(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-527069(P2020-527069A)
(43)【公表日】2020年9月3日
(54)【発明の名称】管腔内人工血管
(51)【国際特許分類】
A61F 2/07 20130101AFI20200807BHJP
【FI】
A61F2/07
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2020-501276(P2020-501276)
(86)(22)【出願日】2018年7月13日
(85)【翻訳文提出日】2020年3月9日
(86)【国際出願番号】EP2018069123
(87)【国際公開番号】WO2019012123
(87)【国際公開日】20190117
(31)【優先権主張番号】102017115898.7
(32)【優先日】2017年7月14日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】508053212
【氏名又は名称】ヨーテック・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】JOTEC GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】バルトルト,フランツ−ペ−ター
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA15
4C097BB01
4C097CC01
4C097CC02
4C097CC12
4C097DD01
4C097DD09
4C097DD10
4C097FF11
4C097MM02
(57)【要約】
本発明は、ステント骨格(11)と、ステント骨格(11)に固定されたプロテーゼ材料(13)とを備える、血管に移植するための管腔内人工血管(10、18、20)であって、その全体を貫通して延在する内腔と、該内腔を周方向に包囲する外被とを有する中空円筒状本体(15)を有し、人工血管(10、18、20)のプロテーゼ材料(13)に、少なくとも1つの実質的にU字型またはV字型の開窓部切り込み(16)が設けられていること、および該開窓部切り込みが、中空円筒状本体(15)から分岐する少なくとも1本の側枝用に、人工血管(10、18、20)内腔と連絡するフラップ様出入口を形成することができるように寸法設計されていることを特徴とする管腔内人工血管(10、18、20)に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステント骨格(11)と、ステント骨格(11)に固定されたプロテーゼ材料(13)とを備える、血管に移植するための管腔内人工血管(10、18、20)であって、その全体を貫通して延在する内腔と、該内腔を周方向に包囲する外被とを有する中空円筒状本体(15)を有し、
人工血管(10、18、20)のプロテーゼ材料(13)に、少なくとも1つの実質的にU字型またはV字型の開窓部切り込み(16)が設けられていること、および
該開窓部切り込みが、中空円筒状本体(15)から分岐する少なくとも1本の側枝用に、人工血管(10、18、20)内腔と連絡するフラップ様出入口を形成することができるように寸法設計されていること
を特徴とする管腔内人工血管(10、18、20)。
【請求項2】
管腔内人工血管(10、18、20)が、1〜9つの開窓部切り込み(16)を、少なくとも1つの外周部U上に有することを特徴とする、請求項1に記載の管腔内人工血管(10、18、20)。
【請求項3】
管腔内人工血管(10、18、20)のステント骨格(11)が、長手方向に並んで配置された、互いに連結されていない、蛇行形状の環状支持体である複数のリングで構成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の管腔内人工血管(10、18、20)。
【請求項4】
ステント骨格(11)が、人工血管(10、18、20)の全長にわたって延在することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の管腔内人工血管(10、18、20)。
【請求項5】
ステントのない領域が少なくとも1つ形成されるように、ステント骨格(11)が人工血管(10、18、20)の全長にわたっては延在していないことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の管腔内人工血管(10、18、20)。
【請求項6】
人工血管(10、18、20)の第1の端部および/または第2の端部にそれぞれステントリングが設けられており、任意選択により、該ステントリングがステント骨格(11)に連結されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の管腔内人工血管(10、18、20)。
【請求項7】
少なくとも1つの開窓部切り込み(16)の切り込み長さが2mm〜10mm、好ましくは5mm〜7mmであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の管腔内人工血管(10、18、20)。
