特表2020-523555(P2020-523555A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フォルシュングスツェントルム・ユーリッヒ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツングの特許一覧

特表2020-523555試料中における細胞外小胞の検出方法
<>
  • 特表2020523555-試料中における細胞外小胞の検出方法 図000002
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-523555(P2020-523555A)
(43)【公表日】2020年8月6日
(54)【発明の名称】試料中における細胞外小胞の検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20200710BHJP
   C12Q 1/06 20060101ALI20200710BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20200710BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20200710BHJP
【FI】
   G01N33/53 S
   C12Q1/06
   C12M1/00 A
   C12M1/34 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2019-562620(P2019-562620)
(86)(22)【出願日】2018年5月16日
(85)【翻訳文提出日】2019年11月12日
(86)【国際出願番号】DE2018000145
(87)【国際公開番号】WO2018228625
(87)【国際公開日】20181220
(31)【優先権主張番号】102017005543.2
(32)【優先日】2017年6月13日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】390035448
【氏名又は名称】フォルシュングスツェントルム・ユーリッヒ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】ツァフィウ・クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルボルト・ディーター
(72)【発明者】
【氏名】クラヴィク・アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】バンナッハ・オーリヴァー
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029AA21
4B029BB11
4B029CC01
4B029FA12
4B029GA08
4B029GB09
4B063QA01
4B063QA18
4B063QQ08
4B063QR48
4B063QR56
4B063QR84
4B063QS33
4B063QX02
(57)【要約】
本発明は、次のステップ:a)基板上へ試料をアプライするステップ、b)細胞外小胞への特異的結合により細胞外小胞を標識する、検出に適切なプローブを添加するステップ、およびc)プローブの特異的シグナルの測定により細胞外小胞を検出するステップを含み、ステップb)をステップa)の前に行ってもよい、試料中における細胞外小胞の検出方法に関する。基板を行うためのキットを開示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次のステップ:
a)基板上へ試料をアプライするステップ、
b)細胞外小胞への特異的結合により細胞外小胞を標識する、検出に適切なプローブを添加するステップ、および
c)プローブの特異的シグナルの測定により細胞外小胞を検出するステップ
を含み、ステップb)をステップa)の前に行ってもよい、
試料中における細胞外小胞の検出方法。
【請求項2】
ステップa)の前に、基板上での、細胞外小胞に対する捕捉分子の固定化を行うことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
細胞外小胞を捕捉分子と接触させて、細胞外小胞を捕捉分子への結合により基板上に固定化することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
細胞外小胞をプローブと接触させた後に、非特異的に結合した分子および粒子を、洗浄によって除去することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
細胞外小胞に結合するプローブが選択され、当該プローブは特異的シグナルを放出できることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
細胞外小胞の、捕捉分子およびプローブとの接触を、同時に行うことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
細胞外小胞の、プローブとの接触を、捕捉分子との接触の前に行うことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
細胞外小胞へのプローブの結合の前に、試料を固定することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
試料をデタージェントで処理することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
プローブシグナルの空間分解測定を行うことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
基板が、プラスチック、ケイ素または二酸化ケイ素、好ましくはガラスを含むことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一つに記載の方法。
【請求項12】
