(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-521569(P2020-521569A)
(43)【公表日】2020年7月27日
(54)【発明の名称】放射線不透過性マーカーを有する多孔性バルーン
(51)【国際特許分類】
A61M 25/10 20130101AFI20200626BHJP
A61M 29/02 20060101ALN20200626BHJP
【FI】
A61M25/10 502
A61M29/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2019-565496(P2019-565496)
(86)(22)【出願日】2018年7月16日
(85)【翻訳文提出日】2019年11月27日
(86)【国際出願番号】US2018042216
(87)【国際公開番号】WO2019018255
(87)【国際公開日】20190124
(31)【優先権主張番号】62/533,497
(32)【優先日】2017年7月17日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(71)【出願人】
【識別番号】501083115
【氏名又は名称】メイヨ・ファウンデーション・フォー・メディカル・エデュケーション・アンド・リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】グルバ、サラ エム.
(72)【発明者】
【氏名】クロス、ジェームズ エイ.
(72)【発明者】
【氏名】ロール、ジェームズ ピー.
(72)【発明者】
【氏名】アッシャーバタム、サミュエル ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】カパ、スラジ
(72)【発明者】
【氏名】ペニントン、ダグラス
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA06
4C267FF10
4C267GG03
4C267GG14
4C267GG34
4C267HH11
4C267HH17
(57)【要約】
本開示は、(a)基端部(104p)、先端部、多孔性領域(106p)、非多孔性領域及び内部チャンバを有するバルーン構造物(104)と、(b)バルーン構造物上に配置された1以上の放射線不透過性マーカー(107)であって、ポリマー材料及び放射線不透過性材料を含んでなる放射線不透過性マーカーとを具備している医療用デバイスに関する。本開示はさらに、そのような医療用デバイスを形成する方法、そのような医療用デバイスを備えたシステム、並びにそのような医療用デバイス及びシステムを使用する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)基端部、先端部、多孔性領域、非多孔性領域及び内部チャンバを具備しているバルーン構造物と、(b)該バルーン構造物上に配置された1以上の放射線不透過性マーカーであって、バルーン表面に配備される、ポリマー材料及び放射線不透過性材料を含んでなる放射線不透過性マーカーと、を具備する医療用デバイス。
【請求項2】
バルーン構造物は、エレクトロスピニングで作られたバルーンを具備している、請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項3】
ポリマー材料はエラストマー材料を含んでなる、請求項1〜2のいずれか1項に記載の医療用デバイス。
【請求項4】
1以上の放射線不透過性マーカーは、放射線不透過性材料を含んでなりかつ液体形態である固化可能材料を、バルーン構造物の表面に塗布し、その後固化可能材料を固化せしめて1以上の放射線不透過性マーカーを形成することを含んでなるプロセスによって、形成される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の医療用デバイス。
【請求項5】
1以上の放射線不透過性マーカーは、室温硬化型の接着剤及び放射線不透過性材料から形成される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の医療用デバイス。
【請求項6】
1以上の放射線不透過性マーカーは、UV硬化型の接着剤及び放射線不透過性材料から形成される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の医療用デバイス。
【請求項7】
1以上の放射線不透過性マーカーは、多孔性領域と非多孔性領域との間の1以上の境界線を示す、請求項1〜6のいずれか1項に記載の医療用デバイス。
【請求項8】
1以上の放射線不透過性マーカーのうち少なくとも1つは、バルーン構造物の基端部を規定する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の医療用デバイス。
【請求項9】
1以上の放射線不透過性マーカーのうち少なくとも1つをバルーン構造物の基端部に位置付けられた第1のバンドの形態で、及び1以上の放射線不透過性マーカーのうち少なくとも1つをバルーンの先端部に位置付けられた第2のバンドの形態で具備している、請求項1〜8のいずれか1項に記載の医療用デバイス。
【請求項10】
等しい長さの複数の等間隔の放射線不透過性マーカーが第1のバンドを形成し、かつ等しい長さの複数の等間隔の放射線不透過性マーカーが第2のバンドを形成する、請求項9に記載の医療用デバイス。
【請求項11】
長尺状本体をさらに具備し、該長尺状本体の先端部にバルーン構造物が位置付けられている、請求項1〜10のいずれか1項に記載の医療用デバイス。
【請求項12】
長尺状本体は、内部チャンバに流体を供給して該流体がバルーン構造物の多孔性領域を通って浸透するように構成された、内部チャンバと流体連通しているルーメンを具備している、請求項11に記載の医療用デバイス。
【請求項13】
バルーン構造物の内部チャンバ内に位置付けられた電極をさらに具備している、請求項1〜12のいずれか1項に記載の医療用デバイス。
【請求項14】
バルーン構造物の内部チャンバ内に位置付けられた電極とともに接地又は閉ループを形成するように構成されたチップ電極をさらに具備している、請求項13に記載の医療用デバイス。
【請求項15】
(a)請求項13〜14のいずれか1項に記載の医療用デバイスと、(b)電極に電気エネルギーを供給するように構成された制御装置とを具備しているシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、放射線不透過性マーカーを備えた多孔性バルーンに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマー製バルーンは、バルーンカテーテルを含む多くの医療製品において使用されている。そのようなバルーンに、該バルーンを放射線画像撮影下で視認可能とする特徴を提供することは、有益である。残念なことに、ポリマー製バルーンはその可撓性ゆえに、金属の放射線不透過性マーカーの適用にはあまり適していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、バルーンのための放射線不透過性マーカーの改善は当分野において絶えず必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
