(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
【解決手段】本発明は、分子がGタンパク質共役受容体(GPCR)の活性化を変化させる能力を決定する方法に関し、上記方法は、a)・1種以上のGPCRと1種以上のGタンパク質とを担持する膜標本、・GDP源またはGTP源、・RETパートナー対の第一のメンバーで標識されたGタンパク質αサブユニット(Gαタンパク質)の第一のリガンド、および上記RETパートナー対の第二のメンバーで標識されたGαタンパク質の第二のリガンドであって、それぞれ個別にまたは組み合わせて空のGαタンパク質または完全なGαタンパク質に特異的に結合することができる第一および第二のリガンドを第一の容器に導入する工程と;b)第一の容器中で放出されたRETシグナルを測定する工程と;c)(i)工程a)と同じ試薬および試験分子を第二の容器に、あるいは(ii)試験分子を第一の容器に導入する工程と;d)工程c)で得られた第二の容器中または第一の容器中で放出されたRETシグナルを測定する工程と;e)工程b)およびd)で得られたシグナルを比較する工程とを含む。
上記Gαタンパク質は、Gαi1、Gαi2、Gαi3、Gαo1、Gαo2、Gαq、Gα12、Gα13、Gαs、Gαz、Gαt1、Gαt2、Gα11、Gα14、Gα15、Gα16、およびGαgusタンパク質から、好ましくはGαi1、Gαi2、およびGαi3から選択される、請求項1または2のいずれか一項に記載の方法。
第一のリガンドは配列Ser−Ser−Arg−Gly−Tyr−Tyr−His−Gly−Ile−Trp−Val−Gly−Glu−Glu−Gly−Arg−Leu−Ser−Arg(配列番号1)のペプチド(ペプチドKB1753)であり、第二のリガンドは抗Gαi抗体である、請求項5に記載の方法。
第一のリガンドは、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、または配列番号9から選択される配列のsdAbであり、第二のリガンドは抗Gαi抗体である、請求項6に記載の方法。
上記GTP源は非加水分解性もしくは低加水分解性GTPであり、好ましくはGTPガンマS(GTPγS)、GppNHp、およびGppCpから選択される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
第一のリガンドおよび第二のリガンドはそれぞれ、RETパートナー対のメンバーで標識され、上記対のメンバーの一方は発光供与体化合物または蛍光供与体化合物であり、上記対の他方のメンバーは蛍光受容体化合物または非蛍光受容体化合物(クエンチャー)である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
上記蛍光供与体化合物は、ユウロピウムクリプテート、ユウロピウムキレート、テルビウムキレート、テルビウムクリプテート、ルテニウムキレート、量子ドット、アロフィコシアニン、ローダミン、シアニン、スクアライン、クマリン、プロフラビン、アクリジン、フルオレセイン、ボロンジピロメテン誘導体、およびニトロベンゾオキサジアゾールから選択されるFRETパートナーである、請求項10に記載の方法。
上記蛍光受容体化合物は、アロフィコシアニン、ローダミン、シアニン、スクアライン、クマリン、プロフラビン、アクリジン、フルオレセイン、ボロンジピロメテン誘導体、ニトロベンゾオキサジアゾール、量子ドット、GFP、GFP10、GFP2、およびeGFPから選択されるGFP変異体、YFP、eYFP、YFP topaz、YFP citrine、YFP venus、およびYPetから選択されるYFP変異体、mOrange、DsRedから選択されるFRETパートナーである、請求項10または11のいずれか一項に記載の方法。
上記発光供与体化合物は、ルシフェラーゼ(luc)、ウミシイタケルシフェラーゼ(Rluc)、ウミシイタケルシフェラーゼ変異体(Rluc8)、およびホタルルシフェラーゼから選択されるBRETパートナーである、請求項10に記載の方法。
上記蛍光受容体化合物は、アロフィコシアニン、ローダミン、シアニン、スクアライン、クマリン、プロフラビン、アクリジン、フルオレセイン、ボロンジピロメテン誘導体、ニトロベンゾオキサジアゾール、量子ドット、GFP、GFP10、GFP2、およびeGFPから選択されるGFP変異体、YFP、eYFP、YFP topaz、YFP citrine、YFP venus、およびYPetから選択されるYFP変異体、mOrange、DsRedから選択されるBRETパートナーである、請求項10または13のいずれか一項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
定義
本発明において、用語「Gタンパク質」は、Gαタンパク質、Gβタンパク質、およびGγタンパク質という3つのサブユニットからなるヘテロ3量体タンパク質を指す。
【0019】
本発明において、用語「Gαタンパク質」または「Gα」は、Gタンパク質αサブユニットを指す。Gαタンパク質は、GTPaseドメインおよびαヘリックスドメインという2つのドメインを有する。少なくとも20個の異なるGαタンパク質が存在し、以下の主要タンパク質ファミリーに分類することができる:Gαs(アデニル酸シクラーゼを活性化してcAMP合成を高めることが知られている)、Gαi(アデニル酸シクラーゼを阻害することが知られている)、Gαolf(嗅覚受容体と結合)、Gαt(ロドプシンと共に網膜で視覚シグナルを伝達することが知られている)、Gαq(ホスホリパーゼCを刺激することが知られている)、またはGα12/13ファミリー(細胞骨格、細胞結合、および他の細胞運動に関連するプロセスを制御することが知られている)。本発明の好ましい一実施形態では、Gαタンパク質は、Gαi1、Gαi2、Gαi3、Gαo1、Gαo2、Gαq、Gα12、Gα13、Gαs、Gαz、Gαt1、Gαt2、Gα11、Gα14、Gα15、Gα16、およびGαgusタンパク質から、好ましくはGαi1、Gαi2、およびGαi3タンパク質から選択される。
【0020】
本発明において、用語「完全なGαタンパク質」は、GTP、非加水分解性もしくは低加水分解性GTP、またはGDPに結合したGαタンパク質を指す。したがって、この用語は、GDPに結合したGαタンパク質(「GDPに結合した完全なGαタンパク質」)、およびGTPまたは非加水分解性/低加水分解性GTPに結合したGαタンパク質(「GTPに結合した完全なGαタンパク質」)の両方を指す。完全なGαタンパク質(GDPまたはGTPに結合)は
図1に示されている。
【0021】
用語「GDP」は、グアノシン二リン酸を指す。
【0022】
用語「GTP」は、グアノシン三リン酸を指す。
【0023】
用語「GTP源」は、GTPおよび/または非加水分解性もしくは低加水分解性GTP、例えばGTPそのものおよび/または非加水分解性もしくは低加水分解性GTPそのものを提供する化合物を指す。
【0024】
用語「GDP源」は、GDP、例えばGDPそのものを提供する化合物を指す。
【0025】
用語「非加水分解性もしくは低加水分解性GTP」は、加水分解しない、あるいはゆっくり加水分解してGDPになるGTPの類似体を指す。例としては、GTPγS(CAS番号37589−80−3)、GppNHp(CAS番号148892−91−5)、またはGppCp(CAS番号10470−57−2)が挙げられる。用語「GTPgS」または「GTPγS」は、用語「GTPガンマS」の略語である。
【0026】
本発明において、用語「空のGαタンパク質」は、GTP、GDP、または非加水分解性もしくは低加水分解性GTPに結合していないGαタンパク質を指す。文献では、空のGαタンパク質は、GDPに結合した完全な形態とGTPまたは非加水分解性もしくは低加水分解性GTPに結合した完全な形態との間の一過性の状態として説明されている。空のGαタンパク質は
図1に示されている。
【0027】
本発明において、用語「膜標本」は、細胞膜、細胞膜断片、または1種以上のGPCRと1種以上のGαタンパク質とを担持する(あるいは表面に発現する)細胞膜を模倣した人工系を含む標本を指す。したがって、用語「膜標本」には、全細胞、透過処理した全細胞、溶解細胞、精製細胞膜、および1種以上のGPCRと1種以上のGαタンパク質とを担持する(あるいは表面に発現する)ナノディスク(「ナノスケールリン脂質二重層」とも言う)または洗剤混合物を用いて精製および再構成されたGPCR/Gαタンパク質複合体が含まれる。
【0028】
本発明による「抗体」は、哺乳類由来(例えば、ヒト、マウス、またはラクダ)、ヒト化、キメラ、組換えであってもよい。好ましくは、当業者に広く知られている技術を用いて遺伝子改変細胞により組換え産生されたモノクローナル抗体である。抗体は、任意のアイソタイプ、例えば、IgG、IgM、IgA、IgD、またはIgEであってもよい。
【0029】
本発明による「抗体断片」は、例えば、断片Fv、Fab、Fab’、Fab’−SH、F(ab’)
2、二重特異性抗体、シングルドメイン抗体、一本鎖抗体(例えばscFv)から選択してもよい。
【0030】
用語「シングルドメイン抗体」および「sdAb」は、言い換え可能であり、抗原との結合を1つの可変領域により行う抗体を指す。sdAbは、i)抗原に結合することができる重鎖可変領域(HV)またはその断片を含むか、あるいはそれからなり、任意の他の可変領域とは独立して抗原に結合する抗体、ii)抗原に結合することができる軽鎖可変領域(LV)またはその断片を含むか、あるいはそれからなり、任意の他の可変領域とは独立して抗原に結合する抗体、またはii)抗原に結合することができるV
HH型の重鎖可変領域(V
HH)またはその断片を含むか、あるいはそれからなり、任意の他の可変領域とは独立して抗原に結合する抗体であってもよい。
【0031】
本発明において、用語「空の形態に特異的に結合することができるリガンド」および「完全な形態に特異的に結合することができるリガンド」はそれぞれ、Gタンパク質の空の形態または完全な形態に優先的に結合することができるリガンドを指す。すなわち、それぞれGタンパク質の完全な形態または空の形態に比べて、それぞれGタンパク質の空の形態または完全な形態との親和性が良好な(すなわち、Kdが低い)リガンドである。選択性倍数(他の形態のKdに対する優先的に認識される形態のKdの比)は、例えば少なくとも2倍である。
【0032】
本発明において、用語「組み合わせて空のGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンド」および「組み合わせて完全なGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンド」は、それぞれ以下のものを指す。
1)Gαタンパク質の空の形態に優先的に結合することができるリガンド対、すなわち、2つのリガンドのうち少なくとも1つが、単独でまたは第二のリガンドと組み合わせて、Gαタンパク質の完全な形態に比べてGαタンパク質の空の形態に対して良好な親和性(すなわち、低いKd)を有するリガンド対。選択性係数(完全な形態のKdに対する空の形態のKdの比)は、例えば少なくとも2倍である。
