特表2020-521748(P2020-521748A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2020-521748UV誘導性損傷に関連する疾患の処置におけるスルホニルウレア化合物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-521748(P2020-521748A)
(43)【公表日】2020年7月27日
(54)【発明の名称】UV誘導性損傷に関連する疾患の処置におけるスルホニルウレア化合物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/64 20060101AFI20200626BHJP
   C12Q 1/34 20060101ALI20200626BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20200626BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20200626BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20200626BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20200626BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20200626BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20200626BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20200626BHJP
   C07C 311/59 20060101ALI20200626BHJP
【FI】
   A61K31/64
   C12Q1/34ZNA
   C12Q1/02
   A61P43/00 105
   A61P35/00
   A61P43/00 111
   A61P17/00
   A61P25/00
   A61P27/02
   A61P19/00
   C07C311/59CSP
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】55
(21)【出願番号】特願2019-564979(P2019-564979)
(86)(22)【出願日】2018年5月24日
(85)【翻訳文提出日】2020年1月21日
(86)【国際出願番号】EP2018063735
(87)【国際公開番号】WO2018215628
(87)【国際公開日】20181129
(31)【優先権主張番号】17172748.0
(32)【優先日】2017年5月24日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】516302823
【氏名又は名称】ツェーエーエムエム・フォルシュングスツェントルム・フュア・モレクラーレ・メディツィン・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヨアンナ・イオアヌ・ロイズ
(72)【発明者】
【氏名】アブデルガニ・マズージ
【テーマコード(参考)】
4B063
4C086
4H006
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA18
4B063QA19
4B063QQ02
4B063QQ03
4B063QQ08
4B063QQ30
4B063QR10
4B063QR72
4B063QR77
4B063QX01
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA21
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA33
4C086ZA89
4C086ZA96
4C086ZB21
4C086ZB26
4C086ZC01
4C086ZC52
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB20
4H006AB21
4H006AB28
(57)【要約】
本発明は、UV誘導性DNA損傷に関連する疾患の処置及び/又は改善における使用のためのスルホニルウレア化合物に関し、処置される対象は、酵素活性mutY類似体(MUTYH)を発現し、スルホニルウレア化合物は、好ましくは、アセトヘキサミド若しくはその誘導体、又はグリメピリド若しくはその誘導体である。本発明は、UV誘導性DNA損傷に関連する疾患の処置及び/又は改善における使用のためのスルホニルウレア化合物を含む医薬組成物に更に関する。また、酵素活性MUTYHを発現する対象において、UV誘導性DNA損傷に関連する疾患を処置及び/又は改善する化合物を同定するためのスクリーニング方法を提供する。本発明はまた、対象のUV誘導性DNA損傷に関連する疾患の処置期間中、治療成功をモニタリングするための方法、及びスルホニルウレア化合物での処置に応答する対象を同定するための方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
UV誘導性DNA損傷に関連する疾患の処置及び/又は改善における使用のための、式I:
【化1】
(式中、
Xは、-NH2で任意に置換されたフェニレンであり、
R1は、-C1〜6アルキル、-C(O)-C1〜6アルキル、-(C1〜6アルキレン)-C(O)-NH-R3、及び-(C1〜6アルキレン)-NH-C(O)-R3から選択され、
R3は、独立して、1〜3個の窒素原子と任意でS及びOから選択される1又は2個の追加のヘテロ原子とを含む単環不飽和ヘテロシクリルから選択され、前記ヘテロシクリルは、任意で、オキソ(=O)、-ハロゲン、-C1〜6アルキル、及び-O-C1〜6アルキルから選択される1又は2個の置換基を有し、
R2は、C1〜6アルキルから独立して選択される1つ又は2つで任意に置換されたC5〜7シクロアルキルから選択される)
の構造を有するスルホニルウレア化合物であって、処置される対象は、酵素活性mutY類似体(MUTYH)を発現する、スルホニルウレア化合物。
【請求項2】
UV誘導性DNA損傷に関連する疾患の処置及び/又は改善における使用のための、
(i)請求項1に記載の使用のためのスルホニルウレア化合物、及び
(ii)任意で、薬学的に許容される担体
を含む医薬組成物であって、処置される対象は、酵素活性MUTYHを発現する、医薬組成物。
【請求項3】
スルホニルウレア化合物が、
(i)アセトヘキサミド若しくはその誘導体、又は
(ii)グリメピリド若しくはその誘導体
である、請求項1に記載の使用のためのスルホニルウレア化合物、又は請求項2に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項4】
酵素活性MUTYHが、野生型MUTYH又は高活性のMUTYHである、請求項1若しくは3に記載の使用のためのスルホニルウレア化合物、又は請求項2若しくは3に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項5】
酵素活性MUTYHが、
(i)配列番号1〜6のいずれか1つのアミノ酸配列、
(ii)(i)のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列であり、ポリペプチドがDNAグリコシラーゼ活性を有する、アミノ酸配列、
(iii)配列番号1の酵素活性断片のアミノ酸配列、又は
(iv)(iii)のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列であり、ポリペプチドがDNAグリコシラーゼ活性を有する、アミノ酸配列
を含む、又はこれらからなるポリペプチドである、請求項1、3及び4のいずれか一項に記載の使用のためのスルホニルウレア化合物、又は請求項2から4のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項6】
酵素活性MUTYHの活性が、配列番号1のアミノ酸配列からなるポリペプチドの少なくとも80%の活性である、請求項1及び3から5のいずれか一項に記載の使用のためのスルホニルウレア化合物、又は請求項2から5のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項7】
対象から得られるサンプルにおいて、MUTYHの発現量が、健康な参照対象から得られるサンプルでのMUTYHの少なくとも80%の発現量である、請求項1及び3から6のいずれか一項に記載の使用のためのスルホニルウレア化合物、又は請求項2から6のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項8】
サンプルが皮膚のサンプルである、請求項1及び3から7のいずれか一項に記載の使用のためのスルホニルウレア化合物、又は請求項2から7のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項9】
スルホニルウレア化合物が、酵素活性MUTYHの量を低下させる、請求項1及び3から8のいずれか一項に記載の使用のためのスルホニルウレア化合物、又は請求項2から8のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項10】
スルホニルウレア化合物が、酵素活性MUTYHを阻害する、並びに/又はMUTYHの分解及び/若しくは枯渇をもたらす、請求項1及び3から9のいずれか一項に記載の使用のためのスルホニルウレア化合物、又は請求項2から9のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項11】
スルホニルウレア化合物が、直接的に、又はMUTYHの酵素活性の阻害を媒介する因子を介して間接的にMUTYHを標的とする、請求項1及び3から10のいずれか一項に記載の使用のためのスルホニルウレア化合物、又は請求項2から10のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項12】
スルホニルウレア化合物が、プロテアソーム依存性の様式で酵素活性MUTYHのタンパク質レベルを低下させる、請求項1及び3から11のいずれか一項に記載の使用のためのスルホニルウレア化合物、又は請求項2から11のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項13】
スルホニルウレア化合物が、UV誘導性DNA損傷の修復を向上させる、請求項1及び3から12のいずれか一項に記載の使用のためのスルホニルウレア化合物、又は請求項2から12のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項14】
UV誘導性DNA損傷が、シクロブタン型ピリミジン二量体(CPD)、6-4ピリミジン-ピリミドン光産物(6-4PP)、デュワー型の原子価異性体及び/又は芽胞光産物、並びに他の種類のUV損傷部である、請求項13に記載の使用のためのスルホニルウレア化合物、又は請求項13に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項15】
UV誘導性DNA損傷が、UVA照射、UVB照射及び/又はUVC照射に起因する、請求項1及び3から14のいずれか一項に記載の使用のためのスルホニルウレア化合物、又は請求項2から14のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項16】
スルホニルウレア化合物が、ヌクレオチド除去修復(NER)の欠損を改善する、及び/又はNERを向上させる、請求項1及び3から15のいずれか一項に記載の使用のためのスルホニルウレア化合物、又は請求項2から15のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項17】
NERが、転写共役修復(TC-NER)及び/又はゲノム全体の修復(GG-NER)である、請求項16に記載の使用のためのスルホニルウレア化合物、又は請求項16に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項18】
UV誘導性DNA損傷に関連する疾患が、NERの欠損に関連する疾患である、請求項1及び3から17のいずれか一項に記載の使用のためのスルホニルウレア化合物、又は請求項2から17のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項19】
NERの欠損に関連する疾患が、色素性乾皮症(XP)、コケイン症候群(CS)、紫外線高感受性症候群(UVSS)、硫黄欠乏性毛髪発育異常症(TTD)、又は脳・眼・顔・骨格症候群(COFS)である、請求項18に記載の使用のためのスルホニルウレア化合物、又は請求項18に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項20】
スルホニルウレア化合物が、NERの欠損に関連する症状を改善する、請求項1及び3から19のいずれか一項に記載の使用のためのスルホニルウレア化合物、又は請求項2から19のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項21】
NERの欠損に関連する症状が、UV感受性、UV刺激性、UV誘導性DNA損傷、UV誘導性細胞死、がんの発症、神経症状、早期の老化、及び/又は発達障害である、請求項20に記載の使用のためのスルホニルウレア化合物、又は請求項20に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項22】
酵素活性MUTYHを発現する対象において、UV誘導性DNA損傷に関連する疾患を処置及び/又は改善する化合物を同定するためのスクリーニング方法であって、
(a)試験化合物を、
(a1)MUTYH、又は
(a2)MUTYHを発現する細胞
と接触させる工程、
(b)前記試験化合物の存在下及び不在下でMUTYHの発現及び/又は活性を測定する工程、及び
(c)酵素活性MUTYHを発現する対象において、UV誘導性DNA損傷に関連する疾患を処置及び/又は改善する化合物として、MUTYHの発現及び/又は活性を低下させる化合物を同定する工程、
並びに任意で、NERの欠損に関連する疾患を処置及び/又は改善する化合物として、前記化合物を同定する工程であり、前記疾患が、好ましくは色素性乾皮症(XP)、コケイン症候群(CS)、紫外線高感受性症候群(UVSS)、硫黄欠乏性毛髪発育異常症(TTD)、又は脳・眼・顔・骨格症候群(COFS)から選択される、工程
を含む方法。
【請求項23】
工程(b)で測定された活性が、DNAグリコシラーゼ活性である、請求項22に記載のスクリーニング方法。
【請求項24】
工程(b)で測定された量が、MUTYHポリペプチドの量である、請求項22又は23に記載のスクリーニング方法。
【請求項25】
前記細胞が、真核細胞である、請求項22から24のいずれか一項に記載のスクリーニング方法。
【請求項26】
加えて、
(b2)試験化合物を対照と比較する工程
を含む、請求項22から25のいずれか一項に記載のスクリーニング方法。
【請求項27】
前記対照において、不活性試験化合物が使用され、前記不活性試験化合物が、MUTYHの発現及び/又は活性を低下させない化合物である、請求項26に記載のスクリーニング方法。
【請求項28】
前記試験化合物が、
(i)スクリーニングライブラリーの小分子、又は
(ii)ファージディスプレイライブラリーのペプチド、抗体断片ライブラリーのペプチド、若しくはcDNAライブラリー由来のペプチド
である、請求項22から27のいずれか一項に記載のスクリーニング方法。
【請求項29】
対象のUV誘導性DNA損傷に関連する疾患の処置期間中、治療成功をモニタリングするための方法であって、
(a)試験対象から得られるサンプル中のMUTYHの量及び/又は活性を測定する工程、
(b)前記量及び/又は活性を、少なくとも1つの参照対象のMUTYHの量及び/又は活性に対応する参照データと比較する工程、及び
(c)比較する工程(b)に基づいて、治療成功を予測する工程
を含む、方法。
【請求項30】
酵素活性MUTYHポリペプチドの量が測定される、請求項29に記載のモニタリング方法。
【請求項31】
試験対象が、処置開始前に酵素活性MUTYHを発現している、請求項29又は30に記載のモニタリング方法。
【請求項32】
処置開始前に試験対象から得られたサンプルにおいて、酵素活性MUTYHポリペプチドの量が、健康な参照対象から得られるサンプルでの酵素活性MUTYHポリペプチドの少なくとも80%の量である、請求項30又は31に記載のモニタリング方法。
【請求項33】
試験対象が、NERの欠損に関連する疾患で薬物治療を受けているヒトである、請求項29から32のいずれか一項に記載のモニタリング方法。
【請求項34】
参照データが、少なくとも1つの参照対象のサンプルのMUTYHの量及び/又は活性に対応する、請求項29から33のいずれか一項に記載のモニタリング方法。
【請求項35】
少なくとも1つの参照対象が、NERの欠損に関連する疾患を有するが、この疾患で薬物治療を受けておらず、工程(c)において参照データと比較して試験対象のMUTYHの低い量及び/又は活性が、NERの欠損に関連する疾患の処置での治療成功を示す、請求項29から34のいずれか一項に記載のモニタリング方法。
【請求項36】
前記MUTYHの低い量及び/又は活性が、試験対象のサンプルのMUTYHの量及び/又は活性が少なくとも1つの参照対象のサンプルのMUTYHの量及び/又は活性の0〜90%であることを意味する、請求項35に記載のモニタリング方法。
【請求項37】
少なくとも1つの参照対象が、NERの欠損に関連する疾患を有し、この疾患で薬物治療を受けており、工程(c)において参照データと比較して試験対象のMUTYHの同じ又は類似の量及び/又は活性が、NERの欠損に関連する疾患の処置での治療成功を示す、請求項29から34のいずれか一項に記載のモニタリング方法。
【請求項38】
少なくとも1つの参照対象が、NERの欠損に関連する疾患を有さず、工程(c)において参照データと比較して試験対象のMUTYHの同じ又は類似の量及び/又は活性が、NERの欠損に関連する疾患の処置での治療成功を示す、請求項29から34のいずれか一項に記載のモニタリング方法。
