(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-523554(P2020-523554A)
(43)【公表日】2020年8月6日
(54)【発明の名称】試料中におけるバイオ治療物質凝集体の検出方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20200710BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20200710BHJP
【FI】
G01N33/53 S
G01N33/543 501A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2019-562619(P2019-562619)
(86)(22)【出願日】2018年5月15日
(85)【翻訳文提出日】2019年11月12日
(86)【国際出願番号】DE2018000139
(87)【国際公開番号】WO2018228622
(87)【国際公開日】20181220
(31)【優先権主張番号】102017005544.0
(32)【優先日】2017年6月13日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102017010455.7
(32)【優先日】2017年11月13日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】390035448
【氏名又は名称】フォルシュングスツェントルム・ユーリッヒ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】ツァフィウ・クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】クラヴィク・アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】バンナッハ・オーリヴァー
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルボルト・ディーター
(57)【要約】
本発明は、次のステップ:a.基板上へ被検査試料をアプライするステップ、b.バイオ治療物質凝集体への特異的結合により凝集体を標識する、検出用に特徴づけられたプローブを添加するステップ、およびc.標識されたバイオ治療物質凝集体を検出するステップを含み、ステップa)をステップb)の前に行ってもよい、試料中におけるバイオ治療物質凝集体の検出方法に関する。この方法を行うためのキットを開示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次のステップ:
a.基板上へ被検査試料をアプライするステップ、
b.バイオ治療物質凝集体への特異的結合により凝集体を標識する、検出に適切なプローブを添加するステップ、および
c.標識されたバイオ治療物質凝集体を検出するステップ、
を含み、
ステップb)をステップa)の前に行ってもよい、試料中におけるバイオ治療物質凝集体の検出方法。
【請求項2】
ステップa)の前に、基板上での、凝集体に対する捕捉分子の固定化を行うことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
試料の前処理を行うことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ガラスでできた基板を使用することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
プラスチックでできた基板を使用することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
基板が、親水性コーティングを有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
基板がデキストランでコーティングされていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
基板がポリエチレングリコールでコーティングされていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
デキストランコーティングが、生体分子を結合するための官能基を有することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
ポリエチレングリコールコーティングが、生体分子を結合するための官能基を有することを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
基板が、生体分子を結合するための官能基でコーティングされていることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一つに記載の方法。
【請求項12】
親水性コーティングが、生体分子を結合するための官能基でコーティングされていることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一つに記載の方法。
【請求項13】
捕捉分子が、基板またはコーティングに結合していることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一つに記載の方法。
【請求項14】
