特表2020-527138(P2020-527138A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-527138(P2020-527138A)
(43)【公表日】2020年9月3日
(54)【発明の名称】脂肪毒性損傷の低減のための化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 305/12 20060101AFI20200807BHJP
   A61K 31/365 20060101ALI20200807BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20200807BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20200807BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20200807BHJP
   A61P 17/10 20060101ALI20200807BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20200807BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20200807BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20200807BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20200807BHJP
【FI】
   C07D305/12CSP
   A61K31/365
   A61P1/18
   A61P11/00
   A61P17/02
   A61P17/10
   A61P3/04
   A61P31/04
   A61P31/00
   A61P13/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】37
(21)【出願番号】特願2020-501125(P2020-501125)
(86)(22)【出願日】2018年7月12日
(85)【翻訳文提出日】2020年2月28日
(86)【国際出願番号】US2018041796
(87)【国際公開番号】WO2019014434
(87)【国際公開日】20190117
(31)【優先権主張番号】62/531,454
(32)【優先日】2017年7月12日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】501083115
【氏名又は名称】メイヨ・ファウンデーション・フォー・メディカル・エデュケーション・アンド・リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シング,ヴィジャイ ピー.
(72)【発明者】
【氏名】アナンダン,サンパス−クマー
(72)【発明者】
【氏名】グリーンマン,ケヴィン
(72)【発明者】
【氏名】カマル,ジーシャン
【テーマコード(参考)】
4C048
4C086
【Fターム(参考)】
4C048TT06
4C048UU01
4C048XX04
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BA02
4C086BA17
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA05
4C086NA14
4C086ZA59
4C086ZA66
4C086ZA70
4C086ZA89
4C086ZB32
4C086ZB35
(57)【要約】
本明細書において、新規リパーゼ阻害剤、並びにそれを炎症、多系統臓器不全、壊死性膵臓腺房細胞死、急性膵炎、敗血症(例えば、培養陰性敗血症)、火傷及びざ瘡を治療するために使用する方法が提供される。例えば、本明細書において、本明細書に記載される方法において有用な2種の新規リパーゼ阻害剤(I)(II)
【化1】

又はその薬学的に許容される塩が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
【化1】
又はその薬学的に許容される塩からなる群から選択される化合物。
【請求項2】
化合物が、
【化2】
又はその薬学的に許容される塩である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
化合物が、
【化3】
又はその薬学的に許容される塩である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される賦形剤とを含む、医薬組成物。
【請求項5】
急性膵炎の治療を必要とする対象において急性膵炎を治療する方法であって、対象に、治療有効量の、
【化4】
又はその薬学的に許容される塩からなる群から選択される化合物を投与することを含む、方法。
【請求項6】
急性膵炎が重度である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
急性膵炎の重症度が、投与後に重度から軽度に下がる、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
対象が肥満である、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
ショックを発症する危険性が低減する、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
腎不全を発症する危険性が低減する、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
肺不全を発症する危険性が低減する、請求項4に記載の方法。
【請求項12】
ざ瘡の治療を必要とする対象においてざ瘡を治療する方法であって、対象に、治療有効量の、
【化5】
又はその薬学的に許容される塩からなる群から選択される化合物を投与することを含む、方法。
【請求項13】
敗血症の治療を必要とする対象において敗血症を治療する方法であって、対象に、治療有効量の、
【化6】
又はその薬学的に許容される塩からなる群から選択される化合物を投与することを含む、方法。
【請求項14】
敗血症が、培養陰性敗血症である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
火傷の治療を必要とする対象において火傷を治療する方法であって、対象に、治療有効量の、
【化7】
又はその薬学的に許容される塩からなる群から選択される化合物を投与することを含む、方法。
【請求項16】
感染症の治療を必要とする対象において感染症を治療する方法であって、対象に、治療有効量の、
【化8】
又はその薬学的に許容される塩からなる群から選択される化合物を投与することを含む、方法。
【請求項17】
感染症が、P.アウレゲノサ(P. auregenosa)、黄色ブドウ球菌(S. aureus)、枯草菌(B. subtilis)、及びB.セペシア(B. cepecia)からなる群から選択される1つ以上の生物によって引き起こされる、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
化合物が、
【化9】
又はその薬学的に許容される塩である、請求項4〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
化合物が、
【化10】
又はその薬学的に許容される塩である、請求項4〜10のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年7月12日に出願された米国仮出願第62/531,454号(その内容は、参照によりその全体が組み込まれる)に対する優先権を主張する。
【0002】
技術分野
