(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-521615(P2020-521615A)
(43)【公表日】2020年7月27日
(54)【発明の名称】軟骨移植片スキャホールド
(51)【国際特許分類】
A61L 27/36 20060101AFI20200626BHJP
A61L 27/38 20060101ALI20200626BHJP
【FI】
A61L27/36 120
A61L27/36 312
A61L27/36 400
A61L27/38
A61L27/38 112
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2020-516952(P2020-516952)
(86)(22)【出願日】2018年5月30日
(85)【翻訳文提出日】2020年1月28日
(86)【国際出願番号】EP2018064245
(87)【国際公開番号】WO2018220047
(87)【国際公開日】20181206
(31)【優先権主張番号】17173516.0
(32)【優先日】2017年5月30日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】519426667
【氏名又は名称】トラウマ・ケア・コンサルト・トラウマトロギッシュ・フォルシュング・ゲマインニュッツィゲ・ゲゼルシャフト・エムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(72)【発明者】
【氏名】レードル,ハインツ
(72)【発明者】
【氏名】ニュルンベルガー,シルビア
(72)【発明者】
【氏名】ゼヘットナー,ヨハン
【テーマコード(参考)】
4C081
【Fターム(参考)】
4C081AB04
4C081AB18
4C081BA12
4C081CD34
4C081DA01
4C081DB07
4C081EA02
4C081EA14
4C081EA16
(57)【要約】
本発明は、実質的に生細胞不含の軟骨移植片スキャホールドを含む生体材料であって、軟骨移植片スキャホールドがラメラまたは格子形態の複数の切欠きを示す、生体材料に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に生細胞不含の軟骨移植片スキャホールドを含む生体材料であって、軟骨スキャホールドがラメラまたは格子形態の複数の切欠きを含む、生体材料。
【請求項2】
切欠きが軟骨移植片スキャホールドの表面にある、請求項1に記載の生体材料。
【請求項3】
切欠きが軟骨移植片スキャホールドに穿孔しない、請求項1または2に記載の生体材料。
【請求項4】
切欠きが規定される深さ、幅および/または距離である、請求項1から3のいずれかに記載の生体材料。
【請求項5】
切欠きが、深さ20〜5,000μm、または20〜3,000μm、または20〜1,000μm、または20〜500μm、または20〜50μmを有する、請求項1から4のいずれかに記載の生体材料。
【請求項6】
切欠き間の距離が、10〜1,000μm、または10〜100μm、または10〜50μmである、請求項1から5のいずれかに記載の生体材料。
【請求項7】
軟骨移植片スキャホールドが実質的に生細胞不含であり、特に実質的に軟骨細胞不含である、請求項1から6のいずれかに記載の生体材料。
【請求項8】
軟骨移植片スキャホールドが、生細胞物質を10%未満、または5%未満、または2%未満、または1%未満有する、請求項7に記載の生体材料。
【請求項9】
軟骨移植片スキャホールドが、弾性軟骨、硝子軟骨、線維軟骨、および天然または合成ポリマー製の人工軟骨物質からなる群から選択される、請求項1から8のいずれかに記載の生体材料。
【請求項10】
軟骨移植片スキャホールドが予め播種されている、請求項1から9のいずれかに記載の生体材料。
【請求項11】
細胞が、埋め込み時に軟骨移植片スキャホールドに添加される、請求項1から9のいずれかに記載の生体材料。
【請求項12】
予め播種するための、または埋め込み時にスキャホールドに添加するための細胞が、軟骨細胞、間葉系幹細胞、骨髄細胞からなる群から選択される、請求項10または11に記載の生体材料。
【請求項13】
軟骨移植片スキャホールドが前処理されている、請求項1から12のいずれかに記載の生体材料。
【請求項14】
軟骨移植片スキャホールドにおいてマトリックス成分が選択的に除去されている、請求項1から13のいずれかに記載の生体材料。
【請求項15】
グリコサミノグリカン(GAG)が選択的に除去されている、請求項14に記載の生体材料。
【請求項16】
生体材料を調製する方法であって、
a.ドナーから軟骨層を得るステップ、
b.複数の切欠きを刻むステップ、ならびに
c.軟骨生体材料を脱細胞および/または失活させるステップ
を含む、方法。
【請求項17】
切欠きがレーザー光線により施される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
レーザーがフェムト秒レーザーまたはCO2レーザーである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
生体材料が前処理されている、請求項16から18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前処理溶液が0.1〜10U/mLの酵素を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