基板が、当該基板上で捕捉分子を固定化する前に親水性表面を有することを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一つに記載の方法。
【請求項13】
親水層が、PEG、ポリリジンおよびデキストランまたはそれらの誘導体を含有するかあるいはPEG、ポリリジンおよびデキストランまたはそれらの誘導体からなる群から選択されることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
基板をAPTES(3−アミノプロピルトリエトキシシラン)またはエタノールアミンと接触させることにより、アミノ基での官能基化を行うことを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一つに記載の方法。
【請求項15】
基板を、気相中においてAPTES(3−アミノプロピルトリエトキシシラン)と接触させることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか一つに記載の方法。
【請求項16】
捕捉分子が、基板またはコーティングに共有結合していることを特徴とする、請求項1〜15のいずれか一つに記載の方法。
【請求項17】
細胞外小胞の結合部位がエピトープであり、捕捉分子およびプローブが、抗体または抗体の部分であることを特徴とする、請求項1〜16のいずれか一つに記載の方法。
【請求項18】
プローブが、蛍光色素で標識されていることを特徴とする、請求項1〜17のいずれか一つに記載の方法。
【請求項19】
空間分解式蛍光顕微鏡法を利用して検出を行うことを特徴とする、請求項1〜18のいずれか一つに記載の方法。
【請求項20】
− 基板であって、任意選択的に親水性表面および/または固定化された捕捉分子を有する基板、
− プローブ、
− 任意選択的に、溶液およびバッファー、
を含む、請求項1〜19のいずれか一つに記載する方法を実施するためのキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料中において細胞外小胞を検出するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞外小胞(EV)は、ほぼすべての細胞から分泌され、かつ多数の細胞によって再び取り込まれ得る膜粒子(Membranpartikel)である。それらの小胞は、ある細胞から別の細胞へ情報を伝達できる。その際、3種の細胞外小胞を区別する。つまり、細胞内部からのエンドソームに由来する、100nm未満の直径を有するエクソソーム、細胞膜から直接に分離する大型微小粒子(100〜1000nm)、細胞外小胞の第3の種のアポトーシスの際に生じる小胞である。小胞は、様々な要因、例えば、細胞外刺激、微生物感染、およびその他のストレス要因によって生成され得る。細胞外小胞は、膜タンパク質が組み込まれた脂質二重層と内部の溶液とからなる。
【0003】
細胞外小胞の内部には、例えば、カーゴと呼ばれる、タンパク質、DNA、および/またはRNAが存在し得る。いくつかの少数のタンパク質は、すべての細胞外小胞中にさらに見出され、細胞型とはかかわりなく分泌される[1]。それらのタンパク質に数えられるのは、細胞内部に見出されるタンパク質、例えば、アクチンおよびチューブリン、さらには膜タンパク質、例えば、テトラスパニンのCD9、CD63およびCD81、ならびにクラスI(MHC I)の組織適合遺伝子複合体である[1、2]。別のタンパク質、DNA断片、および/またはRNA断片は、きわめて特定の細胞型において見出される[3]。
【0004】
細胞外小胞の生物学的役割は複雑であり、まだ完全には解明されていない。現在のところ、細胞外小胞は、とりわけ、望ましくないタンパク質を細胞から排出し、さらには細胞間コミュニケーションにおける役割、例えば、免疫系の刺激における役割も担い得ることが分かっている[1]。それらの小胞は、生命に関わるいくつかの疾患、例えば、心血管疾患、腎臓疾患、および多数の癌疾患における根本的な役割も担い、かつ特定の疾患に対する直接的な示唆を与えることができる[3〜6]。細胞外小胞は、細胞から周囲媒質中へ放出され、さらには腎臓から排出されるため、体液、例えば、血液、脳脊髄液、ならびに尿中に見出され、それらの体液中で検出可能であり、生検を伴わなくても疾患に関する情報を与えることができる[3、7]。
【0005】
さらなる一利用分野は、癌細胞から分泌される細胞外小胞の利用である。それらの細胞外小胞は、ワクチンとして使用し得る[8]。それにより、一方ではリスク患者の免疫が可能になり、他方では、それを用いて、バイオ医薬品有効成分、例えば、抗体を製造して、治療目的に使用できる。治療目的でのエクソソームの直接利用も検討されている[7]。
【0006】
細胞外小胞の検出および特性化におけるゴールドスタンダードは、電子顕微鏡技術であり、そのうち、クライオ透過型電子顕微鏡法が最高感度の技術である。その方法は、最高解像度、および細胞外小胞のサイズ分布に関する最も正確な記載を提供し、かつ免疫染色により細胞外小胞を特性化することも可能である。不利なことは、試料準備が困難であり、測定はきわめて長時間かかり、かつ方法が全体として非常に高価であることである。さらに、クライオ透過型電子顕微鏡法は、適切に訓練されたスタッフを必要とするため、絶対定量にも日常的診断にも適切でない[9]。
【0007】
細胞外小胞を分析するために最も広く普及している方法は、たいていの場合は希釈試料から、検出器を通り過ぎる際の光学特性に基づいて個々の小胞および細胞を認識してカウントするフローサイトメータ(FCM)である。その標準装備では、フローサイトメータは、光散乱による屈折率をもとにソートしカウントする。散乱強度も、個々の粒子のサイズに関する情報を与えることができるが、不利なことに、検出下限がおよそ400nmにある。改善されたバージョンでは、細胞外小胞をさらに蛍光標識抗体で標識し、光散乱に加えて蛍光シグナルも評価する。その利点は、細胞外小胞を特性化でき、かつサイズ解像限界がおよそ100nmに下がることである。最新のフローサイトメータでは、蛍光シグナルをカメラで撮影し、かつ異なる波長を励起できるため、様々な型の細胞外小胞を検出する可能性が存在する。もっとも、この技術の不利点は、フローにおいて常に、特定の1つの小胞に1つの特性のみが割当て可能であるため、この方法は、手間をかけて除去しなかった限り、媒質に由来する残部も合わせて検出するということにある。その上、解像下限が、画像ベースフローサイトメータの場合でも100nmにある[9]。
