特表2020-524733(P2020-524733A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2020-524733メチルパラフィン含有炭化水素流体に基づく低粘度潤滑油
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-524733(P2020-524733A)
(43)【公表日】2020年8月20日
(54)【発明の名称】メチルパラフィン含有炭化水素流体に基づく低粘度潤滑油
(51)【国際特許分類】
   C10M 105/04 20060101AFI20200727BHJP
   C10M 101/02 20060101ALI20200727BHJP
   C10M 145/14 20060101ALI20200727BHJP
   C10M 143/08 20060101ALI20200727BHJP
   C10M 107/02 20060101ALI20200727BHJP
   C10N 20/02 20060101ALN20200727BHJP
   C10N 20/00 20060101ALN20200727BHJP
   C10N 30/08 20060101ALN20200727BHJP
   C10N 30/10 20060101ALN20200727BHJP
   C10N 30/04 20060101ALN20200727BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20200727BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20200727BHJP
   C10N 40/04 20060101ALN20200727BHJP
【FI】
   C10M105/04
   C10M101/02
   C10M145/14
   C10M143/08
   C10M107/02
   C10N20:02
   C10N20:00 Z
   C10N30:08
   C10N30:10
   C10N30:04
   C10N30:06
   C10N40:25
   C10N40:04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】56
(21)【出願番号】特願2019-570994(P2019-570994)
(86)(22)【出願日】2018年6月7日
(85)【翻訳文提出日】2019年12月20日
(86)【国際出願番号】US2018036393
(87)【国際公開番号】WO2018236591
(87)【国際公開日】20181227
(31)【優先権主張番号】62/523,398
(32)【優先日】2017年6月22日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】390023630
【氏名又は名称】エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー
【氏名又は名称原語表記】EXXON RESEARCH AND ENGINEERING COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156085
【弁理士】
【氏名又は名称】新免 勝利
(74)【代理人】
【識別番号】100138885
【弁理士】
【氏名又は名称】福政 充睦
(72)【発明者】
【氏名】ハルウ・オウマール−マハマト
(72)【発明者】
【氏名】マーク・ピー・ハーゲマイスター
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BA02A
4H104BA07A
4H104BA08A
4H104BB33A
4H104BB34A
4H104CA03A
4H104CA04A
4H104CA05C
4H104CB08C
4H104DA02A
4H104DA06A
4H104EA02A
4H104EA27C
4H104EA30A
4H104EB05
4H104EB07
4H104EB09
4H104EB10
4H104EB11
4H104EB13
4H104EB20
4H104LA02
4H104LA03
4H104LA04
4H104LA05
4H104PA02
4H104PA41
(57)【要約】
5〜50重量%の9−メチルノナデカン及び95〜50重量%の9−メチル−11−オクチルヘンエイコサンを含む潤滑油ベースストックを含む潤滑油ベースストック。この潤滑油ベースストックは、y=2.15−0.765ln(x)未満であるASTM D5800によって測定される250℃におけるNoack揮発性(y)とASTM D445によって測定される40℃における動粘度(x)との関係を有する。潤滑油ベースストック及び1種以上の潤滑油添加剤を含有する潤滑油も提供される。潤滑油ベースストック及び1種以上の潤滑油添加剤を含有する配合油を潤滑油として使用することによる、潤滑油における熱及び酸化安定性、堆積物制御及びトラクション制御の1つ以上を改善するための方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
5〜50重量%の9−メチルノナデカン及び95〜50重量%の9−メチル−11−オクチルヘンエイコサンを含んでなる潤滑油ベースストックであって、y=2.15−0.765ln(x)未満である、ASTM D5800によって測定される250℃におけるNoack揮発性(y)とASTM D445によって測定される40℃における動粘度(x)との関係を有する潤滑油ベースストック。
【請求項2】
前記ベースストックが、ASTM D445によって測定される、1.5〜3.5cStの100℃における動粘度を有する、請求項1に記載の潤滑油ベースストック。
【請求項3】
前記ベースストックが、ASTM D445によって測定される、4.0〜14.0cStの40℃における動粘度を有する、請求項1又は2に記載の潤滑油ベースストック。
【請求項4】
前記ベースストックが、ASTM D5800によって測定される、10〜90%の250℃におけるNoack揮発性を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の潤滑油ベースストック。
【請求項5】
前記ベースストックが、ASTM D2270によって決定される、約100〜約170の粘度指数を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の潤滑油ベースストック。
【請求項6】
前記ベースストックが、ASTM D5950によって決定される、約−10〜−80℃の流動点を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の潤滑油ベースストック。
【請求項7】
前記ベースストックが、約0.0060〜0.0090の範囲の(100℃、1GPa、2m/秒及び0〜100%のSRRにおける)MTM平均トラクション係数を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の潤滑油ベースストック。
【請求項8】
前記ベースストックが、匹敵するKV100℃粘度のグループII又はグループIIIベースストックよりも約20〜180%低い(100℃、1GPa、2m/秒及び0〜100%のSRRにおける)MTM平均トラクション係数を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の潤滑油ベースストック。
【請求項9】
前記ベースストックが、ASTM D4683によって決定される、約1.6cP未満の高温高せん断(HTHS)粘度及びASTM D5800によって決定される、約16〜約30パーセントのNoack揮発性を有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の潤滑油ベースストック。
【請求項10】
潤滑油を形成するための少量の1種以上の添加剤をさらに含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の潤滑油ベースストック。
【請求項11】
前記1種以上の添加剤が、粘度向上剤又は調整剤、酸化防止剤、清浄剤、分散剤、流動点抑制剤、腐食抑制剤、金属不活性剤、シール適合性添加剤、消泡剤、抑制剤、防さび剤及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項10に記載の潤滑油ベースストック。
【請求項12】
前記潤滑油が、約60〜150時間の酸化安定性(200%KV40増加までの時間に対する210時間試験)を有する、請求項10又は11に記載の潤滑油ベースストック。
【請求項13】
前記潤滑油が、10〜30mgのASTM D6335による200〜480℃における2時間のTEOST 33C試験によって測定される堆積物形成に対する抵抗を有する、請求項10〜12のいずれか一項に記載の潤滑油ベースストック。
【請求項14】
前記潤滑油が、700〜1000mPa.sのASTM D5293による−35℃におけるコールドクランクシミュレーター(CCS)粘度を有する、請求項10〜13のいずれか一項に記載の潤滑油ベースストック。
【請求項15】
前記1種以上の添加剤が、ポリメタクリレート、炭化水素水素化ポリイソプレン星形ポリマー及びそれらの組合せから選択される粘度調整剤を含む、請求項10〜14のいずれか一項に記載の潤滑油ベースストック。
【請求項16】
前記潤滑油が、ASTM D4683によって決定される、約2.3cP未満の高温高せん断(HTHS)粘度を有する、請求項15に記載の潤滑油ベースストック。
【請求項17】
前記潤滑油が、ASTM D2270によって決定される、約220〜340の粘度指数を有する、請求項15又は16に記載の潤滑油ベースストック。
【請求項18】
前記潤滑油が、5〜40重量%のコベースストックをさらに含み、前記コベースストックが、グループIベースストック、グループIIベースストック、グループIIIベースストック、グループIVベースストック、グループVベースストック及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項10〜17のいずれか一項に記載の潤滑油ベースストック。
【請求項19】
潤滑油における熱及び酸化安定性、堆積物制御及びトラクション制御の1つ以上を改善するための方法であって、主要量の潤滑油ベースストック及び少量の1種以上の添加剤を含んでなる潤滑油を提供することであって、前記潤滑油ベースストックが5〜50重量%の9−メチルノナデカン及び95〜50重量%の9−メチル−11−オクチルヘンエイコサンを含んでなり、前記ベースストックがy=2.15−0.765ln(x)未満である、ASTM D5800によって測定される250℃におけるNoack揮発性(y)とASTM D445によって測定される40℃における動粘度(x)との関係を有する提供することと、配合油中で前記潤滑油を使用して、熱及び酸化安定性、堆積物制御及びトラクション制御の1つ以上を改善することとを含んでなる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、低粘度、低揮発性潤滑油ベースストック、及び上記潤滑油ベースストックを含有する潤滑油に関する。本開示は、上記潤滑油ベースストックを含有する配合油を潤滑油として使用することによる、潤滑油における熱及び酸化安定性、揮発性、粘度指数、堆積物制御及びトラクション制御の1つ以上を改善する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
現在商業的に使用されている潤滑油は、それらの意図される用途次第で種々の添加剤パッケージ及び溶媒と混合された天然及び合成ベースストックから調製される。ベースストックには、典型的に、鉱油、ポリアルファオレフィン(PAO)、ガスツーリキッドベース油(GTL)、シリコーン油、リン酸エステル、モノエステル、ジエステル、ポリオールエステルなどが含まれる。
【0003】
乗用車エンジン油(PCEO)の主な傾向は、より高品質のベースストックがより容易に利用可能になるため、全体的な品質の改善である。典型的に最も高品質のPCEO製品は、種々の添加剤パッケージと混合されたPAO又はGTLストックなどのようなベースストックを用いて配合される。
【0004】
燃費を改善するために、ベース油粘度は非常に重要である。実質的に改善された燃費(>2%)は、(1)ベース油揮発性、(2)耐久性及び(3)摩擦における前進を必要とする。摩擦損失は、エンジン内での成分の移動の間に生じる。現在までに開発されたモデルによると、高せん断下で潤滑油の特性によって燃費が非常に影響を受けることが示される。ベースストックは、低せん断下でよりも高せん断条件下で、全粘度のより大きい割合を与える。ベースストック粘度の低下は、将来的に燃費向上に対して最大の影響を与える可能性が高い。
【0005】
炭化水素及び市販のエステル(例えば、アジピン酸2−エチルヘキシル、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシル、Esterex(商標)A32、Esterex(商標)A34)をベースとする現在市販されているPAO流体(例えば、SpectraSyn(商標)2)では、API規格(例えば、15%以下のNoack揮発性)及び/又は他のOEM(相手先ブランド製造業者)設定規格又は必要条件を満たすものの、十分な超低粘度潤滑油の配合が不可能である。燃費利益のための超低粘度潤滑油を配合するために、揮発性必要条件を満たすため、同一ベースストック中に共存する低粘度及び低揮発性を有することが望ましい。加えて、ベースストックは、堆積物形成を防ぐか、又は最小化するために、高温における適切な熱及び酸化安定性を有するべきである。潤滑油配合物(PVL、乗客車両潤滑油(Passenger Vehicle Lubricants)、CVL、業務用車両潤滑油(Commercial Vehicle Lubricants)及び工業用潤滑油)中に一般に使用される添加剤との良好な適合性、良好な低温特性及び許容できる粘度指数もベースストックのために必要とされる。
【0006】
ポリ−α−オレフィン(PAO)は、高い粘度指数(VI)、低い揮発性を含めて、多くの優れた潤滑油特性を有する重要な潤滑油ベースストックであり、且つ種々の粘度領域(Kv100 2〜300cSt)で利用可能である。しかしながら、PAOは、低い極性を有するパラフィン系炭化水素である。このような低極性は、極性添加剤又は実用間に生じるスラッジの低い溶解性及び分散性を導く。このような低極性を埋め合わせるために、潤滑油配合者は、通常、1つ又は複数の極性コベースストックを添加する。極性添加剤及びスラッジの溶解性を改善する流体極性を増加させるために、通常、多くの仕上げ潤滑油配合物中に1重量%〜50重量%の濃度でエステル又はアルキル化ナフタレン(AN)が存在する。
【0007】
将来の自動車及び工業的な傾向によると、実質的により良好な熱及び酸化安定性を有する先進的な添加剤技術及び合成ベースストックの必要性が示唆される。これは主に、潤滑油により多くの熱及び酸化的ストレスを及ぼすであろう、より小さい油溜めのサイズのためである。性能必要条件は、過去10〜20年でより厳格になり、そしてより長い排出間隔に対する要求は着実に増大した。グループII、III及びIVベース油の使用もより広範になっている。そのようなベース油は、天然硫黄含有酸化防止剤が存在しないか、又は厳格な精製プロセスの間に除去されるため、極めて低い硫黄含有量を有する。
【0008】
自動車用エンジン又はトラックの内部燃焼エンジン及びトランスミッションで使用される潤滑油は、使用間に厳しい環境にさらされることは知られている。これらの環境によって、潤滑油が鉄(摩耗)化合物などの油中の不純物の存在及び高温によって促進される酸化を経験するという結果になる。酸化は、酸又は粘度及び堆積物形成又はこれらの徴候のいずれかの組合せの増加によって現れる。これらは、特に許容できない粘度増加を減少させるか、又は防ぐことによって、潤滑油の使用寿命を延長することができる酸化防止剤の使用によって、ある程度制御される。酸化抑制に加えて、さび及び摩耗制御などの他のパラメーターも重要である。
【0009】
エンジン油配合物の主要な課題は、適切な低温特性及び酸化安定性を達成しながらも、同時に改善された燃費を達成することである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、潤滑油使用者のなおいっそう厳しい必要条件を満たすであろう潤滑油組成物のためのより良好な添加剤及びベースストック技術が必要とされている。特に、改善された燃費、粘度指数及び酸化安定性を有する添加剤技術及び合成ベースストックが必要とされている。
【0011】
本開示は、下記で明らかとされる多くの追加的利点も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示は、良好な高温熱酸化安定性を示しながらも、所望の低粘度/低揮発性特性を有する1つ以上のメチル置換された炭化水素流体を含む潤滑油ベースストックを提供する。したがって、本開示の潤滑油ベースストックは、強化された燃費及びエネルギー効率を達成するための解決策を提供する。加えて、熱、酸化及び固有加水分解安定性、堆積物制御及びトラクション制御は、これらのベースストックの他の利点である。
【0013】
本開示は、一部において、5〜50重量%の9−メチルノナデカン及び95〜50重量%の9−メチル−11−オクチルヘンエイコサンを含んでなる潤滑油ベースストックであって、y=2.15−0.765ln(x)未満である、ASTM D5800によって測定される250℃におけるNoack揮発性(y)とASTM D445によって測定される40℃における動粘度(x)との関係を有するベースストックに関する。ブレンドのための9−メチルノナデカン及び9−メチル−11−オクチルヘンエイコサンベースストックの化学構造は、
【化1】
である。
【0014】
本開示は、一部において、主要量の潤滑油ベースストック及び少量の1種以上の添加剤を含んでなる潤滑油に関する。潤滑油ベースストックは、5〜50重量%の9−メチルノナデカン及び95〜50重量%の9−メチル−11−オクチルヘンエイコサンを含んでなり、y=2.15−0.765ln(x)未満である、ASTM D5800によって測定される250℃におけるNoack揮発性(y)とASTM D445によって測定される40℃における動粘度(x)との関係を有する。
【0015】
本開示は、一部において、潤滑油における熱及び酸化安定性、堆積物制御及びトラクション制御の1つ以上を改善するための方法であって、潤滑油ベースストックが5〜50重量%の9−メチルノナデカン及び95〜50重量%の9−メチル−11−オクチルヘンエイコサンを含んでなり、y=2.15−0.765ln(x)未満である、ASTM D5800によって測定される250℃におけるNoack揮発性(y)とASTM D445によって測定される40℃における動粘度(x)との関係を有する、主要量の潤滑油ベースストック及び少量の1種以上の添加剤を含んでなる潤滑油を提供することと、配合油中で上記潤滑油を使用して、熱及び酸化安定性、堆積物制御及びトラクション制御の1つ以上を改善することとを含んでなる方法にも関する。
【0016】
本開示は、一部において、低粘度低揮発性潤滑油を製造するための方法であって、潤滑油ベースストック及び1種以上の添加剤を提供することであって、潤滑油ベースストックが5〜50重量%の9−メチルノナデカン及び95〜50重量%の9−メチル−11−オクチルヘンエイコサンを含んでなる提供することと、主要量の潤滑油ベースストック及び少量の1種以上の添加剤をブレンドして、潤滑油を形成することであって、潤滑油ベースが、y=2.15−0.765ln(x)未満である、ASTM D5800によって測定される250℃におけるNoack揮発性(y)とASTM D445によって測定される40℃における動粘度(x)との関係を有する形成することとを含んでなる方法にも関する。
【0017】
驚くべきことに、本開示による配合油を潤滑油として使用することによって、潤滑油によって潤滑されたエンジンにおいて、秀逸な低粘度低揮発性、良好な高温熱酸化安定性、堆積物制御及びトラクション利益を達成することができることが見出された。特に、低粘度メチルパラフィンを含んでなる潤滑油ベースストックは、低粘度、低揮発性、優れた酸化安定性、望ましい堆積制御及びトラクション利益を示し、これは潤滑油の使用寿命を延長し、そして高温に暴露される時の潤滑油の耐久性及び耐性を有意に改善するために役立つ。本開示の潤滑油は、乗客用車両(PVL)又は業務用車両(CVL)エンジン油及び/又はドライブライン油製品として特に有利である。
【0018】
本開示の潤滑油は、乗客用車両エンジン油(PVEO)製品として、より特に、SAE 0WX、SAE 5WX又はSAE 10WX(X=4、8、12、16、20、30、40又は50である)、及び類似の油配合物、特に本発明の成分とブレンドした場合に低下する揮発性を示す油配合物として特に有利である。