【請求項8】
複数の開窓部切り込み(16)が存在する場合、各切り込みの長さが同じまたは異なっていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の管腔内人工血管(10、18、20)。
【請求項9】
管腔内人工血管(10、18、20)が、中空円筒状本体(15)に加えて、少なくとも1つの中空円筒状側部をさらに有し、該中空円筒状側部が、好ましくは第2の人工血管(19)によって形成されていること、および該中空円筒状側部が、前記フラップ様出入口を介して人工血管(10、18、20)に連結可能であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の管腔内人工血管(10、18、20)。
【請求項10】
前記管腔内人工血管上に、放射線不透過性材料を含むか放射線不透過性材料のみで構成されているマーカー(17)が配置されており、該マーカー(17)が、特に、少なくとも1つの開窓部切り込み(16)の端点に、かつ/または開窓部切り込み(16)に沿って設けられていることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の管腔内人工血管(10、18、20)。
【請求項11】
前記フラップ様出入口を、人工血管(10、18、20)の内腔に対して内向きおよび/または外向きに延在する少なくとも1つの側枝用に形成することができることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の管腔内人工血管(10、18、20)。
【請求項12】
血管疾患を治療するために、患者の血管に移植するための、請求項1〜11のいずれか一項に記載の管腔内人工血管(10、18、20)の使用。
【請求項13】
管腔内人工血管(10、18、20)を患者の血管に挿入するための方法であって、
請求項1〜10のいずれか一項に記載の第1の管腔内人工血管(10、18、20)を患者の血管に挿入し解放する工程と、
第1の管腔内人工血管(10、18、20)の中空円筒状本体の少なくとも1つの開窓部切り込み(16)によって形成されるフラップ様出入口を介して、少なくとも1つの第2の人工血管(19)を挿入し、前記血管から分岐する側枝血管内に管腔内人工血管(10、18、20)の少なくとも1つの側枝を形成させる工程と、
を含む方法。
【請求項14】
管腔内人工血管(10、18、20)を拡大するための方法であって、
請求項1〜11のいずれか一項に記載の管腔内人工血管(10、18、20)を準備する工程と、
管腔内人工血管(10、18、20)の中空円筒状本体の少なくとも1つの開窓部切り込み(16)によって形成されるフラップ様出入口を通じて、第2の人工血管(19)を誘導し、側枝人工血管を形成する工程と、
を含む方法。
【請求項15】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の管腔内人工血管(10、18、20)を製造する方法であって、プロテーゼ材料(13)の開窓部切り込み(16)が、プロテーゼ材料(13)の熱処理により形成されることを特徴とする方法。
【請求項16】
開窓部切り込み(16)が、レーザー機器またはレーザー装置を用いて形成されることを特徴とする、請求項15に記載の管腔内人工血管(10、18、20)を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステント骨格と、該ステント骨格に固定されたプロテーゼ材料とを備える、血管に移植するための管腔内人工血管であって、その全体を貫通して延在する内腔と、該内腔を周方向に包囲する外被とを有する中空円筒状本体を有する人工血管に関する。
【背景技術】
【0002】
管腔内人工血管は、血管内ステントまたはステントグラフトとも呼ばれており、当技術分野において一般的に知られている。管腔内人工血管は、動脈瘤を治療するために、動脈に移植される。このような人工血管は、不安定または脆弱な血管壁や血栓が生じた血管壁を支持するために一般的に用いられている。治療において、人工血管を血管の病変部または損傷部で解放することにより、血管本来の機能の回復や、血管に残る統合性の維持が見込まれる。
【0003】
本明細書においても一般的にも、動脈瘤は、先天的あるいは後天的な血管壁の病変によって生じる動脈血管の拡張または膨隆と理解される。血管壁の病変は、例えば、血管が極めて急速に成長することによって起こる。例えば、ヒトの大動脈は生涯にわたって成長し続けるため、その直径は、70代では20代より20〜30%大きくなる。動脈瘤の75%は腹部大動脈で見つかっている。この場合の膨隆は血管壁全体に影響を及ぼす可能性があり、また仮性動脈瘤や解離と呼ばれる状態では、血液が血管の内腔から血管壁の層の間へと流れ込み、層が剥離する。動脈瘤を治療せずに放置すると、進行期には動脈が破裂することもあり、患者の体内で出血が起こる。
【0004】
さらに胸部大動脈瘤および胸腹部大動脈瘤の原因として、動脈硬化、高血圧および血管壁の炎症プロセスも考えられる。また、大きな事故による胸部の損傷も、急性または慢性の大動脈瘤の発生につながる可能性がある。