捕捉分子が、抗体または抗体断片であることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一つに記載の方法。
【請求項15】
捕捉分子がアプタマーであることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか一つに記載の方法。
【請求項16】
捕捉分子が、バイオ治療物質単量体の1つまたは複数のエピトープに特異的に結合することを特徴とする、請求項1〜15のいずれか一つに記載の方法。
【請求項17】
捕捉分子が、バイオ治療物質凝集体に特異的に結合することを特徴とする、請求項1〜16のいずれか一つに記載の方法。
【請求項18】
プローブ分子が、バイオ治療物質単量体の1つまたは複数のエピトープに特異的に結合することを特徴とする、請求項1〜17のいずれか一つに記載の方法。
【請求項19】
プローブ分子が、バイオ治療物質凝集体に特異的に結合することを特徴とする、請求項1〜18のいずれか一つに記載の方法。
【請求項20】
プローブ分子が、検出可能分子で標識されていることを特徴とする、請求項1〜19のいずれか一つに記載の方法。
【請求項21】
プローブ分子が、蛍光色素で標識されていることを特徴とする、請求項1〜20のいずれか一つに記載の方法。
【請求項22】
1種または複数の異なるプローブ分子を使用することを特徴とする、請求項1〜21のいずれか一つに記載の方法。
【請求項23】
異なって標識された検出可能分子を有する異なるプローブ分子の混合物を使用することを特徴とする、請求項1〜22のいずれか一つに記載の方法。
【請求項24】
異なって標識された検出可能分子を有する同じプローブ分子の混合物を使用することを特徴とする、請求項1〜23のいずれか一つに記載の方法。
【請求項25】
空間分解式顕微鏡法を利用して検出を行うことを特徴とする、請求項1〜24のいずれか一つに記載の方法。
【請求項26】
空間分解式蛍光顕微鏡法を利用して検出を行うことを特徴とする、請求項1〜25のいずれか一つに記載の方法。
【請求項27】
共焦点蛍光顕微鏡法、蛍光相関分光法(FCS)、任意選択的に相互相関と単一粒子免疫吸着レーザースキャニングアッセイ(Single−Particle−Immunosolvent Laserscanning−Assay)との組み合わせ、レーザースキャン顕微鏡法(LSM)、広視野顕微鏡法および/またはTIRF顕微鏡法、ならびに相応する超解像変種のSTED、SIM、STORM、dSTORMを用いて検出を行うことを特徴とする、請求項1〜26のいずれか一つに記載の方法。
【請求項28】
検出の際に、バックグラウンドシグナルの存在下で個々の凝集体の検出が可能であるほどに多数のデータ点を収集することを特徴とする、請求項1〜27のいずれか一つに記載の方法。
【請求項29】
バイオ治療物質凝集体の定量化およびサイズ測定のために内部標準または外部標準を使用することを特徴とする、請求項1〜28のいずれか一つに記載の方法。
【請求項30】
バイオ治療物質凝集体の定量化およびサイズ測定のための標準が、バイオ治療物質の単量体からなることを特徴とする、請求項1〜29のいずれか一つに記載の方法。
【請求項31】
バイオ治療物質凝集体の定量化およびサイズ測定のための標準が、バイオ治療物質単量体からなり、共有結合で安定化されたことを特徴とする、請求項1〜30のいずれか一つに記載の方法。
【請求項32】
バイオ治療物質凝集体の定量化およびサイズ測定のための標準が粒子であり、当該粒子には2つ以上の同一のまたは異なるポリペプチド配列が結合しており、当該ポリペプチド配列が、その配列に関して、捕捉分子および/またはプローブ分子によって結合される前記バイオ治療物質の単量体の配列と対応する部分領域において同一であることを特徴とする、請求項1〜31のいずれか一つに記載の方法。
【請求項33】
バイオ治療物質凝集体の定量化およびサイズ測定のための標準が、2つ以上のバイオ治療物質単量体が結合している粒子であることを特徴とする、請求項1〜32のいずれか一つに記載の方法。
【請求項34】
シリカでできた粒子の選択を特徴とする、請求項1〜33のいずれか一つに記載の方法。
【請求項35】
親水性コーティングを有する粒子の選択を特徴とする、請求項1〜34のいずれか一つに記載の方法。
【請求項36】
次の成分:
・ 基板、
・ バイオ治療物質凝集体への特異的結合によって結合するプローブ分子、
・ 任意選択:標準、
・ 任意選択:捕捉分子
の1つまたは複数を含有する、請求項1〜35のいずれか一つに記載のバイオ医薬品有効成分凝集体の選択的定量化のためのキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料中のバイオ治療物質凝集体を検出するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオ医薬品は、バイオロジクスとその後発医薬品であるバイオシミラーとに区分され、かつ生きている生物中で製造される治療薬の範疇である。その製品に数えられるのは、とりわけ、組換えタンパク質および抗体である。それらの生成物は、様々な疾患、例えば、糖尿病、様々な種類のガン、および炎症疾患の治療において重要な役割を演じる。
【0003】
バイオ医薬品は、医学的見地からすると非常に魅力的な治療薬である。なぜなら、タンパク質および抗体が、その作用に関して、傑出した活性および特異性を有するからである。もっとも、典型的な低分子医薬品と比べたそれらの高分子物質の構造上の複雑さゆえ、最大の課題は、物理的および化学的な安定性の領域にある。そのようなタンパク質のミスフォールディング、および続く凝集は、そのような治療薬の製品サイクルのあらゆる個別段階の際に起こり得る。それらの段階は、生成物の発現、フォールディング、精製、滅菌、発送、保管、および納品を含む。
