(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-521821(P2020-521821A)
(43)【公表日】2020年7月27日
(54)【発明の名称】体外衝撃波を用いた細胞外小胞体内へ標的物質を伝達する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20200626BHJP
A61K 41/00 20200101ALI20200626BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20200626BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20200626BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20200626BHJP
C12N 5/07 20100101ALI20200626BHJP
C12N 13/00 20060101ALI20200626BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K41/00
A61K48/00
A61K31/7088
A61K35/12
C12N5/07ZNA
C12N13/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2020-517267(P2020-517267)
(86)(22)【出願日】2018年5月30日
(85)【翻訳文提出日】2019年12月2日
(86)【国際出願番号】KR2018006143
(87)【国際公開番号】WO2018221954
(87)【国際公開日】20181206
(31)【優先権主張番号】10-2017-0069309
(32)【優先日】2017年6月2日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0055994
(32)【優先日】2018年5月16日
(33)【優先権主張国】KR
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】519429842
【氏名又は名称】エクソレンス、バイオテクノロジー
【氏名又は名称原語表記】EXOLLENCE BIOTECHNOLOGY
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】クォン、ギファン
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ジファ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ギョンファ
【テーマコード(参考)】
4B033
4B065
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B033NA11
4B033NJ10
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065BD50
4C084AA11
4C084AA13
4C084AA17
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4C084NA05
4C084NA13
4C086AA01
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4C086MA04
4C086MA24
4C086NA05
4C086NA13
4C087AA01
4C087AA02
4C087CA04
4C087MA24
4C087NA05
4C087NA13
(57)【要約】
本発明は、標的物質及び細胞外小胞体を体外衝撃波に露出させる段階を含む、細胞外小胞体内へ標的物質を伝達する方法、標的物質が導入された細胞外小胞体を製造する方法、該方法によって製造された細胞外小胞体、該細胞外小胞体を含む薬物伝達体及び細胞内へ標的物質を伝達する方法に関するものである。本発明による方法は、動物細胞、植物細胞、細菌及び真核細菌を含む微生物など自然界の生物に由来する細胞外小胞体だけでなく、人工的に製造した細胞外小胞体を細胞外から体外衝撃波に露出させるところ、強力なエネルギーレベルの体外衝撃波を利用することができるので、標的物質を体外小胞体内へ効率的に伝達させることができる。また、体外衝撃波を処理すると、前記標的物質が導入された細胞外小胞体の目的とする細胞への混入能力もまた増加するところ、本発明の方法によれば、標的物質を高効率で細胞内へ伝達させることができるので、さまざまな分野に活用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的物質及び細胞外小胞体を体外衝撃波に露出させる段階を含む、細胞外小胞体内へ標的物質を伝達する方法。
【請求項2】
前記標的物質は、核酸、タンパク質及び化合物からなる群から選択されるいずれか一つ以上であることを特徴とする、請求項1に記載の細胞外小胞体内へ標的物質を伝達する方法。
【請求項3】
前記体外衝撃波は、0.05〜0.9mJ/mm2のエネルギー範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の細胞外小胞体内へ標的物質を伝達する方法。
【請求項4】
前記細胞外小胞体は、エキソソーム(exosome)、エクトソーム(ectosome)、マイクロベシクル(microvesicle)とアポトーシス(apopototic body)からなる群から選択されるいずれか一つ以上であることを特徴とする、請求項1に記載の細胞外小胞体内へ標的物質を伝達する方法。
【請求項5】
標的物質及び細胞外小胞体を体外衝撃波に露出させる段階を含む、標的物質が導入された細胞外小胞体を製造する方法。
【請求項6】
請求項5の方法により製造された、細胞外小胞体。
【請求項7】
前記製造された細胞外小胞体は、細胞への混入(incorporation)能力が増加したことを特徴とする、請求項6に記載の細胞外小胞体。
【請求項8】
請求項6の細胞外小胞体を含む、薬物伝達体。
【請求項9】
