特表2020-521971(P2020-521971A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-521971(P2020-521971A)
(43)【公表日】2020年7月27日
(54)【発明の名称】高効率多重化
(51)【国際特許分類】
   G01J 3/36 20060101AFI20200626BHJP
   G01J 3/45 20060101ALI20200626BHJP
   G01J 3/443 20060101ALI20200626BHJP
   G01N 23/20058 20180101ALI20200626BHJP
   G01J 3/44 20060101ALI20200626BHJP
   G01N 23/202 20060101ALI20200626BHJP
   G01N 27/62 20060101ALI20200626BHJP
【FI】
   G01J3/36
   G01J3/45
   G01J3/443
   G01N23/20058
   G01J3/44
   G01N23/202
   G01N27/62 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】41
(21)【出願番号】特願2019-565320(P2019-565320)
(86)(22)【出願日】2018年5月23日
(85)【翻訳文提出日】2020年1月20日
(86)【国際出願番号】CA2018050599
(87)【国際公開番号】WO2018213923
(87)【国際公開日】20181129
(31)【優先権主張番号】62/510,825
(32)【優先日】2017年5月25日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】519415801
【氏名又は名称】10103560 カナダ エルティーディー.
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】プリスチューパ,デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】パカク,ジョン
【テーマコード(参考)】
2G001
2G020
2G041
【Fターム(参考)】
2G001AA03
2G001AA04
2G001BA14
2G001BA18
2G001CA03
2G001CA04
2G001KA08
2G020AA03
2G020CA01
2G020CA02
2G020CA04
2G020CA12
2G020CC02
2G020CC13
2G020CC47
2G020CD03
2G020CD24
2G041CA01
2G041DA05
2G041GA06
2G041GA13
2G041GA26
2G041GA29
2G041LA20
(57)【要約】
放射線を測定する方法において、放射線は変調器によって時間的および/または空間的に分離され、各領域に入射する放射線の少なくともN個の異なる組み合わせを少なくとも2つおよびN未満の異なる方向に方向付ける。各方向の放射線の合計強度は、各変調器構成の検出器で測定され、検出器の出力は統計的に分析され、放射線のスペクトル特性に関する情報が取得される。このように、測定装置の入射口で受信されるエネルギーの実質的にすべてが複数の出力にエンコードされ、多重化された出力が少数の検出器で受信される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
独立変数のインターバル内で入射放射線の1つ以上の従属変数を測定するための方法であって、
測定対象の入射放射線を収集する工程、
空間変調器または時間変調器を用いて、各インターバルにおける入射放射線の半分より多くを少なくとも2つの別個の経路の1つに方向付ける工程であって、前記変調器は構成の1つのシーケンスを受けて、前記シーケンスの各メンバーが前記インターバル内で入射放射線の様々な組み合わせを各経路に方向付け、ここで、すべての別個の経路の放射線強度の合計は、全体の入射放射線の少なくとも60%である、工程、
複数の検出器出力を提供するために、各変調器構成のための検出器を用いて各経路における放射線の全強度を測定する工程、および
測定対象の放射線の従属変数に関する情報を取得するために、検出器出力を統計的に分析する工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記変調器は、M個の構成のシーケンスを循環し、各構成において、放射線が変調器に入射する位置および/または時間に従って入射放射線をN個の部分に分割し、および入射放射線の各部分の大部分をP個の別個の経路の1つに方向付け、ここで、Pは2以上N未満であり、MはN以上であり、変調器の構成シーケンスは、各部分の大部分が異なる経路に方向付けられる少なくとも2つの構成を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
放射線は、光源の位置、波長、位相、または偏光によって空間的に分離され、かつ測定面に特徴付けられるN>2の異なる領域に方向付けられ、変調器は、前記測定面に配置される空間変調器である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
放射線は、ゲート変調器を使用して時間的に分離される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
放射線は、前記シーケンスに従って変調されるゲート変調器を使用して、N>2の部分に時間的に分割される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
構成のシーケンスZの行列表現は、ZZが非特異である特性を有するように、変調器の構成のシーケンスが選択され、ここで、ZはMP行とN列を有し、Zの各行は1つの検出器での測定を表し、Zの各列は独立パラメータの1つの範囲を表し、そしてZの要素は前記行の各範囲からの粒子束の割合を表す、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
放射線が、光源の位置、波長、位相、または偏光のセットから選択される独立した特性によって空間的に分離され、測定面に特徴付けられるN>2の異なる領域に方向付けられ、変調器が前記測定表面に配置された空間変調器である、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
放射線は、独立した特性によって空間的に分離され、前記独立した特性は時間であり、前記放射線は、ゲート変調器を使用して時間的に分離される、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
変調器の異なる構成の数は、独立した特性の区分の数以上である、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
変調器構成シーケンスは、各区分について少なくとも2つの構成を含み、その区分内の大部分の放射線が異なる経路に方向付けられる、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
各経路が複数の検出器を有し、各検出器が異なるエネルギー範囲内で前記経路に沿って伝播する放射線を測定する、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
各検出器が、異なる起源の領域からの放射線を測定する、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
測定対象の放射線が、分散分光計、フーリエ変換分光計、イメージング分光計、干渉パターン、回折計、ラマン散乱から、グレインカーネル、飛行時間型質量分析計、蛍光減衰、流体の流れを測定するためのフローセル、分析中の粒子から反射する光、振動するエネルギーを与えられた固体材料から反射する放射線および参照表面から反射する放射線によって生成される干渉パターンの1つからのものである、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記空間変調器が、屈折、反射、回折のうちの1つである、請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
各経路上の検出器がアナログ電圧を生成し、前記アナログ電圧がデジタル形式への変換の前に減算されたベース電圧レベルを有する、請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
放射線が、光子、電子、陽電子、亜原子粒子、陽子、中性子、イオン、原子または分子のリストから選択される粒子で構成される、請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
すべての別個の方向について測定された放射線強度の合計が、測定表面に入射する全放射線強度の少なくとも90%である、請求項1〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
すべての別個の方向について測定された放射線強度の合計が、測定表面に入射する全放射線強度の実質的に100%である、請求項1〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記変調器が放射線を少なくとも3つの方向に方向付ける、請求項1〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
変調器は、少なくとも2つの別個の領域を有するベースマスクのサイクル順列を生成する、請求項1〜19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
変調器は、ベースマスクの各領域に、前記領域に入射する放射線の実質的にすべてを別個の方向に方向付けさせる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
変調器のベースマスクの少なくとも1つの領域が、前記領域に入射する放射線の一部を第1の方向に方向付け、前記領域に入射する放射線の少なくともいくらかを異なる別個の方向に方向付ける、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
変調器のベースマスク領域の少なくとも一部が少なくとも2つの測定領域を通過するように、測定中に変調器の少なくとも1つの領域が平行移動または回転する、請求項20〜22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
各測定領域の異なる方向それぞれに方向付けられた放射線の割合は、マスク領域が前記方向に放射線を方向付けている時間加重幾何学的割合として計算される、請求項20〜23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
ベースマスクがアダマールマスクまたは擬似ランダムマスクである、請求項20〜24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
変調器は、ベースマスクのサイクル順列を生成し、マスク特性の少なくとも一部は、測定期間中の前記マスクの動きによって決定される、請求項20〜25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
変調器の少なくとも1つの要素が少なくとも2つの異なる構成を有する、請求項20〜26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
変調器が動的テプリッツマスクを備え、サンプリングレートを変更することにより解像度が変更される、請求項20〜27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
各検出器出力が、検出器出力の合計に対して正規化される、請求項1〜28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
測定対象の放射線の特性が多変量最小二乗分析によって取得される、請求項1〜29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
測定される放射線の情報が、生の検出器出力または正規化された検出器出力の多変量統計分析によって取得される、請求項1〜30のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
測定対象の放射線の情報が、生の検出器出力または正規化された検出器出力の相関分析によって取得される、請求項1〜31のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
N個の領域を有する放射線パターンが、スペクトル中のより少ない数mの潜在変数を発見するための統計分析、m回の測定を行うこと、および各潜在変数の値を推測するために統計分析を使用することにより分析される、請求項1〜32のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
すべての検出器にわたって合計された放射線の全体の強度が、空間変調器構成の少なくともいくつかについて変化し、各変調器構成において、各検出器において生の強度値が生成され、ここで、前記変調器構成の全体の強度はC=SUM(検出器強度di)であり、データベクトルに値di’=di/Cがロードされ、その結果、この正規化は強度の変化を補正する、請求項1〜33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
バンドパスフィルタが、検出システムを通って伝搬する波長の範囲を制限して、分析システムの境界条件を確立する、請求項1〜34のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
帯域の重要性に比例して異なるスペクトル帯域の寄与に重み付けすることにより、特定の分析物の検出のために、バンドパスフィルタが使用されて機器の感度を最適化する、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