概要
様々な態様のとおり、本開示は、(a)基端部、先端部、多孔性領域、非多孔性領域及び内部チャンバを具備しているバルーン構造物と、(b)該バルーン構造物上に配置された1以上の放射線不透過性マーカーであって、ポリマー材料及び放射線不透過性材料を含んでなる放射線不透過性マーカーとを具備する医療用デバイスに関する。ある実施形態では、バルーン構造物は、数ある可能性の中でも特に、エレクトロスピニングで作られたバルーンを具備することができる。
【0005】
先の態様及び実施形態のうちいずれかと併せて使用可能な、ある実施形態では、ポリマー材料は、エラストマー材料、例えば数ある可能性の中でも特にシリコーン材料を、含んでなることが可能である。
【0006】
先の態様及び実施形態のうちいずれかと併せて使用可能な、ある実施形態では、1以上の放射線不透過性マーカーは、放射線不透過性材料を含んでなりかつ液体形態である固化可能材料を、バルーン構造物の表面に塗布し、その後固化可能材料を固化せしめて1以上の放射線不透過性マーカーを形成することを含んでなるプロセスによって、形成可能である。例えば、固化可能材料は硬化工程の際に固化せしめられる硬化性材料であってもよいし、又は固化可能材料は、数ある可能な固化工程の中でも特に、冷却で固化せしめられる熱可塑性ポリマー溶融物であってもよい。
【0007】
先の態様及び実施形態のうちいずれかと併せて使用可能な、ある実施形態では、ポリマー材料は室温硬化型の接着剤であってよい。室温硬化型の接着剤は、例えば、数ある可能性の中でも特に、アセトキシ基を有するポリシロキサンを含んでなることができる。
【0008】
先の態様及び実施形態のうちいずれかと併せて使用可能な、ある実施形態では、ポリマー材料はUV硬化型の接着剤であってよい。UV硬化型の接着剤は、例えば、遊離基を生成する光開始剤、多官能性不飽和オリゴマー、及び任意選択で不飽和オリゴマーを含んでなることもできるし、又は、UV硬化型の接着剤は、例えば、数ある可能性の中でも特に、カチオン性光開始剤及びエポキシド化合物を含んでなることもできる。
【0009】
先の態様及び実施形態のうちいずれかと併せて使用可能な、ある実施形態では、1以上の放射線不透過性マーカーは、多孔性領域と非多孔性領域との間の1以上の境界線を規定することができる。例えば、多孔性領域は、基端側境界線及び先端側境界線を有する多孔性バンドの形態であってよく、その場合、(a)1以上の放射線不透過性マーカーが基端側境界線に提供されてもよいし、(b)1以上の放射線不透過性マーカーが先端側境界線に提供されてもよいし、又は、(c)1以上の放射線不透過性マーカーが基端側境界線に提供され、かつ1以上の放射線不透過性マーカーが先端側境界線に提供されてもよい。
【0010】
先の態様及び実施形態のうちいずれかと併せて使用可能な、ある実施形態では、1以上の放射線不透過性マーカーがバルーン構造物の基端部に印を付してもよい。
先の態様及び実施形態のうちいずれかと併せて使用可能な、ある実施形態では、放射線不透過性マーカーのうち1以上はバルーンの基端部に位置付けられた第1のバンドを形成してもよく、かつ/又は、1以上の放射線不透過性マーカーはバルーンの先端部に位置付けられた第2のバンドを形成してもよい。
【0011】
先の態様及び実施形態のうちいずれかと併せて使用可能な、ある実施形態では、第1のバンドの形態の等しい長さの複数の等間隔の放射線不透過性マーカーがバルーンの基端部に位置付けられてもよく、かつ第2のバンドの形態の等しい長さの複数の等間隔の放射線不透過性マーカーがバルーンの先端部に位置付けられてもよい。
【0012】
先の態様及び実施形態のうちいずれかと併せて使用可能な、ある実施形態では、医療用デバイスは長尺状本体をさらに具備してもよく、かつバルーン構造物は該長尺状本体の先端部に位置付けることができる。これらの実施形態のうちいくつかにおいて、長尺状本体は、内部チャンバに流体を供給して該流体がバルーン構造物の多孔性領域を通って浸透するように構成された、内部チャンバと流体連通しているルーメンを具備することができる。これらの実施形態のうちいくつかにおいて、医療用デバイスは追加の内部チャンバをさらに具備することが可能であり、かつ長尺状本体は、追加の内部チャンバと流体連通している追加のルーメンを具備することが可能であり、その場合、ルーメンは、バルーン構造物の内部チャンバに第1の流体を供給して第1の流体がバルーン構造物の多孔性領域を通って浸透するように構成可能であり、かつ追加のルーメンは、バルーン構造物の追加の内部のチャンバに第2の流体を供給して第2の流体がバルーン構造物を膨張させるように構成可能である。
【0013】
先の態様及び実施形態のうちいずれかと併せて使用可能な、ある実施形態では、医療用デバイスは、バルーン構造物の内部に位置付けられた電極をさらに具備することができる。これらの実施形態のうちいくつかにおいて、医療用デバイスは、バルーン構造物の内部に位置付けられた電極とともに接地又は閉ループを形成するように構成されたチップ電極をさらに具備することができる。
【0014】
先の態様及び実施形態のうちいずれかと併せて使用可能な、ある実施形態では、医療用デバイスは不可逆電気穿孔(IRE)デバイスであってよい。
他の態様では、本開示は、(a)先の態様及び実施形態のうちいずれかによる医療用デバイスと、(b)該医療用デバイスに電気エネルギーを供給するように構成された制御装置とを具備するシステムに関する。例えば、制御装置は医療用デバイスに、DCエネルギー、RFエネルギー、又は両方を供給するように構成可能である。
【0015】
本開示の様々な態様及び実施形態の詳細は、以降の説明及び添付の図面に示される。本開示の他の特徴及び利点は、その説明及び図面から、並びに特許請求の範囲から、明白となろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本開示の実施形態による、放射線不透過性マーカーを有している単一チャンバ型多孔性バルーン構造物を具備するカテーテルの先端部の概略切り欠き図。
【
図2】本開示の実施形態による、放射線不透過性マーカーを有している二重チャンバ型多孔性バルーン構造物を具備するカテーテルの先端部の概略切り欠き図。
【
図3】本開示の別の実施形態による、放射線不透過性マーカーを有している二重チャンバ型多孔性バルーン構造物を具備するカテーテルの先端部の概略切り欠き図。
【
図4】本開示の実施形態による、放射線不透過性マーカーを有している3チャンバ型多孔性バルーン構造物を具備するカテーテルの先端部の概略切り欠き図。
【
図6A】本開示の実施形態による、一部が静脈内に位置付けられ、かつ一部が心房内に位置付けられたカテーテルの先端部の概略図。
【
図6B】本開示の実施形態による、全体が静脈内に位置付けられたカテーテルの先端部の概略図。
【
図7A】本開示の実施形態による、一部が静脈内に位置付けられ、かつ一部が心房内に位置付けられたカテーテルの先端部の概略図。