【請求項39】
前記MUTYHの同じ又は類似の量及び/又は活性が、試験対象のサンプルのMUTYHの量及び/又は活性が少なくとも1つの参照対象のサンプルのMUTYHの量及び/又は活性の90〜110%であることを意味する、請求項37又は38に記載のモニタリング方法。
【請求項40】
請求項1から21のいずれか一項で定義されるスルホニルウレア化合物での処置に応答する対象を同定するための方法であって、
(a)試験対象から得られるサンプルのMUTYHの発現及び/又は活性を測定する工程、及び
(c)請求項1から21のいずれか一項で定義されるスルホニルウレア化合物での処置への応答者として酵素活性MUTYHを含む対象を同定する工程
を含む、方法。
【請求項41】
対象が、UV誘導性DNA損傷に関連する疾患を有する、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
試験対象のサンプルの酵素活性MUTYHの量が、少なくとも健康な参照対象のサンプルの酵素活性MUTYHの量と同じく高い、請求項40又は41に記載の方法。
【請求項43】
UV誘導性DNA損傷に関連する疾患を処置/改善するための方法であって、対象に、式I:
【化2】
(式中、
Xは、-NH2で任意に置換されたフェニレンであり、
R1は、-C1〜6アルキル、-C(O)-C1〜6アルキル、-(C1〜6アルキレン)-C(O)-NH-R3、及び-(C1〜6アルキレン)-NH-C(O)-R3から選択され、
R3は、独立して、1〜3個の窒素原子と任意でS及びOから選択される1又は2個の追加のヘテロ原子とを含む単環不飽和ヘテロシクリルから選択され、前記ヘテロシクリルは、任意で、オキソ(=O)、-ハロゲン、-C1〜6アルキル、及び-O-C1〜6アルキルから選択される1又は2個の置換基を有し、
R2は、C1〜6アルキルから独立して選択される1つ又は2つで任意に置換されたC5〜7シクロアルキルから選択される)
の構造を有するスルホニルウレア化合物を投与する工程を含み、処置される対象は、酵素活性mutY類似体(MUTYH)を発現する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、UV誘導性DNA損傷に関連する疾患の処置及び/又は改善における使用のためのスルホニルウレア化合物に関し、処置される対象は、酵素活性mutY類似体(MUTYH)を発現し、スルホニルウレア化合物は、好ましくは、アセトヘキサミド若しくはその誘導体、又はグリメピリド若しくはその誘導体である。本発明は、UV誘導性DNA損傷に関連する疾患の処置及び/又は改善における使用のためのスルホニルウレア化合物を含む医薬組成物に更に関する。また、酵素活性MUTYHを発現する対象において、UV誘導性DNA損傷に関連する疾患を処置及び/又は改善する化合物を同定するためのスクリーニング方法を提供する。本発明はまた、対象のUV誘導性DNA損傷に関連する疾患の処置期間中、治療成功をモニタリングするための方法、及びスルホニルウレア化合物での処置に応答する対象を同定するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生物によって、ゲノムの完全性を維持し、細胞死及び疾患を防御するための一連の異なる種類のDNA損傷に対処するDNA修復経路の概論が展開される。ヌクレオチド除去修復(NER)は、広範囲な構造的に異なるDNA損傷部に対処するその能力のための、最も汎用で柔軟なDNA修復経路の1つである。この経路は、通常はシクロブタン型ピリミジン二量体(CPD)の形態であるが、6-4ピリミジン-ピリミドン光産物(6-4PP)の形態でもある、紫外線(UV)照射誘導性損傷部を修復し、他の嵩高な付加物も除去する[Marteijn等(2014)、Nat Rev Mol Cell Biol、15: 465〜81頁]。CPDは、UV曝露時に直ちに形成され、修復されない場合、シトシンからチミンへのトランジション突然変異をもたらすが、これはメラノーマに関連する[Lo等(2014)、Science、346: 945〜9頁]。NERは、2つの主なサブ経路:転写共役修復(TC-NER)(活性遺伝子の転写鎖で機能し、DNA損傷を認識する際にRNAポリメラーゼIIを係合する)、及びゲノム全体の修復(GG-NER)(抑制された非コード領域及び活性遺伝子の非転写鎖を含むゲノムの他の領域において損傷部を修復する)からなる[Fousteri等(2008)、Cell Res 18: 73〜84頁]。現在まで、NERは、哺乳動物の細胞のUV誘導性DNA損傷を修復する唯一知られているDNA修復である。
【0003】
スルホニルウレア化合物は、医学及び農学で使用される有機化合物である。それらのいくつかは抗糖尿病薬であるが、これらが膵臓のβ細胞からのインスリン放出を増加させるためである。アセトヘキサミドは、スルホニルウレア化合物の群に属し、2型糖尿病を処置するために使用される。WO 2014/164730は、がん等の悪性腫瘍に対する遺伝的素因を有する患者において、がん等の悪性腫瘍の予防で使用されるアセトヘキサミドについて記載するが、素因は、機能喪失又は機能低下による突然変異、とりわけMUTYHを含む。
【0004】
DNA損傷修復経路としてのNERの重要性は、本経路内の突然変異が、色素性乾皮症(XP:Xeroderma pigmentosum)、コケイン症候群(CS:Cockayne syndrome)、紫外線高感受性症候群(UVSS:UV-sensitive syndrome)、及び硫黄欠乏性毛髪発育異常症(TTD:Trichothiodystrophy)を含む、多様な臨床兆候を有するいくつかの疾患を引き起こすという事実によって注目されている。全ての患者は、日光に対して高い感受性を示す。特に、XP患者は、1,000倍超の割合で、皮膚基底細胞癌、扁平上皮細胞癌又は黒色腫を発症しやすい。加えて、これらの患者の20%は、神経の変性に典型的な神経症状に苦しんでいる。現在、当該技術分野において利用可能なNER不足の患者に対する治療法は存在しない。UV誘導性DNA損傷に苦しむこのような患者に対する処置選択肢を提供することが、当該技術分野においてまさに求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO 2014/164730
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Marteijn等(2014)、Nat Rev Mol Cell Biol、15: 465〜81頁
【非特許文献2】Lo等(2014)、Science、346: 945〜9頁
【非特許文献3】Fousteri等(2008)、Cell Res 18: 73〜84頁
【非特許文献4】Markkanen等(2013)、Front Genet、4: 18頁
【非特許文献5】Dorn等(2014)、J Biol Chem、289: 7049-58頁
【非特許文献6】Remington: The Science and Practice of Pharmacy (Gennaro及びGennaro編、第20版、Lippincott Williams & Wilkins、2000年)
【非特許文献7】Theory and Practice of Industrial Pharmacy (Lachman等編、第3版、Lippincott Williams & Wilkins、1986年)
【非特許文献8】Encyclopedia of Pharmaceutical Technology (Swarbrick及びBoylan編、第2版、Marcel Dekker、2002年)
【非特許文献9】the International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook、Wenninger及びMcEwen編、1656〜61頁、1626頁及び1654〜55頁(The Cosmetic, Toiletry, and Fragrance Assoc、Washington, D.C.、第7版、1997年)
【非特許文献10】Sambrook等、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.(1989)
【非特許文献11】Ausubel等、Current Protocols in Molecular Biology、Greene Publishing Associates(1992)
【非特許文献12】Harlow and Lane Antibodies: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.(1990)
【非特許文献13】Joseph等(2010)、J Chromatogr B Analyt Technol Biomed Life Sci、878: 2775〜81頁
【非特許文献14】Proks等(2002)、Diabetes、51補遺3: S368〜76頁
【非特許文献15】Burke等(2008)、Circ Res、102: 164〜76頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ゆえに、本発明の技術的な課題は、NER不足の対象において、UV誘導性DNA損傷に関連する疾患の処置及び/又は改善における使用のための化合物及び/又は組成物の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
技術的な課題は、特許請求の範囲に特徴づけられる実施形態の提供により解決される。ゆえに、本発明は、以下の項目に関する。
【0009】
1.UV誘導性DNA損傷に関連する疾患の処置及び/又は改善における使用のための、式I:
【0010】
【化1】
【0011】
(式中、
Xは、-NH2で任意に置換されたフェニレンであり、
R1は、-C1〜6アルキル、-C(O)-C1〜6アルキル、-(C1〜6アルキレン)-C(O)-NHR3、及び-(C1〜6アルキレン)-NH-C(O)-R3から選択され、
R3は、独立して、1〜3個の窒素原子と任意でS及びOから選択される1又は2個の追加のヘテロ原子とを含む単環不飽和ヘテロシクリルから選択され、前記ヘテロシクリルは、任意で、オキソ(=O)、-ハロゲン、-C1〜6アルキル、及び-O-C1〜6アルキルから選択される1又は2個の置換基を有し、
R2は、C1〜6アルキルから独立して選択される1つ又は2つで任意に置換されたC5〜7シクロアルキルから選択される)
の構造を有するスルホニルウレア化合物であって、処置される対象は、酵素活性mutY類似体(MUTYH)を発現する、スルホニルウレア化合物。
【0012】
2.UV誘導性DNA損傷に関連する疾患の処置及び/又は改善における使用のための、
(i)項目1に記載の使用のためのスルホニルウレア化合物、及び
(ii)任意で、薬学的に許容される担体
を含む医薬組成物であって、処置される対象は、酵素活性MUTYHを発現する、医薬組成物。
【0013】
3.スルホニルウレア化合物が、
(i)アセトヘキサミド若しくはその誘導体、又は
(ii)グリメピリド若しくはその誘導体
である、項目1に記載の使用のためのスルホニルウレア化合物、又は項目2に記載の使用のための医薬組成物。
【0014】
4.酵素活性MUTYHが、野生型MUTYH又は高い活性のMUTYHである、項目1若しくは3に記載の使用のためのスルホニルウレア化合物、又は項目2若しくは3に記載の使用のための医薬組成物。
【0015】
5.酵素活性MUTYHが、
(i)配列番号1〜6のいずれか1つのアミノ酸配列、
(ii)(i)のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列であり、ポリペプチドがDNAグリコシラーゼ活性を有する、アミノ酸配列、
(iii)配列番号1の酵素活性断片のアミノ酸配列、又は
(iv)(iii)のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列であり、ポリペプチドがDNAグリコシラーゼ活性を有する、アミノ酸配列
を含む、又はこれらからなるポリペプチドである、項目1、3及び4のいずれか一項に記載の使用のためのスルホニルウレア化合物、又は項目2から4のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【0016】
6.酵素活性MUTYHの活性が、配列番号1のアミノ酸配列からなるポリペプチドの少なくとも80%の活性である、項目1及び3〜5のいずれか一項に記載の使用のためのスルホニルウレア化合物、又は項目2から5のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【0017】
7.対象から得られるサンプルにおいて、MUTYHの発現量が、健康な参照対象から得られるサンプルでのMUTYHの少なくとも80%の発現量である、項目1及び3〜6のいずれか一項に記載の使用のためのスルホニルウレア化合物、又は項目2から6のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【0018】
8.サンプルが皮膚のサンプルである、項目1及び3から7のいずれか一項に記載の使用のためのスルホニルウレア化合物、又は項目2から7のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【0019】
9.スルホニルウレア化合物が、酵素活性MUTYHの量を低下させる、項目1及び3から8のいずれか一項に記載の使用のためのスルホニルウレア化合物、又は項目2から8のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【0020】
10.スルホニルウレア化合物が、酵素活性MUTYHを阻害する、並びに/又はMUTYHの分解及び/若しくは枯渇をもたらす、項目1及び3から9のいずれか一項に記載の使用のためのスルホニルウレア化合物、又は項目2から9のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【0021】
11.スルホニルウレア化合物が、直接的に、又はMUTYHの酵素活性の阻害を媒介する因子を介して間接的にMUTYHを標的とする、項目1及び3から10のいずれか一項に記載の使用のためのスルホニルウレア化合物、又は項目2から10のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【0022】
12.スルホニルウレア化合物が、プロテアソーム依存性の様式で酵素活性MUTYHのタンパク質レベルを低下させる、項目1及び3から11のいずれか一項に記載の使用のためのスルホニルウレア化合物、又は項目2から11のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【0023】
13.スルホニルウレア化合物がUV誘導性DNA損傷の修復を向上させる、項目1及び3から12のいずれか一項に記載の使用のためのスルホニルウレア化合物、又は項目2から12のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【0024】
14.UV誘導性DNA損傷が、シクロブタン型ピリミジン二量体(CPD)、6-4ピリミジン-ピリミドン光産物(6-4PP)、デュワー型の原子価異性体及び/又は芽胞光産物(Spore photoproduct)、並びに他の種類のUV損傷部である、項目13に記載の使用のためのスルホニルウレア化合物、又は項目13に記載の使用のための医薬組成物。
【0025】
15.UV誘導性DNA損傷が、UVA照射、UVB照射及び/又はUVC照射に起因する、項目1及び3から14のいずれか一項に記載の使用のためのスルホニルウレア化合物、又は項目2から14のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【0026】
16.スルホニルウレア化合物が、ヌクレオチド除去修復(NER)の欠損を改善する、及び/又はNERを向上させる、項目1及び3から15のいずれか一項に記載の使用のためのスルホニルウレア化合物、又は項目2から15のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【0027】
17.NERが、転写共役修復(TC-NER)及び/又はゲノム全体の修復(GG-NER)である、項目16に記載の使用のためのスルホニルウレア化合物、又は項目16に記載の使用のための医薬組成物。
【0028】
18.UV誘導性DNA損傷に関連する疾患が、NERの欠損に関連する疾患である、項目1及び3から17のいずれか一項に記載の使用のためのスルホニルウレア化合物、又は項目2から17のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【0029】
19.NERの欠損に関連する疾患が、色素性乾皮症(XP)、コケイン症候群(CS)、紫外線高感受性症候群(UVSS)、硫黄欠乏性毛髪発育異常症(TTD)、又は脳・眼・顔・骨格症候群(COFS:cerebro-oculo-facioskeletal syndrome)である、項目18に記載の使用のためのスルホニルウレア化合物、又は項目18に記載の使用のための医薬組成物。
【0030】
20.スルホニルウレア化合物が、NERの欠損に関連する症状を改善する、項目1及び3から19のいずれか一項に記載の使用のためのスルホニルウレア化合物、又は項目2から19のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【0031】
21.NERの欠損に関連する症状が、UV感受性、UV刺激性、UV誘導性DNA損傷、UV誘導性細胞死、がんの発症、神経症状、早期の老化、及び/又は発達障害である、項目20に記載の使用のためのスルホニルウレア化合物、又は項目20に記載の使用のための医薬組成物。
【0032】
22.酵素活性MUTYHを発現する対象において、UV誘導性DNA損傷に関連する疾患を処置及び/又は改善する化合物を同定するためのスクリーニング方法であって、
(a)試験化合物を、
(a1)MUTYH、又は
(a2)MUTYHを発現する細胞
と接触させる工程、
(b)前記試験化合物の存在下及び不在下でMUTYHの発現及び/又は活性を測定する工程、及び
