特表2020-526523(P2020-526523A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニーの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-526523(P2020-526523A)
(43)【公表日】2020年8月31日
(54)【発明の名称】方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 15/02 20060101AFI20200803BHJP
   B01J 31/22 20060101ALI20200803BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20200803BHJP
【FI】
   C07F15/02CSP
   B01J31/22 Z
   C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】73
(21)【出願番号】特願2020-500215(P2020-500215)
(86)(22)【出願日】2018年7月4日
(85)【翻訳文提出日】2020年2月4日
(86)【国際出願番号】GB2018051886
(87)【国際公開番号】WO2019008358
(87)【国際公開日】20190110
(31)【優先権主張番号】1710954.7
(32)【優先日】2017年7月7日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】1807243.9
(32)【優先日】2018年5月2日
(33)【優先権主張国】GB
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ネッデン, ハンス ギュンター
(72)【発明者】
【氏名】ユルチーク, ヴァーツラフ
(72)【発明者】
【氏名】タラベラ, ガラジ
【テーマコード(参考)】
4G169
4H039
4H050
【Fターム(参考)】
4G169AA06
4G169BA27A
4G169BA27B
4G169BC70A
4G169BC70B
4G169BD01A
4G169BD01B
4G169BD02A
4G169BD02B
4G169BD04A
4G169BD04B
4G169BD06A
4G169BD06B
4G169BD08A
4G169BD08B
4G169BD11A
4G169BD12B
4G169BD15A
4G169BE15A
4G169BE15B
4G169BE18A
4G169BE19A
4G169BE21A
4G169BE21B
4G169BE34A
4G169BE37A
4G169BE37B
4G169BE45A
4G169BE46B
4G169CB02
4G169CB57
4G169CB62
4G169CB70
4G169DA02
4H039CA60
4H039CB20
4H050AA01
4H050AA02
4H050AA03
4H050AB84
4H050AC40
4H050AC50
4H050AC81
4H050BA17
4H050BB11
4H050BB14
(57)【要約】
本発明は式(I)のメタロセニル化合物を提供する。R、R、R、R、R、R、M、m、n、j、k、Y及びZ及び*は明細書に記載された通りである。本発明はまた錯体の調製方法、式(II)の化合物の光学純度を高めるための方法及び式(V)のメタロセニル化合物の式(IV)のメタロセニル化合物への不斉移動水素化(ATH)方法を提供する。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
[上式中、
、R、R及びRは、非置換C−C20−アルキル、置換C−C20−アルキル、非置換C−C15−シクロアルキル、置換C−C15−シクロアルキル、非置換C−C20−アリール、置換C−C20−アリール、非置換C−C20−ヘテロアリール、置換C−C20−ヘテロアリールからなる群から独立して選択され、ここで、C−C20−ヘテロアリール中のヘテロ原子は、硫黄、酸素及び窒素からなる群から選択され;
及びRは、非置換C−C20−アルキル、置換C−C20−アルキル、非置換C−C15−シクロアルキル、置換C−C15−シクロアルキル、非置換C−C20−アリール、置換C−C20−アリールからなる群から独立して選択され;
Mは、Fe、Ru、Os及びNiからなる群から選択され;
mは0〜4の整数であり;
jは0又は1であり;かつ
j=0の場合、nは0〜5の整数で、kは1又は2であり;
j=1の場合、nは0〜4の整数で、kは1であり;
Yは(j+1)Zk−又はZ(j+1)k−であり;
Zは非光学活性アニオンであり;かつ
*は光学活性炭素原子を示す]
のメタロセニル化合物。
【請求項2】
がメチルである、請求項1に記載のメタロセニル化合物。
【請求項3】
jが0である、請求項1又は2に記載のメタロセニル化合物。
【請求項4】
mが0である、請求項1から3の何れか一項に記載のメタロセニル化合物。
【請求項5】
nが0である、請求項1から4の何れか一項に記載のメタロセニル化合物。
【請求項6】
がメチルであり、m、n及びjが0である、請求項1から5の何れか一項に記載のメタロセニル化合物。
【請求項7】
jが1である、請求項1又は2に記載のメタロセニル化合物。
【請求項8】
がメチルである、請求項1、2又は7に記載のメタロセニル化合物。
【請求項9】
及びRがメチルである、請求項1から8の何れか一項に記載のメタロセニル化合物。
【請求項10】
MがFe、Ru及びOs、好ましくはFeである、請求項1から9の何れか一項に記載のメタロセニル化合物。
【請求項11】
Zが、単原子アニオン、オキシアニオン及び有機アニオンからなる群から選択される、請求項1から10の何れか一項に記載のメタロセニル化合物。
【請求項12】
オキシアニオンが(HPO又は(HPO2−である、請求項11に記載のメタロセニル化合物。
【請求項13】
Zがモノアニオン又はジアニオンである、請求項11に記載のメタロセニル化合物。
【請求項14】
式(I)のメタロセニル化合物の調製方法であって、
式(II)の化合物を溶媒中で酸Hk(j+1)Zと混合して式(I)の化合物を形成することを含み、
上式中、
、R、R及びRは、非置換C−C20−アルキル、置換C−C20−アルキル、非置換C−C15−シクロアルキル、置換C−C15−シクロアルキル、非置換C−C20−アリール、置換C−C20−アリール、非置換C−C20−ヘテロアリール、置換C−C20−ヘテロアリールからなる群から独立して選択され、ここで、C−C20−ヘテロアリール中のヘテロ原子は、硫黄、酸素及び窒素からなる群から選択され;
及びRは、非置換C−C20−アルキル、置換C−C20−アルキル、非置換C−C15−シクロアルキル、置換C−C15−シクロアルキル、非置換C−C20−アリール、置換C−C20−アリールからなる群から独立して選択され;
Mは、Fe、Ru、Os及びNiからなる群から選択され;
mは0〜4の整数であり;
jは0又は1であり;かつ
j=0の場合、nは0〜5の整数で、kは1又は2であり;
j=1の場合、nは0〜4の整数で、kは1であり;
Yは(j+1)Zk−又はZ(j+1)k−であり;
Zは非光学活性アニオンであり;かつ
*は光学活性炭素原子を示す、方法。
【請求項15】
k(j+1)ZがHPO、フマル酸、アジピン酸、シュウ酸、安息香酸、酢酸、メタンスルホン酸及びp−トルエンスルホン酸である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
溶媒が、アルコール、エーテル、芳香族溶媒、エステル又はそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項14及び15に記載の方法。
【請求項17】
溶媒がアルコールである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
アルコールがメタノールである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
塩基の存在下で式(I)のメタロセニル化合物から式(II)のメタロセニル化合物を得ることを更に含む、請求項14から18に記載の方法。
【請求項20】
式(II)の化合物の光学純度を高める方法であって、
a)式(I)のメタロセニル化合物を溶媒と混合して、液体中の固体粒子の懸濁液を得る工程であって、混合が溶媒のほぼ沸点で実施される工程;
b)式(I)のメタロセニル化合物を工程a)の懸濁液から固体として分離する工程;
c)塩基の存在下、工程b)の式(I)のメタロセニル化合物から式(II)の化合物を得る工程
を含み、
上式中、
、R、R及びRは、非置換C−C20−アルキル、置換C−C20−アルキル、非置換C−C15−シクロアルキル、置換C−C15−シクロアルキル、非置換C−C20−アリール、置換C−C20−アリール、非置換C−C20−ヘテロアリール、置換C−C20−ヘテロアリールからなる群から独立して選択され、ここで、C−C20−ヘテロアリール中のヘテロ原子は、硫黄、酸素及び窒素からなる群から選択され;
及びRは、非置換C−C20−アルキル、置換C−C20−アルキル、非置換C−C15−シクロアルキル、置換C−C15−シクロアルキル、非置換C−C20−アリール、置換C−C20−アリールからなる群から独立して選択され;
Mは、Fe、Ru、Os及びNiからなる群から選択され;
mは0〜4の整数であり;
jは0又は1であり;かつ
j=0の場合、nは0〜5の整数で、kは1又は2であり;
j=1の場合、nは0〜4の整数で、kは1であり;
Yは(j+1)Zk−又はZ(j+1)k−であり;
Zは非光学活性アニオンであり;かつ
*は光学活性炭素原子を示す、方法。
【請求項21】
式(II)の化合物の光学純度を高めるための方法であって、
a)式(I)のメタロセニル化合物を溶媒と混合して、液体中の固体粒子の懸濁液を得る工程であって、混合が溶媒のほぼ沸点で実施される工程;
b)式(I)のメタロセニル化合物を工程a)の懸濁液から固体として分離する工程;
c)塩基の存在下、工程b)の式(I)のメタロセニル化合物から式(II)の化合物を得る工程
を含む方法
を更に含む、請求項14から19に記載の方法。
【請求項22】
式(I)の化合物が化合物A*(HPO)であり、式(II)の化合物が化合物Bである、
請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
溶媒がアルコールを含む、請求項20から22に記載の方法。
【請求項24】
アルコールが、メタノール、n−プロパノール、イソプロパノール又はそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
塩基が水酸化ナトリウムである、請求項20から24に記載の方法。
【請求項26】
化合物Bの鏡像体過剰率が≧99%eeである、請求項22から25に記載の方法。
【請求項27】
式(II)の化合物が、式(III)の化合物を式HNRの化合物と溶媒中で混合して式(II)の化合物を形成することにより調製され、
上式中、
、R、R及びRは、非置換C−C20−アルキル、置換C−C20−アルキル、非置換C−C15−シクロアルキル、置換C−C15−シクロアルキル、非置換C−C20−アリール、置換C−C20−アリール、非置換C−C20−ヘテロアリール、置換C−C20−ヘテロアリールからなる群から独立して選択され、ここで、C−C20−ヘテロアリール中のヘテロ原子は、硫黄、酸素及び窒素からなる群から選択され;
及びRは、非置換C−C20−アルキル、置換C−C20−アルキル、非置換C−C15−シクロアルキル、置換C−C15−シクロアルキル、非置換C−C20−アリール、置換C−C20−アリールからなる群から独立して選択され;
Mは、Fe、Ru、Os及びNiからなる群から選択され;
mは0〜4の整数であり;
jは0又は1であり;かつ
j=0の場合、nは0〜5の整数であり;
j=1の場合、nは0〜4の整数であり;かつ
*は光学活性炭素原子を示す、請求項14から19及び21から26に記載の方法。
【請求項28】
溶媒が、アルコールとC−Cアルカンの混合物を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
アルコールがイソプロパノールとヘプタンの混合物又はイソプロパノールとシクロヘキサンの混合物である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
式(III)の化合物が、式(IV)の化合物を塩基の存在下で式アシル−LGの化合物と混合して式(III)の化合物を形成することにより調製され、
ここで、LGが脱離基である、請求項27から29に記載の方法。
【請求項31】
式アシル−LGの化合物が無水カルボン酸又は塩化アシルである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
式アシル−LGの化合物が無水酢酸である、請求項30及び31に記載の方法。
【請求項33】
塩基が酢酸ナトリウムである、請求項30から32に記載の方法。
【請求項34】
酢酸ナトリウムがNaOAc・3HOである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
溶媒を更に含む、請求項30から34に記載の方法。
【請求項36】
溶媒が非プロトン性溶媒である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
非プロトン性溶媒がヘプタンである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
塩基がジメチルアミノピリジン(DMAP)である、請求項30から32、36及び37に記載の方法。
【請求項39】
式(IV)の化合物が、式(V)のメタロセニル化合物の不斉移動水素化(ATH)によって調製され、
ここで、
不斉移動水素化が、不斉移動水素化触媒と活性化ギ酸の存在下、60℃を超える温度で水性溶媒中で実施され;
上式中、
、R、R及びRは、非置換C−C20−アルキル、置換C−C20−アルキル、非置換C−C15−シクロアルキル、置換C−C15−シクロアルキル、非置換C−C20−アリール、置換C−C20−アリール、非置換C−C20−ヘテロアリール、置換C−C20−ヘテロアリールからなる群から独立して選択され、ここで、C−C20−ヘテロアリール中のヘテロ原子は、硫黄、酸素及び窒素からなる群から選択され;
及びRは、非置換C−C20−アルキル、置換C−C20−アルキル、非置換C−C15−シクロアルキル、置換C−C15−シクロアルキル、非置換C−C20−アリール、置換C−C20−アリールからなる群から独立して選択され;
Mは、Fe、Ru、Os及びNiからなる群から選択され;
mは0〜4の整数であり;
jは0又は1であり;かつ
j=0の場合、nは0〜5の整数であり;
j=1の場合、nは0〜4の整数であり;かつ
*は光学活性炭素原子を示す、請求項30から38の何れか一項に記載の方法。
【請求項40】
式(I)の化合物は化合物A*(HPO)であり、式(II)の化合物は化合物Bであり、式(III)の化合物は化合物Cであり、式(IV)の化合物は化合物Dである、
請求項14から19及び21から39の何れか一項に記載の方法。
【請求項41】
a)DMAP・HPO及びDMAP・HOAcを含む化合物A*(HPO)にメタノールを加えて、固液混合物を生成する工程;
b)化合物A*(HPO)及びDMAP・HOAcを含む液体を、工程a)の固液混合物から分離する工程;
c)DMAP・HOAcを含む化合物A*(HPO)を工程b)の液体から単離する工程;
d)工程c)のDMAP・HOAcを含む単離された化合物A*(HPO)にジクロロメタン又はアセトニトリルを加えて、第二の固液混合物を生成する工程;
e)工程d)の第二の固液混合物から固体を単離して、工程a)からe)の前よりも高い純度の化合物A*(HPO)を生成する工程
を更に含む、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
式(III)の化合物が、式HNRの化合物との反応の前にその場で得られる、請求項27から41に記載の方法。
【請求項43】
式(IV)のメタロセニル化合物への式(V)のメタロセニル化合物の不斉移動水素化(ATH)方法であって、
ここで、
不斉移動水素化が、不斉移動水素化触媒と活性化ギ酸の存在下、60℃を超える温度で水性溶媒中で実施され;
上式中、
、R、R及びRは、非置換C−C20−アルキル、置換C−C20−アルキル、非置換C−C15−シクロアルキル、置換C−C15−シクロアルキル、非置換C−C20−アリール、置換C−C20−アリール、非置換C−C20−ヘテロアリール、置換C−C20−ヘテロアリールからなる群から独立して選択され、ここで、C−C20−ヘテロアリール中のヘテロ原子は、硫黄、酸素及び窒素からなる群から選択され;
及びRは、非置換C−C20−アルキル、置換C−C20−アルキル、非置換C−C15−シクロアルキル、置換C−C15−シクロアルキル、非置換C−C20−アリール、置換C−C20−アリールからなる群から独立して選択され;
Mは、Fe、Ru、Os及びNiからなる群から選択され;
mは0〜4の整数であり;
jは0又は1であり;かつ
j=0の場合、nは0〜5の整数であり;
j=1の場合、nは0〜4の整数であり;かつ
*は光学活性炭素原子を示す、方法。
【請求項44】
がメチルである、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
jが0である、請求項43又は44に記載の方法。
【請求項46】
mが0である、請求項43から45の何れか一項に記載の方法。
【請求項47】
nが0である、請求項43から46の何れか一項に記載の方法。
【請求項48】
がメチルであり、かつm、n及びjが0である、請求項43から47の何れか一項に記載の方法。
【請求項49】
jが1である、請求項43又は請求項44に記載の方法。
【請求項50】
がメチルである、請求項43、44又は49に記載の方法。
【請求項51】
及びRがメチルである、請求項43から50の何れか一項に記載の方法。
【請求項52】
不斉移動水素化触媒が、式(VI):
[上式中、
、R、R、R及びRは、水素、置換されていてもよい直鎖C1−20アルキル、分岐又は環状C3−20アルキル、置換されていてもよい直鎖C1−20アルコキシ、分岐又は環状C3−20アルコキシ、置換されていてもよいC6−20アリール、置換されていてもよいC6−20アリールオキシ、−OH、CN、−NR2021、−COOH、COOR20、−CONH、−CONR2021及び−CFからなる群からそれぞれ独立して選択され、ここで、置換基は、一又は複数の直鎖C1−20アルキル、分岐又は環状C3−20アルキル、直鎖C1−20アルコキシ、分岐又は環状C3−20アルコキシ、C6−20アリール、C6−20アリールオキシ、−OH、−CN、−NR3031、−COOR30、−CONR3031及び−CFからなる群から選択され;及び/又は
とR、RとR、RとR、又はRとRは一緒になって、一又は複数の直鎖C1−20アルキル、分岐又は環状C3−20アルキル、直鎖C1−20アルコキシ、分岐又は環状C3−20アルコキシ、C6−20アリール、C6−20アリールオキシ、−OH、−CN、−NR2021、−COOR20、−CONR2021及び−CFで置換されていてもよい、6〜10個の炭素原子からなる芳香環を形成し;
、R、R及びRは、水素、置換されていてもよい直鎖C1−20アルキル、分岐又は環状C3−20アルキル、置換されていてもよい直鎖C1−20アルコキシ、分岐又は環状C3−20アルコキシ、置換されていてもよいC6−20アリール及び置換されていてもよいC6−20アリールオキシからなる群からそれぞれ独立して選択され、ここで、置換基は、一又は複数の直鎖C1−20アルキル、分岐又は環状C3−20アルキル、直鎖C1−20アルコキシ、分岐又は環状C3−20アルコキシ、C6−20アリール、C6−20アリールオキシ、−OH、−CN、−NR2021、−COOR20、−CONR2021及び−CFからなる群から選択され、又は
とRはそれらが結合している炭素原子と一緒になって、及び/又はRとRはそれらが結合している炭素原子と一緒になって、置換されていてもよいC3−20シクロアルキル又は置換されていてもよいC2−20シクロアルコキシを形成し、ここで、置換基は、一又は複数の直鎖C1−20アルキル、分岐又は環状C3−20アルキル、直鎖C1−20アルコキシ、分岐又は環状C3−20アルコキシ、C6−20アリール、C6−20アリールオキシ、−OH、−CN、−NR2021、−COOR20、−CONR2021及び−CFからなる群から選択され、又は
及びRの一つとR及びRの一つは、一緒になって、置換されていてもよいC5−10シクロアルキル又は置換されていてもよいC5−10シクロアルコキシを形成し、ここで、置換基は、一又は複数の直鎖C1−20アルキル、分岐又は環状C3−20アルキル、直鎖C1−20アルコキシ、分岐又は環状C3−20アルコキシ、C6−20アリール、C6−20アリールオキシ、−OH、−CN、−NR2021、−COOR20、−CONR2021及び−CFからなる群から独立して選択され、
但し、RとR及び/又はRとRは同じではなく、
10は、置換されていてもよい直鎖、分岐又は環状C1−10アルキル、置換されていてもよいC6−10アリール又は−NR1112であり、ここで、置換基は、一又は複数の直鎖、分岐又は環状C1−10アルキル、直鎖、分岐又は環状C1−10アルコキシ、C6−10アリール、C6−10アリールオキシ、−Hal、−OH、−CN、−NR2021、−COOR20、−CONR2021及び−CFからなる群から選択され;
11及びR12は、水素、置換されていてもよい直鎖、分岐又は環状C1−10アルキル及び置換されていてもよいC6−10アリールからなる群から独立して選択され、ここで、置換基は、一又は複数の直鎖、分岐又は環状C1−10アルキル基、直鎖、分岐又は環状C1−10アルコキシ、C6−10アリール、C6−10アリールオキシ、−OH、−CN、−NR2021、−COOR20、−CONR2021及び−CFからなる群から選択され、又は
11とR12は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、置換されていてもよいC2−10シクロアルキル−アミノ基を形成し、ここで、置換基は、一又は複数の直鎖、分岐又は環状C1−10アルキル、直鎖、分岐又は環状C1−10アルコキシ、C6−10アリール、C6−10アリールオキシ、−OH、−CN、−NR2021、−COOR20、−CONR2021及び−CFからなる群から選択され;
20及びR21は、水素、置換されていてもよい直鎖C1−20アルキル、分岐又は環状C3−20アルキル、置換されていてもよい直鎖C1−20アルコキシ、分岐又は環状C3−20アルコキシ、置換されていてもよいC6−20アリール、置換されていてもよいC6−20アリールオキシ、−OH、−CN、−NR3031、−COOR30、−CONR3031及び−CFからなる群から独立して選択され、ここで、置換基は、一又は複数の直鎖C1−20アルキル、分岐又は環状C3−20アルキル、直鎖C1−20アルコキシ、分岐又は環状C3−20アルコキシ、C6−20アリール、C6−20アリールオキシ、−OH、−CN及び−CFからなる群から選択され;
