(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-522071(P2020-522071A)
(43)【公表日】2020年7月27日
(54)【発明の名称】性能双スペクトルに基づくマルチモーダル性能指向型耐震設計方法
(51)【国際特許分類】
G06F 30/13 20200101AFI20200626BHJP
G06F 30/20 20200101ALI20200626BHJP
E04B 1/00 20060101ALI20200626BHJP
【FI】
G06F17/50 680B
G06F17/50 612G
E04B1/00ESW
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2019-565937(P2019-565937)
(86)(22)【出願日】2018年10月27日
(85)【翻訳文提出日】2019年11月28日
(86)【国際出願番号】CN2018112249
(87)【国際公開番号】WO2019153798
(87)【国際公開日】20190815
(31)【優先権主張番号】201810144575.9
(32)【優先日】2018年2月12日
(33)【優先権主張国】CN
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】518229179
【氏名又は名称】青▲島▼理工大学
【氏名又は名称原語表記】QINGDAO UNIVERSITY OF TECHNOLOGY
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼文▲鋒▼
【テーマコード(参考)】
5B046
【Fターム(参考)】
5B046AA03
5B046JA07
5B046JA08
(57)【要約】
【課題】 本発明は性能双スペクトルに基づくマルチモーダル性能指向型耐震設計方法を得ることにある。
【解決手段】 本発明は耐震設計の技術分野に関し、具体的には性能双スペクトルに基づくマルチモーダル性能指向型耐震設計方法に関するものであり、それは定量化した性能レベルに基づいてそのまま耐震設計を行う方法であり、最初に1つの性能双スペクトルの1自由度弾塑性構造系を人為的に仮定し、構造物の最上層における特性変位角ρ
obj−m(d)及び2本折れ線弾塑性モデルの第2剛性を調整して、それらを標準1自由度弾塑性構造系と等しくさせることにより、耐震性能レベルにおける構造物の耐震応答効果を求めるものである。本発明の性能レベルに基づいて耐震設計を行う方法では、最終的な破壊状態を耐震設計の基礎とするため、設計震度(地震動パラメーター)を上回る地震が発生したとしても、構造物の耐震性能を制御することが可能である。明らかに、本件特許出願は、従来の設計震度(地震動パラメーター)に基づく性能指向型耐震設計よりもさらに科学的で、構造物の耐震挙動を制御することが可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1組の異なる性能双スペクトルの仮想構造物の最上層における特性変位角ρ
obj−m(d)を設定し、性能双スペクトルの1自由度弾塑性構造系、及び性能双スペクトルの1自由度系の変位性能レベルを構築する第1工程と、
耐震設計場所の地震環境特性に基づき、1組の地震動記録を選択し、性能双スペクトルの1自由度弾塑性微分方程式中に入力して、地震動記録における加速度のピーク値の最小値、平均値及び最大値、及び前記性能双スペクトルの1自由度弾塑性構造系における地震応答の絶対加速度のピーク値の最小値、平均値及び最大値を得る第2工程と、
同じ構造物周期において、1組の異なる2本折れ線弾塑性モデルの第2剛性を設定し、第2工程を繰り返す第3工程と、
実際の必要性を考慮しつつ、耐震基準に基づいて設計構造物の耐震性能レベルを設定し、前記耐震性能レベルの変位角
、構造の高さ
を含める第4工程と、
前記設計構造物に基づき、異なる振動モードにおける構造物周期、振動モード及びモード刺激係数を計算する第5工程と、
任意の応答量に対し、前記異なる振動モードの寄与係数を計算し、寄与閾値εを設定して、必要な振動モードの個数を求める第6工程と、
第1構造物周期を標準1自由度弾塑性構造系として設定し、前記標準1自由度弾塑性構造系を基に構造物の耐震応答効果を合成する第7工程と、
