(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-525855(P2020-525855A)
(43)【公表日】2020年8月27日
(54)【発明の名称】可変鍵張力を有するオルガン
(51)【国際特許分類】
G10B 3/12 20060101AFI20200731BHJP
G10B 3/04 20060101ALI20200731BHJP
G10B 1/02 20060101ALI20200731BHJP
【FI】
G10B3/12 130
G10B3/04
G10B1/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-572746(P2019-572746)
(86)(22)【出願日】2018年6月18日
(85)【翻訳文提出日】2020年1月17日
(86)【国際出願番号】CA2018050735
(87)【国際公開番号】WO2019000078
(87)【国際公開日】20190103
(31)【優先権主張番号】62/527,456
(32)【優先日】2017年6月30日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】519461347
【氏名又は名称】キャサバント フレール
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ブレイン,デニス
(72)【発明者】
【氏名】ペーターセン,イェンス ペーター
(57)【要約】
オルガンは、鍵と、風供給部と流体連通する風箱とを含む。風箱パレットは、風箱の内部に配置されかつ鍵に接続されている。補助室は、風箱から独立しかつウィンドレギュレータと流体連通する。補助パレットは、補助室の内部に配置されかつ鍵に接続されている。第1の調整要素は、ウィンドレギュレータから生成される風を制御する。付勢要素は、補助パレットを閉位置に押し付ける。第2の調整要素は、補助パレットに付勢要素によってかけられる張力を制御する。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍵と;
風供給部と流体連通する風箱と;
前記風箱の内部に配置されかつ前記鍵に接続されている風箱パレットと;
前記風箱から独立しかつウィンドレギュレータと流体連通する補助室と;
前記補助室の内部に配置されかつ前記鍵に接続されている補助パレットと;
前記ウィンドレギュレータから生成される風を制御する第1の調整要素と;
前記補助パレットを閉位置に押し付ける付勢要素と;
前記補助パレットに前記付勢要素によってかけられる張力を制御する第2の調整要素とを備える、オルガン。
【請求項2】
前記補助パレットは、前記鍵が押されたときに前記鍵に張力をもたらすために前記風箱パレットに接続される、請求項1に記載のオルガン。
【請求項3】
前記補助室に隣接する排気室をさらに備え、前記排気室は、前記補助パレットが前記閉位置にあるとき前記補助パレットによって前記補助室から分離されたままである、請求項1または2に記載のオルガン。
【請求項4】
前記排気室が、排気制御ゲートを備える、請求項3に記載のオルガン。
【請求項5】
前記排気制御ゲートが、開口を画定する、請求項4に記載のオルガン。
【請求項6】
前記開口のサイズは可変である、請求項5に記載のオルガン。
【請求項7】
前記補助室の空気圧が前記ウィンドレギュレータによって制御される、請求項1〜6のいずれか1項に記載のオルガン。
【請求項8】
前記空気圧が0〜250mm水柱である、請求項7に記載のオルガン。
【請求項9】
オルガンの鍵の張力を制御するデバイスであって、
前記オルガンの風箱から独立するようになされた補助室であって、ウィンドレギュレータと流体連通するように構成されている補助室と;
前記補助室の内部に配置されかつ前記鍵に接続されている補助パレットと;
前記ウィンドレギュレータから生成される風を制御する第1の調整要素と;
前記補助パレットを閉位置に押し付ける付勢要素と;
前記補助パレットに前記付勢要素によってかけられる張力を制御する第2の調整要素とを備える、デバイス。
【請求項10】
