(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-524685(P2020-524685A)
(43)【公表日】2020年8月20日
(54)【発明の名称】フマル酸ジメチルを含む医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/225 20060101AFI20200727BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20200727BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20200727BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20200727BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20200727BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20200727BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20200727BHJP
A61P 21/04 20060101ALI20200727BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20200727BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20200727BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20200727BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20200727BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20200727BHJP
A61K 9/28 20060101ALI20200727BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20200727BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20200727BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20200727BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20200727BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20200727BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20200727BHJP
【FI】
A61K31/225
A61P19/02
A61P1/04
A61P3/10
A61P7/06
A61P17/06
A61P21/00
A61P21/04
A61P25/00
A61P29/00
A61P29/00 101
A61P37/02
A61P37/06
A61K9/20
A61K9/28
A61K47/02
A61K47/26
A61K47/38
A61K47/04
A61K47/12
A61K47/34
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2019-570520(P2019-570520)
(86)(22)【出願日】2018年6月25日
(85)【翻訳文提出日】2019年12月19日
(86)【国際出願番号】EP2018066970
(87)【国際公開番号】WO2018234584
(87)【国際公開日】20181227
(31)【優先権主張番号】1710114.8
(32)【優先日】2017年6月23日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】17382402.0
(32)【優先日】2017年6月27日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】598032139
【氏名又は名称】アルミラル・ソシエダッド・アノニマ
【氏名又は名称原語表記】Almirall, S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】ホルヘ・アウベツ・ミル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA37
4C076AA45
4C076BB01
4C076CC01
4C076CC03
4C076CC11
4C076CC14
4C076CC16
4C076CC18
4C076DD28H
4C076DD29
4C076DD29A
4C076DD30
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4C076DD60
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4C076EE27
4C076EE31
4C076EE32
4C076FF01
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4C206AA01
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4C206MA03
4C206MA05
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4C206ZA68
4C206ZA89
4C206ZA94
4C206ZA96
4C206ZB07
4C206ZB08
4C206ZB11
4C206ZB15
4C206ZC35
(57)【要約】
(a)フマル酸ジメチル、(b)単糖類、二糖類、デンプンおよびデンプン誘導体、カルシウムおよびマグネシウム無機塩、糖アルコール、ならびにその混合物から選択される希釈剤、(c)微結晶セルロースおよび(d)クロスカルメロースナトリウムを含む医薬組成物であって、該フマル酸ジメチルが胃耐性コーティングで被覆されていない、医薬組成物が記載されている。これらの組成物は、いくつかの炎症性自己免疫疾患または障害の処置が意図されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象体における炎症性自己免疫障害の処置方法であって、対象体に、
(a)フマル酸ジメチルの粒子;
(b)ラクトース;
(c)微結晶セルロース;および
(d)クロスカルメロースナトリウム
を含む医薬組成物の治療上有効量を投与することを含む方法であり、該フマル酸ジメチル粒子が胃耐性コーティングで被覆されておらず、該組成物が食事中または食後1時間以内に対象体に投与される、方法。
【請求項2】
医薬組成物が、さらに、(e)少なくとも1種類の流動促進剤を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
流動促進剤(e)がコロイド状無水シリカである、請求項2記載の方法。
【請求項4】
医薬組成物が、さらに、(f)少なくとも1種類の滑沢剤を含む、上記請求項のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
滑沢剤がステアリン酸マグネシウムである、請求項4記載の方法。
【請求項6】
医薬組成物における(c)微結晶セルロースの(b)希釈剤に対する重量比が2:5〜5:2の範囲内である、上記請求項のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
医薬組成物が、コーティング適用前の錠剤の総重量に基づいて、
(a)20〜30重量%のフマル酸ジメチル;
(b)25〜35重量%のラクトース;
(c)35〜45重量%の微結晶セルロース;
(d)1〜10重量%のクロスカルメロースナトリウム
を含む、上記請求項のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
医薬組成物が胃耐性コーティングでコーティングされている、上記請求項のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
胃耐性コーティングがタルクおよびメタクリル酸−酢酸エチルコポリマーを含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
医薬組成物が経口投与される、上記請求項のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
医薬組成物が食事中または食事直後に投与される、上記請求項のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
炎症性または自己免疫性疾患または障害が、関節リウマチ、多発性硬化症(MS)、筋萎縮性側索硬化症、クローン病、潰瘍性大腸炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、重症筋無力症、急性散在性脳脊髄炎、特発性血小板減少性紫斑病、シェーグレン症候群、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)、I型糖尿病または乾癬から選択される、上記請求項のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
炎症性または自己免疫性疾患または障害が乾癬である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