前記構造物の耐震応答効果を前記設定した構造物の耐震性能レベルと等しくさせて、前記標準1自由度弾塑性構造系における耐震性能レベルを得る第8工程と、
前記設計構造物をPushover解析し、構造物の耐力曲線(pushover curve)を対応する標準1自由度弾塑性構造系加速度−変位関係曲線に変換する第9工程と、
前記標準1自由度弾塑性構造系を前記性能双スペクトルの1自由度弾塑性構造系と等価にして、第1構造物周期に基づき、前記性能双スペクトルの1自由度弾塑性構造系から直接地震動記録における加速度のピーク値の最小値、平均値及び最大値、及び前記標準1自由度弾塑性構造系における地震応答の絶対加速度のピーク値の最小値、平均値及び最大値を得る第10工程と、
前記標準1自由度弾塑性構造系における地震応答の絶対加速度のピーク値の最小値、平均値及び最大値に基づき、前記耐震性能レベル下での構造物の耐震応答効果の最小値r
min、平均値r
ave及び最大値r
maxを計算する第11工程、を含むことを特徴とする、性能双スペクトルに基づくマルチモーダル性能指向型耐震設計方法。
【請求項2】
前記第1工程において、前記性能双スペクトルの1自由度系の変位性能レベルの計算式は:
【数1】
そのうち、Hは構造物の仮想の高さであり、
であり、χ及びCrは経験係数であり、経験式で得て、D
obj−mは、性能双スペクトルの構造物の頂点変位性能値であり、
であり、仮想構造物の地震応答のモード制御については、モード形状ベクトルと高さは正比例の関係をなし、即ち
であり、h
iは第i層の層間高さであり、H
iは第i層の構造物の高さであり、m
iは第i層の質量であることを特徴とする、請求項1に記載の性能双スペクトルに基づくマルチモーダル性能指向型耐震設計方法。
【請求項3】
前記第2工程において、前記地震環境特性は、マグニチュード、断層メカニズム、断層距離及び土地条件を含むことを特徴とする、請求項1に記載の性能双スペクトルに基づくマルチモーダル性能指向型耐震設計方法。
【請求項4】
前記第2工程において、選択した地震動記録を性能双スペクトルの1自由度弾塑性微分方程式中に入力し、地震動記録の大きさを繰り返し調整して、性能双スペクトルの1自由度弾塑性系の変位応答ピーク値が性能双スペクトルの1自由度系の耐震性能レベルに達するようにして、地震動記録における加速度のピーク値の最小値、平均値及び最大値、及び前記性能双スペクトルの1自由度弾塑性構造系における地震応答の絶対加速度のピーク値の最小値、平均値及び最大値を得ることを特徴とする、請求項2に記載の性能双スペクトルに基づくマルチモーダル性能指向型耐震設計方法。
【請求項5】
前記第5工程において、動特性方程式を用いて設計構造物の動特性解析を行うが、動特性方程式は:
【数2】
そのうち、kは構造物自体の剛性マトリクスであり、
は第n次振動モードのモードであり、ω
nは第n次振動モードの構造物振動数であり、第n次振動モードの構造物周期は
であり、第n次振動モードのモード刺激係数は
であり、そのうちNは構造物の振動モードの合計次数であり、振動モードの総数でもあり、m
jは構造物の第j層の質量であり、
は構造物の第j層の振動モードであることを特徴とする、請求項3に記載の性能双スペクトルに基づくマルチモーダル性能指向型耐震設計方法。
【請求項6】
前記第7工程において、平方及び平方根を求める方法又は完全二次結合法を用いて、構造物の耐震応答効果を合成することを特徴とする、請求項5に記載の性能双スペクトルに基づくマルチモーダル性能指向型耐震設計方法。
【請求項7】
前記第10工程において、標準1自由度弾塑性構造系における耐震性能レベルと性能双スペクトルの1自由度系の性能レベルが一致しない場合には、近接する2つの性能双スペクトルの1自由度系の性能レベルの間で内挿法を用いて確定することができ、標準1自由度弾塑性構造系の第2剛性係数と性能双スペクトルの1自由度弾塑性構造系における2本折れ線弾塑性モデルの第2剛性係数が一致しない場合には、近接する2つの性能双スペクトルの1自由度系の性能レベルの間で内挿法を用いて確定することができることを特徴とする、請求項6に記載の性能双スペクトルに基づくマルチモーダル性能指向型耐震設計方法。
【請求項8】