前記補助パレットが、前記鍵が押されたときに前記鍵に張力をもたらすために前記オルガンの風箱パレットに接続されるようになされた、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
前記補助室に隣接する排気室をさらに備え、前記排気室は、前記補助パレットが前記閉位置にあるとき前記補助パレットによって前記補助室から分離されたままである、請求項9または10に記載のデバイス。
【請求項12】
前記排気室が、排気制御ゲートを備える、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
前記排気制御ゲートが、開口を画定する、請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
前記開口のサイズは可変である、請求項13に記載のデバイス。
【請求項15】
前記補助室の空気圧が前記ウィンドレギュレータによって制御される、請求項9〜14のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項16】
前記空気圧が0〜250mm水柱である、請求項15に記載のオルガン。
【請求項17】
オルガンの鍵の鍵張力を制御する方法であって、
前記風箱から独立している補助室の補助パレットにかけられる空気圧を制御することであって、前記補助パレットは、前記鍵に接続されている、制御することと;
前記補助パレットを閉位置に押し付ける付勢要素にかけられる張力を制御することであって、前記付勢要素は、前記鍵に接続されている、制御することとを含む、方法。
【請求項18】
前記補助室に隣接する排気室から出る空気の量を制御することであって、前記排気室は、前記補助パレットが前記閉位置にあるとき前記補助パレットによって前記補助室から分離されたままである、制御することをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記排気室から出る空気の前記量を変えるために排気制御ゲートを制御することであって、前記排気室が前記排気制御ゲートを備え、前記排気制御ゲートが開口を画定する、制御することをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記開口の前記サイズを制御することをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
オルガンの鍵の鍵張力を制御する方法であって、
補助パレットを前記鍵に接続することであって、前記補助パレットは、補助室の内部に配置され、前記補助室は、前記オルガンの風箱から独立するようになされた、接続することと;
前記補助室の内部で生成される風を制御することと;
前記補助パレットに付勢要素によってかけられる張力を制御することとを含む、方法。
【請求項22】
前記補助パレットを前記鍵に接続することが、前記補助パレットを、前記鍵と前記風箱の内部に位置するパレットの間のリンクに接続することを含む、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全体が参照によって本明細書に援用される2017年6月30日に出願されたUS62/527,456に対する優先権を主張し、本開示はオルガンに関する。
【0002】
本開示は、オルガンに関する。詳細には、本開示は、可変鍵張力を有するオルガンに関する。
【背景技術】
【0003】
パイプオルガンは、非常に様々なサイズおよび能力を有する楽器である。コンサートホールのオルガンは、40’×40’×20’奥行程の大きさに容易になり得る。一方、小さな練習用のオルガンは、幅6’×高さ8’×奥行5’程の小ささになり得る。機械作動オルガンに関し、鍵盤への張力もまた、楽器のサイズ、その製造品質、その技術レベルならびにその年式に応じて大きく異なるだろう。プロであれ学生であれ、演奏を習得するために曲の練習を望むオルガン奏者は、コンサートホールまたは教会のオルガンよりも通常はるかに小さい楽器にアクセスするだろう。
【0004】
小さな練習用の楽器は通常、大きな教会またはコンサートホールの楽器よりもはるかに小さいので、それらの鍵盤張力は、大きな楽器よりもはるかに軽いものとなろう。したがって、そういったより大きな楽器で演奏されるときにはるかに多くを要求するだろう曲のリハーサルには理想的な構成ではない。
【発明の概要】
