(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
本発明は、FLT3(Fms様チロシンキナーゼ3)に特異的に結合する抗体を提供する。本発明はさらに、FLT3および別の抗原(例えば、CD3)に結合する二重特異性抗体を提供する。本発明はさらに、抗体をコードする核酸、およびそのような抗体(単一特異性および二重特異性)を取得する方法に関する。本発明はさらに、急性骨髄性白血病(AML)などのがんを含む、FLT3媒介性病理の治療のためのこれらの抗体の使用のための治療方法に関する。
標的抗原に特異的に結合する二重特異性抗体の第1の抗体可変ドメインを含み、ヒト免疫エフェクター細胞上に位置するエフェクター抗原に特異的に結合することによって、ヒト免疫エフェクター細胞の活性を動員することができる二重特異性抗体の第2の抗体可変ドメインを含む、完全長抗体である二重特異性抗体であって、第1の抗体可変ドメインが、配列番号279を含むFLT3のドメイン4に結合する、二重特異性抗体。
標的抗原に特異的に結合する二重特異性抗体の第1の抗体可変ドメインを含み、ヒト免疫エフェクター細胞上に位置するエフェクター抗原に特異的に結合することによって、ヒト免疫エフェクター細胞の活性を動員することができる二重特異性抗体の第2の抗体可変ドメインを含む、完全長抗体である二重特異性抗体であって、第1の抗体可変ドメインが、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、205、207、209、211、213、215、217、219、221、223、225、227、229、231、もしくは233に示されるVH配列のVH CDR1、VH CDR2、およびVH CDR3を含む重鎖可変(VH)領域;ならびに/または配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、204、206、208、210、212、214、216、218、220、222、224、226、228、230、もしくは232に示されるVL配列のVL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3を含む軽鎖可変(VL)領域を含む、二重特異性抗体。
標的抗原に特異的に結合する二重特異性抗体の第1の抗体可変ドメインを含み、ヒト免疫エフェクター細胞上に位置するエフェクター抗原に特異的に結合することによって、ヒト免疫エフェクター細胞の活性を動員することができる二重特異性抗体の第2の抗体可変ドメインを含む、完全長抗体である二重特異性抗体であって、第1の抗体可変ドメインが、
a.(i)配列番号37、38、39、43、44、45、49、50、54、55、56、60、61、62、66、67、68、72、73、74、78、79、80、84、85、86、90、91、92、96、97、98、102、103、104、108、109、110、114、115、116、120、121、122、126、127、128、132、133、134、138、139、140、246、もしくは247に示される配列を含むVH相補性決定領域1(CDR1);(ii)配列番号40、41、46、47、51、52、57、58、63、64、69、70、75、76、81、82、87、88、93、94、99、100、105、106、111、112、117、118、123、124、129、130、135、136、141、142、248、249、251、252、253、もしくは255に示される配列を含むVH CDR2;および(iii)配列番号42、48、53、59、65、71、77、83、89、95、101、107、113、119、125、131、137、143、245、250、もしくは254に示される配列を含むVH CDR3を含む重鎖可変(VH)領域;ならびに/または
b.(i)配列番号144、147、150、153、156、159、162、165、168、171、174、177、180、183、186、189、192、195、257、261、263、265、268、270、273、もしくは275に示される配列を含むVL CDR1;(ii)配列番号145、148、151、154、157、160、163、166、169、172、175、178、181、184、187、190、193、196、259、266、もしくは271に示される配列を含むVL CDR2;および(iii)配列番号146、149、152、155、158、161、164、167、170、173、176、179、182、185、188、191、194、197、256、258、260、262、264、267、269、272、もしくは274に示される配列を含むVL CDR3を含む軽鎖可変(VL)領域
を含む、二重特異性抗体。
ヘテロ二量体タンパク質の第1と第2の両方の抗体可変ドメインが、ヒトIgG2(配列番号290)のヒンジ領域中の223、225、および228位ならびにCH3領域中の409または368位(EU番号付けスキーム)にアミノ酸修飾を含む、請求項4または5に記載の二重特異性抗体。
医薬が、多発性骨髄腫、悪性形質細胞新生物、ホジキンリンパ腫、結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫、カーレル病および骨髄腫症、形質細胞白血病、形質細胞腫、B細胞性前リンパ性白血病、有毛細胞白血病、B細胞性非ホジキンリンパ腫(NHL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、濾胞性リンパ腫、バーキットリンパ腫、辺縁帯リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、大細胞型リンパ腫、前駆Bリンパ芽球性リンパ腫、骨髄性白血病、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫、濾胞性リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、粘膜関連リンパ組織リンパ腫、小細胞型リンパ性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、原発性縦隔(胸腺)大細胞型B細胞性リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、節性辺縁帯B細胞性リンパ腫、脾辺縁帯リンパ腫、血管内大細胞型B細胞性リンパ腫、原発性滲出性リンパ腫、リンパ腫様肉芽腫症、T細胞/組織球豊富型大細胞型B細胞性リンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫、原発性皮膚びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(下肢型)、高齢者のEBV陽性びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫、炎症を伴うびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫、血管内大細胞型B細胞性リンパ腫、ALK陽性大細胞型B細胞性リンパ腫、形質芽球性リンパ腫、HHV8関連多中心性キャッスルマン病で生じる大細胞型B細胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫とバーキットリンパ腫との間の中間的特徴を有する未分類のB細胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫と古典型ホジキンリンパ腫との間の中間的特徴を有する未分類のB細胞性リンパ腫、および他の造血細胞関連がんからなる群から選択されるFLT3関連がんの治療における使用のためのものである、請求項14に記載の抗体。
対象におけるFLT3を発現する悪性細胞と関連する状態を治療する方法であって、それを必要とする対象に、有効量の請求項1から10のいずれか一項に記載の抗体または請求項17に記載の医薬組成物を投与するステップを含む、方法。
がんが、多発性骨髄腫、悪性形質細胞新生物、ホジキンリンパ腫、結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫、カーレル病および骨髄腫症、形質細胞白血病、形質細胞腫、B細胞性前リンパ性白血病、有毛細胞白血病、B細胞性非ホジキンリンパ腫(NHL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、濾胞性リンパ腫、バーキットリンパ腫、辺縁帯リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、大細胞型リンパ腫、前駆Bリンパ芽球性リンパ腫、骨髄性白血病、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫、濾胞性リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、粘膜関連リンパ組織リンパ腫、小細胞型リンパ性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、原発性縦隔(胸腺)大細胞型B細胞性リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、節性辺縁帯B細胞性リンパ腫、脾辺縁帯リンパ腫、血管内大細胞型B細胞性リンパ腫、原発性滲出性リンパ腫、リンパ腫様肉芽腫症、T細胞/組織球豊富型大細胞型B細胞性リンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫、原発性皮膚びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(下肢型)、高齢者のEBV陽性びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫、炎症を伴うびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫、血管内大細胞型B細胞性リンパ腫、ALK陽性大細胞型B細胞性リンパ腫、形質芽球性リンパ腫、HHV8関連多中心性キャッスルマン病で生じる大細胞型B細胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫とバーキットリンパ腫との間の中間的特徴を有する未分類のB細胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫と古典型ホジキンリンパ腫との間の中間的特徴を有する未分類のB細胞性リンパ腫、および他の造血細胞関連がんからなる群から選択されるFLT3関連がんである、請求項19に記載の方法。
FLT3を発現する悪性細胞を有する対象における腫瘍増殖または進行を阻害する方法であって、それを必要とする対象に、有効量の請求項17に記載の医薬組成物を投与するステップを含む、方法。
対象におけるFLT3を発現する悪性細胞の転移を阻害する方法であって、それを必要とする対象に、有効量の請求項17に記載の医薬組成物を投与するステップを含む、方法。
FLT3を発現する悪性細胞を有する対象における腫瘍退縮を誘導する方法であって、それを必要とする対象に、有効量の請求項17に記載の医薬組成物を投与するステップを含む、方法。
第2の治療剤が、サイトカイン、TNFα(腫瘍壊死因子アルファ)、PAP(ホスファチジン酸ホスファターゼ)阻害剤、腫瘍溶解性ウイルス、キナーゼ阻害剤、IDO(インドールアミン−ピロール2,3−ジオキシゲナーゼ)阻害剤、グルタミナーゼGLS1阻害剤、CAR(キメラ抗原受容体)−T細胞もしくはT細胞療法、TLR(Toll様受容体)アゴニスト、または腫瘍ワクチンである、請求項24に記載の方法。
キナーゼ阻害剤が、ミドスタウリン、レスタウルチニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、キザルチニブ、ポナチニブ、クレノラニブ、パルボシクリブ、またはギルテリチニブである、請求項25に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本明細書に開示される発明は、FLT3(例えば、ヒトFLT3)に特異的に結合する抗体(例えば、単一特異性または二重特異性抗体)を提供する。本発明はまた、これらの抗体をコードするポリヌクレオチド、これらの抗体を含む組成物、ならびにこれらの抗体を作製および使用する方法も提供する。本発明はまた、がんなどの、対象におけるFLT3媒介性病理と関連する状態を治療するための方法も提供する。特に、本発明の発明者は、完全長二重特異性形式の本明細書に記載のFLT3抗体が、免疫細胞との相互作用によって、in vivoでより長い半減期、最小化されたFc相互作用、および最小化された非特異的サイトカイン放出を有することを発見した。さらに、完全長二重特異性形式の本明細書に記載のFLT3タンパク質のドメイン4を標的とするFLT3抗体は、二重特異性形式のドメイン1、2、3、および5を含む他のドメインと比較してAML細胞枯渇においてより有効であることが見出される。
【0034】
一般的な技法
本発明の実施では、別段の指定のない限り、分子生物学(組換え技法を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学、免疫学、ウイルス学、モノクローナル抗体の生成および操作の慣例的な技法を使用し、これらは、当技術分野の技術内である。このような技法は、文献、例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、2版(Sambrookら、1989)Cold Spring Harbor Press;Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait編、1984);Methods in Molecular Biology、Humana Press;Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis編、1998)Academic Press;Animal Cell Culture(R.I.Freshney編、1987);Introduction to Cell and Tissue Culture(J.P.MatherおよびP.E.Roberts、1998)Plenum Press;Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures(A.Doyle、J.B.Griffiths、およびD.G.Newell編、1993〜1998)J.Wiley and Sons;Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.);Handbook of Experimental Immunology(D.M. WeirおよびC.C.Blackwell編);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.MillerおよびM.P.Calos編、1987);Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubelら編、1987);PCR:The Polymerase Chain Reaction、(Mullisら編、1994);Current Protocols in Immunology(J.E.Coliganら編、1991);Short Protocols in Molecular Biology(WileyおよびSons、1999);Immunobiology(C.A.JanewayおよびP.Travers、1997);Antibodies(P.Finch、1997);Antibodies:a practical approach(D.Catty編、IRL Press、1988〜1989);Monoclonal antibodies:a practical approach(P.ShepherdおよびC.Dean編、Oxford University Press、2000);Using antibodies:a laboratory manual(E.HarlowおよびD.Lane(Cold Spring Harbor Laboratory Press、1999);The Antibodies(M.ZanettiおよびJ.D.Capra編、Harwood Academic Publishers、1995)などで完全に説明されている。
【0035】
定義
「抗体」は、免疫グロブリン分子であって、免疫グロブリン分子の可変領域内に位置した少なくとも1つの抗原認識部位によって標的、例えば、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチドなどに特異的に結合することができる、免疫グロブリン分子である。本明細書で使用される場合、この用語は、インタクトなポリクローナルまたはモノクローナル抗体だけでなく、その抗原結合断片(Fab、Fab’、F(ab’)
2、Fv)、一本鎖(ScFv)およびドメイン抗体(例えば、サメおよびラクダ科抗体を含む)、および抗体を含む融合タンパク質、ならびに抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の任意の他の改変された構成も包含する。抗体としては、任意のクラスの抗体、例えば、IgG、IgA、もしくはIgM(またはそのサブクラス)などがあり、抗体は、任意の特定のクラスのものである必要はない。その重鎖の定常領域の抗体アミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは、異なるクラスに割り当てられ得る。免疫グロブリンの5つの主要クラス、すなわち、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMがあり、これらのうちのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2にさらに分類することができる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常領域は、それぞれ、α、δ、ε、γ、およびμと呼ばれる。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造および3次元構成は、周知である。
【0036】
本明細書で使用される場合、抗体の「抗原結合断片」または「抗原結合部分」という用語は、所与の抗原(例えば、FLT3)に特異的に結合する能力を保持するインタクトな抗体の1つまたは複数の断片を指す。抗体の抗原結合機能を、インタクトな抗体の断片によって実行することができる。抗体の用語「抗原結合断片」に包含される結合断片の例としては、Fab;Fab’;F(ab’)
2;VHおよびCH1ドメインからなるFd断片;抗体の単一アームのVLおよびVHドメインからなるFv断片;単一ドメイン抗体(dAb)断片(Wardら、Nature 341:544〜546、1989)、ならびに単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられる。
【0037】
標的(例えば、FLT3タンパク質)に「優先的に結合する」または「特異的に結合する」(本明細書で互換的に使用される)抗体またはポリペプチドは、当技術分野でよく理解されている用語であり、このような特異的または優先的結合を判定する方法も当技術分野で周知である。分子は、それが特定の細胞または物質と、それが代替の細胞または物質と反応または会合するより、頻繁に、急速に、長い継続時間で、かつ/または大きい親和性で反応または会合する場合、「特異的結合」または「優先的結合」を呈すると言われる。抗体は、それが他の物質に結合するより、大きい親和性、結合活性で、容易に、かつ/または長い継続時間で結合する場合、標的に「特異的に結合し」、または「優先的に結合する」。例えば、FLT3エピトープに特異的または優先的に結合する抗体は、抗体であって、それが他のFLT3エピトープまたは非FLT3エピトープに結合するより、大きい親和性、結合活性で、容易にかつ/または長い継続時間でこのエピトープに結合する、抗体である。この定義を読むことによって、例えば、第1の標的に特異的または優先的に結合する抗体(または部分もしくはエピトープ)は、第2の標的に特異的または優先的に結合することができ、または結合しない場合があることも理解される。したがって、「特異的結合」または「優先的結合」は、排他的結合を必ずしも要求しない(しかし、これは排他的結合を含み得る)。一般に、しかし必ずしもではないが、結合への言及は、優先的結合を意味する。
【0038】
抗体の「可変領域」は、単独で、または組合せで抗体軽鎖の可変領域または抗体重鎖の可変領域を指す。当技術分野で公知であるように、重鎖および軽鎖の可変領域は、それぞれ、3つの超可変領域としても公知の相補性決定領域(CDR)によって接続された4つのフレームワーク領域(FR)からなる。各鎖中のCDRは、FRによってごく近くに一緒に保持されると共に、他の鎖に由来するCDRは、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する。CDRを決定するための少なくとも2つの技法が存在する:(1)種間配列可変性に基づく手法(すなわち、Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest(第5版、1991、National Institutes of Health、Bethesda、MD));および(2)抗原−抗体複合体の結晶学的研究に基づく手法(Al−lazikaniら、1997、J.Molec.Biol.273:927〜948)。本明細書で使用される場合、CDRは、いずれかの手法または両手法の組合せによって定義されるCDRを指してもよい。
【0039】
可変ドメインの「CDR」は、Kabat、Chothiaの定義、KabatとChothiaの両方の蓄積、AbM、接触、および/またはコンホメーション定義または当技術分野で周知のCDR決定の任意の方法に従って同定される可変領域内のアミノ酸残基である。抗体CDRを、Kabatらによって元々定義された超可変領域として同定することができる。例えば、Kabatら、1992、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service、NIH、Washington D.C.を参照。また、CDRの位置を、Chothiaその他によって元々記載された構造ループ構造として同定することもできる。例えば、Chothiaら、Nature 342:877〜883、1989を参照。CDR同定に対する他の手法としては、KabatとChothiaとの妥協案であり、Oxford Molecular’s AbM抗体モデリングソフトウェア(現在はAccelrys(登録商標))を使用して誘導される「AbM定義」、またはMacCallumら、J.Mol.Biol.、262:732〜745、1996に記載された、観察された抗原接触に基づくCDRの「接触定義」が挙げられる。CDRの「コンホメーション定義」と本明細書で呼ばれる別の手法では、CDRの位置は、抗原結合にエンタルピー的寄与をする残基として同定することができる。例えば、Makabeら、Journal of Biological Chemistry、283:1156〜1166、2008を参照。さらに他のCDR境界定義は、上記手法の1つに厳密には従わないが、それにもかかわらず、これらは、特定の残基または残基の群またはさらにCDR全体が抗原結合に有意にインパクトを与えないという予測または実験的知見を踏まえると短くまたは長くされ得るが、Kabat CDRの少なくとも一部と重なることになる。本明細書において、CDRは、手法の組合せを含めて、当技術分野で公知の任意の手法によって定義されるCDRを指すことができる。本明細書で使用される方法は、これらの手法のいずれかに従って定義されるCDRを利用することができる。1つを超えるCDRを含有する任意の所与の実施形態について、CDRは、Kabat、Chothia、拡張、AbM、接触、および/またはコンホメーション定義のいずれかに従って定義され得る。
【0040】
本明細書において、「モノクローナル抗体」は、実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、軽微な量で存在し得る可能な天然に存在する突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、単一抗原部位に向けられている。さらに、異なる決定基(エピトープ)に向けられた異なる抗体を一般に含むポリクローナル抗体配合物と対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一決定基に向けられている。修飾語「モノクローナル」は、抗体の実質的に均質な集団から得られる抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の生成を必要とすると解釈されるべきでない。例えば、本発明によって使用されるモノクローナル抗体は、KohlerおよびMilstein、Nature、256:495、1975によって最初に記載されたハイブリドーマ法によって作製することができ、または米国特許第4,816,567号に記載されたものなどの組換えDNA法によって作製することができる。モノクローナル抗体は、例えば、McCaffertyら、Nature、348:552〜554、1990に記載の技法を使用して生成されるファージライブラリーから単離することもできる。
【0041】
