(81)【指定国】
      AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
    
      
        
            本発明は、天然に存在しない抗菌ペプチドに関する。より具体的には、ペプチドは、多剤耐性菌の感染を処置するために用いることができる。加えて、本発明は、抗菌ペプチドを生成するための方法を提供する。
  細菌の1つ以上の一次標的タンパク質の凝集を誘導するように、例えば前記細菌における前記1つ以上の一次標的タンパク質を含む封入体を形成するように、設計された、天然に存在しない抗菌ペプチドであって、ここで、前記細菌の1つ以上の一次標的タンパク質は、3−フェニルプロピオネート−ジヒドロジオール/桂皮酸−ジヒドロジオールデヒドロゲナーゼ(Hcab)タンパク質を含む、前記天然に存在しない抗菌ペプチド。
  前記1つ以上の一次標的タンパク質において、1つ以上の凝集傾向領域(APR)と共凝集させることにより、前記細菌の前記1つ以上の一次標的タンパク質の凝集を誘導する、請求項1または2に記載のペプチド。
  前記1つ以上のAPRのアミノ酸配列が、GLGLALV(配列番号128)であるか、またはGLGLALV(配列番号128)と比較して単一のミスマッチを示す、請求項3に記載のペプチド。
  GLGLALV(配列番号128)、GLGLALA(配列番号202)、GLGLAIV(配列番号203)、GLGLAMV(配列番号204)、GLGLSLV(配列番号205)、GLALALV(配列番号206)、GLGLAVV(配列番号207)、GLPLALV(配列番号208)、GVGLALV(配列番号209)、GLGLALS(配列番号210)、GLLLALV(配列番号211)、GLGLALQ(配列番号212)、GIGLALV(配列番号213)からなる群より選択される1つ以上のAPRと共凝集させることにより、前記細菌の前記1つ以上の一次標的タンパク質の凝集を誘導する、請求項3または4に記載のペプチド。
  細菌が、グラム陰性であり、好ましくは大腸菌属またはアシネトバクター属、より好ましくは、大腸菌、Acinetobacter radioresistensまたはAcinetobacter baumaniiである、請求項1〜5のいずれか一項に記載のペプチド。
  前記細菌に対して32μg/ml未満、例えば25μg/mL以下、12μg/mL以下、または6μg/mL以下の最小阻害濃度(MIC)を示す、請求項1〜6のいずれか一項に記載のペプチド。
  1つより多くの細菌分類群、例えば1つより多くの細菌の属、種または株に対して抗菌効果を示す、請求項1〜14のいずれか一項に記載のペプチドまたはペプチド模倣物。
  細菌の1つ以上の一次標的タンパク質の凝集を誘導するように、例えば前記細菌における前記1つ以上の一次標的タンパク質を含む封入体を形成するように、設計された、天然に存在しない抗菌ペプチドであって、ここで、前記細菌の1つ以上の一次標的タンパク質は、表4において列記されるタンパク質から選択されるタンパク質を含む、前記天然に存在しない抗菌ペプチド。
  前記1つ以上の一次標的タンパク質において、1つ以上の凝集タンパク質セグメント(APR)と共凝集させることにより、前記細菌の前記1つ以上の一次標的タンパク質の凝集を誘導する、請求項23に記載のペプチド。
  細菌が、グラム陰性であり、好ましくは大腸菌属またはアシネトバクター属、より好ましくは、大腸菌、Acinetobacter radioresistensまたはAcinetobacter baumaniiである、請求項23〜25のいずれか一項に記載のペプチド。
  前記細菌に対して32μg/ml未満、例えば25μg/mL以下、12μg/mL以下、または6μg/mL以下の最小阻害濃度(MIC)を示す、請求項23〜26のいずれか一項に記載のペプチド。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の詳細な説明
  本発明は、特定の態様に関して、および特定の図面を参照して記載されるが、本発明は、それらに限定されるものではなく、請求の範囲によってのみ限定される。請求の範囲における任意の引用記号は、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。無論、必ずしもすべての側面または利点が、本発明の任意の特定の態様のとおりに達成され得るものではないことが理解されるべきである。したがって、例えば、当業者は、本発明は、必ずしも本明細書において教示または示唆され得るような他の側面または利点を達成することなく、本明細書において教示されるような1つの利点または利点の群を達成または最適化する様式において具現または実行し得ることを理解するであろう。
 
【0013】
  本発明は、組織および操作の方法の両方について、それらの特色および利点と一緒に、以下の詳細な説明を、添付の図面と組み合わせて読み参照することにより最良に理解され得る。本発明の側面および利点は、本明細書において後に記載される態様(単数または複数)から明らかであるか、またはこれらを参照することにより解明されるであろう。本明細書全体にわたる「一態様(one embodiment)」または「一態様(an embodiment)」への言及は、当該態様に関連して記載された特定の特色、構造または特徴が、本発明の少なくとも1つの態様に含まれることを意味する。したがって、句「一態様において(in one embodiment)」または「一態様において(in an embodiment)」の出現は、本明細書全体にわたる多様な場所において、必ずしも全て同じ態様を指すものではないが、同じ態様を指す場合もある。同様に、本発明の例示的な態様の記載において、本発明の多様な特色は、ときに、多様な発明の側面のうちの1つ以上の開示の合理化および理解の補助を目的として、単一の態様、図面、またはその説明において、一緒にグループ化されることが、理解されるべきである。この開示の方法は、しかし、請求された発明が、各請求項において明示的に列記されるものより多くの特色を必要とするという意図を反映するものとして解釈されるべきではない。むしろ、以下の請求の範囲が反映するとおり、本発明の側面は、単一の前述の開示された態様の全ての特色よりも少ないものにおいて存在する。
 
【0014】
  単数形の名詞を参照する際に、不定冠詞または定冠詞、例えば「a」または「an」、「the」が用いられる場合、これは、何か別段に特に記述されない限り、その名詞の複数形を含む。用語「含むこと(comprising)」が、本説明および請求の範囲において用いられる場合、それは、他の要素またはステップを除外しない。さらに、第1、第2、第3などの用語は、本説明および請求の範囲において、類似の要素の間を区別するために用いられ、必ずしも、連続的または経時的な順序を記載するためのものではない。そのように用いられる用語は、適切な状況下においては交換可能であり、本明細書において記載される本発明の態様は、本明細書において記載または説明されているもの以外の順序における操作が可能であることが、理解されるべきである。以下の用語または定義は、本発明の理解において補助するためにのみ提供される。本明細書において特に定義されない限り、本明細書において用いられる全ての用語は、本発明の分野における当業者にとって有するであろう意味と同じ意味を有する。実施者は、当該分野の定義および用語について、特にSambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第4版、Cold Spring Harbor Press, Plainsview, New York(2012);およびAusubelら、Current Protocols in Molecular Biology(補遺114)、John Wiley & Sons, New York(2016)を教示される。本明細書において提供される定義は、当業者により理解されるものよりも狭い範囲を有するものと解釈されるべきではない。
 
【0015】
  「約」とは、本明細書において用いられる場合、例えば量、時間的期間などの測定可能な値を指す場合、特定された値から±20%または±10%、より好ましくは±5%、さらにより好ましくは±1%、およびなおより好ましくは±0.1%のバリエーションを包含することを意図される。なぜならば、かかるバリエーションは、開示される方法を実施するために適切であるからである。
 
【0016】
  用語「ポリペプチド」および「ペプチド」は、さらに本明細書において交換可能に用いられ、アミノ酸残基のポリマーおよびその合成アナログおよびバリアントを指す。したがって、これらの用語は、1つ以上のアミノ酸残基が合成の天然に存在しないアミノ酸、例えば対応する天然に存在するアミノ酸の化学的アナログであるアミノ酸ポリマーに当てはまるのみならず、天然に存在するアミノ酸ポリマーにも当てはまる。この用語はまた、グリコシル化、リン酸化、アミド化、酸化およびアセチル化などの、ポリペプチドの翻訳後修飾を含む。「組み換えポリペプチド」によってとは、組み換え技術を用いて、すなわち、組み換えまたは合成ポリヌクレオチドの発現を通して作成されたポリペプチドが意味される。用語「発現」または「遺伝子発現」とは、1つの特定の遺伝子または複数の特定の遺伝子または特定の遺伝子コンストラクトの転写を意味する。用語「発現」または「遺伝子発現」は、特定の意味において、1つの遺伝子または複数の遺伝子または遺伝子コンストラクトの、構造的RNA(rRNA、tRNA)またはmRNAへの、その後の後者のタンパク質への翻訳を伴わない、転写を意味する。プロセスは、DNAの転写および生じたmRNA生成物のプロセッシングを含む。用語「組み換え宿主細胞」、「操作された細胞」、「発現宿主細胞」、「発現宿主系」、「発現系」または単に「宿主細胞」とは、本明細書において用いられる場合、組み換えベクターおよび/またはキメラ遺伝子コンストラクトが導入された細胞を指すことを意図される。かかる用語は、特定の対象細胞のみならず、かかる細胞の子孫をも指すことが意図されることが、理解されるべきである。特定の修飾は、変異または環境の影響に起因して、後に続く世代において起こり得るので、かかる子孫は、実際に、親細胞とは同一でない場合があるが、本明細書において用いられる場合は、用語「宿主細胞」の範囲内になお含まれる。用語「調節する(modulate)」、「調節する(modulates)」、または「調節(modulation)」とは、特定のレベルまたは活性の増強(例えば増大)または阻害(例えば減少)を指す。用語「増強する(enhance)」または「増大させる(increase)」とは、特定のパラメーターの、少なくとも約1.25倍、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、8倍、10倍、12倍、または15倍もの増大を指す。
 
【0017】
  用語「阻害する(inhibit)」または「低下させる(reduce)」またはこれらの文法的バリエーションは、本明細書において用いられる場合、特定のレベルまたは活性の少なくとも約15%、25%、35%、40%、50%、60%、75%、80%、90%、95%またはそれより多くの減少または減弱を指す。特定の態様において、阻害または減少は、検出可能な活性を、ほとんどもたらさないか、または本質的にもたらさない(最大でも、顕著でない量、例えば、約10%未満またはわずか5%)。
 
【0018】
  用語「接触させる(contact)」またはその文法的バリエーションは、本発明の天然に存在しないペプチドまたはそのバリアントおよび細菌単離株に関して用いられる場合、天然に存在しないペプチド(またはそのバリアント)と細菌単離株とを、互いに対して生物学的効果を発揮するために十分に、互いの近傍に置くことを指す。いくつかの態様において、接触させるという用語は、特化した天然に存在しないペプチドの、細菌単離株への結合を意味する。「治療有効」量とは、本明細書において用いられる場合、対象に何らかの改善または利益を提供する量である。言い換えると、「治療有効」量とは、対象における少なくとも1つの臨床的症状の何らかの軽減、緩和または減少を提供するであろう量である。当業者は、対象に何らかの利益が提供される以上は、治療効果が完全または治癒的である必要はないことを理解するであろう。用語「処置する(treat)」、「処置すること(treating)」、または「〜の処置(treatment of)」により、対象の状態の重篤度が、低下するか、または少なくとも部分的に改善または改変されること、および、少なくとも1つの臨床的症状の何らかの軽減、緩和または減少が達成されることが意図される。本明細書において用いられる場合、「機能的」ペプチドとは、そのペプチドに通常関連している少なくとも1つの生物学的活性(例えば、細菌に結合してその増殖を阻害する(または細菌を殺傷する)こと)を実質的に保持するものである。特定の態様において、「機能的」ペプチドとは、未修飾のペプチドが有する活性の全てを実質的に保持する。生物学的活性を「実質的に保持する」によってとは、ペプチドが、ネイティブのポリペプチドの生物学的活性のうちの少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、75%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、またはそれより多くを保持すること(およびさらにネイティブのペプチドより高いレベルの活性を有し得ること)が意味される。タンパク質結合および細菌阻害活性などの生物学的活性は、本明細書において記載されるアッセイおよび当該分野において周知の他のアッセイを用いて測定することができる。
 
【0019】
  本明細書において用いられる場合、用語「保存的アミノ酸置換」とは、ペプチド配列において通常存在するアミノ酸を、類似のサイズ、電荷または極性を有する異なるアミノ酸で置換することを意味する。保存的置換の例として、イソロイシン、バリンおよびロイシンなどの非極性(疎水性)残基の、別の非極性残基に対する置換が挙げられる。同様に、保存的置換の例として、1つの極性(親水性)残基の、別のものに対する、例えばアルギニンとリジンとの間、グルタミンとアスパラギンの間、およびグリシンとセリンとの間の置換が挙げられる。加えて、リジン、アルギニンもしくはヒスチジンなどの塩基性残基の、別のものに対する置換、または、アスパラギン酸もしくはグルタミン酸などの1つの酸性残基の別の酸性残基に対する置換は、保存的置換のさらなる例である。非保存的置換の例として、イソロイシン、バリン、ロイシン、アラニン、メチオニンなどの非極性(疎水性)アミノ酸残基の、システイン、グルタミン、グルタミン酸またはリジンなどの極性(親水性)残基に対する、および/または極性残基の、非極性残基に対する置換が挙げられる。
 
【0020】
  本発明は、広範囲にわたるタンパク質恒常性の崩壊により病原性細菌の増殖を阻害する(および/またはこれを殺傷する)ために凝集を利用する、新規のデザイナー抗生物質のパラダイムを提供する。特に、本発明者らは、E. coliのプロテオームにおいて重複する短い凝集−核形成性配列を含む、多数の天然に存在しないペプチドを同定した。本明細書においてさらにコルぺプチン1として指定される特定の代表的なメンバーの作用の様式の分析により、細胞のうちの98%が15分以内に陽性であったことから、ペプチドが、E. coliにより迅速的かつ効率的に内部移行することが明らかとなった。コルぺプチン1の取り込みは、大きな極性の封入体の形成および細菌細胞死を容易にもたらし、約50%の細胞死は15分以内であり、1時間後には80%を超えた。ここで観察された迅速かつ致死性の凝集に関連する細菌細胞死は、IB形成が一般には細菌における急性のストレスに対する非致死性かつ可逆性の応答であることから、驚くべきことであった。さらに、致死量以下の濃度(MICの50%)の活性ペプチドにおける、36日間の期間にわたる細菌の繰り返しの継代は、対照抗生物質アンピシリンとは対照的に、耐性の発達をもたらさなかった。加えて、ペプチドはin vivoで活性であり、実際に、コルぺプチン1は、マウス膀胱感染モデルにおいて、その宿主に対して有害効果をもたらすことなく、細菌の負荷量を効果的に低下させた。本発明は、コルぺプチン1およびそのバリアントなどの天然に存在しないペプチド、ならびに病原性細菌を処置するための、例えば処置することが困難な病原性細菌と戦うための、バリアントまたは類似のペプチドを生成するための方法を提供する。実際に、本発明は、いくつかのタンパク質標的に同時に打撃を与えて、それにより迅速な細菌細胞死をもたらすために、細菌におけるタンパク質における凝集傾向のあるペプチドセグメントの配列特異性を利用することが可能であることを示す。このアプローチは、したがって、新規のクラスの抗生物質を開発するための興味深いパラダイムを代表する。
 
【0021】
  したがって、本発明は、第1の側面において、細菌の1つ以上の一次標的タンパク質の凝集を誘導するように、例えば前記細菌における前記1つ以上の一次標的タンパク質を含む封入体を形成するように、設計された、天然に存在しない抗菌ペプチドであって、ここで、前記細菌の1つ以上の一次標的タンパク質は、3−フェニルプロピオネート−ジヒドロジオール/桂皮酸−ジヒドロジオールデヒドロゲナーゼ(Hcab)タンパク質を含む、前記天然に存在しない抗菌ペプチドを提供する。
 
【0022】
  ある態様において、前記細菌の1つ以上の一次標的タンパク質は、以下をさらに含む:
−  シャペロンタンパク質skp(Skp)、リン酸レギュロンセンサータンパク質(PhoR)、ジペプチド・トリペプチドパーミアーゼA(Dtpa)、有望なセンサー様ヒスチジンキナーゼ(probable sensor-like-histidine kinase)YedV(YedV)、特徴づけられていないNa(+)/H(+)交換体YjcE(YjcE)、浸透圧センサータンパク質EnvZ(EnvZ)、センサータンパク質RstB(RstB)、センサータンパク質ZraS(ZraS)、推定の特徴づけられていないタンパク質YbfO(YbfO)、センサーヒスチジンキナーゼDcuS(DcuS)、シグナル伝達ヒスチジン−タンパク質キナーゼAtoS(AtoS)、ギ酸ハイドロゲンリアーゼサブユニット4(hycD)、芳香族アミノ酸エクスポーターYddG(YddG)、UPF0226タンパク質YfcJ(YfcJ)、および内膜タンパク質yfeZ(YfeZ);
−  表8において列記されるタンパク質からなる群より選択される1つ以上のタンパク質;および/または
−  表9において列記されるタンパク質からなる群より選択される1つ以上のタンパク質。
 
【0023】
  ある態様において、ペプチドは、前記1つ以上の一次標的タンパク質において、1つ以上の凝集傾向領域(APR)と共凝集させることにより、前記細菌の前記1つ以上の一次標的タンパク質の凝集を誘導する。ある態様において、前記1つ以上のAPRのアミノ酸配列は、GLGLALV(配列番号128)であるか、またはGLGLALV(配列番号128)と比較して単一のミスマッチを示す。 
 
【0024】
  ある態様において、ペプチドは、GLGLALV(配列番号128)、GLGLALA(配列番号202)、GLGLAIV(配列番号203)、GLGLAMV(配列番号204)、GLGLSLV(配列番号205)、GLALALV(配列番号206)、GLGLAVV(配列番号207)、GLPLALV(配列番号208)、GVGLALV(配列番号209)、GLGLALS(配列番号210)、GLLLALV(配列番号211)、GLGLALQ(配列番号212)、GIGLALV(配列番号213)からなる群より選択される1つ以上のAPRと共凝集させることにより、前記細菌の前記1つ以上の一次標的タンパク質の凝集を誘導する。
 
【0025】
  ある態様において、細菌は、グラム陰性であり、好ましくは大腸菌属またはアシネトバクター属、より好ましくは、大腸菌、Acinetobacter radioresistensまたはAcinetobacter baumaniiである。
  ある態様において、ペプチドは、前記細菌に対して、32μg/ml未満、例えば25μg/mL以下、12μg/mL以下、または6μg/mL以下の最小阻害濃度(MIC)を示す。
 
【0026】
  ある態様において、ペプチドは、前記1つ以上のAPRと共凝集するように設計された配列X
1−X
2−X
3−X
4−X
5−X
6−X
7を含み、ここで、
−  X
1は、グリシンまたはグリシンの保存的アミノ酸置換またはグリシンの非天然のアミノ酸バリアントまたはグリシンの保存的アミノ酸置換のD−アミノ酸またはグリシンの非天然のアミノ酸バリアントのD−アミノ酸であり、
−  X
2は、ロイシンまたはロイシンの保存的アミノ酸置換またはロイシンの非天然のアミノ酸バリアントまたはロイシンのD−アミノ酸またはロイシンの保存的アミノ酸置換のD−アミノ酸またはロイシンの非天然のアミノ酸バリアントのD−アミノ酸であり、
−  X
3は、グリシンまたはグリシンの保存的アミノ酸置換またはグリシンの非天然のアミノ酸バリアントまたはグリシンの保存的アミノ酸置換のD−アミノ酸またはグリシンの非天然のアミノ酸バリアントのD−アミノ酸であり、
−  X
4は、ロイシンまたはロイシンの保存的アミノ酸置換またはロイシンの非天然のアミノ酸バリアントまたはロイシンのD−アミノ酸またはロイシンの保存的アミノ酸置換のD−アミノ酸またはロイシンの非天然のアミノ酸バリアントのD−アミノ酸であり、
−  X
5は、アラニンまたはアラニンの保存的アミノ酸置換またはアラニンの非天然のアミノ酸バリアントまたはアラニンのD−アミノ酸またはアラニンの保存的アミノ酸置換のD−アミノ酸またはアラニンの非天然のアミノ酸バリアントのD−アミノ酸であり、
−  X
6は、ロイシンまたはロイシンの保存的アミノ酸置換またはロイシンの非天然のアミノ酸バリアントまたはロイシンのD−アミノ酸またはロイシンの保存的アミノ酸置換のD−アミノ酸またはロイシンの非天然のアミノ酸バリアントのD−アミノ酸であり、
−  X
7は、バリンまたはバリンの保存的アミノ酸置換またはバリンの非天然のアミノ酸バリアントまたはバリンのD−アミノ酸またはバリンの保存的アミノ酸置換のD−アミノ酸またはバリンの非天然のアミノ酸バリアントのD−アミノ酸である。
  ある態様において、ペプチドは、1つ以上のD−アミノ酸および/または非天然のアミノ酸を含む。
 
【0027】
  ある態様において、ペプチドは、以下の構造:(A
2i−1−X
1−X
2−X
3−X
4−X
5−X
6−X
7−A
2i−Z
i)
nを含み、ここで、
−  nは、1〜4の整数であり、iは、各リピート毎に1〜nまで増加し;
−  各A
2i−1およびA
2iは、独立して、1〜3の連続したゲートキーパーから選択され、ここで、ペプチド構造中のアミノ末端ゲートキーパーは、任意にアセチル化されるか、および/またはここで、ペプチド配列中のカルボキシ末端ゲートキーパーは、任意にアミド化され、
−  X
1は、グリシンまたはグリシンの保存的アミノ酸置換またはグリシンの非天然のアミノ酸バリアントまたはグリシンの保存的アミノ酸置換のD−アミノ酸またはグリシンの非天然のアミノ酸バリアントのD−アミノ酸であり、
−  X
2は、ロイシンまたはロイシンの保存的アミノ酸置換またはロイシンの非天然のアミノ酸バリアントまたはロイシンのD−アミノ酸またはロイシンの保存的アミノ酸置換のD−アミノ酸またはロイシンの非天然のアミノ酸バリアントのD−アミノ酸であり、
−  X
3は、グリシンまたはグリシンの保存的アミノ酸置換またはグリシンの非天然のアミノ酸バリアントまたはグリシンの保存的アミノ酸置換のD−アミノ酸またはグリシンの非天然のアミノ酸バリアントのD−アミノ酸であり、
−  X
4は、ロイシンまたはロイシンの保存的アミノ酸置換またはロイシンの非天然のアミノ酸バリアントまたはロイシンのD−アミノ酸またはロイシンの保存的アミノ酸置換のD−アミノ酸またはロイシンの非天然のアミノ酸バリアントのD−アミノ酸であり、
−  X
5は、アラニンまたはアラニンの保存的アミノ酸置換またはアラニンの非天然のアミノ酸バリアントまたはアラニンのD−アミノ酸またはアラニンの保存的アミノ酸置換のD−アミノ酸またはアラニンの非天然のアミノ酸バリアントのD−アミノ酸であり、
−  X
6は、ロイシンまたはロイシンの保存的アミノ酸置換またはロイシンの非天然のアミノ酸バリアントまたはロイシンのD−アミノ酸またはロイシンの保存的アミノ酸置換のD−アミノ酸またはロイシンの非天然のアミノ酸バリアントのD−アミノ酸であり、
−  X
7は、バリンまたはバリンの保存的アミノ酸置換またはバリンの非天然のアミノ酸バリアントまたはバリンのD−アミノ酸またはバリンの保存的アミノ酸置換のD−アミノ酸またはバリンの非天然のアミノ酸バリアントのD−アミノ酸であり、
およびここで、X
1−X
2−X
3−X
4−X
5−X
6−X
7およびX
7−X
6−X
5−X
4−X
3−X
2−X
1は、リピート中で交換可能に用いられ、ここで、nは、2〜4であり、
ならびに、各々のZ
iは、リンカーである。
 
