特表2020-528735(P2020-528735A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2020-528735反復伸長変異のためのゲノム編集システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-528735(P2020-528735A)
(43)【公表日】2020年10月1日
(54)【発明の名称】反復伸長変異のためのゲノム編集システム
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/113 20100101AFI20200904BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20200904BHJP
   C07K 14/205 20060101ALI20200904BHJP
   C07K 14/22 20060101ALI20200904BHJP
   C07K 14/315 20060101ALI20200904BHJP
   C12N 15/31 20060101ALI20200904BHJP
   C12N 15/861 20060101ALI20200904BHJP
   C12N 15/863 20060101ALI20200904BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20200904BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20200904BHJP
   C12N 15/869 20060101ALI20200904BHJP
   C12N 15/86 20060101ALI20200904BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20200904BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20200904BHJP
   A61K 35/761 20150101ALI20200904BHJP
   A61K 35/763 20150101ALI20200904BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20200904BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20200904BHJP
   A61P 21/02 20060101ALI20200904BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20200904BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20200904BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20200904BHJP
【FI】
   C12N15/113 ZZNA
   C12N15/09 110
   C07K14/205
   C07K14/22
   C07K14/315
   C12N15/31
   C12N15/861 Z
   C12N15/863 Z
   C12N15/864 100Z
   C12N15/867 Z
   C12N15/869 Z
   C12N15/86 Z
   A61K48/00
   A61K35/76
   A61K35/761
   A61K35/763
   A61P43/00 111
   A61P25/14
   A61P21/02
   A61P21/04
   A61P25/00
   A61P27/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】122
(21)【出願番号】特願2019-569721(P2019-569721)
(86)(22)【出願日】2018年6月14日
(85)【翻訳文提出日】2020年1月30日
(86)【国際出願番号】KR2018006731
(87)【国際公開番号】WO2018230976
(87)【国際公開日】20181220
(31)【優先権主張番号】62/520,098
(32)【優先日】2017年6月15日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】516355531
【氏名又は名称】ツールゲン インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TOOLGEN INCORPORATED
(71)【出願人】
【識別番号】517037227
【氏名又は名称】カレッジ オブ メディシン ポチョン チャ ユニバーシティ インダストリー−アカデミック コーオペレイション ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】リー、ジェ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ソクジョン
(72)【発明者】
【氏名】バエ、ヒースク
(72)【発明者】
【氏名】ソン、ジファン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ヒュン ジュン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084MA56
4C084MA58
4C084MA65
4C084MA66
4C084MA67
4C084NA14
4C084ZA021
4C084ZA181
4C084ZA331
4C084ZA941
4C084ZC411
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA12
4C087MA56
4C087MA58
4C087MA65
4C087MA66
4C087MA67
4C087NA14
4C087ZA02
4C087ZA18
4C087ZA33
4C087ZA94
4C087ZC41
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA11
4H045DA89
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
本明細書は、過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子における人工的操作または改変に関する。より具体的には、過剰増幅反復配列の発現を低減するために人工的に操作された遺伝子を含む、過剰増幅反復配列の発現を調節するためのシステムに関する。人工的に操作された遺伝子は、SPT4遺伝子、SPT5遺伝子、SUPT4H遺伝子、SUPT5H遺伝子から成る群から選択される1または複数の遺伝子を含む。人工的に操作された遺伝子は、遺伝子のゲノム配列における人工的変異を含む。人工的に操作された遺伝子は、機能が低下した、または、発現が低減した遺伝子を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反復伸長の発現を低減するために人工的に設計された遺伝子を含む、反復伸長の発現を調節するためのシステムであって、
前記人工的に設計された遺伝子は、SPT4、SPT5、SUPT4H、SUPT5Hから成る群から選択される1または複数の遺伝子を含み、
前記人工的に設計された遺伝子は、そのゲノムにおいて人工的変異を含み、
前記人工的に設計された遺伝子は、機能異常である、または、発現が低減された遺伝子を含み、
前記遺伝子の発現の前記低減は、その発現産物の量が、人工的に設計されていない遺伝子と比較して低減または抑制されることを特徴とする、
システム。
【請求項2】
前記SUPT4HはSUPT4H1遺伝子を含む、反復伸長変異の発現を調節するための、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記遺伝子の前記人工的変異は、1または複数のヌクレオチドの欠失、置換または挿入のうち少なくとも1つを含む、反復伸長変異の発現を調節するための、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記反復伸長は、
前記反復配列の重複を含む第1反復部分と、
前記反復配列の過剰重複を含む第2反復部分と
を含み、
前記第1反復部分は、障害のある対象および通常の対象に含まれ、
前記第2反復部分は通常の対象に含まれず、
反復伸長の発現の前記調節は、前記第2反復部分の発現減少を含む、
反復伸長変異の発現を調節するための、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
反復伸長の前記発現は、転写、転写後処理、翻訳、翻訳後修飾から成る群から選択される少なくとも1つである、反復伸長変異の発現を調節するための、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記反復伸長は、
前記反復配列の重複を含む第1反復部分と、
前記反復配列の過剰重複を含む第2反復部分と
を含み、
前記第1および第2反復部分は、
3ヌクレオチド反復伸長、
4ヌクレオチド反復伸長、
5ヌクレオチド反復伸長、
6ヌクレオチド反復伸長、
12ヌクレオチド反復伸長
から選択される1または複数の反復伸長を含む、反復伸長変異の発現を調節するための、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記3ヌクレオチド反復伸長は、CAG‐、CCG‐、CTG‐、CGG‐、GAA‐、GAC‐、GCG‐、GCA‐、GCC‐およびGCT‐反復伸長であり、
前記4ヌクレオチド反復伸長はCCTG反復伸長であり、
前記5ヌクレオチド反復伸長は、ATTCT‐およびTGGAA‐反復伸長から選択される1または複数の反復伸長であり、
前記6ヌクレオチド反復伸長は、GGCCTG‐およびGGGGCC‐反復伸長から選択された1または複数の反復伸長であり、
前記12ヌクレオチド反復伸長は、CCCCGCCCCGCG反復伸長である、
反復伸長変異の発現を調節するための、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記反復伸長の発現は、ハンチントン病(HD)、ハンチントン類縁疾患2型、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)、球脊髄性筋萎縮症(SBMA)、脊髄小脳失調症(SCA)、脆弱X症候群(FXS)、脆弱X随伴振戦/失調症候群(FXTAS)、脆弱XE精神遅滞、XLMR、フックス角膜ジストロフィー、フリートライヒ運動失調症(FRDA)、筋強直性ジストロフィー、筋萎縮性側索硬化症(C9orf72変異)、鎖骨頭蓋骨異形成症、眼球咽頭型筋ジストロフィー、合多指症型2、手足性器症候群、全前脳胞症、眼瞼裂狭小症候群、先天性中枢性低換気症候群、成長ホルモン欠乏症を伴う精神発達遅滞、のうちから選択される1または複数の障害の原因である、反復伸長変異の発現を調節するための、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
反復伸長の発現を低減するための遺伝子操作用組成物であって、
Clustered regularly interspaced short palindromic repeats(CRISPR)−CRISPR関連タンパク質(Cas)システム、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、FokI、または、エンドヌクレアーゼを含み、
前記遺伝子は、SPT4、SPT5、SUPT5Hから成る群から選択される1または複数の遺伝子である、
遺伝子操作用組成物。
【請求項10】
前記遺伝子操作は、ヌクレオチドの欠失、置換、または挿入である1または複数の改変を含む、請求項9に記載の遺伝子操作用組成物。
【請求項11】
前記遺伝子操作用組成物は、
3ヌクレオチド反復伸長、
4ヌクレオチド反復伸長、
5ヌクレオチド反復伸長、
6ヌクレオチド反復伸長、
12ヌクレオチド反復伸長
によって生じる任意の1または複数の障害を治療するための組成物である、請求項9に記載の遺伝子操作用組成物。
【請求項12】
前記3ヌクレオチド反復伸長は、CAG‐、CCG‐、CTG‐、CGG‐、GAA‐、GAC‐、GCG‐、GCA‐、GCC‐およびGCT‐反復伸長であり、
前記4ヌクレオチド反復伸長はCCTG反復伸長であり、
前記5ヌクレオチド反復伸長は、ATTCT‐およびTGGAA‐反復伸長から選択される1または複数の反復伸長であり、
前記6ヌクレオチド反復伸長は、GGCCTG‐およびGGGGCC‐反復伸長から選択された1または複数の反復伸長であり、
前記12ヌクレオチド反復伸長は、CCCCGCCCCGCG反復伸長である、
請求項11に記載の遺伝子操作用組成物。
【請求項13】
前記遺伝子操作用組成物は、ハンチントン病(HD)、ハンチントン類縁疾患2型、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)、球脊髄性筋萎縮症(SBMA)、脊髄小脳失調症(SCA)、脆弱X症候群(FXS)、脆弱X随伴振戦/失調症候群(FXTAS)、脆弱XE精神遅滞、XLMR、フックス角膜ジストロフィー、フリートライヒ運動失調症(FRDA)、筋強直性ジストロフィー、筋萎縮性側索硬化症(C9orf72変異)、鎖骨頭蓋骨異形成症、眼球咽頭型筋ジストロフィー、合多指症型2、手足性器症候群、全前脳胞症、眼瞼裂狭小症候群、先天性中枢性低換気症候群、成長ホルモン欠乏症を伴う精神発達遅滞のうちから選択される1または複数の障害を治療するための組成物である、請求項9に記載の遺伝子操作用組成物。
【請求項14】
SPT4、SPT5、SUPT4H、SUPT5Hから成る群から選択される1または複数の遺伝子の標的配列に対するガイド核酸を含む遺伝子操作用組成物。
【請求項15】
前記遺伝子操作用組成物は、前記エディタータンパク質、または、それをコードする核酸を含み、
前記エディタータンパク質は、ストレプトコッカス・ピオゲネス由来Cas9タンパク質、カンピロバクター・ジェジュニ由来Cas9タンパク質、ストレプトコッカス・サーモフィラス由来Cas9タンパク質、ストレプトコッカス・アウレウス由来Cas9タンパク質、ナイセリア・メニンジティディス由来Cas9タンパク質、Cpf1タンパク質から成る群から選択される1または複数のタンパク質を含む、
請求項14に記載の遺伝子操作用組成物。
【請求項16】
前記標的配列は、プロモーター領域、イントロン領域、エクソン領域、エンハンサー領域、3'‐UTR(未翻訳領域)、5'‐UTRから選択される遺伝子の1または複数の領域に存在する、請求項14に記載の遺伝子操作用組成物。
【請求項17】
前記標的配列は遺伝子のエクソン領域に存在する、請求項14に記載の遺伝子操作用組成物。
【請求項18】
前記標的配列は、前記遺伝子を構成する核酸配列におけるプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列の5'末端および/または3'末端に隣接する連続の10bp〜25bpヌクレオチド配列領域に存在するヌクレオチド配列である、請求項14に記載の遺伝子操作用組成物。
【請求項19】
前記PAM配列は、
NGG(NはA、T、CまたはG)、
NNNNRYAC(Nは各々独立に、A、T、CまたはG、RはAまたはG、YはCまたはT)、
NNAGAAW(Nは各々独立に、A、T、CまたはG、WはAまたはT)、
NNNNGATT(Nは各々独立に、A、T、CまたはG)、
NNGRR(T)(Nは各々独立に、A、T、CまたはG、RはAまたはG、YはCまたはT)、
TTN(NはA、T、CまたはG)
の配列(5'から3'の方向に記載)から成る群から選択される少なくとも1つを含む、
請求項14に記載の遺伝子操作用組成物。
【請求項20】
前記標的配列は、配列識別番号1〜24から成る群から選択される1または複数の配列である、請求項14に記載の遺伝子操作用組成物。
【請求項21】
前記標的配列は、配列識別番号1、2、14、15、16、17から成る群から選択される1または複数の配列である、請求項14に記載の遺伝子操作用組成物。
【請求項22】
前記組成物は、
配列識別番号1、2、8〜10、および、14〜20から選択される1または複数の配列のガイド核酸と、
ストレプトコッカス・ピオゲネス由来Cas9タンパク質、または、それをコードする核酸と
を含む、請求項15に記載の遺伝子操作用組成物。
【請求項23】
前記組成物は、
配列識別番号3〜7、11〜13、および、21〜24から選択される1または複数の配列のガイド核酸と、
カンピロバクター・ジェジュニ由来Cas9タンパク質、または、それをコードする核酸と
を含む、請求項15に記載の遺伝子操作用組成物。
【請求項24】
前記ガイド核酸は、前記遺伝子の標的配列に対して相補結合を形成可能なガイドドメインを含み、
前記相補結合は、0〜5個のミスマッチ結合を含む、
請求項14に記載の遺伝子操作用組成物。
【請求項25】
前記ガイドドメインは、前記遺伝子の標的配列に対する相補ヌクレオチド配列を含み、
前記相補ヌクレオチド配列は0〜5個のミスマッチを含む、
請求項24に記載の遺伝子操作用組成物。
【請求項26】
前記ガイド核酸は、第1相補ドメイン、リンカードメイン、第2相補ドメイン、近位ドメイン、尾部ドメインから成る群から選択される少なくとも1つのドメインを含む、請求項14に記載の遺伝子操作用組成物。
【請求項27】
前記ガイド核酸および前記エディタータンパク質は、それぞれ、それらをコードするDNAの形態である、請求項14または15に記載の遺伝子操作用組成物。
【請求項28】
前記DNAは、プラスミドまたはウイルスベクターの形態で含まれる、請求項27に記載の遺伝子操作用組成物。
【請求項29】
前記ウイルスベクターは、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ワクチニアウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルスから成る群から選択される少なくとも1つである、請求項28に記載の遺伝子操作用組成物。
【請求項30】
前記エディタータンパク質をコードする前記核酸は、mRNAの形態で提供される、請求項15に記載の遺伝子操作用組成物。
【請求項31】
前記エディタータンパク質は、ポリペプチドまたはタンパク質の形態である、請求項15に記載の遺伝子操作用組成物。
【請求項32】
前記組成物はガイド核酸‐エディタータンパク質複合体の形成である、請求項15に記載の遺伝子操作用組成物。
【請求項33】
前記組成物は、
3ヌクレオチド反復伸長、
4ヌクレオチド反復伸長、
5ヌクレオチド反復伸長、
6ヌクレオチド反復伸長、12ヌクレオチド反復伸長
によって生じる任意の1または複数の障害を治療するための組成物である、請求項14または15に記載の遺伝子操作用組成物。
【請求項34】
前記3ヌクレオチド反復伸長は、CAG‐、CCG‐、CTG‐、CGG‐、GAA‐、GAC‐、GCG‐、GCA‐、GCC‐およびGCT‐反復伸長であり、
前記4ヌクレオチド反復伸長はCCTG反復伸長であり、
前記5ヌクレオチド反復伸長は、ATTCT‐およびTGGAA‐反復伸長から選択される1または複数の反復伸長であり、
前記6ヌクレオチド反復伸長は、GGCCTG‐およびGGGGCC‐反復伸長から選択された1または複数の反復伸長であり、
前記12ヌクレオチド反復伸長は、CCCCGCCCCGCG反復伸長である、
請求項34に記載の遺伝子操作用組成物。
【請求項35】
前記組成物は、ハンチントン病(HD)、ハンチントン類縁疾患2型、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)、球脊髄性筋萎縮症(SBMA)、脊髄小脳失調症(SCA)、脆弱X症候群(FXS)、脆弱X随伴振戦/失調症候群(FXTAS)、脆弱XE精神遅滞、XLMR、フックス角膜ジストロフィー、フリートライヒ運動失調症(FRDA)、筋強直性ジストロフィー、筋萎縮性側索硬化症(C9orf72変異)、鎖骨頭蓋骨異形成症、眼球咽頭型筋ジストロフィー、合多指症型2、手足性器症候群、全前脳胞症、眼瞼裂狭小症候群、先天性中枢性低換気症候群、成長ホルモン欠乏症を伴う精神発達遅滞のうち1または複数の疾患を治療するための組成物である、請求項14または15に記載の遺伝子操作用組成物。
【請求項36】
組成物を対象に投与する段階を含む反復伸長疾患治療方法であって、
前記組成物は、活性成分として遺伝子操作組成物を含み、
前記遺伝子操作組成物は、反復伸長の発現を低減するためのものであり、
前記遺伝子操作組成物は、Clustered regularly interspaced short palindromic repeats(CRISPR)−CRISPR関連タンパク質(Cas)システム、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、FokI、または、エンドヌクレアーゼを含み、
前記遺伝子は、SPT4、SPT5、SUPT4H、SUPT5Hから成る群から選択される少なくとも1つの遺伝子である、
反復伸長疾患治療方法。
【請求項37】
組成物を対象に投与する段階を含む反復伸長疾患治療方法であって、
前記組成物は、活性成分として、遺伝子操作用組成物を含み、
前記遺伝子操作用組成物は
SPT4、SPT5、SUPT4H、SUPT5Hから成る群から選択される少なくとも1つの遺伝子の標的配列に対するガイド核酸と、
エディタータンパク質、または、それをコードする核酸と
を含み、
前記エディタータンパク質は、ストレプトコッカス・ピオゲネス由来Cas9タンパク質、カンピロバクター・ジェジュニ由来Cas9タンパク質、ストレプトコッカス・サーモフィラス由来Cas9タンパク質、ストレプトコッカス・アウレウス由来Cas9タンパク質、ナイセリア・メニンジティディス由来Cas9タンパク質、Cpf1タンパク質から成る群から選択される少なくとも1つのタンパク質を含む、
反復伸長疾患治療方法。
【請求項38】
前記標的配列は、配列識別番号1〜24から成る群から選択される少なくとも1つの標的配列である、請求項37に記載の反復伸長疾患治療方法。
【請求項39】
前記遺伝子操作用組成物は、
配列識別番号1、2、8〜10、14〜20から選択される少なくとも1つの配列に対するガイド核酸と、
ストレプトコッカス・ピオゲネス由来Cas9タンパク質と
を含む、請求項37に記載の反復伸長疾患治療方法。
【請求項40】
前記遺伝子操作用組成物は、
配列識別番号3、7、11〜13、21〜24から選択される少なくとも1つの配列に対するガイド核酸と、
カンピロバクター・ジェジュニ由来Cas9タンパク質と
を含む、請求項37に記載の反復伸長疾患治療方法。
【請求項41】
前記組成物は、リボ核タンパク質(RNP)、リポソーム、プラスミド、ウイルスベクター、ナノ粒子、タンパク質移行ドメイン(PTD)法のうち1または複数によって投与される、請求項36または37に記載の反復伸長疾患治療方法。
【請求項42】
前記ウイルスベクターは、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ワクチニアウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルスから成る群から選択される少なくとも1つである、請求項41に記載の反復伸長疾患治療方法。
【請求項43】
前記ガイド核酸はDNAまたはRNAの形態で細胞に送達され、
前記エディタータンパク質はポリペプチドの形態で細胞に送達される、または、前記エディタータンパク質をコードする核酸はDNAの形態で細胞に送達される、
請求項37に記載の反復伸長疾患治療方法。
【請求項44】
対象への前記投与方法は、電気穿孔、注射、輸血、インプラント、移植から選択される1または複数の方法である、請求項36または37に記載の反復伸長疾患治療方法。
【請求項45】
前記投与は局部的または局所的に実行される、請求項36または37に記載の反復伸長疾患治療方法。
【請求項46】
前記投与は、皮下、皮内、結節内、髄内、筋肉内、静脈内、リンパ内、または腹腔内の方法で実行される、請求項36または37に記載の反復伸長疾患治療方法。
【請求項47】
前記対象への局部的または局所的投与は、前記対象の
腎臓、
胃、膵臓、十二指腸、回腸および/または結腸を含む消化器系、
心臓、肺、
脳、特にニューロンおよび/または一般に中枢神経系、
網膜組織を含む目、
内耳を含む耳、
皮膚、
筋肉、
骨、
肝臓
のうち少なくとも1つの臓器に対して実行される、請求項46に記載の反復伸長疾患治療方法。
【請求項48】
前記対象は、ヒト、サル、マウス、ラットを含む哺乳動物である、請求項36または37に記載の反復伸長疾患治療方法。
【請求項49】
前記反復伸長は、
前記反復配列の重複を含む第1反復部分と、
前記反復配列の過剰重複を含む第2反復部分と
を含み、
前記第1反復部分は、障害のある対象および通常の対象に含まれ、
前記第2反復部分は通常の対象に含まれず、
反復伸長の前記治療は、前記第2反復部分の発現の減少を含む、
請求項36または37に記載の反復伸長疾患治療方法。
【請求項50】
前記反復伸長疾患は、3ヌクレオチド反復伸長、4ヌクレオチド反復伸長、5ヌクレオチド反復伸長、6ヌクレオチド反復伸長、12ヌクレオチド反復伸長によって生じる1または複数の疾患である、請求項36または37に記載の反復伸長疾患治療方法。
【請求項51】
前記3ヌクレオチド反復伸長は、CAG‐、CCG‐、CTG‐、CGG‐、GAA‐、GAC‐、GCG‐、GCA‐、GCC‐およびGCT‐反復伸長であり、
前記4ヌクレオチド反復伸長はCCTG反復伸長であり、
前記5ヌクレオチド反復伸長は、ATTCT‐およびTGGAA‐反復伸長から選択される1または複数の反復伸長であり、
前記6ヌクレオチド反復伸長は、GGCCTG‐およびGGGGCC‐反復伸長から選択された1または複数の反復伸長であり、
前記12ヌクレオチド反復伸長は、CCCCGCCCCGCG反復伸長である、
請求項50に記載の反復伸長疾患治療方法。
【請求項52】
前記反復伸長疾患は、ハンチントン病(HD)、ハンチントン類縁疾患2型、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)、球脊髄性筋萎縮症(SBMA)、脊髄小脳失調症(SCA)、脆弱X症候群(FXS)、脆弱X随伴振戦/失調症候群(FXTAS)、脆弱XE精神遅滞、XLMR、フックス角膜ジストロフィー、フリートライヒ運動失調症(FRDA)、筋強直性ジストロフィー、筋萎縮性側索硬化症(C9orf72変異)、鎖骨頭蓋骨異形成症、眼球咽頭型筋ジストロフィー、合多指症型2、手足性器症候群、全前脳胞症、眼瞼裂狭小症候群、先天性中枢性低換気症候群、成長ホルモン欠乏症を伴う精神発達遅滞のうち少なくとも1つである、請求項36または37に記載の反復伸長疾患治療方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子における人工的操作または改変に関する。より具体的には、本明細書は、過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子を人工的に操作するための遺伝子操作用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
反復配列を有する特定のヌクレオチド配列の発現は、反復配列の増幅度に応じて、疾患を生じさせ得る。特に、反復配列の増幅度が高いとき、深刻な遺伝性疾患が対象において生じ得る。例えば、ハンチントン病(HD)、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)、球脊髄性筋萎縮症(SBMA)、脊髄小脳失調(SCA)、脆弱X症候群(FXS)、脆弱X随伴振戦/失調症候群(FXTA)、フックス角膜ジストロフィー、フリードライヒ運動失調症(FRDA)、筋強直性ジストロフィー、および、筋萎縮性側索硬化症(C9orf72変異)などの疾患の共通の特徴は、過剰増幅反復配列を含む特定の遺伝子によって生じる遺伝性疾患であるという点である。上述の疾患は致死的な影響を有するので、治療剤を開発する必要性がある。
【0003】
過剰増幅反復配列を含む特定の遺伝子によって生じる遺伝性疾患の治療剤が出現する必要性がある状況下において、本発明者は、標的特異的遺伝子はさみを使用して、過剰増幅反復配列を含む特定の遺伝子の発現が、過剰増幅反復配列を含む特定の遺伝子の発現の調節に関与する遺伝子である、SPT4遺伝子および/またはSPT5遺伝子、または、SUPT4H遺伝子/またはSUPT5H遺伝子の発現を調節することによって調節され得ることを確認した。このようにして、本発明者は、過剰増幅反復配列によって生じる疾患を緩和または治療するための遺伝子治療剤、および、疾患を治療するための方法を確認し、それにより、本出願を完成させた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本出願によって開示される内容によって達成される目的は、過剰増幅反復配列の発現を調節するためのシステムを提供することである。
【0005】
本出願によって開示される内容によって達成される別の目的は、過剰増幅反復配列の発現を低減するための遺伝子操作用組成物を提供することである。
【0006】
本出願によって開示される内容によって達成される更に別の目的は、反復伸長疾患を治療するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を実現するために、過剰増幅反復配列の発現を調節するためのシステムが提供される。過剰増幅反復配列の発現を調節するためのシステムは、過剰増幅反復配列の発現を低減するために人工的に操作された遺伝子を含む過剰増幅反復配列の発現を調節するためのシステムであり、人工的に操作された遺伝子は、SPT4遺伝子、SPT5遺伝子、SUPT4H遺伝子およびSUPT5H遺伝子から成る群から選択される1または複数の遺伝子を含み、人工的に操作された遺伝子は、遺伝子のゲノム配列における人工的変異を含み、人工的に操作された遺伝子は、機能が低下した、または、発現が低減した遺伝子を含む。
【0008】
上述の別の目的を実現するべく、遺伝子操作用組成物が本出願によって提供される。本出願によって開示される態様によれば、過剰増幅反復配列の発現を低減するための遺伝子操作用組成物が提供され、当該組成物は、clustered regularly interspaced short palindromic repeats (CRISPR)−CRISPR関連タンパク質(Cas)システム、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、FokI、および、エンドヌクレアーゼのいずれか1つを含み、当該遺伝子は、SPT4遺伝子、SPT5遺伝子、SUPT4H遺伝子およびSUPT5H遺伝子から成る群から選択される1または複数の遺伝子である。本出願によって開示される別の態様によれば、遺伝子操作用組成物は、SPT4遺伝子、SPT5遺伝子、SUPT4H遺伝子、および、SUPT5H遺伝子から成る群から選択される1または複数の遺伝子の標的配列に対するガイド核酸を含む遺伝子操作用組成物であり、標的配列は、ガイド核酸と相補的に結合する、または、標的配列は、ガイド核酸と相補的に結合する配列に相補的である。
【0009】
上述の更に別の目的を実現するべく、本出願によって、反復伸長疾患を治療するための方法が提供される。治療方法は、反復伸長疾患を治療するための方法であり、当該方法は、活性成分として上記の組成物を含む組成物を治療対象に投与する段階を含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】ヒトHEK293T細胞株においてhSUPT4H1遺伝子を標的化するSpCas9およびCjCas9遺伝子はさみのスクリーニング結果を示す。
【0011】
図2】マウスNIH3T3細胞株においてSupt4a遺伝子を標的化するSpCas9およびCjCas9遺伝子はさみのスクリーニング結果を示す。
【0012】
図3】マウスFVB/NJ胚の初代神経幹細胞においてSupt4a遺伝子を標的化するSpCas9およびCjCas9遺伝子はさみのスクリーニング結果を示す。
【0013】
図4】マウスFVB/NJのハンチントン病マウスモデル(YAC128)の初代神経幹細胞において、mRosa26遺伝子(対照)またはSupt4a遺伝子を標的化するSpCas9遺伝子はさみを使用して、遺伝子操作または編集によるインデル(%)効率を確認する結果を示す。
【0014】
図5】マウスFVB/NJのハンチントン病マウスモデル(YAC128)の初代神経幹細胞において、mRosa26遺伝子(対照)を標的化するSpCas9遺伝子はさみを使用してインデルが生じた後、3継代の間にmRosa26のリーディングフレームにおける改変が生存に対して選択的効果を有するかどうかを確認する結果を示す。
【0015】
図6】マウスFVB/NJのハンチントン病マウスモデル(YAC128)の初代神経幹細胞において、SpCas9遺伝子を標的化するSpCas9遺伝子はさみを使用してインデルが生じた後、3継代の間にSupt4aのリーディングフレームにおける変更が生存に対して選択的効果を有するかどうかを確認する結果を示す。
【0016】
図7】マウスFVB/NJのハンチントン病マウスモデル(YAC128)の初代神経幹細胞において、mRosa26遺伝子(対照)またはSupt4a遺伝子を標的化するSpCas9遺伝子はさみを使用する遺伝子操作の結果として、抗変異体HTT(EM48)検出を通じてハンチントン遺伝子の発現量を確認する結果を示す。
【0017】
図8】マウスFVB/NJのハンチントン病マウスモデル(YAC128)の初代神経幹細胞において、mRosa26遺伝子(対照)またはSupt4a遺伝子を標的化するSpCas9遺伝子はさみを使用する遺伝子操作の結果として、1C(抗PolyQ)検出を通じてポリグルタミンの発現量を確認する結果を示す。
【0018】
図9】過剰増幅反復配列を含む特定の遺伝子の発現によって生じる遺伝性疾患を緩和または治療に使用される遺伝子操作用組成物の要素であるガイド核酸およびCjCas9遺伝子を含むベクターの構造を示す。
【0019】
図10】反復配列の種類、および、過剰増幅反復配列によって生じる遺伝性疾患の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
別の定めが無い限り、明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本明細書において開示される内容に関連する当業者によって一般的に理解される意味と同一の意味を有する。本明細書に記載のものと類似または同等の方法および材料が、本明細書において開示される内容の実施または試験において使用できるが、適切な方法および材料は以下に記載される。本明細書において言及される、すべての刊行物、特許出願、特許、および、他の参考文献は参照によって、その実体が組み込まれる。加えて、材料、方法および例は、例示を目的としたものに過ぎず、限定を意図するものではない。
【0021】
以降、本出願によって開示される過剰増幅反復配列の発現の調節を詳細に説明する。
【0022】
本明細書によって開示される態様によれば、過剰増幅反復配列の発現を調節するためのシステムが提供され得る。
【0023】
過剰増幅反復配列の発現を調節するためのシステムは、過剰増幅反復配列の発現を低減するために人工的に操作された遺伝子を含む過剰増幅反復配列の発現を調節するためのシステムであり、人工的に操作された遺伝子は、SPT4遺伝子、SPT5遺伝子、SUPT4H遺伝子およびSUPT5H遺伝子から成る群から選択される1または複数の遺伝子を含み、人工的に操作された遺伝子は、遺伝子のゲノム配列における人工的変異を含み、人工的に操作された遺伝子は、機能異常がある、または、発現が低減した遺伝子を含み、遺伝子の発現の低減は、人工的に操作されていない遺伝子と比較して、発現産物の発現量が低減する、または、抑制されることを特徴とする。
【0024】
本明細書において開示される実施形態は、過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子の発現を調節するためのシステムに関する。
【0025】
「過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子」は、過剰増幅反復配列を含む特定の遺伝子の発現を調節するための遺伝子であり得る。
【0026】
「過剰増幅反復配列」は、反復配列の重複および過剰重複を含む特定のヌクレオチド配列であり得る。過剰増幅反復配列は、反復配列の重複を含む第1反復部分、および、反復配列の過剰重複を含む第2反復部分を含み得る。
【0027】
「反復配列の重複」は、反復配列の反復度が通常の対象の遺伝子において見られる反復度であり得る。反復配列の重複は、病的対象の遺伝子においてさえ見られる反復度であり得る。
【0028】
「反復配列の過剰重複」は、反復配列の反復度が通常の対象の遺伝子において見られない反復度であり得る。反復配列の過剰重複は、病的対象の遺伝子において見られる反復度であり得る。
【0029】
第1反復部分は、病的対象および通常の対象に含まれる領域であり得る。例えば、ハンチントン病に関連するHTT遺伝子における第1反復部分は、CAGヌクレオチド反復単位の35〜40反復に対応する配列であり得る。別の例において、脊髄小脳失調症1型(SCA1)に関連するATXN1遺伝子における第1反復部分は、CAGヌクレオチド反復単位の35〜40反復に対応する配列であり得る。更に別の例において、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)に関連するDRPLA遺伝子における第1反復部分は、CAGヌクレオチド反復単位の45〜50反復に対応する配列であり得る。
【0030】
第2反復部分は、病的対象の遺伝子に含まれるが、通常の対象の遺伝子に含まれない領域であり得る。例えば、ハンチントン病に関連するHTT遺伝子における第2反復部分は、CAGヌクレオチド反復単位の35〜40反復後の対応する配列であり得る。別の例において、脊髄小脳失調症1型(SCA1)に関連するATXN1遺伝子における第2反復部分は、CAGヌクレオチド反復単位の35〜40反復後の対応する配列であり得る。更に別の例において、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)に関連するDRPLA遺伝子における第2反復部分は、CAGヌクレオチド反復単位の45〜50反復後の対応する配列であり得る。
【0031】
「過剰増幅反復配列の発現の調節」は、過剰増幅反復配列を含む特定の遺伝子の発現の減少であり得る。
【0032】
過剰増幅反復配列を含む特定の遺伝子の発現の調節は、過剰増幅反復配列を含む特定の遺伝子における過剰増幅反復配列の発現の減少であり得る。
【0033】
過剰増幅反復配列を含む特定の遺伝子の発現の調節は、過剰増幅反復配列を含む特定の遺伝子における過剰増幅反復配列における第2反復部分の発現の減少であり得る。第2反復部分の発現の減少は、第2反復部分の転写の減少を含み得る。
【0034】
「過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子」は、過剰増幅反復配列を含む特定の遺伝子の発現調節に関連する機能に直接的に関与する、または、間接的に影響するすべての遺伝子を指す。
【0035】
本明細書において開示される過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子は、過剰増幅反復配列を含む特定の遺伝子の転写、転写後修飾、翻訳および翻訳後修飾を含む、遺伝子発現プロセス全体のうち任意の1または複数の調節に直接的に関与する、または、間接的に影響するすべての遺伝子を含む。
【0036】
過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子は、例えば、SPT4遺伝子および/またはSPT遺伝子であり得る。SPT4遺伝子および/またはSPT5遺伝子から発現する産物は、SPT4、SPT5またはSPT4/5タンパク質であり得る。
【0037】
SPT4、SPT5またはSPT4/5タンパク質は、RNAポリメラーゼのRNA重合プロセスにおける転写調節因子として機能し得る。
【0038】
RNAポリメラーゼは、RNAポリメラーゼI、RNAポリメラーゼIIまたはRNAポリメラーゼIIIであり得る。RNAポリメラーゼは、RNAポリメラーゼIIとして、クラスIIプロモーターの下の配列を転写するものであり得る。RNAポリメラーゼは、RNAポリメラーゼIIとして、クラスIIプロモーターの下の反復配列を有するヌクレオチド配列を転写するものであり得る。RNAポリメラーゼは、RNAポリメラーゼIIとして、クラスIIプロモーターの下の過剰増幅反復配列を有するヌクレオチド配列を転写するものであり得る。RNAポリメラーゼは、RNAポリメラーゼIIとして、クラスIIプロモーターの下の過剰増幅反復配列を有するヌクレオチド配列の第1反復部分および/または第2反復部分を転写するものであり得る。RNAポリメラーゼIIによる転写産物は、mRNAであり得る。SPT4、SPT5またはSPT4/5タンパク質は、RNAポリメラーゼIIの処理能力に関与し得る。
【0039】
処理能力は、ポリメラーゼの重合プロセスの間に、産物が鋳型DNA鎖から分離することなく合成される度合いに関連し得る。ポリメラーゼはRNAポリメラーゼであり得る。RNAポリメラーゼはRNAポリメラーゼIIであり得る。
【0040】
RNAポリメラーゼIIの処理能力は、RNAポリメラーゼIIの重合プロセスの間に、RNA産物が鋳型DNA鎖から分離することなく合成される度合いに関連し得る。RNAポリメラーゼIIの処理能力が高いことは、DNA鋳型鎖の転写開始配列(+1)からのRNAの合成において、下流配列までの合成の度合いが高いことを意味し得る。RNAポリメラーゼIIの処理能力が高いことは、DNA鋳型鎖の転写開始配列(+1)からのRNAの合成において、合成が転写開始配列から下流配列まで進行し、より長いRNA転写産物が合成される度合いが高いことを意味し得る。RNAポリメラーゼIIの処理能力が高いことは、DNA鋳型鎖の転写開始配列(+1)からのRNAの合成において、RNAが転写開始配列から終結配列またはその周辺部分まで合成される度合いが高いことを意味し得る。
【0041】
SPT4、SPT5またはSPT4/5タンパク質は、RNAポリメラーゼIIの進行調節に関与し得る。SPT4、SPT5またはSPT4/5タンパク質は、RNAポリメラーゼIIの処理能力を維持または増加し得る。
【0042】
SPT4、SPT5またはSPT4/5タンパク質は、転写調節因子の機能を提供し得る。SPT4、SPT5またはSPT4/5タンパク質は、転写調節因子の機能を提供するべく、転写プロセスの開始、伸長、または、終結のうち任意の1または複数のプロセスに関与し得る。SPT4、SPT5またはSPT4/5タンパク質は、転写伸長プロセスを調節する因子の機能を提供し得る。
【0043】
SPT4、SPT5またはSPT4/5タンパク質は、転写伸長因子の機能を提供し得る。SPT4、SPT5またはSPT4/5タンパク質は、転写伸長因子として作用するので、RNAポリメラーゼから、より高い効率でRNA産物を取得可能な機能を提供し得る。
【0044】
SPT4、SPT5またはSPT4/5タンパク質は、過剰増幅反復配列を含む特定の遺伝子の調節に関与し得る。
【0045】
「過剰増幅反復配列」は、反復配列の重複および過剰重複を含む特定のヌクレオチド配列であり得る。
【0046】
過剰増幅反復配列は、反復配列の重複を含む第1反復部分、および、反復配列の過剰重複を含む第2反復部分を含み得る。第1反復部分は、病的対象および通常の対象に含まれる反復配列である。第2反復部分は、病的対象の遺伝子に含まれるが、通常の対象の遺伝子に含まれない反復配列である。
【0047】
過剰増幅反復配列を含む特定の遺伝子の発現の調節は、第2反復部分の発現の調節であり得る。発現は、転写、転写後処理、翻訳および翻訳後修飾を含む、任意の1または複数であり得る。
【0048】
SPT4、SPT5またはSPT4/5タンパク質は、過剰増幅反復配列を含む特定の遺伝子の発現において、第2反復部分の発現を調節し得る。SPT4、SPT5またはSPT4/5タンパク質が関与する発現の調節は、転写の調節であり得る。
【0049】
SPT4、SPT5またはSPT4/5タンパク質は、過剰増幅反復配列を含む特定の遺伝子の発現において、第2反復部分の発現を維持または増加し得る。発現は転写であり得る。SPT4、SPT5またはSPT4/5タンパク質が関与する発現の維持または増加は、転写の維持または増加であり得る。
【0050】
