特表2020-527299(P2020-527299A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2020-527299超音波を用いて空中音を生成するためのシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-527299(P2020-527299A)
(43)【公表日】2020年9月3日
(54)【発明の名称】超音波を用いて空中音を生成するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/00 20060101AFI20200807BHJP
   H04R 1/40 20060101ALI20200807BHJP
   G10K 11/34 20060101ALI20200807BHJP
【FI】
   H04R3/00 310
   H04R1/40 310
   G10K11/34 130
   H04R3/00 330
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2019-571073(P2019-571073)
(86)(22)【出願日】2018年6月22日
(85)【翻訳文提出日】2020年2月20日
(86)【国際出願番号】JP2018024748
(87)【国際公開番号】WO2018235967
(87)【国際公開日】20181227
(31)【優先権主張番号】特願2017-123049(P2017-123049)
(32)【優先日】2017年6月23日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ▲1▼ 平成29年2月11日に六本木ヒルズで開催された「MEDIA AMBITION TOKYO 2017」にて公開 ▲2▼ 平成29年3月4日に“ART & SCIENCE GALLERY LAB AXIOM”で開催された「Yoichi Ochiai Imago et Materia」にて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ▲3▼ 平成29年3月23日に虎ノ門ヒルズで開催された「SENSORS IGNITION 2017」にて公開 ▲4▼ 平成29年4月7日に“AbemaTV”で放送された番組「2021未来のテラピコ」にて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ▲5▼ 平成29年4月27日に東京ガーデンテラス紀尾井町で開催された「Yahoo!JAPAN Technology Art #01 ジャパニーズテクニウム展 by 落合陽一とデジタルネイチャーグループ」にて公開 ▲6▼ 平成29年5月2日に国際会議「ACM Conference on Human Factors in Computing Systems」の講演予稿集にて公開(http://dl.acm.org/citation.cfm?doid=3025453.3025989)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WINDOWS
(71)【出願人】
【識別番号】517182918
【氏名又は名称】ピクシーダストテクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】230116816
【弁護士】
【氏名又は名称】成川 弘樹
(74)【代理人】
【識別番号】100146123
【弁理士】
【氏名又は名称】木本 大介
(72)【発明者】
【氏名】落合 陽一
(72)【発明者】
【氏名】星 貴之
【テーマコード(参考)】
5D018
5D019
5D220
【Fターム(参考)】
5D018AF16
5D018AF22
5D019AA02
5D019FF01
5D220AA44
5D220AB06
(57)【要約】
空間音の生成に関する新規システム及び新規方法が開示されている。このシステム及び方法は、実体のない空中スピーカを生成するシステム及び方法は、オーディオ信号を有する超音波搬送信号を変調することにより、変調信号を生成するステップを備え、少なくとも1つの焦点に対して超音波振動子アレイの各超音波振動子の位相遅延量を決定するステップを備え、少なくとも1つの焦点で可聴音を生成するように、各超音波振動子に対して決定された位相遅延量に従って各超音波振動子を駆動させるステップを備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実体のない空中スピーカを生成する方法であって、
オーディオ信号を有する超音波搬送信号を変調することにより、変調信号を生成するステップを備え、
少なくとも1つの焦点に対して超音波振動子アレイの各超音波振動子の位相遅延量を決定するステップを備え、
少なくとも1つの焦点で可聴音を生成するように、各超音波振動子に対して決定された位相遅延量に従って各超音波振動子を駆動させるステップを備える、
方法。
【請求項2】
各超音波振動子の位相遅延量は、式Δtij = (l00 - lij)/cに従って決定され、
Δtijは、超音波振動子に対する駆動信号の適用の時間遅延を示す、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
各超音波振動子の位相遅延量は、式Uh(x,y) = ah(x,y)exp[iφh (x,y)]に従って決定され、
φh(x,y) は、位相遅延量を示す、
請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記変調信号は、AM(amplitude modulation)変調又はFM(frequency modulation)変調によって生成される、
