(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
4〜12cStの100℃での動粘度を有する15〜95重量%のグループIIIベースストックと、29〜1000cStの100℃での動粘度を有する0.5〜55重量%の共ベースストックと、0.1〜2.0重量%のモリジチオカルバメート摩擦調整剤と、0.1〜2.0重量%の亜鉛ジチオカルバメート耐摩耗添加剤と、2〜30重量%の他の潤滑油添加剤とを含む船舶用潤滑油が提供される。共ベースストックは、グループI、グループIV、グループVおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される。船舶用潤滑油の製造方法および使用方法もまた提供される。
4〜12cStのKV100を有する15〜95重量%のグループIIIベースストックと、29〜1000cStのKV100を有する0.5〜55重量%の共ベースストックと、0.1〜2.0重量%のモリジチオカルバメート摩擦調整剤と、0.1〜2.0重量%の亜鉛ジチオカルバメート耐摩耗添加剤と、2〜30重量%の他の潤滑油添加剤とを含む船舶用潤滑油であって、前記共ベースストックが、グループI、グループIV、グループVおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される油。
前記グループIV共ベースストックが、フリーデル−クラフツ触媒PAOベースストックまたはメタロセン触媒PAOベースストックである、請求項1〜2のいずれか1項に記載の油。
グループV共ベースストックが、ポリイソブチレン、ポリメタクリレートおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の油。
前記他の潤滑油添加剤が、粘度指数向上剤、酸化防止剤、清浄剤、分散剤、流動点降下剤、腐食防止剤、金属不活性化剤、シール適合性添加剤、泡立ち防止剤、インヒビタ、防錆添加剤、他の摩擦調整剤および他の耐摩耗添加剤からなる群から選択される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の油。
前記清浄剤が、前記油の6〜30重量%(活性成分)の量の全処理レベルでのアルカリおよび/またはアルカリ土類金属サリチレート、フェネート、カルボキシレート、スルホネート、フェネートとサリチレートとの混合物、またはフェネートとカルボキシレートとの混合物から選択される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の油。
前記グループIV共ベースストックが、フリーデル−クラフツ触媒PAOベースストック又はメタロセン触媒PAOベースストックである、請求項11〜12のいずれか1項に記載の方法。
グループV共ベースストックが、ポリイソブチレン、ポリメタクリレートおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項11〜13のいずれか1項に記載の方法。
前記他の潤滑油添加剤が、粘度指数向上剤、酸化防止剤、清浄剤、分散剤、流動点降下剤、腐食防止剤、金属不活性化剤、シール適合性添加剤、泡立ち防止剤、インヒビタ、防錆添加剤、他の摩擦調整剤および他の耐摩耗添加剤からなる群から選択される、請求項11〜16のいずれか1項に記載の方法。
前記清浄剤が、前記油の6〜30重量%(活性成分)の量の全処理レベルでのアルカリおよび/またはアルカリ土類金属サリチレート、フェネート、カルボキシレート、スルホネート、フェネートとサリチレートとの混合物、またはフェネートとカルボキシレートとの混合物から選択される、請求項11〜17のいずれか1項に記載の方法。
前記油が、シリンダー油、システム油またはトランクピストンエンジンオイルとして船舶用ディーゼルエンジンに使用される、請求項11〜19のいずれか1項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(詳細な説明)
下記は、本開示を実行する際に当業者を助けるために提供される本開示の詳細な説明である。当業者は、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく本明細書に記載される実施形態において修正及び変形を行い得る。特に定義しない限り、本明細書に用いられる全ての専門用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書での開示の説明に用いられる専門用語は、特定の実施形態を説明するためであるにすぎず、本開示の限定を意図するものではない。本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、図及び他の参考文献は、それらの全体を参照により明らかに援用される。
【0014】
ある範囲の値が提供される場合、当該範囲の上限と下限との間の、それぞれの介在値は、(例えば、ある数の炭素原子を含有する基の場合であって、その範囲内に入る各炭素原子数が提供される場合に)文脈が特に明らかに指示しない限り下限の単位の10分の1まで、及び当該表明範囲中の任意の他の表明値又は介在値は、本開示内に包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限及び下限は独立して、より小さい範囲に含められ得るし、表明範囲中の任意の特に排除された限界次第で、本開示内にまた包含される。表明範囲が限界の1つ又は両方を含む場合、それらの含まれる限界の両方のどちらかを排除する範囲もまた本開示に含められる。
【0015】
それとは反対を明らかに示されない限り、2つ以上の工程又は行為を含む本明細書で特許請求されるいかなる方法においても、方法の工程又は行為の順番は、方法の工程又は行為が列挙されている順番に必ずしも限定されないことがまた理解されるべきである。
【0016】
以下の用語が、本開示を説明するために用いられる。用語が本明細書で具体的に定義されない場合、その用語は、本開示を説明する際のその使用に文脈の中でその用語を適用する当業者によって、当該技術分野において承認されている意味を与えられる。
【0017】
冠詞「a」及び「an」は、本明細書で及び添付の特許請求の範囲で用いられるところでは、文脈が特に明らかに示さない限り、冠詞の文法上の目的語の1つを又は2つ以上(すなわち、少なくとも1つ)を言うために本明細書では用いられる。例として、「an element」は、1つの要素又は2つ以上の要素を意味する。
【0018】
語句「及び/又は」は、本明細書において及び特許請求の範囲においてここで用いられるところでは、そのように結合した要素の「どちらか又は両方」、すなわち、ある場合には結合して存在する要素及び他の場合には分離して存在する要素を意味すると理解されるべきである。「及び/又は」付きでリストアップされる多数の要素は、同じように、すなわち、そのように結合した要素の「1つ以上」と解釈されるべきである。「及び/又は」条項によって具体的に特定される要素以外の他の要素が、具体的に特定されたそれらの要素に関連するか関連しないかに関わらず、任意選択的に存在し得る。したがって、非限定的な例として、「A及び/又はB」への言及は、「含む」などの制約がない言語に関連して用いられる場合、一実施形態において、Aのみを言う(任意選択的にB以外の要素を含めて);別の実施形態において、Bのみを言う(任意選択的にA以外の要素を含めて);その上別の実施形態において、A及びBの両方を言うことができる(任意選択的に他の要素を含めて);等。
【0019】
本明細書において及び特許請求の範囲においてここで用いられるところでは、「又は」は、上で定義されたような「及び/又は」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、項目をリストにおいて分離する場合、「又は」若しくは「及び/又は」は、包括的である、すなわち、多数の又はリストの要素、及び、任意選択的に、追加の非リスト項目の、少なくとも1つの包含、しかしまた、それらの2つ以上の包含であると解釈されるものとする。「の1つのみ」若しくは「の正確に1つ」などの、それとは反対を明らかに示されている用語のみが、又は、特許請求の範囲において用いられる場合、「からなる」が、多数の又はリストの要素の正確に1つの要素の包含を言うであろう。一般に、用語「又は」は、本明細書で用いるところでは、「どちらか」、「の1つ」、「のたった1つ」、又は「の正確に1つ」などの、排他性の用語に先行される場合、排他的な代替(すなわち、「1つ又は他方、しかし両方ではない」)を示すと解釈されるにすぎないものとする。
【0020】
用語「約」又は「およそ」は、値が測定される又は決定される方法にある程度依存する、当業者によって測定されるような特定の値について許容される実験誤差を意味する。ここでの本明細書及び特許請求の範囲内の全ての数値は、表示値を「約」又は「およそ」で修飾され、当技術分野での通常の技能を有する人によって予期され得た実験誤差及びばらつきを考慮に入れている。
【0021】
語句「多量」又は「主成分」は、それが本明細書及び特許請求の範囲の船舶用潤滑油内に含まれる成分に関するところでは、潤滑油の総重量を基準として、50重量%以上、又は60重量%以上、又は70重量%以上、又は80重量%以上、又は90重量%以上を意味する。語句「少量」又は「少量成分」は、それが本明細書及び特許請求の範囲の船舶用潤滑油内に含まれる成分に関するところでは、潤滑油の総重量を基準として、50重量%以下、又は40重量%以下、又は30重量%以下、又は20重量%以下、又は10重量%以下、又は5重量%以下、又は2重量%以下、又は1重量%以下を意味する。語句「実質的に含まない」又は「本質的に含まない」は、それが本明細書及び特許請求の範囲の船舶用潤滑油内に含まれる成分に関するところでは、その特定の成分が潤滑油内に0重量%で存在する、又は或いは潤滑油内に不純物タイプレベル(100ppm未満、又は20ppm未満、又は10ppm未満、又は1ppm未満)で存在することを意味する。語句「他の潤滑油添加剤」は、本明細書及び特許請求の範囲で用いるところでは、本明細書又は特許請求の範囲の特定のセクションで具体的に列挙されない他の潤滑油添加剤を意味する。例えば、他の潤滑油添加剤には、耐摩耗添加剤、酸化防止剤、清浄剤、分散剤、流動点降下剤、腐食防止剤、金属不活性化剤、シール適合性添加剤、泡立ち防止剤、インヒビタ、防錆添加剤、摩擦調整剤及びそれらの組み合わせが含まれ得るが、それらに限定されない。
【0022】
特許請求の範囲において、並びに上の明細書において、全ての移行句、例えば「含む(comprising)」、「含む(including)」、「持っている(carrying)」、「有する(having)」、「含有する(containing)」、「含む(involving)」、「保持する(holding)」、「からなる(composed of)」等は、制約がないと、すなわち、含むが限定されないことを意味すると理解されるべきである。移行句「からなる(consisting of)」及び「から本質的になる(consisting essentially of)」だけが、10 United States Patent Office Manual of Patent Examining Procedures,Section 2111.03に説明されているように、それぞれ、閉鎖又は半閉鎖移行句であるものとする。
【0023】
本明細書において及び特許請求の範囲においてここで用いるところでは、語句「少なくとも1つ」は、1つ以上の要素のリストに関して、要素のリスト中の要素のいずれか1つ以上から選択されるが、要素のリスト内に具体的にリストアップされた各要素及びあらゆる要素の少なくとも1つを必ずしも含まず、要素のリスト中の要素のいかなる組み合わせをも排除しない少なくとも1つの要素を意味すると理解されるべきである。この定義はまた、具体的に特定されたそれらの要素に関連するか関連しないかに関わらず、語句「少なくとも1つ」が言及する要素のリスト内に具体的に特定された要素以外の要素が任意選択的に存在し得ることを可能にする。したがって、非限定的な例として、「A及びBの少なくとも1つ」(又は、同等に、「A若しくはBの少なくとも1つ」、又は、同等に「A及び/若しくはBの少なくとも1つ」)は、一実施形態において、Bが存在せずに(及びB以外の要素を任意選択的に含んで)、任意選択的に1超を含めて、少なくとも1つのAを言うことができ;別の実施形態において、Aが存在せずに(及びA以外の要素を任意選択的に含んで)、任意選択的に1超を含めて、少なくとも1つのBを言うことができ;その上別の実施形態において、任意選択的に1超を含めて、少なくとも1つのA、並びに任意選択的に1超を含めて、少なくとも1つのB(及び他の要素を任意選択的に含んで)を言うことができる;等である。
【0024】
用語「第1」、「第2」等は、様々な要素、成分、領域、層及び/又はセクションを記載するために本明細書で用いられ得るが、これらの要素、成分、領域、層及び/又はセクションは、これらの用語によって制限されるべきではない。これらの用語は、1つの要素、成分、領域、層又はセクションを、別の要素、成分、領域、層又はセクションから区別するために用いられるにすぎない。したがって、以下に論じられる第1の要素、成分、領域、層又はセクションは、実施例実施形態の教示から逸脱することなく、第2の要素、成分、領域、層又はセクションと称することができよう。
【0025】
