特表2020-523397(P2020-523397A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2020-523397水溶性トリメトキシフェニルピリジン型錯化剤および対応するランタニド錯体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-523397(P2020-523397A)
(43)【公表日】2020年8月6日
(54)【発明の名称】水溶性トリメトキシフェニルピリジン型錯化剤および対応するランタニド錯体
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/14 20060101AFI20200710BHJP
   C07F 5/00 20060101ALI20200710BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20200710BHJP
【FI】
   C07D401/14
   C07F5/00 DCSP
   C09K11/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】55
(21)【出願番号】特願2019-569719(P2019-569719)
(86)(22)【出願日】2018年6月13日
(85)【翻訳文提出日】2020年2月14日
(86)【国際出願番号】FR2018051392
(87)【国際公開番号】WO2018229432
(87)【国際公開日】20181220
(31)【優先権主張番号】1755330
(32)【優先日】2017年6月14日
(33)【優先権主張国】FR
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】514064671
【氏名又は名称】シスビオ バイオアッセイズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラマルク, ローラン
(72)【発明者】
【氏名】ズヴィール, ユリアーン
(72)【発明者】
【氏名】ブリエ, エマニュエル
【テーマコード(参考)】
4C063
4H048
【Fターム(参考)】
4C063AA05
4C063BB03
4C063CC45
4C063DD12
4C063EE10
4H048AA01
4H048AB92
4H048AC52
4H048BB17
4H048BC10
4H048BC19
4H048VA32
4H048VA70
4H048VB10
(57)【要約】
【課題】水溶性トリメトキシフェニルピリジン型錯化剤および対応するランタニド錯体の提供。
【解決手段】本発明は、下記式(I)で表される錯化剤に関する。本発明はまた、上記錯化剤から得られるランタニド錯体にも関する。本発明は、生体分子を標識するのに使用することができる。
[化1]

(式中、Ra、Chrom、ChromおよびChromは、本明細書に定義される通りである。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表される錯化剤。
【化1】
(式中、
Chrom、ChromおよびChromはそれぞれ、下記式(Ia)または(Ib)の基を表し、
【化2】
およびXはそれぞれ、L−CO−RまたはL−G基を表し、
Rは、−ORまたは−NH−E基であり、
Raは、Hまたは−(CH−G基であり、
は、−COHまたは−PO(OH)R基であり、
は、Hまたは(C〜C)アルキルであり、
は、(C〜C)アルキル、好ましくはメチル;−SO基によって好ましくはメタ位もしくはパラ位が置換されていてもよいフェニル;またはベンジルであり、
は、直接結合;酸素原子、窒素原子および硫黄原子から選択される少なくとも1個の原子で中断されていてもよい−(CH−基;−CH=CH−基;−CH=CH−CH−基;−CH−CH=CH−基;またはPEG基であり、
は、二価の連結基であり、
Gは、反応性基であり、
Eは、−CH−(CH−CH−SOもしくは−NAlkAlkAlk基、またはスルホベタインであり、
lは、1〜4の範囲の整数であり、
rは、1〜6の範囲の整数、好ましくは1〜3の範囲の整数であり、
sは、0、1または2であり、
Alk、Alk、Alkは同一でも異なってもよく、(C〜C)アルキルを表すが、
ただし、式(I)の化合物は、少なくとも1個の式(Ia)の基および少なくとも1個のL−CO−R基を含むと理解される。)
【請求項2】
Chromが、XがL−G基である式(Ia)の基を表し、ChromおよびChromがそれぞれ、XがL−CO−R基である式(Ib)の基を表す、請求項1に記載の錯化剤。
【請求項3】
ChromおよびChromが同一である、請求項2に記載の錯化剤。
【請求項4】
ChromおよびChromがそれぞれ、XがL−CO−R基である式(Ia)の基を表し、Chromが、XがL−G基である式(Ib)の基を表す、請求項1に記載の錯化剤。
【請求項5】
ChromおよびChromが同一である、請求項4に記載の錯化剤。
【請求項6】
RaがHである、請求項2〜5のいずれか一項に記載の錯化剤。
【請求項7】
Chrom、ChromおよびChromがそれぞれ、XがL−CO−R基である式(Ia)の基を表し、Raが、−(CH−G基である、請求項1に記載の錯化剤。
【請求項8】
Chrom、ChromおよびChromが同一である、請求項8に記載の錯化剤。
【請求項9】
が、−COHまたは−P(O)(OH)R基(式中、Rが(C〜C)アルキルまたはフェニル)である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の錯化剤。
【請求項10】
が、直接結合;酸素原子および硫黄原子から選択される少なくとも1個の原子で中断されていてもよい−(CH−基(式中、r=2または3);−CH=CH−基;−CH=CH−CH−基;または−CH−CH=CH基である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の錯化剤。
【請求項11】
Eが、−CH−(CH−CH−SO基(式中、s=0または1);−(CH−NAlkAlkAlk基(式中、Alk、Alk、Alkは同一でも異なってもよく、(C〜C)アルキルを表し、s=0または1);または下記式の基:
【化3】
(式中、Rは、(C〜C)アルキルであり、tは1または2)である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の錯化剤。
【請求項12】
が、
直接結合;
1つまたは複数の二重または三重結合を含んでいてもよい直鎖状または分枝状C〜C20アルキレン基;
〜Cシクロアルキレン基;C〜C14アリーレン基;
下記式の二価の基から選択される基:
【化4】
(式中、n、m、p、qは、1〜16の整数、好ましくは1〜5の整数であり、eは、1〜6の範囲の整数、好ましくは1〜4の範囲の整数である。)から選択されるが、
ただし、上記アルキレン、シクロアルキレンまたはアリーレン基は、酸素、窒素、硫黄もしくはリンなどの1個もしくは複数のヘテロ原子、または1個もしくは複数のカルバモイルもしくはカルボキサミド基を含んでいてもよく、上記アルキレン、シクロアルキレンまたはアリーレン基は、1〜5個のC〜Cアルキル、C〜C14アリール、スルホナートまたはオキソ基によって置換されていてもよい、請求項1〜11のいずれか一項に記載の錯化剤。
【請求項13】
反応性基Gが、アクリルアミド、活性化アミン、活性化エステル、アルデヒド、ハロゲン化アルキル、無水物、アニリン、アジド、アジリジン、カルボン酸、ジアゾアルカン、ハロアセトアミド、ハロトリアジン、ヒドラジン、イミドエステル、イソシアナート、イソチオシアナート、マレイミド、ハロゲン化スルホニル、チオール、ケトン、アミン、酸ハロゲン化物、スクシンイミジルエステル、ヒドロキシスクシンイミジルエステル、ヒドロキシスルホスクシンイミジルエステル、アジドニトロフェニル、アジドフェニル、グリオキサール、トリアジン、アセチレン基、特に下記式の基から選択される基:
【化5】
(式中、wは0〜8の範囲であり、vは0または1であり、Arは、ハロゲン原子によって置換されていてもよい、1〜3個のヘテロ原子を含む飽和または不飽和5員または6員ヘテロ環である。)から選択される、請求項1〜12のいずれか一項に記載の錯化剤。
【請求項14】
−L−G基が、カルボン酸、アミン、スクシンイミジルエステル、ハロアセトアミド、ヒドラジン、イソチオシアナート、マレイミド基から選択される反応性基Gと、1〜5個の炭素原子を含むアルキレン鎖または下記式の基から選択される基:
【化6】
(式中、n、mは、1〜16の範囲の整数、好ましくは1〜5の範囲の整数であり、eは、1〜6の範囲の整数、好ましくは1〜4の範囲の整数である。)からなるスペーサーアームLとからなり、G基が、上記二価の基の一端または他端に結合している、請求項1〜13のいずれか一項に記載の錯化剤。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の錯化剤とランタニドとを含むランタニド錯体。
【請求項16】
上記ランタニドが、Eu3+、Tb3+、Sm3+から選択され、好ましくはTb3+であることを特徴とする、請求項15に記載のランタニド錯体。
【請求項17】
(i)G基を含む請求項15または16に記載のランタニド錯体と、(ii)官能基を含む所望の分子との反応によって得られる蛍光性コンジュゲートであって、上記官能基は、G基の原子の1個と共有結合を形成するものである、蛍光性コンジュゲート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性錯化剤またはリガンド、これらの錯化剤から得られるランタニド錯体、および、分子を標識し、時間分解蛍光法で検出するためのこれらのランタニド錯体の使用に関する。本発明には、1、2または3個の水溶性官能化トリメトキシフェニルピリジン型発色団を含む安定な錯体が記載されている。
【背景技術】
【0002】