(a)標的物質及び細胞外小胞体を体外衝撃波に露出させ、標的物質を細胞外小胞体内へ導入する段階、及び
(b)前記標的物質が導入された細胞外小胞体を細胞に処理する段階
を含んでなる、細胞内へ標的物質を伝達する方法。
【請求項10】
前記(a)段階で体外衝撃波は、0.05〜0.9mJ/mm2のエネルギーの範囲であることを特徴とする、請求項9に記載の細胞内へ標的物質を伝達する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標的物質及び細胞外小胞体を体外衝撃波に露出させる段階を含む、細胞外小胞体内へ標的物質を伝達する方法と、標的物質が導入された細胞外小胞体を製造する方法と、該方法によって製造された細胞外小胞体、該細胞外小胞体を含む薬物伝達体、並びに細胞内へ標的物質を伝達する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
衝撃波は、特定の音波発生器によって生成される連続した単一音波であって、100MPaまでの高ピーク圧力振幅を有し、1μs未満の短い持続時間を有し、0.005〜1.0mJ/mm
2範囲のエネルギー密度で特定の標的部位に伝達することができる。
【0003】
高エネルギーの体外衝撃波結石破砕術(extracorporeal shock−wave lithotripsy、ESWL)は、35〜100MPaの圧力を人体の特定部位に照射する治療方法であって、腎臓と胆管の結石破砕に使用されて以来、様々な分野で新たな治療方法で試みられている。近来、体外衝撃波結石破砕術が筋骨格系疾患治療に利用され、抗炎症作用及び血流増加に効果を奏すると報告されている。
【0004】
細胞外小胞体は、二重脂質膜からなる数十nm〜数百nmのサイズのナノ小胞体であって、タンパク質、脂質、及び遺伝子などの生物学的に活性を有する物質で構成されている。従来は、このような細胞外小胞体は、細胞から分泌される残渣であるとされてきたが、最近は細胞外小胞体の臨床学的意味が台頭してきており、様々な研究が進められている。特に、細胞によって排出される球状小嚢であるエクソソームは、母細胞タンパク質、DNAなどの様々な情報を有しているので、これをバイオマーカーとして活用した癌検出用マーカー及びセンサーの開発に活発に取り組んでいる。一例として、患者の血液中に存在する細胞外小胞体から変異した形であるEGFRVIII遺伝子の検出に基づいて、膠芽腫の診断可能性を提示した研究結果がある。また、患者の尿中に存在する細胞外小胞体の中から、癌細胞由来の細胞外小胞体の誘電体解析を通じて前立腺癌の生体マーカーPCA−3及びTMPRSS2:ERGの存在を確認した研究結果もある。併せて、体液内の細胞外小胞体内に存在する炎症性疾患に関連する遺伝子発現量を解析し、炎症性疾患を診断する方法が特許登録第10−1704828号に開示されている。
【0005】
一方、特許登録第10−1719569号において、本発明者らは、本発明に先立って体外衝撃波を処理した細胞から目的の標的物質が導入されたエキソソームと、エクトソーム、マイクロベシクルまたはアポトーシスなどの細胞外小胞体の生成及び分泌が増加することを確認することによって、標的物質を含有する細胞を生成する方法を確立した。しかし、前記の方法は、形質転換過程が細胞に加えられた体外衝撃波によって産生された細胞外小胞体を媒介に行われることの確認に止まっており、細胞外小胞体、特にエキソソーム自体を利用する機転及びこれを直接用いた形質転換方法については開示されていなかった。細胞を用いた治療法に比べ、エキソソームを基盤とする薬物伝達又は治療は、血管の閉鎖効果がなく、二次微小血管血栓症を発生させる危険性及び腫瘍形成の危険性を低減し得る。また、エキソソームは、少量の細胞で多量得ることができ、前記のように収得した大量のエキソソームは安定であり、かつ保存が容易であり、免疫拒否反応を誘導しないので、臨床に適用しやすいという多くの利点が存在する。したがって、細胞を媒介とした治療法よりも改善されたエキソソーム自体を用いた細胞治療法を研究する必要性があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、形質転換の過程で標的物質を伝達する媒介体である細胞外小胞体内へ標的物質を伝達する方法を研究していたところ、従来登録特許である第10−1719569号とは異なり、細胞外小胞体にエネルギーレベルの高い体外衝撃波を処理すれば、標的物質の細胞外小胞体への導入率が増加し、前記標的物質が導入された細胞外小胞体の細胞に対する混入能力の増加が発生する事実を確認した。また、標的物質を担持した細胞外小胞体として動物細胞、植物細胞、細菌及び真核細菌を含む微生物など、自然界の生物に由来する細胞外小胞体だけでなく、人工的に産生された細胞外小胞体も活用できることを確認しており、体外衝撃波を利用すれば、目標とする細胞への標的物質の伝達効率が高まることが明らかになった。このようにして、本発明を完成した。
【0007】
したがって、本発明の目的は、標的物質及び細胞外小胞体を体外衝撃波に露出させる段階を含む、細胞外小胞体内へ標的物質を伝達する方法と、標的物質が導入された細胞外小胞体を製造する方法と、該方法によって製造された細胞外小胞体、該細胞外小胞体を含む薬物伝達体、並びに細胞内へ標的物質を伝達する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は、標的物質及び細胞外小胞体を体外衝撃波に露出させる段階を含む、細胞外小胞体内へ標的物質を伝達する方法を提供する。
【0009】
また、本発明は、標的物質及び細胞外小胞体を体外衝撃波に露出させる段階を含む標的物質が導入された細胞外小胞体を製造する方法を提供する。
【0010】
また、本発明は、前記方法によって製造された細胞外小胞体を提供する。
【0011】
また、本発明は、前記細胞外小胞体を含む薬物伝達体を提供する。
【0012】