2)Gαタンパク質の完全な形態に優先的に結合することができるリガンド対、すなわち、2つのリガンドのうち少なくとも1つが、単独でまたは第二のリガンドと組み合わせて、Gαタンパク質の空の形態に比べてGαタンパク質の完全な形態に対して良好な親和性(すなわち、低いKd)を有するリガンド対。選択性係数(空の形態のKdに対する完全な形態のKdの比)は、例えば少なくとも2倍である。
【0033】
また、Gαタンパク質の一方の形態に比べてGαタンパク質の他の形態でより高いRETシグナルを生成することができるリガンド対であってもよい。RETシグナル比(他の形態のRETシグナルに対する優先的に認識される形態のRETシグナルの比)は、例えば少なくとも1.3倍である。
【0034】
本発明において、用語「GPCR活性化を変化させることができる分子」は、GPCRを活性化あるいは阻害することができ、したがって、GPCRを介した細胞外から細胞内へのシグナルの伝達を誘導あるいは防止することができる分子を指す。上記分子は、作動薬、拮抗薬、逆作動薬、正のアロステリックモジュレーター、または負のアロステリックモジュレーターであってもよい。
【0035】
本発明において、用語「試験分子」は、GPCR活性化を変化させることができる分子である。
【0036】
本明細書では、用語「分子」は、さらなる説明がなければ、「GPCR活性化を変化させることができる分子」および「試験分子」の両方を指す。
【0037】
用語「RET」は、共鳴エネルギー移動を指す。
【0038】
用語「FRET」は、蛍光共鳴エネルギー移動を指す。FRETは、エネルギー供与体と受容体との双極子−双極子相互作用から得られる非放射性エネルギー移動として定義される。この物理的現象は、これら分子間のエネルギー互換性を必要とする。これは、供与体の発光スペクトルが受容体の吸収スペクトルと少なくとも部分的に重なっていなければならないことを意味する。フェルスターの理論によると、FRETは、2つの分子、すなわち供与体および受容体の間の距離に依存するプロセスであり、これらの分子が互いに近接していると、FRETシグナルが放出される。
【0039】
用語「BRET」は、生物発光共鳴エネルギー移動を指す。
【0040】
本発明において、用語「リガンド」は、標的分子に特異的かつ可逆的に結合することができる分子を指す。本発明の文脈で、標的分子は空のGαタンパク質または完全なGαタンパク質である。リガンドは、タンパク質の性質を持つもの(例えば、タンパク質またはペプチド)、またはヌクレオチドの性質を持つもの(例えば、DNAまたはRNA)であってもよい。本発明の文脈で、各リガンドは、抗体、抗体断片、ペプチド、またはアプタマーから選択されることが有利である。
【0041】
本発明において、リガンドは、RETパートナー対のメンバーで標識されている。リガンドは、以下に記載するものなど、当業者によく知られている方法で直接的または間接的に標識されていてもよいが、好ましくは、リガンドは、RETパートナー対のメンバーで共有結合により直接的に標識されている。
【0042】
用語「RETパートナー対」は、エネルギー供与体化合物(以降、「供与体化合物」と言う)とエネルギー受容体化合物(以降、「受容体化合物」と言う)とからなる対を指し、これらが互いに近接して供与体化合物の励起波長で励起すると、これら化合物はRETシグナルを放出する。2つの化合物がRETパートナーであるためには、供与体化合物の発光スペクトルが受容体化合物の励起スペクトルと部分的に重なっていなければならないことが知られている。例えば、蛍光供与体化合物および受容体化合物を用いる場合は「FRETパートナー対」が用いられ、生物発光供与体化合物および受容体化合物を用いる場合は「BRETパートナー対」が用いられる。
【0043】
用語「RETシグナル」は、供与体化合物と受容体化合物とのRETを表す任意の測定可能なシグナルを指す。したがって、例えば、FRETシグナルは、蛍光供与体化合物、あるいは受容体化合物が蛍光性である場合は受容体化合物の発光強度または寿命の変分であってもよい。
【0044】
用語「容器」は、本発明による方法を実施するのに必要な試薬と膜標本とを混合するためのプレートのウェル、試験管などの好適な容器を指す。
【0045】
方法
第一の態様によれば、本発明は、分子がGタンパク質共役受容体(GPCR)の活性化を変化させる能力を決定する方法に関し、上記方法は、
a)
・1種以上のGPCRと1種以上のGタンパク質とを担持する膜標本、
・GDP源またはGTP源、
・RETパートナー対の第一のメンバーで標識されたGタンパク質αサブユニット(Gαタンパク質)の第一のリガンド、およびRETパートナー対の第二のメンバーで標識されたGαタンパク質の第二のリガンドであって、それぞれ個別にまたは組み合わせて空のGαタンパク質または完全なGαタンパク質に特異的に結合することができる第一および第二のリガンド
を第一の容器に導入する工程と;
b)第一の容器中で放出されたRETシグナルを測定する工程と;
c)(i)工程a)と同じ試薬および試験分子を第二の容器に、あるいは(ii)試験分子を第一の容器に導入する工程と;
d)工程c)で得られた第二の容器中または第一の容器中で放出されたRETシグナルを測定する工程と;
e)工程b)およびd)で得られたシグナルを比較する工程であって、
・GDP源と、空のGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの増加は、上記分子がGPCR作動薬であることを示し、
・GDP源と、空のGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの減少は、上記分子がGPCR逆作動薬であることを示し、
・GDP源と、完全なGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの減少は、上記分子がGPCR作動薬であることを示し、
・GDP源と、完全なGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの増加は、上記分子がGPCR逆作動薬であることを示し、
・GTP源と、空のGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの増加は、上記分子がGPCR作動薬であることを示し、
・GTP源と、空のGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの減少は、上記分子がGPCR逆作動薬であることを示し、
・GTP源と、完全なGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの減少は、上記分子がGPCR作動薬であることを示し、
・GTP源と、完全なGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの増加は、上記分子がGPCR逆作動薬であることを示す、工程と
を含む。
【0046】
第二の態様によれば、本発明は、分子がGタンパク質共役受容体(GPCR)の活性化を変化させる能力を決定する方法に関し、上記方法は、
a)
・1種以上のGPCRと1種以上のGタンパク質とを担持する膜標本、
・GDP源またはGTP源、
・RETパートナー対の第一のメンバーで標識されたGタンパク質αサブユニット(Gαタンパク質)の第一のリガンド、およびRETパートナー対の第二のメンバーで標識されたGαタンパク質の第二のリガンドであって、それぞれ個別にまたは組み合わせて空のGαタンパク質または完全なGαタンパク質に特異的に結合することができる第一および第二のリガンド、
・GPCR作動薬
を第一の容器に導入する工程と;
b)第一の容器中で放出されたRETシグナルを測定する工程と;
c)工程a)と同じ試薬および試験分子を第二の容器に導入する工程と;
d)工程c)で得られた第二の容器中で放出されたRETシグナルを測定する工程と;
e)工程b)およびd)で得られたシグナルを比較する工程であって、
・GDP源と、空のGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの増加は、上記分子がGPCRの作動薬または正のアロステリックモジュレーターであることを示し、
・GDP源と、完全なGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの減少は、上記分子がGPCRの作動薬または正のアロステリックモジュレーターであることを示し、
・GTP源と、空のGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの増加は、上記分子がGPCRの作動薬または正のアロステリックモジュレーターであることを示し、
・GTP源と、完全なGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの減少は、上記分子がGPCRの作動薬または正のアロステリックモジュレーターであることを示し、
・GDP源と、空のGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの減少は、上記分子がGPCRの拮抗薬または負のアロステリックモジュレーターであることを示し、
・GDP源と、完全なGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの増加は、上記分子がGPCRの拮抗薬または負のアロステリックモジュレーターであることを示し、
・GTP源と、空のGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの減少は、上記分子がGPCRの拮抗薬または負のアロステリックモジュレーターであることを示し、
・GTP源と、完全なGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの増加は、上記分子がGPCRの拮抗薬または負のアロステリックモジュレーターであることを示す、工程と
を含む。
【0047】
本明細書はまた、Gタンパク質共役受容体(GPCR)の活性化を測定する方法に関し、上記方法は、
a)
・1種以上のGPCRと1種以上のGタンパク質とを担持する膜標本、
・GDP源またはGTP源、
・RETパートナー対の第一のメンバーで標識されたGタンパク質αサブユニット(Gαタンパク質)の第一のリガンド、およびRETパートナー対の第二のメンバーで標識されたGαタンパク質の第二のリガンドであって、それぞれ個別にまたは組み合わせて空のGαタンパク質または完全なGαタンパク質に特異的に結合することができる第一および第二のリガンド
を第一の容器に導入する工程と;
b)第一の容器中で放出されたRETシグナルを測定する工程と;
c)(i)工程a)と同じ試薬、およびGPCR活性化を変化させることができる分子を第二の容器に、あるいは(ii)GPCR活性化を変化させることができる分子を第一の容器に導入する工程と;
d)工程c)で得られた第二の容器中または第一の容器中で放出されたRETシグナルを測定する工程と;
e)工程b)およびd)で得られたシグナルを比較する工程であって、工程b)で得られたシグナルと比較した工程d)で得られたシグナルの増加または減少はGPCR活性化の変化を示す、工程と
を含む。
【0048】
本明細書はまた、Gタンパク質共役受容体(GPCR)の標本において空のGタンパク質または完全なGタンパク質の出現または消失を検出する方法に関し、上記方法は、
