特表2020-523411(P2020-523411A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シスビオ バイオアッセイズの特許一覧

特表2020-523411新規水溶性一分枝状および二分枝状錯化剤並びに対応するランタニド錯体
<>
  • 特表2020523411-新規水溶性一分枝状および二分枝状錯化剤並びに対応するランタニド錯体 図000041
  • 特表2020523411-新規水溶性一分枝状および二分枝状錯化剤並びに対応するランタニド錯体 図000042
  • 特表2020523411-新規水溶性一分枝状および二分枝状錯化剤並びに対応するランタニド錯体 図000043
  • 特表2020523411-新規水溶性一分枝状および二分枝状錯化剤並びに対応するランタニド錯体 図000044
  • 特表2020523411-新規水溶性一分枝状および二分枝状錯化剤並びに対応するランタニド錯体 図000045
  • 特表2020523411-新規水溶性一分枝状および二分枝状錯化剤並びに対応するランタニド錯体 図000046
  • 特表2020523411-新規水溶性一分枝状および二分枝状錯化剤並びに対応するランタニド錯体 図000047
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-523411(P2020-523411A)
(43)【公表日】2020年8月6日
(54)【発明の名称】新規水溶性一分枝状および二分枝状錯化剤並びに対応するランタニド錯体
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/14 20060101AFI20200710BHJP
【FI】
   C07D401/14CSP
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】53
(21)【出願番号】特願2020-518585(P2020-518585)
(86)(22)【出願日】2018年6月11日
(85)【翻訳文提出日】2020年2月10日
(86)【国際出願番号】FR2018051354
(87)【国際公開番号】WO2018229408
(87)【国際公開日】20181220
(31)【優先権主張番号】1755214
(32)【優先日】2017年6月12日
(33)【優先権主張国】FR
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】514064671
【氏名又は名称】シスビオ バイオアッセイズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラマルク, ローラン
(72)【発明者】
【氏名】ズヴィール, ユリアーン
(72)【発明者】
【氏名】ブリエ, エマニュエル
【テーマコード(参考)】
4C063
【Fターム(参考)】
4C063AA05
4C063BB02
4C063CC45
4C063DD12
4C063EE10
(57)【要約】
【課題】新規水溶性一分枝状および二分枝状錯化剤並びに対応するランタニド錯体の提供。
【解決手段】本発明は、式(I)で表される錯化剤に関する。本発明はまた、上記錯化剤から得られるランタニド錯体にも関する。応用:生体分子の標識。
[化1]

(式中、Chrom、ChromおよびChromは、本明細書に定義される通りである。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表される錯化剤。
【化1】
(式中、
Chrom、ChromおよびChromは、互いに独立して下記式の基を表すが、
【化2】
ただし、式(I)の化合物は、(i)(Ia)基および(Ib)基から選択される1または2個の基と、(ii)少なくとも1個のL−CO−R基とを含むものとし、
Rは、−ORまたは−NH−E基であり、
は、−COHまたは−P(O)(OH)R基であり、
は、Hまたは(C〜C)アルキルであり、
は、(C〜C)アルキル、好ましくはメチル;−SO基によって好ましくはメタ位もしくはパラ位が置換されていてもよいフェニル;またはベンジルであり、
は、直接結合;酸素原子、窒素原子および硫黄原子から選択される少なくとも1個の原子で中断されていてもよい−(CH−基;−CH=CH−基;−CH=CH−CH−基;−CH−CH=CH−基;またはPEG基であり、
は、二価の連結基であり、
Gは、反応性基であり、
Eは、−CH−(CH−CH−SOもしくは−(CH−NAlkAlkAlk基、またはスルホベタインであり、
rは、1〜6の整数、好ましくは1〜3の整数であり、
sは、0、1または2であり、
Alk、Alk、Alkは同一でも異なってもよく、(C〜C)アルキルを表す。)
【請求項2】
Chromが、式(Ia)の基であり、ChromおよびChromがそれぞれ、同一または異なる式(Ic)の基である、請求項1に記載の錯化剤。
【請求項3】
ChromおよびChromが同一である、請求項2に記載の錯化剤。
【請求項4】
ChromおよびChromがそれぞれ、同一または異なる式(Ib)の基であり、Chromが、式(Id)の基である、請求項1に記載の錯化剤。
【請求項5】
ChromおよびChromが同一である、請求項4に記載の錯化剤。
【請求項6】
が、−COHまたは−P(O)(OH)R基(式中、Rは(C〜C)アルキルまたはフェニル)である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の錯化剤。
【請求項7】
が、直接結合;酸素原子および硫黄原子から選択される少なくとも1個の原子で中断されていてもよい−(CH−基(式中、r=2または3);−CH=CH−基;−CH=CH−CH−基;または−CH−CH=CH−基である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の錯化剤。
【請求項8】
Eが、−CH−(CH−CH−SO基(式中、s=0または1);−(CH−NAlkAlkAlk(式中、Alk、Alk、Alkは、同一または異なって(C〜C)アルキルを表し、s=0または1);または下記式の基:
【化3】
(式中、Rは、(C〜C)アルキルであり、tは、1または2である。)
である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の錯化剤。
【請求項9】
反応性基Gが、アクリルアミド、活性化アミン、活性化エステル、アルデヒド、ハロゲン化アルキル、無水物、アニリン、アジド、アジリジン、カルボン酸、ジアゾアルカン、ハロアセトアミド、ハロトリアジン、ヒドラジン、イミドエステル、イソシアナート、イソチオシアナート、マレイミド、ハロゲン化スルホニル、チオール、ケトン、アミン、酸ハロゲン化物、スクシンイミジルエステル、ヒドロキシスクシンイミジルエステル、ヒドロキシスルホスクシンイミジルエステル、アジドニトロフェニル、アジドフェニル、3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオンアミド、グリオキサール、トリアジン、アセチレン基、特に下記式の基から選択される基:
【化4】
(式中、wは0〜8の範囲であり、vは0または1であり、Arは、ハロゲン原子によって置換されていてもよい、1〜3個のヘテロ原子を含む飽和または不飽和5員または6員ヘテロ環である。)
から選択される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の錯化剤。
【請求項10】
が、
直接結合;
1つまたは複数の二重または三重結合を含んでいてもよい直鎖状または分枝状C〜C20アルキレン基;
〜Cシクロアルキレン基;C〜C14アリーレン基;
下記式の二価の基から選択される基:
【化5】
(式中、n、m、p、qは、1〜16の整数、好ましくは1〜5の整数であり、eは、1〜6の整数、好ましくは1〜4の整数である。)
から選択されるが、
ただし、上記アルキレン、シクロアルキレンまたはアリーレン基は、酸素、窒素、硫黄、リンなどの1個もしくは複数のヘテロ原子、または1個もしくは複数のカルバモイルもしくはカルボキサミド基を含んでいてもよく、上記アルキレン、シクロアルキレンまたはアリーレン基は、1〜5個のC〜Cアルキル、C〜C14アリール、スルホナートまたはオキソ基によって置換されていてもよい、
請求項1〜9のいずれか一項に記載の錯化剤。
【請求項11】
−L−G基が、カルボン酸、アミン、スクシンイミジルエステル、ハロアセトアミド、ヒドラジン、イソチオシアナート、マレイミド基から選択される反応性基Gと、1〜5個の炭素原子を有するアルキレン鎖または下記式の基から選択される基:
【化6】
(式中、n、mは、1〜16の整数、好ましくは1〜5の整数であり、eは、1〜6の整数、好ましくは1〜4の整数である。)
からなるスペーサーアームLとからなり、G基が、上記二価の基のどちらか一端に連結されている、請求項1〜10のいずれか一項に記載の錯化剤。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の錯化剤とランタニドとを含むランタニド錯体。
【請求項13】
上記ランタニドが、Eu3+、Sm3+、Tb3+、Gd3+、Dy3+、Nd3+、Er3+から選択されることを特徴とする、請求項12に記載のランタニド錯体。
【請求項14】
上記ランタニドが、Eu3+またはTb3+、好ましくはEu3+であることを特徴とする、請求項13に記載のランタニド錯体。
【請求項15】
(i)G基を含む請求項12〜14のいずれか一項に記載のランタニド錯体と、(ii)官能基を含む所望の分子とを反応させることによって得られるコンジュゲートであって、上記官能基は、G基の原子の1個と共有結合を形成するものである、コンジュゲート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性錯化剤またはリガンド、これらの錯化剤から得られるランタニド錯体、および、分子を標識し、時間分解蛍光法で検出するためのこれらのランタニド錯体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ランタニド錯体の使用は、この20年で生命科学の分野において大幅に拡大してきた。この理由は、これらの蛍光性化合物が、それらを生体分子を検出するのに好まれる標識としている有利な分光学的特徴を有するからである。これらの蛍光性化合物は、フェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)測定を実施するために適合するフルオロフォアと組み合わせた使用に特に適しており、生体分子間の相互作用の研究へのその応用が、Cisbio Bioassays社およびそのHTRF(登録商標)製品群など、いくつかの企業により商業的に利用されている。ランタニド錯体の寿命が比較的長いことにより、時間分解蛍光測定(すなわちフルオロフォア励起後に遅延時間をおく)を行うことも可能になり、そのため測定媒体による蛍光干渉を制限することができる。後者の特徴は、測定媒体が、多数のタンパク質を含むためそれらの蛍光が研究中の化合物の蛍光に干渉するおそれがある生物学的媒体に近づくほどいっそう有用である。
