(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-526594(P2020-526594A)
(43)【公表日】2020年8月31日
(54)【発明の名称】PD−1を標的とするサポニン系化合物及びその応用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/56 20060101AFI20200803BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20200803BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20200803BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20200803BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20200803BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20200803BHJP
A61P 31/22 20060101ALI20200803BHJP
A61P 31/16 20060101ALI20200803BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20200803BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20200803BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20200803BHJP
A61P 21/04 20060101ALI20200803BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20200803BHJP
【FI】
A61K31/56
A61P35/00
A61P31/12
A61P31/04
A61P31/10
A61P35/02
A61P31/22
A61P31/16
A61P29/00
A61P7/06
A61P19/02
A61P21/04
A61P29/00 101
A61P37/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】42
(21)【出願番号】特願2020-523480(P2020-523480)
(86)(22)【出願日】2018年7月12日
(85)【翻訳文提出日】2020年3月13日
(86)【国際出願番号】CN2018095426
(87)【国際公開番号】WO2019011293
(87)【国際公開日】20190117
(31)【優先権主張番号】201710570889.0
(32)【優先日】2017年7月13日
(33)【優先権主張国】CN
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】517204656
【氏名又は名称】イースト チャイナ ユニバーシティ オブ サイエンス アンド テクノロジー
(71)【出願人】
【識別番号】520015391
【氏名又は名称】ユンナン ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】YUNNAN UNIVERSITY
(71)【出願人】
【識別番号】513299225
【氏名又は名称】上海 インスティテュート オブ マテリア メディカ、チャイニーズ アカデミー オブ サイエンシーズ
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI INSTITUTE OF MATERIA MEDICA, CHINESE ACADEMY OF SCIENCES
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】リー,ホンリン
(72)【発明者】
【氏名】シャオ,ウェイリー
(72)【発明者】
【氏名】ヂュー,リリ
(72)【発明者】
【氏名】クアン,リナ
(72)【発明者】
【氏名】リー,ヂャオ
(72)【発明者】
【氏名】ディアオ,ヤンヤン
(72)【発明者】
【氏名】ザオ,ゼンジャン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,フアリアン
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA08
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA05
4C086NA14
4C086ZA55
4C086ZA94
4C086ZB05
4C086ZB15
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZB33
4C086ZB35
(57)【要約】
本発明は、PD−1を標的とする薬物の調製における、式IまたはIIで表されるサポニン系化合物またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、溶媒和物の用途を開示する。前記PD−1を標的とする薬物は、PD−1とそのリガンドの結合を阻害することにより疾患を治療する薬物であり、前記疾患は、腫瘍、細菌、ウイルスまたは真菌によって引き起こされる感染症または炎症性疾患である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PD−1を標的とする薬物の調製における、下記式IまたはIIで表されるサポニン系化合物またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、溶媒和物の用途であって、
