特表2020-524075(P2020-524075A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-524075(P2020-524075A)
(43)【公表日】2020年8月13日
(54)【発明の名称】流体リアクタ
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/00 20060101AFI20200717BHJP
   B01J 19/26 20060101ALI20200717BHJP
【FI】
   B01J19/00 N
   B01J19/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-569958(P2019-569958)
(86)(22)【出願日】2018年6月18日
(85)【翻訳文提出日】2020年2月13日
(86)【国際出願番号】EP2018066070
(87)【国際公開番号】WO2018234217
(87)【国際公開日】20181227
(31)【優先権主張番号】102017210202.0
(32)【優先日】2017年6月19日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】500242786
【氏名又は名称】フラウンホファー ゲセルシャフト ツール フェールデルンク ダー アンゲヴァンテン フォルシュンク エー.ファオ.
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルター,モーリッツ
(72)【発明者】
【氏名】ボット,マリオ
【テーマコード(参考)】
4G075
【Fターム(参考)】
4G075AA13
4G075AA27
4G075BB03
4G075BB05
4G075BD09
4G075CA57
4G075DA02
4G075EB01
4G075EC01
4G075EC30
4G075FA14
(57)【要約】
衝突によって微粒子流体を生成するための流体リアクタは、衝突チャンバ(40)を囲むハウジング(30)と、第1の流体ノズル(10)と、共線的に第1の流体ノズル(10)に対向して配向される第2の流体ノズルであって、共通の衝突ゾーン(50)の中で、ノズル(10、20)の噴流方向において第1の流体ノズル(10)に直接対向して配置される第2の流体ノズル(20)と、第1の流体ノズル(10)の側方(36)に配置される、衝突チャンバ(40)の中に注入する少なくとも1つの洗浄流体注入口(32)と、第2の流体ノズル(20)の側方(38)に配置される、衝突チャンバ(40)からの少なくとも1つの生成物出口(34)とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
衝突によって微粒子流体を生成するための流体リアクタであって、
衝突チャンバ(40)を囲むハウジング(30)と、
第1の流体ノズル(10)と、
共線的に前記第1の流体ノズル(10)に対して対向して配向される第2の流体ノズル(20)であって、前記第2の流体ノズル(20)は、共通の衝突ゾーン(50)の流体ノズル(10、20)の噴流方向において、前記第1の流体ノズル(10)に直接対向して配置される第2の流体ノズル(20)と、
前記第1の流体ノズル(10)の側方(36)に配置され、前記衝突チャンバ(40)の中に注入させる少なくとも1つの洗浄流体注入口(32)と、
前記第2の流体ノズル(20)の側方(38)に配置され、前記衝突チャンバ(40)からの少なくとも1つの生成物出口(34)と、
を備え、
洗浄流体案内構造物(44)が、前記第1の流体ノズル(10)の側方(36)に平行チャンネルとして形成され、前記衝突チャンバ(40)の前記衝突ゾーン(50)の領域で、前記第1の流体ノズル(10)の噴流方向に誘導される洗浄流体の流れ(55)を生成することに適している流体リアクタ。
【請求項2】
請求項1に記載の流体リアクタであって、
前記衝突チャンバ(40)の中において、前記第2の流体ノズル(20)の側方(38)に開放気孔で又はスポンジ状に構造化された衝撃壁(46)が形成される流体リアクタ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の流体リアクタであって、
