(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-524635(P2020-524635A)
(43)【公表日】2020年8月20日
(54)【発明の名称】海洋浮体式構造物のパラメトリック共振運動事前警報方法、装置およびデバイス
(51)【国際特許分類】
B63B 79/00 20200101AFI20200727BHJP
B63B 39/14 20060101ALI20200727BHJP
【FI】
B63B79/00
B63B39/14
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2019-570948(P2019-570948)
(86)(22)【出願日】2017年8月30日
(85)【翻訳文提出日】2020年2月20日
(86)【国際出願番号】CN2017099596
(87)【国際公開番号】WO2018233025
(87)【国際公開日】20181227
(31)【優先権主張番号】201710486070.6
(32)【優先日】2017年6月23日
(33)【優先権主張国】CN
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】507190994
【氏名又は名称】上海交通大学
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI JIAO TONG UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】馬 寧
(72)【発明者】
【氏名】于 立偉
(72)【発明者】
【氏名】平川 嘉昭
(72)【発明者】
【氏名】荒井 誠
(72)【発明者】
【氏名】王 徳禹
(72)【発明者】
【氏名】顧 解▲チォン▼
(57)【要約】
海洋浮体式構造物パラメトリック共振運動事前警報方法、装置及びデバイスである。前記方法は、リアルタイムに収集された前記海洋浮体式構造物の異なる自由度における運動信号を取得することと、前記異なる運動信号の時間歴データを線形重畳して結合信号の時間歴データを取得することと、前記結合信号の時間歴データに基づいて前記結合信号の瞬時周波数が時間とともに変化する瞬時周波数時間歴データを生成することと、前記瞬時周波数時間歴データから周波数の突然変化を識別することと、前記周波数の突然変化によりパラメトリック共振運動発生時刻を算出して事前警報を発することと、を含み、ここで、前記周波数の突然変化はパラメトリック共振運動発生時に少なくとも2つの自由度における運動信号間の周波数倍増関係に起因する。本発明はより効果的なアルゴリズム及びより少ない装置コストでのパラメトリック共振運動事前警報を発することによって、パラメトリック共振が発生する初期段階で運動振幅が比較的小さい時に、少ないエネルギー消費でパラメトリック共振運動を効率的に回避することができる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リアルタイムに収集された海洋浮体式構造物の異なる自由度における運動信号を取得することと、
前記異なる運動信号の時間歴データを線形重畳して結合信号の時間歴データを取得することと、
前記結合信号の時間歴データに基づいて前記結合信号の瞬時周波数が時間とともに変化する瞬時周波数時間歴データを生成することと、
前記瞬時周波数時間歴データから周波数の突然変化を識別することと、
前記周波数の突然変化によりパラメトリック共振運動発生時刻を算出して事前警報を発することと、を含み、
前記周波数の突然変化はパラメトリック共振運動発生時に少なくとも2つの自由度における運動信号間の周波数倍増関係に起因することを特徴とする海洋浮体式構造物のパラメトリック共振運動事前警報方法。
【請求項2】
前記結合信号の時間歴データにより前記瞬時周波数時間歴データを生成することは、増分リアルタイムヒルベルト・ファンアルゴリズムに基づいて実現されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記周波数の突然変化によりパラメトリック共振運動発生時刻を算出することは、条件Γ1と条件Γ
2を確立することを含み、
【数12】
ここで、f
MA(t)は瞬時周波数であり、t
hはギブズピークポイントの時間であり、μ
1はパラメータであり、T
S2は目標運動信号の固有周期であり、周波数低下幅αは、周波数の[0, t
h] 区間における平均周波数f
Average (t
h) に対する周波数低下幅を表し、α
crは予め設定された臨界周波数の低下幅であり、
【数13】
ここで、Θ
PRは変化率閾値であり、この閾値を超えることはパラメトリック共振運動が発生した可能性があることを示し、この閾値を下回ることはパラメトリックの共振による周波数変化でないことを示し、
前記条件Γ1と条件Γ
2により、パラメトリック共振運動発生時刻t
p=t
h+μ
1T
S2を算出することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記変化率閾値ΘPRは、前記目標運動信号の固有周波数及び前記目標運動信号と周波数倍増関係を形成する運動信号の固有周波数の差とトランジション時間との比、と設定し、ここで、前記トランジション時間は、前記目標運動信号の固有周期及び前記目標運動信号
