(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
本明細書に提示するシステム、デバイス、および方法は、心機能の測定値を得るために血液ポンプを用いる。本システムは、大動脈圧またはモーター電流などの特定のパラメータ/信号を測定することによって自己心臓の機能を定量化し、次いで、左室圧、左室拡張終期圧、または心拍出力(cardiac power output)などの、1つまたは複数の心臓パラメータおよび心機能パラメータを算出し表示することができる。これらのパラメータは、現在の心機能ならびに血液ポンプの配置および機能に関する貴重な情報をユーザーに提供する。いくつかの態様において、本システムは診断用および治療用ツールとなりうる。心臓パラメータを、有害な作用についての警告、ならびに、デバイスによってポンピングされる血液の体積流量を増大または低減させる、薬物治療を行う、および/または血液ポンプを再配置するといった、心機能を支持するための推奨とともにリアルタイムで提供することによって、臨床医療従事者が、より良好な支持および循環器疾患の治療を行うことが可能になる。
算出された心臓パラメータおよび心機能パラメータのうち少なくとも1つを、時間の関数として、表示用に生成する段階をさらに含む、請求項1〜7のいずれか一項記載の方法。
モータースピードに対する決定された推奨される変更が、以前に記録された心臓パラメータおよび心機能パラメータのうちの少なくとも1つの履歴に基づく、請求項7記載の方法。
プロセッサが、心臓パラメータとして左室拡張終期圧を、および心機能パラメータとして心拍出力を算出するようさらに構成されている、請求項16記載の血液ポンプシステム。
【発明を実施するための形態】
【0009】
詳細な説明
本明細書に説明するシステム、方法、およびデバイスが全体的に理解されうるよう、特定の例示的態様を説明する。本明細書に説明する態様および特徴は、経皮的血液ポンプシステムと関係した使用について具体的に説明するが、理解されるであろう点として、以下に概説するすべてのコンポーネントおよび他の特徴は、任意の好適な様式において互いに組み合わせられてもよく、かつ、外科的切開を用いて植込みされる心臓補助デバイスなどを含む心臓補助デバイスなど、他のタイプの心臓治療および心臓補助デバイスに適合および適用されてもよい。
【0010】
本明細書に説明するシステム、デバイス、および方法は、血液ポンプシステムにおいて測定されたモーター電流と、モータースピードと、大動脈圧とに基づいて、心臓パラメータおよび心機能パラメータを臨床医療従事者に提供するための機構を提供する。血管内血液ポンプの機能性および拍出量は、患者の心機能および健康状態を決定するうえで有用な追加的パラメータを算出するために、測定可能な心臓パラメータとともに用いられてもよい。これらの決定を行い、かつ、有用かつ有意義な方式でデータを臨床医療従事者向けに表示することによって、医療上の意思決定に情報をもたらすために臨床医療従事者が利用できるデータが増える。血管内血液ポンプの拍出量に基づきアルゴリズムによってアクセス可能な、追加的な心臓パラメータおよび心機能、ならびにそれらの傾向は、様々な血液ポンプと、血液ポンプの配置と、治療用薬剤の投与とによって患者に提供される心臓支持に関して、情報に基づいた意思決定を臨床医療従事者が行うことを可能にする。アルゴリズムはまた、血液ポンプシステムが、重要な心臓パラメータを決定し、かつ、患者ケアの意思決定に情報をもたらすためそれらを臨床医療従事者向けに表示すること;または、例えば様々な心臓パラメータの入力に基づいて心機能のレベルを変動させるという推奨を臨床医療従事者向けに表示することによって、支持の調節についての推奨を行うこと;を可能にする。
【0011】
血液ポンプの機能から様々な心臓パラメータを算出することは、例えば、血液ポンプの稼働スピードおよび入力パワー(input power)に関する心臓の圧力応答およびフロー応答についての知見など、血液ポンプの稼働についての知見に基づいて可能である。心臓内のポンプの稼働機能性(operational functionality)に基づき、血液ポンプが心臓系と相互作用する際に心臓計量値がどのように変動するかを算出するアルゴリズムを構築できる。これらの決定を行い、そして即時的および履歴的な心臓パラメータを臨床医療従事者に提供することにより、臨床医療従事者は、血液ポンプの機能性または患者の心臓の健康状態をよりよく理解し、かつその変化に反応できる。
【0012】
具体的には、LVEDP、LVP、大動脈脈圧、平均大動脈圧、ポンプ流量、圧力勾配、心拍数、心拍出量、心拍出力、自己心拍出量、自己心拍出力、心収縮性、心弛緩性、輸液反応性、容積状態、心負荷軽減指数(cardiac unloading index)、心臓回復指数(cardiac recovery index)、左室拡張機能、左室拡張期エラスタンス、左室収縮期エラスタンス、一回拍出量、心拍変動、一回拍出量変動、脈圧変動、大動脈コンプライアンス、血管コンプライアンス、または血管抵抗など、正確かつ適時の心臓パラメータを臨床医療従事者に提供することは、臨床医療従事者が患者ケアについて情報によく基づいた意思決定を行うことを可能にする。全心拍出量および自己心拍出量のいずれも、本明細書に説明する方法およびシステムを用いて決定できる。本明細書において、自己心拍出量は、血液ポンプの寄与を伴わない、心臓のみの心拍出量を説明するために用いられる。同様に、自己心拍出力は、血液ポンプの寄与を何ら伴わない、心臓の心拍出力を説明するために用いられる。対照的に、全心拍出量は、本明細書において、心臓と血液ポンプとの組み合わせによってもたらされる心拍出量を説明するために用いられる。同様に、全心拍出力は、心臓の自己拍出力の寄与と血液ポンプとをいずれも含む、心臓の心拍出力を説明するために用いられる。本出願全体を通して、心拍出力または心拍出量が決定または算出される時、本明細書に説明するシステムおよび方法は、全心拍出量または自己心拍出量のいずれかを算出することができ、そして、心拍出量または心拍出力への参照は、自己拍出または全拍出のいずれもを参照しうる。
【0013】
本明細書に論じるアルゴリズムは、臨床医療従事者が患者の離脱について情報に基づいた意思決定を行うことを可能にする。臨床医療従事者は、血液ポンプが提供する心臓支持から患者を離脱させるための適切なタイミングを、提供されるパラメータに基づいて、より良好に決定できる。さらに、本明細書に提供するアルゴリズムは、支持のレベルと、モータースピードと、心機能を支持するための推奨モータースピードを提供するための適切な血液ポンプとについて推奨を提供することによって、患者を離脱させる妥当なペースについて臨床医療従事者が意思決定を行うことを可能にしうる。
【0014】
本明細書に説明するシステム、デバイス、および方法はさらに、心臓パラメータの測定および算出によって、血液ポンプのパフォーマンスの最適化を支援する。他の心臓計量値と併せて、LVPの推定およびLVP波形のリアルタイム表示は、患者の現在および履歴的な心機能、ならびに血液ポンプによって提供されている支持のレベルを、医師が理解することを可能にする。医師は、この情報を用いて、提供されている支持のレベルの修正(例えば、患者を支持から離脱させる、または提供される支持を増大させる);血液ポンプの配置および機能性;ならびに吸引事象の発生;に関する決定、ならびに後述する他の臨床上の決定を行う。
【0015】
本明細書に説明するシステム、デバイス、および方法は、血液ポンプが心臓内に妥当に配置されかつ適切に機能しているかを、臨床医療従事者が視覚的に決定することを可能にする。LVPの推定は吸引事象に対して非常に感度が高く、吸引事象および妥当でない配置について臨床医療従事者に情報をもたらすために、ならびに、心臓内におけるポンプの再配置を支援するために利用できる。本明細書に説明するアルゴリズムにしたがって決定されそして臨床医療従事者向けに表示される心臓計量値は、さらに、吸引事象が生じたときにその原因の同定を支援できる。
【0016】
加えて、本明細書に説明するシステム、デバイス、および方法は、心機能の回復を支援するために患者に薬物治療を適用するなど、追加の治療的支持を提供するためのデータおよび推奨を臨床医療従事者に提供する。例えば、アルゴリズムは、心臓パラメータおよびその傾向に基づいて、薬物治療が有益となりうるかについての推奨を提供でき、そして用量情報も提供できる。自己心拍出量、拡張終期圧、および心拍出力などの心臓パラメータの傾向が臨床医療従事者に提供されてもよく、アルゴリズムは、その傾向に基づいて、強心剤の用量設定を支持する推奨を行ってもよい。
【0017】
代替的に、輸液および患者の容積状態の調節を支援するための心臓パラメータが臨床医療従事者に提示されてもよい。患者が至適体液ウィンドウ(optimum fluid window)内にあるかどうか、および患者の輸液反応性を、臨床医療従事者が決定することを可能にするため、自己拍出量、拡張終期圧、および脈圧の変動が臨床医療従事者に提供されてもよい。アルゴリズムは、これらのパラメータに基づき、患者が至適体液ウィンドウ内にあると考えられるかを示す通知、および、患者が輸液に反応する可能性が高いかの指標を、臨床医療従事者に提供してもよい。
【0018】
本明細書に説明するシステム、デバイス、および方法は、測定および算出された心臓パラメータに基づいて予測される予測有害事象に関して、臨床医療従事者に警告を提供するために用いられてもよい。血液ポンプ支持に頼っている患者は、さらなる虚血事象をきたすリスクがある。左室収縮性、左室弛緩性、およびLVEDPにおける小さな変化はすべて、無症候性虚血事象の早期インジケータである。これらのパラメータの変化について臨床医療従事者に注意喚起することは、臨床医療従事者が虚血事象をより早期に検出し、そしてより迅速に対処することを可能にする。加えて、大動脈弁逆流およびペースメーカーを必要とする伝導異常(経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVR)に備えてバルーン大動脈弁形成術(BAV)を受ける患者の場合)など、他の有害事象およびアウトカム。左室弛緩性、左室拡張期充満圧、収縮期圧勾配、心拍出力、および全拍出力の変化はすべて、そうした事象の早期インジケータとして機能でき、本明細書に説明するアルゴリズムによって算出および検出され、そして臨床医療従事者に提示されてもよい。
【0019】
さらに、本明細書に説明するシステム、デバイス、および方法は、例えば両心室支持を提供する同時に使用される右心用デバイスと左心用デバイスとのバランスを取るために用いられてもよい;2つのデバイスのバランスを取ることは、肺中の適切な圧力を維持しかつ肺水腫のリスクを限定するために、右心用デバイスと左心用デバイスとのバランスを取るという、独特の課題を呈することがある。アルゴリズムは、自己拍出量および全拍出量を、肺動脈圧および左室拡張期圧と併せて測定することによって、両心室デバイスの稼働についての意思決定に情報をもたらせるよう、これらパラメータについての情報を臨床医療従事者に提供してもよく、かつ、臨床医療従事者が2つのデバイスのバランスを取ることを助けるために推奨を提供してもよい。
【0020】
本明細書に提示するシステム、デバイス、および方法は、血液ポンプによる心臓支持を用いて処置されている患者のケアおよび処置において臨床医療従事者に有用である、様々な心臓パラメータおよび心機能パラメータを、血液ポンプの拍出量と測定された圧力信号とに基づいて、血液ポンプシステム内で測定する機構を記述する。アルゴリズムによって提供されるパラメータおよび推奨は、後述するように、医学的処置の様々な意思決定に情報をもたらすために臨床医療従事者によって用いられてもよい。
【0021】
図1に、心臓102内に位置している例示的な先行技術の心臓補助デバイスを示す。心臓102は、左心室103と、大動脈104と、大動脈弁105とを含む。血管内心臓ポンプシステムは、カテーテル106と、モーター108と、ポンプアウトレット110と、カニューレ111と、ポンプインレット114と、圧力センサー112とを含む。モーター108は、その近位端でカテーテル106に連結され、かつ、その遠位端でカニューレ111に連結される。モーター108はまた、ポンプインレット114からカニューレ111を通りポンプアウトレット110まで血液をポンピングするために回転する、ローター(図中では見えない)も駆動する。カニューレ111は、ポンプインレット114が左心室103内に位置し、かつポンプアウトレット110が大動脈104内に位置するよう、大動脈弁105をまたいで配置される。この構成は、血管内心臓ポンプシステム100が、心拍出を支持するため血液を左心室103から大動脈104内までポンピングすることを可能にする。
【0022】
血管内心臓ポンプシステム100は、心臓102の自己心拍出と並行して、血液を左心室から大動脈内にポンピングする。健康な心臓を通る血流は典型的に約5リットル/分であり、そして血管内心臓ポンプシステム100を通る血流は、同様の流量または異なる流量であってもよい。例えば、血管内心臓ポンプシステム100を通る流量は、0.5リットル/分、1リットル/分、1.5リットル/分、2リットル/分、2.5リットル/分、3リットル/分、3.5リットル/分、4リットル/分、4.5リットル/分、5リットル/分、5リットル/分超、または他の任意の好適な流量であってもよい。
【0023】
血管内心臓ポンプシステム100のモーター108は、任意の数の点において様々であってもよい。例えば、モーター108は電気モーターであってもよい。モーター108は、血液を左心室103から大動脈104までポンピングするために、一定した回転速度で稼働されてもよい。モーター108にかかる負荷は、心臓102の心周期の異なるステージにおいて変動するので、モーター108を一定速度で稼働するには、一般的に、変動する電流量をモーター108に供給する必要がある。例えば、血液ポンプを通って大動脈104に入る血液の質量流量が増大するとき(例えば収縮時)、モーター108を稼働するために必要な電流は増大する。ゆえに、モーター電流におけるこの変化は、以降の図面との関連においてさらに論じるように、心機能の特性決定に役立てるために利用できる。モーター電流を用いた質量流量の検出は、左心室103から大動脈104内への血流の自然の方向にアライメントされた、モーター108の置き方によって容易になる可能性がある。モーター電流を用いた質量流量の検出はまた、モーター108のサイズが小さいことおよび/またはトルクが低いことによっても容易になる可能性がある。
図1のモーター108は約4 mmの直径を有するが、ローター−モーター集合体(rotor-motor mass)が充分に小さく、充分に低いトルクを有し、かつ、ポンプをまたぐ生理学的な圧力勾配の変化に迅速かつ容易に反応できるよう配置されるのであるならば、任意の好適なモーター直径が用いられてよい。いくつかの実施形態において、モーター108の直径は4 mm未満である。