本明細書において、「ヒト化」抗体は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含有する、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、またはこれらの断片(Fv、Fab、Fab’、F(ab’)
2、もしくは抗体の他の抗原結合部分配列など)である、非ヒト(例えば、マウス)抗体の形態を指す。好ましくは、ヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)に由来する残基が、所望の特異性、親和性、および能力を有する、非ヒト種(ドナー抗体)、例えば、マウス、ラット、またはウサギなどのCDRに由来する残基と置き換えられているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。一部の例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置き換えられる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、移入されるCDRもしくはフレームワーク配列にも見つからないが、抗体性能をさらに洗練および最適化するために含められる残基を含むことができる。一般に、ヒト化抗体は、CDR領域の全部または実質的に全部が非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FR領域の全部または実質的に全部がヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全部を含む。ヒト化抗体はまた、最適には、免疫グロブリン定常領域またはドメイン(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンのものの少なくとも一部を含む。WO99/58572に記載されたように修飾されたFc領域を有する抗体が好ましい。他の形態のヒト化抗体は、元の抗体に関して変化した、1つまたは複数のCDR(CDR L1、CDR L2、CDR L3、CDR H1、CDR H2、またはCDR H3)を有し、元の抗体に由来する1つまたは複数のCDR「から誘導される」1つまたは複数のCDRとも呼ばれる。
【0042】
本明細書で使用される場合、「ヒト抗体」は、ヒトによって産生される抗体のアミノ酸配列に対応し、および/または当業者には公知の、もしくは本明細書に開示のヒト抗体を作製するための技法のいずれかを使用して作製されたアミノ酸配列を有する抗体を意味する。ヒト抗体のこの定義は、少なくとも1つのヒト重鎖ポリペプチドまたは少なくとも1つのヒト軽鎖ポリペプチドを含む抗体を含む。1つのそのような例は、マウス軽鎖およびヒト重鎖ポリペプチドを含む抗体である。ヒト抗体を、当技術分野で公知の様々な技法を使用して産生させることができる。一実施形態では、ヒト抗体は、ヒト抗体を発現するファージライブラリーから選択される(Vaughanら、Nature Biotechnology、14:309〜314、1996;Sheetsら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)95:6157〜6162、1998;HoogenboomおよびWinter、J.Mol.Biol.、227:381、1991;Marksら、J.Mol.Biol.、222:581、1991)。ヒト抗体を、ヒト免疫グロブリン遺伝子座が内因性遺伝子座の代わりにトランスジェニック的に導入された動物、例えば、内因性免疫グロブリン遺伝子が部分的または完全に不活化されたマウスの免疫化によって作製することもできる。この手法は、米国特許第5,545,807号;第5,545,806号;第5,569,825号;第5,625,126号;第5,633,425号;および第5,661,016号に記載されている。あるいは、ヒト抗体を、標的抗原に対する抗体を産生するヒトBリンパ球を不死化することによって調製することができる(そのようなBリンパ球は、個体から、もしくはcDNAの単一細胞クローニングから回収することができるか、またはin vitroで免疫化されていてもよい)。例えば、Coleら、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、Alan R.Liss、p.77、1985;Boernerら、J.Immunol.、147(1):86〜95、1991;および米国特許第5,750,373号を参照。
【0043】
用語「キメラ抗体」は、可変領域配列が1つの種に由来し、定常領域配列が別の種に由来する抗体、例えば、可変領域配列がマウス抗体に由来し、定常領域配列がヒト抗体に由来する抗体などを指す。
【0044】
用語「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」は、任意の長さのアミノ酸の鎖を指すのに本明細書で互換的に使用される。例えば、鎖は、比較的短い(例えば、10〜100アミノ酸)か、またはより長くてもよい。鎖は、直鎖状であっても分枝状であってもよく、修飾アミノ酸を含むことができ、かつ/または非アミノ酸によって中断されていてもよい。この用語は、天然に、または介入、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または標識コンポーネントとのコンジュゲーションなどの任意の他の操作もしくは修飾によって修飾されたアミノ酸鎖も包含する。例えば、アミノ酸の1つまたは複数の類似体(例えば、非天然アミノ酸などを含む)、および当技術分野で公知の他の修飾を含有するポリペプチドもこの定義の中に含まれる。ポリペプチドは、単鎖または会合鎖として存在し得ることが理解される。
【0045】
「一価抗体」は、1分子(例えば、IgGまたはFab)あたり1個の抗原結合部位を含む。一部の例では、一価抗体は、1個より多い抗原結合部位を有してもよいが、結合部位は異なる抗原に由来する。
【0046】
「単一特異性抗体」は、2個の結合部位が抗原上の同一のエピトープに結合するように、1分子(例えば、IgG)あたり2個の同一の抗原結合部位を含む。かくして、それらは、1つの抗原分子への結合に関して互いに競合する。自然に見出される多くの抗体は、単一特異性である。一部の例では、単一特異性抗体はまた、一価抗体(例えば、Fab)であってもよい。
【0047】
「二価抗体」は、1分子(例えば、IgG)あたり2個の抗原結合部位を含む。一部の例では、2個の結合部位は、同じ抗原特異性を有する。しかしながら、二価抗体は、二重特異性であってもよい。
【0048】
「二重特異性」または「二重特異的」は、2つの異なる抗原結合部位を有するハイブリッド抗体である。二重特異性抗体の2個の抗原結合部位は、同じか、または異なるタンパク質標的上に存在してもよい、2つの異なるエピトープに結合する。
【0049】
「二官能性」は、2つのアーム中に同一の抗原結合部位(すなわち、同一のアミノ酸配列)を有する抗体であるが、それぞれの結合部位は2つの異なる抗原を認識することができる。
【0050】
「ヘテロ多量体」、「ヘテロ多量体複合体」または「ヘテロ多量体ポリペプチド」は、少なくとも第1のポリペプチドと第2のポリペプチドとを含む分子であり、第2のポリペプチドは、少なくとも1個のアミノ酸残基が第1のポリペプチドとアミノ酸配列において異なる。ヘテロ多量体は、第1および第2のポリペプチドによって形成される「ヘテロ二量体」を含んでもよく、または第1および第2のポリペプチドに加えてポリペプチドが存在するより高次の三次構造を形成してもよい。
【0051】
「ヘテロ二量体」、「ヘテロ二量体タンパク質」、「ヘテロ二量体複合体」または「ヘテロ二量体ポリペプチド」は、第1のポリペプチドと第2のポリペプチドとを含む分子であり、第2のポリペプチドは、少なくとも1個のアミノ酸残基が第1のポリペプチドとアミノ酸配列において異なる。
【0052】
本明細書で使用される場合、「ヒンジ領域」、「ヒンジ配列」およびその変形は、例えば、Janewayら、ImmunoBiology:the immune systems in health and disease(Elsevier Science Ltd.、NY)(第4版、1999);Bloomら、Protein Science(1997)、6:407〜415;Humphreysら、J.Immunol.Methods(1997)、209:193〜202に例示される、当技術分野で公知の意味を含む。
【0053】
本明細書で使用される場合、「免疫グロブリン様ヒンジ領域」、「免疫グロブリン様ヒンジ配列」およびその変形とは、免疫グロブリン様または抗体様分子(例えば、イムノアドヘシン)のヒンジ領域およびヒンジ配列を指す。一部の実施形態では、免疫グロブリン様ヒンジ領域は、キメラ形態、例えば、キメラIgG1/2ヒンジ領域を含む、任意のIgG1、IgG2、IgG3、もしくはIgG4サブタイプに由来するか、もしくはそれから誘導されるか、またはIgA、IgE、IgDもしくはIgMに由来してもよい。
【0054】
本明細書で使用される用語「免疫エフェクター細胞」または「エフェクター細胞」とは、標的細胞の生存能力に影響するように活性化することができるヒト免疫系中の細胞の天然のレパートリー内の細胞を指す。標的細胞の生存能力は、細胞の生存、増殖、および/または他の細胞と相互作用する能力を含んでもよい。
【0055】
本発明の抗体を、当技術分野で周知の技法、例えば、組換え技法、ファージディスプレイ技法、合成技法もしくはそのような技法の組合せまたは当技術分野で容易に公知の他の技法を使用して産生させることができる(例えば、Jayasena,S.D.、Clin.Chem.、45:1628〜50、1999およびFellouse,F.A.ら、J.Mol.Biol.、373(4):924〜40、2007を参照)。
【0056】
当技術分野で公知であるように、本明細書で互換的に使用する「ポリヌクレオチド」または「核酸」は、任意の長さのヌクレオチドの鎖を指し、DNAおよびRNAを含む。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾ヌクレオチドもしくは塩基、および/またはこれらの類似体、あるいはDNAまたはRNAポリメラーゼによって鎖中に組み込まれ得る任意の基質であり得る。ポリヌクレオチドは、修飾ヌクレオチド、例えば、メチル化ヌクレオチド、およびこれらの類似体などを含むことができる。存在する場合、ヌクレオチド構造への修飾は、鎖をアセンブリーする前または後に付与することができる。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチドコンポーネントによって中断される場合がある。ポリヌクレオチドは、標識コンポーネントとのコンジュゲーションなどによって、重合後にさらに修飾することができる。他のタイプの修飾としては、例えば、「キャップ」、天然に存在するヌクレオチドのうちの1つまたは複数の類似体との置換、ヌクレオチド間修飾、例えば、非荷電連結(例えば、ホスホン酸メチル、ホスホトリエステル、ホスホアミデート(phosphoamidate)、カルバメートなど)を有するもの、および荷電した連結(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)を有するもの、ペンダント部分、例えば、タンパク質(例えば、ヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ポリ−L−リシンなど)などを含有するもの、インターカレーター(例えば、アクリジン、ソラレンなど)を有するもの、キレーター(例えば、金属、放射性金属、ホウ素、酸化金属など)を含有するもの、アルキル化剤を含有するもの、修飾連結を有するもの(例えば、αアノマー核酸など)など、ならびにポリヌクレオチド(複数可)の無修飾形態がある。さらに、糖内に通常存在するヒドロキシル基のいずれも、例えば、ホスホネート基、リン酸基によって置き換え、標準的な保護基によって保護し、または活性化して追加のヌクレオチドへの追加の連結を準備することができ、または固体支持体にコンジュゲートすることができる。5’および3’末端OHを、リン酸化し、またはアミンもしくは1〜20炭素原子の有機キャッピング基部分で置換することができる。他のヒドロキシルも、誘導体化して標準的な保護基にすることができる。ポリヌクレオチドは、例えば、2’−O−メチル−、2’−O−アリル、2’−フルオロ−、または2’−アジド−リボース、炭素環糖類似体、α−またはβ−アノマー糖、エピマー糖、例えば、アラビノース、キシロース、またはリキソースなど、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、非環式類似体、およびメチルリボシドなどの脱塩基ヌクレオシド類似体を含めた、当技術分野で一般に公知であるリボースまたはデオキシリボース糖の類似形態も含有し得る。1つまたは複数のホスホジエステル連結を、代替の連結基によって置き換えることができる。これらの代替の連結基としては、それだけに限らないが、ホスフェートが、P(O)S(「チオエート」)、P(S)S(「ジチオエート」)、(O)NR
2(「アミデート」)、P(O)R、P(O)OR’、CO、またはCH
2(「ホルムアセタール」)(式中、各RまたはR’は、独立して、H、またはエーテル(−O−)連結、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、もしくはアラルジル(araldyl)を含有してもよい置換もしくは非置換のアルキルである(1〜20C))によって置き換えられている実施形態がある。ポリヌクレオチド中のすべての連結が同一である必要はない。前述の説明は、RNAおよびDNAを含めた、本明細書で参照されるすべてのポリヌクレオチドに当てはまる。
【0057】
当技術分野で公知であるように、抗体の「定常領域」は、単独で、または組合せで、抗体軽鎖の定常領域または抗体重鎖の定常領域を指す。
【0058】
本明細書において、「実質的に純粋」は、少なくとも50%純粋(すなわち、混入物を含まない)、より好ましくは、少なくとも90%純粋、より好ましくは、少なくとも95%純粋、なおより好ましくは、少なくとも98%純粋、最も好ましくは、少なくとも99%純粋である材料を指す。
【0059】
「宿主細胞」には、ポリヌクレオチドインサートの組込みのためのベクター(複数可)のレシピエントであり得る、またはそれであった個々の細胞または細胞培養物が含まれる。宿主細胞には、単一宿主細胞の子孫が含まれ、子孫は、天然の、偶発的な、または意図的な突然変異に起因して、必ずしも元の親細胞と完全に同一(形態において、またはゲノムDNA補体において)でない場合がある。宿主細胞には、本発明のポリヌクレオチド(複数可)をin vivoでトランスフェクトされた細胞が含まれる。
【0060】
当技術分野で公知であるように、用語「Fc領域」は、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するのに使用される。「Fc領域」は、天然配列Fc領域であっても、バリアントFc領域であってもよい。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は、様々であり得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、通常、Cys226位のアミノ酸残基から、またはPro230からそのカルボキシル末端まで伸びるように定義される。Fc領域中の残基の番号付けは、KabatのEUインデックスのものである。Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、5版、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、Md.、1991。免疫グロブリンのFc領域は、一般に、2つの定常領域、CH2およびCH3を含む。
【0061】
当技術分野で使用される場合、「Fc受容体」および「FcR」は、抗体のFc領域に結合する受容体を記述する。好適なFcRは、天然配列ヒトFcRである。さらに、好適なFcRは、IgG抗体(ガンマ受容体)に結合するものであり、好適なRcRとして、FcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIサブクラスの受容体が挙げられ、これらの受容体の対立遺伝子バリアントおよび選択的にスプライスされた形態を含む。FcγRII受容体としては、FcγRIIA(「活性化受容体」)およびFcγRIIB(「阻害受容体」)があり、これらは、その細胞質ドメインにおいて主に異なる同様のアミノ酸配列を有する。FcRは、RavetchおよびKinet、Ann.Rev.Immunol.、9:457〜92、1991;Capelら、Immunomethods、4:25〜34、1994;ならびにde Haasら、J.Lab.Clin.Med.、126:330〜41、1995に総説されている。「FcR」には、新生仔受容体、FcRnも含まれ、これは、母体IgGの胎仔への移動を担う(Guyerら、J.Immunol.、117:587、1976;およびKimら、J.Immunol.、24:249、1994)。
【0062】
用語「競合する」は、抗体に関して本明細書で使用する場合、第1の抗体またはその抗原結合断片(または部分)が、第2の抗体またはその抗原結合部分の結合と十分に同様の様式でエピトープに結合し、その結果、第1の抗体のその同族エピトープとの結合の結果が、第2の抗体の非存在下での第1の抗体の結合と比較して、第2の抗体の存在下で検出可能な程度に減少することを意味する。第2の抗体のそのエピトープへの結合も第1の抗体の存在下で検出可能な程度に減少する残された選択も、当てはまり得るが、そうである必要はない。すなわち、第1の抗体は、第2の抗体のそのエピトープへの結合を、その第2の抗体が第1の抗体のそのそれぞれのエピトープへの結合を阻害することなく、阻害することができる。しかし、それぞれの抗体が、他の抗体のその同族エピトープまたはリガンドとの結合を、同じ程度であっても、より大きい程度であっても、またはより小さい程度であっても、検出可能な程度に阻害する場合、抗体は、これらのそれぞれのエピトープ(複数可)の結合を互いに「交差競合する」と言われる。競合および交差競合する抗体はともに、本発明によって包含されている。このような競合または交差競合が起こる機構(例えば、立体障害、コンホメーション変化、または共通エピトープもしくはその部分への結合)にかかわらず、当業者は、本明細書に提供する教示に基づいて、このような競合および/または交差競合する抗体が包含され、本明細書に開示の方法に有用であり得ることを理解するはずである。
【0063】
「機能性Fc領域」は、天然配列Fc領域の少なくとも1つのエフェクター機能を有する。例示的な「エフェクター機能」としては、C1q結合;補体依存性細胞傷害;Fc受容体結合;抗体依存性細胞媒介性細胞傷害;食作用;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方制御などがある。このようなエフェクター機能は一般に、Fc領域が結合ドメイン(例えば、抗体可変ドメイン)と結合されることを必要とし、このような抗体エフェクター機能を評価するための当技術分野で公知の様々なアッセイを使用して評価することができる。
【0064】
「天然配列Fc領域」は、自然において見つかるFc領域のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む。「バリアントFc領域」は、少なくとも1つのアミノ酸修飾によって天然配列Fc領域のものと異なるが、それでも天然配列Fc領域の少なくとも1つのエフェクター機能を保持するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、天然配列Fc領域または親ポリペプチドのFc領域と比較して少なくとも1個のアミノ酸置換、例えば、天然配列Fc領域または親ポリペプチドのFc領域内に約1〜約10個のアミノ酸置換、好ましくは約1〜約5個のアミノ酸置換を有する。本明細書のバリアントFc領域は、好ましくは、天然配列Fc領域および/または親ポリペプチドのFc領域と少なくとも約80%の配列同一性、最も好ましくは、これらと少なくとも約90%の配列同一性、より好ましくは、これらと少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%の配列同一性を有することになる。
【0065】
用語「エフェクター機能」は、抗体のFc領域に起因する生物学的活性を指す。抗体のエフェクター機能の例としては、それだけに限らないが、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、Fc受容体の結合、補体依存性細胞傷害(CDC)、食作用、C1qの結合、および細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体、BCR)の下方調節がある。例えば、米国特許第6,737,056号を参照。このようなエフェクター機能は一般に、Fc領域が結合ドメイン(例えば、抗体可変ドメイン)と結合されることを必要とし、このような抗体エフェクター機能を評価するための当技術分野で公知の様々なアッセイを使用して評価することができる。エフェクター機能の典型的な測定は、Fcγ3および/またはC1qの結合を介する。
【0066】
本明細書において使用する場合、「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害」または「ADCC」は、Fc受容体(FcR)を発現する非特異的な細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、およびマクロファージ)が標的細胞上の結合抗体を認識し、次いで標的細胞の溶解を生じさせる、細胞媒介性の反応を指す。目的の分子のADCC活性は、米国特許第5,500,362号または米国特許第5,821,337号において記載されているものなどの、in vitroでのADCCアッセイを使用して評価することができる。このようなアッセイに有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核球(PBMC)およびNK細胞がある。あるいは、またはさらに、目的の分子のADCC活性は、in vivoで、例えば、Clynesら、1998、PNAS(USA)、95:652〜656において開示されているものなどの動物モデルにおいて、評価することができる。
【0067】
「補体依存性細胞傷害」または「CDC」は、補体の存在下での標的の溶解を指す。補体活性化経路は、同族抗原と複合体化した分子(例えば抗体)に対する補体系(C1q)の第1のコンポーネントの結合によって開始される。補体活性化を評価するために、例えばGazzano−Santoroら、J.Immunol.Methods.、202:163(1996)において記載されているように、CDCアッセイを行うことができる。
【0068】
本明細書において、「治療」は、有益なまたは所望の臨床結果を得るための手法である。本発明の目的に関して、有益なまたは所望の臨床結果としては、それだけに限らないが、以下のうちの1つまたは複数がある:新生物もしくはがん性細胞の増殖の低減(またはその破壊)、新生物細胞の転移の阻害、FLT3発現腫瘍のサイズの縮小もしくは減少、FLT3関連疾患(例えば、がん)の寛解、FLT3関連疾患(例えば、がん)から生じる症状の減少、FLT3関連疾患(例えば、がん)に罹患している者の生活の質の増大、FLT3関連疾患(例えば、がん)を治療するのに要求される他の薬物療法の用量の減少、FLT3関連疾患(例えば、がん)の進行の遅延、FLT3関連疾患(例えば、がん)の治癒、および/またはFLT3関連疾患(例えば、がん)を有する患者の生存期間の延長。
【0069】
「緩和」は、FLT3抗体(単一特異性または二重特異性)を投与しないことと比較して、1つまたは複数の症状の軽減または改善を意味する。「緩和」は、症状の継続時間の短縮または低減も含む。
【0070】
本明細書において、薬剤、化合物、または医薬組成物の「有効投与量」または「有効量」は、任意の1つまたは複数の有益なまたは所望の結果をもたらすのに十分な量である。予防的使用に関して、有益なまたは所望の結果としては、疾患、疾患の発達中に呈する、その合併症、および中間の病理学的表現型の生化学的、組織学的、および/または行動的症状を含めた、疾患のリスクの排除もしくは低減、重症度の軽減、または発症の遅延がある。治療的使用に関して、有益な、または所望の結果は、様々なFLT3関連疾患または状態(例えば、多発性骨髄腫など)の1つまたは複数の症状の発生の低減またはその改善、疾患を治療するのに要求される他の薬物療法の用量の減少、別の薬物療法の効果の増強、および/または患者のFLT3関連疾患の進行の遅延などの臨床結果を含む。有効投与量は、1回または複数の投与で投与することができる。本発明の目的に関して、薬剤、化合物、または医薬組成物の有効投与量は、直接的にまたは間接的に予防的または治療的処置を達成するのに十分な量である。臨床状況において理解されているように、薬剤、化合物、または医薬組成物の有効投与量は、別の薬剤、化合物、または医薬組成物と併せて実現することができ、または実現されなくてもよい。したがって、「有効投与量」は、1種または複数の治療剤の投与という状況で考慮することができ、単剤は、1種または複数の他の作用物質と併せて、望ましい結果が実現され得る、または実現されている場合、有効量で与えられていると見なすことができる。
【0071】
「個体」または「対象」は、哺乳動物、より好ましくはヒトである。哺乳動物には、それだけに限らないが、霊長類、ウマ、イヌ、ネコ、マウス、およびラットも含まれる。
【0072】
