特表2020-527684(P2020-527684A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 2020527684-自動調心型クラッチリリース軸受 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-527684(P2020-527684A)
(43)【公表日】2020年9月10日
(54)【発明の名称】自動調心型クラッチリリース軸受
(51)【国際特許分類】
   F16D 23/14 20060101AFI20200814BHJP
   F16C 23/08 20060101ALI20200814BHJP
【FI】
   F16D23/14 A
   F16C23/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2020-503059(P2020-503059)
(86)(22)【出願日】2018年7月18日
(85)【翻訳文提出日】2020年3月19日
(86)【国際出願番号】IB2018055314
(87)【国際公開番号】WO2019021116
(87)【国際公開日】20190131
(31)【優先権主張番号】201721026125
(32)【優先日】2017年7月22日
(33)【優先権主張国】IN
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】519457904
【氏名又は名称】テックススピン・ベアリングス・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100163522
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 晋平
(72)【発明者】
【氏名】ヴィシャル・マクワナ
【テーマコード(参考)】
3J012
3J056
【Fターム(参考)】
3J012AB01
3J012BB03
3J012DB02
3J012EB16
3J012FB10
3J056AA33
3J056AA37
3J056AA58
3J056BA04
3J056BE02
3J056BE27
3J056BE30
3J056CA04
3J056CC20
3J056GA02
3J056GA12
(57)【要約】
回転リング(114)および静止リング(112)を備えた自動調心型クラッチリリース軸受が開示される。静止リング(112)は球面カップ(13)内に配置され、球面カップ(13)は内側球面(131)を組み込み、静止リング(112)は、球面(131)を通じて球面カップ(13)と係合する。球面(131)は、軸受の回転軸線(111)と、クラッチのフィンガと係合する回転リング(114)の面によって規定される平面と、の交点によって規定される中心点と一致する中心を有する半径を有する。さらに、外径に球状端面(141)を組み込んだ球面リング(14)は、静止リング(112)の内径内に配置され、静止リングの内径の球状端面(113)と係合する。2つの球状端面は、中心点(10)と一致する中心を有する同じ半径を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラッチのクラッチリリース軸受用途の自動調心型軸受であって、
前記クラッチのフィンガと係合して、フライホイールからクラッチプレートを切り離すために軸方向の力を伝えるための面を有する回転リングと、
複数の玉を通じて前記回転リングと係合した静止リングであって、前記回転リングが前記静止リングに対して前記軸受の回転軸線の周りを摩擦なしに回転するために、前記複数の玉が前記回転リングと前記静止リングとの間に配置された、静止リングと、
球面カップであって、前記球面カップの内部空洞内に前記静止リングを収容するような大きさの球面カップと、
を備え、
前記球面カップが内側球面を組み込み、これにより前記静止リングが、前記球面カップの前記球面を通じて前記球面カップと係合し、
前記球面カップの前記球面が、前記軸受の前記回転軸線と、前記クラッチのフィンガと係合する前記回転リングの前記面によって規定される平面と、の交点によって規定された中心点と一致した中心を有する半径を有し、
前記静止リングが前記球面カップと係合することによって、前記静止リングが、前記回転リング、および前記回転リングと前記静止リングとの間に配置された前記複数の玉とともに、前記中心点を中心として傾いて、前記クラッチの前記フィンガと前記回転リングとの間の任意の角度ミスアライメントに順応することができる、自動調心型軸受。