前記第1の流体ノズル(10)の先端部(11)の領域において、前記流体ノズル(10)の周囲の前記衝突チャンバ(40)の中に、同心円状に配置され、先細の第1の流体案内空間(17)を生成する突出部(15)が形成されている流体リアクタ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の流体リアクタであって、
前記第2の流体ノズル(20)の先端部(21)の領域において、前記流体ノズル(20)の周囲の前記衝突チャンバ(40)の中に、同心円状に配置され、先細の第2の流体案内空間(27)を生成する突出部(25)が形成されている流体リアクタ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の流体リアクタであって、
前記第2の流体ノズル(20)のシャフトが、前記流体ノズル(20)の先端部(21)からそのベース(23)に向かって先細となることによって、流体拡張空間(48)が前記流体ノズル(20)と前記衝突チャンバ(40)の壁との間に形成される流体リアクタ。
【請求項6】
溶媒中に溶解した成分からナノ粒子流体を生成するための方法であって、
その中に溶解した成分を有する第1の流体媒体を第1の流体ノズル(10)を通して加圧する工程と、
前記第1の流体ノズル(10)に直近で対向する、共線的に対向して配向される第2の流体ノズル(20)を通して、沈殿剤を含む第2の流体媒体を加圧する工程であって、前記ノズル(10、20)から出てくる2つの自由噴流は、前記第1の流体媒体に溶解している前記成分が前記沈殿剤によって沈殿し、前記ノズル(10、20)の噴流方向に対して横方向に衝突ゾーン(50)から伸張する、前記沈殿した成分の衝突ディスク(52)がナノ粒子流体として形成されるような高速で前記衝突ゾーン(50)で互いに衝突する工程と、
を備え、
前記ノズル(10、20)の前記噴流方向に平行に誘導される洗浄流体の流れ(55)は、ナノ粒子流体の、生成中の衝突ディスク(52)を洗浄流体の流れ(55)の方向に偏向し、前記洗浄流体の流れ(55)は、前記形成されたナノ粒子流体を前記ノズル(10、20)の噴流方向に前記衝突ゾーンから流体拡張空間(48)の中に搬送し、
前記ナノ粒子流体は、前記洗浄流体の流れ(55)から回収される方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、
前記流体拡張空間(48)は、生成された粒子の前記衝突ゾーン(50)の中へのリバウンドを回避又は防止する方法。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の方法であって、
前記洗浄流体の流れ(55)は、前記形成されたナノ粒子流体を前記ノズル(10、20)の前記噴流方向に前記衝突ゾーンから構造化された衝撃壁(46)上に搬送し、生成された粒子の前記衝突ゾーン(50)の中へのリバウンドを回避又は防止する方法。
【請求項9】
請求項6乃至8のいずれか1項に記載の方法であって、
前記洗浄流体の流れ(55)の体積流量と必要に応じて密度とを、前記第1及び第2の流体媒体の体積流量と密度に適合させて、媒体又は生成された粒子の前記衝突ゾーン(50)の中への逆流を防止する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体媒体から沈殿によりナノ粒子を生成するための流体リアクタ、特に、いわゆる衝突噴流リアクタに関する。本発明は、特に、化学製品又は医薬製品において利用するために、溶液から狭い粒径分布を有するナノ粒子を製造するための方法と手段に関する。
【背景技術】
【0002】
物質又はその物質の前駆体が溶解している流体が高圧下で、そしてその結果高速度で沈殿槽と衝突するとき、その物質又はその物質の混合物のナノ粒子を、沈殿によって、当該物質又はその物質の混合物又は前駆体の溶液から得ることができる。これによって、その流体のアトマイゼーション、従って、ナノ粒子構造物の形態で沈殿物の形成がもたらされる。技術的に実現する方法の1つに、「衝突噴流」法が知られている。この目的のために、流体リアクタが用いられ、2つの流体、すなわち、一方で沈殿させられる流体と、他方で沈殿させる流体が、2つの対向する流体ノズルによって高圧下で加圧される結果、その2つの流体は、これらのノズルの間の衝突ゾーンで、自由噴流として高速で衝突する。