前記第11工程において、平方及び平方根を求める方法又は完全二次結合法を用いて、耐震性能レベル下での構造物の耐震応答効果の最小値rmin、平均値rave及び最大値rmaxを計算することを特徴とする、請求項7に記載の性能双スペクトルに基づくマルチモーダル性能指向型耐震設計方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐震設計の技術分野に関し、具体的には性能双スペクトルに基づくマルチモーダル性能指向型耐震設計方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
中国の耐震規範(GB 50011−2016)では、耐震設計震度(地震動パラメーター)による耐震設計が行われている。50年超過確率10%、63%及び2%の地震動強さをそれぞれ小地震、中地震及び大地震の震度とし、小震不壊、中震可修、大震不倒の3レベルに基づく対策が採用されている。また2段階法が採用されており、第1段階は弾性設計、第2段階は弾塑性設計となっている。第1段階は、小地震の作用下において弾性設計を採用し、2次元の弾性地震応答スペクトルに基づき、モーダルアナリシス法又はEquivalent Base Shear法を用いて地震作用を計算し、小地震による構造物の変位を計算した上で、重力などの他の荷重と組み合わせて、構造の内力を求める。第2段階は、大地震下の弾塑性変形の検証であり、構造の変形が規範で定められた変形の許容値を超えないことが要求され、これによって大震不倒の要求を満たしており、特定の構造については、2次元の弾性地震応答スペクトルに基づき、簡略化された方法で大地震による構造物の変位を計算している。
【0003】
米国のASCE7、IBCでは、2レベルの対策に基づく変換を行い、最大想定地震(中国の規範でいう「大地震」に相当する)の2/3を設計用地震動(中国の規範でいう「中地震」に相当する)に変換し、単一段階設計で耐震強度の検算を行い、構造物が弾塑性状態にあると仮定した上で、応答スペクトルに基づいて静的設計のEquivalent Base Shear法(等価水平力法)及び動的設計のモーダルアナリシス法を採用し、構造物の調整係数Rにより様々な構造別変形性能を考慮した上で設計用地震動を弾性範囲に換算し、内力耐荷力の検算及び変位の計算を行い、構造物の変位増幅係数Cdを弾塑性変形に換算することで構造物の剛性を計算し、P−デルタ分析を行うかどうか判断している。欧州の耐震基準は米国と似ており、設計用地震動における設計用地震力の換算は、性能係数qにより、設計用応答スペクトル中でqの陽関数形式で表し、内力耐荷力の検算及び変位の計算を行い、構造物の変位増幅係数qeを用いて弾塑性変形を計算している。
【0004】
上記の事実は、中国、米国、欧州の基準がいずれも設計震度(地震動パラメーター)下の設計用応答スペクトルによって性能指向型耐震設計を行っていることを示している。しかし、唐山(中国、1976)、ノースリッジ(米国、1994)、神戸(日本、1995)、集集(中国台湾、1999)、スマトラ−アンダマン(インドネシア、2004)、ペルー (ペルー、2007)、ブン川(中国、2008)、ポルトープランス(ハイチ、2010)、コンセプシオン(チリ、2010)、玉樹(中国、2010)、日本東北太平洋海域(日本、2011)などの地震は、設計震度(地震動パラメーター)の基準をはるかに上回っていた。設計震度(地震動パラメーター)で耐震設計を行った場合、設計震度(地震動パラメーター)と最終的な破壊状態との関連性がはっきりしないため、設計震度(地震動パラメーター)を上回る地震が発生した場合、工程の損壊程度を把握することは不可能である。そのため、設計震度(地震動パラメーター)に基づく性能指向型耐震設計は改良する必要があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような技術的課題に鑑み、性能双スペクトルに基づくマルチモーダル性能指向型耐震設計方法を提供するが、それは定量化した性能レベルに基づいてそのまま耐震設計を行う方法であり、従来の設計震度(地震動パラメーター)に基づく性能指向型耐震設計よりもさらに科学的で、構造物の耐震挙動を制御することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の技術案を提供する。性能双スペクトルに基づくマルチモーダル性能指向型耐震設計方法は、以下の工程を含む。