(c)酵素活性MUTYHを発現する対象において、UV誘導性DNA損傷に関連する疾患を処置及び/又は改善する化合物として、MUTYHの発現及び/又は活性を低下させる化合物を同定する工程、
並びに任意で、NERの欠損に関連する疾患を処置及び/又は改善する化合物として、前記化合物を同定する工程であり、前記疾患が、好ましくは色素性乾皮症(XP)、コケイン症候群(CS)、紫外線高感受性症候群(UVSS)、硫黄欠乏性毛髪発育異常症(TTD)、又は脳・眼・顔・骨格症候群(COFS)から選択される、工程
を含む、方法。
【0033】
23.工程(b)で測定された活性が、DNAグリコシラーゼ活性である、項目22に記載のスクリーニング方法。
【0034】
24.工程(b)で測定された量が、MUTYHポリペプチドの量である、項目22又は23に記載のスクリーニング方法。
【0035】
25.前記細胞が、真核細胞である、項目22から24のいずれか一項に記載のスクリーニング方法。
【0036】
26.加えて、
(b2)試験化合物を対照と比較する工程
を含む、項目22から25のいずれか一項に記載のスクリーニング方法。
【0037】
27.前記対照において、不活性試験化合物が使用され、前記不活性試験化合物が、MUTYHの発現及び/又は活性を低下させない化合物である、項目26に記載のスクリーニング方法。
【0038】
28.前記試験化合物が、
(i)スクリーニングライブラリーの小分子、又は
(ii)ファージディスプレイライブラリーのペプチド、抗体断片ライブラリーのペプチド、若しくはcDNAライブラリー由来のペプチド
である、項目22から27のいずれか一項に記載のスクリーニング方法。
【0039】
29.対象のUV誘導性DNA損傷に関連する疾患の処置期間中、治療成功をモニタリングするための方法であって、
(a)試験対象から得られるサンプル中のMUTYHの量及び/又は活性を測定する工程、
(b)前記量及び/又は活性を、少なくとも1つの参照対象のMUTYHの量及び/又は活性に対応する参照データと比較する工程、及び
(c)比較する工程(b)に基づいて、治療成功を予測する工程
を含む、方法。
【0040】
30.酵素活性MUTYHポリペプチドの量が測定される、項目29に記載のモニタリング方法。
【0041】
31.試験対象が、処置開始前に酵素活性MUTYHを発現している、項目29又は30に記載のモニタリング方法。
【0042】
32.処置開始前に試験対象から得られたサンプルにおいて、酵素活性MUTYHポリペプチドの量が、健康な参照対象から得られるサンプルでの酵素活性MUTYHポリペプチドの少なくとも80%の量である、項目30又は31に記載のモニタリング方法。
【0043】
33.試験対象が、NERの欠損に関連する疾患で薬物治療を受けているヒトである、項目29から32のいずれか一項に記載のモニタリング方法。
【0044】
34.参照データが、少なくとも1つの参照対象のサンプルのMUTYHの量及び/又は活性に対応する、項目29から33のいずれか一項に記載のモニタリング方法。
【0045】
35.少なくとも1つの参照対象が、NERの欠損に関連する疾患を有するが、この疾患で薬物治療を受けておらず、工程(c)において参照データと比較して試験対象のMUTYHの低い量及び/又は活性が、NERの欠損に関連する疾患の処置での治療成功を示す、項目29から34のいずれか一項に記載のモニタリング方法。
【0046】
36.前記MUTYHの低い量及び/又は活性が、試験対象のサンプルのMUTYHの量及び/又は活性が少なくとも1つの参照対象のサンプルのMUTYHの量及び/又は活性の0〜90%であることを意味する、項目35に記載のモニタリング方法。
【0047】
37.少なくとも1つの参照対象が、NERの欠損に関連する疾患を有し、この疾患で薬物治療を受けており、工程(c)において参照データと比較して試験対象のMUTYHの同じ又は類似の量及び/又は活性が、NERの欠損に関連する疾患の処置での治療成功を示す、項目29から34のいずれか一項に記載のモニタリング方法。
【0048】
38.少なくとも1つの参照対象が、NERの欠損に関連する疾患を有さず、工程(c)において参照データと比較して試験対象のMUTYHの同じ又は類似の量及び/又は活性が、NERの欠損に関連する疾患の処置での治療成功を示す、項目29から34のいずれか一項に記載のモニタリング方法。
【0049】
39.前記MUTYHの同じ又は類似の量及び/又は活性が、試験対象のサンプルのMUTYHの量及び/又は活性が少なくとも1つの参照対象のサンプルのMUTYHの量及び/又は活性の90〜110%であることを意味する、項目37又は38に記載のモニタリング方法。
【0050】
40.項目1から21のいずれか一項で定義されるスルホニルウレア化合物での処置に応答する対象を同定するための方法であって、
(a)試験対象から得られるサンプルのMUTYHの発現及び/又は活性を測定する工程、及び
(c)項目1から21のいずれか一項で定義されるスルホニルウレア化合物での処置への応答者として酵素活性MUTYHを含む対象を同定する工程
を含む、方法。
【0051】
41.対象が、UV誘導性DNA損傷に関連する疾患を有する、項目40に記載の方法。
【0052】
42.試験対象のサンプルの酵素活性MUTYHの量が、少なくとも健康な参照対象のサンプルの酵素活性MUTYHの量と同じく高い、項目40又は41に記載の方法。
【0053】
43.UV誘導性DNA損傷に関連する疾患を処置/改善するための方法であって、対象に、式I:
【0054】
【化2】
【0055】
(式中、
Xは、-NH2で任意に置換されたフェニレンであり、
R1は、-C1〜6アルキル、-C(O)-C1〜6アルキル、-(C1〜6アルキレン)-C(O)-NH-R3、及び-(C1〜6アルキレン)-NH-C(O)-R3から選択され、
R3は、独立して、1〜3個の窒素原子と任意でS及びOから選択される1又は2個の追加のヘテロ原子とを含む単環不飽和ヘテロシクリルから選択され、前記ヘテロシクリルは、任意で、オキソ(=O)、-ハロゲン、-C1〜6アルキル、及び-O-C1〜6アルキルから選択される1又は2個の置換基を有し、
R2は、C1〜6アルキルから独立して選択される1つ又は2つで任意に置換されたC5〜7シクロアルキルから選択される)
の構造を有するスルホニルウレア化合物を投与する工程を含み、処置される対象は、酵素活性mutY類似体(MUTYH)を発現する、方法。
【0056】
したがって、本発明は、UV誘導性DNA損傷に関連する疾患の処置及び/又は改善における使用のための、式I:
【0057】
【化3】
【0058】
(式中、
Xは、-NH2で任意に置換されたフェニレンであり、
R1は、-C1〜6アルキル、-C(O)-C1〜6アルキル、-(C1〜6アルキレン)-C(O)-NH-R3、及び-(C1〜6アルキレン)-NH-C(O)-R3から選択され、
R3は、独立して、1〜3個の窒素原子と任意でS及びOから選択される1又は2個の追加のヘテロ原子とを含む単環不飽和ヘテロシクリルから選択され、前記ヘテロシクリルは、任意で、オキソ(=O)、-ハロゲン、-C1〜6アルキル、及び-O-C1〜6アルキルから選択される1又は2個の置換基を有し、
R2は、C1〜6アルキルから独立して選択される1つ又は2つで任意に置換されたC5〜7シクロアルキルから選択される)
の構造を有するスルホニルウレア化合物であって、処置される対象は、酵素活性mutY類似体(MUTYH)を発現する、スルホニルウレア化合物に関する。
【0059】
本発明の好ましい実施形態において、式IのXは、未置換フェニレンである。
【0060】
本発明の別の好ましい実施形態において、式IのR1は、-メチル、-C(O)-メチル、-(C1〜3アルキレン)-C(O)-NH-R3、及び-(C1〜3アルキレン)-NH-C(O)-R3から選択される。
【0061】
好ましい実施形態において、本発明は、式Iのスルホニルウレア化合物に関し、R3は、独立して、1個の窒素原子を含有する5員又は6員単環不飽和ヘテロシクリルから選択され、前記ヘテロシクリルは、任意で、オキソ(=O)、-ハロゲン、-C1〜3アルキル、及び-O-メチルから選択される1又は2個の置換基を有する。
【0062】
本発明はまた、本発明による使用のためのスルホニルウレア化合物に関し、式IのR2は、メチルで任意に置換されたシクロヘキシルから選択される。
【0063】
本明細書で使用される場合、用語「アルキル」とは、直鎖状又は分岐鎖状でありうる1価飽和非環式(即ち、非環状)炭化水素基を指す。したがって、「アルキル」基は、任意の炭素-炭素二重結合又は任意の炭素-炭素三重結合を含まない。「C1〜6アルキル」とは、炭素数1〜6のアルキル基を意味する。好ましい例示的アルキル基として、メチル、エチル、プロピル(例えば、n-プロピル若しくはイソプロピル)、又はブチル(例えば、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル若しくはtert-ブチル)がある。別段の定義がない限り、用語「アルキル」とは、好ましくはC1〜3アルキル、より好ましくはメチル又はエチル、更により好ましくはメチルを指す。
【0064】
本明細書で使用される場合、用語「アルキレン」とは、アルカンジイル基、即ち、直鎖状又は分岐鎖状でありうる2価飽和非環式炭化水素基を指す。「C1〜6アルキレン」とは、炭素数1〜6のアルキレン基を意味する。好ましい例示的アルキレン基として、メチレン(-CH2-)、エチレン(例えば、-CH2-CH2-若しくは-CH(-CH3)-)、プロピレン(例えば、-CH2-CH2-CH2-、-CH(-CH2-CH3)-、-CH2-CH(-CH3)-若しくは-CH(-CH3)-CH2-)、又はブチレン(例えば、-CH2-CH2-CH2-CH2-)がある。別段の定義がない限り、用語「アルキレン」とは、好ましくはC1〜3アルキレン(特に直鎖状C1〜3アルキレンを含む)、より好ましくはメチレン又はエチレン、更により好ましくはエチレンを指す。
【0065】
本明細書で使用される場合、用語「不飽和ヘテロシクリル」とは環基を指し、前記環基は、O、S及びNから独立して選択される1つ又は複数(例えば、1つ、2つ、3つ、又は4つ)の環ヘテロ原子を含み、残りの環原子が炭素原子であり、1つ若しくは複数のS環原子(存在する場合)及び/又は1つ若しくは複数のN環原子(存在する場合)は、任意で酸化されてよく、1つ又は複数の炭素環原子は、任意で酸化されてよく(即ち、オキソ基を形成する)、更に前記環基は、部分的に不飽和(即ち、不飽和であるが芳香族ではない)、又は芳香族であってもよい。「単環不飽和ヘテロシクリル」の例として、ピロリル(例えば2Hピロリル)、ピロロン(例えば(5H)-ピロール-2-オン)、イミダゾイル、ピラゾイル、ピリジル(即ちピリジニル、例えば2ピリジル、3ピリジル又は4ピリジル)、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、フラザニルが挙げられる。好ましい例として、ピロロン及びピリジンが挙げられる。1〜3個の窒素原子と任意でS及びOから選択される1又は2個の追加のヘテロ原子とを含む単環不飽和ヘテロシクリルにおいて、N、S又はOではない残りの環員が炭素原子であることは理解されるべきである。炭素原子の数は、好ましくは3〜5である。同様に、1個の窒素原子を含有する5員又は6員単環不飽和ヘテロシクリルにおいて、窒素原子以外の環員は炭素原子である。この場合、炭素原子の数は、好ましくは4又は5である。
【0066】
本明細書で使用される場合、用語「シクロアルキル」とは、飽和炭化水素環基を指し、単環系、並びに架橋環系、スピロ環系、及び/又は縮合環系を含む(例えば、2つ又は3つの環から構成されてよく、例えば2つ又は3つの縮合環から構成される縮合環系であってもよい)。「シクロアルキル」とは、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、又はアダマンチルを指してもよい。別段の定義がない限り、「シクロアルキル」とは、好ましくはC3〜11シクロアルキルを指し、より好ましくはC3〜7シクロアルキルを指す。特に好ましい「シクロアルキル」とは、3〜7員環の単環飽和炭水化物環である。最も好ましくは、用語「シクロアルキル」とは、シクロヘキシル基を指す。
【0067】
本明細書で使用される場合、用語「ハロゲン」とは、フルオロ(-F)、クロロ(-Cl)、ブロモ(-Br)、又はヨード(-I)を指す。
【0068】
本明細書で使用される場合、用語「任意の」、「任意で」、及び「〜してもよい(may)」とは、示された特徴が存在してもよいが存在しなくてもよいことを意味する。用語「任意の」、「任意で」、及び「〜してもよい」が使用される場合は常に、本発明は、特に、両方の可能性、即ち、対応する特徴が存在するか、或いは、対応する特徴が存在しないかの両方の可能性に関する。例えば、表現「Xは、任意で、Yと置換する」(又は「Xは、Yと置換してもよい」)とは、XがYと置換するか、又は置換しないかのいずれかであることを意味する。同様に、組成物の成分が、「任意で」あることを示す場合、本発明は、特に、両方の可能性、即ち、(組成物に含有される)対応する成分が存在するか、又は対応する成分が組成物に存在しないかの両方の可能性に関する。
【0069】
ゆえに、本発明のスルホニルウレア化合物、特にアセトヘキサミド若しくはその誘導体、又はグリメピリド若しくはその誘導体が、短期的な用量応答アッセイ(図1D)及び長期的なコロニー形成アッセイ(図1E)の両方において、細胞のUV感受性を概ね野生型細胞のレベルまで改善することを、驚くべきことに、本発明者等が見出した。この点について、本発明者等は、本発明のスルホニルウレア化合物、特にアセトヘキサミド若しくはその誘導体、又はグリメピリド若しくはその誘導体でのインキュベーションが、UVにより誘導される最も主要な損傷部であるCPDのレベルを測定することにより、UV誘導性損傷部のクリアランスをもたらし、UV損傷部のおよそ75%を表すかどうかを判別した。NER熟達(proficient)予測野生型細胞が、UV照射の24時間後にCPDをクリアにすることができたのに対して、NER不足のXPAΔ/Δ細胞は、UV照射の24時間後にCPDのレベルの上昇を示し続けた。非常に驚くべき、全く意外なことに、本発明のスルホニルウレア化合物、特にアセトヘキサミド若しくはその誘導体、又はグリメピリド若しくはその誘導体は、XPAΔ/Δ細胞中のCPDのクリアランスをもたらしたが、但し、本発明の化合物、特にアセトヘキサミド若しくはその誘導体、又はグリメピリド若しくはその誘導体は、CPD損傷部をクリアにするNER不足の細胞の能力を向上させる。重要なことに、CPDの初期量は影響を受けなかった(図2C図2D)。HAP1細胞株でも同様の驚くべき観察がなされた(図7C図7D)。本発明のスルホニルウレア化合物、特にアセトヘキサミド若しくはその誘導体、又はグリメピリド若しくはその誘導体は、追加的又は代替的に、ピリミジン(6-4)ピリミドン光産物(6-4PP)をクリアにするNER不足の細胞の能力を向上させる。6-4PPSは、元の3'末端塩基のC4環外基が5'末端ピリミジンのC5位に移動する間に、5'末端のC6を3'末端ピリミジンのC4に結合させる共有結合を特徴とする損傷部である。
【0070】
この驚くべき知見により、限定されないが、色素性乾皮症(XP)、コケイン症候群(CS)、紫外線高感受性症候群(UVSS)、及び硫黄欠乏性毛髪発育異常症(TTD)を含む多くのNERに関連する疾患の処置に対する新しい治療手段が広がる。
【0071】
本発明の化合物、特にアセトヘキサミド若しくはその誘導体、又はグリメピリド若しくはその誘導体の作用様式に対する洞察を得るために、細胞周期プロファイルを、化合物への曝露時に評価した。細胞周期相の効果を除くと、処置時の野生型細胞又はΔXPA細胞の間に差異はなかった(図9A)。本発明の化合物、特にアセトヘキサミド若しくはその誘導体、又はグリメピリド若しくはその誘導体には、一般的な抗アポトーシス効果がある可能性を除外するために、野生型細胞を、DNA架橋剤マイトマイシンC(MMC)、リボヌクレオチドの細胞プールを枯渇することから複製ストレスを引き起こすヒドロキシウレア(HU)、及びアルキル化剤メチルメタンスルホナート(MMS)を含む、様々な異なるDNA損傷剤で処置した。本発明の化合物、特にアセトヘキサミド若しくはその誘導体、又はグリメピリド若しくはその誘導体で、MMC、HU及びMMSに曝露した後に細胞生存率は増加しなかった。ゆえに、本発明の化合物、特にアセトヘキサミド若しくはその誘導体、又はグリメピリド若しくはその誘導体は、DNAを損傷した後、抗アポトーシス剤として作用しない(図9B図9D)。更に、強力な抗酸化剤N-アセチルシステイン(NAC)は、アセトヘキサミドと比較してUV誘導感受性の改善において非常にわずかな効果しか示さず(図9E)、本発明の化合物、特にアセトヘキサミド若しくはその誘導体、又はグリメピリド若しくはその誘導体が、活性酸素種をクエンチするだけではその効果を発揮しないことを示唆した。
【0072】
本発明のスルホニルウレア化合物、特にアセトヘキサミド若しくはその誘導体、又はグリメピリド若しくはその誘導体が、NER不足の細胞でのCPDのクリアランスを向上させたので、CRISPR-Cas9を使用するDNA修復不足の20個の細胞株のパネルを生成し、全てのDNA修復経路を表した。Pol kappa(POLK)は、NERの修復合成工程での役割を有するので、損傷乗り越え修復(TLS)ポリメラーゼを表すように選択された。その後、これらの細胞株(並びに2つの野生型対照)を、本発明の化合物、特にアセトヘキサミド若しくはその誘導体、又はグリメピリド若しくはその誘導体で処置し、UV照射に曝露した(図3A)。「救済の百分率」は、未処理と比較して、アセトヘキサミドで処置し、次にUV照射した所与の細胞株の生存率の差異として定義された(図3A)。驚くべきことに、本発明のスルホニルウレア化合物、特にアセトヘキサミド若しくはその誘導体、又はグリメピリド若しくはその誘導体は、試験した全てのノックアウト細胞株(及び野生型細胞)でのUV誘導性損傷に対して同等の保護効果があったが、MUTYHを欠損する細胞には効果がなかった。これらの結果により、驚くべきことに、また意外なことに、本発明のスルホニルウレア化合物、例えばアセトヘキサミド若しくはその誘導体、又はグリメピリド若しくはその誘導体、並びにMUTYHが、関連する機能を有し、本発明の化合物には、UV誘導性DNA損傷に対して細胞を保護する一般的な効果があることを実証する。
【0073】