【0005】
したがって、記述した課題の1つを少なくとも部分的に解決するまたは既存技術の代替となる装置または方法を提供することが非常に望ましい。
【0006】
一態様によれば、鍵と;風供給部と流体連通する風箱と;風箱の内部に配置されかつ鍵に接続されている風箱パレットと;風箱から独立しかつウィンドレギュレータと流体連通する補助室と;補助室の内部に配置されかつ鍵に接続されている補助パレットと;ウィンドレギュレータから生成される風を制御する第1の調整要素と;補助パレットを閉位置に押し付ける付勢要素と;補助パレットに付勢要素によってかけられる張力を制御する第2の調整要素とを備えるオルガンが提供される。
【0007】
別の態様によれば、オルガンの鍵の張力を制御するデバイスであって、オルガンの風箱から独立するようになされた補助室であって、ウィンドレギュレータと流体連通するように構成されている補助室と;補助室の内部に配置されかつ鍵と接続されている補助パレットと;ウィンドレギュレータから生成される風を制御する第1の調整要素と;補助パレットを閉位置に押し付ける付勢要素と;補助パレットに付勢要素によってかけられる張力を制御する第2の調整要素とを備えるデバイスが提供される。
【0008】
一態様によれば、オルガンの鍵の鍵張力を制御する方法であって、風箱から独立している補助室の補助パレットにかけられる空気圧を制御することであって、補助パレットは当該鍵に接続されている、制御することと;補助パレットを閉位置に押し付ける付勢要素にかけられる張力を制御することであって、付勢要素は鍵に接続されている、制御することとを含む、方法が提供される。
【0009】
別の態様によれば、オルガンの鍵の鍵張力を制御する方法であって、補助パレットを鍵に接続することであって、補助パレットは補助室の内部に配置され、補助室はオルガンの風箱から独立している、接続することと;補助室の内部で生成される風を制御することと;補助パレットに付勢要素によってかけられる張力を制御することとを含む、方法が提供される。
【0010】
以下の図面は、非限定的に提示される例を表す。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1B】別の例によるオルガンの概略断面図である。
【
図1C】別の例によるオルガンの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
例えば、オルガンは、鍵が押されたときに鍵に張力をもたらすために風箱パレットに接続されている補助パレットを含み得る。
【0014】
例えば、オルガンは、さらに、補助室に隣接する排気室を含み得、排気室は、補助パレットが閉位置にあるとき補助パレットによって補助室から分離されたままである。
【0015】
例えば、排気室は、排気制御ゲートを備え得る。
【0016】
例えば、排気制御ゲートは、開口を画定し得る。
【0017】
例えば、開口のサイズは、可変であり得る。
【0018】
例えば、補助室の空気圧は、ウィンドレギュレータによって制御され得る。
【0019】
例えば、空気圧は、0〜250mmまたは約10〜約225水柱であり得る。
【0020】
例えば、デバイスにおいて、補助パレットは、鍵が押されたときに鍵に張力をもたらすためにオルガンの風箱パレットに接続されている。
【0021】
例えば、デバイスは、室に隣接する排気室を含み、排気室は、補助パレットが閉位置にあるとき補助パレットによって室から分離されたままである。
【0022】
例えば、排気室は、排気制御ゲートを備える。
【0023】
例えば、排気制御ゲートは、開口を画定する。
【0024】
例えば、開口のサイズは、可変である。
【0025】
例えば、補助室の空気圧は、ウィンドレギュレータによって制御される。
【0026】
例えば、空気圧は、0〜250mmまたは約10〜約225mm水柱である。
【0027】
オルガン奏者が弾きながら対処しなければならない力は、主に、2つの異なる要素からもたらされる。
【0028】
1つの力は、鍵盤の鍵を風箱(パイプに送られる圧力下の空気を含む箱)に位置するパレットに接続する機械要素の経路全てにおいて発生する摩擦およびばね張力の実際の合計である。短くかつより単純な機構は、ピボットおよびスクエア全てにおいてより少ない戻しばね張力およびより少ない摩擦を必要とするだろう。このことをばね抵抗と呼ぶ。