【請求項2】
前記静止リングが、前記球面カップの前記球面と係合している領域に、前記球面カップの前記球面の半径以下の半径を組み込む、請求項1に記載の自動調心型軸受。
【請求項3】
前記自動調心型軸受は、前記静止リングの内径内に配置された球面リングをさらに備え、前記球面リングが、その外径に球状端面を組み込み、前記静止リングが、その内径に球状端面を組み込み、
前記静止リングおよび前記球面リングの前記2つの球状端面が、前記中心点と一致したそれらの中心を有する同じ半径を有する、請求項1に記載の自動調心型軸受。
【請求項4】
前記球面リングが、スプリングによって前記静止リングの球状端面に対して予荷重をかけられている、請求項3に記載の自動調心型軸受。
【請求項5】
前記スプリングが、前記軸受が取り付けられたスリーブのストッパと前記球面リングとの間に配置された、請求項4に記載の自動調心型軸受。
【請求項6】
それぞれの前記球状端面を通じた前記球面リングの前記静止リングとの係合が、前記スプリングによる前記球面リングの予荷重と結合して、軸方向変位に逆らって前記軸受を前記スリーブとともに保持するように、前記静止リングと前記球面リングの2つの前記球状端面が構成された、請求項5に記載の自動調心型軸受。
【請求項7】
前記球面リングおよび前記球面カップの内径が前記スリーブの外径よりも大きい結果、前記球面リングおよび前記球面カップが半径方向内向きに移動する隙間ができ、それによって、前記軸受が、前記クラッチを基準として自動心合わせをすることができる、請求項5に記載の自動調心型軸受。
【請求項8】
前記球面リングが熱処理されている、請求項1に記載の自動調心型軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動調心型クラッチリリース軸受に関する。より詳細には、本発明は、前記クラッチリリース軸受が単一の機構内に自動調心機能と自動心合わせ機能の両方を有する、自動調心型クラッチリリース軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
大多数の自動車は、様々な駆動条件に対して車両が速度とトルクとを制御することできるように、マニュアルまたは自動マニュアルトランスミッションシステムを備えている。速度とトルクとの前記制御は、トランスミッションのギヤを変更することによって達成される。このギヤの変更は、車両の速度とトルクを変えるが、エンジン出力は変化しないままである。エンジンと車両との間の速度とトルクのこの変化を補償するために、クラッチを使用してトランスミッションシステムのギヤの滑らかな変更を容易にしている。車両のタイプに応じて、前記クラッチは以下のタイプのものがあり得る。
・摩擦クラッチ
・遠心クラッチ
・流体クラッチ
・噛み合いクラッチ
【0003】
原付またはミニバイクにたいてい使用されている遠心クラッチ、自動変速機を備えた車両に使用されている流体クラッチ、および噛み合いクラッチは、寿命が短く摩耗問題があるため、陳腐化した非常に古いタイプのクラッチである。
【0004】
乗用車および荷物運搬車を考えると、使用されているクラッチのタイプは摩擦クラッチである。摩擦クラッチには、i)プッシュ式、ii)プル式の2つのタイプがあった。これらの2つのタイプのクラッチの間の主な違いは、クラッチリリース力の方向である。プッシュ式とプル式の選択は、クラッチの設計およびそのパッケージの寸法による。本発明は摩擦クラッチのプッシュ式に関する。典型的なプッシュ式の摩擦クラッチ組立体の例示的な線図が図1に示されている。
【0005】
図1に示すように、典型的なプッシュ式の摩擦クラッチ組立体100は、フライホイール60、エンジン出力軸70、クラッチ40、クラッチ軸受20、フォーク30、および被駆動軸50から成る。前記フライホイール60はエンジン出力軸70に強固に接続されて、エンジンのエネルギーを慣性の形で蓄える。前記クラッチ40は、フライホイール60に同心状に取り付けられて、滑らかにギヤシフトするために出力軸70と被駆動軸50との嵌合および切り離しを行う。前記被駆動軸50はクラッチ40と同心状に配置される。前記クラッチ軸受20は、クラッチ40とフォーク30との間に配置され、被駆動軸50に同心状かつ摺動可能に取り付けられる。
【0006】
