(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-522702(P2020-522702A)
(43)【公表日】2020年7月30日
(54)【発明の名称】プロセスプロダクトストリーム内の総塩化物含有量を測定するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
G01N 31/00 20060101AFI20200703BHJP
G01N 33/00 20060101ALI20200703BHJP
【FI】
G01N31/00 Q
G01N33/00 B
G01N33/00 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2019-566733(P2019-566733)
(86)(22)【出願日】2018年6月4日
(85)【翻訳文提出日】2020年1月24日
(86)【国際出願番号】GB2018051519
(87)【国際公開番号】WO2018224810
(87)【国際公開日】20181213
(31)【優先権主張番号】62/515,707
(32)【優先日】2017年6月6日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】1710412.6
(32)【優先日】2017年6月29日
(33)【優先権主張国】GB
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】パップ, スラヴァン
(72)【発明者】
【氏名】ウィルソン, ミッシェル テイラー
【テーマコード(参考)】
2G042
【Fターム(参考)】
2G042AA01
2G042BA10
2G042CB01
2G042CB03
2G042HA10
(57)【要約】
本発明は、プロセスプロダクトストリーム内の総塩化物含有量を測定する方法及びシステムに関する。特に、本発明は、ガスでの精製プロセスプロダクトストリームに対して、塩化水素及び有機塩化物含有量をその場で測定する方法に関する。この方法は、単一の試験方法での塩化水素及び有機塩化物含有量の測定を可能にし、精製プロセス内にて使用される塩化物ガードベッドに対する最適化されたパフォーマンス及びメンテナンススケジュールを可能にする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセスプロダクトストリームにおける総塩化物含有量のその場での測定に使用するシステムであって、
バルブを含むサンプルポートと、
塩化物試験機器と、
前記バルブと前記塩化物試験機器を接続するコネクタと、
を含み、
前記塩化物試験機器が、
HCl塩化物試験機器と、
触媒に関するRCl変換手段と、
HCl等価物塩化物試験機器と、
を含む、システム。
【請求項2】
前記サンプルポートが調整バルブを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記サンプルポートがニードルバルブを含む、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記サンプルポートが通気孔を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記サンプルポートが遮断バルブを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記塩化物試験機器の前記HCl塩化物試験機器と、前記触媒に関するRCl変換手段と、前記HCl等価物塩化物試験機器と、が直列に配置されている、請求項1から5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
ポンプ又は吸引装置を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
除湿装置を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載のシステムを利用する、プロセスプロダクトストリームサンプルの総塩化物含有量をその場で測定する方法であって、
1)試験されるサンプルをプロダクトストリームから取り出して、前記プロダクトストリームサンプルを提供するステップ、
2)前記プロダクトストリームサンプルを分析して、そのHCl含有量を測定するステップ、
3)前記プロダクトストリームサンプル内のいずれかのRClを変換して、HCl等価物を生成するステップ、
4)前記ステップ3)にて生成された前記HCl等価物を分析して、そのHCl等価物含有量を測定するステップ、及び
5)前記ステップ2)及び4)の前記HCl及びHCl等価物含有量の測定値に基づいて、前記プロダクトストリームサンプルの総塩化物含有量を計算するステップ、
を含む方法。
【請求項10】
前記プロダクトストリームは、ガス又は液体の形態であり、好適には、前記プロダクトストリームはガスである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記プロセス内の、原料の導入後、脱塩装置の後、触媒改質ユニット(CRU)の後、塩化物ガードの前若しくは後、影響を受けるいずれかの装置の前若しくは後、又は、最終生成物の排出若しくは保管の前の1つ又はそれ以上のいずれかの時点にて前記ステップ1)を行うことを含む、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
試験されるサンプルをプロダクトストリームから取り出して、プロダクトストリームサンプルを、サンプルポートを介して提供する前記ステップ1)を行うことを含む、請求項9から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記試験方法の対象となる前記プロダクトストリームサンプルの体積を記録することを含む、請求項9から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記方法は、0.05ppmvと50ppmvとの間、好適には、0.2ppmvと40ppmvとの間の、HCl含有量の定量的測定を提供する、請求項9から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記方法は、0.05ppmvと50ppmvとの間、好適には、0.2ppmvと40ppmvとの間の、HCl等価物の定量的測定を提供する、請求項9から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