この際、MUTYHは、塩基除去修復(BER)経路において、8-オキソ-グアニンと誤って対になっているアデニンの除去を触媒するDNAグリコシラーゼである。ゆえに、MUTYHは、損傷した塩基を除去する代わりにDNA損傷部に対向して位置する損傷していない塩基を除去するため、通常ではないグリコシラーゼである[Markkanen等(2013)、Front Genet、4: 18頁]。MUTYHを喪失することで、本発明の化合物を使用する処置の効果と類似して、野生型細胞と比較してUV照射に対する耐性をもたらしたことが見出された。更に、アセトヘキサミドでのプレインキュベーションには、生存率に対して顕著な効果がなく(図3B)、アセトヘキサミド及びMUTYHの喪失には、機能的に関連する効果があることが更に示唆された。アセトヘキサミドがMUTYHを介して作用するかどうかを更に判別した。このようにして、MUTYHのタンパク質レベルの効果を分析した。驚くべきことに、野生型細胞の本発明の化合物を使用する処置がプロテアソーム依存性の様式でMUTYHのタンパク質レベルを低下させることが見出された(図4A図4B)。したがって、本発明のスルホニルウレア化合物、特にアセトヘキサミド若しくはその誘導体、又はグリメピリド若しくはその誘導体は、MUTYHの分解を促進することにより、それらの機能を発揮する。これの更なる裏付けとして、ダブルノックアウトΔXPA-MUTYHのアセトヘキサミド処置により、UV処置時の生存率が更に高まることはなかった(図4C)。
【0074】
ゆえに、驚くべきことに、また意外なことに、本発明のスルホニルウレア化合物、特にアセトヘキサミド若しくはその誘導体、又はグリメピリド若しくはその誘導体が、NER不足の細胞の感受性を改善し、MUTYHの分解を通してUV損傷部の修復を向上させることを、本発明者等が見出した。ゆえに、本発明は、UV誘導性DNA損傷に関連する疾患の処置及び/又は改善における使用のための、式Iの構造を有するスルホニルウレア化合物であって、処置される対象は、酵素活性mutY類似体(MUTYH)を発現する、スルホニルウレア化合物に関する。
【0075】
特定の実施形態において、本発明のスルホニルウレア化合物は、アセトヘキサミド又はその誘導体である。本発明の別の実施形態において、本発明のスルホニルウレア化合物は、グリメピリド又はその誘導体である。
【0076】
本発明において、処置される対象は、酵素活性mutY類似体(MUTYH)を発現する。本発明の一実施形態において、酵素活性MUTYHは、野生型MUTYH又は高い活性のMUTYHである。当業者は、MUTYH酵素を知っており、アミノ酸配列、並びにヌクレオチド配列及び/又はそのアイソフォームの配列がGenBank等の公知のデータベースに見出すことができることを十分に承知している。しかし、本発明の好ましい実施形態において、MUTYHは、MUTYHアイソフォームのアルファ-1、アルファ-2、アルファ-3、ベータ-1、ガンマ-2又はガンマ-3のアミノ酸配列を含むか、又はこれらからなるポリペプチドである。したがって、MUTYHは、好ましくは、配列番号1、2、3、4、5又は6のいずれか1つのアミノ酸配列を含むか、又はこれらからなるポリペプチドであり、ポリペプチドは、配列番号1、2、3、4、5又は6のいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%の同一性を有し、野生型MUTYHの活性に相当する活性を有する。in vivo環境において、MUTYHは、DNAグリコシラーゼ活性を有する。酵素活性MUTYHのDNAグリコシラーゼ活性は、酵素活性MUTYHであると考えられる純粋ポリペプチドをインキュベートすることにより、例えば、グアニン、8-オキソ-7,8-ジヒドログアニン又は2-ヒドロキシアデニン、CPD及び6-4PPを含むDNA損傷部を含有する放射性標識オリゴで、そのアミノ酸配列を決定し、配列番号1、2、3、4、5又は6のいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%の同一性を有することを見出すことにより、並びに相補性非損傷鎖における切断活性を測定することにより試験することができる。切断活性を測定する場合、試験したポリペプチドは、本発明の意味の範囲内の酵素活性MUTYHであると判別される。一実施形態において、酵素活性MUTYHは、配列番号1、2、3、4、5又は6のいずれか1つの酵素活性断片のアミノ酸配列を有し、好ましい断片は、配列番号1、2、3、4、5若しくは6のいずれか1つのアミノ酸125〜283を含むENDO3c、エンドヌクレアーゼIII断片、配列番号1、2、3、4、5若しくは6のいずれか1つのアミノ酸286〜306を含むドメインと結合するFeS、鉄硫黄、及び/又は配列番号1、2、3、4、5若しくは6のいずれか1つのアミノ酸365〜494を含むDNAグリコシラーゼドメインの1つ又は複数、好ましくは全てを含む。一実施形態において、酵素活性MUTYHポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号1、2、3、4、5又は6のいずれか1つの酵素活性断片のアミノ酸配列と少なくとも80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%の同一性を有し、好ましい断片は、配列番号1、2、3、4、5若しくは6のいずれか1つのアミノ酸125〜283を含むENDO3c、エンドヌクレアーゼIII断片、配列番号1、2、3、4、5若しくは6のいずれか1つのアミノ酸286〜306を含むドメインと結合するFeS、鉄硫黄、及び/又は配列番号1、2、3、4、5若しくは6のいずれか1つのアミノ酸365〜494を含むDNAグリコシラーゼドメインの1つ又は複数、好ましくは全てを含み、ポリペプチドは、DNAグリコシラーゼ活性を有する。好ましい実施形態において、酵素活性MUTYHのDNAグリコシラーゼ活性は、酵素活性MUTYHであると考えられる純粋ポリペプチドをインキュベートすることにより、例えば、グアニン、8-オキソ-7,8-ジヒドログアニン又は2-ヒドロキシアデニン、CPD及び6-4PPを含むDNA損傷部を含有する放射性標識オリゴで、そのアミノ酸配列を決定することにより、並びに相補性非損傷鎖における切断活性を測定することにより試験する。切断活性を測定する場合、試験したポリペプチドは、本発明の意味の範囲内の酵素活性MUTYHであると判別される。
【0077】
したがって、本明細書で使用される用語「酵素活性MUTYH」とは、ポリペプチドがDNAグリコシラーゼ活性を有し、グアニン、8-オキソ-7,8-ジヒドログアニン又は2-ヒドロキシアデニンと誤って対になっているアデニンの除去を触媒することを意味する。酵素活性MUTYHは、標的塩基及びそのデオキシリボース糖の間のN-グリコシド結合を切断し、脱プリン部位/脱ピリミジン(AP)部位を残す。AP部位のホスホジエステル結合5'は、次いで、APエンドヌクレアーゼ1(APE1)により切断され、下流のBER酵素により、修復処理が完了する。
【0078】
本発明の好ましい実施形態において、本明細書で使用される酵素活性MUTYHの活性又はその断片は、配列番号1のアミノ酸配列を含む、少なくとも80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99又は100%のポリペプチドの活性である。活性は、好ましくは、上述の試験を使用して測定する。しかし、当業者は、所与のポリペプチドがMUTYH活性を有するかどうかを判別する代替的な試験を設定することができる。
【0079】
本発明の一実施形態において、本発明のスルホニルウレア化合物を受ける対象から得られるサンプルにおいて、MUTYHの量を決定する。好ましい実施形態において、対象から得られるサンプルのMUTYHの発現量は、健康な参照対象から得られるサンプルの少なくとも80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99又は100%のMUTYHの発現量である。MUTYHの発現量を決定するために、その目的に好適であり、当業者に公知の任意の技術を利用することができる。例えば、免疫ブロッティング法、質量分析技術、酵素結合免疫吸着法(ELISA)、フローサイトメトリーに基づく方法(FACS)、免疫組織化学に基づく方法、又は免疫蛍光に基づく方法が利用できる。当業者は、上記の方法のいずれかを使用する実験の設定を、本発明のスルホニルウレア化合物を受ける対象から得られるサンプル及び/又は健康な参照対象から得られるサンプルのMUTYHの発現量を確実に決定するためにどのように選択するかを十分に承知している。本発明の好ましい実施形態において、本発明のスルホニルウレア化合物を受ける対象及び健康な参照対象から得られるサンプルは、皮膚サンプル又は血液サンプルである。
【0080】
上記の詳述の通り、野生型細胞の本発明の化合物を使用する処置がプロテアソーム依存性の様式でMUTYHのタンパク質レベルを低下させることが予想外に見出された(図4A図4B)。したがって、本発明の化合物、特にアセトヘキサミド若しくはその誘導体、又はグリメピリド若しくはその誘導体は、MUTYHの分解を促進することにより、それらの機能を発揮する。ゆえに、一実施形態において、本発明のスルホニルウレア化合物は、酵素活性MUTYHの量を減らし、並びに/又はMUTYHの酵素活性を阻害し、並びに/又はMUTYHの分解及び/若しくは枯渇をもたらす。本発明の一実施形態において、本発明のスルホニルウレア化合物は、直接的に、又はMUTYHの酵素活性の阻害を媒介する因子を介して間接的にMUTYHを標的とする。この点について、本発明者等は、本発明のスルホニルウレア化合物がNER不足の細胞の感受性を改善し、MUTYHの分解を通してUV損傷部の修復を向上させることを実証した。MUTYHがE3リガーゼMULEによりユビキチン化され、それによりそのタンパク質レベル及びクロマチンの後続の補給を減らすことが示されている[Dorn等(2014)、J Biol Chem、289: 7049-58頁]。したがって、MULEの喪失により、MUTYHタンパク質が蓄積することで、細胞をUV照射に対して感作する。本発明者等は、MULE不足の細胞(ΔMULE)がまた、UV照射に対して高い感受性を示したことを実証することができた(図4F)。まとめると、理論に束縛されることなく、スルホニルウレア化合物は、MULE及び続く分解によるMUTYHユビキチン化の増大をもたらすデユビキチン(deubiquitin)リガーゼを阻害することにより機能する。したがって、本発明の一実施形態において、本発明のスルホニルウレア化合物は、直接的に、又はMUTYHの酵素活性の阻害を媒介する因子を介して間接的にMUTYHを標的とするので、MUTYHの酵素活性の阻害を媒介する因子、及び/又はMUTYHのタンパク質レベルを調整することができる因子は、MULE、又はユビキチン化及び分解に対してMUTYHを標的とする他のユビキチンリガーゼの効果に対抗するデユビキチンリガーゼである。ゆえに、一実施形態において、本発明のスルホニルウレア化合物は、プロテアソーム依存性の様式で酵素活性MUTYHのタンパク質レベルを低下させる。
【0081】
一実施形態において、本発明のスルホニルウレア化合物は、UV誘導性DNA損傷の修復を向上させる。
【0082】
本明細書で使用される用語「UV誘導性DNA損傷」とは、UV光、例えば太陽が放射するUV光に起因するDNAの改変を指す。紫外線(UV)は、波長が10nm(30PHz)〜400nm(750THz)である電磁照射であり、その波長は可視光より短いが、X線より長い。UV照射は、太陽の総光出力の約10%をなし、ゆえに日光に存在する。UV照射はまた、電気アーク、並びに水銀灯、日焼け用ランプ及びブラックライト等の特殊な光でも生成される。その光子には原子をイオン化するエネルギーが欠如していることからUV照射は電離放射線とはみなせないので、長波長紫外線照射は、化学反応を起こすことができ、多くの物質を成長又は蛍光させる。その後、UVの生物学的効果は、ただの発熱効果より優れており、UV照射の実用化の多くは、有機分子の相互作用に由来する。DNAへのUV光の効果の1つに、UV光に曝露する前の状態と比較すると、DNAの損傷、即ち改変を引き起こすことがある。本発明において、UV誘導性DNA損傷は、シクロブタン型ピリミジン二量体(CPD)、6-4ピリミジン-ピリミドン光産物(6-4PP)、デュワー型の原子価異性体及び/又は芽胞光産物、並びに他の種類のUV損傷部である。シクロブタン型ピリミジン二量体(CPD)は、2つのピリミジン部分のC5〜C6二重結合間の付加環化により形成する。この反応により、2つの塩基を結合した4員シクロブタン環を形成する。CPDは、以下を含む隣接するピリミジン間で形成することができる:チミン-チミン(TT)、シトシン-チミン(CT)、チミン-シトシン(TC)、及びシトシン-シトシン。これらはまた、5-メチルシトシン(m5C)に対しても形成することができる。いくつかの配置は、シクロブタン部分に対して2つのピリミジン塩基により調整することができる。塩基がシクロブタン環として同じ鎖である場合、この幾何学的構造はシス立体異性体として知られている。これに対して、塩基がシクロブタン環の対向鎖である場合、トランス立体異性体として定義される。塩基間で形成される共有結合について、より複雑であることを観察することができる。1つのピリミジンのC5が他のピリミジンのC5に結合し、C6原子も並列構造で互いに結合する場合、これはシン配置として知られる一方、アンチ配置は、C5がC6と逆平行方向に結合する場合に起こる。CPDと異なる他の光産物は、5-(α-チミニル)-5,6-ジヒドロチミン(芽胞光産物)である。ピリミジン(6-4)ピリミドン光産物(6-4PP)は、元の3'末端塩基のC4環外基が5'末端ピリミジンのC5位に移動する間に、5'末端のC6を3'末端ピリミジンのC4に結合させる共有結合を特徴とする損傷部である。6-4PPはまた、デュワー型の原子価異性体(DEW)として知られる別の構造に変換することができ、ピリミジン原子のN3及びC6の間の共有結合を特徴とする。6-4PP及びDEWの両方は、5'末端がシトシンである場合、脱アミノ化することができる。CPD、6-4PP及びDEWは、最も頻繁なUV誘導性DNA損傷部を表すが、少数の他の光産物も存在する。二量化光産物は、アデニン及びチミン、若しくは2つのアデニン環、又は6-ヒドロキシ-5,6-ジヒドロシトシンの立体異性体(シトシン水和物として知られる)を含み、UVC照射に曝露するモデルシステムを特徴としている。好ましい実施形態において、UV損傷は、UVA照射、UVB照射及び/又はUVC照射に起因するものである。この点について、UVA照射は、315〜400nmの間の波長を有する照射に関し、UVB照射は、280〜315nmの間の波長を有する照射に関し、UVC照射は、100〜280nmの間の波長を有する照射に関する。
【0083】
発明者等の知見によれば、一実施形態において、本発明の化合物は、ヌクレオチド除去修復(NER)の欠損を改善する、及び/又はNERを向上させる。好ましい実施形態において、NERは、転写共役修復(TC-NER)及び/又はゲノム全体の修復(GG-NER)である。
【0084】
本明細書で使用される場合、用語ヌクレオチド除去修復(NER)とは、構造的に異なるDNA損傷部への対応能力を有するので、修復用の非常に汎用で柔軟な経路を指す。この経路は、通常はシクロブタン型ピリミジン二量体(CPD)の形態であるが、6-4ピリミジン-ピリミドン光産物(6-4PP)、デュワー型の原子価異性体、芽胞光産物の形態でもある紫外線(UV)照射誘導性損傷部、並びに鎖内架橋等の他の損傷部及びシクロプリン等のいくつかの他の嵩高な付加物を修復する。協働して、4つの主な基本工程:損傷の認識、損傷したDNA鎖の除去、DNA合成、及びDNAライゲーションを通して適切で正確なDNA損傷部の修復を確実にする、NER経路を含むおよそ30個のタンパク質がある。NERは、ゲノムでの損傷の認識及び位置に基づく、2つの主なサブ経路:ゲノム全体の修復(GG-NER)及び転写共役修復(TC-NER)からなり、これらは、活性遺伝子の転写鎖で作用し、DNA損傷を認識する際にRNAポリメラーゼIIを係合する。この点について、ゲノム全体の修復経路(GG-NER)は、抑制された非コード領域を含むゲノムを通してDNA損傷に対処する。多くの他のDNA修復経路のように、GG-NERは、DNA損傷の検出及び認識により開始する。前者は、ヘリックス歪みに対するゲノム全体をスキャンすることからなり、ヌクレオチドの配座及び構造を変化させる。GG-NERでの主なDNA損傷部検出器は、XPC、UV除去修復タンパク質RAD23類似体B(RAD23B)、及びセントリン2(CETN2)から主になる複合器である。XPCがGG-NERでのUV損傷部を検出する主なタンパク質であったとしても、CPDは、二重らせんの熱力学的二重鎖不安定化が穏やかであるため、XPCではほとんど認識しない。この種類の損傷部に対処するために、近年、XPCは、紫外線照射-DNA損傷結合タンパク質複合体(UV-DDBに関連するE3)を介してクロマチンに補給されることが示された。損傷をXPCにより認識された後、転写開始因子IIH(TFIIH)は補給されるが、これは、XPB及びXPDを含む10個のタンパク質サブユニットから構成される。その後、損傷は、損傷部から近い距離をあけて、それぞれ5'及び3'でXPF-ERCC1エンドヌクレアーゼ及びXPGエンドヌクレアーゼにより取り除かれ、22〜30ヌクレオチドの単鎖のギャップをもたらす。XPAは、汎用な機能であるためNERの中心的な成分の1つであり、DNA損傷の検証の実行において非常に重要であり、おそらくssDNAにおいて構造的に損傷したヌクレオチドを検出し、結合することも含む。更に、XPAは、ほとんどのNERタンパク質と相互作用する。次に、単鎖のギャップは、DNA Polδ、ε又はκを含むDNAポリメラーゼの活性を通して充填される。最終的に、GG-NERは、DNAリガーゼI又はXRCC1-DNAリガーゼ3を介してニックを閉じることにより完了する。転写共役修復経路(TC-NER)は、転写延長の間、転写鎖でのDNAの改変を検出する能力を有する。RNAポリメラーゼIIを失速させるか又は停止させることで、CSBがDNA障害部位に局在化する引き金となる。このタンパク質は、デユビキチンリガーゼUSP7の機能によりこの過程の間に高度に調整されており、これが、CSBをCSA依存性分解から保護する。更に、CSBは、CRL4CSA複合体の係合での重要な役割を果たしており、失速するRNAポリメラーゼの事象、並びにp300及びHMGN1を介して再構築するクロマチンを調整する。RNAポリメラーゼIIを損傷部位から除去した後、鎖を切断することができ、損傷部をGG-NERサブ経路において上述のようにクリアし、修復することができる。以下のTable 1(表1)は、NERに含まれる公知のタンパク質を列挙する。