【化1】
式において、
R
1は、H、
【化2】
から選択され、
R
2及びR
3は、それぞれ独立的にH、置換または非置換のC
1−6アルキル、OH、置換または非置換のC
1−6アルキレンヒドロキシルから選択され、
R
4は、H、OH、置換または非置換のC
1−6アルコキシ、−OC(O)R
11から選択され、R
11は、水素または置換または非置換のC
1−6アルキルから選択され、好ましくはHまたは置換または非置換のC
1−3アルキルであり、
R
5及びR
6は、それぞれ独立的にH、置換または非置換のC
1−6アルキルから選択され、
R
7は、H、OHから選択され、
R
8は、H、1−3個の炭素原子のカルボキシル基、2−7個の炭素
原子的置換または非置換のエステル、
【化3】
から選択され、
R
9及びR
10は、それぞれ独立的にH、置換または非置換のC
1−6アルキル、OHから選択される、前記PD−1を標的とする薬物の調製における、式IまたはIIで表されるサポニン系化合物またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、溶媒和物の用途。
【請求項2】
式Iで表される化合物において、
R
2及びR
3は、それぞれ独立的にH、置換または非置換のC
1−3アルキル、OH、置換または非置換のC
1−3アルキレンヒドロキシルから選択され、
R
5及びR
6は、それぞれ独立的にH、置換または非置換のC
1−3アルキルから選択され、
R
8は、H、−COOH、
【化4】
から選択され、
R
9及びR
10は、それぞれ独立的にH、置換または非置換のC
1−3アルキル、OHから選択され、
R
1、R
4及びR
7は、請求項1に記載のとおりであることを特徴とする
請求項1に記載のPD−1を標的とする薬物の調製における、式IまたはIIで表されるサポニン系化合物またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、溶媒和物の用途。
【請求項3】
式IIで表される化合物は、下記式で表される化合物であり、
【化5】
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10はそれぞれ、請求項1に限定されたとおりであることを特徴とする
請求項1に記載のPD−1を標的とする薬物の調製における、式IまたはIIで表されるサポニン系化合物またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、溶媒和物の用途。
【請求項4】
式IまたはIIで表される化合物は、以下の群から選択されることを特徴とする
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
請求項1に記載のPD−1を標的とする薬物の調製における、式IまたはIIで表されるサポニン系化合物またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、溶媒和物の用途。
【請求項5】
前記PD−1を標的とする薬物は、PD−1とそのリガンドの結合を阻害することにより疾患を治療する薬物であることを特徴とする
請求項1〜4のいずれか一項に記載のPD−1を標的とする薬物の調製における、式IまたはIIで表されるサポニン系化合物またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、溶媒和物の用途。
【請求項6】
前記疾患は、腫瘍、細菌、ウイルスまたは真菌によって引き起こされる感染症または炎症性疾患であることを特徴とする
請求項5に記載のPD−1を標的とする薬物の調製における、式IまたはIIで表されるサポニン系化合物またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、溶媒和物の用途。
【請求項7】
前記腫瘍は、黒色腫、肺がん、腎臓がん、卵巣がん、前立腺がん、乳がん、大腸がん、骨がん、膵臓がん、皮膚がん、頭頸部がん、子宮がん、直腸がん、肛門がん、胃がん、精巣腫瘍、卵管がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、膣がん、外陰がん、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、食道がん、小腸がん、内分泌系がん、甲状腺がん、副甲状腺がん、副腎がん、軟部肉腫、尿道がん、陰茎がん、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、小児固形腫瘍、リンパ球性リンパ腫、膀胱がん、腎臓または尿管がん、腎がん、中枢神経系(CNS)腫瘍、原発性CNSリンパ腫、脊髄軸索、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮癌、扁平上皮癌、T細胞リンパ腫を含むが、これらに限定されず、
前記ウイルスは、肝炎ウイルス、ヘルペスウイルス、インフルエンザウイルス、アデノウイルス、コロナウイルス、麻疹ウイルス、デングウイルス、ポリオウイルス、狂犬病ウイルスを含むが、これらに限定されず、
前記細菌は、クラミジア、リケッチア、マイコバクテリア、ブドウ球菌、肺炎球菌、コレラ菌、破傷風菌を含むが、これらに限定されず、
前記真菌は、カンジダ、アスペルギルス、皮膚炎芽酵母を含むが、これらに限定されず、
