特表2020-530274(P2020-530274A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-530274(P2020-530274A)
(43)【公表日】2020年10月22日
(54)【発明の名称】造血器腫瘍の処置
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/12 20060101AFI20200925BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20200925BHJP
   C12N 15/86 20060101ALI20200925BHJP
   C12N 15/861 20060101ALI20200925BHJP
   C12N 15/863 20060101ALI20200925BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20200925BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20200925BHJP
   C12N 15/869 20060101ALI20200925BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20200925BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20200925BHJP
   C07K 14/725 20060101ALI20200925BHJP
   C07K 7/06 20060101ALI20200925BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20200925BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20200925BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20200925BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20200925BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20200925BHJP
   A61K 35/761 20150101ALI20200925BHJP
   A61K 35/763 20150101ALI20200925BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20200925BHJP
   A61K 35/28 20150101ALI20200925BHJP
   A61K 38/08 20190101ALI20200925BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20200925BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20200925BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20200925BHJP
   A61K 38/17 20060101ALN20200925BHJP
【FI】
   C12N15/12ZNA
   C12N15/63 Z
   C12N15/86 Z
   C12N15/861 Z
   C12N15/863 Z
   C12N15/864 100Z
   C12N15/867 Z
   C12N15/869 Z
   C12P21/02 C
   C12N5/10
   C07K14/725
   C07K7/06
   A61P35/00
   A61P35/02
   A61P37/04
   A61K48/00
   A61K35/76
   A61K35/761
   A61K35/763
   A61K35/17 Z
   A61K35/28
   A61K38/08
   A61K39/00 H
   A61K39/39
   G01N33/68
   A61K38/17
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】71
(21)【出願番号】特願2019-572562(P2019-572562)
(86)(22)【出願日】2018年6月28日
(85)【翻訳文提出日】2020年2月26日
(86)【国際出願番号】NL2018050421
(87)【国際公開番号】WO2019004831
(87)【国際公開日】20190103
(31)【優先権主張番号】2020602
(32)【優先日】2018年3月16日
(33)【優先権主張国】NL
(31)【優先権主張番号】2019156
(32)【優先日】2017年6月30日
(33)【優先権主張国】NL
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】517065965
【氏名又は名称】アカデミス・ジーケンハイス・ライデン・ハー・オー・デー・エヌ・エルユーエムセー
【氏名又は名称原語表記】ACADEMISCH ZIEKENHUIS LEIDEN H.O.D.N. LUMC
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】マリーケ・フリフィウン
(72)【発明者】
【氏名】イェー・ハー・フレデリック・ファルケンブルフ
【テーマコード(参考)】
2G045
4B064
4B065
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
2G045AA26
2G045DA36
4B064AG20
4B064BJ12
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B064DA13
4B065AA90X
4B065AA93X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4B065CA46
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA07
4C084AA13
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA17
4C084BA18
4C084BA23
4C084BA44
4C084CA18
4C084DC50
4C084NA14
4C084ZB091
4C084ZB092
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB272
4C085AA03
4C085AA38
4C085BB01
4C085EE01
4C085EE06
4C085FF24
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG05
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB37
4C087BB44
4C087BB64
4C087BB65
4C087BC83
4C087CA04
4C087CA09
4C087NA14
4C087ZB09
4C087ZB26
4C087ZB27
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA15
4H045BA16
4H045CA40
4H045DA50
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
ΔNPM1陽性造血器腫瘍を有するヒト対象の処置に有用である新規核酸配列、ベクター、修飾細胞、ペプチドおよび医薬組成物が提供される。対応する方法および使用も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)CLAVEEVSL(配列番号1)、AVEEVSLRK(配列番号26)、CLAVEEVSLRK(配列番号27)、VEEVSLRK(配列番号28)およびAVEEVSLR(配列番号29)から選択されるペプチドに特異的に結合するTCRα鎖ポリペプチドのCDR3を含むポリペプチド;および/または
(b)CLAVEEVSL(配列番号1)、AVEEVSLRK(配列番号26)、CLAVEEVSLRK(配列番号27)、VEEVSLRK(配列番号28)およびAVEEVSLR(配列番号29)から選択されるペプチドに特異的に結合するTCRβ鎖ポリペプチドのCDR3を含むポリペプチド
をコードする、単離核酸配列。
【請求項2】
核酸配列が(a)および(b)両者をコードし、ここで、(a)および(b)が一体となってCLAVEEVSL(配列番号1)、AVEEVSLRK(配列番号26)、CLAVEEVSLRK(配列番号27)、VEEVSLRK(配列番号28)およびAVEEVSLR(配列番号29)から選択されるペプチドに特異的に結合する、請求項1に記載の単離核酸配列。
【請求項3】
コードされたポリペプチドがCLAVEEVSL(配列番号1)に特異的に結合する、請求項1または2に記載の単離核酸配列。
【請求項4】
(a)のCDR3がCAVTGARLMF(配列番号2)と少なくとも90%配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、請求項3に記載の単離核酸配列。
【請求項5】
(a)のCDR3が配列番号3または配列番号4の核酸配列によりコードされる、請求項4に記載の単離核酸配列。
【請求項6】
(b)のCDR3がCASSPGGLSNEQF(配列番号5)と少なくとも90%配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、請求項3〜5の何れかに記載の単離核酸配列。
【請求項7】
(b)のCDR3が配列番号6または配列番号7の核酸配列によりコードされる、請求項6に記載の単離核酸配列。
【請求項8】
(a)のCDR3が配列番号1に特異的に結合するTCRα鎖可変領域内であり、所望により(a)がTCRα鎖定常領域をさらに含む、請求項3〜7の何れかに記載の単離核酸配列。
【請求項9】
TCRα鎖可変領域が配列番号8と少なくとも90%配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、請求項8に記載の単離核酸配列。
【請求項10】
(a)のTCRα鎖可変領域が配列番号9または配列番号10の核酸配列によりコードされる、請求項9に記載の単離核酸配列。
【請求項11】
(b)のCDR3が配列番号1に特異的に結合するTCRβ鎖可変領域内であり、所望により(b)がTCRβ鎖定常領域をさらに含む、請求項3〜10の何れかに記載の単離核酸配列。
【請求項12】
TCRβ鎖可変領域が配列番号11と少なくとも90%配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、請求項11に記載の単離核酸配列。
【請求項13】
(b)のTCRβ鎖可変領域が配列番号12または配列番号13の核酸配列によりコードされる、請求項12に記載の単離核酸配列。
【請求項14】
(a)のCDR3が配列番号8と少なくとも90%配列同一性を有するTCRα鎖可変領域内であり、ここで、CDR3が配列番号2ののアミノ酸配列を有し、所望により(a)がTCRα鎖定常領域を含む、請求項3〜13の何れかに記載の単離核酸配列。
【請求項15】
TCRα鎖可変領域CDR1が配列番号14のアミノ酸配列を有し、TCRα鎖可変領域CDR2が配列番号15のアミノ酸配列を有する、請求項14に記載の単離核酸配列。
【請求項16】
(b)のCDR3が配列番号11と少なくとも90%配列同一性を有するTCRβ鎖可変領域内であり、ここで、CDR3が配列番号5ののアミノ酸配列を有し、所望により(b)がTCRβ鎖定常領域を含む、請求項3〜15の何れかに記載の単離核酸配列。
【請求項17】
TCRβ鎖可変領域CDR1が配列番号16のアミノ酸配列を有し、TCRβ鎖可変領域CDR2が配列番号17のアミノ酸配列を有する、請求項16に記載の単離核酸配列。
【請求項18】