本開示は、重度の膵炎及び/又はざ瘡の治療のためのリパーゼ阻害剤の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
膵臓は、食物の消化及び吸収を助ける酵素を産生する; 1つのそのような酵素はリパーゼであり、これは脂肪を消化する。特定の個体(例えば、肥満の個体)は、急性炎症状態、例えば、重度の火傷、重度の外傷、重症疾患、及び急性膵炎(AP)において多系統臓器不全を発症する増加した危険性を有する。膵炎は、膵臓腺房細胞から膵臓自体への破壊的消化酵素の放出に関連している。APが開始されると、すぐに重度のAP(SAP)になり得る。急性腎不全、呼吸不全、低カルシウム血症、及び多系統臓器不全の他の発現、又は大きな面積の膵臓壊死が合併した場合、SAPは40〜50%の死亡率をもたらすため、このことは懸念事項である。有効な療法がないため、現在の管理標準は、支持ケア、及び合併症発生時の合併症の管理である。
【発明の概要】
【0004】
本明細書において、新規リパーゼ阻害剤、並びにそれを膵炎及び/又は臓器不全及び/又はざ瘡を治療するために使用する方法であって、そのような治療を必要とする対象に、有効量の本明細書において提供されるリパーゼ阻害剤を投与することを含む、方法が提供される。本明細書において提供される方法は、脂肪毒性が、炎症、多系統臓器不全、壊死性膵臓腺房細胞死、急性膵炎、敗血症(例えば、培養陰性敗血症)、火傷、ざ瘡、及び感染症に寄与し、リパーゼ活性の阻害が、これらの状態に関連する指標を低減することができるという発見に少なくとも部分的に基づく。したがって、一部の実施形態においては、本明細書において、脂肪毒性を制限し、それによって、急性膵炎及び他の重度の全身状態に関連する不良転帰の可能性を低減するための方法及び組成物が提供される。
【0005】
本明細書において、
【0006】
【化1】
又はその薬学的に許容される塩からなる群から選択される化合物が提供される。一部の実施形態においては、化合物は、
【0007】
【化2】
又はその薬学的に許容される塩である。一部の実施形態においては、化合物は、
【0008】
【化3】
又はその薬学的に許容される塩である。
【0009】
さらに本明細書において、本明細書において提供される化合物の1つ以上及び薬学的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物が提供される。
【0010】
本開示はまた、急性膵炎の治療を必要とする対象において急性膵炎を治療する方法であって、対象に、治療有効量の本明細書において提供される化合物又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法を提供する。一部の実施形態においては、急性膵炎は重度である。一部の実施形態においては、急性膵炎の重症度は、投与後に重度から軽度に下がる。一部の実施形態においては、対象は肥満である。一部の実施形態においては、ショック、腎不全、及び/又は肺不全を発症する危険性が低減する。
【0011】
また本明細書において、ざ瘡の治療を必要とする対象においてざ瘡を治療する方法であって、対象に、治療有効量の本明細書において提供される化合物又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法が提供される。
【0012】
さらに本明細書において、敗血症の治療を必要とする対象において敗血症を治療する方法であって、対象に、治療有効量の本明細書において提供される化合物又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法が提供される。一部の実施形態においては、敗血症は培養陰性敗血症である。
【0013】
本開示はまた、火傷の治療を必要とする対象において火傷を治療する方法であって、対象に、治療有効量の本明細書において提供される化合物又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法を提供する。
【0014】
また本明細書において、感染症の治療を必要とする対象において感染症を治療する方法であって、対象に、治療有効量の本明細書において提供される化合物又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法が提供される。一部の実施形態においては、感染症は、P.アウレゲノサ(P. auregenosa)、黄色ブドウ球菌(S. aureus)、枯草菌(B. subtilis)、及びB.セペシア(B. cepecia)からなる群から選択される1つ以上の生物によって引き起こされる。
【0015】
上記実施形態の一部においては、化合物は:
【0016】
【化4】
又はその薬学的に許容される塩である。上記実施形態の一部の実施形態においては、化合物は:
【0017】
【化5】
又はその薬学的に許容される塩である。
【0018】
別段定義されない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本発明において使用するための方法及び材料が本明細書に記載され; 当技術分野で公知の他の好適な方法及び材料も使用することができる。材料、方法、及び実施例は、例示に過ぎず、限定することは意図されない。本明細書において言及されるすべての刊行物、特許出願、特許、配列、データベースエントリー、及び他の参考文献は、それらの全体が参照により組み込まれる。矛盾する場合、定義を含む本明細書が統制する。
【0019】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び図面から、並びに特許請求の範囲から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、化合物を3つの主要領域に分割した、オルリスタットの構造の概略図である。
図2-1】図2は、オルリスタットコアへのアミノ-エステル改変を調製するための合成経路を詳しく示すスキームである。
図2-2】図2-1の続きである。
図3図3は、調製された様々な非ホルミル化アミノエステル改変類似体化合物の構造を示す。
図4図4は、非ホルミル化アミノエステル改変類似体化合物を試験するリパーゼ阻害アッセイの結果を示す線グラフを提供する。図4Aは、化合物の新たに調製された溶液の結果を提供し、一方、図4Bは、一晩保存された溶液の結果を提供する。
図5図5は、考案されたアミノエステル改変類似体を調製するための合成経路を詳しく示すスキームである。
図6図6は、調製された様々なホルミルアミノエステル改変類似体化合物の構造を示す。
図7図7は、ホルミルアミノエステル改変類似体化合物を試験するリパーゼ阻害アッセイの結果を示す線グラフを提供する。図7Aは、化合物の新たに調製された溶液の結果を提供し、一方、図7Bは、一晩保存された溶液の結果を提供する。
図8図8は、腺房-脂肪細胞共培養における腺房細胞への脂肪毒性損傷の低減における選択された類似体化合物の効力を詳しく示す棒グラフ(図8A)、一方でまた、これらの細胞に対する化合物の毒性を評価する棒グラフ(図8B)を提供する。
図9図9は、β鎖類似体を調製するために使用される転移反応を詳しく示すスキームである。
図10図10は、β鎖類似体への合成経路を詳しく示すスキームである。
図11図11は、β鎖類似体への合成経路を詳しく示すスキームである。
図12図12は、β鎖類似体への合成経路を詳しく示すスキームである。
図13図13は、β鎖類似体への合成経路を詳しく示すスキームである。
図14図14は、調製された様々なβ鎖類似体の構造を示す。
図15図15は、新たに調製された溶液中のβ鎖類似体を試験するリパーゼ阻害アッセイの結果を示す線グラフを提供する。
図16図16は、α鎖類似体への合成経路を詳しく示すスキームである。
図17図17は、α鎖類似体を試験するリパーゼ阻害アッセイの結果を示す線グラフを提供する。図17Aは、化合物の新たに調製された溶液の結果を提供し、一方、図17Bは、一晩保存された溶液の結果を提供する。
