン(テトラメチレンスルホン、非環式スルホン)、ジアルキルスルホン、アルキルフェニルスルホン、ジメチルスルホン、メチルエチルスルホン、ジエチルスルホン、エチルプロピルスルホン、メチルフェニルスルホン、メチルスルホラン、ジメチルスルホランなどが含まれる。そのような材料は、単独でも、組み合わせでも使用することができる。
【0036】
殺生物剤および/または殺菌剤も、本明細書で開示される水性分散液またはインクジェットインク組成物に添加することができる。細菌は、しばしばインクノズルより大きく、目詰まりおよび他の印刷の問題を引き起こし得るので、殺生物剤は、細菌増殖を防止する上で重要である。有用な殺生物剤の例は、これに限定されるものではないが、安息香酸塩またはソルビン酸塩、およびイソチアゾリノンを含む。一実施形態では、殺生物剤および/または殺菌剤は、組成物の総質量に対して、0.05%〜5質量%、0.05%〜2質量%、0.1%〜5質量%、または0.1%〜2質量%の範囲の量で存在する。
【実施例】
【0037】
本明細書で開示されるアクリルポリマーを含有するインクのO.D.の改善を示すために、一連のインクを調製した。以下の表1に、実施例および比較例で使用したインク製剤を列挙する。
【0038】
【表1】
【0039】
実施例および比較例で使用したポリマー添加剤を以下に列挙する。
・Joncryl(登録商標)樹脂−水酸化ナトリウムで中和した、または塩基にすでに予備溶解して使用されるBASF製のスチレンアクリルポリマー;Joncryl(登録商標)樹脂50、684、680、675、693、60、7025、96、71、586を使用する(J50、J684、J680、J675、J693、J60、J7025、J96、J71、J586と略記する);
・SMA(登録商標)樹脂−スチレン/無水マレイン酸ポリマー、Cray Valley製;SMA(登録商標)樹脂1440、2000、3000、EF40、およびEF60は、NaOHを用いて加水分解後に使用する(SMA1440、SMA2000、SMA3000、SMAEF40、およびSMAEF60と略記する);
・Pluronic(登録商標)F38界面活性剤−BASF製のポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシド(PEO/PPO)をベースとするトリブロックコポリマー(Plur.F38と略記する);
・PVP10K−平均分子量10,000を有するポリビニルピロリドン、Sigma Aldrich製;
・PEG1000−平均分子量1000を有するポリエチレングリコール、Sigma Aldrich製;および
・AQ55SまたはAQ(商標)55Sポリマー−スルホン化したポリエステル、Eastman Chemical製。
対照インクも、表1の配合に従い調製したが、ポリマー添加剤は含まれていない。
【0040】
実施例および比較例では、種々のポリマー添加剤を用いて作製したインクを、インクジェット処理なしの2つの普通紙:Xerox4200(Xerox製)およびStaplesコピー用紙(Staples製)、ならびにHP製インクジェット処理紙:HP多目的ウルトラホワイト(HPMP)上で評価した。
【0041】
Staples、XeroxおよびHPMPの各紙上で#3ワイヤを巻いたラボロッド(lab rod)を用いてインクのドローダウン(70μL)を得た。光学濃度(OD)は、以下の設定のX−rite 530分光光度計を使用して得た。照度D65、2度標準観察者、DIN密度標準、ホワイトベース:Absに設定、およびフィルターなし。各紙では、ドローダウン画像の上部、中間、下部で取った少なくとも3測定値の平均としてOD値を報告した。
HPMP紙上で対照インクのOD変動を評価した。ドローダウン上のOD測定値の変動を表2に列挙する。
【0042】
【表2】
【0043】
対照インクでは、標準偏差(σ)は0.02であった。したがって、閾値OD差は、3σ以上、すなわち0.05以上の増加または減少であると決定した。
【0044】
(実施例1〜7および比較例1〜13)
表1の配合から、種々のアクリル樹脂を用いて実施例1〜7を調製した。15,000超の分子量および/または150未満の酸価を有する非アクリル樹脂またはアクリル樹脂を用いて比較例1〜13を調製した。実施例1〜7、比較例1〜13、および対照サンプルの各々で、使用した顔料は、その開示内容を参照により本明細書に組み込む米国特許第8,858,695号の実施例72に記載されているようにして調製し、カルシウム指数値3.45を有するビスホスホネート基を用いて改質したカーボンブラックであった。