【0028】
  したがって、関連する側面としてまた提供されるのは、以下の構造:(A
2i−1−X
1−X
2−X
3−X
4−X
5−X
6−X
7−A
2i−Z
i)
nを含むペプチドであって、ここで、
−  nは、1〜4の整数であり、iは、各リピート毎に1〜nまで増加し;
−  各A
2i−1およびA
2iは、独立して、1〜3の連続したゲートキーパーから選択され、ここで、ペプチド構造中のアミノ末端ゲートキーパーは、任意にアセチル化されるか、および/またはここで、ペプチド配列中のカルボキシ末端ゲートキーパーは、任意にアミド化され、
−  X
1は、グリシンまたはグリシンの保存的アミノ酸置換またはグリシンの非天然のアミノ酸バリアントまたはグリシンの保存的アミノ酸置換のD−アミノ酸またはグリシンの非天然のアミノ酸バリアントのD−アミノ酸であり、
−  X
2は、ロイシンまたはロイシンの保存的アミノ酸置換またはロイシンの非天然のアミノ酸バリアントまたはロイシンのD−アミノ酸またはロイシンの保存的アミノ酸置換のD−アミノ酸またはロイシンの非天然のアミノ酸バリアントのD−アミノ酸であり、
−  X
3は、グリシンまたはグリシンの保存的アミノ酸置換またはグリシンの非天然のアミノ酸バリアントまたはグリシンの保存的アミノ酸置換のD−アミノ酸またはグリシンの非天然のアミノ酸バリアントのD−アミノ酸であり、
−  X
4は、ロイシンまたはロイシンの保存的アミノ酸置換またはロイシンの非天然のアミノ酸バリアントまたはロイシンのD−アミノ酸またはロイシンの保存的アミノ酸置換のD−アミノ酸またはロイシンの非天然のアミノ酸バリアントのD−アミノ酸であり、
−  X
5は、アラニンまたはアラニンの保存的アミノ酸置換またはアラニンの非天然のアミノ酸バリアントまたはアラニンのD−アミノ酸またはアラニンの保存的アミノ酸置換のD−アミノ酸またはアラニンの非天然のアミノ酸バリアントのD−アミノ酸であり、
−  X
6は、ロイシンまたはロイシンの保存的アミノ酸置換またはロイシンの非天然のアミノ酸バリアントまたはロイシンのD−アミノ酸またはロイシンの保存的アミノ酸置換のD−アミノ酸またはロイシンの非天然のアミノ酸バリアントのD−アミノ酸であり、
−  X
7は、バリンまたはバリンの保存的アミノ酸置換またはバリンの非天然のアミノ酸バリアントまたはバリンのD−アミノ酸またはバリンの保存的アミノ酸置換のD−アミノ酸またはバリンの非天然のアミノ酸バリアントのD−アミノ酸であり、
およびここで、X
1−X
2−X
3−X
4−X
5−X
6−X
7およびX
7−X
6−X
5−X
4−X
3−X
2−X
1は、リピート中で交換可能に用いられ、ここで、nは、2〜4であり、
ならびに、各々のZ
iは、リンカーである。
 
【0029】
  ある態様において、各A
2i−1およびA
2iは、独立して、R、K、D、E、Pから選択される1〜3の連続したゲートキーパーアミノ酸および/または1〜3の非天然のゲートキーパーアミノ酸から選択される。
  ある態様において、各々のZ
iは、独立して、1〜5単位のストレッチから選択され、ここで、単位は、PEG、アミノ酸または非天然のアミノ酸である。
  ある態様において、A
2i−1、A
2i、X
1−X
2−X
3−X
4−X
5−X
6−X
7および/またはZ
iのうちの1つ以上のアミノ酸は、D−アミノ酸および/または非天然のアミノ酸である。
 
【0030】
  また提供されるのは、前記ペプチドから生成されるペプチド模倣物である。 
  ある態様において、ペプチドまたはペプチド模倣物は、検出可能な標識をさらに含む。
  ある態様において、ペプチドまたはペプチド模倣物は、半減期の延長を増大させる分子をさらに含む。
  ある態様において、ペプチドまたはペプチド模倣物は、分子の溶解度を増大させる部分をさらに含む。
  ある態様において、ペプチドまたはペプチド模倣物は、1つより多くの細菌分類群、例えば1つより多くの細菌の属、種または株に対する抗菌効果を示す。
 
【0031】
  さらに提供されるのは、独立して、
−  医薬としての使用のためのペプチドまたはペプチド模倣物;
−  抗菌剤としての使用のためのペプチドまたはペプチド模倣物;およびペプチドまたはペプチド模倣物を用いる対応する細菌感染の処置の方法;
−  診断剤としての使用のためのペプチドまたはペプチド模倣物;およびペプチドまたはペプチド模倣物を用いる対応する診断の方法;あるいは、
−  ペプチドまたはペプチド模倣物および薬学的に受入可能なキャリアを含む、医薬組成物
である。
 
【0032】
  本発明は、第二の側面において、細菌の1つ以上の一次標的タンパク質の凝集を誘導するように、例えば前記細菌における前記1つ以上の一次標的タンパク質を含む封入体を形成するように、設計された、天然に存在しない抗菌ペプチドであって、ここで、前記細菌の1つ以上の一次標的タンパク質は、表4において列記されるタンパク質から選択されるタンパク質を含む、前記天然に存在しない抗菌ペプチドを、さらに提供する。
  ある態様において、ペプチドは、前記1つ以上の一次標的タンパク質における1つ以上の凝集タンパク質セグメント(APR)と共凝集させることにより、前記細菌の前記1つ以上の一次標的タンパク質の凝集を誘導する。
 
【0033】
  ある態様において、前記1つ以上のAPRのアミノ酸配列は、表4において列記されるとおりであるか、またはそれと比較して単一のミスマッチを示す。
  ある態様において、細菌は、グラム陰性であり、好ましくは大腸菌属またはアシネトバクター属、より好ましくは、大腸菌、Acinetobacter radioresistensまたはAcinetobacter baumaniiである。
  ある態様において、ペプチドは、前記細菌に対して、32μg/ml未満、例えば25μg/mL以下、12μg/mL以下、または6μg/mL以下の最小阻害濃度(MIC)を示す。
 
【0034】
  ある態様において、ペプチドは、以下の構造:(A
2i−1−APR−A
2i−Z
i)
nを含み、ここで、
−  nは、1〜4の整数であり、iは、各リピート毎に1〜nまで増加し;
−  各A
2i−1およびA
2iは、独立して、1〜3の連続したゲートキーパーから選択され、ここで、ペプチド構造中のアミノ末端ゲートキーパーは、任意にアセチル化されるか、および/またはここで、ペプチド配列中のカルボキシ末端ゲートキーパーは、任意にアミド化され、
−  APR中に含まれるペプチドの名称は、表5において表され(P3、P4、P5、P12、P14、P16、P18、P23、P26、P29、P33、P39、P40、P49、P50、P58、P72、P76、P79、P80、P87、P88、P89、P90、P91、P92、P93、P99、P101、P103、P105、P111、P112、P113、P114、P115、P116、P117、p118、P123、P124およびP125)、これらのペプチドについての対応するアミノ酸配列は、表4において表され、ここで、APRは、天然のアミノ酸を含むか、またはAPRは、APR中に存在するアミノ酸の保存的アミノ酸置換を含むか、またはAPRは、APR中に存在するペプチド配列において存在するアミノ酸の非天然のアミノ酸アナログを含むか、またはAPRは、APR中に存在するアミノ酸のペプチド配列におけるD−アミノ酸置換を含み、
およびここで、APR中のアミノ酸は、直列または逆方向リピートであってよく、ここで、nは、2〜4であり、
ならびに、各々のZ
iは、リンカーである。
 
【0035】
  したがって、関連する側面としてまた提供されるのは、以下の構造:(A
2i−1−APR−A
2i−Z
i)
nを含むペプチドであって、ここで、
−  nは、1〜4の整数であり、iは、各リピート毎に1〜nまで増加し;
−  各A
2i−1およびA
2iは、独立して、1〜3の連続したゲートキーパーから選択され、ここで、ペプチド構造中のアミノ末端ゲートキーパーは、任意にアセチル化されるか、および/またはここで、ペプチド配列中のカルボキシ末端ゲートキーパーは、任意にアミド化され、
−  APR中に含まれるペプチドの名称は、表5において表され(P3、P4、P5、P12、P14、P16、P18、P23、P26、P29、P33、P39、P40、P49、P50、P58、P72、P76、P79、P80、P87、P88、P89、P90、P91、P92、P93、P99、P101、P103、P105、P111、P112、P113、P114、P115、P116、P117、p118、P123、P124およびP125)、これらのペプチドについての対応するアミノ酸配列は、表4において表され、ここで、APRは、天然のアミノ酸を含むか、またはAPRは、APR中に存在するアミノ酸の保存的アミノ酸置換を含むか、またはAPRは、APR中に存在するペプチド配列において存在するアミノ酸の非天然のアミノ酸アナログを含むか、またはAPRは、APR中に存在するアミノ酸のペプチド配列におけるD−アミノ酸置換を含み、
およびここで、APR中のアミノ酸は、直列または逆方向リピートであってよく、ここで、nは、2〜4であり、
ならびに、各々のZ
iは、リンカーである。
 
【0036】
  ある態様において、各A
2i−1およびA
2iは、独立して、R、K、D、E、Pから選択される1〜3の連続したゲートキーパーアミノ酸および/または1〜3の非天然のゲートキーパーアミノ酸から選択される。
  ある態様において、各々のZ
iは、独立して、1〜5単位のストレッチから選択され、ここで、単位は、PEG、アミノ酸または非天然のアミノ酸である。
  ある態様において、A
2i−1、A
2i、APR、および/またはZ
iのうちの1つ以上のアミノ酸は、D−アミノ酸および/または非天然のアミノ酸である。
 
【0037】
  ある態様において、ペプチドは、検出可能な標識をさらに含む。
  ある態様において、ペプチドは、半減期の延長を増大させる分子をさらに含む。
  ある態様において、ペプチドは、分子の溶解度を増大させる部分をさらに含む。
 
【0038】
  さらに提供されるのは、独立して、
−  医薬としての使用のためのペプチド;
−  抗菌剤としての使用のためのペプチド、およびペプチドを用いる対応する細菌感染の処置の方法;
−  診断剤としての使用のためのペプチド;およびペプチドを用いる対応する診断の方法;または
−  ペプチドおよび薬学的に受入可能なキャリアを含む、医薬組成物
である。
 
【0039】
  本発明は、一態様において、以下の構造:(A
2i−1−APR−A
2i−Z
i)
nを含むペプチドをさらに提供し、ここで、
−  nは、1〜4の整数であり、iは、各リピート毎に1〜nまで増加し;
−  各A
2i−1およびA
2iは、独立して、R、K、D、EおよびPから選択される1〜3の連続したゲートキーパーアミノ酸および/または3−メチルプロリン、3,4−デヒドロ−プロリン、2−[(2S)−2−(ヒドラジンカルボニル)ピロリジン−1−イル]−2−オキソ酢酸、ベータ−ホモプロリン、アルファ−メチル−プロリン、ヒドロキシプロリン、4−オキソ−プロリン、ベータ,ベータ−ジメチル−プロリン、5,5−ジメチル−プロリン、4−シクロヘキシル−プロリン、4−フェニル−プロリン、3−フェニル−プロリン、4−アミノプロリン、4−メルカプトプロリン、2−アミノ−アジピン酸(ホモグルタミン酸)、2−アミノ−ヘプタン二酸(2−アミノピメリン酸)、2−アミノ−オクタン二酸(アミノスベリン酸)、2−アミノ−4−カルボキシ−ペンタン二酸(4−カルボキシグルタミン酸)、グリオキサル−ヒドロイミダゾロン、メチルグリオキサル−ヒドロイミダゾロン、N−アルファ−メチル−アルギニン、オメガ−メチル−アルギニン、ノルアルギニン、ホモアルギニン、N,N’−ジエチル−ホモアルギニン、ベータ−ホモアルギニン、2−アミノ−3−ウレイド−プロピオン酸、2−アミノ−6−(1−カルボキシエチルアミノ)ヘキサン酸、2−アミノ−6−カルボキシメチルアミノ)ヘキサン酸、2−アミノ−6−(2−(フラン−2−イル)−2−オキソエチルアミノ)ヘキサン酸、2−アミノ−6−(ホルミル−5−ヒドロキシメチル−ピロール−1−イル)−ヘキサン酸、c−アルファ−メチル−リジン、ベータ,ベータ−ジメチル−リジン、N−イプシロン−ホルミル−リジン、N−イプシロン−メチル−リジン、N−イプシロン−i−プロピル−リジン、N−イプシロン−ジメチル−リジン、N−イプシロン−トリメチルアンモニウム−リジン(N-epsilon-trimethylamonium-lysine)、N−イプシロン−ニコチニル−リジン、{[5−アミノ−1−(ヒドラジンカルボニル)ペンチル]カルバモイル}ギ酸、N−アルファ−メチル−リジン、ホモリジン、ベータ−ホモリジン、2−アミノ−6−ジアゾ−5−オキソカプロン酸、ノルバリン、アルファ-メチル-ノルバリン、ヒドロキシノルバリン(hydroxinorvaline)、オルニチン、N−デルタ−メチル−オルニチン、N−デルタ−N−デルタ−ジメチル−オルニチン、N−デルタ−i−プロピル−オルニチン、c−アルファ−メチル−オルニチン、ベータ,ベータ−ジメチル−オルニチン、カナバニン、N−デルタ−メチル−N−デルタ−ブチル−オルニチン、N−デルタ−メチル−N−デルタ−フェニル−オルニチン、デルタ−(2−メチルピロリジン)−オルニチン、デルタ−ピペリジル−オルニチン、ガンマ−アミノ−デルタ−ピペリジル−吉草酸およびデルタ−アゼパニル−オルニチンから選択される1〜3つの非天然のゲートキーパーアミノ酸から選択され、およびここで、ペプチド構造中のアミノ末端ゲートキーパーのアミノ酸もしくはアミノ末端の非天然のゲートキーパーのアミノ酸は、任意にアセチル化されるか、および/またはここで、ペプチド配列中のカルボキシ末端ゲートキーパーのアミノ酸もしくはカルボキシ末端の非天然のゲートキーパーのアミノ酸は、任意に、アミド化され;
−  APR中に含まれるペプチドの名称は、表5において表され(P2、P3、P4、P5、P12、P14、P16、P18、P23、P26、P29、P33、P39、P40、P49、P50、P58、P72、P76、P79、P80、P87、P88、P89、P90、P91、P92、P93、P99、P101、P103、P105、P111、P112、P113、P114、P115、P116、P117、p118、P123、P124およびP125)、これらのペプチドについての対応するアミノ酸配列は、表4において表され、ここで、APRは、天然のアミノ酸を含むか、またはAPRは、APR中に存在するアミノ酸の保存的アミノ酸置換を含むか、またはAPRは、APR中に存在するペプチド配列において存在するアミノ酸の非天然のアミノ酸アナログを含むか、またはAPRは、APR中に存在するアミノ酸のペプチド配列におけるD−アミノ酸置換を含み、
およびここで、APR中のアミノ酸は、直列または逆方向リピートであってよく、ここで、nは、2〜4であり;
ならびに、各々のZ
iは、リンカーであり、およびここで、各々のZ
iは、独立して、1〜5単位のストレッチから選択され、ここで、単位は、PEG、アミノ酸または非天然のアミノ酸である。
 
【0040】
  さらに別の態様において、本発明は、表5において表される配列(P2、P3、P4、P5、P12、P14、P16、P18、P23、P26、P29、P33、P39、P40、P49、P50、P58、P72、P76、P79、P80、P87、P88、P89、P90、P91、P92、P93、P99、P101、P103、P105、P111、P112、P113、P114、P115、P116、P117、p118、P123、P124およびP125)を提供し、これらのペプチドについての対応するアミノ酸配列は、表4において表される。
 
【0041】
  本発明は、さらなる態様において、以下の構造:(A
2i−1−X
1−X
2−X
3−X
4−X
5−X
6−X
7−A
2i−Z
i)nを含むペプチドを提供し、ここで、
−  nは、1〜4の整数であり、iは、各リピート毎に1〜nまで増加し;
−  各
A2i−1およびA
2iは、独立して、R、K、D、EおよびPから選択される1〜3の連続したゲートキーパーアミノ酸および/または3−メチルプロリン、3,4−デヒドロ−プロリン、2−[(2S)−2−(ヒドラジンカルボニル)ピロリジン−1−イル]−2−オキソ酢酸、ベータ−ホモプロリン、アルファ−メチル−プロリン、ヒドロキシプロリン、4−オキソ−プロリン、ベータ,ベータ−ジメチル−プロリン、5,5−ジメチル−プロリン、4−シクロヘキシル−プロリン、4−フェニル−プロリン、3−フェニル−プロリン、4−アミノプロリン、4−メルカプトプロリン、2−アミノ−アジピン酸(ホモグルタミン酸)、2−アミノ−ヘプタン二酸(2−アミノピメリン酸)、2−アミノ−オクタン二酸(アミノスベリン酸)、2−アミノ−4−カルボキシ−ペンタン二酸(4−カルボキシグルタミン酸)、グリオキサル−ヒドロイミダゾロン、メチルグリオキサル−ヒドロイミダゾロン、N−アルファ−メチル−アルギニン、オメガ−メチル−アルギニン、ノルアルギニン、ホモアルギニン、N,N’−ジエチル−ホモアルギニン、ベータ−ホモアルギニン、2−アミノ−3−ウレイド−プロピオン酸、2−アミノ−6−(1−カルボキシエチルアミノ)ヘキサン酸、2−アミノ−6−カルボキシメチルアミノ)ヘキサン酸、2−アミノ−6−(2−(フラン−2−イル)−2−オキソエチルアミノ)ヘキサン酸、2−アミノ−6−(ホルミル−5−ヒドロキシメチル−ピロール−1−イル)−ヘキサン酸、c−アルファ−メチル−リジン、ベータ,ベータ−ジメチル−リジン、N−イプシロン−ホルミル−リジン、N−イプシロン−メチル−リジン、N−イプシロン−i−プロピル−リジン、N−イプシロン−ジメチル−リジン、N−イプシロン−トリメチルアンモニウム−リジン、N−イプシロン−ニコチニル−リジン、{[5−アミノ−1−(ヒドラジンカルボニル)ペンチル]カルバモイル}ギ酸、N−アルファ−メチル−リジン、ホモリジン、ベータ−ホモリジン、2−アミノ−6−ジアゾ−5−オキソカプロン酸、ノルバリン、アルファ−メチル−ノルバリン、ヒドロキシノルバリン、オルニチン、N−デルタ−メチル−オルニチン、N−デルタ−N−デルタ−ジメチル−オルニチン、N−デルタ−i−プロピル−オルニチン、c−アルファ−メチル−オルニチン、ベータ,ベータ−ジメチル−オルニチン、カナバニン、N−デルタ−メチル−N−デルタ−ブチル−オルニチン、N−デルタ−メチル−N−デルタ−フェニル−オルニチン、デルタ−(2−メチルピロリジン)−オルニチン、デルタ−ピペリジル−オルニチン、ガンマ−アミノ−デルタ−ピペリジル−吉草酸およびデルタ−アゼパニル−オルニチンから選択される1〜3つの非天然のゲートキーパーアミノ酸から選択され、およびここで、ペプチド構造中のアミノ末端ゲートキーパーのアミノ酸もしくはアミノ末端の非天然のゲートキーパーのアミノ酸は、任意にアセチル化されるか、および/またはここで、ペプチド配列中のカルボキシ末端ゲートキーパーのアミノ酸もしくはカルボキシ末端の非天然のゲートキーパーのアミノ酸は、任意にアミド化され、
−  X
1は、グリシンまたはグリシンの保存的アミノ酸置換またはグリシンの非天然のアミノ酸バリアントまたはグリシンの保存的アミノ酸置換のD−アミノ酸またはグリシンの非天然のアミノ酸バリアントのD−アミノ酸であり、
−  X
2は、ロイシンまたはロイシンの保存的アミノ酸置換またはロイシンの非天然のアミノ酸バリアントまたはロイシンのD−アミノ酸またはロイシンの保存的アミノ酸置換のD−アミノ酸またはロイシンの非天然のアミノ酸バリアントのD−アミノ酸であり、
−  X
3は、グリシンまたはグリシンの保存的アミノ酸置換またはグリシンの非天然のアミノ酸バリアントまたはグリシンの保存的アミノ酸置換のD−アミノ酸またはグリシンの非天然のアミノ酸バリアントのD−アミノ酸であり、
−  X
4は、ロイシンまたはロイシンの保存的アミノ酸置換またはロイシンの非天然のアミノ酸バリアントまたはロイシンのD−アミノ酸またはロイシンの保存的アミノ酸置換のD−アミノ酸またはロイシンの非天然のアミノ酸バリアントのD−アミノ酸であり、
−  X
5は、アラニンまたはアラニンの保存的アミノ酸置換またはアラニンの非天然のアミノ酸バリアントまたはアラニンのD−アミノ酸またはアラニンの保存的アミノ酸置換のD−アミノ酸またはアラニンの非天然のアミノ酸バリアントのD−アミノ酸であり、
−  X
6は、ロイシンまたはロイシンの保存的アミノ酸置換またはロイシンの非天然のアミノ酸バリアントまたはロイシンのD−アミノ酸またはロイシンの保存的アミノ酸置換のD−アミノ酸またはロイシンの非天然のアミノ酸バリアントのD−アミノ酸であり、
−  X
7は、バリンまたはバリンの保存的アミノ酸置換またはバリンの非天然のアミノ酸バリアントまたはバリンのD−アミノ酸またはバリンの保存的アミノ酸置換のD−アミノ酸またはバリンの非天然のアミノ酸バリアントのD−アミノ酸であり、
およびここで、X
1−X
2−X
3−X
4−X
5−X
6−X
7およびX
7−X
6−X
5−X
4−X
3−X
2−X
1は、リピート中で交換可能に用いられ、ここで、nは、2〜4であり、
ならびに、各々のZ
iは、リンカーであり、およびここで、各々のZ
iは、独立して、1〜5単位のストレッチから選択され、ここで、単位は、PEG、アミノ酸または非天然のアミノ酸である。
 
【0042】
  本発明のペプチド中のリンカー部分、Z
iの性質は、本発明にとって極めて重要ではないが、長い可撓性のリンカーは、好ましくは用いられない。特定の態様により、各々のZ
iは、独立して、0〜20個の同一または非同一の単位のストレッチから選択され、ここで、単位はアミノ酸、単糖、ヌクレオチドまたはモノマーである。非同一の単位は、同じ性質の非同一の単位であってよい(例えば、異なるアミノ酸、またはいくつかのコポリマー)。それらはまた、異なる性質の非同一の単位、例えばアミノ酸およびヌクレオチド単位、または2つ以上の異なるモノマー種を含むヘテロポリマー(コポリマー)を有するリンカーであってもよい。特定の態様により、少なくとも1つ、および特にZ
n以外の各々のZ
iの長さは、少なくとも1単位である。他の特定の態様により、Z
nは、0単位である。特定の態様により、Z
n以外の全てのZ
iリンカーは、同一である。さらなる態様により、全てのZ
i部分は、同一である。
 
【0043】
  特定の態様により、少なくとも1つ、および特にすべてのZ
iは、同じ性質の0〜10単位のもの、特に同じ性質の0〜5単位のものである。特定の態様により、少なくとも1つのZ
i部分、および特にZ
nを除くすべてのZ
i部分は、ペプチドまたはポリペプチドリンカーである。かかるリンカーの特に想起される配列として、これらに限定されないが、PPP、PPまたはGSが挙げられる。リンカーはまた、化学的性質のものであってもよい。特に想起される化学リンカーとして、PEGおよびTtds(別名4,7,10−トリオキサトリデカン−13−スクシンアミド酸)が挙げられる。
 
【0044】
  典型的には、長いリンカーは用いられない。しかし、凝集促進性部分が1つより多くのタンパク質の凝集を誘導する領域に対応する特定の態様により、長いリンカーが用いられ得ることが想起される。実際に、分子が確実に、(例えば同時に)1つより多くのタンパク質と相互作用し得るようにするために、立体障害に起因して相互作用が妨げられないように、標的が異なる凝集促進性部分の間の距離を増大させることは、有益であり得る。これらの場合において、Z
iリンカーは、0〜100個の同一または非同一の単位のストレッチであってよく、ここで、単位は、アミノ酸、単糖、ヌクレオチドまたはモノマーである;あるいは、0〜90、0〜80、0〜70、0〜60、0〜50、0〜40、0〜30または0〜20のものである。特に、Z
iリンカーの最小の長さは、少なくとも1単位、少なくとも2単位、少なくとも3単位、少なくとも4単位、または少なくとも5単位である。
 
【0045】
  さらに別の態様において、本発明は、以下の構造:(A
2i−1−X
1−X
2−X
3−X
4−X
5−X
6−X
7−A
2i−Z
i)
nを含むペプチドを提供し、ここで、
−  nは、1〜4の整数であり、iは、各リピート毎に1〜nまで増加し;
−  各A
2i−1およびA
2iは、独立して、R、K、D、EおよびPから選択される1〜3の連続したゲートキーパーアミノ酸から選択されるか、および/またはここで、アミノ末端ゲートキーパーのアミノ酸は、任意にアセチル化されるか、および/またはここで、ペプチド配列中のカルボキシ末端ゲートキーパーのアミノ酸は、任意にアミド化され、
−  X
1は、グリシンまたはグリシンの保存的アミノ酸置換またはグリシンの非天然のアミノ酸バリアントまたはグリシンの保存的アミノ酸置換のD−アミノ酸またはグリシンの非天然のアミノ酸バリアントのD−アミノ酸であり、
−  X
2は、ロイシンまたはロイシンの保存的アミノ酸置換またはロイシンの非天然のアミノ酸バリアントまたはロイシンのD−アミノ酸またはロイシンの保存的アミノ酸置換のD−アミノ酸またはロイシンの非天然のアミノ酸バリアントのD−アミノ酸であり、
−  X
3は、グリシンまたはグリシンの保存的アミノ酸置換またはグリシンの非天然のアミノ酸バリアントまたはグリシンの保存的アミノ酸置換のD−アミノ酸またはグリシンの非天然のアミノ酸バリアントのD−アミノ酸であり、
−  X
4は、ロイシンまたはロイシンの保存的アミノ酸置換またはロイシンの非天然のアミノ酸バリアントまたはロイシンのD−アミノ酸またはロイシンの保存的アミノ酸置換のD−アミノ酸またはロイシンの非天然のアミノ酸バリアントのD−アミノ酸であり、
−  X
5は、アラニンまたはアラニンの保存的アミノ酸置換またはアラニンの非天然のアミノ酸バリアントまたはアラニンのD−アミノ酸またはアラニンの保存的アミノ酸置換のD−アミノ酸またはアラニンの非天然のアミノ酸バリアントのD−アミノ酸であり、
−  X
6は、ロイシンまたはロイシンの保存的アミノ酸置換またはロイシンの非天然のアミノ酸バリアントまたはロイシンのD−アミノ酸またはロイシンの保存的アミノ酸置換のD−アミノ酸またはロイシンの非天然のアミノ酸バリアントのD−アミノ酸であり、
−  X
7は、バリンまたはバリンの保存的アミノ酸置換またはバリンの非天然のアミノ酸バリアントまたはバリンのD−アミノ酸またはバリンの保存的アミノ酸置換のD−アミノ酸またはバリンの非天然のアミノ酸バリアントのD−アミノ酸であり、
およびここで、X
1−X
2−X
3−X
4−X
5−X
6−X
7およびX
7−X
6−X
5−X
4−X
3−X
2−X
1は、リピート中で交換可能に用いられ、ここで、nは、2〜4であり、
ならびに、各々のZ
iは、リンカーであり、およびここで、各々のZ
iは、独立して、1〜5単位のストレッチから選択され、ここで、単位は、PEG、アミノ酸または非天然のアミノ酸である。
 
