(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-528991(P2020-528991A)
(43)【公表日】2020年10月1日
(54)【発明の名称】熱作動型建物パネル
(51)【国際特許分類】
F24D 3/16 20060101AFI20200904BHJP
C23C 30/00 20060101ALI20200904BHJP
F24F 5/00 20060101ALI20200904BHJP
F28F 19/06 20060101ALI20200904BHJP
【FI】
F24D3/16 G
C23C30/00 B
C23C30/00 D
F24F5/00 101B
F28F19/06 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】有
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2019-572709(P2019-572709)
(86)(22)【出願日】2017年6月28日
(85)【翻訳文提出日】2020年2月6日
(86)【国際出願番号】IB2017053859
(87)【国際公開番号】WO2019002915
(87)【国際公開日】20190103
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】519005510
【氏名又は名称】クヴァドラ ソフト セルズ エー/エス
(71)【出願人】
【識別番号】519460971
【氏名又は名称】プライス インダストリーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ニールセン、イェスペル
(72)【発明者】
【氏名】リマー、ジュリアン ダグラス ティルディスレイ
(72)【発明者】
【氏名】テシエ、シルビオ
(72)【発明者】
【氏名】オリバー、バシリオス アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】リュー、ヘン
(72)【発明者】
【氏名】ヒックス、トロイ
(72)【発明者】
【氏名】ラムルー、タミー
(72)【発明者】
【氏名】ジョーダン、ショーン
【テーマコード(参考)】
3L070
4K044
【Fターム(参考)】
3L070AA03
3L070AA04
3L070BD07
3L070BD22
4K044AA16
4K044AB02
4K044BA10
4K044BC12
4K044CA11
4K044CA13
4K044CA15
4K044CA18
(57)【要約】
熱作動型建物パネル1が、部屋向き表面3及び建物向き表面4を有する金属板2を含む。冷却媒体又は加熱媒体を搬送するための熱交換器チューブ5が、金属板2の建物向き表面4と伝熱接触している。テキスタイル9が、金属板2の部屋向き表面3上に配置され、且つ、全体的に金属板2に接触する第1の表面10、及び、全体的に前述の部屋から見える第2の表面11を有する。テキスタイル9は、金属板2の対向する縁部12間で張力をかけられる。テキスタイル9の第1の表面10は、テキスタイル9上への金属粒子の堆積によって金属化される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部屋の天井又は壁に取り付けられるように構成され、且つ、部屋向き表面(3)及び建物向き表面(4)を有する金属板(2)を含む、熱作動型建物パネル(1)であって、冷却媒体又は加熱媒体を搬送するための熱交換器チューブ(5)が、前記金属板(2)の前記建物向き表面(4)と伝熱接触しており、テキスタイル(9)が、前記金属板(2)の前記部屋向き表面(3)上に配置され、前記テキスタイル(9)が、全体的に前記金属板(2)に接触する第1の表面(10)、及び、全体的に前記部屋から見える第2の表面(11)を有する、熱作動型建物パネル(1)であって、前記テキスタイル(9)が前記金属板(2)の対向する縁部(12)間で張力をかけられること、及び、前記テキスタイル(9)の前記第1の表面(10)が前記テキスタイル(9)上への金属粒子の堆積によって金属化されることを特徴とする、熱作動型建物パネル(1)。
【請求項2】
前記テキスタイル(9)の前記第1の表面(10)が、真空堆積、イオンめっき、電気めっき、又は無電解めっきの形態での前記テキスタイル(9)上への金属粒子の堆積によって金属化される、請求項1に記載の熱作動型建物パネル。
【請求項3】
前記テキスタイル(9)の前記第1の表面(10)が、前記テキスタイル(9)上への金属粒子の真空堆積によって金属化される、請求項1又は2に記載の熱作動型建物パネル。
【請求項4】
前記テキスタイル(9)上に堆積される前記金属粒子が、主に又は完全にアルミニウムによって形成される、請求項1から3までのいずれか一項に記載の熱作動型建物パネル。
【請求項5】
前記テキスタイル(9)上に堆積される前記金属粒子が、前記テキスタイル(9)の前記第1の表面(10)の構造内に一体化される金属被覆を形成する、請求項1から4までのいずれか一項に記載の熱作動型建物パネル。
【請求項6】
前記テキスタイル(9)上に堆積される前記金属粒子が、1000マイクロメートル未満、好ましくは750マイクロメートル未満、より好ましくは500マイクロメートル未満、さらに好ましくは250マイクロメートル未満、さらに好ましくは150マイクロメートル未満、さらに好ましくは50マイクロメートル未満、最も好ましくは25マイクロメートル未満の最大厚さを全体的に有する金属被覆を形成する、請求項1から5までのいずれか一項に記載の熱作動型建物パネル。
【請求項7】
前記テキスタイル(9)上に堆積される前記金属粒子が、500ナノメートル超、好ましくは750ナノメートル超、最も好ましくは1000ナノメートル超の最小厚さを全体的に有する金属被覆を形成する、請求項1から6までのいずれか一項に記載の熱作動型建物パネル。
【請求項8】
前記テキスタイル(9)上に堆積される前記金属粒子が、1平方メートル当たり300ミリグラム未満、好ましくは1平方メートル当たり200ミリグラム未満、より好ましくは1平方メートル当たり100ミリグラム未満、さらに好ましくは1平方メートル当たり50ミリグラム未満、さらに好ましくは1平方メートル当たり30ミリグラム未満、さらに好ましくは1平方メートル当たり10ミリグラム未満、最も好ましくは1平方メートル当たり5ミリグラム未満の重さを有する金属被覆を形成する、請求項1から7までのいずれか一項に記載の熱作動型建物パネル。
【請求項9】
前記テキスタイル(9)上に堆積される前記金属粒子が、1平方メートル当たり100マイクログラム超、好ましくは1平方メートル当たり200マイクログラム超、最も好ましくは1平方メートル当たり300マイクログラム超の重さを有する金属被覆を形成する、請求項1から8までのいずれか一項に記載の熱作動型建物パネル。
【請求項10】
前記金属板(2)が、輪郭部材(14)によって構成される枠(13)内に配置され、各輪郭部材(14)が、前記輪郭部材(14)の部屋向き側(16)を前記輪郭部材(14)の建物向き側(17)と接続する丸み付き外側縁部(15)を有し、前記テキスタイル(9)が、前記輪郭部材(14)の前記丸み付き外側縁部(15)の周りで曲げられ、前記テキスタイル(9)の縁部(18)が、少なくとも1つのばね部材(19)により、前記輪郭部材(14)の前記建物向き側(17)に好ましくは弾性的に固定される、請求項1から9までのいずれか一項に記載の熱作動型建物パネル。
【請求項11】
前記テキスタイル(9)の各縁部(18)が、対応する前記輪郭部材(14)の前記建物向き側(17)にある軌道(21)内に配置されるブラケット(20)を備え、前記ブラケット(20)が、前記金属板(2)の前記対向する縁部(12)間で前記テキスタイル(9)に張力をかけるために、前記軌道(21)内で横へばね付勢される、請求項10に記載の熱作動型建物パネル。
【請求項12】
前記金属板(2)の各縁部(12)が、前記金属板(2)の前記部屋向き表面(3)が、対応する輪郭部材(14)の前記丸み付き外側縁部(15)との滑らかな移行部を形成する前記輪郭部材(14)の前記部屋向き側(16)の一部分(24)と同一平面になるように、前記輪郭部材(14)の凹部(23)内に配置される、請求項10又は11に記載の熱作動型建物パネル。
【請求項13】
各輪郭部材(14)が、前記金属板(2)の前記部屋向き表面(3)の平面にまたがらない、請求項12に記載の熱作動型建物パネル。
【請求項14】
前記金属板(2)が、前記部屋から裏側の吸音パネルへの音波の伝達を可能にするために穿孔される、請求項1から13までのいずれか一項に記載の熱作動型建物パネル。
【請求項15】
前記金属板(2)が、前記板(2)とテキスタイル(9)との間の接触を確実とするために、前記張力をかけられるテキスタイルの自然な弛みよりも大きい3次元的な反りを作り出すように変形される、請求項1から14までのいずれか一項に記載の熱作動型建物パネル。
【請求項16】
前記金属板(2)が、前記テキスタイル(9)を張力がかけられた時点で工学的形状に導くために、3次元的な輪郭に形成される、請求項1から15までのいずれか一項に記載の熱作動型建物パネル。