前記クラッチ40は、予荷重をかけられたダイアフラムスプリング41またはスプリング荷重をかけられたレバー(図示略)、クラッチカバー42、クラッチプレート43、およびプレッシャプレート44から成る。前記予荷重をかけられたスプリング41は、ピボット点45を通じてクラッチカバー42と接続され、点46を通じて前記プレッシャプレート44を保持する。前記プレッシャプレート44はクラッチプレート43と摩擦接触し、クラッチプレート43はさらにフライホイール60と摩擦接触している。前記クラッチプレート43は、スプライン51によって被駆動軸50と接続される。前記スプライン51は、クラッチプレート43と被駆動軸50との間の軸方向の相対的な動きを可能にする。
【0007】
図1は、エンジン出力軸70と被駆動軸50とがつながった状態を示し、この状態では、予荷重をかけられたダイアフラムスプリング41は、プレッシャプレート44をクラッチプレート43に押し付けることによって、クラッチプレート43に力をかける。ギヤシフトのとき、出力軸70から被駆動軸50を切り離す必要があり、それは、クラッチプレート43から圧力を解放することによってなされる。クラッチプレート43から前記圧力を解放するために、ダイアフラムスプリング41にいくらか軸方向の力をかけなければならない。クラッチプレート43を解放するために必要な軸方向の力はクラッチリリース力として知られている。ダイアフラムスプリングに力をかけると、図1に示すように、ピボット点45からダイアフラムスプリングをゆがめて、点46を通じてプレッシャプレート44を引っ張ってクラッチプレート43を解放し、それによってエンジン出力軸70から被駆動軸50を切り離す。
【0008】
エンジン出力軸70から被駆動軸50を切り離す前記過程は、クラッチ軸受20およびフォーク30または液圧駆動の作動機構(図示略)によって達成される。前記フォーク30は、ペダルを動かすことによって動作するスレイブシリンダ(図示略)または機械的なリンク装置によって作動させられて、クラッチ軸受20にクラッチリリース力をかけ、それはさらに、フライホイール60からクラッチプレート43を切り離すために、クラッチフィンガ41に軸方向の力を伝えて、それによって、エンジン出力軸70から被駆動軸50を切り離し、滑らかなギヤシフトが可能になる。
【0009】
前記典型的なクラッチ40には、その構成部品の製作公差の結果として、幾何学的不正確さがある。製作公差のため、クラッチ回転軸線47と被駆動軸軸線52との間に心ずれが生じる。この心ずれを補償するために、従来のクラッチ軸受20には自動心合わせ機能が設けられている。この自動心合わせ機能を与えるために、図2に示すように、軸受の静止リング212はスプリング23によって予荷重をかけられ、静止リング212とクラッチ軸受20のスリーブ22との間に隙間cが設けられている。この隙間cがあるので、軸受21は、半径方向の力がかかると移動しようとしてクラッチ軸線47と心が合わせされる。
【0010】
さらに、クラッチ組立体100にはあと2つの幾何学的な不正確さがある。
i.幾何学的な不正確さの1つのクラッチフィンガ41のランアウトrが図1および図2に示されている。この不正確さは、ダイアフラムスプリング41のクラッチカバー42との不正確な固定、および接続されたすべての構成部品の累積公差によって引き起こされた。
ii.また、クラッチ40とフライホイール60との取付けの不正確さのため、図1および図2に示すように、クラッチ回転軸線47と被駆動軸軸線52との間にミスアライメントθが生じる。
【0011】
上記のように、クラッチ軸受20には、全部で3つの幾何学的不正確さがある。
1.クラッチの回転軸線47と被駆動軸の回転軸線52との心ずれ
2.スプリング41のランアウトr
3.クラッチの回転軸線と被駆動軸の回転軸線とのミスアライメントθ
従来のクラッチ軸受20では、これらの内、心ずれの不正確さは自動心合わせ機構によって補償される。残りの2つの不正確さのため、クラッチ軸受20は、ダイアフラムスプリング41のアンバランス力を受ける。前記アンバランス力はクラッチ軸受に振動を生じさせ、それは、フォークおよびその作動機構によってクラッチペダルに伝えられる。前記振動は、クラッチ操作時に運転者の快適性を減じる。さらに、前記アンバランス力は、騒音、回転リングの摩耗、および回転要素の摩耗を生じさせ、その結果、温度が過剰に上昇し、クラッチ軸受20が早期に損傷する。
【0012】
先行技術およびその欠点