ランタニド錯体の使用は、この約20年にわたって生命科学の分野において大幅に増加している。実際、これらの蛍光化合物は、それらを生体分子を検出するのに好まれる標識としている興味深い分光学的性質を有する。これらの蛍光化合物は、FRET(フェルスター共鳴エネルギー移動)測定を実施するために適合するフルオロフォアと組み合わせた使用に特に適しており、生体分子間の相互作用の研究へのその応用が、Cisbio Bioassays社およびそのHTRF(登録商標)製品群など、いくつかの企業により商業的に利用されている。ランタニド錯体の寿命が比較的長いことにより、時間分解蛍光測定(すなわち、フルオロフォア励起後に遅延時間をおく)を行うことも可能になり、そのため測定媒体による蛍光干渉を制限することができる。後者の性質は、測定媒体が、多数のタンパク質を含むためそれらの蛍光が検討中の化合物の蛍光に干渉するおそれがある生物学的媒体に近くなるほどいっそう有用である。
【0003】
いくつかのランタニド錯体が開示されており、一部は商業的に利用されている。特に、大多環状ランタニドクリプタート(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5)、ジエチレントリアミン五酸単位に結合したクマリンに由来する単位を含むランタニド錯体(特許文献6)、およびピリジンの誘導体(特許文献7、特許文献8)、ビピリジンの誘導体(特許文献9)またはテルピリジンの誘導体(特許文献10、特許文献11、特許文献12)を含むランタニド錯体が挙げられる。
【0004】
蛍光性ランタニド錯体は、以下の3つの部分からなる。
・光吸収性発色団(アンテナ効果)、
・錯化性部分、および
・ランタニド基に属している原子(一般にユウロピウムまたはテルビウム)。
【0005】
非常に多くの発色団がこの分野で研究を行っているチームによって使用されており、それらの研究は多くの総説のテーマである(非特許文献1;非特許文献2;および非特許文献3)。これらすべての研究のうち、トリメトキシフェニルピリジン発色団を取り扱っているものはほとんどない。非特許文献1において、著者らは、形態的には、水性環境において不安定なキレートであるトリメトキシフェニルジピコリン酸の誘導体の光物理的特性を記載している。非特許文献4において、著者らは、イムノアッセイにおいて使用可能なものとするためにナノ粒子にこの単位を導入した。しかし、これらの粒子は大きく(直径45nm)、このことは、小さい生体分子を蛍光プローブで標識すべき場合には欠点である。
【0006】
特許文献13は、3個のトリメトキシフェニルピリジン型発色団を含むランタニド錯体の合成に関する。これらの錯体はキレート群に属するものであるため、特に二価のカチオン、またはイムノアッセイ緩衝液中の添加剤として使用されるEDTA型錯化剤の存在下、非常に不安定な錯体になる。
【0007】
特許文献14において、著者らは、トリメトキシフェニルピリジン単位を含む錯体を記載している。これらの発色団は、以下のように様々な構造に組み入れられている。
・キレートに組み入れられる場合、上述の媒体(二価のカチオンおよびEDTA)中で不安定な錯体を形成する。
・発色団がトリアザシクロノナン(TACN)型大環状分子に一体化されると、今度は錯体は安定であるが、生物学的水性媒体に対する溶解性がかなり低い。さらに、官能化は直接的には不可能であり、著者らは、これらの系を官能化する手順を全く記載していない。
・最後に、これらの発色団がトリアザシクロデカン型大環状分子に組み入れられる場合、錯体はやはりまだ生物学的水性媒体に対する溶解性がかなり低い。官能化は、大環状分子のプロピレン鎖の中間炭素において実施され、それによりランタニド原子の周りの対称性、結果として発光スペクトル線の分布が変化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許第0180492号明細書
【特許文献2】欧州特許第0321353号明細書
【特許文献3】欧州特許第0601113号明細書
【特許文献4】国際公開第2001/96877号
【特許文献5】国際公開第2008/063721号
【特許文献6】米国特許第5,622,821号明細書
【特許文献7】米国特許第4,920,195号明細書
【特許文献8】米国特許第4,761,481号明細書
【特許文献9】米国特許第5,216,134号明細書
【特許文献10】米国特許第4,859,777号明細書
【特許文献11】米国特許第5,202,423号明細書
【特許文献12】米国特許第5,324,825号明細書
【特許文献13】国際公開第89/04826号
【特許文献14】国際公開第2005/058877号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Journal of Luminescence、1997年、75巻、149頁
【非特許文献2】Chemical Reviews、2010年、110巻、2729頁
【非特許文献3】Inorganic Chemistry、2014年、53巻、1854頁
【非特許文献4】Analytical Chemistry、2005年、77巻、2643頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、本発明の錯体が、アニオン、カチオンまたは双性イオン型の水可溶化基と、最終的には、トリアザシクロノナン環(ランタニド原子の錯体化に特に適しており、ランタニドの周りのC3型対称性に従う環)のエチレン鎖に直接置換されている官能化アームとを含むので、あらゆる生物学的媒体に可溶な大部分の二価のカチオンおよびEDTAの存在下で安定である錯体を提供することによって、先行技術の化合物の欠点を克服することを目的とする。本発明の錯体は、発光スペクトルがFRET実験における使用に十分に適しており、かつ生体分子を標識するのに非常に便利である化合物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の代表的錯体のUVスペクトルを示す図である。
図2】本発明の代表的錯体のクロマトグラムを示す図である。
図3】本発明の代表的錯体の質量スペクトルを示す図である。
図4】本発明の代表的錯体のUVスペクトルを示す図である。
図5】本発明の代表的錯体のクロマトグラムを示す図である。
図6】本発明の代表的錯体の質量スペクトルを示す図である。
図7】本発明の代表的錯体のUVスペクトルを示す図である。
図8】本発明の代表的錯体のクロマトグラムを示す図である。
図9】本発明の代表的錯体の質量スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
錯化剤
本発明に係る錯化剤は、下記式(I)で表される化合物である。
【0013】
【化1】
【0014】
(式中、
Chrom、ChromおよびChromはそれぞれ、式(Ia)または(Ib)の基を表し、
【0015】
【化2】
【0016】
およびXはそれぞれ、L−CO−RまたはL−G基を表し、
Rは、−ORまたは−NH−E基であり、
Raは、Hまたは−(CH−G基であり、
は、−COHまたは−PO(OH)R基であり、
は、Hまたは(C〜C)アルキルであり、
は、(C〜C)アルキル、好ましくはメチル;−SO基によって好ましくはメタ位もしくはパラ位が置換されていてもよいフェニル;またはベンジルであり、
は、直接結合;酸素原子、窒素原子および硫黄原子から選択される少なくとも1個の原子で中断されていてもよい−(CH−基;−CH=CH−基;−CH=CH−CH−基;−CH−CH=CH−基;またはPEG基であり、
は、二価の連結基であり、
Gは、反応性基であり、
Eは、−CH−(CH−CH−SOもしくは−NAlkAlkAlk基、またはスルホベタインであり、
lは、1〜4の範囲の整数であり、
rは、1〜6の範囲の整数、好ましくは1〜3の範囲の整数であり、
sは、0、1または2であり、
Alk、Alk、Alkは同一でも異なってもよく、(C〜C)アルキルを表すが、
ただし、式(I)の化合物は、少なくとも1個の式(Ia)の基および少なくとも1個のL−CO−R基を含むと理解される。)
【0017】
「PEG基」は、式−CH−(CHOCH−CHOCH(yは1〜5の範囲の整数)で表されるポリエチレングリコール基を意味する。
【0018】
「スルホベタイン」は、下記から選択される基:
【0019】
【化3】
【0020】
(式中、Rは、(C〜C)アルキル、好ましくはメチルまたはエチルを表し、tは、1、2、3、4、5または6であり、好ましくは1または2である。)を意味し、式−(CH−(CH−SOのスルホベタインが好ましい。
【0021】
−SOH、−COHおよび−PO(OH)基は、pHに応じて、脱プロトン化した形態または脱プロトン化していない形態である。したがって、これらの基は、以下の本明細書において、−SO、−COおよび−PO(OH)O基も表し、その逆も表す。
【0022】
錯化剤の第1の好ましいファミリーは、Chromが、XがL−G基である式(Ia)の基を表し、ChromおよびChromが同一でも異なってもよく、それぞれ、XがL−CO−R基である式(Ib)の基を表す、式(I)の化合物からなる。一実施形態において、ChromおよびChromは同一である。
【0023】
錯化剤の第2の好ましいファミリーは、ChromおよびChromが同一でも異なってもよく、それぞれ、XがL−CO−R基である式(Ia)の基を表し、Chromが、XがL−G基である式(Ib)の基を表す、式(I)の化合物からなる。一実施形態において、ChromおよびChromは同一である。
【0024】
錯化剤の最初の2つの好ましいファミリーに共通の一実施形態において、RaはHである。
【0025】
錯化剤の第3の好ましいファミリーは、Chrom、ChromおよびChromが同一でも異なってもよく、それぞれ、XがL−CO−R基である式(Ia)の基を表し、Raが−(CH−G基である、式(I)の化合物からなる。一実施形態において、Chrom、ChromおよびChromは同一である。
【0026】
これら3つの好ましいファミリーのうち、好ましいサブファミリーは、錯化剤が以下の特徴の1つまたは複数を含むものである。
・Rは、−COHまたは−P(O)(OH)R基(式中、Rが(C〜C)アルキルまたはフェニル)である。
・Lは、直接結合;酸素原子および硫黄原子から選択される少なくとも1個の原子で中断されていてもよい−(CH−基(式中、r=2または3);−CH=CH−基;−CH=CH−CH−基;または−CH−CH=CH−基である。
・Eは、−CH−(CH−CH−SO基(式中、s=0または1);−(CH−NAlkAlkAlk基(式中、Alk、Alk、Alkは同一でも異なってもよく、(C〜C)アルキルを表し、s=0または1);または下記式の基:
【0027】
【化4】
【0028】