【0019】
本開示のさらなる目的、特徴及び利点は、次の図面及び詳細な記載を参照することによって理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の低粘度メチルパラフィンベースのベースストック及び比較のための低粘度ベースストックの物理的特徴を示す。
図2図2は、本発明のメチルパラフィンベースのベースストック及び比較のための低粘度ベースストックを含むエンジン油配合物の物理的特徴及び性能試験結果を示す。
図3図3は、粘度調整剤も含む、本発明のメチルパラフィンベースのベースストック及び比較のための低粘度ベースストックを含むエンジン油配合物の動粘度及び粘度指数を示す。
図4図4は、Noack揮発性及び40℃における動粘度の間の関係のグラフであって、本発明のメチルパラフィンベースの低粘度ベースストックブレンドが、y=2.15−0.765ln(x)未満である、Noack揮発性(y)とKV40(x)との関係を有することを示す。
図5図5は、図4の本発明のメチルパラフィンベースの低粘度ベースストックブレンドのC10二量体及びC10三量体の本発明の混合物及び比較のためのPAO低粘度ベースストックブレンドの2cSt及び3.6cStの従来のPAOの比較のための混合物のベースストックブレンド比を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書の詳細な説明及び請求項における全ての数値は「約」又は「およそ」表示値によって修飾され、そして当業者によって予想されるであろう実験誤差及び変動を考慮に入れる。
【0022】
潤滑油ベースストック
本開示の本発明のベースストックは、C10二量体及びC10三量体のブレンドである。特に、本開示の本発明のベースストックは、(本明細書中、「C10二量体」とも呼ばれる)9−メチルノナデカン及び(本明細書中、「C10三量体」とも呼ばれる)9−メチル−11−オクチルヘンエイコサンのブレンドである。ブレンドのための9−メチルノナデカン及び9−メチル−11−オクチルヘンエイコサンベースストックの化学構造は、
【化2】
である。
【0023】
比較のための11−メチルトリコベースストック(本明細書中、「C12二量体」とも呼ばれる)の化学構造も以下に示す。
【化3】
【0024】
これらのベースストックは、(1)秀逸な低粘度低揮発性特性、(2)良好な高温熱及び酸化安定性、(3)良好な低温特性及び特に高粘度指数、(4)良好な堆積物制御及び(4)トラクション利益を示す。これらの特性によって、それらは高性能の燃費潤滑油用途におけるグループIV合成ベースストックとして魅力的なものとなる。
【0025】
現在市場で入手可能である低粘ベースストック(例えば、100℃における動粘度、2〜3cSt)は、次世代の超低粘度エンジン油(すなわち、xxW−4→xxW−16)を配合するために使用するには揮発性が高い。これらのベースストック(例えば、SpectraSyn(商標)2、QHVI(商標)3、アジピン酸ビス−(2−エチルヘキシル)、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシル、Esterex(商標)A32)は、現在の揮発性API規格又は他のOEM揮発性必要条件を満たす配合エンジン油を提供するために有用である。本開示は、トラクション利益、良好な堆積物制御挙動及び良好な高温熱−酸化安定性を示しながらも、望ましい低粘度及び低揮発性特性を有するメチルパラフィンのブレンド提供し、したがって、強化された燃費及びエネルギー効率を達成するための解決策を提供する。
【0026】
上記で示されるように、本開示において有用なメチルパラフィンベースストック成分としては、下記の式によって表される、C10二量体化合物及びC10三量体化合物のブレンドが含まれる。
【化4】
【0027】
メチルパラフィン潤滑油ベースストックは、10〜60重量%のC10二量体及び40〜90重量%のC10三量体を含み得るか、又は5〜50重量%のC10二量体及び50〜95重量%のC10三量体を含み得る。より特に、本発明のメチルパラフィンベースストックブレンド中のC10二量体は、全ベースストックブレンドの5重量%、10重量%、又は15重量%、又は20重量%、又は25重量%、又は30重量%、又は35重量%、又は40重量%、又は45重量%、又は50重量%、又は55重量%、又は60重量%であってよい。本発明のメチルパラフィンベースストックブレンド中のC10三量体は、全ベースストックブレンドの95重量%、90重量%、又は85重量%、又は80重量%、又は75重量%、又は70重量%、又は65重量%、又は60重量%、又は55重量%、又は50重量%、又は45重量%、又は40重量%であってよい。本発明のメチルパラフィンベースストックブレンドの1つの好ましい形態において、C10二量体は、全ベースストックブレンドの30重量%を構成し、そしてC10三量体は、全ベースストックブレンドの70重量%を構成する。本発明のメチルパラフィンベースストックブレンドの別の好ましい形態において、C10二量体は、全ベースストックブレンドの10重量%を構成し、そしてC10三量体は、全ベースストックブレンドの90重量%を構成する。
【0028】
本開示のメチルパラフィン潤滑油ベースストックは、ASTM D445又はASTM D7042によって決定される、1.5cSt〜3.5cSt、又は1.7〜3.3cSt、又は1.9〜3.1cSt、又は2.1〜2.9cSt、又は2.3〜2.7cStの100℃における粘度(Kv100)を有する。本開示のメチルパラフィン潤滑油ベースストックは、ASTM D445又はASTM D7042によって決定される、4.0cSt〜14.0cSt、又は4.5〜13.5cSt、又は5.0〜13.0cSt、又は5.5〜12.5cSt、又は6.0〜12.0cSt、6.5cSt〜11.5cSt、又は7.0〜11.0cSt、又は7.5〜10.5cSt、又は8.0〜10.0cSt、又は8.5〜9.5cSt、又は8.7〜9.3cStの粘度(Kv40)を有する。
【0029】
本開示のメチルパラフィン潤滑油ベースストックは、ASTM D5800によって決定される、約10〜約90パーセントの250℃におけるNoack揮発性を有し得る。或いは、メチルパラフィン潤滑油ベースストックブレンドは、ASTM D5800によって決定される、12〜85%、又は16〜80%、又は20〜75%、又は24〜70%、又は28〜65%、又は32〜60%、又は36〜55%の250℃におけるNoack揮発性を有し得る。
【0030】
本開示のメチルパラフィン潤滑油ベースストックは、ASTM D2270によって決定される、約100〜約170の粘度指数を有し得る。或いは、メチルパラフィン潤滑油ベースストックブレンドは、ASTM D2270によって決定される、105〜165、又は110〜160、又は115〜155、又は120〜150、又は125〜145、又は130〜140の粘度指数を有し得る。
【0031】
本開示のメチルパラフィン潤滑油ベースストックは、ASTM D5950によって決定される、約−10〜−80℃の流動点を有し得る。或いは、メチルパラフィン潤滑油ベースストックブレンドは、ASTM D5950によって決定される、−15〜−70℃、又は−17〜−65℃、又は−19〜−60℃、又は−21〜−55℃、又は−23〜−50℃、又は−25〜−40℃の流動点を有し得る。
【0032】
本開示のメチルパラフィン潤滑油ベースストックは、0.0060〜0.0090の範囲の(100℃、1GPa、2m/秒及び0〜100%のSRRにおける)MTM平均トラクション係数を有し得る。或いは、メチルパラフィン潤滑油ベースストックブレンドは、0.0055〜0.0090、又は0.0060〜0.0085、又は0.0065〜0.0080の範囲のMTM平均トラクション係数を有し得る。MTM平均トラクション係数は、より低い値ほど改善された燃費を提供するように、燃料効率と関連づけられ得る。本開示のメチルパラフィン潤滑油ベースストックブレンドは、匹敵するKV100℃粘度の従来のグループII、グループIII及びグループIII(GTL)ベースストックよりも20〜180%低い、又は40〜160%低い、又は60〜140%低い、80〜120%低い、又は90〜110%低いMTM平均トラクション係数を有する。
【0033】
潤滑油ベースストックの製造方法
本開示のメチルパラフィン潤滑油ベースストック成分は、メタロセン触媒と、それに続く水素化を使用する線形アルファオレフィンのオリゴマー化を含むプロセスによって調製可能である。より特に、9−メチルノナデカン(C10二量体)及び9−メチル−11−オクチルヘンエイコサン(C10三量体)は、メタロセン触媒と、それに続く水素化を使用する1−デセン[11−メチルトリコサン(C12二量体)に関しては1−ドデセン]のオリゴマー化を含むプロセスによって調製されてよい。次いで、濾過によって、C10二量体、C10三量体及びC12二量体の純粋な化合物が得られ得る。
【0034】
本開示のメチルパラフィン潤滑油ベースストック成分は、低粘度ポリアルファオレフィン(「PAO」)ベースストックを製造するために使用されるものと同一のプロセスによって調製可能である。特に、低粘度ポリアルファオレフィン(「PAO」)ベースストック及びメチルパラフィン潤滑油ベースストックは、本明細書に記載のメタロセン触媒プロセス、又は2ステッププロセスによって製造され得る。
【0035】
好ましい実施形態において、第1のステップは、シングルサイト触媒の存在下での低分子量線形アルファオレフィンのオリゴマー化を含み、そして第2のステップは、オリゴマー化触媒の存在下での第1のステップからの生成物の少なくとも一部のオリゴマー化を含む。
【0036】
本発明は、PAOの少なくとも一部が、次のオリゴ―化のためにそれらを高度に望ましいものにさせる特性を有する、第1のオリゴマー化において形成されたPAO組成物にも関する。第1のオリゴマー化のための好ましいプロセスでは、高い変換率で、優れたNoack揮発性を有する低粘度PAOを製造するように、水素を添加することなく、高温でシングルサイト触媒を使用する。このPAOは、少なくとも25重量%が三置換ビニレンオレフィンである二量体生成物を含んでなり、前記二量体生成物は、次のオリゴマー化のための供給原料として非常に望ましい。このPAOは、水素化後に潤滑油ベースストックとしてこれらの生成物を有用にさせる、秀逸な特性を有する三量体及び任意選択的に四量体及びより高級なオリゴマー生成物も含んでなる。水素化三量体部分は、本発明の潤滑油ベースストック及びエンジン油組成物中でメチルパラフィン潤滑油ベースストック成分として使用することができる。
【0037】
本発明は、2ステッププロセス後に得られる、非常に低い粘度及び優れたNoack揮発性を特徴とする、改善されたメチルパラフィン潤滑油ベースストック成分にも関する。
【0038】
本発明において形成されたメチルパラフィン潤滑油ベースストック成分は、中間及び最終メチルパラフィンの両方とも液体である。本発明の目的に関して、「液体」という用語は、0℃より高い温度で明白な融点を有さず、好ましくは−10℃より高い温度で明白な融点を有さず、そして3000cSt以下の100℃における動粘度を有する流体であるものとして定義されるが、本発明の液体PAOの全ては、さらに開示される通り、20cSt以下の100℃における動粘度を有する。
【0039】
本発明において使用される場合、当該技術における従来の用語法に従って、明快さのために次の用語は定義される。「ビニル」という用語は、式RCH=CH2の基を指定するために使用される。「ビニリデン」という用語は、式RR’=CH2の基を指定するために使用される。「二置換ビニレン」という用語は、式RCH=CHR’の基を指定するために使用される。「三置換ビニレン」という用語は、式RR’C=CHR’’の基を指定するために使用される。「四置換ビニレン」という用語は、式RR’C=CR’’R’’’の基を指定するために使用される。これらの式の全てに関して、R、R’、R’’及びR’’’は、同一であり得るか、又は互いに異なり得るアルキル基である。
【0040】
第1のオリゴマー化において使用され、且つ任意選択的に次のオリゴマー化においてリサイクルされた中間体PAO二量体及び軽質オレフィン留分と接触するモノマー供給原料は、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン及び1−テトラデセンなどの6〜24個の炭素原子、通常6〜20個、好ましくは6〜14個の炭素原子を有するモノマーから典型的に構成される少なくとも1つの線形アルファオレフィン(LAO)である。さらに炭素数を有するオレフィンは好ましいLAOである。さらに、これらのオレフィンは、国際公開第2007/011973号パンフレットに記載されるような、過酸化物、酸素、硫黄、窒素含有有機化合物及び/又はアセチレン系化合物などの触媒毒を除去するために好ましくは処理される。
【0041】
触媒
第1のオリゴマー化において有用な触媒としては、シングルサイト触媒が含まれる。好ましい実施形態において、第1のオリゴマー化はメタロセン触媒を使用する。本開示において、「メタロセン触媒」及び「遷移金属化合物」という用語は互換的に使用される。触媒の好ましい分類によって高い触媒生産性が与えられ、そして低い生成物粘度及び低分子量がもたらされる。有用なメタロセン触媒は、架橋型又は未架橋型であってよく、且つ置換されていてもよいか、又は未置換であってよい。それらは、二ハロゲン化物又はジアルキルを含む脱離基を有し得る。脱離基が二ハロゲン化物である場合、反応を促進するためにトリ−アルキルアルミニウムが使用されてもよい。一般に、有用な遷移金属化合物は、次式:
(CpCp)M
(式中、
は、任意選択的な架橋元素であり、好ましくは、ケイ素又は炭素から選択され;
は、第4族金属であり;
Cp及びCpは、同一又は異なる置換又は未置換のシクロペンタジエニル配位子系であって、置換されている場合、置換基は、独立していても、又は連結して多環式構造を形成していてもよく;
及びXは、独立して、水素、水素化物基、ヒドロカルビル基、置換ヒドロカルビル基、シリルカルビル基、置換シリルカルビル基、ゲルミルカルビル基、又は置換ゲルミルカルビル基であるか、或いは好ましくは、独立して、水素、分岐又は未分岐のC〜C20ヒドロカルビル基、又は分岐又は未分岐の未置換C〜C20ヒドロカルビル基から選択され;且つ
及びXは、独立して、水素、ハロゲン、水素化物基、ヒドロカルビル基、置換ヒドロカルビル基、ハロカルビル基、置換ハロカルビル基、シリルカルビル基、置換シリルカルビル基、ゲルミルカルビル基、又は置換ゲルミルカルビル基であるか;或いはX及びXの両方が金属原子に接合及び結合して、約3〜約20個の炭素原子を含有するメタラサイクル環を形成するか、或いは好ましくは、独立して、水素、分岐又は未分岐のC〜C20ヒドロカルビル基、又は分岐又は未分岐の未置換C〜C20ヒドロカルビル基から選択される)によって表され得る。
【0042】
本開示に関して、ヒドロカルビル基はC1〜C100基であり、且つ線形、分岐型又は環式であってよい。置換ヒドロカルビル基には、ハロカルビル基、置換ハロカルビル基、シリルカルビル基、及びゲルミルカルビル基が含まれ、これらの用語については、以下に定義される。
【0043】
置換ヒドロカルビル基は、少なくとも1つの水素原子が、NR2、OR、SeR、TeR、PR2、AsR2、SbR2、SR、BR2、SiR3、GeR3、SnR3、PbR3などの少なくとも1つの官能基によって置換されている基であるか、或いはO、S、Se、Te、N(R)、=N、P(R)、=P、As(R)、=As、Sb(R)、=Sb、B(R)、=B、Si(R)2、Ge(R)2、Sn(R)2、Pb(R)2などの非炭化水素原子又は基がヒドロカルビル基内に挿入されている基である。式中、Rは、独立して、ヒドロカルビル基又はハロカルビル基であり、且つ2つ以上のRが一緒に連結して、置換又は未置換飽和、部分不飽和又は芳香族環又は多環式環構造を形成してもよい。
【0044】
ハロカルビル基は、1つ以上のヒドロカルビル水素原子が、少なくとも1つのハロゲン(例えば、F、Cl、Br、I)又はハロゲン含有基(例えば、CF3)によって置換であった基である。
【0045】
置換ハロカルビル基は、少なくとも1つのハロカルビル水素又はハロゲン原子が、NR2、OR、SeR、TeR、PR2、AsR2、SbR2、SR、BR2、SiR3、GeR3、SnR3、PbR3などの少なくとも1つの官能基によって置換されている基であるか、或いはO、S、Se、Te、N(R)、=N、P(R)、=P、As(R)、=As、Sb(R)、=Sb、B(R)、=B、Si(R)2、Ge(R)2、Sn(R)2、Pb(R)2などの非炭素原子又は基がハロカルビル基内に挿入されている基である。式中、Rは、独立して、ヒドロカルビル基又はハロカルビル基であるが、ただし、少なくとも1つのハロゲン原子が、最初のハロカルビル基上に残っていることを条件とする。さらに、2つ以上のRが一緒に連結して、置換又は未置換飽和、部不分飽和又は芳香族環又は多環式環構造を形成してもよい。
【0046】
(シリルカルビルとも呼ばれる)シリルカルビル基は、示された原子にシリル官能基が直接結合している基である。例としては、SiH3、SiH2R、SiHR2、SiR3、SiH2(OR)、SiH(OR)2、Si(OR)3、SiH2(NR2)、SiH(NR2)2、Si(NR2)3などが含まれる。式中、Rは、独立して、ヒドロカルビル基又はハロカルビル基であり、且つ2つ以上のRが一緒に連結して、置換又は未置換飽和、部分不飽和又は芳香族環又は多環式環構造を形成してもよい。
【0047】
(ゲルミルカルビルとも呼ばれる)ゲルミルカルビル基は、示された原子にゲルミル官能基が直接結合している基である。例としては、GeH3、GeH2R、GeHR2、GeR53、GeH2(OR)、GeH(OR)2、Ge(OR)3、GeH2(NR2)、GeH(NR2)2、Ge(NR2)3などが含まれる。式中、Rは、独立して、ヒドロカルビル基又はハロカルビル基であり、且つ2つ以上のRが一緒に連結して、置換又は未置換飽和、部分不飽和又は芳香族環又は多環式環構造を形成してもよい。
【0048】
一実施形態において、遷移金属化合物は、次式:
(CpCp)M
(式中、
は、架橋元素、好ましくは、ケイ素であり;
は、第4族金属、好ましくは、チタン、ジルコニウム又はハフニウムであり;
Cp及びCpは、それぞれ、M及びMの両方に結合する、同一又は異なる置換又は未置換インデニル又はテトラヒドロインデニル環であり;
及びXは、独立して、水素、水素化物基、ヒドロカルビル基、置換ヒドロカルビル基、シリルカルビル基、置換シリルカルビル基、ゲルミルカルビル基、又は置換ゲルミルカルビル基であり;且つ
及びXは、独立して、水素、ハロゲン、水素化物基、ヒドロカルビル基、置換ヒドロカルビル基、ハロカルビル基、置換ハロカルビル基、シリルカルビル基、置換シリルカルビル基、ゲルミルカルビル基、又は置換ゲルミルカルビル基であるか;或いはX及びXの両方が金属原子に接合及び結合して、約3〜約20個の炭素原子を含有するメタラサイクル環を形成する)によって表され得る。
【0049】
「置換又は未置換のテトラヒドロインデニル」、「置換又は未置換のテトラヒドロインデニル配位子」などの用語を使用する場合、上記配位子への置換は、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、置換ハロカルビル、シリルカルビル又はゲルミルカルビルであってよい。置換は環内であってもよく、その場合、追加的に置換されていることが可能であるか、未置換であることが可能である、ヘテロインデニル配位子又はヘテロテトラヒドロインデニル配位子が生じる。
【0050】
別の実施形態において、有用な遷移金属化合物は、次式:
MDE
(式中、
は、Mにπ−結合した置換シクロペンタジエニル又はヘテロシクロペンタジエニル補助配位子であり;
は、Lに関して定義された補助配位子の分類の一員であるか、又はJ、Mにσ−結合したヘテロ原子補助配位子であり;L及びL配位子は、第14族元素連結基を通して一緒に共有結合的に架橋し得;
は、Mへの供与結合を有する任意選択的な中性の非酸化配位子であり(iは0〜3に等しい);
Mは、第4族又は第5族遷移金属であり;且つ
D及びEは、独立して、モノアニオン性易動性配位子であり、それぞれがMへのπ−結合を有し、任意選択的に互いに又はL若しくはLに架橋する)によって表され得る。モノアニオン性配位子は、重合性モノマーの挿入を可能にするために適切な活性剤によって置換可能であるか、又は遷移金属化合物の空配位座上での配位重合のためにマクロモノマーが挿入可能である。
【0051】
本発明の一実施形態は、高度に活性のメタロセン触媒を使用する。本実施形態において、触媒生産性は、
【数1】
より高く、好ましくは、
【数2】
より高く、好ましくは、
【数3】
より高く、且つより好ましくは、
【数4】
より高い。ここで、
【数5】
は、オリゴマー化反応において使用される触媒のグラムあたりの形成されたPAOのグラムを表す。
【0052】
高い生産速度も達成される。実施形態において、第1のオリゴマー化における生産速度は、
