特表2020-524988(P2020-524988A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ファイザー・インクの特許一覧 ▶ ボストン メディカル センター コーポレーションの特許一覧

特表2020-524988抗ROBO2抗体、組成物、方法、およびその使用
<>
  • 特表2020524988-抗ROBO2抗体、組成物、方法、およびその使用 図000041
  • 特表2020524988-抗ROBO2抗体、組成物、方法、およびその使用 図000042
  • 特表2020524988-抗ROBO2抗体、組成物、方法、およびその使用 図000043
  • 特表2020524988-抗ROBO2抗体、組成物、方法、およびその使用 図000044
  • 特表2020524988-抗ROBO2抗体、組成物、方法、およびその使用 図000045
  • 特表2020524988-抗ROBO2抗体、組成物、方法、およびその使用 図000046
  • 特表2020524988-抗ROBO2抗体、組成物、方法、およびその使用 図000047
  • 特表2020524988-抗ROBO2抗体、組成物、方法、およびその使用 図000048
  • 特表2020524988-抗ROBO2抗体、組成物、方法、およびその使用 図000049
  • 特表2020524988-抗ROBO2抗体、組成物、方法、およびその使用 図000050
  • 特表2020524988-抗ROBO2抗体、組成物、方法、およびその使用 図000051
  • 特表2020524988-抗ROBO2抗体、組成物、方法、およびその使用 図000052
  • 特表2020524988-抗ROBO2抗体、組成物、方法、およびその使用 図000053
  • 特表2020524988-抗ROBO2抗体、組成物、方法、およびその使用 図000054
  • 特表2020524988-抗ROBO2抗体、組成物、方法、およびその使用 図000055
  • 特表2020524988-抗ROBO2抗体、組成物、方法、およびその使用 図000056
  • 特表2020524988-抗ROBO2抗体、組成物、方法、およびその使用 図000057
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-524988(P2020-524988A)
(43)【公表日】2020年8月27日
(54)【発明の名称】抗ROBO2抗体、組成物、方法、およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20200731BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20200731BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20200731BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20200731BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20200731BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20200731BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20200731BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20200731BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20200731BHJP
   C07K 14/705 20060101ALN20200731BHJP
【FI】
   C12N15/13
   C07K16/28
   C12N15/63 Z
   C12N1/15
   C12N1/19
   C12N1/21
   C12N5/10
   A61K39/395 D
   A61K39/395 N
   A61P13/12
   C07K14/705
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】104
(21)【出願番号】特願2019-567335(P2019-567335)
(86)(22)【出願日】2018年6月8日
(85)【翻訳文提出日】2020年1月31日
(86)【国際出願番号】US2018036629
(87)【国際公開番号】WO2018227063
(87)【国際公開日】20181213
(31)【優先権主張番号】62/517,233
(32)【優先日】2017年6月9日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】593141953
【氏名又は名称】ファイザー・インク
(71)【出願人】
【識別番号】309020703
【氏名又は名称】ボストン メディカル センター コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100133927
【弁理士】
【氏名又は名称】四本 能尚
(74)【代理人】
【識別番号】100137040
【弁理士】
【氏名又は名称】宮澤 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100147186
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 眞紀
(74)【代理人】
【識別番号】100174447
【弁理士】
【氏名又は名称】龍田 美幸
(74)【代理人】
【識別番号】100185960
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 理愛
(72)【発明者】
【氏名】ステファン ベラーシ
(72)【発明者】
【氏名】ジャネット エリザベス バールマン
(72)【発明者】
【氏名】エリック エム. ベネット
(72)【発明者】
【氏名】ネーサン ヒギンソン−スコット
(72)【発明者】
【氏名】ヒュイラン ガオ
(72)【発明者】
【氏名】ゾン ショーン ジョー
(72)【発明者】
【氏名】ステファノ ヴイ.ガラ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティーヌ ユアール
(72)【発明者】
【氏名】シュリークマール アール.コダンガティル
(72)【発明者】
【氏名】ジアン リー
(72)【発明者】
【氏名】ウェイニン ルー
(72)【発明者】
【氏名】シューピン ファン
(72)【発明者】
【氏名】デビッド ジェイ.サラント
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AA93Y
4B065AB01
4B065BC03
4B065CA25
4B065CA44
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB33
4C085BB34
4C085BB35
4C085BB36
4C085BB37
4C085BB42
4C085CC22
4C085CC23
4C085DD62
4C085GG02
4C085GG04
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045DA76
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、ROBO2に特異的に結合する抗体およびその抗原結合断片、ならびにその使用および方法を提供する。
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Roundabout受容体2(ROBO2)のIgドメイン1内、またはドメイン1およびドメイン2内のエピトープに結合する、単離された抗体またはその抗原結合断片であって、前記エピトープが、配列番号1の番号付けに従ったアミノ酸残基アルギニン100(R100)を含む、抗体またはその抗原結合断片。
【請求項2】
前記エピトープが、配列番号1の番号付けに従ったV96、G98、R99、およびS101からなる群から選択される1つまたは複数の残基をさらに含む、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項3】
前記エピトープが、配列番号1の番号付けに従ったE69、E72、R79、H81、R82、R94、およびP103からなる群から選択される1つまたは複数の残基をさらに含む、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項4】
前記エピトープが、配列番号1の番号付けに従ったK66、D67、R70、V71、T73、D74、D77、P78、H97、およびK102からなる群から選択される1つまたは複数の残基をさらに含む、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項5】
R100がKで置き換えられているエピトープに対するその結合親和性(K)値の多くとも100分の1であるK値で前記エピトープに結合する、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項6】
Roundabout受容体1(ROBO1)にほとんど結合しない、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項7】
配列番号1の番号付けに従ったR100がKで置き換えられK102がRで置き換えられているROBO2突然変異体に結合しない、請求項6に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項8】
配列番号9の番号付けに従ったROBO1のアミノ酸残基K137がRで置き換えられROBO1のアミノ酸残基R139がKで置き換えられているROBO1突然変異体に結合する、請求項6に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項9】
Kabatの番号付けに従った(i)重鎖のT30、G31、Y32、Y33、E95、G97、およびD99、ならびに(ii)軽鎖のY32およびY92からなる群から選択される以下のパラトープ残基の1つまたは複数をさらに含む、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項10】
Kabatの番号付けに従った(i)重鎖のG26、T28、W50、K53、D98、D101、およびI102、ならびに(ii)軽鎖のS91、G93、およびT96からなる群から選択される以下のパラトープ残基の1つまたは複数をさらに含む、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項11】
Kabatの番号付けに従った(i)重鎖のE1、V2、Y27、H35、T73、R94、およびS96、ならびに(ii)軽鎖のY49、Q55、およびS56からなる群から選択される以下のパラトープ残基の1つまたは複数をさらに含む、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項12】
(a)以下のように、ROBO2上の少なくとも1つのエピトープ残基(配列番号1に従った番号付け)の3.8Å以内にある少なくとも1つのパラトープ残基(Kabatに従った番号付け)を含む:エピトープ残基Arg94は、パラトープ残基H/Asp98の3.8Å以内にあり、エピトープ残基Gly98は、パラトープ残基H/Gly97およびH/Asp99の3.8Å以内にあり、エピトープ残基Arg99は、パラトープ残基H/Asp99、L/Tyr32、およびL/Tyr92の3.8Å以内にあり、エピトープ残基Arg100は、パラトープ残基H/Tyr33、H/Trp50、H/Glu95、L/Ser91、およびL/Tyr92の3.8Å以内にあり、エピトープ残基Ser101は、パラトープ残基H/Tyr32、H/Tyr33、H/Glu95、H/Ser96、およびH/Gly97の3.8Å以内にあり、エピトープ残基Lys102は、パラトープ残基H/Gly31の3.8Å以内にあり、そして、エピトープ残基Pro103は、パラトープ残基H/Gly31およびH/Tyr32の3.8Å以内にある、
(b)以下のように、ROBO2のエピトープ残基(配列番号1に従った番号付け)と水素結合を形成し得る少なくとも1つのパラトープ残基(Kabatに従った番号付け)を含む:エピトープ残基Arg94は、パラトープ残基H/Asp98と水素結合を形成し得、エピトープ残基Arg99は、パラトープ残基H/Aso99およびL/Tyr92と水素結合を形成し得、エピトープ残基Arg100は、パラトープ残基H/Glu95、L/Ser91、およびL/Tyr92と水素結合を形成し得、そして、エピトープ残基Ser101は、パラトープ残基H/Glu95およびH/Gly97と水素結合を形成し得る、
(c)以下のように、ROBO2のエピトープ残基(配列番号1に従った番号付け)と塩橋を形成し得る少なくとも1つのパラトープ残基(Kabatに従った番号付け)を含む:エピトープ残基Arg94は、パラトープ残基H/Asp98と塩橋を形成し得、そしてエピトープ残基Arg100は、パラトープ残基H/Glu95と塩橋を形成し得る、または
(d)以下のように、エピトープ残基(配列番号1に従った番号付け)との相互作用に起因したBSAにおける変化がゼロではない少なくとも1つのパラトープ残基(Kabatに従った番号付け)を含む:エピトープ残基Arg94は、パラトープ残基H/Asp98およびL/Tyr49と相互作用し、エピトープ残基Val96は、パラトープ残基H/Gly97と相互作用し、エピトープ残基His97は、パラトープ残基H/Gly97と相互作用し、エピトープ残基Gly98は、パラトープ残基H/Gly97と相互作用し、エピトープ残基Arg99は、パラトープ残基H/Asp99、L/Tyr32、およびL/Tyr92と相互作用し、エピトープ残基Arg100は、パラトープ残基H/Tyr33、H/Trp50、H/Glu95、L/Ser91、L/Tyr92、およびL/Ser93と相互作用し、エピトープ残基Ser101は、パラトープ残基H/Tyr32、H/Tyr33、H/Glu95、H/Ser96、およびH/Gly97と相互作用し、エピトープ残基Lys 102は、パラトープ残基H/Gly31と相互作用し、そしてエピトープ残基Pro103は、パラトープ残基H/Gly31およびH/Tyr32と相互作用する、
請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項13】
(i)
(a)配列番号24のアミノ酸配列を含むVH相補性決定領域1(CDR−H1)、
(b)配列番号25または44のアミノ酸配列を含むVH CDR−H2、および
(c)配列番号26のアミノ酸配列を含むVH CDR−H3
を含む重鎖可変領域(VH)、
ならびに
(ii)
(a)配列番号29のアミノ酸配列を含むVL相補性決定領域1(CDR−L1)、
(b)配列番号30のアミノ酸配列を含むVL CDR−L2、および
(c)配列番号31または47のアミノ酸配列を含むVL CDR−L3
を含む軽鎖可変領域(VL)
を含む、ROBO2に特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項14】
VLフレームワーク配列およびVHフレームワーク配列を含み、(i)VLフレームワーク配列およびVHフレームワーク配列の一方または両方が、それが由来する元であるヒト生殖細胞系フレームワーク配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であり、かつ(ii)前記ヒト生殖細胞系VLフレームワーク配列が、フレームワーク配列:DPK9、DPK12、DPK18、DPK24、HK102_V1、DPK1、DPK8、DPK3、DPK21、Vg_38K、DPK22、DPK15、DPL16、DPL8、V1−22、Vλコンセンサス、Vλ1コンセンサス、Vλ3コンセンサス、VΚコンセンサス、VΚ1コンセンサス、VΚ2コンセンサス、またはVΚ3コンセンサスであり、かつ(iii)前記ヒト生殖細胞系VHフレームワーク配列が、フレームワーク配列:DP54、DP47、DP50、DP31、DP46、DP71、DP75、DP10、DP7、DP49、DP51、DP38、DP79、DP78、DP73、VH3コンセンサス、VH5コンセンサス、VH1コンセンサス、またはVH4コンセンサスである、請求項13に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項15】
(i)配列番号32、43、126、127、128、129、130、131、および132のいずれか1つに少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含むVH、ならびに(ii)配列番号39、46、および133のいずれか1つに少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含むVLを含む、請求項13に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項16】
(i)配列番号32、43、および126〜132からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むVH、ならびに(ii)配列番号39、46、および133からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むVLを含む、請求項13に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項17】
(i)配列番号127のアミノ酸配列を含むVH、および(ii)配列番号133のアミノ酸配列を含むVLを含む、請求項13に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項18】
IgA、IgA、IgD、IgE、IgM、IgG、IgG、IgG、またはIgGのFcドメインであるFcドメインを含む、請求項13に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項19】
(i)配列番号38、45、134、135、136、137、138、139、および140のいずれか1つに少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含む重鎖、ならびに(ii)配列番号42、48、および141のいずれか1つに少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含むLCを含む、請求項13に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項20】
(i)配列番号38、45、134、135、136、137、138、139、および140からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖、ならびに(ii)配列番号42、48、および141からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むLCを含む、請求項13に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項21】
(i)配列番号135のアミノ酸配列を含む重鎖、ならびに(ii)配列番号141のアミノ酸配列を含むLCを含む、請求項13に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項22】
a.ATCCに寄託されかつATCC受託番号PTA−123265を有するプラスミドのインサート、
b.ATCCに寄託されかつATCC受託番号PTA−123700を有するプラスミドのインサート、
c.配列番号143の配列を含む単離された核酸、
d.配列番号145の配列を含む単離された核酸、
によってコードされるVH配列を含み、
a.ATCCに寄託されかつATCC受託番号PTA−123266を有するプラスミドのインサート、
b.ATCCに寄託されかつATCC受託番号PTA−123701を有するプラスミドのインサート、
c.配列番号144の配列を含む単離された核酸、
d.配列番号146の配列を含む単離された核酸、
によってコードされるVL配列をさらに含む、請求項13に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項23】
請求項13に記載の抗体またはその抗原結合断片と、ROBO2への結合について競合する抗体またはその抗原結合断片。
【請求項24】
請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片をコードする1つまたは複数のヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子。
【請求項25】
請求項24に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項26】
請求項24に記載の核酸分子を含む宿主細胞。
【請求項27】
請求項25に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項28】
(i)
(a)配列番号24のアミノ酸配列を含むVH相補性決定領域1(CDR−H1)、
(b)配列番号25または44のアミノ酸配列を含むVH CDR−H2、および
(c)配列番号26のアミノ酸配列を含むVH CDR−H3
を含む重鎖可変領域(VH)、
ならびに
(ii)
(a)配列番号29のアミノ酸配列を含むVL相補性決定領域1(CDR−L1)、
(b)配列番号30のアミノ酸配列を含むVL CDR−L2、および
(c)配列番号31または47のアミノ酸配列を含むVL CDR−L3
を含む軽鎖可変領域(VL)
を含む、ROBO2に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片をコードする単離された核酸。
【請求項29】
請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片、および薬学的に許容できる担体または賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項30】
治療有効量の請求項1に記載の抗体もしくはその抗原結合断片、または請求項29に記載の医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、腎臓疾患を処置する方法。
【請求項31】
前記腎臓疾患が、糸球体疾患、巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)、または腎症である、請求項30に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、参照することによってその全体が本明細書に組み込まれる、2017年6月9日に出願された米国仮特許出願第62/517,233号の利益を請求する。
【0002】
配列表
本願は配列表を含み、これは、ASCIIフォーマットで電子的に提出されており、参照することによってその全体が本明細書に組み込まれる。2018年5月14日に作成された前記ASCIIのコピーはPCFC−0042−WO1_SL.txtという名であり、サイズは360,666バイトである。
【0003】
共同研究契約の契約者
本発明は、共同研究契約の以下に列挙する契約者またはそれを代理するものによってなされた。共同研究契約は、本発明がなされた日またはそれ以前に効力を有しており、また、本発明は、共同研究契約の範囲内で行われた活動の結果としてなされた。共同研究契約の契約者は、BOSTON MEDICAL CENTER CORP.およびPFIZER INC.である。
【背景技術】
【0004】
慢性腎臓疾患(CKD)は、末期の腎不全をもたらすことが多い、世界的な公衆衛生上の課題である。CKDは、推定で米国の人口の13%、すなわち≒2700万人、および世界中で5億を超える人が罹患している。CKDの流行は増大を続けることが予測されており、それは、糖尿病および肥満が一般集団で蔓延しているためである。USにおける約50万人のCKD患者(世界中で≒700万人)が末期の腎臓疾患(ESRD)に進行し、生存のために透析または腎臓移植が必要となるであろう。ESRDの罹患率および死亡率は高く、米国人では毎年少なくとも400億ドルの費用がかかっている。
【0005】
タンパク尿(すなわち、尿中アルブミンレベル>30mg/日として一般に定義される、尿における過剰な血清タンパク質の存在)は、糖尿病を有する患者および有さない患者におけるCKDの早期のバイオマーカー、危険因子、および代理アウトカムである。CKDの初期段階の間のタンパク尿のレベルを低減させるための処置は、ESRDへの進行を遅らせることができる。しかし、タンパク尿を伴うCKD患者にとって現在利用可能な処置は存在しない。
【0006】
ポドサイトは、糸球体基底膜の外表面を被覆するための一次および二次突起を伸ばす、特別な上皮細胞である。隣接するポドサイトから出ている、アクチンに富んだ、指状嵌入する二次突起(すなわち、足突起)は、タンパク質の透過に対する最終的な障壁を形成する半多孔質のスリット膜によって架橋されている濾過スリットを生成する。タンパク尿は、糖尿病性のおよび非糖尿病性の腎臓疾患におけるポドサイトの損傷の臨床的徴候である。ポドサイトの分子成分における遺伝性の、先天的な、または後天的な異常がタンパク尿をもたらすことを示す研究が発表される数は増え続けている。ネフリンおよびポドシンなどのポドサイトのスリット膜タンパク質の遺伝子突然変異はタンパク尿性腎臓疾患の遺伝形式に関連するが、スリット膜を形成し、スリット膜に会合するタンパク質が、単なる受動的な構造的障壁を超えたものであることが、次第に明らかになってきている。それどころか、多くの証拠が、これらのタンパク質が、アクチン細胞骨格との相互作用を介してポドサイトの足突起の構造および機能に影響し得るバランスの取れたシグナル伝達ネットワークを形成することを示唆している。
【0007】
Roundabout受容体2(ROBO2、Roundabout Guidance受容体2またはRoundaboutホモログ2とも呼ばれる)は、SLITリガンドの受容体であり、SLIT−ROBO2シグナル伝達は、神経系の発生の際に軸索回路形成を制御するための化学反発性のガイダンスキューとしてまず特徴付けされた。最近のデータによって、ROBO2が腎臓内の糸球体ポドサイトの基底表面で発現するポドサイトタンパク質でもあることが示されている。ROBO2は、糸球体濾過障壁においてネフリンと複合体を形成し、ネフリンによって誘発されるアクチンダイナミクスを阻害するための負の調節因子として作用する。ROBO2の喪失は、ポドサイトのアクチン/ミオシンダイナミクスを改変し、かつ、糸球体基底膜への接着を増大させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
多くの糸球体疾患(巣状分節性糸球体硬化症を含む)に罹患している患者には、現在、腎機能を維持するために利用可能な治療法が存在しない。さらに、タンパク尿を伴うCKD患者にとって現在利用可能な処置も存在しない。したがって、ROBO2−SLITシグナル伝達を調節し、それによってポドサイトの機能を維持するかまたは調節し、タンパク尿を減少させる可能性がある治療が必要であると考えられるようになって久しい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ROBO2に特異的に結合する抗体(およびその抗原結合断片)、ならびにその使用および関連する方法を提供する。当業者であれば、通常の実験を使用すれば、本明細書において記載される本発明の具体的な実施形態の多くの均等物を認識するか、または確認することができよう。このような均等物は、以下の実施形態(E)によって包含されるものである。
【0010】
E1.Roundabout受容体2(ROBO2)のIgドメイン1内、またはIgドメイン1およびIgドメイン2内のエピトープに結合する、単離された抗体またはその抗原結合断片であって、前記エピトープが、配列番号1の番号付けに従った残基R100を含む、抗体またはその抗原結合断片。
【0011】
E2.前記エピトープが、配列番号1の番号付けに従ったV96、G98、R99、およびS101からなる群から選択される1つまたは複数の残基をさらに含む、E1の抗体またはその抗原結合断片。
【0012】
E3.前記エピトープが、配列番号1の番号付けに従った残基V96、G98、R99、およびS101をさらに含む、E1またはE2の抗体またはその抗原結合断片。
【0013】
E4.前記エピトープが、配列番号1の番号付けに従ったE69、E72、R79、H81、R82、R94、およびP103からなる群から選択される1つまたは複数の残基を含む、E1〜E3のいずれか1つの抗体またはその抗原結合断片。
【0014】
E5.前記エピトープが、配列番号1の番号付けに従ったE69、E72、R79、H81、R82、R94、およびP103からなる群から選択される1つまたは複数の残基を含む、E1〜E4のいずれか1つの抗体またはその抗原結合断片。
【0015】
E6.R100がKで置き換えられているエピトープにほとんど結合しない、E1〜E5のいずれか1つの抗体またはその抗原結合断片。
【0016】
E7.配列番号1の番号付けに従ったアミノ酸残基R100がKで置き換えられアミノ酸残基K102がRで置き換えられている突然変異エピトープ(ROBO2−KSR)にほとんど結合しない、E1〜E6のいずれか1つの抗体またはその抗原結合断片。
【0017】
E8.R100がKで置き換えられているエピトープに対するその結合親和性(K)値の多くとも100分の1、多くとも200分の1、多くとも300分の1、多くとも400分の1、多くとも500分の1、多くとも600分の1、多くとも700分の1、多くとも800分の1、多くとも900分の1、または多くとも1000分の1であるK値で前記エピトープに結合する、E1〜E6のいずれか1つの抗体またはその抗原結合断片。
【0018】
E9.ROBO1にほとんど結合しない、E1〜E8のいずれか1つの抗体またはその抗原結合断片。
【0019】
E10.配列番号9の番号付けに従ったROBO1のアミノ酸残基K137がRで置き換えられROBO1のアミノ酸残基R139がKで置き換えられている突然変異体ROBO1(ROBO1−RSK)に特異的に結合する、E1〜E8のいずれか1つの抗体またはその抗原結合断片。
【0020】
E11.ROBO1に対するそのK値の多くとも100分の1、多くとも200分の1、多くとも300分の1、多くとも400分の1、多くとも500分の1、多くとも600分の1、多くとも700分の1、多くとも800分の1、多くとも900分の1、または多くとも1000分の1である結合親和性(K)値でROBO2に結合する、E1〜E8のいずれか1つの抗体またはその抗原結合断片。
【0021】
E12.前記K値が、Biacore T200機器を場合により使用して、表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定される、E8またはE11の抗体またはその抗原結合断片。
【0022】
E13.前記K値が、ForteBio Octet機器を場合により使用して、バイオレイヤー干渉法(BLI)によって測定される、E8またはE11の抗体またはその抗原結合断片。
【0023】
E14.前記ROBO1がヒトROBO1である、E9〜E13のいずれか1つの抗体またはその抗原結合断片。
【0024】
E15.前記ROBO1が配列番号13を含む、E14の抗体またはその抗原結合断片。
【0025】
E16.前記ROBO2がヒトROBO2である、E1〜E15のいずれか1つの抗体またはその抗原結合断片。
【0026】
E17.前記ROBO2が配列番号5を含む、E16の抗体またはその抗原結合断片。
【0027】
E18.
(a)配列番号24のアミノ酸配列を含むVH相補性決定領域1(CDR−H1)、
(b)配列番号25のアミノ酸配列を含むVH相補性決定領域2(CDR−H2)、および
(c)配列番号26のアミノ酸配列を含むVH相補性決定領域3(CDR−H3)
を含む重鎖可変領域(VH)を含む、E1〜E17のいずれか1つの抗体またはその抗原結合断片。
【0028】
E19.配列番号32のCDR−H1配列、CDR−H2配列、およびCDR−H3配列を含む、E1〜E18のいずれか1つの抗体またはその抗原結合断片。
【0029】
E20.
(a)配列番号24のアミノ酸配列を含むCDR−H1、
(b)配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR−H2、および
(c)配列番号26のアミノ酸配列を含むCDR−H3
を含むVHを含む、ROBO2に特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合断片。
【0030】
E21.ヒト生殖細胞系VH3フレームワーク配列に由来するVHフレームワークを含む、E1〜E20のいずれか1つの抗体またはその抗原結合断片。
【0031】
E22.ヒト生殖細胞系VH1フレームワーク配列に由来するVHフレームワークを含む、E1〜E20のいずれか1つの抗体またはその抗原結合断片。
【0032】
E23.ヒト生殖細胞系VH5フレームワーク配列に由来するVHフレームワークを含む、E1〜E20のいずれか1つの抗体またはその抗原結合断片。
【0033】
E24.ヒトVH生殖細胞系コンセンサスフレームワーク配列を含む、E1〜E20のいずれか1つの抗体またはその抗原結合断片。
【0034】
E25.DP54、DP47、DP50、DP31、DP46、DP71、DP75、DP10、DP7、DP49、DP51、DP38、DP79、DP78、DP73、VH1コンセンサス、VH2コンセンサス、VH3コンセンサス、VH4コンセンサス、およびVH5コンセンサスからなる群から選択されるヒト生殖細胞系VH配列に由来するVHフレームワーク配列を含む、E1〜E24のいずれか1つの抗体またはその抗原結合断片。
【0035】
E26.DP54、DP47、DP50、DP31、DP46、DP49、およびDP51からなる群から選択されるヒト生殖細胞系VH配列に由来するフレームワークVH配列を含む、E1〜E25のいずれか1つの抗体またはその抗原結合断片。
【0036】
E27.DP54、DP47、DP50、およびDP31からなる群から選択されるヒト生殖細胞系VH配列に由来するフレームワークVH配列を含む、E1〜E26のいずれか1つの抗体またはその抗原結合断片。
【0037】
E28.ヒト生殖細胞系DP54配列に由来するVHフレームワーク配列を含む、E1〜E27のいずれか1つの抗体またはその抗原結合断片。
【0038】
E29.
(a)配列番号29のアミノ酸配列を含むVL相補性決定領域1(CDR−L1)、
(b)配列番号30のアミノ酸配列を含むVL相補性決定領域2(CDR−L2)、および
(c)配列番号31のアミノ酸配列を含むVL相補性決定領域3(CDR−L3)
を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、E1〜E28のいずれか1つの抗体またはその抗原結合断片。
【0039】
E30.配列番号39のCDR−L1配列、CDR−L2配列、およびCDR−L3配列を含む、E1〜E29のいずれか1つの抗体またはその抗原結合断片。
【0040】
E31.配列番号32のCDR−H1配列、CDR−H2配列、およびCDR−H3配列、ならびに配列番号39のCDR−L1配列、CDR−L2配列、およびCDR−L3配列を含む、ROBO2に特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合断片。
【0041】
E32.