【
図7B】本開示の実施形態による、全体が静脈内に位置付けられたカテーテルの先端部の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
詳細な説明
様々な態様において、本開示は、(a)長尺状本体、(b)基端部、先端部、多孔性領域、非多孔性領域、及び長尺状本体の先端部に位置付けられた少なくとも1つの内部チャンバ、を有するバルーン構造物、並びに(c)バルーン構造物上に配置された少なくとも1つの放射線不透過性マーカーであって、ポリマー材料及び放射線不透過性材料を含んでなる放射線不透過性マーカー、を具備している医療用デバイスに関する。
【0018】
本開示に従って使用するためのバルーン構造物は、下記を含む様々な材料、特にそれらの組み合わせなどであって:ポリウレタン、例えば熱可塑性ポリウレタン、例えば、数ある中でも特に、ポリカーボネート系ポリウレタン(例えばBIONATE(登録商標)、CHRONOFLEX(登録商標)など)、ポリエーテル系ポリウレタン、ポリエステル系ポリウレタン、ポリエーテル系及びポリエステル系ポリウレタン(例えばTECOTHANE(登録商標)、PELLETHANE(登録商標)など)、ポリイソブチレン系ポリウレタン、並びにポリシロキサン系ポリウレタン;スチレン‐アルキレンブロックコポリマー、例えば、数ある中でも特に、ポリ(スチレン‐b‐イソブチレン‐b‐スチレン)(SIBS)トリブロックコポリマーなどのスチレン‐イソブチレンブロックコポリマー、及びスチレン‐イソプレン‐ブタジエンブロックコポリマー;フルオロポリマー、例えば、数ある中でも特に、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ビニリデンフルオライド‐ヘキサフルオロプロペンコポリマー(PVDF‐HFP)、及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE);ポリエステル、例えば、数ある中でも特に、ポリエチレンテレフタレートのような非生物分解性ポリエステル、並びにポリカプロラクトン(PCL)及び乳酸‐グリコール酸コポリマー(PLGA)のような生物分解性ポリエステル;並びに、ポリアミド、例えば、数ある中でも特に、ナイロン(例えばナイロン6)及びポリエーテルブロックアミド、から形成可能である。
【0019】
多孔性領域及び非多孔性領域を有しているバルーンは、当分野で既知の任意の方法によって提供可能である。ある有益な実施形態では、そのようなバルーンは、数ある可能なプロセスの中でも特に、エレクトロスピニング、フォーススピニング又はメルトブローのような繊維形成プロセスと並行して形成可能である。エレクトロスピニングは、ポリマーを含有する液体(例えばポリマー溶液又はポリマー溶融物)からポリマー繊維を作出するために電荷を使用するプロセスである。フォーススピニングは、繊維を作出するために遠心力を使用するプロセスである。メルトブローは、ポリマー溶融物がダイスを通して押し出され、次に高速の空気流で伸長及び冷却せしめられて繊維を形成するプロセスである。
【0020】
エレクトロスピニング又はフォーススピニングのような紡糸プロセス用のポリマー溶液を形成するための溶媒は、溶液中のポリマーに応じて決まることになり、例えば、数ある中でも特に、アセトン、アセトニトリル、ヘプタン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、エタノール、酢酸エチル、メタノール、1‐プロパノール、2‐プロパノール、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、キシレン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。エレクトロスピニングのための典型的な電圧は、数ある可能な電圧の中でも特に、5000〜30000ボルトの範囲である。
【0021】
ある実施形態では、ポリマー繊維は、適切な繊維形成プロセス(例えばエレクトロスピニングプロセスなど)を使用して、バルーン形状の型枠の内部キャビティの中に、又はバルーン形状の型枠の外側表面上に、形成されてもよいし、予め形成されたポリマー繊維がバルーン形状の型枠の内部キャビティの中に、又はバルーン形状の型枠の外側表面上に、設置されてもよい。型枠は、除去可能な材料、例えば後で溶融又は溶解させることのできる材料から、形成可能である。ある実施形態では、ポリマー繊維は、氷で形成されたバルーン形状の型枠の外側表面上に形成される。
【0022】
繊維がバルーンの形状に組み立てられた時点で(例えば型枠の中若しくは型枠上にまだ残っている間、又は型枠から取り外された後に)、硬化性の液体材料、例えば液体の室温硬化性材料、液体の熱硬化性材料若しくは液体のUV硬化性材料、例えば、数ある中でも特に、硬化性ポリジメチルシロキサン(PDMS)材料、又は熱可塑性の溶融物を、1以上の非多孔性領域を設けることが望まれるエリアの繊維に塗布することができる。硬化(硬化性材料が使用される場合)又は冷却(熱可塑性の溶融物が使用される場合)が行われると、多孔性領域及び非多孔性領域を有するバルーンが生産される。
【0023】
1つの特定の実施例では、UV硬化性接着剤、例えば米国カリフォルニア州カーピンテリアのNuSil(商標)テクノロジー・エルエルシー(NuSil
TM Technology LLC)から入手可能なMed‐1515RTVシリコーン室温接着剤を、繊維に塗布して繊維構造物の小間隙を塞ぐことにより、1以上の非多孔性領域を作出することが可能である。該接着剤は、希釈されなくてもよいし、ヘプタン又はキシレンで希釈されてもよい。接着剤:溶媒の質量/質量での希釈レベルは、例えば、数ある値の中でも特に、3:1〜1:5の範囲(例えば3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:4又は1:5)であってよい。
【0024】
別例のプロセスでは、硬化性の液体材料又は熱可塑性の溶融物が、バルーン形状の中空の型枠の内部キャビティに対して、又はバルーン形状の内部型枠の外側表面上に対して、非多孔性領域が所望されるエリアに塗布されてもよい。材料が少なくとも部分的に液体形態のままである間(例えば、熱硬化性材料が硬化していないか若しくは部分的にしか硬化していない場合、又は熱可塑性材料がその融点若しくはそれ以上に保持されている場合)に、ポリマー繊維が該材料の上に、例えばエレクトロスピニングプロセス又は別例のプロセスを使用して、適用されてもよい。材料は少なくとも部分的に液体形態であるので、ポリマー繊維の少なくとも一部は材料の中に入り込む。硬化(硬化性材料が使用される場合)又は冷却(熱可塑性の溶融物が使用される場合)が行われると、多孔性領域及び非多孔性領域を有するバルーンが生産される。
【0025】
上記及びその他の方法を使用して、基端部、先端部、多孔性領域、非多孔性領域及び少なくとも1つの内部チャンバを有するバルーン構造物が形成される。