図18A図18は、%遊離脂肪酸(FFA)生成を調査するアッセイの結果を示す線グラフを提供する。図18Aは、化合物の新たに調製された溶液の結果を提供する。
図18B図18は、%遊離脂肪酸(FFA)生成を調査するアッセイの結果を示す線グラフを提供する。図18Bは、一晩保存された溶液の結果を提供する。
図19図19は、マウス膵臓細胞における毒性研究から得られた値の表を示す。
図20A図20は、%FFA生成を調査するアッセイの結果を示す線グラフを提供する。図20Aは、hPLRP2リパーゼを用いた結果を提供する。
図20B図20は、%FFA生成を調査するアッセイの結果を示す線グラフを提供する。図20Bは、hCELリパーゼを用いた結果を提供する。
図21図21は、本明細書に記載されるインビトロ(in vitro)研究の表形式の概要を提供する。
図22図22は、重度の膵炎の低減におけるオルリスタットの使用の概要を提供する。
図23図23は、化合物767のインビボ(in vivo)試験の結果を提供する。図23Aは、研究のタイムラインを提供し; 図23Bは、血清リパーゼ濃度の棒グラフを提供し; 図23Cは、様々な時点での血清血中尿素窒素レベルを示すグラフを提供し; 図23Dは、様々な時点での血清カルシウムレベルを示すグラフを提供し; 及び図23Eは、全身性炎症反応症候群(SIRS)に対する防御を示すグラフを提供し; 図23Fは、ショックに対する防御を示すグラフを提供し; 及び図23Gは、改善された生存を示すグラフを提供する。
図24図24は、処置されたマウスの写真を提供する。
図25図25は、化合物767及びオルリスタットを用いたインビボ研究の表形式の概要を提供する。
図26図26は、P.アクネス(P. acnes)の培地中の%FFA生成を示す線グラフを提供する。
図27図27は、P.アクネス(P. acnes)を接種し、オルリスタット及び化合物767の両方に曝露したスピリットブルー寒天の写真を提供する。
図28図28は、600mM GTLとインキュベートした腺房細胞からのLDH漏出の低減における10mM薬剤の効力を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
詳細な説明
現在、重度の膵炎は、FDAに認可されたリパーゼ阻害剤であるオルリスタットの投与により治療されることが多い。リパーゼ阻害は、膵炎の重症度を低減するが、オルリスタットの使用は、膵炎中の反復投与(例えば、50mg/kg BID、2日間)の必要性、及びこの化合物の使用に関連する高トリグリセリド血症によって複雑になる。本明細書において、オルリスタットに関連する反復投与の必要性又は合併症なしに、膵炎に治療上の利益を提供する化合物が提供される。
【0022】
本明細書において提供される化合物は、表1に記載されるもの又はその薬学的に許容される塩を含む。
【0023】
【表1】
【0024】
一部の実施形態においては、化合物は、
【0025】
【化6】
又はその薬学的に許容される塩である。一部の実施形態においては、化合物は、
【0026】
【化7】
又はその薬学的に許容される塩である。
【0027】
一部の実施形態においては、本明細書において提供される化合物は、水溶液中で安定である。例えば、本明細書において提供される化合物は、水溶液中でオルリスタットよりも安定であり得る。一部の実施形態においては、化合物は、
【0028】
【化8】
又はその薬学的に許容される塩である。一部の実施形態においては、化合物は、
【0029】
【化9】
又はその薬学的に許容される塩である。
【0030】
合成
本明細書に記載される化合物は、例えば、実施例及び関連する図面に記載される手順に従って、調製することができる。
【0031】
当業者であれば、記載される方法が、本明細書において提供される化合物を合成することができる唯一の手段ではないこと、及び幅広いレパートリーの合成有機反応が、本明細書において提供される化合物の合成において潜在的に用いるのに利用可能であることを認識するであろう。当業者であれば、適当な合成経路をどのように選択及び実行するかを知っている。出発材料、中間体、及び生成物の好適な合成方法は、文献を参照することによって特定することができ、例えばAdvances in Heterocyclic Chemistry, Vols. 1-107 (Elsevier, 1963-2012); Journal of Heterocyclic Chemistry Vols. 1-49 (Journal of Heterocyclic Chemistry, 1964-2012); Carreira, et al. (Ed.) Science of Synthesis, Vols. 1-48 (2001-2010) and Knowledge Updates KU2010/1-4; 2011/1-4; 2012/1-2 (Thieme, 2001-2012); Katritzky, et al. (Ed.) Comprehensive Organic Functional Group Transformations, (Pergamon Press, 1996); Katritzky et al. (Ed.); Comprehensive Organic Functional Group Transformations II (Elsevier, 2nd Edition, 2004); Katritzky et al. (Ed.), Comprehensive Heterocyclic Chemistry (Pergamon Press, 1984); Katritzky et al., Comprehensive Heterocyclic Chemistry II, (Pergamon Press, 1996); Smith et al., March's Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms, and Structure, 6th Ed
. (Wiley, 2007); Trost et al. (Ed.), Comprehensive Organic Synthesis (Pergamon Press, 1991)等の出典が挙げられる。
【0032】
本明細書に記載される化合物を調製するための反応は、有機合成の技術分野における当業者であれば容易に選択することができる好適な溶媒中で実施することができる。好適な溶媒は、反応が実施される温度(例えば、溶媒の凍結温度から溶媒の沸騰温度までの範囲にあり得る温度)において、出発材料(反応物質)、中間体、又は生成物に対して実質的に非反応性であり得る。所与の反応は、1種の溶媒中で、又は2種以上の溶媒の混合物中で実施することができる。当業者であれば、特定の反応工程に応じて、特定の反応工程にとって好適な溶媒を選択することができる。
【0033】
本明細書に記載される化合物の調製は、様々な化学基の保護及び脱保護を伴う可能性がある。当業者であれば、保護及び脱保護に対する必要性、並びに適当な保護基の選択を容易に決定することができる。保護基の化学的性質については、例えば、T. W. Greene and P. G. M. Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd Ed., Wiley & Sons, Inc., New York (1999)において見出すことができる。
【0034】
反応は、当技術分野において公知である任意の好適な方法に従って監視することができる。例えば、生成物の形成は、分光学的手段、例えば核磁気共鳴分光法(例えば、1H又は13C)、赤外分光法、分光光度法(例えば、UV-可視)、質量分析法によって、又はクロマトグラフィー法、例えば高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、液体クロマトグラフィー-質量分析法(LCMS)、若しくは薄層クロマトグラフィー(TLC)によって監視することができる。化合物は、当業者であれば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)及び順相シリカクロマトグラフィーを含めた様々な方法で精製することができる。