(式中、Rは、(C〜C)アルキルであり、tは1または2)である。
【0029】
本発明の一実施形態において、式(I)の錯化剤がいくつかのE基を含む場合、これらの基の多くとも1個はスルホベタインを表す。
【0030】
スペーサーアームLが有する反応性基Gによって、本発明に係る化合物と、蛍光化することが望まれる化学種、例えば有機分子、ペプチド、タンパク質またはヌクレオチド(RNA、DNA)とのカップリングが可能になる。2つの有機分子をコンジュゲーションする方法は、反応性基の使用に基づいており、当業者の一般知識の一部を成す。これらの通常の方法は、例えばBioconjugate Techniques、G.T.Hermanson、Academic Press、第2版、2008年、169〜211頁に記載されている。
【0031】
典型的には、反応性基は、それぞれ好適な求核性または求電子性基の存在下で共有結合を形成することができる求電子性または求核性基である。反応性基を含む本発明に係る化合物と官能基を有する有機分子、ペプチドまたはタンパク質とのコンジュゲーション反応によって、反応性基の1個または複数の原子を含む共有結合が形成される。
【0032】
好ましくは、反応性基Gは、以下の化合物の1つに由来する基である:アクリルアミド、活性化アミン(例えば、カダベリンまたはエチレンジアミン)、活性化エステル、アルデヒド、ハロゲン化アルキル、無水物、アニリン、アジド、アジリジン、カルボン酸、ジアゾアルカン、ハロアセトアミド、モノクロロトリアジン、ジクロロトリアジンなどのハロトリアジン、ヒドラジン(ヒドラジドを含む)、イミドエステル、イソシアナート、イソチオシアナート、マレイミド、ハロゲン化スルホニル、またはチオール、ケトン、アミン、酸ハロゲン化物、スクシンイミジルエステル、ヒドロキシスクシンイミジルエステル、ヒドロキシスルホスクシンイミジルエステル、アジドニトロフェニル、アジドフェニル、3−(2−ピリジルジチオ)プロピオンアミド、グリオキサール、トリアジン、アセチレン基、特に下記式の基から選択される基。
【0033】
【化5】
【0034】
(式中、wは0〜8の範囲であり、vは0または1であり、Arは、ハロゲン原子によって置換されていてもよい、1〜3個のヘテロ原子を含む飽和または不飽和5員または6員ヘテロ環である。)
【0035】
好ましくは、反応性基Gは、アミン(−NHBocとして保護されていてもよい)、スクシンイミジルエステル、ハロアセトアミド、ヒドラジン、イソチオシアナート、マレイミド基、またはカルボン酸(−COMe、−COtBu基として保護されていてもよい)である。後者の場合、酸は、求核性種と反応することができるようにエステルとして活性化されなければならない。
【0036】
反応性基Gは、共有結合によって、あるいは二価の有機基からなることが有利であるスペーサーアームを介して錯化剤に結合している。したがって、スペーサーアームLは、下記から選択することができる。
・直接結合;
・1つまたは複数の二重または三重結合を含んでいてもよい直鎖状または分枝状C〜C20アルキレン基;
・C〜Cシクロアルキレン基;C〜C14アリーレン基;
・下記式の二価の基から選択される基。
【0037】
【化6】
【0038】
(式中、n、m、p、qは、1〜16の整数、好ましくは1〜5の整数であり、eは、1〜6の範囲の整数、好ましくは1〜4の範囲の整数である。)
ただし、上記アルキレン、シクロアルキレンまたはアリーレン基は、酸素、窒素、硫黄、リンなどの1個もしくは複数のヘテロ原子、または1個もしくは複数のカルバモイルもしくはカルボキサミド基を含んでいてもよく、上記アルキレン、シクロアルキレンまたはアリーレン基は、1〜5個、好ましくは1〜3個のC〜Cアルキル、C〜C14アリール、スルホナートまたはオキソ基によって置換されていてもよい。
【0039】
好ましくは、−L−G基は、カルボン酸(−COMe、−COtBu基として保護されていてもよい)、アミン(−NHBocとして保護されていてもよい)、スクシンイミジルエステル、ハロアセトアミド、ヒドラジン、イソチオシアナート、マレイミド基から選択される反応性基Gと、1〜5個の炭素原子を含むアルキレン鎖または下記式の基から選択される基:
【0040】
【化7】
【0041】
(式中、nおよびmは、1〜16の整数、好ましくは1〜5の整数であり、eは、1〜6の範囲の整数、好ましくは1〜4の範囲の整数である。)からなるスペーサーアームLとからなり、G基が、上記二価の基の一端または他端に結合している。
【0042】
本発明の説明
上述の問題は、トリアゾ化大環状分子(1,4,7−トリアザシクロノナン、以下TACN)からなり、その窒素原子は、4位のメトキシがO−X基で置き換えられているトリメトキシフェニルピリジン型発色団で置換されているため、水可溶化官能基を容易に導入できる錯化剤によって解決された。本発明に係る錯化剤は、ランタニドと安定な錯体を形成するものであり、所望の分子の蛍光性コンジュゲートを生成するのに使用できる。本発明に係るランタニド錯体は、特にそれらの量子収量、発光寿命、および励起スペクトル(約337nmでのレーザー励起に非常に適している)に関して、優れた光物理的特性を有する。本発明の錯体は、1、2または3個の発色団を含むことができ、そのため錯体の総輝度および錯体のサイズを容易に調節できる。錯体が発色団を含む場合、立体障害はほとんどない。3個の発色団が存在することで、錯体のモル吸光係数(ε)、結果として総輝度が著しく増加し、また、水性媒体に対する錯体の溶解性によって、錯体が生物学的媒体における使用に非常に適したものになる。最後に、TACN環が有するNH官能基によって、生体分子とのバイオコンジュゲーションが容易になる。特に、この官能基は、生物学者にとって好ましい官能基であるN−ヒドロキシスクシンイミドエステルに容易に変換可能である。
【0043】
錯体
本発明はまた、上述した錯化剤により錯化したランタニド原子からなるランタニド錯体であって、上記ランタニドがEu3+、Sm3+、Tb3+、Gd3+、Dy3+、Nd3+、Er3+から選択されるランタニド錯体にも関する。好ましくは、上記ランタニドは、Tb3+、Sm3+またはEu3+であり、さらにより好ましくはTb3+である。
【0044】
これらの錯体は、本発明に係る錯化剤とランタニド塩を接触させることによって調製される。したがって、室温における溶媒(上記塩と相溶性があるアセトニトリル、メタノールまたは他の溶媒)または緩衝液中での1当量の錯化剤と1〜5当量のランタニド塩(塩化物、酢酸塩またはトリフル酸塩の形態のユウロピウム、サマリウムまたはテルビウム)との数分間の反応によって、対応する錯体が生じる。
【0045】
上述したように、得られた蛍光性錯体は、特にそれらの量子収量、発光寿命、および励起スペクトル(約337nmでのレーザー励起に非常に適している)に関して、優れた光物理的特性を有する。さらに、それらの発光スペクトルのバンド分布によって、シアニン、フルオレセイン、ローダミンまたはアロフィコシアニン型アクセプター(Cisbio Bioassays社販売のXL665など)を用いたFRET用途において非常に好ましい特性が錯体に付与される。これらの錯体は、大部分の二価のカチオン(Ca2+、Mg2+…)またはEDTAを含む生物学的媒体において安定性が高いため、それらの発光は、先行技術の錯体と比較して優れたままである。
【0046】
コンジュゲート
−L−G基を含む本発明に係る錯化剤およびランタニド錯体は、反応性基と反応して共有結合を形成することができる官能基を含む有機または生体分子を標識するのに特に適している。したがって、本発明はまた、所望の分子(タンパク質、抗体、酵素、ホルモン、RNA、DNAなど)を標識するためのランタニド錯体の使用にも関する。
【0047】
本発明はまた、本発明に係る錯体で標識された分子にも関する。反応性基と反応することができる官能基を有するならば、いずれの有機または生体分子も本発明に係る錯体とコンジュゲーションすることができる。特に、本発明に係るコンジュゲートは、本発明に係る錯体と、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、抗体、糖、炭水化物鎖、ヌクレオシド、ヌクレオチド(DNA、RNA)、オリゴヌクレオチド、酵素基質(特に、ベンジルグアニンまたはベンジルシトシンなどの酵素自殺基質(SnaptagおよびCliptagという名称で販売されている酵素基質))、クロロアルカン(Halotagという名称で販売されている酵素基質)、補酵素A(ACPtagまたはMCPtagという名称で販売されている酵素基質)から選択される分子とを含む。
【0048】
合成
本発明に係る錯化剤(リガンド)および錯体の調製に関する一般戦略を、以下(スキーム1:単一アンテナ、スキーム2:ジアンテナ、スキーム3:トリアンテナ)に概略的に記載し、実験の部にさらに詳述する。
【0049】
【化8】
【0050】
モノ保護トリアザシクロノナン大環状分子Boc1を出発物質として、2個の可溶化基Eを付加させるために使用される2個のピリジニル単位を導入した。保護基Bocを除去し、次いでアンテナ(発色団)を大環状分子に付加して、したがってリガンド3を得た。エステル(カルボン酸エステルおよびホスフィン酸エステル)の加水分解を塩基性条件を使用して従来法で実施した。そして、これによりランタニド原子(Ln)を組み込むことができ、したがって錯体5が形成される。この錯体を基にして、2個の水可溶化官能基Eを導入した。最後に、アンテナ(発色団)が有する保護基Bocの脱保護後、錯体を生体分子にコンジュゲーションすることができるように官能化した(7)。
【0051】
【化9】
【0052】
ジアンテナ系は、同様の戦略を使用するが、ピリジニル単位および発色団の導入の順序を逆にして得られる。今回は、最初にアンテナを導入して、化合物8を得る。Boc基の除去後、最後のピリジニル単位を導入した。残り、すなわちエステル官能基(カルボン酸エステルおよびホスフィン酸エステル)の加水分解、ランタニド錯体の形成、2個の水可溶化官能基Eの導入(今回、これらの官能基は発色団が有する)、次いで官能基の組み込みは同一であり、このようにしてジアンテナファミリー13を得る。
【0053】
【化10】
【0054】