本明細書において、「ベクター」は、宿主細胞内の対象とする1種または複数の遺伝子(複数可)または配列(複数可)を送達し、好ましくは発現させることができるコンストラクトを意味する。ベクターの例としては、それだけに限らないが、ウイルスベクター、裸のDNAまたはRNA発現ベクター、プラスミド、コスミドまたはファージベクター、カチオン性縮合剤に付随したDNAまたはRNA発現ベクター、リポソーム中に被包されたDNAまたはRNA発現ベクター、および産生細胞などのある特定の真核細胞がある。
【0073】
本明細書において、「発現制御配列」は、核酸の転写を指示する核酸配列を意味する。発現制御配列は、構成的もしくは誘導プロモーターなどのプロモーター、またはエンハンサーであり得る。発現制御配列は、転写される核酸配列に作動可能に連結されている。
【0074】
本明細書において、「薬学的に許容できる担体」または「薬学的に許容できる賦形剤」として、活性成分と合わせたとき、成分に生物活性を保持させ、対象の免疫系と非反応性である任意の材料が挙げられる。例としては、それだけに限らないが、標準的な薬学的担体、例えば、リン酸緩衝溶液、水、油/水エマルジョンなどのエマルジョン、および様々なタイプの湿潤剤などのいずれかがある。エアロゾルまたは非経口投与用の好適な希釈剤は、リン酸緩衝溶液(PBS)または通常の(0.9%)生理食塩水である。このような担体を含む組成物は、周知の従来法によって製剤化される(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、18版、A.Gennaro編、Mack Publishing Co.、Easton、PA、1990;およびRemington、The Science and Practice of Pharmacy、21版、Mack Publishing、2005を参照)。
【0075】
本明細書で使用される用語「アシルドナーグルタミン含有タグ」または「グルタミンタグ」とは、トランスグルタミナーゼアミンアクセプターとして作用する1つまたは複数のGln残基を含有するポリペプチドまたはタンパク質を指す。例えば、WO2012059882およびWO2015015448を参照。
【0076】
用語「k
on」または「k
a」は、本明細書において、抗原への抗体の会合の速度定数を指す。具体的には、速度定数(k
on/k
aおよびk
off/k
d)ならびに平衡解離定数は、全長抗体(すなわち二価抗体)および単量体FLT3タンパク質(例えば、ヒスチジンタグ付FLT3融合タンパク質)を使用して測定される。
【0077】
用語「k
off」または「k
d」は、本明細書において、抗体/抗原複合体からの抗体の解離の速度定数を指す。
【0078】
用語「K
D」は、本明細書において、抗原−抗体相互作用の平衡解離定数を指す。
【0079】
本明細書で「約」のついた値またはパラメータへの言及は、その値またはパラメータ自体を対象としている実施形態を含む(かつ記述する)。例えば、「約X」に言及する記述は、「X」の記述を含む。数値範囲は、その範囲を画定する数値を含む。一般的に言うと、用語「約」は、示された変数値および示された値の実験誤差以内(例えば、平均の95%信頼区間以内)または示された値の10パーセント以内にある全ての変数値のどちらか大きい方を指す。用語「約」が時間間隔(年、カ月、週間、日など)の文脈内で使用される場合、用語「約」は、その時間間隔プラスまたはマイナス次の下位の時間間隔1つ分(例えば、約1年は11〜13カ月を意味し、6カ月は6カ月プラスまたはマイナス1週間を意味し、約1週間は6〜8日を意味するなど)または示された値の10パーセント以内のいずれか大きい方を意味する。
【0080】
実施形態が言い回し「含む」を用いて本明細書で記載されている場合は必ず、「からなる」および/または「から本質的になる」の観点から記載される別段の類似の実施形態も提供されることが理解される。
【0081】
本発明の態様または実施形態が選択肢のマーカッシュ群または他の分類の観点から記載される場合、本発明は、全体として列挙された群全体だけでなく、群の各メンバーを個々に、および主群のすべての可能な亜群、また群メンバーの1つまたは複数を欠く主群を包含する。本発明は、請求項に係る発明における群メンバーのいずれかの1つまたは複数を明確に除外することも想定する。
【0082】
別段の定義のない限り、本明細書で使用するすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者が一般に理解するのと同じ意味を有する。矛盾する場合、定義を含めて本明細書が支配する。本明細書および特許請求の範囲全体にわたって、単語「含む(comprises)」または「含む(comprises)」もしくは「含むこと」などの変形は、述べた整数または整数の群を含めることを暗示するが、任意の他の整数または整数の群の除外を暗示しないことが理解されるであろう。脈絡による別段の要求のない限り、単数形の用語は、複数を含むものとし、複数形の用語は、単数形を含むものとする。
【0083】
例示的な方法および材料を本明細書に記載するが、本明細書に記載のものと同様または等価な方法および材料も、本発明の実施または試験において使用することができる。材料、方法、および例は、例示的であるだけであり、限定的であるように意図していない。
【0084】
FLT3抗体およびそれを作製する方法
本発明は、FLT3[例えば、ヒトFLT3(例えば、受託番号:NP_004110または配列番号235)]に結合し、以下の特徴:(a)対象においてFLT3を発現する悪性細胞と関連する状態(例えば、AMLなどのがん)の1つもしくは複数の症状を治療する、防止する、改善すること;(b)対象(FLT3を発現する悪性腫瘍を有する)における腫瘍の増殖もしくは進行を阻害すること;(c)対象(FLT3を発現する1つもしくは複数の悪性細胞を有する)におけるFLT3を発現するがん(悪性)細胞の転移を阻害すること;(d)FLT3を発現する腫瘍の退縮(例えば、長期退縮)を誘導すること;(e)FLT3を発現する悪性細胞中で細胞傷害活性を発揮すること;(f)他のまだ同定されていない因子とのFLT3の相互作用を遮断すること;および/または(g)近くの悪性細胞を発現する非FLT3を殺傷するか、もしくはその増殖を阻害するバイスタンダー効果を誘導すること、のいずれか1つまたは複数を特徴とする抗体を提供する。
【0085】
一態様では、FLT3に特異的に結合し、(a)(i)配列番号37、38、39、43、44、45、49、50、54、55、56、60、61、62、66、67、68、72、73、74、78、79、80、84、85、86、90、91、92、96、97、98、102、103、104、108、109、110、114、115、116、120、121、122、126、127、128、132、133、134、138、139、140、246、もしくは247に示される配列を含むVH相補性決定領域1(CDR1);(ii)配列番号40、41、46、47、51、52、57、58、63、64、69、70、75、76、81、82、87、88、93、94、99、100、105、106、111、112、117、118、123、124、129、130、135、136、141、142、248、249、251、252、253、もしくは255に示される配列を含むVH CDR2;および(iii)配列番号42、48、53、59、65、71、77、83、89、95、101、107、113、119、125、131、137、143、245、250、もしくは254に示される配列を含むVH CDR3を含む重鎖可変(VH)領域;ならびに/または(b)(i)配列番号144、147、150、153、156、159、162、165、168、171、174、177、180、183、186、189、192、195、257、261、263、265、268、270、273、もしくは275に示される配列を含むVL CDR1;(ii)配列番号145、148、151、154、157、160、163、166、169、172、175、178、181、184、187、190、193、196、259、266、もしくは271に示される配列を含むVL CDR2;および(iii)配列番号146、149、152、155、158、161、164、167、170、173、176、179、182、185、188、191、194、197、256、258、260、262、264、267、269、272、もしくは274に示される配列を含むVL CDR3を含む軽鎖可変(VL)領域を含む、単離抗体が提供される。
【0086】
別の態様では、FLT3に特異的に結合し、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、205、207、209、211、213、215、217、219、221、223、225、227、229、231、もしくは233に示されるVH配列のVH CDR1、VH CDR2、およびVH CDR3を含むVH領域;ならびに/または配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、204、206、208、210、212、214、216、218、220、222、224、226、228、230、もしくは232に示されるVL配列のVL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3を含むVL領域を含む、単離抗体が提供される。一部の実施形態では、抗体は、配列番号229に示されるVH配列のVH CDR1、VH CDR2、およびVH CDR3を含むVH領域;ならびに/または配列番号228に示されるVL配列のVL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3を含むVL領域を含む。
【0087】
一部の実施形態では、表1に列挙される部分軽鎖配列のいずれか1つおよび/または表1に列挙される部分重鎖配列のいずれか1つを有する抗体が提供される。表1において、P4F6、P4C7、P3A1、P5A3、P9B5、P9F1、P1B4、P1B11、P7H3、P3E10、P1A5、P5F7、P4H11、P15F7、P12B6、P8B6、P14G2、およびP7F9の重鎖CDR2配列について、ChothiaのCDR配列が、下線付きであり、KabatのCDR配列が太字であることを除いて、下線付きの配列は、Kabatによる、およびChothiaによる太字のCDR配列である。
【0096】
また、FLT3に対する抗体の抗原結合ドメインのCDR部分も本明細書に提供される(Chothia、KabatのCDR、およびCDR接触領域を含む)。CDR領域の決定は、当技術分野の技術の十分範囲内である。一部の実施形態では、CDRは、KabatおよびChothiaのCDRの組合せであり得る(「組合せCDR」または「拡張CDR」とも呼ばれる)ことが理解される。一部の実施形態では、CDRは、Kabat CDRである。他の実施形態では、CDRは、Chothia CDRである。言い換えれば、1つを超えるCDRに関する実施形態では、CDRは、Kabat、Chothia、組合せCDR、またはこれらの組合せのいずれかであってよい。表2は、本明細書に提供されるCDR配列の例を提供する。
【0105】
一部の実施形態では、本発明は、FLT3に結合し、P4F6、P4C7、P3A、P5A3、P9B5、P9F1、P1B4、P1B11、P7H3、P3E10、P1A5、P5F7、P4H11、P15F7、P12B6、P8B6、P14G2、P7F9、P08B06EE、P04A04、P01A05、P08B03、P5F7、P5F7g、P10A02g、P10A04g、P10A05g、P10A07g、P10B03g、P10B06g、P5F7g2、P5F7g3、またはP5F7g4を含む、本明細書に記載の抗体と競合する抗体を提供する。
【0106】
一部の実施形態では、本発明はまた、CDR接触領域に基づくFLT3抗体に対する抗体のCDR部分も提供する。CDR接触領域は、抗原に対する抗体に特異性を植え付ける抗体の領域である。一般に、CDR接触領域は、CDR、および抗体が特異的抗原に結合するための適切なループ構造を維持するために束縛されているバーニアゾーン内に残基位置を含む。例えば、Makabeら、J.Biol.Chem.、283:1156〜1166、2007を参照。CDR接触領域の決定は、当技術分野の技術の十分範囲内である。
【0107】
FLT3(ヒトFLT3(例えば、配列番号201)など)に対する本明細書に記載のFLT3抗体の結合親和性(K
D)は、約0.001〜約5000nMであってもよい。一部の実施形態では、結合親和性は、約5000nM、4500nM、4000nM、3500nM、3000nM、2500nM、2000nM、1789nM、1583nM、1540nM、1500nM、1490nM、1064nM、1000nM、933nM、894nM、750nM、705nM、678nM、532nM、500nM、494nM、400nM、349nM、340nM、353nM、300nM、250nM、244nM、231nM、225nM、207nM、200nM、186nM、172nM、136nM、113nM、104nM、101nM、100nM、90nM、83nM、79nM、74nM、54nM、50nM、45nM、42nM、40nM、35nM、32nM、30nM、25nM、24nM、22nM、20nM、19nM、18nM、17nM、16nM、15nM、12nM、10nM、9nM、8nM、7.5nM、7nM、6.5nM、6nM、5.5nM、5nM、4nM、3nM、2nM、1nM、0.5nM、0.3nM、0.1nM、0.01nM、または0.001nMのいずれかである。一部の実施形態では、結合親和性は、約5000nM、4000nM、3000nM、2000nM、1000nM、900nM、800nM、250nM、200nM、100nM、50nM、30nM、20nM、10nM、7.5nM、7nM、6.5nM、6nM、5nM、4.5nM、4nM、3.5nM、3nM、2.5nM、2nM、1.5nM、1nM、または0.5nM未満のいずれかである。
【0108】
二重特異性抗体、少なくとも2つの異なる抗原に対する結合特異性を有するモノクローナル抗体を、本明細書に開示の抗体を使用して調製することができる。二重特異性抗体を作製するための方法は、当技術分野で公知である(例えば、Sureshら、Methods in Enzymology 121:210、1986を参照)。伝統的に、二重特異性抗体の組換え生産は、2本の重鎖が異なる特異性を有する、2つの免疫グロブリン重鎖−軽鎖対の同時発現に基づいていた(MillsteinおよびCuello、Nature 305、537〜539、1983)。したがって、一態様では、標的抗原(例えば、FLT3)に特異的に結合する二重特異性抗体の第1の抗体可変ドメインを含み、ヒト免疫エフェクター細胞上に位置するエフェクター抗原に特異的に結合することによって、ヒト免疫エフェクター細胞の活性を動員することができる二重特異性抗体の第2の抗体可変ドメインを含む完全長ヒト抗体である二重特異性抗体が提供される。
【0109】
ヒト免疫エフェクター細胞は、当業界で公知の様々な免疫エフェクター細胞のいずれかであってもよい。例えば、免疫エフェクター細胞は、限定されるものではないが、T細胞(例えば、細胞傷害性T細胞)、B細胞、およびナチュラルキラー(NK)細胞を含む、ヒトリンパ球系列のメンバーであってもよい。免疫エフェクター細胞はまた、例えば、限定されるものではないが、単球、好中球性顆粒球、および樹状細胞を含む、限定されるものではないが、ヒト骨髄細胞系列のメンバーであってもよい。そのような免疫エフェクター細胞は、エフェクター抗原の結合による活性化の際に標的細胞に対する細胞傷害効果もしくはアポトーシス効果または他の所望の効果を有してもよい。
【0110】
エフェクター抗原は、ヒト免疫エフェクター細胞上で発現される抗原(例えば、タンパク質またはポリペプチド)である。ヘテロ二量体タンパク質(例えば、ヘテロ二量体抗体または二重特異性抗体)が結合することができるエフェクター抗原の例としては、限定されるものではないが、ヒトCD3(またはCD3(分化抗原群)複合体)、CD16、NKG2D、NKp46、CD2、CD28、CD25、CD64、およびCD89が挙げられる。
【0111】
標的細胞は、天然であるか、またはヒトに対して外来である細胞であってもよい。天然の標的細胞では、細胞は、悪性細胞となるように形質転換されているか、または病理学的に改変されていてもよい(例えば、ウイルス、プラスモジウム、または細菌に感染した天然の標的細胞)。外来の標的細胞において、細胞は、細菌、プラスモジウム、またはウイルスなどの侵入病原体である。
【0112】
標的抗原は、疾患状態(例えば、炎症疾患、増殖性疾患(例えば、がん)、免疫学的障害、神経疾患、神経変性疾患、自己免疫疾患、感染症(例えば、ウイルス感染もしくは寄生虫感染)、アレルギー反応、移植片対宿主疾患または宿主体移植片疾患)において標的細胞上で発現される。標的抗原は、エフェクター抗原ではない。一部の実施形態では、標的抗原は、FLT3である。
【0113】
一部の実施形態では、標的抗原に特異的に結合する二重特異性抗体の第1の抗体可変ドメインを含み、ヒト免疫エフェクター細胞上に位置するエフェクター抗原に特異的に結合することによって、ヒト免疫エフェクター細胞の活性を動員することができる二重特異性抗体の第2の抗体可変ドメインを含む、完全長抗体である二重特異性抗体であって、第1の抗体可変ドメインが、配列番号279を含むFLT3のドメイン4に結合する、二重特異性抗体が提供される。
【0114】
一部の実施形態では、標的抗原に特異的に結合する二重特異性抗体の第1の抗体可変ドメインを含み、ヒト免疫エフェクター細胞上に位置するエフェクター抗原に特異的に結合することによって、ヒト免疫エフェクター細胞の活性を動員することができる二重特異性抗体の第2の抗体可変ドメインを含む、完全長抗体である二重特異性抗体であって、第1の抗体可変ドメインが、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、205、207、209、211、213、215、217、219、221、223、225、227、229、231、もしくは233に示されるVH配列のVH CDR1、VH CDR2、およびVH CDR3を含む重鎖可変(VH)領域;および/または配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、204、206、208、210、212、214、216、218、220、222、224、226、228、230、もしくは232に示されるVL配列のVL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3を含む軽鎖可変(VL)領域を含む、二重特異性抗体が提供される。
【0115】
一部の実施形態では、標的抗原に特異的に結合する二重特異性抗体の第1の抗体可変ドメインを含み、ヒト免疫エフェクター細胞上に位置するエフェクター抗原に特異的に結合することによって、ヒト免疫エフェクター細胞の活性を動員することができる二重特異性抗体の第2の抗体可変ドメインを含む、完全長抗体である二重特異性抗体であって、第1の抗体可変ドメインが、(a)(i)配列番号37、38、39、43、44、45、49、50、54、55、56、60、61、62、66、67、68、72、73、74、78、79、80、84、85、86、90、91、92、96、97、98、102、103、104、108、109、110、114、115、116、120、121、122、126、127、128、132、133、134、138、139、140、246、もしくは247に示される配列を含むVH相補性決定領域1(CDR1);(ii)配列番号40、41、46、47、51、52、57、58、63、64、69、70、75、76、81、82、87、88、93、94、99、100、105、106、111、112、117、118、123、124、129、130、135、136、141、142、248、249、251、252、253、もしくは255に示される配列を含むVH CDR2;および(iii)配列番号42、48、53、59、65、71、77、83、89、95、101、107、113、119、125、131、137、143、245、250、もしくは254に示される配列を含むVH CDR3を含む重鎖可変(VH)領域;ならびに/または(b)(i)配列番号144、147、150、153、156、159、162、165、168、171、174、177、180、183、186、189、192、195、257、261、263、265、268、270、273、もしくは275に示される配列を含むVL CDR1;(ii)配列番号145、148、151、154、157、160、163、166、169、172、175、178、181、184、187、190、193、196、259、266、もしくは271に示される配列を含むVL CDR2;および(iii)配列番号146、149、152、155、158、161、164、167、170、173、176、179、182、185、188、191、194、197、256、258、260、262、264、267、269、272、もしくは274に示される配列を含むVL CDR3を含む軽鎖可変(VL)領域を含む、二重特異性抗体が提供される。
【0116】
一部の実施形態では、第1の抗体可変ドメインは、(a)(i)配列番号102、103、もしくは104に示される配列を含むVH相補性決定領域1(CDR1);(ii)配列番号255もしくは106に示される配列を含むVH CDR2;および(iii)配列番号107に示される配列を含むVH CDR3を含む重鎖可変(VH)領域;ならびに/または(b)(i)配列番号177に示される配列を含むVL CDR1;(ii)配列番号178に示される配列を含むVL CDR2;および(iii)配列番号179に示される配列を含むVL CDR3を含む軽鎖可変(VL)領域を含む。
【0117】
一部の実施形態では、第2の抗体可変ドメインは、配列番号282に示されるVH配列のVH CDR1、VH CDR2、およびVH CDR3を含む重鎖可変(VH)領域;ならびに/または配列番号281に示されるVL配列のVL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3を含む軽鎖可変(VL)領域を含む。
【0118】
一部の実施形態では、第1の抗体可変ドメインは、配列番号229に示されるVH配列のVH CDR1、VH CDR2、およびVH CDR3を含む重鎖可変(VH)領域;ならびに/または配列番号228に示されるVL配列のVL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3を含む軽鎖可変(VL)領域を含み;および第2の抗体可変ドメインは、配列番号282に示されるVH配列のVH CDR1、VH CDR2、およびVH CDR3を含む重鎖可変(VH)領域;ならびに/または配列番号281に示されるVL配列のVL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3を含む軽鎖可変(VL)領域を含む。
【0119】
一部の実施形態では、第2の抗体可変ドメインは、(a)(i)配列番号285、286、もしくは287に示される配列を含むVH相補性決定領域1(CDR1);(ii)配列番号288もしくは289に示される配列を含むVH CDR2;および(iii)配列番号290に示される配列を含むVH CDR3を含む重鎖可変(VH)領域;ならびに/または(b)(i)配列番号291に示される配列を含むVL CDR1;(ii)配列番号292に示される配列を含むVL CDR2;および(iii)配列番号234に示される配列を含むVL CDR3を含む軽鎖可変(VL)領域を含む。
【0120】
表3は、CD3に特異的である、第2の抗体可変ドメインの特異的アミノ酸および核酸配列を示す。表3において、下線を引かれた配列は、Kabatに従ったCDR配列であり、太字の配列は、Chothiaに従った配列である。
【0122】
表4は、CD3に特異的である、第2の抗体可変ドメインのCDR配列の例を示す。
【0124】
一部の実施形態では、本明細書に提供される二重特異性抗体は、あらゆる目的で参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第20160297885号に提供される抗CD3配列を有するCD3特異的可変ドメインを含有する。
【0125】
二重特異性抗体を作製するための一手法によれば、所望の結合特異性(抗体−抗原結合部位)を有する抗体可変ドメインが、免疫グロブリン定常領域配列に融合される。融合は、好ましくは、ヒンジ、CH2、およびCH3領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖定常領域とのものである。融合物の少なくとも1つの中に存在する、軽鎖結合に必要な部位を含有する第1重鎖定常領域(CH1)を有することが好適である。免疫グロブリン重鎖融合物および必要に応じて、免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAは、別個の発現ベクター内に挿入され、適当な宿主生物体内にコトランスフェクトされる。これは、構築物内で不等比の3本のポリペプチド鎖が使用されると収率が最適になる実施形態において、3つのポリペプチド断片の相互の比率の調整に大きな柔軟性をもたらす。しかし、少なくとも2本のポリペプチド鎖が等比で発現されると収率が高くなる場合、または比が特に重要でない場合、2本、または3本すべてのポリペプチド鎖のコード配列を1つの発現ベクター内に挿入することが可能である。
【0126】
