(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
水蒸気分解装置タールなどの熱分解タールをアップグレードするための多段階プロセスから製造された第1の水素化処理生産物及び第2の水素化処理生産物が本明細書において提供される。第1の水素化処理生産物及び/又は第2の水素化処理生産物を含む燃料ブレンド、並びに第1の水素化処理生産物及び第2の水素化処理生産物を使用して軽油の流動点を低下させる方法も本明細書において提供される。
前記燃料流が、低硫黄ディーゼル、超低硫黄ディーゼル、低硫黄軽油、超低硫黄軽油、低硫黄灯油、超低硫黄灯油、水素処理直留ディーゼル、水素処理直留軽油、水素処理直留灯油、水素処理サイクルオイル、水素処理熱分解ディーゼル、水素処理熱分解軽油、水素処理熱分解灯油、水素処理コークス器ディーゼル、水素処理コークス器軽油、水素処理コークス器灯油、水素化分解装置ディーゼル、水素化分解装置軽油、水素化分解装置灯油、ガス−ツー−リキッドディーゼル、ガス−ツー−リキッド灯油、水素処理植物油、脂肪酸メチル基エステル、非水素処理直留ディーゼル、非水素処理直留灯油、非水素処理直留軽油、低硫黄原油スレートから誘導される蒸留物、ガス−ツー−リキッドワックス、ガス−ツー−リキッド炭化水素、非水素処理サイクルオイル、非水素処理流体接触分解スラリーオイル、非水素処理熱分解軽油、非水素処理分解軽質軽油、非水素処理分解重質軽油、非水素処理熱分解軽質軽油、非水素処理熱分解重質軽油、非水素処理熱分解残渣、非水素処理熱分解重質蒸留物、非水素処理コークス器重質蒸留液、非水素処理減圧軽油、非水素処理コークス器ディーゼル、非水素処理コークス器軽油、非水素処理コークス器減圧軽油、非水素処理熱分解減圧軽油、非水素処理熱分解ディーゼル、非水素処理熱分解軽油、グループ1粗蝋、潤滑油芳香族抽出物、脱アスファルト化油、大気圧塔底物、減圧塔底物、水蒸気分解装置タール、低硫黄原油スレートから誘導される残渣材料、超低硫黄燃料油(ULSFO)、超低硫黄燃料油(LSFO)、レギュラー硫黄燃料油(RSFO)、船用燃料油、水素処理残渣材料(例えば、原油蒸留からの残渣)、水素処理流体接触分解スラリーオイル及びその組合せからなる群から選択される、請求項7に記載の燃料ブレンド。
前記第1の水素化処理生産物及び/又は前記第2の水素化処理生産物が、約40重量%〜約70重量%の量で存在し、且つ前記燃料流が、約30重量%〜約60重量%の量で存在する、請求項7又は8に記載の燃料ブレンド。
請求項1〜3のいずれか一項に記載の第1の水素化処理生産物及び/又は請求項4〜6のいずれか一項に記載の第2の水素化処理生産物と、軽油(例えば、規格外船用軽油、規格内船用軽油又は水素処理軽油)とをブレンドし、前記軽油の流動点よりも低い流動点を有するブレンドされた軽油を形成することを含む、軽油の流動点を低下させる方法。
ブレンド前の前記軽油の流動点が0.0℃以上であり、且つブレンド後、前記ブレンドされた軽油の流動点が約−5.0℃以下であり、且つ/又は前記ブレンドされた軽油が、ブレンド前の前記軽油の流動点よりも少なくとも5℃低い流動点を有する、請求項11に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
I.多段階水素化処理生産物
本明細書中、水素化処理生産物(例えば、第1の水素化処理生産物、第2の水素化処理生産物)を製造するための触媒的水素化処理条件下、水素分子を含む処理気体の存在下で、熱分解タール炭化水素(例えば、10.0重量%以上)及びユーティリティ流体を含む供給原料が1つ以上の水素化処理ゾーン又は段階(例えば、第1の段階、第2の段階など)において水素化処理され得る炭化水素変換プロセスの生産物が開示される。炭化水素変換プロセスに関するさらなる詳細は、本開示の後の項目において提供される。
【0020】
A.第1の水素化処理生産物
種々の態様において、第1の水素化処理生産物が本明細書において提供される。第1の水素化処理生産物が、単一水素化処理ゾーン又は段階から得られる生産物、或いは多段階水素化処理の第1の水素化処理ゾーン又は段階から得られる生産物を包含するように意図されることが本明細書において規定される。いくつかの実施形態において、第1の水素化処理生産物は、第1段階水素化処理生産物と記載されてもよい。第1の水素化処理生産物は、第1の水素化処理生産物が適切な燃料油及び/又は適切な燃料油ブレンドストックとなり得るように、適切な量の硫黄、パラフィン及び芳香族を含み得、そして限定されないが、流動点及び粘度などの所望の特性を有し得る。
【0021】
特に、第1の水素化処理生産物は、第1の水素化処理生産物の全重量に基づき、約5.0重量%以下、約2.5重量%以下、約1.0重量%以下、約0.75重量%以下、約0.50重量%以下、約0.40重量%以下、約0.30重量%以下、約0.20重量%以下又は約0.10重量%以下の硫黄含有量を有し得る。例えば、第1の水素化処理生産物は、第1の水素化処理生産物の全重量に基づき、約0.10重量%〜約5.0重量%、約0.10重量%〜約1.0重量%、約0.10重量%〜約0.50重量%、約0.10重量%〜約0.40重量%又は約0.10重量%〜約0.30重量%の硫黄含有量を有し得る。好ましくは、第1の水素化処理生産物は、第1の水素化処理生産物の全重量に基づき、約の0.10重量%から約0.50重量%未満までの硫黄含有量を有し得る。有利に、その低い硫黄含有量のため、第1の水素化処理生産物は、LSFOとして適切であり得、且つ/又は0.50重量%より高い硫黄含有量を有するレギュラー硫黄燃料油(RSFO)及び/又はより粘性のブレンドストック材料とLSFOとをブレンドすることを可能にし得るLSFOプールを拡張するために使用されることが可能である。さらに、第1の水素化処理生産物をブレンドストックとして使用することによって、望ましくないより低いエネルギー含量を有し得る蒸留物を使用することを避けることができる。その上、第1の水素化処理生産物は、硫黄含有量に関して規格外(オフスペック)であり得るLSFOを修正するために使用されてもよい。
【0022】
その上、又は代わりに、第1の水素化処理生産物は、より低いパラフィン含有量を有し得、それによって燃料装置におけるワックス沈殿及びフィルター目詰まりのリスクを有利に低減することができる。本明細書で使用される場合、或いは「アルカン」と記載される「パラフィン」という用語は、限定されないが、メタン、エタン、プロパン及びブタンなどの鎖長において1〜約25個の炭素原子の飽和炭化水素鎖を意味する。パラフィンは、直鎖又は分枝鎖であってよく、非環式化合物であると考えられる。「パラフィン」は、パラフィンの全ての構造異性体の形態を包含するように意図される。例えば、第1の水素化処理生産物は、第1の水素化処理生産物の全重量に基づき、約10重量%以下、約7.5重量%以下、約5.0重量%以下、約2.5重量%以下、約1.0重量%以下、約0.50重量%以下又は約0.10重量%以下のパラフィン含有量を有し得る。好ましくは、第1の水素化処理生産物は、第1の水素化処理生産物の全重量に基づき、約5.0重量%以下、約2.5重量%以下、約1.0重量%以下又は約0.50重量%以下のパラフィン含有量を有し得る。その上、又は代わりに、第1の水素化処理生産物は、第1の水素化処理生産物の全重量に基づき、約0.10重量%〜約10重量%、約0.10重量%〜約5.0重量%、約0.10重量%〜約1.0重量%又は約0.10重量%〜約0.50重量%のパラフィン含有量を有し得る。
【0023】
その上、又は代わりに、第1の水素化処理生産物は、それを種々の残渣燃料油とより相溶性にさせる、そのアルキル官能化誘導体を含む芳香族のより高い量を含んでもよい。例えば、第1の水素化処理生産物は、1〜4又は1〜3又は1〜2つの炭化水素置換基などの1つ以上の炭化水素置換基を有するものを含む、40重量%以上、50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、90重量%以上又は95重量%以上の芳香族を含むことが可能である。そのような置換基は、全溶媒蒸留特徴と一致するいずれの炭化水素基であることも可能である。そのような炭化水素基の例としては、限定されないが、C
1〜C
6アルキルからなる群から選択されるものが含まれ、炭化水素基は、分枝鎖又は直鎖であることが可能であり、且つ炭化水素基は、同一であることも、又は異なることも可能である。任意選択的に、第1の水素化処理生産物は、第1の水素化処理生産物の重量に基づき、85重量%以上のベンゼン、エチルベンゼントリメチルベンゼン、キシレン、トルエン、ナフタリン、アルキルナフタレン(例えば、メチルナフタレン)、テトラリン、アルキルテトラリン(例えば、メチルテトラリン)、フェナントレン又はアルキルフェナントレンを含むことができる。
【0024】
第1の水素化処理生産物が、末端不飽和を有する分子、例えば、ビニル芳香族を実質的に含まないことは、特にそのような分子の存在下、コークスを形成する傾向を有する水素化処理触媒を利用する実施形態において、一般に望ましい。これに関連して、「実質的に含まない」という用語は、第1の水素化処理生産物が、第1の水素化処理生産物の重量に基づき、10.0重量%以下(例えば、5.0重量%以下又は1.0重量%以下)のビニル芳香族を含むことを意味する。
【0025】
一般に、第1の水素化処理生産物は、1つ以上の芳香族コアを有する分子の十分量を含有する。例えば、第1の水素化処理生産物は、第1の水素化処理生産物の全重量に基づき、少なくとも1つの芳香族コアを有する分子を50.0重量%以上(例えば、60.0重量%以上、例えば、70重量%以上)含むことが可能である。一実施形態において、第1の水素化処理生産物は、第1の水素化処理生産物の重量に基づく重量パーセントで、(i)60.0重量%以上の少なくとも1つの芳香族コアを有する分子、及び(ii)1.0重量%以下のビニル芳香族を含むことが可能である。
【0026】
第1の水素化処理生産物は、二次元ガスクロマトグラフィー(2D GC)によって決定される明白な環クラスに含まれる部分に関して記載されるであろう。2D GC法に関する詳細は、本明細書の後の項目においてさらに提供される。記載されるそれぞれの環クラスの中でも、少なくとも1つの芳香族コアを含むそれらの部分が好ましい。
【0027】
本明細及び添付の請求項において、「0.5環クラス化合物」は、その分子構造において、1つのみの非芳香族環部分を有し、そして芳香族環部分がない分子を意味する。
【0028】
「非芳香族環」という用語は、少なくとも1つの環構造において4個以上の炭素原子が接合し、環構造中の4個以上の炭素原子の中の少なくとも1つが芳香族炭素原子ではないことを意味する。芳香族炭素原子は、例えば、
13C 核磁気共鳴を使用して識別することができる。環に付加しているが、環構造の一部ではない原子(例えば、1つ以上のヘテロ原子、1つ以上の炭素原子など)を有する非芳香族環は、「非芳香族環」の用語の範囲内である。
【0029】
非芳香族環の例としては、
(i)五環系環−
【化1】
などの5員炭素環
(ii)六環系環−
【化2】
などの6員炭素環が含まれる。
非芳香族環は、上記で例示されるように飽和であること、又は部分的不飽和、例えば、シクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロヘキセン及びシクロヘキサジエンであることが可能である。
【0030】
非芳香族環(SCT中、主に6員及び5員の非芳香族環である)は、硫黄(S)、窒素(N)及び酸素(O)などの1種以上のヘテロ原子を含有することが可能であり、且つ「ヘテロ原子非芳香族環」と記載されてもよい。ヘテロ原子を有するヘテロ原子非芳香族環の非限定的な例としては、
【化3】
が含まれる。
ヘテロ原子非芳香族環は、上記で例示されるように飽和であること、又は部分的不飽和であることが可能である。
【0031】
「芳香族環」という用語は、環構造において5個又は6個の炭素原子が接合し、(i)環構造中の接合した原子の少なくとも4個が炭素原子であり、且つ(ii)環構造中の接合した炭素原子の全てが芳香族炭素原子であることを意味する。環に付加しているが、環構造の一部ではない原子(例えば、1つ以上のヘテロ原子、1つ以上の炭素原子など)を有する芳香族環は、「芳香族環」の用語の範囲内である。
【0032】
代表的な芳香族環としては、例えば、
(i)ベンゼン環
【化4】
(ii)
【化5】
などのチオフェン環、
(iii)
【化6】
などのピロール環、
(iv)
【化7】
などのフラン環が含まれる。
【0033】
分子構造中に2つ以上の環がある場合、環は芳香族環及び/又は非芳香族環であることが可能である。環と環との連結は2つのタイプであることが可能であり、環の少なくとも1つの側面が共有されるタイプ(1)、及び環が少なくとも1つの結合によって連結するタイプ(2)である。タイプ(1)構造は、縮合環構造としても知られている。タイプ(2)構造は、架橋環構造として一般に知られている。
【0034】
タイプ(1)縮合環構造のいくつかの非限定的な例は、
【化8】
である。
【0035】
タイプ(2)架橋環構造の非限定的な例は、
【化9】
(式中、n=0、1、2又は3である)である。
【0036】
分子構造中に2つ以上の環(芳香族環及び/又は非芳香族環)が存在する場合、環と環との連結は、タイプ(1)又はタイプ(2)の連結、或いはタイプ(1)及び(2)の両方の混合を含み得る。
【0037】
以下、本明細書及び添付の請求項の目的に関する多環化合物に対する化合物クラスを定義する。
【0038】
1.0環クラスの化合物は、次の環部分:
(i)分子構造中に1つの芳香族環[1・(1.0環)]
の1つのみを含有するが、他の環部分は含有しない。
【0039】
1.5環クラスの化合物は、次の環部分:
(i)分子構造中に1つの芳香族環[1・(1.0環)]及び1つの非芳香族環[1・(0.5環)]、又は
(ii)分子構造中に3つの非芳香族環[3・(0.5環)]
の1つのみを含有するが、他の環部分は含有しない。
【0040】
2.0環クラスの化合物は、次の環部分:
(i)2つの芳香族環[2・(1.0環)]、又は
(ii)分子構造中に1つの芳香族環[1・(1.0環)]及び2つの非芳香族環[2・(0.5環)]、又は
(iii)分子構造中に4つの非芳香族環[4・(0.5環)]
の1つのみを含有するが、他の環部分は含有しない。
【0041】
2.5環クラスの化合物は、次の環部分:
(i)分子構造中に2つの芳香族環[2・(1.0環)]及び1つの非芳香族環[1・(0.5環)]、又は
(ii)分子構造中に1つの芳香族環[1・(1.0環)]及び3つの非芳香族環[3・(0.5環)]、又は
(iii)分子構造中に5つの非芳香族環[5・(0.5環)]
の1つのみを含有するが、他の環部分は含有しない。
【0042】
同様に、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0などの分子クラスの化合物は、合計がそれぞれ3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0などであるように、0.5環として計算される非芳香族環及び1.0環として計算される芳香族環の組合せを含有する。
【0043】
例えば、5.0環クラスの化合物は、次の環部分:
(i)5つの芳香族環[5・(1.0環)]、又は
(ii)分子構造中に4つの芳香族環[4・(1.0環)]及び2つの非芳香族環[2・(0.5環)]、又は