(i)
(a)配列番号24のアミノ酸配列を含むCDR−H1、
(b)配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR−H2、および
(c)配列番号26のアミノ酸配列を含むCDR−H3
を含むVH、
ならびに
(ii)
(a)配列番号29のアミノ酸配列を含むCDR−L1、
(b)配列番号30のアミノ酸配列を含むCDR−L2、および
(c)配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR−L3
を含むVL
を含む、ROBO2に特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合断片。
【0042】
E33.ヒト生殖細胞系VΚフレームワーク配列に由来するVLフレームワークを含む、E1〜E32のいずれか1つの抗体またはその抗原結合断片。
【0043】
E34.ヒト生殖細胞系Vλフレームワーク配列に由来するVLフレームワークを含む、E1〜E32のいずれか1つの抗体またはその抗原結合断片。
【0044】
E35.ヒトVL生殖細胞系コンセンサスフレームワーク配列を含む、E1〜E32のいずれか1つの抗体またはその抗原結合断片。
【0045】
E36.DPK9、DPK12、DPK18、DPK24、HK102_V1、DPK1、DPK8、DPK3、DPK21、Vg_38K、DPK22、DPK15、DPL16、DPL8、V1−22、Vλコンセンサス、Vλ1コンセンサス、Vλ3コンセンサス、VΚコンセンサス、VΚ1コンセンサス、VΚ2コンセンサス、およびVΚ3コンセンサスからなる群から選択されるヒト生殖細胞系VL配列に由来するVLフレームワーク配列を含む、E1〜E35のいずれか1つの抗体またはその抗原結合断片。
【0046】
E37.ヒト生殖細胞系VΚ1配列に由来するVLフレームワーク配列を含む、E1〜E33、E35、およびE36のいずれか1つの抗体またはその抗原結合断片。
【0047】
E38.DPK9、HK102_V1、DPK1、およびDPK8からなる群から選択されるヒト生殖細胞系VL配列に由来するVLフレームワーク配列を含む、E1〜E36のいずれか1つの抗体またはその抗原結合断片。
【0048】
E39.ヒト生殖細胞系DPK9配列に由来するVLフレームワーク配列を含む、E1〜E36のいずれか1つの抗体またはその抗原結合断片。
【0049】
E40.VLフレームワーク配列およびVHフレームワーク配列を含み、VLフレームワーク配列またはVHフレームワーク配列の一方または両方が、それが由来する元であるヒト生殖細胞系フレームワーク配列と少なくとも90%同一である、E1〜E39のいずれか1つの抗体またはその抗原結合断片。
【0050】
E41.VLフレームワーク配列およびVHフレームワーク配列を含み、VLフレームワーク配列またはVHフレームワーク配列の一方または両方が、それが由来する元であるヒト生殖細胞系フレームワーク配列と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一である、E1〜E40のいずれか1つの抗体またはその抗原結合断片。
【0051】
E42.VLフレームワーク配列およびVHフレームワーク配列を含み、VLフレームワーク配列またはVHフレームワーク配列の一方または両方が、それが由来する元であるヒト生殖細胞系フレームワーク配列と同一である、E1〜E41のいずれか1つの抗体またはその抗原結合断片。
【0052】
E43.配列番号32、43、49、55、70、73、76、79、82、85、88、115、119、126、127、128、129、130、131、および132のいずれか1つに少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含むVHを含む、実施形態E1〜E42のいずれか1つの抗体またはその抗原結合断片。
【0053】
E44.配列番号32および126〜132のいずれか1つに少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一なアミノ酸配列を含むVHを含む、E1〜E43のいずれか1つの抗体またはその抗原結合断片。
【0054】
E45.配列番号32および126〜132のいずれか1つのアミノ酸配列を含むVHを含む、E1〜E44のいずれか1つの抗体またはその抗原結合断片。
【0055】
E46.配列番号39、46、52、58、61、64、67、91、94、97、99、101、103、105、107、109、111、113、および133に少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含むVLを含む、E1〜E45のいずれか1つの抗体またはその抗原結合断片。
【0056】
E47.配列番号39または133に少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一なアミノ酸配列を含むVHを含む、E1〜E46のいずれか1つの抗体またはその抗原結合断片。
【0057】
E48.配列番号39または133のアミノ酸配列を含むVLを含む、E1〜E47のいずれか1つの抗体またはその抗原結合断片。
【0058】
E49.Fcドメインを含む、E1〜E48のいずれか1つの抗体またはその抗原結合断片。
【0059】
E50.Fcドメインが、IgA(例えば、IgAもしくはIgA)、IgD、IgE、IgM、またはIgG(例えば、IgG、IgG、IgG、もしくはIgG)のFcドメインである、E49の抗体またはその抗原結合断片。
【0060】
E51.FcドメインがIgGのFcドメインである、E50の抗体またはその抗原結合断片。
【0061】
E52.IgGが、IgG、IgG、IgG、またはIgGからなる群から選択される、E51の抗体またはその抗原結合断片。
【0062】
E53.IgGがIgGである、E52の抗体またはその抗原結合断片。
【0063】
E54.配列番号38、45、51、57、72、75、78、81、84、87、90、118、121、134、135、136、137、138、139、および140のいずれか1つに少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含む重鎖を含む、E1〜E53のいずれか1つの抗体またはその抗原結合断片。
【0064】
E55.配列番号38、134、135、136、137、138、139、および140のいずれか1つに少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一なアミノ酸を含む重鎖を含む、E1〜E54のいずれか1つの抗体またはその抗原結合断片。
【0065】
E56.配列番号38、134、135、136、137、138、139、および140のいずれか1つのアミノ酸配列を含む重鎖を含む、E1〜E55のいずれか1つの抗体またはその抗原結合断片。
【0066】
E57.配列番号42、48、54、60、63、66、69、93、96、98、100、102、104、106、108、110、112、114、および141のいずれか1つに少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、E1〜E56のいずれか1つの抗体またはその抗原結合断片。
【0067】
E58.配列番号42または141に少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一なアミノ酸配列を含むLCを含む、E1〜E57のいずれか1つの抗体またはその抗原結合断片。
【0068】
E59.配列番号42または141のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、E1〜E58のいずれか1つの抗体またはその抗原結合断片。
【0069】
E60.ATCCに寄託されかつATCC受託番号PTA−123265またはPTA−123700を有するプラスミドによってコードされるVH配列を含む、E1〜E59のいずれか1つの抗体またはその抗原結合断片。
【0070】
E61.ATCCに寄託されかつATCC受託番号PTA−123266またはPTA−123701を有するプラスミドによってコードされるVL配列を含む、E1〜E60のいずれか1つの抗体またはその抗原結合断片。
【0071】
E62.ATCCに寄託されかつATCC受託番号PTA−123265またはPTA−123700を有するプラスミドによってコードされるVHを含む抗体またはその抗原結合断片。
【0072】
E63.ATCCに寄託されかつATCC受託番号PTA−123266またはPTA−123701を有するプラスミドによってコードされるVLを含む抗体またはその抗原結合断片。
【0073】
E64.ATCCに寄託されかつATCC受託番号PTA−123265を有するプラスミドによってコードされるVH、およびATCCに寄託されかつATCC受託番号PTA−123266を有するプラスミドによってコードされるVLを含む抗体またはその抗原結合断片。
【0074】
E65.ATCCに寄託されかつATCC受託番号PTA−123700を有するプラスミドによってコードされるVH、およびATCCに寄託されかつATCC受託番号PTA−123701を有するプラスミドによってコードされるVLを含む抗体またはその抗原結合断片。
【0075】
E66.ATCCに寄託されかつATCC受託番号PTA−123700を有するプラスミドによってコードされるVH、およびATCCに寄託されかつATCC受託番号PTA−123266を有するプラスミドによってコードされるVLを含む抗体またはその抗原結合断片。
【0076】
E67.ATCCに寄託されかつATCC受託番号PTA−123265を有するプラスミドによってコードされるVH、およびATCCに寄託されかつATCC受託番号PTA−123701を有するプラスミドによってコードされるVLを含む抗体またはその抗原結合断片。
【0077】
E68.E1〜E67のいずれか1つの抗体またはその抗原結合断片と、ROBO2への結合について競合する抗体またはその抗原結合断片。
【0078】
E69.Abcs35、93H2、Ab1、Ab3、Ab9、Ab13、Ab17、Ab21、Ab22、Ab25、Ab29、Ab32、Ab40、Ab45、Ab46、Ab58、Ab83、Ab96、Ab112、Ab123、Abcs1、Abcs2、Abcs4、Abcs5、Abcs12、Abcs20、Abcs25、Abcs40、Abcs50、Abcs55、CTIR2−1、CTIR2−2、CTIR2−3、CTIR2−4、CTIR2−5、CTIR2−6、CTIR2−7、CTIR2−8、CTIR2−9、CTIR2−10、CTIR2−11、CTIR2−12、CTIR2−13、CTIR2−14、CTIR2−15、CTIR2−16、Abcs35−A、Abcs35−B、Abcs35−C、Abcs35−D、Abcs35−E、Abcs35−F、Abcs35−G、Abcs35−H、Abcs35−I、Abcs35−J、Abcs35−K、Abcs35−L、Abcs35−M、Abcs35−N、およびAbcs35−Oからなる群から選択される抗体と、ROBO2への結合について競合する抗体またはその抗原結合断片。
【0079】
E70.Abcs35、Abcs35−A、Abcs35−B、Abcs35−C、Abcs35−D、Abcs35−E、Abcs35−F、Abcs35−G、Abcs35−H、Abcs35−I、Abcs35−J、Abcs35−K、Abcs35−L、Abcs35−M、Abcs35−N、およびAbcs35−Oからなる群から選択される抗体と、ROBO2への結合について競合する抗体またはその抗原結合断片。
【0080】
E71.E1〜E67のいずれか1つの抗体またはその抗原結合断片と実質的に同一のエピトープに結合する、ROBO2に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片。
【0081】
E72.Abcs35、93H2、Ab1、Ab3、Ab9、Ab13、Ab17、Ab21、Ab22、Ab25、Ab29、Ab32、Ab40、Ab45、Ab46、Ab58、Ab83、Ab96、Ab112、Ab123、Abcs1、Abcs2、Abcs4、Abcs5、Abcs12、Abcs20、Abcs25、Abcs40、Abcs50、Abcs55、CTIR2−1、CTIR2−2、CTIR2−3、CTIR2−4、CTIR2−5、CTIR2−6、CTIR2−7、CTIR2−8、CTIR2−9、CTIR2−10、CTIR2−11、CTIR2−12、CTIR2−13、CTIR2−14、CTIR2−15、CTIR2−16、Abcs35−A、Abcs35−B、Abcs35−C、Abcs35−D、Abcs35−E、Abcs35−F、Abcs35−G、Abcs35−H、Abcs35−I、Abcs35−J、Abcs35−K、Abcs35−L、Abcs35−M、Abcs35−N、およびAbcs35−Oからなる群から選択される抗体と実質的に同一のエピトープに結合する、ROBO2に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片。
【0082】
E73.Abcs35、Abcs35−A、Abcs35−B、Abcs35−C、Abcs35−D、Abcs35−E、Abcs35−F、Abcs35−G、Abcs35−H、Abcs35−I、Abcs35−J、Abcs35−K、Abcs35−L、Abcs35−M、Abcs35−N、およびAbcs35−Oからなる群から選択される抗体と実質的に同一のエピトープに結合する、ROBO2に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片。
【0083】
E74.Abcs35、93H2、Ab1、Ab3、Ab9、Ab13、Ab17、Ab21、Ab22、Ab25、Ab29、Ab32、Ab40、Ab45、Ab46、Ab58、Ab83、Ab96、Ab112、Ab123、Abcs1、Abcs2、Abcs4、Abcs5、Abcs12、Abcs20、Abcs25、Abcs40、Abcs50、Abcs55、CTIR2−1、CTIR2−2、CTIR2−3、CTIR2−4、CTIR2−5、CTIR2−6、CTIR2−7、CTIR2−8、CTIR2−9、CTIR2−10、CTIR2−11、CTIR2−12、CTIR2−13、CTIR2−14、CTIR2−15、CTIR2−16、Abcs35−A、Abcs35−B、Abcs35−C、Abcs35−D、Abcs35−E、Abcs35−F、Abcs35−G、Abcs35−H、Abcs35−I、Abcs35−J、Abcs35−K、Abcs35−L、Abcs35−M、Abcs35−N、およびAbcs35−Oからなる群から選択される抗体と同一のエピトープに結合する、ROBO2に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片。
【0084】
E75.
(i)Abcs35および93H2から選択される抗体と実質的に同一のエピトープに結合する、ならびに
(ii)ROBO1に結合しないが、配列番号9の番号付けに従ったアミノ酸残基K137がRで置き換えられアミノ酸残基R139がKで置き換えられているROBO1−RSK突然変異体には結合する、
ROBO2に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片。
【0085】
E76.Fc融合タンパク質、モノボディ、マキシボディ、二官能性抗体、scFab、scFv、またはペプチボディである、E1〜E75のいずれか1つの抗体またはその抗原結合断片。
【0086】
E77.約10nM未満、約5nM未満、約2nM未満、約1nM未満、約900pM未満、約800pM未満、約700pM未満、約600pM未満、約500pM未満、約400pM未満、約300pM未満、約250pM未満、約200pM未満、約150pM未満、約100pM未満、約50pM未満、約40pM未満、約30pM未満、約25pM未満、約20pM未満、約15pM未満、約10pM未満、約5pM未満、または約1pM未満のK値でROBO2に結合する、E1〜76の抗体またはその抗原結合断片。
【0087】
E78.(a)SLITおよびROBO2の結合を阻害する、(b)srGAP1およびROBO2の結合もしくはNckおよびROBO2の結合を低減させる、ならびに/または(c)ROBO2依存性のSLIT−N活性を阻害する、E1〜77の抗体またはその抗原結合断片。
【0088】
E79.E1〜E78のいずれか1つの抗体またはその抗原結合断片をコードする1つまたは複数のヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子。
【0089】
E80.配列番号143のヌクレオチド配列を含む、単離された核酸。
【0090】
E81.配列番号144のヌクレオチド配列を含む、単離された核酸。
【0091】
E82.配列番号145のヌクレオチド配列を含む、単離された核酸。
【0092】
E83.配列番号146のヌクレオチド配列を含む、単離された核酸。
【0093】
E84.ATCCに寄託されかつ受託番号PTA−123265を有するプラスミドのインサートのヌクレオチド配列を含む、単離された核酸。
【0094】
E85.ATCCに寄託されかつ受託番号PTA−123266を有するプラスミドのインサートのヌクレオチド配列を含む、単離された核酸。
【0095】
E86.ATCCに寄託されかつ受託番号PTA−123700を有するプラスミドのインサートヌクレオチド配列を含む、単離された核酸。
【0096】
E87.ATCCに寄託されかつ受託番号PTA−123701を有するプラスミドのインサートのヌクレオチド配列を含む、単離された核酸。
【0097】
E88.E79〜E87のいずれか1つの核酸を含むベクター。
【0098】
E89.E79〜E87のいずれか1つの核酸を含む宿主細胞。
【0099】
E90.E89のベクターを含む宿主細胞。
【0100】
E91.哺乳動物細胞である、E90の宿主細胞。
【0101】
E92.CHO細胞、HEK−293細胞、またはSp2.0細胞である、E91の宿主細胞。
【0102】
E93.抗体またはその抗原結合断片を作製する方法であって、E89〜E92のいずれか1つの宿主細胞を、前記抗体または抗原結合断片が前記宿主細胞によって発現される条件下で培養することを含む方法。
【0103】
E94.前記抗体またはその抗原結合断片を単離することをさらに含む、E93の方法。
【0104】
E95.E1〜E78のいずれか1つの抗体またはその抗原結合断片、および薬学的に許容できる担体または賦形剤を含む医薬組成物。
【0105】
E96.治療有効量の実施形態E1〜E78のいずれか1つの抗体もしくはその抗原結合断片、またはE95の医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、ROBO2の活性を低減させる方法。
【0106】
E97.治療有効量のE1〜E78のいずれか1つの抗体もしくはその抗原結合断片、またはE95の医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、腎臓疾患を処置する方法。
【0107】
E98.治療有効量のE1〜E78のいずれか1つの抗体もしくはその抗原結合断片、またはE95の医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、ポドサイトの機能を維持または調節する方法。
【0108】
E99.治療有効量のE1〜E78のいずれか1つの抗体もしくはその抗原結合断片、またはE95の医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、糸球体疾患を処置する方法。
【0109】
E100.治療有効量のE1〜E78のいずれか1つの抗体もしくはその抗原結合断片、またはE95の医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)を処置する方法。
【0110】
E101.治療有効量のE1〜E78のいずれか1つの抗体もしくはその抗原結合断片、またはE95の医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、腎症を処置する方法。
【0111】
E102.前記腎症がIgA腎症である、E101の方法。
【0112】
E103.前記対象がヒトである、E96〜E102のいずれか1つの方法。
【0113】
E104.前記抗体もしくはその抗原結合断片または医薬組成物を静脈内に投与することを含む、E96〜E103のいずれか1つの方法。
【0114】
E105.前記抗体もしくはその抗原結合断片または医薬組成物を皮下に投与することを含む、E96〜E103のいずれか1つの方法。
【0115】
E106.前記抗体もしくはその抗原結合断片または医薬組成物が、おおよそ週に2回、週に1回、2週間ごとに1回、3週間ごとに1回、4週間ごとに1回、5週間ごとに1回、6週間ごとに1回、7週間ごとに1回、8週間ごとに1回、9週間ごとに1回、10週間ごとに1回、月に2回、月に1回、2カ月ごとに1回、3カ月ごとに1回、または4カ月ごとに1回投与される、E96〜E105のいずれか1つの方法。
【0116】
E107.薬剤として使用するための、E1〜E78のいずれか1つの抗体もしくはその抗原結合断片、またはE95の医薬組成物。
【0117】
E108.対象におけるROBO2の活性の低減において使用するための、E1〜E78のいずれか1つの抗体もしくはその抗原結合断片、またはE95の医薬組成物。
【0118】
E109.対象におけるポドサイト機能の維持または調節において使用するための、E1〜E78のいずれか1つの抗体もしくはその抗原結合断片、またはE95の医薬組成物。
【0119】
E110.対象における糸球体疾患(FSGSなど)の処置において使用するための、E1〜E78のいずれか1つの抗体もしくはその抗原結合断片、またはE95の医薬組成物。
【0120】
E111.対象における腎症(IgA腎症など)の処置において使用するための、E1〜E78のいずれか1つの抗体もしくはその抗原結合断片、またはE95の医薬組成物。
【図面の簡単な説明】
【0121】
図1】Abcs35がヒトROBO2に高い親和性で結合することを実証する図である。表面プラズモン共鳴(SPR)を使用して、Abcs35のKDは0.268nMであると判定された。まず、8点からなるAbcs35の2倍連続希釈物を、CM5チップ上で300RUに固定した。センサーを次いで、ROBO2 Ig1,Ig2−Hisに曝露した。会合および解離を経時的に追跡した。
図2】組換えタンパク質を利用しての、ROBO2のRSKエピトープへのAbcs35の結合の特異性を実証する図である。Octet Red AHC(抗ヒトIgG FC)センサーにAbcs35をロードした。ロードしたセンサーを次いで、ヒトROBO2 Ig1−2、ラットROBO2 Ig1−2、ROBO1内のRSKがKSRに突然変異したヒトROBO2 Ig1−2、またはROBO1 Ig1−2に曝露し、次いで、センサーを、いかなるROBO1タンパク質もROBO2タンパク質も含まないPBSのみに移した。矢印は、試験対象のROBOタンパク質の各々についての曲線を示す。ヒトおよびラットのROBO2タンパク質はAbcs35に結合したが、その一方で、ROBO1およびROBO2−KSRタンパク質はAbcs35に結合しなかった。
図3】ヒトROBO2に対するAbcs35の用量依存性の結合、およびROBO2におけるRSKエピトープの特異的認識を示す図である。11点からなる3倍連続希釈物をAbcs35で作製し、ヒトROBO2(陽性対照、黒い丸印)、ROBO2のRSKモチーフを含むように突然変異されたヒトROBO1(灰色の丸印)、またはROBO1のKSRモチーフを含むように突然変異されたROBO2(黒いダイヤ印)のいずれかを過剰発現するHEK293細胞への結合を評価した。用量依存性の結合は、ネイティブなROBO2またはROBO1−RSKでのみ見られるが、ROBO2−KSRでは見られず、このことは、Abcs35がROBO2に、具体的にはROBO2内のRSKモチーフに結合することを示している。
図4】Abcs35がカニクイザルおよびラットのROBO2オルソログの両方と交差反応することを実証する図である。11点からなる3倍連続希釈物をAbcs35で作製し、対照HEK293細胞(黒いダイヤ印)、またはヒトROBO2(塗りつぶされた黒い丸印)、カニクイザルROBO2(塗りつぶされた灰色の丸印)、もしくはラットROBO2(白抜きの灰色の丸印)を過剰発現するHEK293細胞への結合を評価するために使用した。用量依存性の結合は、ヒト、カニクイザル、またはラットのROBO2を発現する細胞で見られるが、対照HEK293細胞では見られず、このことは、Abcs35が両オルソログを認識することを示している。
図5】ホモジニアス時間分解蛍光(HTRF)によって評価された、ROBO2へのSLIT2−Nの結合の用量依存性の阻害を実証する図である。親93H2および親和性が成熟したAbcs35の両方が、SLIT2−Nの結合を中和する。
図6】神経細胞移動のSLIT2−N介在性の阻害の用量依存性の阻害を示す図である。表5に記載するように、SVZ神経組織細胞の外植片を、1nMのSLIT2−Nの存在下で一晩培養し、Abcs35の量を滴定した。Abcs35は、用量依存性の様式で神経細胞移動を回復し得、神経細胞移動のROBO2依存性のSLIT2−N介在性の阻害を基本的に逆転させた。
図7】ラット受身ヘイマン腎炎モデルにおけるAbcs35のインビボでの有効性(Abcs35を処置することでのタンパク尿の阻害)を実証する図である。示した群のそれぞれにおいて12頭の動物を、示した用量のAbcs35または関連のない対照モノクローナル抗体で、0日目でのモデルの誘発の前日に開始して3日間ごとに1回、皮下に処置した。Y軸は、ポドサイトの損傷の指標である尿中へのタンパク質の漏出の尺度としての、尿中のクレアチニンに対するアルブミンの比(mg/mg)を示す。Lewisラットに、ラット腎臓刷子縁に対して作製されたヒツジ抗血清(抗Fx1a、基底膜、およびポドサイト)を注射した。ラットは、ラットポドサイトに結合したヒツジ血清に対する免疫応答を示すようになる。ポドサイトが損傷し、消失するにつれて、タンパク尿は増大する。最大用量のAbcs35で処置すると、タンパク尿は、対照抗体での処置と比較して、反復測定ANOVA統計分析によって、0.001未満のp値で、最大39%低減した。用量の効果もまた、0.001未満のp値で統計的に有意であった。
図8】Abcs35での処置が、受身ヘイマン腎炎モデルにおいてポドサイトの下部構造に対する損傷を低減させることを実証する図である。示した群のそれぞれにおいて12頭の動物を、示した用量のAbcs35または関連のない対照モノクローナル抗体で、図7に示すように0日目でのモデルの誘発の前日に開始して3日間ごとに1回、25mg/kgで皮下に処置して、100%の標的カバレージを達成するようにした。16日目に動物を屠殺した後、選択された腎臓試料を、透過型電子顕微鏡を使用してデジタル画像化した。反復することなく、200倍の倍率で見られた最初の3つの糸球体の3つのループ状毛細血管を、5000倍および1万倍の倍率で画像化した。ImageJソフトウェア(バージョン1.47v、National Institutes of Health、Bethesda、MD)を使用して手動でトレースし、高倍率の透過型電子顕微鏡の画像で、糸球体基底膜(GBM)の単位長さ当たりの隣接した足突起(FP)の幅を測定した。Abcs35で処置した動物のポドサイトの足突起は、対照抗体で処置した動物よりも有意に短く(両側T検定によると0.01未満のp値)、このことは、Abcs35で処置した動物のポドサイトの足突起がそれほど消失しておらず、糸球体の損傷から保護されていることを示している。
図9】ヒトROBO2およびROBO1のIg1ドメインおよびIg2ドメインのアラインメントを示す図である。これらの配列は、配列番号1の番号付けに従ったROBO2の残基31から220、および配列番号9の番号付けに従ったROBO1の68から257である。100から102のROBO2のRSKモチーフ、および137〜139のROBO1のKSRモチーフには下線が引かれている。上:配列番号1の残基31〜220、下:配列番号9の残基68から257。
図10】残基68〜164(配列番号9に従った番号付け)のROBO1とアラインした、残基31から127(配列番号1に従った番号付け)のヒトROBO2のIg1ドメインのアラインメントを示す図である。93H2抗体がROBO2を特異的に認識するがROBO1は特異的に認識しないようになる可能性がある、ROBO2とROBO1との間で異なるアミノ酸残基が、強調されている。
図11】ROBO2−SLIT2およびROBO2−93H2のアラインされた結晶構造を示す図であり、これは、ROBO2とわずかに相互作用するにすぎない93H2の軽鎖が、ROBO2とSLIT2との間の相互作用を阻害するために必要な構造的障害をもたらしていることを明らかにしている。
図12】93H2とROBO2 Ig1、特にROBO2の近い「RSK」配列(残基100〜102)との間の特異的なアミノ酸残基の相互作用を示す図である。
図13】93H2のFabと複合体を形成したROBO2のIg1ドメインの結晶構造を示す図である。この構造は、結晶格子の非対称の各単位で環様の立体構造に配置された、ROBO2−93H2複合体の6つのコピーから構成される。