前記ミスアライメントθおよびランアウトrを補償するために、以下のように多くの試みがなされた。
・特許文献1には、リングおよび支持構造体に球面を設けることによって、単一の機構内に自動心合わせ機能と自動位置合わせ機能の両方を有するクラッチリリース軸受を製造する方法が記載されている。しかしながら、この装置には、特別の材料および複雑な加工を含む、修正された軸受リングが必要であり、それによって、クラッチリリース軸受20のパッケージの大きさd、コスト、および重量が増大する。
・特許文献2には、球面リングを設けることによって自動位置合わせ機能を有するクラッチリリース軸受を製造する方法が記載されている。しかしながら、この装置はガタのある球面リングから成り、それは、騒音、振動、および軸受リングの摩耗をもたらす。
【0013】
したがって、利用できる先行技術は、ガタのある部品、特別の材料、および特別の加工という不利な点のあるクラッチリリース軸受について教示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】独国特許出願公開第102009055659号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102007053180号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の主な目的は、クラッチ組立体におけるダイアフラムスプリングのランアウトおよび被駆動軸のミスアライメントの不正確さを自動位置合わせ機能によって補償する自動調心型クラッチリリース軸受を提供することである。
【0016】
本発明の別の目的は、単一の機構内に自動心合わせ機能と自動位置合わせ機能の両方を有する自動調心型クラッチリリース軸受を提供することである。
【0017】
本発明の別の目的は、構成部品の摩耗がないので、寿命がより長く、温度上昇がより小さい、自動調心型クラッチリリース軸受を提供することである。
【0018】
本発明の別の目的は、従来のクラッチ軸受とパッケージの大きさが同じ自動調心型クラッチリリース軸受を提供することである。
【0019】
本発明の別の目的は、スリーブを傾けず、その結果、被駆動軸でのクラッチ軸受の不快な滑りが除去され、それによって、クラッチペダルの労力と軸受スリーブの摩耗を減らす、自動調心型クラッチリリース軸受を提供することである。
【0020】
本発明の別の目的は、ダイアフラムスプリングのアンバランス力によって引き起こされる振動を吸収し、クラッチ操作時に運転者の快適性を増す、自動調心型クラッチリリース軸受を提供することである。
【0021】
本発明の別の目的は、ガタのある部品が全くなく、それによって、軸受の摩耗および振動がない、自動調心型クラッチリリース軸受を提供することである。
【0022】
本発明のさらに別の目的は、軸受リングに大きな修正を必要とせず、それによって、特別の材料および複雑な加工という要件を減らす、自動調心型クラッチリリース軸受を提供することである。
【0023】
本発明のさらに別の目的は、軸受リングにいかなる大きな修正もせずに自動位置合わせ機能と自動心合わせ機能を有し、それによって、摩耗および軸受の早期の損傷を除去する、自動調心型クラッチリリース軸受を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本開示の態様は、クラッチのクラッチリリース軸受用途の自動調心型軸受に関し、本自動調心型軸受は、その位置を調節して、クラッチフィンガ/ダイアフラムスプリングのランアウト、およびクラッチ組立体の被駆動軸のミスアライメントの不正確さを補償する。
【0025】
一態様では、開示する自動調心型軸受は、回転リング、静止リング、および球状カップを備える。
【0026】
一態様では、回転リングは、クラッチのフィンガと係合して、フライホイールからクラッチプレートを切り離すために軸方向の力を伝える面を有する。
【0027】
一態様では、静止リングは、複数の玉を通じて回転リングと係合しており、回転リングが静止リングに対して軸受の回転軸線の周りを摩擦なしに回転するために、複数の玉は回転リングと静止リングとの間に配置される。
【0028】
一態様では、球面カップは、球面カップの内部空洞内に静止リングを収容するような大きさである。
【0029】
一態様では、球面カップは内側球面を組み込み、静止リングは、球面カップの球面を通じて球面カップと係合する。
【0030】