組織再生における使用のための、または骨軟骨欠損を治療するための、請求項1から15のいずれかに記載の脱細胞された軟骨スキャホールドを含む生体材料。
【請求項22】
軟骨、骨、または筋肉欠損の治療における使用のための、請求項21に記載の生体材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、治療への適用において有用な、刻印された切欠きを有する軟骨移植片スキャホールド、およびこのようなスキャホールドを産生する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]マトリックス随伴軟骨細胞移植(matrix−associated chondrocyte transplantation)(MACTまたはMACI)は現在、大型関節軟骨欠損(large articular cartilage defect)の治療におけるゴールドスタンダードであり、大部分の患者を症状の改善に導く。しかし、移植不全が未だ発生し、成功は長期の手術後理学療法に高度に依存する。ドナーの年齢、ボディマスインデックス、欠損の種類および外科的手法が関与するものの、移植不全の1つの重要な原因は、ともに早期の負荷に関連する、埋め込み後の不十分なリハビリテーションまたは外傷の発生であり(Marlovitsら、Eur J Radiol.2006 Jan;57(1):24〜31)、これらは負荷がリスクを生じる時間枠の減少、または感受性のより小さいインプラント、例えばより硬いスキャホールド物質により防止されうる。
【0003】
[0003]最も天然の力学的挙動は、関節軟骨自体に見ることができる。マトリックスをより利用可能にするためのプロセスにおいてグリコサミノグリカン(GAG)が枯渇されても、生体力学に対し許容できる影響で軟骨を脱細胞する可能性を以前の研究が示している(Schneiderら、Tissue Eng Part C Methods.2016 Dec;22(12):1095〜1107)。
【0004】
[0004]一部の移植不全は、それまで1年超の間軟骨組織形成が起こり、十分に機能していたにも関わらず、非常に遅れて発生する。長期的なフォローアップ臨床試験が、患者の最大3分の1に軟骨肥大および線維軟骨形成があり、患者の10パーセントに再手術の必要性があると報告している。
【0005】
[0005]生体力学的特性の改善に加えて、脱細胞されたスキャホールドでは、関節軟骨における複雑なコラーゲン構造が、最も天然の環境の利点を有して保存されている。軟骨由来のII型コラーゲンは、軟骨誘導性刺激をもたらすことが示されている。天然の3D構成と組み合わせると、これは望ましくない種類の軟骨の形成に対抗し、ゆえに移植片の長期的な機能性に対し正の効果を有する可能性がある。
【0006】
[0006]細胞が、脱細胞されたスキャホールド表面に十分に接着するが、マトリックスの不十分な浸潤を示すことを再播種試験が示している。これは、極めて高密度の硝子軟骨ECMにより生じる周知の課題である。
【0007】
[0007]WO2006/090372は、移植のための軟骨含有組織を提供する方法について開示している。軟骨含有組織は切除され、低温で保存された軟骨含有組織を生じるように適切な低温の保存条件下で処理される。解凍後、保存された軟骨含有組織は軟骨部分全体で生軟骨細胞を少なくとも10%含む。切除された軟骨含有組織は軟骨部分または層で覆われた骨組織を含む。少なくとも1つまたは複数の切欠きが軟骨部分に作製されてもよい。
【0008】
[0008]WO2014/011891は、穴を開けた(porated)軟骨産物について記載している。軟骨産物は、軟骨試料を単離し、穴を開け、消化し、温度を段階的に低下させることによって凍結保存することにより作製された。このような処理された軟骨産物は、増強されたレベルの生軟骨細胞を含む。
【0009】
[0009]US2014/0243993は、モザイク軟骨について開示している。モザイク軟骨は、複数の相互接続された軟骨タイルの軟骨シート、および生体適合性担体、およびさらなる生体成分、例えば、フィブリンまたはコラーゲンゲルを含む。軟骨タイルは、軟骨組織において複数のチャネルを示しうる。穿孔によっても軟骨構築物またはシートの凍結保存の増強が可能となる。軟骨シート内の生軟骨細胞はシートから遊走し、修復および再生機能を果たしうる。
【0010】
[0010]WO2009022191は、純粋な軟骨から作製され、骨に面する表面に切込みを有する、軟骨欠損を修復するための関節軟骨について記載している。切込みは切断刃によりもたらされる。切込みを有する軟骨は、表面に細胞を播種されてもよい。
【0011】
[0011]最新技術による軟骨産物は、生存および/または死滅軟骨細胞を含む。しかし、細胞成分はアロ反応性免疫応答における抗原性刺激となるおそれがある。したがって、アロ反応性免疫応答を誘起しない、正常軟骨と同様の力学的特性を有するスキャホールドの必要性が未だ存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
[0012]したがって、細胞がそこで増殖するための刻印された切込みを有し、ゆえにスキャホールドに再播種することが可能であり、移植片統合を最適化し、アロ反応性免疫応答を誘起しない、軟骨移植片スキャホールドを提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
[0013]目的は、本発明の主題により解決される。