1)遮断バルブを含むサンプルポートを提供し、塩化物試験機器を前記サンプルポートに取り付けるステップ、
2)前記遮断値を開くことと、続いて、プロダクトストリームサンプルが一旦取り出されたら、前記遮断バルブを閉じることと、を含む、試験されるサンプルをプロダクトストリームから取り出して、前記プロダクトストリームサンプルを、前記サンプルポートを介して提供するステップ、
3)前記プロダクトストリームサンプルを分析して、そのHCl含有量を測定するステップ、
4)前記プロダクトストリームサンプル内のいずれかのRClを変換して、HCl等価物を生成するステップ、
5)前記ステップ3)にて生成された前記HCl等価物を分析して、前記サンプル内のRCl含有量のHCl等価物含有量を測定するステップ、及び
6)前記ステップ3)及び5)の前記HCl及びHCl等価物含有量の測定値の合計に基づいて、総塩化物含有量を計算して、前記総塩化物含有量の測定値を提供するステップ、
を含む、請求項9から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
1)遮断バルブを任意に含むサンプルポートを提供し、前記サンプルポートに、塩化物試験機器と、HCl等価物試験機器と、を取り付けるステップ、
2)前記遮断バルブを開くことと、続いて、プロダクトストリームサンプルが一旦取り出されたら、前記遮断値を閉じることと、を任意に含む、試験されるサンプルをプロダクトストリームから取り出して、前記プロダクトストリームサンプルを、前記サンプルポートを介して提供するステップ、
3)前記プロダクトストリームサンプルを分析して、そのHCl含有量を測定するステップ、
4)前記ステップ3)からの前記プロダクトストリームサンプル内のいずれかのRClを続いて変換して、HCl等価物を生成するステップ、
5)前記ステップ4)にて生成された前記HCl等価物を分析して、前記サンプル内のRCl含有量の前記HCl等価物を測定するステップ、及び
6)前記ステップ3)及び5)の前記HCl及びHCl等価物含有量の測定値の合計に基づいて、総塩化物含有量を計算して、前記総塩化物含有量の測定値を提供するステップ、
を含む、請求項9から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記方法のステップ1から6)は、試験される単一のサンプルに順次行われる、請求項9から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記方法が、100バールGを超えない圧力にて行われる、請求項9から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記サンプルプロダクトストリームの圧力を、略大気圧力レベルまで下げることを含む、請求項9から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記サンプルプロダクトストリームを除湿装置に通すことを含む、請求項9から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
請求項1から8に記載のシステムの、精製プロセスでの使用。
【請求項23】
請求項9から21に記載の方法の、精製プロセスでの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロセスプロダクトストリーム内の総塩化物含有量を測定するシステム及び方法に関する。特に、排他的ではないが、本発明は、ガスでの精製プロセスプロダクトストリームに対して、塩化水素及び有機塩化物含有量の双方をその場で測定する方法に関する。この方法は、単一の試験方法での塩化水素及び有機塩化物の測定を可能にし、精製プロセス内にて使用される塩化物ガードベッドに対する最適化されたパフォーマンス及びメンテナンススケジュールを可能にする。
【背景技術】
【0002】
塩化物は通常、2つの方法にて精製プロセスプラントに導入される。まず、いくつかの原油源が、無機及び有機塩化物質の双方を、初期精製原料の一部として精製プロセスに運び入れ得る。一般的に、塩化水素及び塩化物塩などといった無機塩化物をこの初期原料ストリームから取り出すために、既知の脱塩プロセスが使用され、下流の触媒物質での腐食及び付着を防止している。有機塩化物の特定及び取り出しは、精製プロセスのこの段階では一般に行われないため、有機塩化物は、いずれのそのような脱塩装置の下流のプロダクトストリーム内に存在する場合がある。次に、塩化物は一般に、触媒改質ユニット(Catalytic Reforming Unit又はCRU)の時点にて精製プロセスに導入される。使用中、塩化物はCRU内に噴射され、触媒上に吸着し、所望する最適な生成物変換及び反応選択性に必要な酸機能を提供する。これらの噴射された塩化物はしかし、CRU内の触媒に恒久的に化学結合せず、結果として生じるプロダクトストリーム内に移動し、そこでCRUの下流に流れて、精製プロセスのさらなるステップを経る。これは、塩化水素がプロセスプロダクトストリームに導入される最も一般的な方法である。プロセスプロダクトストリームの塩化物含有量はしたがって、フィールド内の無機塩化物とも時に呼ばれる塩化水素(hydrogen chloride又はHCl)と、有機塩化物(organochloride又はRCl)と、の双方を含み得る。
【0003】
下流での働きにおけるHClの悪影響は、オーステナイトステンレス鋼の腐食、塩化アンモニウムの塩溶、圧力低下問題、及び、より一般的な、下流の配管及び他の装置の腐食を含み得る。そのため、これらの悪影響を回避するために、HCl吸着剤又は吸着性物質が使用される。これらの物質は通常、塩化物ガードベッド内に存在する。しかし、プロダクトストリーム内に有機塩化物が存在することは、水素処理又は改質反応器内などの、精製プロセスにおける下流にて塩酸が予期せずに生成され得ることを意味し、この塩酸は、精製装置の凝縮領域内に蓄積する。したがって、HCl塩化物ガードがプロセス内に利用されていたとしても、効果的に中和できない塩化物の予期しない濃度により、ダメージが残り得る。そのため、有機塩化物(総称して、RClとして呼ばれる)の、プロダクトストリームからの取り出しがも重要である。なぜならこれらは、HClへの変換後に、下流における各種の問題の原因になるからである。精製プロセスにおける有機塩化物に関して報告される最も一般的な問題として、
1)水素化処理装置及びスタビライザタワー内のNH
4Clの詰まりと、
2)ステンレス鋼製の配管及び交換器の、塩化物による応力腐食亀裂と、
