特表2020-524002(P2020-524002A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エイブリィ セラピューティクス インコーポレイテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-524002(P2020-524002A)
(43)【公表日】2020年8月13日
(54)【発明の名称】三次元組織組成物及び使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/071 20100101AFI20200717BHJP
【FI】
   C12N5/071
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】43
(21)【出願番号】特願2020-519013(P2020-519013)
(86)(22)【出願日】2018年6月15日
(85)【翻訳文提出日】2020年2月17日
(86)【国際出願番号】US2018037882
(87)【国際公開番号】WO2018232323
(87)【国際公開日】20181220
(31)【優先権主張番号】62/521,137
(32)【優先日】2017年6月16日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】519448175
【氏名又は名称】エイブリィ セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ランカスター、ジョーダン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ゴールドマン、スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】コエベリー、ジェニファー ワトソン
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AB01
4B065AC20
4B065BC41
4B065BC50
4B065CA44
(57)【要約】
足場、細胞外マトリックス(ECM)材料、及び場合により線維芽細胞などのECM生成細胞の集団を特徴とする、細胞の増殖、維持及び/又は分化を支援するための操作された組織組成物。組織組成物は、骨格筋、平滑筋、心組織、胃腸組織などに関連する細胞など、目的の特定の細胞型の播種細胞を支持するために使用され得る。播種細胞を有する組織組成物は機能的な組織に発達し得、この機能的な組織は、治療目的の組織移植片、又はインビトロアッセイ用の貴重なモデルを提供する可能性を有し得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織組成物であって、
a.内部に細孔を有する足場であり、前記足場の少なくとも一部は低速分解材料から構成され、前記低速分解材料は、培養又は移植後1カ月以上の時間枠内で再吸収されるか、吸収されるか、又は分解する、前記足場と、
b.前記足場上、又は前記足場上及び前記足場内に配置された細胞外マトリックス(ECM)材料と、
を含む組織組成物。
【請求項2】
前記低速分解材料が、タンパク質、ポリマー又は複数の繊維を含む、請求項1に記載の組織組成物。
【請求項3】
前記組織組成物が、移植中にそれ自体の上に自発的に折り重ならない、請求項1に記載の組織組成物。
【請求項4】
前記足場が、500μm〜1200μmの細孔径を有する、請求項1に記載の組織組成物。
【請求項5】
前記足場の少なくとも一部が、対象への移植後3年までの時間枠内で再吸収性、吸収性又は分解性である、請求項1に記載の組織組成物。
【請求項6】
前記足場の少なくとも一部が、非再吸収性である、請求項1に記載の組織組成物。
【請求項7】
前記組織組成物が、前記ECM中にECM生成細胞をさらに含み、前記ECM生成細胞が生きているか、死んでいるか、又は前記ECM生成細胞の一部が死んでいる、請求項1に記載の組織組成物。
【請求項8】
前記ECM生成細胞が、最初に前記足場上に播種され、続いて前記ECMを生成する、請求項7に記載の組織組成物。
【請求項9】
前記ECMが、前記ECM生成細胞の播種前に前記足場上に堆積される、請求項7に記載の組織組成物。
【請求項10】
前記組織組成物が細胞層を有し、前記細胞層が3〜500細胞層厚である、請求項1に記載の組織組成物。
【請求項11】
前記ECM中又は前記ECM上に播種された播種細胞をさらに含み、前記播種細胞が、幹細胞、胚性幹細胞、胚性幹細胞由来細胞、人工多能性幹細胞由来細胞、前駆細胞、心細胞、骨格筋細胞、平滑筋細胞、肝細胞、膵細胞、肺細胞、骨細胞、臍帯細胞、内皮細胞、中枢神経系細胞、胃腸細胞、内分泌細胞、唾液細胞、間葉系幹細胞、線維芽細胞又は傍分泌細胞である、請求項1に記載の組織組成物。
【請求項12】
前記播種細胞が、スフェロイドとして、又は細胞シートの形態、ゲルの形態若しくは発泡体の形態で播種される、請求項11に記載の組織組成物。
【請求項13】
前記播種細胞が層を形成し、前記層が3つ以上の細胞の厚さである、請求項11に記載の組織組成物。
【請求項14】
前記組織組成物が、1つ以上の機械的パラメーター、電気生理学的パラメーター、化学的パラメーター、生化学的パラメーター又はそれらの組合せについて評価され得る、請求項11に記載の組織組成物。
【請求項15】
前記播種細胞が収縮性細胞であり、前記組織組成物が0〜50bpmの拍動数又は0〜120bpmの拍動数を有する、請求項11に記載の組織組成物。
【請求項16】
前記組織組成物が凍結保存されている、請求項1に記載の組織組成物。
【請求項17】
前記組織組成物が、鉗子又は手で取り扱われた際に構造的完全性を維持する、請求項1に記載の組織組成物。
【請求項18】
組織組成物であって、
a.内部に細孔を有する複数の組換えペプチドから構築された足場と、
b.前記足場上、又は前記足場上及び前記足場内に配置された細胞外マトリックス(ECM)材料と、
を含む組織組成物。
【請求項19】
前記組織組成物が、前記ECM中にECM生成細胞をさらに含み、前記ECM生成細胞が、生きているか、死んでいるか、又は前記ECM生成細胞の一部が死んでいる、請求項18に記載の組織組成物。
【請求項20】
前記ECM中又は前記ECM上に播種された播種細胞をさらに含み、前記播種細胞が、幹細胞、胚性幹細胞、胚性幹細胞由来細胞、人工多能性幹細胞由来細胞、前駆細胞、心細胞、骨格筋細胞、平滑筋細胞、肝細胞、膵細胞、肺細胞、骨細胞、臍帯細胞、内皮細胞、中枢神経系細胞、胃腸細胞、内分泌細胞、唾液細胞、間葉系幹細胞、線維芽細胞又は傍分泌細胞である、請求項18に記載の組織組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年6月16日に出願された米国仮特許出願第62/521,137号明細書の優先権を主張し、その明細書の全体を参照により本明細書に組み込む。
【0002】
本発明は、組織工学に関し、さらに具体的には、1つ以上の細胞型の増殖、分化及び/又は維持を可能にするための三次元の操作された組織組成物に関する。本明細書の組織組成物(tissue compositions)は、インビトロ又はインビボでの使用、例えば、移植又は外科的目的のために構築され得る。本明細書の組織組成物は、短期保存又は長期保存(例えば、凍結保存)に適合され得る。
【背景技術】
【0003】
近年、細胞の増殖、分化及び/又は維持のために、インビボ(例えば、適切な構造及び微小環境)で予測されるものと同様の条件を提供するために、三次元培養物がますます使用されるようになっている。現在、特定の組織を模倣する三次元培養物の開発に多大な努力が注がれている。そのような三次元組織培養物は、例えば、治療目的のため、研究及び試験のための生物学的モデルを作製するためなど、様々な目的のために使用され得る。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、操作された組織組成物(engineered tissue compositions)、例えば、細胞の増殖、維持及び/又は分化などを支援する三次元組織組成物を特徴とする。本明細書の組織組成物は、インビトロ用途及びインビボ用途を含む様々な目的、例えば、疾患又は症状を治療するための外科的移植などの治療目的に使用され得る。
【0005】
例えば、本発明は、足場(本明細書に記載の足場(scaffold))と、足場上、又は足場上及び足場内に配置された細胞外マトリックス(ECM:extracellular matrix)材料とを含む組織組成物を提供する。ECMは、生物由来であり得るか(例えば、ECM生成細胞(ECM−generating cells)によって生成される)、合成由来であり得るか、生物由来の部分及び合成由来の部分を特徴とし得る。組織組成物の他の特徴を以下に説明する。
【0006】
本発明は、足場(本明細書に記載の足場)と、足場上、又は足場上及び足場内に配置された細胞外マトリックス(ECM)材料とを含む組織組成物を提供し、ECMは無細胞である。ECMは、生物由来であり得るか(例えば、ECM生成細胞によって生成される)、合成由来であり得るか、生物由来の部分及び合成由来の部分を特徴とし得る。組織組成物の他の特徴を以下に説明する。
【0007】
本発明はまた、足場(本明細書に記載の足場)と、足場上、又は足場上及び足場内に配置された細胞外マトリックス(ECM)材料及びECM生成細胞とを含む組織組成物を提供する。ECMは、生物由来であり得るか(例えば、ECM生成細胞によって生成される)、合成由来であり得るか、生物由来の部分及び合成由来の部分を特徴とし得る。組織組成物の他の特徴を以下に説明する。
【0008】
本発明はまた、内部に細孔を有する足場(scaffold)と、ここで、足場の少なくとも一部は低速分解材料(slow−degrading material)から構成され、低速分解材料は、細胞培養及び/又は移植の開始後1カ月以上の時間枠内で再吸収されるか、吸収されるか、分解する材料であり(例えば、低速分解材料は、移植後1カ月以内に完全に再吸収されないか、吸収されないか、分解しない)、足場上、又は足場上及び足場内に配置された細胞外マトリックス(ECM)材料とを含む組織組成物を提供する。本発明はまた、内部に細孔を有する足場と、ここで、足場の少なくとも一部は低速分解材料から構成され、低速分解材料は、細胞培養の開始及び/又は移植後2カ月以上の時間枠内で再吸収されるか、吸収されるか、分解する材料であり(例えば、低速分解材料は、移植後2カ月以内に完全に再吸収されないか、吸収されないか、分解しない)、足場上、又は足場上及び足場内に配置された細胞外マトリックス(ECM)材料とを含む組織組成物を提供する。本発明はまた、内部に細孔を有する足場と、ここで、足場の少なくとも一部は低速分解材料から構成され、低速分解材料は、細胞培養及び/又は移植の開始後3カ月以上の時間枠内で再吸収されるか、吸収されるか、分解する材料であり(例えば、低速分解材料は、移植後3カ月以内に完全に再吸収されないか、吸収されないか、分解しない)、足場上、又は足場上及び足場内に配置された細胞外マトリックス(ECM)材料とを含む組織組成物を提供する。本発明はまた、内部に細孔を有する足場と、ここで、足場の少なくとも一部は低速分解材料から構成され、低速分解材料は、細胞培養及び/又は移植の開始後6カ月以上の時間枠内で再吸収されるか、吸収されるか、分解する材料であり(例えば、低速分解材料は、移植後6カ月以内に完全に再吸収されないか、吸収されないか、分解しない)、足場上、又は足場上及び足場内に配置された細胞外マトリックス(ECM)材料とを含む組織組成物を提供する。特定の実施形態では、低速分解材料は、タンパク質、ポリマー又は複数の繊維を含む。特定の実施形態では、組織組成物は、移植中にそれ自体の上に折り重ならない(例えば、それ自体の上に自発的に折り重ならない)。特定の実施形態では、使用者が組織組成物をそれ自体の上に誤って折り重ねた場合(例えば、移植中)、組織組成物はそれ自体の上に折り重なったままでいることができない。特定の実施形態では、足場の少なくとも一部は非再吸収性である。いくつかの実施形態では、組織組成物は細胞層を有し、細胞層は3〜500細胞層厚である。いくつかの実施形態では、組織組成物は、ECM中及び/又はECM上に播種された播種細胞をさらに含み、播種細胞は、幹細胞、胚性幹細胞、胚性幹細胞由来細胞、人工多能性幹細胞由来細胞、前駆細胞、心細胞、骨格筋細胞、平滑筋細胞、肝細胞、膵細胞、肺細胞、骨細胞、臍帯細胞、内皮細胞、中枢神経系細胞、胃腸細胞、内分泌細胞、唾液細胞、間葉系幹細胞、線維芽細胞又は傍分泌細胞である。いくつかの実施形態では、播種細胞は、スフェロイド(spheroids)として、又は細胞シートの形態、ゲルの形態若しくは発泡体の形態で播種される。組織組成物の他の特徴を以下に説明する。
【0009】
本発明はまた、内部に細孔を有する複数の組換えペプチドから構築された足場と、足場上、又は足場上及び足場内に配置された細胞外マトリックス(ECM)材料とを含む組織組成物を提供する。いくつかの実施形態では、組織組成物は、ECM中にECM生成細胞をさらに含み、ECM生成細胞は、生きているか、死んでいるか、又はECM生成細胞の一部は死んでいる。いくつかの実施形態では、組織組成物は、ECM中又はECM上に播種された播種細胞をさらに含み、播種細胞は、幹細胞、胚性幹細胞、胚性幹細胞由来細胞、人工多能性幹細胞由来細胞、前駆細胞、心細胞、骨格筋細胞、平滑筋細胞、肝細胞、膵細胞、肺細胞、骨細胞、臍帯細胞、内皮細胞、中枢神経系細胞、胃腸細胞、内分泌細胞、唾液細胞、間葉系幹細胞、線維芽細胞又は傍分泌細胞である。組織組成物の他の特徴を以下に説明する。
【0010】
本発明はまた、内部に細孔を有する複数の繊維から構築された足場と、足場上、又は足場上及び足場内に配置された細胞外マトリックス(ECM)材料とを含む組織組成物を提供する。本発明はまた、内部に細孔を有する複数の繊維から構築された足場と、足場上、又は足場上及び足場内に配置された細胞外マトリックス(ECM)材料と、ECM中及び/又はECM上に播種された播種細胞とを含む組織組成物を提供する。特定の実施形態では、播種細胞は、幹細胞、人工多能性幹細胞由来細胞、前駆細胞、心細胞、骨格筋細胞、平滑筋細胞、肝細胞、膵細胞、肺細胞、骨細胞、臍帯細胞、内皮細胞、中枢神経系細胞、胃腸細胞、内分泌細胞、間葉系幹細胞、線維芽細胞、唾液細胞又は傍分泌細胞である。組織組成物の他の特徴を以下に説明する。
【0011】
本発明はまた、内部に細孔を有する複数の組換えペプチド、又は内部に細孔を有する複数のタンパク質、又は内部に細孔を有する複数のポリマーから構築された足場と、足場上、又は足場上及び足場内に配置された細胞外マトリックス(ECM)材料とを含む組織組成物を提供する。本発明はまた、内部に細孔を有する複数の組換えペプチド、又は内部に細孔を有する複数のタンパク質、又は内部に細孔を有する複数のポリマーから構築された足場と、足場上、又は足場上及び足場内に配置された細胞外マトリックス(ECM)材料と、ECM中及び/又はECM上に播種された播種細胞とを含む組織組成物を提供する。特定の実施形態では、播種細胞は、幹細胞、人工多能性幹細胞由来細胞、前駆細胞、心細胞、骨格筋細胞、平滑筋細胞、肝細胞、膵細胞、肺細胞、骨細胞、臍帯細胞、内皮細胞、中枢神経系細胞、胃腸細胞、内分泌細胞、間葉系幹細胞、線維芽細胞、唾液細胞又は傍分泌細胞である。組織組成物の他の特徴を以下に説明する。
【0012】
本発明はまた、内部に細孔を有する複数の繊維、又は内部に細孔を有する複数の組換えペプチド、又は内部に細孔を有する複数のタンパク質、又は内部に細孔を有する複数のポリマーから構築された足場と、足場上、又は足場上及び足場内に配置された細胞外マトリックス(ECM)材料とを含む組織組成物を提供する。本発明はまた、内部に細孔を有する複数の繊維、又は内部に細孔を有する複数の組換えペプチド、又は内部に細孔を有する複数のタンパク質、又は内部に細孔を有する複数のポリマーから構築された足場と、足場上、又は足場上及び足場内に配置された細胞外マトリックス(ECM)材料と、ECM中及び/又はECM上に播種された播種細胞とを含む組織組成物を提供する。特定の実施形態では、播種細胞は、幹細胞、人工多能性幹細胞由来細胞、前駆細胞、心細胞、骨格筋細胞、平滑筋細胞、肝細胞、膵細胞、肺細胞、骨細胞、臍帯細胞、内皮細胞、中枢神経系細胞、胃腸細胞、内分泌細胞、間葉系幹細胞、線維芽細胞、唾液細胞又は傍分泌細胞である。組織組成物の他の特徴を以下に説明する。
【0013】
本発明はまた、内部に細孔を有する複数の繊維、又は内部に細孔を有する複数の組換えペプチド、又は内部に細孔を有する複数のタンパク質、又は内部に細孔を有する複数のポリマーから構築された足場と、足場上、又は足場上及び足場内に配置された細胞外マトリックス(ECM)材料と、ECM中及び/又はECM上に播種された播種細胞とを含む組織組成物を提供し、播種細胞は心筋細胞である。特定の実施形態では、組織組成物は、0〜120bpmの拍動数(beat rate)を有する。特定の実施形態では、組織組成物は、0〜60bpmの拍動数を有する。特定の実施形態では、組織組成物は、0〜50の拍動数を有する。特定の実施形態では、組織組成物に薬物若しくは溶液又は他の生成物を適用して、特定の拍動数、例えば、0〜60、0〜50などの拍動数を達成する。特定の実施形態では、心筋細胞は、組織組成物の面積の3〜60%、又は組織組成物の体積の3〜60%、又は組織組成物中の細胞材料の体積の3〜60%を構成する。組織組成物の他の特徴を以下に説明する。