SPT4、SPT5またはSPT4/5タンパク質による、過剰増幅反復配列を含む特定の遺伝子の発現における第2反復部分の発現の調節の結果として、第2反復部分の転写が生じ得る。第2反復部分の転写の結果として、第2反復部分によってコードされるポリペプチドが発現され得る。第2反復部分によってコードされるポリペプチドは、特定のアミノ酸配列の単純反復に対応し得る。特定のアミノ酸配列の単純反復数は、疾患に従って決定され得る。
【0051】
例えば、SPT4、SPT5またはSPT4/5タンパク質による、HTT遺伝子の発現における第2反復部分の発現の調節の結果として、HTT遺伝子の第2反復部分であるCAG‐ヌクレオチドの転写が生じ得る。ポリグルタミンは、第2反復部分の転写産物から発現し得る。
【0052】
過剰増幅反復配列を含む特定の遺伝子の転写はRNAポリメラーゼIIによって生じ得る。SPT4、SPT5またはSPT4/5タンパク質は、RNAポリメラーゼIIが過剰増幅される反復配列を含む特定の遺伝子を転写するプロセスに関与し得る。SPT4、SPT5またはSPT4/5タンパク質は、RNAポリメラーゼIIが過剰増幅される反復配列を含む特定の遺伝子を転写するプロセスにおいて、RNAポリメラーゼIIの処理能力を強化する機能を提供し得る。SPT4、SPT5またはSPT4/5タンパク質は、RNAポリメラーゼIIが過剰増幅される反復配列を含む特定の遺伝子を転写するプロセスにおいて、転写伸長因子の機能を提供し得る。
【0053】
「過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子」は、例えば、SUPT4H遺伝子、および/または、SUPT5H遺伝子であり得る。SUPT4H遺伝子および/またはSUPT5H遺伝子は、哺乳動物に由来するSPT4遺伝子および/またはSPT5遺伝子であり得る。
【0054】
SUPT4H遺伝子は、SUPT4H1、SPT4、SPT4H、SUPT4H、または、Supt4a遺伝子と称され得る。SUPT5H遺伝子は、SPT5、SPT5H、または、Tat‐CT1遺伝子と称され得る。
【0055】
SUPT4H遺伝子および/またはSUPT5H遺伝子からの発現産物は、SUPT4H、SUPT5HまたはSUPT4/5Hタンパク質であり得る。
【0056】
SUPT4H遺伝子および/またはSUPT5H遺伝子からの発現産物であるSUPT4H、SUPT5HまたはSUPT4/5Hタンパク質は、SPT4、SPT5またはSPT4/5タンパク質のものと同等または類似の機能を提供し得る。
【0057】
SUPT4H、SUPT5HまたはSUPT4/5Hタンパク質は、RNAポリメラーゼのRNA重合プロセスにおいて、転写調節因子として機能し得る。
【0058】
SUPT4H、SUPT5HまたはSUPT4/5Hタンパク質は、RNAポリメラーゼIIの処理能力に関与し得る。
【0059】
SUPT4H、SUPT5HまたはSUPT4/5Hタンパク質は、RNAポリメラーゼIIの処理能力の調節に関与し得る。SUPT4H、SUPT5HまたはSUPT4/5Hタンパク質は、RNAポリメラーゼIIの処理能力を維持または増加し得る。
【0060】
SUPT4H、SUPT5HまたはSUPT4/5Hタンパク質は、転写調節因子の機能を提供し得る。SUPT4H、SUPT5HまたはSUPT4/5Hタンパク質は、転写調節因子の機能を提供するべく、転写プロセスの開始、伸長、または、終結のうち任意の1または複数のプロセスに関与し得る。SUPT4H、SUPT5HまたはSUPT4/5Hタンパク質は、転写伸長プロセスを調節する因子の機能を提供し得る。
【0061】
SUPT4H、SUPT5HまたはSUPT4/5Hタンパク質は、転写伸長因子の機能を提供し得る。SUPT4H、SUPT5HまたはSUPT4/5Hタンパク質は、転写伸長因子として作用するので、RNAポリメラーゼから、より高い効率でmRNA産物を取得可能な機能を提供し得る。
【0062】
SUPT4H、SUPT5HまたはSUPT4/5Hタンパク質は、過剰増幅反復配列を含む特定の遺伝子の発現において、第2反復部分の発現を調節し得る。SUPT4H、SUPT5HまたはSUPT4/5Hタンパク質が関与する発現の調節は、転写の調節であり得る。
【0063】
SUPT4H、SUPT5HまたはSUPT4/5Hタンパク質は、過剰増幅反復配列を含む特定の遺伝子の発現において、第2反復部分の発現を維持または増加し得る。SUPT4H、SUPT5HまたはSUPT4/5Hタンパク質が関与する発現の維持または増加は、転写の維持または増加であり得る。
【0064】
SUPT4H、SUPT5HまたはSUPT4/5Hタンパク質による、過剰増幅反復配列を含む特定の遺伝子の発現における第2反復部分の発現の調節の結果として、第2反復部分の転写が生じ得る。第2反復部分の転写の結果として、第2反復部分によってコードされるポリペプチドが発現され得る。第2反復部分によってコードされるポリペプチドは、特定のアミノ酸配列の単純反復に対応し得る。特定のアミノ酸配列の単純反復数は、疾患に従って決定され得る。
【0065】
例えば、SUPT4H、SUPT5HまたはSUPT4/5Hタンパク質による、HTT遺伝子の発現における第2反復部分の発現の調節の結果として、HTT遺伝子の第2反復部分であるCAG‐ヌクレオチドの転写が生じ得る。ポリグルタミンは、第2反復部分の転写産物から発現し得る。
【0066】
過剰増幅反復配列を含む特定の遺伝子の転写はRNAポリメラーゼIIによって生じ得る。SUPT4H、SUPT5HまたはSUPT4/5Hタンパク質は、RNAポリメラーゼIIによる過剰増幅反復配列を含む特定の遺伝子を転写するプロセスに関与し得る。SUPT4H、SUPT5HまたはSUPT4/5Hタンパク質は、RNAポリメラーゼIIが過剰増幅される反復配列を含む特定の遺伝子を転写するプロセスにおいて、RNAポリメラーゼIIの処理能力を強化する機能を提供し得る。SUPT4H、SUPT5HまたはSUPT4/5Hタンパク質は、RNAポリメラーゼIIが過剰増幅される反復配列を含む特定の遺伝子を転写するプロセスにおいて、転写伸長因子の機能を提供し得る。
【0067】
遺伝子は、ヒトおよびサルなどの霊長動物、ならびに、ラットおよびマウスなどの齧歯動物などを含む哺乳動物に由来し得る。
【0068】
遺伝子についての情報は、GenBank of the National Center for Biotechnology Information (NCBI)などの公然知られたデータベースから取得され得る。
【0069】
「過剰増幅反復配列の発現の調節」は、過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子の発現を調節した結果を含み得る。
【0070】
「過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子の発現の調節」は、過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子の発現の減少であり得る。
【0071】
過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子の発現の調節は、過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子の操作によって引き起こされ得る。
【0072】
遺伝子の操作は、標的遺伝子に対する1または複数のヌクレオチドの欠失、置換または挿入であり得る。
【0073】
遺伝子の操作は、標的遺伝子の転写、転写後修飾、翻訳または翻訳後修飾に関与する1要素の変化であり得る。
【0074】
遺伝子の操作は、標的遺伝子における1または複数のヌクレオチドの人工的改変、および/または、発現産物の低減であり得る。発現産物は、mRNAおよび/またはタンパク質であり得る。
【0075】
発現産物は、人工的に操作されない遺伝子から発現される発現産物と比較して、発現量が減少または抑制される発現産物であり得る。
【0076】
遺伝子の操作は、標的遺伝子からの発現産物の減少を引き起こし得る。発現産物は、標的遺伝子から転写されるRNAであり得る。発現産物は、標的遺伝子から翻訳されるポリペプチドであり得る。発現産物は、標的遺伝子から発現されるタンパク質であり得る。発現産物は、標的遺伝子から発現されるタンパク質のうち、活性を有するタンパク質であり得る。遺伝子の操作は、標的遺伝子のノックダウンまたはノックアウトであり得る。
【0077】
この場合、ノックダウンは、標的遺伝子の人工的操作または改変による効果であり得る。
【0078】
この場合、ノックアウトは、標的遺伝子の人工的操作または改変による効果であり得る。
【0079】
標的遺伝子のノックダウンは、標的遺伝子の発現を調節し得る。標的遺伝子のノックダウンは、標的遺伝子におけるRNA干渉を誘導し得る。標的遺伝子のノックダウンは、標的遺伝子のRNAから翻訳されるポリペプチドの量を減少させ得る。標的遺伝子のノックダウンは、標的遺伝子から発現されるタンパク質の量を減少させ得る。
【0080】
標的遺伝子のノックアウトは、標的遺伝子の発現を調節し得る。標的遺伝子のノックアウトは、標的遺伝子のDNAを操作し得る。標的遺伝子のDNAは、遺伝子はさみによって操作され得る。遺伝子はさみは、clustered regularly interspaced short palindromic repeats(CRISPR)−CRISPR関連タンパク質(Cas)システム、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、FokI、または、エンドヌクレアーゼであり得るが、これらに限定されない。標的遺伝子のノックアウトは、異常RNAが標的遺伝子のDNAから転写されるように、標的遺伝子を操作し得る。標的遺伝子のノックアウトは、RNAが標的遺伝子のDNAから転写されないように、標的遺伝子を操作し得る。標的遺伝子のノックアウトは、通常のポリペプチドが標的遺伝子のDNAから翻訳されないように、標的遺伝子を操作し得る。標的遺伝子のノックアウトは、タンパク質が標的遺伝子のDNAから発現されないように、標的遺伝子を操作し得る。標的遺伝子は、過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子であり得る。
【0081】
遺伝子の操作は、過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子の転写、転写後修飾、翻訳、または、翻訳後修飾に関与する1要素の変化であり得る。
【0082】
遺伝子の操作は、過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子からの発現産物の減少を誘導し得る。発現産物は、過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子から転写されるRNAであり得る。発現産物は、過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子から翻訳されるポリペプチドであり得る。発現産物は、過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子から発現されるタンパク質のうち、活性を有するタンパク質であり得る。
【0083】
遺伝子の操作は、過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子のノックアウトまたはノックダウンであり得る。
【0084】
この場合、ノックダウンは、過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子の人工的操作または改変による効果であり得る。
【0085】
この場合、ノックアウトは、過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子の人工的操作または改変による効果であり得る。
【0086】
過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子のノックダウンは、過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子の発現を調節し得る。過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子のノックダウンは、過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子におけるRNA干渉を誘導し得る。過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子のノックダウンは、過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子のRNAから翻訳されるポリペプチドの量を減少させ得る。過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子のノックダウンは、過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子の遺伝子から発現されるタンパク質の量を減少させ得る。
【0087】
過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子のノックアウトは、過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子の発現を調節し得る。過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子のノックアウトは、過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子のDNAを操作し得る。過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子のDNAは、遺伝子はさみによって操作され得る。遺伝子はさみは、ZFN、TALEN、または、CRISPR−Casシステムであり得る。過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子のノックアウトは、異常RNAが過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子のDNAから転写されるように、過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子を操作し得る。過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子のノックアウトは、RNAが過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子のDNAから転写されないように、過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子を操作し得る。過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子のノックアウトは、通常のポリペプチドが過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子のDNAから翻訳されないように、過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子を操作し得る。過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子のノックアウトは、タンパク質が過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子のDNAから発現されないように、過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子を操作し得る。
【0088】
過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子は、SPT4遺伝子および/またはSPT5遺伝子であり得る。
【0089】
遺伝子の操作は、SPT4遺伝子および/またはSPT5遺伝子の転写、転写後修飾、翻訳または翻訳後修飾に関与する1要素の変化であり得る。
【0090】
遺伝子の操作は、SPT4遺伝子および/またはSPT5遺伝子からの発現産物の減少を誘導し得る。発現産物は、SPT4遺伝子および/またはSPT5遺伝子から転写されるRNAであり得る。発現産物は、SPT4遺伝子および/またはSPT5遺伝子から翻訳されるポリペプチドであり得る。発現産物は、SPT4遺伝子および/またはSPT5遺伝子から発現されるタンパク質のうち、活性を有するタンパク質であり得る。遺伝子の操作は、SPT4遺伝子および/またはSPT5遺伝子のノックアウトまたはノックダウンであり得る。
【0091】
この場合、ノックダウンは、過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子の人工的操作または改変による効果であり得る。
【0092】
この場合、ノックアウトは、SPT4遺伝子および/またはSPT5遺伝子の人工的操作または改変による効果であり得る。
【0093】
SPT4遺伝子および/またはSPT5遺伝子のノックダウンは、SPT4遺伝子および/またはSPT5遺伝子の発現を調節し得る。SPT4遺伝子および/またはSPT5遺伝子のノックダウンは、SPT4遺伝子および/またはSPT5遺伝子におけるRNA干渉を誘導し得る。SPT4遺伝子および/またはSPT5遺伝子のノックダウンは、SPT4遺伝子および/またはSPT5遺伝子のRNAから翻訳されるポリペプチドの量を減少させ得る。SPT4遺伝子および/またはSPT5遺伝子のノックダウンは、SPT4遺伝子および/またはSPT5遺伝子から発現されるタンパク質の量を減少させ得る。
【0094】
SPT4遺伝子および/またはSPT5遺伝子のノックアウトは、SPT4遺伝子および/またはSPT5遺伝子お発現を調節し得る。SPT4遺伝子および/またはSPT5遺伝子のノックアウトは、SPT4遺伝子および/またはSPT5遺伝子のDNAを操作し得る。SPT4遺伝子および/またはSPT5遺伝子のDNAは、遺伝子はさみによって操作され得る。遺伝子はさみは、ZFN、TALENまたはCRISPR−Casシステムであり得る。SPT4遺伝子および/またはSPT5遺伝子のノックアウトは、異常RNAがSPT4遺伝子および/またはSPT5遺伝子のDNAから転写されるように、SPT4遺伝子および/またはSPT5遺伝子を操作し得る。SPT4遺伝子および/またはSPT5遺伝子のノックアウトは、RNAがSPT4遺伝子および/またはSPT5遺伝子のDNAから転写されないように、SPT4遺伝子および/またはSPT遺伝子を操作し得る。SPT4遺伝子および/またはSPT5遺伝子のノックアウトは、通常のポリペプチドがSPT4遺伝子および/またはSPT5遺伝子のDNAから発現されないように、SPT4遺伝子および/またはSPT5遺伝子を操作し得る。SPT4遺伝子および/またはSPT5遺伝子のノックアウトは、タンパク質がSPT4遺伝子および/またはSPT5遺伝子のDNAから発現されないように、SPT4遺伝子および/またはSPT5遺伝子を操作し得る。
【0095】
過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子は、SUPT4H遺伝子および/またはSUPT5H遺伝子であり得る。
【0096】
遺伝子の操作は、SUPT4H遺伝子および/またはSUPT5H遺伝子の転写、転写後修飾、翻訳または翻訳後修飾に関与する1要素の変化であり得る。
【0097】
遺伝子の操作は、SUPT4H遺伝子および/またはSUPT5H遺伝子からの発現産物の減少を誘導し得る。発現産物は、SUPT4H遺伝子および/またはSUPT5H遺伝子から転写されるRNAであり得る。発現産物は、SUPT4H遺伝子および/またはSUPT5H遺伝子から翻訳されるポリペプチドであり得る。発現産物は、SUPT4H遺伝子および/またはSUPT5H遺伝子から発現されるタンパク質のうち、活性を有するタンパク質であり得る。遺伝子の操作は、SUPT4H遺伝子および/またはSUPT5H遺伝子のノックダウンまたはノックアウトであり得る。
【0098】
この場合、ノックダウンは、SUPT4H遺伝子および/またはSUPT5H遺伝子の人工的操作または改変による効果であり得る。
【0099】
この場合、ノックアウトは、SUPT4H遺伝子および/またはSUPT5H遺伝子の人工的操作または改変による効果であり得る。
【0100】
SUPT4H遺伝子および/またはSUPT5H遺伝子のノックダウンは、SUPT4H遺伝子および/またはSUPT5H遺伝子の発現を調節し得る。SUPT4H遺伝子および/またはSUPT5H遺伝子のノックダウンは、SUPT4H遺伝子および/またはSUPT5H遺伝子におけるRNA干渉を誘導し得る。SUPT4H遺伝子および/またはSUPT5H遺伝子のノックダウンは、SUPT4H遺伝子および/またはSUPT5H遺伝子のRNAから翻訳されるポリペプチドの量を減少させ得る。SUPT4H遺伝子および/またはSUPT5H遺伝子のノックダウンは、SUPT4H遺伝子および/またはSUPT5H遺伝子から発現されるタンパク質の量を減少させ得る。
【0101】
SUPT4H遺伝子および/またはSUPT5H遺伝子のノックアウトは、SUPT4H遺伝子および/またはSUPT5H遺伝子の発現を調節し得る。SUPT4H遺伝子および/またはSUPT5H遺伝子のノックアウトは、SUPT4H遺伝子および/またはSUPT5H遺伝子のDNAを操作し得る。SUPT4H遺伝子および/またはSUPT5H遺伝子のDNAは、遺伝子はさみによって操作され得る。遺伝子はさみは、ZFN、TALENまたはCRISPR−Casシステムであり得る。SUPT4H遺伝子および/またはSUPT5H遺伝子のノックアウトは、通常のRNAがSUPT4H遺伝子および/またはSUPT5H遺伝子のDNAから転写されないように、SUPT4H遺伝子および/またはSUPT5H遺伝子を操作し得る。SUPT4H遺伝子および/またはSUPT5H遺伝子のノックアウトは、RNAがSUPT4H遺伝子および/またはSUPT5H遺伝子のDNAから転写されないように、SUPT4H遺伝子および/またはSUPT5H遺伝子を操作し得る。SUPT4H遺伝子および/またはSUPT5H遺伝子のノックアウトは、通常のポリペプチドがSUPT4H遺伝子および/またはSUPT5H遺伝子のDNAから翻訳されないように、SUPT4H遺伝子および/またはSUPT5H遺伝子を操作し得る。SUPT4H遺伝子および/またはSUPT5H遺伝子のノックアウトは、タンパク質がSUPT4H遺伝子および/またはSUPT5H遺伝子のDNAから発現しないように、SUPT4H遺伝子および/またはSUPT5H遺伝子を操作し得る。ノックアウトは、標的遺伝子に含まれる一部のヌクレオチドの欠失であり得る。
【0102】
ノックアウトは、過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子に含まれる一部のヌクレオチドの欠失であり得る。ノックアウトは、SPT4遺伝子および/またはSPT5遺伝子に含まれる一部のヌクレオチドの欠失であり得る。ノックアウトは、SUPT4H遺伝子および/またはSUPT5H遺伝子に含まれる一部のヌクレオチドの欠失であり得る。削除されるヌクレオチドは、2bp以上のヌクレオチドを含むヌクレオチド断片であり得る。
【0103】
削除されるヌクレオチド断片のサイズは、2bp〜5bp、6bp〜10bp、11bp〜15bp、16bp〜20bp、21bp〜25bp、26bp〜30bp、31bp〜35bp、36bp〜40bp、41bp〜45bpまたは46bp〜50bpであり得る。
【0104】
過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子の遺伝子操作の結果として、過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子の発現が調節され得る。
【0105】
過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子の調節の結果として、過剰増幅反復配列の発現は調節され得る。
【0106】
過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子の発現の調節の結果として、過剰増幅反復配列における第2反復部分の発現は調節され得る。
【0107】
過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子の発現の調節の結果として、RNAポリメラーゼのRNA重合プロセスは調節され得る。RNAポリメラーゼはRNAポリメラーゼIIであり得る。
【0108】
過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子の遺伝子操作の結果として、RNAポリメラーゼIIの処理能力は調節され得る。
【0109】
過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子のノックダウンの結果として、RNAポリメラーゼIIの処理能力は低減され得る。
【0110】
過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子のノックアウトの結果として、RNAポリメラーゼIIの処理能力は低減され得る。
【0111】
過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子の遺伝子操作の結果として、RNAポリメラーゼIIにおける転写伸長因子に作用するタンパク質の発現が調節され得る。
【0112】
過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子のノックダウンの結果として、RNAポリメラーゼIIの転写伸長因子として作用するタンパク質の発現は低減され得る。RNAポリメラーゼIIによる転写産物は、転写伸長因子の発現の減少に起因して減少し得る。転写産物は過剰増幅反復配列であり得る。転写産物は過剰増幅反復配列における第2反復部分であり得る。
【0113】
過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子のノックアウトの結果として、RNAポリメラーゼIIの転写伸長因子として作用するタンパク質の発現が低減し得る。RNAポリメラーゼIIによる転写産物は、転写伸長因子の発現の減少に起因して減少し得る。転写産物は過剰増幅反復配列であり得る。転写産物は過剰増幅反復配列における第2反復部分であり得る。
【0114】
過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子の遺伝子操作の結果として、過剰増幅反復配列を含む特定の遺伝子の発現が調節され得る。
【0115】
過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子の遺伝子操作の結果として、過剰増幅反復配列を含む特定の遺伝子の第2反復部分の発現が調節され得る。具体的には、過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子の遺伝子操作の結果として、過剰増幅反復配列を含む特定の遺伝子の第2反復部分からのmRNA転写が調節され得る。過剰増幅反復配列を含む特定の遺伝子の第2反復部分からのポリペプチドの発現が調節され得る。例として、過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子の遺伝子操作の結果として、mRNA転写が、ハンチントン病に関連するHTT遺伝子の第1反復部分から通常に実行されるが、第2反復部分からのmRNA転写が減少し得る。過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子の遺伝子操作の結果として、ポリペプチドが第1反復部分から通常に発現されるが、第2反復部分からのポリペプチドの発現が低減し得る。
【0116】
過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子の遺伝子操作の結果として、過剰増幅反復配列を含む特定の遺伝子から転写されたmRNAは、遺伝子操作前の長さより短い長さを有し得る。過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子の遺伝子操作の結果として、過剰増幅反復配列を含む特定の遺伝子から発現されるポリペプチドは、遺伝子操作前の長さより短い長さで発現し得る。例えば、過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子の遺伝子操作の結果として、HTT遺伝子から転写されるmRNAは、遺伝子操作前の長さより短い長さを有し得る。過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子の遺伝子操作の結果として、HTT遺伝子から発現されるポリペプチドは、前の長さより短い長さで発現し得る。
【0117】
過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子のノックダウンの結果として、過剰増幅反復配列を含む特定の遺伝子の発現が低減し得る。
【0118】
過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子のノックダウンの結果として、過剰増幅反復配列を含む特定の遺伝子の第2反復部分の発現が低減し得る。
【0119】
過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子のノックアウトの結果として、過剰増幅反復配列を含む特定の遺伝子の発現が低減し得る。
【0120】
過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子のノックアウトの結果として、過剰増幅反復配列を含む特定の遺伝子の第2反復部分の発現が低減し得る。
【0121】
過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子の遺伝子操作の結果として、過剰増幅反復配列を含む特定の遺伝子の発現が調節されるので、反復伸長疾患が治療または緩和され得る。
【0122】
過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子のノックダウンの結果として、過剰増幅反復配列を含む特定の遺伝子の発現が低減するので、反復伸長疾患が治療または緩和され得る。
【0123】
過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子のノックアウトの結果として、過剰増幅反復配列を含む特定の遺伝子の発現が低減するので、反復伸長疾患が治療または緩和され得る。
【0124】
過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子は、SPT4遺伝子および/またはSPT5遺伝子であり得る。
【0125】
SPT4遺伝子および/またはSPT5遺伝子の遺伝子操作の結果として、SPT4遺伝子および/またはSPT5遺伝子の発現は調節され得る。
【0126】
SPT4遺伝子および/またはSPT5遺伝子の発現の調節の結果として、RNAポリメラーゼのRNA重合プロセスは調節され得る。RNAポリメラーゼはRNAポリメラーゼIIであり得る。
【0127】
SPT4遺伝子および/またはSPT5遺伝子の遺伝子操作の結果として、RNAポリメラーゼIIの処理能力は調節され得る。
【0128】
SPT4遺伝子および/またはSPT5遺伝子のノックダウンの結果として、RNAポリメラーゼIIお処理能力は低減し得る。
【0129】
SPT4遺伝子および/またはSPT5遺伝子のノックアウトの結果として、RNAポリメラーゼIIお処理能力は低減し得る。
【0130】
SPT4遺伝子および/またはSPT5遺伝子の遺伝子操作の結果として、RNAポリメラーゼIIの転写伸長因子として作用するタンパク質の発現は調節され得る。
【0131】
SPT4遺伝子および/またはSPT5遺伝子のノックダウンの結果として、RNAポリメラーゼIIの転写伸長因子に作用するタンパク質の発現は低減し得る。
【0132】
SPT4遺伝子および/またはSPT5遺伝子のノックアウトの結果として、RNAポリメラーゼIIの転写伸長因子に作用するタンパク質の発現は低減し得る。
【0133】
SPT4遺伝子および/またはSPT5遺伝子の遺伝子操作の結果として、過剰増幅反復配列を含む特定の遺伝子の発現は調節され得る。
【0134】
SPT4遺伝子および/またはSPT5遺伝子のノックダウンの結果として、過剰増幅反復配列を含む特定の遺伝子の発現は低減し得る。
【0135】
SPT4遺伝子および/またはSPT5遺伝子のノックアウトの結果として、過剰増幅反復配列を含む反復配列の発現は低減し得る。
【0136】
SPT4遺伝子および/またはSPT5遺伝子の遺伝子操作の結果として、過剰増幅反復配列に含まれる第2反復部分からのmRNAの転写は調節され得る。SPT4遺伝子および/またはSPT5遺伝子の遺伝子操作の結果として、過剰増幅反復配列に含まれる第2反復部分からのポリペプチドの発現は調節され得る。
【0137】
SPT4遺伝子および/またはSPT5遺伝子のノックダウンの結果として、過剰増幅反復配列に含まれる第2反復部分からのmRNAの転写は減少し得る。SPT4遺伝子および/またはSPT5遺伝子の遺伝子操作の結果として、過剰増幅反復配列に含まれる第2反復部分からのポリペプチドの発現は低減し得る。
【0138】
SPT4遺伝子および/またはSPT5遺伝子のノックアウトの結果として、過剰増幅反復配列に含まれる第2反復部分からのmRNAの転写は減少し得る。SPT4遺伝子および/またはSPT5遺伝子の遺伝子操作の結果として、過剰増幅反復配列に含まれる第2反復部分からのポリペプチドの発現は低減し得る。
【0139】
SPT4遺伝子および/またはSPT5遺伝子の遺伝子操作の結果として、過剰増幅反復配列を含む特定の遺伝子の発現が調節されるので、反復伸長疾患が治療または緩和され得る。
【0140】
SPT4遺伝子および/またはSPT5遺伝子のノックダウンの結果として、過剰増幅反復配列を含む特定の遺伝子の発現が低減するので、反復伸長疾患が治療または緩和され得る。
【0141】
SPT4遺伝子および/またはSPT5遺伝子のノックアウトの結果として、過剰増幅反復配列を含む特定の遺伝子の発現が低減するので、反復伸長疾患が治療または緩和され得る。
【0142】
過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子は、SUPT4H遺伝子および/またはSUPT5H遺伝子であり得る。
【0143】
SUPT4H遺伝子および/またはSUPT5H遺伝子の遺伝子操作の結果として、SUPT4H遺伝子および/またはSUPT5H遺伝子の発現は調節され得る。
【0144】
SUPT4H遺伝子および/またはSUPT5H遺伝子の発現の調節の結果として、RNAポリメラーゼのRNA重合プロセスは調節され得る。RNAポリメラーゼはRNAポリメラーゼIIであり得る。
【0145】
SUPT4H遺伝子および/またはSUPT5H遺伝子の遺伝子操作の結果として、RNAポリメラーゼIIの処理能力は調節され得る。
【0146】
SUPT4H遺伝子および/またはSUPT5H遺伝子のノックダウンの結果として、RNAポリメラーゼIIの処理能力は低減し得る。
【0147】
SUPT4H遺伝子および/またはSUPT5H遺伝子のノックアウトの結果として、RNAポリメラーゼIIの処理能力は低減し得る。
【0148】
SUPT4H遺伝子および/またはSUPT5H遺伝子の遺伝子操作の結果として、RNAポリメラーゼIIの転写伸長因子として作用するタンパク質の発現は調節され得る。
【0149】
SUPT4H遺伝子および/またはSUPT5H遺伝子のノックダウンの結果として、RNAポリメラーゼIIの転写伸長因子に作用するタンパク質の発現は低減し得る。
【0150】
SUPT4H遺伝子および/またはSUPT5H遺伝子のノックアウトの結果として、RNAポリメラーゼIIの転写伸長因子に作用するタンパク質の発現は低減し得る。
【0151】
SUPT4H遺伝子および/またはSUPT5H遺伝子の遺伝子操作の結果として、過剰増幅反復配列を含む特定の遺伝子の発現は調節され得る。
【0152】
SUPT4H遺伝子および/またはSUPT5H遺伝子のノックダウンの結果として、過剰増幅反復配列を含む特定の遺伝子の発現は低減し得る。
【0153】
SUPT4H遺伝子および/またはSUPT5H遺伝子のノックアウトの結果として、過剰増幅反復配列を含む反復配列の発現は低減し得る。
【0154】
SUPT4H遺伝子および/またはSUPT5H遺伝子の遺伝子操作の結果として、過剰増幅反復配列に含まれる第2反復部分からのmRNAの転写は調節され得る。SUPT4H遺伝子および/またはSUPT5H遺伝子の遺伝子操作の結果として、過剰増幅反復配列に含まれる第2反復部分からのポリペプチドの発現は調節され得る。
【0155】
SUPT4H遺伝子および/またはSUPT5H遺伝子のノックダウンの結果として、過剰増幅反復配列に含まれる第2反復部分からのmRNAの転写は減少し得る。SUPT4H遺伝子および/またはSUPT5H遺伝子の遺伝子操作の結果として、過剰増幅反復配列に含まれる第2反復部分からのポリペプチドの発現は低減し得る。
【0156】
SUPT4H遺伝子および/またはSUPT5H遺伝子のノックアウトの結果として、過剰増幅反復配列に含まれる第2反復部分からのmRNAの転写は減少し得る。SUPT4H遺伝子および/またはSUPT5H遺伝子の遺伝子操作の結果として、過剰増幅反復配列に含まれる第2反復部分からのポリペプチドの発現は低減し得る。
【0157】
SUPT4H遺伝子および/またはSUPT5H遺伝子の遺伝子操作の結果として、過剰増幅反復配列を含む特定の遺伝子の発現が調節されるので、反復伸長疾患は治療または緩和され得る。
【0158】
SUPT4H遺伝子および/またはSUPT5H遺伝子のノックダウンの結果として、過剰増幅反復配列を含む特定の遺伝子の発現が低減するので、反復伸長疾患は治療または緩和され得る。
【0159】
SUPT4H遺伝子および/またはSUPT5H遺伝子のノックアウトの結果として、過剰増幅反復配列を含む特定の遺伝子の発現が低減するので、反復伸長疾患は治療または緩和され得る。
【0160】
「過剰増幅反復配列」は、特定のヌクレオチド配列単位が高度に反復するヌクレオチド配列である。反復配列は、2〜12ヌクレオチド配列単位の反復であり得る。反復配列は、3、4、5、6または12ヌクレオチド配列単位の反復であり得るが、これらに限定されない。
【0161】
過剰増幅反復配列は、特定のヌクレオチド配列または特定の遺伝子において反復配列が高度に反復する配列であり得る。
【0162】
過剰増幅反復配列は、遺伝子のコード領域または非コード領域に存在し得る。コード領域はエクソンを含み得る。エクソンに存在する過剰増幅反復配列は、遺伝子転写産物の翻訳リーディングフレームに存在し得る。エクソンに存在する過剰増幅反復配列は、反復コドンを提供するように機能し得る。反復コドンは、ポリグルタミン(PolyQ)をコードし得る。ポリグルタミンは、CAGヌクレオチド配列単位の過剰反復によって生じ得る。反復コドンは非ポリグルタミンであり得る。非コード領域は、プロモーター、3'‐UTR、イントロンまたは5'‐UTR領域であり得るが、これらに限定されない。過剰増幅反復配列は、ヌクレオチド組成物に関して変動し得る。
【0163】
過剰増幅反復配列は、3ヌクレオチド配列単位の反復であり得る。3ヌクレオチド配列単位の反復は、CAG‐、CCG‐、CTG‐、CGG‐、GAA‐、GAC‐、GCG‐、GCA‐、GCC‐、または、GCT‐ヌクレオチド配列単位の反復であり得るが、これらに限定されない。
【0164】
過剰増幅反復配列は4ヌクレオチド配列単位の反復であり得る。4ヌクレオチド配列単位の反復は、CCTGヌクレオチド配列単位の反復であり得るが、これに限定されない。
【0165】
過剰増幅反復配列は5ヌクレオチド配列単位の反復であり得る。5ヌクレオチド配列単位の反復は、ATTCTまたはTGGAAヌクレオチド配列単位の反復であり得るが、これに限定されない。
【0166】
過剰増幅反復配列は、6ヌクレオチド配列単位の反復であり得る。6ヌクレオチド配列単位の反復は、GGCCTGまたはGGGGCCヌクレオチド配列単位の反復であり得るが、これに限定されない。
【0167】
過剰増幅反復配列は、12ヌクレオチド配列単位の反復であり得る。12ヌクレオチド配列単位の反復は、CCCCGCCCCGCGヌクレオチド配列単位の反復であり得るが、これに限定されない。
【0168】
遺伝子は、ヒトおよびサルなどの霊長動物、ならびに、ラットおよびマウスなどの齧歯動物などを含む哺乳動物に由来し得る。
【0169】
過剰増幅反復配列は、DNA複製ずれによって生成され得る。複製ずれは、複製ずれ事象によって生成され得る。複製ずれのいくつかの反復は、直列配置を含む反復配列においてループを形成することによって、反復配列の重複および過剰重複を生成し得る。
【0170】
過剰増幅反復配列は、体細胞複製プロセスの間に保存され得る。過剰増幅反復配列の数は、体細胞複製プロセスの間に保存され得る、または、増幅され得る。過剰増幅反復配列は、生殖細胞形成プロセスの間に保存され得る。過剰増幅反復配列の数は、生殖細胞形成プロセスの間に保存または増幅され得る。
【0171】
過剰増幅反復配列は継承され得る。過剰増幅反復配列は各世代を通して継承されるが、反復配列の数は保存または増幅され得る。
【0172】
上述の過剰増幅反復配列を含む遺伝子についての情報は、GenBank of the National Center for Biotechnology Information (NCBI)など、公然知られたデータベースから取得され得る。
【0173】
反復配列の過剰重複によって生じる疾患に罹患していない通常の対象でも、反復配列の反復を有し得る。通常の対象では、反復配列の重複は安全なレベルで存在する。安全なレベルは、特定の疾患に応じて変動し得る。例えば、疾患がハンチントン病であるとき、HTT遺伝子におけるCAG‐反復配列の重複が約35〜40である場合は、安全なレベルとみなされ得る。例えば、ハンチントン病において、HTT遺伝子におけるCAG‐反復配列の重複が約35および40以上であるとき、それが疾患を発症させる可能性があるので、これは、非安全なレベルとみなされ得る。反復配列の重複および/または過剰重複の数は、20%以内の範囲の誤差を含む。
【0174】
過剰増幅反復配列は、遺伝子の異常発現を引き起こす、または、タンパク質の機能に影響するので、障害を発症させ得る。過剰増幅反復配列によって生じる障害は、限定されないが、神経障害の原因として作用し得る。
【0175】
一般に、過剰増幅反復配列の数が大きいほど、疾患が生じる可能性が高くなり得る、または、疾患の重症度が増加し得る。過剰増幅反復配列は継承され、反復配列の数は保存または増幅され得るが、過剰増幅反復配列は各世代を通して継承される。反復配列の数が保存または増幅されるとき、系統において遺伝性疾患は保存または悪化し得る。
【0176】
特定の過剰増幅反復配列によって生じる遺伝性疾患の一覧を下に提供する(テーブル1)。
[テーブル1]
過剰増幅反復配列によって生じる遺伝性疾患の一覧
【表1】
【0177】
過剰増幅反復配列によって生じる遺伝性疾患の具体例には、ハンチントン病(HD)、ハンチントン病様2、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)、球脊髄性筋萎縮症(SBMA)、脊髄小脳失調(SCA)、脆弱X症候群(FXS)、脆弱X随伴振戦/失調症候群(FXTA)、脆弱XE精神遅滞、ARX変異によって生じるX連鎖性精神遅滞(XLMR)フックス角膜ジストロフィー、フリードライヒ運動失調症(FRDA)、筋強直性ジストロフィー、筋萎縮性側索硬化症(C9orf72変異)、鎖骨頭蓋骨異形成症、眼球咽頭型筋ジストロフィー、合多指症2型、手足性器症候群(HFGS)、全前脳胞症、眼瞼裂狭小症候群、先天性中枢性低換気症候群、成長ホルモン欠乏症を伴う精神発達遅滞などが含まれ得るが、これに限定されない。
【0178】
過剰増幅反復配列によって引き起こされる遺伝性疾患の具体例は、3ヌクレオチド配列単位の過剰増幅によって生じる疾患であり得る。3ヌクレオチド配列単位の過剰増幅によって生じる疾患は、特定の遺伝子に関連する3ヌクレオチド配列単位の数が不安定かつ反復的に増加して生じ得る。
【0179】
3ヌクレオチド配列単位の過剰増幅によって生じる疾患は、ポリグルタミン病、または、非ポリグルタミン病であり得る。
【0180】
ポリグルタミン病は、CAGヌクレオチド配列単位の過剰増幅によって生じ得る。ポリグルタミン病は、エクソンにおけるCAGヌクレオチド配列単位の過剰増幅によって生じ得る。その例は、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)、ハンチントン病(HD)、ハンチントン病様2(HDL2)、球脊髄性筋萎縮症(SBMA)、脊髄小脳失調症1型(SCA1)、脊髄小脳失調症2型(SCA2)、脊髄小脳失調症3型(SCA3)、脊髄小脳失調症6型(SCA6)、脊髄小脳失調症7型(SCA7)、および、脊髄小脳失調症17型(SCA17)であり得るが、これらに限定されない。