これによって、その2つの流体の運動量の重ね合わせに起因して、その2つの流体のそれぞれの元の方向に対して横方向に、すなわち、その噴流方向に対して横方向に伝播する、いわゆる「衝突ディスク」がもたらされる。その2つの自由噴流の衝突場所において、2つの非相溶性の媒体の激しい乱流混合に起因して、化学沈殿反応がその結果生じる。その場合において、それと同時にそしてこの激しい乱流混合中で支配的なせん断力に起因して、沈殿物がナノ粒子の形態で得られるか又は沈殿中にナノ粒子の中に直接分散する。その粒子の粒径は、衝突場所での速度勾配の関数であると想定される。しかしながら、生成物の組成に応じて、その粒子の粒径は、その系の温度及び/又は圧力にも依存する。通例、粒径が50μmから500μmまでの範囲の粒子が得られる。
【0003】
対向するノズルから出る2つの自由噴流は、衝突し、結果として生じる衝突ディスク中で完全に消失する。その衝突ディスクの中に存在するナノ粒子生成物は、リアクタの中で収集され、その後、そこから取り出される。そのナノ粒子を衝突ディスクのナノ粒子流体から分離する必要がある場合が多い。衝突ディスクのナノ粒子流体をリアクタから除去するために、そのリアクタを洗浄媒体により間欠的又は連続的にリンスすることができる。ナノ粒子流体の除去は、衝突ディスクの平面の方向、すなわち、2つの衝突する自由噴流の方向に対して横方向に行われることが知られている。
【0004】
この種類の公知のリアクタの不利な点は、得られるナノ粒子の粒径分布が幅広く、その上、用いられる動作パラメータ、特に、圧力と流速、なおまた、媒体の物理化学特性、とりわけ、粘度と表面張力に大きく依存することである。再現性のある結果を得るためには、動作パラメータの正確なコントロールが必要である。しかしながら、公知の流体リアクタにおいては、理想的な動作条件下であっても、用途によっては不適切に広い粒径分布のみしか得られず、粒径を分離するさらなる方策が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
その結果、狭い粒径分布を好都合に有する、再現性のあるナノ粒子を、容易な、すなわち、パラメータの精密な制御を必要とせず、また、確実に再現可能な方法で得ることができるように、「衝突噴流」法によって、ナノ粒子を生成するための方法と手段をさらに開発することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この技術的問題は、請求項1に係る衝突によって、ナノ粒子流体、特にナノ粒子を生成するための流体リアクタを提供することよって解決される。
【0007】
特に、衝突チャンバを囲むハウジングを有する流体リアクタによって。前記衝突チャンバの中に第1の流体ノズルが突出し、第2の流体ノズルが、共線的に第1の流体ノズルに対向して配置され、共通の衝突ゾーンの中で、前記両ノズルの噴流方向において、前記第1の流体ノズルに直接対向している。本発明に従い、前記リアクタは、前記第1の流体ノズルの側方に配置され、前記衝突チャンバの中に開いている、少なくとも1つの洗浄流体注入口を前記ハウジング上に有する。前記流体リアクタは、前記第2の流体ノズルの側方に配置され、前記衝突チャンバから通じる少なくとも1つの生成物出口も有する。
【0008】
本発明に従い、提供される前記流体リアクタは、前記第1の流体ノズルの側方に特定の形状の構造物が形成され、前記洗浄流体注入口を介して供給することができる気体又は液体の前記洗浄流体を有することを特に特徴とする。これに関連して、洗浄流体案内構造物が前記第1の流体ノズルの側方に平行チャンネルとして形成され、これらの構造物は、前記衝突チャンバの中で、そして、少なくとも前記衝突ゾーンの領域で、前記第1の流体ノズルの噴流方向に流れる、定方向の、特に、層流の洗浄流体の流れを生成することに適している。「定方向の」流れというのは、本明細書において、好適な層流特性を意味し、その場合、前記流体は、混流せずかつ渦を形成しない層状に流れる。流速の関数として特有のレイノルズ数Reと、前記リアクタ形状の特有の長さと、粘度とは、当該目的のために、Re=2300の値を越えないようにすべきである。
【0009】