トリアンテナ錯体に関しては、官能基の導入を可能にするアミン官能基がトリアザシクロノナン大環状分子(TACN)に直接に固定されているので、合成が単純化される。したがって、3個の発色団が第1のステップにおいて導入され、次にエステル官能基(カルボン酸エステルおよびホスフィン酸エステル)の加水分解、次いで所望のランタニドによる錯化が行われる。錯体は、発色団のそれぞれに可溶化基Eを固定することによって可溶化する。アミンの脱保護後、この官能基は、バイオコンジュゲーションを可能にする反応性官能基に変換される。
【0055】
1)ピリジニルブロックの調製
以下に示すスキーム(4〜12)は、以下の三官能性ピリジニル誘導体をもたらす様々な合成経路を示す。
・2位に錯化官能基(カルボン酸またはホスフィン酸);
・4位に、水可溶化基を導入することができる官能基(メチルエステル官能基)、または官能基を組み込むことができる官能基(保護アミン官能基およびtert−ブチルエステル官能基);
・最後に、6位に、TACN環のアミンと反応することができるように対応するメシラートに変換されるメチルアルコール官能基。
【0056】
【化11】
【0057】
シントン14a〜cの合成は上述のものに記載されている(国際公開第2013/011236号および国際公開第2014/111661号を参照のこと)。これらのシントンを出発物質として、連続した以下の3つの反応によって一連の化合物17a〜fが得られた。ピリジン誘導体とアルケンの間に炭素−炭素結合を生じるHeck反応。この手順は、例えば欧州特許出願公開第2002836号明細書に記載されている。接触水素化による二重結合の還元の後、メシル化反応を行うことにより、化合物17a〜fが得られる。あるいは、二重結合を保持して、系を硬直させ、水可溶化基をアピカル配向させることもできる(18a〜f)。
【0058】
【化12】
【0059】
同じ戦略に従い、対応するアルケンを使用して、tert−ブチルエステル形態(17および18シリーズの類似体)の化合物21a〜fおよび22a〜f(スキーム5)が得られた。
【0060】
【化13】
【0061】
同じ戦略に従い、対応するアルケンを使用して、NHBoc形態(17および18シリーズの類似体)の化合物25a〜fおよび26a〜f(スキーム6)が得られた。
【0062】
【化14】
【0063】
同様の戦略に従って、25シリーズの類似体である(炭素鎖を含まない)化合物28a〜cを調製した。NHBoc基の導入は、例えばTetrahedron Letters、2010年、51巻、4445頁の総説に記載された方法を使用して実施した。
【0064】
【化15】
【0065】
スキーム8に記載された方法により、官能基(CORまたはNHBoc)を有する脂肪族リンカーと芳香環(ピリジン)との間の4位に酸素原子が介在しているピリジニル誘導体を調製した。ケリダム酸29をメチルジエステルとしてエステル化し、次いで光延反応によって官能基を有するリンカーを導入した(例えば、Organic Biomolecular Chemistry、2012年、10巻、9183頁に記載された手順)。水素化ホウ素ナトリウムを使用したモノ還元によって、化合物32a〜cを一価のアルコールの形態で得ることができ、次いでこれらは対応するメシル化誘導体33a〜cに変換される。
【0066】
【化16】
【0067】
4位のメチルエステル官能基を芳香環(ピリジン)に直接固定することもできる。この場合、市販の化合物34を出発物質とし、まずエステル化する必要がある。次いで、ピリジンをm−CPBAの存在下で酸化して、対応するN−オキシド誘導体36を得る。N−オキシド官能基は無水トリフルオロ酢酸と容易に反応し、転位することにより、加水分解後に6位のメチルアルコール官能基が得られる。後者を通常の条件でメシル化して、化合物38を得る。
【0068】
【化17】
【0069】
化合物39を使用して、ホスフィナート誘導体の類似体44a〜bを調製した。化合物39をまずエステル化し、次いでホスフィン酸エステル41a〜bに変換する。反応シーケンスの残りは、化合物38の合成のために使用されたものと同一である。
【0070】
【化18】
【0071】
スキーム11に記載されている反応シーケンスに従って、誘導体51a〜bを調製した。この例では、チオグリコール酸エチルまたはチオグリコール酸tert−ブチルを使用してエステル官能基を導入する。
【0072】
【化19】
【0073】
スキーム12に記載された合成経路に従って、ホスフィナート類似体56a〜dを調製する。
【0074】
2)発色団の調製
【0075】
【化20】
【0076】
スキーム13a〜bおよび14に従って、発色団を合成した。フェノール57は、TBDMSの形態で保護される。次のステップでは、OTBDMSの4位において選択的リチオ化と、その後の求電子試薬(2−イソプロポキシ−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン)の添加とを行う。化合物59が収率39%で得られた。
【0077】
【化21】
【0078】
次いで、化合物59は、鈴木反応を介してピリジン誘導体14a〜cにカップリングされる。反応の条件により、60a〜c(酸形態)と61a〜c(エステル形態)の混合物が得られる。フェノールの保護基もこのステップ中に除去されることに留意されたい。この混合物をエステル化条件で処理することにより、60シリーズを61シリーズに変換することができる。フェノール官能基はアルキル化され(62)、アルコール官能基はメシル化され、それにより化合物63a〜cが得られる。
【0079】
【化22】
【0080】
合成上の理由のために、アミン官能基が必要である場合、フェノールをブロモプロピルアミンNHBocでアルキル化して64シリーズを得ることによって、アミン官能基を発色団に導入し、次いでアルコール官能基をメシル化する(65シリーズ)。
【0081】
3)モノアンテナ錯体の合成
【0082】
【化23】
【0083】
スキーム15に従って、モノアンテナ錯体を合成する。Bocモノ保護TACN大環状分子を出発物質として、ピリジニル誘導体(Py)を縮合して、化合物66a〜sを得る。大環状分子を脱保護し、対応する発色団(Pyが有するものと同一のZ)をリガンドに導入する。エステル官能基を加水分解し(68シリーズ)、ランタニド(特にユウロピウムまたはテルビウム)を様々なリガンドにおいて錯化して、錯体69a〜sを得る。
【0084】
【化24】
【0085】
69a〜sシリーズについては、2個の水可溶化基E〜Eを導入することによって、化合物が水性媒体に対して可溶化される。これらの基は、アニオン性(スルホナートEおよびE)または中性(双性イオン:スルホベタインE)またはカチオン性(第四級アンモニウムEおよびE)である。
【0086】
【化25】
【0087】
最後に、Boc基をトリフルオロ酢酸の存在下で除去し、それにより、NHで官能化された錯体71a−E1〜5〜71s−E1〜5である本発明の錯体を得る。
【0088】
4)ジアンテナ錯体の合成
【0089】
ジアンテナ錯体の合成をスキーム18〜21に記載する。
【0090】
【化26】
【0091】
合成は、3種類の発色団:カルボキシラート、ホスフィン酸メチルおよびホスフィン酸フェニルを用いたモノ保護TACNのアルキル化反応で始まる。Boc保護基を除去し、発色団と同一であるZを有する対応ピリジンをTACNの最後のアルキル化部位に導入する。
【0092】
【化27】
【0093】
リガンドを加水分解し、ランタニド原子を大環状分子に導入して、74シリーズを得る。
【0094】
【化28】
【0095】
次いで、水可溶化基(E〜E)を2個の発色団に導入する(スキーム20)。それらは、アニオン性、中性またはカチオン性である。
【0096】
【化29】
【0097】
次いで、最後に、Bocまたはtert−ブチルエステル基をトリフルオロ酢酸の存在下で除去して、化合物76a〜afを得る(スキーム21)。
【0098】
5)トリアンテナ錯体の合成
【0099】
【化30】
【0100】
スキーム22に記載されている反応スキームに従って、トリアンテナ錯体を合成した。様々なメシル化ピリジン(63a〜c)を一置換TACN1bに縮合させる。得られたリガンド77a〜cを水酸化リチウムの存在下で加水分解し、次いで対応するランタニド塩と接触させ、それによりユウロピウム錯体Eu−79a〜cまたはテルビウム錯体Tb−79a〜cを得る。水可溶化基E〜Eの導入後、Boc基をトリフルオロ酢酸の存在下で除去して、錯体Eu−81a〜cおよびTb−81a〜cを得る。
【0101】
本発明の錯体Eu−81a−E、Tb−81a−E、Tb−81a−Eの有効性を明らかにするために、トリメトキシフェニルピリジンアンテナを含む先行技術の錯体82aおよび82bと比較した。試験の結果を実験の部に示す。
【0102】
【化31】
【0103】
【化32】
【0104】
3つの本発明の錯体を対応するNHS官能化錯体に変換した(スキーム24)。これら3つの錯体は、例えばタンパク質、さらに詳細には抗体を標識するために使用できる。
【0105】
実験の部
使用した略語:
EtOAc:酢酸エチル
AcOH:酢酸
Boc:tert−ブチルオキシカルボニル
n−BuLi:n−ブチルリチウム
CDCl:重水素化クロロホルム
CHCl:クロロホルム
CH(OEt):オルトギ酸エチル
CsCO:炭酸セシウム
CuI:ヨウ化銅(I)
DCM/CHCl:ジクロロメタン
DIAD:アゾジカルボン酸ジイソプロピル
DMF:ジメチルホルムアミド
DIPEA:ジイソプロピルエチルアミン
DMSO:ジメチルスルホキシド
Et:エチル
ESI+:ポジティブモードのエレクトロスプレーイオン化
EtOH:エタノール
h:時間
HATU:(O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート)
HNO:硝酸
HPLC:高速液体クロマトグラフィー
O:水
:過酸化水素
SO:硫酸
d:日
CO:炭酸カリウム
KI:ヨウ化カリウム
PO:リン酸カリウム
LC−MS:質量分析に連結した高速液体クロマトグラフィー
LiOH:水酸化リチウム
LnCl:塩化ランタニド
m−CPBA:メタクロロ過安息香酸
Me:メチル
MeCN:アセトニトリル
MeCO:アセトン
MeOH:メタノール
min:分
Ms:メシル
MsCl:塩化メシル/塩化メタンスルホニル
NaBH:水素化ホウ素ナトリウム
NaH:水素化ナトリウム
Pd/C:チャコール担持パラジウム
Pd(dba):ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)
Pd(dppf)Cl:ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)