図14】SLITタンパク質およびROBOタンパク質のドメインを示すグラフィック表示である。
図15】HTRFアッセイにおける、ROBO2発現細胞へのSLIT2Nの結合の用量依存性の阻害を示す図である。生殖細胞突然変異の導入は、SLIT2の結合を中和する抗体の能力に対して有意な影響を有していなかった。
図16図16A:Abcs35(黒い丸印)およびAbcs35−J(灰色の四角印)がほぼ同一の結合プロファイルを有することを実証する図である。ヒトROBO2が示されている。 図16B:Abcs35(黒い丸印)およびAbcs35−J(灰色の四角印)がほぼ同一の結合プロファイルを有することを実証する図である。カニクイザルROBO2が示されている。 図16C:Abcs35(黒い丸印)およびAbcs35−J(灰色の四角印)がほぼ同一の結合プロファイルを有することを実証する図である。ラットROBO2が示されている。 図16D:Abcs35(黒い丸印)およびAbcs35−J(灰色の四角印)がほぼ同一の結合プロファイルを有することを実証する図である。ヒトROBO1が示されている。 図16E:Abcs35(黒い丸印)およびAbcs35−J(灰色の四角印)がほぼ同一の結合プロファイルを有することを実証する図である。ROBO2 RSKエピトープを含むROBO1が示されている。 図16F:Abcs35(黒い丸印)およびAbcs35−J(灰色の四角印)がほぼ同一の結合プロファイルを有することを実証する図である。ROBO1 KSRエピトープを含むROBO2が示されている。
図17】Abcs35またはAbcs35−Jのいずれかの存在下での神経細胞移動の用量依存性の阻害を示す図である。IC50値は、抗体の効力において有意差がないことを示している。
【発明を実施するための形態】
【0122】
1.概説
これまでの研究によって、SLIT2/ROBO2が、ネフリン誘発性のアクチンポリマー化を阻害し、相殺する、腎臓ポドサイトにおける負のシグナルであることが示されている。ROBO2のポドサイト特異的なノックアウトは、タンパク尿動物モデルにおける糸球体の不良を有意に低減させ、ポドサイトの足突起の構造を保護し、マウスを腎毒性血清(NTS)誘発性の重度のタンパク尿から保護する。ROBO2の喪失欠損はまた、ミオシンダイナミクスの調節に起因して、高血圧性腎症の高塩(DOCA)モデルにおいて膠芽腫(GBM)へのポドサイトの接着を維持する。これらのデータと、ROBO2染色体の転座を有する患者がタンパク尿を有さないという知見とから、本発明者らは、SLIT2−ROBO2シグナル伝達経路を遮断すると、ネフリン誘発性のアクチンポリマー化が増大して、タンパク尿が低減し得ると考えるに至った。ROBO2シグナル伝達の遮断はまた、ネフリン誘発性のアクチンポリマー化を上方調節することによって、タンパク尿疾患における糸球体濾過障壁を回復させ得る。このようにして、ROBO2へのSLITリガンドの結合を阻害する中和抗体は、腎臓保護効果をもたらし得る。
【0123】
ROBO2特異的抗体を得ることの1つの特定の困難性は、ROBO2およびROBO1が、特にそのリガンド結合ドメインIg1およびIg2において、高程度の配列類似性を有することである(図9および10における配列アラインメントを参照されたい)。ROBO1およびROBO2のSLIT結合ドメイン(Ig1およびIg2)における残基の93%が、同一であるかまたは類似している。驚くべきことに、本明細書において開示および例示するように、本発明者らは、ROBO2における固有のエピトープを同定し、ROBO2に特異的に結合するがROBO1には結合しないモノクローナル抗体を生産した。特に、この固有のエピトープは、抗体の特異性を決定する鍵となる残基である残基R100(配列番号1で示されるヒトROBO2の番号付けに従う)を含む。実施例5で示すように、ROBO2(RSK)の残基100〜102をROBO1(KSR)の対応する残基に突然変異させると、ROBO2特異的抗体の結合が無効となるが、その一方で、ROBO1(KSR)の対応する残基をROBO2(RSK)に突然変異させると、ROBO2特異的抗体は、突然変異したROBO1に結合するようになる。S101がROBO2とROBO1との間で保存されている/同一であるため、また、結晶構造が、K102の側鎖が抗体−抗原界面から離れた方向に向いていることを示しているため(これは、K102がROBO2−抗体相互作用に直接関与していないことを意味する)、本発明者らのデータは、R100がROBO2特異的抗体の結合特異性を単独で駆動しているという考えを明らかにサポートしている。
【0124】
このROBO2特異的なエピトープの発見は、非常に驚くべきである。R100は単独でROBO2特異性に関与しているというだけではなく、ほとんどのケースにおいて、RからKへの置換は「保存的な」置換である(両方が、正に荷電した側鎖を有している)と考えられており、結合に実質的に影響しない。これは、ここでは当てはまらない。RをKに突然変異させると、抗原−抗体の結合が無効になり、このことは、この位置にあるR残基の重要性を説明している。
【0125】
2.定義
ROBO2における具体的なアミノ酸残基の位置を、配列番号1(ヒトROBO2)に従って番号付けする。しかし、本発明は、配列番号1に限定されない。他のROBO2ホモログ、アイソフォーム、変異体、または断片の対応する残基を、当技術分野において知られている配列アラインメントまたは構造アラインメントに従って同定することができる。例えば、アラインメントは、手動で、またはデフォルトパラメータを使用してClustalW2もしくは「BLAST 2 Sequences」などの周知の配列アラインメントプログラムを使用することによって、行うことができる。
【0126】
抗体
抗体の「抗原結合断片」は、抗原に特異的に結合する能力を保持する(好ましくは実質的に同一の結合親和性で)、完全長抗体の断片を指す。抗原結合断片の例としては、(i)VLドメイン、VHドメイン、CLドメイン、およびCH1ドメインからなる一価断片であるFab断片、(ii)ヒンジ領域にあるジスルフィド架橋によって連結した2つのFab断片を含む二価断片であるF(ab’)2断片、(iii)VHドメインおよびCH1ドメインからなるFd断片、(iv)抗体のシングルアームのVLドメインおよびVHドメインからなるFv断片、(v)VHドメインからなるdAb断片(Wardら、1989、Nature 341:544〜546)、ならびに(vi)単離された相補性決定領域(CDR)、ジスルフィド結合したFv(dsFv)、および抗イディオタイプ(抗Id)抗体、およびイントラボディが含まれる。さらに、Fv断片2つのドメインであるVLおよびVHは、別個の遺伝子によってコードされているが、VL領域およびVH領域が対合して一価の分子を形成している単一のタンパク質鎖(一本鎖Fv(scFv)として知られている)としてこれらを作ることを可能にする合成リンカーによる組換え方法を使用して、前記VLおよびVHを繋げることができる。例えば、Birdら、Science 242:423〜426(1988)、およびHustonら、1988、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879〜5883を参照されたい。ダイアボディなどの他の形態の一本鎖抗体もまた包含される。ダイアボディは、VHドメインおよびVLドメインが単一のポリペプチド鎖上で発現している二価の二重特異的抗体であるが、同一鎖上でこれらの2つのドメイン間の対合を可能にするには短すぎるリンカーを使用しており、そのため、これらのドメインは別の鎖の相補的なドメインと対合しなくてはならず、2つの抗原結合部位が生じる(例えば、Holligerら、1993、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444〜6448;Poljakら、1994、Structure 2:1121〜1123を参照されたい)。
【0127】
抗体の「可変ドメイン」は、単独のまたは組み合わせた、抗体軽鎖の可変領域(VL)または抗体重鎖の可変領域(VH)を指す。当技術分野において知られているように、重鎖および軽鎖の可変領域はそれぞれ、3つの相補性決定領域(CDR)によって接続された4つのフレームワーク領域(FR)からなり、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する。
【0128】
「相補性決定領域」(CDR)は、Kabatの定義、Chothiaの定義、KabatおよびChothiaの両方の蓄積の定義、AbMの定義、接触の定義、Northの定義、ならびに/もしくは立体構造の定義、または当技術分野において周知のCDR決定方法のいずれかに従って同定することができる。例えば、Kabatら、1991、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版(超可変領域);Chothiaら、1989、Nature 342:877〜883(構造的ループ構造)を参照されたい。CDRを構成する特定の抗体におけるアミノ酸残基の同一性は、当技術分野において周知の方法を使用して決定することができる。CDRのAbMの定義は、KabatおよびChothiaの間の折衷であり、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェア(Accelrys(登録商標))を使用する。CDRの「接触」の定義は、観察される抗原接触に基づき、MacCallumら、1996、J.Mol.Biol.、262:732〜745で示されている。CDRの「立体構造」の定義は、抗原結合に対するエンタルピーの寄与をもたらす残基に基づく(例えば、Makabeら、2008、J.Biol.Chem.、283:1156〜1166を参照されたい)。Northは、CDR定義の異なる好ましいセットを使用する、同定された正準的なCDR立体構造を有する(Northら、2011、J.Mol.Biol.406:228〜256)。CDRの「立体構造の定義」として本明細書において言及される別のアプローチにおいて、CDRの位置は、抗原結合に対するエンタルピーの寄与をもたらす残基として同定され得る(Makabeら、2008、J Biol.Chem.283:1156〜1166)。さらに他のCDR境界の定義は、上記のアプローチの1つに厳密に従わなくてもよいが、それでも、Kabat CDRの少なくとも一部と重複し、しかし、特定の残基または残基群またはさらにはCDR全体が抗原結合に有意には影響しないという予測または実験上の知見に照らして、短くまたは長くされてもよい。本明細書において使用する場合、CDRは、アプローチの組み合わせを含む、当技術分野において知られている任意のアプローチによって定義されるCDRを指し得る。本明細書において使用される方法は、これらのアプローチのいずれかに従って定義されたCDRを利用し得る。2つ以上のCDRを含む任意の所与の実施形態では、CDR(または抗体の他の残基)は、Kabatの定義、Chothiaの定義、Northの定義、伸長の定義、AbMの定義、接触の定義、および/または立体構造の定義のいずれかに従って定義され得る。
【0129】
可変ドメイン内の残基は、抗体の編集物の重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインに使用される番号付けシステムであるKabatに従って番号付けする。Kabatら、1991、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、MDを参照されたい。この番号付けシステムを使用して、実際の直鎖状アミノ酸配列は、可変ドメインのFRもしくはCDRの短縮、または可変ドメインのFRもしくはCDR内への挿入に対応する、より少ないまたは追加のアミノ酸を含有し得る。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後ろの単一のアミノ酸インサート(Kabatに従った残基52a)、ならびに重鎖のFRの残基82の後ろの挿入された残基(例えば、Kabatに従った残基82a、82b、および82c)を含み得る。残基のKabat番号付けは、抗体の配列と「標準的な」Kabat番号付けされた配列との相同領域でのアラインメントによって、所与の抗体について決定され得る。Kabat番号付けを割り当てるための様々なアルゴリズムが利用可能である。Abysis(www.abysis.org)のバージョン2.3.3リリースにおいて実行されるアルゴリズムが、可変領域CDR−L1、CDR−L2、CDR−L3、CDR−H2、およびCDR−H3にKabat番号付けを割り当てるために、本明細書において使用される。AbMの定義がCDR−H1には使用される。
【0130】
抗体内の具体的なアミノ酸残基の位置もまた、Kabatに従って番号付けすることができる。
【0131】
「フレームワーク」(FR)残基は、CDR残基以外の抗体可変ドメイン残基である。VHまたはVLドメインフレームワークは、以下の構造:FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4の、CDRが点在している4つのフレームワーク小領域FR1、FR2、FR3、およびFR4を含む。
【0132】
「エピトープ」は、抗体が特異的に結合する、抗原の区域または領域、例えば、抗体と相互作用する残基を含む区域または領域を指す。エピトープは、直鎖状または立体構造であり得る。
【0133】
用語「パラトープ」は、視点を逆転させることによって「エピトープ」の上記の定義から派生し、抗原の結合に関与する抗体分子の区域または領域、例えば、抗原と相互作用する残基を含む区域または領域を指す。パラトープは、直鎖状または立体構造であり得る(CDR内の不連続な残基など)。
【0134】
所与の抗体/抗原結合対についてのエピトープ/パラトープは、様々な実験的および計算的なエピトープマッピング方法を使用して、異なる詳細さのレベルで定義および特徴付けすることができる。実験的方法としては、突然変異生成、X線結晶学、核磁気共鳴(NMR)分光法、水素/重水素交換質量分析(HX−MS)、および様々な競合結合方法が含まれる。各方法は固有の原理に依拠するため、エピトープの記載は、それが決定された方法に密接にリンクする。したがって、所与の抗体/抗原対についてのエピトープ/パラトープは、採用したマッピング方法に応じて異なって定義される。
【0135】
その最も詳細なレベルでは、抗体(Ab)と抗原(Ag)との間の相互作用についてのエピトープ/パラトープは、Ag−Ab相互作用において存在する原子の接触を規定する空間座標、および結合熱力学に対するそれらの相対的な寄与についての情報によって定義され得る。1つのレベルでは、エピトープ/パラトープの残基は、AgとAbとの間の原子の接触を規定する空間座標によって特徴付けされ得る。一態様では、エピトープ/パラトープの残基は、具体的な基準、例えば、Ab内の原子とAg内の原子との間の距離(例えば、コグネート抗体の重原子および抗原の重原子から約4Å以下の距離(本明細書の実施例において使用される3.8Åなど))によって定義され得る。別の態様では、エピトープ/パラトープの残基は、コグネート抗体/抗原との、またはこれもコグネート抗体/抗原に水素結合している水分子との(水が介在する水素結合)水素結合相互作用に関与するものと特徴付けされ得る。別の態様では、エピトープ/パラトープの残基は、コグネート抗体/抗原の残基と塩橋を形成するものとして特徴付けされ得る。さらに別の態様では、エピトープ/パラトープの残基は、コグネート抗体/抗原との相互作用に起因する埋没表面積(BSA)の変化がゼロではない残基として特徴付けされ得る。あまり詳細ではないレベルでは、エピトープ/パラトープは、例えば他のAbとの競合結合による機能を介して特徴付けされ得る。エピトープ/パラトープはまた、別のアミノ酸による置換によってAbとAgとの間の相互作用の特徴が改変されるアミノ酸残基を含むものとして、より一般的に定義され得る(例えば、アラニンスキャニング)。
【0136】
抗体、例えば1つのFab断片または2つのFab断片と、その抗原との間の複合体の空間座標によって定義される、X線に由来する結晶構造の文脈において、別段の特定がない限り、エピトープ残基は、(i)コグネート抗体の重原子から約4Åの距離以内(例えば、3.8Å)にある重原子(すなわち、非水素原子)を有する、(ii)コグネート抗体の残基との、もしくはこれもコグネート抗体に水素結合している水分子との(水が介在する水素結合)水素結合に関与する、(iii)コグネート抗体の残基への塩橋に関与する、ならびに/または(iv)コグネート抗体との相互作用に起因する埋没表面積(BSA)の変化がゼロではない、ROBO2残基を指す。通常、相互作用が最小の残基を含めることを避けるために、カットオフがBSAに対して行われる。したがって、別段の特定がない限り、カテゴリー(iv)下のエピトープ残基は、20Å以上のBSAを有する場合、または抗体がROBO2に結合すると静電気的な相互作用に関与する場合に選択される。同様に、X線に由来する結晶構造の文脈において、別段の特定がない限り、または文脈と矛盾しない限り、パラトープ残基は、(i)ROBO2の重原子から約4Åの距離以内にある重原子(すなわち、非水素原子)を有する、(ii)ROBO2の残基と、もしくはこれもROBO2に水素結合している水分子との(水が介在する水素結合)水素結合に関与する、(iii)ROBO2の残基への塩橋に関与する、ならびに/または(iv)ROBO2との相互作用に起因する埋没表面積の変化がゼロではない、抗体残基を指す。この場合も、別段の特定がない限り、カテゴリー(iv)下のパラトープ残基は、20Å以上のBSAを有する場合、または抗体がROBO2に結合すると静電気的な相互作用に関与する場合に選択される。(i)の距離または(iv)のBSAによって同定された残基は、「接触」残基と呼ばれることが多い。
【0137】
エピトープの記載および定義が、使用するエピトープマッピング方法に依存し、異なる詳細さのレベルで得られるという事実から、同一のAg上にある異なるAbについてのエピトープの比較も同様に、異なる詳細さのレベルで行うことができることになる。例えば、例えばX線構造から決定された、アミノ酸レベルについて記載されたエピトープは、同一のアミノ酸残基セットを含んでいれば、同一であるとされる。競合結合によって特徴付けされたエピトープは、対応する抗体の結合が相互排他的であれば、すなわち、1つの抗体の結合が他方の抗体の同時のまたは連続的な結合を排除すれば、重複しているとされ、エピトープは、抗原が両方の対応する抗体の結合を同時に提供することができれば、別個である(固有である)とされる。
【0138】
所与の抗体/抗原対のエピトープおよびパラトープは、通常の方法によって同定することができる。例えば、エピトープの全体的な位置は、本明細書の先のいずれかの箇所においてより完全に記載されているように、異なる断片または変異体ROBO2ポリペプチドに結合する抗体の能力を評価することによって決定することができる。抗体内の特異的な残基と接触するROBO2内の具体的な残基もまた、実施例において記載されているものなどの、通常の方法を使用して決定することができる。例えば、抗体/抗原複合体を結晶化することができる。結晶構造を決定および使用して、抗体と抗原との間の相互作用の具体的部位を同定することができる。
【0139】
エピトープに「優先的に結合する」または「特異的に結合する」(本明細書において区別せずに使用される)抗体は、当技術分野において良く理解されている用語であり、このような特異的または優先的な結合を決定するための方法もまた、当技術分野において周知である。分子は、別の細胞または物質と反応または会合するよりも、より頻繁に、より迅速に、より長い期間、および/またはより大きな親和性で、特定の細胞または物質と反応または会合すれば、「特異的結合」または「優先的結合」を示すとされる。抗体は、他の物質に結合するよりも、より大きな親和性、親和力で、より容易に、および/またはより長い期間結合すれば、標的に「特異的に結合する」または「優先的に結合する」。例えば、ROBO2エピトープに特異的または優先的に結合する抗体は、他のROBO2エピトープまたは非ROBO2エピトープに結合するよりも、より大きな親和性、親和力で、より容易に、および/またはより長い期間、このエピトープに結合する抗体である。この定義を読むことによって、例えば、第1の標的に特異的または優先的に結合する抗体(または部分もしくはエピトープ)は、第2の標的に対して特異的または優先的であってもなくてもよいことも理解される。このようにして、「特異的結合」または「優先的結合」は、排他的な結合を必ずしも必要としない(しかし、含み得る)。一般に、結合への言及は優先的結合を意味するが、必ずしもそうではない。「特異的結合」または「優先的結合」には、特異的分子を認識し、それに結合するが、試料中の他の分子には実質的に認識も結合もしない化合物、例えば、タンパク質、核酸、抗体などが含まれる。例えば、試料中のそのコグネート抗原を認識し、それに結合するが、試料中の他の分子には実質的に認識も結合もしない抗体は、コグネート抗原に特異的に結合する。したがって、指定されたアッセイ条件下では、特定された結合部分(例えば、抗体またはその抗原結合部分)は、特定の標的分子に優先的に結合し、試験試料中に存在する他の成分には大量には結合しない。
【0140】
様々なアッセイフォーマットを、目的の分子に特異的に結合する抗体またはペプチドを選択するために使用することができる。例えば、固相ELISA免疫アッセイ、免疫沈降、BIAcore(商標)(GE Healthcare、Piscataway、NJ)、蛍光活性化細胞選別(FACS)、Octet(商標)(ForteBio,Inc.、Menlo Park、CA)、およびウェスタンブロット分析は、抗原と特異的に反応する抗体、またはコグネートリガンドもしくは結合パートナーと特異的に結合する受容体もしくはそのリガンド結合部分を同定するために使用され得る多くのアッセイの中の一部である。典型的には、特異的または選択的な反応は、バックグラウンドシグナルまたはノイズの少なくとも2倍であり、より典型的には、バックグラウンドの10倍を超え、さらに具体的には、抗体は、平衡解離定数(K)値が≦1μMである場合、例えば≦100nM、≦10nM、≦100pM、≦10pM、または≦1pMである場合には、抗原に「特異的に結合する」とされる。
【0141】
用語「競合する」は、抗体に関して本明細書において使用される場合、抗原への第1の抗体またはその抗原結合部分の結合が、その後の第2の抗体またはその抗原結合部分による同一の抗原の結合を低減させることを意味する。通常、第1の抗体の結合は、立体障害、立体構造の変化、または共通のエピトープ(またはその部分)への結合を生じ、その結果、同一の抗原への第2の抗体の結合が低減する。標準的な競合アッセイを、2つの抗体が互いに競合するかどうかを判定するために使用することができる。抗体の競合についての1つの適切なアッセイは、表面プラズモン共鳴(SPR)技術を使用して、典型的にはバイオセンサーシステム(BIACORE(登録商標)システムなど)を使用して相互作用の程度を測定し得る、Biacore技術の使用を伴う。例えば、SPRを、インビトロでの競合的結合阻害アッセイにおいて使用して、1つの抗体が第2の抗体の結合を阻害する能力を判定することができる。抗体の競合を測定するための別のアッセイは、ELISAに基づくアプローチを使用する。
【0142】
さらに、その競合に基づく「結合」抗体についてのハイスループットプロセスは、国際特許出願第WO2003/48731号において記載されている。競合は、1つの抗体(または断片)がROBO2への別の抗体(または断片)の結合を低減させれば存在する。例えば、異なる抗体を連続的に添加する、連続的な結合競合アッセイを使用することができる。第1の抗体は、飽和に近い結合に達するまで添加することができる。次いで、第2の抗体を添加する。ROBO2への第2の抗体の結合が検出されなければ、または、第1の抗体の非存在下で行う並行なアッセイ(この値は100%と示され得る)と比較して有意に低減していれば(例えば、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%の低減)、2つの抗体は互いに競合しているとみなされる。SPRによる典型的な抗体競合アッセイ(およびオーバーラップエピトープ分析)が実施例において提供される。
【0143】
用語「処置」には、予防的および/または治療的処置が含まれる。状態の臨床的兆候の前に処置が行われれば、処置は予防的であるとみなされる。治療的処置としては、例えば、疾患の重症度の改善もしくは低減、または疾患の長さの短縮が含まれる。
【0144】
「約」または「およそ」は、測定可能な数値変数と組み合わせて使用される場合、示された変数値、および示された値の実験誤差(例えば、平均の95%信頼区間以内)または示された値の±10%の大きい方以内の全ての変数値を指す。数値範囲は、その範囲を規定する数値を含む。
【0145】
結合親和性
抗体の結合親和性は、特定の抗原−抗体相互作用の解離速度を指すK値として表すことができる。Kは、会合速度または「オン速度(kon)」に対する、「オフ速度(koff)」とも呼ばれる解離速度の比である。したがって、Kはkoff/konに等しく、モル濃度(M)として表され、Kが小さいほど、結合の親和性は強い。抗体のK値は、当技術分野において良く確立された方法を使用して決定することができる。Kdを測定するための1つの典型的な方法は、BIACORE(登録商標)システムなどのバイオセンサーシステムを典型的には使用する、表面プラズモン共鳴(SPR)である。BIAcore動態分析は、その表面上に分子(例えば、エピトープ結合ドメインを含む分子)が固定されたチップによる抗原の結合およびこのチップからの抗原の解離を分析することを含む。抗体のKdを決定するための別の方法は、Bio−Layer干渉法を使用すること、典型的にはOCTET(登録商標)技術(Octet QKeシステム、ForteBio)を使用することによる。あるいは、またはさらに、Sapidyne Instruments(Boise、Id.)から入手可能なKinExA(登録商標)(結合平衡除外法)アッセイもまた使用することができる。
【0146】
一部の態様では、K値は、表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定される。ROBO2は、例えば固体表面上に固定され得る。ROBO2は、例えば共有結合(アミン結合など)によって、チップに固定され得る。チップは、CM5センサーチップであり得る。
【0147】
分析物がリガンドに結合すると、センサー表面上のタンパク質の蓄積によって、屈折率が増大する。この屈折率の変化はリアルタイムで測定され(動態分析実験におけるサンプリングは0.1秒ごとに行われる)、結果は、時間に対する応答単位(RU)としてプロットされる(センサーグラムと呼ばれる)。重要なことに、ランニング緩衝液および試料緩衝液の屈折率に差がある場合、応答(バックグラウンド応答)もまた生成する。このバックグラウンド応答は、実際の結合応答を得るために、センサーグラムから指し引かなければならない。バックグラウンド応答は、分析物を、リガンドを有さない、または関連のないリガンドがセンサー表面に固定されている対照または参照フローセルを通して注入することによって記録される。結合相互作用の会合および解離をリアルタイムで測定することによって、会合速度定数および解離速度定数ならびに対応する親和性定数の計算が可能になる。1RUは、立方mm当たりの1pgのタンパク質の結合に相当する。1立方mmの分析物の結合当たり50pgを超えることが、良好な再現可能な応答を得るために実際には一般的に必要である。85から370RUの間のROBO2が固定され得る。85から225RUの間のROBO2が固定され得る。
【0148】
ROBO2からの抗体の解離は、約3600秒にわたりモニタリングされ得る。SPR分析を行うことができ、データを約15℃から約37℃の間で収集する。SPR分析を行うことができ、データを約25℃から37℃の間で収集する。SPR分析を行うことができ、データを約37℃で収集する。SPR分析を行うことができ、データを37℃で収集する。K値を、BIAcore T200機器を使用してSPRによって測定することができる。SPRの速度および親和性を、得られたセンサーグラムデータをBIAcore T200 Evaluationソフトウェアバージョン1.0において1:1モデルにフィットさせることによって、決定することができる。収集率は約1Hzであり得る。
【0149】
抗体のKを決定するための別の方法は、Bio−Layer干渉法(BLI)を使用すること、典型的にはOCTET(登録商標)技術(Octet QKeシステム、ForteBio)を使用することによる。一部の実施形態では、バイオセンサー分析が使用される。典型的には、一方の相互作用物がバイオセンサーの表面上に固定され(抗体などの「リガンド」)、他方は溶液内に残る(抗原などの「分析物」)。アッセイは、アッセイ緩衝液を使用して最初のベースラインまたは平衡ステップで開始される。次に、リガンド(抗体など)が、直接的な固定、または捕捉に基づく方法のいずれかによって、バイオセンサーの表面上に固定される(ローディング)。リガンドが固定された後、バイオセンサーを、アッセイのドリフトを評価するためのベースラインステップのために緩衝溶液に浸し、リガンドのロードレベルを判定する。ベースラインステップの後、バイオセンサーを、リガンドの結合パートナーである分析物を含有する溶液に浸す(会合)。このステップにおいて、固定されたリガンドに対する分析物の結合相互作用を測定する。分析物が会合した後、バイオセンサーを、分析物を有さない緩衝溶液に浸し、結合した分析物がリガンドから離れるようにする(解離)。一連のアッセイステップを次いで、試験対象の各分析物について、新たなまたは再生されたバイオセンサーで反復する。各結合応答を測定し、センサーグラムトレースでリアルタイムに報告する。機器は、Octet QKeシステム、Octet RED96システム、Octet QK384システム、またはRED384システムであり得る。