また、本発明は、(a)標的物質及び細胞外小胞体を体外衝撃波に露出させて標的物質を細胞外小胞体内へ導入する段階;及び(b)前記標的物質が導入された細胞外小胞体を細胞に処理する段階;を含む、細胞内へ標的物質を伝達する方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明による方法は、動物細胞、植物細胞、細菌及び真核細菌を含む微生物など、自然界の生物に由来する細胞外小胞体だけでなく、人工的に製造した細胞外小胞体を細胞外から体外衝撃波に露出させるところ、強力なエネルギーレベルの体外衝撃波を使用することができるので、標的物質を体外小胞体内へ効率的に伝達させることができる。また、体外衝撃波を処理すると、前記標的物質が導入された細胞外小胞体の目的とする細胞への混入能力もまた増加する。その結果、本発明の方法によれば、標的物質を高い効率で細胞内へ伝達することができ、様々な分野に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】体外衝撃波処理の有無によるエキソソーム分散溶液のゼータ電位の変化を測定した結果を示す図である。
【
図2】体外衝撃波処理の有無によるエキソソームのサイズの変化をナノ粒子トラッキング解析(NTA)装置を用いて測定した結果を示す図である。
【
図3】体外衝撃波を処理した血管内皮細胞HUVEC由来のエキソソームをヒト血管内皮細胞HUVECに処理し、体外衝撃波による細胞内エキソソーム混入(incorporation)の程度をエネルギーレベルに応じて比較分析した実験の結果を示す図である。
【
図4】様々なレベルの体外衝撃波によるsiRNA(siGlo)のエキソソームへの導入及び前記siRNAが導入されたエキソソームの混入(incorporation)能力を比較分析した結果を示す図である。
【
図5】様々なレベルの体外衝撃波によるRFPタンパク質のエキソソームへの導入及び前記タンパク質が導入されたエキソソームへの混入(incorporation)能力を比較分析した結果を示す図である。
【
図6】様々なレベルの体外衝撃波によるmicroRNAのエキソソームへの導入及び前記microRNAが導入されたエキソソームの混入(incorporation)能力を比較分析した結果を示す図である。
【
図7】体外衝撃波によって核酸が導入されたHUVEC由来の細胞外小胞体(ESW O)を用いたmicro RNA(Cel−miR−39)の形質転換率を様々な細胞で対照群(ESW X)と比較した結果を示す図である。
【
図8】体外衝撃波によって核酸が導入されたMSC由来の細胞外小胞体(ESW O)を用いたmicro RNA(Cel−miR−39)の形質転換率を様々な細胞で対照群(ESW X)と比較した結果を示す図である。
【
図9】体外衝撃波によって核酸が導入されたVSMC由来の細胞外小胞体(ESW O)を用いたmicro RNA(Cel−miR−39)の形質転換率を様々な細胞で対照群(ESW X)と比較した結果を示す図である。
【
図10】体外衝撃波を処理した牛乳由来のエキソソームをヒトの血管内皮細胞HUVECに処理し、体外衝撃波による細胞内エキソソームの混入(incorporation)程度を対照群と比較分析した結果を示す図である。
【
図11】体外衝撃波を処理したグレープフルーツ由来エキソソームをヒトの血管内皮細胞HUVECに処理し、体外衝撃波による細胞内エキソソームの混入(incorporation)程度を対照群と比較分析した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、標的物質及び細胞外小胞体を体外衝撃波に露出させる段階を含む、細胞外小胞体内へ標的物質を伝達する方法を提供する。
【0016】
以下では、本発明についてさらに詳しく述べる。
【0017】
本発明において使用される用語「標的物質」、該標的物質は、細胞内へ伝達されることにより、これの目的とする効果を発現することができる物質であれば制限なく含むことが可能であるが、好ましくは、前記標的物質は、核酸、タンパク質及び化合物からなる群から選択されるいずれか一つ以上であることができる。また、前記核酸は、自然界に存在する核酸であるが、人工的に製造された核酸をすべて含むことができ、好ましくは、DNA、RNA、マイクロRNA(microRNA、miRNA)、小さなRNA(Small RNA、smRNA)、小さな干渉RNA(small interfering RNA、siRNA)、パイRNA(Piwi−interacting RNA、piRNA)、核小体低分子RNA(small nuclelar RNA、snoRNA)、t−RNA−由来小さなRNA(tRNA−derived small RNA、tsRNA)、小さなrDNA−由来RNA(small rDNA−derived RNA、srRNA)、小核RNA(small nuclear RNA、U−RNA)及び長い非暗号化RNA(long noncoding RNA、lncRNA)であることができるが、これらに限定されない。
【0018】
本発明において使用される用語「体外衝撃波」は、特定の音波発生器によって生成される連続した単一音波であって、100MPaまでの高ピーク圧力振幅を有し、1μs未満の短い持続時間を有し、0.005〜1.0mJ/mm
2範囲のエネルギー密度にして、特定の標的部位に伝達させることができることを意味する。従来特許である第10−1719569号とは異なり、本発明では、エキソソームに体外衝撃波を処理するところ、従来特許で生きている細胞に体外衝撃波を処理して細胞の死滅が起こり、使用することができなかった0.09mJ/mm
2以上の体外衝撃波を活用することができ、従来の登録特許の実施例では、具体的に効果を確認できなかった、0.05mJ/mm
2以上の体外衝撃波を使用できるという利点がある。
【0019】
前記のような高エネルギーレベルの0.05mJ/mm
2以上の体外衝撃波を用いた本発明の一実施例では、標的物質の細胞外小胞体への導入率が増加し、及び前記の標的物質が導入された細胞外小胞体が細胞への混入能力もまた高まることを確認し、これによる標的物質を目標とする細胞内へ伝達させる伝達効率の増加も同様に確認した。また、前記のような細胞外小胞体の由来を動物細胞だけでない植物細胞から収得した細胞外小胞体も利用することができることを確認して薬物伝達体としての活用性を広げることができることを確認した。
【0020】
これにより、本発明で用いられる前記体外衝撃波は、0.05〜0.9mJ/mm
2、具体的には、0.05〜0.89mJ/mm
