(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-521484(P2020-521484A)
(43)【公表日】2020年7月27日
(54)【発明の名称】人工多能性幹細胞を生成するための基質および方法
(51)【国際特許分類】
C12N 1/00 20060101AFI20200626BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20200626BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20200626BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20200626BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20200626BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20200626BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20200626BHJP
A61P 9/04 20060101ALI20200626BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20200626BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20200626BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20200626BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20200626BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20200626BHJP
A61K 35/545 20150101ALI20200626BHJP
A61L 27/38 20060101ALI20200626BHJP
A61L 27/36 20060101ALI20200626BHJP
C12N 5/074 20100101ALN20200626BHJP
C07K 14/78 20060101ALN20200626BHJP
C07K 14/475 20060101ALN20200626BHJP
C07K 14/65 20060101ALN20200626BHJP
C07K 14/50 20060101ALN20200626BHJP
C07K 14/485 20060101ALN20200626BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20200626BHJP
C12N 15/85 20060101ALN20200626BHJP
C12N 15/88 20060101ALN20200626BHJP
C12N 5/0781 20100101ALN20200626BHJP
C12N 5/0783 20100101ALN20200626BHJP
C12N 5/0786 20100101ALN20200626BHJP
【FI】
C12N1/00 FZNA
C12M1/00 A
C12N5/10
A61P25/28
A61P25/16
A61P9/00
A61P3/10
A61P9/04
A61P13/12
A61P35/00
A61P21/00
A61P7/06
A61P11/00
A61K35/545
A61L27/38
A61L27/38 300
A61L27/36 100
C12N5/074
C07K14/78
C07K14/475
C07K14/65
C07K14/50
C07K14/485
C12N15/12
C12N15/85 Z
C12N15/88 Z
C12N5/0781
C12N5/0783
C12N5/0786
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】45
(21)【出願番号】特願2019-566085(P2019-566085)
(86)(22)【出願日】2018年5月30日
(85)【翻訳文提出日】2020年1月8日
(86)【国際出願番号】EP2018064296
(87)【国際公開番号】WO2018220081
(87)【国際公開日】20181206
(31)【優先権主張番号】1708554.9
(32)【優先日】2017年5月30日
(33)【優先権主張国】GB
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】502194159
【氏名又は名称】ザ クイーンズ ユニバーシティ オブ ベルファスト
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】マルガリティ,アンドリアナ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィラ−ゴンザレス,マルタ
(72)【発明者】
【氏名】ケライニ,ソフィア
(72)【発明者】
【氏名】スティット,アラン
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
4C081
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029BB11
4B029CC02
4B029GA03
4B065AA94X
4B065AC20
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4B065BB12
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4B065BB19
4B065BC46
4B065CA44
4C081BA17
4C081BC01
4C081CD34
4C081EA01
4C087AA01
4C087AA03
4C087BB64
4C087NA20
4C087ZA02
4C087ZA16
4C087ZA36
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4C087ZA59
4C087ZA81
4C087ZA94
4C087ZB26
4C087ZC35
4H045AA30
4H045BA10
4H045EA60
(57)【要約】
本開示は、体細胞の人工多能性幹細胞への再プログラミングを促進するための組成物および方法に関し、当該組成物はゼラチンとラミニンとを含む。本開示は更に、人工多能性幹細胞を産生するための体細胞の調製方法および人工多能性幹細胞を産生するための方法に関し、したがって、研究および治療で使用するための増殖体細胞および人工多能性幹細胞の産生に有用な方法を提供する。よって、本開示は、人工多能性幹細胞を産生するための体細胞の調製方法であって、(i)体細胞を試料から単離し、(ii)体細胞を所定期間増殖させることを含み、当該増殖体細胞がTERT1を発現する方法、ならびに、当該増殖体細胞から人工多能性幹細胞を産生するための方法であって、(a)人工多能性幹細胞再プログラミング因子を発現する遺伝要素、場合によりエピソーム遺伝要素を当該増殖体細胞に導入し、(b)当該遺伝要素を含む増殖体細胞を培養し、それにより人工多能性幹細胞を産生する方法を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
約0.01w/v%〜約10w/v%の濃度のゼラチンと、約1μg/mL〜約1000μg/mLの濃度のラミニンとを含む、体細胞の人工多能性幹細胞への再プログラミングを促進するための組成物。
【請求項2】
約0.04w/v%〜約10w/v%、場合により約0.04w/v%〜約5w/v%の濃度のゼラチンと、約50μg/mL〜約200μg/mLの濃度のラミニンとを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
約0.04w/v%〜約10w/v%、場合により約0.04w/v%〜約5w/v%の濃度のゼラチンと、約50μg/mL〜約100μg/mLの濃度のラミニンとを含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
約0.5w/v%〜約10w/v%、場合により約0.5w/v%〜約5w/v%の濃度のゼラチンと、約50μg/mL〜約200μg/mLの濃度のラミニンとを含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項5】
約0.5w/v%〜約10w/v%、場合により約0.5w/v%〜約5w/v%の濃度のゼラチンと、約50μg/mL〜約100μg/mLの濃度のラミニンとを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
約1w/v%〜約10w/v%、場合により約1w/v%〜約5w/v%の濃度のゼラチンと、約50μg/mL〜約200μg/mLの濃度のラミニンとを含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項7】
約1w/v%〜約10w/v%、場合により約1w/v%〜約5w/v%の濃度のゼラチンと、約50μg/mL〜約100μg/mLの濃度のラミニンとを含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記ラミニンが組換えヒトラミニンである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記ゼラチンが組換えヒトゼラチンである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物が水性組成物であり、場合により、前記水性組成物が液体またはゲルを含むか、またはそれからなる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
溶媒の添加により水性組成物に形成され得る乾燥した組成物または実質的に乾燥した組成物として提供される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記溶媒が、生理食塩水、場合によりリン酸緩衝生理食塩水;細胞培養培地;および水、場合により滅菌水のうちの1つ以上から選択される、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
1つ以上の追加の細胞外マトリックス成分を更に含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記1つ以上の追加の細胞外マトリックス成分が、コラーゲン、エラスチン、フィブロネクチン、ニドゲン、およびヘパラン硫酸プロテオグリカンから選択される、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
1つ以上の成長因子を更に含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記1つ以上の成長因子が、形質転換成長因子β(TGF−β)表皮成長因子(EGF)、インスリン様成長因子(IGF)、および線維芽細胞成長因子(FGF)から選択される、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
Rho関連タンパク質キナーゼ(ROCK)阻害剤を更に含む、請求項1〜16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記ROCK阻害剤が、Y−27632二塩酸塩(trans−4−[(1R)−1−アミノエチル]−N−4−ピリジニルシクロヘキサンカルボキサミド二塩酸塩)、GSK429286A(N−(6−フルオロ−1H−インダゾール−5−イル)−6−メチル−2−オキソ−4−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]−3、4−ジヒドロ−1H−ピリジン−5−カルボキサミド)、Y−30141(4−(1−アミノエチル)−N−(1H−ピロロ(2、3−b)ピリジン−4−イル)シクロヘキサンカルボキサミド二塩酸塩)、RKI−1447(N−[(3−ヒドロキシフェニル)メチル]−N’−[4−(4−ピリジニル)−2−チアゾリル]尿素二塩酸塩)、ファスジル、およびリパスジル(商標名Glanatec)のうちの1つ以上から選択される、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記ROCK阻害剤が、約1μM〜1mM、場合により約1μM〜100mM、場合により約1μM〜1mM、場合により約1μM〜100μM、場合により約1μM〜50μM、場合により約5μM〜50μM、場合により約10μM〜50μM、更に場合により約10μMの濃度で前記組成物中に存在する、請求項17または18に記載の組成物。
【請求項20】
Oct4、Sox2、Klf4、c−Myc、Lin28、Nanog、およびSV40ラージTのうちの1つ以上から選択される人工多能性幹細胞再プログラミング因子を含むか、またはそれからなる遺伝要素、場合によりエピソーム遺伝要素を更に含む、請求項1〜19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
前記遺伝要素がTERT1を更に含む、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記遺伝因子が、体細胞へのトランスフェクションに適したプラスミドまたは他のベクターに含まれる核酸コード配列、場合によりDNAヌクレオチド配列を含む、請求項20または21に記載の組成物。
【請求項23】
体細胞の内部に遺伝要素を送達するのに適した担体を更に含む、請求項1〜22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
前記担体が、前記体細胞への遺伝要素のナノ粒子媒介送達のためのナノ粒子を含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記担体が脂質ベースのナノ粒子を含み、場合により前記脂質ベースのナノ粒子ナノ粒子がリポソーム、場合によりカチオン性リポソームを含む、請求項23または24に記載の組成物。
【請求項26】
体細胞を人工多能性幹細胞に再プログラミングするための方法における、請求項1〜25のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項27】
請求項1〜25のいずれか一項に記載の組成物を含む、細胞培養容器。
【請求項28】
請求項1〜25のいずれか一項に記載の組成物を含む、キット。
【請求項29】
細胞培養容器を更に含む、請求項28に記載のキット。
【請求項30】
前記細胞培養容器が前記組成物を含む、請求項29に記載のキット。
【請求項31】
体細胞を人工多能性幹細胞に再プログラミングする方法であって、
(i)前記体細胞を請求項1〜25のいずれか一項に記載の組成物と接触させ、
(ii)人工多能性幹細胞再プログラミング因子を発現する遺伝要素、場合によりエピソーム遺伝要素を前記体細胞に導入し、
(iii)前記遺伝要素を含む前記増殖体細胞を培養し、それにより人工多能性幹細胞を産生する、
ことを含む、方法。
【請求項32】