前記炎症性疾患は、強直性脊椎炎、自己免疫性溶血性貧血、関節炎、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、悪性貧血、多発性筋炎を含むが、これらに限定されないことを特徴とする
請求項6に記載のPD−1を標的とする薬物の調製における、式IまたはIIで表されるサポニン系化合物またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、溶媒和物の用途。
【請求項8】
前記肺がんは、非小細胞肺がんであり、前記肝炎ウイルスは、A型、B型またはC型肝炎ウイルスであることを特徴とする
請求項7に記載のPD−1を標的とする薬物の調製における、式IまたはIIで表されるサポニン系化合物またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、溶媒和物の用途。
【請求項9】
PD−1とPD−L1の結合を阻害する方法であって、
請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、溶媒和物、または前記化合物を含む薬物組成物を使用してPD−1とPD−L1の結合を阻害するステップを含む、前記PD−1とPD−L1の結合を阻害する方法。
【請求項10】
薬物組成物であって、
請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、溶媒和物及び薬学的に許容される賦形剤を含む、前記薬物組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物化学分野に関し、具体的に、本発明は、PD−1を標的とする、特にhPD−1のサポニン系化合物及び腫瘍、細菌、ウイルスまたは真菌によって引き起こされる感染症または炎症性疾患を治療するための薬物の調製におけるその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
免疫療法は現在、がんを治療する一般的な方法であり、外科的切除、放射線療法、化学療法などの従来の方法と比較して、免疫療法は安全性、有効性、低毒性などの利点がある。ブロッキング剤を使用して免疫チェックポイントをブロックすることは、免疫療法においてより効果的な方法である。プログラム細胞死受容体1(PD−1)は、より成熟した免疫チェックポイントの1つである。PD−1とその受容体PD−L1またはPD−L2との相互作用のブロッキングは、がんの治療に使用することができる。PD−1またはその受容体を標的とするブロッキング剤の研究は現在注目を集めている。
従って、PD−1/PD−L1の相互作用をブロックする候補薬物としての小分子ブロッキング剤の研究開発は、重要な臨床的意義との見通しがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、PD−1/PD−L1の相互作用をブロッキングして、腫瘍、細菌、ウイルスまたは真菌によって引き起こされる感染症または炎症性疾患を治療する薬物として使用することができる小分子ブロッキング剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の態様において、本発明は、
【化1】
式において、
R
1は、H、
【化2】
から選択され、
R
2及びR
3は、それぞれ独立的にH、置換または非置換のC
1−6アルキル、OH、置換または非置換のC
1−6アルキレンヒドロキシルから選択され、
【0005】
R
4は、H、OH、置換または非置換のC
1−6アルコキシ、−OC(O)R
11から選択され、R
11は、水素または置換または非置換のC
1−6アルキルから選択され、好ましくはHまたは置換または非置換のC
1−3アルキルであり、
R
5及びR
6は、それぞれ独立的にH、置換または非置換のC
1−6アルキルから選択され、
R
7は、H、OHから選択され、
R
8は、H、1−3個の炭素原子のカルボキシル基、2−7個の炭素
原子的置換または非置換のエステル、
【化3】
から選択され、
【0006】
R
9及びR
10は、それぞれ独立的にH、置換または非置換のC
1−6アルキル、OHから選択される、PD−1を標的とする薬物の調製における、式IまたはIIで表されるサポニン系化合物またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、溶媒和物の用途を提供する。
好ましい実施形態では、前記PD−1は、ヒトPD−1、即ちhPD−1である。
具体的な実施形態では、式Iで表される化合物において、
R
2及びR
3は、それぞれ独立的にH、置換または非置換のC
1−3アルキル、OH、置換または非置換のC
1−3アルキレンヒドロキシルから選択され、
R
5及びR
6は、それぞれ独立的にH、置換または非置換のC
1−3アルキルから選択され、
R
8は、H、−COOH、
【化4】
から選択され、
R
9及びR
10は、それぞれ独立的にH、置換または非置換のC
1−3アルキル、OHから選択され、
R
1、R
4及びR
7は、上記のとおりである。
具体的な実施形態において、式IIで表される化合物は、下記式で表される化合物であり、
【化5】
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10はそれぞれ、上記とおりである。
具体的な実施形態において、式IまたはIIで表される化合物は、以下の群から選択される。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
具体的な実施形態において、前記PD−1を標的とする薬物は、PD−1とそのリガンドの結合を阻害することにより疾患を治療する薬物である。