の2つが挙げられる。
【0004】
これに加えて、プロダクトストリーム内に存在するいずれかの有機塩化物は、下流での触媒被毒及び最終生成物仕様に対する問題を引き起こし得る。例えば、ニッケル、銅、及びパラジウムに基づく触媒は、塩化物イオンによる急速な失活を非常に起こしやすい。その代わりに、エンドユーザは、最終精製生成物を燃料として使用する場合など、その最終精製生成物がいずれの塩化物含有量を含まないことを要求する場合がある。
【0005】
精製プロセスのプロダクトストリーム内の塩化物の存在に関連する問題を考慮すると、無機及び有機塩化物の種(つまり、HCl及びRCl)の双方の監視及び取り出しの必要性が明白である。
【0006】
現在では、多くの精製作業が、HClのみの取り出しに集約されている。これは、有機塩化物の存在に関連する問題が克服されないことを意味する。HClは、HClのみの塩化物ガードにより取り出される場合がある。しかし、そのような塩化物ガードはまた、特に酸性化塩化物ガードが利用される場合に、有機塩化物の創出をもたらす。しかし、総塩化物ガードシステムの利用を通して、精製プロセス及びプラントの装置を、先に強調した欠点から保護する、総塩化物(つまり、HCl及びRClの双方)を取り出す方法が知られている。総塩化物ガードシステムは通常、触媒(単一又は複数)物質の混合物及びモレキュラーシーブを利用する。HClを取り出すことができる物質が通常、第1のプロセスベッドにて利用され、RClを取り出すことができる物質が、個別の、第1のプロセスベッドの下流の第2のプロセスベッドにて利用される。しかし、これらの総塩化物ガードシステムの最適なパフォーマンスのためには、ベッドに含まれる物質が、HCl及びRCl物質と飽和して、機能できない又は要求される程度に機能しなくなると共に、補充されることが重要である。通常、双方の種類の塩化物ガードのパフォーマンスは、塩化物ガードの下流の、HClのみの形態での、塩化物ブレークスルーを測定することにより評価される。
【0007】
現在では、精製装置が、(HClのみ又はHCl及びRClの組み合わせの取り出しのいずれかのための)塩化物ガード技術を利用していても、これらは、それらの塩化物ガードベッドのパフォーマンスを適切に評価する能力を有しない。無機塩化物(HCl)を監視することが良好に理解されている一方で、有機塩化物(RCl)及び総塩化物含有量は通常測定されないため、下流の処理及び装置に対するコストが膨大となる。その結果、多くの精製者は、プロダクトストリーム内のHCl含有量のみを測定することとなる。これは、塩化物のCRUへの導入により生じ得る、又は、酸性化塩化物ガードにより創出され得るRCl含有量を特定しない。これは、精製者への警告なく、塩化物ガードの下流での腐食及び付着を引き起こす。したがって、精製プロダクトストリーム内の無機及び有機塩化物の双方を適切に検出して定量化できる方法論を有することが非常に重要である。現在では、プロセスプラントのオペレータは、HCl試験方法を、ガス及び/又は液体系のHCl測定用のDraeger(商標)チューブなどを介して、精製プロセスサイト上のその場で利用し得る。しかし、そのような方法は、有機塩化物の存在を試験しない、又は、分析されたプロダクトストリームの総塩化物含有量の測定値を提供しない。そのような方法は、RCl物質の存在を考慮しないため、したがって不適切であるとみなされる。その結果、この方法は、例えば、(下流プロダクトストリーム内の塩化物ブレークスルーの前に)塩化物ガードの補充がいつ必要になり得るかを推定すること、又は、総(HCl及びRClの組み合わせ)塩化物ガードシステムにおいて使用される、HClに対するRCl取り出し物質の量に関連する最適なプロセス設計を実現することの手段として信頼することはできない。
【0008】
その代わりに、プロセスプラントのオペレータは、プロセスガス及び/又は液体のプロダクトストリームからサンプル物質を取り出す場合があり、これらの取り出されたサンプルが、分析実験室を介してのオフサイトでの分析に送られ得る。この場合、サンプル分析の最も一般的な方法は、RClについては炎イオン化クロマトグラフィであり、HClについては電位差測定分析である。しかし、そのような分析では、臭化物及びフッ化物といった他のハロゲン含有化合物の干渉の可能性や、硫黄の種からの干渉の可能性もある。これにより、異常に高い測定が引き起こされ得る。そのような方法の利用はしたがって、総塩化物の存在の過大評価を時に導く。これは、塩化物ガード物質が必要以上に頻繁に変化することを意味し、不必要なメンテナンス及びプロセスプラントのダウンタイムを引き起こす。これに加えて、そのようなオフサイト分析からデータを取得することは、プロセスプラントのオペレータに返却されるまでに多くの時間、時には多くの日数をも要する。したがってその情報は過去のものとなり、精製プロセスの現在の稼働状態を表さない。
【0009】
本発明の好適な実施形態は、従来技術の上記の欠点の1つ又はそれ以上を克服しようと試みる。特に、本発明の好適な実施形態は、精製者/プロセスプラントのオペレータが、プラントの望ましくないダウンタイムを最小化し、無機及び有機塩化物の双方を塩化物ガードにより最大限に取得することを確かにし、先に強調した問題を回避できるよう、総塩化物含有量の存在をその場で試験する、改善された方法を提供しようと試みる。これに加えて、そのような方法での使用に適したシステムが提供される。
【0010】
定義
「HCl」は塩化水素を意味し、本技術において無機塩化物とも呼ばれる。
「RCl」は、いずれかの有機塩化物質を意味する。
「総塩化物」は、HCl及びRClの形態にて存在する塩化物の総濃度を意味する。好適には、RClの量は、「HCl等価物」として表される。例えば、3ppmvの三塩化有機塩化物質が存在する場合、これは、9ppmvのHClの等価物として表されてよい。
「前(before)」という語句の使用は、関連する上流のプロセスステップに関する。「後(after)」という語句の使用は、関連する下流のプロセスステップに関する。
「その場で」という語句は、サンプルが、行われる試験のためにオフサイトで取り出されないよう、試験のために取り出すサンプルに近位の、対象プロセスプラントでのことを意味する。
「塩化物ガード」という語句は、プロセスの必要性に依存して、HClのみの塩化物ガードと、HCl及びRClの総塩化物の塩化物ガードシステムと、の双方を意味することを意図する。
「ppmv」という略語は、体積あたりの百万分の1(parts per million by volume)を表す。
【発明の概要】