空間関連用語、例えば「真下に」、「下に」、「より低い」、「上に」、「上方に」等は、図に例示されるような別の要素又は形体との1つの要素又は形体の関係を説明するための記載を容易にするために本明細書では用いられ得る。空間関連用語は、図に描かれた配向に加えて、使用又は運転中のデバイスの異なる配向を包含することを意図することが理解されるであろう。例えば、図中のデバイスが回転される場合に、他の要素又は形体の「下に」又は「真下に」として記載された要素は、他の要素又は形体の「上に」配向するであろう。したがって、例示用語「下に」は、上及び下の配向の両方を包含することができる。デバイスは、違ったふうに(90°回転して又は他の配向で)配向させられ得るし、本明細書で用いられる空間関連記述子はそれ相応に解釈され得る。
【0026】
本明細書及び特許請求の範囲においてここで用いるところでは、KV100は、ASTM D445によって測定されるような100℃での動粘度を表す。本明細書及び図における、D2896、TBNは、ASTM D2896によって測定されるような、油試料の1グラム当たりの水酸化カリウムのmgの単位での全塩基価を表す。
【0027】
船舶用潤滑油調合物
本開示は、船舶用潤滑油組成物を指向する。本開示はまた、そのような船舶用潤滑油の製造方法を、並びにミニけん引機(MTM)方法によって測定されるような摩擦又はけん引係数の低減方法及び船舶用潤滑油組成物の燃料効率の改善方法を指向する。本明細書に記載される船舶用潤滑油は、燃費の良いシリンダー油、燃費の良いシステム油及び燃費の良いトランクピストンエンジンオイルを提供する。本明細書に開示される船舶用潤滑油は、二峰性ベースストックブレンの組み合わせ並びに様々なローリング速度にわたってMTMけん引係数の改善を提供し得る、燃料効率の改善につながり得る、任意選択的に他の潤滑油添加剤と共に摩擦調整剤添加剤と耐摩耗添加剤との組み合わせを含む。本明細書に開示される本発明の船舶用潤滑油は、広範囲の粘度グレード及び塩基価にわたって調合され得る。
【0028】
本開示の船舶用潤滑油は、低粘度グループIIIベースストックと高粘度共ベースストックとの組み合わせを含む二峰性ベースストックブレンドを、摩擦調整剤及び耐摩耗添加剤と共に利用する。共ベースストックは、グループI、グループIV、グループV及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0029】
本開示の一形態において、4〜12cStのKV100を有する15〜95重量%のグループIIIベースストックと、29〜1000cStのKV100を有する0.5〜55重量%の共ベースストックと、0.1〜2.0重量%のモリジチオカルバメート摩擦調整剤と、0.1〜2.0重量%の亜鉛ジチオカルバメート耐摩耗添加剤と、2〜30重量%の他の潤滑油添加剤とを含む船舶用潤滑油が提供される。共ベースストックは、グループI、グループIV、グループV及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0030】
本開示の別の形態において、船舶用潤滑油の製造方法であって、4〜12cStのKV100を有するグループIIIベースストックと、グループI、グループIV、グループV及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、29〜1000cStのKV100を有する共ベースストックと、モリジチオカルバメート摩擦調整剤と、亜鉛ジチオカルバメート耐摩耗添加剤と、他の潤滑油添加剤とを提供する工程と、15〜95重量%のグループIIIベースストックと、0.5〜55重量%の共ベースストックと、0.1〜2.0重量%のモリジチオカルバメート摩擦調整剤と、0.1〜2.0重量%の亜鉛ジチオカルバメート耐摩耗添加剤と、2〜30重量%の他の潤滑油添加剤とをブレンドして船舶用潤滑油を形成する工程とを含む方法が提供される。
【0031】
本開示のさらにその上別の形態において、船舶用潤滑油を船舶用ディーゼルエンジンに提供する工程を含む船舶用ディーゼルエンジンの燃料効率の改善方法であって、この船舶用潤滑油が、4〜12cStのKV100を有する15〜95重量%のグループIIIベースストックと、29〜1000cStのKV100を有する0.5〜55重量%の共ベースストックと、0.1〜2.0重量%のモリジチオカルバメート摩擦調整剤と、0.1〜2.0重量%の亜鉛ジチオカルバメート耐摩耗添加剤と、2〜30重量%の他の潤滑油添加剤とを含み、及び共ベースストックが、グループI、グループIV、グループV及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、及び船舶用潤滑油のMTMけん引係数が、共ベースストックを実質的に含まない、モリジチオカルバメート摩擦調整剤を実質的に含まない、又は亜鉛ジチオカルバメート耐摩耗添加剤を実質的に含まないグループIベースストックを含む船舶用潤滑油よりも低い方法が提供される。
【0032】
本発明の船舶用潤滑油、そのような船舶用潤滑油の製造方法及び使用方法は、5〜30、又は7〜30、又は10〜25、又は12〜22、又は15〜20cStの範囲の100℃での動粘度(KV100)を有し得る。船舶用潤滑油はまた、8〜100、又は10〜90、又は20〜80、又は30〜70、又は40〜60、又は45〜55の範囲の全塩基価(TBN)を有し得る。
【0033】
本発明の船舶用潤滑油、そのような船舶用潤滑油の製造方法及び使用方法は、15〜95重量%、又は20〜90重量%、又は25〜85重量%、又は30〜80重量%、又は35〜75重量%、又は40〜70重量%、又は45〜65重量%、又は50〜60重量%の低粘度グループIIIベースストックを含む。1つの有利なグループIIIベースストックはGTLである。グループIIIベースストックは、4〜12、又は5〜11、又は6〜10、又は7〜9cStの範囲の100℃での動粘度(KV100)を有し得る。
【0034】
本発明の船舶用潤滑油、そのような船舶用潤滑油の製造方法及び使用方法は、0.5〜55重量%、又は1〜50重量%、又は5〜45重量%、又は10〜40重量%、又は15〜35重量%、又は20〜30重量%の高粘度共ベースストックを含む。共ベースストックは、29〜1000、又は40〜800、又は60〜600、又は80〜400、又は100〜300、又は150〜250cStの範囲の100℃での動粘度(KV100)を有し得る。共ベースストックは、グループI、グループIV、グループV及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。1つの有利なグループI共ベースストックはブライトストックである。1つの有利なグループIV共ベースストックは、フリーデル−クラフツ(Friedel−Crafts)触媒PAOベースストック又はメタロセン触媒PAOベースストックである。有利なグループV共ベースストックは、ポリイソブチレン、ポリメタクリレート及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0035】
本発明の船舶用潤滑油、そのような船舶用潤滑油の製造方法及び使用方法は、0.1〜5重量%、又は0.5〜4.5重量%、又は1.0〜4.0重量%、又は1.5〜3.5重量%、又は2.0〜3.0重量%のモリジチオカルバメート摩擦調整剤を含む。
【0036】
本発明の船舶用潤滑油、そのような船舶用潤滑油の製造方法及び使用方法は、0.1〜5重量%、又は0.5〜4.5重量%、又は1.0〜4.0重量%、又は1.5〜3.5重量%、又は2.0〜3.0重量%の亜鉛ジチオカルバメート耐摩耗添加剤を含む。
【0037】
本発明の船舶用潤滑油、そのような船舶用潤滑油の製造方法及び使用方法はまた、2〜30重量%、又は5〜25重量%、又は8〜22重量%、又は10〜20重量%、又は12〜18重量%の他の潤滑油添加剤を含む。他の潤滑油添加剤は、粘度指数向上剤、酸化防止剤、清浄剤、分散剤、流動点降下剤、腐食防止剤、金属不活性化剤、シール適合性添加剤、泡立ち防止剤、インヒビタ、防錆添加剤、他の摩擦調整剤及び他の耐摩耗添加剤からなる群から選択される。
【0038】
本明細書に開示される船舶用潤滑油についての全塩基価を達成するために、1種以上の清浄剤が潤滑油中に含まれる。1種以上の清浄剤は、アルカリ及び/又はアルカリ土類金属サリチレート、フェネート、カルボキシレート、スルホネート、フェネートとサリチレートとの混合物又はフェネートとカルボキシレートとの混合物から選択される。1種以上の清浄剤の全処理レベルは、油の活性成分の6〜30重量%、又は8〜28重量%、又は10〜26重量%、又は12〜24重量%、又は14〜22重量%、又は16〜20重量%の活性成分の量にある。
【0039】
本発明の船舶用潤滑油のミニけん引機(MTM)境界けん引係数は、0.07未満、又は0.06未満、又は0.05未満、又は0.04未満、又は0.03未満である。本発明の船舶用潤滑油のMTM境界けん引係数は、共ベースストックを実質的に含まない、モリジチオカルバメート摩擦調整剤を実質的に含まない、又は亜鉛ジチオカルバメート耐摩耗添加剤を実質的に含まないグループIベースストックを含む比較船舶用潤滑油よりも低い。加えて、本発明の船舶用潤滑油のMTM混合けん引係数及びMTM流体力学的けん引係数はまた、0.07未満、又は0.06未満、又は0.05未満、又は0.04未満、又は0.03未満である。さらに、本発明の船舶用潤滑油のMTM混合けん引係数及びMTM流体力学的けん引係数はまた、共ベースストックを実質的に含まない、モリジチオカルバメート摩擦調整剤を実質的に含まない、又は亜鉛ジチオカルバメート耐摩耗添加剤を実質的に含まないグループIベースストックを含む比較船舶用潤滑油よりも低い。
【0040】
本発明の船舶用潤滑油の燃料効率(FE)改善は、0.1%超、又は0.2%超、又は0.3%超、又は0.5%超、又は1.0%超、又は1.5%超、又は2.0%超である。本発明の船舶用潤滑油の燃料効率(FE)は、共ベースストックを実質的に含まない、モリジチオカルバメート摩擦調整剤を実質的に含まない、又は亜鉛ジチオカルバメート耐摩耗添加剤を実質的に含まないグループIベースストックを含む比較船舶用潤滑油よりも大きい燃料効率を有する。燃料効率は、比較船舶用潤滑油に対して本発明の船舶用潤滑油の出力当たりの燃料消費の百分率改善に基づいて計算される。
【0041】
船舶用潤滑油は、シリンダー油、システム油又はトランクピストンエンジンオイルを含むが、それらに限定されない船舶用途又は使用において有用である。
【0042】
ベースストック又は基油
本明細書で及び添付の特許請求の範囲で用いるところでは、用語「ベースストック」及び「基油」は、同意語として及び同じ意味で用いられる。共ベースストックは、調合物中の少なくとも1つの他のベースストックよりも全体配合の割合が小さい調合物中のベースストックを言う。共ベースストックは、典型的には、潤滑油の50重量%未満であり、ベースストックの二峰性ブレンドの高粘度成分である。
【0043】
潤滑油ベースストック及び共ベースストックは、約5〜20cSt(mm
2/s)、より好ましくは約7〜16cSt(mm
2/s)、最も好ましくは約9〜13cSt(mm
2/s)の100℃での動粘度を典型的には有する任意の天然又は合成潤滑ベースストックフラクションである。好ましい実施形態において、粘度指数向上剤の使用は、本調合物を製造するために使用される潤滑油基油フラクションからの100℃で粘度20cSt(mm
2/s)以上の油の除外を可能にする。それ故、好ましい基油は、重質フラクションを、たとえあったとしても、ほとんど含有しないもの;例えば、100℃で粘度20cSt(mm
2/s)以上の潤滑油フラクションを、たとえあったとしても、ほとんど含有しないものである。
【0044】
潤滑油ベースストック及び共ベースストックは、天然潤滑油、合成潤滑油又はそれらの混合物から誘導することができる。好適な潤滑油ベースストックには、合成ワックス及びスラックワックスの異性化によって得られるベースストック、並びに原油の芳香族及び極性成分を(溶剤抽出よりもむしろ)水素化分解することによって製造される水素化分解物ベースストックが含まれる。好適なベースストックには、APIカテゴリーI、II及びIIIのものが含まれ、ここで、飽和物レベル及び粘度指数は次の通りである:
グループI−それぞれ、90%未満及び80〜120;
グループII−それそれ、90%超及び80〜120;並びに
グループIII−それぞれ、90%超及び120超。
【0045】
ベースストック及び共ベースストックは、潤滑粘度の油であり、クロスヘッドエンジンのシステム潤滑に好適な任意の油であり得る。潤滑油は、好適には、動物油、植物油又は鉱油であり得る。好適には、潤滑油は、ナフテン系基油、パラフィン系基油又は混合基油などの、石油由来の潤滑油である。或いは、潤滑油は、合成潤滑油であり得る。好適な合成潤滑油には、それらの油がジ−オクチルアジペート、ジ−オクチルセバケート、トリデシルアジペートなどのジエステルを含む、合成エステル潤滑油、又はポリマー炭化水素潤滑油、例えば、液体ポリイソブテン及びポリアルファオレフィンが含まれる。一般に、鉱油が用いられる。潤滑油は、一般に60超、典型的には70質量%超の潤滑油組成物を含み、典型的には、2〜40、例えば、3〜15mm
2/sの100℃での動粘度、及び80〜100、例えば、90〜95の粘度指数を有する。
【0046】
別のクラスの潤滑油は水素化分解油であり、ここで、精製プロセスが、高温及び中圧で水素の存在下で中間及び重質留出物留分をさらに分解する。水素化分解油は、典型的には2〜40、例えば、3〜15mm