【0003】
多くのランタニド錯体が記載されている。例えば、Latvaらは、41個のEu(III)およびTb(III)錯体を開示し、それらの発光を研究した(非特許文献1)。化合物39は特に、1,4,7−トリアザシクロノナン環(以下「TACN」)からなり、その窒素原子は、フェニルエチニルピリジンに由来する発色団によって置換されている。著者らによれば、この発色団およびEu(III)からなる錯体の量子収量は良好とされているが、この錯体は、生体分子とカップリングするのに適していない。さらに、この化合物は非常に疎水性であるので、水性媒体中での使用は問題になり得る。最後に、この錯体の吸収は315nmにおいて最適であるが、バイオアッセイのプレートリーダーで使用されることが多い励起波長はむしろ337nmである。
【0004】
D’Aleoらは、ジピコリン酸に由来する3つのリガンドから構成されるランタニド錯体の合成を記載した(非特許文献2)。これらのリガンドの1つ(L1)は、ポリエチレングリコールエーテル−オキシド(以下「PEG」)をフェニル基上に有するフェニルエチニル基によって置換されているジピコリン酸分子からなる。著者らによれば、PEG基は、この生成物に、水性媒体および有機溶媒に対する良好な溶解性を付与する。しかし、これらの錯体は、水性媒体中で十分に安定ではなく、バイオコンジュゲーション反応において使用できない。
【0005】
いくつかの他のランタニド錯体が開示されており、一部は商業的に利用されている。特に、大多環状ランタニドクリプタート(特許文献1;特許文献2;特許文献3;特許文献3;特許文献4;特許文献5)、ジエチレントリアミン五酸単位に結合したクマリン由来単位を含むランタニド錯体(特許文献6)、およびピリジン誘導体(特許文献7;特許文献8)、ビピリジン誘導体(特許文献9)またはテルピリジン誘導体(特許文献10;特許文献11;特許文献12)を含むランタニド錯体が挙げられる。
【0006】
特許文献13には、下記式の錯化剤が記載されている。
【0007】
【化1】
【0008】
この特許文献において、発明者らは、輝度を増加させるために3つの発色団を有する錯体を検討している。さらに、これらの錯体を水溶性にするために、発明者らはPEG基を使用する。これらのPEG基は、「総合電荷」の観点から中性であるが、プラスチックおよびガラスへの吸着特性を錯体に付与するため、これらの錯体をイムノアッセイにおいて使用することが困難になる。
【0009】
特許文献14には、下記式で表される3つの発色団基を含む錯化剤が記載されている。
【0010】
【化2】
【0011】
この特許文献において、発明者らは、PEG基をアニオンまたはカチオン荷電基で置き換えた。これらの錯体は、完全に可溶性であり、プラスチックまたはガラスにはもはや吸着しない。これらの錯体は、かなり大きい星型構造および非常に高い輝度特性を有する。
【0012】
特許文献15は、水および生物学的媒体に対する溶解性に関して有利な特性を与える少なくとも2個のベタイン基を有機部分に含むランタニド錯体に関する。これらの可溶化基は、生細胞について非特異的吸着現象を限定するものとして示される。一方、これらの錯体は、特許文献14と同様に、かなり大きい星型構造および良好な輝度特性をもたらす同一または異なる3つの発色団を有する。
【0013】
特許文献16および特許文献17には、高モル吸光係数を有するTACN錯体が記載されている。これらの錯体は、高輝度を有するが、3つの発色団も有する。発明者らは、最適なエネルギー移動(FRET)が起こるようにできるだけ高輝度の錯体を求めている。錯体の星型構造は、この場合も大型であり、それらの輝度が高い。
【0014】
3つの発色団をトリアザシクロナン大環状分子上に導入することは、必ずしも利点とは限らない。その理由は、発色団が、長くて時間のかかる合成によるシントンであるからである。TACN錯体中に3つの発色団が存在すると、分子のサイズが増加し、それにより、生体分子について立体障害が増加する。それにもかかわらず、発色団の数が多いほど、輝度が高くなる。というのは、このパラメータは、分子の量子収量およびモル吸光係数(ε)に依存するからである。3つの発色団を分子中に導入することによって、輝度は増加する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】欧州特許第0180492号明細書
【特許文献2】欧州特許第0321353号明細書
【特許文献3】欧州特許第0601113号明細書
【特許文献4】国際公開第2001/96877号
【特許文献5】国際公開第2008/063721号
【特許文献6】米国特許第5,622,821号明細書
【特許文献7】米国特許第4,920,195号明細書
【特許文献8】米国特許第4,761,481号明細書
【特許文献9】米国特許第5,216,134号明細書
【特許文献10】米国特許第4,859,777号明細書
【特許文献11】米国特許第5,202,423号明細書
【特許文献12】米国特許第5,324,825号明細書
【特許文献13】国際公開第2013/011236号
【特許文献14】国際公開第2014/111661号
【特許文献15】国際公開第2014/162105号
【特許文献16】国際公開第2014/147288号
【特許文献17】国際公開第2016/066641号
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Latvaら、Journal of Luminescence、1997年、75巻、149頁
【非特許文献2】D’Aleoら、Inorganic Chemistry、2008年、47巻、10258頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明において、錯体の輝度と、錯体がエネルギー供与体として使用される時間分解FRETに基づくイムノアッセイにおいて生物学的標的を検出するその能力との間に相関性がないということが見出された。本発明は、先行技術の欠点を克服すること、すなわち、1つまたは2つの発色団を導入して合成を単純化すること、立体障害を低減すること、最後に、エネルギー移動に関して少なくとも同じ性能を有する蛍光プローブとすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
したがって、本発明は、約337nmで励起させた場合に先行技術の化合物より低い輝度を有するが、時間分解FRETに基づくイムノアッセイにおいて生物学的標的を検出する能力が3つの発色団を有する類似体の能力と同等またはそれより優れている蛍光性ランタニド錯体を提供することを目的とする。これらの錯体は、水性媒体に対する良好な溶解性、FRET実験における使用に適した発光スペクトル、さらには、サイズがより小さいことによる生体分子の標識における良好な実用性も有する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明を代表する錯体のUVスペクトルを示す図である。
図2】本発明を代表する錯体のクロマトグラムを示す図である。
図3】本発明を代表する錯体の質量スペクトルを示す図である。
図4】本発明を代表する錯体の有効性を試験するのに使用されたイムノアッセイを示す模式図である。
図5図4におけるイムノアッセイの実施時に測定されたFRETシグナル(ΔF)を示す図である。
図6】本発明を代表する錯体の有効性を試験するのに使用されたイムノアッセイを示す模式図である。
図7図6におけるイムノアッセイの実施時に測定されたFRETシグナル(ΔF)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
錯化剤
本発明に係る錯化剤は、下記式(I)で表される化合物である。
【0021】
【化3】
【0022】
(式中、
Chrom、ChromおよびChromは、互いに独立して下記式の基を表すが、
【0023】
【化4】
【0024】
ただし、式(I)の化合物は、(i)(Ia)基および(Ib)基から選択される1または2個の基と、(ii)少なくとも1個のL−CO−R基とを(必ず)含むものとし、
Rは、−ORまたは−NH−E基であり、
は、−COHまたは−P(O)(OH)R基であり、
は、Hまたは(C〜C)アルキルであり、
は、(C〜C)アルキル、好ましくはメチル;−SO基によって好ましくはメタ位もしくはパラ位が置換されていてもよいフェニル;またはベンジルであり、
は、直接結合;酸素原子、窒素原子および硫黄原子から選択される少なくとも1個の原子で中断されていてもよい−(CH−基;−CH=CH−基;−CH=CH−CH−基;−CH−CH=CH−基;またはPEG基であり、
は、二価の連結基であり、
Gは、反応性基であり、
Eは、−CH−(CH−CH−SOもしくは−(CH−NAlkAlkAlk基、またはスルホベタインであり、
rは、1〜6の整数、好ましくは1〜3の整数であり、
sは、0、1または2であり、
Alk、Alk、Alkは同一でも異なってもよく、(C〜C)アルキルを表す。)
【0025】
したがって、本発明に係る錯化剤は、式(I)の構造が3個の発色団(Chrom、ChromおよびChrom)を含むので、(Ia)基および(Ib)基から選択される1または2個の基と、その結果として(Ic)基および(Id)基から選択される1または2個の基とを含む。式(I)の化合物に対するさらなる要件は、少なくとも1個のL−CO−R基が構造中に存在しなければならないことである。
【0026】
PEG基は、式−CH−(CHOCH−CHOCHのポリエチレングリコール基(式中、yは1〜5の整数)を指す。
【0027】
スルホベタインは、下記から選択される基である。
【0028】