工程(i)において、前記体細胞を、前記組成物と接触するときに細胞懸濁培地に懸濁させる、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記懸濁培地中に懸濁させた体細胞を組成物と接触させることにより、前記懸濁培地が前記組成物を溶解する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記体細胞が末梢血単核細胞を含み、場合により、前記末梢血単核細胞が単球を含む、請求項31〜33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
人工多能性幹細胞再プログラミング因子を発現する前記遺伝要素を、前記組成物に含まれるナノ粒子を介して前記体細胞に導入する、請求項31〜35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記遺伝要素を含む体細胞から産生された人工多能性幹細胞が内皮細胞に分化する、請求項31〜36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
人工多能性幹細胞を産生するための体細胞の調製方法であって、
(i)試料から体細胞を単離し、
(ii)前記体細胞を所定期間増殖させる、
ことを含み、前記増殖させた体細胞がTERT1を発現する、方法。
【請求項38】
前記体細胞を、約14日未満、場合により約13日未満、場合により約12日未満、場合により約11日未満、場合により約10日未満、場合により約9日未満、場合により約8日未満、場合により約7日未満、更に場合により約7日間増殖させる、請求項37記載の方法。
【請求項39】
前記体細胞を、少なくとも約1日、場合により少なくとも約2日、場合により少なくとも約3日、場合により少なくとも約4日、場合により少なくとも約5日、場合により少なくとも約6日、更に場合により少なくとも約7日間増殖させる、請求項37または38に記載の方法。
【請求項40】
TERT1発現が、増殖前の前記体細胞におけるTERT1発現の少なくとも約10%、場合により少なくとも約20%、場合により少なくとも約30%、場合により少なくとも約40%、場合により少なくとも約50%、場合により少なくとも約60%、場合により少なくとも約70%、場合により少なくとも約80%、場合により少なくとも約90%、場合により約100%である、請求項37〜39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記試料が被験体から得られた生体試料であり、場合により、前記試料が被験体から得られた血液試料である、請求項37〜40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記体細胞が末梢血単核細胞であり、場合により、前記末梢血単核細胞が単球である、請求項37〜41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記血液試料の容量が、約10ml未満、場合により約5ml未満、場合により約2.5ml未満、場合により約1ml未満、更に場合により約1mlである、請求項41または42に記載の方法。
【請求項44】
前記被験体がヒト被験体であり、場合により、前記被験体が糖尿病に罹患している、請求項41〜43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記末梢血単核細胞が動員されておらず、最適には、前記末梢血単核細胞が外因的に適用された顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)または顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)で動員されていない、請求項42〜44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記体細胞を増殖培地で増殖させ、場合により、前記増殖培地がエリスロポエチン(EPO)、IL−3、幹細胞因子(SCF)、インスリン様成長因子−1(IGF−1)、デキサメタゾン、およびホロトランスフェリンのうちの1つ以上を補充した無血清培地(SFM)を含む、請求項37〜45のいずれか一項記載の方法。
【請求項47】
前記体細胞を、約1〜7日間、場合により約2〜6日間、場合により約2〜5日間、場合により約2〜4日間、場合により2〜3日、更に場合により約3日間の第一増殖期間中、前記増殖培地で増殖させる、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記体細胞を、約1〜7日間、場合により約1〜6日間、場合により約1〜5日間、場合により約1〜4日間、場合により1〜3日、場合により2〜3日、更に場合により約3日間の第二増殖期間中、前記増殖培地で増殖させる、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
(iii)前記増殖体細胞を凍結保存する
ことを更に含む、請求項37〜48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記増殖させたおよび/または増殖させていない体細胞におけるTERT1発現を測定し、場合により、前記増殖体細胞がTERT1を発現する場合、人工多能性幹細胞を産生するのに適していると判断する、請求項37〜49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
人工多能性幹細胞を産生するための方法であって、
(a)請求項37〜50のいずれか一項に記載の方法に従って産生される、増殖体細胞に、人工多能性幹細胞再プログラミング因子を発現する遺伝要素、場合によりエピソーム遺伝要素を導入し、
(b)前記遺伝要素を含む前記増殖体細胞を培養し、それにより人工多能性幹細胞を産生する、
ことを含む、方法。
【請求項52】
非ウイルストランスフェクション法により、場合によりエレクトロポレーションにより、前記遺伝要素を前記増殖体細胞に導入する、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記人工多能性幹細胞再プログラミング因子が、Oct4、Sox2、Klf4、c−Myc、Lin28、Nanog、およびSV40ラージTのうちの1つ以上から選択される、請求項51または52に記載の方法。
【請求項54】
工程(b)において、前記遺伝要素を含む増殖体細胞を、場合により約2日間、増殖培地で培養する、請求項51〜53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
増殖培地で培養した後、前記遺伝要素を含む増殖体細胞を不活性化マウス胚線維芽細胞(MEF)上に、場合により約1日間播種する、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記不活化マウス胚性線維芽細胞(MEF)上で培養した後、前記遺伝要素を含む増殖体細胞を前記MEFから取り除き、ホウ酸ナトリウムを含む再プログラミング培地で、場合により約1日間培養する、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記ホウ酸ナトリウムを含む再プログラミング培地を、ホウ酸ナトリウムを含む新鮮な再プログラミング培地と毎日交換し、場合により、前記ホウ酸ナトリウムを含む再プログラミング培地を、約4〜8日、場合により約5〜7日、場合により約6日間毎日、ホウ酸ナトリウムを含む新鮮な再プログラミング培地と交換する、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
ホウ酸ナトリウムを含む再プログラミング培地を、人工多能性幹細胞を含む1つ以上の細胞コロニーが形成されるまで、ホウ酸ナトリウムおよび塩基性線維芽細胞成長因子を含む馴化培地と毎日交換する、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
請求項37〜50のいずれか一項に記載の方法に従って産生される、増殖体細胞。
【請求項60】
TERT1を発現する、増殖体細胞。
【請求項61】
前記増殖体細胞におけるTERT1発現が、増殖させていない前記体細胞におけるTERT1発現の少なくとも約20%、場合により少なくとも約30%、場合により少なくとも約40%、場合により少なくとも約50%、場合により少なくとも約60%、場合により少なくとも約70%、場合により少なくとも約80%、場合により少なくとも約90%、場合により約100%である、請求項60に記載の増殖体細胞。
【請求項62】
前記TERT1発現を、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応、逆転写酵素定量的ポリメラーゼ連鎖反応、ウエスタンブロット法および/または免疫蛍光顕微鏡法により測定する、請求項61に記載の増殖体細胞。
【請求項63】
請求項37〜50のいずれか一項に記載の方法に従って産生される、請求項60〜62のいずれか一項に記載の増殖体細胞。
【請求項64】
請求項51〜58のいずれか一項に記載の方法に従って産生される、人工多能性幹細胞。
【請求項65】
請求項59〜63のいずれか一項に記載の増殖体細胞から産生される、人工多能性幹細胞。
【請求項66】
請求項51〜58のいずれか一項に記載の方法に従って産生される、請求項65に記載の人工多能性幹細胞。
【請求項67】
療法に使用するための、請求項64〜66のいずれか一項に記載の人工多能性幹細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工多能性幹細胞を産生するための体細胞を調製するための基材および方法、ならびに人工多能性幹細胞を産生するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人工多能性幹細胞(iPS細胞)が最初に発見されてから約10年が経過した。この分野の研究は、現在および将来の健康管理における、個別化医療に大きな重点を置いた多くの疾患に対する個別化治療の一形態としてのiPS細胞の潜在的な使用により、増大している。Worringerらによって行われた研究[1]は、Oct3/4、Sox2、c−Myc、およびKlf4再プログラミング因子を使用すると、iPSC形成効率が1%と低いことを示唆している。体細胞とiPS細胞との間の再プログラミング効率がなぜ技術改善が行われるほど低いのかを理解しようとさまざまな研究が行われている。多くの研究が、なぜその効率が非常に低いのかを確認し、再プログラミング効率を向上させようとすることによって効率を高めることを目指している。エピジェネティックマークおよび修正の重要性が検討されている。
【0003】
iPS細胞には、健康管理および研究分野において多くの潜在的な用途がある。iPS細胞は、再生医療または細胞ベース療法、疾患のメカニズムのモデリング、薬物スクリーニングおよび細胞毒性試験に使用することができる。
【0004】
外因性組織の移植は拒絶の危険性を伴い、「受容」を確実にするために免疫抑制薬の長期使用を必要とする。再生医療は、患者自身の細胞を使用してiPS細胞を作成し、移植のための新たな組織を作成することで、この問題を回避するものである。
【0005】
個別化医療におけるiPS細胞の可能性は非常に刺激的である。YamanakaとTakahashiが最初にiPSCを開発してから10年[2]、メカニズムや潜在的な用途についての理解が更に深まりつつある。非ヒト霊長類を含む動物モデルでの試験は多くの疾患に対して有望であり、患者の黄斑変性症に対する進行中の試験による臨床試験が提案されている。再生医療に応用するための臨床グレードのiPS細胞が開発されている。これは、ヒト試験への移行における非常に大きな一歩であり、今後数年間にわたってヒトの個別化医療や再生医療においてiPS細胞の使用がどのように進展するかを見るのは非常に刺激的なことである。しかしながら、iPS細胞の生成は依然として非常に低い効率の長期プロセスであり、これらの細胞が臨床で広く使用される可能性をかなり抑止している。この研究において、健康な志願者と糖尿病患者からのわずか数滴の血液からiPS細胞を生成するための、高速かつ高効率な新規アプローチを開発した。
【0006】
このアプローチは、血管疾患の予防および治療に関して特に有用である。糖尿病などの血管疾患の死亡率は世界中で最も高いものの1つであり、血管疾患の発症および進行を予防するためには、内皮の健康かつ正常な機能を維持することが最も重要である。結果として、血管再生医療の主な焦点および目的は、移植のための機能的内皮細胞(EC)の生成を含む損傷細胞を修復し、再生することである。損傷した血管の修復を支援するための治療用ECの送達に関して多くの制限があり、それらの1つは疾患の治療に適切かつ効果的な細胞の入手可能性であり、EC(iPS−EC)を含む体内のあらゆる細胞タイプを生じさせるiPS細胞は、この障害を克服し、血管疾患の治療に関して大きな期待が見込める可能性がある。実際、iPS−ECは、損傷した血管系に組み込み、再内皮化する能力や、血管損傷に対する新生内膜および炎症反応を阻害する能力などの、前臨床研究における顕著な治療上の可能性を示している。再プログラミング方法の進歩を目指して今日研究されている多くのアプローチがあるが、iPS細胞の生成とその後の様々な細胞系統への分化の基礎となる細胞再プログラミング機構の多くはいまだ比較的不明のままである。更に、シンプルかつ堅牢なフィーダーフリー方法に基づいてiPSを生成する標準化された方法は存在せず、現在のプロトコルは効率や集団純度に差がある。したがって、効果的な臨床治療へのiPS細胞の翻訳を確実に成功させるには、iPS細胞生成のための堅牢な方法およびキットが必要である。
【0007】
したがって、本研究では、ヒトiPS細胞を、我々が開発した堅牢かつ高効率のアプローチに基づいて、健康なドナーまたは糖尿病ドナーからのわずか1mlの血液から再プログラミングすると、その後、iPS細胞は内皮細胞(iPS−EC)に分化し、これら内皮細胞(iPS−EC)は、典型的なEC特性を示し、血管疾患の予防および治療に有用である。したがって、我々の研究は、フィーダーフリーの条件下で基質−ナノ粒子組成物の使用を含むことができる新規かつ高効率的なアプローチに基づいて、わずか5〜7日間でわずか数滴の血液から初めてヒトiPS細胞を生成した。
【発明の概要】
【0008】
したがって、1つの態様において、本発明は、体細胞の人工多能性幹細胞への再プログラミングを促進するのに適した組成物を提供し、当該組成物はゼラチンとラミニンとを含む。
【0009】
理論に拘束されることを望まないが、本発明者らは、体細胞が本明細書に記載される組成物を含む基質上で成長すると、体細胞の人工多能性幹細胞への再プログラミング効率が実質的に増加することを見出した。当該組成物は、本発明者らによって体細胞を人工多能性幹細胞へ再プログラミングするための最適条件を提供することが見出された量のゼラチンおよびラミニンを含み、これら最適条件はフィーダーフリーかつゼノフリーであるのが有利である。
【0010】
場合により、組成物は、少なくとも約0.01w/v%、場合により少なくとも約0.02w/v%、場合により少なくとも約0.03w/v%、場合により少なくとも約0.04w/v%、更に場合により少なくとも約0.05w/v%の濃度でゼラチンを含む。
【0011】