(iii)分子構造中に3つの芳香族環[3・(1.0環)]及び4つの非芳香族環[4・(0.5環)]、又は
(iv)分子構造中に2つの芳香族環[2・(1.0環)]及び6つの非芳香族環[6・(0.5環)]、又は
(v)分子構造中に1つの芳香族環[1・(1.0環)]及び8つの非芳香族環[8・(0.5環)]、又は
(vi)分子構造中に10の非芳香族環[10・(0.5環)]
の1つのみを含有するが、他の環部分は含有しない。
【0044】
第1の水素化処理生産物は、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0及び5.5環クラス化合物を含んでよい。第1の水素化処理生産物は、第1の水素化処理生産物の重量に基づき、1.0重量%以下、例えば、0.5重量%以下、0.1重量%以下、0.05重量%以下、例えば、0.01重量%以下の5.5環クラス化合物をさらに含むことができる。その上、第1の水素化処理生産物は、5.5環クラス化合物を含まないことが可能である。第1の水素化処理生産物は、第1の水素化処理生産物の重量に基づき、1.0重量%以下、例えば、0.5重量%以下、0.1重量%以下、0.05重量%以下、例えば、0.03重量%以下の5.0環クラス化合物をさらに含むことができる。その上、第1の水素化処理生産物は、5.0環クラス化合物を含まないことが可能である。好ましくは、第1の水素化処理生産物は、ユーティリティ流体の重量に基づき、0.1重量%以下、例えば、0.05重量%以下、例えば、0.01重量%以下の全6.0、6.5及び7.0環クラス化合物を含む。その上、第1の水素化処理生産物は、6.0、6.5及び/又は7.0環クラス化合物を含まないことが可能である。代わりに、第1の水素化処理生産物は、1.0〜7.0環クラス化合物を含んでよい。好ましくは、第1の水素化処理生産物は、1.0〜5.5環クラス化合物を含む。第1の水素化処理生産物は、5.0重量%以下、例えば、3.0重量%以下、2.0重量%以下、例えば、1.8重量%以下の非芳香族環化合物、例えば、ナフテンをさらに含むことができる。
【0045】
種々の態様において、第1の水素化処理生産物は、第1の水素化処理生産物の重量に基づき、
(i)1.0重量%以上の1.0環クラス化合物、又は2.5重量%以上の1.0環クラス化合物;
(ii)5.0重量%以上の1.5環クラス化合物、10重量%以上の1.5環クラス化合物、又は15重量%以上の1.5環クラス化合物;
(iii)10重量%の2.0環クラス化合物以上、15重量%以上の2.0環クラス化合物、20重量%以上の2.0環クラス化合物、又は25重量%以上の2.0環クラス化合物;
(iv)10重量%以上の2.5環クラス化合物、15重量%以上の2.5環クラス化合物、又は18重量%以上の2.5環クラス化合物;
(v)2.0重量%以上の3.0環クラス化合物、5.0重量%以上の3.0環クラス化合物、又は8.0重量%以上の3.0環クラス化合物;及び
(vi)1.0重量%以上の3.5環クラス化合物、2.0重量%以上の3.5環クラス化合物、又は4.0重量%以上の3.5環クラス化合物;
の1つ以上を含むことができる。
【0046】
任意選択的に、第1の水素化処理生産物は、第1の水素化処理生産物の重量に基づき、(i)5.0重量%以下の4.0環クラス化合物又は3.0重量%以下の4.0環クラス化合物;及び(ii)5.0重量%以下の4.5環クラス化合物又は3.0重量%以下の4.0環クラス化合物の1つ以上を含むことができる。
【0047】
特定の実施形態において、第1の水素化処理生産物は、第1の水素化処理生産物の重量に基づく重量パーセントで、(a)約1.0重量%〜約20重量%、好ましくは約1.0重量%〜約15重量%、より好ましくは約1.0重量%〜約10重量%の1.0環クラス化合物;(b)約5.0重量%〜約50重量%、好ましくは約5.0重量%〜約30重量%、より好ましくは約10重量%〜約30重量%の1.5環クラス化合物;(c)約10重量%〜約60重量%、好ましくは約10重量%〜約50重量%、より好ましくは約10重量%〜約40重量%の2.0環クラス化合物;(d)約10重量%〜約50重量%、好ましくは約10重量%〜約40重量%、より好ましくは約10重量%〜約30重量%の2.5環クラス化合物;(e)約1.0重量%〜約30重量%、好ましくは約1.0重量%〜約20重量%の3.0環クラス化合物;及び/又は(f)約1.0重量%〜約20重量%、好ましくは約1.0重量%〜約15重量%、より好ましくは約1.0重量%〜約10重量%の3.5環クラス化合物の1つ以上を含む。
【0048】
その上、又は代わりに、第1の水素化処理生産物は、ナフテンを含んでもよい。本明細書で使用される場合、「ナフテン」という用語は、3〜30個の炭素原子を有する(シクロパラフィンとしても知られる)シクロアルカンを意味する。ナフテンの例としては、限定されないが、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタンなどが含まれる。ナフテンという用語は、単環ナフテン及び多環ナフテンを包含する。多環ナフテンは、2つ以上の環、例えば、二環、三環、四環、五環、六環、七環、八環、九環及び十環を有してよい。環は、縮合及び/又は架橋されていてもよい。ナフテンは、種々の側鎖、特に1つ以上の1〜10炭素のアルキル側鎖を含むことができる。特に、第1の水素化処理生産物は、5.0重量%以下、4.0重量%以下、3.0重量%以下、2.0重量%以下、1.5重量%以下、1.0重量%以下、0.75重量%以下、0.50重量%以下又は約0.10重量%以下の量で単環(例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタンなど)を有する、及び/又は二環(例えば、デカヒドロナフタレン、オクタヒドロペンタレンなど)を有するナフテンを含んでもよい。例えば、第1の水素化処理生産物は、0.10重量%〜5.0重量%、0.10重量%〜3.0重量%、又は0.10重量%〜1.0重量%の量で単環を有するナフテンを含んでもよい。その上、又は代わりに、第1の水素化処理生産物は、0.10重量%〜5.0重量%、0.10重量%〜3.0重量%、0.10重量%〜2.0重量%又は0.50重量%〜1.5重量%の量で二環を有するナフテンを含んでもよい。
【0049】
これら全ての多環クラスには、それに対して結合された水素、アルキル又はアルケニル基、例えば、H、CH
3、C
2H
5からC
mH
2m+1の1つ以上を有する環化合物が含まれる。一般に、mは1〜6、例えば1〜5の範囲にある。
【0050】
その上、又は代わりに、第1の水素化処理生産物は、種々の残渣燃料油との相溶性を増加させ得る適切なアスファルテン含有量を有し得る。例えば、第1の水素化処理生産物は、第1の水素化処理生産物の重量に基づき、約20重量%以下、約15重量%以下、約12重量%以下、約10重量%以下、約7.0重量%以下、約5.0重量%以下、約2.0重量%以下、又は約1.0重量%以下のアスファルテン含有量を有し得る。その上、又は代わりに、第1の水素化処理生産物は、第1の水素化処理生産物の重量に基づき、約1.0重量%〜約20重量%、約1.0重量%〜約15重量%、約2.0重量%〜約10重量%、又は約2.0重量%〜約7.0重量%のアスファルテン含有量を有し得る。好ましくは、第1の水素化処理生産物は、第1の水素化処理生産物の重量に基づき、約2.0重量%〜約10重量%のアスファルテン含有量を有し得る。
【0051】
上記で議論された通り、第1の水素化処理生産物は、種々の所望の特性を有し得る。例えば、第1の水素化処理生産物は、ASTM D6352に従って測定される約145℃〜約760℃の沸点分布を有し得る。さらに、第1の水素化処理生産物は、ASTM D7346に従って測定される約10℃以下、約5.0℃以下、約0.0℃以下、約−5.0℃以下、約−10℃以下、約−15℃以下又は約−20℃以下の流動点を有し得る。好ましくは、第1の水素化処理生産物は、ASTM D7346に従って測定される約0.0℃以下、より好ましくは約−10℃以下の流動点を有し得る。その上、又は代わりに、第1の水素化処理生産物は、ASTM D7346に従って測定される約−30℃〜約10℃、約−20℃〜約10℃、約−20℃〜約5.0℃、約−20℃〜約0.0℃、又は約−20℃〜約−5.0℃の流動点を有し得る。さらに、第1の水素化処理生産物は、ASTM D7042に従って測定される約20mm
2/秒〜約200mm
2/秒、約20mm
2/秒〜約150mm
2/秒又は約40mm
2/秒〜約100mm
2/秒の50℃における動粘度を有し得る。第1の水素化処理生産物によって実現化される芳香族性、粘度及び/又は流動点のこの組合せによって、第1の水素化処理生産物は燃料油ブレンドストックとして、特に芳香族性、粘度及び/又は流動点に関して規格外の燃料油を修正することに関して特に有用になる。
【0052】
種々の態様において、第1の水素化処理生産物は、
(i)約80以上、約90以上、約100以上又は約110以上の鉱山局相関指標(BMCI);
(ii)約100以上、約110以上、約120以上、約130以上、又は約140以上の可溶性価(S
n);
(iii)約30MJ/kg以上、約35MJ/kg以上、又は約40MJ/kg以上のエネルギー含量;及び
(iv)ASTM D4052に従って測定される約0.99g/ml〜約1.10g/ml、特に約1.02g/mL〜約1.08g/mlの15℃における密度
の1つ以上をさらに有し得る。
【0053】
B.第2の水素化処理生産物
種々の態様において、第2の水素化処理生産物が本明細書において提供される。第2の水素化処理生産物が、第2の水素化処理ゾーン又は段階から得られる生産物、或いは多段階水素化処理の1つ以上の段階から得られる生産物を包含するように意図されることが本明細書において規定される。いくつかの実施形態において、第2の水素化処理生産物は、第2段階水素化処理生産物と記載されてもよい。第1の水素化処理生産物と同様に、第2の水素化処理生産物は、第2の水素化処理生産物が適切な燃料油及び/又は適切な燃料油ブレンドストックとなり得るように、適切な量の硫黄、パラフィン及び芳香族を含み得、そして限定されないが、流動点及び粘度などの所望の特性を有し得る。
【0054】
特に第2の水素化処理生産物は、第2の水素化処理生産物の全重量に基づき、約0.50重量%以下、約0.40重量%以下、約0.30重量%以下、約0.20重量%以下、約0.10重量%以下、約0.080重量%以下、又は約0.050重量%以下の硫黄含有量を有し得る。特に第2の水素化処理生産物は、第1の水素化処理生産物の全重量に基づき、約0.30重量%以下、約0.20重量%以下又は約0.10重量%以下の硫黄含有量を有し得る。その上、又は代わりに、第2の水素化処理生産物は、第2の水素化処理生産物の全重量に基づき、約0.050重量%〜約0.50重量%、約0.050重量%〜約.040重量%、約0.050重量%〜約0.30重量%、約0.050重量%〜約0.20重量%又は約0.050重量%〜約0.10重量%の硫黄含有量を有し得る。有利に、その低い硫黄含有量のため、第2の水素化処理生産物は、ULSFO及び/又はLSFOとして適切であり得る。第2の水素化処理生産物は、LSFOとULSFOとのブレンド、RSFOとLSFOとのブレンド、及び/又はより粘性のブレンドストック材料とLSFO又はULSFOとのブレンドを可能にし得るULSFOプール及び/又はLSFOプールを拡張するために使用されることも可能である。さらに、第2の水素化処理生産物をブレンドストックとして使用することによって、望ましくないより低いエネルギー含量を有し得る蒸留物を使用することを避けることができる。その上、第2の水素化処理生産物は、硫黄含有量に関して規格外であり得るULSFO及び/又はLSFOを修正するために使用されてもよい。
【0055】
その上、又は代わりに、第2の水素化処理生産物は、より低いパラフィン含有量を有し得、それによって燃料装置におけるワックス沈殿及びフィルター目詰まりのリスクを有利に低減することができる。例えば、第2の水素化処理生産物は、第2の水素化処理生産物の全重量に基づき、約10重量%以下、約7.5重量%以下、約5.0重量%以下、約2.5重量%以下、約1.0重量%以下、約0.50重量%以下又は約0.10重量%以下のパラフィン含有量を有し得る。好ましくは、第2の水素化処理生産物は、第2の水素化処理生産物の全重量に基づき、約5.0重量%以下、約2.5重量%以下、約1.0重量%以下又は約0.50重量%以下のパラフィン含有量を有し得る。その上、又は代わりに、第2の水素化処理生産物は、第2の水素化処理生産物の全重量に基づき、約0.10重量%〜約10重量%、約0.10重量%〜約5.0重量%、約0.10重量%〜約1.0重量%又は約0.10重量%〜約0.50重量%のパラフィン含有量を有し得る。
【0056】
その上、又は代わりに、第2の水素化処理生産物は、それを種々の残渣燃料油とより相溶性にさせる、そのアルキル官能化誘導体を含む芳香族のより高い量を含んでもよい。例えば、第2の水素化処理生産物は、1〜6又は1〜4又は1〜3又は1〜2つの炭化水素置換基などの1つ以上の炭化水素置換基を有するものを含む、40重量%以上、50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、90重量%以上又は95重量%以上の芳香族を含むことが可能である。そのような置換基は、全溶媒蒸留特徴と一致するいずれの炭化水素基であることも可能である。そのような炭化水素基の例としては、限定されないが、C
1〜C
6アルキルからなる群から選択されるものが含まれ、炭化水素基は、分枝鎖又は直鎖であることが可能であり、且つ炭化水素基は、同一であることも、又は異なることも可能である。任意選択的に、第2の水素化処理生産物は、第2の水素化処理生産物の重量に基づき、90.0重量%以上のベンゼン、エチルベンゼントリメチルベンゼン、キシレン、トルエン、ナフタリン、アルキルナフタレン(例えば、メチルナフタレン)、テトラリン、アルキルテトラリン(例えば、メチルテトラリン)、フェナントレン又はアルキルフェナントレンを含むことができる。
【0057】
第2の水素化処理生産物が、末端不飽和を有する分子、例えば、ビニル芳香族を実質的に含まないことは、特にそのような分子の存在下、コークスを形成する傾向を有する水素化処理触媒を利用する実施形態において、一般に望ましい。これに関連して、「実質的に含まない」という用語は、第2の水素化処理生産物が、第2の水素化処理生産物の重量に基づき、10.0重量%以下(例えば、5.0重量%以下又は1.0重量%以下)のビニル芳香族を含むことを意味する。
【0058】
一般に、第2の水素化処理生産物は、1つ以上の芳香族コアを有する分子の十分量を含有する。例えば、第2の水素化処理生産物は、第2の水素化処理生産物の全重量に基づき、少なくとも1つの芳香族コアを有する分子を50.0重量%以上(例えば、60.0重量%以上、例えば、70重量%以上)含むことが可能である。一実施形態において、第2の水素化処理生産物は、第2の水素化処理生産物の重量に基づく重量パーセントで、(i)60.0重量%以上の少なくとも1つの芳香族コアを有する分子、及び(ii)1.0重量%以下のビニル芳香族を含むことが可能である。
【0059】
第2の水素化処理生産物は、二次元ガスクロマトグラフィー(2D GC)によって決定される上記される明白な環クラスに含まれる部分に関して記載されるであろう。記載されるそれぞれの環クラスの中でも、少なくとも1つの芳香族コアを含むそれらの部分が好ましい。