【0011】
本発明の第1の態様によると、プロセスプロダクトストリームにおける総塩化物含有量をその場で測定することに使用するシステムが提供される。
【0012】
プロセスプロダクトストリームは、塩化物を含むいずれのストリームであってよく、特に、脱塩装置、塩化物ガード、CRU、又は塩化物に影響を受ける装置の上流又は下流のストリームであってよい。塩化物ガードは、1つ又はそれ以上の吸着剤容器内に配置された1つ又はそれ以上の塩化物吸着剤を含んでよい。システムはまた、吸着剤容器の間に使用されてよい。
【0013】
好適には、システムは、サンプルポートを含む。1つ又はそれ以上のサンプルポートが存在してよい。最も好適には、これらの1つ又はそれ以上のサンプルポートは、プロセスプラントのインフラストラクチャに恒久的に組み込まれており、プロセスプロダクトストリームへのアクセスを都合よく可能にする。恒久的に組み込まれたサンプルポートの提供により、プロダクトストリームサンプルを取り出す際のユーザの安全性を高めることが可能となる。最も好適には、サンプルポートが、プロセスプラントのプロダクトストリームフローとバルブを介して流体連結にあるよう、各サンプルポートは、バルブを適切に含む。この実施形態では、1つ又はそれ以上のサンプルポートの恒久的な組み込みが、バルブを介して適切に実現され得る。
【0014】
1つ又はそれ以上のサンプルポートは、総塩化物含有量の測定に有用となり得る、プロセスプラントのインフラストラクチャ内のいずれのポイントに提供されてよい。特に、システムは、サンプルの取り出しの方法のステップに関連して、以下に特定する地点に、1つ又はそれ以上のサンプルポートを含んでよい。より具体的には、システムは、1つ又はそれ以上のサンプルポートを、CRUの下流と、塩化物ガードの上流と、に提供することを含んでよい。そのようなシステムは、精製プロセスでの使用に特に適している。その代わりに、システムは、1つ又はそれ以上のサンプルポートを、塩化物に影響を受けるいずれかの装置の上流に提供することを含んでよい。
【0015】
好適には、1つ又はそれ以上のサンプルポートは、取り出されたプロセスプロダクトストリームの逆流を防止する調整バルブを含む。より好適には、調整バルブは、プロセスプロダクトストリームから取り出されるプロセスプロダクトストリームの量を制御することを可能にする。
【0016】
加えて、又はその代わりに、1つ又はそれ以上のサンプルポートは、ニードルバルブを含む。これは好適に、取り出されて試験されるサンプルの量が、試験に適した量であるよう、プロセスプロダクトストリームから取り出されるプロダクトストリームの量を相対的に少なくできる。
【0017】
これに加えて、1つ又はそれ以上のサンプルポートは、通気孔を含んでよい。好適には、通気孔は、端部が開口したパイプの形態であり、より好適には、端部が開口したフレキシブルパイプである。この通気孔は、圧力を解放でき、試験されるプロセスと共に、試験方法がその場で行われる際のユーザの安全性を確かにする。これは、特にシステムが高い圧力及び高い温度にて使用される場合の、システムの重要な安全性機能である。好適には、通気孔は、端部が開口したフレキシブルパイプの形態にて提供される。その遠位端は、いずれかのプロダクトストリームサンプルが、システムの使用中にユーザから十分離れて通気孔から排出されるように向けられてよい。
【0018】
加えて、又はその代わりに、1つ又はそれ以上のサンプルポートは、遮断バルブを含む。これは、サンプルポートへの、プロダクトストリームのフローのオン及びオフの切り替えを可能とする。つまり、プロダクトストリームの、サンプルポートへの侵入の可否を、オペレータの決定にて行うことができる。これは、以下に記載する試験方法が行われる際に、プロセスプロダクトストリームがサンプルポートのみを通過し得るよう、サンプルポートが、プロセスプラントのインフラストラクチャに恒久的に組み込まれて提供されている場合に特に好適である。
【0019】
好適には、システムは、塩化物試験機器を含む。適切には、塩化物試験機器は、試験されるプロダクトストリームサンプルの塩化物含有量を、以下に記載する方法にしたがって定量化可能に測定することができる。塩化物試験機器は、いずれかの既知の手段により提供され得る。しかし、本システムのその場でという特徴により、HCl塩化物試験機器は、その場での使用に適したものでなくてはならない。適した塩化物試験機器は、pHインジケータなどの、既知の、化学物質を含む試験チューブを含む。好適には、塩化物試験機器は、携帯することを考慮した、適したサイズを有する。いくつかのシステムでは、塩化物試験機器は携帯型であることが好適である。いくつかの好適な実施形態では、塩化物試験機器は、使い捨てに設計されている。
【0020】
好適には、システムは、コネクタを介して1つ又はそれ以上のサンプルポートに取り外し可能に接続される塩化物試験機器を含む。適切には、コネクタは、サンプルポートに恒久的に固定されてよい。使用中、コネクタは、プロダクトストリームサンプルがサンプルポートから塩化物試験機器内に流れることを可能にする。そのため、コネクタには、第1の近位の、サンプルポート係合端と、第2の遠位の、塩化物試験機器係合端と、が提供される。好適には、コネクタは、フレキシブルチューブにより提供される。最も好適には、塩化物試験機器を、試験方法の開始時及び終了時に容易に取り付けることができ、取り外すことができるよう、コネクタの、第2の遠位の、塩化物試験機器係合端は、塩化物試験機器に取り外し可能に接続される。これは、HCl塩化物試験機器が「使い捨て」という特徴を有し、取り外されて交換される必要がある場合に好適である。
【0021】
コネクタと塩化物試験機器との間の係合は、いずれかの既知の手段を介して可能である。しかし、関連する組み立てが容易なプッシュフィット係合が好適である。
【0022】
好適には、システムの塩化物試験機器は、直列に配置された、RCl変換手段と、HCl等価物塩化物試験機器と、を伴うHCl塩化物試験機器を含む。その代わりに、システムは、RCl変換手段と、HCl等価物塩化物試験と、に並列なHCl塩化物試験機器を含んでよい。後者の場合、システムが、2つ又はそれ以上のサンプルポートを含み、これらのサンプルポートは、使用中に、オペレータが、プロセスプラント内の異なる地理的位置に再配置する必要なく、以下に記載する方法を行うことができるよう、相対的に互いに近くに間隔があけられていることが好適である。
【0023】