【0004】
タンパク質凝集の結果は、一方では活性の低下であり、生成物の高まった免疫原性が特に不利である。免疫系が、有効成分を抗原として認識し、それに対する抗体を生成すると、有効成分の分解をもたらし、さらにはアレルギー反応ももたらす。そのため、治療が無効になり、場合によってはしかも危険にさえなる。
【0005】
すべての自己会合性タンパク質種が同種タンパク質凝集体と定義され、ここでは単量体が天然に存在する最小の単位またはサブユニットである。凝集体は、5つの特徴、すなわち、サイズ、可逆性(解離)、コンホメーション、化学修飾、および形態に基づいて区分される[1]。
【0006】
最小の凝集体単位は、2つの単量体(二量体)に相当し、単量体の数にはさらに上向きには限界がない[1]。不利なことに、タンパク質性バイオ医薬品(biopharmazeutisches Proteinprodukt)の最小の凝集体単位に対してさえもすでに免疫応答が見出された[2]。
【0007】
同種タンパク質凝集体に加えて、異種凝集体も存在し、その場合、タンパク質単量体が、1つまたは複数の別のタンパク質種、さらには有機不純物または無機不純物とも会合し得る。
【0008】
凝集体を介して免疫応答を引き起こし、ないしは強化し得る内在の機構は様々である。それらの機構に数えられるのは、a)その活性化を引き起こし得るB細胞受容体の高まった架橋[3]、b)高まった抗原取込み、プロセシング、および提示とそれに続く免疫賦活(immunstimulierend)シグナルの解除[4]である。そのような機構は、抗体を産生するためにT細胞を刺激し得る。凝集体によって引き起こされる免疫応答に関する臨床上の最大の危険は、凝集体中の単量体エピトープの維持または変性に依存する。エピトープが維持される場合、本来は凝集体しか対象としない抗体が、単量体にも結合でき、その作用を低下または中和させ得る。変性の場合は、抗体が、専ら凝集体を対象とする一方、天然タンパク質の有効成分活性は損なわれない。両方の場合とも、免疫応答は、患者にとって危険になりかねないアナフィラキシーをもたらす恐れがある。
【0009】
現在のところ、バイオ医薬品において、不純物、凝集体分率およびそのサイズを分析するための標準化法は存在しない。凝集体は、そのサイズに応じて、2つの範疇に区分され、適切な測定方法が提案される。
【0010】
凝集体>1μm:大きな凝集体および不純物を測定するために、典型的には、光学的方法、例えば、光減衰(LO)、Dynamic Imaging Particle Analysis(DIPA)およびMicro−flow Imaging(MFI)、ならびにコールターカウンター(CC)の電気化学的方法を適用する。それらの方法の完成した型を利用すると、存在する凝集体の数、サイズ、および形状も確定できる。
【0011】
0.1μm〜1μmの間の凝集体:このサイズ範囲では、小さい凝集体を検出するための複雑な系が使用される。それらの系に数えられるのは、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、分析用超遠心法(AUC)、および非対称フィールドフローフラクショネーション(AF4)である。そのような装置の感度を高めるために、これらの装置は頻繁には質量分析計と連結する。それらの技術は、凝集体の定量化および分布を可能にするものの、不利であるのは、組成の確定であり、かつそれらの方法は、ハイスループット用途には限定的にしか適切でない。
【0012】
どの凝集体分率以上から治療タンパク質に対する免疫応答が起こるのかを確定するためには、凝集体タイプおよび凝集体の量に関する情報が必要である。形成される凝集体および量は、生成物ごとに異なり得て、かつ様々な臨床的シナリオをもたらし得ることが考えられるにもかかわらず、これまでのところ、免疫応答の原因は主に大きな凝集体と粒子にあると見なされた[3]。
【0013】
0.1〜10μmの範囲の粒子および凝集体も免疫原性に作用し得るという認識は、徐々に定着しつつあるものの、目下のところ使用される方法には、それを確認するための精密さに欠けている[5]。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の課題は、試料中におけるバイオ治療物質の凝集体の高感度の検出方法を提供することである。
【0015】
本発明のもう1つの課題は、前記方法を行うためのキットを提供することである。
【0016】
さらなる課題およびそれに対する解決手法は、本発明に関する明細書ならびに従属請求項から判明する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記課題は、特許請求項1に記載の方法および独立請求項に記載のキットによって解決される。それに関する有利な形態は、それぞれ関連特許請求項から判明する。
【0018】
発明の説明
前記課題は、次のステップ:
a.基板上へ被検査試料をアプライするステップ、
b.バイオ治療物質凝集体への特異的結合により凝集体を標識する、検出に適切なプローブを添加するステップ、
c.標識されたバイオ治療物質凝集体を検出するステップ
を含み、ステップb)をステップa)の前に行ってもよい、試料中におけるバイオ治療物質凝集体の検出方法によって解決される。