【0005】
動脈瘤の治療としては、患部動脈を安定化させるために、先行技術に従ってステントまたはステントグラフトを患部動脈に移植して、血管の破裂を防ぐ処置が行われる。用途に応じて、様々な人工血管が使用される。一般的に、人工血管は、バルーン拡張型システムと自己拡張型システムに分けられ、また、プロテーゼ材料の有無によっても分けられる。プロテーゼ材料で被覆された人工血管は「カバード」ステントとも呼ばれる。プロテーゼ材料は多くの場合、織物またはポリマーフィルムからなり、このようなプロテーゼ材料は、特に血液や血液成分が人工血管の壁を透過することや人工血管の壁を通って沈着が起こることを防ぐとともに、組織が人工血管の壁を越えて人工血管内へ侵入し内部で増殖することを防ぐ。このような設計にすることで、ステントグラフトの移植部位における血管壁へのストレスが軽減され、この部位での塞栓の発生の可能性も抑えられる。
【0006】
金属製の管状のフレームを成形し、場合により、その側面を織物またはポリマーフィルムで被覆することで、中空円筒状の本体が得られる。このような金属フレームは、通常、ワイヤーメッシュや、並んで配置された複数の蛇行形状のステント要素で構成されている。蛇行形状のステント要素はステントばねとも呼ばれ、ステント要素同士は、連結支持体によって連結されている場合もあれば、単にプロテーゼ材料を介して連結されている場合もある。自己拡張型人工血管の場合、ワイヤーメッシュまたはステント要素は、形状記憶材料またはニチノールなどの形状記憶合金からできている。
【0007】
移植に際しては、人工血管を半径方向に圧縮して、その断面積を大幅に縮小させる。そのために、人工血管をまず、スリーブカテーテルとも呼ばれるスリーブに導入する。スリーブカテーテルは送達システムの一部であり、これを用いて人工血管を動脈瘤の部位まで前進させ、そこで人工血管を解放する。必要に応じて人工血管の調節が行えるように、通常、人工血管の位置をX線マーカーによってモニターする。金属フレーム/骨格の弾性によって、人工血管は拡張して元の形状に戻り、その際に人工血管の側面/外被表面が伸張することで、人工血管は動脈瘤の近位と遠位で血管内に固定される。これにより、血液は人工血管を通って流れるようになり、膨隆部へのさらなる負荷が回避される。人工血管はその外向きの圧力によって、血管内の所望の位置に固定された状態で保たれる。金属フレームの拡張は、ニチノールなどの自己拡張性金属を用いることで可能であり、バルーン拡張型人工血管の場合には、膨張バルーンを内側から金属フレームに挿入することにより、バルーンの膨張で金属フレームを拡張させることができる。
【0008】
多くの場合、治療される血管が側枝血管を有していることが問題となる。このような血管に人工血管を移植すると、血液不透過性のプロテーゼ材料によって、側枝血管への血液供給が遮断される可能性がある。この問題は、いわゆる「開窓部」をプロテーゼ材料に設けることによって解決される。開窓型の人工血管にはあらかじめ穴(開窓部)が開けられているので、人工血管から1本以上の血管枝を分岐させることができる。
【0009】
In situで、すなわち、人工血管を血管内に配置した後に開窓部が導入される人工血管も公知である。このような人工血管は、例えば、WO2009/064672 A2で公知である。この文献によると、ステントグラフト本幹にin situで針を貫通させ、グラフト材料に針穴を形成する。次に、拡張器アセンブリを針穴に押し入れ、針穴を拡張する。このような人工血管で特に問題となるのは、開窓部を形成したい箇所で、プロテーゼ材料が裂けたり傷ついたりすることである。これにより、プロテーゼ材料がさらに裂けて、開窓部が無制御に拡大する可能性もあり、その結果、この箇所で人工血管から血液が制御不能に流出することも考えられる。公知の人工血管や方法の別の問題点として、側枝血管の位置を造影剤で特定できないことも挙げられる。
【0010】
先行技術の人工血管の問題点として、分岐血管に対して非常に高い精度で人工血管の位置づけを行わなければならないことが挙げられる。それができない場合は、側枝血管への血液供給が遮断されるとともに、穴のある箇所で膨隆が生じる可能性がある。また、人工血管の位置づけを高い精度で行うには、担当医の豊富な経験が必要である。
【0011】
特に、複数の側枝血管への橋渡しをする人工血管の場合、治療を成功させるには、通常、個々の患者に合わせて、すなわち各患者の血管に合わせて精巧に作製された人工血管を準備する必要がある。これには、まず治療する血管の特性を正確に把握するための検査を行う必要があるため、特に費用と時間がかかる。
【0012】
また、側枝を配置できる格子様の開窓部がプロテーゼ材料に設けられた人工血管も先行技術として公知である。この先行技術では、プロテーゼ材料に設けられた「小さい開窓部」を利用してエンドリークを一時的に起こさせるが、これは、組織内でこれらの「穴」から血液がある一定時間漏れるようにして、分岐先の組織の検査を可能にするためである。このようなモデルでは、人工血管の一部の領域に多数の小さな「穴」すなわち開窓部が分布している。In situで開窓した後、残りの未使用の穴を血液凝固により閉鎖して、エンドリークを止める必要がある。