Pd(OAc):酢酸パラジウム(II)
Pd(PPh:テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)
Ph:フェニル
PhMe:トルエン
PPh:トリフェニルホスフィン
mp:融点
Py:ピリジン
Rf:溶媒先端
Rt:保持時間
RT:室温
TEA/EtN:トリエチルアミン
TFA:トリフルオロ酢酸
THF:テトラヒドロフラン
TBDMSCl:tert−ブチルジメチルシリルクロリド
Ts:トシル
TSTU:O−(N−スクシンイミジル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート
UPLC−MS:質量分析に連結した超高速液体クロマトグラフィー
Xphos:2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,4’,6’−トリイソプロピルビフェニル
【0106】
クロマトグラフィー
分析および分取高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を以下の2台の装置で実施した。
・分析HPLC:ThermoScientific社、クォータナリーポンプP4000、重水素ランプ(190〜350nm)を備えたUV1000検出器、Waters製XBridge C18分析カラム(3.5μm、4.6×100mm)
・分取HPLC:Shimadzu社、2台のLC−8Aポンプ、Varian製ProStar ダイオードアレイUV検出器、Waters製XBridge prep.C18分取カラム(5μm:19×100mmまたは50×150mm)
【0107】
検出器としてPDA型のダイオードアレイUV検出器またはSQD2型のシンプル四重極質量検出器を備えたWaters製Acquity HClass装置で、分析超高速液体クロマトグラフィー(UPLC)を実施した。使用されたプローブは、ポジティブモードのエレクトロスプレー(キャピラリー電圧3.2kV、コーン電圧30V)である。
【0108】
Merck製60シリカゲル(0.040〜0.063mm)でシリカカラムクロマトグラフィーを実施した。Sigma−Aldrich製中性活性型酸化アルミニウムBrochmann Iでアルミナカラムクロマトグラフィーを実施した。
【0109】
分光測定
・核磁気共鳴(NMR)
直径5mmの多核種BBFO測定プローブ(ZグラジエントおよびHロック)を備えたBruker製Advance400MHz NanoBay分光計(9.4テスラ磁石)を使用して、NMRスペクトル(H、13Cおよび31P)を記録した。化学シフト(δ)は百万分率(ppm)で表す。以下の略語を使用する。
s:一重線、bs:ブロードな一重線、app s:見掛け上の一重線、d:二重線、t:三重線、q:四重線、m:多重線、dd:二重線の二重線、dt:三重線の二重線、dq:四重線の二重線、ddd:二重線の二重線の二重線、AB:AB系。
・質量分析(LRMS)
Waters製XBridge C18カラム(3.5μm、4.6×100mm)を備えたWaters製ZQ2000シングル四重極マルチモードソースESI/APCI分光計、またはSQD2型シングル四重極質量スペクトルを使用して、質量スペクトル(LC−MS)を記録した。
・高分解能質量分析(HRMS)
気流支援大気圧イオン化(API)源を備えたQStar Elite質量分析計(Applied Biosystems SCIEX)を用いて分析を行った。試料をポジティブエレクトロスプレーモードにて以下の条件でイオン化した:エレクトロスプレー電圧(ISV):5500V;オリフィス電圧(OR):20V;ネブライザーガス圧(空気):20psi。飛行時間(TOF)分析装置を用いて、高分解能質量スペクトル(HRMS)を得た。正確な質量測定は、二重内部較正を用いて3連で実施した。
【0110】
グラジエントA
Waters製Acquity C18カラム、300Å、1.7μm、2.1×50mm−A/水0.1%ギ酸B/アセトニトリル0.1%ギ酸t=0分5%B−t=0.2分5%B−t=5分100%B−0.6mL/分
グラジエントB
Waters製XBridge C18カラム、5μm、50×150mm−A/水25mM TEAAc pH7B/アセトニトリルt=0分10%B−t=19分60%B−100mL/分
グラジエントC
Waters製Acquity C18カラム、300Å、1.7μm、2.1×50mm−A/水5mM酢酸アンモニウムB/アセトニトリルt=0分5%B−t=0.2分5%B−t=5分100%B−0.6mL/分
グラジエントD
Waters製XBridge C18カラム、5μm、20×100mm−A/水25mM TEAAc pH7B/アセトニトリルt=0分5%B−t=19分60%B−20mL/分
グラジエントE
Waters製XBridge C18カラム、5μm、20×100mm−A/水25mM TEAAc pH7B/アセトニトリルt=0分2%B−t=19分40%B−20mL/分
グラジエントF
Waters製XBridge C18カラム、5μm、20×100mm−A/水25mM TEAAc pH6B/アセトニトリルt=0分2%B−t=19分40%B−20mL/分
グラジエントG
Waters製XBridge C18カラム、5μm、50×150mm−A/水0.2%TFA B/アセトニトリルt=0分10%B−t=12分50%B−80mL/分
グラジエントH
Waters製XBridge C18カラム、5μm、50×150mm−A/水0.2%TFA B/アセトニトリルt=0分30%B−t=20分100%B−80mL/分
【実施例】
【0111】
化合物1:国際公開第2013/011236号および国際公開第2014/111661号に記載された手順に従って、化合物1を調製した。
【0112】
化合物14a〜14c:国際公開第2013/011236号および国際公開第2014/111661号に記載された手順に従って、化合物14a〜14cを調製した。
【0113】
化合物15a:100mLのシュレンクフラスコ中で、化合物14a(440mg、1.5mmol)を無水DMF(10mL)に溶解して、無色溶液を得た。反応混合物に、トリ(o−トリル)ホスフィン(91mg、0.3mmol)、Pd(OAc)(33.7mg、0.15mmol)、TEA(0.314mL、2.252mmol)、次いでアクリル酸メチル(0.203mL、2.252mmol)を一度に添加した。反応液を70℃で5時間撹拌した。反応の進行をUPLC−MS(グラジエントA)によりモニターした。この後、反応は完了した。反応混合物を減圧下で濃縮し、EtOAc(50mL)中に希釈し、水(2×50mL)、次いで飽和NaCl水溶液(50mL)で洗浄した。有機相をMgSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。100/0から99/1へのDCM/MeOH溶媒グラジエントを使用したシリカカラムクロマトグラフィーにより粗生成物を精製して、白色粉末の形態で化合物15a(233mg、62%)を得た。
mp=156.4〜156.9℃−HPLCグラジエントA−Rt=2.03分−[M+H]、m/z251.9−Rf=0.41(シリカ,ジクロロメタン−メタノール96:4−HRMS(ESI+)C1214NO[M+H]の計算値、m/z252.0866、実測値:252.0868−H NMR(400MHz,CDCl)δ:8.13(s,1H,Py H)、7.67(d,J=16.2Hz,1H)、7.65(s,1H,Py H)、7.19(dd,J=;16.2Hz,2H,HC=CH)、6.71(d,J=16.2Hz,1H)、4.91(s,2H,CH−OH)、4.04(s,3H,Py−COOMe)、3.85(s,3H,COOMe)、3.49(bs,1H,OH);13C NMR(100MHz,CDCl)δ:166.20(COOMe)、165.24(Py−COOMe)、161.59(Py C)、147.97(Py−=C)、143.74(Py C)、140.92(Py C)、123.77(Py C)、122.08(Py C)、121.86(Py−C=)、64.68(CH−OH)、53.10(Py−CO)、52.19(CO)。
【0114】
化合物15b〜15f:15aの合成に使用された手順と同じ手順に従って対応するアルケンを使用して、これらの化合物を調製した。
【0115】
化合物16a:50mLのフラスコ中で、化合物15a(233mg、0.927mmol)をMeOH(10mL)に溶解して、無色溶液を得た。反応混合物に10%Pd/C(23.69mg、0.022mmol)を一度に添加した。二水素をバブリングしながら反応液を室温で2時間撹拌した。反応の進行をUPLC−MS(グラジエントA)によりモニターした。この後、反応は完了した。反応混合物を22μmのナイロンフィルターに通して濾過し、蒸発乾固して、白色粉末の形態で化合物16a(231mg、98%)を得た。mp=133.2〜136.4℃−HPLCグラジエントA−Rt=1.86分−[M+H]、m/z253.2−HRMS(ESI+)C1216NO[M+H]の計算値、m/z254.1023、実測値:254.1024−H NMR(400MHz,CDCl)δ:7.9(s,1H,Py H)、7.41(s,1H,Py H)、4.85(s,2H,CH−OH)、4.01(s,3H,Py−COOMe)、3.69(s,3H,COOMe)、3.05(t,J=7.6Hz,2H,Py−CH−CH)、2.71(t,J=7.6Hz,2H,Py−CHCH);13C NMR(100MHz,CDCl)δ:172.41(COOMe)、165.65(Py−COOMe)、160.49(Py C)、151.67(Py C)、147.22(Py C)、140.92(Py C)、123.96(Py C)、123.9(Py C)、64.62(CH−OH)、52.91(Py−COCH)、51.91(COCH)、33.97(Py−CHCH)、30.07(Py−CH−CH)。
【0116】
化合物16b〜16f:16aの合成に使用された手順と同じ手順に従って、これらの化合物を調製した。
【0117】