ペプチドCLAVEEVSL(配列番号1)がシステイニル化されている、請求項1〜17の何れかに記載の単離核酸配列。
【請求項19】
核酸配列がT細胞受容体をコードする、請求項1〜18の何れかに記載の単離核酸配列。
【請求項20】
請求項1〜19の何れかに記載の核酸配列を含む、ベクター。
【請求項21】
ベクターがプラスミドまたはウイルスベクターであり、所望によりベクターがレトロウイルス、レンチウイルス、アデノ随伴ウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、カナリアポックスウイルス、ヘルペスウイルス、ミニサークルベクターおよび合成DNAまたはRNAからなる群から選択される、請求項20に記載のベクター。
【請求項22】
請求項1〜19の何れかに記載の核酸配列または請求項20または21に記載のベクターでトランスフェクトまたは形質導入された、修飾細胞。
【請求項23】
修飾細胞がCD8 T細胞、CD4 T細胞、NK細胞、NKT細胞、ガンマ−デルタT細胞、造血幹細胞、前駆細胞細胞、T細胞株またはNK−92細胞株からなる群から選択される、請求項22に記載の修飾細胞。
【請求項24】
修飾細胞がヒト細胞である、請求項22または23に記載の修飾細胞。
【請求項25】
(i)CLAVEEVSL(配列番号1)(ここで、アミノ酸システインはシステイニル化されている);
(ii)AVEEVSLRK(配列番号26);
(iii)CLAVEEVSLRK(配列番号27);
(iv)VEEVSLRK(配列番号28);および
(v)AVEEVSLR(配列番号29)
から選択されるアミノ酸配列を含む、単離ペプチド。
【請求項26】
CLAVEEVSLRK(配列番号27)のアミノ酸システインがシステイニル化されている、請求項25に記載のペプチド。
【請求項27】
ペプチドが20以下のアミノ酸を有する、請求項25または26に記載のペプチド。
【請求項28】
ペプチドが
(i)配列番号1(ここで、アミノ酸システインはシステイニル化されている);
(ii)配列番号26;
(iii)配列番号27;
(iv)VEEVSLRK(配列番号28);および
(v)AVEEVSLR(配列番号29)
から選択される配列からなる、請求項27に記載のペプチド。
【請求項29】
請求項25〜28の何れかに記載のペプチドをコードする、単離核酸配列。
【請求項30】
請求項29に記載の核酸配列を含む、ベクター。
【請求項31】
請求項1〜19の何れかに記載の核酸配列または請求項29、請求項20、21または30に記載のベクター、請求項22〜24の何れかに記載の修飾細胞または請求項25〜28の何れかに記載の単離ペプチドおよび薬学的に許容される添加物、アジュバント、希釈剤および/または担体を含む、医薬組成物。
【請求項32】
組成物が請求項25〜28の何れかに記載の単離ペプチド、請求項29に記載の核酸または請求項30に記載のベクターを含み、ワクチンとして製剤されている、請求項31に記載の医薬組成物。
【請求項33】
ヒト対象におけるΔNPM1陽性造血器腫瘍を処置または予防する方法であって、対象に治療有効量の請求項31または32に記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
【請求項34】
造血器腫瘍が骨髄腫瘍である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
骨髄腫瘍が急性骨髄性白血病である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
方法が対象における細胞介在免疫応答を誘発または増強する、請求項33〜35の何れかに記載の方法。
【請求項37】
ヒト対象におけるΔNPM1陽性造血器腫瘍の処置または予防に使用するための、請求項31または32に記載の医薬組成物。
【請求項38】
造血器腫瘍が骨髄腫瘍である、請求項37に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項39】
骨髄腫瘍が急性骨髄性白血病である、請求項37または38に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項40】
医薬組成物が対象における細胞介在免疫応答の誘発または増強において使用するためである、請求項37〜39の何れかに記載の使用のための医薬組成物。
【請求項41】
ヒト対象におけるΔNPM1陽性造血器腫瘍の処置または予防用医薬の製造における、請求項31または32に記載の医薬組成物の使用。
【請求項42】
造血器腫瘍が骨髄腫瘍である、請求項41に記載の使用。
【請求項43】
骨髄腫瘍が急性骨髄性白血病である、請求項42に記載の使用。
【請求項44】
T細胞受容体を産生する方法であって、請求項1〜19の何れかに記載の核酸配列と細胞を、配列番号1、配列番号26、配列番号27、配列番号28または配列番号29から選択されるペプチドに特異的に結合するT細胞受容体を産生するように、該核酸配列が該細胞に取り込まれ、発現される条件下で接触させることを含む、方法。
【請求項45】
方法がエクスビボである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
ヒト対象におけるΔNPM1陽性造血器腫瘍についてのバイオマーカーとしてのペプチドの使用であって、ペプチドが、
(i)CLAVEEVSL(配列番号1)、
(ii)AVEEVSLRK(配列番号26);
(iii)CLAVEEVSLRK(配列番号27);
(iv)VEEVSLRK(配列番号28);および
(v)AVEEVSLR(配列番号29)
から選択されるものである、使用。
【請求項47】
ヒト対象におけるΔNPM1陽性造血器腫瘍を診断する方法であって、
対象から単離したサンプル中のペプチドの存在を決定することを含み、ここで、ペプチドは(i)CLAVEEVSL(配列番号1);(ii)AVEEVSLRK(配列番号26);(iii)CLAVEEVSLRK(配列番号27);(iv)VEEVSLRK(配列番号28);および(v)AVEEVSLR(配列番号29)から選択され、
ここで、サンプル中の該ペプチドの存在が対象をΔNPM1陽性造血器腫瘍を有するとして同定するものであり、そして該ペプチドの非存在が対象をΔNPM1陽性造血器腫瘍を有しないとして同定するものである
方法。
【請求項48】
ヒト対象におけるΔNPM1陽性造血器腫瘍を処置または予防する方法であって、
(i)該対象から単離したサンプル中のペプチドの存在を決定し、ここで、ペプチドはCLAVEEVSL(配列番号1)、AVEEVSLRK(配列番号26)、CLAVEEVSLRK(配列番号27)、VEEVSLRK(配列番号28)およびAVEEVSLR(配列番号29)から選択されるものであり;そして
(ii)該対象に治療有効量の請求項31または32に記載の医薬組成物を投与する
ことを含む、方法。
【請求項49】
ヒト対象におけるΔNPM1陽性造血器腫瘍の処置または予防に使用するための請求項31または32に記載の医薬組成物であって、該対象は該対象から単離されたサンプルにおけるペプチドの存在によりΔNPM1陽性造血器腫瘍を有するとして同定されており、ここで、該ペプチドは
(i)CLAVEEVSL(配列番号1);
(ii)AVEEVSLRK(配列番号26);
(iii)CLAVEEVSLRK(配列番号27);
(iv)VEEVSLRK(配列番号28);および
(v)AVEEVSLR(配列番号29)
から選択されるものである、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ΔNPM1陽性造血器腫瘍(Haematological Malignancies)を有するヒト対象の処置に有用な新規核酸配列、ベクター、修飾細胞、ペプチドおよび医薬組成物が提供される。対応する方法および使用も提供される。
【背景技術】
【0002】
背景
造血器腫瘍は、血液およびリンパ系に影響する癌である。癌は血液形成組織(例えば骨髄)、または免疫系の細胞から始まり得る。造血器腫瘍の例は、骨髄性腫瘍、例えば急性骨髄性白血病(AML)を含む。
【0003】
急性骨髄性白血病は、分化が停止した骨髄前駆細胞の蓄積により特徴づけられる、骨髄の悪性疾患である。現在、標準的治療は、導入化学療法、続く集中的地固め化学療法または大量療法と自己または同種造血幹細胞移植(alloSCT)であり、≦65歳の患者で40〜45%、>65歳の患者でわずか10%の5年生存率に至る1−2。alloSCTは低再発率と相関するが、この利益は高毒性により制限される。それ故に、alloSCTでの処置は、全身状態良好であるが、細胞遺伝学的有害もしくは分子レベルでの異常または化学療法後の検出可能な永続的もしくは再発性疾患に基づく、予後不良性患者に限定される。患者の大部分で、化学療法後3年以内に再発が生じ、AMLの患者を処置し、生存を改善するための、高い有効性および毒性がないまたは限定的な新規標的療法の差し迫った必要性がある
【0004】
AMLの分子特徴づけは、ここ数十年で加速している。全ゲノムおよびエクソームシーケンシングは、AMLが低突然変異負荷であり、患者あたり平均13翻訳領域変異であることを示す。黒色腫および肺癌などの高突然変異負荷の癌タイプについて、体細胞変異のごく一部がネオ抗原をコードすることが示されている。ネオ抗原は、HLAの影響下で腫瘍細胞に提示されたとき、特異的T細胞により認識され得る、腫瘍特異的DNA変異から生じるペプチドである。この抗原の形成は、さらなるそれぞれの変異がネオ抗原を発生させる機会を高める、確率過程である。AMLにおける突然変異負荷が低いため、ネオ抗原の数は限定的であると推測される
【0005】
ネオ抗原は、チェックポイント阻害剤またはインビトロ拡大腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)の養子移植での処置後のインビボ癌拒絶抗原として働き得る3−4。チェックポイント阻害剤は、CTLA−4(イピリムマブ)またはPD−1(ペムブロリズマブおよびニボルマブ)が介在するT細胞の阻害性シグナルを遮断し、それにより免疫系がネオ抗原を標的とすることが促進される、抗体である。チェックポイント阻害剤およびTIL治療は、高突然変異負荷の腫瘍での成功が証明されているが、低突然変異負荷の腫瘍には無効である。しかしながら、AMLにおける全体的突然変異負荷は低いものの、体細胞異常がしばしば限られた数のドライバー遺伝子で生じ、それらは複数の患者で繰り返し変異している。その結果、AMLにおける反復変異から生じるネオ抗原は、標的免疫療法の開発に適切である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
AMLなどの骨髄性腫瘍を含む造血器腫瘍を処置するための新規免疫療法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の要約
本発明者らは、変異型のヌクレオフォスミン(ΔNPM1またはNPM1mut)が、該変異タンパク質の形成が悪性造血細胞に制限されるため、骨髄性腫瘍(特にAML)などの造血器腫瘍の免疫療法の理想的標的であると認識した。
【0008】
ヌクレオフォスミン(NPM1)は、AMLの患者の約30%でしばしば変異するドライバー遺伝子である。変異NPM1はまた他のタイプの造血器腫瘍(例えば他の骨髄性腫瘍)でも観察されているが、AML以外の腫瘍での頻度ははるかに低い。変異NPM1(ΔNPM1、またはNPM1mut)を有する患者は、遺伝子のエクソン12に特徴的4塩基対(4−bp)フレームシフト挿入を担持する。結果としてのΔNPM1タンパク質は、野生型対応物より4アミノ酸(AA)長く、そのC末端の11個のAAは、代替リーディングフレームに翻訳される(CLAVEEVSLRK)。その結果、ΔNPM1タンパク質は核原形質シャトルタンパク質として機能していた場所である核小体から、細胞質に移行する。ΔNPM1タンパク質は、こうして細胞内に局在する。しかしながら、HLA制限ΔNPM1由来ペプチドは、T細胞受容体に細胞表面で接近可能であり、故にT細胞により認識され得る。
【0009】