【0046】
  さらに別の態様において、本発明は、以下の構造:(A
2i−1−X
1−X
2−X
3−X
4−X
5−X
6−X
7−A
2i−Z
i)nを含むペプチドを提供し、ここで、
−  nは、1〜3の整数であり、iは、各リピート毎に1〜nまで増加し;
−  各A
2i−1およびA
2iは、独立して、R、K、D、EおよびPから選択される1〜3の連続したゲートキーパーアミノ酸から選択され、およびここで、アミノ末端ゲートキーパーのアミノ酸は、任意にアセチル化されるか、および/またはここで、ペプチド配列中のカルボキシ末端ゲートキーパーのアミノ酸は、任意にアミド化され、
−  X
1は、グリシンまたはグリシンの保存的アミノ酸置換またはグリシンの非天然のアミノ酸バリアントまたはグリシンの保存的アミノ酸置換のD−アミノ酸またはグリシンの非天然のアミノ酸バリアントのD−アミノ酸であり、
−  X
2は、ロイシンまたはロイシンの保存的アミノ酸置換またはロイシンの非天然のアミノ酸バリアントまたはロイシンのD−アミノ酸またはロイシンの保存的アミノ酸置換のD−アミノ酸またはロイシンの非天然のアミノ酸バリアントのD−アミノ酸であり、
−  X
3は、グリシンまたはグリシンの保存的アミノ酸置換またはグリシンの非天然のアミノ酸バリアントまたはグリシンの保存的アミノ酸置換のD−アミノ酸またはグリシンの非天然のアミノ酸バリアントのD−アミノ酸であり、
−  X
4は、ロイシンまたはロイシンの保存的アミノ酸置換またはロイシンの非天然のアミノ酸バリアントまたはロイシンのD−アミノ酸またはロイシンの保存的アミノ酸置換のD−アミノ酸またはロイシンの非天然のアミノ酸バリアントのD−アミノ酸であり、
−  X
5は、アラニンまたはアラニンの保存的アミノ酸置換またはアラニンの非天然のアミノ酸バリアントまたはアラニンのD−アミノ酸またはアラニンの保存的アミノ酸置換のD−アミノ酸またはアラニンの非天然のアミノ酸バリアントのD−アミノ酸であり、
−  X
6は、ロイシンまたはロイシンの保存的アミノ酸置換またはロイシンの非天然のアミノ酸バリアントまたはロイシンのD−アミノ酸またはロイシンの保存的アミノ酸置換のD−アミノ酸またはロイシンの非天然のアミノ酸バリアントのD−アミノ酸であり、
−  X
7は、バリンまたはバリンの保存的アミノ酸置換またはバリンの非天然のアミノ酸バリアントまたはバリンのD−アミノ酸またはバリンの保存的アミノ酸置換のD−アミノ酸またはバリンの非天然のアミノ酸バリアントのD−アミノ酸であり、
およびここで、X
1−X
2−X
3−X
4−X
5−X
6−X
7およびX
7−X
6−X
5−X
4−X
3−X
2−X
1は、リピート中で交換可能に用いられ、ここで、nは、2〜4であり、
ならびに、各々のZ
iは、リンカーであり、およびここで、各々のZ
iは、独立して、1〜5単位のストレッチから選択され、ここで、単位は、PEG、アミノ酸または非天然のアミノ酸である。 
 
【0047】
  さらに別の態様において、本発明は、以下の構造:A
2i−1−X
1−X
2−X
3−X
4−X
5−X
6−X
7−A
2i−Z
iを含むペプチドを提供し、ここで、
−  各A
2i−1およびA
2iは、独立して、R、K、D、EおよびPから選択される1〜3の連続したゲートキーパーアミノ酸から選択され、およびここで、アミノ末端ゲートキーパーのアミノ酸は、任意にアセチル化されるか、および/またはここで、ペプチド配列中のカルボキシ末端ゲートキーパーのアミノ酸は、任意にアミド化され、
−  X
1は、グリシンまたはグリシンの保存的アミノ酸置換またはグリシンの非天然のアミノ酸バリアントまたはグリシンの保存的アミノ酸置換のD−アミノ酸またはグリシンの非天然のアミノ酸バリアントのD−アミノ酸であり、
−  X
2は、ロイシンまたはロイシンの保存的アミノ酸置換またはロイシンの非天然のアミノ酸バリアントまたはロイシンのD−アミノ酸またはロイシンの保存的アミノ酸置換のD−アミノ酸またはロイシンの非天然のアミノ酸バリアントのD−アミノ酸であり、
−  X
3は、グリシンまたはグリシンの保存的アミノ酸置換またはグリシンの非天然のアミノ酸バリアントまたはグリシンの保存的アミノ酸置換のD−アミノ酸またはグリシンの非天然のアミノ酸バリアントのD−アミノ酸であり、
−  X
4は、ロイシンまたはロイシンの保存的アミノ酸置換またはロイシンの非天然のアミノ酸バリアントまたはロイシンのD−アミノ酸またはロイシンの保存的アミノ酸置換のD−アミノ酸またはロイシンの非天然のアミノ酸バリアントのD−アミノ酸であり、
−  X
5は、アラニンまたはアラニンの保存的アミノ酸置換またはアラニンの非天然のアミノ酸バリアントまたはアラニンのD−アミノ酸またはアラニンの保存的アミノ酸置換のD−アミノ酸またはアラニンの非天然のアミノ酸バリアントのD−アミノ酸であり、
−  X
6は、ロイシンまたはロイシンの保存的アミノ酸置換またはロイシンの非天然のアミノ酸バリアントまたはロイシンのD−アミノ酸またはロイシンの保存的アミノ酸置換のD−アミノ酸またはロイシンの非天然のアミノ酸バリアントのD−アミノ酸であり、
−  X
7は、バリンまたはバリンの保存的アミノ酸置換またはバリンの非天然のアミノ酸バリアントまたはバリンのD−アミノ酸またはバリンの保存的アミノ酸置換のD−アミノ酸またはバリンの非天然のアミノ酸バリアントのD−アミノ酸であり、
ならびに、各々のZ
iは、リンカーであり、およびここで、各々のZ
iは、独立して、1〜5単位のストレッチから選択され、ここで、単位は、PEG、アミノ酸または非天然のアミノ酸である。 
 
【0048】
  さらに別の態様において、本発明は、以下の構造:(A
2i−1−X
1−X
2−X
3−X
4−X
5−X
6−X
7−A
2i−Z
i)
nを含むペプチドを提供し、ここで、
−  nは、は、1〜2の整数であり、iは、各リピート毎に1〜nまで増加し;
−  各A
2i−1およびA
2iは、独立して、R、K、D、EおよびPから選択される1〜3の連続したゲートキーパーアミノ酸から選択され、およびここで、アミノ末端ゲートキーパーのアミノ酸は、任意にアセチル化されるか、および/またはここで、ペプチド配列中のカルボキシ末端ゲートキーパーのアミノ酸は、任意にアミド化され、
−  X1は、グリシンまたはグリシンの保存的アミノ酸置換またはグリシンの非天然のアミノ酸バリアントまたはグリシンの保存的アミノ酸置換のD−アミノ酸またはグリシンの非天然のアミノ酸バリアントのD−アミノ酸であり、
−  X2は、ロイシンまたはロイシンの保存的アミノ酸置換またはロイシンの非天然のアミノ酸バリアントまたはロイシンのD−アミノ酸またはロイシンの保存的アミノ酸置換のD−アミノ酸またはロイシンの非天然のアミノ酸バリアントのD−アミノ酸であり、
−  X3は、グリシンまたはグリシンの保存的アミノ酸置換またはグリシンの非天然のアミノ酸バリアントまたはグリシンの保存的アミノ酸置換のD−アミノ酸またはグリシンの非天然のアミノ酸バリアントのD−アミノ酸であり、
−  X4は、ロイシンまたはロイシンの保存的アミノ酸置換またはロイシンの非天然のアミノ酸バリアントまたはロイシンのD−アミノ酸またはロイシンの保存的アミノ酸置換のD−アミノ酸またはロイシンの非天然のアミノ酸バリアントのD−アミノ酸であり、
−  X5は、アラニンまたはアラニンの保存的アミノ酸置換またはアラニンの非天然のアミノ酸バリアントまたはアラニンのD−アミノ酸またはアラニンの保存的アミノ酸置換のD−アミノ酸またはアラニンの非天然のアミノ酸バリアントのD−アミノ酸であり、
−  X6は、ロイシンまたはロイシンの保存的アミノ酸置換またはロイシンの非天然のアミノ酸バリアントまたはロイシンのD−アミノ酸またはロイシンの保存的アミノ酸置換のD−アミノ酸またはロイシンの非天然のアミノ酸バリアントのD−アミノ酸であり、
−  X7は、バリンまたはバリンの保存的アミノ酸置換またはバリンの非天然のアミノ酸バリアントまたはバリンのD−アミノ酸またはバリンの保存的アミノ酸置換のD−アミノ酸またはバリンの非天然のアミノ酸バリアントのD−アミノ酸であり、
およびここで、X
1−X
2−X
3−X
4−X
5−X
6−X
7およびX
7−X
6−X
5−X
4−X
3−X
2−X
1は、リピート中で交換可能に用いられ、ここで、nは、2であり、
ならびに、各々のZ
iは、リンカーであり、およびここで、各々のZ
iは、独立して、1〜5単位のストレッチから選択され、ここで、単位は、PEG、アミノ酸または非天然のアミノ酸である。 
 
【0049】
  さらに別の態様において、本発明は、その配列が配列番号1において表されるコルぺプチン1(P2)を提供する。
配列番号1:アミノ−RGLGLALVRRPRGLGLALVRR−カルボキシル
 
【0050】
  さらに別の態様において、X
1およびX
3は、グリシン、またはN−アルファ−メチル−グリシン(サルコシン)、シクロプロピルグリシンおよびシクロペンチルグリシンからなる群より選択されるグリシンの非天然のバリアントから選択され、X
2、X
4およびX
6は、ロイシン、またはバリン、または2−アミノ−3,3−ジメチル−酪酸(t−ロイシン)、アルファ−メチルロイシン、ヒドロキシロイシン、2,3−デヒドロ−ロイシン、N−アルファ−メチル−ロイシン、2−アミノ−5−メチル−ヘキサン酸(ホモロイシン)、3−アミノ−5−メチルヘキサン酸(ベータ−ホモロイシン)、2−アミノ−4,4−ジメチル−ペンタン酸(4−メチル−ロイシン、ネオペンチルグリシン)、4,5−デヒドロ−ノルロイシン(アリルグリシン)、L−ノルロイシン、N−アルファ−メチル−ノルロイシンおよび6−ヒドロキシ−ノルロイシンからなる群より選択されるロイシンの非天然のバリアントから選択され、X
5は、アラニン、または2−アミノ−イソ酪酸(2−メチルアラニン)、2−アミノ−2−メチルブタン酸(イソバリン)、N−アルファ−メチル−アラニン、2−アミノ−2−メチルペント−4−エン酸(アルファ−アリルアラニン)、ベータ−ホモアラニン、2−インダニル−グリシン、ジ−n−プロピル−グリシン、ジ−n−ブチル−グリシン、ジエチル−グリシン、(1−ナフチル)アラニン、(2−ナフチル)アラニン、シクロヘキシルグリシン、アダマンチル−グリシン、ベータ−ホモアリルグリシンからなる群より選択されるアラニンの非天然のバリアントから選択され、およびX
7は、バリン、またはロイシン、またはc−アルファ−メチル−バリン(2,3−ジメチルブタン酸)、2,3−デヒドロ−バリン、3,4−デヒドロ−バリン、3−メチル−L−イソバリン(メチルバリン)、2−アミノ−3−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸(ヒドロキシバリン)、ベータ−ホモバリンおよびN−アルファ−メチル−バリンからなる群より選択されるロイシンの非天然のバリアントから選択される。
 
【0051】
  用語「本発明のペプチド」は、本明細書において、本明細書において開示されるような本発明の原理を具体化する任意のペプチドおよびペプチドバリアント、例えば、限定することなく、コルぺプチン1(coleptin 1)およびそのバリアントに基づくペプチドを包含するように、便利に用いられる。
 
【0052】
  特に、本発明のペプチドの構造における、例えば配列番号1の構造における少なくとも1つのアラニンを、アラニンのアナログに対して置き換えることによる、本発明のペプチドのバリアント、例えば配列番号1のバリアントペプチドを開発するために用いることができるアラニンアナログを、表Iにおいて表す:
【化1-1】
【化1-2】
 
表I:アラニンアナログ
 
【0053】
  特に、ペプチドにおける構造における、例えば配列番号1の構造における少なくとも1つのアルギニンを、アルギニンのアナログに対して置き換えることによる、本発明のペプチドのバリアント、例えば配列番号1のバリアントを開発するために用いることができるアルギニンアナログを、表IIにおいて表す:
【化2-1】
 
【化2-2】
 
表II:アルギニンアナログ
 
【0054】
  特に、ペプチドの構造における、例えば配列番号1の構造における少なくとも1つのグリシンを、グリシンのアナログに対して置き換えることによる、本発明のペプチドのバリアント、例えば配列番号1のバリアントを開発するために用いることができるグリシンアナログを、表IIIにおいて表す:
【化3】
 
表III:グリシンアナログ
 
【0055】
  ある態様において、特に、ペプチドの構造における、例えば配列番号1の構造における少なくとも1つのグリシンを置き換えることによる、本発明のペプチドのバリアント、例えば配列番号1のバリアントを開発するために用いることができるグリシンアナログは、ベータ−アラニンまたは表IIIにおいて表されるアナログを含んでもよく、好ましくは、ベータ−アラニンであってよい。
 
【0056】
  特に、ペプチドの構造における、例えば配列番号1の構造における少なくとも1つのロイシンを、ロイシンのアナログに対して置き換えることによる、本発明のペプチドのバリアント、例えば配列番号1のバリアントを開発するために用いることができるロイシンアナログを、表IVにおいて表す:
【化4】
 
表IV:ロイシンアナログ
 
【0057】
  ある態様において、特に、ペプチドの構造における、例えば配列番号1の構造における少なくとも1つのロイシンを、ロイシンのアナログに対して置き換えることによる、本発明のペプチドのバリアント、例えば配列番号1のバリアントを開発するために用いることができるロイシンアナログを、以下に表す:
【化5】
 
 
【0058】
  ある態様において、特に、ペプチドの構造における、例えば配列番号1の構造における少なくとも1つのロイシンを、ロイシンのアナログに対して置き換えることによる、本発明のペプチドのバリアント、例えば配列番号1のバリアントを開発するために用いることができるロイシンアナログは、ノルバリンまたはアルファ−メチル−ノルバリンであってよい。
 
【0059】
  特に、ペプチドの構造における、例えば配列番号1の構造における少なくとも1つのバリンを、バリンのアナログに対して置き換えることによる、本発明のペプチドのバリアント、例えば配列番号1のバリアントを開発するために用いることができるバリンアナログを、表Vにおいて表す:
【化6】
 
表V:バリンアナログ
 
【0060】
  特に、ゲートキーパー残基リジン(K)をリジン(K)のアナログに対して置き換えることにより、本発明のペプチドを開発するために用いることができるリジンアナログを、表VIにおいて表す:
【化7-1】
 
【化7-2】
 
【化7-3】
 
【化7-4】
 
表VI:リジンアナログ
 
【0061】
  ある態様において、特に、ゲートキーパー残基リジン(K)をリジン(K)のアナログに対して置き換えることによる、本発明のペプチドを開発するために用いることができるリジンアナログは、N−イプシロン−ホルミル−リジン、N−イプシロン−メチル−リジン、N−イプシロン−i−プロピル−リジン、N−イプシロン−ジメチル−リジン、N−イプシロン−トリメチルアンモニウム−リジン、N−イプシロン−ニコチニル−リジン、{[5−アミノ−1−(ヒドラジンカルボニル)ペンチル]カルバモイル}ギ酸、N−アルファ−メチル−リジン、ホモリジン、ベータ−ホモリジン、2−アミノ−6−ジアゾ−5−オキソカプロン酸、ヒドロキシノルバリン、オルニチン、N−デルタ−メチル−オルニチン、N−デルタ−N−デルタ−ジメチル−オルニチン、N−デルタ−i−プロピル−オルニチン、c−アルファ−メチル−オルニチン、ベータ,ベータ−ジメチル−オルニチン、カナバニン、N−デルタ−メチル−N−デルタ−ブチル−オルニチン、N−デルタ−メチル−N−デルタ−フェニル−オルニチン、デルタ−(2−メチルピロリジン)−オルニチン、デルタ−ピペリジル−オルニチン、ガンマ−アミノ−デルタ−ピペリジル−吉草酸またはデルタ−アゼパニル−オルニチンであってよい。
 
【0062】
  特に、請求項1において表されるようなゲートキーパーにおけるプロリンを、人工のプロリン(P)に対して置き換えることによる、本発明のペプチドのバリアント、例えば配列番号1のバリアントを開発するために用いることができるプロリンアナログを、表VIIにおいて表す:
【化8-1】
 
【化8-2】
 
表VII:プロリンアナログ
 
【0063】
  さらに別の態様において、本発明のペプチド中のリンカーZ
iは、プロリン、4−ヒドロキシプロリン、(2R,5S)−5−フェニル−ピロリジン−2−カルボン酸、3,4−デヒドロ−L−プロリン、ベータ−(2−ベンゾチアゾリル)−アラニン、3−(2−フリル)−アラニンまたはベータ−(2−チエニル)−アラニンからなる。
  さらに別の態様において、本発明は、アミノ末端およびカルボキシ末端の非天然のゲートキーパー残基(A
2i−1およびA
2i)の間に環構造を形成することにより産生される環状ペプチドを提供する。
 
【0064】
  さらに別の態様において、本発明のペプチドは、検出可能な標識をさらに含む。
  本発明はまた、同位体標識されたペプチドを含み、これらは、1つ以上の原子が、天然において通常見出される原子質量または質量数とは異なる原子質量または質量数を有する原子により置き換えられるという事実について以外は、本明細書において定義されるものと同一である。本発明のペプチド中に組み込むことができる同位体の例として、水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、フッ素および塩素の同位体、例えばそれぞれ
2H、
3H、
13C、
11C、
14C、
15N、
18O、
17O、
31P、
32P、
35S、
18Fおよび
36CIが挙げられる。本発明のペプチドならびに前記ペプチドの薬学的に受入可能な塩または前述の同位体および/もしくは他の原子の他の同位体を含むものは、本発明の範囲内である。特定の同位体標識された本発明のペプチド、例えば
3Hおよび
14Cなどの放射活性同位体が組み込まれるものは、薬物および/または基質の組織分布アッセイにおいて有用である。トリチウム標識されたもの、すなわち
3H、炭素−14、すなわち
14C同位体は、それらの調製の容易性および検出能力のために、特に好ましい。さらに、重水素、すなわち
2Hなどの、より重い同位体による置換は、より高い代謝安定性、例えば増大したin vivoでの半減期、または低下した投与量要求から生じる、特定の治療上の利点をもたらし得、したがって、いくつかの状況においては好ましい場合がある。本発明の式Iの同位体標識されたペプチドは、一般に、以下の例において開示される手順を実施することにより、容易に入手可能な同位体標識された試薬を、非同位体標識試薬を置き換えることにより、調製することができる。
 
【0065】
  さらに別の態様において、本発明のペプチドは、半減期の延長を増大させる分子をさらに含む。
  さらに別の態様において、本発明のペプチドは、ペプチドの溶解度を増大させる部分をさらに含む。
 
【0066】
  他の特定の態様により、分子は、例えばそれらのin vivoでの半減期を延長するために、他の部分に融合していてもよい。安定性を増大させることの他に、かかる部分はまた、それらが融合している分子の溶解度を増大させ得る。ゲートキーパー(番号付けされたX部分)の存在は、原理的には、分子の早すぎる凝集を防止して、それらを溶液中に保持するためには十分であるが、溶解度を増大させる(すなわち凝集を防止する)部分のさらなる添加は、分子のより容易な取り扱いをもたらし得、特に、安定性および有効期間を改善し得る。かかる部分の周知の例は、PEG(ポリエチレングリコール)である。この部分は、リンカーとしてのみならず、可溶化性部分としても用いられ得るので、特に想起される。他の例として、ペプチドおよびタンパク質またはタンパク質ドメイン、またはさらに完全なタンパク質(例えばGFP)が挙げられる。このことに関して、PEGのように、1つ部分が様々な機能または効果を有し得ることに注意すべきである。例えば、flagタグ(配列DYKDDDDK)は、標識として用いられ得るペプチド部分であるが、その電荷密度に起因して、それはまた、可溶化を増強するであろう。PEG化は、生物製剤の溶解度を増大させることが、既にしばしば示されている(例えば、Veronese and Mero, BioDrugs. 2008; 22(5):315-29)。ペプチド、ポリペプチド、タンパク質またはタンパク質ドメインタグを目的の分子に付加することは、当該分野において広範に記載されている。例として、これらに限定されないが、シヌクレインに由来するペプチド(例えば、Park et al., Protein Eng. Des. Sel. 2004; 17:251-260)、SET(溶解度増強タグ、Zhang et al., Protein Expr Purif 2004; 36:207‐216)、チオレドキシン(TRX)、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質(MBP)、N-Utilization substance(NusA)、低分子ユビキチン様修飾因子(SUMO)、ユビキチン(Ub)、ジスルフィド結合C(disulfide bond C:DsbC)、Seventeen kilodalton protein(Skp)、ファージT7タンパク質キナーゼフラグメント(T7PK)、タンパク質G  B1ドメイン、タンパク質A  IgG  ZZリピートドメイン、および細菌免疫グロブリン結合ドメイン(Hutt et al., J Biol Chem.; 287(7):4462-9, 2012)が挙げられる。タグの性質は、当業者により決定され得る適用に依存するであろう。例えば、本明細書において記載される分子のトランスジェニック発現のために、細胞の機構による早すぎる分解を防止するために、分子を、より大きなドメインに融合させることが想起され得る。他の適用は、分子の特性を改変しすぎないように、より小さな可溶化タグ(例えば、30アミノ酸未満、または20アミノ酸未満、またはわずか10アミノ酸未満)への融合を想起し得る。
 
【0067】
  半減期を延長することの他に、分子は、他のまたはさらなる薬物動態学的および薬力学的特性を改変する部分に融合させてもよい。例えば、アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン)、アルブミン結合ドメインまたは合成アルブミン結合ペプチドへの融合は、様々な治療用タンパク質の薬物動態学および薬力学を改善することが知られている(Langenheim and Chen, Endocrinol.; 203(3):375-87, 2009)。しばしば用いられる別の部分は、抗体のフラグメント結晶化可能領域(fragment crystallizable region:Fc)である。これらの部分の性質は、本発明のためには極めて重要ではなく、適用に依存して当業者により決定されてよい。
 
【0068】
  さらに別の態様において、本発明のペプチドは、前記ペプチドのアミノ末端および/またはカルボキシ末端において、少なくとも1つのD−アラニンをさらに含む。
  さらに別の態様において、本発明は、医薬としての使用のための本発明のペプチドを提供する。
  さらに別の態様において、本発明は、抗菌剤としての使用のための本発明のペプチドを提供する。
  さらに別の態様において、本発明は、グラム陽性細菌を処置するための使用のための本発明のペプチドを提供する。
  さらに別の態様において、本発明は、グラム陰性細菌を処置するための使用のための本発明のペプチドを提供する。
  さらに別の態様において、本発明は、薬剤耐性菌株を処置するための使用のための本発明のペプチドを提供する。
  さらに別の態様において、本発明は、多剤耐性菌株を処置するための使用のための本発明のペプチドを提供する。
  さらに別の態様において、本発明は、カルバペネム耐性腸内細菌(Enterobacteriaceae)、薬剤耐性淋菌、多剤耐性アセチノバクター(Acetinobacter)、薬剤耐性カンピロバクター、広域スペクトルベータ−ラクタマーゼ産生腸内細菌、多剤耐性緑膿菌、薬剤耐性非チフス性サルモネラ菌、薬剤耐性チフス菌および薬剤耐性赤痢菌を含むリストから選択される多剤耐性菌株を処置するための使用のための本発明のペプチドを提供する。
 