医薬組成物の投与後の対象体におけるフマル酸モノメチルの血漿中濃度が、AUC(0−t)が医薬組成物中のフマル酸ジメチル1mgあたり12.5〜16.5ng.h/mLであるようなものである、上記請求項のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
医薬組成物の投与後の対象体におけるフマル酸モノメチルの血漿中濃度が、Cmaxが同量のフマル酸ジメチルを有する対応するFumaderm製剤の投与によって達成可能なCmaxの120%未満であるようなもの、およびAUC(0−t)が同量のフマル酸ジメチルを有する対応するFumaderm製剤の投与によって達成可能なAUC(0−t)の130%を超えるようなものである、上記請求項のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
対象体における炎症性自己免疫障害の処置方法であって、対象体に
(a)フマル酸ジメチルの粒子;
(b)ラクトース;
(c)微結晶セルロース;および
(d)クロスカルメロースナトリウム
を含む医薬組成物の治療上有効量を投与することを含む方法であり、該フマル酸ジメチル粒子が胃耐性コーティングで被覆されておらず、医薬組成物の投与後の対象体におけるフマル酸モノメチルの血漿中濃度が、AUC(0−t)が医薬組成物中のフマル酸ジメチル1mgあたり12.5〜16.5ng.h/mLであるようなものである、方法。
【請求項17】
対象体における炎症性自己免疫障害の処置方法であって、対象体に
(a)フマル酸ジメチルの粒子;
(b)ラクトース;
(c)微結晶セルロース;および
(d)クロスカルメロースナトリウム
を含む医薬組成物の治療上有効量を投与することを含む方法であり、該フマル酸ジメチルが胃耐性コーティングで被覆されておらず、医薬組成物の投与後の対象体におけるフマル酸モノメチルの血漿中濃度が、Cmaxが同量のフマル酸ジメチルを有する対応するFumaderm製剤の投与によって達成可能なCmaxの120%未満であるようなもの、およびAUC(0−t)が同量のフマル酸ジメチルを有する対応するFumaderm製剤の投与によって達成可能なAUC(0−t)の130%を超えるようなものである、方法。
【請求項18】
上記請求項のいずれか1項で定義したヒトまたは動物体を処置する方法において用いるための医薬組成物であって、
(a)フマル酸ジメチルの粒子;
(b)ラクトース;
(c)微結晶セルロース;および
(d)クロスカルメロースナトリウム
を含む医薬組成物であり、該フマル酸ジメチル粒子が胃耐性コーティングで被覆されていない、医薬組成物。
【請求項19】
上記請求項のいずれか1項で定義したヒトまたは動物体を処置する方法において用いるための医薬組成物の製造における、
(a)フマル酸ジメチルの粒子;
(b)ラクトース;
(c)微結晶セルロース;および
(d)クロスカルメロースナトリウム
の使用であって、該フマル酸ジメチル粒子が胃耐性コーティングで被覆されていない、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(a)フマル酸ジメチルの粒子、(b)ラクトース、(c)微結晶セルロースおよび(d)クロスカルメロースナトリウムを含む医薬組成物の投与による炎症性自己免疫障害の処置方法であって、該フマル酸ジメチルの粒子が胃耐性(gastro-resistant)コーティングで被覆されていない、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関節リウマチ、多発性硬化症(MS)、筋萎縮性側索硬化症、クローン病、潰瘍性大腸炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、重症筋無力症、急性散在性脳脊髄炎、特発性血小板減少性紫斑病、シェーグレン症候群、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)、I型糖尿病および乾癬などの炎症性または自己免疫性の疾患または障害は、特に先進工業国において主な健康負担となっている。これらの障害は一般的に治癒することができないが、多くの場合、該状態を管理または軽減することができる。
【0003】
フマル酸エステル(FAE)は、不飽和ジカルボン酸系フマル酸から誘導される化学物質であり、最初にドイツ人化学者Walter Schweckendiekによって提案され、長年乾癬の治療に用いられてきた。
【0004】
1994年に、ドイツで、フマル酸ジメチル(DMF)と、フマル酸モノエチル(MEF)のカルシウム塩、マグネシウム塩および亜鉛塩との混合物であるFumaderm(登録商標)(Fumapharm AG)が乾癬治療用に承認された。Fumaderm(登録商標)は、2つの異なる有効性成分含量(dosage strength)で入手できる:フマル酸ジメチル30mg、Ca−フマル酸水素エチル67mg、Mg−フマル酸水素エチル5mgおよびZn−フマル酸水素エチル3mgを含有する低力価錠剤(low strength tablet)(Fumaderm(登録商標)initial);ならびにフマル酸ジメチル120mg、Ca−フマル酸水素エチル87mg、Mg−フマル酸水素エチル5mgおよびZn−フマル酸水素エチル3mgを含有する高力価錠剤(high strength tablet)(Fumaderm(登録商標))。
【0005】
Fumaderm(登録商標)initialおよびFumaderm(登録商標)はどちらも、以下の賦形剤を含有する腸溶錠である:クロスカルメロースナトリウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、着色剤E171およびE132(Fumaderm(登録商標)のみ)、メタクリル酸−メタクリル酸メチル−コポリマー(1:1)、メタクリル酸−アクリル酸エチル−コポリマー(1:1)、マクロゴール6000、シメチコン、ポビドン、クエン酸トリエチル、微結晶セルロース、ならびに高分散二酸化ケイ素。加えて、該錠剤は、25℃以下で貯蔵しなければならない(Fumaderm(登録商標)initial/Fumaderm(登録商標);製品特性の概要、2009年2月版)。
【0006】
FAE療法は、胃腸愁訴、紅潮またはリンパ球数の減少などの有害事象と関連している。Fumaderm(登録商標)の安全性および有効性を改善するために、1999年に、FAEによる重度乾癬の治療ガイドラインが確立された(非特許文献1)。2種類の有効性成分含量のFumaderm(登録商標)は、漸増量でFumaderm(登録商標)initialから始めて数週間(例えば、3週間)の治療の後にFumaderm(登録商標)に切り替える個別の投与計画で適用されることが意図されている。
【0007】
FAE療法は、しばしば、乾癬などの状態を処置するために中期的または長期的に必要とされる。この理由で、有効成分が反復投与間の時間間隔にわたって徐々に放出される薬物動態プロファイルが有利になり得る。この目的のために、特許文献1、特許文献2、特許文献3および特許文献4は、個々のフマル酸ジメチル粒子がポリマーでコーティングされている、フマル酸ジメチルを含む制御放出医薬組成物を記載している。個々のフマル酸ジメチル粒子をコーティングすることにより、予め決められている速度での有効成分の制御放出が可能になる。
【0008】
特許文献5は、上記の成分(a)〜(d)を含有する医薬組成物を開示しているが、最も有利な臨床結果を確保するための、その特定の組成物を患者に投与する最良の方法について論じていない。フマル酸ジメチルおよびカルシウム−フマル酸モノエチルを含有する(すなわち、fumaderm中に存在するフマル酸モノエチルのマグネシウム塩および亜鉛塩を欠いている)フマレート錠剤の薬物動態が非特許文献2において論じられている。この文献は、具体的には、食前に(すなわち、絶食状態で)患者にフマレートを投与することを提唱している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2006/037342号
【特許文献2】国際公開第2007/042034号
【特許文献3】国際公開第2010/079221号
【特許文献4】国際公開第2010/079222号
【特許文献5】国際公開第2015/086467号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Mrowietz U. et al, British Journal of Dermatology 1999, 141, 424-429
【非特許文献2】Litjens et al, British Journal of Clinical Pharmacology, 2004, 58:4, 429
【発明の概要】
【0011】
この度、驚くべきことに、新規フマル酸ジメチル製剤が有利な薬物動態プロファイルを有することが分かった。したがって、本発明は、対象体における炎症性自己免疫障害の処置方法であって、対象体に
(a)フマル酸ジメチルの粒子;
(b)ラクトース;
(c)微結晶セルロース;および
(d)クロスカルメロースナトリウム
を含む医薬組成物の治療上有効量を投与することを含む方法であり、該フマル酸ジメチル粒子が胃耐性コーティングで被覆されておらず、該組成物が食事中または食後1時間以内に対象体に投与される、方法を提供する。
【0012】
上記で詳述した特定の医薬組成物が、Fumadermのような公知のフマル酸ジメチル製剤と比較して、薬物動態特性が改善されており、特に食事中または食後1時間以内に投与した場合、有害事象の軽減も可能にすることが、本発明の発見である。
【0013】