【0014】
本発明はまた、内部に細孔を有する複数の繊維、又は内部に細孔を有する複数の組換えペプチド、又は内部に細孔を有する複数のタンパク質、又は内部に細孔を有する複数のポリマーから構築された足場と、足場上、又は足場上及び足場内に配置された細胞外マトリックス(ECM)材料と、ECM中に播種された播種細胞とを含む組織組成物を提供し、播種細胞は骨格筋細胞である。本発明はまた、内部に細孔を有する複数の繊維、又は内部に細孔を有する複数の組換えペプチド、又は内部に細孔を有する複数のタンパク質、又は内部に細孔を有する複数のポリマーから構築された足場と、足場上、又は足場上及び足場内に配置された細胞外マトリックス(ECM)材料と、ECM中に播種された播種細胞とを含む組織組成物を提供し、播種細胞は肝細胞である。本発明はまた、内部に細孔を有する複数の繊維、又は内部に細孔を有する複数の組換えペプチド、又は内部に細孔を有する複数のタンパク質、又は内部に細孔を有する複数のポリマーから構築された足場と、足場上、又は足場上及び足場内に配置された細胞外マトリックス(ECM)材料と、ECM中に播種された播種細胞とを含む組織組成物を提供し、播種細胞は胃腸細胞である。本発明はまた、内部に細孔を有する複数の繊維、又は内部に細孔を有する複数の組換えペプチド、又は内部に細孔を有する複数のタンパク質、又は内部に細孔を有する複数のポリマーから構築された足場と、足場上、又は足場上及び足場内に配置された細胞外マトリックス(ECM)材料と、ECM中に播種された播種細胞とを含む組織組成物を提供し、播種細胞は膵細胞である。本発明はまた、内部に細孔を有する複数の繊維、又は内部に細孔を有する複数の組換えペプチド、又は内部に細孔を有する複数のタンパク質、又は内部に細孔を有する複数のポリマーから構築された足場と、足場上、又は足場上及び足場内に配置された細胞外マトリックス(ECM)材料と、ECM中に播種された播種細胞とを含む組織組成物を提供し、播種細胞は臍帯細胞又は臍帯血細胞である。本発明はまた、内部に細孔を有する複数の繊維、又は内部に細孔を有する複数の組換えペプチド、又は内部に細孔を有する複数のタンパク質、又は内部に細孔を有する複数のポリマーから構築された足場と、足場上、又は足場上及び足場内に配置された細胞外マトリックス(ECM)材料と、ECM中に播種された播種細胞とを含む組織組成物を提供し、播種細胞は平滑筋細胞である。組織組成物(tissue compositions)の他の特徴を以下に説明する。
【0015】
本発明はまた、細孔を有するスポンジ様構成を形成する複数の組換えペプチドから構築された足場と、足場上、又は足場上及び足場全体に配置されたECM材料とを含む組織組成物を提供する。特定の実施形態では、いくつかの細孔が重なり合っている。特定の実施形態では、細孔は密集している。特定の実施形態では、組換えペプチドはI型コラーゲンである。特定の実施形態では、組換えペプチドは、細胞外マトリックス材料に見られるペプチドの1つ又は組合せである。
【0016】
本発明はまた、本明細書に記載の少なくとも足場及びECMを含む組織組成物を提供し、組織組成物は、閉鎖培養系内にある(例えば、閉鎖培養系内で増殖し、閉鎖培養系内で維持され、閉鎖培養系内で保存され、例えば、閉鎖培養系内で凍結保存される(cryopreserved))。
【0017】
本発明はまた、本明細書に記載の少なくとも足場及びECMを含む組織組成物を提供し、組織組成物は、例えば、−80℃〜−196℃、−90℃〜−196℃などの凍結保存状態にある。特定の実施形態では、組織組成物は、少なくとも3日、少なくとも7日、少なくとも14日、少なくとも21日、少なくとも60日、少なくとも3カ月、少なくとも6カ月、少なくとも1年、少なくとも2年などにわたり凍結保存状態にあり得る。
【0018】
以下の特徴は、先に提供された前述の組織組成物のいずれかに、又は本明細書に記載の組織組成物のいずれかに、又は本明細書に記載の方法のいずれかに適用され得る。
【0019】
いくつかの実施形態では、足場上に対するその堆積の前にECMが生成される。ECMは無細胞であってよく、例えば、いくつかの実施形態では、ECMはいずれも合成由来である。いくつかの実施形態では、ECMは、生物由来であり(例えば、ECM生成細胞によって生成され)、続いて脱細胞化される。いくつかの実施形態では、ECMは生物由来であり(例えば、ECM生成細胞により生成され)、ECM及びECM生成細胞は足場上に播種される。いくつかの実施形態では、ECM生成細胞は足場上に播種され、ECM生成細胞は続いてECMを生成する。
【0020】
いくつかの実施形態では、ECM生成細胞は生細胞である。いくつかの実施形態では、ECM生成細胞は死細胞である。いくつかの実施形態では、ECM生成細胞の一部は死んでいる。例えば、いくつかの実施形態では、ECM生成細胞の少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%が死んでいる。特定の実施形態では、足場内のECM生成細胞の密度は、5x10細胞/cm〜5x10細胞/cmである。いくつかの実施形態では、ECM生成細胞は、1つ以上の遺伝子を発現するように遺伝子改変されている。
【0021】
いくつかの実施形態では、足場(又はその一部)は、移植後4週間以上の時間枠内で分解する材料、例えば、移植後4週間以上の時間枠内で吸収性/再吸収性/分解性である足場の部分から構築される。いくつかの実施形態では、足場(又はその一部)は、移植後1カ月以上の時間枠内で分解する材料、例えば、移植後1カ月以上の時間枠内で吸収性/再吸収性/分解性である足場の部分から構築される。いくつかの実施形態では、足場(又はその一部)は、移植後6週間以上の時間枠内で分解する材料、例えば、移植後6週間以上の時間枠内で吸収性/再吸収性/分解性である足場の部分から構築される。いくつかの実施形態では、足場(又はその一部)は、移植後8週間以上の時間枠内で分解する材料、例えば、移植後8週間以上の時間枠内で吸収性/再吸収性/分解性である足場の部分から構築される。いくつかの実施形態では、足場(又はその一部)は、移植後3カ月以上の時間枠内で分解する材料、例えば、移植後3カ月以上の時間枠内で吸収性/再吸収性/分解性である足場の部分から構築される。いくつかの実施形態では、足場(又はその一部)は、移植後4カ月以上の時間枠内で分解する材料、例えば、移植後4カ月以上の時間枠内で吸収性/再吸収性/分解性である足場の部分から構築される。いくつかの実施形態では、足場(又はその一部)は、移植後6カ月以上の時間枠内で分解する材料、例えば、移植後6カ月以上の時間枠内で吸収性/再吸収性/分解性である足場の部分から構築される。
【0022】
ECM生成細胞は、線維芽細胞、例えば、iPSC由来線維芽細胞、胚性幹細胞由来線維芽細胞、臓器由来線維芽細胞(例えば、真皮線維芽細胞)などであり得る。特定の実施形態では、ECM生成細胞は非線維芽細胞である。
【0023】
足場に関して、足場は、繊維間に配置された複数の細孔を有する複数の繊維から構築されてもよい。特定の実施形態では、足場は、複数のタンパク質又はタンパク質のネットワークから構成される。いくつかの実施形態では、足場は、複数のポリマー又はポリマーのネットワークから構成される。特定の実施形態では、足場は、複数の組換えペプチド又は組換えペプチドのネットワークから構成される。特定の実施形態では、組換えペプチドはI型コラーゲンである。特定の実施形態では、組換えペプチドは、ECM関連ペプチドの1つ又は組合せである。特定の実施形態では、スポンジ様構成又はフィルム様構成のための組換えペプチド。いくつかの実施形態では、細孔は、50μm〜500μmの直径を有する。いくつかの実施形態では、細孔は、50μm〜1000μmの直径を有する。細孔は、足場全体に不均一に配置されてもよい。特定の実施形態では、足場の少なくとも一部は、対象への移植後3年までの時間枠内で再吸収性、吸収性又は分解性である。特定の実施形態では、ECMは、細孔の少なくとも80%を埋める。組織組成物は、平坦な配向で存在することができ得る。特定の実施形態では、組織組成物はカールすることができる。特定の実施形態では、組織組成物中の細胞層は、3〜500細胞層厚である。特定の実施形態では、足場は少なくとも50μmの厚さである。いくつかの実施形態では、組織組成物は200〜1000μmの厚さである。
【0024】
組織組成物は、足場及び/又はECMの上又は内部に播種された播種細胞を特徴とし得る。特定の実施形態では、播種細胞は溶液として播種される。特定の実施形態では、播種細胞はスフェロイドとして播種される。特定の実施形態では、播種細胞は、細胞シートの形態で播種される。特定の実施形態では、播種細胞はゲルの形態で播種される。特定の実施形態では、播種細胞は、発泡体の形態で播種される。いくつかの実施形態では、播種細胞は、幹細胞(例えば、間葉系幹細胞)、人工多能性幹細胞由来細胞、前駆細胞、最終分化細胞(例えば、肝実質細胞、β細胞、内胚葉細胞、平滑筋細胞、骨格筋細胞、唾液細胞、上皮細胞、内皮細胞、心筋細胞又はそれらの組合せ)又はそれらの組合せである。
【0025】
播種細胞は層を形成してもよく、層は、3つ以上の細胞の厚さ、4つ以上の細胞の厚さ、5つ以上の細胞の厚さなどである。播種細胞は、疾患状態又は変異状態の組織に由来してもよい。播種細胞は、遺伝子改変されてもよく、例えば、1つ以上の遺伝子を発現するように改変されてもよい。
【0026】
組織組成物は、0〜50bpmの拍動数を有してもよい。組織組成物は、0〜120bpmの拍動数を有してもよい。
【0027】
特定の実施形態では、組織組成物は、1つ以上の機械的パラメーター、電気生理学的パラメーター、化学的パラメーター、生化学的パラメーター又はそれらの組合せについて評価され得る。機械的パラメーター又は電気生理学的パラメーターには、限定するものではないが、収縮率、収縮/弛緩速度、一定の収縮力、一定でない収縮力、変位速度、変位力、インパルスの方向性、インパルスの速度、電場電位、振幅、捕捉閾値、変時反応、刺激後の興奮順序、機能的ギャップ結合形成、電気的ペーシングに対する応答、電場電位振幅、伝導速度、伝播パターン、ギャップ結合分析、酸素消費又はそれらの組合せが挙げられ得る。
【0028】
前述のように、組織組成物は凍結保存されてもよい。組織組成物は、凍結保存され、続いて解凍された場合、その構造的完全性を保持し得る。組織組成物は、遠心分離され、その構造的完全性を保持し得る。組成物は、鉗子又は手で取り扱われた場合、その構造的完全性を維持し得る。
【0029】
本発明はまた、本明細書の組織組成物を生成又は製造する方法を提供する。該方法は、足場、ECM、細胞、及び本明細書に記載の他の材料又は特徴のいずれかの使用を特徴とし得る。いくつかの実施形態では、該方法は、足場に細胞外マトリックス(ECM)材料を適用することと、ECM中に播種細胞の集団を播種することとを含み得る。いくつかの実施形態では、該方法は、足場に細胞外マトリックス(ECM)材料を適用することと、足場内のECM上及び/又はECM中にECM生成細胞の集団を播種することと、ECM上及び/又はECM中に播種細胞の集団を播種することとを含む。いくつかの実施形態では、該方法は、足場に細胞外マトリックス(ECM)生成細胞を適用することと、上記ECM生成細胞を培養して足場内にECMを生成することとを含む。次いで、播種細胞の集団が、ECM上及び/又はECM中に播種されてもよい。
【0030】
前述の方法に関して、いくつかの実施形態では、足場上に対するその堆積の前にECMが生成される。ECMは無細胞であってよい。特定の実施形態では、ECMは脱細胞化されている。いくつかの実施形態では、ECMは、ECM生成細胞によって生成される。いくつかの実施形態では、ECMは合成由来である。いくつかの実施形態では、ECMの一部は生物学的に生成され、一部は合成的に生成される。いくつかの実施形態では、ECMにECM生成細胞を播種し、これを一定期間培養し、続いてECMを生成させる。いくつかの実施形態では、足場にECMを加え、続いてECM生成細胞を加える。組織組成物は、生きたECM生成細胞、死んだECM生成細胞又はそれらの組合せを特徴とし得る。ECM及び/又はECM生成細胞は、足場内の細孔の一部を埋める。
【0031】
組織組成物は、播種細胞を特徴とし得る。播種細胞は、使用前に一定期間培養されてもよい。いくつかの実施形態では、播種細胞は、使用前に一定期間培養されない。ECM生成細胞は、播種細胞の播種前に一定期間培養されてもよい。いくつかの実施形態では、播種細胞は、細胞を分化させるために培養され、例えば、増殖因子又は分化因子が培養時に加えられ得る。いくつかの実施形態では、播種細胞(又はECM生成細胞)は、細胞を増殖させるために培養され、例えば、特定の増殖因子が培養時に加えられ得る。
【0032】
いくつかの実施形態では、該方法は、ECM生成細胞を播種すること、及び/又は播種細胞を播種することを特徴とする。これは、足場に細胞(例えば、ECM生成細胞、播種細胞)を適用し、細胞及び足場を遠心分離すること、足場に細胞(例えば、ECM生成細胞、播種細胞)を適用し、細胞及び足場を揺動させること、足場に細胞(例えば、ECM生成細胞、播種細胞)を適用し、重力により足場に細胞を移動させること、スプレー中などの方向性のある力を用いて細胞を適用することなどを含み得る。細胞は、スフェロイドとして、細胞シートの形態で、ゲルの形態で、発泡体の形態などで懸濁液に播種されてもよい。細胞シートは、温度感受性プレート、低付着性プレート、又は選択された時間に細胞の剥離を可能にする組成物を含むプレート上に細胞を播種することにより生成されてもよい。剥離を可能にする組成物は、被覆リポソーム、例えば、金被覆リポソーム、調整されたリポソーム、光活性化リポソーム、RGDリガンドを含むリポソームなどを含んでもよい。
【0033】
いくつかの実施形態では、足場又はECMは、ECM生成細胞の播種中に足場及び/又はECMにECM生成細胞及び/又は播種細胞を付着させるのに役立つ付着因子を含む。付着因子には、リガンド、抗体、磁気ビーズ、リポソーム、足場にECM生成細胞を誘引又は付着させる材料により被覆されたリポソーム、又はそれらの組合せが挙げられ得る。いくつかの実施形態では、付着因子は発泡体である。
【0034】
本発明はまた、収縮性組成物、例えば、収縮することができる心筋細胞などの細胞を特徴とする組織組成物の拍動数を低下させる方法を提供する。該方法は、組織組成物に薬物又は他の組成物を適用することを特徴とし得、薬物又は組成物は組織組成物の拍動数を低下させる。本発明はまた、組織組成物の代謝率を低下させる方法を提供する。該方法は、組織組成物に薬物又は他の組成物を適用することを特徴とし得、薬物又は組成物は組織組成物の代謝率を低下させる。いくつかの実施形態では、薬物又は組成物は組織組成物の拍動数を低下させ、それにより代謝率を低下させる。前述の方法は、輸送中の組織組成物の安定性を改善し得る。該方法は、移植中の組織組成物の安定性及び/又は寿命又は生存率を改善し得る。該方法は、組織組成物の温度を変化させて、組織組成物の拍動数又は代謝率を低下させることを特徴とし得る。
【0035】
本発明はまた、それを必要とする対象に組織組成物を移植する方法を特徴とする。組織組成物は、特定の拍動数、例えば、0〜50bpm、10〜50bpm、0〜40bpm、50〜120bpm、0〜120bpmなどの拍動数で移植されてもよい。
【0036】
本発明はまた、それを必要とする対象に対する本発明の組織組成物の移植を特徴とする、疾患又は症状を治療する方法を提供する。
【0037】
本発明はまた、本明細書に記載の方法のいずれかによって生成される組織組成物を提供する。
【0038】
本明細書に記載されるいかなる特徴又は特徴の組合せも、そのようないかなる組合せに含まれる特徴が、文脈、本明細書、及び当業者の知識から明らかなように相互に矛盾しない限り、本発明の範囲内に含まれる。本発明のさらなる利点及び態様は、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲において明らかである。
【0039】
本発明の特徴及び利点は、添付の図面に関連して提示される以下の詳細な説明の考察から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本明細書の三次元組織組成物を構成する成分の非限定的な例を示す。
【0041】
図2】本明細書の三次元組織組成物に使用され得る足場の特徴の非限定的な例を示す。
【0042】
図3A】繊維束の間の、及び繊維束を囲む細胞及び細胞外マトリックス(ECM)を示す。画像は組織組成物の断面である。繊維束は、増殖性細胞の付着及び増殖を支援する。増殖性細胞、この場合、線維芽細胞は、増殖し、ECMを生成して細孔を埋め、細孔全体にわたる追加の細胞型の付着及び増殖のための追加の支持構造を提供する。これにより、機能的な組織をもたらすことができる。
【0043】
図3B】ヒト真皮線維芽細胞によって埋められ、iPSC由来心筋細胞が局所的に播種された組換えペプチド足場(コラーゲンI)を示す。線維芽細胞は足場の細孔を貫通する。心筋細胞は層状培養物の表面に存在する。
【0044】
