(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
α−D−ガラクトシダーゼをコードする核酸配列の中に機能喪失型変異を含むゲノムを含むコーヒー植物。コーヒー豆からの固形分の抽出性を高める方法も提供される。加えて、ソリュブルコーヒーの製造方法が提供される。
前記DNA編集剤が、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)及びCRISPR−Casからなる群から選択されるDNA編集システムのものである請求項2から請求項9のいずれか一項に記載の植物、方法又は核酸構築物。
α−D−ガラクトシダーゼをコードする前記核酸配列が配列番号2〜配列番号4からなる群から選択される請求項1から請求項14のいずれか一項に記載の植物、方法又は核酸構築物。
前記DNA編集剤が、前記α−D−ガラクトシダーゼをコードする核酸配列のエクソン1、2、3、4及び/又は5内の核酸座標に向けられている請求項2、請求項4から請求項9、請求項13及び請求項14のいずれか一項に記載の植物、方法又は核酸構築物。
前記DNA編集剤が、配列番号38〜配列番号41からなる群から選択される核酸配列に少なくとも99%同一である核酸配列を含む請求項2、請求項4から請求項9、請求項13から請求項14及び請求項19のいずれか一項に記載の植物、方法又は核酸構築物。
前記DNA編集剤が、配列番号9〜配列番号11及び配列番号37からなる群から選択される核酸配列に少なくとも99%同一である核酸配列を含む請求項2、請求項4から請求項9、請求項13から請求項14及び請求項19のいずれか一項に記載の植物、方法又は核酸構築物。
前記DNA編集剤が、配列番号38〜配列番号41からなる群から選択される核酸配列を含む請求項2、請求項4から請求項9、請求項13から請求項14及び請求項19のいずれか一項に記載の植物、方法又は核酸構築物。
前記DNA編集剤が、配列番号9〜配列番号11及び配列番号37からなる群から選択される複数の核酸配列を含む請求項2、請求項4から請求項9、請求項13から請求項14及び請求項19のいずれか一項に記載の植物、方法又は核酸構築物。
前記DNA編集剤が、複数のα−D−ガラクトシダーゼ遺伝子に向けられている請求項2、請求項4から請求項9、請求項13から請求項14及び請求項19のいずれか一項に記載の植物、方法又は核酸構築物。
【発明を実施するための形態】
【0059】
本発明は、そのいくつかの実施形態では、コーヒー豆からの固形分の抽出性を高めるための組成物及び方法に関する。
【0060】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において以下の記載に示され又は実施例によって例示される詳細に必ずしも限定されないということを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であり、又は種々のやり方で実行又は実施することができる。
【0061】
コーヒー生豆では、多糖画分は総重量の半分を占める。これらの多糖の中で、マンナンが50%を占める。マンナンはβ結合マンナン鎖からなり、このマンナン鎖はガラクトース残基で置換されてガラクトマンナンを与えることができる。ガラクトマンナンに対するマンナンの比は、このポリマーの水溶性に影響を及ぼす。マンナンに対してより多くのガラクトマンナンが存在するほど、そのポリマーはより可溶性である。コーヒー中の酵素α−D−ガラクトシダーゼの活性は、ガラクトマンナンからガラクトース残基を除去してマンナンを形成し、ポリマーの水溶性を低下させることに関与すると報告されている。
【0062】
本明細書に記載される実施形態は、コーヒー豆からの水溶部を増やすための、ゲノムレベルでのα−D−ガラクトシダーゼ発現の阻害に関する。それゆえ、α−D−ガラクトシダーゼをコードする遺伝子は、ゲノム編集システム、CRISPR−Cas9によるゲノム改変についての標的とされてきた。
【0063】
本明細書中で説明されるように、本発明者らは、コーヒープロトプラストにおけるゲノム編集システム、及びコーヒー植物に効率的に再生されうる非遺伝子組換えのプロトプラストを生じるその後の選択を確立した(
図1及び
図2を参照)。本発明者らは、編集の標的としての3つのα−D−ガラクトシダーゼ遺伝子をさらに特定し、それらのうちの2つは、Marracciniら、2005、前出、由来のAJ887712.1に対して80%未満の同一性の遠縁のホモログである。発現分析により、とりわけ、コーヒー豆中でのガラクトマンナンからのガラクトース残基の除去においてそれらの役割を強調するCc04_g14280についての生物学的に関連する発現のパターンが明らかになった。すべての3つの遺伝子は、コーヒー豆におけるこれらの遺伝子の発現の喪失をもたらす非遺伝子組換えのゲノム編集(
図4A〜Eから
図6A〜Cを参照)を生じるために、個々に又は同時に標的とされた。これらのゲノム編集イベントを含むプロトプラストは、成長した植物を生じるように再生に供された。
【0064】
よって、本結果は、コーヒーにおけるα−D−ガラクトシダーゼ遺伝子の非遺伝子組換えのゲノム編集を初めて示し、これは、コーヒー豆からの水溶部を増大させるために利用することができる。
【0065】
このように、本発明の一態様によれば、コーヒー植物細胞又はコーヒー植物のゲノムの改変方法であって、コーヒーのゲノムの中のα−D−ガラクトシダーゼ遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子に機能喪失型変異(1又は複数)を誘導するように、コーヒーの細胞又は植物のゲノムをDNA編集剤に供する工程を備える方法が提供される。
【0066】
本明細書で使用する場合、「コーヒー」は、アカネ科、コーヒー属の植物を指す。多くのコーヒー種が存在する。本発明の実施形態は、2つの主要な商業的コーヒー種、アラビカコーヒーとして知られるアラビカコーヒーノキ(C.arabica)、及びロブスタコーヒー(C.robusta)として知られるロブスタコーヒーノキに言及する場合がある。世界のコーヒー豆市場の3%を構成するリベリカコーヒーノキ(Coffea liberica Bull.ex Hiern)も本発明で想定されている。Coffea arnoldiana De Wild又はより一般的にはリベリアコーヒー(Liberian coffee)としても知られる。アラビカ種由来のコーヒーは一般に「ブラジル(Brazils)」とも呼ばれ、又はアラビカ種由来のコーヒーは「アザーマイルド(other milds)」に分類される。ブラジルコーヒーはブラジル原産であり、「アザーマイルド」は他の高級コーヒー生産国で栽培されており、この生産国は、コロンビア、グァテマラ、スマトラ、インドネシア、コスタリカ、メキシコ、米国(ハワイ)、エルサルバドル、ペルー、ケニア、エチオピア及びジャマイカを含むと一般に認識されている。ロブスタコーヒーノキ、すなわちロブスタは、通常、アラビカコーヒー用の低コストの増量剤として使用される。これらのロブスタコーヒーは、通常、西アフリカ及び中央アフリカ、インド、東南アジア、インドネシアの低地で、そしてブラジルでも栽培される。地理的領域は、コーヒー栽培プロセスが同一のコーヒー実生を利用し栽培環境が類似しているコーヒー栽培領域を指すということは、当業者はわかるであろう。
【0067】
本明細書で使用する場合、「植物」は、植物全体(1又は複数)、接ぎ木された植物(穂木)、これらの植物及び植物部分の祖先及び子孫を指し、種子、果実、苗条、茎、根(塊茎を含む)、台木、若枝、並びに植物の細胞、組織及び器官を含む。
【0068】
特定の実施形態によれば、上記植物部分は豆である。
【0069】
「子実」、「種子」、又は「豆」は、顕花植物の繁殖単位であって、別のそのような植物に発生することができる繁殖単位を指す。本明細書で、とりわけコーヒー植物に関して使用する場合、これらの用語は同意語として互換的に使用される。
【0070】
特定の実施形態によれば、上記細胞は胚細胞である。
【0071】
特定の実施形態によれば、上記細胞は体細胞である。
【0072】
上記植物は、懸濁培養液、プロトプラスト、胚、成長点領域、カルス組織、葉、配偶体、胞子体、花粉、及び小胞子を含めたいずれの形態にあってもよい。
【0073】
特定の実施形態によれば、上記植物部分はDNAを含む。
【0074】
特定の実施形態によれば、上記コーヒー植物は、コーヒー育種系統、より好ましくはエリート系統のものである。
【0075】
特定の実施形態によれば、上記コーヒー植物はエリート系統のものである。
【0076】
特定の実施形態によれば、上記コーヒー植物は純粋種系統のものである。
【0077】
特定の実施形態によれば、上記コーヒー植物は、コーヒー変種又は育種対象の生殖質(breeding germplasm)のものである。
【0078】
用語「育種系統」は、本明細書で使用する場合、野生の変種又は在来種とは異なり、商業的に価値があるか又は農学的に望ましい特徴を有する、栽培されるコーヒーの系統を指す。この用語は、エリート育種系統又はエリート系統への言及を含み、このエリート育種系統又はエリート系統は、商業用のF
1雑種を生産するために使用される実質的にホモ接合の系統の、通常近交系の植物を表す。エリート育種系統は、多数の農学的に望ましい形質を含むより優れた農学的性能のための育種及び選択により得られる。エリート植物は、エリート系統由来のあらゆる植物である。より優れた農学的性能は、本明細書中に規定される農学的に望ましい形質の所望の組み合わせを指し、その農学的に望ましい形質の大部分、好ましくはすべてが、非エリート育種系統と比べてエリート育種系統において向上していることが望ましい。エリート育種系統は、実質的にホモ接合性であり、好ましくは近交系である。
【0079】
用語「エリート系統」は、本明細書で使用する場合、より優れた農学的性能のための育種及び選択から得られたあらゆる系統を指す。エリート系統は、好ましくは、複数の、好ましくは少なくとも3、4、5、6又はこれ以上の本明細書に規定される望ましい農学的形質(のための遺伝子)を有する系統である。
【0080】
用語「栽培品種」及び「変種」は、本明細書中で互換的に使用され、商業化される目的、例えば、自身による消費用又は商業化用に農産物を生産するために農業者及び栽培者によって使用される目的で育種、例えば、交雑及び選択によって意図的に開発された植物を表す。用語「育種対象の生殖質」は、「野生」状態以外の生物の状態を有する植物を表し、この「野生」状態は、植物又は系統種の本来の栽培されていない状態、又は天然状態を意味する。
【0081】
用語「育種対象の生殖質」としては、半自然、半野生、雑草、伝統的栽培品種、在来種、育種材料、研究材料、育種用系統、合成集団、雑種、創始株(founder stock)/基礎集団、近交系(雑種栽培品種の親)、分離集団、変異体/遺伝材料(genetic stock)、市場クラス及び後生的な/改良された栽培品種が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用する場合、用語「純粋種」、「純系」又は「近交系」は、互換的であり、反復的な自家受粉及び/又は戻し交配によって得られる実質的にホモ接合性の植物又は植物系統を指す。
【0082】
包括的なものではないが、コーヒー変種のリストが本明細書に提示される。
【0083】
ワイルドコーヒー(Wild Coffee):これは、エチオピア原産のコーヒー種である「Coffea racemosa Lour」の一般名である。
【0084】
バロンゴトーレッド(Baron Goto Red):「カツアイ・レッド(Catuai Red)」に非常に類似したコーヒー豆栽培品種。これは、ハワイのいくつかの場所で栽培されている。
【0085】
ブルーマウンテン(Blue Mountain):Coffea arabica L.’Blue Mountain’。ジャマイカコーヒー(Jamaican coffea)又はケニアコーヒー(Kenyan coffea)としても一般に知られる。これは、ジャマイカ原産であるが、今ではハワイ、パプアニューギニア及びケニアで栽培されている有名なアラビカ栽培品種である。これは、高品質の風味(cup flavor)を備えた最高のコーヒーである。これは、木の実のような芳香、さわやかな酸度及び独特のビーフブリオンのような香りを特徴とする。
【0086】
ブルボン(Bourbon):Coffea arabica L.’Bourbon’。マダガスカル東方のインド洋に位置する、今ではレユニオンと呼ばれるフランス領のブルボン島で最初に栽培されたアラビカコーヒーノキの植物品種又は栽培品種。
【0087】
ブラジルコーヒー(Brazilian Coffea):Coffea arabica L.’Mundo Novo’。「ブルボン(Bourbon)」及び「ティピカ(Typica)変種から交雑して作出されたコーヒー植物を特定するために使用される一般名。
【0088】
カラコル(Caracol)/カラコルリ(Caracoli):「貝殻」を意味するスペイン語の「Caracolillo」からとられ、ピーベリーコーヒー豆を指す。
【0089】
カティモー(Catimor):カツーラ(Caturra)及びヒブリド・デ・チモー(Hibrido de Timor)の系統を交配して1959年にポルトガルで開発されたコーヒー豆栽培品種である。これは、コーヒー葉さび病(Hemileia vastatrix)に抵抗力がある。より新しい栽培品種選択物は、生産量に優れているが平均的品質である。
【0090】
カツアイ(Catuai):ムンド・ノボ(Mundo Novo)及びカツーラ・アラビカ(Caturra Arabica)栽培品種の交配種である。高生産量で知られており、黄色(Coffea arabica L.’Catuai Amarelo’)又は赤のサクランボ色(Coffea arabica L.’Catuai Vermelho’)を特徴とする。
【0091】
カツーラ(Caturra):比較的最近開発されたアラビカコーヒーノキ種の亜種で、一般的に成熟が早く、より多くの生産量を与え、ブルボン(Bourbon)やティピカ(Typica)のような伝統的な「古いアラビカ」の変種よりも、病気への耐性が強い。
【0092】
コロンビア(Columbiana):コロンビア原産の栽培品種。これは、生命力が強く、生産量は多いが、味わい(cup quality)は平均的である。
【0093】
コンジェンシス(Congencis):Coffea Congencis − コンゴの貯蔵所に由来するコーヒー豆の栽培品種で、良質のコーヒーを生産するが、収量が低い。商業的な栽培には好適ではない。
【0094】
デウェブレイルト(DewevreiIt):Coffea DewevreiIt。ベルギー領コンゴの森で自生している所を発見されたコーヒー豆の栽培品種。商業的な栽培に好適ではないと考えられる。
【0095】
ディボウスキールト(DybowskiiIt):Coffea DybowskiiIt。このコーヒー豆栽培品種は、アフリカの熱帯収束帯のエウコフィア(Eucoffea)の群に由来する。商業的な栽培に好適ではないと考えられている。
【0096】
エクセルサ(Excelsa):Coffea Excelsa − 1904に発見されたコーヒー豆栽培品種。生来、病気への耐性があり、高収量をもたらす。成熟すると、アラビカ種に類似した香ばしく心地よい味わいを与えうる。
【0097】
グアダルペ(Guadalupe):アラビカコーヒーノキの栽培品種で、現在ハワイで評価が行われている。
【0098】
グァテマラ(Guatemala(n)):アラビカコーヒーノキの栽培品種で、ハワイの他の地域で評価が行われている。
【0099】
ヒブリド・デ・チモール(Hibrido de Timor):これは、アラビカ及びロブスタの自然雑種である栽培品種である。44の染色体を有している点で、アラビカコーヒーに似ている。
【0100】
イカツ(Icatu):「アラビカ&ロブスタ交配種」をアラビカ栽培品種のモンド・ノボ(Mundo Novo)及びカツーラ(Caturra)と交配した栽培品種。
【0101】
インタースペシフィックハイブリッド(Interspecific Hybrids):コーヒー植物種の雑種であり、次の種を含む:イカツ(ブラジル原産;ブルボン/MNとロブスタの交配種)、S2828(インド原産;アラビカとリベリア(Liberia)の交配種)、アラブスタ(Arabusta)(象牙海岸原産;アラビカとロブスタの交配種)。
【0102】
「K7」、「SL6」、「SL26」、「H66」、「KP532」:有望な新種の栽培品種で、ヘミレイア(Hemileia)のようなコーヒー植物病の様々な変種に対してより耐性がある。
【0103】
ケント(Kent):インドのマイソール(Mysore)でもともと開発され、東アフリカで栽培されているアラビカコーヒー豆の栽培品種。高収量をもたらす植物であり、「コーヒーさび」病には耐性があるが、コーヒーの実の病気には非常に罹りやすい。より耐性がある栽培品種である「S.288」、「S.333」及び「S.795」によって徐々に置き換えられている。
【0104】