【0007】
第1工程:1組の異なる性能双スペクトルの仮想構造物の最上層における特性変位角ρ
obj−m(d)を設定し、性能双スペクトルの1自由度弾塑性構造系、及び性能双スペクトルの1自由度系の変位性能レベルを構築する。
【0008】
第2工程:耐震設計場所の地震環境特性に基づき、1組の地震動記録を選択し、性能双スペクトルの1自由度弾塑性微分方程式中に入力して、地震動記録における加速度のピーク値の最小値、平均値及び最大値、及び性能双スペクトルの1自由度弾塑性構造系における地震応答の絶対加速度のピーク値の最小値、平均値及び最大値を得る。
【0009】
第3工程:同じ構造物周期において、1組の異なる2本折れ線弾塑性モデルの第2剛性を設定し、第2工程を繰り返す。
【0010】
第4工程:実際の必要を考慮しつつ、耐震基準に基づいて設計する構造物の耐震性能レベルを設定し、それには耐震性能レベルの変位角
、構造物の高さ
を含める。
【0011】
第5工程:設計構造物に基づき、異なる振動モードにおける構造物周期、振動モード及びモード刺激係数を計算する。
【0012】
第6工程:任意の応答量に対し、異なる振動モードの寄与係数を計算し、寄与閾値εを設定して、必要な振動モードの個数を求める。
【0013】
第7工程:第1構造物周期を標準1自由度弾塑性構造系として設定し、標準1自由度弾塑性構造系を基に構造物の耐震応答効果を合成する。
【0014】
第8工程:構造物の耐震応答効果を設定した構造物の耐震性能レベルと等しくさせて、標準1自由度弾塑性構造系における耐震性能レベルを得る。
【0015】
第9工程:設計構造物をPushover解析し、構造物の耐力曲線(pushover curve)を対応する標準1自由度弾塑性構造系加速度−変位関係曲線に変換する。
【0016】
第10工程:標準1自由度弾塑性構造系を性能双スペクトルの1自由度弾塑性構造系と等価にして、第1構造物周期に基づき、性能双スペクトルの1自由度弾塑性構造系から直接地震動記録における加速度のピーク値の最小値、平均値及び最大値、及び標準1自由度弾塑性構造系における地震応答の絶対加速度のピーク値の最小値、平均値及び最大値を得る。
【0017】
第11工程:標準1自由度弾塑性構造系における地震応答の絶対加速度のピーク値の最小値、平均値及び最大値に基づき、耐震性能レベル下での構造物の耐震応答効果の最小値r
min、平均値r
ave及び最大値r
maxを計算する。
【0018】
さらに、第1工程において、性能双スペクトルの1自由度系の変位性能レベルの計算式は以下の通りである。
【0019】
【数1】
【0020】
そのうち、Hは構造物の仮想の高さであり、
であり、χ及びCrは経験係数であり、経験式で得る。D
obj−mは性能双スペクトルの構造物の頂点変位性能値であり、
であり、仮想構造物の地震応答のモード制御については、モード形状ベクトルと高さは正比例の関係をなし、即ち
であり、h
iは第i層の層間高さであり、H
iは第i層の構造物の高さであり、m
iは第i層の質量である。
【0021】
さらに、第2工程において、地震環境特性は、マグニチュード、断層メカニズム、断層距離及び土地条件を含む。
【0022】
さらに、第2工程において、選択した地震動記録を性能双スペクトルの1自由度弾塑性微分方程式中に入力し、地震動記録の大きさを繰り返し調整して、性能双スペクトルの1自由度弾塑性系の変位応答ピーク値が性能双スペクトルの1自由度系の耐震性能レベルに達するようにして、地震動記録における加速度のピーク値の最小値、平均値及び最大値、及び前記性能双スペクトルの1自由度弾塑性構造系における地震応答の絶対加速度のピーク値の最小値、平均値及び最大値を得る。
【0023】
さらに、第5工程において、動特性方程式を用いて設計構造物の動特性解析を行うが、動特性方程式は、
【0024】
【数2】
【0025】
そのうち、kは構造物自体の剛性マトリクスであり、
は第n次振動モードのモードであり、ω
nは第n次振動モードの構造物振動数であり、第n次振動モードの構造物周期は
であり、第n次振動モードのモード刺激係数は
であり、そのうちNは構造物の振動モードの合計次数であり、振動モードの総数でもある。m