適切には、塩化物試験機器のRCl変換手段は、いずれかの既知の機器により実現され得る。適切には、この変換手段は、RClをHCl等価物に変換する触媒物質を含む。そのため、変換手段は好適には、触媒に関するRCl変換手段である。
【0024】
本システムに使用する塩化物試験機器、HCl塩化物試験機器、及びHCl等価物塩化物機器は、同じ種類であってもよいし、異なる種類であってもよい、ということが、当業者により理解されるであろう。HCl塩化物試験機器及びHCl等価物塩化物試験機器の双方は、同じ種類であることが好適である。
【0025】
加えて、このシステムは、ポンプ又は吸引装置を含んでよい。好適には、このシステムは、吸引装置を含む。最も好適には、これは、塩化物試験機器に取り外し可能に接続されている。このポンプ又は吸引装置は、既知の体積のサンプルプロダクトストリームを、塩化物試験機器を通して吸引するために利用される。適した吸引装置は、本技術において既知である。
【0026】
加えて、このシステムは、除湿装置を任意に含んでよい。塩化物試験機器が湿度に影響を受ける場合、除湿装置を含めることは特に好適である。精製プロセスでの使用に適した既知のHCl塩化物試験機器は通常、20℃での、0%〜80%の相対湿度の湿度範囲にて作動するため、除湿装置の使用が、システムでの使用に選択されたプロセス条件及びHCl塩化物試験機器に基づく実際の必要性について評価され得る。
【0027】
本発明の第2の態様によると、プロセスプロダクトストリームサンプルの総塩化物含有量をその場で測定する方法が提供される。この方法は、
1)試験されるサンプルをプロダクトストリームから取り出して、プロダクトストリームサンプルを提供するステップ、
2)プロダクトストリームサンプルを分析して、そのHCl含有量を測定するステップ、
3)プロダクトストリームサンプル内のいずれかのRClを変換して、HCl等価物を生成するステップ、
4)ステップ3)にて生成されたHCl等価物を分析して、そのHCl等価物含有量を測定するステップ、及び
5)ステップ2)及び4)の、HCl及びHCl等価物含有量の測定値の合計に基づいて、プロダクトストリームサンプルの総塩化物含有量を計算するステップ、
を含む。
【0028】
この方法は、上述するように、システムを利用して行われることが最も都合よい。
【0029】
この方法は、精製プロセスでの使用に特に適している。しかし、この方法は、塩化物質による腐食から装置の下流の触媒を保護することが好適である場合など、プロダクトストリーム内の総塩化物を監視することが望ましい他のプロセスでの使用に適する場合がある。より具体的には、この方法は、塩化物ガードが利用され、同一の付随する、総塩化物を監視することの最適化が望ましいプロセスにおいて特に有用となるであろう。
【0030】
プロダクトストリームは、ガス又は液体の形態であってよい。好適には、プロダクトストリームはガスである。
【0031】
適切には、精製プロセスの場合は特に、この方法は、原料の導入後にステップ1)を行うことを含む。これにより、いずれかの他の処理ステップが行われる前に、原料の総塩化物含有量が認められ得る。これにより精製者は、任意の初期処理ステップが原料に必要か否かを評価して、原料のプロダクトストリームを最も効果的に処理することができる。
【0032】
加えて、又はその代わりに、精製プロセスの場合、この方法は、脱塩装置の後に、ステップ1)を行うことを含む。これにより精製者は、脱塩装置がHClの取り出しを適切に行わなかったことを示すであろう、脱塩装置からの、いずれかのHClの溶離を測定することができる。加えて、そのような方法はまた、プロセス内の下流でのこれに続く取り出しを必要とし得るいずれかのRClを特定する。
【0033】
加えて、又はその代わりに、そして最も好適には、精製プロセスの場合、この方法は、CRUの後にステップ1)を行うことを含む。これにより精製者は、塩化物のCRUへの噴射により、プロダクトストリームに侵入した可能性のあるHCl及びRClの双方の存在を計算することができる。プロセスのこの段階での、RCl及びHCl塩化物含有量の双方の測定は、特に好適である。なぜならこれにより精製者は、下流の塩化物ガードの設計を最適化できるからである。例えば、有機塩化物(RCl)レベルが、CRUからの溶離において相対的に高い場合、精製者は、HCl取り出し物質のレベルに対して、高いレベルのRCl取り出し物質を利用するよう、塩化物ガードシステムを変更できる。塩化物ガードの最適化により、プロセスプラントのメンテナンス及びダウンタイムの頻度が下がり、同時に、HCl及びRCl取り出し物質のみを必要なだけ利用することに関連して、コストを削減することとなる。HCl含有量のみの既存の試験方法を使用する場合、そのようなプロセスの最適化は実現しない。
【0034】
加えて、又はその代わりに、この方法は好適には、塩化物ガードの前又は後にステップ1)を行うことを含む。試験されるプロダクトストリームサンプルが、塩化物ガードの下流にて取り出された場合、オペレータは、例えば、塩化物の追加的な取り出しが、任意の処理ステップとして必要である場合に、又は、塩化物ガードがメンテナンスを直ちに必要とする場合に、塩素ガードがその機能を適切に行っているかについてアクセスできる。それらを理由として、塩化物ガードの下流にてステップ1)を行うことを含む方法は、特に好適であり得る。
【0035】
加えて、又はその代わりに、この方法は、影響を受けるいずれかの装置の前又は後にステップ1)を行うことを含んでよい。例えば、塩化物の存在が、その装置のパフォーマンスに悪影響をもたらすであろう場合に、試験されるサンプルは、影響を受ける触媒ベッドの上流にて取得されてよい。いくつかのプロセスでの、影響を受ける装置の前にて特定される、許容しがたいほど高いレベルの塩化物の存在により、精製者/オペレータは、必要に応じて処理ステップを調整して、影響を受ける装置を保護し得るであろう。その代わりに、影響を受ける装置に入る、又は、影響を受ける装置から出る塩化物含有量を監視することにより、精製者/ユーザは、影響を受ける装置のメンテナンスの必要性を良好に評価することが可能となり得る。影響を受ける装置の前又は後にステップ1)を行うことを含む方法は、精製プロセスにおいて特に好適となり得る。
【0036】
加えて、又はその代わりに、この方法は、最終生成物の排出又は保管の前にステップ1)を行うことを含む。プロセスからの最終生成物の排出又は最終生成物の保管時、又はその直ぐ上流での、プロダクトストリームサンプルの取り出しは、例えば、最終プロダクトストリームが、その意図する最終用途に対して許容できる低いレベルの塩化物を含むか否かを評価するために、好適となり得る。
【0037】