コウイロウ(Kouillou):ロブスタコーヒーノキ(Robusta)の変種の名前で、この名前は、マダガスカルのガボンの川に由来する。
【0105】
ローリナ(Laurina):干ばつに耐性がある栽培品種で、良質の味わいを有しているが、収量は平均的なものにすぎない。
【0106】
マラゴジペ(Maragogipe/Maragogype):Coffea arabica L.’Maragopipe’。「象の豆」としても知られる。アラビカコーヒーノキ(ティピカ(Typica))の突然変異種で、ブラジルのバイーア(Bahia)州のマラゴジペ(Maragogype)郡で最初に発見された(1884)。
【0107】
モーリシアナ(Mauritiana):Coffea Mauritiana。苦い味わいを生み出すコーヒー豆栽培品種。商業的な栽培に好適ではないと考えられている。
【0108】
モンド・ノボ(Mundo Novo):「アラビカ種」と「ブルボン種」との間の交配種としてブラジルで生まれた自然雑種。非常に生命力がある植物で、3,500〜5,500フィート(1,070m〜1,525m)でも十分に成長し、病気への耐性があり、生産量が多い。他の栽培品種よりも成長が遅い傾向がある。
【0109】
ネオ・アーノルディアナ(Neo−Arnoldiana):Coffea Neo−Arnoldianaは、その高収量のためコンゴの数か所で栽培されているコーヒー豆栽培品種である。商業的な栽培に好適ではないと考えられている。
【0110】
ンガンダ(Nganda):Coffea canephora Pierre ex A.Froehner ’Nganda’。コーヒー植物カネフォラ種の真っ直ぐ立ったものがロブスタと呼ばれるのに対し、カネフォラ種の広がる型はンガンダ(Nganda)又はコウイロウとしても知られている。
【0111】
パカ(Paca):エルサルバドルの農学者によって開発されたもので、アラビカのこの栽培品種は、低木でブルボンよりも収穫量が多く、ラテンアメリカでは人気があるものの、多くの人が味わいの品質が劣ると考えている。
【0112】
パカマラ(Pacamara):低収量で大型豆の品種マラゴジペと、より高収量のパカとの交配によって作出されたアラビカ栽培品種。1960年代にエルサルバドルで開発されたもので、この豆は平均的なコーヒー豆よりも約75%大きい。
【0113】
パチェコリス(Pache Colis):栽培品種カツーラとパチェコマムとの間の交配種であるアラビカ栽培品種。もともと、マタケスクインタ(Mataquescuintla)のグァテマラを育てる農場で成長しているのを発見された。
【0114】
パチェコマム(Pache Comum):グァテマラのサンタローザで開発されたティピカ(アラビカ)の栽培品種の突然変異。適応力に優れ、口当たりがよく、多少風味に欠ける。
【0115】
プリーンガー(Preanger):コーヒー植物栽培品種で、現在ハワイで評価が行われている。
【0116】
プレトリア(Pretoria):コーヒー植物栽培品種で、現在ハワイで評価が行われている。
【0117】
パーパレスント(Purpurescens):珍しい紫色の葉を特徴とするコーヒー植物栽培品種。
【0118】
ラセモサ(Racemosa):Coffea Racemosa − コーヒー豆栽培品種であり、乾季に葉を落とし、雨季の始まりに再び葉を付ける。一般的には味が劣ると評価されており、商業的な栽培に好適ではないと考えられている。
【0119】
ルイル(Ruiru)11:新しい小粒の雑種で、ケニアのルイル(Ruiru)にあるコーヒー研究所(Coffee Research Station)で開発され、1985年から市場に出回っている。ルイル11は、コーヒーの実の病気及びコーヒー葉さび病の両方に耐性がある。また、高収量で、通常の密度の2倍で栽培するのにも好適である。
【0120】
サンラモン(San Ramon):Coffea arabica L.’San Ramon’。アラビカ種ティピカの小型種。樹高は低く、風に強く、高収量で、干ばつに耐性がある。
【0121】
チコ(Tico):中央アメリカで栽培されるアラビカコーヒーノキの栽培品種。
【0122】
チモールハイブリッド(Timor Hybrid):1940年代にチモールで発見されたコーヒーの木の変種で、アラビカ種とロブスタ種が自然状態で交配している。
【0123】
ティピカ(Typica):正確な植物名はCoffea arabica L.’Typica’。エチオピア原産のアラビカコーヒーノキのコーヒー品種である。Var Typicaは、すべてのコーヒー変種の中で最も古く、最もよく知られており、いまだ世界のコーヒー生産の大半を構成している。最良のラテンアメリカのコーヒーのうちのいくつかはティピカ材料から作られたものである。低収量生産という制約を、優れた味わいで埋め合わせている。
【0124】
ビラロボス(Villalobos):アラビカコーヒーノキの栽培品種で、栽培品種「サンラモン」に由来し、コスタリカで移植に成功した。
【0125】
本明細書で使用する場合、「ゲノムを改変する(こと)」は、コーヒーのα−D−ガラクトシダーゼ遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子に少なくとも1つの変異を導入することを指す。いくつかの実施形態によれば、改変(すること)は、コーヒーのα−D−ガラクトシダーゼ遺伝子の各対立遺伝子に変異を導入することを指す。少なくともいくつかの実施形態によれば、α−D−ガラクトシダーゼ遺伝子の2つの対立遺伝子上の変異はホモ接合型である。
【0126】
いくつかの実施形態によれば、α−D−ガラクトシダーゼ遺伝子の2つの対立遺伝子上の変異は非相補的である。
【0127】
本明細書で使用する場合、「α−D−ガラクトシダーゼ遺伝子」は、EC3.2.1.22に示されるα−D−ガラクトシダーゼ酵素をコードする遺伝子を指す。例えば、遺伝子Cc11_g00330(配列番号2)、Cc02_g05490(配列番号3)及びCc04_g14280(配列番号4)から産生される酵素は、受入番号AJ877912(配列番号5)に類似のC.Canephora及び受入番号AJ877911(配列番号6)に類似のC.arabicaに存在する。
【0128】
特定の実施形態によれば、α−D−ガラクトシダーゼ遺伝子はCc04_g14280(配列番号4)である。
【0129】
例示のsgRNA配列あるいはこれらの組み合わせが下記表Aに提示される。
【0131】
上記遺伝子のうちの各々のものの天然に存在する機能的ホモログであって、例えば、上記の遺伝子に対して少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を提示し上で定義されたとおりのα−D−ガラクトシダーゼ活性を有するものも想定される。
【0132】
本明細書で使用する場合、「配列同一性」又は「同一性」又は2つの核酸配列若しくはポリペプチド配列に関して本明細書で使用する文字通りの等価物は、整列させた(配列比較した)ときに同じである2つの配列の中の残基への言及を含む。タンパク質に言及する際に配列同一性のパーセントが使用される場合、同一ではない残基位置は保存的アミノ酸置換によって異なっていることが多く、保存的アミノ酸置換ではアミノ酸残基が類似の化学特性(例えば電荷又は疎水性)を有する他のアミノ酸残基に置換され、それゆえ分子の機能的特性を変化させないということが認識される。配列が保存的置換において異なる場合、パーセント配列同一性は、置換の保存的性質について補正するために上向きに調整されてもよい。このような保存的置換によって異なる配列は「配列類似性」又は「類似性」を有すると考えられる。この調整を行うための手段は当業者にとって周知である。典型的には、これは保存的置換を完全ミスマッチよりはむしろ部分ミスマッチとして点数化し、これによりパーセント配列同一性を大きい値にすることを伴う。このように、例えば、同一のアミノ酸がスコア1を与えられ、非保存的置換がスコア0を与えられる場合、保存的置換は0と1の間のスコアが与えられる。保存的置換の点数化は、例えばHenikoff S及びHenikoff JG.のアルゴリズム[Amino acid substitution matrices from protein blocks.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.1992、89(22):10915−9]に従って算出される。
【0133】
同一性は、例えば国立生物工学情報センター(National Center of Biotechnology Information:NCBI)のBlastNソフトウェアを含むいずれかの相同性比較ソフトウェアを使用して、例えばデフォルトパラメータを使用することにより決定することができる。
【0134】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記同一性は、全体的な同一性、すなわち、本発明の核酸配列全体にわたる同一性であり、その一部分にわたる同一性ではない。
【0135】
α−D−ガラクトシダーゼ酵素は、植物種子貯蔵組織又は成熟に貯蔵されたガラクトマンナンからα−1,6結合ガラクトース単位を放出することができる。換言すれば、α−D−ガラクトシダーゼ活性は、ガラクトマンナン多糖にα−1,6結合しているガラクトース残基を除去する能力を有し、この除去はそのポリマーの溶解性の低下を引き起こす。
【0136】
特定の実施形態によれば、上記DNA編集剤は、標的配列α−D−ガラクトシダーゼを改変し、「オフターゲット」活性を欠く、すなわちコーヒーゲノムの中の他の配列を改変しない。
【0137】
特定の実施形態によれば、上記DNA編集剤は、コーヒーゲノム中の非必須遺伝子に対する「オフターゲット活性」を備える。
【0138】
非必須は、上記DNA編集剤を用いて改変されたときに、農業的に価値ある態様(例えば、カフェイン含有量、香り、バイオマス、収量、生物的/非生物的なストレス耐性等)で標的ゲノムの表現型に影響を及ぼさない遺伝子を指す。
【0139】
オフターゲット作用は、当該技術分野で周知であり本明細書に記載される方法を使用してアッセイすることができる。
【0140】
本明細書で使用する場合、「機能喪失型」変異は、α−D−ガラクトシダーゼが不溶性マンナンからα−1,6結合ガラクトース単位を加水分解する能力の低下(すなわち、機能障害)又は加水分解できなくなることを生じるゲノム異常を指す。本明細書で使用する場合、「能力の低下」は、その機能喪失型変異を欠く野生型酵素のα−D−ガラクトシダーゼ活性(すなわち、α−1,6結合ガラクトース単位、マンナン分岐の加水分解)と比べて低下したα−D−ガラクトシダーゼ活性を指す。特定の実施形態によれば、この活性の低下は、同じアッセイ条件下での野生型酵素の活性と比べて、少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又はこれ以上にもなる。α−Gal活性は、基質p−ニトロフェニル−α−D−ガラクトピラノシド(pNGP)を用いて分光光度法で検出することができる。特定の実施形態によれば、反応混合物は、1ml最終体積までのMcIlvainバッファ(クエン酸100mM−Na
2HPO
4 200mM、pH6.5)中に200μl pNGP 100mMを含有し、必要に応じて酵素抽出物を伴う。反応物は26℃に維持され、酵素の添加で開始される。一体積の反応混合物が4体積の停止液(Na
2CO
3−NaHCO
3 100mM、pH10.2)に添加され、吸収がλ=405nmで読み取られる。ニトロフェニルの出現は、モル吸光係数ε=18300(pH10.2に特定的)を使用して算出され、nkat mg
−1タンパク質に変換される(Marraciniら、2005.Biochemical and molecular characterization of α−D−galactosidase from coffee beans、Plant Physiology and Biochemistry、43:909−920)
【0141】
特定の実施形態によれば、上記機能喪失型変異はα−D−ガラクトシダーゼのmRNA又はタンパク質の発現を生じない。
【0142】
特定の実施形態によれば、上記機能喪失型変異は、マンナン分岐を支持することができないα−D−ガラクトシダーゼタンパク質の発現を生じる。
【0143】
特定の実施形態によれば、上記機能喪失型変異は、欠失、挿入、挿入−欠失(インデル)、逆位、置換及びこれらの組み合わせ(例えば、欠失及び置換、例えば欠失及びSNP)からなる群から選択される。
【0144】
特定の実施形態によれば、上記機能喪失型変異は、1Kb未満又は0.1Kb未満である。
【0145】
特定の実施形態によれば、「機能喪失型」変異は、何らかの機能的α−D−ガラクトシダーゼペプチドの産生を妨害する、コード配列におけるフレームシフトを引き起こすように、α−D−ガラクトシダーゼ遺伝子の5’にあってもよい。あるいは、及び一例として、この変異は、上記タンパク質の発現を生じない未成熟終止コドン又はナンセンス変異を引き起こしてもよい。
【0146】
特定の実施形態によれば、この「機能喪失型」変異は、マンナン分岐を促進する(マンナン分岐に寄与する)ことができないままのα−D−ガラクトシダーゼ発現産物、すなわち、不活性タンパク質又は上記の触媒活性が低下したタンパク質、の産生を可能にするα−D−ガラクトシダーゼ遺伝子の中のいずれか(例えば、第1エクソン)にある。この遺伝子の調節エレメント、例えばプロモーター、スプライス部位及び長い散在反復配列(the line)における変異も本明細書に提示される。
【0147】
Cc04_g14280内の示唆される位置の例。
【0148】
sgRNA ペア1−エクソン1
GGTGAAGTCTCCAGGAACCGAGG(配列番号7);
GCTTGGTCTAACACCTCCGATGG(配列番号8);
sgRNA ペア2−エクソン2及びエクソン3にわたる
ATTTCTCATCAAGATTACAACGG(エクソン2)(配列番号9。sgRNA122とも呼ばれる);
TCAAAGGGGCTTGCTGCACTGGG(エクソン3)(配列番号10。sgRNA123とも呼ばれる);
ペア3−エクソン5
GATGGGAATGTTGAACCTTTAGG(配列番号11。sgRNA124とも呼ばれる);
CAGAGTAAATTCCAAGCTTTAGG(配列番号12)
【0149】
特定の実施形態によれば、上記DNA編集剤は、配列番号38、配列番号39、配列番号40及び配列番号41(169、170、171、172)からなる群から選択される核酸配列に少なくとも99%同一である核酸配列を含む。
【0150】
特定の実施形態によれば、上記DNA編集剤は、配列番号38、配列番号39、配列番号40及び配列番号41(169〜172)からなる群から選択される核酸配列に少なくとも99%同一である核酸配列を含む。
【0151】
特定の実施形態によれば、上記DNA編集剤は、配列番号9〜配列番号11及び配列番号37からなる群から選択される核酸配列に少なくとも99%同一である核酸配列を含む。
【0152】
特定の実施形態によれば、上記DNA編集剤は、配列番号38〜配列番号41からなる群から選択される核酸配列を含む。
【0153】
特定の実施形態によれば、上記DNA編集剤は、配列番号9〜配列番号11及び配列番号37からなる群から選択される複数の核酸配列を含む。
【0154】
上述のように、コーヒー植物は、α−D−ガラクトシダーゼ遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子に機能喪失型変異を含む。
【0155】
特定の実施形態によれば、上記変異はホモ接合性である。
【0156】
特定の実施形態によれば、上記変異はヘテロ接合性である。
【0157】
一態様によれば、コーヒー豆からの固形分の抽出性を高める方法であって、
(a)コーヒー植物細胞を、α−D−ガラクトシダーゼをコードする核酸配列に向けられたDNA編集剤に供し、このα−D−ガラクトシダーゼをコードする核酸配列の中に機能低下型変異又は機能喪失型変異を生じる工程と、
(b)上記植物細胞から植物を再生する工程と
を備える方法が提供される。
【0158】
特定の実施形態によれば、当該方法は、上記植物から豆を収穫する工程をさらに備える。
【0159】
本発明で想定される抽出可能な固形分の例は下記表1〜2に提示されており、そのうちのいくつかは水で抽出可能である。
【0161】
本明細書で使用する場合、「固形分の抽出性」は、当該技術分野で周知の方法(後述の実施例の節を参照)によってアッセイされる場合に、上記機能喪失型変異を含まない同じ遺伝的背景のコーヒー植物の固形分抽出性と比べて、ゲノムにその機能喪失型変異を有するコーヒー植物の豆からの固形分抽出性が少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%又はさらには95%、向上していることを指す。
【0162】