【0181】
非ポリグルタミン病は、コード領域における余分なCAGヌクレオチド配列単位の過剰増幅によって生じ得る。更に、非ポリグルタミン病は、非コード領域におけるヌクレオチド配列の過剰増幅によって生じ得る。非ポリグルタミン病は、脆弱X症候群(FXS、FRAXA)、脆弱X随伴振戦/失調症候群(FXTA)、脆弱XE精神遅滞(FRAXE)、フリードライヒ運動失調症(FRDA)、筋強直性ジストロフィー1型(DM1)、フックス角膜ジストロフィー、脊髄小脳失調症8型(SCA8)、脊髄小脳失調症12型(SCA12)、鎖骨頭蓋骨異形成症、眼球咽頭型筋ジストロフィー、合多指症2型、手足性器症候群(HFGS)、全前脳胞症(HPE5)、眼瞼裂狭小症候群(BPES)、先天性中枢性低換気症候群、成長ホルモン欠乏症を伴う精神発達遅滞(MRGH)、ARX変異によって生じるX連鎖性精神遅滞(XLMR)であり得るが、これらに限定されない。
【0182】
反復配列の過剰増幅によって生じる遺伝性疾患の具体例は、4ヌクレオチド配列の過剰増幅によって生じる疾患であり得る。4ヌクレオチド配列の過剰増幅によって生じる疾患は、特定の遺伝子に関連する4ヌクレオチド配列単位の数が不安定かつ反復的に増加して生じ得る。4ヌクレオチド配列の過剰増幅によって生じる疾患は、CCTCヌクレオチド配列の過剰増幅によって生じる筋強直性ジストロフィー2型(DM2)であり得るが、これに限定されない。
【0183】
反復配列の過剰増幅によって生じる遺伝性疾患の具体例は、5ヌクレオチド配列単位の過剰増幅によって生じる疾患であり得る。5ヌクレオチド配列単位の過剰増幅によって生じる疾患は、特定の遺伝子に関連する5ヌクレオチド配列単位の数が不安定かつ反復的に増加して生じ得る。5ヌクレオチド配列単位の過剰増幅によって生じる疾患は、脊髄小脳失調症10型(SCA10)であり得る。5ヌクレオチド配列単位の過剰増幅によって生じる疾患は、TGGAAヌクレオチド配列単位の過剰増幅によって生じる脊髄小脳失調症31型(SCA31)であり得るが、これに限定されない。
【0184】
過剰増幅反復配列による遺伝性疾患の具体例は、6ヌクレオチド配列単位の過剰増幅によって生じる疾患であり得る。6ヌクレオチド配列単位の過剰増幅によって生じる疾患は、特定の遺伝子に関連する6ヌクレオチド配列単位の数が不安定かつ反復的に増加して生じ得る。6ヌクレオチド配列単位の過剰増幅によって生じる疾患は、GGCCTGヌクレオチド配列単位の過剰増幅によって生じる脊髄小脳失調症36型(SCA36)であり得る。6ヌクレオチド配列単位の過剰増幅によって生じる疾患は、GGGGCCヌクレオチド配列単位の過剰増幅によって生じる筋萎縮性側索硬化症(C9orf72変異)であり得るが、これに限定されない。
【0185】
過剰増幅反復配列による遺伝性疾患の具体例は、12ヌクレオチド配列単位の過剰増幅によって生じる疾患であり得る。12ヌクレオチド配列単位の過剰増幅によって生じる疾患は、特定の遺伝子に関連する12ヌクレオチド配列単位の数が不安定かつ反復的に増加して生じ得る。12ヌクレオチド配列単位の過剰増幅によって生じる疾患は、CCCCGCCCCGCGヌクレオチド配列単位の過剰増幅によって生じる進行性ミオクローヌスてんかん(PME)であり得るが、これに限定されない。
【0186】
本明細書によって開示される更に別の態様によれば、過剰増幅反復配列の発現を低減させるための遺伝子操作用組成物、および、その調製方法が提供され得る。
【0187】
本明細書によって開示される内容の実施形態は、過剰増幅反復配列の発現を低減させるための遺伝子操作用組成物に関する。
【0188】
遺伝子操作用組成物は標的特異的遺伝子はさみであり得る。標的特異的遺伝子はさみは、clustered regularly interspaced short palindromic repeats(CRISPR)CRISPR関連タンパク質(Cas)システム、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、FokI、エンドヌクレアーゼ、または、それらの混在であり得て、好ましくはCRISPR−Casシステムであり得るが、これに限定されない。
【0189】
遺伝子は、SPT4遺伝子、SPT5遺伝子、SUPT4H遺伝子およびSUPT5H遺伝子から成る群から選択される1または複数の遺伝子であり得るが、これに限定されない。CRISPR−Casシステムは、ガイドRNAおよびCRISPR酵素を含み得る。
【0190】
本明細書によって開示される内容の別の実施形態は、過剰増幅反復配列の発現を低減させるための別の遺伝子操作用組成物に関する。
【0191】
他の遺伝子操作用組成物は、SPT4遺伝子、SPT5遺伝子、SUPT4H遺伝子およびSUPT5H遺伝子から成る群から選択される1または複数の遺伝子の標的配列のガイド核酸を含む遺伝子操作用組成物であり得て、標的配列は、ガイド核酸と相補的に結合する、または、標的配列は、ガイド核酸と相補的に結合する配列と相補的である。
【0192】
「ガイド核酸」という用語は、標的核酸、遺伝子または染色体を認識することが可能であり、エディタータンパク質と相互作用することが可能な核酸を指す。ここで、ガイド核酸は、標的核酸、遺伝子、または、染色体の部分的ヌクレオチド配列と相補結合を形成可能である。加えて、ガイド核酸の部分的核酸配列は、エディタータンパク質に含まれるアミノ酸と相互作用し得て、それにより、ガイド核酸‐エディタータンパク質複合体を形成する。
【0193】
ガイド核酸は、ガイド核酸エディタータンパク質が標的核酸、遺伝子または染色体の標的領域に配置されるように誘導する機能を実行し得る。
【0194】
ガイド核酸は、DNA、RNAまたはDNA/RNA混合物の形態で存在し得て、5〜150の核酸配列を有し得る。ガイド核酸は1つの連続する核酸配列であり得る。
【0195】
例えば、1つの連続核酸配列は、(N)mであり得て、NはA、T、CまたはGであり、または、A、U、CまたはGであり、mは1〜150の整数である。ガイド核酸は2つ以上の連続する核酸配列であり得る。
【0196】
例えば、2つ以上の連続核酸配列は、(N)mおよび(N)oであり得て、NはA、T、CまたはG、または、A、U、CまたはGを表し、mおよびoは、1〜150の整数であり、互いに同一であり得る、または、異なり得る。ガイド核酸は、1または複数のドメインを含み得る。
【0197】
ドメインは、これらに限定されないが、ガイドドメイン、第1相補ドメイン、リンカードメイン、第2相補ドメイン、近位ドメインまたは尾部ドメインであり得る。
【0198】
ここで、1つのガイド核酸は、2以上の機能ドメインを含み得る。ここで、2以上の機能ドメインは、互いに異なり得る。または、1つのガイド核酸に含まれる2以上の機能ドメインは、互いに同一であり得る。例えば、1つのガイド核酸は、2つ以上の近位ドメインを有し得る。別の例では、1つのガイド核酸は2つ以上の尾部ドメインを有し得る。しかしながら、1つのガイド核酸に含まれる機能ドメインが同一ドメインであることは、2つの機能ドメインの配列が同一であることを意味するものではない。配列が異なる場合でも、2つの機能ドメインは、同一機能を実行するとき、同一ドメインである。以降、機能ドメインを詳細に説明する。
【0199】
「ガイドドメイン」という用語は、標的遺伝子または標的核酸上の標的配列と相補結合を形成可能な相補的ガイド配列を有するドメインであり、標的遺伝子または標的核酸と特異的に相互作用するように機能する。例えば、ガイドドメインは、標的遺伝子または標的核酸の特定のヌクレオチド配列を有する領域にガイド核酸‐エディタータンパク質複合体を誘導する機能を実行し得る。ガイドドメインは、10〜35塩基の配列であり得る。
【0200】
例において、ガイドドメインは、10〜35、15〜35、20〜35、25〜35、30〜35塩基の配列であり得る。
【0201】
別の例において、ガイドドメインは、10〜15、15〜20、20〜25、25〜30、30〜35塩基の配列であり得る。
【0202】
ガイドドメインはガイド配列を有し得て、「ガイド配列」は、標的遺伝子または二本鎖核酸のうち一本鎖の部分的配列と相補結合を形成可能なヌクレオチド配列であり、ガイド配列は、少なくとも50%以上、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%の相補性または完全相補性を有するヌクレオチド配列であり得る。ガイド配列は10〜25塩基の配列であり得る。例において、ガイドドメインは、10〜25、15〜25、または20〜25塩基の配列であり得る。別の例において、ガイドドメインは、10〜15、15〜20、または20〜25塩基の配列であり得る。加えて、ガイドドメインは追加の塩基配列を含み得る。
【0203】
追加の塩基配列は、ガイドドメインの機能を改善または低減するために利用され得る。
【0204】
追加の塩基配列は、ガイド配列の機能を改善または低減するために利用され得る。追加の塩基配列は1〜10塩基配列であり得る。
【0205】
一例において、追加の塩基配列は、2〜10、4〜10、6〜10、または8〜10塩基配列であり得る。
【0206】
別の例において、追加の塩基配列は、1〜3、3〜6、または7〜10塩基配列であり得る。
【0207】
別の例において、追加の塩基配列は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10塩基配列であり得る。
【0208】
例において、追加の塩基配列は、1塩基配列グアニン(G)、または、2塩基配列GGであり得る。追加の塩基配列はガイド配列の5'末端に位置し得る。追加の塩基配列はガイド配列の3'末端に位置し得る。
【0209】
「第1相補ドメイン」という用語は、第2相補ドメインに相補的な核酸配列を含む核酸配列であり、十分な相補性を有するので、第2相補ドメインと二本鎖を形成する。例えば、第1相補ドメインは、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%以上の相補性または完全相補性を有する第2相補ドメインに相補的な核酸配列であり得る。
【0210】
第1相補ドメインは、第2相補ドメインとの相補結合を形成して二本鎖を形成することが可能である。ここで、二本鎖は、エディタータンパク質に含まれるアミノ酸と相互作用し得て、それにより、ガイド核酸‐エディタータンパク質複合体を形成する。第1相補ドメインは5〜35塩基配列であり得る。
【0211】
一例において、第1相補ドメインは、5〜35、10〜35、15〜35、20〜35、25〜35または30〜35塩基配列であり得る。
【0212】
別の例において、第1相補ドメインは、1〜5、5〜10、10〜15、15〜20、20〜25、25〜30または30〜35塩基配列であり得る。
【0213】
「リンカードメイン」という用語は、2つ以上の同一または異なるドメインである2以上のドメインを接続する核酸配列である。リンカードメインは、共有結合または非共有結合によって2以上のドメインに接続され得るか、または、共有結合または非共有結合によって2以上のドメインを接続し得る。リンカードメインは1〜30塩基配列であり得る。
【0214】
一例において、リンカードメインは、1〜5、5〜10、10〜15、15〜20、20〜25または25〜30塩基配列であり得る。
【0215】
別の例において、リンカードメインは、1〜30、5〜30、10〜30、15〜30、20〜30または25〜30塩基配列であり得る。
【0216】
「第2相補ドメイン」という用語は、第1相補ドメインに相補的な核酸配列を含む核酸配列のことであり、十分な相補性を有するので、第1相補ドメインと二本鎖を形成する。例えば、第2相補ドメインは、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%以上の相補性または完全相補性を有する第1相補ドメインに相補的な核酸配列であり得る。
【0217】
第2相補ドメインは、第1相補ドメインと相補結合を形成して二本鎖を形成することが可能である。ここで、二本鎖は、エディタータンパク質に含まれるアミノ酸と相互作用し得て、それにより、ガイド核酸‐エディタータンパク質複合体を形成する。
【0218】
第2相補ドメインは第1相補ドメインと相補的な塩基配列、および、第1相補ドメインと相補性を有しない塩基配列、例えば、第1相補ドメインと二本鎖を形成しない塩基配列を有し得るので、第1相補ドメインより長い塩基配列を有し得る。第2相補ドメインは5〜35塩基配列を有し得る。
【0219】
一例において、第2相補ドメインは、1〜35、5〜35、10〜35、15〜35、20〜35、25〜35または30〜35塩基配列であり得る。
【0220】
別の例において、第2相補ドメインは、1〜5、5〜10、10〜15、15〜20、20〜25、25〜30または30〜35塩基配列であり得る。
【0221】
「近位ドメイン」という用語は、第2相補ドメインに隣接して配置される核酸配列である。
【0222】
近位ドメインは、その中に相補的塩基配列を有し得て、相補的塩基配列に起因して二本鎖に形成され得る。近位ドメインは、1〜20塩基配列であり得る。一例として、近位ドメインは、1〜20、5〜20、10〜20または15〜20塩基配列であり得る。
【0223】
別の例において、近位ドメインは、1〜5、5〜10、10〜15、または15〜20塩基配列であり得る。
【0224】
「尾部ドメイン」という用語は、ガイド核酸の両方の末端のうち1または複数の末端に位置する核酸配列である。
【0225】
尾部ドメインは、その中に相補的塩基配列を有し得て、相補的塩基配列に起因して、二本鎖に形成され得る。尾部ドメインは、1〜50塩基配列であり得る。
【0226】
一例において、尾部ドメインは、5〜50、10〜50、15〜50、20〜50、25〜50、30〜50、35〜50、40〜50、または、45〜50塩基配列であり得る。
【0227】
別の例において、尾部ドメインは、1〜5、5〜10、10〜15、15〜20、20〜25、25〜30、30〜35、35〜40、40〜45、または、45〜50塩基配列であり得る。
【0228】
一方、ドメイン、すなわち、ガイドドメイン、第1相補ドメイン、リンカードメイン、第2相補ドメイン、近位ドメインおよび尾部ドメインに含まれる核酸配列の一部または全部は、選択的に、または、追加的に、化学修飾を含み得る。
【0229】
化学修飾は、これらに限定されないが、メチル化、アセチル化、リン酸化、ホスホロチオエート結合、架橋型核酸(LNA)、2'−O−メチル3'ホスホロチオエート(MS)、または、2'−O−メチル3'thioPACE(MSP)であり得る。ガイド核酸は1または複数のドメインを含む。ガイド核酸はガイドドメインを含み得る。ガイド核酸は第1相補ドメインを含み得る。ガイド核酸はリンカードメインを含み得る。ガイド核酸は第2相補ドメインを含み得る。ガイド核酸は近位ドメインを含み得る。ガイド核酸は尾部ドメインを含み得る。ここでは、1、2、3、4、5または6以上のドメインがあり得る。ガイド核酸は、1、2、3、4、5または6以上のガイドドメインを含み得る。ガイド核酸は、1、2、3、4、5または6以上の第1相補ドメインを含み得る。ガイド核酸は、1、2、3、4、5または6以上のリンカードメインを含み得る。ガイド核酸は、1、2、3、4、5または6以上の第2相補ドメインを含み得る。ガイド核酸は、1、2、3、4、5または6以上の近位ドメインを含み得る。ガイド核酸は、1、2、3、4、5または6以上の尾部ドメインを含み得る。ここで、ガイド核酸において、1つの種類のドメインが重複し得る。ガイド核酸は、重複がある、または、重複が無い、いくつかのドメインを含み得る。
【0230】
ガイド核酸は、同一の種類のドメインを含み得る。ここで、同一の種類のドメインは、同一の核酸配列または異なる核酸配列を有し得る。
【0231】
ガイド核酸は2種類のドメインを含み得る。ここで、2つの異なる種類のドメインは、異なる核酸配列または同一の核酸配列を有し得る。
【0232】
ガイド核酸は、3種類のドメインを含み得る。ここで、3つの異なる種類のドメインは、異なる核酸配列または同一の核酸配列を有し得る。
【0233】
ガイド核酸は、4種類のドメインを含み得る。ここで、4つの異なる種類のドメインは、異なる核酸配列または同一の核酸配列を有し得る。
【0234】
ガイド核酸は、5種類のドメインを含み得る。ここで、5つの異なる種類のドメインは、異なる核酸配列または同一の核酸配列を有し得る。
【0235】
ガイド核酸は、6種類のドメインを含み得る。ここで、6つの異なる種類のドメインは、異なる核酸配列または同一の核酸配列を有し得る。
【0236】
例えば、ガイド核酸は、[ガイドドメイン]−[第1相補ドメイン]−[リンカードメイン]−[第2相補ドメイン]−[リンカードメイン]−[ガイドドメイン]−[第1相補ドメイン]−[リンカードメイン]−[第2相補ドメイン]から成り得る。ここで、2つのガイドドメインは、異なる、または、同一の標的に対するガイド配列を含み得て、2つの第1相補ドメインおよび2つの第2相補ドメインは、同一または異なる核酸配列を有し得る。ガイドドメインが、異なる標的に対するガイド配列を含むとき、ガイド核酸は、2つの異なる標的に特異的に結合し得て、ここでは、特異的結合は、同時または順番に実行され得る。加えて、リンカードメインは、特異的酵素によって切断され得て、ガイド核酸は、特異的酵素の存在下で、2または3つの部分に分割され得る。本明細書の具体例として、ガイド核酸はgRNAであり得る。
【0237】
「gRNA」という用語は、標的遺伝子または標的核酸に関して、gRNA−CRISPR酵素複合体、すなわち、CRISPR複合体を特異的に標的化可能な核酸を指す。加えて、gRNAは、CRISPR酵素に結合してCRISPR酵素を標的遺伝子または標的核酸へ誘導し得る核酸特異的RNAである。
【0238】
gRNAは、複数のドメインを含み得る。各ドメインに起因して、gRNA鎖の3次元構造もしくは活性形態において、または、これらの鎖の間で、相互作用が生じ得る。
【0239】
gRNAは、一本鎖gRNA(単一RNA分子)、または、二本鎖gRNA(1つより多くの、一般には2つの別個のRNA分子を含む)と称され得る。
【0240】
例示的な一実施形態において、一本鎖gRNAは、5'から3'の方向に、ガイドドメイン、すなわち、標的遺伝子または標的核酸との相補結合を形成可能なガイド配列を含むドメインと、第1相補ドメインと、リンカードメインと、第2相補ドメイン、すなわち、第1相補ドメイン配列に相補的な配列を有し、それにより、第1相補ドメインと共に二本鎖核酸を形成するドメインと、近位ドメインと、任意で、尾部ドメインとを含み得る。
【0241】
別の実施形態において、二本鎖gRNAは、ガイドドメイン、すなわち、標的遺伝子または標的核酸との相補結合を形成可能なガイド配列を含むドメイン、および、第1相補ドメインを含む第1鎖と、5'から3'の方向に、第2相補ドメイン、すなわち、第1相補ドメイン配列に相補的な配列を有し、それにより、第1相補ドメインと共に二本鎖核酸を形成するドメイン、近位ドメイン、任意で、尾部ドメインを含む第2鎖とを含み得る。
【0242】
ここで、第1鎖はcrRNAと称され得て、第2鎖はtracrRNAと称され得る。crRNAは、ガイドドメインおよび第1相補ドメインを含み得て、tracrRNAは、第2相補ドメイン、近位ドメイン、任意で尾部ドメインを含み得る。
【0243】
更に別の実施形態において、一本鎖gRNAは、3'から5'の方向に、ガイドドメイン、すなわち、標的遺伝子または標的核酸との相補結合を形成可能なガイド配列を含むドメインと、第1相補ドメインと、第2相補ドメイン、すなわち、第1相補ドメイン配列に相補的な配列を有し、それにより、第1相補ドメインと共に二本鎖核酸を形成するドメインとを含み得る。
【0244】
ここで、第1相補ドメインは、天然第1相補ドメインとの相同性を有し得る、または、天然第1相補ドメインに由来し得る。加えて、第1相補ドメインは、天然に存在する種に応じて、第1相補ドメインの塩基配列に差異を有し得て、天然に存在する種に含まれる第1相補ドメインに由来し得るか、または、天然に存在する種に含まれる第1相補ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有し得る。
【0245】
例示的な一実施形態において、第1相補ドメインは、ストレプトコッカス・ピオゲネス、カンピロバクター・ジェジュニ、ストレプトコッカス・サーモフィラス、ストレプトコッカス・アウレウスまたはナイセリア・メニンジティディスの第1相補ドメインとの、または、それらに由来する第1相補ドメインとの部分的、すなわち少なくとも50%以上の相同性、または、完全相同性を有し得る。
【0246】
例えば、第1相補ドメインがストレプトコッカス・ピオゲネスの第1相補ドメイン、または、それに由来する第1相補ドメインであるとき、第1相補ドメインは、5'‐GUUUUAGAGCUA‐3'であり得る、または、5'‐GUUUUAGAGCUA‐3'との部分的、すなわち、少なくとも50%以上の相同性、もしくは、完全相同性を有する塩基配列であり得る。ここで、第1相補ドメインは更に、(X)を含み得て、5'−GUUUUAGAGCUA(X)−3'となる。Xは、塩基A、T、UおよびGから成る群から選択され得て、nは、5〜15の整数である塩基の数を表し得る。ここで、(X)は、同一の塩基のn回反復、または、n個の塩基A、T、UおよびGの混在であり得る。
【0247】
別の実施形態において、第1相補ドメインがカンピロバクター・ジェジュニの第1相補ドメイン、または、それに由来する第1相補ドメインであるとき、第1相補ドメインは、5'‐GUUUUAGUCCCUUUUUAAAUUUCUU‐3'であり得る、または、5'‐GUUUUAGUCCCUUUUUAAAUUUCUU‐3'との部分的、すなわち、少なくとも50%以上、または、完全相同性を有する塩基配列であり得る。ここで、第1相補ドメインは更に、(X)を含み得て、5'−GUUUUAGUCCCUUUUUAAAUUUCUU(X)−3'となる。Xは、塩基A、T、UおよびGから成る群から選択され得て、nは、5〜15の整数である塩基の数を表し得る。ここで、(X)は、同一の塩基のn回反復、または、n個の塩基A、T、UおよびGの混在を表し得る。
【0248】
別の実施形態において、第1相補ドメインは、パルクバクテリア・バクテリウム(GWC2011_GWC2_44_17)、ラクノスピラバクテリウム(MC2017)、ブチリビブリオ・プロテオクラスチクス、ペレグリニバクテリア・バクテリウム(GW2011_GWA_33_10)、アシダミノコッカス属(BV3L6)、ポルフィロモナス・マカカエ、ラクノスピラバクテリウム(ND2006)、ポルフィロモナス・クレビオリカニ、プレボテラ・ディシエンス、モラクセラ・ボーボクリ(237)、スミセラ属(SC_KO8D17)、レプトスピラ・イナダイ、ラクノスピラバクテリウム(MA2020)、フランシセラ・ノビサイダ(U112)、カンディダツス・メタノプラズマ・テルミタム、または、ユウバクテリウム・エリゲンスの第1相補ドメイン、または、それに由来する第1相補ドメインとの部分的、すなわち、少なくとも50%以上の相同性、または、完全相同性を有し得る。
【0249】
例えば、第1相補ドメインがパルクバクテリア・バクテリウムの第1相補ドメイン、または、それに由来する第1相補ドメインであるとき、第1相補ドメインは、5'‐UUUGUAGAU‐3'であり得る、または、5'‐UUUGUAGAU‐3'と部分的な、すなわち、少なくとも50%以上の相同性を有する塩基配列であり得る。ここで、第1相補ドメインは更に、(X)を含み得て、5'−(X)UUUGUAGAU−3'となる。Xは、塩基A、T、UおよびGから成る群から選択され得て、nは、1〜5の整数である塩基の数を表し得る。ここで、(X)は、同一の塩基のn回反復、または、n個の塩基A、T、UおよびGの混在を表し得る。
【0250】
ここで、リンカードメインは、第1相補ドメインおよび第2相補ドメインを連結するように機能するヌクレオチド配列であり得る。
【0251】
リンカードメインは、第1相補ドメインおよび第2相補ドメインとの共有結合または非共有結合をそれぞれ形成可能である。
【0252】
リンカードメインは、共有結合または非共有結合によって第1相補ドメインを第2相補ドメインに接続し得る。
【0253】
リンカードメインは、一本鎖gRNA分子において使用されるのに好適であり、共有結合または非共有結合により、二本鎖gRNAの第1鎖および第2鎖と接続されることによって、または、第1鎖を第2鎖と接続することによって、一本鎖gRNAを生成するのに使用され得る。
【0254】
リンカードメインは、二本鎖gRNAのcrRNAおよびtracrRNAと接続されることによって、または、共有結合または非共有結合でcrRNAをtracrRNAに接続することによって、一本鎖gRNAを生成するために使用され得る。
【0255】
加えて、第2相補ドメインは、天然第2相補ドメインとの相同性を有し得る、または、天然第2相補ドメインに由来し得る。加えて、第2相補ドメインは、天然に存在する種に応じて、第2相補ドメインの塩基配列において差異を有し得て、天然に存在する種に含まれる第2相補ドメインに由来し得て、または、天然に存在する種に含まれる第2相補ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有し得る。
【0256】
例示的な実施形態において、第2相補ドメインは、ストレプトコッカス・ピオゲネス、カンピロバクター・ジェジュニ、ストレプトコッカス・サーモフィラス、ストレプトコッカス・アウレウスまたはナイセリア・メニンジティディスとの部分的、すなわち、少なくとも50%以上の相同性、または、完全相同性を有する第2相補ドメイン、または、それに由来する第2相補ドメインを有し得る。
【0257】
例えば、第2相補ドメインがストレプトコッカス・ピオゲネスの第2相補ドメイン、または、それに由来する第2相補ドメインであるとき、第2相補ドメインは、5'‐UAGCAAGUUAAAAU‐3'であり得る、または、5'‐UAGCAAGUUAAAAU‐3'と部分的な、すなわち、少なくとも50%以上の相同性を有する塩基配列であり得る(第1相補ドメインと共に二本鎖を形成する塩基配列を下線で示す)。ここで、第2相補ドメインは更に、(X)および/または(X)を含み得て、5'‐(X) UAGCAAGUUAAAAU(X)‐3'となる。Xは、塩基A、T、UおよびGから成る群から選択され得て、nおよびmの各々は、塩基の数を表し得て、nは1〜15の整数であり得て、mは1〜6の整数であり得る。ここで、(X)は、同一の塩基のn回反復、または、n個の塩基A、T、UおよびGの混在を表し得る。加えて、(X)は、同一の塩基のm回反復、または、m個の塩基A、T、UおよびGの混在を表し得る。
【0258】
別の例において、第2相補ドメインがカンピロバクター・ジェジュニの第2相補ドメイン、または、それに由来する第2相補ドメインであるとき、第2相補ドメインは、5'‐AAGAAAUUUAAAAAGGGACUAAAAU‐3'であり得る、または、5'‐AAGAAAUUUAAAAAGGGACUAAAAU‐3'と部分的、すなわち、少なくとも50%以上の相同性を有する塩基配列であり得る(第1相補ドメインと共に二本鎖を形成する塩基配列を下線で示す)。ここで、第2相補ドメインは更に、(X)および/または(X)を含み得て、5'‐(X)AAGAAAUUUAAAAAGGGACUAAAAU(X)‐3'となる。Xは、塩基A、T、UおよびGから成る群から選択され得て、nおよびmの各々は、塩基の数を表し得て、nは1〜15の整数であり得て、mは1〜6の整数であり得る。ここで、(X)は、同一の塩基のn回反復、または、n個の塩基A、T、UおよびGの混在を表し得る。加えて、(X)は、同一の塩基のm回反復、または、m個の塩基A、T、UおよびGの混在を表し得る。
【0259】
別の実施形態において、第2相補ドメインは、パルクバクテリア・バクテリウム(GWC2011_GWC2_44_17)、ラクノスピラバクテリウム(MC2017)、ブチリビブリオ・プロテオクラスチクス、ペレグリニバクテリア・バクテリウム(GW2011_GWA_33_10)、アシダミノコッカス属(BV3L6)、ポルフィロモナス・マカカエ、ラクノスピラバクテリウム(ND2006)、ポルフィロモナス・クレビオリカニ、プレボテラ・ディシエンス、モラクセラ・ボーボクリ(237)、スミセラ属(SC_KO8D17)、レプトスピラ・イナダイ、ラクノスピラバクテリウム(MA2020)、フランシセラ・ノビサイダ(U112)、カンディダツス・メタノプラズマ・テルミタム、または、ユウバクテリウム・エリゲンスの第1相補ドメイン、または、それに由来する第2相補ドメインとの部分的、すなわち、少なくとも50%以上の相同性、または、完全相同性を有し得る。
【0260】
例えば、第2相補ドメインがパルクバクテリア・バクテリウムの第2相補ドメイン、または、それに由来する第2相補ドメインであるとき、第2相補ドメインは、5'‐AAAUUUCUACU‐3'であり得る、または、5'‐AAAUUUCUACU‐3'と部分的、すなわち、少なくとも50%以上の相同性を有する塩基配列であり得る(第1相補ドメインと共に二本鎖を形成する塩基配列を下線で示す)。ここで、第2相補ドメインは更に、(X)および/または(X)を含み得て、5'‐(X)AAAUUUCUACU(X)‐3'となる。Xは、塩基A、T、UおよびGから成る群から選択され得て、nおよびmの各々は、塩基の数を表し得て、nは1〜10の整数であり得て、mは1〜6の整数であり得る。ここで、(X)は、同一の塩基のn回反復、または、n個の塩基A、T、UおよびGの混在を表し得る。加えて、(X)は、同一の塩基のm回反復、または、m個の塩基A、T、UおよびGの混在を表し得る。
【0261】
ここで、第1相補ドメインおよび第2相補ドメインは相補結合を形成し得て、第1相補ドメインおよび第2相補ドメインは、相補結合によって二本鎖を形成し得る。二本鎖はCRISPR酵素と相互作用し得る。
【0262】
選択的に、第1相補ドメインは、第2相補ドメインと相補結合を形成しない追加ヌクレオチド配列を含み得る。
【0263】
ここで、追加ヌクレオチド配列は1〜15塩基配列であり得る。例えば、追加ヌクレオチド配列は1〜5、5〜10、または10〜15塩基配列であり得る。
【0264】
ここで、近位ドメインは、第2相補ドメインの3'末端方向に位置するドメインであり得る。
【0265】
加えて、近位ドメインは、天然近位ドメインとの相同性を有し得る、または、天然近位ドメインに由来し得る。加えて、近位ドメインは、天然に存在する種に応じて塩基配列に差異を有し得て、天然に存在する種に含まれる近位ドメインに由来し得て、または、天然に存在する種に含まれる近位ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有し得る。
【0266】
例示的な実施形態において、近位ドメインは、ストレプトコッカス・ピオゲネス、カンピロバクター・ジェジュニ、ストレプトコッカス・サーモフィラス、ストレプトコッカス・アウレウスまたはナイセリア・メニンジティディスの近位ドメイン、または、それらに由来する近位ドメインとの部分的、すなわち、少なくとも50%以上の相同性、または、完全相同性を有し得る。
【0267】
例えば、近位ドメインがストレプトコッカス・ピオゲネスの近位ドメイン、または、それに由来する近位ドメインであるとき、近位ドメインは、5'‐AAGGCUAGUCCG‐3'であり得る、または、5'‐AAGGCUAGUCCG‐3'との部分的、すなわち、少なくとも50%以上の相同性を有する塩基配列であり得る。ここで、近位ドメインは更に(X)を含み得て、5'‐AAGGCUAGUCCG(X)‐3'となる。Xは、塩基A、T、UおよびGから成る群から選択され得て、nは、1〜15の整数である塩基の数を表し得る。ここで、(X)は、同一の塩基のn回反復、または、n個の塩基A、T、UおよびGの混在を表し得る。
【0268】
更なる別の例において、近位ドメインがカンピロバクター・ジェジュニの近位ドメイン、または、それに由来する近位ドメインであるとき、近位ドメインは、5'‐AAAGAGUUUGC‐3'であり得る、または、5'‐AAAGAGUUUGC‐3'と少なくとも50%以上の相同性を有する塩基配列であり得る。ここで、近位ドメインは更に(X)を含み得て、5'‐AAAGAGUUUGC(X)‐3'となる。Xは、塩基A、T、UおよびGから成る群から選択され得て、nは、1〜40の整数である塩基の数を表し得る。ここで、(X)は、同一の塩基のn回反復、または、n個の塩基A、T、UおよびGの混在を表し得る。
【0269】
ここで、尾部ドメインは、一本鎖gRNA、または、二本鎖gRNAの第1鎖もしくは第2鎖の3'末端に選択的に追加されることが可能なドメインである。
【0270】
加えて、尾部ドメインは、天然尾部ドメインと相同性を有し得る、または、天然尾部ドメインに由来し得る。加えて、尾部ドメインは、天然に存在する種に応じて塩基配列に差異を有し得て、天然に存在する種に含まれる尾部ドメインに由来し得て、または、天然に存在する種に含まれる尾部ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有し得る。
【0271】
例示的な一実施形態において、尾部ドメインは、ストレプトコッカス・ピオゲネス、カンピロバクター・ジェジュニ、ストレプトコッカス・サーモフィラス、ストレプトコッカス・アウレウスまたはナイセリア・メニンジティディスの尾部ドメイン、または、それに由来する尾部ドメインと、部分的、すなわち、少なくとも50%以上の相同性、または、完全相同性を有し得る。
【0272】
例えば、尾部ドメインが、ストレプトコッカス・ピオゲネスの尾部ドメイン、または、それに由来する尾部ドメインであるとき、尾部ドメインは、5'‐UUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGC‐3'であり得る、または、5'‐UUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGC‐3'と部分的、すなわち、少なくとも50%以上の相同性を有する塩基配列であり得る。ここで、尾部ドメインは更に(X)を含み得て、5'‐UUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGC(X)‐3'となる。Xは、塩基A、T、UおよびGから成る群から選択され得て、nは、1〜15の整数である塩基の数を表し得る。ここで、(X)は、同一の塩基のn回反復、または、A、T、UおよびGなどn個の塩基の混在を表し得る。
【0273】
別の例において、尾部ドメインがカンピロバクター・ジェジュニの尾部ドメイン、または、それに由来する尾部ドメインであるとき、尾部ドメインは、5'−GGGACUCUGCGGGGUUACAAUCCCCUAAAACCGCUUUU−3'であり得る、または、5'−GGGACUCUGCGGGGUUACAAUCCCCUAAAACCGCUUUU−3'と部分的、すなわち、少なくとも50%以上の相同性を有する塩基配列であり得る。ここで、尾部ドメインは更に(X)を含み得て、5'‐GGGACUCUGCGGGGUUACAAUCCCCUAAAACCGCUUUU(X)‐3'となる。Xは、塩基A、T、UおよびGから成る群から選択され得て、nは、1〜15の整数である塩基の数を表し得る。ここで、(X)は、同一の塩基のn回反復、または、n個の塩基A、T、UおよびGの混在を表し得る。
【0274】
別の実施形態において、尾部ドメインは、3'末端において、in vitroまたはin vivo転写法に関与する1〜10塩基配列を含み得る。
【0275】
例えば、gRNAのin vitro転写においてT7プロモーターが使用されるとき、尾部ドメインは、DNA鋳型の3'末端に存在する任意の塩基配列であり得る。加えて、U6プロモーターがin vivo転写において使用されるとき、尾部ドメインはUUUUUUであり得て、H1プロモーターが転写において使用されるとき、尾部ドメインはUUUUであり得て、Pol‐IIIプロモーターが使用されるとき、尾部ドメインはいくつかのウラシル塩基または代替的な塩基を含み得る。
【0276】
gRNAは、上記の複数のドメインを含み得て、このため、核酸配列の長さは、gRNAに含まれるドメインに従って調節され得て、各ドメインに起因して、gRNAの3次元構造または活性形態の鎖において、または、これらの鎖の間で相互作用が生じ得る。
【0277】
gRNAは、一本鎖gRNA(単一RNA分子)、または、二本鎖gRNA(1つより多くの、一般には2つの別個のRNA分子を含む)と称され得る。二本鎖gRNAは、第1鎖および第2鎖から成る。
【0278】
ここで、第1鎖は、5'−[ガイドドメイン]−[第1相補ドメイン]−3'から成り得て、第2鎖は、5'−[第2相補ドメイン]−[近位ドメイン]−3'、または、5'−[第2相補ドメイン]−[近位ドメイン]−[尾部ドメイン]−3'から成り得る。
【0279】
ここで、第1鎖は、crRNAと称され得て、第2鎖は、tracrRNAと称され得る。
【0280】
ここで、第1鎖および第2鎖は、選択的に、追加ヌクレオチド配列を含み得る。
【0281】
一例において、第1鎖は、5'‐(Ntarget)‐(Q)‐3'、または、5'‐(X)‐(Ntarget)‐(X)‐(Q)‐(X)‐3'であり得る。
【0282】
ここで、Ntargetは、標的遺伝子または標的核酸上の標的配列と相補結合を形成可能な塩基配列であり、標的遺伝子または標的核酸上の標的配列に応じて変更され得る塩基配列領域である。
【0283】
ここで、(Q)は、第2鎖の第2相補ドメインとの相補結合を形成可能な第1相補ドメインを含む塩基配列である。(Q)は、天然に存在する種の第1相補ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有する配列であり得て、第1相補ドメインの塩基配列は、由来の種に応じて変更され得る。Qは各々独立に、A、U、CおよびGから成る群から選択され得て、mは塩基の数であり得て、5〜35の整数である。
【0284】
例えば、第1相補ドメインが、ストレプトコッカス・ピオゲネスまたはストレプトコッカス・ピオゲネス由来第1相補ドメインの第1相補ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有するとき、(Q)は、5'‐GUUUUAGAGCUA‐3'、または、5'‐GUUUUAGAGCUA‐3'と少なくとも50%以上の相同性を有する塩基配列であり得る。
【0285】
別の例において、第1相補ドメインが、カンピロバクター・ジェジュニまたはカンピロバクター・ジェジュニ由来第1相補ドメインの第1相補ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有するとき、(Q)は、5'‐GUUUUAGUCCCUUUUUAAAUUUCUU‐3'、または、5'‐GUUUUAGUCCCUUUUUAAAUUUCUU‐3'と少なくとも50%以上の相同性を有する塩基配列であり得る。
【0286】
更に別の例において、第1相補ドメインが、ストレプトコッカス・サーモフィラスまたはストレプトコッカス・サーモフィラス由来第1相補ドメインの第1相補ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有するとき、(Q)は、5'‐GUUUUAGAGCUGUGUUGUUUCG‐3'、または、5'‐GUUUUAGAGCUGUGUUGUUUCG‐3'と少なくとも50%以上の相同性を有する塩基配列であり得る。
【0287】
加えて、(X)、(X)、(X)の各々は選択的に、追加の塩基配列であり、Xは各々独立に、A、U、CおよびGから成る群から選択され得て、a、bおよびcの各々は、塩基の数であり得て、0または1〜20の整数である。
【0288】
例示的な一実施形態において、第2鎖は、5'‐(Z)‐(P)‐3'、または、5'‐(X)‐(Z)‐(X)‐(P)‐(X)‐3'であり得る。
【0289】
別の実施形態において、第2鎖は、5'‐(Z)‐(P)‐(F)‐3'、または、5'‐(X)‐(Z)‐(X)‐(P)‐(X)‐(F)‐3'であり得る。
【0290】
ここで、(Z)は、第1鎖の第1相補ドメインとの相補結合を形成可能な第2相補ドメインを含む塩基配列である。(Z)は、天然に存在する種の第2相補ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有する配列であり得て、第2相補ドメインの塩基配列は、由来の種に応じて改変され得る。Zは各々独立に、A、U、CおよびGから成る群から選択され得て、hは塩基の数であり得て、5〜50の整数である。
【0291】
例えば、第2相補ドメインがストレプトコッカス・ピオゲネスの第2相補ドメインまたはそれに由来する第2相補ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有するとき、(Z)は、5'‐UAGCAAGUUAAAAU‐3'であり得る、または、5'‐UAGCAAGUUAAAAU‐3'と少なくとも50%以上の相同性を有する塩基配列であり得る。
【0292】
別の例において、第2相補ドメインがカンピロバクター・ジェジュニの第2相補ドメインまたはそれに由来する第2相補ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有するとき、(Z)は、5'‐AAGAAAUUUAAAAAGGGACUAAAAU‐3'であり得る、または、5'‐AAGAAAUUUAAAAAGGGACUAAAAU‐3'と少なくとも50%以上の相同性を有する塩基配列であり得る。
【0293】
更に別の例において、第2相補ドメインがストレプトコッカス・サーモフィラスの第2相補ドメインまたはそれに由来する第2相補ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有するとき、(Z)は、5'‐CGAAACAACACAGCGAGUUAAAAU‐3'であり得る、または、5'‐CGAAACAACACAGCGAGUUAAAAU‐3'と少なくとも50%以上の相同性を有する塩基配列であり得る。
【0294】
(P)は、天然に存在する種の近位ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有し得る近位ドメインを含む塩基配列であり、近位ドメインの塩基配列は、由来の種に応じて改変され得る。Pは各々独立に、A、U、CおよびGから成る群から選択され得て、kは1〜20の整数である塩基の数であり得る。
【0295】
例えば、近位ドメインがストレプトコッカス・ピオゲネスの近位ドメイン、または、それに由来する近位ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有するとき、(P)は、5'‐AAGGCUAGUCCG‐3'であり得る、または、5'‐AAGGCUAGUCCG‐3'と少なくとも50%以上の相同性を有する塩基配列であり得る。
【0296】
別の例において、近位ドメインがカンピロバクター・ジェジュニの近位ドメイン、または、それに由来する近位ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有するとき、(P)は、5'‐AAAGAGUUUGC‐3'であり得る、または、5'‐AAAGAGUUUGC‐3'と少なくとも50%以上の相同性を有する塩基配列であり得る。
【0297】
更に別の例において、近位ドメインがストレプトコッカス・サーモフィラスの近位ドメイン、または、それに由来する近位ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有するとき、(P)は、5'‐AAGGCUUAGUCCG‐3'であり得る、または、5'‐AAGGCUUAGUCCG‐3'と少なくとも50%以上の相同性を有する塩基配列であり得る。
【0298】
(F)は、尾部ドメインを含む塩基配列であり得て、天然に存在する種の尾部ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有し、尾部ドメインの塩基配列は由来の種に応じて改変され得る。Fは各々独立に、A、U、CおよびGから成る群から選択され得て、iは塩基の数であり得て、1〜50の整数である。
【0299】
例えば、尾部ドメインがストレプトコッカス・ピオゲネスの尾部ドメイン、または、それに由来する尾部ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有するとき、(F)は、5'‐UUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGC‐3'であり得る、または、5'‐UUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGC‐3'と少なくとも50%以上の相同性を有する塩基配列であり得る。
【0300】