【0013】
しかし、このような開窓部を通して血液が無制御に人工血管から漏出することから、このようなエンドリークはもとよりそれ自体が問題である。さらに、過度なエンドリークが起こらないように、形成される格子様/ふるい様の開窓穴は大きすぎてはならない。しかしその場合、より大きな側枝を配置した際に、プロテーゼ材料が裂けるというリスクがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明の目的は、上記の問題を克服できる管腔内人工血管またはステントグラフトを提供すること、および開窓部の寸法を変更することなく柔軟に対応可能な人工血管、すなわちオーダーメイドの必要のない人工血管を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によると、この目的は、ステント骨格と、該ステント骨格に固定されたプロテーゼ材料とを備える、血管に移植するための管腔内人工血管であって、その全体を貫通して延在する内腔と、該内腔を周方向に包囲する外被とを有する中空円筒状本体を有し、
該人工血管のプロテーゼ材料に、少なくとも1つの実質的にU字型またはV字型の開窓部切り込みが設けられていること、および
該開窓部切り込みが、前記中空円筒状本体から分岐する少なくとも1本の側枝用に、前記人工血管内腔と連絡するフラップ様出入口を形成することができるように寸法設計されていること
を特徴とする管腔内人工血管によって達成される。
【0016】
このようにして本発明の目的は完全に達成される。
【0017】
本発明による管腔内人工血管により、不安定または脆弱な血管壁や血栓が生じた血管壁を支持するために使用でき、特に動脈瘤のある血管の治療に使用できる人工血管が提供される。これは、本発明による人工血管の特別な構造、特にフラップ様出入口によって達成される。このフラップは、側枝血管が近傍または直接接する位置にある時に限り外向きに開く。それ以外のフラップは血管の壁面に接しているので閉じたままであり、したがって不要なエンドリークのリスクが低減される。
【0018】
他の利点は、前記フラップの開口を、上述の格子様/ふるい様の開窓穴より大きく形成できることである。したがって、プロテーゼ材料が裂けるリスクが低減される。
【0019】
本明細書全体にわたって適用されることだが、ここで、「実質的に」とは、U字型またはV字型の開窓部切り込みに関して言えば、その形状は正確にUまたはVの文字の形状である必要はなく、当該形状には、当業者によってほぼU字型またはV字型であると認識・分類される形状も含まれることを意味する。
【0020】
前記開窓部切り込み、すなわちフラップ様出入口により、側枝血管への血液供給を維持することができる。少なくとも1つのフラップ様出入口が側枝血管と向かい合うように、本発明の人工血管を血管内で解放する。特に、フラップ様出入口が開く/開放されるだけで血液供給が行えることは有利である。U字型またはV字型の開窓部切り込みが存在する部分のプロテーゼ材料は、血流によって、側枝の血管壁に押しつけられる。またフラップ様出入口を介して別の人工血管を解放することも可能である。これによっても側枝血管への血液供給が確保される。
【0021】
さらに、本発明による人工血管には、対象となる血管が有する側枝血管の数を大幅に上回る数の開窓部切り込みを設けることができるという利点がある。移植された状態でフラップ様出入口が血管壁に接している場合、開口からの血液の流出は起こらない。したがって、側枝血管の側枝がフラップの後ろにあるかフラップに直接接する場合のみ、フラップが開くという仕組みである。すなわち、フラップは血管内の所望の位置で容易に押し開けられるとともに、側枝のない部位では閉じたままである。この特別な構造により、標的を絞った閉塞も可能である。
【0022】
さらに本発明による人工血管の特別な構造により、エンドリークのリスクが最小限に抑えられる。エンドリークとは、移植された人工血管と動脈瘤嚢との間の漏れを意味する。エンドリークは、大動脈瘤の血管内治療後の最も一般的な合併症で、15%の頻度で発生する。動脈瘤への血流の遮断が不完全であれば、動脈瘤嚢内の血流は維持されるため、動脈瘤の拡大と破裂のリスクが残る。
【0023】
上述したような本発明による人工血管は、一方では、個々の患者に合わせて、すなわち対象となる血管が有する側枝血管と同数の開窓部切り込みを有するように製造でき、他方では、普遍的に使用できるように、多数の開窓部切り込みを有する人工血管として、標準化された方法でも製造できる、という利点がある。
【0024】
本発明によるステント骨格は、互いに連結可能な個々のステント要素で構成されていてもよく、あるいは網状のワイヤーメッシュで構成されていてもよい。前記ステント骨格は、一方では、プロテーゼ材料を固定するように働き、他方では、本発明の人工血管に中空円筒状構造をもたらす。さらに、前記ステント骨格は、移植された状態において、人工血管を血管壁に押し付けることで、人工血管を血管内の適切な位置に保つ働きをする。
【0025】
この場合、「中空円筒状本体」は、本発明の人工血管の本体を意味し、ステント骨格および少なくとも部分的にプロテーゼ材料を含む構造を有する。このステント骨格は、個々のステント要素で構成されていてもよい。