と周波数倍増関係を形成する運動信号の固有周期の和であることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記条件Γ1及び条件Γ2によりパラメトリック共振運動発生時刻を算出する前に、さらに、
前記瞬時周波数時間歴データに対して前処理を行うことにより、ここでの数値誤差によって引き起こされるデータポイントを排除することと、
前処理後の瞬時周波数時間歴データを瞬時周波数fMA(t)として、前記条件Γ1及び条件Γ2に代入して計算することを含むことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記前処理は移動平均アルゴリズムにより実現されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
リアルタイムに収集された前記海洋浮体式構造物の異なる自由度における運動信号を取得するのに用いる信号収集モジュールと、
前記異なる運動信号の時間歴データを線形重畳して結合信号の時間歴データを取得し、前記結合信号の時間歴データに基づいて前記結合信号の瞬時周波数が時間とともに変化する瞬時周波数時間歴データを生成し、前記瞬時周波数時間歴データから周波数の突然変化を識別するのに用いる信号処理モジュールと、
前記周波数の突然変化によりパラメトリック共振運動発生時刻を算出して事前警報を発するのに用いる共振事前警報モジュールと、を含み、
前記周波数の突然変化はパラメトリック共振運動の発生時に少なくとも2つの自由度における運動信号間の周波数倍増関係に起因することを特徴とする海洋浮体式構造物のパラメトリック共振運動事前警報装置。
【請求項8】
前記信号処理モジュールが前記結合信号の時間歴データにより前記瞬時周波数時間歴データを生成することは、増分リアルタイムヒルベルト・ファンアルゴリズムに基づいて実現されることを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記共振事前警報モジュールが前記周波数の突然変化によりパラメトリック共振運動発生時刻を算出することは、条件Γ1及び条件Γ
2を確立して、前記条件Γ1と条件Γ
2によりパラメトリック共振運動発生時刻t
p=t
h+μ
1T
S2を算出することによって実現され、
【数14】
ここで、f
MA(t)は瞬時周波数であり、t
hはギブズピークポイントの時間であり、μ
1はパラメータであり、T
S2は目標運動信号の固有周期であり、周波数低下幅αは、周波数の[0, t
h] 区間における平均周波数f
Average (t
h) に対する周波数低下幅を表し、α
crは予め設定された臨界周波数の低下幅であり、
【数15】
ここで、Θ
PRは変化率閾値であり、この閾値を超えることはパラメトリック共振運動が発生した可能性があることを示し、この閾値を下回ることはパラメトリックの共振による周波数変化でないことを示すことを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項10】
前記変化率閾値ΘPRは、前記目標運動信号の固有周波数及び前記目標運動信号と周波数倍増関係を形成する運動信号の固有周波数の差とトランジション時間との比、と設定し、ここで、前記トランジション時間は、前記目標運動信号の固有周期及び前記目標運動信号と周波数倍増関係を形成する運動信号の固有周期の和であることを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記共振事前警報モジュールが前記パラメトリック共振運動発生時刻を算出する前に、前記瞬時周波数時間歴データに対して、ここでの数値誤差によって引き起こされるデータポイントを排除するために前処理を行い、前処理後の瞬時周波数時間歴データを瞬時周波数fMA(t)として、前記条件Γ1及び条件Γ2に代入して計算するためのデータ前処理モジュールをさらに含むことを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項12】
前記前処理は移動平均アルゴリズムに基づいて実現されることを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記コンピュータプログラムがプロセッサにロードされて実行される時、請求項1から6のいずれかに記載の海洋浮体式構造物パラメトリック共振運動事前警報方法を実現することを特徴とするコンピュータプログラムが記憶された記憶媒体。
【請求項14】
プロセッサとメモリとを含む電子デバイスであって、
前記メモリはコンピュータプログラムを記憶するのに用いられ、
前記プロセッサは前記コンピュータプログラムをロードして実行するのに用いられ、前記電子デバイスに請求項1から6のいずれかに記載の海洋浮体式構造物パラメトリック共振運動事前警報方法を実行させることを特徴とする電子デバイス。
【請求項15】
前記海洋浮体式構造物の異なる自由度における運動信号をリアルタイムに収集するために用いられ、前記海洋浮体式構造物に設置される角運動検出装置と、