2、更に具体的には、0.05〜0.70mJ/mm
2のエネルギー範囲で処理することができる。前記体外衝撃波は、体外衝撃波を加える細胞外小胞体の容積、細胞外小胞体が作成される細胞種、作成された細胞外小胞体の種類によって強度が異なり得る。本発明の一実施例では、前記体外衝撃波を0.07mJ/mm
2以上の強度にして細胞外小胞体によって処理した。
【0021】
本発明における用語「細胞外小胞体」は、細胞由来の膜に囲まれた小球体を指し、このような球体は、その名称が作成される細胞の起源や作成方法によって非常に多様である。本発明では、細胞から作成された方法に従って、名付けられたエキソソーム(exosome)、エクトソーム(ectosome)、マイクロベシクル(microvesicle)及びアポトーシス(apoptotic body)からなる群から選択されるいずれかを含むことができるが、これらに制限されない。前記細胞外小胞体は、自然界、例えば、植物、動物、微生物由来の細胞外小胞体または人工的に製造された細胞外小胞体であってもよい。また、前記細胞は、自然界の生物個体から分離された細胞であってもよい。また、前記細胞は、ヒト及び非ヒト哺乳類を含む任意の類型の動物、植物から由来することができ、様々な種類の免疫細胞、腫瘍細胞などであってもよい。また、本発明の一実施例では、前記細胞は、ヒト臍帯静脈内皮細胞(human umbilical vein endothelial cell、HUVEC)、間葉幹細胞(mesenchymal stem cell、MSC)または大動脈平滑筋細胞(vascular smooth muscle cell、VSMC)を使用した。
【0022】
また、本発明の具体的な実施例で、本発明者らは、細胞外小胞体をエキソソームにし、前記エキソソームを植物又は動物から由来したものを使用して標的物質を導入し、細胞外小胞体内へ標的物質を効率的に伝達した。
【0023】
したがって、体外衝撃波を加えて標的物質を細胞外小胞体内へ導入する場合が体外衝撃波を加えない場合よりも、その効率がより優れており、前記標的物質が導入された細胞外小胞体が、他の細胞内へ優れた形質転換効率を示すことが確認されたことにより、本発明の方法は、これに関連する様々な分野に活用されることができる。
【0024】
また、本発明は、標的物質及び細胞外小胞体を体外衝撃波に露出させる段階を含む標的物質が導入された細胞外小胞体を製造する方法を提供する。
【0025】
本発明の標的物質が導入された細胞外小胞体を製造する方法は、前記体外衝撃波を0.05〜0.9mJ/mm
2、具体的には、0.05〜0.89mJ/mm
2、更に具体的には、0.05〜0.70mJ/mm
2のエネルギー範囲で処理させて標的物質を細胞内へ効率的に導入することができる。本発明の一実施例では、前記体外衝撃波を0.07mJ/mm
2以上の強度で細胞外小胞体に対して処理して効率的に標的物質が導入された細胞外小胞体を製造した。
【0026】
本発明の方法では、細胞外小胞体にエキソソーム(exosome)、エクトソーム(ectosome)、マイクロベシクル(microvesicle)及びアポトーシス(apoptotic body)からなる群から選択されるいずれかを使用することができるが、これに制限されない。前記細胞外小胞体は、細胞外小胞体を有する、ある植物、動物及び微生物からなる自然界の生物に由来する、または人工的に製造された可能性があり、本発明の一実施例では、エキソソームを使用した。
【0027】
また、本発明は、前記の方法により製造された細胞外小胞体を提供する。
【0028】
本発明の標的物質及び細胞外小胞体を体外衝撃波に露出させる段階を含む標的物質が導入された細胞外小胞体を製造する方法により製造された細胞外小胞体を使用すると、細胞外小胞体を破壊することなく標的物質を細胞外小胞体に伝達させることができる。
【0029】
本発明の一実施例では、体外衝撃波を0.02mJ/mm
2で処理した場合には、体外衝撃波未処理群である対照群との差はなかったが、体外衝撃波エネルギーレベルを0.07mJ/mm
2で処理した場合には、対照群に比べエキソソーム分散溶液のゼータ電位値が20%以上増加したことが確認された。また、前記方法により製造された細胞外小胞体を、本発明の一実施例にてエキソソームのサイズ分布が異ならして変化することが確認され、体外衝撃波によりエキソソームのサイズ分布が異なるなることが確認された。前記の結果により細胞外小胞体から目標とする細胞への混入に影響を与えない範囲内での細胞外小胞体自体の物性変化を確認することができた。
【0030】
また、本発明の方法により製造された細胞外小胞体は、細胞への混入(incorporation)能力が増加され、体外衝撃波に露出していない対照群よりゼータ電位(Zeta potential)が上昇したことを特徴とする。
【0031】
また、本発明は、前記細胞外小胞体を含む薬物伝達体を提供する。
【0032】
本発明の方法により製造された細胞外小胞体を利用することにより、細胞外小胞体を破壊することなく標的物質を細胞外小胞体に伝達させることができ、これにより、標的物質を目標細胞に効率的に伝達させることができるところ、効率的な薬物伝達体の製造が可能である。
【0033】
したがって、本発明に係る細胞外小胞体は、細胞への混入能力が高まるという特徴を示すので、本発明の薬物伝達体を利用することにより、細胞内伝達を効果的に達成することができ、標的物質を目標細胞内へ効果的に伝達させることができるので、疾病の治療などの目的を達成することができる。
【0034】
本発明の薬物伝達体に担持することができる薬物として、体外衝撃波によってエキソソーム内に伝達することができる物質である標的物質、すなわち、細胞内に伝達されることにより、これらの目的とする効果を発現することができる物質であれば、制限なく含むことができる。好ましくは、前記標的物質は、核酸、タンパク質及び化合物からなる群から選択されるいずれか一つ以上であることができる。また、前記核酸は、自然界に存在する核酸や、人工的に製造することができる核酸をすべて含むことができ、好ましくは、DNA、RNA、マイクロRNA(microRNA、miRNA)は、小さなRNA(Small RNA、smRNA)、小さな干渉RNA(small interfering RNA、siRNA)、パイRNA(Piwi−interacting RNA、piRNA)、小核小体RNA(small nucleolar RNA、snoRNA)、t−RNA−由来小さなRNA(tRNA−derived small RNA、tsRNA)、小さなrDNA−由来RNA(small rDNA−derived RNA、srRNA)、小核RNA(small nuclear RNA、U−RNA)及び長い非暗号化RNA(long noncoding RNA、lncRNA)であることができるが、これらに制限されない。