化合物17a:100mLのフラスコ中で、化合物16a(231mg、0.912mmol)を無水THF(30mL)に溶解して、無色溶液を得た。反応混合物を氷浴に入れ、TEA(0.127mL、0.912mmol)、次いでMsCl(72μL、0.912mmol)を一度に添加した。混合物を室温に温め、15分間撹拌した。反応の進行をUPLC−MS(グラジエントA)によりモニターした。この後、反応は完了した。反応混合物を減圧下で濃縮し、DCM(50mL)中に希釈し、水(2×25mL)、次いで飽和NaCl水溶液(20mL)で洗浄した。有機相をMgSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、白色粉末の形態で化合物17a(249mg、82%)を得た。HPLCグラジエントA−Rt=3.2分−[M+H]、m/z332.3−Rf=0.23(シリカ,ジクロロメタン−メタノール98:2−HRMS(ESI+)C1318NO[M+H]の計算値、m/z332.0799、実測値:332.0799−H NMR(400MHz,CDCl)δ:7.98(s,1H,Py H)、7.54(s,1H,Py H)、5.41(s,2H,CH−OMs)、4.00(s,3H,Py−COOMe)、3.69(s,3H,COOMe)、3.16(s,3H,OMs)、3.07(t,J=7.5Hz,2H,Py−CH−CH)、2.72(t,J=7.5Hz,2H,Py−CHCH);13C NMR(100MHz,CDCl)δ:172.23(COOMe)、165.27(Py−COOMe)、154.56(Py C)、152.46(Py C)、147.93(Py C)、125.19(Py C)、125.03(Py C)、70.97(CH−OMs)、53.08(Py−COCH)、51.94(COCH)、38.05(CH−OSOCH)、33.87(Py−CHCH)、30.07(Py−CH−CH)。
【0118】
化合物17b〜17f:16aの合成に使用された手順と同じ手順に従って、これらの化合物を調製した。
【0119】
化合物18a〜18f:17aの合成に使用された手順と同じ手順に従って、これらの化合物を調製した。
【0120】
化合物19a〜19f:15aの合成に使用された手順と同じ手順に従って、これらの化合物を調製した。
【0121】
化合物20a〜20f:16aの合成に使用された手順と同じ手順に従って、これらの化合物を調製した。
【0122】
化合物21a〜21f:17aの合成に使用された手順と同じ手順に従って、これらの化合物を調製した。
【0123】
化合物22a〜22f:17aの合成に使用された手順と同じ手順に従って、これらの化合物を調製した。
【0124】
化合物23a〜23f:15aの合成に使用された手順と同じ手順に従って対応するアルケンを使用して、これらの化合物を調製した。
【0125】
化合物24a〜24f:16aの合成に使用された手順と同じ手順に従って、これらの化合物を調製した。
【0126】
化合物25a〜25f:17aの合成に使用された手順と同じ手順に従って、これらの化合物を調製した。
【0127】
化合物26a〜26f:17aの合成に使用された手順と同じ手順に従って、これらの化合物を調製した。
【0128】
化合物27a〜c:Tetrahedron Letters、2010年、51巻、4445頁の論文に記載された手順に従って、化合物27a〜cを調製した。
【0129】
化合物28a〜28c:17aの合成に使用された手順と同じ手順に従って、これらの化合物を調製した。
【0130】
化合物29:この化合物は市販品である。
【0131】
化合物30:Dalton Transactions、2010年、39巻、707頁の論文に記載された手順に従って、化合物30を調製した。
【0132】
化合物31a〜31c:Organic Biomolecular Chemistry、2012年、10巻、9183頁の論文に記載された手順に従って、化合物31a〜31cを調製した。
【0133】
化合物32a〜32c:Journal of Organic Chemistry、2010年、75巻、7175頁の論文に記載された手順に従って、化合物32a〜32cを調製した。
【0134】
化合物33a〜33c:Journal of Organic Chemistry、2010年、75巻、7175頁の論文に記載された手順に従って、化合物33a〜33cを調製した。
【0135】
化合物34:この化合物は市販品である。
【0136】
化合物35:Bioorganic Chemistry、2014年、57巻、148頁の論文に記載された手順に従って、化合物35を調製した。
【0137】
化合物36:Carbohydrate Research、2013年、372巻、35頁の論文に記載された手順に従って、化合物36を調製した。
【0138】
化合物37:国際公開第2004/111661号に記載された手順に従って、化合物37を調製した。
【0139】
化合物38:17aの合成に使用された手順と同じ手順に従って、この化合物を調製した。
【0140】
化合物39:市販品。
【0141】
化合物40:Bioorganic Chemistry、2014年、57巻、148頁の論文に記載された手順に従って、化合物40を調製した。
【0142】
化合物41a〜b:国際公開第2014/111661号に記載された手順に従って対応する触媒を使用して、化合物41a〜bを調製した。
【0143】
化合物42a〜b:36の合成に使用された手順と同じ手順に従って、化合物42a〜bを調製した。
【0144】
化合物43a〜b:37の合成に使用された手順と同じ手順に従って、化合物43a〜bを調製した。
【0145】
化合物44a〜b:17aの合成に使用された手順と同じ手順に従って、化合物44a〜bを調製した。
【0146】
化合物45:この化合物は市販品である。
【0147】
化合物46:Chemistry−A European Journal、2014年、20巻、3610頁の論文に記載された手順に従って、化合物46を調製した。
【0148】
化合物47:化合物46(0.313g、2.04mmol)をHSO(11mL)に室温で溶解し、次いで溶液を氷浴中で冷却した。この混合物にHNO(9.7mL)を滴下し、溶液を100℃で2日間加熱した。混合物を室温に冷却し、次いで砕氷(100g)に注ぎ込んだ。1時間後、水相をCHCl(3×50mL)で抽出し、有機相を1つにまとめ、MgSOで乾燥させ、溶媒混合物(CHCl−AcOH、98/2)を使用したシリカカラムクロマトグラフィーにより粗生成物を精製して、白色固体(224mg、56%)を得た。R(CHCl/AcOH,98/2)=0.38;mp:147℃;H NMR(400MHz,CDCl,δ):16.49(s,1H,COO)、9.08(s,1H,H)、8.36(s,1H,H)、2.75(s,3H,py−CH);13C NMR(101MHz,CDCl,δ):159.4(COOH)、152.4(C)、144.4(C)、138.7(C)、123.1(C)、121.7(C)、18.4(py−CH);MS Cの計算値199.036。実測値199.035[M+H]
【0149】
化合物48:化合物47(2.9、14.7mmol)を無水MeOH(3mL)に室温で溶解した。この溶液にHSO(200μL)を滴下し、溶液を65℃で3日間加熱した。溶液を室温に冷却し、溶媒を減圧下で除去した。HO(30mL)を残渣に添加し、溶液をEtOAc(3×20mL)で抽出した。有機相を1つにまとめ、5%炭酸水素ナトリウム溶液(2×20mL)、次いで飽和塩水(20mL)で洗浄した。MgSOで乾燥させた後、溶媒を濾過し、減圧下で除去して、化合物48を得た。この化合物をさらに精製することなく合成の残りで使用した(57mg、76%)。H NMR(400MHz,CDCl,δ):8.33(d,1H,J 3.1,H)、8.19(d,1H,J 3.1,H)、4.02(s,3H,CHCO)、2.57(s,3H,py−CH);13C NMR(100MHz,CDCl,δ):160.8(COOMe)、152.7(C)、142.1(C)、140.5(C)、121.4(C)、119.3(C)、53.8(OCH)、18.3(py−CH);MS Cの計算値213.051。実測値213.050[M+H]
【0150】
化合物49:化合物48(114mg、0.54mmol)のCHCl(10mL)溶液に無水トリフルオロ酢酸(1.48mL、10.8mmol)を室温で添加した。混合物を不活性雰囲気下、60℃で5時間加熱した。この後、反応液を室温に冷却し、次いで溶媒を減圧下で除去した。この黄色油状物に、EtOH(3mL)およびHO(3mL)を添加し、溶液を室温で2時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、水相をCHCl(3×30mL)で抽出した。有機相を1つにまとめ、MgSOで乾燥させ、減圧下で蒸発させた。70/30から50/50へのヘキサン/AcOEt溶媒グラジエントを使用したシリカカラムクロマトグラフィーにより残渣を精製して、化合物49(74mg、65%)を得た。R(CHCl/MeOH,95/5)=0.67;H NMR(400MHz,CDCl,δ):8.68(d,1H,J 2.1,H)、8.37(d,1H,J 2.1,H)、5.06(s,2H,CHOH)、4.06(s,3H,CHCO);13C NMR(100MHz,CDCl,δ):164.3(COOMe)、163.6(C)、155.3(C)、149.7(C)、116.4(C)、116.3(C)、64.5(CHOH)、29.5(COCH)。
【0151】
化合物50a:NaH(17mg、0.708mmol)およびチオグリコール酸エチル(35μL、0.320mmol)を不活性雰囲気下、室温で化合物49(21.6mg、0.102mmol)の無水DMF(1mL)溶液に添加した。混合物を不活性雰囲気下、室温で2時間撹拌した。次いで、溶媒を減圧下で除去し、この黄色油状物にMeOH(5mL)およびHSO(200μL)を添加した。溶液をアルゴン下、65℃で72時間加熱した。溶媒を減圧下で除去し、残渣にHO(10mL)を添加し、水溶液をEtOAc(3×20mL)で抽出した。有機相を1つにまとめ、MgSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。溶離液としてCHCl−MeOH(98/2)を使用したシリカカラムクロマトグラフィーにより残渣を精製して、化合物50a(8.2mg、25%)を得た。R(DCM/MeOH,95/5)=0.35;H NMR(400MHz,CDCl,δ):7.88(d,1H,J 1.9,H)、7.63(d,1H,J 1.9,H)、4.69(s,2H,CHOH)、4.02(s,2H,S)、3.96(s,3H,CHCO)、3.76(s,3H,CHCO);13C NMR(100MHz,CDCl,δ):170.7(COOMe)、166.4(COOMe)、163.3(C)、152.3(C)、147.8(C)、121.2(C)、121.1(C)、65.1(CHOH)、53.3(CO)、48.5(CO)、33.6(S)。