前記角運動検出装置と通信接続される請求項14に記載の電子デバイスとを含むことを特徴とする海洋浮体式構造物パラメトリック共振運動事前警報システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶および海洋工学の分野に関し、特に、海洋浮体式構造物のパラメトリック共振運動を検出するための事前警報方法、装置、記憶媒体およびデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
船舶、海洋プラットフォーム及び海上浮式送風機などの海洋浮体式構造物は、波動励起の状態では従来の波動運動に加えて、非線形のパラメトリック共振運動が発生する。例えば、コンテナ船及び高級クルーズ船のパラメトリック横揺れ運動、SPARプラットフォーム及び海上浮式送風機のパラメトリック縦揺れ運動などである。パラメトリック共振が発生すると、浮体式構造物は大きく激しく動き、さらには安定性を失い転覆し、人員と財産の重大な損失を引き起こすことがある。例えば、コンテナ船の大きなパラメトリック横揺れによる箱の落下、SPARプラットフォーム及び海上浮式送風機の大きなパラメトリック縦揺れ運動によるケーブルの破断などである。したがって、パラメトリック共振の発生を回避するための対策を講じることが急務である。
【0003】
現在、海洋浮体式構造物は、能動型装置(アクティブアンチローリングタンク、フィンスタビライザー、ダイナミックポジショニングシステムなど)及び受動型装置(パッシブアンチローリングタンク、ビルジキール、垂直スウェイプレートなど)をよく用いて波動運動を効果的に回避している。しかし、これらの装置における従来の波動運動よりもさらに激しいパラメトリック共振運動を回避する効果には限界がある。パラメトリック共振運動の特性のため、それが発生する初期段階でパラメトリック共振条件を満たした直後は、運動振幅が小さい。したがって、パラメトリック共振の初期段階で事前警報を発することができれば、装置を用いて共振を達成する条件を変更できる場合、より少ないエネルギー消費で、効率的にパラメトリック共振運動を回避することができる。したがって、海洋浮体式構造物の事前警報装置はその安全性に重要な意義を有する。
【0004】
中国特許出願『パラメトリック横揺れを積極的に抑制する船舶航路追跡予測制御方法』(公開番号:CN104881040A)は、船舶がパラメトリック横揺れ発生時、船舶の追跡性能を可能な限り小さく犠牲する前提で舵を用いてパラメトリック横揺れを抑制する。当該発明において、舵は大幅なパラメトリック共振運動発生時に減揺を行い、大量のエネルギーを消費し、且つ船舶トラックの追跡性能に影響を与える。これにより明らかなのは、パラメトリック共振運動事前警報を発することで、運動振幅が小さい時に揺れを抑制できることが重要である。韓国の特許『Parametric rollpreventing apparatus and method for vessel』(公開番号:KR100827396B1)の発明者は船舶パラメトリック横揺れの事前警報方法及び装置を提供し、且つ舵を用いてパラメトリック横揺れ抑制を実現している。その警報装置において採用される波浪監視装置(wave monitoring device)は取得しにくいため、応用には一定の制限性が有する。そのため、本発明において取得しやすい運動信号のみを採用してパラメトリック共振事前警報を発することと明らかに異なる。デンマーク特許『Prediction of resonant oscillation』(公開番号:WO2010118752A1)の発明者は、2つの相関振動信号間のパラメトリック共振予報アルゴリズム及び装置を提供し、2つの相関振動信号を時間領域と周波数領域での変換処理を行い、さらに周波数領域での周波数識別と時間領域での位相識別の2つの予報機構をそれぞれ設計し、パラメトリック共振予報を実現している。しかし、当該アルゴリズム及び装置はパラメトリック横揺れの事前警報に関するものだけであり、事前警報の適時性に必要な設計を行っておらず、本発明にて強調した事前
警報とは明らかな違いがある。且つ本発明のアルゴリズムにおいてヒルベルト・ファン方法を採用して時間周波数結合情報を直接取得している。この発明において時間領域と周波数領域情報をそれぞれ取得する方法は本発明とは全く異なる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来技術の欠点に鑑み、本発明の目的は、海洋浮体式構造物のパラメトリック共振運動事前警報方法、装置およびデバイスを提供することにある。より効率的なアルゴリズム及びより少ない装置コストとパラメトリック共振運動事前警報を発することによって、パラメトリック共振が発生する初期段階で運動振幅が比較的小さい時に、より少ないエネルギー消費でパラメトリック共振運動を効率的に回避することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的及び他の関連する目的を実現するために、本発明は海洋浮体式構造物のパラメトリック共振運動事前警報方法を提供する。当該方法は、リアルタイムに収集された前記海洋浮体式構造物の異なる自由度における運動信号を取得することと、前記異なる運動信号の時間歴データを線形重畳して結合信号の時間歴データを取得することと、前記結合信号の時間歴データに基づいて前記結合信号の瞬時周波数が時間とともに変化する瞬時周波数時間歴データを生成することと、前記瞬時周波数時間歴データから周波数の突然変化を識別することと、前記周波数の突然変化によりパラメトリック共振運動発生時刻を算出して事前警報を発することと、を含み、前記周波数の突然変化はパラメトリック共振運動発生時に少なくとも2つの自由度における運動信号間の周波数倍増関係に起因する。