例えば、溶解性は、ガラクトマンナンを測定することにより決定することができる。ガラクトマンナン含有量の増加は、ガラクトマンナン対マンナン比の上昇、それゆえ溶解性の向上の指標である。ガラクトマンナンは、β−マンナナーゼ、α−ガラクトシダーゼ及びβ−ガラクトースデヒドロゲナーゼが関与する逐次的な酵素反応並びにD−ガラクトン酸及びNADHの放出によって間接的に測定することができる。NADHの放出は、分光光度法により340nmでアッセイされる。
【0163】
以降は、核酸変更を目的の遺伝子に導入するために使用される方法及びDNA編集剤、並びにそれを実行するために本開示の特定の実施形態に従って使用することができる薬剤の種々の非限定的な例の説明である。
【0164】
遺伝子操作されたエンドヌクレアーゼを使用するゲノム編集 − このアプローチは、典型的にはゲノム中の所望の場所(1又は複数)で二本鎖を切断し、特定の二本鎖切断を作り出すために人工的に遺伝子操作されたヌクレアーゼを使用する逆遺伝学的方法を指し、この二本鎖切断は、次に相同組換え(HR)又は非相同末端結合(NHEJ)等の細胞の内因的過程により修復される。NHEJは二本鎖切断のDNA末端に直接結合するが、HRは、失われたDNA配列を切断部位で再生するための鋳型(すなわち、S期の間に形成される姉妹染色分体)として相同的なドナー配列を利用する。特定のヌクレオチド改変をゲノムDNAに導入するために、所望の配列を含有するドナーDNA修復鋳型がHRの際に存在する必要がある(外因的に提供される一本鎖DNA又は二本鎖DNA)。
【0165】
ゲノム編集は、従来からの制限エンドヌクレアーゼを使用して実施することができない。なぜなら、多くの制限酵素はDNA上の数個の塩基対をその標的として認識し、これらの配列がゲノムにわたって多くの場所で見出されることになることが多く、所望の場所に限定されない複数の切断部位を生じるからである。この課題を克服し部位特異的な単鎖切断又は二本鎖切断を作り出すために、いくつかの別個のクラスのヌクレアーゼがこれまでに発見され生物工学的に扱われてきた。これらとしては、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)及びCRISPR/Casシステムが挙げられる。
【0166】
メガヌクレアーゼ − メガヌクレアーゼは、一般に4つのファミリーに分類される:LAGLIDADGファミリー、GIY−YIGファミリー、His−Cysボックスファミリー及びHNHファミリー。これらのファミリーは、触媒活性及び認識配列に影響を及ぼす構造モチーフを特徴とする。例えば、LAGLIDADGファミリーのメンバーは、保存されたLAGLIDADGモチーフの1コピー又は2コピーのいずれかを有することを特徴とする。これら4ファミリーのメガヌクレアーゼは、保存された構造要素に関して、従ってDNA認識配列特異性及び触媒活性に関して互いに大きく隔てられている。メガヌクレアーゼは、微生物種において一般に見出され、非常に長い認識配列(>14bp)を有するというユニークな特性を有し、このためメガヌクレアーゼは、天然に、所望の場所での切断に非常に特異的なものになっている。
【0167】
これは、ゲノム編集において部位特異的二本鎖切断を行うために活用することができる。当業者はこれらの天然に存在するメガヌクレアーゼを使用することができるが、しかしながら、このような天然に存在するメガヌクレアーゼの数は限られている。この課題を克服するべく、ユニークな配列を認識するメガヌクレアーゼ変異体を作り出すために、変異生成及び高スループットスクリーニング方法が使用されてきた。例えば、種々のメガヌクレアーゼが融合され、新しい配列を認識するハイブリッド酵素が作り出されてきた。
【0168】
あるいは、メガヌクレアーゼのDNA相互作用性のアミノ酸を、配列特異的メガヌクレアーゼを設計するために変更することができる(例えば、米国特許第8,021,867号明細書を参照)。メガヌクレアーゼは、例えば、Certo、MTら Nature Methods(2012)9:073−975;米国特許第8,304,222号明細書;米国特許第8,021,867号明細書;米国特許第8,119,381号明細書;米国特許第8,124,369号明細書;米国特許第8,129,134号明細書;米国特許第8,133,697号明細書;米国特許第8,143,015号明細書;米国特許第8,143,016号明細書;米国特許第8,148,098号明細書;又は米国特許第8,163,514号明細書に記載されている方法を使用して設計することができ、これらの各々の内容は、参照によりその全体を本明細書に援用する。あるいは、部位特異的な切断特性を有するメガヌクレアーを、市販の技術、例えばプレシジョン・バイオサイエンシーズ(Precision Biosciences)のDirected Nuclease Editor(商標)ゲノム編集技術を使用して得ることができる。
【0169】
ZFN及びTALEN − 遺伝子操作されたヌクレアーゼの2つの別個のクラス、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)及び転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)は、ともに、標的の二本鎖切断を生成することに有効であることが明らかになっている(Christianら、2010;Kimら、1996;Liら、2011;Mahfouzら、2011;Millerら、2010)。
【0170】
基本的に、ZFN及びTALENの制限エンドヌクレアーゼ技術は、特定のDNA結合ドメイン(それぞれ、一系列のジンクフィンガードメイン又はTALEリピート)に連結されている非特異的なDNA切断酵素を利用する。典型的には、DNA認識部位及び切断部位が互いに隔てられている制限酵素が選択される。切断性部分が分離され、次いでDNA結合ドメインに連結され、これにより所望の配列に対して非常に高い特異性を有するエンドヌクレアーゼが得られる。このような特性を有する例示的な制限酵素はFokIである。加えて、FokIは、ヌクレアーゼ活性を有するには二量化を必要とするという利点を有し、これは、各ヌクレアーゼパートナーがユニークなDNA配列を認識するため特異性が劇的に増すことを意味する。この効果を増強するため、ヘテロ二量体として機能できるだけであり増大した触媒活性を有するFokIヌクレアーゼが遺伝子操作された。ヘテロ二量体機能性のヌクレアーゼは、望ましくないホモ二量体活性の可能性を回避し、従って二本鎖切断の特異性を高める。
【0171】
このように、例えば特定部位を標的にするために、ZFN及びTALENは、ヌクレアーゼ対として構築され、この対の各メンバーは、標的部位で隣接する配列に結合するように設計される。細胞における一過性発現の際に、ヌクレアーゼはその標的部位に結合し、FokIドメインはヘテロ二量化して二本鎖切断を作り出す。非相同末端結合(NHEJ)経路によるこれらの二本鎖切断の修復は、小さい欠失又は小さい配列挿入を生じることが多い。NHEJによってなされる各修復はユニークであるので、単一のヌクレアーゼ対の使用により、標的部位に一定範囲の異なる欠失を有する対立遺伝子の系列を生成することができる。
【0172】
一般に、NHEJは比較的正確であり(ヒトの細胞のDSBの約85%が検出から約30分以内にNHEJによって修復される)、遺伝子編集では、NHEJのエラーが頼られる。というのも、修復が正確であるとき、ヌクレアーゼは、修復産物が変異原性であり認識/切断部位/PAMモチーフが消失/変異されるまで、又は一過性に導入されたヌクレアーゼがもはや存在しなくなるまで切断を続けることになるからである。
【0173】
欠失は、典型的には長さが数塩基対〜数百塩基対のいずれの範囲にも及ぶが、より大きい欠失が、2対のヌクレアーゼを同時に使用することにより、細胞培養液中で成功裏に生成されている(Carlsonら、2012;Leeら、2010)。加えて、標的の領域に対する相同性を有するDNAの断片(フラグメント)が上記ヌクレアーゼ対と併用されて導入されるとき、上記二本鎖切断は相同組換え(HR)を経由して修復され、特定の改変が生成されうる(Liら、2011;Millerら、2010;Urnovら、2005)。
【0174】
ZFN及びTALENの両方のヌクレアーゼ部分は類似の特性を有するが、これらの遺伝子操作されたヌクレアーゼの間の差は、それらのDNA認識ペプチドにある。ZFNは、Cys2−His2ジンクフィンガーに依存し、TALENはTALEに依存する。これらのDNA認識ペプチドドメインはともに、それらドメインが組み合わせでそれらのタンパク質に天然に見出されるという特徴を有する。Cys2−His2ジンクフィンガーは、通常3bp離れたリピートで見出され、様々な核酸相互作用性のタンパク質で多様な組み合わせで見出される。他方、TALEは、リピートにおいて上記アミノ酸と認識されたヌクレオチド対との間の1対1の認識比で見出される。ジンクフィンガー及びTALEはともに繰り返しパターンで起こるため、異なる組み合わせを試して、実に様々な配列特異性を作り出すことができる。部位特異的ジンクフィンガーエンドヌクレアーゼを作製するためのアプローチとしては、例えば、とりわけ、モジュールアセンブリ(三塩基配列と関係づけられたジンクフィンガーが一列につなぎ合わされ、必要とされる配列をカバーするようにする)、OPEN(ペプチドドメイン対三塩基ヌクレオチドの低ストリンジェンシー選抜、及びその後の細菌系におけるペプチド組み合わせ対最終の標的の高ストリンジェンシー選抜)、及びジンクフィンガーライブラリーの細菌ワンハイブリッドスクリーニングが挙げられる。ZFNは、例えばSangamo Biosciences(商標)(リッチモンド(Richmond)、カリフォルニア州)から商業的に設計及び入手することもできる。
【0175】
TALENを設計及び入手するための方法は、例えばReyonら、Nature Biotechnology 2012 May;30(5):460−5;Millerら、Nat Biotechnol.(2011)29:143−148;Cermakら、Nucleic Acids Research(2011)39(12):e82及びZhangら、Nature Biotechnology(2011)29(2):149−53に記載されている。Mojo Handと名付けられた最近開発されたウェブベースのプログラムが、Mayo Clinicによって、ゲノム編集への応用のためのTAL及びTALEN構築物を設計するために導入された(www.talendesign.orgによってアクセスすることができる)。TALENは、例えば、Sangamo Biosciences(商標)(リッチモンド(Richmond)、カリフォルニア州)から商業的に設計及び入手することもできる。
【0176】
T−GEEシステム(TargetGene’s Genome Editing Engine) − ポリペプチド部分及び特異性付与核酸(specificity conferring nucleic acid:SCNA)を含有する、インビボで、標的細胞中で会合し所定の標的核酸配列と相互作用することができるプログラム可能な核タンパク質分子複合体が提供されている。このプログラム可能な核タンパク質分子複合体は、標的核酸配列内の標的部位を特異的に改変及び/若しくは編集すること、並びに/又はその標的核酸配列の機能を改変することができる。核タンパク質組成物は、(a)キメラポリペプチドをコードし、(i)標的部位を改変することができる機能ドメイン、及び(ii)特異性付与核酸と相互作用することができる連結ドメインを含むポリヌクレオチド分子と、(b)(i)標的部位に隣接している標的核酸の領域に相補的なヌクレオチド配列、及び(ii)上記ポリペプチドの連結ドメインに特異的に結合することができる認識領域を含む特異性付与核酸(SCNA)とを含む。この組成物は、特異性付与核酸及び標的核酸の塩基対形成を通しての標的核酸に対する分子複合体の高い特異性及び結合能力を用いて、所定の核酸配列標的を正確に、信頼性高くかつ費用効率よく改変することを可能にする。この組成物は、遺伝毒性がより低く、そのアセンブリがモジュール式であり、カスタマイズを要しない単一のプラットフォームを利用し、専門の中核施設の外での独立の使用にとって実用的であり、かつより短い開発期間及び低減されたコストを有する。
【0177】
CRISPR−Casシステム(本明細書で「CRISPR」とも呼ばれる) − 多くの細菌及び古細菌は、侵入するファージ及びプラスミドの核酸を分解することができる内在性のRNAベースの適応免疫系を含有する。これらのシステムは、RNA成分を産生するclustered regularly interspaced short palindromic repeat(CRISPR:クラスター化され、規則的に間隔があいた短い回文構造の繰り返し)ヌクレオチド配列と、タンパク質成分をコードするCRISPR associated(Cas)遺伝子とからなる。このCRISPR RNA(crRNA)は、特定のウイルス及びプラスミドのDNAに対して相同性を有する短鎖を含有し、Casヌクレアーゼを対応する病原体の相補的核酸を分解するように導くガイドとして作用する。Streptococcus pyogenes(化膿レンサ球菌)のII型CRISPR/Casシステムの研究により、下記の3つの成分がRNA/タンパク質複合体を形成し、一緒になれば配列特異的ヌクレアーゼ活性には十分であることが示された:Cas9ヌクレアーゼ、標的配列に対して相同性を有する20塩基対を含有するcrRNA、及びトランス活性化型crRNA(tracrRNA)(Jinekら、Science(2012)337:816−821)。
【0178】
crRNAとtracrRNAとの融合物から構成される合成のキメラのガイドRNA(gRNA)が、Cas9を、crRNAに相補的なDNA標的をインビトロで開裂させるように導くことができるということがさらに実証された。合成gRNAと併用したCas9の一過性発現は、様々な異なる種において標的とされた二本鎖切断を生成するために使用することができるということも実証された(Choら、2013;Congら、2013;DiCarloら、2013;Hwangら、2013a,b;Jinekら、2013;Maliら、2013)。
【0179】
ゲノム編集のためのCRIPSR/Casシステムは、2つの明確に異なる成分、gRNA及びエンドヌクレアーゼ、例えばCas9を含有する。
【0180】
gRNAは、典型的には、標的相同配列(crRNA)と、crRNAを単一のキメラ転写物の中でCas9ヌクレアーゼに連結する内在性の細菌RNA(tracrRNA)との組み合わせをコードする20ヌクレオチド配列である。このgRNA/Cas9複合体は、gRNA配列と相補的ゲノムDNAとの間の塩基対形成により標的配列に動員される。Cas9の結合の成功のために、ゲノム標的配列は、標的配列直下に正しいプロトスペーサー隣接モチーフ(Protospacer Adjacent Motif:PAM)配列も含有する必要がある。gRNA/Cas9複合体の結合はCas9をゲノム標的配列に局在化させ、これによりCas9はDNAの両方の鎖を切断して二本鎖切断を引き起こすことができる。ZFN及びTALENを用いる場合のように、CRISPR/Casによって生成されたこの二本鎖切断は、HR(相同組換え)又はNHEJ(非相同末端結合)により修復されることが可能で、DNA修復の間の特異的配列改変を受けやすい。
【0181】
Cas9ヌクレアーゼは、2つの機能ドメイン、RuvC及びHNH、を有し、これらは各々異なるDNA鎖を切断する。これらのドメインの両方が活性であるとき、Cas9は、ゲノムDNAにおいて二本鎖切断を引き起こす。
【0182】
CRISPR/Casの顕著な優位点は、合成gRNAを簡単に作り出すことができることと合わせたこのシステムの高効率である。これは、異なるゲノム部位での改変物を標的にする、及び/又は同じ部位の異なる改変物を標的にするように容易に改変されることが可能なシステムを作り出す。加えて、複数の遺伝子の同時ターゲティングを可能にするプロトコルが確立されている。変異を有する細胞の大部分は、標的とされた遺伝子において二対立遺伝子変異を提示する。
【0183】
しかしながら、gRNA配列とゲノムDNA標的配列との間の塩基対形成相互作用におけるみかけの柔軟性により、標的配列に対する不完全なマッチもCas9によって切断されることが可能になる。
【0184】