【0152】
化合物50b:50aの合成に使用された手順と同じ手順に従って、化合物50bを調製した。
【0153】
化合物51a:TEA(12.5μL、0.09mmol)およびMsCl(3.5μL、0.045mmol)を化合物50a(8.2mg、0.03mmol)の無水THF(2mL)溶液に添加した。この溶液を室温で3.5時間撹拌した。この後、溶媒を減圧下で除去し、残渣をCHCl(20mL)に溶解した。有機相をHO(3×10mL)で洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧下で除去して、化合物51aを定量的に得た。R(DCM/MeOH,95/5)=0.8;H NMR(400MHz,CDCl,δ):7.95(d,1H,J 1.5,H)、7.52(d,1H,J 1.5,H)、5.35(s,2H,COMs)、3.98(s,2H,CHS)、3.82(s,2H,COCH)、3.77(s,2H,COCH)、3.14(s,3H,SCH)。
【0154】
化合物51b:51aの合成に使用された手順と同じ手順に従って、化合物51bを調製した。
【0155】
化合物52a〜b:それぞれ14bおよび14cの合成に使用された手順と同じ手順に従って、化合物52a〜bを調製した。
【0156】
化合物53a〜b:46の合成に使用された手順と同じ手順に従って、化合物53a〜bを調製した。
【0157】
化合物54a〜b:49の合成に使用された手順と同じ手順に従って、化合物54a〜bを調製した。
【0158】
化合物55a〜d:50aの合成に使用された手順と同じ手順に従って、化合物55a〜dを調製した。
【0159】
化合物56a〜d:51aの合成に使用された手順と同じ手順に従って、化合物56a〜dを調製した。
【0160】
化合物57:この化合物は市販品である。
【0161】
化合物58:イミダゾール(6.49g、94.4mmol)、次いでTBDMSCl(9.78g、62.9mmol)を3,5−ジメトキシフェノール(10g、62.9mmol)の無水DMF(145mL)溶液に添加した。反応混合物を室温で終夜撹拌した。この溶液にHO(50mL)を添加し、次いで溶液をEtOAc(2×30mL)で抽出した。有機相を1つにまとめ、塩水(20mL)で洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。0/90から85/15へ5%ずつ増加させるシクロヘキサン−EtOAc溶媒グラジエントを使用したシリカカラムクロマトグラフィーにより粗生成物を精製して、無色油状物の形態で化合物58(15.8g、94%)を得た。HPLC−Rt=4.19分−[M+H]、m/z270.3−H NMR(300MHz,CDCl)δ:6.11(s,1H,パラ)、6.03(s,2H,オルト)、3.75(s,6H,OMe)、0.98(s,9H,Si−tert−Bu)、0.21(s,6H,Si−Me)
【0162】
化合物59:化合物58(15.8g、58.9mmol)の無水THF(130mL)溶液に−78℃でアルゴン下、ヘキサン中の2.5M n−BuLi(26.3mL、65.8mmol)を滴下した。反応混合物を室温で5時間撹拌し、次いで−78℃に冷却した。この溶液に、2−イソプロポキシ−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(14.4mL、70.6mmol)の無水THF(32mL)溶液を滴下した。反応混合物を室温で3時間撹拌し、次いで砕氷−HO混合物(400mL)に注ぎ込んだ。水相をEtOAc(2×50ml)で抽出した。有機相を1つにまとめ、塩水(20mL)で洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。残渣にMeOH(9mL)を添加し、溶液を4℃に終夜冷却した。この後、白色固体が結晶化した。結晶を濾過により回収し、乾燥して、白色固体の形態で化合物59(8.91g、38%)を得た。HPLC−Rt=3.80分−[M+H]、m/z395.3−H NMR(300MHz,CDCl)δ:5.97(s,2H,オルト)、3.7(s,6H,OMe)、1.36(s,12H,B(O−C−diMe))、0.96(s,9H,Si−tert−Bu)、0.17(s,6H,Si−Me);13C NMR(300MHz,CDCl)δ:164.6;159.4;96.8;83.8;55.9;26.1;25.0;18.6、−4.0;
【0163】
化合物60aおよび61a:50mLのシュレンクフラスコ中で、化合物14a(440mg、1.5mmol)をアセトン(2mL)とHO(2.5mL)の混合物に溶解して、無色溶液を得た。反応混合物に、アセトン(0.5mL)に溶解した化合物59(710mg、1.8mmol)、KCO(518mg、3.75mmol)、およびPd(dba)(1.725mg、3.00μmol)を一度に添加した。反応混合物を65℃で4時間撹拌した。反応の進行をUPLC−MS(グラジエントA)によりモニターした。この後、反応は完了し、化合物60aおよび61aの混合物が含まれていた。反応混合物を減圧下で濃縮し、さらに精製することなく合成の残りで使用した。HPLCグラジエントA−Rt=1.44分−[M+H],m/z304.6
【0164】
化合物61a:250mLのフラスコ中で、化合物60aおよび61aの混合物(458mg、1.5mmol)をMeOH(100mL)に溶解して、黄色溶液を得た。反応混合物にHSO(0.416mL、4.50mmol)を一度に添加した。反応液を還流下、7日間撹拌した。反応の進行をUPLC−MS(グラジエントA)によりモニターした。この後、反応は不完全であった(90%)。反応混合物を減圧下で濃縮し、次いで分取HPLC(グラジエントG)により直接精製して、黄色粉末の形態で化合物61a(385mg、1.21mmol、80%)を得た。mp=169.7〜174.1℃−HPLCグラジエントA−Rt=2.07分−[M+H]、m/z320.3−HRMS(ESI+)C1618NO[M+H]の計算値、m/z320.1129、実測値:320.1127−H NMR(400MHz,MeOD)δ:8.22(s,1H,Py H)、8.02(s,1H,Py H)、6.25(s,2H,オルト)、4.89(s,2H,Py−CH−OH)、4.05(s,3H,Py−COOMe)、3.77(s,6H,OMe);13C NMR(100MHz,MeOD)δ:162.95;161.64;158.75;158.68;150.91;141.38;127.81;127.22;105.67;91.95;61.70;54.89;52.54。
【0165】
化合物62a:250mLのフラスコ中で、化合物61a(354mg、1.11mmol)を無水MeCN(100mL)に溶解して、黄色溶液を得た。反応混合物に、KCO(460mg、3.33mmol)、KI(27.6mg、0.166mmol)、次いでブロモ酢酸メチル(0.162mL、1.66mmol)を一度に添加した。反応液を65℃で終夜撹拌した。反応の進行をUPLC−MS(グラジエントA)によりモニターした。この後、反応は完了した。反応混合物を減圧下で濃縮し、DCM(50mL)中に希釈し、次いで濾過し、最後に溶離液としてEtOAcを使用したシリカカラムクロマトグラフィーにより精製して、白色粉末の形態で化合物62a(261mg、60%)を得た。mp=151.1〜154.4℃−HPLCグラジエントA−Rt=2.58分−[M+H]、m/z393.1−Rf=0.36(シリカ,酢酸エチル)−HRMS(ESI+)C1922NO[M+H]の計算値、m/z392.1340、実測値:392.1340−H NMR(400MHz,CDCl)δ:8.03(s,1H,Py H)、7.48(s,1H,Py H)、6.24(s,2H,オルト)、4.87(s,2H,Py−CH−OH)、4.71(s,2H,O−CH−COOMe)、3.99(s,3H,Py−COOMe)、3.86(s,3H,O−CH−COOMe)、3.73(s,6H,OMe);13C NMR(100MHz,CDCl)δ:169.03;166.03;159.85;159.18;158.20;146.32;144.61;127.05;126.72;109.65;91.48;65.38;64.71;55.89;52.73;52.46。
【0166】
化合物63a:100mLのフラスコ中で、化合物62a(224mg、0.572mmol)を無水THF(30mL)に溶解して、無色溶液を得た。反応混合物を氷浴に入れ、次いでMsCl(45μL、0.572mmol)を一度に添加した。添加の終わりに、氷浴を取り外し、反応液を15分間撹拌した。反応の進行をUPLC−MS(グラジエントA)によりモニターした。この後、反応は完了した。反応混合物を減圧下で濃縮し、DCM(50mL)中に希釈し、水(2×40mL)で洗浄した。有機相をMgSOで乾燥させ、濾過し、ロータリーエバポレーターで蒸発乾固させた。100/0から95/5へのDCM/MeOH溶媒グラジエントを使用したシリカカラムクロマトグラフィーにより粗生成物を精製して、白色粉末の形態で化合物63a(264mg、98%)を得た。mp=141.7〜144.1℃−HPLCグラジエントA−Rt=2.96分−[M+H]、m/z470.6−Rf=0.48(シリカ,ジクロロメタン−メタノール 96:4)−HRMS(ESI+)C2024NO10[M+H]の計算値、m/z470.1115、実測値:470.1113−H NMR(400MHz,CDCl)δ:8.13(s,1H,Py H)、7.67(s,1H,Py H)、6.24(s,2H,オルト)、5.46(s,2H,Py−CH−OH)、4.72(s,2H,O−CH−COOMe)、4.00(s,3H,Py−COOMe)、3.86(s,3H,O−CH−COOMe)、3.73(s,6H,OMe)、3.14(s,3H,OMs);13C NMR(100MHz,CDCl)δ:168.98;165.73;160.09;158.20;153.24;147.15;145.30;128.25;128.10;109.08;91.49;71.66;65.37;55.90;52.94;52.48;38.17。