【0150】
3.Roundabout(ROBO)受容体
分泌されたSLIT糖タンパク質およびそのRoundabout(ROBO)受容体は、重要な軸索ガイダンス分子として元々同定されていた。これらは、神経系の組み立ての間の軸索の不適切な位置への移動を予防することにおいて進化の過程で保存された役割を有する反発性のキューとして機能する。さらに、SLIT−ROBO相互作用は、細胞移動、細胞死、および血管新生の調節に関与し、このようにして、肺、腎臓、肝臓、および乳房などの他の組織の発生の際に重要な役割を有する。
【0151】
無脊椎動物は単一のSLITタンパク質を有するが、その一方で、脊椎動物は、SLIT1、SLIT2、およびSLIT3と名付けられた3つの相同なSLITを有する。SLITは、細胞外マトリックスと会合する分泌タンパク質である。全てのSLITのタンパク質配列は高程度の保存を示し、同一の構造、すなわち、N末端シグナルペプチド、D1〜D4と呼ばれるロイシンに富んだ4つのタンデム反復ドメイン(LRR)、6つの上皮成長因子(EGF)様ドメイン、ラミニンG様ドメイン、さらなる1つの(無脊椎動物)または3つの(脊椎動物)EGF様ドメイン、およびC末端システインノットドメインを有する(図14)。SLITSは切断されて、機能が未知の短いC末端断片(SLIT−C産物)、および、活性でありROBOへの結合を仲介する、長いN末端断片(SLIT−N産物)を生じ得る。本明細書において記載されるSLITリガンドおよび切断産物(例えば、SLIT−N)は、ROBO2の活性、およびROBO2抗体の中和効果を評価するために使用することができる。
【0152】
ROBO1/Dutt1、ROBO2、ROBO3/Rig−1、およびROBO4/Magic Roundaboutという4つのROBO受容体が、脊椎動物において特徴付けされている。ROBO1、ROBO2、およびROBO3は、細胞接着分子を連想させる共通の細胞外ドメイン構造を有する。この領域は、5つの免疫グロブリン様(Ig)ドメインと、それに続く、3つのフィブロネクチンタイプ3(FN3)反復とを含む(図14)。SLITのD2 LRRドメイン、ならびにROBOのIg1およびIg2ドメインは、進化の過程で保存されており、結合に関与する。ROBOのIg1およびIg2ドメインは合わせて、SLIT結合ドメインとも呼ばれる。
【0153】
典型的なROBO配列を表11に示す。完全長ヒトROBO2前駆体の配列を配列番号1として示す。前駆体のシグナルペプチド(配列番号1の残基1〜21)は切断されて、成熟ROBO2を生じる。残基22〜859は細胞外ドメインから、残基860〜880は膜貫通ドメインから、および残基881〜1378は細胞質ドメインから。
【0154】
他のROBOタンパク質の機能的ドメインは既知であるか、または本明細書において記載されるヒトROBO2に対する配列アラインメントによって決定することができる。
【0155】
ROBO−SLITが結合すると、Rho GTPaseおよびその調節因子(GAPおよびGEF)が、下流のシグナル伝達経路に関与する。SLITの存在下では、SLIT−ROBO Rho GTPase活性化タンパク質1(srGAP1)がROBOのCC3ドメインに結合し、RhoAおよびCdc42を不活化する。これらのエフェクタータンパク質は、他のアウトカムの間でもとりわけ、反発、細胞骨格ダイナミクスの制御、および細胞極性を仲介し得る。SLITの存在下では、Vilse/CrossGAPもまた、ROBOのCC2ドメインに結合し得、Rac1およびCdc42を阻害する。Rac1はまた、ROBOのCC2−3ドメインに結合するアダプタータンパク質Dreadlocks(Dock)を介する、GEFタンパク質であるSon of sevenless(Sos)の動員によって活性化される。これは、ROBO CC2−3ドメインにも結合するRac1およびp21活性化キナーゼ(Pak)の下流の標的を活性化する。ROBOのこれらの下流シグナル伝達パートナーは、反発および細胞骨格ダイナミクスを制御する。チロシンキナーゼAbelson(Abl)もまた、ROBO CC3ドメインに結合し得、CC1ドメインのリン酸化を介してROBOシグナル伝達と拮抗し、細胞の接着を仲介する。Ablの基質であるEnabled(Ena)もまた、ROBO CC1およびCC2ドメインに結合する。全てのこれらの下流のROBO−SLIT分子は、ROBO2の活性およびROBO2抗体の中和効果を評価するために使用することができる。
【0156】
腎臓では、ROBO2は、アダプタータンパク質Nckを介してネフリンと複合体を形成する。アクチンポリマー化を促進するネフリンの役割とは対照的に、SLIT−ROBO2シグナル伝達は、ネフリンによって誘発されるアクチンポリマー化を阻害する。したがって、ROBO2細胞内ドメインおよびNckの結合は、ROBO2の活性およびROBO2抗体の中和効果を評価するために使用することができる。
【0157】
一部の態様では、ROBO2は、ヒトROBO2である。一部の態様では、野生型ROBO2の配列は、配列番号1である。一部の態様では、ROBO2は、ラットROBO2である。一部の態様では、ROBO2は、マウスROBO2である。一部の態様では、ROBO2は、霊長類ROBO2である。一部の態様では、ROBO2は、ape ROBO2である。一部の態様では、ROBO2は、サルROBO2である。一部の態様では、ROBO2は、カニクイザルROBO2である。
【0158】
典型的なヒトSLIT2の配列を表11に示す(配列番号142)。前駆体のシグナルペプチド(配列番号142の残基1〜30)は切断されて、成熟SLIT2を生じる。残基31〜1131はSLIT−N産物から、および残基1122〜1529はSLIT−C産物から。他のSLITタンパク質の機能的ドメインは既知であるか、または本明細書において記載されるヒトSLIT2に対する配列アラインメントによって決定することができる。
【0159】
4.ROBO2に対する抗体
一部の態様では、本発明は、ROBO2抗体を提供する。一部の実施形態では、抗体は、ROBO2に特異的に結合するが、その近いファミリーメンバーであるROBO1にはほとんど結合しない。本発明の典型的な抗体の配列を表11に示す。実施例において示すように、ある特定の実施形態では、本発明の抗体は、ROBO2へのSLITの結合を阻害し、したがって、「中和」抗体または「遮断」抗体と呼ばれる。中和抗体または遮断抗体とは、ROBO2へのその結合が(i)ROBO2もしくはROBO2断片とそのリガンドであるSLITとの間の相互作用を阻害する、および/または(ii)ROBO2の少なくとも1つの生物学的機能の阻害をもたらす抗体を意味する。本発明の抗体による中和を判定するためのアッセイは、本明細書のいずれかの箇所において記載されており、および/または当技術分野において既知である。
【0160】
ある特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、実質的に同一のアッセイ条件下で、ROBO1についてのその結合親和性(K)値の多くとも100分の1であるK値で、ROBO2に結合する。例えば、ROBO1についてのKに対するROBO2についてのKの比は、1:100以下、1:250以下、1:500以下、1:1000以下、1:2500以下、1:5000以下、または1:1万以下であり得る。
【0161】
実施例において示すように、ROBO2特異的抗体によって標的化されたヒトROBO2における主要な結合エピトープは、Ig1ドメイン内の柔軟なループ(配列番号1の残基H97〜P103)である(図12)。同様に結合に寄与するさらなるマイナーなエピトープ残基は、ROBO2の別個のループ(E72〜H81)を介する(配列番号1)。しかし、後者のエピトープへの結合は任意である。
【0162】
結晶構造の研究はまた、抗体とROB2との間の主要な界面の安定性がROBO2のR99およびR100の寄与を大きく受けることを示す(図12)。R99はROBO1とROBO2との間で保存されているため、R100は、本発明の典型的な抗体である抗体93H2の結合特異性を決定する単独の残基であると考えられる。すなわち、R100が、対応するROBO1残基であるK137で置き換えられると、この突然変異は、ROBO2特異的抗体の結合を無効にする。逆に、ROBO1 K137の対応する残基をR(配列番号1のR100に対応する)に突然変異すると、ROBO2特異的抗体は、突然変異したROBO1(本明細書において「ROBO1−RSK」と呼ばれる、表14を参照されたい)に結合するようになる。したがって、一態様では、本発明は、ROBO2のIgドメイン1内、またはIgドメイン1およびIgドメイン2内のエピトープであって残基R100を含むエピトープに結合する抗体またはその抗原結合断片を提供する。ある特定の実施形態では、抗体または抗原結合断片は、配列番号1の番号付けに従ったK100を含む突然変異エピトープに結合しない。
【0163】
本発明の抗体は、配列番号1の番号付けに従ったROBO2のアミノ酸残基100〜102にあるRSKモチーフに対する優れた感度を実証する。さらに具体的には、配列番号1の番号付けに従ったROBO2のアミノ酸残基100〜102にあるRSKモチーフが、対応するROBO1−KSRモチーフ、すなわち、配列番号9の番号付けに従ったアミノ酸残基K137、S138、およびR139で置き換えられると、この突然変異は、本発明のROBO2特異的抗体の結合を無効にする。さらに、ROBO1の対応する残基(配列番号9の番号付けに従ったK137およびR139)を配列番号1の番号付けに従ったROBO2の残基R100およびK102に突然変異すると、本発明のROBO2特異的抗体は、本明細書においてROBO1−RSKと呼ばれる突然変異したROBO1に結合するようになる。したがって、一態様では、本発明は、ROBO2のIgドメイン1内、またはIgドメイン1およびIgドメイン2内のエピトープであって残基R100、S101、および場合によってK102(K102は任意である、表10Aを参照されたい)を含むエピトープに結合するが、配列番号1の番号付けに従ったR100がKで置き換えられ、K102がRで置き換えられ、およびS101は不変のままである突然変異したROBO2エピトープには結合しない(突然変異したROBO2は、本明細書において「ROBO2−KSR」と呼ばれる)抗体またはその抗原結合断片を提供する。さらに、本発明の抗体は、配列番号9のアミノ酸配列に従ったアミノ酸残基K137およびR139がR137およびK139でそれぞれ置き換えられている、ROBO1突然変異体に結合する(突然変異したROBO1は、本明細書において「ROBO1−RSK」と呼ばれる)。したがって、驚くべきことに、本発明の抗体は、野生型ROBO2に結合し、野生型ROBO1に結合せず、ROBO2−KSR突然変異体に結合せず、しかし、ROBO1−RSK突然変異体に結合する。本発明は、したがって、野生型ROBO2に結合し、ROBO1に結合せず、しかしROBO1−RSK突然変異体に結合する抗体を包含する。
【0164】
【表1】
【0165】
ある特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、実質的に同一のアッセイ条件下で、R100がKで置き換えられているROBO2エピトープについてのその結合親和性(K)値の多くとも100分の1であるK値を有する、R100を含むROBO2エピトープに結合する。例えば、R100がKによって置き換えられているROBO2エピトープについてのKに対する、R100を含むROBO2エピトープについてのKの比は、1:100以下、1:250以下、1:500以下、1:1000以下、1:2500以下、1:5000以下、または1:1万以下であり得る。
【0166】
ある特定の実施形態では、エピトープは、R100に加えて、残基V96、G98、R99、およびS101の1つまたは複数をさらに含み得る。表10Aを参照されたい(「主要な」残基)。ある特定の実施形態では、エピトープは、抗体−抗原相互作用に寄与すると考えられる1つまたは複数の残基:E69、E72、R79、H81、R82、R94、およびP103をさらに含み得る。表10Aを参照されたい(「寄与」残基)。ある特定の実施形態では、エピトープは、抗体−抗原相互作用に「任意」であると考えられる1つまたは複数の残基:K66、D67、R70、V71、T73、D74、D77、P78、H97、およびK102をさらに含み得る。表10Aを参照されたい(「任意の」残基)。
【0167】
抗体またはその抗原結合断片は、Abcs35、93H2、Ab1、Ab3、Ab9、Ab13、Ab17、Ab21、Ab22、Ab25、Ab29、Ab32、Ab40、Ab45、Ab46、Ab58、Ab83、Ab96、Ab112、Ab123、Abcs1、Abcs2、Abcs4、Abcs5、Abcs12、Abcs20、Abcs25、Abcs40、Abcs50、Abcs55、CTIR2−1、CTIR2−2、CTIR2−3、CTIR2−4、CTIR2−5、CTIR2−6、CTIR2−7、CTIR2−8、CTIR2−9、CTIR2−10、CTIR2−11、CTIR2−12、CTIR2−13、CTIR2−14、CTIR2−15、CTIR2−16、Abcs35−A、Abcs35−B、Abcs35−C、Abcs35−D、Abcs35−E、Abcs35−F、Abcs35−G、Abcs35−H、Abcs35−I、Abcs35−J、Abcs35−K、Abcs35−L、Abcs35−M、Abcs35−N、およびAbcs35−O、その抗原結合断片、ならびにその突然変異体、変異体、誘導体、および実質的に類似の変形からなる群から選択され得る。
【0168】
ある特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、以下のパラトープ残基:(i)重鎖のT30、G31、Y32、Y33、E95、G97、およびD99、ならびに(ii)軽鎖のY32およびY92、の1つまたは複数を含む。表10Bを参照されたい(「主要な」残基)。ある特定の実施形態では、パラトープは、抗体−抗原相互作用に寄与すると考えられる1つまたは複数の残基:(i)重鎖のG26、T28、W50、K53、D98、D101、およびI102、ならびに(ii)軽鎖のS91、G93、およびT96をさらに含み得る。表10Bを参照されたい(「寄与」残基)。ある特定の実施形態では、パラトープは、抗体−抗原相互作用に「任意」であると考えられる1つまたは複数の残基:(i)重鎖のE1、V2、Y27、H35、T73、R94、およびS96、ならびに(ii)軽鎖のY49、Q55、およびS56をさらに含み得る。表10Bを参照されたい(「任意の」残基)。
【0169】
ある特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、以下のパラトープ残基(カットオフが20ÅのBSAに基づく、Kabatの番号付け):(i)重鎖のGly31、Tyr32、Tyr33、Trp50、Glu95、Gly97、Asp98、およびAsp99、(ii)軽鎖のTyr32、Tyr49、Ser91、Tyr92、およびSer93、の1つまたは複数を含む。
【0170】
ある特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、以下のパラトープ残基(カットオフがないBSAに基づく、Kabatの番号付け):(i)重鎖のGly31、Tyr32、Tyr33、His35、Trp50、Glu95、Ser96、Gly97、Asp98、およびAsp99、(ii)軽鎖のTyr32、Tyr49、Ser91、Tyr92、Ser93、およびThr96、の1つまたは複数を含む。
【0171】
ある特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、1つまたは複数の以下のパラトープ残基(H結合に基づく、Kabatの番号付け):(i)重鎖のGlu95、Gly97、Asp98、およびAsp99、(ii)軽鎖のSer91およびTyr92を含む。
【0172】
ある特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、1つまたは複数の以下のパラトープ残基(塩橋に基づく、Kabatの番号付け):重鎖のGlu95およびAsp98を含む。
【0173】
ある特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、1つまたは複数の以下のパラトープ残基(距離<3.8Åに基づく、Kabatの番号付け):(i)重鎖のGly31、Tyr32、Tyr33、Trp50、Glu95、Ser96、Gly97、Asp98、およびAsp99、(ii)軽鎖のTyr32、Ser91、およびTyr92を含む。
【0174】
ある特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、
(a)以下のように、ROBO2上の少なくとも1つのエピトープ残基(配列番号1に従った番号付け)の3.8Å以内にある少なくとも1つのパラトープ残基(Kabatに従った番号付け)を含む:エピトープ残基Arg94は、パラトープ残基H/Asp98の3.8Å以内にあり、エピトープ残基Gly98は、パラトープ残基H/Gly97およびH/Asp99の3.8Å以内にあり、エピトープ残基Arg99は、パラトープ残基H/Asp99、L/Tyr32、およびL/Tyr92の3.8Å以内にあり、エピトープ残基Arg100は、パラトープ残基H/Tyr33、H/Trp50、H/Glu95、L/Ser91、およびL/Tyr92の3.8Å以内にあり、エピトープ残基Ser101は、パラトープ残基H/Tyr32、H/Tyr33、H/Glu95、H/Ser96、およびH/Gly97の3.8Å以内にあり、エピトープ残基Lys102は、パラトープ残基H/Gly31の3.8Å以内にあり、そして、エピトープ残基Pro103は、パラトープ残基H/Gly31およびH/Tyr32の3.8Å以内にある、
(b)以下のように、ROBO2のエピトープ残基(配列番号1に従った番号付け)と水素結合を形成し得る少なくとも1つのパラトープ残基(Kabatに従った番号付け)を含む:エピトープ残基Arg94は、パラトープ残基H/Asp98と水素結合を形成し得、エピトープ残基Arg99は、パラトープ残基H/Aso99およびL/Tyr92と水素結合を形成し得、エピトープ残基Arg100は、パラトープ残基H/Glu95、L/Ser91、およびL/Tyr 92と水素結合を形成し得、そして、エピトープ残基Ser101は、パラトープ残基H/Glu95およびH/Gly97と水素結合を形成し得る、
(c)以下のように、ROBO2のエピトープ残基(配列番号1に従った番号付け)と塩橋を形成し得る少なくとも1つのパラトープ残基(Kabatに従った番号付け)を含む:エピトープ残基Arg94は、パラトープ残基H/Asp98と塩橋を形成し得、そしてエピトープ残基Arg100は、パラトープ残基H/Glu95と塩橋を形成し得る、または
(d)以下のように、エピトープ残基(配列番号1に従った番号付け)との相互作用に起因したBSAにおける変化がゼロではない少なくとも1つのパラトープ残基(Kabatに従った番号付け)を含む:エピトープ残基Arg94は、パラトープ残基H/Asp98およびL/Tyr49と相互作用し、エピトープ残基Val96は、パラトープ残基H/Gly97と相互作用し、エピトープ残基His97は、パラトープ残基H/Gly97と相互作用し、エピトープ残基Gly98は、パラトープ残基H/Gly97と相互作用し、エピトープ残基Arg99は、パラトープ残基H/Asp99、L/Tyr32、およびL/Tyr92と相互作用し、エピトープ残基Arg100は、パラトープ残基H/Tyr33、H/Trp50、H/Glu95、L/Ser91、L/Tyr92、およびL/Ser93と相互作用し、エピトープ残基Ser101は、パラトープ残基H/Tyr32、H/Tyr33、H/Glu95、H/Ser96、およびH/Gly97と相互作用し、エピトープ残基Lys 102は、パラトープ残基H/Gly31と相互作用し、そしてエピトープ残基Pro103は、パラトープ残基H/Gly31およびH/Tyr32と相互作用する。
【0175】
ある特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、以下の重鎖CDR配列:(i)配列番号24を含むCDR−H1、配列番号25を含むCDR−H2、および配列番号26を含むCDR−H3、ならびに/または(ii)以下の軽鎖CDR配列:配列番号29を含むCDR−L1、配列番号30を含むCDR−L2、および配列番号31を含むCDR−L3を含む。
【0176】
ある特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、以下の重鎖CDR配列:(i)配列番号24を含むCDR−H1、配列番号44を含むCDR−H2、および配列番号26を含むCDR−H3、ならびに/または(ii)以下の軽鎖CDR配列:配列番号29を含むCDR−L1、配列番号30を含むCDR−L2、および配列番号47を含むCDR−L3を含む。
【0177】
ある特定の実施形態では、本明細書において記載される抗体またはその抗原結合断片は、以下の重鎖CDR配列:(i)配列番号24と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、もしくは少なくとも95%の同一性を有するCDR−H1、配列番号25もしくは配列番号44と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、もしくは少なくとも95%の同一性を有するCDR−H2、および配列番号26と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、もしくは少なくとも95%の同一性を有するCDR−H3、ならびに/または(ii)以下の軽鎖CDR配列:配列番号29と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、もしくは少なくとも95%の同一性を有するCDR−L1、配列番号30と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、もしくは少なくとも95%の同一性を有するCDR−L2、および配列番号31もしくは配列番号47と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、もしくは少なくとも95%の同一性を有するCDR−L3を含む。
【0178】
ある特定の実施形態では、配列番号29と比較して、10以下、9つ以下、8つ以下、7つ以下、6つ以下、5つ以下、4つ以下、3つ以下、2つ以下、または1つ以下の置換がCDR−L1で行われている。ある特定の実施形態では、配列番号30と比較して、6つ以下、5つ以下、4つ以下、3つ以下、3つ以下、2つ以下、または1つ以下の置換がCDR−L2で行われている。ある特定の実施形態では、配列番号31または配列番号47と比較して、6つ以下、5つ以下、4つ以下、3つ以下、3つ以下、2つ以下、または1つ以下の置換がCDR−L3で行われている。一部の実施形態では、配列番号24と比較して、9つ以下、8つ以下、7つ以下、6つ以下、5つ以下、4つ以下、3つ以下、2つ以下、または1つ以下の置換がCDR−H1で行われている。一部の実施形態では、配列番号25または配列番号44と比較して、18以下、17以下、16以下、15以下、14以下、13以下、12以下、11以下、または10以下、9つ以下、8つ以下、7つ以下、6つ以下、5つ以下、4つ以下、3つ以下、2つ以下、または1つ以下の置換がCDR−H2で行われている。一部の実施形態では、配列番号26と比較して、9つ以下、8つ以下、7つ以下、6つ以下、5つ以下、4つ以下、3つ以下、2つ以下、または1つ以下の置換がCDR−H3で行われている。ある特定の実施形態では、置換は、結合親和性(K)の値を、1000倍を超えて、100倍を超えて、または10倍を超えて変化させることはない。ある特定の実施形態では、置換は、表1に従った保存的な置換である。ある特定の実施形態では、置換は、表10Bで示すように、主要なパラトープ残基または寄与パラトープ残基の1つではない。ある特定の実施形態では、置換は、表10Bで示すように、主要なパラトープ残基、寄与パラトープ残基、または任意のパラトープ残基の1つではない。
【0179】
【表2】
【0180】
抗体またはその抗原結合断片は、ヒト生殖細胞系VHフレームワーク配列を含むVHフレームワークを含み得る。VHフレームワーク配列は、ヒトVH3生殖細胞系、VH1生殖細胞系、VH5生殖細胞系、またはVH4生殖細胞系に由来し得る。好ましいヒト生殖細胞系重鎖フレームワークは、VH1、VH3、またはVH5生殖細胞系に由来するフレームワークである。例えば、以下の生殖細胞系由来のVHフレームワークを使用することができる:IGHV3−23、IGHV3−7、またはIGHV1−69(生殖細胞系の名称は、IMGTの生殖細胞系の定義に基づく)。好ましいヒト生殖細胞系軽鎖フレームワークは、VΚまたはVλ生殖細胞系に由来するフレームワークである。例えば、以下の生殖細胞系由来のVLフレームワークを使用することができる:IGKV1−39またはIGKV3−20(生殖細胞系の名称は、IMGTの生殖細胞系の定義に基づく)。あるいは、またはさらに、フレームワーク配列は、ヒトVλ1コンセンサス配列、VΚ1コンセンサス配列、VΚ2コンセンサス配列、VΚ3コンセンサス配列、VH3生殖細胞系コンセンサス配列、VH1生殖細胞系コンセンサス配列、VH5生殖細胞系コンセンサス配列、またはVH4生殖細胞系コンセンサス配列のフレームワークなどの、ヒト生殖細胞系コンセンサスフレームワーク配列であり得る。ヒト生殖細胞系フレームワークの配列は、V−ベース、IMGT、NCBI、またはAbysisなどの様々な公開データベースから入手可能である。
【0181】
抗体またはその抗原結合断片は、ヒト生殖細胞系VLフレームワーク配列を含むVLフレームワークを含み得る。VLフレームワークは、1つまたは複数のアミノ酸の置換、付加、または欠失を含み得るが、それが由来した元である生殖細胞系との機能的および構造的類似性は依然として保持している。一部の態様では、VLフレームワークは、ヒト生殖細胞系VLフレームワーク配列と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一である。一部の態様では、抗体またはその抗原結合断片は、ヒト生殖細胞系VLフレームワーク配列と比較して1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10個のアミノ酸の置換、添加、または欠失を含むVLフレームワークを含む。
【0182】
ヒト生殖細胞系VLフレームワークは、DPK9のフレームワークであり得る(IMGT名:IGKV1−39)。ヒト生殖細胞系VLフレームワークは、DPK12のフレームワークであり得る(IMGT名:IGKV2D−29)。ヒト生殖細胞系VLフレームワークは、DPK18のフレームワークであり得る(IMGT名:IGKV2−30)。ヒト生殖細胞系VLフレームワークは、DPK24のフレームワークであり得る(IMGT名:IGKV4−1)。ヒト生殖細胞系VLフレームワークは、HK102_V1のフレームワークであり得る(IMGT名:IGKV1−5)。ヒト生殖細胞系のVLフレームワークは、DPK1のフレームワークであり得る(IMGT名:IGKV1−33)。ヒト生殖細胞系のVLフレームワークは、DPK8のフレームワークであり得る(IMGT名:IGKV1−9)。ヒト生殖細胞系のVLフレームワークは、DPK3のフレームワークであり得る(IMGT名:IGKV1−6)。ヒト生殖細胞系のVLフレームワークは、DPK21のフレームワークであり得る(IMGT名:IGKV3−15)。ヒト生殖細胞系のVLフレームワークは、Vg_38Kのフレームワークであり得る(IMGT名:IGKV3−11)。ヒト生殖細胞系のVLフレームワークは、DPK22のフレームワークであり得る(IMGT名:IGKV3−20)。ヒト生殖細胞系のVLフレームワークは、DPK15のフレームワークであり得る(IMGT名:IGKV2−28)。ヒト生殖細胞系のVLフレームワークは、DPL16のフレームワークであり得る(IMGT名:IGLV3−19)。ヒト生殖細胞系のVLフレームワークは、DPL8のフレームワークであり得る(IMGT名:IGLV1−40)。ヒト生殖細胞系のVLフレームワークは、V1−22フレームワークであり得る(IMGT名:IGLV6−57)。ヒト生殖細胞系のVLフレームワークは、ヒトVλコンセンサス配列のフレームワークであり得る。ヒト生殖細胞系のVLフレームワークは、ヒトVλ1コンセンサス配列のフレームワークであり得る。ヒト生殖細胞系のVLフレームワークは、ヒトVλ3コンセンサス配列のフレームワークであり得る。ヒト生殖細胞系のVLフレームワークは、ヒトVΚコンセンサス配列のフレームワークであり得る。ヒト生殖細胞系のVLフレームワークは、ヒトVΚ1コンセンサス配列のフレームワークであり得る。ヒト生殖細胞系のVLフレームワークは、ヒトVΚ2コンセンサス配列のフレームワークであり得る。ヒト生殖細胞系のVLフレームワークは、ヒトVΚ3コンセンサス配列のフレームワークであり得る。