放射線の強度が複数のサンプルのそれぞれについて変化し、各時間サンプルにおいて、第1の検出器Aおよび第2の検出器Bにおいて生の強度値が生成され、時間ステップの全体の強度はC=A+Bであり、データベクトルに値a’=A/Cおよびb’=B/Cがロードされ、その結果、この正規化は強度の変化を補正する、請求項1〜36のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
入射放射線をN個のパケットに分割する工程であって、各パケットは、異なる値の第1の特性を有する放射線を含む、工程、時間的または空間的変調器を使用して前記放射線パケットを時間的または空間的に分離する工程、入射放射線パケットの少なくともN個の異なる組み合わせを少なくとも2つの別個の経路に方向付けるために、変調器シーケンスを使用して変調器を変化させる工程を含み、各測定において各検出器によって受信された全体の強度に対する各帯域の時間加重寄与を推定する工程および時間加重寄与を明示的にモデル化するためにZ行列の係数を設定する工程を含む、請求項1〜37のいずれかに記載の方法。
【請求項39】
空間変調器ならびに関連する光学機器および検出器が、測定対象の放射線源に対して相対運動をしており、前記相対運動が所望の変調を生成する、請求項1〜38のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間および/または時間変調を使用する波動場または粒子束の測定に関する。波動場は、少なくとも1つの特性変数または従属変数における空間変動を含み得る。本発明は、電磁波、物質波および圧力(音)波に適用する。その波は横方向または縦方向であり得る。電磁波における空間変動または従属変数は、振幅、強度、周波数、波長、位相、伝播の偏光方向または起点の位置であり得る。
【0002】
電磁波は、また、光子束として記載され得る。物質波は、また、これらの電子、中性子、原子、イオン、分子、またはこれらの集合体の粒子束として記載され得る。粒子束における空間変動は、起点、速度、加速度、電荷、質量、スピン、量子状態、磁気または電気双極子の位置を含む物質の任意の特性に関し得る。音響波における空間的変動は、振幅、強度、速度、位相、または起点の位置であり得る。
【0003】
測定方法は、結晶学、分光法、干渉法、スペクトルイメージング、イメージング、ポジトロン放出断層撮影、顕微鏡法、電子顕微鏡法、質量分析法、イオン移動度分光法、キャピラリー電気泳動を含むが、これらに限定されない多くの異なる分野において使用され得る。本明細書の構成は、また、通信システム、レーダシステム、または上記で具体的に説明した他の用途においても使用され得る。
【0004】
一例は、光学的に薄い異種サンプルを分析するための 2013年1月1日に発行されたUS 8345254(Prystupa)に開示され、その開示はさらなる情報を研究され得るか、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0005】
別の例は、移動サンプルによって反射された光および超音波を分析するための2016年1月28日に公表されたPCT公開出願2016/0011548(Prystupa)に開示され、その開示はさらなる情報を研究され得るか、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0006】
別の例は、粒子を分離するための2018年2月1日に公表されたPCT公開出願2018/018155に開示され、その開示はさらなる情報を研究され得るか、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。また、本開示の主な特徴は、完全を期すために以下に含まれている。
【背景技術】
【0007】
本発明は、主に多重分光法の分野で開発された概念の拡張である。分光法の分野には膨大な文献がある。その記載は、本発明の顕著な点についてのみ与えられる詳細を含む要約書として意図されている。読者は、トピックの実用的な説明については、Wolfgang Demtroder、Laser SpectroscopyBasic Concept and Instrumentation 2nd Editon,Springer Verlag、New York(1982)を、トピックの厳密な議論については、Max Born and Emi Wilf,Principles of Optics 7th Editon、Cambridge University Press (2002)を参照されたい。
【0008】
分散機器の機能と多重化とを組み合わせたアダマール分光計は、Martin Harwit(1979)によって十分に説明されている。アダマール分光計の一般的な設計には、光路に沿ったさまざまなポイントでの集束光学系と折り畳み式ミラーとともに、入射スリット、コリメート要素、回折要素、空間マスク、検出器が含まれる。いくつかの設計において、回折要素および空間フィルタの順序が入れ替わっている。電磁放射は、回折素子によって波長帯域に分散され、空間フィルタに焦点を合わせられ、空間フィルタは、すべての波長帯域ではなく一部を検出器に方向付ける。検出器は、一連の異なる空間フィルタに対する電磁放射の強度を測定し、一連の方程式を解いて、重み付けスキームに従って各波長帯の強度を推定する。このトピックのより詳細な議論については、Neil J.A.SloaneおよびMartin Harwit.Masks for Hadamard transform optics、and weighing designs APPLIED OPTICS 15(1)107−114(1976)を参照されたい。
【0009】
初期のアダマールの機器は、例えば、1971年5月18日に発行された米国特許第3578980号(Decker)に示されるように、マスターマスクを段階的に動かすことで一連のアダマール空間マスクを生成した。これらのシステムは、いくつかの技術的進歩につながるマスクの位置合わせの問題に直面したが、どれも完全に満足のいくものではなかった。この設計の変形例は、1971年6月22日に発行された米国特許第3586442号(Tripp)によって考案され、これにより、空間的にエンコードされた波長帯が、分散を解除し、検出器に放射線場を集中させるために、2回目に分散要素に入射される。回転マスクに基づくアダマールシステムが開発された。2001年8月7日に発行された米国特許第6271917号(Hagler)は、バイナリマスクの透過のステップがフーリエ解析でリンギングを生成することに注目し、透過を傾斜させたマスクスリットを提案した。
【0010】
アダマール法が、ハイブリッドフーリエ変換分光計を作成するために、干渉計に適用された。1988年6月14日に発行された米国特許第4750834号において、Fateleyらは、干渉パターンの平面に電気的に変更可能なマスクを配置する方法を記載している。Fateleyらは、また、1996年1月30日に発行された米国特許第5488474号のFTIR分光計のためのインターフェログラム中心爆発を低減するための方法を提供する。本発明は、改善された信号対雑音を提供するこれらの方法を拡張する。
【0011】
1989年8月15日に発行された米国特許第4856897において、Fateleyらは、アダマール電気光学マスクおよび単一の検出器に基づくラマン分光計を記載している。本発明は、この設計の信号対雑音性能を改善する目的を有する。
【0012】
より最近、1993年8月10日に発行された米国特許第5235461号(Kirsch)などの電気光学効果(液晶)または1996年4月2日に発行された米国特許第5235461(Kirsch)などの電気機械効果(マイクロミラーアレイ)によって動的に生成されたマスクに基づいたHadamard設計が、提案された。これらのアプローチにはいくつかの問題がある。デューティサイクルおよびその結果のサンプリングレートは、マスクが1つの規定された状態から別の規定された状態に移行するための遷移移行時間によって制限される。液晶ベースの設計において、透過マスク領域と吸収マスク領域との間のコントラストは、機器によって達成可能な精度を制限する10ビット未満である。マイクロミラーベースの設計のデューティサイクルは、熱負荷によって制限される。さらに、マイクロミラー設計は回折および非単一性比質量偏差の影響を受ける。最近の別のアダマールの変形は、アダマールマスクの固定アレイを示し、 1991年9月24日に発行された米国特許第5050989(Van Tassel)のように焦点面アレイを用いて透過されたパターンを測定する。この設計は、可動部品がなく機械的に堅牢であるという利点を有するが、大きな焦点面アレイを要するという欠点を有する。実際には、このアプローチは、シリコンベースの焦点面アレイが安価であるスペクトルの可視領域に限定される。
【0013】
空間次元はスペクトル次元と同じ方法で多重化され得る。一般的な場合は、空間およびスペクトル次元を有するデータキューブを生成する、スペクトルイメージングである。Coifman L alらは、2009年9月15日に発行された米国特許第758972号において、フィルタのモザイク配列を用いたマルチスペクトルイメージングのための装置を記載している。米国特許第8345254号において、多重化は他の方法で弱い信号を増幅するためにさらに拡張される。データキューブ中の情報の量および必要条件処理要求事項は、キューブ内のポイント間の相関を使用して、キューブを記述するために必要なパラメータの数を減らすことができるという考えに基づいた圧縮サンプリングスキームの開発に結びついた。より詳細な記載は、2014年5月6日発行された米国特許第8717484号において、McMackinらによって与えられる。
【0014】
上記のすべてのアダマールの変形に共通する主な欠点は、光学損失が無視されても、平均して、入射口に入るEM放射の半分のみが、検出器によって受信されることである。この限定は、標準的なアダマールマスクを生成するために電磁放射を透過および反射することが可能な電気光学フィルタのアレイの使用を提案した、それぞれ、1986年10月7日および1989年1月24日に発行された米国特許第4615619号および4799795号(Fateley)に示される配置によって部分的に克服されている。Fateleyは、図5に関連して、原則として実効スループットを改善できる透過された放射および反射された放射の両方が、測定され得ることに注目している。しかしながら、Fateleyによって与えられた実装は、わずか50%(5%の透過率から55%の透過率)の変調を提供する。効果的に、入射口に入るEM放射の半分のみが使用される。Fateleyは、第2の検出器からの情報を使用する方法について開示を提供しない。上記のすべてのアダマール変形のさらなる限定は、達成可能な最高のスペクトル分解能は、マスク要素サイズの固定ジオメトリによって制限されることである。
【0015】
アダマール変換飛行時間型質量分析計は、Brockら(1998)によって最初に記載された。イオンは、エレクトロスプレーニードルを介して連続的に導入され、スキミング、加速および平行にされる。平行にされたイオンビームは、ブラッドベリーニールセンシャッターに入射され、検出器に向かって偏向されていないイオンビームを通過させるか、ビーム軸の上下でイオンビームを偏向させる。装置は、直接ビームおよび偏向されたビームの両方が測定されるように、ビーム軸の上下に検出器を追加することにより、後で修正された(Trapp、2004)。その修正により、デューティサイクルが100%近くに増加し、以前のバージョンと比較してSNRが29%改善された。44%の改善が理論的に期待されていた。違いは、誤った検出器チャネルに寄与するイオンフラックスの不完全な分離に起因する。両方のバージョンにおいて、シャッターは、擬似ランダム時間シフトでイオンのパケットを通過させるために、アダマール行列の行に従って一時的に変調される。各パケットはフィールドフリーゾーンに広がり、最も軽いイオンが最も速く移動する。検出器は、各行の時間系列として時間シフトされたパケットの重ね合わせを受信する。逆アダマール変換は、各パケット内の元の質量分布を復元するために実行される。その後の研究で、Hudgensらはイオン源を変調してアダマールパターンを生成した。Brock,A.,Rodriguez,N;Zare,N.Hadamard Transform Time−of−Flight Mass Spectroscopy.Anal.Chem.,70,3735−3741(1998).Trapp,O.;Kimmel,J.R.;Yoon,Zuleta,I.A.;Fernandez,F.M.;Zare,R.N.Continuous Two Channel Time−of−Flight Mass Spectroscopic Detection of Electrosprayed Ions.Agnew.Chem.Int.ED.43,6541−27586544(2004).Hudgens,J.W.;Bergeron,D. A Hadamard transform electron ionization time−of−flight mass spectrometer. REVIEW OF SCIENTIFIC INSTRUMENTS 79(1):014102(2008).
【0016】
上記引用文献のそれぞれの開示は、参照によって本明細書に組み込まれるか、または本明細書で使用され得る構造のさらなる詳細について検討され得る。
【発明の概要】
【0017】
本発明は、波および粒子流束の変調システムおよび分析方法である。物理学における当業者は、本発明によって測定される物理現象が粒子および波の両方の記載を有し、記載の選択は便宜上の問題であることを理解するであろう。変調は、空間的、時間的、またはその両方であり得る。波は、電磁波、物質波、または圧力波によるものである。
【0018】