【0167】
化合物77a:50mLのシュレンクフラスコ中で、化合物1b(41mg、0.159mmol)を無水THF(5mL)に溶解して、無色溶液を得た。反応混合物に、無水MeCN(10mL)に溶解した化合物63a(223mg、0.476mmol)、次いでKCO(88mg、0.635mmol)を一度に添加した。反応液を85℃で終夜撹拌した。反応の進行をUPLC−MS(グラジエントA)によりモニターした。この後、反応は完了した。反応混合物を分取HPLC(グラジエントH)により直接精製して、白色粉末の形態で化合物77a(106mg、48%)を得た。HPLCグラジエントA−Rt=3.64分−[M+H]、m/z1379.9−HRMS(ESI+)C2024NO10[M+2H]2+の計算値、m/z689.7843、実測値:689.7842。
【0168】
化合物Eu−79a:50mLのフラスコ中で、化合物77a(53mg、38.5μmol)をMeCN(1mL)および水(5mL)に溶解して、無色溶液を得た。反応混合物にLiOH(0.941mg、38.5μmol)を一度に添加した。反応液を室温で30分間撹拌した。反応の進行をUPLC−MS(グラジエントA)によりモニターした。この後、脱保護は完了した(化合物78a)。反応混合物のpHを1M HClで7に調整した。反応混合物に塩化ユウロピウム6水和物(21mg、57.8μmol)を一度に添加した。反応液を室温で終夜撹拌し、この後、反応は完了した。反応混合物を分取HPLC(グラジエントD)により直接精製して、白色粉末の形態で化合物79a(49mg、88%)を得た。HPLCグラジエントA−Rt=2.63分−[M−2H]、m/z1445.4−HRMS(ESI+)C637023Eu2+[M−H]2+の計算値、m/z722.6868、実測値:722.6868。
【0169】
化合物Eu−80a−E:25mLのフラスコ中で、化合物79a(49mg、34μmol)を無水DMSO(1.5mL)に溶解して、無色溶液を得た。反応混合物に、3−アミノ−1−プロパンスルホン酸(29mg、204μmol)、DIPEA(36μL、204μmol)、次いでHATU(53mg、136μmol)を一度に添加した。反応液を室温で15分間撹拌した。反応の進行をUPLC−MS(グラジエントC)でモニターした。この後、反応は完了した。反応混合物を分取HPLC(グラジエントD)により直接精製して、白色粉末の形態で化合物Eu−80a−E(19mg、10.2μmol、30%)を得た。HPLCグラジエントC−Rt=1.92分−[M−2H]、m/z1808.4−HRMS(ESI+)C72911029Eu2+[M−H]2+の計算値、m/z904.2162、実測値:904.2166。
【0170】
化合物Eu−81a−E:25mLのフラスコ中で、化合物Eu−80a−E(18.32mg、10.14μmol)をTFA(400μL)に溶解して、黄色溶液を得た。反応液を室温で30分間撹拌した。反応の進行をUPLC−MS(グラジエントC)によりモニターした。この後、反応は完了した。反応混合物をロータリーエバポレーターで蒸発させ、次いで分取HPLC(グラジエントE)により精製して、白色粉末の形態で化合物Eu−81a−E(7.89μmol、78%)を得た。HPLCグラジエントC−Rt=1.48分−[M−2H]、m/z1709−HRMS(ESI+)C67831027Eu2+[M−H]2+の計算値、m/z854.1899、実測値:854.1906。
【0171】
化合物Tb−79a:50mLのフラスコ中で、化合物77a(53mg、38.5μmol)をMeCN(1mL)および水(5mL)に溶解して、無色溶液を得た。反応混合物にLiOH(0.941mg、38.5μmol)を一度に添加した。反応液を室温で30分間撹拌した。反応の進行をUPLC−MS(グラジエントA)によりモニターした。この後、脱保護は完了した(化合物78a)。反応混合物のpHを1M HClで7に調整した。反応混合物に塩化テルビウム6水和物(22mg、57.8μmol)を一度に添加した。反応液を室温で終夜撹拌し、この後、反応は完了した。反応混合物を分取HPLC(グラジエントD)により直接精製して、白色粉末の形態で化合物Tb−79a(19mg、12.8μmol、33%)を得た。HPLCグラジエントA−Rt=2.63分−[M−2H]、m/z1451.7−HRMS(ESI+)C637023Tb2+[M−H]2+の計算値、m/z725.6883、実測値:725.6887。
【0172】
化合物Tb−80a−E:25mLのフラスコ中で、化合物Tb−79a(9.3mg、6.4μmol)を無水DMSO(1mL)に溶解して、無色溶液を得た。反応混合物に、3−アミノ−1−プロパンスルホン酸(5.5mg、38.4μmol)、DIPEA(4.5μL、25.6μmol)、次いでHATU(10mg、25.6μmol)を一度に添加した。反応液を室温で15分間撹拌した。反応の進行をUPLC−MS(グラジエントC)でモニターした。この後、反応は完了した。反応混合物を分取HPLC(グラジエントD)により直接精製して、白色粉末の形態で化合物Tb−80a−E(7.8mg、4.3μmol、67%)を得た。HPLCグラジエントC−Rt=1.89分−[M−2H]、m/z1815.9−HRMS(ESI+)C72911029Tb2+[M−H]2+の計算値、m/z907.2179、実測値:907.2167。
【0173】
化合物Tb−80a−E:25mLのフラスコ中で、化合物Tb−79a(9.3mg、6.4μmol)を無水DMSO(1mL)に溶解して、無色溶液を得た。反応混合物に、2−N,N,N−トリメチルアンモニウムエチルアミン(3.96mg、38.4μmol)、DIPEA(4.5μL、25.6μmol)、次いでHATU(10mg、25.6μmol)を一度に添加した。反応液を室温で15分間撹拌した。反応の進行をUPLC−MS(グラジエントC)によりモニターした。この後、反応は完了した。反応混合物を分取HPLC(グラジエントD)により直接精製して、白色粉末の形態で化合物Tb−80a−E(6.1mg、3.6μmol、56%)を得た。HPLCグラジエントC−Rt=2.00分−[M]3+、m/z569.3−HRMS(ESI+)C781081320Tb4+[M−2H]4+の計算値、m/z426.4266、実測値:426.4265。
【0174】
化合物Tb−81a−E:25mLのフラスコ中で、化合物Tb−80a−E2(7.8mg、4.3μmol)をTFA(500μL)に溶解して、黄色溶液を得た。反応液を室温で30分間撹拌した。反応の進行をUPLC−MS(グラジエントC)によりモニターした。この後、反応は完了した。反応混合物をロータリーエバポレーターで蒸発させ、次いで分取HPLC(グラジエントE)により精製して、白色粉末の形態で化合物Tb−81a−E(2.78μmol、64%)を得た。HPLCグラジエントC−Rt=1.45分−[M−2H]、m/z1715.3−HRMS(ESI+)C67831027Tb2+[M−H]2+の計算値、m/z857.1917、実測値:857.1905。
【0175】
化合物Tb−81a−E:25mLのフラスコ中で、化合物Tb−80a−E(6.1mg、3.6μmol)をTFA(200μL)に溶解して、黄色溶液を得た。反応液を室温で30分間撹拌した。反応の進行をUPLC−MS(グラジエントC)でモニターした。この後、反応は完了した。反応混合物をロータリーエバポレーターで蒸発させ、次いで分取HPLC(グラジエントE)により精製して、白色粉末の形態で化合物Tb−81a−E(2.2μmol、62%)を得た。HPLCグラジエントC−Rt=1.57分−[M]3+、m/z535.9−HRMS(ESI+)C731001318Tb4+[M−2H]4+の計算値、m/z401.4135、実測値:401.4125。
【0176】
錯体Eu−81a−EのUVスペクトル、クロマトグラムおよび質量スペクトルを図1〜3に示す。錯体Tb−81a−EのUVスペクトル、クロマトグラムおよび質量スペクトルを図4〜6に示す。錯体Tb−81a−EのUVスペクトル、クロマトグラムおよび質量スペクトルを図7〜9に示す。
【0177】
錯体Eu−81a−E2、Tb81a−E4およびTb−81a−E2の特性、ならびに国際公開第2005/058877号に記載された構造82aおよび82bに対応する錯体の特性を決定した。錯体82aおよびEu−81a−E2の光物理的特性は同程度である。しかし、錯体Eu−81a−E2は非常に水溶性であるが、錯体82aは溶解性が非常に乏しい(下記を参照のこと)。テルビウム錯体に関して、錯体82bならびにTb81a−E4およびTb−81a−E2の光物理的特性は同程度であるが、発光スペクトル線の強度および分布については小さな差がある。しかし、錯体Tb81a−E4およびTb−81a−E2は、先行技術の錯体82bと比べて非常に水溶性である(下記を参照のこと)。
【0178】
様々な錯体の溶解性を以下の通り決定した。各錯体について、メタノールを用いてユウロピウム錯体の3つの等モル溶液を調製した。溶媒を減圧下で除去し、残留した固体を水/オクタノール混合物(2:1、1:1、1:2)(0.9mL)に溶解し、2分間撹拌した。平衡後、メタノール中において各相の発光スペクトルを記録した(メタノール1mL中50μLの溶液)。各混合物について、下記式を使用してLogPの値を算出した。
LogP=Log[C(オクタノール)/C(水)]
式中、C(オクタノール)およびC(水)はそれぞれ、被験錯体のオクタノール中および水中における濃度を表す。
【0179】
ユウロピウム錯体については、ΔJ=2(605〜635nm)のバンドを計算で使用したが、テルビウム錯体については、ΔJ=5(520〜565nm)のバンドを選択した。結果を以下の表に示す。
【0180】
【表1】
【0181】
化合物82aおよび82bのLogP値がわずかに正の値であるのとは対照的に、本発明に係る錯体のLogP値は負の値であり、これは水性緩衝液に対する溶解性が完璧であることを反映している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】