一態様では、球面カップの球面は、軸受の回転軸線と、クラッチのフィンガと係合する回転リングの面によって規定される平面との交点によって規定される中心点と一致する中心を有する半径を有する。
【0031】
一態様では、静止リングが球面カップと係合することによって、静止リングは、回転リング、ならびに回転リングと静止リングとの間に配置された複数の玉とともに中心点を中心として傾いて、クラッチのフィンガと回転リングとの間の任意の角度ミスアライメントに順応することができる。
【0032】
一態様では、静止リングは、球面カップの球面と係合している領域に、球面カップの球面の半径以下の半径を組み込む。
【0033】
一態様では、本自動調心型軸受は、静止リングの内径内に配置された球面リングをさらに備える。球面リングは、その外径に球状端面を組み込み、静止リングは、その内径に球状端面を組み込む。静止リングと球面リングの2つの球状端面は、中心点と一致するそれらの中心を有する同じ半径を有する。
【0034】
一態様では、球面リングは、スプリングによって静止リングの球状端面に対して予荷重をかけられている。
【0035】
一態様では、スプリングは、軸受が取り付けられたスリーブのストッパと球面リングとの間に配置される。
【0036】
一態様では、それぞれの球状端面を通じた球面リングの静止リングとの係合が、スプリングによる球面リングの予荷重と結合して、軸方向変位のないように軸受をスリーブとともに保持するように、静止リングと球面リングの2つの球状端面は構成される。
【0037】
一態様では、球面リングと球面カップの内径がスリーブの外径よりも大きい結果、球面リングと球面カップは半径方向内向きに移動する隙間ができ、それによって、軸受は、クラッチを基準として自動心合わせをすることができる。
【0038】
一態様では、球面リングは熱処理されている。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】従来のクラッチリリース軸受を有するクラッチ組立体の断面図である。
図2】ランアウトおよびミスアライメントの不正確さを有する従来のクラッチリリース軸受の拡大断面図である。
図3】ランアウトおよびミスアライメントの不正確さを補償する本提案の自動調心型クラッチリリース軸受の断面図である。
図4】自動位置合わせ機能を示す本提案の自動調心型クラッチリリース軸受の拡大断面図である。
図5】本開示にしたがって従来のクラッチリリース軸受を自動調心型クラッチリリース軸受に変換するための仕組みを示す、本提案の自動調心型クラッチリリース軸受の第2の実施形態の断面図である。
図6】本開示にしたがって従来の液圧駆動の作動機構のクラッチ軸受を自動調心型クラッチ軸受に変換するための仕組みを示す、本提案の自動調心型クラッチリリース軸受の第3の実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明は、単一の機構内に自動心合わせ機能と自動位置合わせ機能の両方をさらに提供する、自動調心型クラッチリリース軸受1を提供する。
【0041】
本発明の主な実施形態を示す図3図4、および図5を参照すると、前記自動調心型クラッチリリース軸受1は次のものを主に備える。
・軸受11
・スリーブ12
・球面カップ13
・球面リング14
・スプリング15
【0042】
前記軸受11は回転リング114および静止リング112を備え、これらの軌道の間には、複数の玉115が収容され、これら114および112の間を転がることができる。回転リング114および静止リング112は、軸受鋼から作られ、硬化されることが好ましい。
【0043】
前記スリーブ12は、作動フォーク30または液圧作動機構のピストン(図示略)と軸受11との間に配置されて、フォーク30または液圧作動機構のピストンのための座面を提供する。
【0044】
前記静止リング112は、球面が全くない先行技術とは異なり、その内径に球状端面113(単に、面とも称し、以降、これらの2つの用語は交換可能に使用される)を組み入れる。前記球面リング14は熱処理されている。さらに、前記球面リング14は、その外径に球状端面141(単に、面とも称し、以降、これらの2つの用語は交換可能に使用される)を組み込み、この球面141は、静止リング112の球状端面113と合う。球面113および球面141はともに同じ球面半径R2を有して、ミスアライメントによるアンバランス力が作用すると軸受11が傾くことを可能にする。前記球面半径の中心点10は、図4に示すように、軸受11の回転軸線111と、クラッチのフィンガと係合する回転リングの面によって規定される平面と、の交点によって規定される。前記スプリング15は、スリーブ12のストッパ124と球面リング14との間に配置され、予荷重をかけられた状態にあり、それによって、球面リング14に力をかける。図4および図5に示すように、球面リング13とブッシュ121との間には隙間cがあって、作動中に自動的に心合わせする手段を与えている。