別の手法では、二重特異性抗体は、一方のアーム内の第1の結合特異性を有するハイブリッド免疫グロブリン重鎖、および他方のアーム内のハイブリッド免疫グロブリン重鎖−軽鎖対(第2の結合特異性をもたらす)から構成される。二重特異性分子の半分のみに免疫グロブリン軽鎖を有する非対称構造は、望まれない免疫グロブリン鎖の組合せからの所望の二重特異性化合物の分離を促進する。この手法は、PCT公開第WO94/04690に記載されている。
【0127】
別の手法では、二重特異性抗体は、一方のアーム内の第1のヒンジ領域におけるアミノ酸修飾から構成され、第1のヒンジ領域における置換された/置き換えられたアミノ酸は、他方のアーム内の第2のヒンジ領域における対応するアミノ酸と逆の電荷を有する。この手法は、国際特許出願第PCT/US2011/036419(WO2011/143545)において記載されている。
【0128】
別の手法では、所望のヘテロ多量体またはヘテロ二量体タンパク質(例えば、二重特異性抗体)の形成は、第1と第2の免疫グロブリン様Fc領域(例えば、ヒンジ領域および/またはCH3領域)の間の界面を変更または遺伝子工学的に操作することによって増強される。この手法では、二重特異性抗体は、第1のCH3ポリペプチドおよび第2のCH3ポリペプチドを含むCH3領域から構成されてもよく、これらのポリペプチドは共に相互作用してCH3界面を形成し、CH3界面内の1つまたは複数のアミノ酸は、ホモ二量体の形成を不安定化し、ホモ二量体の形成にとって静電気的に好ましくないものではない。この手法は、国際特許出願第PCT/US2011/036419(WO2011/143545)において記載されている。
【0129】
別の手法では、二重特異性抗体は、一方のアーム内のエピトープ(例えば、FLT3)に向けられた抗体に対する遺伝子工学的に操作されたグルタミン含有ペプチドタグ、および別のアーム内の第2のエピトープに向けられた第2の抗体に対する遺伝子工学的に操作された別のペプチドタグ(例えば、Lys含有ペプチドタグまたは反応性内因性Lys)を、トランスグルタミナーゼの存在下で使用して生成することができる。この手法は、国際特許出願第PCT/IB2011/054899(WO2012/059882)において記載されている。
【0130】
一部の実施形態では、本明細書に記載のヘテロ二量体タンパク質(例えば、二重特異性抗体)は、標的抗原(例えば、FLT3)に特異的に結合する二重特異性抗体の第1の抗体可変ドメインを含み、ヒト免疫エフェクター細胞上に位置するエフェクター抗原(例えば、CD3)に特異的に結合することによって、ヒト免疫エフェクター細胞の活性を動員することができる二重特異性抗体の第2の抗体可変ドメインを含む完全長ヒト抗体を含み、ヘテロ二量体タンパク質の第1および第2の抗体可変ドメインは、ヒトIgG2(配列番号236)のヒンジ領域中の223、225、および228位にアミノ酸修飾(例えば、(C223EまたはC223R)、(E225EまたはE225R)、および(P228EまたはP228R))ならびにCH3領域中の409または368位にアミノ酸修飾(例えば、K409RまたはL368E(EU番号付けスキーム))を含む。
【0131】
一部の実施形態では、ヘテロ二量体タンパク質の第1および第2の抗体可変ドメインは、ヒトIgG1(配列番号237)のヒンジ領域中の221および228位にアミノ酸修飾(例えば、(D221RまたはD221E)、および(P228RまたはP228E))ならびにCH3領域中の409または368位にアミノ酸修飾(例えば、K409RもしくはL368E(EU番号付けスキーム))を含む。
【0132】
一部の実施形態では、ヘテロ二量体タンパク質の第1および第2の抗体可変ドメインは、ヒトIgG4(配列番号238)のヒンジ領域中の228位にアミノ酸修飾(例えば、(P228EまたはP228R))およびCH3領域中の409または368位にアミノ酸修飾(例えば、R409またはL368E(EU番号付けスキーム))を含む。
【0133】
本発明で有用な抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体断片(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)
2、Fv、Fcなど)、キメラ抗体、二重特異性抗体、ヘテロコンジュゲート抗体、単鎖(ScFv)、これらの突然変異体、抗体部分(例えば、ドメイン抗体)を含む融合タンパク質、ヒト化抗体、ならびに抗体のグリコシル化バリアント、抗体のアミノ酸配列バリアント、および共有結合的に修飾された抗体を含めた、要求された特異性の抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の任意の他の修飾された構成を包含することができる。抗体は、マウス、ラット、ヒト、または任意の他の起源(キメラ抗体もしくはヒト化抗体を含む)であり得る。
【0134】
一部の実施形態では、本明細書に記載のFLT3単一特異性抗体またはFLT3二重特異性抗体(例えば、FLT3−CD3)は、モノクローナル抗体である。例えば、FLT3単一特異性抗体は、ヒトモノクローナル抗体である。別の例では、FLT3−CD3二重特異性抗体のFLT3アームは、ヒトモノクローナル抗体であり、FLT3−CD3二重特異性抗体のCD3アームは、ヒト化モノクローナル抗体である。
【0135】
一部の実施形態では、抗体は、例えば、限定されるものではないが、免疫応答を誘発する能力が増大した定常領域などの、修飾された定常領域を含む。例えば、定常領域を、例えば、FcγRI、FcγRIIA、またはFcγIIIなどのFcガンマ受容体に対する親和性が増大するように修飾することができる。
【0136】
一部の実施形態では、抗体は、免疫学的に不活性である、すなわち、免疫応答を誘発する能力が低下している定常領域などの、修飾された定常領域を含む。一部の実施形態では、定常領域は、Eur.J.Immunol.、29:2613〜2624、1999;PCT出願第PCT/GB99/01441;および/またはUK特許出願第98099518号に記載されているように修飾される。Fcは、ヒトIgG1、ヒトIgG2、ヒトIgG3、またはヒトIgG4であってもよい。Fcは、アミノ酸残基が野生型IgG2配列を参照して番号付けされる、A330P331からS330S331への突然変異(IgG2Δa)を含有するヒトIgG2であり得る。Eur.J.Immunol.、29:2613〜2624、1999。一部の実施形態では、抗体は、以下の突然変異:番号付けが野生型IgG4を参照する、E233F234L235からP233V234A235(IgG4Δc)を含むIgG4の定常領域を含む(Armourら、Molecular Immunology 40、585〜593、2003)。さらに別の実施形態では、Fcは、欠失G236を伴ったヒトIgG4 E233F234L235からP233V234A235である(IgG4Δb)。別の実施形態では、Fcは、S228からP228へのヒンジ安定化突然変異を含有する任意のヒトIgG4 Fc(IgG4、IgG4Δb、またはIgG4Δc)である(Aalberseら、Immunology 105、9〜19、2002)。別の実施形態では、Fcは、非グリコシル化Fcであってもよい。
【0137】
一部の実施形態では、定常領域は、オリゴ糖付着残基(Asn297など)および/または定常領域中のグリコシル化認識配列の一部であるフランキング残基を突然変異させることによって非グリコシル化されている。一部の実施形態では、定常領域は、N結合型グリコシル化について酵素的に非グリコシル化されている。定常領域は、酵素的に、またはグリコシル化欠損宿主細胞内の発現によって、N結合型グリコシル化について非グリコシル化されていてもよい。
【0138】
一部の実施形態では、定常領域は、Fcガンマ受容体結合を除去する、または低減する修飾された定常領域を有する。例えば、Fcは、アミノ酸残基が野生型IgG2配列(配列番号236)を参照して番号付けされる、突然変異D265を含有するヒトIgG2であり得る。したがって、一部の実施形態では、定常領域は、配列番号239に示される配列を有する修飾された定常領域を有する:
ASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSNFGTQTYTCNVDHKPSNTKVDKTVERKCRVRCPRCPAPPVAGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVAVSHEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVVHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK。そして、配列番号239に示される配列をコードする核酸は、配列番号240に示される。
【0139】
一部の実施形態では、定常領域は、配列番号241に示される配列を有する修飾された定常領域を有する:
ASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSNFGTQTYTCNVDHKPSNTKVDKTVERKCEVECPECPAPPVAGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVAVSHEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVVHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCEVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK。そして、配列番号241に示される配列をコードする核酸は、配列番号242に示される。
【0140】
ヒトカッパ定常領域のアミノ酸は、配列番号243に示される:
GTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC。そして、配列番号243の配列をコードする核酸は、配列番号244に示される。
【0141】
FLT3に対する抗体の結合親和性を決定するための1つの方法は、単量体FLT3タンパク質への二価抗体の結合親和性を測定することによるものである。FLT3抗体の親和性を、HBS−EP泳動緩衝液(0.01M HEPES、pH7.4、0.15M NaCl、3mM EDTA、0.005%v/v サーファクタントP20)を使用して予め固定された抗マウスFcまたは抗ヒトFcを装備した表面プラズモン共鳴(Biacore(商標)3000(商標)表面プラズモン共鳴(SPR)システム、Biacore(商標)、INC.、Piscataway NJ)によって決定することができる。単量体8−ヒスチジンタグ付きヒトFLT3細胞外ドメインを、HBS−EP緩衝液中で0.5μg/mL未満の濃度に希釈し、可変的な接触時間を使用して個々のチップチャネルにわたって注入して、詳細な動的試験については50〜200応答単位(RU)またはスクリーニングアッセイについて800〜1,000RUの抗原密度の2つの範囲を達成することができる。再生試験により、25%v/vエタノール中の25mM NaOHが、200回を超える注入にわたってチップ上のFLT3抗体の活性を保持しながら、結合したFLT3タンパク質を効率的に除去することが示された。典型的には、精製された8−ヒスチジンタグ付きFLT3試料の連続希釈液(0.1〜10x濃度の見積もりK
Dにわたる)を、100μL/分で1minにわたって注入し、最大2時間の解離時間を可能にする。FLT3タンパク質の濃度は、8−ヒスチジンタグ付きFLT3タンパク質の配列特異的吸光係数に基づいて280nmでの吸光度によって決定される。動的結合速度(k
onまたはk
a)および解離速度(k
offまたはk
d)は、BIAevaluationプログラムを使用して、データを1:1のLangmuir結合モデル(Karlsson,R、Roos,H、Fagerstam,L、Petersson,B、(1994)Methods Enzymology 6、99〜110)に全体的に適合させることによって同時に取得される。平衡解離定数(K
D)値は、k
off/k
onとして計算される。このプロトコールは、ヒトFLT3、別の哺乳動物のFLT3(マウスFLT3、ラットFLT3、または霊長類FLT3)を含む任意の単量体FLT3、ならびに異なる形態のFLT3(例えば、グリコシル化FLT3)に対する抗体の結合親和性を決定する際の使用にとって好適である。抗体の結合親和性は、一般には、25℃で測定されるが、37℃で測定することもできる。
【0142】
本明細書に記載の抗体は、当技術分野で公知の任意の方法によって作製することができる。ハイブリドーマ細胞株の産生のための、宿主動物の免疫化の経路およびスケジュールは一般に、本明細書でさらに記載するように、抗体の刺激および産生のための確立された技法および慣例的な技法を踏まえている。ヒトおよびマウス抗体を生成するための一般的技法は、当技術分野で公知であり、かつ/または本明細書に記載されている。
【0143】
ヒトを含めた任意の哺乳動物対象またはそれに由来する抗体産生細胞を、ヒトを含めた哺乳動物およびハイブリドーマ細胞株を生成するための基盤として機能を果たすように操作することができることが企図されている。一般に、宿主動物は、本明細書に記載するように、腹腔内、筋肉内、経口的、皮下、足底内、および/または皮内に、ある量の免疫原を接種される。
【0144】
ハイブリドーマは、Kohler,B.およびMilstein,C.、Nature、256:495〜497,1975の、またはBuck,D.W.ら、In Vitro、18:377〜381、1982によって改良された一般的な体細胞ハイブリダイゼーション技法を使用して、リンパ球および不死化骨髄腫細胞から調製することができる。それだけに限らないが、X63−Ag8.653、およびthe Salk Institute、Cell Distribution Center、San Diego、Calif.、USAからのものを含めた利用可能な骨髄腫株を、ハイブリダイゼーションで使用することができる。一般に、この技法では、ポリエチレングリコールなどの融合剤を使用して、または当業者に周知の電気的手段によって、骨髄腫細胞およびリンパ系細胞を融合する。融合後、細胞は、融合培地から分離され、ヒポキサンチン−アミノプテリン−チミジン(HAT)培地などの選択的増殖培地内で増殖されて未ハイブリダイズ親細胞が排除される。血清の有無にかかわらず補充された、本明細書に記載の培地のいずれも、モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを培養するのに使用することができる。細胞融合技法の別の選択肢として、EBV不死化B細胞を使用して、対象発明のモノクローナル抗体を生成することができる。ハイブリドーマは、必要に応じて、展開およびサブクローニングされ、慣例的なイムノアッセイ手順(例えば、ラジオイムノアッセイ、酵素免疫アッセイ、または蛍光イムノアッセイ)によって抗免疫原活性について上清がアッセイされる。
【0145】
抗体源として使用され得るハイブリドーマは、FLT3に特異的なモノクローナル抗体、またはこれらの一部を産生するすべての誘導体、親ハイブリドーマの子孫細胞を包含する。
【0146】
このような抗体を産生するハイブリドーマは、公知の手順を使用して、in vitroまたはin vivoで増殖させることができる。モノクローナル抗体は、必要に応じて、慣例的な免疫グロブリン精製手順、例えば、硫安分画、ゲル電気泳動、透析、クロマトグラフィー、および限外濾過などによって、培地または体液から単離することができる。望まれない活性は、存在する場合、例えば、固相に付着した免疫原でできた吸着剤上に配合物を流し、免疫原から所望の抗体を溶出または放出することによって除去することができる。ヒトFLT3を発現する細胞、ヒトFLT3タンパク質、または免疫される種内で免疫原性であるタンパク質、例えば、キーホールリンペットヘモシニアン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン、もしくはダイズトリプシン阻害剤にコンジュゲートした標的アミノ酸配列を含有する断片を用いて、二機能性剤または誘導体化剤、例えば、マレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基によるコンジュゲーション)、N−ヒドロキシスクシンイミド(リシン残基による)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl
2、またはR
1N=C=NR(式中、RおよびR
1は、異なるアルキル基である)を使用して、宿主動物を免疫化すると、抗体(例えば、モノクローナル抗体)の集団を生じさせることができる。
【0147】
必要に応じて、対象とする抗体(モノクローナルまたはポリクローナル)を配列決定し、次いで、ポリヌクレオチド配列をベクター中にクローン化し、発現または増殖させることができる。対象とする抗体をコードする配列を、宿主細胞内のベクター中に維持することができ、次いで宿主細胞を展開し、将来使用するために凍結することができる。細胞培養物内での組換えモノクローナル抗体の生成は、当技術分野で公知の手段によって、B細胞から抗体遺伝子をクローニングすることによって実施することができる。例えば、Tillerら、J.Immunol.Methods、329、112、2008、米国特許第7,314,622号を参照。
【0148】
代替手段では、ポリヌクレオチド配列を遺伝子操作に使用して、抗体を「ヒト化」し、または抗体の親和性もしくは他の特性を改善することができる。例えば、抗体がヒトにおける臨床試験および治療で使用される場合、定常領域をヒト定常領域により類似するように操作して、免疫応答を回避することができる。抗体配列を遺伝子操作して、FLT3に対するより高い親和性を得て、FLT3を阻害するより高い有効性を得ることが望ましいことがある。
【0149】
モノクローナル抗体をヒト化するための4つの一般的なステップが存在する。これらのものは、(1)出発抗体の軽鎖および重鎖可変ドメインのヌクレオチドおよび予測アミノ酸配列を決定するステップ、(2)ヒト化抗体を設計するステップ、すなわち、ヒト化プロセスの間にどの抗体フレームワーク領域を使用するかを決定するステップ、(3)実際のヒト化の方法/技法、ならびに(4)ヒト化抗体のトランスフェクションおよび発現である。例えば、米国特許第4,816,567号;第5,807,715号;第5,866,692号;第6,331,415号;第5,530,101号;第5,693,761号;第5,693,762号;第5,585,089号;および第6,180,370号を参照。
【0150】
げっ歯類または改変げっ歯類V領域と、ヒト定常領域に融合されたその関連するCDRとを有するキメラ抗体を含む、非ヒト免疫グロブリンから誘導される抗原結合部位を含むいくつかの「ヒト化」抗体分子が記載されている。例えば、Winterら、Nature 349:293〜299、1991、Lobuglioら、Proc.Nat.Acad.Sci.USA 86:4220〜4224、1989、Shawら、J Immunol.138:4534〜4538、1987、およびBrownら、Cancer Res.47:3577〜3583、1987を参照。他の参考文献は、適切なヒト抗体定常領域との融合の前にヒト支援フレームワーク領域(FR)中に移植されたげっ歯類CDRを記載している。例えば、Riechmannら、Nature 332:323〜327、1988、Verhoeyenら、Science 239:1534〜1536、1988、およびJonesら、Nature 321:522〜525、1986を参照。別の参考文献は、組換え操作されたげっ歯類フレームワーク領域によって支援されるげっ歯類CDRを記載している。例えば、欧州特許出願公開第0519596号を参照。これらの「ヒト化」分子は、ヒトレシピエントにおけるこれらの部分の治療適用の持続期間および有効性を制限するげっ歯類抗ヒト抗体分子に対する望ましくない免疫応答を最小化するように設計される。例えば、抗体定常領域が免疫学的に不活性となる(例えば、補体溶解を誘発しない)ように、それを操作することができる。例えば、PCT公開第PCT/GB99/01441;UK特許出願第9809951.8号を参照。使用することもできる抗体をヒト化する他の方法は、Daughertyら、Nucl.Acids Res.19:2471〜2476、1991ならびに米国特許第6,180,377号;第6,054,297号;第5,997,867号;第5,866,692号;第6,210,671号;および第6,350,861号;ならびにPCT公開第WO01/27160号に開示されている。
【0151】
上で考察されたヒト化抗体に関する一般原理は、例えば、イヌ、ネコ、霊長類、ウマおよびウシにおける使用のために抗体をカスタマイズすることにも適用可能である。さらに、本明細書に記載の抗体をヒト化する1つまたは複数の態様を、例えば、CDR移植、フレームワーク変異およびCDR変異と組み合わせることができる。
【0152】
一変形では、特定のヒト免疫グロブリンタンパク質を発現するように遺伝子工学的に改変された市販のマウスを使用することによって、完全ヒト抗体を得ることができる。より望ましい(例えば、完全ヒト抗体)、またはよりロバストな免疫応答を生じるように設計されたトランスジェニック動物も、ヒト化抗体またはヒト抗体を生成するのに使用することができる。このような技術の例は、Abgenix,Inc.(Fremont、CA)製のXenomouse(商標)、ならびにMedarex,Inc.(Princeton、NJ)製のHuMAb−Mouse(登録商標)およびTC Mouse(商標)である。
【0153】
代替手段では、抗体を、組換え的に作製し、当技術分野で公知の任意の方法を使用して発現させることができる。別の代替手段では、抗体を、ファージディスプレイ技術によって組換え的に作製することができる。例えば、米国特許第5,565,332号;同第5,580,717号;同第5,733,743号;および同第6,265,150号;ならびにWinterら、Annu.Rev.Immunol.12:433〜455、1994を参照。代わりに、ファージディスプレイ技術(McCaffertyら、Nature、348:552〜553、1990)を使用して、非免疫化ドナーに由来する免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーから、in vitroでヒト抗体および抗体断片を生成することができる。この技法によれば、抗体Vドメイン遺伝子が、糸状バクテリオファージのメジャーまたはマイナーコートタンパク質遺伝子、例えば、M13またはfdなどの中にインフレームでクローニングされ、ファージ粒子の表面上に機能的な抗体断片としてディスプレイされる。糸状粒子は、ファージゲノムの一本鎖DNAコピーを含有するので、抗体を機能的性質に基づいて選択すると、これらの性質を呈する抗体をコードする遺伝子も選択される。したがって、ファージは、B細胞の性質の一部を模倣する。ファージディスプレイは、様々な形式で実施することができる。総説については、例えば、Johnson,Kevin S.およびChiswell,David J.、Current Opinion in Structural Biology 3:564〜571、1993を参照。V遺伝子セグメントのいくつかの源を、ファージディスプレイに使用することができる。Clacksonら、Nature 352:624〜628、1991は、免疫化マウスの脾臓に由来するV遺伝子の小ランダムコンビナトリアルライブラリーから、抗オキサゾロン抗体の多様なアレイを単離した。Markら、J.Mol.Biol. 222:581〜597、1991またはGriffithら、EMBO J. 12:725〜734、1993によって記載された技法に本質的に従って、非免疫化ヒトドナーに由来するV遺伝子のレパートリーを構築することができ、抗原(自己抗原を含む)の多様なアレイに対する抗体を単離することができる。天然の免疫応答では、抗体遺伝子は、高い割合で突然変異を蓄積する(体細胞超変異)。導入された変化のいくつかが、より高い親和性を付与することになり、高親和性表面免疫グロブリンをディスプレイするB細胞が、後続の抗原チャレンジの間に選択的に複製および分化される。この自然過程は、「鎖シャッフリング」として公知の技法を使用することによって模倣することができる。(Marksら、Bio/Technol. 10:779〜783、1992)。この方法では、ファージディスプレイによって得られる「一次」ヒト抗体の親和性は、非免疫化ドナーから得られるVドメイン遺伝子の天然に存在するバリアントのレパートリー(レパートリー)で、重鎖および軽鎖V領域遺伝子を順次置き換えることによって改善することができる。この技法により、pM〜nM範囲内の親和性を有する抗体および抗体断片の生成が可能になる。非常に大きいファージ抗体レパートリー(「マザーオブオールライブラリー」としても公知)を作製するためのストラテジーが、Waterhouseら、Nucl.Acids Res. 21:2265〜2266、1993によって記載されている。げっ歯類抗体からヒト抗体を導出するのに遺伝子シャフリングも使用することができ、この場合、ヒト抗体は、出発げっ歯類抗体と同様の親和性および特異性を有する。「エピトープ刷り込み」とも呼ばれるこの方法によれば、ファージディスプレイ技法によって得られるげっ歯類抗体の重鎖または軽鎖Vドメイン遺伝子がヒトVドメイン遺伝子のレパートリーと置き換えられ、げっ歯類−ヒトキメラが作り出される。抗原の選択により、機能的抗原結合部位を回復することができるヒト可変領域が単離され、すなわち、エピトープがパートナーの選択を支配する(刷り込む)。残りのげっ歯類Vドメインを置き換えるためにこのプロセスが繰り返されると、ヒト抗体が得られる(PCT公開第WO93/06213を参照)。CDR移植によるげっ歯類抗体の伝統的なヒト化と異なり、この技法は、げっ歯類起源のフレームワークまたはCDR残基をまったく有さない完全ヒト抗体をもたらす。