【0069】
  さらに別の態様において、本発明は、診断剤としての使用のための本発明のペプチドの使用を提供する。
  さらに別の態様において、本発明は、本発明のペプチドおよび薬学的に受入可能なキャリアを含む医薬組成物を提供する。
 
【0070】
  さらに別の態様において、本発明は、抗菌ペプチドを産生するための方法を提供し、該方法は、以下のステップを含む:
i)5〜14アミノ酸、例えば5〜12アミノ酸、または6〜14アミノ酸、例えば6〜12アミノ酸の長さを有する、凝集傾向領域(APR)のin silicoのリストを作製すること、ここで、APRは、細菌プロテオームにおいて同定される、
ii)以下の構造:(A
2i−1−APR−A
2i−Z
i)
n,に基づくAPRを含む、20〜200個の数の異なるペプチドを合成すること、ここで、nは、1〜4の整数であり、iは、各リピート毎に1〜nまで増加し、各A
2i−1およびA
2iは、独立して、R、K、D、EおよびPから選択される1〜3の連続したゲートキーパーアミノ酸から選択される、
iii)抗菌効果について前記ペプチドを試験すること、および抗菌ペプチドを生成すること。
 
【0071】
  タンパク質中のかかる配列を同定する、特にプロテオーム中に存在するタンパク質中のAPR配列を同定する一つの特に便利な方法は、ベータ−凝集を予測するアルゴリズムを用いることによる。かかるアルゴリズムは、典型的には、生物物理学的パラメーターを考慮し得る。TangoおよびZyggregatorは、かかるアルゴリズムの一般的な例であるが、多くの他のものが、当該分野において記載されており、これらは、限定されないが、以下により記載されるものを含む:Bryan et al., PLoS Comput Biol. 5(3):e1000333, 2009;Caflish, Curr Opin Chem Biol. 10(5):437-44, 2006;Conchillo-Sole et al., BMC Bioinformatics 8:65, 2007;Galzitskaya et al., PLoS Comput Biol. 29;2(12):e177, 2006;Goldschmidt et al., PNAS 107(8):3487-92, 2010;Maurer-Stroh et al., Nat Methods 7(3):237-42, 2010;Rojas Quijano et al., Biochemistry 45(14):4638-52, 2006;Saiki et al., Biochem Biophys Res Commun 343(4):1262-71, 2006;Sanchez de Groot et al., BMC Struct Biol 5:18, 2005;Tartaglia et al., Protein Sci. 14(10):2723-34, 2005;Tartaglia et al., J Mol Biol. 380(2):425-36, 2008;Thompson et al., PNAS 103(11):4074-8, 2006;Trovato et al., Protein Eng Des Sel. 20(10):521-3, 2007;Yoon and Welsh, Protein Sci. 13(8):2149-60, 2004;Zibaee et al., Protein Sci. 16(5):906-18, 2007。これらのうちの多くは、主にアミロイド凝集性配列に関係し、無定形のベータ−凝集のみと関係するわけではない。両方の凝集の形態の配列空間は、重複し得(Rousseau et al., Current Opinion in Structural Biology 16:118‐126, 2006)、反応の動態学および条件が目的のタンパク質(単数または複数)の凝集に有利である限り、両方の凝集の形態が想起される。
 
【0072】
  いくつかの態様において、本発明のペプチドは、アミノおよび/またはカルボキシル末端において1つ以上のさらなる残基を含んでもよい。いくつかの態様において、1つ以上のさらなる残基は、D−アラニンである。例えば、ペプチドは、アミノおよび/またはカルボキシル末端において1つまたは2つのD−アラニンを含んでもよい。
 
【0073】
  同様に、当業者は、本発明はまた、特化した天然に存在しないペプチドを含む融合ポリペプチドを包含することを理解するであろう。代替として、融合タンパク質は、レポーター分子を含んでもよい。他の態様において、融合タンパク質は、ペプチドの活性と同じであるかまたはこれと異なる機能または活性、例えばターゲティング性、結合性または酵素活性または機能を提供するポリペプチドを含んでもよい。同様に、本明細書において特に開示されるペプチドは、典型的には、アミノ酸配列における置換を耐容し、生物学的活性を実質的に保持するであろうことが、理解されるであろう。本明細書において特に開示されるもの以外の本発明のペプチドを同定するために、アミノ酸置換は、当該分野において公知の任意の特徴に基づくものであってよく、これは、例えばアミノ酸側鎖置換基、それらの疎水性、親水性、電荷サイズなどの相対的な類似性または相違を含む。
 
【0074】
  当該分野において公知であるとおり、ポリペプチドが、既知の配列に対して配列同一性または類似性を有するか否かを同定するために、多数の異なるプログラムを用いることができる。配列同一性または類似性は、当該分野において公知の標準的な技術を用いて決定することができ、これは、限定されないが、Smith & Waterman, Adv. Appl. Math. 2:482 (1981)の局所配列同一性アルゴリズム、Needleman & Wunsch, J. Mol. Biol. 48:443 (1970)の配列同一性アラインメントアルゴリズムによるもの、Pearson & Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444 (1988)の類似性方法の検索により、これらのアルゴリズムのコンピューターによる実行によるもの(Wisconsin Genetics Software Package、Genetics Computer Group、575 Science Drive, Madison, Wis.におけるGAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA)、Devereux et al., Nucl. Acid Res. 12:387 (1984)により記載されるBest Fit配列プログラムによるものを含み、好ましくはデフォルトの設定を用いるか、または検査による。通常のアルゴリズムの一例は、PILEUPである。PILEUPは、漸進的なペアワイズアラインメントを用いて、関連する配列の群から複数の配列アラインメントを作成する。それはまた、アラインメントを作成するために用いられるクラスタリング関係を示す樹形図をプロットすることもできる。PILEUPは、Feng & Doolittle, J. Mol. Evol. 35:351 (1987)の漸進的なアラインメント方法の簡略化を用いる;当該方法は、Higgins & Sharp, CABIOS 5:151 (1989)により記載されるものと類似する。有用なアルゴリズムの別の例は、Altschul et al., J. Mol. Biol. 215:403 (1990)およびKarlin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873 (1993)において記載されるBLASTアルゴリズムである。特に有用なBLASTプログラムは、WU-BLAST-2プログラムであり、これは、Altschul et al., Meth. Enzymol., 266:460 (1996);blast.wustl/edu/blast/README.htmlから入手した。WU-BLAST-2は、いくつかの検索パラメーターを用い、これらは好ましくはデフォルト値に設定される。パラメーターは、動的な値であり、特定の配列の組成および目的の配列を検索する対象となる特定のデータベースの組成に依存して、プログラム自体により確立される;しかし、感受性を増大させるために、値を調節してもよい。さらなる有用なアルゴリズムは、Altschul et al., Nucleic Acids Res. 25:3389 (1997)により報告されるとおりのgapped BLASTである。マッチする同一残基の数を、アラインメントされる領域中の「より長い」配列の残基の総数で除算することにより、アミノ酸配列同一性のパーセンテージの値が決定される。「より長い」配列とは、アラインメントされる領域において実際に最も多い残基を有するものである(アラインメントスコアを最大にするためにWU-Blast-2により導入されるギャップは無視される)。アラインメントは、アラインメントされるべき配列におけるギャップの導入を含んでもよい。加えて、本明細書において特に開示されるペプチドより多い、またはこれより少ないアミノ酸を含む配列については、一態様において、配列同一性のパーセンテージは、アミノ酸の総数に関する同一アミノ酸の数に基づいて決定されるであろうことが、理解される。したがって、例えば、本明細書において特に開示される配列より短い配列の配列同一性は、一態様においては、当該より短い配列中のアミノ酸の数を用いて決定されるであろう。パーセント同一性の計算において、相対重量は、例えば挿入、欠失、置換などの配列バリエーションの多様な現れ方に帰するものではない。
 
【0075】
  特定の態様において、本発明のペプチドは、適切なポリペプチドのin vivoでの残存を促進するために、アミノおよび/またはカルボキシル末端におけるブロッキング剤の付加により、in vivoでの使用のために修飾することができる。これは、ペプチド末端が、細胞による取り込みの前にプロテアーゼにより分解される傾向がある状況において、有用であり得る。かかるブロッキング剤は、限定することなく、さらなる関係するまたは無関係のペプチド配列を含んでもよく、これは、投与されるべきペプチドのアミノおよび/またはカルボキシル末端残基に結合していてもよい。これは、ペプチドの合成の間に化学的に、または組み換えDNA技術により、任意の好適な方法により、行うことができる。例えば、1つ以上の天然に存在しないアミノ酸、例えばD−アラニンなどを、末端に付加させてもよい。あるいは、ピログルタミン酸または当該分野において公知の他の分子などのブロッキング剤を、アミノおよび/またはカルボキシル末端残基に結合させてもよく、または、アミノ末端におけるアミノ基もしくはカルボキシル末端におけるカルボキシル基を、異なる部分で置き換えてもよい。加えて、ペプチド末端を、例えばN末端のアセチル化および/またはC末端のアミド化により修飾してもよい。同様に、ペプチドを、投与の前に、薬学的に受入可能な「キャリア」タンパク質に、共有結合により、または非共有結合的に、カップリングしてもよい。
 
【0076】
本発明のペプチド−本発明のペプチドを含む医薬組成物の投与
  一態様において、本発明のペプチドは、対象に直接投与される。一般に、本発明の化合物は、薬学的に受入可能なキャリア(例えば、生理食塩水)中に懸濁させて、経口で、または静脈内注入により投与されるか、または、皮下で、筋肉内で、髄腔内、腹腔内で、直腸内で、膣内で、鼻内で、胃内で、気管内で、もしくは肺内で投与されるであろう。別の態様において、気管内または肺内送達は、標準的なネブライザー、ジェットネブライザー、ワイヤーメッシュネブライザー、乾燥粉末吸入器、または定量噴霧式吸入器を用いて達成することができる。それらは、例えば肺、腎臓、膀胱または腸などの細菌感染の部位に直接送達してもよい。必要とされる投与量は、投与の経路の選択肢;処方物の性質;患者の疾病の性質;対象のサイズ、重量、表面積、年齢および性別;投与されている他の薬物;ならびに主治医の判断に依存する。好適な投与量は、0.01〜100mg/kgの範囲である。多様なペプチドおよび可能なバリアント、ならびに多様な経路の投与の異なる効率を考慮して、必要とされる投与量の広範なバリエーションが予測される。例えば、経口投与は、i.v.注射による投与よりも高い投与量を必要とすることが予測されるであろう。これらの投与レベルのバリエーションは、当該分野においてよく理解されているような最適化のための標準的な実験ルーチンを用いて調整することができる。投与は、単一であっても複数であってもよい(例えば、2倍、3倍、4倍、6倍、8倍、10倍、20倍、50倍、100倍、150倍、またはそれより多く)。
 
【0077】
  ある態様において、本発明のペプチドは、例えばペプチドを分解に対して保護するために、少なくとも1つの修飾された末端を含む。いくつかの態様において、N末端をアセチル化するか、および/またはC末端をアミド化する。ある態様において、本発明のペプチドは、少なくとも1つの非天然のアミノ酸(例えば1つ、2つ、3つもしくはそれより多く)、または少なくとも1つの末端修飾(例えば1つもしくは2つ)を含む。いくつかの態様において、ペプチドは、少なくとも1つの非天然のアミノ酸および少なくとも1つの末端修飾を含む。
 
【0078】
  本発明のペプチドは、任意に、他の治療剤と組み合わせて送達してもよい。さらなる治療剤を、本発明のペプチドと同時に送達してもよい。本明細書において用いられる場合、「同時に(concurrently)」という語は、組み合わせ効果を産生するために十分に時間的に近いことを意味する(すなわち、同時に(concurrently)とは、同時に(simultaneously)であってもよく、または、それは、2つ以上のイベントが、互いの前後の短期間のうちに起こることであってもよい)。本発明の一態様において、天然に存在しないペプチドは、天然に存在しないペプチドと抗生剤との組み合わせ活性が、より優れた活性を細菌のみに対して有する場合に、細菌の増殖を調節する抗生物質と同時に患者に送達される。本発明の別の側面は、本発明からのペプチドを含むキットに関し、本発明の方法を実施するために有用である。キットは、方法を実施するためのさらなる剤(例えば、バッファー、容器、さらなる治療剤)、ならびに説明をさらに含んでもよい。さらなる側面として、本発明は、上で議論される治療効果のうちのいずれか(例えば、殺菌)を達成するために、医薬処方物およびこれを投与する方法を提供する。医薬処方物は、上で議論される試薬のうちのいずれかを、薬学的に受入可能なキャリア、例えば天然に存在しないペプチドまたはそのバリアント中に含んでもよい。「薬学的に受入可能な」により、生物学的または別段に望ましくなくない材料、すなわち、毒性などの任意の望ましくない生物学的効果を引き起こすことなく対象に投与することができる材料が意味される。本発明の処方物は、任意に、薬用剤、医薬剤、キャリア、アジュバント、分散剤、希釈剤などを含んでもよい。本発明のペプチドは、既知の技術に従って、医薬用キャリア中で投与のために処方することができる。例えば、Remington, The Science And Practice of Pharmacy(Ed. 2014)を参照。本発明による医薬処方物の製造において、ペプチド(その生理学的に受入可能な塩を含む)は、典型的には、特に、受入可能なキャリアと混合される。キャリアは、固体または液体、または両方であってよく、好ましくは、ペプチドの重量により0.01または0.5%〜95%または99%を含んでもよい単位用量処方物、例えば錠剤として、ペプチドと共に処方される。1つ以上のペプチドを、本発明の処方物中に組み込むことができ、これは、周知の製薬の技術のうちのいずれかにより調製することができる。本発明のさらなる側面は、対象をin vivoで処置する方法であって、該方法は、本発明のペプチドを薬学的に受入可能なキャリア中に含む医薬組成物を対象に投与することを含み、ここで、医薬組成物は、治療有効量において投与される。本発明のペプチドの、それを必要とするヒト対象または動物への投与は、化合物を投与するための当該分野において公知の任意の手段によるものであってよい。本発明の処方物は、経口、直腸、局所、頬側(例えば舌下)、膣、非経口(例えば、皮下、骨格筋、心筋、横隔膜の筋肉および平滑筋を含む筋肉内、皮内、静脈内、腹腔内)、局所(すなわち、気道表面を含む皮膚および粘膜の両方の表面)、鼻内、経皮、関節内、気管内、および吸入投与、門脈内送達による肝臓への投与、ならびに直接的な臓器注射(例えば、肝臓内へ、中枢神経系への送達のために脳内へ、膵臓内へ、または腫瘍もしくは腫瘍の周囲の組織中へ)のために好適なものを含む。任意の所与の場合における最も好適な経路は、処置されている状態の性質および重篤度に、ならびに、用いられている特定のペプチドの性質に依存するであろう。
 
【0079】
  注射のために、キャリアは、典型的には、無菌のパイロジェンフリー水、無菌の生理食塩水、高張食塩水、パイロジェンフリーリン酸緩衝化食塩水溶液などの液体であろう。投与の他の方法のために、キャリアは、固体または液体のいずれであってもよい。
  経口投与のために、ペプチドは、カプセル、錠剤および粉末などの固体投与形態において、またはエリキシル剤、シロップおよび懸濁液などの液体投与形態において、投与することができる。ペプチドは、不活性成分および粉末化されたキャリア、例えばグルコース、ラクトース、スクロース、マンニトール、デンプン、セルロースまたはセルロース誘導体、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、サッカリンナトリウム、滑石、炭酸マグネシウムなどと一緒に、ゼラチンカプセル中に封入してもよい。望ましい色、味、安定性、緩衝化能力、分散または他の公知の望ましい特色を提供するために添加することができるさらなる不活性成分の例は、赤色酸化鉄、シリカゲル、ラウリル硫酸ナトリウム、二酸化チタン、食用白色インクなどである。類似の希釈剤は、圧縮錠剤を製造するために用いることができる。錠剤およびカプセルはいずれも、数時間の期間にわたり薬品の連続的な放出をもたらすために、持続放出用製品として製造することができる。圧縮錠剤は、任意の不快な味を遮蔽して、錠剤を雰囲気から保護するために、糖コーティングまたはフィルムコーティングされていても、または胃腸管における選択的崩壊のために、腸溶性コーティングされていてもよい。経口投与のための液体投与形態は、患者のアクセプタンスを増大するために、着色剤および香味剤を含んでもよい。頬側(舌下)投与のために好適な処方物として、香味付けされた基剤(通常はスクロースおよびアラビアゴムまたはトラガカント)中に化合物を含むロゼンジ;ゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアラビアゴムなどの不活性な基剤中に化合物を含むトローチが挙げられる。非経口投与のために好適な本発明の処方物は、無菌の水性および非水性のペプチドの注射溶液を含み、この調製物は、好ましくは、意図されるレシピエントの血液と等張である。これらの調製物は、抗酸化剤、バッファー、静菌剤、および処方物を意図されるレシピエントの血液と等張にする溶質を含んでもよい。水性および非水性の無菌の懸濁液は、懸濁剤および濃縮剤を含んでもよい。処方物は、単位/用量または複数用量の容器、例えば密封されたアンプルおよびバイアル中に存在してもよく、凍結乾燥(freeze-dry/lyophilize)状態において貯蔵してもよく、これは、使用の直前に、無菌の液体キャリア、例えば食塩水または注射用水の添加のみを必要とする。
 
【0080】
  即時注射溶液および懸濁液は、先に記載される種類の無菌の粉末、顆粒および錠剤から調製することができる。例えば、本発明の一側面において、密封された容器中の単位投与形態における、本発明のペプチドを含む、注射可能な、安定な無菌組成物が提供される。ペプチドまたは塩は、好適な薬学的に受入可能なキャリアにより再構成して、対象中へのその注射のために好適な液体組成物を形成することができる、凍結乾燥物の形態において提供される。単位投与形態は、典型的には、約1mg〜約10グラムのペプチドまたは塩を含む。ペプチドまたは塩が、実質的に非水溶性である場合、十分量の薬学的に受入可能な乳化剤を、当該ペプチドまたは塩を水性キャリア中で乳化するために十分な量で使用することができる。1つのかかる有用な乳化剤は、ホスファチジルコリンである。直腸投与のために好適な処方物は、好ましくは、単位用量の坐剤として提示される。これらは、ペプチドを、1つ以上の便利な固体キャリア、例えばカカオバターと混合して、次いで、生じた混合物を成形することにより、調製することができる。皮膚への局所適用のために好適な処方物は、好ましくは、軟膏、クリーム、ローション、ペースト、ゲル、スプレー、エアロゾルまたはオイルの形態をとる。用いることができるキャリアとして、ワセリン、ラノリン、ポリエチレングリコール、アルコール、皮膚浸透増強剤(transdermal enhancer)、およびこれらの2つ以上の組み合わせが挙げられる。経皮投与のために好適な処方物は、レシピエントの表皮との密接な接触を長期間にわたり保持するように適応させた個別のパッチとして提示してもよい。経皮投与のために好適な処方物はまた、イオン泳動により送達することができ(例えばTyle, Pharm. Res. 3:318 (1986)を参照)、典型的には、任意に、緩衝化されたペプチドの水溶液の形態をとってよい。好適な処方物は、クエン酸またはビス/トリスバッファー(pH6)またはエタノール/水を含み、0.1〜0.2Mの化合物を含む。ペプチドは、代替的に、鼻内投与のために処方してもよく、別段に、任意の好適な手段により、対象の肺に投与しても、例えば、対象が吸入するペプチド含有呼吸用粒子のエアロゾル懸濁液により投与してもよい。呼吸用粒子は、液体であっても固体であってもよい。用語「エアロゾル」は、細気管支または鼻孔中に吸入されることができる任意の気体媒介性の懸濁相を含む。特に、エアロゾルは、気体媒介性の液滴の懸濁液を含み、これは、定量噴霧式吸入器またはネブライザーにおいて、またはミストスプレー器において、産生することができる。エアロゾルはまた、空気または他のキャリアガス中に懸濁された乾燥粉末組成物を含み、これは、例えば吸入デバイスからガス注入により送達することができる。ペプチドを含む液体粒子のエアロゾルは、当業者に公知であるとおりの任意の好適な手段により、例えば圧力駆動式エアロゾルネブライザーまたは超音波式ネブライザーにより、産生することができる。ペプチドを含む固体粒子のエアロゾルは、同様に、製薬の分野において公知の技術により、任意の固体粒子医薬用エアロゾル発生器により産生することができる。あるいは、全身性の様式ではなくむしろ局所性の様式において、例えばデポーまたは持続放出処方物において、ペプチドを投与してもよい。
 
【0081】
  さらに、本発明は、本明細書において開示されるペプチドおよびその塩のリポソーム処方物を提供する。リポソーム懸濁液を形成するための技術は、当該分野において周知である。ペプチドまたはその塩が水溶性の塩である場合、従来のリポソーム技術を用いて、前記ペプチドまたはその塩を、脂質小胞中に組み込むことができる。かかる場合において、ペプチドまたはその塩の水溶性に起因して、当該ペプチドまたはその塩は、実質的に、リポソームの親水性の中心またはコア内に搭載されるであろう。使用される脂質層は、任意の従来の組成のものであってよく、コレステロールを含むものであっても、コレステロールフリーであってもよい。目的のペプチドまたはその塩が非水溶性である場合、やはり、従来のリポソーム形成技術を使用して、当該塩を、実質的に、リポソームの構造を形成する疎水性脂質二重層中に搭載することができる。いずれの場合においても、産生されるリポソームは、標準的な超音波処理および均質化技術の使用を通して、サイズを縮小してもよい。本明細書において開示されるペプチドまたはその塩を含むリポソーム処方物を、凍結乾燥して、凍結乾燥物を産生してもよく、これは、水などの薬学的に受入可能なキャリアにより再構成して、リポソーム懸濁液を再生することができる。非水溶性ペプチドの場合、医薬組成物は、非水溶性ペプチドを、例えば水性基剤などのエマルジョン中で含んで調製してもよい。かかる場合において、組成物は、所望される量のペプチドを乳化するために十分な量の薬学的に受入可能な乳化剤を含むであろう。特に有用な乳化剤として、ホスファチジルコリンおよびレシチンが挙げられる。特定の態様において、ペプチドは、その用語が上で定義されるとおり、治療有効量において対象に投与される。薬学的に活性なペプチドの投与量は、当該分野において公知の方法により決定することができる。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciencesを参照。任意の特定のペプチドの治療有効投与量は、ペプチドごと、および患者ごとに変化し、患者の状態および送達の経路に依存するであろう。一般的な提案として、約0.1〜約50mg/kgの投与量は、治療効果を有するであろう。ここで、全ての重量は、塩が使用される場合を含めて、ペプチドの重量に基づいて計算される。より高いレベルにおける毒性の懸念は、静脈内での投与量をより低いレベル、例えば約10mg/kgまでに限定し得、ここで、全ての重量は、塩が使用される場合を含めて、ペプチドの重量に基づいて計算される。約10mg/kg〜約50mg/kgの投与量が、経口投与のために使用することができる。典型的には、約0.5mg/kg〜5mg/kgの投与量が、筋肉内注射のために使用することができる。それぞれ、静脈内または経口投与のために、特定の投与量は、約1μmol/kg〜50μmol/kgであり、ことさらには約22μmol/kgまで、および33μmol/kgまでのペプチドである。本発明の特定の態様において、治療効果を達成するために、1回より多くの投与(例えば2回、3回、4回またはそれより多くの投与)を、多様な時間間隔にわたり(例えば1時間毎、1日毎、1週間毎、1か月毎など)、使用することができる。本発明は、獣医学および医学的適用において用途を見出す。好適な対象として、鳥類および哺乳動物の両方が挙げられ、哺乳動物が好ましい。用語「鳥類」は、本明細書において用いられる場合、これらに限定されないが、ニワトリ、カモ、アヒル、ウズラ、シチメンチョウ、およびキジを含む。用語「哺乳動物」は、本明細書において用いられる場合、これらに限定されないが、ヒト、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ネコ、イヌ、ウサギ類などを含む。ヒトの対象は、新生児、幼児、青少年および成人を含む。
 