【0045】
前記軸受11は球面カップ13内に配置され、球面カップ13は前記スリーブ12上に配置される。球面カップ13は、半径R1を有する内側球面131を組み込む。前記球面カップ13は熱処理されている。この球面131はまた、球面リング14の球面141と同じ中心点10を有する。
【0046】
図4に示すように、静止リング112は、球面カップ13の球面131と係合している領域に、球面カップ13の球面131の半径より小さい半径を組み込む。これは、静止リング112と球面カップ13との間の接触面を最小にすることによって、これら2つの間を滑らかに係合することを確実にする。
【0047】
3つの構成部品、
i)球面リング14
ii)静止リング112
iii)球面カップ13
があり、これらは、スプリング15によって予荷重をかけてスリーブ12に押し付けられ、それによって、軸受1は、スリーブ12によって球面カップ13とともに保持され、さらに、図4に示すように、軸受11が移動することを可能にすることによって自動心合わせ機能を与える。
【0048】
さらに、これら3つの構成部品は、同じ中心点10を有する球面113、131、および141を有し、それによって、軸受11は、中心点10を中心として角度αだけ傾くことができる。図3に示すように、この機構は、ダイアフラムスプリング41のランアウトrおよび軸50のミスアライメントθを補償し、図3に示すように、アンバランス力が作用すると、クラッチ40の回転軸線47とクラッチ軸受1の回転軸線111とが合うようにし、さらに、力を軸受11に均等に分配し、それによって、リングの摩耗、振動、騒音、およびクラッチリリース軸受1の早期の損傷を減らす。
【0049】
図3に示すように、前記軸受11は、角度βだけ傾いており、これは、アンバランス力がかかったときのランアウトrとミスアライメントθとの累積のである。この傾きによって、クラッチ回転軸線47と軸受回転軸線111とが合わされ、それによって、軸受11はダイアフラムスプリング41と位置合わせされて、軸受11へのリリース力が均等に分配される。
【0050】
図4に示すように、前記軸受11は、予荷重をかけられたスプリング15、軸受11、および球面カップ13によって構成された自動位置合わせ機能の結果として角度αだけ傾くことができる。前記軸受11は、ランアウトrおよびミスアライメントθの幾何学的不正確さの結果として、ダイアフラムスプリングからのアンバランス力によって傾けられる。軸受11の傾きは、軸受リングにリリース力を均等に分配し、それは、摩耗および温度の上昇を減少させる助けとなる。
【0051】
さらに、前記軸受11は、図4に示すように、隙間cの範囲までスリーブ12上を半径方向に移動することができる。軸受11は、スプリング15によって予荷重をかけられているので、このように移動するためには軸受リング114へのある程度の半径方向の力が必要である。軸受11を移動させるために必要な軸受リング114への半径方向の力の量は、移動力と呼ばれる。前記移動力は、心ずれの幾何学的不正確さの結果として、ダイアフラムスプリング41から生じる。
【0052】
本発明の他の実施形態
i)本発明の第2の実施形態
本発明の第2の実施形態は、従来の軸受の改良品11Aとして自動調心型クラッチリリース軸受1Aを提供する。
【0053】
図5に示すように、前記改良品はカバー16から成る。前記軸受11Aはカバー16に圧入されている。前記カバー16は、外側球面161および内側球面162から成る。前記球面161は、球面カップ13の半径と同じ半径R1を有する。さらに、前記球面162は、球面リング14の半径と同じ半径R2を有する。前記カバー16は、球面カップ13と球面リング14との間でスプリング15によって予荷重をかけられている。前記球面の中心点は点10上の同じ位置にある。この実施形態では、カバー16および軸受11Aは点10を中心として傾いて、ランアウトrおよびミスアライメントθを補償することができる。したがって、本発明によって、従来のクラッチ軸受を本自動調心型クラッチ軸受1に変換することができる。