【0007】
本発明の一実施例において、前記結合信号の時間歴データに基づいて生成された前記結合信号の瞬時周波数が時間とともに変化する瞬時周波数時間歴データは、増分リアルタイムヒルベルト・ファンアルゴリズムに基づいて実現されたのであり、前記結合信号からすべての局所の平均値0に対称であるモード関数を選別することと、選別されたモード関数をヒルベルト変換して前記瞬時周波数を取得することを含む。
【0008】
本発明の一実施例において、前記周波数の突然変化によりパラメトリック共振運動発生時刻を算出することは、条件Γ1と条件Γ
2を確立することを含み、
【数1】
ここで、f
MA(t)は瞬時周波数であり、t
hはギブズピークポイントの時間であり、μ
1はパラメータであり、T
S2は目標運動信号の固有周期であり、周波数低下幅αは、周波数の [0, t
h] 区間における平均周波数f
Average (t
h)に対する周波数低下幅を表し、α
crは予め設定された臨界周波数の低下幅である。
【数2】
ここで、Θ
PRは変化率閾値であり、この閾値を超えることはパラメトリック共振運動が発生した可能性があることを示し、この閾値を下回ることはパラメトリックの共振による周波数変化でないことを示し、前記条件Γ1と条件Γ
2により、パラメトリック共振運動発
生時刻t
p=t
h+μ
1T
S2を算出する。
【0009】
本発明の一実施例において、前記変化率閾値Θ
PRは、前記目標運動信号の固有周波数及び前記目標運動信号と周波数倍増関係を形成する運動信号の固有周波数の差とトランジション時間との比、と設定し、ここで、前記トランジション時間は、前記目標運動信号の固有周期及び前記目標運動信号と周波数倍増関係を形成する運動信号の固有周期の和である。
【0010】
本発明の一実施例において、前記条件Γ1及び条件Γ
2によりパラメトリック共振運動発生時刻を算出する前に、前記瞬時周波数時間歴データに対して、ここでの数値誤差によって引き起こされるデータポイントを排除するために前処理を行う。前処理後の瞬時周波数時間歴データを瞬時周波数f
MA(t)として、前記条件Γ1及び条件Γ
2に代入して計算する。
【0011】
本発明の一実施例において、前記前処理は移動平均アルゴリズムに基づいて実現される。
【0012】
前記目的及び他の関連目的を実現するために、本発明は海洋浮体式構造物のパラメトリック共振運動事前警報装置を提供し、リアルタイムに収集された前記海洋浮体式構造物の異なる自由度における運動信号を取得するのに用いる信号収集モジュールと、前記異なる運動信号の時間歴データを線形に重ね合わせて、結合信号の時間歴データを取得し、前記結合信号の時間歴データに基づいて前記結合信号の瞬時周波数が時間とともに変化する瞬時周波数時間歴データを生成し、前記瞬時周波数時間歴データから周波数の突然変化を識別するのに用いる信号処理モジュールと、前記周波数の突然変化によりパラメトリック共振運動発生時刻を算出して事前警報を発するのに用いる共振事前警報モジュールと、を含み、前記周波数の突然変化はパラメトリック共振運動発生時に少なくとも2つの自由度における運動信号間の周波数倍増関係に起因する。
【0013】
本発明の一実施例において、前記信号処理モジュールは、前記結合信号の時間歴データにより前記瞬時周波数時間歴データを生成することは、増分リアルタイムヒルベルト・ファンアルゴリズムに基づいて実現されており、前記結合信号からすべての局所の平均値0に対称であるモード関数を選別することと、選別されたモード関数をヒルベルト変換して前記瞬時周波数を取得することを含む。
【0014】
本発明の一実施例において、前記共振事前警報モジュールが前記周波数の突然変化によりパラメトリック共振運動発生時刻を算出することは、条件Γ1及び条件Γ
2を確立して前記条件Γ1及び条件Γ
2によりパラメトリック共振運動発生時刻t
p=t
h+μ
1T
S2を算出することによって実現され、
【数3】
ここで、f
MA(t)は瞬時周波数であり、t
hはギブズピークポイントの時間であり、μ
1はパラメータであり、T
S2は目標運動信号の固有周期であり、周波数低下幅αは、周波数の [0, t
h] 区間における平均周波数f
Average(t
h)に対する周波数低下幅を表し、α
crは予め
設定された臨界周波数の低下幅である。
【数4】
ここで、Θ
PRは変化率閾値であり、この閾値を超えることはパラメトリック共振運動が発生した可能性があることを示し、この閾値を下回ることはパラメトリックの共振による周波数変化でないことを示す。
【0015】
本発明の一実施例においては、前記変化率閾値Θ
PRは、前記目標運動信号の固有周波数及び前記目標運動信号と周波数倍増関係を形成する運動信号の固有周波数の差とトランジション時間との比、と設定し、ここで、前記トランジション時間は、前記目標運動信号の固有周期及び前記目標運動信号と周波数倍増関係を形成する運動信号の固有周期の和である。
【0016】
本発明の一実施例において、前記装置が、前記条件Γ1及び条件Γ