別の例において、尾部ドメインがカンピロバクター・ジェジュニの尾部ドメイン、または、それに由来する尾部ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有するとき、(F)は、5'‐GGGACUCUGCGGGGUUACAAUCCCCUAAAACCGCUUUU‐3'であり得る、または、5'‐GGGACUCUGCGGGGUUACAAUCCCCUAAAACCGCUUUU‐3'と少なくとも50%以上の相同性を有する塩基配列であり得る。
【0301】
更に別の例において、尾部ドメインがストレプトコッカス・サーモフィラスの尾部ドメイン、または、それに由来する尾部ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有するとき、(F)は、5'‐UACUCAACUUGAAAAGGUGGCACCGAUUCGGUGUUUUU‐3'であり得る、または、5'‐UACUCAACUUGAAAAGGUGGCACCGAUUCGGUGUUUUU‐3'と少なくとも50%以上の相同性を有する塩基配列であり得る。
【0302】
加えて、(F)は、in vitroまたはin vivo転写法に関与する3'末端における1〜10塩基の配列を含み得る。
【0303】
例えば、gRNAのin vitro転写においてT7プロモーターが使用されるとき、尾部ドメインは、DNA鋳型の3'末端に存在する任意の塩基配列であり得る。加えて、U6プロモーターがin vivo転写において使用されるとき、尾部ドメインはUUUUUUであり得て、H1プロモーターが転写において使用されるとき、尾部ドメインはUUUUであり得て、Pol‐IIIプロモーターが使用されるとき、尾部ドメインはいくつかのウラシル塩基または代替的な塩基を含み得る。
【0304】
加えて、(X)、(X)、(X)は、選択的に追加される塩基配列であり得て、Xは、A、U、CおよびGから成る群から各々独立に選択され得て、d、eおよびfの各々は塩基の数であり得て、0または1〜20の整数である。
【0305】
一本鎖gRNAは、2種類、すなわち、第1の一本鎖gRNAおよび第2の一本鎖gRNAに分類され得る。
【0306】
第1の一本鎖gRNAは、二本鎖gRNAの第1鎖または第2鎖がリンカードメインによって連結される一本鎖gRNAである。
【0307】
具体的には、一本鎖gRNAは、5'‐[ガイドドメイン]‐[第1相補ドメイン]‐[リンカードメイン]‐[第2相補ドメイン]‐3'、または、5'‐[ガイドドメイン]‐[第1相補ドメイン]‐[リンカードメイン]‐[第2相補ドメイン]‐[近位ドメイン]‐3'、または、5'‐[ガイドドメイン]‐[第1相補ドメイン]‐[リンカードメイン]‐[第2相補ドメイン]‐[近位ドメイン]‐[尾部ドメイン]‐3'から成り得る。第1の一本鎖gRNAは選択的に、追加の塩基配列を含み得る。
【0308】
例示的な一実施形態において、第1の一本鎖gRNAは、
5'−(Ntarget)−(Q)−(L)−(Z)−3'、
5'−(Ntarget)−(Q)−(L)−(Z)−(P)−3'または
5'−(Ntarget)−(Q)−(L)−(Z)−(P)−(F)−3'
であり得る。
【0309】
別の実施形態において、一本鎖gRNAは、
5'−(X)−(Ntarget)−(X)−(Q)−(X)−(L)−(X)−(Z)−(X)−3'、
5'−(X)−(Ntarget)−(X)−(Q)−(X)−(L)−(X)−(Z)−(X)−(P)−(X)−3'、または、
5'−(X)−(Ntarget)−(X)−(Q)−(X)−(L)−(X)−(Z)−(X)−(P)−(X)−(F)−3'
であり得る。
【0310】
ここで、Ntargetは、標的遺伝子または標的核酸上の標的配列と相補結合を形成可能な塩基配列であり、標的遺伝子または標的核酸上の標的配列に応じて変更可能な塩基配列領域である。
【0311】
(Q)は、第2相補ドメインと相補結合を形成可能な第1相補ドメインを含む塩基配列を含む。(Q)は、天然に存在する種の第1相補ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有する配列であり得て、第1相補ドメインの塩基配列は、由来の種に応じて変更され得る。Qは各々独立に、A、U、CおよびGから成る群から選択され得て、mは塩基の数であり得て、5〜35の整数である。
【0312】
例えば、第1相補ドメインが、ストレプトコッカス・ピオゲネスの第1相補ドメイン、または、それに由来する第1相補ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有するとき、(Q)は、5'‐GUUUUAGAGCUA‐3'、または、5'‐GUUUUAGAGCUA‐3'と少なくとも50%以上の相同性を有する塩基配列であり得る。
【0313】
別の例において、第1相補ドメインが、カンピロバクター・ジェジュニの第1相補ドメイン、または、それに由来する第1相補ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有するとき、(Q)は、5'‐GUUUUAGUCCCUUUUUAAAUUUCUU‐3'、または、5'‐GUUUUAGUCCCUUUUUAAAUUUCUU‐3'と少なくとも50%以上の相同性を有する塩基配列であり得る。
【0314】
更に別の例において、第1相補ドメインが、ストレプトコッカス・サーモフィラスの第1相補ドメイン、または、それに由来する第1相補ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有するとき、(Q)は、5'‐GUUUUAGAGCUGUGUUGUUUCG‐3'、または、5'‐GUUUUAGAGCUGUGUUGUUUCG‐3'と少なくとも50%以上の相同性を有する塩基配列であり得る。
【0315】
加えて、(L)は、リンカードメインを含む塩基配列であり、第1相補ドメインを第2相補ドメインに接続し、それにより、一本鎖gRNAを生成する。ここで、Lは各々独立に、A、U、CおよびGから成る群から選択され得て、jは塩基の数であり得て、1〜30の整数である。
【0316】
(Z)は、第1相補ドメインとの相補結合を有することが可能な第2相補ドメインを含む塩基配列である。(Z)は、天然に存在する種の第2相補ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有する配列であり得て、第2相補ドメインの塩基配列は、由来の種に応じて変更され得る。Zは各々独立に、A、U、CおよびGから成る群から選択され得て、hは塩基の数であり、5〜50の整数であり得る。
【0317】
例えば、第2相補ドメインがストレプトコッカス・ピオゲネスの第2相補ドメインまたはそれに由来する第2相補ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有するとき、(Z)は、5'‐UAGCAAGUUAAAAU‐3'であり得る、または、5'‐UAGCAAGUUAAAAU‐3'と少なくとも50%以上の相同性を有する塩基配列であり得る。
【0318】
別の例において、第2相補ドメインがカンピロバクター・ジェジュニの第2相補ドメインまたはそれに由来する第2相補ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有するとき、(Z)は、5'‐AAGAAAUUUAAAAAGGGACUAAAAU‐3'であり得る、または、5'‐AAGAAAUUUAAAAAGGGACUAAAAU‐3'と少なくとも50%以上の相同性を有する塩基配列であり得る。
【0319】
更に別の例において、第2相補ドメインがストレプトコッカス・サーモフィラスの第2相補ドメインまたはそれに由来する第2相補ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有するとき、(Z)は、5'‐CGAAACAACACAGCGAGUUAAAAU‐3'であり得る、または、5'‐CGAAACAACACAGCGAGUUAAAAU‐3'と少なくとも50%以上の相同性を有する塩基配列であり得る。
【0320】
(P)は、天然に存在する種の近位ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有し得る近位ドメインを含む塩基配列であり、近位ドメインの塩基配列は、由来の種に応じて改変され得る。Pは各々独立に、A、U、CおよびGから成る群から選択され得て、kは1〜20の整数である塩基の数であり得る。
【0321】
例えば、近位ドメインがストレプトコッカス・ピオゲネスの近位ドメイン、または、それに由来する近位ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有するとき、(P)は、5'‐AAGGCUAGUCCG‐3'であり得る、または、5'‐AAGGCUAGUCCG‐3'と少なくとも50%以上の相同性を有する塩基配列であり得る。
【0322】
別の例において、近位ドメインがカンピロバクター・ジェジュニの近位ドメイン、または、それに由来する近位ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有するとき、(P)は、5'‐AAAGAGUUUGC‐3'であり得る、または、5'‐AAAGAGUUUGC‐3'と少なくとも50%以上の相同性を有する塩基配列であり得る。
【0323】
更に別の例において、近位ドメインがストレプトコッカス・サーモフィラスの近位ドメイン、または、それに由来する近位ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有するとき、(P)は、5'‐AAGGCUUAGUCCG‐3'であり得る、または、5'‐AAGGCUUAGUCCG‐3'と少なくとも50%以上の相同性を有する塩基配列であり得る。
【0324】
(F)は、尾部ドメインを含む塩基配列であり得て、天然に存在する種の尾部ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有し、尾部ドメインの塩基配列は由来の種に応じて改変され得る。Fは各々独立に、A、U、CおよびGから成る群から選択され得て、iは塩基の数であり得て、1〜50の整数である。
【0325】
例えば、尾部ドメインがストレプトコッカス・ピオゲネスの尾部ドメイン、または、それに由来する尾部ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有するとき、(F)は、5'‐UUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGC‐3'であり得る、または、5'‐ UUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGC‐3'と少なくとも50%以上の相同性を有する塩基配列であり得る。
【0326】
別の例において、尾部ドメインがカンピロバクター・ジェジュニの尾部ドメイン、または、それに由来する尾部ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有するとき、(F)は、5'‐GGGACUCUGCGGGGUUACAAUCCCCUAAAACCGCUUUU‐3'であり得る、または、5'‐GGGACUCUGCGGGGUUACAAUCCCCUAAAACCGCUUUU‐3'と少なくとも50%以上の相同性を有する塩基配列であり得る。
【0327】
更に別の例において、尾部ドメインがストレプトコッカス・サーモフィラスの尾部ドメイン、または、それに由来する尾部ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有するとき、(F)は、5'‐UACUCAACUUGAAAAGGUGGCACCGAUUCGGUGUUUUU‐3'であり得る、または、5'‐UACUCAACUUGAAAAGGUGGCACCGAUUCGGUGUUUUU‐3'と少なくとも50%以上の相同性を有する塩基配列であり得る。
【0328】
加えて、(F)は、in vitroまたはin vivo転写法に関与する3'末端における1〜10塩基の配列を含み得る。
【0329】
例えば、gRNAのin vitro転写においてT7プロモーターが使用されるとき、尾部ドメインは、DNA鋳型の3'末端に存在する任意の塩基配列であり得る。加えて、U6プロモーターがin vivo転写において使用されるとき、尾部ドメインはUUUUUUであり得て、H1プロモーターが転写において使用されるとき、尾部ドメインはUUUUであり得て、Pol‐IIIプロモーターが使用されるとき、尾部ドメインはいくつかのウラシル塩基または代替的な塩基を含み得る。
【0330】
加えて、(X)、(X)、(X)、(X)、(X)、および、(X)は、選択的に追加される塩基配列であり得て、Xは、A、U、CおよびGから成る群から各々独立に選択され得て、a、b、c、d、e、fの各々は塩基の数であり得て、0または1〜20の整数である。第2の一本鎖gRNAは、ガイドドメイン、第1相補ドメイン、第2相補ドメインから成る一本鎖gRNAであり得る。
【0331】
ここで、第2の一本鎖gRNAは、5'‐[第2相補ドメイン]‐[第1相補ドメイン]‐[ガイドドメイン]‐3'、または、5'‐[第2相補ドメイン]‐[リンカードメイン]‐[第1相補ドメイン]‐[ガイドドメイン]‐3'から成り得る。第2の一本鎖gRNAは選択的に、追加の塩基配列を含み得る。
【0332】
例示的な一実施形態において、一本鎖gRNAは、5'−(Z)−(Q)−(Ntarget)−3'、または、5'−(X)−(Z)−(X)‐(Q)−(X)−(Ntarget)−3'であり得る。
【0333】
別の実施形態において、一本鎖gRNAは、
5'−(Z)−(L)−(Q)−(Ntarget)−3'、または、
5'−(X)−(Z)−(L)−(Q)−(X)−(Ntarget)−3'
であり得る。
【0334】
ここで、Ntargetは、標的遺伝子または標的核酸上の標的配列と相補結合を形成可能な塩基配列であり、標的遺伝子または標的核酸上の標的配列に応じて変更され得る塩基配列領域である。
【0335】
(Q)は、第2鎖の第2相補ドメインとの相補結合を形成可能な第1相補ドメインを含む塩基配列である。(Q)は、天然に存在する種の第1相補ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有する配列であり得て、第1相補ドメインの塩基配列は、由来の種に応じて変更され得る。Qは各々独立に、A、U、CおよびGから成る群から選択され得て、mは塩基の数であり得て、5〜35の整数である。
【0336】
例えば、第1相補ドメインが、パルクバクテリア・バクテリウムの第1相補ドメイン、または、それに由来する第1相補ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有するとき、(Q)は、5'‐UUUGUAGAU‐3'、または、5'‐UUUGUAGAU‐3'と少なくとも50%以上の相同性を有する塩基配列であり得る。
【0337】
(Z)は、第1鎖の第1相補ドメインとの相補結合を形成可能な第2相補ドメインを含む塩基配列である。(Z)は、天然に存在する種の第2相補ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有する配列であり得て、第2相補ドメインの塩基配列は、由来の種に応じて改変され得る。Zは各々独立に、A、U、CおよびGから成る群から選択され得て、hは塩基の数であり得て、5〜50の整数である。
【0338】
例えば、第2相補ドメインがパルクバクテリア・バクテリウムの第2相補ドメイン、または、パルクバクテリア・バクテリウム由来第2相補ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有するとき、(Z)は、5'‐AAAUUUCUACU‐3'、または、5'‐AAAUUUCUACU‐3'と少なくとも50%以上の相同性を有する塩基配列であり得る。
【0339】
加えて、(L)は、第1相補ドメインを第2相補ドメインに接続するリンカードメインを含む塩基配列である。ここで、Lは各々独立に、A、U、CおよびGから成る群から選択され得て、jは塩基の数であり得て、1〜30の整数である。
【0340】
加えて、(X)、(X)、(X)は選択的に、追加の塩基配列であり、Xは各々独立に、A、U、CおよびGから成る群から選択され得て、a、bおよびcの各々は、塩基の数であり得て、0または1〜20の整数である。
【0341】
本明細書によって開示される内容の実施形態は、ガイド核酸が過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子の標的配列と相補的に結合可能なgRNAに関する。
【0342】
過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子は、SPT4遺伝子、SPT5遺伝子、SUPT4H遺伝子および/またはSUPT5H遺伝子であり得るが、これに限定されない。
【0343】
ガイド核酸は、SPT4遺伝子、SPT5遺伝子、SUPT4H遺伝子、および/またはSUPT5H遺伝子の標的配列に対するgRNAであり得る。「標的配列」は、標的遺伝子または標的核酸のヌクレオチド配列、具体的には、標的遺伝子または標的核酸における標的領域の部分的ヌクレオチド配列であり、「標的領域」は、ガイド核酸エディタータンパク質によって改変できる標的遺伝子または標的核酸における領域である。
【0344】
本出願によって開示される標的遺伝子は、反復伸長発現調節遺伝子であり得る。
【0345】
本出願によって開示される標的遺伝子は、SPT4、SPT5、SUPT4H、および/または、SUPT5H遺伝子であり得る。
【0346】
以降、標的配列は、2つのヌクレオチド配列情報を指し得る。例えば、標的遺伝子の場合、標的配列は、標的遺伝子のDNAの転写鎖の配列情報を指し得る、または、標的遺伝子のDNAの非転写鎖の配列情報を指し得る。
【0347】
例えば、標的配列は、5'‐ATCATTGGCAGACTAGTTCG‐3'である標的遺伝子Aの転写鎖のヌクレオチド配列、または、5'‐CGAACTAGTCTGCCAATGAT‐3'である標的遺伝子Aの非転写鎖のヌクレオチド配列を指し得る。標的配列は5〜50塩基配列であり得る。
【0348】
一実施形態において、標的配列は、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25塩基配列であり得る。
【0349】
標的配列は、ガイド核酸結合配列またはガイド核酸非結合配列を含む。「ガイド核酸結合配列」は、ガイドドメインに含まれるガイド配列と相補結合を形成可能なガイドドメインに含まれるガイド配列との部分的または完全相補性を有する。標的配列およびガイド核酸結合配列は、標的遺伝子または標的核酸、すなわち、遺伝子操作または修正の対象に応じて変動し、標的遺伝子または標的核酸に応じて様々な形式で設計され得る。「ガイド核酸非結合配列」は、ガイドドメインに含まれるガイド配列と相補結合を形成可能でないガイドドメインに含まれるガイド配列との部分的相同性または完全相同性を有する。加えて、ガイド核酸非結合配列は、ガイド核酸結合配列との相補結合を形成可能なガイド核酸結合配列との相補性を有する。
【0350】
ガイド核酸結合配列は、標的配列の2つの異なるヌクレオチド配列のうち1つであるヌクレオチド配列であり得て、すなわち、一方の配列は、他方と相補結合を形成可能である。ここで、ガイド核酸非結合配列は、ガイド核酸結合配列とは異なる標的配列の他のヌクレオチド配列であり得る。
【0351】
例えば、標的配列が、5'‐ATCATTGGCAGACTAGTTCG‐3'および5'‐CGAACTAGTCTGCCAATGAT‐3'(相補配列)である、標的遺伝子Aの標的領域におけるヌクレオチド配列である場合、ガイド核酸結合配列は、2つの配列5'‐ATCATTGGCAGACTAGTTCG‐3'または5'‐CGAACTAGTCTGCCAATGAT‐3'のうち1つであり得る。ここで、ガイド核酸非結合配列は、ガイド核酸結合配列が5'‐ATCATTGGCAGACTAGTTCG‐3'であるとき、5'‐CGAACTAGTCTGCCAATGAT‐3'であり得る、または、ガイド核酸結合配列が5'‐CGAACTAGTCTGCCAATGAT‐3'であるとき、5'‐ATCATTGGCAGACTAGTTCG‐3'であり得る。
【0352】
ガイド核酸結合配列は、標的配列の2つのヌクレオチド配列、すなわち、転写鎖と同一の配列を有するヌクレオチド配列、および、非転写鎖と同一の配列を有するヌクレオチド配列のうち1つから選択され得る。ここで、ガイド核酸非結合配列は、ガイド核酸結合配列とは異なる、標的配列の他のヌクレオチド配列の1つであり得る。
【0353】
ガイド核酸結合配列の長さは、標的配列の長さと同一であり得る。
【0354】
ガイド核酸非結合配列の長さは、標的配列またはガイド核酸結合配列の長さと同一であり得る。ガイド核酸結合配列は5〜50塩基配列であり得る。
【0355】
実施形態において、ガイド核酸結合配列は、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25塩基配列であり得る。ガイド核酸非結合配列は、5〜50塩基配列であり得る。
【0356】
実施形態において、ガイド核酸非結合配列は、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25塩基配列であり得る。
【0357】
ガイド核酸結合配列は、ガイド核酸のガイドドメインに含まれるガイド配列と完全、または、部分的相補的結合可能であり、ガイド核酸非結合配列の長さは標的配列またはガイド核酸結合配列の長さと同一であり得る。
【0358】
ガイド核酸結合配列は、例えば、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%または95%以上の相補性または完全相補性を有するガイド核酸のガイドドメインに含まれるガイド配列に相補的な核酸配列であり得る。
【0359】
一例において、ガイド核酸結合配列は、ガイド核酸のガイドドメインに含まれるガイド配列と相補的でない1〜8塩基配列であり得る、または、それを含み得る。
【0360】
ガイド核酸非結合配列は、部分的相同性または完全相同性を有し得て、ガイド核酸非結合配列の長さは、ガイド配列の長さと同一であり得る。
【0361】
ガイド核酸非結合配列は、例えば、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%または95%以上の相同性または完全相同性を有するガイド核酸のガイドドメインに含まれるガイド配列に相同性な核酸配列であり得る。
【0362】
一例において、ガイド核酸非結合配列は、ガイドドメインに含まれるガイド配列と相同でない追加の1〜8塩基配列を含み得る。
【0363】
ここで、ガイド核酸非結合配列は、ガイド核酸結合配列との相補結合を形成可能であり、ガイド核酸非結合配列の長さは、ガイド核酸結合配列の長さと同一であり得る。
【0364】
ガイド核酸非結合配列は、ガイド核酸結合配列に相補的な核酸配列であり得て、例えば、少なくとも90%または95%以上の相補性または完全相補性を有する。
【0365】
一例において、ガイド核酸非結合配列は、ガイド核酸結合配列と相補的でない1〜2塩基配列を含み得る。
【0366】
加えて、ガイド核酸結合配列は、エディタータンパク質によって認識されることが可能な核酸配列に隣接する塩基配列であり得る。
【0367】
一例において、ガイド核酸結合配列は、エディタータンパク質によって認識されることが可能な核酸配列の5'末端および/または3'末端に隣接する連続の5〜50塩基配列であり得る。
【0368】
加えて、ガイド核酸非結合配列は、エディタータンパク質によって認識されることが可能な核酸配列に隣接する塩基配列であり得る。
【0369】
一例において、ガイド核酸非結合配列は、エディタータンパク質によって認識されることが可能な核酸配列の5'末端および/または3'末端に隣接する連続の5〜50塩基配列であり得る。
【0370】
一実施形態において、ここで開示されるように、標的配列は、反復伸長発現調節遺伝子のプロモーター領域に位置する連続の10〜35塩基ヌクレオチド配列であり得る。
【0371】
ここで、標的配列は、5〜35、10〜35、15〜35、20〜35、25〜35または30〜35塩基配列であり得る。または、標的配列は、10〜15、15〜20、20〜25、25〜30または30〜35塩基配列であり得る。
【0372】
例えば、標的配列は、SPT4遺伝子のプロモーター領域に位置する連続の10〜25塩基核酸配列であり得る。
【0373】
別の例において、標的配列は、SPT5遺伝子のプロモーター領域に位置する連続の10〜25塩基核酸配列であり得る。
【0374】
例えば、標的配列は、SUPT4H遺伝子のプロモーター領域に位置する連続の10〜25塩基核酸配列であり得る。
【0375】
別の例において、標的配列は、SUPT5H遺伝子のプロモーター領域に位置する連続の10〜25塩基核酸配列であり得る。
【0376】
本出願によって開示される標的配列は、反復伸長発現調節遺伝子のイントロン領域に位置する連続の10〜35塩基ヌクレオチド配列であり得る。
【0377】
ここで、標的配列は、5〜35、10〜35、15〜35、20〜35、25〜35または30〜35塩基配列であり得る。または、標的配列は、10〜15、15〜20、20〜25、25〜30または30〜35塩基配列であり得る。
【0378】
例えば、標的配列は、SPT4のイントロン領域に位置する連続の10〜25塩基ヌクレオチド配列であり得る。
【0379】
例えば、標的配列は、SPT5のイントロン領域に位置する連続の10〜25塩基ヌクレオチド配列であり得る。
【0380】
例えば、標的配列は、SUPT4Hのイントロン領域に位置する連続の10〜25塩基ヌクレオチド配列であり得る。
【0381】
例えば、標的配列は、SUPT5Hのイントロン領域に位置する連続の10〜25塩基ヌクレオチド配列であり得る。
【0382】
本出願によって開示される標的配列は、反復伸長発現調節遺伝子のエクソン領域に位置する連続の10〜35塩基ヌクレオチド配列であり得る。
【0383】
ここで、標的配列は、5〜35、10〜35、15〜35、20〜35、25〜35または30〜35塩基配列であり得る。または、標的配列は、10〜15、15〜20、20〜25、25〜30または30〜35塩基配列であり得る。
【0384】
例えば、標的配列は、SPT4遺伝子のエクソン領域に位置する連続の10〜25塩基ヌクレオチド配列であり得る。
【0385】
例えば、標的配列は、SPT5遺伝子のエクソン領域に位置する連続の10〜25塩基ヌクレオチド配列であり得る。
【0386】
例えば、標的配列は、SUPT4H遺伝子のエクソン領域に位置する連続の10〜25塩基ヌクレオチド配列であり得る。
【0387】
例えば、標的配列は、SUPT5H遺伝子のエクソン領域に位置する連続の10〜25塩基ヌクレオチド配列であり得る。
【0388】
本出願によって開示される標的配列は、反復伸長発現調節遺伝子のエンハンサー領域に位置する連続の10〜35塩基ヌクレオチド配列であり得る。
【0389】
ここで、標的配列は、5〜35、10〜35、15〜35、20〜35、25〜35または30〜35塩基配列であり得る。または、標的配列は、10〜15、15〜20、20〜25、25〜30または30〜35塩基配列であり得る。
【0390】
例えば、標的配列は、SPT4のエンハンサー領域に位置する連続の10〜25塩基ヌクレオチド配列であり得る。
【0391】
例えば、標的配列は、SPT5のエンハンサー領域に位置する連続の10〜25塩基ヌクレオチド配列であり得る。
【0392】
例えば、標的配列は、SUPT4Hのエンハンサー領域に位置する連続の10〜25塩基ヌクレオチド配列であり得る。
【0393】
例えば、標的配列は、SUPT5Hのエンハンサー領域に位置する連続の10〜25塩基ヌクレオチド配列であり得る。
【0394】
本出願によって開示される標的配列は、反復伸長発現調節遺伝子のコード領域または非コード領域またはその混在に位置する連続の10〜35塩基ヌクレオチド配列であり得る。
【0395】
ここで、標的配列は、5〜35、10〜35、15〜35、20〜35、25〜35または30〜35塩基配列であり得る。または、標的配列は、10〜15、15〜20、20〜25、25〜30または30〜35塩基配列であり得る。
【0396】
例えば、標的配列は、SPT4遺伝子のコード領域または非コード領域またはその混在に位置する連続の10〜25塩基ヌクレオチド配列であり得る。
【0397】
例えば、標的配列は、SPT5遺伝子のコード領域または非コード領域またはその混在に位置する連続の10〜25塩基ヌクレオチド配列であり得る。
【0398】
例えば、標的配列は、SUPT4H遺伝子のコード領域または非コード領域またはその混在に位置する連続の10〜25塩基ヌクレオチド配列であり得る。
【0399】
例えば、標的配列は、SUPT5H遺伝子のコード領域または非コード領域またはその混在に位置する連続の10〜25塩基ヌクレオチド配列であり得る。
【0400】
本出願によって開示される標的配列は、反復伸長発現調節遺伝子のプロモーター、エンハンサー、3'UTRまたはポリアデニル(ポリA)領域またはその混在に位置する連続の10〜35塩基ヌクレオチド配列であり得る。
【0401】
ここで、標的配列は、5〜35、10〜35、15〜35、20〜35、25〜35または30〜35塩基配列であり得る。または、標的配列は、10〜15、15〜20、20〜25、25〜30または30〜35塩基配列であり得る。
【0402】
例えば、標的配列は、SPT4遺伝子のプロモーター、エンハンサー、3'UTRまたはポリアデニル(ポリA)領域またはその混在に位置する連続の10〜25塩基ヌクレオチド配列であり得る。
【0403】
例えば、標的配列は、SPT5遺伝子のプロモーター、エンハンサー、3'UTRまたはポリアデニル(ポリA)領域またはその混在に位置する連続の10〜25塩基ヌクレオチド配列であり得る。
【0404】
例えば、標的配列は、SUPT4H遺伝子のプロモーター、エンハンサー、3'UTRまたはポリアデニル(ポリA)領域またはその混在に位置する連続の10〜25塩基ヌクレオチド配列であり得る。
【0405】
例えば、標的配列は、SUPT5H遺伝子のプロモーター、エンハンサー、3'UTRまたはポリアデニル(ポリA)領域またはその混在に位置する連続の10〜25塩基ヌクレオチド配列であり得る。
【0406】
本出願によって開示される標的配列は、反復伸長発現調節遺伝子のエクソン領域またはイントロン領域またはその混在に位置する連続の10〜35塩基ヌクレオチド配列であり得る。
【0407】
ここで、標的配列は、5〜35、10〜35、15〜35、20〜35、25〜35または30〜35塩基配列であり得る。または、標的配列は、10〜15、15〜20、20〜25、25〜30または30〜35塩基配列であり得る。
【0408】
例えば、標的配列は、SPT4遺伝子のエクソン領域またはイントロン領域またはその混在に位置する連続の10〜25塩基ヌクレオチド配列であり得る。
【0409】
例えば、標的配列は、SPT5遺伝子のエクソン領域またはイントロン領域またはその混在に位置する連続の10〜25塩基ヌクレオチド配列であり得る。
【0410】
例えば、標的配列は、SUPT4H遺伝子のエクソン領域またはイントロン領域またはその混在に位置する連続の10〜25塩基ヌクレオチド配列であり得る。
【0411】
例えば、標的配列は、SUPT5H遺伝子のエクソン領域またはイントロン領域またはその混在に位置する連続の10〜25塩基ヌクレオチド配列であり得る。
【0412】
本出願によって開示される標的配列は、反復伸長発現調節遺伝子を含む、または、それに隣接する連続の10〜35塩基ヌクレオチド配列であり得る。
【0413】
ここで、標的配列は、5〜35、10〜35、15〜35、20〜35、25〜35または30〜35塩基配列であり得る。または、標的配列は、10〜15、15〜20、20〜25、25〜30または30〜35塩基配列であり得る。
【0414】
例えば、標的配列は、SPT4遺伝子を含む、または、それに隣接する連続の10〜25塩基ヌクレオチド配列であり得る。
【0415】
例えば、標的配列は、SPT5遺伝子を含む、または、それに隣接する連続の10〜25塩基ヌクレオチド配列であり得る。
【0416】
例えば、標的配列は、SUPT4H遺伝子を含む、または、それに隣接する連続の10〜25塩基ヌクレオチド配列であり得る。
【0417】
例えば、標的配列は、SUPT5H遺伝子を含む、または、それに隣接する連続の10〜25塩基ヌクレオチド配列であり得る。
【0418】
本出願によって開示される標的配列は、反復伸長発現調節遺伝子のヌクレオチド配列におけるプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列の5'末端および/または3'末端に隣接する連続の5〜35塩基ヌクレオチド配列であり得る。「PAM配列」は、エディタータンパク質によって認識され得るヌクレオチド配列である。ここで、PAM配列は、由来の種、または、エディタータンパク質の種類に応じて変動し得る。PAM配列は、以下の配列のうち1または複数である(5'から3'の方向に記載)。
NGG(NはA、T、CまたはG)
NNNNRYAC(各Nは独立に、A、T、CまたはGであり、RはAまたはGであり、YはCまたはTである)
NNAGAAW(各Nは独立に、A、T、CまたはGであり、WはAまたはTである)
NNNNGATT(各Nは独立に、A、T、CまたはGである)
NNGRR(T)(各Nは独立に、A、T、CまたはGであり、RはAまたはGである)
TTN(NはA、T、CまたはGである)。
【0419】
ここで、ガイドドメインは、10〜35、15〜35、20〜35、25〜35、30〜35塩基の配列であり得る。または、ガイドドメインは、10〜15、15〜20、20〜25、25〜30、30〜35塩基の配列であり得る。
【0420】
例えば、標的配列は、SPT4遺伝子のヌクレオチド配列におけるプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列の5'末端および/または3'末端に隣接する連続の5〜25塩基ヌクレオチド配列であり得る。
【0421】
例示的な一実施形態において、エディタータンパク質によって認識されるPAM配列が5'‐NGG‐3'、5'‐NAG‐3'、および/または5'‐NGA‐3'(NはA、T、GもしくはC、または、A、U、GもしくはC)である場合、標的配列は、SPT4遺伝子のヌクレオチド配列における5'‐NGG‐3'、5'‐NAG‐3'、および/または5'‐NGA‐3'(NはA、T、GもしくはC、または、A、U、GもしくはC)の5'末端および/または3'末端に隣接する連続の5〜25塩基ヌクレオチド配列であり得る。
【0422】
別の例示的な実施形態において、エディタータンパク質によって認識されるPAM配列が、5'‐NGGNG‐3'および/または5'‐NNAGAAW‐3'(WはAもしくはT、NはA、T、GもしくはC、または、A、U、GまたはC)である場合、標的配列は、SPT4遺伝子のヌクレオチド配列における5'‐NGGNG‐3'および/または5'‐NNAGAAW‐3'(WはAもしくはT、NはA、T、GもしくはC、または、A、U、GまたはC)の5'末端および/または3'末端に隣接する連続の5〜25塩基ヌクレオチド配列であり得る。
【0423】
更に別の例示的な実施形態において、エディタータンパク質によって認識されるPAM配列が5'‐NNNNGATT‐3'および/または5'‐NNNGCTT‐3'(NはA、T、GもしくはC、または、A、U、GもしくはC)であるとき、標的配列は、SPT4遺伝子のヌクレオチド配列における5'‐NNNNGATT‐3'および/または5'‐NNNGCTT‐3'(NはA、T、GもしくはC、または、A、U、GもしくはC)の5'末端および/または3'末端に隣接する連続の5〜25塩基ヌクレオチド配列であり得る。
【0424】
例示的な一実施形態において、エディタータンパク質によって認識されるPAM配列が5'‐NNNVRYAC‐3'(VはG、CもしくはA、RはAまたはG、YはCまたはT、NはA、T、GもしくはC、または、A、U、GもしくはC)である場合、標的配列は、SPT4遺伝子のヌクレオチド配列における5'‐NNNVRYAC‐3'(VはG、CもしくはA、RはAまたはG、YはCまたはT、NはA、T、GもしくはC、または、A、U、GもしくはC)の5'末端および/または3'末端に隣接する連続の5〜25塩基ヌクレオチド配列であり得る。
【0425】
別の例示的な実施形態において、エディタータンパク質によって認識されるPAM配列が5'‐NAAR‐3'(RはAまたはG、NはA、T、GもしくはC、または、A、U、GもしくはC)である場合、標的配列は、SPT4遺伝子のヌクレオチド配列における5'‐NAAR‐3'(RはAまたはG、NはA、T、GもしくはC、または、A、U、GもしくはC)の5'末端および/または3'末端に隣接する連続の5〜25塩基ヌクレオチド配列であり得る。
【0426】
更に別の例示的な実施形態において、エディタータンパク質によって認識されるPAM配列が5'‐NNGRR‐3'、5'‐NNGRRT‐3'、および/または5'‐NNGRRV‐3'(RはAまたはG、VはG、CまたはA、NはA、T、GもしくはC、または、A、U、GもしくはC)である場合、標的配列は、SPT4遺伝子のヌクレオチド配列における5'‐NNGRR‐3'、5'‐NNGRRT‐3'、および/または5'‐NNGRRV‐3'(RはAまたはG、VはG、CまたはA、NはA、T、GもしくはC、または、A、U、GもしくはC)の5'末端および/または3'末端に隣接する連続の5〜25塩基ヌクレオチド配列であり得る。
【0427】
例示的な一実施形態において、エディタータンパク質によって認識されるPAM配列が5'‐TTN−3'(NはA、T、GもしくはC、または、A、U、GもしくはC)である場合、標的配列は、SPT4遺伝子のヌクレオチド配列における5'‐TTN−3'(NはA、T、GもしくはC、または、A、U、GもしくはC)の5'末端および/または3'末端に隣接する連続の5〜25塩基ヌクレオチド配列であり得る。
【0428】
例えば、標的配列は、SPT5遺伝子のヌクレオチド配列におけるプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列の5'末端および/または3'末端に隣接する連続の5〜25塩基ヌクレオチド配列であり得る。
【0429】
例示的な一実施形態において、エディタータンパク質によって認識されるPAM配列が5'‐NGG‐3'、5'‐NAG‐3'、および/または5'‐NGA‐3'(NはA、T、GもしくはC、または、A、U、GもしくはC)である場合、標的配列は、SPT5遺伝子のヌクレオチド配列における5'‐NGG‐3'、5'‐NAG‐3'、および/または5'‐NGA‐3'(NはA、T、GもしくはC、または、A、U、GもしくはC)の5'末端および/または3'末端に隣接する連続の5〜25塩基ヌクレオチド配列であり得る。
【0430】
別の例示的な実施形態において、エディタータンパク質によって認識されるPAM配列が、5'‐NGGNG‐3'および/または5'‐NNAGAAW‐3'(WはAもしくはT、NはA、T、GもしくはC、または、A、U、GまたはC)である場合、標的配列は、SPT5遺伝子のヌクレオチド配列における5'‐NGGNG‐3'および/または5'‐NNAGAAW‐3'(WはAもしくはT、NはA、T、GもしくはC、または、A、U、GまたはC)の5'末端および/または3'末端に隣接する連続の5〜25塩基ヌクレオチド配列であり得る。
【0431】
更に別の例示的な実施形態において、エディタータンパク質によって認識されるPAM配列が5'‐NNNNGATT‐3'および/または5'‐NNNGCTT‐3'(NはA、T、GもしくはC、または、A、U、GもしくはC)であるとき、標的配列は、SPT5遺伝子のヌクレオチド配列における5'‐NNNNGATT‐3'および/または5'‐NNNGCTT‐3'(NはA、T、GもしくはC、または、A、U、GもしくはC)の5'末端および/または3'末端に隣接する連続の5〜25塩基ヌクレオチド配列であり得る。
【0432】
例示的な一実施形態において、エディタータンパク質によって認識されるPAM配列が5'‐NNNVRYAC‐3'(VはG、CもしくはA、RはAまたはG、YはCまたはT、NはA、T、GもしくはC、または、A、U、GもしくはC)である場合、標的配列は、SPT5遺伝子のヌクレオチド配列における5'‐NNNVRYAC‐3'(VはG、CもしくはA、RはAまたはG、YはCまたはT、NはA、T、GもしくはC、または、A、U、GもしくはC)の5'末端および/または3'末端に隣接する連続の5〜25塩基ヌクレオチド配列であり得る。
【0433】
別の例示的な実施形態において、エディタータンパク質によって認識されるPAM配列が5'‐NAAR‐3'(RはAまたはG、NはA、T、GもしくはC、または、A、U、GもしくはC)である場合、標的配列は、SPT5遺伝子のヌクレオチド配列における5'‐NAAR‐3'(RはAまたはG、NはA、T、GもしくはC、または、A、U、GもしくはC)の5'末端および/または3'末端に隣接する連続の5〜25塩基ヌクレオチド配列であり得る。
【0434】
更に別の例示的な実施形態において、エディタータンパク質によって認識されるPAM配列が5'‐NNGRR‐3'、5'‐NNGRRT‐3'、および/または5'‐NNGRRV‐3'(RはAまたはG、VはG、CまたはA、NはA、T、GもしくはC、または、A、U、GもしくはC)である場合、標的配列は、SPT5遺伝子のヌクレオチド配列における5'‐NNGRR‐3'、5'‐NNGRRT‐3'、および/または5'‐NNGRRV‐3'(RはAまたはG、VはG、CまたはA、NはA、T、GもしくはC、または、A、U、GもしくはC)の5'末端および/または3'末端に隣接する連続の5〜25塩基ヌクレオチド配列であり得る。
【0435】
例示的な一実施形態において、エディタータンパク質によって認識されるPAM配列が5'‐TTN−3'(NはA、T、GもしくはC、または、A、U、GもしくはC)である場合、標的配列は、SPT5遺伝子のヌクレオチド配列における5'‐TTN−3'(NはA、T、GもしくはC、または、A、U、GもしくはC)の5'末端および/または3'末端に隣接する連続の5〜25塩基ヌクレオチド配列であり得る。
【0436】
例えば、標的配列は、SUPT4H遺伝子のヌクレオチド配列におけるプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列の5'末端および/または3'末端に隣接する連続の5〜25塩基ヌクレオチド配列であり得る。
【0437】
例示的な一実施形態において、エディタータンパク質によって認識されるPAM配列が5'‐NGG‐3'、5'‐NAG‐3'、および/または5'‐NGA‐3'(NはA、T、GもしくはC、または、A、U、GもしくはC)である場合、標的配列は、SUPT4H遺伝子のヌクレオチド配列における5'‐NGG‐3'、5'‐NAG‐3'、および/または5'‐NGA‐3'(NはA、T、GもしくはC、または、A、U、GもしくはC)の5'末端および/または3'末端に隣接する連続の5〜25塩基ヌクレオチド配列であり得る。
【0438】
別の例示的な実施形態において、エディタータンパク質によって認識されるPAM配列が、5'‐NGGNG‐3'および/または5'‐NNAGAAW‐3'(WはAもしくはT、NはA、T、GもしくはC、または、A、U、GまたはC)である場合、標的配列は、SUPT4H遺伝子のヌクレオチド配列における5'‐NGGNG‐3'および/または5'‐NNAGAAW‐3'(WはAもしくはT、NはA、T、GもしくはC、または、A、U、GまたはC)の5'末端および/または3'末端に隣接する連続の5〜25塩基ヌクレオチド配列であり得る。
【0439】
更に別の例示的な実施形態において、エディタータンパク質によって認識されるPAM配列が5'‐NNNNGATT‐3'および/または5'‐NNNGCTT‐3'(NはA、T、GもしくはC、または、A、U、GもしくはC)であるとき、標的配列は、SUPT4H遺伝子のヌクレオチド配列における5'‐NNNNGATT‐3'および/または5'‐NNNGCTT‐3'(NはA、T、GもしくはC、または、A、U、GもしくはC)の5'末端および/または3'末端に隣接する連続の5〜25塩基ヌクレオチド配列であり得る。
【0440】
例示的な一実施形態において、エディタータンパク質によって認識されるPAM配列が5'‐NNNVRYAC‐3'(VはG、CもしくはA、RはAまたはG、YはCまたはT、NはA、T、GもしくはC、または、A、U、GもしくはC)である場合、標的配列は、SUPT4H遺伝子のヌクレオチド配列における5'‐NNNVRYAC‐3'(VはG、CもしくはA、RはAまたはG、YはCまたはT、NはA、T、GもしくはC、または、A、U、GもしくはC)の5'末端および/または3'末端に隣接する連続の5〜25塩基ヌクレオチド配列であり得る。
