(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-527320(P2020-527320A)
(43)【公表日】2020年9月3日
(54)【発明の名称】中圧電力配電回路網閉ループ操作の安全性を評価する方法
(51)【国際特許分類】
H02J 3/00 20060101AFI20200807BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20200807BHJP
【FI】
H02J3/00 170
H02J13/00 301A
H02J3/00 130
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2019-547074(P2019-547074)
(86)(22)【出願日】2019年6月5日
(85)【翻訳文提出日】2019年8月28日
(86)【国際出願番号】CN2019090120
(87)【国際公開番号】WO2019233437
(87)【国際公開日】20191212
(31)【優先権主張番号】201810568104.0
(32)【優先日】2018年6月5日
(33)【優先権主張国】CN
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】517431171
【氏名又は名称】国网上海市電力公司
(71)【出願人】
【識別番号】507190994
【氏名又は名称】上海交通大学
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI JIAO TONG UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】周自強
(72)【発明者】
【氏名】張焔
(72)【発明者】
【氏名】馮楠
(72)【発明者】
【氏名】郭強
(72)【発明者】
【氏名】連鴻波
(72)【発明者】
【氏名】陳暘
(72)【発明者】
【氏名】余穎輝
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
【Fターム(参考)】
5G064AC09
5G064CB08
5G064DA03
5G066AA03
5G066AA09
5G066AE03
5G066AE09
(57)【要約】
本発明は、高圧電力配電回路網に対して状態推定を行い、閉ループ給電線先頭における10kVバスバーの電圧振幅および位相角を得ることと、閉ループ給電線ごとの各負荷点における有効負荷が給電線先頭における有効電力に対する比、および閉ループ給電線の各負荷点における無効負荷が給電線先頭における無効電力に対する比を入力変数として選択し、各負荷点における歴史負荷データに基づいて各入力変数の多段キュムラントを計算することと、決定性トレンドおよび閉ループ電流の計算を行うことと、閉ループ電流の多段キュムラントを計算することと、閉ループ電流の累積確率分布を求めることと、各閉ループ電流の限界確率を計算し、複数の限界確率がいずれも予め設定された閾値より小さい場合、閉ループ操作が安全性を有することを確定することと、を含む、中圧電力配電回路網閉ループ操作の安全性を評価する方法を開示する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
取得した閉ループネットワークのトポロジー構造、機器パラメータおよび前記閉ループネットワークの閉ループ前のリアルタイム動作データに基づき、高圧電力配電回路網に対して状態推定を行い、2本の閉ループ給電線先頭における10kVバスバーの電圧振幅および位相角を得ることと、
2本の閉ループ給電線の各負荷点における有効負荷が給電線先頭における有効電力に対する比、および前記閉ループ給電線の各負荷点における無効負荷が給電線先頭における無効電力に対する比を入力変数として選択し、各負荷点における歴史負荷データに基づいて各入力変数の多段キュムラントを計算することと、
前記2本の閉ループ給電線先頭における10kVバスバーの電圧振幅および位相角に基づき、基準動作点において決定性トレンドおよび閉ループ電流の計算を行い、閉ループネットワークシステムの状態変数基準値および閉ループ電流基準値を得、前記閉ループネットワークシステムの状態変数基準値および閉ループ電流基準値に基づいて変換行列を得ることと、