【0024】
特定の実施形態において、モーター108に送達される電力など、電流以外の1つまたは複数のモーターパラメータが測定される。いくつかの実施形態において、
図1におけるモーター108は一定速度で稼働する。特定の実施形態において、モーター108のスピードは、自己心機能を探るため、(例えばデルタ関数、階段関数、シヌソイド関数、またはランプ関数などとして)経時的に変動される。いくつかの実施形態において、モーター108は患者の体外にあってもよく、そして、可撓性のドライブシャフト、駆動ケーブル、または流体連結器など、細長の機械的伝動要素によってローターを駆動してもよい。
【0025】
血管内心臓ポンプシステム100の圧力センサー112は、モーター108上またはポンプの流出部すなわちポンプアウトレット110など、ポンプ上の様々な位置に配されてもよい。圧力センサー112をポンプアウトレット110に置くと、血管内血液ポンプシステム100が大動脈弁105をまたいで配置された時に、圧力センサー112が真の大動脈圧(AoP)を測定することが可能となる。特定の実施形態において、血管内心臓ポンプシステム100の圧力センサー112は、カニューレ111上、カテーテル106上、または他の任意の好適な位置に配されてもよい。圧力センサー112は、血管内心臓ポンプシステム100が心臓102内に妥当に配置された時に、大動脈104内の血圧を検出してもよい。血圧情報は、血管内心臓ポンプシステム100を心臓102内に妥当に置くために用いられてもよい。例えば、圧力センサー112は、ポンプアウトレットが大動脈弁105を通過して左心室103に入ったかを検出するために用いられてもよい;その場合、血液は左心室103から大動脈104まで輸送されるのではなく、左心室103内で循環されるのみになる。いくつかの実施形態において、圧力センサー112は、流体で満たされたチューブ、差圧センサー、液圧センサー、圧電抵抗式ストレインゲージ、光学干渉式センサーもしくは他の光学式センサー、MEMS圧電センサー、または他の任意の好適なセンサーである。
【0026】
血管内心臓ポンプシステム100は、経皮的挿入など、さまざまな方式で心臓102内に挿入されてもよい。例えば、血管内心臓ポンプシステムは、大腿動脈(図には示していない)を通り、大動脈104を通り、大動脈弁105を横切り、そして左心室103内に挿入されてもよい。特定の実施形態において、血管内心臓ポンプシステム100は外科的に心臓102内に挿入される。いくつかの実施形態において、血管内心臓ポンプシステム100、または右心用に適合された類似のシステムが、右心内に挿入される。例えば、血管内心臓ポンプシステム100と類似の右心ポンプが、大腿静脈を通って下大静脈内に挿入され、右心房および右心室をバイパスして、肺動脈内まで延在してもよい。代替的に、右心ポンプが内頚静脈および上大静脈を通って挿入されてもよく、かつ左心ポンプが腋窩動脈を通って挿入されてもよい。特定の実施形態において、血管内心臓ポンプシステム100は、心臓102以外の血管系内(例えば大動脈104内)で稼働するよう配置されてもよい。血管内心臓ポンプシステム100は、低侵襲で血管系内に存在することによって、自己心機能の特性決定を可能にするだけの充分な感度を有する。
【0027】
図2Aに、モーター電流に対する圧力勾配の例示的プロットを示す。プロット200は、モーター電流をmAの単位で表したx軸202と、圧力勾配(dP)をmmHgの単位で表したy軸204とを有する。プロット200は、モーター電流と圧力勾配との関係を示す傾向線206を含む。血液ポンプが受けるモーター電流は、既知のモータースピードにおいて、血液ポンプのカニューレをまたぐ圧力勾配に比例する。プロット200は、所与のモーター電流と、血液ポンプモーターが現在稼働しているモータースピードとから、圧力勾配を決定するためのアルゴリズム用の、ルックアップとして機能する可能性がある。例えば、x軸上のポイント208によって示される約650 mAのモーター電流は、y軸上のポイント210によって示される120 mmHgの圧力勾配に対応する;それは、モーター電流のポイント208から傾向線206まで上向きに線を伸ばし、次に傾向線206との交点からy軸のポイント210まで線を伸ばすことによって決定される。プロット200によって説明される、モーター電流と圧力勾配との間の関係は、研究室において生理学的条件下で特定の血液ポンプについて決定されてもよく、そして血液ポンプコントローラ内のプロセッサのメモリ内に保存されてもよい。
【0028】
コントローラは、プロット200にアクセスすることによって、血液ポンプが現在稼働しているモーター電流およびモータースピードに関連付けられた、圧力勾配を決定する。コントローラは次に、LVEDP、LVP、大動脈脈圧、平均大動脈圧、ポンプ流量、圧力勾配、心拍数、心拍出量、心拍出力、自己心拍出量、自己心拍出力、心収縮性、心弛緩性、輸液反応性、容積状態、心負荷軽減指数、および心臓回復指数などの、様々な心臓パラメータを決定するため、圧力センサー(例えば
図1における圧力センサー112)において測定された大動脈圧などの、決定または測定された他の値とともに、圧力勾配を用いてもよい。
【0029】
例えば、血液ポンプのカニューレをまたぐ圧力勾配がモーター電流およびモータースピードから決定されたら、血液ポンプのカニューレをまたぐ圧力勾配は、ポンプのインレットケージにおけるLVPの推定値を決定するために、測定された大動脈圧(圧力センサー112において測定された圧力など)とともに用いられてもよい。LVPは大動脈圧から圧力勾配を減算することによって推定される。
図2Bに関して後述するように、この方式で決定されたLVPは、心臓内の実際のLVPの非常に良好な推定値である。推定LVPは、コントローラによって表示画面上に表示されてもよく、そこで臨床医療従事者によってアクセスおよび閲覧されてもよい。臨床医療従事者は、血液ポンプが提供する支持に対する変更について情報に基づいた意思決定を行うことを含めて、患者の処置に関する臨床意思決定を行うため、所与の瞬間のLVPによって提供される情報、またはLVPの変化の履歴ビューを用いてもよい。
【0030】
圧力勾配と、既知のモータースピードにおける血液ポンプのモーター電流との間の関係は、プロット200として図示されているが、コントローラは、ルックアップ表にアクセスすることによって、または、圧力勾配とモーター電流およびモータースピードとの関係を記述する関数を照会することによって、プロット200中に含有されている情報を用いてもよい。いくつかの実施形態において、コントローラは、血液ポンプのカニューレをまたぐ圧力勾配を決定するうえで、ポンプの他の性質、ポンプコントローラまたはコンソールの性質、環境パラメータ、およびモータースピード設定など、モーター電流およびモータースピード以外の追加的パラメータを考慮に含めてもよい。圧力勾配の決定に用いられる関数において追加的パラメータを考慮に含めることは、モーター電流と差圧との間のより正確な関連付けにつながる可能性があり、それはLVPまたは他の心臓パラメータをより正確に算出することを可能にする。
【0031】
図2Bに、測定された大動脈圧と算出されたLVPとを時間の関数として示した例示的プロットを示す。プロット201は、時間を秒で表したx軸203と、圧力ヘッドをmmHgの単位で表したy軸205とを有する。同プロットは、大動脈圧212と、推定LVP 214(点線)と、実測LVP 216とを含む、3つのトレースを有する。プロット201上のトレースは、測定された大動脈圧と、血液ポンプのカニューレをまたぐ、決定された圧力勾配とから決定された、推定LVPが、測定されたLVP値と一致することを示している。アルゴリズムは、モーター電流と測定された大動脈圧とに基づき、心周期内の全波形とLVEDPポイントとを含む連続LVPを決定する。アルゴリズムはポンプインレット114のすぐ内部のLVPを測定する;このことは、アルゴリズムが吸引事象を決定すること、および収縮期/連続的吸引と拡張期/間欠的吸引とを区別することを可能にする。
【0032】
心周期内のLVEDPポイントは他の心臓パラメータを算出するうえで重要である。拡張終期ポイントにおける圧力は左室収縮直前のLVPであり、それは参照用EKG測定におけるR波の開始によって定義されうる。心周期内のLVEDPポイントは、大動脈圧212の留置信号、LVP 214の波形、およびポンプにおける圧力勾配に基づいて推定されてもよい。いくつかの実施形態において、LVEDPは、推定LVP 214波形におけるピークの同定に基づいて推定される;同ピークは次に、LVEDPポイントを推定するため時間軸上でシフトされる。この技法はピーク検出および時間インデクシングと呼ばれる。代替的な実施形態において、推定LVEDPは、経時的な推定LVP 214波形の一次および/または二次時間導関数に基づいて算出される。
【0033】
図2Cに、時間に関する、推定LVP 214の波形および大動脈圧212の波形の例示的プロット220を示す。同プロットは、時間を表したx軸222と、圧力ヘッドをmmHgで表したy軸224とを有する。同プロットは、推定LVP波形のトレース226(点線)と、大動脈圧のトレース228(実線)とを含む。いくつかの実施形態において、推定LVP波形226のピークを選択しそしてそのポイントを時間においてシフトさせることによって、プロット220に基づいてLVEDPが選択されてもよい。便宜上、このプロット220には1つのLVEDPポイント229のみが示されているが、経時的変化をモニターするためLVP波形の各周期についてLVEDPが算出されてもよい。
【0034】
図2Dに、時間に関する推定LVP 214波形の一次導関数の例示的プロット230を示す。プロット230は、プロット220内のLVP波形226の導関数として算出されてもよい。プロット230は、時間を表したx軸232と、時間に関する圧力の一次導関数(dP/dt)をmmHg/秒で表したy軸234とを有する。同プロットは、LVP波形の一次導関数のトレース236と、LVP波形の一次導関数のトレース236に基づく推定LVEDPとして選択されてもよい、LVEDPポイント238の指標とを含む。ポイント238はLVEDPに関連付けられたポイントを示す;それは、例えばLVP波形の一次導関数236が最小の谷と最大のピークとの間の中間の時点にあるポイントとして、算出されてもよい。便宜上、このプロット230には1つのLVEDPポイント238のみが示されているが、LVP波形の各周期についてLVEDPが算出されてもよい。代替的に、LVP波形の一次導関数236のプロット230は、LVEDPポイント238についての探索を「ウィンドウ化する(windowing)」または狭めるうえで有用である可能性がある;LVEDPポイント238は次に、二次導関数プロットまたは他の手段に基づいて決定されてもよい。プロット230に基づくLVEDPポイント238の推定は、より高いサンプリング周波数がより正確なLVEDPポイント238の算出をもたらすよう、より高いサンプリング周波数を伴うサンプリング周波数に対して感受性であってもよい。
【0035】
図2Eに、時間に関する推定LVP 214波形の二次導関数の例示的プロット240を示す。プロット230は、プロット230内のLVP波形236の導関数として、またはプロット220内のLVP波形226の二次導関数として、算出されてもよい。プロット240は、時間を表したx軸242と、時間に関する圧力の二次導関数(d
2P/dt
2)をmmHg/秒
2で表したy軸244とを有する。同プロットは、LVP波形の二次導関数のトレース246と、LVP波形の二次導関数のトレース246に基づく推定LVEDPとして選択されてもよい、LVEDPポイント248の指標とを含む。ポイント248はLVEDPに関連付けられたポイントを示す;それは、例えば推定LVP波形の二次導関数246が最大のピークを有するポイントとして、算出されてもよい。便宜上、このプロット240には1つのLVEDPポイント248のみが示されているが、LVP波形の各周期についてLVEDPが算出されてもよい。一次導関数のプロット230に基づくLVEDPポイント238の推定と同様に、二次導関数のプロット240に基づくLVEDPポイント248の推定は、サンプリング周波数に対して感受性であってもよく、そして、高いサンプリング周波数において、より正確である。
【0036】
LVP波形の一次または二次時間導関数のピークは、LVEDPポイントを正確に算出するために用いられてもよい。さらに、LVP波形の一次および二次時間導関数のピークと谷とは、所与のLVEDPポイントについての探索ウィンドウを狭めて、これにより偽陽性を減少させてLVEDPポイントの検出を向上させるために用いられてもよい。LVEDPを決定するために、測定された大動脈圧212の一次または二次時間導関数を用いることは、アルゴリズムが心周期内のLVEDPポイントをより正確に決定することを可能にする。代替的に、大動脈圧波形(例えば
図2Bにおける212)も同様に、LVEDPポイントを決定するために大動脈圧波形の一次および二次導関数とともに用いられてもよい。
【0037】
図3に、経時的な心機能の波形を表示している、心臓ポンプコントローラ用の例示的ユーザーインターフェースを示す。ユーザーインターフェース300は、
図1の血管内心臓ポンプシステム100または他の任意の好適な心臓ポンプを制御するために用いられてもよい。ユーザーインターフェース300は、圧力信号波形302と、LVP波形303と、モーター電流波形304と、流量306と、心拍出力の尺度308と、自己心拍出量の尺度310とを含む。圧力信号波形302は、血液ポンプの圧力センサー(例えば圧力センサー112)によって測定された圧力を示し、そして、ポンプが妥当に置かれている時は大動脈圧に対応する。圧力信号波形302およびLVP波形303は、血管内心臓ポンプ(
図1における血管内心臓ポンプ100など)を心臓内に妥当に置くため医療従事者によって用いられてもよい。圧力信号波形302は、波形302が大動脈波形であるかまたは心室波形であるかを評価することによって、血管内心臓ポンプの場所を検証するために用いられる。大動脈波形は血管内心臓ポンプモーターが大動脈内にあることを示す。心室波形は血管内心臓ポンプモーターが心室内の正しくない位置まで挿入されたことを示す。留置信号波形用のスケール312が波形の左側に表示される。デフォルトのスケーリングは0〜160 mmHgである。スケーリングは20 mmHg刻みで調整されてもよく、例えばスケール312は-20〜160 mmHgのスケーリングで示されている。波形の右側は、波形をラベル付けし、測定の単位を提供し、かつ現在の推定圧力の指標を含む、ディスプレイ314である。ディスプレイ314はまた、瞬時的な推定、平均値、最大値、または最小値であってもよい、大動脈圧の推定316および/またはLVPの推定318も含んでもよく、そして、LVEDPなど、圧力信号波形から算出された他の心臓パラメータの指標も含んでもよい。いくつかの実施形態において、ディスプレイ314は、算出された心臓計量値に由来する最大値と、最小値と、平均値とを示す。圧力信号波形302と、LVP波形303と、ディスプレイ314とを含むことにより、圧力信号およびLVPが時間の関数として表示され、かつ、重要な心臓パラメータが抽出されてディスプレイ314内に表示される。
