(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-528726(P2020-528726A)
(43)【公表日】2020年9月24日
(54)【発明の名称】超音波モータの閉ループ運動制御方法
(51)【国際特許分類】
H02N 2/06 20060101AFI20200828BHJP
【FI】
H02N2/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2020-503936(P2020-503936)
(86)(22)【出願日】2018年7月25日
(85)【翻訳文提出日】2020年3月23日
(86)【国際出願番号】EP2018070096
(87)【国際公開番号】WO2019020658
(87)【国際公開日】20190131
(31)【優先権主張番号】17183131.6
(32)【優先日】2017年7月25日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】505257752
【氏名又は名称】フィジック インストゥルメント(ピーアイ)ゲーエムベーハー アンド ツェーオー.カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コッツ,ブルハネッティン
(72)【発明者】
【氏名】デリバス,ビュレント
【テーマコード(参考)】
5H681
【Fターム(参考)】
5H681AA18
5H681BB02
5H681CC02
5H681DD23
5H681DD30
5H681FF24
5H681FF25
5H681FF30
5H681FF33
5H681FF36
5H681FF38
(57)【要約】
本発明は、超音波モータの閉ループ運動制御のための方法に関し、前記超音波モータは、摩擦手段、少なくとも1つの励振電極および少なくとも1つの共通電極を含む少なくとも1つのアクチュエータを備え、前記超音波モータは、さらに、駆動対象要素、コントローラ、ならびにアクチュエータの電極に印加される少なくとも第1の励振電圧U
1および第2の励振電圧U
2を生成し、それによって、アクチュエータの振動を生じさせるための少なくとも1つの発電機を備え、アクチュエータの摩擦手段は、その振動により、駆動対象要素に断続的に接触し、それによって、駆動対象要素に駆動力を生じさせ、前記方法は、前記少なくとも2つの励振電圧U
1およびU
2に異なる周波数を与えるステップを備え、U
1の周波数はアクチュエータの第1の共振周波数に対応し、U
2の周波数は、アクチュエータの第2の共振周波数に対応し、U
1とU
2との周波数差は、コントローラのサーボサンプリング周波数から最大5kHz逸脱しており、前記方法はさらに、少なくとも2つの励振電圧U
1およびU
2をアクチュエータの電極に同時に印加するステップを備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波モータの位置フィードバックを伴う閉ループ運動制御のための方法であって、前記超音波モータは、摩擦手段(2)、少なくとも1つの励振電極(3)および少なくとも1つの共通電極(4)を含む少なくとも1つのアクチュエータ(1)を備え、前記超音波モータは、さらに、駆動対象要素(5)、コントローラ、ならびに前記アクチュエータの前記電極に印加される少なくとも第1の励振電圧U1および第2の励振電圧U2を生成し、それによって、前記アクチュエータの振動を生じさせるための少なくとも1つの発電機(6)を備え、前記アクチュエータの前記摩擦手段は、その振動により、前記駆動対象要素に断続的に接触し、それによって、前記駆動対象要素に駆動力を生じさせ、前記方法は、前記少なくとも2つの励振電圧U1およびU2に異なる周波数を与えるステップを備え、U1の周波数は前記アクチュエータの第1の共振周波数に対応し、U2の周波数は、前記アクチュエータの第2の共振周波数に対応し、U1とU2との周波数差は、前記コントローラのサーボサンプリング周波数から最大5kHz逸脱しており、前記方法はさらに、前記少なくとも2つの励振電圧U1およびU2を前記アクチュエータの前記電極に同時に印加するステップを備える、超音波モータの位置フィードバックを伴う閉ループ運動制御のための方法。
【請求項2】
前記少なくとも2つの交流励振電圧U1およびU2は、正弦波形、矩形波形または三角波形を有し、その結果生じる前記摩擦手段の運動が、異なる振幅および周波数を有する2つの正弦波三角関数成分を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも2つの交流励振電圧U1およびU2は、U1=A1sin(ω1t+φ1)およびU2=A2sin(ω2t+φ2)の正弦波を有し、A1およびA2は振幅であり、ω1およびω2は角周波数であり、φ1およびφ2は電圧信号の位相角であることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記周波数差は15kHzと25kHzとの間の範囲にあることを特徴とする、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つのアクチュエータは矩形の圧電板であることを特徴とする、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記アクチュエータは、その主面の一方に少なくとも2つの励振電極(3)を有し、他方の主面に少なくとも1つの共通電極(4)を有し、前記第1の励振電圧U1は前記励振電極(3)の少なくとも1つに印加され、前記第2の励振電圧U2は他の励振電極(3)の少なくとも1つに同時に印加され、前記共通電極(4)は接地されていることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記アクチュエータは、その主面の一方に少なくとも2つの励振電極(3)を有し、他方の主面に少なくとも1つの共通電極(4)を有し、前記第1の励振電圧U1は前記励振電極(3)の少なくとも1つに印加され、前記第2の励振電圧U2は他の励振電極(3)の少なくとも1つに同時に印加され、前記少なくとも1つの共通電極(4)は、前記第1の励振電圧U1または前記第2の励振電圧U2に対して180°の位相差を有する第3の励振電圧U3を印加されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記超音波モータは少なくとも2つのアクチュエータ(1)を備え、前記少なくとも2つのアクチュエータは少なくとも1つの結合要素(7)によって結合されることを特徴とする、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記摩擦手段(2)は少なくとも1つの結合要素(7)を構成することを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記超音波モータは2つのアクチュエータ(1)を備え、前記第1の励振電圧U1は前記2つのアクチュエータの一方に印加され、前記第2の励振電圧U2は他方のアクチュエータに印加されることを特徴とする、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
生体医用装置またはロボットアームまたは医療手術または顕微鏡検査段階における超音波モータの閉ループ運動制御のための、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法の使用。
【請求項12】
摩擦手段(2)、少なくとも1つの励振電極(3)および少なくとも1つの共通電極(4)を含む少なくとも1つのアクチュエータ(1)を備える超音波モータであって、前記超音波モータは、さらに、駆動対象要素(5)、位置フィードバックを伴う閉ループ運動のためコントローラ、ならびに前記アクチュエータの前記電極に同時に印加される少なくとも第1の励振電圧U1および第2の励振電圧U2を生成し、それによって、前記アクチュエータの振動を生じさせるための少なくとも1つの発電機(6)をさらに備え、前記アクチュエータの前記摩擦手段は、その振動により、前記駆動対象要素に断続的に接触し、それによって、前記駆動対象要素に駆動力を生じさせ、前記少なくとも2つの励振電圧U1およびU2は異なる周波数を有し、U1の周波数は前記アクチュエータの第1の共振周波数に対応し、U2の周波数は、前記アクチュエータの第2の共振周波数に対応し、U1とU2との周波数差は、前記コントローラのサーボサンプリング周波数から最大5kHz逸脱している、超音波モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1〜10に記載の超音波モータの閉ループ運動制御のための方法を含む。
【背景技術】
【0002】
圧電または電歪または磁歪材料で作られた1つまたは複数のアクチュエータを備えた超音波モータ(UM)は、それらの特定の利点のため、電磁駆動のような従来の駆動要素に取って代わりつつある。これに関連して、UMはバックラッシュがないため、サブナノメートルの範囲ではるかに高い位置決め精度を達成できる。さらに、UMは、よりコンパクトになるように、電磁システムよりも少ない部品で設計および構築できる。その上、UMはエネルギー消費がより少なく、その効率は寸法によって劇的に変化しない。UMを用いると、ギアアセンブリなどの機械的システムを必要としない直接作動が可能である。前述のUMの電磁駆動に対する利点に加えて、UMは非常に動的な駆動である。
【0003】
一般に、UMを使用した運動は、振動子またはアクチュエータ(固定子)と、駆動される本体または要素(回転子または摺動子)との間の摩擦相互作用によって生成される。回転子または摺動子の最初の運動を起こすために超えるべき電圧レベルのしきい値である非線形性または不感帯が常にあり、つまり、離脱力またはトルクを克服する必要がある。固定子と回転子との接触面間に存在する接触摩擦は、非常に非線形の現象である。さらに、前記不感帯に関して方向対称性はなく、不感帯の境界の位置は予測不能であり、それは電圧速度特性に関して非線形性およびヒステリシスを引き起こす。係合面の静止摩擦特性と動摩擦特性との間の違いは、前述の非線形性をさらに悪化させる。
【0004】
離脱力に打ち勝つための電圧は、線形制御機構のオフセット値で補償できる。精密ステージで追従する高精度の軌道を得るためにさまざまな制御概念がある。それでも、UMは、摩擦値が静的から動的に、またはその逆に変化する混合摩擦領域において、さまざまな速度で、小さな動きで精密に駆動することができなかった。特に低速度での精密で滑らかな動きは、特に生体医用装置、ロボットアーム、医療手術および顕微鏡検査段階で要求される。動作中におけるノイズのない作動は、上記の用途の前提条件である。特に低速駆動でのこの非線形特性は、高い位置決め誤差を伴う不連続なスティックスリップ運動だけでなく、不快な可聴きしみ音およびノイズとも常に関連付けられる。低速での振動数が、質量、バネ、ダンパを伴うピエゾモータシステムの固有振動数と一致する場合、音響音は特に大きくなる。
【0005】
US2006250047A1は、2つの駆動電極または端子を有する圧電モータの開ループ低速駆動方法を開示している。ここでは、2つの活性端子を同相の2つの信号で励振することによって第1の振動モードが生成され、2つの活性端子を逆相の2つの信号で励振することによって第2の振動モードが生成される。ゆっくりとした運動を得るために、同相で同じ周波数を有する電圧信号で、両方の端子が同時に励振され、それによって各端子へと流れる電流の大きさが変わる。