図3C】ヒト真皮線維芽細胞によって埋められ、iPSC由来心筋細胞が局所的に播種された組換えペプチド足場(コラーゲンI)を示す。線維芽細胞は足場の細孔を貫通する。心筋細胞は層状培養物の表面に存在する。
【0045】
図3D】ヒト真皮線維芽細胞が局所的に播種された組換えペプチド足場(コラーゲンI)(「中空」足場)を示す。線維芽細胞は足場を埋め込まず、むしろ上部及び下部に細胞の層を形成する。片側はまた、層状培養物内にiPSC由来心筋細胞を含む。
【0046】
図3E】ポリグリコール酸(PGA)及びトリメチレンカーボナート(TMC)から作製された足場上に播種された線維芽細胞及び心筋細胞を含む組織組成物(倍率20倍)を示す。
【0047】
図3F】ポリグリコール酸(PGA)から作製された足場上に播種された線維芽細胞及び心筋細胞を含む組織組成物(倍率20倍)を示す。
【0048】
図4】24時間(左上パネル)、14日間(右上パネル)、17日間(左下パネル)及び28日間(右下パネル)の時点での組織組成物の画像を示す。細孔は経時的に埋まる。図4はまた、ヒト新生児真皮線維芽細胞(HDF)の形態の経時的な変化を示している。17日間の時点で、HDFの紡錘形形態が長くなっている。28日間までに、細胞集団が均質になり、細胞の集団は紡錘形形態を示さず、代わりに小石状形態を示す。本発明は、図4に記載された形態変化の時間枠に限定されない。例えば、長い紡錘形形態は、17日間未満、例えば、14日間以下、10日間以下、8日間以下、5日間以下などの時間で形成され得、小石状形態は、28日間未満、例えば、24日間以下、20日間以下、18日間以下、16日間以下、14日間以下、12日間以下、10日間以下などの時間で形成され得る。形態変化が生じるのに要する時間は、製造方法に依存し得る。
【0049】
図5】本明細書の三次元組織組成物に使用される細胞外マトリックス(ECM)の特徴の非限定的な例を示す。ECMの特徴は、組織組成物の剛性、細孔径、細胞増殖、細胞配向などに影響を及ぼし得ることに留意されたい。
【0050】
図6】本明細書の三次元組織組成物に使用され得る播種細胞(細胞の単一集団、又は細胞集団の組合せを含み得る)の特徴の非限定的な例を示す。
【0051】
図7A】H&E(左パネル)及びトリクローム(右パネル)により染色された、本発明の組織組成物の心細胞層を示す(例2を参照)。本発明の組織組成物中で心筋前駆細胞(CPC)を培養した。最終分化心筋細胞とは対照的に、心筋前駆細胞は増殖性であり、細胞の厚い層、例えば、約20〜100の細胞の厚さを生じる。
【0052】
図7B】慢性心不全(CHF)の齧歯類モデルに図7Aの移植片(組織組成物)を移植した後の心室前壁の画像を示す。Massonのトリクローム染色を用いて、未処置のCHFラット(左パネル)及び心筋前駆細胞移植片により処置したCHFラット(右パネル)の左心室断面分析を行った。未処置のCHFラットの方が左心室前壁が薄く、例えば、生存する筋細胞がほとんどない瘢痕領域を有する。心筋前駆細胞移植片による処置後、陽性赤色染色の増加により示される筋細胞密度の増加とともに、前壁/瘢痕は厚くなる。
【0053】
図7C】慢性心不全(CHF)の齧歯類モデルに図7Aの移植片(組織組成物)を移植した後の拡張期圧容量関係曲線を示す。CHF、n=9;CPC.a及びCPC.b、n=4の各群に対して、エクスビボ拡張期圧容量関係曲線を実施した。CPC.a及びCPC.bの両移植片は、圧容量関係を正常に戻す。このように、移植片により処置した動物は、所定の容量に対して比較的低いLV拡張終期圧(EDP)を示した。この比較的低いEDPは、患者の息切れなどの心不全の症状に有益な効果を及ぼすと想定される。さらに、これらのデータは、この例では、カーディオ−リストリクション(cardio−restriction)などの移植片移植の負の結果がなかったことを示している。データは平均値±標準誤差である。CHF=慢性心不全、CPC=心筋前駆細胞。
【0054】
図8A】本発明の組織組成物(例3に記載)の10倍拡大顕微鏡写真を示し、ここで、hiPSC−CM及びhNDFは生体吸収性メッシュの細孔を埋める。メッシュ繊維は白い矢印によって示されている。細胞はメッシュの細孔を埋め、自発的かつ同期的に拍動するインタクトなシンシチウムを生成し、外科医はこれを容易に扱うことができる。
【0055】
図8B】例3で使用した組織組成物に対する凍結保存の効果を示す。新鮮対解凍後2、20及び40日の収縮率を記録した。先に凍結した組織組成物(hiPSC−CM移植片)の収縮率の方がわずかに遅かったが、組織組成物は依然として同期的かつ自発的な収縮を示した。新鮮、n=6;2、20、40日、n=1。
【0056】
図8C】例3の組織組成物(hiPSC−CM移植片)の移植後3及び7週間の時点で実施された心エコー評価を示す。組織組成物は、CHF対照と比較してLVサイズ及び体積を減少させる。データは3〜7週間の変化率の平均値±標準誤差である。*は、CHFとhiPSC−CM移植片との統計的有意差(p<0.05)を示す。CHF、n=6;hiPSC−CM移植片、n=10。
【0057】
図8D】エクスビボ圧容量関係がランゲンドルフ調製物を介して実施されたことを示す。CHFは、圧容量関係を右に移動させる。例3の組織組成物(hiPSC−CM移植片)による治療は、圧容量曲線を血圧軸に向かって左に移動させる。左方向に移動すると、拡張終期の作動圧が低下する。シャム、n=6;CHF、n=6;hiPSC−CM移植片、n=2。
【発明を実施するための形態】
【0058】
<用語>
他に説明されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、開示された発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。単数形の用語「a」、「an」及び「the」は、文脈がそうでないことを明確に示していない限り、複数の指示対象を含む。同様に、語句「又は」は、文脈がそうでないことを明確に示していない限り、「及び」を含むことが意図される。用語「含む(comprising)」は、提示される定義された要素に加えて他の要素も存在し得ることを意味する。「含む(comprising)」の使用は、限定ではなく包含を示す。すなわち、用語「含む(comprising)」は、「主に含むが、必ずしもそれだけではない」ことを意味する。さらに、語句「含む(comprising)」の変形、例えば、「含む(comprise)」及び「含む(comprises)」は、対応して同じ意味を有する。1つの観点では、本発明にとって不可欠な、本明細書に記載の組成物、方法及びそのそれぞれの構成要素に関連する本明細書に記載の技術は、不可欠であろうとなかろうと、特定されていない要素の包含も受け入れる(「含む(comprising)」)。
【0059】
本明細書に開示されるすべての実施形態は、文脈がそうでないと明確に指示しない限り、他の実施形態と組み合わせることができる。
【0060】
本開示の実施形態の実施及び/又は試験に適した方法及び材料を以下に説明する。そのような方法及び材料は例示にすぎず、限定することを意図していない。本明細書に記載されるものと類似又は同等の他の方法及び材料を使用することができる。例えば、本開示が関係する技術分野で周知の従来の方法は、例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989; Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3d ed.,Cold Spring Harbor Press,2001;Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates,1992(and Supplements to 2000);Ausubel et al.,Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,4th ed.,Wiley & Sons,1999;Harlow and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1990;and Harlow and Lane,Using Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1999,Gene Expression Technology(Methods in Enzymology,Vol.185,edited by D.Goeddel,1991.Academic Press,San Diego,Calif.),“Guide to Protein Purification” in Methods in Enzymology (M.P.Deutshcer,ed.,(1990) Academic Press,Inc.);PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications(Innis,et al.1990.Academic Press,San Diego,Calif.),Culture of Animal Cells:A Manual of Basic Technique,2nd Ed.(R.I.Freshney.1987.Liss,Inc.New York,N.Y.),Gene Transfer and Expression Protocols,pp.109−128,ed.E.J.Murray,The Humana Press Inc.,Clifton,N.J.),and the Ambion 1998 Catalog(Ambion,Austin,Tex.)を含む様々な一般的かつさらに具体的な参考文献に記載されており、その開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0061】
本明細書で言及されるすべての刊行物、特許出願、特許及び他の参考文献は、あらゆる目的のために参照によりその全体が組み込まれる。矛盾がある場合、用語の説明を含め、本明細書が優先される。
【0062】
本明細書に記載のものと類似又は同等の方法及び材料を使用して、開示された技術を実施又は試験することができるが、好適な方法及び材料を以下に説明する。材料、方法及び例は例示にすぎず、限定することを意図していない。
【0063】
本開示の様々な実施形態の概説を容易にするために、特定の用語について以下の説明を提供する。
【0064】
用語「前駆細胞(progenitor cell)」は、分化によって生じ得る細胞よりも原始的な(例えば、完全に分化した細胞よりも発生経路又は進行の初期段階にある)細胞表現型を有する細胞を指す。多くの場合、前駆細胞は、顕著な、又は非常に高い増殖能も有する。前駆細胞は、発生経路、並びに細胞が発生及び分化する環境に応じて、複数の異なる分化細胞型又は単一の分化細胞型を生じさせることができる。
【0065】
本明細書で使用される用語「幹細胞(stem cell)」は、増殖することができ、次いで、分化した、又は分化可能な娘細胞を生じることができる多数の母細胞を生じる能力を有するさらに多くの前駆細胞を生じさせることができる未分化細胞を指す。娘細胞自体を増殖させ、子孫を生じさせ、その後、親の発生能を有する1つ以上の細胞を保持しながら、この子孫を1つ以上の成熟細胞型に分化させることができる。用語「幹細胞」は、特定の状況下でさらに特殊化又は分化した表現型に分化する能力又は可能性を有し、特定の状況下で実質的に分化することなく増殖する能力を保持する前駆細胞のサブセットを指す。一実施形態では、幹細胞という用語は、一般に、胚細胞及び組織の漸進的多様化に見られるように、分化によって、例えば完全に個々の特性を獲得することによって、多くの場合異なる方向にその子孫(descendant)(子孫(progeny))が特殊化する自然発生の母細胞を指す。細胞分化とは、典型的に多くの細胞分裂を通じて発生するプロセスである。分化した細胞は、それ自体が多能性細胞などに由来する多能性細胞に由来し得る。これらの多能性細胞の各々は幹細胞と考えられ得るが、各々が生じさせ得る細胞型の範囲は大幅に変動し得る。分化した細胞の中には、発生能の高い細胞を生じさせる能力を有するものもある。そのような能力は、自然であってもよいか、様々な因子を用いて処理して人工的に誘導してもよい。多くの生物学的な例では、幹細胞はまた、複数の異なる細胞型の子孫を生成することができるため「多能性」であるが、これは「幹細胞性(stem−ness)」には必要ではない。自己再生は幹細胞の定義のもう1つの古典的な部分であり、本書で使用されるように不可欠である。理論的には、2つの主要な機構のいずれかによって自己再生が発生し得る。幹細胞は非対称的に分裂することがあり、一方の娘細胞は幹細胞の状態を維持し、他方の娘細胞はいくつかの異なる他の特異的な機能及び表現型を発現する。あるいは、集団内の幹細胞の一部は2つの幹細胞に対称的に分裂することができるため、集団内の幹細胞の一部が全体として維持され、集団内の他の細胞が分化した子孫のみを生じさせる。
【0066】
用語「胚性幹細胞(embryonic stem cell)」は、胚盤胞(embryonic blastocyst)の内部細胞塊の多能性幹細胞を指すために使用される(参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,843,780号明細書、米国特許第6,200,806号明細書を参照)。そのような細胞は、体細胞核移植に由来する胚盤胞の内部細胞塊から同様に得ることができる(例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,945,577号明細書、米国特許第5,994,619号明細書、米国特許第6,235,970号明細書を参照)。胚性幹細胞の際立った特徴は、胚性幹細胞の表現型を規定する。したがって、ある細胞を他の細胞と区別することができるような胚性幹細胞の特有の特徴のうち1つ以上を有する場合、その細胞は胚性幹細胞の表現型を有する。例示的な特徴的な胚性幹細胞の特徴には、限定するものではないが、遺伝子発現プロファイル、増殖能、分化能、核型、特定の培養条件に対する応答性などが挙げられる。
【0067】
用語「成体幹細胞(adult stem cell)」又は「ASC」は、胎児、若年及び成体組織などの非胚組織に由来するあらゆる多能性幹細胞を指すために使用される。幹細胞は、血液、骨髄、脳、嗅上皮、皮膚、膵臓、骨格筋及び心筋などの多種多様な成人組織から単離されている。これらの幹細胞の各々は、遺伝子発現、因子応答性、及び培養中の形態に基づいて特徴付けることができる。上記のように、幹細胞は事実上あらゆる組織に存在していることが分かっている。したがって、本明細書に記載の技術は、事実上あらゆる動物組織から幹細胞集団を単離することができることを理解している。
【0068】
本明細書で使用される用語「iPS細胞」又は「人工多能性幹細胞」は、分化した体細胞(非多能性細胞)に人工的に由来する(例えば、完全又は部分的な逆転によって誘導される)多能性細胞を指す。多能性細胞は3つの発生胚葉(developmental germ layers)いずれの細胞にも分化することができる。
【0069】
用語「由来する」は、別の細胞又は組織に「由来する」細胞に適用される場合、言及された組織から細胞が単離されたか、参照組織又は細胞型から細胞が分化したことを意味する。したがって、特定の個体の組織に「由来する」細胞は、その個体の組織から単離されたか分化した。個体には、所定の状態を有する個体が挙げられ得る。人工多能性幹細胞は、個体、例えば、分娩後のヒト個体、多くの場合成人の体細胞組織に由来する。同様に、胚性幹細胞は胚に由来する。iPS細胞由来の細胞とは、iPS細胞から分化した細胞を指す。あるいは、細胞は、分化転換又は直接再プログラミングと呼ばれるプロセスによって、1つの細胞型から異なる細胞型に変換され得る。あるいは、iPS細胞に関して、当技術分野で脱分化又は再プログラミングと呼ばれるプロセスによって、分化した細胞から細胞(例えばiPS細胞)を誘導することができる。
【0070】
本明細書で使用される用語「多能性(pluripotent)」は、生殖系細胞を除く体内のあらゆる種類の細胞を生じさせることができる細胞を指す。本明細書で使用される用語「多能性」又は「多能性状態」は、3つの胚性胚葉、すなわち内胚葉(腸組織)、中胚葉(血液、筋肉及び血管を含む)及び外胚葉(皮膚及び神経など)いずれにも分化する能力を有する細胞を指し、典型的には、インビトロで長期間、例えば、1年を超えて、又は30継代を超えて分裂する可能性を有する。多能性はまた、胚性幹(ES)細胞マーカーの発現によっても証明されるが、多能性のための好ましい試験は、例えばヌードマウス奇形腫形成アッセイを用いて検出されるように、3つの胚葉いずれの細胞にも分化する能力の実証である。iPS細胞は多能性細胞である。多能性細胞は、特定の機能を有する細胞を生じさせる多能性細胞へとさらに分化する。例えば、多能性心血管幹細胞(multipotent cardiovascular stem cells)は、心筋細胞などの心臓の細胞、及び心臓の脈管構造に関与する他の細胞を生じさせる。本明細書に開示される筋細胞又は心筋細胞へのインビトロ分化に有用な細胞には、例えば、iPS細胞及び多能性心血管幹細胞が挙げられる。本明細書に開示される組成物及び方法のための筋細胞又は心筋細胞を生成するためのiPSC又は他の幹細胞の使用の主な利点は、多数のそのような細胞を調製し、例えば特定のヒト患者又は対象からそのような細胞を増殖させる能力である。これは、成人の心細胞の単離及び使用に依存する方法、組成物とは対照的である。