【0035】
用語「化合物」は、本明細書において使用される場合、描写される構造のすべての立体異性体、幾何異性体、互変異性体、及び同位体を含むことを意味する。1つの特定の互変異性型として名称又は構造によって本明細書において特定される化合物は、別段指定されない限り、他の互変異性型を含むことが意図される。
【0036】
本明細書において提供される化合物はまた、互変異性型も含む。互変異性型は、プロトンの移動を同時に伴う、単結合の隣接する二重結合とのスワッピングから結果として生じる。互変異性型は、同じ実験式及び総電荷を有する、異性体のプロトン化状態である、プロトトロピー互変異性体を含む。例示的なプロトトロピー互変異性体としては、ケトン-エノール対、アミド-イミド酸対、ラクタム-ラクチム対、エナミン-イミン対、並びにプロトンが複素環式系の2つ以上の位置を占有し得る環状型、例えば1H-及び3H-イミダゾール、1H-、2H-、及び4H-1,2,4-トリアゾール、1H-及び2H-イソインドール、並びに1H-及び2H-ピラゾールが挙げられる。互変異性型は、平衡状態であってもよく、又は適当な置換によって一方の型へと立体的に固定されてもよい。
【0037】
一部の実施形態においては、本明細書に記載される化合物は、1つ以上の不斉中心を含有し、したがって、ラセミ体及びラセミ混合物、鏡像異性的に富化された混合物、単一の鏡像異性体、個々のジアステレオマー及びジアステレオマーの混合物(例えば、(R)-及び(S)-鏡像異性体、ジアステレオマー、(D)-異性体、(L)-異性体、(+)(右旋性)型、(-)(左旋性)型、それらのラセミ混合物、及びそれらの他の混合物を含む)として生じ得る。追加の不斉炭素原子は、アルキル基等の置換基中に存在し得る。これらの化合物のすべてのそのような異性体形態、及びそれらの混合物は、本説明に明確に含まれる。本明細書に記載される化合物はまた又はさらに、結合回転がその特定の結合について制限されている結合(例えば、環又は二重結合の存在に起因する制限)(例えば、炭素-炭素結合、アミド結合等の炭素-窒素結合)を含有し得る。したがって、すべてのシス/トランス及びE/Z異性体及び回転異性体は、本説明に明確に含まれる。別段言及がない又は示されない限り、化合物の化学的名称は、その化合物のすべての可能な立体化学的異性体形態の混合物を包含する。
【0038】
光学異性体は、当業者に公知で、且つジアステレオマー塩形成、速度論的分割、及び不斉合成を含むがこれらに限定されない、標準手順によって純粋な形態で得ることができる。例えば、Jacques, et al., Enantiomers, Racemates and Resolutions (Wiley Interscience, New York, 1981); Wilen, S.H., et al., Tetrahedron 33:2725 (1977); Eliel, E.L. Stereochemistry of Carbon Compounds (McGraw-Hill, NY, 1962); Wilen, S.H. Tables of Resolving Agents and Optical Resolutions p. 268 (E.L. Eliel, Ed., Univ. of Notre Dame Press, Notre Dame, IN 1972)(これらのそれぞれは、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと。また、本明細書に記載される化合物は、すべての可能な位置異性体、及びそれらの混合物を含むことが理解され、これらは、当業者に公知で、且つカラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、及び高速液体クロマトグラフィーを含むがこれらに限定されない、標準分離手順によって純粋な形態で得ることができる。
【0039】
特に定義されない限り、本明細書において提供される化合物はまた、中間体又は最終化合物で生じる原子のすべての同位体を含み得る。同位体は、同じ原子番号を有するが異なる質量数を有する原子を含む。別段記載しない限り、原子が同位体又は放射性同位体(例えば、重水素、[11C]、[18F])と指定される場合、原子は、同位体又は放射性同位体を、少なくとも、同位体又は放射性同位体の天然の存在量よりも多い量で含むと理解される。例えば、原子が「D」又は「重水素」と指定される場合、その位置は、重水素の天然の存在量(0.015%である)よりも少なくとも3000倍多い存在量で重水素を有することが理解される(すなわち、少なくとも45%の重水素の取り込み)。
【0040】
すべての化合物及びその薬学的に許容される塩は、水及び溶媒等の他の物質と一緒に見出されてもよく(例えば、水和物及び溶媒和物)、又は単離されてもよい。
【0041】
一部の実施形態においては、化合物の調製は、例えば所望される反応の触媒作用又は酸付加塩等の塩形態の形成に影響を及ぼす、酸又は塩基の添加を伴ってもよい。
【0042】
例示的な酸は、無機酸であってもよく、又は有機酸であってもよく、限定されるものではないが、強酸及び弱酸を含み得る。一部の例示的な酸としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、p-トルエンスルホン酸、4-ニトロ安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、及び硝酸が挙げられる。一部の弱酸としては、限定されるものではないが、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、安息香酸、酒石酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、及びデカン酸が挙げられる。
【0043】
例示的な塩基としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、及び炭酸水素ナトリウムが挙げられる。一部の例示的な強塩基としては、限定されるものではないが、水酸化物、アルコキシド、金属アミド、金属水素化物、金属ジアルキルアミド、及びアリールアミンが挙げられ、アルコキシドとしては、メチル、エチル、及びt-ブチルオキシドのリチウム、ナトリウム、及びカリウム塩が挙げられ; 金属アミドとしては、ナトリウムアミド、カリウムアミド、及びリチウムアミドが挙げられ; 金属水素化物としては、水素化ナトリウム、水素化カリウム、及び水素化リチウムが挙げられ; 金属ジアルキルアミドとしては、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、tert-ブチル、トリメチルシリル、及びシクロヘキシル置換アミドのリチウム、ナトリウム、及びカリウム塩が挙げられる。
【0044】
「薬学的に許容される」という語句は、しっかりとした医学的判断の範囲内にあり、過剰な毒性、刺激、アレルギー応答、又は他の問題若しくは合併症を伴わずに人間及び動物の組織と接触させて使用するのに好適であり、妥当な損益比で釣り合う、化合物、材料、組成物、及び/又は剤形を指すために本明細書において使用される。
【0045】