【0006】
共振周波数またはその近くで動作する圧電素子の場合、圧電素子で発生する振動の大きさは、圧電素子へと流れる電流に比例する。各端子に流れる電流を変えることにより、各側の振動振幅、したがって摩擦先端での斜め運動の方向を調整できる。斜め運動の方向は、モータの速度に比例して変化している。要求に応じて、低速が必要な場合、一方の端子へと流れる電流は、もう一方の端子と比較してわずかな差で選択され、生成される斜め運動の方向は90度に近くなる。速い速度が必要な場合、斜め運動の角度は、摺動子要素に対して45度付近になるように選択され、これは、一方の端子へと流れる電流が他方の端子と比較して大きな差で選択されることを意味する。しかしながら、動いている摺動子要素にほぼ垂直な振動運動があると、プッシュプル力やトルクなどのモータ性能が低下し、機械的振動が発生して不快な可聴ノイズが発生する。
【0007】
2つの別個の電源からの周期的な制御電圧が供給される2つの駆動電極を備えた圧電モータの閉ループ運動制御の方法がUS 6 747 391 B1から公知であり、この方法においては、より高い性能およびよりよい制御性を得るために2つの振動モードが圧電アクチュエータに適用される。ここでは、単一源方形波入力を圧電アクチュエータにロードして、高調波から同時に2つの共振モードを捕える。しかしながら、前記圧電モータの特に低速度での精度は低い。
【0008】
したがって、本発明の課題は、低速度において、位置決め精度が改善され、大きなノイズが発生しない、超音波モータの閉ループ運動制御のための方法を提供することである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題は、請求項1に記載の方法により解決され、後続の従属請求項は、本発明の少なくとも適切な実施形態を記載する。
【0010】
位置フィードバックを伴う閉ループ運動制御のための本発明の方法は、摩擦手段または摩擦部、少なくとも1つの励振電極および少なくとも1つの共通電極を含む、圧電材料または電歪材料または磁歪材料で形成された少なくとも1つのアクチュエータを備える超音波モータを対象とし、超音波モータは、加えて、駆動対象要素を備える。超音波モータは、コントローラ、ならびにアクチュエータの電極に同時に印加される少なくとも第1の励振電圧U
1および第2の励振電圧U
2を生成し、それによりアクチュエータの振動を生成するための少なくとも1つの発電機をさらに備え、アクチュエータの摩擦手段は、その振動により、駆動対象要素に断続的に接触し、それによって、駆動対象要素に駆動力を生じさせる。
【0011】
そのような超音波モータの本発明の方法は、少なくとも1つの発電機によって生成される前記少なくとも2つの励振電圧U
1およびU
2に異なる周波数を与えるステップを備え、U
1の周波数はアクチュエータの第1の共振周波数に対応し、U
2の周波数は、アクチュエータの第2の共振周波数に対応し、U
1とU
2との周波数差は、コントローラのサーボサンプリング周波数から最大5kHz逸脱しており、上記方法はさらに、前記少なくとも2つの励振電圧U
1およびU
2をアクチュエータの電極に同時に印加するステップを備える。
【0012】
UMの公知の閉ループ運動制御は、一般に、1秒間に実行されるサーボサイクル数である一定のサーボサンプリング周波数で動作する。エンコーダからフィードバック(位置フィードバック)を読み取った後、コントローラは、各サーボサイクルまたはサーボサンプリング期間の始まりで、比例積分微分(PID)などの制御アルゴリズムを用いて、指令された位置に従って駆動信号または電圧を再計算および調整することにより、UMの新しい位置に応答する。UMは、調整された駆動信号で、この位置変化に応答する。コントローラは次のフィードバックを受信する準備が整い、位置制御サイクルが繰り返される。
【0013】
UMは通常40kHzから500kHzの範囲の共振周波数で動作し、UMに使用される一般的なモーションコントローラは10kHzから20kHzのサーボサンプリング周波数を有するため、アクチュエータおよびその摩擦手段はモーションコントローラの1つのサーボサンプリング期間の動作周波数で3から10回振動する。たとえば、1つのサーボサンプリング期間内の最初の振動が静止摩擦力を超え、回転子または摺動子を動かすと仮定する。摺動子が動き始めると、同じサーボサンプリング期間内の後続の振動により、摺動子のさらなる運動が生ずる。ここで、サーボサンプリング期間の終わりでの動きの量は、指令された位置よりも(過度に)大きい可能性が高い。摩擦の非線形性のため、動きの量は予測できない。この問題は、特に低速では、摺動子の位置決め精度に深刻な影響を及ぼしさえする。
【0014】
本発明によれば、UMは、アクチュエータの2つの異なる共振周波数で少なくとも2つの固有振動数モードを励振するために、少なくとも1つの発電機によって生成される少なくとも2つの励振電圧U
1およびU
2を用いる方法によって動作する。アクチュエータの励振された2つの共振周波数により、アクチュエータの振動が変調され、アクチュエータまたはアクチュエータに取り付けられた摩擦手段の混合振動が得られる。結果として生じる摩擦手段の運動(摩擦手段が断続的に接触する駆動対象要素の動きまたは運動の原因となる)は、振幅および周波数が変化する2つの三角関数成分を有する。したがって、摩擦手段の運動方向は時間に関して変動する。前述の特定の振動は、アクチュエータまたはその摩擦手段と駆動対象要素との接触面での摩擦の非線形性を抑制する。
【0015】
励振電圧U
1とU
2との周波数差はサーボサンプリング周波数値に類似しているため、つまりU