[0014]本発明は、実質的に生細胞物質不含の軟骨移植片スキャホールドを含む生体材料であって、軟骨移植片スキャホールドが複数の切欠きを含む、生体材料に関する。
【0014】
[0015]本発明のさらなる実施形態は、脱細胞および/または失活された軟骨移植片スキャホールドを含む生体材料であって、軟骨移植片スキャホールドが複数の切欠きを含む、生体材料に関する。
【0015】
[0016]本発明のさらなる実施形態は、切欠きが軟骨移植片スキャホールドの表面にある、本明細書に記載される生体材料に関する。
[0017]本発明のさらなる実施形態によれば、切欠きは軟骨移植片スキャホールドに穿孔しない。一部の実施形態において、一方の面から他方の面への流体の流動を可能とするため、さらなる穴が軟骨移植片スキャホールドに穿孔していてもよい。
【0016】
[0018]本発明のさらなる実施形態によれば、切欠きは規定される深さ、幅および/または距離である。特に、切欠きは、深さ約20〜5,000μm、または約20〜3,000μm、または約20〜1,000μm、または約20〜500μm、または約20〜50μmを有する。本発明の一部の実施形態において、切欠き間の距離は、約10〜1,000μm、または約10〜100μm、または約10〜50μmである。
【0017】
[0019]本発明のさらなる実施形態によれば、切欠きはラメラまたは格子形態である。
[0020]切欠きのラメラ形態は、細胞が軟骨移植片スキャホールドに深く浸透し、そこに新たなマトリックスを堆積させるための空間をもたらすのに特に適している。例えば、グリコサミノグリカン(GAG)などのマトリックス成分の除去により、細胞の接着が改善され新たな組織の形成が容易となる。
【0018】
[0021]本発明のさらなる実施形態は、軟骨移植片スキャホールドが実質的に生細胞物質不含であり、特に軟骨移植片スキャホールドが実質的に生軟骨細胞不含である、本明細書に記載される生体材料に関する。より具体的には、軟骨移植片スキャホールドは、軟骨移植片スキャホールド全体で生軟骨細胞を10%未満、または5%未満、または2%未満、または1%未満有する。
【0019】
[0022]本発明のさらなる実施形態は、軟骨移植片スキャホールドが、弾性軟骨、硝子軟骨、線維軟骨、および天然または合成ポリマー製の人工軟骨物質からなる群から選択される、本明細書に記載される生体材料に関する。
【0020】
[0023]本発明のさらなる実施形態によれば、軟骨移植片スキャホールドは予め播種されている。特に、軟骨移植片スキャホールドは、自己または同種起源の軟骨細胞、または軟骨形成能力を有するその他の細胞(例えば、間葉系幹細胞、骨髄細胞)を予め播種されている。
【0021】
[0024]さらなる実施形態において、細胞は、埋め込み時にスキャホールドに添加されてもよい。細胞は、軟骨形成能力を有する細胞(軟骨細胞、間葉系幹細胞、骨髄細胞)からなる群から選択されうる。
【0022】
[0025]本発明の一実施形態は、生体材料を調製する方法であって、
a.ドナーから軟骨層を得るステップ、
b.複数の切欠きを刻むステップ、ならびに
c.軟骨生体材料を脱細胞および/または失活させるステップ
を含む、方法に関する。
【0023】
[0026]本発明のさらなる実施形態は、生体材料を調製する方法であって、
a.ドナーから軟骨層を得るステップ、
b.軟骨生体材料を脱細胞および/または失活させるステップ、ならびに
c.複数の切欠きを刻むステップ
を含む、方法に関する。
【0024】
[0027]本発明のさらなる実施形態は、切込みがレーザー光線により施される、本明細書に記載される方法に関する。特に、切欠きはCO
2またはフェムト秒レーザーによりもたらされる。
【0025】
[0028]本発明の一部の実施形態において、生細胞(例えば、軟骨細胞)は軟骨移植片スキャホールドから除去される。特に、細胞は、例えば酸またはアルカリ処理、イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、および双性イオン界面活性剤処理により化学的に失活される。
【0026】
[0029]本発明の一部の実施形態において、軟骨移植片スキャホールドの生細胞は失活される。特に、細胞は、物理的方法、例えば凍結/解凍サイクルにより損傷される。組織のマトリックスから細胞を損傷および部分的に除去するのに使用される最も一般的な物理的方法は、温度、力および圧力、および電気的破壊の使用に基づく。
【0027】
[0030]本発明の一実施形態は、組織再生における使用のための、または骨軟骨欠損を治療するための、本明細書に記載される生体材料に関する。
[0031]本発明のさらなる実施形態は、軟骨、骨、または筋肉欠損の治療における使用のための、本明細書に記載される生体材料に関する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】[0032]様々な速さおよび繰り返しで施された、軟骨におけるCO
2レーザーラメラを示す画像である。(a)巨視的像は、1回のレーザー設定で施された、8mm軟骨生検における規則的な格子パターンを示す。(b、c)組織学的断面は、2回または5回のランで実現された切欠きの深さを示す。レーザー縁部におけるII型コラーゲン免疫染色の消失は、レーザーの熱損傷を明らかにしている。(スケールバー=200μm)
【
図2】[0033]軟骨移植片スキャホールドの(a)巨視的像および(b、c)II型コラーゲンを免疫染色した組織学的断面で、8mm軟骨生検におけるフェムト秒レーザー刻印された線を示す画像である。(b:1000ラン、0.25mm距離;c:600ラン、0.1mm距離、1m/sec;スケールバー=200μm)