好適には、この方法は、試験されるサンプルをプロダクトストリームから取り出して、プロダクトストリームサンプルを、サンプルポートを介して提供するステップ1)を行うことを含む。サンプルポートの特徴は、システムに関連して上記に開示されている。なぜなら、このシステムは、ここに提供される方法を行うことの使用に適しているからである。
【0038】
適切には、本方法の各サンプルポートは、プロセスのインフラストラクチャに恒久的に組み込まれたバルブを含む。そのため、この方法のステップ1)は好適には、試験されるサンプルをプロダクトストリームから取り出して、プロダクトストリームサンプルを、サンプルポート内のバルブを介して提供することを含む。このバルブは、プロセスプロダクトストリームの一部が、メインプロセスプロダクトストリームから流出することを可能にする。
【0039】
好適には、この方法は、試験方法の対象となるプロダクトストリームサンプルの体積を記録することを含む。これは、この試験方法からのデータを、特に有用である「体積あたり」の単位にて表すことを可能にする。試験サンプルの体積を記録することは、サンプルポートの調整バルブを介して適切に実現されてよい。既知の(及び、したがって記録された)体積のプロダクトストリームサンプルがステップ1)にて提供されるよう、この調整バルブは、プロセスプロダクトストリームから取り出されるプロセスプロダクトストリームの量を制御することを可能にする。その代わりに、この試験方法の対象となるプロダクトストリームサンプルの体積は、さらに後述するように、塩化物試験機器を介して記録され得るか、又は、いくつかの他の手段により記録され得る。この場合、この試験方法の対象となるプロダクトストリームサンプルの体積を記録するステップは、方法のステップ1)とは明確に異なる追加的なステップである。
【0040】
この方法は好適には、サンプルポートが通気孔を含み、この試験方法の使用中にユーザの安全性を保証するシステムを使用して行われる。そのため、この方法は好適には、通気孔を通じてのいずれかの解放を、ユーザから離れた方向に向けるよう、最も好適には、いずれかの解放を、ユーザの風下に向けるよう、通気孔を位置決めする最初のステップを含む。
【0041】
上述するように、塩化物試験機器は、使い捨てに設計されることが好適である。この実施形態では、サンプルポートは好適には、遮断バルブを含む。したがって、この方法のステップ1)の一部として(又は、の前に)、サンプルポートの遮断値を開くステップを、この方法が含むことが好適となり得る。この方法はまた、サンプルポートの遮断値を閉じるステップを含んでよい。
【0042】
この方法は必然的に、上述するように、塩化物試験機器を利用して、方法のステップ2)、3)、及び4)を行う。
【0043】
好適には、この方法は、0.05ppmvと50ppmvとの間、より好適には、0.2ppmvと40ppmvとの間の、HCl含有量の定量的測定を提供する。そのため、この目的を実現するために、HCl塩化物試験機器が選択される。そのような方法は、精製プロセスでの使用に特に適している。他のプロセスでは、塩化水素の含有量は変動し得、適切なHCl塩化物試験機器の選択は、これに応じて変動し得る。
【0044】
好適には、この方法は、0.05ppmvと50ppmvとの間、より好適には、0.2ppmvと40ppmvとの間の、HCl等価物の定量的測定を提供する。そのため、この目的を実現するために、HCl等価物塩化物試験機器が選択される。そのような方法は、精製プロセスでの使用に特に適している。他のプロセスでは、有機塩化物の含有量は変動し得、適切なRCl塩化物試験機器の選択は、これに応じて変動し得る。
【0045】
適切には、例えば、この方法にて利用される塩化物試験機器が、使い捨てに設計されている場合、この方法は、試験方法を行う前に、塩化物試験機器を取り付ける任意のステップを含んでよい。同様に、この方法は好適には、この試験方法の終了時に、塩化物試験機器を取り外すステップを含んでよい。取り出し可能な/使い捨ての塩化物試験機器がこの方法にて利用され、サンプルポートが遮断バルブを含む場合、ユーザの安全性が向上する。したがって、この方法は好適には、以下の、
1)遮断バルブを含むサンプルポートを提供し、塩化物試験機器をそのサンプルポートに取り付けるステップ、
2)遮断値を開くことと、続いて、プロダクトストリームサンプルが一旦取り出されたら、遮断値を閉じることと、を含む、試験されるサンプルをプロダクトストリームから取り出して、プロダクトストリームサンプルを、そのサンプルポートを介して提供するステップ、
3)プロダクトストリームサンプルを分析して、そのHCl含有量を測定するステップ、
4)そのプロダクトストリームサンプル内のいずれかのRClを変換して、HCl等価物を生成するステップ、
5)ステップ4)にて生成されたHCl等価物を分析して、サンプル内のRCl含有量のHCl等価物含有量を測定するステップ、及び
6)ステップ3)及び5)のHCl及びHCl等価物含有量の測定値の合計に基づいて、総塩化物含有量を計算して、総塩化物含有量の測定値を提供するステップ、
を含み得る。
【0046】
RClをHCl等価物に変換することにより、本方法は、RCl及び総塩化物含有量の計算が、都合よくその場で行われることを可能にする。この方法の利点の1つは、それがその場で、プロセスと同時且つリアルタイムに行われることである。これまでは、プロダクトストリームのRCl含有量を計算する方法は、その場で行われる方法での使用に適していなかった。サンプルのRCl含有量がHCl等価物に変換されると、この方法のステップ5)にしたがってHCl等価物が測定され得る。
【0047】
最も好適には、この方法は、RClからのHCl等価物の計算が、ステップ2)にて取り出された同じプロダクトストリームサンプルに順次行われるよう、この方法のステップ3)と、これに続いて進む(RClからHClへの変換手段を介しての、RClからHClへの変換のための)ステップ4)及び5)の対象となるプロダクトストリームサンプルを含む。しかし、代わりとなる方法では、2つ(又はそれ以上)のサンプルが、ステップ2)にて平行して取得され得、第1の平行サンプルがステップ3)の対象となり、第2の平行サンプルがステップ4)及び5)の対象となる。
【0048】
ステップ3)でのHCl含有量と、ステップ5)でのRClのHCl等価物含有量と、の双方の計算が行われると、ステップ3)及び5)のHCl含有量の計算値の合計に基づく、サンプルの総塩化物含有量の計算が、この方法のステップ6)に示すように導き出され得る。
【0049】