1とU
2との間の周波数差はコントローラのサーボサンプリング周波数から最大5kHz逸脱しているため、離脱摩擦レベルを丁度超えるUMの加速は1つの閉ループ制御されるサンプリング時間(サーボループまたはサーボサイクル)内で完全に制御され得る。
【0016】
本発明の方法は、サーボループまたはサーボサイクルのサンプリング周波数に類似する2つの異なる励振周波数で少なくとも2つの共振モードを利用するため、特に低速領域でのUMの動きは1つのサーボサイクルで制御できる。アクチュエータまたは摩擦手段の運動は、単一のサーボサイクルで開始および終了できる。共振モードの少なくとも1つは高性能作動に関与する一方で、少なくとも1つの他のモードは摩擦非線形性を補償する。その結果、低速でのUMの位置決め精度が大幅に向上する。圧電板の形状、剛性、および質量に依存する2つの固有振動数間の差は、可聴範囲内にない(つまり、15kHzを超える)。
【0017】
単一のサーボサイクルで運動を開始および終了できるという上記の事実により、UMの制御性は簡素化および向上される。1つのサーボサイクルから次のサーボサイクルへの電圧変動が低減されるため、広範囲の速度に対して必要な適応パラメータが少なくなる。
【0018】
本発明の方法はさらに、先行技術による駆動方法で摩擦により誘導される振動およびノイズの主な理由である単一のサーボサイクルにおける平均加速度の値を低減する。
【0019】
単純な軌道だけでなく、円、円弧、楕円などの複雑なパターンの位置および速度プロファイルも、本発明の駆動方法を適用することにより、最小限の追跡誤差および輪郭誤差で辿ることができる。一方、PIDのような線形制御アルゴリズムでの動的なステップ安定化特性での高精度の走査パターンも実行できる。
【0020】
少なくとも2つの交流励振電圧U
1およびU
2が正弦波形、矩形波形、または三角波形を有し、その結果生じる摩擦手段の動きが異なる振幅および周波数を有する2つの正弦波三角関数成分を有する場合、有利となり得る。正弦波形の場合、少なくとも2つの交流励振電圧U
1およびU
2をU
1=A
1sin(ω
1t+φ
1)およびU
2=A
2sin(ω
2t+φ
2)で表現でき、A
1およびA
2が振幅であり、ω
1およびω
2が角周波数であり、φ
1およびφ
2が電圧信号の位相角である場合、有利である。
【0021】
励振電圧間の周波数差が15kHzから25kHzの範囲にある場合も有利であり得る。
【0022】
さらに、少なくとも1つのアクチュエータが矩形の圧電板である場合、有利であり得る。ここで、アクチュエータは、その主面の一方に少なくとも2つの励振電極を、その主面の他方に少なくとも1つの共通電極を有し、第1の励振電圧U
1は励振電極の少なくとも1つに印加され、第2の励振電圧U
2は、他の励振電極の少なくとも1つに印加され、共通電極は接地されていることが好ましくてもよい。
【0023】
しかしながら、アクチュエータは、その主面の一方に少なくとも2つの励振電極を有し、他方の主面に少なくとも1つの共通電極を有し、第1の励振電圧U
1は励振電極の少なくとも1つに印加され、第2の励振電圧U
2は他の励振電極の少なくとも1つに同時に印加され、少なくとも1つの共通電極は、第1の励振電圧U
1または第2の励振電圧U
2に対して180°の位相差を有する第3の励振電圧U
3を印加されることが好ましくてもよい。
【0024】
矩形の圧電板の「主面」という前述の表現は、最大寸法、すなわち最大面積を有する圧電板の表面を表す。
【0025】
超音波モータが少なくとも2つのアクチュエータを備え、少なくとも2つのアクチュエータは少なくとも1つの結合要素によって結合されることが有益であり得る。ここで、第1の励振電圧U
1が2つのアクチュエータの一方に印加され、第2の励振電圧U
2が他方のアクチュエータに印加されることが有用であることが判明する場合がある。少なくとも2つのアクチュエータが2つの結合要素によって結合または接続され、結合要素の1つが摩擦手段によって構築されていることも有用であることが判明する場合もある。
【0026】
第2の励振信号の電圧が第1の励振信号の電圧よりも低いことは有益であり得る。第2の励振信号の電圧値はモータ速度に反比例することが観察される。したがって、第2の電極の電圧レベルはモータ速度に合わせて調整されることができる。
【0027】
以下、添付図面を参照して本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】UMの駆動対象要素の時間に対する位置または運動それぞれを示す図であり、駆動対象要素の運動は、先行技術に従って0.2mm/sの速度でPID閉ループ制御される図である。
【
図2】動作中にUMのアクチュエータの摩擦手段に作用する力の模式図である。
【
図3】
図1に従って駆動対象要素のPID閉ループ制御された運動を伴う、UMのアクチュエータの時間に対する力を示す図である。
【
図4】UMの駆動対象要素の時間に対する位置または運動を示す図であり、駆動対象要素の運動は、先行技術に従って0.6mm/sの速度でPID閉ループ制御される図である。
【
図5】
図4に従って駆動対象要素のPID閉ループ制御された運動を伴う、UMのアクチュエータの時間に対する力を示す図である。
【
図6】本発明の駆動方法の適用のためのUMのアクチュエータの電気的接続の実施形態を示すブロック図である。
【
図7】UMの駆動対象要素の時間に対する位置を示す図であって、駆動対象要素の運動は、本発明に従って0.2mm/sの速度で閉ループ制御される図である。
【
図8】
図7に従って駆動対象要素の閉ループ制御された運動を伴う、UMのアクチュエータの時間に対する力を示す図である。
【