前記各入力変数の多段キュムラントおよび前記変換行列に基づいて閉ループ電流の多段キュムラントを計算することと、
前記閉ループ電流の多段キュムラントに基づいて前記閉ループ電流の累積確率分布を求めることと、
給電線最大許容容量および電流保護整定値を限定値として、前記累積確率分布に基づいて各閉ループ電流の限界確率を計算し、複数の前記限界確率がいずれも予め設定された閾値より小さい場合、閉ループ操作が安全性を有することを確定することとを含む、中圧電力配電回路網閉ループ操作の安全性を評価する方法。
【請求項2】
取得した閉ループネットワークのトポロジー構造、機器パラメータおよび前記閉ループネットワークの閉ループ前のリアルタイム動作データに基づき、高圧電力配電回路網に対して状態推定を行い、2本の閉ループ給電線先頭における10kVバスバーの電圧振幅および位相角を得ることは、
取得した閉ループネットワークのトポロジー構造、機器パラメータおよび前記閉ループネットワークの閉ループ前のリアルタイム動作データに基づき、重み付け最小自乗法を用いて高圧電力配電回路網の状態推定を行い、2本の閉ループ給電線先頭における10kVバスバーの電圧振幅および位相角を得ながら、不良測定データを識別・修正することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
【請求項4】
【請求項5】
【請求項6】
【請求項7】
【請求項8】
【請求項9】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力システムの安全・安定的な動作の分野に関し、例えば、中圧電力配電回路網閉ループ操作の安全性を評価する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中圧電力配電回路網としては、閉ループ設計、開ループ動作の給電モードが用いられている。正常の場合、接続スイッチを入れて、電力配電回路網が輻射構造で動作し、機器メンテナンスや事故処理時に、接続スイッチの閉ループ操作により停電せずに負荷を転移することを実現することができる。中圧電力配電回路網の閉ループ操作は、閉ループネットワークにおいて大きな閉ループ電流を発生し、回路電流保護動作やある電気機器の過負荷を起こし、より大きな範囲の停電事故を招くことがある。そのため、作業員は閉ループ操作をする前に、閉ループ操作の安全性を評価する必要がある。
【0003】
現在、系統的な中圧電力配電回路網閉ループ操作の安全性についての評価方法がないため、実際の生産において、作業員は一般的な経験によって閉ループ操作が安全であるか否かを判断しており、相応する理論的なサポートが欠如し、的確性が低い。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、中圧電力配電回路網閉ループ操作の安全性評価の的確性が低いという問題を解決するために、中圧電力配電回路網閉ループ操作の安全性を評価する方法を提供する。
【0005】
一実施例において、本発明は、閉ループ給電線の負荷点における負荷をランダム変数と見なし、確率トレンド理論に基づいて閉ループ定常電流と過渡衝撃電流の限界確率を求めて閉ループ操作の安全性を評価する、中圧電力配電回路網閉ループ操作の安全性を評価する方法であって、
取得した閉ループネットワークのトポロジー構造、機器パラメータおよび前記閉ループネットワークの閉ループ前のリアルタイム動作データに基づき、高圧電力配電回路網に対して状態推定を行い、2本の閉ループ給電線先頭における10kVバスバーの電圧振幅および位相角を得ることと、
閉ループ給電線ごとの各負荷点における有効負荷が給電線先頭における有効電力に対する比、および閉ループ給電線の各負荷点における無効負荷が給電線先頭における無効電力に対する比を入力変数として選択し、各負荷点における歴史負荷データに基づいて各入力変数の多段キュムラント(Multi−order semi−invariant)を計算することと、
前記2本の閉ループ給電線先頭における10kVバスバーの電圧振幅および位相角に基づき、基準動作点において決定性トレンドおよび閉ループ電流の計算を行い、閉ループネットワークシステムの状態変数基準値および閉ループ電流基準値を得、閉ループネットワークシステムの状態変数基準値および閉ループ電流基準値に基づいて変換行列を得ることと、
前記各入力変数の多段キュムラントおよび前記変換行列に基づいて閉ループ電流の多段キュムラントを計算することと、