【0008】
FCMと組み合わせた抵抗パルス法(RPS)では、電圧が印加される2つの電極間にある細孔を通って、試料溶液が流れる。通過する粒子が、電極間の電気抵抗を高めるため、粒子をカウントできる。そのような方法の達成可能な検出下限は、40nmにあり、かつ孔直径に依存する。細孔が詰まりかねないこと、および不均一サイズ分布を有する試料中のすべての粒子をカウントするために最適な設定を見出すのが困難であり得ることが不利に作用する。その上、この方法では、細胞外小胞を特性化できない[10]。
【0009】
動的光散乱(DLS)も使用される。動的光散乱は、操作が容易であり、かつ最高5〜10nmという検出下限を有するものの、この方法は、細胞外小胞の定量には適切でない。アーチファクトも妨害しかねない[9]。
【0010】
Nanoparticle Tracking Analysis(NTA)では、光散乱を介して、粒子移動を追跡し、カメラで撮影する。獲得されたデータから、サイズ分布およびその濃度に関する結論が得られる。蛍光検出システムを装備する装置も少なからずあり、それらの装置は、標識された細胞外小胞を追跡することも可能にする。しかしながら、不均一サイズ分布の場合、試料を様々な希釈で測定する必要がある。検出下限は、50nmにある[9]。
【0011】
従来技術の方法のいくつかは、エクソソームのサイズ範囲全体ないしは決定的(30〜100nm)サイズ範囲をカバーできないため、細胞外小胞の実際の数が過小評価され、かつ重要な情報が失われる。
【0012】
従来技術による方法の決定的な不利点は、検出を実施可能にするためには、手間をかけて試料を精製する必要があることに基づく。さらに、それらの方法によると、測定した粒子が、エクソソーム、微小粒子ないしは微小小胞であるのか、または試料マトリクスに由来するその他の小胞もしくは粒子であるのか明らかには区別することもできない[11]。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明の課題は、任意の試料、例えば、血漿、血清、尿、脳脊髄液といった体液、さらには細胞培養上清中における細胞外小胞の検出方法を提供することである。
【0014】
本発明のもう1つの課題は、前記検出を行うためのキットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
その課題は、主要請求項に記載の方法および独立請求項に記載のキットによって解決される。それに関する有利な形態は、それぞれ関連特許請求項から判明する。
【0016】
課題は、次のステップ:
a)基板上へ試料をアプライするステップ、
b)細胞外小胞への特異的結合により細胞外小胞を標識する、検出に適切なプローブを添加するステップ、
c)プローブの特異的シグナルの測定により細胞外小胞を検出するステップ
を含み、ステップb)をステップa)の前に行ってもよい
、試料中における細胞外小胞の検出方法によって解決される。
【0017】
そのようにして、本発明の課題が解決される。
【0018】
本発明の一形態では、前記方法は、ステップa)の前に、基板上での、細胞外小胞に対する捕捉分子の固定化を行うことを特徴とする。
【0019】
本発明の、および本発明による方法のさらなる一形態では、細胞外小胞を捕捉分子と接触させることにより、細胞外小胞を捕捉分子への結合により基板上に固定化する。
【0020】
本発明の、および本発明による方法のさらなる一形態では、細胞外小胞をプローブと接触させた後に、非特異的に結合した分子および粒子を、洗浄によって除去する。
【0021】
有利には、細胞外小胞に結合するプローブを選択してもよく、ここで、そのプローブは、例えば、結合後にはじめて特異的シグナルを放出することもできる。
【0022】
細胞外小胞の、捕捉分子およびプローブとの接触は、同時に行ってもよい。
【0023】
細胞外小胞の、プローブとの接触は、捕捉分子との接触の前に行うことも可能である。
【0024】
本方法は、下記のように、有利には、細胞外小胞のサイズ分布の測定を、特に、エクソソームの場合は10〜100nmのサイズ範囲および微小粒子の場合は100〜1000nmに対して可能にする。
【0025】
本方法により、任意の試料中において、かつわずかな細胞外小胞数において、細胞外小胞の検出に成功する。それゆえ、手間をかけて試料を精製する必要なしに個別検出も行える。
【0026】
その上、本方法は、有利には、細胞外小胞の定性的検出、さらには任意の試料中における定量化および特性化も可能にする。それにより、一方では、細胞外小胞数の直接的および絶対的な定量化が保証され、他方では、細胞外小胞のサイズ分布の特性化が、有利なことに保証される。
【0027】
特性化は、さらに、小胞内部のタンパク質、DNAおよびRNAの定量化および同定に基づいて、および/または膜タンパク質に基づいてして行うこともできる。
【0028】
したがって、検出は、簡単なステップにより、任意の試料をじかに用いて行う。用語「任意の試料」とは、異なる添加物を含むバッファー、または培地も意味する。その上、試料は、ex vivoで体液から採取されてもよく、ないしはそのようなものであってもよい。環境からの試料、例えば、水試料、植物試料、および土壌試料、ならびに食料品を直接に検査して、細胞外小胞を検出してもよい。
【0029】
本発明による方法の特別な一変形形態は、捕捉分子に対する少なくとも1つの結合部位とプローブに対する少なくとも1つの結合部位とを含有する細胞外小胞の定量化および/または定性化である。その方法は、次のステップを含む。
【0030】
捕捉分子に対する少なくとも1つの結合部位とプローブに対する少なくとも1つの結合部位とを含有する細胞外小胞を定量化および/または定性化するための方法は、次のステップ:
a)基板上に捕捉分子を固定化するステップ、
b)細胞外小胞を、捕捉分子と接触させるステップ、
c)捕捉分子への結合により、細胞外小胞を基板上に固定化するステップ、
d)細胞外小胞をプローブと接触させるステップ、および
e)非特異的に結合した分子および粒子を、例えば、洗浄によって除去するステップ、
f)プローブが細胞外小胞に結合するステップ、
を含み、
ここで、プローブは、特異的シグナルを放出することができ、ステップb)およびステップd)は同時に行われるか、またはステップd)をステップb)の前に行ってもよい。
【0031】
したがって、ステップc)およびステップf)も有利には、同時に行われ得る。
【0032】
したがって、細胞外小胞を捕捉分子と接触させる前にプローブと接触させる方法のさらなる変形形態では、基板上での、プローブで標識された細胞外小胞の固定化を行う。
【0033】
それゆえ、細胞外小胞を捕捉分子と接触させる前に、プローブを細胞外小胞に結合させて、基板上に固定化する。
【0034】
前記方法のさらなる一変形形態では、細胞外小胞をプローブと接触させた後に試料を、例えば、ホルムアルデヒドにより化学的に固定する。
【0035】
任意選択的に、細胞外小胞にプローブを結合させた後、または結合させる間に、または結合させる前に、さらに、試料をDNAおよびRNAに結合するプローブと混合してもよい。
【0036】
本発明の一形態では、細胞外小胞の膜を透過性にするため、かつ例えば、プローブが細胞外小胞に結合する間に、プローブが細胞外小胞内部へ浸透できるように、化学的な固定後にデタージェント(Detergenz)を使用する。
【0037】
本発明の趣旨では、「定量的測定」とは、まず細胞外小胞の濃度の測定を意味し、それゆえ、つまりその存在および/または不在の測定も意味する。
【0038】
好ましくは、定量的測定が、細胞外小胞の特定型の選択的定量化も意味する。そのような定量化は、適切な特異的プローブを介して検出することができる。
【0039】
本発明の趣旨では、「定性的測定」とは、細胞外小胞の特性化を意味する。
【0040】
検出に有用なおよび/または特異的な1つまたは複数のプローブを用いて細胞外小胞を標識する。そのプローブは、細胞外小胞の結合部位を認識してそこに結合する親和性分子を含有する。その上、プローブは、細胞外小胞に対して親和性の分子または分子部分に共有結合しており、かつ化学的または物理的な方法を利用して検出可能ないしは測定可能である、少なくとも1つの検出用分子(Detektionsmolekuel)または分子部分を含有する。
【0041】
本発明の一形態では、プローブが、異なる検出用分子(または部分)を有する同じ親和性分子または分子部分を有してもよい。もう1つの代案では、異なる検出用分子もしくは部分を有する異なる親和性分子もしくは分子部分を組み合わせるか、または代案として、同じ検出用分子もしくは部分を有する異なる親和性分子もしくは部分を組み合わせてもよい。
【0042】
異なるプローブの混合物も使用可能である。
【0043】
異なる検出用分子または分子部分に結合している複数の異なるプローブの使用は、一方ではシグナル(相関シグナル(Korrelationssignal))の特異性を高め、他方では、1つまたは複数の特徴部分の点で異なる細胞外小胞の同定を可能にする。それが、細胞外小胞の選択的な定量化および特性化を可能にする。
【0044】
一実施形態では、プローブシグナルの空間分解測定(ortsaufgeloeste Bestimmung)、つまり、プローブから放出されるシグナルの空間分解検出を行う。それによると、本発明のその実施形態では、非空間分解シグナルに基づく方法、例えば、ELISAまたはサンドイッチELISAは除外される。
【0045】
検出の際、高い空間分解能が有利である。その際、本発明による方法の一実施形態では、例えば、装置固有ノイズ、別の非特異的シグナル、または非特異的に結合したプローブによって引き起こされるバックグラウンドシグナルの存在下で細胞外小胞の検出が可能になるほどに多数のデータ点を収集する。このやり方で、空間分解イベント、例えば、ピクセルが存在する分と同様に多数の値が読み取られる(リードアウト値)。各イベントは、空間分解能によりそれぞれのバックグラウンドのもとで測定され、つまり、空間分解シグナルを伴わないELISA法に比べて有利である。
【0046】
一実施形態では、プローブシグナルの空間分解測定は、全反射照明蛍光顕微鏡法(total intern reflection fluorescence microscopy)(tirfm)と、数フェムトリットル〜1フェムトリットル未満の範囲、または500nm、好ましくは300nm、特に好ましくは250nm、特に200nmという高さを有する捕捉分子の接触表面積を上回る体積範囲にある、試料の体積と比べて小さい体積要素の試験とに基づく。
【0047】
本発明の趣旨では、エクソソームおよび/または微小粒子を含有するかあるいはエクソソームおよび/または微小粒子からなる群から選択される細胞外小胞を検出する。
【0048】
一実施形態では、基板の材料が、プラスチック、ケイ素および二酸化ケイ素を含有するかまたはプラスチック、ケイ素および二酸化ケイ素からなる群から選択される。好ましい一代案では、基板としてガラスを使用する。
【0049】
本発明のさらなる一実施形態では、捕捉分子が基板に共有結合している。
【0050】
そのためには、一代案において、親水性表面を有する基板を使用する。一代案では、ステップa)の前にもう、基板に親水層を施与することで、それを達成する。それゆえ、捕捉分子が、基板に、ないしは基板にロードされている親水層に、特に共有結合する。
【0051】
親水層は、生体分子反発層(Biomolekuele−abweisende Schicht)であるため、基板への生体分子の非特異的結合が、有利には最低限に抑えられる。その層に、捕捉分子を、好ましくは共有結合で固定化する。その捕捉分子は、細胞外小胞の特徴部分に対して親和性である。捕捉分子はすべて同じであってもよく、または異なる捕捉分子の混合物であってもよい。
【0052】