【0071】
本明細書で言及される用語「分化(differentiation)」は、細胞が発生経路をさらに下方に移動し、さらに特殊化し、最終分化細胞に近い細胞に関連することが知られているマーカー及び表現型特性を発現し始めるプロセスを指す。細胞が傾倒度の低い細胞から、特定の細胞型にますます傾倒した細胞に、最終的に最終分化細胞へと進行する経路は、漸進的分化又は漸進的傾倒と呼ばれる。さらに特殊化した(例えば、漸進的分化の経路に沿って進行し始めた)が、未だ最終分化していない細胞は、部分的に分化したと呼ばれる。分化は発生的プロセスであり、それによって細胞は、さらに特化した表現型を呈し、例えば、他の細胞型とは異なる1つ以上の特徴又は機能を獲得する。場合によっては、分化した表現型とは、ある発生経路の成熟終点にある細胞表現型(いわゆる最終分化細胞)を指す。すべてではないが多くの組織では、分化のプロセスは、細胞周期からの脱出と結びついている。これらの場合、最終分化細胞は、それらの増殖能を失うか、大きく制限される。ただし、本明細書の文脈では、用語「分化」又は「分化した」は、それらの発生の一時点よりも、それらの運命又は機能にさらに特殊化した細胞を指す。例えば、本出願の文脈では、分化した細胞には、心血管前駆細胞から分化した心室心筋細胞が挙げられ、このような心血管前駆細胞は、いくつかの例では、ES細胞の分化から、又は代替的に、人工多能性幹(iPS)細胞の分化から、又はいくつかの実施形態では、ヒトES細胞株から誘導され得る。したがって、そのような心室心筋細胞は、それが心血管前駆細胞の表現型を有した時よりも特殊化しているが、iPS細胞が由来した成熟細胞として細胞が存在していた時(例えば、iPS細胞を形成するための細胞の再プログラミングの前)よりも特殊化していないこともある。
【0072】
前駆細胞と比較して「分化した」細胞は、その前駆細胞と比較して1つ以上の表現型の相違と、さらに成熟した又は特殊化した細胞型の特徴とを有する。表現型の相違には、限定するものではないが、発現されたマーカーの有無だけでなく、マーカーの量の相違及び一連のマーカーの共発現パターンの相違を含め、形態学的相違並びに遺伝子発現及び生物活性の相違が挙げられる。
【0073】
本明細書で使用される「増殖する」及び「増殖」は、細胞分裂による集団内の細胞数の増加(増殖)を指す。細胞増殖は、一般に、増殖因子及び他のマイトジェンを含め、環境に応答する複数のシグナル伝達経路の協調的な活性化から生じると理解されている。細胞増殖は、細胞内又は細胞外シグナルの作用からの放出、及び細胞増殖を遮断するか細胞増殖に悪影響を与える機構によっても促進され得る。
【0074】
用語「組織(tissue)」は、特定の特別な機能をともに遂行する同様に特殊化された細胞の群又は層を指す。
【0075】
本明細書で使用される語句「心血管症状(cardiovascular condition)、疾患又は障害)」は、不十分な、望ましくない、又は異常な心機能によって特徴付けられるあらゆる障害、例えば、不整脈、虚血性心疾患、高血圧性心疾患及び肺高血圧性心疾患、弁膜症、先天性心疾患、並びに対象、特にヒト対象にうっ血性心不全を引き起こすあらゆる症状を含むことが意図される。不十分又は異常な心機能は、疾患、損傷及び/又は加齢の結果であり得る。背景として、心筋損傷に対する応答は、一部の細胞が死に、他の細胞は未だ死んでいないが機能不全の冬眠状態に入るという明確に定義された経路をたどる。これに続いて炎症細胞の浸潤、瘢痕の一部としてのコラーゲンの沈着が起こり、これらはいずれも、新たな血管の増殖、及びある程度の連続した細胞死と並行して起こる。本明細書で使用される用語「虚血」は、血液の流入の減少によるあらゆる局所組織虚血を指す。用語「心筋虚血」は、冠動脈アテローム性硬化及び/又は心筋への不十分な酸素供給によって引き起こされる循環障害を指す。例えば、急性心筋梗塞とは、心筋組織に対する不可逆的な虚血発作を表す。この発作は、冠循環に閉塞性(例えば、血栓性又は塞栓性)事象をもたらし、心筋代謝要求が心筋組織への酸素供給を上回っている環境を作り出す。
【0076】
用語「疾患(disease)」又は「障害(disorder)」は、身体又は一部の臓器の状態の変化であって、それらの機能の遂行を遮断又は妨害し、及び/又は罹患した人、又は人と接触した人に不快感、機能障害、苦痛などの症状、又はさらには死亡を引き起こすものを指す。疾患又は障害はまた、苦痛、不調、病気、病弊、障害、疾病、愁訴、不快又は辛苦に関連し得る。
【0077】
本明細書で使用される用語「治療する(treat)」又は「治療(treatment)」又は「治療する(treating)」は、治療的処置及び予防的手段の両方を指し、その目的は、心機能障害の発現を遅らせるなど、疾患の発症を予防若しくは遅らせること、又は心血管症状、疾患若しくは障害、例えば、不十分若しくは望ましくない心機能を特徴とするあらゆる障害の少なくとも1つの有害作用若しくは症状を軽減することである。心機能障害の有害作用又は症状は当技術分野で周知であり、それらには、限定するものではないが、呼吸困難、胸痛、動悸、めまい、失神、浮腫、チアノーゼ、顔面蒼白、疲労及び死亡が挙げられる。1つ以上の症状又は臨床マーカーがその用語が本明細書で定義されているように低減する場合、治療は一般に「有効」である。あるいは、疾患の進行が低減又は停止した場合、治療は「有効」である。すなわち、「治療」には、症状の改善又は疾患のマーカーの低減だけでなく、治療の非存在下で予測される症状の停止又は進行の遅延又は悪化も挙げられる。有益又は望ましい臨床結果には、限定するものではないが、検出可能又は検出不能を問わず、1つ以上の症状の緩和、疾患の程度の軽減、疾患の状態の安定化(例えば、悪化しない)、疾患の進行の遅延、疾患状態の改善又は緩和、及び寛解(部分的又は全体的を問わず)が挙げられる。「治療」はまた、治療を受けない場合に予測される生存期間と比較して、生存期間を延ばすことも意味し得る。治療が必要な人には、すでに心機能症状と診断された人、並びに遺伝的感受性、又は体重、食事及び健康などの他の因子により心機能症状を発現する可能性が高い人が挙げられる。
【0078】
用語「足場(scaffold)」は、細胞及び/又は細胞材料の支持構造を指す。支持構造は、繊維及び細孔を特徴とし得るが、足場はそのような組成物に限定されない。例えば、足場は、フィルム、スポンジ又は溶液の形態であってよい。足場は、例えば、繊維、ペプチド(例えば、組換えペプチド)、脂質、炭水化物などの様々な材料から構築されてもよい。
【0079】
本発明は、操作された組織組成物、例えば、細胞の増殖及び/又は維持及び/又は分化などを支援する三次元組織組成物を特徴とする。本明細書の組織組成物は、インビトロ適用及びインビボ適用を含む様々な目的、例えば、疾患又は症状を治療するための外科的移植、研究及び試験などに使用され得る。本明細書の組織組成物は、短期又は長期の保存(例えば、凍結保存)、輸送に耐えるように設計され得る。特定の実施形態では、組織組成物は、室温で特定の長さの時間に耐えることができる。
【0080】
要約すると、本発明の操作された組織組成物は、足場及び細胞外マトリックス(ECM)材料を含む。ECM材料は、限定するものではないが、線維芽細胞、任意の他の適切なECM生成細胞型、又はECM生成細胞型の組合せなどのECM生成細胞型によって生成され得る。ECM材料は、足場への適用前に生成され得るか、ECM材料は、足場上で直接生成され得る(又は、一部が事前に作製され、一部が足場上で直接生成される)。特定の実施形態では、ECM材料は無細胞であるか、細胞(例えば、生細胞、死細胞、それらの組合せ)を含む。特定の実施形態では、ECM材料は、生物由来材料、合成由来材料又はそれらの組合せを特徴とする。特定の実施形態では、組織組成物は、ECM生成細胞、非ECM生成細胞、及び/又は追加の播種細胞、例えば、目的の特定の組織に由来する細胞、幹細胞などをさらに含む。特定の実施形態では、組織組成物は、ECMへの細胞の付着などを増強する増殖因子、薬物又は成分などの追加の因子をさらに含む。
【0081】
図1は、本発明の組織組成物を構成する成分の非限定的な例を示す。例えば、特定の実施形態では、組織組成物は足場及びECM材料を含む(ECMは無細胞であり、例えば、細胞は存在しない)。いくつかの実施形態では、ECM材料は死細胞、例えば、1つの生細胞を含む。いくつかの実施形態では、ECM材料は、生細胞の副産物(現在生きている細胞、死細胞、それらの組合せなど)である。特定の実施形態では、組織組成物は、足場と、ECM材料と、ECM生成細胞、非ECM生成細胞又はそれらの組合せである細胞集団とを含む。特定の実施形態では、組織組成物は、足場と、ECM材料と、播種細胞の集団(例えば、目的の細胞型)とを含む。特定の実施形態では、組織組成物は、足場と、ECM材料と、ECM生成細胞、非ECM生成細胞又はそれらの組合せである細胞集団と、播種細胞の集団(例えば、目的の細胞型)とを含む。組織組成物の前述の例は、例えば、増殖因子、薬物、細胞の付着を増強するための組成物などの追加の因子を含んでもよい。
【0082】
<足場>
本明細書の操作された組織組成物に使用される足場(scaffold)は、様々な種類の材料、様々な大きさの材料、様々な構成などから構築され得る。特定の実施形態では、足場は複数の繊維を含み、繊維は、それらの間に配置される複数の細孔をもたらすように一緒に配置される(例えば、織られる)。足場は繊維構成に限定されない。特定の実施形態では、足場は、フィルム、スポンジ、ゲル、溶液などを含む。代替の足場の非限定的な例は、ポリマー、タンパク質、組換えペプチド、例えば、ヒトI型コラーゲンから構築されたスポンジ又はフィルムである。スポンジ及びフィルムについては以下でさらに説明する。
【0083】
繊維構成の足場を備えた実施形態では、足場の繊維は、直径がほぼ均一であってもよいか、繊維は様々な直径であってもよい。例えば、いくつかの実施形態では、足場は、第1の繊維タイプの繊維及び第2の繊維タイプの繊維を含み、第1の繊維タイプは、第2の繊維タイプの直径とは異なる直径を有する。足場は、第1の繊維タイプ及び第2の繊維タイプよりも多くを含んでもよく、例えば、足場は、第1の繊維タイプ及び第2の繊維タイプ及び第3の繊維タイプ、又はさらに第4の繊維タイプ、又はさらに第5の繊維タイプなどを含んでもよいことに留意されたい。複数の繊維タイプを有する足場は、限定するものではないが、繊維タイプ配列の固定パターンを有する印刷又は紡糸された繊維又はニット又は織物、ランダム繊維タイプ配列を有する印刷又は紡糸された繊維又はニット又は織物などを含む様々な構成で配置されてもよい。いくつかの実施形態では、小さな繊維が、1つ以上の大きな繊維から伸びる。いくつかの実施形態では、繊維は、細胞がその間に位置するための空間が存在するように、緩く印刷されるか、紡糸されるか、編まれるか、織られる。繊維は、特定の細胞配列を可能にする構成及び/又は向きに配置されてもよい。
【0084】
前述のように、足場の繊維は、織物又はニットの構成で配置されてもよい。織物又はニットの構成には、限定するものではないが、平織り、綾織り、交互綾織り、ニット織り平オランダ織り、オランダ綾織り、逆オランダ織り、六角形透かし細工織り、経編み、又はそれらの組合せが挙げられ得る。構築目的のために、足場は織られるか、編まれるか、紡糸されるか、押し出されるか、印刷されてもよい。いくつかの実施形態では、足場はリング状構成を有する。
【0085】
繊維径は様々な大きさであってよい。例えば、いくつかの実施形態では、繊維の少なくとも一部は、5um〜100um、10um〜500um、100um〜1mm(例えば、繊維束)などの直径を有する。本発明は、前述の繊維径に限定されない。
【0086】
いくつかの実施形態では、繊維はいずれも、単一の材料から構築される。いくつかの実施形態では、繊維の一部が第1の材料から構築され、繊維の一部が第1の材料とは異なる第2の材料から構築される。いくつかの実施形態では、繊維の一部が第1の材料から構築され、繊維の一部が第1の材料とは異なる第2の材料から構築され、繊維の一部が第1及び第2の材料とは異なる第3の材料から構築される。本発明は、3つの異なる材料タイプに限定されない。足場は、4つ、5つ、6つなどの異なる材料から構築されてもよい。いくつかの実施形態では、足場の1つ以上の繊維が2つ以上の材料から構築され、例えば、個々の繊維が材料の組合せから作製される。
【0087】
足場(例えば、繊維及び/又はペプチドなどの他の成分を有する足場)の構築に使用される材料には、限定するものではないが、ポリグリコリド、ポリラクチド、ポリヒドロキソブチラート、ポリ(無水物)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(トリメチレンカーボナート)、ポリグラクチン、ポリ(乳酸)、ポリフッ化ビニリデン、ポリエステル、シリコーン、ポリウレタン、ポリメチルメタクリラート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリグレカプロン−25モノフィラメント、ポリカーボナート、ポリアミド、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアクリラート、ポリビニル、ポリテトラフルオロエチレン、サーマノックス、ニトロセルロース、コラーゲン、フィブリン、エラスチン、絹、金属、TMC、ポリエステル、ゼラチン、デキストラン、タンパク質、ペプチド又はそれらの組合せが挙げられ得る。例えば、いくつかの実施形態では、第1の材料は少なくともグリコリド、ラクチド及びトリメチレンカーボナートを含み、第2の材料は少なくともラクチド及びトリメチレンカーボナートを含む。
【0088】
前述のように、特定の実施形態では、足場はフィルムの形態である。特定の実施形態では、足場は溶液中にある。特定の実施形態では、足場はスポンジである。スポンジ構成に関して、いくつかの実施形態では、スポンジはほぼ均一な直径を有する。特定の実施形態では、スポンジは不均一な直径を有する。特定の実施形態では、スポンジは、複数のレベル又は層(例えば、下位レベル、上位レベルなど)を有する層状であり、1つの層は第1の均一性を有し得、別の層は第2の均一性を有し得る。スポンジは、溝又は隆起を特徴としてもよい。例えば、1つの層、例えば上部レベル又は下部層は、隆起又は溝を特徴としてもよい。
【0089】
足場は、限定するものではないが、ペプチド(例えば、組換えペプチド)、炭水化物、脂質などを含む様々な材料から構築されてもよい。特定の実施形態では、足場は、組換えペプチド及び繊維(例えば、吸収性/分解性繊維、非吸収性/分解性繊維又はそれらの組合せ)の両方を含む。フィルム足場又はスポンジ足場又は溶液足場を作成するために使用される組換えペプチドの非限定的な例には、I型コラーゲンが挙げられる。
【0090】
足場は、生物由来材料、合成由来材料、又は合成由来材料と生物由来材料との組合せから構築されてもよい。
【0091】
足場は、溝及び隆起、例えば、平行な溝及び隆起、組織化又はパターン化された溝及び隆起、ランダムに組織化された溝及び隆起を特徴としてもよい。足場の構成は、細胞の増殖又は分化/成熟の増強に役立ち得る。足場の構成は、特定の方向又は向きに細胞を組織化する、例えば、筋肉の収縮などの特定の目的のために細胞を整列させるのに役立ち得る。
【0092】
足場は、様々な厚さで構築されてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、足場は少なくとも25umの厚さである。いくつかの実施形態では、足場は少なくとも40umの厚さである。いくつかの実施形態では、足場は少なくとも50umの厚さである。いくつかの実施形態では、足場は少なくとも100umの厚さである。いくつかの実施形態では、足場は少なくとも250umの厚さである。いくつかの実施形態では、足場は少なくとも500umの厚さである。いくつかの実施形態では、足場は少なくとも1mmの厚さである。いくつかの実施形態では、足場は少なくとも2mmの厚さである。いくつかの実施形態では、足場は30又は40um〜820又は850umである。いくつかの実施形態では、足場は50um〜500umの厚さである。いくつかの実施形態では、足場は500um〜1mmの厚さである。いくつかの実施形態では、足場は1mm〜2mmの厚さである。本発明は、前述の厚さ、例えば、2〜3mm、3〜4mm、4〜5mm、5〜6mmなどに限定されない。例えば、厚さは、45um〜1070um、45〜499um、246〜1070umなどであってよい。前述の厚さは、操作された組織組成物(例えば、場合により細胞を有するECMを有する足場など)に適用され得る。例えば、特定の実施形態では、操作された組織組成物は、厚さが200〜1000ミクロンである。
【0093】