前記閉ループ電流の多段キュムラントに基づいて閉ループ電流の累積確率分布を求めることと、
給電線最大許容容量および電流保護整定値を限定値として、累積確率分布に基づいて各閉ループ電流の限界確率を計算し、複数の限界確率がいずれも予め設定された閾値より小さい場合、閉ループ操作が安全性を有することを確定することと、を含む中圧電力配電回路網閉ループ操作の安全性を評価する方法を開示する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本発明における中圧電力配電回路網閉ループ操作の模式図である。
【
図2】本発明における中圧電力配電回路網閉ループ操作の安全性を評価する方法のフローチャートである。
【
図3】本発明における中圧電力配電回路網閉ループ操作の安全性を評価する方法の技術ロードマップである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、中圧電力配電回路網閉ループ操作の安全性を評価する方法を開示し、以下、図面と具体的な実施形態を結び付けて本発明を更に説明する。
【0008】
実際の生産において、作業員は、一般的に経験によって以下の場合の閉ループ操作が安全であると考えている。
(1)閉ループ前に、接続スイッチ両側のブレイクが所在する給電線における10kVバスバーの電圧振幅の差が10%より小さい。
(2)閉ループ前に、接続スイッチ両側の給電線における負荷の差が小さく、且つ総負荷がいずれかの給電線における伝送容量の上限より大きくない。
【0009】
したがって、安全性を保証するために、中圧電力配電回路網の閉ループの負荷転移操作は、負荷が小さい夜で行われることが多い。
【0010】
しかしながら、このような生産経験に基づく評価方法は、相応する理論的なサポートが欠如する。理論的な分析から分かるように、閉ループ電流の大きさは、接続スイッチブレイク両側の電圧振幅の差および位相角の差に大きく影響される。そのため、閉ループ点両側の10kVバスバーの電圧振幅の差だけで閉ループ操作の安全性の評価を行うことは、科学的な依拠が欠如する。また、閉ループ給電線の総負荷と回路伝送容量の上限とを比較する方法によって、閉ループの安全性の評価結果が保守的となり、最終的な閉ループ対策の制定に対する参照価値に限界がある。
【0011】
関連研究において、閉ループ定常電流および過渡衝撃電流の計算によって閉ループの安全性の評価を行うことが提出されているが、関連技術において電力配電回路網の測定装置の配置範囲に限界があるので、電力配電回路網における10kVバスバーの電圧位相角の情報および接続スイッチブレイク両側の電圧振幅および位相角の差を取得することができず、また、閉ループ電流の計算に必要となる給電線の各負荷点におけるリアルタイム負荷データを取得することもできないため、これらの研究の実用性が制限される。
【0012】
本発明は、電力配電回路網におけるバスバーの電圧位相角データを取得できないという問題に対して、高圧電力配電回路網に対して状態推定を行う方法を用いてバスバーの位相角情報を得る。閉ループ電流の計算に必要となる給電線の負荷点におけるリアルタイム負荷データを取得できないという問題に対して、まず、歴史負荷データに基づいて各負荷点における負荷値の確率分布特性を分析した後、確率トレンド理論に基づき、キュムラント法を用いて閉ループ電流の累積分布曲線を求め、最後に閉ループ電流の限界確率を求めることにより閉ループ操作の安全性を評価する。
【0013】
図1に示すように、システム送電網(220kVおよびそれ以上の電圧レベルの電力網)が環状構造となって動作し、110kVおよびそれ以下の電圧レベルの電力配電回路網が開ループで動作する。Q1およびQ2は、それぞれ接続スイッチ両側の給電線の出口遮断器である。2本の10kV給電線同士は接続スイッチQ3により接続され、システムが正常に動作する場合、接続スイッチQ3が切断され、動作形態を調整し、或いは緊急事故を処理する場合、接続スイッチQ3が入り、閉ループにより負荷ホットターンを行うことができる。
【0014】
図2に示すように、本発明は、
取得した閉ループネットワークのトポロジー構造、機器パラメータおよび閉ループネットワークの閉ループ前のリアルタイム動作データに基づき、高圧電力配電回路網に対して状態推定を行い、2本の閉ループ給電線先頭における10kVバスバーの電圧振幅および位相角を得るS10と、