【0082】
ペプチドの合成
  特定の態様において、本発明のペプチドは、当該分野において公知のいくつかのペプチド合成方法に従って産生することができる。ペプチド合成方法は、例えば、固相合成プロセスおよび液相合成プロセスのうちのいずれかであってよい。すなわち、目的のペプチドは、化合物(I)を構成することができる部分的なペプチドまたはアミノ酸と、残りの部分(これは、2つ以上のアミノ酸により構成することができる)の縮合を、所望される配列に従って繰り返すことにより、産生することができる。望ましい配列を有する生成物が保護基を有する場合、目的のペプチドは、保護基を除去することにより生成することができる。知られるべき縮合する方法および保護基を除去する方法の例は、以下の(1)〜(5)において記載される方法を含む。(1)M. Bodanszky and M. A. Ondetti: Peptide Synthesis, Interscience Publishers, New York (1966)、(2)Schroeder and Luebke: The Peptide, Academic Press, New York (1965)、(3)Nobuo Izumiya, et al.: Peptide Gosei-no-Kiso to Jikken (Basics and experiments of peptide synthesis), published by Maruzen Co. (1975)、(4)Haruaki Yajima and Shunpei Sakakibara: Seikagaku Jikken Koza (Biochemical Ex-periment) 1, Tanpakushitsu no Kagaku (Chemistry of Proteins) IV, 205 (1977)、および(5)Haruaki Yajima, ed.: Zoku Iyakuhin no Kaihatsu (A sequel to Development of Pharmaceuticals), Vol. 14, Peptide Synthesis, published by Hirokawa Shoten。反応後に、ペプチドは、例えば溶媒抽出、蒸留、カラムクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、再結晶化など、従来の精製の方法を用いて精製および単離することができる。上述の方法により得られたペプチドが、遊離の形態である場合、それは、既知の方法により好適な塩に変換することができる;逆に、ペプチドが塩の形態で得られる場合、当該塩は、既知の方法により遊離の形態または他の塩に変換することができる。出発化合物もまた、塩であってもよい。かかる塩の例として、以下に記述されるペプチドの塩として例示されるものが挙げられる。保護されたアミノ酸またはペプチドの縮合のために、ペプチド合成のために使用可能な多様な活性化試薬を用いることができ、これらは、特に好ましくは、トリスホスホニウム(trisphosphonium)塩、テトラメチルウロニウム塩、カルボジイミドなどである。トリスホスホニウム塩の例として、ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)、ブロモトリス(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBroP)、7−アザベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyAOP)が挙げられ、テトラメチルウロニウム塩の例として、2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−ヘキサフルオロホスフェート(HBTU)、2−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−ヘキサフルオロホスフェート(HATU)、2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)、2−(5−ノルボルナン−2,3−ジカルボキシイミド)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TNTU)、O−(N−スクシンイミジル(succimidyl))−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TSTU)が挙げられ、カルボジイミドの例として、DCC、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(DIPCDI)、N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDCI.HCl)などが挙げられる。これらを用いる縮合のために、ラセミ化阻害剤(例えば、HONB、HOBt、HOAt、HOOBtなど)の添加を用いることができる。縮合のために用いられるべき溶媒は、ペプチド縮合反応のために使用可能であることが知られるものから適切に選択される。例えば、酸アミド、例えば無水または含水性のN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセタミド、N−メチルピロリドンなど、ハロゲン化炭化水素、例えば塩化メチレン、クロロホルムなど、アルコール、例えばトリフルオロエタノール、フェノールなど、スルホキシド、例えばジメチル−スルホキシドなど、三級アミン、例えばピリジンなど、エーテル、例えばジオキサン、テトラヒドロフランなど、ニトリル、例えばアセトニトリル、プロピオンニトリルなど、エステル、例えば酢酸メチル、酢酸エチルなど、これらの適切な混合物などを用いることができる。反応温度は、ペプチド結合反応のために使用可能であることが知られている範囲から適切に選択され、通常、約−20℃(「℃」は、「摂氏」を表す)〜50℃の範囲から選択される。活性化されたアミノ酸誘導体は、通常、1.5〜6倍の過剰量において用いられる。相合成において、ニンヒドリン反応を用いる試験により縮合が不十分であることが明らかとなる場合、十分な縮合は、限定することなく、保護基の縮合反応を繰り返すことにより行うことができる。反応を繰り返した後で縮合がまだ不十分である場合、その後の反応に対する影響を回避することができるように未反応のアミノ酸を、無水酢酸、アセチルイミダゾールなどによりアシル化することができる。出発アミノ酸のアミノ基のための保護基の例として、Z、Boc、tert−ペンチルオキシカルボニル、イソボルニルオキシカルボニル、4−メトキシベンジルオキシカルボニル、Cl−−Z、Br−−Z、アダマンチルオキシカルボニル、トリフルオロアセチル、フタロイル、ホルミル、2−ニトロフェニルスルフェニル、ジフェニルホスフィノチオイル、Fmoc、トリチルなどが挙げられる。出発アミノ酸のためのカルボキシル保護基の例として、上述のC
1−6アルキル基、C
3−10シクロアルキル基、C
7−14アラルキル基に加えて、アリル、2−アダマンチル、4−ニトロベンジル、4−メトキシベンジル、4−クロロベンジル、フェナシルおよびベンジルオキシカルボニルヒドラジド、tert−ブトキシカルボニルヒドラジド、トリチルヒドラジドなどが挙げられる。セリンまたはスレオニンのヒドロキシル基は、例えば、エステル化またはエーテル化により保護することができる。エステル化のために好適な基の例として、低級(C
2−4)アルカノイル基、例えばアセチル基など、アロイル基、例えばベンゾイル基など、および有機酸などから誘導される基が挙げられる。加えて、エーテル化のために好適な基の例として、ベンジル、テトラヒドロピラニル、tert−ブチル(Bu.sup.t)、トリチル(Trt)などが挙げられる。チロシンのフェノールのヒドロキシル基のための保護基の例として、Bzl、2,6−ジクロロベンジル、2−ニトロベンジル、Br−−Z、tert−ブチルなどが挙げられる。ヒスチジンのイミダゾールのための保護基の例として、Tos、4−メトキシ−2,3,6−トリメチルベンゼンスルホニル(Mtr)、DNP、Bom、Bum、Boc、Trt、Fmocなどが挙げられる。
 
【0083】
  アルギニンのグアニジノ基のための保護基の例として、Tos、Z、4−メトキシ−2,3,6−トリメチルベンゼンスルホニル(Mtr)、p−メトキシベンゼンスルホニル(MBS)、2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマン−6−スルホニル(Pmc)、メシチレン−2−スルホニル(Mts)、2,2,4,6,7−ペンタメチルジヒドロベンゾフラン−5−スルホニル(Pbf)、Boc、Z、NO2などが挙げられる。リジンの側鎖アミノ基の保護基の例として、Z、Cl−−Z、トリフルオロアセチル、Boc、Fmoc、Trt、Mtr、4,4−ジメチル−2,6−ジオキソシクロヘキシリデニル(Dde)などが挙げられる。トリプトファンのインドリルのための保護基の例として、ホルミル(For)、Z、Boc、Mts、Mtrなどが挙げられる。アスパラギンおよびグルタミンのための保護基の例として、Trt、キサンチル(Xan)、4,4‘−ジメトキシベンズヒドリル(Mbh)、2,4,6−トリメトキシベンジル(Tmob)などが挙げられる。出発物質中の活性化カルボキシル基の例として、対応する酸無水物、アジド、活性エステル[アルコールとのエステル(例えば、ペンタクロロフェノール、2,4,5−トリクロロフェノール、2,4−ジニトロフェノール、シアノメチルアルコール、パラニトロフェノール、HONB、N−ヒドロキシスクシニミド(hydroxysuccimide)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール(HOAt))]などが挙げられる。出発材料中の活性化アミノ基の例として、対応する亜リン酸アミドが挙げられる。保護基を取り除く(除去する)ための方法の例として、Pd−ブラックまたはPd−カーボンなどの触媒の存在下における水素流中での触媒による還元;無水フッ化水素、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリメチルシリルブロミド(TMSBr)、トリメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート、テトラフルオロホウ酸、トリス(トリフルオロ)ホウ酸、三臭化ホウ素、またはこれらの混合溶液を用いる酸処置;ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、ピペリジン、ピペラジンなどを用いる塩基処置;および液体アンモニア中のナトリウムによる還元などが挙げられる。上記の酸処置による除去反応は、一般に、−20℃〜40℃の温度において行われる;酸処置は、アニソール、フェノール、チオアニソール、メタクレゾールおよびパラクレゾールなどのカチオンスカベンジャー;ジメチルスルフィド、1,4−ブタンジチオール、1,2−エタンジチオールなどを添加することにより、効率的に行われる。また、ヒスチジンのイミダゾールの保護基として用いられる2,4−ジニトロフェニル基は、チオフェノール処置により取り除かれる;トリプトファンのインドールの保護基として用いられるホルミル基は、1,2−エタンジチオール、1,4−ブタンジチオールなどの存在下における酸処置による、ならびに希釈水酸化ナトリウム、希釈アンモニアなどによるアルカリ処置による脱保護により取り除かれる。
 
【0084】
  加えて、本発明のペプチドは、溶媒和物(例えば水和物)であっても非溶媒和物(例えば非水和物)であってもよい。ペプチドは、同位体(例えば、
3H、
14C、
35S、
125I)などにより標識されていてもよい。さらに、ペプチドは、
1Hが
2H(D)に変換されている重水素変換形態であってもよい。同位体により標識または置換されたペプチドは、例えば、ポジトロン放出断層撮影(PET)における使用のためのトレーサー(PETトレーサー)として用いることができ、医学的診断などの分野において有用である。
  本明細書において記述されるペプチドについて、従来のペプチドのマーキングに従って、左末端はN末端(アミノ末端)であり、右末端はC末端(カルボキシル末端)である。ペプチドのC末端は、アミド(−CONH
2)、カルボキシル基(−COOH)、カルボン酸(−COO
−)、アルキルアミド(−CONHR)、およびエステル(−COOR)のうちのいずれかであってよい。特に、アミド(−CONH
2)が好ましい。化合物は、塩の形態であってもよい。かかる塩の例として、金属塩、アンモニウム塩、有機塩基との塩、無機酸との塩、有機酸との塩、塩基性または酸性アミノ酸との塩などが挙げられる。
 
【0085】
  ある態様において、ペプチドはまた、プロドラッグ形態であってもよい。プロドラッグとは、生体内の生理学的条件下において、酵素、胃酸などに起因する反応により本発明の機能的ペプチドに変換される化合物、すなわち、酵素による酸化、還元、加水分解などにより、本発明のペプチドに変換される化合物;胃酸などに起因する加水分解などにより本発明のペプチドに変換される化合物を意味する。本発明のペプチドのプロドラッグの例として、ペプチドのアミノが、アシル化、アルキル化またはリン酸化されている化合物(例えば、ペプチドのアミノが、エイコサノイル化、アラニル化、ペンチルアミノカルボニル化、(5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキソレン−4−イル)メトキシカルボニル化、テトラヒドロフラニル化、ピロリジルメチル化、ピバロイルオキシメチル化またはtert−ブチル化されている化合物など);ペプチドのヒドロキシが、アシル化、アルキル化、リン酸化またはホウ酸化されている化合物(例えば、ペプチドのヒドロキシが、アセチル化、パルミトイル化、プロパノイル化、ピバロイル化、スクシニル化、フマリル化、アラニル化またはジメチルアミノメチルカルボニル化されている化合物);ペプチドのカルボキシが、エステル化またはアミド化されている化合物(例えば、ペプチドのカルボキシが、C1−6アルキルエステル化、フェニルエステル化、カルボキシメチルエステル化、ジメチルアミノメチルエステル化、ピバロイルオキシメチルエステル化、エトキシカルボニルオキシエチルエステル化、フタリジルエステル化、(5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキソレン−4−イル)メチルエステル化、シクロヘキシルオキシカルボニルエチルエステル化またはメチルアミド化されている化合物)などが挙げられる。他のものの中でも、化合物(I)のカルボキシが、メチル、エチル、tert−ブチルなどのC1−6アルキルによりエステル化されている化合物が、好ましくは用いられる。これらの化合物は、それ自体公知の方法により、ペプチドから産生することができる。本発明のペプチドのプロドラッグはまた、IYAKUHIN no KAIHATSU(Development of Pharmaceuticals)、第7巻、Design of Molecules、p. 163-198、Published by HIROKAWA SHOTEN(1990年)において記載されるものなどの生理学的条件下において、本発明のペプチドに変換されるものであってよい。本明細書において、プロドラッグは、塩を形成してもよい。かかる塩の例として、本発明のペプチドの塩として例示されるものが挙げられる。本発明のペプチドは、結晶を形成してもよい。単一の結晶形態または複数の結晶形態の混合物を有する結晶もまた、本発明のペプチドにおいて含まれる。結晶は、それ自体公知の結晶化方法に従って本発明のペプチドを結晶化することにより生成することができる。加えて、本発明のペプチドは、薬学的に受入可能な共結晶または共結晶の塩であってもよい。ここで、共結晶または共結晶の塩とは、室温で固体であって、各々が異なる物理学的特性(例えば、構造、融点、融解熱、吸湿性、溶解度、安定性など)を有する2つ以上の特定の物質からなる、結晶性物質を意味する。共結晶および共結晶の塩は、それ自体公知の共結晶化により生成することができる。本発明のペプチドの結晶は、物理化学的特性(例えば、融点、溶解度、安定性)および生物学的特性(例えば、薬物動態(吸収、分布、代謝、排出)、効率の表出)において優れ、したがって、医薬として極めて有用である。
 
【0086】
  さらなる側面および態様において、本発明はまた、以下の(1)〜(14)のうちのいずれか1つおよび全てにおいて記載されるとおりの主題を提供する:
(1)以下の構造:(A
2i−1−X
1−X
2−X
3−X
4−X
5−X
6−X
7−A
2i−Z
i)nを含むペプチドであって、ここで、
−  nは、1〜4の整数であり、iは、各リピート毎に1〜nまで増加し;
−  各A
2i−1およびA
2iは、独立して、R、K、D、EおよびPから選択される1〜3の連続したゲートキーパーアミノ酸、および/または、3−メチルプロリン、3,4−デヒドロ−プロリン、2−[(2S)−2−(ヒドラジンカルボニル)ピロリジン−1−イル]−2−オキソ酢酸、ベータ−ホモプロリン、アルファ−メチル−プロリン、ヒドロキシプロリン、4−オキソ−プロリン、ベータ,ベータ−ジメチル−プロリン、5,5−ジメチル−プロリン、4−シクロヘキシル−プロリン、4−フェニル−プロリン、3−フェニル−プロリン、4−アミノプロリン、4−メルカプトプロリン、2−アミノ−アジピン酸(ホモグルタミン酸)、2−アミノ−ヘプタン二酸(2−アミノピメリン酸)、2−アミノ−オクタン二酸(アミノスベリン酸)、2−アミノ−4−カルボキシ−ペンタン二酸(4−カルボキシグルタミン酸)、グリオキサル−ヒドロイミダゾロン、メチルグリオキサル−ヒドロイミダゾロン、N−アルファ−メチル−アルギニン、オメガ−メチル−アルギニン、ノルアルギニン、ホモアルギニン、N,N’−ジエチル−ホモアルギニン、ベータ−ホモアルギニン、2−アミノ−3−ウレイド−プロピオン酸、2−アミノ−6−(1−カルボキシエチルアミノ)ヘキサン酸、2−アミノ−6−カルボキシメチルアミノ)ヘキサン酸、2−アミノ−6−(2−(フラン−2−イル)−2−オキソエチルアミノ)ヘキサン酸、2−アミノ−6−(ホルミル−5−ヒドロキシメチル−ピロール−1−イル)−ヘキサン酸、c−アルファ−メチル−リジン、ベータ,ベータ−ジメチル−リジン、N−イプシロン−ホルミル−リジン、N−イプシロン−メチル−リジン、N−イプシロン−i−プロピル−リジン、N−イプシロン−ジメチル−リジン、N−イプシロン−トリメチルアンモニウム−リジン、N−イプシロン−ニコチニル−リジン、{[5−アミノ−1−(ヒドラジンカルボニル)ペンチル]カルバモイル}ギ酸、N−アルファ−メチル−リジン、ホモリジン、ベータ−ホモリジン、2−アミノ−6−ジアゾ−5−オキソカプロン酸、ノルバリン、アルファ−メチル−ノルバリン、ヒドロキシノルバリン、オルニチン、N−デルタ−メチル−オルニチン、N−デルタ−N−デルタ−ジメチル−オルニチン、N−デルタ−i−プロピル−オルニチン、c−アルファ−メチル−オルニチン、ベータ,ベータ−ジメチル−オルニチン、カナバニン、N−デルタ−メチル−N−デルタ−ブチル−オルニチン、N−デルタ−メチル−N−デルタ−フェニル−オルニチン、デルタ−(2−メチルピロリジン)−オルニチン、デルタ−ピペリジル−オルニチン、ガンマ−アミノ−デルタ−ピペリジル−吉草酸およびデルタ−アゼパニル−オルニチンから選択される1〜3つの非天然のゲートキーパーアミノ酸から選択され、およびここで、ペプチド構造中のアミノ末端ゲートキーパーのアミノ酸もしくはアミノ末端の非天然のゲートキーパーのアミノ酸は、任意にアセチル化されるか、および/またはここで、ペプチド配列中のカルボキシ末端ゲートキーパーのアミノ酸もしくはカルボキシ末端の非天然のゲートキーパーのアミノ酸は、任意にアミド化され、
−  X
1は、グリシンまたはグリシンの保存的アミノ酸置換またはグリシンの非天然のアミノ酸バリアントまたはグリシンの保存的アミノ酸置換のD−アミノ酸またはグリシンの非天然のアミノ酸バリアントのD−アミノ酸であり、
−  X
2は、ロイシンまたはロイシンの保存的アミノ酸置換またはロイシンの非天然のアミノ酸バリアントまたはロイシンのD−アミノ酸またはロイシンの保存的アミノ酸置換のD−アミノ酸またはロイシンの非天然のアミノ酸バリアントのD−アミノ酸であり、
−  X
3は、グリシンまたはグリシンの保存的アミノ酸置換またはグリシンの非天然のアミノ酸バリアントまたはグリシンの保存的アミノ酸置換のD−アミノ酸またはグリシンの非天然のアミノ酸バリアントのD−アミノ酸であり、
−  X
4は、ロイシンまたはロイシンの保存的アミノ酸置換またはロイシンの非天然のアミノ酸バリアントまたはロイシンのD−アミノ酸またはロイシンの保存的アミノ酸置換のD−アミノ酸またはロイシンの非天然のアミノ酸バリアントのD−アミノ酸であり、
−  X
5は、アラニンまたはアラニンの保存的アミノ酸置換またはアラニンの非天然のアミノ酸バリアントまたはアラニンのD−アミノ酸またはアラニンの保存的アミノ酸置換のD−アミノ酸またはアラニンの非天然のアミノ酸バリアントのD−アミノ酸であり、
−  X
6は、ロイシンまたはロイシンの保存的アミノ酸置換またはロイシンの非天然のアミノ酸バリアントまたはロイシンのD−アミノ酸またはロイシンの保存的アミノ酸置換のD−アミノ酸またはロイシンの非天然のアミノ酸バリアントのD−アミノ酸であり、
−  X
7は、バリンまたはバリンの保存的アミノ酸置換またはバリンの非天然のアミノ酸バリアントまたはバリンのD−アミノ酸またはバリンの保存的アミノ酸置換のD−アミノ酸またはバリンの非天然のアミノ酸バリアントのD−アミノ酸であり、
およびここで、X
1−X
2−X
3−X
4−X
5−X
6−X
7およびX
7−X
6−X
5−X
4−X
3−X
2−X
1は、リピート中で交換可能に用いられ、ここで、nは、2〜4であり、
ならびに、各々のZ
iは、リンカーであり、およびここで、各々のZ
iは、独立して、1〜5単位のストレッチから選択され、ここで、単位は、PEG、アミノ酸または非天然のアミノ酸である。
 
【0087】
(2)(1)によるペプチドであって、ここで、
−  X
1およびX
3は、グリシン、N−アルファ−メチル−グリシン(サルコシン)、シクロプロピルグリシンおよびシクロペンチルグリシンから選択され、
−  X
2、X
4およびX
6は、ロイシン、バリン、2−アミノ−3,3−ジメチル−酪酸(t−ロイシン)、アルファ−メチルロイシン、ヒドロキシロイシン、2,3−デヒドロ−ロイシン、N−アルファ−メチル−ロイシン、2−アミノ−5−メチル−ヘキサン酸(ホモロイシン)、3−アミノ−5−メチルヘキサン酸(ベータ−ホモロイシン)、2−アミノ−4,4−ジメチル−ペンタン酸(4−メチル−ロイシン、ネオペンチルグリシン)、4,5−デヒドロ−ノルロイシン(アリルグリシン)、L−ノルロイシン、N−アルファ−メチル−ノルロイシンおよび6−ヒドロキシ−ノルロイシンから選択され、
−  X
5は、アラニン、2−アミノ−イソ酪酸(2−メチルアラニン)、2−アミノ−2−メチルブタン酸(イソバリン)、N−アルファ−メチル−アラニン、2−アミノ−2−メチルペント−4−エン酸(アルファ−アリルアラニン)、ベータ−ホモアラニン、2−インダニル−グリシン、ジ−n−プロピル−グリシン、ジ−n−ブチル−グリシン、ジエチル−グリシン、(1−ナフチル)アラニン、(2−ナフチル)アラニン、シクロヘキシルグリシン、アダマンチル−グリシン、ベータ−ホモアリルグリシンから選択され、
−  X
7は、バリン、ロイシン、c−アルファ−メチル−バリン(2,3−ジメチルブタン酸)、2,3−デヒドロ−バリン、3,4−デヒドロ−バリン、3−メチル−L−イソバリン(メチルバリン)、2−アミノ−3−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸(ヒドロキシバリン)、ベータ−ホモバリンおよびN−アルファ−メチル−バリンからから選択される。
 
【0088】
(3)(1)または(2)によるペプチドであって、ここで、Z
iは、プロリン、4−ヒドロキシプロリン、(2R,5S)−5−フェニル(penyl)−ピロリジン−2−カルボン酸、3,4−デヒドロ−L−プロリン、ベータ−(2−ベンゾチアゾリル)−アラニン、3−(2−フリル)−アラニンまたはベータ−(2−チエニル)−アラニンからなる。
(4)(1)〜(3)のうちのいずれか1つによる環状ペプチドであって、ここで、アミノ末端およびカルボキシ末端ゲートキーパーアミノ酸A
2i−1およびA
2iは、環構造を形成する。
 
【0089】
(5)(1)、(2)、(3)または(4)によるペプチドから生成される、ペプチド模倣物。
(6)検出可能な標識をさらに含む、(1)〜(5)のうちのいずれか1つによるペプチドまたはペプチド模倣物。
(7)半減期の延長を増大させる分子をさらに含む、(1)〜(5)のうちのいずれか1つによるペプチドまたはペプチド模倣物。
(8)分子の溶解度を増大させる部分をさらに含む、(1)〜(5)のうちのいずれか1つによるペプチドまたはペプチド模倣物。
(9)アミノ末端および/またはカルボキシ末端において、少なくとも1つのD−アラニンをさらに含む、(1)〜(5)のうちのいずれか1つによるペプチドまたはペプチド模倣物。
 
【0090】
(10)医薬としての使用のための、(1)〜(9)のいずれか1つによる分子。
(11)抗菌剤としての使用のための、(1)〜(9)のいずれか1つによる分子。
(12)診断剤としての使用のための、(1)〜(9)のいずれか1つによる分子。
(13)(1)〜(9)のいずれか1つによるものおよび薬学的に受入可能なキャリアを含む、医薬組成物。
 
【0091】
(14)さらに別の態様において、本発明は、抗菌ペプチドを産生するための方法を提供し、該方法は、以下のステップを含む:
(i)6〜12アミノ酸の長さを有する凝集傾向領域(APR)のin silicoのリストを生成すること、ここで、APRは、細菌プロテオームにおいて同定される、
(ii)以下の構造:(A
2i−1−APR−A
2i−Z
i)
nに基づくAPRを含む、20〜200個の数の異なるペプチドを合成すること、ここで、nは、1〜4の整数であり、iは、各リピート毎に1〜nまで増加し、各A
2i−1およびA
2iは、独立して、R、K、D、EおよびPから選択される1〜3の連続したゲートキーパーアミノ酸から選択される、
(iii)抗菌効果について前記ペプチドを試験すること、および抗菌ペプチドを産生すること。
 