場合により、組成物は、最大約10w/v%、場合により最大約9w/v%、場合により最大約8w/v%、場合により最大約7w/v%、場合により最大約6w/v%、場合により最大約5w/v%、場合により最大約4w/v%、場合により最大約3w/v%、場合により最大約2w/v%、更に場合により最大約1w/v%の濃度のゼラチンを含む。
【0012】
場合により、組成物は、約0.01〜10w/v%、場合により約0.01〜9w/v%、場合により約0.01〜8w/v%、場合により約0.01〜7w/v%、場合により約0.01〜6w/v%、場合により約0.01〜5w/v%、場合により約0.01〜4w/v%、場合により約0.01〜3w/v%、場合により約0.01〜2w/v%、場合により約0.01〜1w/v%、更に場合により約1w/v%の濃度のゼラチンを含む。
【0013】
場合により、組成物は、約0.02〜10w/v%、場合により約0.02〜9w/v%、場合により約0.02〜8w/v%、場合により約0.02〜7w/v%、場合により約0.02〜6w/v%、場合により約0.02〜5w/v%、場合により約0.02〜4w/v%、場合により約0.02〜3w/v%、場合により約0.02〜2w/v%、場合により約0.02〜1w/v%、更に場合により約1w/v%の濃度のゼラチンを含む。
【0014】
場合により、組成物は、約0.03〜10w/v%、場合により約0.03〜9w/v%、場合により約0.03〜8w/v%、場合により約0.03〜7w/v%、場合により約0.03〜6w/v%、場合により約0.03〜5w/v%、場合により約0.03〜4w/v%、場合により約0.03〜3w/v%、場合により約0.03〜2w/v%、場合により約0.03から1w/v%、更に場合により約1w/v%の濃度のゼラチンを含む。
【0015】
場合により、組成物は、約0.04〜10w/v%、場合により約0.04〜9w/v%、場合により約0.04〜8w/v%、場合により約0.04〜7w/v%、場合により約0.04〜6w/v%、場合により約0.04〜5w/v%、場合により約0.04〜4w/v%、場合により約0.04〜3w/v%、場合により約0.04〜2w/v%、場合により約0.04〜1w/v%、更に場合により約1w/v%の濃度のゼラチンを含む。
【0016】
場合により、組成物は、約0.05〜10w/v%、場合により約0.05〜9w/v%、場合により約0.05〜8w/v%、場合により約0.05〜7w/v%、場合により約0.05〜6w/v%、場合により約0.05〜5w/v%、場合により約0.05〜4w/v%、場合により約0.05〜3w/v%、場合により約0.05〜2w/v%、場合により約0.05〜1w/v%、更に場合により約1w/v%の濃度のゼラチンを含む。
【0017】
場合により、組成物は、少なくとも約0.1μg/mL、場合により少なくとも約1μg/mL、場合により少なくとも約5μg/mL、場合により少なくとも約10μg/mL、場合により少なくとも約15μg/mL、場合により少なくとも約20μg/mL、場合により少なくとも約25μg/mL、場合により少なくとも約30μg/mL、場合により少なくとも約35μg/mL、場合により少なくとも約40μg/mL、場合により少なくとも約45μg/mL、更に場合により少なくとも約50μg/mLの濃度のラミニンを含む。
【0018】
場合により、組成物は、最大約1000μg/mL、場合により最大約500μg/mL、場合により最大約400μg/mL、場合により最大約300μg/mL、場合により最大約200μg/mL、場合により最大約100μg/mL、更に場合により最大約50μg/mLの濃度のラミニンを含む。
【0019】
場合により、組成物は、約0.1〜1000μg/mL、場合により、1〜1000μg/mL、場合により約5〜1000μg/mL、場合により約10〜1000μg/mL、場合により約15〜1000μg/mL、場合により約20〜1000μg/mL、場合により約25〜1000μg/mL、場合により約30〜1000μg/mL、場合により約35〜1000μg/mL、場合により約40〜1000μg/mL、場合により約45〜1000μg/mL、更に場合により約50〜1000μg/mLの濃度のラミニンを含む。
【0020】
場合により、組成物は、約0.1〜500μg/mL、場合により約1〜500μg/mL、場合により約5〜500μg/mL、場合により約10〜500μg/mL、場合により約15〜500μg/mL、場合により約20から500μg/mL、場合により約25から500μg/mL、場合により約30から500μg/mL、場合により約35から500μg/mL、場合により約40から500μg/mL、場合により約45〜500μg/mL、更に場合により約50〜500μg/mLの濃度のラミニンを含む。
【0021】
場合により、組成物は、約0.1〜400μg/mL、場合により約1〜400μg/mL、場合により約5〜400μg/mL、場合により約10〜400μg/mL、場合により約15〜400μg/mL、場合により約20から400μg/mL、場合により約25から400μg/mL、場合により約30から400μg/mL、場合により約35から400μg/mL、場合により約40から400μg/mL、場合により約45〜400μg/mL、更に場合により約50〜400μg/mLの濃度のラミニンを含む。
【0022】
場合により、組成物は、約0.1〜300μg/mL、場合により約1〜300μg/mL、場合により約5〜300μg/mL、場合により約10〜300μg/mL、場合により約15〜300μg/mL、場合により約20から300μg/mL、場合により約25から300μg/mL、場合により約30から300μg/mL、場合により約35から300μg/mL、場合により約40から300μg/mL、場合により約45〜300μg/mL、更に場合により約50〜300μg/mLの濃度のラミニンを含む。
【0023】
場合により、組成物は、約0.1〜200μg/mL、場合により約1〜200μg/mL、場合により約5〜200μg/mL、場合により約10〜200μg/mL、場合により約15〜200μg/mL、場合により約20から200μg/mL、場合により約25から200μg/mL、場合により約30から200μg/mL、場合により約35から200μg/mL、場合により約40から200μg/mL、場合により約45〜200μg/mL、更に場合により約50〜200μg/mLの濃度のラミニンを含む。
【0024】
場合により、組成物は、約0.1〜100μg/mL、場合により約1〜100μg/mL、場合により約5〜100μg/mL、場合により約10〜100μg/mL、場合により約15〜100μg/mL、場合により約20から100μg/mL、場合により約25から100μg/mL、場合により約30から100μg/mL、場合により約35から100μg/mL、場合により約40から100μg/mL、場合により約45〜100μg/mL、更に場合により約50〜100μg/mLの濃度のラミニンを含む。
【0025】
場合により、ラミニンは組換えヒトラミニンである。場合により、ラミニンは、ラミニン521、ラミニン522、ラミニン523、ラミニン511、ラミニン423、ラミニン421、ラミニン411、ラミニン321(ラミニン3A21)、ラミニン311(ラミニン3A11)、ラミニン3B32、ラミニン−332(ラミニン−3A32)、ラミニン221、ラミニン213、ラミニン211、ラミニン121、およびラミニン111のうちの1つ以上から選択される。場合により、ラミニンは、組換えヒトラミニン521、組換えヒトラミニン522、組換えヒトラミニン523、組換えヒトラミニン511、組換えヒトラミニン423、組換えヒトラミニン421、組換えヒトラミニン411、組換えヒトラミニン321(ラミニン3A21)、組換えヒトラミニン311(ラミニン3A11)、組換えヒトラミニン3B32、組換えヒトラミニン−332(ラミニン−3A32)、組換えヒトラミニン221、組換えヒトラミニン213、組換えヒトラミニン211、組換えヒトラミニン121、および組換えヒトラミニン111のうちの1以上から選択される。
【0026】
場合により、ゼラチンは組換えヒトゼラチンである。
【0027】
特定実施形態において、本発明は、体細胞の人工多能性幹細胞への再プログラミングを促進するのに適した組成物を提供し、当該組成物は、少なくとも約0.01w/v%、0.02w/v%、0.03w/v%、0.04w/v%、0.05w/v%、0.06w/v%、0.07w/v%、0.08w/v%、0.09w/v%、0.1w/v%、0.2w/v%、0.3w/v%、0.4w/v%または0.5w/v%の濃度で、かつ、最大約0.8w/v%、0.9w/v%、1w/v%、2w/v%、3w/v%、4w/v%、5w/v%、6w/v%、7w/v%、8w/v%、9w/v%または10w/v%の濃度で存在するゼラチンと、少なくとも約1μg/mL、5μg/mL、10μg/mL、20μg/mL、30μg/mL、40μg/mL、50μg/mL、60μg/mL、70μg/mL、80μg/mL、90μg/mL、または100μg/mL、かつ、最大約100μg/mL、200μg/mL、300μg/mL、400μg/mL、500μg/mL、600μg/mL、700μg/mL、800μg/mL、900μg/mL、1000μg/mLの濃度で存在するラミニンと、を含む。
【0028】
場合により、組成物は、少なくとも約0.04w/v%、0.05w/v%、0.06w/v%、0.07w/v%、0.08w/v%、0.09w/v%、0.1w/v%、0.2w/v%、0.3w/v%、0.4w/v%または0.5w/v%の濃度で、かつ、最大濃度約0.08w/v%、0.09w/v%、1w/v%、2w/v%、3w/v%、4w/v%、5w/v%、6w/v%、7w/v%、8w/v%、9w/v%または10w/v%の濃度で存在するゼラチンと、少なくとも約50μg/mL、60μg/mL、70μg/mL、80μg/mL、90μg/mL、または100μg/mL、約100μg/mLの濃度まで、200μg/mL、300μg/mL、400μg/mL、500μg/mL、600μg/mL、700μg/mL、800μg/mL、900μg/mL、1000μg/mLの濃度で存在するラミミンと、を含む。
【0029】
場合により、組成物は、
少なくとも約0.04w/v%の濃度で、かつ、最大約10w/v%の濃度で存在するゼラチンと、
少なくとも約50μg/mLの濃度で、かつ、最大約200μg/mLの濃度で存在するラミニンと、を含む。
【0030】
場合により、組成物は、
少なくとも約0.04w/v%の濃度で、かつ最大約5w/v%の濃度で存在するゼラチンと、
少なくとも約50μg/mLの濃度で、かつ、最大約200μg/mLの濃度で存在するラミニンと、を含む。
【0031】
場合により、組成物は、
少なくとも約0.04w/v%の濃度で、かつ、最大約10w/v%の濃度で存在するゼラチンと、
少なくとも約50μg/mLの濃度で、かつ、最大約100μg/mLの濃度で存在するラミニンと、を含む。
【0032】
場合により、組成物は、
少なくとも約0.04w/v%の濃度で、かつ、最大約5w/v%の濃度で存在するゼラチンと、
少なくとも約50μg/mLの濃度で、かつ、最大約100μg/mLの濃度で存在するラミニンと、を含む。
【0033】
場合により、組成物は、
少なくとも約0.5w/v%の濃度で、かつ、最大約10w/v%の濃度で存在するゼラチンと、
少なくとも約50μg/mLの濃度で、かつ、最大約200μg/mLの濃度で存在するラミニンと、を含む。
【0034】
場合により、組成物は、
少なくとも約0.5w/v%の濃度で、かつ、最大約5w/v%の濃度で存在するゼラチンと、
少なくとも約50μg/mLの濃度で、かつ、最大約200μg/mLの濃度で存在するラミニンと、を含む。
【0035】
場合により、組成物は、
少なくとも約0.5w/v%の濃度で、かつ、最大約10w/v%の濃度で存在するゼラチンと、
少なくとも約50μg/mLの濃度で、かつ、最大約100μg/mLの濃度で存在するラミニンと、を含む。
【0036】
場合により、組成物は、
少なくとも約0.5w/v%の濃度で、かつ、最大約5w/v%の濃度で存在するゼラチンと、
少なくとも約50μg/mLの濃度で、かつ、最大約100μg/mLの濃度で存在するラミニンと、を含む。
【0037】
場合により、組成物は、
少なくとも約1w/v%の濃度で、かつ、最大約10w/v%の濃度で存在するゼラチンと、
少なくとも約50μg/mLの濃度で、かつ、最大約200μg/mLの濃度で存在するラミニンと、を含む。
【0038】
場合により、組成物は、
少なくとも約1w/v%の濃度で、かつ、最大約5w/v%の濃度で存在するゼラチンと、
少なくとも約50μg/mLの濃度で、かつ、最大約200μg/mLの濃度で存在するラミニンと、を含む。
【0039】
場合により、組成物は、
少なくとも約1w/v%の濃度で、かつ、最大約10w/v%の濃度で存在するゼラチンと、
少なくとも約50μg/mLの濃度で、かつ、最大約100μg/mLの濃度で存在するラミニンと、を含む。
【0040】
場合により、組成物は、
少なくとも約1w/v%の濃度で、かつ、最大約5w/v%の濃度で存在するゼラチンと、
少なくとも約50μg/mLの濃度で、かつ、最大約100μg/mLの濃度で存在するラミニンと、を含む。
【0041】
場合により、ゼラチンおよびラミニンは、別々にまたは組み合わせて、組成物の固形分の少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、すべてまたは実質的にすべてを形成する。場合により、ゼラチンおよびラミニンは、別々にまたは組み合わせて、組成物に含有される細胞外マトリックス内容物の少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、すべてまたは実質的にすべてを形成する。場合により、細胞外マトリックス内容物は、組換えヒト、細胞外マトリックス成分などの天然物および/または合成物を含む。
【0042】
場合により、組成物は水性組成物である。場合により、水性組成物は、液体またはゲルを含むか、またはそれからなる。場合により、組成物は、溶媒の添加により水性組成物に形成され得る乾燥した組成物または実質的に乾燥した組成物として提供される。場合により、溶媒は、組成物のゼラチンおよび/またはラミニンなどの固体成分を溶解するように作用する。場合により、組成物は、溶媒中でゼラチンとラミニンを別々に、連続的に、または同時に混合する、場合により溶解することにより形成される。場合により、組成物は、ゲル様組成物を形成するように、溶媒中でゼラチンおよびラミニンを別々に、連続的に、または同時に混合する、場合により溶解することにより形成される。「ゲル様」により、組成物が細胞培養容器表面などの表面に組成物をコーティングする、さもなければ適用するのに適したコンシステンシーまたは粘度を有することが理解される。場合により、溶媒は、組成物のゼラチンおよび/またはラミニンなどの固体成分を溶解するように作用する。場合により、溶媒は生理食塩水、場合によりリン酸緩衝生理食塩水、または細胞培養培地である。場合により、溶媒は水であり、場合により滅菌水である。場合により、組成物は液体組成物またはゲル組成物として提供される。
【0043】