【0054】
ii)本発明の第3の実施形態
本発明の第3の実施形態は、従来の液圧作動機構の軸受の改良品11Bとして自動調心型クラッチリリース軸受1Bを提供する。
【0055】
図6に示すように、軸受11Bは、球面113を有する静止リング112を備える。この実施形態のカバー17は、図6に示すように、球面171から成る。前記カバー17は、スプリング15と球面リング14との間で予荷重がかけられている。前記球面171、113、116、および141の中心点は点10上の同じ位置にある。この実施形態では、軸受11Bは点10を中心として傾いて、ランアウトrおよびミスアライメントθの不正確さを補償することができる。したがって、本発明によって、従来のクラッチ軸受を本自動調心型クラッチ軸受に変換することができる。
【0056】
特定の実施形態についての前述の説明は、本書では、実施形態の一般的特性を、他者が、一般概念から逸脱することなく、様々な用途に対して現状の知識を適用することによってこのような特定の実施形態を容易に修正する、および/または適応させることができるほど完全に示すものであり、したがって、このような適応および修正は、開示する実施形態の均等物の意図および範囲内にあるものとして理解されるべきであり、そのように意図される。本書で使用する表現および用語は、説明のためであって、限定するものではないことを理解されたい。したがって、本書の実施形態は好ましい実施形態の観点で説明されたが、当業者であれば、本書の実施形態は、本書で説明したような実施形態の趣旨および範囲内で修正して実施することができることを認識するであろう。
【0057】
発明の作用
1.自動車の始動では、エンジンの出力軸70が回転し始め、フライホイール60は出力軸70に強固に接続されているので、それはさらにフライホイール60を回転させる。クラッチ40もまた、クラッチカバー42によってフライホイールと強固かつ同心状に接続されているので、フライホイールと同じ速度で回転する。被駆動軸50は、スプライン51によってクラッチプレート43と接続されており、それは、被駆動軸も回転することを意味する。さらに、クラッチ軸受1の回転リング114は、いくらかの予荷重でクラッチ40のダイアフラムスプリング41と接触している。ここで、回転リング114と静止リング112との間を転がる玉115があるので、静止リング112が静止したまま回転リング114は回転する。スリーブ12が、予荷重をかけられたスプリング15によって静止リング112と接続されているので、前記静止リング112は、クラッチ軸受1のスリーブ12を静止したままにする。フォーク30はスリーブ12上に配置され、スレイブシリンダ(図示略)と接続される。したがって、ここでは、スリーブ12および静止リング112は静止している。
【0058】
2.車両の始動時、ギヤが出力軸と接続されず車両の速度がゼロとなるように、ギヤはニュートラル状態にある。車両の速度をいくらか出すためには、ギヤの状態をニュートラルから変える必要がある。被駆動軸50がギヤに接続される。
【0059】
3.前記摩擦クラッチ組立体100は、心ずれ、ランアウトr、およびミスアライメントθの不正確さを有する。この不正確さのため、クラッチ軸受1の前記回転リング114は、ダイアフラムスプリング41からアンバランス力を受ける。
【0060】
4.スレイブシリンダまたは機械的なリンク装置(図示略)によって作動させられるフォーク30によってクラッチ軸受1にリリース力をかけると、前記ダイアフラムスプリング41はゆがんで、フライホイール60からクラッチプレート43を切り離す。
【0061】
5.車両の始動状態では、クラッチ40およびクラッチ軸受1はエンジンの速度で回転している。したがって、心ずれの不正確さがあるときには、クラッチ40は回転リング114に半径方向の荷重をかける。回転リング114を通じて、力は玉15を介して静止リング112に伝わる。静止リング112が必要な移動力を得ると、静止リング112は、スプリング15によって予荷重をかけられているので、スリーブ12上を摩擦摺動する。軸受11がスリーブ12上を滑るので、軸受とクラッチの回転軸線は同じになる。
【0062】