請求項1〜請求項3の何れかに記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの焦点は、人の耳に隣接する、
請求項1〜請求項4の何れかに記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの焦点は、オブジェクト又は画像が前記可聴音の音源になるように、前記オブジェクト又は前記画像に隣接する、
請求項1〜請求項5の何れかに記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つの焦点の空間位置を変更するステップを備え、
前記少なくとも1つの焦点に対して超音波振動子アレイの各超音波振動子の新しい位相遅延量を決定し、前記少なくとも1つの焦点で可聴音を生成するステップを備え、
請求項1〜請求項6の何れかに記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つのフェーズドアレイを備え、
前記フェーズドアレイは、
超音波振動子のアレイを有し、
可聴信号を有する超音波搬送信号を変調することにより、変調信号を生成する信号生成器を有し、
少なくとも1つの焦点に対して超音波振動子アレイの各超音波振動子の位相遅延量を決定する位相遅延計算機を有する、
スピーカ。
【請求項9】
各超音波振動子の位相遅延量は、式Δtij = (l00 - lij)/cに従って決定され、
Δtijは、超音波振動子に対する駆動信号の適用の時間遅延を示す、
請求項8に記載のスピーカ。
【請求項10】
各超音波振動子の位相遅延量は、式Uh(x,y) = ah(x,y)exp[iφh (x,y)]に従って決定され、
φh(x,y) は、位相遅延量を示す、
請求項8又は請求項9に記載のスピーカ。
【請求項11】
前記信号生成器は、振幅又は周波数を変調するように構成された変調ユニットを備え、
請求項8〜請求項10の何れかに記載のスピーカ。
【請求項12】
可聴音の音量を調整するように構成された出力パワー制御回路を備える、
請求項8〜請求項11の何れかに記載のスピーカ。
【請求項13】
前記位相遅延計算機は、前記少なくとも1つの焦点の空間位置の変化に対して超音波振動子アレイの各超音波振動子の新しい位相遅延量を決定し、前記少なくとも1つの焦点で可聴音を生成する、
請求項8〜請求項12の何れかに記載のスピーカ。
【請求項14】
実体のない空中スピーカを生成する方法であって、
第1オーディオ信号を有する超音波搬送信号を変調することにより、第1変調信号を生成するステップを備え、
第2可聴音信号を有する超音波搬送信号を変調することにより、第2変調信号を生成するステップを備え、
第1焦点に対して超音波振動子のアレイの第1振動子グループの各超音波振動子の位相遅延量を決定するステップを備え、
第2焦点に対して超音波振動子のアレイの第2振動子グループの各超音波振動子の位相遅延量を決定するステップを備え、
前記第1グループの各超音波振動子に対して決定された位相遅延量に従って前記第1変調信号を用いて前記第1振動子グループの超音波振動子を駆動させることにより、前記第1焦点位置で可聴音を生成するステップを備え、
前記第2グループの各超音波振動子に対して決定された位相遅延量に従って前記第2変調信号を用いて前記第2振動子グループの超音波振動子を駆動させることにより、前記第2焦点位置で可聴音を生成するステップを備える、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元に局所化された音源に関する。特に、本発明は、超音波の場の分布を任意の点に集束させることにより、可聴音源を空中に生成するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
音波の非線形相互作用または散乱と呼ばれる現象に基づく周知の方法に基づいて、超音波を音毎に変調して、空気中に可聴音を生成することができる。空気の非線形性は、自己復調効果を与える。超音波は、オーディオ信号で変調され、且つ、振動子アレイから一次波として空中に放射される。変調された超音波は、空気中で非線形に相互作用する。結果として、それらは復調され、且つ、超音波の変調に使用されるオーディオ信号を生成する。
【0003】
この原理は、音響スポットライトを実現可能な非常に明確な指向性パターンを有する指向性スピーカの生成に適用されてきた(参照:米山正史他「The Audio Spotlight: An Application Of Nonlinear Interaction Of Sound Waves To A New Type Of Loudspeaker Design」、J. Acoust. Soc. Am. 73 (5), May 1983. (hereby incorporated by reference in its entirely))。従来の超指向性スピーカ、たとえばパラメトリックスピーカは、変調された超音波を狭いビームで放射するので、ビーム内でのみ変調オーディオを聴くことができる。オーディオは、超音波ビームに沿って無数の点で作成される。
【0004】
従来のパラメトリックスピーカは、超音波振動子を使用して、平行ビームのオーディオ信号で変調された超音波搬送信号を投影する。このようなスピーカは、通常、超音波搬送波信号をオーディオ信号で変調する変調器と、変調搬送波信号を増幅するドライバ増幅器と、変調搬送波信号を音ビームとして空気中に投射する少なくとも1つの超音波振動子と、を含む。空気の非線形伝搬特性のため、投影された変調されたキャリア信号は、空気を通過するときに復調され、それによってビーム経路に沿ってオーディオ信号が生成される。
【0005】