図9】UMの駆動対象要素の時間に対する位置または運動を示す図であって、駆動対象要素の運動は、本発明に従って0.6mm/sの速度で閉ループ制御される図である。
【
図10】
図9に従って駆動対象要素の閉ループ制御された運動を伴う、UMのアクチュエータの時間に対する力を示す図である。
【
図11】後続の2つのサーボサイクルにわたる駆動対象要素の、本発明の閉ループ制御された運動を伴う、UMのアクチュエータの時間に対する力を示す図である。
【
図12】
図11に従って、後続の2つのサーボサイクルにわたる駆動対象要素の、本発明の閉ループ制御された運動を伴う、UMのアクチュエータの時間に対する加速度を示す図である。
【
図13】後続の2つのサーボサイクルにわたる駆動対象要素の、本発明の閉ループ制御された運動、および印加電圧間の位相差を伴う、UMのアクチュエータの時間に対する力を示す図である。
【
図14】
図13に従って、後続の2つのサーボサイクルにわたる駆動対象要素の、本発明の閉ループ制御された運動、および印加電圧間の位相差を伴う、UMのアクチュエータの時間に対する加速度を示す図である。
【
図15】2つの共振周波数または固有振動数を示すUMのアクチュエータのインピーダンス図である。
【
図16】本発明の駆動方法を適用し、アクチュエータの2つの固有振動数を励振している間の、
図14によるアクチュエータの摩擦手段の運動軌跡を示す。
【
図17】後続の2つのサーボサイクルにわたる駆動対象要素の、本発明の閉ループ制御された運動を伴い、印加励振電圧の一方が他方の励振電圧と比較して低減されたレベルを有する、UMのアクチュエータの時間に対する力を示す図である。
【
図18】
図17に従って後続の2つのサーボサイクルにわたる駆動対象要素の、本発明の閉ループ制御された運動を伴う、UMのアクチュエータの時間に対する加速度を示す図である。
【
図19】本発明の駆動方法の適用のための、UMのアクチュエータの電気的接続の実施形態を示すブロック図である。
【
図20】2つのアクチュエータを有する本発明の駆動方法の適用を意図したUMの実施形態である。
【
図21】本発明の駆動方法の適用のための、
図20によるUMのアクチュエータの電気的接続の実施形態を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、圧電UMの駆動対象要素の時間に対する位置または運動それぞれを示す図であり、駆動対象要素の運動は、先行技術に従って0.2mm/sの速度でPID閉ループ制御される図である。駆動対象要素の運動の非線形応答が、
図1から明確に認識でき、
図1では、駆動対象要素は、ジグザグパターン、つまり駆動対象要素の運動段階(ここでは、駆動対象要素の運動が生ずる)と運動のない非運動段階との繰り返しシーケンスでのみ、指令された位置軌道を追跡し得る。
【0030】
図2は、動作中にUMのアクチュエータの摩擦手段に作用する力を説明する概略図である。摩擦手段(ここではアクチュエータの側面に取り付けられた摩擦要素によって実現される)に作用する2つの外力がある:1つは、摩擦要素が取り付けられた側面にほぼ垂直な動作方向を有する法線力Nであり、1つは、摩擦対摩擦要素‐駆動対象要素により規定される摩擦力F
fであり、摩擦力F
fは、摩擦要素が取り付けられる側面に実質的に平行な動作方向を有する。
【0031】
アクチュエータの励振により、アクチュエータは周期的な変形を行い、それは摩擦要素に伝達され、その結果、動作方向が摩擦力F
fの動作方向と逆平行であるアクチュエータ力または駆動力F
acxをもたらす。
【0032】
さらに、励振はアクチュエータの周期的な変形をもたらし、その結果、動作方向が法線力の動作方向に平行な追加のアクチュエータ力F
acyが生じる。前記アクチュエータ力F
acyは一定値であり、法線力の大きさを低減し、それにより摩擦力も低減する。
【0033】
図3は、
図1の方法および速度で駆動される圧電UMの圧電アクチュエータの時間に対する力を示す図を示す。t=0sから開始して、アクチュエータ力F
acxは、摩擦対摩擦手段(駆動対象要素)によって決定される静止摩擦レベルに達するまで線形に上昇し、その後大幅に低下する。静止摩擦レベルに初めて到達する前は、対時間曲線位置が水平に走る
図1の対応する時間間隔からわかるように、駆動対象要素の運動はない。アクチュエータ力が静止摩擦レベルに達すると、それはすぐに低下し、動摩擦レベルの下限値を下回る。アクチュエータの力F
acxの値が動摩擦レベルを超えている限り、駆動対象要素の運動が存在する。
【0034】
アクチュエータ力が動摩擦レベルを下回ると、駆動対象要素はその運動を停止する。その後、アクチュエータの力が再び上昇し、アクチュエータの力F
acxが静止摩擦レベルに達すると、駆動対象要素のさらなる運動が再び開始され、その後、アクチュエータの力は直ちに低下する。繰り返すが、駆動対象要素の運動は、アクチュエータの力が動摩擦レベルを下回るまでのみ存在する。
【0035】
アクチュエータ力の前述の時間に対する挙動は数回繰り返され、つまり、アクチュエータ力F
acxは、静止摩擦レベルに達するたびに直ちに低下して、動摩擦レベルを下回る値に低下し、その後静止摩擦レベルに達するまで再び上昇する。言い換えれば、アクチュエータ力F
acxは、正弦関数のように静止摩擦レベルと動摩擦レベルとの間で交番し、前記正弦波状の関数の周波数は、コントローラの速度およびPIDパラメータに依存する。正弦波状のアクチュエータ力の変動の典型的な周期、すなわち(ΔT
1)は、0.2mm/secの速度制御の場合、40msであるため、この変動の角周波数はω
0=2π/ΔT
1=157となる。
【0036】
図4は、圧電UMの駆動対象要素の時間に対する位置または運動を示す図であり、駆動対象要素の運動は、先行技術に従って、より速い0.6mm/sの速度でPID閉ループ制御される。(