すなわち、本発明に従い、前記リアクタの動作において、つまり、前記第1及び第2の流体ノズルから出る前記2つの自由噴流の衝突中に、定方向の、特に層流の、洗浄流体の流れが存在し、原則として、前記流出する自由噴流の方向に対して平行に、つまり、基本的に、結果として生じる衝突ディスクに対して直角に流れる。結果として、本発明に従い、前記衝突ディスクを、その伝播において、前記洗浄流体の定方向の正味の流れの方向に偏向することを達成する。
【0010】
これは、特に、前記自由噴流の伝播方向に対して、本来、実質的に垂直に生成する前記扁平な衝突ディスクは、実際にはキノコ状に、すなわち、好適にはドーム又は回転放物面の形で偏向されることを意味する。第一次近似では、前記定方向の、特に層流の洗浄流体によって、偏向して生成する衝突円錐の具体的な形は、一方で前記衝突ゾーンからのナノ粒子流体の伝播速度と、他方で前記定方向の洗浄流体のプロファイルとのベクトルの加算によって得られる。
【0011】
これによって、前記衝突ディスクの前記形成されたナノ粒子流体中に存在する粒子は、前記衝突ゾーンから、従って、有利に前記衝突する自由噴流からも安全かつ確実に搬出され、それによって、既に生成された粒子が前記衝突ゾーンに戻る又は前記自由噴流に衝突する確率が大幅に低下するということが有利に達成される。
【0012】
驚くべきことに、前記プロセスの成果、すなわちナノ粒子の生成は、当該方法と動作条件によって大幅に改善でき、それが本発明に係る前記流体リアクタの特定の構造設計から必然的にもたらされることが判明している。一方では、品質及び、特に、ナノ粒子の粒径分布は、選択される動作パラメータ及びプロセスパラメータへの依存度が低いので、確実性と再現性がより高いナノ粒子生成物を得ることができる。他方では、驚くべきことに、これによって、公知のプロセスによって生成することが可能なナノ粒子と比較して、得られるナノ粒子の粒径分布が大幅に改善されること、つまり、粒径分布を縮小することが判明している。
【0013】
本発明と関連して、「共線的」とは、0度の角度(整流の配向の場合)又は代わりに180度の角度(逆の配向の場合)のみでなく、「共線的」は、当該相互作用の角度からの実際に考えられる偏りを含むことも意味する。用語「共線的」は、従って、好適には、−10度乃至+10度、つまり、170度乃至190度の相互作用の角度を含む。
【0014】
本発明と関連して、「共線的」は、前記2つの相互作用する噴流の配向又はノズルの配向が整列している又は共通軸で延びていることを意味するだけでなく、「共線的」は、前記噴流の軸又はノズルの軸の横変位の形で実際に起こりうる偏りも含む。理想的には、前記噴流の100%のオーバーラップが提供される、すなわち、特に、前記噴流の軸又は代わりにノズルの軸は整列している。しかしながら、用語「共線的」は、好適に、50%以上のオーバーラップ、好適には、70%以上のオーバーラップも含む。必要なオーバーラップの程度は、前記ノズルから出る前記自由噴流の噴流プロファイルにも依存する。当業者は前記対応関係を理解する。
【0015】
以下において、本発明に係る前記流体リアクタの特定の実施形態を説明する。それらは、それぞれ、本発明に係る前記リアクタの有利な動作を付加的にサポートし、そして、生成されたナノ粒子の前記衝突ゾーンの中への、従って、同様に前記自由噴流の中へのリバウンドを防止するために特に適している。
【0016】
好適な実施形態において、構造化された衝撃壁が、前記流体リアクタの前記衝突チャンバの中、少なくとも前記第2の流体ノズルの側方に設けられ、そこで、前記生成可能な、特に層状の洗浄流体の流れにより前記衝突ディスクを偏向することができる。当該構造化された衝撃壁は、それに衝突する、前記形成されたナノ粒子流体からの粒子の運動量が分散かつ/又は減衰するように設計され、その結果、特に、前記粒子の前記衝突チャンバの中への、及び、最悪の場合、前記衝突ゾーン又は前記自由噴流の中への弾性的リバウンドが防止される。この目的のために、前記衝撃壁は、衝撃する流体の液滴を砕くために、好適に構造化される。開放気孔構造物又はスポンジ状構造物、好適には焼結構造物、金属、ガラス又はセラミックの発泡体又はフリットが与えられることが好ましい。
【0017】