【化5】
【0029】
式中、Rは、(C〜C)アルキル、好ましくはメチルまたはエチルを表し、tは、1、2、3、4、5または6であり、好ましくは1または2であるが、式−(CH(CH−(CH−SOで表されるスルホベタインが好ましい。
【0030】
pHに応じて、−SOH、−COHおよび−PO(OH)基は、脱プロトン化した形態または脱プロトン化していない形態である。したがって、これらの基は、以下の本明細書において、−SO基、−CO基および−PO(OH)O基も指し、その逆も指す。
【0031】
錯化剤の第1の好ましいファミリーは、Chromが式(Ia)の基であり、ChromおよびChromがそれぞれ、同一または異なる式(Ic)の基である式(I)の化合物からなる。一実施形態において、ChromおよびChromは同一である。直前の実施形態と組み合わせることができる別の実施形態において、Rは、−COHまたは−P(O)(OH)R基(式中、Rは(C〜C)アルキルまたはフェニル)である。
【0032】
錯化剤の第2の好ましいファミリーは、ChromおよびChromがそれぞれ、同一または異なる式(Ib)の基であり、Chromが式(Id)の基である式(I)の化合物からなる。一実施形態において、ChromおよびChromは同一である。直前の実施形態と組み合わせることができる別の実施形態において、Rは、−COHまたは−P(O)(OH)R基(式中、Rは(C〜C)アルキルまたはフェニル)である。
【0033】
これら2つの好ましいファミリーのうち、好ましいサブファミリーは、錯化剤が以下の特徴の1つまたは複数を含むものである。
・Rは、Hである。
・Lは、直接結合;酸素原子および硫黄原子から選択される少なくとも1個の原子で中断されていてもよい−(CH−基(式中、r=2または3);−CH=CH−基;−CH=CH−CH−基;または−CH−CH=CH−基である。
・Eは、−CH−(CH−CH−SO基(式中、s=0または1);−(CH−NAlkAlkAlk(式中、Alk、Alk、Alkは、同一または異なって(C〜C)アルキルを表し、s=0または1);または下記式の基:
【0034】
【化6】
【0035】
(式中、Rは、(C〜C)アルキルであり、tは、1または2である。)
である。
【0036】
本発明の一実施形態において、式(I)の錯化剤がいくつかのE基を含む場合、これらの基の多くとも1個はスルホベタインを表す。
【0037】
スペーサーアームLまたはLが有する反応性基Gによって、本発明に係る化合物と、蛍光化される種、例えば有機分子、ペプチドまたはタンパク質とのカップリングが可能になる。2つの有機分子をコンジュゲーションする方法は、反応性基の使用に基づいており、当業者の一般知識の一部である。これらの従来方法は、例えばBioconjugate Techniques、G.T.Hermanson、Academic Press、第2版、2008年、169〜211頁に記載されている。
【0038】
典型的には、反応性基は、それぞれ適当な求核性または求電子性基の存在下にある場合に共有結合を形成することができる求電子性または求核性基である。反応性基を含む本発明に係る化合物と官能基を有する有機分子、ペプチドまたはタンパク質とのコンジュゲーション反応によって、反応性基の1個または複数の原子を含む共有結合が形成される。
【0039】
好ましくは、反応性基Gは、以下の化合物の1つに由来する基である:アクリルアミド、活性化アミン(例えば、カダベリンまたはエチレンジアミン)、活性化エステル、アルデヒド、ハロゲン化アルキル、無水物、アニリン、アジド、アジリジン、カルボン酸、ジアゾアルカン、ハロアセトアミド、モノクロロトリアジン、ジクロロトリアジンなどのハロトリアジン、ヒドラジン(ヒドラジドを含む)、イミドエステル、イソシアナート、イソチオシアナート、マレイミド、ハロゲン化スルホニル、チオール、ケトン、アミン、酸ハロゲン化物、スクシンイミジルエステル、ヒドロキシスクシンイミジルエステル、ヒドロキシスルホスクシンイミジルエステル、アジドニトロフェニル、アジドフェニル、3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオンアミド、グリオキサール、トリアジン、アセチレン基、特に下記式の基から選択される基。
【0040】
【化7】
【0041】
(式中、wは0〜8の範囲であり、vは0または1であり、Arは、ハロゲン原子によって置換されていてもよい、1〜3個のヘテロ原子を含む飽和または不飽和5員または6員ヘテロ環である。)
【0042】
好ましくは、反応性基Gは、アミン(−NHBocとして保護されていてもよい)、スクシンイミジルエステル、ハロアセトアミド、ヒドラジン、イソチオシアナート、マレイミド基、またはカルボン酸(−COMe、−COtBu基として保護されていてもよい)である。後者の場合、酸は、求核性種と反応するようにエステルとして活性化されなければならない。
【0043】
反応性基Gは、二価の有機基によって構成されることが有利なスペーサーアームLまたはLを介して錯化剤に結合している。特に、スペーサーアームLは、下記から選択することができる。
・直接結合;
・1つまたは複数の二重または三重結合を含んでいてもよい直鎖状または分枝状C〜C20、好ましくはC〜Cアルキレン基;
・C〜Cシクロアルキレン基;C〜C14アリーレン基;
・下記式の二価の基から選択される基。
【0044】
【化8】
【0045】
(式中、n、m、p、qは、1〜16の整数、好ましくは1〜5の整数であり、eは、1〜6の整数、好ましくは1〜4の整数である。)
ただし、上記アルキレン、シクロアルキレンまたはアリーレン基は、酸素、窒素、硫黄、リンなどの1個もしくは複数のヘテロ原子、または1個もしくは複数のカルバモイルもしくはカルボキサミド基を含んでいてもよく、上記アルキレン、シクロアルキレンまたはアリーレン基は、1〜5個、好ましくは1〜3個のC〜Cアルキル、C〜C14アリール、スルホナートまたはオキソ基によって置換されていてもよい。
【0046】
式(Ia)の基において、−L−G基は、好ましくは、カルボン酸(−COMe、−COtBu基として保護されていてもよい)、アミン(−NHBocとして保護されていてもよい)、スクシンイミジルエステル、ハロアセトアミド、ヒドラジン、イソチオシアナート、マレイミド基から選択される反応性基Gと、1〜5個の炭素原子を有するアルキレン鎖または下記式の基から選択される基:
【0047】
【化9】
【0048】
(式中、n、mは、1〜16の整数、好ましくは1〜5の整数であり、eは、1〜6の整数、好ましくは1〜4の整数である。)
からなるスペーサーアームLとから構成され、G基が、上記二価の基のどちらか一端に連結されている。
【0049】
錯体
本発明はまた、上述の錯化剤により錯化したランタニド原子からなるランタニド錯体であって、上記ランタニドがEu3+、Sm3+、Tb3+、Gd3+、Dy3+、Nd3+、Er3+から選択されるランタニド錯体にも関する。上記ランタニドは、好ましくはTb3+またはEu3+、さらにより好ましくはEu3+である。
【0050】
これらの錯体は、本発明に係る錯化剤とランタニド塩とを反応させることによって調製される。したがって、溶媒(上記塩と相溶性があるアセトニトリル、メタノールまたは他の溶媒)または緩衝液中での1当量の錯化剤と1〜5当量のランタニド塩(塩化物、酢酸塩またはトリフル酸塩の形態のユウロピウムまたはテルビウム)との反応によって、数分間の撹拌後、対応する錯体が生じる。
【0051】
上述したように、得られた蛍光性錯体は、特にそれらの量子収量、それらの発光寿命、およびそれらの励起スペクトル(約337nmでのレーザー励起またはフラッシュランプに特に適している)に関して、優れた光物理的特性を有する。さらに、それらの発光スペクトルのバンド分布は約620nmを中心としており、そのため、シアニン型またはアロフィコシアニン型アクセプター(Cisbio Bioassays社販売のXL665など)と共にFRETを使用した場合に並はずれた非常に好ましい特性が錯体に付与される。これらの錯体は、大部分の二価のカチオン(Ca2+、Mg2+など)またはEDTAを含む生物学的環境において安定性が高いため、それらの発光は、先行技術の3つの発色団を有する錯体と比較して優れたままである。
【0052】
コンジュゲート
G基を含む本発明に係る錯化剤およびランタニド錯体は、反応性基と反応して共有結合を形成することができる官能基を含む有機または生体分子を標識するのに特に適している。したがって、本発明はまた、所望の分子(タンパク質、抗体、酵素、ホルモンなど)を標識するためのランタニド錯体の使用にも関する。
【0053】
本発明はまた、本発明に係る錯体で標識された分子にも関する。反応性基と反応することができる官能基を有するならば、いずれの有機または生体分子も、本発明に係る錯体とコンジュゲーションすることができる。特に、本発明に係るコンジュゲートは、本発明に係る錯体と、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、抗体、糖、炭水化物鎖、ヌクレオシド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、酵素基質(特に、ベンジルグアニンまたはベンジルシトシンなどの酵素自殺基質(SnaptagおよびCliptagとして販売されている酵素基質))、クロロアルカン(Halotagという名称で販売されている酵素の基質)、補酵素A(ACPtagまたはMCPtagという名称で販売されている酵素の基質)から選択される分子とを含む。
【0054】
合成
本発明に係る錯化剤(リガンド)および錯体の調製のための一般戦略を、以下(スキーム1:単一アンテナおよびスキーム2:2個のアンテナ)に概略的に記載し、実験の部にさらに詳述する。
【0055】
【化10】
【0056】
Boc−モノ保護トリアザシクロナン大環状分子1を出発物質として、2個の可溶化基を付加させるために使用される2つのピリジニル単位を導入した。保護基Bocを除去し、次いでアンテナ(発色団)を大環状分子に付加して、リガンド3を得た。エステル(カルボン酸エステルおよびホスフィン酸エステル)の加水分解を、通常の方法で塩基性条件を使用して実施した。そして、これにより、ユウロピウム原子が組み込まれるため、錯体5が形成された。この錯体を基にして、2個の水可溶化官能基が導入された。最後に、アンテナ(発色団)が有する保護基Bocの脱保護後、錯体を生体分子にコンジュゲーションすることができるように官能化した(7)。