【0029】
もう1つの力は、空気がパイプ内に流入することを阻むパレットの抵抗である。楽器が大きくなると、圧力は大きくなり、パレットは大きくなり、かくして、圧力差およびパレットのサイズによって生じるパレットの開きまたは「パレットの吸着」を克服するのに、鍵へのより強い力が必要とされるだろう。圧力差は、パレットの上にある室と下にある室の圧力の差である。
【0030】
時とともに、オルガン奏者が感じるだろう事柄がある。すなわち、オルガン奏者が鍵を押し下げるにつれて、パレットへの張力は増大し、したがって、鍵への張力が増大する。鍵の経路における様々な要素からの張力全てが克服されたとき、パレット箱と鍵チャネルの圧力において克服すべき圧力差がまだ存在する。パレットの移動のこれら1〜2mmは、鍵への増大する張力として感じられるだろう。オルガン奏者は、通常、この力を「pluck resistance(引張抵抗)」と呼ぶ。
【0031】
奏者が、鍵にさらに少しの力をかけて押すと、突然、パレットは開き始め、空気がパレットの上の鍵チャネルに流入するにつれ、パレットの下の圧力とパレットの上の圧力は均等化し、鍵上に、ほとんどばね抵抗のみを残す。鍵上の残存する抵抗は、最大抵抗の40〜60%となろう。力全てが突然克服されたときの鍵張力の低下は、「PLUCK(引張)」と呼ばれる。
【0032】
機構は、これら2つの力を模倣するように設計され得る。例えば、そのようにするために、小さなオルガンは非常に軽いアクションで用いることができ、それに、より大きな楽器の特性を再現する2つの追加機構が追加され得る。
【0033】
例えば、風箱を有する2段のマニュアル(2段の鍵盤)楽器が構成され、それに、補助パレット室に位置する61鍵の各々に対する補助パレットが追加される。風箱10および補助パレット室80の断面図を
図1Aに示す。
【0034】
これらのパレットを用いることにより、鍵盤への鍵張力に影響する2つの主パラメータ、すなわちばね張力およびパレット吸着または「pluck(引張)」の量を変更することが可能となり得る。
【0035】
ばね張力は、いくつかの源からもたらされ得る。
・鍵アクションの質量
・鍵アクションの経路における方向性変化の量
・鍵アクションの摩耗などからの様々な摩擦源
・ローラーボードの多数の軸点
・鍵アクションの経路におけるスクエアまたは様々なピボットポイント
【0036】
このパラメータに作用しかつばね張力の変化を模倣するために、ばね30が、補助パレットの各々に一端が取り付けられる。ばねの他端は、パレットから離れて移動され得る部材に取り付けられる。例えば、ばねは、レバー40に取り付けられ得、かつ、レバー40およびその機構50を有するスクエアによって移動され得る。
【0037】
レバー40のピボットは、一端において風箱の底部に取り付けられている。スクエア50の端部は、奏者がアクセスすることができるクランク60に接続されているねじ棒によって引かれるまたは押される。奏者がクランクを時計回りに回すと、バーは、さらに下に移動し、かくして、補助パレットに取り付けられているばねの張力を増大させる。そして、このシステムは、鍵アクションのばね張力を変えることができる。
【0038】
もう1つのパラメータは、パレット吸着または「pluck(引張)」の量である。この現象は、初期パレット抵抗によって生じるものであり、それは、パレットが開かれたときに低下する。抵抗は、パレットの上の圧力とパレットの下の圧力がほぼ均等化されたとき低下する。奏者が克服する必要があるこの力は、パレットが開くことに逆らうように作用する圧力の結果である。
【0039】
開口における張力は、パレット開口面積に、風箱10に設定されている風圧を乗じた積である。補助パレット室80において開口の上に位置する補助パレットは、いくらかの「pluck(引張)」を追加するのに用いられ、かつ、受ける圧力によって制御される追加張力を有するだろう。
【0040】
補助パレット室の圧力を変化させると、それに応じて、追加「pluck(引張)」は変化するだろう。圧力を変化させるために、第2のウィンドレギュレータ160が、オルガンに追加される。その設定は、可撓軸110によってレギュレータばね100に作用する第2のクランクを用いて調整され得る。そして、圧力は、0〜250mm水柱で変えられ得る。より高い張力は、利用可能な場合、より高い送風機の圧力を用いて達成され得る。