具体的な実施形態において、前記疾患は、腫瘍、細菌、ウイルスまたは真菌によって引き起こされる感染症または炎症性疾患である。
【0007】
具体的な実施形態において、前記腫瘍は、黒色腫、肺がん、腎臓がん、卵巣がん、前立腺がん、乳がん、大腸がん、骨がん、膵臓がん、皮膚がん、頭頸部がん、子宮がん、直腸がん、肛門がん、胃がん、精巣腫瘍、卵管がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、膣がん、外陰がん、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、食道がん、小腸がん、内分泌系がん、甲状腺がん、副甲状腺がん、副腎がん、軟部肉腫、尿道がん、陰茎がん、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、小児固形腫瘍、リンパ球性リンパ腫、膀胱がん、腎臓または尿管がん、腎がん、中枢神経系(CNS)腫瘍、原発性CNSリンパ腫、脊髄軸索、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮癌、扁平上皮癌、T細胞リンパ腫を含むが、これらに限定されず、
【0008】
前記ウイルスは、肝炎ウイルス、ヘルペスウイルス、インフルエンザウイルス、アデノウイルス、コロナウイルス、麻疹ウイルス、デングウイルス、ポリオウイルス、狂犬病ウイルスを含むが、これらに限定されず、
前記細菌は、クラミジア、リケッチア、マイコバクテリア、ブドウ球菌、肺炎球菌、コレラ菌、破傷風菌を含むが、これらに限定されず、
前記真菌は、カンジダ、アスペルギルス、皮膚炎芽酵母を含むが、これらに限定されず、
【0009】
前記炎症性疾患は、強直性脊椎炎、自己免疫性溶血性貧血、関節炎、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、悪性貧血、多発性筋炎を含むが、これらに限定されない。
具体的な実施形態において、前記肺がんは、非小細胞肺がんであり、前記肝炎ウイルスは、A型、B型またはC型肝炎ウイルスである。
【0010】
第2の態様において、本発明は、本発明の第1の態様に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、溶媒和物、または前記化合物を含む薬物組成物を使用してPD−1とPD−L1の結合を阻害するステップを含む、PD−1とPD−L1の結合を阻害する方法を提供する。
好ましい実施形態では、前記方法は、非治療目的で使用される。
【0011】
第3の態様において、本発明は、本発明の第1の態様に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、溶媒和物及び薬学的に許容される賦形剤を含む、薬物組成物を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の範囲内で、本発明の上記の技術的特徴及び以下に(例えば、実施例)具体的に説明する技術的特徴を互いに組み合わせて、新規または好ましい技術的解決策を形成できることを理解されたい。スペースの制限のため、ここでは繰り返さない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例2の14%のSDS−PAGEゲル電気泳動により精製後のPD−1組換えタンパク質を分析した結果を示す。当該標的バンド位置の分子量の大きさは13 kDaであり、理論分子量の大きさと一致する。
【
図2】実施例3の精製後のヒトPD−1のWestern blot同定図を示す。
【
図3】化合物1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13及びヒトPD−1タンパク質を定数に結合して測定したSPR図を示す。
【
図4】化合物1、2、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13及びPD−L1タンパク質がヒトPD−1タンパク質にに競合的に結合するSPR〜を示し、化合物がヒトPD−1及びヒトPD−L1の結合をブロックすることができることを示す。
【
図5】化合物6、8、10、11、13が枯渇したJurkat T細胞がIL−2を分泌する能力を回復できることを示し、化合物がJurkat T細胞の関連する免疫機能をある程度回復できることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
広範囲にわたる綿密な研究の後、発明者らは、一連の構造的に近いサポニン化合物がPD−1を標的とし、それによってPD−1とその受容体間の相互作用をブロッキングし、腫瘍、細菌、ウイルスまたは真菌によって引き起こされる感染症または炎症性疾患を治療することを発現した。本発明は、これに基づいて完成された。
【0015】
PD−1
PD−1は、T細胞の表面の重要な免疫抑制受容体であり、288アミノ酸からなる免疫グロブリンスーパーファミリーI型膜貫通糖タンパク質であり、最初はマウスのアポトーシスハイブリドーマ及び造血前駆細胞株からサブトラクティブハイブリダイゼーション技術によってクローンして獲得され、アポトーシスに関連すると考えられて、プログラムされた死の分子−1(programmed death−1,PD−1)と名付けられた。PD−1タンパク質は、主にT細胞、B細胞、NK細胞で誘導的にアップレギュレートされて発現される。PD−L1及びPD−L2は、PD−1の2つの内因性リガンドであり、PD−L1は、活性化されたT細胞、B細胞、単球及び多くの種類の腫瘍細胞ですべて発現されるが、PD−L2は主に、活性化されたマクロファージ、樹状細胞、骨髄由来間質細胞及び個々の腫瘍細胞で発現される。従って、PD−L1はPD−L2より一般的である。多数の研究により、活性化されたT細胞上のPD−1とそのリガンドとの相互作用は、エフェクターT細胞の生物学的機能を著しく阻害して、一部の腫瘍の自己免疫回避、自己免疫疾患、ウイルス感染症疾患などを引き起こす可能性があることが示されている。PD−1とPD−L1/PD−L2間の相互作用をブロックすることは、優れた応用見通しがある。