場合により、組成物は、1つ以上の追加の細胞外マトリックス成分、場合により1つ以上の追加の細胞外マトリックス成分を更に含む。場合により、1つ以上の追加の細胞外マトリックス成分は、コラーゲン、エラスチン、フィブロネクチン、ニドゲン、およびヘパラン硫酸プロテオグリカンから選択される。場合により、または追加的に、組成物は、Matrigel(商標)、Geltrex(商標)、および/またはCultrex BME(商標)を更に含む。場合により、または追加的に、組成物は1つ以上の成長因子を更に含む。場合により、1つ以上の成長因子は、形質転換成長因子β(TGF−β)表皮成長因子(EGF)、インスリン様成長因子(IGF)、および線維芽細胞成長因子(FGF)のうちの1つ以上から選択される。
【0044】
場合により、組成物は、Rho関連タンパク質キナーゼ(ROCK)阻害剤を更に含む。場合により、ROCK阻害剤が、Y−27632二塩酸塩(trans−4−[(1R)−1−アミノエチル]−N−4−ピリジニルシクロヘキサンカルボキサミド二塩酸塩)、GSK429286A(N−(6−フルオロ−1H−インダゾール−5−イル)−6−メチル−2−オキソ−4−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]−3、4−ジヒドロ−1H−ピリジン−5−カルボキサミド)、Y−30141(4−(1−アミノエチル)−N−(1H−ピロロ(2、3−b)ピリジン−4−イル)シクロヘキサンカルボキサミド二塩酸塩)、RKI−1447(N−[(3−ヒドロキシフェニル)メチル]−N’−[4−(4−ピリジニル)−2−チアゾリル]尿素二塩酸塩)、ファスジル、およびリパスジル(商標名Glanatec)のうちの1つ以上から選択される。
【0045】
場合により、ROCK阻害剤は、約1μM〜1mM、場合により約1μM〜500μM、場合により約1μM〜100μM、場合により約1μM〜50μM、場合により約5μM〜50μM、場合により約10μM〜50μM、場合により約10μM〜20μM、更に場合により約10μMの濃度で組成物中に存在する。
【0046】
場合により、組成物は、Oct4、Sox2、Klf4、c−Myc、Lin28、NanogおよびSV40ラージTのうちの1つ以上から選択される人工多能性幹細胞再プログラミング因子を含むか、またはそれからなる遺伝要素、場合によりエピソーム遺伝要素を更に含む。場合により、遺伝要素は、Oct4、Sox2、Klf4、c−Myc、Lin28、Nanog、およびSV40ラージTからなる人工多能性幹細胞再プログラミング因子を含むか、またはそれからなる。場合により、遺伝要素はTERT1を更に含む。
【0047】
遺伝要素は、前述の再プログラミング因子および/またはTERT1のうちの1つ以上をコードする核酸配列を含むことが理解されよう。場合により、核酸コード配列、場合によりDNAヌクレオチド配列は、体細胞へのトランスフェクションに適したプラスミドまたは他のベクターに含まれる。当該プラスミドまたは他の好適なベクターは、組成物と接触した体細胞への核酸コード配列のトランスフェクションを可能にするのに適しており、場合により、体細胞における核酸コード配列の発現を可能にするのに適していることが理解されよう。
【0048】
場合により、組成物は、遺伝要素が複合体を形成する担体を更に含む。場合により、担体は体細胞内に遺伝要素を送達するのに適している。場合により、担体は、ナノ粒子、ナノカプセル、ミセル系のうちの1つ以上から選択される。場合により、担体は、体細胞への核酸配列のナノ粒子媒介送達のためのナノ粒子を含む。記載された組成物は、負荷、場合により遺伝要素を含む負荷を体細胞に送達するのに適した任意のタイプのナノ粒子を含み得ることが理解されるであろう。したがって、場合により、ナノ粒子は脂質ベースのナノ粒子を含む。場合により、脂質ベースのナノ粒子は、リポソーム、場合によりカチオン性リポソームを含む。場合により、ナノ粒子は、カーボンナノチューブ、磁性ナノ粒子、リン酸カルシウムナノ粒子、金属ナノ粒子、および量子ドット、場合によりナノ結晶量子ドットなどの無機ナノ粒子を含む。場合により、金属ナノ粒子は金ナノ粒子および/または銀ナノ粒子を含む。場合により、ナノ粒子はポリマーベースのナノ粒子を含み、場合によりナノ粒子は高分子ナノ粒子を含む。場合により、ポリマーベースのナノ粒子は、ポリ乳酸(PLA)、ポリD、L−グリコリド(PLG)、ポリラクチド−コ−グリコリド(PLGA)、および/またはポリシアノアクリレート(PCA)を含むか、またはそれらからなる。場合により、ナノ粒子はミセル、場合により高分子ミセルを含む。場合により、ナノ粒子はデンドリマーナノ粒子を含む。場合により、ナノ粒子は、リポソーム−ポリカチオン−DNAナノ粒子および多層ナノ粒子などのハイブリッドナノ粒子を含む。場合により、ナノ粒子の表面はアニオン性官能基を含む。場合により、生体適合性ナノ粒子の表面はカチオン性官能基を含む。
【0049】
場合により、ナノ粒子は、1〜1000nm、場合により1〜500nm、場合により1〜400nm、場合により1〜300nm、場合により1〜200nm、場合により10〜200nmの範囲のサイズ、場合により更に任意で10〜110nmの平均サイズを有する。場合により、該サイズはナノ粒子の直径に対応する。
【0050】
場合により、核酸配列は、核酸配列がナノ粒子と複合体を形成するのに十分な時間、無血清細胞培養培地でナノ粒子と核酸配列を混合することにより、ナノ粒子に連結される。場合により、核酸配列は、少なくとも約5分間、少なくとも約10分間、少なくとも約20分間、少なくとも約30分間、無血清細胞培養培地中でナノ粒子と混合される。場合により、核酸配列は、約10〜30℃の間、場合により約18〜25℃の間、約20〜23℃の間、場合によりほぼ室温でナノ粒子と混合される。場合により、核酸配列は、無血清細胞培養培地中でナノ粒子と最大約120分間、場合により最大約90分間、場合により最大約60分間、更に場合により最大約30分間混合される。場合により、無血清培地はOpti−MEM(商標)である。場合により、無血清培地は、HEPESおよび炭酸水素ナトリウムで緩衝され、ヒポキサンチン、チミジン、ピルビン酸ナトリウム、L−グルタミン、微量元素および成長因子を補充したイーグル最小必須培地である。
【0051】
理解されるように、本発明は、化学的に定義されたフィーダーフリーおよびゼノフリーの幹細胞培養システムにおいて人工多能性幹(iPS)細胞の自己再生を確実に促進するラミニンおよびゼラチンを含む新規基質を提供する。
【0052】
したがって、更なる態様において、本発明は、体細胞を人工多能性幹細胞に再プログラミングするための方法における、本明細書に記載される組成物の使用を提供する。
【0053】
更なる態様において、本発明は、本明細書に記載される組成物を含む細胞培養容器を提供する。細胞培養容器は、細胞培養、特に体細胞培養および/または幹細胞培養で使用するための当技術分野で公知の任意の好適な容器であり得る。場合により、細胞培養容器は、96ウェルプレート、24ウェルプレート、12ウェルプレート、6ウェルプレート、T25フラスコ、T75フラスコ、T175フラスコのうちの1つ以上から選択される。スライド、場合により細胞培養スライドおよび細胞培養顕微鏡スライドは、細胞培養容器と見なすことができる。
【0054】
更なる態様では、本発明は、本明細書に記載される組成物を含むキットを提供する。場合により、キットは、本明細書に記載される細胞培養容器を更に含む。場合により、キットは、本明細書に記載される組成物を含む細胞培養容器を更に含む。したがって、キットに含まれる細胞培養容器は、本明細書に記載される組成物を含み得る、すなわち、本明細書に記載される組成物を、細胞培養容器の表面、場合により細胞成長表面にコーティングし得ることが理解される。場合により、キットは、キットの使用説明書を更に含む。場合により、キットは、別個の成分として、またはキットのエンドユーザーが組み合わせることができる成分の組み合わせとして、例えばゼラチン、ラミニン、担体および/またはROCK阻害剤を含む、本明細書に記載される組成物の成分を含む。有利なことに、このキットにより、ユーザーは体細胞と好適な細胞培養培地とを基質に簡単に添加し、体細胞の人工多能性幹細胞への効率的かつ信頼性の高い再プログラミングを達成することができる。プログラミングは、Oct4、Sox2、Klf4、c−Myc、Lin28、Nanog、SV40ラージT、および場合によりTERT1を含むまたはそれらからなる遺伝要素を体細胞に導入することにより達成し得る。遺伝要素の導入は、当該分野で既知の標準的なトランスフェクション技術によって達成することができる。有利なことに、トランスフェクションは、本明細書に記載されるように、体細胞への核酸配列のナノ粒子媒介送達を使用して達成される。すなわち、核酸配列を含み、本明細書に記載の組成物に埋め込まれたナノ粒子は、核酸配列を体細胞に送達し、核酸配列を体細胞内にトランスフェクトすることにより、細胞の再プログラミングを大幅に簡略化することができる。また、これにより、組成物およびキットを滅菌製品として製造および提供できるため、培養細胞の汚染の可能性が減少する。更に、再プログラミング効率は、本明細書において実証されるように改善することができる。
【0055】
したがって、更なる態様において、本発明は、体細胞を人工多能性幹細胞に再プログラミングする方法であって、
(i)体細胞を本明細書に記載される組成物と接触させ、
(ii)人工多能性幹細胞再プログラミング因子および場合によりTERT1を発現する遺伝要素、場合によりエピソーム遺伝要素を体細胞に導入し、
(iii)遺伝要素を含む該増殖体細胞を培養し、それにより人工多能性幹細胞を産生する、
ことを含む方法を提供する。
【0056】
場合により、工程(i)において、体細胞を、組成物と接触するときに細胞懸濁培地に懸濁させる。場合により、細胞懸濁培地は細胞培養培地である。場合により、懸濁培地に懸濁させた体細胞を組成物と接触させることにより、懸濁培地が組成物を溶解させる。ナノ粒子および遺伝要素を含む組成物において、懸濁培地による組成物の溶解は、体細胞とナノ粒子および遺伝要素との間のアクセスを改善できることが理解されるであろう。
【0057】
場合により、体細胞は、以下に記載されるように人工多能性幹細胞を産生するために調製される。場合により、体細胞は以下に記載される細胞である。
【0058】
場合により、人工多能性幹細胞再プログラミング因子を発現する遺伝要素は、以下に記載されるように体細胞に導入される。あるいは、人工多能性幹細胞再プログラミング因子を発現する遺伝要素を、上記組成物に含まれるナノ粒子を介して体細胞に導入する。
【0059】
任意に、遺伝要素を含む体細胞を、以下に記載されるように更に培養する。遺伝要素を含む体細胞から産生された人工多能性幹細胞は内皮細胞に分化する。場合により、人工多能性幹細胞は、場合によりBMP4、アクチビンA、CHIR99021およびbFGF2、ならびに場合によりVEGFおよびLY364947から選択される成長因子とともに人工多能性幹細胞を培養することにより、当技術分野で既知の技術によって内皮細胞に分化する。
【0060】
別の態様において、本発明は、人工多能性幹細胞を産生するための体細胞の調製方法であって、
(i)試料から体細胞を単離し、
(ii)該体細胞を所定期間増殖させる、ことを含み、
当該増殖させた体細胞がTERT1を発現する方法を提供する。
【0061】
場合により、体細胞は、約14日未満、場合により約13日、場合により約13日未満、場合により約12日、場合により約12日未満、場合により約11日、場合により約11日未満、場合により約10日、場合により約10日未満、場合により約9日、場合により約9日未満、場合により約8日、場合により約8日未満、場合により約7日、更に場合により約7日未満の所定期間増殖させる。
【0062】
場合により、体細胞は、少なくとも約1日、場合により約1日、場合により少なくとも約2日、場合により約2日、場合により少なくとも約3日、場合により約3日、場合により少なくとも約4日、場合により約4日、場合により少なくとも約5日、場合により約5日、場合により少なくとも約6日、場合により約6日、場合により少なくとも約7日、更に場合により約7日の所定期間増殖させる。
【0063】
場合により、体細胞は、2〜13日、場合により2〜12日、場合により2〜11日、場合により2〜10日、場合により2〜9日、場合により2〜8日、更に場合により2〜7日の所定期間増殖させる。
【0064】
場合により、体細胞は、3〜13日、場合により3〜12日、場合により3〜11日、場合により3〜10日、場合により3〜9日、場合により3〜8日、更に場合により3〜7日の所定期間増殖させる。
【0065】
場合により、体細胞は、4〜13日、場合により4〜12日、場合により4〜11日、場合により4〜10日、場合により4〜9日、場合により4〜8日、更に場合により4〜7日の所定期間増殖させる。
【0066】
場合により、体細胞は、5〜13日、場合により5〜12日、場合により5〜11日、場合により5〜10日、場合により5〜9日、場合により5〜8日、更に場合により5〜7日の所定期間増殖させる。
【0067】
場合により、体細胞は、6〜13日、場合により6〜12日、場合により6〜11日、場合により6〜10日、場合により6〜9日、場合により6〜8日、更に場合により6〜7日の所定期間増殖させる。
【0068】
場合により、体細胞は、7〜13日、場合により7〜12日、場合により7〜11日、場合により7〜10日、場合により7〜9日、場合により7〜8日、更に場合により7日の所定期間増殖させる。
【0069】
場合により、TERT1発現は、所定期間増殖させる前の体細胞におけるTERT1の発現の少なくとも約10%、場合により少なくとも約20%、場合により少なくとも約30%、場合により少なくとも約40%、場合により少なくとも約50%、場合により少なくとも約60%、場合により少なくとも約70%、場合により少なくとも約80%、場合により少なくとも約90%、場合により少なくとも約95%、場合により約100%である。言い換えると、TERT1発現は、増殖させていない体細胞、すなわち、上記増殖工程(ii)を受ける前の単離された体細胞におけるTERT1発現の少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%である。
【0070】
理論に拘束されることを望まないが、本発明者らは、体細胞の増殖中にTERT1発現が減少し、体細胞のiPS細胞への再プログラミングにTERT1発現が必要であることを発見した。したがって、本明細書に記載される方法に従って産生される増殖体細胞は、増殖させた細胞が人工多能性幹細胞の作成に適しているようにTERT1を発現する。
【0071】
場合により、TERT1 mRNAレベルおよび/またはTERT1タンパク質レベルを測定することにより、増殖させたおよび/または増殖させていない体細胞におけるTERT1発現を測定する。場合により、増殖させた細胞のTERT1発現を増殖させていない細胞のTERT1発現と比較して、TERT1の相対的発現レベルを判断する。言い換えれば、増殖細胞におけるTERT1発現は、非増殖細胞におけるTERT1発現に対して正規化され、TERT1の相対的発現レベルを示す。場合により、TERT1 mRNA発現を、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応によって、場合により体細胞からRNAを抽出し、mRNAをcDNAに逆転写し、TERT1プライマーを使用してリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応を行うことによって測定する。場合により、体細胞から抽出したタンパク質を使用してTERT1タンパク質発現を測定し、必要に応じてTERT1特異的抗体を使用してタンパク質抽出物をウエスタンブロットして、TERT1発現を検出する。場合により、体細胞の体細胞中のTERT1に結合するフルオロフォアを含むTERT1特異的抗体を使用し、蛍光顕微鏡下で該結合を観察してTERT1の発現レベルを判断することにより、TERT1タンパク質発現を測定する。抗テロメラーゼ逆転写酵素抗体[Y182](ab32020)などのTERT1特異的抗体は、当技術分野で周知である。フルオロフォアは当技術分野で周知であり、フルオレセイン、Cy5などが含まれる。mRNAまたはタンパク質レベルで遺伝子発現を検出する方法は当技術分野で知られており、本明細書に記載されるTERT1発現を測定するために使用できることが理解されよう。