【0026】
一実施形態によれば、本発明の管腔内人工血管は、1〜9つの開窓部切り込みを、少なくとも1つの外周部U上に有することが好ましい。
【0027】
したがって、本発明によれば、1、2、3、4、5、6、7、8または9つの開窓部切り込みが、前記人工血管の少なくとも1つの外周部Uの全体に分布して存在していてもよい。本発明による人工血管のある特定の外周部により多くの開窓部切り込みが存在することは、人工血管を解放する際に、血管内で人工血管の周方向の位置をピンポイントに合わせる必要がないという利点がある。これは、より多くのフラップが存在することで、これらのフラップの1つまたはこれらのフラップの少なくとも1つが分岐血管の存在する位置で解放される確率が上がるからである。開窓部切り込みの特別なフラップ様構造により、開窓部切り込み部分のプロテーゼ材料が血管壁に接した状態または血管壁と向かい合った状態で解放された場合は、出入口は閉じたままである。人工血管に存在する開窓部切り込みが多いほど、容易に移植を行うことができ、必要であれば側枝の解放も容易に行える。
【0028】
本発明の管腔内人工血管を解放する対象となる血管の特性によっては、該人工血管が複数の外周部を有し、各外周部が、1、2、3、4、5、6、7、8または9つの開窓部切り込みを有することが必要な場合もある。
【0029】
各開窓部切り込みを、それぞれ異なる大きさで作製することも可能である。開窓部切り込みの長さ、すなわち形成されるフラップ様出入口の直径は、側枝の直径に合わせることが好ましい。
【0030】
本発明による人工血管の「外周部」Uは、少なくとも1つの開窓部が分布する人工血管の外周表面部、すなわち筒状部である。
【0031】
本発明の一実施形態によると、並んで配置された、互いに連結されていない複数の蛇行形状の環状ステントリングと、該ステントリングが固定されたプロテーゼ材料とを備える本発明の人工血管において、前記外周部は、並んで配置された2つのステントリング間に形成されるプロテーゼ部分として画定されることが好ましい。
【0032】
別の実施形態によれば、前記外周部は好ましくは10mm〜40mm、好ましくは10〜20mmである。
【0033】
本発明および別の実施形態によれば、本発明の人工血管は、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10の外周部に、1、2、3、4、5、6、7、8または9つの開窓部切り込みを有する。
【0034】
一実施形態によれば、本発明の人工血管は、複数の、すなわち少なくとも2つの外周部を有し、これらはそれぞれ異なる数の開窓部切り込みを有していてもよく、同じ数の開窓部切り込みを有していてもよい。また、第1の外周部の開窓部切り込みは、別の外周部の開窓部切り込みと長さが同じまたは異なっていてもよく、同様に第1の外周部および/または第2の外周部内で長さが同じまたは異なっていてもよい。また、1つの外周部が、同じ長さの開窓部切り込みを複数、すなわち少なくとも2つ有するとともに、異なる開窓部切り込みをさらに少なくとも1つ有していてもよいことも理解されるであろう。
【0035】
別の実施形態によれば、本発明の管腔内人工血管のステント骨格は、長手方向に並んで配置された、互いに連結されていない、蛇行形状の環状支持体である複数のリングで構成されている。
【0036】
「蛇行形状」は本明細書では、ステント要素のループ状の線形を意味するものと理解される。この場合、「ステント」、「ステント要素」または「ステントリング」は、人工血管に拡張力および/または支持機能を与える任意の構造を指す。したがって、ステント要素は、ステントの特性を有する任意の要素である。
【0037】
この場合、「ステントばね」は、その材料ゆえに圧縮可能で、圧縮圧力を除くとばねのように再拡張可能な、任意のひとつながりの環状要素を意味するものと理解される。ステントばねは波状の形状を有しており、波の山と波の谷が相を形成し、これらが交互に現れる形状になっている。
【0038】
複数のステント要素またはステントばねの周方向の振幅は、同じであってもよく、異なっていてもよい。振幅が同じになるか異なるかは、ステントばねの脚の長さが同じか異なるかによる。振幅の大きさが異なる場合は、ステントグラフトを個々の血管および個々の状況(曲率、分岐血管、狭窄など)に適合させることができるという利点がある。
【0039】
本発明によれば、前記ステント要素は、個々のステントばねの代わりに、編組、撚組またはレーザー切断されたステント要素も含みうる。
【0040】
この実施形態では、個々の蛇行形状の環状支持体が、プロテーゼ材料を介して連結されていることが好ましい。この目的のために、蛇行形状の環状支持体は、縫目(縫付)によってプロテーゼ材料に固定されていてもよい。これらの支持体は、プロテーゼ材料上にステントのない領域が存在するように、プロテーゼ材料上に配置されていてもよい。
【0041】
縫付用の材料として、外科用糸を用いることが好ましい。この外科用糸は、ポリエステル、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン、超高分子ポリエチレン(UHMPE)、またはこれらの混合物から形成されることが好ましい。