本発明の1つの定義によれば、測定される入射放射線を収集する工程;入射放射線をNパケットであって、各パケットが第1の特性の異なる値を有する放射線を含むNパケットに分割する工程;時間的または空間的変調器を使用して、時間的または空間的に放射パケットを分離し、変調シーケンスを使用して変調器を変化させ、N個の異なる組み合わせの入射放射パケットを、すべての異なる経路に対する全体の放射強度が入射放射の合計の少なくとも60%である少なくとも2つの異なる経路に向ける工程;複数の検出器出力を提供するために、各変調器構成のために検出器を用いて各経路における放射線の合計強度を測定する工程;測定される放射線の特性に関する情報を得るために検出器出力を統計的に分析する工程;を含み、変調器構成シーケンスは、各パケットが上記の別個の経路に方向付けられる少なくとも2つの構成を含む、入射放射線の1つ以上の特性を測定する方法が提供される。
【0019】
一実施形態において、放射線は、光源の位置、エネルギー、周波数、波長、位相または偏光によって空間的に分離され、かつ測定面に特徴付けられるN>2の異なる領域に報告付けられ、変調器は、測定面に配置される空間変調器である。
【0020】
別の実施形態において、放射はゲート変調器を使用して時間的に分離される。
【0021】
本発明の別の定義によれば、測定対象の入射放射線を収集する工程;入射放射線を時間変調器または空間変調器、あるいは時間および空間変調器に方向付ける工程;変調器は、M個の構成のシーケンスを循環し、各構成において、放射線が変調器に入射する位置および/または時間に従って入射放射線をN個の部分に分割し、入射放射線の各部分の大部分をP個の別個の経路の1つに方向付ける工程;複数の検出器出力を提供するために各変調器構成に対して検出器を用いて各経路内の放射線の総強度を測定する工程;測定される放射線の特性に関する情報を得るために検出器出力を統計的に分析する工程;Pは2以上かつN未満であり、MはN以上であり、変調器の構成シーケンスは、各部分の大部分が異なる経路に方向付けられる少なくとも2つの構成を含む、入射放射線の1つ以上の特性を測定する方法が提供される。
【0022】
一実施形態において、放射線は、光源の位置、エネルギー、周波数、波長、位相または偏光によってN>2の部分に空間的に分割され、かつ測定面に特徴付けられるN>2の異なる領域に報告付けられ、変調器は、測定面に配置される空間変調器である。
【0023】
別の実施形態において、放射線は、例えば、シーケンスに従って変調されるゲート変調器を使用して、N>2の部分に時間的に分割される。
【0024】
好ましくは、構成のシーケンスZの行列表現は、ZZが非特異である特性を有するように、変調器の構成のシーケンスが選択され、ZはMP行およびN列を有し、Zの各行が1つの検出器での測定を表し、Zの各列はそれぞれ、粒子束パラメータのための1つの範囲を表す。Zの要素は、1つの測定のための行によって指定された検出器によって受信された各範囲からの粒子束の画分を表す。
【0025】
本発明の別の定義によれば、測定対象の入射放射線を収集する工程、空間変調器または時間変調器を用いて、各インターバルにおける入射放射線の半分より多くを少なくとも2つの別個の経路の1つに方向付ける工程であって、前記変調器は構成の1つのシーケンスを受けて、前記シーケンスの各メンバーが前記インターバル内で入射放射線の様々な組み合わせを各経路に方向付け、ここで、すべての別個の経路の放射線強度の合計は、全体の入射放射線の少なくとも60%である、工程、複数の検出器出力を提供するために、各変調器構成のための検出器を用いて各経路における放射線の全強度を測定する工程、および測定対象の放射線の従属変数に関する情報を取得するために、検出器出力を統計的に分析する工程を含む、独立変数の間隔内で入射放射線の1つ以上の従属変数を測定する方法が提供される。
【0026】
本明細書で使用される用語「ゲート」あるいは「ゲート変調器」は、フラックスまたは粒子を取り、異なる時間でその粒子のフラックスの半分以上を少なくとも2つの異なる宛先に配信する機能を実行するデバイスを指す。ゲートの一例はマルチプレクサである。
【0027】
用語「区分」および「範囲」は互換的に使用される。両方とも独立したパラメータの間隔、通常は空間または時間だけでなく、空間および時間パラメータと相関するパラメータも指す。
【0028】
用語「統計的に」および「統計分析」は、少なくとも2乗で直接計算されるか、ニューラルネットワークで間接的に計算される多変量統計、相関および確率に基づいた分析方法を指す。
【0029】
これは、変調器構成の数、変調器のタイプまたは変数のタイプを参照しない一般的な説明である。この定義は、部分的および完全に決定された方程式系を含む。従属は、放射線の特性を意味し、独立は、放射線の特性、あるいは時間または空間のような無関係なものであり得る。
【0030】
一実施形態において、放射線は、光源の位置、エネルギー、周波数、波長、位相または偏光のセットから選択される独立した特性によって空間的に分離され、測定面に特徴付けられるN>2の異なる領域に向けられ、変調器は測定面に配置された空間変調器である。
【0031】
別の実施形態において、独立した特性は時間であり、期間Tにわたって受信された放射は、ゲート変調器を用いてN>2のタイムスライスに時間的に分離される。タイムスライスは等しい長さT/N、または不均等な長さであり得る。等しい長さのタイムスライスは、従属特性が強度であるレーザパルスの形状を測定するのに有用であり得る。飛行時間型光学分光計のゲート変調器は、等しい波長間隔で光子束を測定するために、分散媒体を通過する光子のパルスを不均等なタイムスライスに分割し得る。
【0032】
好ましくは、変調器の異なる構成の数は、独立した特性の分割の数以上である。このことは、すべての変数が解決され得る保証を提供する。
【0033】
好ましくは、変調器構成シーケンスは、各区分について少なくとも2つの構成を含み、その区分内の大部分の放射線が異なる経路に方向付けられる。
【0034】
好ましくは、各経路は各検出器が異なるエネルギー範囲内の経路に沿って移動する放射線を測定する複数の検出器を有する。
【0035】
一実施形態において、測定される放射線は分散分光計からである。
【0036】
一実施形態において、測定される放射線はフーリエ変換分光計からである。
【0037】
一実施形態において、測定される放射線はイメージング分光計からである。本実施形態において、各経路は各検出器が観察される物体中の異なる範囲のセットから発散する放射線を測定する複数の検出器を有し得る。
【0038】
一実施形態において、測定される放射線は干渉パターンからである。
【0039】
一実施形態において、測定される放射線は回折計からである。
【0040】
一実施形態において、測定される放射線はラマン散乱である。
【0041】
一実施形態において、測定される放射線はグレインカーネルからである。
【0042】
一実施形態において、空間変調器は屈折性である。
【0043】
一実施形態において、空間変調器は反射型である。
【0044】
一実施形態において、空間変調器は回折性である。
【0045】
一実施形態において、各経路上の検出器がアナログ電圧を生成し、アナログ電圧がデジタル形式への変換の前に減算されたベース電圧レベルを有する。
【0046】
一実施形態において、本発明は、位置および時間と共に変化する少なくとも1つの特性を有する波を受信し、空間変調器を用いて2つ以上の経路に沿って特性を空間的に符号化し、時間変調器を用いて各経路に沿って特性を時間的に符号化し、検出器を用いて各経路上の波長強度を時間的に測定し、分析器に入射する波に関する情報を提供するためにすべての検出器からの情報を分析する。
【0047】
すなわち、通常、一連の測定は、シーケンス内の各測定に対して異なる位置によって変動する波動特性をエンコードする空間変調器で行われる。シーケンスは、信号対雑音比をさらに改善するために繰り返され得る。本実施形態において、本発明は、フーリエまたはアダマール分光計などの単一の検出器多重化機器および検出器の非多重化線形アレイとの間の概念的な中間である。本発明は、検出器の数分の一を使用しながら、従来の多重化よりも優れており、検出器の線形アレイに近い信号対雑音比を提供する。
【0048】
すなわち、別の実施形態において、本発明は、時間とともに変化する少なくとも1つの特性を有する波を受信し、波特性に比例するアナログ信号を生成する検出器で波を受信し、アナログ信号を2つ以上の統合デバイスに時間的に変調し、分析器に入射する波に関する情報を提供するためにすべての統合デバイスからの情報を分析する。
【0049】
本実施形態は、改善された時間分解能および改善された信号対雑音性能で繰り返し現象のダイナミクスを測定する方法を提供する。
【0050】
別の実施形態において、上記された空間および時間の両方の変調は、組み合わせられ得る。
【0051】
放射線が、光子、電子、陽電子、亜原子粒子、陽子、中性子、イオン、原子または分子を含むがこれらに限定されないリストから選択される粒子で構成され得る。
【0052】
好ましくは、すべての別個の方向について測定された放射強度の合計が、測定表面に入射する全放射強度の少なくとも90%である。
【0053】
好ましくは、変調器が放射線を少なくとも3つの方向に方向付ける。
【0054】
好ましくは、変調器は、少なくとも2つの別個の領域を有するベースマスクのサイクル順列を生成する。
【0055】
好ましくは、変調器は、ベースマスクの各領域に、その領域に入射する放射線の少なくとも半分および好ましくは90%以上を、別個の方向に方向付けさせる。
【0056】
好ましくは、変調器のベースマスクの少なくとも1つの領域が、領域に入射する放射線の一部を第1の方向に方向付け、領域に入射する放射線の少なくともいくらかを異なる別個の方向に方向付ける。
【0057】
いくつかの実施形態において、変調器のベースマスク領域の少なくとも一部が少なくとも2つの測定領域を通過するように、測定中に変調器の少なくとも1つの領域が平行移動または回転する。
【0058】
好ましくは、各測定領域の異なる方向それぞれに方向付けられた放射線の割合は、マスク領域が前記方向に放射線を方向付けている時間加重幾何学的割合として計算される。
【0059】
いくつかの場合において、ベースマスクがアダマールマスクまたは擬似ランダムマスクである。
【0060】
いくつかの場合において、空間変調器はベースマスクのサイクル順列を生成し、マスク特性の少なくとも一部は、測定期間中のマスクの動きによって決定される。しかしながら、また、例えば、各マスク要素がマイクロミラーアレイのように個別に調整可能な場合、非サイクル順列を使用可能である。サイクル順列は固定されたジオメトリを有するマスクから発生する。
【0061】
好ましくは、変調器の少なくとも1つの要素が、マイクロミラーアレイ、マイクロ格子、液晶、電気光学デバイスなど、少なくとも2つの異なる構成を有する。
【0062】
好ましくは、各検出器出力は検出器出力の合計に正規化される。
【0063】
好ましくは、測定対象の放射線の特性は、多変量最小二乗分析によって得られる。
【0064】
好ましくは、測定される放射線中の情報は、生の検出器出力(上記)または正規化された検出器出力(上記)の主成分分析によって得られる。
【0065】
1つの重要な特徴において、N個の領域を含む放射パターンが統計分析で分析され、潜在変数のより小さい数mを見つけ、m回の測定を行い、統計分析を使用して各潜在変数の値を推測する。この特徴は、N個の領域のいくつかが相関される状況において、および、N個の領域のいくつかが関心のある情報をほとんど含まない状況において、有用である。各潜在的変数は、基礎となるN領域データセットの合計分散の一部を記載する。ユーザは、許容可能な程度の精度でN領域データセットをモデル化するために必要な多くの潜在変数のみを使用することを選択し得る。例えば、潜在変数がPCAによって検出された場合、通常、最初のm個の潜在変数は、基礎となるN領域データセットの分散のほとんどを記載する。経験的に、最初の3つの潜在変数は、しばしば数百のスペクトル領域を有する赤外線スペクトル内の分散の90%以上を表す。ユーザは、3つの潜在変数をN領域データセットへの許容可能な近似として使用することを選択し得るか、近似の精度を向上させるためにより多くの潜在変数を使用することを選択し得る。
【0066】
好ましくは、すべての検出器で合計された放射線の合計強度は、空間変調器構成の少なくともいくつかによって異なり、各変調器構成で、生の強度値が各検出器で生成され、変調器構成の合計強度は、C=SUM(検出器強度Di)であり、データベクトルが値di’=di/Cが読み込まれるため、この正規化は強度における変化を補正する。
【0067】
一例において、変調器はダイナミックテプリッツマスクを含み、分解能は、サンプリングレートを変更することで変化される。
【0068】
1つの重要な最終用途において、放射線は飛行時間型質量分析計によって提供される。
【0069】
1つの重要な最終用途において、放射線は蛍光減衰によって提供される。
【0070】
1つの重要な最終用途において、放射線は流体の流れを測定するためのフローセルによって提供される。
【0071】
1つの重要な最終用途において、放射線は分析中の粒子から反射する光によって提供される。
【0072】
1つの重要な最終用途において、放射線は、材料の密度を分析するために、エネルギーを与えられた固体材料によって放射される超音波によって提供される。
【0073】
好ましくは、バンドパスフィルタは、検出システムを介して伝播する波長の範囲を制限し、分析システムの境界条件を確立するのに有用である。
【0074】
好ましくは、バンドパスフィルタは、検出器のダイナミックレンジがより大きい診断値のスペクトルバンドを測定するためのみに使用されるように、ほとんど診断値を有しないスペクトルバンドを削除するために使用される。
【0075】
好ましくは、バンドパスフィルタは、そのバンドの有効係数に比例した異なるスペクトルバンドの寄与に重み付けすることによって、特定の分析対象物の検出に対する機器の感度を最適化するために使用される。
【0076】
本発明の別の態様によれば、測定対象の入射放射線を収集する工程;入射放射線を、N個のパケットであって、各パッケットが第1の特性の異なる値を有する放射線を含むN個のパケットに分割する工程;時間的または空間的変調器を使用して、放射パケットを時間的または空間的に分離し、変調シーケンスを使用して変調器を変化させて、入射放射パケットの少なくともN個の異なる組み合わせを少なくとも2つの別個の経路に方向付ける工程;複数の検出器出力を提供するために、各変調器構成の検出器を用いて各経路の放射線の合計強度を測定する工程;測定対象の放射線の特性に関する情報を取得するために、検出器の出力を統計的に分析する工程;N個の領域を有する放射パターンは、スペクトル内の潜在変数のより小さい数mを見つけるために、統計分析によって分析され、m測定を行い、各潜在変数の値を推測するために統計分析を使用する工程;を含む、入射放射線の1つ以上の特性を測定する方法が提供される。