【0072】
場合により、人工多能性幹細胞を産生するための体細胞の調製方法は、増殖させたおよび/または増殖させていない体細胞におけるTERT1発現を測定する工程を更に含む。場合により、人工多能性幹細胞を産生するための体細胞の調製方法は、増殖させたおよび増殖させていない体細胞におけるTERT1発現を測定し、TERT1の相対的発現レベルを判断することを更に含む。場合により、人工多能性幹細胞を産生するための体細胞の調製方法は、増殖させたおよび/または増殖させていない体細胞におけるTERT1発現を測定して、人工多能性幹細胞を産生するための増殖細胞の適合性を決定する工程を更に含み、当該増殖体細胞がTERT1を発現する場合、増殖体細胞は人工多能性幹細胞の産生に適していると判断される。場合により、TERT1発現が、本明細書に記載のように所定期間増殖させる前の体細胞におけるTERT1の発現の少なくとも約10%、場合により少なくとも約20%、場合により少なくとも約30%、場合により少なくとも約40%、場合により少なくとも約50%、場合により少なくとも約60%、場合により少なくとも約70%、場合により少なくとも約80%、場合により少なくとも約90%、場合により少なくとも約95%、場合により約100%である場合、場合により、増殖体細胞は人工多能性幹細胞の産生に適していると判断される。換言すると、TERT1の発現は、増殖させていない体細胞、例えば 上記増殖工程(ii)を受けていない単離した体細胞における、TERT1の発現の少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%である。
【0073】
場合により、体細胞は哺乳動物細胞であり、更に場合によりヒト細胞である。場合により、体細胞は初代細胞または不死化細胞である。場合により、体細胞は、被検体、場合によりヒト被検体から得られた生体試料から単離される。場合により、生体試料は組織の試料であり、場合によりヒト組織である。場合により、当該組織は、血液、皮膚、肺、膵臓、肝臓、胃、腸、心臓、生殖器官、膀胱、腎臓、尿道、および他の尿器官組織のうちの1つ以上から選択される。場合により、体細胞は、単球およびリンパ球(ナチュラルキラー(NK)、BおよびTリンパ球)などの末梢血単核細胞、好中球、好塩基球および好酸球などの赤血球、マクロファージ、セルトリ細胞、内皮細胞、顆粒膜上皮、ニューロン、膵島細胞、表皮細胞、上皮細胞、肝細胞、毛包細胞、ケラチノサイト、脂肪細胞、造血細胞、メラニン細胞、軟骨細胞、線維芽細胞、および心筋細胞などの筋肉細胞から選択される。場合により、体細胞は、造血幹細胞、神経幹細胞、および間葉系幹細胞などの成体幹細胞を含む。
【0074】
場合により、試料は血液試料であり、該血液試料の容量は、約10ml未満、場合により約5ml未満、場合により約2.5ml未満、場合により約1ml未満、更に場合により約1mlである。
【0075】
場合により、被検体はヒト被検体であり、該被検体は糖尿病に罹患している。場合により、該糖尿病は1型糖尿病、2型糖尿病、または妊娠糖尿病である。
【0076】
場合により、末梢血単核細胞は、被検体から試料を得る前には動員されていない。更に最適には、被検体から試料を取得する前、末梢血単核細胞は、外因的に適用された顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)または顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)で動員されていない。
【0077】
場合により、体細胞は好適な増殖培地で増殖され、場合により、増殖培地は1つ以上の成長因子を補充した無血清培地(SFM)を含み、場合により、該成長因子はエリスロポエチン(EPO)、IL−3、幹細胞因子(SCF)、インスリン様成長因子−1(IGF−1)、デキサメタゾン、およびホロトランスフェリンから選択される。
【0078】
場合により、単離された体細胞を、約2〜4日間、場合により約2〜3日間、更に場合により約3日間の第一増殖期間にわたって増殖培地で増殖させる。場合により、単離された体細胞を、1mlあたり約2〜6x10
6細胞、1mlあたり約3〜5x10
6細胞、1mlあたり約4x10
6細胞の密度でプレーティングし、約2〜4日間、場合により約2〜3日間、更に場合により約3日間の第一増殖期間中に増殖培地で増殖させる。場合により、第一増殖期間中に増殖させた体細胞を2〜4日間、場合により2〜3日間、更に場合により約3日間の第二増殖期間中に更に増殖させる。場合により、第一増殖期間に増殖させた体細胞を、その後1mlあたり約0.5〜2x10
6細胞、1mlあたり約0.5〜1.5x10
6細胞、1mlあたり約1x10
6細胞の密度でプレーティングし、約2〜4日間、場合により約2〜3日間、更に場合により約3日間の第二増殖期間中に培地で増殖させる。
【0079】
場合により、本方法は、(iii)増殖体細胞を凍結保存することを更に含む。場合により、本方法は、(iii)膨張した体細胞を凍結培地に凍結保存することを更に含み、場合により、当該凍結培地は約50%のウシ胎児血清(FBS)、約40%の無血清培地(SFM)および約10%のジメチルスルホキシド(DMSO)を含む。
【0080】
更なる態様において、本発明は、人工多能性幹細胞を産生するための増殖体細胞の適合性を判断する方法であって、
(i)増殖体細胞におけるTERT1の発現を測定し、
(ii)測定したTERT1の発現に基づいて、人工多能性幹細胞を産生するための増殖体細胞の適合性を判断すること、を含む方法を提供する。
【0081】
場合により、増殖体細胞がTERT1を発現する場合、増殖体細胞は、人工多能性幹細胞の産生に適していると判断される。場合により、TERT1発現が、本明細書に記載のように所定期間増殖させる前の体細胞におけるTERT1の発現の少なくとも約10%、場合により少なくとも約20%、場合により少なくとも約30%、場合により少なくとも約40%、場合により少なくとも約50%、場合により少なくとも約60%、場合により少なくとも約70%、場合により少なくとも約80%、場合により少なくとも約90%、場合により少なくとも約95%、場合により約100%である場合、増殖体細胞は人工多能性幹細胞の産生に適していると判断される。換言すると、TERT1の発現は、増殖させていない体細胞、例えば上記増殖工程(ii)を受けていない単離した体細胞における、TERT1の発現の少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%である。
【0082】
場合により、TERT1発現を、TERT1 mRNAレベルおよび/またはTERT1タンパク質レベルを測定することにより、場合により本明細書に記載されるようにTERT1 mRNAレベルおよび/またはTERT1タンパク質レベルを測定することにより、増殖させたおよび/または増殖させていない体細胞において測定する。
【0083】
場合により、体細胞を、本明細書に記載されるように所定期間増殖させる。
【0084】
場合により、体細胞は、本明細書に記載される体細胞から選択される。
【0085】
更なる態様において、本発明は、人工多能性幹細胞を産生するための方法であって、
(a)人工多能性幹細胞再プログラミング因子を発現する遺伝要素、場合によりエピソーム遺伝要素を当該増殖体細胞に導入し、
(b)遺伝要素を含む該増殖体細胞を培養し、それにより人工多能性幹細胞を産生する、
ことを含む方法を提供する。
【0086】
場合により、非ウイルストランスフェクション法により、場合によりエレクトロポレーションにより、遺伝要素を増殖体細胞に導入する。場合により、脂質ベースのトランスフェクション試薬を使用して、増殖体細胞に遺伝要素を導入し、場合により、該脂質ベースのトランスフェクション試薬はEndofectin(商標)である。
【0087】
場合により、遺伝要素は、Oct4、Sox2、Klf4、c−Myc、Lin28、NanogおよびSV40ラージTのうちの1つ以上から選択される人工多能性幹細胞再プログラミング因子を含むか、またはそれからなる。場合により、遺伝要素は、Oct4、Sox2、Klf4、c−Myc、Lin28、Nanog、およびSV40ラージTからなる人工多能性幹細胞再プログラミング因子を含むか、またはそれからなる。
【0088】
場合により、工程(b)において、遺伝要素を含む増殖体細胞は増殖培地で増殖され、場合により、増殖培地は1つ以上の成長因子を補充した無血清培地(SFM)を含み、場合により、該成長因子はエリスロポエチン(EPO)、IL−3、幹細胞因子(SCF)、インスリン様成長因子−1(IGF−1)、デキサメタゾン、およびホロトランスフェリンから選択される。場合により、遺伝要素を含む増殖体細胞を、少なくとも約1〜3日間、場合により約1〜3日間、更に場合により約2日間、増殖培地で培養する。場合により、遺伝要素を含む増殖体細胞を、細胞成長表面3.8cm
2あたり約1〜3×10
6個の細胞、任意に細胞成長表面3.8cm
2あたり約2×10
6個の細胞の密度でプレーティングし、少なくとも約1〜3日間、場合により約1〜3日間、更に場合により約2日間増殖培地で培養する。細胞成長表面は、典型的には、細胞の接着および成長に適した細胞培養プレートの基部またはそのウェルの基部を含むことが理解されるであろう。
【0089】
場合により、増殖培地で培養した後、遺伝要素を含む増殖体細胞を不活化マウス胚線維芽細胞(MEF)に播種し、再プログラミング培地で培養する。場合により、再プログラミング培地は、遺伝要素を含む増殖体細胞を多能性幹細胞に再プログラミングさせるのに適した培地である。場合により、再プログラミング培地は、アミノ酸(グリシン、L−ヒスチジン、L−イソロイシン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−プロリン、L−ヒドロキシプロリン、L−セリン、L−スレオニン、L−トリプトファン、L−チロシン、L−バリンなど)、ビタミンおよび/または酸化防止剤(チアミン、還元グルタチオン、アスコルビン酸2−PO
4など)、微量元素(Ag
+、Al
3+、Ba
2+、Cd
2+、Co
2+、Cr
3+、Ge
4+、Se
4+、Br
−、I
−、F
−、Mn
2+、Si
4+、V
5+、Mo
6+、Ni
2+、Rb
+、Sn
2+、Zr
4+など)および/またはタンパク質(トランスフェリン(鉄飽和)、インスリン、脂質リッチアルブミンなど)、ならびに、bFGF、β−メルカプトエタノールおよびMEM(最小必須培地)非必須アミノ酸(MEM NEAA)を含む血清代替組成物(ノックアウト血清代替など)のうちの1つ以上を補充した無血清培地(ノックアウトDMEMなどのSFM)を含む。場合により、増殖培地で培養した後、遺伝要素を含む増殖体細胞を不活化マウス胚線維芽細胞(MEF)に播種し、再プログラミング培地で少なくとも約1〜2日間、場合により約1〜2日間、更に場合により約1日間培養する。場合により、増殖培地で培養した後、遺伝要素を含む増殖体細胞を不活化マウス胚線維芽細胞(MEF)に播種し、再プログラミング培地で、細胞成長表面3.8cm
2あたり1x10
4〜1x10
6個の細胞、場合により8x10
4〜1x10
5個の細胞の密度で少なくとも約1〜2日間、場合により約1〜2日間、更に場合により約1日間培養する。
【0090】
場合により、不活化マウス胚性線維芽細胞(MEF)上で培養した後、遺伝要素を含む増殖体細胞をMEFから取り除き、ホウ酸ナトリウムを含む再プログラミング培地で培養する。場合により、不活化マウス胚線維芽細胞(MEF)で培養した後、遺伝要素を含む増殖体細胞をMEFから除去し、ホウ酸ナトリウムを含む再プログラミング培地で少なくとも約1〜2日間、場合により約1〜2日間、更に場合により約1日間培養する。場合により、ホウ酸ナトリウムは、約0.025〜2.5mM、場合により約0.1〜1mM、更に場合により約0.25mMの濃度で再プログラミング培地中に存在する。
【0091】
場合により、ホウ酸ナトリウムを含む再プログラミング培地を、ホウ酸ナトリウムを含む新鮮な再プログラミング培地と毎日交換する。場合により、ホウ酸ナトリウムを含む再プログラミング培地は、約4〜8日間、場合により約5〜7日間、更に場合により約6日間、ホウ酸ナトリウムを含む新鮮な再プログラミング培地と毎日交換する。
【0092】
場合により、ホウ酸ナトリウムを含む再プログラミング培地を、人工多能性幹細胞を含む1つ以上の細胞コロニーが形成されるまで、ホウ酸ナトリウムおよび塩基性線維芽細胞成長因子を含む馴化培地と毎日交換する。場合により、塩基性線維芽細胞成長因子、ホウ酸ナトリウムは、約0.1ng/ml〜1μg/ml、場合により約0.1ng/ml〜1μg/ml、更に場合により約10ng/mlの濃度で再プログラミング培地に存在し、ホウ酸ナトリウムは、再プログラミング培地中に約0.025〜2.5mM、場合により約0.1〜1mM、更に場合により約0.25mMの濃度で存在する。
【0093】
更なる態様において、本発明は、本明細書に記載される人工多能性幹細胞を産生するための体細胞の調製方法に従って産生される増殖体細胞を提供する。
【0094】
更なる態様において、本発明は、TERT1を発現する増殖体細胞を提供する。場合により、TERT1を発現する増殖体細胞において、TERT1発現は、増殖させていない体細胞におけるTERT1発現の少なくとも約10%、場合により少なくとも約20%、場合により少なくとも約30%、場合により少なくとも約40%、場合により少なくとも約50%、場合により少なくとも約60%、場合により少なくとも約70%、場合により少なくとも約80%、場合により少なくとも約90%、場合により約100%である。場合により、TERT1を発現する増殖体細胞は、本明細書に記載される人工多能性幹細胞を産生するための体細胞調製方法に従って産生される。
【0095】