初代AMLのHLAクラスIリガンドームの研究により、本発明者らは、HLAクラスIに存在するΔNPM1の代替リーディングフレームによりコードされる5つのペプチドを同定した。5つの同定されたペプチドは、CLAVEEVSL(配列番号1)、AVEEVSLRK(配列番号26)、CLAVEEVSLRK(配列番号27)、VEEVSLRK(配列番号28)およびAVEEVSLR(配列番号29)である。これらのペプチドは、ΔNPM1陽性AMLの処置または予防のための治療剤(例えばワクチン)として使用され得る23。あるいは、それらをここに記載する修飾細胞(例えば特定したペプチドの一つにより特異的に認識されるT細胞受容体を有する末梢血リンパ球または腫瘍浸潤性リンパ球(TIL))を有するような患者の処置のための標的抗原として使用し得る。
【0010】
有利には、CLAVEEVSL(配列番号1)、AVEEVSLRK(配列番号26)、CLAVEEVSLRK(配列番号27)、VEEVSLRK(配列番号28)およびAVEEVSLR(配列番号29)から選択されるペプチドに特異的なTCRを発現するT細胞を、ΔNPM1陽性AML処置の有効な免疫療法として使用できる。これらのペプチド特異的TCRを使用したTCR遺伝子導入アプローチは、それ故にΔNPM1陽性AMLの患者の新規処置モダリティをもたらし得る。
【0011】
本発明者らは、始めて、CLAVEEVSLがHLA−A02:01陽性AMLの患者から単離された初代AML細胞の表面に提示されることを示した。有利には、ペプチドは、それ故にHLA−A02:01陽性ヒト患者におけるΔNPM1陽性AMLを処置または予防するための治療剤(例えばワクチン)として使用できる。あるいは、ここに記載する修飾細胞(例えばCLAVEEVSLを特異的に認識するT細胞受容体を有する末梢血リンパ球または腫瘍浸潤性リンパ球(TIL))を有するような患者の処置のための標的抗原として使用し得る。
【0012】
HLA−A02:01の影響下で提示されるCLAVEEVSLに特異的なT細胞受容体(TCR)を有するT細胞が、健常個体からのT細胞レパートリーに存在するかを調べるために、HLA−A02:01四量体をCLAVEEVSLについて作製し、そのシステイニル化バリアントおよび四量体陽性CD8 T細胞を健常個体からの末梢血単核細胞(PBMC)から単離した。いくつかの四量体陽性T細胞クローンを試験し、2つのみがCLAVEEVSLへの特異的に結合およびHLA−A02:01およびΔNPM1陽性AMLの認識を示した。最も反応性のクローン(1A2)のT細胞受容体を配列決定し、CD8およびCD4 T細胞に導入し、これは、共受容体非依存的様式でHLA−A02:01陽性初代AMLのΔNPM1での特異的認識および細胞溶解を示した。
【0013】
本発明者らは、それ故にネオ抗原CLAVEEVSLに特異的に結合するTCRを同定した。
【0014】
有利には、CLAVEEVSLに特異的なTCRを発現するT細胞は、それ故に、ΔNPM1陽性AMLを有するHLA−A02:01陽性患者の処置における有効な免疫療法として使用され得る。CLAVEEVSL特異的TCRを使用するTCR遺伝子導入アプローチは、それ故にΔNPM1陽性AMLを有するHLA−A02:01陽性患者のための新規処置モダリティをもたらし得る。
【0015】
さらに、ペプチドCLAVEEVSL(および特にそのシステイニル化形態、すなわちCLAVEEVSL)を、HLA−A02:01陽性患者のΔNPM1陽性AMLを処置または予防するための治療剤(例えばワクチン)として使用できる。ペプチド自体も、それ故に例えば単離形態でまたは医薬組成物として製剤されたとき有用である。
【0016】
初代AMLのHLAクラスIリガンドームの研究により、本発明者らはまたΔNPM1のオルターナティブリーディングフレームによりコードされる別の9量体ペプチドおよび11量体ペプチドも同定した(それぞれAVEEVSLRKおよびCLAVEEVSLRK)。HLA−A03:01およびHLA−A11:01へのAVEEVSLRKおよびCLAVEEVSLRKの各々の結合は、四量体産生のための単量体折り畳みにより確認した(CLAVEEVSLペプチドについてここに詳述するとおり)。従って、AVEEVSLRKおよびCLAVEEVSLRKペプチドの各々を、HLA−A03:01またはHLA−A11:01陽性ヒト患者におけるΔNPM1陽性AMLを処置または予防するための治療剤(例えばワクチン)として使用できる。あるいは、これらのペプチドの各々を、ここに記載する修飾細胞(例えばそれぞれAVEEVSLRKまたはCLAVEEVSLRKを特異的に認識するT細胞受容体を有する末梢血リンパ球または腫瘍浸潤性リンパ球(TIL))を有するような患者の処置のための標的抗原として使用し得る。
【0017】
四量体産生のための単量体折り畳みはまた、HLA−A01:01を用いるAVEEVSLRKについて十分示されている(CLAVEEVSLペプチドについてここに詳述するとおり)。AVEEVSLRKがHLA−A01:01に結合する能力は、それ故に確認されている。AVEEVSLRKはまたHLA−A03:01およびHLA−A11:01を欠くHLA−A01:01陽性AML対象(AML4443)からのHLAクラスIリガンドームでも同定されている(図2参照)。従って、AVEEVSLRKペプチドはまたHLA−A01:01陽性ヒト患者におけるΔNPM1陽性AMLを処置または予防するための治療剤(例えばワクチン)として使用できる。あるいは、このペプチドを、ここに記載する修飾細胞(例えばAVEEVSLRKを特異的に認識するT細胞受容体を有する末梢血リンパ球または腫瘍浸潤性リンパ球(TIL))を有するような患者の処置のための標的抗原として使用し得る。
【0018】
HLA−A03:01またはHLA−A11:01の影響下で提示されるAVEEVSLRKに特異的なT細胞受容体(TCR)を有するT細胞が健常個体からのT細胞レパートリーに存在するかを調べるために、HLA−A03:01四量体およびHLA−A11:01四量体をAVEEVSLRKについて産生し、四量体陽性CD8 T細胞を健常個体からの末梢血単核細胞(PBMC)から単離した。いくつかの四量体陽性T細胞クローンを試験し、一つが、HLA−A03:01の影響下でAVEEVSLRKに特異的に結合を有することが示された(反応性クローン(3B3);図37)。さらに、一つのT細胞クローンが、HLA−A11:01の影響下でAVEEVSLRKに特異的に結合を有することが示された(反応性クローン(6F11);図37)。これらのクローン(6F11および3B3)の各々の反応性も試験し(図38および39)、ここで、適切なHLA−Aのみの影響下でΔNPM1ペプチドと存在するとき、各クローンによりサイトカイン放出が示された。
【0019】
本発明者らは、それ故にHLA−A03:01(クローン3B3からのTCR)またはHLA−A11:01(クローン6F11からのTCR)の影響下でネオ抗原AVEEVSLRKに特異的に結合する2つのTCRを同定した。
【0020】
有利には、AVEEVSLRKに特異的なTCRを発現するT細胞は、それ故にΔNPM1陽性AMLを有するHLA−A03:01、HLA−A11:01またはHLA−A01:01陽性患者の処置における有効な免疫療法として使用できる。AVEEVSLRK特異的TCRを使用するTCR遺伝子導入アプローチは、それ故にΔNPM1陽性AMLを有するHLA−A03:01、HLA−A11:01またはHLA−A01:01陽性患者のための新規処置モダリティをもたらし得る。
【0021】
さらに、ペプチドAVEEVSLRKは、HLA−A03:01、HLA−A11:01またはHLA−A01:01陽性患者におけるΔNPM1陽性AMLの処置または予防のための治療剤(例えばワクチン)として使用され得る。ペプチド自体も、それ故に例えば単離形態でまたは医薬組成物として製剤されたとき有用である。
【0022】
本発明者らは、ペプチドCLAVEEVSLRK(配列番号27)がHLA−A03:01またはHLA−A11:01により提示されることを示している。それ故に、このペプチドの何れかへの特異的に結合が、適切なHLAの影響下で生じ得る(すなわちペプチドへの特異的に結合は、上記のとおり、適切なHLAにより提示されるときのみ生じ得る)。
【0023】
HLA−A03:01の影響下で提示されるCLAVEEVSLRKに特異的なT細胞受容体(TCR)を有するT細胞が健常個体からのT細胞レパートリーに存在するかを調べるために、HLA−A03:01四量体をCLAVEEVSLRKについて作製し、そのシステイニル化バリアントおよび四量体陽性CD8 T細胞を健常個体からの末梢血単核細胞(PBMC)から単離した。いくつかの四量体陽性T細胞クローンを試験し、一つがHLA−A03:01の影響下でCLAVEEVSLRKに特異的に結合を有するとして同定された(反応性クローン(1F2);図37)。
【0024】
本発明者らは、それ故にHLA−A03:01でネオ抗原CLAVEEVSLRKに特異的に結合するTCR(クローン1F2からのTCR)を同定した。
【0025】
有利には、CLAVEEVSLRK(および特にシステイニル化形態、すなわちCLAVEEVSLRK)に特異的なTCRを発現するT細胞は、それ故に、ΔNPM1陽性AMLを有するHLA−A03:01またはHLA−A11:01陽性患者の処置における有効な免疫療法として使用され得る。CLAVEEVSLRK(および特にCLAVEEVSLRK)特異的TCRを使用するTCR遺伝子導入アプローチは、それ故にΔNPM1陽性AMLを有するHLA−A03:01およびHLA−A11:01陽性患者のための新規処置モダリティをもたらし得る。
【0026】
さらに、ペプチドCLAVEEVSLRK(および特にそのシステイニル化形態、すなわちCLAVEEVSLRK)を、HLA−A03:01またはHLA−A11:01陽性患者のΔNPM1陽性AMLを処置または予防するための治療剤(例えばワクチン)として使用できる。ペプチド自体も、それ故に例えば単離形態でまたは医薬組成物として製剤されたとき有用である。
【0027】
本発明は、ΔNPM1陽性AMLを有する患者の処置に特異的な適用を有する。しかしながら、ΔNPM1はまた他の形態の造血器腫瘍、特に骨髄性腫瘍を有する患者のサブセットにも存在する。本発明は、それ故に、骨髄性腫瘍(例えばAML)のような、しかしこれに限定されないΔNPM1陽性造血器腫瘍を有する患者に等しく適用される。
【0028】
従って、ある態様において、本発明は、
(a)CLAVEEVSL(配列番号1)、AVEEVSLRK(配列番号26)、CLAVEEVSLRK(配列番号27)、VEEVSLRK(配列番号28)およびAVEEVSLR(配列番号29)から選択されるペプチドに特異的に結合するTCRα鎖ポリペプチドのCDR3を含むポリペプチド;および/または
(b)CLAVEEVSL(配列番号1)、AVEEVSLRK(配列番号26)、CLAVEEVSLRK(配列番号27)、VEEVSLRK(配列番号28)およびAVEEVSLR(配列番号29)から選択されるペプチドに特異的に結合するTCRβ鎖ポリペプチドのCDR3を含むポリペプチド
をコードする単離核酸配列を提供する。
【0029】
核酸配列は(a)および(b)両者をコードでき、ここで、(a)および(b)は一体となってCLAVEEVSL(配列番号1)、AVEEVSLRK(配列番号26)、CLAVEEVSLRK(配列番号27)、VEEVSLRK(配列番号28)およびAVEEVSLR(配列番号29)から選択されるペプチドに特異的に結合する。
【0030】
コードされたポリペプチドは、CLAVEEVSL(配列番号1)に特異的に結合し得る。ペプチドはシステイニル化形態であり得る。コードされたポリペプチドは、それ故に、CLAVEEVSL(システイニル化形態)のみに特異的に結合し得る。
【0031】
あるいは、コードされたポリペプチドは、AVEEVSLRK(配列番号26)に特異的に結合し得る。
【0032】
あるいは、コードされたポリペプチドは、CLAVEEVSLRK(配列番号27)に特異的に結合し得る。ペプチドはシステイニル化形態であり得る。コードされたポリペプチドは、それ故に、CLAVEEVSLRK(システイニル化形態)のみに特異的に結合し得る。
【0033】
(a)のCDR3は、CAVTGARLMF(配列番号2)と少なくとも90%配列同一性を有するアミノ酸配列を有し得る。所望により、(a)のCDR3は配列番号3または配列番号4の核酸配列またはその遺伝的に変化した配列(すなわち遺伝暗号縮重の結果として同じタンパク質をコードする他の核酸配列)によりコードされる。