バルーン構造物を形成する方法にかかわらず、本開示の様々な態様において、適切な放射線不透過性材料を含んでなりかつ液体形態である固化可能材料をバルーン構造物の表面に塗布することにより、少なくとも1つの放射線不透過性マーカーがバルーン構造物上に提供される。固化可能材料は、バルーン構造物の多孔性領域、バルーン構造物の非多孔性領域、又は両方に適用可能である。
【0026】
数ある位置の中でも特に、固化可能材料は、例えばバルーンの多孔性領域と非多孔性領域との間に位置する境界に、そのような境界を描出する1以上の放射線不透過性マーカーを形成するために、塗布されてもよい。多くの他の可能な形態の中でも特に、多孔性領域は、例えば、バルーン構造物の周囲にぐるりと伸びる1以上の多孔性バンドを含んでなることができる。そのような場合、固化可能材料は、例えば1以上のバンドの形態で、一連のドットの形態で、一連のバンドセグメント(例えば一連の弧状帯)の形態で、又は別の形態で、(a)1以上の多孔性バンドに隣接して位置する、バルーン構造物の領域へ、(b)1以上の多孔性バンドに隣接して位置してはいない、バルーン構造物の領域へ、(c)1以上の多孔性バンドの表面の一部分(全部ではない)へ、又は(d)先述の組み合わせへ、塗布されることが可能である。別例として、又は追加として、固化可能材料は、例えば、バルーンの基端部及び先端部のうち少なくともいずれか一方に、該基端部及び先端部のうち少なくともいずれか一方を規定する1以上の放射線不透過性マーカーを形成するために、塗布されてもよい。
【0027】
エレクトロスピニングで作られたバルーンを特に参照すると、そのようなデバイスを様々な医療製品に使用可能であることが分かる。しかしながら、多くの実例において、その弾性、及び多孔性領域の存在のうち少なくともいずれか一方が原因で、エレクトロスピニングで作られたバルーンは、デバイス上の対象エリアがどこにあるかを定める金属の放射線不透過性マーカーの適用には適していない。加えて、エレクトロスピニングで作られたバルーンは多くの場合、壁の厚さ全体にわたる細孔を多数有しており、このことは該バルーンを視覚化という目的のために造影剤で満たす助けにならない。
【0028】
エレクトロスピニングで作られたバルーン上の特定の位置を画像化することが有益である1つの特定用途は、エレクトロスピニングで作られたバルーンが不可逆電気穿孔法(IRE)と併せて使用される場合である。IREでは、エレクトロスピニングで作られたバルーンの1以上の多孔性エリアは、処理されている組織の近傍に配置される。放射線不透過性マーカーが無いと、バルーンの1以上の多孔性エリアが解剖学的構造の正確な位置にあるかどうかを知るのは困難である。高周波エネルギー、又はDCアブレーションからの温熱性外傷とは異なり、IREは接触を必要としない。むしろ、上を覆っている電界により細胞膜の電気穿孔及びその後の細胞死を引き起こすことにより、作用する。電界は、インピーダンス差が急激なエリア(組織の特性、血液との接触面などの結果生じうる)においてはより高い電界強度で集中するので、変化するインピーダンスが原因で電界強度を高める必要があるかもしれないエリアを同定するために、本明細書中に記載されるようにポリマー材料及び放射線不透過性材料を含んでなる放射線不透過性マーカーを使用する、と説明できるかもしれない。
【0029】
さらに、バルーンの基端部(したがってバルーン全体)がいつカテーテルから出るかを知ることも有益である。通常はバルーンの基端部を同定するために造影剤を使用することが可能である。しかしながら、造影剤は1以上の多孔性エリアを通して身体内へと漏出する可能性がある。造影剤を使用しない状態では、少なくとも1つの放射線不透過性マーカーはバルーンの基端部を規定するのに有用である。
【0030】
ある用途では、心房細動の治療のための手技の際にバルーンの位置を知ることは有益となりうる。この点に関して、その手技の間に、バルーンが静脈(例えば肺静脈)の内部にあるか又は心房内で解放状態にあるかを知ることは有益となりうる。あるバルーン設計については、バルーンが入口部の左心房壁に対向しているか否かを知ることが有益な場合がある。加えて、IREの域を越えて、バルーンが(例えば、高周波アブレーションが肺静脈の外側に位置付けられた電極を使用して行われる手技において)血管内の流れを妨げるように適正に位置付けられているかどうかを知ることは有益な場合もある。
【0031】
上記及びその他の用途において、複数の放射線不透過性マーカーが、バルーンを一周する等間隔に配置された1以上のマーカーの線を(例えば、単一バンドの形態で、又はバルーンの軸方向長に沿って互いに離隔した2、3、4、5、6本若しくはそれ以上のバンドの形態で)形成するバルーンが提供されてもよい。バルーンが遮るもののない空間で拡張せしめられると、放射線不透過性マーカーは拡張し、互いに等距離かつ軸から径方向に等しい距離に分離する。バルーンの一部が静脈内にあり、かつ一部が心門又は心房内にある時、この関係性はもはや、静脈内ではより小さな度合いで、かつ心門又は心房内ではより大きな度合いで互いに対して拡張及び分離するマーカーには適用されない。この情報は、例えば、放射線不透過性マーカーの拡張及び分離が、バルーンのどの部分(したがってどの電極)が静脈の内側にあり、バルーンのどの部分(したがってどの電極)が静脈の外側にあるか、同様に静脈がバルーンによって閉塞されているか否かに関して医療提供者に知らせるので、有用である。
【0032】
本開示による放射線不透過性マーカーは、所与のデバイスの表面のいかなる場所にも適用可能であり、かつ多数の様々な次々に登場するデバイスであってマーカーを必要とするもの、例えばバルーンデバイスであって該デバイスを破損することなく固体の金属バンドをバルーンの周りに配置することが不可能なデバイス、のために使用可能である。本開示による放射線不透過性マーカーを加えることにより、デバイスの関連部分の位置を、例えばX線透視検査で見ることが可能である。
【0033】
様々な実施形態において、1以上の放射線不透過性マーカーは、組織がどこで治療されているかを示すためにバルーンの多孔性エリアと並んで配置される。1以上の放射線不透過性マーカーはさらに、展開配置された時にバルーン全体がカテーテルの外にあることを確実にするために、バルーンの基端部に配置されてもよい。様々な実施形態において、本開示による放射線不透過性マーカー(例えば、数ある中でも特にシリコーン/ポリシロキサン材料のようなエラストマー材料中に分散せしめられた適切な放射線不透過性材料を含んでなるマーカー)は、膨張及び収縮の際にバルーンの様々な大きさに合わせて調整するために、拡張及び縮小することができる。加えて、本開示による放射線不透過性マーカーは所与のデバイスに容易に適用され、かつデバイスの形状に著しい影響を与えない。放射線不透過性マーカーが固化可能な接着材料から形成される場合、該マーカーはさらに、デバイスの2つのエリアを結合するために使用すること(例えば、放射線不透過性マーカーがその位置にあることが望ましい場合に、バルーンをカテーテルに結合するため、又は内側のバルーンを外側のバルーンに結合するために、使用すること)も可能である。
【0034】