【0035】
また、本発明は、(a)標的物質及び細胞外小胞体を体外衝撃波に露出させて標的物質を細胞外小胞体内に導入する段階;(b)前記標的物質が導入された細胞外小胞体を細胞に処理する段階;を含む、細胞内に標的物質を伝達する方法を提供する。
【0036】
本発明の細胞内へ標的物質を伝達する方法を利用すれば、標的物質が導入された細胞外小胞体が細胞に混入能力が高まるところ、これにより、標的物質を目標とする細胞内への伝達を増加させることができる。また、前記のような動物細胞だけでなく、植物細胞から収得した細胞外小胞体を制限なく利用することができるところ、薬物伝達体としての活用性を拡大することができる。
【0037】
本発明の細胞内へ標的物質を伝達する方法の(a)段階において、体外衝撃波は、そのエネルギー範囲を0.05〜0.9mJ/mm
2、具体的には、0.05〜0.89mJ/mm
2、更に具体的には、0.05〜0.70mJ/mm
2のエネルギー範囲で処理することができる。
【0038】
以下では、本発明の理解を助けるために実施例を挙げ、詳細に述べることとする。ただし、以下の実施例は、本発明の内容を例示するものに過ぎず、本発明の範囲が以下の実施例に限定されるものではない。本発明の実施例は、当業界で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【実施例】
【0039】
実施例1.エキソソームの分離
様々な細胞(HUVEC、MSC及びVSMC)由来のエキソソームの分離
ヒト臍帯静脈内皮細胞(human umbilical vein endothelial cell、HUVEC)由来のエキソソームを分離するために、HUVECを、5%FBS、及び1%抗生剤/抗真菌剤が含まれたM200培地を用いて、5%CO
2、37℃の条件で培養した。このとき、細胞は、2〜3日に一回、直径が10cmのプレートに継代培養した。
【0040】
細胞からエキソソームを分離するために培地の細胞の残骸(debris)を除去した後、0.2μM pore サイズのシリンジフィルターを用いてエキソソームを分離した。エキソソームの分離実験は、32,000rpmで1時間30分間、遠心分離したエキソソームが除去されたFBSを用いて行われた。分離されたエキソソームを3,000gの条件で30分間遠心分離して濃縮させ、これをナノ粒子トラッキング解析(Nanoparticle tracking Analysis、NTA)で確認した後、使用した。
【0041】
間葉幹細胞(mesenchymal stem cell、MSC)または大動脈平滑筋細胞(vascular smooth muscle cell、VSMC)からエキソソームを分離するために、分離を開始した細胞のみMSCまたはVSMCにして、前記HUVECの分離方法と同様の方法でエキソソームを分離した。
【0042】
牛乳及びグレープフルーツ由来のエキソソームの分離
細胞以外の大量のエキソソームが得られる動物及び植物由来の材料として牛乳及びグレープフルーツを選択し、これらからエキソソームを分離した。牛乳由来のエキソソームを分離するために市販の牛乳を購入して使用した。20,000gの条件で2時間、遠心分離してcream layerを除去した後、Density Gradient遠心分離方法(OptiPrep)によりエキソソームを分離した。分離方法は、Centrifuge tubes下部に50%Optiprep 0.5ml、その上部に10%Optiprep 1ml、残りの上部に牛乳10mlを入れ、100,000gの条件で16時間遠心分離して50%層、10%層間で得られたエキソソームを分離した。
【0043】
グレープフルーツ由来のエキソソームを分離するためにグレープフルーツを搾汁して使用した。3,000gの条件で30分間2回遠心分離してdebrisを除去した後、OptiPrep方法でエキソソームを分離した。分離方法は、Centrifuge tubes下部に50%Optiprep 1ml、その上部に10%Optiprep 1ml、残りの上部にグレープフルーツジュース10mlを入れ、100,000gの条件で2時間遠心分離して、50%層、10%層間で得られたエキソソームを分離した。
【0044】
牛乳とグレープフルーツのいずれからエキソソームを分離した後、ナノ粒子トラッキング解析(Nanoparticle tracking Analysis、NTA)により確認した後に使用した。
【0045】
細胞、動物及び植物由来の材料から分離したエキソソームを下記の実施例で使用した。
【0046】
実施例2.体外衝撃波処理によるエキソソームの物性変化
2.1 体外衝撃波処理によるエキソソームゼータ電位の変化の確認
体外衝撃波を処理した場合にエキソソームの物理的な特性が変化するのかを確認するために、体外衝撃波の大きさを異にして、これによる粒子の表面電位であるゼータ電位(Zeta potential)の変化を測定する実験を行った。HUVEC由来の分離されたエキソソームを各実験群ウェル当り1×10
10個を含むようにし、各実験群に体外衝撃波を未処理したり、それぞれエネルギーレベルを0.02mJ/mm
2及び0.07mJ/mm
2で処理し、体外衝撃波処理の有無によるエキソソーム分散溶液のゼータ電位の変化をゼータ電位測定システムELSZ−2000(Otsuka Electronics Co.、Ltd)を用いて測定し、その結果を
図1に示した。
【0047】
図1に示すように、体外衝撃波を0.02mJ/mm
2で処理した場合には、体外衝撃波未処理群である対照群との差がなかったが、体外衝撃波エネルギーレベルを0.07mJ/mm