jは構造物の第j層の質量である。
は構造物の第j層の振動モードである。
【0026】
さらに、第7工程において、平方及び平方根を求める方法又は完全二次結合法を用いて、構造物の耐震応答効果を合成する。
【0027】
さらに、第10工程において、標準1自由度弾塑性構造系における耐震性能レベルと性能双スペクトルの1自由度系の性能レベルが一致しない場合には、近接する2つの性能双スペクトルの1自由度系の性能レベルの間で内挿法を用いて確定することができる。また標準1自由度弾塑性構造系の第2剛性係数と性能双スペクトルの1自由度弾塑性構造系における2本折れ線弾塑性モデルの第2剛性係数が一致しない場合には、近接する2つの性能双スペクトルの1自由度系の性能レベルの間で内挿法を用いて確定することができる。
【0028】
さらに、第11工程において、平方及び平方根を求める方法又は完全二次結合法を用いて、耐震性能レベル下での構造物の耐震応答効果の最小値r
min、平均値r
ave及び最大値r
maxを計算する。
【発明の効果】
【0029】
本発明の性能双スペクトルに基づくマルチモーダル性能指向型耐震設計方法は、定量化した性能レベルに基づいてそのまま耐震設計を行う方法であり、性能レベルに基づいて耐震設計を行う方法では最終的な破壊状態を耐震設計の基礎とするため、設計震度(地震動パラメーター)を上回る地震が発生したとしても、構造物の耐震性能を制御することが可能である。明らかに、本件特許出願は、従来の設計震度(地震動パラメーター)に基づく性能指向型耐震設計よりもさらに科学的で、構造物の耐震挙動を制御することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の目的、技術案及び優位点をより明解にするため、以下で実施例と合わせて本発明についてより詳細に説明する。ここに記述された具体的な実施例は本発明を説明するためのものに過ぎず、本発明を限定するものでは決してないことを理解されたい。
【実施例】
【0031】
本発明の性能双スペクトルに基づくマルチモーダル性能指向型耐震設計方法は、以下の工程を含む。
【0032】
第1工程:1組の異なる性能双スペクトルの仮想構造物の最上層における特性変位角ρ
obj−m(d)を設定し、性能双スペクトルの1自由度弾塑性構造系、及び性能双スペクトルの1自由度系の変位性能レベルを構築する。
【0033】
性能双スペクトルの1自由度弾塑性動的微分方程式は以下の通りである。
【0034】
【数3】
【0035】
そのうち、ωは構造物の固有振動数を表しており、周期は
であり、ξは減衰比であり、Dは1自由度系の変位であり、
は既知の地震励振であり、Fは標準の2本折れ線弾塑性モデルであり、標準の2本折れ線弾塑性モデルF
iの第2剛性係数ψF
iを規定する。
【0036】
性能双スペクトルのobj−m個の構造物の最上層における特性変位角ρ
obj−m(d)を設定し、構造物の高さは経験式に基づいて構造物の周期で表す。例えば、仮想構造物の高さは;
【0037】
【数4】
【0038】
そのうち、χ及びCrは経験係数であり、経験式で得る。
【0039】
性能双スペクトルの構造物の頂点変位性能値D
obj−mは;
【0040】
【数5】
【0041】
仮想構造物の地震応答のモード制御については、モード形状ベクトルと高さは正比例の関係をなしており、
【0042】
【数6】
【0043】
そのうち、h
iは第i層の層間高さであり、H
iは第i層の構造物の高さであり、m
iは第i層の質量である。
【0044】
性能双スペクトルの1自由度系の変位性能レベル;
【0045】
【数7】
【0046】
第2工程:耐震設計場所の地震環境特性に基づき、1組の地震動記録を選択し、性能双スペクトルの1自由度弾塑性微分方程式中に入力して、地震動記録における加速度のピーク値の最小値、平均値及び最大値、及び性能双スペクトルの1自由度弾塑性構造系における地震応答の絶対加速度のピーク値の最小値、平均値及び最大値を得る。
【0047】
そのうち、地震環境特性は、マグニチュード、断層メカニズム、断層距離及び土地条件を含む。
【0048】