【0038】
いくつかの実施形態において、測定された大動脈圧波形302に対してLVP波形303をキャリブレーションすることによって、異なる血液ポンプ間のばらつきが考慮に含められる。ユーザーは、推定LVP波形のピーク(例えば
図2Bにおける214)を、大動脈圧波形のピーク(例えば
図2Bにおける212)に一致するようにy軸に沿って手動で調整するよう、ディスプレイによって促されてもよい。いくつかの実施形態において、キャリブレーションは、大動脈圧波形およびLVP波形の圧力読取りに基づいて、ユーザーのために自動化されてもよい。他の実施形態において、必要なキャリブレーションはユーザーインターフェース300内のコントローラによって算出されてもよく、そして、収縮中のLVP波形のピークを大動脈圧波形中の同じピークにアライメントさせるという指示を伴うプロンプトが、プログラムのバックグラウンドにおける、同じアライメントについてのコントローラの算出に基づく提案値を含めて、ユーザーに提示されてもよい。コントローラはまた、そのアライメントをバックグラウンドで算出することによって、大動脈圧波形とLVP波形とがオーバーラップすべきである心周期内の厳密なポイントも検出できる。大動脈圧波形とLVP波形とのオーバーラップは、大動脈弁の開弁および大動脈弁の閉弁に対応する。これらの事象は収縮の開始および終了を示す。大動脈圧波形とLVP波形とのオーバーラップのポイントを決定することは、目視では困難であるが、LVP波形および大動脈圧波形のピークの同定を必要とするキャリブレーションを向上させるために、コントローラよってキャリブレーションされてもよい。
【0039】
キャリブレーション手順の自動化は、ユーザーインターフェース300の使用を単純化し、かつ、適切なキャリブレーション値がユーザーに提示されることを確実化する。キャリブレーションの算出は、高いサンプリング周波数においてさらに向上する可能性がある。
【0040】
モーター電流波形304は心臓ポンプのモーターのエネルギー取り入れの尺度である。エネルギー取り入れは、モータースピードと、ローターに対する容積負荷の変化をもたらす、カニューレのインレットエリアとアウトレットエリアとの間の圧力差とによって、変動する。血管内心臓ポンプ(
図1における血管内心臓ポンプ100など)とともに用いられた時、モーター電流は、大動脈弁に対するカテーテルの場所についての情報を提供する。インレットエリアが心室内かつアウトレットエリアが大動脈内にあって血管内心臓ポンプが正しく配置されている時は、心臓ポンプを通る質量流量が心周期とともに変化するので、モーター電流は拍動性となる。インレットエリアおよびアウトレットエリアが大動脈弁の同じ側にある時は、ポンプのインレットとアウトレットとが同じ空間(chamber)内に位置しており、差圧の変動がなく、その結果、質量流量が一定となりひいてはモーター電流も一定となるので、モーター電流は弱まるかまたは平らになる。モーター電流波形に関するスケール320が波形の左側に表示される。デフォルトのスケーリングは0〜1000 mAである。スケーリングは100 mA刻みで調整可能であってもよい。波形の右側は、波形をラベル付けし、測定の単位を提供し、かつ、受け取られたサンプルに由来する最大値と最小値と平均値とを示す、ディスプレイ322である。圧力センサーおよびモーター電流センサーは、外科的に植込みされるポンプの配置には必要でない可能性があるが、そうしたデバイスにおいても治療をモニターするため自己心機能の追加的特性を決定する目的で用いられてもよい。
【0041】
図3には3つの波形(圧力信号波形302、LVP波形303、およびモーター電流波形304)のみが示されているが、追加の波形が、ディスプレイ300の主画面に表示されるか、または追加画面上でアクセス可能であってもよい。例えば、収縮力の波形、心臓状態の波形、ECG波形、または、時間もしくは脈拍に伴って変化する他の任意の適切な心臓パラメータが、ディスプレイ300上に表示されてもよい。心臓情報を傾向線として表示することは、医師が患者の履歴的心臓状態を閲覧し、視認可能な傾向に基づいて意思決定を行うことを可能にする。例えば、医師は、圧力信号波形302に表示される大動脈圧の経時的な減退または増大を観察し、その観察に基づいて処置を改めるかまたは続けることを決定してもよい。
【0042】
図3における場所、コントローラ上の計量値の描写、ならびに、計量値および推奨の識別および数は、例示的なものである。計量値およびインジケータの数、それら計量値およびインジケータのコンソール上の場所、ならびに、表示される計量値は、ここに示したものと異なっていてもよい。ユーザー向けに表示される心臓パラメータは、例えば、LVEDP、LVP、大動脈脈圧、平均大動脈圧、ポンプ流量、圧力勾配、心拍数、心拍出量、心拍出力、自己心拍出量、自己心拍出力、心収縮性、心弛緩性、輸液反応性、容積状態、心負荷軽減指数、心臓回復指数、左室拡張機能、左室拡張期エラスタンス、左室収縮期エラスタンス、一回拍出量、心拍変動、一回拍出量変動、脈圧変動、大動脈コンプライアンス、血管コンプライアンス、または血管抵抗であってもよい。いくつかの実施形態において、ユーザー向けに表示されるフォント、フォントサイズ、レイアウト、および配置は、クリティカルケア状況において使いやすいように構成されてもよい。
【0043】
自己心拍出量の尺度310の尺度は、測定された心臓パラメータに基づいて算出された、L/分を単位とするNCOの表示を含んでもよい。自己心拍出量は、心臓それ自体による血流の尺度、または、血液ポンプを囲んでいる血管構造内の血流の流量である。自己心拍出量は、留置信号(大動脈圧)316と、大動脈圧の最大値から大動脈圧の最小値を減算することによってコントローラで算出された脈圧とから算出される。脈圧はコントローラによって定期的に算出されてもよい。自己心拍出量は、臨床関連性がある追加的な心臓パラメータを算出するために用いられてもよい。例えば、心臓それ自体と血液ポンプとの全心拍出量を算出するため、血液ポンプの流量に関する情報と併せて自己心拍出量が用いられてもよい。
【0044】
心拍出力の尺度308は、測定された心臓パラメータに基づいて算出された、ワットを単位とする全心拍出力の表示を含んでもよい。全心拍出力は、上述のように自己心拍出量に基づいて算出される全心拍出量から算出される。全心拍出力は、心拍出量に平均動脈圧を乗算し、そして451で除算することによって算出される。
【0045】
流量324は、ユーザーによって設定される目標血流量、または推定される実際の流量であってもよい。コントローラのいくつかのモードにおいて、コントローラは、目標流量を維持するため、後負荷の変化に応答してモータースピードを自動的に調整する。いくつかの実施形態において、流量算出が可能でないならば、コントローラは、スピードインジケータによって示される固定モータースピードをユーザーが設定することを可能にする。
【0046】
ユーザーインターフェースまたはコントローラ内のメモリが、コントローラ上で測定、算出、および表示されたデータを記録する。メモリは25〜150 Hzのサンプリングレートを有してもよい。いくつかの実施形態において、データはより速い速度でメモリ内のデータログ中に記録されるので、100 Hzまたはそれ以上など、より高いサンプリングレートが好ましい。メモリ内に記録された、より忠実度の高いデータは、経時的な心機能をより良好に推定するために用いられてもよい。ユーザーインターフェース上でユーザー向けに表示される波形、アルゴリズム、およびアラームは、効率性のため、より低い速度で表示されてもよい。
【0047】
ディスプレイ300は、追加的な表示画面にアクセスするための様々なボタン326〜334を含む。ボタンには、メニューボタン326と、パージメニューボタン328と、ディスプレイボタン330と、フロー制御ボタン332と、ミュートアラームボタン334とが含まれる。ディスプレイ300上に示されているボタンは例示的なものであり、代替的または追加的なボタンがユーザーにとってアクセス可能であってもよい。メニューボタン326は、ソフトウェアバージョン、登録内容、および使用日を含む、ディスプレイ300の使用についての追加的な情報にユーザーがアクセスすることを可能にしてもよい。メニューボタン326はまた、ディスプレイ300の電源モードまたはディスプレイ300のロックなどのオプションにユーザーがアクセスすることを可能にしてもよい。メニューボタン326はまた、ユーザーがディスプレイ300をキャリブレーションすることを可能にしてもよく、または、取り付けられた血液ポンプとの関連においてディスプレイ300をキャリブレーションするためのオプションもしくは指示にユーザーがアクセスすることを可能にしてもよい。例えば、ユーザーは、測定された圧力値または波形として表示された心臓パラメータを、動脈カテーテルまたは類似物によって測定された心臓パラメータの既知の値に対してキャリブレーションしてもよい。パージメニューボタン328は、取り付けられた血液ポンプのパージシステムに関する追加的な使用オプション、設定、および情報にユーザーがアクセスすることを可能にしてもよい。ディスプレイメニューボタン330は、ユーザーが、追加的な心臓計量値およびパラメータにアクセスすること、そしていくつかの場合において、ディスプレイ300の主画面上に表示される心臓計量値を追加または変更することを、可能にしてもよい。フロー制御ボタン332は、ポンプモータースピードを調整することによってポンプの流量を制御することに関する追加的なオプションおよび設定にユーザーがアクセスすることを可能にしてもよい。フロー制御ボタンは、現在のポンプモータースピードと、コントローラによって算出される様々な心臓計量値とに関する推奨に、ユーザーがアクセスすることを可能にしてもよく、かつ、ユーザーがポンプモータースピードの調整を入力または受け入れることを可能にしてもよい。ミュートアラームボタン334は、ユーザーが、アラームを消音すること、または、コントローラが発したアラームもしくは警告についての追加的な情報にアクセスすること、を可能にしてもよい。コントローラは、ディスプレイ、血液ポンプ、および関連システムの使用、またはコントローラによって算出された心臓計量値に関して、ユーザー向けに警告通知を発してもよい。警告およびアラームは、可聴アラームもしくはディスプレイ300上のポップアップ画面であってもよく、または、例えばテキスト、ページ、もしくは電子メールを介して臨床医療従事者に直接送られてもよい。
【0048】
いくつかの実施形態において、警告またはアラームは、コントローラによって算出、測定、またはモニターされる心臓計量値が、設定閾値を下回ったことによってトリガーされる。いくつかの実施形態において、警告またはアラームは、コントローラによって算出、測定、またはモニターされる心臓計量値が、設定閾値を上回ったことによってトリガーされる。いくつかの実施形態において、警告またはアラームは、コントローラによって算出、測定、またはモニターされる心臓計量値に、設定閾値を上回るかまたは下回る変化があったことによってトリガーされる。いくつかの実施形態において、設定閾値は、コントローラ内で設定されるシステム値である。いくつかの実施形態において、設定閾値は、患者の履歴および健康状態に基づいて臨床医療従事者によって設定される。いくつかの実施形態において、設定閾値は、例えばあらかじめ定められた時間だけ前に測定または算出された前値などである、心臓計量値の前値である。
【0049】
いくつかの実施形態において、警告またはアラームは、血液ポンプによって心臓に提供される支持を、算出、測定、またはモニターされる心臓計量値のうち1つまたは複数に基づいて改めるための推奨である。
図4〜11に、血液ポンプによって提供される心臓支持に対する、推奨される様々な変更を、コントローラが決定するためのプロセスを示す。
【0050】
図4に、心臓内の血液ポンプのパフォーマンスを、測定および算出された心臓パラメータに基づいて最適化するためのプロセス400を示す。
【0051】
段階402において、心臓ポンプのモーターが、ある回転スピードで稼働される。段階404において大動脈圧が測定される。大動脈圧は、心臓ポンプに連結された圧力センサーによって、別個のカテーテルによって、非侵襲的な圧力センサーによって、または他の任意の好適なセンサーによって、測定されてもよい。圧力センサーは、流体で満たされたチューブ、差圧センサー、液圧センサー、圧電抵抗式ストレインゲージ、光学干渉式センサーもしくは他の光学式センサー、MEMS圧電センサー、または他の任意の好適なセンサーであってもよい。いくつかの実施形態において、大動脈圧の測定に対する追加または代替として、心室圧が測定される。段階406において、モーターに送達される電流が測定され、かつモータースピードが測定される。段階408において、血液ポンプのカニューレをまたぐ差圧が、測定されたモーター電流およびモータースピードに基づいて決定される;その決定は、ルックアップ表を用いることによって、または、既知のスピードにおいて測定されたモーター電流についておよび任意で他のパラメータについて説明する関数にアクセスすることによって、行われる。段階410において、血液ポンプのカニューレをまたぐ差圧と大動脈圧とに基づいて心臓パラメータが算出される。心臓パラメータは、LVEDP、LVP、大動脈脈圧、平均大動脈圧、ポンプ流量、圧力勾配、または心拍数のうちの1つであってもよい。これらの心臓パラメータは、それぞれ、心臓の健康状態および機能の様々な局面の尺度として臨床医療従事者によって用いられてもよい。各心臓パラメータの経時的な傾向は、自己心拍出量が向上または減退しているかを決定するために臨床医療従事者によって用いられてもよく、そして、血液ポンプと薬物治療とによって提供されている支持についての臨床意思決定が、これらの傾向に基づいて行われてもよい。いくつかの実施形態において、血液ポンプのカニューレをまたぐ差圧と大動脈圧とに基づいて、2つ以上の心臓パラメータが算出される。
【0052】
具体的には、患者の心臓内における血液ポンプのパフォーマンスを評価するため、LVPおよびLVEDPのうち1つまたは複数がアルゴリズムに従って算出されてもよい。いくつかの実施形態において、算出された計量値は、血液ポンプの現在のパフォーマンスに問題があるかどうかを決定するために、および、その問題を是正するための提案をユーザーに提供するために、プロセッサによって評価される。いくつかの実施形態において、計量値は医療従事者による評価のために提示される。
【0053】
段階412において、算出された心臓パラメータがメモリ内に記録される。メモリ内に保存された、記録された心臓パラメータにアクセスすることによって、経時的な心臓パラメータの履歴ビューがユーザーによってアクセスされてもよく、またはディスプレイコンソール上に傾向線として表示されてもよい。