a)
・1種以上のGPCRと1種以上のGαタンパク質とを担持する膜標本、
・GDP源またはGTP源、
・RETパートナー対の第一のメンバーで標識されたGタンパク質αサブユニット(Gαタンパク質)の第一のリガンド、およびRETパートナー対の第二のメンバーで標識されたGαタンパク質の第二のリガンドであって、それぞれ個別にまたは組み合わせて空のGαタンパク質または完全なGαタンパク質に特異的に結合することができる第一および第二のリガンド
を第一の容器に導入する工程と;
b)第一の容器中で放出されたRETシグナルを測定する工程と;
c)(i)工程a)と同じ試薬、およびGPCR活性化を変化させることができる分子を第二の容器に、あるいは(ii)GPCR活性化を変化させることができる分子を第一の容器に導入する工程と;
d)工程c)で得られた第二の容器中または第一の容器中で放出されたRETシグナルを測定する工程と;
e)工程b)およびd)で得られたシグナルを比較する工程であって、工程b)で得られたシグナルと比較した工程d)で得られたシグナルの増加または減少は、空のGタンパク質または完全なGタンパク質の出現または消失を示す、工程と
を含む。
【0049】
本明細書はまた、分子がGタンパク質共役受容体(GPCR)の活性化を変化させる能力を決定する方法に関し、上記方法は、
a)
・1種以上のGPCRと1種以上のGタンパク質とを担持する膜標本、
・GDP源およびGTP源、
・RETパートナー対の第一のメンバーで標識されたGタンパク質αサブユニット(Gαタンパク質)の第一のリガンド、およびRETパートナー対の第二のメンバーで標識されたGαタンパク質の第二のリガンドであって、それぞれ個別にまたは組み合わせて空のGαタンパク質または完全なGαタンパク質に特異的に結合することができる第一および第二のリガンド
を第一の容器に導入する工程と;
b)第一の容器中で放出されたRETシグナルを測定する工程と;
c)(i)工程a)と同じ試薬および試験分子を第二の容器に、あるいは(ii)試験分子を第一の容器に導入する工程と;
d)工程c)で得られた第二の容器中または第一の容器中で放出されたRETシグナルを測定する工程と;
e)工程b)およびd)で得られたシグナルを比較する工程であって、
・GDP源と、空のGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの増加は、上記分子がGPCR作動薬であることを示し、
・GDP源と、空のGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの減少は、上記分子がGPCR逆作動薬であることを示し、
・GDP源と、完全なGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの減少は、上記分子がGPCR作動薬であることを示し、
・GDP源と、完全なGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの増加は、上記分子がGPCR逆作動薬であることを示し、
・GTP源と、空のGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの増加は、上記分子がGPCR作動薬であることを示し、
・GTP源と、空のGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの減少は、上記分子がGPCR逆作動薬であることを示し、
・GTP源と、完全なGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの減少は、上記分子がGPCR作動薬であることを示し、
・GTP源と、完全なGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの増加は、上記分子がGPCR逆作動薬であることを示す、工程と
を含む。
【0050】
本明細書はまた、分子がGタンパク質共役受容体(GPCR)の活性化を変化させる能力を決定する方法に関し、上記方法は、
a)
・1種以上のGPCRと1種以上のGタンパク質とを担持する膜標本、
・GDP源およびGTP源、
・RETパートナー対の第一のメンバーで標識されたGタンパク質αサブユニット(Gαタンパク質)の第一のリガンド、およびRETパートナー対の第二のメンバーで標識されたGαタンパク質の第二のリガンドであって、それぞれ個別にまたは組み合わせて空のGαタンパク質または完全なGαタンパク質に特異的に結合することができる第一および第二のリガンド、
・GPCR作動薬
を第一の容器に導入する工程と;
b)第一の容器中で放出されたRETシグナルを測定する工程と;
c)工程a)と同じ試薬および試験分子を第二の容器に導入する工程と;
d)工程c)で得られた第二の容器中で放出されたRETシグナルを測定する工程と;
e)工程b)およびd)で得られたシグナルを比較する工程であって、
・GDP源と、空のGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの増加は、上記分子がGPCRの作動薬または正のアロステリックモジュレーターであることを示し、
・GDP源と、完全なGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの減少は、上記分子がGPCRの作動薬または正のアロステリックモジュレーターであることを示し、
・GTP源と、空のGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの増加は、上記分子がGPCRの作動薬または正のアロステリックモジュレーターであることを示し、
・GTP源と、完全なGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの減少は、上記分子がGPCRの作動薬または正のアロステリックモジュレーターであることを示し、
・GDP源と、空のGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの減少は、上記分子がGPCRの拮抗薬または負のアロステリックモジュレーターであることを示し、
・GDP源と、完全なGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの増加は、上記分子がGPCRの拮抗薬または負のアロステリックモジュレーターであることを示し、
・GTP源と、空のGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの減少は、上記分子がGPCRの拮抗薬または負のアロステリックモジュレーターであることを示し、
・GTP源と、完全なGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの増加は、上記分子がGPCRの拮抗薬または負のアロステリックモジュレーターであることを示す、工程と
を含む。
【0051】
工程a)
本発明の第一の態様によれば、工程a)は、以下の3つの要素を第一の容器に導入することからなる。
・1種以上のGPCRと1種以上のGタンパク質とを担持する膜標本、
・GDP源またはGTP源、
・RETパートナー対の第一のメンバーで標識されたGタンパク質αサブユニット(Gαタンパク質)の第一のリガンド、およびRETパートナー対の第二のメンバーで標識されたGαタンパク質の第二のリガンドであって、それぞれ個別にまたは組み合わせて空のGαタンパク質または完全なGαタンパク質に特異的に結合することができる第一および第二のリガンド。
【0052】
第一の態様の一実施形態では、工程a)において、第一の容器は試験分子を含まない。この容器は、RETシグナルおよび/またはRETシグナルのバックグラウンドノイズの基底レベルを測定するのに用いられる。
【0053】
本発明の第二の態様によれば、工程a)は、以下の4つの要素を第一の容器に導入することからなる。
・1種以上のGPCRと1種以上のGタンパク質とを担持する膜標本、
・GDP源またはGTP源、
・RETパートナー対の第一のメンバーで標識されたGタンパク質αサブユニット(Gαタンパク質)の第一のリガンド、およびRETパートナー対の第二のメンバーで標識されたGαタンパク質の第二のリガンドであって、それぞれ個別にまたは組み合わせて空のGαタンパク質または完全なGαタンパク質に特異的に結合することができる第一および第二のリガンド、
・GPCR作動薬。
【0054】
好ましい一実施形態では、GTP源は、非加水分解性もしくは低加水分解性GTP源であり、好ましくはGTPガンマS(GTPγS)、GppNHp、およびGppCpから選択され、好ましくはGTPガンマS(GTPγS)である。
【0055】
好ましい一実施形態では、GDP源はGDPである。
【0056】
本発明による方法は、GTP源およびGDP源の両方を導入するものではないことを理解しなければならない。
【0057】
各要素を任意の順番で順次、同時、またはほとんど同時に容器に導入してもよい。要素を混合することで、RETの実施に適合した反応液を得ることができる。他の要素を容器に加えて、溶液をRETの実施に適合させてもよい。例えば、セレンテラジンh(ベンジルセレンテラジン)、ビスデオキシセレンテラジン(DeepBlueC
TM)、ジヒドロセレンテラジン(セレンテラジン−400a)、またはD−ルシフェリンを加えてもよい。
【0058】
各リガンドは、個別にまたは組み合わせて空のGαタンパク質または完全なGαタンパク質に特異的に結合することができる。第一の実施形態では、上記2つのリガンドのそれぞれが個別に空のGαタンパク質または完全なGαタンパク質に特異的に結合してもよい。すなわち、一方のリガンドは、他方のリガンドの存在下および非存在下で空のGαタンパク質または完全なGαタンパク質に特異的に結合してもよい。第二の特定の実施形態では、上記2つのリガンドは組み合わせて空のGαタンパク質または完全なGαタンパク質に特異的に結合してもよい。すなわち、上記2つのリガンドの少なくとも一方は、他方のリガンドの存在下でのみ空のGαタンパク質または完全なGαタンパク質に特異的に結合してもよい。
【0059】
特定の実施形態では、GDP源と、それぞれ個別にまたは組み合わせて空のGαタンパク質に特異的に結合することができる各リガンドとが用いられる。この実施形態により、空のGαタンパク質とGDPに結合した完全なGαタンパク質とを識別することができる。
【0060】
他の特定の実施形態では、GDP源と、それぞれ個別にまたは組み合わせて完全なGαタンパク質に特異的に結合することができる各リガンドとが用いられる。この実施形態により、GDPに結合した完全なGαタンパク質と空のGαタンパク質とを識別することができる。
【0061】
他の特定の実施形態では、GTP源と、それぞれ個別にまたは組み合わせて空のGαタンパク質に特異的に結合することができる各リガンドとが用いられる。この実施形態により、空のGαタンパク質とGTPおよび/または非加水分解性/低加水分解性GTPに結合した完全なGαタンパク質とを識別することができる。
【0062】
他の特定の実施形態では、GTP源と、それぞれ個別にまたは組み合わせて完全なGαタンパク質に特異的に結合することができる各リガンドとが用いられる。この実施形態により、GTPおよび/または非加水分解性/低加水分解性GTPに結合した完全なGαタンパク質と空のGαタンパクとを識別することができる。