【
図3】[0034]CO
2レーザー刻印され、脱細胞され、GAGを枯渇させ、ASCを播種され、軟骨形成分化培地で5週間培養された軟骨移植片スキャホールドを示す画像である;II型コラーゲンおよびアルシアンブルー染色された組織学的パラフィン切片は、ラメラ間に形成され、軟骨移植片スキャホールドと十分に統合した、十分に分化した組織を示す(スケールバー=200μm)。
【
図4】[0035]左:修復組織で満たされているが、軟骨表面から剥離した、失活されたラメラ移植片(凍結−解凍サイクル)を示す画像である。右:前処理されたラメラ移植片(HCl、ペプシンおよびNaOH)において、新たに形成された組織はスキャホールドの軟骨縁部に高密度に接着する(スケールバー=200μm)。
【
図5】[0036]様々な技術により生じた、軟骨における切欠きを示す画像である。a)接近した軟骨縁部を有する、剃刀刃による切込み。b)ラメラの軟骨縁部の間に約50μmの空間を生成するフェムト秒レーザーによる切欠き。c)CO
2レーザーは、V字形状の切欠きをもたらす最大の物質アブレーションを生じる(スケールバー=200μm)。
【
図6】[0037]経時的に修復組織をもたらす(右)、ラメラ空間に少量の細胞を再播種された、フェムト秒レーザー照射されたスキャホールド(左)を示す画像である(スケールバー=200μm)。
【
図7】[0038](a)満たされていない欠損;(b)再播種されたスキャホールドで満たされた欠損を有する、皮下に埋め込まれた骨軟骨プラグを有するヌードマウスについて示す画像である。(c)骨軟骨プラグ外植から5週間後、再播種されたスキャホールドを有する欠損は組織で満たされる。
【
図8】[0039]ASC、共培養物および軟骨細胞を播種されたFSレーザー刻印スキャホールドについてのin vivo結果を示す画像であり、ラメラ間での播種された細胞の組織形成、および新たに形成された組織とスキャホールドとの良好な統合を示す。新たに合成されたII型コラーゲン(左列)および総II型コラーゲン(右列)と反応する抗体でパラフィン切片を免疫染色し、軟骨細胞および共培養物のII型コラーゲン堆積を示した。(スケールバー=100μm)
【発明を実施するための形態】
【0029】
[0040]驚くべきことに、細胞がそこで増殖するための刻印された切込み(切欠き)を有する軟骨移植片スキャホールドが、スキャホールドに再播種することを可能にし、移植片統合を最適化するための有望な選択肢であることが判明した。
【0030】
[0041]したがって、本発明は、脱細胞された軟骨移植片スキャホールドを含む生体材料であって、軟骨移植片スキャホールドが複数の切欠きを含む、生体材料を提供する。
[0042]本明細書で使用される場合、「軟骨移植片スキャホールド」という語は、任意の組織、特に天然の軟骨組織を指す。
【0031】
[0043]軟骨は、コラーゲンおよび/またはエラスチン線維、ならびに軟骨細胞からできた無血管の結合組織であり、それら全てがマトリックスを形成し、グリコサミノグリカンなどのさらなる成分を含みうる。天然の軟骨移植片スキャホールドは、例えば、膝、股関節、肩、肘などの関節の末端に存在する、気管、肋もしくは関節軟骨などの硝子軟骨、または恥骨結合、椎間板の線維輪、半月板、および側頭下顎関節(TMJ)に存在する軟骨などの線維軟骨、または外耳、耳管および喉頭蓋に存在する軟骨などの弾性軟骨などの任意の供給源から得られうる。硝子軟骨は、関節を形成する骨の末端、肋骨の末端、鼻の末端、気管周囲で喉頭を支持する硬い輪において見ることができる。関節軟骨は、関節表面を覆い、力学的力を分散させて関節の根底にある骨を保護する耐久性の低摩擦表面をもたらす、特殊化した種類の硝子軟骨である。線維軟骨は脊柱、股関節および骨盤の骨の間に見られる。
【0032】
[0044]軟骨移植片スキャホールドは、例えば細胞「スキャホールディング」物質、シリカおよびポリマー(例えば、ポリカプロラクトン)からなるバイオガラス物質、または、例えば、シルクスキャホールドもしくはスポンジのコラーゲン、熱可逆性ゲル化ヒドロゲル、カプロラクトンポリマー、もしくは芳香族有機酸ポリマーなどの無細胞支持マトリックスなどの、合成または人工の物質であってもよい。
【0033】
[0045]軟骨移植片スキャホールドは、ヒトまたは動物ドナー、若年のドナー、死亡した個体(動物またはヒト、すなわち死体)からも得られうる。特に人体には、硝子/関節軟骨移植片スキャホールドを産生するための採取部位として機能しうる多くの関節がある。関節軟骨移植片スキャホールドを採取するのに使用可能な足の関節の例は、以下に限定されないが、踵骨−立方骨関節、楔状骨間関節、足根中足関節、小中足指節関節(lesser metatarsophalangeal joint)、指節間関節、および例えば大腿骨頭からの股関節を含む。
【0034】
[0046]本発明のさらなる実施形態によれば、軟骨移植片スキャホールドはヒト軟骨移植片スキャホールドである。本発明のさらなる実施形態によれば、軟骨移植片スキャホールドは非ヒトスキャホールドである。本発明のさらなる実施形態において、軟骨移植片スキャホールドは関節軟骨である。
【0035】
[0047]軟骨移植片スキャホールドは、厚さ約100μm〜5,000μmを有していてよい。典型的には、厚さは約250μm〜3,000μmの間であってよい。軟骨移植片スキャホールドの厚さは均一であっても不均一であってもよい。好ましくは、厚さは均一である。