足場のいくつかの成分(又は全成分)、例えば繊維、ペプチドなどは、再吸収性、吸収性又は分解性であり得る。例えば、増殖性ECM生成細胞が足場上及び足場内で複製すると、成分のうちの1つ以上が再吸収され/吸収され/分解し/溶解し得る。足場が2つ以上の異なる繊維タイプを含む例では、特定の実施形態では、第1の繊維タイプの繊維が再吸収性/吸収性/分解性であってよく、第2の繊維タイプの繊維が再吸収性/吸収性/分解性でなくてもよい。特定の実施形態では、足場成分はいずれも、ある程度の能力で再吸収性/吸収性/分解性であってよく、例えば、第1の繊維タイプは、第2の繊維タイプとは異なる速度で再吸収性/吸収性/分解性であってよい。足場は、特定の時間に足場の部分が分解する分解プロファイル(時限、階層化)を特徴としてもよい。任意の適切な分解性材料又はそれらの組合せは、所望の分解プロファイルを達成し得る。
【0094】
以下の例では、組織組成物の外科的移植時から開始して、分解プロファイル(足場が再吸収される/吸収される/分解する場合)が測定される。いくつかの実施形態では、足場の一部又は全部が、1日以内、2日以内、3日以内、4日以内、5日以内、6日以内、1週間以内、8日以内、9日以内、10日以内、11日以内、12日以内、13日以内、2週間以内、3週間以内、1カ月以内、2カ月以内、3カ月以内、4カ月以内、5カ月以内、6カ月以内、1年以内、2年以内、3年以内、4年以内、5年以内などに再吸収される/吸収される/分解する。特定の実施形態では、足場は完全に再吸収されない/吸収されない/分解しない(足場は非吸収性である)。
【0095】
足場の機械的特性(例えば、剛性など)は、足場の成分(例えば、繊維及び/又はペプチドなどの他の材料)が再吸収される/吸収される/分解するにつれて変化してもよい。
【0096】
本発明を何らかの理論又は機構に限定することを望むものではないが、外科的移植中にそれ自体の上で大きくカールしたり折り重なったりしない足場は、例えば、組織組成物がそれ自体の上で折り重ならなければ外科医が移植するのが容易になり得るという利点を提供し得ると考えられている。
【0097】
図2は、本発明の組織組成物に使用される足場の特徴の非限定的な例を示す。例えば、前述のように、特定の実施形態では、足場は吸収性/分解性繊維、非吸収性/分解性繊維又はそれらの組合せを含む。特定の実施形態では、足場はスポンジ(例えば、組換えペプチド、例えば、ヒトI型コラーゲンにより構築された)を含む。いくつかの実施形態では、足場はフィルム(例えば、組換えペプチド、例えばヒトI型コラーゲンにより構築された)を含む。いくつかの実施形態では、足場は溶液中にある。特定の実施形態では、足場は、組換えペプチド(フィルム又はスポンジを形成する)及び繊維(例えば、吸収性/分解性繊維、非吸収性/分解性繊維又はそれらの組合せ)の両方を含む。特定の実施形態では、足場は、生物由来成分(例えば、細胞によって自然に産生される)、合成由来成分又はそれらの組合せを含む。特定の実施形態では、足場は、細胞及び/又はECMの付着を増強する追加の特徴又は特性を有する。例えば、特定の実施形態では、足場は、細胞及び/又はECMの付着を可能にするように適合された親水性を有する。特定の実施形態では、足場は、細胞及び/又はECMの付着を可能にするように適合された表面粗さを有する。細胞付着を増強し得る組成物又は特徴の非限定的な例には、特定の質感又は粗さ、特定の親水性化合物又は特徴、特定のリガンド、RGDコーティングされた材料などが挙げられ得る。
【0098】
<足場の機械的特性>
足場は異方性であってよく、例えば、足場の機械的特性は、一方向では他の方向と異なっていてもよい。または、足場は等方性であってよい。足場は、強度及び柔軟性に関連する様々な機械的特性を有する。
【0099】
一般に、基材の特性(例えば、足場のみ)と組織組成物の特性(線維芽細胞及びECMを有する)との間には差がある。例えば、足場が分解性の成分(例えば、繊維及び/又はペプチド)を特徴とする場合(例えば、培養中に分解する繊維又はペプチド)、足場は、組織組成物として最終的に使用されるもの(例えば、インビボでの使用のために)よりも剛性であり得る。いくつかの実施形態では、足場は、GPa範囲の材料により選択され得るが、組織組成物が移植されると、それはMPa範囲であり得、同様に、足場は、MPa範囲で選択され得るが、組織組成物が移植されると、それはkPa範囲であり得る。いくつかの実施形態では、移植された材料(組織組成物の特性)は100MPa未満であり得る。
【0100】
弾性率(剛性)は20kPa〜100GPaであり得る。足場は、20N/cm〜200N/cm、50N/cm〜100N/cm、75N/cm〜90N/cmなどの破裂強度を有してもよい。足場は、10N/5N〜50N/40Nの平行/垂直引裂抵抗を有してもよい。足場は、30/31N〜350N/36Nの平行/垂直引裂抵抗を有してもよい。いくつかの実施形態では、足場は1N/mm〜50N/mmの縦剛性を有する。いくつかの実施形態では、足場は4N/mm〜30N/mmの縦剛性を有する。いくつかの実施形態では、足場は0.5N/mm〜5N/mmの横剛性を有する。いくつかの実施形態では、足場は、横剛性とは異なる縦剛性を有する。いくつかの実施形態では、足場は、横剛性と同じ縦剛性を有する。いくつかの実施形態では、足場は10kPa〜100MPaの縦方向の最大力を有する。いくつかの実施形態では、足場は10kPa〜100MPaの横方向の最大力を有する。いくつかの実施形態では、足場は5〜3000kPaの剛性を有する。いくつかの実施形態では、足場は3000〜4600kPaの剛性を有する。いくつかの実施形態では、足場は4600kPaよりも大きい剛性を有する。足場は、異なる剛性を有する繊維、例えば、1〜20MPaの剛性を有する繊維及び10MPaを超える剛性を有する繊維を特徴とし得る。前述のように、細胞を培養する前の足場の剛性は、最終製品、例えば、組織組成物とは異なってもよい。いくつかの実施形態では、組織組成物(例えば、最終製品)は20kPa〜50MPaであってよいが、本発明はこれらの値に限定されない。
【0101】
機械的特性(例えば、剛性など)は、製造、細胞増殖、細胞分化、移植などの過程で変化し得る。本発明は、本明細書に記載の機械的特性パラメーターに限定されない。
【0102】
特定の実施形態では、操作された組織組成物は、電気信号伝達を可能にする。
【0103】
<足場細孔>
細孔の密度、例えば、単位面積当たりの細孔の数(例えば、足場の1mm当たりの細孔の数)は、細胞が足場全体にわたって効率的に増殖するのに役立ち得る。いくつかの実施形態では、細孔は密集し、及び/又はわずかに重なり合う細孔の上に配置される。ただし、本発明は、密集した細孔、又はわずかに重なり合う細孔の上に配置された細孔に限定されない。さらに、細孔の密度は、足場に使用される材料の種類、足場の厚さ、足場の織りの種類などに依存し得る。いくつかの実施形態では、足場は1cm当たり1〜1,000個の細孔を有する。いくつかの実施形態では、足場は1cm当たり10〜1,000個の細孔を有する。いくつかの実施形態では、足場は1cm当たり100〜1,000個の細孔を有する。いくつかの実施形態では、足場は1mm当たり100〜1,000個の細孔を有する。いくつかの実施形態では、足場は1mm当たり100〜500個の細孔を有する。いくつかの実施形態では、足場は1mm当たり200〜1,000個の細孔を有する。細孔密度はまた、経時的に変化し得る。例えば、いくつかの実施形態では、足場の成分(例えば、繊維及び/又はペプチドなど)が分解し(例えば、生分解する、再吸収される、吸収されるなど)、足場に元々存在していたものとは異なる細孔密度を生じる可能性がある。
【0104】
いくつかの実施形態では、細孔は足場全体に均一に配置される。いくつかの実施形態では、細孔は足場全体にランダムに配置される。いくつかの実施形態では、細孔は足場全体にパターンで配置される。細孔は、様々な形状(例えば、断面形状)、例えば、長方形、丸みを帯びた長方形であり得るか、限定するものではないが、六角形、円形、楕円形、八の字形などを含む他の幾何学的形状又は不規則な形状又は形状の組合せであり得る。したがって、細孔は、高さ、幅、長さ、直径、面積などを有すると説明され得る。いくつかの実施形態では、足場の細孔(例えば、細孔のうちの1つ以上)は、0.1μm〜100μm、1μm〜1000μm、100μm〜5000μm、0.1μm〜0.01mm、0.1μm〜0.1mm、0.1μm〜1mm、0.1μm〜2mm、0.1μm〜10mmなどの面積を有する。いくつかの実施形態では、平均細孔径は約104,540μmである。いくつかの実施形態では、平均細孔径は、5,000μm〜1,000,000μm超である。いくつかの実施形態では、細孔は、50μm〜90μmの直径を有する。いくつかの実施形態では、細孔は、50μm〜200μmの直径を有する。いくつかの実施形態では、細孔は、200μm〜400μm、200μm〜500μmなどの直径を有する。いくつかの実施形態では、細孔は、500μm〜1000μmの直径を有する。いくつかの実施形態では、細孔は、500μm〜1500μmの直径を有する。いくつかの実施形態では、細孔は、800μm〜1200μmの直径を有する。いくつかの実施形態では、細孔は、800μm〜1000μmの直径を有する。
【0105】
いくつかの実施形態では、足場は、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも15週間、少なくとも20週間、少なくとも30週間、少なくとも40週間などにわたり、その機械的強度の少なくとも50%を保持する。
【0106】
いくつかの実施形態では、足場は3週間以上で分解する。いくつかの実施形態では、足場は移植後4週間以上で分解する。いくつかの実施形態では、足場は移植後6週間以上で分解する。いくつかの実施形態では、足場は移植後8週間以上で分解する。いくつかの実施形態では、足場は移植後10週間以上で分解する。
【0107】
足場は、二段階の再吸収を可能にするために、(互いに対して)一方は速く再吸収され、他方は遅く再吸収される2つの異なる繊維を特徴とし得る。
【0108】
<細胞外マトリックス材料>
前述のように、本発明の操作された組織組成物は、細胞外マトリックス(ECM)材料を含む。ECMは、ECM生成細胞によって生成され得るが、本発明は、ECM生成細胞によって生成されたECMに限定されない。特定の実施形態では、ECMは合成由来材料のみを含む。特定の実施形態では、ECMは、生物由来材料(例えば、ECM生成細胞によって生成されたECM)を含む。特定の実施形態では、ECMは、生物由来材料と合成由来材料との組合せを含む。一例として、合成的に生成されたコラーゲン及びフィブロネクチンなどの材料(及び同様のもの、例えば、本明細書で説明される材料)を組み合わせて、ECM生成細胞を必要とせずにECMを形成してもよい。
【0109】
いくつかの実施形態では、ECM又は組織組成物の0〜10%(面積又は体積に従って)が合成由来である。いくつかの実施形態では、ECM又は組織組成物の10〜25%(面積又は体積に従って)が合成由来である。いくつかの実施形態では、ECM又は組織組成物の25〜40%(面積又は体積に従って)が合成由来である。いくつかの実施形態では、ECM又は組織組成物の40〜60%(面積又は体積に従って)が合成由来である。いくつかの実施形態では、ECM又は組織組成物の60〜75%(面積又は体積に従って)が合成由来である。いくつかの実施形態では、ECM又は組織組成物の75〜90%(面積又は体積に従って)が合成由来である。いくつかの実施形態では、ECM又は組織組成物の50〜95%(面積又は体積に従って)が合成由来である。
【0110】
ECMの成分には、限定するものではないが、コラーゲン(例えば、I型コラーゲン、III型コラーゲン)、エラスチン、フィブロネクチン、ラミニン、テネイシン、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン(例えば、Veriscan、Decorin、Betaglycan、Syndecan)などが挙げられ得る。(Naughton,2002,Ann N Y Acad Sci,961:372−85を参照されたい)。いくつかの実施形態では、外因性ゼラチンが足場に堆積される。いくつかの実施形態では、外因性コラーゲン、フィブロネクチン、フィブリンが加えられる(又は他の適切なECM成分)。
【0111】
本発明を何らかの理論又は機構に限定することを望むものではないが、特定の量のECMは、操作された組織組成物が有効である(例えば、種細胞の受容、種細胞の分化、外科的移植などに有効である)ために有益であると考えられている。
【0112】
特定の実施形態では、足場内及び/又は足場上(例えば、足場の細孔及び成分上及び/又は足場の細孔及び成分内)にECM生成細胞を播種することによってECMが生成され、ECM生成細胞は続いて増殖し、足場内及び/又は足場上及び足場を通って拡大し、ECMを生成する。ECM生成細胞は、足場の成分(例えば、繊維、ペプチドなど)に沿って、さらに細孔内で(例えば、生成されたECMとともに)移動する場合がある。ECM生成細胞(及び/又は本明細書の他の細胞)の播種プロセスでは、限定するものではないが、遠心分離若しくは他の適切な力(例えば、電気力)又はそれらの組合せなど、足場上への細胞の付着を増強するための様々な工程が利用されてもよい。
【0113】
特定の実施形態では、足場上にECMを適用する前に、ECM生成細胞によってECMが生成される。一例として、ECM生成細胞によるECMの生成に続いて、ECM生成細胞とともにECM材料を足場に適用してもよい。あるいは、特定の実施形態では、ECM生成細胞によって生成されたECM材料は、無細胞化され、続いて足場に適用されてもよい。特定の実施形態では、ECMの適用前に足場内及び/又は足場上に細胞集団が播種される。
【0114】
ECM生成細胞は、生きていても死んでいてもよい(又は生細胞と死細胞との組合せ)ことに留意されたい。例えば、組織組成物は、足場、ECM及び生きたECM生成細胞(例えば、線維芽細胞若しくは他のECM生成細胞型又はそれらの組合せ)を含んでもよい。特定の実施形態では、組織組成物は、足場、ECM及び死んだECM生成細胞を含む。特定の実施形態では、組織組成物は、足場と、ECMと、生きたECM生成細胞の集団及び死んだECM生成細胞の集団とを含む。
【0115】
ECM生成細胞は、線維芽細胞、例えば、ヒト真皮線維芽細胞であり得る。ただし、本発明は線維芽細胞に限定されない。いくつかの実施形態では、ECM生成細胞は、線維芽細胞、骨芽細胞、軟骨細胞、グリア細胞、神経幹細胞、心筋細胞、筋線維芽細胞など、又はそれらの組合せを含む。本明細書で説明されるように、特定の実施形態では、ECM生成細胞は、例えば、特定のECM及び/又は増殖因子を産生するように遺伝子操作され得、及び/又は増殖するように操作され得る。
【0116】
ECM生成細胞は、適切な供給源又は宿主に由来してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、ECM生成細胞はヒト細胞である。いくつかの実施形態では、ECM生成細胞は霊長類細胞である。いくつかの実施形態では、ECM生成細胞は、マウス細胞、ラット細胞、ヤギ細胞、ウサギ細胞、ウマ細胞、イヌ、ネコ、又は任意の他の宿主由来細胞である。特定の実施形態では、ECM生成細胞は、普遍的な細胞(非免疫原性)になるように遺伝子改変される。
【0117】
前述のように、ECM生成細胞は線維芽細胞であり得る。特定の実施形態では、線維芽細胞はiPSC由来の線維芽細胞である。いくつかの実施形態では、線維芽細胞は皮膚由来の線維芽細胞、例えば、真皮新生児線維芽細胞である。いくつかの実施形態では、線維芽細胞は血液由来の線維芽細胞である。いくつかの実施形態では、線維芽細胞は、心臓由来、筋肉由来、肝臓由来、膵臓由来、脂肪組織由来、中枢神経系(CNS)由来又は肺由来の線維芽細胞である。
【0118】
特定の実施形態では、ECM生成細胞は野生型細胞である。特定の実施形態では、ECM生成細胞は、遺伝子改変されており、例えば、1つ以上の目的の遺伝子を発現するように操作されている。特定の実施形態では、ECM生成細胞は、野生型細胞と遺伝子改変細胞との組合せである。
【0119】
ECM生成細胞は、足場上に層を形成し得る。(特定の実施形態では、足場上/足場内に播種されたECM細胞はすでにECM中にある。特定の実施形態では、ECM中の細胞は生きている及び/又は死んでいる。) いくつかの実施形態では、ECM生成細胞は、足場内及び/又は足場上に配置される。ECM生成細胞は、足場内又は足場上に集合体として存在し得るか、足場上に1つ以上の層を形成し得るか、足場内又は足場上に代替配列を導入し得るか、それらの組合せであり得る。本発明の組織組成物は、細胞の層、例えば、3〜500の細胞層を有してもよい。細胞層は、ECM生成細胞、非ECM生成細胞又はそれらの組合せから構成されてもよい。
【0120】
ECM生成細胞が増殖し、足場内及び足場上でECMを生成すると、ECM生成細胞及び/又はECMは、足場の細孔の少なくとも一部を埋める。次いで、ECM生成細胞及び/又はECMは、足場の細孔全部を埋め得る。いくつかの実施形態では、足場の細孔の面積の一部又は全部を埋める無細胞ECM材料が使用されることに留意されたい。
【0121】