30及びR31は、水素、置換されていてもよい直鎖C1−20アルキル、分岐又は環状C3−20アルキル、置換されていてもよい直鎖C1−20アルコキシ、分岐又は環状C3−20アルコキシ、置換されていてもよいC6−20アリール、置換されていてもよいC6−20アリールオキシ、−OH、−CN及び−CFからなる群から独立して選択され、ここで、置換基は、一又は複数の直鎖C1−20アルキル、分岐又は環状C3−20アルキル、直鎖C1−20アルコキシ、分岐又は環状C3−20アルコキシ、C6−20アリール、C6−20アリールオキシ、−OH、−CN及び−CFからなる群から選択され;
Aは、置換されていてもよい直鎖又は分岐鎖C2−5アルキルであり、ここで、置換基は、一又は複数の直鎖、分岐又は環状C1−10アルキル、直鎖、分岐又は環状C1−10アルコキシ、C6−10アリール及びC6−10アリールオキシからなる群から選択され、又は
Aは式(VII):
(上式中、pは1、2、3又は4から選択される整数であり;
各R40は、直鎖C1−20アルキル、分岐又は環状C3−20アルキル、直鎖C1−20アルコキシ、分岐又は環状C3−20アルコキシ、C6−20アリール、C6−20アリールオキシ、−OH、−CN又は−CFからなる群から独立して選択され;
q及びrは、独立して0、1、2又は3から選択される整数であり、ここで、q+r=1、2又は3であり;
各R41は、水素、直鎖C1−20アルキル、分岐又は環状C3−20アルキル、直鎖C1−20アルコキシ、分岐又は環状C3−20アルコキシ、C6−20アリール、C6−20アリールオキシ、−OH、−CN及び−CFからなる群から独立して選択される)の基であり;又は
Aは式(VIII):
(上式中、XはO又はSであり;
s及びtは独立して0、1、2又は3から選択される整数であり、ここで、s+t=1、2又は3であり、
各R42は、水素、直鎖C1−20アルキル、分岐又は環状C3−20アルキル、直鎖C1−20アルコキシ、分岐又は環状C3−20アルコキシ、C6−20アリール、C6−20アリールオキシ、−OH、−CN及び−CFからなる群から独立して選択される)の基であり;
かつ
Halはハロゲンである]の錯体である、請求項43から51の何れか一項に記載の方法。
【請求項53】
不斉移動水素化触媒が、式(IX):
[上式中、
101、R102、R103、R104、R105及びR106は、水素、置換されていてもよい直鎖C1−20アルキル、分岐又は環状C3−20アルキル、置換されていてもよい直鎖C1−20アルコキシ、分岐又は環状C3−20アルコキシ、置換されていてもよいC6−20アリール、置換されていてもよいC6−20アリールオキシ、−OH、CN、−NR200201、−COOH、COOR200、−CONH、−CONR200201及び−CFからなる群からそれぞれ独立して選択され、ここで、置換基は、一又は複数の直鎖C1−20アルキル、分岐又は環状C3−20アルキル、直鎖C1−20アルコキシ、分岐又は環状C3−20アルコキシ、C6−20アリール、C6−20アリールオキシ、−OH、−CN、−NR300301、−COOR300、−CONR300301及び−CFからなる群から選択され;及び/又は
101とR102、R102とR103、R103とR104、R104とR105、又はR105とR106は一緒になって、一又は複数の直鎖C1−20アルキル、分岐又は環状C3−20アルキル、直鎖C1−20アルコキシ、分岐又は環状C3−20アルコキシ、C6−20アリール、C6−20アリールオキシ、−OH、−CN、−NR200201、−COOR200、−CONR200201及び−CFで置換されていてもよい6〜10個の炭素原子からなる芳香環を形成し;
107、R108、R109及びR110は、水素、置換されていてもよい直鎖C1−20アルキル、分岐又は環状C3−20アルキル、置換されていてもよい直鎖C1−20アルコキシ、分岐又は環状C3−20アルコキシ、置換されていてもよいC6−20アリール及び置換されていてもよいC6−20アリールオキシからなる群からそれぞれ独立して選択され、ここで、置換基は、一又は複数の直鎖C1−20アルキル、分岐又は環状C3−20アルキル、直鎖C1−20アルコキシ、分岐又は環状C3−20アルコキシ、C6−20アリール、C6−20アリールオキシ、−OH、−CN、−NR200201、−COOR200、−CONR200201及び−CFからなる群から選択され、又は
107とR108はそれらが結合している炭素原子と一緒になって、及び/又はR109とR110はそれらが結合している炭素原子と一緒になって、置換されていてもよいC3−20シクロアルキル又は置換されていてもよいC2−20シクロアルコキシを形成し、ここで、置換基は、一又は複数の直鎖C1−20アルキル、分岐又は環状C3−20アルキル、直鎖C1−20アルコキシ、分岐又は環状C3−20アルコキシ、C6−20アリール、C6−20アリールオキシ、−OH、−CN、−NR200201、−COOR200、−CONR200201及び−CFからなる群から選択され、又は
107及びR108の一つとR109及びR110の一つは、一緒になって、置換されていてもよいC5−10シクロアルキル又は置換されていてもよいC5−10シクロアルコキシを形成し、ここで、置換基は、一又は複数の直鎖C1−20アルキル、分岐又は環状C3−20アルキル、直鎖C1−20アルコキシ、分岐又は環状C3−20アルコキシ、C6−20アリール、C6−20アリールオキシ、−OH、−CN、−NR200201、−COOR200、−CONR200201及び−CFからなる群から独立して選択され、
但し、R107とR108及び/又はR109とR110は同じではなく、
111は置換されていてもよい直鎖、分岐又は環状C1−10アルキル、置換されていてもよいC6−10アリール又は−NR112113であり、ここで、置換基は、一又は複数の直鎖、分岐又は環状C1−10アルキル、直鎖、分岐又は環状C1−10アルコキシ、C6−10アリール、C6−10アリールオキシ、−Hal、−OH、−CN、−NR200201、−COOR200、−CONR200201及び−CFからなる群から選択され;
112及びR113は、水素、置換されていてもよい直鎖、分岐又は環状C1−10アルキル及び置換されていてもよいC6−10アリールからなる群から独立して選択され、ここで、置換基は、一又は複数の直鎖、分岐又は環状C1−10アルキル基、直鎖、分岐又は環状C1−10アルコキシ、C6−10アリール、C6−10アリールオキシ、−OH、−CN、−NR200201、−COOR200、−CONR200201及び−CFからなる群から選択され、又は
112とR113は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、置換されていてもよいC2−10シクロアルキル−アミノ基を形成し、ここで、置換基は、一又は複数の直鎖、分岐又は環状C1−10アルキル、直鎖、分岐又は環状C1−10アルコキシ、C6−10アリール、C6−10アリールオキシ、−OH、−CN、−NR200201、−COOR200、−CONR200201及び−CFからなる群から選択され;
200とR201は、水素、置換されていてもよい直鎖C1−20アルキル、分岐又は環状C3−20アルキル、置換されていてもよい直鎖C1−20アルコキシ、分岐又は環状C3−20アルコキシ、置換されていてもよいC6−20アリール、置換されていてもよいC6−20アリールオキシ、−OH、−CN、−NR3031、−COOR300、−CONR300301及び−CFからなる群から独立して選択され、ここで、置換基は、一又は複数の直鎖C1−20アルキル、分岐又は環状C3−20アルキル、直鎖C1−20アルコキシ、分岐又は環状C3−20アルコキシ、C6−20アリール、C6−20アリールオキシ、−OH、−CN及び−CFからなる群から選択され;
300及びR301は、水素、置換されていてもよい直鎖C1−20アルキル、分岐又は環状C3−20アルキル、置換されていてもよい直鎖C1−20アルコキシ、分岐又は環状C3−20アルコキシ、置換されていてもよいC6−20アリール、置換されていてもよいC6−20アリールオキシ、−OH、−CN及び−CFからなる群から独立して選択され、ここで、置換基は、一又は複数の直鎖C1−20アルキル、分岐又は環状C3−20アルキル、直鎖C1−20アルコキシ、分岐又は環状C3−20アルコキシ、C6−20アリール、C6−20アリールオキシ、−OH、−CN及び−CFからなる群から選択され、
かつ
Hal’がハロゲンである]
の錯体である、請求項43から52の何れか一項に記載の方法。
【請求項54】
水性溶媒が、水又は水と水混和性溶媒の混合物である、請求項43から53の何れか一項に記載の方法。
【請求項55】
不斉移動水素反応が、>約60℃からおよそ≦約100℃の範囲の一又は複数の温度で実施される、請求項43から54の何れか一項に記載の方法。
【請求項56】
活性化ギ酸が、ギ酸、第三級アミン塩基及び任意の水の混合物である、請求項43から55の何れか一項に記載の方法。
【請求項57】
第三級アミン塩基がトリエチルアミンである、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
ギ酸:第三級アミンのモル比が、約1:1〜約1.2:1モルの範囲である、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
活性化ギ酸がギ酸、第三級アミン及び水の混合物であり、ギ酸:第三級アミンの濃度が1M:1M〜約1.2M:1Mの範囲である、請求項57又は請求項58の何れか一項に記載の方法。
【請求項60】
式(V)のメタロセニル化合物と不斉移動水素化触媒のモル比が、約100:1〜約2000:1の範囲である、請求項43から59の何れか一項に記載の方法。
【請求項61】
モル比が≧約600:1である、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
MがFeであり、mが0、1、2又は3であり、−R*H(OH)基に対してオルトの炭素原子の少なくとも1個が非置換であり、式(IV)のメタロセニルアルコールをBophoz又はJosiphos配位子に変換することを更に含む、請求項43から61の何れか一項に記載の方法。
【請求項63】
式(II)の化合物の鏡像体過剰率が≧97%である、請求項14から19及び27から62に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタロセニル含有アミンの第四級アンモニウム塩とその調製方法に関する。特に、本発明は、アニオンが非光学活性である、メタロセニル含有アミンの光学活性第四級アンモニウム塩に関する。本発明はまたメタロセニルアルコールの改良された調製方法にも関する。特に、本発明は、不斉移動水素化(ATH)による光学活性メタロセニルアルコールの調製に関する。
【0002】
エナンチオ濃縮N,N−ジメチル−α−フェロセニルエチルアミン(Ugiアミン)は、不斉触媒反応で使用される様々なキラル配位子の合成のための用途の広い出発物質である。米国特許第5760264号(Lonza)は、アセチルフェロセンから出発し、キラルボランの存在下で還元して(R)−(1−ヒドロキシエチル)フェロセン(D)を得、続いてアセチル化により88%eeで(R)−(1−アセトキシエチル)フェロセン(C)を得る、多段階手順によるエナンチオ濃縮N,N−ジメチル−α−フェロセニルエチルアミン(B)の合成(スキーム1)を記載している。この生成物を引き続いてジメチルアミンで処理して、(R)−[1−ジメチルアミノ)エチル]フェロセン(N,N−ジメチル−α−フェロセニルエチルアミン、Ugiアミン、B)が得られる。アミノ化工程が光学純度を損なうことなく実施されると仮定して、生成物の最大eeは88%である。
【0003】
N,N−ジメチル−α−フェロセニルエチルアミン(B)は、キラルアニオンを用いた光学分割により光学的に純粋な状態で得られた。Gokel等(J. Chem. Ed., 1972, 49, 294)による一例では、ラセミ体N,N−ジメチル−α−フェロセニルエチルアミンがR−(+)−酒石酸で処理されている。しかし、記載されている塩分割により、50%の理論収率で単一の所望のエナンチオマーを得ることができる。
【0004】
光学活性メタロセニル含有アミンを得る際のそれらの用途に加えて、光学活性メタロセニルアルコールは、Bophoz、Josiphos及びXyliphos配位子などのビスリン含有メタロセニル配位子の調製における中間体として有用である。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、高収率で得られる、メタロセニル含有アミンの第四級アンモニウム塩を高純度及び/又は高鏡像体過剰率で提供する。所定の実施態様では、メタロセニル含有アミンの第四級アンモニウム塩は、高い化学的純度を有する。所定の実施態様では、メタロセニル含有アミンの第四級アンモニウム塩は高い鏡像体過剰率を有する。
【0006】
本発明はまた光学活性メタロセニルアルコールの大規模製造により適している。所定の実施態様では、ATH法では、光学活性メタロセニルアルコールが高収率で生成される。所定の実施態様では、ATH法では、光学活性メタロセニルアルコールが高鏡像体過剰率で生成される。
【0007】
従って、本発明は、式(I)
[上式中、
、R、R及びRは、非置換C−C20−アルキル、置換C−C20−アルキル、非置換C−C15−シクロアルキル、置換C−C15−シクロアルキル、非置換C−C20−アリール、置換C−C20−アリール、非置換C−C20−ヘテロアリール、置換C−C20−ヘテロアリールからなる群から独立して選択され、ここで、C−C20−ヘテロアリール中のヘテロ原子は、硫黄、酸素及び窒素からなる群から選択され;
及びRは、非置換C−C20−アルキル、置換C−C20−アルキル、非置換C−C15−シクロアルキル、置換C−C15−シクロアルキル、非置換C−C20−アリール、置換C−C20−アリールからなる群から独立して選択され;
Mは、Fe、Ru、Os及びNiからなる群から選択され;
mは0〜4の整数であり;
jは0又は1であり;かつ
j=0の場合、nは0〜5の整数で、kは1又は2であり;
j=1の場合、nは0〜4の整数で、kは1であり;
Yは(j+1)Zk−又はZ(j+1)k−であり;
Zは非光学活性アニオンであり;かつ
*は光学活性炭素原子を示す]
のメタロセニル化合物を提供する。
【0008】
他の態様では、本発明は、式(I)のメタロセニル化合物の調製方法であって、
式(II)の化合物を溶媒中で酸Hk(j+1)Zと混合して式(I)の化合物を形成することを含み、
上式中、
、R、R及びRは、非置換C−C20−アルキル、置換C−C20−アルキル、非置換C−C15−シクロアルキル、置換C−C15−シクロアルキル、非置換C−C20−アリール、置換C−C20−アリール、非置換C−C20−ヘテロアリール、置換C−C20−ヘテロアリールからなる群から独立して選択され、ここで、C−C20−ヘテロアリール中のヘテロ原子は、硫黄、酸素及び窒素からなる群から選択され;
及びRは、非置換C−C20−アルキル、置換C−C20−アルキル、非置換C−C15−シクロアルキル、置換C−C15−シクロアルキル、非置換C−C20−アリール、置換C−C20−アリールからなる群から独立して選択され;
Mは、Fe、Ru、Os及びNiからなる群から選択され;
mは0〜4の整数であり;
jは0又は1であり;かつ
j=0の場合、nは0〜5の整数で、kは1又は2であり;
j=1の場合、nは0〜4の整数で、kは1であり;
Yは(j+1)Zk−又はZ(j+1)k−であり;
Zは非光学活性アニオンであり;かつ
*は光学活性炭素原子を示す、方法を提供する。
【0009】
更に別の態様では、式(II)の化合物の光学純度を高める方法であって、
a)式(I)のメタロセニル化合物を溶媒と混合して、液体中の固体粒子の懸濁液を得る工程であって、混合が溶媒のほぼ沸点で実施される工程;
b)式(I)のメタロセニル化合物を工程a)の懸濁液から固体として分離する工程;
c)塩基の存在下、工程b)の式(I)のメタロセニル化合物から式(II)の化合物を得る工程
を含み、
上式中、
、R、R及びRは、非置換C−C20−アルキル、置換C−C20−アルキル、非置換C−C15−シクロアルキル、置換C−C15−シクロアルキル、非置換C−C20−アリール、置換C−C20−アリール、非置換C−C20−ヘテロアリール、置換C−C20−ヘテロアリールからなる群から独立して選択され、ここで、C−C20−ヘテロアリール中のヘテロ原子は、硫黄、酸素及び窒素からなる群から選択され;
及びRは、非置換C−C20−アルキル、置換C−C20−アルキル、非置換C−C15−シクロアルキル、置換C−C15−シクロアルキル、非置換C−C20−アリール、置換C−C20−アリールからなる群から独立して選択され;
Mは、Fe、Ru、Os及びNiからなる群から選択され;
mは0〜4の整数であり;
jは0又は1であり;かつ
j=0の場合、nは0〜5の整数で、kは1又は2であり;
j=1の場合、nは0〜4の整数で、kは1であり;
Yは(j+1)Zk−又はZ(j+1)k−であり;
Zは非光学活性アニオンであり;かつ
*は光学活性炭素原子を示す、方法が提供される。
【0010】
別の態様では、本発明は、式(IV)のメタロセニル化合物への式(V)のメタロセニル化合物の不斉移動水素化(ATH)方法であって、
ここで、不斉移動水素化が、不斉移動水素化触媒と活性化ギ酸の存在下、60℃を超える温度で水性溶媒中で実施され;
上式中、
、R、R及びRは、非置換C−C20−アルキル、置換C−C20−アルキル、非置換C−C15−シクロアルキル、置換C−C15−シクロアルキル、非置換C−C20−アリール、置換C−C20−アリール、非置換C−C20−ヘテロアリール、置換C−C20−ヘテロアリールからなる群から独立して選択され、ここで、C−C20−ヘテロアリール中のヘテロ原子は、硫黄、酸素及び窒素からなる群から選択され;
及びRは、非置換C−C20−アルキル、置換C−C20−アルキル、非置換C−C15−シクロアルキル、置換C−C15−シクロアルキル、非置換C−C20−アリール、置換C−C20−アリールからなる群から独立して選択され;
Mは、Fe、Ru、Os及びNiからなる群から選択され;
mは0〜4の整数であり;
jは0又は1であり;かつ
j=0の場合、nは0〜5の整数であり;
j=1の場合、nは0〜4の整数であり;かつ
*は光学活性炭素原子を示す、方法を提供する。
【0011】
[定義]
部分又は置換基の結合点は「−」で表される。例えば、−OHは酸素原子を介して結合される。
【0012】
「活性化ギ酸」とは、ATH反応のための液体還元剤を形成するギ酸、第三級アミン塩基及び場合により水の混合物を指す。
【0013】
「アルキル」とは、直鎖又は分岐の飽和炭化水素基を指す。所定の実施態様では、アルキル基は、1〜20個の炭素原子、所定の実施態様では、1〜15個の炭素原子、所定の実施態様では、1〜8個の炭素原子を有しうる。アルキル基は非置換でありうる。あるいは、アルキル基は置換されていてもよい。特に明記されない限り、アルキル基は任意の適切な炭素原子で結合され得、置換される場合、任意の適切な原子で置換されうる。典型的なアルキル基には、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシルなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0014】
「シクロアルキル」という用語は、飽和炭素環式炭化水素基を示すために使用される。所定の実施態様では、シクロアルキル基は、3〜15個の炭素原子、所定の実施態様では、3〜10個の炭素原子、所定の実施態様では、3〜8個の炭素原子を有しうる。シクロアルキル基は非置換でありうる。あるいは、シクロアルキル基は置換されていてもよい。特に明記されない限り、シクロアルキル基は、任意の適切な炭素原子で結合され得、置換される場合、任意の適切な原子で置換されうる。典型的なシクロアルキル基には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0015】
「アルコキシ」は、式アルキル−O−又はシクロアルキル−O−の置換されていてもよい基を指し、ここで、アルキルとシクロアルキルは上で定義された通りである。
【0016】
「アリール」とは、芳香族炭素環式基を指す。アリール基は、単環又は複数の縮合環を有しうる。所定の実施態様では、アリール基は、5〜20個の炭素原子、所定の実施態様では、6〜15個の炭素原子、所定の実施態様では、6〜12個の炭素原子を有しうる。アリール基は非置換でありうる。あるいは、アリール基は置換されていてもよい。特に明記されない限り、アリール基は、任意の適切な炭素原子で結合され得、置換される場合、任意の適切な原子で置換されうる。アリール基の例には、フェニル、ナフチル、アントラセニルなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0017】
「アリールアルキル」とは、式アリール−アルキル−の置換されていてもよい基を指し、ここで、アリールとアルキルは上で定義された通りである。
【0018】
「アリールオキシ」は、式アリール−O−の置換されていてもよい基を指し、ここで、アリールは上で定義された通りである。
【0019】
「ハロ」、「hal」又は「ハライド」は、−F、−Cl、−Br、及び−Iを指す。
【0020】
「ヘテロアルキル」とは、一又は複数の炭素原子が一又は複数のヘテロ原子(例えば、窒素、酸素、リン、及び/又は硫黄原子)で独立して置換されている直鎖又は分岐飽和炭化水素基を指す。所定の実施態様では、ヘテロアルキル基は、1〜20個の炭素原子、所定の実施態様では1〜15個の炭素原子、所定の実施態様では1〜8個の炭素原子を有しうる。ヘテロアルキル基は非置換でありうる。あるいは、ヘテロアルキル基は置換されていてもよい。特に明記されない限り、ヘテロアルキル基は、任意の適切な原子で結合され得、置換される場合、任意の適切な原子で置換されうる。ヘテロアルキル基の例には、エーテル、チオエーテル、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミンなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0021】