【0034】
(b)のCDR3は、CASSPGGLSNEQF(配列番号5)と少なくとも90%配列同一性を有するアミノ酸配列を有し得る。所望により、(b)のCDR3は、配列番号6もしくは配列番号7の核酸配列またはその遺伝的に変化した配列(すなわち遺伝暗号縮重の結果として同じタンパク質をコードする他の核酸配列)によりコードされる。
【0035】
(a)のCDR3は、選択ペプチド(すなわち配列番号1、配列番号26、配列番号27、配列番号28または配列番号29)に特異的に結合するTCRα鎖可変領域内であり得る。
【0036】
(a)は、TCRα鎖定常領域をさらに含み得る。換言すると、(a)のポリペプチドは、選択ペプチドに特異的に結合する完全長TCRα鎖可変領域および完全長TCRα鎖定常領域を含み得る。
【0037】
TCRα鎖可変領域は、配列番号8と少なくとも90%配列同一性を有するアミノ酸配列を有し得る。所望により、(a)のTCRα鎖可変領域は、配列番号9もしくは配列番号10の核酸配列またはその遺伝的に変化した配列(すなわち遺伝暗号縮重の結果として同じタンパク質をコードする他の核酸配列)によりコードされる。
【0038】
(b)のCDR3は、選択ペプチド(すなわち配列番号1、配列番号26、配列番号27、配列番号28または配列番号29)に特異的に結合するTCRβ鎖可変領域内であり得る。
【0039】
(b)は、TCRβ鎖定常領域をさらに含み得る。換言すると、(b)のポリペプチドは、選択ペプチドに特異的に結合する完全長TCRα鎖可変領域および完全長TCRα鎖定常領域を含み得る。
【0040】
(b)のTCRβ鎖可変領域は、配列番号11と少なくとも90%配列同一性を有するアミノ酸配列を有し得る。所望により、(b)のTCRβ鎖可変領域は、配列番号12もしくは配列番号13の核酸配列またはその遺伝的に変化した配列(すなわち遺伝暗号縮重の結果として同じタンパク質をコードする他の核酸配列)によりコードされる。
【0041】
(a)のCDR3は、配列番号8に少なくとも90%配列同一性を有するTCRα鎖可変領域内であり得て、ここで、CDR3は、配列番号2のアミノ酸配列を有する。所望により(a)はTCRα鎖定常領域を含む。
【0042】
ここに記載する実施態様の何れにおいても、TCRα鎖可変領域CDR1は配列番号14のアミノ酸配列を有し得て、TCRα鎖可変領域CDR2は配列番号15のアミノ酸配列を有し得る。
【0043】
(b)のCDR3は、配列番号11に少なくとも90%配列同一性を有するTCRβ鎖可変領域内であり得て、ここで、CDR3は、配列番号5のアミノ酸配列を有する。所望により、(b)はTCRβ鎖定常領域を含む。
【0044】
ここに記載する実施態様の何れにおいても、TCRβ鎖可変領域CDR1は配列番号16のアミノ酸配列を有し得て、TCRβ鎖可変領域CDR2は配列番号17のアミノ酸配列を有し得る。
【0045】
選択したペプチドCLAVEEVSL(配列番号1)はシステイニル化され得る。
【0046】
選択したペプチドCLAVEEVSLRK(配列番号27)はシステイニル化され得る。
【0047】
核酸配列はT細胞受容体をコードし得る。
【0048】
疑いを避けるため、本発明者らペプチドCLAVEEVSL(配列番号1)はHLA−A02:01により提示される(すなわちHLA−A02:01限定的である)ことを同定した。さらに、本発明者らは、ペプチドAVEEVSLRKおよびCLAVEEVSLRKが各々HLA−A03:01またはHLA−A11:01により提示され、AVEEVSLRKもHLA−A01:01により提示されることを同定した。それ故に、これらのペプチドの何れかへの特異的に結合が、適切なHLAで生じ得る(すなわちペプチドへの特異的に結合は、上記のとおり、適切なHLAにより提示されるときのみ生じ得る)。
【0049】
本発明の核酸配列は天然に存在しない核酸配列であり得る(例えば全配列がその全体として天然に生じないものであり得る)。例えば、本発明の核酸配列はプロモーターと操作可能に結合でき、ここで、該プロモーターは、天然で等価なヒト核酸配列と天然に関連していない(例えばヒトTCR配列またはそのフラグメント);すなわちその天然環境で該核酸と天然に関連している全プロモーターではない。この状況において、このようなプロモーターは、外来性プロモーターと見なされ得る。適切なプロモーターの例は、他に記載される。
【0050】
さらなる態様において、本発明は、本発明の核酸配列を含むベクターを提供する。
【0051】
ベクターはプラスミドまたはウイルスベクターであり得る。所望により、ベクターは、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ワクシニアウイルス、カナリアポックスウイルス、ヘルペスウイルス、ミニサークルベクターおよび合成DNAまたはRNAからなる群から選択される。所望により、ベクターは、上記のとおり、核酸配列が操作可能に結合しているプロモーターを含む。
【0052】
さらなる態様において、本発明は、本発明の核酸配列または本発明のベクターでトランスフェクトまたは形質導入された修飾細胞を提供する。
【0053】
トランスフェクトまたは形質導入された本発明の核酸配列または本発明のベクターは、上記のとおり、プロモーターに操作可能に結合され得る。
【0054】
修飾細胞は、CD8 T細胞、CD4 T細胞、NK細胞、NKT細胞、ガンマ−デルタT細胞、造血幹細胞、前駆細胞細胞、T細胞株またはNK−92細胞株からなる群から選択され得る。
【0055】
修飾細胞はヒト細胞であり得る。
【0056】
さらなる態様において、本発明は、
(i)CLAVEEVSL(配列番号1)(ここで、システインアミノ酸はシステイニル化されていてもされていなくてもよい);
(ii)AVEEVSLRK(配列番号26);
(iii)CLAVEEVSLRK(配列番号27)(ここで、システインアミノ酸はシステイニル化されていてもされていなくてもよい);
(iv)VEEVSLRK(配列番号28);および
(v)AVEEVSLR(配列番号29)
から選択されるアミノ酸配列を含む、単離ペプチドを提供する。
【0057】
特定の実施態様において、配列番号1のシステインアミノ酸はシステイニル化されている。
【0058】
特定の実施態様において、配列番号27のシステインアミノ酸はシステイニル化されている。
【0059】
ペプチドは20以下のアミノ酸を有し得る。
【0060】
ペプチドは、
(i)配列番号1(ここで、システインアミノ酸はシステイニル化されていてもされていなくてもよい);
(ii)配列番号26;
(iii)配列番号27(ここで、システインアミノ酸はシステイニル化されていてもされていなくてもよい);
(iv)配列番号28;および
(v)配列番号29
から選択される配列からなり得る。
【0061】
特定の実施態様において、ペプチドは配列番号1の配列からなり得て、ここで、配列番号1のシステインアミノ酸はシステイニル化されている。
【0062】
特定の実施態様において、ペプチドは配列番号27の配列からなり得て、ここで、配列番号27のシステインアミノ酸はシステイニル化されている。
【0063】
さらなる態様において、本発明は、本発明のペプチドをコードする単離核酸配列を提供する。
【0064】
さらなる態様において、本発明は、本発明の核酸配列を含むベクターを提供すうr。
【0065】
さらなる態様において、本発明は、本発明の核酸配列、本発明のベクター、本発明の修飾細胞または本発明の単離ペプチドおよび薬学的に許容される添加物、アジュバント、希釈剤および/または担体を含む医薬組成物を提供する。
【0066】
医薬組成物は、該組成物が本発明の単離ペプチド(または該単離ペプチドをコードする核酸またはベクター)を含むとき、ワクチンとして製剤され得る。ペプチドおよび核酸のための適当なワクチン製剤は当分野で周知である。
【0067】
さらなる態様において、本発明は、ヒト対象におけるΔNPM1陽性造血器腫瘍を処置または予防する方法であって、対象に治療有効量の本発明の医薬組成物を投与することを含む方法を提供する。
【0068】
ヒト対象におけるΔNPM1陽性造血器腫瘍を処置または予防する方法は、対象に治療有効量のここに記載するペプチド(または該ペプチドをコードする核酸(例えばRNAまたはDNA)またはベクター)を投与することを含み得る。
【0069】
例として、
(i)CLAVEEVSL(配列番号1)(ここで、システインアミノ酸はシステイニル化されていてもされていなくてもよい);
(ii)AVEEVSLRK(配列番号26);
(iii)CLAVEEVSLRK(配列番号27)(ここで、システインアミノ酸はシステイニル化されていてもされていなくてもよい);
(iv)VEEVSLRK(配列番号28);および
(v)AVEEVSLR(配列番号29)
から選択されるアミノ酸配列を含むまたはそれからなる単離ペプチドを、免疫療法(例えばワクチンとして)として投与し得る。
【0070】
特定の実施態様において、配列番号1のシステインアミノ酸はシステイニル化されている。
【0071】
特定の実施態様において、配列番号27のシステインアミノ酸はシステイニル化されている。
【0072】
造血器腫瘍は骨髄腫瘍であり得る。
【0073】
骨髄腫瘍は急性骨髄性白血病であり得る。
【0074】
方法は、対象における細胞介在免疫応答を誘発または増強し得る。
【0075】
疑いを避けるため、本発明者らは、ペプチドCLAVEEVSL(配列番号1)がHLA−A02:01限定的であることを同定した。さらに、本発明者らは、ペプチドAVEEVSLRKおよびCLAVEEVSLRKが各々HLA−A03:01およびHLA−A11:01の何れかにより提示され、AVEEVSLRKもHLA−A01:01により提示されることを同定した。CLAVEEVSLおよび/またはCLAVEEVSLRKは、特にシステイニル化形態であり得る。
【0076】
それ故に、HLA−A02:01陽性ヒト対象におけるΔNPM1陽性造血器腫瘍を処置または予防する方法は、CLAVEEVSLに特異的に結合するポリペプチドをコードする核酸配列、このような核酸配列をコードするベクター、このような核酸配列またはベクターを含む修飾細胞またはCLAVEEVSLをコードする核酸、このような核酸配列をコードするベクターまたは配列CLAVEEVSLを含むタンパク質もしくはペプチドを含む医薬組成物を優先的に使用し得る(この全て本明細書の他の箇所により詳細に記載されている)。CLAVEEVSLは、特にシステイニル化形態であり得る。
【0077】
同様に、ヒト対象におけるHLA−A03:01またはHLA−A11:01が陽性であるΔNPM1陽性造血器腫瘍を処置または予防する方法は、AVEEVSLRKまたはCLAVEEVSLRKに特異的に結合するポリペプチドをコードする核酸配列、このような核酸配列をコードするベクター、このような核酸配列またはベクターを含む修飾細胞またはAVEEVSLRKまたはCLAVEEVSLRKをコードする核酸、このような核酸配列をコードするベクターまたは配列AVEEVSLRKまたはCLAVEEVSLRKを含むタンパク質もしくはペプチドを含む医薬組成物を優先的に使用し得る(この全て本明細書の他の箇所により詳細に記載されている)。
【0078】
さらに、ヒト対象におけるHLA−A01:01が陽性であるΔNPM1陽性造血器腫瘍を処置または予防する方法は、優先的にAVEEVSLRKに特異的に結合するポリペプチドをコードする核酸配列、このような核酸配列をコードするベクター、このような核酸配列またはベクターを含む修飾細胞またはAVEEVSLRKをコードする核酸、このような核酸配列をコードするベクターまたは配列AVEEVSLRKを含むタンパク質もしくはペプチドを含む医薬組成物を使用し得る(この全て本明細書の他の箇所により詳細に記載されている)。
【0079】
CLAVEEVSLRKは、特にシステイニル化形態であり得る。
【0080】
さらなる態様において、本発明は、ヒト対象におけるΔNPM1陽性造血器腫瘍の処置または予防に使用するための、本発明の医薬組成物を提供する。
【0081】
ヒト対象におけるΔNPM1陽性造血器腫瘍の処置または予防に使用するための本発明の医薬組成物は、治療有効量のここに記載するペプチド(または該ペプチドをコードする核酸(例えばRNAまたはDNA)またはベクター)を含み得る。