【請求項17】
前記テキスタイル(9)の前記第2の表面(11)が、少なくとも実質的に金属粒子を含まない、請求項1から16までのいずれか一項に記載の熱作動型建物パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部屋の天井又は壁に取り付けられるように構成され、且つ、部屋向き表面(room−facing surface)及び建物向き表面(building−facing surface)を有する金属板を含む、熱的に作動される建物パネル(以下、熱作動型建物パネル)であって、冷却媒体又は加熱媒体を搬送するための熱交換器チューブが、金属板の建物向き表面と伝熱接触しており、テキスタイルが、金属板の部屋向き表面上に配置され、テキスタイルが、全体的に金属板に接触する第1の表面、及び、全体的に前述の部屋から見える第2の表面を有する、熱作動型建物パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、金属板と、所望の室温を得るために加熱媒体又は冷却媒体が流れる柔軟なチューブを担持する支持構造とからなる、熱天井パネルを開示している。チューブは、マット形状とされ、且つ、直接金属板上に緩く位置する。音の通過のための複数の円形穿孔が、金属板内に形成され、マットの形態の吸音層が、金属板上又は柔軟なチューブ状に直接設置される。打ち抜き部分を備えた金属板の下側に吸音細孔層が適用されるという点で、改善された遮音性も達成され得ることができ、この層は、事実上、空気の通過を妨げない。しかし、吸音細孔層と金属板との間の熱伝導は、比較的低くなる可能性があり、したがって、熱天井パネルの効率は、吸音細孔層の適用によって低下され得る。さらに、吸音細孔層は、金属板の表面に当接するので、金属板内の円形穿孔の縁部が吸音細孔層の表面に影響を及ぼし、その結果円形穿孔が吸音細孔層を通して目に見えるのを回避することが、難しいかさらには不可能な場合がある。さらに、光が吸音細孔層を通してある程度まで伝播するので、伝播した光は、金属板により吸音細孔層を通して反射されることになる。しかし、光は、金属板内の円形穿孔において異なる形で反射され、そのため、円形穿孔もまた、こうした理由で吸音細孔層を通して目に見えることになる。したがって、熱天井パネルの審美的外観は、悪影響を受ける可能性がある。
【0003】
特許文献2は、有孔金属パネルを含む部屋天井の上面上に固定される薄いシートを開示している。前述のシートは、音響減衰をごくわずかな程度だけ減少させ、且つ、部屋天井の耐火性を大幅に向上させる。シートが金属パネル内の穿孔の至近距離において固定されていない場合、又は、シートが穿孔の領域内にわずかに拡張若しくは伸長されている場合、音響減衰は、事実上減少しない。この伸長は、のり付けされたシート上でフォーム・ロールを駆動することによって得ることができ、それにより、シートは、穴にある程度押し込まれて、塑性的に引き伸ばされる。所望されるならば、フォーム・ロールはまた、シートが再び押し上げられるが伸長は維持されるように、引き続き金属パネルの下側にわたって移動され得る。加熱媒体又は冷却媒体が流れるプラスチック・パイプが、シートにわたって延びてもよい。すると、シートは、プラスチック・パイプのための遮蔽物としてさらに機能する。プラスチック・パイプは、マットに組み立てられるか、又は個別に敷かれ得る。それらは、熱伝導接着剤によりフィルムに付着され、また、フィルムと金属板との間の接着剤は、同様に熱伝導性であることが好ましく、その結果、プラスチック・パイプと金属板との間で良好な熱移動が生じる。この目的のために、フォイルはまた、良好な熱伝導性を有し、さらにプラスチック・チューブが穴を通して目に見えることがないように不透明である。アルミニウムが、これらの要求に適合する。天井からの良好な熱輻射を達成するために、フォイルは、下側上に色被覆を備える。しかし、審美的外観上の理由で、穿孔が目に見えるように有孔金属パネルがそのまま露出されることが、有利な場合がある。
【0004】
特許文献3は、部屋向き側上に有孔カバー層が付いた蜂の巣形合成板を備える、つり天井のための平坦な表面パネルを開示している。表面パネルは、熱パネルの形態を有し得る。部屋に面する有孔カバー層のおかげで、熱パネルの特に高い吸音能力が達成され得る。吸音能力をさらに向上させるために、蜂の巣形合成板の有孔カバー層の部屋向き側は、音響フリース及び/又は開孔被覆(open−pore coating)、例えば開孔した石膏若しくは塗装の層又は開孔鉱物被覆をさらに備えてもよい。しかし、上述のように、このタイプの表面パネルは、音響フリースなどと有孔カバー層との間の熱伝導性が比較的低くなり得ること、及び、カバー層の穿孔が音響フリースなどを通して目に見えるのを回避することが難しいかさらには不可能な場合があることといった欠点を有し得る。
【0005】
特許文献4は、テキスタイル材料を高真空において金属の蒸気に曝し、それによりそのように金属化されるテキスタイル材料が摂氏100度を超える温度で加熱されることによる、特にセルロース系繊維で作られたテキスタイルを金属化する方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0299909号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第4335654号明細書
【特許文献3】独国実用新案登録出願公開第202005010524号明細書
【特許文献4】英国特許出願公開第796,138号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、熱的に効率的であり、それと同時にテキスタイルを通して目に見える穿孔を含まない滑らかで一様なテキスタイル表面を有する、熱作動型建物パネルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を考慮して、テキスタイルは、金属板の対向する縁部間で張力をかけられ、テキスタイルの第1の表面は、テキスタイル上への金属粒子の堆積によって金属化される。
【0009】
テキスタイル上への金属粒子の堆積により、熱伝導性金属被覆がテキスタイルの第1の表面の構造全体に一体化され、それにより、テキスタイルと金属板との間の熱伝導性を大きく高めることができる。金属板の対向する縁部間でテキスタイルに張力をかけること、及び、テキスタイルの第1の表面に一体化された金属被覆によりテキスタイルを通過する光の伝播を阻止することにより、テキスタイル表面を一様に配置することができ、また、テキスタイルを通して金属板内の穿孔が目に見えることを効果的に防ぐことができる。
【0010】
一実施例では、テキスタイルの第1の表面は、テキスタイル上への金属粒子の真空堆積によって金属化される。したがって、蒸発されるべき材料は、任意の形態及び純度の固体であってよい。真空被覆は、一般に、堆積チャンバ内に意図的に導入される元素又は分子のみを含み、それにより、被覆の高い品質及び再現性を保証する。
【0011】
一実施例では、テキスタイルの第1の表面は、イオンめっきの形態でのテキスタイル上への金属粒子の堆積によって金属化される。それにより、真空堆積と比較して、被覆のより高い密度及びより強力な接着が達成され得る。
【0012】
一実施例では、テキスタイルの第1の表面は、電気めっきの形態でのテキスタイル上への金属粒子の堆積によって金属化される。それにより、厚く、硬く、且つ重い被覆が得られ得る。
【0013】
一実施例では、テキスタイルの第1の表面は、無電解めっきの形態でのテキスタイル上への金属粒子の堆積によって金属化される。したがって、電気めっきと比較すると、電場がないことは、被覆の均一な厚さに寄与し得る。
【0014】
一実施例では、テキスタイル上に堆積される金属粒子は、主に又は完全にアルミニウムによって形成される。それにより、テキスタイルの第1の表面上に堆積される金属被覆の比較的高い熱伝導性を確実とすることができ、それにより、テキスタイルと金属板との間の熱伝導が最大化され得る。さらに、アルミニウムは世界中で最も反射性のある金属のうちの1つであるので、テキスタイルを通過する光の伝播の非常に効率的な阻止を金属被覆によって達成することができ、それにより、テキスタイルを通して金属板内の穿孔が目に見えることを、さらによく防ぐことができる。
【0015】
一実施例では、テキスタイル上に堆積される金属粒子は、テキスタイルの第1の表面の構造内に一体化される金属被覆を形成する。それにより、熱がテキスタイルの内部構造の中又は外へさらによく運ばれ得るので、特に、テキスタイルの第1の表面上に堆積される金属被覆の熱伝導性が、さらにもっと強化され得る。
【0016】
一実施例では、テキスタイル上に堆積される金属粒子は、1000マイクロメートル未満、好ましくは750マイクロメートル未満、より好ましくは500マイクロメートル未満、さらに好ましくは250マイクロメートル未満、さらに好ましくは150マイクロメートル未満、さらに好ましくは50マイクロメートル未満、最も好ましくは25マイクロメートル未満の最大厚さを全体的に有する金属被覆を形成する。