【0057】
【化11】
【0058】
ツーアンテナ系は、同様の戦略を使用し、ピリジニル単位および発色団の導入の順序を逆にすることによって得られた。今回は、最初にアンテナを導入して、化合物8を得た。Boc基の除去後、最後のピリジニル単位を導入した。シーケンスは同一であった。すなわち、エステル官能基(カルボン酸エステルおよびホスフィン酸エステル)の加水分解、ユウロピウム錯体の形成、2個の水可溶化官能基(今回、これらの官能基は発色団が有する)の導入、次いで官能基の組み込みによって、ツーアンテナファミリー13を得た。
【0059】
1)ピリジニルブリックの調製
以下のスキーム(3〜11)は、以下の三官能性ピリジニル誘導体の様々な合成経路を示す。
・2位に錯化官能基(カルボン酸またはホスフィン酸);
・4位に、水可溶化基を導入させることができる官能基(メチルエステル官能基)または官能基を組み込むことができる官能基(保護アミン官能基およびtert−ブチルエステル官能基);
・最後に、6位に、TACN環のアミンと反応できるようにするために対応するメシラートに変換されるメチルアルコール官能基。
【0060】
【化12】
【0061】
シントン14a〜cの合成は上述のものに記載されている(国際公開第2013/011236号および国際公開第2014/111661号を参照のこと)。これらのシントンから、連続した以下の3つの反応によって一連の化合物17a〜fが得られた。ピリジン誘導体とアルケンの間に炭素−炭素結合を生じるHeck反応。この手順は、例えば欧州特許出願公開第2002836号明細書に記載されている。二重結合の接触水素化による還元の後、メシル化反応を行うことより、化合物17a〜fを得た。あるいは、二重結合を保持して、系を硬直させ、水可溶化基をアピカル配向させた(18a〜f)。
【0062】
【化13】
【0063】
同じ戦略に従い、対応するアルケンを使用することによって、tert−ブチルエステル形態(17および18シリーズの類似体)の化合物21a〜fおよび22a〜f(スキーム4)が得られた。
【0064】
【化14】
【0065】
同じ戦略に従い、対応するアルケンを使用することによって、NHBoc形態(17および18シリーズの類似体)の化合物25a〜fおよび26a〜f(スキーム5)が得られた。
【0066】
【化15】
【0067】
同様の戦略に従って、25シリーズの類似体である(炭素鎖を含まない)化合物28a〜cを調製した。NHBoc基の導入は、例えばTetrahedron Letters、2010年、51巻、4445頁の総説に記載された方法を使用して実施した。
【0068】
【化16】
【0069】
スキーム7に記載された方法に従って、官能基(CORまたはNHBoc)を有する脂肪族リンカーと芳香族環(ピリジン)の間の4位に酸素原子が介在しているピリジニル誘導体を調製した。ケリダム酸29をメチルジエステルとしてエステル化し、次いで光延反応を使用して、官能基を有するリンカーを導入した(例えば、Organic Biomolecular Chemistry、2012年、10巻、9183頁に記載された手順)。水素化ホウ素ナトリウムを使用したモノ還元によって、モノアルコール形態の化合物32a〜cが得られ、次いで対応するメシル化誘導体33a〜cに変換された。
【0070】
【化17】
【0071】
4位のメチルエステル官能基を芳香環(ピリジン)に直に固定することができる。この場合、市販の化合物34を出発物質とし、まずエステル化する必要があった。次いで、ピリジンをm−CPBAの存在下で酸化し、対応するN−オキシド誘導体36を得た。N−オキシド官能基は無水トリフルオロ酢酸と容易に反応し、転位することにより、加水分解後に6位のメチルアルコール官能基が得られた。後者を通常の条件下でメシル化して、化合物38を得た。
【0072】
【化18】
【0073】
化合物39を使用し、それをまずエステル化し、次いでホスフィン酸エステル41a〜bに変換して、類似したホスフィナート誘導体44a〜bを調製した。反応シーケンスの残りは、化合物38の合成の場合と同一であった。
【0074】
【化19】
【0075】
スキーム10に記載された反応シーケンスに従って、誘導体51a〜bを調製した。この例では、チオグリコール酸エチルまたはtert−ブチルを使用して、エステル官能基を導入した。
【0076】
【化20】
【0077】
スキーム11に記載された合成経路に従って、ホスフィナート類似体56a〜dを調製した。
【0078】
2)発色団の調製
【0079】
【化21】
【0080】
国際公開第2013/011236号および国際公開第2014/111661号に詳述されているプロトコルに従って、発色団58a〜c(スキーム12)および60a〜c(スキーム13)を調製した。
【0081】
【化22】
【0082】
3)単一アンテナ錯体の合成
【0083】
【化23】
【0084】
Boc−モノ保護TACN大環状分子を出発物質として、ピリジニル誘導体(Py)を縮合させて、化合物61a〜sを得た。大環状分子を脱保護し、対応する発色団(Pyが有するものと同一であるZ)をリガンドに導入した。エステル官能基を加水分解し(63シリーズ)、ユウロピウムを様々なリガンドにおいて錯化して、一連の錯体64a〜sを得た。
【0085】
【化24】
【0086】
64a〜sシリーズについては、2個の水可溶化基の導入によって、化合物を水性媒体に対して可溶化した。これらの基は、アニオン性(スルホナート)または中性(双性イオン:スルホベタイン)またはカチオン性(第四級アンモニウム)である。
【0087】
【化25】
【0088】
最後に、Boc基をトリフルオロ酢酸の存在下で取り除き、それにより、NHで官能化された本発明の錯体(66)を得た。
【0089】
4)ツーアンテナ錯体の合成
ツーアンテナ錯体の合成をスキーム17〜20に記載する。
【0090】
【化26】
【0091】
合成は、3種類の発色団:カルボキシラート、ホスフィン酸メチルおよびホスフィン酸フェニルを用いたモノ保護TACNのアルキル化反応から始めた。保護基Bocを除去し、発色団と同一であるZを有する対応するピリジンを最後のTACNアルキル化部位に導入して、化合物67a〜afを得た。
【0092】
【化27】
【0093】
リガンドを加水分解し、ユウロピウム原子を大環状分子に導入して、68シリーズを得た。
【0094】
【化28】
【0095】
次いで、水可溶化基(E〜E)を両方の発色団に導入した(スキーム19)。それらは、アニオン性、中性またはカチオン性である。
【0096】
【化29】
【0097】
最後に、その後、Bocまたはtert−ブチルエステル基をトリフルオロ酢酸の存在下で除去して、化合物70a〜afを得た(スキーム20)。
【0098】
実験の部
使用した略語:
AcOEt:酢酸エチル
AcOH:酢酸
Boc:tert−ブチルオキシカルボニル
TLC:薄層クロマトグラフィー
CDCl:重水素化クロロホルム
CHCl:クロロホルム
CsCO:炭酸セシウム
CuI:ヨウ化銅(I)
CHCl/DCM:ジクロロメタン
DIAD:アゾジカルボン酸ジイソプロピル
DIPEA:ジイソプロピルエチルアミン
DMF:ジメチルホルムアミド
DMSO:ジメチルスルホキシド
Et:エチル
EtN/TEA:トリエチルアミン
ESI+:ポジティブモードのエレクトロスプレーイオン化
EtOH:エタノール
D:日
HATU:(O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート)
O:水
SO:硫酸
HNO:硝酸
HPLC:高速液体クロマトグラフィー
LC−MS:質量分析に連結した高速液体クロマトグラフィー
LiOH/Lithine:水酸化リチウム
LnCl:塩化ランタニド
m−CPBA:メタクロロ過安息香酸
Me:メチル
MeCN:アセトニトリル
MeOH:メタノール
MgSO:硫酸マグネシウム
Ms:メシル
MsCl:塩化メシル
NaCl:塩化ナトリウム
NaH:水素化ナトリウム
Pd(dppf)Cl:ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)
Pd(PPh:テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)
Pd/C:チャコール担持パラジウム
Pd(OAc):酢酸パラジウム(II)
Ph:フェニル
PPh:トリフェニルホスフィン
PtF:融点
Py:ピリジン
Rf:溶媒先端
Rt:保持時間
RT:室温
tBu:tert−ブチル
TEA:トリエチルアミン
TFA:トリフルオロ酢酸
THF:テトラヒドロフラン
TMS:トリメチルシリル
Ts:トシル
TSTU:O−(N−スクシンイミジル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート
UPLC−MS:質量分析に連結した超高速液体クロマトグラフィー
Xphos:2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,4’,6’−トリイソプロピルビフェニル
【0099】
クロマトグラフィー
アルミニウム箔上のMerck製60F254シリカゲルプレートまたはアルミニウム箔上のMerck製60F254中性酸化アルミニウムプレート(タイプE)で薄層クロマトグラフィーを行った。
【0100】
分析および分取高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を以下の2台の装置で行った。
・分析HPLC:ThermoScientific社、クォータナリーポンプP4000、重水素ランプ(190〜350nm)を備えたUV1000検出器、Waters製XBridgeC18分析カラム(3.5μm、4.6×100mm)
・分取HPLC:Shimadzu社、2台のLC−8Aポンプ、Varian製ProStarUVダイオードアレイ検出器、Waters製XBridgeC18分取カラム(5μm:19×100mmまたは50×150mm)
【0101】
検出器としてPDA型のUVダイオードストリップ検出器またはSQD2型のシンプル四重極質量検出器を備えたWaters製Acquity HClass装置で分析超高速液体クロマトグラフィー(UPLC)を行った。使用されたプローブは、ポジティブモードのエレクトロスプレー(キャピラリー電圧3.2kV、コーン電圧30V)である。
【0102】