単一の不活性触媒ドメイン、RuvCドメイン又はHNHドメイン、のいずれかを含有するCas9酵素の改変型は「ニッカーゼ」と呼ばれる。ただ1つの活性なヌクレアーゼドメインを有するため、Cas9ニッカーゼは、標的DNAの一本の鎖だけを切断し、単鎖切断又は「ニック」を生じる。単鎖切断、又はニック、は、PARP(センサー)及びXRCC1/LIG III複合体(ライゲーション)等(これらに限定されない)のタンパク質が関与する単鎖切断修復機構によりたいてい修復される。単鎖切断(SSB)がトポイソメラーゼI毒(ポイズン)により、又は天然に存在するSSBでPARP1を捕捉する薬物により生成されれば、これらは存在し続けるであろうし、その細胞がS期に入り、複製フォークがそのようなSSBに遭遇すれば、このようなSSBは末端を1つしか持たないDSB(single ended DSB)になり、これはHRによって修復できるだけである。しかしながら、Cas9ニッカーゼによって導入された2つの近接する反対鎖のニックは、「ダブルニック」CRISPRシステムと呼ばれることが多いものにおいて二本鎖切断として処理される。基本的に非平行DSBであるダブルニックは、他のDSBのように、遺伝子標的に対する所望の効果、ドナー配列の存在、及び細胞周期の期(HRは存在量が非常に低く、細胞周期のS期及びG2期においてのみ起こることができる)に応じてHR又はNHEJによって修復されることが可能である。このように、特異性及び低下したオフターゲット作用が非常に重要である場合、ごく近傍にありゲノムDNAの反対鎖上にある複数の標的配列を用いて2つのgRNAを設計することによりダブルニックを作り出すためにCas9ニッカーゼを使用することで、オフターゲット作用が低減されるであろう。というのも、いずれのgRNA単独では、ゲノムDNAを変えることが不可能ではないとしてもこれらのイベントの可能性が高くないニックを生じるであろうからである。
【0185】
2つの不活性触媒ドメインを含有するCas9酵素の改変型(dead Cas9、又はdCas9)は、gRNA特異性に基づいてDNAに結合することはなお可能であるが、ヌクレアーゼ活性を有しない。このdCas9は、DNA転写制御因子が不活性酵素を既知の制御ドメインに融合することにより遺伝子発現を活性化又は抑制するためのプラットフォームとして利用することができる。例えば、ゲノムDNA中の標的配列にdCas9単独で結合することで遺伝子転写を妨げることができる。
【0186】
標的配列を選択及び/又は設計するのを支援するために利用できるツール、並びに様々な種の様々な遺伝子について生物情報学的に決定されたユニークなgRNAのリストがいくつか公開されており、例えばFeng Zhang研究室のTarget Finder、Michael Boutros研究室のTarget Finder(E−CRISP)、RGEN Tools:Cas−OFFinder、CasFinder:ゲノム中の特定のCas9標的を特定するためのFlexibleアルゴリズム、及びCRISPR Optimal Target Finderがある。
【0187】
本開示において使用することができるgRNAの非限定的な例としては、後述する実施例の節に記載されるものが挙げられる。
【0188】
CRISPRシステムを使用するためには、gRNA及びCas9の両方が標的細胞の中に存在するか、又はリボ核タンパク質複合体として送達される必要がある。挿入ベクターが単一のプラスミドに両方のカセットを含有してもよいし、又はそれらのカセットは2つの別個のプラスミドから発現される。CRISPRプラスミドは、Addgeneからのpx330プラスミド等、市販されている。また、植物ゲノムを改変するための、clustered regularly interspaced short palindromic repeats(CRISPR)−associated(Cas)−ガイドRNA技術及びCasエンドヌクレアーゼの使用は、Svitashevら、2015、Plant Physiology、169(2):931−945;Kumar及びJain、2015、J Exp Bot 66:47−57により、並びに米国特許出願公開第20150082478号に少なくとも開示されており、これらは個々に参照によりその全体を本明細書に援用される。
【0189】
「ヒットエンドラン(hit and run)」又は「インアウト(in−out)」 − は2工程組換え手順を伴う。第1工程では、正/負二重選択マーカーカセットを含有する挿入型ベクターが使用され、所望の配列変更が導入される。この挿入ベクターは、標的座位に対して相同性を有する単一の連続領域を含有し、目的の変異を保有するように改変される。このターゲティング構築物は、相同性を有する領域内の1つの部位で制限酵素を用いて線状化され、細胞に導入され、正の選択が実施されて、相同組換えイベントが単離される。相同配列を保有するDNAは、プラスミド、一本鎖又は二本鎖のオリゴとして提供されてもよい。これらの相同的な組換え体は、選択カセットを含めた介在するベクター配列によって隔てられている局所的な重複を含有する。第2工程では、標的クローンが、重複した配列間の染色体内組換えにより選択カセットを失った細胞を特定するための負の選択に供される。この局所的な組換えイベントは上記重複を除去し、組換えの部位に応じて、対立遺伝子は導入された変異を保持するか、又は野生型に復帰するかする。最終結果は、何らの外来性配列の保持もない所望の改変の導入である。
【0190】
「二重置換(double−replacement)」又は「タグ及び交換(tag and exchange)」戦略 − は、上記ヒットエンドランアプローチに類似した2工程選択手順を伴うが、2つの異なるターゲティング構築物の使用を必要とする。第1工程では、変異が導入されるべき場所の近くに正/負二重選択カセットを挿入するために、3’及び5’相同性アームを有する標準的なターゲティングベクターが使用される。上記システム成分が細胞に導入されて正の選択がかけられた後で、HRイベントを特定することができよう。次に、所望の変異に相同性を有する領域を含有する第2ターゲティングベクターが標的クローンに導入され、負の選択がかけられ、上記選択カセットが除去され、変異が導入される。最終の対立遺伝子は、望まれない外来性配列を解消しつつ所望の変異を含有する。
【0191】
部位特異的リコンビナーゼ − P1バクテリオファージ由来のCreリコンビナーゼ及び酵母Saccharomyces cerevisiae(出芽酵母)由来のFlpリコンビナーゼは、各々ユニークな34塩基対DNA配列(それぞれ「Lox」及び「FRT」と呼ばれる)を認識する部位特異的DNAリコンビナーゼであり、Lox部位又はFRT部位のいずれかに隣接している配列は、それぞれCreリコンビナーゼ又はFlpリコンビナーゼの発現の後に、部位特異的組換えにより容易に除去されることが可能である。例えば、Lox配列は、13塩基対逆方向リピートに隣接する非対称の8塩基対スペーサ領域から構成される。Creは、この13塩基対逆方向リピートに結合してスペーサ領域内の鎖切断及び再連結を触媒することにより、上記34塩基対lox DNA配列を組換える。スペーサ領域でCreによってなされる突出型(staggered)DNA切断は6塩基対によって隔てられ、同じオーバーラップ領域を有する組換え部位だけが再結合することを確実にするための相同性センサーとして作用するオーバーラップ領域を与える。
【0192】
基本的に、部位特異的リコンビナーゼシステムは、相同組換えイベントの後の選択カセットの除去のための手段を与える。このシステムは、時間的に又は組織特異的に不活性化又は活性化されうる条件付きの変更された対立遺伝子の生成も可能にする。なお、Creリコンビナーゼ及びFlpリコンビナーゼは、34塩基対のLox又はFRTの「傷痕」を残す。残るLox又はFRT部位は、通常、改変された遺伝子座のイントロン又は3’UTRに残され、現在の証左は、これらの部位は、通常遺伝子機能を顕著には妨げないということを示唆する。
【0193】
このように、Cre/Lox及びFlp/FRT組換えは、目的の変異、2つのLox又はFRT配列及び典型的には2つのLox又はFRT配列の間に置かれた選択カセットを含有する3’及び5’相同性アームを持つターゲティングベクターの導入を伴う。正の選択がかけられ、目的の変異を含有する相同組換えイベントが特定される。負の選択と併用したCre又はFlpの一過性発現は、選択カセットの切除を生じ、カセットが失われた細胞を選択する。最終の目的の対立遺伝子は外来性の配列のLox又はFRT傷痕を含有する。
【0194】
特定の実施形態によれば、上記DNA編集剤はCRISPR−Cas9である。
【0195】
例示のgRNA配列は以下に提供される。
Cc04_g14280
GGTGAAGTCTCCAGGAACCG(配列番号13);
GCTTGGTCTAACACCTCCGA(配列番号14);
【0196】
上記DNA編集剤は、通常、発現ベクターを使用して植物細胞に導入される。
【0197】
このように、本発明の一態様によれば、コーヒーのα−D−ガラクトシダーゼ遺伝子にハイブリダイズし、上記α−D−ガラクトシダーゼ遺伝子の編集を容易にすることができるDNA編集剤をコードする核酸配列を含む核酸構築物であって、この核酸配列が、上記DNA編集剤をコーヒーの細胞において発現するためのシス作用性調節エレメントに動作可能に連結されている核酸構築物が提供される。
【0198】
本教示が、mRNA+gRNAトランスフェクション又はRNPトランスフェクション等のDNAフリーの方法を使用する上記DNA編集剤の導入にも関するということは分かるであろう。
【0199】
本発明の実施形態は、上記のもの等のあらゆるDNA編集剤に関する。
【0200】
特定の実施形態によれば、ゲノム編集剤は、エンドヌクレアーゼを含み、このエンドヌクレアーゼはDNAターゲティングモジュールの補助ユニット(例えば、sgRNA、又は本明細書中で「gRNA」とも呼ばれる)を含んでも又は有してもよい。
【0201】
特定の実施形態によれば、DNA編集剤はCRISPR/Cas9 sgRNAである。
【0202】
特定の実施形態によれば、DNA編集剤はTALENである。
【0203】
例えば、α−D−ガラクトシダーゼを標的にするためのTALエフェクターを設計するために、TAL Effector Nucleotide Targeter(TALE−NT)スイート(tale−nt.cac.cornell.edu)の一部としてのウェブベースのツールである、TAL Effector Nucleotides Targeter 2.0が使用される。α−D−ガラクトシダーゼを標的にするTALENの特異性プロファイリングの例はCc04_g14280である。配列は理想的に提供されており、そのためTALENは、その意図された標的配列だけを特異的に結合しオフターゲット活性を有さず、従って、単一の配列、例えば全ゲノムという意味での遺伝子のCc04_g14280対立遺伝子、だけの標的とされた開裂を可能にすることになろう。以下は、本発明の実施形態に係る遺伝子を標的とするために使用することができるTalen配列の非限定的な例である。
【0205】
Kopischke S,Schuessler E,Althoff F,Zachgo S.Plant Methods.2017 Mar 29;13:20;
Zhang K,Raboanatahiry N,Zhu B,Li M.Front Plant Sci.2017 Feb 14;8:177;
Jung JH,Altpeter F.Plant Mol Biol.2016 Sep;92(1−2):131−42;
Li T,Liu B,Chen CY,Yang B.J Genet Genomics.2016 May 20;43(5):297−305;
Blanvillain−Baufume S,Reschke M,Sole M,Auguy F,Doucoure H,Szurek B,Meynard D,Portefaix M,Cunnac S,Guiderdoni E,Boch J,Koebnik R.Plant Biotechnol J.2017 Mar;15(3):306−317)。
【0206】
特定の実施形態によれば、当該核酸構築物は、DNA編集剤のエンドヌクレアーゼ(例えば、Cas9又は上記のエンドヌクレアーゼ)をコードする核酸配列をさらに含む。
【0207】
別の特定の実施形態によれば、上記エンドヌクレアーゼ及びsgRNAは異なる構築物からコードされ、これにより各々が、植物細胞において活性なシス作用性調節エレメント(例えば、プロモーター)に動作可能に連結される。
【0208】
本発明のいくつかの実施形態の特定の実施形態では、調節配列は植物で発現可能なプロモーターである。
【0209】
いくつかの実施形態に係る方法において有用な構築物は、当業者にとっては周知である組換えDNA技術を使用して構築されてよい。このような構築物は、市販され、植物への形質転換に好適であり、形質転換細胞(トランスフォーム細胞)における目的の遺伝子の発現に好適である可能性がある。
【0210】
本明細書で使用する場合、句「植物で発現可能」は、加えられるか又は含有される何らかの付加的な調節エレメントを含めたプロモーター配列が、植物の細胞、組織又は器官、好ましくは単子葉植物又は双子葉植物の細胞、組織若しくは器官における発現を少なくとも誘導、付与、活性化又は増強することができることを指す。本発明のいくつかの実施形態の方法に有用なプロモーターの例としては、Actin、CANV35S、CaMV19S、GOS2が挙げられるが、これらに限定されない。種々の組織、又は発生段階で活性であるプロモーターも使用できる。
【0211】
本発明のいくつかの実施形態のポリペプチドの核酸配列は、植物発現のために最適化されてもよい。このような配列改変の例としては、目的の植物種において通常見出されるG/C含有量により近づくための変更されたG/C含有量、及びコドン最適化と一般に呼ばれる、植物種において変則的に見出されるコドンの除去が挙げられるが、これらに限定されない。
【0212】
植物細胞は、本発明のいくつかの実施形態の核酸構築物を用いて安定に又は一過性に形質転換されてもよい。安定的な形質転換では、本発明のいくつかの実施形態の核酸分子は植物ゲノムに組み込まれ、従ってその植物は、安定な及び遺伝性の形質を表す。一過性の形質転換では、核酸分子は形質転換された細胞によって発現されるが、ゲノムに組み込まれず、従ってその植物は、一過性CRISPR−Cas9システムを表す。
【0213】
特定の実施形態によれば、上記植物は、DNA編集剤を用いて一過性にトランスフェクションされる。
【0214】
特定の実施形態によれば、上記核酸構築物中のプロモーターは、Pol3プロモーターを含む。Pol3プロモーターの例としては、AtU6−29、AtU626、AtU3B、AtU3d、TaU6が挙げられるが、これらに限定されない。
【0215】
特定の実施形態によれば、上記核酸構築物中のプロモーターは、Pol2プロモーターを含む。Pol2プロモーターの例としては、CaMV35S、CaMV19S、ユビキチン、CVMVが挙げられるが、これらに限定されない。
【0216】
特定の実施形態によれば、上記核酸構築物中のプロモーターは35Sプロモーターを含む。
【0217】
特定の実施形態によれば、上記核酸構築物中のプロモーターは、U6プロモーターを含む。
【0218】
特定の実施形態によれば、上記核酸構築物中のプロモーターは、少なくとも1つのgRNAをコードする核酸剤に動作可能に連結されたPol3(例えば、U6)プロモーター及び/又は上記ゲノム編集剤をコードする核酸配列若しくは蛍光レポーター(後述の特定の実施形態に記載されているとおり)をコードする核酸配列に動作可能に連結されたPol2(例えば、CaMV35S)プロモーターを含む。
【0219】
特定の実施形態によれば、上記構築物は一過性発現に有用である(Helensら、2005、Plant Methods 1:13)。一過性形質転換の方法は本明細書中にさらに記載される。
【0220】
特定の実施形態によれば、上記構築物に含まれる核酸配列は、上記植物ゲノムへの組み込みを回避するよう、上記植物細胞のゲノムに相同的な配列を欠く。
【0221】
ある実施形態では、上記核酸構築物は非組み込み性構築物であり、好ましくは上記蛍光レポーターをコードする核酸配列も非組み込み性である。本明細書で使用する場合、「非組み込み性」は、目的の植物のゲノムへの組み込みを促進するように積極的には設計されていない構築物又は配列を指す。例えば、アグロバクテリウム(Agrobacterium)媒介の遺伝子形質転換用の機能的T−DNAベクターシステムは非組み込み性ベクターシステムではない。というのも、このシステムは、植物ゲノムに組み込まれるように積極的に設計されているからである。同様に、目的の植物のゲノムへの蛍光レポーター遺伝子配列又は選択マーカー配列の相同組換えを促進するための、目的の植物のゲノムに相同的な隣接配列を有するその蛍光レポーター遺伝子配列又は選択マーカー配列は、非組み込み性の蛍光レポーター遺伝子配列又は選択マーカー配列ではないであろう。
【0222】
種々のクローニングキットを、本発明のいくつかの実施形態の教示に従って使用することができる。
【0223】
特定の実施形態によれば、上記核酸構築物はバイナリーベクターである。バイナリーベクターの例は、pBIN19、pBI101、pBinAR、pGPTV、pCAMBIA、pBIB−HYG、pBecks、pGreen又はpPZP(Hajukiewicz,P.ら、Plant Mol.Biol.25,989(1994)、及びHellensら、Trends in Plant Science 5,446(2000))である。
【0224】