【0017】
一実施例では、テキスタイル上に堆積される金属粒子は、500ナノメートル超、好ましくは750ナノメートル超、最も好ましくは1000ナノメートル超の最小厚さを全体的に有する金属被覆を形成する。
【0018】
一実施例では、テキスタイル上に堆積される金属粒子は、1平方メートル当たり300ミリグラム未満、好ましくは1平方メートル当たり200ミリグラム未満、より好ましくは1平方メートル当たり100ミリグラム未満、さらに好ましくは1平方メートル当たり50ミリグラム未満、さらに好ましくは1平方メートル当たり30ミリグラム未満、さらに好ましくは1平方メートル当たり10ミリグラム未満、最も好ましくは1平方メートル当たり5ミリグラム未満の重さを有する金属被覆を形成する。
【0019】
一実施例では、テキスタイル上に堆積される金属粒子は、1平方メートル当たり100マイクログラム超、好ましくは1平方メートル当たり200マイクログラム超、最も好ましくは1平方メートル当たり300マイクログラム超の重さを有する金属被覆を形成する。
【0020】
一実施例では、金属板は、輪郭部材によって構成された枠内に配置され、各輪郭部材は、輪郭部材の部屋向き側を輪郭部材の建物向き側と接続する丸み付き外側縁部を有し、テキスタイルは、輪郭部材の丸み付き外側縁部の周りで曲げられ、テキスタイルの縁部が、少なくとも1つのばね部材により、輪郭部材の建物向き側に好ましくは弾性的に固定される。したがって、金属板の対向する縁部間でテキスタイルに張力をかけることを最適化することができ、それにより、テキスタイルを通して金属板内の穿孔が目に見えることが、さらによく防がれる。さらに、金属板は、部屋側から見たときにテキスタイル内に完全に隠され得る。
【0021】
構造的に特に有利な実施例では、テキスタイルの各縁部は、対応する輪郭部材の建物向き側にある軌道内に配置されるブラケットを備え、ブラケットは、金属板の対向する縁部間でテキスタイルに張力をかけるために、軌道内で横へばね付勢される。したがって、金属板の対向する縁部間でテキスタイルに張力をかけることを、さらにもっと最適化することができ、それにより、テキスタイルを通して金属板内の穿孔が目に見えることを、さらによく防ぐことができる。
【0022】
構造的に特に有利な実施例では、金属板の各縁部は、金属板の部屋向き表面が、対応する輪郭部材の丸み付き外側縁部との滑らかな移行部を形成する前述の輪郭部材の部屋向き側の一部分と同一平面になるように、前述の輪郭部材の凹部内に配置される。
【0023】
一実施例では、各輪郭部材は、金属板の部屋向き表面の平面にまたがらない。したがって、テキスタイルが金属板に均一に接していることを確実とすることができ、それにより、全体的に部屋に面するテキスタイルの第2の表面がさらに平滑になることが保証され得る。
【0024】
一実施例では、金属板は、部屋から裏側の吸音パネルへの音波の伝達を可能にするために、穿孔される。
【0025】
一実施例では、金属板は、前述の板とテキスタイルとの間の接触を確実とするために、張力をかけられるテキスタイルの自然な弛みよりも大きい3次元的な反りを作り出すように変形される。それにより、全体的に部屋に面するテキスタイルの第2の表面がさらに平滑になることが保証され得る。
【0026】
一実施例では、金属板は、テキスタイルを張力がかけられた時点で工学的形状に導くために、3次元的な輪郭に形成される。
【0027】
一実施例では、テキスタイルの第2の表面は、少なくとも実質的に金属粒子を含まない。テキスタイルの全体的に部屋に面する第2の表面を少なくとも実質的に金属粒子を含まない状態に維持することにより、テキスタイルと部屋との間の熱輻射も、向上させる又は最適化することができ、さらに、様々なテキスタイル構造と色との間の十分な選択肢が存在し得る。
【0028】
次に、非常に概略的な図面を参照しながら、実施例の実例を用いて、本発明を以下により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明による熱作動型建物パネルの一実施例の一部分の断面図である。
【
図2】
図1の熱作動型建物パネルの部分の上方からの斜視図である。
【
図3】
図1の熱作動型建物パネルの部分の分解組立図である。
【
図4】
図1の熱作動型建物パネルの輪郭部材の一部分の分解組立図である。
【
図5】
図1の熱作動型建物パネルの輪郭部材の一部分の断面斜視図である。
【
図6】本発明による熱作動型建物パネルの熱的性能を示す比較試験結果の図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1及び2は、本発明による熱作動型建物パネル1の実施例の一部を示す。熱作動型建物パネル1は、部屋の優勢な輻射加熱又は輻射冷却を実現するために、示されていない部屋の天井又は壁に取り付けられるように構成される。熱作動型建物パネル1は、部屋向き表面3及び建物向き表面4を有する金属板2を含む。冷却媒体又は加熱媒体を搬送するための熱交換器チューブ5が、金属板2の温度を制御するために金属板2の建物向き表面4と伝熱接触しており、それにより、金属板2は、対流及び優勢な輻射を通じて、部屋内の周囲環境と熱を交換することができる。熱交換器チューブ5は、熱伝導性ブラケット6により金属板2の建物向き表面4上に取り付けられる。熱伝導性ブラケット6は、金属板2の建物向き表面4上に直接に平らに取り付けられる下側を含む平坦部7を有する。さらに、熱伝導性ブラケット6は、平坦部7の上側上で一体化され且つ熱交換器チューブ5の挿入のための上部開口部を有する、部分的円形部8を有し、熱交換器チューブ5は、部分的円形部8内にぴったり嵌合する。それにより、効率的な伝熱接触が、熱交換器チューブ5と金属板2との間で実現される。
【0031】
テキスタイル9が、金属板2の部屋向き表面3上に配置され、且つ、全体的に金属板2に接触する第1の表面10、及び、全体的に前述の部屋から見える第2の表面11を有する。テキスタイル9は、金属板2の対向する縁部12間で張力をかけられる。テキスタイル9と金属板2との間の効率的な熱伝導を提供するために、テキスタイル9の第1の表面10は、テキスタイル9上への金属粒子の堆積によって金属化される。例えば、一実施例では、テキスタイル9と部屋との間の効率的な熱輻射を確実にするために、テキスタイル9の第2の表面11は、少なくとも実質的に金属粒子を含まない。それにより、様々なテキスタイル表面構造と色との間の十分な選択肢も提供され得る。
【0032】
部屋内の音響減衰を提供するために、図に示された実施例では、金属板2の部屋向き表面3から建物向き表面4への音のアクセスのための複数の穿孔26が、金属板2内に配置される。有孔の金属板2は、部屋から裏側の示されていない吸音パネルへの音波の伝達を可能にし得る。これらの穿孔26の数、大きさ、及び形状は、金属板2の建物向き表面4の上方の空洞の体積、並びに前述の空洞内の示されていない制振材料の存在可能性及び音響的特性と一緒に、熱作動型建物パネル1の音響減衰特性に影響を及ぼし得る。さらに、音響減衰特性は、テキスタイル9の構造の適切な選択によって影響される可能性があり、したがって、金属板2の部屋向き表面3に衝突する音波の音響減衰が、それ自体よく知られているように特に高い周波数において達成され得る。
【0033】
テキスタイル9の第1の表面10は、テキスタイル9上への金属粒子の真空堆積によって金属化されることが好ましいが、溶射などの様々な被覆方法が用いられてもよい。
【0034】
真空被覆は、少なくとも実質的に、テキスタイル9上への金属粒子の真空堆積が行われる堆積チャンバ内に意図的に導入される元素又は分子のみを含み、それにより、被覆の高い品質及び再現性を保証する。
【0035】
真空堆積は、真空金属被覆法としても知られており、熱蒸発ソースからの材料がソースとテキスタイル9との間の空間内の気体分子と衝突することなしにテキスタイル9に到達するプロセスである。これは、熱による金属材料の蒸発、及び、部分的又は完全な真空内でのテキスタイル表面上への金属蒸気の凝縮によって行われ得る。真空堆積を使用することにより、蒸発されるべき材料は、任意の形態及び純度の固体であってよい。比較すると、テキスタイル金属被覆法によれば、金属粒子がテキスタイル表面上に堆積され、それにより金属被覆されたファブリックが作り出されるが、一方で、金属貼付(metal application)として一般に知られるものによれば、輝く効果を得るために、金属糸、金属箔、金属薄板などの金属材料がファブリック上に直接付着されることが、留意される。テキスタイル金属被覆法によれば、基礎のテキスタイル材料は、例えば外観などの基本的なテキスタイル材料が維持される。上述のように、本発明によれば、テキスタイル9は、テキスタイル9上への金属粒子の真空堆積によって金属化される。
【0036】
或いは、テキスタイル9の第1の表面10は、テキスタイル9上への金属粒子のイオンめっきによって金属化される。イオンめっきは、テキスタイル上への蒸発金属粒子の接着により金属被覆が作製される物理蒸着技法である。被覆されるべきテキスタイルは、金属材料の分子を蒸発させるために、加熱及び低速アークの適用により、金属材料とともに不作動ガス内に配置される。金属被覆は、テキスタイル表面上での加速されたイオン化金属粒子の衝撃によって生成される。この技術は、真空堆積と比較すると、より高い密度及びより強力な接着力を有し得る。