【0183】
抗体またはその抗原結合断片は、ヒト生殖細胞系VHフレームワーク配列を含むVHフレームワークを含み得る。VHフレームワークは、1つまたは複数のアミノ酸の置換、付加、または欠失を含み得るが、それが由来した元である生殖細胞系との機能的および構造的類似性は依然として保持している。一部の態様では、VHフレームワークは、ヒト生殖細胞系VHフレームワーク配列と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一である。一部の態様では、抗体またはその抗原結合断片は、ヒト生殖細胞系VHフレームワーク配列と比較して1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10個のアミノ酸の置換、添加、または欠失を含むVHフレームワークを含む。
【0184】
ヒト生殖細胞系VHフレームワークは、DP54またはIGHV3−7のフレームワークであり得る。ヒト生殖細胞系VHフレームワークは、DP47またはIGHV3−23のフレームワークであり得る。ヒト生殖細胞系VHフレームワークは、DP71またはIGHV4−59のフレームワークであり得る。ヒト生殖細胞系VHフレームワークは、DP75またはIGHV1−2_02のフレームワークであり得る。ヒト生殖細胞系のVHフレームワークは、DP10またはIGHV1−69のフレームワークであり得る。ヒト生殖細胞系のVHフレームワークは、DP7またはIGHV1−46のフレームワークであり得る。ヒト生殖細胞系のVHフレームワークは、DP49またはIGHV3−30のフレームワークであり得る。ヒト生殖細胞系のVHフレームワークは、DP51またはIGHV3−48のフレームワークであり得る。ヒト生殖細胞系のVHフレームワークは、DP38またはIGHV3−15のフレームワークであり得る。ヒト生殖細胞系のVHフレームワークは、DP79またはIGHV4−39のフレームワークであり得る。ヒト生殖細胞系のVHフレームワークは、DP78またはIGHV4−30−4のフレームワークであり得る。ヒト生殖細胞系のVHフレームワークは、DP73またはIGHV5−51のフレームワークであり得る。ヒト生殖細胞系のVHフレームワークは、DP50またはIGHV3−33のフレームワークであり得る。ヒト生殖細胞系のVHフレームワークは、DP46またはIGHV3−30−3のフレームワークであり得る。ヒト生殖細胞系のVHフレームワークは、DP31またはIGHV3−9のフレームワークであり得る。ヒト生殖細胞系のVHフレームワークは、ヒトVH生殖細胞系のコンセンサス配列のフレームワークであり得る。ヒト生殖細胞系のVHフレームワークは、ヒトVH3生殖細胞系のコンセンサス配列のフレームワークであり得る。ヒト生殖細胞系のVHフレームワークは、ヒトVH5生殖細胞系のコンセンサス配列のフレームワークであり得る。ヒト生殖細胞系のVHフレームワークは、ヒトVH1生殖細胞系のコンセンサス配列のフレームワークであり得る。ヒト生殖細胞系のVHフレームワークは、ヒトVH4生殖細胞系のコンセンサス配列のフレームワークであり得る。
【0185】
ある特定の実施形態では、本明細書において記載される抗体またはその抗原結合断片は、(i)配列番号32と少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一なアミノ酸配列を含むVH、および/または(ii)配列番号39と少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一なアミノ酸配列を含むVLを含む。これらのVL配列およびVH配列の任意の組み合わせもまた、本発明によって包含される。
【0186】
ある特定の実施形態では、本明細書において記載される抗体またはその抗原結合断片は、(i)配列番号126、127、128、129、130、131、および132からなる群の1つと少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一なアミノ酸配列を含むVH、および/または(ii)配列番号133と少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一なアミノ酸配列を含むVLを含む。これらのVH配列およびVL配列の任意の組み合わせもまた、本発明によって包含される。
【0187】
一部の実施形態では、本明細書において記載される抗体またはその抗原結合断片は、(i)配列番号43、49、55、70、73、76、79、82、85、88、115、および119からなる群の1つと少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一なアミノ酸配列を含むVH、および/または(ii)配列番号46、52、58、61、64、67、91、94、97、99、101、103、105、107、109、111、および113のいずれかと少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一なアミノ酸配列を含むVLを含む。これらのVL配列およびVH配列の任意の組み合わせもまた、本発明によって包含される。
【0188】
ある特定の実施形態では、本明細書において記載される抗体またはその抗原結合断片は、(i)配列番号24を含むCDR−H1、配列番号25を含むCDR−H2、配列番号26を含むCDR−H3、配列番号29を含むCDR−L1、配列番号30を含むCDR−L2、および配列番号31を含むCDR−L3、ならびに(ii)ヒト生殖細胞系DPK9のフレームワーク配列と少なくとも66%、少なくとも74%、少なくとも76%、少なくとも80%、少なくとも96%、少なくとも97%、または少なくとも99%同一な配列を含むVLフレームワーク、およびヒト生殖細胞系DP−75のフレームワーク配列と少なくとも73%、少なくとも75%、少なくとも79%、少なくとも90%、少なくとも93%、少なくとも94%、または少なくとも99%同一な配列を含むVHフレームワークを含む。ある特定の実施形態では、VHフレームワークは、DP−75である。他の類似のフレームワーク領域もまた、配列番号24、25、および26のCDRを含む本発明の有利な抗体または抗体断片を送達すると予測され、これには、DP−75のFW領域とそれぞれ99%、94%、94%、94%、93%、90%、90%、79%、75%、73%、および73%の配列同一性を有し、共通の構造的特徴:(A)CDRの真下の残基(バーニヤゾーン):H2、H47、H48、H49、H67、H69、H71、H73、H93、H94、(B)VH/VL鎖パッキング残基:H37、H39、H45、H47、H91、H93、および(C)正準的なCDR構造支持残基:H24、H71、H94(全て、Kabatの番号付け)、において4つ以下のアミノ酸が異なる、DP−8、DP−15、DP−14、DP−7、DP−25、DP−10、DP−88、IGHV7−4−102、DP−73、IGHV5−10−101、およびIGHV5−10−104が含まれる。特に好ましいものは、DP−75とそれぞれ99%、94%、94%、94%、および93%の同一性を有し、これらの共通の構造的特徴において1つ以下のアミノ酸が異なる、DP−8、DP−15、DP−14、DP−7、およびDP−25のフレームワーク領域である。
【0189】
ある特定の実施形態では、VLフレームワークは、DPK9である。他の類似のフレームワーク領域もまた、配列番号29、30、および31のCDRを含む本発明の有利な抗体を送達すると予測され、これには、DP−9のFW領域とそれぞれ99%、97%、97%、96%、80%、76%、66%、97%、97%、96%、76%、および74%の配列同一性を有し、共通の構造的特徴:(A)CDRの真下の残基(バーニヤゾーン):L2、L4、L35、L36、L46、L47、L48、L49、L64、L66、L68、L69、L71、(B)VH/VL鎖パッキング残基:L36、L38、L44、L46、L87、および(C)正準的なCDR構造支持残基:L2、L48、L64、L71(全て、Kabatの番号付け)、において1つ以下のアミノ酸が異なる、DPK5、DPK4、DPK1、IGKV1−501、DPK24、DPK21、DPK15、IGKV1−1302、IGKV1−1701、DPK8、IGKV3−1101、およびDPK22が含まれる。特に好ましいものは、DPK9とそれぞれ99%、97%、97%、96%、80%、76%、および66%の同一性を有し、これらの共通の構造的特徴においてアミノ酸が異ならない、DPK5、DPK4、DPK1、IGKV1−501、DPK24、DPK21、およびDPK15のフレームワーク領域である。
【0190】
ある特定の実施形態では、本明細書において記載される抗体またはその抗原結合断片は、Fcドメインを含む。Fcドメインは、IgA(例えば、IgAもしくはIgA)、IgG、IgE、またはIgG(例えば、IgG、IgG、IgG、もしくはIgG)に由来し得る。一部の実施形態では、Fcドメインは、Fcドメインの野生型配列を含む。一部の実施形態では、Fcドメインは、生物学的活性を改変する1つまたは複数の突然変異を含む。例えば、突然変異を、エフェクター活性を低減させるため(例えば、WO2005/063815)、および/または組換えタンパク質の生産の間の均質性を増大させるために、Fcドメイン内に導入することができる。一部の実施形態では、Fcドメインは、ヒトIgG1のFcドメインであり、以下のエフェクターヌル突然変異:L234A、L235A、およびG237A(EUインデックスに従った番号付け)の1つまたは複数を含む。一部の実施形態では、FcドメインのC末端位置内に位置するリジンは、組換えタンパク質の生産の間の均質性を増大させるために欠失させられる。一部の実施形態では、FcドメインのC末端位置内に位置するリジンは存在している。
【0191】
ある特定の実施形態では、本明細書において記載される抗体またはその抗原結合断片は、(i)配列番号34のいずれかと少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一な重鎖CH1ドメイン、(ii)配列番号36のいずれかと少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一な重鎖CH2ドメイン、(iii)配列番号37のいずれかと少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一な重鎖CH3ドメイン、および/または(iv)配列番号41と少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一な軽鎖CLドメインを含む。これらのCH1、CH2、CH3、およびCL配列の任意の組み合わせもまた、本発明によって包含される。
【0192】
ある特定の実施形態では、本明細書において記載される抗体またはその抗原結合断片は、(i)配列番号38と少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一なアミノ酸配列を含むHC、および/または(ii)配列番号42と少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一なアミノ酸配列を含むLCを含む。これらのHCおよびLC配列の任意の組み合わせもまた、本発明によって包含される。
【0193】
ある特定の実施形態では、本明細書において記載される抗体またはその抗原結合断片は、(i)配列番号45と少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一なアミノ酸配列を含むHC、および/または(ii)配列番号48と少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一なアミノ酸配列を含むLCを含む。これらのHCおよびLC配列の任意の組み合わせもまた、本発明によって包含される。
【0194】
ある特定の実施形態では、本明細書において記載される抗体またはその抗原結合断片は、(i)配列番号38、134、135、136、137、138、139、および140のいずれか1つと少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一なアミノ酸配列を含むHC、および/または(ii)配列番号42もしくは141と少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一なアミノ酸配列を含むLCを含む。これらのHCおよびLC配列の任意の組み合わせもまた、本発明によって包含される。
【0195】
本発明によって同様に提供されるものは、本明細書において提供される抗体のいずれか1つ(またはその抗原結合断片)などの、本明細書において記載される抗体またはその抗原結合断片のいずれかとヒトROBO2への結合について競合する抗体またはその抗原結合断片である。例えば、ヒトROBO2への抗体またはその抗原結合部分の結合が、その後のAbcs35によるヒトROBO2への結合を妨害する場合、この抗体またはその抗原結合部分は、ヒトROBO2の結合についてAbcs35と競合する。
【0196】
本発明によって同様に提供されるものは、本明細書において提供される抗体のいずれか1つまたはその抗原結合断片などの、本明細書において記載される抗体またはその抗原結合断片のいずれかと同一のヒトROBO2エピトープに結合する抗体またはその抗原結合断片である。例えば、抗体競合アッセイ(およびオーバーラップエピトープ分析)は、本明細書において詳細に記載するように、SPRまたはBLIによって評価することができる。
【0197】
本発明によって提供される抗体および抗原結合断片としては、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体断片(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv、Fcなど)、キメラ抗体、二重特異的抗体、ヘテロコンジュゲート抗体、一本鎖(ScFv)、その突然変異体、抗体部分を含む融合タンパク質、ドメイン抗体(dAb)、ヒト化抗体、ならびに、抗体のグリコシル化変異体、抗体のアミノ酸配列変異体、および共有結合によって修飾された抗体を含む、所要の特異性を有する抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子のあらゆる他の修飾された立体構造が含まれる。抗体および抗原結合断片は、マウス、ラット、ヒト、またはあらゆる他の生物由来であり得る(キメラ抗体またはヒト化抗体を含む)。一部の実施形態では、抗体は、モノクローナル抗体である。一部の実施形態では、抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、またはヒト抗体である。ある特定の実施形態では、抗体は、ヒト抗体である。ある特定の実施形態では、抗体は、ヒト化抗体である。
【0198】
抗体の結合親和性は、特定の抗原−抗体相互作用の解離速度を指すK値として表すことができる。Kは、会合速度または「オン速度(kon)」に対する、「オフ速度(koff)」とも呼ばれる解離速度の比である。したがって、Kは、koff/kon(解離/会合)に等しく、モル濃度(M)として表され、Kが小さいほど、結合の親和性が強い。抗体のK値は、当技術分野において良く確立された方法を使用して決定することができる。別段の特定がない限り、「結合親和性」は、一価の相互作用(固有の活性、例えば、一価の相互作用を介する抗原への抗体の結合)を指す。
【0199】
ある特定の実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、約1×10−6M以下、例えば、約1×10−7M以下、約9×10−8M以下、約8×10−8M以下、約7×10−8M以下、約6×10−8M以下、約5×10−8M以下、約4×10−8M以下、約3×10−8M以下、約2×10−8M以下、約1×10−8M以下、約9×10−9M以下、約8×10−9M以下、約7×10−9M以下、約6×10−9M以下、約5×10−9M以下、約4×10−9M以下、約3×10−9M以下、約2×10−9M以下、約1×10−9M以下、約9×10−10M以下、約8×10−10M以下、約7×10−10M以下、約6×10−10M以下、約5×10−10M以下、約4×10−10M以下、約3×10−10M以下、約2×10−10M以下、約1×10−10M以下、約9×10−11M以下、約8×10−11M以下、約7×10−11M以下、約6×10−11M以下、約5×10−11M以下、約4×10−11M以下、約3×10−11M以下、約2×10−11M以下、約1×10−11M以下、約9×10−12M以下、約8×10−12M以下、約7×10−12M以下、約6×10−12M以下、約5×10−12M以下、約4×10−12M以下、約3×10−12M以下、約2×10−12M以下、約1×10−12M以下、約9×10−13M以下、約8×10−13M以下、約7×10−13M以下、約6×10−13M以下、約5×10−13M以下、約4×10−13M以下、約3×10−13M以下、約2×10−13M以下、約1×10−13M以下、約1×10−7Mから約1×10−14M、約9×10−8Mから約1×10−14M、約8×10−8Mから約1×10−14M、約7×10−8Mから約1×10−14M、約6×10−8Mから約1×10−14M、約5×10−8Mから約1×10−14M、約4×10−8Mから約1×10−14M、約3×10−8Mから約1×10−14M、約2×10−8Mから約1×10−14M、約1×10−8Mから約1×10−14M、約9×10−9Mから約1×10−14M、約8×10−9Mから約1×10−14M、約7×10−9Mから約1×10−14M、約6×10−9Mから約1×10−14M、約5×10−9Mから約1×10−14M、約4×10−9Mから約1×10−14M、約3×10−9Mから約1×10−14M、約2×10−9Mから約1×10−14M、約1×10−9Mから約1×10−14M、約1×10−7Mから約1×10−13M、約9×10−8Mから約1×10−13M、約8×10−8Mから約1×10−13M、約7×10−8Mから約1×10−13M、約6×10−8Mから約1×10−13M、約5×10−8Mから約1×10−13M、約4×10−8Mから約1×10−13M、約3×10−8Mから約1×10−13M、約2×10−8Mから約1×10−13M、約1×10−8Mから約1×10−13M、約9×10−9Mから約1×10−13M、約8×10−9Mから約1×10−13M、約7×10−9Mから約1×10−13M、約6×10−9Mから約1×10−13M、約5×10−9Mから約1×10−13M、約4×10−9Mから約1×10−13M、約3×10−9Mから約1×10−13M、約2×10−9Mから約1×10−13M、または約1×10−9Mから約1×10−13Mの親和性(K)値を有する。
【0200】
の値は、周知の方法によって直接決定することができ、例えばCaceciら、(1984、Byte 9:340〜362)で示されているものなどの方法によって、複雑な混合物についてであっても計算することができる。例えば、Kは、Wong & Lohman(1993、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5428〜5432)によって開示されているものなどのダブルフィルターニトロセルロースフィルター結合アッセイを使用して確立することができる。例えば、ELISA、ウェスタンブロット、RIA、およびフローサイトメトリー分析、および本明細書のいずれかの箇所において例示される他のアッセイを含む、標的抗原への抗体などのリガンドの結合能力を評価するための他の標準的なアッセイが、当技術分野において知られている。
【0201】
結合親和性(K)値を測定するための1つの典型的な方法は、BIACORE(登録商標)システムなどのバイオセンサーシステムを典型的には使用する、表面プラズモン共鳴(SPR)である。SPRは、例えばBIACORE(登録商標)システムを使用して、バイオセンサーマトリックス内のタンパク質濃度の改変を検出することによって生体特異性の相互作用をリアルタイムで分析することを可能にする、光学的な現象を指す。BIAcore動態分析は、その表面上に分子(例えば、抗原結合ドメインを含む分子)が固定されたチップへの抗原の結合およびこのチップからの抗原の解離、または抗原が固定されたチップからの抗体もしくはその抗原結合断片の解離を分析することを含む。
【0202】
ある特定の実施形態では、SPRの測定は、BIACORE(登録商標)T100またはT200機器を使用して行われる。例えば、表面プラズモン共鳴のための標準的なアッセイ条件は、SPRチップ上のおよそ100〜500応答単位(RU)のIgGの抗体固定に基づき得る。精製された標的タンパク質を、緩衝液中でさまざまな最終濃度まで希釈し、Kaの計算を可能にするために、必要流量(例えば、10〜100μl/分)で注入する。解離は、オフ速度が確立されるまで進められ、その後、3MのMgCl(または20mMのNaOH)でチップ表面が再生される。センサーグラムを次いで、動態評価ソフトウェアパッケージを使用して分析する。典型的な実施形態では、SPRアッセイは、実施例において示すような条件に従う。
【0203】
ある特定の実施形態では、結合親和性(K)値は、溶液に基づく動態排除アッセイ(KinExA(商標))を使用して測定される。特定の実施形態では、KinExA測定は、KinExA(商標)3200機器(Sapidyne)を使用して行われる。動態排除アッセイ(KinExA(商標))は、抗原/抗体相互作用の平衡解離定数および会合速度定数および解離速度定数を測定し得る多目的の免疫アッセイプラットフォーム(基本的に、フロー分光蛍光光度計)である。KinExA(商標)は、平衡が得られた後に行われるため、これは、相互作用のオフ速度が非常に遅い可能性がある高い親和性相互作用のKの測定に使用するために有利な技術である。KinExA(商標)方法論は、全体として、Drakeら(2004)Analytical Biochem.328、35〜43において記載されているように行うことができる。
【0204】
抗体のKを決定するための別の方法は、Bio−Layer干渉法(BLI)を使用すること、典型的には、ForteBioのOCTET(登録商標)技術(例えば、Octet QKeシステム)を使用することによる。典型的な実施形態では、Octetアッセイは、実施例において示すような条件に従う。ある特定の実施形態では、BLIの測定は、以下に従って行われる:専売されている抗ヒト抗体(ForteBio)で被覆したセンサーチップを、ランニング緩衝液(0.05%Tween−20を含有する10mMのHepes緩衝生理食塩水(HBS)など)中に120秒間浸すことによってBLIシグナルを安定化させる。抗体を次いで、センサーをランニング緩衝溶液(緩衝液は、1〜10ug/mLの抗体を含有し得る)中に300秒間浸すことによって捕捉する。シグナルを次いで、センサーチップをランニング緩衝液中に戻して120秒間浸すことによって安定化させる。チップを次いで、コグネート抗原を含有する溶液中に移す。抗体−抗原の結合を180秒間にわたり測定し、その後、センサーチップをランニング緩衝液に移して、受容体の解離を180秒間にわたりモニタリングする。ROBOのケースでは、抗原の典型的には7点からなる用量応答(2倍希釈で1〜2nMの範囲であり得る)が測定される。さらに、抗体を捕捉していないセンサーチップを抗原に曝露して、センサーチップへの受容体の非特異的な結合をモニタリングする。第2の参照タイプもまた、抗体が捕捉されたチップを含むが、その後に曝露されるランニング緩衝液は、抗原を伴わないもののみである。このことによって、非特異的な結合と、システムノイズ、および抗ヒトFcセンサーチップから解離する抗体に起因する、根底にあるベースラインドリフトとの両方を排除するための、二重参照が可能になる。生データは二重参照を差し引かれ、次いで、1:1のラングミュア型結合モデルにフィットさせて、親和性パラメータおよび動態パラメータを決定する。
【0205】
一般に、抗ROBO2抗体は、ROBO2の活性を効果的に遮断するために、高い親和性でROBO2に結合する。抗ROBO2抗体が低いナノモル濃度およびピコモル濃度範囲、例えば約1×10−8M以下の結合親和性(K)を有することが望ましい。
【0206】
活性アッセイ
ある特定の実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、ROBO2−SLITシグナル伝達の少なくとも1つの活性を低減させる中和抗体である。このような活性としては、当技術分野において知られている他のROBO2−SLIT活性の中でもとりわけ、限定はしないが、ROBO2とSLITリガンドとの間の結合、細胞内ドメインROBO2への細胞内シグナル伝達分子(srGAP1またはNckなど)の結合、ならびに/またはROBO2−SLITシグナル伝達の下流の活性(アクチンポリマー化、ポドサイトの接着、および/もしくは神経細胞移動のSLIT2−N介在性の阻害など)が含まれる。抗体またはその抗原結合断片がROBO2の活性を低減させるかどうかは、多くのアッセイによって評価することができる。例えば、アッセイは、抗体またはその抗原結合断片が、(a)ROBO2へのSLITの結合を阻害するかどうか、(b)srGAP1とROBO2との結合もしくはNckとROBO2との結合を低減させるかどうか、および/または(c)ROBO2依存性のSLIT2−N活性を阻害するかどうかを判定するために使用することができる。
【0207】
ある特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、ROBO2へのSLITリガンドの結合を阻害する(例えば、ROBO2に対する抗体とSLITとの間の競合的結合によって評価することができる)。例えば、アッセイは、(i)抗体またはその抗原結合断片の存在下でのROBO2とSLITとの結合と、(ii)抗体またはその抗原結合断片の非存在下でのROBO2とSLITとの結合とを比較することができる。ROBO2とSLITとの結合の低減は、抗ROBO2抗体またはその抗原結合断片の存在下では、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%であり得る。抗体またはその抗原結合断片の非存在下での、ROBO2へのSLITの予想される結合は、100%と示され得る。
【0208】
ある特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、ROBO2へのSLITの結合を、約1×10−7M以下、約1×10−8M以下、約1×10−9M以下、約1×10−10M以下、約1×10−11M以下、約1×10−12M以下、約1×10−13M以下、約1×10−14M以下、約1×10−15M以下、約1×10−7Mから約5×10−14M、約1×10−7Mから約1×10−14M、約1×10−7Mから約5×10−13M、約1×10−7Mから約1×10−13M、約1×10−7Mから約5×10−12M、または約1×10−7Mから約1×10−12Mの半最大阻害(IC50)で阻害する。IC50は、SLITまたはROBO2の断片、例えば、SLIT−N、ならびにROBO2のIgドメイン1、またはROBO2のIgドメイン1および2を使用して評価することができる。
【0209】
抗体またはその抗原結合断片の阻害活性はまた、アクチンポリマー化、ポドサイトの接着、および/または神経細胞移動のSLIT2−N介在性の阻害などの、ROBO2依存性のSLIT−N活性のレベルを測定することによって評価することができる。例えば、アッセイは、(i)ROBO2、SLIT、および抗体またはその抗原結合断片の存在下での神経細胞移動と、(ii)ROBO2、SLITの存在下であるが抗体またはその抗原結合断片の非存在下での神経細胞移動とを比較することができる。神経細胞移動の低減は、抗ROBO2抗体またはその抗原結合断片の存在下で、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%であり得る。抗体またはその抗原結合断片の非存在下での、ベースラインの神経細胞移動は、100%と示され得る。
【0210】
ある特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、アクチンポリマー化、ポドサイトの接着、および/または神経細胞移動のSLIT2−N介在性の阻害などの、ROBO2依存性のSLIT−N活性を、約1×10−7M以下、約1×10−8M以下、約1×10−9M以下、約1×10−10M以下、約1×10−11M以下、約1×10−12M以下、約1×10−13M以下、約1×10−14M以下、約1×10−15M以下、約1×10−7Mから約5×10−14M、約1×10−7Mから約1×10−14M、約1×10−7Mから約5×10−13M、約1×10−7Mから約1×10−13M、約1×10−7Mから約5×10−12M、または約1×10−7Mから約1×10−12Mの半最大阻害(IC50)で阻害する。ある特定の実施形態では、約1×10−10Mから約1×10−13MのIC50が好ましい。ある特定の実施形態では、約5×10−11Mから約5×10−12MのIC50が好ましい。
【0211】