2/sの100℃での動粘度、及び典型的には100〜110、例えば、105〜108の範囲の粘度指数を有する。
【0047】
ブライトストックは、28〜36mm
2/sの100℃での動粘度を一般に有する、減圧残油からの溶剤抽出された、脱アスファルト化生成物である基油を言い、潤滑油組成物の質量を基準として、30未満、好ましくは20未満、より好ましくは15未満、最も好ましくは、5質量%未満などの10未満の割合で典型的には使用される。
【0048】
上で論じられたように、基油及び共基油は、任意の動物油、植物油若しくは鉱油又は合成油であることができる。基油は、組成物の60質量%超の割合で使用される。油は、典型的には、2〜40、例えば3〜15mm
2/sの100℃での粘度及び80〜100の粘度指数を有する。100℃で2〜40mm
2/sの粘度及び100〜110の粘度指数を有する水素化分解油もまた使用することができる。28〜36mm
2/sの100℃での粘度を有するブライトストックもまた、典型的には30未満、好ましくは20未満、最も好ましくは5質量%未満の割合で使用することができる。
【0049】
グループIIベースストックは、90%以上の飽和物、0.03重量%以下の硫黄並びに80以上及び120未満の粘度指数を含有する油として米国石油協会(American Petroleum Institute)によって分類されている。
【0050】
グループIIIベースストックは、90%以上の飽和物、0.03重量%以下の硫黄及び120以上の粘度指数を含有する油として米国石油協会によって分類されている。グループIIIベースストックは、通常、減圧ガスオイルなどの、油フィードストックを水素化分解して不純物を除去し、存在する可能性がある全ての芳香族化合物を飽和させて非常に高い粘度指数の高パラフィン系潤滑油ストックを生成する工程、異性化によってノルマルパラフィンを分岐パラフィンに転化する選択的接触水素化脱ロウに水素化分解ストックを供する工程、引き続き水素化仕上げしていかなる残存芳香族化合物、硫黄、窒素又はオキシジェネートをも除去する工程を含む3段階プロセスを用いて製造される。
【0051】
グループIIIストックはまた、(1)1種以上のガス・ツー・リキッド(GTL)物質;並びに(2)合成ワックス、天然ワックス若しくはワックス様フィード[ワックス様フィードは、ガスオイル、スラックワックス(天然油、鉱油若しくは合成油;例えば、フィッシャー−トロプシュ(Fischer−Tropsch)フィードストックの溶剤脱ロウに由来する)などの鉱油及び/若しくは非鉱物油ワックス様フィードストック、及びワックス様燃料水素化分解装置ボトム、ワックス様ラフィネート、水素化分解物、熱分解物、フッツ(foots)油若しくは他のミネラル、鉱油などのワックス様ストック、又は石炭液化若しくはシェール油から回収されたワックス様物質、約20個以上、好ましくは約30個以上の炭素数の線状若しくは分岐ヒドロカルビル化合物などの非石油由来ワックス様物質さえを含む]から誘導される水素化脱ロウ、又は水素異性化/接触(及び/若しくは溶剤)脱ロウベースストックに由来するベースストック及び/又は基油の1つ又は混合物を含む非従来型の又は慣例にとらわれないベースストック及び/又は基油、並びにそのようなベースストック及び/又は基油の混合物を包含する。
【0052】
GTL物質は、水素、二酸化炭素、一酸化炭素、水、メタン、エタン、エチレン、アセチレン、プロパン、プロピレン、プロピン、ブタン、ブチレン及びブチンなどのフィードストックとしてのガス状炭素含有化合物、水素含有化合物及び/又は元素から1つ以上の合成、化合、変換、転位、及び/又は分解/脱構築プロセスによって誘導される物質である。GTLベースストック及び/又は基油は、炭化水素;例えば、フィードストックとしてのより簡単なガス状炭素含有化合物、水素含有化合物及び/又は元素からそれら自体誘導される、ワックス様合成炭化水素から一般に誘導される潤滑粘度のGTL物質である。GTLベースストック及び/又は基油には、(1)低下した/低い流動点の潤滑油を製造するために、例えば、蒸留による及びその後に、接触脱ロウプロセス、又は溶剤脱ロウプロセスのどちらか又は両方を含む最終ワックス処理工程に供されるなどの合成GTL物質から分離される/分留される潤滑油沸点範囲で沸騰する油;(2)例えば、水素化脱ロウ若しくは水素異性化された接触及び/若しくは溶剤脱ロウ合成ワックス又はワックス様炭化水素を含む、合成ワックス異性化物;(3)水素化脱ロウされた若しくは水素異性化された接触及び/若しくは溶剤脱ロウフィッシャー−トロプシュ(F−T)物質(すなわち、炭化水素、ワックス様炭化水素、ワックス及び可能な類似のオキシジェネート);好ましくは水素化脱ロウ若しくは水素異性化/引き続く接触及び/若しくは溶剤脱ロウF−Tワックス様炭化水素、又は水素化脱ロウ若しくは水素異性化/引き続く接触(及び/若しくは溶剤)脱ロウF−Tワックス、又はそれらの混合物が含まれる。
【0053】
GTL物質に由来するGTLベースストック及び/又は基油、とりわけ、水素化脱ロウ又は水素異性化/引き続く接触及び/若しくは溶剤脱ロウワックス又はワックス様フィード、好ましくはF−T物質由来ベースストック及び/又は基油は、典型的には、約2mm
2/s〜約50mm
2/sの100℃での動粘度(ASTM D445)を有するとして特徴付けられる。それらは、典型的には、−5℃〜約−40℃以下の流動点(ASTM D97)を有するとしてさらに特徴付けられる。それらはまた、典型的には、約80〜約140以上の粘度指数(ASTM D2270)を有するとして特徴付けられる。
【0054】
加えて、GTLベースストック及び/又は基油は、典型的には高パラフィン系(90%超飽和物)であり、非環状イソパラフィンと組み合わせてモノシクロパラフィンとマルチシクロパラフィンとの混合物を含有し得る。そのような組み合わせ中のナフテン系(すなわち、シクロパラフィン)含有量の比は、用いられる触媒及び温度と共に変わる。さらに、GTLベースストック及び/又は基油は、典型的には、非常に低い硫黄及び窒素含有量を有し、一般に約10ppm未満、より典型的には約5ppm未満のこれらの元素のそれぞれを含有する。F−T物質、とりわけF−Tワックスから得られたGTLベースストック及び/又は基油の硫黄及び窒素含有量は、本質的に無である。加えて、リン及び芳香族化合物の不在は、この物質を、低SAP製品の配合にとってとりわけ好適なものにする。
【0055】
用語GTLベースストック及び/若しくは基油並びに/又はワックス異性化物ベースストック及び/若しくは基油は、生産プロセスにおいて回収されるような広い粘度範囲のそのような物質の個別のフラクション、そのようなフラクションの2つ以上の混合物、並びにブレンドが標的動粘度を示すブレンドを生成するための1つ又は2つ以上の低粘度フラクションと、1つ、2つ以上のより高い粘度フラクションとの混合物を含むと理解されるべきである。
【0056】
GTLベースストック及び/又は基油がそれに由来する、GTL物質は、好ましくは、F−T物質(すなわち、炭化水素、ワックス様炭化水素、ワックス)である。
【0057】
好ましい実施形態において、GTLベースストック及び/又は基油がそれに由来する、GTL物質は、F−T物質(すなわち、炭化水素、ワックス様炭化水素、ワックス)である。スラリーF−T合成プロセス、特に、より望ましいより高い分子量パラフィンを製造するための高いシュルツ−フローリー(Schultz−Flory)動力学的アルファを提供するための触媒コバルト成分を含むF−T触媒を用いるものは、CO及び水素からフィードを合成するために有益に使用され得る。このプロセスはまた、当業者に周知である。
【0058】
GTLベースストック及び/又は基油、水素化脱ロウ又は水素異性化/接触(及び/若しくは溶剤)脱ロウF−T物質由来ベースストック、並びにワックス異性化物又は水素化脱ロウ物などの、ワックス由来の水素化脱ロウ、若しくは水素異性化/接触(及び/若しくは溶剤)脱ロウベースストックの有用な組成物は、例えば、米国特許第6,080,301号明細書;同第6,090,989号明細書、及び同第6,165,949号明細書に列挙されている。
【0059】
この発明におけるグループIIIストックとしての使用にまた好適である、ワックス様フィードに由来するベースストック及び/又は基油は、鉱油、非鉱油、非石油、又は天然源起源の水素化脱ロウ、又は水素異性化/接触(及び/若しくは溶剤)脱ロウワックス様フィードストック、例えば1種以上のガスオイル、スラックワックス、ワックス様燃料水素化分解装置ボトム、炭化水素ラフィネート、天然ワックス、水素化分解物、熱分解物、フッツ油、石炭液化からの若しくはシェール油からのワックス、又は他の好適な鉱油、非鉱油、非石油、又は天然源由来ワックス様物質、約20個以上、好ましくは約30個以上の炭素数の線状若しくは分岐ヒドロカルビル化合物などのフィードストック、並びにそのような異性化物/イソ脱ロウ物ベースストック及び/又は基油の混合物に由来する潤滑粘度のパラフィン系流体である。
【0060】
スラックワックスは、溶剤若しくは自動冷却脱ロウによってF−Tワックス様油などの合成油又は石油を含む任意のワックス様炭化水素油から回収されたワックスである。溶剤脱ロウは、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、MEK/MIBKの混合物、MEKとトルエンとの混合物などの冷却溶剤を用い、そして一方、自動冷却脱ロウは、プロパン又はブタンなどの加圧された、液化した低沸点炭化水素を用いる。
【0061】
F−Tワックス様油などの合成ワックス様油から確保されるスラックワックスは、通常、ゼロ又は無の硫黄及び/又は窒素含有化合物含有量を有するであろう。石油から確保されるスラックワックスは、硫黄及び窒素含有化合物を含有する可能性がある。そのようなヘテロ原子化合物は、水素異性化触媒のその後の被毒/不活性化を回避するために、例えば水素化脱硫(HDS)及び水素化脱窒(HDN)によるように、水素処理(水素化分解ではない)によって除去されなければならない。
【0062】
ワックス様ストック、例えばスラックワックス、F−Tワックス又はワックス様フィードから潤滑油ベースストックを製造するプロセスは、異性化プロセスとして特徴付けられ得る。スラックワックスがフィードとして使用される場合、それらは、その後の工程に使用される水素異性化又は水素化脱ロウ触媒をさもなければ不活性化し得る硫黄及び窒素含有化合物を(触媒被毒若しくは不活性化を有効に回避するであろうレベルまで)減らすために又は除去するために当業者に既に周知の条件下での予備水素処理工程に供される必要があるかもしれない。F−Tワックスが使用される場合、そのような予備処理は、そのようなワックスが痕跡量(約10ppm未満、又はより典型的には約5ppm未満〜無)の硫黄又は窒素化合物含有量を有するにすぎないので必要とされない。しかしながら、いくつかの水素化脱ロウ触媒供給F−Tワックスは、オキシジェネートの除去のための前水素処理から恩恵を受け得るし、そして一方、他のものは、オキシジェネート処理から恩恵を受け得る。水素異性化又は水素化脱ロウプロセスは、触媒の組み合わせ上で、又は単一触媒上で行われ得る。
【0063】
任意の必要な水素化脱窒又は水素化脱硫の後に、そのようなワックス様フィードからのベースストックの製造のために使用される水素処理は、酸化物担体、例えば、アルミナ、シリカ、シリカ/アルミナ上に、潤滑油水素化分解(LHDC)触媒、例えば、Co、Mo、Ni、W、Mo等を含有する触媒などの、非晶性水素化分解/水素異性化触媒、又は結晶性水素化分解/水素異性化触媒、好ましくはゼオライト触媒を使用し得る。
【0064】
イソパラフィン系炭化水素基油を形成するための本明細書で開示されるn−パラフィンワックス様フィードストックの転化に有用な炭化水素転化触媒は、米国特許第号4,906,350明細書に開示されているような、ZSM−5、ZSM−11、ZSM−23、ZSM−35、ZSM−12、ZSM−38、ZSM−48、オフレタイト、フェリエライト、ゼオライトベータ、ゼオライトシータ、及びゼオライトアルファなどの、ゼオライト触媒である。これらの触媒は、族VIII金属、特にパラジウム又は白金と組み合わせて使用される。族VIII金属は、イオン交換などの、従来技術によってゼオライト触媒中へ組み入れられ得る。
【0065】
一実施形態において、ワックス様フィードストックの転化は、水素の存在下で連続して使用されるPt/ゼオライトベータ及びPt/ZSM−23触媒の組み合わせ上で又はそのような触媒上で行われ得る。別の実施形態において、潤滑油ベースストックの製造プロセスは、Pt/ZSM−35などの、単一触媒上での水素異性化及び脱ロウを含む。その上別の実施形態において、ワックス様フィードは、一段階かそれとも2段階で族VIII金属装荷ZSM−48、好ましくは族VIII貴金属装荷ZSM−48、より好ましくはPt/ZSM48を含む触媒上に供給することができる。どんな場合でも、有用な炭化水素基油生成物が得られ得る。触媒ZSM−48は、米国特許第5,075,269号明細書に記載されている。
【0066】
脱ロウ工程は、必要とされる場合、溶剤脱ロウ、接触脱ロウ若しくは水素化脱ロウプロセスの1つ以上、又は任意の順番でのそのようなプロセスの組み合わせを用いて成し遂げられ得る。
【0067】