【0037】
或いは、テキスタイル9の第1の表面10は、テキスタイル9上への金属粒子の電気めっきによって金属化され、電気めっきは、電着としても知られている。電気めっきによれば、導電性テキスタイル材料が、電流を用いて金属粒子の層で被覆される。この層は、厚く、硬く、且つ重い金属の被膜を、テキスタイル上に作り出すことができる。電気めっきプロセスは、電解質と2つの電極とを含む電解槽内で行われる。陽極(正の電解質)は、被覆金属によって形成され、陰極(負の電解質)は、被覆されるべき部品である。
【0038】
或いは、テキスタイル9の第1の表面10は、テキスタイル9上への金属粒子の無電解めっきによって金属化される。
【0039】
テキスタイル9上に堆積される金属粒子は、主に又は完全にアルミニウムによって形成されることが好ましい。それにより、テキスタイル9の第1の表面10上に堆積される金属被覆の比較的高い熱伝導性を確実とすることができ、それにより、テキスタイル9と金属板2との間の熱伝導を最大化することができる。さらに、アルミニウムは世界中で最も反射性のある金属のうちの1つであるので、テキスタイル9を通過する光の伝播の非常に効率的な阻止を金属被覆によって達成することができ、それにより、テキスタイル9を通して金属板2内の穿孔26が目に見えることを、さらによく防ぐことができる。
【0040】
テキスタイル9上に堆積される金属粒子は、テキスタイル9の第1の表面10の構造内に一体化される金属被覆を形成することが好ましい。それにより、熱がテキスタイル9の内部構造内へ又は内部構造の外へさらに良好に運ばれるので、特に、テキスタイル9の第1の表面10上に堆積される金属被覆の熱伝導性がさらに一層強化され得る。
【0041】
一実施例では、テキスタイル9上に堆積される金属粒子は、1000マイクロメートル未満、好ましくは750マイクロメートル未満、より好ましくは500マイクロメートル未満、さらに好ましくは250マイクロメートル未満、さらに好ましくは150マイクロメートル未満、さらに好ましくは50マイクロメートル未満、最も好ましくは25マイクロメートル未満の最大厚さを全体的に有する金属被覆を形成する。
【0042】
一実施例では、テキスタイル9上に堆積される金属粒子は、500ナノメートル超、好ましくは750ナノメートル超、最も好ましくは1000ナノメートル超の最小厚さを全体的に有する金属被覆を形成する。
【0043】
一実施例では、テキスタイル9上に堆積される金属粒子は、1平方メートル当たり300ミリグラム未満、好ましくは1平方メートル当たり200ミリグラム未満、より好ましくは1平方メートル当たり100ミリグラム未満、さらに好ましくは1平方メートル当たり50ミリグラム未満、さらに好ましくは1平方メートル当たり30ミリグラム未満、さらに好ましくは1平方メートル当たり10ミリグラム未満、最も好ましくは1平方メートル当たり5ミリグラム未満の重さを有する金属被覆を形成する。
【0044】
一実施例では、テキスタイル9上に堆積される金属粒子は、1平方メートル当たり100マイクログラム超、好ましくは1平方メートル当たり200マイクログラム超、最も好ましくは1平方メートル当たり300マイクログラム超の重さを有する金属被覆を形成する。
【0045】
図1及び2に部分的に示されるように、金属板2は、輪郭部材14によって構成された枠13内に配置される。各輪郭部材14は、輪郭部材14の部屋向き側16を輪郭部材14の建物向き側17と接続する丸み付き外側縁部15を有する。テキスタイル9は、輪郭部材14の丸み付き外側縁部15の周りで曲げられ、テキスタイル9の縁部18が、少なくとも1つのばね部材19により、輪郭部材14の建物向き側17に弾性的に固定される。テキスタイル9の各縁部18は、対応する輪郭部材14の建物向き側17にある軌道21内に配置されるブラケット20を備え、ブラケット20は、金属板2の対向する縁部12間でテキスタイル9に張力をかけるために、少なくとも1つのばね部材19により、軌道21内で横へばね付勢される。ばね部材19は、細長い可撓性の輪の形態を有する。図に示されるように、テキスタイル9の縁部18は、ブラケット20内で長手方向に延在する歯付き軌道30内に固定され、歯付き軌道30内では、ばねの形態をした保持部材22が、歯付き軌道30に押し付けられ、それにより、テキスタイル縁部18を歯付き軌道30の歯付き壁に接触させて挟む。
【0046】
図に示されるように、金属板2の各縁部12は、金属板2の部屋向き表面3が、対応する輪郭部材14の部屋向き側16の一部分24と同一平面になるように、前述の輪郭部材14の凹部23内に配置される。前述の部分24は、前述の輪郭部材14の丸み付き外側縁部15との滑らかな移行部を形成する。さらに、各輪郭部材14は金属板2の部屋向き表面3の平面にまたがらないこと、すなわち、金属板2と同一平面になる前述の部分24はそれが一体化される丸み付き外側縁部15に到達するまで金属板2の部屋向き表面3の続きとして延在することが、留意される。したがって、テキスタイル9が金属板2に均一に接していることを確実とすることができ、それにより、全体的に部屋に面するテキスタイル9の第2の表面11がさらに平滑になることが保証され得る。
【0047】
輪郭部材14によって構成される枠13は、熱作動型建物パネル1の中央要素27上及びその周りに配置されてもよく、ここで、各輪郭部材14は、前述の中央要素27の上面上を把持する上部取付けフランジ28と、前述の中央要素27の側面に接する内壁29とを有する。
【0048】
輪郭部材14によって構成される枠13は、部屋の示されていない天井又は壁上に取り付けられて
図1に示されるような各輪郭部材14の取付け軌道25に係合する、示されていない適切な取付けブラケットにより、前述の天井又は壁に取り付けられ得る。
【0049】
金属板2の対向する縁部12間で張力をかけられるテキスタイル9は、天然又は人工の繊維、ヤーン、若しくは糸によって形成された柔軟な材料の形態をした、不織布又は織布であってよい。テキスタイル9は、それを通して空気が拡散することを可能にする材料又は構造のものであることが好ましい。
【0050】
一実施例では、金属板2は、前述の板2とテキスタイル9との間の接触を確実とするために、張力をかけられるテキスタイルの自然な弛みよりも大きい3次元的な反りを作り出すように変形される。
【0051】
一実施例では、金属板2は、テキスタイル9を張力がかけられた時点で工学的形状に導くために、3次元的な輪郭に形成される。
【0052】
比較試験結果
図6は、テキスタイルを含まない従来技術のパネル及び被覆されていないテキスタイルを含むパネルのそれぞれと比較したときの本発明による熱作動型建物パネルの相対的な熱的性能を、グラフで示す。グラフのX軸は、室温と熱作動型建物パネルの熱交換器チューブを循環する水の平均温度との間の差を示す。グラフのY軸は、相対的性能をパーセントで示す。
【0053】
図6中の曲線31によって示されるように、金属板を覆ういかなるテキスタイルも含まない従来技術の熱作動型建物パネルの測定された相対的性能が、100%に設定された。さらに、曲線32は、張力をかけられたテキスタイルにより金属板が覆われた熱作動型建物パネルの測定された相対的性能を示し、このテキスタイルは、いかなる金属によっても被覆されていない。見て取れるように、後者のパネルの相対的性能は、実質的に、いかなるテキスタイルも含まない従来技術の熱作動型建物パネルの相対的性能の65から67%の間まで低下している。最後に、曲線33は、張力をかけられたテキスタイルにより金属板が覆われた本発明による熱作動型建物パネルの測定された相対的性能を示し、この熱作動型建物パネルでは、全体的に金属板に接触するテキスタイル9の第1の表面10は、テキスタイル9上へのアルミニウム粒子の堆積によって金属化されており、全体的に部屋から見えるテキスタイル9の第2の表面11は、少なくとも実質的に金属粒子を含まない。見て取れるように、本発明による熱作動型建物パネルの相対的性能は、いかなるテキスタイルも含まない従来技術の熱作動型建物パネルの相対的性能の91から100%の間までわずかに低下したに過ぎない。結論として、比較試験結果は、本発明によれば平滑且つ均一なテキスタイル表面を熱作動型建物パネルに提供するとともに効率的な熱的性能を達成することが可能であることを示す。
図6には示されていない比較試験の別の結果は、本発明による熱作動型建物パネルの金属板2内の穿孔26は、テキスタイルを通して見ることができないが、いかなる金属によっても被覆されていない張力をかけられたテキスタイルによって金属板が覆われている、試験された熱作動型建物パネルでは、穿孔はテキスタイルを通して実際に目に見えるということである。曲線32、33によってそれぞれ示された2つの異なる熱作動型建物パネルの間にはテキスタイルの金属化以外の違いはないことが、留意される。
【符号の説明】
【0054】
1 熱作動型建物パネル
2 金属板