【0060】
第2の水素化処理生産物は、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0及び5.5環クラス化合物を含んでよい。好ましくは、第2の水素化処理生産物は、ユーティリティ流体の重量に基づき、0.1重量%以下、例えば、0.05重量%以下、例えば、0.01重量%以下の全6.0、6.5及び7.0環クラス化合物を含む。その上、第2の水素化処理生産物は、6.0、6.5及び/又は7.0環クラス化合物を含まないことが可能である。代わりに、第2の水素化処理生産物は、1.0〜7.0環クラス化合物を含んでよい。好ましくは、第2の水素化処理生産物は、1.0〜5.5環クラス化合物を含む。第2の水素化処理生産物は、5.0重量%以下、例えば、3.0重量%以下、2.0重量%以下、又は1.0重量%以下の非芳香族環化合物、例えば、ナフテンをさらに含むことができる。
【0061】
種々の態様において、第2の水素化処理生産物は、第2の水素化処理生産物の全重量に基づき、
(i)0.50重量%以上の1.0環クラス化合物又は1.0重量%以上の1.0環クラス化合物;
(ii)1.0重量%以上の1.5環クラス化合物、3.0重量%以上の1.5環クラス化合物又は5.0重量%以上の1.5環クラス化合物;
(iii)2.0重量%以上の2.0環クラス化合物、5.0重量%以上の2.0環クラス化合物又は10重量%以上の2.0環クラス化合物;
(iv)5.0重量%以上の2.5環クラス化合物、10重量%以上の2.5環クラス化合物又は15重量%以上の2.5環クラス化合物;
(v)5.0重量%以上の3.0環クラス化合物、10重量%以上の3.0環クラス化合物又は15重量%以上の3.0環クラス化合物;
(vi)5.0重量%以上の3.5環クラス化合物、10重量%以上の3.5環クラス化合物又は12重量%以上の3.5環クラス化合物;
(vii)2.0重量%以上の4.0環クラス化合物、5.0重量%以上の4.0環クラス化合物又は8.0重量%以上の4.0環クラス化合物;
(viii)1.0重量%以上の4.5環クラス化合物、2.0重量%以上の4.5環クラス化合物又は4.0重量%以上の4.5環クラス化合物;
(ix)1.0重量%以上の5.0環クラス化合物又は2.0重量%以上の5.0環クラス化合物;及び
(x)1.0重量%以上の5.5環クラス化合物又は2.0重量%以上の5.5環クラス化合物
の1つ以上を含むことができる。
【0062】
任意選択的に、第2の水素化処理生産物は、第2の水素化処理生産物の全重量に基づき、(i)5.0重量%以下の1.0環クラス化合物又は3.0重量%以下の1.0環クラス化合物;及び(ii)5.0重量%以下の5.5環クラス化合物又は4.0重量%以下の5.5環クラス化合物の1つ以上を含むことができる。
【0063】
特定の実施形態において、第2の水素化処理生産物は、第2の水素化処理生産物の全重量に基づく重量パーセントで、(a)約1.0重量%〜約20重量%、好ましくは約1.0重量%〜約15重量%、より好ましくは約1.0重量%〜約8.0重量%の1.0環クラス化合物;(b)約1.0重量%〜約25重量%、好ましくは約1.0重量%〜約20重量%、より好ましくは約1.0重量%〜約15重量%の1.5環クラス化合物;(c)約1.0重量%〜約30重量%、好ましくは約1.0重量%〜約25重量%、より好ましくは約1.0重量%〜約20重量%の2.0環クラス化合物;(d)約5.0重量%〜約50重量%、好ましくは約10重量%〜約40重量%、より好ましくは約10重量%〜約30重量%の2.5環クラス化合物;(e)約1.0重量%〜約50重量%、好ましくは約5.0重量%〜約40重量%、より好ましくは約5.0重量%〜約30重量%の3.0環クラス化合物;(f)約1.0重量%〜約50重量%、好ましくは約5.0重量%〜約40重量%、より好ましくは約5.0重量%〜約30重量%の3.5環クラス化合物;(g)約1.0重量%〜約40重量%、好ましくは約1.0重量%〜約30重量%、より好ましくは約1.0重量%〜約20重量%の4.0環クラス化合物;(h)約1.0重量%〜約25重量%、好ましくは約1.0重量%〜約20重量%、より好ましくは約1.0重量%〜約15重量%の4.5環クラス化合物;(i)約1.0重量%〜約25重量%、好ましくは約1.0重量%〜約20重量%、より好ましくは約1.0重量%〜約15重量%の5.0環クラス化合物;及び(j)約1.0重量%〜約25重量%、好ましくは約1.0重量%〜約20重量%、より好ましくは約1.0重量%〜約12重量%の5.5環クラス化合物の1つ以上を含む。
【0064】
その上、又は代わりに、第2の水素化処理生産物は、本明細書において記載されるナフテンを含んでもよい。特に、第2の水素化処理生産物は、5.0重量%以下、4.0重量%以下、3.0重量%以下、2.0重量%以下、1.5重量%以下、1.0重量%以下、0.75重量%以下、0.50重量%以下、約0.10重量%以下又は約0.050重量%以下の量で単環(例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタンなど)を有する、及び/又は二環(例えば、デカヒドロナフタレン、オクタヒドロペンタレンなど)を有するナフテンを含んでもよい。例えば、第2の水素化処理生産物は、0.050重量%〜5.0重量%、0.050重量%〜1.0重量%、0.050重量%〜0.50重量%又は0.050重量%〜0.10重量%の量で単環を有するナフテンを含んでもよい。その上、又は代わりに、第2の水素化処理生産物は、0.10重量%〜5.0重量%、0.10重量%〜3.0重量%、0.10重量%〜1.0重量%又は0.10重量%〜0.75重量%の量で二環を有するナフテンを含んでもよい。
【0065】
これら全ての多環クラスには、それに対して結合された水素、アルキル又はアルケニル基、例えば、H、CH
3、C
2H
5からC
mH
2m+1の1つ以上を有する環化合物が含まれる。一般に、mは1〜6、例えば1〜5の範囲にある。
【0066】
その上、又は代わりに、第2の水素化処理生産物は、種々の残渣燃料油との相溶性を増加させ得る適切なアスファルテン含有量を有し得る。例えば、第2の水素化処理生産物は、第2の水素化処理生産物の重量に基づき、約20重量%以下、約15重量%以下、約12重量%以下、約10重量%以下、約7.0重量%以下、約5.0重量%以下、約2.0重量%以下、又は約1.0重量%以下のアスファルテン含有量を有し得る。その上、又は代わりに、第2の水素化処理生産物は、第2の水素化処理生産物の重量に基づき、約1.0重量%〜約20重量%、約1.0重量%〜約15重量%、約2.0重量%〜約10重量%、又は約2.0重量%〜約7.0重量%のアスファルテン含有量を有し得る。好ましくは、第2の水素化処理生産物は、第2の水素化処理生産物の重量に基づき、約2.0重量%〜約10重量%のアスファルテン含有量を有し得る。
【0067】
上記で議論された通り、第2の水素化処理生産物は、種々の所望の特性を有し得る。例えば、第2の水素化処理生産物は、ASTM D6352に従って測定される約145℃〜約760℃の沸点分布を有し得る。さらに、第2の水素化処理生産物は、ASTM D5949に従って測定される約10℃以下、約5.0℃以下、約0.0℃以下、約−5.0℃以下、約−10℃以下、約−15℃以下、約−20℃以下、約−25℃以下又は約−30℃以下の流動点を有し得る。好ましくは、第2の水素化処理生産物は、ASTM D5949に従って測定される約0.0℃以下、より好ましくは約−10℃以下、より好ましくは約−20℃以下の流動点を有し得る。その上、又は代わりに、第2の水素化処理生産物は、ASTM D5949に従って測定される約−30℃〜約10℃、約−30℃〜約5.0℃、約−30℃〜約0.0℃又は約−20℃〜約0.0℃の流動点を有し得る。さらに、第2の水素化処理生産物は、ASTM D7042に従って測定される約50mm
2/秒〜約1000mm
2/秒、約100mm
2/秒〜約800mm
2/秒又は約200mm
2/秒〜約800mm
2/秒の50℃における動粘度を有し得る。第2の水素化処理生産物によって実現化される芳香族性、粘度及び/又は流動点のこの組合せによって、第2の水素化処理生産物は燃料油ブレンドストックとして、特に芳香族性、粘度及び/又は流動点に関して規格外の燃料油を修正することに関して特に有用になる。
【0068】
種々の態様において、第2の水素化処理生産物は、
(i)約80以上、約90以上、約100以上又は約110以上の鉱山局相関指標(BMCI);
(ii)約100以上、約110以上、約120以上、約130以上、約140以上、約150以上、約160以上、約170以上、約180以上又は約190以上の可溶性価(S
n);
(iii)約30MJ/kg以上、約35MJ/kg以上、又は約40MJ/kg以上のエネルギー含量;及び
(iv)ASTM D4052に従って測定される約0.99g/ml〜約1.10g/ml、特に約1.02g/mL〜約1.08g/mlの15℃における密度
の1つ以上をさらに有し得る。
【0069】
種々の態様において、第2の水素化処理生産物は、ISO 8217の表2、並びに仕上げULSFO及び/又はLSFOとしての品質の必要条件を満たし得る。それとは対照的に、現在入手可能な多くのULSFOはよりパラフィン系であり、且つアスファルテンを含有し得ないため、他の残渣燃料油とのより低い相溶性、並びにワックス沈殿のより高いリスクをもたらし、燃料システムにおけるフィルター目詰まりを引き起こすおそれがある。有利には、第1及び第2の水素化処理生産物は、より高い芳香族性(例えば、より高いBMCI)、適切なアスファルテン含有量及びより低いワックス沈殿のリスクを有する。
【0070】
II.燃料ブレンド
有利には、第1及び第2の水素化処理生産物は、燃料油ブレンドストックとして使用可能であり、且つ適切な燃料ブレンドを製造するために様々な燃料流とブレンドされてよい。したがって、(i)第1の水素化処理生産物及び/又は第2の水素化処理生産物と、(ii)燃料流を含む燃料ブレンドが本明細書において提供される。
【0071】
いずれの適切な燃料流も使用されてよい。適切な燃料流の非限定的な例としては、低硫黄ディーゼル、超低硫黄ディーゼル、低硫黄軽油、超低硫黄軽油、低硫黄灯油、超低硫黄灯油、水素処理直留ディーゼル、水素処理直留軽油、水素処理直留灯油、水素処理サイクルオイル、水素処理熱分解ディーゼル、水素処理熱分解軽油、水素処理熱分解灯油、水素処理コークス器ディーゼル、水素処理コークス器軽油、水素処理コークス器灯油、水素化分解装置ディーゼル、水素化分解装置軽油、水素化分解装置灯油、ガス−ツー−リキッドディーゼル、ガス−ツー−リキッド灯油、水素処理植物油、脂肪酸メチル基エステル、非水素処理直留ディーゼル、非水素処理直留灯油、非水素処理直留軽油、低硫黄原油スレートから誘導される蒸留物、ガス−ツー−リキッドワックス、ガス−ツー−リキッド炭化水素、非水素処理サイクルオイル、非水素処理流体接触分解スラリーオイル、非水素処理熱分解軽油、非水素処理分解軽質軽油、非水素処理分解重質軽油、非水素処理熱分解軽質軽油、非水素処理熱分解重質軽油、非水素処理熱分解残渣、非水素処理熱分解重質蒸留物、非水素処理コークス器重質蒸留液、非水素処理減圧軽油、非水素処理コークス器ディーゼル、非水素処理コークス器軽油、非水素処理コークス器減圧軽油、非水素処理熱分解減圧軽油、非水素処理熱分解ディーゼル、非水素処理熱分解軽油、グループ1粗蝋、潤滑油芳香族抽出物、脱アスファルト化油、大気圧塔底物、減圧塔底物、水蒸気分解装置タール、低硫黄原油スレートから誘導される残渣材料、超低硫黄燃料油(ULSFO)、超低硫黄燃料油(LSFO)、レギュラー硫黄燃料油(RSFO)、船用燃料油、水素処理残渣材料(例えば、原油蒸留からの残渣)、水素処理流体接触分解スラリーオイル及びその組合せが含まれる。特に、燃料流は、水素処理軽油、LSFO、ULSFO及び/又は船用燃料油であり得る。
【0072】
任意選択的に、第1の水素化処理生産物がLSFOとのブレンドに関して意図される場合、第1の水素化処理生産物は、必要であれば、排出ガスコントロール区域(ECA)の必要条件を満たすために、第1の水素化処理生産物の硫黄含有量を、例えば、0.1重量%未満の硫黄まで低下させるために、さらに水素処理されてもよい。特に、そのようなECA必要条件は、船用燃料油で運転される船舶に関して、従われなければならない。
【0073】
種々の態様において、第1の水素化処理生産物及び/又は第2の水素化処理生産物は、約40重量%〜約70重量%、又は約50重量%〜約60重量%の量で燃料ブレンド中に存在してよい。さらに、燃料流は、約30重量%〜約60重量%、又は約40重量%〜約50重量%の量で燃料ブレンド中に存在してよい。
【0074】
有利には、本明細書に記載の燃料ブレンドは、低い硫黄含有量、低い流動点、低い粘度及び所望のエネルギー含量を有し得る。種々の態様において、燃料ブレンドは、燃料ブレンドの全重量に基づき、約5.0重量%以下、約2.5重量%以下、約1.0重量%以下、約0.75重量%以下、約0.50重量%以下、約0.40重量%以下、約0.30重量%以下、約0.20重量%以下、約0.10重量%以下又は約0.050重量%以下の硫黄含有量を有し得る。例えば、燃料ブレンドは、燃料ブレンドの全重量に基づき、約0.050重量%〜約5.0重量%、約0.050重量%〜約1.0重量%、約0.050重量%〜約0.50重量%又は約0.050重量%〜約0.10重量%の硫黄含有量を有し得る。好ましくは、燃料ブレンドは、燃料ブレンドの全重量に基づき、約0.50重量%以下の硫黄含有量を有し得る。
【0075】
その上、又は代わりに、燃料ブレンドは、約10℃以下、約5.0℃以下、約0.0℃以下、約−5.0℃以下、約−10℃以下、約−15℃以下、約−20℃以下、約−30℃以下又は約40℃以下のASTM D5950に従って測定される流動点を有し得る。好ましくは、燃料ブレンドは、約−5.0℃以下、より好ましくは約−10℃以下のASTM D5950に従って測定される流動点を有し得る。その上、又は代わりに、燃料ブレンドは、約−40℃〜約10℃、約−40℃〜約0.0℃、約−40℃〜約−5.0℃又は約−40℃〜約−10℃のASTM D5950に従って測定される流動点を有し得る。さらに、燃料ブレンドは、約5.0mm
2/秒〜約200mm
2/秒、約10mm
2/秒〜約200mm
2/秒又は約10mm
2/秒〜約180mm
2/秒のASTM D7042に従って測定される50℃における動粘度を有し得る。その上、又は代わりに、燃料ブレンドは、約30MJ/k以上、約35MJ/k以上、又は約40MJ/k以上のエネルギー含量を有し得る。
【0076】
III.軽油の流動点を低下させる方法