【0016】
現在、PD−1及びPD−L1経路に対する抗体は、主に1、PD−1に結合してPD−1とPD−L1の相互作用をブロックし、2、PD−L1に結合してPD−1とPD−L1の相互作用をブロックする2つのタイプに分類される。PD−1に結合する抗体は主にNivolumabとPembrolizumabを代表とし、PD−L1に結合する抗体は主にBMS−936559とMPDL3280Aを代表とする。しかし、これらの大分子抗体薬物は、製造コストが高く、免疫原性が生成されやすいなどの欠点がある。したがって、生産コストが低く、免疫原性が生成しにくく、組織に浸透しやすく、安定性がより良い小分子薬物の研究は、優れた応用見通しがある。
具体的な実施形態において、本発明によるPD−1は、ヒトPD−1、即ちhPD−1である。
【0017】
本発明のサポニン系化合物
本明細書で言及されるいくつかのラジカルは、次のように定義される。
本明細書において、「アルキル基」とは低級アルキルを指し、即ち、1〜6個の炭素原子の炭素鎖長を有する飽和分岐鎖または直鎖アルキルを指す。アルキル基の例は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、ヘキシルなどを含むが、これらに限定されない。アルキル基は、ハロゲンまたはハロゲン化アルキル基などの1つまたは複数の置換基で置換されていてもよい。例えば、アルキル基は、1〜4個のフッ素原子で置換されたアルキル基であってもよく、またはフルオロアルキル基で置換されたアルキル基であってもよい。
【0018】
本明細書において、用語「置換された」が置換されたアルコキシ基などのある基を定義または修飾するために使用される場合、定義または修飾された基が1つまたは複数の置換基で置換され得ることを意味する。例えば、定義または修飾されたラジカルは、置換基の数がラジカルの原子価要件を満たす限り、1〜6、1〜3、または1つの置換基で置換される。具体的な実施形態において、前記置換基は、ハロゲン(ただし、これに限定されない)、低級アルキル(例えば、1〜3個の炭素原子のアルキル基)基、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基などである。
本明細書において、「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素を指す。
【0019】
本明細書において、「カルボキシ基」は、構造式が「−RCOOH」である基を指し、ここで、Rは、1〜3個の炭素原子の低級アルキル基などの置換または非置換アルキル基である。具体的な実施形態において、カルボキシル基はCOOHである。
【0020】
本明細書において、前記「エステル基」とは、構造式が「−RaCOORb」である基を指し、ここで、Raは0〜3の炭素原子のアルキル基であり、Rbは1〜3の炭素原子のアルキル基であるため、本明細書に記載のエステル基は、2〜7個の炭素原子の置換または非置換エステル基であってもよい。具体的な実施形態において、本明細書に記載のエステル基には、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピルを含むが、これらに限定されない。
【0021】
具体的な実施形態において、本発明の式IまたはIIで表されるサポニン系化合物またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、溶媒和物は、PD−1を標的とする薬物の調製に使用することができ、
【化6】
式において、
R
1は、H、
【化7】
から選択され、
【0022】
R
2及びR
3は、それぞれ独立的にH、置換または非置換のC
1−6アルキル(好ましくは、置換または非置換のC
1−3アルキル)、OH、置換または非置換のC
1−6アルキレンヒドロキシル(好ましくは、置換または非置換のC
1−3アルキレンヒドロキシル)から選択され、
【0023】
R
4は、H、OH、置換または非置換のC
1−6アルコキシ(好ましくは、置換または非置換のC
1−3アルコキシ)、−OC(O)R
11から選択され、R
11は、水素または置換または非置換のC
1−6アルキルから選択され、好ましくはHまたは置換または非置換のC
1−3アルキルであり、
R
5及びR
6は、それぞれ独立的にH、置換または非置換のC
1−6アルキル(好ましくは、置換または非置換のC
1−3アルキル)から選択され、
R
7は、H、OHから選択され、
R
8は、H、1−3個の炭素原子のカルボキシル基、2−7個の炭素原子的置換または非置換のエステル、
【化8】
から選択され、
R
9及びR
10は、それぞれ独立的にH、置換または非置換のC
1−6アルキル(好ましくは、置換または非置換のC
1−3アルキル)、OHから選択される。
【0024】
当業者は、上記式IIで表される化合物中のR
1及びR
8も特定の立体配置を有し得ることを知っている。従って、さらなる実施形態において、式IIで表される化合物は、下記式で表される化合物であり、
【化9】
式中のR
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10はそれぞれ、上記で限定されたとおりである。