一代案では、捕捉分子およびプローブとして、同じ分子を使用する。好ましくは、捕捉分子が検出用分子、ないしは検出に適切である分子部分を含まない。
【0053】
一実施形態では、親水層が、ポリエチレングリコール、ポリリジン、好ましくはポリ−D−リジン、およびデキストランまたはその誘導体、好ましくはカルボキシメチルデキストラン(CMD)を含有するかあるいはポリエチレングリコール、ポリリジン、好ましくはポリ−D−リジン、およびデキストランまたはその誘導体、好ましくはカルボキシメチルデキストラン(CMD)からなる群から選択される。本発明の趣旨での誘導体とは、いくつかの置換基の点で親化合物とは異なる化合物であり、ここで、それらの置換基は、本発明による方法に対して不活性である。
【0054】
本発明の一実施形態では、親水層を施与する前に、まず基板表面をヒドロキシル化し、続けてアミノ基で活性化する。アミノ基によるその活性化は、一代案では、基板をAPTES(3−アミノプロピルトリエトキシシラン)、またはエタノールアミンと接触させることによって行う。
【0055】
コーティングに向けて基板を準備するためには、次のステップの1つまたは複数が行われる:
・ ガラス製基板ないしはガラス支持体を、超音波浴またはプラズマクリーナー中で洗浄するステップ、あるいは、ガラス製基板ないしはガラス支持体を、5MのNaOH中で少なくとも3時間インキュベートするステップ、
・ 水ですすぎ、続いて窒素下に乾燥させるステップ、
・ ヒドロキシル基を活性化するために、比率3:1の濃硫酸と過酸化水素の溶液中に浸漬するステップ、
・ 中性pHまで水ですすぎ、続いてエタノールですすぎ、そして窒素雰囲気下に乾燥させるステップ、
・ (好ましくは乾燥トルエン中に)3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)(1〜7%)を含む溶液、またはエタノールアミン溶液中に浸漬するステップ、
・ アセトンまたはDMSOおよび水ですすぎ、窒素雰囲気下に乾燥させるステップ。
【0056】
一代案では、基板を、気相中においてAPTESと接触させる;それゆえ、任意選択的に前処理した基板に、APTESを蒸着させる。
【0057】
デキストラン、好ましくはカルボキシメチルデキストラン(CMD)でコーティングするために、基板を、10mg/mlまたは20mg/mlの濃度のCMD水溶液と、および任意選択的にN−エチル−N−(3−ジメチルアミンプロピル(Dimethylaminpropyl))カルボジイミド(EDC)(200mM)およびN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)(50mM)とインキュベートし、続いて洗浄する。
【0058】
一変形形態では、カルボキシメチルデキストランが、まずヒドロキシル化し、続いてアミノ基で官能基化されたガラス表面に共有結合している。
【0059】
基板としては、好ましくはガラスボトムを有する、マイクロタイタープレートを使用してもよい。ポリスチレンフレームを使用すると、濃硫酸の使用が不可能であるため、本発明の一変形実施形態では、ガラス表面の活性化を相応に行う。
【0060】
その親水層上に、検出すべき細胞外小胞の特徴部分に対して親和性である捕捉分子を、好ましくは共有結合で、固定化する。その特徴部分はタンパク質であってもよい。捕捉分子はすべて同じであるか、または異なる捕捉分子の混合物であってもよい。
【0061】
本発明の一実施形態では、任意選択的に、CMDでコーティングした支持体を、EDC/NHS(200ないしは50mM)の混合物により活性化した後に、捕捉分子、好ましくは抗体を基板上に固定化する。
【0062】
捕捉分子が結合しなかった残りのカルボキシレート末端基は、不活性化することができる。CMDスペーサ上のカルボキシレート末端基のその不活性化のためには、エタノールアミンを使用する。試料をアプライする前に、基板ないしは支持体を、任意選択的にバッファーですすぐ。
【0063】
被測定試料はそのように準備した基板と接触させ、任意選択的にインキュベートする。被検査試料としては、生体特有の液体または組織を使用できる。本発明の一実施形態では、試料を、髄液(CSF)、血液、血漿、および尿から選択する。試料は、当業者には公知の、異なる調製ステップを経由してもよい。
【0064】
本発明の一実施形態では、任意選択的に共有結合を介して、基板、例えば、非コーティング基板上に直接、試料をアプライする。任意選択的に、活性化された基板表面上への結合を行う。
【0065】
本発明の一変形形態では、次の方法ステップの1つまたは複数により、試料の前処理を行う。
・ 水またはバッファーによる希釈、
・ 酵素、例えば、プロテアーゼ、ヌクレアーゼ、リパーゼによる処理、
・ 遠心分離、
・ 沈殿、
・ 場合によっては存在する抗体を排除するための、プローブとの競合。
【0066】
好ましくは試料を直接に、および/または前処理なく基板と接触させる。
【0067】
非特異的に結合した物質は、洗浄ステップにより除去され得る。
【0068】
さらなるステップにおいて、さらなる検出に利用するための1つまたは複数のプローブを用いて、固定化された細胞外小胞を標識する。上記のように、個々のステップは、本発明により、別の順序で行うことも可能である。
【0069】
適切な洗浄ステップにより、細胞外小胞に結合していない過剰のプローブを除去する。
【0070】
方法の一代案では、その過剰のプローブを除去しない。そのため、洗浄ステップが省略され、細胞外小胞−プローブ複合体または細胞外小胞−プローブ結合の解離方向への平衡移動も起きない。空間分解検出により、過剰のプローブは、評価の際に検知されない。
【0071】
一実施形態では、細胞外小胞の結合部位がエピトープであり、捕捉分子およびプローブが抗体および/または抗体部分および/またはその断片である。本発明の一変形形態では、捕捉分子とプローブとが同じであってもよい。
【0072】
本発明の一実施形態では、捕捉分子とプローブとが異なる。つまり、例えば、異なる抗体および/または抗体部分および/または断片を、捕捉分子として、およびプローブとして使用してもよい。本発明のさらなる一実施形態では、あり得る(色素)標識を除くと互いに同じである捕捉分子とプローブとを使用する。