図1に比べて)このようにより高速でも、駆動対象要素の運動の非線形応答が発生する結果となり、駆動対象要素は、ここでも、ジグザグパターン、つまり駆動対象要素の運動段階と非運動段階との繰り返しシーケンスでのみ、指令された位置軌道を追跡し得るが、ただし、ジグザクパターンの振幅は大きく低減されている。
【0037】
図5は、
図4の方法および速度で駆動されるUMの圧電アクチュエータの時間に対する力を示す図である。
図3と同様に、アクチュエータの力F
acxは、静止摩擦レベルに達するたびに直ちに低下し、動摩擦レベルを下回る値に下がり、その後、静止摩擦レベルに達するまで再び上昇する。言い換えると、アクチュエータ力F
acxは、正弦関数のように静止摩擦レベルと動摩擦レベルの間で交番し、前記正弦波状の関数の周波数は、より低速のそれよりも高くなる(
図3を参照)。ここで、正弦波状のアクチュエータ力の変動の周期、すなわち(ΔT
2)は、0.6mm/secの速度制御の場合、18msであるため、この変動の角周波数はω
0=2π/ΔT
2=349となる。
【0038】
前述の正弦波状のアクチュエータ力の変動は、摩擦によって誘導される振動をもたらす。低い駆動速度では、前記振動の振幅は著しく増加し、そのような増加した振動振幅は可聴ノイズをもたらす。最も重要なのは、力の変動の周波数がUMが実現されている駆動システムの共振周波数と一致する速度である。
【0039】
図6は、本発明の駆動方法を適用するためのUMの圧電アクチュエータ1の電気的接続の実施形態を示すブロック図であり、アクチュエータは、その主面の一方に間隔を空けて配置された2つの別個の励振電極3と、矩形のアクチュエータの他方の反対側の主面に配置された1つの共通電極4とを有している。共通電極4は接地されているが、2つの励振電極3の各々には、別個の電圧が同時に印加される。ここで、
図6の左側の励振電極には、発電機6によって生成される、A
1sin(ω
1t+φ
1)に等しい電圧U
1が印加され、
図6の右側の励振電極には、異なる別個の発電機6によって生成されるA
2sin(ω
2t+φ
2)と等しい電圧U
2が同時に印加される。U
1の周波数はアクチュエータの第1の共振周波数に対応し、U
2の周波数はアクチュエータの第2の共振周波数に対応し、U
1とU
2との周波数差はコントローラのサーボサンプリング周波数から最大5kHz逸脱している。
図6の矢印は、アクチュエータ1の圧電材料の分極方向を表している。
【0040】
図7は、圧電UMの駆動対象要素の時間に対する位置または運動での図を示し、その運動は、本発明に従って0.2mm/秒の速度で閉ループ制御される。
図8は、
図7の図に対応する、時間に対するアクチュエータの平均の力の図を示している。
【0041】
同じ速度、すなわち0.2mm/sを指令する従来技術による方法で動かされる要素の時間に対する位置を示す
図1および
図3と比較すると、
図7では、駆動対象要素の測定位置に対してジグザグパターンがないことが明確にわかる。代わりに、駆動対象要素が運動を示さない非常に短い初期遅延期間の後、測定された位置曲線の、指令された位置の曲線への迅速な調整が生じ、その後、双方の曲線はほぼ完全な重なりを示す。
【0042】
時間に対するアクチュエータの平均の力に対する対応する曲線は、時間t=0sから始まって、線形に増加するアクチュエータ力を示し、静止摩擦レベルに達すると増加が停止する。対応する時間において、駆動対象要素の運動が開始される。静止摩擦レベルに達した後、平均アクチュエータ力は低下するが、動摩擦レベルを充分に上回るほぼ時定数の値で安定する。言い換えれば、短い安定化プロセスの後、平均アクチュエータ力はほぼ安定したままである。この挙動は、
図3による時間に対するアクチュエータの力の挙動とは大きく異なる。ほぼ安定した平均アクチュエータ力により、動かされるべき要素の時間に対する位置に関して、所望される線形挙動がもたらされる結果となる。
【0043】
図9および
図10は
図7および
図8と非常に似ているが、動かされる要素の運動に対する、より速い0.6mm/sの指令速度のみが異なる。したがって、
図7および
図8に関する前述の説明は、
図9および
図10にも有効である。ここでも、非常に短い遅延期間の後、動かされる要素の測定位置は、いつでも指令位置と同一またはほぼ同一であることがわかり(
図9)、つまり、指令位置と動かされる要素の実際の位置との間には逸脱はまったく、またはほとんどない。この挙動は、
図10による対応する時間に対する平均アクチュエータ力で説明でき、高速線形増加後、平均アクチュエータ力は静止摩擦レベルに達し、次いで少し減少してその後、動摩擦レベルを充分に上回るほぼ完全な安定レベルに達する。
【0044】
図11の図は、2つのサーボサイクルにわたる本発明の閉ループ制御された運動でのUMの圧電アクチュエータの時間に対する力を示し、
図11の縦線は2つの後続のサーボサイクル間の境界を示している。
図11から、アクチュエータ力F
acxは各サーボサイクル内で変調されていることがわかり、これは、サーボサイクル内のアクチュエータ力の振幅が一定値である従来技術とは異なり、なぜならば、従来技術では1サーボサイクル内のアクチュエータ力の振幅レベルに影響する可能性はないからである。
【0045】
図11の時間t=0sから開始して、アクチュエータの力の最初の振動の振幅は静止摩擦レベルに達するが、後続の振動の振幅は最小値まで連続的に減少し、アクチュエータの力の次の振動の振幅は、後続のサーボサイクルの開始後まもなく再び静止摩擦レベルに達するまで連続的に上昇する。
【0046】
図12は、