【数6】
より高く、好ましくは、
【数7】
より高く、好ましくは、
【数8】
より高く、好ましくは、
【数9】
より高い。ここで、
【数10】
は、オリゴマー化反応において使用される触媒のグラムあたりの形成されたPAOのグラムを表す。
【0053】
活性剤
触媒は、非配位アニオン(NCA)活性剤などの一般に既知の活性剤によって活性化されてもよい。NCAは、触媒金属カチオンに配位していないか、又は金属カチオンにわずかに弱く配位するアニオンのいずれかである。NCAの配位は十分弱いため、オレフィン系又はアセチレン系不飽和モノマーなどの中性ルイス塩基がその触媒中心からそれを置き換えることが可能である。触媒金属カチオンと適合性のある、弱く配位する錯体を形成することができるいずれの金属又はメタロイドも使用されてよいか、又はNCAに含まれてよい。適切な金属としては、限定されないが、アルミニウム、金及びプラチナが含まれる。適切なメタロイドとしては、限定されないが、ホウ素、アルミニウム、リン及びケイ素が含まれる。
【0054】
ルイス酸及びイオン性活性剤も使用されてよい。ルイス酸活性剤の有用であるが、非限定的な例としては、トリフェニルホウ素、トリス−ペルフルオロフェニルホウ素、トリス−ペルフルオロフェニルアルミニウムなどが含まれる。イオン性活性剤の有用であるが、非限定的な例としては、ジメチルアニリニウムテトラキスペルフルオロフェニルボレート、トリフェニルカルボニウムテトラキスペルフルオロフェニルボレート、ジメチルアニリニウムテトラキスペルフルオロフェニルアルミネートなどが含まれる。
【0055】
有用なNCAの追加的なサブクラスは、中性又はイオン性のいずれかであることが可能な化学量論的活性剤を含んでなる。中性化学量論的活性剤の例としては、三置換ホウ素、テルル、アルミニウム、ガリウム及びインジウム又はその混合物が含まれる。3つの置換基は、それぞれ独立して、アルキル、アルケニル、ハロゲン、置換アルキル、アリール、アリールハロゲン化物、アルコキシ及びハロゲン化物から選択される。好ましくは、3つの基は、ハロゲン、単環式又は多環式(ハロ置換を含む)アリール、アルキル及びアルケニル化合物並びにその混合物から選択され、そして1〜20個の炭素原子を有するアルケニル基、1〜20個の炭素原子を有するアルキル基、1〜20個の炭素原子を有するアルコキシ基及び3〜20個の炭素原子を有するアリール基(置換アリールを含む)が好ましい。より好ましくは、3つの基は、1〜4個の炭素基を有するアルキル、フェニル、ナフチル又はその混合物である。さらにより好ましくは、3つの基は、ハロゲン化、好ましくは、フッ化アリール基である。イオン性化学量論的活性剤化合物は、イオン化化合物の残留イオンに連結するが配位していないか、又はわずかに緩く配位する活性プロトン、又はいくつかの他のカチオンを含有してもよい。
【0056】
イオン性触媒は、遷移金属化合物と、遷移金属化合物の加水分解性配位子(X’)との反応時に、反応によって生成したカチオン性遷移金属種を安定化させる([B(C6F5)3(X’)]−)などのアニオンを形成するB(C6F6)3などの活性剤とを反応させることによって調製可能である。触媒は、イオン性化合物又は組成物である活性剤成分によって調製可能であり、それが好ましい。しかしながら、中性化合物を利用する活性剤の調製も本発明によって考察される。
【0057】
本発明のプロセスにおいて使用されるイオン性触媒系の調製において活性剤成分として有用である化合物は、好ましくはプロトンの供与が可能であるブレンステッド酸であるカチオンと、アニオンが比較的大きく(嵩高い)、2つの化合物が組み合わせられるときに形成する活性触媒種を安定化させることが可能である適合性のあるNCAとを含んでなり、且つ前記アニオンは、オレフィン系ジオレフィン系及びアセチレン系不飽和基質又は他の中性ルイス塩基、例えば、エーテル、ニトリルなどによって置換されるように十分易動性であろう。
【0058】
実施形態において、イオン性化学量論的活性剤は、カチオン及びアニオン成分を含み、且つ次式:
(L**−H)(Ad−
(式中、
**は、中性ルイス塩基であり;
Hは、水素であり;
(L**−H)は、ブレンステッド酸又は還元性ルイス酸であり;且つ
d−は、電荷d−を有するNCAであり、且つdは1〜3の整数である)によって表され得る。
【0059】
カチオン成分(L**−H)は、プロトンなどのブレンステッド酸、或いはアルキル化後の触媒からアルキル又はアリールなどの部分をプロトン化又は抽出することが可能なプロトン化ルイス塩基又は還元性ルイス酸を含み得る。
【0060】
活性化カチオン(L**−H)d+は、アルキル化遷移金属触媒前駆体にプロトンを供与し、アンモニウム、オキソニウム、ホスホニウム、シリリウム及びその混合物、好ましくは、メチルアミン、アニリン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、N−メチルアニリン、ジフェニルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、メチルジフェニルアミン、ピリジン、p−ブロモ−N,N−ジメチルアニリン、p−ニトロン−N,N−ジメチルアニリンのアンモニウム、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン及びジフェニルホスフィンからのホスホニウム、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン及びジオキサンなどのエーテルからのオキソニウム、ジエチルチオエーテル及びテトラヒドロチオフェンなどのチオエーテルからのスルホニウム及びその混合物を含む遷移金属カチオンを得ることが可能なブレンステッド酸であり得る。活性化カチオン(L**−H)d+、銀、トロピリウム、カルベニウム、フェロセニウム及び混合物、好ましくは、カルボニウム及びフェロセニウム;最も好ましくは、トリフェニルカルボニウムなどの部分であってもよい。アニオン成分Ad−は、式[Mk+Qn]d−(式中、kは、1〜3の整数であり;nは、2〜6の整数であり;n−k=dであり;Mは、元素周期表の第13族から選択される元素、好ましくは、ホウ素又はアルミニウムであり、且つQは、独立して、水素化物、架橋又は未架橋ジアルキルアミド、ハロゲン化物、アルコキシド、アリールオキシド、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、置換ハロカルビル及びハロ置換ヒドロカルビル基であり、前記Qは、20個までの炭素原子を有するが、ただし、1個以下出現する場合、Qはハロゲン化物であることを条件とする)を有するものが含まれる。好ましくは、それぞれのQは、1〜20個の炭素原子を有するフッ化ヒドロカルビル基であり、より好ましくは、それぞれのQは、フッ化アリール基であり、最も好ましくは、それぞれのQは、ペンタフルオリルアリール基である。適切なAd−の例としては、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第5447895号明細書に開示され二ホウ素化合物も含まれる。
【0061】
補助活性剤と組み合わせてNCA活性剤として使用されてもよいホウ素化合物の例示的であるが、非限定的な例は、三置換アンモニウム塩、例えば、トリメチルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラフェニルボレート、トリ(tert−ブチル)アンモニウムテトラフェニルボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N−ジエチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N−ジメチル−(2,4,6−トリメチルアニリニウム)テトラフェニルボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(sec−ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチル−(2,4,6−トリメチルアニリニウム)テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス−(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラキス−(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス−(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス−(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、ジメチル(tert−ブチル)アンモニウムテトラキス−(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス−(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジエチルアニリニウムテトラキス−(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチル−(2,4,6−トリメチルアニリニウム)テトラキス−(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、トリ(tert−ブチル)アンモニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、N,N−ジエチルアニリニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、N,N−ジメチル−(2,4,6−トリメチルアニリニウム)テトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(ペルフルオロビフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラキス(ペルフルオロビフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(ペルフルオロビフェニル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(ペルフルオロビフェニル)ボレート、トリ(tert−ブチル)アンモニウムテトラキス(ペルフルオロビフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペルフルオロビフェニル)ボレート、N,N−ジエチルアニリニウムテトラキス(ペルフルオロビフェニル)ボレート、N,N−ジメチル−(2,4,6−トリメチルアニリニウム)テトラキス(ペルフルオロビフェニル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラキス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、トリ(tert−ブチル)アンモニウムテトラキス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、N,N−ジエチルアニリニウムテトラキス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、N,N−ジメチル−(2,4,6−トリメチルアニリニウム)テトラキス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、及びジアルキルアンモニウム塩、例えば、ジ−(iso−プロピル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、及びジシクロヘキシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート;及び他の塩、例えば、トリ(o−トリル)ホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(2,6−ジメチルフェニル)ホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トロピリウムテトラフェニルボレート、トリフェニルカルベニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリエチルシリリウムテトラフェニルボレート、ベンゼン(ジアゾニウム)テトラフェニルボレート、トロピリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリエチルシリリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ベンゼン(ジアゾニウム)テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トロピリウムテトラキス−(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス−(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラキス−(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、トリエチルシリリウムテトラキス−(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、ベンゼン(ジアゾニウム)テトラキス−(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、トロピリウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、トリエチルシリリウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、ベンゼン(ジアゾニウム)テトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、トロピリウムテトラキス(ペルフルオロビフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペルフルオロビフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラキス(ペルフルオロビフェニル)ボレート、トリエチルシリリウムテトラキス(ペルフルオロビフェニル)ボレート、ベンゼン(ジアゾニウム)テトラキス(ペルフルオロビフェニル)ボレート、トロピリウムテトラキス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラキス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、トリエチルシリリウムテトラキス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、及びベンゼン(ジアゾニウム)テトラキス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレートである。
【0062】
一実施形態において、NCA活性剤(L**−H)(Ad−)は、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペルフルオロビフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペルフルオロビフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、又はトリフェニルカルベニウムテトラ(ペルフルオロフェニル)ボレートである。
【0063】
Pehlertら、米国特許第7,511,104号明細書には、本発明において有用であり得るNCA活性剤についての追加的詳細が提供されている。これらの詳細は、参照によって本明細書に完全に組み込まれる。
【0064】
使用され得る追加的な活性剤としては、アルモキサン又はNCAと組み合わせたアルモキサンが含まれてよい。一実施形態において、アルモキサン活性剤は活性剤として利用される。アルモキサンは、一般に、R1がアルキル基である、−Al(R1)−O−サブユニットを含有するオリゴマー化合物である。アルモキサンの例としては、メチルアルモキサン(MAO)、変性メチルアルモキサン(MMAO)、エチルアルモキサン及びイソブチルアルモキサンが含まれる。アルキルアルモキサン及び変性アルキルアルモキサンは、抽出可能な配位子がアルキル、ハロゲン化物、アルコキシド又はアミドである場合、特に触媒活性剤として適切である。異なるアルモキサン及び変性アルモキサンの混合物も使用されてよい。
【0065】
触媒補助活性剤は、活性剤と組み合わせて使用される場合、活性触媒が形成されるように、触媒をアルキル化することができる化合物である。補助活性剤としては、アルモキサン、例えばメチルアルモキサン、変性アルモキサン、例えば変性メチルアルモキサン、が修正されたメチルアルモキサンのようなアルモキサンを修正した、及びアルキルアルミニウム、例えば、トリメチルアルミニウム、トリ−イソブチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム及びトリ−イソプロプルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウム、トリ−n−デシルアルミニウム又はトリ−n−ドデシルアルミニウムが含まれてよい。補助活性剤は、典型的に、触媒がジヒドロカルビル又は二水素化物錯体ではない場合、ルイス酸活性剤及びイオン性活性剤と組み合わせて使用される。好ましい活性剤は、酸素を含有しない化合物、例えば、アルキルアルミニウムであり、好ましくはトリ−アルキルアルミニウムである。
【0066】
補助活性剤は、供給原料又は反応器中の不純物を非活性化するための掃去剤として使用されてもよい。掃去剤は、重合原料又は反応媒体中で偶発的に生じる極性汚染物質及び不純物と配位するために十分ルイス酸性である化合物である。そのような不純物は、反応成分のいずれによっても不意図的に導入される可能性があり、且つ触媒活性及び安定性に悪影響を与える。有用な掃去化合物は、有機金属化合物、例えば、トリエチルアルミニウム、トリエチルボラン、トリ−イソブチルアルミニウム、メチルアルモキサン、イソブチルアルミヌモキサン、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウムであり得、活性触媒との悪影響を最小化するために、金属又はメタロイド中心に共有結合した嵩高い置換基を有するものが好ましい。他の有用な掃去剤化合物としては、そのような詳細を参照することによって組み込まれる米国特許第5241025号明細書、欧州特許出願公開第A−0426638号明細書及び国際公開第97/22635号パンフレットに記載されるものが含まれ得る。
【0067】
反応時間又は反応器滞留時間は、通常、使用される触媒の種類、使用される触媒の量、及び所望の変換レベル次第である。(メタロセンとも呼ばれる)異なる遷移金属化合物は異なる活性を有する。高い触媒充填量によって、短い反応時間で高い変換をもたらす。しかしながら、高い触媒使用量によって、製造プロセスが非経済的となり、また反応熱を管理すること、又は反応温度を制御することが困難になる。したがって、必要とされるメタロセンの量及び活性剤の量を最小化するために、最大触媒生産性を有する触媒を選択することが有用である。メタロセン+ルイス酸又はイオン性促進剤とNCA成分の好ましい触媒系に関して、遷移金属化合物の使用は、典型的に、アルファオレフィン供給原料1gあたり0.01マイクログラム〜500マイクログラムの範囲のメタロセン成分である。通常好ましい範囲は、アルファオレフィン供給原料1gあたり0.1マイクログラム〜100マイクログラムのメタロセン成分である。さらに、メタロセンに対するNCA活性剤のモル比は、0.1〜10、好ましくは0.5〜5、好ましくは0.5〜3の範囲にある。アルキルアルミニウムの補助活性剤に関して、メタロセンに対する補助活性剤のモル比は、1〜1000、好ましくは2〜500、好ましくは4〜400の範囲にある。
【0068】
オリゴマー化条件を選択することにおいて、望ましい第1の反応器溶出物を得るために、このシステムは、(触媒とも呼ばれる)遷移金属化合物、活性剤及び補助活性剤を使用する。
【0069】
米国特許出願公開第2007/0043248号明細書及び米国特許出願公開第2010/029242号明細書は、メタロセン触媒、活性剤、補助活性剤、及び本発明において有用となり得る供給原料中でのそのような化合物の適切な比率の追加的な詳細を提供しており、そしてこれらの追加的な詳細は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0070】
オリゴマー化プロセス