本発明の組織組成物の例を図3A図3B図3C図3D図3E及び図3Fに示す。図3Aは、特定の足場の繊維束の間の、及び繊維束を囲む線維芽細胞及び細胞外マトリックス(ECM)を示す。線維芽細胞は増殖し、ECMを生成して細孔を埋め、細孔全体にわたる追加の細胞型の付着及び増殖のための追加の支持構造を提供する。図3B及び図3Cは、ヒト真皮線維芽細胞によって埋められ、iPSC由来心筋細胞が局所的に播種された組換えペプチド(コラーゲンI)から作製された足場を示す。線維芽細胞は足場の細孔を貫通する。心筋細胞は層状培養物の表面に存在する。図3Dは、「中空」構成の組換えペプチド(コラーゲンI)から作製された足場を示す。足場には、ヒト真皮線維芽細胞が局所的に播種されている。線維芽細胞は足場を埋め込まず、むしろ上部及び下部に細胞の層を形成する。片側はまた、層状培養物内にiPSC由来心筋細胞を含む。図3Eは、ポリグリコール酸(PGA)及びトリメチレンカーボナート(TMC)から作製された足場上に播種された線維芽細胞及び心筋細胞を含む組織組成物(倍率20倍)を示す。図3Fは、ポリグリコール酸(PGA)から作製された足場上に播種された線維芽細胞及び心筋細胞を含む組織組成物(倍率20倍)を示す。
【0122】
組換えペプチドから作製された足場を含む組織組成物に関して、特定の実施形態では、組換えペプチド足場は300〜500μmの厚さである。特定の実施形態では、心筋細胞は後に20〜50μmの厚さである。特定の実施形態では、細孔は直径50〜90μmである。本発明は、前述の寸法に限定されない。
【0123】
いくつかの実施形態では、細孔の面積の100%が、ECM生成細胞及び/又はECMによって埋められる。いくつかの実施形態では、細孔の面積の少なくとも99%、少なくとも98%、少なくとも97%、少なくとも96%、少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも85%、少なくとも80%、少なくとも75%、少なくとも70%、少なくとも50%などがECM生成細胞及び/又はECMによって埋められる。
【0124】
いくつかの実施形態では、ECM生成細胞を播種してから2〜10日以内、ECM生成細胞を播種してから3〜10日以内、ECM生成細胞を播種してから4〜10日以内、ECM生成細胞を播種してから5〜10日以内、ECM生成細胞を播種してから8〜10日以内、ECM生成細胞を播種してから5〜15日以内、ECM生成細胞を播種してから8〜15日以内、ECM生成細胞を播種してから10〜15日以内、ECM生成細胞を播種してから12〜15日以内、ECM生成細胞を播種してから5〜25日以内、ECM生成細胞を播種してから10〜25日以内、ECM生成細胞を播種してから15〜25日以内、ECM生成細胞を播種してから20〜25日以内などに、細孔の面積の少なくとも50%が埋められる(ECM生成細胞及び/又はECMによって埋められる)。
【0125】
細孔が埋められるのにかかる時間は、特定の要因、例えば、細胞の播種方法、例えば、播種プロセス中に組織組成物を揺動させるかどうか、揺動速度、播種プロセス中に遠心分離が使用されたかどうか、などに依存し得る。一例として、特定の実施形態では、揺動を用いて、ECM生成細胞を播種してから5〜10日以内に細孔の面積の少なくとも50%が埋められる(ECM生成細胞及び/又はECMによって埋められる)のに対して、揺動を用いない特定の実施形態では、ECM生成細胞を播種してから14〜17日以内に細孔の面積の少なくとも50%が埋められる(ECM生成細胞及び/又はECMによって埋められる)。前述の例は、本発明を何ら限定することを意味するものではなく、揺動が、細孔の面積の少なくとも50%を埋めるのに必要な時間を加速する可能性があることを説明する一例として機能するにすぎない。
【0126】
ECM生成細胞が増殖し、足場内でECMを生成すると、細胞は形態変化を受ける(例えば、図3A図4を参照)。図4は、ヒト新生児真皮線維芽細胞(HDF)を播種した後の数日間(1、14、17及び28日間)にわたる組織組成物の画像を示し、ここで、細孔は経時的に埋まる。17日間の時点で、HDFの紡錘形形態が長くなっている。28日間までに、細胞集団が均質になり、細胞の集団は紡錘形形態を示さず、代わりに小石状形態を示す。本発明は、図4に記載された形態変化の時間枠に限定されない。例えば、長い紡錘形形態は、17日間未満、例えば16日間以内、15日間以内、14日間以内、13日間以内、12日間以内、11日間以内、10日間以内、9日間以内、8日間以内、7日間以内、6日間以内、5日間以内、4日間以内、4日間未満、16日間以下、15日間以下、14日間以下、13日間以下、12日間以下、11日間以下、10日間以下、9日間以下、8日間以下、7日間以下、6日間以下、5日間以下などの時間で形成され得る。特定の実施形態では、小石状形態は、28日間未満、例えば、27日間以内、26日間以内、25日間以内、24日間以内、23日間以内、22日間以内、21日間以内、20日間以内、19日間以内、18日間以内、17日間以内、16日間以内、15日間以内、14日間以内、13日間以内、12日間以内、11日間以内、10日間以内、9日間以内、8日間以内、8日間未満、26日間以下、25日間以下、24日間以下、23日間以下、22日間以下、21日間以下、20日間以下、19日間以下、18日間以下、17日間以下、16日間以下、15日間以下、14日間以下、13日間以下、12日間以下、11日間以下、10日間以下、9日間以下、8日間以下などの時間で形成され得る。形態変化が生じるのに要する時間は、製造方法に依存し得る。
【0127】
操作された組織組成物は、5x10細胞/cm〜5x10細胞/cmのECM生成細胞の最終密度を有し得る。いくつかの実施形態では、操作された組織組成物は、1×10細胞/cm〜1×10細胞/cmのECM生成細胞の最終密度を有する。いくつかの実施形態では、操作された組織組成物は、1×10細胞/cm〜1×10細胞/cmのECM生成細胞の最終密度を有する。本発明は、ECM生成細胞の前述の最終密度に限定されない。
【0128】
いくつかの実施形態では、追加の因子がECM、足場及び/又はECM生成細胞に加えられる。ECMの生成を増強するために、又は他の目的、例えば、細胞の増殖、維持及び/又は分化の増強、細胞及び/又はECMの付着の増強などのために、追加の因子が加えられてもよい。非限定的な例として、ECMの堆積を促進するのに役立つアスコルビン酸が加えられてもよい。いくつかの実施形態では、追加の因子は、ECM生成細胞の付着を増強するため、及び/又は播種細胞の付着を増強するためのものである。
【0129】
いくつかの実施形態では、ECM及び/又はECM生成細胞及び/又は足場とともに、又はECM及び/又はECM生成細胞及び/又は足場と組み合わせて外因性増殖因子が加えられる。増殖因子(例えば、線維芽細胞によって分泌されるもの、外因的に加えられるもの)は、(線維芽細胞自体の、播種細胞の)増殖、(線維芽細胞自体の、播種細胞の)播種効率、足場への線維芽細胞の組み込み、ECMの生成などを改善し得る。増殖因子には、限定するものではないが、血管内皮増殖因子(VEGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、アンジオポエチン−1マトリックス堆積因子(例えば、形質転換増殖因子(TGF−b1)、形質転換増殖因子(TBG−b3))、細胞分裂促進因子(例えば、血小板由来増殖因子A(PDGF−A)、インスリン様増殖因子1(IGF−1)、エリスロポエチン(EPO)、ヘパリン結合上皮増殖因子(HBEGF)、血小板由来増殖因子a(TGFa))、血管新生因子(例えば、アンジオゲニン、アンジオポエチン−2)、内皮増殖因子、レプチン、血小板由来増殖因子BB(PDGF−BB)、血管内皮増殖因子(VEGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、Secreted protein acid and rich in cysteine(SPARC)、インターロイキン6(IL−6)、インターロイキン8(IL−8)、炎症性サイトカイン(例えば、インターフェロンγ、インターロイキン1a、インターロイキン1b、インターロイキン6(IL−6)、インターロイキン8(IL−8)、単球走化性タンパク質1、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)、腫瘍壊死因子a(TNFa))などが挙げられ得る。(Naughton,2002,Ann N Y Acad Sci,961:372−85;Lancaster et al.,2010,Tissue Eng Part A,16(10):3065−73を参照されたい)。他の細胞、例えば治療細胞由来の増殖因子を加えてもよい。例えば、心筋細胞は、インビトロのシグナル伝達、成熟、マイオカイン活性、及びインビボの筋形成などを刺激するための特異的な因子を分泌し、上記増殖因子はまた、外因的に、又は別の細胞型の播種を介して加えられ得る。
【0130】
いくつかの実施形態では、足場は体積で組織組成物の1〜70%を構成する。いくつかの実施形態では、足場は体積で組織組成物の1〜80%を構成する。いくつかの実施形態では、足場は体積で組織組成物の5〜50%を構成する。いくつかの実施形態では、ECM及びECM生成細胞は、体積で組織組成物の少なくとも20%を構成する。いくつかの実施形態では、ECM及びECM生成細胞は、体積で組織組成物の20〜50%を構成する。いくつかの実施形態では、ECM及びECM生成細胞は、体積で組織組成物の50〜75%を構成する。いくつかの実施形態では、ECM及びECM生成細胞は、体積で組織組成物の50〜99%を構成する。いくつかの実施形態では、ECM及びECM生成細胞は、体積で組織組成物の30〜99%を構成する。ECM及びECM生成細胞から構成される組織組成物の量(対足場)は、様々な要因、例えば、培養開始時に播種されたECM生成細胞の量、足場材料の予測される分解速度、種細胞集団の量などに依存し得る。例えば、種細胞から構成される組織組成物の量は、組織組成物の3〜60%の範囲であり得る。
【0131】
一例として、足場質量に対する細胞及びECMの質量を評価するために、特定の足場材料(例えば、二重繊維/低速分解足場、ラクチド足場、ポリグラクチン足場)によって構築された特定の組織組成物(ECM及びECM生成細胞を含む)を分析した。最初に足場を秤量し、次いで組織組成物(完全培養HDF足場組成物)を湿った状態及び乾燥した状態の両方で秤量した。細胞及びECMとともに培養した二重繊維足場では、湿重量は0.058g/cm2であり、乾燥重量は0.028g/cm2であったのに対して、二重繊維足場単独では、湿重量は0.021g/cm2であり、乾燥重量は0.016g/cm2であった。したがって、ECM及びECM堆積細胞の質量は0.037g/cm2であった。乾燥重量は0.012g/cm2であった。
【0132】
操作された組織組成物は、一般に平坦であり得る。操作された組織組成物は、それ自体がカールを有してもよいか、組織組成物の顕微鏡的特徴が凸状又は凹状成分を有してもよい。本発明を何らかの理論又は機構に限定することを望むものではないが、凹構造が細胞の播種、付着及び組み込みに有益であり得る可能性がある。
【0133】
図5は、本発明の組織組成物に使用されるECMの特徴の非限定的な例を示す。例えば、前述のように、特定の実施形態では、ECMは生物由来(例えば、ECM生成細胞由来)、合成由来又はそれらの組合せである。特定の実施形態では、ECM生成細胞は、野生型であり、遺伝子改変されており、又はECM生成細胞は、野生型細胞の集団及び遺伝子改変細胞の集団を特徴とする。特定の実施形態では、ECMは無細胞である。特定の実施形態では、ECMは、生きているか、死んでいるか、生細胞の集団及び死細胞の集団を特徴とするECM生成細胞を含む。特定の実施形態では、ECMは、増殖因子、薬物、及び/又はECM生成、細胞付着、足場へのECM付着などに役立つ他の組成物を含む。
【0134】
<播種細胞>
本発明の組織組成物は、播種細胞を含んでもよい。播種細胞は、任意の適切な細胞型(及び任意の適切な宿主由来のもの、又は普遍的な細胞になるように遺伝子改変されたもの)であってよい。例えば、いくつかの実施形態では、種細胞はヒト細胞である。いくつかの実施形態では、種細胞は、マウス細胞、ラット細胞、ヤギ細胞、ウサギ細胞、ウマ細胞、イヌ、ネコ、又は任意の他の宿主由来細胞である。種細胞は、血液、心組織、骨格筋組織、肝組織、膵組織、肺組織、骨組織、臍帯組織、内皮組織、中枢神経系組織、胃腸組織、内分泌細胞、傍分泌細胞、酵素分泌細胞、その幹細胞、その前駆細胞、原核生物、真核生物若しくは他の酸素放出粒子又はそれらの組合せに関連し得る。播種細胞は、ECM生成細胞と同じドナーに由来し得ることに留意されたい。特定の実施形態では、播種細胞は、ECM生成細胞のドナーとは異なるドナーに由来する。
【0135】
播種細胞は、増殖性、非増殖性又はそれらの組合せであり得る。播種細胞は、幹細胞(例えば、成体幹細胞、胚性幹細胞、人工多能性幹細胞)、初代細胞、前駆細胞などであり得る。例えば、播種細胞は、ヒト人工多能性幹細胞由来細胞(hiPSC)、例えば、ヒト人工多能性幹細胞由来心筋細胞(hiPSC−CM)であり得る。種細胞は、最終分化細胞、例えば、最終分化心筋細胞、肝実質細胞、β細胞、内胚葉、平滑筋細胞、唾液細胞などであり得る。
【0136】
播種細胞は成熟していても未成熟でもよい。例えば、心筋前駆細胞は、限定するものではないが、MESP1、GATA4、ISL1、NKX2.5など、又はそれらの組合せなどの1つ以上のマーカーを発現し得る。発生期の心筋細胞は、限定するものではないが、CTNT、MHC、MLC、サルコメアアクチニンなど、又はそれらの組合せなどの1つ以上のマーカーを発現し得る。iPSCは、限定するものではないが、Oct−4、LIN−23など、又はそれらの組合せなどの1つ以上のマーカーを発現し得る。
【0137】
播種細胞は野生型細胞であってよい。特定の実施形態では、播種細胞は、1つ以上の目的の遺伝子を発現するように遺伝子改変される。特定の実施形態では、播種細胞は、野生型細胞の集団及び遺伝子改変細胞の集団を含む。例えば、目的の遺伝子には、限定するものではないが、サイモシンβ−4(TB4)、akt murine thyoma viral oncogene homolog(AKT1)、ストロマ細胞由来因子1α(SDF−1)、肝細胞増殖因子(HGF)、インスリン様増殖因子1(IGF−1)、エリスロポエチン(EPO)などが挙げられ得る。本発明は、前述の遺伝子に限定されるものではなく、特定の治療目的のために遺伝子を発現する遺伝子改変細胞に限定されるものでもない。いくつかの実施形態では、播種細胞に含まれるのは、原核生物、真核生物、又は自発的に若しくは外部刺激により酸素を生成するように操作された粒子などの追加の細胞又は粒子であり得る。
【0138】
特定の疾患状態又は遺伝的状態から得られた細胞が播種されてもよい。例えば、種細胞は、特定の疾患状態又は症状に関連する異常を有する細胞であり得る。いくつかの実施形態では、種細胞は、異常な状態(例えば、心筋梗塞などのストレス又は外傷又は事象の後)の組織に由来する細胞である。特定の遺伝子変異を有する細胞又は特定の疾患状態若しくは症状に関連する細胞の非限定的な例には、先天性心筋症、後天性心筋症、不整脈誘発性心筋症(例えば、QT延長症候群、QT短縮症候群(SQTS)、ブルガダ症候群、カテコールアミン誘発性多形性心室性頻拍(CPVT)、不整脈誘発性右室心筋症(ARVC))、拡張型心筋症(例えば、肥大型心筋症、左室緻密化障害、トランスサイレチンアミロイドーシス、遺伝性ヘモクロマトーシス、ラソパシー(Noonanスペクトラム障害としても知られる)、心不全などに関連するものが挙げられ得る。いくつかの実施形態では、疾患状態又は症状は、拡張型虚血性心筋症及び非虚血性心筋症、高血圧性心疾患などの後天性症状である。いくつかの実施形態では、疾患状態又は症状は、後天性の先天性疾患又は先天性+不整脈である。いくつかの実施形態では、疾患状態又は症状は、糖尿病、癌、筋ジストロフィー、消化管に影響を及ぼす先天性、遺伝性又は後天性症状、骨格筋、平滑筋に影響を及ぼす症状などである。本発明は、前述の症状に限定されない。
【0139】
組織組成物のECM生成細胞及び/又はECM及び/又は他の因子は、播種細胞の分化及び/又は成熟を引き起こし得る(適切な場合)。増殖因子(例えば、線維芽細胞由来、外因性)は、播種、足場への組み込み、増殖、及びインビトロ又はインビボでの播種細胞の分化のうちの1つ以上の改善に役立ち得る。2つ以上の細胞型に分化する能力を有する特定の細胞では、組織組成物の微小環境(例えば、ECM生成細胞、ECM、増殖因子など)が分化経路の促進に役立ち得る。いくつかの実施形態では、特定の方向の分化を増強するために外因性因子が加えられる。
【0140】
本発明の組織組成物は、増強細胞をさらに含み得る。増強細胞の非限定的な例には、分泌細胞、傍分泌細胞、酵素細胞、β細胞、胃腸細胞又はそれらの組合せが挙げられ得る。増強細胞は、播種細胞及び/又はECM生成細胞に対して特定の比率であり得る。細胞の比率は、細胞型及び望ましい結果に依存し得る。この比率はまた、増強細胞のクラスター化(例えば、細胞束)に依存し得る。または、この比率は、細胞の増殖に依存し得る(細胞の増殖がこの比率に最終的に影響を及ぼす)。スフェロイド/胚様体は、予め作製されても、調製中に自発的に生成されてもよい。いくつかの実施形態では、増強細胞と播種細胞又はECM生成細胞との比率は1:10〜10:1である。いくつかの実施形態では、増強細胞と播種細胞又はECM生成細胞との比率は1:5〜5:1である。いくつかの実施形態では、増強細胞と播種細胞又はECM生成細胞との比率は1:20〜20:1である。いくつかの実施形態では、増強細胞と播種細胞又はECM生成細胞との比率は1:25〜25:1である。いくつかの実施形態では、増強細胞と播種細胞又はECM生成細胞との比率は1:50〜50:1である。いくつかの実施形態では、増強細胞と播種細胞又はECM生成細胞との比率は1:100〜100:1である。本発明は、前述の比率に限定されない。