閉ループ給電線ごとの各負荷点における有効負荷が給電線先頭における有効電力に対する比、および前記閉ループ給電線の各負荷点における無効負荷が給電線先頭における無効電力に対する比を入力変数として選択し、各負荷点における歴史負荷データに基づいて各入力変数の多段キュムラントを計算するS20と、
前記2本の閉ループ給電線先頭における10kVバスバーの電圧振幅および位相角に基づき、基準動作点において決定性トレンドおよび閉ループ電流の計算を行い、閉ループネットワークシステムの状態変数基準値および閉ループ電流基準値を得、前記閉ループネットワークシステムの状態変数基準値および前記閉ループ電流基準値に基づいて変換行列を得るS30と、
前記各入力変数の多段キュムラントおよび前記変換行列に基づいて閉ループ電流の多段キュムラントを計算するS40と、
前記閉ループ電流の多段キュムラントに基づいて前記閉ループ電流の累積確率分布を求めるS50と、
給電線最大許容容量および電流保護整定値を限定値として、前記累積確率分布に基づいて各閉ループ電流の限界確率を計算し、複数の前記限界確率がいずれも予め設定された閾値より小さい場合、閉ループ操作が安全性を有することを確定するS60と、を含む、中圧電力配電回路網閉ループ操作の安全性を評価する方法を提供する。
【0015】
一実施例において、取得した閉ループネットワークのトポロジー構造、機器パラメータおよび前記閉ループネットワークの閉ループ前のリアルタイム動作データに基づき、高圧電力配電回路網に対して状態推定を行い、2本の閉ループ給電線先頭における10kVバスバーの電圧振幅および位相角を得ることは、
取得した閉ループネットワークのトポロジー構造、機器パラメータおよび前記閉ループネットワークの閉ループ前のリアルタイム動作データに基づき、重み付け最小自乗法を用いて高圧電力配電回路網の状態推定を行い、2本の閉ループ給電線先頭における10kVバスバーの電圧振幅および位相角を得ながら、不良測定データを識別・修正することを含む。
【0026】
図3に示すように、本発明に係る中圧電力配電回路網閉ループ操作の安全性を評価する方法は、以下を含む。
【0027】
ステップA、高圧電力配電回路網の状態推定を行う。
【0028】
ステップAでは、閉ループネットワークのトポロジー構造、機器パラメータおよび閉ループネットワーク閉ループ前のリアルタイム動作データを取得することに加えて、高圧電力配電回路網に対して状態推定を行い、2本の閉ループ給電線先頭における10kVバスバーの電圧振幅および位相角を得る。
【0029】
具体的には、中圧電力配電回路網閉ループ電流の計算を行う場合、一般的に閉ループ給電線先頭における10kVバスバーのノードを参照ノードとして選択するため、接続スイッチ両側の10kVバスバーの電圧振幅および位相角を知る必要がある。現在、中圧電力配電回路網の測定システムは、電圧振幅値を採集することはできるが、依然としてその位相角の情報を取得することができない。これに対して、閉ループネットワークにおける送電網および高圧電力配電回路網のトポロジー構造、機器パラメータおよび閉ループ前リアルタイム動作データを取得することに加えて、重み付け最小自乗法(Weighted Least Squares、WLS)を用いて高圧電力配電回路網の状態推定を行う。当該重み付け最小自乗法は、モデルがシンプルであり、計算量が小さいという利点を有するため、高圧電力配電回路網の状態推定により、閉ループ給電線先頭における10kVバスバーの電圧振幅および位相角を得ることができながら、不良測定データを識別・修正することができる。
【0030】
ステップB、入力変数の多段キュムラントの計算を行う。
【0031】
ステップBでは、閉ループ給電線ごとの各負荷点における有効負荷が給電線先頭における有効電力に対する比、および閉ループ給電線の各負荷点における無効負荷が給電線先頭における無効電力に対する比を入力変数として選択し、各負荷点における全年96点の日負荷歴史データに基づき、各入力変数の閉ループタイミングが所在する季節および時間帯内における多段キュムラントを計算する。
【0032】