Merck製60シリカゲル(0.040〜0.063mm)でシリカカラムクロマトグラフィーを行った。Sigma−Aldrich製中性活性型酸化アルミニウムBrochmannIでアルミナカラムクロマトグラフィーを行った。
【0103】
グラジエントA
Waters製AcquityC18カラム、300Å、1.7μm、2.1×50mm−A/水0.1%ギ酸B/アセトニトリル0.1%ギ酸t=0分5%B−t=0.2分5%B−t=5分100%B−0.6mL/分
グラジエントB
Waters製XbridgeC18カラム、5μm、50×150mm−A/水25mM TEAAc pH7B/アセトニトリルt=0分10%B−t=19分60%B−100mL/分
グラジエントC
Waters製AcquityC18カラム、300Å、1.7μm、2.1×50mm−A/水5mM酢酸アンモニウムB/アセトニトリルt=0分5%B−t=0.2分5%B−t=5分100%B−0.6mL/分
グラジエントD
Waters製XbridgeC18、5μm、20×100mm−A/水25mM TEAAc pH7B/アセトニトリルt=0分5%B−t=19分60%B−20mL/分
グラジエントE
Waters製XbridgeC18、5μm、20×100mm−A/水25mM TEAAc pH7B/アセトニトリルt=0分2%B−t=19分40%B−20mL/分
グラジエントF
Waters製XbridgeC18、5μm、20×100mm−A/水25mM TEAAc pH6B/アセトニトリルt=0分2%B−t=19分40%B−20mL/分
【0104】
分光測定
・核磁気共鳴
NMRスペクトル(H、13Cおよび31P)は、直径5mmの多核種BBFO測定プローブ(ZグラジエントおよびHロック)を備えたBruker製Avance400MHzNanoBay分光計(9.4テスラ磁石)を使用して行われた。化学シフト(δ)は百万分率(ppm)で表す。以下の略語を使用する。
s:一重線、bs:ブロードな一重線、d:二重線、t:三重線、q:四重線、m:多重線、dd:二重線の二重線、td:二重線の三重線、qd:二重線の四重線、ddd:二重線の二重線の二重線。
・質量分析(LRMS)
質量スペクトル(LC−MS)は、Waters製XBridgeC183.5μm4.6×100mmカラムを備えたマルチモードESI/APCIソースを有するシングル四重極型Waters製ZQ2000分光計またはSQD2型のシングル四重極質量分析計を使用して行った。
・高分解能質量分析(HRMS)
気流支援大気圧イオン化(API)源を備えたQStar Elite質量分析計(Applied Biosystems SCIEX)を用いて分析を行った。試料をポジティブエレクトロスプレーモードにて以下の条件下でイオン化した:エレクトロスプレー電圧(ISV):5500V;オリフィス電圧(OR):20V;ネブライザーガス圧(空気):20psi。飛行時間分析機器(TOF)を用いて高分解能質量スペクトル(HRMS)を得た。正確な質量測定は、二重内部較正を用いて3連で行った。
【実施例】
【0105】
化合物1:国際公開第2013/011236号および国際公開第2014/111661号に記載された手順に従って、化合物1を調製した。
【0106】
化合物14a〜14c:国際公開第2013/011236号および国際公開第2014/111661号に記載された手順に従って、化合物14a〜14cを調製した。
【0107】
化合物15a:100mLのシュレンクフラスコ中で、化合物14a(440mg、1.5mmol)を無水DMF(10mL)に可溶化して、無色溶液を得た。反応混合物に、トリ(o−トリル)ホスフィン(91mg、0.3mmol)、Pd(OAc)(33.7mg、0.15mmol)、TEA(0.314ml、2.252mmol)およびアクリル酸メチル(0.203mL、2.252mmol)を一度に添加した。反応液を70℃で5時間撹拌した。反応の進行をUPLC−MS(グラジエントA)でモニターした。この後、反応は完了した。反応混合物を減圧下で濃縮し、AcOEt(50mL)中に希釈し、水(2×50mL)、次いで飽和NaCl水溶液(50mL)で洗浄した。有機相をMgSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。100/0から99/1へのDCM/MeOH溶媒グラジエントを使用したシリカカラムクロマトグラフィーにより粗生成物を精製して、白色粉末の形態で化合物15a(233mg、62%)を得た。
Pf=156.4〜156.9℃−HPLCグラジエントA−Rt=2.03分−[M+H]、m/z251.9−Rf=0.41(シリカ、ジクロロメタン−メタノール96:4−HRMS(ESI+)C1214NO[M+H]の計算値、m/z252.0866、実測値:252.0868−H NMR(400MHz,CDCl)δ:8.13(s,1H,Py H)、7.67(d,J=16.2Hz,1H)、7.65(s,1H,Py H)、7.19(dd,J=;16.2Hz,2H,HC=CH)、6.71(d,J=16.2Hz,1H)、4.91(s,2H,C−OH)、4.04(s,3H,Py−COOMe)、3.85(s,3H,COOMe)、3.49(s l,1H,OH);13C NMR(100MHz,CDCl)δ:166.20(COOMe)、165.24(Py−COOMe)、161.59(Py C)、147.97(Py−=C)、143.74(Py C)、140.92(Py C)、123.77(Py C)、122.08(Py C)、121.86(Py−C=)、64.68(CH−OH)、53.10(Py−CO)、52.19(CO)。
【0108】
化合物15b〜15f:15aの合成に使用された手順と同じ手順に従って対応するアルケンを使用して、これらの化合物を調製した。
【0109】
化合物16a:50mLのフラスコ中で、化合物15a(233mg、0.927mmol)をMeOH(10mL)に可溶化して、無色溶液を得た。反応混合物に10%Pd/C(23.69mg、0.022mmol)を一度に添加した。二水素をバブリングしながら、反応液を室温で2時間撹拌した。反応の進行をUPLC−MS(グラジエントA)でモニターした。この後、反応は完了した。反応混合物を22μmのナイロンフィルターに通して濾過し、蒸発乾固して、白色粉末の形態で化合物16a(231mg、98%)を得た。Pf=133.2〜136.4℃−HPLCグラジエントA−Rt=1.86分−[M+H]、m/z253.2−HRMS(ESI+)C1216NO[M+H]の計算値、m/z254.1023、実測値:254.1024−H NMR(400MHz,CDCl)δ:7.9(s,1H,Py H)、7.41(s,1H,Py H)、4.85(s,2H,C−OH)、4.01(s,3H,Py−COOMe)、3.69(s,3H,COOMe)、3.05(t,J=7.6Hz,2H,Py−CH−CH)、2.71(t,J=7.6Hz,2H,Py−CHCH);13C NMR(100MHz,CDCl)δ:172.41(COOMe)、165.65(Py−COOMe)、160.49(Py C)、151.67(Py C)、147.22(Py C)、140.92(Py C)、123.96(Py C)、123.9(Py C)、64.62(CH−OH)、52.91(Py−CO)、51.91(CO)、33.97(Py−CHCH)、30.07(Py−CH−CH)。
【0110】
化合物16b〜16f:16aの合成に使用された手順と同じ手順に従って、これらの化合物を調製した。
【0111】
化合物17a:100mLのフラスコ中で、化合物16a(231mg、0.912mmol)を無水THF(30mL)に可溶化して、無色溶液を得た。反応混合物を氷浴に入れ、TEA(0.127mL、0.912mmol)およびMsCl(72μL、0.912mmol)を一度に添加した。混合物を室温に温め、15分間撹拌した。反応の進行をUPLC−MS(グラジエントA)でモニターした。この後、反応は完了した。反応混合物を減圧下で濃縮し、DCM(50mL)中に希釈し、水(2×25mL)、次いで飽和NaCl水溶液(20mL)で洗浄した。有機相をMgSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、白色粉末の形態で化合物17a(249mg、82%)を得た。HPLCグラジエントA−Rt=3.2分−[M+H]、m/z332.3−Rf=0.23(シリカ、ジクロロメタン−メタノール98:2−HRMS(ESI+)C1318NO[M+H]の計算値、m/z332.0799、実測値:332.0799−H NMR(400MHz,CDCl)δ:7.98(s,1H,Py H)、7.54(s,1H,Py H)、5.41(s,2H,C−OMs)、4.00(s,3H,Py−COOMe)、3.69(s,3H,COOMe)、3.16(s,3H,OMs)、3.07(t,J=7.5Hz,2H,Py−CH−CH)、2.72(t,J=7.5Hz,2H,Py−CHCH);13C NMR(100MHz,CDCl)δ:172.23(COOMe)、165.27(Py−COOMe)、154.56(Py C)、152.46(Py C)、147.93(Py C)、125.19(Py C)、125.03(Py C)、70.97(CH−OMs)、53.08(Py−CO)、51.94(CO)、38.05(CH−OSOCH)、33.87(Py−CHCH)、30.07(Py−CH−CH)。
【0112】
化合物17b〜17f:16aの合成に使用された手順と同じ手順に従って、これらの化合物を調製した。
【0113】
化合物18a〜18f:17aの合成に使用された手順と同じ手順に従って、これらの化合物を調製した。
【0114】
化合物19a〜19f:15aの合成に使用された手順と同じ手順に従って、これらの化合物を調製した。
【0115】
化合物20a〜20f:16aの合成に使用された手順と同じ手順に従って、これらの化合物を調製した。
【0116】
化合物21a〜21f:17aの合成に使用された手順と同じ手順に従って、これらの化合物を調製した。
【0117】
化合物22a〜22f:17aの合成に使用された手順と同じ手順に従って、これらの化合物を調製した。
【0118】
化合物23a〜23f:15aの合成の合成に使用された手順と同じ手順に従って対応するアルケンを使用して、これらの化合物を調製した。
【0119】
化合物24a〜24f:16aの合成に使用された手順と同じ手順に従って、これらの化合物を調製した。