場合により、TERT1 mRNAレベルおよび/またはTERT1タンパク質レベルを測定することにより、増殖させたおよび/または増殖させていない体細胞におけるTERT1発現を測定する。場合により、増殖させた細胞のTERT1 mRNA発現を増殖させていない細胞のTERT1 mRNA発現と比較して、TERT1 mRNAレベルの相対的発現レベルを判断する。言い換えれば、増殖細胞におけるTERT1 mRNA発現は、非増殖細胞におけるTERT1 mRNA発現に対して正規化されたTERT1 mRNA発現に対応して正規化され、TERT1の相対的発現レベルを示す。場合により、TERT1 mRNA発現を、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応によって、場合により体細胞からRNAを抽出し、mRNAをcDNAに逆転写し、TERT1プライマーを使用してリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応を行うことによって測定する。場合により、体細胞から抽出したタンパク質を使用してTERT1タンパク質発現を測定し、必要に応じてTERT1特異的抗体を使用してタンパク質抽出物をウエスタンブロットして、TERT1発現を検出する。場合により、体細胞の体細胞中のTERT1に結合するフルオロフォアを含むTERT1特異的抗体を使用し、蛍光顕微鏡下で該結合を観察して1の発現レベルを判断することにより、TERT1タンパク質発現を測定する。抗テロメラーゼ逆転写酵素抗体[Y182](ab32020)などのTERT1特異的抗体は、当技術分野で周知である。フルオロフォアは当技術分野で周知であり、フルオレセイン、Cy5などが含まれる。mRNAまたはタンパク質レベルで遺伝子発現を検出する方法は当技術分野で知られており、本明細書に記載されるTERT1発現を測定するために使用できることが理解されよう。
【0096】
更なる態様において、本発明は、本明細書に記載される人工多能性幹細胞を産生するための方法に従って産生された人工多能性幹細胞胞を提供する。
【0097】
更なる態様において、本発明は、本明細書に記載される増殖体細胞から産生された人工多能性幹細胞を提供する。場合により、人工多能性幹細胞は、本明細書に記載される人工多能性幹細胞を産生するための方法に従って産生される。
【0098】
更なる態様において、本発明は、療法に使用するための本明細書に記載の人工多能性幹細胞を提供する。場合により、本明細書に記載される人工多能性幹細胞は、例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、心血管疾患、糖尿病、糖尿病合併症、心不全、腎臓および生命疾患、がん、筋萎縮性側索硬化症、またはファンコニ貧血や嚢胞性線維症などの遺伝的症状の治療に使用するためのものである。本明細書に記載される人工多能性幹細胞は、幹細胞療法に適した他の状態および疾患の治療に使用できることが理解されよう。
【0099】
更なる態様において、本発明は、研究、場合により実験研究で使用するための、本明細書に記載される増殖体細胞および/または本明細書に記載される人工多能性幹細胞を提供する。
【0100】
本発明の態様の特徴の上記の説明から理解されるように、任意の特徴は、明示的に述べられていなくても、任意の組み合わせで組み合わせることができる。便宜上および簡潔にするために、任意の特徴がそのように列挙されているが、記載された発明の様々な態様における特徴の組み合わせを決して限定するものではない。特徴の組み合わせは、本発明の目的を達成するための化学的、物理的または構造的な非互換性、および適合性によってのみ制限され、その決定は、本開示に基づく熟練した読者の知識および能力の範囲内である。
【0101】
本明細書で使用される際、「増殖させる」、「増殖」などは、細胞培養分野の単語の通常の意味に従って、単離した体細胞を制御された条件下で成長させ、複製させて、細胞数を増加させることを意味する。体細胞が増殖され得る期間は、体細胞をプレーティングするか、さもなければ培養液中で増殖させる瞬間から計算され、この期間は、試料から体細胞を単離した後、または凍結保存などの保存期間の後、単離した細胞をプレーティングするか、さもなければ培養液中で増殖させる前に起こり得ることが理解されるであろう。増殖期間の終了は、増殖体細胞がその後の保存のため、またはそこからの人工多能性幹細胞の産生のために収穫されるか、さもなければ収集されるときに起こる。
【0102】
本明細書で使用される際、「培養」、「培養する」などは、細胞培養の分野での言葉の通常の意味に従って、制御された条件下、例えば、好適な培地、雰囲気、温度で、遺伝要素、場合によりエピソーム遺伝要素を含む単離した体細胞を成長させ、場合により複製させることを意味する。
【0103】
本明細書で使用する際、「約」は、記載された値が、正確に記載された値、場合により記載された値の±5%、場合により記載された値の±10%、場合により記載された値の±15%、場合により記載された値の±20%、場合により記載された値の±30%、場合により記載された値の±40%、更に場合により記載された値の±50%であることを意味する。本明細書で使用される際、「約」は、指定された日数に関連して使用される場合、記載された日数が、記載された値、場合により±3日、場合により±2日、場合により±1日、場合により±18時間、場合により±12時間、場合により±6時間、更に場合により±3時間であることを意味する。
【0104】
「含む」は、開示された特徴が、代替的に、特徴の記載された1つ以上の構成要素からなるか、または本質的になることが理解される。
【0105】
本発明の実施形態を、例として、添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【
図1】TERT1がiPS細胞の再プログラミングの重要なメディエーターであることを実証する。(A)TERT1の発現レベルは、健康な志願者および糖尿病患者から得られた単核細胞(MNC)を14日間培養した後に予想外に消失する。(B)7日間のMNCにおいてshRNAによりTERT1がノックダウンされた場合、再プログラミング効率が0%に低下し、これは、TERT1発現がiPS細胞生成の重要なメディエーターであることを示す。(C)TERT1レベルが正常な対照MNCにより、多能性幹細胞マーカーを発現するiPS細胞コロニーが生成された。これらの知見に基づいて、本明細書に記載されているように、多能性幹細胞を生成する新しいプロトコルが開発された。わずか数滴の血液から得られたMNCを、わずか7日間増殖させ、iPSの再プログラミングに供した。このプロトコルは、再現可能かつ効率的な方法でiPS細胞コロニーを1週間以内に生成する。そのような新規の短いプロトコルの確立は、個別化された再生医療のための強力なツールである。
【
図2】現在開示されている新規のアプローチに基づいて数滴の血液から得られたiPS細胞の生成および特徴付けを示している。(A)健康志願者および糖尿病患者から得られた数滴の血液試料からのiPSC生成を説明する図。(B)iPSCは、定められた境界を有する円形コロニーを形成する。(C)免疫蛍光アッセイは、iPSCがCDy1(インビトロライブ染色)、Oct4、TRA−1−60およびLin28などの多能性マーカーを発現することを示している。(D)iPSCはOct4、Lin28およびNanogをmRNAレベルで発現する。(E)iPSCは、タンパク質レベルでTRA−1−60、Oct4およびLin28を発現する。(F)iPSCは生体内で奇形腫を形成する。これらのデータは、これらの細胞が実際に多能性幹細胞であることを裏付けている。
【
図3】iPS細胞の機能的内皮細胞への分化を示す。(A)内皮細胞(EC)系統へのiPS細胞分化の図。(B)iPS−ECの形態。(C)iPS−ECがmRNAレベルで内皮マーカーを発現することを示すqPCRデータ。(D)分化すると、iPS−ECはタンパク質レベルでVE−カドヘリンを発現し、多能性マーカーOCT4の発現を停止する。(E)iPS−ECは、インビトロで密着結合を形成し、VE−カドヘリン、PECAM−1、およびZO−1を発現する。(F)iPS−ECはLDLを取り込み、インビトロチューブ形成アッセイで血管構造を形成する。これらのデータは、これらの細胞が機能的なECであり、薬物スクリーニングおよび細胞ベース療法のための強力なツールであることを裏付けている。
【
図4】単眼細胞からのiPS細胞の生成に潜在的に関与する様々な因子の発現レベルをプロファイルするスクリーニングアッセイの結果を示す。増殖後9および14日目の単眼細胞の発現レベルを測定した。
【
図5】(A)非統合エピソームプラスミドベクターpEB−C5(Oct4、Sox2、Klf4、c−MycおよびLin28を過剰発現)、およびTERT1を補充したpEB−Tgベクター(SV40ラージT抗原を過剰発現)をトランスフェクトし、新しい基質上で成長させた増殖単眼細胞から生成されたiPS細胞を示す。明確に定められた円形の境界を持つ典型的なiPS細胞コロニーが観察される。(B)多能性マーカーCDy1に対して陽性染色されたiPS細胞コロニーを示す。
【発明を実施するための形態】
【0107】
材料および方法
血液単核細胞(MNC)の単離および増殖
1〜20mlの非動員末梢血を、EDTAコーティングされた4mlチューブに静脈穿刺により採取した。Histopaque溶液(1:1比)に重層し、室温で、550gで30分間回転させることにより、勾配遠心分離によって血液を分離した。単核細胞(MNC)は、プラズマ層とHistopaque緩衝層との間に軟層を形成する。上清を廃棄し、細胞を1mlのMNC培地に再懸濁した。この培地には、エリスロポエチン(EPO)、IL−3、幹細胞因子(SCF)、インスリン様成長因子−1(IGF−1)、デキサメタゾン、およびホロトランスフェリンを補充した無血清培地(SFM)が含まれる。具体的には、SFM(100ml用)は、49mlのIMDM(Life Technologies 21056023)、49mlのF12 Nutrient Mix(Life Technologies 21765029)、1mlのITS−X(Life Technologies 41400045)、1mlの化学的に定義された脂質濃縮物(Life Technologies 11905031)、1mlのペニシリン/ストレプトアビジン、1mlのグルタマックス、5mgアスコルビン酸(SIGMA A8960)、0.5gのBSA(SIGMA A9418)、1.8μlの1−チオグリセロール(SIGMA M6145)を含む。MNCは、2Umlの組換えヒトエリスロポエチン(EPO;R&D Systems、カタログ番号287−TC−500)、10ng/mlのIL−3(IL−3;PeproTech、カタログ番号200−03)、100ng/mlの組換えヒト幹細胞因子(SCF;PeproTech、カタログ番号300−07)、40ng/mlの組換えヒトインスリン様成長因子−1(IGF−1;PeproTech、カタログ番号100−11)、1μMのデキサメタゾン(Sigma−Aldrich、カタログ番号D2915)、および100μg/mlのヒトホロトランスフェリン(R&D Systems、カタログ番号2914−HT−100MG)で補われますSFMを含む。細胞をカウントし、12ウェル(ウェルあたり1ml)または6ウェル(ウェルあたり1〜4ml)プレートに1mlあたり約400万個の密度でプレーティングした。プレーティング後3日目に、すべての細胞を収集し、250gで5分間回転させることにより、培地を変更した。細胞を凍結培地(50%FBS、40%SFM、および10%DMSO)で7日目から凍結保存するか、ただちに再プログラミングに使用した。
【0108】
再プログラミング
Lonza CD34ヌクレオフェクターキットおよびAmaxaヌクレオフェクター(プログラムT−016)を使用したエレクトロポレーションにより、10μgのプラスミド(8μgのpEB−C5および2μgのpEB−抗原T)で2百万細胞をトランスフェクトした。エレクトロポレーション後、細胞を12ウェルプレートのウェル内に2mlのMNC培地、すなわちウェルあたり200万個の細胞をプレーティングした。トランスフェクション後2日目に、細胞を収集し、カウントし、12ウェルプレートのウェルあたり100,000〜80,000細胞の密度で再プログラミング培地に不活化マウス胚性線維芽細胞(MEF)に播種した(つまり、各ウェルの成長表面はおよそ3.8cm
2である)。再プログラミング用メディアには、ノックアウトDMEM(Invitrogen、SKU−10829−018)、20%ノックアウト血清代替品(Invitrogen SKU 10828−028)、10ng/mlの塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF Miltenyi Biotec、130−093−837)、0.1mM β−メルカプトエタノール、および0.1mM MEM非必須アミノ酸(MEM NEAA)を含む。トランスフェクション後3日目に、培地をチューブに集め、300gで5分間遠心分離した。ペレットを新しい培地の残りの容量で再懸濁し、ウェルに戻してプレーティングした。コロニーが採取されるまで、ホウ酸ナトリウム(NaB)を0.25mMの濃度で培地に加えた。再プログラミング培地(NaBを含む)は、新しい再プログラミング培地(NaBを含む)で毎日変更した。トランスフェクション後9日目以降、再プログラミング培地(NaBを含む)をFGF2(10ng/ml)およびNaB(0.25mM)を含む馴化培地と交換した。培地は毎日変更した。つまり、培地をFGF2(10ng/ml)とNaB(0.25mM)を含む新鮮な馴化培地と交換した。7〜10日目からコロニーが出現した。コロニーを採取したら、細胞系を樹立し、FGF2[10ng/ml]を補充した再プログラミング培地で培養した。
【0109】
本方法の更なる発展において、健康なドナーから得られ、上記のように約7日間増殖させた単核血液細胞(MNC)を、標準の解凍プロトコルに従ってMNC培地で解凍した。6ウェルプレートのウェルを異なる基質(表4を参照)で4℃で一晩コーティングした。6ウェルプレートの各ウェルの成長表面積は通常、約9.5cm
2である。基質は、ゼラチン1%、ラミニン50μg/mLを含む本発明の新規基質であり、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を加え、ゼラチンおよびラミニンをPBS(ES)マトリゲル、Matrigel(商標)を含むゼラチン、細胞マトリックス(CellMatrix基底膜マトリックスゲル(ATCC(登録商標)ACS−3035(商標)))、細胞マトリックスを含むMatrigel(商標)(CellMatrix基底膜マトリックスゲル(ATCC(登録商標)ACS−3035(商標)))、およびMatrigel(商標)を混合することにより、濃いゲル状溶液に処方した。翌日、上記のように、非統合エピソームプラスミドベクターpEB−C5(Oct4、Sox2、Klf4、c−MycおよびLin28を過剰発現)、およびpEB−Tgベクター(SV40ラージTを過剰発現)(Chou et al.[5]およびDowey et al.[6])を使用して、2,000,000個のMNCをトランスフェクトし、場合によりTERT1を補充した。TERT1をベクターにクローニングし(NM_198253.2から得られたクローニング配列)、当技術分野で知られている標準的なクローニング技術を使用して、TERT1を過剰発現するプラスミドを生成した。2,000,000個のトランスフェクトMNCを、2mlMNC培地の6ウェルプレートの各ウェルに加えた。MNC培地およびReproTeSR(商標)培地は、製造元の指示に従って加えた。ReproTeSR(商標)(Stem Cell Technologies)は、完全な、定義済みの、無血清かつゼノフリーの再プログラミング培地である。この培地は、線維芽細胞やその他の細胞型などの体細胞からiPS細胞を生成する際に、フィーダーフリーの条件下で、メーカーの指示に従って(https://cdn.stemcell.com/media/files/pis/DX20217−PIS_1_3_0.pdf?_ga=2.216708116.343397011.15 27158806−1504615269.1527158806)使用される。Rho関連プロテインキナーゼ(ROCK)阻害剤を3日目に添加した。ROCK阻害剤であるY−27632二塩酸塩(trans−4−[(1R)−1−アミノエチル]−N−4−ピリジニルシクロヘキサンカルボキサミド二塩酸塩)は、TOCRIS(カタログ番号1254)から入手した。10mMのストック溶液を使用中に更に1:1000に希釈した。5日目からコロニーが観察された。5日目から、ReproTeSR培地を毎日交換し(2ml)、ROCK阻害剤(使用中に10mM原液を1:1000に希釈)を補充し、本明細書に記載されるおよび/または当技術分野で知られている標準プロトコルに従ってコロニーを選択し、増殖させ、特徴付けし、凍結させた。