溶液、スラリー及びバルクオリゴマー化プロセスなどのシングルサイト−又はメタロセン触媒が本発明において使用されてよい。いくつかの実施形態において、固体触媒が使用される場合、スラリー又は連続固定床又はプラグフロープロセスが適切である。好ましい実施形態において、モノマーは、好ましくは連続撹拌槽反応器又は連続管状反応器中で、溶液相、バルク相又はスラリー相においてメタロセン化合物及び活性剤と接触する。好ましい実施形態において、本明細書において使用されるいずれかの反応器における温度は、−10℃〜250℃、好ましくは30℃〜220℃、好ましくは50℃〜180℃、好ましくは80℃〜150℃である。好ましい実施形態において、本明細書において使用されるいずれかの反応器における圧力は、10.13〜10132.5kPa(0.1〜100気圧/1.5〜1500psi)、好ましくは、50.66〜7600kPa(0.5〜75気圧/8〜1125psi)、最も好ましくは、101.3〜5066.25kPa(1〜50気圧/15〜750psi)である。別の実施形態において、本明細書において使用されるいずれかの反応器における圧力は、101.3〜5,066,250kPa(1〜50,000気圧)、好ましくは、101.3〜2,533,125kPa(1〜25,000気圧)である。別の実施形態において、いずれかの反応器における滞留時間は、1秒〜100時間、好ましくは30秒〜50時間、好ましくは2分〜6時間、好ましくは1〜6時間である。別の実施形態において、溶媒又は希釈剤が反応器に存在する。これらの溶媒又は希釈剤は、通常、供給原料オレフィンと同一様式で前処理される。
【0071】
オリゴマー化は、全ての成分を反応器に添加し、そして部分的又は完全変換のいずれかの変換度まで反応させるバッチモードで実行可能である。その後、触媒を、空気又は水への暴露などのいずれかの可能な手段によって、或いは脱活性剤を含有するアルコール又は溶媒の添加によって脱活性化する。オリゴマー化は、供給原料オレフィンに対する触媒系成分の接触比を最小化するように供給原料及び触媒系成分が連続的及び同時に反応器に添加される半連続操作においても実行可能である。全ての供給原料及び触媒成分が添加された時、あらかじめ決定された段階に反応を進めることができる。次いで、バッチ操作に関して記載されたものと同一の様式での触媒脱活性化によって反応を中止する。オリゴマー化は、触媒系及び供給原料の接触比を維持するように供給原料及び触媒系成分が連続的及び同時に反応器に添加される連続操作においても実行可能である。典型的な連続撹拌槽反応器(CSTR)操作のように、反応生成物を反応器から連続的に引き抜く。反応物の滞在時間は、あらかじめ決定された変換度によって制御される。次いで、典型的に、引き抜かれた生成物を、他の操作と同様の様式で別個の反応器においてクエンチする。好ましい実施形態において、本明細書に記載されるPAOを調製するためのプロセスのいずれも連続プロセスである。
【0072】
生産設備には、1つの単一反応器、又は生産性、製品特性及び一般的なプロセス効率を最大化するために連続して、若しくは平行して、又はその両方で配置されたいくつかの反応器があってよい。触媒、活性剤及び補助活性剤は、溶媒中又はLAO供給原料流中の溶液又はスラリーとして別個に反応器に送達され得るか、或いは反応器の直前にインラインで活性化され得るか、或いは前もって活性化され、そして活性化溶液又はスラリーとして反応器にポンプ送達され得る。オリゴマー化は、モノマー又はいくつかのモノマー、触媒/活性剤/補助活性剤、任意選択的な掃去剤及び任意選択的な調整剤が連続的に単一反応器に添加される単一反応器操作か、上記成分が、連続して連結している2つ以上の反応器のそれぞれに添加される連続反応器操作のいずれかで実行される。触媒成分が連続して第1の反応器に添加されることが可能である。触媒成分が両方の反応器に添加され、1つの成分が第1の反応に添加され、そして別の成分が他の反応器に添加されてもよい。
【0073】
反応器及び関連機器は、通常、適切な反応速度及び触媒性能を保証するために前処理される。反応は通常、触媒系及び供給原料成分が、通常、極性酸素、窒素、硫黄又はアセチレン化合物であるいずれかの触媒脱活性剤又は毒と接触していない不活性雰囲気下で実行される。さらに、本明細書に記載のプロセスのいずれかの一実施形態において、供給原料オレフィン及び/又は溶媒は、過酸化物、酸素又は窒素含有有機化合物又はアセチレン化合物などの触媒毒を除去するために処理される。そのような処理によって、触媒生産性は2倍〜10倍以上増加するであろう。
【0074】
反応時間又は反応器滞留時間は、通常、使用される触媒の種類、使用される触媒の量及び所望の変換レベル次第である。触媒がメタロセンである場合、異なるメタロセンが異なる活性を有する。通常、シクロペンタジエニル環上のアルキル置換、又は架橋の程度が高いほど、触媒生産性が向上する。触媒充填が高いと、短い反応時間で高い変換をもたらす傾向がある。しかしながら、高い触媒使用量によって、プロセスが非経済的となり、また反応熱を管理すること、又は反応温度を制御することが困難になる。したがって、必要とされるメタロセンの量及び活性剤の量を最小化するために、最大触媒生産性を有する触媒を選択することが有用である。
【0075】
米国特許出願公開第2007/0043248号明細書及び米国特許出願公開第2010/0292424号明細書は、メタロセン触媒を使用する許容できるオリゴマー化プロセスについての有意な追加的な詳細を提供しており、そしてこれらのプロセス、プロセス条件、触媒、活性剤、補助活性剤などの詳細は、本開示に記載されるいずれとも一致する限り、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0076】
高温におけるいくつかのメタロセン触媒の低い活性のため、低粘度PAOは、典型的に、より低い温度において添加された水素の存在下でオリゴマー化される。その利点は、水素が連鎖停止剤として作用し、PAOの分子量及び粘度を効果的に減少させるということである。しかしながら、水素は、オレフィンを水素化させ、LAO供給原料及びPAOを飽和させる可能性がある。これによって、LAO又はPAO二量体を、さらなるオリゴマー化プロセスへの供給原料として有効にリサイクル又は使用することが妨げられるであろう。したがって、未反応LAO供給原料及び中間体PAO二量体が、さらなるオリゴマー化プロセスにおける供給原料としての次のリサイクルステップ又は使用のために、それらの不飽和、したがって、それらの反応性を維持するため、連鎖停止反応のために水素を添加することを必要とせずに中間体PAOを製造することが可能であることは従来技術からの改善点である。
【0077】
製造された中間体PAOは、それぞれのアルファオレフィン供給原料の二量体、三量体及び任意選択的に四量体及びさらに高級なオリゴマーの混合物である。この中間体PAO及びその部分は、未反応のモノマーが任意選択的に除去された「第1の反応器溶出物」として互換的に記載される。実施形態において、中間体PAOの二量体部分は、蒸留プロセスを受けていない反応器溶出物であってもよい。別の実施形態において、中間体PAOの二量体部分は、第2の反応器に第1の反応器の少なくとも二量体部分を供給する前に、三量体及び任意選択的なさらに高級なオリゴマー部分から分離するために蒸留プロセスを受けていてもよい。別の実施形態において、中間体PAOの二量体部分は、蒸留物溶出物であってもよい。別の実施形態において、中間体PAOの少なくとも二量体部分は、第2の反応器中に直接供給される。さらなる実施形態において、中間体PAOの三量体部分及び中間体PAOの四量体及びさらに高級なオリゴマー部分は、蒸留によって第1の溶出物から単離することができる。別の実施形態において、中間体PAOは、オリゴマー化の後に別個の異性化プロセスを受けない。
【0078】
本発明において、中間体PAO生成物は、20cSt未満、好ましくは15cSt未満、好ましくは12cSt未満、より好ましくは10cStの100℃における動粘度(KV100)を有する。本発明において、水素化ステップ後の中間体PAO三量体部分は、4cSt未満、好ましくは3.6cSt未満のKV100を有する。実施形態において、水素化ステップ後の中間体PAOの四量体及びより高級なオリゴマー部分は、30cSt未満のKV100を有する。実施形態において、中間体PAO二量体部分が除去された後、残りの中間体PAOオリゴマー部分は25cSt未満のKV100を有する。
【0079】
中間体PAO三量体部分は、125より高く、好ましくは130より高いVIを有する。実施形態において、中間体PAOの三量体及びより高級なオリゴマー部分は、130より高い、好ましくは135より高いVIを有する。実施形態において、中間体PAOの四量体及びより高級なオリゴマー部分は、150より高い、好ましくは155より高いVIを有する。
【0080】
中間体PAO三量体部分は、15重量%未満、好ましくは14重量%未満、好ましくは13重量%未満、好ましくは12重量%未満のNoack揮発性を有する。実施形態において、中間体PAO四量体及びより高級なオリゴマー部分は、8重量%未満、好ましくは7重量%未満、好ましくは6重量%未満のNoack揮発性を有する。
【0081】
中間体PAO二量体部分は、120〜600の範囲の数平均分子量を有する。
【0082】
中間体PAO二量体部分は、少なくとも1つの炭素−炭素不飽和二重結合を有する。この中間体PAO二量体の一部は、三置換ビニレンを含んでなる。この三置換ビニレンは、次の構造:
【化5】
(式中、破線は、不飽和二重結合が位置し得る2つの可能な位置を表し、且つRx及びRyは、独立して、C〜C21アルキル基、好ましくは線形C〜C21アルキル基から選択される)によって表される、共存し得、そして不飽和二重結合の位置に関して異なり得る2つの可能な異性体構造を有する。
【0083】
いずれの実施形態においても、中間体PAO二量体は、20重量%より高い、好ましくは25重量%より高い、好ましくは30重量%より高い、好ましくは40重量%より高い、好ましくは50重量%より高い、好ましくは60重量%より高い、好ましくは70重量%より高い、好ましくは80重量%より高い上記一般構造によって表される三置換ビニレンオレフィンを含有する。
【0084】
好ましい実施形態において、Rx及びRyは、独立して、C〜C11アルキル基である。好ましい実施形態において、Rx及びRyは両方ともCである。好ましい実施形態において、中間体PAO二量体は、次の構造:
【化6】
(式中、破線は、不飽和二重結合が位置し得る2つの可能な位置を表す)によって表される三置換ビニレン二量体の一部を含んでなる。
【0085】
実施形態において、中間体PAOは、70重量%未満、好ましくは60重量%未満、好ましくは50重量%未満、好ましくは40重量%未満、好ましくは30重量%未満、好ましくは20重量%未満の次式:
RqRzC=CH
(式中、Rq及びRzは、独立して、アルキル基、好ましくは、線形アルキル基、又は好ましくはC〜C21線形アルキル基から選択される)によって表される二置換ビニリデンを含有する。
【0086】
第1のオリゴマー化の一の実施形態は、非限定的な例として以下に例証及び説明される。最初に、次の反応は、トリn−オクチルアルミニウムによるメタロセン触媒のアルキル化、それに続くN,N−ジメチルアニリウムテトラキス(ペンタ−フルオロフェニル)ボレート(1−):
【化7】
による触媒の活性化を示す。
【0087】
触媒活性化の後に、以下に示されるように1,2挿入プロセスが実行されてよい。
【化8】
【0088】
以下に示されるように、1,2末端鎖から除去の結果として、ビニル及びビニリデン鎖末端が形成され得る。以下に示されるこのような連鎖停止反応機構は、この反応相の間に生長反応と競争する。
【化9】
【0089】
或いは触媒活性化の後に、以下に示されるように2,1挿入プロセスが実行されてよい。
【化10】
【0090】
2,1挿入後、活性中心に対するアルファアルキル分枝鎖の近接のため、除去は生長反応より優位である(上記反応において「A」の文字で識別される領域を参照のこと)。換言すれば、より混雑した活性部位は生長反応を阻害し、そして除去を強化する。2,1挿入は、ユニークなメチレン−メチレン単位からのシグナルを使用して核磁気共鳴(NMR)によって検出される(上記反応において「B」の文字で識別される領域を参照のこと)。
【0091】
特定のメタロセン触媒によって、以下に示されるように、2,1挿入のより高い発生、並びにビニリデン鎖末端よりも優位である2,1末端鎖からの除去がもたらされる。
【化11】
【0092】
次のオリゴマー化
第1のオリゴマー化からの中間体PAO二量体を次のオリゴマー化への単独のオレフィン供給原料として使用してもよく、又はそれを第1のオリゴマー化のためのオレフィン出発材料として使用された種類のアルファオレフィン供給原料と一緒に使用してもよい。未反応LAOを含む第1のオリゴマー化からの溶出物の他の部分も、次のオリゴマー化への供給原料として使用されてもよい。潤滑油ベースストックとして使用される留分又は次のオリゴマー化のための供給原料として使用される留分次第の値に切点を設定して、中間体PAO二量体は蒸留によって全中間体PAO生成物から適切に分離され得る。第1のオリゴマー化に関して好ましいものと同じ特性を有するアルファオレフィンは、次のオリゴマー化のために好ましい。典型的に、供給原料中の中間体PAO二量体留分対アルファオレフィン留分の比率は、重量で90:10〜10:90、より通常、80:20〜20:80である。しかしながら、最終生成物の特性及び分布は、一部において出発材料次第で、アルファオレフィンと等しい比率で中間体PAO二量体を供給することによって好ましく影響を受けるため、好ましくは、中間体PAO二量体は、オレフィン系供給原料の約50モル%を構成するであろう。第2の反応器中の次のオリゴマー化のための温度は、15〜60℃の範囲である。
【0093】
いずれのオリゴマー化プロセス及び触媒も、次のオリゴマー化のために使用されてよい。次のオリゴマー化のための好ましい触媒は、非遷移金属触媒、好ましくはルイス酸触媒である。米国特許出願公開第2009/0156874号明細書及び同第2009/0240012号明細書は、供給原料、組成物、触媒及び助触媒並びにプロセス条件の詳細が参照される、次のオリゴマー化の好ましいプロセスを記載している。米国特許出願公開第2009/0156874号明細書及び米国特許出願公開第2009/0240012号明細書のルイス酸触媒としては、Friedel−Crafts触媒として通常使用される金属及びメタロイドハロゲン化物が含まれ、例として、単独であるか、又はプロトン促進剤/活性剤と一緒のAlCl、BF、AlBr、TiCl及びTiClが挙げられる。三フッ化ホウ素が一般に使用されるが、それがプロトン促進剤と一緒に使用されない限り、特に適切ではない。有用な助触媒は周知であり、そして米国特許出願公開第2009/0156874号明細書及び米国特許出願公開第2009/0240012号明細書において詳細に記載される。ルイス酸触媒、例えば、合成又は天然ゼオライト、酸性粘土、ポリマー酸性樹脂、非晶質固体触媒、例えば、シリカアルミナ、並びにヘテロポリ酸、ジルコン酸タングステン、モリブデン酸タングステン、バナジン酸タングステン、リンタングステン酸塩及びモリブドタングストバナドゲルマネート(molybdotungstovanadogermanate)(例えば、WOx/ZrO、WOx/MoO)も使用されてよいが、これらは経済的に一般に好ましくはない。追加的なプロセス条件及び他の詳細は、米国特許出願公開第2009/0156874号明細書及び米国特許出願公開第2009/0240012号明細書に詳細に記載されており、そして参照によって本明細書に組み込まれる。
【0094】
好ましい実施形態において、次のオリゴマー化は、BF、並びにアルコール及びアルキルアセテートから選択される少なくとも2種の異なる活性剤の存在下で実行される。アルコールはC〜C10アルコールであり、そしてアルキルアセテートはC〜C10アルキルアセテートである。好ましくは、両補助活性剤は、C〜Cベースの化合物である。補助活性剤の2つの最も望ましい組合せは、i)エタノール及び酢酸エチル、並びにii)n−ブタノール及びn−酢酸ブチルである。アルキルアセテートに対するアルコールの比率は、0.2〜15、又は好ましくは0.5〜7の範囲である。
【0095】
本発明の中間体PAOの構造は、次のオリゴマー化において反応する場合、中間体PAOが優先的に任意選択的なLAOと反応し、高い収率において二量体及びLAOの共二量体を形成するようなものである。これによって、所望のPAO生成物の高い変換率及び収率レートが可能となる。実施形態において、次のオリゴマー化からのPAO生成物は、主に二量体及びそれぞれのLAO供給原料の共二量体を含んでなる。両オリゴマー化ステップのためのLAO供給原料が1−デセンである実施形態において、より高級なオリゴマー中への中間体C20 PAO二量体の組み込みは80%より高く、LAOの変換は95%より高く、そして全生成物混合物中のC30生成物の収率%は75%より高い。LAO供給原料が1−オクテンである別の実施形態において、より高級なオリゴマー中へのPAO二量体の組み込みは85%より高く、LAOの変換は90%より高く、そして全生成物混合物中のC28生成物の収率%は70%より高い。供給原料が1−ドデセンである別の実施形態において、より高級なオリゴマー中へのPAO二量体の組み込みは90%より高く、LAOの変換は75%より高く、そして全生成物混合物中のC32生成物の収率%は70%より高い。
【0096】
実施形態において、モノマーは、第2の反応器中の供給原料として任意選択的である。別の実施形態において、第1の反応器溶出物は未反応モノマーを含んでなり、そして未反応モノマーは第2の反応器に供給される。別の実施形態において、モノマーは第2の反応器中に供給され、そしてモノマーは、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン及び1−テトラデセンを含む群から選択されるLAOである。別の実施形態において、次のオリゴマー化において製造されるPAOは、中間体PAO二量体及び1種のみのモノマーから誘導される。別の実施形態において、次のオリゴマー化において製造されるPAOは、中間体PAO二量体及び2種以上のモノマー、又は3種以上のモノマー、又は4種以上のモノマー、又は5種以上のモノマーから誘導される。例えば、中間体PAO二量体及びC、C10、C12−LAO混合物、又はC、C、C、C、C10、C11、C12、C13、C14−LAO混合物、又はC、C、C、C10、C12、C14、C16、C18−LAO混合物を供給原料として使用することができる。別の実施形態において、次のオリゴマー化において製造されるPAOは、30モル%未満、好ましくは20モル%未満、好ましくは10モル%未満、好ましくは5モル%未満、好ましくは3モル%未満、好ましくは0モル%のC、C及びCモノマーを含んでなる。特に、別の実施形態において、次のオリゴマー化において製造されるPAOは、30モル%未満、好ましくは20モル%未満、好ましくは10モル%未満、好ましくは5モル%未満、好ましくは3モル%未満、好ましくは0モル%のエチレン、プロピレン及びブテンを含んでなる。
【0097】
次のオリゴマー化において製造されるPAOは、二量体、三量体、並びに任意選択的に四量体及びより高級なオリゴマーの混合物であり得る。このPAOは、それから未反応モノマーが任意選択的に除去され得、そして第2の反応器に戻されてリサイクルされ得る「第2の反応器溶出物」として互換的に記載される。中間体PAO二量体の所望の特性によって、第2の反応器溶出物中の中間体PAO二量体及びLAOの共二量体の高い収率が可能となる。非常に低粘度のPAOが非常に高い収率で得られ、そしてこれらのPAOが、低流動点、秀逸なNoack揮発性及び非常に高い粘度指数を含めて優れた流動学的特性を有するため、第2の反応器溶出物中のPAOは特に注目に値する。
【0098】
実施形態において、中間体又は次のオリゴマー化における触媒がメタロセン触媒である場合、このPAOは、痕跡量の遷移金属化合物を含有していてもよい。痕跡量の遷移金属化合物は、本開示の目的に関して、PAOに存在する遷移金属化合物又は第4族金属のいずれかの量として定義される。第4族金属の存在は、ASTM 5185又は当該技術において周知の他の方法によってppm又はppbレベルで検出され得る。
【0099】
好ましくは、第2の反応器溶出物PAOは、C28〜C32部分が第2の反応器溶出物の少なくとも65重量%、好ましくは少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも80重量%であるC28〜C32の炭素数を有する部分を有する。
【0100】
PAOの100℃における動粘度は、10cSt未満、好ましくは6cSt未満、好ましくは4.5cSt未満、好ましくは3.2cSt未満、又は好ましくは2.8〜4.5cStの範囲である。PAOのC28部分の100℃における動粘度は、3.2cSt未満である。実施形態において、PAOのC28〜C32部分の100℃における動粘度は、10cSt未満、好ましくは6cSt未満、好ましくは4.5cSt未満、そして好ましくは2.8〜4.5cStの範囲である。
【0101】