平行化されたされた超音波ビームの経路内の誰でも、復調された音声を聞くことができる。特定の個人を対象とすることができる指向性スピーカが望まれている。特定の個人に音声を向ける試みは、従来のパラメトリックスピーカを天井に設置することを含む。しかし、このソリューションには、導入の非実用性及び高電力消費など、さまざまな欠点がある。また、従来のパラメトリックスピーカは、特定の個人が動いているときに、特定の個人にシームレスに音声を配信できない場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
空中に点音源を生成するシステム及び方法が提供される。本発明の実施形態によれば、特定の空間上の位置に音響場を集束実体のない空中スピーカをすることによって、実体のない空中音源が生成される。
【0007】
さらに、音響場を操ることによって、実体のない空中点音源の空間上の位置を変化させることができる。したがって、音場の生成及び提示の分野で新たな道を開くことができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、実体のない空中スピーカを生成する方法は、
オーディオ信号を有する超音波搬送信号を変調することにより、変調信号を生成するステップを備え、
少なくとも1つの焦点に対して超音波振動子アレイの各超音波振動子の位相遅延量を決定するステップを備え、
少なくとも1つの焦点で可聴音を生成するように、各超音波振動子に対して決定された位相遅延量に従って各超音波振動子を駆動させるステップを備える。
【0009】
本発明の別の態様によれば、超音波搬送信号は、少なくとも20kHzの周波数を有する正弦波である。
【0010】
本発明の別の態様によれば、各超音波振動子の位相遅延量は、式Δtij = (l00 - lij)/cに従って決定され、
Δtijは、超音波振動子に対する駆動信号の適用の時間遅延を示す。
【0011】
本発明の別の態様によれば、各超音波振動子の位相遅延量は、式Uh(x,y) = ah(x,y)exp[iφh (x,y)]に従って決定され、
φ(x,y)h は、位相遅延量を示す。
【0012】
本発明の別の態様によれば、変調信号は、AM変調によって生成される。
【0013】
本発明の別の態様によれば、変調信号は、FM変調によって生成される。
【0014】
本発明の別の態様によれば、少なくでとも1つの焦点の約50cm以内で可聴音を聴くことができる。
【0015】
本発明の別の態様によれば、人の耳に隣接する。
【0016】
本発明の別の態様によれば、少なくとも1つの焦点は、オブジェクト又は画像が可聴音の音源になるように、オブジェクト又は画像に隣接する。
【0017】
本発明の別の態様によれば、実体のない空中音源を生成する方法は、
少なくとも1つの焦点の空間位置を変更するステップを備え、
少なくとも1つの焦点に対して超音波振動子アレイの各超音波振動子の新しい位相遅延量を決定し、少なくとも1つの焦点で可聴音を生成するステップを備える。
【0018】
本発明の別の態様によれば、実体のない空中スピーカの生成装置は、
少なくとも1つのフェーズドアレイを備え、
フェーズドアレイは、
超音波振動子のアレイを有し、
可聴信号を有する超音波搬送信号を変調することにより、変調信号を生成する信号生成器を有し、
少なくとも1つの焦点に対して超音波振動子アレイの各超音波振動子の位相遅延量を決定する位相遅延計算機を有する。
【0019】
本発明の別の態様によれば、実体のない空中スピーカの生成装置では、超音波搬送信号は、少なくとも20kHzの周波数を有する正弦波である。
【0020】
本発明の別の態様によれば、実体のない空中スピーカの生成装置では、各超音波振動子の位相遅延量は、式Δtij = (l00 - lij)/cに従って決定され、
Δtijは、超音波振動子に対する駆動信号の適用の時間遅延を示す。
【0021】
本発明の別の態様によれば、実体のない空中スピーカでは、各超音波振動子の位相遅延量は、式Uh(x,y) = ah(x,y)exp[iφh (x,y)]に従って決定され、
φh(x,y) は、位相遅延量を示す。
【0022】
本発明の別の態様によれば、実体のない空中スピーカでは、信号生成器は、AM変調ユニットを備える。
【0023】
本発明の別の態様によれば、実体のない空中スピーカでは、信号生成器は、FM変調ユニットを備える。
【0024】
本発明の別の態様によれば、実体のない空中スピーカは、更に、可聴音のボリュームを調整する出力パワー制御回路を備える。
【0025】
本発明の別の態様によれば、実体のない空中スピーカでは、位相遅延計算機は、少なくとも1つの焦点の空間位置の変化に対して超音波振動子アレイの各超音波振動子の新しい位相遅延量を決定し、少なくとも1つの焦点で可聴音を生成する。
【0026】
本発明の別の態様によれば、実体のない空中スピーカの生成装置では、位相遅延計算機は、少なくとも1つの焦点の空間上の位置の任意の変化に対して超音波振動子アレイの各超音波振動子の新しい位相遅延量を決定する。
【0027】
本発明の別の態様によれば、実体のない空中スピーカを生成する方法であって、
第1オーディオ信号を有する超音波搬送信号を変調することにより、第1変調信号を生成するステップを備え、
第2可聴音信号を有する超音波搬送信号を変調することにより、第2変調信号を生成するステップを備え、
第1焦点に対して超音波振動子のアレイの第1振動子グループの各超音波振動子の位相遅延量を決定するステップを備え、
第2焦点に対して超音波振動子のアレイの第2振動子グループの各超音波振動子の位相遅延量を決定するステップを備え、
第1グループの各超音波振動子に対して決定された位相遅延量に従って第1変調信号を用いて第1振動子グループの超音波振動子を駆動させることにより、第1焦点位置で可聴音を生成するステップを備え、
第2グループの各超音波振動子に対して決定された位相遅延量に従って第2変調信号を用いて第2振動子グループの超音波振動子を駆動させることにより、第2焦点位置で可聴音を生成するステップを備える、
方法。
【0028】
様々な本発明の実施形態は、以下の図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1A】本発明の実施形態の超音波場で生成された実体のない空中音源を示す。