【0063】
Gαタンパク質は、Gαi1、Gαi2、Gαi3、Gαo1、Gαo2、Gαq、Gα12、Gα13、Gαs、Gαz、Gαt1、Gαt2、Gα11、Gα14、Gα15、Gα16、およびGαgusタンパク質から選択されるのが有利であり、Gαi1、Gαi2、およびGαi3タンパク質から選択されるのが好ましい。
【0064】
特定の実施形態では、第一のリガンドはペプチドであり、第二のリガンドは抗体または抗体断片である。例えば、第一のリガンドは、配列Ser−Ser−Arg−Gly−Tyr−Tyr−His−Gly−Ile−Trp−Val−Gly−Glu−Glu−Gly−Arg−Leu−Ser−Arg(配列番号1)を有するペプチド(GTPに結合した完全なGαタンパク質を特異的に認識するペプチドKB1753)であり、第二のリガンドは抗Gαi抗体である。例えば、抗Gαi抗体は、供給業者Santa Cruz Biotechnologiesの製品#SC13533の抗体(空の形態および完全な形態のGタンパク質を認識するクローンR4)である。
【0065】
他の特定の実施形態では、第一のリガンドおよび第二のリガンドは抗体または抗体断片である。
【0066】
特定の実施形態では、本発明による方法の実施に用いられる抗体は、DSV36S、DSV3S、DSV39S、DSV26S(注文に応じてCisbio Bioassaysから入手できるDSV抗体)、および#SC13533から選択される。
【0067】
他の特定の実施形態では、第一のリガンドは、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、または配列番号9から選択される配列のsdAbであり、第二のリガンドは抗Gαi抗体、例えば抗体#SC13533またはDSV36S抗体である。
【0068】
もちろん、第一のリガンドおよび第二のリガンドがGαタンパク質に結合する場合、これらは競合してはならない。例えば、第一のリガンドおよび第二のリガンドは、Gαタンパク質の同じエピトープに結合しない。
【0069】
当業者であれば、選択した作動薬、試験分子、および/または所望の特性などに応じてGPCR作動薬の濃度および試験分子の濃度を適合させるのは困難ではない。
【0070】
工程b)
本発明の3つの態様によれば、工程b)は、第一の容器中、すなわち工程a)で得られた容器中で放出されたRETシグナルを測定することからなる。測定されたシグナルは、試験分子の非存在下、容器中で得られたシグナルに相当する。この測定は、当業者に広く知られている従来の方法によって行うことができ、特に問題はない。通常、TR−FRETまたは生物発光読取りモードを備えたPHERAstar FSマイクロプレートリーダー(BMG Labtech)など、RETシグナルを検出および測定する装置が用いられる。
【0071】
工程c)
本発明の第一の態様によれば、
・一実施形態では、工程c)は、工程a)と同じ試薬および試験分子を第二の容器に導入することからなる。有利には、第二の容器は第一の容器と同様に準備されるが、第二の容器には試験分子が存在することのみが異なっている。この実施形態は、第一の容器中および第二の容器中で放出されたRETシグナルの測定を同時に行うことができるので有利である。この実施形態はまた、1つ以上の第二の容器中で放出されたRETシグナルを同時に測定することができる。したがって、この実施形態は、いくつかの異なる分子を並行して試験することができるので特に有利である。
・他の態様では、工程c)は、試験分子を第一の容器に導入することからなる。この実施形態は、本発明による方法を実施するために容器を1つだけしか用いないという利点がある。
【0072】
特定の実施形態では、シグナルの増減の振幅を変化させるように濃度を高めて試験分子を導入する。
【0073】
本発明の第二の態様によれば、工程c)は、工程a)と同じ試薬および試験分子を第二の容器に導入することからなる。有利には、第二の容器は、第一の容器と同様に準備されるが、第二の容器には試験分子が存在することのみが異なっている。したがって、第一の容器および第二の容器中で放出されたRETシグナルの測定が同時に行われる。これにより、1つ以上の第二の容器中で放出されたRETシグナルを同時に測定することもできる。これにより、いくつかの異なる分子を並行して試験することができる。
【0074】
特定の実施形態では、シグナルの増減の振幅を変化させるように濃度を高めて試験分子またはGPCR作動薬を導入する。
【0075】
工程d)
本発明の3つの態様によれば、工程d)は、工程c)で得られた第二の容器中または第一の容器中で放出されたRETシグナルを測定することからなる。測定されたシグナルは、試験分子(第二の態様では、±作動薬)の存在下、容器中で得られたシグナルに相当する。工程b)のように、この測定は、当業者に広く知られている従来の方法によって行うことができ、特に問題はない。通常、TR−FRETまたは生物発光読取りモードを備えたPHERAstar FSマイクロプレートリーダー(BMG Labtech)など、RETシグナルを検出および測定する装置が用いられる。
【0076】
工程e)
本発明の3つの態様によれば、工程e)は、工程b)およびd)で得られたシグナルを比較することからなる。
【0077】
当業者であれば、工程b)およびd)のシグナルを容易に比較し、増減の定量を可能にする閾値(例えば、5%、10%、15%、20%、または25%より大きいシグナルの差)を規定することができる。例えば、工程b)およびd)のシグナルの比を算出してもよい。一般に、所与のリガンド対について、シグナルの差が大きいほど、シグナルの比が大きく、GPCR活性化の変化(例えば活性化または阻害)も大きい。しかしながら、シグナルの差は、本発明による方法の実施に用いられるリガンド対に応じて変化し得る。GPCR活性化の変化の度合いによって、おおよその作動薬分子、拮抗薬分子、逆作動薬分子、正のアロステリックモジュレーター分子、または負のアロステリックモジュレーター分子を同定することができる。
【0078】
第一の態様によれば、
・GDP源と、空のGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの増加は、上記分子がGPCR作動薬であることを示し、
・GDP源と、空のGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの減少は、上記分子がGPCR逆作動薬であることを示し、
・GDP源と、完全なGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの減少は、上記分子がGPCR作動薬であることを示し、
・GDP源と、完全なGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの増加は、上記分子がGPCR逆作動薬であることを示し、
・GTP源と、空のGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの増加は、上記分子がGPCR作動薬であることを示し、
・GTP源と、空のGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの減少は、上記分子がGPCR逆作動薬であることを示し、
・GTP源と、完全なGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの減少は、上記分子がGPCR作動薬であることを示し、
・GTP源と、完全なGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの増加は、上記分子がGPCR逆作動薬であることを示す。
【0079】
第二の態様によれば、
・GDP源と、空のGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの増加は、上記分子がGPCRの作動薬または正のアロステリックモジュレーターであることを示し、
・GDP源と、完全なGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの減少は、上記分子がGPCRの作動薬または正のアロステリックモジュレーターであることを示し、
・GTP源と、空のGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの増加は、上記分子がGPCRの作動薬または正のアロステリックモジュレーターであることを示し、
・GTP源と、完全なGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの減少は、上記分子がGPCRの作動薬または正のアロステリックモジュレーターであることを示し、
・GDP源と、空のGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの減少は、上記分子がGPCRの拮抗薬または負のアロステリックモジュレーターであることを示し、
・GDP源と、完全なGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの増加は、上記分子がGPCRの拮抗薬または負のアロステリックモジュレーターであることを示し、
・GTP源と、空のGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの減少は、上記分子がGPCRの拮抗薬または負のアロステリックモジュレーターであることを示し、
・GTP源と、完全なGαタンパク質に特異的に結合することができるリガンドとを用いた場合のシグナルの増加は、上記分子がGPCRの拮抗薬または負のアロステリックモジュレーターであることを示す。
【0080】
RETパートナー対のメンバーによるリガンドの標識
リガンドは、直接的または間接的に標識することができる。
【0081】
当業者に知られている従来の方法によって、リガンド上の反応性基の存在に基づいて、RETパートナー対のメンバー(例えばFRETを用いる場合には蛍光化合物など)でリガンドを直接標識することができる。例えば、リガンドが抗体または抗体断片である場合、以下の反応性基を用いてもよい:末端アミノ基、アスパラギン酸およびグルタミン酸のカルボキシラート基、リシンのアミノ基、アルギニンのグアニジン基、システインのチオール基、チロシンのフェノール基、トリプトファンのインドール環、メチオニンのチオエーテル基、ヒスチジンのイミダゾール基。
【0082】
反応性基は、RETパートナー対のメンバーに担持された反応性基と共有結合を形成することができる。RETパートナー対のメンバーに担持される適切な反応性基は、当業者によく知られており、例えば、マレイミド基で官能化された供与体化合物または受容体化合物は、例えば、タンパク質またはペプチド(例えば抗体または抗体断片)に担持されたシステインに担持されたチオール基と共有結合することができる。同様に、N−ヒドロキシスクシンイミドエステルを担持する供与体/受容体化合物は、タンパク質またはペプチドを含むアミンと共有結合することができる。
【0083】
また、それ自体は受容体/供与体化合物と共有結合している抗体または抗体断片を測定培地に導入することなどによって、リガンドを蛍光または生物発光化合物で間接的に標識してもよい。この第二の抗体または抗体断片はリガンドを特異的に認識するものである。