実施形態において、PAOの流動点は、−40℃未満、好ましくは−50℃未満、好ましくは−60℃未満、好ましくは−70℃未満、又は好ましくは−80℃未満である。PAOのC28〜C32部分の流動点は、−30℃未満、好ましくは−40℃未満、好ましくは−50℃未満、好ましくは−60℃未満、好ましくは−70℃未満、又は好ましくは−80℃未満である。
【0102】
PAOのNoack揮発性は、9.0重量%以下、好ましくは8.5重量%以下、好ましくは8.0重量%以下、又は好ましくは7.5重量%以下である。PAOのC28〜C32部分のNoack揮発性は、19重量%以下、好ましくは14重量%以下、好ましくは12重量%以下、好ましくは10重量%以下、又は好ましくは9重量%以下である。
【0103】
PAOの粘度指数は、121より高く、好ましくは125より高く、好ましくは130より高く、又は好ましくは136より高い。PAOの三量体又はC28〜C32部分の粘度指数は、120より高く、好ましくは125より高く、好ましくは130より高く、又はより好ましくは少なくとも135である。
【0104】
PAO又はPAOの部分の−25℃におけるコールドクランクシミュレーター値(CCS)は、500cP以下、好ましくは450cP以下、好ましくは350cP以下、好ましくは250cP以下、好ましくは200〜450cPの範囲、又は好ましくは100〜250cPの範囲である。
【0105】
実施形態において、PAOは、3.2cSt以下の100℃における動粘度及び19重量%以下のNoack揮発性を有する。別の実施形態において、PAOは、4.1cSt以下の100℃における動粘度及び9重量%以下のNoack揮発性を有する。
【0106】
そのような高い収率においてそのような低いNoack揮発性を有するそのような低粘度PAOを達成する能力は特に注目に値し、そして次のオリゴマー化プロセスにおいてそれを特に望ましいものにさせる特性を有する中間体PAO三置換ビニレン二量体に大いに帰因する。
【0107】
本発明によって適用可能な全反応スキームは、以下に示される通りであってよく、最初のLAO供給原料から出発し、そして次のオリゴマー化のための供給原料として使用される中間体PAO二量体を通過する。
【化12】
【0108】
次のオリゴマー化からの潤滑油範囲オリゴマー生成物は、いずれかの残留不飽和を除去するため、そして生成物を安定化するために、潤滑油ベースストックとして使用する前に望ましくは水素化される。任意選択的な水素化は、従来のPAOの水素処理に対する従来的な様式で実行され得る。いずれの水素化よりも前に、PAOは、(本明細書中、後述される)炭素NMRによって決定されるように、少なくとも10重量%の四置換オレフィンから構成され;他の実施形態において、炭素NMRによって決定されるように、四置換の量は少なくとも15重量%、又は少なくとも20重量%である。四置換オレフィンは、次の構造:
【化13】
を有する。さらに、いずれの水素化よりも前に、PAOは、少なくとも60重量%の三置換オレフィン、好ましくは少なくとも70重量%の三置換オレフィンから構成される。
【0109】
製造された中間体PAO及び第2の反応器のPAO、特に超低粘度のものは、それらだけで、或いはグループII、グループII+、グループIII、グループIII+、又はCO/H合成ガスからのFisher−Tropsch炭化水素合成からのワックス留分の水素異性化から誘導される潤滑油ベースストック、又は他のグループIV若しくはグループVベースストックなどの他の流体とブレンドすることによって、高性能自動車エンジン油配合物用に特に適切である。それらは、超低粘度及び低粘度油と呼ばれる高性能工業用油配合物の好ましいグレードでもある。さらに、それらは、石けん、清浄剤、クリーム、ローション、スティック、シャンプー、清浄剤などのパーソナルケア用途での使用にも適切である。
【0110】
潤滑油
上記の本開示のメチルパラフィン潤滑油ベースストックブレンドは、主要量のメチルパラフィン潤滑油ベースストックブレンドへの少量の1種以上の潤滑油添加剤の添加によって潤滑油に配合されてよい。メチルパラフィン潤滑油ベースストックは、主要ベースストックとして本開示の潤滑油中に存在することができる。したがって、メチルパラフィン潤滑油ベースストックは、全配合潤滑油中に55〜99重量%、又は60〜97重量%、又は65〜95重量%、又は70〜90重量%、又は75〜85重量%、又は77〜83重量%の量で存在することが可能である。1種以上の潤滑油添加剤は、本開示の潤滑油の少量として存在する。したがって、潤滑油添加剤は、全配合潤滑油中に1〜45重量%、又は3〜40重量%、又は5〜35重量%、又は10〜30重量%、又は15〜25重量%、又は17〜23重量%の量で存在することが可能である。潤滑油は、主要量のメチルパラフィン潤滑油ベースストックブレンドを含む。
【0111】
本開示のメチルパラフィン潤滑油は、ASTM D445又はASTM D7042によって決定される、2.0〜6.0cSt、又は2.5〜5.5cSt、又は3.0〜5.0cSt、又は3.5〜4.5cSt、又は3.7〜4.3cStの100℃における粘度(Kv100)を有する。本開示のメチルパラフィン潤滑油は、ASTM D445又はASTM D7042によって決定される、5.0cSt〜25.0cSt、又は7.0〜23.0cSt、又は9.0〜21.0cSt、又は10.0〜20.0cSt、又は11.0〜19.0cSt、又は12.0〜18.0cSt、又は13.0〜17.0cSt、又は14.0〜16.0cStの粘度(Kv40)を有する。
【0112】
本開示のメチルパラフィン潤滑油は、ASTM D4683によって決定される、約2.3cP未満、又は約2.2cP未満、又は約2.1cP未満、又は約2.0cP未満、又は約1.9cP未満、又は約1.8cP未満、又は約1.7cP未満、又は1.6cP未満、又は1.5cP未満、又は1.4cP未満、又は1.3cP未満、又は1.2cP未満、又は1.1cP未満、又は1.0cP未満の150℃における高温高せん断(HTHS)粘度を有する。
【0113】
本開示のメチルパラフィン潤滑油は、ASTM D5800によって決定される、約10〜約90パーセントの250℃におけるNoack揮発性を有し得る。或いは、メチルパラフィン潤滑油は、ASTM D5800によって決定される、15〜85%、又は20〜80%、又は25〜75%、又は30〜70%、又は35〜65%、又は40〜60%、又は45〜55%の250℃におけるNoack揮発性を有し得る。
【0114】
潤滑油の粘度−温度の関係性は、特定の応用のために潤滑油を選択する際に考慮されなければならない重要な基準の1つである。粘度指数(VI)は、所与の温度範囲内での油の粘度の変化を示す経験的な無名数である。温度による粘度の比較的大きい変化を示す流体は、低い粘度指数を有すると言われる。例えば、低VI油は、高VI油より速く高温で希薄化するであろう。通常、高VI油は、より高い温度においてより高い粘度を有し、これはより良好又はより厚い潤滑膜及び接触する機械素子のより良好な保護を意味するため、より望ましい。
【0115】
本開示のメチルパラフィン潤滑油は、ASTM D2270によって決定される、約100〜約200の粘度指数を有し得る。或いは、メチルパラフィン潤滑油は、ASTM D2270によって決定される、100〜190、又は120〜180、又は130〜170、又は140〜160、又は145〜155の粘度指数を有し得る。
【0116】
驚くべきことに、本明細書の実施例において示されるように、主要成分としてこれらのメチルパラフィンベースストックブレンドを利用する配合エンジン油が、高温で実行されたThermo−Oxidation Engine Oil Simulation Test(TEOST 33C ASTM D6335)からのそれらの一貫した低い堆積物形成によって確認されるように、良好な堆積物制御の利点と一緒に予想外に高い熱及び酸化安定性を有することが発見された。
【0117】
本開示のメチルパラフィン潤滑油は、メチルパラフィンベースストックブレンド中に組み込まれたC10二量体及びC10三量体の酸化安定性に対して、酸化安定性における特に相乗的な改善をもたらす。特に、本開示のメチルパラフィン潤滑油は、60〜150時間、又は70〜140時間、又は80〜130時間、又は90〜120時間、又は100〜110時間の酸化安定性(200%KV40増加までの時間に対する210時間試験)を有する。
【0118】
本開示のメチルパラフィン潤滑油は、ASTM D6335による200〜480℃における2時間のTEOST 33C試験によって測定される秀逸な堆積物形成に対する抵抗も提供する。特に、本開示のメチルパラフィン潤滑油は、メチルパラフィンベースストックブレンド中に組み込まれたC10二量体及びC10三量体の堆積物形成に対して、堆積物形成における特に相乗的な改善をもたらす。本開示のメチルパラフィン潤滑油は、10〜30mg、又は12〜28mg、又は14〜26mg、又は16〜24mg、又は18〜22mg、又は19〜21mgの範囲の全堆積物を提供する。
【0119】
本開示のメチルパラフィン潤滑油は、0.0050〜0.0090の範囲のMTM平均トラクション係数(100℃、1GPa、2m/秒及び0〜100% SRRにおける)を有し得る。或いは、メチルパラフィン潤滑油は、0.0055〜0.0085、又は0.0060〜0.0080、又は0.0065〜0.0075の範囲のMTM平均トラクション係数を有し得る。MTM平均トラクション係数は燃料効率と関連し、この値が低いと改善された燃費が提供される。本開示のメチルパラフィン潤滑油は、潤滑油の主要成分としてグループII、グループIII、又はグループIII(GTL)ベースストックを利用する従来の潤滑油よりも、20〜180%低い、又は40〜120%低い、又は60〜100%低い、又は70〜90%低い、又は75〜85%低いMTM平均トラクション係数を有する。
【0120】
本開示のメチルパラフィン潤滑油は、ASTM D5950によって決定される、約−10〜−60℃の流動点を有し得る。或いは、メチルパラフィン潤滑油は、ASTM D5950によって決定される、−15〜−55℃、又は−20〜−50℃、又は−25〜−45℃、又は−30〜−40℃、又は−32〜−47℃の流動点を有し得る。
【0121】
本開示のメチルパラフィン潤滑油は、ASTM D5293によって決定される、700〜1000mPa.s、又は750〜950mPa.s、又は800〜900mPa.s、又は830〜880mPa.sの範囲のコールドクランクシミュレーター(CCS)粘度(−35℃)も有し得る。
【0122】
本開示のメチルパラフィン潤滑油に組み込まれる1種の特に好ましい潤滑油添加剤は、粘度調整剤である。ポリメタクリレート(PMA)粘度調整剤(例えば、Evnoik IndustriesによるViscoplex3−200)及び炭化水素(HC)水素化ポリイソプレン星形ポリマー型粘度調整剤(InfineumによるSV600)が、2種の特に好ましい粘度調整剤である。粘度調整剤を有する本開示のメチルパラフィン潤滑油は、ASTM D2270によって決定される、約200〜約350の粘度指数を有し得る。或いは、粘度調整剤を有する本開示のメチルパラフィン潤滑油は、ASTM D2270によって決定される、220〜340、又は240〜330、又は260〜320、又は270〜310、又は280〜300の粘度指数を有し得る。
【0123】
本開示のメチルパラフィン潤滑油は、少量成分としてコベースストックを含んでもよい。コベースストックは、5〜40重量%、又は10〜35重量%、又は15〜30重量%、又は20〜25重量%で潤滑油に含まれ得る。
【0124】
本開示のメチルパラフィン潤滑油は、ASTM D4683によって決定される、約2.3cP未満の高温高せん断(HTHS)粘度、及びASTM D5800によって決定される、約15〜約90パーセントのNoack揮発性を有する。
【0125】
本開示の例示的なメチルパラフィン潤滑油は、ASTM D445又はASTM D7042によって決定される、約1cSt〜約8cSt、より好ましくは約2cSt〜約6cSt、さらにより好ましくは約1cSt〜約4cSt、なおさらにより好ましくは約2cSt〜約3cStの100℃における粘度(Kv100)、ASTM D2270によって決定される、約−100〜約300、より好ましくは約0〜約200、さらにより好ましくは約25〜約150、なおさらにより好ましくは約100〜約170の粘度指数(VI)、ASTM D5800によって決定される、90パーセント以下、より好ましくは75パーセント以下、さらにより好ましくは50パーセント以下、なおさらにより好ましくは40パーセント以下、なおさらにより好ましくは30パーセント以下のNoack揮発性、及びASTM D4683によって決定される約2.5cP未満、より好ましくは約2.25cP未満、なおより好ましくは約2.0cP未満の高温高せん断(HTHS)粘度を有する。
【0126】
本開示の好ましいメチルパラフィン潤滑油は、ASTM D4683によって決定される約1.7cP未満の高温高せん断(HTHS)粘度、及びASTM D5800によって決定される、約15〜約90パーセントのNoack揮発性を有する。
【0127】
本開示のメチルパラフィン潤滑油は、商業的に入手可能な低粘度グループIV PAO合成ベースストック(例えば、SpectraSyn(商標)2、SpectraSyn(商標)4)又はグループVエステルベースストック(例えば、オレイン酸2−エチルヘキシル、アジピン酸2−エチルヘキシル、アジピン酸イソデシル、フタル酸2−エチルヘキシル、nC8/nC10ネオペンチルグリコールエステル、nC7トリメチロールプロパンエステルなど)と比較した場合、より望ましい粘度−揮発性特徴を有する。本開示のメチルパラフィンベースストックは、同等の揮発性において商業的に入手可能なエステルより低い粘度を有する。さらに、本開示のメチルパラフィンベースストックは、同等の粘度において商業的に入手可能なエステルより低い揮発性を有する。
【0128】
驚くべきことに、本明細書の実施例において示されるように、主要成分として本開示のこれらのメチルパラフィンベースストックを利用する配合エンジン油が、高温で実行されたThermo−Oxidation Engine Oil Simulation Test(TEOST 33C ASTM D6335)からのそれらの一貫した低い堆積物形成によって確認されるように、良好な堆積物制御の利点と一緒に予想外に高い熱及び酸化安定性を有することが発見された。比較すると、商業的に入手可能なエステルベースストック(例えば、アジピン酸ジイソオクチル)をベースとする同一配合物は、同一試験において高い堆積物形成を示す。
【0129】
本明細書の実施例において示されるように、本開示のメチルパラフィンベースストックは、商業的に入手可能な低粘度グループIV PAO合成ベースストック(例えば、SpectraSyn(商標)2、SpectraSyn(商標)4)又はグループII及びグループIIIベースストックと比較した場合、より望ましい粘度−揮発性特徴を有する。
【0130】
驚くべきことに、本明細書の実施例において示されるように、主要成分として本開示のこれらのメチルパラフィンベースストックを利用する配合エンジン油が、高温で実行されたThermo−Oxidation Engine Oil Simulation Test(TEOST 33C ASTM D6335)からのそれらの一貫した低い堆積物形成によって確認されるように、良好な堆積物制御の利点と一緒に予想外に高い熱及び酸化安定性を有することが発見された。比較すると、商業的に入手可能なエステルベースストック(例えば、アジピン酸ジイソオクチル)をベースとする同一配合物は、同一試験において高い堆積物形成を示す。
【0131】
本開示のメチルパラフィンベースストックは、商業的に入手可能な低粘度グループIV PAO合成ベースストック(例えば、SpectraSyn(商標)2、SpectraSyn(商標)4)又はグループVエステルベースストック(例えば、オレイン酸2−エチルヘキシル、アジピン酸2−エチルヘキシル、アジピン酸イソデシル、フタル酸2−エチルヘキシル、nC8/nC10ネオペンチルグリコールエステル、nC7トリメチロールプロパンエステルなど)又は商業的に入手可能な低粘度グループII及びグループIIIベースストックと比較した場合、より望ましい粘度−揮発性特徴を有する。
【0132】
驚くべきことに、本明細書の実施例において示されるように、主要成分として本開示のこれらのメチルパラフィンベースストックを利用する配合エンジン油が、予想外に良好なトラクション特性を有することが発見された。
【0133】
本明細書の実施例において示されるように、本開示のメチルパラフィンベースストックは、商業的に入手可能な低粘度グループIV PAO合成ベースストック(例えば、SpectraSyn(商標)2、SpectraSyn(商標)4)又はグループIIベースストック若しくはグループIIIベースストックと比較した場合、より望ましい粘度−揮発性特徴を有する。
【0134】
上記のプロセスによって形成された組成物を特徴づけるために利用することができる技術の例としては、限定されないが、分析用ガスクロマトグラフィー、核磁気共鳴、熱重量分析(TGA)、誘導結合プラズマ質量分析、示差走査熱量測定(DSC)、揮発性及び粘度測定が含まれる。
【0135】
本開示は、優れた酸化安定性を特徴とする、エンジン油、ドライブライン油として、及び他の用途において有用である潤滑油を提供する。潤滑油は、本開示のメチルパラフィンベースストックをベースとする。本明細書及び請求項において、ベース油及びベースストックという用語は互換的に使用される。
【0136】
別の態様において、油操作温度が低下した場合、高VI油の粘度は、低VI油の粘度ほど増加しないであろう。低VI油の極めて高い粘度は機械操作の効率を減少させるため、これは有利である。したがって、高VI(HVI)油は、高温及び低温の両操作における性能利点を有する。VIは、ASTM D2270によって決定される。VIは、ASTM D445を使用して、40℃及び100℃において測定される動粘度と関連する。
【0137】
潤滑油コベースストック
本開示のメチルパラフィン潤滑油は、少量成分としてコベースストックを含んでもよい。本潤滑油のコベースストック成分は、典型的に1〜50パーセント、又はより好ましくは5〜45パーセント、又はより好ましくは10〜40パーセント、又はより好ましくは20〜30パーセントであろう。
【0138】
本出願のコベースストック成分として機能することができる広範囲の潤滑油が当該技術分野において既知である。本開示においてコベースストック成分として有用である潤滑油は、天然油及び合成油の両方である。合成油(又はその混合物)を未精製、精製又は再精製の状態で使用することもできる(後者は再生利用又は再処理油としても既知である)。未精製油は、天然又は合成供給源から直接得られるものであり、且つ追加的な精製を行わずに使用される。これらには、乾留操作から直接得られる頁岩油、一次蒸留から直接得られる石油、及びエステル生成プロセスから直接得られるエステル油が含まれる。精製油は、少なくとも1つの潤滑油特性を改善するための1回以上の精製工程を受けることを除き、未精製油に関して議論された油に類似する。当業者は多くの精製プロセスに精通している。これらのプロセスには、溶媒抽出、二次蒸留、酸抽出、塩基抽出、ろ過及びパーコレーションが含まれる。再精製油は、精製油に類似であるが、以前に使用されたことのある油を供給ストックとして使用する。
【0139】
グループI、II、III、IV及びVは、潤滑油ベース油のガイドラインを作成するためにAmerican Petroleum Institute(API Publication 1509;www.API.org)によって開発及び定義されたベース油ストックの広範囲の分類である。グループIベースストックは、一般に約80〜120の粘度指数を有し、約0.03%より多い硫黄及び約90%未満の飽和を含有する。グループIIベースストックは、一般に約80〜120の粘度指数を有し、約0.03%以下の硫黄及び約90%以上の飽和を含有する。グループIIIストックは、一般に約120より高い粘度指数を有し、約0.03%以下の硫黄及び約90%より多い飽和を含有する。グループIVは、ポリアルファオレフィン(PAO)を含む。グループVベースストックは、グループI〜IVに含まれないベースストックを含む。以下の表に、これらの5つのグループのそれぞれの特性を要約する。
【0140】
【表1】
【0141】
天然油には、動物油、植物油(例えば、ヒマシ油及びラード油)、並びに鉱油が含まれる。好ましい熱酸化安定性を有する動物及び植物油を使用することができる。天然油の中で、鉱油が好ましい。鉱油は、それらの原油産地によって、例えば、それらがパラフィン系、ナフテン系又は混合パラフィン−ナフテン系であるかどうかによって大きく異なる。石炭又は頁岩から誘導される油も本開示において有用である。天然油は、それらの製造及び精製のために使用される方法によって、例えば、それらの蒸留範囲によって、及びそれらが直留であるか、又は分解されたか、水素化精製されたか、又は溶媒抽出されたかどうかによっても異なる。
【0142】