溶剤脱ロウにおいて、水素異性化物は、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、ME/MIBKの混合物、又はMEK/トルエンの混合物等の冷却溶剤と接触させられ、ワックス様固体のようなより高い流動点物質を析出させるためにさらに冷却され、ワックス様固体は次に、ラフィネートである溶剤含有潤滑油フラクションから分離される。ラフィネートは、典型的には、より多くのワックス固形分を除去するためにかき取り表面冷却装置でさらに冷却される。水素異性化物が例えば、液体プロパンと混合され、液体プロパンの少なくとも一部が水素異性化物を冷却してワックスを沈澱させるためにフラッシュオフされる、プロパンなどの、低分子量炭化水素を使用する自動冷却脱ロウもまた用いることができる。ワックスは、濾過、膜分離又は遠心分離によってラフィネートから分離される。溶剤は次に、ラフィネートから揮散され、ラフィネートは次に、本発明において有用な好ましいベースストックを生成するために分留される。
【0068】
接触脱ロウにおいて、水素異性化物は、水素異性化物の流動点を下げるのに有効な条件下に好適な脱ロウ触媒の存在下で水素と反応させられる。接触脱ロウはまた、水素異性化物の一部をより低沸点物質に転化し、それは、より重質のベースストックフラクションから分離される。このベースストックフラクションは次に、2つ以上のベースストックへ分留することができる。より低沸点物質の分離は、所望のベースストックへの重質ベースストック物質の分留前に或いは分留中に成し遂げられ得る。
【0069】
水素異性化物の流動点を下げ得る任意の脱ロウ触媒、及び好ましくは水素異性化物から潤滑油ベースストックの高い収率を提供するものが使用され得る。これらには、少なくとも1種の触媒金属成分と組み合わせられた場合に、石油フラクションを脱ロウするために有用として実証されている形状選択的モレキュラーシーブが含まれ、例えば、フェリエライト、モルデナイト、ZSM−5、ZSM−11、ZSM−23、ZSM−35、シータワン若しくはRONとしも知られるZSM−22、及びSAPOとして知られるシリコアルミノホスフェートが含まれる。予想外にも特に有効であることを分かった脱ロウ触媒は、H−モルデナイトと複合体化した、貴金属、好ましくはPtを含む。脱ロウは、固定床、流動床又はスラリー層の触媒で成し遂げられ得る。典型的な脱ロウ条件には、約400〜600°Fの範囲の温度、500〜900psigの圧力、流動式反応器について1500〜3500SCF/BのH
2処理比率及び0.1〜10、好ましくは0.2〜2.0のLHSVが含まれる。脱ロウは、典型的には、650〜750°Fの範囲の初期沸点を有する水素異性化物の40重量%以下、好ましくは30重量%以下を、その初期沸点よりも下で沸騰する物質に転化するために行われる。
【0070】
共ベースストック又は共基油はまた、本明細書及び添付の特許請求の範囲の目的のためにはポリアルファオレフィンと特定されるグループIVベースストックであり得る。
【0071】
ポリアルファオレフィン(PAO)は、一般に、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等の、C
8〜約C
16アルファオレフィンが好ましい、C
2〜約C
32アルファオレフィンを含むが、それらに限定されないポリアルファオレフィンの比較的低分子量の水素化ポリマー又はオリゴマーから典型的になる。好ましいポリアルファオレフィンは、ポリ−1−オクテン、ポリ−1−デセン及びポリ−1−ドデセン並びにそれらの混合物及び混合オレフィン由来ポリオレフィンである。
【0072】
PAO流体は、例えば、三塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素又は三フッ化ホウ素と水、エタノール、プロパノール若しくはブタノールなどのアルコール、酢酸エチル若しくはプロピオン酸エチルなどのエステルとの錯体を含むフリーデル−クラフツ触媒などの重合触媒の存在下でのアルファオレフィンの重合によって便利に製造され得る。例えば、米国特許第4,149,178号明細書又は米国特許第3,382,291号明細書によって開示されている方法が、本明細書で便利に用いられ得る。PAO合成の他の記載は、以下の米国特許に見いだされる:米国特許第3,742,082号明細書;同第3,769,363号明細書;同第3,876,720号明細書;同第4,239,930号明細書;同第4,367,352号明細書;同第4,413,156号明細書;同第4,434,408号明細書;同第4,910,355号明細書;同第4,956,122号明細書;及び同第5,068,487号明細書。C
14〜C
18オレフィンの二量体は、米国特許第4,218,330号明細書に記載されている。
【0073】
本発明において有用なPAOはまた、メタロセン触媒作用によって製造することができる。メタロセン触媒PAO(mPAO)は、メタロセン触媒系によって少なくとも2種以上のアルファオレフィンから製造されたコポリマー、又はメタロセン触媒系によって単一アルファオレフィンフィードから製造されたホモポリマーであることができる。
【0074】
メタロセン触媒は、例えば、メチルアルミノキサン(MAO)又はN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(パーフルオロフェニル)ボレートなどの、非配位アニオン若しくは他の同等の非配位アニオンによって活性化又は促進されるシンプルなメタロセン、置換メタロセン又は架橋メタロセン触媒であることができる。メタロセン触媒作用を用いるmPAO及びmPAOの製造方法は、国際公開第2009/123800号パンフレット、国際公開第2007/011832号パンフレット及び米国特許出願公開第2009/0036725号明細書に記載されている。
【0075】
コポリマーmPAO組成物は、C
3〜C
30範囲の少なくとも2種のアルファオレフィンから製造され、モノマーがポリマー中にランダムに分布している。平均炭素数は少なくとも4.1であることが好ましい。有利には、エチレン及びプロピレンは、フィード中に存在する場合、個別に50重量%未満又は好ましくは組み合わせて50重量%未満の量で存在する。本発明のコポリマーは、アイソタクチック、アタクチック、シンジオタクチックポリマー又は任意の他の形態の適切な立体規則性であることができる。
【0076】
mPAOはまた、C
3〜C
30線状アルファオレフィンから選択される少なくとも2種及び26種以下の異なる線状アルファオレフィンを含む混合フィード線状アルファオレフィン(LAO)から製造することができる。好ましい実施形態において、混合フィードLAOは、アルミニウム触媒又はメタロセン触媒を使用するエチレン成長プロセシングから得られる。成長オレフィンは、大部分はC
6〜C
18LAOを含む。他のプロセスからのLAOもまた使用することができる。
【0077】
ホモポリマーmPAO組成物は、C
3〜C
30範囲、好ましくはC
3〜C
16、最も好ましくはC
3〜C
14又はC
3〜C
12から選ばれる単一アルファオレフィンから製造される。ホモポリマーは、アイソタクチック、アタクチック、シンジオタクチックポリマー又は任意の他の形態の適切な立体規則性であることができる。多くの場合立体規則性は、選ばれる重合触媒及び重合反応条件によって又は選ばれる水素化条件によって注意深く調整することができる。
【0078】
アルファオレフィンは、従来のLAO生産設備からの又は精油所からの任意の成分から選択することができる。それは、ホモポリマーを製造するために単独で又はプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン等の、精油所若しくは化学プラントから入手可能な別のLAOと、又は専用の生産設備から製造された1−ヘキセン若しくは1−オクテンと一緒に使用することができる。別の実施形態において、アルファオレフィンは、フィッシャー−トロプシュ合成から製造されたアルファオレフィンから選択することができる(米国特許第5,382,739号明細書に報告されているように)。例えば、C
3〜C
16アルファオレフィン、より好ましくは線状アルファオレフィンが、ホモポリマーを製造するために好適である。C
4−及びC
14−LAO、C
6−及びC
16−LAO、C
8−、C
10−、C
12−LAO、又はC
8−及びC
14−LAO、C
6−、C
10−、C
14−LAO、C
4−及びC
12−LAO等の、他の組み合わせが、コポリマーを製造するために好適である。
【0079】
C
3〜C
30LAOから選択されるLAOの混合物又はC
3〜C
16LAOから選択される単一LAOを含むフィードは、潤滑油成分での又は機能性流体として使用するのに好適な液体生成物を提供するためにオリゴマー化条件下で活性化メタロセン触媒と接触させられる。本発明はまた、C
3〜C
30範囲の少なくとも2種のアルファオレフィンから製造され、モノマーがポリマー中にランダムに分布しているコポリマー組成物を指向する。語句「少なくとも2種のアルファオレフィン」は、「少なくとも2種の異なるアルファオレフィン」を意味する(同様に「少なくとも3種のアルファオレフィン」は、「少なくとも3種の異なるアルファオレフィン」を意味する、等)と理解されるであろう。
【0080】
得られた生成物は、少なくとも2種のアルファオレフィンを含む本質的にランダムの液体コポリマーである。「本質的にランダムの」とは、生成物がランダムコポリマーであると当業者が考えるであろうことを意味する。同様に、用語「液体」は、周囲温度及び圧力などの、温度及び圧力の通常の条件下で液体を意味すると当業者によって理解されるであろう。
【0081】
本プロセスは、非配位アニオン(NCA)(下の、式2)又はメチルアルミノキサン(MAO)1111(下の、式3)などの活性化剤と一緒にメタロセン化合物(下の、式1)を含む触媒系を用いる:
【化1】
【0082】
用語「触媒系」は、メタロセン/活性化剤ペアなどの、触媒前駆体/活性化剤ペアを意味すると本明細書では定義される。「触媒系」が、活性化前のそのようなペアを記載するために用いられる場合、それは、活性化剤及び、任意選択的に、共活性化剤(トリアルキルアルミニウム化合物などの)と一緒に非活性化触媒(プレ触媒)を意味する。それが活性化後のそのようなペアを記載するために用いられる場合、それは、活性化触媒及び活性化剤又は他の電荷平衡部分を意味する。さらに、この活性化「触媒系」は、共活性化剤及び/又は他の電荷平衡部分を任意選択的に含んでもよい。任意選択的に及び多くの場合に、トリアルキルアルミニウム化合物などの、共活性化剤はまた、不純物捕捉剤として使用される。
【0083】
メタロセンは、上の式1に従った1種以上の化合物から選択される。式1において、Mは、4族遷移金属、好ましくはジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)及びチタン(Ti)から選択され、L1及びL2は、置換されていても非置換であってもよい、及び部分的に水素化されていてもよい、シクロペンタジエニル(「Cp」)、インデニル、及びフルオレニルからら独立して選択される。Aは、存在する場合、好ましい実施形態においてジアルキルシリル、ジアルキルメチル、ジフェニルシリル又はジフェニルメチル、エチレニル(−CH
2−CH
2)、アルキルエチレニル(−CR
2−CR
2)(ここで、アルキルは、独立して、C
1〜C
16アルキルラジカル又はフェニル、トリル、キシリルラジカル等であることができる)から選択される任意選択の架橋基であり、及び式中、2つのX基、Xa及びXbは、ハライド OR(Rは、好ましくはC
1〜C
5直鎖又は分岐鎖アルキル基から選択される、アルキル基である)、水素、C
1〜C
16アルキル又はアリール基、ハロアルキル等から独立して選択される。通常、比較的より高度に置換されたメタロセンが、より高い触媒生産性及びより広い生成物粘度範囲を与え、従って多くの場合より好ましい。
【0084】
ポリアルファオレフィンのいずれも、好ましくは、ASTM D1159によって測定されるように1.8以下、好ましくは1.7以下、好ましくは1.6以下、好ましくは1.5以下、好ましくは1.4以下、好ましくは1.3以下、好ましくは1.2以下、好ましくは1.1以下、好ましくは1.0以下、好ましくは0.5以下、好ましくは0.1以下の臭素価を有する。必要ならば、ポリアルファオレフィンは、低い臭素価を達成するために水素化することができる。
【0085】
本明細書に記載されるmポリアルファオレフィン(mPAO)のいずれも、全て規則正しい1,2−連結に加えて式4
【化2】
(式中、j、k及びmはそれぞれ、プロトンNMRによって測定されるように、独立して、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21又は22であり、nは、1〜350(好ましくは1〜300、好ましくは5〜50)の整数である)
で表されるモノマー単位を有し得る。
【0086】
本明細書に記載されるmポリアルファオレフィン(mPAO)のいずれも、好ましくは、100,000以下、好ましくは100〜80,000、好ましくは250〜60,000、好ましくは280〜50,000、好ましくは336〜40,000g/モルのMw(重量平均分子量)を有する。
【0087】
本明細書に記載されるmポリアルファオレフィン(mPAO)のいずれも、好ましくは、50,000以下、好ましくは200〜40,000、好ましくは250〜30,000、好ましくは500〜20,000g/モルのMn(数平均分子量)を有する。