本発明の医薬組成物は、また、貯蔵安定性の向上を可能にする。したがって、本発明の医薬組成物の貯蔵条件は、Fumaderm(登録商標)およびTecfidera(登録商標)の処方情報に示されている条件ほど制限されない。また、本発明の医薬組成物は、有効成分の数がFumaderm(登録商標)から減っており、異なる賦形剤を有しているにもかかわらず、Fumaderm(登録商標)を同様の溶出プロファイルを呈する。
【0014】
本発明の組成物で処置することができる炎症性自己免疫障害は、典型的には、関節リウマチ、多発性硬化症(MS)、筋萎縮性側索硬化症、クローン病、潰瘍性大腸炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、重症筋無力症、急性散在性脳脊髄炎、特発性血小板減少性紫斑病、シェーグレン症候群、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)、I型糖尿病または乾癬から選択される炎症性または自己免疫性の疾患または障害である。より好ましくは、それは多発性硬化症または乾癬である。最も好ましくは、それは乾癬である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明の詳細な説明
本明細書で用いられる場合、用語「処置」とは、
(a)疾患または医学的状態が生じるのを防ぐこと、すなわち、患者の予防的処置;
(b)疾患または医学的状態を寛解すること、すなわち、患者において疾患または医学的状態の退行を引き起こすこと;
(c)疾患または医学的状態を抑制すること、すなわち、患者において疾患または医学的状態の発生を遅延させること;または
(d)患者において疾患または医学的状態の症状を緩和すること
を含む、ヒト患者における疾患または医学的状態の処置をいう。
【0016】
本明細書で用いられる場合、化合物または組成物の「治療上有効量」という用語は、所定の疾患およびその合併症の臨床症状を治癒、緩和または部分停止するのに十分な量を意味する。これを達成するのに十分な量を「治療上有効量」と定義する。各目的に有効な量は、疾患または損傷の重症度ならびに対象体の体重および全身状態に依存する。適切な投与量の決定は、値のマトリクスを構築し、該マトリクス内の様々なポイントを試験することによって、常用の実験を用いて達成され得ると解され、これはすべて訓練を受けた医師の通常のスキルの範囲内である。
【0017】
本明細書で用いられる場合、用語「胃耐性コーティングで被覆されていない」とは、フマル酸ジメチル粒子が、薬学的に許容されるポリマー、例えば、エチルセルロース、メタクリル酸/アクリル酸コポリマーまたはアンモニオメタクリレートコポリマー(例えば、アンモニオメタクリレートコポリマータイプAもしくはB、またはメタクリル酸コポリマーAもしくはB)、ポリ酢酸ビニルポリマー、メタクリル−エチルアセテートポリマーなどのポリマー;またはポリエチレングリコール(PEG)、ポビドン、ヒドロキシルプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルデンプン(HES)もしくはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)などの親水性賦形剤で被覆されていないことを意味する。
【0018】
本明細書で用いられる場合、「Fumaderm」製剤は、フマル酸ジメチル、フマル酸モノエチルカルシウム、フマル酸水素モノエチルマグネシウム、フマル酸モノエチル亜鉛、ならびにクロスカルメロースナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、微結晶セルロース、およびコロイド状無水シリカを含有する錠剤である。該錠剤は、タルクおよびメタクリル酸−メタクリル酸メチルコポリマー(1:1)を含有する腸溶コーティングでコーティングされている。該腸溶コーティングは、さらにマクロゴール6000、シメチコン、ポビドン、クエン酸トリエチル、二酸化チタンおよびインジゴカルミン(E−132)を含むことができる。
【0019】
フマル酸ジメチル
フマル酸ジメチル((E)−ブテン二酸ジメチル;CAS RN 624−49−7)は、フマル酸のメチルエステルであり、分子式C
6H
8O
4および分子量144.13g/mol、ならびに下記化学式を示す。
【化1】
【0020】
ドイツ公定医薬品集2004(German Medicines Codex 2004)(DAC 2004)によると、融点が102〜105℃の範囲である白色結晶性粉末である。フマル酸ジメチルの結晶学的特性は、Kooijman H et al, Acta Cryst. (2004), E60, o917-o918に記載されている。フマル酸ジメチルは、触媒として濃硫酸の存在下でフマル酸とメタノールを反応させることにより得ることができる(Ma Hongfei, Chemical industry Times, 2005, Vol. 19, No. 4, 18-19)。
【0021】
典型的には、フマル酸ジメチルを篩過および/または粉砕してその粒度を制御する。好ましい実施態様において、フマル酸ジメチルは、レーザー回折式粒度分析計Mastersizer 2000(Malvern Instruments)を使用して測定した粒度分布が、d(10)5〜20μm、d(50)30〜70μm、およびd(90)80〜150μmである。
【0022】
ラクトース希釈剤
希釈剤は、薬物量(drug dosage)自体では、剤形、すなわち、錠剤の必要なバルク(bulk)にするのに不十分である場合、この必要なバルクを構成するために指定される増量剤である(The Theory and Practice of Industrial Pharmacy, 3rd edition, 1986, ISBN 0-8121-0977-5)。
【0023】
ラクトースは、ミルクから得られる天然単糖であり、1つのガラクトース部分と1つのグルコース部分からなる。ラクトースは、白色〜オフホワイト色の結晶性粒子または粉末として存在する。それは、無臭で、わずかに甘い。Handbook of Pharmaceutical Excipients, 6th edition, 2009には、本発明に従って好適である種々のラクトースタイプが記載されている:無水ラクトース(CAS RN 63−42−3;分子式C
12H
22O
11;分子量342.30g/m)、吸入ラクトース、ラクトース一水和物(CAS RN 5989−81−1;分子式C
12H
22O
11・H
2O;分子量360.31g/m)、およびアモルファスラクトース(α−ラクトースとβ−ラクトースの1:1混合物)とラクトース一水和物の混合物である噴霧乾燥ラクトース。
【0024】
好ましい実施態様において、ラクトースは、ラクトース一水和物または噴霧乾燥ラクトースから選択され、好ましくは噴霧乾燥ラクトースである。
【0025】
典型的には、噴霧乾燥ラクトースは、かさ密度が0.55〜0.68g/cm
3であり、タップ密度が0.65〜0.75g/cm
3である。好ましい実施態様において、噴霧乾燥ラクトースは、粒度分布(エアジェットシーブ上に保持、累積)が、75μm(米国規格#200)60〜80%、106μm(米国規格#140)30〜55%、および250μm(米国規格#60)0.0〜0.5%である。
【0026】
微結晶セルロース
微結晶セルロース(CAS RN 9004−34−6;分子式(C
6H
10O
5)
n(ここで、nは約220である);分子量約36000g/m)は、多孔質粒子からなる無味無臭の白色結晶性粉末として存在する、精製された部分脱重合セルロースである(Handbook of Pharmaceutical Excipients, 6th edition, 2009)。
【0027】
典型的には、微結晶セルロースは、かさ密度が0.28〜0.33g/cm
3である。好ましい実施態様において、微結晶セルロースは、レーザー回折式粒度分析計Mastersizer(Malvern Instruments)を使用して測定した粒度分布が、d(10)25〜50μm、d(50)100〜150μm、およびd(90)195〜280μmである。
【0028】
クロスカルメロースナトリウム
クロスカルメロースナトリウム(セルロース、カルボキシメチルエーテル、ナトリウム塩、架橋されている;CAS RN 74811−65−7)は、カルボキシメチルセルロースナトリウムの架橋重合体である。クロスカルメロースナトリウムは、無臭の白色または灰色がかった白色の粉末として存在する(Handbook of Pharmaceutical Excipients, 6th edition, 2009)。
【0029】
典型的には、クロスカルメロースナトリウムは、かさ密度が約0.529g/cm
3であり、タップ密度が約0.819g/cm
3である。好ましい実施態様において、微結晶セルロースは、レーザー回折式粒度分析計Mastersizer(Malvern Instruments)を使用して測定した粒度分布が、d(10)25μm以下、d(50)25〜55μm、およびd(90)60μm以上である。
【0030】
医薬組成物
好ましい実施態様において、上記で定義した医薬組成物は、さらに、(e)少なくとも1種類の流動促進剤を含む。
【0031】
典型的には、流動促進剤(e)は、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、粉末セルロース、ケイ酸マグネシウム、三ケイ酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、ラウリル硫酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム デンプン、二酸化ケイ素、タルク、コロイド状シリカ、コロイド状無水シリカ(コロイド状二酸化ケイ素またはヒュームド二酸化ケイ素)およびその混合物から選択される。