【0120】
化合物25a〜25f:17aの合成に使用された手順と同じ手順に従って、これらの化合物を調製した。
【0121】
化合物26a〜26f:17aの合成に使用された手順と同じ手順に従って、これらの化合物を調製した。
【0122】
化合物27a〜c:Tetrahedron Letters、2010年、51巻、4445頁の論文に記載された手順に従って、化合物27a〜cを調製した。
【0123】
化合物28a〜28c:17aの合成に使用された手順と同じ手順に従って、これらの化合物を調製した。
【0124】
化合物29:この化合物は市販品である。
【0125】
化合物30:Dalton Transactions、2010年、39巻、707頁の論文に記載された手順に従って、化合物30を調製した。
【0126】
化合物31a〜31c:Organic Biomolecular Chemistry、2012年、10巻、9183頁の論文に記載された手順に従って、化合物31a〜31cを調製した。
【0127】
化合物32a〜32c:Journal of Organic Chemistry、2010年、75巻、7175頁の論文に記載された手順に従って、化合物32a〜32cを調製した。
【0128】
化合物33a〜33c:Journal of Organic Chemistry、2010年、75巻、7175頁の論文に記載された手順に従って、化合物33a〜33cを調製した。
【0129】
化合物34:この化合物は市販品である。
【0130】
化合物35:Bioorganic Chemistry、2014年、57巻、148頁の論文に記載された手順に従って、化合物35を調製した。
【0131】
化合物36:Carbohydrate Research、2013年、372巻、35頁の論文に記載された手順に従って、化合物36を調製した。
【0132】
化合物37:国際公開第2014/111661号に記載された手順に従って、化合物37を調製した。
【0133】
化合物38:17aの合成に使用された手順と同じ手順に従って、この化合物を調製した。
【0134】
化合物39:この化合物は市販品である。
【0135】
化合物40:Bioorganic Chemistry、2014年、57巻、148頁の論文に記載された手順に従って、化合物40を調製した。
【0136】
化合物41a〜b:国際公開第2014/111661号に記載された手順に従って対応する触媒を使用して、化合物41a〜bを調製した。
【0137】
化合物42a〜b:36の合成に使用された手順と同じ手順に従って、化合物42a〜bを調製した。
【0138】
化合物43a〜b:37の合成に使用された手順と同じ手順に従って、化合物43a〜bを調製した。
【0139】
化合物44a〜b:17aの合成に使用された手順と同じ手順に従って、化合物44a〜bを調製した。
【0140】
化合物45:市販品。
【0141】
化合物46:Chemistry−A European Journal、2014年、20巻、3610頁の論文に記載された手順に従って、化合物46を調製した。
【0142】
化合物47:化合物46(0.313g、2.04mmol)をHSO(11mL)に室温で溶解し、次いで溶液を氷浴中で冷却した。この混合物にHNO(9.7mL)を滴下し、溶液を100℃に2日間加熱した。混合物を室温に冷却し、次いで砕氷(100g)に注ぎ込んだ。1時間後、水相をCHCl(3×50mL)で抽出し、有機相を1つにまとめ、MgSOで乾燥させ、溶媒混合物(CHCl−AcOH、98/2)を使用したシリカカラムクロマトグラフィーにより粗生成物を精製して、白色固体(224mg、56%)を得た。R(CHCl/AcOH,98/2)=0.38;PtF:147℃;H NMR(400MHz,CDCl,δ):16.49(s,1H,COO)、9.08(s,1H,H)、8.36(s,1H,H)、2.75(s,3H,py−CH);13C NMR(101MHz,CDCl,δ):159.4(COOH)、152.4(C)、144.4(C)、138.7(C)、123.1(C)、121.7(C)、18.4(py−CH);MS Cの計算値199.036。実測値199.035[M+H]
【0143】
化合物48:化合物47(2.9、14.7mmol)を無水MeOH(3mL)に室温で溶解した。この溶液にHSO(200μL)を滴下し、溶液を65℃に3日間加熱した。溶液を室温に冷却し、溶媒を減圧下で除去した。HO(30mL)を残渣に添加し、溶液をAcOEt(3×20mL)で抽出した。有機相を1つにまとめ、5%炭酸水素ナトリウム溶液(2×20mL)、次いで飽和食塩水溶液(20mL)で洗浄した。MgSOで乾燥させた後、溶媒を濾過し、減圧下で除去して、化合物48を得た。その化合物をさらに精製することなくその後の合成に使用した(57mg、76%)。H NMR(400MHz,CDCl,δ):8.33(d,1H,J 3.1,H)、8.19(d,1H,J 3.1,H)、4.02(s,3H,CCO)、2.57(s,3H,py−CH);13C NMR(100MHz,CDCl,δ):160.8(COOMe)、152.7(C)、142.1(C)、140.5(C)、121.4(C)、119.3(C)、53.8(OCH)、18.3(py−CH);MS C計算値213.051。実測値213.050[M+H]
【0144】
化合物49:無水トリフルオロ酢酸(1.48mL、10mL)を室温で化合物48(114mg、0.54mmol)のCHCl(10mL)溶液に添加した。混合物を不活性雰囲気中で60℃に5時間加熱した。この後、反応液を室温に冷却し、溶媒を減圧下で除去した。この黄色油状物に、EtOH(3mL)およびHO(3mL)を添加し、溶液を室温で2時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、水相をCHCl(3×30mL)で抽出した。有機相を1つにまとめ、MgSOで乾燥させ、減圧下で蒸発させた。70/30から50/50へのヘキサン/AcOEt溶媒のグラジエントを使用したシリカカラムクロマトグラフィーにより残渣を精製して、化合物49(74mg、65%)を得た。R(CHCl/MeOH,95/5)=0.67;H NMR(400MHz,CDCl,δ):8.68(d,1H,J 2.1,H)、8.37(d,1H,J 2.1,H)、5.06(s,2H,CHOH)、4.06(s,3H,CCO);13C NMR(100MHz,CDCl,δ):164.3(COOMe)、163.6(C)、155.3(C)、149.7(C)、116.4(C)、116.3(C)、64.5(CHOH)、29.5(COCH)。
【0145】
化合物50a:NaH(17mg、0.708mmol)およびチオグリコール酸エチル(35μL、0.320mmol)を不活性雰囲気下、室温で化合物49(21.6mg、0.102mmol)の無水DMF(1mL)溶液に添加した。混合物を不活性雰囲気中、室温で2時間撹拌した。次いで、溶媒を減圧下で除去し、この黄色油状物にMeOH(5mL)およびHSO(200μL)を添加した。溶液をアルゴン下で65℃に72時間加熱した。溶媒を減圧下で除去し、残渣にHO(10mL)を添加し、水溶液をAcOEt(3×20mL)で抽出した。有機相を1つにまとめ、MgSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。溶離液としてCHCl−MeOH(98/2)を使用したシリカカラムクロマトグラフィーにより残渣を精製して、化合物50a(8.2mg、25%)を得た。R(DCM/MeOH,95/5)=0.35;H NMR(400MHz,CDCl,δ):7.88(d,1H,J 1.9,H)、7.63(d,1H,J 1.9,H)、4.69(s,2H,COH)、4.02(s,2H,S)、3.96(s,3H,CHCO)、3.76(s,3H,CHCO);13C NMR(100MHz,CDCl,δ):170.7(COOMe)、166.4(COOMe)、163.3(C)、152.3(C)、147.8(C)、121.2(C)、121.1(C)、65.1(CHOH)、53.3(CO)、48.5(CO)、33.6(S)。
【0146】
化合物50b:50aの合成に使用された手順と同じ手順に従って、化合物50bを調製した。
【0147】
化合物51a:トリエチルアミン(12.5μL、0.09mmol)およびMsCl(3.5μL、0.045mmol)を化合物50a(8.2mg、0.03mmol)の無水THF(2mL)溶液に添加した。この溶液を室温で3.5時間撹拌した。この後、溶媒を減圧下で除去し、残渣をCHCl(20mL)に溶解した。有機相をHO(3×10mL)で洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧下で除去して、化合物51aを定量的に得た。R(DCM/MeOH,95/5)=0.8;H NMR(400MHz,CDCl,δ):7.95(d,1H,J 1.5,H)、7.52(d,1H,J 1.5,H)、5.35(s,2H,COMs)、3.98(s,2H,CHS)、3.82(s,2H,COCH)、3.77(s,2H,COCH)、3.14(s,3H,SCH)。
【0148】
化合物51b:51aの合成に使用された手順と同じ手順に従って、化合物51bを調製した。
【0149】
化合物52a〜b:それぞれ14bおよび14cの合成に使用された手順と同じ手順に従って、化合物52a〜bを調製した。
【0150】
化合物53a〜b:46の合成に使用された手順と同じ手順に従って、化合物53a〜bを調製した。
【0151】
化合物54a〜b:49の合成に使用された手順と同じ手順に従って、化合物54a〜bを調製した。
【0152】
化合物55a〜d:50aの合成に使用された手順と同じ手順に従って、化合物55a〜dを調製した。
【0153】
化合物56a〜d:51aの合成に使用された手順と同じ手順に従って、化合物56a〜dを調製した。
【0154】
化合物57a:57bの合成に使用された手順と同じ手順に従ってピリジン14aを使用して、化合物57aを調製した。
【0155】