【0073】
本発明のさらなる一形態では、異なるプローブを同時に使用する。
【0074】
本発明のさらなる一代案では、例えば、異なる抗体を含有し、かつ任意選択的に異なる色素標識も有する、少なくとも2つ以上の異なる捕捉分子および/またはプローブを使用する。
【0075】
検出のために、プローブは、蛍光−、バイオルミネセンス−およびケミルミネセンス−発光および吸収からなる群から選択される光学的に検出可能なシグナルを発信するように特徴づけられている。
【0076】
したがって、一代案では、プローブが蛍光色素で標識されている。蛍光色素としては、当業者に公知の色素を使用できる。代案として、GFP(Green Fluorescence Protein)、それらのコンジュゲートおよび/または融合タンパク質、ならびに量子ドットが使用可能である。
【0077】
表面の品質制御のために、例えば、捕捉分子によるコーティングの均等性の検出において、蛍光色素で標識された捕捉分子を使用してもよい。
【0078】
そのためには、好ましくは、細胞外小胞上にあるプローブの蛍光色素の検出を干渉しない色素を使用する。それにより、構成の後からの点検ならびに測定結果の標準化が可能になる。
【0079】
固定化および標識された細胞外小胞の検出は、表面の結像を利用して、例えば、レーザー顕微鏡法により行う。できるだけ高い空間分解能が、多数のピクセルを確定し、それにより、方法の感度ならびに選択性が高まり得る。なぜなら、構造的な特徴部分が合わせて結像され、かつ分析され得るからである。したがって、バックグラウンドシグナル(例えば、非特異的に結合したプローブ)の存在下で特異的シグナルが高められる。
【0080】
検出は、例えば、好ましくは、空間分解式の蛍光顕微鏡法(ortsaufloesender Fluoreszenzmikroskopie)を利用して、TIRF顕微鏡、ならびにその、相応する超解像変種、例えば、STORM、dSTORMにより行う。
【0081】
そのために、本発明の一実施形態では、例えば、レーザースキャン顕微鏡法で使用されるようなレーザー焦点、またはFCS(Fluorescence Correlation Spectroscopy System)、ならびに相応する超解像変種、例えば、STED、PALMまたはSIMを使用する。
【0082】
それらの方法により、ELISAとは異なり、空間分解イベント(例えば、ピクセル)が存在する分と同様に多数のリードアウト値が生じる。異なるプローブの数に応じて、有利にはその情報が何倍にもなる。この数倍化は、各検出イベントに当てはまるため、情報獲得をもたらす。なぜなら、その数倍化は、細胞外小胞に関するさらなる特性、例えば、第2の特徴部分を開示するからである。そのような構成により、各イベントに関してシグナルの特異性が高まり得る。
【0083】
プローブは、個々の細胞外小胞特徴部分の存在、例えば、個々の膜タンパク質が測定結果に影響を及ぼさないように選択してもよい。
【0084】
プローブは、個々の細胞外小胞に関する細胞外小胞種(表現型)を特定できるように選択してもよい。
【0085】
付加的なプローブを、DNA/RNAを含有する細胞外小胞と区別、それゆえ細胞外小胞内部に関する情報を与えられるように選択してもよい。そのためには、例えば、DNA/RNA結合フルオロフォア、例えば、HoechstのDAPIを使用してもよい。
【0086】
評価に向けて、例えば、細胞外小胞の数、そのサイズ、およびその特徴部分を特定するためには、使用され、かつ検出されたすべてのプローブの空間分解情報、例えば、蛍光強度を考慮に入れる。
【0087】
その際、例えば、バックグラウンド最小化の、および/またはさらなる評価用の強度閾値の、ならびにパターン識別のアルゴリズムも適用できる。
【0088】
さらなる画像解析オプションは、例えば、画像情報から、検出された細胞外小胞の数を得るため、さらには粒子サイズを特定できるように、局所的な強度最大値の検索を含む。
【0089】
距離、時間および実験者を越えて、試験結果を互いに比較可能にするためには、内部標準および/または外部標準を使用してもよい。
【0090】
本発明の主題はまた、所定のサイズを有し、かつ好ましくは、検査すべき細胞外小胞の表面特徴部分を共有結合で担持するナノ粒子標準である。
【0091】
前記標準は、好ましくは、シリカナノ粒子であるが、プラスチックでできたナノ粒子も可能である。
【0092】
本発明の主題はまた、次の成分:
− (任意選択的に親水性表面を有する)基板、
− 捕捉分子、
− プローブ、
− 捕捉分子を有する基板、
− 溶液、
− 標準、
− バッファー
の1つまたは複数を含有するキットである。
【0093】
本発明のキットの化合物および/または成分は、容器中に、任意選択的に、バッファーおよび/または溶液と共に/の中に、包装されていてもよい。
【0094】
代案として、いくつかの成分が、同じ容器中に包装されていてもよい。付加的またはその代わりに、成分の1つまたは複数が、固体支持体、例えば、ガラスプレート、チップ、またはナイロン膜上に、またはマイクロタイタープレートのウェル上に吸着されていてもよい。その場合、基板は、そのようなマイクロタイタープレートを含む。
【0095】
さらに、キットは、実施形態のうちの任意の一実施形態用のキットの使用説明書を含有してもよい。
【0096】
キットのさらなる一変形形態では、基板上に、上記の捕捉分子がすでに固定化されている。さらに、キットは、溶液および/またはバッファーを含有してもよい。コーティングおよび/またはその上に固定化された捕捉分子を保護するために、それらが、溶液またはバッファーで覆われていてもよい。
【0097】
本発明のさらなる主題は、任意の試料中において細胞外小胞を検出するための本発明による方法の、細胞外小胞を定量化しそれによって力価測定するための使用である。
【0098】
したがって、有利には、本方法は、疾患、例えば、心血管疾患、腎臓疾患、および癌疾患の検出、免疫応答の検出も提供し得る。本方法は、有効成分開発、細胞外小胞の直接的および絶対的な定量化において、コンパニオン診断(Therapie begleitenden Diagnostik)(target engagement)、鑑別診断、タンパク質−タンパク質相互作用の検出において、および/または細胞外小胞のタイピングにおいて使用できる。