【0084】
他の非常に伝統的な間接標識法は、標識対象のリガンドにビオチンを結合させて、受容体/供与体化合物で標識されたストレプトアビジンの存在下、このビオチン化リガンドをインキュベートすることからなる。適切なビオチン化リガンドは、当業者によく知られている技術により調製することができる。例えば、Cisbio Bioassaysは、商品名「d2」(品番610SADLA)でフルオロフォア標識ストレプトアビジンを市販している。
【0085】
本発明の文脈で、第一のリガンドおよび第二のリガンドは、それぞれRETパートナー対のメンバーで標識されており、上記対のメンバーの一方は蛍光供与体または発光供与体化合物であり、上記対の他方のメンバーは蛍光受容体化合物または非蛍光受容体化合物(クエンチャー)である。
【0086】
FRETを実施するための標識
特定の実施形態では、第一のリガンドおよび第二のリガンドはそれぞれ、FRETパートナー対のメンバー、すなわち蛍光供与体化合物または蛍光エネルギー受容化合物で標識されている。
【0087】
FRETシグナルを得るためのFRETパートナー対の選択は、当業者の知るところである。例えば、FRET現象を研究するのに用いることができる供与体/受容体の対は、Joseph R.Lakowicz(Principles of fluorescence spectroscopy、2
nd edition 338)の著作に記載されており、当業者は参照することができる。
【0088】
蛍光供与体化合物
寿命の長いエネルギー供与蛍光化合物(>0.1ミリ秒、好ましくは0.5〜6ミリ秒の範囲)、特に希土類キレートまたはクリプテートは、測定培地から放出されたバックグラウンドノイズの大部分を処理する必要がなく、時間分解FRETを行うことができるため、有利である。このため、これらは本発明による方法の実施に一般に好ましい。これら化合物はランタニド錯体であることが有利である。これら錯体(例えば、キレートまたはクリプテート)はエネルギー供与FRET対のメンバーとして特に好適である。
【0089】
ユウロピウム(Eu
3+)、テルビウム(Tb
3+)、ジスプロシウム(Dy
3+)、サマリウム(Sm
3+)、ネオジム(Nd
3+)、イッテルビウム(Yb
3+)、またはエルビウム(Er
3+)の錯体も、本発明に好適な希土類錯体であり、ユウロピウム(Eu
3+)およびテルビウム(Tb
3+)錯体が特に好ましい。
【0090】
多くの希土類錯体が開示されており、いくつかは現在、Perkin Elmer、Invitrogen、およびCisbio Bioassaysによって商品化されている。
【0091】
本発明の目的に好適な希土類キレートまたはクリプテートの例は以下の通りである。
・1つ以上のピリジン単位を含むランタニドクリプテート。そのような希土類クリプテートは、例えば、欧州特許第0180492号、欧州特許第0321353号、欧州特許第0601113号、および国際公開第01/96877号に記載されている。テルビウム(Tb
3+)およびユウロピウム(Eu
3+)のクリプテートは本発明の目的に特に好適である。ランタニドクリプテートは、Cisbio Bioassaysにより市販されている。この例としては、下記式のユウロピウムクリプテート(反応性基(ここでは例えばNH
2基)を介して標識対象の化合物に結合させることができる)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0096】
・特に米国特許第4,761,481号、5,032,677号、5,055,578号、5,106,957号、5,116,989号、4,761,481号、4,801,722号、4,794,191号、4,637,988号、4,670,572号、4,837,169号、4,859,777号に記載されたランタニドキレート。欧州特許第0403593号、米国特許第5,324,825号、米国特許第5,202,423号、米国特許第5,316,909号には、テルピリジンなどの九座リガンドからなるキレートが記載されている。ランタニドキレートはPerkin Elmerにより市販されている。
【0097】
・Poole R.et al.,Biomol.Chem,2005,3,1013−1024“Synthesis and characterisation of highly emissive and kinetically stable lanthanide complexes suitable for usage in cellulo”に記載されたものなど、芳香環を有する発色団により置換されたキレート剤(テトラアザシクロドデカンなど)からなるランタニド錯体もまた用いることができる。国際公開第2009/10580号に記載された錯体もまた用いることができる。
【0098】
・欧州特許第1154991号および1154990号に記載されたランタニドクリプテートもまた利用可能である。
【0099】
・下記式のテルビウムクリプテート(反応性基(ここでは例えばNH
2基)を介して標識対象の化合物に結合させることができる)。その合成は、国際公開第2008/063721(89ページの化合物6a)に記載されている。
【0101】
・Cisbio Bioassaysから市販されているLumiphore製テルビウムクリプテートLumi4−Tb。
【0102】
・Research Organics製の下記式の量子色素(反応性基(ここではNCS)を介して標識対象の化合物に結合させることができる)。
【0104】
・ルテニウムキレート、特にルテニウムイオンといくつかのビピリジンとからなる錯体(例えばルテニウム(II)トリス(2,2’−ビピリジン))。
【0105】
・Life Technologiesから市販されている下記式のテルビウムキレートDTPA−cs124Tb(反応性基Rを介して標識対象の化合物に結合させることができる)。その合成は、米国特許第5,622,821号に記載されている。
【0107】
・Latva et al.(Journal of Luminescence 1997,75(2):149−169)に記載された下記式のテルビウムキレート。
【0109】
蛍光供与体化合物は、ユウロピウムクリプテート、ユウロピウムキレート、テルビウムキレート、テルビウムクリプテート、ルテニウムキレート、量子ドット、アロフィコシアニン、ローダミン、シアニン、スクアライン、クマリン、プロフラビン、アクリジン、フルオレセイン、ボロンジピロメテン誘導体、およびニトロベンゾオキサジアゾールから選択されるFRETパートナーであるのが有利である。
【0110】
蛍光供与体化合物は、ユウロピウムクリプテート;ユウロピウムキレート;テルビウムキレート;テルビウムクリプテート;ルテニウムキレート;および量子ドットから選択されるFRETパートナーであるのが特に有利であり、ユウロピウムおよびテルビウムのキレートおよびクリプテートが特に好ましい。
【0111】
蛍光受容体化合物
蛍光受容体化合物は、以下の群から選択されてもよい:アロフィコシアニン、特に商品名XL665で知られているもの;発光有機分子、例えば、ローダミン、シアニン(Cy5など)、スクアライン、クマリン、プロフラビン、アクリジン、フルオレセイン、ボロンジピロメテン誘導体(「Bodipy」として市販)、「Atto」として知られているフルオロフォア、「DY」として知られているフルオロフォア、「Alexa」として知られている化合物、ニトロベンゾオキサジアゾール。蛍光受容体化合物は、アロフィコシアニン、ローダミン、シアニン、スクアライン、クマリン、プロフラビン、アクリジン、フルオレセイン、ボロンジピロメテン誘導体、ニトロベンゾオキサジアゾールから選択されることが有利である。
【0112】
用語「シアニン」および「ローダミン」はそれぞれ、「シアニン誘導体」および「ローダミン誘導体」として理解されるべきである。当業者は、市場で入手可能なこれらの様々なフルオロフォアを熟知している。
【0113】
「Alexa」化合物はInvitrogenにより市販されている。「Atto」化合物はAttotecにより市販されている。「DY」化合物はDyomicsにより市販されている。「Cy」化合物はAmersham Biosciencesにより市販されている。他の化合物はSigma、Aldrich、またはAcrosなどの様々な化学試薬供給業者により市販されている。
【0114】
以下の蛍光タンパク質もまた、蛍光受容体化合物として用いることができる:シアン蛍光タンパク質(AmCyan1、Midori−Ishi Cyan、mTFP1)、緑色蛍光タンパク質(EGFP、AcGFP、TurboGFP、Emerald、Azami Green、ZsGreen)、黄色蛍光タンパク質(EYFP、Topaz、Venus、mCitrine、YPet、PhiYFP、ZsYellow1、mBanana)、橙色および赤色蛍光タンパク質(Orange kusibari、mOrange、tdtomato、DsRed、DsRed2、DsRed−Express、DsRed−Monomer、mTangerine、AsRed2、mRFP1、JRed、mCherry、mStrawberry、HcRed1、mRaspberry、HcRed−Tandem、mPlim、AQ143)、近赤外蛍光タンパク質(mKate、mKate2、tdKatushka2)。
【0115】
蛍光受容体化合物は、アロフィコシアニン、ローダミン、シアニン、スクアライン、クマリン、プロフラビン、アクリジン、フルオレセイン、ボロンジピロメテン誘導体、ニトロベンゾオキサジアゾール、および量子ドット、GFP、GFP10、GFP2、およびeGFPから選択されるGFP変異体、YFP、eYFP、YFP topaz、YFP citrine、YFP venus、およびYPetから選択されるYFP変異体、mOrange、DsRedから選択されるFRETパートナーであることが有利である。
【0116】
BRETを実施するための標識
特定の実施形態では、第一のリガンドおよび第二のリガンドはそれぞれ、BRETパートナー対のメンバー、すなわち発光供与体化合物または蛍光エネルギー受容化合物で標識されている。
【0117】
リガンドは、直接的または間接的に標識することができる。
【0118】
BRETパートナー対のメンバーである発光供与体化合物またはタンパク質型蛍光受容体化合物によりリガンドを直接標識することは、当業者に知られている伝統的な方法により行うことができ、特にTarik Issad and Ralf Jockersの論文(Bioluminescence Resonance Energy Transfer to Monitor Protein−Protein Interactions,Transmembrane Signaling Protocols pp 195−209,Part of the Methods in Molecular Biology
TM book series MIMB,volume 332)に記載されており、当業者は参照することができる。
【0119】