【0141】
本発明の組織組成物は、ECM生成細胞とは異なる増殖性細胞、例えば、付着性増殖性細胞、例えば、間葉系幹細胞、血管前細胞(pre−vascular cells)、内皮細胞、前駆細胞などをさらに含んでもよい。細胞型ごとに特定の微小環境があることに留意されたい。したがって、使用される各細胞型が、特定のニッチを提供して、追加の細胞型の脱出又は組み込みを促進する可能性が高い。
【0142】
前述のように、種細胞は、ヒト人工多能性幹細胞由来心筋細胞又は心筋細胞であり得る。そのような組織組成物では、心筋細胞は、例えば同期した様式で発達し、自発的に収縮することができる。心筋細胞は電気信号の伝播を可能にする。いくつかの実施形態では、足場は収縮を方向付ける。前述のように、いくつかの実施形態では、足場の繊維は溝を形成し、溝は足場が細胞の播種又は収縮を方向付けるのに役立ち得る。
【0143】
心筋細胞の例では、特定の実施形態では、心筋細胞は、0拍/分〜30拍/分、20拍/分〜60拍/分、30拍/分〜50拍/分、30拍/分〜200拍/分、40拍/分〜270拍/分、20拍/分〜300拍/分、40拍/分〜80拍/分などの速度で収縮する。例えば、限定するものではないが、温度、凍結保存後の時間、播種後の時間などの要因が、拍動数に影響を及ぼし得ることに留意されたい。拍動数は、ゼロになるか、培養中に変動する可能性がある。
【0144】
種細胞は、ECM生成細胞に対して特定の比率で存在し得る。正確な比率は、種細胞の細胞型に依存し得る。例えば、いくつかの実施形態では、種細胞とECM生成細胞との比率は1:10〜10:1である。いくつかの実施形態では、播種細胞とECM生成細胞との比率は1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10などである。いくつかの実施形態では、種細胞とECM生成細胞との比率は1:5〜5:1である。いくつかの実施形態では、種細胞とECM生成細胞との比率は1:20〜20:1である。いくつかの実施形態では、種細胞とECM生成細胞との比率は1:25〜25:1である。いくつかの実施形態では、種細胞とECM生成細胞との比率は1:50〜50:1である。いくつかの実施形態では、種細胞とECM生成細胞との比率は1:100〜100:1である。いくつかの実施形態では、図3Dの中空のものなどの足場では、播種細胞とECM生成細胞との比率は1:1である。同様に、組織組成物上に堆積される種細胞の量は、種細胞の細胞型に依存し得る。いくつかの実施形態では、0.5×10細胞/cm〜5×10細胞/cmの最終密度を有するように種細胞が播種される。いくつかの実施形態では、1×10細胞/cm〜1×10細胞/cmの最終密度を有するように種細胞が播種される。いくつかの実施形態では、1×10細胞/cm〜1×10細胞/cmの最終密度を有するように種細胞が播種される。
【0145】
種細胞の配列は層であってよい。または、足場上の種細胞の配列は、例えば、胚様体、カーディオスフェアなどの密集した細胞の束、集合体又は群(又は層と束との組合せ)であってよい。細胞束は様々な大きさのものであってよく、単一又は層状細胞と混合されてもよい。特定の実施形態では、組織組成物は、3〜500の細胞層を特徴とする。
【0146】
いくつかの実施形態では、細胞束(例えば、胚様体)が播種され、例えば、播種前に細胞が予めクラスター化される。いくつかの実施形態では、播種プロセス後に細胞が上記束又は集合体を形成し得る。このような束の細胞(胚様体)は、独自の微小環境を示し得る。
【0147】
図6は、本明細書の三次元組織組成物に使用され得る播種細胞(細胞の単一集団、又は細胞集団の組合せを含み得る)の特徴の非限定的な例を示す。
【0148】
<組織組成物の特徴及び変形例>
特定の実施形態では、組織組成物(tissue composition)は、生体材料(例えば、足場のみ、播種細胞を有しECM生成細胞を有しない足場、播種細胞及びECM生成細胞を有する足場、ECM生成細胞を有する足場など)及び増殖性細胞集団を含む。例えば、組織組成物は、足場及びECM(ECM生成細胞の有無を問わず)及び増殖性細胞集団を含んでもよい。特定の実施形態では、組織組成物は、生体材料及び非増殖性細胞集団を含む。例えば、組織組成物は、足場及びECM(ECM生成細胞の有無を問わず)及び非増殖性細胞集団を含んでもよい。組織組成物は、3〜500細胞層厚の細胞層を有し得るが、本発明は、この構成、又は細胞層の範囲に限定されない。本明細書の組織組成物は、所望の厚さを達成するために、因子(例えば、FGF)、他の増殖性サイトカイン、増殖因子又はそれらの組合せとともに培養され得る。
【0149】
生体材料は、吸収性、非吸収性又はそれらの組合せであり得る。生体材料は、合成由来材料、生物由来材料又はそれらの組合せを特徴とし得る。生体材料は、予め播種されたECM生成細胞(例えば、線維芽細胞)を含んでもよい。特定の実施形態では、生体材料は、ECM生成細胞(例えば、線維芽細胞)を含まない。特定の実施形態では、生体材料は細孔を含む。特定の実施形態では、生体材料は細孔を含まない。特定の実施形態では、生体材料は、生体材料に細胞を誘引するためのリガンド、抗体、磁気ベースの粒子など、又はそれらの組合せを特徴とし得る。特定の実施形態では、組織組成物を生成するために使用される培養プレート、バイオリアクター又は他の材料は、その表面の少なくとも一部上の抗付着材料を特徴として、細胞が表面に付着するのを抑止し、代わりに生体材料に付着させてもよい。
【0150】
増殖性細胞の非限定的な例には、心筋前駆細胞、線維芽細胞、間葉系幹細胞(MSC)、他の前駆細胞(例えば、骨格筋前駆細胞、平滑筋前駆細胞、神経前駆細胞、肝前駆細胞など)などが挙げられる。非増殖性細胞の非限定的な例には、心筋細胞、神経細胞、膵細胞などが挙げられる。
【0151】
本発明の組織組成物、例えば、増殖性細胞により作製されたものは、足場上に播種されると、増殖し続けるように誘導され得る。このプロセスには、特定の組成物(例えば、増殖因子、ペプチドなど)が使用されてもよい。本発明の組織組成物、例えば、増殖性細胞により作製されたものは、構築物上で増殖することが可能であり得、特定の時間に特定の細胞型に分化するように誘導され得る。例えば、心筋前駆細胞を含む組織組成物では、心筋前駆細胞は、適切な因子が導入されると分化するように促進され得る。
【0152】
特定の実施形態では、組織組成物(例えば、上記の増殖性細胞により作製されたもの)に、別の細胞集団、例えば、内皮細胞集団、心筋細胞集団、間葉系幹細胞(MSC)集団などを播種してもよい。
【0153】
本明細書の組織組成物は、様々な方法で構築され得る。例えば、特定の実施形態では、細胞シート又はスフェロイドが生成され、次いで、生体材料に移される。細胞シートは、様々な方法で生成され得る。例えば、細胞シートは、温度感受性プレート、低付着性プレート、又は選択した時間に細胞若しくは組織の剥離を可能にする組成物(例えば、リガンド)を有するプレートに細胞を播種することにより生成されてもよい。温度感受性プレートは、特定の温度(例えば、20〜25℃)に置かれた際に付着細胞を放出するように設計される。播種細胞がそれらの適切なコンフルエント及び/又は形態に達した際に、細胞のシートとしてプレート(例えば、温度感受性プレート、低付着性プレート、リガンドを有するプレートなど)から細胞を分離し、次いで、生体材料に移すことができる。スフェロイドは、例えば、遠心分離技術、低付着性プレート、軌道振盪などを使用して生成されてもよい。スフェロイドをペレット化してから、生体材料上に播種することができる。
【0154】
本発明を何らかの理論又は機構に限定することを望むものではないが、細胞シート又はスフェロイドの使用により、組織組成物の播種効率を高めることができると考えられている。これは、高価な細胞型及び/又は非増殖性細胞型を扱う場合に有利であり得る。
【0155】
本発明はまた、特定の表面に細胞を播種し、続いて、細胞に生体材料(例えば、足場のみ、播種細胞を有しECM生成細胞を有しない足場、播種細胞及びECM生成細胞を有する足場、ECM生成細胞を有する足場など)を付着させることにより構築された組織組成物を特徴とする。最初にプレートに生体材料を付着させ、次いで、細胞を播種することにより、類似の組織組成物を構築してもよい。特定の実施形態では、組織組成物は、生体材料及び細胞の層を特徴とする。播種細胞に生体材料を付着させる方法には、限定するものではないが、遠心分離が挙げられ得る。特定の実施形態では、生体材料は、播種細胞を誘引するための1つ以上の成分(例えば、リガンドなど)を含む。特定の実施形態では、播種細胞は、生体材料を誘引するための1つ以上の成分(例えば、リガンド)を含む。
【0156】
表面は、組織組成物の除去を可能にする特徴を有する培養ディッシュ又は培養表面であり得る。例えば、いくつかの実施形態では、表面は温度感受性培養プレートである。温度感受性プレートは、特定の温度(例えば、20〜25℃)に置かれた際に、付着細胞(例えば、組織組成物の播種細胞)を放出するように設計される。
【0157】
特定の実施形態では、プレートは、プレートに細胞及び/又は生体材料を一時的に付着させるための付着成分を含む。例えば、特定の実施形態では、付着成分は、RGDなどのリガンドを有する調整されたリポソーム(例えば、金被覆リポソーム)である。リガンドはプレートに金リポソームを付着させ、細胞及び/又は生体材料はリポソームに付着する。組織組成物を採取する準備ができたら、共鳴光により金被覆リポソームを活性化して開かせ、それによりプレートから組織組成物を剥離することができる。本発明は、金被覆リポソームに限定されない。本発明を何らかの理論又は機構に限定することを望むものではないが、付着成分(金被覆リポソームなど)を使用することの1つの利点は、プレート上の付着成分(例えば、金被覆リポソーム)を特定の形状にパターン化することによって、組織組成物をその形状に構築することができることであると考えられている。付着成分はまた、細胞、及びリポソーム内に含まれ得る特定の物質、例えば、増殖及び/又は分化に必要な因子の安定性及び制御放出を可能にし得る。
【0158】
本発明はまた、組織組成物の代謝率を低下させる方法を特徴とする。例えば、本発明は、心筋細胞を特徴とする組織組成物などの組織組成物の拍動数を低下させる方法を特徴とする。該方法は、特定の所望の拍動数に拍動数を低下させる薬物を組織組成物に導入することを特徴とし得る。特定の実施形態では、該方法は温度制御を特徴とする。特定の実施形態では、保存及び/又は安定性、例えば輸送中の安定性のために拍動数を低下させる。組織組成物の拍動数を低下させる方法は、本明細書の任意の適切な組織組成物、例えば、足場、ECM、ECM生成細胞及び心筋細胞を特徴とする組織組成物;足場の有無を問わず細胞シートを特徴とする組織組成物などに適用してもよい。
【0159】
さらに、本発明は、10〜20bpmの拍動数を有する組織組成物(例えば、本明細書の任意の適切な組織組成物、他の収縮性移植片など)を特徴とする。本発明はまた、20〜30bpmの拍動数を有する組織組成物(例えば、本明細書の任意の適切な組織組成物、他の収縮性移植片など)を特徴とする。本発明はまた、10〜30bpmの拍動数を有する組織組成物(例えば、本明細書の任意の適切な組織組成物、他の収縮性移植片など)を特徴とする。本発明はまた、30〜40bpmの拍動数を有する組織組成物(例えば、本明細書の任意の適切な組織組成物、他の収縮性移植片など)を特徴とする。本発明はまた、20〜40bpmの拍動数を有する組織組成物(例えば、本明細書の任意の適切な組織組成物、他の収縮性移植片など)を特徴とする。本発明はまた、40〜50bpmの拍動数を有する組織組成物(例えば、本明細書の任意の適切な組織組成物、他の収縮性移植片など)を特徴とする。本発明はまた、30〜50bpmの拍動数を有する組織組成物(例えば、本明細書の任意の適切な組織組成物、他の収縮性移植片など)を特徴とする。本発明はまた、0〜50bpmの拍動数を有する組織組成物(例えば、本明細書の任意の適切な組織組成物、他の収縮性移植片など)を特徴とする。本発明はまた、0〜100bpmの拍動数を有する組織組成物(例えば、本明細書の任意の適切な組織組成物、他の収縮性移植片など)を特徴とする。本発明を何らかの理論又は機構に限定することを望むものではないが、低い拍動数を有する組織組成物であれば、高い拍動数を有する組織組成物と比較して代謝負荷が低く、低い代謝負荷は、組織組成物の貯蔵寿命(例えば、移植片が移植される前に室温に設定され得る時間)を延ばすのに役立ち得るため、低い拍動数(例えば、10〜50bpmの拍動数)は有利であり得ると考えられている。低い代謝負荷は、組織組成物が健康で機能的であるために必要な栄養素が少ないため、虚血環境でも有益であり得る。
【0160】
組織組成物の拍動数を調節する方法には、限定するものではないが、β遮断薬又は他の外因性因子の使用が挙げられる。
【0161】
本発明の組織組成物は、短期及び/又は長期の保存、例えば、凍結保存に耐えるように構築される。凍結保存とは、−80℃〜−196℃又は−90℃〜196℃の温度を指し得る。組織組成物を凍結保存する能力は、要求に応じて使用するまで組織を貯蔵することと、組織組成物をある場所から別の場所へ輸送することとを可能にするのに役立つ。
【0162】
組織組成物はまた、室温(又は37℃未満の温度)で特定の長さの時間に耐えるように構築されてもよい。特定の長さの時間にわたり、37℃未満の温度で生存し続ける能力は、組織組成物が使用前にインキュベーターから出ている場合に有益であり得る。一例として、組織組成物は、インキュベーターから取り出され、移植プロセスに使用するために手術室に運ばれるが、すぐには移植されない場合、長時間室温に曝される可能性がある。
【0163】
<組織組成物の特性>
本発明の操作された組織組成物(例えば、心筋細胞を特徴とする)は、1つ以上の機械的パラメーター、電気生理学的パラメーター、化学的パラメーター、生化学的パラメーター(増殖因子、代謝産物、イオンチャネルなど)又はそれらの組合せについて評価することができる。機械的パラメーター又は電気生理学的パラメーターには、限定するものではないが、収縮率、収縮/弛緩速度、一定の収縮力、一定でない収縮力、変位速度、変位力、インパルスの方向性、インパルスの速度、電場電位、振幅、捕捉閾値、変時反応、刺激後の興奮順序、機能的ギャップ結合形成、電気的ペーシングに対する応答、電場電位振幅、伝導速度、伝播パターン、ギャップ結合分析又はそれらの組合せが挙げられ得る。
【0164】
同様に、操作された組織組成物(例えば、心筋細胞を特徴とする)は、リアルタイム電気生理学的測定のための多電極アレイマッピングに供することができる。収縮率、収縮期/拡張期変位、収縮期収縮速度及び/又は拡張期弛緩速度は、顕微鏡を用いて検出されてもよい。前述のように、心筋細胞をペーシングすることができる。ペーシングは、適用される外部場刺激によって達成され得る。
【0165】
組織組成物、例えば、心筋細胞を含む組織組成物は、特定の拍動数を有するように構築されてもよい。特定の実施形態では、拍動数は0〜100bpmである。特定の実施形態では、拍動数は10〜30bpmである。特定の実施形態では、拍動数は20〜40bpmである。特定の実施形態では、拍動数は30〜60bpmである。特定の実施形態では、拍動数は40〜70bpmである。特定の実施形態では、拍動数は50〜80bpmである。特定の実施形態では、拍動数は60〜90bpmである。特定の実施形態では、拍動数は70〜100bpmである。本発明は、前述の拍動数の例に限定されない。
【0166】
操作された組織組成物(例えば、心筋細胞を特徴とする)の機械的特性は、使用される足場材料に依存し得る。例えば、変位、ひずみ率、変位速度などはいずれも、足場の材料に依存し得る。いくつかの実施形態では、操作された組織組成物(例えば、心筋細胞を特徴とする)は、1mm〜1.5cmの電極間間隔では、操作された組織組成物全体で0.1mV〜1mVの電圧振幅を有する。
【0167】
組織組成物の引張強度は、その組成、例えば、足場、ECM、細胞などの割合によって決定され得る。
【0168】
特定の実施形態では、マーカーの相対発現を評価して、ECM生成細胞(例えば、線維芽細胞)に対する特定の目的の細胞型(例えば、心筋細胞、骨格筋細胞、平滑筋細胞など)の量を決定することができる。目的の細胞型とECM生成細胞との比率は、例えば、目的の細胞が増殖する場合、特定の細胞集団が死ぬ場合、細胞が経時的に分化する場合など、組織組成物の変化に基づいて経時的に変化する。評価され得るマーカーの非限定的な例には、CD90、ビメンチン、FSP−1、コラーゲンI、α−SMA、HSP47などが挙げられる。
【0169】
<プラットフォーム>