【0036】
[0048]本明細書で使用される場合、「脱細胞された」という語は、実質的に生細胞物質不含の、例えば、実質的に生軟骨細胞不含の生体材料を指す。
[0049]「実質的に不含の」という句は、本明細書で使用される場合、生細胞物質の少なくとも90%が失活されたかつ/またはスキャホールドから除去された、好ましくは、生細胞物質の約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.8%、99.9%または100%が失活されたかつ/または除去された、本発明により産生される軟骨移植片スキャホールドを指す。
【0037】
[0050]「脱細胞された軟骨移植片スキャホールド」は、軟骨移植片スキャホールドの抗原性を、スキャホールドが異種移植片として非免疫原性と考えられる程度まで根絶または低下させるように実質的に細胞成分不含の、軟骨移植片スキャホールドを意味する。
【0038】
[0051]脱細胞は、ネイティブの軟骨と同じ生化学構造を有しつつ、低免疫原性を有する無細胞マトリックスをもたらす。一方、失活された軟骨(DVC)は、細胞残渣および抗原性細胞表面マーカーを未だ含みうるマトリックスをもたらす。脱細胞では、典型的には物理的および化学的プロセスが使用され、失活では物理的方法が使用される。軟骨の脱細胞の成功は、残る生化学的含量、細胞除去、および力学的性能に関して異なる結果を伴う様々な方法を使用して、例えば、浸透圧ショック、界面活性剤、および酵素洗浄の往復を使用して実現されうる。軟骨移植片スキャホールドの失活は、凍結/解凍サイクル、または−20℃での凍結により実施されうる。
【0039】
[0052]本発明の一実施形態は、脱細胞された軟骨移植片スキャホールドを含む生体材料であって、スキャホールドが複数の切込みまたは切欠きを含む、生体材料に関する。複数の切込みまたは切欠きは、生体材料の厚さの約5〜約95%の間の深さであってよい。複数の切込みは、深さおよび幅が不均一であってよい。さらに、複数の切込みまたは切欠きは、均一または不均一な配列のいずれかで配置されてよい。
【0040】
[0053]複数の切込みまたは切欠きは、スキャホールド全体の切込みパターンとしてもたらされる。切込みパターンは、実質的に平行の空間をあけた関係の、直線または曲線の複数の伸長されたチャネル、共通の中心領域から広がる複数の伸長されたチャネル、共通の中心領域から広がる複数の同心のチャネル;格子を形成する複数の伸長されたチャネル;「ジグザグ」パターンを形成する複数の伸長されたチャネル、波状のパターン、例えばラメラを形成する複数の伸長されたチャネル、らせん状のパターンを形成する複数の伸長されたチャネル、適切な次元のマトリックスに配置された、複数の相互に空間をあけた点切欠き、またはそれらの任意の組合せ、および当業者により予想される多くのその他のパターンであってよい。
【0041】
[0054]本発明のさらなる実施形態は、複数の切欠きを有する脱細胞された軟骨移植片スキャホールドを含む生体材料であって、切欠きが軟骨移植片スキャホールドの表面に刻印された、生体材料に関する。切欠きは所定の深さを有していてよい。切込みの所定の深さは、軟骨移植片スキャホールドの表面から20μm、または表面から25μm、50μm、75μm、100μm、150μm、200μm、250μm、500μm、750μm、1,000μm、1,500μm、2,000μm、2,500μm、3,000μm、3,500μm、4,000μm、4,500μm、もしくは5,000μmでも、もしくはさらに深くてもよい。所定の深さは軟骨移植片スキャホールドの厚さを上回ることはない、すなわち軟骨移植片スキャホールドに穿孔しないことを理解されたい。
【0042】
[0055]一部の実施形態において、一方の面から他方の面への流体の流動を可能とするため、局所的穿孔がもたらされてもよい。
[0056]例として、各切込みの幅は約15μm〜約25μm、または約25μm〜約100μmであってよい。しかし、幅は約15μm未満でも約100μm超であってもよい。隣接する切欠き間の、例えば、隣接する切欠き間の、同心の切欠き間の、または隣接する直線状切欠きもしくは直線状に配置された切欠き間の距離は、約10μm、50μm、100μm、250μm、500μm、750μm、または1,000μmであってよい。切欠きの深さは軟骨層にわたって実質的に均一であってもよく、代わりに切欠き間で変動してもよい。
【0043】
[0057]本発明のさらなる実施形態は、高い精度および標準化をもたらすだけでなく、既成の生体材料の大規模産生も可能にする、自動化された手法に関する。
[0058]剃刀刃またはナイフなどの切断器具を用いて施された切欠きは、その間にほぼ充填不可能な空間を有する、接近して存在する切断縁部をもたらす(
図5a)。これらの切欠きは、曲げた場合に(または、組織学的加工中の場合などの人工産物によって)のみ広がる。
【0044】
[0059]しかし、細胞、再播種、力学的損傷の回避、および組織形成のための空間をもたらすために一定の間隙が必要である。レーザーは切込み中に物質をアブレーションし、除去された物質の量はレーザーの種類および技術によって決まる。フェムト秒レーザーは狭い切欠き(例えば50μm)を可能にする(
図5b)が、それでもこれは、細胞の再増殖を可能にするのに十分な広さであり、組織形成にとって保護された環境をもたらす。FSレーザーにより生じる切欠きは、組織生成の成功に必要な最小の空間と考えられる(
図6)。CO