【0054】
段階414において、算出された心臓パラメータに基づいて心機能パラメータが決定される。心機能パラメータは、心拍出量、心拍出力、自己心拍出量、自己心拍出力、心収縮性、心弛緩性、輸液反応性、容積状態、心負荷軽減指数、心臓回復指数、左室拡張機能、左室拡張期エラスタンス、左室収縮期エラスタンス、一回拍出量、心拍変動、一回拍出量変動、脈圧変動、大動脈コンプライアンス、血管コンプライアンス、または血管抵抗のいずれかであってもよい。これらの心機能パラメータは、算出された心臓パラメータおよび他の利用可能な測定パラメータから算出されてもよい。心機能パラメータは、心機能について、および、心機能との関連における血液ポンプのパフォーマンスについて、追加的な情報を臨床医療従事者に提供する。いくつかの実施形態において、心機能パラメータもまた、履歴データと、時間に対する心機能パラメータの傾向とを提供するために、メモリ内に記録される。いくつかの実施形態において、2つ以上の心機能パラメータが決定される。
【0055】
例えば、血液ポンプのモーター電流およびモータースピードと、測定された大動脈圧とに基づいて、心拍出量が算出されてもよい。大動脈圧から、大動脈波形の脈圧が導出されてもよい。圧力センサー(例えば
図1における圧力センサー112)がポンプ流出部に位置する実施形態において、大動脈圧と、大動脈波形の脈圧とは、大動脈根で測定される;この部位は、末梢アプローチによる脈圧の算出(例えばPiCCO、Edwards FloTract)と比較して、大動脈抵抗、全身抵抗、および全身血管コンプライアンスの影響が少ない。いくつかの実施形態において、脈圧、ひいてはアルゴリズム算出値は、患者ごとに様々である、測定ポイントにおける大動脈コンプライアンスによる影響を受ける。しかし、患者ごとのばらつきは、心拍出量アルゴリズムをキャリブレーションすることによって考慮に含めることができ、かつ、大動脈根壁の性質は典型的に血管作用薬および強心薬による影響を受けないので、支持の期間中、患者内の大動脈コンプライアンスの変動はごくわずかであると考えられる。脈圧と脈圧波の導関数とに依存する、他の心拍出量アルゴリズム(例えばPiCCO、FloTract、またはPulseCo)は、自己心臓による拍動性と支持デバイスによる拍動性とを判別できない。対照的に、本アルゴリズムは、自己の拍動性とポンプ駆動による拍動性とを判別でき、かつ、ポンプまたは心臓のいずれかに由来するフローの変化による拍動性の変化を切り離す(de-couple)ことができる。
【0056】
段階416において、算出された心臓パラメータおよび/または心機能パラメータが、表示用に生成され、表示インターフェース上でユーザー向けに表示される。算出された心臓パラメータは、コントローラのメモリ内でアクセスされてもよく、そして、数値、経時的波形、または最大値もしくは最小値として表示されるよう心臓パラメータを準備するために処理されてもよい。心臓パラメータおよび心機能パラメータは、
図3におけるディスプレイ300などのディスプレイ上で、例えば検査技師または集中治療状況もしくはカテーテル室の看護師などの臨床医療従事者向けに表示されてもよい。算出された心臓パラメータ、心機能パラメータ、ならびに任意で、経時的な心臓パラメータおよび/または心機能パラメータの履歴ビューは、臨床医療従事者が心臓パラメータおよび心機能パラメータの傾向を閲覧し、それに基づいて意思決定を行うことを可能にする。本アルゴリズムによって導出されるアルゴリズムを、血液ポンプの正しい場所の決定に用いることを例証するため、ユーザーインターフェースの例を
図5に示す。
【0057】
心臓パラメータおよび心機能パラメータの表示および/または決定は、心臓ポンプが心臓内に植え込まれている間に連続的またはほぼ連続的に行われてもよい。このことは、心周期中の特定の時間または不連続な時点においてのみ心機能をサンプリングできる、従来のカテーテル式の方法に対して、有利である可能性がある。例えば、心臓パラメータの連続的なモニタリングにより、心臓の悪化をより迅速に検出できる可能性がある。心臓パラメータおよび心機能パラメータの連続的なモニタリングは、心臓のコンディションの経時的な変化を示すことができる。加えて、心臓補助デバイスがすでに患者体内にあるならば、追加のカテーテルを患者に導入する必要なく心機能を測定できる。心臓パラメータおよび/または心機能パラメータは、
図3のユーザーインターフェースに示すように、または、他の任意の好適なユーザーインターフェースもしくはレポートを用いて、表示されてもよい。
【0058】
段階418において、算出された心臓パラメータおよび心機能パラメータに基づいて、血液ポンプのパフォーマンスの最適化が決定される。コントローラは、メモリ内の算出された心臓パラメータにアクセスしてもよく、そして、患者の心機能に関して血液ポンプのパフォーマンスを最適化できることを決定するために、算出された心臓パラメータまたは心機能パラメータを保存された閾値と比較してもよい。例えば、コントローラは、患者の心機能が向上しており、患者を血液ポンプ支持から離脱させることができると決定してもよい。代替的に、コントローラは、患者の心機能が減退しており、患者に提供される血液ポンプ支持を増大すべきであると決定してもよい。追加的または代替的に、コントローラは、吸引のリスクまたは吸引事象があることを血液ポンプの現在の留置に基づいて決定してもよく、かつ、血液ポンプの場所を最適化できると決定してもよい。算出された心臓パラメータまたは心機能パラメータの比較対象となる閾値は、製造時にプリセットされるか、ユーザーインターフェースを介して医師によって設定されるか、または、その患者の、算出された心臓パラメータおよび心機能パラメータの以前の読取りに基づいてもよい。例えば、コントローラは、血液ポンプの現在の配置に起因する吸引リスクがあることを決定するために、算出されたLVPを閾値と比較してもよい。いくつかの実施形態において、コントローラは、LVP波形を、保存された1つまたは複数の波形と比較する。いくつかの実施形態において、コントローラは、LVP波形に由来する最小ポイントおよび/または最大ポイントを、保存された閾値と比較する。
【0059】
段階420において、血液ポンプのパフォーマンスについて決定された最適化に関する通知が、生成および表示される。通知は、コントローラ内のメモリにおいてアクセスされてもよく、かつ、決定された最適化に従いそして表示用に生成されてもよい。血液ポンプのパフォーマンスの最適化に関する通知は
図3のユーザーインターフェース内に表示されてもよい。いくつかの実施形態において、血液ポンプのパフォーマンスの最適化に関する通知は主画面上に表示される。いくつかの実施形態において、血液ポンプのパフォーマンスの最適化に関する通知はポップアップまたは警告として表示される。通知は、血液ポンプモータースピードを増大もしくは減少させることを提案してもよく、または、配置の問題または吸引事象のリスクがあることを示してもよい。いくつかの実施形態において、通知は、例えば血液ポンプモータースピードを増大もしくは減少させること、または血液ポンプを特定の方向にある距離だけ移動させることを推奨するなどによって、配置の問題点または吸引事象に対処するための推奨をさらに示してもよい。いくつかの実施形態において、推奨されるモータースピードの変化は、現在使われている血液ポンプのスピードを上回ってもよく、通知は血液ポンプのタイプを変更することを推奨してもよい。
【0060】
いくつかの実施形態において、表示される通知はインタラクティブであり、コントローラは、臨床医療従事者からの入力に基づき、推奨されるモータースピードの変化に関してアクションを講じてもよい。他の実施形態において、通知は、推奨されるモータースピードの変更がすでにコントローラによって自動的に行われたことを示してもよい。
【0061】
図5Aに、血液ポンプにおける間欠的なまたは拡張時の吸引事象を図示している、心臓ポンプコントローラ用のユーザーインターフェース500を示す。ユーザーインターフェース500はユーザーインターフェース300と類似のコンポーネントを含む;そして、ここでは簡潔化のため、すべてのコンポーネントをラベル付けまたは表示してはいない。ユーザーインターフェース500は、大動脈圧波形504とLVP波形506とを示す第一のプロット505、および、モーター電流波形を示す第二のプロット507を含む。同ユーザーインターフェースはまた、最小値と最大値とを含む、大動脈圧波形504上の大動脈圧の指標508、および、最小値と最大値とを含む、LVP波形506上のLVPの指標512も含む。現在のモータースピードの指標510、警告ポップアップ514、および、警告ポップアップに対処するための指示または推奨516もまた、ユーザーインターフェース500に含まれる。
【0062】
圧力の読取りと血液ポンプのモーター電流とに基づきコントローラによって測定される、大動脈圧波形504およびLVP波形506は、心臓内の血液容量が不十分であることによって引き起こされる、血液ポンプにおける拡張期の間欠的な吸引事象を検出するうえで役立つ。そうした吸引事象の際、LVP波形506は、拡張早期に第一のプロット505においてゼロより下まで低下するが、拡張終期圧ポイントまでには回復する。LVP波形506の収縮期フェーズは正常である。間欠的な拡張期の吸引事象の際、最大のLVPの指標512は典型的に正常でありかつ最大の大動脈圧の指標508より大きく、一方で、最小のLVPの指標512は異常でありかつ非常に低いかまたはゼロ未満であるので、これらの事象はまた、LVPの指標512および大動脈圧の指標508によって検出されてもよい。したがって、LVPの指標512の最小値は、拡張期吸引の早期インジケータを提供する。コントローラは、LVPの指標512の最小値と、例えば0 mmHg、-10 mmHg、-20 mmHg、-30 mmHg、-40 mmHg、または他の任意の好適な閾値などである閾値との比較に基づいて、警告514を発してもよい。いくつかの実施形態において、LVPの指標512の最小値の比較は、例えば0 mmHgが境界線上または低いリスクを知らせ、-10 mmHgが軽度の吸引リスクを知らせ、-20 mmHgが中程度の吸引リスクを知らせるなど、リスクのレベルまたは吸引事象の重度を決定するために用いられてもよい。コントローラはさらに、吸引事象への対処および是正のため警告514にどのように反応すべきかについて、医師、看護師、または技師向けに推奨516を提供してもよい。例えば、コントローラは、吸引事象の原因を決定するために追加的な心臓計量値をチェックすること、または、血液ポンプの配置もしくは心臓支持レベルを調整する前に患者の健康状態をチェックすること、の推奨を提供してもよい。コントローラはまた、吸引事象の検出に基づき血液ポンプの配置をチェックするという指示または推奨を提供してもよく、かつ、モーター電流510の変更により、血液ポンプによって提供される支持のレベルを変更することをさらに推奨してもよい。
【0063】
図5Bに、血液ポンプにおける連続的吸引事象を図示している、心臓ポンプコントローラ用のユーザーインターフェース501を示す。
図5Aにおけるユーザーインターフェース500と同様に、ユーザーインターフェース501はユーザーインターフェース300と類似のコンポーネントを含む;そして、ここでは簡潔化のため、すべてのコンポーネントをラベル付けまたは表示してはいない。ユーザーインターフェース501は、大動脈圧波形524とLVP波形526とを示す第一のプロット525、および、モーター電流波形を示す第二のプロット527を含む。同ユーザーインターフェースはまた、最小値と最大値とを含む、大動脈圧波形524上の大動脈圧の指標528、および、最小値と最大値とを含む、LVP波形526上のLVPの指標532も含む。現在のモータースピードの指標530、警告ポップアップ534、および、警告ポップアップに対処するための指示または推奨536もまた、ユーザーインターフェース501に含まれる。
【0064】
図5Aにおける、表示されたLVPおよび大動脈圧によって間欠的(拡張期)吸引事象が決定され示されるプロセスと同様に、連続的または収縮期の吸引事象の決定にも、LVP波形526、大動脈圧波形524、LVPの指標528、および大動脈圧の指標532によって情報がもたらされる。これらおよび他の心臓計量値をユーザーインターフェース501を介してユーザー向けに表示することにより、臨床医療従事者または医師などのユーザーが、連続的吸引事象を認識でき、かつ、それらに対処するため適切に反応することができる。連続的吸引事象は、典型的に、血液ポンプの配置の不良か、または、心臓の構造が血液ポンプの流入部を(例えばポンプインレット114を)ブロックしていることによって引き起こされる。連続的吸引事象の際、LVP波形526は、拡張期中にゼロより下まで低下し、かつ、収縮期中に大動脈圧波形524より上には決して上昇しない。加えて、連続的吸引事象の際、LVPの指標532の最大値は異常でありかつ典型的に大動脈圧の指標528の最大値よりはるかに低く、一方で、LVPの指標532の最小値は異常でありかつゼロ未満である。LVP波形526から算出されるLVEDPは、表示されているのであれば、ゼロに等しい。
【0065】
図5Aの間欠的(拡張期)吸引事象の場合と同様に、連続的吸引事象が検出された時に警告534および推奨536が表示されてもよい。連続的吸引事象が検出された時に表示される推奨536は、間欠的吸引事象の際に表示される推奨516と同じかまたは異なっていてもよい。
【0066】
図5Cに、計量値傾向画面を図示している、心臓ポンプコントローラ用のユーザーインターフェース502を示す。同傾向画面は、心拍出量の傾向波形542と、血液ポンプ流量の傾向波形544と、自己心拍出量の傾向波形546とを表示する第一のプロット540、ならびに、医師による迅速な評価のための、関連する値である心拍出量、血液ポンプ流量、および自己心拍出量を含む。ユーザーインターフェース502の計量値傾向画面はまた、平均大動脈圧の傾向波形550と、LVEDPの傾向波形552とを表示する第二のプロット548、ならびに、関連する値である平均大動脈圧554およびLVEDP 556も含む。ユーザーインターフェース502はまた、血液ポンプのモータースピードの指標560、血液ポンプ流量562、心拍出量564、および心拍出力558も含む。
【0067】
ユーザーインターフェース502の計量値傾向画面は、様々な経時的心臓パラメータに関連付けられた履歴データをさらに図示するために医師がアクセスすることができる。そうした履歴データは、医師が、患者の心臓の健康状態の進行を理解すること、および、生じている事象を同定することに、役立つ可能性がある。例えば、