別の実施形態において、軽油の流動点を低下させる方法が本明細書において提供される。軽油の流動点を低下させる方法は、本明細書に記載の第1の水素化処理生産物及び/又は本明細書に記載の第2の水素化処理生産物と軽油をブレンドし、ブレンドされた軽油を形成することを含んでよい。ブレンドされた軽油は、第1の水素化処理生産物及び/又は記載の第2の水素化処理生産物とのブレンドの前の軽油の流動点よりも低い流動点を有利に有し得る。したがって、種々の態様において、ブレンド前の軽油のASTM D5950に従って測定される流動点は、約0.0℃以上、約5.0℃以上、約10℃以上、約15℃以上、約20℃以上、約25℃以上、約30℃以上、約35℃以上、約40℃以上、約45℃以上、約50℃以上、約55℃以上又は約60℃であり得る。例えば、ブレンド前の軽油のASTM D5950に従って測定される流動点は、約0.0℃〜約60℃、約0.0℃〜約50℃、約0.0℃〜約40℃又は約5.0℃〜約40℃であり得る。その上、第1の水素化処理生産物及び/又は記載の第2の水素化処理生産物とのブレンドの後、ブレンドされた軽油は、約50℃以下、約40℃以下、約30℃以下、約20℃以下、約10℃以下、約0.0℃以下、約−5.0℃以下、約−10℃以下、約−20℃以下、約−30℃以下、約−40℃以下又は約−50℃以下のASTM D5950に従って測定される流動点を有し得る。例えば、ブレンドされた軽油のASTM D5950に従って測定される流動点は、約−50℃〜約50℃、約−50℃〜約20℃、約−50℃〜約0.0℃、約−50℃〜約−5.0℃又は約−40℃〜約5.0℃であり得る。特定の実施形態において、軽油及びブレンドされた軽油の流動点をASTM D5950に従って測定した場合、ブレンド前の軽油の流動点は0.0℃以上であり得、そしてブレンド後、ブレンドされた軽油の流動点は約−5.0℃以下であり得る。
【0077】
その上、又は代わりに、軽油及びブレンドされた軽油の流動点をASTM D5950に従って測定した場合、ブレンドされた軽油の流動点は、ブレンド前の軽油の流動点より少なくとも約5.0°低くなり得る。例えば、軽油及びブレンドされた軽油の流動点をASTM D5950に従って測定した場合、ブレンドされた軽油の流動点は、ブレンド前の軽油の流動点より少なくとも約10°、少なくとも約15°、少なくとも約20°、少なくとも約25°、少なくとも約30°、少なくとも約35°、少なくとも約40°、少なくとも約45°、少ない少なくとも約50°又は少なくとも約55°低くなり得る。例えば、軽油の流動点は約25°であり得、そして第1及び/又は第2の水素化処理生産物とのブレンド後、得られるブレンドされた軽油は−15℃の流動点を有し得る。したがって、ブレンドされた軽油の流動点は、軽油の流動点より40°低い。
【0078】
有利には、軽油と第1及び/又は第2の水素化処理生産物のブレンドによって、軽油の流動点が低下し得るのみならず、軽油のエネルギー含量、硫黄含有量及び/又は粘度に実質的に悪影響を及ぼし得ない。いくつかの態様において、軽油と第1及び/又は第2の水素化処理生産物のブレンドによって、軽油のエネルギー含量、硫黄含有量及び/又は粘度が実質的に維持され得、且つ/又は改善され得る。したがって、種々の態様において、ブレンドされた軽油は、ブレンドされた軽油の全重量に基づき、約5.0重量%以下、約2.5重量%以下、約1.0重量%以下、約0.75重量%以下、約0.50重量%以下、約0.40重量%以下、約0.30重量%以下、約0.20重量%以下、約0.10重量%以下又は約0.050重量%以下の硫黄含有量を有し得る。例えば、ブレンドされた軽油は、ブレンドされた軽油の全重量に基づき、約0.050重量%〜約5.0重量%、約0.050重量%〜約1.0重量%、約0.050重量%〜約0.50重量%又は約0.050重量%〜約0.10重量%の硫黄含有量を有し得る。好ましくは、ブレンドされた軽油は、ブレンドされた軽油の全重量に基づき、約0.50重量%以下又は約0.30重量%以下の硫黄含有量を有し得る。さらに、ブレンドされた軽油は、約5.0mm
2/秒〜約200mm
2/秒、約10mm
2/秒〜約200mm
2/秒、約10mm
2/秒〜約180mm
2/秒又は約10mm
2/秒〜約100mm
2/秒のASTM D7042に従って測定される50℃における動粘度を有し得る。その上、又は代わりに、ブレンドされた軽油は、約30MJ/k以上、約35MJ/k以上、又は約40MJ/k以上のエネルギー含量を有し得る。
【0079】
適切な軽油としては、限定されないが、本明細書に記載の燃料流が含まれる。特に、軽油は、規格外船用軽油、規格内(on−spec)船用軽油又は水素処理軽油であり得る。本明細書で使用される場合、「規格内(on−spec)船用軽油」という用語は、ISO8217の表1による船用軽油を意味し得る。
【0080】
IV.第1及び第2の水素化処理生産物を製造するための多段階水素化処理
上記で議論された通り、触媒的水素化処理条件下、水素分子を含む処理気体の存在下で、熱分解タール炭化水素(例えば、10.0重量%以上)及びユーティリティ流体を含む供給原料が1つ以上の水素化処理ゾーン又は段階(例えば、第1の段階、第2の段階)において水素化処理され得る炭化水素変換プロセスによって、本明細書に記載の第1の水素化処理生産物及び本明細書に記載の第2の水素化処理生産物を製造することができる。任意選択的に、ユーティリティ流体は、例えば、第1段階水素化処理ゾーンにおいて製造された第1の水素化処理生産物からのミッドカット流としてプロセスの間に得られ得る。このプロセスは、1つ以上の水素化処理段階又はゾーンにおいて異なる温度で操作されてよい。種々の態様において、炭化水素変換プロセスは、溶媒補助タール変換(SATC)プロセスである。
【0081】
SATCプロセスは、水蒸気分解タールであり得るか、又は別の熱分解プロセスからのタールであり得るタールを、燃料油に類似のより軽質な生産物へと変換するように設計される。いくつかの場合、分子沸点をより蒸留物範囲にさせるように、タールをアップグレードすることが望ましい。SATCは、90%より高い硫黄変換とともに、50℃における500,000程度の高さから15cStまでの劇的な粘度減少に関して有効であることを証明される。SATC反応機構及び動力学は、タールの複雑な性質のため、そして不相容性現象のために簡単ではない。SATCプロセスにおける顕著な反応型は、水素化分解、水素化脱硫、水素化脱窒素、熱分解、水素化及びオリゴマー化反応である。これらの反応を互いから完全に分離することは非常に難しいが、適切な触媒及びプロセス条件の選択によって、他の反応以上の1つの反応の選択性を増加させることができる。これらの反応のためのいずれかの熱力学及び必要とされるプロセス条件は、特に熱分解及び水素化反応に関して、非常に異なる可能性がある。単一固定床反応器において標的水素処理タール生産物品質を達成することは、SATCプロセスで生じる反応の性質における上記の相違のため、非常に難しい。さらに、反応条件が適切に選択されない場合、SATC反応器は、不相容性のため、早期目詰まりを経験する可能性がある。溶媒範囲における分子の未選択な水素化によって、供給原料の溶解力が低下する可能性があり、そして溶解性ブレンド価及び不溶性価の間の差が減少する場合、アスファルテンの沈殿が起こる可能性がある。
【0082】
一般に、1つ以上の段階のプロセスは、熱分解タールをアップグレードするために同様又は優れた水素浸透を達成しながら、単一段階における場合よりも低い圧力及び/又は高い重量時空間速度(WHSV)において実行可能である。これらの構成は、少なくとも、i)所望の水素化処理生産物へのインプット水素のより高い浸透度がより低い操作圧力及びより高い空間速度において得られること;並びにii)ランレングスを溶媒(ユーティリティ流体)分子の飽和の低下又は阻害を含むことが可能な2つの水素化処理ゾーンプロセスの利点を示すことが可能である。ランレングスは、少なくとも2つの汚損原因:i)不相容性によるアスファルテンの沈殿を導く溶媒S
BNの低下及びii)炭素状堆積物の蓄積によって最も起こりそうな触媒不活性化を軽減することによって、拡張されると考えられる。本明細書に記載のプロセスは、製造されたミッドカット流が熱分解タールとの相溶性の増加を有するように、そしてミッドカット流が、供給原料の粘度を有利に減少させるため、及びプロセスを通してのタールの流動性を補助するため、少なくとも第1水素化処理段階又はゾーンにおいてユーティリティ流体としてリサイクル及び使用されることができるように実行され得る。
【0083】
したがって、種々の態様において、多段階の炭化水素変換プロセスが本明細書において提供される。炭化水素変換プロセスは、(a)供給原料の少なくとも一部を第1の水素化処理生産物へと変換するための触媒的水素化処理条件下で、ユーティリティ流体及び分子水素の存在下、供給原料と少なくとも1種の水素化処理触媒とを接触させることによって、第1の水素化処理ゾーンにおいて熱分解タールを含む供給原料を水素化処理することと;(b)1つ以上の分離段階において第1の水素化処理生産物から、(i)第1の水素化処理生産物の約1.0重量%以上を構成する塔頂流;(ii)第1の水素化処理生産物の約20重量%以上を構成し、且つASTM D7500に従って測定される約120℃〜約480℃の沸点分布を有するミッドカット流;及び(iii)第1の水素化処理生産物の約20重量%以上を構成する底流を分離することと;(c)第1の水素化処理ゾーンにおいてユーティリティ流体として使用するために、ミッドカット流の少なくとも一部をリサイクルすることと;(d)底流の少なくとも一部を第2の水素化処理生産物へと変換するための触媒的水素化処理条件下で、分子水素の存在下、底流と少なくとも1種の水素化処理触媒とを接触させることによって、第2の水素化処理ゾーンにおいて底流の少なくとも一部を水素化処理することとを含む。
【0084】
A.供給原料
供給原料は、タール、例えば、供給原料の重量に基づき10重量%以上のタール炭化水素を含んでよく、且つ15重量%より多く、20重量%より多く、30重量%より多く、又は最大で約50重量%のタール炭化水素を含むことができる。特に、供給原料中のタールは熱分解タールであってよい。
【0085】
供給原料中のタールは、炭化水素含有供給原料を熱分解条件に暴露し、未反応供給原料、熱分解の間に供給原料から生じた不飽和炭化水素及び熱分解タールを含む混合物である熱分解溶出物を製造することによって製造することができる。例えば、熱分解供給原料の重量に基づき10重量%以上の炭化水素を含む熱分解供給原料に熱分解を受けさせて、熱分解タール及び熱分解溶出物の重量に基づき1.0重量%以上のC
2不飽和物を一般に含有する熱分解溶出物を製造する。熱分解タールは、一般に、290℃以上の大気圧沸点を有する熱分解溶出物の分子を90重量%以上含む。したがって、熱分解タールの少なくとも一部は、290℃以上の大気圧沸点を有する熱分解溶出物の分子を90重量%以上含む、本明細書に記載の多段階炭化水素変換において使用するための供給原料を製造するために熱分解溶出物から分離される。炭化水素に加えて、熱分解供給原料は、任意選択的に、希釈剤、例えば、窒素、水などの1種以上をさらに含む。例えば、熱分解供給原料は、供給原料の重量に基づき、1.0重量%以上、例えば、25.0重量%以上の希釈剤を含んでよい。希釈剤が水蒸気の感知可能な量を含む場合、熱分解は水蒸気分解と呼ばれる。本明細書及び添付の請求項の目的に関して、次の用語が定義される。
【0086】
「熱分解タール」という用語は、(a)1種以上の芳香族成分を有する炭化水素の混合物、任意選択的に(b)非芳香族及び/又は非炭化水素分子を意味し、上記混合物は炭化水素熱分解から誘導され、混合物の少なくとも70%、約550°F(290°)以上である大気圧における沸点を有する。特定の熱分解タールは、200℃以上の初期沸点を有する。特定の熱分解タールに関して、熱分解タールの90.0重量%以上が、550°F(290°)以上の大気圧における沸点を有する。熱分解タールは、熱分解タールの重量に基づき、例えば、50.0重量%以上、例えば、75.0重量%以上の、(i)1種以上の芳香族成分及び(ii)約15以上の炭素原子数を有する炭化水素分子(混合物及びその凝集体を含む)を含むことができる。熱分解タールは、一般に、熱分解タールの重量に基づき、1.0×10
3ppmw以下の金属含有量を有し、この金属量は、同一平均粘度の原油(又は原油成分)においてみられるものよりもはるかに低い。「SCT」は、水蒸気分解から得られる熱分解タールを意味し、水蒸気−分解装置タールとも呼ばれる。
【0087】
「タール重質分」(TH)は、565℃以上の大気圧沸点を有し、そして生産物の重量に基づき、5.0重量%以上の複数の芳香族コアを有する分子を含む炭化水素熱分解の生産物を意味する。THは、25.0℃において典型的に固体であり、そして一般に25.0℃において5:1(体積:体積)比のn‐ペンタン:SCTにおいて不溶性であるSCTの留分を含む。THは、一般にアスファルテン及び他の高分子量分子を含む。
【0088】
種々の態様において、熱分解タールは、熱分解溶出物からのSCT含有タール流(「タール流」)であることが可能である。そのようなタール流は、タール流の重量に基づき、典型的に、90重量%以上、例えば、95重量%以上、例えば99重量%以上のSCTを含有し、そしてタール流の残りは、例えば粒状物である。熱分解溶出物SCTは、一般に、(重量基準で)10重量%以上の熱分解溶出物のTHを含む。
【0089】
特定の実施形態において、SCTは、熱分解溶出物のTHの重量に基づき、50重量%以上の熱分解溶出物のTHを含む。例えば、SCTは、熱分解溶出物のTHの重量に基づき、90重量%以上の熱分解溶出物のTHを含むことができる。SCTは、例えば、(i)SCTの重量に基づき、0.5重量%〜7.0重量%の範囲の硫黄含有量;(ii)SCTの重量に基づき、5.0重量%〜40.0重量%の範囲のTH含有量;(iii)1.01g/cm
3〜1.15g/cm
3の範囲、例えば、1.07g/cm
3〜1.15g/cm
3の範囲の15℃における密度;及び(iv)200cSt〜1.0×107cStの範囲の50℃粘度を有することが可能である。SCT中のオレフィンの量は、SCTの重量に基づき、一般に、10.0重量%以下、例えば、5.0重量%以下、例えば、2.0重量%以下である。より特に、(i)SCTにおけるビニル芳香族及び/又は(ii)ビニル芳香族を含むSCT中の凝集体の量は、SCTの重量に基づき、一般に、5.0重量%以下、例えば、3.0重量%以下、例えば、2.0重量%以下である。
【0090】
特定の態様において、熱分解供給原料の炭化水素成分は、1種以上のナフサ、軽油、減圧軽油、ワックス様残渣、大気圧残渣、残渣混合物又は原油を含むことが可能であり;約0.1重量%以上のアスファルテンを含むものが含まれる。例えば、熱分解供給原料の炭化水素成分は、(炭化水素の重量に基づき)10.0重量%以上、例えば50.0重量%以上、例えば90.0重量%の1種以上のナフサ、軽油、減圧軽油、ワックス様残渣、大気圧残渣、残渣混合物又は原油を含むことが可能であり;約0.1重量%以上のアスファルテンを含むものが含まれる。炭化水素が原油及び/又は1種以上のその留分を含む場合、熱分解供給原料に含まれる前に、原油は任意選択的に脱塩される。熱分解供給原料において利用される原油留分の例は、原油からの大気圧パイプスチル(「APS」)底物の分離と、それに続くAPS底物の減圧パイプスチル(「VPS」)処理によって製造される。
【0091】
適切な原油としては、例えば、多環式芳香族が豊富なものなどの高硫黄バージン原油が含まれる。例えば、熱分解供給原料の炭化水素は、90.0重量%以上の1種以上の原油及び/又は1種以上の原油留分、例えば、大気圧APS及び/又はVPSから得られるもの;ワックス様残渣;大気圧残渣;原油によって汚染されたナフサ;種々の残渣混合物;及びSCTを含むことができる。
【0092】