2によりパラメトリック共振運動発生時刻を算出する前に、前記瞬時周波数時間歴データに対して、ここでの数値誤差によって引き起こされるデータポイントを排除するために前処理を行い、前処理後の瞬時周波数時間歴データを瞬時周波数f
MA(t)として、前記条件Γ1及び条件Γ
2に代入して計算するためのデータ前処理モジュールをさらに含む。
【0017】
本発明の一実施例において、前記前処理は移動平均アルゴリズムに基づいて実現される。
【0018】
前記目的及び他の関連目的を実現するため、本発明は記憶媒体を提供する。ここで、前記記憶媒体は、コンピュータプログラムを格納し、前記コンピュータプログラムがプロセッサにロードして実行された時、前記いずれかの海洋浮体式構造物のパラメトリック共振運動事前警報方法が実現される。
【0019】
前記目的及び他の関連目的を実現するため、本発明はプロセッサと、メモリとを含む電子デバイスを提供し、前記メモリは前記コンピュータプログラムを格納するのに用いられ、前記プロセッサは前記コンピュータプログラムをロードして実行するのに用いられ、前記電子デバイスに前記いずれかの海洋浮体式構造物のパラメトリック共振運動事前警報方法を実行させる。
【0020】
前記目的及び他の関連目的を実現するため、本発明は前記海洋浮体式構造物に設置され、前記海洋浮体式構造物の異なる自由度における運動信号をリアルタイムに収集するために用いられる角運動検出装置と、前記角運動検出装置と通信接続する前記電子デバイスとを含む海洋浮体式構造物パラメトリック共振運動事前警報システムを提供する。
【発明の効果】
【0021】
前記のように、本発明の海洋浮体式構造物パラメトリック共振運動事前警報方法、装置及びデバイスは、特許文献(公開番号:KR100827396B1)に比べて、より効率的なアルゴリズムとより少ない装置コストでパラメトリック共振運動事前警報を実現することができ、特許文献(公開番号:WO2010118752A1)に比べて、IR−HHTアルゴリズムを用いて運動時間周波数情報を取得し、パラメトリック共振運動事前警報を発する。また、本発明はさらに事前警報の適時性のために特殊な設計を行い、パラメトリック共振が発生する初期段階で運動振幅が小さい時にパラメトリック共振運動事前警報を発することができ、このようにより少ないエネルギー消費でパラメトリック共振運
動を効果的に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施例における海洋浮体式構造物パラメトリック共振運動シーンの概略図である。
【
図2】本発明のモデル実験における縦揺れ運動信号S1と横揺れ運動信号S2の時間歴データ図である。
【
図3】本発明の一実施例における海洋浮体式構造物パラメトリック共振運動事前警報ハードウェア装置の概略図である。
【
図4】本発明の一実施例における海洋浮体式構造物パラメトリック共振運動事前警報方法を示す模式図である。
【
図5】本発明の一実施例における増分リアルタイムヒルベルト・ファン(IR−HHT)アルゴリズムを示すフローチャートである。
【
図6】本発明の一実施例における瞬時周波数曲線f(t)及び移動平均f
MA(t)と変化率-10f‘
MA(t)の模式図である。
【
図7】本発明のモデル実験で得られたパラメトリック横揺れの事前警報のシミュレーション結果を示す図である。
【
図8】本発明の一実施例における海洋浮体式構造物パラメトリック共振運動事前警報ソフトウェア装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に特定の具体的な実施例によって本発明の実施形態を説明するが、該分野の技術者は本明細書に開示された内容によって本発明の他の利点及び効果を容易に理解することができる。本発明はさらに異なる具体的な実施形態によって実施し又は応用することができ、本明細書における各詳細は異なる観点と応用に基づき、本発明の精神から逸脱しない範囲で様々な変形又は変更を行うことができる。なお、以下の実施例および実施例の特徴は、相互に矛盾しない限り、相互に組み合わせることが可能である。
【0024】
説明すべきことは、以下の実施例で提供される図面は本発明の基本的な概念を説明したものであり、その図面は本発明に関連する部品のみを示し、実際に実施される部品の数、形状及び寸法に基づいて描画されるものではなく、その実際に実施される部品の形態、数量及び比率は自由に変更可能であり、且つその部品の配置形態もより複雑である可能性がある。
【0025】
本発明は、海洋浮体式構造物(例えば、船舶、海洋プラットフォーム及び海上浮式送風機など)に用いるパラメトリック共振運動事前警報アルゴリズム及び装置を提供し、より効率的なアルゴリズム及びより少ない装置コストでパラメトリック共振運動事前警報を発することよって、パラメトリック共振が発生する初期段階で運動振幅が比較的小さい時に、より少ないエネルギー消費でパラメトリック共振運動を効率的に回避することができる。
【0026】
図1に示すように、海洋浮体式構造物2は波1の励起で六自由度振動運動を行い、x縦
振動、y横振動、z垂下振動、φ横揺れ、Θ縦揺れ、ψ舳先揺れを含む。
【0027】
パラメトリック共振運動発生時、海洋浮体式構造物はある自由度で周波数運動を行う。一方、ある自由度で低周波数の共振運動を行い、異なる周波数の運動間に周波数倍増関係がある。例えば、船舶のパラメトリック横揺れ発生時の縦揺れ、垂下振動と横揺間との倍増関係、Sparプラットフォームが大幅に縦揺れ発生時の垂下振動と縦揺れ運動間との倍増関係などである。