【0030】
図1B】本発明の別の実施形態の超音波場で異なる焦点で生成される空中音源を示す。
【0031】
図2】本発明の実施形態の音響場で点音源を生成するシステムを示す。
【0032】
図3図2のシステムのより詳細な図である。
【0033】
図4】本発明の実施形態の超音波フェーズドアレイを示す。
【0034】
図5】本発明の実施形態の超音波フェーズドアレイによって生成される焦点を示す。
【0035】
図6】本発明の実施形態の超音波フェーズドアレイによって生成される焦点線を示す。
【0036】
図7】本発明の実施形態による焦点付近に生成された定在波の狭いビームを示す。
【0037】
図8A】本発明の実施形態のドット状の音響場を示す。
【0038】
図8B】本発明の実施形態のライン状の音響場を示す。
【0039】
図8C】本発明の実施形態のクロス状の音響場を示す。
【0040】
図8D】本発明の実施形態の三角形状の音響場を示す。
【0041】
図8E】本発明の実施形態の正方形状の音響場を示す。
【0042】
図8F】本発明の実施形態の二次元グリッド状の音響場を示す。
【0043】
図9】超音波振動子に適用される駆動信号の波形の例を示す。
【0044】
図10】変調されたパルスを用いたオーディオデータで変調された駆動信号の波形の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本明細書で開示および説明される本発明の実施形態によれば、空間内の任意の点に音源、すなわち実体のない空中スピーカが作成される。
【0046】
従来のパラメトリックスピーカは、空気中の有限振幅超音波の非線形相互作用を利用して、可聴音の指向性ビームを生成する。パラメトリックスピーカは、複数の振動子からの球面波を重ね合わせた高強度の超音波ビームを放射する。異なる周波数を持つ2つの有限振幅音波(一次波)が空気中で相互作用すると、周波数が一次波の和と差に対応する新しい音波(二次波)が生成される。この現象は、空気中の音波相互作用の非線形音響に基づいている。超音波からの音生成の原理は、次の式で表される。
【数1】
ここで、psは二次波音圧、p1は一次波音圧、βは非線形流体パラメーター、c0は小信号音速である。左辺は生成された可聴音psの数式であり、右側は駆動超音波源p1の方程式である。この導出された波動方程式は、非線形相互作用によって生成される二次波の音圧を決定する。これは、高振幅変調超音波で満たされた空間が音源として機能できることを意味する。
【0047】
本発明は、式(1)で具体化される音生成の原理を利用して可聴音の点音源を生成する。超音波搬送波信号はオーディオ信号で変調され、変調された超音波搬送波信号は空気中の焦点に向けられ、そこで変調超音波搬送波信号が相互作用して十分な強度のオーディオ信号を再生し、焦点で可聴音を生成する。
【0048】
図1Aに示すように、振動子20のアレイは、音響ビーム60を焦点に向けるように制御され、その結果、可聴音5を放出する実体のない空中音源1がその焦点に生み出される。超音波フェーズドアレイの出力は、生成された音が焦点の周りでのみ聞こえるように制御される。
【0049】
図2は、本発明によるシステム100の例示的な実施形態を示す。システム100は、システムコントローラ10および1つ以上の超音波フェーズドアレイ20を含む。システムコントローラ10は、USBケーブル30を介して超音波フェーズドアレイ20のそれぞれを制御する。図3に示すように、システムコントローラ10は、制御アプリケーション12の指示の下でシステム100を制御して、1つまたは複数の超音波振動子アレイ20によって生成される音場に所望の変化を生じさせる。本発明に従う実施形態において、制御アプリケーション12は、Windowsオペレーティングシステム上のC ++で開発されている。
【0050】
各フェーズドアレイ20は、2つの回路基板21、25からなる。第1の回路基板は、超音波振動子26のアレイ25である。第2の回路基板は、超音波振動子26を駆動する駆動回路21を含む。駆動回路21は、USBインタフェース回路22、フィールドプログラマブルゲートアレイFPGA23、およびドライバ24を含む。2つの回路基板は、ひいては振動子アレイ25および駆動回路21は、ピンコネクタ40により互いに接続される。
【0051】
図5に示されるように、超音波振動子26の各アレイ25は一辺の長さDを有し、各々が計算された時間または位相遅延および強度値で別々に制御される複数の超音波振動子26を有する。時間または位相遅延は、超音波振動子とオーディオ信号が生成される空間の1つまたは複数の点との間の相対位置に基づいて計算される。強度値は、生成されるオーディオ信号に基づいて導出される。これらの値は、駆動回路21によって適用される。このようにして、超音波振動子26の各アレイ25は、単一焦点または超音波の他の分布(例えば、複数の焦点および焦点線)を生成して1つ以上の実体のない空中音源を形成する。好ましい実施形態では、単一フェーズドアレイ20のサイズおよび重量は、それぞれ19×19×5cmおよび0.6kgである。
【0052】
現時点で好ましい実施形態では、超音波フェーズドアレイ20は、40kHzまたは25kHzのいずれかの周波数を有することができる。焦点の位置は、波長の1/16(40 kHz超音波の場合は約0.5 mm)の分解能でデジタル制御され、1 kHzでリフレッシュできる。本発明による一実施形態では、超音波フェーズドアレイ40は40kHzの周波数を有し、285個の振動子からなり、各振動子は直径10mmの直径を有する。例示的な40kHz振動子は、モデル番号T4010A1を有し、日本セラミック株式会社によって製造されている。超音波振動子は、170×170mmの面積を有するアレイに配置されている。焦点距離R = 200 mmの場合、焦点のピークでの音圧は2585 Pa RMS(測定値)である。本発明による別の実施形態では、超音波フェーズドアレイ40は、25kHzの周波数を有し、それぞれが16mmの直径を有する100個の振動子からなる。例示的な25kHz振動子は、モデル番号T2516A1を有し、日本セラミック株式会社によって製造されている。焦点のピークでの音圧は、焦点距離R = 200mmのときに900PaRMS(推定)である。25 kHzフェーズドアレイを使用すると、音圧は40 kHzフェーズドアレイを使用した場合よりもはるかに小さくなるが、焦点のサイズは40 kHzフェーズドアレイを使用した場合よりも大きくなる。本発明による現在好ましい実施形態では、超音波フェーズドアレイ20は40kHzフェーズドアレイである。