【0088】
本明細書に記載されるmポリアルファオレフィン(mPAO)のいずれも、好ましくは、1超及び5未満、好ましくは4未満、好ましくは3未満、好ましくは2.5未満の分子量分布(MWD−Mw/Mn)を有する。mPAOのMWDは、常に流体粘度の関数である。或いは、本明細書に記載されるポリアルファオレフィンのいずれも、好ましくは、流体粘度に応じて、1〜2.5、或いは1〜3.5のMw/Mnを有する。
【0089】
重量平均MW対数平均MWの比(=Mw/Mn)として定義される、分子量分布(MWD)は、p.115〜144、第6章、The Molecular Weight of Polymers in 「Principles of Polymer Systems」(Ferdinand Rodriguesによる、McGraw−Hill Book,1970)に記載されているように、ポリスチレン標準を使用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定することができる。GPC溶媒は、30℃のカラム温度、1ml/分の流量、及び1重量%の試料濃度で、HPLC Gradeテトラヒドロフラン(禁止剤なし)であり、カラムセットは、Phenogel 500 A,Linear,10E6Aである。
【0090】
本明細書に記載されるmポリアルファオレフィン(mPAO)のいずれも、実質的に少ない部分の高末尾の分子量分布を有し得る。好ましくは、mPAOは、45,000ダルトン超の分子量を有する5.0重量%以下のポリマーを有する。さらに又は或いは、45,000ダルトン超の分子量を有するmPAOの量は、1.5重量%以下、又は0.10重量%以下である。さらに又は或いは、60,000ダルトン超の分子量を有するmPAOの量は、0.5重量%以下、又は0.20重量%以下、又は0.1重量%以下である。45,000〜60,000の分子量における質量分率は、上に記載されたような、GPCによって測定することができる。
【0091】
本発明の好ましい実施形態において、本明細書に記載されるいかなるPAOも、0℃未満(ASTM D97によって測定されるような)、好ましくは−10℃未満、好ましくは20℃未満、好ましくは−25℃未満、好ましくは−30℃未満、好ましくは−35℃未満、好ましくは−50℃未満、好ましくは−10℃〜−80℃、好ましくは−15℃〜−70℃の流動点を有し得る。
【0092】
メタロセン触媒作用を用いて製造されたポリアルファオレフィンは、ASTM D445によって測定されるように約1.5〜約5,000cSt、好ましくは約2〜約3,000cSt、好ましくは約3〜約1,000cSt、より好ましくは約29cSt〜約1,000cSt、その上より好ましくは約40〜約500cStの100℃での動粘度を有し得る。
【0093】
本発明において有用なPAOには、米国特許第4,827,064号明細書及び米国特許第4,827,073号明細書に開示されているプロセスによって製造されるものが含まれる。低原子価状態クロム触媒の使用によって製造される、それらのPAO材料は、潤滑油ベースストックとして、及びより高い粘度等級で、VI向上剤として有用であるための非常に望ましい特性をそれらに与える非常に高い粘度指数で特徴付けられるポリマーのオレフィンオリゴマーである。それらは、高粘度指数PAO又はHVI−PAOと言われる。比較的低分子量の高粘度PAO材料は、潤滑油ベースストックとして有用であることが分かったが、典型的には100cSt以上、例えば100〜1,000cStの範囲の粘度の、より高粘度のPAOは、従来のPAO並びに他の合成油及び鉱油由来のベースストック用の粘度指数向上剤として非常に有効であることが分かった。
【0094】
これらの高粘度PAO材料の様々な変性及び変形はまた、言及される以下の米国特許:米国特許第4,990,709号明細書;同第5,254,274号明細書;同第5,132,478号明細書;同第4,912,272号明細書;同第5,264,642号明細書;同第5,243,114号明細書;同第5,208,403号明細書;同第5,057,235号明細書;同第5,104,579号明細書;同第4,943,383号明細書;同第4,906,799号明細書に記載されている。これらのオリゴマーは、低原子価状態の担持金属である金属オリゴマー化触媒の存在下での1−オレフィンのオリゴマー化によって製造されると手短に要約することができる。好ましい触媒は、還元剤として一酸化炭素を使用するクロムの還元によって調製される、シリカ担体上の低原子価状態クロムを含む。オリゴマー化は、米国特許第4,827,064号明細書及び同第4,827,073号明細書に記載されているように、結果として生じるオリゴマーについての所望の粘度に従って選択される温度で実施される。より高粘度の材料は、約90℃よりも下のオリゴマー化温度がより高分子量のオリゴマーを製造するために用いられる米国特許第5,012,020号明細書及び米国特許第5,146,021号明細書に記載されているように製造され得る。全ての場合に、オリゴマーは、残存不飽和を低減するために必要な場合に水素化後に、0.19未満の分岐指数(米国特許第4,827,064号明細書及び同第4,827,073号明細書に定義されているような)を有する。概して、HVI−PAOは、普通、約12〜5,000cStの範囲の粘度を有する。
【0095】
さらに、HVI−PAOは、一般に、下記の1つ以上で特徴付けることができる:0.19未満の分岐比、300〜45,000の重量平均分子量、300〜18,000の数平均分子量、1〜5の分子量分布を有するC
30〜C
1300炭化水素。特に好ましいHVI−PAOは、29〜5000mm
2/sの範囲の100℃粘度の流体である。別の実施形態において、100℃で測定されるHVI−PAOオリゴマーの粘度は、3mm
2/s〜15,000mm
2/sの範囲である。さらに、3mm
2/s〜5000mm
2/sの100℃での粘度の流体は、130超のASTM方法D2270によって計算されるVIを有する。通常、それらは、130〜350の範囲である。流体は、全て、−15℃よりも下の、低い流動点を有する。
【0096】
HVI−PAOは、さらに、C
6〜C
20 1−アルケンからなる群から選び取られる、単独で或いは混合物形態で、1−アルケンでできているポリマー又はオリゴマーを含む炭化水素組成物として特徴付けることができる。フィードの例は、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン等、又はC
6〜C
14 1−アルケンの混合物若しくはC
6〜C
20 1−アルケン、C
6及びC
12 1−アルケン、C
6及びC
14 1−アルケン、C
6及びC
16 1−アルケン、C
6及びC
18 1−アルケン、C
8及びC
10 1−アルケン、C
8及びC
12 1−アルケン、C
8、C
10及びC
12 1−アルケン、並びに他の適切な組み合わせの混合物であり得る。
【0097】
潤滑油生成物は、通常、それらが重合反応から製造されるか、又は出発原料から持ち込まれる場合、600°Fよりも下で沸騰する、又はC
20未満の炭素数のものなどの、いかなる低分子量組成物をも除去するために蒸留される。
【0098】
重合又はオリゴマー化プロセスから直接製造された潤滑油流体は、通常、不飽和二重結合を有するか、又はオレフィン分子構造を有する。二重結合又は不飽和又はオレフィン成分の量は、幾つかの方法、例えば臭素価(ASTM D1159)、臭素指数(ASTM D2710)又はNMR、IR等の他の好適な分析方法によって測定することができる。二重結合の量又はオレフィン成分の量は、幾つかの因子(重合度、重合プロセスの間中存在する水素の量、及び重合プロセスの停止反応段階に関与する他の促進剤、又は本プロセスにおいて存在する他の試剤の量)に依存する。通常、二重結合の量又はオレフィン成分の量は、より高い重合度、重合プロセスにおいて存在するより高い量の水素ガス、又は停止反応段階に関与するより高い量の促進剤によって減少する。
【0099】
他のPAOと同様に、HVI−PAO流体の酸化安定性及び光又はUV安定性は、不飽和二重結合の量又はオレフィン含有量が減少した場合に向上する。それ故、ポリマーが高い不飽和度を有する場合、ポリマーをさらに水素処理することが必要である。通常、ASTM D1159によって測定されるような、5未満の臭素価の流体は、高品質ベースストック用途向けに好適である。勿論、臭素価が低ければ低いほど、潤滑油品質はより良好である。3又は2未満の臭素価の流体が一般的である。最も好ましい範囲は、1未満又は0.1未満である。水素処理して不飽和度を低下させるための方法は、文献(米国特許第4,827,073号明細書、実施例16)において周知である。いくつかのHVI−PAO生成物において、重合から直接製造された流体は、既に、100℃で150cSt超の粘度のものなどの、非常に低い不飽和度を有する。それらは、5未満又は2よりも下さえの臭素価を有する。これらの場合には、それは、水素処理なしの現状のまま使用することができるか、又はそれは、ベースストック特性をさらに改善するために水素処理することができる。
【0100】
PAO流体は、少なくとも29mm
2/s、好ましくは29〜1000mm
2/s、より好ましくは29〜600mm
2/s、さらにより好ましくは29〜300mm
2/s、最も好ましくは29〜150mm
2/sの範囲の100℃での動粘度のPAOである高動粘度流体であり得る。
【0101】
PAOを論じるときに、例えばPAO 150のようなPAOの呼称は、名目上150mm
2/sの100℃での動粘度のPAOを意味する。
【0102】
そのようなより高動粘度PAO流体は、低動粘度PAO流体の製造に関して前に列挙されたのと同じ技術を用いて製造することができる。好ましくは、高動粘度PAO流体は、メタロセン触媒作用又は米国特許第4,827,064号明細書若しくは米国特許第4,827,073号明細書に記載されている方法を用いて製造される。
【0103】
清浄剤
清浄剤は、1種以上の金属スルホネート及び/又は金属フェネートと1種以上の金属サリチレートとの混合物である。金属は、任意のアルカリ又はアルカリ土類金属;例えば、カルシウム、バリウム、ナトリウム、リチウム、カリウム、マグネシウム、より好ましくはカルシウム、バリウム及びマグネシウムである。混合物に使用される金属塩のそれぞれは、混合物中の他の金属塩と同じ又は実質的に同じTBNを有することが本潤滑油の特徴である;したがって、混合物は、1種以上の金属サリチレートと組み合わせられた1種以上の金属スルホネート及び/又は金属フェネートを含むことができ、ここで、1種以上の金属塩のそれぞれは低TBN清浄剤であるか、又はそれぞれは中位TBN清浄剤であるか若しくはそれぞれは高TBN清浄剤である。好ましくは、それぞれは低TBN清浄剤であり、各金属清浄剤は、約100よりも下の同じ又は実質的に同じ類似のTBNを有する。本明細書及び特許請求の範囲の目的のためには、金属塩について、低TBNとは、100未満のTBNを意味し;中位TBNとは、100〜250未満のTBNを意味し;高TBNとは、約250以上のTBNを意味する。同じ又は実質的に類似のTBNとは、所与のTBNカテゴリー内;例えば、低い、中位の及び高いにもかかわらず、塩のTBNが同じTBNカテゴリー内にどうしても入らないが、絶対的には互いに近いことを意味する。したがって、低TBNのスルホネート及び/又はフェネートとサリチレートとの混合物は、100未満のTBNの塩で構成されるのみならず、各塩は、混合物;例えば、TBN64のサリチレートとペアになったTBN60のスルホネート、又はTBN64のサリチレートとペアになったTBN65のフェネート中の他の塩のTBNと実質的に同じものを有するであろう。したがって、個別の塩は、適用できるTBNカテゴリーの極端な反対端での、つまり互いに実質的に異なるTBNを持たないであろう。
【0104】
塩のTBNは、約15%以下、好ましくは約12%以下、より好ましくは約10%以下又はそれ未満だけ異なるであろう。
【0105】
1種以上の金属スルホネート及び/又は金属フェネート、並びに1種以上の金属サリチレートが、例えば、5:95〜95:5、好ましくは10:90〜90:10、より好ましくは20:80〜80:20の部による比で、混合物として清浄剤において利用される。
【0106】
清浄剤の混合物は、少なくとも0.65重量%の硫酸塩灰分含有量の潤滑油を達成するのに十分な(下に列挙される)他の金属塩又は金属塩の群と組み合わせた量で使用される、約150超〜300又はそれ以上、好ましくは約160〜300の高いTBNを有する1種以上の金属スルホネート、サリチレート、フェネート及びそれらの混合物からなる群から選択される第1の金属塩又は金属塩の群と、約50超〜150、好ましくは約60〜120の中位TBNを有する1種以上の金属サリチレート、金属スルホネート、金属フェネート及びそれらの混合物からなる群から選択される第2の金属塩又は金属塩の群と、約10〜50、好ましくは約20〜40のTBN、約0.7容積%以上(活性成分)、好ましくは約0.9容積%以上(活性成分)、最も好ましくは約1容積%以上(活性成分)である中位プラス中性/低TBN清浄剤の総量を有する、中性又は低TBNと特定される1種以上の金属スルホネート、金属サリチレート、金属フェネート及びそれらの混合物からなる群から選択される第3の金属塩又は金属塩の群であって、中位又は低/中性TBN清浄剤の少なくとも1種が金属サリチレートであり、好ましくは中位TBN清浄剤の少なくとも1種が金属サリチレートである、第3の金属塩又は金属塩の群とを含む。高TBN清浄剤の総量は、約0.3容積%以上(活性成分)、好ましくは約0.4容積%以上(活性成分)、最も好ましくは約0.5容積%以上(活性成分)である。混合物は、中位又は中性サリチレートが本質的な成分である状態で、少なくとも2種の異なるタイプの塩を含有する。高TBN清浄剤対中位プラス中性/低TBN清浄剤の容積比(活性成分を基準とする)は、約0.15〜3.5、好ましくは0.2〜2、最も好ましくは約0.25〜1の範囲にある。