【0041】
鍵の各々に対して、元の「pluck(引張)」が克服されたとき「触った後の」効果を変更する別のデバイスが、補助パレット室の底部の後ろに配置され得る。この別のデバイスは、パレット移動の最初の何ミリメートルかのピークフォール抵抗を低減またはさらに強めるという制限を、排気部120において設ける。このデバイスは、出荷時に調整済みである。
【0042】
両方の張力機構がそれらの最小値に設定されると、オルガンの実際の鍵アクションに張力は加えられない。オルガン奏者は、オルガンを、そのサイズの通常の楽器の実際の張力特性で演奏することができる。そして、補助パレット室の圧力および張力は風箱から独立しているので、補助パレット室の圧力を変更することは、配管の音声に全く影響を与えない。
【0043】
一例によれば、鍵張力の変化を可能とするオルガン機構が開示される。
図1Aに示すように、オルガンの断面図が開示される。
【0044】
オルガンの鍵101は、先端102を有する。鍵を押すとき、ユーザは、鍵101の先端102を押す。鍵は、鍵の一部において均衡が取られる。例えば、鍵101は、点104において回転する。
【0045】
鍵の端部は、レバーに接続されている。例えば、リンクが、鍵の端部103をレバー203の一端201に接続する。レバーの支点は固定されている。
【0046】
レバーの他端205は、風箱パレットに接続されている。レバーは、リンクによって風箱パレットに接続され得る。リンクは、ワイヤ、ステッカー、ロッド、トラッカーであり得る。
【0047】
ユーザが鍵101の先端102を押すと、
−先端102は、鍵101がピボット104で回転しながら、下に移動し、
−鍵101の端部103は上に移動し、
−レバー端部201は上に移動し、
−レバー203は回転し、
−レバー端部205は下に移動しかつリンク207を引き下げ、それにより、風箱パレット12を開位置まで引き下げる。
【0048】
下に移動することによって、レバー端部205は、風箱パレット12に下方への力をかける。例えば、この下方への力により、パレット12は開き得る。
【0049】
鍵は、オルガン奏者の指がそれを動かすために多かれ少なかれエネルギーをかけることができるように、特定の重量を有し得る。風箱パレットを引き下げるのに必要な力は、鍵において感じられる抵抗をもたらし得る。この抵抗は、ユーザに、特定量のフィードバックを与える。このフィードバックは、良い「感触」を有し得る。鍵は、適度な下方への圧力を必要とし、なお非常に良い「感触」を有し得る。抵抗は、オルガン奏者がその存在に気が付くのにちょうどのものであり得る。
【0050】
風箱パレット12は、ばね14によってかけられる張力によって閉位置に維持される。風箱パレット12はまた、風箱内部の空気圧によって閉位置に維持される。閉位置において、風箱パレット12は、空気がパイプ内に流入することを阻む。かくして、パレットの両側に圧力差が存在する。パレットの下の風箱の空気圧は、パレットの上部の鍵チャネルの空気圧と異なる。パレットに作用する圧力差により、パレットは、閉位置に吸着される。風箱パレットに作用するこの力は、「pluck resistance(引張抵抗)」と呼ばれる。
【0051】
図1Aを参照すると、風箱10は、風供給部と流体連通する。風箱は、パイプに送られる圧力下の空気を含む箱である。
【0052】
風箱パレット12は、風箱10の内部に配置されかつ鍵101に接続されている。パレット12は、閉位置において、風箱と鍵チャネルを分離したままとする。風箱10は、圧搾空気を含み、鍵チャネル16は、パイプに接続されている。風箱パレットは、パレットが開位置にあるとき空気がパイプに流れることを可能にする溝を被覆する。
【0053】
1つの特定の鍵に対するパイプは全て、鍵チャネルに対する開口に位置し、それによって、パレットが開いたとき、圧搾空気が鍵チャネルにおける溝を介してパイプに入ることが可能になる。パレットは、鍵が押されていないときは、ばねによって閉じたままとされ得る。
【0054】
例えば、ばねは、風箱パレットに接続され、パレットを閉位置に保つ。ばねは、V形状のばねであり得る。
【0055】