例えば、本発明の式IまたはIIで表されるサポニン系化合物は、以下の群から選択される化合物である。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【0025】
本発明の化合物は、PD−1とそのリガンドの結合を阻害することにより疾患を治療する薬物である。前記疾患は、疾患は、腫瘍、細菌、ウイルスまたは真菌によって引き起こされる感染症または炎症性疾患であることができる。例えば、前記腫瘍は、黒色腫、肺がん、腎臓がん、卵巣がん、前立腺がん、乳がん、大腸がん、骨がん、膵臓がん、皮膚がん、頭頸部がん、子宮がん、直腸がん、肛門がん、胃がん、精巣腫瘍、卵管がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、膣がん、外陰がん、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、食道がん、小腸がん、内分泌系がん、甲状腺がん、副甲状腺がん、副腎がん、軟部肉腫、尿道がん、陰茎がん、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、小児固形腫瘍、リンパ球性リンパ腫、膀胱がん、腎臓または尿管がん、腎がん、中枢神経系(CNS)腫瘍、原発性CNSリンパ腫、脊髄軸索、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮癌、扁平上皮癌、T細胞リンパ腫を含むが、これらに限定されず、前記ウイルスは、肝炎ウイルス、ヘルペスウイルス、インフルエンザウイルス、アデノウイルス、コロナウイルス、麻疹ウイルス、デングウイルス、ポリオウイルス、狂犬病ウイルスを含むが、これらに限定されず、前記細菌は、クラミジア、リケッチア、マイコバクテリア、ブドウ球菌、肺炎球菌、コレラ菌、破傷風菌を含むが、これらに限定されず、前記真菌は、カンジダ、アスペルギルス、皮膚炎芽酵母を含むが、これらに限定されず、前記炎症性疾患は、強直性脊椎炎、自己免疫性溶血性貧血、関節炎、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、悪性貧血、多発性筋炎を含むが、これらに限定されない。好ましい実施形態において、前記肺がんは、非小細胞肺がんであり、前記肝炎ウイルスは、A型、B型またはC型肝炎ウイルスである。
【0026】
これに基づいて、本発明は、本発明のサポニン系化合物またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、溶媒和物、または前記化合物を含む薬物組成物を使用してPD−1とPD−L1の結合を阻害するステップを含むPD−1とPD−L1の結合を阻害する方法をさらに提供する。当業者は、前記方法が、科学研究目的などに限定されず、非治療目的に使用できることを理解するであろう。
【0027】
本発明の化合物の薬学的に許容される塩の例は、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、マンデル酸塩およびシュウ酸塩などの無機および有機酸塩、及び水酸化ナトリウム、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS、トロメタミン)およびN−メチルグルコサミンなどの塩基で形成される無機および有機塩基塩を含むが、これらに限定されない。
【0028】
人それぞれの需要は異なるが、当業者は投与される化合物の量を決定できる。投与量は、1つまたは複数の状態を改善または排除するのに有効な量である。特定の疾患の治療のために、有効量とは、疾患に関連する症状を改善または何らかの方法で軽減するのに十分な量である。そのような用量は、単回用量として投与されてもよいし、効果的な治療計画に従って投与されてもよい。投与量は疾患を治すこともできが、通常は疾患の症状を改善するために投与される。症状の望ましい改善を達成するには、一般的に繰り返し投与が必要である。薬の投与量は、患者の年齢、健康状態、体重、同時治療の種類、治療の頻度、必要な治療効果に基づいて決定される。
【0029】
本発明の化合物は、腫瘍やその他の疾患の治療に使用される非経口、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、経皮、経口、髄腔内、頭蓋内、鼻腔内、または局所投与経路用に製剤化されたものを含むがこれらに限定されない様々な投与経路に適した製剤に製剤化することもできる。
【0030】
本発明の化合物を含む薬物製剤は、本発明の化合物の治療効果が得られる限り、任意の哺乳動物に投与することができる。これらの哺乳類の中で最も重要なのは人間である。
【0031】
本発明の化合物を含む薬物製剤は、既知の方法で製造することができる。例えば、従来の混合、造粒、インゴット製造、溶解、または凍結乾燥プロセスによって製造される。経口製剤を製造する場合、固体賦形剤と活性化合物を組み合わせて、混合物を選択的に粉砕することができる。需要であるか、必要な場合、適切な量のアジュバントを加えた後、顆粒混合物を加工して錠剤または錠剤芯を獲得する。
【0032】