本明細書はまた、本明細書に記載される化合物の薬学的に許容される塩も含む。本明細書において使用される場合、「薬学的に許容される塩」は、開示された化合物の誘導体であって、既存の酸又は塩基部分をその塩形態に変換することによって親化合物が改変されている、誘導体を指す。薬学的に許容される塩の例としては、限定されるものではないが、アミン等の塩基性残基の鉱酸又は有機酸塩; カルボン酸等の酸性残基のアルカリ又は有機塩; 及び同類のものが挙げられる。本出願の薬学的に許容される塩としては、例えば、無毒性の無機酸又は有機酸から形成される、親化合物の従来の無毒性塩が挙げられる。本出願の薬学的に許容される塩は、従来の化学的方法により、塩基性又は酸性部分を含有する親化合物から合成することができる。一般に、そのような塩は、これらの化合物の遊離酸又は塩基形態を、水若しくは有機溶媒中、又は2つの混合物中の化学量論量の適当な塩基又は酸と反応させることによって調製することができ; 一般に、エーテル、酢酸エチル、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソ-プロパノール、又はブタノール)又はアセトニトリル(MeCN)のような非水性媒体が好ましい。好適な塩のリストは、Remington's Pharmaceutical Sciences, 17th ed., Mack Publishing Company, Easton, Pa., 1985, p. 1418及びJournal of Pharmaceutical Science, 66, 2 (1977)に見出される。塩形態を調製するための従来の方法は、例えば、Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use, Wiley-VCH, 2002に記載される。
【0046】
医薬組成物
医薬品として用いられる場合、本明細書において提供される化合物及びその薬学的に許容される塩は、医薬組成物の形態で投与することができる。これらの組成物は、本明細書又は他の場所に記載されるように調製することができ、局所処置又は全身処置のどちらが所望されているかに応じて、及び処置されるべき領域に応じて、様々な経路で投与することができる。投与は、局所(例えば、経皮、表皮、眼及び粘膜へ、例えば、鼻腔内、膣内及び直腸送達)、肺内(例えば、ネブライザーによるものを含めた、粉末若しくはエアロゾルの吸入若しくは吹送による; 気管内、又は鼻腔内)、経口、又は非経口であってもよい。非経口投与としては、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内、筋肉内又は注射若しくは注入; 又は頭蓋内(例えば、髄腔内又は脳室内投与)が挙げられる。非経口投与は、単回のボーラス用量の形態であってもよく、又は例えば継続的な潅流ポンプによるものであってもよい。一部の実施形態においては、本明細書において提供される化合物又はその薬学的に許容される塩は、非経口投与に好適である。一部の実施形態においては、本明細書において提供される化合物は、静脈内投与に好適である。一部の実施形態においては、本明細書において提供される化合物は、経口投与に好適である。一部の実施形態においては、本明細書において提供される化合物は、局所投与に好適である。
【0047】
局所投与のための医薬組成物及び製剤としては、限定されるものではないが、経皮パッチ、軟膏、ローション、クリーム、ジェル、点滴薬、坐薬、スプレー、液体、及び粉末を挙げることができる。従来の医薬担体、水性、粉末若しくは油性基剤、増粘剤並びに同類のものが必要であるか又は望ましい可能性がある。一部の実施形態においては、本明細書において提供される医薬組成物は、非経口投与に好適である。一部の実施形態においては、本明細書において提供される化合物は、(例えば、ざ瘡の治療のための)局所送達用に製剤化することができる。例示的製剤は以下を含む:
【0048】
約10〜約50mMの本明細書において提供される化合物(例えば、化合物767)
約50%(v/v)の99.5〜100%エタノール又はイソプロパノール
約0.25〜約2%(w/v)のカルボマー(例えば、カルボマー934又はカルボマー940)
約0.5〜約1%(w/v)のトロラミン
水(100%まで)。
【0049】
一部の実施形態においては、本明細書において提供される医薬組成物は、静脈内投与に好適である。一部の実施形態においては、本明細書において提供される医薬組成物は、経口投与に好適である。一部の実施形態においては、本明細書において提供される医薬組成物は、局所投与に好適である。
【0050】
また、活性成分として、本明細書において提供される化合物又はその薬学的に許容される塩を、1種以上の薬学的に許容される担体(例えば、賦形剤)と組み合わせて含有する医薬組成物も提供される。本明細書において提供される医薬組成物を作製する際、活性成分は、典型的には、賦形剤と混合されたり、賦形剤によって希釈されたり、又はそのような担体内に、例えば、カプセル、サシェ、紙、若しくは他の容器の形態で封入されたりする。賦形剤が希釈剤として働く場合、賦形剤は、活性成分のためのビヒクル、担体、又は媒体として作用する、固体、半固体、又は液体の材料であり得る。したがって、組成物は、例えば、錠剤、丸剤、粉末、ロゼンジ、サシェ、カシェ、エリキシル、懸濁液、エマルション、溶液、シロップ、エアロゾル(固体としての又は液体媒体中の)、軟膏、軟質及び硬質ゼラチンカプセル、坐薬、滅菌注射用溶液、並びに滅菌包装粉末の形態であってもよい。
【0051】
好適な賦形剤の一部の例としては、限定されるものではないが、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アラビアゴム、リン酸カルシウム、アルギネート、トラガカント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、及びメチルセルロースが挙げられる。製剤は、追加的に、限定されるものではないが、タルク、ステアリン酸マグネシウム、及び鉱油等の滑沢剤; 湿潤剤; 乳化剤及び懸濁剤; メチル-及びプロピルヒドロキシ-ベンゾエート等の保存剤; 甘味剤; 着香剤、又はそれらの組み合わせを含むことができる。
【0052】
活性化合物は、幅広い投与量の範囲にわたって有効であることができ、概して、有効量で投与される。しかしながら、実際に投与される化合物の量は、通常、処置されるべき状態、選ばれた投与経路、投与される実際の化合物、個別の対象の年齢、体重、及び応答、対象の症状の重症度、並びに同類のものを含めた関連する状況に従って、医師によって決定されることが理解されるであろう。
【0053】
本明細書において提供される組成物は、1日1回以上から週に1回以上、例えば1日おきに1回、投与することができる。当業者であれば、疾患若しくは障害の重症度、以前の処置、対象の全般的健康及び/若しくは年齢、並びに存在する他の疾患を含むがこれらに限定されない特定の因子が、対象を効果的に治療するために必要な投与量及びタイミングに影響を及ぼし得ることを認識するであろう。さらに、治療有効量の本明細書に記載される化合物による対象の治療は、単一の治療又は一連の治療を含み得る。一部の実施形態においては、本明細書において提供される組成物は、単回用量として投与される。
【0054】
本明細書において提供される化合物の投与量、毒性及び治療効力は、例えば、LD50(集団の50%に致死的な用量)及びED50(集団の50%に治療的に有効な用量)を決定するための、細胞培養又は実験動物における標準的な製薬手順によって、決定することができる。毒性効果と治療効果との間の用量比は、治療指数であり、比LD50/ED50と表すことができる。高い治療指数を示す化合物が好ましい。有毒な副作用を示す化合物を使用することができるが、非感染細胞への潜在的な損傷を最小限に抑え、それにより副作用を低減するために、罹患した組織の部位にそのような化合物を標的化する送達システムを設計するように注意すべきである。一部の実施形態においては、本明細書において提供される化合物は、同様の投与量のオルリスタットと比較して、より低い毒性を示す。毒性の評価は、例えば、本明細書に記載される方法等の方法を使用して決定してもよい。
【0055】
治療方法