好適な実施形態において、前記洗浄流体案内構造物は、前記洗浄流体の定方向の、特に層流を及び、特に、前記ノズルから出る前記自由噴流の流れ方向に平行な前記洗浄流体の流れを生成するために、構造化された尾根又は同様の構造物として設計される。これらの構造物は、前記流体リアクタの中にあって、前記衝突空間の中に導入される前記洗浄流体の乱流の生成を抑え、前記洗浄流体の流れを導く。好適な変形例において、これらの構造物は、平行なチャンネル又は溝として形成される。同じものが、中央に延びる第1の流体ノズルの周囲に同心円状に好適に配置される。好適な実施形態において、これらのチャンネルは、前記衝突ゾーンの中で、前記第1の媒体の自由噴流が出る、前記第1の流体ノズルの先端部の近傍で開いているので、少なくとも前記衝突ゾーンの領域で、導入された洗浄流体の、定方向の、特に層状の流れを形成することができる。
【0018】
好適な変形例において、突出部が洗浄流体案内構造物として形成される。前記突出部は、前記ハウジングに沿った、特に前記衝突チャンバの壁に沿った、少なくとも前記第1の流体ノズルの先端部の領域において、中央の第1の流体ノズルの周囲に同心円状に配置され、特に先細の第1の流体案内空間を前記衝突チャンバの中に形成する。当該好適に形成される流体案内空間において、導入された洗浄流体の誘導流は、前記第1流体ノズルから前記第1の媒体の自由噴流の出口の開口部に直接誘導されると考えられる。こうして、前記洗浄流体は、前記第1の流体ノズルのシャフトに沿って、前記第1の流体ノズルの先端部の近傍を流れ、そこから出てくる前記第1の媒体の自由噴流を同軸状に囲む。理論に縛られることなく、流出する自由噴流は、こうして、ベンチュリノズルの原理に従って前記洗浄流体の流れを巻き込み、前記洗浄流体を加速して、前記結果として生じる衝突ディスクに対して垂直な、前記自由噴流の方向に直接向ける。その結果、前記衝突ディスクは、前記洗浄流体によって、その伝播方向に対して横方向に直ちに方向転換することができる。
【0019】
付加的で好適な実施形態において、突出部が前記第2の流体ノズルの先端部の領域、特に、前記衝突チャンバの壁に沿って同様に形成される。前記突出部は、前記第2の流体ノズルの先端部の領域において、前記流体ノズルの周囲に同心円状に配置され、好適には先細の第2の流体案内領域を前記衝突チャンバの中に形成する。その結果、前記第2の流体案内空間は、前記洗浄流体によって偏向される前記衝突ディスクに追随できるように寸法が決まる。前記第2の流体案内空間が、前記偏向された衝突ディスクの伝播方向に伸張するように特に講じられ、その結果、好適に、形成されて流れるナノ粒子流の圧力低下と速度低下を可能にする。この方策によって、前記形成されたナノ粒子流の粒子がそれの生成場所、つまり、前記衝突ゾーン又は更に前記自由噴流にまで戻ることが付加的に防止される。
【0020】
これらの方策によって、本発明に従い洗浄流体を偏向する前記衝突ディスクが、前記衝突ディスクに対してほぼ垂直な、従って、前記衝突ディスクの伝播方向に、つまり、前記衝突ゾーンで形成されたナノ粒子流体の流れ方向に、前記洗浄流体の流れ方向に沿って配向されている前記衝突ゾーンに衝突することがサポートされる又は可能となる。これは、前記形成されたナノ粒子流体の流れ方向が前記洗浄流体の流れ方向に旋回し、その結果、本発明に従い、これらの流れは最終的に平行に流れ、それによって、前記洗浄流体は、前記形成されたナノ粒子の前記リアクタからの取り出しを直ちに直接サポートする。前述の構造物の寸法決めが可能な動作パラメータに適合し、その結果、前記衝突ディスクの連続的な偏向を強制する圧力と流動条件を達成することが好適に講じられる。これは、特に、本発明に従い偏向されかつ衝突円錐に変形される前記衝突ディスクが、縦断面において、厳密に減少する単調関数を描くことを意味する。これは、前記偏向された衝突ディスクのどの場所で形成されたナノ粒子もその主な正味の流れ方向と逆に流れない、あるいは、さらに前記自由噴流の方に又は前記衝突ゾーンに逆流しないことを意味する。
【0021】
前記ノズルの直径は、好適には50μmから500μmまで、特には、100μmから500μmまで、好適には200μmから400μmまで、特定の変形例では約300μmである。
【0022】