「ヘテロシクロアルキル」とは、一又は複数の炭素原子が一又は複数のヘテロ原子(例えば、窒素、酸素、リン、及び/又は硫黄原子)で独立して置換されている飽和環状炭化水素基を指す。所定の実施態様では、ヘテロシクロアルキル基は、2〜15個の炭素原子、所定の実施態様では2〜10個の炭素原子、所定の実施態様では2〜8個の炭素原子を有しうる。ヘテロシクロアルキル基は非置換でありうる。あるいは、ヘテロシクロアルキル基は置換されていてもよい。特に明記されない限り、ヘテロシクロアルキル基は、任意の適切な原子で結合され得、置換される場合、任意の適切な原子で置換されうる。ヘテロシクロアルキル基の例には、エポキシド、モルホリニル、ピペラジニル(piperadinyl)、ピペラジニル(piperazinyl)、チラニル、ピロリジニル、ピラゾリジニル、イミダゾリジニル、チアゾリジニル、チオモルホリニルなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0022】
「ヘテロアリール」とは、一又は複数の炭素原子が一又は複数のヘテロ原子(例えば、窒素、酸素、リン、及び/又は硫黄原子)で独立して置換されている芳香族炭素環式基を指す。所定の実施態様では、ヘテロアリール基は、4〜20個の炭素原子、所定の実施態様では4〜15個の炭素原子、所定の実施態様では4〜8個の炭素原子を有しうる。ヘテロアリール基は非置換でありうる。あるいは、ヘテロアリール基は置換されていてもよい。特に明記されない限り、ヘテロアリール基は、任意の適切な原子で結合され得、置換される場合、任意の適切な原子で置換されうる。ヘテロアリール基の例には、チエニル、フラニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、チオフェニル、オキサジアゾリル、ピリジニル、ピリミジル、ベンゾオキサゾリル、ベンズチアゾリル、ベンズイミダゾリル、インドリル、キノリニルなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0023】
「置換された」とは、一又は複数の水素原子が、それぞれ独立して、同じであっても異なっていてもよい置換基(例えば、1、2、3、4、5又はそれ以上)で置き換えられている基を指す。基は、安定性及び原子価の規則によって課せられる制限まで、一又は複数の置換基で置換されうる。置換基は、ATH、アシル化、アミノ化又は塩形成反応条件下で悪影響を受けないように選択される。置換基の例には、−ハロ、−CF、−R、−O−R、−S−R、−NR、−CN、−C(O)−R、−COOR、−C(S)−R、−C(S)OR、−S(O)OH、−S(O)−R、−S(O)NR及び−CONR、好ましくは−ハロ、−CF、−R、−O−R、−NR、−COOR、−S(O)OH、−S(O)−R、−S(O)NR及び−CONRが含まれるが、これらに限定されない。RとRは、H、アルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリールからなる群から独立して選択されるか、あるいはRとRはそれらが結合している原子と一緒になってヘテロシクロアルキル基を形成し、ここで、RとRは非置換であってもよく、又はここで定義されるように更に置換されうる。
【0024】
「メタロセニル」は、遷移金属原子又はイオンが原子の二つの環の間に「挟まれた」遷移金属錯体基を指す。メタロセニル基は置換又は非置換でありうる。特に明記されない限り、メタロセニル基は、任意の適切な原子で結合され得、置換される場合、任意の適切な原子で置換されうる。遷移金属原子又はイオンの例には、ルテニウム、オスミウム、ニッケル及び鉄が含まれるが、これらに限定されない。原子の適切な環の例はシクロペンタジエニル環である。メタロセニル基の例には、限定されないが、フェロセニルが含まれ、これは、二つのシクロペンタジエニル環の間に挟まれたFe(II)イオンを含み、各シクロペンタジエニル環は独立して非置換又は置換でありうる。
【0025】
「光学活性」とは、偏光の振動面を右又は左に回転できることを意味する。
【0026】
「ハライドアニオン」とは、F、Cl、Br、及びIを指す。
【0027】
「オキシアニオン」とは、別の元素に結合した一又は複数の酸素原子を含むアニオンを意味する。
【0028】
「モノアニオン」は、単一の負電荷を持つイオンである。「ジアニオン」は、二つの負電荷を持つアニオンである。
【0029】
「アシル基」は、カルボン酸から一又は複数のヒドロキシル基を除去することにより誘導される部分である。
【0030】
「懸濁液」は、静置時に沈降するのに十分な大きさの固体粒子を含む不均一混合物である。
【0031】
「水性溶媒」とは、水又は水と水混和性溶媒の混合物を指す。
【詳細な説明】
【0032】
[式(I)及び(II)のメタロセニル化合物]
一態様では、本発明は、式(I)
[上式中、
、R、R及びRは、非置換C−C20−アルキル、置換C−C20−アルキル、非置換C−C15−シクロアルキル、置換C−C15−シクロアルキル、非置換C−C20−アリール、置換C−C20−アリール、非置換C−C20−ヘテロアリール、置換C−C20−ヘテロアリールからなる群から独立して選択され、ここで、C−C20−ヘテロアリール中のヘテロ原子は、硫黄、酸素及び窒素からなる群から選択され;
及びRは、非置換C−C20−アルキル、置換C−C20−アルキル、非置換C−C15−シクロアルキル、置換C−C15−シクロアルキル、非置換C−C20−アリール、置換C−C20−アリールからなる群から独立して選択され;
Mは、Fe、Ru、Os及びNiからなる群から選択され;
mは0〜4の整数であり;
jは0又は1であり;かつ
j=0の場合、nは0〜5の整数で、kは1又は2であり;
j=1の場合、nは0〜4の整数で、kは1であり;
Yは(j+1)Zk−又はZ(j+1)k−であり;
Zは非光学活性アニオンであり;かつ
*は光学活性炭素原子を示す]
のメタロセニル化合物を提供する。
【0033】
は、非置換C−C20−アルキル、置換C−C20−アルキル、非置換C−C15−シクロアルキル、置換C−C15−シクロアルキル、非置換C−C20−アリール、置換C−C20−アリール、非置換C−C20−ヘテロアリール、置換C−C20−ヘテロアリールからなる群から選択され得、ここで、C−C20−ヘテロアリール中のヘテロ原子は硫黄、酸素及び窒素からなる群から選択される。一実施態様では、Rは、非置換C−C20−アルキル、非置換C−C15−シクロアルキル、非置換C−C20−アリール、非置換C−C20−ヘテロアリールからなる群から選択され、ここで、C−C20−ヘテロアリール中のヘテロ原子は、硫黄、酸素、及び窒素からなる群から選択される。Rは、置換又は非置換の分岐又は直鎖アルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル(例えばn−ペンチル又はネオペンチル)、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル又はステアリル、シクロアルキル基、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル又はアダマンチル、あるいはアリール基、例えばフェニル、ナフチル又はアントラシルでありうる。一実施態様では、アルキル基は、ハライド(F、Cl、Br又はI)又はアルコキシ基、例えばメトキシ、エトキシ又はプロポキシのようなそれぞれが同一か又は異なっていてもよい一又は複数(例えば、1、2、3、4、又は5)の置換基で場合によっては置換されうる。アリール基は、ハライド(F、Cl、Br又はI)、直鎖又は分岐鎖アルキル(例えばC−C10)、アルコキシ(例えばC−C10アルコキシ)、直鎖又は分岐鎖(ジアルキル)アミノ(例えばC−C10ジアルキル)アミノ)、ヘテロシクロアルキル(例えばC3−10ヘテロシクロアルキル基、例えばモルホリニル及びピペラジニル)又はトリ(ハロ)メチル(例えばFC−)のようなそれぞれが同一又は異なっていてもよい一又は複数(例えば1、2、3、4、又は5)の置換基で場合によっては置換されうる。適切な置換アリール基には、4−ジメチルアミノフェニル、4−メチルフェニル、3,5−ジメチルフェニル、4−メトキシフェニル、4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニル及び3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェニルが含まれるが、これらに限定されない。ピリジルなどの置換又は非置換ヘテロアリール基もまた使用されうる。一実施態様では、Rはメチルである。
【0034】
は、非置換C−C20−アルキル、置換C−C20−アルキル、非置換C−C15−シクロアルキル、置換C−C15−シクロアルキル、非置換C−C20−アリール、置換C−C20−アリール、非置換C−C20−ヘテロアリール、置換C−C20−ヘテロアリールからなる群から選択され得、ここで、C−C20−ヘテロアリール中のヘテロ原子は硫黄、酸素及び窒素からなる群から選択される。一実施態様では、Rは、非置換C−C20−アルキル、非置換C−C15−シクロアルキル、非置換C−C20−アリール、非置換C−C20−ヘテロアリールからなる群から選択され、ここで、C−C20−ヘテロアリール中のヘテロ原子は、硫黄、酸素、及び窒素からなる群から選択される。一実施態様では、Rは、非置換C−C20−アルキル、非置換C−C15−シクロアルキル、非置換C−C20−アリール、非置換C−C20−ヘテロアリールからなる群から選択され、ここで、C−C20−ヘテロアリール中のヘテロ原子は、硫黄、酸素、及び窒素からなる群から選択される。Rは、置換又は非置換の分枝又は直鎖アルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル(例えばn−ペンチル又はネオペンチル)、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル又はステアリル、シクロアルキル基、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル又はアダマンチル、あるいはアリール基、例えばフェニル、ナフチル又はアントラシルでありうる。一実施態様では、アルキル基は、ハライド(F、Cl、Br又はI)又はアルコキシ基、例えばメトキシ、エトキシ又はプロポキシなどのそれぞれが同一か又は異なっていてもよい一又は複数(例えば、1、2、3、4、又は5)の置換基で場合によっては置換されうる。アリール基は、ハライド(F、Cl、Br又はI)、直鎖又は分岐鎖アルキル(例えばC−C10)、アルコキシ(例えばC−C10アルコキシ)、直鎖又は分岐鎖(ジアルキル)アミノ(例えばC−C10ジアルキル)アミノ)、ヘテロシクロアルキル(例えばC3−10ヘテロシクロアルキル基、例えばモルホリニル及びピペラジニル)又はトリ(ハロ)メチル(例えばFC−)のようなそれぞれが同一又は異なっていてもよい一又は複数(例えば1、2、3、4、又は5)の置換基で場合によっては置換されうる。適切な置換アリール基には、4−ジメチルアミノフェニル、4−メチルフェニル、3,5−ジメチルフェニル、4−メトキシフェニル、4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニル及び3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェニルが含まれるが、これらに限定されない。ピリジルなどの置換又は非置換ヘテロアリール基もまた使用されうる。
は存在しても存在していなくてもよい。存在しない場合、mは0である。つまり、R含有Cp環は更に置換されていない。Rが存在する場合、mは1、2、3、又は4でありうる。その又は各Rは同じでも異なっていてもよい。一実施態様では、Rは存在しない。つまり、mは0である。
【0035】
は、非置換C−C20−アルキル、置換C−C20−アルキル、非置換C−C15−シクロアルキル、置換C−C15−シクロアルキル、非置換C−C20−アリール、置換C−C20−アリール、非置換C−C20−ヘテロアリール、置換C−C20−ヘテロアリールからなる群から選択され得、ここで、C−C20−ヘテロアリール中のヘテロ原子は硫黄、酸素及び窒素からなる群から選択される。一実施態様では、Rは、非置換C−C20−アルキル、非置換C−C15−シクロアルキル、非置換C−C20−アリール、非置換C−C20−ヘテロアリールからなる群から選択され、ここで、C−C20−ヘテロアリール中のヘテロ原子は、硫黄、酸素及び窒素からなる群から選択される。一実施態様では、Rは、非置換C−C20−アルキル、非置換C−C15−シクロアルキル、非置換C−C20−アリール、非置換C−C20−ヘテロアリールからなる群から選択され、ここで、C−C20−ヘテロアリール中のヘテロ原子は、硫黄、酸素及び窒素からなる群から選択される。Rは、置換又は非置換の分枝又は直鎖アルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル(例えばn−ペンチル又はネオペンチル)、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル又はステアリル、シクロアルキル基、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル又はアダマンチル、あるいはアリール基、例えばフェニル、ナフチル又はアントラシルでありうる。一実施態様では、アルキル基は、ハライド(F、Cl、Br又はI)又はアルコキシ基、例えばメトキシ、エトキシ又はプロポキシのようなそれぞれが同一か又は異なっていてもよい一又は複数(例えば、1、2、3、4、又は5)の置換基で場合によっては置換されうる。アリール基は、ハライド(F、Cl、Br又はI)、直鎖又は分岐鎖アルキル(例えばC−C10)、アルコキシ(例えばC−C10アルコキシ)、直鎖又は分岐鎖(ジアルキル)アミノ(例えばC−C10ジアルキル)アミノ)、ヘテロシクロアルキル(例えばC3−10ヘテロシクロアルキル基、例えばモルホリニル及びピペラジニル)又はトリ(ハロ)メチル(例えばFC−)のようなそれぞれが同一か又は異なっていてもよい一又は複数(例えば1、2、3、4、又は5)の置換基で場合によっては置換されうる。適切な置換アリール基には、4−ジメチルアミノフェニル、4−メチルフェニル、3,5−ジメチルフェニル、4−メトキシフェニル、4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニル及び3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェニルが含まれるが、これらに限定されない。ピリジルなどの置換又は非置換ヘテロアリール基もまた使用されうる。
は存在しても存在していなくてもよい。存在しない場合、nは0である。つまり、R含有Cp環は置換されていない。Rが存在する場合、jが0のとき、nは1、2、3、4又は5であり得、あるいはjが1のとき、nは1、2、3又は4でありうる。
その又は各Rは同じでも異なっていてもよい。一実施態様では、Rは存在しない。つまり、nは0である。
【0036】
は、非置換C−C20−アルキル、置換C−C20−アルキル、非置換C−C15−シクロアルキル、置換C−C15−シクロアルキル、非置換C−C20−アリール、置換C−C20−アリール、非置換C−C20−ヘテロアリール、置換C−C20−ヘテロアリールからなる群から選択され得、ここで、C−C20−ヘテロアリール中のヘテロ原子は硫黄、酸素及び窒素からなる群から選択される。一実施態様では、Rは、非置換C−C20−アルキル、非置換C−C15−シクロアルキル、非置換C−C20−アリール、非置換C−C20−ヘテロアリールからなる群から選択され、ここで、C−C20−ヘテロアリール中のヘテロ原子は、硫黄、酸素及び窒素からなる群から選択される。Rは、置換又は非置換の分枝又は直鎖アルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル(例えばn−ペンチル又はネオペンチル)、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル又はステアリル、シクロアルキル基、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル又はアダマンチル、あるいはアリール基、例えばフェニル、ナフチル又はアントラシルでありうる。一実施態様では、アルキル基は、ハライド(F、Cl、Br又はI)又はアルコキシ基、例えばメトキシ、エトキシ又はプロポキシなどのそれぞれが同一か又は異なっていてもよい一又は複数(例えば、1、2、3、4、又は5)の置換基で場合によっては置換されうる。アリール基は、ハライド(F、Cl、Br又はI)、直鎖又は分岐鎖アルキル(例えばC−C10)、アルコキシ(例えばC−C10アルコキシ)、直鎖又は分岐鎖(ジアルキル)アミノ(例えばC−C10ジアルキル)アミノ)、ヘテロシクロアルキル(例えばC3−10ヘテロシクロアルキル基、例えばモルホリニル及びピペラジニル)又はトリ(ハロ)メチル(例えばFC−)のようなそれぞれが同一か又は異なっていてもよい一又は複数(例えば1、2、3、4、又は5)の置換基で場合によっては置換されうる。適切な置換アリール基には、4−ジメチルアミノフェニル、4−メチルフェニル、3,5−ジメチルフェニル、4−メトキシフェニル、4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニル及び3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェニルが含まれるが、これらに限定されない。ピリジルなどの置換又は非置換ヘテロアリール基もまた使用されうる。
一実施態様では、Rは存在せず、jは0である。
一実施態様では、Rはメチルであり、jは1である。
【0037】
は、非置換C−C20−アルキル、置換C−C20−アルキル、非置換C−C15−シクロアルキル、置換C−C15−シクロアルキル、非置換C−C20−アリール、置換C−C20−アリールからなる群から選択されうる。一実施態様では、Rは、非置換C−C20−アルキル、非置換C−C15−シクロアルキル、非置換C−C20−アリールからなる群から選択される。Rは、置換又は非置換の分岐又は直鎖アルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル(例えばn−ペンチル又はネオペンチル)、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル又はステアリル、シクロアルキル基、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル又はアダマンチル、あるいはアリール基、例えばフェニル、ナフチル又はアントラシルでありうる。一実施態様では、アルキル基は、ハライド(F、Cl、Br又はIなど)又はアルコキシ基、例えばメトキシ、エトキシ又はプロポキシのようなそれぞれが同一か又は異なっていてもよい一又は複数(例えば、1、2、3、4、又は5)の置換基で場合によっては置換されうる。アリール基は、ハライド(F、Cl、Br又はI)、直鎖又は分岐鎖アルキル(例えばC−C10)、アルコキシ(例えばC−C10アルコキシ)、直鎖又は分岐鎖(ジアルキル)アミノ(例えばC−C10ジアルキル)アミノ)、ヘテロシクロアルキル(例えばC3−10ヘテロシクロアルキル基、例えばモルホリニル及びピペラジニル)又はトリ(ハロ)メチル(例えばFC−)のようなそれぞれが同一又は異なっていてもよい一又は複数(例えば1、2、3、4、又は5)の置換基で場合によっては置換されうる。適切な置換アリール基には、4−ジメチルアミノフェニル、4−メチルフェニル、3,5−ジメチルフェニル、4−メトキシフェニル、4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニル及び3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェニルが含まれるが、これらに限定されないが。ピリジルなどの置換又は非置換ヘテロアリール基もまた使用されうる。一実施態様では、Rはメチルである。
【0038】
は、非置換C−C20−アルキル、置換C−C20−アルキル、非置換C−C15−シクロアルキル、置換C−C15−シクロアルキル、非置換C−C20−アリール、置換C−C20−アリールからなる群から選択されうる。一実施態様では、Rは、非置換C−C20−アルキル、非置換C−C15−シクロアルキル、非置換C−C20−アリールからなる群から選択される。一実施態様では、Rは、非置換C−C20−アルキル、非置換C−C15−シクロアルキル、非置換C−C20−アリール、非置換C−C20−ヘテロアリールからなる群から選択され、ここで、C−C20−ヘテロアリール中のヘテロ原子は、硫黄、酸素及び窒素からなる群から選択される。Rは、置換又は非置換の分枝又は直鎖アルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル(例えばn−ペンチル又はネオペンチル)、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル又はステアリル、シクロアルキル基、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル又はアダマンチル、あるいはアリール基、例えばフェニル、ナフチル又はアントラシルでありうる。一実施態様では、アルキル基は、ハライド(F、Cl、Br又はI)又はアルコキシ基、例えばメトキシ、エトキシ又はプロポキシなどのそれぞれが同一か又は異なっていてもよい一又は複数(例えば、1、2、3、4、又は5)の置換基で場合によっては置換されうる。アリール基は、ハライド(F、Cl、Br又はI)、直鎖又は分岐鎖アルキル(例えばC−C10)、アルコキシ(例えばC−C10アルコキシ)、直鎖又は分岐鎖(ジアルキル)アミノ(例えばC−C10ジアルキル)アミノ)、ヘテロシクロアルキル(例えばC3−10ヘテロシクロアルキル基、例えばモルホリニル及びピペラジニル)又はトリ(ハロ)メチル(例えばFC−)のようなそれぞれが同一か又は異なりうる一又は複数(例えば1、2、3、4、又は5)の置換基で場合によっては置換されうる。適切な置換アリール基には、4−ジメチルアミノフェニル、4−メチルフェニル、3,5−ジメチルフェニル、4−メトキシフェニル、4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニル及び3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェニルが含まれるが、これらに限定されない。ピリジルなどの置換又は非置換ヘテロアリール基もまた使用されうる。一実施態様では、Rはメチルである。
【0039】
Mは、Fe、Ru、Os及びNiからなる群から選択されうる。一実施態様では、MはFeであり、式(I)の化合物はフェロセニル化合物である。別の実施態様では、MはRuである。別の実施態様では、MはOsである。別の実施態様では、MはNiである。好ましくは、MはFeである。
【0040】
一実施態様では、jは0であり、nは1〜5の整数であり、kは1又は2であり、式(I)のメタロセニル化合物は、式(Ia)で表される:
Zは非光学活性アニオンであり、次から適切に選択されうる:
a)単原子アニオン、例えばハライドアニオンで、この場合、k=1;又は
b)オキシアニオン、例えば(HPO(k=1)又は(HPO2−(k=2);又は