【0077】
本発明の別の態様によれば、測定対象の入射放射線を収集する工程;入射放射線を、N個のパケットであって、各パッケットが第1の特性の異なる値を有する放射線を含むN個のパケットに分割する工程;時間的または空間的変調器を使用して、放射パケットを時間的または空間的に分離し、変調シーケンスを使用して変調器を変化させて、入射放射パケットの少なくともN個の異なる組み合わせを少なくとも2つの別個の経路に方向付ける工程;複数の検出器出力を提供するために、各変調器構成の検出器を用いて各経路の放射線の合計強度を測定する工程;測定対象の放射線の特性に関する情報を取得するために、検出器の出力を統計的に分析する工程;放射線の強度は、複数のサンプルの各々に対して変化し、各時間サンプルでは、生の強度値が第1の検出器Aおよび第2の検出器Bで生成され、タイムステップにおける合計強度はC=A+Bであり、この正規化が強度における変化を補正するように、データベクトルが値a’=A/Cおよびb’=B/Cで読み込まれる、入射放射線の1つ以上の特性を測定する方法が提供される。
【0078】
本発明の別の態様によれば、測定対象の入射放射線を収集する工程;入射放射線を、N個のパケットであって、各パッケットが第1の特性の異なる値を有する放射線を含むN個のパケットに分割する工程;時間的または空間的変調器を使用して、放射パケットを時間的または空間的に分離し、変調シーケンスを使用して変調器を変化させて、入射放射パケットの少なくともN個の異なる組み合わせを少なくとも2つの別個の経路に方向付ける工程;複数の検出器出力を提供するために、各変調器構成の検出器を用いて各経路の放射線の合計強度を測定する工程;測定対象の放射線の特性に関する情報を取得するために、検出器の出力を統計的に分析する工程;変調器はダイナミックテプリッツマスクを含み、分解能は、サンプリングレートを変更することで変更される、入射放射線の1つ以上の特性を測定する方法が提供される。
【0079】
本発明の別の態様によれば、測定対象の入射放射線を収集する工程;入射放射線を、N個のパケットであって、各パッケットが第1の特性の異なる値を有する放射線を含むN個のパケットに分割する工程;時間的または空間的変調器を使用して、放射パケットを時間的または空間的に分離し、変調シーケンスを使用して変調器を変化させて、入射放射パケットの少なくともN個の異なる組み合わせを少なくとも2つの別個の経路に方向付ける工程;複数の検出器出力を提供するために、各変調器構成の検出器を用いて各経路の放射線の合計強度を測定する工程;測定対象の放射線の特性に関する情報を取得するために、検出器の出力を統計的に分析する工程;および各測定において各検出器によって受信された合計強度に対する各帯域バンドの時間加重寄与を推定し、時間加重寄与を明示的にモデル化するためにZ行列の係数を設定するステップを含む、入射放射線の1つ以上の特性を測定する方法が提供される。
【0080】
これは、畳み込みの適用と機能的に同等であり、得られるH行列は、単一の検出器の場合でもバイナリおよび単数ではない。
【0081】
以下により詳細に説明するように、本明細書に開示される構成は、最適数の検出器を使用して粒子束の特性を効率的に測定する多重化方法を提供する。
【0082】
一実施形態において、粒子は光子である。以下の説明では、光子と電磁放射、EM放射という用語は、互換的に使用される。この方法は以下を含むアプリケーションに使用できるが、分光法、結晶学、干渉法、イメージングおよびスペクトルイメージングを含むが、これらに限定されない適用のために使用され得る。当技術分野で知られている集光光学系は、測定が行われるとともに表面上の空間変調器が少なくとも2つの部分を差検出器に方向付ける表面上に、電磁放射の少なくとも3つ(通常はさらに多く)の異なる部分を収集および投影するために使用される。放射線の部分は、線源、偏光、波長、位相またはこれらの組み合わせによって変化し得る。
【0083】
別の実施形態において、粒子は中性子である。この方法は、中性子散乱および中性子回折を含む用途において使用され得る。
【0084】
別の実施形態において、粒子は電子である。この方法は、電子回折および電子顕微鏡を含む適用において使用され得る。
【0085】
別の実施形態において、粒子は陽子およびイオンである。この方法は、質量分析法、イオン移動度分光分析およびキャピラリー電気泳動を含む適用において使用され得る。
【0086】
さらに別の実施形態において、粒子は、圧力波を形成するために集合的に移動する原子または分子である。この方法は、音響分光法やおよび音響イメージングを含む適用において使用され得る。
【0087】
本発明の目的は、入射波または粒子束エネルギーの60%以上、好ましくは実質的にすべてを収集および測定することである。説明の目的のために、ここでは電磁放射に言及しているが、説明される概念は、音響波、中性子波、電子波、イオン波、原子波および分子波などであるが、これらに限定されない他の波にも適用される。ここで電磁波を参照すると、本発明は、付加的なバンドパスフィルタ、空間または時間変調器、2つ以上の検出器セットまたは積分器、制御システム、および分析システムを含む。
【0088】
バンドパスフィルタは、検出システムを介して伝播する波長の範囲を制限し、解析システムによって方程式(3)(以下を参照)を解くための周辺条件を確立するのに有用である。第2に、バンドパスフィルタは、検出器のダイナミックレンジがより大きな診断値のスペクトルバンドを測定するためのみに使用されるように、診断値をほとんど有しないスペクトルバンドを削除するために使用され得る。第3に、バンドパスフィルタは、ケモメトリック分析(例えば、その分析物に関連付けられた固有ベクトル)によって決定されるそのバンドの有効係数に比例して、異なるスペクトルバンドの寄与に重み付けすることにより、特定の分析物の検出に対する機器感度を最適化するために使用さえ得る。このアプローチの利点は、検出器セットまたはインテグレータのダイナミックレンジが、検体測定において可能な限り最良の精度を達成するために最適に利用されることである。
【0089】
一実施形態において、空間変調器は、制御システムによって一連の構成を段階的に処理される。各構成において、空間変調器は、入射放射線をその構成に固有のスペクトル成分を有する2つ以上の部分に分割し、各部分は異なる検出器セットを使用して測定される。最も簡易な場合において、検出器と部品との間に1対1の対応がある。拡張された波長範囲が測定される場合、検出器のセットは、各部分を測定するために使用され得る。例えば、セットは、UV検出器、可視光検出器、近赤外線検出器、中赤外線検出器、マイクロ波検出器および電波検出器を含むが、これらに限定されない。プリズム、格子、バンドパスフィルタ、ダイクロイックミラー、ミラー、レンズなどのさらなる光学系が、各スペクトル領域を適切な検出器に方向付けるために使用されることが理解される。各検出器での強度または振幅(ヘテロダイン手段による)は統合され、結果が分析手段に送信される。空間変調器は、1つの部分を透過して1つ以上の他の部分を反射することによって、または2つ以上の部分を異なる方向に反射することによって、入射放射を分割することができる。あるいは、空間変調器は、1つの部分を透過して1つ以上の部分を異なる方向に屈折させることによって、または2つ以上の部分を異なる方向に屈折させることにより、入射放射を分割することができる。あるいは空間変調器は、1つの部分を透過して1つ以上の部分を異なる方向に回折することによって、または2つ以上の部分を異なる方向に回折することによって、入射放射を分割することができる。一般的に、透過、反射、屈折および回折の任意の組み合わせは、放射線の異なる部分を異なる方向に方向付ける目的を達成するために使用され得る。
【0090】
いくつかの実施形態において、空間変調器および関連する光学系および検出器は、測定対象の放射源に対して相対運動しており、相対運動は、所望の変調を生成する。例えば、地球を周回する衛星の空間変調器上の画像は、空間変調器に対してほぼ一定の速度で移動し、画像情報は、画像が静止して変調器が移動しているかのように変調される。
両方の場合において、相対運動は変調を生成する。
【0091】
当業者に周知の他の方法は、非電磁波を誘導するために使用され得る。
【0092】
以下に説明する一実施形態において、急速に移動する物体から反射された放射線は収集され、分光計の入射スリットに伝達される。各時間ステップで受信される総放射線量は、照射源および集光光学系に対する物体の距離および方向における変化により異なる。各時間ステップでは、生の強度値は、検出器A(反射)および検出器B(透過)で生成される。時間ステップ中の総強度はC=A+Bである。データベクトルには、値a’=A/Cおよびb’=B/Cが読み込まれる。この正規化は、信号レベル全体における変化を補正する。
【0093】
別の実施形態において、測定対象の放射線は、合計測定時間Tの間、1つ以上の検出器に入射される。説明の目的のために、検出器は、光電効果を介して光電子を生成するフォトダイオードであり得る。合計測定時間はN間隔に分割される。各時間間隔中に、時間変調器は、以下で説明する擬似ランダムシーケンスに従って複数の積分器の1つを選択し、その時間間隔中に生成された光電子の実質的にすべてを、選択された積分器に方向付ける。2つの積分器AおよびBの最も単純な場合では、AまたはBのいずれかが各時間間隔中に光電子を受け取り、期間Tに亘ってAおよびBによって受け取られた光電子の合計は、期間Tに亘ってフォトダイオードによって生成される光電子の総数と実質的に等しい。測定プロセスは、N個の一意のシーケンスで少なくともN回繰り返され、各測定のために各積分器によって受け取られた光電子の数は、分析システムに送信される。
【0094】
次に分析システムに目を向けると、多重化は上記のすべての実施形態における共通要素であることに留意されたい。違いは実施形態の詳細にある。一般的な多重方程式は、
y=AZb+e(1)
であり、yは観測値の列ベクトル、Aは機器関数、Zは多重化係数の行列、bは粒子束強度の列ベクトル、eは測定誤差または不確実性による残差の列ベクトルである。Zの各行は、1つの検出器での1つの測定の多重化係数を含み、測定ベクトルyの対応する行は測定値を含む。Zの各列は、独立パラメータの値の範囲に対応する。各列に表示される範囲に制限はない。各列で表される値の範囲は不連続であり得、各列における範囲は、すべての列で表される独立したパラメータの全体的なスパンの異なる画分を表し得る。本明細書で説明する潜在パラメータを測定する場合、各列に表示される範囲は不連続である。Zの列によって表わされる範囲は重複し得る。Zの各列の多重化係数は、行によって指定された検出器への経路上に方向付けられた指定範囲内の粒子束または放射線の画分を表す。各測定サイクルは、少なくとも2つの検出器および2行のZを含む。光学システムにおける機器機能は、例えば、システム内の各光学コンポーネントの効率の畳み込みである。簡単にするために、以下の説明では、A行列が恒等行列Iであると見なされる理想的なシステムを考慮する。Zの多重化係数は、空間変調器のジオメトリまたは時間変調器のタイムスライスを表す。残差(ノイズ)は、以下の説明では無相関であると見なされる。残差が相関するあまり一般的でない場合の解決策は、当業者に知られている。n個のスペクトル強度、およびn個のスペクトル強度の異なる組み合わせのn個の測定値がある。Zの次元はnxnであり、bおよびyの両方の次元はnx1である。
Zのこの特殊な場合は、解
b=Z−1y(2)
を有する。
【0095】
Zの行がさらにアダマール符号化されている場合、Z行列は一般的に文献でS行列と呼ばれる。S行列は、
n=2−1
の特定の値に対してのみ存在し、mは0以上の整数である。S行列は、逆行列が簡単に計算され、すべての要素がバイナリコードに変換して計算を大幅に簡素化できるという有用な特性を有する。S行列法は、粒子束の約半分の(n/2+1)/nを使用する。従来技術は、増加された信号スループットによるSNRにおける理論上のsqrt(2)改善を提供するタンデムで使用されるS行列法を含む。
【0096】
方程式1は、また、検出器の線形アレイも表し、この場合において、Zは単位行列Iである。機器機能マトリックスAは、アレイ内の検出器間の応答における違いを表す用語を含む。n個の検出器によるn個のスペクトル強度およびn個の同時測定がある。
【0097】
本発明は、方程式(2)を導く単純化された仮定を有しない方程式(1)の物理的実施形態である。本発明において使用される一般的なケースは計算上より多くを要求するが、余分な計算は、方程式(2)で説明されるより単純な場合によって達成され得るものに増分する信号対雑音比におけるさらなる改善によって正当化される。上述したように、本発明は、d個の検出器または積分装置(d≧2)を含み、測定をc回繰り返す(c≧1)可能性も可能にする。
【0098】
本発明において、Zの次元はndc×nであり、yの次元はndcx1であり、bの次元はnx1である。nd(c=1)測定の最小値が必要であることに留意されたい。本明細書では、nは潜在的なパラメータであり得る測定されたパラメータの数であることが理解される。データ収集がC>1の非整数値で中断された場合でも、データは依然として分析され得る。
【0099】
さらに、Zの行列要素は、一般に、従来技術のような整数ではなく、複素数である。Aでの畳み込みは一般に非整数要素を導入するため、以下の説明では、Zを機器機能マトリックスAでの畳み込みを含むと考えると便利である。次元により、Zは、この場合、直接反転され得ない。代わりに、スペクトル強度bは、方程式(1)に対する複数の最小二乗(MLS)解を使用することにより、最小の誤差で推定され得る:
b=(ZZ)−1y(3)。
【0100】