【0042】
好ましい実施形態によると、前記ステント骨格は、人工血管の全長にわたって延在する。
【0043】
血管によっては、本発明の人工血管が全長にわたってステント骨格を有することが必要な場合もある。このような形態は、例えば、少なくとも部分的にプロテーゼ材料を有するワイヤーメッシュを使用することで実現できる。プロテーゼ材料を有する領域では、開窓部切り込みは、成形メッシュ内に存在していてもよい。
【0044】
本発明の人工血管は、ワイヤーメッシュの代わりに、連結要素によって互いに連結された複数のステント要素を有することも可能である。このように連結することによっても、ひとつながりのステント骨格を形成することができる。
【0045】
別の実施形態によれば、ステントのない領域が少なくとも1つ形成されるように、前記ステント骨格は人工血管の全長にわたっては延在していない。
【0046】
この実施形態は、人工血管が移植される血管に応じて、その血管に特別に適合する人工血管を製造できるという利点を提供する。したがって、ステント骨格または個々のステント要素の数や形状、プロテーゼ材料の量、人工血管の直径、ステント骨格またはプロテーゼ材料に使用される材料、開窓部切り込みの数などを変更することができる。
【0047】
別の実施形態によれば、本発明の人工血管の第1の端部および/または第2の端部にそれぞれステントリングが設けられており、該ステントリングは、前記ステント骨格に連結されていてもいなくてもよい。
【0048】
本発明による第1の端部または第2の端部は、人工血管の近位端または遠位端を意味する。原則として、人工血管の場合、端部はそれぞれ、通常、「遠位」および「近位」という用語で表され、「遠位」という用語は、血流に対して下流側に位置する部分または端部を意味する。これに対して「近位」という用語は、血流に対して上流側に位置する部分または端部を意味する。言い換えると、「遠位」という用語は、血流の方向を意味し、「近位」という用語は、血流とは逆の方向を意味する。これとは対照的に、カテーテルまたは挿入システムの場合には、「遠位」という用語は、カテーテルまたは挿入システムの、患者に挿入される端部、すなわち使用者から遠い端部を指し、「近位」という用語は、使用者に近いほうの端部を指す。
【0049】
別の実施形態によれば、少なくとも1つの開窓部切り込みの切り込み長さは、2mm〜10mm、好ましくは5mm〜7mmである。
【0050】
この実施形態には、前記開窓部切り込みによって形成される出入口の寸法が、側枝血管の一般的な寸法に適合するという利点がある。
【0051】
別の実施形態によれば、複数の開窓部切り込みが存在する場合、各切り込みの長さは、同じまたは異なっている。
【0052】
側枝血管の特性はそれぞれ異なるため、大きさの異なる開窓部切り込みも必要である。非常に小さい切り込みであっても、血液供給を維持することは可能であるが、出入口が小さすぎると血圧に好ましくない影響が生じる可能性がある。この実施形態により、大きな側枝血管と小さな側枝血管の両方を橋渡しすることが可能である。
【0053】
さらなる実施形態によれば、本発明の管腔内人工血管は、中空円筒状本体に加えて、少なくとも1つの中空円筒状側部をさらに有し、該中空円筒状側部は、前記フラップ様出入口を介して当該人工血管に連結可能である。
【0054】
「少なくとも1つの中空円筒状側部」は、好ましくは、1、2、3または4つの側部を意味する。このような人工血管は、側部とともに開口を有しているため、この開口により、人工血管の側部を介した側枝血管へのアクセスが確実に保証される。この実施形態は、損傷部または破裂部が側枝の近くにある血管にとっては特に好都合である。したがって、主血管が第1の人工血管に支持されるとともに、側枝血管が第2の人工血管によって支持される場合に好都合である。
【0055】
本発明による人工血管において、少なくとも1本の側枝が、該人工血管の内腔と連絡するフラップ様出入口を介して該人工血管に連結されている場合、該少なくとも1本の側枝は、該人工血管に対して外向きに分岐可能であるとともに、該人工血管の内腔に向かって内向きにも分岐可能であると通常理解される。
【0056】
前記中空円筒状側部は、本発明による第2の人工血管であってもよい。この第2の人工血管は、すでに説明した人工血管と同じ特性を有していてもよい。したがって、自己拡張型人工血管またはバルーン拡張型人工血管であってよく、またプロテーゼ材料を有していてもいなくてもよい。一実施形態では、前記中空円筒状側部はプロテーゼ材料を有さない。
【0057】
したがって、この実施形態は、本発明による人工血管が、治療を受ける患者それぞれの解剖学的状態に適合できるという利点を有する。
【0058】
別の実施形態によれば、本発明の管腔内人工血管上に、マーカーが配置されている。このマーカーは放射線不透過性材料を含むか、放射線不透過性材料のみで構成されている。前記マーカーは、特に、少なくとも1つの開窓部切り込みの端点に、かつ/または開窓部切り込みに沿って設けられている。
【0059】