【0028】
以下では、船舶パラメトリック横揺れを例とし、パラメトリック共振運動及び周波数倍増関係のメカニズムを説明する。
【0029】
船舶パラメトリック横揺れは、縦波における横揺れの復元力の非線形な周期的な変化によって引き起こされるパラメトリックの自励振動であり、以下の形式のマチュー方程式に簡略化される。
【数5】
ここで,φは横揺れ角であり、ζは減衰係数であり、ω
0とωはそれぞれ横揺れ固有周波数と波の発生周波数を表示し、εは横揺れ復元力振幅であり、εcosωt項は周期的に変化する横揺れ復元力である。ζとεが小さい場合、ω=2ω
0、すなわち、縦揺れ周波数が横揺れ固有周波数の2倍である付近では、不安定な境界が存在し、これがつまりパラメトリック共振運動の発生時に満たされた周波数倍増関係である。
【0030】
図2は、モデル実験で得られたパラメトリック共振運動発生時の周波数倍増関係にある縦揺れ運動信号S1(符号11参照)と横揺れ運動信号S2(符号10参照)の時間経過曲線を示す図である。
図2から分かるように、2つの仮想縦線の間で、信号S2は1つの周期の振動運動を完了し、信号S1は2つの周期の振動運動を完了し、これによりパラメトリックの共振条件の形成を示す。それと同時に、信号S2の振幅が急速に増大し、大幅な激しい運動を形成し、これが海洋浮体式構造物の安全に大きな脅威になる。
【0031】
また、
図2に示すように、信号S2の振幅が比較的小さい場合に、信号S1と信号 S2との倍増関係が形成されている。したがって、本発明は共振の初期段階で運動振幅が比較的小さい時にこのような周波数倍増関係を識別することにより、パラメトリック共振事前警報を発する。
【0032】
図3に示すように、本発明の提供する海洋浮体式構造物パラメトリック共振運動事前警報装置は主に、運動検出装置、及び運動検出装置と電気的接続される電子デバイスを含む。ここで、運動検出装置の好ましいものは、六軸ジャイロ301である。電子デバイスはプロセッサ(CPU/MCU/SOC)、メモリ(ROM/RAM)、入力/出力インタフェース(バスインタフェース/通信インタフェース)とシステムバスを含み、好ましくは、マイクロホストコンピュータ302である。実際の船舶の応用シーンにおいて、運動検出装置と電子デバイスは船舶のデバイスの容器ケース(
図1の符号4)に取り付けられ、且つ船舶の運転室に取り付けられた事前警報モニタ(
図1の符号3)と通信接続される。
【0033】
図4に示すように、本発明の一実施過程において、海洋浮体式構造物は波の励起で振動運動を行い、六軸ジャイロ301はパラメトリック共振が発生する可能性のある2つの関連運動信号S1とS2の時間歴をリアルタイムに収集し、それをマイクロホストコンピュータ
302に送信する。マイクロホストコンピュータ302はパラメトリック共振運動事前警報アルゴリズムを集積し、当該アルゴリズムはまず2つの信号時間歴を線形重畳して結合信号時間歴x(t)=S1+S2を取得し続いて、増分リアルタイムヒルベルト・ファン(Incremental Real−time Hilbert−Huang Transform、 IR−HHTと略称される)のアルゴリズムに基づいて結合信号時間歴x(t)を分析し、2つの運動信号の時間周波数情報を含む瞬時周波数(Instantaneous Frequency、IFと略称される)を取得し、その後、当該アルゴリズムは取得した瞬時周波数を分析し、ここでのパラメトリック共振に起因する周波数の突然変化を識別することにより、事前警報の結果を取得し、最後に、事前警報結果を無線信号7によって運転室の事前警報モニタに送信する。事前警報信号がパラメトリック共振の発生を表示する時に、対応する措置を用いてパラメトリック共振運動の回避を行うことができる。
【0034】
以下に本発明の海洋浮体式構造物パラメトリック共振運動事前警報方法の原理を詳細に説明する。IR−HHTアルゴリズムでは、いかなる複雑な信号でも一定の物理的意味を持つ有限数のモード関数(Intrinsic Mode Function,IMF)に分解できると仮定する。IMFを取得するために、本アルゴリズムでは、経験的なモデル分解(Empirical Mode Decomposition,EMD)と呼ばれるスクリーニングプロセスを採用し、絶えず繰り返しのスクリーニングプログラムを介して高から低への異なる周波数の一連のIMFを徐々に検索する。IMFが一定の物理的意味を有するために、2つの条件を満たすべきである。
1)曲線上の局所的な極大値と極小値の数の和はゼロ点の数と等しいまたはゼロ点の数との差が最大1である。
2)任意の時点で、局所極大値からなるエンベロープと局所極小値からなるエンベロープとの平均値がゼロに近づく。
【0035】
第1条件はIMFが狭帯域であることを保証し、第2条件はIMFがゼロ点シフトしないことを保証する。この2つの条件により、IMFが局所的に平均値0に対称であること、それを弦値関数(sinusoid−like)に類似させることは保証されている。しかし、その周期や振幅は、弦値関数と異なるため、変化する可能性がある。これらの類似弦値関数のIMFに対して直接にHilbert変換し、意味のある瞬時周波数IFを求めることができる。
【0036】