図1Bを参照すると、補助室80は風箱10の下に位置する。補助室は、風箱から独立している。
【0056】
補助室80は、ウィンドレギュレータ160と流体連通する。
図1Cに示すように、導管311は、補助室80とウィンドレギュレータ160の間を接続する。導管311の一端313は、ウィンドレギュレータ160に接続されている。導管311の他端315は、補助室80の開口に接続されている。導管311は、空気などの流体を、ウィンドレギュレータから補助室80に通過させるように構成されている。
【0057】
図1Bに戻ると、レバー211が、補助室に配置されている。レバー211は、2つの端部、端部213および端部215を有する。レバー端部213は、リンク207に接続されている。
【0058】
補助パレット20は、補助室80に配置されている。補助パレット20は、レバー211を通じて鍵102に接続され、レバー211は、リンク207に接続されている。レバー端部215は、補助パレット20にリンク217経由で接続されている。補助パレット20は、その停止位置において、補助パレット室80を排気室120から分離されたままとする。
【0059】
一例では、リンク207は、補助パレット室80を通り抜ける。絶縁ガスケットが、リンクの補助室内への入口地点において、補助室内部の圧力の漏れを防ぐために用いられ得る。例えば、絶縁ガスケット209は、補助パレット室80と風箱10の間の空気圧の漏れを防ぐ。
【0060】
図1Bを参照すると、リンク207は、レバー211の一端213がリンク207に接続されるように、補助パレット室80の内部でレバー211に接続されている。
【0061】
補助パレット20は、鍵が押されたときに鍵101に張力をもたらすために風箱パレット12に接続されている。ユーザが鍵101を押すと、レバー端部205が下に移動し、リンク207を引き下げて、風箱に配置されている風箱パレット12を開くにつれ、以下のことが、補助パレット室80の内部で起きる。
−レバー211の端部213が引き下げられる
−レバー211が回転し、レバー211の端部215が上に移動する
−上に移動することによって、レバー端部215は、リンク217に上方への力をかけて、補助パレット20を引き上げる
【0062】
例えば、リンク217に対するこの上方への力により、補助パレット20が開かれ得る。補助パレット室の圧力を変化させると、それに応じて、追加「pluck(引張)」は変化するだろう。補助パレット室80の圧力は、ウィンドレギュレータ160によって変えられ得る。補助パレット室80の圧力はまた、排気室120および排気制御ゲート90の構造によっても変えられ得る。
【0063】
風箱パレットおよび/または補助パレットをアクティブにするのに必要とされる力は、鍵において感じられる抵抗をもたらし得る。この抵抗は、オルガン奏者に、特定の張力、感覚、またはそれに対する「感触」を有する、鍵における特定量のフィードバックを与える。張力、感覚、または「感触」はまた、風箱パレットおよび/または補助パレットが開位置にあるとき、鍵において感じられる。
【0064】
オルガン奏者は、補助パレットに付勢要素によってかけられる抵抗を調整することによって、鍵における張力、感覚、または「感触」を設定可能であり得る。
【0065】
オルガン奏者は、補助室の空気圧を調整することによってまたはウィンドレギュレータによって補助室において生成される風を制御することによって、鍵における張力、感覚、または「感触」を設定可能であり得る。
【0066】
オルガン奏者は、補助室の空気圧を調整することによってまたは排気室および排気制御ゲートを調整することによって、鍵における張力、感覚、または「感触」を設定可能であり得る。
【0067】
第1の調整要素70は、ウィンドレギュレータから生成される風を制御するのに用いられる。例えば、ウィンドレギュレータ160は、補助パレット室80内部の圧力を変えるのに用いられる。一例では、第1の調整要素は、クランクであり得る。例えば、ウィンドレギュレータの設定は、クランクの使用によって調整され得る。クランクは、可撓軸110を介してレギュレータばね100に作用する。送風機から入ってくる圧力に対抗するばね100の張力を変えることによって、風箱に供給する「標準」ウィンドレギュレータ(図示せず)および調整可能なウィンドレギュレータ120の両方に供給する送風機が存在する。そして、圧力は、補助パレット室において、0〜250mm水柱で変えられ得る。より高い張力は、利用可能な場合、より高い送風機の圧力を用いて達成され得る。