2レーザーは、ほぼ1:1比の軟骨スキャホールドマトリックスおよび新たに形成された組織を可能にする、V字形状の切欠きを生成する(
図5c)。
【0045】
[0060]切欠きは切込み、切れ目、開口部、穴、間隙、チャネル、亀裂などであってよく、本明細書に記載される任意の適切なパターンで配置されてよい。切欠きは様々な手段、例えば、フライスまたはレーザー光線により施されてよい。本発明の一実施形態において、切欠きはレーザー光線により生じる。レーザーを使用することにより、切欠きが作製されるだけでなく、規定される量の軟骨マトリックスが局所的に除去される。したがって、好ましい実施形態において、切欠きはレーザー光線により生じ、それによりマトリックス成分が局所的に除去される。好ましい実施形態において、グリコサミノグリカンが軟骨マトリックスから選択的に除去される。
【0046】
[0061]本発明の一実施形態によれば、十分に規定された微細な構造を生成するため、二酸化炭素レーザーが使用される。本発明の別の実施形態によれば、フェムト秒レーザーが使用される。レーザー刻印は繰り返し実施されてよい。切欠きの深さに応じて、1、2、3、4、5、またはそれを超える繰り返しが実施される。
【0047】
[0062]レーザーで作り出された切欠きを使用することにより、細胞はスキャホールドに深く導かれ、そこで、欠損の深さ全体から切欠きを満たし、新たな軟骨を形成し、GAG含量の回復を含む移植片リモデリングを支持する。適切な細胞は、自己または同種起源の軟骨細胞、または軟骨形成能力を有するその他の細胞(例えば、幹細胞)のいずれかである。これらは、埋め込み前に(手術中に、または前培養の場合細胞培養研究室で)スキャホールドに予め播種されるか、細胞懸濁液または骨髄刺激を施用することにより欠損内部で直接スキャホールドと組み合わされる。
【0048】
[0063]さらに、切欠きが満たされ、細胞の唯一の選択肢がコラーゲンシートの間で横に遊走することとなるとすぐに、脱細胞されたマトリックスに浸潤するように細胞が刺激されうる。
【0049】
[0064]本発明の一実施形態によれば、軟骨移植片スキャホールド、例えば、関節軟骨に微細な構造を刻印するためにレーザーが使用可能であり、それらの構造が細胞で満たされ、十分に統合された分化組織が実現されうる。レーザー刻印され脱細胞されたスキャホールドの産生は正確で再現性があり、労力および時間の増大もほとんどなしにスケールアップ可能である。
【0050】
[0065]CO
2レーザーは、二酸化炭素、窒素およびヘリウムからなるレーザー媒質中で、波長10.6μmの赤外光ビームを放射する。エネルギーおよび速度(これらの積はレーザー出力に等しい)、ビーム直径(ならびにそれとともに、エネルギー密度および放射照度)、パルス持続時間ならびに繰り返し周波数などの様々な調節可能なパラメーターにより、望ましい刻印の深さを実現し、熱損傷を制限するための数多くの選択肢が生じる。出力の増大、長いパルス持続時間および速さの低下により、より深い刻印または切断が生じる。アブレーションは10psecを上回るレーザーパルス長を有するレーザーでは温熱性であるため(例えばCO
2、しかしフェムト秒レーザーなどの超短パルスレーザーではこの限りでない)、残りの組織のECM分子がプロセスにおいて損傷を受ける可能性がある。熱への長時間の曝露中、ネイティブのコラーゲンの3本ヘリックス構造は、水素結合およびファンデルワールス力の不安定化によりランダムコイルに変換される。免疫組織化学は、これらのパラメーターに関して、レーザー照射された縁部でのII型コラーゲン構造の変化を示した。この望ましくない副作用は、十分に短い組織曝露により、または組織アブレーション面の速度が残留組織への熱拡散と同様かそれより迅速である場合(低温アブレーション)はフェムト秒レーザーの使用により、アブレーションされていない組織への熱エネルギー蓄積を回避することで最小限にされうる。
【0051】
[0066]一部の実施形態において、上記の短所が、軟骨における切欠きをもたらす代替の方法に使用されうる。コラーゲンをゼラチンに変換するため、軟骨移植片スキャホールドが熱への長時間の曝露に局所的にさらされる。次いで、形成されたゼラチンが除去され、それにより局所的切欠きが得られる。処理は熱発生または熱伝達装置により実施されうる。
【0052】
[0067]熱発生または熱伝達装置の例は、以下に限定されないが、レーザー、加熱されたメスの刃、加熱されたハサミまたは加熱された鉗子を含む。装置は温度約200℃に加熱されるべきである。別の実施形態において、熱はCO
2、またはフェムト秒レーザーにより加えられてよい。
【0053】
[0068]したがって、本発明のさらなる実施形態は、結果を最適化するための、エネルギーおよび速度について選択された適切な値を有するレーザー設定に関する。迅速なレーザーの移動および短いパルス持続時間を選択することによる短い曝露時間が好ましい。切込みの深さは、繰り返し周波数または然るべき長時間の曝露により決定される。
【0054】
[0069]穴と比較して、ラメラ構造は、スキャホールドをより柔軟にし、任意の欠損における細胞−スキャホールド接触表面およびスキャホールド−宿主接触を潜在的に最大にするという利点を有する。ラメラ構造は、生成されることになる新たなマトリックスのためのより大きい空間をもたらし、新たに生成されるマトリックスによって未だ満たされていないものの、培養から間もないうちに、切欠きを介した媒質の層流を可能にしうる。コラーゲンのネイティブの構造はラメラまたは柱(レーザーまたは切断縁部を除く)において保存されており、新たに合成されたマトリックスはスキャホールドの組織分布により垂直のマトリックス配列に近付く−これは環状のマトリックス堆積を促進するスポンジ移植片に対する利点である。共焦点顕微鏡法は、切欠きがより広い表層帯の近くでは、マトリックスはスキャホールド表面に沿って配列される傾向では配列されにくいものの、コラーゲン線維が切断縁部に沿って、かつ切欠き内部の軟骨表層帯に対して垂直に配列されることを示した−これはともに関節軟骨のコラーゲンネットワークの特性である。