第2工程において、選択した地震動記録を性能双スペクトルの1自由度弾塑性微分方程式中に入力し、地震動記録の大きさを繰り返し調整して、性能双スペクトルの1自由度弾塑性系の変位応答ピーク値が性能双スペクトルの1自由度系の耐震性能レベルに達するようにして、地震動記録における加速度のピーク値の最小値、平均値及び最大値、及び前記性能双スペクトルの1自由度弾塑性構造系における地震応答の絶対加速度のピーク値の最小値、平均値及び最大値を得る。
【0049】
第3工程:同じ構造物周期において、1組の異なる2本折れ線弾塑性モデルの第2剛性を設定し、第2工程を繰り返す。
【0050】
第4工程:実際の必要を考慮しつつ、耐震基準に基づいて設計する構造の耐震性能レベルを設定し、それには耐震性能レベルの変位角
、構造の高さ
を含める。
【0051】
第5工程:設計した構造物に基づき、異なる振動モードにおける構造物周期、振動モード及びモード刺激係数を計算する。
【0052】
第5工程において、動特性方程式に基づき、異なる振動モードにおける構造物周期、振動モード及びモード刺激係数を求めるが、動特性方程式は以下の通りである。
【0053】
【数8】
【0054】
そのうち、kは構造物自体の剛性マトリクスであり、
は第n次振動モードのモードであり、ω
nは第n次振動モードの構造物振動数であり、第n次振動モードの構造物周期は
であり、第n次振動モードのモード刺激係数は
であり、そのうちNは構造物の振動モードの合計次数であり、振動モードの総数でもある。m
jは構造物の第j層の質量である。
は構造物の第j層の振動モードである。
【0055】
第6工程:任意の応答量に対し、異なる振動モードの寄与係数を計算し、寄与閾値εを設定して、必要な振動モードの個数を求める。
【0056】
外力Sによって引き起こされる構造物rの静的値はr
stで設定し、第n次振動モードにおける静的値は
であり、第n次振動モードのr
stに対する貢献度は
で設定し、
【0057】
【数9】
【0058】
を解き、必要な振動モードの個数を得る。
【0059】
第7工程:第1構造物周期を標準1自由度弾塑性構造系として設定し、標準1自由度弾塑性構造系を基に構造物の耐震応答効果を合成する。
【0060】
第1工程において選択した耐震性能レベルが変位であることに対応して、ここで選択する構造物の耐震応答効果も変位とする。
【0061】
第n次振動モードにおける静的値は
であり、第n次振動モードにおける変位は
であり;
【0062】
【数10】
【0063】
そのうち、S
anは設計地震動の加速度応答スペクトルにおける第n構造物周期のスペクトル値であり、D
1は性能双スペクトルの1自由度弾塑性構造系中でω
1に対応する応答値であり;
【0064】
とすれば、
【0065】
【数11】
【0066】
第7工程において、平方及び平方根を求める方法又は完全二次結合法を用いて、構造物の耐震応答効果、即ち変位を合成する。
【0067】
そのうち、平方及び平方根は以下の通りである。
【0068】
【数12】
【0069】
そのうち、完全二次結合法は以下の通りである。
【0070】
【数13】
【0071】
ρ
inはモード結合係数であり、
【0072】
【数14】
【0073】
そのうち、ζ
i、ζ
nはそれぞれ第i及び第nモードの減衰比であり、ρ
inは第i構造物振動数と第n構造物振動数の相関係数であり、λ
Tは第i構造物振動数と第n構造物振動数の比率である。
【0074】
第8工程:構造物の耐震応答効果を設定した構造物の耐震性能レベルと等しくさせて、標準1自由度弾塑性構造系における耐震性能レベルを得る。即ち;
【0075】
【数15】
【0076】
として、標準1自由度弾塑性構造系における耐震性能レベルの変位を求める。
【0077】
第9工程:設計構造物をPushover解析し、構造物の耐力曲線(pushover curve)を対応する標準1自由度弾塑性構造系加速度−変位関係曲線に変換する。
【0078】
変換式は以下の通りである。
【0079】
【数16】
【0080】
【数17】
【0081】
そのうち、
は第1振動モード等価質量であり、Γ
1は第1振動モード刺激係数である。
は第1振動モード頂点ベクトルである。u
rnは構造物の頂点の変位である。V
bは構造物のベースシアであり、これにより構造物の第1モードにおける弾塑性折れ線モデルの第2剛性係数
を得る。
【0082】