【0053】
図6に示すように、超音波の焦点50は次のように生成される。振動子アレイ25の(i、j)番目の振動子26の時間遅延Δtijは、次の式で与えられる。
【数2】
ここで、l00およびlijは、それぞれ、焦点から(0、0)番目(基準)および(i、j)番目の振動子26までの距離である。空気中の音速はcである。焦点50は、その次の目標位置の座標についての時間遅延を再計算して設定することにより移動することができる。
【0054】
長方形の振動子アレイから生成された超音波の空間分布がほぼsinc関数型であることは理論的および実験的に示されている。長方形アレイの辺に平行なメインローブの幅wmは、次のように記述される。
【数3】
ここで、λは波長、Rは焦点距離、Dは長方形アレイの辺の長さである。式 (3)は、空間解像度と配列サイズの間にトレードオフがあることを意味する。
【0055】
焦点のサイズは、超音波の周波数に依存し、実体のない空中音源のサイズを決定する。実体のない空中音源の直径は、超音波ビームの幅wmによって決まる。たとえば、超音波の周波数が40 kHz、焦点距離が150 mm、長方形アレイの辺の長さが170 mmの場合、焦点のサイズはwm =2λR/ D = 15 mmである。超音波の周波数が25 kHzの場合、焦点のサイズはwm = 24 mmである。
【0056】
実体のない空中音源の長さは、焦点深度wd =4λ(R / D)2によって決定される。たとえば、超音波の周波数が40 kHzの場合、焦点の長さはwd = 26.5 mm、超音波の周波数が25 kHzの場合、wd = 42.4 mmである。音源の直径と長さがさらに異なる場合、音源の形状は球体ではなく卵形であり、音の放射は全方向性ではなくなる。
【0057】
超音波の周波数は、目的の用途に基づいて選択する必要がある。これは焦点のサイズの大まかなガイドラインであることに注意されたい。小さい音源ほど、固定された超音波出力でより大きな音を放射する。
【0058】
システム100のより詳細な図を示す図3を参照すると、駆動回路21は、USBインタフェース22、フィールドプログラマブルゲートアレイFPGA23、およびドライバ24を含む。本発明の一実施形態では、駆動回路のUSBインタフェース22は、英国グラスゴーのフューチャーテクノロジーデバイスインターナショナルリミテッドによって製造されたFT2232HハイスピードデュアルUSB UART / FIFO集積回路を採用したUSBボードによって実装できる。FPGA23は、カリフォルニア州サンノゼのアルテラ社によって製造されたCyclone III FPGAを含むFPGAボードによって実装されてもよい。ドライバ24は、プッシュプル増幅器ICを使用して実装されてもよい。
【0059】
システムコントローラ10は、焦点の空間座標(例えば、X、Y、およびZ)および各振動子の強度データを含む必要なデータを駆動ボード21に送信する。駆動回路21は、USBインタフェース22を使用してこのデータを受信し、当該データをFPGA23に提供する。FPGA23は、式(2)に基づいて超音波振動子アレイ25内の各超音波振動子26の適切な時間(または位相)遅延を計算する位相計算機27を含む。
【0060】
強度データは、HDD/USBメモリ/SDカード/クラウドストレージなどの任意の媒体に格納され、システムコントローラ10にアクセス可能なオーディオ信号に基づいてシステムコントローラ10で生成される。好ましくは、強度データは、超音波搬送周波数と同じ周波数でオーディオ信号をサンプリングすることにより生成される。図10に示されるように、40kHzの搬送周波数を有する好ましい実施形態では、強度データは、40kHzおよびサンプルあたり8ビットでオーディオ信号をサンプリングすることにより生成される。超音波搬送波は、強度データに従って変調される。
【0061】
次に、信号生成器28は、位相計算器27によって計算された時間(または位相)遅延およびシステムコントローラ10によって提供された強度データに基づいて、振動子アレイ25内の各振動子の駆動信号を生成する。図9に示すように、好ましい実施形態では、各振動子26の出力強度値は、強度データに基づいて振動子に印加される駆動信号29のパルス幅変調(「PWM」)制御を使用して変化する。個々のパルスの幅は、サンプリングされた8ビットオーディオデータに基づいて設定される。次いで、駆動信号は、ドライバ24のプッシュプル増幅器を介して振動子アレイ25の振動子26に送られる。
【0062】
狭ビームにおける可聴音は、振幅変調(AM)および周波数変調(FM)を含む他の変調技術を使用することにより生成され得る。当業者は、振幅変調を実施するために追加の電圧制御ICが必要であることを理解するであろう。好ましい実施形態は、搬送波を変調するためにデジタル処理を使用するが、電圧入力としてオーディオ信号を使用してハードウェア(アナログ回路)で実装することができる。たとえば、これはオーディオ信号に応じて電源電圧を変調することで実現できる。次いで、デジタル駆動信号の電圧が変更される(すなわち、振幅変調)。
【0063】