2で処理した場合には、対照群に比べエキソソーム分散溶液のゼータ電位値が20%以上増加したことが確認された。ゼータ電位の絶対値の増加は、液体中に浮遊しているコロイド粒子の電気的反発力が大きくなり、凝集現象なく液体に均一に浮遊することを意味する。エキソソームに0.05mJ/mm
2以上の体外衝撃波を処理した場合には、エキソソーム分散溶液のコロイド粒子の電気的反発力が強くなることが確認されたところ、体外衝撃波処理は、エキソソームの物性の変化を誘導させることが確認できた。
【0048】
2.2.体外衝撃波処理によるエキソソームのサイズの変化の確認
体外衝撃波を処理した場合にエキソソームの物理的な特性が変化するのかを確認するために、物性の一つであるエキソソームのサイズに対する影響を確認した。HUVEC由来の分離されたエキソソームを各実験群ウェル当り3×10
9個となるように含めた。体外衝撃波を未処理した群を対照群とし、この外に体外衝撃波を0.02mJ/mm
2、0.07mJ/mm
2、0.09mJ/mm
2及び0.12mJ/mm
2とし、様々なエネルギーレベルを各実験群に処理した後、体外衝撃波処理の有無によるエキソソームのサイズの変化をナノ粒子トラッキング解析(NTA)装置を用いて測定し、エキソソームのサイズの変化を
図2に示した。
【0049】
図2に示すように、体外衝撃波のエネルギーレベルが増加するにつれて体外衝撃波処理後、100〜200nmサイズのエキソソーム数が大幅に増加する傾向にあることが確認された。特に、0.12mJ/mm
2のエネルギーレベルが処理された場合には、100〜200nmサイズのエキソソーム数が対照群に比べ10倍程度増加し、この外に200nm以上のエキソソームもすべて著しく増加したことを確認した。これによりエキソソームの体外衝撃波を処理した場合、そのエキソソームのサイズ分布度が異なるように変化することを確認し、体外衝撃波によりエキソソームのサイズ分布が異なるエキソソーム物性の変化を確認することができた。
【0050】
2.3.体外衝撃波によるHUVEC由来エキソソームの混入能力の増加の確認
実施例1で分離されたヒト血管内皮細胞HUVEC由来エキソソームを各ウェル当り3×10
9個を含むようにし、前記エキソソームをPKH26で染色した後、体外衝撃波を未処理した群を対照群とし、これ以外の体外衝撃波を0.02mJ/mm
2、0.07mJ/mm
2、0.09mJ/mm
2と0.12mJ/mm
2とし、様々なエネルギーレベルを各実験群に処理した。この後、体外衝撃波処理エキソソームをヒト血管内皮細胞HUVECに処理し、1時間後に体外衝撃波エネルギーレベルによる目標とする細胞内へのエキソソーム混入(incorporation)を比較分析し、その実験の結果を
図3に示した。
【0051】
図3に示すように、体外衝撃波エネルギーレベルを0.02mJ/mm
2で処理した場合、体外衝撃波処理による細胞内へのエキソソーム混入の変化を確認することができなかった。その一方、これ以外のエネルギーレベルを0.07〜0.12mJ/mm
2で体外衝撃波処理をしたエキソソーム実験群において、これを処理していない対照群に比べ著しいHUVEC細胞内へのエキソソーム混入増加が確認された。したがって、体外衝撃波をエキソソームで処理した場合、ヒト細胞由来のエキソソームの目標とする細胞内への混入能力の定量的に増加することを確認したところ、体外衝撃波の処理によるエキソソームの物性変化を確認することができた。
【0052】
実施例3.体外衝撃波による様々な標的物質のエキソソーム内への導入とこれによる形質転換の確認
3.1.体外衝撃波によるsiRNA(siGlo)のエキソソームへの導入とこれによる形質転換の確認
体外衝撃波によれば、さまざまな標的物質をエキソソームに対して優れた効率で導入することができるが、前記の様々な標的物質を導入したエキソソームが体外衝撃波を処理した場合、他の細胞内への混入も同様に増加して目標とする標的細胞に標的物質を伝達することができるか否かを確認するために、標的物質をsiRNAのいずれかであるsiGloにして実験を行った。赤い色で標識された50nM siGloと実施例1で分離した血管内皮細胞HUVEC由来エキソソームを混合した後、体外衝撃波を未処理した群を対照群とし、これ以外の体外衝撃波を0.02mJ/mm
2、0.07mJ/mm
2、0.09mJ/mm
2と0.12mJ/mm
2とし、様々なエネルギーレベルを各実験群において処理した。その後、体外衝撃波処理エキソソームのヒト血管内皮細胞HUVECで処理し、1時間後に体外衝撃波エネルギーレベルによる目標とする細胞内へのエキソソーム混入(incorporation)を比較分析し、その実験の結果を
図4に示した。
【0053】
図4に示すように、体外衝撃波エネルギーレベルが0.02mJ/mm
2であった場合には、体外衝撃波処理の有無による細胞内へのエキソソーム混入の変化が確認されなかった。その一方、それ以外のエネルギーレベルとして0.07mJ/mm
2以上の体外衝撃波処理をしたエキソソーム実験群からは、対照群に比べ、細胞内へのエキソソーム混入が有意な程度に増加したことが確認された。したがって、0.07mJ/mm
2以上の体外衝撃波処理をした場合には、標的物質であるsiGloのエキソソームへの導入が増加すると同時に、細胞内へのエキソソーム自体の混入も同様に定量的に増加することがあることが確認された。これに対し、体外衝撃波を用いれば、エキソソーム内へ導入された標的物質を目標細胞内へ効率的に伝達することができることが確認された。
【0054】
3.2.体外衝撃波によるRFPタンパク質のエキソソームへの導入及びこれによる形質転換を確認
体外衝撃波を介せば、種々の標的物質をエキソソームに対して優れた効率で導入することができるが、前記の種々の標的物質を導入したエキソソームが体外衝撃波を処理した場合、他の細胞内への混入も同様に増加し、目標とする標的細胞に標的物質を伝達することができるか否かを確認するために、標的物質をタンパク質であるRFPにて実験を行った。赤色の2μg RFPと実施例1において、分離した血管内皮細胞HUVEC由来のエキソソームを混合した後、体外衝撃波を未処理した群を対照群とし、その外に体外衝撃波を0.02mJ/mm
2、0.07mJ/mm
2、0.09mJ/mm
2及び0.12mJ/mm