本開示は、上昇した脂質濃度(例えば、脂肪毒性)に関連する障害の治療方法をさらに提供する。そのような障害のいくつかは、当技術分野で公知であり、当業者であれば容易に特定することができる。一部の実施形態においては、本方法は、血清リパーゼの阻害を必要とする対象において血清リパーゼを阻害する方法であって、対象に、治療有効量の本明細書において提供される化合物又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法を含む。一部の実施形態においては、本明細書において提供される化合物は、血清リパーゼ濃度を減少させる。一部の実施形態においては、リパーゼは、膵臓リパーゼ、例えば、ヒト膵臓トリアシルグリセロールリパーゼ(hPNLIP)、ヒト膵臓リパーゼ関連タンパク質2(hPLRP2)及びヒトコリパーゼ(hCEL)である。一部の実施形態においては、本明細書において提供される化合物は、遊離脂肪酸の生成を低減又は阻害することができる。例えば、本明細書において提供される化合物は、遊離脂肪酸の血清濃度を減少させることができる。
【0056】
本明細書において使用される場合、用語「対象」は、任意の動物、例えば、哺乳動物をを指す。例えば、用語「対象」は、限定されるものではないが、マウス、ラット、他のげっ歯類、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマ、霊長類、及びヒトを含む。一部の実施形態においては、対象はヒトである。一部の実施形態においては、対象は肥満である。用語「肥満」は、本明細書において使用される場合、23、25より大きい、特に30以上のボディ・マス・インデックス(body mass index)を有する対象を指す。あるいは、肥満は、個体の人種、民族性、性別又は国籍についての通常よりも大きい腹部脂肪又は胴回りの増加を意味し得る。
【0057】
一部の実施形態においては、本明細書に記載される方法は、インビトロの方法、例えば、サンプル(例えば、細胞又は組織)を、本明細書において提供される化合物又はその薬学的に許容される塩と接触させることを含み得る。
【0058】
一部の実施形態においては、障害は急性膵炎である。例えば、急性膵炎は重度であり得る。一部の実施形態においては、本明細書において提供される方法は、急性膵炎の重度症例を、膵炎の軽度症例に重症度を下げるのに有用であり得る。本開示は、治療有効量の本明細書において提供される化合物又はその薬学的に許容される塩を投与して、急性膵炎の1つ以上の症状を治療することによって、膵炎の1つ以上の症状の治療を必要とする対象において膵炎の1つ以上の症状を治療する方法を提供する。急性膵炎の例示的な症状としては、腹痛、背部痛、腹部の腫れ、悪心、嘔吐、発熱、速い脈拍、息切れ、低体温及び同類のものが挙げられる。
【0059】
本発明の非限定的な実施形態は、急性膵炎に罹患している対象において臓器不全の危険性を低減する方法であって、対象に、有効量の膵臓リパーゼ阻害剤を投与することを含む、方法を提供する。臓器不全の危険性が低減し得る臓器としては、腎臓(不全が腎不全と呼ばれる)、肺(不全が肺不全と呼ばれる)、低血圧によるショック、又は心拍数の増加、又は肺浮腫の出現(聴診での捻髪音として認められる、又はCXR、又はCTスキャン)及び多系統臓器不全(例えば、少なくともこれらの2つの臓器に関連した多臓器機能障害症候群)が挙げられる。これらの臓器の状態は、当技術分野で周知の臨床方法を使用して決定してもよい。例えば、限定するものではなく、腎臓機能(及び腎不全の発症)は、血中尿素窒素レベルの増加、クレアチニンの増加、尿量の減少、及び/又は組織学的所見によって評価してもよく; 肺機能及び肺不全の発症は、肺機能検査、血液ガス(酸素及び二酸化炭素レベル)、酸素補給要求(例えば、鼻カニューレ又はフェイスマスク又は人工呼吸器(酸素の異なる割合及び流速を有するもの))及び/又は組織学的所見を用いて評価してもよい(臓器不全の指標については、J. Wallach, 1978, Interpretation of Diagnostic Tests, Third Edition, Little, Brown and Co., Boston、及び/又はJ. Wallach, 2006, Interpretation of Diagnostic Tests, Eighth Edition, Lippincott Williams & Wilkins(両者はそれらの全体が参照により組み込まれる)を参照のこと)。同様に、全身性炎症の指標は、CRP、又は全身性炎症反応症候群(SIRS)基準の一部、腫瘍壊死因子アルファ、単球走化性タンパク質1及び/又はインターロイキン6を含むがこれらに限定されない、1つ以上の炎症媒介物質のレベルの増加である。これらの実施形態は、少なくとも部分的に、以下の実施例によってサポートされ、以下の実施例は、多系統臓器不全の危険性の減少における膵臓リパーゼ阻害剤の有効性を示す。
【0060】
一部の実施形態においては、本明細書において提供される化合物は、急性膵炎の二次的影響の危険性の低減を必要とする対象において、急性膵炎の二次的影響の危険性を低減するのに有用である。例えば、ショックを発症する危険性を低減することができる。一部の実施形態においては、腎不全を発症する危険性が低減する。一部の実施形態においては、肺不全を発症する危険性が低減する。
【0061】
一部の実施形態においては、障害はざ瘡である。他の実施形態においては、障害は、外傷、出血、重症疾患、又は敗血症である。例えば、敗血症は、培養陰性敗血症である。一部の実施形態においては、障害は火傷である。他の実施形態においては、障害は感染症である。例えば、感染症は、P.アウレゲノサ(P. auregenosa)、黄色ブドウ球菌(S. aureus)、枯草菌(B. subtilis)、及びB.セペシア(B. cepecia)からなる群から選択される1つ以上の生物によって引き起こされてもよい。例えば、Ryan CM, Sheridan RL, Schoenfeld DA, Warshaw AL, Tompkins RG: Postburn pancreatitis. Ann Surg 1995, 222(2):163-170; Subramanian A, Albert V, Mishra B, Sanoria S, Pandey RM: Association Between the Pancreatic Enzyme Level and Organ Failure in Trauma Patients. Trauma Mon 2016, 21(2):e20773; Malinoski DJ, Hadjizacharia P, Salim A, Kim H, Dolich MO, Cinat M, Barrios C, Lekawa ME, Hoyt DB: Elevated serum pancreatic enzyme levels after hemorrhagic shock predict organ failure and death. J Trauma 2009, 67(3):445-449; Lee CC, Chung WY, Shih YH: Elevated amylase and lipase levels in the neurosurgery intensive care unit. J Chin Med Assoc 2010, 73(1):8-14; 及びManjuck J, Zein J, Carpati C, Astiz M: Clinical significance of increased lipase levels on admi
ssion to the ICU. Chest 2005, 127(1):246-250を参照のこと。
【実施例】
【0062】
実施例1. 非ホルミル化アミノ酸類似体の調製及び試験
L-アミノ-エステルロイシンが代替物で置き換えられた、いくつかの非ホルミル化アミノ酸類似体を調製した。このプロセスに関与する合成工程の概要を図2に示す。図3に示されるように、生成された化合物は、L-ロイシン(#723、オルリスタットでもある)アミノ-エステルが、代替物、例えば、N-メチルロイシン(#724)又はより極性の若しくは短い代替物、例えば、L-アラニン(#716)、N-アセチル-L-シスチン(#717)、L-アスパルテート(#718)、L-ヒスチジン(#725)、L-メチオニンスルホン(#726)、L-アルギニン(727)、L-ジアミノピメリン酸(#728)、L-セリン(#729)、L-オルニチン(#731)、又はN-アセチルロイシン(#732)で置き換えられた化合物を含んだ。