図5Cに示すユーザーインターフェース502の計量値傾向画面は、心拍出量の傾向波形542、血液ポンプ流量の傾向波形544、自己心拍出量の傾向波形546、大動脈圧の傾向波形550、およびLVEDPの傾向波形552を表示しており、これらはすべて経時的に比較的安定である。しかし、これら波形の経時的な変化または傾向は、吸引事象または吸引のリスクを示す可能性がある。LVEDPの傾向波形552は、患者に心臓支持を提供する過程にわたって安定しているべきである。LVEDPの傾向波形552が低いことおよび/または減退していることは、拡張期吸引のリスク増大があることを示す。この波形を医師が容易に利用できるようにすることは、医師が吸引事象のリスクをモニターすることを可能にする。吸引の原因を決定するために、医師はユーザーインターフェース502の計量値傾向画面を調べてもよい;同画面において、LVEDPの傾向波形552が高いが突然ゼロまで降下することは連続的または収縮期の吸引事象を示唆し、一方、LVEDPの傾向波形552が低くゼロ付近で停滞することは間欠的または拡張期の吸引事象を示唆する。これらの傾向および値の表示は、コントローラのアルゴリズムによって血液ポンプのモーター電流と大動脈圧とから計量値を算出することによって可能になるのであり、そして医師は、その値および傾向に基づき、患者ケアについて情報に基づいた意思決定を行うことができる。
【0068】
様々な波形および心臓計量値の平均値の表示は、吸引事象の指標を提供するのみにとどまらず、血液ポンプの配置エラーを医師が決定することを可能にする情報も、医師に提供してもよい。例えば、医師または技師は、大動脈圧波形(例えば
図5Aにおける504または
図5Bにおける524)に対するLVP波形(例えば
図5Aにおける506または
図5Bにおける526)の変化を観察することにより、血液ポンプが左心室内に移動しており、その結果もはや適切な支持を提供していない、と決定してもよい。血液ポンプが左心室内に移動した時、LVP波形の形状の変化は、配置エラーが生じたという瞬時フィードバックを提供する。LVPの最大値および最小値を大動脈圧の最大値および最小値と比較することにより、大動脈圧の値が大動脈圧の代わりに左心室の信号を反映しはじめたことを医師に示すことができる。その間、LVEDPは安定したままである;それは、ポンプは移動したもののフローエリアを妨げている心室構造はないという確認となる。
【0069】
波形の表示はまた、左心室内に移動したポンプの再配置中にも有用である可能性がある。別個のLVP波形および大動脈圧波形は、明瞭な大動脈圧信号を確認するために閲覧されてもよく、かつ、再配置中に医師または技師に瞬時的なフィードバックを提供してもよい。LVP指標と大動脈圧指標との比較もまた、閲覧されてもよく、かつ、大動脈圧の値がLVPの値と分かれる際に血液ポンプの再配置の確認となってもよい。
【0070】
ユーザーインターフェースは、波形および心臓計量値を表示することに加えて、血液ポンプの配置の問題が検出されたならば警告および/または推奨を提供してもよい。推奨は、ポンプ流量またはモータースピードを低下させること、および再配置のガイドにアクセスすることの提案を含んでもよい。
【0071】
吸引事象および配置の問題について医師に示すことができる、心臓の波形および値を表示することに加えて、算出された心臓パラメータおよび計量値はまた、離脱の意思決定に情報をもたらしてもよい。
図5Dに、表示された計量値によって捉えられた、離脱中の心機能の変化を図示している、心臓ポンプコントローラ用のユーザーインターフェース504を示す。同ユーザーインターフェースは、大動脈圧波形574とLVP波形576とを示す第一のプロット575、および、モーター電流波形を示す第二のプロット577を含む。同ユーザーインターフェースはまた、最小値と、最大値と、平均値とを含む、大動脈圧波形574上の大動脈圧の指標578、および、最小値と、最大値と、拡張終期の(LVEDP)値とを含む、LVP波形576上のLVPの指標582も含む。現在のモータースピードの指標580、血液ポンプ流量の指標588、心拍出量の指標586、および心拍出力の指標584もまた、ユーザーインターフェース504に含まれる。
【0072】
図5Dに表示されているLVP波形576および大動脈圧波形575は、血行動態が安定している、回復した患者のものを例示している。LVEDPは、離脱プロセス中、自己心臓が機能を引き継ぎそして過剰な左室容積が解消される際に、安定しているべきである。心拍出量も同様に、離脱中、自己心臓がポンプの拍出量を引き継ぐ際に安定しているべきである;そして、心拍出力も安定しているべきであり、かつ好ましくは、特定の機関の意思決定プトロコルによって求められる範囲内であるべきである。回復した患者の離脱中の進行もまた、計量値傾向画面上で可視化されてもよい;その場合、血液ポンプからの支持が経時的に低減されるにつれて、自己心拍出量(例えば
図5Cにおける546)の増加が、血液ポンプ流量(例えば
図5Cにおける544)の減少とともに生じる。離脱プロセス中、自己心臓が血液ポンプから機能を引き継ぎ、そして心拍出量(例えば
図5Cにおける542)は安定したままである。自己心臓が引き継ぐ際、LVEDP(例えば
図5Cにおける552)は安定しているかまたは減退する。そして、心拍出力(例えば
図5Cにおける558)は安定している。
【0073】
コンディションが悪化している患者の場合は、心臓が超過の血液容量をポンピングできず、左室容積が増大するので、離脱の試み中にLVEDPが上昇する可能性が高い。この時にLVP波形576および大動脈圧波形574は低下することがある。病気の患者では、血液ポンプからの支持の減少を自己心臓が補償できないので、心拍出量586および心拍出力584もまた離脱中に低下する。病気の患者の、離脱中の機能減退は、計量値傾向画面上でも可視化されうる;その場合、血液ポンプ支持への患者の依存が大きくなるにつれて、自己心拍出量(例えば
図5Cにおける546)が経時的に減退する可能性がある。心臓が血液をポンピングできず、LVPが増大するので、LVEDP波形(例えば
図5Cにおける552)が上昇する可能性がある。心拍出力(例えば
図5Cにおける558)が低下し、全拍出力もより低くなる。
【0074】
図6に、心拍出力を決定しそしてポンプ支持の調節の推奨をユーザー向けに表示するためのプロセス600を示す。プロセス600は、
図1の血管内心臓ポンプシステム100または他の任意の好適な心臓ポンプを用いて行われてもよい。離脱プロセス中の計量値傾向をモニターするために、および、心臓を血液ポンプ支持から離脱させるための患者の準備状態を評価するために、集中治療状況またはカテーテル室において、心拍出力と、心拍出力の経時的な履歴的傾向とが、医師によって解釈および評価されてもよい。加えて、患者の離脱についての意思決定に情報をもたらすため、心拍出量、自己心拍出量、およびLVEDPもまた生成されそして医師向けに表示されてもよい。
【0075】
患者の心拍出力を決定するために、本アルゴリズムは以下のプロセスに従って進む。段階602において心臓ポンプのモーターが稼働される。モーターは一定した回転スピードで稼働されてもよい。段階604において大動脈圧が測定される。大動脈圧は、心臓ポンプに連結された圧力センサーによって、別個のカテーテルによって、非侵襲的な圧力センサーによって、または他の任意の好適なセンサーによって、測定されてもよい。圧力センサーは、流体で満たされたチューブ、差圧センサー、液圧センサー、圧電抵抗式ストレインゲージ、光学干渉式センサーもしくは他の光学式センサー、MEMS圧電センサー、または他の任意の好適なセンサーであってもよい。いくつかの実施形態において、大動脈圧の測定に対する追加または代替として、心室圧が測定される。
【0076】
段階606において、モーターに送達される電流が測定され、かつモータースピードが測定される。電流は、電流センサーを用いて、または他の任意の好適な手段によって、測定されてもよい。
【0077】
段階608において、最大の大動脈圧から最小の大動脈圧を減算することによって、大動脈圧波形から脈圧波が算出される。大動脈圧波形の平均から平均大動脈圧もまた抽出されてもよい。段階610において、脈圧から自己心拍出量が導出される。自己心拍出量を算出するには、まず、線形のスケーリング因子による、脈圧と自己心拍出量と間の関係を決定しなればならない。スケーリング因子は患者およびコンディションの両方に特異的であり、内的または外的なキャリブレーション方法から導出されうる。段階612において、測定されたモーター電流およびモータースピードからポンプ流量が導出される。段階614において、自己心拍出量にポンプ流量を加算することによって全心拍出量が決定される。段階616において、全心拍出量および平均大動脈圧から心拍出力が算出される。
【0078】
段階618において、心臓に対するポンプ支持の調節についての推奨が、算出された心拍出力に基づいて決定される。例えば、算出された心拍出力、または、算出された心拍出力と閾値もしくは履歴値との比較が、患者の心機能が向上したことを示すのであれば、患者を心臓支持から離脱させるためにポンプ支持を低減させるという推奨が決定されてもよい。別の実施例において、算出された心拍出力、または、算出された心拍出力と閾値もしくは履歴値との比較が、心機能が悪化したことを示すのであれば、患者に対するポンプ支持を増大させるという推奨が決定されてもよい。最後に、段階620において、ポンプ支持の調節についての推奨が表示用に生成され、そしてユーザーインターフェース上に表示される。いくつかの実施形態において、心拍出力、そして追加的に、算出された他の計量値およびパラメータもまた、表示用に生成され、そしてポンプ支持の調節についての推奨とともに表示される。算出された心拍出力、および任意で、経時的な心拍出力の履歴ビューは、例えば血液ポンプ支持からの患者の離脱に関する意思決定を行うために、臨床医療従事者が心拍出力の傾向を閲覧しそしてそれに基づいて意思決定を行うことを可能にする。これらの計量値傾向を表示することは、臨床医療従事者が、表示された調節の推奨を評価すること、および、離脱の意思決定または血液ポンプによって提供される支持のレベルを変えるための他の意思決定を支持すること、に役立つ可能性がある。
【0079】
心拍出力は心拍出量と平均大動脈圧との積であり、大動脈弁のすぐ遠位側において心臓とポンプとによって生じるパワーの、真の尺度の指標となる。これは、血液ポンプのポンプ流出部にある圧力センサーの配置と、心臓パラメータに関係する血液ポンプの稼働の理解とに基づいて、測定可能である。自己心拍出力は、心臓それ自体によって出されているパワーを表すので、臨床医療従事者はそれを心臓の全体的な健康状態の尺度として用いることができる。自己心拍出力の傾向は、自己心拍出量が向上または減退しているかを決定するために臨床医療従事者によって用いられてもよく、そして、血液ポンプと薬物治療とによって提供されている支持についての臨床意思決定が、これらの傾向に基づいて行われてもよい。上述のアルゴリズムによる心拍出力の決定は、従来の決定方法よりも信頼性が高くかつ正確である。
【0080】
図7に、測定および算出された心臓パラメータに基づいて、モータースピードに対する調整を推奨するための、プロセス700を示す。プロセス700は、
図1の血管内心臓ポンプシステム100または他の任意の好適な心臓ポンプを用いて行われてもよい。プロセス700は、
図4における段階402〜416と実質的に同様である段階702〜716を含む。ここではこれらの段階を簡潔に列挙するが、当業者には、
図4の対応する段階の説明に含まれる代替物および追加的詳細が、
図7の段階702〜716にも当てはまることが理解されるであろう。
【0081】
図4におけるプロセス400と同様に、段階702において心臓ポンプのモーターが稼働される。モーターは一定した回転スピードで稼働されてもよい。段階704において大動脈圧が測定される。
図4におけるプロセス400と同様に、大動脈圧は、心臓ポンプに連結された圧力センサーによって、または別個のカテーテルによって、測定されてもよい。センサーは、流体で満たされたチューブ、差圧センサー、液圧センサー、圧電抵抗式ストレインゲージ、光学干渉式センサーもしくは他の光学式センサー、MEMS圧電センサー、または他の任意の好適なセンサーであってもよい。段階706において、モーターに送達される電流が測定され、かつモータースピードが測定される。段階708において、血液ポンプのカニューレをまたぐ差圧が、測定されたモーター電流およびモータースピードに基づいて決定される;
図4におけるプロセス400に関して論じたように、その決定は、ルックアップ表を用いることによって、または、既知のモータースピードに対して測定されたモーター電流について、および任意で他のパラメータについて、説明する関数にアクセスすることによって、行われる。
【0082】
段階710において、血液ポンプのカニューレをまたぐ差圧と大動脈圧とに基づいて心臓パラメータが算出される。心臓パラメータは、LVEDP、LVP、大動脈脈圧、平均大動脈圧、ポンプ流量、圧力勾配、または心拍数のうちの1つであってもよい。これらの心臓パラメータは、それぞれ、心臓の健康状態および機能の様々な局面の尺度として臨床医療従事者によって用いられてもよい。各心臓パラメータの経時的な傾向は、自己心拍出量が向上または減退しているかを決定するために臨床医療従事者によって用いられてもよく、そして、血液ポンプと薬物治療とによって提供されている支持についての臨床意思決定が、これらの傾向に基づいて行われてもよい。いくつかの実施形態において、血液ポンプのカニューレをまたぐ差圧と大動脈圧とに基づいて、2つ以上の心臓パラメータが算出される。
【0083】
段階712において、算出された心臓パラメータがメモリ内に記録される。メモリ内に保存された、記録された心臓パラメータにアクセスすることによって、経時的な心臓パラメータの履歴ビューがユーザーによってアクセスされてもよく、またはディスプレイコンソール上に傾向線として表示されてもよい。
【0084】
段階714において、算出された心臓パラメータに基づいて心機能パラメータが決定される。心機能パラメータは、心拍出量、心拍出力、自己心拍出量、自己心拍出力、心収縮性、心弛緩性、輸液反応性、容積状態、心負荷軽減指数、心臓回復指数、左室拡張機能、左室拡張期エラスタンス、左室収縮期エラスタンス、一回拍出量、心拍変動、一回拍出量変動、脈圧変動、大動脈コンプライアンス、血管コンプライアンス、または血管抵抗のいずれかであってもよい。これらの心機能パラメータは、算出された心臓パラメータおよび他の利用可能な測定パラメータから算出されてもよい。心機能パラメータは、心機能について追加的な情報を臨床医療従事者に提供する。いくつかの実施形態において、心機能パラメータもまた、履歴データと、時間に関する心機能パラメータの傾向とを提供するために、メモリ内に記録される。いくつかの実施形態において、2つ以上の心機能パラメータが決定される。
【0085】
段階716において、算出された心臓パラメータおよび/または心機能パラメータが、表示用に生成され、そしてユーザー向けに表示される。算出された心臓パラメータおよび/または心機能パラメータは、メモリからアクセスされ、そして、数値、ある期間にわたる最大値および最小値、ならびに/または経時的な履歴的傾向として、表示用に生成される。心臓パラメータおよび心機能パラメータは、次に、