図11の時間に対するアクチュエータの力の挙動に従って駆動対象要素の加速度を示している。時間t=0sから開始して、加速度がゼロ値のままである非常に短い期間があり、その後第1の段階的増加を行う。第1の段階的増加は、アクチュエータ力の第1の振動の振幅が静止摩擦レベルに達した時点である。アクチュエータ力の後続の2つの振動の振幅は、第1の振動の振幅(静止摩擦レベルに達した振幅)よりも低いが、各対応する振動で、さらに明確な加速度のステップが存在する。静止摩擦レベルよりも小さい振幅を有する後続の振動は、駆動対象要素のさらなる加速度に至らず、代わりに、駆動対象要素の加速度は、対応する期間でゼロ値に減少する。アクチュエータの力の振動の振幅が再び静止摩擦レベルに達すると、次の段階的加速度の増加を検出できる。
【0047】
それは、本発明の方法では、1サーボサイクル内のアクチュエータ力振動の振幅の変動または変調それぞれが可能であり、したがって、駆動対象要素の加速度が非常に短い期間内で最大値に達することが実現可能であることを意味する。
【0048】
その結果、アクチュエータ力の変調により、1サーボサイクル中に駆動対象要素の小さな位置変化が得られる。制御ユニットは、後のサーボサンプリング時間において、アクチュエータ力を制動手順のために動摩擦レベルよりも小さく低減するために、電圧振幅を大幅に低減する必要はない。本発明の方法では、駆動対象要素は、1サーボサイクル内で、追加の制動動作を必要とせずに停止する。したがって、低速での運動制御性が向上する。制動のために電圧を極端に下げるために、より高い制御パラメーターを必要としない。
【0049】
たとえ、駆動対象要素の動きがサーボサイクルで開始され、同じサーボサイクル内で停止しなくても(
図13および
図14からわかる)、最大加速度はモータが次のサーボサイクルの始まりで停止するのに十分小さいであろう。2つの振動運動の位相差は、常に1つのサーボサイクルから次のサーボサイクルへと変化している。より低い平均加速度値の結果、摩擦によって誘導される振動による低速度のきしみ音およびノイズが大幅に低減されるか、または完全に除去されさえする。
【0050】
図15は、2つの共振周波数または固有振動数を示すUMの圧電アクチュエータのインピーダンス図を示す。前記2つの共振周波数は互いと約22kHz異なる。
【0051】
図16は、本発明の駆動方法を適用し、圧電アクチュエータの2つの固有振動数を励振しながら、
図15による圧電アクチュエータの摩擦手段の運動軌跡を示す。摩擦手段の運動は、振幅および周波数の異なる2つの正弦波三角関数成分を有する。したがって、運動の方向は時間に関して変化する。この駆動方法を用いることにより、摩擦手段の先端でのアクチュエータ力は、顕著な効率損失のない高性能作動とノイズまたはきしみのない低速運動との両方が容易に達成できる態様で変動される。
【0052】
図17の図は、2つのサーボサイクルにわたる本発明の閉ループ制御された運動と、他の励振電圧と比較して低下したレベルを有する第2の共振モードを励振するための電圧とを伴う、UMの圧電アクチュエータの時間に対する力を示し、
図18の図は、圧電アクチュエータの、対応する、時間に対する加速度を示している。第2の共振モードの励振のための電圧レベルを下げることにより、UMのより高い駆動性能を達成できる。駆動対象要素の速度に反比例する第2の共振モードの励振のための電圧が低下すると、第2の共振モードの効果はより速い速度で減少する。これにより、単相駆動でのようにUMが作動することが可能となる。したがって、高性能作動での前述の駆動方法は、作動一相駆動に類似し得る。したがって、本発明の駆動方法でも、より大きな速度および力が達成可能であろう。
【0053】
図19は、本発明の駆動方法を適用するためのUMの圧電アクチュエータの電気的接続の実施形態を示すブロック図に対応する。ここで、各励振電極は別々の電圧源に接続され、一方は励振電圧U
1=A
1sin(ω
1t+φ
1)を生成し、他方は励振電圧U
2=A
2sin(ω
2t+φ
2)を生成し、U
1とU
2とは異なる周波数を有し、U
1の周波数はアクチュエータの第1の共振周波数に対応し、U
2の周波数はアクチュエータの第2の共振周波数に対応し、U
1とU
2との周波数差はコントローラのサーボサンプリング周波数から最大5kHz逸脱している。励振電圧U
1に反転される励振電圧A
1sin(ω
1t+φ
1+π)は、アクチュエータの共通電極に印加される。
図19の矢印は、アクチュエータ1の圧電材料の分極方向を示している。
【0054】
図20は、2つの圧電アクチュエータを有するUMの実施形態を示し、
図21は、本発明の駆動方法を適用するための、
図20によるUMの圧電アクチュエータの電気的接続のブロック図を示す。
【0055】
図20のUMは2つの同一の円柱状圧電アクチュエータ1を含み、各圧電アクチュエータ1の一方端部は、金属製の第1の結合要素7を表す共通基部に取り付けられているが、プラスチックまたは構造セラミック材料などの他の材料も可能である。2つのアクチュエータのそれぞれの他端部は、酸化物セラミックから形成される屋根形状の摩擦手段2を介して接続または結合され、摩擦手段2は第2の結合要素を表す。アクチュエータ1は、平行に向かないように配置され、その代わりに、アクチュエータは、30°から60°の範囲の値でアクチュエータ間の角度αを規定する。
【0056】
図21によると、アクチュエータ1の一方またはその電極3および4に電圧U
1=A
1sin(ω
1t+φ
1)が印加され、他方の別のアクチュエータ1またはその電極3および4に電圧U
2=A
2sin(ω
2t+φ
2)が同時に印加される。ここで、各アクチュエータ1は、1つの励振電極3および1つの共通電極4を有する。
図21の矢印は、各アクチュエータ1の圧電材料の分極方向を示している。
【手続補正書】