【0107】
清浄剤の混合物は、清浄剤混合物中の活性成分を基準として約10容積%以下の量で、好ましくは活性成分を基準として約8容積%以下、より好ましくは清浄剤混合物中の活性成分を基準として6容積%、さらにより好ましくは清浄剤混合物中の活性成分を基準として、約1.5〜5.0容積%、最も好ましくは清浄剤混合物中の活性成分を基準として約0.3容積%〜3容積%の量で潤滑油調合物に添加される。好ましくは、全TBNの使用される金属サリチレートの総量は、金属サリチレートの活性成分を基準として、0.5容積%〜4.5容積%の範囲にある。
【0108】
船舶用潤滑油並びに製造及び使用方法は、追加の性能添加剤を含有するエンジン潤滑油を、その潤滑油がモリジチオカルバメート摩擦調整剤及び亜鉛ジチオカルバメート耐摩耗添加剤を含むという条件で使用することができる。
【0109】
示されたように、用いられる清浄剤は、単独で或いは様々な組み合わせで使用されるアルカリ及び/又はアルカリ土類金属、好ましくはアルカリ土類金属、より好ましくはカルシウム、サリチレート、フェネート、スルホネート、カルボキシレートである。これらの清浄剤は、低い、中位の又は高いTBN清浄剤、すなわち、約5から500mg KOH/gほどに高いまで、好ましくは約5〜約400mg KOH/gの範囲の塩基価の清浄剤であり得る。
【0110】
他の潤滑油添加剤
本発明において有用な調合潤滑油は、分散剤、追加の他の清浄剤、腐食防止剤、錆止め剤、金属不活性化剤、他の摩耗防止及び/又は極圧添加剤、抗けいれん剤、ワックス改質剤、粘度指数向上剤、粘度調整剤、フルイド−ロス添加剤、シール適合性剤、他の摩擦調整剤、潤滑剤、汚れ防止剤、発色剤、消泡剤、乳化破壊剤、高密度化剤、湿潤剤、ゲル化剤、粘着剤、着色剤等を含むが、それらに限定されない、他の一般に使用される潤滑油性能添加剤の1種以上をさらに含有し得る。多くの一般に使用される添加剤のレビューについては、Klamann in Lubricants and Related Products,Verlag Chemie,Deerfield Beach,FL;ISBN 0−89573−177−0を参照されたい。Noyes Data Corporation of Parkridge,NJ(1973)によって出版された、M.W.Ranneyによる「Lubricant Additives」もまた言及される。
【0111】
潤滑油組成物中に本発明と組み合わせて使用される性能添加剤のタイプ及び量は、例示として本明細書に示される実施例によって限定されない。
【0112】
増粘剤
増粘剤(粘度指数調整剤、及びVI向上剤としても知られる)は、高温及び低温操作性を潤滑油に提供する。これらの添加剤は、低温での粘度に限定された影響を及ぼしながら、フィルム厚さを増やす高温での油組成物の粘度を増加させる。
【0113】
好適な増粘剤には、高分子量炭化水素、ポリエステル並びに粘度指数向上剤及び分散剤の両方として機能する粘度指数向上剤分散剤が含まれる。これらのポリマーの典型的な分子量は、約1,000〜1,000,000、より典型的には約2,000〜500,000、さらにより典型的には約2,500〜200,000である。
【0114】
好適な増粘剤の例は、メタクリレート、ブタジエン、オレフィン、又はアルキル化スチレンのポリマー及びコポリマーである。ポリイソブチレンが、一般に使用される増粘剤である。別の好適な粘度指数向上剤は、ポリメタクリレート(例えば、様々な鎖長アルキルメタクリレートのコポリマー)であり、それのいくつかの調合物はまた、流動点降下剤として役立つ。他の好適な粘度指数向上剤には、エチレンとプロピレンとのコポリマー、スチレンとイソプレンとの水素化ブロックコポリマー、及びポリアクリレート(例えば、様々な鎖長アクリレートのコポリマー)が含まれる。具体的な例としては、50,000〜200,000分子量のスチレン−イソプレン又はスチレン−ブタジエンベースのポリマーが挙げられる。
【0115】
粘度調整剤の量は、有効成分を基準として及び使用される具体的な粘度調整剤に応じてゼロ〜10重量%、好ましくはゼロ〜6重量%、より好ましくはゼロ〜4重量%の範囲であり得る。
【0116】
酸化防止剤
典型的な酸化防止剤には、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤及び油溶性銅錯体が含まれる。
【0117】
フェノール系酸化防止剤には、硫化及び非硫化フェノール系酸化防止剤が含まれる。本明細書で用いられる用語「フェノール型」又は「フェノール系酸化防止剤」には、それ自体単核、例えば、ベンジル、又は多核、例えばナフチル及びスピロ芳香族化合物であってもよい芳香環に結合した1個又は2個以上のヒドロキシル基を有する化合物が含まれる。したがって、「フェノール型」には、フェノールそれ自体、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ナフトール等、並びにそれらのアルキル又はアルケニル及び硫化アルキル又はアルケニル誘導体が含まれ、ビスフェノール型化合物には、アルキレン架橋 硫黄架橋又は酸素架橋によって連結されたそのようなビフェノール化合物が含まれる。アルキルフェノールには、モノ及びポリアルキル又はアルケニルフェノール(アルキル若しくはアルケニル基は、約3〜100個の炭素、好ましくは4〜50個の炭素を含有する)及びそれらの硫化誘導体が含まれ、芳香環に存在するアルキル若しくはアルケニル基の数は、1から芳香環に結合したヒドロキシル基の数をカウントした後に残る芳香環の利用可能な不充足原子価以下までの範囲である。
【0118】
一般的には、それ故、フェノール系酸化防止剤は、一般式:
(R)
x−Ar−(OH)
y
(ここで、Arは、
【化3】
からなる群から選択され、
式中、Rは、C
3〜C
100アルキル若しくはアルケニル基、硫黄置換アルキル若しくはアルケニル基、好ましくはC
4〜C
50アルキル若しくはアルケニル基又は硫黄置換アルキル若しくはアルケニル基、より好ましくはC
3〜C
100アルキル又は硫黄置換アルキル基、最も好ましくはC
4〜C
50アルキル基であり、R
gは、C
1〜C
100アルキレン又は硫黄置換アルキレン基、好ましくはC
2〜C
50アルキレン又は硫黄置換アルキレン基、より好ましくはC
2〜C
2アルキレン又は硫黄置換アルキレン基であり、yは、少なくとも1からArの利用可能な原子価以下までであり、xは、0からAr−yの利用可能な原子価以下までの範囲であり、zは1〜10の範囲であり、nは0〜20の範囲であり、mは0〜4であり、pは0又は1であり、好ましくはyは1〜3の範囲であり、xは0〜3の範囲であり、zは1〜4の範囲であり、nは0〜5の範囲であり、pは0である)
で表され得る。
【0119】
好ましいフェノール系酸化防止剤化合物は、立体障害のあるヒドロキシル基を含有するヒンダードフェノール化合物であり、これらには、ヒドロキシル基が互いにo位又はp位にあるジヒドロキシアリール化合物のそれらの誘導体が含まれる。典型的なフェノール系酸化防止剤には、C
1+アルキル基で置換されたヒンダードフェノール及びこれらのヒンダードフェノールのアルキレン連結誘導体が含まれる。このタイプのフェノール系物質の例は、2−t−ブチル−4−ヘプチルフェノール;2−t−ブチル−4−オクチルフェノール;2−t−ブチル−4−ドデシルフェノール;2,6−ジ−t−ブチル−4−ヘプチルフェノール;2,6−ジ−t−ブチル−4−ドデシルフェノール;2−メチル−6−t−ブチル−4−ヘプチルフェノール;2−メチル−6−t−ブチル−4−ドデシルフェノール;2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール;2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール;及び2,6−ジ−t−ブチル−4−アルコキシフェノール。
【0120】
フェノール型酸化防止剤は、潤滑油業界で周知であり、市販例、例えばEthanox(登録商標)4710、Irganox(登録商標)1076、Irganox(登録商標)L1035、Irganox(登録商標)1010、Irganox(登録商標)L109、Irganox(登録商標)L118、Irganox(登録商標)L135等は、当業者におなじみである。上記は、使用することができるフェノール系酸化防止剤のタイプに関する限定ではなく、例示の目的で提示されるにすぎない。
【0121】
芳香族アミン酸化防止剤には、次の分子構造:
【化4】
(式中、R
zは、水素又はC
1〜C
14線状又はC
3〜C
14分岐アルキル基、好ましくはC
1〜C
10線状又はC
3〜C
10分岐アルキル基、より好ましくは線状又は分岐C
6〜C
8であり、nは、1〜5の範囲の整数、好ましくは1である)
によって表されるフェニル−α−ナフチルアミンが含まれる。特定例はIrganox L06である。
【0122】
他の芳香族アミン酸化防止剤には、式R
8R
9R
10N[ここで、R
8は、脂肪族、芳香族又は置換芳香族基であり、R
9は、芳香族又は置換芳香族基であり、R
10は、H、アルキル、アリール又はR
11S(O)
xR
12(ここで、R
11は、アルキレン、アルケニレン、又はアラルキレン基であり、R
12は、高級アルキル基、又はアルケニル、アリール、又はアルカリール基であり、xは、0、1又は2である)である]の芳香族モノアミンなどの他のアルキル化及び非アルキル化芳香族アミンが含まれる。脂肪族基R
8は、1〜約20個の炭素原子を含有し得るし、好ましくは約6〜12個の炭素原子を含有する。脂肪族基は、飽和脂肪族基である。好ましくは、R
8及びR
9は両方とも、芳香族又は置換芳香族基であり、芳香族基は、ナフチルなどの縮合環芳香族基であってもよい。芳香族基R
8及びR
9は、Sなどの他の基と結合してもよい。
【0123】
典型的な芳香族アミン酸化防止剤は、少なくとも6個の炭素原子のアルキル置換基を有する。脂肪族基の例としては、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、及びデシルが挙げられる。一般に、脂肪族基は、約14個超の炭素原子を含有しない。存在してもよい、そのような他の追加のアミン酸化防止剤の一般的なタイプには、ジフェニルアミン、フェノチアジン、イミドジベンジル及びジフェニルフェニレンジアミンが含まれる。そのような他の追加の芳香族アミンの2種以上の混合物もまた存在してもよい。ポリマーアミン酸化防止剤もまた使用することができる。
【0124】
潤滑油組成物に使用される、及び必要なフェニル−α−ナフチルアミンに加えて存在してもよい別のクラスの酸化防止剤は、油溶性銅化合物である。任意の好適な油溶性銅化合物が、潤滑油に溶け込んでもよい。好適な銅酸化防止剤の例としては、銅ジヒドロカルビルチオホスフェート又はジチオホスフェート及びカルボン酸(天然由来の又は合成の)の銅塩が挙げられる。他の好適な銅塩には、銅ジチオカルバメート、スルホネート、フェネート、及びアセチルアセトネートが含まれる。アルケニルコハク酸又は酸無水物に由来する塩基性の、中性の、又は酸性の銅Cu(I)及び又はCu(II)塩が、特に有用であることが知られている。
【0125】
そのような酸化防止剤は、(到着ベースで)約0.10〜5重量%、好ましくは約0.30〜3重量%の量で使用され得る。
【0126】
分散剤
エンジン運転中に、油不溶性の酸化副生成物が生成する。分散剤は、これらの副生成物を溶液に保ち、こうして金属表面上のそれらの堆積を減らすのに役立つ。分散剤は、事実上、無灰であっても灰形成であってもよい。好ましくは、分散剤は無灰である。いわゆる無灰分散剤は、燃焼時に灰を実質的に形成しない有機材料である。例えば、金属を含有しない又はホウ素入り(borated)金属を含まない分散剤が無灰と考えられる。対照的に、上に論じられた金属含有清浄剤は、燃焼時に灰を形成する。
【0127】
好適な分散剤は、典型的には、比較的高分子量の炭化水素鎖に結合した極性基を含有する。極性基は、典型的には、窒素、酸素、又はリンの少なくとも1種の元素を含有する。典型的な炭化水素鎖は、50〜400個の炭素原子を含有する。
【0128】
特に有用なクラスの分散剤は、長鎖置換アルケニルコハク酸化合物、通常、置換コハク酸無水物と、ポリヒドロキシ又はポリアミノ化合物との反応によって典型的には製造される、アルケニルコハク酸誘導体である。油への溶解性を付与する分子の親油性部分を構成する長鎖基は、普通は、ポリイソブチレン基である。このタイプの分散剤の多くの例が、商業的に及び文献において周知である。
【0129】
ヒドロカルビル置換コハク酸化合物は、人気のある分散剤である。特に、好ましくは少なくとも50個の炭素原子を炭化水素置換基中に有する炭化水素置換コハク酸化合物と、少なくとも1当量のアルキレンアミンとの反応によって調製されるスクシンイミド、コハク酸エステル、又はコハク酸エステルアミドが特に有用である。
【0130】