【0085】
【表1A】
【0086】
【表1B】
【0087】
ノックアウト細胞株、特にXPA、XPC、ERCC8(CSA)、ERCC6(CSB)又はXPV(POLH)を含まない細胞株の使用に基づいて、本発明のスルホニルウレア化合物、特にアセトヘキサミド又はその誘導体には、NER不足の細胞株に対して一般的な保護効果があることを示した。
【0088】
したがって、本発明は、UV誘導性DNA損傷に関連する疾患の処置及び/又は改善における使用のための式Iの構造を有するスルホニルウレア化合物であって、処置される対象は、酵素活性mutY類似体(MUTYH)を発現し、UV誘導性DNA損傷に関連する疾患が、Table 1(表1)に示されるNER経路遺伝子の少なくとも1つにおいて少なくとも1つの突然変異を特徴とするNERの欠損に関連する疾患である、スルホニルウレア化合物を提供する。好ましい実施形態において、NERの欠損に関連する疾患は、色素性乾皮症(XP)、コケイン症候群(CS)、紫外線高感受性症候群(UVSS)、硫黄欠乏性毛髪発育異常症(TTD)、又は脳・眼・顔・骨格症候群(COFS)である。
【0089】
この際、用語「処置」、「処置する」等とは、所望の薬理学的効果及び/又は生理学的効果を得ることを一般的に意味するように、本明細書で使用される。その効果は、疾患若しくはその徴候の完全な若しくは部分的な予防という点で予防的でありえ、並びに/又は疾患及び/若しくは疾患に起因する有害な影響の部分的若しくは完全な治癒という点で治療的でありうる。本明細書で使用される用語「処置」とは、対象の疾患のいかなる処置も網羅し、以下を含む:(a)望まれない免疫反応に関連する疾患が、疾患に罹患しやすい可能性のある対象で発症することを予防する工程、(b)疾患を阻害する、即ち、その発症を停止する工程、(c)疾患を緩和する、即ち、疾患の後退をもたらす工程、又は(d)疾患に関連する症状を改善する工程。
【0090】
ゆえに、一実施形態において、本発明は、UV誘導性DNA損傷に関連する疾患の処置及び/又は改善における使用のための式Iの構造を有するスルホニルウレア化合物であって、処置される対象は、酵素活性mutY類似体(MUTYH)を発現し、UV誘導性DNA損傷に関連する疾患が、NERの欠損に関連する疾患であり、NERの欠損に関連する症状を改善する、スルホニルウレア化合物に関する。本発明の好ましい実施形態において、NERの欠損に関連する症状は、UV感受性、UV刺激性、UV誘導性DNA損傷、UV誘導性細胞死、がんの発症、神経症状、早期の老化、及び/又は発達障害である。この点について、がんの発症は、メラノサイト及びケラチノサイト悪性腫瘍、並びに/又は多発性基底細胞癌、浸潤性扁平細胞癌、及びメラノーマの発症に部分的に関連する。神経症状及び発達障害は、反射低下、進行性精神遅滞、感音性難聴、痙直、発作、髄鞘障害、小頭症、超低身長、並びに/又は重篤な神経発達の異常及び早期の老化に関連する多くの他の特徴を部分的に含む。早期の老化は、若年齢の患者が呈する促進老化の表現型に関する。
【0091】
本発明はまた、UV誘導性DNA損傷に関連する疾患の処置及び/又は改善における使用のための、本発明に従って使用するための本発明のスルホニルウレア化合物、及び任意で薬学的に許容される担体を含む医薬組成物であって、処置される対象は、酵素活性MUTYHを発現する、医薬組成物に関する。
【0092】
本発明の目的のために使用される「対象」とは、ヒト及び他の動物の両方、特に哺乳動物、並びに他の生物を含む。ゆえに、方法は、ヒトの治療及び獣医学的な用途の両方に適用可能である。好ましい実施形態において、患者又は対象は哺乳動物であり、最も好ましい実施形態において、患者又は対象はヒトである。
【0093】
表現「医薬組成物」とは、本発明の目的のために、治療有効量の活性成分、即ち、任意で薬学的に許容される担体又は希釈剤を伴う本発明のスルホニルウレア化合物を指すことを意味する。
【0094】
これは、ヒト又は非ヒト動物において、治癒的処置、状態の制御、改善、回復、又は疾患若しくは障害の予防に好適である組成物を包含する。ゆえに、ヒト医学又は獣医学の分野での使用のための医薬組成物を包含する。
【0095】
本発明の化合物及び様々な実施形態において本明細書に記載の化合物、並びに前記化合物を含有する医薬組成物は、体表に局所投与し、それゆえ局所投与に好適な形態で製剤化してもよく、又は経口投与してもよい。
【0096】
様々な実施形態において本明細書で提供される医薬組成物はまた、放出制御組成物、即ち、活性成分を投与後の一定期間にわたって放出する組成物として投与してもよい。例えば、本発明のスルホニルウレア化合物又は本発明の医薬組成物は、例えば5、6、7、8、9又は10時間の長期間にわたって、放出することができる。制御又は持続放出組成物として、親油性貯蔵物(例えば脂肪酸、ワックス、油)での製剤が挙げられる。別の実施形態において、組成物は、即時放出組成物、即ち、活性成分を投与直後に放出する組成物である。
【0097】
本発明に従う医薬組成物及び様々な実施形態において本明細書に記載の医薬組成物の好適な投与量は、対象の状態、年齢及び人種によって様々であり、当業者なら容易に決定することができる。好適な投与量は、投与される特定の化合物、投与の経路、処置する条件、並びに処置する患者を含む、各々の特別な場合での個別の要件に応じて調整される。しかし、化合物はまた、貯蔵調製物(インプラント、徐放性製剤等)として、毎週、毎月、又は更に長時間間隔で投与することができる。特定の調製物は、プラスター剤、パッチ剤等である。このような場合において、投与量は、1日量より高く、投与形態、体重、及び具体的な症状に適合させなければならない。適切な投与量は、従来のモデル試験、好ましくは動物モデルを行うことにより決定することができる。1日投与量は、単回用量又は分割用量で投与することができる。
【0098】
活性成分の効果的な用量は、処置される状態の性質、毒性に少なくとも依存し、化合物は、予防的に(少用量で)使用するか、又は活性状態、送達方法及び医薬製剤に対して使用し、従来の用量漸増試験を使用して臨床医により決定される。
【0099】
特定の実施形態において、様々な実施形態又は態様において本明細書に記載の本発明の医薬組成物は、乳児に対して長期間にわたって毎日投与する。規則的な適用/投与、特に毎日の適用には、疾患が発症するのを予防する有益で長期的な効果がある。
【0100】
薬学的に許容される担体は、当該技術分野において周知されている。即ち、当業者は、本発明の手段及び方法で使用するための許容される担体を容易に得ることができる。薬学的に許容される担体として、限定されないが、水、塩溶液、アルコール、アラビアガム、植物性油、ベンジルアルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、ラクトース、アミラーゼ又はデンプン等の炭水化物、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、粘性パラフィン、白色パラフィン、グリセロール、アルギネート、ヒアルロン酸、コラーゲン、香油、脂肪酸モノグリセリド及びジグリセリド、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、並びにポリビニルピロリドンが挙げられる。担体はまた、Remington: The Science and Practice of Pharmacy (Gennaro及びGennaro編、第20版、Lippincott Williams & Wilkins、2000年)、Theory and Practice of Industrial Pharmacy (Lachman等編、第3版、Lippincott Williams & Wilkins、1986年)、Encyclopedia of Pharmaceutical Technology (Swarbrick及びBoylan編、第2版、Marcel Dekker、2002年)に記載された物質のいずれかを含みうる。充填剤は、限定されないが、粉末セルロース、ソルビトール、マンニトール、様々な種類のラクトース、ホスフェート等から選択することができる。
【0101】
ポリマーは、限定されないが、セルロースの誘導体(例えば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、エチルセルロース)等の親水性又は疎水性ポリマー、ポリビニルピロリドン(例えば、ポビドン、クロスポビドン、コスポビドン)、ポリメタクリレート(例えば、Eudragit RS、RL)、親油性成分(例えば、グリセリルモノステアレート、グリセリルベヘネート)、及び例えばヒドロキシプロピルデンプン、ポリエチレンオキシド、カラギーナン等の様々な他の物質等から選択することができる。最も一般的には、ヒプロメロース等の好適な粘度の親水性膨張ポリマーは、好ましくは5%超の量で、より好ましくは8%超の量で使用される。流動促進剤は、限定されないが、コロイド状二酸化ケイ素、タルク、ステアリン酸マグネシウム、パルミチン酸、ステアリン酸、ステアロール、セタノール、ポリエチレングリコール等から選択することができる。滑沢剤は、限定されないが、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、タルク、水素化ヒマシ油、ポリエチレングリコール等から選択することができる。
【0102】
本発明の特定の実施形態において、医薬組成物は局所投与用であり、即ち、それは局所用組成物である。本発明に有用な局所用組成物は、皮膚への局所投与に好適な製剤を含む。一実施形態において、組成物は、本発明のスルホニルウレア化合物、及び薬学的に許容される局所用担体を含む。一実施形態において、薬学的に許容される局所用担体は、組成物の約50質量%〜約99.99質量%(例えば、組成物の約80質量%〜約95質量%)である。
【0103】
組成物は、限定されないが、ローション、クリーム、ゲル、スティック、スプレー、シェービングクリーム、軟膏、クレンジング液体洗浄剤及び固体バー、シャンプー、ペースト、パウダー、ムース、シェービングクリーム、拭き取りシート、パッチ、ネイルラッカー、創傷包帯、絆創膏、ヒドロゲル、フィルム、並びにコンシーラー、ファンデーション、マスカラ、及び口紅等の化粧品を含む、多種多様な製品タイプに加工することができる。これらの製品の種類は、限定されないが、溶液剤、乳剤(例えば、マイクロ乳剤及びナノ乳剤)、ゲル剤、固形剤、ミセル剤、並びにリポソームを含む、いくつかの種類の薬学的に許容される局所用担体を含むことができる。
【0104】
本発明に有用な局所用組成物は、溶液剤として製剤化することができる。溶液剤は、典型的には、水性溶媒(例えば、約50質量%〜約99.99質量%、例えば約90質量%〜約99質量%の薬学的に許容される水性溶媒)を含む。本発明に有用な局所用組成物は、緩和剤を含む溶液剤として製剤化することができる。このような組成物は、好ましくは、約2%〜約50%の緩和剤を含有する。本明細書で使用される場合、「緩和剤」とは、乾燥の予防又は軽減、並びに皮膚の保護のために使用する材料を指す。多種多様な有用な緩和剤は知られており、本明細書で使用することができる。the International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook、Wenninger及びMcEwen編、1656〜61頁、1626頁及び1654〜55頁(The Cosmetic, Toiletry, and Fragrance Assoc、Washington, D.C.、第7版、1997年)(以下、「ICIハンドブック」)は、有用な材料の多くの例を含有することを参照。
【0105】
ローションは、溶液剤のように加工することができる。ローションは、典型的には、約1%〜約20%(例えば、約5%〜約10%)の緩和剤、及び約50%〜約90%(例えば、約60%〜約80%)の水を含む。
【0106】
溶液剤から製剤化することができる別の種類の製品はクリームである。クリームは、典型的には、約5%〜約50%(例えば、約10%〜約20%)の緩和剤、及び約45%〜約85%(例えば、約50%〜約75%)の水を含む。
【0107】
溶液剤から製剤化することができる更に別の種類の製品は軟膏である。軟膏は、動物性若しくは植物性油、又は半固体炭化水素の単純塩基を含有することができる。軟膏は、約2%〜約10%の緩和剤、及び約0.1%〜約2%の増粘化剤を含むことができる。本明細書で有用な増粘化剤又は増粘剤についてのより完全な開示は、ICIハンドブック1693〜1697頁で見出すことができる。本発明に有用な局所用組成物はまた、乳剤として製剤化することもできる。担体が乳剤である場合、約1%〜約10%(例えば、約2%〜約5%)の担体は、乳化剤を含む。乳化剤は、非イオン性、アニオン性又はカチオン性でありうる。好適な乳化剤は、ICIハンドブック1673〜1686頁に開示されている。
【0108】
ローション及びクリームは、乳剤として製剤化することができる。典型的には、このようなローションは、0.5%〜約5%の乳化剤を含む。このようなクリームは、典型的には、約1%〜約20%(例えば、約5%〜約10%)の緩和剤、約20%〜約80%(例えば、約30%〜約70%)の水、及び約1%〜約10%(例えば、約2%〜約5%)の乳化剤を含む。水中油型及び油中水型の、ローション及びクリーム等の単相エマルション(single emulsion)のスキンケア調製物は、化粧品分野で周知されており、本発明に有用である。水中油中水型等の多相エマルション組成物もまた、本発明に有用である。一般に、このような単相又は多相エマルションは、必須成分として、水、緩和剤、及び乳化剤を含有する。
【0109】
本発明の局所用組成物はまた、ゲル(例えば、好適なゲル化剤を使用する水性ゲル)として製剤化することもできる。水性ゲルのために好適なゲル化剤として、限定されないが、天然ゴム、アクリル酸並びにアクリレートポリマー及びコポリマー、並びにセルロース誘導体(例えば、ヒドロキシメチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロース)が挙げられる。油(例えば鉱物油)のために好適なゲル化剤として、限定されないが、水素化ブチレン/エチレン/スチレンコポリマー、及び水素化エチレン/プロピレン/スチレンコポリマーが挙げられる。このようなゲルは、典型的には、約0.1質量%〜5質量%の間のこのようなゲル化剤を含む。
【0110】
本発明の局所用組成物はまた、固体製剤(例えば、ワックス系スティック、石鹸バー組成物、パウダー、又はパウダー含有拭き取りシート)に製剤化することができる。
【0111】
リポソーム製剤もまた、本発明の有用な組成物である。リポソームの例として、単層、多重層及び寡層薄膜のリポソームがあり、これは、リン脂質を含有してもよく、含有しなくてもよい。リポソームのサイズは、典型的には約50nm〜約10ミクロンであり、例えば約0.1〜約1ミクロンである。このような組成物は、カルボン酸をリン脂質、例えばジパルミトイルホスファチジルコリン、コレステロール及び水をまず組み合わせることにより調製することができる。リポソームを形成するための好適な組成物の表皮脂質により、リン脂質を置換してもよい。このような表皮脂質の例として、限定されないが、グリセリルモノエステル及びジエステル、ポリエチレン脂肪エーテル、並びにステロールが挙げられる。次いで、リポソーム調製物は、リポソーム製剤を生成するために上記の担体(例えば、溶液剤、ゲル、又は水中油乳剤に懸濁された)の1つに組み込むことができる。
【0112】
ミセル製剤もまた、本発明の有用な組成物である。このような組成物は、一本鎖界面活性剤及び脂質を使用して調製することができる。
【0113】
ミセルのサイズは、典型的には約1nm〜約100nmであり、例えば約10nm〜約50nmである。次いで、ミセル調製物は、ミセル製剤を生成するために上記の担体(例えば、ゲル又は溶液剤)の1つに組み込むことができる。
【0114】
本発明に有用な局所用組成物は、上述の成分に加えて、当該技術分野で確立されているレベルで、皮膚、髪及び爪で使用するための組成物中で従来使用される、多種多様な追加の油溶性材料及び/又は水溶性材料を含有することができる。
【0115】
有効量とは、所与の状態及び投与レジメンに治療的効果を与える量を指す。特に、「治療有効量」とは、疾患の症状を予防するか、緩和するか、又は改善するのに効果的である量を意味する。治療有効量の決定は、当業者の技能の範囲内にある。本発明に従う化合物の治療有効量又は投与量は、広い限度内で変動することができ、関連技術分野において公知の様式で決定することができる。投与量は、広い限度内で変動することができ、もちろん各々の特定の場合での個別の要件に応じて調整されなければならない。
【0116】
本発明のスルホニルウレア化合物は、例えば不活性希釈剤若しくは食用担体で経口投与のために製剤化することができるか、又は硬殻若しくは軟殻ゼラチンカプセルに封入されるか、錠剤に圧縮されるか、若しくは食事へ直接組み込むことができる。治療的経口投与のために、活性化合物に添加剤を組み込むことができ、摂取可能な錠剤、口腔錠剤、コーティングされた錠剤、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、分散体、懸濁剤、溶液剤、シロップ剤、ウェハ剤、貼付剤等の形態で使用されうる。
【0117】
錠剤、トローチ剤、丸剤、カプセル剤等はまた、以下のうち、1つ又は複数を含有することができる:トラガントゴム、アカシアゴム、コーンスターチ若しくはゼラチン等の結合剤、リン酸二カルシウム等の添加剤、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸等の崩壊化剤、ステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤、スクロース、ラクトース若しくはサッカリン等の甘味剤、又はペパーミント、冬緑油若しくはチェリー風味等の着香剤。単位剤形がカプセル剤である場合、上記の種類の材料に加えて、液体担体を含有することができる。様々な他の材料は、コーティングとして存在することができ、例えば錠剤、丸剤又はカプセル剤は、シェラック、砂糖、又はその両方でコーティングしてもよい。シロップ剤又はエリキシル剤は、活性化合物、甘味剤としてのスクロース、保存剤としてのメチル及びプロピルパラベン、色素剤、並びにチェリー又はオレンジ香料等の着香剤を含有することができる。薬学的に純粋であり、利用する量において実質的に非毒性であることは、剤形又は医薬組成物において、材料に望ましい可能性がある。