3 金属板の部屋向き表面
4 建物向き表面金属板
5 熱交換器チューブ
6 熱伝導性ブラケット
7 熱伝導性ブラケットの平坦部
8 熱伝導性ブラケットの部分的円形部
9 テキスタイル
10 テキスタイルの第1の表面
11 テキスタイルの第2の表面
12 金属板の対向する縁部
13 枠
14 輪郭部材
15 輪郭部材の丸み付き外側縁部
16 輪郭部材の部屋向き側
17 輪郭部材の建物向き側
18 テキスタイルの縁部
19 ばね部材
20 ブラケット
21 軌道
22 保持部材
23 凹部
24 輪郭部材の部屋向き側の一部分
25 輪郭部材の取付け軌道
26 金属板内の穿孔
27 熱作動型建物パネルの中央要素
28 輪郭部材の取付けフランジ
29 輪郭部材の内壁
30 ブラケットの歯付き軌道
31 テキスタイルを含まない従来技術のパネルの相対的性能
32 被覆されていないテキスタイルを含むパネルの相対的性能
33 金属被覆されたテキスタイルを含む本発明によるパネルの相対的性能
【手続補正書】
【提出日】2019年4月26日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部屋の天井又は壁に取り付けられるように構成され、且つ、部屋向き表面(room−facing surface)及び建物向き表面(building−facing surface)を有する金属板を含む、熱的に作動される建物パネル(以下、熱作動型建物パネル)であって、冷却媒体又は加熱媒体を搬送するための熱交換器チューブが、金属板の建物向き表面と伝熱接触しており、テキスタイルが、金属板の部屋向き表面上に配置され、テキスタイルが、全体的に金属板に接触する第1の表面、及び、全体的に前述の部屋から見える第2の表面を有する、熱作動型建物パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、金属板と、所望の室温を得るために加熱媒体又は冷却媒体が流れる柔軟なチューブを担持する支持構造とからなる、熱天井パネルを開示している。チューブは、マット形状とされ、且つ、直接金属板上に緩く位置する。音の通過のための複数の円形穿孔が、金属板内に形成され、マットの形態の吸音層が、金属板上又は柔軟なチューブ状に直接設置される。打ち抜き部分を備えた金属板の下側に吸音細孔層が適用されるという点で、改善された遮音性も達成され得ることができ、この層は、事実上、空気の通過を妨げない。しかし、吸音細孔層と金属板との間の熱伝導は、比較的低くなる可能性があり、したがって、熱天井パネルの効率は、吸音細孔層の適用によって低下され得る。さらに、吸音細孔層は、金属板の表面に当接するので、金属板内の円形穿孔の縁部が吸音細孔層の表面に影響を及ぼし、その結果円形穿孔が吸音細孔層を通して目に見えるのを回避することが、難しいかさらには不可能な場合がある。さらに、光が吸音細孔層を通してある程度まで伝播するので、伝播した光は、金属板により吸音細孔層を通して反射されることになる。しかし、光は、金属板内の円形穿孔において異なる形で反射され、そのため、円形穿孔もまた、こうした理由で吸音細孔層を通して目に見えることになる。したがって、熱天井パネルの審美的外観は、悪影響を受ける可能性がある。
【0003】
特許文献2は、有孔金属パネルを含む部屋天井の上面上に固定される薄いシートを開示している。前述のシートは、音響減衰をごくわずかな程度だけ減少させ、且つ、部屋天井の耐火性を大幅に向上させる。シートが金属パネル内の穿孔の至近距離において固定されていない場合、又は、シートが穿孔の領域内にわずかに拡張若しくは伸長されている場合、音響減衰は、事実上減少しない。この伸長は、のり付けされたシート上でフォーム・ロールを駆動することによって得ることができ、それにより、シートは、穴にある程度押し込まれて、塑性的に引き伸ばされる。所望されるならば、フォーム・ロールはまた、シートが再び押し上げられるが伸長は維持されるように、引き続き金属パネルの下側にわたって移動され得る。加熱媒体又は冷却媒体が流れるプラスチック・パイプが、シートにわたって延びてもよい。すると、シートは、プラスチック・パイプのための遮蔽物としてさらに機能する。プラスチック・パイプは、マットに組み立てられるか、又は個別に敷かれ得る。それらは、熱伝導接着剤によりフィルムに付着され、また、フィルムと金属板との間の接着剤は、同様に熱伝導性であることが好ましく、その結果、プラスチック・パイプと金属板との間で良好な熱移動が生じる。この目的のために、フォイルはまた、良好な熱伝導性を有し、さらにプラスチック・チューブが穴を通して目に見えることがないように不透明である。アルミニウムが、これらの要求に適合する。天井からの良好な熱輻射を達成するために、フォイルは、下側上に色被覆を備える。しかし、審美的外観上の理由で、穿孔が目に見えるように有孔金属パネルがそのまま露出されることが、有利な場合がある。
【0004】
特許文献3は、部屋向き側上に有孔カバー層が付いた蜂の巣形合成板を備える、つり天井のための平坦な表面パネルを開示している。表面パネルは、熱パネルの形態を有し得る。部屋に面する有孔カバー層のおかげで、熱パネルの特に高い吸音能力が達成され得る。吸音能力をさらに向上させるために、蜂の巣形合成板の有孔カバー層の部屋向き側は、音響フリース及び/又は開孔被覆(open−pore coating)、例えば開孔した石膏若しくは塗装の層又は開孔鉱物被覆をさらに備えてもよい。しかし、上述のように、このタイプの表面パネルは、音響フリースなどと有孔カバー層との間の熱伝導性が比較的低くなり得ること、及び、カバー層の穿孔が音響フリースなどを通して目に見えるのを回避することが難しいかさらには不可能な場合があることといった欠点を有し得る。
【0005】
特許文献4は、テキスタイル材料を高真空において金属の蒸気に曝し、それによりそのように金属化されるテキスタイル材料が摂氏100度を超える温度で加熱されることによる、特にセルロース系繊維で作られたテキスタイルを金属化する方法を開示している。
【0006】
特許文献5は、部屋に面し、熱交換媒体を導くための流路が組み込まれた金属板からなる、特に部屋を冷却するための平面熱交換要素を開示している。テキスタイル材料は、部屋に面する金属板の側面を覆ってもよい。
【0007】
特許文献6は、基材と、その外部表面で多層膜コーティングとを含む複合材シートを開示し、コーティングは、金属層と、オレフィン基及びイソシアネート又はシラン基などの水分硬化性基を含む重合性組成物を含む前駆体から形成される外部ポリマー層とを含む。ポリマー層の機能は、金属層を腐食から保護することを含む。複合材シートは、様々な建築構造の態様、特にルーフ及びウォールシステムで有用である。複合材シートの高度に反射する金属化表面は、低放射率表面を提供し、これは遮断性能を向上させ、ウォール及びルーフシステムのエネルギー効率を改善し、したがって、建築所有者が負担する光熱費を低下させる。複合材シートは、好ましくは、ウォール又はルーフシステムで、金属化側面がエアスペースに隣接するように設置される。複合材シートの高い水蒸気透過性は、複合材シートを通して水蒸気が通過することを可能にし、それによって、エアスペースで分散され、したがって、遮断材での水分凝縮を防止する。
【0008】
特許文献7は、金属で被覆されたプラスチック又は合成材料のウェブを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0299909号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第4335654号明細書
【特許文献3】独国実用新案第202005010524号明細書
【特許文献4】英国特許出願公開第796,138号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第0452558号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2013/0122769号明細書
【特許文献7】独国実用新案第1951130号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、熱的に効率的であり、それと同時にテキスタイルを通して目に見える穿孔を含まない滑らかで一様なテキスタイル表面を有する、熱作動型建物パネルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を考慮して、テキスタイルは、金属板の対向する縁部間で張力をかけられ、テキスタイルの第1の表面は、テキスタイル上への金属粒子の堆積によって金属化される。
【0012】
テキスタイル上への金属粒子の堆積により、熱伝導性金属被覆がテキスタイルの第1の表面の構造全体に一体化され、それにより、テキスタイルと金属板との間の熱伝導性を大きく高めることができる。金属板の対向する縁部間でテキスタイルに張力をかけること、及び、テキスタイルの第1の表面に一体化された金属被覆によりテキスタイルを通過する光の伝播を阻止することにより、テキスタイル表面を一様に配置することができ、また、テキスタイルを通して金属板内の穿孔が目に見えることを効果的に防ぐことができる。