いくつかの態様において、熱分解溶出物(例えば、熱分解タール)中のタールは、(i)10.0重量%以上の、アスファルテン以外の約565℃以上の大気圧沸点を有する分子、及び(ii)約1.0×10
3ppmw以下の金属を含むことができる。
【0093】
代わりに、水蒸気分解装置の第1精留塔の水蒸気分解軽油(「SCGO」)流及び/又は底物流から、フラッシュドラム底物から(例えば、熱分解炉の下流及び第1精留塔の上流に位置する1つ以上のフラッシュドラムの底物)、又はその組合せからタール流を得ることができる。例えば、タール流は、第1精留塔底物及びタールノックアウトドラム底物の混合物であることが可能である。
【0094】
種々の態様において、供給原料中のタール(例えば、熱分解タール)は、80以上のI
Nを有する。例えば、供給原料(例えば、熱分解タール)中のタールは、85以上のI
N、90以上のI
N、100以上のI
N、110以上のI
N、120以上のI
N、130以上のI
N、又は135以上のI
Nを有することができる。
【0095】
さらに、供給原料中のタール(例えば、熱分解タール)のS
BNは、130以上の程度の低いS
BNであることが可能であるが、典型的に、140以上のS
BN、145以上のS
BN、150以上のS
BN、160以上のS
BN、170以上のS
BN、175以上のS
BN、又はさらに180以上のS
BNである。いくつかの例において、タールは、200以上のS
BN、200以上のS
BN、さらに約240のS
BNを有するものであることができる。
【0096】
さらに、供給原料中のタール(例えば、熱分解タール)は、最高50重量%までのC7不溶分を含むことができる。一般に、タールは、15重量%程度のC7不溶分、又は最高25%までのC7不溶分、又は最高30重量%までのC7不溶分、又は最高45%までのC7不溶分を有することができる。したがって、タールは、15〜50重量%のC7不溶分、又は30〜50重量%のC7不溶分を含み得る。
【0097】
特に、プロセスが有利に適用可能であるタールは、110〜135のI
N、180〜240のS
BN及び30〜50重量%のC7不溶分含有量を有する熱分解タールである。
【0098】
B.水素化処理ゾーン
「水素化処理」は、水素分子を利用する反応において、分子の1組成物から別の組成物へと炭化水素を変換する反応を意味する。水素化処理は、分解及び水素処理の両方を含む。
【0099】
「分解」は、いくつかのヘテロ原子を含んでいても、又は含んでいなくてもよいインプット炭化水素分子が、より少ない分子量の炭化水素分子を製造するように変換されるプロセスである。分解には、水素が反応物と接触する大気中に含まれる「水素化分解」と、分子量スペクトルのローエンドにおける分子の製造に向かって反応を引き起こすために比較的高温が使用される「熱分解」の両方を含む。水素化分解プロセスにおいて利用される温度は、熱分解プロセスにおいて使用される温度よりも典型的に低い。分解反応は、反応にインプットされる炭化水素分子と比較して、不飽和C−C結合及び芳香族性の増加を生成物に導入し得る。分解反応において脱硫又は脱アミノが生じてもよい。「水蒸気分解」において、水蒸気は分解反応の雰囲気に含まれる。
【0100】
「水素処理」は、供給原料中の結合、典型的に炭化水素における不飽和又は芳香族炭素−炭素結合が水素化反応によって減少するプロセスである。
【0101】
触媒は、同一の選択された条件下での触媒の存在によって他の反応の速度が増加するよりもより大きい量で、触媒の包含によって、反応物濃度、温度及び圧力の条件の選択された組合せにおいて1つの反応の速度が増加する場合、水素処理よりも分解が好ましいか、またその逆である本出願に関して、別の反応よりも1つの反応を「優性に促進する」であろう。
【0102】
上記で議論された通り、SATCプロセスなどの炭化水素変換プロセスは、熱分解、水素化及び脱硫反応を伴う。しかしながら、単一反応器において標的の水素処理タール生産物品質を達成することは、それらの反応の性質及びSATCプロセスの間に必要とされるプロセス条件における相違のために非常に難しい。その上、反応条件が適切に選択されない場合、単一反応器は早期の目詰まりを経験し得る。さらに、溶媒範囲の分子の非選択的な水素化によって供給原料の溶解力が減少する可能性があり、そして溶解性ブレンド価及び不溶性価の間の差異が減少する場合、アスファルテンの沈殿が生じるおそれがある。
【0103】
これらの問題は、少なくとも一部において、連続する少なくとも2つの異なる反応ゾーン又は段階において2つの主反応、分解及び水素化を促進することによって解決される。2つの異なる反応ゾーン又は段階は、典型的に2つの異なる反応器にあるが、単一の反応器の異なる2つの部分において設定されることができる。分解が優位である少なくとも1つの反応ゾーン又は段階及び水素処理が優位である少なくとも1つの反応ゾーン又は段階が存在する限り、2つ以上の反応ゾーン又は段階が存在することが可能であることは理解されるであろう。分解及び水素化反応が両方の反応ゾーン又は段階において生じるであろうが、これらの2つの反応の大量が別個の反応ゾーン又は段階で生じるであろう。本発明のいずれかの理論によって拘束されることなく、結果として、反応条件における液相の溶解力が、全反応時間の間のいずれの時点においても溶液中に極性アスファルテン分子を保持するために十分高いであろうと考えられる。
【0104】
多段プロセスによって、反応器の目詰まりが生じることなく、反応器寿命の持続可能な時間(例えば1年以上)で、いずれかの種類のタール、典型的に水蒸気分解タールからの規格内SATC生産物(例えば、1.5重量%以下、例えば1.0重量%以下、又は0.5重量%以下の硫黄含有量、及び50℃において30cSt以下、好ましくは50℃において20cSt以下、又は50℃において15cSt以下の生産物粘度、及び1.00g/cm
3以下の密度)の製造が可能である。
【0105】
ほとんどの例において、2つの主反応、(水素化分解又は熱分解かのいずれかであり得る)分解及び水素化(「水素処理」)は別々に促進され、すなわち、分解又は水素化のいずれかが、連続する2つの異なる反応ゾーン又は段階において優位となるであろう。
【0106】
いくつかの例において、熱分解及び穏やかな水素化による分解された結合の硬化は、1つの水素化処理ゾーン又は段階において実行することができる。
【0107】
いくつかの例において、水素化は、変換が困難であるタール試料(典型的に高芳香族タール試料)を前処理するため、又は生産物の品質を向上させるため、例えば生産物密度を減少させるために、別の水素化処理ゾーン又は段階において実行することが可能である。
【0108】
主要分解反応は、優性な水素化反応より先に起こり得るか、又はその逆である。
【0109】
例えば、炭化水素変換プロセスは、一般に、水素化処理タールを含む水素化処理生産物を製造するための触媒的水素化処理条件下、水素分子を含む処理気体の存在下で、少なくとも2つの水素化処理ゾーン又は段階において、本明細書に記載の供給原料を供給することと、供給原料を水素化処理することとを含むもの(「水素処理−分解」)であり得る。そのような例において、水素化処理条件は、第1の水素化処理ゾーン又は段階において第1の水素化処理生産物を製造するための水素処理反応を主に促進する触媒が使用され、そして第2の水素化処理ゾーンにおいて、第1の水素化処理生産物を水素化処理タールを含む水素化処理生産物(第2の水素化処理生産物)に変換するための水素化分解反応を主に促進する触媒が使用される。
【0110】
代わりに、炭化水素変換プロセスは、一般に、水素化処理タールを含む水素化処理生産物を製造するための触媒的水素化処理条件下、水素分子を含む処理気体の存在下で、少なくとも2つの水素化処理ゾーンにおいて、本明細書に記載の供給原料を供給することと、供給原料を水素化処理することとを含むもの(「分解−水素処理」)として配置することも可能である。そのような例において、水素化処理条件は、第1の水素化処理ゾーンにおいて第1の水素化処理生産物を製造するための水素化分解反応を主に促進する触媒が使用され、そして第2の水素化処理ゾーンにおいて、第1の水素化処理生産物を水素化処理タールを含む水素化処理生産物(第2の水素化処理生産物)に変換するための水素処理反応を主に促進する触媒が使用される。
【0111】
独立して、又は異なる水素化処理ゾーン又は段階における触媒のいずれかの特定の配置の組合せで、第1の水素化処理ゾーン又は段階における温度は、約200〜450℃又は約200〜425℃の範囲であることが可能であり、且つ水素化処理ゾーン又は段階における温度は、約300〜450℃又は約350〜425℃であることが可能であり、そして逆もまた同様である。いくつかの例において、第1の水素化処理ゾーンにおける温度は、第2の水素化処理ゾーンにおける温度よりも高いことが可能であり、そして逆もまた同様である。代わりに、温度は、第1及び第2の水素化処理ゾーン又は段階において同一であってもよい。
【0112】
プロセスのいずれの構成においても、水素化処理条件は、約600〜2000psig、約600〜1900psig、約800〜1600psig、約1000〜1400psig、約1000〜1200psig、約1100〜1600psig又は約1100〜1300psigの圧力を含むことが可能である。いくつかの態様において、水素処理プロセスが優位に最初に適用され、そして第2に水素分解プロセスが優位に適用されるプロセスにおいて、約1000〜1800psigの圧力範囲が典型的に使用される。
【0113】
プロセスのいずれの構成においても、水素(「メイクアップ水素」)は、水素化処理ゾーンにおいて700psig〜1500psigまでH
2部分圧を維持するのに十分な速度で供給原料に添加又はクエンチされることが可能である。
【0114】
プロセスのいずれの構成においても、水素処理反応を優位に促進する触媒はNiを含むことが可能であり、そして水素処理反応を優位に促進する水素化処理ゾーン又は段階における圧力は、2000psig以上であることが可能である。
【0115】
プロセスのいずれの構成においても、供給原料(例えば、熱分解タール)中のタールは、100以上のI
Nを有することが可能であり、且つ(i)水素処理は、t
2が(t
1+80日)以上である、第1の時間t
1から第2の時間t
2まで水素処理ゾーン又は段階において連続的に実行可能であり、そして(ii)2回目の水素処理ゾーン又は段階での圧力低下は、1回目の圧力低下より10.0%以下増加する。
【0116】
種々の態様において、供給原料が第1の水素化処理ゾーンにおいて水素化処理される前に、供給原料を加熱することができる。例えば、供給原料を水素分子を含む処理気体と混合することができ、そして混合物を、例えば、熱交換器において加熱する。H
2:供給原料の比率は、典型的に3000scfbであることが可能であるが、約2000scfbから約3500scfbまで、又は約2500〜3200scfbで変動してもよい。
【0117】
次いで、混合された供給原料を通常200℃〜425℃の温度までさらに加熱されることが可能であり、次いで、第1の水素化処理ゾーンに供給される。供給原料は、本明細書に記載の触媒的水素化処理条件下で触媒と接触し、第1の水素化処理生産物が製造される。
【0118】
C.ユーティリティ流体
上記で議論された通り、タール(例えば、熱分解タール)との改善された相溶性を有するユーティリティ流体は、硫黄、密度及び粘度減少を促進するためにより広範囲の水素化を受けることができる仕上げ生産物を達成しながらも、本明細書に記載の少なくとも2つの水素化処理ゾーン又は段階の使用を通して有利に得ることができる。特に、ユーティリティ流体は、第1の水素化処理生産物から分離されたミッドカット流として得られ得る。したがって、本明細書に提供されるプロセスは、(軽質カット流とも呼ばれる)塔頂流、ミッドカット流及び底流へと1つ以上の分離段階において第1の水素化処理生産物を分離することを含む。例えば、第1の水素化処理生産物は、最初に蒸気部分及び液体部分へと(例えば、フラッシュドラムにおいて)分離され得、次いで、液体部分は(例えば、蒸留塔において)塔頂流、ミッドカット流及び底流に分離され得る。
【0119】
種々の態様において、塔頂流(又は軽質カット流)は、第1の水素化処理生産物の約1.0重量%(例えば、5.0重量%、10重量%など)以上を構成し、ミッドカット流は、第1の水素化処理生産物の約20重量%(例えば、30重量%、40重量%、50重量%など)以上を構成し、そして底流は、第1の水素化処理生産物の約20重量%(例えば、30重量%、40重量%など)以上を構成する。例えば、塔頂流(又は軽質カット流)は、第1の水素化処理生産物の約1.0重量%〜約20重量%、約5.0重量%〜約15重量%又は約5.0重量%〜約10重量%を構成する。ミッドカット流は、第1の水素化処理生産物の約20重量%〜約70重量%、約30重量%〜約70重量%又は約40重量%〜約60重量%を構成する。底流は、第1の水素化処理生産物の約10重量%〜約60重量%、約20重量%〜約60重量%又は約30重量%〜約50重量%を構成する。
【0120】
種々の実施形態において、塔頂流(又は軽質カット流)は、ASTM D2887に従って測定される約140℃〜約340℃の沸点分布を有し得る。その上、又は代わりに、塔頂流(又は軽質カット流)は、塔頂流(又は軽質カット流)の全重量に基づき、約1.0重量%以上、約5.0重量%以上、約10重量%以上、約15重量%以上、約20重量%以上、約30重量%以上、約40重量%以上、例えば、約1.0重量%〜約40重量%、約1.0重量%〜約30重量%、約1.0重量%〜約20重量%、約1.0重量%〜約15重量%、約5.0重量%〜約40重量%、約5.0重量%〜約30重量%、約5.0重量%〜約20重量%又は約5.0重量%〜約15重量%の芳香族(例えば、多環式芳香族)を含み得る。
【0121】
その上、又は代わりに、塔頂流(又は軽質カット流)は、塔頂流(又は軽質カット流)の全重量に基づき、約100ppm以下、約75ppm以下、約50ppm以下、約25ppm以下、約20ppm以下、約15ppm以下、約10ppm以下、又は約5.0ppm以下の硫黄含有量を有し得る。例えば、塔頂流(又は軽質カット流)は、塔頂流(又は軽質カット流)の全重量に基づき、約5.0ppm〜約100ppm、約5.0ppm〜約75ppm、約5.0ppm〜約50ppm、約5.0ppm〜約25ppm、約5.0ppm〜約20ppm、約5.0ppm〜約15ppm又は約10ppm〜約20ppmの硫黄含有量を有し得る。
【0122】
その上、又は代わりに、塔頂流(又は軽質カット流)は、ASTM D97に従って測定される約10℃以下、約0.0℃以下、約−10℃以下、約−20℃以下、約−30℃以下、約−40℃以下、約−50℃以下、約−60℃以下又は約−70℃以下の流動点を有し得る。好ましくは、塔頂流(又は軽質カット流)は、ASTM D97に従って測定される約−30℃以下、より好ましくは約−50℃以下、より好ましくは約−60℃以下の流動点を有し得る。その上、又は代わりに、塔頂流(又は軽質カット流)は、ASTM D97に従って測定される約−70℃〜約10℃、約−70℃〜約0.0℃、約−70℃〜約−20℃又は約−70℃〜約−40℃の流動点を有し得る。さらに、塔頂流(又は軽質カット流)は、ASTM D445に従って測定される約1.0cSt〜約8.0cSt、約1.0cSt〜約6.0cSt、約1.0cSt〜約5.0cSt、約1.0cSt〜約4.0cSt又は約1.0cSt〜約3.0cStの40℃における粘度を有し得る。その上、又は代わりに、塔頂流(又は軽質カット流)は、次の1つ以上を持有し得る:(i)ASTM D4052に従って測定される約910kg/m