【0032】
好ましくは、流動促進剤(e)は、コロイド状無水シリカ、タルク、またはその組合せから選択され、より好ましくはコロイド状無水シリカである。
【0033】
好ましい実施態様において、上記で定義した医薬組成物は、さらに、(f)少なくとも1種類の滑沢剤を含む。
【0034】
典型的には、滑沢剤(f)は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルカルシウム、ポリエチレングリコール(特に、ポリエチレングリコール4000および6000)、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、軽油、硬化植物油(特に、硬化ヒマシ油)、モノステアリン酸グリセリン、ベヘン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセリル、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、およびその混合物から選択される。
【0035】
好ましくは、滑沢剤(f)はステアリン酸マグネシウムである。
【0036】
したがって、好ましくは、本発明の医薬組成物は、(a)フマル酸ジメチルの粒子、(b)ラクトース、(c)微結晶セルロース、(d)クロスカルメロースナトリウム、(e)コロイド状無水シリカおよび(f)ステアリン酸マグネシウムを含み、ここで、フマル酸ジメチルの粒子は胃耐性コーティングで被覆されていない。
【0037】
好ましい実施態様において、上記で定義した医薬組成物において、(c)微結晶セルロースの(b)ラクトース希釈剤に対する重量比は、2:5〜5:2の範囲内、好ましくは2:1〜1:2の範囲内、より好ましくは4:3である。
【0038】
他の好ましい実施態様において、上記で定義した医薬組成物において、(c)微結晶セルロースの(a)フマル酸ジメチルに対する重量比は、5:1〜1:5の範囲内、好ましくは3:1〜1:3の範囲内、より好ましくは8:5である。
【0039】
他の好ましい実施態様において、上記で定義した医薬組成物において、(b)ラクトース希釈剤の(c)フマル酸ジメチルに対する重量比は、5:1〜1:5の範囲内、好ましくは3:1〜1:3の範囲内、より好ましくは6:5である。
【0040】
他の好ましい実施態様において、上記で定義した医薬組成物において、(c)微結晶セルロースの(d)クロスカルメロースナトリウムに対する重量比は、30:1〜1:5の範囲内、好ましくは20:1〜1:2の範囲内、より好ましくは10:1である。
【0041】
他の好ましい実施態様において、上記で定義した医薬組成物において、(b)ラクトース希釈剤の(d)クロスカルメロースナトリウムに対する重量比は、20:1〜1:5の範囲内、好ましくは10:1〜1:3の範囲内、より好ましくは15:2である。
【0042】
本発明の医薬組成物は、所望により、抗酸化剤、着色剤、香味剤、防腐剤および矯味剤などの他の慣用成分を含有してもよい。
【0043】
好ましい実施態様において、本発明の医薬組成物は、経口投与される(経口投与;per os(ラテン語))。
【0044】
典型的には、本発明の医薬組成物は、固体剤形、すなわち、即時放出型錠剤、即時放出型カプセル剤、遅延放出型錠剤、遅延放出型カプセル剤、持続放出型錠剤、持続放出型カプセル剤、溶解錠、分散錠、発泡錠、チュアブル錠、チューインガム、バッカル錠、舌下錠、口腔内崩壊錠、ロゼンジ剤(lozenge)、トローチ剤(pastille)、硬ゼラチンカプセル剤または軟ゼラチンカプセル剤である。
【0045】
好ましくは、本発明の医薬組成物は、遅延放出型錠剤の剤形であり、より好ましくは胃耐性(腸溶性)錠剤である。胃耐性錠剤は、胃液に耐え、腸媒体(intestinal media)内でその活性物質を放出することが意図されている遅延放出型錠剤である。通常、それらは、胃耐性コーティングで既に被覆されている顆粒または粒子から調製されるか、または場合によっては、錠剤コアを胃耐性コーティングで被覆することにより調製される(腸溶錠)(European Pharmacopoeia 6.0, 2007, ISBN 9789287160546)。好ましい実施態様において、本発明の医薬組成物は、錠剤コアを胃耐性コーティングで被覆することにより調製された胃耐性(腸溶性)錠剤の剤形である。
【0046】
上記のように、フマル酸ジメチル粒子は、胃耐性コーティングで被覆されていない。しかしながら、上記成分(a)〜(d)を含有する錠剤は、そのようなコーティングで被覆されていてもよい。
【0047】
錠剤配合物を直接またはローラーにより圧縮して錠剤を形成してもよい。別法として、打錠の前に、錠剤配合物または配合物の一部を、湿式、乾式もしくは溶融造粒するか、溶融凝固するか、または押出成形することができる。錠剤の製剤化は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 21st Edition, 2005, ISBN 0781746736において詳細に論じられている。
【0048】
錠剤コア上のコーティングは、通常、物質の混合物、例えば、1種類以上の可塑剤、1種類以上(one or core)のポリマー、1種類以上のコポリマー、1種類以上の流動促進剤、1種類以上の顔料、またはその混合物からなる。錠剤コアのコーティングは、Pharmaceutical Manufacturing Handbook: Production and Processes, 2008, ISBN 9780470259580において詳細に論じられている。
【0049】
コーティング中の好適な可塑剤(最低フィルム形成温度およびガラス転移温度を低下させる化合物)の例としては、アセチルクエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリエチル、安息香酸ベンジル、酢酸フタル酸セルロース、クロルブタノール、デキストリン、フタル酸ジブチル、ジブチルセカケート(dibutyl secacate)、フタル酸ジエチル、フタル酸ジメチル、グリセリン、モノステアリン酸グリセリン、フタル酸ヒプロメロース、マンニトール、鉱油、ラノリンアルコール、パルミチン酸、ポリエチレングリコール、ポリビニルアセテートフタレート、プロピレングリコール、2−ピロリドン、ソルビトール、ステアリン酸、トリアセチン、クエン酸トリブチル、トリエタノールアミン、クエン酸トリエチル、セバシン酸ジブチル、ポリエチレングリコールおよびプロピレングリコールのうちの1種類以上が挙げられる。
【0050】
コーティング中の好適なポリマーの例としては、メタクリル酸ポリマー、アクリル酸ポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS)、エチルセルロース(EC)、カルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、およびポリビニルアセテートフタレート(PVAP)のうちの1種類以上が挙げられる。これらのポリマーは、水性分散液、粉末または有機溶液(例えば、アルコール、アセトン)として入手可能である。市販の有機溶液の一例は、ポリ(ビニルアルコール)、メタクリル酸コポリマータイプC、ポリエチレングリコール、タルク、中和剤および顔料の混合物であり;Colorcon, Inc.から商品名OPADRY(登録商標)200で販売されている。
【0051】
コーティング中の好適なコポリマーの例としては、メタクリル酸−メタクリル酸メチル(50:50)コポリマー、メタクリル酸−メタクリル酸メチル(30:70)コポリマー、メタクリル酸−アクリル酸エチル(50:50)コポリマー、またはメタクリル酸−アクリル酸メチル−メタクリル酸メチルコポリマーのうちの1種類以上が挙げられる。これらのコポリマーは、水性分散液、粉末または有機溶液(例えば、アルコール、アセトン)として入手可能である。市販のコポリマーの例としては、Evonikから商品名EUDRAGIT(登録商標)の下に販売されているメタクリル酸コポリマーが挙げられ、EUDRAGIT(登録商標)L 30 D−55(メタクリル酸−アクリル酸エチルコポリマー(1:1)、30%水性分散液)、EUDRAGIT(登録商標)L 100−55(メタクリル酸−アクリル酸エチルコポリマー(1:1)、粉末形態)、EUDRAGIT(登録商標)L 100(メタクリル酸−メタクリル酸メチルコポリマー(1:1)、粉末形態)、EUDRAGIT(登録商標)L 12,5(メタクリル酸−メタクリル酸メチルコポリマー(1:1)、12.5%有機溶液)、EUDRAGIT(登録商標)S 100(メタクリル酸−メタクリル酸メチルコポリマー(1:2)、粉末形態)、EUDRAGIT(登録商標)S 12,5(メタクリル酸−メタクリル酸メチルコポリマー(1:1)、12.5%有機溶液)およびEUDRAGIT(登録商標)FS 30 D(メタクリル酸−アクリル酸メチル−メタクリル酸メチルコポリマー、30%水性分散液)が挙げられる。
【0052】
コーティング中の好適な流動促進剤の例としては、タルクまたはモノステアリン酸グリセロールが挙げられる。
【0053】
コーティング中の好適な顔料の例としては、二酸化チタン、アルミニウムレーキ、インジゴカルミンレーキまたは酸化鉄顔料が挙げられる。
【0054】
特定の実施態様において、本発明の医薬組成物は、i)1種類以上のポリマーおよび/またはコポリマー、ii)1種類以上の流動促進剤、iii)1種類以上の可塑剤、ならびにiv)1種類以上の顔料を含むコーティング製剤でコーティングされた錠剤である。所望により、該コーティング製剤は、1種類以上の消泡剤を含むことができる。
【0055】