【0019】
つまり、まず基板にプローブを添加し、その後試料を添加することも可能である。
【0020】
同種凝集体および異種凝集体を測定するため、特に定量化および/または定性化するための方法は、バイオ医薬品のおよびバイオ医薬品中の凝集体が、少なくとも1つの、プローブに対する結合部位を含有することを特徴とする。
【0021】
任意選択的に、凝集体が、少なくとも1つの、捕捉分子に対する結合部位も含む。
【0022】
その場合、方法は、次のステップ:
a)基板上に捕捉分子を固定化するステップ、
b)溶液においてバイオ医薬品を含む試料を捕捉分子と接触させるステップ、
c)バイオ医薬品の溶液中に存在する1つまたは複数の分子の単量体および/または凝集体を、捕捉分子への結合により、基板上に固定化するステップ、
d)プローブを、単量体および/または凝集体と接触させるステップ、
e)プローブが、単量体および/または凝集体に結合するステップ
を含み、
前記プローブは、所定のシグナルを生み出すことができ、ステップb)およびd)は同時に行われるか、またはステップd)をステップb)の前に行ってもよい。
【0023】
ステップb)およびd)を同時に行う限り、ステップc)およびe)も同時に行われる。
【0024】
ステップd)をステップb)の前に行うさらなる変形形態では、したがって、ステップc)において、プローブで標識された単量体および凝集体の、基板上での固定化を行う。それゆえ、つまりステップe)もステップb)およびc)の前に行う。
【0025】
本発明の趣旨では、「定量的測定」とは、まず凝集体の濃度の測定を意味し、それゆえ、つまりその存在および/または不在の測定も意味する。
【0026】
好ましくは、定量的測定が、凝集体組成物の選択的定量化も意味する。そのような定量化は、適切なプローブを介して行うことができる。
【0027】
本発明の趣旨では、「定性的測定」とは、凝集体組成物の特性化を意味する。
【0028】
検出に有用な1つまたは複数のプローブを用いて凝集体を標識する。そのプローブは、凝集体またはその単量体の結合部位を認識してそこに結合する親和性分子を含有する。
【0029】
その上、プローブは、親和性分子または分子部分に結合しており、かつ化学的または物理的な方法を利用して検出可能ないしは測定可能である、少なくとも1つの検出用分子(Detektionsmolekuel)または分子部分を含有する。
【0030】
一代案では、プローブが、異なる検出用分子(または部分)を有する同じ親和性分子または分子部分を有してもよい。もう1つの代案では、異なる検出用分子もしくは部分を有する異なる親和性分子もしくは分子部分を組み合わせるか、または代案として、同じ検出用分子もしくは部分を有する異なる親和性分子もしくは部分を組み合わせてもよい。異なるプローブの混合物も使用可能である。
【0031】
異なる検出用分子または分子部分に結合している複数の異なるプローブの使用は、一方ではシグナル(相関シグナル(Korrelationssignal))の特異性を高め、他方では、その組成の点で異なる凝集体の同定を可能にする。それが、凝集体の選択的な定量化および特性化を可能にする。
【0032】
一実施形態では、プローブシグナルの空間分解測定(ortsaufgeloeste Bestimmung)、つまり、プローブから放出されるシグナルの空間分解検出を行う。それによると、本発明のその実施形態では、非空間分解シグナルに基づく方法、例えば、ELISAまたはサンドイッチELISAは除外される。
【0033】
検出の際、高い空間分解能は有利であるが必須ではない。その際、本発明による方法の一実施形態では、例えば、装置固有ノイズ、別の非特異的シグナル、または非特異的に結合したプローブによって引き起こされるバックグラウンドシグナルの存在下とで凝集体の検出を可能にするほどに多数のデータ点を収集する。このやり方で、空間分解イベント、例えば、ピクセルが存在する分と同様に多数の値が読み取られる(リードアウト値)。空間分解能により、各イベントは、それぞれのバックグラウンドのもとで測定され、つまり、空間分解シグナルを伴わないELISA法に比べて有利である。
【0034】
一実施形態では、プローブシグナルの空間分解測定が、数フェムトリットル〜1フェムトリットル未満の範囲、または500nm、好ましくは300nm、特に好ましくは250nm、特に200nm、さらには150nmおよび90nmという高さを有する捕捉分子の接触表面積を上回る体積範囲にある、試料の体積と比べて小さい体積要素の試験に基づく。
【0035】
本発明の趣旨では、凝集体は、少なくとも2つの同じ単量体単位からなる同種凝集体、または少なくとも2つの異なる単量体単位からなる異種凝集体である。異種凝集体の場合、2つの単量体はその一次配列においては同じであるものの、そのコンホメーションにおいて異なることも可能である。
【0036】
一実施形態では、基板の材料が、プラスチック、ケイ素、および二酸化ケイ素を含有するか、あるいはプラスチック、ケイ素、および二酸化ケイ素からなる群から選択される。好ましい一代案では、基板としてガラスを使用する。
【0037】
本発明のさらなる一実施形態では、捕捉分子が基板に共有結合している。
【0038】
そのためには、一代案において、親水性表面を有する基板を使用する。一代案では、ステップa)の前に、基板に親水層を施与することで、それを達成する。それゆえ、捕捉分子が、基板に、ないしは基板にロードされている親水層に、共有結合する。
【0039】