【0441】
別の例示的な実施形態において、エディタータンパク質によって認識されるPAM配列が5'‐NAAR‐3'(RはAまたはG、NはA、T、GもしくはC、または、A、U、GもしくはC)である場合、標的配列は、SUPT4H遺伝子のヌクレオチド配列における5'‐NAAR‐3'(RはAまたはG、NはA、T、GもしくはC、または、A、U、GもしくはC)の5'末端および/または3'末端に隣接する連続の5〜25塩基ヌクレオチド配列であり得る。
【0442】
更に別の例示的な実施形態において、エディタータンパク質によって認識されるPAM配列が5'‐NNGRR‐3'、5'‐NNGRRT‐3'、および/または5'‐NNGRRV‐3'(RはAまたはG、VはG、CまたはA、NはA、T、GもしくはC、または、A、U、GもしくはC)である場合、標的配列は、SUPT4H遺伝子のヌクレオチド配列における5'‐NNGRR‐3'、5'‐NNGRRT‐3'、および/または5'‐NNGRRV‐3'(RはAまたはG、VはG、CまたはA、NはA、T、GもしくはC、または、A、U、GもしくはC)の5'末端および/または3'末端に隣接する連続の5〜25塩基ヌクレオチド配列であり得る。
【0443】
例示的な一実施形態において、エディタータンパク質によって認識されるPAM配列が5'‐TTN−3'(NはA、T、GもしくはC、または、A、U、GもしくはC)である場合、標的配列は、SUPT4H遺伝子のヌクレオチド配列における5'‐TTN−3'(NはA、T、GもしくはC、または、A、U、GもしくはC)の5'末端および/または3'末端に隣接する連続の5〜25塩基ヌクレオチド配列であり得る。
【0444】
例えば、標的配列は、SUPT5H遺伝子のヌクレオチド配列におけるプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列の5'末端および/または3'末端に隣接する連続の5〜25塩基ヌクレオチド配列であり得る。
【0445】
例示的な一実施形態において、エディタータンパク質によって認識されるPAM配列が5'‐NGG‐3'、5'‐NAG‐3'、および/または5'‐NGA‐3'(NはA、T、GもしくはC、または、A、U、GもしくはC)である場合、標的配列は、SUPT5H遺伝子のヌクレオチド配列における5'‐NGG‐3'、5'‐NAG‐3'、および/または5'‐NGA‐3'(NはA、T、GもしくはC、または、A、U、GもしくはC)の5'末端および/または3'末端に隣接する連続の5〜25塩基ヌクレオチド配列であり得る。
【0446】
別の例示的な実施形態において、エディタータンパク質によって認識されるPAM配列が、5'‐NGGNG‐3'および/または5'‐NNAGAAW‐3'(WはAもしくはT、NはA、T、GもしくはC、または、A、U、GまたはC)である場合、標的配列は、SUPT5H遺伝子のヌクレオチド配列における5'‐NGGNG‐3'および/または5'‐NNAGAAW‐3'(WはAもしくはT、NはA、T、GもしくはC、または、A、U、GまたはC)の5'末端および/または3'末端に隣接する連続の5〜25塩基ヌクレオチド配列であり得る。
【0447】
更に別の例示的な実施形態において、エディタータンパク質によって認識されるPAM配列が5'‐NNNNGATT‐3'および/または5'‐NNNGCTT‐3'(NはA、T、GもしくはC、または、A、U、GもしくはC)であるとき、標的配列は、SUPT5H遺伝子のヌクレオチド配列における5'‐NNNNGATT‐3'および/または5'‐NNNGCTT‐3'(NはA、T、GもしくはC、または、A、U、GもしくはC)の5'末端および/または3'末端に隣接する連続の5〜25塩基ヌクレオチド配列であり得る。
【0448】
例示的な一実施形態において、エディタータンパク質によって認識されるPAM配列が5'‐NNNVRYAC‐3'(VはG、CもしくはA、RはAまたはG、YはCまたはT、NはA、T、GもしくはC、または、A、U、GもしくはC)である場合、標的配列は、SUPT5H遺伝子のヌクレオチド配列における5'‐NNNVRYAC‐3'(VはG、CもしくはA、RはAまたはG、YはCまたはT、NはA、T、GもしくはC、または、A、U、GもしくはC)の5'末端および/または3'末端に隣接する連続の5〜25塩基ヌクレオチド配列であり得る。
【0449】
別の例示的な実施形態において、エディタータンパク質によって認識されるPAM配列が5'‐NAAR‐3'(RはAまたはG、NはA、T、GもしくはC、または、A、U、GもしくはC)である場合、標的配列は、SUPT5H遺伝子のヌクレオチド配列における5'‐NAAR‐3'(RはAまたはG、NはA、T、GもしくはC、または、A、U、GもしくはC)の5'末端および/または3'末端に隣接する連続の5〜25塩基ヌクレオチド配列であり得る。
【0450】
更に別の例示的な実施形態において、エディタータンパク質によって認識されるPAM配列が5'‐NNGRR‐3'、5'‐NNGRRT‐3'、および/または5'‐NNGRRV‐3'(RはAまたはG、VはG、CまたはA、NはA、T、GもしくはC、または、A、U、GもしくはC)である場合、標的配列は、SUPT5H遺伝子のヌクレオチド配列における5'‐NNGRR‐3'、5'‐NNGRRT‐3'、および/または5'‐NNGRRV‐3'(RはAまたはG、VはG、CまたはA、NはA、T、GもしくはC、または、A、U、GもしくはC)の5'末端および/または3'末端に隣接する連続の5〜25塩基ヌクレオチド配列であり得る。
【0451】
例示的な一実施形態において、エディタータンパク質によって認識されるPAM配列が5'‐TTN−3'(NはA、T、GもしくはC、または、A、U、GもしくはC)である場合、標的配列は、SUPT5H遺伝子のヌクレオチド配列における5'‐TTN−3'(NはA、T、GもしくはC、または、A、U、GもしくはC)の5'末端および/または3'末端に隣接する連続の5〜25塩基ヌクレオチド配列であり得る。
【0452】
以降、本発明の実施形態において使用可能な標的配列の例をテーブル2に示し、テーブル2に列挙された標的配列は、ガイド核酸非結合配列であり、相補的配列、すなわちガイド核酸結合配列はテーブル2に記載の配列から予測できる。
[テーブル2]
[過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子の標的配列]
【表2】
【0453】
ここで開示される更に別の実施形態は、エディタータンパク質を含む遺伝子操作用組成物に関連し、組成物は、SPT4、SPT5、SUPT4H、SUPT5H遺伝子から成る群から選択される1または複数の遺伝子の標的配列の遺伝子はさみとして作用し得る。
【0454】
遺伝子操作用組成物は、反復伸長発現調節遺伝子を生成するために使用され得る。
【0455】
遺伝子操作用組成物によって操作される反復伸長発現調節遺伝子は、反復伸長の発現を調節するためのシステムを構築し得る。
【0456】
「人工的に改変、設計、または人工的に設計」という用語は、天然に発生する状態でない、人工的に改変された状態を意味する。以降、非天然の人工的に改変または設計された反復伸長発現調節遺伝子という用語は、人工的な反復伸長発現調節遺伝子という用語と相互交換可能に使用され得る。「過剰増幅反復配列の発現の調節」とは、人工的に操作された過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子の機能を変更することによって疾患発現に影響する機構に関与するすべての現象を含む用語であり、そのような過剰増幅反復配列の発現システムに直接的または間接的に関与するすべての物質、組成物、方法および使用を含む。例えば、当該用語は、過剰増幅反復配列の転写、転写後修飾、翻訳、または、翻訳後修飾に関与する遺伝子、ならびに、当該遺伝子を含む細胞および臓器/組織の両方を含む。
【0457】
本出願によって開示される遺伝子操作用組成物は、ガイド核酸およびエディタータンパク質を含み得る。
【0458】
遺伝子操作用組成物は、(a)反復伸長発現調節遺伝子の標的配列に対する相補結合を形成可能なガイド核酸、または、それをコードする核酸配列と、(b)1または複数のエディタータンパク質、および、それをコードする核酸配列とを含み得る。反復伸長発現調節遺伝子は上に記載のものと同一である。標的配列は上に記載したものと同一である。遺伝子操作用組成物はガイド核酸‐エディタータンパク質複合体を含み得る。
【0459】
「ガイド核酸‐エディタータンパク質複合体」という用語は、ガイド核酸とエディタータンパク質との間の相互作用を通して形成される複合体を指す。ガイド核酸は上に記載のものと同一である。
【0460】
「エディタータンパク質」という用語は、核酸に直接結合する、または、直接結合することなく相互作用することが可能なペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質を指す。核酸は、標的核酸、遺伝子、または染色体に含まれる核酸であり得る。核酸はガイド核酸であり得る。エディタータンパク質は酵素であり得る。
【0461】
酵素とは、核酸、遺伝子、染色体またはタンパク質を切断可能なドメインを含むタンパク質を指す。酵素はヌクレアーゼまたは制限酵素であり得る。エディタータンパク質は完全活性酵素を含み得る。
【0462】
ここで、「完全活性酵素」とは、野性型酵素の機能と同一の機能を有する酵素を指し、例えば、DNAの二本鎖を切断する野性型酵素は、DNAの二本鎖を全体的に切断する完全な酵素活性を有する。
【0463】
加えて、完全活性酵素は、野性型酵素の機能と比較して機能が改善された酵素を含み、例えば、DNAの二本鎖を切断する特定の改変または操作されたタイプの野性型酵素は、野性型酵素と比較して改善された完全酵素活性、すなわち、DNAの二本鎖を切断する活性を有する。エディタータンパク質は、不完全な、または、部分的に活性のある酵素を含み得る。エディタータンパク質は、不完全な、または、部分的に活性のある酵素を含み得る。
【0464】
ここで、「不完全な、または、部分的に活性のある酵素」とは、野性型酵素の機能の一部を有する酵素を指す。例えば、DNAの二本鎖を切断する野性型酵素の特異的に改変または操作されたタイプは、第1機能を有する酵素、または、第2機能を有する酵素である。ここで、第1機能は、二本鎖DNAの第1の一本鎖を切断し得て、第2機能は、二本鎖DNAの第2の一本鎖を切断し得る。ここで、第1機能または第2機能を有する酵素は、不完全な、または部分的に活性のある酵素であり得る。エディタータンパク質は、不活性酵素を含み得る。
【0465】
ここで、「不活性酵素」は、野性型酵素の機能が完全に不活性化された酵素を指す。例えば、DNAの二本鎖を切断する野性型酵素の特異的に改変または操作されたタイプは、第1および第2機能の両方を失った酵素である。ここで、第1および第2機能の両方を失った酵素は不活性酵素であり得る。エディタータンパク質は融合タンパク質であり得る。
【0466】
ここで、「融合タンパク質」とは、酵素を追加のドメイン、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質と融合させることによって生成されるタンパク質を指す。
【0467】
追加のドメイン、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質は、酵素と同一または異なる機能を有する機能ドメイン、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質であり得る。
【0468】
融合タンパク質は、酵素のN末端またはその付近、C末端またはその付近、酵素の中央部分、および、それらの組み合わせのうち1または複数の領域において、機能ドメイン、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質を含み得る。
【0469】
ここで、機能ドメイン、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質は、メチラーゼ活性、デメチラーゼ活性、転写活性化活性、転写抑制活性、転写終結因子活性、ヒストン修飾活性、RNA切断活性もしくは核酸結合活性を有するドメイン、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質、または、タンパク質(ペプチドを含む)の単離および精製のためのタグもしくはレポーター遺伝子であり得るが、本発明はこれに限定されない。機能ドメイン、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質はデアミナーゼであり得る。
【0470】
タグは、ヒスチジン(His)タグ、V5タグ、FLAGタグ、インフルエンザヘマグルチニン(HA)タグ、Mycタグ、VSV‐Gタグおよびチオレドキシン(Trx)タグを含み、レポーター遺伝子は、グルタチオン‐S‐トランスフェラーゼ(GST)、ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ(HRP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)βガラクトシダーゼ、βグルクロニダーゼ、ルシフェラーゼ、自家蛍光タンパク質(緑色蛍光タンパク質(GFP)、HcRed、DsRed、シアン蛍光タンパク質(CFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)および青色蛍光タンパク質(BFP)を含む)を含むが、本発明はこれらに限定されない。
【0471】
加えて、機能ドメイン、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質は、核局在配列もしくはシグナル(NLS)、または、核外搬出配列もしくはシグナル(NES)であり得る。
【0472】
NLSは、アミノ酸配列PKKKRKVを有する、SV40ウイルスのラージT抗原のNLS、ヌクレオプラスミンに由来するNLS(例えば、配列KRPAATKKAGQAKKKKを有する双節型ヌクレオプラスミンNLS)、アミノ酸配列PAAKRVKLDまたはRQRRNELKRSPを有するc‐myc NLS、または、配列NQSSNFGPMKGGNFGGRSSGPYGGGGQYFAKPRNQGGYを有するhRNPA1 M9 NLS、インポーチンα由来IBBドメイン配列RMRIZFKNKGKDTAELRRRRVEVSVELRKAKKDEQILKRRNV、筋腫Tタンパク質配列VSRKRPRPおよびPPKKARED、ヒトp53配列POPKKKPL、マウスc‐abl IV配列SALIKKKKKMAP、インフルエンザウイルスNS1配列DRLRRおよびPKQKKRK、D型肝炎ウイルス抗原配列RKLKKKIKKL、マウスMx1タンパク質配列REKKKFLKRR、ヒトポリ(ADPリボース)ポリメラーゼ配列KRKGDEVDGVDEVAKKKSKK、または、ステロイドホルモン受容体(ヒト)グルココルチコイド配列RKCLQAGMNLEARKTKKであり得るが、本発明はこれらに限定されない。
【0473】
追加のドメイン、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質は、非機能ドメイン、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質であり得る。ここで、非機能ドメイン、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質は、酵素の機能に影響しない。
【0474】
融合タンパク質は、酵素のアミノ末端(N末端)またはその近傍、カルボキシル末端(C末端)またはその近傍、酵素の中央部分、および、それらの組み合わせのうち1または複数の領域に非機能ドメイン、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質を含み得る。エディタータンパク質は、天然酵素または融合タンパク質であり得る。
【0475】
エディタータンパク質は、部分的に改変された天然の酵素または融合タンパク質の形態で存在し得る。
【0476】
エディタータンパク質は、天然に存在しない人工的に生成された酵素または融合タンパク質であり得る。
【0477】
エディタータンパク質は、天然に存在しない、部分的に改変された人工酵素または融合タンパク質の形態で存在し得る。
【0478】
ここで、改変は、エディタータンパク質に含まれるアミノ酸の置換、除去、追加、または、それらの組み合わせであり得る。
【0479】
加えて、改変は、エディタータンパク質をコードする塩基配列におけるいくつかの塩基の置換、除去、追加、または、それらの組み合わせであり得る。
【0480】
本明細書によって開示される内容の別の実施形態は、遺伝子操作用組成物に関し、SPT4遺伝子、SPT5遺伝子、SUPT4H遺伝子、SUPT5H遺伝子から成る群から選択される1または複数の遺伝子の標的配列と結合を形成可能なガイド核酸、および、標的配列の遺伝子はさみとして作用可能なエディタータンパク質を含む。遺伝子操作用組成物は、遺伝子操作用組成物であり得る。
【0481】
本出願によって開示される内容の一実施形態として、遺伝子操作用組成物は、gRNAおよびCRISPR酵素を含み得る。
【0482】
遺伝子操作用組成物は、(a)反復伸長発現調節遺伝子の標的配列に対する相補結合を形成可能なgRNA、または、それをコードする核酸配列、および、(b)1または複数のCRISPR酵素、または、それをコードする核酸配列を含む。反復伸長発現調節遺伝子は上に記載したものと同一である。標的配列は上に記載したものと同一である。遺伝子操作用組成物はgRNA−CRISPR酵素複合体を含み得る。
【0483】
「gRNA−CRISPR酵素複合体」という用語は、gRNAとCRISPR酵素との間の相互作用を通して形成される複合体を指す。gRNAは上に記載したものと同一である。
【0484】
「CRISPR酵素」という用語は、CRISPR−Casシステムの主なタンパク質要素であり、gRNAと複合体を形成し、CRISPR−Casシステムをもたらす。
【0485】
CRISPR酵素は、CRISPR酵素をコードする配列を有する核酸またはポリペプチド(またはタンパク質)であり得る。CRISPR酵素はII型CRISPR酵素であり得る。
【0486】
II型CRISPR酵素の結晶構造は、2種類以上の天然の微生物II型CRISPR酵素分子に関する研究(Jinek et al.,Science, 343(6176):1247997, 2014)、および、gRNAと複合化されたストレプトコッカス・ピオゲネスCas9(SpCas9)に関する研究(Nishimasu et al., Cell, 156:935−949, 2014;Anders et al., Nature,2014, doi: 10.1038/nature13579)に従って決定された。
【0487】
II型CRISPR酵素は2つのローブ.すなわち、認識(REC)ローブおよびヌクレアーゼ(NUC)ローブを含み、各ローブはいくつかのドメインを含む。
【0488】
RECローブは、アルギニンリッチブリッジへリックス(BH)ドメイン、REC1ドメインおよびREC2ドメインを含む。
【0489】
ここで、BHドメインは、ロングαへリックスおよびアルギニンリッチ領域であり、REC1およびREC2ドメインは、例えば、一本鎖gRNA、二本鎖gRNAまたはtracrRNAなど、gRNAに形成される二本鎖の認識において重要な役割を果たす。
【0490】
NUCローブは、RuvCドメイン、HNHドメインおよびPAM相互作用(PI)ドメインを含む。ここで、RuvCドメインは、RuvC様ドメインを含み、または、HNHドメインは、HNH様ドメインを含むように使用される。
【0491】
ここで、RuvCドメインは、II型CRISPR酵素を有する、天然に存在する微生物ファミリーのメンバーと構造類似性を共有し、例えば、標的遺伝子または標的核酸の非相補鎖、すなわち、gRNAとの相補結合を形成しない鎖などの一本鎖を切断する。RuvCドメインは、当技術分野において、RuvC Iドメイン、RuvC IIドメイン、または、RuvC IIIドメインと呼ばれることがあり、一般に、RuvC I、RuvC IIまたはRuvC IIIと呼ばれる。
【0492】
HNHドメインは、HNHエンドヌクレアーゼと構造類似性を共有し、例えば、標的核酸分子の相補鎖、すなわち、gRNAとの相補結合を形成する鎖など、一本鎖を切断する。HNHドメインは、RuvC IIとIIIモチーフとの間に位置する。
【0493】
PIドメインは、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)である標的遺伝子または標的核酸における特定の塩基配列を認識する、または、PAMと相互作用する。ここで、PAMはII型CRISPR酵素の由来に従って変動し得る。例えば、CRISPR酵素がSpCas9であるとき、PAMは、5'−NGG−3'であり得て、CRISPR酵素がストレプトコッカス・サーモフィラスCas9(StCas9)であるとき、PAMは5'−NNAGAAW−3'(W=AまたはT)であり得て、CRISPR酵素がナイセリア・メニンジティディスCas9(NmCas9)であるとき、PAMは5'−NNNNGATT−3'であり得て、CRISPR酵素がカンピロバクター・ジェジュニCas9(CjCas9)であるとき、PAMは5'−NNNVRYAC−3'(V=GまたはCまたはA、R=AまたはG、Y=CまたはT)であり得て、NはA、T、GもしくはC、または、A、U、GもしくはCであり得る。II型CRISPR酵素は、Cas9であってよい。
【0494】
Cas9は、Streptococcus pyogenes、Streptococcus thermophilus、Streptococcus sp.、Staphylococcus aureus、Nocardiopsis dassonvillei、Streptomyces pristinaespiralis、Streptomyces viridochromogenes、Streptosporangium roseum、AlicyclobacHlus acidocaldarius、Bacillus pseudomycoides、Bacillus selenitireducens、Exiguobacterium sibiricum、Lactobacillus delbrueckii、Lactobacillus salivarius、Microscilla marina、Burkholderiales bacterium、Polaromonas naphthalenivorans、Polaromonas sp.、Crocosphaera watsonii、Cyanothece sp.、Microcystis aeruginosa、Synechococcus sp.、Acetohalobium arabaticum、Ammonifex degensii、Caldicelulosiruptor bescii、Candidatus Desulforudis、Clostridium botulinum、Clostridium difficile、Finegoldia magna、Natranaerobius thermophilus、Pelotomaculum thermopropionicum、Acidithiobacillus caldus、Acidithiobacillus ferrooxidans、Allochromatium vinosum、Marinobacter sp.、Nitrosococcus halophilus、Nitrosococcus watsoni、Pseudoalteromonas haloplanktis、Ktedonobacter racemifer、Methanohalobium evestigatum、Anabaena variabilis、Nodularia spumigena、Nostoc sp.、Arthrospira maxima、Arthrospira platensis、Arthrospira sp.、Lyngbya sp.、Microcoleus chthonoplastes、Oscillatoria sp.、Petrotoga mobilis、Thermosipho africanusおよびAcaryochloris marinaなどの様々な微生物に由来し得る。
【0495】
「Cas9」という用語は、標的遺伝子または標的核酸上の標的配列または位置を切断または改変するようにgRNAに結合する酵素であり、核酸鎖を切断してgRNAとの相補結合を形成可能なHNHドメインと、核酸鎖を切断してgRNAとの相補結合を形成可能なRuvCドメインと、標的を認識するRECドメインと、PAMを認識するPIドメインとから成り得る。Cas9の特定の構造的特徴については、Hiroshi Nishimasu et al. (2014) Cell 156:935−949を参照されたい。
【0496】
Cas9は、組み換えまたは合成法によって生成される天然または非天然に存在する微生物から単離され得る。加えて、CRISPR酵素はV型CRISPR酵素であり得る。
【0497】
V型CRISPR酵素は、II型CRISPR酵素のRuvCドメインに対応する同様のRuvCドメインを含み、II型CRISPR酵素のHNHドメインの代わりにNucドメインと、標的を認識するRECおよびWEDドメインと、PAMを認識するPIドメインとから成り得る。V型CRISPR酵素の具体的な構造特性については、Takashi Yamano et al. (2016) Cell 165:949−962を参照されたい。
【0498】
V型CRISPR酵素は、gRNAと相互作用し得て、それにより、gRNA−CRISPR酵素複合体、すなわち、CRISPR複合体を形成し、gRNAと協働して、PAM配列を含む標的配列にガイド配列が接近することを可能にし得る。ここで、標的遺伝子または標的核酸との相互作用のためのV型CRISPR酵素の能力は、PAM配列に依存する。
【0499】
PAM配列は、標的遺伝子または標的核酸に存在する配列であり、V型CRISPR酵素のPIドメインによって認識され得る。PAM配列は、V型CRISPR酵素の由来に従って変動し得る。すなわち、種に応じて特異的に認識されることが可能な異なるPAM配列がある。例えば、CRISPR酵素がCpf1タンパク質であるとき、PAM配列は5'‐TTN−3'(NはA、T、CまたはG)である。しかしながら、上に記載の酵素の由来に応じてPAM配列が決定されることが一般に理解されるが、PAM配列は、酵素の変異体の研究が進むにつれて変動し得る。V型CRISPR酵素はCpf1であり得る。
【0500】
Cpf1は、ストレプトコッカス、カンピロバクター、ニトラチフラクター、スタフィロコッカス、パルビバクラム、ローズブリア、ナイセリア、グルコナセトバクター、アゾスピリラム、スフェロケタ、ラクトバチルス、ユーバクテリウム、コリネバクター、カルノバクテリウム、ロドバクター、リステリア、パルディバクター、クロストリジウム、ラクノスピラ、クロストリジアリジウム、レプトトリキア、フランシセラ、レジオネラ、アリシクロバチルス、メタノメチオフィラス、ポルフィロモナス、プレボテラ、バクテロイデス、ヘルココッカス、レトスピラ、デススルホビブリオ、デスルフォナトロナム、オピトゥトゥス、ツベリバチルス、バチルス、ブレビバチルス、メチロバクテリウムまたはアシダミノコッカスに由来し得る。
【0501】
Cpf1は、Cas9のRuvCドメインと同様の対応するRuvCドメイン、Cas9のHNHドメイン無しのNucドメイン、標的を認識するRECドメイン、PAMを認識するWEDドメインおよびPIドメインから成り得る。Cpf1の特定の構造的特徴については、Takashi Yamano et al.(2016)Cell 165:949−962を参照されたい。
【0502】
Cpf1は、組み換えまたは合成法によって生成される天然または非天然に存在する微生物から単離され得る。
【0503】
CRISPR酵素は、標的遺伝子または標的核酸のDNAの二本鎖を切断する機能を有するヌクレアーゼまたは制限酵素であり得る。CRISPR酵素は完全活性CRISPR酵素であり得る。
【0504】
「完全活性」とは、野性型CRISPR酵素の機能と同一の機能を有する状態を指し、完全活性CRISPR酵素とは、野性型CRISPR酵素の機能と同一の機能を有する酵素を指す。ここで、「野性型CRISPR酵素の機能」とは、DNAの二本鎖を切断する機能である。換言すれば、それは、第1および第2機能の両方を有することを指し、第1機能は、二本鎖DNAの第1鎖を切断する機能であり、第2機能は、二本鎖DNAの第2鎖を切断する機能である。
【0505】
完全活性CRISPR酵素は、DNAの二本鎖を切断する野性型CRISPR酵素であり得る。
【0506】
完全活性CRISPR酵素は、DNAの二本鎖を切断する改変または操作された野性型CRISPR酵素であるCRISPR酵素バリアントであり得る。
【0507】
CRISPR酵素変異体は、野性型CRISPR酵素のアミノ酸配列における1または複数のアミノ酸が除去される、または、別のものと置換される酵素であり得る。
【0508】
CRISPR酵素変異体は、1または複数のアミノ酸が野性型CRISPR酵素のアミノ酸配列に挿入される酵素であり得る。ここで、挿入されるアミノ酸は、アミノ末端(N末端)、カルボキシル末端(C末端)、または、野性型CRISPR酵素のアミノ酸配列の中央に位置し得る。
【0509】
CRISPR酵素変異体は、野性型CRISPR酵素の機能と比較して機能が改善された完全活性CRISPR酵素であり得る。
【0510】
例えば、改変または操作された野性型CRISPR酵素‐CRISPR酵素変異体は、DNA二本鎖と結合することなく、または、一定距離だけ離れた状態を維持しながら、DNA二本鎖を切断できる。この場合、改変または操作されたCRISPR酵素は、野性型CRISPR酵素の機能活性化と比較して機能活性化が改善された完全活性CRISPR酵素であり得る。
【0511】
CRISPR酵素変異体は、野性型CRISPR酵素の機能と比較して機能が低減された完全活性CRISPR酵素であり得る。
【0512】
例えば、改変または操作された野性型CRISPR酵素‐CRISPR酵素バリアントは、一定距離における、または、特定の結合の存在において、DNA二本鎖を切断できる。この場合、改変または操作されたCRISPR酵素は、野性型CRISPR酵素の機能活性化と比較して機能活性化が低減された完全活性CRISPR酵素であり得る。
【0513】
CRISPR酵素は、不完全または部分的CRISPR酵素であり得る。「不完全または部分的に活性のある」とは、野性型酵素の第1および第2機能から選択された機能を有する状態を指す。ここで、第1機能は、二本鎖DNAの第1の一本鎖を切断し、第2機能は、二本鎖DNAの第2の一本鎖を切断する。記載された状態のCRISPR酵素は、不完全または部分的に活性のあるCRISPR酵素と呼ばれる。加えて、不完全または部分的に活性のあるCRISPR酵素は、ニッカーゼと呼ばれ得る。
【0514】
「ニッカーゼ」という用語は、標的遺伝子または標的核酸の二本鎖のうち1本の鎖のみを切断するように操作または改変されたCRISPR酵素を指し、ニッカーゼは、例えば、標的遺伝子または標的核酸のgRNAに相補的でない、または、相補的な鎖である一本鎖を切断するヌクレアーゼ活性を有する。このため、二本鎖を切断するには、2つのニッカーゼのヌクレアーゼ活性が必要である。
【0515】
例えば、ニッカーゼは、RuvCドメインによるヌクレアーゼ活性を有し得る。すなわち、ニッカーゼは、HNHドメインのヌクレアーゼ活性を含み得て、この目的で、HNHドメインは操作または改変され得る。
【0516】
一例において、CRISPR酵素がII型CRISPR酵素であれば、ニッカーゼは、改変されたHNHドメインを含むII型CRISPR酵素であり得る。
【0517】
例えば、II型CRISPR酵素が野性型SpCas9であれば、ニッカーゼは、SpCas9のアミノ酸配列における残基840をヒスチジンからアラニンに変異させることによって、HNHドメインのヌクレアーゼ活性が不活性化された、操作されたSpCas9であり得る。それにより生成されたニッカーゼがRuvCドメインのヌクレアーゼ活性を有するので、標的遺伝子または標的核酸の非相補鎖と相補結合を形成しない鎖、すなわちgRNAを切断することが可能である。
【0518】
例えば、II型CRISPR酵素が野性型CjCas9であれば、ニッカーゼは、CjCas9のアミノ酸配列における残基559をヒスチジンからアラニンに変異させることによって、HNHドメインのヌクレアーゼ活性が不活性化された、操作されたCjCas9であり得る。それにより生成されたニッカーゼがRuvCドメインのヌクレアーゼ活性を有するので、標的遺伝子または標的核酸の非相補鎖と相補結合を形成しない鎖、すなわちgRNAを切断することが可能である。
【0519】
加えて、ニッカーゼは、HNHドメインによるヌクレアーゼ活性を有し得る。すなわち、ニッカーゼは、RuvCドメインのヌクレアーゼ活性を含み得て、この目的で、RuvCドメインは操作または改変され得る。
【0520】
一例において、CRISPR酵素がII型CRISPR酵素であれば、ニッカーゼは、改変されたRuvCドメインを含むII型CRISPR酵素であり得る。
【0521】
例えば、II型CRISPR酵素が野性型SpCas9であれば、ニッカーゼは、SpCas9のアミノ酸配列における残基10をアスパラギン酸からアラニンに変異させることによって、HNHドメインのヌクレアーゼ活性が不活性化された、操作されたSpCas9であり得る。それにより生成されたニッカーゼは、HNHドメインのヌクレアーゼ活性を有するので、標的遺伝子または標的核酸の相補鎖、すなわち、gRNAと相補結合を形成する鎖を切断可能である。
【0522】
例えば、II型CRISPR酵素が野性型CjCas9であれば、ニッカーゼは、CjCas9のアミノ酸配列における残基8をアスパラギン酸からアラニンに変異させることによって、HNHドメインのヌクレアーゼ活性が不活性化された、操作されたCjCas9であり得る。それにより生成されたニッカーゼは、HNHドメインのヌクレアーゼ活性を有するので、標的遺伝子または標的核酸の相補鎖、すなわち、gRNAと相補結合を形成する鎖を切断可能である。CRISPR酵素は不活性CRISPR酵素であり得る。
【0523】
「不活性」とは、野性型酵素の機能のすべてを失った状態を指し、当該機能は、二本鎖DNAの第1の一本鎖を切断する第1機能、および、二本鎖DNAの第2の一本鎖を切断する第2機能を指す。記載された状態のCRISPR酵素は、不活性CRISPR酵素と呼ばれる。不活性CRISPR酵素は、野性型CRISPR酵素のヌクレアーゼ活性を有するドメインにおける変異に起因するヌクレアーゼ不活性を有する。
【0524】
不活性CRISPR酵素は、RuvCドメインおよびHNHドメインにおける変異に起因するヌクレアーゼ不活性を有する。すなわち、不活性CRISPR酵素は、RuvCドメインおよびHNHドメインに起因するCRISPR酵素のヌクレアーゼ活性を含まないことがあり得る。この目的で、RuvCドメインおよびHNHドメインは操作または改変され得る。
【0525】
一例において、CRISPR酵素がII型CRISPR酵素であるとき、CRISPR酵素は、改変されたRuvCドメインおよび改変されたHNHドメインを含むII型CRISPR酵素であり得る。
【0526】
例えば、II型CRISPR酵素が野性型SpCas9であれば、不活性CRISPR酵素は、SpCas9のアミノ酸配列における残基10および840をアスパラギン酸およびヒスチジンからアラニンにそれぞれ変異することによって、RuvCドメインおよびHNHドメインのヌクレアーゼ活性が不活性化される、操作されたSpCas9であり得る。それにより生成された不活性CRISPR酵素のRuvCドメインおよびHNHドメインによるヌクレアーゼ活性が不活性化されるので、二本鎖は、標的遺伝子または標的核酸の二本鎖を完全に切断しないことがあり得る。
【0527】
別の例において、II型CRISPR酵素が野性型CjCas9であれば、不活性CRISPR酵素は、CjCas9のアミノ酸配列における残基8および559をアスパラギン酸およびヒスチジンからアラニンにそれぞれ変異することによって、RuvCドメインおよびHNHドメインのヌクレアーゼ活性が不活性化される、操作されたSpCas9であり得る。それにより生成された不活性CRISPR酵素のRuvCドメインおよびHNHドメインによるヌクレアーゼ活性が不活性化されるので、二本鎖は、標的遺伝子または標的核酸の二本鎖を完全に切断しないことがあり得る。
【0528】
CRISPR酵素は、上述のヌクレアーゼ活性に加えて、エンドヌクレアーゼ活性、エクソヌクレアーゼ活性、または、ヘリカーゼ活性、すなわち、二本鎖核酸のへリックス構造をアニールする能力を有し得る。
【0529】
加えて、CRISPR酵素は、ヘリカーゼ活性を完全に、不完全に、または、部分的に活性化するように改変し得る。
【0530】
CRISPR酵素は、人工的に改変または操作された野性型CRISPR酵素であるCRISPR酵素変異体であり得る。
【0531】
CRISPR酵素変異体は、二本鎖DNAの第1の一本鎖を切断する第1機能および/または二本鎖DNAの第2の一本鎖を切断する第2機能を改変するように人工的に改変または操作されたCRISPR酵素変異体であり得る。
【0532】
例えば、CRISPR酵素変異体は、野性型CRISPR酵素の第1機能が失われたCRISPR酵素であり得る。
【0533】
または、CRISPR酵素変異体は、野性型CRISPR酵素の第2機能が失われたCRISPR酵素であり得る。
【0534】
例えば、CRISPR酵素変異体は、野性型CRISPR酵素の機能、すなわち、第1および第2機能が失われたCRISPR酵素であり得る。CRISPR酵素変異体は、gRNAとの相互作用を通してgRNA−CRISPR酵素複合体を形成し得る。
【0535】
CRISPR酵素変異体は、野性型CRISPR酵素のgRNAと相互作用する機能を改変するように、人工的に改変または操作されたCRISPR酵素変異体であり得る。
【0536】
例えば、CRISPR酵素変異体は、野性型CRISPR酵素と比較してgRNAとの相互作用が低減し得る。
【0537】
加えて、CRISPR酵素変異体は、野性型CRISPR酵素と比較して、gRNAとの相互作用が増加し得る。
【0538】
例えば、CRISPR酵素変異体は、野性型CRISPR酵素の第1機能を有しつつ、野性型CRISPR酵素と比較して、gRNAとの相互作用が減少し得る。
【0539】
または、CRISPR酵素変異体は、野性型CRISPR酵素の第1機能を有しつつ、野性型CRISPR酵素と比較して、gRNAとの相互作用が増加し得る。
【0540】
例えば、CRISPR酵素変異体は、野性型CRISPR酵素の第2機能を有しつつ、野性型CRISPR酵素と比較して、gRNAとの相互作用が減少し得る。
【0541】
または、CRISPR酵素変異体は、野性型CRISPR酵素の第2機能を有しつつ、野性型CRISPR酵素と比較して、gRNAとの相互作用が増加し得る。
【0542】
例えば、CRISPR酵素変異体は、野性型CRISPR酵素の第1および第2機能を有しないが、野性型CRISPR酵素と比較して、gRNAとの相互作用が低減し得る。
【0543】
例えば、CRISPR酵素変異体は、野性型CRISPR酵素の第1および第2機能を有しないが、野性型CRISPR酵素と比較して、gRNAとの相互作用が増加し得る。
【0544】
ここで、様々なgRNA−CRISPR酵素複合体は、gRNAとCRISPR酵素変異体との間の相互作用力に従って形成され得て、標的配列にアクセスまたは切断する機能は、CRISPR酵素変異体に従って変動し得る。
【0545】
例えば、gRNAとの相互作用が低減したCRISPR酵素変異体によって形成されるgRNA−CRISPR酵素複合体は、gRNA−CRISPR酵素複合体がgRNAとの完全相補結合を形成する標的配列に近い、または、それに局在化するときだけ、一本鎖または二本鎖を切断し得る。
【0546】
CRISPR酵素変異体は、野性型CRISPR酵素のアミノ酸配列の1または複数のアミノ酸が改変されたCRISPR酵素であり得る。
【0547】
一例において、CRISPR酵素変異体は、野性型CRISPR酵素のアミノ酸配列の1または複数のアミノ酸が置換されるCRISPR酵素であり得る。
【0548】
別の例において、CRISPR酵素変異体は、野性型CRISPR酵素のアミノ酸配列の1または複数のアミノ酸が欠失されるCRISPR酵素であり得る。
【0549】
更に別の例において、CRISPR酵素変異体は、野性型CRISPR酵素のアミノ酸配列の1または複数のアミノ酸が追加されるCRISPR酵素であり得る。
【0550】
一例において、CRISPR酵素変異体は、野性型CRISPR酵素のアミノ酸配列の1または複数のアミノ酸が置換、欠失および/または追加されるCRISPR酵素であり得る。
【0551】
加えて、CRISPR酵素変異体は、野性型CRISPR酵素の元の機能、すなわち、二本鎖DNAの第1の一本鎖を切断する第1機能、および、二本鎖DNAの第2の一本鎖を切断する第2機能に加えて、追加的な機能ドメインを選択的に含み得る。ここで、CRISPR酵素変異体は、野性型CRISPR酵素の元の機能に加えて、追加の機能を有し得る。機能ドメインは、メチラーゼ活性、デメチラーゼ活性、転写活性化活性、転写抑制活性、転写終結因子活性、ヒストン修飾活性、RNA切断活性、または、核酸結合活性を有するドメイン、または、(ペプチドを含む)タンパク質を単離および精製するためのタグまたはレポーター遺伝子であり得るが、本発明はこれに限定されない。
【0552】
タグは、ヒスチジン(His)タグ、V5タグ、FLAGタグ、インフルエンザヘマグルチニン(HA)タグ、Mycタグ、VSV‐Gタグおよびチオレドキシン(Trx)タグを含み、レポーター遺伝子は、グルタチオン‐S‐トランスフェラーゼ(GST)、ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ(HRP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)βガラクトシダーゼ、βグルクロニダーゼ、ルシフェラーゼ、自家蛍光タンパク質(緑色蛍光タンパク質(GFP)、HcRed、DsRed、シアン蛍光タンパク質(CFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)および青色蛍光タンパク質(BFP)を含む)を含むが、本発明はこれらに限定されない。機能ドメイン、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質はデアミナーゼであり得る。
【0553】
例えば、不完全または部分的CRISPR酵素は、機能ドメインとしてシチジンデアミナーゼを追加的に含み得る。例示的な一実施形態、シチジンデアミナーゼ、例えば、アポリポタンパク質B編集複合体1(APOBEC1)はSpCas9ニッカーゼに追加され得て、それにより、融合タンパク質を産生する。それにより形成される[SpCas9ニッカーゼ]‐[APOBEC1]は、CをTまたはUにする、または、GをAにする塩基修復または編集において使用され得る。
【0554】
別の例として、不完全または部分的CRISPR酵素は、追加的に、機能ドメインとしてアデノシンデアミナーゼを含み得る。例示的な一実施形態において、アデノシンデアミナーゼ、例えば、TadAバリアント、ADAR2バリアント、または、ADAT2バリアントは、SpCas9ニッカーゼに追加され得て、それにより、融合タンパク質を生成する。それにより形成される[SpCas9ニッカーゼ]‐[TadAバリアント]、[SpCas9ニッカーゼ]‐[ADAR2バリアント]または[SpCas9ニッカーゼ]‐[ADAT2バリアント]は、ヌクレオチドAをイノシンに変更し、改変されたイノシンは、ポリメラーゼによってヌクレオチドGとして認識されるので、ヌクレオチドAをGにするように操作または編集する効果を有する。したがって、上に記載の融合タンパク質は、AをG、または、TをCにする編集において使用され得る。
【0555】
加えて、機能ドメイン、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質は、核局在配列もしくはシグナル(NLS)、または、核外搬出配列もしくはシグナル(NES)であり得る。
【0556】