化合物57b:無水THF(1mL)を臭素化誘導体14b(103mg、0.35mmol)に添加し、溶液を3回の凍結融解サイクルにより脱気した。この溶液に、アセチレン誘導体(80mg、0.42mmol)およびTEA(0.24mL、1.75mmol)を添加し、溶液を再度脱気した。この溶液に、Pd(dppf)Cl(30mg、0.035mmol)およびCuI(7mg、0.035mmol)を添加した。この新しい溶液を再度3回脱気し、次いで不活性雰囲気中、65℃で撹拌した。反応の進行をTLCでモニターした。18時間後、反応は完了した。反応混合物を室温に冷却し、溶媒を減圧下で除去した。シリカカラムクロマトグラフィー(0.1%ずつ増加させて0から3%DCM/MeOH)により粗生成物を精製して、化合物57bに対応する黄色油状物(122mg、87%)を得た。H NMR(400MHz,CDCl)δ:7.98(s l,1H)、7.50(s l,1H)、7.45(d,J=8.9Hz,2H)、6.88(d,J=8.9Hz,2H)、4.80(s,2H)、4.65(s,2H)、4.09(m,1H)、3.99(s l,1H)、3.86(m,1H)、3.79(s,3H)、1.76(d,J=14.9Hz,3H)、1.26(t,J=6.9Hz,3H);13C NMR(100MHz,CDCl)δ:168.9;161.0(d,J=19Hz)、158.8;153.3(d,J=155Hz)、133.8;132.9(d,J=12Hz)、128.1(d,J=22Hz)、124.2;115.1;115.0;95.7;85.6;65.2;64.3;61.3(d,J=5Hz)、52.5;16.5(d,J=4Hz)、13.5(d,J=104Hz);31P NMR(162MHz,CDCl)δ:+39.5.HRMS(ESI+)C2022NNaOP[M+Na]の計算値、m/z426.1082 実測値:426.1063。R=0.44(シリカ;DCM−MeOH90:10)。
【0156】
化合物57c:57bの合成に使用された手順と同じ手順に従ってピリジン14cを使用して、化合物57cを調製した。
【0157】
化合物59a:無水THF(20mL)とTEA(20mL)の混合物中にアセチレン誘導体(0.864g、3.1mmol)およびヨウ素誘導体14a(0.735g、2.5mmol)を加えた溶液を撹拌下、20分間脱気した。この溶液に、パラジウム(II)ビスクロリドビストリフェニルホスフィン(22mg、0.031mmol)およびCuI(12mg、0.063mmol)を添加した。反応液を室温で12時間撹拌した。反応の進行をTLCでモニターした。この後、反応は完了した。溶媒を減圧下で除去した。残渣に飽和塩化アンモニウム溶液(50mL)を添加し、混合物をDCM(2×25mL)で抽出した。有機相を1つにまとめ、飽和塩化アンモニウム溶液(50mL)、次いで飽和NaCl溶液(2×50mL)で洗浄し、次いでMgSOで乾燥させた。濾過後、溶媒を減圧下で除去し、残渣をシリカカラムクロマトグラフィー(98/2のDCM/MeOH)により精製して、白色固体として化合物59a(0.91g、82%)を得た。PtF:143〜144℃。H NMR(500MHz,CDCl)δ:8.04(s,1H)、7.58(s,1H)、7.45(d,J=8.7Hz,2H)、6.86(d,J=8.7Hz,2H)、4.83(d,J=5.4Hz,2H)、4.75(s,1H)、4.01(t,J=6.1Hz,2H)、3.97(s,3H)、3.31(td,J=6.1;6.1Hz,2H)、1.96(m,J=6.1Hz,2H)、1.41(s,9H)。13C NMR(125MHz,CDCl)δ:165.4;160.8;160.1;156.2;147.3;134.1;133.8;125.8;125.4;114.9;113.9;95.9;85.4;66.1;64.8;53.2;38.1;29.7;28.6.HRMS(ESI+)C2428[M+H]の計算値、m/z441.2020、実測値:441.2021。R=0.32(シリカ,DCM−MeOH96:4)。
【0158】
化合物59b:無水THF(10mL)を臭素化誘導体14b(200mg、0.68mmol)に添加し、溶液を3回の凍結融解サイクルにより脱気した。この溶液に、アセチレン誘導体(260mg、0.75mmol)およびTEA(5mL)を添加し、溶液を再度脱気した。この溶液に、Pd(PPh(79mg、0.068mmol)およびCuI(13mg、0.068mmol)を添加した。この新しい溶液を再度3回脱気し、次いで不活性雰囲気中、65℃で撹拌した。反応の進行をTLCでモニターした。1時間後、反応は完了した。反応混合物を室温に冷却し、溶媒を減圧下で除去した。残渣をDCM(25mL)中に希釈し、飽和塩化アンモニウム水溶液(25mL)、次いで水(25mL)で洗浄した。有機相をMgSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、残渣を得た。シリカカラムクロマトグラフィー(1%ずつ増加させて0から5%DCM/MeOH)によりその残渣を精製して、化合物59bに対応する黄色油状物(220mg、66%)を得た。HRMS(ESI+)C2534P[M+H]の計算値、m/z489.2149、実測値:489.2152。Rf=0.35(シリカ、DCM−MeOH、95:5)。
【0159】
化合物59c:無水THF(10mL)を臭素化誘導体14c(142mg、0.4mmol)に添加し、溶液を3回の凍結融解サイクルにより脱気した。この溶液に、アセチレン誘導体(147mg、0.4mmol)およびTEA(5mL)を添加し、溶液を再度脱気した。この溶液に、Pd(PPh(46mg、0.04mmol)およびCuI(7.6mg、0.04mmol)を添加した。この新しい溶液を再度3回脱気し、次いで不活性雰囲気中、65℃で撹拌した。反応の進行をTLCでモニターした。1時間後、反応は完了した。反応混合物を室温に冷却し、溶媒を減圧下で除去した。残渣をDCM(25mL)中に希釈し、飽和塩化アンモニウム水溶液(25mL)、次いで水(25mL)で洗浄した。有機相をMgSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、残渣を得た。シリカカラムクロマトグラフィー(0.5%ずつ増加させて0から3%DCM/MeOH)によりその残渣を精製して、化合物59cに対応する黄色油状物(154mg、70%)を得た。H NMR(400MHz,CDCl)δ:8.01(dd,J=6.4;2.0Hz,1H)、7.89(dd,J=8.4;12.4Hz,2H)、7.48(t,J=8.4Hz,1H)、7.40(d,J=8.8Hz,2H)、7.39(td,J=8.4;4.2Hz,2H)、7.33(d,J=2.0Hz,1H)、6.81(d,J=8.8Hz,2H)、4.73(s,1H)、4.69(s,2H)、4.08(qd,J=5.6;4.8Hz,2H)、3.97(t,J=6Hz,2H)、3.26(m,2H)、1.92(q,J=6Hz,2H)、1.37(s,9H,1.31(t,J=5.6Hz,3H);13C NMR(100MHz,CDCl)δ:160.3(d,J=18Hz)、159.8;156.0;153.2(d,J=164Hz);133.7;133.0(d,J=11Hz);132.6(d,J=5Hz);132.3(d,J=10Hz);129.6(d,J=138Hz);128.6(d,J=18Hz);128.5(d,J=9Hz);123.8(d,J=3Hz);114.7;113.8;96.0;85.3(d,J=2Hz);79.3;65.9;63.8;61.9(d,J=6Hz);37.9;29.5;28.4;16.6;31P NMR(162MHz,CDCl)δ:+25.6.HRMS(ESI+)C3036P[M+H]の計算値、m/z551.2306 実測値:551.2305。Rf=0.24(シリカ,DCM−MeOH,95:5)。
【0160】
化合物60a:アルコール59a(195mg、0.44mmol)の無水THF(7mL)溶液にTEA(0.2mL、148μmol)を不活性雰囲気下で滴下した。4℃に冷却したこの混合物にMsCl(67μL、0.84mmol)を滴下した。反応の進行をTLCでモニターした。5分後、反応は完了した。溶媒を減圧下で除去した。残渣をDCM(10mL)に溶解し、この溶液を水(2×10mL)で洗浄した。有機相をMgSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、黄緑色油状物(240mg、定量的)を得た。生成物60aは、さらに精製することなくその後の合成に使用するのに十分な程度に純粋であった。LRMS(ESI+):C2531S[M+H]の計算値、m/z519.1801、実測値:519.13。Rf=0.6(シリカ、DCM−MeOH 96:4)。
【0161】
化合物60b〜c:60aの合成に使用された手順と同じ手順に従って、化合物60b〜cを調製した。
【0162】
化合物61a〜c:61dの合成に使用された手順と同じ手順に従って、化合物61a〜cを調製した。
【0163】
化合物61d:化合物1(81mg、0.353mmol)の無水THF(10mL)溶液に、無水MeCN(10mL)中に溶解した化合物17a(234mg、0.706mmol)と炭酸カリウム(195mg、1.413mmol)とを一度に添加した。反応液を60℃で終夜撹拌した。反応の進行をUPLC−MS(グラジエントA)でモニターした。この後、反応は完了した。反応混合物を減圧下で濃縮し、DCM(50mL)中に希釈し、水(25mL×2)、次いで飽和NaCl水溶液(25mL)で洗浄した。有機相をMgSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。96/4から90/10へのDCM/MeOH溶媒グラジエントを使用したシリカカラムクロマトグラフィーにより粗生成物を精製して、白色粉末の形態で化合物61d(67mg、27%)を得た。
HPLCグラジエントA−Rt=2.91分−[M+H]、m/z700.54−HRMS(ESI+)C355010[M+H]の計算値、m/z700.3552、実測値:700.3560−H NMR(400MHz,CDCl)δ:7.85(s,2H)、7.69(s,1H)、7.57(s,1H)、4.00(s,3H,Py−COOMe)、3.97(s,10H)、3,(s,3H,OMs)、3.66(s,6H)、3(m,20H)、1.45(s,9H);13C NMR(100MHz,CDCl)δ:172.48;172.39;165.90;161.48;155.68;151.13;147.55;147.43;126.27;123.70;79.29;63.56;63.40;57.15;54.84;54.66;54.35;52.88;51.84;51.80;50.09;49.50;34.07;33.93;30.11;30.06;29.68;28.56。