c)非光学活性有機アニオン、例えば
− k=1の場合:CHCO(アセテート)、CCO(ベンゾエート)、CHSO3(メシレート)、CHSO(トシレート)、HOCCH=CHCO(モノアニオン性フマレート)、HOC(CHCO(モノアニオン性アジペート)、HOC−CO(モノアニオン性オキサレート)、
− k=2の場合:CCH=CHCO(ジアニオン性フマレート)、C(CHCO(ジアニオン性アジペート)、C−CO(ジアニオン性オキサレート)。
【0041】
一実施態様では、Zはモノアニオン(この場合k=1)又はジアニオン(この場合k=2)でありうる。
【0042】
別の実施態様では、jは1であり、nは1〜4の整数であり、kは1であり、式(I)のメタロセニル化合物は式(Ib)によって表される:
Zは非光学活性アニオンであり、次から適切に選択されうる:
a)単原子アニオン、例えばハライドアニオン;又は
b)オキシアニオン、例えば(HPO又は(HPO2−;又は
c)非光学活性有機アニオン、例えば
− CHCO(アセテート)、CCO(ベンゾエート)、CHSO3(メシレート)、CHSO(トシレート)、HOCCH=CHCO(モノアニオン性フマレート)、HOC(CHCO(モノアニオン性アジペート)、HOC−CO(モノアニオン性オキサレート)、
CCH=CHCO(ジアニオン性フマレート)、C(CHCO(ジアニオン性アジペート)、C−CO(ジアニオン性オキサレート)。
【0043】
式(I)の適切なメタロセニル化合物は、N,N−ジメチル−α−フェロセニルエチルアンモニウムカチオン(A*)の塩、例えばA*(HPO)、A*(HPO)又はそれらの混合物、A*(OAc)、A*(ベンゾエート)、A*(メシレート)、A*(トシレート)、A*(フマレート)、A*(アジペート)、A*(オキサレート)である:
【0044】
式(I)の好ましいメタロセニル化合物は、リン酸二水素N,N−ジメチル−α−フェロセニルエチルアンモニウム(A*(HPO))、リン酸一水素ジ(N,N−ジメチル−α−フェロセニルエチルアンモニウム(A*(HPO))又はその混合物である。
【0045】
他の態様では、本発明は、式(I)のメタロセニル化合物の調製方法であって、
式(II)の化合物を溶媒中で酸Hk(j+1)Zと混合して式(I)の化合物を形成することを含み、
上式中、
、R、R及びRは、非置換C−C20−アルキル、置換C−C20−アルキル、非置換C−C15−シクロアルキル、置換C−C15−シクロアルキル、非置換C−C20−アリール、置換C−C20−アリール、非置換C−C20−ヘテロアリール、置換C−C20−ヘテロアリールからなる群から独立して選択され、ここで、C−C20−ヘテロアリール中のヘテロ原子は、硫黄、酸素及び窒素からなる群から選択され;
及びRは、非置換C−C20−アルキル、置換C−C20−アルキル、非置換C−C15−シクロアルキル、置換C−C15−シクロアルキル、非置換C−C20−アリール、置換C−C20−アリールからなる群から独立して選択され;
Mは、Fe、Ru、Os及びNiからなる群から選択され;
mは0〜4の整数であり;
jは0又は1であり;かつ
j=0の場合、nは0〜5の整数で、kは1又は2であり;
j=1の場合、nは0〜4の整数で、kは1であり;
Yは(j+1)Zk−又はZ(j+1)k−であり;
Zは非光学活性アニオンであり;かつ
*は光学活性炭素原子を示す、方法を提供する。
【0046】
酸Hk(j+1)Zは、式(I)の化合物中の非光学活性アニオンZ又はZ2−の対応する酸でありうる。一実施態様では、酸Hk(j+1)Zは、HPO、フマル酸、アジピン酸、シュウ酸、安息香酸、酢酸、メタンスルホン酸及びp−トルエンスルホン酸でありうる。好ましい一実施態様では、酸Hk(j+1)ZはHPOでありうる。
【0047】
本発明に係る方法は、溶媒の存在下で実施されうる。好ましくは、溶媒は、アルコール、エーテル(テトラヒドロフラン(THF)又はメチルtert−ブチルエーテル(MTBE)などの環状又は開鎖)、芳香族溶媒(ベンゼン又はトルエンなど)、エステル(酢酸エチルなど)又はその組み合わせを含む。溶媒がアルコールを含む場合、好ましいアルコールは大気圧(すなわち1.0135×10Pa)で160℃未満、より好ましくは120℃未満、更により好ましくは100℃未満の沸点を有する。好ましい例は、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール又はそれらの組み合わせである。より好ましくは、アルコールはメタノール、イソプロパノール又はそれらの組み合わせである。メタノールが特に好ましい。
【0048】
式(II)の化合物の濃度は、0.1〜5M、好ましくは0.9M〜約1.2Mの範囲内でありうる。一実施態様では、式(II)の化合物の濃度は約1.1Mである。Hk(j+1)Zの濃度は0.5M〜約1Mの範囲でありうる。一実施態様では、Hk(j+1)Zの濃度は約0.9Mである。別の実施態様では、Hk(j+1)Zの濃度は約0.6Mである。
【0049】
反応物は、任意の適切な順序で添加されうるが、本発明の好ましい方法では、Hk(j+1)Zの希釈水溶液が溶媒中の式(II)の化合物の溶液に添加される。制御不能な発熱を避けるためには、Hk(j+1)Zの希釈水溶液が式(II)の化合物の溶液にゆっくりと添加されることが望ましい。
【0050】
本発明において、式(II)の化合物とHk(j+1)Zとの比が、式(I)のメタロセニル化合物の組成と純度を決定する。j=0かつk=1の場合、式(II)の化合物とHk(j+1)Zの当量数との比は、約0.8:1〜約1.25:1の範囲であり得、未反応の式(II)の化合物とk=1の式(I)の化合物の混合物が形成されうる。式(II)の化合物とHk(j+1)Zの当量数との適切な比には、0.80:1、0.85:1、0.90:1、0.95:1、1.00:1、1.05:1、1.10:1、1.15:1、1.20:1、1.25:1が含まれるが、これらに限定されない。
【0051】
j=0かつkが2である場合、又はj=1かつk=1である場合、式(II)の化合物とHk(j+1)Zの当量数との比は、約1.15:1〜約2.20:1の範囲であり得、k=1である式(I)の化合物とk=2である式(I)の化合物の混合物が形成されうる。式(II)の化合物とHk(j+1)Zの当量数との適切な比には、1.15:1、1.20:1、1.25:1、1.30:1、1.35:1、1.40:1、1.45:1、1.50:1、1.55:1、1.60:1、1.65:1、1.70:1、1.75:1、1.80:1、1.85:1、1.90:1、1.95:1、2.00:1、2.05:1、2.10:1、2.15:1、2.20:1が含まれるが、これらに限定されない。
【0052】
k(j+1)Zが式(II)の化合物に添加される間、反応混合物の温度範囲が、約−15℃〜約35℃の間の一又は複数の温度に維持されうることが好ましい。一実施態様では、反応混合物は、約−10℃〜約10℃の温度に維持される。別の実施態様では、反応混合物は約5℃未満の温度に維持される。好ましい一実施態様では、反応混合物は0℃に維持される。
反応は、約30分〜約2時間の間、好ましくは約1時間、継続されうる。この時間の間、反応温度は約−10℃〜約60℃の間で一又は複数回、変わりうる。
【0053】
あるいは、Hk(j+1)Zは、160℃未満、より好ましくは120℃未満、更により好ましくは100℃未満の温度で式(II)の化合物に添加されうる。反応は、約30分〜約2時間の間、好ましくは約1時間、継続されうる。この時間の間、反応温度は約160℃〜約15℃の間で一又は複数回、変わりうる。
【0054】
反応完了時に、式(I)の化合物は、任意の適切な方法により反応混合物から分離されうる。
【0055】
式(I)の錯体の精製は通常は必要ではないが、必要であれば、一般的な手順を使用して錯体を精製することは可能である。
【0056】
一実施態様では、本発明は、式(I)のメタロセニル錯体を塩基で処理して式(II)の錯体を形成する工程を更に含む。式(I)のメタロセニル錯体は、好ましくは溶媒と混合されて懸濁液が得られる。溶媒は、任意の適切な溶媒、例えば芳香族炭化水素(例えばトルエン)でありうる。塩基は、好ましくは水酸化アルカリの水溶液である。液体のpHが約10〜約11の範囲になるまで塩基が加えられうる。反応完了時に、式(II)の化合物は任意の適切な方法により反応混合物から分離されうる。鏡像体過剰率の決定は、式(II)の化合物のサンプルについて、それをHPLCで分析することにより、実施される。
【0057】
他の態様では、本発明は、式(II)の化合物の光学純度を高めるための方法であって、
a)式(I)のメタロセニル化合物を溶媒と混合して、液体中の固体粒子の懸濁液を得る工程であって、混合が溶媒のほぼ沸点で実施される工程;
b)式(I)のメタロセニル化合物を工程a)の懸濁液から固体として分離する工程;
c)塩基の存在下、工程b)の式(I)のメタロセニル化合物から式(II)の化合物を得る工程
を含み、
上式中、
、R、R及びRは、非置換C−C20−アルキル、置換C−C20−アルキル、非置換C−C15−シクロアルキル、置換C−C15−シクロアルキル、非置換C−C20−アリール、置換C−C20−アリール、非置換C−C20−ヘテロアリール、置換C−C20−ヘテロアリールからなる群から独立して選択され、ここで、C−C20−ヘテロアリール中のヘテロ原子は、硫黄、酸素及び窒素からなる群から選択され;
及びRは、非置換C−C20−アルキル、置換C−C20−アルキル、非置換C−C15−シクロアルキル、置換C−C15−シクロアルキル、非置換C−C20−アリール、置換C−C20−アリールからなる群から独立して選択され;
Mは、Fe、Ru、Os及びNiからなる群から選択され;
mは0〜4の整数であり;
jは0又は1であり;かつ
j=0の場合、nは0〜5の整数で、kは1又は2であり;
j=1の場合、nは0〜4の整数で、kは1であり;
Yは(j+1)Zk−又はZ(j+1)k−であり;
Zは非光学活性アニオンであり;かつ
*は光学活性炭素原子を示す、方法を提供する。
【0058】
一実施態様では、前に記載された式(I)のメタロセニル化合物の調製方法は、式(II)の化合物の光学純度を高めるための方法であって、
a)式(I)のメタロセニル化合物を溶媒と混合して、液体中の固体粒子の懸濁液を得る工程であって、混合が溶媒のほぼ沸点で実施される工程;
b)式(I)のメタロセニル化合物を工程a)の懸濁液から固体として分離する工程;
c)塩基の存在下、工程b)の式(I)のメタロセニル化合物から式(II)の化合物を得る工程
を含み、
、R、R、R、R、R、M、Y、Z、m、n、j及びkが上に一般に記載された通りである、方法を更に含む。
【0059】
式(I)の好ましい化合物は化合物A*(HPO)であり、式(II)の好ましい化合物は化合物Bである:
【0060】
式(I)の化合物が化合物A*(HPO)であり、式(II)の化合物が化合物Bである場合、溶媒はアルコールを含む。好ましいアルコールは、大気圧(すなわち、1.0135×10Pa)で160℃未満、より好ましくは120℃未満、更により好ましくは100℃未満の沸点を有する。好ましい例は、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール又はそれらの組み合わせである。より好ましくは、アルコールはメタノール、イソプロパノール又はそれらの組み合わせである。イソプロパノール/メタノール99/1の混合物が特に好ましい。
【0061】
化合物A*(HPO)は、懸濁液から固体として分離され、濾過などの一般的な手順を使用して単離される。
【0062】
単離された化合物A*(HPO)は、トルエンなどの適切な溶媒中で塩基を用いて処理される。
好ましい塩基はNaOH 2Mである。液体のpHが約10〜約11の範囲になるまで塩基を加えることができる。反応の完了時に、化合物Bは、有機層を水性層から分離し、化合物Bを有機層から単離するなどの任意の適切な方法によって反応混合物から分離されうる。
【0063】
鏡像体過剰率の決定は、化合物Bのサンプルについて、それをHPLCで分析することにより、実施される。化合物Bの鏡像体過剰率は≧99%eeでありうる。
【0064】
一実施態様では、式(II)の化合物は、式(III)の化合物を式HNRの化合物と溶媒中で混合して式(II)の化合物を形成することにより調製され、
上式中、
、R、R及びRは、非置換C−C20−アルキル、置換C−C20−アルキル、非置換C−C15−シクロアルキル、置換C−C15−シクロアルキル、非置換C−C20−アリール、置換C−C20−アリール、非置換C−C20−ヘテロアリール、置換C−C20−ヘテロアリールからなる群から独立して選択され、ここで、C−C20−ヘテロアリール中のヘテロ原子は、硫黄、酸素及び窒素からなる群から選択され;
及びRは、非置換C−C20−アルキル、置換C−C20−アルキル、非置換C−C15−シクロアルキル、置換C−C15−シクロアルキル、非置換C−C20−アリール、置換C−C20−アリールからなる群から独立して選択され;
Mは、Fe、Ru、Os及びNiからなる群から選択され;
mは0〜4の整数であり;
jは0又は1であり;かつ
j=0の場合、nは0〜5の整数であり;
j=1の場合、nは0〜4の整数であり;かつ
*は光学活性炭素原子を示す。
【0065】
j=0の場合の式(III)の化合物:HNRのモル比は、約1:10〜約1:4、好ましくは約1:6〜約1:4の範囲でありうる。一実施態様では、式(III)の化合物:HNRのモル比は、約1:5.5〜1:4.5の範囲でありうる。好ましい一実施態様では、その比は約1:5である。j=1の場合、式(III)の化合物:HNRのモル比は約1:20〜約1:8、好ましくは約1:12〜約1:8の範囲でありうる。一実施態様では、式(III)の化合物:HNRのモル比は、約1:11〜1:9の範囲でありうる。好ましい一実施態様では、その比は約1:10である。
【0066】
本発明に係る方法は溶媒の存在下で実施されうる。好ましくは、溶媒はアルコールとC−Cアルカンの混合物を含む。溶媒は更に水を含みうる。好ましいアルコールは、大気圧(すなわち、1.0135×10Pa)で160℃未満、より好ましくは120℃未満、更により好ましくは100℃未満の沸点を有する。好ましい例は、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール又はそれらの組み合わせである。より好ましくは、アルコールはメタノール、イソプロパノール又はそれらの組み合わせである。イソプロパノールが特に好ましい。C−Cアルカンは、直鎖アルカン、分岐アルカン又はシクロアルカンでありうる。適切なアルカンは、ペンタン(全異性体)、ヘキサン(全異性体)、ヘプタン(全異性体)、オクタン(全異性体)又はそれらの混合物である。最も好ましいアルカンはヘプタンとシクロヘキサンである。
アルコール:C−Cアルカンの比は、約1:3〜約1:8、好ましくは約1:4〜約1:7の範囲、最も好ましくは1:5でありうる。
【0067】
反応物は、任意の適切な順序で添加されうるが、本発明の好ましい方法では、水又はアルコール中の式HNRの化合物の溶液が溶媒中の式(III)の化合物の溶液に添加される。制御不能な発熱を避けるためには、HNRの溶液が式(III)の化合物の溶液にゆっくりと添加されることが望ましい。
【0068】
HNRが式(III)の化合物に添加される間、反応混合物の温度範囲が約−15℃〜約35℃の間の一又は複数の温度に維持されうることが好ましい。一実施態様では、反応混合物は、約−10℃〜約10℃の温度に維持される。別の実施態様では、反応混合物は約5℃未満の温度に維持される。好ましい一実施態様では、反応混合物は0℃に維持される。
【0069】
反応は、約30分〜約24時間、好ましくは約10時間、継続されうる。この時間の間、反応温度は、約−10℃〜約65℃、好ましくは約50℃の間で一又は複数回、変わりうる。反応完了時に、式(II)の化合物は、任意の適切な方法により反応混合物から分離されうる。式(II)の錯体の精製は通常は必要ではないが、必要であれば、一般的な手順を使用して錯体を精製することが可能である。
【0070】
一実施態様では、式(III)の化合物は、塩基の存在下で式(IV)の化合物を式アシル−LGの化合物と混合して、式(III)の化合物を形成することにより調製され、ここで、LGは脱離基である:
【0071】
式アシル−LGの化合物は、好ましくは無水カルボン酸又は塩化アシルである。これらの場合、LGは−O−アシル(無水カルボン酸の場合)又は−Cl(塩化アシルの場合)である。式アシル−LGの最も好ましい化合物は無水酢酸である。
【0072】
塩基は、有機塩基又は無機塩基でありうる。好ましくは、塩基は酢酸ナトリウムである。最も好ましい塩基は、酢酸ナトリウム三水和物(NaOAc・3HO)である。
【0073】
反応は、無溶媒(ニート)で実施されうる。これらの場合、式アシル−LGの化合物が溶媒として作用する。式アシル−LGの適切な化合物は、好ましくは無水カルボン酸である。
【0074】
あるいは、反応は溶媒の存在下で実施されうる。溶媒は、任意の適切な非プロトン性溶媒でありうる。溶媒は、芳香族溶媒(ベンゼン又はトルエンなど)、エーテル(テトラヒドロフラン(THF)などの環状又はメチルtert−ブチルエーテル(MTBE)などの開鎖)、エステル(酢酸エチル、酢酸イソプロピルなど)、C−Cアルカン(ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン又はそれらの混合物など)、ジクロロメタン、アセトニトリル、アセトン又はそれらの組み合わせからなる群から選択されうる。好ましい実施態様では、溶媒はヘプタンである。
【0075】
式(IV)の化合物と式アシル−LGの化合物は、任意の適切な順序で添加されうる。しかし、本発明の好ましい方法では、式(IV)の化合物と塩基が、溶媒(使用する場合)と共に反応容器に入れられ、ついで式アシル−LGの化合物が加えられる。
【0076】
j=0の場合、式(IV)の化合物と式アシル−LGの化合物とのモル比は、約1:1〜約1:5の範囲でありうる。好ましくは、式(IV)の化合物と式アシル−LGの化合物とのモル比は、約1:1.5〜約1:2の範囲でありうる。
j=1の場合、式(IV)の化合物と式アシル−LGの化合物とのモル比は、約1:2.2〜1:8の範囲でありうる。好ましくは、式(IV)の化合物と式アシル−LGの化合物とのモル比は、約1:2.2〜1:2.6の範囲でありうる。
【0077】
塩基は、約1:0.1〜1:5の間の式(IV)の化合物と塩基とのモル比で加えることができる。
【0078】
あるいは、塩基はジメチルアミノピリジン(DMAP)である。
【0079】
一実施態様では、式(IV)の化合物は、式(V)のメタロセニル化合物の不斉移動水素化(ATH)によって調製され、
ここで、
不斉移動水素化が、不斉移動水素化触媒と活性化ギ酸の存在下、60℃を超える温度で水性溶媒中で実施され;
上式中、
、R、R及びRは、非置換C−C20−アルキル、置換C−C20−アルキル、非置換C−C15−シクロアルキル、置換C−C15−シクロアルキル、非置換C−C20−アリール、置換C−C20−アリール、非置換C−C20−ヘテロアリール、置換C−C20−ヘテロアリールからなる群から独立して選択され、ここで、C−C20−ヘテロアリール中のヘテロ原子は、硫黄、酸素及び窒素からなる群から選択され;
及びRは、非置換C−C20−アルキル、置換C−C20−アルキル、非置換C−C15−シクロアルキル、置換C−C15−シクロアルキル、非置換C−C20−アリール、置換C−C20−アリールからなる群から独立して選択され;
Mは、Fe、Ru、Os及びNiからなる群から選択され;
mは0〜4の整数であり;
jは0又は1であり;かつ
j=0の場合、nは0〜5の整数であり;
j=1の場合、nは0〜4の整数であり;かつ
*は光学活性炭素原子を示す。
【0080】
式(I)の好ましい化合物は化合物A*(HPO)であり、式(II)の好ましい化合物は化合物Bであり、式(III)の好ましい化合物は化合物Cであり、式(IV)の好ましい化合物は化合物Dである:
【0081】
一実施態様では、式(III)の化合物は化合物Cであり、式(IV)の化合物は化合物Dであり、ジメチルアミノピリジン(DMAP)が、化合物Dから化合物Cを調製する方法において塩基として使用されうる。
【0082】
この場合、化合物A*(HPO)は、
a)DMAP・HPO及びDMAP・HOAcを含む化合物A*(HPO)にメタノールを加えて、固液混合物を生成する工程;
b)化合物A*(HPO)及びDMAP・HOAcを含む液体を、工程a)の固液混合物から分離する工程;
c)工程b)の液体からDMAP・HOAcを含む化合物A*(HPO)を単離する工程;
d)ジクロロメタン又はアセトニトリルを、工程c)のDMAP・HOAcを含む単離された化合物A*(HPO)に添加して、第二の固液混合物を生成する工程;
e)工程d)の第二の固液混合物から固体を単離して、工程a)〜e)の前よりも高純度の化合物A*(HPO)を生成する工程
を含む更なる精製によって、DMAP・HPO及びDMAP・HOAcのような不純物を含まない状態で単離されうる。
【0083】
一実施態様では、式(III)の化合物は、その場で、従って更なる単離なしに、式HNRの化合物との反応前に、得られる。
【0084】
[式(IV)及び(V)のメタロセニル化合物]
式(V)のメタロセニルカルボニル化合物は、式(IV)のメタロセニルアルコールに不斉的に還元される:
、R、R、R、M、m、n、及びjは、上に一般的に記載された通りである。
【0085】
[不斉移動水素化触媒]
不斉移動水素化触媒は、式(VI)の錯体でありうる。式(VI)の錯体は、ここではテザー型錯体と呼ぶ場合がある。
[上式中、
、R、R、R及びRは、水素、置換されていてもよい直鎖C1−20アルキル、分岐又は環状C3−20アルキル、置換されていてもよい直鎖C1−20アルコキシ、分岐又は環状C3−20アルコキシ、置換されていてもよいC6−20アリール、置換されていてもよいC6−20アリールオキシ、−OH、CN、−NR2021、−COOH、COOR20、−CONH、−CONR2021及び−CFからなる群からそれぞれ独立して選択され、ここで、置換基が、一又は複数の直鎖C1−20アルキル、分岐又は環状C3−20アルキル、直鎖C1−20アルコキシ、分岐又は環状C3−20アルコキシ、C6−20アリール、C6−20アリールオキシ、−OH、−CN、−NR3031、−COOR30、−CONR3031及び−CFからなる群から選択され;及び/又は
とR、RとR、RとR、又はRとRは一緒になって、一又は複数の直鎖C1−20アルキル、分岐又は環状C3−20アルキル、置換されていてもよい直鎖C1−20アルコキシ、分岐又は環状C3−20アルコキシ、C6−20アリール、C6−20アリールオキシ、−OH、−CN、−NR2021、−COOR20、−CONR2021及び−CFで置換されていてもよい、6〜10個の炭素原子からなる芳香環を形成し;