【0154】
抗体は、宿主動物から抗体および抗体産生細胞を最初に単離し、遺伝子配列を得、遺伝子配列を使用して、宿主細胞(例えば、CHO細胞)内で抗体を組換えで発現させることによって組換えで作製することができる。使用することができる別の方法は、植物(例えば、タバコ)またはトランスジェニック乳内で抗体配列を発現させることである。植物または乳内で、組換えで抗体を発現させるための方法は、開示されている。例えば、Peetersら、Vaccine 19:2756、2001、Lonberg,N.およびD.Huszar Int.Rev.Immunol 13:65、1995ならびにPollockら、J Immunol Methods 231:147、1999を参照。抗体の誘導体、例えば、ヒト化、単鎖などを作製するための方法は、当技術分野で公知である。
【0155】
イムノアッセイ、および蛍光活性化細胞選別(FACS)などのフローサイトメトリーソーティング技法も、FLT3に対して特異的な抗体、または目的の腫瘍抗原を単離するのに使用することができる。
【0156】
本明細書に記載の抗体は、多くの異なる担体に結合することができる。担体は、活性および/または不活性であり得る。周知の担体の例としては、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、ガラス、天然および変性セルロース、ポリアクリルアミド、アガロースならびに磁鉄鉱がある。担体の性質は、本発明の目的に関して可溶性または不溶性であり得る。当業者であれば、結合抗体用の他の適当な担体が分かり、または日常の実験を使用してこのようなものを確認することができるであろう。一部の実施形態では、担体は、心筋を標的にする部分を含む。
【0157】
モノクローナル抗体をコードするDNAは、慣例的な手順を使用して(例えば、モノクローナル抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)容易に単離および配列決定される。ハイブリドーマ細胞は、このようなDNAなどの好適な源として機能を果たす。単離した後、発現ベクター(PCT公開第WO87/04462号に開示された発現ベクターなど)内にDNAを配置することができ、次いでこれらは、宿主細胞、例えば、大腸菌(E.coli)細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または免疫グロブリンタンパク質を他の方法で産生しない骨髄腫細胞などの中にトランスフェクトされて、組換え宿主細胞内でモノクローナル抗体の合成が得られる。例えば、PCT公開第WO87/04462号を参照。DNAは、例えば、相同マウス配列の代わりにヒト重鎖および軽鎖定常領域のコード配列を置換することによって、Morrisonら、Proc.Nat.Acad.Sci. 81:6851、1984、または免疫グロブリンコード配列に、非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列のすべてもしくは一部を共有結合的に接合することによって、修飾することもできる。その様式で、本明細書のモノクローナル抗体の結合特異性を有する「キメラ」または「ハイブリッド」抗体が調製される。
【0158】
本明細書に記載のFLT3抗体を、当技術分野で公知の方法を使用して同定するか、または特徴付けることができ、それによって、FLT3発現レベルの低下が検出および/または測定される。一部の実施形態では、FLT3抗体は、候補薬剤を、FLT3と共にインキュベートし、FLT3への結合および/またはFLT3発現レベルの付随する低下をモニタリングすることによって同定される。結合アッセイは、精製FLT3ポリペプチド(複数可)を用いて、またはFLT3ポリペプチド(複数可)を天然に発現し、もしくはこれらを発現するようにトランスフェクトされた細胞を用いて実施することができる。一実施形態では、結合アッセイは、競合的結合アッセイであり、この場合、候補抗体がFLT3結合を公知のFLT3抗体と競合する能力が評価される。アッセイは、ELISA形式を含めて様々な形式で実施することができる。
【0159】
最初に同定した後、候補FLT3抗体の活性を、標的にされる生物活性を試験することが知られているバイオアッセイによってさらに確認および洗練することができる。あるいは、バイオアッセイを使用して、候補を直接スクリーニングすることができる。抗体を同定し、特徴付けるための一部の方法は、実施例に詳細に記載される。
【0160】
FLT3抗体は、当技術分野で周知の方法を使用して特徴付けることができる。例えば、1つの方法は、それが結合するエピトープを同定すること、または「エピトープマッピング」である。例えば、HarlowおよびLane、Using Antibodies、a Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New York、1999の11章に記載されている、抗体−抗原複合体の結晶構造の解明、競合アッセイ、遺伝子断片発現アッセイ、および合成ペプチドベースアッセイを含めて、タンパク質上のエピトープの位置をマッピングし、特徴付けるための多くの当技術分野で公知の方法がある。追加の例では、エピトープマッピングを使用して、抗体が結合する配列を求めることができる。エピトープマッピングは、様々な源、例えば、Pepscan Systems(Edelhertweg 15、8219 PH Lelystad、オランダ)から商業的に利用可能である。エピトープは、線状エピトープであり得、すなわち、アミノ酸の単一ストレッチ内に含有され得、または必ずしも単一ストレッチ内に含有されていない場合がある、アミノ酸の3次元相互作用によって形成される立体構造エピトープであり得る。様々な長さ(例えば、少なくとも4〜6アミノ酸の長さ)のペプチドを、単離または合成し(例えば、組換えで)、FLT3または他の腫瘍抗原抗体を用いた結合アッセイに使用することができる。別の例では、FLT3抗体が結合するエピトープは、FLT3配列に由来する重複ペプチドを使用し、FLT3抗体による結合を決定することによって、系統的なスクリーニングで決定することができる。遺伝子断片発現アッセイによれば、FLT3をコードするオープンリーディングフレームがランダムに、または特定の遺伝子構築によって断片化され、FLT3の発現断片の試験される抗体との反応性が決定される。遺伝子断片は、例えば、放射性アミノ酸の存在下で、in vitroで、PCRによって生成され、次いで転写され、およびタンパク質に翻訳され得る。次いで放射性標識FLT3への抗体の結合が、免疫沈降およびゲル電気泳動によって決定される。ある特定のエピトープは、ファージ粒子の表面上にディスプレイされたランダムペプチド配列の大きいライブラリー(ファージライブラリー)を使用することによっても同定することができる。代わりに重複ペプチド断片の定義されたライブラリーを、単純な結合アッセイで試験抗体への結合について試験することができる。追加の例では、抗原結合ドメインの突然変異誘発、ドメイン交換実験、およびアラニンスキャニング突然変異誘発を実施して、エピトープ結合に要求され、十分な、かつ/または必要な残基を同定することができる。例えば、FLT3タンパク質の様々な断片が、別の種(例えば、マウス)に由来するFLT3に由来する配列、または密接に関連するが、抗原的に異なるタンパク質と置き換えられた(交換された)、突然変異体FLT3を使用して、ドメイン交換実験を実施することができる。突然変異体FLT3への抗体の結合を評価することによって、抗体結合に対する特定のFLT3断片の重要性を評価することができる。FLT3特異的抗体(すなわち、FLT3wt(野生型)または任意の他のタンパク質に結合しない抗体)の場合、エピトープを、FLT3とFLT3wtとの配列アラインメントから推定することができる。
【0161】
FLT3抗体を特徴付けるのに使用することができるさらに別の方法は、同じ抗原、すなわち、FLT3の様々な断片に結合することが知られている他の抗体との競合アッセイを使用して、FLT3抗体が他の抗体と同じエピトープに結合するか否かを決定することである。競合アッセイは当業者に周知である。
【0162】
発現ベクターをFLT3抗体の直接発現に使用することができる。当業者は、in vivoで外因性タンパク質の発現を得るための発現ベクターの投与に精通している。例えば、米国特許第6,436,908号、同第6,413,942号、および同第6,376,471号を参照。発現ベクターの投与としては、注入、経口投与、粒子銃もしくはカテーテル挿入投与、および局部投与を含めた局所投与または全身投与がある。別の実施形態では、発現ベクターは、交感神経幹もしくは神経節に、または冠動脈、心房、心室、もしくは心膜内に直接投与される。
【0163】
発現ベクターまたはサブゲノムポリヌクレオチドを含有する治療用組成物の標的化送達も使用することができる。受容体媒介DNA送達技法は、例えば、Findeisら、Trends Biotechnol.、1993、11:202、Chiouら、Gene Therapeutics:Methods And Applications Of Direct Gene Transfer、J.A.Wolff編、1994、Wuら、J.Biol.Chem.、1988、263:621、Wuら、J.Biol.Chem.、1994、269:542、Zenkeら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、87:3655、1990、およびWuら、J.Biol.Chem.、266:338、1991に記載されている。ポリヌクレオチドを含有する治療用組成物は、遺伝子療法プロトコールの局所投与に関して、約100ng〜約200mgのDNAの範囲内で投与される。約500ng〜約50mg、約1μg〜約2mg、約5μg〜約500μg、および約20μg〜約100μgのDNAの濃度範囲も、遺伝子療法プロトコールの間に使用することができる。治療用ポリヌクレオチドおよびポリペプチドは、遺伝子送達ビヒクルを使用して送達することができる。遺伝子送達ビヒクルは、ウイルス起源であっても、非ウイルス起源であってもよい(一般に、Jolly、Cancer Gene Therapy、1:51、1994、Kimura、Human Gene Therapy、5:845、1994、Connelly、Human Gene Therapy、1995、1:185、およびKaplitt、Nature Genetics、6:148、1994を参照)。このようなコード配列の発現は、内因性哺乳動物プロモーターまたは異種プロモーターを使用して誘導され得る。コード配列の発現は、構成的であってもよく、または制御されてもよい。
【0164】
所望のポリヌクレオチドを送達し、所望の細胞内で発現させるためのウイルス系ベクターは、当技術分野で周知である。例示的なウイルス系ビヒクルとしては、それだけに限らないが、組換えレトロウイルス(例えば、PCT公開第WO90/07936号、同第WO94/03622号、同第WO93/25698号、同第WO93/25234号、同第WO93/11230号、同第WO93/10218号、同第WO91/02805号、米国特許第5,219,740号および同第4,777,127号、英国特許第2,200,651号、ならびに欧州特許第0345242号を参照)、アルファウイルス系ベクター(例えば、シンドビスウイルスベクター、セムリキ森林ウイルス(ATCC VR−67、ATCC VR−1247)、ロスリバーウイルス(ATCC VR−373、ATCC VR−1246)、ならびにベネズエラウマ脳炎ウイルス(ATCC VR−923、ATCC VR−1250、ATCC VR1249、ATCC VR−532))、ならびにアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター(例えば、PCT公開第WO94/12649号、同第WO93/03769号、同第WO93/19191号、同第WO94/28938号、同第WO95/11984号、および同第WO95/00655を参照)がある。Curiel、Hum.Gene Ther.、1992、3:147に記載された死滅アデノウイルスに連結したDNAの投与も使用することができる。
【0165】
それだけに限らないが、死滅アデノウイルス単独に連結した、または連結していないポリカチオン凝縮DNA(例えば、Curiel、Hum.Gene Ther.、3:147、1992を参照)、リガンド連結DNA(例えば、Wu、J.、Biol.Chem.、264:16985、1989を参照)、真核細胞送達ビヒクル細胞(例えば、米国特許第5,814,482号、PCT公開第WO95/07994号、同第WO96/17072号、同第WO95/30763号、および同第WO97/42338号を参照)、ならびに核電荷中和または細胞膜との融合を含めた、非ウイルス送達ビヒクルならびに方法も使用することができる。裸のDNAも使用することができる。例示的な裸のDNA導入方法は、PCT公開第WO90/11092号、および米国特許第5,580,859号に記載されている。遺伝子送達ビヒクルとして作用することができるリポソームは、米国特許第5,422,120号、PCT公開第WO95/13796号、同第WO94/23697号、同第WO91/14445号、およびEP0524968に記載されている。追加の手法は、Philip、Mol.CellBiol.、14:2411、1994およびWoffendin、Proc.Natl.Acad.Sci.、91:1581、1994に記載されている。
【0166】
一部の実施形態では、本発明は、本明細書に記載されるか、または前記方法によって作製された抗体を含み、本明細書に記載の特徴を有する、医薬組成物を含む組成物を包含する。本明細書で使用される場合、組成物は、FLT3に結合する1つもしくは複数の抗体、および/または1つもしくは複数のこれらの抗体をコードする配列を含む1つもしくは複数のポリヌクレオチドを含む。これらの組成物は、当技術分野で周知である、緩衝剤を含む薬学的に許容でされる賦形剤などの好適な賦形剤をさらに含んでもよい。
【0167】
本発明はまた、これらの抗体のいずれかを作製する方法も提供する。本発明の抗体は、当技術分野で公知の手順によって作製することができる。ポリペプチドは、抗体のタンパク質分解もしくは他の分解によって、上述した組換え法(すなわち、単一もしくは融合ポリペプチド)によって、または化学合成によって生成することができる。抗体のポリペプチド、特に最大約50アミノ酸のより短いポリペプチドは、化学合成によって好都合に作製される。化学合成の方法は、当技術分野で公知であり、商業的に利用可能である。例えば、抗体は、固相法を使用する自動ポリペプチドシンセサイザーによって生成することができる。米国特許第5,807,715号、同第4,816,567号、および同第6,331,415号も参照。
【0168】
別の代替手段では、抗体を、当技術分野で周知である手順を使用して組換え的に作製することができる。一実施形態では、ポリヌクレオチドは、抗体P4F6、P4C7、P3A`、P5A3、P9B5、P9F1、P1B4、P1B11、P7H3、P3E10、P1A5、P5F7、P4H11、P15F7、P12B6、P8B6、P14G2、P7F9、P08B06EE、P04A04、P01A05、P08B03、P5F7、P5F7g、P10A02g、P10A04g、P10A05g、P10A07g、P10B03g、P10B06g、P5F7g2、P5F7g3、またはP5F7g4の重鎖および/または軽鎖可変領域をコードする配列を含む。対象とする抗体をコードする配列は、宿主細胞内のベクター中に維持することができ、次いで宿主細胞を展開し、将来使用するために凍結させることができる。ベクター(発現ベクターを含む)および宿主細胞は、本明細書でさらに記載されている。
【0169】
2つの共有結合的に接合された抗体を含むヘテロコンジュゲート抗体も、本発明の範囲内である。このような抗体は、免疫系細胞を望まれない細胞に向けるのに(米国特許第4,676,980号)、およびHIV感染を治療するために(PCT公開第WO1991/000360および同第92/200373号;EP03089)使用されている。ヘテロコンジュゲート抗体は、任意の好都合な架橋法を使用して作製することができる。適当な架橋剤および架橋技法は、当技術分野で周知であり、米国特許第4,676,980号に記載されている。
【0170】
キメラまたはハイブリッド抗体も、架橋剤を伴うものを含めて、合成タンパク質化学の公知の方法を使用してin vitroで調製することができる。例えば、免疫毒素は、ジスルフィド交換反応を使用して、またはチオエーテル結合を形成することによって構築することができる。この目的用の適当な試薬の例としては、イミノチオレートおよびメチル−4−メルカプトブチルイミデート(mercaptobutyrimidate)がある。
【0171】
組換えヒト化抗体では、Fcγ部分を修飾して、Fcγ受容体と補体および免疫系との相互作用を回避することができる。このような抗体を調製するための技法は、WO99/58572に記載されている。例えば、抗体がヒトにおける臨床試験および治療で使用される場合、定常領域をヒト定常領域により類似するように操作して、免疫応答を回避することができる。例えば、米国特許第5,997,867号および同第5,866,692号を参照。
【0172】
本発明は、特性に有意に影響しない機能的に等価な抗体ならびに活性および/または親和性が増強または減少したバリアントを含む、表5に示されるバリアントを含む本発明の抗体およびポリペプチドに対する修飾を包含する。例えば、アミノ酸配列を突然変異させて、FLT3に対する所望の結合親和性を有する抗体を得ることができる。ポリペプチドの修飾は、当技術分野で日常の行為であり、本明細書で詳細に説明する必要はない。修飾ポリペプチドの例としては、アミノ酸残基の保存的置換、機能活性を有意に有害に変更しない、もしくはポリペプチドのそのリガンドに対する親和性を成熟させる(増強する)アミノ酸の1つもしくは複数の欠失もしくは付加、または化学的類似体の使用を有するポリペプチドがある。
【0173】
アミノ酸配列挿入としては、1つの残基から、100以上の残基を含有するポリペプチドまでの長さの範囲のアミノ末端融合および/またはカルボキシル末端融合、ならびに単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入がある。末端挿入の例としては、N末端メチオニル残基を有する抗体、またはエピトープタグに融合した抗体がある。抗体分子の他の挿入バリアントには、血液循環中で抗体の半減期を増大させる酵素またはポリペプチドの、抗体のN末端またはC末端への融合が含まれる。
【0174】
置換バリアントは、除去された抗体分子内の少なくとも1つのアミノ酸残基、およびその場所内に挿入された異なる残基を有する。置換突然変異誘発の最も大きな関心のある部位には超可変領域が含まれるが、FR変化も企図されている。保存的置換を、「保存的置換」の表題で表5に示す。このような置換が生物活性を変化させる場合、表5で「例示的な置換」と命名した、またはアミノ酸クラスを参照して以下にさらに記載する、より実質的な変化を導入することができ、生成物をスクリーニングすることができる。一部の実施形態では、本明細書に提供される抗体の置換バリアントは、参照親抗体と比較して、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1個以下の連続する置換をVHまたはVL領域に有する。一部の実施形態では、置換は、VHまたはVL領域のCDR内にない。
【0176】
抗体の生物学的性質の実質的な修飾は、(a)例えば、シートもしくはヘリックスコンホメーションとしての置換範囲内のポリペプチド骨格の構造、(b)標的部位における分子の電荷もしくは疎水性、または(c)側鎖のバルクを維持することに対する置換の効果が有意に異なる置換を選択することによって達成される。天然に存在するアミノ酸残基は、共通の側鎖の性質に基づいて群に分類される:
(1)非極性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)電荷を有さない極性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性(負に荷電した):Asp、Glu;
(4)塩基性(正に荷電した):Lys、Arg;
(5)鎖配向に影響を与える残基:Gly、Pro、および
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe、His。
【0177】
非保存的置換は、これらのクラスの1つのクラスのメンバーを別のクラスと交換することによって行われる。
【0178】
抗体の適切なコンホメーションの維持に関与していない任意のシステイン残基も、分子の酸化安定性を改善し、異常な架橋を防止するために、一般にセリンと置換することができる。反対に、システイン結合(複数可)を、特に抗体がFv断片などの抗体断片である場合、抗体の安定性を改善するために抗体に付加することができる。
【0179】
アミノ酸修飾は、1つまたは複数のアミノ酸の変化または修飾から、可変領域などの領域の完全な再設計までの範囲であってもよい。可変領域内の変化は、結合親和性および/または特異性を変更し得る。一部の実施形態では、1〜5個以下の保存的アミノ酸置換がCDRドメイン内で行われる。他の実施形態では、1〜3個以下の保存的アミノ酸置換がCDRドメイン内で行われる。さらに他の実施形態では、CDRドメインは、CDR H3および/またはCDR L3である。
【0180】
修飾には、グリコシル化および非グリコシル化ポリペプチド、ならびに他の翻訳後修飾、例えば、異なる糖でのグリコシル化、アセチル化、およびリン酸化などを有するポリペプチドも含まれる。抗体は、これらの定常領域内の保存位置でグリコシル化される(JefferisおよびLund、Chem.Immunol.、65:111〜128、1997;WrightおよびMorrison、TibTECH、15:26〜32、1997)。免疫グロブリンのオリゴ糖側鎖は、タンパク質の機能(Boydら、Mol.Immunol.、32:1311〜1318、1996;WittweおよびHoward、Biochem.、29:4175〜4180、1996)、ならびにコンホメーションに影響し得る糖タンパク質の部分と、糖タンパク質の提示された三次元表面との分子内相互作用(JefferisおよびLund、上記;WyssおよびWagner、Current Opin.Biotech.、7:409〜416、1996)に影響する。オリゴ糖は、特異的な認識構造に基づいて、ある特定の分子に所与の糖タンパク質を向ける機能を果たすこともできる。抗体のグリコシル化は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)に影響することも報告されている。特に、バイセクティングGlcNAcの形成を触媒するグリコシルトランスフェラーゼであるβ(1,4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII)がテトラサイクリンにより発現制御されるCHO細胞は、改善されたADCC活性を有することが報告された(Umanaら、Mature Biotech.、17:176〜180、1999)。
【0181】
抗体のグリコシル化は、一般に、N結合型またはO結合型である。N結合型は、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の結合を指す。トリペプチド配列のアスパラギン−X−セリン、アスパラギン−X−トレオニン、およびアスパラギン−X−システイン(式中、Xは、プロリンを除く任意のアミノ酸である)は、炭水化物部分がアスパラギン側鎖に酵素的結合するための認識配列である。したがって、ポリペプチド中にこれらのトリペプチド配列のいずれかが存在すると、潜在的なグリコシル化部位が作り出される。O結合型グリコシル化は、糖N−アセチルガラクトサミン、ガラクトース、またはキシロースのうちの1種の、ヒドロキシアミノ酸、最も一般にはセリンまたはトレオニンへの結合を指すが、5−ヒドロキシプロリンまたは5−ヒドロキシリシンも使用することができる。
【0182】
グリコシル化部位の抗体への付加は、アミノ酸配列を、これが上述したトリペプチド配列の1つまたは複数を含有するように変更することによって好都合には達成される(N結合型グリコシル化部位に関して)。変更は、元の抗体の配列への、1つまたは複数のセリンまたはトレオニン残基の付加、またはこれらによる置換によっても行うことができる(O結合型グリコシル化部位に関して)。
【0183】
抗体のグリコシル化パターンも、基本的なヌクレオチド配列を変更することなく変更することができる。グリコシル化は、抗体を発現させるのに使用される宿主細胞に大部分は依存する。潜在的な治療剤としての組換え糖タンパク質、例えば、抗体の発現に使用される細胞型は、まれにネイティブ細胞であるので、抗体のグリコシル化パターンのバリエーションが予期され得る(例えば、Hseら、J.Biol.Chem.、272:9062〜9070、1997を参照)。
【0184】
宿主細胞の選択に加えて、抗体を組換え生産する間にグリコシル化に影響する要因としては、増殖モード、培地配合、培養密度、酸素供給、pH、精製スキームなどがある。オリゴ糖生成に関与するある特定の酵素の導入または過剰発現を含めて、特定の宿主生物体内で実現されるグリコシル化パターンを変更するための様々な方法が提案されている(米国特許第5,047,335号、同第5,510,261号、および同第5,278,299号)。グリコシル化、またはある特定のタイプのグリコシル化は、例えば、エンドグリコシダーゼH(Endo H)、N−グリコシダーゼF、エンドグリコシダーゼF1、エンドグリコシダーゼF2、エンドグリコシダーゼF3を使用して、糖タンパク質から酵素的に除去することができる。さらに、組換え宿主細胞は、ある特定のタイプの多糖のプロセシングにおいて欠陥のあるように遺伝子工学的に改変することができる。これらの技法および同様の技法は、当技術分野で周知である。