NLSは、アミノ酸配列PKKKRKVを有する、SV40ウイルスのラージT抗原のNLS、ヌクレオプラスミンに由来するNLS(例えば、配列KRPAATKKAGQAKKKKを有する双節型ヌクレオプラスミンNLS)、アミノ酸配列PAAKRVKLDまたはRQRRNELKRSPを有するc‐myc NLS、または、配列NQSSNFGPMKGGNFGGRSSGPYGGGGQYFAKPRNQGGYを有するhRNPA1 M9 NLS、インポーチンα由来IBBドメイン配列RMRIZFKNKGKDTAELRRRRVEVSVELRKAKKDEQILKRRNV、筋腫Tタンパク質配列VSRKRPRPおよびPPKKARED、ヒトp53配列POPKKKPL、マウスc‐abl IV配列SALIKKKKKMAP、インフルエンザウイルスNS1配列DRLRRおよびPKQKKRK、D型肝炎ウイルス抗原配列RKLKKKIKKL、マウスMx1タンパク質配列REKKKFLKRR、ヒトポリ(ADPリボース)ポリメラーゼ配列KRKGDEVDGVDEVAKKKSKK、または、ステロイドホルモン受容体(ヒト)グルココルチコイド配列RKCLQAGMNLEARKTKKであり得るが、本発明はこれらに限定されない。
【0557】
加えて、CRISPR酵素変異体は、CRISPR酵素を2つ以上の部分に分割することによって調製されたスプリット型CRISPR酵素を含み得る。「スプリット」という用語は、タンパク質の機能的または構造的な分割、または、タンパク質を2つ以上の部分にランダムに分割することを指す。
【0558】
ここで、スプリット型CRISPR酵素は、完全に、不完全に、または、部分的に、活性酵素または不活性酵素であり得る。
【0559】
例えば、SpCas9は、残基656チロシンと残基657スレオニンとの間で2つの部分に」分割され得て、それにより、スプリット型SpCas9を生成する。加えて、スプリット型CRISPR酵素は選択的に、再構成のための追加のドメイン、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質を含み得る。
【0560】
スプリット型CRISPR酵素は選択的に、再構成のための追加のドメイン、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質を含み得る。
【0561】
再構成のための追加のドメイン、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質は、スプリット型CRISPR酵素を野性型CRISPR酵素と構造的に同一または類似にするように組み立て得る。
【0562】
再構成のための追加のドメイン、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質は、FRBおよびFKBP二量体化ドメイン、インテイン、ERTおよびVPRドメイン、または、特定の条件下でヘテロダイマーを形成するドメインであり得る。
【0563】
例えば、SpCas9は、残基713セリンと残基714グリシンとの間で2つの部分に分割され得て、それにより、スプリット型SpCas9を生成する。FRBドメインは、2つの部分のうち1つに接続され得て、FKBPドメインは他方に接続され得る。それにより生成されるスプリット型SpCas9において、FRBドメインおよびFKBPドメインは、ラパマイシンが存在する環境において二量体で形成され得て、それにより、再構成されたCRISPR酵素を生成する。
【0564】
本発明において説明されるCRISPR酵素またはCRISPR酵素変異体は、ポリペプチド、タンパク質、または、それをコードする配列を有する核酸であり得て、CRISPR酵素またはCRISPR酵素変異体を導入するべく対象に対してコドン最適化され得る。
【0565】
「コドン最適化」という用語は、宿主細胞における発現を改善するように、天然配列の少なくとも1つのコドンを、宿主細胞においてより頻繁にまたは最も頻繁に使用されるコドンと置換しながら、天然アミノ酸配列を維持することによって核酸配列を改変するプロセスを指す。様々な種が、特定のアミノ酸の特定のコドンに対して特定のバイアスを有し、コドンバイアス(生物間のコドン使用率の差異)は、翻訳されたコドンの特徴、および、特定のtRNA分子の利用可能性に従っているとみなされる、mRNAの翻訳の効率と頻繁に相関する。細胞において選択されるtRNAの優位性(dominance)は一般的に、ペプチド合成において最も頻繁に使用されるコドンを反映する。したがって、遺伝子は、コドン最適化に基づいて、所与の生物における最適な遺伝子発現によりカスタマイズされ得る。
【0566】
gRNA、CRISPR酵素、または、gRNA−CRISPR酵素複合体は、様々な形式で対象に送達または導入され得る。対象は上に記載されたものと同一である。
【0567】
一実施形態において、gRNAおよび/またはCRISPR酵素をコードする核酸配列は、ベクターによって対象に送達または導入され得る。ベクターは、gRNAおよび/またはCRISPR酵素をコードする核酸配列を含み得る。
【0568】
一例において、ベクターは、gRNAおよびCRISPR酵素をそれぞれコードする核酸配列を同時に含み得る。別の例において、ベクターは、gRNAをコードする核酸配列を含み得る。
【0569】
一例において、gRNAに含まれるドメインは、1つのベクターに含まれ得る、または、分割され、次いで、異なるベクターに含まれ得る。例えば、ベクターは、CRISPR酵素をコードする核酸配列を含み得る。
【0570】
一例において、CRISPR酵素の場合、CRISPR酵素をコードする核酸配列は、1つのベクターに含まれ得る、または、分割され、次いで、いくつかのベクターに含まれ得る。ベクターは、1または複数の調節/制御要素を含み得る。
【0571】
ここで、調節/制御要素は、プロモーター、エンハンサー、イントロン、ポリアデニル化シグナル、コザックコンセンサス配列、配列内リボソーム進入部位(IRES)、スプライスアセプターおよび/または2A配列を含み得る。プロモーターはRNAポリメラーゼIIによって認識されるプロモーターであり得る。プロモーターはRNAポリメラーゼIIIによって認識されるプロモーターであり得る。プロモーターは誘導プロモーターであり得る。プロモーターは対象特異的プロモーターであり得る。プロモーターはウイルスまたは非ウイルスプロモーターであり得る。
【0572】
プロモーターは、制御領域(すなわち、ガイド核酸またはエディタータンパク質をコードする核酸配列)に従って好適なプロモーターを使用し得る。
【0573】
例えば、ガイド核酸に有用なプロモーターは、H1、EF‐1a、tRNAまたはU6プロモーターであり得る。例えば、エディタータンパク質に有用なプロモーターは、CMV、EF‐1a、EFS、MSCV、PGK、または、CAGプロモーターであり得る。ベクターは、ウイルスベクター、または、組み換えウイルスベクターであり得る。ウイルスは、DNAウイルスまたはRNAウイルスであり得る。
【0574】
ここで、DNAウイルスは、二本鎖DNA(dsDNA)ウイルスまたは一本鎖DNA(ssDNA)ウイルスであり得る。ここで、RNAウイルスは、一本鎖RNA(ssRNA)ウイルスであり得る。
【0575】
ウイルスは、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ワクチニアウイルス、ポックスウイルスまたは単純ヘルペスウイルスであり得るが、本発明はこれらに限定されない。
【0576】
一例において、ガイド核酸および/またはエディタータンパク質をコードする核酸配列が、組み換えレンチウイルスによって送達または導入され得る。
【0577】
別の例において、ガイド核酸および/またはエディタータンパク質をコードする核酸配列は、組み換えアデノウイルスによって送達または導入され得る。
【0578】
更に別の例において、ガイド核酸および/またはエディタータンパク質をコードする核酸配列が組み換えAAVによって送達または導入され得る。
【0579】
更なる別の例において、ガイド核酸および/またはエディタータンパク質をコードする核酸配列は、ハイブリッドウイルスによって、例えば、本明細書において列挙されるウイルスの1または複数のハイブリッドによって、送達または導入され得る。
【0580】
一実施形態において、gRNAおよびCRISPR酵素は、gRNA−CRISPR酵素複合体の形成で対象に送達または導入され得る。
【0581】
例えば、ガイド核酸はDNA、RNAまたはそれらの混在であり得る。CRISPR酵素は、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質であり得る。
【0582】
一例において、gRNAおよびCRISPR酵素は、RNA型gRNAおよびタンパク質型CRISPRを含むgRNA−CRISPR複合体、すなわち、リボ核タンパク質(RNP)の形成で対象に送達または導入され得る。
【0583】
CRISPR gRNA−CRISPR酵素複合体は、電気穿孔、マイクロインジェクション、一過性細胞圧縮またはスクイージング(例えば、文献Lee, et al, (2012) Nano Lett., 12, 6322−6327に記載されている)、脂質媒介トランスフェクション、ナノ粒子、リポソーム、ペプチド媒介送達、または、それらの組み合わせによって対象に送達または導入され得る。
【0584】
ここで開示されるように、gRNA−CRISPR酵素複合体は、標的遺伝子、すなわち、反復伸長発現調節遺伝子の操作または改変において使用され得る。
【0585】
標的遺伝子または標的核酸は、上述のgRNA−CRISPR酵素複合体、すなわち、CRISPR複合体を使用して操作または修正され得る。ここで、標的遺伝子または標的核酸の操作または修正は、i)標的遺伝子または標的核酸の切断または損傷、および、ii)損傷した標的遺伝子または標的核酸の修復の段階のすべてを含む。
【0586】
i)標的遺伝子または標的核酸の切断または損傷は、CRISPR複合体を使用する標的遺伝子または標的核酸の切断または損傷、特に、標的遺伝子または標的核酸における標的配列の切断または損傷であり得る。
【0587】
標的配列は、gRNA−CRISPR酵素複合体の標的であり得て、標的配列は、CRISPR酵素によって認識されるPAM配列を含んでも含まなくてもよい。そのような標的配列は、gRNA設計段階における重要な基準を当業者に提供し得る。
【0588】
標的配列は、gRNA−CRISPR酵素複合体のgRNAによって特異的に認識されることが可能であり得るので、gRNA−CRISPR酵素複合体は認識された標的配列に隣接して配置され得る。
【0589】
標的領域における「切断」という用語は、ポリヌクレオチドの共有結合主鎖の破損を指す。切断は、ホスホジエステル結合の酵素的または化学的加水分解を含むが、本発明はこれに限定されず、また、様々な他の方法を含む。切断は、一本鎖および二本鎖の両方に実行されることが可能であり、二本鎖の切断は、異なる一本鎖切断の結果であり得る。二本鎖切断は、平滑末端、または、付着末端(または粘着末端)を生じさせ得る。
【0590】
一例において、CRISPR複合体を使用する、標的遺伝子または標的核酸の切断または損傷は、標的配列の二本鎖に対する完全な切断または損傷であり得る。
【0591】
例示的な一実施形態において、野性型SpCas9が使用されるとき、gRNAとの相補結合を形成する標的配列の二本鎖は完全に切断され得る。
【0592】
別の例示的な実施形態において、SpCas9ニッカーゼ(D10A)およびSpCas9ニッカーゼ(H840A)が使用されるとき、gRNAとの相補結合を形成する標的配列の相補一本鎖は、SpCas9ニッカーゼ(D10A)によって切断され得て、gRNAとの相補結合を形成する標的配列の非相補一本鎖は、SpCas9ニッカーゼ(H840A)によって切断され得て、切断は、順番または同時に起き得る。
【0593】
別の例において、CRISPR複合体を使用する、標的遺伝子または標的核酸の切断または損傷は、標的配列の一本鎖のみに対する切断または損傷であり得る。ここで、一本鎖は、gRNAと相補結合を形成する標的配列の相補一本鎖、または、gRNAと相補結合を形成しない標的配列の非相補一本鎖であり得る。
【0594】
例示的な一実施形態において、SpCas9ニッカーゼ(D10A)が使用されるとき、gRNAとの相補結合を形成する標的配列の相補一本鎖は、SpCas9ニッカーゼ(D10A)によって切断され得るが、gRNAとの相補結合を形成する標的配列の非相補一本鎖は、切断されないことがあり得る。
【0595】
別の例示的な実施形態において、SpCas9ニッカーゼ(H840A)が使用されるとき、gRNAとの相補結合を形成する標的配列の相補一本鎖は、SpCas9ニッカーゼ(H840A)によって切断され得るが、gRNAとの相補結合を形成する標的配列の非相補一本鎖は切断されないことがあり得る。
【0596】
更なる別の例において、CRISPR複合体を使用する、標的遺伝子または標的核酸の切断または損傷は、核酸断片の部分的除去であり得る。
【0597】
例示的な一実施形態において、異なる標的配列を有する2つのgRNA、および、野性型SpCas9が使用されるとき、第1gRNAとの相補結合を形成する標的配列の二本鎖は切断され得て、第2gRNAとの相補結合を形成する標的配列の二本鎖は切断され得て、第1および第2gRNA、ならびに、SpCas9による、核酸断片の除去をもたらす。
【0598】
CRISPR複合体によって切断または損傷した標的遺伝子または標的核酸は、NHEJおよび相同組換え修復(HDR)を通して修復または復元され得る。
【0599】
非相同末端結合(NHEJ)は、切断された二本鎖または一本鎖の両方の末端を共に結合することによって、DNAにおける二本鎖の破損を復元または修復する方法であり、一般に、二本鎖の破損(例えば切断)によって形成される2つの適合する末端が互いに頻繁に接触して2つの末端を完全に連結するとき、破損された二本鎖が復元される。NHEJは、細胞周期全体で使用されることが可能な復元方法であり、通常、G1期など、鋳型として使用される相同ゲノムが細胞に無いときに生じる。
【0600】
NHEJを使用する、損傷した遺伝子または核酸の修復プロセスにおいて、核酸配列におけるいくつかの挿入および/または欠失(インデル)がNHEJ修復領域において生じ、そのような挿入および/または欠失は、リーディングフレームのシフトを引き起こし、トランスクリプトームmRNAのフレームシフトをもたらす。結果として、ナンセンス媒介分解、または、正常タンパク質の合成の失敗が原因で、先天的機能が失われる。加えて、リーディングフレームが維持される一方で、タンパク質の機能を破損するために、相当量の配列の挿入または欠失が引き起こされる変異が引き起こされ得る。重要な機能ドメインにおける変異は、タンパク質の非重要領域における変異より許容度が低い可能性があるので、変異は、座位依存的である。
【0601】
天然状態においてNHEJによりインデル変異が生じると予期するのは不可能であるが、所与の切断領域では特定のインデル配列が好適であり、マイクロホモロジーの小さい領域に由来し得る。従来、欠失長は、1bp〜50bpの範囲に及び、挿入は、より短い傾向があり、切断領域を直接囲む短い反復配列を頻繁に含む。
【0602】
加えて、NHEJは、変異を引き起こすプロセスであり、特定の最終的な配列を生成する必要がないとき、小さい配列のモチーフの欠失に使用され得る。
【0603】
CRISPR複合体によって標的化される遺伝子の特異的なノックアウトは、そのようなNHEJを使用して実行され得る。標的遺伝子または標的核酸の二本鎖または2つの一本鎖は、Cas9またはCpf1などのCRISPR酵素を使用して切断され得て、標的遺伝子または標的核酸の破損された二本鎖または2つの一本鎖は、NHEJを通してインデルを有し得て、それにより、標的遺伝子または標的核酸の特異的なノックアウトを誘導する。ここで、CRISPR酵素によって切断される標的遺伝子または標的核酸の部位は、非コードまたはコード領域であり得て、加えて、NHEJにより復元される標的遺伝子または標的核酸の部位は、非コードまたはコード領域であり得る。
【0604】
一例において、gRNA−CRISPR複合体による標的遺伝子の二本鎖の切断、および、NHEJによるそれらの修復を含むプロセスに起因して、修復領域において、様々なインデルが生じ得る。
【0605】
「インデル」という用語は、DNA塩基配列におけるいくつかの塩基の間に発生する挿入または欠失変異についての総称である。gRNA−CRISPR酵素複合体が、上に記載されたように過剰増幅反復配列の発現調節因子の核酸(DNAまたはRNA)を切断するとき、インデルは、HDRまたはNHEJ機構による修復の間に標的配列に導入され得る。
【0606】
HDRは、損傷した遺伝子または核酸を修復または復元するために、および、一般に、切断されたDNAを修復または復元するために、相同性配列を鋳型として使用する、エラーの無い修正方法である。すなわち、細胞の先天的情報を復元するために、改変されていない相補的塩基配列の情報、または、姉妹染色分体の情報を使用して、切断されたDNAが修復される。最も一般的な種類のHDRは相同組換え(HR)である。HDRは、活発に分裂している細胞のSまたはG2/M期に通常生じる修復または復元方法である。
【0607】
細胞の相補的塩基配列または姉妹染色分体を使用する代わりにHDRを使用して、損傷したDNAを修復または復元するために、相補的塩基配列または相同塩基配列の情報を使用して人工的に合成されるDNA鋳型、すなわち、相補的塩基配列または相同塩基配列を含む核酸鋳型が細胞に提供され得て、それにより、切断されたDNAを修復する。ここで、切断されたDNAを修復するために核酸配列または核酸断片が核酸鋳型に更に追加されるとき、切断されたDNAに更に追加される核酸配列または核酸断片は、ノックインの対象になり得る。更に追加される核酸配列または核酸断片は、変異によって改変された標的遺伝子または標的核酸を正常な遺伝子または核酸に、または、細胞において発現されるべき遺伝子または核酸に修正するための核酸配列または核酸断片であり得るが、本発明はこれらに限定されない。フレーム内インデルまたはフレーム外インデルはインデルによって生成され得る。
【0608】
「フレーム内インデル」とは、DNAのヌクレオチド配置における一部のヌクレオチドが中央に挿入される、または、欠失されるとき、3n(nは整数)個のヌクレオチドが挿入または欠失される変異をまとめて指す。フレーム内インデルが誘導される標的遺伝子または標的核酸の二本鎖から転写されるRNAの翻訳の間に、リーディングフレームが維持され得る。標的遺伝子または標的核酸の二本鎖は、ヌクレオチド挿入または欠失座位の周囲の一部のポリペプチドが挿入または欠失される配列に変異され得て、その後のポリペプチドは、フレーム内インデルによるヌクレオチドの挿入または欠失の前と同一のポリペプチドをコードする。
【0609】
「フレーム外インデル」とは、DNAのヌクレオチド配置における一部のヌクレオチドが中央に挿入される、または、欠失されるとき、3n+1または3n+2(nは整数)個のヌクレオチドが挿入または欠失される変異をまとめて指す。フレーム外インデルが誘導される標的遺伝子または標的核酸の二本鎖から転写されるRNAの翻訳の間に、リーディングフレームが改変され得る。標的遺伝子または標的核酸の二本鎖は、ヌクレオチド挿入または欠失座位がフレーム外インデルによって置換または削除された後のポリペプチドである、ポリペプチドをコードし得る。
【0610】
一例において、標的遺伝子または標的核酸の二本鎖または一本鎖は、CRISPR複合体を使用して切断され得て、切断部位に隣接する塩基配列に相補的な塩基配列を含む核酸鋳型は細胞に提供され得て、標的遺伝子または標的核酸の切断された塩基配列は、HDRを通して修復または復元され得る。
【0611】
ここで、相補的塩基配列を含む核酸鋳型は、切断されたDNA、すなわち、相補的塩基配列の切断された二本鎖または一本鎖を有し得て、更に、切断されたDNAに挿入される核酸配列または核酸断片を含み得る。追加の核酸配列または核酸断片は、相補的塩基配列に挿入される核酸配列または核酸断片を含む核酸鋳型を使用して、切断されたDNAの切断部位、すなわち、標的遺伝子または標的核酸に挿入され得る。ここで、挿入される核酸配列または核酸断片、および、追加の核酸配列または核酸断片は、変異によって改変された標的遺伝子または標的核酸を正常な遺伝子または核酸に、または、細胞において発現されるべき遺伝子または核酸に修正するための核酸配列または核酸断片であり得る。相補的塩基配列は、切断されたDNA、すなわち、標的遺伝子または標的核酸の切断された二本鎖または一本鎖の左右の塩基配列との相補結合を有する塩基配列であり得る。代替的に、相補的塩基配列は、切断されたDNA、すなわち、標的遺伝子または標的核酸の切断された二本鎖または一本鎖の3'および5'末端との相補結合を有する塩基配列であり得る。相補的塩基配列は、15〜3000塩基配列であり得て、相補的塩基配列の長さまたはサイズは、核酸鋳型または標的遺伝子のサイズに従って適切に設計され得る。ここで、核酸鋳型として、二本鎖または一本鎖の核酸が使用され得る、または、核酸鋳型は鎖状または円状であり得るが、本発明はこれらに限定されない。
【0612】
別の例において、二本鎖または一本鎖の標的遺伝子または標的核酸は、CRISPR複合体を使用して切断され、切断部位に隣接する塩基配列を有する相同塩基配列を含む核酸鋳型は細胞に提供され、標的遺伝子または標的核酸の切断された塩基配列は、HDRによって修復または復元され得る。
【0613】
ここで、相同塩基配列を含む核酸鋳型は、切断されたDNA、すなわち、切断された二本鎖または一本鎖相同塩基配列であり得て、更に、切断されたDNAに挿入される核酸配列または核酸断片を含む。追加の核酸配列または核酸断片は、相同塩基配列、および、挿入される核酸配列または核酸断片を含む核酸鋳型を使用して、切断されたDNA、すなわち、標的遺伝子または標的核酸の切断部位に挿入され得る。ここで、挿入される核酸配列または核酸断片、および、追加の核酸配列または核酸断片は、変異によって改変された標的遺伝子または標的核酸を正常な遺伝子または核酸に、または、細胞において発現されるべき遺伝子または核酸に修正するための核酸配列または核酸断片であり得る。相同塩基配列は、切断されたDNA、すなわち、切断された二本鎖塩基配列との相同性を有する塩基配列、または、標的遺伝子または標的核酸の左右の一本鎖塩基配列であり得る。代替的に、相補的塩基配列は、切断されたDNA、すなわち、標的遺伝子または標的核酸の切断された二本鎖または一本鎖の3'および5'末端との相同性を有する塩基配列であり得る。相同塩基配列は、15〜3000塩基配列であり得て、相同塩基配列の長さまたはサイズは、核酸鋳型または標的遺伝子または標的核酸のサイズに従って適切に設計され得る。ここで、核酸鋳型として、二本鎖または一本鎖の核酸が使用され得て、線状または円状であり得るが、本発明はこれに限定されない。
【0614】
NHEJおよびHDR以外に、切断されたDNAを修復または復元する方法がある。例えば、一本鎖アニール(SSA)、一本鎖切断修復(SSBA)、ミスマッチ修復(MMR)、塩基除去修復(BER)、または、ヌクレオチド除去修復(NER)。
【0615】
SSAは、標的核酸に存在する2つの反復配列の間の二本鎖切断を修復する方法であり、一般に、30より多い塩基の反復配列を使用する。反復配列は、切断された末端の各々において、標的核酸の二本鎖に関して一本鎖を有するように(粘着末端を有するように)切断され、切断後、反復配列を含む一本鎖オーバーハングは、不適切に反復配列を互いにアニールさせることを防止するように、RPAタンパク質で被覆される。RAD52は、オーバーハング上の各反復配列に結合し、相補的反復配列にアニール可能な配列が配置される。アニール後、オーバーハングの一本鎖フラップが切断され、新規のDNAの合成が特定のギャップを満たし、DNA二本鎖を復元する。この修復の結果として、2つの反復の間のDNA配列が欠失され、欠失長は、ここで使用される2つの反復の位置、切断の進行の経路または度合いを含む様々な因子に依存し得る。
【0616】
HDRと同様に、SSAは相補的配列、すなわち、相補的反復配列を利用し、対照的に、標的核酸配列を改変または修正するために核酸鋳型を必要としない。
【0617】
ゲノムにおける一本鎖切断は、上述の修復機構とは別個の機構であるSSBRを通して修復される。一本鎖DNA切断の場合、PARP1および/またはPARP2は、切断を認識し、修復機構を集める。DNA切断部に関するPARP1の結合および活性は一時的であり、SSBRは、損傷領域におけるSSBRタンパク質複合体の安定性を促進することによって促進される。SSBR複合体におけるもっとも重要なタンパク質は、DNAの3'末端および5'末端処理を促進するタンパク質と相互作用してDNAを安定化するXRCC1である。末端処理は一般的に、損傷3'末端をヒドロキシル化状態に、および/または、損傷5'末端をリン酸塩部分に修復することに関与し、末端の処理後、DNAギャップフィリングが起きる。DNAギャップフィリングのための2つの方法、すなわち、短いパッチの修復および長いパッチの修復があり、短いパッチの修復は、単一塩基の挿入を伴う。DNAギャップフィリング後、DNAリガーゼは末端の連結を促進する。
【0618】
MMRは、ミスマッチしたDNA塩基に作用する。MSH2/6またはMSH2/3複合体の各々は、ATPase活性を有し、よって、ミスマッチの認識および修復の開始において重要な役割を果たす。MSH2/6は主に、塩基と塩基とのミスマッチを認識し、1または2つの塩基ミスマッチを識別するが、MSH2/3は主に、より大きいミスマッチを認識する。
【0619】
BERは、細胞周期全体を通してはたらく修復方法であり、小さい非らせん歪み塩基損傷領域をゲノムから除去するのに使用される。損傷したDNAにおいては、塩基をリン酸デオキシリボース主鎖に連結するNグリコシド結合を切断することによって、損傷した塩基が除去され、次いで、ホスホジエステル主鎖が切断され、よって、一本鎖DNAにおける切断部を生成する。形成される切断された一本鎖末端はそれにより除去され、除去された一本鎖に起因して生成されるギャップは新規の相補的塩基で充填され、次いで、新規に充填された相補的塩基の末端は、DNAリガーゼによって主鎖とライゲーションされ、損傷したDNAの修復がもたらされる。
【0620】
NERは、DNAから大きいへリックス歪み損傷を除去するために重要な切除機構であり、損傷が認識されるとき、損傷した領域を含む短い一本鎖DNAセグメントが除去され、22〜30塩基の一本鎖ギャップがもたらされる。生成されたギャップは、新しい相補的塩基で充填され、新しく充填された相補的塩基の末端が、DNAリガーゼによって主鎖とライゲーションされ、損傷したDNAが修復される。
【0621】
標的遺伝子または標的核酸の操作または修正は主に、ノックアウト、ノックダウンの効果につながり得る。
【0622】
「ノックアウト」という用語は、標的遺伝子または標的核酸の不活性化を指し、「標的遺伝子または標的核酸の不活性化」とは、標的遺伝子または標的核酸の転写および/または翻訳が生じない状態を指す。疾患を引き起こす遺伝子、または、異常な機能を有する遺伝子の転写および翻訳は、ノックアウトを通して阻害され得て、タンパク質発現の防止がもたらされる。
【0623】
例えば、CRISPR複合体を使用して標的遺伝子または標的核酸を操作または編集するとき、標的遺伝子または標的核酸は、CRISPR複合体によって切断され得る。損傷した標的遺伝子または標的核酸は、CRISPR複合体を使用してNHEJを通して修復され得る。損傷した標的遺伝子または標的核酸は、NHEJに起因するインデルを有し得て、それにより、標的遺伝子または標的核酸に対する特異的なノックアウトが誘導され得る。
【0624】
別の例として、CRISPR複合体およびドナーを使用して標的遺伝子または標的核酸を操作または編集するとき、標的遺伝子または標的核酸は、CRISPR複合体によって切断され得る。CRISPR複合体によって損傷した標的遺伝子または標的核酸は、HDRを通してドナーを使用することによって修復され得る。ここで、ドナーは、挿入されるべき相同ヌクレオチド配列およびヌクレオチド配列を含み得る。ここで、挿入されるべきヌクレオチド配列の塩基の数は、挿入部位または目的に応じて変動し得る。損傷した遺伝子または染色体がドナーによって修復されるとき、挿入されるべきヌクレオチド配列は、損傷されたヌクレオチド配列の一部に挿入される。これは、標的遺伝子または染色体の特異的なノックアウトを誘導し得る。
【0625】
「ノックダウン」という用語は、標的遺伝子または標的核酸の転写および/または翻訳、または、標的タンパク質の発現の減少を指す。ノックダウンを通して遺伝子またはタンパク質の過剰発現を調節することによって、疾患の発現は防止され得る、または、疾患は治療され得る。
【0626】
例えば、gRNA−CRISPR不活性酵素−転写阻害活性ドメイン複合体、すなわち、転写阻害活性ドメインを含むCRISPR不活性複合体を使用して、標的遺伝子または標的核酸が編集または修正されるとき、CRISPR不活性複合体は具体的には、標的遺伝子または標的核酸に結合し得て、標的遺伝子または標的核酸の転写は、CRISPR不活性複合体に含まれる転写阻害活性ドメインによって阻害され得て、それにより、対応する遺伝子または核酸の発現が阻害されるノックダウンを誘導する。
【0627】
別の例として、gRNA−CRISPR酵素複合体、すなわちCRISPR複合体を使用して標的遺伝子または標的核酸が操作または編集されるとき、CRISPR複合体は、標的遺伝子または染色体のプロモーターおよび/またはエンハンサー領域を切断し得る。ここで、gRNAは、標的遺伝子または染色体のプロモーターおよび/またはエンハンサー領域のヌクレオチド配列の一部を標的配列として認識し得る。CRISPR複合体によって切断または損傷された標的遺伝子または染色体は、NHEJを通して修復され得る。損傷された標的遺伝子または染色体は、NHEJに起因するインデルを有し得て、それにより、標的遺伝子または染色体に対する特異的なノックアウトが誘導され得る。または、選択的にドナーを使用するとき、CRISPR複合体によって損傷される標的遺伝子または染色体がHDRを通して修復され得る。損傷した遺伝子または染色体がドナーによって修復されるとき、挿入されるべきヌクレオチド配列は、損傷されたヌクレオチド配列の一部に挿入される。これは、標的遺伝子または染色体の特異的なノックアウトを誘導し得る。
【0628】
一実施形態において、gRNA−CRISPR酵素複合体は、SPT4、SPT5、SUPT4Hおよび/またはSUPT5H遺伝子を人工的に改変または編集し得る。
【0629】
gRNA−CRISPR酵素複合体は、SPT4、SPT5、SUPT4Hおよび/またはSUPT5H遺伝子の標的配列を特異的に認識し得る。
【0630】
標的配列は、gRNA−CRISPR酵素複合体によって特異的に認識され得て、したがって、gRNA−CRISPR酵素複合体は、認識された標的配列に隣接して配置され得る。
【0631】
標的配列は、人工的改変が生じるSPT4、SPT5、SUPT4H、および/または、SUPT5Hの一部または領域であり得る。
【0632】
標的配列は、SPT4、SPT5、SUPT4Hおよび/またはSUPT5Hのプロモーター領域の連続の10〜25塩基配列であり得る。
【0633】
標的配列は、SPT4、SPT5、SUPT4Hおよび/またはSUPT5Hのイントロン領域の連続の10〜25塩基配列であり得る。
【0634】
標的配列は、SPT4、SPT5、SUPT4Hおよび/またはSUPT5Hのエクソン領域の連続の10〜25塩基配列であり得る。
【0635】
標的配列は、SPT4、SPT5、SUPT4Hおよび/またはSUPT5Hのエンハンサー領域の連続の10〜25塩基配列であり得る。
【0636】
標的配列は、SPT4、SPT5、SUPT4Hおよび/またはSUPT5Hの3'UTR領域の連続の10〜25塩基配列であり得る。
【0637】
標的配列は、SPT4、SPT5、SUPT4Hおよび/またはSUPT5Hの5'UTR領域の連続の10〜25塩基配列であり得る。
【0638】
標的配列は、SPT4、SPT5、SUPT4Hおよび/またはSUPT5Hのプロトスペーサ―隣接モチーフ(PAM)配列の5'末端および/または3'末端に隣接する連続の10〜25の塩基配列であり得る。
【0639】
ここで、PAM配列は、以下の配列のうち少なくとも1つである。
5'‐NGG‐3'(NはA、T、GまたはC)、
5'‐NNNNRYAC‐3'(各Nは独立に、A、T、CまたはG、RはAまたはG、YはCまたはT)、
5'‐NNAGAAW‐3'(各Nは独立に、A、T、CまたはG、WはAまたはT)、
5'‐NNNNGATT‐3'(各Nは独立に、A、T、CまたはG)、
5'‐NNGRR(T)‐3'(各Nは独立に、A、T、CまたはG、RはAまたはG、(T)はランダムに追加可能な配列)、
5'‐TTN−3'(NはA、T、CまたはG)
【0640】
一実施形態において、標的配列は、テーブル1に列挙される配列から選択される1または複数の核酸配列であり得る。gRNA−CRISPR酵素複合体は、gRNAおよびCRISPR酵素から成り得る。
【0641】
gRNAは、SPT4、SPT5、SUPT4Hおよび/またはSUPT5H遺伝子の標的配列のガイド核酸結合配列との部分的または完全相補結合を形成可能なガイドドメインを含み得る。
【0642】
ガイド核酸は、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%または95%以上の相補性または完全相補性を有する。
【0643】
ガイドドメインは、SPT4遺伝子の標的配列のガイド核酸結合配列との相補ヌクレオチド配列を含み得る。ここで、相補ヌクレオチド配列は、0〜5、0〜4、0〜3、0〜2個のミスマッチを生じ得る。
【0644】
ガイドドメインは、SPT5遺伝子の標的配列のガイド核酸結合配列との相補ヌクレオチド配列を含み得る。ここで、相補ヌクレオチド配列は、0〜5、0〜4、0〜3、0〜2個のミスマッチを生じ得る。
【0645】
ガイドドメインは、SUPT4H遺伝子の標的配列のガイド核酸結合配列との相補ヌクレオチド配列を含み得る。ここで、相補ヌクレオチド配列は、0〜5、0〜4、0〜3、0〜2個のミスマッチを生じ得る。
【0646】
ガイドドメインは、SUPT5H遺伝子の標的配列のガイド核酸結合配列との相補ヌクレオチド配列を含み得る。ここで、相補ヌクレオチド配列は、0〜5、0〜4、0〜3、0〜2個のミスマッチを生じ得る。
【0647】
ガイド核酸は、第1相補ドメイン、第2相補ドメイン、リンカードメイン、近位ドメインおよび尾部ドメインから成る群から選択される1または複数のドメインを含む。CRISPR酵素は、ストレプトコッカス・ピオゲネス由来Cas9タンパク質、カンピロバクター・ジェジュニ由来Cas9タンパク質、ストレプトコッカス・サーモフィラス由来Cas9タンパク質、ストレプトコッカス・アウレウス由来Cas9タンパク質、ナイセリア・メニンジティディス由来Cas9タンパク質、Cpf1タンパク質から成る群から選択される1または複数であり得る。一例において、CRISPR酵素は、カンピロバクター・ジェジュニ由来Cas9タンパク質またはストレプトコッカス・アウレウス由来Cas9タンパク質であり得る。
【0648】
gRNA−CRISPR酵素複合体は、gRNAおよびCRISPR酵素の種類に応じて、SPT4、SPT5、SUPT4Hおよび/またはSUPT5H遺伝子に様々な人工的改変または操作を加え得る。
【0649】
例えば、CRISPR酵素がSpCas9タンパク質であるとき、人工的に改変または操作されたSPT4、SPT5、SUPT4H、および/またはSUPT5H遺伝子は、標的遺伝子の標的領域の各々の5'‐NGG‐3'(NはA、T、GまたはC)PAM配列の5'末端および/または3'末端に隣接する、連続の1bp〜50bp、1bp〜40bp、1bp〜30bp、好ましくは、1bp〜25bpの塩基配列における1または複数の改変を含み得て、それらは、i)1または複数のヌクレオチドの欠失、ii)野性型遺伝子とは異なる1または複数のヌクレオチドとの置換、または、iii)i)およびii)の組み合わせを含む。
【0650】
別の例において、CRISPR酵素がCjCas9タンパク質であるとき、人工的に改変または編集されたSPT4、SPT5、SUPT4H、および/またはSUPT5H遺伝子は、標的遺伝子の標的領域の各々のNNNNRYAC‐3'(各Nは独立に、A、T、CまたはG、RはAまたはG、YはCまたはT)(PAM)配列の5'末端および/または3'末端に隣接する、連続の1bp〜50bp、1bp〜40bp、1bp〜30bp、好ましくは、1bp〜25bpの塩基配列における1または複数の改変を含み得て、それらは、i)1または複数のヌクレオチドの欠失、ii)野性型遺伝子とは異なる1または複数のヌクレオチドとの置換、または、iii)i)およびii)の組み合わせを含む。
【0651】
別の例において、CRISPR酵素がStCas9タンパク質であるとき、人工的に改変または編集されたSPT4、SPT5、SUPT4H、および/またはSUPT5H遺伝子は、標的遺伝子の標的領域の各々のNNAGAAW‐3'(各Nは独立に、A、T、CまたはG、WはAまたはT)PAM配列の5'末端および/または3'末端に隣接する、連続の1bp〜50bp、1bp〜40bp、1bp〜30bp、好ましくは、1bp〜25bpの塩基配列における1または複数の改変を含み得て、それらは、i)1または複数のヌクレオチドの欠失、ii)野性型遺伝子とは異なる1または複数のヌクレオチドとの置換、または、iii)i)およびii)の組み合わせを含む。
【0652】
例えば、CRISPR酵素がNmCas9タンパク質であるとき、人工的に改変または編集されたSPT4、SPT5、SUPT4H、および/またはSUPT5H遺伝子は、標的遺伝子の標的領域の各々の5'‐NNNNGATT‐3'(各Nは独立に、A、T、CまたはG)PAM配列の5'末端および/または3'末端に隣接する、連続の1bp〜50bp、1bp〜40bp、1bp〜30bp、好ましくは、1bp〜25bpの塩基配列における1または複数の改変を含み得て、それらは、i)1または複数のヌクレオチドの欠失、ii)野性型遺伝子とは異なる1または複数のヌクレオチドとの置換、または、iii)i)およびii)の組み合わせを含む。
【0653】
別の例において、CRISPR酵素がSaCas9タンパク質であるとき、人工的に改変または編集されたSPT4、SPT5、SUPT4H、および/またはSUPT5H遺伝子は、標的遺伝子の標的領域の各々の5'‐NNGRR(T)‐3'(各Nは独立に、A、T、CまたはG、RはAまたはG、(T))PAM配列の5'末端および/または3'末端に隣接する、連続の1bp〜50bp、1bp〜40bp、1bp〜30bp、好ましくは、1bp〜25bpの塩基配列における1または複数の改変を含み得て、それらは、i)1または複数のヌクレオチドの欠失、ii)野性型遺伝子とは異なる1または複数のヌクレオチドとの置換、または、iii)i)およびii)の組み合わせを含む。
【0654】
別の例において、CRISPR酵素がCpf1タンパク質であるとき、人工的に改変または編集されたSPT4、SPT5、SUPT4H、および/またはSUPT5H遺伝子は、標的遺伝子の標的領域の各々の5'‐TTN‐3'(NはA、T、CまたはG)PAM配列の5'末端および/または3'末端に隣接する、連続の1bp〜50bp、1bp〜40bp、1bp〜30bp、好ましくは、1bp〜25bpの塩基配列における1または複数の改変を含み得て、それらは、i)1または複数のヌクレオチドの欠失、ii)野性型遺伝子とは異なる1または複数のヌクレオチドとの置換、または、iii)i)およびii)の組み合わせを含む。
【0655】
gRNA−CRISPR酵素複合体によるSPT4、SPT5、SUPT4H、および/またはSUPT5Hの人工的操作は、ノックアウトの効果につながり得る。
【0656】
gRNA−CRISPR酵素複合体によるSPT4、SPT5、SUPT4H、および/またはSUPT5H遺伝子の人工的操作は、SPT4、SPT5、SUPT4Hおよび/またはSUPT5H遺伝子によってコードされるタンパク質の発現を抑制し得る。
【0657】
gRNA−CRISPR酵素複合体によるSPT4、SPT5、SUPT4H、および/またはSUPT5Hの人工的操作は、ノックダウンの効果につながり得る。
【0658】
ガイドドメインは、ガイド核酸配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%以上相補的、または、完全相補的であり得る。
【0659】
ガイドドメインは、SPT4遺伝子、SPT5遺伝子、SUPT4H遺伝子および/またはSUPT5H遺伝子の標的配列におけるガイド核酸結合配列と相補的なヌクレオチド配列を含み得る。この場合、相補ヌクレオチド配列は、0〜5、0〜4、0〜3、0〜2個のミスマッチを含み得る。
【0660】
ガイドRNAは、標的化される遺伝子または核酸の配列と相補的に結合する核酸配列を含み得る。
【0661】
ガイドRNAは、標的化される遺伝子または核酸の配列と相補的な配列を含むcrRNA、および、CRISPR酵素に結合するtracrRNAを含み得る。
【0662】
この場合、crRNAは、標的化される遺伝子または核酸の配列と相補的に結合する部分であるガイド配列を含む。ガイド配列は、標的化される遺伝子または核酸の配列と相補的な配列を有し、標的化される遺伝子または核酸の配列を認識するように機能し得る。ガイド配列のサイズは5〜50bpであり得るが、これに限定されない。
【0663】
ガイド配列の核酸配列は、標的化される遺伝子または核酸の配列または位置に50〜100%相補的な核酸配列を含み得るが、これに限定されない。
【0664】
この場合、ガイド配列の核酸配列は、標的遺伝子、例えば、SPT4遺伝子および/またはSPT5遺伝子と相補的に結合する核酸配列を含み得る。
【0665】
更に、ガイド配列の核酸配列は、標的遺伝子、例えば、SUPT4H遺伝子および/またはSUPT5H遺伝子と相補的に結合する核酸配列を含み得る。
【0666】
加えて、crRNAは、tracrRNAの一部に相補的な配列を有する部分を含み得て、従って、crRNAは、tracrRNAと部分的に相補的であり得る。
【0667】
ガイドRNAは、crRNAおよびtracrRNAが各々離れて存在するデュアルガイドRNAであり得る。
【0668】
ガイドRNAは、crRNAおよびtracrRNAが互いに接続される単一ガイドRNAであり得る。この場合、単一ガイドRNAは、リンカーを含んでよい。さらに、ガイドRNAは、CRISPR酵素の種類に応じてcrRNAのみを含むものであってよい。
【0669】
ガイドRNAは化学修飾を含み得る。この場合、化学修飾は、ホスホロチオエート結合、架橋型核酸(LNA)を含み得て、2'‐O‐メチル3'ホスホロチオエート(MS)または2'‐O‐メチル3'thioPACE(MSP)は、ガイドRNAを含む核酸のうち1または2つ以上の核酸において改変される。ガイドRNAは、5'末端の部分的配列が切り取られたガイドRNAであり得る。
【0670】
ガイドRNAは、標的遺伝子または標的核酸の配列に従って、ガイドRNAの核酸配列を設計し得る。
【0671】
ガイドRNAはベクターに含まれ得て、この場合、ベクターは、ガイドRNAの発現に適切なプロモーターを含み得る。ガイドRNAは、人工的に合成されたガイドRNAであり得る。CRISPR酵素は、CRISPR酵素をコードする配列を有する核酸であってよい。
【0672】
CRISPR酵素をコードする配列を有する核酸がベクターに含まれ得る。この場合、ベクターは、CMVまたはCAGなどのCRISPR酵素の発現に適切なプロモーターを含み得る。CRISPR酵素はポリペプチドまたはタンパク質であり得る。CRISPR酵素は、導入される対象に適切であるようにコドン最適化され得る。CRISPR酵素はII型CRISPR酵素またはV型CRISPR酵素であり得る。II型CRISPR酵素はCas9酵素であり得る。V型CRISPR酵素はCpf1酵素であり得る。
【0673】
Cas9酵素は、ストレプトコッカス・ピオゲネスCas9(SpCas9)、黄色ブドウ球菌Cas9(SaCas9)、ストレプトコッカス・サーモフィラスCas9(StCas9)、ナイセリア・メニンジティディスCas9(NmCas9)、カンピロバクター・ジェジュニCas9(CjCas9)またはそれらのオーソログであり得るが、これらに限定されない。好ましくは、Cas9酵素はストレプトコッカス・ピオゲネスCas9(SpCas9)またはカンピロバクター・ジェジュニCas9(CjCas9)であり得る。Cas9酵素は活性Cas9酵素または不活性Cas9酵素であり得る。
【0674】
不活性Cas9酵素は、完全不活性化Cas9酵素および部分的不活性化Cas9酵素(例えばニッカーゼ)を含み得る。
【0675】
Cas9酵素に関しては、RuvC、HNH、RECおよび/またはPIドメインに存在する1、2、または、それより多くのアミノ酸が変異し得る。
【0676】
Cas9酵素は、SpCas9のアミノ酸のうち、D10、E762、H840、N854、N863、D986から成るアミノ酸群、または、それに対応する他のCas9オーソログのアミノ酸群における1または2またはより多くのアミノ酸の変異を含み得る。
【0677】
Cas9酵素は、SpCas9のアミノ酸のうち、R780、K810、K848、K855およびH982から成るアミノ酸群、または、それに対応する他のCas9オーソログのアミノ酸群における1または2またはより多くのアミノ酸の変異を含み得る。
【0678】