適切な賦形剤は、特に、ラクトースまたはスクロースなどの糖、マンニトールまたはソルビトールなどの充填剤と、リン酸三カルシウムまたは二塩基性リン酸カルシウムなどのセルロース製剤またはリン酸カルシウムと、及びコーンスターチ、小麦スターチ、米スターチ、ジャガイモスターチ、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、またはポリビニルピロリドンを含むスターチペーストなどの結合剤である。需要に応じて、上記のデンプン、及びカルボキシメチルデンプン、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸またはアルギン酸ナトリウムなどのその塩などの崩壊剤を添加してもよい。アジュバントは、特に、流量調節剤および潤滑剤、例えば、シリカ、タルク、ステアリン酸マグネシウムカルシウム、ステアリン酸またはポリエチレングリコールなどのステアリン酸塩系である。需要に応じて、錠剤芯に胃液に耐性のある適切なコーティングを施してもよい。この目的のために、濃縮糖液を適用することができる。この溶液は、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコールおよび/または二酸化チタン、ラッカー溶液および適切な有機溶媒または溶媒混合物を含んでもよい。胃液耐性コーティングを調製するには、セルロースアセテートフタレートまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートなどの適切なセルロース溶液を使用することができる。錠剤または錠剤芯のコーティングに染料または顔料を追加することができる。これは、例えば、活性成分の投与量の組み合わせを特定したり、特徴付けたりするためである。
【0033】
具体的な投与方法は、当該分野で公知の種々の投与方法に限定されないが、患者の実際の状況に従って決定することができる。これらの方法は、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、経皮、経口、髄腔内、頭蓋内、鼻腔内、または局所投与経路を含むが、これらに限定されない。
【0034】
本発明の利点:
1.本発明は、PD−1とそのリガンドの結合を阻害することができる一連のサポニン化合物を初めて発見した。
2.本発明の化合物は天然物であるため、入手が容易であり、毒性および副作用が低いという利点がある。
3.本発明の化合物は、PD−1、特にhPD−1の阻害剤の開発のための新しい物質的基礎を提供する。
【0035】
以下、具体的な実施例と結び付けて、本発明の技術的解決策をさらに説明するが、以下の実施例は本発明を限定するものではなく、本発明の原理および技術的手段に従って採用される様々な適用方法はすべて、本発明の範囲に属する。
【0036】
以下の実施例に具体的な条件のない実験方法は、通常、従来の条件またはメーカーが推奨する条件に基づく。特に明記しない限り、パーセンテージおよび部数は重量によって計算される。
【0037】
実施例1.PD−1発現ベクターの構築
関連文献により、標的遺伝子がヒトPD−1である34−150アミノ酸を選択した。NCoI及びNdeIの2つの酵素分解ポイントを使用して、標的遺伝子をpET−28aベクターにクローニングした。最初に、ヒトPD−1遺伝子をPCR増幅するために、NCoI及びNdeIの2つの酵素分解ポイントに基づいて特異的なプライマーを設計した。次に、従来のクローニング方法を使用してベクタープラスミドとPCR産物をNCoI及びNdeIの2つを制限酵素で二重消化し、T4リガーゼの作用下で連結して組換えプラスミドを形成し、最後に組換えプラスミドを大腸菌DH5αコンピテント細胞に形質転換した。一晩培養した後、同定のために単一のクローンを選択した。
【0038】
実施例2.PD−1タンパク質の発現及び精製
会社のシーケンシング後、序列が完全に一致する細菌溶液を選択して一晩培養し、プラスミドを抽出した後、プラスミドを発現用宿主大腸菌BL21(DE3)に形質転換して発現した。大腸菌BL21(DE3)に形質転換された単一のクローンを取り、カナマイシンを含む20 mLの2×YT培地に入れ、37 ℃のシェーカーで一晩培養した。翌日、培養された産物をカナマイシン含有TB培地に移し、37 ℃でOD600が0.6〜0.8になるまで培養し、0.5 mM IPTGを添加して、37 ℃で5〜7 時間誘導した。4000 rpmで遠心分離して細菌を収集し、大腸菌を溶解バッファー(50 mM Tris−HCl、pH 8.0、50 mM NaCl、1 mM DTT、0.5 mM EDTA、5 %のグリセロール)で溶解し、高圧下で粉砕し、12000rpmで60 分間遠心分離し、沈殿物を取った。洗浄バッファー(20 mM Tris−HCl、pH 8.0、2 M尿素、2.5%Triton X−100)で3回洗浄し、沈殿物を取った。次に、タンパク質を溶解バッファー(20 mM Tris−HCl、pH 8.0、8 M尿素)に溶解し、上清を遠心分離した。3 kDaの限外ろ過濃縮チューブを使用してタンパク質を5 mL程度に濃縮し、1 Lの再生バッファー(50 mM Tris−HCl、pH 8.0、50 mM L−Arg、24 mM NaCl、1 mM KCl、1 mM EDTA)に追加し、4 ℃で24時間希釈法により再生した。次に、3kDa濃縮チューブを使用してタンパク質を約20 mL程度に濃縮し、タンパク質を透析バッグに入れ、透析バッファー(50 mM Tris−HCl、pH 8.0、150 mM NaCl、1 mM DTT)で一晩透析した。その目的は、再生バッファーのL−Argを置換することである。濃縮し、陽イオン交換カラムおよびモレキュラーシーブにより精製した。モレキュラーシーブ後のタンパク質を14 %SDS−PAGEゲル電気泳動にかけ、精製後のタンパク質の純度を同定した。結果は、
図1に示されたように、精製して得られたタンパク質の分子量は13 kDa程度であり、これは理論的に計算されたヒトPD−1タンパク質の分子量と一致し、タンパク質の純度は高かった。
【0039】
実施例3.PD−1タンパク質の同定