DNA送達の他の方法(例えばトランスフェクション、電気穿孔、撃ち込み(ボンバードメント)、ウイルス接種)で使用されることができる他のベクターの例は、pGE−sgRNA(Zhangら Nat.Comms.2016 7:12697)、pJIT163−Ubi−Cas9(Wangら、Nat.Biotechnol 2004 32、947−951)、pICH47742::2x35S−5’UTR−hCas9(STOP)−NOST(Belhanら、Plant Methods 2013 11;9(1):39)である。
【0225】
本明細書に記載される実施形態は、ゲノム編集イベントを含む細胞の選択方法であって、
(a)コーヒー植物の細胞を、ゲノム編集剤(上記のとおり)及び蛍光レポーターを含む核酸構築物で形質転換する工程と、
(b)フローサイトメトリ又は撮像を使用して、蛍光レポーターによって発せられる蛍光を呈する形質転換細胞を選択する工程と、
(c)上記DNA編集剤によって生成されたゲノム編集イベントを含むが上記DNA編集剤をコードするDNAを欠く細胞を得るために、上記DNA編集剤によるゲノム編集イベントを含む形質転換細胞を、上記DNA編集剤の発現を失うのに十分な時間のあいだ培養する工程と
を備える方法にも関する。
【0226】
いくつかの実施形態によれば、当該方法は、工程(c)後に、上記形質転換細胞において、上記蛍光レポーターの発現の喪失を検証する工程をさらに備える。
【0227】
いくつかの実施形態によれば、当該方法は、工程(c)後に、上記形質転換細胞において、上記DNA編集剤の発現/出現の喪失を検証する工程ことをさらに含む。
【0228】
当該方法の非限定的な実施形態は、
図1のフロー図に記載されている。
【0229】
特定の実施形態によれば、上記植物は、植物細胞、例えば胚細胞懸濁液中の植物細胞である。
【0230】
特定の実施形態によれば、この植物細胞はプロトプラストである。
【0231】
このプロトプラストはいずれかの植物組織、例えば根、葉、胚細胞懸濁液、カルス又は実生組織に由来する。
【0232】
植物細胞に、例えばプロトプラストを使用してDNAを導入する方法はいくつかあり、当業者はどれを選択するべきかを知っているであろう。
【0233】
核酸の送達は、本発明の実施形態では、DNA、RNA、ペプチド及び/若しくはタンパク質又は核酸及びペプチドの組み合わせを植物細胞に送達するための方法において当業者にとって公知であるいずれの方法によって植物細胞に導入されてもよく、その方法としては、例えば以下が挙げられるが、これらに限定されない:プロトプラストの形質転換による(例えば、米国特許第5,508,184号明細書を参照);乾燥/阻害媒介DNA取り込みによる(例えば、Potrykusら(1985)Mol.Gen.Genet.199:183−8を参照);電気穿孔による(例えば、米国特許第5,384,253号明細書を参照);炭化ケイ素繊維を用いたかき混ぜによる(例えば、米国特許第5,302,523号明細書及び米国特許第5,464,765号明細書を参照);アグロバクテリウム媒介の形質転換による(例えば、米国特許第5,563,055号明細書、米国特許第5,591,616号明細書、米国特許第5,693,512号明細書、米国特許第5,824,877号明細書、米国特許第5,981,840号明細書及び米国特許第6,384,301号明細書を参照);DNA被覆粒子の加速による(例えば、米国特許第5,015,580号明細書、米国特許第5,550,318号明細書、米国特許第5,538,880号明細書、米国特許第6,160,208号明細書、米国特許第6,399,861号明細書及び米国特許第6,403,865号明細書を参照)並びにナノ粒子、ナノ担体及び細胞膜透過ペプチドによる(国際公開第201126644A2号パンフレット;国際公開第2009046384A1号パンフレット;国際公開第2008148223A1号パンフレット)。
【0234】
トランスフェクション(形質移入)の他の方法としては、トランスフェクション試薬の使用(例えばLipofectin、ThermoFisher(サーモフィッシャー))、デンドリマー(Kukowska−Latallo,J.F.ら、1996、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93、4897−902)、細胞膜透過ペプチド(Maeら、2005、Internalisation of cell−penetrating peptides into tobacco protoplasts、Biochimica et Biophysica Acta 1669(2):101−7)又はポリアミン(Zhang及びVinogradov、2010、Short biodegradable polyamines for gene delivery and transfection of brain capillary endothelial cells,J Control Release,143(3):359−366)が挙げられる。
【0235】
特定の実施形態によれば、植物細胞(例えば、プロトプラスト)へのDNAの導入は電気穿孔によって行われる。
【0236】
特定の実施形態によれば、植物細胞(例えば、プロトプラスト)へのDNAの導入は撃ち込み/微粒子銃によって行われる。
【0237】
特定の実施形態によれば、DNAをプロトプラストに導入するために、当該方法は、ポリエチレングリコール(PEG)に媒介されるDNA取り込みを含む。さらなる詳細については、Kareschら(1991)Plant Cell Rep.9:575−578;Mathurら(1995)Plant Cell Rep.14:221−226;Negrutiuら(1987)Plant Cell Mol.Biol.8:363−373を参照。次に、プロトプラストは、プロトプラストが細胞壁を発達させ、分裂を開始してカルスを形成し、シュートを及び根を発達させ、植物全体を再生することを可能にする条件下で培養される。
【0238】
一過性形質転換は、改変植物ウイルスを使用するウイルス感染によっても行うことができる。
【0239】
植物宿主の形質転換に有用であることが示されたウイルスとしては、CaMV、TMV、TRV及びBVが挙げられる。植物ウイルスを使用する植物の形質転換は、米国特許第4,855,237号明細書(BGV)、欧州特許出願公開第67,553号明細書(TMV)、特開昭63−14693号公報(TMV)、欧州特許出願公開第194,809号明細書(BV)、欧州特許出願公開第278,667号明細書(BV);及びGluzman,Y.ら、Communications in Molecular Biology:Viral Vectors、Cold Spring Harbor Laboratory、ニューヨーク(New York)、172−189頁(1988)に記載されている。外来DNAを、植物を含めた多くの宿主で発現することにおいて使用するための偽ウイルス粒子は国際公開第87/06261号パンフレットに記載されている。
【0240】
植物における非ウイルス性の外来性核酸配列の導入及び発現のための植物RNAウイルスの構築は、上述の参考文献並びにDawson,W.O.ら、Virology(1989)172:285−292;Takamatsuら、EMBO J.(1987)6:307−311;Frenchら、Science(1986)231:1294−1297;及びTakamatsuら。FEBS Letters(1990)269:73−76によって実証されている。
【0241】
ウイルスがDNAウイルスである場合、好適な改変はウイルス自体に対して行うことができる。あるいは、外来DNAを有する所望のウイルスベクターを構築することの簡単さのため、ウイルスDNAは最初に細菌プラスミドにクローニングされてもよい。この後、このウイルスDNAは、上記プラスミドから取り出すことができる。ウイルスがDNAウイルスであれば、細菌の複製開始点がウイルスDNAに結合していることが可能で、ウイルスDNAは、次にその細菌によって複製される。このDNAの転写及び翻訳は、ウイルスDNAを包むことになるコートタンパク質をもたらす。ウイルスがRNAウイルスであれば、そのウイルスは、一般にcDNAとしてクローニングされ、プラスミドに挿入される。次に、このプラスミドが上記構築物のすべてを作製するために使用される。RNAウイルスが、ウイルスRNAを包むコートタンパク質(1又は複数)をもたらすための、プラスミドのウイルス配列の転写及びウイルス遺伝子の翻訳によって産生される。
【0242】
本発明のいくつかの実施形態の構築物に含まれるもの等の非ウイルス性の外来性核酸配列の導入及び植物における発現のための植物RNAウイルスの構築は、上記の参考文献及び米国特許第5,316,931号明細書によって実証されている。
【0243】
1つの実施形態では、天然のコートタンパク質コード配列がウイルス核酸から欠失しており、非天然の植物ウイルス性コートタンパク質コード配列、並びに植物宿主中で発現し、組換え植物ウイルス核酸をパッケージ化すること、及び上記組換え植物ウイルス核酸による宿主の全身感染を確実にすることができる非天然のプロモーター、好ましくは上記非天然のコートタンパク質コード配列のサブゲノムプロモーターが挿入されている植物ウイルス核酸が提供される。あるいは、タンパク質が産生されるように、コートタンパク質遺伝子は、非天然の核酸配列をその内部に挿入することにより不活性化されてもよい。この組換え植物ウイルス核酸は、1以上のさらなる非天然のサブゲノムプロモーターを含有してもよい。各非天然のサブゲノムプロモーターは、隣接する遺伝子又は核酸配列を植物宿主中で転写又は発現することができ、互いに及び天然のサブゲノムプロモーターと組み換わることができない。複数の核酸配列が含まれる場合には、非天然の(外来の)核酸配列が、上記天然の植物ウイルスサブゲノムプロモーター又は上記天然及び非天然の植物ウイルスサブゲノムプロモーターに隣接して挿入されてもよい。この非天然の核酸配列は宿主植物中で、上記サブゲノムプロモーターの制御下で転写又は発現され、所望の産物が産生される。
【0244】
第2実施形態では、上記天然のコートタンパク質コード配列が非天然のコートタンパク質コード配列の代わりに非天然のコートタンパク質サブゲノムプロモーターのうちの1つに隣接して置かれていることを除いて第1実施形態のように組換え植物ウイルス核酸が提供される。
【0245】
第3実施形態では、上記天然のコートタンパク質遺伝子がそのサブゲノムプロモーターに隣接しており、1以上の非天然のサブゲノムプロモーターがウイルス核酸に挿入されている組換え植物ウイルス核酸が提供される。この挿入された非天然のサブゲノムプロモーターは、隣接する遺伝子を植物宿主中で転写又は発現することができ、互いに及び天然のサブゲノムプロモーターと組み換わることができない。上記配列が宿主植物中で、上記サブゲノムプロモーターの制御下で転写又は発現され、所望の産物が産生されるように、非天然の核酸配列がこの非天然のサブゲノム植物ウイルスプロモーターに隣接して挿入されてもよい。
【0246】
第4実施形態では、上記天然のコートタンパク質コード配列が非天然のコートタンパク質コード配列によって置き換えられていることを除いて上記第3実施形態のように組換え植物ウイルス核酸が提供される。
【0247】
上記ウイルスベクターは、組換え植物ウイルスを産生するための組換え植物ウイルス核酸によってコードされるコートタンパク質によって包まれている。この組換え植物ウイルス核酸又は組換え植物ウイルスは、適切な宿主植物を感染させるために使用される。この組換え植物ウイルス核酸は、所望のタンパク質を産生するための、宿主中での複製、宿主の全身への広がり、及び宿主中での外来の遺伝子(1又は複数)(単離された核酸)の転写又は発現が可能である。
【0248】
用いられる形質転換/感染方法にかかわらず、本教示は、本明細書に記載される核酸構築物(1若しくは複数)を含む任意の細胞、例えば植物細胞(例えば、プロトプラスト)又はバクテリア細胞にさらに関する。
【0249】
形質転換の後、細胞は、蛍光レポーター(すなわち、蛍光タンパク質)によって発せられる蛍光を呈する形質転換細胞を選択するために、フローサイトメトリに供される。
【0250】
本明細書で使用する場合、「蛍光タンパク質」は、蛍光を発し、通常はフローサイトメトリ又は撮像により検出可能であり、それゆえそのようなタンパク質を発現する細胞の選択の基礎として使用することができるポリペプチドを指す。
【0251】
レポーターとして使用することができる蛍光タンパク質の例は、緑色蛍光タンパク質(GFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)及び赤色蛍光タンパク質dsRedである。蛍光レポーター又は他のレポーターの非限定的な一覧は、ルミネセンスにより検出可能なタンパク質(例えばルシフェラーゼ)又は比色分析により検出可能なタンパク質(例えばGUS)を含む。特定の実施形態によれば、蛍光レポーターはDsRed又はGFPである。
【0252】
この分析は、通常は形質転換後、24〜72時間以内、例えば48〜72時間以内、24〜28時間以内に行われる。一過性発現を確実にするために、抗生物性選択、例えば選択マーカーに対する抗生物質は用いられない。この培養物はなお抗生物質を含んでよいが、それは選択マーカーに対するものではない。
【0253】
植物細胞のフローサイトメトリは、通常、蛍光活性化セルソーティング(Fluorescence Activated Cell Sorting:FACS)によって実施される。蛍光活性化セルソーティング(FACS)は細胞を含めた粒子をその粒子の蛍光特性に基づいて分離するための周知の方法である(例えばKamarch、1987、Methods Enzymol、151:150−165を参照)。
【0254】
例えば、GFP陽性細胞のFACSは、488nmレーザーによって励起されたプロトプラストの緑色対赤色の発光スペクトルの可視化を利用する。GFP陽性プロトプラストは、赤色発光に対する緑色発光の比の上昇によって区別することができる。
【0255】
以下は、Bastiaanら、J Vis Exp.2010;(36):1673から改変した非結合プロトコルである。この文献は、参照により本明細書に援用される。FACS装置は市販されており、例えばFACSMelody(BD)、FACSAria(BD)がある。
【0256】
100μmノズル及び20psi(約0.138MPa)シース圧を用いてフローストリームが設定される。細胞密度及び試料注入速度は、最良の収率又は達成可能な最も大きい速度、例えば10,000,000細胞/ml以下が望まれるか否かに基づいて、特定の実験に対して調整することができる。プロトプラストの沈降を防ぐために、試料はFACS上で撹拌される。FACSの詰まりが問題になれば、3つの可能なトラブルシューティング工程がある:1.試料ラインの逆流を実施する、2.密度を下げるためにプロトプラスト懸濁液を希釈する、3.遠心分離及び再懸濁後に濾過工程を繰り返すことによりプロトプラスト溶液を清浄にする。この装置は、488nmレーザーによる励起後の前方散乱光(FSC)、側方散乱光(SSC)、並びにGFPについて530/30nm及び赤色スペクトル自己蛍光(RSA)について610/20nmの発光を測定するように準備されている。これらは、実質的に、GFP陽性プロトプラストを単離するために使用される唯一のパラメータである。以下の電圧設定値が使用できる:FSC −60V、SSC 250V、GFP 350V及びRSA 335V。なお、最適の電圧設定値は、FACSごとに異なり、セルソーターの耐用期間全体にわたってなお調整される必要がある。
【0257】
プロセスは、前方散乱光対側方散乱光についてのドットプロットを組み立てることにより開始される。測定されるイベントがプロットの中心にくるように電圧設定値が印加される。次に、緑色蛍光シグナル対赤色蛍光シグナルのドットプロットが作成される。野生型(非GFP)プロトプラスト懸濁液を見るときに、測定されるイベントがプロットで中央に集まった対角線上の集団を与えるように電圧設定値が印加される。GFPマーカーラインに由来するプロトプラスト懸濁液は、野生型試料では決して見られない緑色蛍光イベントの明確な集団を生成することになる。GFPとRSAとの間のスペクトルのオーバーラップを調整するために、コンペンセーション制約が設定される。適正なコンペンセーション制約設定値は、非GFPプロトプラスト及びデブリからのGFP陽性プロトプラストのより良好な分離を可能にすることになる。本願で使用する制約は以下のとおりである:RSA、マイナス17.91%GFP。ゲートはGFP陽性イベントを特定するように設定され、非GFPプロトプラストの陰性対照が、ゲート境界を画定することを支援するために使用される必要がある。小さいデブリを分析から外すために前方散乱光カットオフが実行される。カットオフの配置を決定するのを助けるためにGFP陽性イベントがFSC対SSCプロットで可視化される。例えば、カットオフは5,000に設定される。なお、FACSは、デブリをソートイベントとしてカウントすることになり、高レベルのデブリを有する試料は、予測とは異なるGFP陽性イベントパーセントを有する可能性がある。これは必ずしも問題ではない。しかしながら、試料中にデブリが多いほど、ソートに長い時間がかかることになる。実験に応じて及び分析する対象の細胞型の存在量に応じて、FACSの精度モードはソートされた細胞の最適収率又は最適純度のいずれかを求めて設定される。