図3におけるディスプレイ300などのディスプレイ上で、臨床医療従事者向けに表示される。算出された心臓パラメータ、心機能パラメータ、ならびに任意で、経時的な心臓パラメータおよび/または心機能パラメータの履歴ビューは、臨床医療従事者が心臓パラメータおよび心機能パラメータの傾向を閲覧し、そしてそれに基づいて意思決定を行うことを可能にする。
【0086】
心臓パラメータおよび心機能パラメータの表示および/または決定は、心臓ポンプが心臓内に植え込まれている間に連続的またはほぼ連続的に行われてもよい。このことは、心周期中の特定の時間または不連続な時点においてのみ心機能をサンプリングできる、従来のカテーテル式の方法に対して、有利である可能性がある。例えば、心臓パラメータの連続的なモニタリングにより、心臓の悪化をより迅速に検出できる可能性がある。心臓パラメータおよび心機能パラメータの連続的なモニタリングは、心臓のコンディションの経時的な変化を示すことができる。加えて、心臓補助デバイスがすでに患者体内にあるならば、追加のカテーテルを患者に導入する必要なく心機能を測定できる。心臓パラメータおよび/または心機能パラメータは、
図3のユーザーインターフェースに示すように、または、他の任意の好適なユーザーインターフェースもしくはレポートを用いて、表示されてもよい。
【0087】
段階718において、算出された心臓パラメータおよび心機能パラメータに基づいて、モータースピードに対する推奨される変更が決定される。モータースピードに対する推奨される変更は、心臓パラメータおよび/または心機能パラメータと閾値との比較に基づいて決定されてもよい。続いて、心臓パラメータおよび/もしくは心機能パラメータ、または、心臓パラメータもしくは心機能パラメータと閾値との間の差が、ポンプ流量における必要な増大または減少を決定するために用いられてもよく、そして、ポンプ流量におけるその増大または減少は、ルックアップ表または他の関数を用いて、対応するモータースピードを決定するために用いられてもよい。
【0088】
段階720において、モータースピードに対する推奨される変更が、表示用に生成され、そして表示される。モータースピードに対する推奨される変更は、
図3のユーザーインターフェース内に表示されてもよい。いくつかの実施形態において、モータースピードに対する推奨される変更は、主画面上に表示される。いくつかの実施形態において、モータースピードに対する推奨される変更は、ポップアップまたは警告として表示される。段階722において、表示された、モータースピードに対する推奨される変更に応答したユーザー入力が受け入れられる。段階724において、ユーザー入力に従ってモータースピードが調整される。モータースピードは、モーターに送達される電力を変更することによって調整される。モータースピードは、推奨されるモータースピードの変更に応答したユーザー入力に応じて、モーターの現在のスピードより速くまた遅くなるよう調整されてもよい。モーターに送達される電力は、コントローラによって自動的に、または手動で(例えば医療従事者によって)、調整されてもよい。支持の程度は、患者の心機能が悪化している時に増大されてもよい;または、支持の程度は、患者の心機能が回復している時に低減されてもよく、それによって患者が徐々に治療から離脱することを可能にしてもよい。このことは、心臓の回復を促すためにデバイスが心機能の変化に動的に応答することを可能にする。このことはまた、ポンプ支持を間欠的に調節するため、そして、例えば心臓がポンピング機能を心臓ポンピングデバイスから引き継げるかなど、心臓がどのように反応するかを診断するために用いられてもよい。
【0089】
図8に、心拍出力およびLVEDPに基づいて、モータースピードに対する調整を推奨するためのプロセス800を示す。プロセス800は、
図1の血管内心臓ポンプシステム100または他の任意の好適な心臓ポンプを用いて行われてもよい。プロセス800は、心拍出力およびLVEDPに基づいてモータースピードに対する調整の推奨を決定するという具体的ケースについて、
図7に示したプロセス700の諸段階に従う。段階802において心臓ポンプのモーターが稼働される。モーターは一定した回転スピードで稼働されてもよい。段階804において大動脈圧が測定される。大動脈圧は、心臓ポンプに連結された圧力センサーによって、別個のカテーテルによって、非侵襲的な圧力センサーによって、または他の任意の好適なセンサーによって、測定されてもよい。圧力センサーは、流体で満たされたチューブ、差圧センサー、液圧センサー、圧電抵抗式ストレインゲージ、光学干渉式センサーもしくは他の光学式センサー、MEMS圧電センサー、または他の任意の好適なセンサーであってもよい。いくつかの実施形態において、大動脈圧の測定に対する追加または代替として、心室圧が測定される。段階806において、モーターに送達される電流が測定され、かつモータースピードが測定される。電流は、電流センサーを用いて、または他の任意の好適な手段によって、測定されてもよい。
【0090】
段階808において、血液ポンプのカニューレをまたぐ差圧が、測定されたモーター電流およびモータースピードに基づいて決定される。コントローラは、
図2Aにおける既知のモータースピードに対するモーター電流と差圧との関係に基づくルックアップ表などの、ルックアップ表にアクセスしてもよい。代替的に、コントローラは、測定されたモーター電流と既知のモータースピードとに関連付けられた、血液ポンプのカニューレをまたぐ差圧を決定するために、差圧とモーター電流との関係を記述した関数を利用してもよい。コントローラはまた、カニューレをまたぐ圧力勾配をより正確に決定するために、例えば血液ポンプ、ポンプコントローラ、またはコンソールの特性、環境パラメータ、およびモータースピード設定など、他の様々なパラメータも、差圧の決定において考慮に含めてもよい。
【0091】
段階810において、大動脈圧と、血液ポンプのカニューレをまたぐ圧力勾配とに基づいて、LVEDPおよび心拍出力が決定される。LVEDPは、モーター電流から決定された、カニューレをまたぐ圧力勾配を、大動脈圧から減算すること、および、心周期から拡張終期ポイントを選択することによって、算出される。心拍出力は、まず脈圧から自己心拍出量を決定し、ポンプ流量に基づいて全心拍出量を決定し、そして最後に心拍出量を平均動脈圧とともに用いて心拍出力を算出することによって、算出される。いくつかの実施形態において、血液ポンプが右心用血液ポンプであるならば、右室圧が決定される。
【0092】
段階812において、血液ポンプのモータースピードに対する推奨される調整が決定される。モータースピードに対する推奨される調整は、LVEDP、心拍出力、心拍出量、および/または平均大動脈圧と閾値との比較に基づいて決定されてもよい。続いて、比較された上述の心臓パラメータ、または、比較された心臓パラメータもしくは心機能パラメータと閾値との間の差が、ポンプ流量における必要な増大または減少を決定するために用いられてもよく、そして、ポンプ流量におけるその増大または減少は、ルックアップ表または他の関数を用いて、対応するモータースピードを決定するために用いられてもよい。
【0093】
段階814において、血液ポンプのモータースピードに対する推奨される調整が、表示用に生成され、そして表示される。モータースピードに対する推奨される変更は、
図3のユーザーインターフェース内に表示されてもよい。いくつかの実施形態において、モータースピードに対する推奨される変更は、主画面上に表示される。いくつかの実施形態において、モータースピードに対する推奨される変更は、ポップアップ通知または警告として表示される。
【0094】
図9に、測定および算出された心臓パラメータに基づいて、より高流量の処置用デバイスを推奨するための、プロセス900を示す。プロセス900は、
図7における段階702〜718と実質的に同様である段階902〜918を含む。ここではこれらの段階を簡潔に列挙するが、当業者には、
図7の対応する段階の説明に含まれる代替物および追加的詳細が、
図9の段階902〜918にも当てはまることが理解されるであろう。
【0095】
段階902において心臓ポンプのモーターが稼働される。段階904において大動脈圧が測定される。段階906において、モーターに送達される電流が測定され、かつモータースピードが測定される。段階908において、血液ポンプのカニューレをまたぐ差圧が、測定されたモーター電流および測定されたモータースピードに基づいて決定される。段階910において、血液ポンプのカニューレをまたぐ差圧と大動脈圧とに基づいて心臓パラメータが算出される。段階912において、算出された心臓パラメータがメモリ内に記録される。算出される心臓パラメータは、LVEDP、LVP、大動脈脈圧、平均大動脈圧、ポンプ流量、圧力勾配、または心拍数のいずれかであってもよい。段階914において、算出された心臓パラメータに基づいて心機能パラメータが決定される。心機能パラメータは、心拍出量、心拍出力、自己心拍出量、自己心拍出力、心収縮性、心弛緩性、輸液反応性、容積状態、心負荷軽減指数、心臓回復指数、左室拡張機能、左室拡張期エラスタンス、左室収縮期エラスタンス、一回拍出量、心拍変動、一回拍出量変動、脈圧変動、大動脈コンプライアンス、血管コンプライアンス、または血管抵抗のいずれかであってもよい。段階916において、算出された心臓パラメータおよび/または心機能パラメータが、表示用に生成され、そしてユーザー向けに表示される。記録された心臓パラメータは、メモリ内でアクセスされ、そして、瞬時値、ある期間にわたる最大値および最小値のセット、ならびに/または経時的な履歴的傾向として、表示用に処理される。記録された心臓パラメータは、次にユーザー向けに表示される。いくつかの実施形態において、算出された心機能パラメータもまた、保存されそして経時的傾向として表示される。段階918において、算出された心臓パラメータおよび心機能パラメータに基づいて、モータースピードに対する推奨される変更が決定される。
【0096】
段階920において、モータースピードに対する推奨される変更が、閾値と比較される。閾値は、最大または最小の稼働モータースピードを示す、血液ポンプに関連付けられた値であってもよい。モータースピードに対する推奨される変更が、閾値と比較されるのは、現在の血液ポンプが、必要とされるスピードで稼働できるか;および/または、現在の血液ポンプが、必要とされるスピードで稼働するための最適な血液ポンプであるか、を決定するためである。
【0097】
段階922において、推奨されるモータースピードで稼働するための適切な血液ポンプが、閾値との比較に基づいて決定される。適切な血液ポンプは、利用可能な様々な血液ポンプの性質および特性を含むルックアップ表を調べることによって決定されてもよい。推奨されるモータースピードで稼働するための適切な血液ポンプの決定に、算出された心臓パラメータおよび/または心機能パラメータもまた考慮に含めてもよい。算出された心臓パラメータおよび/または心機能パラメータを考慮に含めることにより、コントローラが、推奨されるポンプスピードのみならず心臓の全般的な機能および健康状態にも基づいて推奨を行える可能性がある。いくつかの場合において、患者の心機能が低いため、異なる血液ポンプに変更することが賢明でない可能性がある。算出された心臓パラメータおよび心機能を考慮に含めることにより、または代替的に、推奨とともに警告を臨床医療従事者向けに表示することにより、モータースピードを調整するために血液ポンプを変更することが賢明でない時に、それが防止される。
【0098】
段階924において、決定された適切な血液ポンプが表示用に生成され、そして表示される。心臓パラメータおよび心機能パラメータが、
図3におけるディスプレイ300などのディスプレイ上で臨床医療従事者向けに表示されてもよい。いくつかの実施形態において、推奨されるモータースピードもまた表示される。上述したように、異なる血液ポンプが推奨される時に、追加的な情報または警告もまた臨床医療従事者向けに表示されてもよい;それは、プロトコルに従うよう、または、推奨に基づいて行動する前に心臓の機能および健康状態について追加的な決定を行うよう、臨床医療従事者に促す。
【0099】
図10に、測定および算出された心臓パラメータに基づいて薬物治療を推奨するためのプロセス1000を示す。例えば、強心剤および昇圧剤を含む、薬剤の用量設定が、心拍出量および平均大動脈圧などの心臓計量値の評価に基づいて、モニターおよび決定されてもよい。さらに、経時的なLVEDPの評価によって容積状態および輸液反応性がモニターされてもよい。薬物治療を推奨するためのプロセス1000は、
図7における段階702〜720と実質的に同様である段階1002〜1020を含む。ここではこれらの段階を簡潔に列挙するが、当業者には、
図7の対応する段階の説明に含まれる代替物および追加的詳細が、
図10の段階1002〜1020にも当てはまることが理解されるであろう。
【0100】
段階1002において心臓ポンプのモーターが稼働される。段階1004において大動脈圧が測定される。段階1006において、モーターに送達される電流が測定され、かつモータースピードが測定される。段階1008において、血液ポンプのカニューレをまたぐ差圧が、測定されたモーター電流および測定されたモータースピードに基づいて決定される。段階1010において、血液ポンプのカニューレをまたぐ差圧と大動脈圧とに基づいて心臓パラメータが算出される。算出される心臓パラメータは、LVEDP、LVP、大動脈脈圧、平均大動脈圧、ポンプ流量、圧力勾配、または心拍数のいずれかであってもよい。段階1012において、算出された心臓パラメータがメモリ内に記録される。段階1014において、算出された心臓パラメータに基づいて心機能パラメータが決定される。心機能パラメータは、心拍出量、心拍出力、自己心拍出量、自己心拍出力、心収縮性、心弛緩性、輸液反応性、容積状態、心負荷軽減指数、心臓回復指数、左室拡張機能、左室拡張期エラスタンス、左室収縮期エラスタンス、一回拍出量、心拍変動、一回拍出量変動、脈圧変動、大動脈コンプライアンス、血管コンプライアンス、または血管抵抗のいずれかであってもよい。いくつかの実施形態において、心機能パラメータもまたメモリ内に保存される。段階1016において、算出された心臓パラメータおよび/または心機能パラメータが表示される。
【0101】
段階1018において、算出された心臓パラメータおよび心機能パラメータに基づいて、推奨治療が決定される。推奨治療は、算出された心臓パラメータおよび心機能パラメータに基づく。いくつかの実施形態において、推奨治療は、算出された心臓パラメータおよび/または心機能パラメータと閾値との比較に基づく。いくつかの実施形態において、推奨治療は、ある期間にわたる、算出された心臓パラメータおよび/または心機能パラメータの変化の比較に基づく。いくつかの実施形態において、推奨治療は、ルックアップ表にアクセスし、そして、算出された心臓パラメータおよび心機能パラメータの現在値に対応する用量を抽出することによって、決定される。