IR−HHT方式におけるEMDプロセスは
図5に示すように、具体的に、1つの原信号x(t)に対して、
ステップ1、r
0(t)=x(t), i=1で初期化し、
ステップ2. 第i個のIMFを分解し、以下のことを含む。
A. h
0(t)=r
i(t), k=1で初期化。
B. 全ての局所極大値h
0(t)と局所極小値hk-1(t) を検索し、新たな極値がないと、ステップDにジャンプする。
C. Hermite補間を採用し、それぞれ局所極大値と極小値を上下エンベロープに直列連結する。
D. 上下エンベロープの平均を計算し、平均値エンベロープm
k-1(t) を得る。
E. h
k(t)= h
k-1(t)-m
k-1(t)。
F. h
k(t)がIMFの条件に合致するか否かを確認する。IMF
i(t)= h
k(t)に一致すれば、ステップ3を継続する。一致しなければ、ステップBに戻り、且つk=k+1にする。
ステップ3、r
i(t)= r
i-1(t)- IMF
i(t)を定義する。
ステップ4、もし r
i(t)に依然として少なくとも2つの極大値を含むなら、ステップ2を続けて、且つi=i+1にする。そうでなければ終了し、r
i(t)はx(t)の平均トレンドコンポーネントである。
【0037】
これ以上IMFを分解できなければ、EMDスクリーニングプロセスが完了したと見なす
。信号x(t)は、このn個のIMFと1つの平均トレンドとの重畳である。
【数6】
【0038】
このように、信号x(t)は周波数の高から低へn個のIMFと1つトレンド関数に分解され、信号S1とS2を含むIMFをHilbert変換して瞬時周波数IFを得る。
図6は、
図2における信号S1と信号S2の結合信号x(t)の瞬時周波数IF曲線f(t) (図内12を参照)である。曲線から分かるように、パラメトリック共振運動発生時に周波数倍増関係によって瞬時周波数IFの突然変化を引き起こし、IFは信号S1の周波数から信号S2の周波数(周波数突然変化前の信号S1の周波数が支配的であり、周波数突然変化後の信号S2の周波数が支配的である)まで低下する。本発明は、この瞬時周波数IFの突然変化に基づいて事前警報アルゴリズムを設計してパラメトリックの共振の発生する時刻を予報する。
【0039】
まず、移動平均(Moving Average)方法を導入してIF曲線f(t)に対して前処理を行い、
図6の曲線における数値誤差による頂点を除去する。移動平均により求めされた瞬時周波数f
MA(t)(図内13を参照)とその変化率-10f '
MA(t)のプロットを
図6に示す。これにより、瞬時周波数f
MA(t)に基づいてパラメトリック共振運動事前警報アルゴリズムを設計し、アルゴリズムは、周波数変化条件Γ1と変化率条件Γ
2の2つの条件を含む。
【0040】
周波数変化条件Γ1は、パラメトリック共振発生時の周波数突然変化を識別するのに用いる。
図6に示すように、ギブズ現象(Gibbs phenomenon)によれば、周波数の不連続性は、瞬時周波数においてピークポイント(hump)として現れる(図内14を参照)。事前警報アルゴリズムにおいてこのピークポイントに基づいて周波数変化条件Γ1を設計する。
【数7】
ここで,第1行の条件は、瞬時周波数の極大点を可能なギブズピークポイントとし、t
hはピークポイントの時間である。第2行は、区間[0, μ
1T
S2]の瞬時周波数が低下段階にあるか否かを判断するために用い、ここで、μ
1はパラメトリックであり、好ましくは、0.8〜1にする。第3行では、周波数低下幅αが周波数の [0, t
h]区間における平均周波数f
Average(t
h)に対する低下幅を表示し、臨界周波数低下幅α
crは0.5と設定されることが好ましく、これもパラメトリック共振運動発生時の信号S2の周波数と信号S1の周波数との比である。これにより、この式は、ギブズピークポイント後の周波数低下の幅を決めることにより、周波数変化条件Γ1を確立した。
【0041】
瞬時周波数の突然変化は緩やかな海況変化の中でも生じるため、変化率条件Γ
2を導入してもう1つの判定基準とする。まず、1つの変化率閾値Θ
PRを設定する必要があり、こ
の閾値を超えるとパラメトリック共振運動が発生する可能性があり、閾値を下回るとパラメトリックの共振による周波数変化ではない。
【0042】
パラメトリック共振が発生すると、結合信号x(t)の瞬時周波数は、一定のトランジション時間t
tran内で信号S1の周波数f
S1から信号S2の周波数f
S2まで低下する。これにより、変化率閾値Θ
PRを設定することができる。
【数8】
ここで、信号S1とS2の周期は、T
S1=T
S2/2を満たす。トランジション時間t
tranは1つのS1周期と1つのS2周期の和とし、最後に変化率条件Γ
2を設定する。
【数9】
ここで,設置された変化率閾値Θ
PRが小さすぎると、海況の変化に起因する瞬時周波数の遅い変化が誤って予測され、大きすぎると、パラメトリック横揺れを予報することができない場合がある。
【0043】
ここまで、IR−HHT方法に基づいて得られた瞬時周波数が周波数変化条件Γ1と変化率条件Γ
2を応用してできた事前警報アルゴリズムはパラメトリック横揺れの予報を行うことができる。パラメトリック横揺れはt
p時点で発生する:t
p=t
h+μ
1T
S2 。
【0044】