【0099】
本発明のさらなる主題は、細胞外小胞を用いた治療を監視するため、ならびに有効成分および/または治療法の有効性を監視および/または点検するための、本発明による方法の使用である。したがって、本方法は、臨床検査、臨床試験と同様に治療モニタリングにおいても使用できる。そのためには、本発明の方法により、試料を測定して結果を比較する。
【0100】
本発明のさらなる主題は、病的細胞に対する有効成分の有効性を測定するための本発明による方法の実施である。その際、試料中における細胞外小胞の特性化に基づいて結果を互いに比較する。試料は、相応に、有効成分の投与ないしは治療法の実施に先立つないしはその後、または投与ないしは実施後の異なる時間点に採取された体液である。本発明によると、有効成分および/または治療法の対象でなかった対照と、結果を比較する。結果に基づいて、有効成分および/または治療法を選択する。
【0101】
本発明のさらなる主題は、ある者を臨床試験に参加させるかどうかを決定するための、本発明による方法の実施である。そのためには、本発明の方法により試料を測定し、限界値に関して決定を下す。
【0102】
以下では、有利な例示的実施形態としての図面および帰属の測定に基づいて、本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0103】
図1】2つの試料(二重測定;50画像)の平均算出および(強度値16384のうちの4000という)強度フィルタの使用に基づく、顕微鏡写真の定量評価の結果を示す。A)は、705nmでの発光(EM)および633nmでの励起(EX)を示す。このチャネルは、APC色素を表す。B)は、Ex/Em=561/600nmにおいて算出されたピクセル(Pixel)を示す。そのチャネルは、PEおよびmCherry色素を励起し、C)は、Ex/Em=488/600に対してのものである。このチャネルは、PE色素を励起する。試料1は、NEF−mCherryを発現せず、かつPE色素が付いた抗MHC1抗体で処理されたHEK細胞の細胞培養上清である。試料2は、MHC1抗体がAPC色素を担持する以外は試料1に相当する。試料3中には、NEF−mCherry融合タンパク質を発現し、かつ抗MHC1抗体−PEで標識されたHEK細胞の細胞培養上清が存在する。試料4は、抗MHC1抗体がPEの代わりにAPCで標識された以外は試料3に相当する。試料5中では、NEF−mCherry発現細胞の細胞培養上清を、抗体では標識しなかった。A)では、試料1および3が、別の試料とは明らかに異なることが分かる。それらの試料は、APC色素を担持する抗MHC1抗体で処理された。したがって、それらの試料中では、MHC1タンパク質を担持する細胞外小胞を検出することができた。B)では、試料1が、残りの試料よりも少数のピクセルを有することが分かる。その蛍光チャネルで、PE色素とmCherryが励起され、APCは励起されなかったのはそのせいである。この図では、PE(試料2)、および細胞内で発現して細胞外小胞内に包装されるmCherry(試料5)を定量できることが分かる。組み合わせ(試料3および4)も、定量化に適したシグナルを提供する。 C)は、A)と逆の図を示し、PE色素が付いた抗MHC1抗体のみの定量化を可能にする。したがって、この抗体を用いても、細胞外小胞の測定が可能である。
【0104】
NEFとは、エクソソーム中に見出されるタンパク質Negative Regulatory Factorと理解される。mCherryとは、558nmにある吸収極大および583nmにある発光極大を有する蛍光タンパク質と理解される。
【0105】
アッセイの構成:
この実験には、384個の反応チャンバー(RK)およびガラスボトムを有する市販のマイクロタイタープレート(Greiner Bio−one、Sensoplate Plus)を使用した。まず、マイクロタイタープレートの表面を構成した。そのために、トルエン中の5%APTESを含むシャーレが入ったデシケーター中に、プレートを配置した。デシケーターにアルゴンを流し込んで、1時間インキュベートした。次いで、シャーレを取り除き、プレートを2時間、真空中で乾燥させた。乾燥したプレートの反応チャンバー内に、脱イオンHO中の2mMのSC−PEG−CM(MW3400、Laysan Bio)溶液20μlを注入し、4時間、インキュベートした。インキュベーション後に、反応チャンバーを3回、水で洗浄し、続いて、それぞれ20μlの、200mMのEDC水溶液(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、Sigma)および50mMのNHS(N−ヒドロキシスクシンイミド、Sigma)を加えて30分間インキュベートした。プレートを再び3回、脱イオン水で洗浄した。次いで、反応チャンバーを、捕捉分子としての抗CD63抗体および抗MHC1抗体でコーティングした(20μl、PBS中に各抗体5μg/ml、1時間)。続いて、0.1%のTween−20を含むTBSおよびTBSによる、それぞれ3回の洗浄および吸引して空にすること(Leersaugen)からなる洗浄プログラムで処理した。次のステップでは、反応チャンバーに、スマートブロック(Candor Bioscience GmbH)50μlを加えて一晩、室温(RT)においてコーティングし、一晩たった後、再び3回、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン緩衝生理食塩水(TBS、pH=7.4)で洗浄した。次いで、三連で(in dreifacher Ausfuehrung)、それぞれ20μlの試料を反応チャンバーにアプライし、室温において1時間インキュベートした。インキュベーション後に、反応チャンバーを3回、TBSで洗浄し、検出用抗体20μlを加えた。検出用抗体としては、前もって蛍光色素PE(フィコエリトリン)またはAPC(アロフィコシアニン)で標識した抗MHC1抗体を使用した。その検出用抗体を一緒に、各抗体の最終濃度が1.25ng/mlになるようにTBS中に希釈した。反応チャンバーごとに、抗体溶液20μlをアプライし、室温において1h、インキュベートした。1hの経過後、プレートを3回、TBSで洗浄し、プレートにフィルムで封をした。