Cas9酵素は、SpCas9のアミノ酸のうち、G1104、S1109、L1111、D1135、S1136、G1218、N1317、R1335およびT1337から成るアミノ酸群、または、それに対応する他のCas9オーソログのアミノ酸群における1または2またはより多くのアミノ酸の変異を含み得る。
【0679】
Cpf1酵素は、フランシセラ・ノビサイダCpf1(FnCpf1)、アシダミノコッカス属Cpf1(AsCpf1)、ラクノスピラバクテリウムCpf1(LbCpf1)またはそれらのオーソログであり得るが、それに限定されない。Cpf1酵素は、活性Cpf1酵素または不活性Cpf1酵素であり得る。
【0680】
不活性Cpf1酵素は、完全不活性化Cpf1酵素および部分的不活性化Cpf1酵素(例えばニッカーゼ)を含み得る。
【0681】
Cpf1酵素に関しては、RuvC、Nuc、WED、RECおよび/またはPIドメインに存在する1、2、または、それより多くのアミノ酸が変異し得る。
【0682】
Cpf1酵素は、FnCpf1のアミノ酸のうちD917、E1006またはD1255;AsCpf1のアミノ酸のうちD908、E993またはD1263;LbCpf1のアミノ酸のうちD832、E925、D947またはD1180、または、それに対応する他のCpf1オーソログのアミノ酸群における1または複数のアミノ酸の変異を含み得る。
【0683】
CRISPR酵素は、遺伝子または核酸の配列におけるプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)を認識できる。PAMは、CRISPR酵素の由来に従って変動し得る。
【0684】
例えば、CRISPR酵素がSpCas9であるとき、PAMは5'‐NGG‐3'であり得て、CRISPR酵素がStCas9であるとき、PAMは5'NNAGAAW‐3'(W=AまたはT)であり得て、CRISPR酵素がNmCas9であるとき、PAMは5'‐NNNNGATT‐3'であり得て、CRISPR酵素がCjCas9であるとき、PAMは5'‐NNNVRYAC‐3'(V=GまたはCまたはA、R=AまたはG、Y=CまたはT)であり得て、この場合、NはA、T、GもしくはC、または、A、U、GもしくはCであり得る。さらに、CRISPR酵素がFnCpf1である場合、PAMは5′TTN−3′であってよく、CRISPR酵素がAsCpf1またはLbCpf1である場合、PAMは5′−TTTN−3′であってよく、この場合、NはA、T、GもしくはC、またはA、U、GもしくはCであり得る。
【0685】
CRISPR酵素は追加的に、機能ドメインを含み得る。この場合、CRISPR酵素は、活性CRISPR酵素または不活性CRISPR酵素であり得る。機能ドメインは、非相同機能ドメイン(HFD)であり得る。
【0686】
機能ドメインは、メチラーゼ活性、デメチラーゼ活性、転写活性化活性、転写抑制活性、転写終結因子活性、ヒストン修飾活性、RNA切断活性、DNA切断活性、核酸結合活性および分子スイッチ(例えば光誘導性)から成る群から選択され得る。
【0687】
機能ドメインは、メチラーゼ、デメチラーゼ、ホスファターゼ、チミジンキナーゼ、システインデアミナーゼ、シチジンデアミナーゼから成る群から選択され得る。
【0688】
機能ドメインをCRISPR酵素に連結するべく、CRISPR酵素と機能ドメインとの間のリンカーが追加的に含まれ得る。
【0689】
リンカーは、(A)、(G)、GGGS、(GGS)、(GGGGS)、(EAAAK)、SGGGS、GGSGGSGGS、SGSETPGTSESATPES、XTEN、または、(XP)であり得て、この場合、nは1、2、3、4、5、6、7以上であり得る。しかしながら、リンカーおよびnはこれらに限定されない。CRISPR酵素は、核局在配列(NLS)を追加的に含んでよい。CRISPR酵素およびガイドRNAは、CRISPR複合体を形成してよい。CRISPR複合体は、細胞の外部で形成されてよい。CRISPR複合体は、細胞の細胞質内で形成されてよい。CRISPR複合体は、細胞の核内で形成されてよい。
【0690】
CRISPR複合体において、CRISPR酵素は、標的化される遺伝子または核酸の配列に存在するPAMを認識できる。
【0691】
CRISPR複合体において、ガイドRNAは、標的化される遺伝子または核酸の配列に関して相補的に結合し得る。
【0692】
標的化される遺伝子または核酸の配列にCRISPR複合体が結合するとき、標的化される遺伝子または核酸の配列は、CRISPR複合体のCRISPR酵素によって切断または改変できる。
【0693】
別の実施形態において、CRISPR−Casシステムは、ガイドRNAおよびCRISPR酵素が複合体を形成するリボ核タンパク質(RNP)の形態で存在し得る。
【0694】
標的特異的遺伝子はさみは、周知の方法によって細胞または組織に導入され得る。
【0695】
標的特異的遺伝子はさみを細胞内に導入することは、ウイルスベクターシステム、リボ核タンパク質(RNP)、ナノ粒子、リポソームなど、マイクロインジェクション、電気穿孔などを使用して、トランスフェクションによって実行できるが、導入方法はこれらに限定されない。
【0696】
例えば、導入方法は、リン酸カルシウム媒介トランスフェクション、ヌクレオフェクション、電気穿孔、カチオンポリマートランスフェクション(例えば、DEAEデキストランまたはポリエチレンイミン)、ウイルストランスフェクション、ウイロソームトランスフェクション、ビリオントランスフェクション、リポソームトランスフェクション、カチオンリポソームトランスフェクション、免疫リポソームトランスフェクション、非リポソームトランスフェクション、デンドリマートランスフェクション、熱ショックトランスフェクション、マグネットフェクション、リポフェクション、遺伝子銃送達、インペールフェクション、ソノポレーション、光トランスフェクション、および、核酸の専用薬剤増強摂取を含む。細胞は、真核細胞または原核細胞であり得て、好ましくは真核細胞であり得る。真核細胞は植物、動物、または、ヒト細胞であり得て、好ましくはヒト細胞であり得る。
【0697】
組織は、皮膚、肝臓、腎臓、心臓、肺、脳および筋肉などの動物または人体組織であり得る。
【0698】
CRISPR−Casシステムはコドン最適化され得る。CRISPR−Casシステムは、少なくとも1つの核移行シグナル(NLS)のコードを含み得る、または、少なくとも1つのNLSを含み得る。
【0699】
更に、治療剤は追加的に、医薬的に許容される担体またはアジュバントを含み得る。
【0700】
「対象」という用語は、ガイド核酸、エディタータンパク質またはガイド核酸‐エディタータンパク質複合体が導入される生物、ガイド核酸、エディタータンパク質またはガイド核酸‐エディタータンパク質複合体がはたらく生物、または、当該生物から取得される標本または試料を指す。
【0701】
対象は、ガイド核酸‐エディタータンパク質複合体の標的核酸、遺伝子、染色体またはタンパク質を含む生物であり得る。生物は、動物、動物臓器、動物組織、または動物細胞であり得る。生物は、ヒト、ヒト臓器、ヒト組織、またはヒト細胞であり得る。
【0702】
臓器は、腎臓;胃、膵臓、十二指腸、回腸および/または結腸を含む消化器系;心臓;肺;脳、特にニューロン、および/または、一般に中枢神経系;網膜組織を含む目内耳を含む耳;皮膚;筋肉;骨;および/または肝臓であり得る。
【0703】
組織は、眼球、皮膚、肝臓、腎臓、心臓、肺、脳、筋肉または血液組織などの組織であり得る。
【0704】
細胞は、神経細胞、筋細胞、血球、免疫細胞、脂肪細胞、骨細胞、生殖細胞、肌膚細胞、またはそれらの幹細胞であり得る。
【0705】
好ましくは、対象は、過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子を含む生物であり得る。
【0706】
ガイド核酸は、DNA、RNAの形態、または、その混合物の形態で対象に送達または導入され得る。
【0707】
ガイド核酸および/またはエディタータンパク質をコードするDNA、RNA、または、その混合物の形態は、当技術分野において既知の方法によって対象に送達または導入され得る。
【0708】
または、ガイド核酸および/またはエディタータンパク質をコードするDNA、RNAまたはその混合物の形態は、ベクター、非ベクターまたはその組み合わせによって対象に送達または導入され得る。ベクターは、ウイルスまたは非ウイルスベクター(例えばプラスミド)であり得る。非ベクターは、ネイキッドDNA、DNA複合体またはmRNAであり得る。
【0709】
一実施形態において、ガイド核酸および/またはエディタータンパク質をコードする核酸配列はベクターによって対象に送達または導入され得る。
【0710】
ベクターは、ガイド核酸および/またはエディタータンパク質をコードする核酸配列を含み得る。
【0711】
例えば、ベクターは、ガイド核酸およびエディタータンパク質をそれぞれコードする複数の核酸配列を同時に含み得る。例えば、ベクターは、ガイド核酸をコードする核酸配列を含み得る。
【0712】
例として、ガイド核酸に含まれるドメインはすべて1つのベクターに含まれ得る、または、分割されて、次いで、異なるベクターに含まれ得る。例えば、ベクターは、エディタータンパク質をコードする核酸配列を含み得る。
【0713】
一例において、エディタータンパク質の場合、エディタータンパク質をコードする核酸配列は、1つのベクターに含まれ得る、または、分割され、次いで、いくつかのベクターに含まれ得る。ベクターは1または複数の調節/制御要素を含み得る。
【0714】
ここで、調節/制御要素は、プロモーター、エンハンサー、イントロン、ポリアデニル化シグナル、コザックコンセンサス配列、配列内リボソーム進入部位(IRES)、スプライスアセプターおよび/または2A配列を含み得る。プロモーターはRNAポリメラーゼIIによって認識されるプロモーターであり得る。プロモーターはRNAポリメラーゼIIIによって認識されるプロモーターであり得る。プロモーターは誘導プロモーターであり得る。プロモーターは対象特異的プロモーターであり得る。プロモーターはウイルスまたは非ウイルスプロモーターであり得る。
【0715】
プロモーターは、制御領域(すなわち、ガイド核酸またはエディタータンパク質をコードする核酸配列)に従って好適なプロモーターを使用し得る。
【0716】
例えば、ガイド核酸に有用なプロモーターは、H1、EF‐1a、tRNAまたはU6プロモーターであり得る。例えば、エディタータンパク質に有用なプロモーターは、CMV、EF‐1a、EFS、MSCV、PGK、またはCAGプロモーターであり得る。ベクターは、ウイルスベクターまたは組み換えウイルスベクターであり得る。ウイルスは、DNAウイルスまたはRNAウイルスであり得る。
【0717】
ここで、DNAウイルスは、二本鎖DNA(dsDNA)ウイルスまたは一本鎖DNA(ssDNA)ウイルスであり得る。ここで、RNAウイルスは、一本鎖RNA(ssRNA)ウイルスであり得る。
【0718】
ウイルスは、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ワクチニアウイルス、ポックスウイルスまたは単純ヘルペスウイルスであり得るが、本発明はこれらに限定されない。
【0719】
一般的に、ウイルスは、宿主(例えば細胞)に感染し得て、それにより、ウイルスの遺伝情報をコードする核酸を宿主に導入する、または、遺伝情報をコードする核酸を宿主ゲノムに挿入する。ガイド核酸および/またはエディタータンパク質は、そのような特徴を有するウイルスを使用して対象に導入され得る。ウイルスを使用して導入されたガイド核酸および/またはエディタータンパク質は、対象(例えば細胞)において一時的に発現され得る。代替的に、ウイルスを使用して導入されたガイド核酸および/またはエディタータンパク質は、対象(例えば細胞)において継続的に長時間(例えば、1、2または3週、1、2、3、6または9か月、1または2年、または、恒久的)発現され得る。
【0720】
ウイルスのパッケージング能力は、ウイルスの種類に従って、少なくとも2kb〜50kb変動し得る。そのようなパッケージング能力に応じて、ガイド核酸またはエディタータンパク質を含むウイルスベクター、または、ガイド核酸およびエディタータンパク質の両方を含むウイルスベクターが設計され得る。代替的に、ガイド核酸、エディタータンパク質、および、追加の要素を含むウイルスベクターが設計され得る。
【0721】
一例において、ガイド核酸および/またはエディタータンパク質をコードする核酸配列が、組み換えレンチウイルスによって送達または導入され得る。
【0722】
別の例において、ガイド核酸および/またはエディタータンパク質をコードする核酸配列は、組み換えアデノウイルスによって送達または導入され得る。
【0723】
更に別の例において、ガイド核酸および/またはエディタータンパク質をコードする核酸配列が組み換えAAVによって送達または導入され得る。
【0724】
更なる別の例において、ガイド核酸および/またはエディタータンパク質をコードする核酸配列は、ハイブリッドウイルスによって、例えば、本明細書において列挙されるウイルスの1または複数のハイブリッドによって、送達または導入され得る。
【0725】
ガイド核酸および/またはエディタータンパク質をコードする核酸配列は、非ベクターを使用して対象に送達または導入され得る。
【0726】
非ベクターは、ガイド核酸および/またはエディタータンパク質をコードする核酸配列を含み得る。非ベクターは、ネイキッドDNA、DNA複合体、mRNAまたはそれらの混合物であり得る。
【0727】
非ベクターは、電気穿孔、パーティクルボンバードメント、ソノポレーション、マグネットフェクション、一過性細胞圧縮またはスクイージング(例えば、文献Lee, et al, (2012) Nano Lett., 12, 6322‐6327]において説明されている)、脂質媒介トランスフェクション、デンドリマー、ナノ粒子、リン酸カルシウム、シリカ、ケイ酸塩(Ormosil)、または、それらの組み合わせによって対象に送達または導入され得る。
【0728】
例として、電気穿孔を通した送達は、細胞と、ガイド核酸および/またはエディタータンパク質をコードする核酸配列とをカートリッジ、チャンバーまたはキュベットにおいて混合し、予め定められた期間および強度で細胞に電気刺激を加えることによって実行され得る。
【0729】
別の例において、非ベクターは、ナノ粒子を使用して送達され得る。ナノ粒子は、無機ナノ粒子(例えば、磁気ナノ粒子、シリカなど)、または、有機ナノ粒子(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)で被覆された脂質など)であり得る。ナノ粒子の外表面には、結合可能な正荷電ポリマー(例えば、ポリエチレンイミン、ポリリジン、ポリセリンなど)が結合され得る。特定の実施形態において、非ベクターは、脂質シェルを使用して送達され得る。
【0730】
特定の実施形態において、非ベクターは、エキソソームを使用して送達され得る。エキソソームは、タンパク質およびRNAを輸送するための内因性のナノ小胞であり、RNAを脳および別の標的臓器へ送達できる。
【0731】
特定の実施形態において、非ベクターは、リポソームを使用して送達され得る。リポソームは、内側の水性区画を囲む単一または複数の層状の脂質二重層と、比較的非透過性である外側の親油性リン脂質二重層とから構成される球状の小胞構造である。リポソームは複数の異なる種類の脂質からできていることがあり得るが、リン脂質は、薬剤担体としてリポソームを生成するために使用されるのがもっとも一般的である。加えて、非ベクターを送達するための組成物は他の添加剤を含み得る。
【0732】
エディタータンパク質は、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質の形成で対象に送達または導入され得る。
【0733】
ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質の形態のエディタータンパク質は、当技術分野において周知の方法によって、対象に送達または導入され得る。
【0734】
ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質の形態は、電気穿孔、マイクロインジェクション、一過性細胞圧縮、または、スクイ―ジング(例えば、文献[Lee, et al, (2012) Nano Lett., 12, 6322‐6327]において説明される)、脂質媒介トランスフェクション、ナノ粒子、リポソーム、ペプチド媒介送達、または、それらの組み合わせによって、対象に送達または導入され得る。
【0735】
ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質は、ガイド核酸をコードする核酸配列と共に送達され得る。
【0736】
一例において、電気穿孔を通した移入は、エディタータンパク質がガイド核酸と共に、または、ガイド核酸無しで導入されることになる細胞をカートリッジ、チャンバーまたはキュベットにおいて混合し、予め定められた期間および強度で細胞に電気刺激を加えることによって実行され得る。
【0737】
ガイド核酸およびエディタータンパク質は、核酸タンパク質混合物の形態で対象に送達または導入され得る。
【0738】
ガイド核酸およびエディタータンパク質は、ガイド核酸‐エディタータンパク質複合体の形態で、対象に送達または導入され得る。
【0739】
例えば、ガイド核酸は、DNA、RNAまたはその混合物であり得る。エディタータンパク質はペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質であり得る。
【0740】
一例において、ガイド核酸およびエディタータンパク質は、RNA型ガイド核酸、および、タンパク質型エディタータンパク質、すなわち、リボ核タンパク質(RNP)を含むガイド核酸‐エディタータンパク質複合体の形態で対象に送達または導入され得る。
【0741】
本明細書において開示される内容は、過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子の遺伝子操作のために「遺伝子編集」技術を使用し得る。遺伝子編集技術のもっとも好ましい実施形態として、CRISPR−Casシステムが使用され得る。
【0742】
過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子の遺伝子操作は、過剰増幅反復配列によって引き起こされる上述の遺伝性疾患のために使用され得る。
【0743】
本明細書において開示される内容において、「過剰増幅反復配列によって引き起こされる遺伝性疾患のための治療剤」は、上の疾患の治療のための遺伝子編集技術、特にCRISPR−Casシステムを使用するために使用され得る材料、それを含む組成物、および、それを使用するシステムのすべてを含む概念である。
【0744】
したがって、本明細書において開示される内容の治療剤は、標的特異的遺伝子はさみを含み、「標的特異的遺伝子はさみ」とは、所望の(標的化される、または、標的の)ゲノム上の核酸(DNAまたはRNA)の特定の位置を認識および切断できるヌクレアーゼを指す。本明細書において開示される内容において、標的特異的遺伝子はさみは、特定のヌクレアーゼが所望の機能を実行することを可能にするために必要な他の要素を含む概念としても使用される。
【0745】
標的特異的遺伝子はさみは、過剰増幅反復配列の発現に直接的または間接的に関与する遺伝子を標的化することを特徴とする。本明細書において開示される内容において標的化される遺伝子は、過剰増幅反復配列の発現の調節に関与する遺伝子のすべてを含む。
【0746】
標的特異的遺伝子はさみの標的は、例えば、SPT4遺伝子および/またはSPT5遺伝子であり得る。
【0747】
標的特異的遺伝子はさみの標的は、例えば、SUPT4H遺伝子および/またはSUPT5H遺伝子であり得る。
【0748】
標的のために、遺伝子の発現は、本明細書において開示される内容の標的遺伝子はさみの作用によって調節され得る。
【0749】
例えば、過剰増幅反復配列の発現にポジティブに関与する遺伝子の発現は、減少または抑制され得る。
【0750】
別の例において、過剰増幅反復配列の発現にネガティブに関与する遺伝子の発現は、増加または促進され得る。
【0751】
本明細書において開示される標的特異的遺伝子はさみ、および、それを含む組成物は、標的遺伝子の発現が目的にとって適切であるように調節されるように、設計および変更され得る。ガイド核酸‐エディタータンパク質複合体は、標的核酸、遺伝子または染色体を改変し得る。
【0752】
例えば、ガイド核酸‐エディタータンパク質複合体は、標的核酸、遺伝子または染色体の配列における改変を誘導する。その結果、標的核酸、遺伝子または染色体によって発現されるタンパク質を、構造および/または機能について改変できる、または、タンパク質の発現を調節または除去できる。
【0753】
ここで、ガイド核酸‐エディタータンパク質複合体は、DNA、RNA、遺伝子または染色体レベルで作用し得る。
【0754】
例えば、ガイド核酸‐エディタータンパク質複合体は、標的遺伝子によってコードされるタンパク質の発現を調節(例えば、阻害、抑制、低減、増加、または促進)し、タンパク質活性を調節(例えば、阻害、抑制、低減、増加または促進)し、または、標的遺伝子の操作または改変を通して改変タンパク質を発現し得る。
【0755】
ガイド核酸‐エディタータンパク質複合体は、遺伝子転写および翻訳の段階で作用し得る。
【0756】
一例において、ガイド核酸‐エディタータンパク質複合体は、標的遺伝子の転写を促進または抑制し得て、それにより、標的遺伝子によってコードされるタンパク質の発現を調節(例えば、阻害、抑制、低減、増加または促進)する。
【0757】
別の例において、ガイド核酸‐エディタータンパク質複合体は、標的遺伝子の翻訳を促進または抑制し得て、それにより、標的遺伝子によってコードされるタンパク質の発現を調節(例えば、阻害、抑制、低減、増加または促進)する。
【0758】
本明細書において開示される実施形態によれば、過剰増幅反復配列を特徴とする遺伝子発現は、遺伝子操作のための組成物によって調節され得る。
【0759】
過剰増幅反復配列を特徴とする遺伝子は、遺伝子の1つの領域における反復配列過剰増幅を有し得る。
【0760】
遺伝子は、例えば、HTT遺伝子、FMR1遺伝子、FMR2遺伝子、FRDA遺伝子、DMPK/SIX遺伝子、ZNF9遺伝子、SCA8遺伝子、ATXN10遺伝子、PPP2R2B遺伝子、CSTB遺伝子、TCF4遺伝子、C9orf72遺伝子、AIB1遺伝子、KCNN3遺伝子、CBFA1遺伝子、COMP遺伝子、AR遺伝子、JPH3遺伝子、DRPLA遺伝子、ATXN1遺伝子、ATXN2遺伝子、ATXN3遺伝子、CACNA1A遺伝子、ATXN7遺伝子、TBP遺伝子、PABPN1遺伝子、HOXD13遺伝子、RUNX2遺伝子、HOXA13遺伝子、ZIC2遺伝子、FOXL2遺伝子、PHOX2B遺伝子、SOX3遺伝子、ARX遺伝子のうち任意の1または複数であり得るが、これらに限定されない。
【0761】
遺伝子1つの領域は、例えば、エクソン、イントロン、3'‐UTR、5'‐UTR、および、ポリアデニル化シグナル配列のうち任意の1または複数であり得るが、これらに限定されない。
【0762】
過剰増幅反復配列は、反復配列の重複を含む第1反復部分と、反復配列の過剰重複を含む第2反復部分とを含み、第1反復部分は、病的対象および通常の対象に含まれ、第2反復部分は通常の対象に含まれない。
【0763】
第1反復部分および第2反復部分は、特定のアミノ酸配列の反復をコードする核酸配列であり得る。
【0764】
特定のアミノ酸配列の反復を有するポリペプチドは、第1反復部分および第2反復部分から翻訳され得る。
【0765】
遺伝子操作のための組成物は、過剰増幅反復配列の発現を調節する遺伝子を人工的に操作し得る。
【0766】
過剰増幅反復配列の発現を調節する遺伝子は、SPT4遺伝子、SPT5遺伝子、SUPT4H遺伝子、SUPT5H遺伝子から成る群から選択される1または複数であり得る。
【0767】
遺伝子操作のための組成物は、過剰増幅反復配列の発現を調節する遺伝子の発現を低減し得る。例えば、遺伝子操作のための組成物は、SPT4遺伝子、SPT5遺伝子、SUPT4H遺伝子、SUPT5H遺伝子のうち任意の1または複数の発現を低減し得る。
【0768】
過剰増幅反復配列の発現を調節する遺伝子の発現の低減は、過剰増幅反復配列の転写伸長因子の発現の低減であり得る。例えば、SPT4遺伝子、SPT5遺伝子、SUPT4H遺伝子、SUPT5H遺伝子のうち任意の1または複数の発現の低減は、過剰増幅反復配列の転写伸長因子の発現の低減であり得る。
【0769】
過剰増幅反復配列の発現を調節する遺伝子の発現の低減は、過剰増幅反復配列の発現を低減し得る。過剰増幅反復配列の発現を調節する遺伝子の発現の低減は、過剰増幅反復配列における第2反復部分の発現を低減し得る。過剰増幅反復配列の発現を調節する遺伝子の発現の低減は、過剰増幅反復配列における第2反復部分の転写を低減し得る。
【0770】
例えば、SPT4遺伝子、SPT5遺伝子、SUPT4H遺伝子、SUPT5H遺伝子のうち任意の1または複数の発現の低減は、過剰増幅反復配列の発現を低減し得る。SPT4遺伝子、SPT5遺伝子、SUPT4H遺伝子、SUPT5H遺伝子のうち任意の1または複数の発現の低減は、過剰増幅反復配列における第2反復部分の発現を低減し得る。SPT4遺伝子、SPT5遺伝子、SUPT4H遺伝子、SUPT5H遺伝子のうち任意の1または複数の発現の低減は、過剰増幅反復配列における第2反復部分の転写を低減し得る。
【0771】
過剰増幅反復配列における第2反復部分の発現の低減は、核酸配列からのmRNAの転写を低減し得る。本明細書によって開示される実施形態として、操作された動物細胞が提供される。
【0772】
操作された動物細胞は、過剰増幅反復配列を含む特定の遺伝子の発現が阻害または抑制される動物細胞であり得る。
【0773】
操作された動物細胞は、過剰増幅反復配列のための発現調節因子の発現が阻害または抑制される動物細胞であり得る。
【0774】
操作された動物細胞は、1または複数の人工的に操作または改変された過剰増幅反復配列および/またはその発現産物の発現調節因子を含む人工的に操作された動物細胞であり得る。
【0775】
発現産物は、1または複数の人工的に操作または改変された過剰増幅反復配列の発現調節因子によって発現されるmRNAまたはタンパク質であり得る。
【0776】
この場合、過剰増幅反復配列の発現調節因子は、過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子、すなわち、SPT4遺伝子、SPT5遺伝子、SUPT4H遺伝子またはSUPT5H遺伝子によって発現されるポリペプチドまたはタンパク質であり得る。
【0777】
本明細書によって開示される別の実施形態として、操作された動物細胞を含む操作された動物対象が提供される。
【0778】
操作された動物対象は、臓器の1つの領域または全体の領域において操作された動物細胞を含む、操作された動物対象であり得る。
【0779】
操作された動物対象は、過剰増幅反復配列の発現調節因子の発現が臓器の1つの領域または全体の領域において阻害または抑制される操作された動物細胞を含む操作された動物対象であり得る。
【0780】
本明細書において開示される実施形態によれば、過剰増幅遺伝子の発現調節遺伝子の標的配列との結合を形成可能なガイド核酸を含む、遺伝子操作のための組成物の使用が提供され得る。
【0781】
本明細書によって開示される実施形態は、遺伝子操作のための組成物を使用して、過剰増幅反復配列によって引き起こされる疾患を治療するために使用される医薬組成物を提供する。
【0782】
本明細書において開示される内容は、疾患を治療するための、または、薬剤もしくは医薬組成物を調製するための、遺伝子(ゲノム)操作のためのCRISPR‐Cas組成物の使用を提供する。
【0783】
医薬における本明細書において開示される内容の配列、ベクター、酵素、または、システムの使用が提供される。更に、遺伝子またはゲノム編集における、上述したものの使用も提供される。
【0784】
加えて、本明細書において開示される内容は、標的特異的遺伝子はさみを使用して、過剰増幅反復配列を含む特定の遺伝子によって引き起こされる遺伝性疾患を緩和または治療するための方法を提供する。
【0785】
治療方法は、過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子を標的化する標的特異的遺伝子はさみを使用することを特徴とする。
【0786】
治療方法は、標的化される過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子を含む細胞に標的特異的遺伝子はさみを導入することを含むことを特徴とする。
【0787】
治療方法は、過剰増幅反復配列を含む特定の遺伝子を含む細胞に標的特異的遺伝子はさみを導入することを含むことを特徴とする。
【0788】
例えば、標的特異的遺伝子はさみは、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レンチウイルス、アデノウイルス、または、他のプラスミドもしくはウイルスベクターの種類を使用して導入され得る。
【0789】
更に、本明細書において開示される内容は、過剰増幅反復配列を含む特定の遺伝子の発現を調節するための組成物またはキットを提供する。
【0790】
この場合、組成物またはキットは、標的特異的遺伝子はさみを含み、標的特異的遺伝子はさみは、過剰増幅反復配列の発現に関与する遺伝子を標的化することを特徴とする。
【0791】
更に、組成物は追加的に、医薬的に許容される担体またはアジュバントを含み得る。
【0792】
本明細書によって開示される別の態様によれば、反復伸長疾患を治療するための方法が提供され得る。
【0793】
本明細書によって開示される実施形態は、反復伸長疾患を治療するための方法であり、当該方法は、活性成分として、過剰増幅反復配列の発現を低減するための、遺伝子操作のための組成物を含む組成物を治療の対象に投与する段階を含み、遺伝子操作のための組成物は、clustered regularly interspaced short palindromic repeats(CRISPR)−CRISPR関連タンパク質(Cas)システム、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、FokIおよびエンドヌクレアーゼのうち、いずれか1つを含み、遺伝子は、SPT4遺伝子、SPT5遺伝子、SUPT4H遺伝子、SUPT5H遺伝子から成る群から選択される1または複数の遺伝子であることを特徴とする。
【0794】
本明細書によって開示される別の実施形態は、反復伸長疾患を治療するための方法であり、当該方法は、活性成分として、過剰増幅反復配列の発現を低減するための、遺伝子操作のための組成物を含む組成物を治療の対象に投与する段階を含み、遺伝子操作のための組成物は、SPT4遺伝子、SPT5遺伝子、SUPT4H遺伝子、SUPT5H遺伝子から成る群から選択される1または複数の遺伝子の標的配列のガイド核酸、ならびに、ストレプトコッカス・ピオゲネス由来Cas9タンパク質、カンピロバクター・ジェジュニ由来Cas9タンパク質、ストレプトコッカス・サーモフィラス由来Cas9タンパク質、ストレプトコッカス・アウレウス由来Cas9タンパク質、ナイセリア・メニンジティディス由来Cas9タンパク質、Cpf1タンパク質から成る群から選択される1または複数のエディタータンパク質、または、エディタータンパク質をコードする核酸を含む、遺伝子操作のための組成物である。
【0795】
投与のために、治療の対象への組成物の投与は、電気穿孔、注射、輸血、インプラント、または、移植の方法であり得る。
【0796】
投与は、皮下、皮内、腫瘍内、結節内、髄内、筋肉内、静脈内、リンパ内、および腹腔内のうち1または複数で組成物を投与することであり得るが、投与経路はこれらに限定されない。
【0797】
投与のために、組成物は、局部的に投与され得る。更に、投与のために、組成物は局所的に投与され得る。
【0798】
ガイド核酸の標的配列は、配列識別番号か1〜24から選択される1または複数であり得る。
【0799】
治療の対象は、ヒトおよびサルなどの霊長動物、ラットなどの齧歯動物を含む哺乳動物などであり得る。
【0800】
投与のために、組成物は、治療の対象の腎臓;胃、膵臓、十二指腸、回腸および/または結腸を含む消化器系;心臓;肺;脳、特にニューロン、および/または、一般に中枢神経系;網膜組織を含む目内耳を含む耳;皮膚;筋肉;骨;および/または肝臓のうち、任意の1または複数の臓器に投与され得るが、臓器はこれらに限定されない。
【0801】
治療の対象の細胞は、神経細胞、筋細胞、血球、免疫細胞、脂肪細胞、骨細胞、生殖細胞、肌膚細胞、または、それらの幹細胞のうち任意の1または複数であり得るが、これらに限定されない。
【0802】
投与のために組成物は、治療の対象の臓器に投与され得る。例えば、臓器は脳であり得る。脳において、海馬歯状回、視覚皮質、一次運動皮質、一次聴覚皮質、一次体性感覚皮質、小脳、小脳、主嗅球、前頭黒質皮質、内梨状核、扁桃腺、黒質、線条体、淡蒼球、視床、視床下部、傍小脳脚核、上オリーブ核複合体、蝸牛神経核、乳頭核のうち、任意の1または複数を含む他の組織が、一部の実施形態において好ましいことがあり得る。
【0803】
脳の細胞は、神経細胞またはグリア細胞であり得る。神経細胞は、ニューロンであり得て、グリア細胞は、アストロサイト、希突起膠細胞、シュワン細胞、嗅神経鞘細胞、上衣細胞、または衛星細胞であり得るが、これらに限定されない。
【0804】
遺伝子操作のための組成物は、リボ核タンパク質(RNP)、リポソーム、プラスミド、ウイルスベクター、ナノ粒子、タンパク質移行ドメイン(PTD)融合タンパク質法のうち1または複数の方法によって投与され得る。
【0805】
方法によって投与される遺伝子操作のための組成物は、例えば、ガイド核酸および/またはエディタータンパク質、または、エディタータンパク質をコードする核酸であり得る。遺伝子操作の組成物は、in vivoで投与され得る。ガイド核酸は、DNAまたはRNAの形態で細胞に送達され得る。エディタータンパク質は、ポリペプチドの形態で細胞に送達され得る。エディタータンパク質をコードする核酸は、DNAの形態で細胞に送達され得る。
【0806】
形態のうち、核酸の形態は、1または複数のウイルスベクターを含むベクターシステムに含まれ得る。
【0807】
ウイルスベクターは、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ワクチニアウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルスから成る群から選択される1または複数であり得るが、これらに限定されない。
【0808】
本明細書によって開示される更に別の実施形態は、反復伸長疾患を治療するための方法であり、当該方法は、活性成分として、過剰増幅反復配列の発現を低減するための、遺伝子操作のための組成物を含む組成物を治療の対象に投与する段階と、遺伝子操作のための組成物を、治療の対象の細胞に接触させる段階とを含む。
【0809】
接触は、(a)治療される対象の細胞と、(b)SPT4遺伝子、SPT5遺伝子、SUPT4H遺伝子、SUPT5H遺伝子から成る群から選択される過剰増幅反復配列の1または複数の発現調節遺伝子を人工的に操作することが可能な遺伝子操作用組成物とを接触させることであり得る。
【0810】
この場合、(a)治療される対象の細胞は、神経細胞、筋細胞、血球、免疫細胞、脂肪細胞、骨細胞、生殖細胞、肌膚細胞、または、それらの幹細胞であり得る。治療される対象の細胞は、人体に由来し得る。
【0811】
(b)遺伝子操作のための組成物は、(b')SPT4遺伝子、SPT5遺伝子、SUPT4H遺伝子、SUPT5H遺伝子から成る群から選択される、過剰増幅反復配列の1または複数の発現調節遺伝子の標的配列に対するガイド核酸と、(b")ストレプトコッカス・ピオゲネス由来Cas9タンパク質、カンピロバクター・ジェジュニ由来Cas9タンパク質、ストレプトコッカス・サーモフィラス由来Cas9タンパク質、ストレプトコッカス・アウレウス由来Cas9タンパク質、ナイセリア・メニンジティディス由来Cas9タンパク質およびCpf1タンパク質から成る群から選択される1または複数のエディタータンパク質とを含み得る。遺伝子組み換えのための組成物の説明は上記の通りである。
【0812】
ガイド核酸の標的配列は、配列識別番号1〜24から選択される1または複数であり得る。接触段階はin vivoで実行され得る。
【0813】
接触段階は、(b)遺伝子操作のための組成物を(a)動物細胞に導入することを含み得る。方法は、in vivoまたはex vivoで、例えば、人体で実行され得る。ガイド核酸は、DNAまたはRNAの形態で細胞と接触され得る。エディタータンパク質は、ポリペプチドの形態で細胞と接触され得る。
【0814】
エディタータンパク質をコードする核酸は、DNAの形態で細胞と接触され得る。
【0815】
形態のうち、核酸の形態は、1または複数のウイルスベクターを含むベクターシステムに含まれ得る。
【0816】
ウイルスベクターは、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ワクチニアウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルスから成る群から選択される1または複数であり得るが、これらに限定されない。
【0817】
当該方法に使用される動物細胞は、ヒトおよびサルなどの霊長動物、ならびに、マウスおよびラットなどの齧歯動物を含む哺乳動物に由来する動物細胞であり得る。
【0818】
上述の遺伝子操作または編集による疾患の治療のために、生物の遺伝子を直接操作することによって、動物細胞の遺伝子の発現に影響を与える治療方法があり得る。治療方法は、生物の遺伝子をin vivoで操作する遺伝子操作のための組成物を直接注射することによって実行され得る。
【0819】
遺伝子操作のための組成物がin vivoで直接注射されるとき、遺伝子操作のための組成物の投与量の実施形態において、組成物の単回投与(所望の効果を得るための医薬的有効量)は、ヒトに対するものであり、組成物がAAVを通じてin vivoで送達されるとき、約1×10〜約1×1018の機能性AAV/mLを含む約20mL〜約50mLの生理食塩水が投与され得る。本明細書の実施形態において、AAV投与は一般に、約1×10〜1×1050ゲノムAAV、約1×10〜1×1020ゲノムAAV、約1×1010〜約1×1016ゲノムAAV、または、約1×1011〜約1×1016ゲノムAAVの範囲の濃度内である。ヒトの用量は、約1×1013ゲノムAAVであり得る。濃度は、約0.001ml〜約100ml、約0.05ml〜約50ml、または、約10ml〜約25mlの担体溶液で送達され得る。濃度は、当該数値範囲内のすべての整数値から選択され得るが、これらに限定されない。組成物は、投与の対象の年齢、健康、体重、併用療法の種類、該当する場合は治療の頻度、所望の効果の特徴などを考慮して適宜処方され得る。
【0820】
遺伝子操作のための組成物がin vivoで直接注射されるとき、遺伝子操作のための組成物の投与量の別の実施形態において、組成物の単回投与(所望の効果を得るための医薬的有効量)はヒトに対するものであり、組成物がRNPを通じてin vivoで送達されるとき、体重kgあたり、約0.01〜約1mgの用量の組成物がin vivoで投与されることが考えられ得る。例えば、体重kgあたり、in vivoで約0.01〜0.05mg、0.05〜0.10mg、0.10〜0.20mg、0.20〜0.30mg、0.30〜0.50mg、0.50〜0.70mg、または0.70〜1mg投与される組成物の用量が投与され得る。濃度は、当該数値範囲内のすべての整数値から選択され得るが、これらに限定されない。組成物は、投与の対象の年齢、健康、体重、併用療法の種類、該当する場合は治療の頻度、所望の効果の特徴などを考慮して適宜処方され得る。
【0821】
投与量は更に、例えば、担体(水、生理食塩水、エタノール、グリセロール、ラクトース、スクロース、リン酸カルシウム、ゼラチン、デキストラン、寒天、ペクチン、ピーナッツ油、ゴマ油など)、希釈剤、薬学的に許容される担体(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)、薬学的に許容される賦形剤、抗原性を強化するアジュバント、免疫賦活化合物もしくは分子、および/または、当技術分野において周知の他の化合物を含み得る。本明細書のアジュバントは、サイトカインなどの免疫調節分子、副刺激分子、例えば、CpGオリゴヌクレオチドなどの免疫調節DNAまたはRNA分子を含み得る。そのような投薬は、当業者が容易に確認できる。
【0822】
投薬は更に、1または複数の医薬的に許容可能な塩、例えば、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸塩などの無機塩、および、例えば酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩などの有機酸の塩を含み得る。追加的に、投薬は、補助物質、例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝物質、ゲルまたはゲル化材料、着香料、着色剤、ミクロスフェア、ポリマー、懸濁剤などを含み得る。追加的に、剤形が再構成可能な形態であるとき、1または複数の典型的な医薬成分、例えば、保存剤、湿潤剤、懸濁剤、界面活性剤、抗酸化剤、固化防止剤、賦形剤、キレート剤、コーティング剤、化学安定剤なども存在し得る。適切な成分の例には、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリソルベート80、フェネチルアルコール、クロロブタノール、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸、二酸化硫黄、没食子酸プロピル、パラベン、エチルバニリン、グリセリン、フェノール、パラクロロフェノール、ゼラチン、アルブミン、および、それらの組み合わせが含まれる。
【0823】
本明細書によって開示される更に別の実施形態は、過剰増幅反復配列を特徴とする遺伝子を含む細胞に、遺伝子操作のための組成物を投与する段階を含む治療方法である。細胞は上記の通りである。
【0824】
過剰増幅反復配列を特徴とする遺伝子は、遺伝子の1つの領域における反復配列過剰増幅を有し得る。
【0825】
遺伝子は、例えば、HTT遺伝子、FMR1遺伝子、FMR2遺伝子、FRDA遺伝子、DMPK/SIX遺伝子、ZNF9遺伝子、SCA8遺伝子、ATXN10遺伝子、PPP2R2B遺伝子、CSTB遺伝子、TCF4遺伝子、C9orf72遺伝子、AIB1遺伝子、KCNN3遺伝子、CBFA1遺伝子、COMP遺伝子、AR遺伝子、JPH3遺伝子、DRPLA遺伝子、ATXN1遺伝子、ATXN2遺伝子、ATXN3遺伝子、CACNA1A遺伝子、ATXN7遺伝子、TBP遺伝子、PABPN1遺伝子、HOXD13遺伝子、RUNX2遺伝子、HOXA13遺伝子、ZIC2遺伝子、FOXL2遺伝子、PHOX2B遺伝子、SOX3遺伝子、ARX遺伝子のうち任意の1または複数であり得るが、これらに限定されない。
【0826】
遺伝子1つの領域は、例えば、エクソン、イントロン、3'‐UTR、5'‐UTR、および、ポリアデニル化シグナル配列のうち任意の1または複数であり得るが、これらに限定されない。
【0827】
過剰増幅反復配列は、反復配列の重複を含む第1反復部分と、反復配列の過剰重複を含む第2反復部分とを含み、第1反復部分は、病的対象および通常の対象に含まれ、第2反復部分は通常の対象に含まれない。
【0828】
第1反復部分および第2反復部分は、特定のアミノ酸配列の反復をコードする核酸配列であり得る。
【0829】
特定のアミノ酸配列の反復を有するポリペプチドは、第1反復部分および第2反復部分から翻訳され得る。
【0830】
過剰増幅反復配列の発現を調節する遺伝子が、遺伝子操作のための組成物によって人工的に操作される効果を提供することが可能である。
【0831】
過剰増幅反復配列の発現を調節する遺伝子は、SPT4遺伝子、SPT5遺伝子、SUPT4H遺伝子、SUPT5H遺伝子から成る群から選択される1または複数であり得る。
【0832】
遺伝子操作のための組成物は、過剰増幅反復配列の発現を調節する遺伝子の発現を低減する効果を提供し得る。
【0833】
例えば、遺伝子操作のための組成物は、SPT4遺伝子、SPT5遺伝子、SUPT4H遺伝子、SUPT5H遺伝子のうち任意の1または複数の発現を低減する効果を提供し得る。
【0834】
過剰増幅反復配列の発現を調節する遺伝子の発現の低減は、過剰増幅反復配列の転写伸長因子の発現の低減であり得る。例えば、SPT4遺伝子、SPT5遺伝子、SUPT4H遺伝子、SUPT5H遺伝子のうち任意の1または複数の発現の低減は、過剰増幅反復配列の転写伸長因子の発現の低減であり得る。