本発明のパラメトリック共振運動事前警報アルゴリズム及び装置をあるコンテナ船のモデルに取り付けてコンテナ船のパラメトリック横揺れの事前警報を行い、実験により発明の効果を検証し、事前警報結果を
図7に示す。
【0045】
図7は4つの動作モードの実験結果を示し、各動作モードの結果には、実験における六軸ジャイロが採集した横揺れ角15と、縦揺れ角16の時間歴とIR−HHTアルゴリズムが得た瞬時周波数17を含む。また、
図7には、縦揺れ周波数f
Θ(図内18を参照)と、横揺れ固有周波数f
roll(図内19を参照)をさらに含む。
【0046】
図7から分かるように、パラメトリック横揺れ発生時の横揺れ角15は絶えず拡大し、瞬時周波数17は縦揺れ周波数18から横揺れ固有周波数19に急激に変化し、事前警報アルゴリズムはパラメトリック横揺れ発生の時刻20を事前警報した。このとき、パラメトリックの振幅はまだ比較的小さい。
【0047】
実験結果により、本発明の提供するパラメトリック共振運動事前警報アルゴリズム及び装置はパラメトリック共振運動の振幅が比較的小さい時に事前に警報を発することができることが明らかになった。これにより対応する回避措置を採用し、海洋浮体式構造物の安全性を効果的に確保することができる。
【0048】
これに加えて、本発明はさらに記憶媒体を含み、前記記憶媒体は、ROM、RAM、磁気ディスク又は光ディスク等の各種プログラムコードを記憶する記憶媒体を含み、コンピ
ュータプログラムを記憶しており、該コンピュータプログラムはプロセッサにロードされて実行される際に、前述の実施例における海洋浮体式構造物のパラメトリック共振運動事前警報方法のすべて又は一部のステップを実現する。前記実施例における技術的特徴は本実施例に適用することができるため、重複説明を省略する。
【0049】
具体的には、
図8に示すように、該コンピュータプログラムは以下のモジュールに基づいて実現される。
【0050】
信号収集モジュール801は、リアルタイムに収集された前記海洋浮体式構造物の異なる自由度における運動信号を取得する。
【0051】
信号処理モジュール802は、まず、前記異なる運動信号の時間歴データを線形重畳して結合信号の時間歴データを取得する。それから、前記結合信号の時間歴データに基づいて前記結合信号の瞬時周波数が時間とともに変化する瞬時周波数時間歴データを生成し、例えば、増分リアルタイムヒルベルト・ファンのアルゴリズムに基づいて前記結合信号時間歴を分析して前記結合信号の時間周波数情報を含む瞬時周波数取得し、即ち前記結合信号から(例えば経験的なモード分解アルゴリズムに基づく)すべての局所の平均値0に対称するモード関数を選別することと、選別されたモード関数をヒルベルト変換して前記瞬時周波数を取得することを含む。続いて、前記瞬時周波数時間歴データからパラメトリック共振運動の発生時に少なくとも2つの自由度における運動信号間の周波数倍増関係に起因する周波数突然変化を識別する。
【0052】
共振事前警報モジュール803は、前記周波数の突然変化によりパラメトリック共振運動発生時刻を算出して事前警報を発する。例えば、前記瞬時周波数の曲線対して前処理を行い、(例えば、移動平均アルゴリズムに基づき)誤差データポイントを除去する。前記前処理後の瞬時周波数f
MA(t) に基づき、条件Γ1と条件Γ
2を確立する。
【数10】
ここで,t
hはギブズピークポイントの時間であり、μ
1はパラメトリックであり、周波数低下幅αは、周波数の[0, t
h] 区間における平均周波数f
Average (t
h) に対する周波数低下幅を表し、α
crは予め設定された臨界周波数の低下幅である。
【数11】
ここで,Θ
PRは変化率閾値であり、この閾値を超えることはパラメトリック共振運動が発生した可能性があることを示し、この閾値を下回ることはパラメトリックの共振による周波数変化でないことを示す。好ましくは、前記変化率閾値Θ
PRは、目標運動信号の固有周波数及び前記目標運動信号と周波数倍増関係を形成する運動信号の固有周波数の差とトランジション時間との比、と設定し、前記トランジション時間は、前記目標運動信号の固有周期及び前記目標運動信号と周波数倍増関係を形成する運動信号の固有周期の和である。
【0053】
この時、計算してパラメトリック共振運動発生時刻t
p=t
h+μ
1T
S2を算出する。
【0054】
ここまで、IR−HHT方法に基づいて得られた瞬時周波数が周波数変化条件Γ1と変化率条件Γ
2を応用してできた事前警報アルゴリズムはパラメトリック横揺れの予報を行うことができる。パラメトリック横揺れはt
p時点で発生する:t
p=t
h+μ
1T
S2 。
【0055】
以上に説明したように、本発明の海洋フロート構造物のパラメトリック共振運動を検出するための事前警報方法、装置、記憶媒体及びデバイスは、従来技術における種々の欠点を効果的に克服できたため高度な産業利用価値を有する。
【0056】
前記実施例は本発明の原理及びその効果を例示的に説明し、本発明を限定するものではない。この技術に精通している当業者であれば、本発明の精神及び範囲から逸脱しない限り、前記実施例に修正又は変更を加えることができる。したがって、本発明に開示された精神及び技術的思想から逸脱しない限り、属する技術分野の通常の知識を有するものによって行われたすべての同等の変形または変更は、本発明の特許請求の範囲に含まれる。
【国際調査報告】