これに加えて、上記説明より認められるように、HClと、RClから導き出されるHCl等価物と、の量は、この方法を行うことから判定される。これは、上記に触れたように、有機塩化物及び無機塩化物の取り出しが、独立して実現され得る場合の、総塩化物ガードシステムの最適化に関連して好適である。
【0050】
この方法が、試験されるサンプルを、サンプルポートを介して取り出すステップを含む場合、ステップ3)及びステップ5)の双方においてHCl含有量を計算する手段は、サンプルポートに直接取り外し可能に接続されてよい。明確には、3)と、5)と組み合わせての4)と、の方法のステップが平行して行われる場合、ステップ3)にてHCl含有量を計算する手段は、1つのサンプルポートに取り外し可能に接続され得、ステップ5)にてHCl等価物含有量を計算する手段は、平行するサンプルポートに取り外し可能に接続され得る。しかし、より好適には、1から6)の方法のステップは、試験される単一のサンプルに順次行われる。そのように、この方法は以下の、
1)(遮断バルブを任意に含む)サンプルポートを提供し、そのサンプルポートに、塩化物試験機器を取り付け、HCl等価物試験機器を取り付けるステップ、
2)(遮断バルブを開くことと、続いて、プロダクトストリームサンプルが一旦取り出されたら、遮断値を閉じることと、を任意に含む)試験されるサンプルをプロダクトストリームから取り出して、プロダクトストリームサンプルを、サンプルポートを介して提供するステップ、
3)プロダクトストリームサンプルを分析して、そのHCl含有量を測定するステップ、
4)ステップ3)からの、そのプロダクトストリームサンプル内のいずれかのRClを続いて変換して、HCl等価物を生成するステップ、
5)ステップ4)にて生成されたHCl等価物を分析して、サンプル内のRCl含有量のHCl等価物を測定するステップ、及び
6)ステップ3)及び5)のHCl及びHCl等価物含有量の測定値の合計に基づいて、総塩化物含有量を計算して、総塩化物含有量の測定値を提供するステップ、
を含み得る。
【0051】
好適には、この方法は、100バールGを超えない圧力にて行われる。なぜなら、この圧力レベルを超えると、塩化物試験機器にダメージを与える場合があり、塩化物試験機器からの測定値の精度もまた、悪影響を受ける場合があるからである。
【0052】
この方法を行ういくつかの実施形態では、プロダクトストリームは、取り出されたプロダクトストリームサンプルが、サンプルポート及び塩化物試験機器を自力で通過するのに十分な圧力下にあるプロセスプラントから排出されてよいことが想到される。しかし、その代わりに、そしてより好適には、この方法は、サンプルプロダクトストリームの圧力を、略大気圧力レベルまで下げることを含む。このように圧力を下げることは、安全性における利点を有し、上記の、プロセスプラントとサンプルポートとの間に自然に生じる圧力の低下により実現されてよいし、又は、既知の圧力調整手段が利用されてよい。したがって、任意に、そして最も好適には、プロダクトストリームサンプルが、この方法を行うために使用される機器を自力で通過するのに十分な圧力でのそれでない場合、この方法は、ステップ1)でのプロダクトストリームサンプルの吸引に使用するポンプ又は吸引装置を含む。システムに関連して上述するように、好適には、HCl塩化物試験機器にて一般に使用される吸引装置が使用される。
【0053】
任意に、この方法は、サンプルプロダクトストリームを除湿装置に通すことをさらに含む。塩化物試験機器が湿度に影響を受ける場合、このステップを含めることは特に好適である。本方法での使用に適した既知のHCl塩化物試験機器は通常、20℃での、0%〜80%の相対湿度の湿度範囲にて作動するため、この試験方法での除湿装置の使用は、プロダクトストリームの生成物が、プロセスにおいてこの作動範囲を外れる湿度を有する場合に特に好適である。
【0054】
本発明の一態様に関連して説明する特徴が、本発明の別の態様においても等しく適用可能であり得ることが認められるであろう。例えば、本発明のシステムの態様に関連して説明する特徴は、本発明の方法の態様に等しく適用可能であり得、その逆もまたしかりである。
【0055】
本発明の実施形態を、いずれの制限を示唆しない例として、添付の図面を参照して以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【
図1】
図1は、プロセスプラント上のその場での、システムの特徴を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
本発明の一実施形態に係るシステムを利用する、精製プロセスプロダクトストリーム内の総塩化物含有量をその場で測定する方法が提供され、これを以下により詳細に、添付の図面を参照して説明する。
【0058】
プロセスプラント(1)のプロダクトストリームフローからの、プロダクトストリームから試験されるガスのプロダクトストリームサンプルの取り出しは、サンプルポート(3)を介して実現される。サンプルの取り出しは、精製CRU(図示せず)の下流、及び塩化物ガード(図示せず)の上流にて生じる。総塩化物含有量のために試験されるプロダクトストリームサンプルがしたがって提供される。
【0059】
サンプルポート(3)は、精製プロセスプラントシステム内に恒久的に位置するバルブ(5)を含む。精製者/オペレータが、プロセスプロダクトストリーム内の生成物スチームの総塩化物含有量を測定しようとする場合、バルブ(5)が開に設定され、プロダクトストリームの制御されたフローが、プロセスプラント(1)を、バルブ(5)を介して出ることができ、生成物スチームのサンプルを提供する。バルブ(5)は、プロダクトストリームがプロセスプラント(1)を流出することのみを可能とし、逆流することが防止されている。
【0060】
サンプルプロダクトストリームフローの制御は、はじめのバルブ(5)に関連して、調整バルブ(7)により、下流の塩化物試験機器に負荷を過剰に与えないよう、サンプルプロダクトストリームの体積が制限され得るように実現される(いくつかの場合では、これは、ニードルバルブ(図示せず)と組み合わせて使用され、非常に少量のプロダクトストリームサンプルのみが塩化物試験機器(13)に入ることを確かにする)。
【0061】
サンプルポート(3)にはまた、通気孔(9)も提供され、精製者がこの方法を行う際のユーザの安全性を確かにする。通気孔には、圧力が所定の安全限度を超えた場合に、生成物をサンプルポートアセンブリから解放するフレキシブルチューブ(17)が提供される。フレキシブルチューブ(17)は、安全エリア(例えば、この方法を行う精製者の風下)に排気するように配置され、向けられている。