精製した後のPD−1タンパク質を14 %SDS−PAGEゲル電気泳動にかけ、膜を転写し、膜転写電流を300 mAに設定し、膜転写時間を45分にした。次に、膜を室温で5 %脱脂粉乳で2時間ブロックした。取り出した後、マウス抗ヒトPD−1モノクローナル抗体で4 ℃で一晩インキュベートし、1×TBST溶液で3回すすぎ、ヤギ抗マウスモノクローナル抗体で室温で2時間インキュベートし、1×TBSTで3回すすいだ。現像液を追加した後、完全自動の化学発光画像解析システムで現像した。結果は
図2に示されたように、10〜15 kDaの間にタンパク質バンドがあり、PD−1抗体の下で現像できるため、精製して得られたタンパク質が確実にヒトPD−1タンパク質であることを示している。
【0040】
実施例4.SPRによりサポニン系天然産物のPD−1への結合定数の測定
実施例で使用されている天然産物は、宝鶏市辰光生物有限公司から購入した。
表面プラズモン共鳴技術(SPR)を使用して、天然産物とPD−1タンパク質間との結合親和性を測定した。具体的な実験手順は次のとおりである:最初に、精製した後のタンパク質を50 mM Hepes、pH 8.0、250 mM NaCl、1 mM DTTバッファーに交換し、タンパク質をpH 4.5酢酸ナトリウムで50 μg/mlに希釈し、アミノカップリングキットでタンパク質をCM7チップにカップリングし、10 μl/minの流速で600秒間結合し、最終的なカップリング量は約13000RUである。カップリングが完了した後、CM7チップをバッファー(1.05×PBS、0.05 %P20)で安定状態に平衡化した。次に、ランニングバッファー(1.05×PBS、0.05 %P20、1 %DMSO)で化合物を一連の異なる濃度に希釈し、ランニングバッファーでチップ表面を流し、流速は30 μL/分であり、結合時間は90秒であり、解離時間は120秒である。最終データを、BIAevaluation2.0ソフトウェアで分析し、定常状態フィッティングによってKD値を取得した。測定された化合物のKD値を以下の表1に示した。
表1、本発明における小分子化合物と組換えヒトPD−1タンパク質の結合親和性KD値
【表3】
【0041】
実施例5.PD−L1タンパク質とサポニン系天然産物がPD−1に競争的結合するSPR実験
上記の実施例の結果に基づいて、本発明者らは、化合物とPD−L1をPD−1に競合的に結合させ、化合物がPD−1のPD−L1への結合をブロックできるかどうかを調べた。PD−L1タンパク質はBeijing Yiqiao Shenzhou Biotechnology Co.,Ltdから購入した。具体的な実験手順は次のとおりである。アミノカップリング方法により50 μg/ml PD−L1タンパク質をCM5チップにカップリングした。カップリング量は約3780RUである。異なる濃度の化合物と3 μMPD−1タンパク質を氷上で30分間インキュベートした。ランニングバッファー(1.05×PBS、0.05 %P20、1 %DMSO)がチップ表面を流し、流速は30 μL/分であり、結合時間は90秒であり、解離時間は120秒である。最終データをBIAevaluation2.0ソフトウェアで分析し、結果は、
図3に示したとおりである。化合物濃度が増加すると、チップ上のPD−L1タンパク質に結合したPD−1タンパク質が減少するため、応答値が減少した。この実験の結果は、化合物がPD−1のPD−L1への結合をブロックできることを示している。
【0042】
実施例6.ELISAによるT細胞におけるIL-2分泌レベルの検出
本発明者らは、細胞機能実験の評価のためにいくつかの化合物を選択した。刺激されたBxPC−3腫瘍細胞とJurkat T細胞を3:1の比率で96ウェルプレートで共培養し、Jurkat T細胞を陰性対照として単独培養した。実験群に50 μMの化合物を添加し、同じDMSO含有量のD−hank’s溶液を陰性対照として使用した。二酸化炭素セルインキュベーターで48時間インキュベートした。上清培養培地を収集し、ELISAキットによりIL−2の分泌量を検出した。実験は3回繰り返した。結果は、
図4に示し多様に、腫瘍細胞とT細胞を共培養した後、そのT細胞によって産生されるIL−2の量は55 %程度抑制され、そして、50 μMの化合物6を加えるとJurkat T細胞によって産生されるIL−2の量を30 %程度増加させ、50 μMの化合物8を加えるとJurkat T細胞によって産生されるIL−2の量を17 %程度増加させ、50 μMの化合物10を加えるとJurkat T細胞によって産生されるIL−2の量を30%程度増加させ、50 μMの化合物11を加えるとJurkat T細胞によって産生されるIL−2の量を12 %程度増加させ、50 μMの化合物13を加えるとJurkat T細胞によって産生されるIL−2の量を23 %程度増加させ、3回の繰り返した実験にすべてこの効果があった。当該実験の結果は、化合物がT細胞の機能をある程度回復できることを示している。
【0043】
論議:本発明の化合物及びその天然サポニン系産物は、PD−1タンパク質に結合することができ、PD−1およびPD−L1の結合を遮断することができる。また、ELISA実験では、化合物がJurkat T細胞によって分泌されたIL−2のレベルをある程度回復できる、即ちJurkat T細胞の機能をある程度回復できることが分かった。
【0044】
本発明で言及されるすべての文書は、あたかも各文書が個々に参照により組み込まれたかのように、本出願に参照により組み込まれている。さらに、本発明の上記の教示内容を読んだ後、当業者は本発明に様々な変更または修正を加えることができ、これらの同等の形態も本願に添付された特許請求の範囲によって定義される範囲内にあることを理解されたい。
【国際調査報告】