【0258】
FACSソーティングの後、蛍光マーカーを提示する形質転換された植物細胞(例えば、プロトプラスト)の正に選択されたプールが集められ、そしてアリコート(一定分量)がこのDNA編集イベントを試験する(任意の工程。
図1を参照)ために使用されてもよい。あるいは(又は任意の検証する工程に続いて)、クローンがコロニー、すなわちクローン(少なくとも28日)及びマイクロカルスへと発生するまで、クローンが選択(例えば、選択マーカーに対する抗生物質)の不存在下で培養される。培養下の少なくとも60〜100日間(例えば、少なくとも70日、少なくとも80日)の後、カルスの細胞の一部が、DNA編集イベント及びDNA編集剤の存在、つまりそのDNA編集剤をコードするDNA配列の喪失(これは当該方法の一過性を指摘する)について分析(検証)される。
【0259】
このように、クローンは、求められる編集の種類、例えば、挿入、欠失、挿入−欠失(インデル)、逆位、置換及びこれらの組み合わせに応じて本明細書中で「変異」又は「編集」とも呼ばれるDNA編集イベントの存在について検証される。
【0260】
特定の実施形態によれば、ゲノム編集イベントは、これがなければ従来の育種によって目的の植物に導入されることが可能な欠失、一塩基対置換、又は第2植物由来の遺伝子材料の挿入を含む。
【0261】
特定の実施形態によれば、ゲノム編集イベントは、従来の育種を通しては導入できないと思われる目的の植物のゲノムへの外来DNAの導入を含まない。
【0262】
配列変更の検出方法は当該技術分野で周知であり、その例としては、DNAシークエンシング(例えば、次世代シークエンシング)、電気泳動、酵素ベースのミスマッチ検出アッセイ、並びにPCR、RT−PCR、RNaseプロテクション、インサイツハイブリダイゼーション、プライマー伸長法、サザンブロット、ノーザンブロット及びドットブロット解析等のハイブリダイゼーションアッセイが挙げられるが、これらに限定されない。一塩基多型(SNP)の検出のために使用される種々の方法、例えばPCRを伴うT7エンドヌクレアーゼ、ヘテロ二本鎖及びSangerシークエンシングも使用することができる。
【0263】
DNA編集イベント、例えばインデルの存在の別の検証方法は、ミスマッチのDNAを認識してこれを切断する構造選択的な酵素(例えば、mエンドヌクレアーゼ)を利用するミスマッチ切断アッセイを含む。
【0264】
ミスマッチ切断アッセイは、インデルの検出について簡便で費用効率が高い方法であり、それゆえゲノム編集により誘導された変異を検出するための代表的な手順である。このアッセイは、ミスマッチ部分及び複数のヌクレオチドによって形成される追加らせんループ(extrahelical loop)でヘテロ二本鎖DNAを切断し、2以上のより小さい断片を与える酵素を使用する。得られた断片がサイズで類似しておらず従来のゲル電気泳動又は高速液体クロマトグラフィ(HPLC)により簡単に分離できるように、予測されるヌクレアーゼ切断部位を外して約300〜1000bpのPCR産物が生成される。末端標識された消化産物も自動のゲル電気泳動又はキャピラリー電気泳動によって分析できる。遺伝子座のインデルの頻度は、PCR増幅産物及び切断されたDNAバンドの積分強度を測定することにより推定することができる。消化工程には15〜60分かかり、DNA調製工程及びPCR工程が加えられるときには、アッセイ全体は3時間未満で完了することができる。
【0265】
2つの択一的な酵素が、通常、このアッセイで使用される。T7エンドヌクレアーゼ1(T7E1)は、ミスマッチの上流にある第1、第2又は第3のホスホジエステル結合で不完全マッチのDNAを認識して切断するリゾルバーゼである。T7E1ベースのアッセイの感度は0.5〜5%である。対照的に、Surveyor(商標)ヌクレアーゼ(Transgenomic Inc.、オマハ(Omaha)、ネブラスカ州、米国)は、オランダミツバ由来のミスマッチ特異的ヌクレアーゼのCELファミリーのメンバーである。これは、一塩基多型(SNP)又は小さいインデルの存在に起因するミスマッチ部分を認識して切断し、ミスマッチの下流の両方のDNA鎖を切断する。このヌクレアーゼは、12ntまでのインデルを検出することができ、約3%、すなわち32コピーに1つという低い頻度で存在する変異に感受性がある。
【0266】
編集イベントの存在のさらに別の検証方法は、高分解能融解曲線分析を含む。
【0267】
高分解能融解曲線分析(HRMA)は、ゲノム標的(90〜200bp)にまたがるDNA配列を、蛍光染料を組み込んでリアルタイムPCRにより増幅すること、及びこれに続く増幅産物の融解曲線分析を伴う。HRMAは、挿入染料が熱変性の間に二本鎖DNAから放出されるときの蛍光の喪失に基づく。この分析は、増幅産物の温度依存的変性プロファイルを記録し、融解プロセスが1又は複数の分子種を伴うかを検出する。
【0268】
さらに別の方法はヘテロ二本鎖移動度アッセイである。変異も、再ハイブリダイズしたPCR断片を直接未変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)によって分析することにより、検出することができる。この方法は、ポリアクリルアミドゲル中でのヘテロ二本鎖DNA及びホモ二本鎖DNAの泳動の差を利用する。インデルによって引き起こされるマッチDNA鎖とミスマッチDNA鎖との間の角度は、未変性条件下ではヘテロ二本鎖DNAがホモ二本鎖DNAよりも著しく小さい速度で泳動し、それらは移動度に基づいて簡単に区別できるということを意味する。140〜170bpの断片は15%ポリアクリルアミドゲル中で分離できる。そのようなアッセイの感度は、最適条件下では0.5%に近づくことができ、これはT7E1に近い。PCR産物の再アニール後、このアッセイの電気泳動部分には約2時間を要する。
【0269】
編集イベントの存在の他の検証方法は、Zischewski 2017 Biotechnol.Advances 1(1):95−104に詳しく記載されている。
【0270】
陽性クローンは、DNA編集イベントについてホモ接合性であってもよく又はヘテロ接合性であってもよいということは分かるであろう。当業者は、目的の用途に従ってクローンをさらなる培養/再生のために選択する。
【0271】
所望のDNA編集イベントの存在を提示するクローンは、DNA編集剤の存在、つまりDNA編集剤をコードするDNA配列の喪失(これは当該方法の一過性を指摘する)についてさらに分析される。
【0272】
これは、例えば、GFPの蛍光検出又はq−PCRによりDNA編集剤の発現(例えば、mRNA、タンパク質での)を分析することにより行うことができる。
【0273】
あるいは又は加えて、細胞は、本明細書に記載される核酸構築物又はその部分、例えばレポーターポリペプチド又はDNA編集剤をコードする核酸配列の存在について分析される。
【0274】
蛍光レポーター又はDNA編集剤をコードするDNA(例えば、蛍光顕微鏡法、q−PCR及び/又はサザンブロット、PCR、シークエンシング等のいずれかの他の方法によって確認される)を示さないが、所望のDNA編集イベント(1又は複数)[変異(1又は複数)]を含むクローンが、さらなる処理のために単離される。
【0275】
それゆえ、これらのクローンは保存することができる(例えば、凍結保存される)。
【0276】
あるいは、細胞(例えば、プロトプラスト)は、カルスへと発生する一群の植物細胞へとまず成長し、次いで植物組織培養方法を使用してそのカルスからシュートを再生すること(不定芽形成(caulogenesis))により植物全体へと再生されてもよい。カルスへのプロトプラストの成長及びシュートの再生は、植物の種それぞれについて誂えられる必要がある組織培地中での植物成長調節物質の適正なバランスを必要とする。
【0277】
プロトプラストも、プロトプラスト融合と呼ばれる技術を使用する植物育種のために使用されてよい。異なる種に由来するプロトプラストは、電場又はポリエチレングリコールの溶液を使用することにより融合するように誘導される。この技術は、組織培養において体細胞雑種を生成するために使用されてもよい。
【0278】
プロトプラスト再生の方法は当該技術分野で周知である。いくつかのファクター、つまり遺伝子型、ドナー組織及びその前処理、プロトプラスト単離のための酵素処理、プロトプラスト培養の方法、培養、培地、及び物理的環境が、プロトプラストの単離、培養、及び再生に影響を及ぼす。詳細な総説のために、Maheshwariら、1986、Differentiation of Protoplasts and of Transformed Plant Cells:3−36.Springer−Verlag、Berlinを参照。
【0279】
再生された植物は、当業者が適切と考える場合には、さらなる育種及び選択に供されてもよい。
【0280】
最終系統、植物又は中間育種産物の表現型は、α−D−ガラクトシダーゼ遺伝子の配列、mRNA若しくはタンパク質のレベルでのその発現、そのタンパク質の活性を決定すること、及び/又はコーヒー豆の特性(溶解性)を分析すること等により、分析することができる。
【0281】
例えば、植物材料が液体窒素中で粉砕され、100μlあたり20mgの適切な比の氷冷した酵素抽出緩衝液(グリセロール10%v/v、メタ重亜硫酸ナトリウム10mM、EDTA 5mM、MOPS(NaOH) 40mM、pH6.5)に抽出される。この混合物は氷上で20分間撹拌され、遠心分離(12,000g×30分)に供され、小分けされ、使用まで−85℃で保存される。α−D−ガラクトシダーゼ活性は、基質p−ニトロフェニル−α−D−ガラクトピラノシド(pNGP)を用いて分光光度法で検出される。
【0282】
反応混合物は、1mlの最終体積までのMcIlvainバッファ(クエン酸100mM − Na
2HPO
4 200mM pH6.5)中に200μl pNGP 100mMを含有し、酵素抽出物を伴う。反応は26℃に維持され、酵素の添加で開始され、4体積の停止液(Na
2CO
3−NaHCO
3 100mM pH10.2)の添加により停止される。吸収が405nmで読み取られる。ニトロフェニルの放出は、モル吸光係数ε=18300(pH10.2に特定的)を使用して算出され、mmol min
−1 mg タンパク質
−1に変換される。全タンパク質が、水性緩衝液に抽出された試料中でBradfordの方法により測定される(Anal.Biochem.、72(1976)、248−254)。活性の発現について、各試料が抽出されて小分けされ、アッセイが三重に実施され、結果は平均として表される。
【0283】
本明細書及び後述の実施例の中で説明されるように、本発明者らは、安定な遺伝子組換えを回避しつつコーヒーを形質転換することができた。
【0284】
従って、本発明の方法論は、選択可能又はスクリーニング可能なレポーターの組み込みを伴わないゲノム編集を可能にする。
【0285】
このように、本発明の実施形態は、非遺伝子組換えの植物、非遺伝子組換えの植物細胞及び本発明の教示に従って生成された遺伝子編集イベント(1又は複数)を含む植物の加工産物さらに関する。
【0286】
このように、本発明の教示は、本明細書に記載される植物の一部分又はその加工産物にも関する。
【0287】
いくつかの実施形態によれば、ソリュブルコーヒーの製造方法であって、本明細書に記載されるコーヒーの豆を抽出、脱水及び任意に焙煎に供する工程を備える方法が提供される。
【0288】
特定の実施形態によれば、上記植物の加工産物は、向上した溶解性をもたらす変異したα−D−ガラクトシダーゼ遺伝子を含むDNAを含む。
【0289】
いくつかの実施形態の加工コーヒー組成物は、抽出され若しくは煎じられるべきコーヒー粉末又はソリュブルコーヒー粉末の形態であってもよい。このように、当該加工コーヒー組成物は、粗挽きコーヒー、フィルターコーヒー又はインスタントコーヒーであってもよい。他方、本発明のコーヒー組成物は、焙煎したコーヒー豆全体を含むこともできる。本発明のさらなる実施形態は、当該コーヒー組成物及び水を含むコーヒー飲料に関する。このようなコーヒー飲料は、当業者に公知の方法、例えば本発明のコーヒー組成物を水で抽出すること、本発明のコーヒー組成物を水で煎じることにより、又は本発明のコーヒー組成物を水に浸漬することにより調製することができる。本発明のコーヒー飲料は、天然又は人工の香味料、乳製品、アルコール、発泡剤、天然又は人工の甘味剤等の他の物質も含むことができる。
【0290】
本願から成立した特許の有効期間の間に、多くの関連するDNA編集剤が開発されることが予想され、用語DNA編集剤の範囲は、すべてのこのような新しい技術を事前に含むことが意図されている。
【0291】
本明細書で使用する場合、用語「約」は±10%を指す。
【0292】
用語「comprises(…を含む、…を備える」、「comprising」、「includes(…を含む)」、「including」、「having(…を有する)」及びこれらの接合語は、「including but not limited to(含む(備える)が、これらに限定されない)」を意味する。
【0293】
用語「consisting of(…からなる)」は、「including and limited to(…を含み、かつ…に限定される)」を意味する。
【0294】
用語「consisting essentially of(…から実質的になる)」は、組成物、方法又は構造は、追加の原料、工程及び/又は部品を含んでもよいが、それは、その追加の原料、工程及び/又は部品が請求項に係る組成物、方法又は構造の基本で新規な特徴を実質的に変えない場合に限られるということを意味する。
【0295】
本明細書で使用する場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈と明らかに矛盾する場合を除いて複数の指示対象を含む。例えば、用語「a compound(化合物)」又は「at least one compound(少なくとも1つの化合物)」は、a plurality of compounds(複数の化合物)、及びこれらのmixtures(混合物)を含んでもよい。
【0296】
本願全体にわたって、本発明の種々の実施形態は、範囲形式で提示されてもよい。範囲形式での記載は単に便宜及び簡潔さのためであり、本発明の範囲に対する変更できない限定と解釈されるべきではないということを理解されたい。従って、範囲の記載は、すべての可能な部分範囲及びその範囲内の個々の数値を具体的に開示したと考えられるべきである。例えば、1〜6等の範囲の記載は、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6等の部分範囲、並びにその範囲内の個々の数、例えば、1、2、3、4、5、及び6を具体的に開示したと考えられるべきである。これは、範囲の広さにかかわらず当てはまる。
【0297】
本明細書中で数値範囲が示されている場合にはいつでも、その数値範囲は、示された範囲内のあらゆる引用された数値(分数又は整数)を含むことが意図されている。句、第1の示された数と第2の示された数との間「にわたる/の範囲」、及び第1の示された数から第2の示された数まで(第1の示された数〜第2の示された数)「にわたる/の範囲」は、本明細書中で互換的に使用され、その第1及び第2の示された数並びにそれらの間のすべての分数及び整数を含むことが意図されている。
【0298】
本明細書で使用する場合、用語「方法」は、与えられた課題を成し遂げるためのやり方、手段、技法及び手順を指し、それらには、化学、薬理学、生物学、生化学及び医学の分野の当業者に公知であるか、又は化学、薬理学、生物学、生化学及び医学の分野の当業者によって公知のやり方、手段、技法及び手順から容易に開発されるやり方、手段、技法及び手順が含まれるが、これらに限定されない。
【0299】
特定の配列表に言及されるとき、そのような言及は、その相補的配列に実質的に対応する配列、例えば、シークエンシングエラー、クローニングエラーから生じるわずかな配列変化、又は塩基置換、塩基欠失若しくは塩基付加を生じる他の変更を含む配列も包含すると理解されたい。ただし、そのような変化の頻度は、50ヌクレオチドに1未満、あるいは100ヌクレオチドに1未満、あるいは200ヌクレオチドに1未満、あるいは500ヌクレオチドに1未満、あるいは1000ヌクレオチドに1未満、あるいは5,000ヌクレオチドに1未満、あるいは10,000ヌクレオチドに1未満である。
【0300】
本願に開示されるあらゆる配列番号は、その配列番号がDNA配列フォーマット又はRNA配列フォーマットでのみ表されている場合であっても、配列番号が言及される文脈に応じて、DNA配列又はRNA配列のいずれかを指すことができるということは理解される。例えば、ある与えられた配列番号はDNA配列フォーマットで表される(例えば、チミンについてTと書かれている)が、それは、与えられた核酸配列に対応するDNA配列、又はRNA分子核酸配列のRNA配列のいずれかを指すことができる。同様に、いくつかの配列は、記載される分子の現実の種類に応じて、RNA配列フォーマットで表されている(例えば、ウラシルについてUと書かれている)が、それは、dsRNAを含むRNA分子の配列、又は示されたRNA配列に対応するDNA分子の配列のいずれかを指すことができる。いずれにせよ、いずれかの置換を有して開示された配列を有するDNA分子及びRNA分子の両方が想定される。