【0082】
例として、医薬組成物は、
(i)CLAVEEVSL(配列番号1)(ここで、システインアミノ酸はシステイニル化されていてもされていなくてもよい);
(ii)AVEEVSLRK(配列番号26);
(iii)CLAVEEVSLRK(配列番号27)(ここで、システインアミノ酸はシステイニル化されていてもされていなくてもよい);
(iv)VEEVSLRK(配列番号28);および
(v)AVEEVSLR(配列番号29)
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むまたはそれからなる単離ペプチドを含み得る。
【0083】
医薬組成物は、免疫療法として(例えばワクチンとして)使用し得る。
【0084】
特定の実施態様において、配列番号1のシステインアミノ酸はシステイニル化されている。
【0085】
特定の実施態様において、配列番号27のシステインアミノ酸はシステイニル化されている。
【0086】
造血器腫瘍は骨髄腫瘍であり得る。
【0087】
骨髄腫瘍は急性骨髄性白血病であり得る。
【0088】
医薬組成物は、対象における細胞介在免疫応答の誘発または増強に使用するためであり得る。
【0089】
上記のとおり、本発明者らは、ペプチドCLAVEEVSL(配列番号1)がHLA−A02:01限定的であることを同定した。さらに、本発明者らは、ペプチドAVEEVSLRKおよびCLAVEEVSLRKが各々HLA−A03:01およびHLA−A11:01により提示され、AVEEVSLRKもHLA−A01:01により提示されることを同定した。
【0090】
CLAVEEVSLおよび/またはCLAVEEVSLRKは、特にシステイニル化形態であり得る。
【0091】
それ故に、CLAVEEVSLに特異的に結合するポリペプチドをコードする核酸配列、このような核酸配列をコードするベクター、このような核酸配列またはベクターを含む修飾細胞またはCLAVEEVSLをコードする核酸、このような核酸配列をコードするベクターまたは配列CLAVEEVSLを含むタンパク質もしくはペプチド(この全て本明細書の他の箇所により詳細に記載されている)を含む医薬組成物は、HLA−A02:01陽性ヒト対象におけるΔNPM1陽性造血器腫瘍の処置または予防のときに優先的に使用され得る。CLAVEEVSLは、特にシステイニル化形態であり得る。
【0092】
同様に、AVEEVSLRKまたはCLAVEEVSLRKに特異的に結合するポリペプチドをコードする核酸配列、このような核酸配列をコードするベクター、このような核酸配列またはベクターを含む修飾細胞またはAVEEVSLRKまたはCLAVEEVSLRKをコードする核酸、このような核酸配列をコードするベクターまたは配列AVEEVSLRKまたはCLAVEEVSLRKを含むタンパク質もしくはペプチド(この全て本明細書の他の箇所により詳細に記載されている)を含む医薬組成物は、HLA−A03:01またはHLA−A11:01が陽性であるヒト対象におけるΔNPM1陽性造血器腫瘍の処置または予防のときに優先的に使用され得る。
【0093】
さらに、AVEEVSLRKに特異的に結合するポリペプチドをコードする核酸配列、このような核酸配列をコードするベクター、このような核酸配列またはベクターを含む修飾細胞またはAVEEVSLRKをコードする核酸、このような核酸配列をコードするベクターまたは配列AVEEVSLRKを含むタンパク質もしくはペプチド(この全て本明細書の他の箇所により詳細に記載されている)を含む医薬組成物は、HLA−A01:01が陽性であるヒト対象におけるΔNPM1陽性造血器腫瘍の処置または予防のときに優先的に使用され得る。
【0094】
CLAVEEVSLRKは、特にシステイニル化形態であり得る。
【0095】
さらなる態様において、本発明は、ヒト対象におけるΔNPM1陽性造血器腫瘍の処置または予防用医薬の製造における本発明の医薬組成物の使用を提供する。
【0096】
医薬組成物は、治療有効量のここに記載するペプチド(または該ペプチドをコードする核酸(例えばRNAまたはDNA)またはベクター)を含み得る。
【0097】
例として、医薬組成物は、
(i)CLAVEEVSL(配列番号1)(ここで、システインアミノ酸はシステイニル化されていてもされていなくてもよい);
(ii)AVEEVSLRK(配列番号26);
(iii)CLAVEEVSLRK(配列番号27)(ここで、システインアミノ酸はシステイニル化されていてもされていなくてもよい);
(iv)VEEVSLRK(配列番号28);および
(v)AVEEVSLR(配列番号29)
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むまたはそれからなる単離ペプチドを含み得る。
【0098】
医薬組成物は、免疫療法として(例えばワクチンとして)使用し得る。
【0099】
特定の実施態様において、配列番号1のシステインアミノ酸はシステイニル化されている。
【0100】
特定の実施態様において、配列番号27のシステインアミノ酸はシステイニル化されている。
【0101】
造血器腫瘍は骨髄腫瘍であり得る。
【0102】
骨髄腫瘍は急性骨髄性白血病であり得る。
【0103】
本明細書の他の箇所に記載するとおり、本発明者らは、ペプチドCLAVEEVSL(配列番号1)がHLA−A02:01限定的であることを同定している。さらに、本発明者らは、ペプチドAVEEVSLRKおよびCLAVEEVSLRKが各々HLA−A03:01およびHLA−A11:01により提示され、AVEEVSLRKもHLA−A01:01により提示されることを同定している。CLAVEEVSLおよび/またはCLAVEEVSLRKは、特にシステイニル化形態であり得る。
【0104】
それ故に、CLAVEEVSLに特異的に結合するポリペプチドをコードする核酸配列、このような核酸配列をコードするベクター、このような核酸配列またはベクターを含む修飾細胞または配列CLAVEEVSLを含む単離ペプチド(この全て本明細書の他の箇所により詳細に記載されている)を含む医薬組成物は、HLA−A02:01陽性ヒト対象におけるΔNPM1陽性造血器腫瘍の処置または予防用医薬の製造に優先的に使用され得る。CLAVEEVSLは、特にシステイニル化形態であり得る。
【0105】
同様に、AVEEVSLRKまたはCLAVEEVSLRKに特異的に結合するポリペプチドをコードする核酸配列、このような核酸配列をコードするベクター、このような核酸配列またはベクターを含む修飾細胞または配列AVEEVSLRKまたはCLAVEEVSLRKを含む単離ペプチド(この全て本明細書の他の箇所により詳細に記載されている)を含む医薬組成物は、HLA−A03:01またはHLA−A11:01が陽性であるヒト対象におけるΔNPM1陽性造血器腫瘍の処置または予防用医薬の製造に優先的に使用され得る。
【0106】
さらに、AVEEVSLRKに特異的に結合するポリペプチドをコードする核酸配列、このような核酸配列をコードするベクター、このような核酸配列またはベクターを含む修飾細胞または配列AVEEVSLRKを含む単離ペプチド(この全て本明細書の他の箇所により詳細に記載されている)を含む医薬組成物は、HLA−A01:01が陽性であるヒト対象におけるΔNPM1陽性造血器腫瘍の処置または予防用医薬の製造に優先的に使用され得る。
【0107】
CLAVEEVSLRKは、特にシステイニル化形態であり得る。
【0108】
さらなる態様において、本発明は、本発明の核酸配列と細胞を、配列番号1、配列番号26、配列番号27、配列番号28および配列番号29から選択されるペプチドに特異的に結合するT細胞受容体を産生するように、該核酸配列が該細胞に取り込まれ、発現される条件下で接触させることを含む、T細胞受容体を産生する方法を提供する。
【0109】
方法はエクスビボであり得る。
【0110】
上記のとおり、CLAVEEVSL、AVEEVSLRKおよびCLAVEEVSLRKの何れかへの特異的結合が、適切なHLAの状況で生じ得る(例えばペプチドへの特異的結合は、上記のとおり、それが適切なHLAにより提示されたときのみ生じ得る)。
【0111】
さらなる態様において、本発明は、ヒト対象におけるΔNPM1陽性造血器腫瘍についてのバイオマーカーとしてのペプチドの使用を提供し、ここで、ペプチドは、
(i)CLAVEEVSL(配列番号1)(ここで、システインアミノ酸はシステイニル化されていてもされていなくてもよい);
(ii)AVEEVSLRK(配列番号26);
(iii)CLAVEEVSLRK(配列番号27)(ここで、システインアミノ酸はシステイニル化されていてもされていなくてもよい);
(iv)VEEVSLRK(配列番号28);および
(v)AVEEVSLR(配列番号29)
から選択される。
【0112】
特定の実施態様において、配列番号1のシステインアミノ酸はシステイニル化されている。
【0113】
特定の実施態様において、配列番号27のシステインアミノ酸はシステイニル化されている。
【0114】
さらなる態様において、本発明は、ヒト対象におけるΔNPM1陽性造血器腫瘍を診断する方法であって、
対象から単離したサンプル中のペプチドの存在を決定することを含み、ここで、ペプチドは(i)CLAVEEVSL(配列番号1)(ここで、システインアミノ酸はシステイニル化されていてもされていなくてもよい);(ii)AVEEVSLRK(配列番号26);(iii)CLAVEEVSLRK(配列番号27)(ここで、システインアミノ酸はシステイニル化されていてもされていなくてもよい);(iv)VEEVSLRK(配列番号28);および(v)AVEEVSLR(配列番号29)から選択され、
ここで、サンプル中の該ペプチドの存在が対象をΔNPM1陽性造血器腫瘍を有するとして同定するものであり、そして該ペプチドの非存在が対象をΔNPM1陽性造血器腫瘍を有しないとして同定するものである、
方法を提供する。
【0115】
特定の実施態様において、配列番号1のシステインアミノ酸はシステイニル化されている。
【0116】
特定の実施態様において、配列番号27のシステインアミノ酸はシステイニル化されている。
【0117】
さらなる態様において、本発明は、ヒト対象におけるΔNPM1陽性造血器腫瘍を処置または予防する方法であって、
(i)対象から単離したサンプル中のペプチドの存在を決定し、ここで、ペプチドはCLAVEEVSL(配列番号1)(ここで、システインアミノ酸はシステイニル化されていてもされていなくてもよい)、AVEEVSLRK(配列番号26)、CLAVEEVSLRK(配列番号27)(ここで、システインアミノ酸はシステイニル化されていてもされていなくてもよい);VEEVSLRK(配列番号28);およびAVEEVSLR(配列番号29)から選択されるものであり;そして(ii)対象に治療有効量の本発明の医薬組成物を投与する
ことを含む、方法を提供する。
【0118】
特定の実施態様において、配列番号1のシステインアミノ酸はシステイニル化されている。
【0119】
特定の実施態様において、配列番号27のシステインアミノ酸はシステイニル化されている。
【0120】
ペプチドの各々およびそのHLA限定性質(および特に特定のHLA状態の対象におけるΔNPM1陽性造血器腫瘍の処置または予防方法における使用のための適切な医薬組成物の文脈において)に関する先の説明は、ここで等しく適用される。
【0121】
さらなる態様において、本発明は、ヒト対象におけるΔNPM1陽性造血器腫瘍の処置または予防に使用するための本発明の医薬組成物を提供し、ここで、対象は、該対象から単離したサンプル中のペプチドの存在によりΔNPM1陽性造血器腫瘍を有するとして同定されており、ここで、ペプチドは、
(i)CLAVEEVSL(配列番号1)(ここで、システイン残基はシステイニル化されていてもいなくてもよい);
(ii)AVEEVSLRK(配列番号26);
(iii)CLAVEEVSLRK(配列番号27)(ここで、システイン残基はシステイニル化されていてもいなくてもよい);
(iv)VEEVSLRK(配列番号28);および
(v)AVEEVSLR(配列番号29)
から選択される。
【0122】
この態様において、ΔNPM1陽性造血器腫瘍を有するとして同定されている対象は、該対象から単離したサンプル中のペプチドの存在により処置前に既にΔNPM1陽性造血器腫瘍を有するとして診断されており、ここで、ペプチドは、