【0013】
一実施例では、テキスタイルの第1の表面は、テキスタイル上への金属粒子の真空堆積によって金属化される。したがって、蒸発されるべき材料は、任意の形態及び純度の固体であってよい。真空被覆は、一般に、堆積チャンバ内に意図的に導入される元素又は分子のみを含み、それにより、被覆の高い品質及び再現性を保証する。
【0014】
一実施例では、テキスタイルの第1の表面は、イオンめっきの形態でのテキスタイル上への金属粒子の堆積によって金属化される。それにより、真空堆積と比較して、被覆のより高い密度及びより強力な接着が達成され得る。
【0015】
一実施例では、テキスタイルの第1の表面は、電気めっきの形態でのテキスタイル上への金属粒子の堆積によって金属化される。それにより、厚く、硬く、且つ重い被覆が得られ得る。
【0016】
一実施例では、テキスタイルの第1の表面は、無電解めっきの形態でのテキスタイル上への金属粒子の堆積によって金属化される。したがって、電気めっきと比較すると、電場がないことは、被覆の均一な厚さに寄与し得る。
【0017】
一実施例では、テキスタイル上に堆積される金属粒子は、主に又は完全にアルミニウムによって形成される。それにより、テキスタイルの第1の表面上に堆積される金属被覆の比較的高い熱伝導性を確実とすることができ、それにより、テキスタイルと金属板との間の熱伝導が最大化され得る。さらに、アルミニウムは世界中で最も反射性のある金属のうちの1つであるので、テキスタイルを通過する光の伝播の非常に効率的な阻止を金属被覆によって達成することができ、それにより、テキスタイルを通して金属板内の穿孔が目に見えることを、さらによく防ぐことができる。
【0018】
一実施例では、テキスタイル上に堆積される金属粒子は、テキスタイルの第1の表面の構造内に一体化される金属被覆を形成する。それにより、熱がテキスタイルの内部構造の中又は外へさらによく運ばれ得るので、特に、テキスタイルの第1の表面上に堆積される金属被覆の熱伝導性が、さらにもっと強化され得る。
【0019】
一実施例では、テキスタイル上に堆積される金属粒子は、1000マイクロメートル未満、好ましくは750マイクロメートル未満、より好ましくは500マイクロメートル未満、さらに好ましくは250マイクロメートル未満、さらに好ましくは150マイクロメートル未満、さらに好ましくは50マイクロメートル未満、最も好ましくは25マイクロメートル未満の最大厚さを全体的に有する金属被覆を形成する。
【0020】
一実施例では、テキスタイル上に堆積される金属粒子は、500ナノメートル超、好ましくは750ナノメートル超、最も好ましくは1000ナノメートル超の最小厚さを全体的に有する金属被覆を形成する。
【0021】
一実施例では、テキスタイル上に堆積される金属粒子は、1平方メートル当たり300ミリグラム未満、好ましくは1平方メートル当たり200ミリグラム未満、より好ましくは1平方メートル当たり100ミリグラム未満、さらに好ましくは1平方メートル当たり50ミリグラム未満、さらに好ましくは1平方メートル当たり30ミリグラム未満、さらに好ましくは1平方メートル当たり10ミリグラム未満、最も好ましくは1平方メートル当たり5ミリグラム未満の重さを有する金属被覆を形成する。
【0022】
一実施例では、テキスタイル上に堆積される金属粒子は、1平方メートル当たり100マイクログラム超、好ましくは1平方メートル当たり200マイクログラム超、最も好ましくは1平方メートル当たり300マイクログラム超の重さを有する金属被覆を形成する。
【0023】
一実施例では、金属板は、輪郭部材によって構成された枠内に配置され、各輪郭部材は、輪郭部材の部屋向き側を輪郭部材の建物向き側と接続する丸み付き外側縁部を有し、テキスタイルは、輪郭部材の丸み付き外側縁部の周りで曲げられ、テキスタイルの縁部が、少なくとも1つのばね部材により、輪郭部材の建物向き側に好ましくは弾性的に固定される。したがって、金属板の対向する縁部間でテキスタイルに張力をかけることを最適化することができ、それにより、テキスタイルを通して金属板内の穿孔が目に見えることが、さらによく防がれる。さらに、金属板は、部屋側から見たときにテキスタイル内に完全に隠され得る。
【0024】
構造的に特に有利な実施例では、テキスタイルの各縁部は、対応する輪郭部材の建物向き側にある軌道内に配置されるブラケットを備え、ブラケットは、金属板の対向する縁部間でテキスタイルに張力をかけるために、軌道内で横へばね付勢される。したがって、金属板の対向する縁部間でテキスタイルに張力をかけることを、さらにもっと最適化することができ、それにより、テキスタイルを通して金属板内の穿孔が目に見えることを、さらによく防ぐことができる。
【0025】
構造的に特に有利な実施例では、金属板の各縁部は、金属板の部屋向き表面が、対応する輪郭部材の丸み付き外側縁部との滑らかな移行部を形成する前述の輪郭部材の部屋向き側の一部分と同一平面になるように、前述の輪郭部材の凹部内に配置される。
【0026】
一実施例では、各輪郭部材は、金属板の部屋向き表面の平面にまたがらない。したがって、テキスタイルが金属板に均一に接していることを確実とすることができ、それにより、全体的に部屋に面するテキスタイルの第2の表面がさらに平滑になることが保証され得る。
【0027】
一実施例では、金属板は、部屋から裏側の吸音パネルへの音波の伝達を可能にするために、穿孔される。
【0028】
一実施例では、金属板は、前述の板とテキスタイルとの間の接触を確実とするために、張力をかけられるテキスタイルの自然な弛みよりも大きい3次元的な反りを作り出すように変形される。それにより、全体的に部屋に面するテキスタイルの第2の表面がさらに平滑になることが保証され得る。
【0029】
一実施例では、金属板は、テキスタイルを張力がかけられた時点で工学的形状に導くために、3次元的な輪郭に形成される。
【0030】
一実施例では、テキスタイルの第2の表面は、少なくとも実質的に金属粒子を含まない。テキスタイルの全体的に部屋に面する第2の表面を少なくとも実質的に金属粒子を含まない状態に維持することにより、テキスタイルと部屋との間の熱輻射も、向上させる又は最適化することができ、さらに、様々なテキスタイル構造と色との間の十分な選択肢が存在し得る。
【0031】
次に、非常に概略的な図面を参照しながら、実施例の実例を用いて、本発明を以下により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明による熱作動型建物パネルの一実施例の一部分の断面図である。
【
図2】
図1の熱作動型建物パネルの部分の上方からの斜視図である。
【
図3】
図1の熱作動型建物パネルの部分の分解組立図である。
【
図4】
図1の熱作動型建物パネルの輪郭部材の一部分の分解組立図である。
【
図5】
図1の熱作動型建物パネルの輪郭部材の一部分の断面斜視図である。
【
図6】本発明による熱作動型建物パネルの熱的性能を示す比較試験結果の図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1及び2は、本発明による熱作動型建物パネル1の実施例の一部を示す。熱作動型建物パネル1は、部屋の優勢な輻射加熱又は輻射冷却を実現するために、示されていない部屋の天井又は壁に取り付けられるように構成される。熱作動型建物パネル1は、部屋向き表面3及び建物向き表面4を有する金属板2を含む。冷却媒体又は加熱媒体を搬送するための熱交換器チューブ5が、金属板2の温度を制御するために金属板2の建物向き表面4と伝熱接触しており、それにより、金属板2は、対流及び優勢な輻射を通じて、部屋内の周囲環境と熱を交換することができる。熱交換器チューブ5は、熱伝導性ブラケット6により金属板2の建物向き表面4上に取り付けられる。熱伝導性ブラケット6は、金属板2の建物向き表面4上に直接に平らに取り付けられる下側を含む平坦部7を有する。さらに、熱伝導性ブラケット6は、平坦部7の上側上で一体化され且つ熱交換器チューブ5の挿入のための上部開口部を有する、部分的円形部8を有し、熱交換器チューブ5は、部分的円形部8内にぴったり嵌合する。それにより、効率的な伝熱接触が、熱交換器チューブ5と金属板2との間で実現される。
【0034】
テキスタイル9が、金属板2の部屋向き表面3上に配置され、且つ、全体的に金属板2に接触する第1の表面10、及び、全体的に前述の部屋から見える第2の表面11を有する。テキスタイル9は、金属板2の対向する縁部12間で張力をかけられる。テキスタイル9と金属板2との間の効率的な熱伝導を提供するために、テキスタイル9の第1の表面10は、テキスタイル9上への金属粒子の堆積によって金属化される。例えば、一実施例では、テキスタイル9と部屋との間の効率的な熱輻射を確実にするために、テキスタイル9の第2の表面11は、少なくとも実質的に金属粒子を含まない。それにより、様々なテキスタイル表面構造と色との間の十分な選択肢も提供され得る。
【0035】