本発明の人工血管の特定の位置に配置されたマーカーを用いて、移植中および移植後に、極めて速やかに人工血管の位置を正確に定めることができる。開窓部切り込み周辺/開窓部切り込みに沿って設けられたマーカーは特に有用である。これは、人工血管の位置決めを行う際に、この部分に関しては特に正確に位置づける必要があるからである。
【0060】
放射線不透過性のマーカーを使用する場合、該マーカーは、例えば金、パラジウム、タンタル、クロム、銀などの材料から選ばれる1種以上で構成されていることが好ましい。前記マーカーの形状は、例えば円形、多角形などの任意の形状であってよく、かつ/または例えば、血管内でのステントグラフトの方向づけに役立つ文字、数字または図の形状であってもよい。
【0061】
また、本発明の目的は、血管疾患を治療するために、患者の血管に移植するための、管腔内人工血管の使用によって達成される。
【0062】
また、本発明の目的は、管腔内人工血管を患者の血管に挿入するための方法であって、
上述した第1の管腔内人工血管を患者の血管に挿入し解放する工程と、
第1の管腔内人工血管の中空円筒状本体の少なくとも1つの開窓部切り込みによって形成されるフラップ様出入口を介して、少なくとも1つの第2の人工血管を挿入し、前記血管から延びる側枝血管内に前記管腔内人工血管の少なくとも1つの側枝を形成させる工程と、
を含む方法によって達成される。
【0063】
また、本発明の目的は、管腔内人工血管を拡大するための方法であって、
管腔内血管を準備する工程と、
前記管腔内人工血管の中空円筒状本体の少なくとも1つの開窓部切り込みによって形成されるフラップ様出入口を通じて、第2の人工血管を誘導し、側枝人工血管を形成する工程と、
を含む方法によって達成される。
【0064】
また、本発明の目的は、管腔内人工血管を製造する方法であって、プロテーゼ材料の開窓部切り込みが、該プロテーゼ材料の熱処理により形成される方法によって達成される。
【0065】
この方法の好ましい実施形態によると、前記開窓部切り込みは、レーザー機器またはレーザー装置を用いて形成される。
【0066】
この実施形態には、レーザー機器を用いて特に正確な切り込みを形成することができるという利点がある。さらに、切断中の加熱によって、前記プロテーゼ材料の切り込みの縁部分が溶融するため、この位置にある組織が不必要にほつれたり、あるいは血管壁を損傷する可能性がある鋭利な縁部が形成されたりすることが避けられる。
【0067】
上述した特徴および以下で説明する特徴が、個々に挙げた組み合わせに限定されず、本発明の範囲から逸脱することなく他の組み合わせまたは単独で使用できることは理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0068】
本発明の例示的な実施形態を、より詳細に以下に説明するとともに、図面に示す。
【
図1】本発明による管腔内人工血管の細部を示す第1の概略図である。
【
図2】本発明による管腔内人工血管の第2の概略図である。
【
図3】中空円筒状側部が挿入された、本発明による管腔内人工血管の細部を示す概略図である。
【
図4】本発明による管腔内人工血管の細部を示す別の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0069】
図1は、ステント骨格11を備える、本発明による管腔内人工血管10の細部の実施形態を示す第1の概略図である。このステント骨格は、個々のステントばねまたはステントリング12から形成されており、蛇行形状の環状支持体である複数のリングを有する。この図において、5つのステントばね/ステントリング12、12
I、12
II、12
III、12
IVは、縫目14によってプロテーゼ材料13に固定されている。この図のプロテーゼ材料13は人工血管10の全体にわたって延在する。この実施形態では、ステントばね12は並んで配置されているが、互いに連結されておらず、プロテーゼ材料13を介してのみ連結されている。ステントばね12は、自己拡張性の材料から構成されるか、自己拡張性の材料を有することが好ましい。このようなステントばね12は、圧縮状態から、弛緩した拡張状態に変化しうる。この特性は、管腔内人工血管10を血管に移植できるようにするために好ましい。
【0070】
プロテーゼ材料13は、中空円筒状本体15として形成されており、中空円筒状本体15は、その全体を貫通して延在する内腔を有し、プロテーゼ材料13は、該内腔を周方向に包囲する外被を形成する。本体15の中空円筒状構造は主にステント骨格11によって形成される。ステント骨格11は好ましくは人工血管10の全長にわたって延在してもよく、これが人工血管10の構造強度を決定する。また、ステント骨格11が、人工血管10の全長にわたっては延びていない場合もある。その場合、ステント骨格11はプロテーゼ材料13によって分断されている。この実施形態では、人工血管10を中空円筒状構造とするために、プロテーゼ材料13の両端部がステント骨格11で支持されていることが好ましい。
【0071】