親水層は、生体分子反発層(Biomolekuel−abweisende Schicht)であるため、基板への生体分子の非特異的結合が最低限に抑えられる。その層に、任意選択的に捕捉分子を、好ましくは共有結合で固定化する。その捕捉分子は、単量体またはその凝集体の特徴部分に対して親和性である。捕捉分子は、すべて同じであってもよく、または異なる捕捉分子の混合物であってもよい。
【0040】
一代案では、捕捉分子およびプローブとして、同じ分子を使用し、好ましくは、捕捉分子が検出用分子ないしは分子部分を含有しない。
【0041】
一実施形態では、親水層が、PEG、ポリリジン、好ましくはポリ−D−リジン、およびデキストランまたはその誘導体、好ましくはカルボキシメチルデキストラン(CMD)を含有するかあるいはPEG、ポリリジン、好ましくはポリ−D−リジン、およびデキストランまたはその誘導体、好ましくはカルボキシメチルデキストラン(CMD)からなる群から選択される。本発明の趣旨での誘導体とは、いくつかの置換基の点で親化合物とは異なる化合物であり、ここで、それらの置換基は、本発明による方法に対して不活性である。
【0042】
一実施形態では、親水層を施与する前に、まず基板表面をヒドロキシル化し、続いて適切な化学基、好ましくはアミノ基で官能基化する。アミノ基を用いるその官能基化は、一代案では、基板をアミノシラン、好ましくはAPTES(3−アミノプロピルトリエトキシシラン)、またはエタノールアミンと接触させることによって行う。
【0043】
コーティングに向けて基板を準備するためには、次のステップの1つまたは複数を行ってもよい:
・ ガラス製基板ないしはガラス支持体を、超音波浴またはプラズマクリーナー中で洗浄する、その代わりに、5MのNaOH中で少なくとも3時間インキュベートするステップ、
・ 水ですすぎ、続いて窒素下または真空下に乾燥させるステップ、
・ ヒドロキシル基を活性化するために、比率3:1の濃硫酸と過酸化水素の溶液中に浸漬するステップ、
・ 中性pHまで水ですすぎ、続いてエタノールですすぎ、そして窒素雰囲気下に乾燥させるステップ、
・ (好ましくは乾燥トルエン中に)3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)(1〜7%)を含む溶液、またはエタノールアミン溶液中に浸漬するステップ、
・ アセトンまたはDMSOおよび水ですすぎ、窒素雰囲気下に乾燥させるステップ。
【0044】
一代案では、基板を、アミノシラン、好ましくはAPTESと気相中において接触させる;それゆえ、任意選択的に前処理した基板に、アミノシランを蒸着させる。
【0045】
デキストラン、好ましくはカルボキシメチルデキストラン(CMD)でコーティングするために、基板を、CMDの水溶液(10mg/mlまたは20mg/mlの濃度)と、および共有結合用の触媒、任意選択的にN−エチル−N−(3−ジメチルアミンプロピル(Dimethylaminpropyl))カルボジイミド(EDC)(200mM)およびN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)(50mM)とインキュベートし、続いて洗浄する。
【0046】
一変形形態では、カルボキシメチルデキストランが、上記のようにまずヒドロキシル化し、続いてアミン基(Amingruppe)で官能基化されたガラス表面に共有結合している。
【0047】
基板としては、好ましくはガラスボトムを有する、マイクロタイタープレートを使用してもよい。ポリスチレンフレームを使用すると、濃硫酸の使用が不可能であるため、本発明の一変形実施形態では、ガラス表面の活性化を相応に行う。
【0048】
その親水層上に、凝集体の特徴部分(例えば、タンパク質)に対して親和性である捕捉分子を、好ましくは共有結合で、固定化する。捕捉分子はすべて同じであるか、または異なる捕捉分子の混合物であってもよい。
【0049】
本発明の一実施形態では、任意選択的に、CMDでコーティングした支持体を、好ましくは200ないしは50mMのEDC/NHSの混合物により活性化した後に、捕捉分子、好ましくは凝集体の単量体に対する抗体を基板上に固定化する。
【0050】
捕捉分子が結合しなかった残りのカルボキシレート末端基は、不活性化することができる。その、CMDスペーサー上のカルボキシレート末端基の不活性化のためには、エタノールアミンを使用する。試料をアプライする前に、基板ないしは支持体を、任意選択的にバッファーですすぐ。
【0051】
本発明の一実施形態では、試料をアプライする前に、タンパク質またはペプチドを含有する溶液を用いて基板をブロッキングし、バッファーで洗浄する。
【0052】
そのように準備した基板と被測定試料を接触させ、任意選択的にインキュベートする。被検査試料としては、バイオ医薬品の様々に調合された溶液、細胞上清および培地または生体特有の液体中の製品の様々に調合された溶液を使用できる。本発明の一実施形態では、試料を、髄液(CSF)、血液、血漿、および尿から選択する。試料は、当業者には公知の、異なる調製ステップを経由してもよい。
【0053】
本発明の一実施形態では、任意選択的には任意選択的に活性化された基板表面上での任意選択的に共有結合を介して、基板(非コーティング基板)上に直接、試料をアプライする。
【0054】
本発明の一実施形態では、次の方法ステップの1つまたは複数により、試料の前処理を行う。
− 試料の加熱、
− 1回または複数回の凍結融解サイクル、
− 機械的破砕、
− 試料のホモジナイゼーション、