【0102】
例えば、薬学的介入が正当または有益であることを決定するために、自己心拍出量、LVEDP、および心拍出力という、算出された心臓パラメータの組み合わせが、アルゴリズムによって解析され、そして閾値と比較されてもよい。アルゴリズムは、強心剤の投与が正当であることを決定してもよい;そして、用量のルックアップ表を調べるなどのさらなる解析により、臨床医療従事者が強心剤を投与するという推奨、および、その治療で用いられるべき特定の用量または用量設定についての推奨を、アルゴリズムが提供することが可能になってもよい。
【0103】
追加的な心臓パラメータをモニターおよび解析することにより、アルゴリズムが、患者の水分摂取を調節することまたは患者に利尿剤を投与することの情報および推奨を臨床医療従事者に提供することもまた可能になる。自己拍出量、LVEDP、および大動脈脈圧の変動などの心臓パラメータを測定および決定することにより、アルゴリズムは、患者の状態、および患者が至適体液ウィンドウ内にあるかを同定でき、かつ、患者の輸液反応性について評価および報告することもできる。
【0104】
段階1020において、推奨治療に関連付けられた推奨用量が決定される。推奨用量は、算出された心臓パラメータおよび心機能パラメータに基づく。いくつかの実施形態において、推奨用量は、算出された心臓パラメータおよび/または心機能パラメータと閾値との比較に基づく。いくつかの実施形態において、推奨用量は、ある期間にわたる、算出された心臓パラメータおよび/または心機能パラメータの変化の比較に基づく。いくつかの実施形態において、推奨用量は、推奨治療についてのルックアップ表にアクセスし、そして、算出された心臓パラメータおよび心機能パラメータの現在値に対応する用量を抽出することによって、決定される。
【0105】
段階1022において、推奨治療および推奨用量が表示用に生成され、そして表示される。推奨治療および推奨用量は
図3のユーザーインターフェース内に表示されてもよい。いくつかの実施形態において、推奨治療および推奨用量は主画面上に表示される。いくつかの実施形態において、推奨治療および推奨用量はポップアップ通知または警告として表示される。プロセス900の場合と同様に、推奨治療および推奨用量は、特定のプロトコルに従うよう、または、治療を行う前に他の心機能パラメータをモニターまたはチェックするよう、臨床医療従事者に促すため、警告とともに臨床医療従事者向けに表示されてもよい。
【0106】
図11に、測定および算出された心臓パラメータに基づいて、予測される心臓有害事象についてユーザーに注意喚起するための、プロセス1100を示す。プロセス1100は、
図7における段階702〜720と実質的に同様である段階1102〜1120を含む。ここではこれらの段階を簡潔に列挙するが、当業者には、
図7の対応する段階の説明に含まれる代替物および追加的詳細が、
図11の段階1102〜1120にも当てはまることが理解されるであろう。
【0107】
段階1102において心臓ポンプのモーターが稼働される。段階1104において大動脈圧が測定される。段階1106において、モーターに送達される電流が測定され、かつモータースピードが測定される。段階1108において、血液ポンプのカニューレをまたぐ差圧が、測定されたモーター電流および測定されたモータースピードに基づいて決定される。段階1110において、血液ポンプのカニューレをまたぐ差圧と大動脈圧とに基づいて心臓パラメータが算出される。算出される心臓パラメータは、LVEDP、LVP、大動脈脈圧、平均大動脈圧、ポンプ流量、圧力勾配、または心拍数のいずれかであってもよい。段階1112において、算出された心臓パラメータがメモリ内に記録される。段階1114において、算出された心臓パラメータに基づいて心機能パラメータが決定される。心機能パラメータは、心拍出量、心拍出力、自己心拍出量、自己心拍出力、心収縮性、心弛緩性、輸液反応性、容積状態、心負荷軽減指数、心臓回復指数、左室拡張機能、左室拡張期エラスタンス、左室収縮期エラスタンス、一回拍出量、心拍変動、一回拍出量変動、脈圧変動、大動脈コンプライアンス、血管コンプライアンス、または血管抵抗のいずれかであってもよい。いくつかの実施形態において、心機能パラメータもまたメモリ内に保存される。段階1116において、算出された心臓パラメータおよび/または心機能パラメータが表示用に生成され、そしてユーザー向けに表示される。算出された心臓パラメータおよび/または心機能パラメータは、瞬時値、ある期間にわたる最大値および最小値、ならびに/または経時的な履歴的傾向として、表示用に生成されてもよい。算出された心臓パラメータおよび/または心機能パラメータは、次にユーザー向けに表示される。
【0108】
段階1118において、算出された心臓パラメータおよび/または心機能パラメータが、閾値と比較される。いくつかの実施形態において、設定閾値は、コントローラ内で設定されるシステム値である。いくつかの実施形態において、設定閾値は、患者の履歴および健康状態に基づいて臨床医療従事者によって設定される。いくつかの実施形態において、設定閾値は、例えばあらかじめ定められた時間だけ前に測定または算出された前値などである、心臓計量値の前値である。段階1120において、算出された心臓パラメータおよび/または心機能パラメータが閾値を満たすかどうかが決定される。設定閾値は、その閾値を満たす心臓パラメータまたは心機能パラメータが、心臓事象または虚血事象が進行しているという早期警告信号の指標または潜在的指標となるように、設定される。
【0109】
多くの有害事象が、心臓パラメータの決定、および、心臓パラメータもしくはその経時的傾向と閾値との比較に基づいて、予測可能である。加えて、これらの追加的心臓パラメータを医療従事者向けにリアルタイムで表示すること、および、履歴データを含めることにより、医師が患者の健康状態をよりよく理解すること、および、生じうる有害事象を予測しこれに対処することが可能となる。例えば、本明細書に説明するアルゴリズムに従って算出および表示された心臓パラメータに基づき、追加的な虚血事象、伝導異常、または出血および溶血が検出され、そして対処されてもよい。医師は、そうした有害事象の予測に基づき、自然な回復を最大化するために支持を最適化する、および、左心支持と右心支持とのバランスを取るなどの、臨床意思決定を行ってもよい。
【0110】
段階1122において、心臓パラメータおよび/または心機能パラメータに関するアラームがトリガーされる。アラームは可聴アラームであってもよく、または
図3のユーザーインターフェース内に表示されてもよい。いくつかの実施形態において、アラームは、Wi-Fiネットワーク、blue tooth信号、または携帯電話信号を介して、ページ、テキスト、または電子メールとして臨床医療従事者に送られてもよい。いくつかの実施形態において、警告は主画面上に表示される。いくつかの実施形態において、警告はポップアップメッセージとして表示される。いくつかの実施形態において、警告は臨床医療従事者によってオフにされるかまたは消音される。
【0111】
図12に、測定および算出された心臓パラメータに基づいて、両心室支持中に右心用および左心用血液ポンプデバイスのバランスを取るための、プロセス1200を示す。左心用デバイスおよび右心用デバイスの両方が同時的な心臓支持を提供する時は、肺内の適切な圧力を維持し肺水腫のリスクを限定するために右心および左心の拍出量のバランスを取ることが困難である可能性がある。自己心拍出量および全拍出量を、肺動脈圧および左室拡張期圧とともに測定することにより、臨床医療従事者が右室および左室の支持のバランスをより良く取ることが可能となる。
【0112】
段階1202において、第一血液ポンプの第一モーターが稼働される。これは、例えば、心臓の右心室および肺動脈内に置かれた右心用デバイスであってもよい。段階1204において、第二血液ポンプの第二モーターが稼働される。これは、例えば、心臓の左心室および大動脈内に置かれた左心用デバイスであってもよい。第一モーターおよび第二モーターは、心臓の両側に支持を提供するために同時に稼働される。段階1206において、ポンプアウトレットにおける圧力が測定される。左心用デバイスである第二ポンプの場合、これは大動脈圧である。右心用デバイスである第一ポンプの場合、これは肺動脈圧である。大動脈圧は、心臓ポンプに連結された圧力センサーによって、別個のカテーテルによって、非侵襲的な圧力センサーによって、または他の任意の好適なセンサーによって、測定されてもよい。圧力センサーは、流体で満たされたチューブ、差圧センサー、液圧センサー、圧電抵抗式ストレインゲージ、光学干渉式センサーもしくは他の光学式センサー、MEMS圧電センサー、または他の任意の好適なセンサーであってもよい。いくつかの実施形態において、大動脈圧の測定に対する追加または代替として、心室圧が測定される。
【0113】
段階1208において、第一血液ポンプの第一モーター電流と第一モータースピードとが測定され、かつ、第二血液ポンプの第二モーター電流と第二モータースピードとが測定される。段階1210において、第一血液ポンプの第一カニューレをまたぐ第一差圧が、測定された第一モーター電流および測定された第一モータースピードに基づいて決定され、かつ、第二血液ポンプの第二カニューレをまたぐ第二差圧が、測定された第二モーター電流および測定された第二モータースピードに基づいて決定される。第一差圧および第二差圧は、ルックアップ表を用いることによって、または、測定されたモーター電流と、測定されたモータースピードと、そして任意で他のパラメータとについて説明する関数にアクセスすることによって、決定されてもよい。
【0114】
段階1212において、第一血液ポンプの第一カニューレをまたぐ第一差圧と第一ポンプアウトレット圧とに基づいて第一心臓パラメータが算出され、かつ、第二血液ポンプの第二カニューレをまたぐ第二差圧と第二ポンプアウトレット圧とに基づいて第二心臓パラメータが算出される。右心用デバイスに由来する第一心臓パラメータは、右室圧、右室拡張終期圧、肺動脈圧、右動脈圧、中心静脈圧、または血液ポンプ流量のいずれかであってもよい。左心用デバイスに由来する第二心臓パラメータは、LVEDP、LVP、大動脈脈圧、平均大動脈圧、ポンプ流量、圧力勾配、心拍数、または右動脈圧のいずれかであってもよい。これらの心臓パラメータは、それぞれ、心臓の健康状態および機能の様々な局面の尺度として、かつ、バランスの取れた心臓支持を提供するため右心用および左心用デバイスのバランスをより良く取るために、臨床医療従事者によって用いられてもよい。
【0115】
さらに、各心臓パラメータの経時的な傾向は、自己心拍出量が向上または減退しているかを決定するために臨床医療従事者によって用いられてもよく、そして、血液ポンプと薬物治療とによって提供されている支持についての臨床意思決定が、これらの傾向に基づいて行われてもよい。いくつかの実施形態において、血液ポンプのカニューレをまたぐ差圧と大動脈圧とに基づいて、2つ以上の心臓パラメータが算出される。
【0116】
段階1214において、算出された第一心臓パラメータおよび/または算出された第二心臓パラメータに基づいて心機能パラメータが決定される。心機能パラメータは、心拍出量、心拍出力、自己心拍出量、自己心拍出力、心収縮性、心弛緩性、輸液反応性、容積状態、心負荷軽減指数、心臓回復指数、左室拡張機能、左室拡張期エラスタンス、左室収縮期エラスタンス、一回拍出量、心拍変動、一回拍出量変動、脈圧変動、大動脈コンプライアンス、血管コンプライアンス、もしくは血管抵抗、または、右心支持に関連付けられた同様のパラメータのいずれかであってもよい。これらの心機能パラメータは、算出された心臓パラメータおよび他の利用可能な測定パラメータから算出されてもよい。心機能パラメータは、心機能について、および、第一血液ポンプと第二血液ポンプとによって提供されている支持のバランスについて、追加的な情報を臨床医療従事者に提供する。いくつかの実施形態において、心機能パラメータもまた、履歴データと、時間に関する心機能パラメータの傾向とを提供するために、メモリ内に記録される。いくつかの実施形態において、2つ以上の心機能パラメータが決定される。
【0117】
段階1216において、第一血液ポンプおよび/または第二血液ポンプによって提供される支持のレベルに対する推奨される変更が決定される。支持のレベルに対する推奨される変更は、メモリ内に保存されたルックアップ表内でアクセスされてもよく、または、心臓パラメータおよび心機能パラメータの現在値もしくは履歴値に基づいて算出されてもよい。支持のレベルに対する推奨される変更は、ポンプ支持を増大または低減させるためのプロンプトを含んでもよく、かつ/または、ポンプ支持に対して行われるべき変更の量の推奨を含んでもよい。
【0118】
段階1218において、第一血液ポンプおよび/または第二血液ポンプによって提供される支持のレベルに対する推奨される変更が、表示用に生成され、そして表示される。第一血液ポンプおよび/または第二血液ポンプによって提供される支持のレベルに対する推奨される変更は、
図3のユーザーインターフェース内に表示されてもよい。いくつかの実施形態において、第一血液ポンプおよび/または第二血液ポンプによって提供される支持のレベルに対する推奨される変更は、主画面上に表示される。いくつかの実施形態において、第一血液ポンプおよび/または第二血液ポンプによって提供される支持のレベルに対する推奨される変更は、ポップアップまたは警告として表示される。第一血液ポンプおよび/または第二血液ポンプによって提供される支持のレベルに対する推奨される変更は、第一および第二血液ポンプについての追加的情報とともに、かつ、提供される支持のレベルを第一血液ポンプまたは第二血液ポンプのモータースピードの調整によって変更する前にプロトコルに従いそしてさらなるチェックを行うよう促すプロンプトとともに、臨床医療従事者向けに表示されてもよい。いくつかの実施形態において、コントローラは、第一血液ポンプおよび第二血液ポンプのうち1つまたは両方に対するモータースピードの適切な変更を決定してもよく、また、現在支持を提供している第一血液ポンプおよび第二血液ポンプが、推奨される支持レベルを提供するために推奨されるモータースピードで稼働するのに最適な血液ポンプであるかどうかを決定してもよい。
【0119】
1つまたは複数の血液ポンプおよび血液ポンプシステムによって収集されたデータを用いて、臨床的関連性のある心臓パラメータおよび心機能パラメータを算出すること、そしてそのパラメータを臨床医療従事者向けにリアルタイムで表示することによって、支持についての臨床意思決定を行うために用いられうる、心臓の健康状態および機能についての重要な情報が臨床医療従事者に提供される。さらに、生じうる課題の決定において臨床医療従事者を支援しかつ心機能を向上させるための推奨を提供する、血液ポンプコントローラまたはコンソール内のアルゴリズムは、この重要な情報がない場合と比較して、課題をより早期に検出しかつ問題により迅速に対応する能力を、臨床医療従事者にもたらす。