ある特定の実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合断片の特徴は、例えば治療物質としてのその強度、薬理学的活性、および潜在的な有効性を評価するために、他の生物学的活性アッセイを使用してさらに評価される。このようなアッセイは、当技術分野において知られており、抗体の使用目的に応じる。例としては、例えば、毒性アッセイ、免疫原性アッセイ、安定性アッセイ、および/またはPK/PDプロファイリングが含まれる。
【0212】
抗ROBO2抗体を生産する核酸および方法
本発明はまた、本明細書において記載される、抗体部分および修飾抗体を含む本発明の抗体のいずれかをコードするポリヌクレオチドを提供する。本発明はまた、本明細書において記載されるポリヌクレオチドのいずれかを作製する方法を提供する。ポリヌクレオチドは、当技術分野において知られている手順によって作製することおよび発現させることができる。
【0213】
一態様では、本発明は、以下のROBO2抗体:Abcs35、93H2、Ab1、Ab3、Ab9、Ab13、Ab17、Ab21、Ab22、Ab25、Ab29、Ab32、Ab40、Ab45、Ab46、Ab58、Ab83、Ab96、Ab112、Ab123、Abcs1、Abcs2、Abcs4、Abcs5、Abcs12、Abcs20、Abcs25、Abcs40、Abcs50、Abcs55、CTIR2−1、CTIR2−2、CTIR2−3、CTIR2−4、CTIR2−5、CTIR2−6、CTIR2−7、CTIR2−8、CTIR2−9、CTIR2−10、CTIR2−11、CTIR2−12、CTIR2−13、CTIR2−14、CTIR2−15、CTIR2−16、Abcs35−A、Abcs35−B、Abcs35−C、Abcs35−D、Abcs35−E、Abcs35−F、Abcs35−G、Abcs35−H、Abcs35−I、Abcs35−J、Abcs35−K、Abcs35−L、Abcs35−M、Abcs35−N、およびAbcs35−Oおよびその抗原結合部分のいずれかをコードするポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドまたは組成物を提供する。
【0214】
本発明はまた、Abcs35、93H2、Ab1、Ab3、Ab9、Ab13、Ab17、Ab21、Ab22、Ab25、Ab29、Ab32、Ab40、Ab45、Ab46、Ab58、Ab83、Ab96、Ab112、Ab123、Abcs1、Abcs2、Abcs4、Abcs5、Abcs12、Abcs20、Abcs25、Abcs40、Abcs50、Abcs55、CTIR2−1、CTIR2−2、CTIR2−3、CTIR2−4、CTIR2−5、CTIR2−6、CTIR2−7、CTIR2−8、CTIR2−9、CTIR2−10、CTIR2−11、CTIR2−12、CTIR2−13、CTIR2−14、CTIR2−15、CTIR2−16、Abcs35−A、Abcs35−B、Abcs35−C、Abcs35−D、Abcs35−E、Abcs35−F、Abcs35−G、Abcs35−H、Abcs35−I、Abcs35−J、Abcs35−K、Abcs35−L、Abcs35−M、Abcs35−N、およびAbcs35−Oからなる群から選択される抗体と実質的に同一のエピトープに結合する抗体またはその抗原結合断片をコードするポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドまたは組成物を提供する。
【0215】
本発明はまた、ROBO2への結合について、Abcs35、93H2、Ab1、Ab3、Ab9、Ab13、Ab17、Ab21、Ab22、Ab25、Ab29、Ab32、Ab40、Ab45、Ab46、Ab58、Ab83、Ab96、Ab112、Ab123、Abcs1、Abcs2、Abcs4、Abcs5、Abcs12、Abcs20、Abcs25、Abcs40、Abcs50、Abcs55、CTIR2−1、CTIR2−2、CTIR2−3、CTIR2−4、CTIR2−5、CTIR2−6、CTIR2−7、CTIR2−8、CTIR2−9、CTIR2−10、CTIR2−11、CTIR2−12、CTIR2−13、CTIR2−14、CTIR2−15、CTIR2−16、Abcs35−A、Abcs35−B、Abcs35−C、Abcs35−D、Abcs35−E、Abcs35−F、Abcs35−G、Abcs35−H、Abcs35−I、Abcs35−J、Abcs35−K、Abcs35−L、Abcs35−M、Abcs35−N、およびAbcs35−Oからなる群から選択される抗体と競合する抗体またはその抗原結合断片をコードするポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドまたは組成物を提供する。
【0216】
本発明はまた、(i)配列番号32、43、126〜132、(ii)配列番号39、46、133、および(iii)そのあらゆる組み合わせ、からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードする配列を含むポリヌクレオチドまたは組成物を提供する。
【0217】
本発明はまた、配列番号143、144、145、146、およびそのあらゆる組み合わせのいずれかから選択される核酸配列を含むポリヌクレオチドまたは組成物を提供する。
【0218】
本発明はまた、前記核酸配列を含むポリヌクレオチドまたは組成物であって、ポリヌクレオチドが、ATCC受託番号PTA−123265、PTA−123266、PTA−123700、およびPTA−123701を有するATCCに寄託されたプラスミドのDNAインサートの配列を含む、ポリヌクレオチドまたは組成物を提供する。
【0219】
別の態様では、本発明は、抗ROBO2抗体をコードするポリヌクレオチドおよびその変異体であって、このような変異体ポリヌクレオチドが、限定はしないが配列番号143、144、145、および146の核酸を含む核酸などの本明細書において開示されている任意の核酸と、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも87%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する、ポリヌクレオチドおよびその変異体を提供する。
【0220】
別の態様では、本発明は、核酸配列が配列番号143〜146のいずれか1つで示される、ポリヌクレオチドを含む。
【0221】
一実施形態では、VHドメインおよびVLドメインもしくはその抗原結合部分、または完全長HCもしくはLCは、別個のポリヌクレオチドによってコードされる。あるいは、VHおよびVLもしくはその抗原結合部分の両方、またはHCおよびLCの両方が、単一のポリヌクレオチドによってコードされる。
【0222】
任意のこのような配列に相補的なポリヌクレオチドもまた、本開示によって包含される。ポリヌクレオチドは、一本鎖(コードもしくはアンチセンス)または二本鎖であり得、DNA(ゲノムDNA、cDNA、または合成DNA)またはRNA分子であり得る。RNA分子としては、イントロンを含み、1対1の様式でDNA分子に対応する、HnRNA分子、およびイントロンを含まないmRNA分子が含まれる。さらなるコード配列または非コード配列が本開示のポリヌクレオチド内に存在し得るが、必ずしも存在していなくてもよく、ポリヌクレオチドは他の分子および/または支持材料に連結していてよいが、必ずしも連結していなくてもよい。
【0223】
ポリヌクレオチドは、ネイティブ配列(すなわち、抗体またはその部分をコードする内在性配列)を含み得るか、またはこのような配列の変異体を含み得る。ポリヌクレオチド変異体は、コードされるポリペプチドの免疫反応性がネイティブな免疫反応性分子と比較して弱まらないような、1つまたは複数の置換、付加、欠失、および/または挿入を含む。コードされるポリペプチドの免疫反応性に対する影響は、一般に、本明細書において記載するように評価することができる。一部の実施形態では、変異体は、ネイティブな抗体またはその部分をコードするポリヌクレオチド配列と、少なくとも約70%の同一性を示し、一部の実施形態では少なくとも約80%の同一性、一部の実施形態では少なくとも約90%の同一性、また一部の実施形態では少なくとも約95%の同一性を示す。これらの量は限定的なものではなく、言及されたパーセンテージ間の増加が、開示の一部として具体的に想起される。
【0224】
2つのポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列は、以下に記載するような最大対応でアラインした場合に2つの配列内のヌクレオチドまたはアミノ酸の配列が同一であれば、「同一である」とされる。2つの配列の間の比較は、比較ウィンドウにわたり配列を比較して、配列が類似している局所的領域を同定し、比較することによって、典型的には行われる。「比較ウィンドウ」は、本明細書において使用する場合、2つの配列を最適にアラインした後に配列と参照配列とを同数の連続する位置について比較することができる、少なくとも約20、通常は30から約75、または40から約50の連続する位置からなるセグメントを指す。
【0225】
比較対象の配列の最適なアラインメントは、デフォルトパラメータを使用して、バイオインフォマティクスソフトウェア(DNASTAR(登録商標),Inc.、Madison、WI)のLasergene(登録商標)パッケージソフトのMegAlign(登録商標)プログラムを使用して行うことができる。このプログラムは、以下の参考文献において記載されているいくつかのアラインメントスキームを搭載している:Dayhoff,M.O.、1978、A model of evolutionary change in proteins−Matrices for detecting distant relationships.In Dayhoff,M.O.(編)、Atlas of Protein Sequence and Structure、National Biomedical Research Foundation、WASHINGTON DC、第5巻、補遺3、345〜358頁;Hein J.、1990、Unified Approach to Alignment and Phylogenes、626〜645頁、Methods in Enzymology、第183巻、Academic Press,Inc.、San Diego、CA;Higgins,D.G.およびSharp,P.M.、1989、CABIOS 5:151〜153;Myers,E.W.およびMuller W.、1988、CABIOS 4:11〜17;Robinson,E.D.、1971、Comb.Theor.11:105;Santou,N.、Nes,M.、1987、Mol.Biol.Evol.4:406〜425;Sneath,P.H.A.およびSokal,R.R.、1973、Numerical Taxonomy the Principles and Practice of Numerical Taxonomy、Freeman Press、San Francisco、CA;Wilbur,W.J.およびLipman,D.J.、1983、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:726〜730。
【0226】
一部の実施形態では、「配列同一性のパーセンテージ」は、2つの最適にアラインされた配列を、少なくとも20の位置からなる比較ウィンドウにわたり比較することによって決定され、ここで、比較ウィンドウ内のポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列の部分は、2つの配列の最適なアラインメントのためには、参照配列(付加または欠失を含まない)と比較して20パーセント以下の、通常は5〜15パーセント、または10から12パーセントの付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含み得る。パーセンテージは、同一の核酸塩基またはアミノ酸残基が両配列内に存在する位置の数を決定して、マッチする位置の数を得、マッチする位置の数を参照配列内の位置の総数(すなわち、ウィンドウサイズ)で割り、その結果に100をかけて配列同一性のパーセンテージを得ることによって計算される。
【0227】
変異体はまた、またはあるいは、ネイティブ遺伝子またはその部分もしくは相補体に実質的に相同である。このようなポリヌクレオチド変異体は、中程度にストリンジェントな条件下で、ネイティブな抗体をコードする天然のDNA配列(または相補配列)にハイブリダイズし得る。
【0228】
適切な「中程度にストリンジェントな条件」は、5×SSC、0.5%SDS、1.0mMのEDTA(pH8.0)からなる溶液中で事前洗浄すること、50℃〜65℃で5×SSCと一晩ハイブリダイズすること、その後、65℃で20分間、0.1%SDSを含有する2×、0.5×、および0.2×SSCのそれぞれで2回洗浄することを含む。
【0229】
本明細書において使用する場合、「高度にストリンジェントな条件」または「高いストリンジェンシー条件」は、(1)洗浄のために低いイオン強度および高い温度を、例えば、0.015Mの塩化ナトリウム/0.0015Mのクエン酸ナトリウム/0.1%ドデシル硫酸ナトリウムを50℃で利用し、(2)ハイブリダイゼーションの間に、ホルムアミド、例えば50%(v/v)ホルムアミドなどの変性剤と、0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%フィコール/0.1%ポリビニルピロリドン/pH6.5の50mMのリン酸ナトリウム緩衝液と、750mMの塩化ナトリウム、75mMのクエン酸ナトリウムとを42℃で利用し、または(3)50%ホルムアミド、5×SSC(0.75MのNaCl、0.075Mのクエン酸ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%ピロリン酸ナトリウム、5×デンハート液、超音波処理したサケ精子DNA(50μg/mL)、0.1%SDS、および10%硫酸デキストランを42℃で利用し、42℃の0.2×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)および55℃の50%ホルムアミド中で洗浄し、その後、55℃のEDTAを含有する0.1×SSCからなる高ストリンジェンシー洗浄を行うものである。当業者には、温度、イオン強度などを、必要に応じて、プローブの長さなどの因子に適応するように調節するための方法が認識されよう。
【0230】
当業者には、遺伝子コードの縮重の結果として、本明細書において記載されるポリペプチドをコードする多くのヌクレオチド配列が存在することが理解されよう。これらのポリヌクレオチドの一部は、任意のネイティブ遺伝子のヌクレオチド配列に対する相同性が最小である。それでも、コドン使用頻度の差に起因して変化するポリヌクレオチドが、本開示によって具体的に検討される。さらに、本明細書において提供されるポリヌクレオチド配列を含む遺伝子の対立遺伝子は、本開示の範囲内である。対立遺伝子は、ヌクレオチドの欠失、付加、および/または置換などの1つまたは複数の突然変異の結果として改変されている内在性遺伝子である。得られたmRNAおよびタンパク質は、改変された構造または機能を有し得るが、必ずしも有していなくてもよい。対立遺伝子は、標準的な技術(ハイブリダイゼーション、増幅、および/またはデータベース配列の比較など)を使用して同定することができる。
【0231】
本開示のポリヌクレオチドは、化学合成、組換え方法、またはPCRを使用して得ることができる。化学的なポリヌクレオチド合成の方法は、当技術分野において周知であり、本明細書において詳細に記載する必要はない。当業者は、本明細書において提供される配列および市販のDNA合成装置を使用して、所望のDNA配列を生産することができる。
【0232】
組換え方法を使用してポリヌクレオチドを調製するために、所望の配列を含むポリヌクレオチドを、適切なベクター内に挿入することができ、このベクターを次に、本明細書においてさらに論じられるように、複製および増幅のために適切な宿主細胞内に導入することができる。ポリヌクレオチドは、当技術分野において知られている任意の手段によって宿主細胞内に挿入することができる。細胞は、直接的な取り込み、エンドサイトーシス、トランスフェクション、F−交配、またはエレクトロポレーションによって外来ポリヌクレオチドを導入することによって形質転換される。導入されると、外来ポリヌクレオチドは、細胞内で非組み込みベクター(プラスミドなど)として維持され得るか、または宿主細胞ゲノム内に組み込まれ得る。このように増幅されたポリヌクレオチドは、当技術分野において周知の方法によって宿主細胞から単離することができる。例えば、Sambrookら、1989を参照されたい。
【0233】
あるいは、PCRは、DNA配列の再生を可能にする。PCR技術は、当技術分野において周知であり、米国特許第4,683,195号、米国特許第4,800,159号、米国特許第4,754,065号、および米国特許第4,683,202号、ならびにPCR:The Polymerase Chain Reaction、Mullisら編、Birkauswer Press、Boston、1994において記載されている。
【0234】
RNAは、単離されたDNAを適切なベクター内で使用し、それを適切な宿主細胞内に挿入することによって得ることができる。細胞が複製し、DNAがRNAに転写されると、RNAは、例えばSambrookら、1989において示されているような当業者に周知の方法を使用して単離することができる。
【0235】
適切なクローニングベクターは、標準的な技術に従って構築することができるか、または当技術分野において利用可能な多くのクローニングベクターから選択することができる。選択されるクローニングベクターは使用対象の宿主細胞に従って変化し得るが、有用なクローニングベクターは、一般に、自己複製する能力を有し、特定の制限エンドヌクレアーゼにとっての単一の標的を有し得、かつ/またはベクターを含むクローンの選択において使用され得るマーカーの遺伝子を有し得る。適切な例としては、プラスミドおよび細菌ウイルス、例えば、pUC18、pUC19、Bluescript(例えば、pBS SK+)およびその誘導体、mp18、mp19、pBR322、pMB9、ColE1、pCR1、RP4、ファージDNA、ならびにシャトルベクター、例えばpSA3およびpAT28が含まれる。これらのおよび多くの他のクローニングベクターは、BioRad、Strategene、およびInvitrogenなどの商業的供給業者から入手することができる。
【0236】
発現ベクターがさらに提供される。発現ベクターは、概して、本開示に従ったポリヌクレオチドを含む複製可能なポリヌクレオチド構築物である。発現ベクターが宿主細胞内でエピソームとしてまたは染色体DNAの不可欠な部分として複製可能でなければならないことは当然である。適切な発現ベクターとしては、限定はしないが、プラスミド、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルスを含むウイルスベクター、コスミド、およびPCT公開第WO87/04462号において開示されている発現ベクターが含まれる。ベクター成分としては、一般に、限定はしないが、シグナル配列、複製起点、1つまたは複数のマーカー遺伝子、適切な転写制御エレメント(プロモーター、エンハンサー、およびターミネーターなど)の1つまたは複数が含まれ得る。発現(すなわち、翻訳)のためには、リボソーム結合部位、翻訳開始部位、および停止コドンなどの、1つまたは複数の翻訳制御エレメントもまた、通常は必要である。
【0237】
目的のポリヌクレオチドを含むベクターおよび/またはポリヌクレオチド自体は、塩化カルシウム、塩化ルビジウム、リン酸カルシウム、DEAE−デキストラン、または他の物質を利用する、エレクトロポレーション、トランスフェクション;微粒子銃;リポフェクション;および感染(例えば、ベクターがワクシニアウイルスなどの感染性物質である場合)を含む、多くの適切な手段のいずれかによって、宿主細胞内に導入することができる。ベクターまたはポリヌクレオチドの導入の選択は、宿主細胞の特徴に応じることが多い。
【0238】
典型的な宿主細胞としては、大腸菌(E.coli)細胞、酵母細胞、昆虫細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、またはさもなければ免疫グロブリンタンパク質を生産しない骨髄腫細胞が含まれる。好ましい宿主細胞としては、当技術分野において周知の多くの細胞の中でも、CHO細胞、ヒト胚腎臓(HEK)293細胞、またはSp2.0細胞が含まれる。
【0239】
抗体断片はまた、完全長抗体のタンパク質分解もしくは他の分解によって、組換え方法によって、または化学合成によって生産することができる。抗体のポリペプチド断片、特に、最大約50アミノ酸の短めのポリペプチドは、化学合成によって都合良く作製することができる。タンパク質およびペプチドを化学合成する方法は、当技術分野において知られており、市販されている。
【0240】
本発明の抗体またはその抗原結合断片は、親和性成熟し得る。例えば、親和性成熟した抗体は、当技術分野において知られている手順によって生産することができる(Marksら、1992、Bio/Technology、10:779〜783;Barbasら、1994、Proc Nat.Acad.Sci、USA 91:3809〜3813;Schierら、1995、Gene、169:147〜155;Yeltonら、1995、J.Immunol.、155:1994〜2004;Jacksonら、1995、J.Immunol.、154(7):3310〜9;Hawkinsら、1992、J.Mol.Biol.、226:889〜896;およびWO2004/058184)。
【0241】
5.製剤および使用
本発明の抗体またはその抗原結合断片は、医薬組成物として製剤することができる。医薬組成物はさらに、凍結乾燥製剤または水性溶液の形態で、薬学的に許容できる担体、賦形剤、および/または安定剤(Remington:The Science and practice of Pharmacy、第20版、2000、Lippincott WilliamsおよびWilkins編、K.E.Hoover)を含み得る。本明細書において使用する場合、「薬学的に許容できる担体」または「薬学的に許容できる賦形剤」としては、活性成分と組み合わせた場合に、成分の生物学的活性を保持させ、かつ対象の免疫系と非反応性である、任意の材料が含まれる。例としては、限定はしないが、リン酸緩衝溶液、水、油/水エマルジョンなどのエマルジョン、および様々なタイプの湿潤剤などの、標準的な薬学的担体のいずれかが含まれる。エアロゾルまたは非経口投与のための好ましい希釈剤は、リン酸緩衝溶液(PBS)または通常(0.9%)生理食塩水である。このような担体を含む組成物は、周知の従来の方法によって製剤される(例えば、Remington’s Phrmaceutical Sciences、第18版、A.Gennaro編、Mack Publishing Co.、Easton、PA、1990;およびRemington、The Science and Practice of Pharmacy、第20版、Mack Publishing、2000を参照されたい)。
【0242】
許容できる担体、賦形剤、または安定剤は、投薬量および濃度でレシピエントに対して無毒であり、リン酸、クエン酸、および他の有機酸などの緩衝液;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルアルコールもしくはベンジルアルコール;メチルパラベンもしくはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;およびm−クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、もしくはリジンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、もしくはデキストランを含む単糖、二糖、および他の糖質;EDTAなどのキレート剤;ショ糖、マンニトール、トレハロース、もしくはソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn−タンパク質錯体);ならびに/またはTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)、もしくはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤を含み得る。薬学的に許容できる賦形剤は、本明細書においてさらに記載される。
【0243】
診断的使用
本発明の抗体またはその抗原結合断片は、様々な治療目的または診断目的で使用することができる。例えば、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、親和性精製剤として(例えば、ROBO2をインビトロで精製するための)、診断薬として(例えば、特異的な細胞、組織、または血清におけるROBO2の発現を検出するため)使用することができる。ROBO2の典型的な診断アッセイは、例えば、患者から得た試料を、検出可能な標識またはレポーター分子で標識されている本発明の抗ROBO2抗体と接触させることを含み得る。
【0244】
本発明は、本明細書において開示されている抗体を、試料、細胞、組織、または患者内のROBO2を可視化するための診断イメージング方法として使用することを包含する。例えば、抗体をイメージング剤にコンジュゲートさせて抗体の存在を検出できるようにし、それによってROBO2の存在を検出することができる。
【0245】
治療的使用
本発明の抗体またはその抗原結合断片の典型的な治療的使用としては、糸球体疾患、FSGSなどの腎臓疾患を処置することが含まれる。本発明の抗体またはその抗原結合断片はまた、予防的処置においても使用することができる(例えば、疾患の症候は示していないが、糸球体疾患、FSGSなどの腎臓疾患に罹患しやすい対象への投与)。
【0246】
別の態様では、本発明は、疾患、障害、または状態の非存在下での尿中のタンパク質レベルと比較して増大した尿中のタンパク質レベルによって仲介される、またはその増大した尿中のタンパク質レベルを伴う、任意の障害、疾患、または状態の処置を含む。このような疾患、障害、または状態としては、限定はしないが、ループス腎炎、IgA腎症、膜性腎症(MN)、微小変化群(MCD)、線維症(肝線維症など)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、タンパク尿、アルブミン尿、糸球体腎炎、糖尿病性腎症、ネフローゼ症候群、巣状糸球体硬化症、急性腎不全、急性尿細管間質性腎炎、腎盂腎炎、腎臓移植片拒絶、および逆流性腎症が含まれる。
【0247】
治療用途では、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、従来の技術によって、例えば、静脈内に(ボーラスとして、または一定期間にわたる連続注入による)、筋肉内に、腹腔内に、脳脊髄内に、皮下に、関節内に、滑液嚢内に、髄腔内に、経口的に、局所的に、または吸入によって、哺乳動物、特にヒトに投与することができる。本発明の抗体またはその抗原結合断片はまた、腫瘍内経路、腫瘍周辺経路、病変内経路、または病変周辺経路によって適切に投与される。
【0248】
したがって、一態様では、本発明は、それを必要とする対象(例えば、ヒト)に治療有効量の本発明の抗体またはその抗原結合断片を投与することを含む、ROBO2の活性を低減させる方法を提供する。
【0249】
別の態様では、本発明は、それを必要とする対象(例えば、ヒト)に治療有効量の本発明の抗体またはその抗原結合断片を投与することを含む、ポドサイトの機能を維持または調節する方法を提供する。
【0250】
ある特定の実施形態では、対象は、腎臓疾患に罹患しているか、または腎臓疾患に罹患しやすい。ある特定の実施形態では、腎臓疾患は、糸球体疾患である。ある特定の実施形態では、腎臓疾患は、FSGSである。
【0251】
ある特定の実施形態では、対象は、腎症に罹患しているか、または腎症に罹患しやすい。
【0252】
投薬および投与
ある特定の実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、皮下に投与される。ある特定の実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、静脈内に投与される。
【0253】
医薬組成物は、それを必要とする対象に、腎臓疾患の重症度で変化し得る頻度で投与され得る。予防的治療のケースでは、頻度は、腎臓疾患に対する対象の感受性または傾向に応じて変化し得る。
【0254】
組成物は、必要とする患者に、ボーラスとして、または連続注入によって投与することができる。例えば、Fab断片として存在する抗体のボーラス投与は、体重1kg当たり0.0025から100mg、1kg当たり0.025から0.25mg、1kg当たり0.010から0.10mg、または1kg当たり0.10〜0.50mgの量であり得る。連続注入では、Fab断片として存在する抗体は、1分間当たり体重1kg当たり0.001から100mg、1分間当たり1kg当たり0.0125から1.25mg、1分間当たり1kg当たり0.010から0.75mg、1分間当たり1kg当たり0.010から1.0mg、または1分間当たり1kg当たり0.10〜0.50mgで、1〜24時間、1〜12時間、2〜12時間、6〜12時間、2〜8時間、または1〜2時間の時間にわたり投与され得る。