【0063】
これらの化合物の効力を試験するために、薬剤を、エタノール中に20mMのストックとして溶解し、600マイクロモルの作業ストック(3.3%エタノール)としてPBS中にさらに希釈した。これはすぐに使用するか、又は効力を再試験する前に室温で16〜20時間一晩放置した。薬剤を、200〜0.3マイクロモルの範囲にわたる連続1/3希釈の膵臓溶解物と共に30分間インキュベートした。次いで、5マイクロリットルのこれらの混合物を使用して、試薬中にモノアシルグリセロールリパーゼを含有する市販のリパーゼアッセイ(Pointe scientific)を使用してリパーゼ活性を測定した。リパーゼアッセイは、推奨プロトコールに比例した試薬を使用して行った。値は、阻害剤なしのウェルの%最大リパーゼ活性として示した。見られるように、非ホルミル化オルリスタット類似体の効力は、オルリスタットの効力よりも増加しなかった(図4)。
【0064】
実施例2. ホルミル化アミノ酸類似体の調製及び試験
L-アミノ-エステルロイシンが代替物で置き換えられた、いくつかのホルミル化アミノ酸類似体を調製した。このプロセスに関与する合成工程の概要を図2及び図5に示す。
【0065】
これらの薬剤(図6に示されるように#733、734、738、739、740、742、743)を、最初に実施例1に記載されるように試験した。化合物741、736、743は、一晩保存した後、オルリスタットよりも約10倍安定性及び効力が改善することが認められた(図7)。Navina S, Acharya C, DeLany JP, Orlichenko LS, Baty CJ, Shiva SS, Durgampudi C, Karlsson JM, Lee K, Bae KT et al: Lipotoxicity causes multisystem organ failure and exacerbates acute pancreatitis in obesity. Sci Transl Med 2011, 3(107):107ra110に記載されるように、腺房-脂肪細胞共培養における腺房細胞への脂肪毒性損傷の低減における効力について、化合物をさらに試験し(図8A)、すべての薬剤は66マイクロモル(一晩のインキュベーション後のオルリスタットのIC50に最も近い濃度)で有効であったが、化合物743は、腺房細胞に対して毒性であることが認められ(図8B)、化合物741は、その効力を保持しながら、この濃度で最も毒性が低かった。化合物736も、低毒性でその効力を保持した。
【0066】
実施例3. β鎖類似体の調製及び試験
類似体の効力を改善するための選択肢をさらに調査するために、741のベータ鎖を変更して、それをより親水性にした。このために、化合物760、762、763を、図9〜14に記載されるように調製した。この位置での改変は、リパーゼ阻害効力の改善に関連せず、実際、効力の減少が観察された。図15を参照のこと。
【0067】
実施例4. α鎖類似体の調製及び試験
図16に示されるように、アルファ鎖への改変に基づいて、一連の類似体を調製し、化合物767及び768を生成した。これらの薬剤は、新鮮な場合、オルリスタットと同等のリパーゼ活性アッセイにおける効力を有したが、薬剤767は、一晩放置した場合、溶液として、その効力を著しく保持した。図17を参照のこと。
【0068】
実施例5. 遊離脂肪酸(FFA)生成の阻害、毒性、並びに組換えヒト膵臓トリアシルグリセロールリパーゼ[hPNLIP]、膵臓リパーゼ関連タンパク質2(hPLRP2)及びカルボキシエステルリパーゼ(hCEL)の阻害における効力
調製された類似体の選択物の効力を調査して、安定性を保持しながら、組換えヒトリパーゼからの遊離脂肪酸(FFA)生成を阻害するそれらの能力を決定した。これらの特徴を試験するために、類似体をエタノール中に溶解し(200mMストック)、PBS中で600マイクロモル(0.3%エタノール)の作業ストックにさらに希釈した。薬剤を、200〜0.3マイクロモルの範囲にわたる連続1/3希釈の組換え酵素と共に30分間インキュベートし、次いで、PBS、pH7.4中の基質1mMグリセリルトリリノレエート(GTL)に、補因子コリパーゼ(CLPS; 0.5mcg/ml)と共に添加した。図18に見られるように、薬剤767、733、734、740及び743は、オルリスタット又は741より50倍低い、組換えヒト膵臓トリアシルグリセロールリパーゼ[PNLIP; hPTL(コリパーゼ(CLPS)存在下)]に対するIC50Sを有し、一方、一晩保存した場合、IC50<2マイクロモルを保持した。特に、化合物767及び740は、最も良い安定性を示した。
【0069】
関連化合物の毒性研究はまた、元のエタノールストック200mMを、腺房細胞用のインキュベーション培地(HEPES緩衝液、pH7.4、Navina et alによって記載される)に希釈することによって、PBS中の0.3%エタノール中の化合物の600マイクロモルストック溶液を使用して実施した。これらを200マイクロモルで開始する1/3希釈で腺房細胞に添加した。マウス膵臓腺房ATPレベル及びLDH漏出を、4時間にわたって測定し、対照と比較した。対照に対してプラスの任意の数は、対照腺房よりも大きい%損傷を示す。しかし、薬剤743(図8B参照)及び733は、腺房細胞に対して毒性があり、20〜200マイクロモル範囲の濃度(インビボ使用に関連する濃度)で、ATPの低下を引き起こし、LDH漏出を誘発した(図19参照)。
【0070】
これらの化合物を、図20に示されるように、組換えヒト膵臓リパーゼ関連タンパク質2(hPLRP2)及びカルボキシエステルリパーゼ(hCEL)の低減における効力についてさらに試験した。これらのリパーゼは、膵臓リパーゼの15〜30%を形成する。薬剤740、734及び767は、2マイクロモル以下のIC50Sを再度示した。相対的な効力及び毒性を、図21の表にまとめる。これに加えて、767の強み、すなわち、a)マウス膵臓溶解物に対するより高い効力(図7及び17)、b)最も一般的なリパーゼ(hPTL)に対するより高い効力(図18)、c)水性媒体中でのより良い安定性(図17及び18)、及びd)より低い毒性(図19)に注目して、インビボ研究に進むために化合物767を選択した。さらに、10マイクロモルの薬剤740及び767は、オルリスタットよりも毒性が低く、GTL誘発性腺房損傷の低減により有効であった(図28)。
【0071】
実施例6. 化合物767のインビボ研究
このインビボ研究の目的は、化合物767を単回治療用量として投与した場合、マウスで致死性膵炎の重症度を低減することができるか、及び化合物がオルリスタットの制限、例えば、反復高用量及び高トリグリセリド血症を回避することができるかを知ることであった。図22を参照のこと。
【0072】
化合物767又はオルリスタットを、1mg/10マイクロリットルエタノールとして溶解し、生理食塩水で400マイクロリットルに希釈した(最終濃度2.5%エタノール)。遺伝的に肥満の雄性ob/obマウス(50〜60gm)を使用し、血清リパーゼ、トリグリセリド、及びBUN(血中尿素窒素)のために、ベースライン尾静脈採血を収集した。タイムラインは、図23Aのように示される。重度の膵炎を、2.5mg/mlセルレインを含有するアルゼットポンプを皮下に移植し、これを50mc/kg/hrの用量で投与することによって誘発した。6時間後、尾静脈サンプル(50マイクロリットル)を、血清リパーゼについて試験し、ベースの>3倍の増加を確認した。図23Bに見られるように、これは達成された(P=0.003)。
【0073】