BRETパートナー対のメンバーである有機分子型蛍光受容体化合物によりリガンドを直接標識することは、当業者に知られている伝統的な方法によって、上述したようにリガンド上の反応性基の存在に基づいて行うことができる。例えば、リガンドが抗体または抗体断片である場合、以下の反応性基を用いてもよい:末端アミノ基、アスパラギン酸およびグルタミン酸のカルボキシラート基、リシンのアミノ基、アルギニンのグアニジン基、システインのチオール基、チロシンのフェノール基、トリプトファンのインドール環、メチオニンのチオエーテル基、ヒスチジンのイミダゾール基。
【0120】
反応性基は、BRETパートナー対のメンバーに担持された反応性基と共有結合を形成することができる。BRETパートナー対のメンバーに担持された適切な反応性基は、当業者によく知られており、例えば、マレイミド基で官能化された受容体化合物は、タンパク質またはペプチド(例えば抗体または抗体断片)に担持されたシステインに担持されたチオール基と共有結合することができる。同様に、N−ヒドロキシスクシンイミドエステルを担持する受容体化合物は、タンパク質またはペプチドを含むアミンと共有結合することができる。
【0121】
また、それ自体は受容体/供与体化合物に共有結合している抗体または抗体断片を測定培地に導入することなどによって、リガンドを生物発光または蛍光化合物で間接的に標識してもよい。この第二の抗体または抗体断片はリガンドを特異的に認識するものである。
【0122】
他の非常に伝統的な間接標識法は、標識対象のリガンドにビオチンを結合させて、受容体/供与体化合物で標識されたストレプトアビジンの存在下、このビオチン化リガンドをインキュベートすることからなる。適切なビオチン化リガンドは、当業者によく知られている技術により調製することができる。例えば、Cisbio Bioassaysは、商品名「d2」(品番610SADLA)でフルオロフォア標識ストレプトアビジンを市販している。
【0123】
BRETシグナルを得るためのBRETパートナー対の選択は、当業者の知るところである。例えば、BRET現象を研究するのに用いることができる供与体/受容体対は、特にDasiel O.Borroto−Escuelaの論文(BIOLUMINESCENCE RESONANCE ENERGY TRANSFER(BRET)METHODS TO STUDY G PROTEIN−COUPLED RECEPTOR−RECEPTOR TYROSINE KINASE HETERORECEPTOR COMPLEXES,Cell Biol.2013;117:141−164)に記載されており、当業者は参照することができる。
【0124】
発光供与体化合物
特定の実施形態では、発光供与体化合物は、ルシフェラーゼ(luc)、ウミシイタケルシフェラーゼ(Rluc)、ウミシイタケルシフェラーゼ変異体(Rluc8)、およびホタルルシフェラーゼから選択されるBRETパートナーである。
【0125】
蛍光受容体化合物
特定の実施形態では、蛍光受容体化合物は、アロフィコシアニン、ローダミン、シアニン、スクアライン、クマリン、プロフラビン、アクリジン、フルオレセイン、ボロンジピロメテン誘導体、ニトロベンゾオキサジアゾール、量子ドット、GFP、GFP変異体(GFP10、GFP2、eGFP)、YFP、YFP変異体(eYFP、YFP topaz、YFP citrine、YFP venus、YPet)、mOrange、DsRedから選択されるBRETパートナーである。
【0126】
キット
本発明はまた、本発明による方法を実施するためのキットに関し、上記キットは、
・RETパートナー対の第一のメンバーで標識されたGタンパク質αサブユニット(Gαタンパク質)の第一のリガンド、およびRETパートナー対の第二のメンバーで標識されたGαタンパク質の第二のリガンドであって、それぞれ個別にまたは組み合わせて空のGαタンパク質または完全なGαタンパク質に特異的に結合することができる第一および第二のリガンド、ならびに
・一連の指示
を含む。
【0127】
特定の実施形態では、上記キットはGDP源またはGTP源をさらに含む。
【0128】
特定の実施形態では、上記キットは、Gαタンパク質、および/または1種以上のGPCRと1種以上のGタンパク質とを担持する膜標本をさらに含む。
【0129】
上記キットはまた、上記試薬用の希釈緩衝液を含んでいてもよい。
【実施例】
【0130】
抗Gαi1タンパク質抗体を得るためのプロトコル
組換えTST−Gαi1タンパク質(TEVリンカーを介してN末端がTwinStreptag(TST)タグ(IBA)で標識されたUniProt配列P63096−1のGαi1タンパク質)をSf9昆虫細胞(上記タンパク質をコードするバキュロウイルスに感染)内で産生してから、TwinStreptag(TST)タグを介した親和性カラム(Strep−Tactin Superflow高容量樹脂(IBA、カタログ:2−1208−002))で精製した。
【0131】
GTPgSを含む緩衝液(HEPES:20mM、pH8、NaCl:100mM、MgCl
2:3mM、CHAPS:11mM、GTPgS:100μM)で予め希釈したTST−Gαi1タンパク質の注射によりBALB/cマウスを免疫した。1回目の注射の後、1ヶ月間隔で3回追加免疫した。
【0132】
各注射後の15日間、マウスの血管穿刺を行って免疫応答の有無を確認した。
【0133】
この目的のため、ELISA試験を設定した。GTPgSを含む緩衝液(Tris HCl:20mM、pH8.5、NaCl:140mM、EDTA:2mM、MgCl
2:10mM、BSA:0.1%、GTPgS:1μM)で予め20μg/mLに希釈したTST−Gαi1タンパク質を、Strep−Tactin(R)XTを含む96ウェルプレート(IBA、カタログ:2−4101−001)にTwinStreptagタグを介して吸着させた。この目的のため、100μlのタンパク質を各ウェルに加え、37℃で2時間インキュベートした後、緩衝液(1×PBS、0.05%Tween20)で3回洗浄した。
【0134】
次に、血管穿刺の10〜100万倍の連続希釈液を100μL/ウェル加え、37℃で2時間インキュベートした。タンパク質に結合していない抗体を緩衝液(1×PBS、0.05%Tween20)で3回洗浄工程を行って除去してから、HRP(セイヨウワサビペルオキシダーゼ)に結合した二次マウス抗Fc抗体(PBS、0.1%BSAで1/10,000に希釈したSigma#A0168)を用いて、結合した抗体の検出を行った。37℃で1時間インキュベートしてから緩衝液(1×PBS、0.05%Tween20)で3回洗浄した後、HRPのTMB基質(3,3’,5,5,5’−テトラメチルベンジジン、Sigma#T0440)を撹拌下、室温で20分間インキュベートしてから、450nmの比色アッセイによりHRPを測定した。
【0135】
ELISA試験により検出される抗体がTwinStrepTagではなくGαi1タンパク質に対するものであることを確実にするために、TwinStrepTagで標識した他の直交性タンパク質(SNAPTag−TwinStrpeTag)の過剰量とプレインキュベートした後に同じ血管穿刺をELISA試験で試験した。したがって、抗タグ抗体は直交性標識タンパク質に結合するので、ウェル底部に結合したGαi1タンパク質には結合しない。この場合、HRPシグナルは検出されないか、あるいはHRPシグナルの減少が検出される。
【0136】
抗タグ対照群において抗体価が最も良好でシグナル減少が最も少ないマウスを、次のリンパ球ハイブリダイゼーション工程(融合とも言う)に選んだ。マウスの脾臓を回収し、この脾臓に由来するリンパ球と形質細胞の混合物をポリエチレングリコール型細胞融合触媒の存在下で骨髄腫細胞株とインビトロで融合させた。ヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT)酵素を欠損している変異骨髄腫細胞株を用いて、ハイブリドーマと呼ばれるハイブリッド細胞の選択を行うことができた。これらの細胞を、ヒポキサンチン、アミノプテリン(メトトレキサート)、およびチミジンを含む培地(HAT培地)で培養することで、融合していない骨髄腫細胞を排除して、目的のハイブリドーマを選択することができた。融合していない脾臓細胞は、インビトロでは増殖することができないので死滅する。したがって、ハイブリドーマのみが生き残った。
【0137】
次に、これらのハイブリドーマを培養プレートで成長させた。次いで、これらハイブリドーマの上澄みを試験して、抗Gαi1タンパク質抗体を産生する能力を評価した。この目的のため、上述したELISA試験を行った。
【0138】
Gαi1タンパク質の各種形態(GDPに結合した完全な形態か、GTPgSに結合した完全な形態か、空の形態か)間で抗体の選択性を評価するために、1μMのGDPまたは1μMのGTPgSを含むか、あるいはヌクレオチドを含まない緩衝液中でTST−Gαi1タンパク質をプレインキュベートする条件のもと並行して試験を行った。そして、最も良好なハイブリドーマを限界希釈工程でクローニングして、ハイブリドーマクローンを得た。
【0139】
次いで、目的のハイブリドーマクローンをマウスに注射(腹腔内注射)して、腹水中に多量の抗体を産生させることができた。
【0140】
次いで、親和性クロマトグラフィーによってタンパク質Aを含む樹脂を備えたカラム上で抗体を精製した。
【0141】
本発明の方法に用いるために、このようにして得られたモノクローナル抗体を上述の方法などによって蛍光プローブで標識した。
【0142】
材料
●研究した受容体およびGαiタンパク質を発現する細胞膜は、Perkin Elmerから購入した。下記表に、用いた各種試料の細胞株および品番を示す。
【0143】
【表1】
【0144】
●抗Gαi抗体SC13533は、Santa Cruz Biotechnologyから購入した(カタログ番号SC13533)。この抗体は、Gαタンパク質の3つの形態(空のGαタンパク質、GDPに結合した完全なGαタンパク質、およびGTPまたは非加水分解性もしくは低加水分解性GTPに結合した完全なGαタンパク質)に非特異的に結合する。
●DSV36S、DSV3S、DSV39S、DSV26S抗体は、Cisbio Bioassaysにより生成されたものであり、注文に応じてCisbio Bioassaysから入手可能である(それぞれ製品番号DSV36S、DSV3S、DSV39S、DSV26S)。これらの抗体を適合したTR−FRET検出用蛍光プローブ(red−d2受容体またはLumi4Tb供与体)で標識した。ビオチン化ペプチドKB1753は、Cisbio Bioassaysにより生成された。
・DSV36S抗体は、空のGαタンパク質およびGDPの形態に比べて、Gαタンパク質GTPまたは非加水分解性もしくは低加水分解性GTPの形態に特異的に結合する。
・DSV3S抗体は、GDPおよびGTPまたは非加水分解性もしくは低加水分解性GTPの形態に比べて、空のGαタンパク質の形態に特異的に結合する。
・DSV26S抗体は、GDPおよびGTPまたは非加水分解性もしくは低加水分解性GTPの形態に比べて、空のGαタンパク質の形態に特異的に結合する。
・DSV39S抗体は、Gαタンパク質の3つの形態(空のGαタンパク質、GDPに結合した完全なGαタンパク質、およびGTPまたは非加水分解性もしくは低加水分解性GTPに結合した完全なGαタンパク質)に非特異的に結合する。