(i)CLAVEEVSL(配列番号1)(ここで、システイン残基はシステイニル化されていてもいなくてもよい);
(ii)AVEEVSLRK(配列番号26);
(iii)CLAVEEVSLRK(配列番号27)(ここで、システイン残基はシステイニル化されていてもいなくてもよい);
(iv)VEEVSLRK(配列番号28);および
(v)AVEEVSLR(配列番号29)
から選択される。
【0123】
特定の実施態様において、配列番号1のシステインアミノ酸はシステイニル化されている。
【0124】
特定の実施態様において、配列番号27のシステインアミノ酸はシステイニル化されている。
【0125】
ペプチドの各々およびそのHLA限定性質(および特に特定のHLA状態の対象におけるΔNPM1陽性造血器腫瘍の処置または予防のときに使用するための適切な医薬組成物おいて)に関する先の説明は、ここで等しく適用される。
【0126】
本願の明細書および特許請求の範囲をとおして、用語「含む」および「包含」およびその文法的異形は、「含むがそれに限定されない」ことを意味し、かつそれらは他の部分、添加物、成分、整数または工程を除外することを意図しない(そして除外しない)。
【0127】
本願の明細書および特許請求の範囲をとおして、単数表現は、文脈から他の解釈が必要でない限り、複数を包含する。特に、不定冠詞が使用されるとき、記載は、文脈から他の解釈が必要でない限り、複数および単数を意図するとして解釈されるべきである。
【0128】
本発明の特定の態様、実施態様または例と組み合わせて記載される特性、整数、特徴、化合物、化合物部分または基は、矛盾しない限り、ここに記載するあらゆる他の態様、実施態様または例に適用可能であると解釈されるべきである。
【0129】
ここに引用する特許、科学および技術文献は、出願時の当業者が利用可能であった知識を証明する。ここに引用する登録特許、公開され、係属中の特許出願および他の刊行物の全記載を、各々が特にかつ個々に引用により包含させると記載されたのと同程度に引用により本明細書に包含させる。何らかの矛盾がある場合、本明細書が優先する。
【0130】
本発明の種々の態様を以下にさらに詳述する。
【0131】
図面の簡単な説明
本発明の実施態様を添付する図面を参照してさらにここに記載する。当該各図面は次のとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0132】
図1図1は、ΔNPM1を伴うHLA−A02:01陽性AMLから溶出したペプチドとしてのCLAVEEVSLの検証を提供する。ΔNPM1を伴うHLA−A02:01陽性AML10197からの溶出ペプチド(上部)および第一残基のシステイニル化後の合成ペプチドCLAVEEVSL(下部)についてのマススペクトルを示す。データは、両ペプチド間のマススペクトルの完全一致を示す。
【0133】
図2図2は、初代AMLから溶出したΔNPM1ペプチドの検証を提供する。AMLからの溶出ペプチド(上部)および合成ペプチド(下部)についてタンデムマススペクトルを示す。C=Cys残基のシステイニル化。(A)AML10197(上部)およびAML3361(中央部)からの溶出ペプチドおよび合成ペプチドCLAVEEVSLおよびAML3361からの溶出ペプチドおよび合成ペプチドAVEEVSLRK(下部)についてのタンデムマススペクトル。(B)AML9448(上部)、AML5444(中央部)およびAML5518(下部)からの溶出ペプチドおよび合成ペプチドAVEEVSLRKについてのタンデムマススペクトル。(C)AML6498(上部)およびAML4443(中央部)からの溶出ペプチドおよび合成ペプチドAVEEVSLRKおよびAML9448からの溶出ペプチドおよび合成ペプチドCLAVEEVSLRK(下部)についてのタンデムマススペクトル。(D)AML6498からの溶出ペプチドおよび合成ペプチドCLAVEEVSLRK(上部)、AML3361からの溶出ペプチドおよび合成ペプチドVEEVSLRK(中央部)およびAMLからの溶出ペプチド5518および合成ペプチドAVEEVSLR(下部)についてのタンデムマススペクトル。
【0134】
図3図3は、ΔNPM1についてのCD8細胞は、ΔNPM1−CLAとΔNPM1−CLA pMHC四量体の混合を使用してHLA−A02:01陽性健常個体からのPBMCから単離された単一細胞であったことを示す。A. 増大中のT細胞クローンを、pMHC四量体での染色について試験した。T細胞クローン1A2(上部)および4A8(下部)は両者ともΔNPM1−CLA四量体について陽性であり、クローン1A2のみがΔNPM1−CLAで染色された。B. 四量体陽性T細胞クローン1A2(上部)および4A8(下部)を、IFN−γ ELISAにより、用量設定濃度の非システイニル化ΔNPM1ペプチドCLAVEEVSL(丸)、システイニル化ΔNPM1ペプチドCLAVEEVSL(四角)または無関係HLA−A02:01制限CMVペプチドNLVPMVATV(三角)で外来性に充填したHLA−A02:01陽性T2細胞に対する反応性について試験した。クローン1A2のみが、システイニル化および非システイニル化両者のΔNPM1ペプチドの認識を示した。無関係NLVPMVATVペプチドに対する反応性は見られなかった。2個のウェルでのIFN−γの平均放出(ng/ml)を示す。C. クローン1A2(上部)および4A8(中央部)を、IFN−γ ELISAにより5つのHLA−A02:01陽性初代AMLに対する反応性について試験した。パネルは、3つのΔNPM1を伴うAMLおよび2つのwtNPMを伴うAML1を含んだ。T細胞クローン1A2は全3つのΔNPM1を伴うAMLと種々の程度で反応し、クローン4A8は、3つのAML中2つでのみ認識された。両T細胞クローンは、wtNPMを伴うAML1を認識できなかった。HLA−A02:01特異的アロ反応性T細胞クローン(Allo−A2クローン;下部)を陽性対照として含めた。2個のウェルでのIFN−γの平均放出(ng/ml)を示す。
【0135】
図4図4は、TCR遺伝子移入後のΔNPM1に対する特異性を示す。クローン1A2のΔNPM1特異的TCRα鎖およびβ鎖の遺伝子を、TCR遺伝子移入のために修飾MP71−TCR−flexレトロウイルスベクターにクローン化した。HLA−A02:01陽性健常個体から単離したCD8およびCD4細胞を、ΔNPM1についてのTCRおよび、対照として、HLA−A02:01制限CMVペプチドNLVPMVATVについてのTCRでレトロウイルスにより形質導入した。形質導入6日後、TCR形質導入T細胞を、マウスTCR−Cβに対するAPC接合抗体および磁性抗APCビーズを使用して精製した。A. TCR形質導入T細胞を、形質導入7日後CD8またはCD4およびCLAVEEVSL(ΔNPM1−CLA;左)またはNLVPMVATV(CMV−NLV;右)についてのpMHC四量体に対する抗体を使用して、フローサイトメトリーにより分析した。ΔNPM1についてのTCRで形質導入したCD8(CD8ФNPM1)およびCD4(CD4ФNPM1)細胞はΔNPM1−CLA四量体で染色されたが、CMV−NLV四量体ではされなかった。対照的に、CMV特異的TCRで形質導入したCD8(CD8ФCMV)およびCD4(CD4ФCMV)T細胞は、CMV−NLV四量体への結合を示したが、ΔNPM1−CLA四量体へは示さなかった。結果はドナー1について示すが、ドナー2でも結果は類似した。B. TCR形質導入T細胞を、IFN−γ ELISAによりその標的ペプチドに対する反応性について分析した。TCR形質導入CD8およびCD4細胞を、用量設定濃度のΔNPM1ペプチドCLAVEEVSL(丸)またはCMV由来ペプチドNLVPMVATV(四角)を外来性に充填したT2細胞と共インキュベートした。CD8ФNPM1(上部左)およびCD4ФNPM1(下部左)は、30〜100nM濃度のCLAVEEVSLを充填したT2細胞の最大半量認識を示すが(点線)、NLVPMVATVを充填したT2細胞は認識されなかった。逆に、CD8ФCMV(上部右)およびCD4ФCMV(下部右)は、NLVPMVATVを充填したT2細胞に対して反応性であったが、CLAVEEVSLではなかた。2個のウェルでのIFN−γの平均放出(ng/ml)をドナー1について示すが、ドナー2でも結果は類似した。C. TCR形質導入T細胞(CD8ФNPM1およびCD4ФNPM1は黒棒で示す;CD8ФCMVおよびCD4ФCMVは灰色棒で示す)を、IFN−γ ELISAにより、HLAクラスI(W6/32)またはHLAクラスII(PdV5.1)に対する遮断抗体の非存在下または存在下、HLA−A02:01陽性AML細胞株のΔNPM1(OCI−AML3)またはwtNPM1(OCI−AML2)での認識について試験した。ΔNPM1についてのTCRで形質導入したCD8およびCD4細胞によるOCI−AML3の認識は、HLAクラスIが介在する。2個のウェルのIFN−γの平均放出(ng/ml)をドナー2について示す。
【0136】
図5図5は、TCR遺伝子移入後の初代AMLのΔNPM1の認識を示す。TCR形質導入CD8およびCD4細胞を、9つのΔNPM1サンプルおよび4つのwtNPM1サンプルを含む13のHLA−A02:01陽性初代AMLのパネルに対する反応性について、IFN−γ ELISAにより試験した。ΔNPM1についてのTCRで形質導入したCD8(CD8ФNPM1;上部パネル;黒色棒)およびCD4(CD4ФNPM1;下部パネル;黒色棒)細胞は、全9つのΔNPM1を伴うAMLと反応したが、wtNPMを伴うAML1とはせず、一方13のAMLサンプルの何れも、CMV特異的TCRの移入後、CD8(CD8ФCMV;上部パネル;濃灰色棒)またはCD4(CD4ФCMV;下部パネル;濃灰色棒)細胞で認識されなかった。TCR形質導入CD8およびCD4細胞はまたΔNPM1を伴うHLA−A02:01陰性AMLも認識しなかった(データは示していない)。allo−A2クローン(薄灰色棒)を陽性対照として入れる。2個のウェルでのIFN−γの平均放出(ng/ml)をドナー1について示す。
【0137】
図6図6は、IFN−γ ELISAにより単球由来成熟DCで試験したTCR形質導入T細胞を示す。ΔNPM1についてのTCR(CD8ФNPM1およびCD4ФNPM1;黒色棒)またはCMV(CD8ФCMVおよびCD4ФCMV;中間灰色棒)で形質導入したドナー2からのT細胞を、自己単球由来成熟DCならびにHLA−A02:01陽性(AML8861)または陰性(AML587)であるΔNPM1陽性AMLに対する反応性について試験した。自己成熟DCおよびAML8861について、allo−A2クローン(薄灰色棒)を陽性対照として入れ、AML587をHLA−B07:02結合SMCYペプチドと導入し、陽性対照としてのSMCY特異的CD8 T細胞クローンによる認識について試験した(濃灰色棒)。2個のウェルでのIFN−γの平均放出(ng/ml)を示す。
【0138】
図7図7は、51Cr放出アッセイでのTCR遺伝子移入後のΔNPM1を伴う初代AMLの溶解を示す。TCR形質導入CD8およびCD4細胞を、4つのΔNPM1サンプルおよび2つのwtNPM1サンプルを含む6つのHLA−A02:01陽性初代AMLのパネルの9時間51Cr放出アッセイによる細胞溶解能について試験した。ΔNPM1についてのTCRで形質導入したCD8(CD8ФNPM1;黒丸)およびCD4(CD4ФNPM1;黒四角)細胞は、全4つのΔNPM1を伴うAMLの特異的溶解を示したが、wtNPMを伴うAML1では示さず、一方6つのAMLサンプルのいずれも、CMV特異的TCRの移入後、CD8(CD8ФCMV;灰色丸)またはCD4(CD4ФCMV;下部パネル;灰色四角)細胞により特異的に溶解されなかった。allo−A2クローン(灰色三角)を陽性対照として入れる。3個のウェルでの特異的溶解の平均パーセンテージを、30:1のE:T比でドナー2について示すが、ドナー1でも結果は類似した。
【0139】
図8図8は、配列番号1の免疫原性ペプチドアミノ酸配列を示す。配列番号1のシステインアミノ酸はシステイニル化されていてもいなくてもよいことは注意すべきである。
【0140】
図9図9は、CDR3のアミノ酸配列(TCRα鎖)(配列番号2)を示す。