グループII及び/又はグループIII水素化処理又は水素化分解ベースストック、並びにポリアルファオレフィン、アルキル芳香族及び合成エステルなどの合成油、すなわち、グループIV及びグループV油も周知のベースストック油である。
【0143】
合成油には、重合及び共重合オレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレンイソブチレンコポリマー、エチレン−オレフィンコポリマー及びエチレン−アルファオレフィンコポリマー)などの炭化水素油が含まれる。ポリアルファオレフィン(PAO)油ベースストック、グループIV APIベースストックは、一般に使用される合成炭化水素油である。例として、C、C10、C12、C14又はそれらの混合物から誘導されるPAOが利用されてもよい。例えば、参照によって全体が本明細書に組み込まれる米国特許第4,956,122号明細書、同第4,827,064号明細書及び同第4,827,073号明細書を参照されたい。グループIV油、すなわち、PAOベースストックは、好ましくは130より高い、より好ましくは135より高い、さらにより好ましくは140より高い粘度指数を有する。
【0144】
エステルは、本開示の潤滑油において有用となり得る。付加的な溶解作用及びシール適合性特徴は、モノアルカノールとの二塩基酸のエステル及びモノカルボン酸のポリオールエステルなどのエステルの使用によって確保され得る。前者の種類のエステルには、例えば、フタル酸、コハク酸、セバシン酸、フマル酸、アジピン酸、リノール酸二量体、マロン酸、アルキルマロン酸、アルケニルマロン酸などのジカルボン酸と、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコールなどの様々なアルコールとのエステルが含まれる。これらの種類のエステルの具体的な例としては、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジ(2−エチルヘキシル)、フマル酸ジ−n−ヘキシル、セバシン酸ジオクチル、アゼライン酸ジイソオクチル、アゼライン酸ジイソデシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジデシル、セバシン酸ジエイコシルなどが含まれる。
【0145】
特に有用な合成エステルは、1種以上の多価アルコール、好ましくはヒンダードポリオール、例えば、ネオペンチルポリオール;例えば、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、2−メチル2プロピル−1,3−プロパンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール及びジペンタエリトリトールと、少なくとも4個の炭素原子を含有するアルカノン酸、好ましくはC〜C30酸、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸及びベヘン酸を含む飽和直鎖脂肪酸、又は対応する分枝鎖脂肪酸若しくは不飽和脂肪酸、例えば、オレイン酸、或いはこれらの材料のいずれかの混合物との反応によって得られるものである。
【0146】
エステルは、本開示の潤滑油によって提供される改善された耐摩耗性及び耐食性が悪影響を及ぼさないような量で使用されるべきである。
【0147】
非従来型又は非慣例型ベースストック及び/又はベース油としては、(1)1種以上の気体−液体(GTL)材料、並びに(2)合成ワックス、天然ワックス又はワックス状供給原料及び/又は非鉱油ワックス状供給ストック、例えば、ガス油、スラックワックス(天然油、鉱油又は合成油、例えばFischer−Tropsch供給ストックの溶媒脱蝋から誘導されるもの)、天然ワックス、及びワックス状ストック、例えば、ガス油、ワックス状燃料水素化分解装置残留物、ワックス状ラフィネート、水素化分解生成物、熱分解生成物、脚油若しくは他の鉱物、鉱油、又は非石油誘導ワックス状材料、例えば、石炭液化から受け取られたワックス状材料若しくは頁岩油、約20以上、好ましくは約30以上の炭素数を有する線形又は分枝鎖ヒドロカルビル化合物及びそのようなベースストック及び/又はベース油の混合物から誘導される水素脱蝋化又は水素異性化/触媒(及び/又は溶媒)脱蝋化べースストック及び/又はベース油から誘導されるベースストック及び/又はベース油の1種又は混合物が含まれる。
【0148】
GTL材料は、水素、二酸化炭素、一酸化炭素、水、メタン、エタン、エチレン、アセチレン、プロパン、プロピレン、プロピン、ブタン、ブチレン及びブチンなどの供給ストックとしての気体状炭素含有化合物、水素含有化合物及び/又は要素からの1種以上の合成、組合せ、変換、転位、及び/又は分解/脱構築プロセスによって誘導される材料である。GTLベースストック及び/又はベース油は、一般に、炭化水素、例えば、それら自体が供給ストックとしてより単純な気体状炭素含有化合物、水素含有化合物及び/又は他の要素から誘導されるワックス状合成炭化水素から誘導される潤滑粘度のGTL材料である。GTLベースストック及び/又はベース油には、潤滑油沸騰範囲で沸騰する油であって、(1)合成されたGTL材料から、例えば、蒸留などによって分離/分留され、その後、流動点が減少した/低流動点の潤滑油を製造するために、触媒脱ロウプロセス又は溶媒脱ロウプロセスの一方又は両方を含む最終ワックス処理工程を受けるもの;(2)例えば、水素脱ロウ又は水素異性化された触媒及び/又は溶媒脱ロウされた合成ワックス又はワックス状炭化水素を含んでなる合成異性化ワックス;(3)水素脱ロウ又は水素異性化された触媒及び/又は溶媒脱ロウされたフィッシャー−トロプシュ(F−T)材料(すなわち、炭化水素、ワックス状炭化水素、ワックス及び可能な類似のオキシジェネート);好ましくは、水素脱ロウ又は水素異性化され/続いて、触媒及び/又は溶媒脱ロウされたF−Tワックス状炭化水素、或いは水素脱ロウ又は水素異性化され/続いて、触媒(又は溶媒)脱ロウされたF−Tワックス、又はそれらの混合物が含まれる。
【0149】
GTL材料から誘導されるGTLベースストック及び/又はベース油、特に、水素脱ロウ又は水素異性化され/続いて、触媒及び/又は溶媒脱ロウされたワックス又はワックス状供給材料、好ましくは、F−T材料誘導ベースストック及び/又はベース油は、典型的に、約2mm/秒〜約50mm/秒の100℃における動粘度を有することを特徴とする(ASTM D445)。それらは、典型的に、約5℃〜約40℃以下の流動点を有することをさらに特徴とする(ASTM D97)。またそれらは、典型的に、約80〜約140以上の粘度指数を有することを特徴とする(ASTM D2270)。
【0150】
加えて、GTLベースストック及び/又はベース油は、典型的に、高パラフィン(>90%飽和)であり、且つ非環式イソパラフィンと組み合わせて、単環式パラフィン及び多環式パラフィンの混合物を含有していてもよい。そのような組合せにおけるナフテン系(すなわち、シクロパラフィン)含有量の比率は、使用される触媒及び温度によって変動する。さらに、GTLベースストック及び/又はベース油は、典型的に、非常に低い硫黄及び窒素含有量を有し、一般に、これらの元素をそれぞれ、約10ppm未満、より典型的に約5ppm未満含有する。F−T材料、特にF−Tワックスから誘導されたGTLベースストック及び/又はベース油の硫黄及び窒素含有量は本質的にゼロである。加えて、リン及び芳香族がないことによって、この材料は特に、低SAP製品の配合に適切である。
【0151】
GTLベースストック及び/又はベース油及び/又はワックス異性体ベースストック及び/又はベース油という用語は、製造プロセスで回収された広い粘度範囲のそのような材料の個々のフラクション、そのようなフラクションの2つ以上の混合物、並びに標的の動粘度を示すブレンドを製造するための低粘度フラクションの1つ又は2つ以上と、高粘度フラクションの1つ又は2つ以上との混合物を包括するものとして理解される。
【0152】
GTLベースストック及び/又はベース油が誘導されるGTL材料は、好ましくは、F−T材料(すなわち、炭化水素、ワックス状炭化水素、ワックス)である。
【0153】
本開示において有用な配合された潤滑油で使用するためのベース油は、それらの優れた揮発性、安定性、粘性測定及び清浄度特性のため、APIグループI、グループII、グループIII、グループIV、グループV及びグループVI油及びそれらの混合物、好ましくは、APIグループII、グループIII、グループIV、グループV及びグループVI油及びそれらの混合物、より好ましくは、グループIII〜グループVIベース油に相当する様々な油のいずれかである。配合された潤滑油製品中にブレンドするために添加剤を希釈するために使用される量などの少量のグループIストックは、許容可能であるが、最少に保持されるべきであり、すなわち、「受け取られたまま」の基準で使用される添加剤用の希釈剤/キャリア油としてのそれらの使用に関連するのみの量である。グループIIストックに関しても、グループIIストックが、そのストック、すなわち、100<VI<120の範囲の粘度指数を有するグループIIストックと関連する、より高品質の範囲にあることが好ましい。
【0154】
加えて、GTLベースストック及び/又はベース油は、典型的に、高パラフィン(>90%飽和)であり、且つ非環式イソパラフィンと組み合わせて、単環式パラフィン及び多環式パラフィンの混合物を含有していてもよい。そのような組合せにおけるナフテン系(すなわち、シクロパラフィン)含有量の比率は、使用される触媒及び温度によって変動する。さらに、GTLベースストック及び/又はベース油及び水素脱蝋化又は水素異性化/触媒(及び/又は溶媒)脱蝋化ベースストック及び/又はベース油は、典型的に、非常に低い硫黄及び窒素含有量を有し、一般に、これらの元素をそれぞれ、約10ppm未満、より典型的に約5ppm未満含有する。F−T材料、特にF−Tワックスから誘導されたGTLベースストック及び/又はベース油の硫黄及び窒素含有量は本質的にゼロである。加えて、リン及び芳香族がないことによって、この材料は特に、低硫黄、硫化灰及びリン(低SAP)製品の配合に適切である。
【0155】
他の添加剤
本開示において有用な配合メチルパラフィン潤滑油は、限定されないが、分散剤、他の清浄剤、腐食抑制剤、さび抑制剤、金属不活性化剤、他の抗摩耗剤及び/又は極圧添加剤、抗焼付剤、ワックス調整剤、粘度指数向上剤、粘度調整剤、脱水添加剤、シール適合性剤、他の摩擦調整剤、潤滑剤、抗汚染剤、発色剤、消泡剤、解乳化剤、乳化剤、高密度化剤、湿潤剤、ゲル化剤、粘着剤、着色剤及び他を含む、1種以上の一般に使用される潤滑油性能添加剤を追加的に含有していてもよい。多くの一般に使用される添加剤に関しては、KlamannのLubricants and Related Products,Verlag Chemie,Deerfield Beach,FL;ISBN 0−89573−177−0を参照されたい。「Lubricant Additives Chemistry and Applications」、Leslie R.Rudnick編、Marcel Dekker,Inc.New York,2003 ISBN:0−8247−0857−1も参照されたい。
【0156】
下記の潤滑油添加剤の全ては、単独で、又は組合せで使用することができる。添加剤の全処理レートは、1〜30重量パーセント、より好ましくは2〜25重量パーセント、より好ましくは3〜20重量パーセント、より好ましくは4〜15重量パーセント、より好ましくは5〜10重量パーセントの範囲であることが可能である。特に好ましい組成物は、15〜20重量パーセントの添加剤濃度を有する。
【0157】
潤滑油中で使用する場合、本明細書に開示される本発明のメチルパラフィンベースストックは、全潤滑油組成物の70〜99重量パーセント、より好ましくは75〜98重量パーセント、より好ましくは80〜97重量パーセント、より好ましくは85〜96重量パーセント、より好ましくは90〜95重量パーセントで含まれてよい。特に好ましい油組成物は、80〜85重量パーセントのベースストック充填量を有する。
【0158】
潤滑剤組成物中で本開示と組み合わせて使用される性能添加剤の種類及び量は、例として本明細書に示される実施例によって限定されない。
【0159】
粘度調整剤
本開示の潤滑剤組成物中に、粘度調整剤(粘度指数向上剤(VI向上剤)及び粘度向上剤としても知られている)を含むことが可能である。
【0160】
粘度調整剤は、高温及び低温運転性能を潤滑剤に提供する。これら添加剤は、高温におけるせん断安定性及び低温における容認できる粘度を与える。
【0161】
適切な粘度調整剤としては、高分子量炭化水素、ポリエステル、並びに粘度調整剤及び分散剤の両方として機能する粘度調整剤分散剤が含まれる。これらのポリマーの典型的な分子量は、約10,000〜1,500,000、より典型的に20,000〜1,200,000、さらにより典型的に50,000〜1,000,000である。
【0162】
適切な粘度調整剤の例は、メタクリレート、ブタジエン、オレフィン又はアルキル化スチレンの線形又は星形ポリマー及びコポリマーである。ポリイソブチレンは一般に使用される粘度調整剤である。別の適切な粘度調整剤は、ポリメタクリレート(例えば、種々の鎖長のアルキルメタクリレートのコポリマー)であり、それらの配合物のいくつかは流動点降下剤としても機能する。他の適切な粘度調整剤としては、エチレン及びプロピレンのコポリマー、スチレン及びイソプレンの水素化ブロックコポリマー、並びにポリアクリレート(例えば、種々の鎖長のアクリレートのコポリマー)が含まれる。具体例としては、50,000〜200,000の分子量のスチレン−イソプレン又はスチレン−ブタジエンベースのポリマーが含まれる。
【0163】
オレフィンコポリマーは、Chevron Oronite Company LLCから商標名「PARATONE(登録商標)」(例えば、「PARATONE(登録商標)8921」及び「PARATONE(登録商標)8941」)、Afton Chemical Corporationから商標名「HiTEC(登録商標)」(例えば、「HiTEC(登録商標)5850B」)、及びThe Lubrizol Corporationから商標名「Lubrizol(登録商標)7067C」で商業的に入手可能である。水素化ポリイソプレン星型ポリマーは、Infineum International Limitedから、例えば、商標名「SV200」及び「SV600」で商業的に入手可能である。水素化ジエン−スチレンブロックコポリマーは、Infineum International Limitedから、例えば、商標名「SV50」で商業的に入手可能である。
【0164】
ポリメタクリレート又はポリアクリレートポリマーは、Evonik Industriesから「Viscoplex(登録商標)」の商標名(例えば、Viscoplex 6−954、Viscoplex 3−200)で入手可能である線形ポリマー、又はLubrizol Corporationから「designation Asteric(商標)」の商標名(例えば、Lubrizol 87708及びLubrizol 87725)で入手可能である星型ポリマーであることが可能である。
【0165】
本開示において有用な例示的なビニル芳香族含有ポリマーは、主にビニル芳香族炭化水素モノマーから誘導され得る。本開示において有用な例示的なビニル芳香族含有コポリマーは次の一般式:
A−B
(式中、Aは、主にビニル芳香族炭化水素モノマーから誘導されるポリマーブロックであり、且つBは、主に共役ジエンモノマーから誘導されるポリマーブロックである)によって表され得る。
【0166】
本開示において有用であるビニル芳香族含有ポリマー又はコポリマーは、約80,000より高い重量平均分子量及び約40,000より高い数平均分子量、好ましくは約90,000より高い重量平均分子量及び約75,000より高い数平均分子量、より好ましくは約100,000より高く且つ1,000,000より低い重量平均分子量及び約100,000より高く且つ1,000,000より低い数平均分子量を有する。ビニル芳香族含有ポリマー又はコポリマーは、ビニル芳香族含有ポリマー又はコポリマーの約10重量%より高い、又は約20重量%より高い、又は約30重量%より高いビニル芳香族含有量を有する。ビニル芳香族含有ポリマー又はコポリマーは、好ましくは、ビニル芳香族含有ポリマー又はコポリマーの約10重量%〜約50重量%、より好ましくは約15重量%〜約40重量%、さらにより好ましくは約20重量%〜約35重量%のビニル芳香族含有量を有する。
【0167】
本開示の一実施形態において、粘度調整剤は、配合油又は潤滑油エンジン油組成物の全重量に基づき、約2.0重量%未満、好ましくは約1.0重量%未満、より好ましくは約0.5重量%未満の量で使用されてよい。粘度調整剤は、典型的に、多量の希釈油中の濃縮物として添加される。
【0168】
本開示の別の実施形態において、粘度調整剤は、配合油又は潤滑油エンジン油組成物の全重量に基づき、0.05〜約2.0重量%、好ましくは0.15〜約1.0重量%、より好ましくは0.25〜約0.5重量%の量で使用されてよい。或いは、粘度調整剤は、配合油又は潤滑油エンジン油組成物の全重量に基づき、0.5〜約2.0重量%、好ましくは0.8〜約1.5重量%、より好ましくは1.0〜約1.3重量%の量(全固体ポリマー含有量)で使用されてよい。
【0169】
本明細書で使用される場合、粘度調整剤濃度は、「送達されたまま」の基準で与えられる。典型的に、活性ポリマーは希釈油によって送達される。「送達されたまま」の粘度調整剤は、典型的に、「送達されたまま」のポリマー濃縮液中、約20重量パーセント〜約75重量パーセントのポリメタクリレート又はポリアクリレートポリマーのための活性ポリマー、或いは約8重量〜約20重量パーセントのオレフィンコポリマー、水素化ポリイソプレン星型ポリマー又は水素化ジエン−スチレンブロックコポリマーのための活性ポリマーを含有する。
【0170】
酸化防止剤
典型的な酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤及び油溶性銅錯体が挙げられる。
【0171】
フェノール系酸化防止剤としては、硫化及び非硫化フェノール系酸化防止剤が含まれる。「フェノール型」又は「フェノール系酸化防止剤」という用語は、本明細書で使用される場合、それ自体が単核、例えば、ベンジル、又は多核、例えば、ナフチル及びスピロ芳香族化合物であり得る芳香族環に結合した1個又は2個以上のヒドロキシル基を有する化合物を含む。したがって、「フェノール型」には、フェノール自体、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ナフトールなど、並びにそのアルキル又はアルケニル及び硫化アルキル又はアルケニル誘導体、並びにアルキレン架橋、硫黄架橋又は酸素架橋によって結合したそのようなビフェノール化合物を含むビスフェノール型化合物が含まれる。アルキルフェノールとしては、アルキル又はアルケニル基が3〜100個の炭素、好ましくは、4〜50個の炭素を含有するモノ−及びポリ−アルキル又はアルケニルフェノール、並びにその硫化誘導体が含まれる。芳香族間中に存在するアルキル又はアルケニル基の数は、芳香族環に結合したヒドロキシル基の数を数えた後に残る1から芳香族環の利用可能な不満足原子価までの範囲である。
【0172】
したがって、一般に、フェノール系酸化防止剤は、次の一般式:
(R)x−Ar−(OH)y
(式中、Ar基は、
【化14】
からなる群から選択され、Rは、C〜C100アルキル若しくはアルケニル基、硫黄置換アルキル若しくはアルケニル基、好ましくは、C〜C50アルキル若しくはアルケニル基又は硫黄置換アルキル若しくはアルケニル基、より好ましくは、C〜C100アルキル若しくは硫黄置換アルキル基、最も好ましくは、C〜C50アルキルであり、Rは、C〜C100アルキレン基若しくは硫黄置換アルキレン基、好ましくは、C〜C50アルキレン若しくは硫黄置換アルキレン基、より好ましくは、C〜Cアルキレン若しくは硫黄置換アルキレン基であり、yは、少なくとも1からArの利用可能な原子価までであり、xは、0からAr−yの利用可能な原子価までの範囲であり、zは、1〜10の範囲であり、nは、0〜20の範囲であり、且つmは、0〜4の範囲であり、且つpは、0又は1であり、好ましくは、yは、1〜3の範囲であり、xは、0〜3の範囲であり、zは、1〜4の範囲であり、且つnは、0〜5の範囲であり、且つpは0である)によって表され得る。
【0173】
好ましいフェノール系酸化防止剤化合物は、立体障害ヒドロキシル基を含有するヒンダードフェノール及びフェノール系エステルであり、且つこれらには、ヒドロキシル基が互いにo又はp位にあるジヒドロキシアリール化合物のそれらの誘導体が含まれる。典型的なフェノール系酸化防止剤としては、C+アルキル基で置換されたヒンダードフェノール、及びこれらのヒンダードフェノールのアルキレン結合誘導体が含まれる。この種類のフェノール系材料の例は、2−t−ブチル−4−ヘプチルフェノール;2−t−ブチル−4−オクチルフェノール;2−t−ブチル−4−ドデシルフェノール;2,6−ジ−t−ブチル−4−ヘプチルフェノール;2,6−ジ−t−ブチル−4−ドデシルフェノール;2−メチル−6−t−ブチル−4−ヘプチルフェノール;2−メチル−6−t−ブチル−4−ドデシルフェノール;2,6−ジ−t−ブチル−4メチルフェノール;2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール;及び2,6−ジ−t−ブチル4アルコキシフェノール;並びに