3〜約960kg/m
3の15℃における密度;及び(ii)ASTM D4737に従って測定される約10〜約20のセタン指数。
【0123】
底流は、(上記で記載された様式で)新しい処理気体と任意選択的に混合されてよく、そして底流の少なくとも一部を第2の水素化処理生産物へと変換するための触媒的水素化処理条件下で本明細書に記載の少なくとも1種の水素化処理触媒と接触させられる。底流は、任意選択的に、新しい処理気体と一緒に、例えば熱交換器において加熱されて、そして/又は次いで、第2の水素化処理ゾーン又は段階中に導入されて、そして底流の少なくとも一部を第2の水素化処理生産物へと変換するための触媒的水素化処理条件下で少なくとも水素化処理触媒と接触させられてもよい。任意選択的に、塔頂流の少なくとも一部を第2の水素化処理生産物とブレンドしてもよい。種々の態様において、第1の水素化処理ゾーン又は段階を通しての供給原料及び/又は第2の水素化処理ゾーン又は段階を通しての底流の重量時空間速度(WHSV)は、約0.5時間
−1〜約4.0時間
−1、好ましくは約0.7時間
−1〜約4.0時間
−1であり得る。
【0124】
ユーティリティ流体とタールとの相溶性は、ユーティリティ流体とタールとの混合物のS
BNをタールのI
Nと比較することに基づく。例えば、SCTに関して、ユーティリティ流体とSCTとの混合物がSCTのI
N値より高いS
BN値を有する場合、ユーティリティ流体はSCTと相溶性であると考えられてよい。換言すれば、SCTが80のI
Nを有する場合、ユーティリティ流体とSCTとの混合物が80より高いか、90以上、100以上、110以上又は120以上のS
BNを有する場合、ユーティリティ流体はSCTと相溶性であると考えられるであろう。
【0125】
しかしながら、ミッドカット流のS
BNは、水素化処理条件に影響を受ける可能性がある。例えば、生産物品質を改善するために条件が調節される場合(例えば、より高い圧力、より低いWHSV)、ミッドカット流はさらに水素化され得、それによってミッドカット流のS
BNが減少し得る。より低いS
BNによってミッドカット流をタールと不相溶性にする可能性があり、反応器の汚損及び目詰まりを導く可能性があるため、タールとブレンドする場合、ミッドカット流のS
BN減少は問題となる可能性がある。
【0126】
本明細書に記載の第1の水素化処理ゾーン又は段階からミッドカット流が分離される少なくとも2つの水素化処理ゾーンを使用するプロセスは、種々の炭化水素変換プロセス、例えば、水素化処理におけるユーティリティ流体としてそれを特に有用にする組成及び沸点範囲を有するミッドカット流を生じることができることが見出された。特にミッドカット流は、供給原料中のタール(例えば、熱分解タール)との相容性を有利に増加させた。タールとの相容性の増加のため、ミッドカット流が水素化処理の間にユーティリティ流体として使用される場合、水素化処理反応器及び補助的な装置において有意に少ない汚損が生じ得、それによって水素化処理ランレングスの増加がもたらされる。種々の態様において、ミッドカット流は、約100以上、約110以上、約120以上、約130以上、約140以上、150以上又は160以上のS
BNを有する。
【0127】
任意選択的に、次いで、ミッドカット流の少なくとも一部を、第1の水素化処理ゾーンにおけるユーティリティ流体としての使用のためにリサイクル(すなわち、インターステージリサイクル)することができる。例えば、約20重量%以上、約30重量%以上、約40重量%以上、約50重量%以上、約60重量%以上、約70重量%以上、約80重量%以上のミッドカット流を第1の水素化処理ゾーン又は段階におけるユーティリティ流体としての使用のためにリサイクルしてよい。
【0128】
補足的なユーティリティ流体が、例えば、プロセスの開始時(十分なユーティリティ流体がミッドカット流として第1の水素化処理生産物から入手可能になるまで)、又はより高い反応器圧力で操作される場合、特定の操作条件下で必要とされ得ることが観察される。
【0129】
したがって、溶媒、溶媒混合物、水蒸気分解ナフサ(SCN)、水蒸気分解軽油(SCGO)、又は芳香族を含む流体(すなわち、少なくとも1つの芳香族核を有する分子を含む)などの補足的なユーティリティ流体が任意選択的に、例えば、プロセスを開始するために添加されてよい。特定の態様において、補足的なユーティリティ流体は、補足的なユーティリティ流体の重量に基づき、50.0重量%以上、例えば、75.0重量%以上、例えば、90.0重量%以上の芳香族及び/又は非芳香族を含む。補足的なユーティリティ流体は、60℃以上のASTM D86 10%蒸留点及び350℃以下の90%蒸留点を有することができる。任意選択的に、(溶媒又は溶媒の混合物であることが可能である)ユーティリティ流体は、120℃以上、例えば140℃以上、例えば150℃以上のASTM D86 10%蒸留点及び/又は300℃以下のASTM D86 90%蒸留点を有することができる。
【0130】
任意選択的に、補足的なユーティリティ流体は、ユーティリティ流体の重量に基づき、90.0重量%以上、例えば95.0重量%以上、例えば99.0重量%以上のベンゼン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、キシレン、ナフタレン、アルキルナフタレン(例えばメチルナフタレン)、テトラリン又はアルキルテトラリン(例えばメチルテトラリン)の1種以上を含み得る。一般に、特にそのような分子の存在下でコークス形成の傾向を有する水素化処理触媒を利用する態様において、補足的なユーティリティ流体が、アルケニル官能性を有する分子が実質的に含まないことが望ましい。特定の態様において、補足的なユーティリティ流体は、ユーティリティ流体の重量に基づき、10.0重量%以下のアルケニル官能性を有するC
1〜C
6側鎖を有する環化合物を含む。1種の適切な補足的ユーティリティ流体は、Aromatic 200、CAS番号64742−94−5としてExxonMobil Chemical Company)(Houston Texas)から入手可能なA200溶媒である。
【0131】
水素化処理の間に利用されるユーティリティ流体(例えば、ミッドカット流、補足的なユーティリティ流体)及びタール流の相対量は、組み合わせたユーティリティ流体及びタール流の全重量に基づき、一般に約20.0重量%〜約95.0重量のタール流及び約5.0重量%〜約80.0重量%のユーティリティ流体の範囲にある。例えば、水素化処理の間のユーティリティ流体(例えば、ミッドカット流、補足的なユーティリティ流体)及びタール流の相対量は、(i)約20.0重量%〜約90.0重量のタール流及び約10.0重量%〜約80.0重量%のユーティリティ流体、又は(ii)約40.0重量%〜約90.0重量のタール流及び約10.0重量%〜約60.0重量%のユーティリティ流体の範囲にあることが可能である。一実施形態において、ユーティリティ流体(例えば、ミッドカット流、補足的なユーティリティ流体):タール重量の比率は、0.05〜4.0の範囲、例えば0.1〜3.0、又は0.3〜1.1の範囲であることが可能である。第1の水素化処理容器、或いは第1の水素化処理ゾーン又は段階において、ユーティリティ流体(例えば、ミッドカット流、補足的なユーティリティ流体)の少なくとも一部をタール流の少なくとも一部と組み合わせることができるが、これは必ずしも必要とされず、そして1つ以上の実施形態において、ユーティリティ流体(例えば、ミッドカット流、補足的なユーティリティ流体)の少なくとも一部及びタール流の少なくとも一部は別個の流れとして供給され、そして水素化処理段階(例えば、その上流)に入る前に1つの供給原料流に組み合わせられる。例えば、タール流及びユーティリティ流体(例えば、ミッドカット流、補足的なユーティリティ流体)を組み合わせて、水素化処理段階(例えば、第1の水素化処理ゾーン)の上流で、例えば、供給原料の重量に基づく重量パーセントで、(i)約20.0重量%〜約90.0重量%のタール流及び約10.0重量%〜約80.0重量%のユーティリティ流体(例えば、ミッドカット流、補足的なユーティリティ流体)、又は(ii)約40.0重量%〜約90.0重量%のタール流及び約10.0重量%〜約60.0重量%のユーティリティ流体(例えば、ミッドカット流、補足的なユーティリティ流体)を含む供給原料を製造することができる。
【0132】
いくつかの実施形態において、ユーティリティ流体(例えば、ミッドカット流、補足的なユーティリティ流体)及び熱分解タールの混合物は、熱分解タールのI
Nよりも約20ポイント高いS
BN値を有する。例えば、熱分解タールが80より高いI
Nを有するそのような例において、ユーティリティ流体及び熱分解タールの混合物は、少なくとも100以上のS
BNを有する。特に、ユーティリティ流体(例えば、ミッドカット流、補足的なユーティリティ流体)及び熱分解タールの混合物は、熱分解タールのI
Nよりも約30ポイント高いS
BN値を有するか、又はユーティリティ流体(例えば、ミッドカット流、補足的なユーティリティ流体)及び熱分解タールの混合物は、熱分解タールのI
Nよりも約40ポイント高いS
BN値を有する。
【0133】
いくつかの実施形態において、ユーティリティ流体(例えば、ミッドカット流、補足的なユーティリティ流体)及び熱分解タールの混合物は、110以上のS
BNを有する。したがって、組み合わせた後、ユーティリティ流体(例えば、ミッドカット流、補足的なユーティリティ流体)及びタール混合物が110以上、120以上、130以上のS
BNを有する場合、80より高い不相容性価(I
N)を有する熱分解タールを水素化処理する場合、反応器目詰まりの有利な減少があることが見出された。その上、組み合わせた後、ユーティリティ流体及びタール混合物が150以上、155以上又は160以上のS
BNを有する場合、110より高いI
Nを有する熱分解タールを水素化処理する場合、反応器目詰まりの有利な減少があることが見出された。
【0134】
一般に、ユーティリティ流体として有用なミッドカット流は、かなりの部分の多環化合物の混合物を含む。環は芳香族又は非芳香族であることが可能であり、且つ様々な置換基及び/又はヘテロ原子を含有することができる。例えば、ミッドカット流は、ミッドカット流の重量に基づき、10.0重量%以上、20.0重量%以上、30.0重量%以上、40.0重量%以上、45.0重量%以上、50.0重量%以上、55.0重量%以上又は60.0重量%以上の芳香族及び/又は非芳香族環化合物を含有することができる。
【0135】
ミッドカット流は、ASTM D7500に従って測定される約120℃〜約480℃の沸点分布を有することができる。その上、又は代わりに、ミッドカット流は、ミッドカット流の重量に基づき、約10重量%以上、約20重量%以上、約30重量%以上、約40重量%以上、約50重量%以上、約60重量%以上、約70重量%以上、約80重量%以上、約90重量%以上又は約95重量%以上、例えば、約10重量%〜約95重量%、約20重量%〜約95重量%、約30重量%〜約95重量%、約50重量%〜約95重量%、約50重量%〜約95重量%、約60重量%〜約95重量%、約10重量%〜約60重量%、約20重量%〜約60重量%、約30重量%〜約60重量%又は約30重量%〜約50重量%の量で芳香族(例えば、多環式芳香族)を含有することができる。
【0136】
その上、又は代わりに、ミッドカット流は、ミッドカット流の重量に基づき、約3000ppm以下、約2500pmm以下、約2000ppm以下、約1500ppm以下、約1000ppm以下又は約500ppm以下の硫黄含有量を有し得る。例えば、ミッドカット流は、ミッドカット流の重量に基づき、約500ppm〜約3000ppm、約500ppm〜約2500ppm、約500ppm〜約2000ppm、約500ppm〜約1500ppm、約1000ppm〜約3000ppm、約1000ppm〜約2000ppm又は約1000ppm〜約1500ppmの硫黄含有量を有し得る。
【0137】
その上、又は代わりに、ミッドカット流は、ASTM D97に従って測定される約10℃以下、約0.0℃以下、約−10℃以下、約−20℃以下、約−30℃以下、約−40℃以下、約−50℃以下又は約−60℃以下の流動点を有し得る。好ましくは、ミッドカット流は、ASTM D97に従って測定される約−20℃以下、より好ましくは約−30℃以下、より好ましくは約−40℃以下の流動点を有し得る。その上、又は代わりに、ミッドカット流は、ASTM D97に従って測定される約−60℃〜約10℃、約−60℃〜約0.0℃、約−60℃〜約−10℃又は約−60℃〜約−20℃の流動点を有し得る。さらにミッドカット流は、ASTM D445に従って測定される約1.0cSt〜約12cSt、約1.0cSt〜約10cSt、約1.0cSt〜約8.0cSt、約2.0cSt〜約8.0cSt、約3.0cSt〜約7.0cSt又は約4.0cSt〜約6.0cStの40℃における粘度を有し得る。その上、又は代わりに、ミッドカット流は、ASTM D4737に従って測定される約7〜約20のセタン指数を有し得る。
【0138】
いくつかの実施形態において、ミッドカット流は、全体が参照によって本明細書に組み込まれる事件整理番号2017EM162を有する「Multi−Stage Upgrading of Hydrocarbon Pyrolysis Tar Using Recycled Interstage Product」と題されるExxonMobil Chemical Companyの出願に記載される組成及び特性を有してもよい。
【0139】
D.触媒
少なくとも2つの水素化処理ゾーン又は段階における本明細書に記載の供給原料(例えば、熱分解タール)を水素化処理するために、従来の水素化処理触媒を利用することが可能である。少なくとも2つの水素化処理ゾーン又は段階における使用のために適切な水素化処理触媒としては、(i)1種以上のバルク金属及び/又は(ii)担体上の1種以上の金属を含むものが含まれる。金属は、元素の形態又は化合物の形態であることが可能である。1つ以上の実施形態において、水素化処理触媒は、(元素周期表として表にされている、The Merck Index、Merck & Co.,Inc.、1996)元素周期表の第5族〜第10族のいずれかからの少なくとも1種の金属を含む。そのような触媒金属の例としては、限定されないが、バナジウム、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、テクネチウム、レニウム、鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、パラジウム、ロジウム、オスミウム、イリジウム、白金又はその混合物が挙げられる。
【0140】