この図では、プロテーゼ材料13は3つの開窓部切り込み16を有する。これらはU字型またはV字型で、それぞれ切り込みの長さが異なる。切り込みの長さは、主血管の側枝の直径に応じたものであることが好ましい。人工血管10が第2の人工血管を有し、第2の人工血管がフラップ様出入口を介して解放されることにより側枝人工血管が形成される場合、切り込み長さは対応する第2の人工血管の直径によって決まる。第2の人工血管の直径が小さい場合、開窓部切り込み16の切り込み長さはそれに応じて短いものとなる。
【0072】
図1において、「U」は、並んで配置された2つの蛇行形状のステントばね/ステントリング12
II、12
IIIによって形成される例示的な外周部分を指す。したがって、この外周部分の一方の境界はステントばね12
IIの線体であり、もう一方の境界はステントばね12
IIIの線体によって形成される。
【0073】
管腔内人工血管10を移植しようとする血管によっては、人工血管10に複数の開窓部切り込み16が必要な場合もある。特に、対象となる血管に複数の分岐血管が存在する場合がこれに該当する。好ましい実施形態では、管腔内人工血管10は、側枝血管の数と少なくとも同数の開窓部切り込み16を有し、これらの開窓部切り込み16は、側枝血管への橋渡しとなる箇所に設けられる。このような開窓部切り込み16を通じて第2の人工血管を配置することにより、あるいはフラップが開くだけでも、分岐する側枝血管への供給が可能になる。この目的のために、人工血管10の血管への移植は、分岐する側枝がフラップ様出入口に直接接するか、あるいはフラップ様出入口の後ろに位置するように行う。
【0074】
図2に、本発明による管腔内人工血管10の第2の概略図を示す。ここでは、
図1のような人工血管10の細部だけでなく、人工血管10全体が示されている。図示されている人工血管10は4つのステントばね12を有し、各ステントばねは少なくとも部分的に、縫目14によってプロテーゼ材料13に固定されている。この実施形態では、ステントばね12はそれぞれ異なる振幅を有する。ステントばね12の形状は、人工血管10が移植される血管の特性に特に依存する。具体的には、硬い人工血管10は、多数のステントばね12を備えていることが好ましく、ステントばね同士が連結されて網状構造を形成していることが好ましい。また、硬さが低い人工血管は、例えば壁の薄い血管への適用が可能であり、そのような人工血管は、より振幅の大きいステントばね12を有することが好ましい。さらにこの実施形態では、個々のステントばね12は、間隔を空けてプロテーゼ材料13に取り付けられている。
【0075】
この図では、管腔内人工血管10は2つの開窓部切り込み16を有する。これらは、プロテーゼ材料13の部分領域である、2つのステントばね12で区切られた領域に配置されている。各開窓部切り込み16は、それぞれの端部にマーカー17を有する。このマーカー17は、放射線不透過性材料を含むか、放射線不透過性材料のみで構成されているので、人工血管10の移植中に、血管内での人工血管10の位置、特に開窓部切り込み16の位置を定めることができる。
【0076】
図3は、中空円筒状側部19が挿入された、本発明による管腔内人工血管18の細部を示す概略図である。
図3に示す人工血管18は、
図1に示す人工血管10と概ね類似している。人工血管18は2つの開窓部切り込み16を有し、1つのフラップ様出入口は外向きに開放されているが、もう1つのフラップ様出入口には、それを通る第2の人工血管19によって側部がさらに形成されている。このような開放されているフラップ様出入口と側部の両方によって、分岐する側枝血管への供給が可能である。
【0077】
この図では、側部、すなわち第2の人工血管19は、被覆付き(カバード)人工血管として形成されている。別の中空円筒状人工血管、例えば、プロテーゼ材料のない人工血管、自己拡張型人工血管、バルーン拡張型人工血管なども可能である。
【0078】
図4は、本発明による管腔内人工血管20の細部を示す別の概略図である。管腔内人工血管20は、2つのステント骨格11を備え、これらのステント骨格11はそれぞれメッシュ状または網状の形状を有する。ステント骨格11は縫目14によってプロテーゼ材料13に連結されている。この図では、ステント骨格11は、
図1〜3のようにプロテーゼ材料13で被覆されていない。ステント骨格11とプロテーゼ材料13はともに、中空円筒状本体15を形成する。
【0079】
人工血管20はプロテーゼ材料13に開窓部切り込み16を有し、切り込みの各端部にマーカー17を有する。
【0080】
図示されていないが、別の実施形態によれば、本発明による人工血管のステント骨格11は、公知の形態のステント要素12を有することができる。ステント要素12は、ステントばね、ステントリング、ステントメッシュなどで構成される自己拡張型またはバルーン拡張型のステント要素でありうる。個々のステント要素12が互いに連結されていない場合、ステント骨格11は、中空円筒状本体15を形成するためにプロテーゼ材料13を備える。この場合、プロテーゼ材料13は個々のステント要素12同士をつなぐ連結部として機能する。このような本発明による人工血管は少なくとも部分的にプロテーゼ材料13を有し、該プロテーゼ材料は、例えば、ひとつながりのステント骨格11に連結または縫付されているか、少なくとも部分的に個々のステント要素12を有して、これらに連結または縫付されている。
【国際調査報告】