本発明は、ナノ粒子流体つまり、溶液中に溶解している成分又は成分の混合物からナノ粒子を生成するための方法にも関する。前記方法は、前記ナノ粒子が生成される前記成分が溶解している媒体である第1の流体媒体が、第1の流体ノズルを通して加圧され、高速で前記第1の流体ノズルから出ることと、さらに、前記第1の流体媒体中に溶解している前記成分を沈殿させるための沈殿剤を含む第2の流体媒体が、前記第1の流体ノズルに対して共線的に配置されるが対向して配向される第2の流体ノズルを通して加圧されることを含む。前記第2の流体ノズルは、前記第1の流体ノズルに直接対向しており、前記方法のステップにおいて、前記第1及び第2の流体ノズルの2つの流出する自由噴流は、共通の衝突ゾーンにおいて、前記第1の媒体中に溶解している前記成分が沈殿剤によって沈殿し、特に、それと同時に、衝突ディスクが前記ノズルの噴流方向に対して横方向の衝突場所から伸長して形成されるような高速で互いに衝突する。前記ディスクはナノ粒子流体として沈殿成分を含む。本発明に従い、前記方法は、次に、前記ノズル又は前記自由噴流の噴流方向に対して基本的に平行に誘導される、定方向の洗浄流体の流れを生成し、前記生成中の衝突ディスクを、前記洗浄流体の流れによってその主な伝播方向に対して横方向に偏向させて、衝突円錐を形成することを特徴とする。
【0023】
好適に、前記方法は、本明細書に記載され、特定の方法で設計された前記流体リアクタを使用することを規定する。
【0024】
前記洗浄流体の流れが、前記形成されたナノ粒子流体を前記衝突ゾーンから前記ノズル又は前記自由噴流の噴流方向に搬送することが好適に規定される。前記洗浄流体の流れが、生成された粒子の前記衝突ゾーンの中へのリバウンドを回避又は防止する流体空間の中に前記ナノ粒子流体を搬送することが好適に規定される。前記流体空間は、拡張空間として好適に形成される。
【0025】
代わりに又は付加的に、前記洗浄流体の流れが、前記ノズルの噴流方向の前記形成されたナノ粒子流体を前記衝突ゾーンから搬出し、構造化された衝撃壁の方に偏向させて、前記衝突ゾーンにおいて生成された粒子のリバウンドを回避又は防止することが好適に規定される。
【0026】
特に、使用される前記流体リアクタの寸法決めと併せて、前記方法は、前記洗浄流体の流れの体積流量と必要に応じて密度とを前記第1の流体媒体及び第2の流体媒体の体積流量と密度に適合させ、その結果、前記体積流量の流れの連続平衡を確立させて、媒体又は生成された粒子の前記衝突ゾーン又は前記自由噴流への逆流を防止する形状を形成することを好適に規定する。
【0027】
前記流動ノズルにおける前記流体体積流量は、好適には、100mL/minから1000mL/minまで、特には125mL/minから500mL/minまで、好適には200mL/minから300mL/minまで、特定の変形例において約250mL/minである。前記ノズルの直径は、好適には約300μmである。
【0028】
前記洗浄流体の気体体積流量は、好適には1L/minから20L/minまで、特には1L/minから10L/minまで、好適には3L/minから8L/minまで、特定の変形例において約5L/minである。
【0029】
前記方法は、不活性ガス又は不活性ガスの混合物である洗浄流体を使用することが好適に規定される。代替実施形態では、前記洗浄流体は液体である。当該液体は、前記粒子の衝突と沈殿のために用いられる前記第1の流体媒体及び第2の流体媒体より密度が低いことが好ましく、沈殿する前記成分を含む前記第1の流体媒体より密度が低いことがより好ましい。
本発明を以下の例で詳細に説明するが、以下の例は、限定するものと解釈すべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明に係る流体リアクタの概略断面図に基づいて、機能原理の概略図を示す。
図2A】開状態の、図1に係る実施形態を示す。
図2B図1に係る流体リアクタの動作状態の概略図を示す。
図2C】閉状態の、図1に係るリアクタの外観図を示す。
図3】本発明に係る流体リアクタの好適な実施形態の断面図を示す。
図4A】本発明に係る流体リアクタのさらなる好適な実施形態の概略の縦断面図を示す。
図4B】本発明に係る流体リアクタのさらなる好適な実施形態の概略の側面図を示す。
図4C】本発明に係る流体リアクタのさらなる好適な実施形態の概略の側面図を示す。