【0062】
本例では、サンプルポート(3)はまた、サンプルが塩化物試験機器(13)に入る直前に、サンプルポートを出たプロダクトストリームのフローのオン及びオフが切り替えられ得るよう配置されている遮断バルブ(11)をも含む。これは、塩化物試験機器が、遮断バルブにプッシュフィットコネクタを介して取り付けられ得、遮断バルブ(11)がこれに続いて、塩化物試験機器を介して塩化物測定方法が行われる間に開かれる場合に、使い捨ての塩化物試験機器が都合よく使用されることを可能にする。HCl及びHCl等価物含有量の必要な計算が行われることに続いて、遮断バルブ(11)は、使い捨ての塩化物試験機器(13)の安全な取り外しのために閉じられ得る。
【0063】
本例では、この方法は、HClの測定と、同一の、単一のサンプルプロダクトストリームの分析から生じるHCl等価物としてのRClの測定と、が順次行われる。分析されるプロダクトストリームサンプルは、吸引装置(15)を使用することにより、塩化物試験機器(13)を通して吸引される。塩化物試験機器(13)内では、試験されるサンプルはまず、HCl塩化物試験機器を通過し、そしてRClからHClへの変換手段を通過し、これに続き、HCl等価物塩化物試験機器を通過する。したがって、この方法のステップ3、4、及び5が、(上述するように)順次行われる。HCl含有量の測定値は、HCl及びHCl等価物塩化物試験機器のそれぞれにppmの単位にて視覚的に表示される。
【0064】
本例では、プロセスプラントを出るサンプルプロダクトストリームがサンプルポート(3)を通過するため、その圧力が大気レベルまで低下している。したがって、吸引装置(15)を使用して、プロダクトストリームサンプルを塩化物試験機器(13)から吸引する必要がある。吸引装置(15)は、吸引した、したがって、塩化物試験機器(13)を通過したガスの体積を監視して明示する視覚的インジケータ含む。プロダクトストリームサンプルの既知の体積を、塩化物試験機器(13)を通して吸引装置(15)が吸引すると、試験したサンプルの塩化物及び塩化物の等価物含有量がppmvの単位にて表される。塩化物試験機器により取得された結果は、塩化物試験機器に入るプロダクトストリームサンプルの体積に依存するため、塩化物含有量をppmvの単位にて表すことは、(HClのみを測定する本技術において一般的であるため)適切であることが認められるべきである。精製者/オペレータは、サンプルの総塩化物含有量を、表示された2つの測定値を単に共に加算することにより計算できる。つまり、最初に表示された、HCl塩化物含有量の測定値が、表示された、RClのHCl塩化物等価物含有量の測定値に加えられ、総塩化物含有量の測定値が提供される。HClと、RClのHCl等価物含有量と、の双方をppmvの単位にて取得すると、オペレータは、CRUを出て塩化物ガードに入る塩化物及び有機塩化物のレベルを計算するための情報を推定できる。そのため、プロセスプラントのオペレータは、HCl及びRClの双方の最大の取り出しのために、塩化物ガードを変更して最適化できる。さらに、オペレータは、塩化物ガードに入る塩化物(HCl及びRCl)のレベルをより正確に監視でき、塩化物ガードがメンテナンスを必要とする時をよりよく推定できる。
【0065】
本例では、第1のHCl塩化物試験機器と、これに続いて、RClからHClへの変換手段と、第2のHCl等価物塩化物試験機器と、を含む塩化物試験機器(13)が、サンプルポート(3)に、遮断バルブ(11)と塩化物試験機器(13)との間に位置する、不活性フレキシブルチューブの形態のコネクタを介して、取り外し可能に接続されている。塩化物試験機器(13)は使い捨てに設計されているため、コネクタの遠位端は、各試験方法の開始時及び終了時に塩化物試験機器(13)を容易に取り付けることができ、取り外すことができるよう、塩化物試験機器(13)に取り外し可能に接続されている。
【0066】
例1
塩化物含有量を測定するためにここに提供される、その場での方法の有用性を明示するため、実験的な、精製プロセス試験用の塩化物ブレークスルーのリグを設定した。このリグは、60mlのCRUベッドを含んでいた。これは適切な触媒を装備しており、ガラス反応装置に挿入されており、これにより、実験的なCRUを提供した。CRUは、HCl及びRClが独立して、又は同時に導入されてよい上流の反応装置に接続されていた。代表的な有機塩化物である第3塩化ブチル(tertiary butyl chloride又はTBC)が、反応装置に、代表的なプロダクトガスストリーム内への異なる濃度での噴射を介して与えられた。プロダクトストリームサンプル内に存在するRCl及びHClの含有量を確かめるために、CRUの下流のプロダクトガスストリームがその場でサンプルされ、分析された。HClの存在の試験には、HCl測定用の塩化物試験機器が利用され、RClのHCl等価物の存在の試験には、同じ種類ではあるものの、先行する触媒RCl変換手段を伴う塩化物試験機器が利用された。総塩化物含有量をその場で測定する方法を使用して取得した結果が、ガスクロマトグラフィ(gas chromatography又はGC)による、同様に取り出されたサンプルのオフサイト分析から取得した測定と比較された。
【0068】
使用したHCl試験機器にRClが影響したことを、例1から見ることができる。HCl試験機器と組み合わせてRCl変換手段が使用される場合、HCl等価物として、最も正確なRClの測定値が取得される。精製者/オペレータが、現在のHClのみの測定方法に頼る場合、サンプルプロダクトストリームに存在するRClのレベルを見落し、プロセスプラントの下流をこれらの物質から保護することを最適化できない可能性がある。なお、RCl変換手段を利用しないHCl試験機器であっても、HClは検出される。これは、HClに変換するCRUに導入されたいくらかのRClの結果によるものとみられる。総塩化物含有量は、HCL試験機器のみの測定から取得された測定値と、HCl試験機器を組み合わせたRCl変換手段から取得した測定値と、の合計により容易に計算され得る。
【0069】
上記の実施形態は、制限を示唆しない例としてのみに説明されており、種々の変形例及び変更例が、添付の特許請求の範囲により定められる本発明の範囲を逸脱することなく可能であることが、本技術における当業者により認められるであろう。例えば、上記のシステムでは、調整バルブに加えてニードルバルブが利用されてよいし、技術的困難が明白でなければ、代わりとなる圧力解放システムが利用されてよい。
【国際調査報告】