2とし、様々なエネルギーレベルを各実験群で処理した。この後、体外衝撃波処理エキソソームをヒト血管内皮細胞HUVECに処理し、1時間後に体外衝撃波エネルギーレベルによる目標とする細胞内へのエキソソームの混入(incorporation)を比較分析し、その実験の結果を
図5に示した。
【0055】
図5に示すように、体外衝撃波エネルギーレベルが0.02mJ/mm
2であった場合には、体外衝撃波処理の有無による細胞内へのエキソソームの混入に変化が確認されなかった。その一方、それ以外のエネルギーレベルとして0.09mJ/mm
2以上の体外衝撃波処理をしたエキソソーム実験群では、対照群に比べ、細胞内へのエキソソームの混入が有意な程度に増加したことを確認した。したがって、0.09mJ/mm
2以上の体外衝撃波処理をした場合、標的物質であるタンパク質RFPのエキソソームへの導入が増加すると同時に、細胞内へのエキソソーム自体の混入も同様に定量的に増加し得ることを確認した。これに対し、体外衝撃波を用いれば、エキソソーム内に導入された標的物質を所望の目標とする細胞内へ効率的に伝達することができることを確認した。
【0056】
3.3.体外衝撃波によるmicroRNAのエキソソームへの導入及びこれによる形質転換の確認
体外衝撃波を介せば、種々の標的物質をエキソソームに対して優れた効率で導入することができるが、前記の種々の標的物質が導入されたエキソソームを体外衝撃波を処理した場合、他の細胞内への混入も増加して目標とする標的細胞に標的物質を提供することができるか否かを確認するために、標的物質をmicroRNAにて実験を行った。緑色で標識された50nM microRNA mimicと実施例1において、分離した血管内皮細胞HUVEC由来のエキソソームを混合した後、体外衝撃波を未処理した群を対照群とし、この外の体外衝撃波を0.02mJ/mm
2、0.07mJ/mm
2、0.09mJ/mm
2と0.12mJ/mm
2とし、様々なエネルギーレベルを各実験群において処理した。その後、体外衝撃波処理エキソソームをヒト血管内皮細胞HUVECに処理し、1時間後に体外衝撃波エネルギーレベルに応じた目標細胞内へのエキソソームの混入(incorporation)を比較分析し、その実験の結果を
図6に示した。
【0057】
図6に示すように、体外衝撃波エネルギーレベルが0.02mJ/mm
2である場合には、体外衝撃波処理の有無による細胞内へのエキソソームの混入に変化が確認されなかった。その一方、その外のエネルギーレベルで0.07mJ/mm
2以上の体外衝撃波処理をしたエキソソーム実験群では、対照群に比べ、細胞内へのエキソソームの混入が有意な程度に増加したが、定量的に、少なくとも2倍以上の混入量の増加が示されることが確認できた。したがって、0.07mJ/mm
2以上の体外衝撃波処理をした場合には、標的物質であるmicroRNAのエキソソームへの導入が増加すると同時に、細胞内へのエキソソーム自体の混入も同様に定量的に優良に増加し得ることを確認した。これに対し、体外衝撃波を利用すれば、エキソソーム内へ導入された標的物質を所望の目標とする細胞内へ効率的に伝達することができることを確認した。
【0058】
実施例4.体外衝撃波による様々な細胞由来のエキソソーム内への核酸導入及び核酸が導入されたエキソソームによる細胞の形質転換効率の確認
4.1.体外衝撃波による様々な細胞由来のエキソソーム内への核酸の導入
ヒト臍帯静脈内皮細胞、間葉幹細胞及び血管平滑筋細胞(VSMC)から分離したエキソソームを3,000gの条件で30分間遠心分離して濃縮させ、これをナノ粒子トラッキング解析(NTA)で確認した後に使用した。コニカルチューブに2mLの培地、前記HUVEC、MSCまたはVSMCで得られた1×10
8個/mLのエキソソーム、及び2μMのカエノラプディティス・エレガンス(Caenorhabditis elegans)のmiR−39(Cel−miR−39、Qiagen)を入れて混合した。前記混合物に0.07mJ/mm
2の強度で4分間1,000shotの体外衝撃波を加えて核酸が導入されたエキソソームを収得した。体外衝撃波を加えずに取得したエキソソームを対照群とした。エキソソーム分離実験を32,000rpmで1時間30分間遠心分離したFBSを用いて、細胞培養液に既に存在するエキソソームを除去した状態で実験を行った。
【0059】
4.2.体外衝撃波によって核酸が導入されたエキソソームによる形質転換効率の確認
4.2.1.HUVEC由来のエキソソームによる多様な細胞内への核酸伝達及び形質転換効率の確認
まず、6ウェルプレートにHUVEC、不死化マウスの大動脈内皮細胞(immortalized mouse aortic endothelial cell、iMAEC)、VSMCまたは心筋細胞の細胞株(cardiomyocyte cell line)であるH9C2細胞を4×10
5cells/well濃度で分注した。これを24時間培養した後、実施例4.1で製造したHUVEC由来のエキソソームをウェル当たり1×10
8個/mLずつ添加した。エキソソームを添加した細胞を、37℃で1時間培養した後、PBSで洗浄し、ウェル当たり2mLずつ培地を添加した後、24時間をさらに培養して培養された細胞を取得した。通常の方法によってQIAzol(QIAzen)溶液を用いて前記細胞からRNAを抽出し、抽出されたRNAは、260nmの紫外線吸収波長でナノドロップ(NanoDrop Technologies Inc.、USA)を用いて定量した。定量化したRNAにジエチルピロカルボン酸(DEPC)が添加された蒸留水を添加して、RNA濃度が1μg/μLになるように準備した。10μLのRNA及びDEPC蒸留水を混合し、4μLの5X miScript HiFlex buffer(QIAGEN、Germany)、2μLの10X miScript Nucleics Mix(QIAGEN、Germany)、2μLの10X miScript Reverse Transcriptase Mix(QIAGEN、Germany)を添加して、37℃で1時間逆転写反応を行った。前記合成されたcDNA 1μLに2μLの下記表1のプライマー、2μLの10X miScript Universalプライマー(QIAGEN、Germany)、10μLの2X SYBRgreen I mixture(Applied Biosystems)及び5μLの蒸留水を添加して混合した。該混合物をABI 7900HT(Applied Biosystems)を用いて、通常の方法でリアルタイムで重合酵素連鎖反応を行った。以降、ヒトの細胞には存在しないので、標的細胞から検出された場合、エキソソームによる伝達が行われたことを確認できるCel−miR−39の発現量を測定し、発現量の測定の結果を