【0055】
[0070]失活された(しかし脱細胞されておらずGAGを枯渇させてもいない)スキャホールドにおいて、組織学は、新たに形成されたマトリックスとスキャホールドとの間の間隙を明らかにした。これは、組織学的試料調製の過程で発生した収縮によるものである可能性もあるが、それでもやはり、この効果が観察されなかったdecell−deGAG試料よりも、新たな細胞/組織が、スキャホールド表面により弱く接着していたことを意味する(
図4)。
【0056】
[0071]GAGを枯渇させた軟骨移植片スキャホールドにおける細胞接着をさらに改善するため、スキャホールドは化学物質で処理されうる。本発明の一実施形態において、軟骨移植片スキャホールドは酵素、酸性および/または塩基性溶液で処理される。好ましい実施形態において、軟骨移植片スキャホールドはペプシン、HClおよびNaOHで処理される。
【0057】
[0072]失活のため、軟骨試料は約−20℃および室温でそれぞれ約1時間維持され、乾燥した状態で数回凍結され、低張緩衝液に浸漬されて数回凍結される。次いで、軟骨試料は脱細胞のため塩酸中で一晩、選択的マトリックス枯渇のため酵素溶液中で一晩インキュベートされ、その後縁部を粗化するため水酸化ナトリウム中でインキュベートされる。
【0058】
[0073]軟骨移植片スキャホールドは、それを必要とする対象を治療するために使用されうる。脱細胞および/または失活された軟骨移植片スキャホールドを含む生体材料は、正確なマトリックス堆積および組織形成を容易にしまたは増強しうることが予想される。軟骨移植片スキャホールドの表面の複数の切欠きは、前記切欠きを欠く軟骨に対して増大した表面積を有する構築物を作り出す。増大した表面積は、細胞接着、および傷害部位の軟骨移植片スキャホールド内に、スキャホールド全体に、スキャホールドにわたって栄養が容易に行き渡ることを可能にし、ゆえに再生または治癒の増強に寄与しうる。
【0059】
[0074]本発明の生体材料は、軟骨および軟骨組織の修復、置換および再生に有用である。軟骨移植片スキャホールドは、プロテオグリカンおよびコラーゲンから構成される高密度の結合組織層と規定されうる。
【0060】
[0075]本発明の手法は、軟骨再生に現在使用されている市販のスキャホールドと比較して優れた力学的特性、ならびに細胞接着およびマトリックス堆積に対する正の効果を有するスキャホールドを生成する。レーザーにより生成される構造は、保持された力学的特性により、軟骨マトリックスに関して細胞−スキャホールド接触および細胞量を著しく増大させることにより、移植片統合の増強およびより迅速なリモデリングを促進する。刻印されたラメラおよび格子パターンを有する、脱細胞されGAGを枯渇させた軟骨は、手術後理学療法の期間および移植不全リスクを減少させる能力を有し、ゆえに、治療コストを低下させることにより保健財源にとって、かつ日常生活へのより迅速な復帰を可能にすることにより患者にとって有益であることが予想される。
【0061】
[0076]本発明のさらなる実施形態は、軟骨および/または骨欠損を治療するため患者内の部位に施用される、本明細書に記載される生体材料に関する。例えば、周辺組織由来の細胞は、in vitroで新たな軟骨を再現および生成することができる。新たに形成された軟骨組織は、欠損を満たし、治療部位における既存のネイティブの軟骨および/または軟骨下骨と統合することができる。
【0062】
[0077]本発明のさらなる実施形態によれば、生体材料は、軟骨、骨、靭帯、腱、半月板、関節、または筋肉における欠損部位に投与されてよい。本発明のさらなる実施形態は、変性性の欠損または傷害の治療における使用のための生体材料に関する。本発明のさらなる実施形態は、変形性関節症または筋肉欠損の治療における使用のための生体材料に関する。
【0063】
[0078]本発明のさらなる実施形態によれば、生体材料は、軟骨を修復するため、または軟骨の増殖を促進するため、または再生のため対象に投与されてよい。生体材料は、関節(例えば、膝)、骨(例えば、大腿骨または上腕骨)、または軟骨に施用されてよい。
【0064】
[0079]本発明のさらなる実施形態によれば、生体材料は、軟部組織欠損を有する対象に、その修復および/または再生のために投与されてよい。生体材料は靭帯、腱、または筋肉に施用されてよい。軟組織欠損は、靭帯、腱、または筋肉の捻挫、肉離れ、挫傷、または圧力傷害であってよい。
【0065】
[0080]本発明のさらなる実施形態によれば、生体材料はそれを必要とする対象に局所的に投与されてよい。生体材料は外科的に埋め込まれてよく、好ましくは、生体材料は最小限に侵襲性の手順で、例えば関節鏡法により投与される。
【実施例】
【0066】
[0081]以下の実施例は、本発明の理解を助けるために示されており、決して、本発明の範囲を制限することを意図するものではなく、本発明の範囲を制限すると解釈されるべきでない。実施例は従来の方法についての詳細な説明を含まない。このような方法は当業者に周知である。
【0067】
材料および方法