超音波パネルの直径サイズは、超音波をどの程度効果的に集束させることができるかに影響する。50個の12V振動子のパネルは、十分な音圧で可聴音を生成できる。本発明の好ましい実施形態では、285個の24V振動子を有する超音波パネルが使用される。17x17-cm2以上の超音波パネルが望ましい。この目的には、任意の超音波周波数(> 20 kHz)を使用できる。40kHz振動子が最も市販されており、したがって、本実施形態では40kHz振動子が使用される。
【0064】
本発明の例示的な一実施形態では、単一の超音波フェーズドアレイが使用される。単一のパネルは、対象者の耳の近く(たとえば、約50 cm以内、好ましくは約10 cm以内)に焦点を設定できる。追加の位相遅延制御により、対象者の各耳の近くに2つの焦点を設定したり、複数の対象者の耳の近くに複数の焦点を設定したりできる。同じオーディオ信号を各焦点で再生することも、異なるオーディオ信号を各焦点で再生することもできる。例えば、各フェーズドアレイ20の振動子は、別々に制御されるグループに分割することができる。各グループは個別の焦点を設定でき、その焦点に送られる超音波は異なるオーディオ信号で変調できる。本発明の別の例示的な実施形態では、複数のパネルが使用される。超音波パネルの好ましい数は、音源の有効距離によって決まる。これは、17x17-cm2のパネルで最大3 mである。パネルが大きいほど、焦点を遠くに設定できる。パネルは対象者に向けられる必要があるため、対象エリアが大きい場合、複数のパネルが必要である。焦点の複雑な分布を設定し、再生のために異なるオーディオ信号を伝えるには、複数のパネルも必要になる場合がある。
【0065】
図7を参照すると、超音波の焦点線は、ターゲット座標の変動と同様に生成される。この場合、アレイ25の(i、j)番目の振動子26の時間遅延Δtijは次の式で与えられる。
【数4】
ここで、l0jとlijは、それぞれj番目の焦点から(0、j)番目と(i、j)番目の振動子26までの距離である。つまり、各列は当該列の焦点50をターゲットにする。上記の式(3)で定義されているように、焦点線の太さはwmである。音響エネルギーはより広い領域に分散されるため、焦点線の振幅のピーク値は焦点の振幅のピーク値よりも低くなる。超音波定在波が発生すると、焦点間の間隔はλ/ 2になり、焦点のサイズは超音波ビームの幅wmはλ/ 2になる。
【0066】
2つのタイプの音場、すなわち焦点と焦点線について上述した。フェーズドアレイの振動子は個別に制御されるため、複数のビームなど、音場の他の分布を生成できることに注意されたい。フェーズドアレイの配置は、音場の形状を設計するために使用できる。たとえば、リフレクター付きの単一フェーズドアレイ、2つの対向フェーズドアレイ、4つの対向フェーズドアレイ、またはワークスペースを囲む複数のフェーズドアレイを使用して、定在波を生成して異なる超音波分布を形成する。図8は、音場分布の例を示し、ここで、円形粒子は、実体のない空中音源が形成される定在波61によって形成される極小値3(すなわち、ノード)を示す。図8Aは、それぞれが狭い音響ビーム60を放出する一対の超音波フェーズドアレイ20によって生成されたドット形状の音響場を示している。図8Bは、それぞれが狭い音響ビーム60を放出する一対の超音波フェーズドアレイ20によって生成されたライン形状の音響場を示す。図8Cは、それぞれが狭い音響ビーム60を放出する2対の超音波フェーズドアレイ20によって生成された十字形の音場を示す。図8Dは、それぞれが複数(例えば、2つ)の音響ビーム60を放出する3つの超音波フェーズドアレイ20によって生成された三角形の音場を示す。図8Eは、それぞれが複数(例えば、2つ)の音響ビーム60を放出する2対の超音波フェーズドアレイ20によって生成された正方形の音場を示す。図8Fは、同じ位置にある焦点線を標的とする広い(すなわち、シート)音響ビーム160をそれぞれ放出する2対の超音波フェーズドアレイ20によって生成された2次元グリッド形状(「2Dグリッド」)ドットマトリックス音響場を示す。
【0067】
本発明に従って生成することができる音場の他の分布は、任意の三次元形状を含む任意の形状を有する音場を含む。たとえば、ワークスペースを囲む1つまたは複数の超音波フェーズドアレイを使用して、さまざまな形状の定在波を生成し、任意の形状の音場を提供できる。
【0068】
本発明の実施形態によれば、任意の所望の3次元超音波分布は、以下のように複数の超音波フェーズドアレイを使用する超音波計算ホログラフィーにより生成することができる。サラウンドサウンドシステムが実現されるように、実体のない空中音源を音場のさまざまなノードに配置できる。
【0069】
超音波の空間的位相制御により、各フェーズドアレイの三次元空間における1つ以上の焦点の生成が可能になる。各フェーズドアレイについて、コンピュータ生成ホログラム(CGH)Urからの再構成の複素振幅(CA)は、設計されたCGHパターンUhのフーリエ変換によって与えられる。
【数5】
【数6】
ここで、ahとφhは、それぞれフェーズドアレイから放射される超音波の振幅と位相である。簡単にするために、ahはフェーズドアレイのすべての振動子で一定にすることができる。ahは、必要に応じて、振動子ごとに個別に調整できる。φhは、最適回転角(ORA)法によって導出される。arとφrは、それぞれ再構成平面の振幅と位相である。再構成の空間強度分布は、実際には|U r|2 = ar2として観察される。CGH Urは、フェーズドアレイの視点からの音場分布の表現である。
【0070】
横(XY)方向に沿った焦点位置の制御において、CGHは、様々な方位角を有するブレーズド格子のCAの重ね合わせに基づいて設計される。再構成にN個の多重焦点がある場合、CGHにはNブレーズド格子が含まれる。軸(Z)方向に沿った焦点位置の制御では、焦点距離fの位相フレネルレンズパターン
【数7】
をφhに単純に追加する(k =2π/λは波数)。この場合、フェーズドアレイの空間分解能によって最小焦点距離が決まる。