【0255】
完全長抗体(完全な定常領域を有する)として存在する抗体の投与では、投薬量は、約1mg/kgから約10mg/kg、約2mg/kgから約10mg/kg、約3mg/kgから約10mg/kg、約4mg/kgから約10mg/kg、約5mg/kgから約10mg/kg、約1mg/kgから約20mg/kg、約2mg/kgから約20mg/kg、約3mg/kgから約20mg/kg、約4mg/kgから約20mg/kg、約5mg/kgから約20mg/kg、約1mg/kg以上、約2mg/kg以上、約3mg/kg以上、約4mg/kg以上、約5mg/kg以上、約6mg/kg以上、約7mg/kg以上、約8mg/kg以上、約9mg/kg以上、約10mg/kg以上、約11mg/kg以上、約12mg/kg以上、約13mg/kg以上、約14mg/kg以上、約15mg/kg以上、約16mg/kg以上、約17mg/kg以上、約19mg/kg以上、または約20mg/kg以上であり得る。投与の頻度は、状態の重症度に応じる。頻度は、週に3回から2週間または3週間ごとに1回の範囲であり得る。
【0256】
さらに、組成物は、皮下注射を介して患者に投与することができる。例えば、1から100mgの用量の抗ROBO2抗体が、週に2回、週に1回、2週間ごとに1回、3週間ごとに1回、4週間ごとに1回、5週間ごとに1回、6週間ごとに1回、7週間ごとに1回、8週間ごとに1回、9週間ごとに1回、10週間ごとに1回、月に2回、月に1回、2カ月ごとに1回、または3カ月ごとに1回投与される皮下注射または静脈内注射を介して、患者に投与され得る。例えば、抗体Abcs35は、約19日間の推定される半減期を有し、皮下(SC)投与後の生物学的利用能はおよそ60%である。この半減期は、毎週または2〜6週間ごと、例えば、2週間ごとに1回または4週間ごとに1回の皮下注射または静脈内注射をサポートする。
【0257】
ある特定の実施形態では、ヒトにおける抗ROBO2抗体の半減期は、約5日間、約6日間、約7日間、約8日間、約9日間、約10日間、約11日間、約12日間、約13日間、約14日間、約15日間、約16日間、約17日間、約18日間、約19日間、約20日間、約21日間、約22日間、約23日間、約24日間、約25日間、約26日間、約27日間、約28日間、約29日間、約30日間、約5日間から約40日間、約5日間から約35日間、約5日間から約30日間、約5日間から約25日間、約10日間から約40日間、約10日間から約35日間、約10日間から約30日間、約10日間から約25日間、約15日間から約40日間、約15日間から約35日間、約15日間から約30日間、または約15日間から約25日間である。
【0258】
ある特定の実施形態では、医薬組成物は、2〜6週間ごとに、約0.1mg/kgから約10mg/kg、約0.5mg/kgから約10mg/kg、約1mg/kgから約10mg/kg、約1.5mg/kgから約10mg/kg、約2mg/kgから約10mg/kg、約0.1mg/kgから約8mg/kg、約0.5mg/kgから約8mg/kg、約1mg/kgから約8mg/kg、約1.5mg/kgから約8mg/kg、約2mg/kgから約8mg/kg、約0.1mg/kgから約5mg/kg、約0.5mg/kgから約5mg/kg、約1mg/kgから約5mg/kg、約1.5mg/kgから約5mg/kg、約2mg/kgから約5mg/kg、約0.5mg/kg、約1.0mg/kg、約1.5mg/kg、約2.0mg/kg、約2.5mg/kg、約3.0mg/kg、約3.5mg/kg、約4.0mg/kg、約4.5mg/kg、約5.0mg/kg、約5.5mg/kg、約6.0mg/kg、約6.5mg/kg、約7.0mg/kg、約7.5mg/kg、約8.0mg/kg、約8.5mg/kg、約9.0mg/kg、約9.5mg/kg、または約10.0mg/kgの用量で、皮下または静脈内に投与される。
【0259】
ある特定の実施形態では、医薬組成物は、2〜6週間ごとに、約3.0mg/kgの用量で、皮下または静脈内に投与される。ある特定の実施形態では、医薬組成物は、2〜6週間ごとに、約2.0mg/kgから約10.0mg/kgの用量で、皮下または静脈内に投与される。
【0260】
1つの典型的な実施形態では、医薬組成物は、2週間ごとに皮下投与される。
【0261】
ある特定の実施形態では、医薬組成物は、2〜6週間ごとに、約10.0mg/kgの用量で、皮下または静脈内に投与される。ある特定の実施形態では、医薬組成物は、2〜6週間ごとに、約1.0mg/kgから約10.0mg/kgの用量で、皮下または静脈内に投与される。
【0262】
1つの典型的な実施形態では、医薬組成物は、毎月、静脈内投与される。
【0263】
本発明の抗体またはその抗原結合断片は、単剤療法として、または例えば腎臓疾患を処置するための他の治療法と組み合わせて、使用することができる。腎臓疾患を処置するための他の治療法は、当技術分野において周知であり、本明細書において列挙していない。
【0264】
6.キット
本発明はまた、本発明の抗体またはその抗原結合断片および使用のための指示を含むキットまたは製品を提供する。したがって、一部の実施形態では、容器、抗ROBO2アンタゴニスト抗体を含む容器内の組成物、およびそれを必要とする患者を処置するための治療有効量の抗ROBO2アンタゴニスト抗体を投与するための指示を含有する包装挿入物を含むキットまたは製品が提供される。
【0265】
ある特定の実施形態では、キットは、乾燥したタンパク質を有する第1の容器および水性製剤を有する第2の容器の両方を含み得る。ある特定の実施形態では、単一のおよび複数のチャンバを有する充填済みシリンジ(例えば、液体シリンジおよびリオシリンジ)を含むキットが含まれる。
【0266】
本発明の抗体またはその抗原結合断片の使用に関する指示は、一般に、目的の処置のための投薬量、投与スケジュール、および投与経路についての情報を含む。容器は、単位用量、バルク包装(例えば、多用量包装)、または小単位用量であり得る。本発明のキットにおいて提供される指示は、典型的には、ラベルまたは包装挿入物(例えば、キットに含まれる紙片)上の文書による指示であるが、機械可読の指示(例えば、磁気ディスクまたは光学式記憶ディスクに記録された指示)もまた許容できる。
【0267】
本発明のキットは、適切な包装の中にある。適切な包装としては、限定はしないが、バイアル、ボトル、瓶、柔軟な包装(例えば、密封されたマイラーまたはプラスチック袋)などが含まれる。吸入器、経鼻投与装置(例えば、アトマイザー)、またはミニポンプなどの注入装置などの特定の装置と組み合わせて使用するための包装もまた検討される。キットは、無菌のアクセスポートを有し得る(例えば、容器は、静脈内溶液用の袋、または皮下注射針が貫通可能なストッパーを有するバイアルであり得る)。容器もまた、無菌のアクセスポートを有し得る(例えば、容器は、静脈内溶液用の袋、または皮下注射針が貫通可能なストッパーを有するバイアルであり得る)。容器は、第2の薬学的に活性な作用物質をさらに含み得る。
【0268】
キットは、緩衝液および説明情報などのさらなる構成要素を提供してもよい。通常、キットは、容器、および容器上のまたは容器に伴うラベルまたは包装挿入物を含む。
【0269】
7.生物の寄託
本発明の代表的な材料は、2016年6月23日に、American Type Culture Collection、10801 University Boulevard、Manassas、Va.20110−2209、USAに寄託された。ATCC受託番号PTA−123265を有するベクターAbcs35−VHは、抗体Abcs35の重鎖可変領域をコードするDNAインサートを含み、ATCC受託番号PTA−123266を有するベクターAbcs35−VLは、抗体Abcs35の軽鎖可変領域をコードするDNAインサートを含む。さらに、本発明のさらなる代表的な材料が、2016年12月20日に、ATCCに寄託された。ATCC受託番号PTA−123700を有するベクターAbcs35−J−VHは、抗体Abcs35−Jの重鎖可変領域をコードするDNAインサートを含み、ATCC受託番号PTA−123701を有するベクターAbcs35−J−VLは、抗体Abcs35−Jの軽鎖可変領域をコードするDNAインサートを含む。寄託は、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約、およびそれに準ずる規則(ブダペスト条約)の規定の下で行われた。これにより、寄託物の生存状態での培養が寄託日から30年にわたり維持されることが保証される。寄託物は、ブダペスト条約に基づいてATCCによって利用可能とされ、また、関連する米国特許が認められた際、または米国もしくは外国の特許出願のいずれかが公開された際のいずれか早い方に、寄託物の培養による子孫が公共に対して永久にかつ無制限に利用可能となることを保証し、かつ、米国特許商標庁が35 U.S.C.セクション122およびそれに従った長官の裁定(886 OG 638を特に参照して、37 C.F.R.セクション1.14を含む)に従って特許付与を決定した者に対して子孫の利用可能性を保証する、Pfizer Inc.とATCCとの間での合意に従うものである。
【0270】
本願の譲受人であるPfizer Inc.は、寄託されている材料の培養物が適切な条件下での培養時に死亡した場合または紛失した場合または破壊された場合には、この材料が、通知に基づいて、別の同一材料で早急に置き換えられるということに同意している。寄託された材料の利用可能性は、いずれかの政府がその特許法に従ってその権限の下で認めた権利に違反した本発明の実施許諾であると解釈されるものではない。
【実施例】
【0271】
典型的な方法および材料が本明細書において記載されるが、本明細書において記載されるものに類似のまたはそれに等しい方法および材料もまた、本発明の実施または試験において使用することができる。材料、方法、および例は、例示的なものにすぎず、限定することを意図したものではない。
【0272】
(実施例1)
抗Robo2抗体の生成
Abcs35は、SLIT2リガンドの結合を中和するROBO2タンパク質に対する完全ヒトIgG1抗体である。単一のROBO2特異的抗体クローンである93H2を単離し、以下に記載するように、複数ラウンドの親和性成熟を使用して、親和性をおよそ37nMから0.268nMまで増大させた。
【0273】
ファージディスプレイによる抗ROBO2抗体の選択
抗ROBO2 scfvを、抗体ファージディスプレイライブラリーから、ヒトROBO2の細胞外ドメイン(ECD)でスクリーニングすることによって選択した。ヒトROBO2 ECDを、製造者のプロトコルに従って、スルホ−NHS−LC−ビオチン(Pierce)でビオチン化した。このビオチン化されたROBO2 ECDを使用して、結合剤をscfv抗体ファージディスプレイライブラリーから選択し、次いで、標準的な方法を使用して、ストレプトアビジンで被覆した磁性Dynabeads M−280(Invitrogen)上に捕捉した。以下の低下濃度の標的(ROBO2 ECD)で、3ラウンドの選択を行った:200nM(第1ラウンド)、100nM(第2ラウンド)、および50nM(第3ラウンド)。関連するROBO1タンパク質にほとんど結合しなかった、ROBO2に特異的な抗体を得るために、全ての選択を、以下の増大濃度のヒトROBO1 ECDの存在下で行った:50nM(第1ラウンド)、100nM(第2ラウンド)、および200nM(第3ラウンド)。このスクリーニングから、110のscfvのヒットをROBO2 ECDへの結合として同定し、これを、標準的な方法を使用してIgGに変換した。
【0274】
ROBO2 ECDおよびROBO1 ECDへのヒトIgGの結合を測定するためのELISA。
ELISAプレートを1μgのROBO2 ECDまたは1μgのROBO1 ECDで被覆し、標準的なELISAプロトコルに従った。抗体を抗ヒトIgG HRP二次抗体(Southern Biotech)で検出し、ELISAを3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジンで可視化し、吸光度を、Envisionプレートリーダー(Perkin Elmer)で、450nmで読み取った。scfvからIgG1に再フォーマットした後、抗体クローン93H2が、ROBO2への特異的結合を示した唯一のものであり、そのROBO1への結合は最小であった。
【0275】
93H2 mAbの親和性成熟。
親和性および効力を増大させるために、2つのアプローチを適用した。まず、93H2にフォーカスしたファージディスプレイライブラリーを、スプライスオーバーラップ伸長PCRによって生成した。93H2にフォーカスしたファージディスプレイライブラリーは、VH−CDR1、VH−CDR2、VL−CDR1、VL−CDR2、およびVL−CDR3をそれぞれ突然変異させることを目的とした突然変異誘発性プライマーを含むNNKコドンを使用して構築した5つの突然変異生成ライブラリーからなるものであった。全部の組み合わせ多様性が1.1×10である得られたライブラリーを、ファージ上にディスプレイさせ、ROBO2 Ig1−Ig2の結合について選択した。5つのライブラリーをレスキューした後、2ラウンドの選択を行った。第1ラウンドでは、200pMのヒトROBO2 Ig1−Ig2を溶液中で使用してファージを30分にわたり室温で結合させ、その後、ストレプトアビジン磁性ビーズでの捕捉を行った。ROBO2に特異的な抗体を得るために、選択は、200nMのヒトROBO1の存在下で行った。オフ速度が遅いROBO2特異的なscfvを得るために、洗浄したビーズを、ビオチン化されていないROBO2 Ig1−Ig2と一晩インキュベートした。第2ラウンドでは、2nMのビオチン化されたROBO2 Ig1−Ig2を、第1ラウンドで得たアウトプットファージと溶液中で30分間にわたりインキュベートし、その後、ストレプトアビジン磁性ビーズでの捕捉を行った。
【0276】
アウトプットファージプールの全部で3800のクローンを、細菌ペリプラズムフォーマットにおいて、標準的なプロトコルを使用して、ヒトROBO2 Ig1−Ig2タンパク質結合ELISAによってスクリーニングした。110を超える、ROBO2に特異的に結合する変異体を同定し、完全長ヒトIgGに再フォーマットした。
【0277】
第2のアプローチは、ROBO2 Ig1に複合した93H2の分解した結晶構造に基づいて設計された(図12)。第1のアプローチについて記載したものと同一のライブラリースクリーニングパラダイムに従った。全部で27のIgG変異体を、上記のアッセイを使用するスクリーニングのために生成した。
【0278】
スクリーニングした全てのクローンから、親和性が最適化された上位20のクローンを同定し、これらは、それぞれが単一の固有の突然変異を軽鎖に有する、重鎖ライブラリーからの15のクローン、軽鎖ライブラリーからの3つのクローン、および構造に基づくライブラリーからの2つのクローンからなるものであった。
【0279】
Octet技術を使用して、Ab96およびAb123は、それぞれ1.2nMおよび1.4nMの相対Kd値でROBO2 Ig1−Ig2に結合することが示され、93H2のKd(37nM)よりも25〜30倍の向上を示した。Ab96およびAb123と、有利な親和性の増強を有する別の18のクローンとに、さらなる重鎖および軽鎖シャッフリングを行った。
【0280】
最良の親和性成熟クローン(Abcs35)はこのプロセスから生じ、クローンAb96の重鎖可変ドメインおよびAb123の軽鎖可変ドメインを含む。Octet法およびSPR法の両方を使用すると、Abcs35抗体は、Kd=279pMでROBO2 Ig1−2に結合し、≒300倍の親和性の向上を示す。
【0281】
(実施例2)
ROBO2特異的中和抗体の同定および特徴付け
親和性成熟の作戦の結果生じた抗体を、SLIT2−Nの結合の中和、ROBO1と比較したROBO2への選択的結合、およびSLIT2−Nの機能的活性の阻害についての多くのアッセイによってスクリーニングした(表2を参照されたい)。ROBO2−SLIT2−Nのホモジニアス時間分解蛍光(HTRF)アッセイを使用して、ROBO2へのSLIT2−Nの結合を遮断し得る抗体を同定した。このアッセイにおいて、テルビウム(Tb)標識されたSNAPタグ付けされたROBO2を発現するHEK293細胞を、5nMのd2標識されたSLIT−2Nと、1nMの抗ROBO2抗体の存在下で1時間にわたりインキュベートした。インキュベーションした後、665nmおよび620nmでの蛍光を、Envisionマルチラベルプレートリーダーで測定した。HTRF比を以下のように計算した:665nmでの蛍光/620nmでの蛍光×1万。最大シグナルは、抗体の非存在下、d2標識されたSLIT2−Nありでの、Tb標識されたROBO2細胞のHTRF比として定義し、最低シグナルは、Tb標識されたROBO2を発現するHEK293細胞のみのHTRF比として定義した。1ナノモル濃度(nM)の親抗体である93H2は、HTRFアッセイを遮断することができず、したがって、この濃度を、93H2よりも高い親和性でクローンを同定するために選択した(表2、HTRF比の欄)。SLIT2−Nの結合の単一点での中和を実証した抗体を次いで、HTRFアッセイの用量依存性の中和について評価して、より低い阻害濃度50(IC50、半最大シグナル阻害が観察される濃度)でクローンを同定した。93H2および親親和性成熟抗体(Abシリーズ)を、7点からなる、最大濃度が1000nMの10倍連続希釈物で評価した。鎖(Abcシリーズ)またはCDRシャッフリング(CTIR−2シリーズ)に由来する抗体を、11点からなる、最大濃度が1500nMの5倍連続希釈物において評価した(表2のHTRF IC50)。
【0282】
親93H2抗体は、非常にROBO2特異的であり、したがって、単一点での中和活性を有する親和性成熟抗体をフローサイトメトリーによってスクリーニングして、ROBO2の選択性が維持されていることを確認した。ROBO2の選択性を評価するために、ヒトROBO1またはROBO2のいずれかを過剰発現するヒト胚性腎臓293(HEK293)細胞を、単一の濃度の選択された抗体と、30分間にわたり4℃でインキュベートした。93H2および親親和性成熟抗体(Abシリーズ)を0.1μg/mlの示された抗体で染色し、鎖(Abcsシリーズ)またはCDRシャッフリング(CTIR−2シリーズ)に由来する抗体を2.5μg/mlの示された抗体で染色した。抗体の結合を、蛍光色素にコンジュゲートした抗ヒトIgG F(ab’)二次抗体を使用して検出し、試料をFortessaサイトメーター(BD Biosciences)で分析した。ROBO2選択性倍率を、ROBO2細胞での幾何平均蛍光強度(Geo MFI)/ROBO1細胞でのGeo MFIとして計算した。3を超える変化倍率を、ROBO2特異的であるとみなした(表2、選択性倍率)。一部の親和性成熟クローン、例えば、Abcs 55、CTI−R2−10、およびCTIR2−13は、ROBO1反応性が増大していた。
【0283】
表2は、ROBO1および/またはROBO2に対する抗体をスクリーニングするために使用して、ROBO2を高い親和性で特異的に認識したがROBO1は認識しなかった抗体を同定した、アッセイの概要である。行ったアッセイは、親抗体が中和しなかった条件下でアッセイを中和し得たクローンを同定するための単一点の中和のホモジニアス時間分解蛍光(HTRF)アッセイを含んでいた。抗体を選択するために、完全用量曲線を同一のアッセイで行った。ネイティブな、表面に発現されたタンパク質の認識、およびROBO2選択性を、フローサイトメトリーによって評価した。抗体を、単一の濃度で、ヒトROBO1またはROBO2のいずれかを過剰発現するヒト胚性腎臓293(HEK293)細胞への結合について試験した。抗体が、表面に発現されたタンパク質への結合を実証した場合、選択性倍率を、ROBO2細胞での幾何平均蛍光強度(Geo MFI)をROBO1細胞でのGeo MFIによって割ることによって決定した。3を超える値を有するものはいずれも、ROBO2に対して選択的であるとみなされた。各抗体に対して行われた様々なスクリーニングアッセイのアウトカムは、最後の欄で強調されている。
【0284】
最後の選択スクリーニングは、ROBO2依存性のSLIT2−N活性の機能的な中和であった。SLIT2−ROBO2の相互作用は、発生の際の軸索移動の鍵となる調節因子である。SLIT2が脳室下帯ニューロンにとって化学反発性であること、およびこの活性がROBO2依存性であることが知られている。ラットの脳室下帯(SVZ)の神経組織外植片を単離し、コラーゲンマトリックスに包埋した。SLIT2−Nの存在下で、神経細胞移動は阻害される(SVZaアッセイ)。抗体を、SVZaアッセイにおいて、神経細胞移動を回復させる用量依存性の能力について評価した。組織外植片を、1nMのSLIT2−Nの存在下で、滴定量の選択ROBO2特異的抗体あり、またはなしでインキュベートした。インキュベーションした後、細胞を4%パラホルムアルデヒドで固定し、Hoechst 33342で染色した。広視野の蛍光画像を、10倍の高NA対物レンズを有するOperetta High Content Imager(Perkin Elmer)で得た。5%のオーバーラップを有する、ウェル当たり9つの視野を得て、ウェルの中央区域全体を捉えた。各視野について、各平面間の距離が1μmの6つの平面からなるA Z−スタックを得て、組織外植片の最深長を捉えた。分析は、Volocityソフトウェア(Perkin Elmer)で行った。各ウェルの全ての視野を互いにステッチした。中央の組織外植片の区域、および組織外植片の外側の各核を、Hoechst 33342染色によって検出した。個々の核を計数し、各核の中央から組織外植片の最も近い縁までの距離をμm単位で測定した。ウェル内の核の平均移動距離に核の数をかけて、各ウェルについての総移動距離を得た。SVZaアッセイにおいて、全ての選択された親和性成熟抗体は、親93H2抗体よりも低いIC50を有しており(表5)、Abcs35が、0.027nMの最も低いIC50を有していた(図6)。
【0285】
【表3-1】
【0286】
【表3-2】
【0287】
【表3-3】
【0288】
(実施例3)
Abcs35およびAbcs25のインビトロでの薬理学。
いくつかの基準に基づいて、Abcs25およびAbcs35を、さらなる特徴付けのために選択した。フローサイトメトリーを使用して、親93H2と比較した、ヒトROBO2に対する結合のEC50の向上を評価した。ROBO2の選択性倍率について上記で記載したように(実施例2)、6.7nMで開始して、11点からなる3倍連続希釈物を各抗体について作製し、HEK293を過剰発現するヒトROBO2を染色するために使用した。Abcs25およびAbcs35の両方が、より低いEC50で、ヒトROBO2に対するより高い親和性結合を実証した(表3)。ヒトROBO2への結合の向上を測定することに加えて、カニクイザルROBO2およびラットROBO2の両方への高い親和性での結合を確実に維持することが重要であった。カニクイザルROBO2またはラットROBO2のいずれかを過剰発現するHEK293細胞を使用して、93H2、Abcs25、およびAbcs35の相対的な用量依存性の結合を、上記のように評価した。カニクイザルおよびラットROBO2の両方への高い親和性での結合は、Abcs25およびAbcs35において維持された(表4)。Abcs35のKDは、Biacore T200を使用する表面プラズモン共鳴(SPR)によって、0.268nMであると判定された。簡潔に述べると、Abcs35を、CM5チップ上で300共鳴単位(RU)に固定した。ROBO2 Ig1−Ig2−His(ROBO2)の会合を5分間にわたり測定し、解離を10分間にわたり追跡した。ROBO2の8点からなる2倍連続希釈物を使用して、KDを決定した(図1)。
【0289】
表3は、親ROBO2特異的抗体、93H2、ならびに2つの選択された親和性成熟クローンであるAbcs35およびAbcs25の、細胞への抗体結合の半最大シグナルが観察される濃度である有効濃度50(EC50)値の概要である。EC50を、ヒトROBO2、またはROBO2のRSKエピトープを含むROBO1の突然変異形態を過剰発現するいずれかの細胞に対する用量依存性の結合を評価することによって決定した。
【0290】
【表4】
【0291】
表4は、ヒト、カニクイザル、またはラットのROBO2オルソログのいずれかに対する、親ROBO2特異的抗体である93H2、ならびに2つの選択された親和性成熟クローンであるAbcs35およびAbcs25のEC50値の概要である。EC50を、ヒトROBO2、カニクイザルROBO2、またはラットROBO2のいずれかを過剰発現するHEK293細胞に対する用量依存性の結合を評価することによって決定した。
【0292】
【表5】
【0293】
表5は、選択されたROBO2特異的抗体による神経細胞移動のSLIT2−N介在性の阻害の中和についての(SVZaアッセイ)、半最大シグナル阻害が観察される濃度である阻害濃度50(IC50)値の概要である。SVZaアッセイは、ラットの脳室下帯(SVZ)からの神経組織外植片の単離を伴う。コラーゲンマトリックスに包埋されると、神経細胞は外植片の外部へ移動する。SLIT2−Nの存在下で、神経細胞移動は阻害され、この移動はROBO2依存性である。中和抗ROBO2抗体の存在下では、神経細胞移動は回復される。組織外植片を、1nMのSLIT2−Nの存在下で、滴定量の選択されたROBO2特異的抗体の存在下または非存在下でインキュベートし、移動のSLIT2−N介在性の阻害の回復を評価した。SLIT2−N活性の用量依存性の阻害が、広範なIC50にわたり試験した全ての抗体で見られた。Abcs35、Abcs25、およびCTIR2−15の値は、2つの独立した実験の平均を表し、その一方で、他のものは単一の実験に相当する。
【0294】
【表6】
【0295】
(実施例4)
インビボでの薬理学
ラットをAbcs35で処置すると、タンパク尿が低減し、ポドサイトの足突起のアーキテクチャが保護される。図7および8で示すように、ポドサイト駆動性の糸球体慢性腎臓疾患のモデルである受身ヘイマン腎炎モデルのラットを処置すると、タンパク尿の量が用量依存性の様式で低減した。簡潔に述べると、Lewisラットに、ラット腎臓刷子縁に対して作られたヒツジ抗血清(抗Fx1a(Probetex Inc)、基底膜およびポドサイト)を注射する。ラットは、ラットポドサイトに結合したヒツジ血清に対する免疫応答を示すようになる。補体活性化は次いで、ポドサイトを消失させ、3日目から12日目の間にタンパク尿を増大させ、その後は横ばいとなる。このメカニズムは、ポドサイトタンパク質PLA2R(全ケースの70%において)に対する自己抗体が補体会合の後にポドサイトの消失およびネフローゼ域タンパク尿を生じさせる、膜性腎症で見られるメカニズムに非常に類似している。ラットを、モデル開始の24時間前に、糸球体ROBO2のおよそ80、90、および99%を網羅するための用量範囲(1、5、および25mg/kg)で前処理し、その後、72時間ごとに処理した。タンパク尿の最大の低減は39%であり、および反復測定ANOVA統計分析によって、p値が0.0003の用量応答が確認された。補体IHCスコアリングによって判定したところ、腎臓における免疫複合体の蓄積の低減はなく、このことは、応答がポドサイト保護効果に起因するものであったことを示している。ポドサイトの機能および構造の調節における信頼性をさらに提供するために、ポドサイトの下部構造の電子顕微鏡写真の定量分析を行った(以下に記載するように)。指状嵌入している足突起のスリット隔膜間の距離を、複数のループ状毛細血管について計算し、足突起の平均幅を決定した。消失したポドサイトの足突起の幅は、正常な消失していないポドサイトの足突起の幅よりも大きい。図8で示すように、25mg/kg用量のAbcs35で処置した動物の足突起の幅は、対照抗体で処理した動物よりも有意に小さかった(19%の低減)。このデータは、タンパク尿の低減がポドサイト下部構造の改変に起因するものであったという仮説をサポートした。
【0296】
回収、試料採取、および切片化:浸漬(4%ホルムアルデヒド/1%グルタルアルデヒド)によって固定された完全(full face)試料腎臓(動物当たり1つの腎臓)を受け取り、皮質のみを含めるように刈り込み、腎臓につき5つの試料をエポキシ樹脂に包埋した。各腎臓の第1の包埋された試料を切片化した。これが3つの糸球体を含有していれば、この試料を薄片化し、イメージングした。この第1の試料が糸球体を含有していなければ、その腎臓の他の包埋試料を連続的に切片化し、同様に評価して、3つの糸球体を有する試料を見出した。
【0297】
観察およびイメージング:選択された腎臓試料を、透過型電子顕微鏡(Hitachi H−7100)およびデジタルCCDカメラシステム(Advanced Microscopy Techniques、Danvers、MA)を使用してデジタルイメージングした。反復せずに、200倍の倍率で見られた最初の3つの糸球体の3つのループ状毛細血管を、5000倍および1万倍の倍率でイメージングした。この結果、腎臓当たり18のデジタル画像を得た(すなわち、腎臓試料当たり3つの糸球体×糸球体当たり3つの区域×2つの倍率)。盲検様式での評価を可能にするために、各画像を、研究番号、動物番号、試料番号、および倍率のみにより特定した。