部屋内の音響減衰を提供するために、図に示された実施例では、金属板2の部屋向き表面3から建物向き表面4への音のアクセスのための複数の穿孔26が、金属板2内に配置される。有孔の金属板2は、部屋から裏側の示されていない吸音パネルへの音波の伝達を可能にし得る。これらの穿孔26の数、大きさ、及び形状は、金属板2の建物向き表面4の上方の空洞の体積、並びに前述の空洞内の示されていない制振材料の存在可能性及び音響的特性と一緒に、熱作動型建物パネル1の音響減衰特性に影響を及ぼし得る。さらに、音響減衰特性は、テキスタイル9の構造の適切な選択によって影響される可能性があり、したがって、金属板2の部屋向き表面3に衝突する音波の音響減衰が、それ自体よく知られているように特に高い周波数において達成され得る。
【0036】
テキスタイル9の第1の表面10は、テキスタイル9上への金属粒子の真空堆積によって金属化されることが好ましいが、溶射などの様々な被覆方法が用いられてもよい。
【0037】
真空被覆は、少なくとも実質的に、テキスタイル9上への金属粒子の真空堆積が行われる堆積チャンバ内に意図的に導入される元素又は分子のみを含み、それにより、被覆の高い品質及び再現性を保証する。
【0038】
真空堆積は、真空金属被覆法としても知られており、熱蒸発ソースからの材料がソースとテキスタイル9との間の空間内の気体分子と衝突することなしにテキスタイル9に到達するプロセスである。これは、熱による金属材料の蒸発、及び、部分的又は完全な真空内でのテキスタイル表面上への金属蒸気の凝縮によって行われ得る。真空堆積を使用することにより、蒸発されるべき材料は、任意の形態及び純度の固体であってよい。比較すると、テキスタイル金属被覆法によれば、金属粒子がテキスタイル表面上に堆積され、それにより金属被覆されたファブリックが作り出されるが、一方で、金属貼付(metal application)として一般に知られるものによれば、輝く効果を得るために、金属糸、金属箔、金属薄板などの金属材料がファブリック上に直接付着されることが、留意される。テキスタイル金属被覆法によれば、基礎のテキスタイル材料は、例えば外観などの基本的なテキスタイル材料が維持される。上述のように、本発明によれば、テキスタイル9は、テキスタイル9上への金属粒子の真空堆積によって金属化される。
【0039】
或いは、テキスタイル9の第1の表面10は、テキスタイル9上への金属粒子のイオンめっきによって金属化される。イオンめっきは、テキスタイル上への蒸発金属粒子の接着により金属被覆が作製される物理蒸着技法である。被覆されるべきテキスタイルは、金属材料の分子を蒸発させるために、加熱及び低速アークの適用により、金属材料とともに不作動ガス内に配置される。金属被覆は、テキスタイル表面上での加速されたイオン化金属粒子の衝撃によって生成される。この技術は、真空堆積と比較すると、より高い密度及びより強力な接着力を有し得る。
【0040】
或いは、テキスタイル9の第1の表面10は、テキスタイル9上への金属粒子の電気めっきによって金属化され、電気めっきは、電着としても知られている。電気めっきによれば、導電性テキスタイル材料が、電流を用いて金属粒子の層で被覆される。この層は、厚く、硬く、且つ重い金属の被膜を、テキスタイル上に作り出すことができる。電気めっきプロセスは、電解質と2つの電極とを含む電解槽内で行われる。陽極(正の電解質)は、被覆金属によって形成され、陰極(負の電解質)は、被覆されるべき部品である。
【0041】
或いは、テキスタイル9の第1の表面10は、テキスタイル9上への金属粒子の無電解めっきによって金属化される。
【0042】
テキスタイル9上に堆積される金属粒子は、主に又は完全にアルミニウムによって形成されることが好ましい。それにより、テキスタイル9の第1の表面10上に堆積される金属被覆の比較的高い熱伝導性を確実とすることができ、それにより、テキスタイル9と金属板2との間の熱伝導を最大化することができる。さらに、アルミニウムは世界中で最も反射性のある金属のうちの1つであるので、テキスタイル9を通過する光の伝播の非常に効率的な阻止を金属被覆によって達成することができ、それにより、テキスタイル9を通して金属板2内の穿孔26が目に見えることを、さらによく防ぐことができる。
【0043】
テキスタイル9上に堆積される金属粒子は、テキスタイル9の第1の表面10の構造内に一体化される金属被覆を形成することが好ましい。それにより、熱がテキスタイル9の内部構造内へ又は内部構造の外へさらに良好に運ばれるので、特に、テキスタイル9の第1の表面10上に堆積される金属被覆の熱伝導性がさらに一層強化され得る。
【0044】
一実施例では、テキスタイル9上に堆積される金属粒子は、1000マイクロメートル未満、好ましくは750マイクロメートル未満、より好ましくは500マイクロメートル未満、さらに好ましくは250マイクロメートル未満、さらに好ましくは150マイクロメートル未満、さらに好ましくは50マイクロメートル未満、最も好ましくは25マイクロメートル未満の最大厚さを全体的に有する金属被覆を形成する。
【0045】
一実施例では、テキスタイル9上に堆積される金属粒子は、500ナノメートル超、好ましくは750ナノメートル超、最も好ましくは1000ナノメートル超の最小厚さを全体的に有する金属被覆を形成する。
【0046】
一実施例では、テキスタイル9上に堆積される金属粒子は、1平方メートル当たり300ミリグラム未満、好ましくは1平方メートル当たり200ミリグラム未満、より好ましくは1平方メートル当たり100ミリグラム未満、さらに好ましくは1平方メートル当たり50ミリグラム未満、さらに好ましくは1平方メートル当たり30ミリグラム未満、さらに好ましくは1平方メートル当たり10ミリグラム未満、最も好ましくは1平方メートル当たり5ミリグラム未満の重さを有する金属被覆を形成する。
【0047】
一実施例では、テキスタイル9上に堆積される金属粒子は、1平方メートル当たり100マイクログラム超、好ましくは1平方メートル当たり200マイクログラム超、最も好ましくは1平方メートル当たり300マイクログラム超の重さを有する金属被覆を形成する。
【0048】
図1及び2に部分的に示されるように、金属板2は、輪郭部材14によって構成された枠13内に配置される。各輪郭部材14は、輪郭部材14の部屋向き側16を輪郭部材14の建物向き側17と接続する丸み付き外側縁部15を有する。テキスタイル9は、輪郭部材14の丸み付き外側縁部15の周りで曲げられ、テキスタイル9の縁部18が、少なくとも1つのばね部材19により、輪郭部材14の建物向き側17に弾性的に固定される。テキスタイル9の各縁部18は、対応する輪郭部材14の建物向き側17にある軌道21内に配置されるブラケット20を備え、ブラケット20は、金属板2の対向する縁部12間でテキスタイル9に張力をかけるために、少なくとも1つのばね部材19により、軌道21内で横へばね付勢される。ばね部材19は、細長い可撓性の輪の形態を有する。図に示されるように、テキスタイル9の縁部18は、ブラケット20内で長手方向に延在する歯付き軌道30内に固定され、歯付き軌道30内では、ばねの形態をした保持部材22が、歯付き軌道30に押し付けられ、それにより、テキスタイル縁部18を歯付き軌道30の歯付き壁に接触させて挟む。
【0049】
図に示されるように、金属板2の各縁部12は、金属板2の部屋向き表面3が、対応する輪郭部材14の部屋向き側16の一部分24と同一平面になるように、前述の輪郭部材14の凹部23内に配置される。前述の部分24は、前述の輪郭部材14の丸み付き外側縁部15との滑らかな移行部を形成する。さらに、各輪郭部材14は金属板2の部屋向き表面3の平面にまたがらないこと、すなわち、金属板2と同一平面になる前述の部分24はそれが一体化される丸み付き外側縁部15に到達するまで金属板2の部屋向き表面3の続きとして延在することが、留意される。したがって、テキスタイル9が金属板2に均一に接していることを確実とすることができ、それにより、全体的に部屋に面するテキスタイル9の第2の表面11がさらに平滑になることが保証され得る。
【0050】
輪郭部材14によって構成される枠13は、熱作動型建物パネル1の中央要素27上及びその周りに配置されてもよく、ここで、各輪郭部材14は、前述の中央要素27の上面上を把持する上部取付けフランジ28と、前述の中央要素27の側面に接する内壁29とを有する。
【0051】
輪郭部材14によって構成される枠13は、部屋の示されていない天井又は壁上に取り付けられて
図1に示されるような各輪郭部材14の取付け軌道25に係合する、示されていない適切な取付けブラケットにより、前述の天井又は壁に取り付けられ得る。
【0052】
金属板2の対向する縁部12間で張力をかけられるテキスタイル9は、天然又は人工の繊維、ヤーン、若しくは糸によって形成された柔軟な材料の形態をした、不織布又は織布であってよい。テキスタイル9は、それを通して空気が拡散することを可能にする材料又は構造のものであることが好ましい。
【0053】
一実施例では、金属板2は、前述の板2とテキスタイル9との間の接触を確実とするために、張力をかけられるテキスタイルの自然な弛みよりも大きい3次元的な反りを作り出すように変形される。
【0054】
一実施例では、金属板2は、テキスタイル9を張力がかけられた時点で工学的形状に導くために、3次元的な輪郭に形成される。