【0092】
  さらなる側面および態様において、本発明はまた、以下の(1
*)〜(12
*)のうちのいずれか1つおよび全てにおいて記載される主題を提供する:
(1
*)以下の構造:(A
2i−1−APR−A
2i−Z
i)
nを含むペプチドであって、ここで、
−  nは、1〜4の整数であり、iは、各リピート毎に1〜nまで増加し;
−  各A
2i−1およびA
2iは、独立して、R、K、D、EおよびPから選択される1〜3の連続したゲートキーパーアミノ酸、または3−メチルプロリン、3,4−デヒドロ−プロリン、2−[(2S)−2−(ヒドラジンカルボニル)ピロリジン−1−イル]−2−オキソ酢酸、ベータ−ホモプロリン、アルファ−メチル−プロリン、ヒドロキシプロリン、4−オキソ−プロリン、ベータ,ベータ−ジメチル−プロリン、5,5−ジメチル−プロリン、4−シクロヘキシル−プロリン、4−フェニル−プロリン、3−フェニル−プロリン、4−アミノプロリン、4−メルカプトプロリン、2−アミノ−アジピン酸(ホモグルタミン酸)、2−アミノ−ヘプタン二酸(2−アミノピメリン酸)、2−アミノ−オクタン二酸(アミノスベリン酸)、2−アミノ−4−カルボキシ−ペンタン二酸(4−カルボキシグルタミン酸)、グリオキサル−ヒドロイミダゾロン、メチルグリオキサル−ヒドロイミダゾロン、N−アルファ−メチル−アルギニン、オメガ−メチル−アルギニン、ノルアルギニン、ホモアルギニン、N,N’−ジエチル−ホモアルギニン、ベータ−ホモアルギニン、2−アミノ−3−ウレイド−プロピオン酸、2−アミノ−6−(1−カルボキシエチルアミノ)ヘキサン酸、2−アミノ−6−カルボキシメチルアミノ)ヘキサン酸、2−アミノ−6−(2−(フラン−2−イル)−2−オキソエチルアミノ)ヘキサン酸、2−アミノ−6−(ホルミル−5−ヒドロキシメチル−ピロール−1−イル)−ヘキサン酸、c−アルファ−メチル−リジン、ベータ,ベータ−ジメチル−リジン、N−イプシロン−ホルミル−リジン、N−イプシロン−メチル−リジン、N−イプシロン−i−プロピル−リジン、N−イプシロン−ジメチル−リジン、N−イプシロン−トリメチルアンモニウム−リジン、N−イプシロン−ニコチニル−リジン、{[5−アミノ−1−(ヒドラジンカルボニル)ペンチル]カルバモイル}ギ酸、N−アルファ−メチル−リジン、ホモリジン、ベータ−ホモリジン、2−アミノ−6−ジアゾ−5−オキソカプロン酸、ノルバリン、アルファ−メチル−ノルバリン、ヒドロキシノルバリン、オルニチン、N−デルタ−メチル−オルニチン、N−デルタ−N−デルタ−ジメチル−オルニチン、N−デルタ−i−プロピル−オルニチン、c−アルファ−メチル−オルニチン、ベータ,ベータ−ジメチル−オルニチン、カナバニン、N−デルタ−メチル−N−デルタ−ブチル−オルニチン、N−デルタ−メチル−N−デルタ−フェニル−オルニチン、デルタ−(2−メチルピロリジン)−オルニチン、デルタ−ピペリジル−オルニチン、ガンマ−アミノ−デルタ−ピペリジル−吉草酸およびデルタ−アゼパニル−オルニチンから選択される1〜3の非天然のゲートキーパーアミノ酸から選択され、およびここで、ペプチド構造中のアミノ末端ゲートキーパーのアミノ酸もしくはアミノ末端の非天然のゲートキーパーのアミノ酸は、任意にアセチル化されるか、および/またはここで、ペプチド配列中のカルボキシ末端ゲートキーパーのアミノ酸もしくはカルボキシ末端の非天然のゲートキーパーのアミノ酸は、任意にアミド化され、
−  APR中に含まれるペプチドの名称は、表5において表され(P3、P4、P5、P12、P14、P16、P18、P23、P26、P29、P33、P39、P40、P49、P50、P58、P72、P76、P79、P80、P87、P88、P89、P90、P91、P92、P93、P99、P101、P103、P105、P111、P112、P113、P114、P115、P116、P117、p118、P123、P124およびP125)、これらのペプチドについての対応するアミノ酸配列は、表4において表され、ここで、APRは、天然のアミノ酸を含むか、またはAPRは、APRの保存的アミノ酸置換を含むか、またはAPRは、APR中に存在するペプチド配列において存在するアミノ酸の非天然のアミノ酸アナログを含むか、またはAPRは、APR中に存在するアミノ酸のペプチド配列におけるD−アミノ酸置換を含み、
およびここで、APR中のアミノ酸は、直列または逆方向リピートであってよく、ここで、nは、2〜4であり、
ならびに、各々のZ
iは、リンカーであり、およびここで、各々のZ
iは、独立して、1〜5単位のストレッチから選択され、ここで、単位は、PEG、アミノ酸または非天然のアミノ酸である。
 
【0093】
(2
*)(1
*)によるペプチドであって、ここで、Z
iは、プロリン、4−ヒドロキシプロリン、(2R,5S)−5−フェニル−ピロリジン−2−カルボン酸、3,4−デヒドロ−L−プロリン、ベータ−(2−ベンゾチアゾリル)−アラニン、3−(2−フリル)−アラニンまたはベータ−(2−チエニル)−アラニンからなる。
(3
*)(1
*)〜(2
*)のうちのいずれか1つによる環状ペプチドであって、ここで、アミノ末端およびカルボキシ末端ゲートキーパーアミノ酸A
2i−1およびA
2iは、環構造を形成する。
 
【0094】
(4
*)検出可能な標識をさらに含む、(1
*)〜(3
*)のうちのいずれか1つによるペプチド。
(5
*)半減期の延長を増大させる分子をさらに含む、(1
*)〜(4
*)のうちのいずれか1つによるペプチド。
(6
*)分子の溶解度を増大させる部分をさらに含む、(1
*)〜(3
*)のうちのいずれか1つによるペプチド。
(7
*)アミノ末端および/またはカルボキシ末端において、少なくとも1つのD−アラニンをさらに含む、(1
*)〜(3
*)のうちのいずれか1つによるペプチド。
 
【0095】
(8
*)医薬としての使用のための、(1
*)〜(7
*)のうちのいずれか1つによる分子。
(9
*)抗菌剤としての使用のための、(1
*)〜(7
*)のうちのいずれか1つによる分子。
(10
*)診断剤としての使用のための、(1
*)〜(7
*)のうちのいずれか1つによる分子。
(11
*)(1
*)〜(7
*)のうちのいずれか1つによるものおよび薬学的に受入可能なキャリアを含む、医薬組成物。
 
【0096】
(12
*)以下のステップを含む、抗菌ペプチドを産生するための方法:
(i)6〜10アミノ酸の長さを有する凝集傾向領域(APR)のin silicoのリストを作製すること、ここで、APRは、細菌プロテオームにおいて同定される、
(ii)以下の構造:(A
2i−1−APR−A
2i−Z
i)
nに基づくAPRを含む、20〜200個の数の異なるペプチドを合成すること、ここで、nは、1〜4の整数であり、iは、各リピート毎に1〜nまで増加し、各A
2i−1およびA
2iは、独立して、R、K、D、EおよびPから選択される1〜3の連続したゲートキーパーアミノ酸から選択される、
(iii)抗菌効果について前記ペプチドを試験すること、および抗菌ペプチドを産生すること。
 
【0097】
  本明細書においては、本発明による操作されたペプチドおよび方法についての特定の態様、特定の立体配置、ならびに材料および/または分子が議論されてきたが、本発明の範囲および精神を逸脱することなく、形態および詳細についての多様な変更または改変を行うことができることが、理解されるべきである。以下の例は、特定の態様をより良く説明するために提供され、それらは、本願を限定するものとみなされるべきではない。本願は、請求の範囲によってのみ限定される。
 
【0098】
例
1.E. coli特異的凝集性ペプチドの設計およびスクリーニング
  本発明において、本発明者らは、統計学的熱力学アルゴリズムTANGOを用いて、E. coli株O157:H7のプロテオームにおける凝集傾向領域(APR)を同定した。これにより、長さが少なくとも6アミノ酸である3535個の配列および少なくとも20%のTANGOスコアを得た。効率的な凝集シーズを作製するために、本発明者らは、先に考案されたタンデムリピートデザインを使用し
19、21、ここで、APRは1回繰り返され、リンカーにより分離されている。収率および純度に関して固相ペプチド合成における長さの限定を考慮して、本発明者らは、7アミノ酸の長さを有する1542個のAPRに焦点を当てた。これらのペプチドがE. coliにおいて凝集を誘導する能力を最大化するために、本発明者らは、APRを、E. coliプロテオーム全体にわたるそれらの発生の頻度により順位付けし、単一のアミノ酸ミスマッチは許容し、このリストから初めの75個の最も頻繁に生じる配列を選択した(表4)。設計パターンにおいて、およびこれらの凝集性ペプチドのコロイド安定性を増大するために、APRを、凝集動態学を低下させることが先に示されている残基のクラスである凝集ゲートキーパーに隣接させた
22〜24。正に荷電した残基は、細菌による取り込みを補助することが示されているので
25、本発明者らは、以下のペプチドレイアウト:R−APR−RRを得るために、アルギニンを選択した。タンデム型を作製するために、本発明者らは、単一のプロリン残基を、ゲートキーパーに隣接したAPRの間のリンカーとして用いた。この様式において生成された75個のペプチドに加えて、本発明者らは、ペプチドの凝集傾向をさらに調節するために、第1のAPRリピート中の1つの残基をアルギニンに無作為に変異させることにより、リスト中の初めの25個のペプチドの各々の2つのバリアントを加えた(表4)。全てのペプチドは、固相合成を用いて200ナノモルのスケールにおいて生成し、DMSO中で、2mMの理論上のストック濃度に溶解した(100%の合成効率を仮定して)。E. coli O157:H7の増殖に対するペプチド活性を、1、6、12および25μg/mLの濃度に対応するペプチドの希釈において測定した。最も高い希釈において細菌の増殖を阻害することができたペプチドは存在しなかったが、これらのうちの43個は、25μg/mLにおいてE. coliに対して活性であり、そのうちの11個は、12μg/mLにおいて活性であり、6個は、6μg/mLの見かけの最小阻害濃度(MIC)値を有した(表5)。本発明者らは、既知のAMPを同定するように訓練されるCAMPソフトウェア予測アルゴリズム
26を用いて本発明者らの配列を分析し、本発明者らがそれらを活性であると見出したか活性でないと見出したか(65%は不活性であった)に関わらず、90%が抗菌性であると予測されることを見出した。測定された活性によるマシューズ相関関係(MCC)は、12μg/mLにおいては0.1、25μg/mLにおいては0.24であった。このことは、機械学習アルゴリズムにより捕捉される既知のAMPの疎水性および電荷などの重要な特性は、凝集性ペプチドの抗菌活性を予測するためには十分ではないこと、ならびに、本発明者らのペプチドは、現行の予測アルゴリズムには組み込まれていない機序により作用することを示す。
 
【0099】
2.E. coli由来の凝集性ペプチドの活性および選択性
  本発明者らは、スクリーニングからのいくつかのペプチド、すなわちP2(RGLGLALVRRPRGLGLALVRR、配列番号1)、P5(RALLTTLLRRPRALLTTLLRR、配列番号3)、P14(RGLLALLARRPRGLLALLARR、配列番号6)ならびにP105(RALLRTLLRRPRALLTTLLRR、配列番号5)を再合成およびHPLC精製し、HPLCグレードに精製されたペプチドの最小阻害濃度(MIC)および最小殺菌濃度(MBC)の値が、6〜12μg/mLとなることを確認した(表1を参照)。E. coli O157:H7に対するペプチドの殺菌活性の速度の分析(MIC濃度において)は、ペプチドが、30分間〜2時間以内に完全な殺菌効果を発揮することを示した(
図1A)。ペプチド処置された細菌の横断面の透過型電子顕微鏡観察は、E. coliにおけるタンパク質凝集の特徴である大きな封入体の広範囲にわたる存在を明らかにし、このことは、ペプチドが、細菌のタンパク質恒常性に干渉することにより作用することを示唆している(
図1B、C、D)。大型極性凝集物(Large Polar Aggregates)とも称されるこれらの封入体は、大抵は細菌細胞の極に位置する。このことは、核様体閉鎖(nucleoid occlusion)に起因するそれらの構造から予測されるとおりである
27。興味深いことに、致死量以下の濃度(MICの50%)の活性なペプチドに対して36日間の期間にわたり細菌を繰り返し継代した場合、耐性の発生は観察されなかったが、一方、対照抗生物質アンピシリンについての場合においては耐性が発生した(
図1E)。ペプチドの特異性の初めの徴候として、本発明者らは、ヒト赤血球に対するそれらの溶血活性を評価し(
図1F)、これにより、P2ペプチド(RGLGLALVRRPRGLGLALVRR、配列番号1)が、E. coli株O157:H7に対して好ましい(特に、最も特異性が高い)毒性プロフィールを有することが明らかとなった。このことを、HeLa細胞に対するCellTiter Blue(
図1G)およびLDH放出(
図1H)アッセイによりさらに確認した。E. coli O157:H7に対するP2の特異性は、細菌の増殖が50%阻害される濃度(IC50=1.5μg/mL)を決定して、当該ペプチドがヒト赤血球の50%溶解を誘導する濃度(LC50=1100μg/mL)と比較することにより概算し、730の治療比率を得た。この観察に基づいて、P2を、さらなる特徴づけのために選択し、これ以降、コルぺプチン1と称するであろう。対照として、本発明者らは、コルぺプチン1の変異体を生成し、これにおいて、本発明者らは、APR中の異なる位置においてプロリン置換を誘導し(表1)、これは、疎水性を保存するが、ベータ−シート傾向を妨害し、それによりペプチドの凝集傾向を低下させる。変異体ペプチドの疎水性および電荷の保存に起因して、CAMP予測ソフトウェアは、やはり、これらの対照を抗菌性であると分類する。しかし、本発明者らが細菌を対照ペプチドで処置した場合、本発明者らは、200μg/mLを超えるMIC値を得、このことは、ベータ−構造形成が、本発明者らのペプチドの抗菌活性のために重要であることを示し、他のAMPの作用の様式は、本発明者らの配列により観察される抗菌活性にとっては予測的でないことを確認している。次のステップにおいて、本発明者らは、多様な菌株に対するコルぺプチン1の活性を評価し、これを、当該菌株中に存在するHcaBタンパク質の配列保存と相関させた。データを、表2において示す。
 
【0100】
3.コルぺプチン1は、無定形凝集物に成熟する可溶性オリゴマー性ベータ構造凝集物を形成する
  イオンモビリティ質量分析と連結されたエレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI−IMS−MS)
28によるコルぺプチン1の分析により、100mMの酢酸アンモニウムバッファー中でのコルぺプチン1の可溶化の直後に、ペプチドは、単量体のみではなく、可溶性のオリゴマーを容易に形成し、これは二量体から九量体までの範囲であり、より高次となる可能性もあることが明らかとなった(
図1I)。このことと一致して、溶解後に動的光分散(DLS)により観察される主要な種は、約1〜2nmの明らかな水力学的な半径を有し、これは、数時間以内にすみやかに大きな粒子に成長する(
図1J)。コルぺプチン1溶液の組成は、経時的により大きな種へと進化し、これは、質量分析計において、より小さな種の消費と平行している(より大きなものは装置の検出範囲外となる)。超遠心を用いる経時的なペプチドの溶解度の研究もまた凝集を示し、溶解後の30分間の超遠心により、ペプチドのうちの60%未満が溶液中に残存した(
図1K)。この様式において回収された不溶性画分を、懸濁液中に戻し(元の容積の10%において)、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)を用いて二次構造含有量を分析し、これは、1622および1641周辺に主要なピークを示し、これは、ベータ−構造の形成と一致する(
図1L)。成熟した凝集物は、アミロイド特異的色素である五量体ホルミルチオフェン酢酸(p−FTAA)
29〜31に対して、わずかに温和に陽性であった(
図1M)。透過型電子顕微鏡によると、成熟した凝集物は、主にアミロイド様凝集物を形成し、これは時折、規則正しい原線維に集合した(
図1N)。まとめると、これらの特色は、徐々に不溶性の線維様凝集物へと転換するβ構造の可溶性オリゴマーを形成するコルぺプチン1に一致する。E. coliにおけるリン酸の天然に豊富な形態であってアミロイド形成を促進することが先に示されている
32ポリリン酸への、コルぺプチン1の暴露により、当該ペプチドは、典型的なアミロイド−凝集動態学を示すことが、pFTAA蛍光を用いて測定される(
図1O)。コルぺプチン1のプロリン置換された不活性な対照(P−コルぺプチン1と称される)の分析により、同一条件下における可溶化の後で、P−コルぺプチン1は、ほぼ完全に可溶性であり、ベータ−構造の立体配置をとらないがことが示されたが、沈降分析によっては、なお、より長い時間スケールにおいて、凝集が明らかとなる(
図1K&L)。
 
【0101】
4.膀胱感染モデルにおいて、コルぺプチン1はE. coliに対してin vivoでの活性を示す
  コルぺプチン1のin vivoでの可能性を試験するために、本発明者らは、哺乳動物(HeLa)細胞とE. coli O157:H7との共培養物をコルぺプチン1で処置し、コルぺプチン1は細菌中で優先的に蓄積するが、哺乳動物細胞においてはそうではないことを観察した(
図2A)。最後に、本発明者らは、25%または50%のヒト血清中で2時間にわたりインキュベートされたコルぺプチン1が、25μg/mLおよび50μg/mLにおいて、なお細菌の増殖を阻害することができることを見出した(
図2D)。これらの正の結果を考慮して、本発明者らは、次いで、用量漸増実験を行うことにより、ペプチドに対するスイスマウスの耐性を確立した。本発明者らは、30mg/kgまでのコルぺプチン1の腹腔内投与の後で、動物の基本的な生理学的および行動学的パラメーターに対して、全濃度範囲にわたり急性の有害効果を観察した。観察されたパラメーターは、体重、食餌および水の消費、ホームケージでの活動および移動運動を含んだ。本発明者らは、次に、6個体のマウスのコホートを、明らかな有害効果を伴うことなく、18日間にわたる最大耐容用量における毎日の注射により処置した。マウスを3日間にわたり回復させ、その時点で、それらを安楽死させ、主要な臓器の調査を行い、これにより、重要な形態学的な毒性の兆候がないことが明らかとなった(表6、7および
図5、6)。加えて、これらの動物の血清に対するELISAアッセイにより、コルぺプチン1ペプチドに対する特異的抗体応答がないことが明らかとなった(
図2E)。健康な動物における、10mg/kgのFITC標識コルぺプチン1の単一用量の注射(IPまたは尿路)の後の、限定された体内分布の研究により、注射の後少なくとも3時間にわたる蛍光材料の明確な分布、および24時間後ペプチドの総クリアランスが明らかとなった(
図7)。これらの観察に基づいて、本発明者らは、マウス膀胱感染モデルにおいてコルぺプチン1の抗菌効力を試験した。このモデルにおいて、50μLの10
8のCFU/mLのE. coli O157:H7の懸濁液の接種材料は、健康なスイスマウスの尿道を介して膀胱へ送達された。感染の1時間後、本発明者らは、コルぺプチン1の単一の注射を、10mg/kgで、尿道(n=15)または腹腔内(n=15)のいずれかを介して投与した。処置の24時間後、動物を安楽死させて、浸漬して柔らかくした組織に播種することにより、腎臓、結腸、膀胱および尿管における細菌の力価を決定した(
図2F〜I)。これらの実験により、コルぺプチン1処置された動物の様々な臓器における細菌の力価の、腹腔内および尿道送達の両方の後での2対数倍を超える著しい低下が明らかとなった(バッファー対照と比較してp−val<10
−4、および非凝集性P−コルぺプチン1対照と比較してp−val<10
−4、Tukey事後検定によるANOVA)。効果は、対照として用いられた経口投与されたアンピシリン(20mg/kg)のものに匹敵し、このことは、E. coliに対するコルぺプチン1の抗菌活性がin vivoで維持されることを示している。
 
【0102】
5.コルぺプチン1の取り込みはIB形成および増殖阻害をもたらす
  その作用の様式を研究するために、本発明者らは、コルぺプチン1を、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)で誘導体化し、コンジュゲートがその抗菌活性を保持したことを確立し(E. coli O157: H7に対してMIC=3μg/mL)、コルぺプチン1の取り込みをフローサイトメトリーにより定量した。E. coli O157:H7によるコルぺプチン1の取り込みの分析は、15分後に既に細胞の97.7±2.9%(N=4)が(
図3B&F)、1時間後以降にはほぼ100%までがFITCに対して陽性であることを示した(
図3C〜F)。平行して、MIC濃度で処置されたE. coli O157:H7の蛍光顕微鏡観察によっては、細胞膜におけるFITC−コルぺプチン1の濃縮は確認されず、むしろ、15分以降に、細胞内の極性の封入体(IB)における蛍光の明らかな蓄積を示し(
図3G)、これは、より後の時点においても持続した(
図3H)。加えて、コルぺプチン1により誘導されたIBは、アミロイド様凝集物ならびに疾患関連タンパク質封入体に特に結合する色素であるp−FTAA
31により染色することができ、このことにより、これらの封入体の規則正しいベータ−シートが豊富な凝集したタンパク質構造が確認された(
図3I&J)。このことは、コルぺプチン1の取り込みおよびIB形成が、緊密に連続して起こることを示す。コルぺプチン1処置後のCFU決定により測定される細菌細胞死の動態学(
図3K)もまた、ペプチドの内部移行の後に緊密に続き、15分間の処置の後に、IBの出現と同時発生する(15分後に50%)。一方、膜の易透化(permeabilisation)の結果としてのヨウ化プロピジウム(PI)の取り込みによりモニタリングされる細菌細胞死は、よりゆっくりと増加し(15分後の2.1±1.3%から3時間後の85±13.2%へ、
図3A〜E&3L)、このことは、短い処置時間においては、IB形成と同時発生的であるが、膜の透過性が観察され得るより以前に、著しい増殖抑制が確立されることを示している。このことと一致して、4×MICで2時間にわたり処置された細菌、および未処置の対照の、走査型電子顕微鏡(SEM、
図3M、N、O)を用いた形態学的分析は、コルぺプチン1処置された細菌が、縮んだように見えるが、細胞からの漏出は見られないことを示す。まとめると、これらのデータは、コルぺプチン1の内部移行がコルぺプチン1を含むIBの形成および細菌の増殖阻害と同時発生的であるイベントの連鎖を示唆する。
 
【0103】
6.コルぺプチン1は、致死性の細菌のタンパク質恒常性の崩壊を誘導する
  細菌のIB形成は、熱への暴露および組み換えタンパク質の(過剰)発現を含む細胞ストレスと関連する、一般的なイベントである。このプロセスは、しかし、しばしば一過性かつ可逆性であり、必ずしも細菌細胞の死をもたらさない。実際に、細菌における組み換えタンパク質の産生は、細菌がIBに対処する能力に広範に依拠する。一例として、本発明者らは、組み換えタンパク質産生のために慣用的に用いられるE. coli BL21細胞の増殖に対する、ヒトp53タンパク質(p53CD)の凝集傾向が高いコアドメインの過剰発現の帰結を測定した(
図4A)。p53CDの発現は、対数増殖期の遅延をもたらし、これは、過剰発現から生じる細胞ストレスに一致したが、コロニー形成に対しては何らの効果も存在せず、このことは、当該ストレスが致死性ではないことを示している。コルぺプチン1により誘導されるIB形成が不可逆的に毒性である理由を理解するために、本発明者らは、MIC濃度におけるコルぺプチン1で1時間処置されたE. coli O157:H7細胞から精製したIBの組成を、p53CDを一晩過剰発現したE. coli株BL21から精製したIBと比較した。生じた試料のTEMによる検査により、これらのIBの首尾よい精製を確認した(
図4C)。IBの組成を、その後、クーマシー染色SDS−PAGEにより分析した(
図4D)。クーマシー染色全体的なパターンにより、多数の類似する細菌のタンパク質が、コルぺプチン1処置E. coli O157:H7およびp53過剰発現E. coli BL21の両方のIB中に捕捉されているが、未処置の細菌においてはそうではないことが明らかとなり、このことは、IB形成に関連する共通する分子機構を示唆している。IBに捕捉されたタンパク質の中で、封入体において生じることが知られている多数の分子シャペロンを検出することができた。これは、細菌のHsp70ホモログDnaK、Hsp60シャペロニンGroEL、リボソーム関連シャペロンであるトリガー因子(TF)および細菌のHsp40  DnaJを含む(
図4E)。コルぺプチン1に暴露されたE. coli K12 MG1655細胞における、蛍光により追跡可能なDnaK−mCerulean3融合タンパク質(後者の部分は青色蛍光タンパク質を含む)の極局在により、DnaKとIBとの関連が確認された(
図4F)。本発明者らのデータは、コルぺプチン1およびp53CDのIBが、IBの一般的な構成要素である多くのシャペロンおよびリボソームタンパク質を含む、多数のタンパク質を共有することを示す。第2に、この共通のコアに加えて、本発明者らは、コルぺプチン1のIBが、p53CDのIBより多くのさらなるタンパク質を含むことを見出す。このことは、コルぺプチン1処置の毒性の影響が、p53CDの過剰発現の効果より大規模なプロテオミクスの影響に対応することを示す。この観察は、複数のタンパク質の凝集によりタンパク質恒常性の崩壊を誘導することを目的とする、本発明者らの初期の設計の仮説に則している。
 