1つ以上の実施形態において、触媒は、元素基準で算出されたグラムで、少なくとも0.0001グラム又は少なくとも0.001グラム又は少なくとも0.01グラムの触媒1グラムあたりの第5族〜第10族金属の全量を有する。例えば、触媒は、0.0001グラム〜0.6グラム、又は0.001グラム〜0.3グラム、又は0.005グラム〜0.1グラム、又は0.01グラム〜0.08グラムの範囲の第5族〜第10族金属の全量を含むことができる。特定の実施形態において、触媒は、少なくとも1種の第15族元素をさらに含む。好ましい第15族元素の例はリンである。第15族元素が利用される場合、触媒は、元素基準で算出されたグラムで、0.000001グラム〜0.1グラム、又は0.00001グラム〜0.06グラム、又は0.00005グラム〜0.03グラム、又は0.0001グラム〜0.001グラムの範囲の第15族元素の全量を含むことができる。
【0141】
一実施形態において、触媒は、少なくとも1種の第6族金属を含む。好ましい第6族金属の例としては、クロム、モリブデン及びタングステンが含まれる。触媒は、元素基準で算出されたグラムで、触媒1グラムあたり、少なくとも0.00001グラム、又は少なくとも0.01グラム、又は少なくとも0.02グラムの第6族金属の全量を含有してよい。例えば、触媒は、元素基準で算出されたグラム数で、触媒1グラムあたり、0.0001グラム〜0.6グラム、又は0.001グラム〜0.3グラム、又は0.005グラム〜0.1グラム、又は0.01グラム〜0.08グラム第6族金属の全量を含有することができる。
【0142】
関連する実施形態において、触媒は、少なくとも1種の第6族金属を含み、そして第5族、第7族、第8族、第9族又は第10族からの少なくとも1種の金属をさらに含む。そのような触媒は、例えば、元素基準の比率で0.1〜20、1〜10又は2〜5の範囲の第5族金属に対する第6族金属のモル比で金属の組合せを含有することができる。代わりに、触媒は、元素基準の比率で0.1〜20、1〜10又は2〜5の範囲の第7族〜第10族金属の全量に対する第6族金属のモル比で金属の組合せを含有することができる。
【0143】
触媒が、少なくとも1種の第6族金属及び第9族又は第10族からの1種以上の金属、例えば、モリブデン−コバルト及び/又はタングステン−ニッケルを含む場合、これらの金属は、例えば、元素基準の比率で1〜10又は2〜5の第9族及び第10族金属に対する第6族金属のモル比で存在することが可能である。触媒が、少なくとも1種の第5族金属及び少なくとも1種の第10族金属を含む場合、これらの金属は、例えば、元素基準の比率で1〜10又は2〜5の第10族金属に対する第5族金属のモル比で存在することが可能である。さらに、触媒は、例えば、結合剤及び/又は担体として、無機酸化物をさらに含んでもよい。例えば、触媒は、触媒の重量に基づく重量パーセントで、(i)1.0重量%以上の周期表の第6族、第8族、第9族及び第10族から選択される1種以上の金属、並びに(ii)1.0重量%以上の無機酸化物を含むことができる。
【0144】
1つ以上の実施形態において、(例えば、第1及び/又は第2の水素化処理ゾーンにおいて)触媒は、結合剤の有無にかかわらず、バルク多金属水素化処理触媒である。一実施形態において、触媒は、2種の第8族金属、好ましくはNi及びCo並びに1種の第6族金属、好ましくはMoから構成されるバルク三金属触媒である。
【0145】
本開示は、担体中に1種以上の触媒金属、例えば、第5族〜第10族及び/又は第15族の1種以上の金属を組み込み(又はその上に堆積させ)、水素化処理触媒を形成することも含む。担体は多孔質材料であることができる。例えば、担体は、1種以上の耐火性酸化物、多孔質炭素ベースの材料、ゼオライト、又はその組合せを含むことが可能であり、適切な耐火性酸化物としては、例えば、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム及びその混合物が含まれる。適切な多孔質炭素ベースの材料としては、活性炭及び/又は多孔質黒鉛が含まれる。ゼオライトの例としては、例えば、Y−ゼオライト、ベータゼオライト、モルデナイトゼオライト、ZSM−5ゼオライト及びフェリエライトゼオライトが含まれる。担体材料の追加的な例としては、ガンマアルミナ、シータアルミナ、デルタアルミナ、アルファアルミナ又はその組合せが含まれる。触媒担体1グラムあたりのガンマアルミナ、デルタアルミナ、アルファアルミナ又はその組合せの量は、x線回折によって測定されるように、0.0001グラム〜0.99グラム、又は0.001グラム〜0.5グラム、又は0.01グラム〜0.1グラム、又は最大0.1グラムまでの範囲にあることが可能である。特定の実施形態において、(例えば、第1及び/又は第2の水素化処理ゾーンにおける)水素化処理触媒は担持触媒であり、そして担体は、担体1グラムあたり0.1グラム〜0.99グラム、又は0.5グラム〜0.9グラム、又は0.6グラム〜0.8グラムの範囲の量の少なくとも1種のアルミナ、例えば、シータアルミナを含む。アルミナの量は、例えば、x線回折を使用して決定することができる。別の実施形態において、担体は、少なくとも0.1グラム、又は少なくとも0.3グラム、又は少なくとも0.5グラム、又は少なくとも0.8グラムのシータアルミナを含むことができる。
【0146】
担体が利用される場合、水素化処理触媒を形成するために望ましい金属を金属に含浸させることが可能である。担体は、金属による含浸の前に、400℃〜1200℃、又は450℃〜1000℃、又は600℃〜900℃の範囲の温度で熱処理されることが可能である。特定の実施形態において、水素化処理触媒は、担体の成形熱処理混合物に第5族〜第10族金属を添加又は組み込むことによって形成することができる。この種類の形成は、一般に、担体材料上での金属のオーバーレイと呼ばれる。任意選択的に、触媒は、担体と1種以上の触媒金属とを組み合わせた後、例えば、150℃〜750℃、又は200℃〜740℃、又は400℃〜730℃の範囲の温度において熱処理される。任意選択的に、触媒は、第5族〜第10族金属の少なくとも一部がそれらの相当する金属酸化物に変換されるように、揮発性物質を除去するため、400℃〜1000℃の範囲の温度において熱気及び/又は酸素に富む空気の存在下で熱処理される。他の実施形態において、触媒は、酸素(例えば、空気)の存在下で、35℃〜500℃、又は100℃〜400℃、又は150℃〜300℃の範囲の温度において熱処理されることが可能である。熱処理は、第5族〜第10族金属がそれらの酸化物型へと変換されることなく大部分の揮発性成分を除去するために、1〜3時間の範囲の時間で実行されることができる。そのような方法によって調製された触媒は、一般に「未焼成」触媒又は「乾燥型」と呼ばれる。そのような触媒は、第5族〜第10族金属が担体中で実質的に分散されている状態で、硫化法と組み合わせて調製することができる。触媒がシータアルミナ担体及び1種以上の第5族〜第10族金属を含む場合、触媒は、一般に、400℃以上の温度において熱処理されて、水素化処理触媒を形成する。典型的に、そのような熱処理は、1200℃以下の温度で実行される。
【0147】
1つ以上の実施形態において、水素化処理触媒は、通常、高表面積担体上に分散された遷移金属硫化物を含む。典型的な水素処理法触媒の構造は、3〜15重量%の第6族金属の酸化物及び2〜8重量%の第8族金属の酸化物から構成され、そしてこれらの触媒は使用の前に典型的に硫化される。
【0148】
必要とされないが、触媒は、成形された形態、例えば、ディスク、ペレット、押出物などの1種以上であることが可能である。そのような成形された形態の非限定的な例としては、約0.79mm〜約3.2mm(1/32〜1/8インチ)、約1.3mm〜約2.5mm(1/20〜1/10インチ)、又は約1.3mm〜約1.6mm(1/20〜1/16インチ)の範囲の直径を有する円筒状対称性を有するものが含まれる。本明細書において、同様の径の非円筒状の形状、例えば、トリローブ、クアドローブなども考えられる。任意選択的に、触媒は、50〜500N/cm、又は60〜400N/cm、又は100〜350N/cm、又は200〜300N/cm、又は220〜280N/cmの範囲での平板破砕強さを有する。
【0149】
従来の細孔特徴を有するものを含む多孔質触媒は、本発明の範囲内である。多孔質触媒が利用される場合、触媒は、従来の水素化処理触媒の特徴である範囲で、細孔構造、細孔径、細孔体積、細孔形状、細孔表面積などを有することができるが、本発明はそれに限定されない。供給原料(例えば、熱分解タール)が非常に大きい分子からなることが可能であるため、大きい細孔径を有する触媒が、特に触媒及び供給原料が最初に出会う反応器位置において、好ましい。例えば、触媒は、SCT分子を水素化処理するために効果的な中央細孔径を有することが可能であり、そのような触媒は、30Å〜1000Å、又は50Å〜500Å、又は60Å〜300Åの範囲の中央細孔径を有する。さらに、担体中の250〜1000Åの供給装置細孔に対して150〜250Åの細孔を有する二峰性細孔システムを有する触媒はより好ましい。細孔径は、ASTM法D4284−07 Mercury Porosimetryに従って決定され得る。
【0150】
特定の実施形態において、(例えば、第1及び/又は第2の水素化処理ゾーンにおける)水素化処理触媒は、50Å〜200Åの範囲の中央細孔径を有する。代わりに、水素化処理触媒は、90Å〜180Å、又は100Å〜140Å、又は110Å〜130Åの範囲の中央細孔径を有する。別の実施形態において、水素化処理触媒は、50Å〜150Åの中央細孔径を有する。代わりに、水素化処理触媒は、60Å〜135Å、又は70Å〜120Åの範囲の中央細孔径を有する。さらに別の選択肢において、より大きい中央細孔径を有する水素化処理触媒、例えば、180Å〜500Å、又は200Å〜300Å、又は230Å〜250Åの範囲の中央細孔径を有するものが利用される。
【0151】
一般に、水素化処理触媒は、触媒活性又は選択性を有意に低下させるほど大きくない細孔径分布を有する。例えば、水素化処理触媒は、細孔の少なくとも60%が45Å、35Å又は25Åの中央細孔径の範囲の細孔径を有する細孔径分布を有することができる。特定の実施形態において、触媒は、50Å〜180Å、又は60Å〜150Åの範囲の中央細孔径を有し、細孔の少なくとも60%が45Å、35Å又は25Åの中央細孔径の範囲の細孔径を有する。
【0152】
多孔質触媒が利用される場合、触媒は、例えば、0.3cm
3/g以上、例えば、0.7cm
3/g以上、又は0.9cm
3/g以上の細孔体積を有することができる。特定の実施形態において、細孔体積は、例えば、0.3cm
3/g〜0.99cm
3/g、0.4cm
3/g〜0.8cm
3/g、又は0.5cm
3/g〜0.7cm
3/gの範囲であることが可能である。
【0153】
特定の実施形態において、比較的大きい表面積が望ましくなる可能性がある。例として、水素化処理触媒は、60m
2/g以上、又は100m
2/g以上、又は120m
2/g以上、又は170m
2/g以上、又は220m
2/g以上、又は270m
2/g以上、例えば、100m
2/g〜300m
2/g、又は120m
2/g〜270m
2/g、又は130m
2/g〜250m
2/g、又は170m
2/g〜220m
2/gの範囲の表面積を有することが可能である。
【0154】
水素化処理ゾーンにおいて使用するための従来の水素化処理触媒を使用することが可能であるが、本発明はそれに限定されない。特定の実施形態において、触媒としては、Albemarle Catalysts Company LP,Houston TXから入手可能なKF860及びRTシリーズ触媒;同供給源から入手可能なNebula(登録商標)20などのNebula(登録商標)触媒;DC−2618、DN−2630、DC−2635及びDN−3636の1種以上などのCriterion Catalysts and Technologies,Houston TXから入手可能なCentera(登録商標)触媒;DC−2532、DC−2534及びDN−3531の1種以上などの同供給源から入手可能なAscent(登録商標)触媒;DN3651及び/又はDN3551などの同供給源から入手可能なFCC前処理触媒;並びにTK−565HyBRIM(商標)、TK−611HyBRIM(商標)及びTK−926の1種以上などのHaldor Topsoe,Lyngby,Denmarkから入手可能なTKシリーズ触媒の1種以上が挙げられる。しかしながら、本発明は、これらの触媒のみに限定されない。
【0155】
指定された水素化処理触媒及び指定されたユーティリティ流体を使用して、タール流及びユーティリティ流体の指定された量を水素化処理することによって、触媒寿命の改善が導かれ、例えば、水素化処理又は接触ゾーンにおいて触媒を置き換えることをしなくても、水素化処理段階を少なくとも三カ月、又は少なくとも六カ月、又は少なくとも一年間、運転することが可能となる。触媒寿命は、一般に、ユーティリティ流体が利用されない場合よりも10倍より長く、例えば、100倍以上長く、例えば、1000倍以上長い。
【0156】
特定の実施形態において、プロセスが水素処理−分解の構成で実行される場合、第1の水素化処理ゾーン又は段階の触媒は、非晶質Al
2O
3及び/又はSiO
2(ASA)上に担持されたCo、Fe、Ru、Ni、Mo、W、Pd及びPtの1種以上を含むものであることが可能である。水素化処理が供給原料タールに適用される第1の処理であることが可能である水素化処理ゾーンでの使用のための模範的な触媒は、Ni−Co−Mo/Al
2O
3型触媒、又はPt−Pd/Al
2O
3−SiO
2、Ni−W/Al
2O
3、Ni−Mo/Al
2O
3、或いはカーボンブラック又はカーボンブラック複合材などの非酸性担体上に担持されたFe、Fe−Mo、或いはTiO
2又はAl
2O
3/TiO
2などの非酸性担体上に担持されたMoである。
【0157】
第2の水素化処理ゾーン又は段階の触媒は、主にゼオライト、或いはASA及び/又はゼオライト上に担持されたCo、Mo、P、Ni、Pdの1種以上を含むものであることが可能である。第2の水素化処理ゾーンでの使用のための模範的な触媒は、USY又はVUSYゼオライトY、Co−Mo/Al
2O
3、Ni−Co−Mo/Al
2O
3、Pd/ASA−ゼオライトYである。それぞれの水素化処理ゾーン又は段階のための触媒は、他のいずれかの水素化処理ゾーン又は段階において使用される触媒とは独立して選択され得;例えば、RT−228触媒が第1の水素化処理ゾーン又は段階において使用され得、そしてRT−621触媒が第2の水素化処理ゾーン又は段階において使用され得る。
【0158】
いくつかの態様において、Co−Mo/Al
2O
3などの安価であり、且つ容易に入手可能な触媒を含むガードベッドは、供給原料のS及びNが非常に高く、且つ特定の触媒が水素化処理ゾーンにおいて使用される場合(例えば、ゼオライト)、それに続いてH
2S及びNH
3の除去が必要とされる。しかしながら、硫黄及び窒素レベルがすでに第1の反応器中で減少されるだろうため、ゼオライト触媒が第2の反応器で使用される場合、ガードベッドは必ずしも必要とされない。NH
3及びH
2S分離のためのステップは、所望であれば、第1の水素化処理ゾーン又は段階並びに第2の水素化処理ゾーン又は段階の両方の生産物に適用可能である。
【0159】
別の特定の実施形態において、分解−水素処理の様式で実行される場合、第1の水素化処理ゾーン又は段階の触媒は、ゼオライト、或いはASA及び/又はゼオライトに担持されたCo、Mo、P、Ni、Pdの1種以上を含むものであることが可能であり、且つ第2の水素化処理ゾーンの触媒は、非晶質Al
2O
3及び/又はSiO