スクシンイミドは、アルケニルコハク酸無水物とアミンとの縮合反応によって形成される。モル比は、ポリアミンに応じて変わることができる。例えば、アルケニルコハク酸無水物対TEPAのモル比は、約1:1から約5:1まで変わることができる。
【0131】
コハク酸エステルは、アルケニルコハク酸無水物とアルコール又はポリオールとの縮合反応によって形成される。モル比は、使用されるアルコール又はポリオールに応じて変わることができる。例えば、アルケニルコハク酸無水物とペンタエリスリトールとの縮合生成物は、有用な分散剤である。
【0132】
コハク酸エステルアミドは、アルケニルコハク酸無水物とアルカノールアミンとの縮合反応によって形成される。例えば、好適なアルカノールアミンには、エトキシル化ポリアルキルポリアミン、プロポキシル化ポリアルキルポリアミン及びポリエチレンポリアミンなどのポリアルケニルポリアミンが含まれる。一例は、ポリプロポキシル化ヘキサメチレンジアミンである。
【0133】
アルケニルコハク酸無水物の分子量は、典型的には、800〜2,500の範囲であろう。上記の生成物は、様々な試薬、例えば硫黄、酸素、ホルムアルデヒド、オレイン酸などのカルボン酸、及びホウ酸エステル又は高ホウ素入り分散剤などのホウ素化合物などと後反応させることができる。分散剤は、分散剤反応生成物の1モル当たり約0.1〜約5モルのホウ素でホウ素入りであることができる。
【0134】
マンニッヒ(Mannich)塩基分散剤は、アルキルフェノールと、ホルムアルデヒドと、アミンとの反応から製造される。オレイン酸及びスルホン酸などの、加工助剤及び触媒がまた、反応混合物の一部であることができる。アルキルフェノールの分子量は、800〜2,500の範囲である。
【0135】
典型的な高分子量の脂肪族酸変性マンニッヒ縮合生成物は、高分子量アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物又はHN(R)
2基含有反応剤から調製することができる。
【0136】
高分子量アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物の例は、ポリプロピルフェノール、ポリブチルフェノール、及び他のポリアルキルフェノールである。これらのポリアルキルフェノールは、平均600〜100,000分子量を有するフェノールのベンゼン環上にアルキル置換基を与えるための高分子量ポリプロピレン、ポリブチレン、及び他のポリアルキレン化合物でのフェノールの、BF
3などの、アルキル化触媒の存在下での、アルキル化によって得ることができる。
【0137】
HN(R)
2基含有反応剤の例は、アルキレンポリアミン、特にポリエチレンポリアミンである。マンニッヒ縮合生成物の調製に使用するのに好適な少なくとも1個のHN(R)
2基を含有する他の代表的な有機化合物は、周知であり、モノアミノ及びジアミノアルカン並びにそれらの置換類似体、例えば、エチルアミン及びジエタノールアミン;芳香族ジアミン、例えば、フェニレンジアミン、ジアミノナフタレン;複素環アミン、例えば、モルホリン、ピロール、ピロリジン、イミダゾール、イミダゾリジン、及びピペリジン;メラミン及びそれらの置換類似体を含む。
【0138】
アルキレンポリアミン反応剤の例としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキダエチレンヘプタアミン、ヘプタエチレンオクタアミン、オクタエチレンノナアミン、ノナエチレンデカミン、及びデカエチレンウンデカミン並びに前述の、式H
2N−(Z−NH−)
nH(Zは、二価エチレンであり、nは、前述の式の1〜10である)における、アルキレンポリアミンに相当する窒素含有量を有するそのようなアミンの混合物が挙げられる。プロピレンジアミン及びジ−、トリ−、テトラ−、ペンタプロピレントリ−、テトラ、ペンタ−及びヘキサアミンなどの相当するプロピレンポリアミンもまた好適な反応剤である。アルキレンポリアミンは、通常、アンモニアと、ジクロロアルカンなどの、ジハロアルカンとの反応によって得られる。したがって、2〜11モルのアンモニアと、2〜6個の炭素原子及び異なる炭素上に塩素を有する1〜10モルのジクロロアルカンとの反応から得られるアルキレンポリアミンが、好適なアルキレンポリアミン反応剤である。
【0139】
本発明に有用な高分子生成物の調製に有用なアルデヒド反応剤には、ホルムアルデヒド(また、パラホルムアルデヒド及びホルマリンとして)、アセトアルデヒド及びアルドール(β−ヒドロキシブチルアルデヒド)などの脂肪族アルデヒドが含まれる。ホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド生成反応剤が好ましい。
【0140】
好ましい分散剤には、モノ−スクシンイミド、ビス−スクシンイミド、及び/又はモノ−スクシンイミドとビス−スクシンイミドとの混合物からのそれらの誘導体などのホウ素入り及び非ホウ素入りスクシンイミドが含まれ、ここで、ヒドロカルビルスクシンイミドは、約500〜約5000のMnを有するポリイソブチレンなどのヒドロカルビレン又はそのようなヒドロカルビレンの混合物から誘導される。他の好ましい分散剤には、コハク酸エステル及びアミド、アルキルフェノールポリアミン結合マンニッヒ付加体、それらのキャップされた誘導体、並びに他の関連成分が含まれる。そのような添加剤は、全潤滑油の重量を基準として(到着ベースで)約0.1〜20重量%、好ましくは約0.1〜8重量%、より好ましくは約1〜6重量%の量で使用され得る。
【0141】
流動点降下剤
従来型流動点降下剤(潤滑油流動性向上剤としても知られる)がまた存在してもよい。流動点降下剤は、流体が流れ得る又は注ぐことができる最低温度を下げるために添加され得る。好適な流動点降下剤の例としては、アルキル化ナフタレン ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアリールアミド、ハロパラフィンワックスと芳香族化合物との縮合生成物、ビニルカルボキシレートポリマー、及びジアルキルフマレートと、脂肪酸のビニルエステルとアリルビニルエーテルとのターポリマーが挙げられる。
【0142】
そのような添加剤は、到着ベースで約0.0〜0.5重量%、好ましくは約0〜0.3重量%、より好ましくは約0.001〜0.1重量%の量で使用され得る。
【0143】
腐食防止剤/金属不活性化剤
腐食防止剤は、潤滑油組成物と接触している金属部品の劣化を低減するために使用される。好適な腐食防止剤には、アリールチアジン、アルキル置換ジメルカプトチオジアゾール チアジアゾール及びそれらの混合物が含まれる。
【0144】
そのような添加剤は、潤滑油組成物の総重量を基準として(到着ベースで)約0.01〜5重量%、好ましくは約0.01〜1.5重量%、より好ましくは約0.01〜0.2重量%、さらにより好ましくは約0.01〜0.1重量%の量で使用され得る。
【0145】
シール適合性添加剤
シール適合性剤は、流体に化学反応又はエラストマーに物理的変化を引き起こすことによってエラストマーのシールを膨張させるのに役立つ。潤滑油用の好適なシール適合性剤には、有機ホスフェート、芳香族エステル、芳香族炭化水素、エステル(例えば、ブチルベンジルフタレート)、及びポリブテニルコハク酸無水物が含まれる。そのような添加剤は、到着ベースで約0.01〜3重量%、好ましくは約0.01〜2重量%の量で使用され得る。
【0146】
泡立ち防止剤
泡立ち防止剤は、有利に、潤滑油組成物に添加され得る。これらの試剤は、安定した泡の形成を妨害する。シリコーン及び有機ポリマーが、典型的な泡立ち防止剤である。例えば、シリコーンオイル又はポリジメチルシロキサンなどの、ポリシロキサンが消泡特性を提供する。泡立ち防止剤は、商業的に入手可能であり、乳化破壊剤などの他の添加剤と一緒に慣習の少量で使用され得;通常、合わせたこれらの添加剤の量は、潤滑油組成物の総重量を基準として(到着ベースで)1パーセント未満、好ましくは0.001〜約0.5重量%、より好ましくは約0.001〜約0.2重量%、さらにより好ましくは約0.0001〜0.15重量%である。
【0147】
インヒビタ及び防錆添加剤
防錆添加剤(つまり腐食防止剤)は、潤滑される金属表面を、水又は他の汚染物質による攻撃から保護する添加剤である。一タイプの防錆添加剤は、優先的に金属表面をぬらして、油のフィルムでそれを保護する極性化合物である。別のタイプの防錆添加剤は、油のみが表面に触れるように油中水エマルジョン中に水を組み込むことによって水を吸収する。その上別のタイプの防錆添加剤は、金属に化学的に固着して非反応性表面を生成する。好適な添加剤の例としては、亜鉛ジチオホスフェート、金属フェノレート、塩基性金属スルホネート、脂肪酸及びアミンが挙げられる。そのような添加剤は、到着ベースで約0.01〜5重量%、好ましくは約0.01〜1.5重量%の量で使用され得る。
【0148】
摩耗防止添加剤がまた、有利に存在することができきる。摩耗防止添加剤は、金属ジチオホスフェート、金属ジチオカルバメート(好ましくは亜鉛ジチオカルバメート)、金属ジアルキルジチオホスフェート、金属ザンテージ(metal xanthage)(ここで、金属は、亜鉛又はモリブデンであり得る)で例示される。トリクレジルホスフェートは、別のタイプの耐摩耗添加剤である。そのような耐摩耗添加剤は、(到着ベースで)約0.05〜1.5重量%、好ましくは約0.1〜1.0重量%、より好ましくは約0.2〜0.5重量%の量で存在することができる。
【実施例】
【0149】
比較例及び実施例
一連の船舶用潤滑油を、ベースストック組成物タイプ(グループI、グループIII)及び粘度、共ベース組成物タイプ(グループV PMA、グループI、グループIV PAO、グループV PIB)及び粘度、摩擦調整剤タイプ(発明モリブデンジチオカルバメート)並びに耐摩耗添加剤タイプ(比較ZDDP及び発明亜鉛ジチオカルバメート)の影響に関して評価した。本発明船舶用潤滑油は、摩擦調整剤及び耐摩耗添加剤と組み合わせて低粘度グループIIIベースストックと高粘度共ベースストックとを含む二峰性ベースストックを利用した。共ベースストックは、グループIベースストック、グループIVベースストック、グループVベースストック又はそれらの組み合わせであった。
【0150】
調合物は、調合物中の種々のベースストック、共ベースストック、摩擦調整剤及び耐摩耗添加剤に加えて、「調合物の残り」として図に示される、同じタイプの他の潤滑油添加剤をまた全て含有した。下表は、比較及び本発明船舶用潤滑油調合物に使用された成分のまとめを示す。
【0151】
【表1】
【0152】
発明油及び比較油のけん引係数は、完全自動化ミニけん引機(Mini Traction Machine)けん引測定機器であるMTM Traction Rigを用いて測定された。このリグは、PCS Instrumentsによって製造され、Model MTMと特定される。試験検体及び装置構成は、現実的な圧力、温度及び速度が非常に大きい負荷、モーター又は構造物を必要とせずに達成できるようなものである。流体の小試料(50ml)が試験セルに入れられ、機械は、様々な速度、スライド対ロール比、温度及び負荷の至る所で自動的にランして、操作介入なしに試験流体について包括的なけん引マップを生成する。標準的な試験検体は、AISI 52100軸受鋼から製造された19.05mm研磨球及び50.0mm直径ディスクである。検体は、一回使用の、使い捨て品目であるように設計される。球は、ディスクの面に対して負荷をかけ、球及びディスクは、DCサーボモーターによって独立して駆動され、特に低いスライド/ロール比で、高精度速度制御を可能にさせる。それぞれの検体は、小さいステンレス鋼製試験流体浴中のシャフト上に末端に取り付けられる。ディスク試験検体を支持する垂直シャフト及び駆動系は固定される。しかしながら、球試験体を支持するシャフト及び駆動系は、それが2つの直交軸の周りを回転できるようなジンバル配置によって支持される。1つの軸は、負荷印加方向に対して、他の軸は、けん引力に対して垂直である。球及びディスクは、同じ方向に運ばれる。負荷の印加及びけん引力の抑制は、全体支持系偏向を最小限にするためにジンバル配置で適切に取り付けられた高剛性力変換器によって行われる。これらの力変換器からのアウトプットは、パーソナルコンピューターによって直接監視される。けん引係数は、けん引力対印加負荷の比である。
図1及び10〜13に示されるように、けん引係数は、様々な速度にわたって測定された。
図1及び10〜13において、x軸上の速度は、ボール及びディスク速度の合計の半分である、エントレインメント速度である。これらのエントレインメント速度は、エンジンが動作中であるときに達せられる、表面速度の範囲、又は表面速度の範囲の少なくとも一部をシミュレートする。
【0153】
本明細書に提示される試験結果は、次の試験条件下で生み出された:
【0154】
【表2】
【0155】
発明及び比較船舶用潤滑油は、50%SRR、1Gpa、100C及び3.2m/s速度で現場データと指向的に相関関係を持つことが示された標準条件下でMTMによって評価した。TBN2896及びKV100は計算値であった。
図1は、摩擦の減少への本発明の船舶用潤滑油組成物の各要素の貢献を、そして耐摩耗添加剤としてZDDPを含む比較船舶用潤滑油と比較して例示するミニけん引機(MTM)けん引係数対ローリング速度のグラフ表示である。
【0156】
Mo及びZDTCの含有量が異なる発明及び比較船舶用潤滑油調合物を、