【提出日】2020年4月6日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波モータの位置フィードバックを伴う閉ループ運動制御のための方法であって、前記超音波モータは、摩擦手段(2)、少なくとも1つの励振電極(3)および少なくとも1つの共通電極(4)を含む少なくとも1つのアクチュエータ(1)を備え、前記超音波モータは、さらに、駆動対象要素(5)、コントローラ、ならびに前記アクチュエータの前記励振電極(3)に印加される少なくとも第1の励振電圧U1および第2の励振電圧U2を生成し、それによって、前記アクチュエータの振動を生じさせるための少なくとも1つの発電機(6)を備え、前記アクチュエータの前記摩擦手段は、その振動により、前記駆動対象要素に断続的に接触し、それによって、前記駆動対象要素に駆動力を生じさせ、前記方法は、前記少なくとも2つの励振電圧U1およびU2に異なる周波数を与えるステップを備え、U1の周波数は前記アクチュエータの第1の共振周波数に対応し、U2の周波数は、前記アクチュエータの第2の共振周波数に対応し、U1とU2との周波数差は、前記コントローラのサーボサンプリング周波数から最大5kHz逸脱しており、前記方法はさらに、前記少なくとも2つの励振電圧U1およびU2を前記アクチュエータの前記励振電極(3)に同時に印加するステップを備える、超音波モータの位置フィードバックを伴う閉ループ運動制御のための方法。
【請求項2】
前記少なくとも2つの交流励振電圧U1およびU2は、正弦波形、矩形波形または三角波形を有し、その結果生じる前記摩擦手段の運動が、異なる振幅および周波数を有する2つの正弦波三角関数成分を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも2つの交流励振電圧U1およびU2は、U1=A1sin(ω1t+φ1)およびU2=A2sin(ω2t+φ2)の正弦波を有し、A1およびA2は振幅であり、ω1およびω2は角周波数であり、φ1およびφ2は電圧信号の位相角であることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記周波数差は15kHzと25kHzとの間の範囲にあることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つのアクチュエータは矩形の圧電板であることを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記アクチュエータは、その主面の一方に少なくとも2つの励振電極(3)を有し、他方の主面に少なくとも1つの共通電極(4)を有し、前記第1の励振電圧U1は前記励振電極(3)の少なくとも1つに印加され、前記第2の励振電圧U2は他の励振電極(3)の少なくとも1つに同時に印加され、前記共通電極(4)は接地されていることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記アクチュエータは、その主面の一方に少なくとも2つの励振電極(3)を有し、他方の主面に少なくとも1つの共通電極(4)を有し、前記第1の励振電圧U1は前記励振電極(3)の少なくとも1つに印加され、前記第2の励振電圧U2は他の励振電極(3)の少なくとも1つに同時に印加され、前記少なくとも1つの共通電極(4)は、前記第1の励振電圧U1または前記第2の励振電圧U2に対して180°の位相差を有する第3の励振電圧U3を印加されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記超音波モータは少なくとも2つのアクチュエータ(1)を備え、前記少なくとも2つのアクチュエータは少なくとも1つの結合要素(7)によって結合されることを特徴とする、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記摩擦手段(2)は少なくとも1つの結合要素(7)を構成することを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記超音波モータは2つのアクチュエータ(1)を備え、前記第1の励振電圧U1は前記2つのアクチュエータの一方に印加され、前記第2の励振電圧U2は他方のアクチュエータに印加されることを特徴とする、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
生体医用装置またはロボットアームまたは医療手術または顕微鏡検査段階における超音波モータの閉ループ運動制御のための、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の方法の使用。
【請求項12】
摩擦手段(2)、少なくとも1つの励振電極(3)および少なくとも1つの共通電極(4)を含む少なくとも1つのアクチュエータ(1)を備える超音波モータであって、前記超音波モータは、さらに、駆動対象要素(5)、位置フィードバックを伴う閉ループ運動のためコントローラ、ならびに前記アクチュエータの前記励振電極(3)に同時に印加される少なくとも第1の励振電圧U1および第2の励振電圧U2を生成し、それによって、前記アクチュエータの振動を生じさせるための少なくとも1つの発電機(6)をさらに備え、前記アクチュエータの前記摩擦手段は、その振動により、前記駆動対象要素に断続的に接触し、それによって、前記駆動対象要素に駆動力を生じさせ、前記少なくとも2つの励振電圧U1およびU2は異なる周波数を有し、U1の周波数は前記アクチュエータの第1の共振周波数に対応し、U2の周波数は、前記アクチュエータの第2の共振周波数に対応し、U1とU2との周波数差は、前記コントローラのサーボサンプリング周波数から最大5kHz逸脱している、超音波モータ。
【国際調査報告】