【0164】
化合物61e〜s:61dの合成に使用された手順と同じ手順に従って、化合物61e〜sを調製した。
【0165】
化合物62a〜c:62dの合成に使用された手順と同じ手順に従って、化合物62a〜cを調製した。
【0166】
化合物62d:25mLのフラスコ中で、化合物61d(67mg、0.096mmol)をDCM(500μL)に可溶化して、無色溶液を得た。反応混合物にTFA(500μL、6.53mmol)を一度に添加した。反応液を室温で30分間撹拌した。反応の進行をUPLC−MS(グラジエントA)でモニターした。この後、反応は完了した。反応混合物を減圧下で濃縮して、白色粉末(57mg)を得た。その白色粉末をその後の手順において使用した。100mLのフラスコ中で、化合物60a(76mg、0.147mmol)と、2バッチをまとめたものから事前に得られた白色粉末(87.4mg、0.122mmol)とを無水MeCN(30mL)に可溶化して、無色溶液を得た。反応混合物に炭酸カリウム(16.92mg、0.122mmol)を一度に添加した。反応液を65℃で終夜撹拌した。反応の進行をUPLC−MS(グラジエントA)でモニターし、この後、反応は完了した。反応混合物を減圧下で濃縮し、DCM(50mL)中に希釈し、水(2×40mL)で洗浄した。有機相をMgSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、白色粉末の形態で化合物62d(10.8mg、10.6μmol、9%)を得た。HPLCグラジエントA−Rt=2.91分−[M+H]、m/z1022.65−HRMS(ESI+)C546713Ag[M+Ag]の計算値、m/z1128.3842、実測値:1128.3843。
【0167】
化合物62e〜s:62dの合成に使用された手順と同じ手順に従って、化合物62e〜sを調製した。
【0168】
化合物64a〜c:64dの合成に使用された手順と同じ手順に従って、化合物64a〜cを調製した。
【0169】
化合物64d:50mLのフラスコ中で、化合物62d(10.8mg、10.57μmol)を水(4mL)に可溶化して、無色懸濁液を得た。反応混合物にLiOH(1.291mg、0.053mmol)を一度に添加した。反応液を室温で1時間撹拌した。反応の進行をUPLC−MS(グラジエントA)でモニターした。この後、脱保護は完了した。反応混合物のpHを1M HClで7に調整した。反応混合物(化合物63d)に塩化ユウロピウム6水和物(5.81mg、15.85μmol)を一度に添加した。反応液を室温で1時間撹拌し、この後、反応は完了した。反応混合物を分取HPLC(グラジエントB)により直接精製し、白色粉末の形態で化合物64d(6.32mg、5.74μmol、54%)を得た。HPLCグラジエントA−Rt=2.62分−[M−2H]、m/z1102.62−HRMS(ESI+)C4955EuNO13[M−2H]の計算値、m/z1100.3051、実測値:1100.3064。
【0170】
化合物64e〜s:64dの合成に使用された手順と同じ手順に従って、化合物64e〜sを調製した。
【0171】
錯体65d−E:25mLのフラスコ中で、化合物64d(6.32mg、5.74μmol)を無水DMSO(1mL)に可溶化して、無色溶液を得た。反応混合物に、3−アミノ−1−プロパンスルホン酸(3.29mg、22.96μmol)、DIPEA(4μL、23μmol)およびHATU(6.75mg、17.2μmol)を一度に添加した。反応液を室温で15分間撹拌した。反応の進行をUPLC−MS(グラジエントC)でモニターし、この後、反応は完了した。反応混合物を分取HPLC(グラジエントD)により直接精製し、白色粉末の形態で可溶性錯体65d−E(5.87mg、4.37μmol、76%)を得た。HPLCグラジエントC−Rt=2.19分−[M−2H]、m/z1345.26−HRMS(ESI+)C5570EuN172+[M−H]2+の計算値、m/z672.6768、実測値:672.6769。
【0172】
錯体66d−E:25mLのフラスコ中で、錯体65d−E(5.64mg、4.2μmol)をTFA(200μL)に可溶化して、黄色溶液を得た。反応液を室温で30分間撹拌した。反応の進行をUPLC−MS(グラジエントC)でモニターした。この後、脱保護は完了した。反応混合物を減圧下で濃縮し、分取HPLC(グラジエントE)により精製し、白色粉末の形態で錯体66d−E(2.16μmol、51%)を得た。HPLCグラジエントC−Rt=1.36分−[M−2H]、m/z1243.45−HRMS(ESI+)C5062EuN152+[M−H]2+の計算値、m/z622.6506、実測値:622.6503。
【0173】
錯体66d−E2のUVスペクトル、クロマトグラムおよび質量スペクトルをそれぞれ図1〜3に示す。
【0174】
錯体66d−E2と、国際公開第2014/111661号の記載に従って合成され、その構造が以下に示されたスリーアンテナ錯体(TACN−Phos−トリアンテナおよびTACN−Carbo−トリアンテナ)の光物理的特性を決定した。
【0175】
【化30】
【0176】
下記表からわかるように、錯体66d−E2の輝度は、3個のアンテナを有するTACN−Phos−トリアンテナおよびTACN−Carbo−トリアンテナ錯体の輝度より低い。
【0177】
【表1】
【0178】
以下のプロトコルに従って、66d−E2およびTACN−Phos−トリアンテナ錯体の効率も試験した。当業者に公知の通常の方法を使用して、各錯体をNHSエステル(N−ヒドロキシスクシンイミド)として官能化した。66d−E2−NHS錯体またはTACN−Phosトリアンテナ−NHS錯体を使用して、1バッチの抗グルタチオンS−トランスフェラーゼ(抗GST)抗体を標識した。TACN−Phosトリアンテナ錯体(抗GST−TACN−Phos−トリアンテナ)および錯体66d−E2(抗GST−66d−E2)の両方とも、平均の抗体結合錯体数は7である。
【0179】
ユウロピウム錯体66d−E2で標識された抗GST抗体(抗GST−66d−E2)またはユウロピウムTACN−Phos−トリアンテナ錯体で標識された抗GST抗体(抗GST−TACN Phos−トリアンテナ)を時間分解蛍光に基づくイムノアッセイ(図4に示す)において使用して、グルタチオンS−トランスフェラーゼ−ビオチン(GST−ビオチン)タンパク質を検出した。384ウェルプレート中で所定濃度の抗GST−66d−E2または抗GST−TACN Phos−トリアンテナおよび5nmのストレプトアビジン−d2(Cisbio Bioassays社製品番号610SADLB)の存在下、BSAを含むリン酸緩衝液中に希釈した様々な濃度のGST−ビオチンを3連で測定し、インキュベーション2時間後にPherastar FS蛍光リーダー(BMG−labtech社)でHTRFモードにて読み取った。結果を図5に示す。2つの標識抗体について、GST−ビオチンを検出する。驚いたことに、また予想外なことに、抗GST−66d−E2抗体を使用したイムノアッセイの性能は、抗GST−TACN phos−トリアンテナの性能よりも優れている。すなわち、単一アンテナ蛍光プローブは、3個のアンテナを有するプローブに比べて、輝度が3分の1であるにもかかわらず、高いFRET能を有する。
【0180】
この結果を確認するために、環状アデノシン一リン酸(cAMP)を認識する抗体を使用して、別のイムノアッセイを行った。このために、抗cAMP抗体を66d−E2−NHS錯体で標識して、平均して6.5個の錯体/抗体を有する抗cAMP−66d−E2コンジュゲートを得た。同じバッチの抗体をTACN−Carbo−トリアンテナNHS錯体で標識し、平均して6.6個の錯体/抗体を有する抗cAMP−TACN−Carbo−トリアンテナコンジュゲートを得た。
【0181】
試験の原理を図6に示す。時間分解蛍光を検出法として使用した競合試験において、両方のコンジュゲートを使用した。ユウロピウム錯体で標識された抗cAMPは、時間分解蛍光シグナルを生じることによって、フルオロフォアd2とコンジュゲーションしたcAMP(cAMP、Gs−ダイナミックキット、Cisbio Bioassays社(ref 621M4PEC))を認識する。様々なcAMP濃度において、cAMP−d2の置換が可能であり、それによりシグナルが緩やかに低下する。
【0182】
384ウェルプレート中でウシ血清アルブミン(BSA)の存在下のリン酸緩衝液中のcAMP−d2の存在下、様々なcAMP濃度とし、明確に定めた濃度の抗cAMP−66d−E2および抗cAMP−TACN−Carbo−トリアンテナコンジュゲートの両方を3連で使用し、インキュベーション1時間後にPherastar FSプレートリーダー(BMG−labtech社)でHTRFモードにて読み取った。FRETシグナル阻害応答を図7に示す。この第2の例において、またもや驚いたことに、抗cAMP−66d−E2コンジュゲートの性能は、抗cAMP−TACN−Carbo−トリアンテナコンジュゲートの性能よりも優れている。すなわち、単一アンテナ蛍光プローブは、3個のアンテナを有するプローブに比べて、輝度が半分であるにもかかわらず、高いFRET能を有する。
【0183】
1または2個のフェニルエチニルピリジン発色団を有するTACN大環状分子からなる錯化剤は、ランタニドと安定な錯体を形成するものであり、所望の分子の蛍光性コンジュゲートを作製するために使用することができる。本発明に係るランタニド錯体は、特にそれらの量子収量、それらの発光寿命、およびそれらの励起スペクトル(約337nmでのレーザー励起に非常によく適している)に関して、優れた光物理的特性を有する。さらに、それらの発光スペクトルのバンド分布は約620nmを中心としており、それにより、シアニン型またはアロフィコシアニン型アクセプター(Cisbio Bioassays社販売のXL665など)と共にFRETを使用した場合に並はずれた非常に好ましい特性が錯体に付与される。これらの錯体は、大部分の二価のカチオン(Ca2+、Mg2+など)またはEDTAを含む生物学的媒体において安定性が高いため、それらの発光は優れたままである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】