さらなる議論のために、H=(ZZ)−1を定義すると便利である。共分散行列ZZは対称であるため、逆行列の計算を単純化する。一般的な場合、逆行列の計算は、計算集約的である。Zの行がシードシーケンスのサイクル順列である場合、ZZは常に循環行列であるため、逆行列は離散フーリエ変換を使用して計算され得る。方程式1の他の解も可能であり、Nの大きい値のために好ましい。1つの代替アプローチは、測定ベクトルyを既知の入力ベクトルbと相関させて、yからbへの変換の係数を推測することである。これは、直接的な方法によっておよびニューラルネットワークなどの教師なしの方法によって行なわれ得る。MLS方法は、中程度のサイズ(N<1024)のシステムについて方程式1を解く好ましい方法であるが、教師ありおよび教師なし相関などの他の統計的方法も機能し、本発明の範囲内である。
【0101】
本発明は、Zの形態にほとんど制約を課さない。方程式3を使用してN個の波長帯を測定するには、Zが少なくともN行を有することだけが必要である;各波長帯は少なくとも1行で表される;各行は一意である;ZZは非特異である。すなわち、測定はZの便利な形式を使用して行なわれ得、計算のために別のベースに変換され得る。Zの要素は、従来技術のような整数に限定されず、一般に複素数であり得る。しかしながら、ほとんどの適用において、Zの要素はインターバル[0,1]における実数であり、検出器に方向付けられた放射の割合を表す。Zのすべての要素に共通の係数を乗算すると、同等の結果が生成され、計算がパフォーマンス上の理由から整数演算で行われる場合に好ましいことが認識されるべきである。Zの異なる選択は、方程式(3)の解における異なる信号対雑音比を生成する。Zは、工学上の考慮事項と方程式(3)から計算される結果のRMSノイズの最小化とのバランスをとるために選択される。解の1つの重要なクラスは、少なくとも2つの別個の領域を有するシードパターンのサイクル順列、または順列の基本パターンによって構築される。上述のように、先行技術のアダマールパターンは、RMSノイズを最小化するために少なくとも単一検出器において最適化されたこのカテゴリーのサブセットである。本発明の範囲において、アダマールパターンは、第2の検出器に対するアダマールパターンの補完を含むことにより、2つの検出器に拡張される。2つ以上の検出器については、擬似ランダムシードシーケンスは、サイクル順列のベースとして使用され得る。本発明の範囲内の2つ以上の検出器については、各検出器のベースシードパターンは、すべての検出器の合計が各測定に対して1になるように、各測定に対する各検出器に0と1との間の値をランダムに割り当てることによって生成され得る。各列に対して割り当てられた値は、指定された検出器に方向付けるために、独立したパラメータの対応する範囲に入射する粒子束の割合を表す。RMSノイズは、シードシーケンスを繰り返し変異させ、方程式3に従ってRMSノイズを計算する遺伝的アルゴリズムによって最小化され得る。
【0102】
シードパターンの別の重要なクラスは、1’sのブロックおよび0’sのブロックを有する、テプリッツパターンに基づいている。テプリッツパターンを有する物理マスクは、一般に領域の物理サイズがより大きくなり得るため、擬似ランダムシードに基づくマスクよりも容易に作成される。
【0103】
Zの要素は、また、信号対雑音比を最適化するために行間に相関がないように選択され得る。
【0104】
適用では、yは測定された量であり、yは
y=y+y(4)
のように記述され得、ybは一定のベース信号であり、ysは可変信号を表す。(3)に代入すると、
b=Hy+Hy(5)
が見つかる。
【0105】
は定数ベクトルであるため、Hyも定数ベクトルである。方程式5は、定数が任意の入力信号yに追加されることができ、唯一の効果が、結果のスペクトルbにおける一定のオフセットであることを示している。ハードウェアでは、信号yは通常、オフセットされ、増幅された後デジタル化されたアナログ電圧である(ただし、別の測定可能な量であり得る)。ハードウェア構成部品は、検出システムのダイナミックレンジを定義する設定された制限内で動作する。最適には、検出システムのダイナミックレンジは、測定対象のサンプルによって生成される入力信号の範囲に一致するように設定される。検出システムは、以下の工程を実行することによって、調整され得る。
1.代表的なサンプルセットについてのゼロオフセットおよび低増幅でのyの測定。
2.代表的なサンプルセットについての平均最小および最大信号値とそれぞれの標準偏差を決定。
3.最小予想信号を、平均最小値から3つの標準偏差を引いた値に設定。
4.最大予想信号を平均最大信号に設定し、平均最大信号に3つの標準偏差を加えた値にする。
5.電圧オフセットを予想される最小信号に設定。
6.増幅ゲインgを(検出システムのダイナミックレンジ)/(予想最大値−予想最小値)に設定。
【0106】
動作中、yは検出システムのダイナミックレンジ内で測定され、デジタル化される。多くの応用については、対象の唯一の部分はyである。必要に応じて、yのデジタル値はyを回復するために追加され得る。
【0107】
本発明の範囲内のパターン認識に関係する多くの実際の用途では、スペクトル強度ベクトルbを計算する必要はない。方程式3から、bがyベクトル要素の線形結合 で構成されていることは明らかである。yベクトル要素は、上記の正規化手順で述べたように、測定の線形コード化であり得る。スペクトル強度bの結合を計算する任意の分析手順は、測定ベクトルyにも適用されることができ、異なる基底ベクトルのセットに対して表現される同等の結果を生成するだろう。素人の用語では、異なるセットまたは基底ベクトルは異なる座標系にすぎない。例えば、三次元空間では、点は、デカルト座標で{x,Y,Z}として、または球面座標で{r、θ、φ}として同等に表現され得る。ほとんどの実用的な用途では、次元の数は3より大きい。分析手順は、LDA、MLS、PLS、PCAなどの多変量統計分析法、またはニューラルネットワークなどの伝播法であり得る。主成分分析(PCA)のようなパターン認識アルゴリズムは、データセット中の分散を最もよく捕らえるbベクトル要素の線形結合を慣例通りに計算する。bベクトル要素自体はyベクトル要素の線形結合であるため、PCAアルゴリズムは、同等の結果を生成するために、入力として生データyベクトルを直接取得することができる。
【0108】
本明細書の構成は、異なるレベルの空間分解能でスペクトルを取得することができる。従来技術では、分解能は空間エンコーダによって固定されている。本発明では、スペクトル分解能は、Iheサンプリングレートを増加させることにより増加され得る。対応するコードは、エントリを複製することにより、より高いサンプリングレートを反映するように変更される。例えば、コードシーケンス{10011011}は分解能の2倍で{11 00 00 11 11 00 11}になる。分解能はこの方法によって無制限に増加され得るが、実用的な限界は、粒子フラックスを空間変調器に方向付けるシステムの分解能によって決定される。サンプリング時間は分解能に比例して増加する;スペクトル分解能を2の因数だけ改善するためには、サンプリング時間の2倍を必要とする。フーリエ変換分光計は同じ時間依存性を有するが、干渉計内の走査ミラーを2倍に変換する必要がある。本発明における改善された分解能は、いかなる機械的部品を変更することなく、電子的手段のみによって達成され得る。以下の図14に示されるように、特定の操作パラメータのみが、向上された分解能を有する有効な結果を提供する。アレイ検出器の分解能は固定されている。分解能は、従来の分散装置においてスリット幅を狭くすることで向上され、スループットの損失を伴う。その結果、サンプリング時間が分解能の改善の2乗として増加する。多重化機器は明確な利点を有する。
【0109】
デューティサイクルに関して、本明細書の構成は、静的モードおよび動的モードの両方で動作され得る。
【0110】
静的モードにおいて、空間変調器は、各測定の間、固定された構成に保持される。単一の検出器の場合、これは、従来技術における従来のアダマール分光計に対応する。このモードにおいて、変調器の物理的領域と粒子束の区分との間に1対1の対応がある。
【0111】
動的モードにおいて、空間変調器は、測定対象の空間的に可変な粒子束に対して相対運動する。相対運動により、粒子束の区分と変調器の物理的領域との間に1対多数の関係が生じる。各領域からの粒子束は、1測定サイクル中の各検出器の変調器領域の相対的な時間加重幾何学的断面に従って、異なる検出器に方向付けられる。
【0112】
テプリッツパターンは、空間的に別個の領域の2つ以上のセットで構成できる。領域の各セットは、その領域に入射するEM放射線の実質的にすべてを、検出器、またはその領域のセットに排他的な検出器のセットに方向付けされるように設計されている。手段は、セットの空間的に分離された領域からのEM放射線を、検出器に集中させるための1つ以上の光学要素を含み得る。領域の各セットは、EM放射線を検出器または検出器のセットに方向付けるために、反射、透過、屈折または回折を使用し得る。
【0113】
透過性領域は、領域内に透過性材料を配置することにより、またはより好ましくは、領域内にスロットを配置することにより構築され得る。反射領域は、領域内に高反射材料を配置することで構築され得る。反射材料は、好ましくは、広いスペクトル範囲にわたって高い反射率を有するAl、AgまたはAuなどの金属である。誘電体ミラーは、より狭いスペクトル範囲にわたってより高い反射率を提供し得る。対象のスペクトル領域で高い反射率を提供する他の材料が、使用され得る。入射角は、異なる検出器に方向付けられた反射領域のセットを提供するために変更され得る。いくつかの実施形態では、反射領域は平坦な表面を有し、他の実施形態では、反射領域は、検出器にEM放射線を集中させる目的で湾曲した表面を有する。屈折領域は、領域内に1より大きい屈折率を有する材料を配置することによって構築され得る。屈折材料は、好ましくは、屈折領域を出るEM放射線の一般的な方向が、屈折領域に入射するEM放射線の一般的な方向と平行ではないように、一般にくさび形である。異なる出口方向を有する屈折領域は、くさび角を変えることにより、構築され得る。具体的には、領域の2つ以上のセットは、2つ以上の別個のくさび角を使用することによって、構築され得る。屈折領域の表面は、検出器でEM放射線を集中させる目的で、平面または曲面であり得る。回折領域は、領域内に回折格子を配置することによって構築され得る。回折格子は透過型であっても反射型であってもよい。異なる波長を有するEM放射線は、共通の格子周期を有するセットで空間的に分離された回折面に当たるため、共通の検出器に至る一連の経路は、シータZ空間の線である。入射放射線はいくつかの回折次数に方向付けられるため、回折格子はいくつかの論理領域として機能し得ることに留意されるできである。各次数における相対強度は、ブレーズ角、溝の深さまたは格子材料などのパラメータを変更することで調整され得る。異なる出射方向を有する回折領域は、回折格子の周期を変えることによって構築され得る。回折面は、検出器にEM放射線を集中させる目的で、平面または曲面であり得る。本発明において想定される反射領域および屈折領域は、本質的に二次元である従来の設計と比較して三次元で本質的に可変である空間変調器をもたらす。一般に、二次元空間変調器は、三次元空間変調器よりも製造が簡単であるが、三次元空間変調器は優れたパ性能を提供できる。回折領域オプションは、複数の出力方向を可能にする利点を有し、効率の低下を犠牲にして製造が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0114】
ここで、本発明の一実施形態を添付の図面と併せて説明する。
図1】本発明による方法を使用することができる配置の一例を示す穀物選別装置の等角図である。
図2図1の装置の垂直断面図である。
図3図1および図2の装置の測定システム28の本発明による2つの検出器配置の概略図である。
図4】3種類の反射領域を伴う、図3において使用するための空間変調器の代表的なセクションを示す。
図4A】測定面のさまざまな部分に入射する放射線を3つの方向に方向付けるために一列に配置されたさまざまなタイプの領域のグラフを示す。
図5】固定ミラーが3つの位置間で切り替え可能な可動ミラーに置き換えられている以外は、図4と同様である。
図6】3種類の屈折領域を伴う空間変調器の代表的なセクションを示す。
図7】単一タイプの屈折素子を使用し、電界を適用して屈折率を変化させて、入射放射線を3つの異なる方向に方向付ける以外は、図6と同様である。
図8】3種類の回折領域を伴う空間変調器の代表的なセクションを示す。
図9A】回転軸に平行な特徴を伴う空間エンコーダディスクの図である。
図9B】回転軸に垂直な特徴を伴う空間エンコーダディスクの図である。
図10】23チャネルおよび3サンプリングモデルについて、図3に示される配置を使用した数値シミュレーションに基づくRMSノイズ対畳み込みのグラフである。
図11】計算が、23チャネルの場合よりも実用的である127チャネルに対して行われる以外は、図10と同様のグラフである。
図12】検出器の数の関数としての127チャネルシステムについてのRMSノイズの依存性を示す、RMSノイズ対畳み込みのグラフである。
図13】127チャンネルが一定速度で移動する空間変調器のRMSノイズ対デューティサイクルのプロットである。
図14】ベースサンプリング周波数の最初の10高調波に対して3つの検出器および23チャネルを備えたシステムについてのRMSノイズ対デューティサイクルのプロットである。
図15】本発明を使用する3つの検出器を備えた飛行時間質量分析計の概略図である。
図16】本発明を使用して蛍光減衰を測定するためのシステムの概略図を示す。
図17】本発明を使用するフローセルのためのシステムの概略図を示す。
図18A】本発明の測定プロセスにおいて使用される重み関数の概略図を示す。
図18B】測定対象の従属パラメータの概略図を示す。
図18C図18Bにおける従属パラメータの積分強度の概略図を示す。
図19A】本発明の重み関数の例を示す。
図19B】本発明の重み関数の例を示す。
図19C】本発明の重み関数の例を示す。
図20A】本発明の重み関数に対する相対運動の効果を示す。
図20B】本発明の最も一般的な重み関数の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0115】