【0185】
修飾の他の方法には、それだけに限らないが、酵素的手段、酸化的置換、およびキレート化を含めた、当技術分野で公知のカップリング技法の使用が含まれる。修飾は、例えば、イムノアッセイ用標識の結合に使用することができる。修飾ポリペプチドは、当技術分野で確立した手順を使用して作製され、当技術分野で公知の標準アッセイを使用してスクリーニングすることができる。これらのアッセイのいくつかを以下および実施例で記載する。
【0186】
他の抗体修飾には、PCT公開第WO99/58572号に記載されたように修飾された抗体が含まれる。これらの抗体は、標的分子に向けられた結合ドメインに加えて、ヒト免疫グロブリン重鎖の定常領域のすべてまたは一部に実質的に相同のアミノ酸配列を有するエフェクタードメインを含む。これらの抗体は、標的の著しい補体依存性溶解または細胞媒介性破壊を誘発することなく、標的分子に結合することができる。一部の実施形態では、エフェクタードメインは、FcRnおよび/またはFcγRIIbに特異的に結合することができる。これらは一般に、2つ以上のヒト免疫グロブリン重鎖C
H2ドメインに由来するキメラドメインに基づく。このようにして修飾された抗体は、慣例的な抗体療法に対する炎症反応および他の拒絶反応を回避するための長期抗体療法で使用するのに特に適している。
【0187】
本発明は、親和性成熟した実施形態を含む。例えば、親和性成熟抗体は、当技術分野で公知の手順によって生成することができる(Marksら、Bio/Technology、10:779〜783、1992、Barbasら、Proc Nat.Acad.Sci,USA 91:3809〜3813、1994、Schierら、Gene、169:147〜155、1995、Yeltonら、J.Immunol.、155:1994〜2004、1995、Jacksonら、J.Immunol.、154(7):3310〜9、1995、Hawkinsら、J.Mol.Biol.、226:889〜896、1992、およびPCT公開第WO2004/058184)。
【0188】
以下の方法は、抗体の親和性を調整し、CDRを特徴付けるのに使用することができる。抗体のCDRを特徴付け、かつ/または抗体などのポリペプチドの結合親和性を変更する(改善するなど)一方法は、「ライブラリースキャンニング突然変異誘発」と呼ばれた。一般に、ライブラリースキャンニング突然変異誘発は、以下のように働く。CDR内の1つまたは複数のアミノ酸位置が、当技術分野で承認されている方法を使用して、2つ以上(3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20個など)のアミノ酸と置き換えられる。これにより、クローンの小ライブラリーが生成され(一部の実施形態では、分析されるアミノ酸位置毎に1つ)、それぞれは、2つ以上のメンバーの複雑性を有する(位置毎に2つ以上のアミノ酸が置換される場合)。一般に、ライブラリーは、天然(非置換)アミノ酸を含むクローンも含む。各ライブラリーから少数のクローン、例えば、約20〜80クローン(ライブラリーの複雑性に応じて)が、標的ポリペプチド(または他の結合標的)に対する結合親和性についてスクリーニングされ、結合性が増大した、同じ、減少した、またはまったくない候補が同定される。結合親和性を決定するための方法は、当技術分野で周知である。結合親和性は、約2倍以上の結合親和性の差異を検出するBiacore(商標)表面プラズモン共鳴分析を使用して求めることができる。Biacore(商標)は、出発抗体が比較的高い親和性、例えば、約10nM以下のK
Dで既に結合する場合、特に有用である。Biacore(商標)表面プラズモン共鳴を使用するスクリーニングは、本明細書の実施例に記載される。
【0189】
結合親和性を、Kinexa Biocensor、シンチレーション近接アッセイ、ELISA、ORIGENイムノアッセイ(IGEN)、蛍光クエンチング、蛍光移動、および/または酵母ディスプレイを使用して決定することができる。結合親和性は、適当なバイオアッセイを使用してスクリーニングすることもできる。
【0190】
一部の実施形態では、CDR内のすべてのアミノ酸位置が、当技術分野で承認されている突然変異誘発法(これらのいくつかを本明細書に記載する)を使用して、20すべての天然アミノ酸で置き換えられる(一部の実施形態では、一つずつ)。これにより、クローンの小ライブラリーが生成され(一部の実施形態では、分析されるアミノ酸位置毎に1つ)、それぞれは、20のメンバーの複雑性を有する(位置毎に20個すべてのアミノ酸が置換される場合)。
【0191】
一部の実施形態では、スクリーニングされるライブラリーは、2つ以上の位置に置換を含み、これらは、同じCDR内にあっても、2つ以上のCDR内にあってもよい。したがって、ライブラリーは、1つのCDR内の2つ以上の位置に置換を含み得る。ライブラリーは、2つ以上のCDR内の2つ以上の位置に置換を含み得る。ライブラリーは、2、3、4、5、または6つのCDR内に見つかる、3、4、5、またはそれ以上の位置に置換を含み得る。置換は、低冗長性コドンを使用して調製することができる。例えば、Balintら、Gene 137(1):109〜18、1993の表2を参照。
【0192】
CDRは、CDRH3および/またはCDRL3であってもよい。CDRは、CDRL1、CDRL2、CDRL3、CDRH1、CDRH2、および/またはCDRH3の1つまたは複数であってよい。CDRは、Kabat CDR、Chothia CDR、または拡張CDRであってよい。
【0193】
結合性が改善された候補を配列決定し、それによって、親和性を改善するCDR置換突然変異体(「改善された」置換とも呼ばれる)を同定することができる。結合する候補を配列決定し、それによって、結合性を保持するCDR置換を同定することもできる。
【0194】
複数ラウンドのスクリーニングを行うことができる。例えば、結合性が改善された候補(それぞれは、1つまたは複数のCDRの1つまたは複数の位置でアミノ酸置換を含む)は、それぞれの改善されたCDR位置(すなわち、置換突然変異体が結合性の改善を示したCDR内のアミノ酸位置)で少なくとも元のアミノ酸および置換されたアミノ酸を含有する第2ライブラリーの設計にも有用である。このライブラリーの調製、およびスクリーニングまたは選択を以下でさらに論じる。
【0195】
改善された結合性、同じ結合性、減少した結合性を有し、または結合性をまったく有さないクローンの頻度も、抗体−抗原複合体の安定性について各アミノ酸位置の重要性に関する情報を提供する限り、ライブラリースキャンニング突然変異誘発も、CDRを特徴付けるための手段を提供する。例えば、CDRの位置が、20個すべてのアミノ酸に変更されたとき結合性を保持する場合、その位置は、抗原結合に必要とされそうにない位置として同定される。反対に、CDRの位置が、置換の小パーセンテージのみにおいて結合性を保持する場合、その位置は、CDR機能に重要である位置として同定される。したがって、ライブラリースキャンニング突然変異誘発法により、多くの異なるアミノ酸(20個すべてのアミノ酸を含む)に変更することができるCDR内の位置、および変更することができないか、または数種のアミノ酸に変更することができるだけであるCDR内の位置に関する情報が生成される。
【0196】
親和性が改善された候補は、第2ライブラリー内で組み合わせることができ、このライブラリーは、改善されたアミノ酸、その位置における元のアミノ酸を含み、望まれる、または所望のスクリーニングもしくは選択法を使用して許容されるライブラリーの複雑性に応じて、その位置で追加の置換をさらに含むことができる。さらに、必要に応じて、隣接するアミノ酸位置は、少なくとも2つ以上のアミノ酸に対してランダム化することができる。隣接するアミノ酸をランダム化すると、突然変異体CDR内の追加の立体構造的柔軟性を可能にすることができ、それはさらには、より多数の改善突然変異の導入を可能にし、または促進することができる。このライブラリーはまた、スクリーニングの第1ラウンドで親和性の改善を示さなかった位置で置換を含むことができる。
【0197】
第2ライブラリーは、Biacore(商標)表面プラズモン共鳴分析を使用するスクリーニング、ならびにファージディスプレイ、酵母ディスプレイ、およびリボソームディスプレイを含む、選択のための当技術分野で公知の任意の方法を使用する選択を含めて、当技術分野で公知の任意の方法を使用して、結合親和性が改善および/または変更されたライブラリーメンバーについてスクリーニングまたは選択される。
【0198】
本発明は、本発明の抗体に由来する1つまたは複数の断片または領域を含む融合タンパク質も包含する。一実施形態では、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、204、206、208、210、212、214、216、218、220、222、224、226、228、230、または232に示した可変軽鎖領域の少なくとも10の連続したアミノ酸、および/または配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、205、207、209、211、213、215、217、219、221、223、225、227、229、231、または233に示した可変重鎖領域の少なくとも10個のアミノ酸を含む融合ポリペプチドが提供される。他の実施形態では、可変軽鎖領域の少なくとも約10個、少なくとも約15個、少なくとも約20個、少なくとも約25個、もしくは少なくとも約30個の連続したアミノ酸および/または可変重鎖領域の少なくとも約10個、少なくとも約15個、少なくとも約20個、少なくとも約25個、もしくは少なくとも約30個の連続したアミノ酸を含む融合ポリペプチドが提供される。別の実施形態では、融合ポリペプチドは、1つまたは複数のCDR(複数可)を含む。さらに他の実施形態では、融合ポリペプチドは、CDR H3(VH CDR3)および/またはCDR L3(VL CDR3)を含む。本発明の目的に関して、融合タンパク質は、1種または複数の抗体、および天然分子内に結合されていない別のアミノ酸配列、例えば、異種配列、または別の領域からの相同配列を含有する。例示的な異種配列としては、それだけに限らないが、FLAGタグまたは6Hisタグなどの「タグ」がある。タグは、当技術分野で周知である。
【0199】
融合ポリペプチドは、当技術分野で公知の方法によって、例えば、合成的に、または組換えで作り出すことができる。一般に、本発明の融合タンパク質は、本明細書に記載の組換え法を使用して、これらをコードするポリヌクレオチドを調製し、発現させることによって作製されるが、これらは、例えば、化学合成を含めた当技術分野で公知の他の手段によっても調製することができる。
【0200】
本発明は、固体支持体へのカップリングを促進する作用物質(ビオチンまたはアビジンなど)にコンジュゲートした(例えば、連結した)抗体を含む組成物も提供する。単純性のために、これらの方法が本明細書に記載のFLT3抗体の実施形態のいずれかに適用されるという理解で、一般に、抗体に言及する。コンジュゲーションは一般に、本明細書に記載のこれらのコンポーネントを連結することを指す。連結(これは一般に、少なくとも投与のために、近接会合でこれらのコンポーネントを固定することである)は、任意の数の方法で実現され得る。例えば、作用物質と抗体との直接反応は、それぞれが他方の置換基と反応することができる置換基を有する場合、可能である。例えば、一方上の求核基、例えば、アミノ基またはスルフヒドリル基などは、他方上のカルボニル含有基、例えば、無水物もしくは酸ハロゲン化物など、または良好な脱離基(例えば、ハロゲン化物)を含有するアルキル基と反応することができる。
【0201】
本発明はまた、本発明の抗体をコードする単離されたポリヌクレオチド、ならびに前記ポリヌクレオチドを含むベクターおよび宿主細胞も提供する。
【0202】
従って、本発明は、以下:P4F6、P4C7、P3A、P5A3、P9B5、P9F1、P1B4、P1B11、P7H3、P3E10、P1A5、P5F7、P4H11、P15F7、P12B6、P8B6、P14G2、P7F9、P08B06EE、P04A04、P01A05、P08B03、P5F7、P5F7g、P10A02g、P10A04g、P10A05g、P10A07g、P10B03g、P10B06g、P5F7g2、P5F7g3、P5F7g4、または、FLT3を結合する能力を有するその任意の断片もしくは部分のいずれかをコードするポリヌクレオチドを含む、ポリヌクレオチド(または医薬組成物を含む組成物)を提供する。
【0203】
別の態様では、本発明は、エフェクター機能が損傷した抗体およびポリペプチドなどの、本明細書に記載の抗体(抗体断片を含む)およびポリペプチドのいずれかをコードするポリヌクレオチドを提供する。ポリヌクレオチドは、当技術分野で公知の手順によって作製し、発現させることができる。
【0204】
別の態様では、本発明は、発明のポリヌクレオチドのいずれかを含む組成物(医薬組成物など)を提供する。一部の実施形態では、組成物は、本明細書において記載される抗体のいずれかをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターを含む。
【0205】
発現ベクター、およびポリヌクレオチド組成物の投与は、本明細書にさらに記載される。
【0206】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載のポリヌクレオチドのいずれかを作製する方法を提供する。
【0207】
任意のこのような配列に相補的なポリヌクレオチドも本発明によって包含される。ポリヌクレオチドは、一本鎖(コードまたはアンチセンス)であっても、二本鎖であってもよく、DNA(ゲノム、cDNA、または合成)であっても、RNA分子であってもよい。RNA分子には、イントロンを含有し、1対1の様式でDNA分子に対応するHnRNA分子、およびイントロンを含有しないmRNA分子が含まれる。追加のコード配列または非コード配列が本発明のポリヌクレオチド内に存在してもよいが、その必要はなく、ポリヌクレオチドは、他の分子および/または支持材に連結されていてもよいが、その必要はない。
【0208】
ポリヌクレオチドは、天然配列(すなわち、抗体またはその部分をコードする内因性配列)を含むことができ、またはこのような配列のバリアントを含むことができる。ポリヌクレオチドバリアントは、コードされるポリペプチドの免疫反応性が天然の免疫反応性分子と比べて減少しないように、1つまたは複数の置換、付加、欠失、および/または挿入を含有する。コードされるポリペプチドの免疫反応性に対する効果は、一般に、本明細書に記載するように評価することができる。バリアントは、好ましくは、自然抗体またはその部分をコードするポリヌクレオチド配列と、少なくとも約70%の同一性、より好ましくは、少なくとも約80%の同一性、さらにより好ましくは、少なくとも約90%の同一性、最も好ましくは、少なくとも約95%の同一性を呈する。
【0209】
2つのポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列は、2つの配列中のヌクレオチドまたはアミノ酸の配列が、以下に記載するように、最大対応に関してアラインメントされたとき同じである場合、「同一」であると言われる。2つの配列間の比較は、典型的には、比較ウィンドウにわたって配列を比較して、配列類似性の局所領域を同定および比較することによって実施される。「比較ウィンドウ」は、本明細書において、少なくとも約20の連続した位置、通常30〜約75、または40〜約50のセグメントを指し、この中で1つの配列を同じ数の連続した位置の参照配列と、2つの配列を最適にアラインメントさせた後に比較することができる。
【0210】
比較するための配列の最適なアラインメントは、バイオインフォマティクスソフトウェアのLasergene一式内のMegalignプログラム(DNASTAR,Inc.、Madison、WI)を使用して、デフォルトのパラメータを使用して行うことができる。このプログラムは、以下の参考文献に記載されたいくつかのアラインメントスキームを具現する:Dayhoff,M.O.、1978、A model of evolutionary change in proteins − Matrices for detecting distant relationships.In Dayhoff,M.O.(編)、Atlas of Protein Sequence and Structure、National Biomedical Research Foundation、Washington DC、5巻、補遺3、345〜358頁;Hein J.、1990、Unified Approach to Alignment and Phylogenes、626〜645頁、Methods in Enzymology、183巻、Academic Press,Inc.、San Diego、CA;Higgins,D.G.およびSharp,P.M.、1989、CABIOS 5:151〜153;Myers,E.W.およびMuller W.、1988、CABIOS 4:11〜17;Robinson,E.D.、1971、Comb.Theor. 11:105;Santou,N.、Nes,M.、1987、Mol.Biol.Evol. 4:406〜425;Sneath,P.H.A.およびSokal,R.R.、1973、Numerical Taxonomy the Principles and Practice of Numerical Taxonomy、Freeman Press、San Francisco、CA;Wilbur,W.J.およびLipman,D.J.、1983、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:726〜730。
【0211】
好ましくは、「配列同一性のパーセンテージ」は、少なくとも20の位置の比較のウィンドウにわたって2つの最適にアラインメントされた配列を比較することによって求められ、ここで、比較ウィンドウ内のポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の部分は、2つの配列の最適なアラインメントのための参照配列(これは、付加または欠失を含まない)と比較して、20パーセント以下、通常5〜15パーセント、または10〜12パーセントの付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含み得る。パーセンテージは、同一の核酸塩基またはアミノ酸残基が両配列内で起こる位置の数を求めてマッチした位置の数を得、マッチした位置の数を参照配列(すなわち、ウィンドウサイズ)内の位置の総数で除し、結果に100を乗じて、配列同一性のパーセンテージを得ることによって計算される。
【0212】
バリアントは、加えて、または代わりに、天然遺伝子またはその部分もしくは相補鎖に実質的に相同である。このようなポリヌクレオチドバリアントは、自然抗体(または相補配列)をコードする天然に存在するDNA配列に、中程度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる。
【0213】
適当な「中程度にストリンジェントな条件」は、5×SSC、0.5%のSDS、1.0mMのEDTA(pH8.0)の溶液中での予洗、50℃〜65℃、5×SSCで一晩のハイブリダイゼーション、その後の0.1%のSDSを含有する2×、0.5×、および0.2×SSCのそれぞれを用いた65℃で20分間の2回の洗浄を含む。
【0214】
本明細書において、「高度にストリンジェントな条件」または「高ストリンジェンシー条件」は、(1)洗浄のために低イオン強度および高温、例えば、50℃で、0.015Mの塩化ナトリウム/0.0015Mのクエン酸ナトリウム/0.1%のドデシル硫酸ナトリウムを使用し、(2)ハイブリダイゼーションの間に、42℃で、ホルムアミド、例えば、0.1%のウシ血清アルブミンを含む50%(v/v)のホルムアミド/0.1%のフィコール/0.1%のポリビニルピロリドン/750mMの塩化ナトリウム、75mMのクエン酸ナトリウムを含むpH6.5の50mMのリン酸ナトリウム緩衝液などの変性剤を使用し、または(3)42℃で0.2×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)および55℃で50%のホルムアミド中での洗浄、その後の55℃でEDTAを含有する0.1×SSCからなる高ストリンジェンシー洗浄を伴った、42℃で、50%のホルムアミド、5×SSC(0.75MのNaCl、0.075Mのクエン酸ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%のピロリン酸ナトリウム、5×デンハルト溶液、超音波処理したサケ精子DNA(50μg/ml)、0.1%のSDS、および10%のデキストラン硫酸を使用するものである。当業者は、プローブ長などの要因に対応するために、必要に応じてどのように温度、イオン強度などを調整するかを認識するであろう。
【0215】
遺伝コードの縮退の結果として、本明細書に記載のポリペプチドをコードする多くのヌクレオチド配列が存在することを当業者が理解することになる。これらのポリヌクレオチドのいくつかは、任意の天然遺伝子のヌクレオチド配列と最小の相同性を持つ。それにもかかわらず、コドン使用頻度の差異に起因して変化するポリヌクレオチドは、本発明によって具体的に企図されている。さらに、本明細書に提供するポリヌクレオチド配列を含む遺伝子の対立遺伝子は、本発明の範囲内である。対立遺伝子は、ヌクレオチドの1つまたは複数の突然変異、例えば、欠失、付加、および/または置換などの結果として変更されている内因性遺伝子である。得られるmRNAおよびタンパク質は、変更された構造または機能を有し得るが、その必要はない。対立遺伝子は、標準技法(ハイブリダイゼーション、増幅、および/またはデータベース配列比較など)を使用して同定することができる。
【0216】
本発明のポリヌクレオチドは、化学合成、組換え法、またはPCRを使用して得ることができる。化学的なポリヌクレオチド合成の方法は、当技術分野で周知であり、本明細書で詳細に記載する必要はない。当業者は、所望のDNA配列を生成するために、本明細書に提供する配列、および市販のDNAシンセサイザーを使用することができる。
【0217】
組換え法を使用してポリヌクレオチドを調製するために、本明細書でさらに論じるように、所望の配列を含むポリヌクレオチドを適当なベクター中に挿入することができ、ベクターを次に、複製および増幅のために適当な宿主細胞内に導入することができる。ポリヌクレオチドは、当技術分野で公知の任意の手段によって宿主細胞内に挿入することができる。細胞は、直接取込み、エンドサイトーシス、トランスフェクション、F−接合、または電気穿孔により、外因性ポリヌクレオチドを導入することによって形質転換される。導入された後、外因性ポリヌクレオチドは、非組込みベクター(プラスミドなど)として細胞内で維持し、または宿主細胞ゲノム中に組み込むことができる。このように増幅されたポリヌクレオチドは、当技術分野で周知の方法によって宿主細胞から単離することができる。例えば、Sambrookら、1989を参照。
【0218】
代わりに、PCRにより、DNA配列の複製が可能になる。PCR技術は、当技術分野で周知であり、米国特許第4,683,195号、同第4,800,159号、同第4,754,065号、および同第4,683,202号、ならびにPCR:The Polymerase Chain Reaction、Mullisら編、Birkauswer Press、Boston、1994に記載されている。
【0219】
RNAは、適切なベクター中で単離DNAを使用し、適当な宿主細胞内にこれを挿入することによって得ることができる。細胞が複製し、DNAがRNAに転写される場合、次いで、例えば、Sambrookら、1989、上記に示されているように、当業者に周知の方法を使用してRNAを単離することができる。
【0220】
適当なクローニングベクターを標準技法によって構築することができ、または当技術分野で利用可能な多数のクローニングベクターから選択することができる。選択されるクローニングベクターは、使用されるように意図された宿主細胞によって変更することができるが、有用なクローニングベクターは一般に、自己複製する能力を有することになり、特定の制限エンドヌクレアーゼに対する単一標的を有することができ、かつ/またはベクターを含有するクローンの選択に使用することができるマーカー用遺伝子を担持することができる。適当な例としては、プラスミドならびに細菌ウイルス、例えば、pUC18、pUC19、Bluescript(例えば、pBS SK+)およびその誘導体、mp18、mp19、pBR322、pMB9、ColE1、pCR1、RP4、ファージDNA、ならびにpSA3およびpAT28などのシャトルベクターがある。これらの、および多くの他のクローニングベクターは、市販供給業者、例えば、BioRad、Strategene、およびInvitrogenから入手可能である。
【0221】