【0141】
図10図10は、CDR3をコードする非最適化核酸配列(TCRα鎖)(配列番号3)を示す。
【0142】
図11図11は、CDR3をコードする最適化核酸配列(TCRα鎖)(配列番号4)を示す。
【0143】
図12図12は、CDR3のアミノ酸配列(TCRβ鎖)(配列番号5)を示す。
【0144】
図13図13は、CDR3をコードする非最適化核酸配列(TCRβ鎖)(配列番号6)を示す。
【0145】
図14図14は、CDR3をコードする最適化核酸配列(TCRβ鎖)(配列番号7)を示す。
【0146】
図15図15は、α鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号8)(CDR3下線)を示す。
【0147】
図16図16は、α鎖可変領域をコードする非最適化核酸配列(配列番号9)(CDR3下線)を示す。
【0148】
図17図17は、α鎖可変領域をコードする最適化核酸配列(配列番号10)(CDR3下線)を示す。
【0149】
図18図18は、β鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号11)(CDR3下線)を示す。
【0150】
図19図19は、β鎖可変領域をコードする非最適化核酸配列(配列番号12)(CDR3下線)を示す。
【0151】
図20図20は、β鎖可変領域をコードする最適化核酸配列(配列番号13)(CDR3下線)を示す。
【0152】
図21図21は、CDR1のアミノ酸配列(TCRα鎖)(配列番号14)を示す。
【0153】
図22図22は、CDR2のアミノ酸配列(TCRα鎖)(配列番号15)を示す。
【0154】
図23図23は、CDR1のアミノ酸配列(TCRβ鎖)(配列番号16)を示す。
【0155】
図24図24は、CDR2のアミノ酸配列(TCRβ鎖)(配列番号17)を示す。
【0156】
図25図25は、CDR1をコードする非最適化核酸配列(TCRα鎖)(配列番号18)を示す。
【0157】
図26図26は、CDR1をコードする最適化核酸配列(TCRα鎖)(配列番号19)を示す。
【0158】
図27図27は、CDR2をコードする非最適化核酸配列(TCRα鎖)(配列番号20)を示す。
【0159】
図28図28は、CDR2をコードする最適化核酸配列(TCRα鎖)(配列番号21)を示す。
【0160】
図29図29は、CDR1をコードする非最適化核酸配列(TCRβ鎖)(配列番号22)を示す。
【0161】
図30図30は、CDR1をコードする最適化核酸配列(TCRβ鎖)(配列番号23)を示す。
【0162】
図31図31は、CDR2をコードする非最適化核酸配列(TCRβ鎖)(配列番号24)を示す。
【0163】
図32図32は、CDR2をコードする最適化核酸配列(TCRβ鎖)(配列番号25)を示す。
【0164】
図33図33は、配列番号26の免疫原性ペプチドアミノ酸配列を示す。
【0165】
図34図34は、配列番号27の免疫原性ペプチドアミノ酸配列を示す。配列番号27のシステインアミノ酸はシステイニル化されていてもいなくてもよいことは注意すべきである。
【0166】
図35図35は、配列番号28の免疫原性ペプチドアミノ酸配列を示す。
【0167】
図36図36は、配列番号29の免疫原性ペプチドアミノ酸配列を示す。
【0168】
図37〜39は、A03;01およびA11:01におけるΔNPM1ペプチドに対するT細胞を示す。ΔNPM1ペプチドAVEEVSLRK(AVE)、CLAVEEVSLRK(CLA)およびCLAVEEVSLRK(CLA;第一残基システイニル化)を伴うPE接合HLA−A03:01四量体の混合物またはAVEEVSLRKを伴う単一HLA−A11:01四量体を使用して、特異的T細胞をHLA−A03:01および/またはHLA−A11:01陽性健常個体からそれぞれ単離した。CLAVEEVSLRKおよび、対照としてCLAVEEVSLRKを伴うHLA−A03:01四量体を、UV交換(それぞれUV−CLAおよびUV−CLA)により産生した。
【0169】
図37図37は、PE接合HLA−A03:01 UV−CLA(クローン1F2;左)、A03:01 AVE(クローン3B3;中央)およびA11:01 AVE(クローン6F11;右)四量体へのT細胞クローン結合を示す。
【0170】
図38図38は、T細胞クローン3B3(左)を用量設定濃度のΔNPM1ペプチドAVEEVSLRK(三角)、CLAVEEVSLRK(丸)またはCLAVEEVSLRK(四角)で外来性にパルスしたHLA−A03:01で形質導入したT2細胞に対する反応性を試験した。種々のペプチド濃度(nM)でのGM−CSFの放出(ng/ml)が示される。T細胞クローン6F11(右)を、用量設定濃度のΔNPM1ペプチドAVEEVSLRK(三角)で外来性にパルスしたHLA−A11:01で形質導入したT2細胞に対する反応性を示した。種々のペプチド濃度(nM)でのIFN−γの放出(ng/ml)が示される。
【0171】
図39図39は、K562細胞、HLA−A03:01またはA11:01で形質導入したK562、HLA−A03:01またはA11:01ならびに完全長野生型またはΔNPM1をコードする遺伝子で形質導入したK562およびOCI−AML2およびA03:01またはA11:01で形質導入したそれぞれ野生型およびΔNPM1を内因性に発現するOCI−AML3細胞株に対する反応性についてT細胞クローン3B3(左)および6F11(右)を試験したものを示す。GM−CSF(クローン3B3)またはIFN−γ(クローン6F11)の放出がng/mlで示される。
【発明を実施するための形態】
【0172】
詳細な記載
変異体NPM1(ΔNPM1)由来のペプチドの免疫原性は以前に試験されており14、そこで、ΔNPM1のアミノ酸配列全体のインシリコ・スクリーニングが、どのペプチドがHLA−A02:01により提示される可能性があるかを予測するために使用された。CLAVEEVSLを含むHLA−A02:01結合が予測されるペプチドを合成により産生した。健常個体およびΔNPM1 AML患者から単離されたCD8 T細胞を該ペプチドで刺激し、T細胞応答を測定した。試験したペプチドの2個のみ(AIQDLCLAVおよびAIQDLCVAV)がインビトロで免疫応答を誘発することが判明した。これらのペプチドは、それ故にΔNPM1の最も顕著なエピトープであると見なされ、故にさらなる試験に使用した。
【0173】
本発明者らは、本発明により、ΔNPM1陽性初代AMLのHLAクラスIリガンドームに存在する5つの異なるペプチド(すなわちCLAVEEVSL(配列番号1)、AVEEVSLRK(配列番号26)、CLAVEEVSLRK(配列番号27)、VEEVSLRK(配列番号28)およびAVEEVSLR(配列番号29))を同定した。
【0174】
本発明者らはまた、本発明により、ΔNPM1内の全ての可能なペプチドで、CLAVEEVSLペプチドがHLA−A02:01癌患者から単離された初代ΔNPM1 AML細胞の表面に提示され、さらに該ペプチドが単離初代AML細胞表面にシステイニル化形態で見られることも驚くべきことに示した。
【0175】
本発明者らはまた、本発明により、ΔNPM1由来ペプチドAVEEVSLRKおよびCLAVEEVSLRKが各々HLA−A03:01およびHLA−A11:01により提示され、AVEEVSLRKもHLA−A01:01により提示されることも驚くべきことに発見した。
【0176】
本発明者らは、健常HLA−A02:01陽性個体のT細胞レパートリーからのCLAVEEVSLと反応性であるT細胞受容体を単離およびクローン化した。これらのT細胞受容体が、末梢血リンパ球の遺伝子操作に使用でき、遺伝的に修飾したリンパ球が、ΔNPM1を有するHLA−A02:01陽性AMLを効率的に致死させることを証明した。これらのTCRは、HLA−A02:01陽性ΔNPM1陽性AMLを有する患者の処置における有効な免疫療法として有利に使用され得る。
【0177】
本発明者らはまた、健常HLA−A03:01陽性個体のT細胞レパートリーからCLAVEEVSLRK(特に、このペプチドのシステイニル化バリアント)と反応性のT細胞クローンも単離した。このクローンからのTCRは、HLA−A03:01陽性ΔNPM1陽性AMLを有する患者の処置における有効な免疫療法として有利に使用され得る。
【0178】
本発明者らはまた、それぞれ健常HLA−A03:01およびHLA−A11:01陽性個体のT細胞レパートリーからAVEEVSLRKと反応性である2つのT細胞クローンも単離した。これらのクローンからのTCRは、ΔNPM1陽性AMLを有するHLA−A03:01およびHLA−A11:01陽性患者の処置における有効な免疫療法として有利に使用され得る。
【0179】
TCRポリペプチド成分をコードする核酸配列
本発明は、CLAVEEVSL(配列番号1)、AVEEVSLRK(配列番号26)、CLAVEEVSLRK(配列番号27)、VEEVSLRK(配列番号28)およびAVEEVSLR(配列番号29)から選択されるペプチドに特異的に結合するT細胞受容体成分をコードする核酸配列を提供する。核酸配列は、T細胞受容体の大きな構成成分をコードする大きな核酸配列の一部を形成し得る(例えばTCRα鎖可変領域、TCRβ鎖可変領域、TCRα鎖、TCRβ鎖など)。核酸配列は、機能的T細胞受容体をコードする大きな核酸配列の一部も形成し得る(すなわち所望により2つのタンパク質またはポリペプチドの同じベクターによる協調的発現を可能にするリンカー配列により離された、機能的TCRα鎖および機能的TCRβ鎖をコードする。これに関するさらなる詳細は下に提供する。
【0180】
核酸配列は、T細胞受容体の小さな成分、例えばTCRα鎖ポリペプチドのCDR3ドメインまたはTCRβ鎖ポリペプチドのCDR3ドメインのみをコードし得る。核酸配列は、それ故にペプチド特異性の必須成分を提供する「構成成分」と見なし得る。本発明の核酸配列は、本発明の核酸配列が取り込まれたとき、CLAVEEVSL(配列番号1)、AVEEVSLRK(配列番号26)、CLAVEEVSLRK(配列番号27)、VEEVSLRK(配列番号28)およびAVEEVSLR(配列番号29)から選択されるペプチドに特異的に結合するTCRα鎖可変領域および/またはTCRβ鎖可変領域をコードする新規核酸配列が産生されるように、TCR可変鎖の他の要素をコードする別の核酸配列(例えばベクター)に取り込まれ得る。本発明の核酸配列は、それ故に選択ΔNPM1ペプチドに対するTCR特異性の必須成分として有用であり得て、故にΔNPM1陽性AMLを標的とするための必要な抗原結合活性および特異性を備えたTCR可変領域をコードする核酸配列を産生するために使用され得る。
【0181】
T細胞受容体(TCR)は、標的細胞上の主要組織適合抗原(MHC)分子に結合する(提示される)ペプチドの認識を担う、T細胞(Tリンパ球)の表面に見られる分子である。本発明は、MHCの適切な血清型の状況で特定のペプチド、例えばHLA−A02:01の影響下でCLAVEEVSL;または各々HLA−A03:01およびHLA−A11:01の何れかの影響下でAVEEVSLRKまたはCLAVEEVSLRKの一つまたはHLA−A01:01の影響下でAVEEVSLRKと相互作用するTCRをコードする核酸配列に関する。
【0182】
HLA−A02:01は、HLA−A血清型群内の世界的によくあるヒト白血球抗原血清型である。HLA−A02:01に対するTCRにより提示されるペプチドは、「HLA−A02:01限定的」であるとして記載する。
【0183】
HLA−A03:01、HLA−A11:01およびHLA−A01:01も、HLA−A血清型群内でよくあるヒト白血球抗原血清型である。HLA−A03:01に対するTCRにより提示されるペプチドは、「HLA−A03:01限定的」であるとして記載する。同様に、HLA−A11:01に対するTCRにより提示されるペプチドは、「HLA−A11:01限定的」であるとして記載する。同様に、HLA−A01:01に対するTCRにより提示されるペプチドは、「HLA−A01:01限定的」であるとして記載する。
【0184】