図2に従って調合し、試験した。加えて、低塩基価及びSAE30グレードの船舶用システム油用の発明及び比較船舶用潤滑油調合物を、
図3に従って調合し、試験した。さらに、低塩基価並びにSAE20及びSAE30グレードの船舶用システム油用の発明及び比較船舶用潤滑油調合物を、
図4に従って調合し、試験した。
【0157】
中位塩基価及びSAE40グレードの船舶用トランクピストンエンジンオイル用の発明及び比較船舶用潤滑油調合物を、
図5に従って調合し、試験した。中位塩基価及びSAE50グレードの船舶用シリンダー油用の発明及び比較船舶用潤滑油調合物を、
図6に従って調合し、試験した。中位塩基価及びSAE50グレードの船舶用シリンダー油用の追加の発明及び比較船舶用潤滑油調合物を、
図7に従って調合し、試験した。
【0158】
高塩基価及びSAE50グレードの船舶用シリンダー油用の発明及び比較船舶用潤滑油調合物を、
図8に従って調合し、試験した。高塩基価及びSAE50グレードの船舶用シリンダー油用のさらにその上追加の発明及び比較船舶用潤滑油調合物を、
図9に従って調合し、試験した。
【0159】
図10は、9のTBNの比較及び発明船舶用ディーゼルエンジンシステム油についてのミニけん引機(MTM)けん引係数対ローリング速度のグラフ表示である。
【0160】
図11は、35のTBNの比較及び発明船舶用ディーゼルエンジンシリンダー油についてのミニけん引機(MTM)けん引係数対ローリング速度のグラフ表示である。
【0161】
図12は、70のTBNの比較及び発明船舶用ディーゼルエンジンシリンダー油についてのミニけん引機(MTM)けん引係数対ローリング速度のグラフ表示である。
【0162】
図13は、40のTBNの比較及び発明船舶用トランクピストンディーゼルエンジンオイルについてのミニけん引機(MTM)けん引係数対ローリング速度のグラフ表示である。
【0163】
本発明油及び比較油の出力当たりの燃料消費を、Bolnes 3DNL 190/600 2ストローク船舶用ディーゼルクロスヘッドエンジンを用いて測定した。出力当たりの燃料消費を、一定の速度及び負荷でエンジンをランさせながら1キロワット時当たりのグラム単位で測定した。比較油、引き続き本発明油をランさせ、次に比較油を再びランさせる実験設計を用いた。この実験設計は、試験中の油の統計的に有意な区別を可能にする。
【0164】
図14は、Bolnes 3DNL 190/600 2ストローク船舶用ディーゼルクロスヘッドエンジンに使用される発明及び比較船舶用シリンダー油ランの出力当たりの燃料消費を示す表である。90パーセント信頼範囲が示され、テューキーの方法(Tukey’s method)を用いて計算された。
【0165】
発明及び比較油の出力当たりの燃料消費を、Wartsila 6L20 4ストローク船舶用ディーゼルエンジンを用いて測定した。出力当たりの燃料消費を、
図15に示されるような4つの異なるモードでエンジンをランさせながら1キロワット時当たりのグラム単位で測定した。この試験サイクルは、ISO 8178−4:2007試験手順のサイクルE2表6に基づく。それぞれのエンジンモードは、速度を一定に保つが、負荷を変える。4モードの5セットは、試験サイクルパラメータについて
図16に示されるように、様々なエンジンパラメータ、例えばクーラント温度、流入空気温度等を一定に保ちながら、出力の増加に従ってランさせた。比較油、引き続き本発明油をランさせ、次に比較油を再びランさせて油の統計的に有意な区別を可能にする実験設計を用いた。
【0166】
発明及び比較油の出力当たりの燃焼消費を、小型の2ストローク船舶用クロスヘッドディーゼル研究用エンジンを用いて測定した。本エンジンを用いてシリンダー油及びシステム油を両方とも評価した。エンジン設計仕様は、
図17に示されるように、ストローク:ボア比、運転圧力、及びライナー温度などの重要な近代エンジンパラメータを再現して当技術分野において動作している市販サイズエンジンの条件に類似の条件(すなわち、温度、圧力、剪断、燃焼等)に潤滑油が供されることを確実にする。出力当たりの燃料消費を、
図18に示されるような6つの異なるモードでエンジンをランさせながら、1キロワット時当たりのグラム単位で測定した。この試験サイクルは、ISO 8178−4:2007試験手順のサイクルE2表6に基づく。それぞれのエンジンモードは、速度を一定に保つが、負荷を変える。
図19において分かるように、6モードの5セットは、様々なエンジンパラメータ、例えばクーラント温度、流入空気温度等を一定に保ちながら、出力の増加に従ってランさせた。比較油、引き続き本発明油をランさせ、次に比較油を再びランさせて油の統計的に有意な区別を可能にする実験設計を用いた。
【0167】
EP及びPCT条項(又は請求項又はクレーム):
1
4〜12cStのKV100を有する15〜95重量%のグループIIIベースストックと、29〜1000cStのKV100を有する0.5〜55重量%の共ベースストック(cobase stock)と、0.1〜2.0重量%のモリジチオカルバメート摩擦調整剤(molydithiocarbamate friction modifier)と、0.1〜2.0重量%の亜鉛ジチオカルバメート耐摩耗添加剤(zinc dithiocarbamate anti-wear additive)と、2〜30重量%の他の潤滑油添加剤(lubricating oil additives)とを含む船舶用潤滑油(marine lubricating oil)であって、共ベースストックが、グループI、グループIV、グループVおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される油(又はオイル)。
【0168】
2
グループI共ベースストックがブライトストック(bright stock)である、条項1に記載の油。
【0169】
3
グループIV共ベースストックが、フリーデル−クラフツ触媒PAOベースストックまたはメタロセン触媒PAOベースストックである、条項1〜2のいずれか1つに記載の油。
【0170】
4
グループV共ベースストックが、ポリイソブチレン、ポリメタクリレートおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、条項1〜3のいずれか1つに記載の油。
【0171】
5
グループIIIベースストックがGTLベースストックである、条項1〜4のいずれか1つに記載の油。
【0172】
6
油が7〜30cStの範囲のKV100を有する、条項1〜5のいずれか1つに記載の油。
【0173】
7
他の潤滑油添加剤が、粘度指数向上剤(viscosity index improvers)、酸化防止剤(antioxidants)、清浄剤(detergents)、分散剤(dispersants)、流動点降下剤(pour point depressants)、腐食防止剤(corrosion inhibitors)、金属不活性化剤(metal deactivators)、シール適合性添加剤(seal compatibility additives)、泡立ち防止剤(anti-foam agents)、インヒビタ(inhibitors)、防錆添加剤(anti-rust additives)、他の摩擦調整剤(friction modifiers)および他の耐摩耗添加剤(anti-wear additives)からなる群から選択される、条項1〜6のいずれか1つに記載の油。
【0174】
8
清浄剤が、油(又はオイル)の6〜30重量%(活性成分)の量の全処理レベル(又はトータル・トリート・レベル(total treat level))でのアルカリおよび/またはアルカリ土類金属サリチレート、フェネート、カルボキシレート、スルホネート、フェネートとサリチレートとの混合物、またはフェネートとカルボキシレートとの混合物から選択される、条項1〜7のいずれか1つに記載の油。
【0175】
9
油(又はオイル)が、8〜100の範囲の全塩基価(又はトータル・ベース・ナンバー(total base number))を有する、条項1〜8のいずれか1つに記載の油。
【0176】
10
シリンダー油(又はシリンダーオイル)、システム油(又はシステムオイル)またはトランクピストンエンジンオイルとして使用される条項1〜9のいずれか1つに記載の油。
【0177】
11
船舶用潤滑油(marine lubricating oil)の製造方法であって、
4〜12cStのKV100を有するグループIIIベースストックと、グループI、グループIV、グループVおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、29〜1000cStのKV100を有する共ベースストック(cobase stock)と、モリジチオカルバメート摩擦調整剤(molydithiocarbamate friction modifier)と、亜鉛ジチオカルバメート耐摩耗添加剤(zinc dithiocarbamate anti-wear additive)と、他の潤滑油添加剤(lubricating oil additives)とを提供する工程(又はステップ)と、
15〜95重量%のグループIIIベースストックと、0.5〜55重量%の共ベースストック(cobase stock)と、0.1〜2.0重量%のモリジチオカルバメート摩擦調整剤(molydithiocarbamate friction modifier)と、0.1〜2.0重量%の亜鉛ジチオカルバメート耐摩耗添加剤(zinc dithiocarbamate anti-wear additive)と、2〜30重量%の他の潤滑油添加剤(lubricating oil additives)とをブレンドして船舶用潤滑油(marine lubricating oil)を形成する工程(又はステップ)と
を含む方法。
【0178】
12
グループI共ベースストックがブライトストックである、条項11に記載の方法。
【0179】
13
グループIV共ベースストックが、フリーデル−クラフツ触媒PAOベースストックまたはメタロセン触媒PAOベースストックである、条項11〜12のいずれか1つに記載の方法。
【0180】
14
グループV共ベースストックが、ポリイソブチレン、ポリメタクリレートおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、条項11〜13のいずれか1つに記載の方法。
【0181】
15
グループIIIベースストックがGTLベースストックである、条項11〜14のいずれか1つに記載の方法。
【0182】
16
油(又はオイル)が7〜30cStの範囲のKV100を有する、条項11〜15のいずれか1つに記載の方法。
【0183】
17
他の潤滑油添加剤が、粘度指数向上剤(viscosity index improvers)、酸化防止剤(antioxidants)、清浄剤(detergents)、分散剤(dispersants)、流動点降下剤(pour point depressants)、腐食防止剤(corrosion inhibitors)、金属不活性化剤(metal deactivators)、シール適合性添加剤(seal compatibility additives)、泡立ち防止剤(anti-foam agents)、インヒビタ(inhibitors)、防錆添加剤(anti-rust additives)、他の摩擦調整剤(friction modifiers)および他の耐摩耗添加剤(anti-wear additives)からなる群から選択される、条項11〜16のいずれか1つに記載の方法。
【0184】
18
清浄剤が、油(又はオイル)の6〜30重量%(活性成分)の量の全処理レベル(又はトータル・トリート・レベル(total treat level))でのアルカリおよび/またはアルカリ土類金属サリチレート、フェネート、カルボキシレート、スルホネート、フェネートとサリチレートとの混合物、またはフェネートとカルボキシレートとの混合物から選択される、条項11〜17のいずれか1つに記載の方法。
【0185】
19
油(又はオイル)が8〜100の範囲の全塩基価(又はトータル・ベース・ナンバー(total base number))を有する、条項11〜18のいずれか1つに記載の方法。
【0186】
20
油(又はオイル)が、シリンダー油(又はシリンダーオイル)、システム油(又はシステムオイル)またはトランクピストンエンジンオイルとして船舶用ディーゼルエンジン(marine diesel engine)に使用される、条項11〜19のいずれか1つに記載の方法。
【0187】
出願人らは、合理的に予測され得る開示主題の全ての実施形態及び用途を開示することを試みてきた。しかしながら、同等物としてのままである予測できない、非実質的な修正が存在し得る。本発明は、それの具体的な、例示的な実施形態と関連して記載されてきたが、本開示の趣旨又は範囲から逸脱することなく前述の記載を考慮して多くの変更、修正、及び変形が当業者に明らかであろうことは明白である。したがって、本開示は、上に詳述された記載の全てのそのような変更、修正、及び変形を包含することを意図する。
【0188】
優先権公文書を含めて、本明細書に引用される全ての特許、試験手順、及び他の公文書は、そのような開示が本発明と矛盾しない程度に、及びそのような援用が許される全ての権限について参照により完全に援用される。
【0189】
数の下限及び数の上限が本明細書でリストアップされる場合、任意の下限から任意の上限までの範囲が考えられる。