【0835】
過剰増幅反復配列の発現を調節する遺伝子の発現の低減は、過剰増幅反復配列の発現を低減し得る。過剰増幅反復配列の発現を調節する遺伝子の発現の低減は、過剰増幅反復配列における第2反復部分の発現を低減し得る。
【0836】
例えば、SPT4遺伝子、SPT5遺伝子、SUPT4H遺伝子、SUPT5H遺伝子のうち任意の1または複数の発現の低減は、過剰増幅反復配列の発現を低減し得る。SPT4遺伝子、SPT5遺伝子、SUPT4H遺伝子、SUPT5H遺伝子のうち任意の1または複数の発現の低減は、過剰増幅反復配列における第2反復部分の発現を低減し得る。
【0837】
過剰増幅反復配列における第2反復部分の発現の低減は、核酸配列からのmRNAの転写を低減し得る。
【0838】
本明細書によって開示される更に別の実施形態は、患者の疾患を治療するための方法であり、当該方法は、上述の遺伝子操作のための組成物を、それを必要とする患者に投与する段階を含む。疾患は、過剰増幅反復配列によって生じる疾患であり得る。
【0839】
過剰増幅反復配列によって生じる疾患の具体例には、ハンチントン病(HD)、ハンチントン病様2、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)、球脊髄性筋萎縮症(SBMA)、脊髄小脳失調(SCA)、脆弱X症候群(FXS)、脆弱X随伴振戦/失調症候群(FXTA)、脆弱XE精神遅滞、ARX変異によって生じるX連鎖性精神遅滞(XLMR)フックス角膜ジストロフィー、フリードライヒ運動失調症(FRDA)、筋強直性ジストロフィー、筋萎縮性側索硬化症(C9orf72変異)、鎖骨頭蓋骨異形成症、眼球咽頭型筋ジストロフィー、合多指症2型、手足性器症候群(HFGS)、全前脳胞症、眼瞼裂狭小症候群、先天性中枢性低換気症候群、成長ホルモン欠乏症を伴う精神発達遅滞などが含まれるが、これに限定されない。治療される疾患は、以下の反復配列増幅単位を含み得る。
【0840】
3ヌクレオチド反復配列の過剰増幅によって生じる疾患として、3ヌクレオチド反復配列は、CAG‐、CCG‐、CTG‐、CGG‐、GAA‐、GAC‐、GCG‐、GCA‐、GCC‐、または、GCT‐ヌクレオチド配列の反復を含み得る。4ヌクレオチド反復配列の過剰増幅によって生じる疾患として、4ヌクレオチド反復配列は、CCTG‐ヌクレオチド配列の反復を含み得る。5ヌクレオチド反復配列の過剰増幅によって生じる疾患として、5ヌクレオチド反復配列は、ATTCT‐またはTGGAA‐ヌクレオチド配列の反復を含み得る。6ヌクレオチド反復配列の過剰増幅によって生じる疾患として、6ヌクレオチド反復配列は、GGCCTG‐またはGGGGCC‐ヌクレオチド配列の反復を含み得る。12ヌクレオチド反復配列の過剰増幅によって生じる疾患として、12ヌクレオチド反復配列は、CCCCGCCCCGCG‐ヌクレオチド配列の反復を含み得るが、ヌクレオチド反復配列はこれらに限定されない。
【0841】
過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子が、本明細書によって開示される遺伝子操作のための組成物によって人工的に操作および調節されるとき、動物細胞の生存、増殖、および/または持続性、細胞毒性などが改善され得る。更に、本明細書によって開示される医薬組成物、および、医薬組成物を使用する治療方法を通じて、過剰増幅反復配列を含む特定の遺伝子によって生じる遺伝性疾患を緩和または治療することが可能である。以下に、実施例を参照しつつ本発明についてさらに詳細に記載する。
【0842】
例は、本発明を更に詳細に説明するために提供されるに過ぎず、本発明の範囲が以下の例に限定されないことは当業者にとって明らかであろう。
【0843】
[例1 gRNAの設計および合成]
[1‐1.sgRNAの設計]
ヒトSUPT4H1遺伝子(SUPT4H1;NCBIアクセッション番号NM_003168)のCRISPR/Cas9標的領域、および、マウスSupt4a遺伝子(SUPT4a;NCBIアクセッション番号NM_009296)が、CRISPR RGEN Tools(Institute for Basic Science、韓国)を使用して選択された。CRISPR/Cas9標的領域として、ヒトゲノムにおけるオンターゲット領域を除き、0、1、または2bpのミスマッチを有しないDNA配列がsgRNA標的領域として選択された。
【0844】
[1‐2.sgRNAの合成]
2つの相補的オリゴヌクレオチドをアニールして延長することによって、sgRNA合成のための鋳型をPCR増幅した。
【0845】
使用された標的領域配列、標的領域配列を増幅するために使用されたプライマー、および、生成されたsgRNAによって標的化された標的DNA配列をテーブル3からテーブル8にまとめた。
【0846】
鋳型DNA(標的配列の3'末端の「NGG」を除く)のために、T7 RNAポリメラーゼ(New England Biolab)を使用するin vitro転写を実行し、製造元の指示に従ってRNAを合成し、その後、DNase(Ambion)を使用することによって鋳型DNAを除去した。転写されたRNAは、Expin Comboキット(GeneAll)およびイソプロパノール沈殿によって精製した。
【0847】
[1‐3 CjCas9およびsgRNAをコードするAAVベクターの構築]
核移行シグナル(NLS)およびそのC末端にHAタグエピトープを有する小さい改変を起こしたカンピロバクター・ジェジュニCas9(CjCas9)に由来するヒトコドン最適化CjCas9およびsgRNAをAAV逆位末端反復ベースベクタープラスミドで送達した。
【0848】
sgRNA転写をU6プロモーターによって誘導し、CjCas9および赤色蛍光タンパク質(RFP)の発現をEFSプロモーターによって調節した。AAVベクターを各sgRNAのスクリーニングに使用した。
【0849】
[例2 細胞株の培養]
[2‐1.細胞株および培地]
10%ウシ胎児血清(FBS、Welgene)、1×ペニシリンおよびストレプトマイシンを加えた高濃度グルコースと共に、ヒトHEK293(ATCC、CRL−1573)細胞株およびマウスNIH‐3T3線維芽細胞株をダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)で培養した。
【0850】
[2‐2.E12.5 YAC128マウスの前脳由来神経幹細胞の構築]
ハンチントン病モデルマウスであるYAC128 HDトランスジェニックマウスをJackson Laboratory (Bar Harbor、メイン州、米国)から購入した。YAC128 HDトランスジェニックマウス(FVBN/NJバックグラウンド系統)を繁殖および交配させた。前脳由来神経幹細胞(NSC)を12.5日(胎生期12.5;E12.5)のYAC128 HDトランスジェニックマウスおよび野性型マウスの胚脳から取得した。神経幹細胞を構築するために小さい改変を実行した。
【0851】
簡潔に説明すると、マウスの前脳組織を除去し、メスを使用して、非常に小さい断片が残るまで、1〜2分間切り刻み、次に、37℃で5分間にわたって0.5%トリプシンEDTAで処理した。その後、10%ウシ胎児血清(FBS、Welgene)、1×ペニシリン、ストレプトマイシンを含むDMEMベース培地において細胞を解離させた。その後、15μg/mLのポリLオルニチン(PLO、Sigma、セントルイス、ミズーリ州)および1μg/mLのフィブロネクチン(FN、Sigma)で被覆した組織培養ペトリ皿に細胞を塗布した。1日後、培地を、100×N添加物、300mM D‐グルコース、200mM L‐グルタミン、100U/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシン、0.1mM非必須アミノ酸、0.1mM β‐メルカプトエタノール、10ng/mL上皮増殖因子(EGF)、10ng/mL塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)を含むDMEM/F12培地を含むNSC完全培地と交換した。
【0852】
その後、細胞の増殖が安定化したとき、PSA‐NCAMマイクロビードを使用して磁気選別を実行し、次に、精製された神経前駆細胞を取得した。5%CO加湿インキュベータにおいて、NSCを37℃に維持し、1×trypLE Select (Gibco)を使用して反復的に継代培養した。本実験の前に、24ウェルプレートの個々に被覆されたウェル(1×10細胞/ウェル)、または、60mm培養皿(3×10細胞/培養皿)において細胞を継代培養した。
【0853】
[2‐3.E12.5 YAC128マウスの神経幹細胞の神経細胞への分化]
NSCのニューロンへの分化のために、PLO/ラミニン(5μg/mL、Sigma)で被覆した培養皿またはプレートを準備した。上記の2‐2の培養において、上皮増殖因子が除去される条件に培養条件を変更し、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)を徐々に減少させた。簡潔に説明すると、分化は以下の手順で進行した。
【0854】
EUROMED−N培地を、DMEM/F12の培地:ニューロン細胞培地=1:1で置換し、交換した培地を分化培地として使用した。分化培地は、200×N添加物、100×B27、100U/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシン、0.1mM非必須アミノ酸、0.1mM βメルカプトエタノール、3mM D‐グルコース、2mM L‐グルタミンを含む。BDNFの代わりに、増殖因子NGFを神経誘導のために使用した。分化段階において、神経分化は、NGF(200ng/mL)およびbFGF−2(10ng/mL)を加えた分化培地において、最初の3日間にわたって実行した。次の3日間では、神経分化は、NGF(30ng/mL)およびbFGF−2(6.7ng/mL)を加えた分化培地において実行した。分化の7日後、細胞を蛍光抗体法およびウエスタンブロットのために使用した。
【0855】
[例3 CRISPR/Cas9の導入]
[3‐1.SpCas9‐gRNAトランスフェクション]
CRISPR/SpCas要素で上述の細胞をトランスフェクションするために、15分間にわたって室温で、1gのsgRNAと共に、4μgのCas9タンパク質(Toolgen)を培養することによってRNP複合体を形成した。その後、10μL電気穿孔チップを用いて、Neon(登録商標)エレクトロポレーター(ThermoFisher)を使用して、RNP複合体を2×10個の細胞に電気穿孔した。標的ディープシーケンシングのために、トランスフェクションの48時間後、DNeasy Blood & Tissue kit(Qiagen)を使用して、細胞からゲノムDNA(gDNA)を回収した。
【0856】
[3‐2.CjCas9‐gRNAトランスフェクション]
上述の細胞をCRISPR/CjCas9要素でトランスフェクトするべく、10μL電気穿孔チップを用いて、Neon(登録商標)エレクトロポレーター(ThermoFisher)を使用して、sgRNAおよびCjCas9の各々を送達するAAVプラスミドを電気穿孔した。標的ディープシーケンシングのために、トランスフェクションの48時間後、DNeasy Blood & Tissue kit(Qiagen)を使用して、細胞からゲノムDNA(gDNA)を回収した。
【0857】
[例4 SPT4遺伝子を標的化する遺伝子はさみのスクリーニング]
【0858】
[4‐1.標的ディープシーケンシング]
トランスフェクトされた細胞からgDNAを抽出し、Phusionポリメラーゼ(New England Biolab)(テーブル3)を使用して、特定のプライマー(配列識別番号25〜42)でオンターゲット領域をPCR増幅した。
[テーブル3]
ヒトSUPT4H1遺伝子、C57Bl/6 MOUSE Supt4a遺伝子、FVB/NJ MOUSE Supt4a遺伝子のオンターゲット領域特異的プライマー配列
【表3】
【0859】
その後、PCRの結果生成されたPCRアンプリコンを、Mi−Seq(Illumina)を使用してペアエンドディープシーケンシングにかけた。ディープシーケンシングからのデータを、オンラインのCas−Analyzerツール(www.rgenome.net)を使用して解析した。PAM配列から3bp上流の領域におけるインデルを、Cas9によって生じた変異とみなした。
【0860】
[4‐2.ヒトSUPT4H1遺伝子のための標的ディープシーケンシング]
sgRNAは、オフターゲットがin silicoベースによって最小化された配列を有するヒトSUPT4H1遺伝子の標的配列を標的化するSpCas9およびCjCas9のための遺伝子はさみを選択および設計することによって合成された(テーブル4および5)。その後、ヒトHEK293T細胞株における遺伝子はさみによって生じたインデル効率(%)がスクリーニングされた(図1)。
【0861】
以下のテーブル4および5の各々は、SpCas9のsgRNA配列、および、ヒトSUPT4H1遺伝子のsgRNA配列の例を開示する。
[テーブル4]
[ヒトSUPT4H1遺伝子を標的化するSpCas9のsgRNA配列の例]
【表4】
[テーブル5]
ヒトSUPT4H1遺伝子を標的化するCjCas9のsgRNA配列の例
【表5】
【0862】
[4‐3.C57Bl/6 MOUSE Supt4a遺伝子のための標的ディープシーケンシング]
マウスSupt4a遺伝子の標的配列を標的化する、SpCas9およびCjCas9のためのsgRNAは、オフターゲットがin silicoベースによって最小化された配列で選択および設計することによって合成された(テーブル6および7)。その後、マウスC57BL/6細胞株における遺伝子はさみによって生じるインデル効率(%)をスクリーニングした(図2)。
【0863】
以下のテーブル6および7の各々は、マウスSupt4a遺伝子の標的配列を標的化するためのSpCas9のsgRNA配列およびCjCas9のsgRNA配列の例を開示する。
[テーブル6]
C57Bl/6 MOUSE Supt4a遺伝子を標的化するSpCas9のsgRNA配列の例
【表6】
[テーブル7]
C57Bl/6 MOUSE Supt4a遺伝子を標的化するCjCas9のsgRNA配列の例
【表7】
【0864】
[4‐4.FVB/NJ MOUSE Supt4a遺伝子のための標的ディープシーケンシング]
マウスSupt4a遺伝子の標的配列を標的化する、SpCas9およびCjCas9のためのsgRNAは、オフターゲットがin silicoベースによって最小化された配列で選択および設計することによって合成された(テーブル8および9)。その後、マウスFVB/NJ細胞株における遺伝子はさみによって生じるインデル効率(%)をスクリーニングした(テーブル3)。
【0865】
以下のテーブル8および9の各々は、マウスSupt4a遺伝子の標的配列を標的化するためのSpCas9のsgRNA配列およびCjCas9のsgRNA配列の例を開示する。
[テーブル8]
FVB/NJ MOUSE Supt4a遺伝子を標的化するSpCas9のsgRNA配列の例
【表8】
[テーブル9]
FVB/NJ MOUSE Supt4a遺伝子を標的化するCjCas9のsgRNA配列の例
【表9】
【0866】
[例5 FVB/NJマウス(YAC128)細胞に対する細胞毒性アッセイ]
マウスFVB/NJにおけるハンチントン病マウスモデル(YAC128)の初代神経幹細胞におけるmRosa26遺伝子(対照)を標的化するSpCas9遺伝子はさみを使用して、3継代の間に、mRosa26のリーディングフレームの改変が生存に対して選択的効果を及ぼしたかどうかを確認した。
【0867】
マウスFVB/NJにおけるハンチントン病マウスモデル(YAC128)の初代神経幹細胞におけるSupt4a遺伝子を標的化するSpCas9遺伝子はさみを使用して、3継代の間に、Supt4aのリーディングフレームの改変が生存に対して選択的効果を及ぼしたかどうかを確認した。
【0868】
mRosa26遺伝子(対照)を標的化するSpCas9遺伝子はさみ、または、Supt4a遺伝子を標的化するSpCas9遺伝子はさみを適用した後に、細胞を3回継代培養した。その後、3回継代培養した各細胞からゲノムDNAを回収することによって標的ディープシーケンシングを実行した。シーケンシング読み取りにおいて、フレーム内インデルおよびフレーム外インデルの数を決定し、割合を計算した。3継代の間、フレーム外インデルおよびフレーム内インデルの比が大幅に変更されたケースは、遺伝子ノックアウトによって生じた細胞毒性とみなした。
【0869】
[例6 FVB/NJマウス(YAC128)細胞のための免疫染色]
[6‐1.ウエスタンブロット]
NSCおよび分化ニューロンを氷冷RIPAバッファに溶解した。その後、溶解物を遠心分離し(20分、14000g、4℃)、その上清を新しいチューブに移した。BCAアッセイキット(Thermo Fisher Scientific、ウォルサム、マサチューセッツ州)を使用してタンパク質を解析した。等量のタンパク質(20〜50μg)を8〜12% SDSポリアクリルアミドゲルにロードした。単離タンパク質を電気泳動によってフッ化ポリビニリデン膜(Millipore、ベドフォード、マサチューセッツ州、米国)に移した。2.5mM EDTA(TNE)を含むトリス緩衝生理食塩水で膜を洗浄し、5%スキムミルクを含むTNEにおいて1時間にわたってブロックした。膜を一次抗体、1C(1:500、Millipore)、EM48(1:500、Millipore)、Spt4(1:1000、Biorbyt)と共に4℃で一晩培養した。その後、室温で1時間にわたって二次抗体(1:1000、GeneTex、アーバイン、カリフォルニア州、米国)と共に膜を培養し、再度洗浄した。ECLウエスタンブロッティング検出試薬(Millipore、ベドフォード、マサチューセッツ、米国)を使用してブロッティングを実行した。定量的解析のために、免疫ブロットバンドの濃度をImage Jソフトウェアを使用して測定した。
【0870】
[6‐2.蛍光抗体法]
4ウェルプレートにおいて、PLO/ラミニン(5μg/mL、Sigma)で被覆された12mm円状カバーガラスでNSCおよび分化ニューロンを調製した。その後、細胞を氷冷PBSで洗浄し、室温で20分間にわたって4%パラホルムアルデヒドにおいて固定した。その後、細胞をPBSで2回洗浄し、0.2%Triton X‐100を含む1%ウシ血清アルブミン(BSA)を含む1X PBSにおいて、室温条件で30分間培養した。その後、0.5%ウシ血清アルブミン(BSA)を含む1X PBSで細胞を3回洗浄した。洗浄後、細胞を一次抗体、1C(1:100、Millipore)、EM48(1:100、Millipore)、Spt4(1:100、Biorbyt)と共に4℃で一晩培養した。次に、0.5%ウシ血清アルブミン(BSA)を含む1X PBSで細胞を洗浄し、ヤギ抗マウスIgG(Alexa Fluor−555, Molecular Probes、Wyman、マサチューセッツ州、米国)およびヤギ抗ウサギIgG(Alexa Fluor−488、Molecular Probes、Wyman、マサチューセッツ州、米国)を含む適切な二次抗体と共に培養した。Carl Zeiss Microscopy LSM880共焦点走査型レーザ顕微鏡(Carl Zeiss Microscopy、イェーナ、ドイツ)を使用して、染色細胞を確認した。
【0871】
[配列表フリーテキスト]
過剰増幅反復配列の発現調節遺伝子の標的配列を記載する。
【0872】
ヒトSUPT4H1遺伝子、C57Bl/6 MOUSE Supt4a遺伝子、FVB/NJ MOUSE Supt4a遺伝子のオンターゲット部位特異的プライマー配列を記載する。
【0873】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【配列表】
2020528735000001.app
【手続補正書】
【提出日】2020年2月17日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SPT4、SPT5、SUPT4H、SUPT5H遺伝子から成る群から選択される1または複数の遺伝子の核酸配列における1または複数の標的配列を標的化することが可能なガイド核酸であって、
前記1または複数の標的配列に対して相補結合を形成可能な1または複数のガイドドメインと、
第1相補ドメイン、リンカドメイン、第2相補ドメイン、近位ドメイン、尾部ドメインから成る群から選択される1または複数のドメインと
を含み、
前記1または複数の標的配列は、SPT4、SPT5、SUPT4H、SUPT5H遺伝子から成る群から選択される1または複数の遺伝子のエクソン1領域に存在する、
ガイド核酸。
【請求項2】
前記ガイド核酸の前記1または複数の標的配列は、SUPT4H遺伝子の核酸配列における配列識別番号1〜24から成る群から選択される1または複数である、請求項1に記載のガイド核酸。
【請求項3】
前記ガイド核酸の前記1または複数の標的配列は、SUPT4H遺伝子の前記核酸配列における配列識別番号1〜2、14〜15、および17から成る群から選択される1または複数である、請求項1に記載のガイド核酸。
【請求項4】
請求項1に記載のガイド核酸、または、それをコードする核酸配列と、
エディタータンパク質、または、それをコードする核酸配列と
を含む遺伝子操作用組成物。
【請求項5】
前記エディタータンパク質は、ストレプトコッカス・ピオゲネス由来Cas9タンパク質、カンピロバクター・ジェジュニ由来Cas9タンパク質、ストレブトコッカス・サーモフィラス由来Cas9タンパク質、ストレプトコッカス・アウレウス由来Cas9タンパク質、ナイセリア・メニンジティディス由来Cas9タンパク質、Cpf1タンパク質から成る群から選択される1または複数を含む、請求項4に記載の遺伝子操作用組成物。
【請求項6】
前記ガイド核酸の前記1または複数の標的配列は、SUPT4H遺伝子の前記核酸配列における配列識別番号1〜2、14〜15、および17から成る群から選択される1または複数である、請求項4に記載の遺伝子操作用組成物。
【請求項7】
前記エディタータンパク質は、ストレプトコッカス・ピオゲネス由来Cas9タンパク質である、請求項6に記載の遺伝子操作用組成物。
【請求項8】
前記遺伝子操作用組成物は、ウイルスベクターのシステムに含まれる、請求項4に記載の遺伝子操作用組成物。
【請求項9】
前記ウイルスベクターは、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ワクチニアウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルスから選択される1または複数を含む、請求項8に記載の遺伝子操作用組成物。
【請求項10】
反復伸長疾患の治療に使用するための、請求項4から9のいずれか一項に記載の遺伝子操作用組成物。
【請求項11】
前記反復伸長疾患は、ハンチントン病(HD)、ハンチントン類縁疾患2型、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)、球脊髄性筋萎縮症(SBMA)、脊髄小脳変性(SCA)、脆弱X症候群(FXS)、脆弱X随伴振戦/失調症候群(FXTAS)、脆弱XE症候群、XLMR、フックス角膜内皮ジストロフィー、フリートライヒ運動失調症(FRDA)、筋強直性ジストロフィー、筋萎縮性側索硬化症(C9orf72変異)、鎖骨頭蓋骨異形成症、眼球咽頭型筋ジストロフィー、合多指症型2、手足性器症候群、全前脳胞症、眼瞼裂狭小症候群、先天性中枢性低換気症候群、成長ホルモン欠乏症を伴う精神発達遅滞のうち1または複数である、請求項10に記載の遺伝子操作用組成物。
【請求項12】
前記反復伸長疾患はハンチントン病(HD)である、請求項10に記載の遺伝子操作用組成物。
【請求項13】
前記遺伝子操作用組成物は、皮下、皮内、眼内、硝子体内、腫瘍内、結節内、髄内、筋肉内、静脈内、リンパ内、または腹腔内に投与され、
前記遺伝子操作用組成物は、注射、輸血、またはインプラントによって適用される、
請求項10に記載の遺伝子操作用組成物。
【請求項14】
前記遺伝子操作用組成物は、ウイルスベクターのシステムに含まれる、請求項10に記載の遺伝子操作用組成物。
【請求項15】
前記ウイルスベクターは、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ワクチニアウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルスから選択される1または複数を含む、請求項14に記載の遺伝子操作用組成物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0222
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0222】
近位ドメインは、その中に相補的塩基配列を有し得て、相補的塩基配列に起因して二本鎖に形成され得る。近位ドメインは、1〜20塩基配列であり得る。一例として、近位ドメインは、1〜20、5〜20、10〜20または15〜20塩基配列であり得る。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0223
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0223】
別の例において、近位ドメインは1〜5、5〜10、10〜15、または15〜20塩基配列であり得る。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0872
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0872】
ヒトSUPT4H1遺伝子、C57Bl/6 MOUSE Supt4a遺伝子、FVB/NJ MOUSE Supt4a遺伝子のオンターゲット部位特異的プライマー配列を記載する。
(項目1)
反復伸長の発現を低減するために人工的に設計された遺伝子を含む、反復伸長の発現を調節するためのシステムであって、
上記人工的に設計された遺伝子は、SPT4、SPT5、SUPT4H、SUPT5Hから成る群から選択される1または複数の遺伝子を含み、
上記人工的に設計された遺伝子は、そのゲノムにおいて人工的変異を含み、
上記人工的に設計された遺伝子は、機能異常である、または、発現が低減された遺伝子を含み、
上記遺伝子の発現の上記低減は、その発現産物の量が、人工的に設計されていない遺伝子と比較して低減または抑制されることを特徴とする、
システム。
(項目2)
上記SUPT4HはSUPT4H1遺伝子を含む、反復伸長変異の発現を調節するための、項目1に記載のシステム。
(項目3)
上記遺伝子の上記人工的変異は、1または複数のヌクレオチドの欠失、置換または挿入のうち少なくとも1つを含む、反復伸長変異の発現を調節するための、項目1に記載のシステム。
(項目4)
上記反復伸長は、
上記反復配列の重複を含む第1反復部分と、
上記反復配列の過剰重複を含む第2反復部分と
を含み、
上記第1反復部分は、障害のある対象および通常の対象に含まれ、
上記第2反復部分は通常の対象に含まれず、
反復伸長の発現の上記調節は、上記第2反復部分の発現減少を含む、
反復伸長変異の発現を調節するための、項目1に記載のシステム。
(項目5)
反復伸長の上記発現は、転写、転写後処理、翻訳、翻訳後修飾から成る群から選択される少なくとも1つである、反復伸長変異の発現を調節するための、項目1に記載のシステム。
(項目6)
上記反復伸長は、
上記反復配列の重複を含む第1反復部分と、
上記反復配列の過剰重複を含む第2反復部分と
を含み、
上記第1および第2反復部分は、
3ヌクレオチド反復伸長、
4ヌクレオチド反復伸長、
5ヌクレオチド反復伸長、
6ヌクレオチド反復伸長、
12ヌクレオチド反復伸長
から選択される1または複数の反復伸長を含む、反復伸長変異の発現を調節するための、項目1に記載のシステム。
(項目7)
上記3ヌクレオチド反復伸長は、CAG‐、CCG‐、CTG‐、CGG‐、GAA‐、GAC‐、GCG‐、GCA‐、GCC‐およびGCT‐反復伸長であり、
上記4ヌクレオチド反復伸長はCCTG反復伸長であり、
上記5ヌクレオチド反復伸長は、ATTCT‐およびTGGAA‐反復伸長から選択される1または複数の反復伸長であり、
上記6ヌクレオチド反復伸長は、GGCCTG‐およびGGGGCC‐反復伸長から選択された1または複数の反復伸長であり、
上記12ヌクレオチド反復伸長は、CCCCGCCCCGCG反復伸長である、
反復伸長変異の発現を調節するための、項目6に記載のシステム。
(項目8)
上記反復伸長の発現は、ハンチントン病(HD)、ハンチントン類縁疾患2型、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)、球脊髄性筋萎縮症(SBMA)、脊髄小脳失調症(SCA)、脆弱X症候群(FXS)、脆弱X随伴振戦/失調症候群(FXTAS)、脆弱XE精神遅滞、XLMR、フックス角膜ジストロフィー、フリートライヒ運動失調症(FRDA)、筋強直性ジストロフィー、筋萎縮性側索硬化症(C9orf72変異)、鎖骨頭蓋骨異形成症、眼球咽頭型筋ジストロフィー、合多指症型2、手足性器症候群、全前脳胞症、眼瞼裂狭小症候群、先天性中枢性低換気症候群、成長ホルモン欠乏症を伴う精神発達遅滞、のうちから選択される1または複数の障害の原因である、反復伸長変異の発現を調節するための、項目1に記載のシステム。
(項目9)
反復伸長の発現を低減するための遺伝子操作用組成物であって、
Clustered regularly interspaced short palindromic repeats(CRISPR)−CRISPR関連タンパク質(Cas)システム、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、FokI、または、エンドヌクレアーゼを含み、
上記遺伝子は、SPT4、SPT5、SUPT5Hから成る群から選択される1または複数の遺伝子である、
遺伝子操作用組成物。
(項目10)
上記遺伝子操作は、ヌクレオチドの欠失、置換、または挿入である1または複数の改変を含む、項目9に記載の遺伝子操作用組成物。
(項目11)
上記遺伝子操作用組成物は、
3ヌクレオチド反復伸長、
4ヌクレオチド反復伸長、
5ヌクレオチド反復伸長、
6ヌクレオチド反復伸長、
12ヌクレオチド反復伸長
によって生じる任意の1または複数の障害を治療するための組成物である、項目9に記載の遺伝子操作用組成物。
(項目12)
上記3ヌクレオチド反復伸長は、CAG‐、CCG‐、CTG‐、CGG‐、GAA‐、GAC‐、GCG‐、GCA‐、GCC‐およびGCT‐反復伸長であり、
上記4ヌクレオチド反復伸長はCCTG反復伸長であり、
上記5ヌクレオチド反復伸長は、ATTCT‐およびTGGAA‐反復伸長から選択される1または複数の反復伸長であり、
上記6ヌクレオチド反復伸長は、GGCCTG‐およびGGGGCC‐反復伸長から選択された1または複数の反復伸長であり、
上記12ヌクレオチド反復伸長は、CCCCGCCCCGCG反復伸長である、
項目11に記載の遺伝子操作用組成物。
(項目13)
上記遺伝子操作用組成物は、ハンチントン病(HD)、ハンチントン類縁疾患2型、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)、球脊髄性筋萎縮症(SBMA)、脊髄小脳失調症(SCA)、脆弱X症候群(FXS)、脆弱X随伴振戦/失調症候群(FXTAS)、脆弱XE精神遅滞、XLMR、フックス角膜ジストロフィー、フリートライヒ運動失調症(FRDA)、筋強直性ジストロフィー、筋萎縮性側索硬化症(C9orf72変異)、鎖骨頭蓋骨異形成症、眼球咽頭型筋ジストロフィー、合多指症型2、手足性器症候群、全前脳胞症、眼瞼裂狭小症候群、先天性中枢性低換気症候群、成長ホルモン欠乏症を伴う精神発達遅滞のうちから選択される1または複数の障害を治療するための組成物である、項目9に記載の遺伝子操作用組成物。
(項目14)
SPT4、SPT5、SUPT4H、SUPT5Hから成る群から選択される1または複数の遺伝子の標的配列に対するガイド核酸を含む遺伝子操作用組成物。
(項目15)
上記遺伝子操作用組成物は、上記エディタータンパク質、または、それをコードする核酸を含み、
上記エディタータンパク質は、ストレプトコッカス・ピオゲネス由来Cas9タンパク質、カンピロバクター・ジェジュニ由来Cas9タンパク質、ストレプトコッカス・サーモフィラス由来Cas9タンパク質、ストレプトコッカス・アウレウス由来Cas9タンパク質、ナイセリア・メニンジティディス由来Cas9タンパク質、Cpf1タンパク質から成る群から選択される1または複数のタンパク質を含む、
項目14に記載の遺伝子操作用組成物。
(項目16)
上記標的配列は、プロモーター領域、イントロン領域、エクソン領域、エンハンサー領域、3'‐UTR(未翻訳領域)、5'‐UTRから選択される遺伝子の1または複数の領域に存在する、項目14に記載の遺伝子操作用組成物。
(項目17)
上記標的配列は遺伝子のエクソン領域に存在する、項目14に記載の遺伝子操作用組成物。
(項目18)
上記標的配列は、上記遺伝子を構成する核酸配列におけるプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列の5'末端および/または3'末端に隣接する連続の10bp〜25bpヌクレオチド配列領域に存在するヌクレオチド配列である、項目14に記載の遺伝子操作用組成物。
(項目19)
上記PAM配列は、
NGG(NはA、T、CまたはG)、
NNNNRYAC(Nは各々独立に、A、T、CまたはG、RはAまたはG、YはCまたはT)、
NNAGAAW(Nは各々独立に、A、T、CまたはG、WはAまたはT)、
NNNNGATT(Nは各々独立に、A、T、CまたはG)、
NNGRR(T)(Nは各々独立に、A、T、CまたはG、RはAまたはG、YはCまたはT)、
TTN(NはA、T、CまたはG)
の配列(5'から3'の方向に記載)から成る群から選択される少なくとも1つを含む、
項目14に記載の遺伝子操作用組成物。
(項目20)
上記標的配列は、配列識別番号1〜24から成る群から選択される1または複数の配列である、項目14に記載の遺伝子操作用組成物。
(項目21)
上記標的配列は、配列識別番号1、2、14、15、16、17から成る群から選択される1または複数の配列である、項目14に記載の遺伝子操作用組成物。
(項目22)
上記組成物は、
配列識別番号1、2、8〜10、および、14〜20から選択される1または複数の配列のガイド核酸と、
ストレプトコッカス・ピオゲネス由来Cas9タンパク質、または、それをコードする核酸と
を含む、項目15に記載の遺伝子操作用組成物。
(項目23)
上記組成物は、
配列識別番号3〜7、11〜13、および、21〜24から選択される1または複数の配列のガイド核酸と、
カンピロバクター・ジェジュニ由来Cas9タンパク質、または、それをコードする核酸と
を含む、項目15に記載の遺伝子操作用組成物。
(項目24)
上記ガイド核酸は、上記遺伝子の標的配列に対して相補結合を形成可能なガイドドメインを含み、
上記相補結合は、0〜5個のミスマッチ結合を含む、
項目14に記載の遺伝子操作用組成物。
(項目25)
上記ガイドドメインは、上記遺伝子の標的配列に対する相補ヌクレオチド配列を含み、
上記相補ヌクレオチド配列は0〜5個のミスマッチを含む、
項目24に記載の遺伝子操作用組成物。
(項目26)
上記ガイド核酸は、第1相補ドメイン、リンカードメイン、第2相補ドメイン、近位ドメイン、尾部ドメインから成る群から選択される少なくとも1つのドメインを含む、項目14に記載の遺伝子操作用組成物。
(項目27)
上記ガイド核酸および上記エディタータンパク質は、それぞれ、それらをコードするDNAの形態である、項目14または15に記載の遺伝子操作用組成物。
(項目28)
上記DNAは、プラスミドまたはウイルスベクターの形態で含まれる、項目27に記載の遺伝子操作用組成物。
(項目29)
上記ウイルスベクターは、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ワクチニアウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルスから成る群から選択される少なくとも1つである、項目28に記載の遺伝子操作用組成物。
(項目30)
上記エディタータンパク質をコードする上記核酸は、mRNAの形態で提供される、項目15に記載の遺伝子操作用組成物。
(項目31)
上記エディタータンパク質は、ポリペプチドまたはタンパク質の形態である、項目15に記載の遺伝子操作用組成物。
(項目32)
上記組成物はガイド核酸‐エディタータンパク質複合体の形成である、項目15に記載の遺伝子操作用組成物。
(項目33)
上記組成物は、
3ヌクレオチド反復伸長、
4ヌクレオチド反復伸長、
5ヌクレオチド反復伸長、
6ヌクレオチド反復伸長、12ヌクレオチド反復伸長
によって生じる任意の1または複数の障害を治療するための組成物である、項目14または15に記載の遺伝子操作用組成物。
(項目34)
上記3ヌクレオチド反復伸長は、CAG‐、CCG‐、CTG‐、CGG‐、GAA‐、GAC‐、GCG‐、GCA‐、GCC‐およびGCT‐反復伸長であり、
上記4ヌクレオチド反復伸長はCCTG反復伸長であり、
上記5ヌクレオチド反復伸長は、ATTCT‐およびTGGAA‐反復伸長から選択される1または複数の反復伸長であり、
上記6ヌクレオチド反復伸長は、GGCCTG‐およびGGGGCC‐反復伸長から選択された1または複数の反復伸長であり、
上記12ヌクレオチド反復伸長は、CCCCGCCCCGCG反復伸長である、
項目34に記載の遺伝子操作用組成物。
(項目35)
上記組成物は、ハンチントン病(HD)、ハンチントン類縁疾患2型、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)、球脊髄性筋萎縮症(SBMA)、脊髄小脳失調症(SCA)、脆弱X症候群(FXS)、脆弱X随伴振戦/失調症候群(FXTAS)、脆弱XE精神遅滞、XLMR、フックス角膜ジストロフィー、フリートライヒ運動失調症(FRDA)、筋強直性ジストロフィー、筋萎縮性側索硬化症(C9orf72変異)、鎖骨頭蓋骨異形成症、眼球咽頭型筋ジストロフィー、合多指症型2、手足性器症候群、全前脳胞症、眼瞼裂狭小症候群、先天性中枢性低換気症候群、成長ホルモン欠乏症を伴う精神発達遅滞のうち1または複数の疾患を治療するための組成物である、項目14または15に記載の遺伝子操作用組成物。
(項目36)
組成物を対象に投与する段階を含む反復伸長疾患治療方法であって、
上記組成物は、活性成分として遺伝子操作組成物を含み、
上記遺伝子操作組成物は、反復伸長の発現を低減するためのものであり、
上記遺伝子操作組成物は、Clustered regularly interspaced short palindromic repeats(CRISPR)−CRISPR関連タンパク質(Cas)システム、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、FokI、または、エンドヌクレアーゼを含み、
上記遺伝子は、SPT4、SPT5、SUPT4H、SUPT5Hから成る群から選択される少なくとも1つの遺伝子である、
反復伸長疾患治療方法。
(項目37)
組成物を対象に投与する段階を含む反復伸長疾患治療方法であって、
上記組成物は、活性成分として、遺伝子操作用組成物を含み、
上記遺伝子操作用組成物は
SPT4、SPT5、SUPT4H、SUPT5Hから成る群から選択される少なくとも1つの遺伝子の標的配列に対するガイド核酸と、
エディタータンパク質、または、それをコードする核酸と
を含み、
上記エディタータンパク質は、ストレプトコッカス・ピオゲネス由来Cas9タンパク質、カンピロバクター・ジェジュニ由来Cas9タンパク質、ストレプトコッカス・サーモフィラス由来Cas9タンパク質、ストレプトコッカス・アウレウス由来Cas9タンパク質、ナイセリア・メニンジティディス由来Cas9タンパク質、Cpf1タンパク質から成る群から選択される少なくとも1つのタンパク質を含む、
反復伸長疾患治療方法。
(項目38)
上記標的配列は、配列識別番号1〜24から成る群から選択される少なくとも1つの標的配列である、項目37に記載の反復伸長疾患治療方法。
(項目39)
上記遺伝子操作用組成物は、
配列識別番号1、2、8〜10、14〜20から選択される少なくとも1つの配列に対するガイド核酸と、
ストレプトコッカス・ピオゲネス由来Cas9タンパク質と
を含む、項目37に記載の反復伸長疾患治療方法。
(項目40)
上記遺伝子操作用組成物は、
配列識別番号3、7、11〜13、21〜24から選択される少なくとも1つの配列に対するガイド核酸と、
カンピロバクター・ジェジュニ由来Cas9タンパク質と
を含む、項目37に記載の反復伸長疾患治療方法。
(項目41)
上記組成物は、リボ核タンパク質(RNP)、リポソーム、プラスミド、ウイルスベクター、ナノ粒子、タンパク質移行ドメイン(PTD)法のうち1または複数によって投与される、項目36または37に記載の反復伸長疾患治療方法。
(項目42)
上記ウイルスベクターは、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ワクチニアウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルスから成る群から選択される少なくとも1つである、項目41に記載の反復伸長疾患治療方法。
(項目43)
上記ガイド核酸はDNAまたはRNAの形態で細胞に送達され、
上記エディタータンパク質はポリペプチドの形態で細胞に送達される、または、上記エディタータンパク質をコードする核酸はDNAの形態で細胞に送達される、
項目37に記載の反復伸長疾患治療方法。
(項目44)
対象への上記投与方法は、電気穿孔、注射、輸血、インプラント、移植から選択される1または複数の方法である、項目36または37に記載の反復伸長疾患治療方法。
(項目45)
上記投与は局部的または局所的に実行される、項目36または37に記載の反復伸長疾患治療方法。
(項目46)
上記投与は、皮下、皮内、結節内、髄内、筋肉内、静脈内、リンパ内、または腹腔内の方法で実行される、項目36または37に記載の反復伸長疾患治療方法。
(項目47)
上記対象への局部的または局所的投与は、上記対象の
腎臓、
胃、膵臓、十二指腸、回腸および/または結腸を含む消化器系、
心臓、肺、
脳、特にニューロンおよび/または一般に中枢神経系、
網膜組織を含む目、
内耳を含む耳、
皮膚、
筋肉、
骨、
肝臓
のうち少なくとも1つの臓器に対して実行される、項目46に記載の反復伸長疾患治療方法。
(項目48)
上記対象は、ヒト、サル、マウス、ラットを含む哺乳動物である、項目36または37に記載の反復伸長疾患治療方法。
(項目49)
上記反復伸長は、
上記反復配列の重複を含む第1反復部分と、
上記反復配列の過剰重複を含む第2反復部分と
を含み、
上記第1反復部分は、障害のある対象および通常の対象に含まれ、
上記第2反復部分は通常の対象に含まれず、
反復伸長の上記治療は、上記第2反復部分の発現の減少を含む、
項目36または37に記載の反復伸長疾患治療方法。
(項目50)
上記反復伸長疾患は、3ヌクレオチド反復伸長、4ヌクレオチド反復伸長、5ヌクレオチド反復伸長、6ヌクレオチド反復伸長、12ヌクレオチド反復伸長によって生じる1または複数の疾患である、項目36または37に記載の反復伸長疾患治療方法。
(項目51)
上記3ヌクレオチド反復伸長は、CAG‐、CCG‐、CTG‐、CGG‐、GAA‐、GAC‐、GCG‐、GCA‐、GCC‐およびGCT‐反復伸長であり、
上記4ヌクレオチド反復伸長はCCTG反復伸長であり、
上記5ヌクレオチド反復伸長は、ATTCT‐およびTGGAA‐反復伸長から選択される1または複数の反復伸長であり、
上記6ヌクレオチド反復伸長は、GGCCTG‐およびGGGGCC‐反復伸長から選択された1または複数の反復伸長であり、
上記12ヌクレオチド反復伸長は、CCCCGCCCCGCG反復伸長である、
項目50に記載の反復伸長疾患治療方法。
(項目52)
上記反復伸長疾患は、ハンチントン病(HD)、ハンチントン類縁疾患2型、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)、球脊髄性筋萎縮症(SBMA)、脊髄小脳失調症(SCA)、脆弱X症候群(FXS)、脆弱X随伴振戦/失調症候群(FXTAS)、脆弱XE精神遅滞、XLMR、フックス角膜ジストロフィー、フリートライヒ運動失調症(FRDA)、筋強直性ジストロフィー、筋萎縮性側索硬化症(C9orf72変異)、鎖骨頭蓋骨異形成症、眼球咽頭型筋ジストロフィー、合多指症型2、手足性器症候群、全前脳胞症、眼瞼裂狭小症候群、先天性中枢性低換気症候群、成長ホルモン欠乏症を伴う精神発達遅滞のうち少なくとも1つである、項目36または37に記載の反復伸長疾患治療方法。
【国際調査報告】