・ペプチドKB1753は、空のGαタンパク質およびGDPの形態に比べて、Gαタンパク質GTPまたは非加水分解性もしくは低加水分解性GTPの形態に特異的に結合する。
・リガンド対のペプチドKB1753/抗Gαi抗体SC13533は、空のGαタンパク質およびGDPの形態に比べて、Gαタンパク質GTPまたは非加水分解性もしくは低加水分解性GTPの形態に特異的に結合する。
・リガンド対の抗Gαi抗体DSV36S/抗Gαi抗体SC13533は、空のGαタンパク質およびGDPの形態に比べて、Gαタンパク質GTPまたは非加水分解性もしくは低加水分解性GTPの形態に特異的に結合する。
・リガンド対の抗Gαi抗体DSV39S/抗Gαi抗体SC13533は、空のGαタンパク質およびGDPの形態に比べて、Gαタンパク質GTPまたは非加水分解性もしくは低加水分解性GTPの形態に特異的に結合する。
・リガンド対の抗Gαi抗体DSV3S/抗Gαi抗体DSV36Sは、空のGαタンパク質およびGDPの形態に比べて、Gαタンパク質GTPまたは非加水分解性もしくは低加水分解性GTPの形態に特異的に結合する。
・リガンド対の抗Gαi抗体DSV39S/抗Gαi抗体DSV26Sは、Gαタンパク質GDPおよびGTPまたは非加水分解性もしくは低加水分解性GTPの形態に比べて、空のGαタンパク質の形態に特異的に結合する。
●赤色受容体XL665で標識したストレプトアビジンは、Cisbio Bioassaysにより生成された(カタログ番号610SAXLB)。
●GTP、GDP、およびGTPγSヌクレオチドは、Sigma Aldrichから購入した(それぞれカタログ番号G8877、G7127、およびG8634)。
●デルタオピオイドGPCR作動薬SNC162およびデルタオピオイドGPCR拮抗薬ナルトリンドールは、Tocrisから購入した(それぞれカタログ番号1529および0740)。
●384ウェル低容量白色プレート(背面白色)は、Greiner Bio Oneから購入した(カタログ番号784075)。
【0145】
方法
●試薬の調製:
すべての試薬を緩衝液(50mMのTrisHCl、pH7.4、10mMのMgCl
2、10mMのNaCl、0.1%のBSA)で希釈した。膜を4倍調製して1μg/ウェルで分配した(他の仕様は除く)。GDP、GTP、またはGTPγSヌクレオチドおよび試験化合物(作動薬または拮抗薬)を予め混合し、4倍調製して、グラフに記載したウェル中の最終濃度を得た。検出に用いたすべての抗Gαi試薬を4倍調製して、以下のウェル中の最終濃度にした:sdAbs−d2(50nM);抗体SC13533−d2(0.1nM);抗体SC13533−Lumi4Tb(0.25nM);抗体DSV36S−d2(0.1nM);抗体DSV36S−Lumi4Tb(0.25nM);抗体DSV3S−d2(10nM);抗体DSV39S−d2(10nM);抗体DSV26S−Lumi4Tb(0.25nM);ペプチドKB1753−ビオチン(50nM)と組み合わせたストレプトアビジン−XL665(SA−XL)(25nM)(プレートに分配する前に室温で30分間プレインキュベート)。
●384ウェルプレートでの試薬の分配:
・GPCRおよびGタンパク質を発現する膜:5μL
・ヌクレオチド(GDP、GTP、またはGTPγS)±試験化合物(作動薬および/または拮抗薬):5μL
・抗Gαiリガンド−受容体(d2またはXL665):5μL
・抗Gαiリガンド−供与体(Lumi4Tb):5μL
【0146】
非特異的シグナル(バックグラウンド蛍光ノイズ)は、2種の検出試薬(供与体および受容体で標識)のみを含み、他の成分は希釈緩衝液で置き換えたウェルで測定した。
●HTRFシグナルの読取り:
プレートを21℃で3時間または20時間インキュベートし、次いでHTRFシグナルを以下の構成を有するPHERAstarリーダー(BMG Labtech)で測定した。
・モジュール:HTRF(励起:337nm、発光:665nmおよび620nm)
・励起:レーザー、40フラッシュ
・読取りウィンドウ:遅延:60μs−積算:400μs
●シグナル処理:
665nmおよび620nmでの生シグナルから、HTRF比を下記式により算出した。
HTRF比=(665nmでのシグナル/620nmでのシグナル)×10,000
【0147】
試験フォーマット
図3Aは、空のGαタンパク質形態と、GDPに結合した完全なGαタンパク質形態との識別(フォーマット1A)を示す。GPCR作動薬によってGPCRおよびGαタンパク質が活性化された後、RETパートナーで標識された2種のリガンドを用いて、空のGαタンパク質形態の割合の増加が特異的に検出される。GPCRの活性化によりRETシグナルが増加する。
【0148】
図3Bは、GDPに結合した完全なGαタンパク質形態と、空のGαタンパク質形態との識別(フォーマット1B)を示す。GPCR作動薬によってGPCRおよびGαタンパク質が活性化された後、RETパートナーで標識された2種のリガンドを用いて、GDPに結合した完全なGαタンパク質形態の割合の減少(空のGαタンパク質の割合の増加によるもの)が特異的に検出される。GPCRの活性化によりRETシグナルが減少する。
【0149】
図3Cは、空のGαタンパク質形態と、GTPまたはGTPγSに結合した完全なGαタンパク質形態との識別(フォーマット2A)を示す。GPCR作動薬によってGPCRおよびGαタンパク質が活性化された後、RETパートナーで標識された2種のリガンドを用いて、空のGαタンパク質形態の割合の増加が特異的に検出される。GPCRの活性化によりRETシグナルが増加する。
【0150】
図3Dは、GTPまたはGTPγSに結合した完全なGαタンパク質形態と、空のGαタンパク質形態との識別(フォーマット2B)を示す。GPCR作動薬によってGPCRおよびGαタンパク質が活性化された後、RETパートナーで標識された2種のリガンドを用いて、GTPまたはGTPγSに結合した完全なGαタンパク質形態の割合の減少(空のGαタンパク質形態の割合の増加によるもの)が特異的に検出される。GPCRの活性化によりRETシグナルが減少する。
【0151】
実施例1〜4 フォーマット2Bによる活性化試験:TR−FRETパートナーで標識した検出リガンド対を用いたGTPまたはGTPγS形態と空の形態との識別
まず、デルタオピオイドGPCRおよびGαiタンパク質を発現するHEK293細胞膜を用いて、検出リガンド対が、空のGαタンパク質に対してGTPまたはGTPγSに結合した完全なGαタンパク質を特異的に検出する能力を確認した。膜を過剰のGTPγS(10μM)とともにインキュベートして、Gタンパク質にヌクレオチドを積載させるか(GTPγSに結合した完全なGαタンパク質形態)、あるいは緩衝液のみでインキュベートした(空のGαタンパク質形態)。これらの2つの条件で観察されたTR−FRETシグナル(HTRF比)の差から、用いた4つの検出リガンド対(ペプチドKB1753−ビオチン/SA−XL/抗Gαi抗体SC13533−Lumi4Tb(実施例1/
図4A);抗Gαi抗体DSV36S−d2/抗Gαi抗体SC13533−Lumi4Tb(実施例2/
図5A);抗Gαi抗体DSV39S−d2/抗Gαi抗体SC13533−Lumi4Tb(実施例3/
図6A);抗Gαi抗体DSV3S−d2/抗Gαi抗体DSV36S−Lumi4Tb(実施例4/
図7A))によって、GTPγSに結合したGαタンパク質形態と空のGαタンパク質形態とを識別することができることが示された。
【0152】
第二の工程では、同じ膜および検出リガンド対を用いて、GPCR作動薬が空の形態のGαタンパク質の割合を変化させる能力を試験した。デルタオピオイドGPCRおよびGαiタンパク質を発現するHEK293細胞膜をGTPγS(10nM)およびGPCR作動薬(SNC162、濃度を高めていく)とともにインキュベートした。作動薬による刺激によって生成されたTR−FRETシグナル(HTRF比)の減少は、空のGαタンパク質形態の割合が増加したことを意味する。したがって、作動薬により活性化されたGPCR受容体によって、GTPgSがGタンパク質から放出されて、Gタンパク質が空の形態となり、TR−FRETシグナルが減少する。第二の条件では、所定濃度のGPCR作動薬SNC162(10nM)での活性化は、GPCR拮抗薬(ナルトリンドール)の濃度が高くなると阻害された。この活性化の阻害は、TR−FRETシグナル(HTRF比)の増加により観察される。これらの結果を
図4B(実施例1)、
図5B(実施例2)、
図6B(実施例3)、および
図7B(実施例4、ここでは第二の条件は実施しなかった)に示す。
【0153】
実施例5 フォーマット1Aによる活性化試験:TR−FRETパートナーで標識した検出リガンド対を用いた空のGαタンパク質形態とGDPに結合した完全なGαタンパク質形態との識別
まず、デルタオピオイドGPCRおよびGαiタンパク質を発現するHEK293細胞膜を用いて、検出リガンド対が、GDPに結合した完全なGαタンパク質形態に対して空のGαタンパク質形態を特異的に検出する能力を確認した。膜を過剰のGDP(10μM)とともにインキュベートして、Gタンパク質にヌクレオチドを積載させるか(GDPに結合した完全なGαタンパク質形態)、あるいは緩衝液のみでインキュベートした(空のGαタンパク質形態)。これらの2つの条件で観察されたTR−FRETシグナル(HTRF比)の差から、用いた検出リガンド対(抗Gαi抗体DSV39S−d2+抗Gαi抗体DSV26S−Lumi4Tb(
図8A))によって、空のGαタンパク質形態とGDPに結合した完全なGαタンパク質形態とを識別することができることが示された。
【0154】
第二の工程では、同じ膜および同じ検出リガンド対を用いて、GPCR作動薬が空の形態のGタンパク質の割合を変化させる能力を試験した。デルタオピオイドGPCRおよびGαiタンパク質を発現するHEK293細胞膜をGDP(10μM)およびGPCR作動薬(SNC162、濃度を高めていく)とともにインキュベートした。作動薬による刺激によって生成されたTR−FRETシグナル(HTRF比)の増加は、空のGαタンパク質形態の割合が増加したことを意味する。したがって、作動薬により活性化されたGPCR受容体によって、GDPがGタンパク質から放出されて、Gタンパク質が空の形態となり、TR−FRETシグナルが増加する。第二の条件では、所定濃度のGPCR作動薬SNC162(10nM)での活性化は、GPCR拮抗薬(ナルトリンドール)の濃度が高くなると阻害された。この活性化の阻害は、TR−FRETシグナル(HTRF比)の減少により観察される。これらの結果を
図8Bに示す。
【0155】
実施例6 フォーマット2Aによる活性化試験:TR−FRETパートナーで標識した検出リガンド対を用いた空の形態とGTPまたはGTPγS形態との識別
まず、デルタオピオイドGPCRおよびGαiタンパク質を発現するHEK293細胞膜を用いて、検出リガンド対が、GTPまたはGTPγSに結合した完全なGαタンパク質形態に対して空のGαタンパク質形態を特異的に検出する能力を確認した。膜を過剰のGTPγS(10μM)とともにインキュベートして、Gタンパク質にヌクレオチドを積載させるか(GTPγSに結合した完全なGαタンパク質形態)、あるいは緩衝液のみでインキュベートした(空のGαタンパク質形態)。これらの2つの条件で観察されたTR−FRETシグナル(HTRF比)の差から、用いた検出リガンド対(抗Gαi抗体DSV39S−d2+抗Gαi抗体DSV26S−Lumi4Tb(