− 水またはバッファーを用いた希釈、
− 酵素、例えばヌクレアーゼ、リパーゼでの処理、
− 遠心分離、
− 場合によっては存在する抗体を排除するための、プローブとの競合。
【0055】
好ましくは試料を直接に、および/または前処理なく基板と接触させる。
【0056】
非特異的に結合した物質は、洗浄ステップにより除去され得る。
【0057】
さらなるステップにおいて、さらなる検出に利用するための1つまたは複数のプローブを用いて、固定化された凝集体を標識する。上記のように、個々のステップは、本発明により、別の順序で行うことも可能である。
【0058】
適切な洗浄ステップにより、凝集体に結合していない過剰のプローブを除去する。
【0059】
一代案では、その過剰のプローブを除去しない。そのため、最後の洗浄ステップが省略され、凝集体−プローブ複合体または凝集体−プローブ結合の解離方向への平衡移動も起きない。空間分解検出により、過剰のプローブは、評価の際に検知されず、測定を損なわない。
【0060】
一変形形態では、試料−捕捉分子複合体を化学的に固定する。
【0061】
一代案では、検出プローブ−試料−捕捉分子複合体を化学的に固定するので、試料−捕捉分子複合体も化学的に固定される。
【0062】
方法の特別な一実施形態では、凝集体の結合部位がエピトープであり、捕捉分子およびプローブが抗体である。本発明の一変形形態では、捕捉分子とプローブとが同じであってもよい。
【0063】
本発明の一実施形態では、捕捉分子とプローブとが異なる。つまり、例えば、異なる抗体を、捕捉分子として、およびプローブとして使用してもよい。
【0064】
本発明のさらなる一実施形態では、あり得る(色素)標識を除くと互いに同じである捕捉分子とプローブとを使用する。
【0065】
本発明のさらなる一実施形態では、あり得る(色素)標識を除くと互いに同じである異なるプローブを使用する。
【0066】
本発明のさらなる一実施形態では、異なる抗体を含有し、かつ任意選択的に異なる色素標識も有する、少なくとも2つ以上の異なる捕捉分子および/またはプローブを使用する。
【0067】
本発明の一代案では、FRET、いわゆるフェルスター共鳴エネルギー移動が起こるように、2つ以上のプローブが適切な色素で標識され、一方の色素が励起され、かつ近くに存在する他方の色素が発光し、ここで両方の色素は異なる分子である。
【0068】
検出のために、プローブは、蛍光−、リン光−、バイオルミネセンス−、ケミルミネセンス−およびエレクトロケミルミネセンス−発光および吸収からなる群から選択される光学的に検出可能なシグナルを発信するように特徴づけられている。
【0069】
したがって、一代案では、プローブが蛍光色素で標識されている。蛍光色素としては、当業者に公知の色素を使用できる。代案として、蛍光生体分子、好ましくはGFP(Green Fluorescence Protein)、それらのコンジュゲートおよび/または融合タンパク質、ならびに蛍光ナノ粒子、好ましくは量子ドットも使用可能である。
【0070】
後に行う表面の品質制御のために、例えば、捕捉分子によるコーティングの均等性には、蛍光色素で標識された捕捉分子を使用してもよい。そのためには、好ましくは検出を干渉しない色素を使用する。それにより、構成の後からの点検ならびに測定結果の標準化が可能になる。
【0071】
固定化および標識された凝集体の検出は、表面の結像を利用して行う(例えば、レーザー顕微鏡法)。できるだけ高い空間分解能が、多数のピクセルを確定し、それにより、アッセイの感度ならびに選択性が高まり得るが、なぜなら、構造的な特徴部分が合わせて結像され、かつ分析され得るからである。したがって、バックグラウンドシグナル(例えば、非特異的に結合したプローブ)の存在下で特異的シグナルが高められる。
【0072】
検出は、好ましくは、共焦点蛍光顕微鏡法、蛍光相関分光法(FCS)により、特に相互相関およびレーザースキャン顕微鏡(LSM)を組み合わせて行う。
【0073】
本発明の一代案では、共焦点レーザースキャン顕微鏡を用いて検出を行う。
【0074】
そのために、本発明の一実施形態では、例えば、レーザースキャン顕微鏡法で使用されるようなレーザー焦点、またはFCS(Fluorescence Correlation Spectroscopy System)、ならびに相応する超解像変種、例えば、STED、PALMまたはSIMを使用する。
【0075】
さらなる一実施形態では、空間分解式の蛍光顕微鏡法(ortsaufloesender Fluoreszenzmikroskopie)を利用して、好ましくはTIRF顕微鏡、ならびにその、相応する超解像変種、例えば、STORM、dSTORMにより検出を行ってもよい。
【0076】
それらの方法により、ELISAとは異なり、空間分解イベント(例えば、ピクセル)が存在する分と同様に多数のリードアウト値が生じる。異なるプローブの数に応じて、しかもその情報が何倍にもなる。この数倍化は、各検出イベントに当てはまるため、情報獲得をもたらす。なぜなら、その数倍化は、凝集体に関するさらなる特性(例えば、第2の特徴部分)を開示するからである。そのような構成により、各イベントに関してシグナルの特異性が高まり得る。
【0077】
プローブは、異種凝集体の場合、個々の構成要素またはコンホメーションの存在が測定結果に影響を及ぼさないように選択してもよい。プローブは、同種および異種凝集体ならびに異なる異種凝集体を、1回の測定で特定できるように選択してもよい。
【0078】