図7に示した。このとき、内部対照群であるRNU−6を基準にmicroRNAの発現量を定量し、すべての実験は3回繰り返しており、その結果は、マン−ホイットニーU検定法で検定し、平均値で示した。
【0060】
【表1】
【0061】
図7に示すように、体外衝撃波によってmicro RNAが導入されたHUVEC由来のエキソソームを処理したHUVEC、iMAEC、VSMC及びH9C2細胞は、対照群に比べてCel−miR−39の発現量が有意に増加したことが確認された。すなわち、0.07mJ/mm
2以上の体外衝撃波を加え、核酸を細胞外小胞体であるエキソソーム内へ導入する場合が、体外衝撃波を加えていない場合よりも、その効率がより優れており、様々な細胞内への導入もより起こり易いことを確認することができた。
【0062】
4.2.2.MSC由来のエキソソームによる多様な細胞内への核酸伝達及び形質転換効率を確認
実施例4.1で製造したMSC由来のエキソソームをHUVEC、MSCまたはVSMC細胞に添加したことを除いては、実験を実施例4.2.1と同一条件及び方法で行い、その実験を行った結果を
図8に示した。
【0063】
図8で示すように、体外衝撃波によってmicro RNAが導入されたMSC由来のエキソソームを処理したHUVEC、MSC及びVSMCは、対照群に比べてCel−miR−39の発現量が3倍程度有意に増加することが確認された。すなわち、HUVEC由来エキソソームだけでなく、MSC由来のエキソソームに対しても0.07mJ/mm
2以上の体外衝撃波を加え、核酸をMSC由来のエキソソーム内へ導入した場合には、体外衝撃波を加えていない場合よりも、その効率がより優れ、様々な細胞内への形質転換もまた、より起りやすいことが確認できた。
【0064】
4.2.3.VSMC由来のエキソソームによる多様な細胞内への核酸伝達及び形質転換効率の確認
実施例4.1で製造したVSMC由来のエキソソームをHUVEC、iMAECまたはVSMC細胞に添加したことを除いては、実験を実施例4.2.1と同じ条件及び方法で行い、その実験を行った結果を
図9に示した。
【0065】
図9に示すように、体外衝撃波によってmicro RNAが導入されたVSMC由来のエキソソームを処理したHUVEC、iMAEC及びVSMCは、対照群に比べてCel−miR−39の発現量が有意に増加したことを確認した。したがって、0.07mJ/mm
2以上の体外衝撃波を加え、核酸をVSMC由来のエキソソーム内へ導入した場合が、体外衝撃波を加えていない場合よりも、その効率がより優れ、様々な細胞内への形質転換もまた、より起こり易いことを確認した。
【0066】
実施例5.体外衝撃波の処理によるさまざまなソース由来のエキソソームの形質転換効率上昇の確認
5.1.体外衝撃波による動物由来エキソソームの形質転換効率の確認
ヒト細胞由来以外の他のソースから得たエキソソームにも体外衝撃波を処理する場合、細胞内へエキソソームの混入が増加することを確認するために、多くのエキソソームを収得できる動物由来の材料のいずれかである牛乳からエキソソームを分離して実験を行った。実施例1で分離した乳由来エキソソームを各ウェル当り3×10
9個を含むようにし、前記エキソソームをPKH26で染色した後、体外衝撃波を未処理した群を対照群とし、体外衝撃波を0.07 mJ/mm
2のエネルギーレベルで処理した群を実験群とした。この後、体外衝撃波処理エキソソームをヒトの血管内皮細胞HUVECに処理し、1時間後に体外衝撃波エネルギーレベルによる目標細胞内へのエキソソームの混入(incorporation)を比較分析し、その実験の結果を
図10に示した。
【0067】
図10に示すように、体外衝撃波未処理した対照群に比べ0.07mJ/mm
2のエネルギーレベルの体外衝撃波を処理したエキソソームは、血管内皮細胞内への混入が2倍程度増加したことが確認された。したがって、体外衝撃波を動物由来のエキソソームに処理した場合にも、細胞内へのエキソソームの混入が定量的に増加できることが確認された。
【0068】
5.2.体外衝撃波による植物由来のエキソソームの形質転換効率の確認
ヒト細胞由来以外の他のソースから得られたエキソソームにも体外衝撃波を処理する場合、細胞内へのエキソソームの混入が増加していることを確認するために、多くのエキソソームを得ることができる植物由来の材料のいずれかであるグレープフルーツからエキソソームを分離して実験を行った。実施例1で分離したグレープフルーツ由来エキソソームを各ウェル当り3x10
9個を含むようにし、前記エキソソームをPKH26で染色した後、体外衝撃波を未処理した群を対照群とし、体外衝撃波を0.07mJ/mm
2のエネルギーレベルで処理した群を実験群とした。その後、体外衝撃波処理エキソソームをヒト血管内皮細胞HUVECに処理し、1時間後に体外衝撃波エネルギーレベルによる目標とする細胞内へのエキソソームの混入(incorporation)を比較分析し、その実験の結果を
図11に示した。
【0069】
図11に示すように、体外衝撃波未処理した対照群に比べ0.07mJ/mm
2のエネルギーレベルの体外衝撃波を処理したエキソソームは、血管内皮細胞内への混入が2倍程度増加したことが確認された。したがって、体外衝撃波をグレープフルーツに代表される植物由来のエキソソームに処理した場合にも、細胞内へのエキソソームの混入が定量的に増加することが確認された。
【0070】
結論として、0.07mJ/mm
2のエネルギーレベル以上の体外衝撃波を処理した場合には、その由来を異にするエキソソームをいずれも所望の目標とする細胞への標的物質の伝達率が上昇することを確認したところ、本発明の方法は、エキソソームの由来に制限されることなく、普遍的に使用できる技術であることが確認できた。
【国際調査報告】