【0110】
再度、本方法の更なる開発において、ナノ粒子を介して再プログラミング因子をMNCに導入した。つまり、2mMストックのナノ粒子を5%デキストロースで1:2に希釈して、1mMの溶液を得た。ナノ粒子およびプラスミドの正しい量を、使用する細胞数に基づいて決定する。0.25μgのプラスミドDNAを含む1.5μLの1mMナノ粒子溶液を使用することで、良好な結果が得られた(約1μgのDNAが約1x10
6個の細胞のトランスフェクションに適している)。まず、必要な量のDNA(再プログラミングプラスミド)に125μLまで(6ウェルプレートの1ウェルに対して)無血清Optimemを加えた。無血清Optimemも最大125μLのナノ粒子の容量まで加えた。次に、125μLのDNA−Optimemを125μLのナノ粒子−Optimemに滴下する。DNA−ナノ粒子混合物を室温で30分間インキュベートする。次に、DNA−ナノ粒子混合物を基質に添加し、ナノ粒子に含まれる再プログラミング因子が埋め込まれた基質を含む製品を製造する。
【0111】
理解されるように、DNAは、それ自体、高分子電解質−DNAの負に帯電した糖リン酸骨格が、とりわけ以下のものに影響を及ぼす:(i)溶液中のDNAの立体配座とダイナミクス、(ii)小分子と大分子の両方との化学的および物理的相互作用の性質、ならびに(iii)表面および界面での吸着方法。上記の考慮事項により、DNAの送達に対する多くのアプローチは、正に帯電したポリマーの設計に焦点をあてている。カチオン性ポリマーは、静電相互作用を介して溶液中のDNAと相互作用して、サイズ、電荷、および細胞によるDNAの内在化および処理を促進できるその他の特性を持つ凝集体または集合体を形成することができる。
【0112】
基質は、本明細書に記載されるようなROCK阻害剤、例えば、Y−27632二塩酸塩をおよそ10〜20μMの濃度で更に含んでもよい。
【0113】
奇形腫形成アッセイ
iPS細胞(1x10
6個)をMatrigelと混合し、重度の複合免疫不全(SCID)マウスに皮下注射した。8週間後、プラグを採取し、HE染色および奇形種形成のために切片を観察した。
【0114】
細胞分化
フィーダーフリー条件下で培養されたヒト人工多能性幹(iPS)細胞を、解離培地を使用して切り離し、EGM−2培地(Lonza)+10%FBS中マウスコラーゲンIV(BDマウスコラーゲンIV−5μg/ml)コーティングプレートに播種した。溶解培地は、ヒトiPSコロニーを単一細胞に解離する試薬(RCHETP002、Reinnervate)を含んでいる。25ng/mlBMP4、12ng/mlアクチビンA、8μM CHIR99021、および20ng/mlのFGF2(bFGF Miltenyi Biotec、130−093−837)を培地に添加した(分化0日目)。48時間後(2日目)、50ng/mlのVEGF、10ng/mlのFGF2および10μMのLY364947(Sigma)を補充したEGM−2+10%FBSと当該培地を交換し、1日おきに新しくした。分化の6日目に、CD144発現細胞のMACS媒介選択を実施し、選択した細胞をマウスコラーゲンIVコーティングプレートに播種した。MACS(登録商標)技術は、試料内の目的の細胞をMACSマイクロビーズで磁気標識し、試料をMACSセパレータに配置されたMACSカラムに適用し、カラム上に磁気的に捕捉して収集することにより、混合細胞集団から任意の細胞型を分離するべくマイクロビーズ技術を利用する。使用した培地は、50ng/mlのVEGFおよび10μMのLY364947を補充した10%FBSを含むEGM−2であった。
【0115】
RNA抽出、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)およびリアルタイムPCR
細胞を収穫し、冷PBSで洗浄し、Qiazolで溶解し、製造元の指示に従ってRNeasyミニキット(Qiagen)を使用してRNAを精製した。RNA収量は、NanoDrop分光光度計(NanoDrop Technologies)を使用して決定した。全RNA(2μg)をcDNAに変換した。SYBR Green(Life Technologies)を使用して定量PCR(qPCR)を行い、サーモサイクラーLightCycler480シーケンス検出器(Roche)を使用して検出を行った。プライマー配列を表1に列挙する。標的遺伝子の発現を、参照遺伝子GAPDHに対して正規化した。
【表1】
【0116】
免疫蛍光染色
細胞を4%パラホルムアルデヒドで15分間固定し、PBSで0.1%Triton X−100で5分間透過処理し、PBS中5%ロバ血清で室温にて30分間ブロックした。細胞を一次抗体とともに37℃で1時間インキュベートした。当該抗体は次のとおりである:ウサギ抗VE−カドヘリン;ウサギ抗CD31(ヒト特異的);ウサギ抗KDR;およびマウス抗SM22。二次抗体との次のインキュベーションは、抗ウサギAlexa488および10個の抗マウスAlexa594を使用して、37℃で45分間行われた。細胞を4’−6−ジアミノ−2−フェニルインドール(DAPI)で対比染色し、スライドガラスに載せ、蛍光顕微鏡(Axioplan2イメージング;Zeiss)またはSP5共焦点顕微鏡(Leica、ドイツ)で検査した。
【0117】
免疫ブロッティング
細胞を回収し、冷PBSで洗浄し、RIPA緩衝液(Sigma)に再懸濁し、超音波処理(2回、各6秒)(Bradson Sonifier150)により溶解して、全細胞溶解液を得た。タンパク質濃度は、Biorad Protein Assay Reagentを使用して決定した。50μgの全溶解物をSDS−PAGEに適用し、Hybond PVDF膜(GE Health)に転写し、次いで標準的な免疫ブロッティング手順を行った。結合した一次抗体は、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)結合二次抗体およびECL検出システム(GE Health)を使用して検出した。
【0118】
FACS分析
iPS−ECをFACSで分析して、フローサイトメーターのCD144、KDRおよびその他の内皮マーカーの割合を決定した。FlowJoソフトウェアを使用してデータ分析を実行した。
【0119】
Ac−LDL取り込みアッセイ
アセチル化低密度リポタンパク質(LDL)の取り込みを検出するために、細胞をDil−ac−LDL(Molecular Probes)と共に4時間インキュベートし、蛍光顕微鏡(Axioplan2 imaging;Zeiss)で検査および撮影した。
【0120】
インビトロチューブ形成アッセイ
5x10
4のiPS、iPS−ECまたはHUVECを含有する細胞懸濁液を8ウェルチャンバースライドの50μl/ウェルマトリゲル(BD Matrigel Basement Membrane Matrix Growth Factor Reduced)の上に置き、37℃で30〜60分間インキュベートしてゲルを固化させた。
【0121】
結果および考察
TERT1はiPS細胞の再プログラミングの重要なメディエーターである
健康志願者および糖尿病患者から人工多能性幹細胞を生成する堅牢なプロトコルを開発する試みで、血液1mlから単核細胞(MNC)を分離した。細胞を細胞の再プログラミングに反応させる単核細胞増殖の最適な時点を定義するために、9日目および14日目の単眼細胞の大規模なスクリーニングアッセイプロファイリングを行った(
図4)。この大規模なスクリーニングアッセイには再プログラミング遺伝子、エピジェネティックモジュレーター、血管前駆細胞、ならびに初期および後期の内皮細胞系統遺伝子が含まれる。驚くべきことに、テロメラーゼ逆転写酵素(TERT1)は、体細胞の再プログラミングにテロメア外機能を有していると思われ、iPS細胞の再プログラミングの重要なメディエーターであることがわかっている。テロメラーゼ逆転写酵素(ヒトではTERT、TERT1、またはhTERTと略される)は、酵素テロメラーゼの触媒サブユニットであり、テロメラーゼRNA成分(TERC)とともに、テロメラーゼ複合体の最も重要な単位を構成する。
図1Aに示すように、TERT1の発現レベルは、培養MNCの14日後に完全に消失し(
図1A)、その時点での再プログラミング効率はほぼゼロになる。以下の表2は、7日間の増殖後のコロニー形成を示しているが、14日間増殖させたMNCからは単一のコロニーのみが形成された。
【表2】
【0122】
細胞の再プログラミングにおけるTERT1の役割を確認するために、7日間のMNCでshRNAによりTERT1がノックダウンされ(
図1B)、再プログラミング効率が0%に低下し(表3)、TERT1発現がiPS細胞生成の重要なメディエーターであることを示している。TERT1レベルが正常な対照MNCによりiPS細胞コロニーが生成され(表3)、これらの細胞はCDy1などの多能性幹細胞マーカーを発現する(
図1C)。これらの発見に基づいて、多能性幹細胞を生成する新しいプロトコルが開発された。わずか数滴の血液から得られたMNCを、わずか7日間増殖させ、iPSの再プログラミングに供した。このプロトコルは、初めて、再現可能かつ効率的な方法でiPS細胞コロニーを1週間以内に生成する。そのような新規の短いプロトコルの確立は、個別化された再生医療のための強力なツールである。
【表3】
【0123】
新規アプローチに基づく数滴の血液から得られたiPS細胞の生成および特徴付け
数滴の血液からのこの強力で高速かつ高効率の再プログラミング方法が生成され、得られたiPS細胞が完全に特徴付けられた。
図2Aには、健康志願者および糖尿病患者からの数滴の血液試料から得られたiPSC生成を説明する図が示されている。iPS細胞は、定められた境界を持つ円形コロニーを形成し、多能性幹細胞の典型的な形態を明らかにする(
図2B)。iPS細胞がCDy1(インビトロライブ染色)、Oct4、TRA−1−60およびLin28などの多能性マーカーを発現することを示す免疫蛍光染色が行われた。
図2Cを参照のこと。更に、iPS細胞はOct4、Lin28およびNanogをmRNAレベルで発現する(
図2D)。重要なことに、iPS細胞はタンパク質レベルでTRA−1−60、Oct4およびLin28を発現する(
図2E)。最後に、新規アプローチに基づいて得られたiPS細胞の多能性を、SCIDマウスで奇形腫の形成を行うことによりインビボで試験した。実際、iPS細胞はインビボで6〜8週間以内に奇形腫を形成した(
図2F)。これらの結果は、健康志願者および糖尿病患者からの数滴の血液から、高速かつ高効率な新規方法に基づいてiPS細胞が生成されることを強調している。
【0124】
体細胞(MNC)を成長させてiPS細胞に再プログラミングする好適なフィーダーフリーおよびゼノフリーの基質を特定するために、実験を行った。様々な濃度のゼラチンおよびラミニンを好適な緩衝液(リン酸緩衝生理食塩水)と混合し、硬化させた。表4に示すように、ゼラチンおよびラミニンの組み合わせを含む特定の基質のみが、示された量で、好適なゲルコンシステンシーを生成し、iPS細胞のコロニーを生成することを発見した。
【表4】
【0125】
また、コーティング基質、播種密度、トランスフェクション法、および/または高継代MNCの使用を変更したフィーダーフリー培地を使用して実験を実施した。高継代細胞(つまり、再プログラミングの14日以上前に拡張させた体細胞(MNC))を使用してもコロニーは得られなかった。また、Lipofectamine(商標)やFugene(登録商標)6などの他のトランスフェクション法ではコロニーは得られなかった(データは示さず)。6ウェルプレートのウェルあたり約1〜2×10
6個の細胞の播種密度により、再プログラミング効率が最良となった。表5からわかるように、標準のコーティング基質はiPS細胞コロニーをまったく、またはほとんど生成しなかったが、新規基質はわずか5〜7日後にコロニーを生成した。
【表5】
【0126】
したがって、5〜7日目頃に、十分に定義された多能性関連マーカーの評価により、明確な円形限界を持つ典型的なiPS細胞コロニーが新規基質上で観察された(
図5Aを参照)。iPS細胞コロニーは、多能性マーカーCDy1に対して陽性染色した(
図5B)。
【0127】
機能的内皮細胞へのiPS細胞の分化
次の工程は、iPS細胞を内皮細胞(EC)系統に分化させることであった。
図3Aには、ECへのiPS細胞の分化の模式図が示されている。簡潔に言うと、iPS細胞をフィーダーフリー条件下で培養し、EGM−2培地(Lonza)10%FBSのマウスコラーゲンIVコーティングプレートに播種した。培地には、25ng/mlのBMP4、12ng/mlのActivin A、8μMのCHIR99021、および20ng/mlのFGF2を添加した。48時間後(2日目)、50ng/mlのVEGF、10ng/mlのFGF
2および10μMのLY364947(Sigma)を補充したEGM−2+10%FBSと当該培地を交換し、1日おきに新しくした。分化の6日目に、CD144発現細胞のMACS媒介選択を実施し、選択した細胞をマウスコラーゲンIVコーティングプレートに播種した。使用した培地は、50ng/mlのVEGFおよび10μMのLY364947を補充した10%FBSを含むEGM−2であった。得られたiPS−ECは、ECの典型的な形態を明らかにする(
図3B)。iPS−ECがmRNAレベルでKDR、CD144、eNOSなどのECマーカーを発現することもリアルタイムデータで示されている(
図3C)。重要なことに、ECの分化時に、iPS−ECはVE−カドヘリンをタンパク質レベルで発現し、多能性マーカーOCT4の発現を停止する(
図3D)。驚くべきことに、iPS−ECは、インビトロで密着結合を形成し、VE−カドヘリン、PECAM−1、およびZO−1を発現する(
図3E)。機能的には、iPS−ECはLDLを取り込み、インビトロチューブ形成アッセイで血管構造を形成する(
図3F)。これらの結果は、機能的ECがもたらされ、薬物スクリーニングおよび細胞ベース療法のための強力なツールであることを明確に実証する。
【0128】
更なる開発では、フィーダーフリー条件下で培養されたヒト人工多能性幹(iPS)細胞を、解離溶液(Reprocell)を使用して切り離し、EGM−2培地(Lonza)10%FBS中マウスコラーゲンIV(Cultrex Mouse Collagen IV(3410−010−01、R&D))に播種した。培地には、25ng/mlのBMP4、12ng/mlのActivin A、8μMのCHIR99021、および20ng/mlのFGF2を添加した(MACS)。48時間(分化2日目)後、200ng/mlのVEGF(Life Technologies)、10ng/mlのFGF