【化15】
である。
【0174】
フェノール型酸化防止剤は、潤滑産業界で周知であり、且つEthanox(登録商標)4710、Irganox(登録商標)1076、Irganox(登録商標)L1035、Irganox(登録商標)1010、Irganox(登録商標)L109、Irganox(登録商標)L118、Irganox(登録商標)L135などの市販品の例は当業者によく知られている。上記は、使用可能なフェノール系酸化防止剤の種類の例としてのみ提示されており、制限するものではない。
【0175】
活性成分基準で約0.1〜3重量%、好ましくは約1〜3重量%、より好ましくは1.5〜3重量%の範囲の量でフェノール系酸化防止剤を利用することができる。
【0176】
芳香族アミン酸化防止剤は、次の分子構造:
【化16】
(式中、Rは水素又はC〜C14線形若しくはC〜C14分枝鎖アルキル基、好ましくは、C〜C10線形若しくはC〜C10分枝鎖アルキル基、より好ましくは、線形若しくは分枝鎖C〜Cアルキル基であり、且つnは、1〜5の範囲の整数、好ましくは1である)によって記載される、フェニル−α−ナフチルアミンを含む。特定の例はIrganox L06である。
【0177】
他の芳香族アミン酸化防止剤としては、式
10
(式中、Rは脂肪族、芳香族又は置換芳香族基であり、Rは芳香族又は置換芳香族基であり、且つR10は、H、アルキル、アリール又はR11S(O)12であり、R11は、アルキレン、アルケニレン又はアルアルキレン基であり、R12は、高級アルキル基、又はアルケニル、アリール若しくはアルカリール基であり、且つxは0、1又は2である)の芳香族モノアミンなどの他のアルキル化又は非アルキル化芳香族アミンが含まれる。脂肪族基Rは、1〜約20個の炭素原子を含有してもよく、好ましくは約6〜12個の炭素原子を含有する。脂肪族基は、飽和脂肪族基である。好ましくは、R及びRは両方とも芳香族又は芳香族基であり、且つ芳香族基は、ナフチルなどの縮合環芳香族基であってもよい。芳香族基R及びRは、Sなどの他の基と一緒に結合していてもよい。
【0178】
典型的な芳香族アミン酸化防止剤は、少なくとも約6個の炭素原子のアルキル置換基を有する。脂肪族基の例としては、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル及びデシルが含まれる。一般に、脂肪族基は、約14個より多い炭素原子を含まないであろう。存在していてもよいそのような他の追加的なアミン酸化防止剤の一般的な種類は、ジフェニルアミン、フェノチアジン、イミドジベンジル及びビフェニルフェニレンジアミンが含まれる。そのような他の追加的な芳香族アミンの2種以上の混合物も存在してよい。ポリマーアミン酸化防止剤も使用可能である。
【0179】
活性成分基準で約0.1〜5重量%、好ましくは約0.5〜3重量%、より好ましくは1〜3重量%の範囲の量で芳香族アミン酸化防止剤を利用することができる。
【0180】
潤滑油組成物において使用され、且つ存在してもよい酸化防止剤の別の種類は、油溶性の銅化合物である。いずれの油溶性の適切な銅化合物も潤滑油にブレンドされてよい。適切な銅酸化防止剤の例としては、ジヒドロカルビルチオ−又はジチオリン酸銅或いは(自然由来又は合成)カルボン酸の銅塩が含まれる。他の適切な銅の塩としては、銅ジチオカルバメート、スルホネート、フェナート及びアセチルアセトネートが含まれる。アルケニルコハク酸又は無水物から誘導される塩基性、中性又は酸性の銅Cu(I)及び又はCu(II)塩も特に有用であることが知られている。
【0181】
そのような酸化防止剤は、個別に、或いは1種以上の酸化防止剤の混合物として使用されてよく、利用される全量は、(受け取ったままの基準で)約0.50〜5重量%、好ましくは約0.75〜3重量%である。
【0182】
清浄剤
本開示において有用な例示的な清浄剤としては、例えば、アルカリ金属清浄剤、アルカリ土類金属清浄剤又は1種若しくはそれ以上のアルカリ金属清浄剤及び1種若しくはそれ以上のアルカリ土類金属清浄剤の混合物が含まれる。低濃度の清浄剤及び/又は低灰分清浄剤が配合された油は、低灰分、低金属、低リン油として、好ましくなる可能性がある。典型的な清浄剤は、分子の長鎖疎水性部分と、分子のより小さいアニオン性又は疎油性の親水性部分とを含むアニオン性材料である。清浄剤のアニオン性部分は、有機酸、例えば、硫黄酸、カルボン酸、リン酸、フェノール又はそれらの混合物から誘導される。対イオンは典型的にアルカリ土類又はアルカリ金属である。
【0183】
実質的に化学量論的量の金属を含有する塩は中性塩として記載され、且つ0〜80の全アルカリ価(TBN、ASTM D2896によって測定される)を有する。多くの組成物は過塩基性であり、過剰量の金属化合物(例えば、金属水酸化物又は酸化物)と(二酸化炭素などの)酸性気体とを反応させることによって達成される金属塩基を大量に含有する。有用な清浄剤は、中性であるか、わずかに過塩基性であるか、又は高度に過塩基性であり得る。これらの清浄剤は、中性、過塩基性、高度に過塩基性のカルシウムサリチレート、スルホネート及びフェネート及び/又はマグネシウムサリチレート、スルホネート、フェネートの混合物において使用可能である。TBNの範囲は、低、中程度及び高製品まで変動可能であり、0程度の低TBNから600程度の高TBNまで含まれる。スルホネート、フェネート、サリチレート及びカルボキシレートを含むカルシウム及びマグネシウム金属ベース清浄剤と一緒に、低、中程度、高TBNの混合物を使用することができる。金属比1の清浄剤混合物を、金属比2の清浄剤及び金属比5の清浄剤との組合せで使用することができる。ホウ酸化清浄剤も使用することができる。
【0184】
別の有用な種類の清浄剤は、アルカリ土類フェネートである。これらの清浄剤は、アルカリ土類金属水酸化物又は酸化物(例えば、CaO、Ca(OH)2、BaO、Ba(OH)2、MgO、Mg(OH)2)をアルキルフェノール又は硫化アルキルフェノールと反応させることによって製造可能である。有用なアルキル基としては、直鎖又は分枝鎖C1〜C30アルキル基、好ましくは、C4〜C20又はそれらの混合物が含まれる。適切なフェノールの例としては、イソブチルフェノール、2−エチルヘキシルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノールなどが含まれる。なお、出発アルキルフェノールが、それぞれ独立して直鎖又は分岐鎖である2個以上のアルキル置換基を含有してもよく、且つこれを0.5〜6重量%使用し得ることに留意するべきである。非硫化アルキルフェノールが使用される場合、硫化生成物は、当該技術分野において周知の方法によって得られてもよい。これらの方法には、アルキルフェノール及び硫化剤(硫黄元素、二塩化硫黄などのハロゲン化硫黄などを含む)の混合物を加熱し、次いで、硫化フェノールをアルカリ土類金属塩基と反応させることが含まれる。
【0185】
カルボン酸のアルカリ土類金属塩も清浄剤として有用である。これらのカルボン酸清浄剤は、塩基性金属化合物と少なくとも1種のカルボン酸を反応させ、及び反応生成物から水分を除去することによって調製され得る。これらの化合物は、望ましいTBNレベルを生じるように過塩基性であってもよい。サリチル酸から製造された清浄剤は、カルボン酸から誘導される清浄剤の好ましい1種である。有用なサリチレートとしては、長鎖アルキルサリチレートが含まれる。組成物の有用な系統群の1種は、次式
【化17】
(式中、Rは、1〜約30個の炭素原子を有するアルキル基であり、nは1〜4の整数であり、且つMはアルカリ土類金属である)である。好ましいR基は、少なくともC11、好ましくはC13以上のアルキル鎖である。Rは、清浄剤の機能を妨害しない置換基によって任意選択的に置換されていてもよい。Mは、好ましくは、カルシウム、マグネシウム又はバリウムである。より好ましくは、Mはカルシウム又はマグネシウムである。
【0186】
ヒドロカルビル置換サリチル酸は、コルベ反応によってフェノールから調製され得る(米国特許第3,595,791号明細書を参照されたい)。ヒドロカルビル置換サリチル酸の金属塩は、水又はアルコールなどの極性溶媒中での金属塩の複分解によって調製され得る。
【0187】
アルカリ土類金属ホスフェートが清浄剤として使用されてもよく、これは当該技術分野において既知である。
【0188】
清浄剤は、単一清浄剤、又はハイブリッド若しくは複合清浄剤として既知であるものであってよい。後者の清浄剤は、別々の材料をブレンドすることを必要とせずに、2種の清浄剤の特性を提供することができる。米国特許第6,034,039号明細書を参照されたい。
【0189】
好ましい清浄剤としては、カルシウムフェネート、スルホン酸カルシウム、サリチル酸カルシウム、マグネシウムフェネート、スルホン酸マグネシウム、サリチル酸マグネシウム及び他の関連成分(ホウ酸化清浄剤を含む)並びにそれらの混合物が含まれる。好ましい清浄剤の混合物としては、スルホン酸マグネシウム及びサリチル酸カルシウム、スルホン酸マグネシウム及びスルホン酸カルシウム、スルホン酸マグネシウム及びカルシウムフェナート、カルシウムフェナート及びサリチル酸カルシウム、カルシウムフェナート及びスルホン酸カルシウム、カルシウムフェナート及びサリチル酸マグネシウム、カルシウムフェナート及びマグネシウムフェナートが含まれる。
【0190】
本開示の潤滑油は、清浄剤の有無にかかわらず、特にサリチル酸清浄剤又はスルホン酸清浄剤の有無にかかわらず、所望の特性、例えば、摩耗制御、堆積物制御及び燃料効率を示す。
【0191】
本開示の潤滑油中の清浄剤濃度は、潤滑油の全重量に基づき、約0.5〜約20重量パーセント以上、好ましくは、約0.6〜約5.0重量パーセント、より好ましくは、約0.8重量パーセント〜約4.0重量パーセントの範囲であることが可能である。
【0192】
本明細書で使用される場合、清浄剤濃度は、「送達されたまま」の基準で与えられる。典型的に、活性清浄剤はプロセス油によって送達される。「送達されたまま」の清浄剤は、典型的に、「送達されたまま」の清浄製品中、約20重量パーセント〜約100重量パーセント、又は約40重量〜約60重量パーセントの活性清浄剤を含有する。
【0193】
分散剤
エンジン運転の間、油不溶性の酸化副産物が生じる。分散剤は、これらの副産物を溶液中に保持することを促進し、したがって、金属表面上でのそれらの堆積が低減する。分散剤は、本質的に無灰型又は灰分形成型であってよい。好ましくは、分散剤は無灰である。いわゆる無灰分散剤は、燃焼時に実質的に灰分を形成しない有機材料である。例えば、非金属含有又はホウ酸化された金属を含まない分散剤が無灰であると思われる。対照的に、上記の金属含有清浄剤は燃焼時に灰分を形成する。
【0194】
適切な分散剤は、典型的に、比較的高分子量の炭化水素鎖に結合した極性基を含有する。極性基は、典型的に、窒素、酸素又はリンの少なくとも1種の元素を含有する。典型的な炭化水素鎖は、50〜400個の炭素原子を含有する。
【0195】
分散剤の特に有用な種類は、典型的に長鎖置換アルケニルコハク酸化合物、通常、置換無水コハク酸とポリヒドロキシ又はポリアミノ化合物との反応によって製造されるアルキルコハク酸誘導体である。油中での溶解性を与える分子の親油性部分を構成する長鎖基は、通常、ポリイソブチレン基である。この種類の分散剤の多くの例は、商業的に及び文献において周知である。そのような分散剤を記載する代表的な特許は、米国特許第3,172,892号明細書、同第3,219,666号明細書、同第3,316,177号明細書及び同第4,234,435号明細書である。他の種類の分散剤は、米国特許第3,036,003号明細書及び同第5,705,458号明細書に記載される。
【0196】
ヒドロカルビル置換コハク酸化合物は、一般的な分散剤である。特に、炭化水素置換期中に好ましくは少なくとも50個の炭素原子を有する炭化水素置換コハク酸化合物と、少なくとも1当量のアルキレンアミンとの反応によって調製されたスクシンイミド、コハク酸エステル又はコハク酸エステルアミドは特に有用である。
【0197】
スクシンイミドは、アルケニル置換無水コハク酸とアミンとの縮合反応によって形成される。モル比は、アミン又はポリアミン次第で変動可能である。例えば、置換アルケニル無水コハク酸対TEPAのモル比は、約1:1〜約5:1で変動可能である。
【0198】
コハク酸エステルは、ヒアルケニル無水コハク酸とアルコール又はポリオールとの縮合反応によって形成される。モル比は、使用されるアルコール又はポリオール次第で変動可能である。例えば、アルケニル無水コハク酸及びペンタエリスリトールの縮合物は有用な分散剤である。
【0199】
コハク酸エステルアミドは、アルケニル無水コハク酸とアルカノールアミンとの縮合反応によって形成される。例えば、適切なアルカノールアミンとしては、エトキシル化ポリアルキルポリアミン、プロポキシル化ポリアルキルポリアミン及びポリエチレンポリアミンなどのポリアルケニルポリアミンが含まれる。一例は、プロポキシル化ヘキサメチレンジアミンである。
【0200】
アルケニル無水コハク酸の分子量は、典型的に800〜2,500の範囲である。上記生成物は、硫黄、酸素、ホルムアルデヒド、オレイン酸などのカルボン酸、ホウ酸エステル又は高度にホウ酸化された分散剤などのホウ素化合物などの種々の試薬とその後反応させることができる。分散剤は、分散剤反応生成物1モルあたり約0.1〜約5モルでホウ酸化させることが可能である。
【0201】
マンニッヒ塩基分散剤は、アルキルフェノール、ホルムアルデヒド及びアミンの反応から製造される。オレイン酸及びスルホン酸などのプロセス助剤及び触媒も反応混合物の一部であり得る。アルキルフェノールの分子量は、800〜2,500の範囲である。マンニッヒ塩基分散剤は、ホウ酸化が可能であり、且つマンニッヒ塩基分散剤の混合物が使用可能である。
【0202】
典型的な高分子量脂肪酸変性マンニッヒ縮合生成物は、高分子量アルキル置換ヒドロキシ芳香族又はHN(R)基含有反応物から調製することができる。
【0203】
高分子量アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物の例は、ポリプロピルフェノール、ポリブチルフェノール及び他のポリアルキルフェノールである。これらのポリアルキルフェノールは、BFなどのアルキル化触媒の存在下での高分子量ポリプロピレン、ポリブチレン及び他のポリアルキレン化合物によるフェノールのアルキル化によって、平均600〜100,000の分子量を有するフェノールのベンゼン環上にアルキル置換をもたらすことによって得ることができる。
【0204】
HN(R)基含有反応物の例は、アルキレンポリアミン、主にポリエチレンポリアミンである。マンニッヒ縮合生成物の調製における使用のために適切である少なくとも1つのHN(R)基を含有する他の代表的な有機化合物は周知であり、且つモノ−及びジアミノアルカン並びにそれらの置換類似体、例えば、エチルアミン及びジエタノールアミン;芳香族ジアミン、例えば、フェニレンジアミン、ジアミノナフタリン;複素環式アミン、例えば、モルホリン、ピロール、ピロリジン、イミダゾール、イミダゾリジン及びピペリジン;メラミン及びそれらの置換類似体が含まれる。
【0205】
アルキレンポリアミン反応物の例としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタアミン、ヘプタエチレンオクタアミン、オクタエチレンノナアミン、ノナエチレンデカミン及びデカエチレンウンデカミン並びにアルキレンポリアミンに対応する窒素含有量を有するそのようなアミンの混合物が含まれ、上記式HN−(Z−NH−)H中、Zは二価エチレンであり、且つnは上記式の1〜10である。プロピレンジアミン並びにジ−、トリ−、テトラ−、ペンタプロピレントリ−、テトラ−及びヘキサアミンなどの対応するプロピレンポリアミンも適切な反応物である。アルキレンポリアミンは、通常、アンモニアと、ジクロロアルカンなどのジハロアルカンとの反応によって入手される。したがって、2〜11モルのアンモニアと、2〜6個の炭素原子及び異なる炭素上の塩素を有する1〜10モルノジクロロアルカンとの反応から得られるアルキレンポリアミンは、適切なアルキレンポリアミン反応物である。
【0206】
本開示において有用な高分子生成物の調製において有用なアルデヒド反応物としては、ホルムアルデヒド(パラホルムアルデヒド及びホルマリンとも呼ばれる)、アセトアルデヒド及びアルドール(β−ヒドロキシブチルアルデヒド)などの脂肪族アルデヒドが含まれる。ホルムアルデヒド又はホルムアルデヒドをもたらす反応物が好ましい。
【0207】
好ましい分散剤としては、モノスクシンイミド、ビススクシンイミド及び/又はモノ及びビススクシンイミドの混合物からのそれらの誘導体を含む、ホウ酸化及び非ホウ酸化スクシンイミドが含まれ、ヒドロカルビルスクシンイミドは、約500〜約5000のMnを有するポリイソブチレンなどのヒドロカルビレン基、又はそのようなヒドロカルビレン基の混合物から誘導される。他の好ましい分散剤としては、コハク酸エステル及びアミド、アルキルフェノール−ポリアミン結合マンニッヒ付加物、それらのキャップ形成誘導体及び他の関連化合物が含まれる。そのような添加剤は、全潤滑油の重量に基づき、約0.1〜20重量%、好ましくは約0.1〜8重量%、より好ましくは約1〜6重量%(受け取ったままの基準で、又は活性成分基準で0〜10重量%)の量で使用されてよい。
【0208】
流動点降下剤
従来の流動点降下剤(潤滑油流動性向上剤としても知られている)も存在してよい。流動点降下剤は、流体が流動し得るか、又は流れ出ることが可能であろう最低温度を低下させるために添加されてよい。適切な流動点降下剤の例としては、アルキル化ナフタレンポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアリールアミド、ハロパラフィンワックス及び芳香族化合物の縮合生成物、ビニルカルボキシレートポリマー、並びにジアルキルフマレート、脂肪酸のビニルエステル及びアリルビニルエーテルのターポリマーが含まれる。そのような添加剤は、受け取ったままの基準で約0.0〜0.5重量%、好ましくは約0〜0.3重量%、より好ましくは約0.001〜0.1重量%の量で使用されてよい。
【0209】
腐食抑制剤/金属脱活性剤
潤滑油組成物と接触している金属部品の分解を減少させるために、腐食抑制剤が使用される。適切な腐食抑制剤としては、アリールチアジン、アルキル置換ジメルカプトチオジアゾールチアジアゾール及びその混合物が含まれる。そのような添加剤は、潤滑油組成物の全重量に基づき、(受け取ったままの基準で)約0.01〜5重量%、好ましくは約0.01〜1.5重量%、より好ましくは約0.01〜0.2重量%、さらにより好ましくは約0.01〜0.1重量%の量で使用されてよい。
【0210】
シール適合性添加剤
シール適合性剤は、流体中で化学反応を、又はエラストマー中で物理変化をもたらすことによって、エラストマー性シールを膨張させることを促進する。潤滑油に適切なシール適合性剤には、有機ホスフェート、芳香族エステル、芳香族炭化水素、エステル(例えば、ブチルベンジルフタレート)、ポリブテニル無水コハク酸及びLubrizol 730型シール膨潤添加剤などのスルホラン型シール膨潤添加剤が含まれる。そのような添加剤は、受け取ったままの基準で約0.01〜3重量%、好ましくは約0.01〜2重量%の量で使用されてよい。
【0211】
消泡剤
消泡剤は、潤滑油組成物に都合よく添加されてもよい。これらの薬剤は、安定した気泡の形成を遅らせる。シリコーン及び有機ポリマーは、典型的な消泡剤である。例えば、シリコン油又はポリジメチルシロキサンなどのポリシロキサンは、消泡剤の特性を提供する。消泡剤は商業的に入手可能であり、及び解乳化剤などの他の添加剤と一緒に従来通り少量で使用されてもよく、通常、これらの組み合わされた添加剤の量は、潤滑油組成物の全重量に基づき、(受け取ったままの基準で)1重量%未満、好ましくは0.001〜約0.5重量%、より好ましくは約0.001〜約0.2重量%、なおより好ましくは約0.0001〜0.15重量%である。
【0212】
抑制剤及び抗さび添加剤
抗さび添加剤(又は腐食抑制剤)は、水又は他の汚染物質による化学的攻撃に対して、潤滑された金属表面を保護する添加剤である。抗さび添加剤の1種は、金属表面を優先的に湿潤し、油の膜によってそれを保護する極性化合物である。別の種類の抗さび添加剤は、油のみが表面に接触するように、油中水エマルジョンにそれを組み込むことによって、水を吸収する。さらに別の種類の抗さび添加剤は、非反応性表面を生じるように化学的に結合する。適切な添加剤の例には、ジチオリン酸亜鉛、金属フェノレート、塩基性金属スルホネート、脂肪酸及びアミンが含まれる。そのような添加剤は、受け取ったままの基準で約0.01〜5重量%、好ましくは約0.01〜約1.5重量%の量で使用されてよい。