【0118】
いくつかの組成物又は剤形は、液体でありうるか、又は液体に分散する固相を含みうる。
【0119】
いくつかの実施形態において、経口剤形は、Prosolv等のケイ化微結晶性セルロースを含むことができる。例えば、約20%(wt/wt)〜約70%(wt/wt)、約10%(wt/wt)〜約20%(wt/wt)、約20%(wt/wt)〜約40%(wt/wt)、約25%(wt/wt)〜約30%(wt/wt)、約40%(wt/wt)〜約50%(wt/wt)、又は約45%(wt/wt)〜約50%(wt/wt)のケイ化微結晶性セルロースが、経口剤形又は経口剤形の単位に存在することができる。
【0120】
いくつかの実施形態において、経口剤形は、クロスポビドン等の架橋ポリビニルピロリドンを含むことができる。例えば、約1%(wt/wt)〜約10%(wt/wt)、約1%(wt/wt)〜約5%(wt/wt)、又は約1%(wt/wt)〜約3%(wt/wt)の架橋ポリビニルピロリドンが、経口剤形又は経口剤形の単位に存在することができる。
【0121】
いくつかの実施形態において、経口剤形は、Aerosil等のヒュームドシリカを含むことができる。例えば、約0.1%(wt/wt)〜約10%(wt/wt)、約0.1%(wt/wt)〜約1%(wt/wt)、又は約0.4%(wt/wt)〜約0.6%(wt/wt)のヒュームドシリカが、経口剤形又は経口剤形の単位に存在することができる。
【0122】
いくつかの実施形態において、経口剤形は、ステアリン酸マグネシウムを含むことができる。例えば、約0.1%(wt/wt)〜約10%(wt/wt)、約0.1%(wt/wt)〜約1%(wt/wt)、又は約0.4%(wt/wt)〜約0.6%(wt/wt)のステアリン酸マグネシウムが、経口剤形又は経口剤形の単位に存在することができる。
【0123】
本発明のスルホニルウレア化合物を含む経口剤形は、2単位以上の経口剤形を含む医薬製品に含まれうる。
【0124】
毎日使用するための経口剤形を含有する医薬製品は、毎月の供給用に28、29、30又は31単位の経口剤形を含有することができる。およそ6週間の毎日の供給には、40〜45単位の経口剤形を含有することができる。およそ3か月間の毎日の供給には、85〜95単位の経口剤形を含有することができる。およそ6か月間の毎日の供給には、170〜200単位の経口剤形を含有することができる。およそ1年間の毎日の供給には、350〜380単位の経口剤形を含有することができる。
【0125】
毎週使用するための経口剤形を含有する医薬製品は、毎月の供給用に4又は5単位の経口剤形を含有することができる。およそ2か月間の毎週の供給には、8又は9単位の経口剤形を含有することができる。およそ6週間の毎週の供給には、約6単位の経口剤形を含有することができる。およそ3か月間の毎週の供給には、12、13又は14単位の経口剤形を含有することができる。およそ6か月間の毎週の供給には、22〜30単位の経口剤形を含有することができる。およそ1年間の毎週の供給には、45〜60単位の経口剤形を含有することができる。
【0126】
医薬製品は、他の投与計画に対応することもある。例えば、医薬製品は、5〜10単位の経口剤形を含むことができ、経口剤形の各単位は、約40mg〜約150mgの本発明のスルホニルウレア化合物を含有する。いくつかの医薬製品は、1〜10単位の経口剤形を含むことができ、製品は、約200mg〜約2000mgの本発明のスルホニルウレア化合物を含有する。このような製品のために、経口剤形の各単位は、1か月の間、例えば月の初めに、1〜10日間又は5〜10日間、毎日摂取しうる。
【0127】
本発明のスルホニルウレア化合物を含むいくつかの経口剤形は、腸溶コーティング又はフィルムコーティングを有することができる。
【0128】
本発明はまた、酵素活性MUTYHを発現する対象において、UV誘導性DNA損傷に関連する疾患を処置及び/又は改善する化合物を同定するためのスクリーニング方法であって、試験化合物をMUTYH又はMUTYHを発現する細胞と接触させる工程、前記試験化合物の存在下及び不在下でMUTYHの発現及び/又は活性を測定する工程、及び酵素活性MUTYHを発現する対象において、UV誘導性DNA損傷に関連する疾患を処置及び/又は改善する化合物として、MUTYHの発現及び/又は活性を低下させる化合物を同定する工程を含む方法に関する。一実施形態において、MUTYHの活性は、DNAグリコシラーゼ活性である。好ましい実施形態において、酵素活性MUTYHのDNAグリコシラーゼ活性は、試験化合物の存在下、グアニン、8-オキソ-7,8-ジヒドログアニン又は2-ヒドロキシアデニン、CPD及び6-4PPを含むDNA損傷部を含有する放射性標識オリゴで、MUTYHをインキュベートすることにより、並びに相補性非損傷鎖における切断活性を測定することにより試験する。一実施形態において、本発明のスクリーニング方法で測定される量は、MUTYHポリペプチドの量である。この際、サンプル中のポリペプチドの量を決定するのに好適な任意の技術を利用することができる。好ましい方法として、免疫ブロッティング法、質量分析技術、酵素結合免疫吸着法(ELISA)、フローサイトメトリーに基づく方法(FACSに基づく方法)、免疫組織化学に基づく方法、又は免疫蛍光に基づく方法が挙げられる。しかし、当業者には、代替的な方法が存在し、それらを利用することもできることは周知のことである。
【0129】
本発明のスクリーニング方法で使用する細胞は、一実施形態において、真核細胞である。好ましい細胞として、対象由来の線維芽細胞、又は限定されないが、HAP1、HeLa、U2OS、HEK293Tを含むヒト一倍体細胞等のヒト細胞株、又はMUTYHが機能的に活性である他の細胞株がある。
【0130】
一実施形態において、本発明のスクリーニング方法は、試験化合物を対照と比較する工程を追加的に含む。対照を使用することにより、試験化合物が所望の目的に効果的であるかどうかの評価を簡略化することができる。例えば、一実施形態において、対照は、不活性試験化合物であり、前記不活性試験化合物は、MUTYHの発現及び/又は活性を低下させない化合物である。陰性対照は、ジメチルスルホキシド(DMSO)でありうる。陽性対照は、アセトヘキサミドでありうる。
【0131】
本明細書で提供されるスクリーニング方法の一実施形態において、試験化合物は、スクリーニングライブラリーの小分子、又はファージディスプレイライブラリーのペプチド、抗体断片ライブラリーのペプチド、若しくはcDNAライブラリー由来のペプチドである。
【0132】
MUTYHの発現及び/又は活性を低下させる本発明のスクリーニング方法において同定される試験化合物は、酵素活性MUTYHを発現する対象において、UV誘導性DNA損傷に関連する疾患を処置及び/又は改善する化合物として分類され、NERの欠損に関連する疾患は、色素性乾皮症(XP)、コケイン症候群(CS)、紫外線高感受性症候群(UVSS)、硫黄欠乏性毛髪発育異常症(TTD)、又は脳・眼・顔・骨格症候群(COFS)である。
【0133】
本発明はまた、対象のUV誘導性DNA損傷に関連する疾患の処置期間中、治療成功をモニタリングするための方法であって、試験対象から得られるサンプル中のMUTYHの量及び/又は活性を測定する工程、前記量及び/又は活性を、少なくとも1つの参照対象のMUTYHの量及び/又は活性に対応する参照データと比較する工程、及び前記量及び/又は活性と、少なくとも1つの参照対象のMUTYHの量及び/又は活性に対応する参照データとの比較に基づいて、治療成功を予測する工程を含む、方法に関する。本発明のモニタリング方法の好ましい実施形態において、測定されるMUTYHの量は、酵素活性MUTYHポリペプチドの量である。本発明のモニタリング方法の更に好ましい実施形態において、試験対象は、処置開始前に酵素活性MUTYHを発現している。
【0134】
本発明のモニタリング方法において、処置開始前に試験対象から得られたサンプルにおいて、酵素活性MUTYHポリペプチドの量が、健康な参照対象から得られるサンプルでの酵素活性MUTYHポリペプチドの少なくとも80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、又は100%の量であることが更に好ましい。
【0135】
本発明のモニタリング方法の一実施形態において、試験対象は、NERの欠損に関連する疾患で薬物治療を受けているヒトである。
【0136】
本発明のモニタリング方法において、参照データは、少なくとも1つの参照対象のサンプルのMUTYHの量及び/又は活性に対応する。本発明のモニタリング方法の好ましい実施形態において、少なくとも1つの参照対象は、NERの欠損に関連する疾患を有するが、この疾患で薬物治療を受けておらず、前記量及び/又は活性と少なくとも1つの参照対象のMUTYHの量及び/又は活性に対応する参照データとの比較に基づいて治療成功を予測する場合、参照データと比較して試験対象のMUTYHの低い量及び/又は活性は、NERの欠損に関連する疾患の処置での治療成功を示す。MUTYHの低い量及び/又は活性とは、一実施形態において、試験対象のサンプルのMUTYHの量及び/又は活性が、少なくとも1つの参照対象のサンプルのMUTYHの量及び/又は活性の0〜10、0〜20、0〜30、0〜40、0〜50、0〜60、0〜70、0〜80、又は0〜90%であることを意味する。好ましくは、少なくとも1つの参照対象は、NERの欠損に関連する疾患を有し、この疾患で薬物治療を受けており、前記量及び/又は活性と少なくとも1つの参照対象のMUTYHの量及び/又は活性に対応する参照データとの比較に基づいて治療成功を予測する場合、参照データと比較して試験対象のMUTYHの同じ又は類似の量及び/又は活性は、NERの欠損に関連する疾患の処置での治療成功を示す。
【0137】
代替的な実施形態において、少なくとも1つの参照対象は、NERの欠損に関連する疾患を有さず、前記量及び/又は活性と少なくとも1つの参照対象のMUTYHの量及び/又は活性に対応する参照データとの比較に基づいて治療成功を予測する場合、参照データと比較して試験対象のMUTYHの同じ又は類似の量及び/又は活性は、NERの欠損に関連する疾患の処置での治療成功を示す。
【0138】
MUTYHの同じ又は類似の量及び/又は活性とは、好ましくは、試験対象のサンプルのMUTYHの量及び/又は活性が、少なくとも1つの参照対象のサンプルのMUTYHの量及び/又は活性の10、20、30、40、50、60、70、80又は90〜100又は110%、好ましくは90〜110%であることを意味する
【0139】
本発明は、本発明に従うスルホニルウレア化合物での処置に応答する対象を同定するための方法であって、試験対象から得られるサンプルのMUTYHの発現及び/又は活性を測定する工程、及び本発明に従うスルホニルウレア化合物での処置への応答者として酵素活性MUTYHを含む対象を同定する工程を含む、方法に更に関する。好ましくは、対象は、本明細書で定義される疾患等のUV誘導性DNA損傷に関連する疾患を有する。更に、試験対象のサンプルの酵素活性MUTYHの量は、少なくとも健康な参照対象のサンプルの酵素活性MUTYHの量と同じく高いことが好ましい。
【0140】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術的及び学術的用語は、本発明が属する当業者により通常理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似するか又は等価である方法及び材料は、本発明の実施又は試験に使用することができるので、好適な方法及び材料は、以下に記載する。矛盾する場合は、定義を含む本明細書が優先する。加えて、材料、方法、及び実施例は、例示にすぎず、限定することを意図しない。
【0141】
本明細書に記載の一般的な方法及び技術は、当該技術分野において周知される従来の方法に従い、別段の記載がない限り、本明細書を通して引用され議論される様々な一般的でより具体的な参照文献に記載されるように実施することができる。例えば、Sambrook等、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.(1989)、及びAusubel等、Current Protocols in Molecular Biology、Greene Publishing Associates(1992)、及びHarlow and Lane Antibodies: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.(1990)を参照。
【0142】
本発明の態様を、図面及び前述の説明において、詳細に例示し、記載したが、このような例示及び記載は、例示又は模範であるが制限しないとみなすべきである。当業者が、下記の請求項の範囲及び趣旨内で変更及び修飾を行うことができることは理解されよう。特に、本発明は、上記及び下記の異なる実施形態の特徴の任意の組合せで、更なる実施形態を網羅する。本発明はまた、以前の説明又は以下の説明で記載されていない可能性があるが、個別に図に示される全ての更なる特徴も網羅する。また、図及び説明に記載されている実施形態の1つの代替例、並びにそれらの特徴の1つの代替例は、本発明の他の態様の主題では権利を主張しない。
【0143】
更に、特許請求の範囲において、単語「含む」は、他の要素又は工程を除外せず、不定冠詞「1つの(a)」又は「1つの(an)」は、複数を除外しない。単一のユニットは、特許請求の範囲に記載したいくつかの特徴の機能を満たすことができる。属性又は値に関する用語「本質的に」、「約」、「およそ」等はまた、それぞれ、正確な属性、又は正確な値も定義する。特許請求の範囲の任意の参照符号は、範囲を限定すると解釈すべきではない。
【0144】
本発明の態様は、本発明の実施形態及びその多くの利点をより理解するための、以下の例示的な非限定例として追加的に記載されている。以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を明らかにすることを含む。本発明で使用される代表的な技術に従って実施例に開示される技術が、本発明の実施において良好に機能し、ゆえに、その実施に対して好ましい様式を構成するとみなすことができることを、当業者は理解すべきである。しかし、当業者は、本開示を考慮して、多くの変更が、本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく、開示され、同類の又は類似する結果が得られる具体的な実施形態において行うことができることを理解すべきである。特許出願、製造業者のマニュアル、及び科学刊行物を含むいくつかの文献は、本明細書に引用される。これらの文献の開示は、本発明の特許性に関連がないとみなすと同時に、その全体を参照により本明細書に組み込まれる。より具体的には、全ての参照する文献は、あたかも、各個別の文献が参照により組み込まれるように具体的かつ個別に示したのと同程度に、参照により組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0145】
図1A】アセトヘキサミドは、NER不足の細胞のUV感受性を改善する。 ハイスループット薬物スクリーニングを実施するために使用する実験の設定の略図である。薬物は、5回の最大血漿濃度で使用した(CLOUD、特有の薬物のCeMMライブラリー)。
図1B】アセトヘキサミドは、NER不足の細胞のUV感受性を改善する。 細胞生存度に対してプロットした使用した薬物を表示するバブルプロットである。淡灰色のバブルは、野生型(WT)細胞を示し、濃灰色のバブルは、XPA不足の細胞(ΔXPA)を示す。バブルのサイズは有意性を示し、-log10(p値)として表示する。
図1C】アセトヘキサミドは、NER不足の細胞のUV感受性を改善する。 アセトヘキサミドの化学構造の図である。
図1D】アセトヘキサミドは、NER不足の細胞のUV感受性を改善する。 0.5mMのアセトヘキサミドで、又はそれなしで6時間処置し、その後、UV照射した、WT細胞及びΔXPA細胞の用量反応曲線のグラフである。CellTiter-Gloを使用して、生存率を3日後に評価した。DMSO対照の生データをアセトヘキサミド処置された細胞に正規化することにより得られる相対生存度を表示する。エラーバーは、SEM(n=3)を示す。
図1E】アセトヘキサミドは、NER不足の細胞のUV感受性を改善する。 (D)で示される同様の条件を使用するコロニー形成を示す図である。細胞を10日間培養し続け、次にUV照射し、更にそれらを固定し、染色した。
図2A】アセトヘキサミドは、NER不足の細胞においてシクロブタン型ピリミジン二量体のクリアランスを向上させる。 0.5mMのアセトヘキサミドで、又はそれなしで6時間処置し、その後、イルジンS処置した、WT細胞及びΔXPA細胞の用量反応曲線のグラフである。CellTiter-Gloを使用して、生存率を3日後に評価した。
図2B】アセトヘキサミドは、NER不足の細胞においてシクロブタン型ピリミジン二量体のクリアランスを向上させる。 0.5mMのアセトヘキサミドで、又はそれなしで6時間処置し、その後(示す通り)UV照射し、次いで10日間培養し続けた、WT線維芽細胞(BJ)及びXPA患者由来の線維芽細胞(XPAΔ/Δ)のコロニー形成を示す図である。
図2C】アセトヘキサミドは、NER不足の細胞においてシクロブタン型ピリミジン二量体のクリアランスを向上させる。 WT BJ及びXPAΔ/Δ線維芽細胞様細胞を、0.5mMのアセトヘキサミドで6時間処置し、15J/M2で照射し、次いで固定し、示された時間で、抗シクロブタン型ピリミジン二量体(CPD)抗体で免疫染色した。核DNAをDAPIで対比染色した。スケールバーは10μmである。
図2D】アセトヘキサミドは、NER不足の細胞においてシクロブタン型ピリミジン二量体のクリアランスを向上させる。 100超の細胞の、0.5mMのアセトヘキサミドの存在下又は不在下での、WT細胞及びXPAΔ/Δ細胞の核当たりのCPD強度の定量化を表示する散布図である。各列内の赤線は、メジアン強度を表す。A.u.=任意の単位。