【0298】
ポドサイトの足突起の幅およびスリット膜の密度の測定。ImageJソフトウェア(バージョン1.47v、National Institutes of Health、Bethesda、MD、USA)を使用して、糸球体基底膜(GBM)の単位長さ当たりの隣接した足突起の幅を手動でトレースし、高倍率の透過型電子顕微鏡画像で測定する。
【0299】
(実施例5)
ROBO2特異的なエピトープの同定
材料の調製、結晶化、データの収集、および構造の決定:
ROBO2 Ig1ドメインの精製。6×ヒスチジンタグをC末端に有するROBO2のIg1ドメインを、哺乳動物細胞で一時的に発現させ、Ni Excelカラムを介してイミダゾール勾配溶出で精製した。タンパク質をさらに精製して、HiLoad 26/200 Superdex 200(GE Healthcare)を使用してサイズ排除クロマトグラフィーを介して均質にした。
【0300】
93H2 Fabの生成。抗ROBO2 mAb 93H2を、製造者のプロトコル(Thermo/Pierce)に従って、固定パパインで12時間にわたり消化した。タンパク質A50(Poros)を使用して、Fabを消化されたプールから分離した。Fabを次いでさらに精製して、HiLoad 26/200 Superdex 200(GE Healthcare)を使用してサイズ排除クロマトグラフィーを介して均質にした。
【0301】
複合体の生成。93H2 FabおよびROBO2のIg1ドメインを1:1.1の比で混合して複合体を形成した。HiLOAD 26/200 Superdex 200カラム(GE Healthcare)を使用する最終的なサイズ排除ステップを行って、過剰なROBO2を分離した。精製された複合体を、結晶化の準備のために、10.6mg/mlに濃縮した。
【0302】
結晶化。ROBO2のIg1ドメインと複合体を形成した93H2 Fabの結晶を、以下の条件下で得た:100mMのクエン酸ナトリウム、pH5.6、100mMの硫酸リチウム、12%PEG6000。この条件によって、2.9Åで回折する平面状の結晶が得られた。
【0303】
データの収集。結晶を一時的に凍結防止処理し、シンクロトロンデータの収集を、Advanced Photon Source(APS)の17 IDビームラインで遠隔的に行った。イメージフレームを、ソフトウェアAutoPROC(Global Phasing Ltd)を使用して処理した。データは、以下の単位胞を有する空間群P21に属する:非対称単位当たり6つの複合体で、a=76.46Å、b=221.85Å、c=129.31Å、b=95.86°。
【0304】
構造の決定および精密化。分子置換サーチモデルは、93H2 Fabの可変ドメインおよび定常ドメイン、ならびにProtein Database Bankを介して公開されているROBO1のIg1ドメイン(アクセスid:2V9Q)の相同性モデルから構成される。サーチを複数回行った後、複合体の6つのコピーの全ての分子置換の解を、高い信頼性で、結晶格子内に置いた。モデルを再構築した後、ソフトウェアautoBUSTER(Global Phasing Ltd)を使用して精密化を行い、2.94Åでの最終的な精密化R/Rfree因子は、それぞれ0.1646および0.2251であった。構造は良好な幾何学にあり、結合のRMSDは0.010Åであり、角度のRMSDは1.23°である。
【0305】
抗体−抗原界面および突然変異生成の研究
図10は、SLIT1/SLIT2の主要な認識部位であるROBO2およびROBO1のIg1ドメインが、96.2%の配列類似性(102/106)および92.5%の配列同一性(98/106)を示すことを示す。2つのフレームワークが事実上同一であることを考えると、ROBO2に排他的に結合し得るがROBO1には結合しない任意の最良の抗体は、ROBO2上の以下の8つの残基(ROBO1における対応する残基は括弧内に列挙している):V40(L)、T48(A)、D67(G)、R100(K)、K102(R)、S107(V)、R122(H)、およびN123(D)の少なくとも1つを区別することができなくてはならない。
【0306】
93H2 mAbのFabと複合体を形成したROBO2のIg1ドメインの結晶構造を、非対称単位当たり6コピーの複合体で、2.94オングストロームで決定した。結晶充填環境の差に起因して、複合体の6つのコピーは2つの異なる立体構造にグループ化され得、ROBO2と93H2との間の結合界面の立体構造の多様性についてのさらなる理解を提供する。
【0307】
ROBO2−SLIT2およびROBO2−93H2の結晶構造をアラインすることによって、ROBO2とわずかに相互作用するにすぎない93H2の軽鎖が、ROBO2とSLIT2との間の相互作用を防ぐために必要な構造的障害となることが明らかになる(図11)。ROBO2の、93H2との結合親和性がSLIT2との結合親和性よりも高い場合、93H2は、ROBO2−SLIT2の相互作用およびその下流のシグナル伝達を防ぐために十分な立体遮断を提供する。
【0308】
93H2によって標的化されるROBO2のIg1ドメイン上の主要な結合エピトープは、ROBO2の柔軟なループ(残基H97〜P103)である(図12)。93H2の結合に寄与するさらなるマイナーなエピトープは、ROBO2の別個のループ(E72〜H81)を介する。しかし、異なる立体構造の複合体において明らかにされるように、後者のエピトープへの結合は任意である。これは、ROBO2に対する93H2の特異性を説明するための決定要因ではない。
【0309】
93H2とROB2との間の主要な界面の安定性は、ROBO2のR99およびR100の寄与を大きく受ける(図12)。R100は、重鎖のE95ならびに93H2の軽鎖のS91およびY92のカルボニル基との広範囲に及ぶ水素結合を形成して、認識を強固にする。ROBO2のR99はまた、重鎖のD99および軽鎖のY92と接触して、相互作用をさらに安定化させる。R99はROBO1とROBO2との間で保存されているため、R100は、ROBO2に対する93H2の結合特異性を決定する唯一の残基である。
【0310】
突然変異生成の研究は、構造の観察および予測をさらに裏付ける:RSKのROBO2の残基100〜102をKSRに突然変異することによって、突然変異体ROBO2の、93H2と相互作用する能力が無効となり、その一方で、KSRのROBO1の残基100〜102をRSKに突然変異することによって、この突然変異体ROBO1がROBO2特異的な93H2と相互作用することが可能になる(以下に記載する研究)。S101はROBO2およびROBO1の間で保存され、K102の側鎖はROBO2相互作用を伴わないため(界面から離れた箇所を指している)、R100がROBO2に対する93H2の結合特異性を唯一駆動していることが明らかになる。
【0311】
上記の結晶構造に基づいて、以下の実験を行って、93H2および/または親和性成熟クローンAbcs35のエピトープ特異性を確認した。Octet Redを使用して、エピトープ特異性を生化学的に確認した。10μg/mlのAbcs35を、AHCセンサー上に60秒間捕捉させた。100nMで調製された、組換えヒトROBO2 Ig1−Ig2、ラットROBO1 Ig1−Ig2、ROBO1 KSR配列を含むヒトROBO2(ROBO2−KSR突然変異体)、およびヒトROBO1 Ig1−Ig2を使用して、捕捉されたAbcs35と相互作用させた。会合時間は100秒間であり、次いで、解離を20秒間にわたって追跡した。Abcs35はヒトおよびラットROBO2に特異的に結合したが、ヒトROBO1にもROBO2−KSR突然変異タンパク質にも結合しなかった(図2)。
【0312】
Abcs35と、93H2およびAbcs25とのRSK特異性もまた、フローサイトメトリーを使用する細胞ベースの結合アッセイにおいて確認した。ROBO1のKSR配列を含むROBO2(ROBO2−KSR)、またはROBO2のRSK配列を含むROBO1(ROBO1−RSK)を過剰発現するHEK293細胞を生成した。上記の実施例3において記載したように、用量依存性の結合を評価した。Abcs35は、ヒトROBO2を発現する細胞およびROBO1−RSK細胞に対する特異的結合を実証したが、突然変異体ROBO2−KSRタンパク質を発現する細胞に対する結合は観察されなかった(図3)。Abcs35と共に、93H2およびAbcs25は、突然変異体ROBO1−RSKタンパク質を発現する細胞に対する用量依存性のかつ特異的な結合を実証し、Abcs25およびAbcs35は、親93H2よりも高い親和性を有していた(表3)。
【0313】
エピトープおよびパラトープの分析
93H2のFabと複合体を形成したROBO2のIg1ドメインの全体的な結晶構造を図13に示す。非対称単位は、結晶格子内に環様の立体構造に配置された、ROBO2−93H2複合体の6つのコピーを含む。この配置によって、6つのわずかに異なる局所環境で同一の複合体を可視化することが可能になる。結晶構造と溶液の挙動との間の一部のさらなる差が、2つの環境における溶液の条件(pHなど)の差に起因して生じ得る。構造において、鎖A、D、G、J、M、およびPが抗体重鎖の例であり、鎖B、E、H、K、N、および、Qが抗体軽鎖の例であり、鎖C、F、I、L、O、およびRがROBO2 Ig1ドメインの例である。主要なFab/抗原相互作用は、以下の6つ鎖群の間で生じる:(A、B、C)、(D、E、F)、(G、H、I)、(J、K、L)、(M、N、O)、および(P、Q、R)。71位から81位の抗原残基は、構造の6つの独立したコピーの間で著しい柔軟性を示す。PQRコピーが両抗体鎖について最も低いB因子を有するが、ABCバージョンの複合体における抗原Ig1ドメインは、以前に公開されたROBO2構造(PDBエントリー2V9R;Morlotら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 2007、103、14923〜8)と比較して最も低いRMSd(≒0.6A)を有する。複合体の6つのコピー全てが、溶液中で生じる柔軟な挙動の関連するスナップショットを含み得るが、6つのコピーのうちのより多くで生じる相互作用は、エネルギー的に有利であり得、したがって、より重要であり得る。
【0314】
構造を、Contactsパネルを使用して、Maestro 10(Schrodinger,LLC、New York、NY)で視覚化して、ROBO2とFabとの間の原子内接触距離がこの2つの原子のファンデルワールス半径の合計の≦1.3倍である相互作用を位置決定した。表6は、抗体と接触するROBO2残基を示し、複合体の6つのコピーのうちのいくつが抗体と相互作用する残基を示すか、および、どのFab鎖が関与するかを示す(異なる複合体間の結晶充填相互作用、例えば、[A、B、C]と[D、E、F]との間の相互作用は含まれないことに留意されたい)。ROBO2の69位〜82位および131位〜140位のアミノ酸は、非対称単位の複合体の少なくとも半数において、抗体と接触する複数の残基を含み、93H2の結合のためのエピトープをほぼ規定する
【0315】
表7は、ROBO2と接触する93H2残基、これらがCDR内にあるかどうか、および構造内の6つのROBO2コピーのいずれが相互作用を示すかを示す。3つの重鎖CDRの全てが6つのコピーの全てにおいて接触するが、軽鎖ではCDR−1およびCDR−3のみが6つのコピーの全てと接触する。複合体の少なくとも一部のコピーにおいて、H1、H2、H73、およびL49に接触するROBO2とのフレームワーク接触も存在する。表7は、接触が複合体の少なくとも1つにおいて93H2側鎖を伴うかどうかをさらに示す。2つのケースにおいて(H96およびL93)、ROBO2との接触は、側鎖によってではなく残基骨格によって排他的に起きる。
【0316】
表6および7において同定されたエピトープ残基およびパラトープ残基の重要性をさらに特徴付けすることが可能である。例えば、接触が主に骨格となされる場合、または接触がエネルギー的にニュートラルである場合、残基は、広範な突然変異を許容し得る。側鎖全体と他の結合パートナーとの著しい接触、またはコンピュータによる進化シミュレーションにおける高度な保存は、特定の残基の重要性が他の残基と比較して高い可能性があることの証拠である。93H2の結晶構造について、本発明者らは、抗体/抗原の接触に関与する残基への側鎖の接触を調べた。本発明者らはまた、MODELLERソフトウェアパッケージ(Webb & Sali、Current Protocols in Bioinformatics、John Wiley & Sons,Inc.、5.6.1〜5.6.32、2014)を使用して、93H2の結晶構造を使用してAbcs35−Jの可変ドメイン(配列番号127および133)の相同性モデルを構築した。上記のように、93H2/ROBO2複合体のPQRコピーは、最も低いB因子を有していたが、ABCコピーは、以前に公開されたバージョンのROBO2ドメインに、より密接に類似していた。したがって、本発明者らは、1つはABC複合体を鋳型として使用し、1つはPQR複合体を鋳型として使用して、2つの相同性モデルを構築した。界面における最も重要な残基を同定するための代替的なアプローチとして、本発明者らは、これらの相同性モデルの鍵となる領域を、環境依存性の水素結合のスコアリングを無効にし、0.228のボルツマンウェイトを使用する、Smith & Kortemme(PLOS One、2011、http://dx.doi.org/10.1371/journal.pone.0020451、およびJ.Mol.Bio.402、2(17)、460〜74(2010))によって記載されているような、Rosettaソフトウェアパッケージにおける配列を最適化するための遺伝的アルゴリズムに供した。全部で50または100の骨格変異体を、各残基クラスター(それぞれ、8個以下の残基を含む)につき、世代当たり骨格変異体当たり5000または2万配列で、遺伝的アルゴリズムの5世代にわたりシミュレートした(最大8残基からなるクラスターには小さい方の数を使用したが、その一方で、9残基を有していた単一クラスターのサンプリングを増大させるためには、大きい方の数を使用した)。プロトコルのアウトプットには、どのアミノ酸が各サンプリングされた位置で最も頻繁に生じるかについての統計が含まれる。アミノ酸がランダムに分布していた場合、20のアミノ酸が存在するため、各々は、およそ5%の頻度で存在することになる。一般に、しかし、1つまたはいくつかの残基は5%よりも有意に高い頻度で存在し、このことは、特異的なアミノ酸に対する構造的または結合的優先性を示す。表8は、野生型残基が>10%の頻度を有していたROBO2残基を列挙しており、これは、既存の残基が抗体/抗原相互作用に好ましいものの1つであることを示している。一部の残基は、シミュレーションのための複数の残基クラスターの一部として選択され、したがって、複数回シミュレートされた。このようなケースにおいて、表8は、代表的な結果を示す。シミュレーションに関与する一部の残基は、抗体−抗原界面に直接関与しない第2層の残基であり、直接的に接触していた隣接する残基のバリエーションを高めることを可能にするためだけに含まれていた。しかし、直接的に接触することが観察された残基(すなわち、表6の残基)のみが、表8に含めるか検討された。一部の残基(Asp77など)は、ROBO2の立体構造の差に起因して、一方の相同性モデル(ABC複合体に基づく)をシミュレートする場合、高い頻度を有していたが、他方のモデル(PQR複合体に基づく)をシミュレートする場合は、高い頻度を有していなかった。
【0317】
Abcs35−J抗体残基の類似性の分析が表9に示され、この表は、既存の抗体残基が>10%の頻度を有していた抗体残基を列挙しており、このことは、既存の残基が抗体/抗原相互作用に好ましいものの1つであることを示している。抗原と接触していることが認められる残基(すなわち、表7に示されているもの)のみが表9に示される。
【0318】
抗体/抗原界面における残基の重要性の全体的な質的ランキングを、その各々がより高い重要性を示す以下の基準に基づいて確立した:(A)表6および7で示すような、結晶構造の非対称単位における6つの独立して精密化された複合体で見られる一貫した相互作用、(B)表7における抗体について示されているような、抗体/抗原の結合における側鎖の関与、特に、末端側鎖の原子または側鎖の水素結合を伴うケース、(C)表8および9で示すような、コンピュータによる遺伝的アルゴリズムの配列最適化における高い配列保存、ならびに(D)上記のような突然変異生成の研究。これらの基準の2つの以上を満たす残基は、「主要な」役割を有すると定義され得、その一方で、重要性が低い他の残基は、「寄与する」役割(中程度の重要性)または「任意の」役割(低い重要性)を有すると定義され得る。基準(A)および(C)を満たすが骨格相互作用のみを界面に与えるアミノ酸は、それが広い特異性を伴って多くの抗体に一般に存在し、それが正準的なCDR立体構造をサポートするということを主たる理由としてシミュレーションにおいて保存される場合は、依然として、「主要な」役割までは有さないと判断され得る。このような残基の例はTyr(H27)であり、このケースでは、側鎖は、ごく稀にROBO2と偶発的な接触を生じ、それはCβ側鎖原子を介してのみである。ROBO2残基のランキングを表10Aに示し、抗体についてのランキングを表10Bに示す。表6〜9で既に捕捉されていない、何らかの鍵となる特徴があれば、各表のコメント欄に示す。
【0319】
【表7】
【0320】
【表8】
【0321】
【表9】
【0322】
【表10】
【0323】
【表11】
【0324】
【表12】
【0325】
さらに、エピトープ/パラトープ残基に一般的に用いられる基準には、(i)コグネート抗体の重原子から約4Åの距離以内にある重原子(すなわち、非水素原子)を有する残基、(ii)コグネート抗体の残基と、もしくはこれもコグネート抗体に水素結合している水分子との(水が介在する水素結合)水素結合に関与する残基、(iii)コグネート抗体の残基への塩橋に関与する残基、または(iv)BSAが20Å以上の、もしくは抗体が抗原に結合する場合の静電気的相互作用に関与する残基が含まれる。これらの相互作用は、以下のようにまとめられる。
【0326】
【表13】
【0327】
【表14】
【0328】
【表15】
【0329】
【表16】
【0330】
【表17】
【0331】
(実施例6)
生殖細胞系抗体の特徴付け
Abcs−AからAbcs−Oと名付けられた(表12)、Abcs35に基づくさらなる生殖細胞系抗体を生成した。これらの生殖細胞系抗体は、Abcs35内のある特定の非生殖細胞系残基(重鎖の3残基および軽鎖の1残基)が、対応するヒト生殖細胞系残基で置き換えられた。
【0332】
フレームワーク領域内に生殖細胞系配列を導入するための突然変異を有する抗体を、以下の多くのインビトロアッセイで評価した:1)SPR、2)SLIT2−N:ROBO2相互作用の中和、3)ROBO2オルソログ、ROBO1ホモログ、およびROBO2の特異的RSKモチーフへの結合、ならびに4)SLIT2−Nの存在下での神経細胞移動の回復。
【0333】
親和性を、実施例3において記載されているような標準的SPR方法によって測定した。簡潔に述べると、抗体を、CM5チップ上の特定量の共鳴単位(RU)に固定した。ROBO2 Ig1−Ig2−His(ROBO2)の会合および解離を、一定期間にわたり追跡する。抗体を10nM、1nM、および0.1nMの濃度で使用して、KDを決定した。表13は、導入された生殖細胞系突然変異によって与えられたKの変化を示す。
【0334】
【表18】
【0335】
ROBO2へのSLIT2−Nの結合の中和を、実施例2において記載したようなROBO2:SLIT2−Nホモジニアス時間分解蛍光(HTRF)アッセイによって評価した。簡潔に述べると、HTRFアッセイを、以下のように行った:テルビウム(Tb)で標識されたSNAPタグ付けされたROBO2を発現するHEK293細胞を、抗ROBO2抗体の存在下で、d2標識されたSLIT−2Nと1時間インキュベートした。インキュベーションした後、665nmおよび620nmでの蛍光を、Envisionマルチラベルプレートリーダーで測定した。HTRF比を以下のように計算した:665nmでの蛍光/620nmでの蛍光×1万。最大シグナルを、抗体の非存在下、d2標識されたSLIT2−Nありでの、Tb標識されたROBO2細胞のHTRF比として定義し、最小シグナルを、Tb標識されたROBO2を発現するHEK293細胞のみのHTRF比として定義した。図15は、全ての生殖細胞系抗体によるHTRFシグナルのほとんど区別不可能な用量依存性の阻害を示し、表14は、各生殖細胞系抗体について決定されたIC50値を含む表である。これらのデータは、生殖細胞系突然変異の導入がSLIT2の結合を中和する抗体の能力に対する有意な影響を有していたことを示す。
【0336】
【表19】
【0337】
ヒトROBO2、カニクイザルおよびラットのオルソログ、ヒトROBO1についての、Abcs35と比較したAbcs35−Jの結合プロファイル、ならびに、ROBO1のKSRに対してはないがROBO2のRSKエピトープに対する特異性を判定した。結合を、実施例2(ホモログ特異性)、実施例3(オルソログ反応性)、および実施例5(RSKエピトープ対KSRエピトープの特異性)において記載したように、フローサイトメトリーによって評価した。簡潔に述べると、1)ヒトROBO1、2)ヒトROBO2、3)カニクイザルROBO2、4)ラットROBO2、5)ROBO1 KSRモチーフを含む突然変異体ROBO2、または6)ROBO2のRSKモチーフを含む突然変異体ROBO1という6つのROBO分子のうち1つを過剰発現するヒト胚性腎臓293(HEK293)細胞を、滴定量の選択された抗体とインキュベートした。抗体の結合を、蛍光色素にコンジュゲートした抗ヒトIgG F(ab’)二次抗体を使用して検出し、試料を、Fortessaサイトメーター(BD Biosciences)で分析した。表15は、ヒト、カニクイザル、ラットのROBO2、またはROBO2 RSKエピトープについて、Abcs35−JとAbcs35とを比較した結合親和性に有意差がなかったことを実証している。図16A〜16Fは、ヒトROBO2(図16A)、カニクイザルROBO2(図16B)、ラットROBO2(図16C)、ヒトROBO1(図16D)、ROBO2 RSKエピトープを含むROBO1(図16E)、またはROBO1 KSRエピトープを含むROBO2(図16F)に対するAbcs35(黒い丸印)またはAbcs35−J(灰色の四角印)の結合プロファイルを示す。
【0338】
【表20】
【0339】
Abcs35と比較した、Abcs35−JのSLIT2活性の機能的中和を、SVZアッセイにおいて評価した。実施例2で記載したように、組織外植片を、1nMのSLIT2−Nの存在下で、滴定量の選択ROBO2特異的抗体あり、またはなしでインキュベートする。インキュベーションした後、細胞を4%パラホルムアルデヒドで固定し、Hoechst 33342で染色した。データの取得は、Operetta High Content Imager(Perkin Elmer)で行い、Volocityソフトウェア(Perkin Elmer)を使用した分析を使用して、移動した細胞の数を判定した。図17で見ることができるように、Abcs35−JとAbcs35との比較で、SVZaアッセイにおける細胞移動を阻害する強度に差はなかった。
【0340】
本発明をこうして、上記の代表的な実施形態を参照して広く開示し、説明してきた。当業者には、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な修正が本発明に対してなされ得ることが認識されよう。全ての公報、特許出願、および特許は、個々の公報、特許出願、または特許が参照することによってその全体が組み込まれることが具体的かつ個別に示されているかのごとく、参照することによって本明細書に組み込まれる。参照によって組み込まれるテキストに含まれる定義は、それらが本開示における定義と矛盾する限りにおいて排除される。
【0341】
明確性のために別個の実施形態の文脈で記載されている、本発明のある特定の特徴はまた、単一の実施形態において組み合わせて提供され得ることを理解されたい。逆に、簡潔性のために単一の実施形態の文脈で記載されている、本発明の様々な特徴はまた、別個に、または任意の適切な部分的組み合わせでも提供され得る。
【0342】
本発明の1つの実施形態に関して論じられるいかなる限定も、本発明のあらゆる他の実施形態に適用され得ることが、具体的に検討される。さらに、本発明のいかなる組成物も、本発明のあらゆる方法において使用され得、また、本発明のいかなる方法も、本発明のあらゆる組成物を生産または利用するために使用され得る。特に、単独の請求項または1つもしくは複数のさらなる請求項と組み合わせた請求項において記載されている本発明の任意の態様、および/あるいは明細書の態様は、特許請求の範囲および/または明細書および/または配列表および/または図面のいずれかの箇所で示されている本発明の他の態様と組み合わせ可能であると理解される。
【0343】
本明細書において見られる具体的な例が本発明の範囲に含まれない場合に限り、前記具体的な例は特許請求の範囲から明確に除外され得る。
【0344】
特許請求の範囲における用語「または」の使用は、代替的なもののみを指すことが明確に示されていない限り、または代替的なものが相互排他的でない限り、「および/または」を意味するために使用されるが、本開示は、代替的なもののみおよび「および/または」を指す定義をサポートする。本発明の明細書において使用する場合、「a」または「an」は、別段の指示が明らかにない限り、1つまたは複数を意味し得る、本発明の特許請求の範囲において使用する場合、語「含む(comprising)」と組み合わせて使用する場合、語「a」または「an」は、1つまたは2つ以上を意味し得る。本明細書において使用する場合、「別の」は、少なくとも2つめ以上を意味し得る。本明細書において別段の定義がない限り、本発明に関連して使用される科学的および技術的用語は、当業者によって一般に理解されている意味を有する。さらに、文脈により別段の要求がない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含む。語「含む(comprises/comprising)」および語「有する/含む(having/including)」は、本発明に関して本明細書において使用する場合、言及した特徴、整数、ステップ、または成分の存在を特定するために使用されるが、1つもしくは複数の他の特徴、整数、ステップ、成分、もしくはその群の存在または追加を排除するものではない。
【0345】
開示された教示を様々な適用、方法、および組成物に関して記載してきたが、様々な変更および修正が、本明細書における教示および以下の特許請求の範囲に記載される発明から逸脱することなくなされ得ることが理解されよう。例は、開示される教示をより良く説明するために提供され、本明細書において提供される教示の範囲を限定することを意図したものではない。本教示はこれらの典型的な実施形態に関して記載されているが、不要な実験を行うことなく、これらの典型的な実施形態の多くの変形および修正が可能である。全てのこのような変形および修正は、本教示の範囲内である。
【0346】
本発明の態様または実施形態がマーカッシュグループまたは他の代替的なグルーピングに関して記載されている場合、本発明は、列挙されているグループ全体を丸ごと包含するだけではなく、グループの各メンバーを個別に、また、メイングループの全ての考えられるサブグループ、グループメンバーの1つまたは複数が欠けているメイングループも包含する。本発明はまた、特許請求の範囲に記載される発明におけるグループメンバーのいずれかの1つまたは複数を明確に排除することも想定する。
【0347】
特許、特許出願、文書、テキスト本などを含む、本明細書において引用される全ての参考文献、およびその中で引用される参考文献は、それらがすでにそうされていない限りにおいて、参照することによってその全体が本明細書に組み込まれる。限定はしないが、定義される用語、用語の使用法、記載される技術などを含む、組み込まれる文献および類似の材料の1つまたは複数が、本願と異なるかまたは矛盾する場合には、本願が優先される。
【0348】
明細書および実施例は、本発明のある特定の具体的な実施形態を詳述し、本発明者らによって検討される最良の態様を説明する。しかし、いかに詳細にそれらが文中において記載されているように見えたとしても、本発明は多くの手段で実施され得るものであり、本発明は、添付の特許請求の範囲およびその任意の均等物に従って解釈されるべきであることを理解されたい。
【0349】
【表21-1】
【0350】
【表21-2】
【0351】
【表21-3】
【0352】
【表21-4】
【0353】
【表21-5】
【0354】
【表21-6】
【0355】
【表21-7】
【0356】
【表21-8】
【0357】
【表21-9】
【0358】
【表21-10】
【0359】
【表21-11】
【0360】
【表21-12】
【0361】
【表21-13】
【0362】
【表22-1】
【0363】
【表22-2】
【受託番号】
【0364】
PTA−123265
PTA−123700
PTA−123266
PTA−123701
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【配列表】
2020524988000001.app
【国際調査報告】