2(ASA)上に担持されたNi、Mo、W、Pd及びPtの1種以上を含むものであることが可能である。この構成において、第1の水素化処理ゾーン又は段階での使用のための模範的な触媒は、USY又はVUSYゼオライトY、Co−Mo/Al
2O
3、Ni−Co−Mo/Al
2O
3、Pd/ASA−ゼオライトYであり、且つ第2の水素化処理ゾーン又は段階での使用のための模範的な触媒は、Ni−Co−Mo/Al
2O
3型触媒、又はPt−Pd/Al
2O
3−SiO
2、Ni−W/Al
2O
3、Ni−Mo/Al
2O
3、或いはカーボンブラック又はカーボンブラック複合材などの非酸性担体上に担持されたFe、Fe−Mo、或いはTiO
2又はAl
2O
3/TiO
2などの非酸性担体上に担持されたMoである。第2の水素化処理ゾーン又は段階の触媒は、非晶質Al
2O
3及び/又はSiO
2(ASA)上に担持されたCo、Fe、Ru、Ni、Mo、W、Pd及びPtの1種以上を含むものであることが可能である。水素化処理が供給原料タールに適用される第1の処理であることが可能である水素化処理ゾーンでの使用のための模範的な触媒は、Ni−Co−Mo/Al
2O
3型触媒、又はPt−Pd/Al
2O
3−SiO
2、Ni−W/Al
2O
3、Ni−Mo/Al
2O
3、或いはカーボンブラック又はカーボンブラック複合材などの非酸性担体上に担持されたFe、Fe−Mo、或いはTiO
2又はAl
2O
3/TiO
2などの非酸性担体上に担持されたMoである。
【0160】
それぞれの水素化処理ゾーンのための触媒は、他のいずれかの水素化処理ゾーン又は段階において使用される触媒とは独立して選択され得;例えば、RT−621触媒が第1の水素化処理ゾーン又は段階において使用され得、そしてRT−228触媒が第2の水素化処理ゾーン又は段階において使用され得る。
【0161】
V.さらなる実施形態
実施形態1.約50重量%以上又は約80重量%以上の量の芳香族;約5.0重量%以下の量のパラフィン;約0.10重量%〜約0.50重量%未満の量の硫黄;及び任意選択的に、約2.0重量%〜10重量%の量のアスファルテンを含む第1の水素化処理生産物であって、ASTM D6352に従って測定される約145℃〜約760℃の沸点分布;ASTM D7346に従って測定される約0.0℃以下又は約−10℃以下の流動点;及びASTM D7042に従って測定される20mm
2/秒〜200mm
2/秒の動粘度を有する第1の水素化処理生産物。
【0162】
実施形態2.第1の水素化処理生産物が、第1の水素化処理生産物の重量に基づき、(a)1.0重量%以上の1.0環クラス化合物;(b)10重量%以上の1.5環クラスの化合物;(c)2重量%以上の2.0環クラス化合物;(d)15重量%以上の2.5環クラス化合物;及び(e)5.0重量%以上の3.0環クラス化合物の1つ以上を含む、実施形態1の第1の水素化処理生産物。
【0163】
実施形態3.(i)約100以上の鉱山局相関指標(BMCI);(ii)約130以上の可溶性価(S
n);及び(iii)約35MJ/kg以上のエネルギー含量の1つ以上を有する、実施形態1又は2の第1の水素化処理生産物。
【0164】
実施形態4.約50重量%以上又は約80重量%以上の量の芳香族;約5.0重量%以下の量のパラフィン;約30重量%以上の量の硫黄;及び任意選択的に、約2.0重量%〜10重量%の量のアスファルテンを含む第2の水素化処理生産物であって、ASTM D6352に従って測定される約140℃〜約760℃の沸点分布;ASTM D5949に従って測定される約0.0℃以下の流動点;及びASTM D7042に従って測定される100mm
2/秒〜800mm
2/秒の動粘度を有する第2の水素化処理生産物。
【0165】
実施形態5.第2の水素化処理生産物が、第2の水素化処理生産物の重量に基づき、(a)1.0重量%以上の1.0環クラス化合物;(b)5.0重量%以上の1.5環クラスの化合物;(c)5.0重量%以上の2.0環クラス化合物;(d)10重量%以上の2.5環クラス化合物;(e)10重量%以上の3.0環クラス化合物;及び(f)10重量%の3.5環クラス化合物の1つ以上を含む、実施形態4の第2の水素化処理生産物。
【0166】
実施形態6.(i)約100以上の鉱山局相関指標(BMCI);(ii)約150以上の可溶性価(S
n);及び(iii)約35MJ/kg以上のエネルギー含量の1つ以上を有する、実施形態4又は5の第2の水素化処理生産物。
【0167】
実施形態7.実施形態1〜3のいずれか一つの第1の水素化処理生産物及び/又は実施形態4〜6のいずれか一つの第2の水素化処理生産物と、燃料流とを含む燃料ブレンド。
【0168】
実施形態8.燃料流が、低硫黄ディーゼル、超低硫黄ディーゼル、低硫黄軽油、超低硫黄軽油、低硫黄灯油、超低硫黄灯油、水素処理直留ディーゼル、水素処理直留軽油、水素処理直留灯油、水素処理サイクルオイル、水素処理熱分解ディーゼル、水素処理熱分解軽油、水素処理熱分解灯油、水素処理コークス器ディーゼル、水素処理コークス器軽油、水素処理コークス器灯油、水素化分解装置ディーゼル、水素化分解装置軽油、水素化分解装置灯油、ガス−ツー−リキッドディーゼル、ガス−ツー−リキッド灯油、水素処理植物油、脂肪酸メチル基エステル、非水素処理直留ディーゼル、非水素処理直留灯油、非水素処理直留軽油、低硫黄原油スレートから誘導される蒸留物、ガス−ツー−リキッドワックス、ガス−ツー−リキッド炭化水素、非水素処理サイクルオイル、非水素処理流体接触分解スラリーオイル、非水素処理熱分解軽油、非水素処理分解軽質軽油、非水素処理分解重質軽油、非水素処理熱分解軽質軽油、非水素処理熱分解重質軽油、非水素処理熱分解残渣、非水素処理熱分解重質蒸留物、非水素処理コークス器重質蒸留液、非水素処理減圧軽油、非水素処理コークス器ディーゼル、非水素処理コークス器軽油、非水素処理コークス器減圧軽油、非水素処理熱分解減圧軽油、非水素処理熱分解ディーゼル、非水素処理熱分解軽油、グループ1粗蝋、潤滑油芳香族抽出物、脱アスファルト化油、大気圧塔底物、減圧塔底物、水蒸気分解装置タール、低硫黄原油スレートから誘導される残渣材料、超低硫黄燃料油(ULSFO)、超低硫黄燃料油(LSFO)、レギュラー硫黄燃料油(RSFO)、船用燃料油、水素処理残渣材料(例えば、原油蒸留からの残渣)、水素処理流体接触分解スラリーオイル及びその組合せからなる群から選択される、実施形態7の燃料ブレンド。
【0169】
実施形態9.第1の水素化処理生産物及び/又は第2の水素化処理生産物が、約40重量%〜約70重量%の量で存在し、且つ燃料流が、約30重量%〜約60重量%の量で存在する、実施形態7又は8の燃料ブレンド。
【0170】
実施形態10.燃料ブレンドが、約0.50重量%未満の量の硫黄を含み、且つASTM D5950に従って測定される約−5.0℃以下の流動点;ASTM D7042に従って測定される10mm
2/秒〜180mm
2/秒の50℃における動粘度;及び約35MJ/kg以上のエネルギー含量を有する、実施形態7〜9の燃料ブレンド。
【0171】
実施形態11.実施形態1〜3の第1の水素化処理生産物及び/又は実施形態4〜6の第2の水素化処理生産物と、軽油(例えば、規格外船用軽油、規格内船用軽油又は水素処理軽油)とをブレンドし、軽油の流動点よりも低い流動点を有するブレンドされた軽油を形成することを含む、軽油の流動点を低下させる方法。
【0172】
実施形態12.ブレンド前の軽油の流動点が0.0℃以上であり、且つブレンド後、ブレンドされた軽油の流動点が約−5.0℃以下であり、且つ/又はブレンドされた軽油が、ブレンド前の軽油の流動点よりも少なくとも5℃低い流動点を有する、実施形態11の方法。
【0173】
実施形態13.ブレンドされた軽油が、約0.50重量%未満又は約0.30重量%未満の量の硫黄を含み、且つASTM D7042に従って測定される10mm
2/秒〜180mm
2/秒の50℃における動粘度;及び約35MJ/kg以上のエネルギー含量を有する、実施形態11又は12の方法。
【実施例】
【0174】
一般的な方法
A.二次元ガスクロマトグラフィー
利用された2DGC(GC×GC)システムは、インレット、カラム及び検出器から構成されるAgilent7890ガスクロマトグラフ(Agilent Technology,Wilmington,DE)であった。16バイアルトレーオートサンプラーを備えたスプリット/スプリットレスインレットシステムが使用された。2次元キャピラリーカラムシステムは、弱極性第1カラム(BPX−5、30メートル、内径0.25mm、1.0μm膜)及び中央極性第2カラム(BPX−50、3メートル、内径0.10、0.10μm膜)を利用した。両キャピラリーカラムは、SGE Inc.Austin,TXから入手された。冷窒素ガス冷却(液体窒素熱交換)「捕捉−放出」熱的変調器であるループ状シングルジェット熱的変調アセンブリ(ZOEX Corp.Lincoln,NE)ZX1をこれらの2つのカラムの間に設置した。GC×GCのアウトプットは2つ流れに分割され、一方は水素炎イオン化検出器(FID)に連結され、そして他方はトランスファーラインを経由してMSのイオン源に連結された。MSは、電子イオン化(EI)又は電界イオン化(FI)供給源のいずれかを備えた、JMS−T100GCV 4G(JEOL、東京、日本)、飛行時間スペクトロメーター(TOFMS)システム(質量分解8000(FWHM)及び5ppmの質量精度仕様)であった。EIモード及びFIモード間の切り換えは、イオン供給源を発散させないで交換するためのプローブを使用することによって、5分以内に達成することができる。最大サンプリング速度は最大50Hzであり、これは、GC×GC分解を維持するために必要とされるサンプリング速度に適合するために十分であった。
【0175】
0.20マイクロリットルの試料を、1分あたり2.0mLヘリウムの一定フローモードで300℃において50:1スプリットを有するスプリット/スプリットレス(S/S)注入器によって注入した。炉を、90分の全実行時間で毎分3℃で45℃から315℃までプログラムした。ホットジェットを炉の温度よりも120℃高く維持し、次いで390℃で一定に保持した。MSトランスファーライン及びイオン供給源を、それぞれ350℃及び150℃に設定した。変調時間は10秒であった。FID検出器のサンプリング速度は100Hzであり、そしてマススペクトロメーター(EI及びFIモードの両方)に関しては25Hzであった。Agilent Chemstationは、GC×GCコントロール及びFIDのデータ取得を提供した。MSコントロールデータ取得のために、JEOL Mass Centerソフトウェアを使用した。GC×GC及びMSの間の同調は、GCリモートコントロールポートからMS外部同期ポートまで通信ケーブルを使用して作成された。データ取得後、FID、EIMS及びFIMSシグナルを定性及び定量分析のために処理し、そしてEIMS及びFIMSデータを処理した。
【0176】
実施例1−第1の水素化処理生産物
実施例1a:第1の水素化処理生産物I
第1の水素化処理生産物Iの組成及び特性の詳細を決定し、そして以下の表1に示す。
【0177】
【表1】
【0178】
【表2】
【0179】
実施例1b:第1の水素化処理生産物II
第1の水素化処理生産物IIの組成及び特性の詳細を決定し、そして以下の表2に示す。
【0180】
【表3】
【0181】
【表4】
【0182】
510℃(950°F)より高い沸点を有する第1の水素化処理生産物II中の芳香族環の分布を決定し、そしてそれをx軸が芳香族環の数を表し、且つy軸が質量%を表す
図1に示す。510℃(950°F)より高い沸点を有する第1の水素化処理生産物II中の芳香族環の分布は、15T Solarix Fourier Transform Ion Cyclotron Resonance Mass Spectrometry(FT−ICR−MS)を使用して決定された。検出のために様々な電子レンズを通してICRセルへとガイドされる気相の分子をイオン化するためにクリプトン電球を利用する大気圧光子イオン化(APPI)を利用した。測定されたデータによって、全質量スペクトルにおいてそれぞれ割り当てられた質量に関して特異的な化学量論的式をもたらす正確な質量が得られる。特異的な式に基づき、それらの水素欠如及び環によってアレンジされた同族体が芳香族環の排他的仮定によって算出される。
【0183】
実施例1c:第1の水素化処理生産物III
第1の水素化処理生産物IIIの組成及び特性の詳細を決定し、そして以下の表3に示す。
【0184】
【表5】
【0185】
実施例2−第2の水素化処理生産物
実施例2a:第2の水素化処理生産物IV
第2の水素化処理生産物IVの組成及び特性の詳細を決定し、そして以下の表4に示す。
【0186】
【表6】
【0187】
【表7】
【0188】
図2は、600°Fより高い沸点範囲を有する第2の水素化処理生産物IVにおける芳香族環の分布を示す。x軸は芳香族環の数を表し、そしてy軸は質量%を表す。第2の水素化処理生産物IVの芳香族環の分布は、
図1に関して上記されたものと同様に決定された。
【0189】
実施例2b:第2の水素化処理生産物V
第2の水素化処理生産物Vの組成及び特性の詳細を決定し、そして以下の表5に示す。
【0190】
【表8】
【0191】
【表9】
【0192】
図3は、600°Fより高い沸点範囲を有する第2の水素化処理生産物Vにおける芳香族環の分布を示す。x軸は芳香族環の数を表し、そしてy軸は質量%を表す。第2の水素化処理生産物Vの芳香族環の分布は、
図1に関して上記されたものと同様に決定された。
【0193】
実施例2c:第2の水素化処理生産物VI
第2の水素化処理生産物VIの組成及び特性の詳細を決定し、そして以下の表6に示す。
【0194】
【表10】
【0195】
実施例3−燃料ブレンド
実施例3a:燃料ブレンドA
60重量%の第2の水素化処理生産物Vと40重量%の水素処理軽油とをブレンドすることによって燃料ブレンドAを調製した。水素処理軽油の組成及び特性の詳細を決定し、そして以下の表7に示す。
【0196】
【表11】
【0197】
炭素数の関数としての表7からのn−パラフィン及びイソパラフィンの分布を以下の表8に提供する。
【0198】
【表12】
【0199】
燃料ブレンドAの組成物及び特性の詳細を決定し、そして以下の表9に示す。
【0200】
【表13】
【0201】
実施例3b:燃料ブレンドB
50重量%の第2の水素化処理生産物Vと50重量%の船用軽油とをブレンドすることによって燃料ブレンドBを調製した。船用軽油の組成及び特性の詳細を決定し、そして以下の表10に示す。
【0202】
【表14】
【0203】
炭素数の関数としての表11からのn−パラフィン及びイソパラフィンの分布を以下の表11に提供する。
【0204】
【表15】
【0205】
燃料ブレンドBの組成物及び特性の詳細を決定し、そして以下の表12に示す。
【0206】
【表16】
【0207】
実施例3c:燃料ブレンドC
実施例3aにて示された60重量%の第1の水素化処理生産物IIIと40重量%の水素処理軽油とをブレンドすることによって燃料ブレンドCを調製した。燃料ブレンドCの組成及び特性の詳細を決定し、そして以下の表13に示す。
【0208】
【表17】
【0209】
実施例4−塔頂流(軽質カット流)及びミッドカット流
第1の水素化処理生産物からの塔頂流(又は軽質カット流)及びミッドカット流の組成及び特性の詳細を決定し、そして以下の表14に示す。
【0210】
【表18】