【0045】
表3は、実施例1〜7および比較例1〜13の各々に対するポリマー添加剤およびその特性、ならびにインクジェット処理していない(普通)紙(Xerox製およびStaples製)およびインクジェット処理紙(HPMP)上での対応するODデータを提供する。ΔOD値=OD(試料)−OD(対照)。
【0046】
【表3】
【0047】
表4のパラメータに従い、「評価」を決定する。
【表4】
【0048】
表3のデータから、クレームする発明に記載のアクリルポリマーは、2つの普通紙上で良好なODをもたらし、インクジェット処理紙上では大きな変化がなかったことがわかる。低い酸価を有するポリマーを含むインクでは、O.D.の改善を示さない。高分子量を有するポリマーを含むインクは、処理した紙上でO.D.性能の低下を示す。
【0049】
(比較例14〜29)
表1に従い、比較例14〜29のインクを調製し、これらでは、カーボンブラックが、1,2,3−ベンゼントリカルボン酸のカルシウム指数以下のカルシウム指数を有する基を用いて改質されていた。具体的には、顔料は、以下の官能基:トルエンスルホン酸(比較例14〜17);安息香酸(比較例18〜21);イソフタル酸(比較例22〜25);および1,2,3−ベンゼントリカルボン酸(比較例26〜29)を用いて改質され、これらの各々は、その開示内容を参照により本明細書に組み込む米国特許第5,571,311号の方法により調製した。表5に、ポリマー添加剤およびODデータを列挙する。
【0050】
【表5】
【0051】
表3に列挙した実施例と異なり、表5のデータは、種々のポリマー添加剤(クレームする発明によるポリマー添加剤でも)と共にこれらのカーボンブラック分散液を使用すると、OD効果がほとんどまたは全く見られないことを示している。クレームするポリマーと顔料の組み合わせにより、所望のOD効果が得られることがわかる。
【0052】
(実施例9および比較例30〜36)
このセットの試料は、ポリマー添加剤の存在下での、様々なカルシウム結合指数を有する官能基を用いて処理したピグメントレッド122(PR122)のOD応答を示す。具体的には、顔料は、以下の官能基:その開示内容を参照により本明細書に組み込む米国特許第5,571,311号の方法により調製したトルエンスルホン酸(比較例30〜33);および、その開示内容を参照により本明細書に組み込む米国特許第8,858,695号の実施例72に記載されているようにして調製したビスホスホン酸(実施例9および比較例34〜36)を用いて改質されている。表6に、ポリマー添加剤およびODデータを列挙する。
【0053】
【表6】
【0054】
ベース顔料としてPR122を用いた表5のデータから、OD応答は、カーボンブラックの例と同様の傾向を示す。より高いカルシウム結合指数を有する官能基を用いてPR122を表面処理した実施例9の場合のみ、2つの普通紙上のOD増加が、低分子量および高酸価ポリマーの存在下で観察される。
【0055】
用語「1つの(a)」および「1つの(an)」および「その(the)」の使用は、本明細書で別段の指示がない限り、または文脈から明白に矛盾しない限り、単数と複数の両方を網羅すると解釈されるべきである。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、および「含有する(containing)」は、別段の留意がない限り、オープンエンドの用語(すなわち、「含むが、これに限定されない」を意味する)として解釈されるべきである。本明細書の値の範囲の列挙は、本明細書で別段の指示がない限り、該範囲内に入るそれぞれ別個の値を個々に指す簡略方法として機能すると単に意図され、それぞれ別個の値は、あたかも個々に本明細書で列挙されるように明細書に組み込まれる。本明細書に記載されるすべての方法は、本明細書で別段の指示がない限り、または他の方法で文脈から明白に矛盾しない限り、任意の適切な順番で実施することができる。本明細書で提供される任意のおよびすべての例、または例示的な言語(例えば、「などの/例えば(such as)」)の使用は、単に本発明をより良く明らかにするものであり、別段の主張がない限り本発明の範囲を制限しない。明細書のどんな言語も本発明の実施に不可欠な任意のクレームしない要素を示唆すると解釈されるべきではない。
【国際調査報告】