本発明はまた、本発明の組織組成物を有するプラットフォームを特徴とする。例えば、本発明は、単一ウェルプレート(単一ウェルを有する)を特徴とし、本発明の操作された組織組成物は、その中のウェルに堆積される。本発明はまた、2つ以上のウェルを有するマルチウェルプレートを特徴とし、本発明の操作された組織組成物は、その中の少なくとも1つのウェルに堆積される。マルチウェルプレートは、2ウェル、4ウェル、6ウェル、8ウェル、12ウェル、24ウェル、48ウェル、96ウェル、96を超えるウェル、2〜12ウェル、12〜24ウェル、24〜48ウェル、48〜96ウェルなどを有してもよい。本発明はまた、ウェル、トラフ、又はチューブ、トレイなどの任意の他の適切な培養装置内にウェルを有する、操作された組織組成物のためのプラットフォームを特徴とする。本発明は、組織組成物を培養、維持及び/又は保存するためのプラットフォームとしての培養ディッシュに限定されない。
【0170】
本発明はまた、本明細書の組織組成物を生成、維持及び/又は保存するための閉鎖系プラットフォームを特徴とする。例えば、閉鎖系は、組織組成物、例えば、その中に収容される足場及びECM並びに場合により本明細書で説明される他の成分によるカプセル化を特徴とし得る。閉鎖系では、培地を無菌的に交換することができる。組織組成物は、カプセル化を用いて凍結し、準備ができたら解凍することもできる。特定の実施形態では、複数の組織組成物をカプセル化に収容することができるか、複数のカプセル化を一緒に接続して新たなカプセル化を作成することができる。例えば、いくつかの実施形態では、最大6個の組織組成物がカプセル化に収容される。いくつかの実施形態では、最大10個の組織組成物がカプセル化に収容される。いくつかの実施形態では、最大20個の組織組成物がカプセル化に収容される。いくつかの実施形態では、20個を超える組成物がカプセル化に収容される。
【0171】
<使用方法>
本発明の組織組成物は、様々な目的、例えば、インビボ使用、インビトロ使用、例えば、患者への移植、インビトロアッセイ、細胞分化プラットフォームなどに使用され得る。例えば、本発明は、組織を修復する方法(例えば、疾患又は症状、外傷などによって影響を受けた組織など)を特徴とし、本発明の組織組成物は患部組織に移植されて、患部組織の機能を高める。非限定的な例として、心組織組成物(心筋細胞を特徴とする)が、目的の心組織に移植されてもよく、操作された組織組成物は心組織の機能を高める。疾患又は症状には、(限定するものではないが)不整脈、心不全、心筋梗塞、不整脈誘発性心筋症(例えば、QT延長症候群(LQTS)、QT短縮症候群(SQTS)、ブルガダ症候群、カテコールアミン誘発性多形性心室性頻拍(CPVT)、不整脈誘発性右室心筋症(ARVC)、拡張型心筋症(例えば、肥大型心筋症、左室緻密化障害、トランスサイレチンアミロイドーシス、遺伝性ヘモクロマトーシス、ラソパシー(Noonanスペクトラム障害としても知られる))、何らかの他の後天性の心疾患若しくは損傷、又は何らかの他の先天性の心疾患若しくは損傷が挙げられ得る。
【0172】
本発明はまた、本発明の操作された組織組成物上に上記細胞を播種することにより細胞を分化させる方法を特徴とする。組織組成物のECM生成細胞由来の化合物、又はその中の他の因子は、細胞の分化を引き起こす。本発明はまた、本発明の操作された組織組成物に上記細胞を播種することにより細胞の成熟を増強する方法を特徴とする。組織組成物のECM生成細胞由来の化合物、又はその中の他の因子は、細胞の成熟を引き起こし得る。本発明はまた、本発明の操作された組織組成物に上記細胞を播種することにより、細胞の特定の表現型又は遺伝子型を駆動する方法を特徴とする。組織組成物のECM生成細胞由来の化合物、又はその中の他の因子は、細胞の発達を引き起こして特定の表現型又は遺伝子型を発現させ得る。
【0173】
本発明の組織組成物(例えば、微小環境、例えば、ECM生成細胞由来の化合物)は、播種細胞を様々な比率で複数の異なる細胞集団に発生/分化させ得ることに留意されたい。例えば、前駆細胞の群は、2つ以上の細胞集団に分化し得る。別の例として、種細胞は、心筋細胞(例えば、80〜90%)、内皮細胞(例えば、2〜10%)及び平滑筋細胞(例えば、2〜10%)に分化し得る。
【0174】
本発明の組織組成物はまた、移植に使用され得る。方法は、切開外科的処置、低侵襲処置、経皮的処置、ロボット処置などを特徴とし得る。
【0175】
本明細書の方法及び組成物は、様々な対象、例えば、ヒト/霊長類、ブタ、ラット、イヌ、ウマ、ネコなどに使用され得る。
【0176】
本発明の操作された組織組成物は天然の組織を模倣し得るため、操作された組織組成物は、有害若しくは毒性作用を検出するための化合物若しくは他の成分の試験、又は有益若しくは治療作用の検出に使用され得る。例えば、本発明は、特定の組織、例えば、操作された組織組成物の組織に対する試験成分(例えば、薬物、小分子、細胞、細胞産物など)の作用(例えば、有害、毒性、有益、治療)を検出する方法のための方法を特徴とする。組織は、例えば、心組織であり得る。いくつかの実施形態では、該方法は、操作された組織組成物に試験成分を導入することを含む。いくつかの実施形態では、操作された組織組成物は何らかの方法で刺激される。該方法は、1つ以上の物理的パラメーター、機械的パラメーター、電気生理学的パラメーター、生化学的パラメーターなどを測定することをさらに含んでもよい。試験の結果に応じて、試験成分が有害作用又は有益作用を有するかどうかを決定することができる。いくつかの実施形態では、該方法は、変位、ひずみ、力、伝導速度、ミリ電圧振幅(milivoltage amplitude)又はそれらの組合せを測定することをさらに含む。
【0177】
少なくとも2つの異なる電極を使用して(x軸に沿って、又はy軸に沿って)、インパルスの方向性が測定される。興奮順序を決定することができるため、インパルスの方向性を決定することができる。少なくとも2つの異なる電極を使用して(x軸に沿って、又はy軸に沿って)、インパルスの速度が測定される。個々の電極からの単極電位図トレースを用いて、又は電極を組み合わせて双極トレースを形成することによって、電場電位が測定される。電圧/電場電位を記録することができ、続いて振幅を分析することができる。本発明者らが開発した独自のソフトウェアを使用して捕捉閾値が測定される。多電極アレイを介して特定の位置で構築物を刺激することができ、構築物の細胞ネットワークの脱分極を引き起こすのに必要な最小電圧を決定することができる。本発明者らが開発した同じ独自のソフトウェアを使用して変時反応が測定される。決定された速度で心臓を刺激し、反応をモニターすることができる。既知の位置で組織組成物(例えば、移植片)を刺激することができ、複数の軸に沿った構築物のその後の興奮を記録することができる。プログラムされた追加の刺激をペーシングし導入することにより、持続性心室性頻拍の誘導性を測定することができる。
【実施例】
【0178】
[例1]
例1は、本発明の組織組成物を生成する方法の例を記載している。本発明は、本明細書のこの例の特徴に限定されない。(1)液体窒素からヒト真皮線維芽細胞(HDF)を取り出し、温め、培養ディッシュ内で培養する。(2)HDFを約8回継代し(約20継代まで継代することができる)、各継代は細胞が約80%コンフルエントになった際に行う。(3)適切な継代で、細胞を採取する(トリプシンなどを用いて培養ディッシュから細胞を除去してもよいか、細胞をこすり取ってもよい)。(4)組織培養ディッシュ(例えば、60mmディッシュ)に足場を入れる。足場は、任意の適切な形状及び大きさであってよく、組織培養ディッシュは、円形の60mmディッシュに限定されないことに留意されたい。例えば、足場及びディッシュは長方形、正方形などであってよい。(5)足場にHDFを適用する。細胞数(及び体積、したがって細胞の濃度)は既知である。HDFの凍結保存バイアルは、温め、継代せずに足場に直接播種することができることに留意されたい。(6)HDFの播種には、重力、揺動及び/又は遠心分離が使用されてもよい。(7)特定の期間、例えば、30日間にわたって足場−HDF培養物を培養してもよい。線維芽細胞の準備ができたら、例えば、遠心分離を使用して、細胞の別の集団(例えば、心筋細胞などの播種細胞)を播種することができる。(8)播種細胞は、特定の期間、例えば、2日間にわたって組織組成物上で培養され得る。(9)本明細書に記載されるように、組織組成物は、場合により凍結保存することができるか(例えば、制御された速度凍結プロトコルを使用して)、組織組成物は、様々な目的、例えば、外科的移植、インビトロ薬物試験などのために直ちに使用することができる。
【0179】
[例2]
例2は、本発明の組織組成物を記載している。本発明は、例2に記載された方法及び特徴に限定されない。心筋前駆細胞を用いて試験を行った。本発明者らは、驚くべきことに、構築物(組織組成物)内の心細胞層が、先に記載されたものよりもはるかに厚いこと、例えば、細胞層が1〜50細胞であった(図7Aを参照)ことを見出した。心筋前駆細胞は増殖性であり、培養期間中に複製し続ける。この移植片(組織組成物)を慢性心不全(CHF)の齧歯類モデルに移植すると、心機能が改善された(図7B図7C並びに表1、表2及び表3を参照)。いくつかの実施形態では、本発明の組織組成物は、心臓の心外膜上に移植され得る同種異系凍結保存心臓移植片である。いくつかのデータは、これらの移植片が心室性頻拍に対する感受性を低下させることができることを示している。さらに、これらの前駆細胞は、心臓特異的中胚葉系統細胞(内皮細胞、平滑筋細胞及び心筋細胞)に分化する能力を有する。本発明を何らかの理論又は機構に限定することを望むものではないが、線維芽細胞移植片の増殖因子環境は、インビトロで心細胞の分化を促進及び誘導するのに役立つ可能性がある。
【0180】
前述のように、移植後も細胞が分裂し続けるのは驚くべきことであった。本発明を何らかの理論又は機構に限定することを望むものではないが、心筋前駆細胞は低酸素に対して優れた抵抗性を有し得、最終分化心筋細胞よりも良好に低酸素又は梗塞後環境で生存し得ることが仮定される。移植片の最終細胞比は5:1〜100:1である。
【0181】
表1を参照すると、固体Millarカテーテルを使用して、シャム、CHF、及びCPC(hiPSC由来心筋前駆細胞)により処理した前駆細胞移植に対して、試験終了時に血行動態評価を実施した。心筋前駆細胞心臓移植片の移植により、EDP及びTauが減少するのに対して、PDPが増加する。これらの値は心臓の充満能力の改善をもたらし、最終的には、これらの移植片により治療された患者では病状が改善し、ニューヨーク心臓協会心機能分類の低下をもたらす可能性があることを示唆する。データは平均値±標準誤差である。CHF、n=6;シャム、n=10;CPC、n=13。略語:HR=心拍数、EDP=拡張末期圧、SysP=収縮期圧、dP/dt=経時的な血圧の変化、PDP=ピーク最大圧(Peak Developed Pressure)、CHF=慢性心不全。
【表1】
【0182】
表2を参照すると、処置後3週間の時点で非侵襲的心エコー評価を実施した。心筋前駆細胞移植片の移植により、非適応性リモデリング(LVid−sys/dia及びLVv−sys/dia)が減少するとともに、EF及びFSが増加する。データは平均値±標準誤差である。CHF、n=6;CPC。略語:EF=駆出率;FS=左室内径短縮率;sys=収縮期;dia=拡張期;LVid=左心室内部寸法;LVv=左心室容積;AW=前壁。
【表2】
【0183】
表3を参照すると、処置後3週間の時点で非侵襲的心エコー評価を実施した。心筋前駆細胞移植片の移植により、非適応性リモデリング(LVid−sys/dia及びLVv−sys/dia)が減少するとともに、EF及びFSが増加する。データは平均値±標準誤差である。CHF、n=6;CPC。略語:EF=駆出率;FS=左室内径短縮率;sys=収縮期;dia=拡張期;LVid=左心室内部寸法;LVv=左心室容積;AW=前壁。
【表3】
【0184】
[例3]
例3は、本発明の組織組成物を記載している。本発明は、例3に記載された方法及び特徴に限定されない。例3は、線維芽細胞及び心筋細胞を播種し、心不全ラットの機能的利益について評価した、低速分解メッシュ足場を記載している。また、組織組成物を凍結保存し、移植前に再構成した。データは、移植後、及び移植後3〜7週間の機能改善を示している。
【0185】
ヒト真皮線維芽細胞(hNDF)及びヒトiPSC由来心筋細胞(hiPSC−CM)を生体吸収性メッシュ内で培養することにより、組織組成物(hiPSC−CM移植片)(直径1.7cm)を製造した(図8Aを参照)。移植片を−196℃で2〜4週間凍結保存し、解凍し、再構成し、CHFラットに移植した。左冠動脈(LCA)を恒久的に結紮することにより、免疫適格ラットに心筋梗塞(MI)を発生させた(時間=0)。3週間かけてラットを回復させて、慢性心不全を発症させた。次いで、胸骨正中切開により組織組成物(hiPSC−CM移植片)を移植した(時間=3週間)。梗塞後3、6及び10週間(移植片移植後0、3及び7週間)の時点で心エコー検査を実施した。試験のエンドポイントで、血行動態及びエクスビボ圧容量治癒を得た(試験のエンドポイント 時間=10週間)。
【0186】
本明細書で使用される本発明の組織組成物(hiPSC−CM移植片)は、凍結前(65±10bpm)及び解凍後(60±10bpm)に自発的及び同期的収縮を維持した。移植片は、組成物又は拍動数の悪化を伴わず、解凍後40日まで維持された(図8Bを参照)。使用した組織組成物(hiPSC−CM移植片)は、LV容積(収縮期/拡張期)、LV直径(収縮期/拡張期)を減少させることにより(p<0.05)不適応性左心室(LV)リモデリングを回復させ、CHF対照と比較して、移植後3週間及び7週間から駆出率及び左室内径短縮率に改善傾向が見られた(図8Cを参照)。移植片は、LV拡張末期圧を低下させ(24±6mmHg(CHF対照)対18±3mmHg(使用した組織組成物))、対照と比較してLV dP/dt(−)及びdP/dt(+)の改善傾向を示した(表4を参照。試験のエンドポイント(hiPSC‐CM移植片移植後7週間、MI後10週間)で血行動態評価を実施した。hiPSC−CM移植片はLV EDPを改善し、dP/dt(+)の改善傾向を示す。シャム、n=6;CHF、n=6;hiPSC−CM移植片、n=10)。さらに、使用した組織組成物(hiPSC−CM移植片)により、拡張期圧容積関係が左方向に移動することによって示されるように、LV EDP作動容積が36%減少する(図8Dを参照)。
【表4】
【0187】
例3は、本発明の組織組成物を凍結保存し、再構成し、CHFラットに移植することができることを示している。処置されたラットは、不適応性LVリモデリングの回復を示し、処置後3週間から7週間まで機能改善を継続した。本発明を何らかの理論又は機構に限定することを望むものではないが、凍結保存する能力により、大量バッチ製造後の長期保存が可能になり、それによりコスト及び実用性の利点がもたらされると考えられている。
【0188】
以下の米国特許の開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。米国特許第4,963,489号明細書;米国特許出願第2009/0269316号明細書;国際公開第2013151755号パンフレット;国際公開第2011102991号パンフレット;米国特許出願第2014/0178450号明細書;米国特許第8,802,144号明細書;国際公開第2009102967号パンフレット;米国特許第9,119,831号明細書;国際公開第2010042856号パンフレット;米国特許第2008/0075750号明細書。米国特許第9,587,222号明細書。
【0189】
本発明の様々な修正は、本明細書に記載されたものに加えて、前述の説明から当業者には明らかであろう。そのような修正も、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されている。本出願において引用される各参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0190】
本発明の好ましい実施形態を示し、説明してきたが、添付の特許請求の範囲の範囲を超えない修正をそれに加えることができることは当業者には容易に明らかであろう。したがって、本発明の範囲は、特許請求の範囲によってのみ限定される。特許請求の範囲に列挙される参照番号は例示的なものであり、特許庁による審査を容易にするためのものにすぎず、何ら限定するものではない。いくつかの実施形態では、本特許出願で提示される図は、角度、寸法の比率などを含め、縮尺通りに描かれている。いくつかの実施形態では、図は代表的なものにすぎず、特許請求の範囲は図の寸法によって限定されない。いくつかの実施形態では、語句「含む(comprising)」を使用して本明細書に記載される本発明の説明は、「からなる(consisting of)」と説明され得る実施形態を含み、したがって、語句「からなる(consisting of)」を使用して本発明の1つ以上の実施形態を特許請求するための書面による説明要件を満たす。
【0191】
特許請求の範囲に列挙される参照番号は、単に本特許出願の検討を容易にするためのものであり、例示であって、図面中の対応する参照番号を有する特定の特徴に特許請求の範囲を限定することを何ら意図するものではない。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図8D
【国際調査報告】