評価に向けて、例えば、凝集体の数、そのサイズ、およびその特徴部分を特定するためには、使用され、かつ検出されたすべてのプローブの空間分解情報(例えば、蛍光強度)を考慮に入れる。その際、例えば、バックグラウンド最小化の、および/またはさらなる評価用の強度閾値の、ならびにパターン識別のアルゴリズムも適用できる。さらなる画像解析オプションは、例えば、画像情報から、検出された凝集体の数を得るために、局所的な強度最大値の検索を含む。
【0079】
距離、時間および実験者を越えて、試験結果を互いに比較可能にするためには、標準、例えば、内部標準および/または外部標準を使用してもよい。それらの標準は、バイオ医薬品の凝集体のサイズ分布、量、および/または組成を確認するために、測定の較正にも利用できる。
【0080】
本発明のさらなる主題は、狭いサイズ分布を有し、かつ2つ以上の同じまたは異なるポリペプチド配列からなる標準の提供である。前記ポリペプチド配列は、バイオ医薬品有効成分の天然単量体型でもあり得る。
【0081】
一変形形態では、前記標準は、異なるサイズ分布の混合物からなる。
【0082】
一変形形態では、前記標準は標識されている。
【0083】
一変形形態では、前記標準は、互いに共有結合されている2つ以上の単量体からなる。
【0084】
一変形形態では、前記標準は、ナノ粒子からなり、その表面には2つ以上の単量体または1つのポリペプチド配列が共有結合しており、かつそのポリペプチド配列は、部分領域において、バイオ治療物質単量体の配列と同じである。
【0085】
本発明の主題はまたは、次の成分:
(任意選択的に親水性表面を有する)基板、捕捉分子、プローブ、標準、捕捉分子を有する基板、溶液、バッファー、
の1つまたは複数を含有するキットである。
【0086】
本発明のキットの化合物および/または成分は、容器中に、任意選択的に、バッファーおよび/または溶液と共に/の中に、包装されていてもよい。代案として、いくつかの成分が、同じ容器中に包装されていてもよい。付加的またはその代わりに、成分の1つまたは複数が、固体支持体、例えば、ガラスプレート、チップ、またはナイロン膜上に、またはマイクロタイタープレートのウェル上に吸着されていてもよい。さらに、キットは、実施形態のうちの任意の一実施形態用のキットの使用説明書を含有してもよい。
【0087】
キットのさらなる一変形形態では、基板上に、上記の捕捉分子が固定化されている。さらに、キットは、溶液および/またはバッファーを含有してもよい。生体分子反発表面(例えば、デキストラン表面)および/またはその上に固定化された捕捉分子を保護するために、それらを、溶液またはバッファーで覆ってもよい。一代案では、その溶液が、1つまたは複数の、表面の保存性を高める殺生物剤を含有する。
【0088】
本発明のさらなる主題は、任意の試料中においてバイオ医薬品のおよびバイオ医薬品中の同種および異種凝集体を検出するため、バイオ医薬品のおよびバイオ医薬品中の同種および異種凝集体を定量化(力価測定)するため、粒子数を直接的および/または絶対的に定量化するための、本発明による方法の使用である。
【0089】
本発明のさらなる主題は、バイオ医薬品有効成分を生産する際のプロセスステップを最適化および監視するため、および/または最終製品を品質決定するための、本発明による方法の使用である。
【0090】
本発明のさらなる主題は、臨床検査、臨床試験と同様に治療モニタリングにおいても、バイオ医薬品の同種および異種凝集体を検出するための、本発明による方法の使用である。そのためには、本発明の方法により、試料を測定して結果を比較する。
【0091】
例示的実施形態:
引き続き、一例示的実施形態および添付の図面に基づいて本発明を説明するが、それによって、その特定の例示的実施形態に限定はされない。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【
図1】試料としてのヒトIgG抗体の凝集体(斜線バー)および単量体(白色バー)を示す。
【0093】
図1は、ヒトIgG抗体(アイソタイプコントロール、ThermoFisher Scietific、RF237824)の凝集体(斜線バー)および単量体(白色バー)を、10倍ごとの希釈シリーズで示す。
【0094】
単量体としては、そのままの状態の抗体を使用し、pH7.4のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に希釈した。凝集体を産生するためには、試料(5mg/ml)を10分間、70℃において加熱し、25℃に達してから10倍ごとに希釈した。
【0095】
その結果は、6つの対数段階にわたって濃度と測定シグナルとの間で直線関係を示す。それに対して、単量体は、広い範囲にわたって、はるかに低い測定シグナルを示す。単量体溶液中においてさえも、高濃度での値の原因である、わずかな量の凝集体が存在していたということを排除できない。陰性対照(黒色バー)として、希釈用バッファーを使用した。
【0096】
具体的な実施形態
この実験には、384個の反応チャンバー(RK)および基板としてのガラスボトムを有する市販のマイクロタイタープレート(Greiner Bio−one、Sensoplate Plus)を使用した。
【0097】
まず、マイクロタイタープレートの表面を構成ないしは官能基化した。そのためには、トルエン中の5%APTESを含むシャーレが入ったデシケーター中に、プレートを配置した。デシケーターにアルゴンを流し込んで、1時間インキュベートした。次いで、シャーレを取り除き、プレートを2時間、真空中で乾燥させた。親水性コーティングをするために、乾燥したプレートの反応チャンバー内に、脱イオンH