次いで、薬剤を腹腔内用量(20mg/kg単回用量[767についてn=8、又はオルリスタットn=7])として投与した。動物に生理食塩水IP 1mL BIDを投与し、重症度(発熱若しくは低体温症の体温、及びショックに対するパルスディステンション(pulse distention))に焦点を合わせて、生命徴候を毎日監視した。これらはそれぞれ、SIRS及び重症度の改訂アトランタ基準(revised Atlanta criteria for severity)の一部である(Classification of acute pancreatitis--2012: revision of the Atlanta classification and definitions by international consensus. Gut 2013, 62(1):102-111)。ランソン(Ranson's)及びグラスゴー(Glasgow)の基準の一部である重症度パラメーター(血清BUN、血清カルシウム、及び総白血球数)、及びトリグリセリドのために、尾静脈サンプルを収集した。動物は瀕死の場合に犠牲にした。
【0074】
図23に見られるように、インビボですべての未処置マウスは、腎不全(BUN85±18mg/dl)図23C、低カルシウム血症(血清カルシウム4.9±0.2mg/dl)図23D、SIRS図23E、ショック図23F及び100%死亡率図23Gを生じた。BUN(ピーク18.5±0.9対オルリスタット50±4.4mg/dl、p<0.05)図23C、血清カルシウム(8.8±1.0mg/dl対4.2±0.3mg/dl、p<0.05)図23D、UFA(2.4±0.4mM対5.4±0.9mM)の正常化、ショック(PD: 290±20μm対171±21μm、p<0.05)図23F、白血球減少症(0/8マウス対4/7マウス、p<0.03、図25参照)、低体温症(94.1±0.8対86±0.9゜F、p<0.01; 図23E)の予防、及び5日生存(8/8対2/7、p<0.01)図23Gの改善において、767はオルリスタットよりも有効であった。ビヒクル群では8/8(平均44時間)の死亡率、オルリスタット群では5/7の死亡率であった。2つの薬剤を用いた全体的な外観を、図24で比較する。見られるように、オルリスタット処置動物では、はるかにより広範な脂肪壊死が存在する。薬剤767からのこの防御は、オルリスタットが防御するのに必要な投与に関連する高トリグリセリド血症なしで達成された(図25)。結果を図25の表にまとめる。
【0075】
実施例7. P.アクネス(P. acnes)の培地でのFFA生成
P.アクネス(P. acnes)による脂肪分解は、767によって阻害された(図26及び図27)。
【0076】
P.アクネス(P. acnes)ブロス培養:
培地については、2.0gのカゼイン加水分解物酵素消化物(カタログ番号12855、Affymetrix Inc, Ohio, USA)、1.0gの酵母抽出物(カタログ番号61180-5000、Acros organics, New Jersey, USA)及び0.03gのビクトリアブルーB(カタログ番号sc-216055、Santa Crutz Biotechnology Inc, California, USA)を、穏やかに加熱しながら、200mlの再蒸留水に完全に溶解した。混合溶液を、15lbsの圧力(121℃)で15分間オートクレーブすることによって滅菌した。オートクレーブ処理した溶液を、50℃に冷却し、次いで、6mlの乳化したリパーゼ基質を、連続的に撹拌しながらゆっくりと添加し、均一に分布させ、P.アクネス(P. acnes)培養のために4℃で保存した。
【0077】
リパーゼ基質の調製: リパーゼ基質を、100mlの温かい再蒸留水及び25mlの綿実油(カタログ番号C0145、Spectrum chemical, California, USA)中で200μlのTween 80(カタログ番号P4780、Sigma, St louis, USA)を混合することによって調製した。混合物を激しく撹拌し、その後、超音波処理(10秒パルス×5回)を行って、エマルションを得た。
【0078】
P.アクネス(P. acnes)培養拡張培地、保存条件、培地で使用される接種物の量
少量の凍結乾燥プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)(株VPI0389、ATCC)を培地に添加し、容器内の嫌気性状態を維持する2つの嫌気性生物サシェ(カタログ番号260683、Beckton Dickinson, MD, USA)と共に、BD GasPak EZ標準インキュベーション容器(カタログ番号260671、Beckton Dickinson, MD, USA)中で37℃で48時間増殖させた。培養48時間後、細菌数を濁度(OD600nm)法によって測定した。分泌されたリパーゼ及び産生されたFFAの量を、培養上清において測定した。
【0079】
P.アクネス(P. acnes)の保存のために、1.5mlのオートクレーブ処理したエッペンドルフマイクロフュージ(eppendorf microfuge)中の培養細菌(1ml/マイクロフュージ)を、5000rpmで5分間沈降させ、使用した培地を除去し、ペレット化細菌を、基質なしの15%グリセロール含有P.アクネス(P. acnes)培養培地中に再懸濁し(1ml/マイクロフュージ)、将来の使用のために-80℃で保存した。
【0080】
さらにP.アクネス(P. acnes)を培養するために、等分された1つのP.アクネス(P. acnes)ストックを、-80℃から取り出し、氷中で解凍した。約30μlのP.アクネス(P. acnes)ストック(1×106/30μl)を、各2mlのエッペンドルフマイクロフュージ中でリパーゼ基質を含む1mlの培養培地に添加し、嫌気性条件で37℃で48時間インキュベートした。
【0081】
P.アクネス(P. acnes)に対する効力試験又はリパーゼ阻害剤:
インキュベーションの開始時に、オルリスタット又は薬剤767(エタノール中のストック200mM)を指定濃度で添加した。インキュベーション期間の終わりに、よく混合した培地の一部を取り出し、Wako Diagnostics (Richmond Virginia)からのHRシリーズNEFA-HR(2)キットを使用して、遊離脂肪酸生成を測定した。
【0082】
P.アクネス(P. acnes)寒天培地
スピリットブルー寒天: 供給業者、カタログ番号、調製、保存。培養接種物量、培養条件。
【0083】
プレート調製のために、3.215gのスピリットブルー寒天(カタログ番号M445、HiMedia Laboratories Pvt Ltd, Mumbai, India)を、100mlの再蒸留水中に溶解し、オートクレーブし、55℃に冷却し、3mlの温かいリパーゼ基質を添加し、よく混合した。温かい状態で、混合物を無菌的に組織培養プレート(6ウェル、12ウェルプレート)に注いだ。固化した寒天プレートを、パラフィルムで包み、37℃で一晩保持して、汚染がないことを確認した。余分なプレートは、将来の使用のために4℃のフリーザーで保持した。解凍したP.アクネス(P. acnes)-80℃ストックを、6ウェル/12ウェルプレートに広げる(30μl/ウェル)か、又は接種ループによってウェル全体に接種した。次いで、プレートを1つの嫌気性生物サシェと共に、BD GasPak EZチャンバー中で37℃に保持し、5〜7日間待って、細菌コロニーを確認した。次いで、これらをトランスイルミネーターで可視化し、写真撮影した。
【0084】
他の実施形態
本発明をその詳細な説明と併せて説明したが、前述の説明は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を例示するが、限定することは意図されないことを理解されたい。他の態様、利点、及び改変は、以下の特許請求の範囲内にある。
図1
図2-1】
図2-2】
図3
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【国際調査報告】