【0104】
7.コルぺプチン1は、直接的な配列標的の同時翻訳的凝集を誘導する
  本発明者らの設計により、コルぺプチン1  APRは、E. coliプロテオームにおいて高度に重複し、単一のミスマッチを有する18個の他のE. coliのタンパク質(表8)および二重のミスマッチを有する158個のタンパク質においても見出すことができる。コルぺプチン1の場合、その直接的なAPRマッチは、HcaBからのG
17LGLALV
24配列である。HcaB(3−フェニルプロピオネート−ジヒドロジオール/桂皮酸−ジヒドロジオールデヒドロゲナーゼ)は、芳香族化合物の代謝における非必須の酵素であって、非常に低い量において存在する(PaxDB
33によれば0.015ppm)。Taguchiおよび共同研究者らは、先に、細胞フリーの翻訳系を用いてHcaBを含む全E. coliプロテオームの溶解度を決定し、HcaBが凝集傾向が高いタンパク質であって、フォールディングのためにGroEL/ESに高度に依存することを示している
34。次のステップにおいて、本発明者らは、HcaBを組み換え発現のために誘導性ベクター中にクローニングして、HcaBを過剰発現するE. coli BL21:DE3細胞のライセートからタンパク質をクロマトグラフィーにより精製した。この材料を用いて、本発明者らは、マウスにおいて免疫化スキームを行い(材料および方法を参照)、HcaBに対する抗血清を得、ウェスタンブロットにおいて、正しい分子量におけるバンド、ならびに、2つのオフターゲットのバンドが明らかとなった(
図4H)。この抗血清を用いて、本発明者らは、HcaBを内因的に過剰発現するE. coli O157:H7およびHcaBを過剰発現するE. coli BL21細胞の可溶性および不溶性画分において、HcaBの存在に対するコルぺプチン1処置(1時間、MIC濃度において)の効果を比較し(
図4H)、コルぺプチン1処置細胞の封入体画分におけるHcaBの蓄積を確認した。このことは、コルぺプチン1による処置の後でHcaBが凝集することを確認する。個々のコドンの典型的なデコード時間を用いるTuller法
35に基づいてこれらの遺伝子の翻訳効率を計算する場合、本発明者らは、コルぺプチン1の標的タンパク質の翻訳効率は、未検出の推定の標的についてのものよりも有意に高い(スチューデントt検定、p<0.001、
図4J)ことを見出し、このことは、高い翻訳速度が、コルぺプチン1により誘導される凝集を促進し得ることを示唆している。この仮説を検証するために、本発明者らは、リボソームにおけるポリペプチドの出口チャネルを遮断することにより作用する静菌薬であるマクロライド系抗生物質エリスロマイシンの存在下における、コルぺプチン1のMBC値を測定した。驚くべきことに、本発明者らは、細胞を100μg/mLのエリスロマイシンで2時間にわたり前処置してコルぺプチン1への暴露の間の翻訳を遮断した後で、コルぺプチン1に対する細菌の著しい脱感作を観察し(E. coli O157)(MBC>100μg/mL)、このことは、作用の様式としてのタンパク質凝集の同時翻訳的誘導を強力に支持している。
 
【0105】
  コルぺプチン1  APRは、Acinetobacter baumanniiのプロテオームにおいて高度に重複しており、単一のミスマッチを有する18個の他のA. baumanniiのタンパク質、および二重のミスマッチを有する268個のタンパク質においてもまた見出すことができ(表9)、このことは、E.coliおよびA. baumaniiの両方に対して観察されたコルぺプチン1の殺菌活性を支持している(
図9)。
 
【0106】
8.コルぺプチン1は、多標的凝集カスケードを誘導し、タンパク質恒常性の崩壊をもたらす
  コルぺプチン1の凝集およびその検出された標的が、どのようにコルぺプチン1  IBにおいて見出される他のタンパク質の凝集に関係するのかという問題は、なお残る。第1の可能性は、コルぺプチン1により誘導されるタンパク質恒常性の崩壊が、細菌シャペロンの飽和から生じるということである。この可能性を試験するために、本発明者らは、E. coli K-12 BW25113株における主要な細菌シャペロンおよびプロテアーゼ(KEIOコレクション
37)の、コルぺプチン1の活性に対する効果を決定し、E. coliのタンパク質恒常性の主要な構成成分の個々のノックアウトから、DnaKのみが、コルぺプチン1の活性に対して温和な効果を有したことを見出した(表3)。さらに、表皮ブドウ球菌において致死性の凝集を誘導する、正の電荷に隣接する株特異的APRのタンデムリピートを用いて先に設計されたペプチド19は、これらのペプチドが内部移行したとしても、グラム陰性のE. coliに対して活性ではなく、逆もまた真なりである。まとめると、これらのデータは、凝集性ペプチドによるシャペロンおよびタンパク質恒常性系の飽和は、コルぺプチン1の主要な作用の機構ではないことを示唆する。あるいは、および本発明者らの仮説と一致して、APRの重複性は、配列特異的なタンパク質凝集のカスケードにより、タンパク質恒常性の崩壊を駆動する。本発明者らは、一次的なコルぺプチン1の標的は、それらの配列中にさらなるAPRを有し、これらがコルぺプチン1により誘導される共凝集したタンパク質を形成し、これらはまた、これらのIB中にも存在し、それら自体におけるタンパク質が、一次的なコルぺプチン1の標的における二次的なAPRにより決定される凝集カスケードにより、さらに連結され得ると考えた。さらに1ステップ進むと、なおさらなる多数のタンパク質が、第3層により類似の様式において連結され、最終的に、細胞中で連結されていないタンパク質はほとんど残らない。
 
【0107】
  比較すると、p53CDは、TANGOによれば、1つのドミナントなAPRを有し(ILTIITL、配列番号223)
38、これは、E coli O157:H7のプロテオームにおいて正確なマッチを有さないが、1個の変異を有するAPRを有する3個のタンパク質、および変異2個分離れたAPRを有する50個のタンパク質を有する。これらのタンパク質のうちのいずれも、IB中で検出され得ず(データは示さず)、このことは、p53CDの凝集が、配列空間において、はるかにより離れたイベントであることを示している。p53CDのIBにおいて検出されるタンパク質は、一方、主にシャペロンクライアント
39〜46からなり、このことから、p53CDの凝集はタンパク質恒常性ストレスを構成するが、これはコルぺプチン1とは反対にタンパク質恒常性の崩壊を引き起こさず、細菌細胞にとって致死性ではないことが確認される。
 
【0108】
9.細菌のセットに対する28個の異なるペプチドについてのMIC値の決定
  本実験において、そのアミノ酸配列が表4において表される28個のペプチドのセットを、E. coli BL2株、Acinetobacter baumannii、肺炎桿菌および緑膿菌に投与した。MIC値を決定し、
図8において表す。
 
【0109】
10.コルぺプチン1は、種内での広範な反応性を有し、病原体耐性プロフィールにより影響を受けない
  本実験において、本発明者らは、E. coliの多数の臨床分離株およびAcinetobacter baumanniiの多数の臨床分離株(2つの参照株を含む)に対するコルぺプチン1の効力を評価した。
図9(上のパネル)は、E. coliの多数の臨床分離株に対するコルぺプチン1のMIC値(
図8においてP2として示される)を列記する。
図9(下のパネル)は、コルぺプチン1のMIC値(
図9においてP2として示される)を列記する。12の異なる抗生物質に対する臨床分離株の感受性(S)または耐性(R)または中程度の耐性(I)を、パネルにおいて表す(特定の抗生物質に対するCLSI基準に従うデータ)。本発明者らのデータは、コルぺプチン1が、種内での広範な反応性を有すること、およびE. coliおよびAcinetobacter baumanniiの両方について、MIC値は、抗生物質病原体耐性プロフィールにより影響を受けないことを示す。
 
【0110】
材料および方法
1.バイオインフォマティクス分析
  多様な菌株についてのタンパク質配列を、UniProt(Nucleic Acid Res. (2008) 36, D190-5)から得、cd-hitアルゴリズム(Fu L. et al (2012) Bioinformatics 28, 3150)を用いて重複性を取り除いた。本発明者らは、この文書における全てのAPRの同定についてTANGOアルゴリズムを用いた。本発明者らは、TANGOスコアに対して、残基1つあたり5のカットオフを用いた。なぜならば、これは、予測と実験との間で、0.92のマシューズ相関係数をもたらすからである(Fernandez-Escamilla AM et al (2004) Nat. Biotechnol. 22, 1302)。TANGOのセッティングは、温度=298K、pH=7.5、イオン強度=0.10Mであった。
 
【0111】
2.ペプチド合成
  スクリーニングの段階の間に、標準的な固相ペプチド合成を用いてペプチドを合成した(JPT, Berlin, Germany)。的中したペプチドは、インハウスでIntavis Multipep RSi合成ロボットを用いて、より高いスケールにおいて再合成し、Prominence HPLC(Shimadzu, Japan)においてZorbax SB-C3セミ分取カラム(Agilent, USA)を用いて、95%までHPLC精製した。ペプチドを、凍結乾燥し、使用前は−20℃で貯蔵した。
 
【0112】
3.菌株および増殖条件
  グラム陰性の菌株は、Luria-Bertani(LB)ブロス(Difco)中で培養し、グラム陽性の菌株は、富栄養培地である脳心臓浸出物(BHI)ブロス(Difco, Sparks, MD)中で、37℃で培養した。必要である場合にはいつでも、培地またはプレートに、増殖培地に適切な抗生物質を添加した。クローニングおよびプラスミド増幅のために、大腸菌DH5αを用いた。抗生物質耐性コロニーの選択のために、プラスミドを運搬しているE. coliを、25μg/mLのアンピシリンまたは100μg/mLのエリスロマイシン(sigma)を添加したLB培地中で培養した。細菌のCFU計数は、血液寒天プレート(BD Biosciences)上で行った。全ての臨床分離株についての種の同定およびアンチバイオグラムを、MALDI-TOFおよびVITEK(登録商標)2自動化システム(bioMerieux)を用いて行った。
 
【0113】
4.MICの決定
  活性ペプチドのMICは、EUCASTガイドラインに従って、ブロス微量希釈アッセイを介して決定し、これは、96ウェルのポリスチレン平底マイクロタイタープレート(BD Biosciences)において行った。簡単に述べると、単一のコロニーを、5mLのLB培地中に接種し、振盪インキュベーター中で37℃で、対数増殖終了期まで増殖させた。培養物を、その後、フレッシュなLB培地中で0.002のOD
600まで希釈した(1×10
8CFU/mL)。100μg/mL〜1μg/mLの範囲の様々な濃度のペプチドを含む100μLのLB培地を、無菌の96ウェルプレートに対して連続希釈した(各プレート中少なくとも3ウェル)。その後、100μLの希釈菌を、様々な濃度のペプチドを含む96ウェルプレート中にピペッティングした。各プレートにおいて、最大濃度のキャリアおよび培地により増殖した細菌を、それぞれ陽性および陰性の対照とみなした。その後、96ウェルプレートを、静かに一晩37℃でインキュベートし、細菌を増殖させた。多目的UV/VISプレートリーダーにより、OD
590nmで、1秒間の振盪において、Perkin Elmer分光光度計(1420 Multilabel Counter Victor 3)を用いて、増殖した細菌の吸光度を測定した。
 
【0114】
5.抗体および抗生物質製品コード
抗CLPB(Aviva、カタログ#ARP53790_P050)、抗DnaK(Aviva、カタログ#OAED00201)、抗Trigger Factor(Clontech、カタログ#M201)、抗groEL(Abcam、カタログ#ab82592)、抗DnaJ(Enzo Life Sciences、カタログ#ADI-SPA-410-D)。アンピシリンナトリウム、CAS番号69-52-3、Duchefa Biochemie、カタログ#A0104。エリスロマイシン、CAS番号114-07-8、Sigma Aldrich、CAS番号114-07-8、カタログ#E5389。
 
【0115】
6.生物物理学的特徴づけ
  動的光散乱(DLS)測定は、室温で、830nmのレーザー源を備えたDynaPro DLSプレートリーダー装置(Wyatt, Santa Barbara, CA, USA)により、行った。試料(100μLのPBSバッファー、2mMのペプチド)を、平底96ウェルマイクロクリアプレート(Greiner, Frickenhausen, Germany)中に配置した。90°の角度における散乱光の強度の自己相関を10秒間にわたり記録し、40回の記録にわたる平均を求めることにより、単一のデータポイントを得る。Wyatt Dynamicsソフトウェアを用いて、球状粒子の形状を推定することにより、水力学的な半径を計算した。Bio-ATR IIアクセサリーを備えたBruker Tensor 27赤外分光光度計を用いて、減弱化全反射フーリエ変換赤外分光法(Attenuated Total Reflection Fourier Transform Infrared Spectroscopy:ATR FTIR)を行った。120回のデータ獲得を蓄積することにより、900〜3500cm
−1の範囲において、4cm
−1のスペクトル解像度において、スペクトルを記録した。分光光度計は、乾燥した空気で持続的にパージした。空電についてのスペクトルを記録し、基線を差し引き、アミドII領域において再計測した(1500〜1600cm
−1)。透過型電子顕微鏡(TEM)のために、ペプチド調製物からのアリコートを、炭素被覆されたFormvar 400-メッシュの銅グリッド(Agar Scientific)に1分間にわたり吸着させた。グリッドを、ブロットし、洗浄し、1%(wt.vol
−1)の酢酸ウラニルで染色した。試料を、JEOL JEM-1400顕微鏡(JEOL Tokyo, Japan)で、80kVにおいて調べた。
 
【0116】
7.時間−殺傷動態学アッセイ
  ペプチドの時間−殺傷の動態学研究を行い、十分な暴露の時点における細菌の殺傷速度を評価した。本研究は、抗菌活性の評価のための標準的なガイドに従って、時間−殺傷動態学の手順を用いて行った。剤の濃度の選択は、MICのエンドポイントにより導かれた。
 
【0117】
  簡単に述べると、20μLの凍結されたE. coli O157:H7の培養物を、5mLのLB中に接種し、振盪インキュベーター中で37℃で、対数増殖終了期まで増殖させた。培養物を、その後、フレッシュなLB培地(1mL)中で、OD
600=0.002まで希釈した(1×10
8CFU/mL)。凝集因子の経時的な効果を評価するために、細菌を、様々な濃度のペプチドに、MIC値において、様々な期間にわたり(5分、10分、30分、1時間、6時間まで)供した。定義された接触期間の後で、50μlの各培養物を、連続希釈し、血液寒天プレート上に播種した。プレートを、振盪せずに、37℃で一晩インキュベートした 。陽性および陰性の対照は、それぞれ、使用された最大量のバッファーおよびLB培地で処置された細菌であった。生存生体の数は、CFU/mlとして計数した。
 
【0118】
8.多段階の耐性の発達の研究
  MIC値の半分の活性なペプチドの存在下において30日間にわたり繰り返し継代培養することにより、標的株が活性な化合物に対して耐性を発達させる能力を評価した。簡単に述べると、E. coli O157の培養物を、Luriaブロス(LB)培地中で増殖させた;次いで、細菌の光学密度を、0.002のOD600に調整した(1×10
8CFU/mLに等しい)。次いで、細菌を、MIC濃度の半分においてP2ペプチドにより処置し、24時間のインキュベーション期間の後で、EUCASTガイドラインに従って、微量希釈アッセイによりMICを試験し、細菌を、MIC値の半分量のそれぞれの凝集因子の存在下において再培養した。この実験において、アンピシリンを陽性対照として用いた。
 
【0119】
9.走査型電子顕微鏡
  走査型電子顕微鏡観察(SEM)のために、E. coli O157細菌を、対数増殖終了期において、10
8CFU/mLの密度まで希釈し、MIC濃度より上の量のペプチドで処置した。2時間の処置の後で、細菌を、2%のグルタルアルデヒドで1時間にわたり固定した。0.1Mのカコジル酸ナトリウムバッファー中、1%の四酸化オスミウム(OsO4)を、1時間にわたり後固定として用いた。試料を、カコジル酸バッファー(0.1Mのカコジル酸ナトリウム)で10分間、室温において、3回洗浄した。試料を、段階的エタノールシリーズ(50%、70%、96%、100%のアルコール)で脱水した。脱水のステップの後で、試料を、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)により1時間にわたり乾燥させ、試料台上にマウントし、金でスパッタ被覆した。30kVの加速電圧を有するSEM-FEG顕微鏡(JEOL JSM 6700F)を用いた。
 
【0120】
10.横断面の透過型電子顕微鏡
  E. coliを、対数増殖終了期において、2回洗浄し、生理的水で希釈し、その後、4×MIC値の特異的凝集因子(aggregator)ペプチド(コルぺプチン1もしくはP2Pro2)またはバッファー(対照群)のいずれかにより、2時間にわたり37℃で処置した。2時間後、細菌を、6000rpmで4分間にわたり遠心分離し、ペレットを、0.1MのNa−カコジル酸バッファーpH=7.2〜7.4[+2.5mMのCaCl2+1mMのMgCl2]中、2.5%のグルタルアルデヒドにより1時間にわたり固定した。次いで、ペレットを、カコジル酸バッファーで洗浄し、コジル酸バッファー中、1.5%の低融点アガロース(Sigma A4018)中で再懸濁し(40℃)、6000rpmで4分間遠心分離した。遠心管を、15分間にわたり氷上に置き、その後、ペレットを含有するチップを切り取り、ペレットをカコジル酸バッファーの液滴中に取り除いた。ペレットを、1mm
3の管中で切断し(4℃)、蒸留水中、1%の四酸化オスミウム(OsO4)で2時間にわたり後固定し、蒸留水で2回洗浄した。その後、試料を、段階的エタノールシリーズ(30、50、70、90、100%)中で、各ステップ5分間、4℃で、ゆっくりと回転させながら脱水した(エタノール100%、3回繰り返した)。最後に、細胞を、プロピレンオキシドにより2回、15分間、4℃で処置し、エポキシ樹脂とプロピレンオキシドとの1:1の混合物を浸潤させ(60‘@4℃、ゆっくりと回転させる)、その後、ドラフト下において、キャップをせずに、2:1のエポキシ樹脂とプロピレンオキシドとの混合物中で一晩静置した。翌朝、試料を、100%のフレッシュなエポキシ樹脂中に配置し、夜にBEEMカプセル中に包埋し、2日間にわたりオーブン中で60℃において重合させた。Leica ultracut UCTウルトラミクロトームを用いて超薄切片を切り出し、80kVにおいて作動させ、Olympus Quemesa 11Mpxlカメラを備えたJEOL JEM1400透過型電子顕微鏡において観察した。
 
【0121】
11.In vitroでの溶血活性試験
  ペプチドの溶血活性を、ヒト赤血球に対する溶血により決定した。プールしたフレッシュな血液を得、3000rpmでの5分間にわたる遠心分離により、赤血球を回収した(Anticoagulated by EDTAK)(Cristina et al. 2015)。ペレットを、PBSで3回洗浄し、PBS中8%の濃度まで希釈した。100μLの8%の赤血球細胞溶液を、96ウェルプレート(BD Biosciences)中で100μLのPBSバッファー中のペプチドの連続希釈と混合した。反応混合物を、1時間にわたり37℃でインキュベートした。その後、プレートを、10分間にわたり3000rpmで遠心分離し、100μLの上清を、滅菌96ウェルプレート(平底)に移した。405nmにおける上清の吸光度を測定することにより、ヘモグロビンの放出を決定した。溶血活性は、溶血を引き起こした最小ペプチド濃度として決定した(最小溶血濃度、MHC)。1%のTritonおよび最大の使用された濃度のビヒクル中の赤血球を、それぞれ、100%および0%溶血の対照として用いた。
 
【0122】
12.In vitroでの哺乳動物細胞毒性
  LDH放出(Roche, Mannheim, Germany)およびCellTiter Blue(Promega)法を用いて、哺乳動物細胞毒性を測定した。簡単に述べると、HeLa細胞(Bart De Strooper研究室から得られ、マイコプラズマフリーであることを試験したもの)を、96ウェル丸底プレート中に、ダルベッコ改変イーグル培地中3×10
5細胞/mLの濃度において播種し、様々な濃度のペプチドにより処置した。1%のTriton(商標)X-100およびビヒクルで処置した細胞を、それぞれ陽性および陰性対照とみなした。マイクロプレートを、37℃で、5%CO2および90%の湿度において、4時間にわたりインキュベートした。マイクロプレートを、1350rpmで10分間にわたり遠心分離した。100μLの上清を、透明な96ウェル平底マイクロプレート中に移した。上清中のLDH活性を測定するために、100μlの反応ミックス(触媒および色素溶液)を各ウェルに加え、30分間にわたりRTで暗所でインキュベートし、100ulの停止(Stop)溶液を添加することにより、LDH反応を停止させた。490nmにおける試料の吸光度を測定した。式:(exp.値−陰性対照値)/(陽性対照値−陰性対照値)
*100を用いて、細胞の生存率を計算した。吸光の量は、生細胞の数に比例し、細胞の代謝活性に対応する。
 
【0123】
13.E. coli ATCC 25922株におけるhcaB遺伝子のクローニングおよび発現
  E. coli O157のHcaBのコード領域を、加えてクローニングを目的としてSalIおよびSmaI制限酵素切断部位を含むhcaB特異的プライマー(ATGTCGACATGAGCGATCTGCATAACGA(配列番号224)、ATGTCGACATGGAGCGATTTATCGAAGAAGGC(配列番号225)、ATCCCGGGTTAAAGATCCAACCCAGCCG(配列番号226))を用いて増幅した。一方が標的とされる遺伝子部分であるAPRであり、他の一方が標的領域を含まない、遺伝子の2つの短縮型バージョンを設計した。細菌E. coli O157株、臨床分離株のゲノムDNA(gDNA)を、鋳型として用いた。アンプリコンを、SalI/SmaIで消化したpCN68 E. coli−Staphylococcusシャトルベクター中にライゲーションし、異なる短縮型バージョンpCN-hcaBを得た。このプラスミドにおいて、PblaZがプロモーターである。アンピシリン(25μg/mL)またはエリスロマイシン(100μg/mL)を、選択マーカーとして用いた。クローニングの正確性は、初めに制限酵素消化、PCR、および挿入物のヌクレオチド配列分析により、次いでシークエンシングにより確認した。
 
【0124】
14.マクロライドとペプチドとの相互作用
  エリスロマイシンの存在下におけるペプチドの効果を評価するために、E. coli O157を、5mlのLB(Luria-Bertani)中で増殖させた。対数期の培養物を、次いで、108細胞/mlまで希釈した。増殖を停止させるために、細菌を、100ug/mlの濃度のエリスロマイシンにより、2時間にわたり37℃で振盪することなく処置した。様々な濃度のペプチド(100ug/ml〜0.75ug/ml)またはバッファーを、少なくとも3回の複製ウェル(50ul)を用いて、96ウェル中に播種した。50ulのエリスロマイシン処置細菌を、各ウェルに加え、96ウェルプレートを、2時間にわたり37℃でインキュベートした。2時間後、細菌を連続希釈し、血液寒天プレート上で培養した。プレートを、37℃で一晩インキュベートした。CFU計数により、生細胞の数を定量した。
 
【0125】
FITC標識ペプチドに共役した、細菌と哺乳動物細胞との共培養物の蛍光顕微鏡
  イメージングを目的として、ヒトHELA細胞を、ガラス底を有するスモールセルビュー細胞ディッシュ(small cell view cellular dish)(Greiner Bio-One/ GmbH/ 35mm ref: 627860)上で増殖させ、コンフルエントな単層を形成させた。その後、細胞に、200μLのE. coli O157株の一晩培養物を、FITCペプチド(3×MIC)と共に、24時間にわたり感染させた。細胞を、CellMask Deep Red細胞膜色素および1μlのNucBlue試薬(Invitrogen)で30分間にわたり染色し、次いで、培地を取り除いて、2mlの4%パラホルムアルデヒドを、固定のためにプレートに加えた。プレートを、6時間にわたりRTでインキュベートした。共培養した細胞を、1mLの食塩水で3回洗浄し、その後イメージングした。
 
【0126】
15.発光共役オリゴマー(LCO)による染色
  200μLの対数増殖終了時の培養E. coli O157を、PBSで3回洗浄し、細菌数を10
8細胞に調整し、その後、細菌を、ペプチドで(MICで)、または対照としてPro2ペプチドで、2時間にわたり処置した。2時間後、細胞を、1μLのLCO色素p−FTAAと共に1時間および30分間にわたりインキュベートした。吸光度および発光スペクトルを、480〜600nmにおいて測定した。
 
【0127】
16.標識されたペプチドおよびヨウ化プロピジウム(PI)を用いる細菌のフローサイトメトリー分析
  ヨウ化プロピジウム(PI)およびFITCペプチドによる二重染色技術を用いて、殺傷速度およびペプチドの取り込みを、二次元分析において評価した。簡単に述べると、対数増殖終了期のE. coli O157細胞(10
8CFU/mL)を、PBSで洗浄し、MIC値のペプチド(コルぺプチン11またはPro2/FITC標識されたもの)により、様々な期間にわたり処置した。処置された細菌を、再び、PBSバッファーで3回洗浄した。1ulのPI(Invitrogen)を細菌に加え、5分間にわたりインキュベートした後、混合物からFACs管中にアリコート(500μL)を分取した。ペプチドの活性を細胞死と相関させるために、Gallios(商標)フローサイトメーターを用いて、2つのチャネルにおいて蛍光強度を測定した。PI:励起536nmおよび発光617nm、FITC:励起490nmおよび発光525nm。
 