本開示と併せて使用するのに適した放射線不透過性材料には、放射線不透過性金属及び放射線不透過性金属化合物、例えば、数ある金属の中でも特に、バリウム、ビスマス、セリウム、タングステン、タンタル、インジウム、金、又は白金を含有するものが挙げられる。放射線不透過性金属化合物の特定の例には、数ある中でも特に、硫酸バリウム、三酸化ビスマス、次炭酸ビスマス、オキシ塩化ビスマス、又は酸化セリウムが挙げられる。放射線不透過性材料にはさらに、ポリマー構造中にヨウ素又は臭素を含んでなるポリマー材料も挙げられる。
【0035】
固化可能材料には、医療用デバイスの分野で既知の任意の適切な固化可能なポリマー材料が挙げられる。いくつかの実施形態では、固化可能材料は医学的に許容可能な接着材料であり、かつ例えば、室温硬化型の接着材料又はUV硬化型の接着材料であってよい。
【0036】
ある実施形態では、固化可能材料は適切な溶媒で希釈されてもよい。
ある実施形態では、固化可能材料は、重量比で放射線不透過性材料の5〜75%(例えば重量比で5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70又は75%)を構成することができる。
【0037】
室温硬化性接着剤の特定の例には、反応性基を有するポリマー(例えばポリシロキサン)を含んでなるものが挙げられる。特定の実施形態では、ポリシロキサンの形態の反応性ポリマー(例えばアセトキシ基を有するポリジメチルシロキサン)が使用されうる。アセトキシ基を有するポリシロキサンの場合、かつ理論に束縛されることは望まないが、反応性ポリマーを周囲の湿気に曝露させると、アセトキシ基が加水分解されてシラノールを生じ、シラノールはさらに縮合してポリマー鎖を相互に連結する。硬化プロセスは、高温で硬化させること、高湿度で硬化させること、又は両方により、加速させることができる。加えて、末端にシラノールを備えたポリシロキサンは、例えば、数ある別例のプロセスの中でも特に、適切な触媒の存在下でトリアセトキシメチルシラン又はトリアセトキシエチルシランを使用して、架橋させることが可能である。室温硬化性接着剤の他の例には、室温硬化性のエポキシ系接着剤(例えば、米国ニュージャージー州ハッケンサックのマスター・ボンド(Master Bond )から入手可能な、接着用の二成分型放射線不透過性エポキシシステムであるEP21BAS)が挙げられる。
【0038】
UV硬化性接着剤の例には、フリーラジカルを生成する光開始剤並びに多数の不飽和基(例えばアクリラート基、メタクリラート基又はビニル基)を有する化合物、例えば多数の不飽和基を有するオリゴマー及び任意選択で多数の不飽和基を有するモノマー、を含有するUV硬化性接着材料が挙げられる。フリーラジカルを生成する光開始剤の具体例には、例えば、数ある中でも特に、I型又はII型光開始剤、例えばベンゾインエーテル、1‐ヒドロキシ‐シクロヘキシルフェニル‐ケトン又はベンゾフェノンが挙げられる。多数の不飽和基を有するオリゴマーの具体例には、アクリラートオリゴマー、例えばエポキシアクリラート(例えばビスフェノールA‐エポキシアクリラート)、脂肪族ウレタンアクリラート(例えばIPDI系脂肪族ウレタンアクリラート)、芳香族ウレタンアクリラート、ポリエーテルアクリラート、ポリエステルアクリラート、アミノ化アクリラート、及びアクリルアクリラートが挙げられる。モノマーの具体例には、単官能性、二官能性及び三官能性モノマー、例えば、数ある中でも特に、トリメチロールプロパントリアクリラート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリラート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリラート、トリプロピレングリコールジアクリラート、ヘキサンジオールジアクリラート、イソボルニルアクリラート、イソデシルアクリラート、エトキシ化フェニルアクリラート、及び2‐フェノキシエチルアクリラートが挙げられる。
【0039】
UV硬化性接着剤のさらなる例には、カチオン性光開始剤及びエポキシド化合物を含んでなるUV硬化性接着材料が挙げられる。カチオン性光開始剤の特定の例には、オニウム塩、例えばアリールスルホニウム塩及びアリールヨードニウム塩が挙げられる。エポキシド化合物の具体例には、数ある中でも特に、脂環式エポキシド化合物及び芳香族エポキシド化合物、例えば、3,4‐エポキシ‐シクロヘキシルメチル‐3,4‐エポキシ‐シクロヘキサン‐カルボキシラート及びビスフェノールAジグリシジルエーテル、並びにエポキシ基を有するポリシロキサンが挙げられる。
【0040】
いくつかの特定の実施形態では、室温硬化性接着剤(例えばMed‐1515RTVシリコーン室温接着剤)が放射線不透過性材料(例えばバリウム粉末など)と混合され、1以上の放射線不透過性マーカーを作出するためにバルーン構造物に塗布される。例えば、該混合物は、(例えばバルーンの基端部の)非多孔性エリアに、又は多孔性エリアの縁部に塗布されうる。接着剤は希釈されなくてもよいし、適切な溶媒(例えばヘプタン、キシレンなど)で希釈されてもよい。接着剤:溶媒の質量(mas )/質量の希釈レベルは、例えば、数ある値の中でも特に、3:1〜1:5の範囲(例えば3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:4又は1:5)であってよい。接着剤をその後、室温で一晩、又は高湿度のオーブンの中で、硬化させることができる。
【0041】
いくつかの特定の実施形態では、UV硬化性接着剤が放射線不透過性材料(例えばバリウム粉末など)と混合されて、放射線不透過性マーカーを作出するためにバルーンに塗布されてもよい。例えば、該混合物は、(例えばバルーンの基端部の)非多孔性エリアに、又は多孔性エリアの縁部に塗布されうる。接着剤は、希釈されなくてもよいし、妥当な場合には、適切な溶媒で希釈されてもよい。接着剤はその後、選択された特定の接着剤に応じて、適切な波長のUV光に適切な時間曝露することによって硬化せしめることができる。
【0042】
ある実施形態では、本明細書中に記載のバルーン構造物は、電気エネルギーが送達されるデバイス、例えば、1以上の電極がバルーン構造物の内部に位置付けられる不可逆電気穿孔(IRE)バルーンデバイスに関連して提供されてもよい。
【0043】
この点に関して、
図1は、本開示の実施形態による組織領域にアブレーション療法を適用するための例示の装置100の切り欠き図を示す。装置100は、長尺状本体102を有するカテーテルを備えている。長尺状本体102の先端側部分又はその近くにバルーン構造物104がある。バルーン構造物104は、長尺状本体102に取り付けられてもよいし、長尺状本体102の上に形成されてもよい。
【0044】
バルーン構造物104は、少なくともその一区画が第1の浸透性を有している第1の部分106を備えうる。バルーン構造物104は、該構造物に提供されている液体膨張媒体に応じて膨張するように構成される。さらに、バルーン構造物104の第1の部分106は、バルーン構造物104の膨張に応じて液体を通過させる(液体は、例えば生理食塩水、又は薬剤などであってよい)一方で、同時に組織領域に長尺状本体102を固定するように、構成可能である。
【0045】