【0068】
一例では、補助室に隣接する排気室が存在する。排気室は、補助パレットが閉位置にあるとき補助パレットによって補助室から分離されたままである。排気室は、排気制御ゲート90を有し得る。排気制御ゲートは、開口を画定する。開口のサイズは、可変であり得る。
【0069】
図1Bを参照すると、排気室120は、補助パレット室80の下に位置する。排気室120は、閉位置における補助パレット20によって補助パレット室80から分離されたままである。排気室120は、開口を画定する排気制御ゲート90を有する。開口は、排気室の外周上のどこかに位置し得る。排気制御ゲート90のサイズは、変えられ得る。排気制御ゲート開口90のサイズを変えることにより、補助パレット20が開位置にあるときに排気室120に残り得る空気量が変わる。
【0070】
補助パレットが開位置まで引き上げられるとすぐに、排気室の圧力は上昇するだろう。そこから逃げる空気量は、パレットが開かれると圧力差が低減されることにより補助パレットの吸着効果に影響を及ぼすように制御される。
【0071】
補助パレット箱の圧力を変化させると、それに応じて「pluck(引張)」は変化するだろう。
【0072】
補助パレット室80の圧力は、ウィンドレギュレータ160によって変えられ得る。
【0073】
補助パレットが開かれたとき補助パレット室80から流出する圧力は、排気室120および排気制御ゲート90の構造によって変えられ得る。
【0074】
補助パレットが開かれたときの補助パレット室と排気室の間の圧力の低下または変化は、排気制御ゲートのサイズに応じて変わるだろう。
【0075】
排気制御ゲート90の幅を変えることによって、元の「pluck(引張)」が克服されたとき鍵101で感じられる「触った後の」効果が変更される。排気制御ゲートは、補助パレットが開かれてすぐに補助パレット室から流出する空気の制限を設け得る。この制限は、補助パレットの移動の最初の何ミリメートルかのピークフォール抵抗を低減またはさらに強める。排気制御ゲートは、出荷時に調整済みであり得る。
【0076】
付勢要素は、補助パレットを閉位置に押し付けるのに用いられ得る。第2の調整要素は、補助パレットに付勢要素によってかけられる張力を制御し得る。
【0077】
一例では、付勢要素は、ばねである。
図1Bを参照すると、ばね30は、補助パレット20に接続されている。例えば、ばね30の端部219は、補助パレット20に接続されている。ばね30の他端218は、レバー40に取り付けられる。
【0078】
レバー40は、排気室120の下に位置する。レバー40は、ピボット227に取り付けられる。ピボット227は、レバー40が、その回転軸によって画定された方向に移動することを可能にする。
【0079】
一例では、レバー40上にカラー140が存在する。カラー140は、ばね30の端部218を締め付けるまたは保持するように構成されている。
【0080】
ばね30の端部218がカラー140によって保持されると、レバー40が移動するときバー40はばね30を引っ張るだろう。バー40が移動するにつれて、ばね30の長さは変わるだろう。それは、ばね30の抵抗が変わるだろうことを意味する。
【0081】
一例では、ばねの他端は、レバー40上のバー150に取り付けられる。レバーが上下に移動すると、ばね30は、縮小または拡大し、補助パレットにばねによってかけられる力を変える。
【0082】
ばねは、レバー40およびその機構50を有するスクエアによって、パレットから離れるように移動される。スクエア機構は、垂直に接続されているバー251および253を含む。レバー40は、一端において風箱の底部に取り付けられているピボットを有する。レバー40の端部221は、スクエア機構50に接続されている。
【0083】
図1Bを参照すると、クランク60などの調整要素は、スクエア機構50に接続されている。スクエア50は、奏者がアクセスすることができるクランク60に接続されているねじ棒によって引かれるまたは押される。奏者がクランク60を時計回りに回すにつれて、バー251は、右に向かって移動し、同時に、バー253は下に移動し、かくして、ばね30に下方への力をかける。このことにより、補助パレットに取り付けられているばね30の張力が増大する。