【0055】
比較試験結果
図6は、テキスタイルを含まない従来技術のパネル及び被覆されていないテキスタイルを含むパネルのそれぞれと比較したときの本発明による熱作動型建物パネルの相対的な熱的性能を、グラフで示す。グラフのX軸は、室温と熱作動型建物パネルの熱交換器チューブを循環する水の平均温度との間の差を示す。グラフのY軸は、相対的性能をパーセントで示す。
【0056】
図6中の曲線31によって示されるように、金属板を覆ういかなるテキスタイルも含まない従来技術の熱作動型建物パネルの測定された相対的性能が、100%に設定された。さらに、曲線32は、張力をかけられたテキスタイルにより金属板が覆われた熱作動型建物パネルの測定された相対的性能を示し、このテキスタイルは、いかなる金属によっても被覆されていない。見て取れるように、後者のパネルの相対的性能は、実質的に、いかなるテキスタイルも含まない従来技術の熱作動型建物パネルの相対的性能の65から67%の間まで低下している。最後に、曲線33は、張力をかけられたテキスタイルにより金属板が覆われた本発明による熱作動型建物パネルの測定された相対的性能を示し、この熱作動型建物パネルでは、全体的に金属板に接触するテキスタイル9の第1の表面10は、テキスタイル9上へのアルミニウム粒子の堆積によって金属化されており、全体的に部屋から見えるテキスタイル9の第2の表面11は、少なくとも実質的に金属粒子を含まない。見て取れるように、本発明による熱作動型建物パネルの相対的性能は、いかなるテキスタイルも含まない従来技術の熱作動型建物パネルの相対的性能の91から100%の間までわずかに低下したに過ぎない。結論として、比較試験結果は、本発明によれば平滑且つ均一なテキスタイル表面を熱作動型建物パネルに提供するとともに効率的な熱的性能を達成することが可能であることを示す。
図6には示されていない比較試験の別の結果は、本発明による熱作動型建物パネルの金属板2内の穿孔26は、テキスタイルを通して見ることができないが、いかなる金属によっても被覆されていない張力をかけられたテキスタイルによって金属板が覆われている、試験された熱作動型建物パネルでは、穿孔はテキスタイルを通して実際に目に見えるということである。曲線32、33によってそれぞれ示された2つの異なる熱作動型建物パネルの間にはテキスタイルの金属化以外の違いはないことが、留意される。
【符号の説明】
【0057】
1 熱作動型建物パネル
2 金属板
3 金属板の部屋向き表面
4 建物向き表面金属板
5 熱交換器チューブ
6 熱伝導性ブラケット
7 熱伝導性ブラケットの平坦部
8 熱伝導性ブラケットの部分的円形部
9 テキスタイル
10 テキスタイルの第1の表面
11 テキスタイルの第2の表面
12 金属板の対向する縁部
13 枠
14 輪郭部材
15 輪郭部材の丸み付き外側縁部
16 輪郭部材の部屋向き側
17 輪郭部材の建物向き側
18 テキスタイルの縁部
19 ばね部材
20 ブラケット
21 軌道
22 保持部材
23 凹部
24 輪郭部材の部屋向き側の一部分
25 輪郭部材の取付け軌道
26 金属板内の穿孔
27 熱作動型建物パネルの中央要素
28 輪郭部材の取付けフランジ
29 輪郭部材の内壁
30 ブラケットの歯付き軌道
31 テキスタイルを含まない従来技術のパネルの相対的性能
32 被覆されていないテキスタイルを含むパネルの相対的性能
33 金属被覆されたテキスタイルを含む本発明によるパネルの相対的性能
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部屋の天井又は壁に取り付けられるように構成され、且つ、部屋向き表面(3)及び建物向き表面(4)を有する金属板(2)を含む、熱作動型建物パネル(1)であって、冷却媒体又は加熱媒体を搬送するための熱交換器チューブ(5)が、前記金属板(2)の前記建物向き表面(4)と伝熱接触しており、テキスタイル(9)が、前記金属板(2)の前記部屋向き表面(3)上に配置され、前記テキスタイル(9)が、全体的に前記金属板(2)に接触する第1の表面(10)、及び、全体的に前記部屋から見える第2の表面(11)を有する、熱作動型建物パネル(1)であって、前記テキスタイル(9)が前記金属板(2)の対向する縁部(12)間で張力をかけられること、及び、前記テキスタイル(9)の前記第1の表面(10)が前記テキスタイル(9)上への金属粒子の堆積によって金属化されることを特徴とする、熱作動型建物パネル(1)。
【請求項2】
前記テキスタイル(9)の前記第1の表面(10)が、真空堆積、イオンめっき、電気めっき、又は無電解めっきの形態での前記テキスタイル(9)上への金属粒子の堆積によって金属化される、請求項1に記載の熱作動型建物パネル。
【請求項3】
前記テキスタイル(9)の前記第1の表面(10)が、前記テキスタイル(9)上への金属粒子の真空堆積によって金属化される、請求項1又は2に記載の熱作動型建物パネル。
【請求項4】
前記テキスタイル(9)上に堆積される前記金属粒子が、主に又は完全にアルミニウムによって形成される、請求項1から3までのいずれか一項に記載の熱作動型建物パネル。
【請求項5】
前記テキスタイル(9)上に堆積される前記金属粒子が、前記テキスタイル(9)の前記第1の表面(10)の構造内に一体化される金属被覆を形成する、請求項1から4までのいずれか一項に記載の熱作動型建物パネル。
【請求項6】
前記テキスタイル(9)上に堆積される前記金属粒子が、1000マイクロメートル未満、好ましくは750マイクロメートル未満、より好ましくは500マイクロメートル未満、さらに好ましくは250マイクロメートル未満、さらに好ましくは150マイクロメートル未満、さらに好ましくは50マイクロメートル未満、最も好ましくは25マイクロメートル未満の最大厚さを全体的に有する金属被覆を形成する、請求項1から5までのいずれか一項に記載の熱作動型建物パネル。
【請求項7】
前記テキスタイル(9)上に堆積される前記金属粒子が、500ナノメートル超、好ましくは750ナノメートル超、最も好ましくは1000ナノメートル超の最小厚さを全体的に有する金属被覆を形成する、請求項1から6までのいずれか一項に記載の熱作動型建物パネル。
【請求項8】
前記テキスタイル(9)上に堆積される前記金属粒子が、1平方メートル当たり300ミリグラム未満、好ましくは1平方メートル当たり200ミリグラム未満、より好ましくは1平方メートル当たり100ミリグラム未満、さらに好ましくは1平方メートル当たり50ミリグラム未満、さらに好ましくは1平方メートル当たり30ミリグラム未満、さらに好ましくは1平方メートル当たり10ミリグラム未満、最も好ましくは1平方メートル当たり5ミリグラム未満の重さを有する金属被覆を形成する、請求項1から7までのいずれか一項に記載の熱作動型建物パネル。
【請求項9】
前記テキスタイル(9)上に堆積される前記金属粒子が、1平方メートル当たり100マイクログラム超、好ましくは1平方メートル当たり200マイクログラム超、最も好ましくは1平方メートル当たり300マイクログラム超の重さを有する金属被覆を形成する、請求項1から8までのいずれか一項に記載の熱作動型建物パネル。
【請求項10】
前記金属板(2)が、輪郭部材(14)によって構成される枠(13)内に配置され、各輪郭部材(14)が、前記輪郭部材(14)の部屋向き側(16)を前記輪郭部材(14)の建物向き側(17)と接続する丸み付き外側縁部(15)を有し、前記テキスタイル(9)が、前記輪郭部材(14)の前記丸み付き外側縁部(15)の周りで曲げられ、前記テキスタイル(9)の縁部(18)が、少なくとも1つのばね部材(19)により、前記輪郭部材(14)の前記建物向き側(17)に好ましくは弾性的に固定される、請求項1から9までのいずれか一項に記載の熱作動型建物パネル。
【請求項11】
前記テキスタイル(9)の各縁部(18)が、対応する前記輪郭部材(14)の前記建物向き側(17)にある軌道(21)内に配置されるブラケット(20)を備え、前記ブラケット(20)が、前記金属板(2)の前記対向する縁部(12)間で前記テキスタイル(9)に張力をかけるために、前記軌道(21)内で横へばね付勢される、請求項10に記載の熱作動型建物パネル。
【請求項12】
前記金属板(2)の各縁部(12)が、前記金属板(2)の前記部屋向き表面(3)が、対応する輪郭部材(14)の前記丸み付き外側縁部(15)との滑らかな移行部を形成する前記輪郭部材(14)の前記部屋向き側(16)の一部分(24)と同一平面になるように、前記輪郭部材(14)の凹部(23)内に配置される、請求項10又は11に記載の熱作動型建物パネル。
【請求項13】
各輪郭部材(14)が、前記金属板(2)の前記部屋向き表面(3)の平面にまたがらない、請求項12に記載の熱作動型建物パネル。
【請求項14】
前記金属板(2)が、前記部屋から裏側の吸音パネルへの音波の伝達を可能にするために穿孔される、請求項1から13までのいずれか一項に記載の熱作動型建物パネル。
【請求項15】
前記テキスタイル(9)の前記第2の表面(11)が、少なくとも実質的に金属粒子を含まない、請求項1から14までのいずれか一項に記載の熱作動型建物パネル。
【国際調査報告】