【0301】
明確性のために、別個の実施形態に関して記載される本発明の特定の特徴が、単一の実施形態において組み合わせて提供されてもよいことが理解される。逆に、簡潔さのために、単一の実施形態に関して記載される本発明の種々の特徴が、別個に若しくはいずれかの好適なサブコンビネーションにおいて、又は適宜本発明のいずれかの他の記載された実施形態において提供されてもよい。種々の実施形態に関して記載される特定の特徴は、それらの要素がなければその実施形態が動作不能である場合を除き、それらの実施形態の必須の特徴と考えられるべきではない。
【0302】
本明細書中でこれまで記載された及び添付の特許請求の範囲でクレームされる本発明の種々の実施形態及び態様は、以下の実施例で実験的にサポートされる。
【0303】
本明細書で使用する場合、用語「約」は±10%を指す。
【0304】
用語「comprises(…を含む、…を備える」、「comprising」、「includes(…を含む)」、「including」、「having(…を有する)」及びこれらの接合語は、「including but not limited to(含む(備える)が、これらに限定されない)」を意味する。
【0305】
用語「consisting of(…からなる)」は、「including and limited to(…を含み、かつ…に限定される)」を意味する。
【0306】
用語「consisting essentially of(…から実質的になる)」は、組成物、方法又は構造は、追加の原料、工程及び/又は部品を含んでもよいが、それは、その追加の原料、工程及び/又は部品が請求項に係る組成物、方法又は構造の基本で新規な特徴を実質的に変えない場合に限られるということを意味する。
【0307】
本明細書で使用する場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈と明らかに矛盾する場合を除いて複数の指示対象を含む。例えば、用語「a compound(化合物)」又は「at least one compound(少なくとも1つの化合物)」は、a plurality of compounds(複数の化合物)、及びこれらのmixtures(混合物)を含んでもよい。
【0308】
本願全体にわたって、本発明の種々の実施形態は、範囲形式で提示されてもよい。範囲形式での記載は単に便宜及び簡潔さのためであり、本発明の範囲に対する変更できない限定と解釈されるべきではないということを理解されたい。従って、範囲の記載は、すべての可能な部分範囲及びその範囲内の個々の数値を具体的に開示したと考えられるべきである。例えば、1〜6等の範囲の記載は、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6等の部分範囲、並びにその範囲内の個々の数、例えば、1、2、3、4、5、及び6を具体的に開示したと考えられるべきである。これは、範囲の広さにかかわらず当てはまる。
【0309】
本明細書中で数値範囲が示されている場合にはいつでも、その数値範囲は、示された範囲内のあらゆる引用された数値(分数又は整数)を含むことが意図されている。句、第1の示された数と第2の示された数との間「にわたる/の範囲」、及び第1の示された数から第2の示された数まで(第1の示された数〜第2の示された数)「にわたる/の範囲」は、本明細書中で互換的に使用され、その第1及び第2の示された数並びにそれらの間のすべての分数及び整数を含むことが意図されている。
【0310】
本明細書で使用する場合、用語「方法」は、与えられた課題を成し遂げるためのやり方、手段、技法及び手順を指し、それらには、化学、薬理学、生物学、生化学及び医学の分野の当業者に公知であるか、又は化学、薬理学、生物学、生化学及び医学の分野の当業者によって公知のやり方、手段、技法及び手順から容易に開発されるやり方、手段、技法及び手順が含まれるが、これらに限定されない。
【0311】
本明細書で使用する場合、用語「処置すること」は、状態の進行を排除すること、実質的に阻害すること、緩慢化すること若しくは逆転させること、状態の臨床症候若しくは美的症候を実質的に改善すること、又は状態の臨床症候若しくは美的症候の外観を実質的に予防することを含む。
【0312】
特定の配列表に言及されるとき、そのような言及は、その相補的配列に実質的に対応する配列、例えば、シークエンシングエラー、クローニングエラーから生じるわずかな配列変化、又は塩基置換、塩基欠失若しくは塩基付加を生じる他の変更を含む配列も包含すると理解されたい。ただし、そのような変化の頻度は、50ヌクレオチドに1未満、あるいは100ヌクレオチドに1未満、あるいは200ヌクレオチドに1未満、あるいは500ヌクレオチドに1未満、あるいは1000ヌクレオチドに1未満、あるいは5,000ヌクレオチドに1未満、あるいは10,000ヌクレオチドに1未満である。
【0313】
本願に開示されるあらゆる配列番号は、その配列番号がDNA配列フォーマット又はRNA配列フォーマットでのみ表されている場合であっても、その配列番号が言及される文脈に応じて、DNA配列又はRNA配列のいずれかを指すことができるということは理解される。例えば、ある与えられた配列番号はDNA配列フォーマットで表される(例えば、チミンについてTと書かれている)が、それは、DNA配列又はRNA分子核酸配列のRNA配列のいずれかを指すことができる。同様に、いくつかの配列は、記載される分子の現実の種類に応じて、RNA配列フォーマットで表されている(例えば、ウラシルについてUと書かれている)が、それは、dsRNAを含むRNA分子の配列、又は示されたRNA配列に対応するDNA分子の配列のいずれかを指すことができる。いずれにせよ、いずれかの置換を有して開示された配列を有するDNA分子及びRNA分子の両方が想定される。
【0314】
明確性のために、別個の実施形態に関して記載される本発明の特定の特徴が、単一の実施形態において組み合わせて提供されてもよいことが理解される。逆に、簡潔さのために、単一の実施形態に関して記載される本発明の種々の特徴が、別個に若しくはいずれかの好適なサブコンビネーションにおいて、又は適宜本発明のいずれかの他の記載された実施形態において提供されてもよい。種々の実施形態に関して記載される特定の特徴は、それらの要素がなければその実施形態が動作不能である場合を除き、それらの実施形態の必須の特徴と考えられるべきではない。
【0315】
本明細書中でこれまで記載された及び添付の特許請求の範囲でクレームされる本発明の種々の実施形態及び態様は、以下の実施例で実験的にサポートされる。
【実施例】
【0316】
これより以下の実施例が参照されるが、この実施例は、上記の記載と一緒になって、本発明のいくつかの実施形態を限定せずに説明する。
【0317】
全般的に、本明細書で使用される命名法及び本発明で利用する実験室手順は、分子技法、生化学的技法、微生物学的技法及び組換えDNA技法を含む。このような技法は、文献に十分に説明されている。例えば下記を参照。「Molecular Cloning: A laboratory Manual」、Sambrookら、(1989);「Current Protocols in Molecular Biology」、I〜III巻、Ausubel,R.M.編(1994);Ausubelら、「Current Protocols in Molecular Biology」、John Wiley and Sons、ボルチモア(Baltimore)、メリーランド州(Maryland)(1989);Perbal、「A Practical Guide to Molecular Cloning」、John Wiley & Sons、ニューヨーク(New York)(1988);Watsonら、「Recombinant DNA」、Scientific American Books、ニューヨーク(New York);Birrenら(編)「Genome Analysis:A Laboratory Manual Series」、1〜4巻、Cold Spring Harbor Laboratory Press、ニューヨーク(New York)(1998);米国特許第4,666,828号明細書;米国特許第4,683,202号明細書;米国特許第4,801,531号明細書;米国特許第5,192,659号明細書及び米国特許第5,272,057号明細書に示される方法論;「Cell Biology:A Laboratory Handbook」、I〜III巻、Cellis,J.E.編(1994);Freshney、Wiley−Lissによる「Culture of Animal Cells − A Manual of Basic Technique」、N.Y.(1994)、第3版;「Current Protocols in Immunology」、I〜III巻、Coligan J.E.編(1994);Stitesら(編)、「Basic and Clinical Immunology」(第8版)、Appleton & Lange、ノーウォーク(Norwalk)、コネチカット州(1994);Mishell及びShiigi(編)、「Selected Methods in Cellular Immunology」、W.H.Freeman and Co.、ニューヨーク(New York)(1980);利用可能なイムノアッセイは、特許文献及び科学文献に詳細に記載されている。例えば、米国特許第3,791,932号明細書;米国特許第3,839,153号明細書;米国特許第3,850,752号明細書;米国特許第3,850,578号明細書;米国特許第3,853,987号明細書;米国特許第3,867,517号明細書;米国特許第3,879,262号明細書;米国特許第3,901,654号明細書;米国特許第3,935,074号明細書;米国特許第3,984,533号明細書;米国特許第3,996,345号明細書;米国特許第4,034,074号明細書;米国特許第4,098,876号明細書;米国特許第4,879,219号明細書;米国特許第5,011,771号明細書及び米国特許第5,281,521号明細書を参照;「Oligonucleotide Synthesis」、Gait,M.J.編(1984);「Nucleic Acid Hybridization」、Hames,B.D.、及びHiggins S.J.編(1985);「Transcription and Translation」、Hames,B.D.、及びHiggins S.J.編(1984);「Animal Cell Culture」、Freshney,R.I.編(1986);「Immobilized Cells and Enzymes」、IRL Press,(1986);「A Practical Guide to Molecular Cloning」、Perbal,B.、(1984)及び「Methods in Enzymology」、1〜317巻、Academic Press;「PCR Protocols:A Guide To Methods And Applications」、Academic Press、サンディエゴ(San Diego)、カリフォルニア州(1990);Marshakら、「Strategies for Protein Purification and Characterization − A Laboratory Course Manual」、CSHL Press(1996);これらのすべては、参照により、本明細書中にすべて示されているが如く援用される。他の一般的な参考文献は、本明細書全体にわたって提供されている。これらの文献の中にある手順は当該技術分野で周知であると考えられるが、読者の便宜のために提供されている。上記文献に含まれるすべての情報は、参照により本明細書に援用される。
【0318】
実施例1
材料及び方法
胚カルスからのプロトプラスト単離
胚カルスをこれまでに記載されたようにして得る[Etienne,H.、Somatic embryogenesis protocol:coffee(Coffea arabica L. and C. canephora P.)、Protocol for somatic embryogenesis in woody plants.2005,Springer所収、167−1795頁]。手短に言えば、コーヒーの若葉を表面殺菌し、1cm
2片に切断し、2.26μM 2,4−ジクロロフェノキシ酢酸(2,4−D)、4.92μM インドール−3−酪酸(IBA)及び9.84μM イソペンテニルアデニン(iP)を添加した半分量半固体MS培地に1ヶ月間置く。次いで、外植片を4.52μM 2,4−D及び17.76μM 6−ベンジルアミノプリン(6−BAP)を含有する半分量半固体MS培地に、胚発生カルスの再生まで6〜8月間移す。胚発生カルスを、5μM 6−BAPを添加したMS培地で維持する。
【0319】
細胞懸濁培養液をこれまでに記載されたようにして胚発生カルスから生成する[Acuna,J.R.及びM.de Pena、Plant regeneration from protoplasts of embryogenic cell suspensions of Coffea arabica L. cv. caturra. Plant Cell Reports、1991.10(6):345−348頁]。胚発生カルス(30g/l)を、13.32μM 6−BAPを添加した液体MS培地に置く。フラスコを28℃の振盪培養器(110rpm)の中に置く。この細胞懸濁液を、十分に樹立するまで、2〜4週間ごとに継代培養/継代する。細胞懸濁培養液を、4.44μM 6−BAPを有する液体MS培地中で維持する。プロトプラストをこれまでに記載されたようにして生成する[Acuna,J.R.及びM.de Pena、Plant regeneration from protoplasts of embryogenic cell suspensions of Coffea arabica L.cv.caturra. Plant Cell Reports、1991.10(6):345−348頁;Yamada,Y.、Z.Q.Yang、及びD.T.Tang、Plant regeneration from protoplast−derived callus of rice(Oryza sativa L.).Plant Cell Rep、1986.5(2):85−8頁]及び総説として[Davey,M.R.ら、Plant protoplasts:status and biotechnological perspectives.Biotechnol Adv,2005.23(2):131−71頁]を参照。手短に言えば、およそ0.5グラムの細胞を5〜6日齢の懸濁培養液から収集し、プロトプラスト培地(マンニトール0.4M、NaCl、154mM;CaCl
2、125mM;KCl、5mM;MES−K、2mM)に溶解したCellulase Onozuka R−10(2%)、Pectolyase Y−23(0.2%)及びDriselase(0.2%)を含有するカルチャー中で4〜6時間、ゆっくりと撹拌しながらインキュベーションする。プロトプラストを洗浄し、濾過(70ミクロン(70μm))及びその後の40% Percoll(sigma)又は20%スクロースのクッションでの浮選により精製する。細胞密度を、血球計算器を使用して決定し、プロトプラストの生存率を0.01%(w/v)二酢酸フルオレセイン(FDA)を用いる染色及び蛍光顕微鏡での観察によって決定する。
【0320】
標的遺伝子
栽培品種ロブスタ(C.canephora)における標的遺伝子はα−D−ガラクトシダーゼ>chr4 chr4:20969056..20978218(+鎖)クラス=遺伝子長さ=9163(配列番号4 Cc04_g14280)である。
【0321】
sgRNA設計
sgRNAを、Park,J.、S.Bae、及びJ.−S.Kim、Cas−Designer:a web−based tool for choice of CRISPR−Cas9 target sites.Bioinformatics、2015.31(24):4014−4016頁由来の公開されているsgRNA設計ツールを使用して設計する。2つのsgRNAを、標的遺伝子の機能喪失を生じることができると考えられるDSBの機会を増やすためにα−D−ガラクトシダーゼ遺伝子に対して設計する。
【0322】
Cc04_g14280
GGTGAAGTCTCCAGGAACCG(配列番号13);
GCTTGGTCTAACACCTCCGA(配列番号14);
Cc04_g14280、Cc11_g00330及びCc02_g05490についての
図9A〜CにあるsgRNAも参照。
【0323】
sgRNAクローニング