【0071】
ORA法は、均一な強度を有するスポットアレイから構成されるCGHの再構成を得るための最適化アルゴリズムである。これは、反復最適化プロセスによって計算された適切な位相変動をCGHに追加することに基づいている。i番目の反復プロセスでは、CGH平面(つまり、フェーズドアレイ表面)上のピクセル(振動子)hでの振幅ahおよび位相φh(i)、ならびに、の再構成平面上の焦点位置に対応するピクセルrでの複素振幅(CA)Ur(i)は、コンピュータに次のように記述される。
【数8】
ここで、uhrはフェーズドアレイ表面上のピクセル(振動子)hから再構成平面上のピクセルrに寄与するCA、φhrはピクセル(振動子)hからピクセルrへの超音波伝播に寄与する位相、ωr(i)は、ピクセルrでの超音波強度を制御する重み係数である。各ピクセルrでの超音波強度Σr|Ur(i)|2の合計を最大化するために、ピクセル(振動子)hでφh(i)に追加される位相変動Δφh(i)が、流動方程式を使用して計算される。
【数9】
【数10】
【数11】
ここで、ωrは再構成平面上のピクセルrの位相である。CGHφh(i)の位相は、次のように計算されたΔφh(i)によって更新される。
【数12】
【0072】
さらに、式(12)の再構成平面上のピクセルrでの超音波強度を制御するために、ωr(i) は、式(11)のフーリエ変換によって得られた再構成の超音波強度に従って更新される。
【数13】
ここで、Ir(i)=|Ur(i)|2は、i番目の反復プロセスでの再構成平面上のピクセルrでの超音波強度であり、Ir(d)は、所望の超音波強度であり、αは定数である。位相変動Δφh(i)は、Ir(i)がIr(d)にほぼ等しくなるまで、上記の反復プロセス(式(8)〜式(12))によって最適化される。その結果、ORAメソッドは高品質のCGHの生成を促進する。
【0073】
したがって、音波の前面を正確に制御することにより、超音波振動子のアレイを使用して、点音源の複雑な配置を生成することができる。例えば、本発明の例示的な実施形態によれば、式(7)〜式(12)を参照すると、振幅ahは1に固定され、位相φhが計算される。位相が計算された後、振幅ahはオーディオ信号に従って変調できる。
【0074】
複数のフェーズドアレイを使用して定在波を生成する場合、各フェーズドアレイによって生成されるCGH Urは、他のフェーズドアレイに対するその空間的位置に依存する。フェーズドアレイのUhを得るには、フェーズドアレイごとに、フェーズドアレイの相対位置に従ってCGH Urを回転させる必要がある。所望の三次元超音波分布は、各超音波フェーズドアレイによって提供される三次元超音波分布を重ね合わせることにより最終的に得られる。本発明の実施形態によれば、本発明の実施形態において音場の形状を制御可能なシステムおよび方法が提供される。
【0075】
本発明の一実施形態によれば、1つ以上の超音波フェーズドアレイ20は、一緒になって音場発生器を形成する。システム100の別の好ましい実施形態では、4つのフェーズドアレイ120が互いに向かい合って配置される。4つのフェーズドアレイ20のこの配置によって形成される「ワークスペース」は520×520mm2である。4つのフェーズドアレイ20のこのような配置では、4つのフェーズドアレイ20が作業空間を囲み、同じ位置に焦点線を生成するとき、焦点付近に定在波のシートビームが生成される。このような音場は、互いに垂直に重なる定在波の2つのビームとして記述される。
【0076】
さらに、本発明による実施形態では、1つまたは複数の実体のない空中音源を、一緒にまたは別々に三次元空間で作成および操作することができる。本発明のこれらの特徴は図1Bに示されている。図1Bは、音場2内で実体のない空中音源1が1つの焦点から内部の異なる焦点3に移動するように、音響ビーム60を用いて音場2を空間的および時間的に制御することにより操作される実体のない空中音源1を示す。
【0077】
1つ以上の超音波フェーズドアレイ20によって生成される焦点の分布は、各振動子26に印加される駆動信号29の相対時間(または位相)遅延を修正することにより変更することができる。
【0078】
本発明の一実施形態によれば、定在波の狭いビームまたはシートビームが、単一の目標点の近傍で生成される。音場はこの目標点の動きに応じて変化し、実体のない空中音源を動かす。音場内のすべての実体のない空中音源は、同じ方向に一緒に移動できる。
【0079】
オーディオの連続ストリーミングを維持するために、目標点の移動は可能な限り連続的でなければならない。古い目標点と新しい目標点の間の距離が大きい場合、フロート空中スピーカが音を途切れさせる可能性がある。本発明の一実施形態では、音場発生器は0.5mmの空間分解能および1kHzのリフレッシュレートを有するが、オーディオ信号を復調および再生するのにかかる時間はそれらの動きの速度を制限することに留意されたい。
【0080】
本発明による実施形態は、グラフィックス用途において有用であることが証明できるいくつかの特徴を有する。これらの特性は、(1)音場の変更により複数の実体のない空中音源を同時に作成および操作できること、および(2)音源を迅速に操作できるため、グラフィカル要素の動きに対応する3Dサウンドが生成されること、を含む。
【0081】
空中ディスプレイに焦点を合わせたいくつかの研究がある。例えば、発光点からなる画像を生成するレーザー励起プラズマに基づいた三次元ボリュームメトリックディスプレイが開示された。「落合陽一等による,2015. “Fairy lights in femtoseconds: aerial and volumetric graphics rendered by focused femtosecond laser combined with computational holographic fields.” In ACM SIGGRAPH 2015 Emerging Technologies (SIGGRAPH '15). ACM, New York, NY, USA, Article 10 , 1 pages. DOI=http://dx.doi.org/10.1145/2782782.2792492」を参照されたい。本発明による実施形態は、そのようなディスプレイと組み合わせて使用して、没入型の空間音響を提供することができる。