発現ベクターは一般に、本発明によるポリヌクレオチドを含有する複製可能ポリヌクレオチドコンストラクトである。発現ベクターは、エピソームとして、または染色体DNAの一体部分として宿主細胞内で複製可能でなければならないことが暗示されている。適当な発現ベクターとしては、それだけに限らないが、プラスミド、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルスを含めたウイルスベクター、コスミド、およびPCT公開第WO87/04462号に開示された発現ベクター(複数可)がある。ベクターコンポーネントとして一般に、それだけに限らないが、以下、すなわちシグナル配列、複製起点、1つまたは複数のマーカー遺伝子、適当な転写制御エレメント(プロモーター、エンハンサー、およびターミネーターなど)の1つまたは複数を挙げることができる。発現(すなわち、翻訳)のために、1つまたは複数の翻訳制御エレメント、例えば、リボソーム結合部位、翻訳開始部位、および終止コドンなども通常必要とされる。
【0222】
対象とするポリヌクレオチドを含有するベクターは、電気穿孔、塩化カルシウム、塩化ルビジウム、リン酸カルシウム、DEAE−デキストラン、または他の物質を使用するトランスフェクション;微粒子銃;リポフェクション;および感染(例えば、この場合、ベクターは、ワクシニアウイルスなどの感染性病原体である)を含めたいくつかの適切な手段のいずれかによって宿主細胞内に導入することができる。ベクターまたはポリヌクレオチドを導入する選択は、宿主細胞の特徴に依存することになることが多い。
【0223】
本発明は、本明細書に記載のポリヌクレオチドのいずれかを含む宿主細胞も提供する。異種DNAを過剰発現することができる任意の宿主細胞を、対象とする抗体、ポリペプチド、またはタンパク質をコードする遺伝子を単離する目的に使用することができる。哺乳動物宿主細胞の非限定例としては、それだけに限らないが、COS、HeLa、およびCHO細胞がある。PCT公開第WO87/04462号も参照。適当な非哺乳動物宿主細胞としては、原核生物(大腸菌(E.coli)またはB.スブチリス(B.subtillis)など)、および酵母(S.セレビサエ(S.cerevisae)、S.ポンベ(S.pombe)、またはK.ラクチス(K.lactis)など)がある。好ましくは、宿主細胞は、存在する場合、宿主細胞中の対象とする、対応する内因性抗体またはタンパク質のレベルより、約5倍高い、より好ましくは10倍高い、さらにより好ましくは20倍高いレベルでcDNAを発現する。FLT3への特異的結合のための宿主細胞のスクリーニングは、イムノアッセイまたはFACSによって行われる。対象とする抗体またはタンパク質を過剰発現する細胞を同定することができる。
【0224】
FLT3抗体を使用する方法
本発明の抗体は、それだけに限らないが、治療的処置方法および診断的処置方法を含めた、様々な用途で有用である。
【0225】
上記の方法によって得られる抗体(例えば、単一特異性および二重特異性)を、医薬として使用することができる。一部の実施形態では、そのような医薬を、がんを治療するために使用することができる。一部の実施形態では、がんは、リンパ腫または白血病などの造血起源のがんである。一部の実施形態では、がんとしては、多発性骨髄腫、悪性形質細胞新生物、ホジキンリンパ腫、結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫、カーレル病および骨髄腫症、形質細胞白血病、形質細胞腫、B細胞性前リンパ性白血病、有毛細胞白血病、B細胞性非ホジキンリンパ腫(NHL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、濾胞性リンパ腫、バーキットリンパ腫、辺縁帯リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、大細胞型リンパ腫、前駆Bリンパ芽球性リンパ腫、骨髄性白血病、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫、濾胞性リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、粘膜関連リンパ組織リンパ腫、小細胞型リンパ性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、原発性縦隔(胸腺)大細胞型B細胞性リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、節性辺縁帯B細胞性リンパ腫、脾辺縁帯リンパ腫、血管内大細胞型B細胞性リンパ腫、原発性滲出性リンパ腫、リンパ腫様肉芽腫症、T細胞/組織球豊富型大細胞型B細胞性リンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫、原発性皮膚びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(下肢型)、高齢者のEBV陽性びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫、炎症を伴うびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫、血管内大細胞型B細胞性リンパ腫、ALK陽性大細胞型B細胞性リンパ腫、形質芽球性リンパ腫、HHV8関連多中心性キャッスルマン病で生じる大細胞型B細胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫とバーキットリンパ腫との間の中間的特徴を有する未分類のB細胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫と古典型ホジキンリンパ腫との間の中間的特徴を有する未分類のB細胞性リンパ腫、または他の造血細胞関連がんである。好ましい実施形態では、がんはAMLである。好ましい実施形態では、がんはALLである。
【0226】
一部の実施形態では、本発明は、FLT3を発現する悪性細胞を有する対象における腫瘍増殖または進行を阻害する方法であって、それを必要とする対象に本明細書に記載のFLT3抗体(例えば、FLT3−CD3二重特異性抗体)を含む有効量の組成物を投与するステップを含む、方法が提供される。他の実施形態では、対象におけるFLT3を発現する細胞の転移を阻害する方法であって、それを必要とする対象に、本明細書に記載のFLT3抗体(例えば、FLT3−CD3二重特異性抗体)を含む有効量の組成物を投与するステップを含む、方法が提供される。他の実施形態では、対象における悪性細胞の腫瘍退縮を誘導する方法であって、それを必要とする対象に、本明細書に記載のFLT3抗体(例えば、FLT3−CD3二重特異性抗体)を含む有効量の組成物を投与するステップを含む、方法が提供される。
【0227】
一部の実施形態では、本発明による抗体(例えば、FLT3−CD3二重特異性抗体)を、それを必要とする患者におけるがんの治療のための医薬の製造において使用することができる。
【0228】
一部の実施形態では、治療は、抗体療法、化学療法、サイトカイン療法、標的療法、ワクチン療法、樹状細胞療法、遺伝子療法、ホルモン療法、外科的切除、レーザー光線療法、および放射線療法からなる群から選択されるがんに対する1つまたは複数の療法との組合せであってもよい。
【0229】
一部の実施形態では、サイトカイン療法において使用されるサイトカインは、インターロイキン(IL)−1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、または17である。一部の実施形態では、サイトカインは、IL−15、IL−12、またはIL−2である。例えば、本発明のFLT3抗体(例えば、FLT3−CD3二重特異性抗体)は、野生型IL−15(例えば、受託番号:>sp|P40933|49−162または配列番号293)と共に(例えば、前、同時または後に)患者に投与される。
【0230】
一部の実施形態では、本発明のFLT3抗体(例えば、FLT3−CD3二重特異性抗体)は、生物治療剤、例えば、限定されるものではないが、抗CTLA−4抗体、抗4−1BB抗体(例えば、PF−04518600)、抗PD−1抗体(例えば、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、もしくはPF−06801591)、抗PD−L1抗体(例えば、アベルマブ、アテゾリズマブ、もしくはデュルバルマブ)、抗TIM3抗体、抗LAG3抗体、抗TIGIT抗体、抗OX40抗体、IL−8抗体、抗HVEM抗体、抗BTLA抗体、抗CD40抗体、抗CD40L抗体、抗CD47抗体、抗CSF1R抗体、抗CSF1抗体、抗MARCO抗体、抗CXCR4抗体、抗VEGFR1抗体、抗VEGFR2抗体、抗TNFR1抗体、抗MCSF抗体(例えば、PD−0360324)、抗TNFR2抗体、抗CD3二重特異性抗体、抗CD19抗体、抗CD20抗体、抗Her2抗体、抗EGFR抗体、抗ICOS抗体、抗CD22抗体、抗CD52抗体、抗CCR4抗体、抗CCR8抗体、抗CD200R抗体、抗VISG4抗体、抗CCR2抗体、抗LILRb2抗体、抗CXCR4抗体、抗CD206抗体、抗CD163抗体、抗KLRG1抗体、抗B7−H4抗体、抗B7−H3抗体、または抗GITR抗体を含む抗体を用いる治療と共に(例えば、前、同時または後に)患者に投与される。
【0231】
一部の実施形態では、本発明のFLT3抗体(例えば、FLT3−CD3二重特異性抗体)は、MS患者のためのCCR2アンタゴニスト(例えば、INC−8761)、抗ウイルス剤、シドフォビルおよびインターロイキン−2、シタラビン(ARA−Cとしても知られる)もしくはナタリズマブ治療または乾癬患者のためのエファリズマブまたはPML患者のための他の治療と共に(例えば、前、同時または後に)患者に投与される。一部の実施形態では、本発明のFLT3抗体(例えば、FLT3−CD3二重特異性抗体)を、化学療法、放射線、免疫抑制剤(シクロスポリン、アザチオプリン、メトトレキサート、ミコフェノレート、およびFK506)またはCAMPATH、サイトトキシン、フルダリビン、シクロスポリン、FK506、ラパマイシン、ミコフェノール酸、ステロイド、FR901228、サイトカイン、および/もしくは照射などの他の免疫除去剤と組み合わせて使用することができる。これらの薬物は、カルシウム依存的ホスファターゼカルシニューリン(シクロスポリンおよびFK506)を阻害するか、または増殖因子誘導性シグナル伝達にとって重要であるp70S6を阻害する(ラパマイシン)。 さらなる実施形態では、本発明のFLT3抗体(例えば、FLT3−CD3二重特異性抗体)を、限定されるものではないが、mTOR阻害剤、ミドスタウリン、レスタウルチニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、キザルチニブ、ポナチニブ、クレノラニブ、パルボシクリブ、およびギルテリチニブを含むキナーゼ阻害剤と組み合わせて使用することができる。
【0232】
一部の実施形態では、本発明のFLT3抗体(例えば、FLT3−CD3二重特異性抗体)を、エピジェネティックモジュレーター、プロテアソーム阻害剤、免疫調節剤(例えば、レナリドミド)、ヘッジホッグ阻害剤、TNFα(腫瘍壊死因子アルファ)、PAP(ホスファチジン酸ホスファターゼ)阻害剤、腫瘍溶解性ウイルス、IDO(インドールアミン−ピロール2,3−ジオキシゲナーゼ)阻害剤、グルタミナーゼGLS1阻害剤、腫瘍ワクチン、TLR(Toll様受容体)アゴニスト(例えば、TLR3、TLR4、TLR5、TLR7、もしくはTLR9)、またはイソクエン酸デヒドロゲナーゼ(IDH)阻害剤と組み合わせて使用することもできる。
【0233】
さらなる実施形態では、本発明のFLT3抗体(例えば、FLT3−CD3二重特異性抗体)は、骨髄移植、CART(キメラ抗原受容体T)細胞、フルダラビン、外部ビーム照射療法(XRT)、シクロホスファミドなどの化学療法、またはOKT3もしくはアレムツズマブなどの抗体を使用するT細胞除去療法と共に(例えば、前、同時または後に)患者に投与される。
【0234】
本発明による抗体(例えば、単一特異性または二重特異性)の投与を、エアロゾル吸入、注射、摂取、輸液、埋込みまたは移植を含む任意の都合のよい様式で実行することができる。本明細書に記載の組成物を、皮下的、皮内的、腫瘍内的、頭蓋内的、結節内的、髄内的、筋肉内的に、静脈内もしくはリンパ管内注射により、または腹腔内的に患者に投与することができる。一実施形態では、本発明の抗体組成物は、好ましくは、静脈内注射によって投与される。
【0235】
一部の実施形態では、抗体(例えば、単一特異性または二重特異性)の投与は、例えば、範囲内の全ての整数値のmg/kgを含む、約0.01〜約20mg/kg体重の投与を含んでもよい。一部の実施形態では、抗体の投与は、範囲内の全ての整数値のmg/kgを含む、約0.1〜10mg/kg体重の投与を含んでもよい。抗体を、1回または複数の用量で投与することができる。一部の実施形態では、抗体の前記有効量を、単回用量として投与することができる。一部の実施形態では、抗体の前記有効量を、一定期間にわたって1回を超える用量として投与することができる。投与のタイミングは、管理する医師の判断内にあり、患者の臨床状態に依存する。個体のニーズは変化するが、特定の疾患または状態のための所与の抗体(例えば、単一特異性または二重特異性)の有効量の最適範囲の決定は、当業者の技術の範囲内にある。有効量は、治療または予防利益を提供する量を意味する。投与される用量は、レシピエントの年齢、健康および体重、もしあれば、同時的治療の種類、治療の頻度および望ましい効果の性質に依存する。一部の実施形態では、ヘテロ多量体抗体またはこれらの抗体を含む組成物の有効量は、非経口的に投与される。一部の実施形態では、投与は、静脈内投与であってもよい。一部の実施形態では、投与は、腫瘍内での注射によって直接行うことができる。
【0236】
一部の実施形態では、本明細書に提供される抗FLT3抗体を、試料(例えば、免疫組織化学アッセイ)または患者におけるFLT3タンパク質を同定するためのアッセイなどの、診断目的で使用することができる。
【0237】
組成物
一態様では、本発明は、薬学的に許容される担体中に、本発明の抗体(例えば、単一特異性もしくは二重特異性)または上記のその一部を含む医薬組成物を提供する。ある特定の実施形態では、本発明のポリペプチドは、中性形態(両性イオン形態を含む)で、または正もしくは負に荷電した種として存在してもよい。一部の実施形態では、ポリペプチドを、対抗イオンと複合体化させて、1つまたは複数のポリペプチドと、薬学的に許容される無機性および有機性の酸および塩基から誘導される1つまたは複数の対抗イオンとを含む複合体を指す、「薬学的に許容される塩」を形成させることができる。
【0238】
抗体(例えば、単一特異性もしくは二重特異性)またはその部分を、単独で、または1つもしくは複数の本発明の他のポリペプチドと組み合わせて、または1つもしくは複数の他の薬物と組み合わせて(またはその任意の組合せとして)投与することができる。本発明の医薬組成物、方法および使用は、かくして、以下で詳述されるような、他の活性薬剤との組合せ(同時投与)の実施形態も包含する。
【0239】
本明細書で使用される場合、本発明の抗体および1つまたは複数の他の治療剤に言及する用語「同時投与」、「同時投与された」および「と組み合わせた」は、以下:(i)本明細書に開示される抗体と、治療剤とのそのような組合せの、治療を必要とする患者への同時的投与であって、そのような成分が、前記成分を実質的に同時に前記患者に放出する単一剤形中で一緒に製剤化される場合の、同時的投与;(ii)本明細書に開示される抗体と、治療剤とのそのような組合せの、治療を必要とする患者への実質的に同時的な投与であって、そのような成分が前記患者によって実質的に同時に摂取される別々の剤形中で互いに別々に製剤化され、その際に、前記成分が実質的に同時に前記患者に放出される場合の、実質的に同時的な投与;(iii)本明細書に開示される抗体と、治療剤とのそのような組合せの、治療を必要とする患者への連続的投与であって、そのような成分が、それぞれの投与の間の有意な時間間隔で前記患者によって連続する時間で摂取される別々の剤形中で互いに別々に製剤化され、その際に、前記成分が実質的に異なる時間で前記患者に放出される場合の、連続的投与;および(iv)本明細書に開示される抗体と、治療剤とのそのような組合せの、治療を必要とする患者への連続的投与であって、そのような成分が、制御された様式で前記成分を放出する単一剤形中で一緒に製剤化され、その際に、それらが同時に、および/または異なる時間に、同時的に、連続的に、および/または重複的に前記患者に放出され、それぞれの部分を同じか、または異なる経路によって投与することができる場合の、連続的投与を意味することが意図され、それを指し、含む。
【0240】
一般に、本明細書に開示される抗体(例えば、単一特異性もしくは二重特異性)またはその部分は、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤と関連する製剤として投与されるのに好適である。本明細書で使用される用語「賦形剤」は、本発明の化合物以外の任意の成分を記載する。賦形剤の選択は、大部分は、特定の投与様式、可溶性および安定性に対する賦形剤の効果、ならびに剤形の性質などの因子に依存する。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される賦形剤」は、生理学的に適合する、任意かつ全ての溶媒、分散媒体、コーティング、抗細菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含む。薬学的に許容される賦形剤の一部の例は、水、食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、ならびにそれらの組合せである。多くの場合、等張剤、例えば、糖、マンニトール、ソルビトールなどのポリアルコール、または塩化ナトリウムを組成物中に含有させることが好ましい。薬学的に許容される物質のさらなる例は、抗体の保存可能期間または有効性を増強する、湿潤剤または湿潤剤もしくは乳化剤、保存剤もしくは緩衝剤などの少量の補助物質である。
【0241】
本発明の医薬組成物およびそれらの調製のための方法は、当業者には容易に明らかとなる。そのような組成物およびそれらの調製のための方法を、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第19版(Mack Publishing Company、1995)に見出すことができる。医薬組成物は、好ましくは、GMP条件下で製造される。
【0242】
本発明の医薬組成物を、バルクで、単回単位用量として、または複数の単回単位用量として調製、包装、または販売することができる。本明細書で使用される場合、「単位用量」は、所定量の活性成分を含む医薬組成物の個別量である。活性成分の量は、一般には、対象に投与される活性成分の用量または例えば、そのような用量の1/2もしくは1/3などの、そのような用量の都合のよい画分に等しい。当技術分野で許容されるペプチド、タンパク質または抗体を投与するための任意の方法を、本明細書に開示されるヘテロ二量体タンパク質およびその部分のために好適に使用することができる。
【0243】
本発明の医薬組成物は、典型的には、非経口投与にとって好適である。本明細書で使用される場合、医薬組成物の「非経口投与」は、対象の組織の物理的裂け目および組織中の裂け目を介する医薬組成物の投与、かくして、一般には、血流、筋肉、または内臓への直接的投与をもたらすことを特徴とする任意の投与経路を含む。かくして、非経口投与は、限定されるものではないが、組成物の注射による、外科的切開を介する組成物の適用による、組織浸透性非外科的創傷を介する組成物の適用による医薬組成物の投与などを含む。特に、非経口投与は、限定されるものではないが、皮下、腹腔内、筋肉内、胸骨内、静脈内、動脈内、髄腔内、脳室内、尿道内、頭蓋内、滑液嚢内の注射または輸注;および腎臓透析輸注技法を含むことが企図される。好ましい実施形態は、静脈内および皮下経路を含む。
【0244】
非経口投与にとって好適な医薬組成物の製剤は、典型的には、一般に滅菌水または滅菌等張性食塩水などの、薬学的に許容される担体と組み合わせた活性成分を含む。そのような製剤を、ボーラス投与または連続投与にとって好適な形態で調製、包装、または販売することができる。注射可能製剤を、保存剤を含有するアンプルまたは多用量容器などの単位剤形中で調製、包装、または販売することができる。非経口投与のための製剤としては、限定されるものではないが、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液、乳濁液、ペーストなどが挙げられる。そのような製剤は、限定されるものではないが、懸濁剤、安定化剤、または分散剤を含む1つまたは複数の追加成分をさらに含んでもよい。非経口投与のための製剤の一実施形態では、活性成分は、再構成される組成物の非経口投与の前に好適なビヒクル(例えば、滅菌非発熱源含有水)を用いた再構成のために乾燥(すなわち、粉末または顆粒)形態で提供される。非経口製剤はまた、塩、炭水化物、および緩衝剤(好ましくは、3〜9のpH)などの賦形剤を含有してもよい水性溶液も含むが、一部の適用については、それらは、滅菌非発熱源含有水などの好適なビヒクルと共に使用される滅菌非水性溶液として、または乾燥形態としてより好適に製剤化することができる。例示的な非経口投与形態としては、滅菌水性溶液、例えば、水性プロピレングリコールまたはデキストロース溶液中の溶液または懸濁液が挙げられる。そのような剤形を、必要に応じて好適に緩衝化することができる。有用である他の非経口投与可能な製剤としては、微結晶形態にあるか、またはリポソーム調製物中の活性成分を含むものが挙げられる。非経口投与のための製剤を、即時および/または改変放出であるように製剤化することができる。改変放出製剤としては、制御、遅延、持続、パルス、標的およびプログラム放出製剤が挙げられる。 例えば、一態様では、必要に応じて、上に列挙された成分の1つまたは組合せと共に、適切な溶媒中に、必要な量のヘテロ二量体タンパク質、例えば、二重特異性抗体を含有させた後、濾過滅菌を行うことによって、滅菌注射溶液を調製することができる。一般に、分散体は、活性化合物を、基本分散媒体および上に列挙されたものに由来する必要な他の成分を含有する滅菌ビヒクル中に含有させることによって調製される。滅菌注射溶液の調製のための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、活性成分と、その予め滅菌濾過された溶液に由来するさらなる所望の成分との粉末を得る、減圧乾燥および凍結乾燥である。例えば、レシチンなどのコーティングの使用により、分散体の場合、必要とされる粒径の維持により、および界面活性剤の使用により、溶液の適切な流動性を維持することができる。組成物中に、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸塩およびゼラチンを含有させることによって、注射可能組成物の長期的吸収をもたらすことができる。
【0245】
投薬レジメンを調整して、最適な所望の応答を提供することができる。例えば、単回ボーラスを投与し、いくつかの分割された用量を、時間をかけて投与するか、または治療状況の緊急性によって示されるように用量を比例的に減少させるか、または増加させることができる。投与の容易性および用量の均一性のために単位剤形中で非経口組成物を製剤化することが特に有利である。本明細書で使用される場合、単位剤形とは、治療しようとする患者/対象のための単一の用量として適した物理的に個別の単位を指す;それぞれの単位は、必要とされる薬学的担体と関連する所望の治療効果をもたらすように計算された所定量の活性化合物を含有する。本発明の単位剤形に関する明細は、(a)化学療法剤の独特の特徴および達成しようとする特定の治療または予防効果、ならびに(b)個体における感度の治療のためのそのような活性化合物を組み合わせる当業界において固有の制限によって一般に決定され、それらに直接依存する。
【0246】
かくして、当業者であれば、本明細書に提供される開示に基づいて、用量および投薬レジメンが治療業界において周知の方法に従って調整されることを理解できる。すなわち、それぞれの薬剤を投与して、患者に対して検出可能な治療利益を提供するための時間的要件が可能であるように、最大耐量を容易に確立することができ、患者に対して検出可能な治療利益を提供する有効量も決定することができる。したがって、ある特定の用量および投与レジメンが本明細書に例示されるが、これらの例はいかなる意味でも、本発明を実施する際に患者に提供することができる用量および投与レジメンを制限しない。
【0247】
用量値は、軽減しようとする状態の種類および重症度によって変化してもよく、単回または複数回用量を含んでもよいことに留意すべきである。任意の特定の対象について、特定の用量レジメンを、個々の必要性および組成物を投与するか、または組成物の投与を管理する者の専門的判断に応じて時間と共に調整するべきであるということ、ならびに本明細書に記載される用量範囲は例示に過ぎず、特許請求される組成物の範囲または実施を制限することを意図するものではないということがさらに理解されるべきである。さらに、本発明の組成物に関する用量レジメンは、疾患の種類、患者の年齢、体重、性別、医学的状態、状態の重症度、投与経路、および使用される特定の抗体を含む、様々な因子に基づいてもよい。かくして、用量レジメンは、広く変化してもよいが、標準的な方法を使用して日常的に決定することができる。例えば、用量を、毒性効果および/または検査値などの臨床効果を含んでもよい、薬物動態または薬力学パラメータに基づいて調整することができる。かくして、本発明は、当業者によって決定される患者内用量上昇を包含する。適切な用量およびレジメンの決定は、関連する業界において周知であり、本明細書に開示される教示が提供されたら、当業者によって包含されることが理解される。
【0248】