、R7、R及びRは、水素、置換されていてもよい直鎖C1−20アルキル、分岐又は環状C3−20アルキル、置換されていてもよい直鎖C1−20アルコキシ、分岐又は環状C3−20アルコキシ、置換されていてもよいC6−20アリール及び置換されていてもよいC6−20アリールオキシからなる群からそれぞれ独立して選択され、ここで、置換基が、一又は複数の直鎖C1−20アルキル、分岐又は環状C3−20アルキル、置換されていてもよい直鎖C1−20アルコキシ、分岐又は環状C3−20アルコキシ、C6−20アリール、C6−20アリールオキシ、−OH、−CN、−NR2021、−COOR20、−CONR2021及び−CFからなる群から選択され、又は
とRはそれらが結合している炭素原子と一緒になって、及び/又はR及びRはそれらが結合している炭素原子と一緒になって、置換されていてもよいC3−20シクロアルキル又は置換されていてもよいC2−20シクロアルコキシを形成し、ここで、置換基が、一又は複数の直鎖C1−20アルキル、分岐又は環状C3−20アルキル、直鎖C1−20アルコキシ、分岐又は環状C3−20アルコキシ、C6−20アリール、C6−20アリールオキシ、−OH、−CN、−NR2021、−COOR20、−CONR2021及び−CFからなる群から選択され、又は
及びRの一つとR及びRの一つは、一緒になって、置換されていてもよいC5−10シクロアルキル又は置換されていてもよいC5−10シクロアルコキシを形成し、ここで、置換基が、一又は複数の直鎖C1−20アルキル、分岐又は環状C3−20アルキル、直鎖C1−20アルコキシ、分岐又は環状C3−20アルコキシ、C6−20アリール、C6−20アリールオキシ、−OH、−CN、−NR2021、−COOR20、−CONR2021及び−CFからなる群から独立して選択され、
但し、RとR及び/又はRとRは同じではなく、
10は、置換されていてもよい直鎖C1−20アルキル、分岐又は環状C3−20アルキル、置換されていてもよいC6−10アリール又は−NR1112であり、ここで、置換基が、一又は複数の直鎖、分岐又は環状C1−10アルキル、直鎖、分岐又は環状C1−10アルコキシ、C6−10アリール、C6−10アリールオキシ、−Hal、−OH、−CN、−NR2021、−COOR20、−CONR2021及び−CFからなる群から選択され;
11及びR12は、水素、置換されていてもよい直鎖C1−20アルキル、分岐又は環状C3−20アルキル及び置換されていてもよいC6−10アリールからなる群から独立して選択され、ここで、置換基が一又は複数の直鎖C1−20アルキル、分岐又は環状C3−20アルキル基、直鎖、分岐又は環状C1−10アルコキシ、C6−10アリール、C6−10アリールオキシ、−OH、−CN、−NR2021、−COOR20、−CONR2021及び−CFからなる群から選択され、又は
11とR12は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、置換されていてもよいC2−10シクロアルキル−アミノ基を形成し、ここで、置換基が、一又は複数の直鎖C1−20アルキル、分岐又は環状C3−20アルキル、直鎖、分岐又は環状C1−10アルコキシ、C6−10アリール、C6−10アリールオキシ、−OH、−CN、−NR2021、−COOR20、−CONR2021及び−CFからなる群から選択され;
20及びR21は、水素、置換されていてもよい直鎖C1−20アルキル、分岐又は環状C3−20アルキル、置換されていてもよい直鎖C1−20アルコキシ、分岐又は環状C3−20アルコキシ、置換されていてもよいC6−20アリール、置換されていてもよいC6−20アリールオキシ、−OH、−CN、−NR3031、−COOR30、−CONR3031及び−CFからなる群から独立して選択され、ここで、置換基が、一又は複数の直鎖C1−20アルキル、分岐鎖又は環状C3−20アルキル、直鎖C1−20アルコキシ、分岐又は環状C3−20アルコキシ、C6−20アリール、C6−20アリールオキシ、−OH、−CN及び−CFからなる群から選択され;
30及びR31は、水素、置換されていてもよい直鎖C1−20アルキル、分岐又は環状C3−20アルキル、置換されていてもよい直鎖C1−20アルコキシ、分岐又は環状C3−20アルコキシ、置換されていてもよいC6−20アリール、置換されていてもよいC6−20アリールオキシ、−OH、−CN及び−CFからなる群から独立して選択され、ここで、置換基が、一又は複数の直鎖C1−20アルキル、分岐又は環状C3−20アルキル、直鎖C1−20アルコキシ、分岐又は環状C3−20アルコキシ、C6−20アリール、C6−20アリールオキシ、−OH、−CN及び−CFからなる群から選択され;
Aは、置換されていてもよい直鎖又は分岐鎖C2−5アルキルであり、ここで、置換基が一又は複数の直鎖C1−20アルキル、分岐又は環状C3−20アルキル、直鎖、分岐又は環状C1−10アルコキシ、C6−10アリール及びC6−10アリールオキシからなる群から選択され、又は
Aは式(VII):
(式中、pは1、2、3又は4から選択される整数であり;
各R40は、直鎖C1−20アルキル、分岐又は環状C3−20アルキル、直鎖C1−20アルコキシ、分岐又は環状C3−20アルコキシ、C6−20アリール、C6−20アリールオキシ、−OH、−CN又は−CFからなる群から独立して選択され;
q及びrは、独立して0、1、2又は3から選択される整数であり、ここでq+r=1、2又は3であり;
各R41は、水素、直鎖C1−20アルキル、分岐又は環状C3−20アルキル、直鎖C1−20アルコキシ、分岐又は環状C3−20アルコキシ、C6−20アリール、C6−20アリールオキシ、−OH、−CN及び−CFからなる群から独立して選択される)の基であり;又は
Aは式(VIII):
(上式中、XはO又はSであり;
s及びtは独立して0、1、2又は3から選択される整数であり、ここでs+t=1、2又は3であり、
各R42は、水素、直鎖C1−20アルキル、分岐又は環状C3−20アルキル、直鎖C1−20アルコキシ、分岐又は環状C3−20アルコキシ、C6−20アリール、C6−20アリールオキシ、−OH、−CN及び−CFからなる群から独立して選択される)の基であり;
かつ
Halはハロゲンである]
【0086】
とR及び/又はRとRが同じ基ではない場合、RとR及び/又はRとRが結合している炭素原子は不斉である。一実施態様では、RとRは同じ基ではない。別の実施態様では、RとRは同じ基ではない。不斉炭素原子は、記号「*」で表される。従って、式(VI)の錯体はキラル(光学活性)であり、本発明の移動水素化法は不斉移動水素化法である。
【0087】
、R、R、R及びRは、水素、直鎖C1−20アルキル、分岐又は環状C3−20アルキル、直鎖C1−20アルコキシ、分岐又は環状C3−20アルコキシ、C6−20アリール、C6−20アリールオキシ、−OH、−CN、−NR2021、−COOH、COOR20、−CONH、−CONR2021及び−CFからなる群からそれぞれ独立して選択されうる。別の実施態様では、R、R、R、R及びRは、水素、直鎖又は分岐鎖C1−10アルキル、直鎖又は分岐鎖C1−10アルコキシ、C6−10アリール、C6−10アリールオキシ及び−OHからなる群からそれぞれ独立して選択される。好ましくは、R、R、R、R及びRは、水素、直鎖C1−10アルキル及び分岐鎖C1−10アルキルからなる群からそれぞれ独立して選択される。R、R、R、R、及びRは、水素、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、及びt−ブチルからなる群からそれぞれ独立して選択されうる。例えば、R、R、R、R及びRはそれぞれ水素でありうる。別の実施態様では、Rはメチルであり得、R、R、R及びRはそれぞれ水素でありうる。
【0088】
更に別の実施態様では、R、R、R及びRは、水素、置換されていてもよい直鎖又は分岐鎖C1−10アルキル、置換されていてもよい直鎖又は分岐鎖C1−10アルコキシ、置換されていてもよいC6−10アリール及び置換されていてもよいC6−10アリールオキシからなる群からそれぞれ独立して選択され、ここで、置換基は、直鎖又は分岐鎖C1−10アルキル、直鎖又は分岐鎖C1−10アルコキシ、C6−10アリール、C6−10アリールオキシ及び−OHからなる群から選択される。基R、R、R及びRは、水素及び置換されていてもよいC6−10アリールからなる群からそれぞれ独立して選択されうる。例えば、R、R、R及びRはそれぞれ水素又はフェニルからなる群から独立して選択されうる。一実施態様では、RとRの一方はフェニルで、RとRの他方は水素である。一実施態様では、RとRの一方はフェニルで、RとRの他方は水素である。
【0089】
別の実施態様では、RとRはそれらが結合している炭素原子と一緒に、及び/又はRとRはそれらが結合している炭素原子と一緒に、置換されていてもよいC5−10シクロアルキル又は置換されていてもよいC5−10シクロアルコキシを形成し、ここで、置換基は、直鎖又は分岐鎖C1−10、直鎖又は分岐鎖C1−10アルコキシ、C6−10アリール、C6−10アリールオキシ及び−OHからなる群から選択される。
【0090】
更に別の実施態様では、R及びRの一方とR及びRの一方は、一緒になって、置換されていてもよいC5−10シクロアルキル又は置換されていてもよいC5−10シクロアルコキシを形成し、ここで、置換基は、直鎖又は分枝鎖C1−10アルキル、直鎖又は分岐鎖C1−10アルコキシ、C6−10アリール、C6−10アリールオキシ及び−OHからなる群から選択される。
【0091】
更に別の実施態様では、R10は、置換されていてもよい直鎖、分岐又は環状C1−10アルキル、置換されていてもよいC6−10アリールであり、ここで、置換基は、一又は複数の直鎖、分岐又は環状C1−10アルキル、直鎖、分岐又は環状C1−10アルコキシ、C6−10アリール、C6−10アリールオキシ、−Hal、−OH、−CN、−NR2021、−COOR20、−CONR2021及び−CFからなる群から選択される。別の実施態様では、置換基は、一又は複数の直鎖、分岐又は環状C1−10アルキル、直鎖、分岐又は環状C1−10アルコキシ、C6−10アリール、C6−10アリールオキシ、−Hal、又は−CFからなる群から選択される。別の実施態様では、R10は、一又は複数の直鎖又は分岐鎖C1−10アルキル基で置換されていてもよいC6−10アリールあるいは直鎖又は分岐鎖C1−10アルキルである。R10の例には、p−トリル、メチル、p−メトキシフェニル、p−クロロフェニル、トリフルオロメチル、3,5−ジメチルフェニル、2,4,6−トリメチルフェニル、2,4,6−トリイソプロピルフェニル、4−tert−ブチルフェニル、ペンタメチルフェニル及び2−ナフチルが含まれるが、これらに限定されない。R10はメチル基又はトリル基でありうる。
【0092】
別の実施態様では、R10は−NR1112であり、ここで、R11及びR12は、直鎖又は分岐鎖C1−10アルキル及び一又は複数の直鎖又は分岐鎖C1−10アルキル基で置換されていてもよいC6−10アリールからなる群から独立して選択される。−NR1112は−NMeでありうる。
【0093】
更に別の実施態様では、R11とR12は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、置換されていてもよいC5−10シクロアルキル−アミノ基を形成し、ここで、置換基は、直鎖又は分岐鎖C1−10アルキル、直鎖又は分岐鎖C1−10アルコキシ、C6−10アリール、C6−10アリールオキシ及び−OHからなる群から選択される。
【0094】
一実施態様では、Aは置換されていてもよい直鎖又は分岐鎖C2−5アルキル、好ましくは置換されていてもよい直鎖又は分岐鎖C3−5アルキルであり、ここで、置換基は、直鎖又は分岐鎖C1−10アルキル、直鎖又は分岐鎖C1−10アルコキシ、C6−10アリール及びC6−10アリールオキシからなる群から選択される。Aは、−(CH−、−(CH−、−(CH−又は−(CH−、例えば−(CH−又は−(CH−から選択されうる。
【0095】
あるいは、Aは式(VII)の基であり得、すなわち、−[C(R41−及び−[C(R41−基が互いにオルトである。
(上式中、pは1、2、3又は4から選択される整数であり;
各R40は、直鎖C1−20アルキル、分岐又は環状C3−20アルキル、直鎖C1−20アルコキシ、分岐又は環状C3−20アルコキシ、C6−20アリール、C6−20アリールオキシ、−OH、−CN又は−CFからなる群から独立して選択され;
q及びrは、独立して0、1、2又は3から選択される整数であり、ここで、q+r=1、2又は3であり;かつ
各R41は、水素、直鎖C1−20アルキル、分岐又は環状C3−20アルキル、直鎖C1−20アルコキシ、分岐又は環状C3−20アルコキシ、C6−20アリール、C6−20アリールオキシ、−OH、−CN又は−CFからなる群から独立して選択される)
【0096】
一実施態様では、pは0である。従って、フェニル環は如何なるR40基でも置換されていない。
【0097】
別の実施態様では、各R41は、水素、直鎖C1−10アルキル及び分岐鎖C1−10アルキルからなる群から独立して選択される。より好ましくは、各R41は、水素、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル及びt−ブチルからなる群からそれぞれ独立して選択される。一実施態様では、各R41は水素である。
【0098】
一実施態様では、q+rは1である。別の実施態様では、q+rは2である。更に別の実施態様では、q+rは3である。
【0099】
Aの例には、次のものが含まれるが、これらに限定されない:
【0100】
別の実施態様では、Aは式(VIII):
(上式中、XはO又はSであり;
s及びtは独立して0、1、2又は3から選択される整数であり、ここで、s+t=1、2又は3であり;
各R42は、水素、直鎖C1−20アルキル、分岐又は環状C3−20アルキル、直鎖C1−20アルコキシ、分岐又は環状C3−20アルコキシ、C6−20アリール、C6−20アリールオキシ、−OH、−CN及び−CFからなる群から独立して選択される)の基である。
【0101】
一実施態様では、s+tは1でありうる。別の実施態様では、s+tは2でありうる。更に別の実施態様では、s+tは3でありうる。
【0102】
一実施態様では、XはO、すなわち酸素原子である。別の実施態様では、XはS、すなわち硫黄原子である。
【0103】
別の実施態様では、各R42は、水素、直鎖C1−10アルキル及び分岐鎖C1−10アルキルからなる群から独立して選択される。より好ましくは、各R42は、水素、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル及びt−ブチルからなる群からそれぞれ独立して選択される。一実施態様では、各R42は水素である。
【0104】
Aの例には、次のものが含まれるが、これらに限定されない:
【0105】
一実施態様では、Aには次のものが含まれるが、これらに限定されない:
【0106】
一実施態様では、Halは塩素、臭素又はヨウ素、好ましくは塩素である。
【0107】
式(VI)の金属錯体は、次のものからなる群から選択されうる:
【0108】
式(VI)の金属錯体は、次のものからなる群から選択されうる:
【0109】
式(VI)の金属錯体の調製法は、国際公開第2010/106364号、国際公開第2016/042298号及び欧州特許出願公開第2609103号に記載されている。
【0110】
不斉移動水素化触媒は、式(IX):
[上式中、
101、R102、R103、R104、R105及びR106は、水素、置換されていてもよい直鎖C1−20アルキル、分岐又は環状C3−20アルキル、置換されていてもよい直鎖C1−20アルコキシ、分岐又は環状C3−20アルコキシ、置換されていてもよいC6−20アリール、置換されていてもよいC6−20アリールオキシ、−OH、CN、−NR200201、−COOH、COOR200、−CONH、−CONR200201及び−CFからなる群からそれぞれ独立して選択され、ここで、置換基は、一又は複数の直鎖C1−20アルキル、分岐又は環状C3−20アルキル、直鎖C1−20アルコキシ、分岐又は環状C3−20アルコキシ、C6−20アリール、C6−20アリールオキシ、−OH、−CN、−NR300301、−COOR300、−CONR300301及び−CFからなる群から選択され;及び/又は
101とR102、R102とR103、R103とR104、R104とR105、又はR105とR106は一緒になって、一又は複数の直鎖C1−20アルキル、分岐又は環状C3−20アルキル、直鎖C1−20アルコキシ、分岐又は環状C3−20アルコキシ、C6−20アリール、C6−20アリールオキシ、−OH、−CN、−NR200201、−COOR200、−CONR200201及び−CFで置換されていてもよい6〜10個の炭素原子からなる芳香環を形成し;
107、R108、R109及びR110は、水素、置換されていてもよい直鎖C1−20アルキル、分岐又は環状C3−20アルキル、置換されていてもよい直鎖C1−20アルコキシ、分岐又は環状C3−20アルコキシ、置換されていてもよいC6−20アリール及び置換されていてもよいC6−20アリールオキシからなる群からそれぞれ独立して選択され、ここで、置換基は、一又は複数の直鎖C1−20アルキル、分岐又は環状C3−20アルキル、直鎖C1−20アルコキシ、分岐又は環状C3−20アルコキシ、C6−20アリール、C6−20アリールオキシ、−OH、−CN、−NR200201、−COOR200、−CONR200201及び−CFからなる群から選択され、又は
107とR108はそれらが結合している炭素原子と一緒になって、及び/又はR109とR110はそれらが結合している炭素原子と一緒になって、置換されていてもよいC3−20シクロアルキル又は置換されていてもよいC2−20シクロアルコキシを形成し、ここで、置換基は、一又は複数の直鎖C1−20アルキル、分岐又は環状C3−20アルキル、直鎖C1−20アルコキシ、分岐又は環状C3−20アルコキシ、C6−20アリール、C6−20アリールオキシ、−OH、−CN、−NR200201、−COOR200、−CONR200201及び−CFからなる群から選択され、又は
107及びR108の一つとR109及びR110の一つは、一緒になって、置換されていてもよいC5−10シクロアルキル又は置換されていてもよいC5−10シクロアルコキシを形成し、ここで、置換基は、一又は複数の直鎖C1−20アルキル、分岐又は環状C3−20アルキル、直鎖C1−20アルコキシ、分岐又は環状C3−20アルコキシ、C6−20アリール、C6−20アリールオキシ、−OH、−CN、−NR200201、−COOR200、−CONR200201及び−CFからなる群から独立して選択され、
但し、R107とR108及び/又はR109とR110は同じではなく、
111は置換されていてもよい直鎖、分岐又は環状C1−10アルキル、置換されていてもよいC6−10アリール又は−NR112113であり、ここで、置換基は、一又は複数の直鎖、分岐又は環状C1−10アルキル、直鎖、分岐又は環状C1−10アルコキシ、C6−10アリール、C6−10アリールオキシ、−Hal、−OH、−CN、−NR200201、−COOR200、−CONR200201及び−CFからなる群から選択され;
112及びR113は、水素、置換されていてもよい直鎖、分岐又は環状C1−10アルキル及び置換されていてもよいC6−10アリールからなる群から独立して選択され、ここで、置換基は、一又は複数の直鎖、分岐又は環状C1−10アルキル基、直鎖、分岐又は環状C1−10アルコキシ、C6−10アリール、C6−10アリールオキシ、−OH、−CN、−NR200201、−COOR200、−CONR200201及び−CFからなる群から選択され、又は
112とR113は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、置換されていてもよいC2−10シクロアルキル−アミノ基を形成し、ここで、置換基は、一又は複数の直鎖、分岐又は環状C1−10アルキル、直鎖、分岐又は環状C1−10アルコキシ、C6−10アリール、C6−10アリールオキシ、−OH、−CN、−NR200201、−COOR200、−CONR200201及び−CFからなる群から選択され;
200及びR201は、水素、置換されていてもよい直鎖C1−20アルキル、分岐又は環状C3−20アルキル、置換されていてもよい直鎖C1−20アルコキシ、分岐又は環状C3−20アルコキシ、置換されていてもよいC6−20アリール、置換されていてもよいC6−20アリールオキシ、−OH、−CN、−NR300301、−COOR300、−CONR300301及び−CFからなる群から独立して選択され、ここで、置換基は、一又は複数の直鎖C1−20アルキル、分岐又は環状C3−20アルキル、直鎖C1−20アルコキシ、分岐又は環状C3−20アルコキシ、C6−20アリール、C6−20アリールオキシ、−OH、−CN及び−CFからなる群から選択され;
300及びR301は、水素、置換されていてもよい直鎖C1−20アルキル、分岐又は環状C3−20アルキル、置換されていてもよい直鎖C1−20アルコキシ、分岐又は環状C3−20アルコキシ、置換されていてもよいC6−20アリール、置換されていてもよいC6−20アリールオキシ、−OH、−CN及び−CFからなる群から独立して選択され、ここで、置換基は、一又は複数の直鎖C1−20アルキル、分岐鎖又は環状C3−20アルキル、直鎖C1−20アルコキシ、分岐又は環状C3−20アルコキシ、C6−20アリール、C6−20アリールオキシ、−OH、−CN及び−CFからなる群から選択され、
かつ
Hal’がハロゲンである]
の錯体でありうる。
【0111】
107とR108及び/又はR109とR110が同じ基ではない場合、R107とR108及び/又はR109とR110が結合している炭素原子は不斉である。一実施態様では、R107とR108が同じ基ではない。別の実施態様では、R108とR109が同じ基ではない。不斉炭素原子は、記号「*」で表される。従って、式(IX)の錯体はキラル(光学活性)であり、本発明の移動水素化法は不斉移動水素化法である。
【0112】
一実施態様では、R101、R102、R103、R104、R105、及びR106は、水素、直鎖C1−20アルキル、分岐又は環状C3−20アルキル、直鎖C1−20アルコキシ、分岐又は環状C3−20アルコキシ、C6−20アリール、C6−20アリールオキシ、−OH、−CN、−NR200201、−COOH、COOR200、−CONH、−CONR200201及び−CFからなる群からそれぞれ独立して選択される。別の実施態様では、R101、R102、R103、R104、R105及びR106は、水素、直鎖又は分岐鎖C1−10アルキル、直鎖又は分岐鎖C1−10アルコキシ、C6−10アリール、C6−10アリールオキシ及び−OHからなる群からそれぞれ独立して選択される。例えば、R101、R102、R103、R104、R105及びR106は、水素、直鎖C1−10アルキル及び分岐鎖C1−10アルキルからなる群からそれぞれ独立して選択されうる。R101、R102、R103、R104、R105及びR106は、水素、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル及びt−ブチルからなる群からそれぞれ独立して選択されうる。例えば、R101、R102、R103、R104、R105及びR106はそれぞれ水素であり得、すなわち、Ru原子に配位したアリール環はベンゼンである。別の実施態様では、R102はメチルであり得、R105はi−プロピルであり得、R101、R103、R104及びR106はそれぞれ水素であり得、すなわち、Ru原子に配位したアリール環はp−シメンである。別の実施態様では、R101、R103、及びR105はそれぞれメチルであり、R102、R104、及びR106はそれぞれ水素であり、すなわち、Ru原子に配位したアリール環はメシチレンである。