例えば、バルーン構造物104は、液体に対して浸透性である多孔性領域106pを第1の部分106に備えることができる一方で、第1の部分106の残りの部分は液体に対してほぼ不浸透性である。よって、バルーン構造物104のうち少なくとも部分106pは浸透性であることが可能である。
【0046】
バルーン構造物104は、アブレーションの標的組織領域に位置付けることが可能である。バルーン構造物104は、多孔性領域106pが血管壁に隣接するように血管内で展開配置するように構成可能である。第1の部分106は、区画106pを通して組織領域(例えば血管壁)へと液体を浸透させることができる。
【0047】
本開示によれば、バルーン構造物104には、ポリマー材料及び放射線不透過性材料を含んでなる1以上の放射線不透過性マーカー107も提供される。1以上のマーカー107は、多孔性領域106pの基端側縁部106ip及び先端側縁部106idのうち少なくともいずれか一方に配置されうる(この場合、バンドの形状のマーカー107が多孔性領域106pの先端側縁部106idに配置されている)。加えて、1以上の放射線不透過性マーカー107は、バルーン構造物の基端部104pにも配置されうる。
【0048】
装置100はさらに、組織領域にエネルギーを送達するように構成された1以上の電極も備えうる。
図1に示されるように、装置100はバルーン構造物104の内部に配置構成された電極112を備えている。ある実例では、電極112は、第1の部分106の内部に配置構成されてそこに適用された直流電流に応じてエネルギーを送達するように構成されうる。電極112からのエネルギーは、外部の発生源/制御装置(図示せず)によって生成され長尺状本体102内部のワイヤを通して転送された電界によって、バルーン構造物104の第1の部分106の外側表面を通して適用可能である。電気エネルギーは、バルーン構造物104の第1の部分106の多孔性領域106pを通って染み出る液体を介して組織領域(例えば血管壁)へと伝達可能である。電界は、少なくとも部分的には、エネルギーを受け取っている組織にアポトーシス細胞死及びネクローシスのうち少なくともいずれか一方を引き起こしうる。ある実例では、アブレーション用の電界が適用されている一方で、バルーン構造物104の第1の部分106の区画106pを通した液体の組織への伝達を継続することが可能である。この点に関して、電界は、バルーンに継続的に液体を送り込みながら適用されてもよいし、バルーンの中への流体の流れが短時間停止される一方で適用されてもよく、この間に液体はバルーン内の残留圧力によりバルーンから漏出し続ける。
【0049】
ある実例において、及び上記に示されるように、電界は電極112に直流電流を流すことにより生成されうる。直流電流の使用により、アブレーションエネルギーを受け取っている組織にアポトーシス細胞死を引き起こすことができる。直流電流は、組織領域の細胞に、不可逆性である(例えば、細孔が閉じない)ような細孔を形成することができる。組織に隣接しているバルーン構造物104は、標的エリアの制御された直接的なアブレーションを提供すると同時に、下流へのアブレーションエネルギーの拡散を軽減することができる。
【0050】
別の実施形態は
図2に示されており、同図は、本開示による、組織領域にアブレーション療法を適用するための別の例示の装置200の切り欠き図を示している。装置200は、長尺状本体202を有するカテーテルを備えている。長尺状本体202の先端側部分又はその近くにバルーン構造物204がある。バルーン構造物204は、長尺状本体202に取り付けられてもよいし、長尺状本体202の上に形成されてもよい。
【0051】
バルーン構造物204は、第1のチャンバを形成する第1の部分206と、第2のチャンバを形成する第2の部分208とを備えうる。第1の部分206は、第2の部分208の上に据え置かれても、取り付けられてもよい。バルーン構造物204は、液体に対して浸透性である多孔性領域206pを第1の部分206に備えうる一方で、第1の部分206の残りの部分は液体に対してほぼ不浸透性であることが可能である。第2の部分208は、液体に対してほぼ不浸透性であってよい。バルーン構造物204は、該構造物に提供されている膨張媒体に応じて膨張するように構成可能である。ある実例では、第1の部分206及び第2の部分208は、単一の膨張媒体を使用して膨張せしめられてもよいし、又は第1の部分206及び第2の部分208が、第1の膨張媒体及び第2の膨張媒体を使用して別々に膨張せしめられてもよい。その結果、ある実例では、バルーン構造物204の第1の部分206はバルーン構造物204の膨張に応じて液体を通過させるように構成可能であり(液体は例えば生理食塩水、薬剤などであってよい)、かつバルーン構造物204の第2の部分208は、組織領域に長尺状本体202を固定するように構成可能である。
【0052】
バルーン構造物204はアブレーションの標的組織領域に位置付けることができる。バルーン構造物204は、多孔性領域206pが血管壁に隣接するように血管内に展開配置するように構成可能である。多孔性領域206pは、組織領域(例えば血管壁)へと液体を浸透させることができる。加えて、第2の部分208は長尺状本体202を組織領域に固定するように構成可能である。
【0053】
本開示によれば、バルーン構造物204には、ポリマー材料と放射線不透過性材料とを含んでなる1以上の放射線不透過性マーカー207も提供される。1以上のマーカー207は、多孔性領域206pの基端側縁部206ip及び先端側縁部206idのうち少なくともいずれか一方に配置可能である(この場合、バンドの形状のマーカー207が多孔性領域206pの先端側縁部206idに配置されている)。加えて、1以上の放射線不透過性マーカー207は、バルーン構造物の基端部204pに配置されてもよい。
【0054】
装置200は、組織領域にエネルギーを送達するように構成された1以上の電極を備えうる。
図2に示されるように、装置はバルーン構造物204の内部に配置構成された電極212を具備している。ある実例では、電極212は第1の部分206の内部に配置構成され、かつそこに適用された直流電流に応じてエネルギーを送達するように構成されることが可能である。電極212からのエネルギーは、外部の発生源/制御装置(図示せず)によって生成され長尺状本体202内部のワイヤ213を通して転送された電界によって、バルーン構造物204の第1の部分206の外側表面を通して適用することができる。電気エネルギーは、第1の部分206の多孔性領域206pから浸出する液体を介して組織領域(例えば血管壁)へと伝達可能である。電界は、少なくとも部分的には、エネルギーを受け取っている組織にアポトーシス細胞死を引き起こすことができる。ある実例では、アブレーション用の電界が適用されている一方で、バルーン構造物204の第1の部分206の多孔性領域206pから組織への液体の伝達を継続することが可能である。
【0055】
ある実例において、及び上記に示されるように、電界は電極212に直流電流を流すことにより生成されうる。直流電流の使用により、アブレーションエネルギーを受け取っている組織にアポトーシス細胞死を引き起こすことができる。直流電流は、組織領域の細胞に、不可逆性である(例えば、細孔が閉じない)ような細孔を形成することができる。組織に隣接しているバルーン構造物204は、標的エリアの制御された直接的なアブレーションを提供すると同時に、下流へのアブレーションエネルギーの拡散を軽減することができる。