試料採取
[0082]股関節置換術を受けたドナーの大腿骨頭から、患者の同意および地域の倫理委員会の承認を得て、巨視的にインタクトなヒト関節軟骨を採取した。全層非石灰化軟骨を軟骨下骨から分離し、直径8mmの生検トレパンを用いて生検を調製し、PBS+抗生物質(Pen/Strep)で洗浄した。軟骨生検は全層、またはTeixido軟骨カッター(MicroFrance(登録商標)Integra LifeSciences、USA)を使用して300μmに統一された試料厚さで使用した。軟骨は生検の中間帯から採集し、表層帯および深部の石灰化した帯の組織は捨てた。
【0068】
レーザー設定
[0083]レーザー刻印は、CO
2レーザーまたはフェムト秒レーザーのいずれかを用いて施した。前者は、標準波長10.6μmで、パルス持続時間0.2msecに常にセットされた、Trotec Speedy 300(Trotec Ltd、Austria)であった。フェムト秒レーザーは、波長520μmおよび焦点距離100mmで使用されるSpirit(登録商標)High Q Laserであった。軟骨生検に穴を開けるのには、CO
2レーザーを30Wおよび5000Hzに設定し、速さを42.6cm/sに設定し、1〜5回の線パターンを施した。フェムト秒レーザーは、7μJに等しい12.4J/cm
2、パルス繰り返し周波数200kHzに常に設定した。全層軟骨生検には400〜600ランおよび1000mm/sで、様々な間隔で刻印した。厚さ300μmの軟骨生検には140ランで刻印した。
【0069】
[0084]格子パターンを生成するため、フェムト秒レーザーでは試料全体に対してレーザー光線を平行な水平および垂直の線に変換し、CO
2レーザーでは試料を90°回転させて平行の線パターンを繰り返した。
【0070】
失活/脱細胞
[0085]レーザー刻印された格子パターンを有する軟骨生検を失活または脱細胞させ、目的のマトリックス枯渇を行った(「decell−deGAG」)。
【0071】
[0086]失活のため、試料を−20℃および室温でそれぞれ約1時間交互に維持し、乾燥した状態で2回凍結させ、低張緩衝液(10mMトリス−塩基、HClを使用してpH8.0に調節)に浸漬させて2回凍結させた。decell−deGAG試料にもこれらの凍結/解凍サイクルを行い、次いで、脱細胞のため0.1M塩酸中で一晩、選択的マトリックス枯渇のため1mg/mLペプシン(0.5M酢酸中0.1%)中で一晩インキュベートし、その後縁部を粗化するため0.1M水酸化ナトリウム中で6時間インキュベートした。インキュベーションステップは全て、継続的な振とう下で37℃で行った。
【0072】
細胞培養
[0087]ヒト脂肪由来間質/幹細胞(ASC)をトリプシン処理により採取し、再播種実験に使用した。
【0073】
in vivo研究
[0088]軟骨環境および全身状態下でのスキャホールド物質の挙動を証明するため、小動物モデルを選択した。ウシ骨軟骨プラグをヌードマウスの皮下に埋め込んだ。骨軟骨プラグ(直径1cm)は実験的軟骨欠損(4mm)を有していた。これらの欠損は膝欠損モデルとして機能し、1x10
6の細胞(ヒトASC、ウシ軟骨細胞または共培養物)を有する開発された生体材料(300μmチップ2枚の積み重ね)で満たされた(「処理された」)。空の欠損は対照として機能した。細胞は埋め込み2日前に予め播種した。埋め込み6週間後に試料を採集した。
【0074】
組織学的検査
[0089]in vitroおよびin vivo試料を、4%中性緩衝ホルマリンで固定し、パラフィン包埋し、アルシアンブルー(pH2.5)およびII型コラーゲン(collage)抗体で染色した。
【0075】
結果
レーザー設定
[0090]CO
2レーザー刻印はV字形状の切込みを示した。深さは特定の設定内で規則的であり、1回の繰り返しで150μm〜5回の繰り返しで680μmの範囲で繰り返し数とともに増大した。レーザー縁部は幅約50μmのII型コラーゲン変性を示す(
図1)。
【0076】
フェムト秒レーザー刻印は、ラメラ間の距離が狭い直線および平行の切欠きを生じた。ラメラ表面はマトリックスの変質を何ら示さない(
図2)。
スキャホールドのin vitroでの性能
[0091]CO
2レーザー刻印された軟骨生検にASCを再播種すると、スキャホールドと、ASCにより新たに生じた軟骨形成分化組織との合着した構築物がもたらされた。ASCはその細胞内空間にII型コラーゲンおよびプロテオグリカンを堆積させ、このマトリックスでラメラを満たした。細胞およびマトリックスはスキャホールドと、その表面への完全かつ強い接着により十分に統合した(
図3)。
【0077】
スキャホールドのin vivoでの性能
[0092]細胞を播種されたスキャホールドを実験的欠損に埋め込むと、ヌードマウスの全身状態下で、軟骨環境において物質が十分に機能したことが示された。物質は6週間にわたってほぼ変質せずに持続し、欠損を完全に満たした。対照に対する差は、ヌードマウスの皮下で巨視的にも、円柱を外植(explanation)後に半分に切断しても視認可能であった(
図7)。in vivoへの埋め込みから6週間後、スキャホールドは未だ存在し、新たに形成された組織に十分に埋め込まれた。ASCにより形成された組織は軟骨形成分化の徴候を示さず、軟骨細胞との共培養物におけるASCおよび軟骨細胞単独は軟骨組織を形成した。これはII型コラーゲンについて陽性であり、高密度の外観、ならびにスキャホールドマトリックスとの完全な接着および統合を有していた(
図8)。
【国際調査報告】