【0113】
更に別の実施態様では、R107、R108、R109及びR110は、水素、置換されていてもよい直鎖又は分岐鎖C1−10アルキル、置換されていてもよい直鎖又は分岐鎖C1−10アルコキシ、置換されていてもよいC6−10アリール及び置換されていてもよいC6−10アリールオキシからなる群からそれぞれ独立して選択され、ここで、置換基は、直鎖又は分岐鎖C1−10アルキル、直鎖又は分岐鎖C1−10アルコキシ、C6−10アリール、C6−10アリールオキシ及び−OHからなる群から選択される。基R107、R108、R109及びR110は、水素及び置換されていてもよいC6−10アリールからなる群からそれぞれ独立して選択されうる。例えば、R107、R108、R109及びR110は、水素又はフェニルからなる群からそれぞれ独立して選択されうる。一実施態様では、R107とR108の一方がフェニルで、R107とR108の他方が水素である。一実施態様では、R109とR110の一方がフェニルで、R109とR110の他方が水素である。
【0114】
別の実施態様では、R107とR108はそれらが結合している炭素原子と一緒に、及び/又はR109とR110はそれらが結合している炭素原子と一緒に、置換されていてもよいC5−10シクロアルキル又は置換されていてもよいC5−10シクロアルコキシを形成し、ここで、置換基は、直鎖又は分岐鎖C1−10、直鎖又は分岐鎖C1−10アルコキシ、C6−10アリール、C6−10アリールオキシ及び−OHからなる群から選択される。
【0115】
更に別の実施態様では、R107及びR108の一方と、R109及びR110の一方は、一緒になって、置換されていてもよいC5−10シクロアルキル又は置換されていてもよいC5−10シクロアルコキシを形成し、ここで、置換基は、直鎖又は分岐鎖C1−10アルキル、直鎖又は分岐鎖C1−10アルコキシ、C6−10アリール、C6−10アリールオキシ及び−OHからなる群から選択される。
【0116】
更に別の実施態様では、R111は、置換されていてもよい直鎖、分岐又は環状C1−10アルキル、置換されていてもよいC6−10アリールであり、ここで、置換基は、一又は複数の直鎖、分岐又は環状C1−10アルキル、直鎖、分岐又は環状C1−10アルコキシ、C6−10アリール、C6−10アリールオキシ、−Hal、−OH、−CN、−NR200201、−COOR200、−CONR200201及び−CFからなる群から選択される。別の実施態様では、置換基は、一又は複数の直鎖、分岐又は環状C1−10アルキル、直鎖、分岐又は環状C1−10アルコキシ、C6−10アリール、C6−10アリールオキシ、−Hal、又は−CFからなる群から選択される。別の実施態様では、R111は、一又は複数の直鎖又は分岐鎖C1−10アルキル基で置換されていてもよいC6−10アリールあるいは直鎖又は分岐鎖C1−10アルキルである。R111の例には、p−トリル、メチル、p−メトキシフェニル、p−クロロフェニル、トリフルオロメチル、3,5−ジメチルフェニル、2,4,6−トリメチルフェニル、2,4,6−トリイソプロピルフェニル、4−tert−ブチルフェニル、ペンタメチルフェニル及び2−ナフチルが含まれるが、これらに限定されない。R111はメチル又はトリル基でありうる。
【0117】
別の実施態様では、R111は−NR112113であり、ここで、R112及びR113は、直鎖又は分岐鎖C1−10アルキル及び一又は複数の直鎖又は分岐鎖C1−10アルキル基で置換されていてもよいC6−10アリールからなる群から独立して選択される。−NR112113は−NMeでありうる。
【0118】
更に別の実施態様では、R112とR113は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、置換されていてもよいC5−10シクロアルキル−アミノ基を形成し、ここで、置換基は、直鎖又は分岐鎖C1−10アルキル、直鎖又は分岐鎖C1−10アルコキシ、C6−10アリール、C6−10アリールオキシ及び−OHからなる群から選択される。
【0119】
Hal’は塩素、臭素又はヨウ素、例えば塩素でありうる。
【0120】
式(IX)の金属錯体は、次のものからなる群から選択されうる:
【0121】
式(IX)の金属錯体の調製法は、欧州特許第0916637B号(高砂香料工業株式会社等)において与えられている。
【0122】
[不斉移動水素化反応]
移動水素化は、水素ガス以外の供給源から分子への水素の付加である。不斉移動水素反応は、プロキラル分子(例えば式(V)のメタロセニル化合物)を光学活性生成物(例えば式(IV)のメタロセニル化合物)に還元する。
【0123】
本発明において、ATH反応は、ATH触媒と活性化ギ酸の存在下で水性溶媒中で実施される。
【0124】
ATH触媒と活性化ギ酸は水性溶媒中で組み合わされる。一実施態様では、水性溶媒は水である。水は、それ自体で、又は活性化ギ酸混合物の一部として、ATH反応に導入されうる。別の実施態様では、水性溶媒は水と少なくとも一種の水混和性溶媒である。ATH触媒及び活性化ギ酸を溶解することができ、化合物(V)から化合物(IV)への化学転化率及び/又は化合物(IV)の鏡像異性体純度に悪影響を及ぼさない任意の適切な水混和性溶媒が使用されうる。ATH触媒が式(VI)の錯体である場合、水性溶媒は、水、アミド溶媒、環状エーテル溶媒及びエステル溶媒からなる群から選択されうる。アミド溶媒の例には、ジメチルホルムアミド(DMF)及びジメチルアセトアミド(DMA)が含まれるが、これらに限定されない。環状エーテル溶媒の例には、テトラヒドロフラン(THF)及び1,4−ジオキサンが含まれるが、これらに限定されない。水と水混和性溶媒の混合物には、水とTHF、水と1,4−ジオキサン、水とDMF、又は水とDMAが含まれるが、これらに限定されない。ある種のエステル溶媒は、少量で水溶性である。これらのエステル溶媒には、酢酸エチル及び酢酸プロピル(i−又はn−)が含まれるが、これらに限定されない。
【0125】
ATH反応は、単相性(すなわち均一)又は二相性でありうる。ATH反応は、水性相に測定可能な量の有機溶媒が溶解している場合、二相性でありうる。
【0126】
ATH反応は、60℃よりも高く、反応混合物の沸点未満の温度で実施されうる。反応混合物の沸点は、使用される水性溶媒に応じて変わりうる。一実施態様では、ATH反応は、>約60℃からおよそ≦約100℃の範囲の一又は複数の温度で実施される。幾つかの実施態様では、水素化は≧約65℃の一又は複数の温度で実施される。幾つかの実施態様では、水素化は≧約70℃の一又は複数の温度で実施される。幾つかの実施態様では、水素化は≧75℃の約一又は複数の温度で実施される。幾つかの実施態様では、水素化は≦約95℃の一又は複数の温度で実施される。幾つかの実施態様では、水素化は≦約90℃の一又は複数の温度で実施される。幾つかの実施態様では、水素化は≦約85℃の一又は複数の温度で実施される。好ましい一実施態様では、水素化は、約80℃のような、≧約77℃から≦約85℃の範囲の一又は複数の温度で実施される。
【0127】
ATH反応における水素供与体は活性化ギ酸である。「活性化ギ酸」とは、ギ酸、第三級アミン塩基、及び場合により水の混合物を指し、ATH反応のための液体還元剤を形成する。水が反応の個々の成分としてATH反応に添加される場合、活性化ギ酸は、ギ酸と第三級有機塩基の混合物でありうる。あるいは、又は加えて、活性化ギ酸は、ギ酸、第三級アミン塩基及び水の混合物でありうる。この場合、個々の成分として反応混合物に水を更に加える必要はない場合がある。第三級アミン塩基には、NR’R’’R’’’が含まれるが、これに限定されず、ここで、R’、R’’、及びR’’’は独立して置換又は非置換C20−アルキル基である。第三級アミンには、トリメチルアミン及びトリエチルアミン、例えばトリエチルアミンが含まれるが、これらに限定されない。一実施態様では、活性化ギ酸は、濃ギ酸、トリエチルアミン及び水の混合物である。活性化ギ酸は、例えば液体にアルゴンや窒素などの不活性ガスを吹き込むことにより、使用前に脱酸素されうる。
【0128】
ギ酸:第三級アミンのモル比は、約1:1から約1.5:1モルの範囲であり得、すなわち、ギ酸は僅かに過剰でありうる。一実施態様では、ギ酸:第三級アミンのモル比は約1:1モルである。別の実施態様では、ギ酸:第三級アミンのモル比は約1.1:1モルである。更に別の実施態様では、ギ酸:第三級アミンのモル比は約1.2:1モルである。更に別の実施態様では、ギ酸:第三級アミンのモル比は約1.4:1モルである。
【0129】
ギ酸:三級アミン液が水で希釈される場合、ギ酸:第三級アミンの濃度は1M:1Mから約1.2M:1Mの範囲でありうる。一実施態様では、モル比は約1M:1Mである。別の実施態様では、モル比は約1.1M:1Mである。更に別の実施態様では、モル比は約1.2M:1Mである。
【0130】
水中のギ酸:第三級アミンのモル比が約1M:1Mから約1.2M:1Mの範囲にある場合、液体のpHは約4から約10の範囲になる。ギ酸:第三級アミンの濃度の僅かな変動がpHの大きな変化をもたらすことが見出された。一実施態様では、水中におけるギ酸:トリエチルアミン1M:1MのpHは約pH6.5である。
【0131】
所定の実施態様では、活性化ギ酸は、ギ酸とトリエチルアミンの共沸混合物、すなわち、5M:2Mの比のギ酸:トリエチルアミンではない。
【0132】
還元されるカルボニル基(すなわち、−COR又は−COR)当たりの活性化ギ酸のモル比は、約1:1から約1.5:1モルの範囲であり得、すなわち、活性化ギ酸は僅かに過剰でありうる。一実施態様では、還元されるカルボニル基当たりの活性化ギ酸のモル比は約1:1モルである。別の実施態様では、還元されるカルボニル基当たりの活性化ギ酸のモル比は約1.1:1モルである。更に別の実施態様では、還元されるカルボニル基当たりの活性化ギ酸のモル比は約1.2:1モルである。更に別の実施態様では、還元されるカルボニル基当たりの活性化ギ酸のモル比は約1.4:1モルである。
【0133】
式(V)のメタロセニル化合物のATH触媒に対する基質/触媒(S/C)モル比は、約100:1から約2000:1の範囲でありうる。幾つかの実施態様では、S/Cモル比は≧約150:1でありうる。幾つかの実施態様では、S/Cモル比は≧約200:1でありうる。幾つかの実施態様では、S/Cモル比は≧約250:1でありうる。幾つかの実施態様では、S/Cモル比は≧約300:1でありうる。幾つかの実施態様では、S/Cモル比は≧約350:1でありうる。幾つかの実施態様では、S/Cモル比は≧約400:1でありうる。幾つかの実施態様では、S/Cモル比は≧約450:1でありうる。幾つかの実施態様では、S/Cモル比は≧約500:1でありうる。幾つかの実施態様では、S/Cモル比は≧約550:1でありうる。幾つかの実施態様では、S/Cモル比は≧約600:1でありうる。幾つかの実施態様では、S/Cモル比は≦約2000:1でありうる。幾つかの実施態様では、S/Cモル比は≦約1750:1でありうる。幾つかの実施態様では、S/Cモル比は≦約1500:1でありうる。幾つかの実施態様では、S/Cモル比は≦約1250:1でありうる。幾つかの実施態様では、S/Cモル比は≦約1000:1でありうる。幾つかの実施態様では、S/Cモル比は≦約750:1でありうる。幾つかの実施態様では、S/Cモル比は≦約700:1でありうる。一実施態様では、S/Cモル比は≧600:1から≦約700:1の範囲、例えば約620:1又は645:1でありうる。化合物(IV)(例えば、キラルフェロセニルエタノール)の合成は、>100:1以上のS/Cモル比、特に≧600:1の高S/Cモル比ではこれまで記載されていないと思われる。高S/Cモル比でATH反応を実施する能力は、化合物(IV)を調製するための商業的に実行可能な工業プロセスの開発を可能にする。
【0134】
ATH反応は、窒素又はアルゴンなどの不活性雰囲気下で実施されうる。この場合、反応は、例えばバブラーを使用して、CO副生成物を放出するために開放系で実行されることが望ましい。不活性ガスは、反応からCOをパージする。
【0135】
ATH反応は、反応が完了したと判断されるまでの期間にわたって実施される。反応の完了は、インプロセス分析により、例えば、反応混合物のサンプルを採取し、HPLCでそれを分析して、転化率と鏡像体過剰率を決定することにより、判定されうる。所定の実施態様では、化合物(V)から化合物(IV)への転化率は>約50%である。所定の実施態様では、転化率は≧約60%である。所定の実施態様では、転化率は≧約70%である。所定の実施態様では、転化率は≧約80%である。所定の実施態様では、転化率は≧約85%である。所定の実施態様では、転化率は≧約90%である。所定の実施態様では、転化率は≧約95%である。所定の実施態様では、転化率は≧約97%である。所定の実施態様では、転化率は実質的に100%である。典型的には、反応は約48時間以内に完了する。化合物(B)の鏡像体過剰率は、≧90%ee、≧91%ee、≧92%ee、≧93%ee、≧94%ee、≧95%ee、≧96%ee、≧97%ee、≧98%ee、≧99%ee又はそれ以上でありうる。
【0136】
試薬は、任意の適切な順序で添加されうる。これに関して、反応器に化合物(V)が充填され、続いて活性化ギ酸とATH触媒が充填されうる。活性化ギ酸は一度に添加されてもよい。あるいは、活性化ギ酸は、ある期間にわたって(例えば、シリンジポンプを使用して)ゆっくりと連続的に、及び/又は反応過程中に少しずつ添加されうる。ATH反応により、還元されたカルボニル1モル当たり1モルのCOが生成されるので、かなりの量のガスが放出される。而して、活性化ギ酸のゆっくり/連続的及び/又は少しずつの添加は、反応容器中に存在する還元剤の量を制限することにより、ガスの蓄積を制御するのに役立つ。ATH触媒は、固体として、又は上記の水混和性溶媒の一つ(例えば、THF)の溶液として反応混合物に添加されうる。反応混合物は、適切な時間、適切な温度で撹拌されうる。
【0137】
反応が完了したら、反応容器は周囲温度まで冷却され、場合によっては一又は複数回の不活性ガス/真空サイクル(例えば、1、2、3、4、又は5サイクル)でパージされて、過剰な二酸化炭素が除去されうる。反応混合物はエステル溶媒(例えば酢酸エチル)で処理され、水又はブラインで一又は複数回(例えば1回、2回、3回以上)洗浄され、(例えば硫酸マグネシウムで)乾燥され、(例えばシリカと硫酸マグネシウムのパッドを通して)濾過されうる。生成物である化合物(IV)は、当該技術分野で周知の蒸留又はストリッピング法を使用して温度を上げるか圧力を下げる等により、有機溶媒を除去することにより得ることができる。
【0138】
化合物(IV)は、化合物(IV)を沈殿させ又は結晶化させる高温アルカン溶媒(例えばペンタン、ヘキサン又はヘプタン)で更に処理されうる。ついで、固体化合物(IV)を更なるアルカン溶媒で洗浄し、乾燥させうる。乾燥は、既知の方法を使用して、例えば、約1時間から約5日間、0.1〜30ミリバール下で、約10〜60℃、例えば20〜40℃の範囲の温度で実施されうる。
【0139】
化合物(IV)の単離収率は≧70%、≧71%、≧72%、≧73%、≧74%、≧75%又はそれ以上でありうる。所定の実施態様では、化合物(B)の単離収率は≧76%である。所定の実施態様では、化合物(IV)の単離収率は≧80%である。所定の実施態様では、化合物(IV)の単離収率は≧83%である。所定の実施態様では、化合物(IV)の単離収率は≧85%である。所定の実施態様では、化合物(IV)の単離収率は≧90%である。
【0140】
本発明の方法により調製された化合物(IV)は純粋である。所定の実施態様では、化合物(IV)の化学的純度は≧90%、≧91%、≧92%、≧93%、≧94%、≧95%又はそれ以上である。所定の実施態様では、化合物(IV)の化学的純度は≧95%である。所定の実施態様では、化合物(IV)の化学的純度は≧96%である。所定の実施態様では、化合物(IV)の化学的純度は≧97%である。所定の実施態様では、化合物(IV)の化学的純度は≧98%である。所定の実施態様では、化合物(IV)の化学的純度は≧99%である。
【0141】
単離された化合物(IV)の鏡像体過剰率は≧90%ee、≧91%ee、≧92%ee、≧93%ee、≧94%ee、≧95%ee、≧96%ee、≧97%ee、≧98%ee、≧99%ee又はそれ以上でありうる。
【0142】
式(V)の化合物は、例えば、Gokel等(J. Chem. Ed. 1972, 49, 4, 294)により記載された方法により得ることができる。
【0143】
[不斉触媒反応に有用な配位子への式(IV)のメタロセニルアルコールの転化]
式(IV)のメタロセニルアルコールは、当該技術分野で既知の方法による様々なキラルメタロセニル配位子の調製における重要な中間体である(例えば、Schaarschmidt及びLang, Organometallics, 2013, 32, 5668-5704を参照)。
【0144】
例えば、式(IV)のメタロセニルアルコールは、Bophoz配位子又はJosiphos配位子に転化されうる。この場合、MはFeで、mは0、1、2、又は3(但し4ではない)であり、−R*H(OH)基に対してオルトの炭素原子の少なくとも1個は非置換でなければならない(つまり−H)。−R*H(OH)基に対してオルトの炭素原子の少なくとも1個は、リン含有基が当該技術分野で既知の方法によりフェロセニル化合物に化学的に導入されるためには非置換でなければならない(すなわち−H)。
【0145】
配位子がJosiphos配位子である場合、配位子は式(La)又は(Lb):
(上式中、
及びRは、非置換C1−20−アルキル、置換C1−20−アルキル、非置換C3−20−シクロアルキル、置換C3−20−シクロアルキル、非置換C20−アルコキシ、置換C1−20−アルコキシ、非置換C5−20−アリール、置換C5−20−アリール、非置換C20−ヘテロアルキル、置換C1−20−ヘテロアルキル、非置換C2−20−ヘテロシクロアルキル、置換C2−20−ヘテロシクロアルキル、非置換C4−20−ヘテロアリール及び置換C4−20−ヘテロアリールからなる群から独立して選択され;
及びRは、非置換C1−20−アルキル、置換C1−20−アルキル、非置換C3−20−シクロアルキル、置換C3−20−シクロアルキル、非置換C1−20−アルコキシ、置換C1−20−アルコキシ、非置換C5−20−アリール、置換C5−20−アリール、非置換C1−20−ヘテロアルキル、置換C1−20−ヘテロアルキル、非置換C2−20−ヘテロシクロアルキル、置換C2−20−ヘテロシクロアルキル、非置換C4−20−ヘテロアリール及び置換C4−20−ヘテロアリールからなる群から独立して選択され;かつ
は上で定義された通りである)
のものでありうる。
【0146】
一実施態様では、Rは、非置換C1−20−アルキル及び置換C1−20−アルキルからなる群から選択される。一実施態様では、Rは、非置換の分岐又は直鎖アルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル又はステアリルである。好ましくは、Rはメチルである。
【0147】
一実施態様では、R及びRは、置換又は非置換の分岐又は直鎖アルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル又はステアリル、シクロアルキル基、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル又はアダマンチル、アリール基、例えばフェニル、ナフチル又はアントラシル及びヘテロアリール基、例えばフリルからなる群から独立して選択される。一実施態様では、アルキル基は、ハライド(−F、−Cl、−Br又は−I)又はアルコキシ基、例えばメトキシ、エトキシ又はプロポキシのような一又は複数の置換基で場合によっては置換されうる。アリール基は、ハライド(−F、−Cl、−Br又は−I)、直鎖又は分岐鎖C−C10−アルキル(例えばメチル)、C−C10アルコキシ、直鎖又は分岐鎖C−C10−(ジアルキル)アミノ、C3−10ヘテロシクロアルキル基(例えばモルホリニル及びピペラジニル)又はトリ(ハロ)メチル(例えばFC−)などの一又は複数(例えば、1、2、3、4、又は5)の置換基で場合によっては置換されうる。ヘテロアリール基は、ハライド(−F、−Cl、−Br又は−I)、直鎖又は分岐鎖C−C10−アルキル(例えばメチル)、C−C10アルコキシ、直鎖又は分岐鎖C−C10−(ジアルキル)アミノ又はトリ(ハロ)メチル(例えばFC−)などの一又は複数(例えば1、2、3、4、又は5)の置換基で場合によっては置換されうる。好ましくは、RとRは同じであり、tert−ブチル、シクロヘキシル、フェニル、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル、4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニル、4−トリフルオロメチルフェニル、1−ナフチル、3,5−キシリル、2−メチルフェニル及び2−フリル、最も好ましくはtert−ブチル、シクロヘキシル、フェニル、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル、4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニル、4−トリフルオロメチルフェニル、1−ナフチル及び2−フリルからなる群から選択される。
【0148】