【0056】
装置200はさらに、電極212とともに接地又は閉ループを形成するように構成されたチップ電極216も備えうる。電極212と同じように、チップ電極216は長尺状本体202内部のワイヤ217を通して外部の発生源/制御装置に連結可能である。外部の発生源/制御装置は、例えば、RFアブレーションエネルギー又は直流電流を適用することができる。よって、チップ電極216は、外部の発生源/制御装置がRFアブレーションエネルギーを適用するように構成される場合には、単一点アブレーション電極として機能することができる。
【0057】
ある実例では、電極212及びチップ電極216のうち少なくともいずれか一方は、局所的な心臓内電気活性を計測するように構成されることも可能である。ワイヤ213及びワイヤ217のうち少なくともいずれか一方は、心筋組織における電気的事象を、電気記録図、単相活動電位(MAP)、等時電気活動マップ(isochronal electrical activity map)などの作成のために感知可能であるように、マッピング信号プロセッサに電気的に連結されることも可能である。電極212及びチップ電極216のうち少なくともいずれか一方は、医師が組織領域の電気活性を計測するのを可能にすることができる(例えば、電気活性の欠如はアブレーションされた組織を示す一方、電気活性の存在は生きている組織を示す)。
【0058】
いくつかの実例では、装置200はさらに、ペーシング電極214a、214bを備えることもできる。ペーシング電極214a、214bは、バルーン構造物204の内部に配置構成可能である。ペーシング電極214a、214bは、心筋組織における電気的事象を、電気記録図、単相活動電位(MAP)、等時電気活動マップなどの作成のために感知可能であるように、マッピング信号プロセッサに電気的に連結されることが可能である。ペーシング電極214a、214bは、医師が組織領域の電気活性を計測するのを可能にすることができる(例えば、電気活性の欠如はアブレーションされた組織を示す一方、電気活性の存在は生きている組織を示す)。電極212を介して適用されるアブレーションエネルギーは、アブレーション療法のための標的位置の決定に使用可能な、ペーシング電極214a、214bによって計測された電気活性に基づいて、変更可能である。
【0059】
別の実施形態は
図3に例証されており、同図は、本開示の実施形態による組織領域にアブレーション療法を適用するための例示の装置300の切り欠き図を示す。装置300は、長尺状本体302を有するカテーテルを備えている。長尺状本体302の先端側部分又はその近くにバルーン構造物304がある。
【0060】
図2に類似して、
図3のバルーン構造物304は、第1のチャンバを形成する第1の部分306と、第2のチャンバを形成する第2の部分308とを備えうる。バルーン構造物304は、液体に対して浸透性である多孔性領域306pを第1の部分306に備えうる一方で、第1の部分306の残りの部分は液体に対してほぼ不浸透性である。第2の部分308は、液体に対してほぼ不浸透性であってよい。バルーン構造物304は、該構造物に提供されている膨張媒体に応じて膨張するように構成可能である。ある実例では、第1の部分306及び第2の部分308は単一の膨張媒体を使用して膨張せしめられてもよいし、第1の部分306及び第2の部分308は第1の膨張媒体及び第2の膨張媒体を使用して別々に膨張せしめられてもよい。その結果、ある実例では、バルーン構造物304の第1の部分306はバルーン構造物304の膨張に応じて液体を通過させるように構成可能であり(液体は例えば生理食塩水、薬剤などであってよい)、かつバルーン構造物304の第2の部分308は、組織領域に長尺状本体302を固定するように構成可能である。
【0061】
バルーン構造物304は、アブレーションのために標的組織領域に位置付けることができる。バルーン構造物304は、多孔性領域306pが血管壁に隣接するように血管内に展開配置するように構成可能である。多孔性領域306pは、組織領域(例えば血管壁)へと液体を浸透させることができる。加えて、第2の部分308は長尺状本体302を組織領域に固定するように構成可能である。
【0062】
本開示によれば、バルーン構造物304には、ポリマー材料と放射線不透過性材料とを含んでなる1以上の放射線不透過性マーカー307も提供される。1以上のマーカーが、各々の多孔性領域306pの基端側縁部306ip及び先端側縁部306idのうち少なくともいずれか一方に(例えば、個別に図示してはいないが、連続的なバンド又は非連続的なバンドの形状で)配置可能である。加えて、1以上の放射線不透過性マーカー307は、バルーン構造物の基端部304pに配置されてもよい。
【0063】
図2に類似して、
図3の装置300は、バルーン構造物304の内部に配置構成された電極312、電極312とともに接地又は閉ループを形成するように構成されるチップ電極316、及びペーシング電極314a、314bを具備することができる。これらの構成要素は、
図2に関連して説明されたのと類似の様式で操作可能である。
【0064】
さらに別の実施形態は
図4に例証されており、同図は、本開示による組織領域にアブレーション療法を適用するための例示の装置400の切り欠き図を示している。装置400は、長尺状本体402を有するカテーテルを具備している。長尺状本体402の先端側部分又はその近くにバルーン構造物404がある。
【0065】
図4のバルーン構造物404は、第1のチャンバを形成する第1の部分406a、第2のチャンバを形成する第2の部分408、及び第3のチャンバを形成する第3の部分406bを具備している。バルーン構造物404は、一方は第1の部分406aにあり他方は第3の部分406bにある2つの多孔性領域406pであって液体に対して浸透性である多孔性領域を具備し、その一方で第1及び第3の部分406a、406bの残りの部分は液体に対してほぼ不浸透性である。第2の部分408は、液体に対してほぼ不浸透性であってよい。バルーン構造物404は、該構造物に提供されている膨張媒体に応じて膨張するように構成可能である。ある実例では、第1の部分406a、第2の部分408、及び第3の部分406bは単一の膨張媒体を使用して膨張せしめられてもよいし、第1の部分406a、第2の部分408、及び第3の部分406bが個別の膨張媒体を使用して個別に膨張せしめられてもよい。その結果、ある実例では、バルーン構造物404の第1及び第3の部分406a、406bは、バルーン構造物404の膨張に応じて液体を通過させるように構成可能であり(液体は例えば生理食塩水、薬剤などであってよい)、かつバルーン構造物404の第2の部分408は、組織領域に長尺状本体402を固定するように構成可能である。
【0066】