図9A))によって、空のGαタンパク質形態とGTPγSに結合した完全なGαタンパク質形態とを識別することができることが示された。
【0156】
第二の工程では、同じ膜および同じ検出リガンド対を用いて、GPCR作動薬が空の形態のGタンパク質の割合を変化させる能力を試験した。デルタオピオイドGPCRおよびGαiタンパク質を発現するHEK293細胞膜をGTPγS(10nM)およびGPCR作動薬(SNC162、濃度を高めていく)とともにインキュベートした。作動薬による刺激によって生成されたTR−FRETシグナル(HTRF比)の増加は、空のGαタンパク質形態の割合が増加したことを意味する。したがって、作動薬により活性化されたGPCR受容体によって、GTPgSがGタンパク質から放出されて、Gタンパク質が空の形態となり、TR−FRETシグナルが増加する。第二の条件では、所定濃度の作動薬SNC162(10nM)での活性化は、GPCR拮抗薬(ナルトリンドール)の濃度が高くなると阻害される。この活性化の阻害は、TR−FRETシグナル(HTRF比)の減少により観察される。これらの結果を
図9Bに示す。
【0157】
実施例7 各種GPCRおよび細胞株での活性化試験の検証(フォーマット2Bの場合:TR−FRETパートナーで標識した検出リガンド対のペプチドKB1753−ビオチン/SA−XL/抗Gαi抗体SC13533−Lumi4Tbを用いたGTPまたはGTPγSに結合した完全なGαタンパク質形態と空のGαタンパク質形態との識別)
4つの異なるGPCR(デルタオピオイド、ガラニンR1、NOP、5HT1A)および2つの異なる細胞株(HEK293およびCHO−K1)に対して活性化の検出の原理を検証した。
【0158】
一方においては、デルタオピオイド、GALR1(ガラニン受容体)、NOP(ノシセプチン受容体)、または5HT1A GPCRおよびGαiタンパク質を発現するHEK293細胞の膜(10μg/ウェル)を、GTPγS(100nM)のみで、あるいはそれを所定の飽和濃度(1μM)の受容体作動薬(それぞれSNC162、ガラニン、ノシセプチン、およびセロトニン)と組み合わせたものとともにインキュベートした。これら4種のGPCRについて、受容体作動薬による刺激によって生成されたTR−FRETシグナル(HTRF比)の減少は、空のGαタンパク質形態の割合が増加したことを意味する。したがって、作動薬により活性化されたGPCR受容体によって、GTPgSがGタンパク質から放出されて、Gタンパク質が空の形態となり、TR−FRETシグナルが減少する。膜をGTPγSのみでインキュベートする条件のもとでの一方の受容体と他方の受容体とのシグナルの差は、各種膜標本でのGαiタンパク質の発現量の差によって説明される。同様に、各種GPCRで観察されたシグナル変化の振幅の差は、Gαiタンパク質またはGPCRの発現量の差によるものであり得る。
【0159】
他方においては、デルタオピオイドGPCRおよびGαiタンパク質を発現するHEK293またはCHO−K1細胞の膜(10μg/ウェル)を、GTPγS(100nM)のみで、あるいはそれを所定の飽和濃度(1μM)の受容体作動薬(SNC162)と組み合わせたものとともにインキュベートした。いずれの細胞株でも、作動薬による刺激によって生成されたTR−FRETシグナル(HTRF比)の減少は、空のGタンパク質形態の割合が増加したことを意味する。したがって、作動薬により活性化されたGPCR受容体によって、今度はGタンパク質が活性化されて、Gタンパク質が空の形態になり、TR−FRETシグナルが低下する。
【0160】
これらの結果を
図10に示す。
【0161】
実施例8 検出リガンド対の抗Gαi抗体DSV39S−d2+抗Gαi抗体DSV26S−Lumi4Tbを用いたフォーマット2Aによる活性化試験(空のGαタンパク質形態とGTPまたはGTPγSに結合した完全なGαタンパク質形態との識別)でのGTPγSとGTPとの比較
デルタオピオイドGPCRおよびGαiタンパク質を発現するHEK293細胞の膜(1μg/ウェル)を、GTPγSまたはGTP(50、1000、または20000nM)のみで、あるいはそれを所定の飽和濃度(1μM)のGPCR作動薬(SNC162)と組み合わせたものとともにインキュベートした。ヌクレオチドGTPγSおよびGTPのいずれでも、作動薬による刺激によって生成されたTR−FRETシグナル(HTRF比)の増加は、空のGタンパク質形態の割合が増加したことを意味する。したがって、作動薬により活性化されたGPCR受容体によって、GTPまたはGTPgSがGタンパク質から放出されて、Gタンパク質が空の形態となり、TR−FRETシグナルが増加する。いずれの条件(GTPγSおよびGTP)も作動薬によるGPCRの活性化の検出に有効である場合、GTPγSで観察されるシグナル変化の振幅は、GTPの場合よりも著しく良好である。このシグナル変化の振幅の差は、GTPに結合した完全なGαタンパク質形態の不安定さ(すなわち、GTPのGDPへの加水分解)により説明される。
【0162】
これらの結果を
図11に示す。
【0163】
実施例9 フォーマット2Bによる活性化試験:TR−FRETパートナーで標識した抗体対(抗Gαi抗体SC13533−d2/抗Gαi抗体DSV36S−Lumi4Tb)を用いた完全なGαi形態(GTPまたはGTPγS)と空のGαi形態との識別
まず、デルタオピオイドGPCRおよびGαiタンパク質を発現するHEK293細胞膜を用いて、検出リガンド対が、空のGαタンパク質に対してGTPまたはGTPγSに結合した完全なGαタンパク質を特異的に検出する能力を確認した。膜を過剰のGTPγS(10μM)とともにインキュベートして、Gαタンパク質にヌクレオチドを積載させるか(GTPγSに結合した完全なGαタンパク質形態)、あるいは緩衝液のみでインキュベートした(空のGαタンパク質形態)。これらの2つの条件で観察されたTR−FRETシグナル(HTRF比)の差から、用いた検出リガンド対(抗Gαi抗体DSV36S−Lumi4Tb/抗Gαi抗体SC13533−d2)によって、GTPγSに結合したGαタンパク質形態と空のGαタンパク質形態とを識別することができることが示された(
図12A)。
【0164】
第二の工程では、同じ膜および検出リガンド対を用いて、GPCR作動薬が空の形態のGαタンパク質の割合を変化させる能力を試験した。
【0165】
第一の条件では、デルタオピオイドGPCRおよびGαiタンパク質を発現するHEK293細胞膜をGTPγS(10nM)およびGPCR作動薬(SNC162、濃度を高めていく)とともにインキュベートした。作動薬による刺激によって生成されたTR−FRETシグナル(HTRF比)の減少は、空のGαタンパク質形態の割合が増加したことを意味する。したがって、作動薬により活性化されたGPCR受容体によって、GTPgSがGタンパク質から放出されて、Gタンパク質が空の形態となり、TR−FRETシグナルが減少する。
【0166】
第二の条件では、デルタオピオイドGPCRおよびGαiタンパク質を発現するHEK293細胞膜をGTPγS(10nM)、所定濃度のGPCR作動薬SNC162(10nM)、およびGPCR拮抗薬(ナルトリンドール、濃度を高めていく)とともにインキュベートした。したがって、作動薬による活性化は、拮抗薬の濃度が高くなると阻害される。この活性化の阻害は、TR−FRETシグナル(HTRF比)の増加により観察された。
【0167】
結果を
図12Bに示す。
【0168】
実施例10 フォーマット2Bによる活性化試験:TR−FRETパートナーで標識したリガンド対を用いた完全なGαi形態(GTPまたはGTPγS)と空のGαi形態との識別
以下の8つのリガンド対を用いた。
・抗Gαi sdAb F11(配列番号2)/抗Gαi抗体SC13533;
・抗Gαi sdAb F4(配列番号3)/抗Gαi抗体SC13533;
・抗Gαi sdAb G6(配列番号4)/抗Gαi抗体SC13533;
・抗Gαi sdAb B11(配列番号5)/抗Gαi抗体SC13533;
・抗Gαi sdAb F9(配列番号6)/抗Gαi抗体SC13533;
・抗Gαi sdAb G7(配列番号7)/抗Gαi抗体SC13533;
・抗Gαi sdAb A10(配列番号8)/抗Gαi抗体DSV36S;
・抗Gαi sdAb E2(配列番号9)/抗Gαi抗体SC13533。
【0169】
まず、デルタオピオイドGPCRおよびGαiタンパク質を発現するHEK293細胞膜を用いて、リガンド対が、空のGαiタンパク質に対してGTPまたはGTPγSに結合した完全なGαiタンパク質を特異的に検出する能力を確認した。膜を過剰のGTPγS(10μM)とともにインキュベートして、Gαタンパク質にヌクレオチドを積載させるか(GTPγSに結合した完全なGαタンパク質形態)、あるいは緩衝液のみでインキュベートした(空のGαタンパク質形態)。これらの2つの条件で観察されたTR−FRETシグナル(HTRF比)の差から、用いた8つの検出リガンド対によって、GTPγSに結合した完全なGαタンパク質形態と空のGαタンパク質形態とを識別することができることが示された(抗Gαi sdAb F11−d2/抗Gαi抗体SC13533−Lumi4Tb(
図13A);抗Gαi sdAb F4−d2/抗Gαi抗体SC13533−Lumi4Tb(
図14A);抗Gαi sdAb G6−d2/抗Gαi抗体SC13533−Lumi4Tb(
図15A);抗Gαi sdAb B11−d2/抗Gαi抗体SC13533−Lumi4Tb(
図16A);抗Gαi sdAb F9−d2/抗Gαi抗体SC13533−Lumi4Tb(
図17A);抗Gαi sdAb G7−d2/抗Gαi抗体SC13533−Lumi4Tb(
図18A);抗Gαi sdAb A10−d2/抗Gαi抗体DSV36S−Lumi4Tb(
図19A);抗Gαi sdAb E2−d2/抗Gαi抗体SC13533−Lumi4Tb(
図20A))。
【0170】
第二の工程では、デルタオピオイドGPCRおよびGαiタンパク質を発現するHEK293細胞膜および上記8つのリガンド対を用いて、空の形態のGαタンパク質の割合を測定することにより、GPCR作動薬がGPCRの活性化を変化させる能力を試験した。
【0171】
第一の条件では、膜をGTPγS(10nM)およびGPCR作動薬(SNC162、濃度を高めていく)とともにインキュベートした。作動薬による刺激によって生成されたTR−FRETシグナル(HTRF比)の減少は、空のGαタンパク質形態の割合が増加したことを意味する。作動薬により活性化されたGPCR受容体によって、GTPgSがGαタンパク質から放出されて、Gαタンパク質が空の形態となり、TR−FRETシグナルが減少する。
【0172】
第二の条件では、膜をGTPγS(10nM)、所定濃度のGPCR作動薬SNC162(10nM)、およびGPCR拮抗薬(ナルトリンドール、濃度を高めていく)とともにインキュベートした。したがって、作動薬による活性化は、拮抗薬の濃度が高くなると阻害される。この活性化の阻害は、TR−FRETシグナル(HTRF比)の増加により観察された。
【0173】
結果を
図13B、
図14B、
図15B、
図16B、
図17B、
図18B、および
図19B(
図19Bでは、第二の条件は実施しなかった)に示す。