好ましくは、コーティングは、タルクおよびメタクリル酸−アクリル酸エチルコポリマーを含む。より好ましくは、コーティングは、さらに、シメチコン、クエン酸トリエチル、二酸化チタン、インジゴカルミンおよび水酸化ナトリウムを含む。
【0056】
好ましい実施態様において、本発明の組成物は、
(a)1重量部の量のフマル酸ジメチルの粒子、
(b)0.9〜1.3重量部の量のラクトース;
(c)0.1〜0.2重量部の量の微結晶セルロース;
(d)0.1〜0.2重量部の量のクロスカルメロースナトリウム;
(e)所望により、0.01〜0.03重量部の量のコロイド状無水シリカ;および
(f)所望により、0.01〜0.03重量部の量のステアリン酸マグネシウム
を含んでおり、該フマル酸ジメチルの粒子は胃耐性コーティングで被覆されていない。
【0057】
さらに好ましい実施態様において、本発明の医薬組成物は、胃耐性(腸溶性)錠剤の剤形であり、コーティング前の錠剤(錠剤コア)の総重量に基づいて
(a)20〜30重量%のフマル酸ジメチル(予め胃耐性コーティングで被覆されていない);
(b)25〜35重量%のラクトース希釈剤;
(c)35〜45重量%の微結晶セルロース;
(d)1〜10重量%のクロスカルメロースナトリウム
を含む。
【0058】
上記で定義した胃耐性(腸溶性)錠剤が(e)少なくとも1種類の流動促進剤を含む場合、流動促進剤(または流動促進剤の組合せ)は、コーティング前の錠剤(錠剤コア)の総重量に基づいて、0.1〜5重量%、好ましくは0.2〜3重量%、より好ましくは0.1〜1重量%の範囲の量で存在する。
【0059】
上記で定義した胃耐性(腸溶性)錠剤が(f)少なくとも1種類の滑沢剤を含む場合、滑沢剤(または滑沢剤の組合せ)は、コーティング前の錠剤(錠剤コア)の総重量に基づいて、0.1〜10重量%、好ましくは0.2〜5重量%、より好ましくは0.1〜2重量%の範囲の量で存在する。
【0060】
特に好ましい実施態様において、本発明の医薬組成物は、胃耐性(腸溶性)錠剤の剤形であり、コーティング前の錠剤(錠剤コア)の総重量に基づいて
(a)20〜30重量%のフマル酸ジメチル粒子(胃耐性コーティングで被覆されていない);
(b)25〜35重量%のラクトース;
(c)35〜45重量%の微結晶セルロース;
(d)1〜10重量%のクロスカルメロースナトリウム;
(e)0.1〜5重量%の少なくとも1種類の流動促進剤;好ましくはコロイド状無水シリカ、タルク、またはその組合せから選択されたもの;より好ましくはコロイド状無水シリカ;
(f)0.1〜10重量%の少なくとも1種類の滑沢剤、好ましくはステアリン酸マグネシウム
を含む。
【0061】
好ましい実施態様において、本発明の医薬組成物は、胃耐性(腸溶性)錠剤の剤形であり、コーティング前の錠剤(錠剤コア)の総重量に基づいて
(a)25重量%のフマル酸ジメチルの粒子(胃耐性コーティングで被覆されていない);
(b)30重量%のラクトース;
(c)40重量%の微結晶セルロース;
(d)4重量%のクロスカルメロースナトリウム;
(e)0.5重量%の少なくとも1種類の流動促進剤;好ましくはコロイド状無水シリカ、タルク、またはその組合せから選択されるもの;より好ましくはコロイド状無水シリカ;
(f)0.5重量%の少なくとも1種類の滑沢剤、好ましくはステアリン酸マグネシウム
を含む。
【0062】
特に好ましい実施態様において、本発明の医薬組成物は、胃耐性(腸溶性)錠剤の剤形であり、コーティング前の錠剤(錠剤コア)の総重量に基づいて
(a)フマル酸ジメチルの粒子(胃耐性コーティングで被覆されていない)30mg;
(b)ラクトース36mg;
(c)微結晶セルロース48mg;
(d)クロスカルメロースナトリウム4.8mg;
(e)コロイド状無水シリカ0.6mg;
(f)ステアリン酸マグネシウム0.6mg
を含む。
【0063】
他の特に好ましい実施態様において、本発明の医薬組成物は、胃耐性(腸溶性)錠剤の剤形であり、コーティング前の錠剤(錠剤コア)の総重量に基づいて
(a)フマル酸ジメチルの粒子(予め胃耐性コーティングで被覆されていない)120mg;
(b)ラクトース144mg;
(c)微結晶セルロース192mg;
(d)クロスカルメロースナトリウム19.2mg;
(e)コロイド状無水シリカ2.4mg;
(f)ステアリン酸マグネシウム2.4mg
を含む。
【0064】
好ましい実施態様において、本発明の医薬組成物が胃耐性(腸溶性)錠剤の剤形である場合、錠剤コアは、上記の賦形剤、すなわち、(b)ラクトース希釈剤、(c)微結晶セルロース、(d)クロスカルメロースナトリウムおよび所望による(e)コロイド状無水シリカ;および(f)ステアリン酸マグネシウム以外にさらなる賦形剤を含有しない。
【0065】
典型的には、本発明の医薬組成物は、20重量%未満のフマル酸モノエチルの塩を含有する。より好ましくは、10重量%未満、より好ましくは5重量%未満、より好ましくは1重量%未満のフマル酸モノエチルの塩を含有する。最も好ましくは、フマル酸モノエチルの塩を実質的に含まない。
【0066】
炎症性障害の処置方法
典型的には、医薬組成物は、食事中または食後30分以内に対象体に投与される。好ましくは、食事中または食事直後に対象体に投与される。かくして、対象体は、典型的には、医薬組成物が投与される時には摂食状態である。
【0067】
好ましくは、対象体は哺乳動物であり、より好ましくはヒトである。
【0068】
対象体にフマル酸ジメチルを投与した後、該有効成分は急速にフマル酸モノメチル代謝物にインビボ加水分解される。典型的には、本発明の医薬組成物の投与後の対象体におけるフマル酸モノメチルの血漿中濃度は、AUC(0−t)が医薬組成物中のフマル酸ジメチル1mgあたり10〜19、好ましくは12.5〜16.5ng.h/mLであるようなものである。より好ましくは、AUC(0−t)は、医薬組成物中のフマル酸ジメチル1mgあたり13〜15ng.h/mLである。典型的には、この実施態様において、医薬組成物は、フマル酸ジメチル30mgまたは120mgを含み、経口投与される。
【0069】
本発明のさらなる実施態様において、本発明の医薬組成物の投与後の対象体におけるフマル酸モノメチルの血漿中濃度は、Cmaxが同量のフマル酸ジメチルを有する対応するFumaderm製剤の投与によって達成可能なCmaxの120%未満、好ましくは110%未満であるようなもの、およびAUC(0−t)が同量のフマル酸ジメチルを有する対応するFumaderm製剤の投与によって達成可能なAUC(0−t)の130%を超えるようなもの、好ましくは150%を超えるようなものである。
【0070】
本発明は、また、対象体における炎症性自己免疫障害の処置方法であって、対象体に
(a)フマル酸ジメチルの粒子;
(b)ラクトース;
(c)微結晶セルロース;および
(d)クロスカルメロースナトリウム
を含む医薬組成物の治療上有効量を投与することを含む方法であり、該フマル酸ジメチルが胃耐性コーティングで被覆されておらず、医薬組成物の投与後の対象体におけるフマル酸モノメチルの血漿中濃度が、AUC(0−t)が医薬組成物中のフマル酸ジメチル1mgあたり10〜19、好ましくは12.5〜16.5、より好ましくは13〜15ng.h/mLであるようなものである、方法を提供する。
【0071】
対象体における炎症性自己免疫障害の処置方法であって、対象体に
(a)フマル酸ジメチルの粒子;
(b)ラクトース;
(c)微結晶セルロース;および
(d)クロスカルメロースナトリウム
を含む医薬組成物の治療上有効量を投与することを含む方法であり、該フマル酸ジメチルが胃耐性コーティングで被覆されておらず、医薬組成物の投与後の対象体におけるフマル酸モノメチルの血漿中濃度が、Cmaxが同量のフマル酸ジメチルを有する対応するFumaderm製剤の投与によって達成可能なCmaxの120%未満、好ましくは110%未満であるようなもの、およびAUC(0−t)が同量のフマル酸ジメチルを有する対応するFumaderm製剤の投与によって達成可能なAUC(0−t)の130%を超えるようなもの、好ましくは150%を超えるようなものである、方法もまた提供される。
【0072】
この実施態様において、医薬組成物は典型的には経口投与され、Fumaderm製剤の投与により達成可能なCmaxおよびAUC(0−t)は、Fumaderm製剤の経口投与後に達成される。対照薬として用いるFumaderm製剤は、フマル酸ジメチル、フマル酸モノエチルカルシウム、フマル酸水素モノエチルマグネシウム、フマル酸モノエチル亜鉛、およびクロスカルメロースナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、微結晶セルロース、およびコロイド状無水シリカを含有する錠剤であって、タルクおよびメタクリル酸−メタクリル酸メチルコポリマー(1:1)を含有する腸溶コーティングでコーティングした錠剤である。腸溶コーティングは、さらに、マクロゴール6000、シメチコン、ポビドン、クエン酸トリエチル、二酸化チタンおよびインジゴカルミン(E−132)を含有することができる。
【0073】
医薬組成物の調製方法
本発明の医薬組成物は、
i)(a)フマル酸ジメチル(ここで、フマル酸ジメチルは予め胃耐性コーティングで被覆されていない)、(b)ラクトース希釈剤、(c)微結晶セルロース、(d)クロスカルメロースナトリウム、および、所望により他の医薬賦形剤を混合して均一な配合物を形成する工程;ならびに
ii)所望により該配合物を篩過する工程
を含む方法によって調製することができる。
【0074】
本発明の好ましい組成物は、
i)(a)フマル酸ジメチル(ここで、フマル酸ジメチルは予め胃耐性コーティングで被覆されていない)、(b)ラクトース希釈剤、(c)微結晶セルロース、(d)クロスカルメロースナトリウム、および(e)少なくとも1種類の流動促進剤を混合して均一な配合物を形成する工程;
ii)所望により該配合物を篩過する工程;