【0120】
図13に、血液ポンプによって提供される支持のレベルを自動的に修正するためのプロセスのブロック
図1300を示す。段階1302において、あるレベルの心臓支持を心臓に提供するために、心臓内に配置された血液ポンプが稼働される。血液ポンプは、カニューレと、心臓に支持を提供するためにあるモータースピードで稼働しかつある可変電流を受けるモーターとを有する。段階1304において、血液ポンプに連結されたコントローラが、心臓内で大動脈圧を測定する。段階1306において、コントローラがモーター電流とモータースピードとを測定する。段階1308において、コントローラが、モーター電流およびモータースピードに関連付けられた、カニューレをまたぐ圧力勾配を決定する。
【0121】
段階1310において、プロセッサが、大動脈圧と、モーター電流およびモータースピードに関連付けられた、カニューレをまたぐ圧力勾配とに基づいて、算出される心臓パラメータを算出する。段階1312において、算出された心臓パラメータがメモリ内に記録される。段階1314において、算出された心臓パラメータに基づいて心機能パラメータが決定される。いくつかの実施形態において、心機能パラメータもまたメモリ内に保存される。段階1316において、血液ポンプによって提供される心臓支持のレベルに対する推奨される変更が、算出された心臓パラメータおよび心機能パラメータのうち少なくとも1つに基づいて決定される。段階1318において、心臓支持のレベルに対する推奨される変更が、表示用に生成される。
【0122】
いくつかの実施形態において、大動脈圧とカニューレをまたぐ圧力勾配とから、2つ以上の心臓パラメータが算出される。例えば、LVEDP、LVP、大動脈脈圧、平均大動脈圧、ポンプ流量、圧力勾配、または心拍数を含む、任意の数の心臓パラメータが算出されてもよい。いくつかの実施形態において、これらの心臓パラメータはまた、最大値もしくは最小値、平均値、瞬時値、履歴的傾向、または波形として、表示用に生成される。いくつかの実施形態において、心臓パラメータから、2つ以上の心機能パラメータが決定される。例えば、心機能パラメータは、心拍出量、心拍出力、自己心拍出量、自己心拍出力、心収縮性、心弛緩性、輸液反応性、容積状態、心負荷軽減指数、心臓回復指数、左室拡張機能、左室拡張期エラスタンス、左室収縮期エラスタンス、一回拍出量、心拍変動、一回拍出量変動、脈圧変動、大動脈コンプライアンス、血管コンプライアンス、または血管抵抗であってもよい。
【0123】
いくつかの実施形態において、算出される心臓パラメータはLVEDPであり、心機能パラメータは心拍出力である。LVEDPと心拍出力とを算出することにより、心臓支持を調節するための推奨が履歴データに基づいて決定されてもよい。LCEDPと心拍出力とによって示される患者の心臓の健康状態に基づき、(健康状態が悪化している患者について、血液ポンプによる心臓支持を増大させるため)モータースピードを増大させるか、または、(健康状態が改善している患者を血液ポンプから離脱させるため)モータースピードを低減させるという推奨が、決定され、表示用に生成され、そして医療従事者向けに表示されてもよい。
【0124】
そうした推奨は、LVEDPおよび/または心拍出力の現在値を前値または設定閾値と比較することによって決定されてもよい。その比較に基づき、メモリ内に保存されたルックアップ表が推奨を提供してもよい;推奨は、決定された、支持レベルにおける推奨される変更の指標、および、推奨される変更を実現するための段階のリストを含んでもよい。代替的に、いくつかの実施形態において、心臓支持レベルにおける推奨される変更が、コントローラによって自動化されてもよい。
【0125】
心臓計量値およびパラメータの様々な組み合わせが、患者の心臓の健康状態ならびに心臓および血液ポンプの機能性の諸局面を決定するうえで、有用となりうる。これらパラメータの値、ならびに、患者の健康状態に基づく現在の閾値または履歴的情報に基づきアルゴリズムによって生成された推奨および警告は、医療従事者が、支持の調節について情報に基づいた意思決定を行うこと、ならびに、
図4〜12を参照して上述したような他の多数の医療意思決定を行うことを、可能にする。
【0126】
図14に、
図4〜13に関して上述したいずれかの方法を実現するための例示的な血液ポンプシステム1400のブロック図を示す。心臓ポンプシステム1400は、心臓内、部分的に心臓内、心臓外、部分的に心臓外、部分的に血管系外、または、患者の血管系における他の任意の好適な位置で、稼働してもよい。血液ポンプシステム1400はコンソール1401と血液ポンプ1402とを含む。コンソール1401は、駆動ユニット1404と、メモリ1406と、プロセッサ1408と、回路1403と、ディスプレイ1410とを含む。
【0127】
血液ポンプシステム1400は、心臓の右心側または左心側に心臓支持を提供するために、任意の好適な血液ポンプデバイスとともに用いられてもよく、例えば血液ポンプ1402は
図1に示した血液ポンプ100であってもよい。血液ポンプ1402は、モーター1405およびセンサー1407、ならびに、図には示していないが
図1における血液ポンプ100の他のコンポーネントを含む。いくつかの実施形態において、血液ポンプシステム1400は、心臓の左心側および右心側に同時に心臓支持を提供するために、2つの血液ポンプとともに用いられてもよい。
【0128】
血液ポンプ1402は回路1403によって駆動ユニット1404に連結される。回路1403の全部または一部は、血液ポンプ1402から分かれている/離れているコンソール1401内にあってもよい。いくつかの実施形態において、回路1403は血液ポンプ1402の内部にある。回路1403および血液ポンプ1402は一律の縮尺には示されていない。駆動ユニット1404は、回路1403によって心臓ポンプ1402のモーター1405に電流を供給する。駆動ユニット1404がワイヤ1426上で心臓ポンプ1402のモーター1405に供給する電流は、駆動ユニット1404内にあるかまたはこれに連結された電流センサー1409によって測定される。
【0129】
血液ポンプ1402上に位置する圧力センサー1407において留置信号または大動脈圧が測定される。圧力センサー1307において検出された圧力は、回路1403を介して駆動ユニット1404において受け取られる;そして、モーター1405に供給される電流とともにプロセッサ1408に渡されてもよい。いくつかの実施形態において、大動脈圧は、血液ポンプ1402に連結された圧力センサー1407によって、別個のカテーテルによって、非侵襲的な圧力センサーによって、または他の任意の好適なセンサーによって、測定されてもよい。圧力センサー1407は、流体で満たされたチューブ、差圧センサー、液圧センサー、圧電抵抗式ストレインゲージ、光学干渉式センサーもしくは他の光学式センサー、MEMS圧電センサー、または他の任意の好適なセンサーであってもよい。
【0130】
プロセッサ1408は、モーター電流および圧力の測定結果を駆動ユニット1404から受け取り、そしてその値を用いて複数の追加的な心臓パラメータおよび心機能パラメータを決定できるよう、ソフトウェアおよび/またはハードウェアを含む。例えば、プロセッサは、血液ポンプ1402のモーター電流と圧力センサー1407から受け取られた大動脈圧情報とからLVPおよびLVEDPを算出するため、
図2A〜2Eに関して説明した方法を用いるソフトウェアを含む。さらに、プロセッサ1408は、受け取った測定結果と、パラメータと、値とを、メモリ1406内に保存することができ、かつ、ディスプレイ1410上での表示用に生成するため、メモリ内に保存された値およびパラメータにアクセスすることができる。
【0131】
プロセッサ1408は、駆動ユニット1404からの電流および大動脈圧の値を受け入れるまたは要求するために、ならびに、心臓の健康状態または機能の指標となる心臓パラメータおよび心機能パラメータをこれらの値から決定するために、
図4〜13に関して説明した諸段階を実行するアルゴリズムをさらに含む。その値もまた、ユーザー向けの表示用に生成されてもよく、そしてディスプレイ1410上に表示されてもよい。
【0132】
プロセッサ1408は、算出された心臓パラメータおよび心機能パラメータに関する決定を行うために、ならびに、その決定を用いて、患者の心臓に提供される処置および支持に関する推奨を行うために、メモリ1406内に保存された関数およびルックアップ表にアクセスすることができる。プロセッサ1408は、推奨を生成し、そしてこれらの推奨をディスプレイ1410上に表示することができる。
【0133】
ディスプレイ1410は
図3のユーザーインターフェース300と実質的に同様であってもよい。ディスプレイは、臨床医療従事者がリアルタイムデータを用いて処置上の意思決定を行えるよう、臨床的関連性のある、算出された心臓パラメータおよび心機能パラメータを、臨床医療従事者に提供する。さらに、ディスプレイ1410は、生命を脅かす心臓の問題を臨床医療従事者がより迅速に検出しかつこれに対応できるよう、プロセッサ1408が推奨を臨床医療従事者向けに表示することを可能にする。コンソール1401上のプロセッサ1408は、臨床医療従事者がより効率的かつより効果的な心臓治療を患者に提供することを助けるため、血液ポンプ1402とアクセス可能な測定とを用いて、追加的な情報を臨床医療従事者に提供する。
【0134】
以上は本開示の原理を例示したものにすぎず、本装置は、限定ではなく例示の目的で提示される本説明の実施形態以外でも実施されうる。理解されるべき点として、本明細書に開示する装置は、心臓ポンプの経皮的挿入における使用について示されているが、他の用途の装置に適用されてもよい。
【0135】
当業者には、本開示の検討後にバリエーションおよび修正が考えられるであろう。本開示の諸特徴は、本明細書に説明する1つまたは複数の他の特徴との、任意の組み合わせおよび下位組み合わせ(複数の従属的な組み合わせおよび下位組み合わせを含む)において実施されてもよい。以上に説明または例証した様々な特徴は、そのコンポーネントも含めて、他のシステムに組み合わせまたは統合されてもよい。さらに、特定の特徴が省略されるかまたは実施されなくてもよい。
【0136】
概して、本明細書に説明する対象事項および機能的稼働の諸態様は、デジタル電子回路において、または、本明細書に開示する諸構造およびそれらの構造的同等物を含む、ソフトウェア、ファームウェア、もしくはハードウェアにおいて実施されてもよく、または、それらのうち1つもしくは複数の組み合わせにおいて実施されてもよい。本明細書に説明する対象事項の諸態様は、1つまたは複数のコンピュータプログラム製品として、すなわち、データ処理装置によって実行されるため、またはデータ処理装置の演算を制御するために、コンピュータ可読媒体上にエンコードされたコンピュータプログラム命令の、1つまたは複数のモジュールとして、実施されてもよい。コンピュータ可読媒体は、機械可読な記憶デバイス、機械可読な記憶基板、メモリデバイス、機械可読な伝搬信号に影響を及ぼす物質組成物、または、それらのうち1つもしくは複数の組み合わせであってもよい。「データ処理装置(data processing apparatus)」という用語は、データを処理するためのすべての装置、デバイス、および機械を包含し、それには例としてプログラム可能なプロセッサ、コンピュータ、または複数のプロセッサもしくはコンピュータが含まれる。装置には、ハードウェアに加えて、対象のコンピュータプログラムのための実行環境を作り出すコードも含まれてもよく、その例として、プロセッサファームウェア、プロトコルスタック、データベース管理システム、オペレーティングシステム、またはそれらのうち1つもしくは複数の組み合わせ、を構成するコードなどがある。伝搬信号は、好適な受信装置への送信用に情報をエンコードするために生成される、例えば機械生成された電気信号、光信号、または電磁信号などの、人工的に生成された信号である。
【0137】
コンピュータプログラム(プログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーション、スクリプト、またはコードとしても公知である)は、コンパイルまたは翻訳される言語を含めて任意の形態のプログラミング言語で書かれてもよく、かつ、スタンドアロンプログラムとしての形態、または、モジュール、コンポーネント、サブルーチン、もしくは計算環境での使用に好適な他のユニットとしての形態を含めて、任意の形態で展開されてもよい。コンピュータプログラムは、ファイルシステム中のファイルに必ずしも対応しない。プログラムは、他のプログラムもしくはデータを保持するファイルの一部分(例えば、マークアップ言語ドキュメント内に保存された1つもしくは複数のスクリプト)、対象のプログラム専用の単一ファイル、または、連携した複数のファイル(例えば、1つもしくは複数のモジュール、サブプログラム、もしくはコードの一部分を保存するファイル)内に保存されてもよい。コンピュータプログラムは、1つのコンピュータ上か、または、1箇所に位置するかもしくは複数個所にわたって分配されそして通信網によって相互接続された、複数のコンピュータ上で、実行されるために展開されてもよい。
【0138】
本明細書に説明するプロセスおよび論理フローは、入力データに対する演算と出力の生成とによって機能を行うため、1つまたは複数のコンピュータプログラムを実行する、1つまたは複数のプログラム可能プロセッサによって行われてもよい。プロセスおよび論理フローはまた、例えばFPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)またはASIC(特定用途向け集積回路)などの専用論理回路によって行われてもよく、かつ装置が専用論理回路として実施されてもよい。
【0139】
コンピュータプログラムの実行に好適なプロセッサには、例として、汎用および専用のマイクロプロセッサ、ならびに、任意の種類のデジタルコンピュータの1つまたは複数の任意のプロセッサが含まれる。一般に、プロセッサは、読出し専用メモリもしくはランダムアクセスメモリ、またはその両方から、命令およびデータを受け取る。コンピュータの必須要素は、命令を行うためのプロセッサ、ならびに、命令およびデータを保存するための1つまたは複数のメモリデバイスである。一般に、コンピュータはまた、例えば磁気ディスク、光磁気ディスク、または光ディスクなど、データを保存するための1つまたは複数の大容量記憶デバイスを含む;または、それからデータを受け取るか、それにデータを転送するか、もしくはその両方を行うため、そのような大容量記憶デバイスに稼働的に連結される。しかし、コンピュータがそうしたデバイスを有していなくてもよい。
【0140】
変更、置換、および改変の例は当業者によって確認可能であり、かつ、本明細書に開示する情報の範囲から逸脱することなく行われうる。本明細書に挙げるすべての参照物は、その全体が参照により組み入れられ、かつ本出願の一部をなす。