図3A】MUTYHの喪失は、アセトヘキサミドの機能を模倣する。 未処理と比較して、アセトヘキサミドで処置し、次にUV照射した所与の細胞株の生存率の差異として定義された、救済の百分率を表示するバブルプロットである。淡灰色、濃灰色のバブルは、それぞれΔMUTYH細胞及びΔXPA細胞を強調し、黒色のバブルは、残りのノックアウト細胞株及びWT HAP1を示す。バブルのサイズは、-log10(p値)として有意性を示す。BER:塩基除去修復、NER:ヌクレオチド除去修復、DSBR:二本鎖切断修復、MMR:ミスマッチ修復、FA:ファンコーニ貧血、DR:直接的逆転、TLS:損傷乗り越え修復。
図3B】MUTYHの喪失は、アセトヘキサミドの機能を模倣する。 0.5mMのアセトヘキサミドで、又はそれなしで処置し、次にUV照射し、CellTiter-Gloを使用して3日後に評価した、WT細胞及びMUTYH不足の細胞(ΔMUTYH)の生存率のグラフである。MUTYHタンパク質の喪失は、抗MUTYH抗体を使用する免疫ブロッティング法により確認した。アクチンをローディング対照として使用した。
図3C】MUTYHの喪失は、アセトヘキサミドの機能を模倣する。 WT HAP1又はXPA不足の背景でのMUTYHの欠失は、抗MUTYH抗体を使用する免疫ブロッティング法により確認した。チューブリンをローディング対照として使用した。
図3D】MUTYHの喪失は、アセトヘキサミドの機能を模倣する。 示された用量又は未処理のままで、UVで照射した、WT細胞、ΔXPA細胞又はΔXPA-MUTYH細胞のクローン原性生存率の図である。細胞を固定し、10日後に染色した。
図4A】MUTYHの喪失、又はアセトヘキサミドの使用により、染色体の不安定性を蓄積させずに、NER不足の細胞中のシクロブタン型ピリミジン二量体のUV感受性及びクリアランス不良は修正される。 WT HAP1細胞を、0.5mMのアセトヘキサミドで、又はそれなしで6時間処置し、次いで示された時点に対して化合物非含有培地に放出し、抗MUTYH抗体で免疫ブロットした。アクチンをローディング対照として使用した。
図4B】MUTYHの喪失、又はアセトヘキサミドの使用により、染色体の不安定性を蓄積させずに、NER不足の細胞中のシクロブタン型ピリミジン二量体のUV感受性及びクリアランス不良は修正される。 WT HAP1細胞を、0.5mMのアセトヘキサミド単独、又は10μmのプロテアソーム阻害剤MG132のいずれかで6時間処置し、抗MUTYH抗体を使用する免疫ブロッティング法により分析した。
図4C】MUTYHの喪失、又はアセトヘキサミドの使用により、染色体の不安定性を蓄積させずに、NER不足の細胞中のシクロブタン型ピリミジン二量体のUV感受性及びクリアランス不良は修正される。 左パネル:0.5mMのアセトヘキサミドで、又はそれなしで6時間処置し、その後15J/M2のUVで照射し、次いで10日間培養し続けた、WT細胞、ΔXPA細胞又はΔXPA-MUTYH HAP1細胞のコロニー形成を示す図である。右パネル:肉眼で見えるコロニーを、クリスタルバイオレットで染色し、定量化した。
図4D】MUTYHの喪失、又はアセトヘキサミドの使用により、染色体の不安定性を蓄積させずに、NER不足の細胞中のシクロブタン型ピリミジン二量体のUV感受性及びクリアランス不良は修正される。 WT細胞、ΔXPA細胞又はΔXPA-MUTYH HAP1細胞を、15J/M2のUVで処理するか、又は未処理のままにして、次いで示された回復時間、培養し続け、ゲノムDNA内のCPDの存在に対するドットブロットにより分析した。
図4E】MUTYHの喪失、又はアセトヘキサミドの使用により、染色体の不安定性を蓄積させずに、NER不足の細胞中のシクロブタン型ピリミジン二量体のUV感受性及びクリアランス不良は修正される。 異なる用量のUV照射に曝露したΔXPA又はΔXPA-MUTYH HAP1の中期拡散ごとの染色体異常の数のグラフである。(E)内のデータは、平均±SEMとして表される。
図4F】MUTYHの喪失、又はアセトヘキサミドの使用により、染色体の不安定性を蓄積させずに、NER不足の細胞中のシクロブタン型ピリミジン二量体のUV感受性及びクリアランス不良は修正される。 異なる用量でUV照射に曝露し、CellTiter-Gloを使用して3日後に評価した、WT細胞及びΔMULE HAP1細胞の生存率のグラフである。
図5A】XPA不足のHAP1細胞の生成、及びハイスループット薬物スクリーニングの実験的最適化。 HAP1 WT細胞及びΔXPA細胞、並びに線維芽細胞様WT BJ細胞、及びXPA患者由来の線維芽細胞(XPAΔ/Δ)の全細胞抽出物の免疫ブロットの図である。チューブリンをローディング対照として使用した。
図5B】XPA不足のHAP1細胞の生成、及びハイスループット薬物スクリーニングの実験的最適化。 HAP1 WT細胞及びΔXPA細胞、並びにWT及び患者由来の線維芽細胞(XPAΔ/Δ)の生存率を、UV照射に続く3日、CellTiter-Gloを使用して評価した。
図5C】XPA不足のHAP1細胞の生成、及びハイスループット薬物スクリーニングの実験的最適化。 示す通り、異なる用量でUVで照射し、10日間培養し続けた、WT細胞及びΔXPA細胞のコロニー形成を示す図である。
図5D-1】XPA不足のHAP1細胞の生成、及びハイスループット薬物スクリーニングの実験的最適化。 WT細胞及びΔXPA細胞を、384ウェルプレートに播種し、示す通り、異なるUV用量で照射した。
図5D-2】XPA不足のHAP1細胞の生成、及びハイスループット薬物スクリーニングの実験的最適化。 WT細胞及びΔXPA細胞を、384ウェルプレートに播種し、示す通り、異なるUV用量で照射した。
図5D-3】XPA不足のHAP1細胞の生成、及びハイスループット薬物スクリーニングの実験的最適化。 WT細胞及びΔXPA細胞を、384ウェルプレートに播種し、示す通り、異なるUV用量で照射した。
図6A】NER不足の細胞のUV感受性を改善する薬剤に対するハイスループット薬物スクリーニング。 UV照射の後、又は未処理の条件下で、WT細胞及びΔXPA細胞で実施されるハイスループット薬物スクリーニングに対する、2つの生物学的複製の実験的再現性を決定するスピアマンの順位相関係数のグラフである。
図6B】NER不足の細胞のUV感受性を改善する薬剤に対するハイスループット薬物スクリーニング。 2,000J/M2のUVで照射した後、又は未処理でのDMSO対照で処理されたサンプル間の分離のグラフである。
図6C】NER不足の細胞のUV感受性を改善する薬剤に対するハイスループット薬物スクリーニング。 野生型(WT)細胞と比較して、ΔXPA細胞の細胞死が40%超改善したことを示した上位10個の薬物のグラフである。
図7A】アセトヘキサミドは、CPDのクリアランスを向上させるため、ΔXPA細胞のUV感受性及びイルジンS感受性を改善する。 0.5mMのアセトヘキサミドで、又はそれなしで示された時間処置し、その後、UV照射した、WT細胞及びΔXPA細胞の用量反応曲線のグラフである。CellTiter-Gloを使用して、生存率を3日後に評価した。DMSO対照の生データをアセトヘキサミド処置された細胞に正規化することにより得られる相対生存度を表示する。エラーバーは、SEM(n=3)を示す。
図7B】アセトヘキサミドは、CPDのクリアランスを向上させるため、ΔXPA細胞のUV感受性及びイルジンS感受性を改善する。 0.5mMのアセトヘキサミドで6時間処置するか、又は未処理のままにして、次いで示す通り、イルジンSに10日間曝露した、WT細胞及びΔXPA細胞のクローン原性生存率の図である。
図7C】アセトヘキサミドは、CPDのクリアランスを向上させるため、ΔXPA細胞のUV感受性及びイルジンS感受性を改善する。 0.5mMのアセトヘキサミドで、又はそれなしで示された時間処置し、その後15J/M2で照射し、ゲノムDNA内のCPDの存在に対するドットブロットにより分析した、WT細胞及びΔXPA細胞の図である。DNAをローディング対照としてメチレンブルー(MB)で対比染色した。
図7D】アセトヘキサミドは、CPDのクリアランスを向上させるため、ΔXPA細胞のUV感受性及びイルジンS感受性を改善する。 Cの強度の定量化のグラフである。
図8A】アセトヘキサミドは、細胞周期、アポトーシスを改変することにより、又は活性酸素種をクエンチすることにより機能しない。 WT細胞及びΔXPA細胞は、DMSO又は0.5mMのアセトヘキサミドのいずれかで6時間処置した。細胞周期プロファイルは、ヨウ化プロピジウム(PI)染色を使用して決定し、その後FACS分析した。
図8B】アセトヘキサミドは、細胞周期、アポトーシスを改変することにより、又は活性酸素種をクエンチすることにより機能しない。 DMSO又は0.5mMのアセトヘキサミドのいずれかで6時間処置し、その後、示されたDNA損傷剤に曝露したWT HAP1細胞の生存率のグラフである(MMC:マイトマイシンC)。CellTitre-Gloを使用して、生存率を3日後に評価した。
図8C】アセトヘキサミドは、細胞周期、アポトーシスを改変することにより、又は活性酸素種をクエンチすることにより機能しない。 DMSO又は0.5mMのアセトヘキサミドのいずれかで6時間処置し、その後、示されたDNA損傷剤に曝露したWT HAP1細胞の生存率のグラフである(HU:ヒドロキシルウレア)。CellTitre-Gloを使用して、生存率を3日後に評価した。
図8D】アセトヘキサミドは、細胞周期、アポトーシスを改変することにより、又は活性酸素種をクエンチすることにより機能しない。 DMSO又は0.5mMのアセトヘキサミドのいずれかで6時間処置し、その後、示されたDNA損傷剤に曝露したWT HAP1細胞の生存率のグラフである(MMS:メチルメタンスルホナート)。CellTitre-Gloを使用して、生存率を3日後に評価した。
図8E】アセトヘキサミドは、細胞周期、アポトーシスを改変することにより、又は活性酸素種をクエンチすることにより機能しない。 0.5mMのアセトヘキサミド、又は30μMのN-アセチルシステイン(NAC)で6時間処置し、その後30J/M2のUVに曝露した、WT細胞の細胞生存度のグラフである。
図9A】アセトヘキサミドは、UVの後、生存度を修正するSUR1阻害剤を介して機能しない。 RNAシークエンシングから、比較したHAP1 WT細胞でのSUR1及びGAPDHに対するFragments Per Kilobase Million(FPKM)のグラフである。
図9B】アセトヘキサミドは、UVの後、生存度を修正するSUR1阻害剤を介して機能しない。 0.5mMのアセトヘキサミドで、又はそれなしで6時間処置し、その後15J/M2のUVで照射し、示す通り、その後回復した、WT細胞及びΔXPA細胞での定量的逆転写PCRにより評価したSUR1転写のmRNA発現のグラフである。GAPDHの発現を参照として使用した。エラーバーは、SEM(n=3)を示す。
図10A】NER不足の細胞のUV感受性を修正するスルホニルウレア化合物の調査。 異なる濃度のアセトヘキサミド(aceto)で6時間処置し、その後10J/M2のUVに曝露した、ΔXPA細胞の細胞生存度のグラフである。
図10B】NER不足の細胞のUV感受性を修正するスルホニルウレア化合物の調査。 異なる濃度のグリクラジド(GLC)で6時間処置し、その後10J/M2のUVに曝露した、ΔXPA細胞の細胞生存度のグラフである。
図10C】NER不足の細胞のUV感受性を修正するスルホニルウレア化合物の調査。 異なる濃度のグリメピリド(GLM)で6時間処置し、その後10J/M2のUVに曝露した、ΔXPA細胞の細胞生存度のグラフである。
図10D】NER不足の細胞のUV感受性を修正するスルホニルウレア化合物の調査。 50μMのグリベンクラミドで、又はそれなしで6時間処置し、その後、UVに曝露した、WT細胞及びΔXPA細胞の生存率のグラフである。CellTitre-Gloを使用して、生存率を3日後に評価した。
図10E】NER不足の細胞のUV感受性を修正するスルホニルウレア化合物の調査。 10μMのアセトヘキサミドの異なる誘導体で6時間処置し、その後15J/M2のUVで照射した、ΔXPA細胞の細胞生存度のグラフである。
図11A】MUTYHの喪失は、シクロブタン型ピリミジン二量体のクリアランスを向上させ、XPA不足の細胞のUV感受性を修正する。 ΔXPA(mCherry+)及びΔXPA-MUTYH(GFP+)を均一に混合し、次いで異なる用量でUV照射し、その後10日後にFACS分析した。
図11B】MUTYHの喪失は、シクロブタン型ピリミジン二量体のクリアランスを向上させ、XPA不足の細胞のUV感受性を修正する。 15J/M2で処置し、その後、示された時間回復した、WT細胞、ΔMUTYH細胞、ΔXPA細胞、ΔXPA-MUTYH HAP1細胞の図である。ゲノムDNAは、ドットブロットによりCPDの存在に対して分析した。DNAをローディング対照としてメチレンブルー(MB)で対比染色した。
図12A】6-4PPのクリアランス。 WT細胞、ΔXPA細胞又はΔXPA-MUTYH HAP1細胞を、15J/M2のUVで処理するか、又は未処理のままにして、次いで示された回復時間、培養し続けた後、ゲノムDNAを抽出し、6-4ピリミジン-ピリミドン光産物(6-4PP)をドットブロットにより分析した。 総DNAをローディング対照としてメチレンブルー(MB)で対比染色した。
図12B】6-4PPのクリアランス。 Aの定量化のグラフである。 データにより、XPA不足の細胞でのMUTYH喪失が6-4PPのクリアランスを可能とし、ゆえに改善するDNA修復により6-4PPを修復する点でNER不足の細胞を検出することが示される。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0146】
化合物のスクリーニング
食品医薬品局(FDA)承認化合物の構造的に異なる全てを表している、およそ300個の化合物のインハウス薬物ライブラリーを使用して、潜在的な薬物の再利用を可能にした。まず、NER不足の細胞株を、TC-NER及びGG-NERの両方で機能するNERの中心的な成分の1つであるXPAでフレームシフト突然変異を、一倍体細胞株HAP1(ΔXPAと示す)に近いヒトでCRISPR-Cas9を利用して行うことにより生成した(図5A)。予想した通り、XPA患者由来の線維芽細胞株(XPAΔ/Δと示す)と同様に、ΔXPA細胞は、UV照射に対して高い感受性を示した(図5B図5C)。次に、ΔXPA細胞及び野生型細胞を、薬物ライブラリーに24時間曝露し(各薬物は、5回の最大血漿濃度で使用した)、その後、(ΔXPA細胞を死滅させるが野生型細胞は死滅しないように選択された用量で)UVに曝露した(図1A及び図5D)。化合物を、野生型細胞と比較して、ΔXPA細胞の細胞生存率を改善する効率に基づいてスコア付けした(図1B)。ΔXPA細胞及び野生型細胞の間に十分な分離を有する、生物学的複製間で0.9超の係数を得た(図6A図6B)。
【0147】
野生型細胞と比較して、ΔXPA細胞の生存率を40%超修正したことを示した10個の化合物を同定した(図6C)。10個の化合物のうち8個を、UV誘導性DNA損傷を妨害し、ゆえに細胞生存率を間接的に増大させる能力により、更なる分析から除外した。残る2つの化合物の1つは、スルホニルウレア薬の第一生成物に属する抗糖尿病薬である、アセトヘキサミドだった(図1C)[Joseph等(2010)、J Chromatogr B Analyt Technol Biomed Life Sci、878: 2775〜81頁]。
【実施例2】
【0148】
アセトヘキサミド、及び更なるスルホニルウレア化合物の機能分析
アセトヘキサミドは、短期的な用量応答アッセイ(図1D)及び長期的なコロニー形成アッセイ(図1E)の両方において、ΔXPA細胞のUV感受性を、ほぼ野生型細胞のレベルまで改善した。アセトヘキサミドがまた、DNA架橋損傷の他の源によって細胞生存率を修正するかどうかを判別するために、本発明者等は、野生型細胞及びΔXPA細胞を、NERにより修復される嵩高な付加物を誘導する遺伝毒性であるイルジンSに曝露させた(図2A及び図7B)。本発明者等は、実際に、アセトヘキサミドが、イルジンS処置の後、細胞生存率を増大させたことを観察した。本発明者等はまた、アセトヘキサミドが、XPAΔ/Δ患者由来の細胞のUV誘導性細胞死を改善し(図2B)、救済方法が細胞型特異的ではないことを示すことを確認した。次に、本発明者等は、アセトヘキサミドでのインキュベーションが、UVにより誘導される最も主要な損傷部であるCPDのレベルを測定することにより、UV誘導性損傷部のクリアランスをもたらし、UV損傷部のおよそ75%を表すかどうかを判別した。NER熟達予測野生型細胞が、UV照射の24時間後にCPDをクリアにすることができたのに対して、NER不足のXPAΔ/Δ細胞は、UV照射の24時間後にCPDのレベルの上昇を示し続けた。しかし、際立ったことに、アセトヘキサミドは、XPAΔ/Δ細胞中のCPDのクリアランスをもたらしたが、これは、アセトヘキサミドがCPD損傷部をクリアにするNER不足の細胞の能力を向上させることを示唆する。重要なことに、アセトヘキサミドは、CPDの初期量に影響を受けなかった(図2C図2D)。HAP1細胞株でも同様の観察がなされた(図7C図7D)。
【0149】
次に、グリクラジド(GLC)、グリメピリド(GLM)、及びグリベンクラミドを含む、ATP依存性K+チャネルを介するインスリン放出を刺激する3つの追加のスルホニルウレアを試験した。グリメピリドのみが、UVに対してΔXPA細胞の保護効果を示した(図10A図10D)。スルホニルウレアの2つの追加の誘導体は、μM量の範囲内で強力な効果を示したが(図10E)、本発明は、アセトヘキサミドの具体的な構造に限定されない。
【実施例3】
【0150】
アセトヘキサミドの作用様式
アセトヘキサミドの作用様式への洞察を得るために、化合物への曝露時の細胞周期を評価した。細胞周期相の効果を除くと、アセトヘキサミド処置時の野生型細胞又はΔXPA細胞の間に差異はなかった(図8A)。アセトヘキサミドには一般的な抗アポトーシス効果がある可能性を除外するために、野生型細胞を、DNA架橋剤マイトマイシンC(MMC)、リボヌクレオチドの細胞プールを枯渇することから複製ストレスを引き起こすヒドロキシウレア(HU)、及びアルキル化剤メチルメタンスルホナート(MMS)を含む、様々な異なるDNA損傷剤で処置した。アセトヘキサミドは、MMC、HU及びMMSへの曝露に続いて細胞生存率を高めない。ゆえに、アセトヘキサミドは、DNA損傷に続く抗アポトーシス剤として作用しない(図8B図8D)。更に、強力な抗酸化剤N-アセチルシステイン(NAC)は、アセトヘキサミドと比較してUV誘導感受性の改善において非常にわずかな効果しか示さず(図8E)、アセトヘキサミドが、活性酸素種をクエンチするだけではその効果を発揮しないことを示唆した。