図4D】本発明に係る流体リアクタのさらなる好適な実施形態の概略の縦断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、本発明に係る流体リアクタの概略断面図に基づいて、機能原理の概略図を示す。リアクタは、図示のバージョンにおいて、2つの部分で示される。その状況において、第1のノズル10に関連する一方のハウジング部36は、第2のノズル20に関連する第2のハウジング部38と接続されて、フランジ39によって封止部を形成することができる。この場合、ハウジング30に囲まれた衝突空間40には、共通の衝突ゾーン50の中で互いに直接向き合うように配置された、2つの、対向して向き合いかつ共線的に配置された流体ノズル10、20がある。その結果、一方のノズル先端部11と他方のノズル先端部21から出る自由噴流は衝突ゾーン50で衝突する。本発明に従い、流体案内構造物44が少なくとも第1のノズル10の領域に形成される。本構造物は、洗浄流体注入口32の中に導入された洗浄流体が流体案内構造物44によって偏向される結果、洗浄流体の誘導流が、流体ノズル10、20の流れ方向に沿って、特に、少なくとも衝突ゾーン50の領域に生じるように構成されている。洗浄流体は、衝突ゾーン50に形成されたナノ粒子流体と共に、出口34を通して衝突チャンバ40から除去することができる。図示の実施形態において、構造化された衝撃壁46が、衝突チャンバ内部、少なくとも第2のノズル20に関連した領域に付加的に設けられている。
【0032】
図2Aは、開状態の、図1に係る実施形態を示す。図2Cは、閉状態の、図1に係るリアクタの外観図を示す。図2Bは、図1に係る流体リアクタの動作状態の概略図を示す。その状況において、流体リアクタで生成された誘導気体流55は、ノズル間の衝突ゾーン50に形成される衝突ディスク52を第1のノズルの流れ方向に偏向する。その結果、リアクタの最初の衝突ディスク52からのナノ粒子流体は、衝撃壁46に衝突し、別の観点から言えば、洗浄流体と共に、出口34を介して、流体リアクタから最終的に放出することができる。衝突ゾーン50は、2つのハウジング半体32、34の間で、フランジ39の面の下方に位置する。衝突ディスク52は、リアクタの中における、フランジ39の下方に生じる。こうしてフランジ上の沈殿物を防止することができ、フランジシール上のナノ粒子流体を汚染するリスクも最小限にする。
【0033】
図3(a)は、本発明に係る流体リアクタの好適な実施形態の断面図を示す。スリーピースタイプの設計が選択され、第1のノズル10に関連するハウジング上部36は、衝突ゾーンの領域のワッシャー37によって、第2のノズル20に関連するハウジング下部38に接続されて、シールを生成している。図示の実施形態において、ノズル10、20のノズル本体は、ハウジング部36、38の中に別々に挿入されている。
【0034】
第1のノズル10は、注入口12を介して高圧ポンプに接続することができる。ノズル20は、注入口22を介して第2の高圧ポンプに接続することができる。ハウジング部36において、少なくとも1つの注入口32が洗浄媒体用に設計されている。ハウジング部38において、少なくとも1つの出口34が、形成されたナノ粒子流体と洗浄流体用に設計されている。図3(b)は、切断線Aの領域における、図3(a)のハウジング部36の断面図を示す。ノズル10は、ハウジング30の壁の内部に挿入され、ノズルのシャフトは、ハウジングの壁に並行でノズルの周りに同心円状に配置されているチャンネル44を形成し、チャンネルは、導流構造物として機能し、ノズル10に沿ってその先端部11の方へ向かう洗浄流体の誘導流を可能にする。
【0035】
図3(c)は、衝突ゾーン50の領域における、図3(a)に係る実施形態の詳細を示す。第1のノズルの先端部11において、導流チャンネル44は、流体案内領域17の中に開いている。流体案内領域17は、第1のノズルの先端部と、衝突ゾーン50の下方の流れ方向におけるハウジング壁の突出部15とによって形成されている。第2のノズルの先端部21は、ハウジングの突出部25とによって第2の流体案内空間27を形成し、案内空間は、衝突ゾーン50において衝突ディスク上に生成された、生成ナノ粒子流体を受け取り、通過して流れる洗浄流体と共にそれを送り出す。
【0036】
図4A乃至図4Dは、本発明に係る流体リアクタのさらなる好適な実施形態の概略の縦断面図と側面図を示す。図4Aは、断面図を示し、図4Cは、対応する方向の外観図を示す。図4Dは、図4Aに対して垂直な断面によって、図4Aに係る実施形態の断面図を示す。図4Bは、対応して配向された実施形態の関連する外観図を示す。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
【国際調査報告】