2O中の2mMのSC−PEG−CM(MW3400、Laysan Bio)溶液20μlを注入し、4時間、インキュベートした。インキュベーション後に、反応チャンバーを3回、水で洗浄し、続いて、それぞれ20μlの、200mMのEDC水溶液(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、Sigma)および50mMのNHS(N−ヒドロキシスクシンイミド、Sigma)を加えて30分間インキュベートした。その結果、PEGによる親水性コーティングが、生体分子を結合するための官能基を獲得する。
【0098】
プレートを再び3回、脱イオン水で洗浄した。次いで、反応チャンバーを、ヒト抗体のFC部分のCH2ドメインに特異的に結合する、捕捉分子としてのモノクローナル抗体である、クローン8A4(Thermo−Fisher)でコーティングした(20μl、PBS中の10μg/ml、1時間)。続いて、0.1%のTween−20を含むTBSおよびTBSによる、それぞれ3回の洗浄および吸引して空にすること(Leersaugen)からなる洗浄プログラムで処理した。
【0099】
次のステップでは、反応チャンバーに、スマートブロック(Candor Bioscience GmbH)50μlを加えて一晩、室温(RT)においてコーティングし、一晩たった後、再び3回、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン緩衝生理食塩水(TBS、pH=7.4)で洗浄した。
【0100】
試料を、逐次的に、色素ヘキストステイン(1μg/ml)を含むトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)バッファー中に希釈し、1時間インキュベートした。次いで、三重の実施として、それぞれ20μlの試料を反応チャンバーにアプライし、室温において1時間インキュベートした。インキュベーション後に、反応チャンバーを3回、TBSで洗浄し、検出用抗体20μlを加えた。検出用抗体は、それぞれ、一種の蛍光色素で標識した。つまり、別個に、8A4(ThermoFisher Scientific、MA1−81864)を、蛍光色素CF488およびCF633で標識した。そのプローブ抗体ないしは検出用抗体を一緒に、各抗体の最終濃度が1.25ng/mlになるようにTBS中に希釈した。それらの抗体は、バイオ治療物質の単量体および凝集体のエピトープに特異的に結合する。
【0101】
反応チャンバーごとに、抗体溶液20μlをアプライし、室温において1h、インキュベートした。1hの経過後、プレートを3回、TBSで洗浄し、プレートにフィルムで封をした。
【0102】
凝集体を検出するために、空間分解式顕微鏡法(ortsaufgeloeste Mikroskopie)を行った。この測定は、TIRF顕微鏡(Leica)において、100倍の油浸対物レンズを用いて行った。そのためには、マイクロタイタープレートのガラスボトムに、油浸オイルを十分に塗り付け、プレートを、顕微鏡の自動ステージに装入した。次いで、バックグラウンドシグナルのもとで個々の凝集体が検出可能になるほどに多数のデータ点を獲得するために、反応チャンバーごとに5x5の位置で、2つの蛍光チャネル(Ex/Em=633/715nmおよび488/525nm)で、それぞれ1つの画像(1000x100ピクセル)を連続的に撮影した。最大レーザー出力(100%)、500msの露光時間、および800というゲイン値を選択した。次いで、画像データを評価した。強度閾値は、チャネルごとに、該当するチャネルの平均陰性対照の0.0001%グレースケールにセットした。評価ステップでは、まずチャネルごとの各画像に対して、強度閾値を適用し、続いて、同じ位置の画像を、両方の値において互いに比較した。画像ごとに、両方のチャネルにおいて、ちょうど同じ位置でピクセルがそのチャネルの強度閾値を上回るようなピクセルのみを数えた。最後に、各反応チャンバーのすべての画像にわたってピクセル数を平均してから、反復値(Replikatwert)の平均ピクセル数の平均値を求め、標準偏差を指定する。
【0103】
それらの値を
図1に示す。
【0104】
その場合、この較正シリーズは、バイオ治療物質、具体的には、試料である医薬品の溶液中にバイオ治療物質として存在し得て、かつ凝集体に基づいて検査されるIgGの、より複雑な検出方法へのアプローチとして利用できる。その際、蛍光プローブ抗体は、捕捉分子に結合した単量体には結合できない。なぜなら、その結合部位が、捕捉分子によって埋まっているからである。その代わりに、プローブ抗体は、凝集体の単量体エピトープにしか結合しない。したがって、凝集体は、示した方法で定量化可能である。
【0105】
参考文献
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[2] Gamble, C. N. (1966). “The role of soluble aggregates in the primary immune response of mice to human gamma globulin.” Int Arch Allergy Appl Immunol 30(5): 446−455.
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【国際調査報告】