図1および2に示される粒子の測定可能なパラメータに基づいて粒子を選別するための装置は、供給源(10A)から選別される粒子を運ぶ供給管路(10)を含み、それは、管路を介して、連続した流れで粒子を軸(12)のまわりで回転可能な回転体(11)へと供給する。実施形態では、回転体は、垂直に配置される軸(12)を備えた平らなディスクであり、その結果、上記ディスクは上部水平面を提供し、その上で粒子(13)が、管路(10)からの流れの中で供給される。上記粒子は、ディスクが回転するが、外向きの速度がほとんどない位置の中心上に置かれるように、管路がディスクの中心に配置される。典型的な場合では、粒子は粒核であり得る。この時点での粒核速度は、供給管路(10)の流れからである。wが角速度で、rが半径である場合、ディスク上のある点の速度は、v=wrである。速度変化が大きすぎる領域に核が堆積される場合、それらは跳ね返り、その流れは無秩序である。核は中央領域に堆積して、速度の変化を最小化する。
【0116】
回転体を形成するディスクの上部表面には、軸に隣接する内側端部(15)から外に向かって外側端部(16)へとそれぞれ延びる複数のダクト(14)が設けられ、上記外側端部(16)は、軸から外に向かって、内側端部より大きいラジアル距離で配置される。この実施形態では、ダクトの外側端部(16)はディスク(11)の縁(17)で配置される。この実施形態では、各ダクト(14)は中心に近接する位置からディスクの周辺部(17)へと伸び、その結果、中心とダクトがすぐ隣りに配置され、ダクトが外側に向かって広がり、外側端部(16)において、それらが周辺部(17)まわりに一定間隔で配置される。
【0117】
したがって、内側端部(15)は、軸に隣接するアレイに配置され、供給管路(10)は、選別される粒子を内側端部に入れるため、ダクトの内側端部(15)で選別される粒子を堆積するように作用する。ディスクの中心で内側端部が隣接するため、粒子はその中心で積み重なりを形成し、その積み重なりは、内側端部にあるダクトの開口部へと自動的に均一に選別される。粒子が中心で連続的に積み重なっていると仮定して、ディスクの回転は、粒子を、粒子の寸法に対する口の寸法によって定義される流れで個別のダクトへと均等に選別するために作用するだろう。ダクトに沿った経路の開始時に、粒子は隣接するか、あるいは重なり合うだろう。しかし、粒子が遠心力によって加速される間の粒子のダクトに沿った通過は、粒子を次々と広げて、重複しない粒子のラインを形成する。遠心力が比較的均等であるため、粒子は均等に加速され、したがって、ダクトに沿って均等な間隔で配置されるだろう。核は、ダクトの第1の部分でダクトと軸方向に整列し、核の長さは、核の大きさの違いによって、いくらかの変化を有する第1の中心−中心間距離を定義する。遠心加速度は所定の半径で一定であるが、摩擦力は約20%異なる。摩擦力は、コリオリの力=uNに対応する(u=摩擦係数およそ0.2−0.25、N=主にコリオリの力によって供給されるダクト壁に対する垂直抗力)。上述のように、正味の力の線に沿ってダクトを曲げることによって、垂直抗力および摩擦を最小化するようにダクトを成形することができる(本文中で以前に言及されている)。
【0118】
粒子のサイズに対するダクトの長さを選択することができ、各粒子と後ろ(behind)の粒子との間の間隔が、粒子の長さの比率となるように選択することができる。セパレーターが種子に使用される例において、各種子と次の種子の間の分離は、種子の長さと少なくとも同等であり得、典型的には、種子の長さの1.5あるいは2.0倍であり得る。入口のダクト幅は、詰まらないように種子長さの約1.5でなければならない。
【0119】
したがって、粒子が外側端部に向かって移動する際に次々に一列に整列させるために、ダクトは、粒子が内側端部から外側端部へと通過するにつれて加速するように成形および構成される。
【0120】
外側端部(16)は回転体の外周で角度離間のアレイに配置され、各ダクト中の粒子列の粒子が、ディスクからの遠心力によって、ディスクの軸から外側に向かって放出される。開口部はすべて、ディスクの共通の放射面にある。ダクトは、より厚いディスクの上部表面に切り込まれた溝、あるいはディスクの上面上に適用される追加の壁によって形成され得る。
【0121】
個々の分離装置(21)がディスクの角度離間の位置で配置されるように、粒子分離装置(21)のアレイ(20)は、ディスク(11)の上の環帯中に配置されるか、ディスクの外縁(17)を囲む。
【0122】
各分離装置は、分離装置の動作によって決定される複数の経路の1つに各粒子を方向付けるように動作可能である。示される例では、分離装置は、出口(16)の平面に対して上方または下方へ、粒子を方向付けるように構成される。図2に示されるように、分離装置(21)は、粒子が一方向または他方に分離されない最初の中間位置あるいは開始位置を取ることができる。収集チャンバ(23)内での収集のために、粒子を経路(22)へと下方に方向付けるように、分離装置を上方に移動することができる。同様に、分離装置がより低い位置に移動する場合、粒子は、チャンバ(25)内での収集のために、経路(24)に沿った分離装置の頂点上へと上方に移動する。2つの経路(22および24)は、チャンバ(23および25)のどちらかに粒子が移動することを保証するガイド板(26)によって分離される。
【0123】
分離装置(21)を制御するために、(28)で一般に示される測定システムが提供され、上記測定システムは、粒子が、ディスクの縁にあるダクトの端部から分離装置に向かって移動する際に、粒子の選択されたパラメータあるいはパラメータを測定するために使用される。測定システムは、例えば、図3に示されるスペクトロメーターであってもよい。
【0124】
典型的な例では、粒子の分析は、疾病による種子の劣化の存在に関連し、これは、しばしば、例えば、上記システムを使用して光学的に検出することができ、本発明者の先の米国特許第8227719号に開示され、その開示は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0125】
各分離装置(21)は、粒子のパラメータを測定するように動作可能な、多数の検知コンポーネントを含み得るそれぞれの検出装置(28)に関連し、関連する検出装置によって測定されたパラメータに応じて、それぞれの分離装置は、経路(22)または経路(24)を選択するように動作する。
【0126】
必要な場合は、測定対象のパラメータに応じて、経路の数が2つを超える経路を含むように変更できることが認識されるだろう。経路の数の増加に対するそのような選択は、最初の分離の下流にある後続の分離装置(21)を提供することにより行うことができる。この方法で、経路の1つあるいは両方は、2つ以上の補助経路に分割することができ、分離装置の全ては、測定装置(28)からデータを受け取る制御システム(29)によって制御される。
【0127】
したがって、ディスク(11)は、供給管路に面する正面(8)を備え、ダクト(14)はディスクの放射面にあり、軸からディスク(11)の周辺部(17)へと外側に延びる。
【0128】
示されるように、ダクト(14)は、供給管路(10)に面する開口面を備えるチャネルを形成する。しかし、ダクトは上面で閉じることができ、口(15)および放出端部(16)だけは開いている。
【0129】
図1に示されるように、内側端部(15)に対して外側端部(16)が角度的に遅れるように、ダクト(14)が曲げられる。これは、Dで示されるような反時計回り方向の回転方向に対して角度的に遅れる各ダクトの側面を形成し、角度的に進む対向面上に側面を形成する。ダクトのこの曲率は、粒子がダクトの一方の側壁に対して過剰な圧力のないダクトに沿って、コリオリの力および遠心力に実質的に従うように配置される。しかし、コリオリの力はダクト(14)の下流側に対して粒子を運ぶ傾向にあるように、ダクトの形状が配置される。粒子上の力Fが、粒子をダクト(14)の底部(9)に向かって運ぶ傾斜壁に対して粒子を押しつけるように、側壁(7)が傾けられる。これは、粒子がダクト(14)の底面の放射面でディスクから出現するように、ダクトの底部に向かってすべての粒子を導くように作用する。
【0130】
図1で最もよく示されるように、ダクト(14)は、軸に隣接する内側端部(15)においてすぐ隣りに並んでおり、および外側端部(16)に向かって間隔が増加する。内側端部(15)上でダクトはすぐ隣に並んでおり、結果として、ダクトの最大数は、開口部(15)の最大数によって提供される。図示されない配置では、ダクト数が増加されてもよく、ダクトは枝を含んでおり、各ダクトがその長さに沿って1つ以上の枝に分割する。
【0131】
図示されない別の配置では、ダクトを内側端部(15)の別のものの上に積み重ねて、内側端部でダクト開口部の数を増加させてもよい。それは、例えば、ダクトの3つのリングを別のものの上に積み重ねると、ダクトの総数を3倍に増加することができる。その後、空間が外端で利用可能となって、共通の平面の3本のリングを収容する場合、ダクトは、下方へ移動する最上部のダクトによって、外側端部の共通の放射面に配置される。このように、ダクトの外側端部(16)は、ディスクの周辺部(17)上で直接並んで配置することができる。
【0132】
図2の実施形態では、検出装置(28)および分離装置(21)は両方とも、ディスクの周辺部(17)を越えて位置する。このように、粒子は、周縁(17)を出て、ダクトの外側端部から分離装置のアレイへと通過する際に誘導されない。粒子は、ディスク(11)の角速度および外側端部(16)におけるダクト(14)の方向によって決定される軌道に沿って移動する。関連する検出装置(28)は、分離装置(21)に対して位置し、その軌道中の粒子に対して作用する。すなわち、軌道は、外周(17)と分離装置(21)の間の自由空間に配置され、ダクトの放出端部(16)を出る粒子が、その放出位置に応じて検出装置(28)の1つを通り過ぎ、その検出装置から、粒子がその関連する検出装置(28)によって行なわれた分析に応じて分離するように作用する、関連する分離装置(21)へと移動する。したがって、軌道が一貫し、検出される粒子が必要な分離装置へと移動することを保証する必要がある。
【0133】
1つの実施形態において、図3に示されるように、本発明は、例えば、図1および2のサンプルからの反射によって受け取られた光の分析のための、散布スペクトロメーターの検出手段として使用される。電磁放射線、あるいはこの場合、分析される光が集められて、入口開口(30)によって方向付けられる。必ずしもではないが、通常、平行ビーム(32)は、凹面鏡(31)などの当業者に既知の方法を使用して、光学を集めることによって生成される。平行ビームは、角発散を制限するために1つ以上のストップ(33)を通り抜けて、1つ以上の分散素子のアレイに投影し、ビーム経路における波長依存の角度偏差を引き起こす。分散素子は屈折性あるいは回折性であってもよい。示される実施形態では、分散素子はプリズム(34)を含む。偏差の角度範囲は、測定対象の最小波長および最大波長によって指定される2つ以上の波長領域(35、36、37)に分割される。以下の議論について、これらの波長領域は「帯域」と名付けられる。当業者は、前の光学部品の分解能によって帯域の最小幅が決定されることを認識するだろう。帯域幅は必ずしも等しくない。好ましい実施形態において、透過は、一般に、広いスペクトル域にわたって80%よりも良く、スペクトルエイリアシングがないため、スループットは、分散のために低屈折率プリズム(34)を使用することによって最大化される。
【0134】
以下により詳細に議論される別の配置では、回折格子は、特定の波長で同様の効率を達成するように設計されてもよいが、効率は設計波長からの距離に伴い低下する。好ましくは、結合したすべての帯域のための波長領域は、最小波長と最大波長の間に制限される。波長領域は、帯域通過フィルタ、開口絞り、あるいは検出器感度で制限することができる。
【0135】
分散したビームは、鏡(38)および凹面鏡(39)によって随意に集束され、入射放射線を透過または吸収する第1の空間変調器(40)に入射する。第1の空間変調器(40)は帯域通過フィルタとして機能する。この実施形態では、透過光は、第2の空間変調器(42)を含む第2の表面(41)に渡される。
【0136】
N測定の各々について、測定表面(41)における空間変調器(42)は、入射放射線を、透過される波長域の第1のセットと反射される波長域の第2のセットに分割する。各セットに含まれる波長域は、測定ごとに異なり、N個の異なる組み合わせが存在する。空間変調器(42)は、波長域の第1のセットを、第1の検出器(44)上に波長域の第1のセットを集束させる集束鏡(43)へと透過させる。空間変調器(42)は、波長域の第2のセットを反射して、第2の検出器(45)上に集束させるために湾曲する。2つの別個の方向が示されるが、本発明の範囲内でN−1個もの数であってもよい。すべての別個の方向において合計されたEM放射強度は、空間変調器(42)上のEM放射強度の入射の少なくとも60%である。
【0137】
各方角のEM放射線の総強度は、各空間変調器構成について検出器(44、45)で測定され、検出器の出力は、検出器出力を統計的に分析するために制御システム(46)に送信され、測定対象のEM放射線のスペクトルの特性に関連する情報を取得する。
【0138】
図4は、3つのタイプの領域(50、51、および52)を有する空間変調器の代表的なセクションを示す。各タイプの領域は、異なる角度で反射し、入射放射線を3つの異なる方向に方向付ける。集束素子(53)は、検出器(54、55、56)上に放射線を集中させる。図4Aで示されるように、異なるタイプの領域が1列に配置され、測定表面の異なる部分上の放射入射線を3つの方向へと方向付ける。いくつかの実施形態では、領域の配置は2次元である。
【0139】
図5は、固定鏡(50、51、および52)が、例として示されている3つの位置を有する多くの位置間で切り替えることができる、移動可能な鏡(57)と取り替えられるという点を除いて、図4に類似する。好ましい実施形態では、マイクロミラーアレイが使用される。
【0140】
図6は、3つのタイプの領域を備えた空間変調器の代表的な部分を示す。各タイプの領域は、3つの異なる方向へ入射放射線を方向付ける、くさび形の屈折要素(58)、(59)、および(60)を有する。集束要素(53)は検出器(54)、(55)、(56)上に放射線を集中させる。
【0141】
図7は、1つのタイプの屈折要素(61)が使用され、3つの異なる方向に入射放射線を方向付けるために屈折率を変えるように電場をかけることを除けば、図6に類似している。集束要素(53)は検出器(54)、(55)、(56)上に放射線を集中させる。