【0151】
アセトヘキサミドを含むスルホニルウレアは、ATP感受性カリウムチャネルを標的にし、インスリン分泌の調整に顕著な役割を果たす。スルホニルウレアは、(スルホニルウレア受容体1に対して)SUR1へのそれらの結合を通して、Kir6.2サブユニットの内向きレクチファイヤを妨害し、膜の脱分極、Ca2+流入、及び続くインスリン放出をもたらすことが報告されている。[Proks等(2002)、Diabetes、51補遺3: S368〜76頁][Burke等(2008)、Circ Res、102: 164〜76頁]。しかし、RNAシークエンシング分析を介する発現プロファイリングでは、ΔXPA細胞でのいかなるSUR1転写も検出しなかった(図9A)。更に、SUR1は、UV照射又はアセトヘキサミド処置に続いてΔXPA細胞を発現しなかった(図9B)。これらのデータに基づき、アセトヘキサミドの標的としてのSUR1は、本文脈において無視した。
【0152】
アセトヘキサミドがNER不足の細胞でのCPDのクリアランスを向上させたので、その作用様式が1つの公知のDNA除去修復経路を介していたことが推測された。ゆえに、DNA修復不足の20個の細胞株のパネルは、CRISPR-Cas9を使用して調製し、全てのDNA修復経路を表した。Pol kappa(POLK)は、NERの修復合成工程での役割を有するので、損傷乗り越え修復(TLS)ポリメラーゼを表すように選択された。その後、これらの細胞株(並びに2つの野生型対照)は、アセトヘキサミドで処置し、UV照射に曝露させた(図3A)。「救済の百分率」は、未処理と比較して、アセトヘキサミドで処置し、その後UV照射した所与の細胞株の生存率の差異として定義された(図3A)。アセトヘキサミドは、試験した全てのノックアウト細胞株(及び野生型細胞)でのUV誘導性損傷に対して同等の保護効果があったが、MUTYHを欠損する細胞には効果がなかった。これは、アセトヘキサミド及びMUTYHが関連する機能を有することを示唆した。アセトヘキサミドには、UV誘導性DNA損傷に対して細胞を保護する一般的な効果があるという更なる証拠も提供した。
【実施例4】
【0153】
MUTYHの役割
MUTYHは、塩基除去修復(BER)経路において、8-オキソ-グアニンと誤って対になっているアデニンの除去を触媒するDNAグリコシラーゼである。ゆえに、MUTYHは、損傷した塩基を除去する代わりにDNA損傷部に対向して位置する損傷していない塩基を除去するため、通常ではないグリコシラーゼである[Markkanen等(2013)、Front Genet、4: 18頁]。MUTYHを喪失することで、アセトヘキサミド処置の効果と類似して、野生型細胞と比較してUV照射に対する耐性をもたらしたことが、驚くべきことに見出された。更に、アセトヘキサミドでのプレインキュベーションには、生存率に対して顕著な効果がなく(図3B)、アセトヘキサミド及びMUTYHの喪失には、機能的に関連する効果があることが更に示唆された。より直接的にNER中のMUTYHの役割を試験するために、MUTYH欠失が、CRISPR-Cas9を使用してダブルノックアウト(ΔXPA-MUTYH)を生成することにより、ΔXPA細胞の感受性を改善できるかどうかを分析した(図3C)。ΔXPA細胞と比較して、UV曝露に続くΔXPA-MUTYH細胞の細胞生存率が向上したことが観察された(図3D)。この知見を確認するために、ΔXPA細胞をmCherryで標識し、ΔXPA-MUTYH細胞をGFPで標識した。次に、これらの細胞株を等量で混合し、次いで異なる用量でUVで照射した。培養10日後、細胞をフローサイトメトリーで分析した。ΔXPA-mCherry細胞はもはや検出できなかったが、ΔXPA-MUTYH-GFP細胞は存在し、MUTYHを喪失することで、UVに対する細胞耐性をもたらしたことを示した(図11A)。
【0154】
ゆえに、アセトヘキサミド及びMUTYHの喪失の両方が、野生型細胞及びNER不足の細胞の両方をUV誘導性細胞死から防御することが示された。MUTYHを介してアセトヘキサミドが働くかどうかを判別するために、MUTYHのタンパク質レベルでのその効果を最初に分析した。野生型細胞のアセトヘキサミド処置がプロテアソーム依存性の様式でMUTYHのタンパク質レベルを低下させることが見出された(図4A図4B)。これは、アセトヘキサミドが実際に、MUTYHの分解を促進することによりその機能を発揮することを示唆した。これの更なる裏付けとして、ダブルノックアウトΔXPA-MUTYHのアセトヘキサミド処置により、UV処置時の生存率が更に高まることはなかった(図4C)。重要なことに、ΔXPA-MUTYH細胞は、UV照射の24時間後、ΔXPA細胞と比較してより効率的にCPDをクリアにし(図4D及び図11B)、UV活性に続いて観察されたΔXPA細胞の毒性がMUTYH依存性であることを示唆した。
【0155】
次に、ΔXPA-MUTYH細胞でのUV感受性の改善に、染色体の不安定性への効果があるかどうかを判別した。ゆえに、ΔXPA細胞の染色体異常を、UV曝露に続いて、ΔXPA-MUTYH細胞と比較した。ΔXPA-MUTYH細胞は、ΔXPA細胞と比較して、UV照射後の染色体異常が著しく軽減することを示した(図4E)。まとめると、MUTYH喪失には、UV照射に続くΔXPA細胞でのゲノム安定性に対して保護効果があった。
【0156】
集合的に、抗糖尿病薬であるアセトヘキサミドは、NER不足の細胞の感受性を改善することができ、MUTYHの分解を通してUV損傷部の修復を向上させることができる。MUTYHがE3リガーゼMULEによりユビキチン化され、それによりそのタンパク質レベル及びクロマチンの後続の補給を減らすことが示されている[Dorn等(2014)、J Biol Chem、289: 7049-58頁]。したがって、MULEの喪失により、MUTYHタンパク質が蓄積することで、細胞をUV照射に対して感作する。実際に、MULE不足の細胞(ΔMULE)はまた、UV照射に高い感受性を示した(図4F)。まとめると、データは、アセトヘキサミドが、MULE及び続く分解によるMUTYHユビキチン化の増大をもたらすデユビキチンリガーゼを阻害することにより機能することを示す。
【実施例5】
【0157】
スルホニルウレア化合物の使用
アセトヘキサミド等のスルホニルウレア化合物は、MUTYH分解を介して、UV誘導性DNA損傷を除去するためのNER非依存性機構を明らかにする。この経路は、CPDのクリアランスをもたらし、ゆえに、V曝露に続くNER不足の細胞の細胞生存率を改善する。これは、染色体の高い不安定性を伴わずに起こる。MUTYHは、グアニン、8-オキソ-7,8-ジヒドログアニン又は2-ヒドロキシアデニンと誤って対になっているアデニン塩基を除去するDNAグリコシラーゼであり、以前はUV誘導性損傷部の除去に関連していなかった。
【0158】
2型糖尿病を処置するために既に臨床的に承認されているアセトヘキサミド、その誘導体の1つ、又はMUTYH阻害剤は、NERでの欠損に関連する症状を改善するために使用することができる。これにより、多くのNERに関連する疾患の処置に対する新しい治療手段が広がる。この手段は、XP、CS、UVSS、及びTTDを含む、UV感受性を特徴とする症状の範囲に有益である。脳又は皮膚で特に機能するか、又は局所的に投与される、本明細書で提供されるスルホニルウレア化合物により、XP、CS、UVSS、及びTTD等NERが欠損する疾患を改善する治療機会が提供される。
【実施例6】
【0159】
材料及び方法
細胞培養及び試薬
HAP1細胞を、Iscoveの改変タルベッコの培地(Gibco)で培養した。XPA患者由来の線維芽細胞株を、Coriell Biorepository社(GM04429)から購入し、BJ細胞のようにMEM(Gibco)で培養した。全細胞を、10%のウシ胎児血清(FBS)(Thermo Fisher Scientific社)、及び1%のペニシリン-ストレプトマイシン(Sigma-Aldrich社)の存在下、37℃で、5%のCO2及び3%のO2で成長させた。イルジンS、ヒドロキシウレア(HU)、マイトマイシンC(MMC)、メチルメタンスルホナート(MMS)、アセトヘキサミド、N-アセチルシステイン、グリクラジド、グリメピリド、グリベンクラミド、L100889、PH003986、CDS021537、及びPH000650は、Sigma-Aldrich社から購入した。
【0160】
CRISPR-Cas9編集された細胞株の生成
DNA修復ノックアウト細胞株を、Horizon Genomics社と連携して生成した。簡単に言えば、HAP1細胞を、Xfect(クロンテック)を使用して、Cas9を発現するプラスミド(Zhang lab社製のpX165)、ガイドRNA、及びブラスチシジン耐性遺伝子でトランスフェクトした。次いで、細胞を24時間、20μg/mlのブラスチシジンで処置して、非トランスフェクト細胞を除去した。細胞を5〜7日間、抗生物質選択から回復した後、クローン細胞株を限界希釈により単離した。その後、ダイレクトPCR-細胞キット(PeqLab社)を使用して、ゲノムDNAを単離し、gRNAで標的された領域をPCR増幅し、Sangerシークエンシングで分析した。最終的に、フレームシフト突然変異でのクローンを更なる分析として選択した。
【0161】
ハイスループット薬物スクリーニング
1ウェル当たり50nLの化合物を、音響伝達(Labcyte Echo 520)を使用して、DMSOストックプレートから384ウェルプレート(Corning 3712)に移した。野生型細胞及びXPA不足のHAP1細胞を(1,000細胞の量で)、化合物含有プレート中の50μlの培地に播種した。24時間後、細胞を2,000J/M2でUV照射した。3日後、Cell Titer-Glo(Promega社)を使用して、細胞生存度を決定した。スクリーニングは2回行った。データ解析のために、対照の百分率を計算し、DMSO照射されたサンプルの信号を使用して、0%に値を設定し、DMSO照射されていないサンプルを使用して、100%に値を設定した。ヒットは、それらが生存率を40%超修正するかどうかに基づいて定義され、信号は、DMSO処置条件から3標準偏差であった。
【0162】
核型分析
中期の調製を、標準方法により行った。簡単に言えば、分裂細胞を、30〜60分間、0.1μg/mlのコルセミド(Gibco、Thermo Fisher社)を加えることにより中期にブロッキングした。その後、細胞を20分間、低張液で処置し、メタノール/酢酸(酢酸1に対してメタノール3)を使用して固定した。次いで、細胞をスライドに滴下し、42℃で約20分間乾燥し、次に60℃で終夜インキュベートした。染色体を、2.5%のトリプシン/NaCl溶液で30分間消化し、0.9%の氷冷NaCl溶液で約5秒インキュベートした。最終的に、スライドを緩衝Giemsa染色液で3分間染色した。「MetaSystems Ikaros」ソフトウェア、バージョン5.3.18を使用して、核型分析を行った。
【0163】
用量応答及びUV処置
マイトマイシンC(MMC)、メチルメタンスルホナート(MMS)、ヒドロキシウレア(HU)、ネオカルチノスタチン(NCS)、及びイルジンSを含むDNA損傷剤に対する用量応答曲線を、1,000細胞/ウェルで3回播種した96ウェルプレートで行った。次の日、異なる濃度の化合物を加えて、3日後、Cell Titer-Glo(Promega社)を使用して、細胞生存度を評価した。
【0164】
UV照射のために、細胞をPBSで洗浄し、トリプシン処理し、計数し、同数で分配し、次いで示す通り、異なる用量でのUVで照射した。最終的に、1,000細胞を、96ウェルプレートに再分配した。72時間後、Cell Titer-Glo(Promega社)を使用して、生存率を測定した。UVP CX-2000装置(254nm、Fisher Scientific社)を使用して、細胞をUVCで照射した。
【0165】
コロニー形成アッセイ
薬物の前処置で、又はそれなしで、細胞を異なる用量でのUVで処置し、次いで、可視コロニーが形成されるまで2週間、1,000細胞/ウェルの濃度で2回、6ウェルプレートに播種した。次いで、培地を除去し、コロニーをPBSで洗浄し、3.7%のパラホルムアルデヒド(PFA)を使用して1時間固定した。その後、PFAを除去し、コロニーを5%のエタノール溶液中の0.1%のクリスタルバイオレットで1時間染色した。次に、染色液を除去し、ウェルを洗浄し、画像化し、CellProfilerを使用して定量化した。
【0166】
細胞周期分析
示す通り、DMSO又はアセトヘキサミドのいずれかで、細胞を処置した。ヨウ化プロピジウム(PI)染色を使用して、細胞周期の段階を同定した。簡単に言えば、細胞を採取し、PBS中に再懸濁し、冷70%エタノールで終夜固定した。遠心分離した後、エタノールを除去し、細胞を1μg/mLのRNase A及び1μg/mLのPIを含有するPBSで再懸濁した。最終的に、細胞をFACScaliburフローサイトメトリーで分析した。細胞取得に続いて、FlowJoソフトウェア(Tree Star社)を使用して、分析を行った。
【0167】
定量的逆転写PCR
WT細胞及びΔXPA HAP1細胞を採取し、フェノール-クロロホルム抽出物を使用して、RNAを単離した。1μlのDNase(Sigma社)で処置した後、SuperScript III逆転写酵素(Invitrogen社)を使用して、cDNAを転写した。1μgのcDNAテンプレートの量を、SYBR Green qPCR Mastermix(Qiagen社)を使用するqRT-PCRに対して使用した。対照遺伝子としてGAPDHを使用して、分析を3回行った。7900HT Fast Real-Time PCR System(Applied Biosystems社)でPCRを行った。以下のプライマーを使用した:
SUR1:5'-AGCTGAGAGCGAGGAGGATG-3';5'-CACTTGGCCAGCCAGTAGTC-3',
GAPDH:5'-AGAACATCATCCCTGCATCC-3';5'-ACATTGGGGGTAGGAACAC-3'.
【0168】
タンパク質抽出及び免疫ブロッティング
プロテアソーム阻害剤(Sigma社)を補充したRIPA溶解緩衝液、及びホスファターゼ阻害剤(Sigma社、NEB)からなる溶解緩衝液中で、細胞を溶解した。溶解物を超音波処理し、遠心分離した後、これらを還元サンプル緩衝液で加熱した。SDS-PAGE(3〜8%又は4〜12%の勾配ゲル、Invitrogen社)で、タンパク質サンプルを分離し、次いで、ニトロセルロース膜上に移した。全ての一次抗体を1:1,000希釈で使用し、二次抗体を1:5,000希釈で使用した。使用した抗体は、以下である:XPA(14607S、Cell Signaling社)、MUTYH(ab55551、Abcam社)、チューブリン(3873、Cell Signaling社)(07-164、Millipore社)、及びβ-アクチン(A 5060A、Sigma社)。
【0169】
シクロブタン型ピリミジン二量体に対する免疫蛍光及び関連する顕微鏡
シクロブタン型ピリミジン二量体(CPD)を測定するために、細胞を5cm皿のカバーガラス(VWR社)状に播種した。翌日に、示す通り、細胞を処置した。次に、これらをPBSで2回洗浄し、室温(RT)で10分間、4%のパラホルムアルデヒド(PFA)で固定し、次いで、RTで5分間、PBS中の0.5%のTriton X-100で透過処理した。PBSでの洗浄する3工程の後、DNAを室温で30分間、2MのHCLで変性し、その後、37℃で30分間PBS中の10%のFBSでブロッキングした。一次抗CPD抗体及び二次抗体(抗CPD:TDM-2、Cosmo Bio社、二次抗体:Alexa Fluor 488ヤギ抗マウス、Invitrogen社)をPBS(1:1,000)で希釈し、37℃で30分間、細胞をインキュベートし、個別の工程の間に5回洗浄(PBS)を行った。最終的に、細胞を、暗所にてRTで20分間、DAPI(Sigma-Aldrich社)で染色した。細胞画像を逆重畳顕微鏡(Leica社)で得た。CellProfilerを使用して、定量化を行った。
【0170】
シクロブタン型ピリミジン二量体に対するドットブロット
CPD特定的モノクローナル抗体TDM-2(Cosmo Bio社)での免疫ドットブロットアッセイを使用して、DNA中のシクロブタン型ピリミジン二量体(CPD)の量を定量化した。QIAamp DNAミニキット(Qiagen社)を使用して、ゲノムDNAを抽出し、次いで、TE緩衝液(10mMのTris-CL及び1mMのEDTA、pH7.5)中で、5分間加熱することによりゲノムDNAを変性し、その後、50ngのゲノムDNAをニトロセルロース膜上に3回ドットブロットした。次いで、DNAを、80℃で2時間、膜を焼成することにより固定した。膜を、5%(w/v)の乳を含有するTBS、0.2%のTween 20(TBS-T)中で1時間ブロッキングした。TBS-Tで15分間洗浄した後、TBS-Tで1:1,500の希釈液を使用して、モノクローナル抗体TDM-2(抗CPDモノクローナル抗体、Cosmo Bio社)で、室温、4℃で終夜、膜をインキュベートした。15分間、5回洗浄した後、リン酸緩衝食塩水(Invitrogen社)で1:2,500に希釈した抗マウス二次抗体で、膜を1時間インキュベートした。Amersham ECL(GE Healthcare Life Sciences社)を使用して、信号を検出した。DNAをローディング対照としてメチレンブルーで対比染色した。
【0171】
統計解析
データは、別段の記載がない限り、±平均の標準誤差(SEM)として表される。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図5A
図5B
図5C
図5D-1】
図5D-2】
図5D-3】
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図9A
図9B
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図11A
図11B
図12A
図12B
【配列表】
2020521748000001.app
【国際調査報告】