利用したトランスフェクションプラスミドは、1、G7終結配列によって終結したCaMV35sプロモーターによって駆動されるeGFP;2、Mas終結配列によって終結したCaMV35sプロモーターによって駆動されるCas9(ヒトコドンに最適化済み);3、ガイド1のためにsgRNAを駆動するAtU6プロモーター;4、ガイド2のためにsgRNAを駆動するAtU6プロモーターを含む4つのモジュールから構成した。pCAMBIA又はpRI−201−AN DNA等のバイナリーベクターを使用することができる。
【0324】
ポリエチレングリコール(PEG)媒介プラスミドトランスフェクション。コーヒー及びバナナのプロトプラストのPEG−トランスフェクションを、Wangら(2015)[Wang,H.ら、An efficient PEG−mediated transient gene expression system in grape protoplasts and its application in subcellular localization studies of flavonoids biosynthesis enzymes.Scientia Horticulturae、2015.191:82−89頁]によって報告された戦略の改変版を使用して行った。プロトプラストをMMg溶液中で2〜5×10
6プロトプラスト/mlの密度に再懸濁した。100〜200μlのプロトプラスト懸濁液を、プラスミドが入っているチューブに加えた。プラスミド:プロトプラスト比は、形質転換効率に大きく影響を及ぼし、それゆえプロトプラスト懸濁液中のプラスミド濃度の範囲、5〜300μg/μlをアッセイした。PEG溶液(100〜200μl)をこの混合物に加え、10〜60分の範囲の種々の長さの時間にわたり23℃でインキュベーションした。PEG4000濃度を最適化し、200〜400mMマンニトール、100〜500mM CaCl
2溶液中の20〜80% PEG4000の範囲をアッセイした。次いで、このプロトプラストをW5中で洗浄し、80gで3分間遠心分離し、予め1ml W5に再懸濁し、暗所で23℃でインキュベーションした。24〜72時間のインキュベーション後、蛍光を顕微鏡法により検出した。
【0325】
電気穿孔
関連する遺伝子を標的とするPol2駆動GFP/RFP、Pol2駆動NLS−Cas9及びPol3駆動sgRNAを含有するプラスミドを、電気穿孔(BIORAD−GenePulserII;Miao及びJian 2007 Nature Protocols 2(10):2348−2353)を使用して上記細胞に導入した。500μlのプロトプラストを電気穿孔キュベットに移し、100μlのプラスミド(10〜40μg DNA)と混合した。プロトプラストを130V及び1,000Fで電気穿孔にかけ、室温で30分間インキュベーションした。1mlのプロトプラスト培地を各キュベットに加え、このプロトプラスト懸濁液を小さいペトリ皿の中へと注ぎ込んだ。24〜48時間のインキュベーションの後、蛍光を顕微鏡法により検出した。
【0326】
蛍光タンパク質発現細胞のFACSソーティング
プラスミド/RNA送達から48時間後に、細胞を収集し、そしてGFP/編集剤発現細胞について濃縮するためにフローサイトメーターを使用して蛍光タンパク質発現についてソートした[Chiang,T.W.ら、CRISPR−Cas9(D10A) nickase−based genotypic and phenotypic screening to enhance genome editing.Sci Rep,2016.6:24356頁]。この濃縮工程により、マーカー(例えば、抗生物質)選択を省略して、蛍光タンパク質、Cas9及びsgRNAを一過性に発現する細胞だけを収集することが可能になった。これらの細胞は、非相同末端結合(NHEJ)による標的遺伝子の編集及び対応する遺伝子発現の喪失についてさらに試験することができる。
【0327】
コロニー形成
蛍光タンパク質陽性細胞を一部サンプリングし、DNA抽出及びゲノム編集(GE)試験のために使用し、一部は液体媒体中において高希釈でプレーティングし、28〜35日間コロニー形成させた。コロニーを採集し、成長させ、2つのアリコートに分けた。1つのアリコートをDNA抽出及びゲノム編集(GE)試験並びにCRISPR DNAフリー試験(下記参照)のために使用し、他方をその状態が検証されるまで培養液中で保った。GE及びCRISPR DNAフリーであることを明確に示すものだけを次の段階へと選択した。
【0328】
暗所で20日後(GE分析のために分けてから、すなわち60日目から。従って全体で80日目)、グルコース(0.46M)及び0.4%アガロースに減らしたこと以外は同じ培地にコロニーを移し、低照度でインキュベーションした。6週間後、アガロースをスライスし、0.31Mグルコース及び0.2%ゲルライト(登録商標)を含むプロトプラスト培地に置いた。1ヶ月後、プロトコロニー(すなわちカルス)を再生培地(半分量MS+B5ビタミン、20g/lスクロース)へと継代培養した。再生された栄養分体を低照度で28℃の固体培地(0.8%寒天)に置いた。2ヶ月後、栄養分体を土壌に移し、80〜100%湿度の温室の中に置いた。
【0329】
遺伝子改変について及びCRISPRシステムDNAの不存在についてのスクリーニング
各コロニーから、DNAを、GFPソートしたプロトプラスト(任意の工程)のアリコートから、及びプロトプラスト由来のコロニーから抽出し、標的とした遺伝子に隣接しているプライマーを用いてPCR反応を実施した。陽性コロニーを植物を再生するために使用することになるため、コロニーをサンプリングするために測定を行う。Cas9−sgRNAを用いないこと以外は同じ方法に供したプロトプラスト由来の対照反応物を含め、これを野生型(WT)と考える。PCR産物を、次に、WTと比べて産物サイズの何らかの変化を検出するためにアガロースゲルで分離した。WT産物とは異なるPCR反応産物をpBLUNT又はPCR−TOPO(インビトロジェン(Invitrogen))にクローニングした。あるいは、シークエンシングを使用して、上記編集イベントを検証した。得られたコロニーを採集し、プラスミドを単離し、変異の性質を判定するために配列決定した。CRISPRシステムDNA/RNAを含まないことを検証するために、及びゲノムDNAレベルで変異を検出するために、対応するタンパク質のドメイン変更又は完全な喪失を生じると予測される変異を有するクローン(コロニー又はカルス)を全ゲノムシークエンシング用に選んだ。
【0330】
所望のGEを提示する陽性クローンを最初に顕微鏡法分析により(WTと比べて)GFP発現について試験した。次に、GFP陰性植物を、Cas9配列又はその発現カセットのいずれかの他の配列に特異的な(又は次世代シークエンシング、NGS)プライマーを使用するPCRによってCas9カセットの存在について試験した。上記構築物の他の領域も、もとの構築物の何もゲノムの中にはないことを確認するために試験できる。
【0331】
植物再生
配列決定し、標的遺伝子の発現を失ったと予測し、かつCRISPRシステムDNA/RNAを含まないことが判明したクローンを大量に再生するために繁殖させ、並行して実生を生成するために分化させた。この実生から、所望の形質を試験するために機能アッセイを実施する。
【0332】
溶解性アッセイ
ガラクトマンナンを測定することにより溶解性を判定する。ガラクトマンナン含有量の増加は、ガラクトマンナン対マンナン比の上昇、それゆえ溶解性の向上の指標である。ガラクトマンナンは、β−マンナナーゼ、α−ガラクトシダーゼ及びβ−ガラクトースデヒドロゲナーゼが関与する逐次的な酵素反応並びにD−ガラクトン酸及びNADHの放出によって間接的に測定することができる。NADHの放出は、分光光度法により340nmでアッセイされる(McCleary B.V.,1981、An Enzymic Technique for The Quantitation of Galactomannans in Guar Seeds、Lebensmittel−Wissenschaft & Technologie,14,56−59)。
【0333】
【表4】
【0334】
実施例2
非遺伝子組換えのゲノム編集プロトプラストのFACS濃縮及び単離
コーヒープロトプラストにトランスフェクションされるときCRISPR/Cas9複合体及びsgRNAが機能的であることを評価するために、1つのベクターの中の赤色蛍光マーカー(dsRed)、Cas9、GFP蛍光マーカー及びGFPを標的とするsgRNAからなる4レポーター−センサープラスミドを調製した(
図2を参照)。センサー1及びセンサー3は、同じsgRNAを有するが異なるU6プロモーターを有し、センサー2及びセンサー4は、同じsgRNAを有するが異なるU6プロモーターを有する。すべての4つのプラスミドを、ロブスタコーヒーノキ由来のプロトプラストに独立に送達し(
図2)、FACSを使用して緑色プロトプラスト対赤色プロトプラストの比を測定することによりこれらのプロトプラストにおけるCas9活性を確認した。GFPマーカーのゲノム編集の根拠は、sgRNAを欠くだけの対照プラスミドと比べたときの緑色対赤色比の低下として示される。
図2に示すように、すべての種類のレポーター−センサープラスミドは、Cas9がコーヒーにおいて活性であり、ポジティブな編集につながり、これによりGFPマーカーのシグナルをはっきりと低下させることを示す。
【0335】
次に、コーヒーゲノム内のα Dガラクトシダーゼ遺伝子を、Marracciniら、2005、前出、により提出され記載されている受入番号AJ887712.1を有する配列をクエリとして使用して、blastnにより特定した。
図3Aで見られるように、ロブスタコーヒーノキの公開されているゲノムの中のα Dガラクトシダーゼに対応する3つの遺伝子が検索された。99.2%という同一性のパーセンテージは、Cc04_g14280が、コーヒー豆の中のα Dガラクトシダーゼとして生化学的及び分子的に特徴づけられているAJ887712.1のホモログであることを示す(
図3B)。さらなる2つの配列は、60〜65%のより低い類似性を提示する(
図3B)。
【0336】
これらの遺伝子の役割に関するいくらかの見通しを得るために、公開されている発現データをこれらの3つの候補遺伝子(Cc04_g14280、Cc11_g00330、及びCc02_g05490)について検索した(
図3C)。コーヒーゲノムデータベースからの各遺伝子のRPKMデータは、Cc04_g14280が胚乳において強く発現されることを示し、これはコーヒー豆の溶解性におけるその重要性を強調する(
図3C)。しかしながら、他の2つの遺伝子がいまだ胚乳においてだけでなく他の組織においても中程度の発現を示すことをふまえて、すべての遺伝子を標的とするsgRNAを設計することとした。Cc04_g14280を、
図4Aに示すようにエクソン2及びエクソン3にある一対のユニークで特異的なsgRNAを用いて標的にした。この領域はPAMモチーフを特定することができた5’UTRに最も近接しているため、この領域を選択した。sgRNA対を設計するために、CRISPR RGEN Tool(www.rgenome.net/)を使用した。CRISPR RGENは、sgRNA配列を、与えられたゲノムにおけるそれら配列の品質及びオフターゲット活性の欠如に従って設計するアルゴリズムを採用する(
図9A〜
図9C)。示した2つのsgRNAを、mCherry、Cas9、及びU6 Pol3プロモーターによって駆動される2つのsgRNAを含有するプラスミドにクローニングした。同様にして、2つのさらなる候補遺伝子Cc02_g05490及びCc11_g00330について、sgRNAを設計し、プロトプラストトランスフェクションのためにプラスミドにクローニングした(
図5A〜
図5C;
図6A〜
図6C)。
【0337】
次に、CRISPR/Cas9複合体及び遺伝子Cc04_g14280を標的にするsgRNAをコーヒープロトプラスト系統FRT06に形質転換し(上記のとおりPEGを使用して)、そのような複合体を保有する細胞を蛍光活性化セルソーティング(FACS)により濃縮した。mCherryマーカーを使用して、トランスフェクション後3日目(3dpt)に、上記蛍光タンパク質、Cas9及び上記sgRNAを一過性に発現するトランスフェクションしたコーヒー細胞を分離し、ソートし、mCherry陽性コーヒープロトプラストを収集した。6dptに、5000個のソートしたプロトプラストからDNAを抽出した(Qiagen Plan Dneasy抽出キット)。
図4Aに示すプライマーを使用して感度向上のためにネステッドPCRを実施した。PCR1は、Phusionポリメラーゼ、2μl DNA鋳型、順方向及び逆方向1プライマーを使用する60度のアニーリング温度及び60秒の伸長時間の20サイクルで構成されていた。キットで供給されたHF緩衝液以外には添加剤は加えなかった。PCR2を、1μlのPCR1からのDNA鋳型及び順方向及び逆方向2プライマーを用いる20サイクルを使用して実施した。このアガロースゲルは、標的遺伝子において約250bpの欠失が起こったことを示す(
図4B)。
【0338】
PCR産物1及び2(
図4B)を製造者の手順書に従ってpGEM−Tにクローニングした。各ライゲーションの5つの別個のコロニーをシークエンシングによってスクリーニングした。ベクターNTI align Xプログラムを使用して配列比較を実施した。
図4Cに示すように、PCR産物1からの配列はWTと同じであったが、PCR産物2からのすべての5つのコロニーは、2つのsgRNA標的部位の間、PAM部位から3bp上流に位置する239bpの欠失を示した。配列決定したクローンを用いて、本発明者らは、レーン1(非ターゲティングsgRNAプラスミドpDK2029)及びレーン2(Cc04_g14280を標的とするsgRNA、プラスミドpDK2030)から両方のクローンについて最長のペプチド配列を予測した。この239bpの欠失は、赤色のボックスで示すように早期終止コドンを誘導した(
図4D〜
図4E)。
【0339】
候補遺伝子Cc04_g14280について上記した手順と同じ手順に従い、2つのさらなる候補遺伝子Cc02_g05490及びCc11_g00330を、それぞれ
図5A及び
図6Aに示すように、特異的sgRNAを用いて標的にした。両方の遺伝子、Cc02_g05490及びCc11_g00330について、各遺伝子を標的とする1つだけのsgRNAをトランスフェクションベクターにクローニングした。それゆえ、何らの遺伝子編集イベントもアガロースゲルでは見えないと予想した。
図5B及び
図6Bは、それぞれ遺伝子Cc02_g05490及びCc11_g00330についての標的領域の増幅を示す。
図5B及び
図6Bに示すバンドをpGEM−Tにクローニングし、配列決定した。ベクターNTI align Xプログラムを用いて実施した野生型配列との配列比較は、それぞれ
図5C及び
図6Cにある候補遺伝子Cc02_g05490及びCc11_g00330に沿ったインデルの存在を示した。
【0340】
並行して、プロトプラスト再生パイプラインを進んでいたさらなるmCherryプロトプラストをソートした。手短に言えば、ソートしたプロトプラストを液体媒体中において高希釈でプレーティングし、28〜35日間コロニー形成させた。コロニーを採集し、成長させ、2つのアリコートに分けた。1つのアリコートをDNA抽出及びゲノム編集(GE)試験並びにCRISPR DNAフリー試験のために使用し、他方をその状態が検証されるまで培養液中で保った。GE及びCRISPR DNAフリーであることを明確に示すものだけを次の段階へと選択した。
【0341】
暗所で20日後(GE分析のために分けてから、すなわち60日目から。従って全体で80日目)、グルコース(0.46M)及び0.4%アガロースに減らしたこと以外は同じ培地にコロニーを移し、低照度でインキュベーションした。6週間後、アガロースをスライスし、0.31Mグルコース及び0.2%ゲルライト(登録商標)を含むプロトプラスト培地に置いた。1ヶ月後、プロトコロニー(すなわちカルス)を再生培地(半分量MS+B5ビタミン、20g/lスクロース)へと継代培養した。(
図7A〜
図7E;
図8A〜
図8B)。
【0342】
図9A〜
図9Cに示すsgRNA配列及び構築物を使用する。
【0343】
本発明がその特定の実施形態と併せて説明されたが、多くの代替、改変及び変更が当業者に明らかであろうことは明白である。従って、添付の特許請求の範囲の趣旨及び幅広い範囲に入るすべてのそのような代替、改変及び変更を包含することが意図されている。
【0344】
本明細書で言及されるすべての刊行物、特許及び特許出願は、個々の刊行物、特許又は特許出願がそれぞれ具体的に及び個々に参照により本明細書に援用されると示されているのと同じ程度に、参照によりその全体が本明細書に援用される。加えて、本願でのあらゆる参考文献の引用又は特定は、そのような参考文献は本発明の先行技術として利用できるということの自白とは解釈されないものとする。節の見出しが使われているところでは、それらは、必ずしも限定するものではないと解釈されるべきである。