一実施態様では、R及びRは、置換又は非置換の分枝又は直鎖アルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル又はステアリル、シクロアルキル基、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル又はアダマンチル、アリール基、例えばフェニル、ナフチル又はアントラシル、及びヘテロアリール基、例えばフリルからなる群から独立して選択される。一実施態様では、アルキル基は、ハライド(−F、−Cl、−Br又は−I)又はアルコキシ基、例えばメトキシ、エトキシ又はプロポキシのような一又は複数の置換基で場合によっては置換されうる。アリール基は、ハライド(−F、−Cl、−Br又は−I)、直鎖又は分岐鎖C−C10−アルキル(例えばメチル)、C−C10アルコキシ、直鎖又は分岐鎖C−C10−(ジアルキル)アミノ、C3−10ヘテロシクロアルキル基(例えばモルホリニル及びピペラジニル)又はトリ(ハロ)メチル(例えばFC−)のような一又は複数(例えば、1、2、3、4、又は5)の置換基で場合によっては置換されうる。ヘテロアリール基は、ハライド(−F、−Cl、−Br又は−I)、直鎖又は分岐鎖C−C10−アルキル(例えばメチル)、C−C10アルコキシ、直鎖又は分岐鎖C−C10−(ジアルキル)アミノ又はトリ(ハロ)メチル(例えばFC−)のような一又は複数(例えば1、2、3、4、又は5)の置換基で場合によっては置換されうる。好ましくは、R及びRは同じであり、tert−ブチル、シクロヘキシル、フェニル、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル、4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニル、4−トリフルオロメチルフェニル、1−ナフチル、3,5−キシリル、2−メチルフェニル及び2−フリル、最も好ましくはtert−ブチル、シクロヘキシル、フェニル、3,5−キシリル及び2−メチルフェニルからなる群から選択される。
【0149】
一実施態様では、式(La)の配位子は、次のものからなる群から選択される:
(R)−1−[(S)−2−(ジフェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルジシクロヘキシルホスフィン、
(R)−1−[(S)−2−(ジフェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−tert−ブチルホスフィン、
(R)−1−[(S)−2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)フェロセニル]エチルジシクロヘキシルホスフィン、
(R)−1−[(S)−2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)フェロセニル]エチルジフェニルホスフィン、
(R)−1−[(S)−2−(ジフェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−3,5−キシリルホスフィン、
(R)−1−[(S)−2−(ジ−3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルジシクロヘキシルホスフィン、
(R)−1−[(S)−2−(ジ−4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルジシクロヘキシルホスフィン、
(R)−1−[(S)−2−(ジ−3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−3,5−キシリルホスフィン、
(R)−1−[(S)−2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−tert−ブチルホスフィン、
(R)−1−[(S)−2−(ジ−(4−トリフルオロメチル)フェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−tert−ブチルホスフィン、
(R)−1−[(S)−2−(ジ−4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−tert−ブチルホスフィン、
(R)−1−[(S)−2−(ジ−2−フリルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−3,5−キシリルホスフィン、
(R)−1−[(S)−2−(ジ−2−フリルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−tert−ブチルホスフィン、
(R)−1−[(S)−2−(ジ−1−ナフチルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−tert−ブチルホスフィン、
(R)−1−[(S)−2−(ジ−1−ナフチルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−3,5−キシリルホスフィン、
(R)−1−[(S)−2−(ジ−4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−3,5−キシリルホスフィン、
(R)−1−[(S)−2−(ジ−4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−(2−メチルフェニル)ホスフィン、
(R)−1−[(S)−2−(ジ−2−フリルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−(2−メチルフェニル)ホスフィン、
(R)−1−[(S)−2−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)フェロセニル]エチルジフェニルホスフィン、
(R)−1−[(S)−2−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−(2−メチルフェニル)ホスフィン、
(R)−1−[(S)−2−(ジフェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルジフェニルホスフィン、
(R)−1−[(S)−2−(ジフェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ(アダマンチル)ホスフィン、及び
(R)−1−[(S)−2−(ジ(アダマンチル)ホスフィノ)フェロセニル]エチルジフェニルホスフィン。
【0150】
一実施態様では、式(Lb)の配位子は、次のものからなる群から選択される:
(S)−1−[(R)−2−ジ(フェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルジシクロヘキシルホスフィン、
(S)−1−[(R)−2−ジ(フェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−tert−ブチルホスフィン、
(S)−1−[(R)−2−ジ(シクロヘキシルホスフィノ)フェロセニル]エチルジシクロヘキシルホスフィン、
(S)−1−[(R)−2−ジ(シクロヘキシルホスフィノ)フェロセニル]エチルジフェニルホスフィン、
(S)−1−[(R)−2−ジ(フェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−3,5−キシリルホスフィン、
(S)−1−[(R)−2−ジ−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルジシクロヘキシルホスフィン、
(S)−1−[(R)−2−ジ−(4−メトキシ−3,5−ジメチル)フェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルジシクロヘキシルホスフィン、
(S)−1−[(R)−2−ジ−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−3,5−キシリルホスフィン、
(S)−1−[(R)−2−ジ(シクロヘキシルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−tert−ブチルホスフィン、
(S)−1−[(R)−2−ジ−((4−トリフルオロメチル)フェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−tert−ブチルホスフィン、
(S)−1−[(R)−2−ジ−(4−メトキシ−3,5−ジメチル)フェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−tert−ブチルホスフィン、
(S)−1−[(R)−2−ジ−(2−フリル)ホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−3,5−キシリルホスフィン、
(S)−1−[(R)−2−ジ−(2−フリル)ホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−tert−ブチルホスフィン、
(S)−1−[(R)−2−ジ(1−ナフチル)ホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−tert−ブチルホスフィン、
(S)−1−[(R)−2−ジ(1−ナフチル)ホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−3,5−キシリルホスフィン、
(S)−1−[(R)−2−ジ−(4−メトキシ−3,5−ジメチル)フェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−3,5−キシリルホスフィン、
(S)−1−[(R)−2−ジ−(4−メトキシ−3,5−ジメチル)フェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−(2−メチルフェニル)ホスフィン、
(S)−1−[(R)−2−ジ−(2−フリル)ホスフィノフェロセニル]エチルジ−(2−メチルフェニル)ホスフィン、
(S)−1−[(R)−2−ジ(tert−ブチルホスフィノ)フェロセニル]エチルジフェニルホスフィン、
(S)−1−[(R)−2−ジ(tert−ブチルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−(2−メチルフェニル)ホスフィン、
(S)−1−[(R)−2−ジフェニルホスフィノフェロセニル]エチルジフェニルホスフィン、
(S)−1−[(R)−2−(ジフェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ(アダマンチル)ホスフィン、及び
(S)−1−[(R)−2−(ジ(アダマンチル)ホスフィノ)フェロセニル]エチルジフェニルホスフィン。
【0151】
配位子がBophoz配位子である場合、配位子は式(Lc)又は(Ld)
(上式中、
及びRは、非置換C1−20−アルキル、置換C1−20−アルキル、非置換C3−20−シクロアルキル、置換C3−20−シクロアルキル、非置換C1−20−アルコキシ、置換C1−20−アルコキシ、非置換C5−20−アリール、置換C5−20−アリール、非置換C1−20−ヘテロアルキル、置換C1−20−ヘテロアルキル、非置換C2−20−ヘテロシクロアルキル、置換C2−20−ヘテロシクロアルキル、非置換C4−20−ヘテロアリール及び置換C4−20−ヘテロアリールからなる群から独立して選択され;
は、非置換C1−20−アルキル、置換C1−20−アルキル、非置換C3−20−シクロアルキル、置換C3−20−シクロアルキル、非置換C1−20−アルコキシ、置換C1−20−アルコキシ、非置換C5−20−アリール、置換C5−20−アリール、非置換C1−20−ヘテロアルキル、置換C1−20−ヘテロアルキル、非置換C2−20−ヘテロシクロアルキル、置換C2−20−ヘテロシクロアルキル、非置換C4−20−ヘテロアリール及び置換C4−20−ヘテロアリールからなる群から選択され;
及びRz’は、非置換C1−20−アルキル、置換C1−20−アルキル、非置換C3−20−シクロアルキル、置換C3−20−シクロアルキル、非置換C1−20−アルコキシ、置換C1−20−アルコキシ、非置換C5−20−アリール、置換C5−20−アリール、非置換C1−20−ヘテロアルキル、置換C1−20−ヘテロアルキル、非置換C2−20−ヘテロシクロアルキル、置換C2−20−ヘテロシクロアルキル、非置換C4−20−ヘテロアリール及び置換C4−20−ヘテロアリールからなる群から独立して選択され;かつ
は上で定義された通りである)のものでありうる。
【0152】
一実施態様では、Rは、非置換C1−20−アルキル及び置換C1−20−アルキルからなる群から選択される。一実施態様では、Rは、非置換の分岐又は直鎖アルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル又はステアリルである。好ましくは、Rはメチルである。
【0153】
一実施態様では、R及びRは、置換又は非置換の分岐又は直鎖アルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル又はステアリル、シクロアルキル基、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル又はアダマンチル、アリール基、例えばフェニル、ナフチル又はアントラシル及びヘテロアリール基、例えばフリルからなる群から独立して選択される。一実施態様では、アルキル基は、ハライド(−F、−Cl、−Br又は−I)又はアルコキシ基、例えばメトキシ、エトキシ又はプロポキシのような一又は複数の置換基で場合によっては置換されうる。アリール基は、ハライド(−F、−Cl、−Br又は−I)、直鎖又は分岐鎖C−C10−アルキル(例えばメチル)、C−C10アルコキシ、直鎖又は分岐鎖C−C10−(ジアルキル)アミノ、C3−10ヘテロシクロアルキル基(例えばモルホリニル及びピペラジニル)又はトリ(ハロ)メチル(例えばFC−)のような一又は複数(例えば、1、2、3、4、又は5)の置換基で場合によっては置換されうる。ヘテロアリール基は、ハライド(−F、−Cl、−Br又は−I)、直鎖又は分岐鎖C−C10−アルキル(例えばメチル)、C−C10アルコキシ、直鎖又は分岐鎖C−C10−(ジアルキル)アミノ又はトリ(ハロ)メチル(例えばFC−)のような一又は複数(例えば1、2、3、4、又は5)の置換基で場合によっては置換されうる。好ましくは、R及びRは同じであり、tert−ブチル、シクロヘキシル、フェニル、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル、4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニル、4−トリフルオロメチルフェニル、1−ナフチル、3,5−キシリル、2−メチルフェニル及び2−フリル、最も好ましくはtert−ブチル、シクロヘキシル、フェニル、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル、4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニル、4−トリフルオロメチルフェニル、1−ナフチル及び2−フリルからなる群から選択される。
【0154】
一実施態様では、Rは、置換又は非置換の分岐又は直鎖アルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル又はステアリル、シクロアルキル基、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル又はアダマンチル、アリール基、例えばフェニル、ナフチル又はアントラシル及びヘテロアリール基、例えばフリルからなる群から選択される。一実施態様では、アルキル基は、ハライド(−F、−Cl、−Br又は−I)又はアルコキシ基、例えばメトキシ、エトキシ又はプロポキシのような一又は複数の置換基で場合によっては置換されうる。アリール基は、ハライド(−F、−Cl、−Br又は−I)、直鎖又は分岐鎖C−C10−アルキル(例えばメチル)、C−C10アルコキシ、直鎖又は分岐鎖C−C10−(ジアルキル)アミノ、C3−10ヘテロシクロアルキル基(例えばモルホリニル及びピペラジニル)又はトリ(ハロ)メチル(例えばFC−)のような一又は複数(例えば、1、2、3、4、又は5)の置換基で場合によっては置換されうる。ヘテロアリール基は、ハライド(−F、−Cl、−Br又は−I)、直鎖又は分岐鎖C−C10−アルキル(例えばメチル)、C−C10アルコキシ、直鎖又は分岐鎖C−C10−(ジアルキル)アミノ又はトリ(ハロ)メチル(例えばFC−)のような一又は複数(例えば1、2、3、4、又は5)の置換基で場合によっては置換されうる。Rは、メチル、tert−ブチル、シクロヘキシル、フェニル、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル、4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニル、4−トリフルオロメチルフェニル、1−ナフチル、3,5−キシリル、2−メチルフェニル及び2−フリル、最も好ましくは、メチル、tert−ブチル、シクロヘキシル、フェニル、3,5−キシリル及び2−メチルフェニルからなる群から選択されうる。
【0155】
一実施態様では、R及びRz’は、置換又は非置換の分岐又は直鎖アルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル又はステアリル、シクロアルキル基、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル又はアダマンチル、アリール基、例えばフェニル、ナフチル又はアントラシル及びヘテロアリール基、例えばフリルからなる群から独立して選択される。一実施態様では、アルキル基は、ハライド(−F、−Cl、−Br又は−I)又はアルコキシ基、例えばメトキシ、エトキシ又はプロポキシのような一又は複数の置換基で場合によっては置換されうる。アリール基は、ハライド(−F、−Cl、−Br又は−I)、直鎖又は分岐鎖C−C10−アルキル(例えばメチル)、C−C10アルコキシ、直鎖又は分岐鎖C−C10−(ジアルキル)アミノ、C3−10ヘテロシクロアルキル基(例えばモルホリニル及びピペラジニル)又はトリ(ハロ)メチル(例えばFC−)のような一又は複数(例えば、1、2、3、4、又は5)の置換基で場合によっては置換されうる。ヘテロアリール基は、ハライド(−F、−Cl、−Br又は−I)、直鎖又は分岐鎖C−C10−アルキル(例えばメチル)、C−C10アルコキシ、直鎖又は分岐鎖C−C10−(ジアルキル)アミノ又はトリ(ハロ)メチル(例えばFC−)のような一又は複数(例えば1、2、3、4、又は5)の置換基で場合によっては置換されうる。好ましくは、R及びRz’は同じであり、tert−ブチル、シクロヘキシル、フェニル、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル、4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニル、4−トリフルオロメチルフェニル、1−ナフチル、3,5−キシリル、2−メチルフェニル及び2−フリル、最も好ましくはtert−ブチル、シクロヘキシル、フェニル、3,5−キシリル及び2−メチルフェニルからなる群から選択される。
【0156】
一実施態様では、配位子(Lc)は(R)−Me−Bophozでありうる。
【0157】
一実施態様では、配位子(Ld)は(S)−Me−Bophozでありうる。
【0158】
j=1である式(IV)のメタロセニルアルコールは、米国特許第5760264号(Lonza, AG)に記載されているものなどの光学活性メタロセニル配位子に変換することができる。この場合、MはFe、Ru又はNiであり、mは0、1、2、又は3(4ではない)であり、nは0、1、2又は3(4ではない)であり、−R*H(OH)及び−R*H(OH)基の各々に対してオルトの炭素原子の少なくとも1個が非置換(つまり−H)でなければならない。リン含有基がメタロセニル化合物に化学的に導入されるためには、−R*H(OH)及び−R*H(OH)基に対してオルトの炭素原子の少なくとも1個が非置換(すなわち−H)でなければならない。
【0159】
[その他の留意点]
上述の実施態様のそれぞれ及びあらゆる互換性のある組み合わせは、あたかもそれぞれ及びあらゆる組み合わせが個々に明示的に記載されたかのように、ここに明示的に開示される。
【0160】
本開示を考慮すると、本発明の様々な更なる態様及び実施態様が当業者には明らかであろう。
【0161】
ここで使用される「及び/又は」は、二つの特定された特徴又は構成要素のそれぞれの特定の開示として、他方の有無にかかわらず解釈されるべきである。例えば、「A及び/又はB」は、あたかもそれぞれがここに個別に記載されているかのように、(i)A、(ii)B及び(iii)AとBのそれぞれの特定の開示として解釈されるべきである。
【0162】
文脈が別の解釈を示していない限り、上に記載した特徴の説明と定義は、本発明の特定の態様又は実施態様に限定されず、記載される全ての態様及び実施態様に等しく適用される。
【0163】
本発明の所定の態様及び実施態様を、次の非限定的な実施例により以下に説明する。
【実施例】
【0164】
[略語]
【0165】
[全般]
全ての反応をアルゴン又は窒素雰囲気下で実施した。
NMR測定はBruker AC200及びBruker Advance400分光計で記録し、ppmでの化学シフトはHのTMSに対するものである。
【0166】
メタロセニル化合物Bの光学純度を決定するためのHPLCキラル法:
AD−Hカラム、80:20ヘプタン:EtOH+0.1%DEA、流量:1ml/分、温度=25℃、254nmで検出。N,N−ジメチル−α−フェロセニルエチルアミン(B)エナンチオマーのピークはベースライン分離される:(S)−エナンチオマー4.4分、(R)−エナンチオマー3.8分
【0167】
式(IV)及び(V)のメタロセニル化合物のためのHPLCキラル法:
AS−Hカラム、修飾剤として少量のトリフルオロ酢酸を添加したIPA/n−ヘプタン30/70、流量:1mL/分、205nmで検出。1−フェロセニルエタノール鏡像異性体のピークはベースライン分離される:(S)−エナンチオマー4.8分、(R)−エナンチオマー6.7分。
反応サンプルをEtOAcで5mg/1mLの濃度に希釈した。得られた溶液の1mLをn−ヘプタン4mLで更に希釈し、この溶液2〜5μLを注入した。
【0168】
XRPDディフラクトグラムは、Cu Ka放射線(40kV、40mA)とGeモノクロメーターを取付けたθ−2θゴニオメーターを使用して、Bruker D8回折計で収集した。入射ビームは、2.0mmの発散スリットを通過した後、0.2mmの散乱線除去スリットとナイフエッジを通過する。回折ビームは、2.5°Sollerスリットを備えた8.0mmの受光スリットを通過し、Lynxeye検出器に続く。データ収集と分析に使用されるソフトウェアは、それぞれDiffrac Plus XRD CommanderとDiffrac Plus EVAであった。全てのデータは、Enhanceバックグラウンドモデルを使用してDiffrac Plus EVA内で処理した;閾値=0.25、及び曲率はベースラインの特徴を十分にモデル化するために変化。
【0169】
サンプルは、平板試験片として周囲条件下で実行した。乳棒と乳鉢を使用して、材料を穏やかに粉砕した。サンプルは、研磨されたゼロバックグラウンド(510)シリコンウェーハ上で、材料をカットキャビティ中に静かに充填して準備した。サンプルはそれ自身の面内で回転させた。