具体的には、中圧電力配電回路網の閉ループ操作前に、各負荷点におけるリアルタイム負荷は一般的に取得しにくい。これに対して、各負荷点における負荷値をランダム変数と見なし、当該負荷点における有効負荷が給電線先頭における有効電力に対する比、および閉ループ給電線の当該負荷点における無効負荷が給電線先頭における無効電力に対する比を入力変数として選択して確率トレンドの計算を行う。入力変数の多段キュムラントを求める場合、従来の方法は、変数の確率分布関数に基づき、数値方法を用いて求めるものである。しかしながら、工程において、これらの入力変数の分布関数は未知である。そのため、本発明は、歴史負荷データに基づいて入力変数の多段キュムラントを求める方法を用いる。当該方法の説明は、以下の通りである。
【0036】
ステップC、決定性トレンドおよび閉ループ電流の計算を行う。
【0037】
ステップCでは、閉ループネットワークのトポロジー情報と動作データを結び付けて、基準動作点において決定性トレンドおよび閉ループ電流の計算を行い、閉ループネットワークシステムの状態変数基準値、閉ループ電流基準値および係数行列を得る。
【0044】
ステップD、閉ループ電流の多段キュムラントを計算する。
【0045】
ステップDでは、ステップBによる入力変数の多段キュムラントおよびステップCによる変換行列に基づいて閉ループ電流の多段キュムラントを計算する。
【0047】
ステップE、閉ループ電流の確率分布を求める。
【0048】
ステップEでは、コーニッシュフィッシャーCornish−Fisher級数展開方法を用いて、閉ループ電流の多段キュムラントに基づいて閉ループ電流の累積確率分布を求める。
【0050】
式(11)は、閉ループ電流の多段キュムラントに基づいてその累積確率分布関数を求めてもよい。
【0051】
ステップF、複数の閉ループ電流の限界確率を評価する。
【0052】
ステップFでは、安全的な閉ループ条件に基づき、それぞれ給電線最大許容容量および電流保護整定値を限定値として、各閉ループ電流の限界確率を計算し、閉ループ操作の安全性を評価する。
【0054】
最後に、以上の4種類の限界確率の大きさに基づいて中圧電力配電回路網閉ループ操作の安全性を定量的に評価することができる。限界確率がいずれも5%より小さい場合、閉ループ操作の安全性が高いと認められてもよく、そうでない場合、この閉ループ操作の安全性が保証されず、相応する動作形態の調整を行った後に閉ループを行うことを推奨する。
【0055】
以上のように、本発明は、中圧電力配電回路網閉ループ操作の安全性を評価する方法を提供し、閉ループ定常電流と過渡衝撃電流の限界確率を計算して閉ループ操作の安全性を定量的に評価することにより、実際の負荷点におけるリアルタイム負荷データを取得できないという問題を解決する。当該方法が実際の生産に適用される場合、閉ループ前に、閉ループ操作の安全性に対して素早く有効的な評価を行い、作業員による閉ループ対策の制定に対してサポートを提供することができる。
【0056】
本発明は、閉ループ給電線の負荷点における負荷をランダム変数と見なし、確率トレンド理論に基づいて閉ループ定常電流と過渡衝撃電流の限界確率を求めて閉ループ操作の安全性を評価し、中圧電力配電回路網閉ループ操作の安全性を定量的に評価することができ、実際の給電線の各負荷点におけるリアルタイム負荷データを取得できないという問題を解決し、さらに、従来の数値方法においてキュムラントを求める時に入力変数の確率分布関数が知られる必要がある問題を解決することができる。
【0057】
関連技術と比べ、本発明の有益な効果は、以下の通りである。
【0058】
(1)本発明は、閉ループ操作による閉ループ定常電流と過渡衝撃電流の計算によって、中圧電力配電回路網閉ループ操作の安全性を定量的に評価し、且つ評価結果が理論的な依拠を有し、作業員による閉ループ操作に対して参照を提供することができる。
【0059】
(2)本発明は、閉ループ給電線の負荷点における負荷をランダム変数として、確率トレンド理論に基づいて閉ループ定常電流と過渡衝撃電流の確率分布特性を求めることで、負荷点におけるリアルタイム負荷データを取得できないという問題を解決することができる。
【0060】
(3)本発明は、歴史負荷データに対する分析によって入力変数の多段キュムラントを求めることで、従来の数値方法においてキュムラントを求める時に入力変数の確率分布関数を知る必要があるという問題を解決することができる。
【0061】
本発明は、2018年6月5日にて中国専利局へ提出された出願番号201810568104.0の中国専利出願について優先権を主張し、当該出願のすべての内容を本発明に援用する。
【国際調査報告】