【0213】
ZDDP抗摩耗添加剤は、本開示の必須成分である。C8〜C18第一又は第二アルコールから誘導された、そして好ましくはC4、C5及び/又はC7第一又は第二アルコール及びその混合物から誘導されたZDDPがしばしば好ましい。いくつかの用途において、仕上げ油中約0.02%〜0.08%のリンを導く、0.10重量%未満のリンを有する低リンZDDP添加剤が好ましくなる可能性がある。ZDDPに加えて、ジチオカルバミン酸亜鉛、ジアルキルジチオリン酸モリブデン、ジチオカルバミド酸モリブデン、他の有機モリブデン−窒素錯体、硫化オレフィンなどを含む他の抗摩耗添加剤が存在することが可能である。
【0214】
「有機モリブデン窒素錯体」という用語は、米国特許第4,889,647号明細書に記載の有機モリブデン−窒素錯体を含む。複合体は、脂肪油、ジタノールアミン及びモリブデン供給源の反応生成物である。特定の化学構造は、複合体に指名されていない。米国特許第4,889,647号明細書は、その開示の典型的な反応生成物に対する赤外線スペクトルを報告しており、そのスペクトルは、1740cm−1におけるエステルカルボニルバンド及び1620cm−1におけるアミドカルボニルバンドを示す。脂肪油は、少なくとも12個の炭素原子、最大22個以上までの炭素原子を含有するより高級な脂肪酸のグリセリルエステルである。モリブデン供給源は、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン及び混合物などの酸素含有化合物である。
【0215】
本開示において使用可能な他の有機モリブデン錯体は、欧州特許第1040115号明細書及び国際公開第99/31113号パンフレットに記載の三核モリブデン硫黄化合物、並びに米国特許第4,978,464号明細書に記載のモリブデン錯体である。
【0216】
性能及び使用
本開示のメチルパラフィン潤滑油組成物は、内部燃焼エンジン、パワートレイン、ドライブライン、トランスミッション、ギア、ギアトレイン、ギアセット、コンプレッサ、ポンプ、水力システム、ベアリング、ブッシング、タービンなどの潤滑において有利な性能をもたらす。
【0217】
また本開示のメチルパラフィン潤滑油組成物は、例えば、ピストン、ピストンリング、シリンダーライナー、シリンダー、カム、タペット、リフター、ベアリング(ジャーナル、ローラー、テーパード、ニードル、ボールなど)、ギア、バルブなどを含んでなる機械部品の潤滑においても有利な摩擦、摩耗及び他の潤滑油性能をもたらす。
【0218】
さらに、本開示のメチルパラフィン潤滑油組成物は、1MPas〜10GPasより高い、好ましくは10MPasより高い、より好ましくは100MPasより高い、なおより好ましくは300MPasより高い範囲の潤滑接触圧力下における有利な摩擦、摩耗及び他の潤滑油性能をもたらす。特定の状況下において、本開示のメチルパラフィン潤滑油組成物は、0.5GPasより高い、しばしば1GPasより高い、時々2GPasより高い、5GPasより高い選択された状況下において有利な摩擦及び摩耗性能をもたらす。
【0219】
なおさらに、本開示のメチルパラフィン潤滑油組成物は、金属、金属合金、非金属、非金属合金、混合炭素−金属複合材料及び合金、混合炭素−非金属複合材料及び合金、鉄合金、鉄複合材料及び合金、非鉄金属、非鉄複合材料及び合金、チタン、チタン複合材料及び合金、アルミニウム、アルミニウム複合材料及び合金、マグネシウム、マグネシウム複合材料及び合金、イオン注入金属及び合金、プラズマ変性表面;表面変性材料;コーティング;単層、多層及び勾配層コーティング;磨き表面;研磨面;エッチング表面;テクスチャー表面;テクスチャー表面上のミクロ及びナノ構造;超仕上げ表面;ダイヤモンド様炭素(DLC)、高い水素含有量を有するDLC、中程度の水素含有量を有するDLC、低い水素含有量を有するDLC、ゼロの水素含有量を有するDLC、DLC複合材料、DLC−金属組成物及び複合材料、DLC−非金属組成物及び複合材料;ガラス、金属ガラス;セラミックス、サーメット、セラミック酸化物、セラミック窒化物、FeN、CrN、セラミック炭化物、混合セラミック組成物など;ポリマー、プラスチック、熱可塑性ポリマー、エンジニアドポリマー、ポリマーブレンド、ポリマー合金、ポリマー複合材料;エラストマー;黒鉛、炭素、モリブデン、二硫化モリブデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリペルフルオロプロピレン、ポリペルフルオロアルキルエーテルなどを含む乾燥潤滑油を含有する材料組成物及び複合材料を含んでなる潤滑された表面と組み合わせて使用される場合、有利な摩擦、摩耗及び他の潤滑油性能をもたらす。
【0220】
本開示のメチルパラフィン潤滑油の粘度特性は、標準的実施に従って測定することができる。低粘度は、現代の装置における潤滑油に関して有利となる可能性がある。ASTM D4683による低い高温高せん断(HTHS)粘度は、現代のエンジンにおける潤滑油の性能を示すことができる。特に、本開示のメチルパラフィン潤滑油は、2.0cP未満、又はより好ましくは1.9cP未満、又はより好ましくは1.8cP未満、又はより好ましくは1.7cP未満のHTHSを有することが可能である。
【0221】
Noack揮発性試験ASTM D5800によって決定されるか、又はNoack揮発性をシミュレートするTGA試験によって予測されるように、本開示のメチルパラフィン潤滑油は、より低い揮発性を有することができる。特に、本開示の潤滑油は、1%〜50%、又はより好ましくは10%〜50%、又はより好ましくは15%〜45%、又はより好ましくは20%〜35%のNoackを有することができる。特に好ましい組成物は、15%〜30%のNoackを有する。
【0222】
本開示のメチルパラフィン潤滑油は、TEOST 33C堆積試験ASTM D6335によって決定される、より低い堆積傾向を有することができる。特に、本開示の潤滑油は、30mg未満、又はより好ましくは20mg未満、又はより好ましくは15mg未満のTEOST 33Cを有することができる。
【0223】
本開示のメチルパラフィン潤滑油は、MTM(Mini Traction Machine)トラクション試験によって決定される、減少したトラクションを有することができる。トラクションは、比較流体と比較して最も容易に評価され、この場合、適切な比較流体は、市販のGTL QHVI−3を用いて配合されたエンジン油である。したがって、本開示の潤滑油は、参照に対して5%のMTMトラクション減少、又はより好ましくは参照に対して10%の減少、又はより好ましくは参照に対して20%の減少、又はより好ましくは参照に対して30%の減少、又はより好ましくは参照に対して40%の減少を有することができる。
【0224】
上記の詳細な説明において、本開示の特定の実施形態がその好ましい実施形態に関連して記載された。しかしながら、上記の説明が本開示の特定の実施形態又は特定の用途に対して特定的である限りにおいて、これは例示的であるようにのみ意図されて、そして単に模範的な実施形態の簡潔な説明を提供するだけである。したがって、本開示は、上記の特定の実施形態に限定されないが、むしろ本開示は、添付の請求項の真の範囲に含まれる全ての代替、修正及び同等物を含む。本開示の種々の修正及び変形は、当業者に明らかであり、且つそのような修正及び変形が、本出願の範囲並びに請求項の精神及び範囲内に含まれることは理解される。
【実施例】
【0225】
実施例1
本発明及び比較ベースストックの物理的特徴
詳細な説明において記載されたプロセスを使用して、低粘度の本発明のC10二量体、C10三量体、C10二量体及び三量体のブレンド、並びに比較ベースストック(C12二量体、グループII、GTL及びグループIII)を調製し、そして粘度特性、揮発性、密度、流動点及びMTM平均トラクション係数に関して特徴決定した。本開示の本発明のベースストックは、(本明細書中、「C10二量体」とも呼ばれる)9−メチルノナデカン及び(本明細書中、「C10三量体」とも呼ばれる)9−メチル−11−オクチルヘンエイコサンのブレンドである。ブレンドのための9−メチルノナデカン及び9−メチル−11−オクチルヘンエイコサンベースストックの化学構造は、
【化18】
である。
【0226】
比較のための11−メチルトリコベースストック(本明細書中、「C12二量体」とも呼ばれる)の化学構造も以下に示す。
【化19】
【0227】
図1は、本発明のメチルパラフィンベースの低粘度ベースストック及び比較のための低粘度ベースストックの物理的特徴を示す。図1から、C10二量体及びC10三量体の30/70ブレンドが、GTL、グループIII及びグループIIベースストックよりも高いVIを有し、且つ同一の100℃における動粘度のGTL及びグループIIよりも低いNoack揮発性を有することがわかる。C10二量体及びC10三量体の30/70ブレンドは、より低い流動点によって例証されるように、ニートのC10二量体及びC12二量体よりも改善された低温特性も有する。加えて、C10二量体及びC10三量体の30/70ブレンドは、MTMトラクション係数に関して、低粘度グループII、グループIII及びGTL比較ベースストックと比較して26%から158%の改善をもたらし、このことは、燃料及びエネルギー効率と直接関連し得る。C10二量体及びC10三量体低粘度ベースストックブレンドの30/70ブレンドに関するMTMトラクション係数におけるこのような改善は、低粘度グループII、グループIII及びGTL比較ベースストックに対して驚くべきことであり、且つ予想外であった。
【0228】
実施例2
本発明及び比較エンジン油の物理的特徴及び性能結果
図2は、本発明のメチルパラフィン低粘度ベースのベースストック及び比較のための低粘度ベースストックを含むエンジン油配合物の物理的特徴及び性能試験結果を示す。図2から、低粘度ベースストックとしてC10二量体及びC10三量体の30/70ブレンドを含むエンジン油配合物は、MTMトラクション係数に関して、低粘度グループII、グループIII及びGTL比較ベースストックを含むエンジン油配合物と比較して45%から105%の改善をもたらすことがわかり、このことは、燃料効率と直接関連する。C10二量体及びC10三量体低粘度ベースストックの30/70ブレンドによるエンジン油に関するMTMトラクション係数におけるこのような改善は、グループII、グループIII及びGTLベースストックを含む低粘度エンジン油に対して驚くべきことであり、且つ予想外であった。図2から、低粘度ベースストックとしてC10二量体及びC10三量体の30/70ブレンドを含むエンジン油配合物は、比較のためのグループII、グループIII及びGTLベースストックを含む低粘度エンジン油と比較して、より低いNoack揮発性、より低いTEOST 33C堆積物、より高い210時間酸化安定性、より高い粘度指数、より低いHTHS及びより低いCCS粘度をもたらすこともわかる。実際に、低粘度ベースストックとしてC10二量体及びC10三量体の30/70ブレンドを含むエンジン油配合物のTEOST 33C堆積物は、低粘度ベースストックとしてC10二量体又はC10三量体を含む低粘度エンジン油のTEOST 33C堆積物より有意に低かった。したがって、C10二量体及びC10三量体のブレンドにおいて、エンジン油の物理的特徴及び性能における相乗作用がある。C10二量体及びC10三量体の30/70ブレンドを含むエンジン油配合物のCCS粘度が、低粘度ベースストックとしてC10二量体又はC10三量体を含む低粘度エンジン油のCCS粘度より低かったため、ブレンドにおける同相乗的な改善は、CCS粘度に関しても適用される。したがって、エンジン油配合物中での低粘度ベースストックとしてのC10二量体及びC10三量体のブレンドは、エンジン油の物理的及び性能特徴の予想外の改善をもたらす。図2の全ての本発明及び比較エンジン油配合物に関して、配合物に粘度調整剤が含まれなかったことは留意されるべきである。
【0229】
実施例3
粘度調整剤を用いた本発明及び比較エンジン油の粘度特徴
図3は、粘度調整剤も含む、本発明のメチルパラフィンベースの低粘度ベースストック(C10二量体及びC10三量体の30/70ブレンド)及び比較のための低粘度ベースストック(GTL及びYubase3)を含むエンジン油配合物の動粘度及び粘度指数を示す。試験された2種の粘度調整剤は、PMA(Viscoplex3−200VM)及びHC(Infineum SV600 hydrocarbonVM)であった。エンジン油配合物中の粘度調整剤のそれぞれの処理レートは、試験方法ASTM D4663を使用して、PMAに関しては1.9cP及びHCに関しては2.2cPの測定されたHTHS(高温及び高せん断)粘度を達成するように調節された。図3図2と比較すると、粘度調整剤は、全てのエンジン油配合物の粘度指数を劇的に増加させるが、本発明のC10二量体及びC10三量体に関して、より高い粘度指数が観察され、より低いKV40がもたらされ、これは潜在的な燃費利点を示す。
【0230】
実施例4
本発明及び比較ベースストックのKV40に対するNoack揮発性
図4は、C10二量体及びC10三量体の様々な混合物(本発明の低粘度メチルパラフィンベースストック)並びに2cSt及び3.6cStの比較のための従来のPAOの様々な混合物に関するNoack揮発性及び40℃における動粘度の間の関係のグラフである。グラフ上には、ニートのC10二量体、C10三量体、従来の2cStのPAO、従来の3.6cStのPAO、GTL(Shell QHVI 3)、グループII(ExxonMobil EHC 20)及びグループIII(SK Oil Yubase 3)に関するNoack揮発性及び40℃における動粘度の間の関係も示される。図5は、図4の本発明のメチルパラフィンベースの低粘度ベースストックブレンドのC10二量体及びC10三量体の本発明の混合物及び比較のためのPAO低粘度ベースストックブレンドの2cSt及び3.6cStの従来のPAOの比較のための混合物のベースストックブレンド比を示す。
【0231】
図4は、C10二量体及びC10三量体の本発明のメチルパラフィンベースの低粘度ベースストックブレンドが、y=2.15−0.765ln(x)未満である、Noack揮発性(y)とKV40(x)との関係を有することを示す。それとは対照的に、2cSt及び3.6cStの従来のPAOの比較ブレンドは、y=2.15−0.765ln(x)より高い、Noack揮発性(y)とKV40(x)との関係を有する。したがって、所与のKV40に関して、C10二量体及びC10三量体のベースストックブレンドは、従来の2cStのPAO及び従来の3.6cStのPAOの従来のブレンドより低いNoack揮発性を有する。C10二量体及びC10三量体の本発明のベースストックブレンドに関するNoack揮発性と40℃における動粘度との間のこのような改善及び関係は、驚くべきことであり、且つ予想外である。
【0232】
PCT及びEP条項:
1.5〜50重量%の9−メチルノナデカン及び95〜50重量%の9−メチル−11−オクチルヘンエイコサンを含んでなる潤滑油ベースストックであって、y=2.15−0.765ln(x)未満である、ASTM D5800によって測定される250℃におけるNoack揮発性(y)とASTM D445によって測定される40℃における動粘度(x)との関係を有する潤滑油ベースストック。
【0233】
2.ベースストックが、ASTM D445によって決定される、1.5〜3.5cStの100℃における動粘度を有する、条項1の潤滑油ベースストック。
【0234】
3.ベースストックが、ASTM D445によって決定される、4.0〜14.0cStの40℃における動粘度を有する、条項1〜2の潤滑油ベースストック。
【0235】
4.ベースストックが、ASTM D5800によって決定される、10〜90%の250℃におけるNoack揮発性を有する、条項1〜3の潤滑油ベースストック。
【0236】
5.ベースストックが、ASTM D2270によって決定される、約100〜約170の粘度指数を有する、条項1〜4の潤滑油ベースストック。
【0237】
6.ベースストックが、ASTM D5950によって決定される、約−10〜−80℃の流動点を有する、条項1〜5の潤滑油ベースストック。
【0238】
7.ベースストックが、約0.0060〜0.0090の範囲の(100℃、1GPa、2m/秒及び0〜100%のSRRにおける)MTM平均トラクション係数を有する、条項1〜6の潤滑油ベースストック。
【0239】
8.ベースストックが、匹敵するKV100℃粘度のグループII又はグループIIIベースストックよりも約20〜180%低いMTM平均トラクション係数を有する、条項1〜7の潤滑油ベースストック。
【0240】
9.ベースストックが、ASTM D4683によって決定される、約1.6cP未満の高温高せん断(HTHS)粘度及びASTM D5800によって決定される、約16〜約30パーセントのNoack揮発性を有する、条項1〜8の潤滑油ベースストック。
【0241】
10.潤滑油を形成するための少量の1種以上の添加剤をさらに含む、条項1〜9の潤滑油ベースストック。
【0242】
11.1種以上の添加剤が、粘度向上剤又は調整剤、酸化防止剤、清浄剤、分散剤、流動点抑制剤、腐食抑制剤、金属不活性剤、シール適合性添加剤、消泡剤、抑制剤、防さび剤及びそれらの組合せからなる群から選択される、条項10の潤滑油ベースストック。
【0243】
12.潤滑油が、約60〜150時間の酸化安定性(200%KV40増加までの時間に対する210時間試験)を有する、条項10〜11の潤滑油ベースストック。
【0244】
13.潤滑油が、10〜30mgのASTM D6335による200〜480℃における2時間のTEOST 33C試験によって測定される堆積物形成に対する抵抗を有する、条項10〜12の潤滑油ベースストック。
【0245】
14.潤滑油が、700〜1000mPa.sのASTM D5293による−35℃におけるコールドクランクシミュレーター(CCS)粘度を有する、条項10〜13の潤滑油ベースストック。
【0246】
15.1種以上の添加剤が、ポリメタクリレート、炭化水素水素化ポリイソプレン星形ポリマー及びそれらの組合せから選択される粘度調整剤を含む、条項10〜14の潤滑油ベースストック。
【0247】
16.潤滑油が、ASTM D4683によって決定される、約2.3cP未満の高温高せん断(HTHS)粘度を有する、条項15に記載の潤滑油ベースストック。
【0248】
17.潤滑油が、ASTM D2270によって決定される、約200〜340の粘度指数を有する、条項15〜16の潤滑油ベースストック。
【0249】
18.潤滑油が、5〜40重量%のコベースストックをさらに含み、コベースストックが、グループIベースストック、グループIIベースストック、グループIIIベースストック、グループIVベースストック、グループVベースストック及びそれらの組合せからなる群から選択される、条項10〜17の潤滑油ベースストック。
【0250】
19.潤滑油における熱及び酸化安定性、堆積物制御及びトラクション制御の1つ以上を改善するための方法であって、潤滑油ベースストックが5〜50重量%の9−メチルノナデカン及び95〜50重量%の9−メチル−11−オクチルヘンエイコサンを含んでなり、ベースストックがy=2.15−0.765ln(x)未満である、ASTM D5800によって測定される250℃におけるNoack揮発性(y)とASTM D445によって測定される40℃における動粘度(x)との関係を有する、主要量の潤滑油ベースストック及び少量の1種以上の添加剤を含んでなる潤滑油を提供することと、配合油中で潤滑油を使用して、熱及び酸化安定性、堆積物制御及びトラクション制御の1つ以上を改善することとを含んでなる方法。
【0251】
本明細書に引用される全ての特許及び特許出願、試験手順(ASTM法、UL法など)及び他の文献は、そのような開示が本開示と一致する限り、及びそのような組み込みが容認される全ての権限に関して、参照によって完全に組み込まれる。
【0252】
数値的な下限及び数値的な上限が本明細書に記載される場合、いずれかの下限からいずれかの上限までの範囲が考慮される。本開示の例示的な実施形態が詳細に記載されているが、様々なその他の修正形態は、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、当業者にとって明らかであり、且つ当業者によって容易になされ得ることが理解されるであろう。したがって、添付された特許請求の範囲は、本明細書で明らかにされた実施例及び記載に限定されるように意図されず、むしろ、請求項が、本開示が関連する当業者によって、その均等物として扱われるであろう全ての特徴を含めて、本開示に存在する特許取得可能な新規性の全ての特徴を包含すると解釈される。
【0253】
本開示は、多数の実施形態及び個々の実施例を参照して上記された。上記の詳細な説明を考慮に入れて、当業者は多くの変形形態を提案するであろう。全てのそのような明白な変形形態は、添付の請求項の全ての意図された範囲内にある。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】