【0170】
標準的な収集方法の詳細は次のとおりである:
・角度範囲:4.5〜42.0°2θ
・ステップサイズ:0.01°2θ
・収集時間:3.0秒/ステップ(合計収集時間:234分)
【0171】
実施例1:
塩基としてNaOAc・3HOを使用するエナンチオ濃縮フェロセニルエタノール(D)から出発する、エナンチオ濃縮リン酸二水素(R)−N,N−ジメチル−α−フェロセニルエチルアンモニウム(A*(HPO))の合成
(R)−フェロセニルエタノール(D、8.06g、35.06mmol、1当量、97%ee)及びNaOAc・3HO(4.77g、35.06mmol、1当量)を、磁気撹拌機を備えた250mLの丸底フラスコに入れ、ヘプタン(34mL)を加えた。AcO(6.53mL、70.12mmol、2当量)を室温で一度に加えた。混合物を40℃において4時間撹拌した。
反応混合物を0℃に冷却し、MeNH水溶液(40%水溶液、22.08mL、5当量)と、続いてIPA(7mL)を滴下して加えた。反応物を50℃において一晩撹拌した。有機相を水層から分離し、蒸留により濃縮し、40℃/10mbarで乾燥させた。
【0172】
残留物をMeOH(30mL)に溶解し、HPO(85重量%)(1.91mL、28.04mmol、0.8当量)を0℃において滴下して加えた。溶液を室温で1時間撹拌し、真空下で濃縮し、アセトンを貧溶媒として加えて、黄橙色の結晶性粉末を得、これを濾過により収集した(10.6g、収率86%)。
1H-NMR(A*(H2PO4)): 1H NMR(400 MHz, CD3OD): δ= 1.81 (3H, d, J=6.72 Hz), 2.59 (6H, s), 4.26 (5H, s), 4.32-4.58 (5H, m)。
【0173】
表:A*(HPO)に対するXRPDピークリスト。括弧内のデータは、単一X線構造解析データを使用した計算によるものである。
【0174】
単一X線構造解析により、A(HPO)の同一性が確認される。計算されたXPRDピークのリストは、上で報告された測定されたXPRDピークリストとよく一致している。
熱分析(DSC、TGA)は125℃の分解の開始を示す。
【0175】
[遊離N,N−ジメチル−α−フェロセニルエチルアミン(B、Ugiアミン)の回収。鏡像体過剰率の測定]
リン酸塩A*(HPO)(8.70g、24.5mmol)を50mLの丸底フラスコに入れ、トルエン(15mL)を加えた。次に、pH10〜11に達するまでNaOH(2M)を懸濁液に加えた。有機相を水性層から分離した。溶媒化合物の蒸留後、N,N−ジメチル−α−フェロセニルエチルアミン(B)を黄橙色の液体として得た(6.11g、収率97%)。
(R)−B:HPLCによる97.2%ee。
【0176】
実施例2:
NaOAc・3HOを塩基として使用してエナンチオ濃縮フェロセニルエタノール(D)から開始し、続いて精製する、エナンチオ濃縮リン酸二水素(R)−N,N−ジメチル−α−フェロセニルエチルアンモニウム(A*(HPO))の合成
リン酸二水素(R)−N,N−ジメチル−α−フェロセニルエチルアンモニウム(A*(HPO))を、実施例1の手順に従って得た。粗リン酸二水素N,N−ジメチル−α−フェロセニルエチルアンモニウム(A*(HPO))をDCM(50mL)でスラリー化した。スラリーを室温において30分間撹拌し、ついで濾過して、化合物A*(HPO)(8.58g)を68%収率で得た。
実施例1の手順に従って遊離N,N−ジメチル−α−フェロセニルエチルアミン(B、Ugiアミン)を単離して、黄橙色の油を得た。HPLCにより97.2%eeの(R)−Bとしてアッセイされた。
【0177】
実施例3:
無水NaOAcを使用するエナンチオ濃縮フェロセニルエタノール(D)から開始したエナンチオ濃縮リン酸二水素(R)−N,N−ジメチル−α−フェロセニルエチルアンモニウム(A*(HPO))の合成
(R)−フェロセニルエタノール(D、1.21g、5.26mmol、1当量、97%ee)及びNaOAc(432mg、5.26mmol、1当量)を、磁気撹拌機を備えた100mLの丸底フラスコに入れ、ヘプタン(5mL)を加え、続いて室温においてAcO(0.99mL、10.52mmol、2当量)を加えた。混合物を40℃において4時間撹拌した(反応混合物から少量のサンプルを採取し、H−NMRで分析して、生成物への転化率は僅か15%であることが示された)。次に、HO(0.30mL、16mmol)を加え、反応物を40℃において更に2時間撹拌した(H−NMRデータは85%molの生成物を示す)。
反応混合物を0℃に冷却し、MeNH水溶液(40%水溶液、3.31mL、5当量)と続いてIPA(1mL)を滴下して加えた。反応物を50℃において一晩撹拌した。有機相を水性層から分離し、蒸留した。
【0178】
残留物をMeOH(5mL)に溶解し、HPO(85重量%)(0.25mL、4.33mmol、0.7当量)を0℃において滴下して加えた。溶液を室温で1時間撹拌し、溶媒を蒸留し、残留物をアセトンで洗浄して1.36g(収率73%)の対応する塩A*(HPO)を得た。
実施例1の手順に従ってN,N−ジメチル−α−フェロセニルエチルアミン(B)を単離した後、黄橙色の油を得た。(R)−B:HPLCにより97.1%ee。
【0179】
実施例4:
エナンチオ濃縮リン酸一水素ジ−(N,N−ジメチル−α−フェロセニルエチルアンモニウム)((R)−A*(HPO))の合成
(R)−N,N−ジメチル−α−フェロセニルエチルアミン(B、7.20g、28mmol、97%ee)をMeOH(25mL)に溶解し、HPO(85重量%)(0.95mL、14mmol)を0℃において滴下して加えた。溶液を室温において1時間撹拌し、真空下で濃縮し、アセトンを貧溶媒として加えることにより、塩(R)−A*(HPO)を沈殿させて、黄橙色の結晶性粉末を得、これを濾過により収集した(5.90g、収率70%)。
1H-NMR((R)-A*2(HPO4)): 1H NMR(400 MHz CD3OD): δ1.66 (3H, d, J=6.88 Hz), 2.35 (6H, s), 4.07 (1H, q, J=6.84 Hz), 4.19 (5H, s), 4.25-4.38 (4H, m)。
【0180】
表:((R)−A*(HPO))に対するXRPDピークリスト
熱分析(DSC、TGA)は、173℃の融点を示し、続いてより高温で分解する。
【0181】
実施例5(比較例):
ラセミ体リン酸一水素ジ−(N,N−ジメチル−α−フェロセニルエチルアンモニウム)(rac−A(HPO))の合成
rac−N,N−ジメチル−α−フェロセニルエチルアミン(rac−B、4.69g、18mmol)をMeOH(18mL)に溶解し、HPO(85重量%)(0.61mL、9mmol)を0℃において滴下して加えた。溶液を室温において1時間撹拌した。97%eeアミン(R)−Bから得られた塩とは対照的に、今回は幾らかの固体が沈殿し、それを真空濾過で収集した(697mgの黄橙色の結晶性粉末)。母液からの全ての揮発性物質を減圧下で除去して、幾らかの更なる黄橙色粉末(4.42g)(全量:5.11g)を得た。
1H-NMR (rac-A2(HPO4)): 1H NMR (400 MHz CD3OD): δ1.78 (3H, d, J=6.76 Hz), 2.56 (6H, s), 4.24 (5H, s), 4.29-4.54 (5H, m)。
【0182】
表:((rac)−A(HPO))に対するXRPDピークリスト
熱分析(DSC、TGA)は160℃の分解の開始を与える。
【0183】
実施例6:
エナンチオ濃縮(R)−N,N−ジメチル−α−フェロセニルエチルアンモニウム塩(式Iの化合物、表1、エントリー3〜9)の合成の一般手順
(R)−N,N−ジメチル−α−フェロセニルエチルアミンB(8.6mL、40.9mmol)をMeOH(20mL)に溶解し、0℃に冷却した。対応する酸(40.9mmol)をMeOH溶液にゆっくりと加え、混合物を室温において1時間撹拌した。次に、体積を半分に減らし、塩を沈殿させるために対応する貧溶媒を加え(表1、エントリー1、2及び4〜7)、黄色から橙色の固体を収率70〜98%で得た。高真空下で溶媒を除去した後、エントリー3、8、9の化合物を褐色のイオン性液体として得た。
【0184】
【0185】
1H-NMRデータ
A*(アセテート) (エントリー3): 1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ1.62 (3H, d, J=6.92 Hz), 2.01 (3H, s), 2.29 (6H, s), 4.11 (1H, q, J=6.83 Hz), 4.15 (5H, s), 4.15-4.19 (1H, q, J=2.43 Hz), 4.19-4.30 (3H, m, J=3.62 Hz)。
A*(フマレート) (エントリー4): 1H NMR (400 MHz, CD3OD): δ1.77 (3H, d, J=6.84 Hz), 2.61 (6H, s), 4.24 (5H, s), 4.31-4.52 (5H, m), 6.70 (2H, s)。
A*(アジペート) (エントリー5): 1H NMR (400 MHz, CD3OD): δ4.57-4.71 (4H, m), 1.78 (3H, d, J=6.88 Hz), 2.28 (4H, m), 2.58 (6H, s), 4.26 (5H, s), 4.33-4.51 (5H, m)。
A*(オキサレート) (エントリー6): 1H NMR (400 MHz, CD3OD): δ1.79 (3H, d, J=6.44 Hz), 2.64 (6H, s), 4.27 (5H, s), 4.32-4.57 (5H, m)。
A*(ベンゾエート) (エントリー7): 1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ1.72 (3H, d, J=6.92 Hz), 2.43 (6H, s), 4.16 (5H, s), 4.19-4.29 (3H, m), 4.30-4.40 (2H, m), 7.33-7.48 (3H, m), 8.04-8.13 (2H, m)。
A*(メシレート) (エントリー8): 1H NMR (400 MHz, CD3OD): δ1.79 (3H, d, J=6.88 Hz), 2.65 (3H, s), 2.66 (3H, s), 2.73 (3H, s), 4.28 (5H, s), 2.52-2.72 (5H, m)。
A*(トシレート) (エントリー9): 1H NMR (400 MHz, CD3OD): δ1.78 (3H, d, J=6.88 Hz), 2.39 (3H, s), 2.64 (3H, s), 2.65 (3H, s), 4.27 (5H, s), 4.36-4.55 (5H, m), 7.26 (2H), 7.73 (2H)。
【0186】
実施例7:
N,N−ジメチル−α−フェロセニルエチルアミンBの光学純度を高める方法
リン酸二水素N,N−ジメチル−α−フェロセニルエチルアンモニウム(A*(HPO))(5〜10gスケール)を、磁気撹拌機を備えた250mLの丸底フラスコに入れ、表2に示された時間と温度で、溶媒又は溶媒混合物中で加熱した。その後、スラリーを真空下で濾過して、黄色粉末を得た。
実施例1又は2の手順に従ってN,N−ジメチル−α−フェロセニルエチルアミンB(Ugiアミン)を単離した後、黄橙色の油を得た。表2に示される通りの最終ee(%)の(R)−Bとしてアッセイ。
【0187】
【0188】
実施例8:
NaOAc・3HOを塩基として使用して、エナンチオ濃縮(S)−フェロセニルエタノール(D)から出発する、エナンチオ濃縮リン酸二水素(S)−N,N−ジメチル−α−フェロセニルエチルアンモニウム(A*(HPO))の合成−溶媒スクリーニング
(M. M. Mojtahedi, S. Samadian, “Efficient and Rapid Solvent-Free Acetylation of Alcohols, Phenols and Thiols Using Catalytic Amounts of Sodium Acetate Trihydrate”, Journal of Chemistry, 2013, Hindawi Publishing Corporation.)
【0189】
(S)−1−フェロセニルエタノール(D、1g、3.8mmol、97.0%ee)、NaOAc・3HO(517mg、3.8mmol、1当量)、AcO(1.1mL、11.4mmol、3当量)及び対応する溶媒(表3)を回転式スクリーニング反応管に導入し、反応混合物を40℃において18時間撹拌した。次に、混合物をH−NMRで分析するためにサンプルを採取した。
【0190】
【0191】
実施例9:
アセチル化剤としてAcOH/iPrOAcを使用してエナンチオ濃縮フェロセニルエタノール(D)から出発した、光学純度が低下したリン酸二水素N,N−ジメチル−α−フェロセニルエチルアンモニウム(A*(HPO))の合成(比較例)
(R)−1−フェロセニルエタノール(D、69.0g、0.30mol、97%ee)をPrOAc(500mL)に溶解し、AcOH(20mL)を加えた。生成されたHOを反応媒体から除去するために、混合物をDean−Starkを使用して24時間還流した(4.5mLのHOを回収した)。次に、全ての揮発物を、少量のPrOAcを加えて、真空蒸留し、残っているAcOHとHOを除去した。
残留物をMeOH(500mL)に溶解し、MeNH(40%水溶液、163mL)を加えた。反応物を室温で24時間撹拌した。混合物を真空で濃縮して、かなりの量の未反応のMeNHを除去し、暗赤色の油を得た。
残留物をMeOH(500mL)に溶解し、HPO(20.3mL)を滴下して加えた。混合物を室温で1時間撹拌した。溶媒を真空下で除去し、残留物を乾燥させるためにトルエンを用いた(残留HOの共沸蒸留)。リン酸塩A*(HPO)をMeOH/アセトンから沈殿させ、黄橙色固形物を得た(64g、0.18mol、収率63%)。
対応するアミンBを実施例1の手順に従って単離した後、黄橙色の油を得た。HPLCにより80%eeの(R)−Bとしてアッセイされた。
【0192】
実施例10:
DMAP・HPOの合成
DMAP(5.00gmL、40.9mmol)をMeOH(30mL)に溶解し、0℃に冷却した。HPO(85重量%)(2.8mL、40.9mmol)をMeOH溶液上でゆっくりと加え、混合物を室温で1時間撹拌した。次に、沈殿物を濾別し、MeOHで洗浄して、DMAP・HPOを白色固形物として得た(8.82g、収率98%)。
【0193】
実施例11:
DMAP・HOAcの合成
DMAP(5.00gmL、40.9mmol)をMeOH(30mL)に溶解し、0℃に冷却した。AcOH(2.35mL、40.9mmol)をMeOH溶液にゆっくりと加え、混合物を室温で1時間撹拌した。次に、溶媒を真空下で除去し、残留物をアセトンでスラリー化し、濾別して、DMAP・HOAcを白色の吸湿性固形物として得た(6.78g、収率91%)。
【0194】
実施例12:
リン酸二水素N,N−ジメチル−α−フェロセニルエチルアンモニウム(A*(HPO))、DMAP・HPO及びDMAP・HOAcの溶解性の比較
DMAPがフェロセニルエタノール(D)のアセチル化の触媒として使用される場合、DMAP含有不純物は、リン酸二水素N,N−ジメチル−α−フェロセニルエチルアンモニウム(A*(HPO))の合成の後続工程に持ち越される。従って、粗生成物混合物の精製が必要とされる。
【0195】
表4に示されるように、Ugiリン酸二水素アンモニウム((A*(HPO))、DMAP・HPO、DMAP・HOAcの溶解性は、ジクロロメタン、メタノール、アセトニトリルで異なる。
a)化合物A*(HPO)とDMAP・HPOを分離するために、母液の蒸留後に、サンプルをMeOHに溶解し、固形物を濾過してA*(HPO)(DMAP・HOAcで汚染されている可能性がある)を得る。
b)DMAP・HOAcの除去は、工程a)の材料をDCM又はMeCNに溶解することで達成されうる。混合物を真空で濾過して、A*(HPO)を固形物として得る。
【0196】
【0197】
実施例13
HCOOH・EtN 2M:2M混合物の調製
HCOOH・EtN 2M:2M混合物を、HCOOH(400mmol、18.412g、96%の15.7mL)を水(10mL)に溶解し、EtN(400mL、40.48g、56.02mL)でそれを中和することにより、調製した。最後に、目盛り付きpH計を使用してpHを6.5に調整し、体積を水で200mLまで満たした。得られた混合物は粘性のある無色液体であった。アルゴンを液体に30分間バブリングすることにより、試薬の酸素を除去した。
【0198】
実施例14
小規模手順1:ワンポット反応
還流凝縮器と大きな撹拌棒を備えた500mLの丸底フラスコにアセチルフェロセン(51g、223mmol)を入れ、3回の真空/補充サイクルによりアルゴン雰囲気下に置いた。実施例13のHCOOH・EtNの溶液130mL(260mmol、1.2当量)を加え、続いてTHF(45mL)中の[RuCl(S,S)−TsDPEN p−シメン(228mg、0.36mmol、S/C620/1)の溶液を加えた。反応混合物を80℃に16時間加熱した。冷却後、サンプルを採取し、HPLCで分析して、転化率と鏡像体過剰率(95%転化、95%ee)を決定した。反応混合物をEtOAc(200mL)で希釈し、500mLの分液漏斗に移した。有機相をブラインで洗浄した。水性相をEtOAcで抽出して戻し、合わせた有機抽出物を乾燥させ(MgSO)、シリカゲルパッド(2cm)及びMgSO(1cm)を含むガラス焼結物で濾過した。溶媒を蒸発させて、粗(S)−1−フェロセニルエタノールを赤色固形物として得た。これを熱ヘプタン(300mL)から結晶化して、オレンジ色から黄色の結晶性物質を得た。これを濾過により収集し、冷ヘプタン(50mL)で洗浄し、丸底フラスコに移し、真空乾燥して(S)−1−フェロセニルエタノールを黄色固形物として得た(単離収量:37.9g、収率76%、H NMRによる純度95%、95%ee)。
【0199】
実施例15
大規模手順1:ワンポット反応
アセチルフェロセン(312g、1.368mol)、HCOOH・EtN(795mL、1.587mol、1.2当量)、[RuCl(R,R)−TsDPEN p−シメン(1.4g、0.0022mol、S/C620/1)、THF(275mL)を使用して、圧力リリーバーとしてシリコンオイル充填バブラーに連結された効率的な還流凝縮器を備えた20Lフラスコ中で、上記手順を繰り返した。HPLC分析で出発物質が1.6%しか残っていないことが示されるまで、反応物を合計20時間80℃に加熱した。80℃で最初の2時間の間に、激しいガスの発生が検出された。後処理(相分離を達成するための濾過は必要とされない)と再結晶後、(R)−1−フェロセニルエタノールを89%の単離収率(280g、HPLCで>99%の純度、H NMRで>98%の純度、98.3%ee)で得た。
【0200】
実施例16
小規模手順2:HCOOH・EtNのゆっくりした添加
還流凝縮器と大きな撹拌棒を備えた250mLの二口丸底フラスコにアセチルフェロセン(29.4g、129mmol)を入れ、3回の真空/補充サイクルでアルゴン雰囲気下に置いた。HCOOH・EtN 2M:2M(25mL、50mmol、0.42当量)の溶液を加え、続いてTHF(26mL)中の[RuCl(R,R)−TsDPEN p−シメン(127mg、0.2mmol、S/C645/1)の溶液を加えた。反応混合物を3回の真空/補充サイクルにより脱酸素化し、80℃まで加熱した。30分後、シリンジポンプを使用して、試薬のゆっくりとした添加を開始した。残りの50mLのHCOOH・EtN 2M:2M(0.84当量)を3時間かけて添加した。添加が完了したら、反応混合物のサンプルをHPLCによって分析し、転化率及び鏡像体過剰率(68%転化、91%ee)を決定した。加熱を一晩続けた。午前中、HPLC分析により、転化率96%、鏡像体過剰率95%が示された。
【0201】
実施例17
大規模手順2:HCOOH・EtNのゆっくりした添加
上記の手順を20Lのフラスコにおいて、アセチルフェロセン(312g、1.368mol)、HCOOH・EtN 2M:2M(初期量:286mL、0.572mol、0.42当量)、[RuCl(R,R)−TsDPEN p−シメン(1.4g、0.0022mol、S/C 620/1)及びTHF(275mL)を使用して繰り返した。HCOOH・EtN 2M:2M(574mL、0.148mmol、0.84当量)を80℃で6時間かけて添加すると、反応からのガスが安定して発生した。HPLC分析で出発物質が1.4%しか残っていないことが示されるまで、反応物を合計16時間(添加時間を含む)にわたって80℃に加熱した。後処理と再結晶化後、(R)−1−フェロセニルエタノールを、83%の単離収率(261g、HPLCで>99%の純度、H NMRで>99%の純度、97.4%ee)で得た。
【0202】
実施例18
小規模手順3:HCOOHのゆっくりした添加
還流凝縮器を備えた500mLの二口丸底フラスコにアセチルフェロセン(41.5g、181.5mmol)を入れ、3回の真空/補充サイクルによりアルゴン雰囲気下に置いた。HCOOH・EtN 2M:2M(36.4mL 72.8mmol、0.33当量)の溶液を加えた後、THF(25.7mL)中[RuCl(R,R)−TsDPEN p−シメン](192mg、0.302mmol、S/C600/1)の溶液を加えた。反応混合物を3回の真空/補充サイクルにより脱酸素化し、80℃に加熱した。30分後、シリンジポンプを使用してHCOOHのゆっくりとした添加を開始した。HCOOH(5.46mL、145mmol、0.8当量)を4時間かけて添加した。添加が完了したとき、反応混合物のサンプルを採取し、HPLCで分析して、転化率と鏡像体過剰率(83%転化、95%ee)を決定した。加熱を一晩続けた。午前中に、反応混合物のサンプルを採取し、HPLCで分析して、転化率と鏡像体過剰率(96%転化、95%ee)を決定した。
【0203】
実施例19
大規模手順3:HCOOH・EtNのゆっくりした添加
上記の手順を20Lのフラスコにおいて、アセチルフェロセン(312g、1.368mol)、HCOOH・EtN 2M:2M(初期量:274mL、0.548mol、0.4当量)、[RuCl(R,R)−TsDPEN p−シメン](1.4g、0.0022mol、S/C 620/1)及びTHF(193mL)を使用して繰り返した。HCOOH(50g、1.086mol、0.8当量)を80℃において4時間かけて添加すると、反応からのガスが安定して発生した。HPLC分析で出発物質が2.1%しか残っていないことが示されるまで、反応物を合計14時間(添加時間を含む)にわたって80℃に加熱した。後処理(相分離を達成するために濾過が必要であった)と再結晶後、(R)−1−フェロセニルエタノールが90%の単離収率(282g、HPLCで>97%の純度、H NMRで>99%の純度、98.3%ee)で得られた。
【国際調査報告】