【0106】
この測定は、TIRF(Total Internal Reflection Fluorescence)顕微鏡(Leica)において、100倍の油浸対物レンズを用いて行った。そのためには、マイクロタイタープレートのガラスボトムに、油浸オイルを十分に塗り付け、プレートを、顕微鏡の自動ステージに装入した。次いで、反応チャンバーごとに5x5の位置におき、2つの蛍光チャネル(Ex/Em=633/715nm、561/600nmおよび488/600nm)で、それぞれ1つの画像を連続的に撮影した。最大レーザー出力(100%)、500msの露光時間、および800というゲイン値を選択した。次いで、画像データを評価した。強度閾値は、チャネルごとに、全強度のおよそ25%グレースケールにセットした。評価ステップでは、まずチャネルごとの各画像に対して、強度閾値を適用し、続いて、同じ位置の画像を、両方の値において互いに比較した。画像ごとに、両方のチャネルにおいて、ちょうど同じ位置でピクセルがそのチャネルの強度閾値を上回るようなピクセルのみを数えた。最後に、各反応チャンバーのすべての画像にわたってピクセル数を平均してから、反復値(Replikatwert)の平均ピクセル数の平均値を求め、標準偏差を指定する。
参考文献:
[1] Thery, C., L. Zitvogel, and S. Amigorena, Exosomes: Composition, biogenesis and function. Nature Reviews Immunology, 2002. 2(8): p. 569−579.
[2] Wang, W. and M.T. Lotze, Good things come in small packages: exosomes, immunity and cancer. Cancer Gene Therapy, 2014. 21(4): p. 139−141.
[3] De Toro, J., et al., Emerging roles of exosomes in normal and pathological conditions: new insights for diagnosis and therapeutic applications. Frontiers in Immunology, 2015. 6.
[4] Carvalho, J. and C. Oliveira, Extracellular Vesicles − powerful markers of cancer EVolution. Frontiers in Immunology, 2015. 5.
[5] Boulanger, C.M., et al., Extracellular vesicles in coronary artery disease. Nature Reviews Cardiology, 2017. 14(5): p. 259−272.
[6] Gamez−Valero, A., et al., Urinary extracellular vesciles as source of biomarkers in kidney diseases. Frontiers in Immunology, 2015. 6.
[7] EL Andaloussi, S., et al., Extracellular vesicles: biology and emerging therapeutic opportunities. Nature Reviews Drug Discovery, 2013. 12(5): p. 348−358.
[8] Benito−Martin, A., et al., The new deal a potentia role for secretec vesicles in innate immunity and tumor progression. Frontiers in Immunology, 2015. 6: p. 1−13.
[9] Erdbrugger, U. and J. Lannigan, Analytical Challenges of Extracellular Vesicle Detection: A Comparison of Different Techniques. Cytometry Part A, 2016. 89a(2): p. 123−134.
[10]Maas, S.L.N., et al., Possibilities and limitations of current technologies for quantification of biological extracellular vesicles and synthetic mimics. Journal of Controlled Release, 2015. 200: p. 87−96.
[11]Saenz−Cuesta, M., M. Mittelbrunn, and D. Otaegui, Editorial: Novel clinical applications of extracellular vesicles. Frontiers in Immunology, 2015. 6: p. 1−2.
[12]Janissen, R., L. Oberbarnscheidt, and F. Oesterhelt, Optimized straight forward procedure for covalent surface immobilization of different biomolecules for single molecule applications. Colloids and Surfaces B−Biointerfaces, 2009. 71(2): p. 200−207.
図1
【国際調査報告】