iii)上記配合物に(e)少なくとも1種類の流動促進剤を添加して、得られた配合物を混合する工程;および
iv)所望により最終配合物を篩過する工程
を含む方法によって調製することができる。
【0075】
上記の胃耐性(腸溶性)錠剤は、
i)上記の配合物を打錠して錠剤コアを得る工程;および
ii)錠剤コアをコーティングする工程
を含む方法によって調製することができる。
【0076】
併用療法
典型的には、本発明の方法において、医薬組成物は、紅潮を低減するかまたは取り除く化合物の治療上有効量と組み合わせて投与される。
【0077】
紅潮は、初期の臨床研究以来、フマル酸エステルの副作用として知られており、処置の中止に至った患者もいる(Nieboer C et al., Journal of the American Academy of Dermatology, 1989, 20:4, 601-608;Nieboer C et al., Dermatologica, 1990, 181:33-37)。かくして、「紅潮を低減するかまたは取り除く化合物」とは、発現した場合の紅潮の重症度を低減する能力、または、本来発現したであろうよりも少ない紅潮事象を引き起こす能力を有する化合物をいう。本明細書で用いる場合、用語「治療上有効量」とは、発現した場合の紅潮の重症度を低減するのに十分な、または本来発現したであろうよりも少ない紅潮事象を引き起こすのに十分な量を意味する。これを達成するのに十分な量を「治療上有効量」と定義する。
【0078】
紅潮を低減するかまたは取り除く化合物は、本発明の医薬組成物中に存在することができるか、または、異なる医薬組成物で投与され得る。この後者の場合、2つの組成物は、同一または異なる経路により、別々に、同時に、付随して、または連続して投与するためのものであり得る。
【0079】
典型的には、紅潮を低減するかまたは取り除く化合物は、アセチルサリチル酸、ラロピプラント(laropripant)((−)−[(3R)−4−(4−クロロベンジル)−7−フルオロ−5−(メチルスルホニル)−1,2,3,4−テトラヒドロシクロペンタ[b]インドール−3−イル]酢酸)、COX阻害剤、またはその組合せから選択される。
【0080】
本明細書で用いられる場合、用語COX阻害剤とは、シクロオキシゲナーゼ−1酵素およびシクロオキシゲナーゼ−2酵素の両方を阻害する化合物をいう。一の実施態様において、該化合物は、ヒト全血アッセイ(Brideau et al., Inflamm Res., 45:68-74 (1996)に記載のような)において、シクロオキシゲナーゼ−1 IC
50値が約200μM未満、好ましくは約100μM未満、より好ましくは約50μM未満、さらにより好ましくは約20μM未満であり、シクロオキシゲナーゼ−2 IC
50値が約50μM未満、好ましくは25μM未満、より好ましくは約15μM未満、さらにより好ましくは約2μM未満であり、また、シクロオキシゲナーゼ−1阻害に対するシクロオキシゲナーゼ−2阻害の選択比(IC
50 COX−1/IC
50 COX−2比として決定される)が少なくとも0.1、好ましくは少なくとも0.5、より好ましくは少なくとも1、さらにより好ましくは少なくとも2、最も好ましくは少なくとも10である。
【0081】
ある実施態様において、COX阻害剤は、オキシカム、ピロキシカム、メロキシカム、イソキシカム、テノキシカム、スドキシカム、CP−14,304、サリチル酸塩、ジサルシド、ベノリレート、トリリサート、サファプリン(safapryn)、ソルプリン、ジフルニサル、フェンドサル、酢酸誘導体、アセクロフェナク、ジクロフェナク、フェンクロフェナク、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、イソキセパク、フロフェナク、チオピナク、ジドメタシン、アセメタシン(acematacin)、フェンチアザク、ゾメピラック、クリンダナク(clindanac)、オキセピナク、フェルビナク、エトドラク、ケトロラック、フェナメート、メフェナミック、メクロフェナミック(meclofenamic)、フルフェナミック(flufenamic)、ニフルミック(niflumic)、トルフェナム酸、プロピオン酸誘導体、アセトアミノフェン(パラセタモール)、イブプロフェン、ナプロキセン、ベノキサプロフェン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、ピケトプロフェン、フェノプロフェン、フェンブフェン、インドプロフェン(indopropfen)、ピルプロフェン、カルプロフェン、オキサプロジン、プラノプロフェン、ミロプロフェン、チオキサプロフェン、スプロフェン、アルミノプロフェン、チアプロフェン、ピラゾール、フェニルブタゾン、オキシフェンブタゾン、フェプラゾン、アザプロパゾン、トリメタゾン(trimethazone)、アプリコキシブ、セレコキシブ、シミコキシブ、デラコキシブ、エトリコキシブ、ルミラコキシブ、パレコキシブナトリウム、ロフェコキシブ、セレノコキシブ−1(selenocoxib-1)、バルデコキシブ、2−(3,4−ジフルオロ−フェニル)−4−(3−ヒドロキシ−3−メチル−ブトキシ)−5−(4−メタンスルホニル−フェニル)−2H−ピリダジン−3−オン(ABT−963)、4−(4−シクロヘキシル−2−メチルオキサゾール−5−イル)−2−フルオロベンゼンスルホンアミド(JTE−522)、N−[2−シクロヘキシルオキシ−4−ニトロフェニル]メタンスルホンアミド(NS398)、(E)−(5)−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジリデン)−2−エチル−1,2−イソチアゾリジン−1,1−ジオキシド(S−2474)、5(R)−チオスルホンアミド−3(2H)−ベンゾフラノン(SVT−2016)、N−[7−[(メタンスルホニル)アミノ]−4−オキソ−6−フェノキシ−4H−1−ベンゾピラン−3−イル]ホルムアミド(T−614)、BMS−347070(Bristol Myers Squibb)、GSK−644784(GlaxoSmithKline)、RS57067(Roche Bioscience)、SC−75416(Pfizer)、SC−58125(Pfizer)、SD−8381、4−メチル−2−(3,4−ジメチルフェニル)−1−(4−スルファモイル−フェニル)−1H−ピロール、2−(4−エトキシフェニル)−4−メチル−1−(4−スルファモイルフェニル)−1H−ピロール、3−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−6−メチル−2−(4−(メチルスルホニル)フェニル)−4H−ピラン−4−オン、3−(4−クロロフェノキシ)−6−メチル−2−(4−(メチルスルホニル)フェニル)−4H−ピラン−4−オン、3−(4−ブロモ−2−フルオロフェノキシ)−6−メチル−2−(4−(メチルスルホニル)フェニル)−4H−ピラン−4−オン、3−(4−クロロ−2−フルオロフェノキシ)−6−メチル−2−(4−(メチルスルホニル)フェニル)−4H−ピラン−4−オン、3−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−6−メチル−2−(4−(メチルスルフイニル)フェニル)−4H−ピラン−4−オン、3−(4−クロロ−2−フルオロフェノキシ)−6−メチル−2−(4−(メチルスルフイニル)フェニル)−4H−ピラン−4−オン、(S)−3−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−6−メチル−2−(4−(メチルスルフイニル)フェニル)−4H−ピラン−4−オン、(S)−3−(4−ブロモ−2−フルオロフェノキシ)−6−メチル−2−(4−(メチルスルフイニル)フェニル)−4H−ピラン−4−オン、(S)−3−(4−クロロ−2−フルオロフェノキシ)−6−メチル−2−(4−(メチルスルフイニル)フェニル)−4H−ピラン−4−オン、(R)−3−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−6−メチル−2−(4−(メチルスルフイニル)フェニル)−4H−ピラン−4−オン、(R)−3−(4−ブロモ−2−フルオロフェノキシ)−6−メチル−2−(4−(メチルスルフイニル)フェニル)−4H−ピラン−4−オン、
(R)−3−(4−クロロ−2−フルオロフェノキシ)−6−メチル−2−(4−(メチルスルフイニル)フェニル)−4H−ピラン−4−オン、4−(3−(2−フルオロフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロオキサゾール−4−イル)ベンゼンスルホンアミド、4−(2−オキソ−3−m−トリル−2,3−ジヒドロオキサゾール−4−イル)ベンゼンスルホンアミド、4−(2−オキソ−3−p−トリル−2,3−ジヒドロオキサゾール−4−イル)ベンゼンスルホンアミド、(R)−4−(4−(メチルスルフイニル)フェニル)−3−フェニルフラン−2(5H)−オン、(S)−4−(4−(メチルスルフイニル)フェニル)−3−フェニルフラン−2(5H)−オン、4−(4−(メチルスルフイニル)フェニル)−3−フェニルフラン−2(5H)−オン、5−クロロ−6'−メチル−3−(4−(メチルスルフイニル)フェニル)−2,3'−ビピリジン、(S)−5−クロロ−6'−メチル−3−(4−(メチルスルフイニル)フェニル)−2,3'−ビピリジン、(R)−5−クロロ−6'−メチル−3−(4−(メチルスルフイニル)フェニル)−2,3'−ビピリジン、およびそれらの薬学的に許容される塩、それらの溶媒和物、それらのN−オキシド、それらの立体異性体またはそれらの重水素化誘導体からなる群から選択される。
【0082】