【0128】
17.封入体精製
  20mLの細菌の一晩培養物を、30分間にわたり6000rpmで遠心分離し、生理的水により洗浄した。細菌を、MICのペプチドにより、半殺傷時間(half killing time)にわたり処置し、その後、細菌ペレットを、10mLのバッファーA(50mMのHepes(pH7.5)、300mMのNaCl、5mMのベータ−メルカプトエタノール、1.0mMのEDTA)により洗浄し、4℃で30分間にわたり6krpmで遠心分離した。上清を廃棄し、20mLのバッファーB(バッファーAプラス1μg/mLのロイぺプチン、0.1mg/mLのAEBSF)を、細菌のペレットに加えた。細胞を破壊するために、20000〜25000psiに設定した圧力により、Glen Creston細胞ホモジェナイザーを用いて、加えて、懸濁液を、氷上で交互に2分間(2分間の合計超音波処理時間を完了するまで、50%の出力において15パルス、および氷上で30秒間の休止)超音波処理した(Branson Digital sonifier 50/60HZ)。溶解した細胞を、4℃で30分間にわたり10krpmで遠心分離した。沈殿した画分を、その後、10mLのバッファーD(バッファーAプラス:0.8%V/VのTriton X-100、1%のデオキシコール酸ナトリウム)で再懸濁し、ペレットが確実に完全に溶解するように、懸濁液を超音波処理した。このステップを、3回繰り返した。遠心分離を、4℃で30分間にわたり10.000rpmにおいて行った。最後に、IBを可溶化するために、ペレットを、沈殿した画分1グラムあたり1mLのバッファーF(50mMのHepes(pH7.5)、8.0Mの尿素)中で懸濁した。
 
【0129】
18.血清の存在下におけるペプチドの活性および安定性
  簡単に述べると、ヒト血清を得るために、フレッシュな血液を、RT(室温)で20分間にわたり静置し、凝血させた。次いでチューブを3000pmで10分間にわたり遠心分離し、血清を分離した。血清を、RPMI培地(50%)中で希釈し、5μg/ml、25μg/mLおよび50μg/mLの様々な濃度を有するペプチドを、各ウェルに加えた。2時間のインキュベーションの後、対数増殖終了時のE. coli O157培養物を、PBSで3回洗浄し(8000rpm、10分間)。次いで、細菌の数を、RPMI培地中で、血清を用いて、またはこれに用いずに、9×10
8細胞に調整した。2時間のインキュベーションの後、細菌を連続希釈し、血液寒天プレート上で培養した。次いで、プレートを37℃で一晩インキュベートした。生細菌の数は、CFU/ml(コロニー形成単位)の数として定量した
 
【0130】
19.HcaB精製および抗体産生
  E. coli hcaBの完全コード遺伝子(SE2232、分類ID:83333)を、hcaB特異的プライマー:
【数1】
と、これに加えてクローニングの目的のためにNdeIおよびBamHI制限酵素切断部位(下線および斜体)を用いて増幅した。タンパク質精製を容易にするために、抗6X His(太字)タグを、組み換えタンパク質上のタグとして用いた。
  E. coli株O157のゲノムDNA(gDNA)を、鋳型として用いた。アンプリコンを、E. coliにおけるタンパク質発現のための系の構成成分として、NdeI/BamHIで消化したpET11Cプラスミド中にライゲーションし、pET-his-hcaBを得た。このプラスミドにおいて、T7  RNAポリメラーゼ(高度に活性な構成的プロモーター)が、プロモーターであった。選択マーカーとして、アンピシリンを用いた。全ての組み換えプラスミドを、BL21 pET-his-hcaBを有するように、E. coli BL21中で複製した。制限酵素消化および挿入物のヌクレオチド配列分析により、クローニングの正確性を確認した。
 
【0131】
  タンパク質を、先に記載されるように精製した(Luminy and Cedex 2011)。簡単に述べると、E. coli BL21 pET-his-hcaBを、100μg/mLのアンピシリンおよび1mMのイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)を含む1LのLuria-Bertani(LB)ブロス中で、37℃において一晩振盪しながら増殖させた。その後、遠心分離(4,000rpm、10分、4℃)により、細胞を採取して25mlの溶解バッファー(PBS(pH7.5)、1mMのb−メルカプトエタノールプラス1タブレットのプロテアーゼ阻害剤Mini、EDTAフリーの溶解バッファー(EDTA-freelyse))中で再懸濁し、細菌をフレンチプレスにより溶解し、DnaseIを添加して4℃で撹拌し、全タンパク質を精製した。凝集物を取り除くため、本発明者らは、タンパク質を氷上に静置し、次いでろ過した。HcaBタンパク質精製は、完全自動化された液体クロマトグラフィー系であるAKTA FPLC系により行い、ここで、HcaBタンパク質は、HiPrepTM HPの5mlカラムを用いて精製した。実際の精製を始める前に、AKTAを取り外し、帯電させ、ブランクにした。精製は、AKTA Xpress中のプログラムにより行った。精製されたタンパク質を、異なる管から収集し、画分を組み合わせて4℃に保った。精製したタンパク質を、SDSゲル上を流すことによりチェックした。3個体のスイスマウスを、腹腔内で2回、10日間以内に免疫した。最初の注射を、HcaBタンパク質(50ug/マウス)と完全フロイントアジュバント(CFA;Sigma)との混合物(1:1)により投与した。10日目において、LISAにより抗体の滴定を行った後で、追加免疫注射(タンパク質および不完全アジュバント(IFA;Sigma)を行った。次いで、製造者の指示に従って、タンパク質Gカラム(GE Healthcare)への吸収により、全免疫グロブリンGs(IgG)を精製した。
 
【0132】
20.実験動物
  5〜8週齢(20〜23g)のメスのスイスマウスを、実験のために用いた。動物は、実験用ケージへの3日間の順化の期間の後で、規則的な12時間の明暗期間および20℃の環境温度により、実験において用いた。
 
【0133】
21.In vivoでの毒性試験
  アッセイにおいて用いられた手順は、地域の動物倫理委員会により承認され、動物愛護の国際標準に従う(ルーベン大学の倫理委員会の承認番号P067/2015)。30mg/kgの用量の安全濃度は、段階的増大実験から達成され、腹腔内投与の後で何らの急性の有害効果も観察されなかった。
  簡単に述べると、5〜6週齢のスイスメス個体を3群に分け(6動物/群)、30mg/kgのコルぺプチン1(群A)またはビヒクル(生理的水(pH7.5))(群b)を、1日1回、18日間にわたり、IP注射を介して投与した。処置期間の間に、体重、食餌および水の消費、身体状態のスコア、ホームケージでの活動および移動運動を含む、臨床的、生理学的および行動学的パラメーターを、常にモニタリングおよび記録した。
 
【0134】
  最後の投与の3日後に、動物に麻酔し、標準的な後眼窩穿刺を用いて、各々の動物から血液を採取した。次に、マウスを安楽死させ、肉眼での検査および臓器の重量を伴う完全な解剖を行った。臓器(心臓、肝臓、脾臓、腎臓、骨髄、脳、肺)を、サンプリングし、4%パラホルムアルデヒド中で浸漬固定した。ホルマリン固定された組織を、脱水後に、慣用的に処理して、組織病理学的検査のために、パラフィンブロック中に包埋した。これらのブロックから取得された5μm厚の切片(Thermo Scientific Microm HM355Sミクロトーム)は、次いで、ヘマトキシリンおよびエオジンで染色され(Leica ST5010 Autostainer XL)、委員会認定の獣医病理学者によりLeica DM 2500光学顕微鏡下において評価された。自動化高解像度フローサイトメーター、Abbott Cell-Dyn 3700を用いて、血液学検査を行った。
 
【0135】
22.尿路感染モデル
  先に記載されるような4尿路感染モデルのために、8週齢のスイスメスマウスを用いた。簡単に述べると、マウスを、10%のネンブタール の腹腔内投与により麻酔し、次いで、指で、マウスの膀胱をやさしくマッサージして、残尿を排出させるように押し出した。その後、麻酔したマウスに、経尿道的に、50μlの細菌懸濁液を(1×10
8cfu/ml)、膀胱中の滅菌カテーテルにより、手術用顕微鏡を通しての膀胱尿管逆流を回避するために5秒間より長い時間において、ゆっくりと接種した。本発明者らは、試料サイズを以下のとおり概算した:0.05のI型エラー率、II型エラー0.2を許容し、1対数CFUにおけるCFU決定の最大標準偏差を概算し、本発明者らは、15の試料サイズが、処置群と未処置群との間の1対数CFUの差の効果サイズを確実に検出することを可能にするであろうと計算した。1時間後、マウスを無作為化し、5つの群に分けた(15マウス/群)。群AおよびBは、10mg/kgのコルぺプチンを、それぞれ腹腔内でまたは経尿道的に投与された。群Cは、P2Pro2ペプチド(プロリン置換)を経尿道を介して投与された。群Dは、陽性対照としてアンピシリンを経口で投与され、群Dは、ビヒクルを投与された(生理学的水)。次いで、接種の後すぐにカテーテルを除去した。感染の24時間後に、マウスを安楽死させ、腎臓、膀胱、尿管、結腸をPBSで洗浄し、ホモジェナイズした。ホモジェナイズした組織を、連続希釈して、血液寒天プレート上で培養した。プレートを、37℃で一晩静置した。細菌の割合を、CFU値により測定した。盲検法:試料の調製および動物の処置は、L.K.およびL.K.により行われ、L.K.およびL.K.は、CFUの決定も行ったが、しかし、処置と読み取りとの間に、動物は、P.C.により無作為にシャッフルされ、グループ分けのためのキイは、全ての結果が入力された後まで明らかとされなかった。
 
【0136】
23.E. coli MG1655 dnaK-mCer3の構築
  E. coli MG1655 dnaK-mCer3を構築するために、プライマー5’−AGAATTCGGCAGCGGCAGCGGCAGCGTGAGCAAGGGCGAGGA−3’(Fw)(配列番号229)および5’−AGGATCCTTACTTGTACAGCTCGTCCA−3’(Rev)(配列番号230)により生成したmCer3アンプリコンを、EcoRIおよびBamHI制限酵素切断部位を用いてpGBKDparSpMT15中に組み込むことにより、プラスミドpGBKD-mCer3を初めに構築した。それぞれの制限酵素切断部位をアンプリコンの末端に付加することに加えて、これらのプライマーペアはまた、これらの配列により構築された蛍光融合タンパク質のフォールディングを促進する可撓性のリンカー(GSGSGSをコードする6)を付加する。mCer3-frt-cat-frtカセットを、その後、プラスミドpGBKD-mCer3から、プライマーペア:
5’−AGATGACGATGTTGTCGACGCTGAATTTGAAGAAGTCAAAGACAAAAAAGGCAGCGGCAGCGGCA−3’(Fw)(配列番号231)
および
5’−AGGAAATTCCCCTTCGCCCGTGTCAGTATAATTACCCGTTTATAGGGCGAGTGTAGGCTGGAGCTGCTTC−3’(Rev)(配列番号232)を用いてPCRで増幅した。
 
【0137】
  アンプリコンを、その後、MG1655中に挿入し、C末端DnaK-mCer3融合物を作製した。catカセットを、その後、この株にプラスミドpCP20
7を一過性に装備させることによりフリップアウトし、所望されるMG1655 dnaK-mCer3株を生じた。
 
【0138】
24.MS分析のためのSDSゲルからのタンパク質精製
  精製された封入体をSDSゲル(4〜15%のMini-PROTEAN(登録商標)TGX(商標)Precastタンパク質ゲル、10ウェル、50μl)にロードし、クーマシーブルー(R250)で染色した。切り抜いたバンドを、層流下において滅菌メスで切断した。ゲルスライスを、50mMの炭酸水素アンモニウム/ACN(アセトニトリル)(1:1)中で、10分間にわたり、室温で、青色の染色がなくなるまでインキュベートし、バッファーを100%のACNにより置き換えて、5分間にわたりインキュベートすることにより、数回のサイクルにおいて洗浄した。最後のサイクルの後、speedvacにより試料を乾燥させ、250ngの改変トリプシン(Promega)により、50mMの炭酸水素アンモニウムバッファー(pH8.3)中で、一晩、37℃で消化した。5%のACN+0.1%のギ酸、その後、10%のACN+0.1%のFA、および0.5%のFA中の95%のACNを添加することによりペプチドを抽出し、Speedvacにより乾燥させた。抽出したペプチドを、Pierce C18スピンカラム(Thermo Fisher Scientific)を製造者の指示に従って用いることにより洗浄した。試料を、MS機器における注入のために、10μLにおいて、5%のACN+0.1%のFAで希釈した。
 
【0139】
25.統計学
  統計学的計算は、別段に示されない限り、Prismを用いて行った。
  感染モデルのANOVA分析(
図2F〜I)のために、群が類似の標準偏差を有するという仮定をBartlett検定を用いて試験し、これは、尿管データ(これは、未処置群の標準偏差の低下により引き起こされたものであるので、本発明者らは無視した)を除いて、標準偏差の間に有意差を示さなかった。
 
【0140】
表1−E. coli O157に対するHPLCグレードで精製された選択されたペプチドのMICおよびMBC値
【表1】
表2−多様な細菌株に対するコルぺプチン1の活性プロフィールならびにHcaBタンパク質および標的APRの配列保存。
【表2】
 
表3:シャペロン欠失株についてのコルぺプチン1の最小阻害濃度
【表3】
 
 
【0141】
表4−ペプチドの設計およびスクリーニング
1  E. coli O157:H7プロテオーム中のマッチする配列の数(1変異を許容する)。
2  CAMPソフトウェア8を用いての抗菌活性の予測
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
【表4-4】
【表4-5】
【表4-6】
【表4-7】
【表4-8】
【表4-9】
【表4-10】
【表4-11】
【表4-12】
 
【0142】
表5−25ug/ml下においてE. coli O157に対して活性なペプチド
【表5-1】
【表5-2】
 
【0143】
表6−30mg/kgのコルぺプチン1で処置されたマウスの、連続した18日間の注射の後の臓器の重量
【表6】
 
表7−コルぺプチン1で処置されたマウスの、連続した18日間の注射の後の血液学的数値(平均値+SD)
【表7】
 
 
【0144】
WBC、白血球細胞または白血球カウント。NEU、好中球絶対数カウント、%N−好中球パーセント。LYM、リンパ球絶対数カウント、%L−リンパ球パーセント。MONO、単球絶対数カウント%M−単球パーセント。EOS、好酸球絶対数カウント、%E−好酸球パーセント。BASO、好塩基球絶対数カウント、%B−好塩基球パーセント。RBC、赤血球細胞または赤血球カウント。HGB、ヘモグロビン濃度。HCT。ヘマトクリット。MCV、平均赤血球容積。MCH、平均赤血球ヘモグロビン量。MCHC、平均赤血球ヘモグロビン濃度。PLT、血小板(Platelet)または血小板(Thrombocyte)カウント。MPV、平均血小板容積。PDW、血小板分布幅。PCT、血小板クリット。
 
【0145】
表8−コルぺプチン1のAPRに類似する(同一である、または1つのミスマッチ(85.71%同一性))配列セグメントを有するE coliプロテオームからのタンパク質
【表8-1】
【表8-2】
 
【0147】
参考文献
1  Balch, W. E., Morimoto, R. I., Dillin, A. & Kelly, J. W. Adapting proteostasis for disease intervention. Science 319, 916-919, doi:319/5865/916 [pii]
10.1126/science.1141448 (2008).
2  Ellis, R. J. Macromolecular crowding: obvious but underappreciated. Trends Biochem Sci 26, 597-604. (2001).
3  Young, J. C., Agashe, V. R., Siegers, K. & Hartl, F. U. Pathways of chaperone-mediated protein folding in the cytosol. Nat Rev Mol Cell Biol 5, 781-791, doi:10.1038/nrm1492 (2004).
4  Mogk, A., Huber, D. & Bukau, B. Integrating protein homeostasis strategies in prokaryotes. Cold Spring Harbor perspectives in biology 3, doi:10.1101/cshperspect.a004366 (2011).
5  Dobson, C. M. Protein folding and misfolding. Nature 426, 884-890 (2003).
6  Krebs, M. R., Morozova-Roche, L. A., Daniel, K., Robinson, C. V. & Dobson, C. M. Observation of sequence specificity in the seeding of protein amyloid fibrils. Protein Sci 13, 1933-1938, doi:10.1110/ps.04707004 13/7/1933 [pii] (2004).
7  O'Nuallain, B., Williams, A. D., Westermark, P. & Wetzel, R. Seeding specificity in amyloid growth induced by heterologous fibrils. J Biol Chem 279, 17490-17499 (2004).
8  Ganesan, A. et al. Selectivity of aggregation-determining interactions. J Mol Biol 427, 236-247, doi:10.1016/j.jmb.2014.09.027 (2015).
9  De Baets, G., Schymkowitz, J. & Rousseau, F. Predicting aggregation-prone sequences in proteins. Essays Biochem 56, 41-52, doi:10.1042/bse0560041 (2014).
10  Ganesan, A. et al. Structural hot spots for the solubility of globular proteins. Nature communications 7, 10816, doi:10.1038/ncomms10816 (2016).
11  Willmund, F. et al. The cotranslational function of ribosome-associated Hsp70 in eukaryotic protein homeostasis. Cell 152, 196-209, doi:10.1016/j.cell.2012.12.001 (2013).
12  Linding, R., Schymkowitz, J., Rousseau, F., Diella, F. & Serrano, L. A comparative study of the relationship between protein structure and beta-aggregation in globular and intrinsically disordered proteins. J Mol Biol 342, 345-353, doi:10.1016/j.jmb.2004.06.088 (2004).
13  Tompa, P. Intrinsically unstructured proteins. Trends Biochem Sci 27, 527-533 (2002).
14  Rousseau, F., Serrano, L. & Schymkowitz, J. W. How evolutionary pressure against protein aggregation shaped chaperone specificity. J Mol Biol 355, 1037-1047, doi:10.1016/j.jmb.2005.11.035 (2006).
15  Bednarska, N. G., Schymkowitz, J., Rousseau, F. & Van Eldere, J. Protein aggregation in bacteria: the thin boundary between functionality and toxicity. Microbiol-Sgm 159, 1795-1806, doi:10.1099/mic.0.069575-0 (2013).
16  Seefeldt, A. C. et al. The proline-rich antimicrobial peptide Onc112 inhibits translation by blocking and destabilizing the initiation complex. Nat Struct Mol Biol 22, 470-475, doi:10.1038/nsmb.3034 (2015).
17  Last, N. B., Schlamadinger, D. E. & Miranker, A. D. A common landscape for membrane-active peptides. Protein Sci 22, 870-882, doi:10.1002/pro.2274 (2013).
18  Last, N. B. & Miranker, A. D. Common mechanism unites membrane poration by amyloid and antimicrobial peptides. Proc Natl Acad Sci U S A 110, 6382-6387, doi:10.1073/pnas.1219059110 (2013).
19  Bednarska, N. G. et al. Protein aggregation as an antibiotic design strategy. Mol Microbiol, doi:10.1111/mmi.13269 (2015).
20  Hayashi, T. et al. Complete genome sequence of enterohemorrhagic Escherichia coli O157:H7 and genomic comparison with a laboratory strain K-12. DNA Res 8, 11-22 (2001).
21  Betti, C. et al. Sequence-Specific Protein Aggregation Generates Defined Protein Knockdowns in Plants. Plant physiology 171, 773-787, doi:10.1104/pp.16.00335 (2016).
22  De Baets, G., Van Durme, J., Rousseau, F. & Schymkowitz, J. A genome-wide sequence-structure analysis suggests aggregation gatekeepers constitute an evolutionary constrained functional class. J Mol Biol 426, 2405-2412, doi:10.1016/j.jmb.2014.04.007 (2014).
23  Beerten, J. et al. Aggregation gatekeepers modulate protein homeostasis of aggregating sequences and affect bacterial fitness. Protein Eng Des Sel 25, 357-366, doi:10.1093/protein/gzs031 (2012).
24  Rousseau, F., Serrano, L. & Schymkowitz, J. W. H. How evolutionary pressure against protein aggregation shaped chaperone specificity. Journal of Molecular Biology 355, 1037-1047, doi:10.1016/j.jmb.2005.11.035 (2006).
25  Hancock, R. E. & Chapple, D. S. Peptide antibiotics. Antimicrobial agents and chemotherapy 43, 1317-1323 (1999).
26  Waghu, F. H. et al. CAMP: Collection of sequences and structures of antimicrobial peptides. Nucleic Acids Res 42, D1154-1158, doi:10.1093/nar/gkt1157 (2014).
27  Rokney, A. et al. E. coli transports aggregated proteins to the poles by a specific and energy-dependent process. J Mol Biol 392, 589-601, doi:10.1016/j.jmb.2009.07.009 (2009).
28  Young, L. M. et al. Screening and classifying small-molecule inhibitors of amyloid formation using ion mobility spectrometry-mass spectrometry. Nat Chem 7, 73-81, doi:10.1038/nchem.2129 (2015).
29  Klingstedt, T. et al. Synthesis of a library of oligothiophenes and their utilization as fluorescent ligands for spectral assignment of protein aggregates. Organic & biomolecular chemistry 9, 8356-8370, doi:10.1039/c1ob05637a (2011).
30  Hammarstrom, P. et al. A fluorescent pentameric thiophene derivative detects in vitro-formed prefibrillar protein aggregates. Biochemistry 49, 6838-6845, doi:10.1021/bi100922r (2010).
31  Aslund, A. et al. Novel pentameric thiophene derivatives for in vitro and in vivo optical imaging of a plethora of protein aggregates in cerebral amyloidoses. ACS chemical biology 4, 673-684, doi:10.1021/cb900112v (2009).
32  Cremers, C. M. et al. Polyphosphate: A Conserved Modifier of Amyloidogenic Processes. Mol Cell 63, 768-780, doi:10.1016/j.molcel.2016.07.016 (2016).
33  Wang, M. et al. PaxDb, a database of protein abundance averages across all three domains of life. Mol Cell Proteomics 11, 492-500, doi:10.1074/mcp.O111.014704 (2012).
34  Niwa, T. et al. Bimodal protein solubility distribution revealed by an aggregation analysis of the entire ensemble of Escherichia coli proteins. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 106, 4201-4206, doi:10.1073/pnas.0811922106 (2009).
35  Dana, A. & Tuller, T. Mean of the typical decoding rates: a new translation efficiency index based on the analysis of ribosome profiling data. G3 (Bethesda) 5, 73-80, doi:10.1534/g3.114.015099 (2014).
36  Huang da, W., Sherman, B. T. & Lempicki, R. A. Systematic and integrative analysis of large gene lists using DAVID bioinformatics resources. Nat Protoc 4, 44-57, doi:10.1038/nprot.2008.211 (2009).
37  Baba, T. et al. Construction of Escherichia coli K-12 in-frame, single-gene knockout mutants: the Keio collection. Mol Syst Biol 2, 2006 0008, doi:10.1038/msb4100050 (2006).
38  Xu, J. et al. Gain of function of mutant p53 by coaggregation with multiple tumor suppressors. Nat Chem Biol 7, 285-295, doi:10.1038/nchembio.546 (2011).
39  Calloni, G. et al. DnaK functions as a central hub in the E. coli chaperone network. Cell reports 1, 251-264, doi:10.1016/j.celrep.2011.12.007 (2012).
40  Chapman, E. et al. Global aggregation of newly translated proteins in an Escherichia coli strain deficient of the chaperonin GroEL. Proc Natl Acad Sci U S A 103, 15800-15805, doi:10.1073/pnas.0607534103 (2006).
41  Fujiwara, K., Ishihama, Y., Nakahigashi, K., Soga, T. & Taguchi, H. A systematic survey of in vivo obligate chaperonin-dependent substrates. EMBO J 29, 1552-1564, doi:10.1038/emboj.2010.52 (2010).
42  Houry, W. A., Frishman, D., Eckerskorn, C., Lottspeich, F. & Hartl, F. U. Identification of in vivo substrates of the chaperonin GroEL. Nature 402, 147-154 (1999).
43  Kerner, M. J. et al. Proteome-wide analysis of chaperonin-dependent protein folding in Escherichia coli. Cell 122, 209-220, doi:10.1016/j.cell.2005.05.028 (2005).
44  Niwa, T., Kanamori, T., Ueda, T. & Taguchi, H. Global analysis of chaperone effects using a reconstituted cell-free translation system. Proc Natl Acad Sci U S A 109, 8937-8942, doi:10.1073/pnas.1201380109 (2012).
45  Mogk, A. et al. Identification of thermolabile Escherichia coli proteins: prevention and reversion of aggregation by DnaK and ClpB. Embo J 18, 6934-6949 (1999).
46  Deuerling, E. et al. Trigger Factor and DnaK possess overlapping substrate pools and binding specificities. Mol Microbiol 47, 1317-1328 (2003).
47  Gallardo, R. et al. De novo design of a biologically active amyloid. Science 354, doi:10.1126/science.aah4949 (2016).