【0082】
本発明によるさらに別の代替実施形態では、音響効果を生成することができる。音場の焦点の空間的位置を変えることにより、空中音源が移動する。空中の音源を音場内で素早く動かすことにより、ドップラー効果を生成できる。
【0083】
これらの実験の結果は、音源の移動の最大速度は、音源が1 kHzのリフレッシュレートで1cmの間隔で移動する条件下で約1000cm /秒であったことを示した(すなわち、可聴音の波長と比較してほぼ連続的な移動)。この速度は、ドップラー効果を生成するのに十分である。
【0084】
本発明の追加の態様によれば、空中音源は拡張現実体験を提供する。本発明の実施形態によれば、空中音源は、現実世界のオブジェクトが音を発しているように聞こえるように、現実世界のオブジェクトに隣接して配置することができる。
【0085】
音場における空中音源の持続可能性を決定する2つの要因:超音波装置の電力消費と熱条件。
【0086】
超音波装置の熱条件の違いにより、単一の定在波が停止の持続可能性に影響を与える。超音波デバイスの温度は、デバイスの電源を入れる前は同等である。超音波デバイスの電源を入れると、その特性が完全に同等ではないそれぞれのアンプICから発生する熱のために、温度が徐々に上昇する。そのような温度差がある場合、超音波デバイスの制御回路の動作周波数は異なる。この周波数差により、音場のノードの位置が移動し、空中音源は、局在定在波のエッジに到達すると消滅する。同時に、他の新しい音源が、局在定在波の他のエッジに発生する。これは、音源が占める領域が固定されている間、音源が単一の方向に流れることを説明できる。超音波デバイスを冷却し、デバイス間の温度バランスを維持することは、この問題の1つの処置である。別のアプローチは、フィードフォワード制御に基づいて超音波フェーズドアレイ40の振動子の位相遅延を調整することである。
【0087】
単一の超音波フェーズドアレイ20から放射される超音波の強度は、当該アレイに含まれる超音波振動子26の数に比例する。超音波振動子26の数を増やすほど、音をより大きくすることが可能になる。より高い強度を提供することに加えて、超音波振動子26の数を増やすことは、他の利点をもたらす。そのような利点の1つは、より大きなワークスペースである。別の利点は、位相遅延特性の分散が小さいことであり、これにより、音場のより正確な生成と制御が可能になる。
【0088】
定在波の単一の広い/狭い音響ビームでは、すべての空中音源が一緒に操作される。例えば、単一のフェーズドアレイをいくつかの領域に分割し、各領域を個別に制御することにより、複数のビームが生成される。このようにして、複数の空中音源を個別に制御できる。
【0089】
本発明による実施形態は、20×20cmから100cmまでの広範囲のセットアップバリエーションを有する。例えば、図8Fに示されるタイプの2Dグリッド音響場は、25cm×25cm(すなわち、対向する超音波フェーズドアレイ20の各対が25cm離れている)、52cm×52cm(すなわち、対向する超音波フェーズドアレイ20の各対が52cm離れている)、および100cm×100cm(すなわち、対向する超音波フェーズドアレイ20の各対は100cm離れている)の寸法で配置することができる。図8Bに示されたタイプの二次元線音響場は、超音波フェーズドアレイ20の間を20cmの寸法として配置することができる。将来、より大きな超音波装置を備えるより大きなセットアップが可能になるであろう。
【0090】
上述のように、本発明の特定の実施形態によれば、3Dサウンドは、固定システムから動的システムに拡張されている。超音波フェーズドアレイを使用した3次元音響操作技術を使用して、没入型の空間音響体験を提供できる。本明細書で開示および説明されるそのような実施形態は、仮想現実アプリケーション、拡張現実アプリケーション、および個人ガイド付きオーディオツアーのための3Dサウンドなどの幅広いアプリケーションを有する。
【0091】
超音波ベースのスピーカの原理は、強度が効果的に高い変調超音波が変調周波数の可聴音を放射するというものである。アプリケーションでは、超音波を焦点合わせして、焦点のすぐ近くで効果的に高強度の超音波を作ることができる。生成された焦点は完全に球形ではないが、焦点から発せられる音圧は、次の式によって点音源として近似できる。
【数14】
ここで、rは点音源の位置からの距離、tは時間、p0は単位距離での音圧、kは波数、ωは音の角周波数である。時間成分e-jωtは、空間分布に焦点を合わせるために計算では省略できる。相対圧力値は分析に十分であるため、p0の値は1に等しいと仮定される。
【0092】
本発明の実施形態が詳細に示され、説明されたので、それに対する様々な修正および改良が当業者に容易に明らかになり得る。したがって、本発明の例示的な実施形態は、上述のように、限定ではなく例示を意図したものである。本発明の精神および範囲は広く解釈されるべきであり、前述の明細書によって限定されるべきではない。
【0093】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の範囲は上記の実施形態に限定されない。また、上記の実施形態は、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更が可能である。また、上記の実施形態及び変形例は、組合せ可能である。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図9
図10
【国際調査報告】