好ましい実施態様において、COX阻害剤は、アセクロフェナク、ジクロフェナク、アセトアミノフェン(パラセタモール)、イブプロフェン、ナプロキセン、アプリコキシブ、セレコキシブ、シミコキシブ、デラコキシブ、エトリコキシブ、ルミラコキシブ、パレコキシブナトリウム、ロフェコキシブ、セレノコキシブ−1、バルデコキシブ、2−(3,4−ジフルオロ−フェニル)−4−(3−ヒドロキシ−3−メチル−ブトキシ)−5−(4−メタンスルホニル−フェニル)−2H−ピリダジン−3−オン(ABT−963)、4−(4−シクロヘキシル−2−メチルオキサゾール−5−イル)−2−フルオロベンゼンスルホンアミド(JTE−522)、N−[2−シクロヘキシルオキシ−4−ニトロフェニル]メタンスルホンアミド(NS398)、(E)−(5)−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジリデン)−2−エチル−1,2−イソチアゾリジン−1,1−ジオキシド(S−2474)、5(R)−チオスルホンアミド−3(2H)−ベンゾフラノン(SVT−2016)、N−[7−[(メタンスルホニル)アミノ]−4−オキソ−6−フェノキシ−4H−1−ベンゾピラン−3−イル]ホルムアミド(T−614)、3−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−6−メチル−2−(4−(メチルスルホニル)フェニル)−4H−ピラン−4−オン、4−(3−(2−フルオロフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロオキサゾール−4−イル)ベンゼンスルホンアミド、4−(2−オキソ−3−m−トリル−2,3−ジヒドロオキサゾール−4−イル)ベンゼンスルホンアミド、4−(2−オキソ−3−p−トリル−2,3−ジヒドロオキサゾール−4−イル)ベンゼンスルホンアミド、およびそれらの薬学的に許容される塩、それらの溶媒和物、それらのN−オキシド、それらの立体異性体またはそれらの重水素化誘導体からなる群から選択される。
【0083】
さらなる好ましい実施態様において、COX阻害剤は、アセクロフェナク、ジクロフェナク、アセトアミノフェン(パラセタモール)、イブプロフェン、ナプロキセン、アプリコキシブ、セレコキシブ、シミコキシブ、デラコキシブ、エトリコキシブ、ルミラコキシブ、パレコキシブナトリウム、ロフェコキシブ、セレノコキシブ−1、バルデコキシブ、3−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−6−メチル−2−(4−(メチルスルホニル)フェニル)−4H−ピラン−4−オン、4−(3−(2−フルオロフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロオキサゾール−4−イル)ベンゼンスルホンアミド、4−(2−オキソ−3−m−トリル−2,3−ジヒドロオキサゾール−4−イル)ベンゼンスルホンアミド、4−(2−オキソ−3−p−トリル−2,3−ジヒドロオキサゾール−4−イル)ベンゼンスルホンアミド、およびそれらの薬学的に許容される塩、それらの溶媒和物、それらのN−オキシド、それらの立体異性体またはそれらの重水素化誘導体からなる群から選択される。
【0084】
典型的には、本発明の方法において、医薬組成物は、プロトンポンプ阻害薬(PPI)の治療上有効量と組み合わせて投与される。プロトンポンプ阻害薬は、主作用が胃酸生産の顕著で長期にわたる低減である一群の薬物であり、したがって、胃腸障害を低減する。
【0085】
典型的には、プロトンポンプ阻害薬(PPI)は、デクスランソプラゾール、エソメプラゾール、イラプラゾール、ランソプラゾール、オメプラゾール、パントプラゾール、ラベプラゾールまたはその混合物から選択される。
【0086】
好ましい実施態様において、プロトンポンプ阻害薬(PPI)は、ランソプラゾール、オメプラゾール、パントプラゾールまたはその混合物から選択される。
【0087】
組合せにおける活性化合物は、同一の医薬組成物として一緒に投与してもよいか、または、同一もしくは異なる経路により、別々に、同時に、付随して、または連続して投与することを目的とする異なる組成物として投与してもよい。
【0088】
本発明の方法において、本発明の医薬組成物は、上記で定義した紅潮を低減するかまたは取り除く化合物の治療上有効量および上記で定義したプロトンポンプ阻害薬(PPI)の治療上有効量の両方とともに投与することができる。
【0089】
本発明は、また、上記のヒトまたは動物体を治療する方法において用いるための医薬であって、
(a)フマル酸ジメチルの粒子;
(b)ラクトース;
(c)微結晶セルロース;および
(d)クロスカルメロースナトリウム
を含む医薬であり、該フマル酸ジメチルが胃耐性コーティングで被覆されていない、医薬を提供する。
【0090】
また、上記のヒトまたは動物体の処置方法において用いるための上記の実施態様において記載された医薬組成物の製造における、
(a)フマル酸ジメチルの粒子;
(b)ラクトース;
(c)微結晶セルロース;および
(d)クロスカルメロースナトリウム
の使用であって、該フマル酸ジメチルが胃耐性コーティングで被覆されていない、使用が提供される。
【0091】
本発明は、また、下記の実施態様(1)〜(22)を提供する:
【0092】
(1)対象体における炎症性自己免疫障害の処置方法であって、該方法が、対象体に、唯一のフマル酸誘導体としてフマル酸ジメチルを含む経口医薬組成物を投与することを含み、該医薬組成物の投与後の対象体におけるフマル酸モノメチルの血漿中濃度が、Cmaxが医薬組成物中のフマル酸ジメチル1mgあたり8.3〜14.2ng/mLであるようなもの、および/またはAUC(0−t)が医薬組成物中のフマル酸ジメチル1mgあたり11〜18ng.h/mLであるようなものである、方法。
【0093】
(2)経口医薬組成物が唯一のフマル酸誘導体としてフマル酸ジメチル30、120または240mgを含む、(1)に従う方法。
【0094】
(3)Cmaxが医薬組成物中のフマル酸ジメチル1mgあたり8.3〜11.5、または8.3〜12、または8.3〜12.5、または8.3〜13、または8.3〜13.5、または9〜14.2、または9.5〜14.2、または10〜14.2、または10.5〜14.2、または9〜13.5、または9.5〜13、または10〜12.5、または10.5〜12ng/mLである、(1)または(2)に従う方法。
【0095】
(4)AUC(0−t)が医薬組成物中のフマル酸ジメチル1mgあたり11〜15、または11〜15.5、または11〜16、または11〜16.5、または11〜17、または11〜17.5、または11.5〜18、または12〜18、または12.5〜18、または13〜18、または13.5〜18、または14〜18、または11.5〜17.5、または12〜17、または12.5〜16.5、または13〜16、または13.5〜15.5、または14〜15ng.h/mLである、(1)〜(3)のいずれか1つに従う方法。
【0096】
(5)経口医薬組成物が固体剤形の形態、より好ましくは錠剤またはカプセル剤の形態、最も好ましくは錠剤の形態である、(1)〜(4)のいずれか1つに従う方法。
【0097】
(6)経口医薬組成物が即時、または持続、または遅延放出組成物、最も好ましくは即時放出組成物である、(1)〜(5)のいずれかに従う方法。
【0098】
(7)医薬組成物が食事中または食事直後または食後1時間以内に投与される、(1)〜(6)のいずれか1つに従う方法。
【0099】
(8)炎症性または自己免疫性の疾患または障害が、関節リウマチ、多発性硬化症(MS)、筋萎縮性側索硬化症、クローン病、潰瘍性大腸炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、重症筋無力症、急性散在性脳脊髄炎、特発性血小板減少性紫斑病、シェーグレン症候群、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)、I型糖尿病または乾癬から選択され、最も好ましくは乾癬である、(1)〜(7)のいずれか1つに従う方法。
【0100】
(9)摂食状態での医薬組成物の投与後の対象体におけるフマル酸モノメチルの血漿中濃度が、Cmaxが絶食状態での投与後に達成可能なCmaxの85%以上、好ましくは90%以上であるようなものである、(1)〜(8)のいずれか1つに従う方法。
【0101】
(10)摂食状態での医薬組成物の投与後の対象体におけるフマル酸モノメチルの血漿中濃度が、AUC(0−t)が絶食状態での投与後に達成可能なAUC(0−t)の70%以上、より好ましくは80%以上、最も好ましくは90%以上であるようなものである、(1)〜(9)のいずれか1つに従う方法。
【0102】
(11)医薬組成物が、胃耐性コーティングで被覆されていないフマル酸ジメチルの粒子を含む、(1)〜(10)のいずれかに従う方法。
【0103】
(12)医薬組成物が微結晶セルロースおよび/またはクロスカルメロースナトリウムを含む、(1)〜(11)のいずれかに従う方法。
【0104】
(13)医薬組成物がラクトースを含む、(1)〜(12)のいずれかに従う方法。
【0105】
(14)医薬組成物が
(a)フマル酸ジメチルの粒子;
(b)ラクトース;
(c)微結晶セルロース;および
(d)クロスカルメロースナトリウム
を含む、(1)〜(13)のいずれかに従う方法。
【0106】
(15)医薬組成物が、さらに、(e)少なくとも1種類の流動促進剤、好ましくはコロイド状無水シリカを含む、(1)〜(14)のいずれか1つに従う方法。
【0107】
(16)医薬組成物が、さらに、(f)少なくとも1種類の滑沢剤、好ましくはステアリン酸マグネシウムを含む、(1)〜(15)のいずれか1つに従う方法。
【0108】