6.車両をいくらかの速度で走らせるために、ドライバは、クラッチペダルにいくらか力をかけ、それは、スレイブシリンダ(図示略)によってクラッチリリース力に変換される。前記スレイブシリンダは、クラッチリリース軸受1に力をかけるフォーク30を作動させる。クラッチ軸受1への力の量が増すと、軸受11は、ランアウトrおよびミスアライメントθの幾何学的不正確さの結果、より大きなアンバランス力を受ける。接触面131、113、および141は球面であるので、前記アンバランス力によって、軸受11は中心点10を中心として傾く。
【0063】
7.傾いた後、リリース力は軸受リングに均等に分布し、それは騒音、振動、および摩耗を減らす。さらに、軸受リングの摩耗がないので、温度上昇も小さい。
【0064】
【表1】
【0065】
この表および記述から、静止リング112、球面カップ13、および球面リング14に球面を与えることによって、前記軸受11は中心点10によって傾くことができることがわかる。前記傾きによって、ダイアフラムスプリング41のアンバランス力が均等に分配され、それによって、軸受11の寿命が延び、軸受リングの摩耗が減る。さらに、軸受リングの摩耗がないので、温度上昇は従来の軸受20よりも小さい。さらに、自動位置合わせ機能のため、本軸受1は、ダイアフラムスプリング41の振動を吸収し、それは、ドライバのクラッチ操作の快適性を改善する。さらに、先行技術と比較すると、本発明は、何ら特別な材料または複雑な加工を含まず、その代わり、従来の軸受20に非常にわずかな修正をすることだけしか必要がない。さらに、先行技術がより大きな軸受のパッケージを有するのとは異なり、本発明は、従来の軸受20と同じパッケージの大きさdを有する。したがって、本発明は、クラッチ軸受に自動位置合わせ機能と自動心合わせ機能を与える最良の方法を述べており、それは非常に信頼性が高く、そのため、寿命およびドライバのクラッチ操作の快適性が増す。
【0066】
本発明の利点
本発明は先行技術を超える様々な利点を与える。ここで、前記利点を下記に列挙する。
【0067】
i.本発明は、単一の機構内に自動心合わせ機能と自動位置合わせ機能の両方の機能が設けられた、自動調心型クラッチリリース軸受を提供する。
【0068】
ii.本発明は、ランアウトrおよびミスアライメントθの不正確さを補償し、これは、軸受がアンバランス力を受けないことを意味する。これが、早期の損傷の危険性がない理由である。
【0069】
iii.本発明は、被駆動軸50でのクラッチ軸受の不快な滑りを減らし、それによって、ペダルの労力を減らす。
【0070】
iv.さらに、本発明は、ダイアフラムスプリングからのアンバランス力を吸収し、それは、ドライバのクラッチ操作の快適性を増大させる。
【0071】
v.自動位置合わせ機能のため、軸受寿命は25〜30%延び、温度上昇は10〜15%減る。
【0072】
vi.本発明は、ガタのある部品を全く有さない自動調心型クラッチリリース軸受を提供する。
【0073】
vii.軸受の騒音と振動を減じる。
【符号の説明】
【0074】
1 本自動調心型クラッチリリース軸受
1A 自動調心型クラッチリリース軸受の第2の実施形態
1B 自動調心型クラッチリリース軸受の第3の実施形態
100 クラッチ組立体
10 軸受の中心点
11 軸受
11A 第2の実施形態の軸受
11B 第3の実施形態の軸受
111 軸受の回転軸線
112 軸受の静止リング
113 静止リングの球面
114 軸受の回転リング
115 軸受の転がり要素
116 静止リングの内側球面
12 スリーブ
12A 第2の実施形態のスリーブ
12B 第3の実施形態のスリーブ
121 スリーブのブッシュ
122 ブラケットサポート
123 ブラケット
124 スプリングストッパ
13 球面カップ
131 カップの球面
14 球面リング
141 リングの球面
15 スプリング
16 カバー
161 カバーの外側球面
162 カバーの内側球面
17 第3の実施形態のカバー
171 カバーの球面
20 従来のクラッチ軸受
21 従来の軸受
211 従来の軸受の回転軸線
212 従来の軸受の静止リング
22 従来のスリーブ
23 従来のクラッチ軸受のスプリング
30 フォーク
40 クラッチ
41 ダイアフラムスプリング
42 クラッチカバー
43 クラッチプレート
44 プレッシャプレート
45 カバーのピボット点
46 プレッシャプレートのピボット点
47 クラッチの回転軸線
50 被駆動軸
51 被駆動軸のスプライン
52 被駆動軸の回転軸線
60 フライホイール
70 エンジン出力軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】