【0142】
図8は、3つのタイプの屈折領域(62)、(63)、および(64)を備えた空間変調器の代表的な部分を示す。各タイプの領域は異なる格子周期で回折性である。格子罫線は、回折された放射線を空間変調器の面から検出器(54)、(55)、および(56)に方向付けるために、アレイに沿って分散の方向に優先的に実質的に平行である。
【0143】
図9Aは、ディスクの面に垂直な円周の周囲に配置された間隙(58)とリフレクタ(59)のテプリッツパターンを備えた空間エンコーダディスク(57)を示す。ディスクは、中心を通って、かつ、ディスクの面に垂直に軸の回りを回転する。リフレクタは回転軸に平行である。空間エンコーダディスクは図3に示される分光計レイアウトで使用されてもよい。スペクトル帯は、間隙の1つの周期48(図9B)に等しい領域と、エンコーダディスクの円周上の反射領域にわたって焦点へ導かれる。エンコーダディスクが回転するにつれて、反射あるいは送信された周波数域は変化する。好都合なことに、反射領域の曲率は、検出器状の反射された周波数帯を集束させるために使用可能である。反復パターンは周期的境界条件を与える。他の実施形態では、図4、5、6、7、および8に示されるパターンは、ディスクの円周の回りに配置可能である。この構成の重要な利点は、エンコーダディスクが回転するにつれてはじき出された角度範囲は、反射(あるいは伝達)領域の高さを超えて一定であるということである。
【0144】
図9Bは、8つの反復擬似ランダムパターンを備えた平面エンコーダディスクを示す。ディスクは、中心(69)を通って、かつ、ディスクの面に垂直に、軸の回りを回転する。波長帯は、エンコーダパターンの1つの周期と等しい長さの領域に集中する。暗い領域に入射する放射線は送信され、第1の検出器に集束され、可視光線領域に入射する放射線は第2の検出器に反射および集束される。好ましくは、反射あるいは伝達特徴によってはき出された角度範囲が一定となるように、ディスクは作製される。代替的に、ディスク径は、長方形の特徴により開始された畳み込みが許容値未満であるように、十分に大きくなり得る。他の実施形態では、図4、5、6、7、および8に示されるパターンは、ディスクの円周の回りに配置可能である。
【0145】
図10は、23のチャネルおよび3つのサンプリングモデルのRMSノイズに対する畳み込みの効果の数値シミュレーションを示す。RMS検出器ノイズは100であるが、各チャネルのRMSノイズは多重化利点によって減少する。0の畳み込みの上方曲線(アダマール−1)は、入射放射線の半分を測定する1つの検出器を用いる先行技術の標準的なアダマール技術に対応する。0の畳み込みでは、空間マスク領域はそれぞれ一直線に並べられ、波長帯領域に一致する。畳み込み計算については、空間マスクは一定の速度で移動し、各空間領域の中心は各サンプル積分期間の中点で各波長帯の中心に位置合わせされる。(完全スペクトルの)スキャンレートは速度に比例する。高い畳み込み係数は高いスキャンレートに相当する。畳み込み指数は、中央の波長帯の前後の波長帯のそれぞれからマスク領域によって受け取られた放射線の割合を表す。0.25の極大値は、マスク領域によって方向付けられた放射線の1/4が前の波長帯からのもので、1/2が中央の波長帯からのもので、1/4が次の波長帯からのものであることを意味する。畳み込みを適用すると、符号化パターンは2進法でも直交でもない。多最小二乗アルゴリズムを用いて、結果としてもたらされる連立方程式を解くことができる。多重化の利点は畳み込みが増加するにつれて減り、0.19の畳み込み係数に近づくと完全に失われる。中央曲線(アダマール−2)は、ベース符号化の補足物が第2の検出器で測定されることを除けば、ベースと同じアダマール符号化を用いる。第2の曲線は、0.01の標準偏差で上方曲線に対して0.65の一定の比率である。単独で測定された強度の割合の増大ゆえに、sqrt(2)の因子(0.71)が予想される。0.06のさらなる改善は補足のマスクによるものである。下方の曲線(3−遺伝子)は遺伝的アルゴリズムで同定された3つの検出器符号化である。遺伝的アルゴリズムの開始点は、23のトリプレット各々についてランダムに選択された1つの位置のひとつでバイナリ1を置くことにより、および、その符号により生成されたRMSノイズをシミュレーションによって計算することにより、生成された。100,000の無作為の組み合わせがテストされ、最良の組み合わせが遺伝的アルゴリズムでさらに改良された。遺伝的アルゴリズムは、変異させる23のチャネルのうちの1つを無作為に選択し、その後、そのトリプレット中のバイナリ1を無作為に別位置へスワップする。この変化がRMS誤差を減らす場合、変化は次の突然変異のための基礎として維持される。それ以外の方法でもともとのシーケンスが維持される。下方曲線に使用されるシーケンスは以下の通りである:
S1={0,0,1,0,1,1,0,0,1,1,0,1,0,1,0,0,0,0,0,0,1,1,1};
S2={0,1,0,1,0,0,1,1,0,0,0,0,0,0,1,0,1,0,0,0,0,0,0};
S3={1,0,0,0,0,0,0,0,0,0,1,0,1,0,0,1,0,1,1,1,0,0,0};
【0146】
0に近い畳み込みについては、三重検出器ケースのRMSノイズは、従来の標準的なアダマールケースの0.60、および、二重のアダマールケースの0.91である。標準偏差は両方の場合で0.01であり、三重符号利点が統計的なアーチファクトではないことを確認している。しかしながら、三重符号化はいずれかのアダマールベースの変異体よりも畳み込みに対してより頑丈であり、畳み込み係数が増えるにつれて比較的良好に実行される。RMSノイズは畳み込み係数0.22において、標準アダマールのうちの0.51、および、二重のアダマールケースのうちの0.80であり、三重コードによりRMSノイズの減少と高いスキャンレートの両方が可能となることを意味する。0の畳み込みケースは1000回の試行実験によってテストされた。総信号強度はおよそ25ボルトであり、RMS誤差はH1、H2、およびS3のそれぞれの場合で1.56V、1.02V、および0.55Vであった。H1とH2の間の比率はsqrt(2)の期待値に近い。実験では、3検出器ケースL3は、数値シミュレーションで予測された以上にRMSノイズを減少させた。それぞれが線形アレイ結果L1に一致した程度は、L1と多重化ケースの各々との間の内積を計算することで評価された。L1とのH1、H2、およびS3の内積は、それぞれ0.971、0.981、および0.988であった。検出器の数が1から3に増えると、線形アレイスペクトルと多重化結果との間のマッチは改善する。
【0147】
図11は、23のチャネルケースよりも大きな実用的な用途を有する計算が、127のチャネルで行われることを除けば、図10に類似している。全体的な順位は同じであり、相対的パフォーマンスの比率は類似している。3チャネルのトリプレットケースでは、単一のアダマールケースのRMSノイズ0.65、および二重のアダマールの場合のうちのRMSノイズ0.93である。標準偏差は両方のケースで0.01であり、三重コードの利点が統計的なアーチファクトではないことを確認するものである。23チャネルのケースとは異なり、畳み込み係数の関数としてパフォーマンスの比率にいかなる傾向も存在しない。
【0148】
図12は、検出器の数に応じた127チャネルシステムに対するRMSノイズの依存を示す。上方の4曲線は簡易なテプリッツパターン(文献によっては対称的なブロック)を使用する。テプリッツパターンの重要な利点は作るのが簡単であり、ゆえにコストを削減できるということである。テプリッツパターンには1つの検出器当たり1つの連続ブロックがある。上方曲線は、2つの検出器に対して畳み込みへのRMS依存を与える。ブロックサイズは63および64のチャネルである。0.02未満の畳み込みを除いて、SNRパフォーマンスは線形アレイ(RMS=100)よりも悪いが、127よりもむしろ2つの検出器だけが使用され、これは大きなコスト削減となる。第2の曲線は、23、41、および63のチャネルのブロックを備えた3つの検出器テプリッツ形状を表わす。0の畳み込みでのRMSノイズは、124以下の検出器を備えた線形アレイに対してRMSノイズの2/3であり、最大で0.11の畳み込み係数までは上回っている。第3の曲線は、29、31、33、および34のブロック長を備えた4つの検出器に対するテプリッツパターンのRMSパフォーマンスを示す。第4の検出器の追加は、さらにすべての畳み込み係数でRMSノイズを減少させる。第4の曲線は、テプリッツ幾何学形状を備えた5つの検知器のケースを示す。ブロック長は17、19、23、31、および37である。RMSノイズは0の畳み込みで122以下の検出器を使用して、線形アレイのその1/2未満である。そのパフォーマンスは、最大で0.16の畳み込み係数までの線形アレイよりも優れたままである。下方曲線は、アダマールパターンを使用して、2の検出器システムのパフォーマンスを与えている。アダマールパターンのパフォーマンスは、テプリッツパターンのいずれかのパフォーマンスよりも著しく優れているが、製作と動作中の位置合わせの膨大な複雑さを犠牲にしている。
【0149】
図13は、積分時間の効果がノイズ計算に因数分解されることを除けば、図10と同じデータに基づく。図10では、畳み込み係数は、マスク領域の中心と周波帯領域の中心との間のミスアラインメントの尺度としてみなすことができる。一定の速度で移動するマスクについては、デューティサイクルは数の上では畳み込み係数の4倍である。積分時間の効果を補正するために、畳み込みによるRMSノイズにD−1/2を掛け、このとき、Dはデューティサイクルである。積分時間と畳み込みとの間の最良のトレードオフは、一定の速度で移動するマスクに対してほぼ0.5のデューティサイクルを中心とする広範な領域にある。マスクと周波帯領域の中心がほぼ整列しているときにマスク速度を減少させ、整列が揃っていないときにマスク速度を増加させることで、全体的なノイズを減らすことができる。いくつかの実施形態では、これは単振動を受ける発振器で達成可能である。
【0150】
図14は、速度に対するサンプリングレートを増加させる効果を示す。ベースサンプリングレートはH1と標識され、23の周波帯に対応する23のカラムを備えたZ行列Z1に関連付けられる。サンプリングレートを2倍にすることで効果的な周波帯幅を半分にし、したがって、46の周波帯がある。Z行列Z2の列の数は2倍にされ46になる。Z1からZ2を作るために、Z1中の各要素が複製される、複製はオリジナルに隣接して置かれる。Z2は特異行列であるが、運動による畳み込みによりZ2は非特異となって、デューティサイクルの複数の値について低ノイズのソリューションが可能となる。もともとのサンプリングレートの最大で10倍の高調波が示されている。120に近いRMSノイズをもたらす各高調波に対する少なくとも1つのソリューションがある。光学分光計について、この結果は、空間変調器を変えることなく、SNR中の適度の20%のペナルティーでシステムの光学解像度までサンプリング分解能を増加させ得ることを意味している。
【0151】
図15は、本発明にかかる、通常は70で表される多重化飛行時間型質量分析計を示す。図面は明瞭さのために単純化されているが、構成要素の多くはブロック設計(Brock design)に類似している。イオンは(71)で導入され、(72)ですくい取られ、(73)で加速し、以前のように平行にした(図示せず)。これらの工程は本発明の一部ではない。当業者に知られているいかなる適切な手段が使用されてもよい。イオンビームは、測定シーケンスの時間境界を設定するために使用することができる、プロセッサ(76)によって制御された電圧源(75)に接続されたブラッドベリ−ニールセン(Bradbury−Nielsen)シャッター(74)に随意に入射する。この機能は、先に記載された分散型分光計における望ましくない波長のマスク前ブロッキング(pre−mask blocking)と類似している。データ取得中に、シャッターは開いており、すべてのイオンを通過させることができる。その後、イオンビームは、データ取得を同期させるコントローラーから受信された信号に従って、偏向板(77)の1以上のセット全体に渡って印加された電圧によって離散角度へ偏向される。本実施形態では、偏向板は時間変調器を形成する。これは、上記の図7の光学的な実施形態において電圧を印加することにより屈折率を変更することに類似している。図では、3つの離散経路(81)、(82)、(83)が示されているが、経路の数は2を超え、かつ、測定値の数未満の任意の整数であり得る。イオンビームは、RMSノイズを最小限に抑えることを意図した多状態擬似ランダムシーケンスに従って、離散経路(81)、(82)、(83)間で切り替えられ、検出器(54)、(55)、および(56)によって検出される。偏向板上での有限電圧スルーレートにより、イオンビームは短時間、離散経路間の中間にある経路を辿る。これは光学的なケースでの畳み込みと類似している。マスク(78)は随意にこれらの中間通路を塞ぐ。随意のブラッドベリ−ニールセンシャッター(74)は、イオンビームを一時的に停止部へ差し向けるために、偏向板77の電圧状態の移行中に活性化されてもよい。より好ましくは、離散経路は、任意の2つの経路間の移行が第3の経路と交差しないように構成される。好ましい実施形態では、検出器は正多角形で構成される。離散経路に方向付けられたイオンはフィールドのない領域を通って、質量で広がり、検出器によって受け取られる。検出器信号は増幅され、統合され、デジタル化され、プロセッサ(76)に送信される。プロセッサは、データベクトルにH行列を掛ける(方程式3)ことにより、質量分布に対する電荷を計算する。当業者は、同じ方法でイオン移動度分光計を修正することができ、本発明からの同じ利点を実現することができることを認識するだろう。
【0152】
改善点:
1.イオンビーム全体は一度に1つの検出器の方へと方向付けられ、検出され且つ分析される強度の合計を実質的に維持する。強度は、合計の60%を超え、好ましくは合計の90%を超える。先行技術は2つの検出器間で補足ビーム(complimentary beam)を分割し、補足チャネルにおける合計強度は未検出のチャネルにおける強度未満である。