(17)医薬組成物における(c)微結晶セルロースの(b)ラクトースに対する重量比が2:5〜5:2の範囲内である、(1)〜(16)のいずれか1つに従う方法。
【0109】
(18)医薬組成物が、コーティング適用前の錠剤の総重量に基づいて、
(a)20〜30重量%のフマル酸ジメチル;
(b)25〜35重量%のラクトース;
(c)35〜45重量%の微結晶セルロース;
(d)1〜10重量%のクロスカルメロースナトリウム
を含む、(1)〜(17)のいずれか1つに従う方法。
【0110】
(19)医薬組成物が胃耐性コーティングでコーティングされている、(1)〜(18)のいずれか1つに従う方法。
【0111】
(20)胃耐性コーティングがタルクおよびメタクリル酸−酢酸エチルコポリマーを含む、(19)に従う方法。
【0112】
(21)(1)〜(20)のいずれか1つで定義されたヒトまたは動物体を処置する方法に用いるための医薬組成物であって、
(a)フマル酸ジメチルの粒子;
(b)ラクトース;
(c)微結晶セルロース;および
(d)クロスカルメロースナトリウム
を含む医薬組成物であり、該フマル酸ジメチル粒子が胃耐性コーティングで被覆されていない、医薬組成物。
【0113】
(22)(1)〜(20)のいずれか1つで定義されたヒトまたは動物体の処置方法において用いるための医薬組成物の製造における、
(a)フマル酸ジメチルの粒子;
(b)ラクトース;
(c)微結晶セルロース;および
(d)クロスカルメロースナトリウム
の使用であり、該フマル酸ジメチル粒子が胃耐性コーティングで被覆されていない、使用。
【0114】
以下の実施例は、当業者に十分に明確かつ完全に本発明を説明するためのものであって、本明細書の前記部分で述べたような本発明の主題の本質的な態様を限定するものとみなされるべきではない。
【実施例】
【0115】
実施例1 − 安定性
(a)バルク組成物
表1に詳述した量の成分を混合することにより、60kgバルク組成物を調製した。
【0116】
【表1】
【0117】
フマル酸ジメチル、ラクトース、微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウムおよびコロイド状無水シリカを一緒に混合して配合物を形成した。次いで、該ブレンドを0.8mm篩に通した。篩過した配合物を再度混合した。次いで、得られた混合物を再度0.8mm篩に通し、最後に再度混合した。
【0118】
ステアリン酸マグネシウムを0.5mm篩に通し、上記の配合物に添加し、混合して最終配合物を得た。
【0119】
(b)錠剤
2.1.本発明の錠剤
実施例1の最終配合物を相似する2つの部分に分けて異なる力価(フマル酸ジメチル30mgおよび120mg)の錠剤を得た。バルク組成物12kgを、ロータリー式打錠機を用いて直接圧縮により打錠して、最終重量120mg(フマル酸ジメチル30mg)および直径6.5mmの錠剤コア100,000個を得た。
【0120】
バルク組成物48kgを、ロータリー式打錠機を用いて直接圧縮により打錠して、最終重量480mg(フマル酸ジメチル120mg)および直径11mmの錠剤コア100,000個を得た。
【0121】
次いで、錠剤コアを、水およびメタクリル酸−アクリル酸エチルコポリマー(1:1)30%水性分散液に懸濁したクエン酸トリエチル、シメチコン、タルクおよび二酸化チタンを含む水性フィルムコーティング懸濁液(表2中の量を参照)でコーティングした。フマル酸ジメチル120mg錠剤コアの場合、コーティング懸濁液は、インジゴカルミンレーキおよび水酸化ナトリウムも含有した。
【0122】
【表2】
【0123】
上記の腸溶錠は色だけではなくサイズ(低用量−小さい直径;高用量−大きい直径)によっても区別することができ、これは視覚障害者にとって有益である。
【0124】
加えて、医薬品規制調和国際会議(ICH)の安定性ガイドラインに従って上記の腸溶錠に関する安定性試験を行った。錠剤を気候室内にて40℃/相対湿度75%で6か月間、30℃/相対湿度65%で12か月間、および25℃/相対湿度60%で24か月間貯蔵した。外観、水分含量、硬度、溶出および関連物質を一定の間隔で試験した。結果から、錠剤が安定であると結論付けられた。したがって、貯蔵条件の制限は必要ない。
【0125】
2.2.比較実験
ラクトースを微結晶セルロースに置き換えた以外は上記と同様にフマル酸ジメチル120mg腸溶錠を調製した。気候室内にて40℃/相対湿度75%で6か月間、この錠剤に関する安定性試験を行った。結果から、錠剤が安定ではないと結論付けられた。
【0126】
(c)溶出試験
固体剤形用の標準溶出試験に従って、上記の本発明の腸溶錠におけるフマル酸ジメチルの溶出速度を決定した。これらの溶出試験は、European Pharmacopoeia 6.0, Chapter 2.9.3およびUS Pharmacopoiea USP36-NF31, Chapter 711に記載されている。
【0127】
以下のように溶出試験を行った:1L容器を備えたUSP装置II(パドル)を使用した。浴温を37℃±0.5℃に設定し、パドル速度を75rpmに設定した。0.1N HCl(pH1.2)750mLが入っている1つの容器に錠剤1個を2時間にわたって入れておく。その後、0.2Mリン酸緩衝液(0.05Mリン酸緩衝液)220mLを添加することによりpHを6.2に変える。錠剤を該緩衝化pHの下で2時間にわたって保持する。その後、各サンプリング時点(10または20分間隔)で試料を採取する。フマル酸ジメチルをUVにより検出する;セル体積0.1cm
3、検出器波長220nm、参照波長400〜500nm。
【0128】
本発明の医薬組成物は、有効成分の数が少なく、賦形剤が異なるにも関わらず、Fumaderm(登録商標)と同様の溶出プロファイルを示す。加えて、錠剤コアにおいてラクトース、フルクトース、マンニトールまたはリン酸水素カルシウムを用いて得られた本発明の医薬組成物の様々な溶出プロファイルの間に有意な差はみられなかった。
【0129】
実施例2 − 実対照薬に対する非劣性
中等度〜重度の尋常性乾癬患者を用いて、二重盲検、三群、プラセボおよび実対照薬−第III相比較対照臨床試験おいて、本発明の組成物、Skilarenceの安全性および有効性を評価した。大多数の患者は、臨床試験開始前に皮膚科関連QOL評価指標(Dermatology Life Quality Index)(DLQI)に基づいて自身の生活に対する乾癬の影響が「非常に大きい」または「極めて大きい」と報告し、平均DLQIスコアは11.5であった。
【0130】
(i)Skilarence;(ii)実対照薬(Fumaderm);または(iii)プラセボを受けるように、患者を2:2:1の比で無作為化した。上記のように、Fumadermは、フマル酸ジメチルおよび3種類のフマル酸モノエチルの塩を含む併用製品である。
【0131】
Skilarenceは、胃耐性コーティングでコーティングされた錠剤である。該錠剤は、フマル酸ジメチルを含み、30mgおよび120mgの形態で入手可能である。30mg錠および120mg錠の組成を以下に記載する:
【0132】
【表3】
【0133】
フマル酸ジメチルまたはプラセボ30mg/日を含有する錠剤の投与により処置を開始した。実処置群においては、次いで、表6に記載するように投与量を徐々に増やした:
【0134】
【表4】
【0135】
最大720mg/日のフマル酸ジメチルに達成する前に処置の成功が見られた場合には、それ以上増やさず、投与量を個々の維持量まで徐々に減らした。処置を16週間続けた。
【0136】
4〜16週目で患者が耐えられなかった場合、患者は、4週目以降に投与された最後の許容投与量に戻され、16週間の処置期間の残りの間、その投与量が維持された。
【0137】
Fumaderm処置群において、表6に記載したものと同様の投与を行った。該試験の各群で観察された臨床的有効性の概要を表7に示す。
【0138】
【表5】
【0139】
データは、16週間後、Skilarenceがプラセボよりも優れていることを示している。有効性エンドポイントPASIスコアの傾向は、観察されたベースラインからの変化率%が早くも3週目にはSkilarenceに対する臨床反応の開始を示し(−11.8%)、これらが8週目までにプラセボと比較して統計学的に有意になった(−30.9%)ことを意味する。16週目までにさらなる改善が見られた(−50.8%)。Skilarenceの利点は、患者自身が認識した同じような質の改善からも観察された。16週間までに、Skilarenceで処置された患者は、平均DLQI(5.4)がプラセボ(8.8)と比較して低かった。
【0140】
16週間後、PASI 75に基づいて、Skilarenceが実対照薬Fumadermに対して非劣性であることも示された。したがって、SkilarenceとFumadermの間の組成の変化は効力を変えなかった。
【0141】
上記の研究において観察された好ましくない影響を表8に示す。
【0142】
【表6】
【0143】
上記の有効性および安全性パラメータに基づいて、Skilarenceは、Fumadermと同等の効果があることが全体的に示されている。
【0144】
実施例3 − 摂食状態における薬物動態の改善
摂食状態および絶食状態の下での120mgのSkilarence(LAS41008)およびFumadermの単回投与後のフマル酸ジメチル(DMF)代謝物であるフマル酸モノメチル(MMF)の薬物動態を比較する非盲検無作為試験を行った。PK結果および比較統計を表9および10に示す。
【0145】
【表7】
【0146】
【表8】
【0147】
上記のデータからも分かるように、AUC
(o-t)Skilarence/Fumadermの比率は摂食状態の方が絶食状態よりも高いが、C
maxSkilarence/Fumadermは絶食状態の方が摂食状態よりも高い。
【国際調査報告】