【0084】
一例では、デバイスは、鍵の張力に対し制御を行うためにオルガンに設置され得る。係るデバイスは、上述のような補助室を含み得る。
【0085】
例えば、デバイスは、オルガンの風箱から独立するようになされた補助室を含み、補助室は、ウィンドレギュレータと流体連通するように構成されている。デバイスの内部室は、室の内部の空気圧を制御するために、外部から絶縁され得る。補助室は、オルガン内部のどこかに設置され得る。補助室は、オルガンの風箱の下に位置し得る。
【0086】
デバイスは、室の内部に配置されかつ鍵に接続されている補助パレットを含む。補助パレットは、鍵に直接接続され得る。補助パレットは、鍵とオルガンの風箱のパレットの間のリンクに接続され得る。例えば、補助パレットは、鍵が押されたときに鍵に張力をもたらすためにオルガンの風箱に位置するパレットに接続され得る。
【0087】
デバイスは、ウィンドレギュレータから生成される風を制御する第1の調整要素を含む。補助室の空気圧は、ウィンドレギュレータによって制御される。空気圧は、0〜250mm水柱であり得る。
【0088】
デバイスは、補助パレットを閉位置に押し付ける付勢要素を含む。デバイスは、補助パレットに付勢要素によってかけられる張力を制御する第2の調整要素を含む。
【0089】
デバイスは、補助室に隣接する排気室を含み、排気室は、補助パレットが閉位置にあるとき補助パレットによって補助室から分離されたままである。排気室は、排気制御ゲートを含む。排気制御ゲートは、開口を画定する。開口のサイズは、可変である。オルガンの鍵の鍵張力を制御する方法もまた開示される。方法は、風箱から独立している補助室の補助パレットにかけられる空気圧を制御することを含み、補助パレットは、当該鍵に接続されている。
【0090】
方法は、さらに、補助パレットを閉位置に押し付ける付勢要素にかけられる張力を制御することを含み、付勢要素は、鍵に接続されている。
【0091】
方法は、排気制御ゲートを制御して排気室に残る空気の量を変えることを含み、排気室は、開口を画定する排気制御ゲートを備える。排気制御ゲートは、開かれ得るまたは閉められ得る。ユーザは、排気制御ゲートの開閉を制御し得る。製造者はまた、排気室および排気ゲートのサイズを設定し得る。方法は、開口のサイズを制御することを含む。開口のサイズは、製造者によって設定され得る。開口のサイズは、ユーザによって制御され得る。
【0092】
オルガンの鍵の鍵張力を制御する方法もまた開示される。方法は、補助パレットを鍵に接続することを含み、補助パレットは、補助室の内部に配置され、補助室は、オルガンの風箱から独立するようになされている。例えば、補助パレットは、鍵と風箱の内部に位置するパレットの間のリンクに接続され得る。方法はまた、補助室の内部で生成される風を制御することも含む。さらに、方法は、補助パレットに付勢要素によってかけられる張力を制御することを含む。
【0093】
当業者は、所与の例に提示された様々な性質または特徴は、適用可能な場合、本開示の一般的範囲によって網羅される任意の他の例に追加かつ/または用いられ得ることを理解する。
【0094】
本開示の段落[0010]〜[0092]の例は、本開示において、適用可能な場合、例のあらゆる組み合わせがなされ得ることを示すように提示される。かくして、これらの例は、先行請求項のいずれかに従属する、例全てに対する従属請求項を作成する(先に提示した例を網羅する)ことと同等に、説明において提示してきたので、それらはあらゆる可能な方法で一緒に組み合わされ得ることを示す。例えば、適用可能な場合、段落[0010]〜[0092]の例ならびに段落[0006]〜[0009]の装置および方法のあらゆる可能な組み合わせは、本開示によって明細書に網羅される。
【0095】
本開示は、具体例に関して記載されてきた。記載は、開示の範囲を限定するのではなく、開示の理解を助けることを意図した。様々な変更が、本明細書中に記載された開示の範囲から逸脱することなく、開示に対してなされ得ることが当業者に明らかであろう。そして、そうした変更は、本文書によって網羅されることが意図される。
【国際調査報告】