2および10μMのLY364947(Sigma)を補充したEGM−2 10%FBSと当該培地を交換し、1日おきに新しくした。分化6日目に、以前に示したように(Cochrane et al., 2017)、MicroBeads Kit(Miltenyi Biotec)を使用して、CD144発現細胞のMACSを介した磁気選択を行った。陽性選択した細胞を、50ng/mlのVEGFおよび10μMのLY364947を補充したEGM−2 10%FBS培地でマウスコラーゲンIVコーティングプレートに播種した。
【0129】
考察
この研究では、新規で高速かつ高効率の戦略に基づいてiPS細胞を生成する再プログラミング方法を初めて開発した。当研究室には、体細胞集団(線維芽細胞または単核細胞)のiPS細胞[3]および部分iPS細胞(PiPS)[4]への再プログラミングの豊富な経験がある。このプロセスでは、糖尿病患者および健康な対照の体細胞を使用し、DNAを含まない統合技術を利用している。この研究では、iPS細胞の再プログラミングに対する新規の短いアプローチを提案することにより、更に進んでいる。幹細胞ベース療法は、医療研究に新たな分野をもたらし、健康管理に革命をもたらす可能性があり、組織拒絶や免疫抑制薬の使用に伴うリスクなしに、個別化医療を適用する能力を提供する。定義により、幹細胞は、自己再生能力が高く、相対的な周囲の化学環境または「ニッチ」に応じて、多数の異なる細胞型に分化する生得的な能力を有する。幹細胞の用途は、心血管疾患(CVD)、様々な悪性腫瘍、およびアルツハイマー病の治療にまで及ぶ。一般的に、幹細胞は、その効力、つまり、身体の様々な細胞型に分化する相対的な能力に応じて分類できる。多能性と記述されているものは、体のすべての細胞系統を形成することができるが、多能性状態のものは更に最終分化し、結果的に、採用できる細胞型のレパートリーに関してより制限されている。したがって、最も強力なそれらの細胞は細胞ベースの治療戦略に最も有用であるということになる。胚性幹細胞は、唯一の天然の多能性ヒト幹細胞であり、通常、体細胞核移植および結果として生じる胚盤胞の内部細胞塊からの抽出後に単離される。それにもかかわらず、腫瘍形成、ヒト胚の相対的な供給および一般市民の倫理的懸念に関する懸念を含む、前者の細胞の適用には多くの障壁が残っている。しかしながら、科学者たちは、胚性幹細胞における多能性の維持に関与するまさに同じ要因が体細胞のそのような効力を潜在的に促す可能性があると推論している。驚くべきことに、マウス線維芽細胞培養から人工多能性幹(iPS)細胞を生成するには、わずか4つの選択因子の組み合わせで十分であることがわかった。これらの要因には、遺伝子調節タンパク質、Oct3/4、Sox2、Klf4、およびc−Mycが含まれる。その後、成人皮膚線維芽細胞からのヒトiPS細胞の生成が可能であることが、やはり同じ4つの因子の異所性発現を通して見出された。その後の分析により、ヒトiPS細胞は、増殖能、多能性細胞特異的遺伝子のエピジェネティックな状態、および医療用途にとって非常に重要な3つの胚葉を生成する能力など、ヒト胚細胞と多くの特徴を共有していることが明らかになった。そのような知見は、ヒトiPS細胞が体細胞系から実際に生成され得るという決定的な証拠を提供するのに役立つ。他の研究により、これらの表面上典型的な因子の発現時に多能性状態を採用するヒト体細胞の能力が再確認された。信じられないことに、2009年には、単一の山中転写因子であるOct4の過剰発現が、成体マウス神経幹細胞のiPS細胞への再プログラミングに十分であることが報告された。山中因子によって規制されている正確なグローバルターゲットおよびシグナルネットワークの包括的な説明は、前述の因子を含む9つの転写因子の正確なシス作用性標的が特定された、後の2つの研究の組み合わせによって定義され、更なる標的プロモーターが特定され、この研究をマウス胚細胞中で山中因子によって制御されるシグナル伝達カスケードの分析まで拡張した。関与するシグナル伝達カスケードのアレイを考慮すると、これらの経路が非常に複雑であることが分かる。再生医療の分野に関して、これらの細胞には大きな可能性があり、現代社会に影響を及ぼす最も衰弱させる疾患のいくつかを治療する可能性がある。それら細胞の適用が創造性によってのみ制限される場合が非常によくある。臨床環境での使用を超えて、iPS細胞は疾患モデリングおよび新規薬物スクリーニング試験のための貴重なツールとなる可能性がある。
【0130】
体細胞の再プログラミング
過去10年以内に、様々なヒト体細胞系からiPS細胞を産生するためにいくつかの方法が採用されてきた。レトロウイルの遺伝子導入を改善するために、更に複雑なベクターが考案および作成された。すなわち、レンチウイルスをベースとするベクターであり、更なる研究で採用された。
【0131】
前述のプロトコルが明らかに成功したにもかかわらず、レトロウイルスベクターは信じられないほど非効率的であり、感染した体細胞に実質的な遺伝的異質性を生み出し、わずか0.001〜0.1%の細胞しかその後の多能性状態を獲得するものがない。これらの非効率性を考慮して、薬物誘導性レンチウイルスベクターシステムが開発され、初期の方法と比較して、2桁以上の効率の向上が報告された。それにもかかわらず、再プログラミング因子の多くは癌遺伝子であり、レトロウイルスベクターの使用は挿入変異誘発のリスクを高め、かなりの発癌性形質転換のリスクをもたらす。その結果、レトロウイルスベクターによるiPS細胞の生成は、疾患の病因のモデリングなどのインビトロ研究に適用される場合にのみ適切である。より少ない因子でのiPS細胞の産生は、腫瘍形成を潜在的に回避する可能性があると推測でき、実際、選択研究はc−myc癌遺伝子の排除の成功を実証している。しかしながら、これは重要なことではなく、その後の再プログラミング効率の低下により、有害な変異の蓄積の増加を招く。
【0132】
このように、非変異レンチウイルスベクターが開発され、それにより、より適切な治療用iPS細胞が生成され、挿入変異誘発が減少し、細胞株間の悪性腫瘍の発生が同時に減少した。
【0133】
したがって、より短い時間枠で、かつ、より高効率な方法でiPS細胞を生成するには、より高度な戦略が緊急に必要である。本研究では、7日間のMNCが高レベルのエピジェネティック遺伝子TERT1を発現し、それにより、細胞が細胞再プログラミングに応答し、非常に短時間でiPS細胞に向かって迅速かつ効率的に「形質転換」されることを見出した。初めて、少量の血液から分離した細胞を使用してiPS細胞を生成する堅牢な方法が実証された。しかしながら、iPS細胞は血液細胞から導出することができるが、再プログラミング効率の低さと安全性に関連する大きな問題があり、それは大量の血液量、場合によっては顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)を使用した血球の薬物誘導動員のための要件に関連する。現在、iPS細胞を迅速かつ安全に生成できる血液ベースのキットは限られている。この研究では、より低侵襲性のiPS細胞生成の新規アプローチを開発した。患者/ドナーに特異的な細胞再プログラミングのための血液単核細胞(MNC)の使用は、線維芽細胞の使用よりも被検体に対して低侵襲であり、重要なことには血液を動員することなく、わずか1mlの血液しか必要としない。ドナーの以前の成長因子治療を必要とせず、末梢血は静脈穿刺によって抽出される。健康なドナーと糖尿病患者の両方の試料に適用可能性がある。これは、その状態により治癒が困難な糖尿病患者にとって特に重要である。迅速なアプローチである:わずか7日間で増殖する非常に少量の血液細胞(1ml)から細胞を再プログラミングすることができ、再プログラミングのわずか9日後に完全に再プログラミングされたiPS細胞コロニーを生成する。より高速かつ効率的である:MNCを、7日間で最大2.5倍まで増殖させることができる。高効率的である:MNCの再プログラミング効率は最大0.02%であり、これは、統合フリーおよびウイルスフリーの遺伝子送達方法を使用する他のプロトコルによって得られる効率と比較して高い。完全に再プログラミングされたiPS細胞コロニーの確立は、現在のプロトコル全体で報告されている:他のプロトコルは、特徴付けまたは分化工程に失敗する部分的に再プログラミングされた細胞の生成につながるため、これは非常に重要である。この方法で得られたiPS細胞は、完全に再プログラミングされた多能性幹細胞として特徴付けられ、ECへと正常に分化した。本方法はウイルスフリーである:細胞に再プログラミング遺伝子を送達するためにウイルスを使用する必要はなく、代わりに非統合エピソームベクターを使用することができる。これにより、再プログラミングされた細胞の変異が減少し、それらの細胞が再生医療でより安全に使用される。本方法はフィーダーフリーである。ヒト胚性線維芽細胞(MEF)などのフィーダー細胞を使用する必要はない。これは、ヒトiPS細胞を成長させるときに一般的に使用される。したがって、外部汚染のリスクがない。これは、ヒトの疾患を研究したり、それを患者の治療に変換したり、将来の臨床使用に適用したりする際に大きな利点である。費用効果が高い:エピソームベクターの複製および使用は、センダイウイルスやエピソームベクタートランスフェクションキットなどの細胞再プログラミングのための他の非統合遺伝子送達方法と比較した場合、非常に費用対効果が高い。最後に、柔軟な方法である:ベクターの作成および使用に、特定のキットは必要ない。
【0134】
薬物スクリーニングおよび細胞ベース療法のために患者特異的iPS細胞を生成するために本方法を広く使用することができる
重要なことに、この研究では、糖尿病患者からのiPS細胞が生成され、ECに分化した。2025年までに、3億8千万人の糖尿病患者が存在し、2030年までに糖尿病が死因の第7位になると予測されている。糖尿病は、若年死亡の世界的に主要な原因である。糖尿病は、心臓発作、脳卒中、下肢切断、腎不全および失明の主要な原因であり、それらはすべて生活の質に深刻な影響を与え、死を引き起こす荒廃した状態である。2型糖尿病患者の約半分は心血管系の原因で若年死亡し、およそ10%は腎不全で死亡する。1型糖尿病と2型糖尿病の両方から生じる大血管および微小血管合併症の病原性の基礎は複雑で多因子であるが、進行性のEC機能不全は重要である。糖尿病環境を特徴付ける高血糖症、高血圧症および脂質異常症の結果として、酸化ストレス、軽度の炎症、および血小板過活動を伴う血管内皮で、イベントの悪循環が発生する可能性がある。特に高血糖が内皮機能障害にどのように影響するかは、完全には理解されていない。したがって、先駆的なアイデアや、iPS細胞の優れた技術を通じて糖尿病患者からECを導出する可能性などの新しいツールに基づいて実施する研究が非常に緊急に必要である。iPS細胞は、糖尿病の下流の原因因子に対する治療戦略のターゲティングに関して非常に大きな可能性を秘めており、それは顕著なEC機能不全である。実際、糖尿病の過程で失われたまたは損傷したものを置換し、糖尿病の合併症を防ぐ機能的な血管組織の生成は、特にECの自発的な再生が非常に遅いという事実を考慮すると、治療が非常に困難な疾患であった。この血管の再内皮化に加えて、細胞ベース療法も脈管形成に向けられる可能性があり、糖尿病の主要な合併症である急性心筋梗塞後の虚血組織内の血管新生をサポートする。したがって、糖尿病患者から得られたECは、ペトリ皿内の患者固有の細胞を表す独特なツールであり、病気の原因を初めて調べる、無限の数の潜在的な薬物をスクリーニングする、新規療法を開発する、そして、細胞ベース療法に使用される機能細胞を生成するために使用することができる。糖尿病および糖尿病の合併症は、新規方法が甚大な大きな影響を与え得る一例にすぎない。リストは無限であり、無数の患者がこの有望かつ強力な戦略に基づいた新規治療を待っている。
【0135】
本発明は、本明細書に記載される実施形態に限定されず、本発明の範囲から逸脱することなく補正または修正することができる。
【0136】
参考文献
[1]Worringer KA, Rand TA, Hayashi Y, Sami S, Takahashi K, Tanabe K et al. “The let−7/LIN−41 pathway regulates reprogramming to human induced pluripotent stem cells by controlling expression of prodifferentiation genes.” Cell Stem Cell 2014; 14(1): 40−52.
[2]Takahashi K and Yamanaka S. “Induction of pluripotent stem cells from mouse embryonic and adult fibroblast cultures by defined factors.” Cell 2006; 126(4): 663−676.
[3]Cochrane, A., et al. “Quaking Is a Key Regulator of Endothelial Cell Differentiation, Neovascularization, and Angiogenesis.” Stem Cells (2017).
[4]Margariti, A., et al. “Direct reprogramming of fibroblasts into endothelial cells capable of angiogenesis and reendothelialization in tissue−engineered vessels.” Proc Natl Acad Sci U S A 109, 13793−13798 (2012).
[5]Chou, B.−K., Mali, P., Huang, X., Ye, Z., Dowey, S.N., Resar, L.M.S., Zou, C., Zhang, Y.A., Tong, J., and Cheng, L. (2011). Efficient human iPS cell derivation by a non−integrating plasmid from blood cells with unique epigenetic and gene expression signatures. Cell Research 21, 518.
[6]Dowey, S.N., Huang, X., Chou, B.−K., Ye, Z., and Cheng, L. (2012). Generation of integration−free human induced pluripotent stem cells from postnatal blood mononuclear cells by plasmid vector expression. Nature Protocols 7, 2013.
[7]Kishino et al., “Generation of Induced Pluripotent Stem Cells from Human Peripheral T Cells Using Sendai Virus in Feeder−free Conditions”, J Vis Exp. 2015; (105): 53225
【手続補正書】
【提出日】2020年1月29日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]
【国際調査報告】