一般に、本明細書に記載の抗体(単一特異性または二重特異性)の投与では、候補投与量は、毎日、毎週、2週間毎、3週間毎、4週間毎、5週間毎、6週間毎、7週間毎、8週間毎、10週間毎、12週間毎、または12週間超毎に投与することができる。状態に応じて数日間またはそれ以上にわたって投与を繰り返すことに関して、治療は、症状の所望の抑制が起こるまで、または例えば、がんに関連した症状を低減するのに十分な治療レベルが実現されるまで持続される。この療法の進行は、慣例的な技法およびアッセイによって容易に監視される。投薬レジメン(使用される抗FLT単一特異性または二重特異性抗体を含む)は、経時的に変更することができる。
【0249】
一部の実施形態では、候補投与量は、上述した要因に応じて、約1μg/kg〜約30μg/kg〜約300μg/kg〜約3mg/kg〜約30mg/kg〜約100mg/kg、またはそれ以上のいずれかの範囲の投与量を毎日投与される。例えば、約0.01mg/kg、約0.03mg/kg、約0.1mg/kg、約0.3mg/kg、約1mg/kg、約2.5mg/kg、約3mg/kg、約5mg/kg、約10mg/kg、約15mg/kg、および約25mg/kgの1日投与量を使用することができる。
【0250】
一部の実施形態では、候補投与量は、上述した要因に応じて、約1μg/kg〜約30μg/kg〜約300μg/kg〜約3mg/kg〜約30mg/kg〜約100mg/kg、またはそれ以上のいずれかの範囲の投与量を毎週投与される。例えば、約0.01mg/kg、約0.03mg/kg、約0.1mg/kg、約0.3mg/kg、約0.5mg/kg、約1mg/kg、約2.5mg/kg、約3mg/kg、約5mg/kg、約10mg/kg、約15mg/kg、約25mg/kg、および約30mg/kgの毎週投与量を使用することができる。
【0251】
一部の実施形態では、候補投与量は、上述した要因に応じて、約1μg/kg〜約30μg/kg〜約300μg/kg〜約3mg/kg〜約30mg/kg〜約100mg/kg、またはそれ以上のいずれかの範囲の投与量を2週間毎に投与される。例えば、約0.1mg/kg、約0.3mg/kg、約1mg/kg、約2.5mg/kg、約3mg/kg、約5mg/kg、約10mg/kg、約15mg/kg、約25mg/kg、および約30mg/kgの2週間毎の投与量を使用することができる。
【0252】
一部の実施形態では、候補投与量は、上述した要因に応じて、約1μg/kg〜約30μg/kg〜約300μg/kg〜約3mg/kg〜約30mg/kg〜約100mg/kg、またはそれ以上のいずれかの範囲の投与量を3週間毎に投与される。例えば、約0.1mg/kg、約0.3mg/kg、約1mg/kg、約2.5mg/kg、約3mg/kg、約5mg/kg、約10mg/kg、約15mg/kg、約25mg/kg、約30mg/kg、約35mg/kg、約40mg/kg、約45mg/kg、および約50mg/kgの3週間毎の投与量を使用することができる。
【0253】
一部の実施形態では、候補投与量は、上述した要因に応じて、約1μg/kg〜約30μg/kg〜約300μg/kg〜約3mg/kg〜約30mg/kg〜約100mg/kg、またはそれ以上のいずれかの範囲の投与量を毎月または4週間毎に投与される。例えば、約0.1mg/kg、約0.3mg/kg、約1mg/kg、約2.5mg/kg、約3mg/kg、約5mg/kg、約10mg/kg、約15mg/kg、約25mg/kg、約30mg/kg、約35mg/kg、約40mg/kg、約45mg/kg、および約50mg/kgの毎月投与量を使用することができる。
【0254】
他の実施形態では、候補投与量は、上述した要因に応じて、約0.01mg〜約1200mgまたはそれ以上の範囲の投与量を毎日投与される。例えば、約0.01mg、約0.1mg、約1mg、約10mg、約50mg、約100mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg、約1000mg、約1100mg、または約1200mgの1日投与量を使用することができる。
【0255】
他の実施形態では、候補投与量は、上述した要因に応じて、約0.01mg〜約2000mgまたはそれ以上の範囲の投与量を毎週投与される。例えば、約0.01mg、約0.1mg、約1mg、約10mg、約50mg、約100mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg、約1000mg、約1100mg、約1200mg、約1300mg、約1400mg、約1500mg、約1600mg、約1700mg、約1800mg、約1900mg、または約2000mgの毎週投与量を使用することができる。
【0256】
他の実施形態では、候補投与量は、上述した要因に応じて、約0.01mg〜約2000mgまたはそれ以上の範囲の投与量を2週間毎に投与される。例えば、約0.01mg、約0.1mg、約1mg、約10mg、約50mg、約100mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg、約1000mg、約1100mg、約1200mg、約1300mg、約1400mg、約1500mg、約1600mg、約1700mg、約1800mg、約1900mg、または約2000mgの2週間毎の投与量を使用することができる。
【0257】
他の実施形態では、候補投与量は、上述した要因に応じて、約0.01mg〜約2500mgまたはそれ以上の範囲の投与量を3週間毎に投与される。例えば、約0.01mg、約0.1mg、約1mg、約10mg、約50mg、約100mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg、約1000mg、約1100mg、約1200mg、約1300mg、約1400mg、約1500mg、約1600mg、約1700mg、約1800mg、約1900mg、約2000mg、約2100mg、約2200mg、約2300mg、約2400mg、または約2500mgの3週間毎の投与量を使用することができる。
【0258】
他の実施形態では、候補投与量は、上述した要因に応じて、約0.01mg〜約3000mgまたはそれ以上の範囲の投与量を4週間毎または毎月投与される。例えば、約0.01mg、約0.1mg、約1mg、約10mg、約50mg、約100mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg、約1000mg、約1100mg、約1200mg、約1300mg、約1400mg、約1500mg、約1600mg、約1700mg、約1800mg、約1900mg、約2000mg、約2100mg、約2200mg、約2300mg、約2400mg、約2500mg、約2600mg、約2700mg、約2800mg、約2900mg、または約3000mgの毎月投与量を使用することができる。
【0259】
キット
本発明はまた、本発明の方法における使用のためのキットも提供する。本発明のキットは、本明細書に記載の抗体(例えば、単一特異性または二重特異性)を含む1つまたは複数の容器、および本明細書に記載の本発明の方法のいずれかに従って使用するための指示書を含む。一般に、これらの指示書は、上述した治療的処置のための抗体タンパク質の投与の記述を含む。
【0260】
本明細書に記載の抗体(例えば、単一特異性または二重特異性)の使用に関する指示書は、一般に、意図された治療のための投与量、投薬スケジュール、および投与経路に関する情報を含む。容器は、単位用量、バルクパッケージ(例えば、マルチドーズパッケージ)、またはサブユニット用量のものであり得る。本発明のキット内に供給される指示書は、一般に、ラベルまたは添付文書(例えば、キット内に含まれる紙シート)での書面による指示書であるが、機械可読な指示書(例えば、磁気または光記憶ディスクで携帯される指示書)も許容できる。
【0261】
本発明のキットは、適当な包装内にある。適当な包装としては、それだけに限らないが、バイアル、ボトル、広口瓶、フレキシブル包装(例えば、密封されたマイラーバッグまたはビニール袋)などがある。特定のデバイス、例えば、吸入器、経鼻投与デバイス(例えば、アトマイザ)、またはミニポンプなどの注入デバイスなどと組み合わせて使用するためのパッケージも企図されている。キットは、滅菌したアクセスポートを有することができる(例えば、容器は皮下注射針で穿孔可能なストッパーを有する静脈注射用溶液バッグまたはバイアルであり得る)。容器も、滅菌したアクセスポートを有することができる(例えば、容器は皮下注射針で穿孔可能なストッパーを有する静脈注射用溶液バッグまたはバイアルであり得る)。組成物中の少なくとも1種の活性剤は、二重特異性抗体である。容器は、第2医薬活性剤をさらに含むことができる。
【0262】
キットは、追加のコンポーネント、例えば、緩衝液および解釈情報などを任意選択により提供することができる。通常、キットは、容器、および容器上の、またはこれに付随したラベルまたは添付文書(複数可)を含む。
【0263】
生物学的寄託
本発明の代表的な材料は、2017年6月1日にアメリカンタイプカルチャーコレクション、10801 University Boulevard、Manassas、Va. 20110−2209、USAに寄託した。ATCC受託番号PTA−124230を有するベクターP5F7g2−VLは、P5F72g軽鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドであり、ATCC受託番号PTA−124229を有するベクターP5F7g2−VHは、P5F7g2重軽鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドである。寄託は、特許手続上の微生物の寄託の国際承認に関するブダペスト条約およびその下の規定(ブダペスト条約)の条項下で行った。これにより、寄託日から30年間、寄託物の生存培養が保証される。寄託物は、ブダペスト条約の条項、ならびにPfizer,Inc.とATCCとの契約の対象であって、関係する米国特許の発行の後、または米国もしくは外国特許出願の公共への公開の後のいずれか早い方に、公共に寄託物の培養の子孫の永続的および非制限的利用可能性を保証し、米国特許法第122条およびこれに準じた長官規則(886OG638を特に参照して連邦規則法典第37巻第1.14条を含む)によって、米国特許商標庁長官が権利を有すると決定したものへの子孫の利用可能性を保証する、契約の対象の下でATCCによって利用可能にされることになる。
【0264】
本願の代理人は、寄託した材料の培養物が、適当な条件下で培養されたとき、死滅し、または失われ、もしくは破壊された場合、通知された後、材料を別の同じものに即座に置き換えることに同意している。寄託した材料の利用可能性は、任意の政府の権限下でその特許法に従って付与された権利に違反した本発明の実施のライセンスと解釈されるべきでない。
【0265】
本明細書に開示され、2017年6月1日にAmerican Type Culture Collection、10801、University Boulevard、Manassas、Va.20110−2209、USAに寄託された材料も参照する。ATCC受託番号PTA−124228を有するベクターPE310−VLは、PE310軽鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドであり、ATCC受託番号PTA−124227を有するベクターP3E10−VHは、PE310重鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドである。また、寄託物は、ブダペスト条約の規定の下で、上にまとめられたその諸条件に従って作製されたものである。
【0266】
以下の実施例は、例示的な目的だけのために提供されており、本発明の範囲を決して限定するように意図されていない。実際に、本明細書に示し、記載したものに加えて、本発明の様々な修正形態が、前述の説明から当業者に明らかとなり、添付の特許請求の範囲内に入る。
【実施例】
【0267】
(実施例1)
37℃でのヒトFLT3/FLT3抗体相互作用の動力学および親和性の決定
本実施例は、37℃での様々な抗FLT3抗体の動力学および親和性を決定する。全ての実験は、Biacore T200表面プラズモン共鳴バイオセンサー(GE Lifesciences、Piscataway、NJ)で行った。
【0268】
センサーチップの準備を、25℃で、10mMのHEPES、150mMのNaCl、0.05%(v/v)Tween−20、pH7.4からなるランニング緩衝液で行った。Biacore CM4センサーチップの全てのフローセルを、400mMのEDCおよび100mMのNHSの1:1(v/v)混合物で7分、10μL/分の流速で活性化することによって、抗ヒトFcセンサーチップを作製した。抗ヒトFc試薬(ヤギ抗ヒトIgG Fc、SouthernBiotechカタログ番号2081−01)を、10mMの酢酸ナトリウム、pH4.5中に30μg/mLまで希釈し、全てのフローセル上に7分、20μL/分で注入した。全てのフローセルを、150mMのホウ酸緩衝液、pH8.5中の100mMのエチレンジアミンで7分、10μL/分でブロックした。
【0269】
実験は、37℃で、10mMのHEPES、150mMのNaCl、0.05%(v/v)Tween−20、pH7.4、1mg/mLのBSAからなるランニング緩衝液を使用して行った。FLT3抗体を、希釈していない上清から下流のフローセル(フローセル2、3、および4)に、10μL/分の流速で1分、補足した。異なる抗体を各フローセルに捕捉した。フローセル1は、参照表面として使用した。FLT3抗体を捕捉した後、分析物(緩衝液、hFLT3)を、30μL/分で全てのフローセルに2分、注入した。分析物を注入した後、解離を10分間モニタリングし、その後、75mMのリン酸の1分間の注入を3回行って、全てのフローセルを再生した。各捕捉したFLT3抗体について、以下の分析物の注入を行った:緩衝液、11nMのhFLT3、33nMのhFLT3、100nMのhFLT3、および300nMのhFLT3。二重参照の目的のために、緩衝液サイクルを、捕捉した各FLT3抗体について回収した(Myszka,D.G.Improving biosensor analysis.J.Mol.Recognit.12:279〜284(1999)において記載されている二重参照)。二重参照したセンサーグラムは、単純な1:1ラングミュア物質輸送結合モデル(simple 1:1 Langmuir with mass transport binding model)に全体的に適合していた。
【0270】
試験した抗FLT3抗体の動力学および親和性パラメータを、表6に示す。
【0271】
【表6】
【0272】
(実施例2)
in vitroでのFlt3−CD3二重特異性IgG標的化ドメインを使用するAML細胞株のT細胞媒介性殺傷
本実施例は、Flt3陽性細胞中での抗Flt3/CD3 hIgG2ΔA_D265A二重特異性抗体のin vitroでの細胞傷害性を示す。
【0273】
ヒト抗Flt3(P5F7p、P5F7g2、P5F7g2、P5F7g3、P5F7g4)およびヒト抗CD3(h2B4−VH−hnps VL−TK(「H2B4」))抗体を、ヒトIgG2(配列番号236)のヒンジ領域では223、225、および228位での二重特異性交換(例えば、(C223EまたはC223R)、(E225EまたはE225R)、および(P228EまたはP228R))ならびにCH3領域中では409または368位での二重特異性交換(例えば、K409RまたはL368E(EU番号付けスキーム))のために、一方のアーム上ではEEEEおよび他方のアーム上ではRRRRで操作されたヒトIgG2dA_D265Aとして発現させた。FLT3/CD3二重特異性抗体はまた、265位(EU番号付けスキーム)でDからAへの突然変異を有する。
【0274】
ヒトPBMCに由来するCD3+T細胞を、Pan T細胞単離キット、ヒト(Miltenyi、San Diego、CA)を使用して負の選択をした。標的発現(Eol1)細胞およびCD3+T細胞を、それぞれ、20000および100000細胞/ウェルで透明U底プレート上に播種した。細胞を、8倍連続希釈された二重特異性抗体で処理した。AML細胞枯渇を、処理の24時間後にフローサイトメトリー分析によって決定した。細胞枯渇を、対照処理細胞、この場合、
図1中のH2B4のみとの対照によって測定した。EC50を、Prismソフトウェアによって算出した。細胞傷害性を、
図1に示されるようにこのEol1細胞株において観察した。
【0275】
(実施例3)
Flt3−CD3二重特異性IgGは、AML同所性異種移植モデルにおいて腫瘍除去を誘導する
本実施例は、同所性Eol1異種移植モデルにおける腫瘍退縮および阻害を例示する。
【0276】
Flt3二重特異性抗体のin vivoでの有効性試験を、ルシフェラーゼおよびGFPを発現するEol1同所性モデルを用いて実施した。300,000個のEol1 LucGFP細胞を、尾静脈を介して6〜8週齢のメスNod/Scid/IL2Rg
−/−(NSG)動物に静脈内注射した。D−ルシフェリン(Regis Techologies、Morton Grove、IL)の腹腔内注射(15mg/mLで動物あたり200μL)、次いで、イソフルランを用いる麻酔、次いで、全身生物発光イメージング(BLI)により、全身腫瘍組織量のモニタリングが可能になった。腫瘍細胞によって発現されたルシフェラーゼと、ルシフェリンとの相互作用によって放出された生物発光シグナルを、IVIS Spectrum CT(Perkin Elmer、MA)を使用するイメージングによって捕捉し、Living Image 4.4(Caliper Life Sciences、Alameda、CA)を使用して全光束(光子/sec)として定量した。全光束が全ての動物について15E6の平均に達した時、動物に、ボーラス尾静脈を介して、PBMCに由来する2000万個の拡張T細胞を注射した。簡単に述べると、AllCells(Alameda、CA)から購入したpan−T細胞を、ヒトT細胞活性化/拡張キット(Miltenyi、San Diego、CA)を用いて活性化した。3日後、20ng/mlのIL2(Miltenyi、Bergisch Gladbach、Germany)を、11日目まで2日毎に添加した。細胞を収獲し、活性化/拡張ビーズを磁気的に除去し、細胞を洗浄し、PBS中に再懸濁した。T細胞注射の2日後、マウスを上記のように画像化し、動物を7匹のマウスの群に無作為化した:P1A5 10μg/kg(ug/kg)、P4A4 10upk、P4E5 10upk、P5F7 10upk、P5F7 30upk、およびStumpy(30μg/kgのCD3結合のみの二重特異性対照)。T細胞埋込みの3日後、単回用量のヒト抗Flt3/CD3(一方のアーム中の上に列挙されたFLT3抗体および別のアーム中のCD3抗体(h2B4−VH−hnps VL−TK))二重特異性抗体および陰性(NNC)対照二重特異性抗体を、ボーラス尾静脈注射によって投与した。AML同所性モデルの評価項目である、動物が後肢麻痺を示した時、動物を犠死させた。
図2は、単回用量のヒト抗Flt3/CD3二重特異性抗体が、用量依存的様式で腫瘍退縮をもたらしたことを示す。
【0277】
(実施例4)
Flt3−CD3二重特異性IgG標的化ドメイン4は、AML同所性異種移植モデルにおいて二重特異性抗体標的化ドメイン5と比較してより強力である
本実施例は、ドメイン5標的化抗体と比較したFlt3ドメイン4標的化抗体の改善された腫瘍活性を示す。
【0278】
Eol1同所性異種移植モデルを、実施例3に記載のように実施した。この例では、ドメイン4標的化二重特異性6B7抗体またはドメイン5標的化二重特異性P8B6抗体を、10upkの単回用量で投与した。Stumpyは、CD3結合のみの対照二重特異性抗体である。試験した用量で、P8B6は抗腫瘍活性を有していなかったが、6B7は腫瘍除去性であった。
【0279】
(実施例5)
Flt3二重特異性抗体のEC50値は、長期in vitro殺傷アッセイにおいてIL15の存在下で有意に低下する
本実施例は、IL−15と組み合わせた、Flt3陽性細胞中での抗Flt3/CD3 P5F7二重特異性抗体のin vitroでの細胞傷害性を示す。
【0280】
予め凍結したヒトPan Tリンパ球を解凍し、10%血清(Hyclone)、1%Pen Strep(Corning)および15ユニット/mLのヒトIL−2(eBioscience)を添加したRPMI−1640培地中に1日間回収した。1日間回収されたヒトTリンパ球を収集し、完全RPMI培地中に、1x10
6細胞/mLで再懸濁した。Flt3発現EOL1細胞を、96ウェルU底プレート中、100μl中の50,000個の細胞で播種した。50,000個の生きているヒトCD3+リンパ球を、ウェルあたり25μLの培地中、播種された腫瘍細胞に添加した。Flt3/CD3 P5F7二重特異性抗体の5点5倍連続希釈液を調製した(用量範囲1x10
−11nM〜8x10
−14nM最終濃度)。希釈した二重特異性抗体をプレートに添加し、37℃で2日間、5日間または7日間インキュベートすることによって、細胞傷害性アッセイを開始した。Flt3/CD3二重特異性抗体により再指向されたT細胞の抗腫瘍有効性に対するIL15の効果を試験するために、細胞培養物に10ng/mlのIL15またはビヒクル対照を投与した。それぞれの時点でルシフェラーゼ分析によってAML細胞枯渇を決定した。次いで、GraphPad Prism 7.0ソフトウェア(GraphPad Software)を使用して、Flt3/CD3 P5F7二重特異性抗体のLog10濃度に対する特異的細胞傷害性パーセントの非線形回帰プロットにより、EC50値を決定した。
図4Aおよび
図4Bは、それぞれ、長期殺傷アッセイにおけるIL15の非存在下または存在下でのFlt3/CD3二重特異性抗体の改善された抗腫瘍活性を示す。
【0281】
(実施例6)
AML患者に由来する骨髄穿刺液中に存在する自家T細胞は、Flt3/CD3 P5F7二重特異性抗体の存在下でAML芽球を殺傷するのに有効である
本実施例は、抗Flt3/CD3 P5F7二重特異性抗体が、自家T細胞に、ex vivoでAML芽球を除去するように効率的に再指向させることを示す。
【0282】
患者T細胞およびAML細胞を使用して細胞傷害活性を決定するために、新鮮な骨髄穿刺液をFred Hutchinson Cancer Research Center(Seattle、WA)から購入した。それぞれの試料を、PerCP−cy5.5抗ヒトCD3抗体(BioLegend、San Diego、CA)、BV510抗ヒトCD8抗体(BioLegend、San Diego、CA)、BUV650抗ヒトCD4抗体(BioLegend、San Diego、CA)、PE−Texas Red抗ヒトCD33抗体(BioLegend、San Diego、CA)、APC抗ヒトFlt3抗体(BD Biosciences、San Jose、CA)で染色することにより、標的細胞(AML芽球)およびエフェクター細胞(T細胞)の数を決定した。各患者に由来する250,000個の総骨髄細胞を、1mlの培地中、24ウェルプレート上に播種し、5%CO
2雰囲気下、37℃で培養した。P5F7 Flt3/CD3二重特異性抗体を、完全RPMI培地中、10nMに希釈し、5点10倍連続希釈液を調製した(用量範囲10nM〜0.01nM)。希釈した二重特異性抗体をプレートに添加し、37℃で4日間細胞をインキュベートすることによって、細胞傷害性アッセイを開始した。
【0283】
4日間インキュベートした後、FACS Divaソフトウェア(BD Biosciences)を使用するLSRIIフローサイトメトリー機器上で、それぞれ、CD33+CD45dim AML芽球の数、CD4+CD8+細胞の数、およびCD25+CD4+またはCD25+CD8+細胞のパーセンテージを計数することによって、AML患者細胞の生存能力、T細胞の増殖および活性化を評価した。結果は、自家T細胞の存在下で高濃度のFLT3/CD3二重特異性抗体(P5F7)によって誘導された一次AML細胞の有効な殺傷を示す(
図5A、5B、5C、5D、5E、および5Fを参照)。
【0284】
開示される教示を、様々な用途、方法、キット、および組成物を参照して記載してきたが、様々な変更および改変を、本明細書の教示および以下の請求項に係る発明から逸脱することなく行うことができることが理解されるであろう。上記の実施例は、開示される教示をより良好に例示するために提供されており、本明細書に提示した教示の範囲を限定するように意図されていない。本教示をこれらの例示的な実施形態の観点から記載してきたが、当業者は、これらの例示的な実施形態の多数のバリエーションおよび改変が、過度の実験を伴うことなく可能であることを容易に理解するであろう。すべてのこのようなバリエーションおよび改変は、本教示の範囲内である。
【0285】
特許、特許出願、論文、教科書などを含む本明細書に引用したすべての参考文献、ならびにこれらに引用された参考文献は、これらが既に組み込まれていない程度に、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。組み込まれた文献および同様の資料の1つまたは複数が、それだけに限らないが、定義された用語、用語の使用法、記載した技法などを含めて、本願と異なる、または矛盾する場合には、本願が支配する。
【0286】
上記の記載および実施例は、本発明のある特定の具体的な実施形態を詳述し、本発明者らが企図するベストモードを記述する。しかし、どんなに詳細に上記のことが本文中に現れる場合があっても、本発明を多くの方法で実践することができ、本発明は、添付の特許請求の範囲およびその任意の均等物に従って解釈されるべきであることが理解されるであろう。