バルーン構造物404はアブレーションの標的組織領域に位置付けることができる。バルーン構造物404は、多孔性領域406pが血管壁に隣接するように血管内に展開配置するように構成可能である。多孔性領域406pは、組織領域(例えば血管壁)へと液体を浸透させることができる。加えて、第2の部分408は長尺状本体402を組織領域に固定するように構成可能である。
【0067】
本開示によれば、バルーン構造物404には、ポリマー材料と放射線不透過性材料とを含んでなる1以上の放射線不透過性マーカー407も提供される。1以上のマーカーが、各々の多孔性領域406pの基端側縁部406ip及び先端側縁部406idのうち少なくともいずれか一方に(例えば、個別に図示してはいないが、連続的なバンド又は非連続的なバンドの形状で)配置可能である。加えて、1以上の放射線不透過性マーカー407は、バルーン構造物の基端部404pに配置されてもよい。
【0068】
図4のバルーン構造物404はさらに、第1の部分406aに電極412を、第3の部分406bに電極414を、及びチップ電極416を、具備することができる。電極412は、電極414とともに接地又は閉ループを形成するように構成可能である。電極412、414の各々がさらに、チップ電極416とともに接地又は閉ループを形成するように構成されてもよい。これらの構成要素は、
図2に関連して説明されたのと類似の様式で操作可能である。
【0069】
図5Aは、本開示による、バルーン構造物504を有するカテーテルを具備している装置であって、該バルーン構造物は、第1のチャンバを形成しかつ多孔性領域506pを有する第1の部分506と、多孔性領域506pの基端側及び先端側の縁部に配置された2つの放射線不透過性マーカー507aと、バルーン構造物504の基端部に配置された単一の放射線不透過性マーカー507bとを具備している、装置の写真である。
図5Bは、対象者の体内に位置付けられた時のバルーン構造物504のX線画像であり、多孔性領域506pの境界に印付けしている2つの放射線不透過性マーカー507aと、バルーン構造物504の基端部に印付けしている単一の放射線不透過性マーカー507bとを明白に示している。
【0070】
先述の実施形態が連続的なバンドの形態の放射線不透過性マーカーを例証している一方、それら及び他の実施形態において、連続的な放射線不透過性のバンドを非連続的なバンドに、例えば、一連のバンドセグメントの形態であって例えば弧状帯の形態であることも可能なバンドに、置き換えることも有益であるかもしれない。
図6A及び6Bは、本開示の実施形態による、組織領域にアブレーション療法を適用するための例示の装置600を示す。装置600は、長尺状本体602を有するカテーテルを具備している。長尺状本体602の先端部又はその近くに、柔軟性のある(例えば、エラストマーの)材料で形成された、バルーン構造物604がある。バルーン構造物604の上には、3群の放射線不透過性マーカー607a、607b、607cが提供され、各群はバルーン構造物604の長手方向軸の周りでバルーン構造物604を取り囲んでいる。放射線不透過性マーカー607a、607b、607cは、図中の実施形態においてはエラストマー材料から形成され、該マーカーが拡張することが可能となっている。図中の実施形態では、一連の等しい長さの等間隔の弧状帯の形態である第1群の放射線不透過性マーカー607aは、バルーン構造物604の基端部604pにおいてバルーン構造物604を取り囲み、一連の等しい長さの等間隔の弧状帯の形態である第2群の放射線不透過性マーカー607bは、バルーン構造物604の中央においてバルーン構造物604を取り囲み、かつ、一連の等しい長さの等間隔の弧状帯の形態である第3群の放射線不透過性マーカー607cは、バルーン構造物604の先端部604dにおいてバルーン構造物604を取り囲んでいる。
図6Aに見られるように、例えば、バルーン構造物604の先端部604dが静脈650bの中で拡張せしめられ、かつバルーン構造物604の基端部604pが心房650aの中で拡張せしめられるように、対象者の体内において拡張せしめられた時、放射線不透過性マーカー607a、607b、607cは、静脈650bよりも心房650aの中において、より大きく拡張及び分離する。他方、バルーン構造物604全体が静脈650bの中で拡張するように、対象者の体内で拡張せしめられた時、放射線不透過性マーカー607a、607b、607cは、
図6Bに示されるようにより一貫した様式で拡張及び分離する。
【0071】
3群の放射線不透過性マーカー607a、607b、607cが
図6A及び6Bに示されているが、他の実施形態では、1、2、4、5、6、7、8、9、10群又はそれ以上の群が提供されてもよい。さらに、4つの放射線不透過性マーカーが
図6A及び6Bの各群に提供されているが、他の実施形態では、2、3、5、6、7、8、9、10個又はそれ以上の放射線不透過性マーカーが各群に提供されてもよい。
【0072】
対照的に、
図7A及び7Bは、本開示の別の実施形態による組織領域にアブレーション療法を適用するための例示の装置700を示す。装置700は、長尺状本体702を有するカテーテルを具備している。長尺状本体702の先端部又はその近くにバルーン構造物704がある。バルーン構造物704の上には、3つの(thee)放射線不透過性マーカー707a、707b、707cが提供され、各々のマーカーは連続したバンドの状態でバルーン構造物704の長手方向軸の周りでバルーン構造物704を取り囲んでいる。上記のように、放射線不透過性マーカー707a、707b、707cは図示された実施形態ではエラストマー材料から形成されており、該マーカーがバルーン構造物704と共に拡張することが可能となっている。図示された実施形態では、第1の放射線不透過性マーカー707aはバルーン構造物704の基端部704pにおいてバルーン構造物704を取り囲み、第2の放射線不透過性マーカー707bはバルーン構造物704の中央においてバルーン構造物704を取り囲み、かつ第3の放射線不透過性マーカー707cはバルーン構造物704の先端部704dにおいてバルーン構造物704を取り囲んでいる。
図7Aは、バルーン構造物704の先端部704dが静脈750bの中で拡張せしめられ、かつバルーン構造物704の基端部704pが心房750aの中で拡張せしめられる実施形態を示しており、この場合、放射線不透過性マーカー707a、707b、707cは、静脈750bの中よりも心房750aの中においてより大きな直径に拡張する。他方、バルーン構造物704全体が静脈750bの中で拡張するように、対象者の体内で拡張せしめられた時、放射線不透過性マーカー707a、707b、707cは、
図7Bに示されるようにより一貫した様式で拡張する。よって、放射線不透過性マーカーの間の距離は(
図6A及び6Bと比較して)この実施形態では指標にならないであろうが、放射線不透過性マーカーの拡張の相対的な幅及び円形(又は非円形)の性質は、バルーン構造物が静脈内又は心房内にあるか否かに関する指標となることができる。
【0073】
3つの円形の放射線不透過性マーカーが
図7A及び7Bにおいて提供されているが、他の実施形態では、1、2、4、5、6、7、8、9、10個又はそれ以上の円形の放射線不透過性マーカーが提供されてもよい。
【国際調査報告】