第10工程:標準1自由度弾塑性構造系を性能双スペクトルの1自由度弾塑性構造系と等価にして、第1構造物周期に基づき、性能双スペクトルの1自由度弾塑性構造系から直接地震動記録における加速度のピーク値の最小値、平均値及び最大値、及び標準1自由度弾塑性構造系における地震応答の絶対加速度のピーク値の最小値、平均値及び最大値を得る。
【0083】
標準1自由度弾塑性構造系における耐震性能レベルと性能層スペクトルの1自由度形の整能レベルが一致しない場合には、近接する2つの性能双スペクトルの1自由度系の性能レベルの間で内挿法を用いて確定することができる。また標準1自由度弾塑性構造系の第2剛性係数と性能双スペクトルの1自由度弾塑性構造系における2本折れ線弾塑性モデルの第2剛性係数が一致しない場合には、近接する2つの性能双スペクトルの1自由度系の性能レベルの間で内挿法を用いて確定することができる。
【0084】
第11工程:標準1自由度弾塑性構造系における地震応答の絶対加速度のピーク値の最小値、平均値及び最大値に基づき、平方及び平方根を求める方法又は完全二次結合法を用いて、耐震性能レベル下での構造物の耐震応答効果の最小値r
min、平均値r
ave及び最大値r
maxを計算する。
【0085】
そのうち、平方及び平方根を求める方法は以下の通りである。
【0086】
【数18】
【0087】
【数19】
【0088】
【数20】
【0089】
そのうち、完全二次結合法は以下の通りである。
【0090】
【数21】
【0091】
【数22】
【0092】
【数23】
【0093】
本発明の性能双スペクトルに基づくマルチモーダル性能指向型耐震設計方法は、定量化した性能レベルに基づいてそのまま耐震設計を行う方法であり、最初に1つの性能双スペクトルの1自由度弾塑性構造系を人為的に仮定し、構造物の最上層における特性変位角ρ
obj−m(d)及び2本折れ線弾塑性モデルの第2剛性を調整して、それらを標準1自由度弾塑性構造系と等しくさせることにより、耐震性能レベルにおける構造物の耐震応答効果を求めるものである。本発明の性能レベルに基づいて耐震設計を行う方法では、最終的な破壊状態を耐震設計の基礎とするため、設計震度(地震動パラメーター)を上回る地震が発生したとしても、構造物の耐震性能を制御することが可能である。明らかに、本件特許出願は、従来の設計震度(地震動パラメーター)に基づく性能指向型耐震設計よりもさらに科学的で、構造物の耐震挙動を制御することが可能である。
【0094】
なお、当業者であれば上述の説明に基づいて改良又は変換を行うことができ、それらの改良及び変換はすべて本発明が添付する特許請求の範囲の保護範囲に属することを理解されたい。
【手続補正書】
【提出日】2019年11月28日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
性能双スペクトルの1自由度系の変位性能レベルを
得るため、1組の異なる性能双スペクトルの仮想構造物の最上層における特性変位角ρ
obj−m(d)を設定し、性能双スペクトルの1自由度弾塑性構造系を構築する第1工程と、
前記性能双スペクトルの1自由度系の変位性能レベルの計算式は:
そのうち、Hは構造物の仮想の高さであり、
であり、χ及びCrは経験係数であり、経験式で得て、Dobj−mは、性能双スペクトルの構造物の頂点変位性能値であり、
であり、仮想構造物の地震応答のモード制御については、モード形状ベクトルと高さは正比例の関係をなし、即ち
であり、hiは第i層の層間高さであり、Hiは第i層の構造物の高さであり、miは第i層の質量であり;
耐震設計場所の地震環境特性に基づき、1組の地震動記録を選択し、性能双スペクトルの1自由度弾塑性微分方程式中に入力して、地震動記録における加速度のピーク値の最小値、平均値及び最大値、及び前記性能双スペクトルの1自由度弾塑性構造系における地震応答の絶対加速度のピーク値の最小値、平均値及び最大値を得る第2工程と、
同じ構造物周期において、1組の異なる2本折れ線弾塑性モデルの第2剛性を設定し、第2工程を繰り返す第3工程と、
実際の必要性を考慮しつつ、耐震基準に基づいて設計構造物の耐震性能レベルを設定し、前記耐震性能レベルの変位角
、構造の高さ
を含める第4工程と、
前記設計構造物に基づき、異なる振動モードにおける構造物周期、振動モード及びモード刺激係数を計算し;
動特性方程式を用いて設計構造物の動特性解析を行うが、動特性方程式は:
そのうち、kは構造物自体の剛性マトリクスであり、
は第n次振動モードのモードであり、ωnは第n次振動モードの構造物振動数であり、第n次振動モードの構造物周期は
であり、第n次振動モードのモード刺激係数は
であり、そのうちNは構造物の振動モードの合計次数であり、振動モードの総数でもあり、mjは構造物の第j層の質量であり、
は構造物の第j層の振動モードである第5工程と、
任意の応答量に対し、前記異なる振動モードの寄与係数を計算し、寄与閾値εを設定して、必要な振動モードの個数を求める第6工程と、
第1構造物周期を標準1自由度弾塑性構造系として設定し、前記標準1自由度弾塑性構造系を基に構造物の耐震応答効果を合成し;
前記構造物の耐震応答効果は変位とし、
第n次振動モードにおける静的値は
であり、第n次振動モードにおける変位は
であり;
そのうち、Sanは設計地震動の加速度応答スペクトルにおける第n構造物周期のスペクトル値であり、D1は性能双スペクトルの1自由度弾塑性構造系中でω1に対応する応答値であり;
とすれば、
となる第7工程と、
前記構造物の耐震応答効果を前記設定した構造物の耐震性能レベルと等しくさせて、前記標準1自由度弾塑性構造系における耐震性能レベルを得る第8工程と、
前記設計構造物をPushover解析し、構造物の耐力曲線(pushover curve)を対応する標準1自由度弾塑性構造系加速度−変位関係曲線に変換する第9工程と、
前記標準1自由度弾塑性構造系を前記性能双スペクトルの1自由度弾塑性構造系と等価にして、第1構造物周期に基づき、前記性能双スペクトルの1自由度弾塑性構造系から直接地震動記録における加速度のピーク値の最小値、平均値及び最大値、及び前記標準1自由度弾塑性構造系における地震応答の絶対加速度のピーク値の最小値、平均値及び最大値を得る第10工程と、
前記標準1自由度弾塑性構造系における地震応答の絶対加速度のピーク値の最小値、平均値及び最大値に基づき、前記耐震性能レベル下での構造物の耐震応答効果の最小値r
min、平均値r
ave及び最大値r
maxを計算する第11工程、を含むことを特徴とする、性能双スペクトルに基づくマルチモーダル性能指向型耐震設計方法。
【請求項2】
前記第2工程において、前記地震環境特性は、マグニチュード、断層メカニズム、断層距離及び土地条件を含むことを特徴とする、請求項1に記載の性能双スペクトルに基づくマルチモーダル性能指向型耐震設計方法。
【請求項3】
前記第2工程において、選択した地震動記録を性能双スペクトルの1自由度弾塑性微分方程式中に入力し、地震動記録の大きさを繰り返し調整して、性能双スペクトルの1自由度弾塑性系の変位応答ピーク値が性能双スペクトルの1自由度系の耐震性能レベルに達するようにして、地震動記録における加速度のピーク値の最小値、平均値及び最大値、及び前記性能双スペクトルの1自由度弾塑性構造系における地震応答の絶対加速度のピーク値の最小値、平均値及び最大値を得ることを特徴とする、請求項1に記載の性能双スペクトルに基づくマルチモーダル性能指向型耐震設計方法。
【請求項4】
前記第7工程において、平方及び平方根を求める方法又は完全二次結合法を用いて、構造物の耐震応答効果を合成することを特徴とする、請求項2に記載の性能双スペクトルに基づくマルチモーダル性能指向型耐震設計方法。
【請求項5】
前記第10工程において、標準1自由度弾塑性構造系における耐震性能レベルと性能双スペクトルの1自由度系の性能レベルが一致しない場合には、近接する2つの性能双スペクトルの1自由度系の性能レベルの間で内挿法を用いて確定することができ、標準1自由度弾塑性構造系の第2剛性係数と性能双スペクトルの1自由度弾塑性構造系における2本折れ線弾塑性モデルの第2剛性係数が一致しない場合には、近接する2つの性能双スペクトルの1自由度系の性能レベルの間で内挿法を用いて確定することができることを特徴とする、請求項4に記載の性能双スペクトルに基づくマルチモーダル性能指向型耐震設計方法。
【請求項6】
前記第11工程において、平方及び平方根を求める方法又は完全二次結合法を用いて、耐震性能レベル下での構造物の耐震応答効果の最小値rmin、平均値rave及び最大値rmaxを計算することを特徴とする、請求項5に記載の性能双スペクトルに基づくマルチモーダル性能指向型耐震設計方法。
【国際調査報告】