2.中間通路を遮断するためにマスクを含めることで、漂遊イオンを減らす。漂遊イオンは、先行技術がSNRにおいて理論的な(sqrt(2))改善ではなく44%の改善を達成した重要な理由として引用される。
3.データ・チャネルの全てが、先行技術の方法におけるように個々にではなくMLSによりまとめて分析される。
4.先行技術におけるような2より多くの検出器の数の増大により、より優れたSNRをもたらす複数の利点を増大させる。
【0153】
図16は、蛍光減衰の測定のための概略図を示す。サンプル(92)は、開始状態にされ、その後、蛍光放射(florescent emission)(93)を介して減衰する励起状態をもたらすために光源(90)から電磁放射線(91)のパルスを照射される。蛍光放射は、検出器(95)により期間Tにわたり受け取られ、受け取られる光子束に比例した電気信号(94)をもたらす。検出器は、光子束に比例した信号をもたらすために増幅器(図示せず)を含み得る。電気信号は、長さT/NのNインターバルでゲート(96)によって一時的にエンコードされる。各インターバルにおいて、ゲートは、検出器から4つの積分回路(101)、(102)、(103)、及び(104)のうち1つに電気信号を向ける。各測定サイクルの終わりに、積分回路は、アナログ−デジタル変換器(111)、(112)、(113)、及び(114)により読み取られ、デジタル化された結果がプロセッサに送信される。別の構成(図示せず)において、積分器(101)、(102)、(103)、(104)における統合された信号は短期間保持され、単一のアナログ−デジタル変換器に連続して方向付けられる。サンプルは開始状態へと緩和することが可能となり、測定サイクルはN個の別個のコード化パターンに対して繰り返される。プロセッサ(115)は、方程式(3)により時間依存的な蛍光を計算する。
【0154】
図17は、本発明を用いて液体を測定するためのフローセルの概略図を示す。この例において、赤外線ビーム(120)は、高屈折率結晶(121)(当技術分野でATRとして知られる)上で左側から入射し、及び、右側から現われる前に結晶内の様々な全内反射(122)を受ける。結晶の上面(123)は、測定対象の流れる液体を含有するチャネル(124)の底面の部分を形成する。結晶/液体インターフェースでの各全内反射において、エバネセント波が液体に浸透し、液体中の震動遷移及び秤動遷移に対応する波長が部分的に吸収される。右から現われる変形赤外線ビームは、開口部(図示せず)を通って集束し、及び、透過回折格子(126)を介して赤外線を向ける集束ミラー(125)によって視準を合わせられる。回折赤外線(127)は、3つの検出器(54)、(55)、及び(56)に異なるセットの周波帯を向ける空間変調器(129)上でミラー(128)によって集束される。空間変調器は、N個の異なるセットの波長帯を各々に投影するための一連の構成を介して循環し、検出器の読み取り値は、方程式(3)を介して液体のN個のスペクトル領域により赤外線スペクトルを算出し且つ液体の組成を判定するためにスペクトルを分析する、プロセッサ(図示せず)へと送信される。
【0155】
2016年1月28日公開のPCT公報2016/0011548(Prystupa)に関連する別の実施形態において、一片の肉が音響トランスデューサーによって時間依存的パターンを伴う振動を受け、表面の変形が干渉法によって測定される。具体的に、準単色光源が視準を合わせられ、ビームスプリッターにより2つの部分に分割される。第1の部分は検出表面の方に方向付けられ、第2の部分は肉サンプル上で入射し、その後に検出表面の方へ方向付けられる。検出表面において、前記部分は光路差に従って干渉パターンを形成する。任意の点での光路差が音響励起によって調節される。本発明の構成は、干渉パターンの時間依存的変化を測定するために検出表面に配され、前記変化は、肉の構造に関する情報を提供するために統計的に分析される。
【0156】
別の実施形態において、本発明は、フーリエ変換光度計によってもたらされる干渉パターンを測定するために使用可能である。所定の波長に関する干渉縞は、干渉ビームが同一直線上にある場合は均一に間隔を置かれ、干渉ビームが同一直線上にない場合は不均一に間隔を置かれる。同一直線上の場合は数学的により単純なものであるが、利用可能な電磁放射線を半分しか使用しない。SNRは利用可能な電磁放射線の半分より多くを使用することにより改善されるので、本明細書中の非同一直線上の場合が、計算の複雑さの増大に関わらず好ましい。1989年1月10日にClarkeに付与された米国特許第4797923号は、部分波分析を利用する高分解能FTIR光度計を記載する。本発明は、Clarkeにより記載される高分解能干渉パターンを測定するのに適切な方法である。
【0157】
別の態様において、本発明は、音響学、分光学、磁気共鳴、及び結晶学を含む多くの分野で使用されるポンプ−プローブ実験において信号対雑音比及び時間分解能を改善するために適用可能である。例示的な例として、参照により本明細書に組み込まれるYorke in Nature Methods 11(11)2014に記載される、光子を制限したX線回折実験が考慮される。Yorkeの実験において、X線が一時的に調節され、回折パターンが検出器のアレイにより記録される。その後、電子密度の時間発展が、アダマール反転(Hadamard inversion)(方程式(2))により算出される。Yorkeの実験におけるデューティサイクルは50%であるが、図16に示されるような本発明の方法の適用により100%に上昇する。本発明において、X線ビームは、最大数の使用可能な光子をもたらすために実験の全期間にわたりオンになっている。各検出器からの光電流は、各積分回路が光電流の一時的に調節された束を受け取るように、実験の各時間インターバルにわたりゲートによりm(m>=2)個の積分回路のうち1つに方向付けられる。ゲートは、方程式(3)におけるZマトリクスにより特定されるデータ収集シーケンスを機能的に実施する。各シーケンスの長さは、測定対象の時間インターバルの数nに等しい。各積分回路は、符号化シーケンスの長さに対して光電子を集め、その後、各積分回路に関する全電荷が、積分回路により蓄積される全電荷に比例する値をもたらすために、通常はアナログ−デジタル変換(ADC)回路によって処理される。値は、方程式(3)のyデータベクトルの適切なm位置へと入力される。サンプルは開始状態へと緩和することが可能となり、測定サイクルはn回、Zマトリクスにおけるm個の行の各セットに対して1回繰り返され、データベクトルyの全てのmn値がもたらされる。各検出器に対する時間シーケンスは、好ましくは疑似ランダム又はアダマールである。その後、各々時間工程での電子密度が、その時間工程での回折パターンから算出され得る。
【0158】
本発明は、1つ以上の独立したパラメータに応じた依存的パラメータを測定するための方法であり、ここで、依存的パラメータが粒子束の測定可能な特性であり且つ独立したパラメータが空間及び時間のパラメータである。例示目的のために、一般的な独立したパラメータはxとして指定され、f(x)として指定された従属変数はxが変わるにつれ変動する。例えば、xはカメラの焦点面上の位置であり、f(x)は前記位置xにて受け取られる照度である。多くの場合、様々な依存的パラメータが測定され、その後、互いに相関される。例えば、プリズム上で入射する光は、測定表面上の異なる位置xにて異なる波長f(x)へと拡散される。光の強度も同じ位置で測定され、この測定は波長に応じた強度としてスペクトルを与えるために相関される。本明細書の目的のために、独立したパラメータの状況下での依存的パラメータへのあらゆる言及は、基礎的な相関された空間又は時間パラメータへの言及として解釈されるべきである。つまり、上記例における波長への言及は、波長が相関される空間パラメータへの言及として解釈されるべきである。粒子は、亜原子粒子、プロトン、ニュートロン、電子、陽電子、光子、原子、イオン、及び分子を含むがこれらに限定されない任意のタイプの粒子であり得る。測定可能な特性は、質量、エネルギー、電荷、回転、周波数、波長、偏光、電気双極子モーメント、磁気双極子モーメント、運動量、圧力、及び速度を含むがこれらに限定されない任意のタイプの特性であり得る。
【0159】
独立パラメータは、パラメータxの開始値及び終了値により特定される一連の範囲へと分割される。各範囲は固有のラベルを割り当てられる。範囲内のxの平均値により範囲を標識することが多くの場合都合がよいが、これは必須でなく、他の標識スキームを使用することができる。例えば、一連の範囲を代わりに一連の整数インデックスにより特定することができる。本明細書中のテキストにおけるビンという用語は、範囲を指す。
【0160】
本発明は、スカラーパラメータのN個のセットをもたらすために少なくともN個の異なるセットの測定を行うことによって、N範囲における依存的パラメータの値を測定する方法に属する。セットにはP個の測定値が存在し、Pは2以上である。セットにおける各測定値は、0〜1に及ぶ値を持つ加重関数wij(x)に関連付けられ、ここで、指標iはM値を有し、指標jはP値を有し、MはN以上である。測定を行うP個の論理的検出器が、jの各値に対し1つ存在する。各測定は、スカラーgijのセットをもたらすために、wij(x)により測定対象の依存的パラメータf(x)を掛け、且つ範囲内に含まれるxの全ての値上で積分することによって行われる。加重関数wij(x)は、位置xにて入射する粒子束の分画が測定i中に検出器jへの経路上で配向されることを説明する、空間及び/又は時間変調器の物理伝達関数である。空間変調器は、例えば一連のミラーから成り、各ミラーは独立したパラメータxの異なる範囲に相当し得る。伝達関数は最初にミラーの反射率によって判定される。技術的に達成可能である最高の広帯域の反射率は約0.97であり、故に伝達関数はこの場合では0.97である。本発明を画定する特徴は、xの各範囲上での加重関数の合計が0.60を超えるという要件であり、つまり、各範囲で入射する粒子束の60%より多くがP個の検出器のうち1つへの経路上で配向される。
【0161】
図18は、1つの測定の計算を概略的に示す。加重関数は(A)において示され、(B)において束強度(依存的パラメータ)を掛けられ、及び結果として生じる部分(C)が合計され、測定に統合された束強度を提供する。加重関数(18A)は、各検出器に対する各測定において異なる。先行技術において、平均して約50%の入射束を単一の検出器に通す、(A)に示されるような1つの加重関数が存在する。
【0162】
図19は、3つの加重関数(A)、(B)、及び(C)が各測定サイクルの3つの検出器への入力に相当する、本発明の実施形態に関する概略的な理想の加重関数を示す。加重関数の合計は、独立したパラメータxの全ての領域に対して1である。物理的な場合、加重関数の合計は0.6、好ましくは0.9を超える。空間的な独立したパラメータに関して、図19の加重関数は、図4に示されるような反射面のセットによって、図5に示されるような移動可能ミラーによって、図6に示されるような屈折ウェッジ(refractive wedge)によって、図7に示されるように電界によりウェッジの屈折率を変更することによって、図8に示されるような回折面によって、又は図9Aと9Bに示されるような回転ディスク上のテプリッツパターンによって、物理的に実行可能である。図16は、時間的な独立したパラメータにより図19の加重関数を実行する方法を示す。図16において、光子のパルスは屈折及び散乱を被るサンプルを通過する。異なる波長を持つ光子は、異なる時間にサンプルから現われ、光子束強度を電圧波形に変換する光検出器によって記録される。電圧波形は、加重関数(この例に示される積分器のうち1つに対してゼロ)に従って積分回路に方向付けられる。統合された電圧は、アナログ−デジタル変換器によってスカラー値に変換される。光源はN回パルスされる。加重関数の様々なセットが各パルスに用いられる。
【0163】
測定の各セットに関して、図19の加重関数(A)、(B)、及び(C)は、図18Cに概略的に示されるような3つの別個の合計をもたらすために、図18Bに示されるように依存的パラメータを掛けられる。測定(A)、(B)、及び(C)の少なくともN個のセットは、図19の例における少なくとも3Nのスカラー積分強度値をもたらすために予め形成される。この例における加重関数が各領域上で一定の離散値を有するので、積分は合計へと縮小し、方程式(3)で与えられる線形代数解法が適用可能であることに注意されたい。代替的に、積分方程式のシステムは、本発明の範囲内の反復法によって解決することができる。方程式(3)の状況下で、3Nの加重関数は各々、Zマトリクスの行を表わす。独立したパラメータの各範囲はZマトリクスの1つのカラムに相当し、各行の要素は加重関数の一定値である。3Nの測定されたスカラー値は各々、その測定に対する加重関数の行に相当する観察ベクトルyの行へとロードされる。
【0164】
図20は、加重関数が各領域上で一定ではない一般的な事例を概略的に示す。図20Aは、各測定中に一定速度で独立したパラメータに対して動く空間変調器に対する加重関数の一般的な形状を示す。前述のように、相対運動の効果は、各範囲に対する静的加重関数値を、各測定サイクル中にその範囲から検出器によって受け取られる粒子束の時間加重平均強度と置き換えることによって説明することができる。図20Bは、加重関数が独立したパラメータxの範囲全体にわたって0〜1の中間の値を呈する(take on)一般的な事例を示す。本発明の測定プロトコルは結果として、反復法によって解決可能な積分方程式のシステムをもたらす。近似解も測定領域を小さな範囲へと分割することによって得ることができ、前記範囲内では、加重関数がほぼ一定であり、方程式(3)の方法が適用可能である。
【0165】
本明細書中の検出器という用語は、有限の測定期間にわたって積分される入射粒子束に関連する反応をもたらす、任意の装置を指す。検出器は積分装置であり、積分装置に連結されたトランスデューサーであり得る。論理的検出器という用語は、単一の物理検出器、又は、変調器により同じ経路に沿って配向される粒子束を測定する複数の物理検出器を指す場合がある。
図1
図2
図3
図4
図4A
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18A
図18B
図18C
図19A
図19B
図19C
図20A
図20B
【国際調査報告】