TCRは、2つの異なるポリペプチド鎖からなる。ヒトにおいて、TCRの95%は、アルファ(α)鎖およびベータ(β)鎖からなる(それぞれTRAおよびTRBによりコード)。TCRがHLAの状況で(例えば、適切にHLA−A02:01、HLA−A03:01またはHLA−A11:01)の影響下でペプチドと結合したとき、T細胞はシグナル伝達により活性化される。
【0185】
TCRのアルファ鎖およびβ鎖は、配列が高度に可変である。各鎖は、2つの細胞外ドメイン、可変領域(V)および定常領域(C)からなる。定常領域はT細胞膜に近位であり、続いて膜貫通領域および短細胞質テイルがあり、同時に可変領域は、ペプチド/HLA−A複合体に結合する。
【0186】
各鎖の可変領域は、3つの超可変領域(相補性決定領域(CDR)とも称される)を有する。従って、TCRアルファ鎖はCDR1、CDR2およびCDR3を含み、TCRβ鎖も(異なる)CDR1、CDR2およびCDR3を含む。アルファ鎖およびβ鎖の各々において、HLA−Aにより提示されるペプチドの認識を主に担うのは、CDR3である。
【0187】
ある態様において、本発明は、(a)CLAVEEVSL(配列番号1)、AVEEVSLRK(配列番号26)、CLAVEEVSLRK(配列番号27)、VEEVSLRK(配列番号28)およびAVEEVSLR(配列番号29)から選択されるペプチドに特異的に結合するTCRα鎖ポリペプチドのCDR3を含むポリペプチド;および/または(b)CLAVEEVSL(配列番号1)、AVEEVSLRK(配列番号26)、CLAVEEVSLRK(配列番号27)、VEEVSLRK(配列番号28)およびAVEEVSLR(配列番号29)から選択されるペプチドに特異的に結合するTCRβ鎖ポリペプチドのCDR3を含むポリペプチドをコードする単離核酸配列を提供する。
【0188】
特定の実施態様において、コードされたポリペプチドは、CLAVEEVSL(配列番号1)に特異的に結合する。CLAVEEVSLはシステイニル化形態であり得る。コードされたポリペプチドは、システイニル化形態にのみ特異的に結合し得る。
【0189】
特定の実施態様において、コードされたポリペプチドは、AVEEVSLRK(配列番号26)に特異的に結合する。
【0190】
特定の実施態様において、コードされたポリペプチドは、CLAVEEVSLRK(配列番号27)に特異的に結合する。CLAVEEVSLRKはシステイニル化形態であり得る。コードされたポリペプチドは、システイニル化形態にのみ特異的に結合し得る。
【0191】
核酸配列は(a)、(b)または(a)および(b)をコードし得る。核酸配列は、それ故に、T細胞受容体ポリペプチドのCDR3を含む少なくとも一つのポリペプチドをコードし、ここで、CDR3は、次のペプチドCLAVEEVSL(配列番号1)、AVEEVSLRK(配列番号26)、CLAVEEVSLRK(配列番号27)、VEEVSLRK(配列番号28)またはAVEEVSLR(配列番号29)の一つに特異的に結合する。
【0192】
核酸配列は、アルファ鎖CDR3およびβ鎖CDR3を含み得て、ここで、アルファ鎖CDR3およびβ鎖CDR3は、一体となって、選択ペプチドに特異的に結合する。
【0193】
核酸配列は、それ故に「TCRα鎖ポリペプチドのCDR3」(ここではアルファ鎖CDR3またはα鎖CDR3とも称する)および/または「TCRβ鎖ポリペプチドのCDR3」(ここではβ鎖CDR3またはβ鎖CDR3とも称する)をコードする。
【0194】
アルファ鎖CDR3は配列番号2のものまたは下記バリアントの一つであり得る。同様に、β鎖CDR3は、配列番号5のものまたは下記バリアントの一つであり得る。これらの特異的CDR3は、本発明者らにより、配列番号1のペプチドに特異的に結合することが発見されたことは注意すべきである。
【0195】
(a)について下記の並べ替えを、(b)について記載する並べ替えと組み合わせ得る(例えば機能的T細胞受容体をコードする適切な核酸配列を形成するため(すなわち所望により2つのタンパク質またはポリペプチドの同じベクターによる協調的発現を可能にするリンカー配列により分離された、機能的TCRα鎖およびTCRβ鎖をコードする))。
【0196】
ポリペプチド(a) − TCRアルファ鎖の成分
ある実施態様において、(a)のCDR3は、配列番号2のアミノ酸配列を有するかまたはその機能的バリアントであり得る(すなわちここで、バリアントは配列番号1のペプチドに特異的に結合する能力を保持する)。このような機能的バリアントは、配列番号2の天然に存在する、合成または合成により改善された機能的バリアントであり得る。用語「バリアント」はホモログも含む。機能的バリアントは、一般に、配列番号2の1個以上のアミノ酸の保存的置換または該タンパク質の重大でない領域の重大でないアミノ酸の置換、欠失または挿入のみを含む。
【0197】
非機能的バリアントは、配列番号1に特異的に結合しない、配列番号2のアミノ酸配列バリアントである。非機能的バリアントは、一般に配列番号2のアミノ酸配列の非保存的置換、欠失または挿入または未熟な切断または重大なアミノ酸または重大な領域における置換、挿入もしくは欠失を含む。機能的および非機能的バリアントを同定する方法は、当業者に周知である。
【0198】
ある実施態様において、(a)のCDR3は、配列番号2のペプチドに特異的に結合する能力を維持しながら、配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも90%配列同一性を有するアミノ酸配列を有し得る。換言すると、配列番号2の配列に比して1アミノ酸置換を有する機能的CDR3も包含される。上記のとおり、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換であり得る。同様に、パーセント同一性は、対照配列(例えば配列番号2)の全長に対する同一性のパーセンテージとして計算され得る。
【0199】
(a)のCDR3が配列番号2のアミノ酸配列を有する例において、CDR3は、配列番号3または配列番号4の核酸配列またはその遺伝的に変化した配列(すなわち遺伝暗号縮重の結果として同じタンパク質をコードする他の核酸配列)によりコードされ得る。配列番号4は、クローン1A2のCDR3の核酸配列のコドン最適化バージョンであることは注意すべきである(非最適化配列は配列番号3)。従って、(a)のポリペプチドは、配列番号3または配列番号4の核酸配列またはその遺伝的に変化した配列(すなわち遺伝暗号縮重の結果として同じタンパク質をコードする他の核酸配列)によりコードされ得る。
【0200】
ある実施態様において、(a)のポリペプチドは、TCRα鎖可変領域内に配列番号1のペプチドに特異的に結合するCDR3(例えば上記で定義した配列番号2のCDR3またはそのバリアント)を含む。換言すると、(a)のポリペプチドは、特定のCDR3を含むTCRα鎖可変領域を含み得て、ここで、TCRα鎖可変領域(およびその中のCDR3)は、配列番号1のペプチドに特異的に結合する。当業者には明確であるとおり、用語「TCRα鎖可変領域」は、TCRアルファ鎖の可変(V)領域(細胞外ドメイン)をいい、故に、3つの超可変領域(CDR1、CDR2および特定のCDR3)ならびに介在配列を含むが、可変鎖の一部を形成しないアルファ鎖の定常(C)領域は含まない。
【0201】
コードされるTCRα鎖可変領域は、特定のCDR3に加えて、配列番号14のアミノ酸配列を有するCDR1またはその機能的バリアント(すなわちここで、該バリアントは、配列番号1のペプチドのN末端に特異的に結合する能力を保持する)を含み得る。このような機能的バリアントは、配列番号14の天然に存在する、合成または合成により改善された機能的バリアントであり得る。用語「バリアント」はホモログも含む。機能的バリアントは、一般に、配列番号14の1個以上のアミノ酸の保存的置換または該タンパク質の重大でない領域の重大でないアミノ酸の置換、欠失または挿入のみを含む。
【0202】
非機能的バリアントは、配列番号1のペプチドのN末端に特異的に結合しない配列番号14のアミノ酸配列バリアントである。非機能的バリアントは、一般に配列番号14のアミノ酸配列の非保存的置換、欠失または挿入または未熟な切断または重大なアミノ酸または重大な領域における置換、挿入もしくは欠失を含む。機能的および非機能的バリアントを同定する方法は、当業者に周知である。
【0203】
ある実施態様において、(a)のCDR1(例えばアルファ鎖可変領域内)は、配列番号1ののペプチドのN末端に特異的に結合する能力を維持しながら、配列番号14のアミノ酸配列と少なくとも85%配列同一性を有するアミノ酸配列を有し得る。換言すると、配列番号14の配列に比して1アミノ酸置換を有する機能的CDR1も包含される。上記のとおり、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換であり得る。同様に、パーセント同一性は、対照配列(例えば配列番号14)の全長に対する同一性のパーセンテージとして計算され得る。
【0204】
(a)のCDR1(例えばアルファ鎖可変領域内)が配列番号14のアミノ酸配列を有する例において、CDR1は、配列番号18または配列番号19の核酸配列またはその遺伝的に変化した配列(すなわち遺伝暗号縮重の結果として同じタンパク質をコードする他の核酸配列)によりコードされ得る。配列番号19は、クローン1A2のCDR1の核酸配列のコドン最適化バージョンであることは注意すべきである(非最適化配列は配列番号18)。従って、(a)のポリペプチドは、配列番号18または配列番号19の核酸配列またはその遺伝的に変化した配列(すなわち遺伝暗号縮重の結果として同じタンパク質をコードする他の核酸配列)によりコードされ得る。
【0205】
コードされるTCRα鎖可変領域は、特定のCDR3(および所望により上記特定のCDR1)に加えて、配列番号15のアミノ酸配列またはその機能的バリアント(すなわちここで、バリアントはHLA−A02:01に特異的に結合する能力を保持する)を有するCDR2も含み得る。このような機能的バリアントは、配列番号15の天然に存在する、合成または合成により改善された機能的バリアントであり得る。用語「バリアント」はホモログも含む。機能的バリアントは、一般に、配列番号15の1個以上のアミノ酸の保存的置換または該タンパク質の重大でない領域の重大でないアミノ酸の置換、欠失または挿入のみを含む。
【0206】
非機能的バリアントは、HLA−A02:01に特異的に結合しない配列番号15のアミノ酸配列バリアントである。非機能的バリアントは、一般に配列番号15のアミノ酸配列の非保存的置換、欠失または挿入または未熟な切断または重大なアミノ酸または重大な領域における置換、挿入もしくは欠失を含む。機能的および非機能的バリアントを同定する方法は、当業者に周知である。
【0207】
ある実施態様において、(a)のCDR2(例えばアルファ鎖可変領域内)は、HLA−A02:01に結合する能力を保持しながら、配列番号15のアミノ酸配列と少なくとも85%配列同一性を有するアミノ酸配列を有し得る。換言すると、配列番号15の配列に比して1アミノ酸置換を有する機能的CDR2も包含される。上記のとおり、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換であり得る。同様に、パーセント同一性は、対照配列(例えば配列番号15)の全長に対する同一性のパーセンテージとして計算され得る。
【0208】
(a)のCDR2(例えばアルファ鎖可変領域内)が配列番号15のアミノ酸配列を有する例において、CDR2は、配列番号20または配列番号21の核酸配列またはその遺伝的に変化した配列(すなわち遺伝暗号縮重の結果として同じタンパク質をコードする他の核酸配列)によりコードされ得る。配列番号21は、クローン1A2のCDR2の核酸配列のコドン最適化バージョンであることは注意すべきである(非最適化配列は配列番号20)。従って、(a)のポリペプチドは、配列番号20または配列番号21の核酸配列またはその遺伝的に変化した配列(すなわち遺伝暗号縮重の結果として同じタンパク質をコードする他の核酸配列)によりコードされ得る。
【0209】
(a)のポリペプチドは、それ故に上に詳述した(配列特異的またはそのバリアントにより)CDRを、CDR間の適切な介在配列と共に含むTCRアルファ鎖可変領域を含み得る。
【0210】
(a)のTCRアルファ鎖可変領域は、配列番号8のアミノ酸配列またはその機能的バリアント(すなわちここで、バリアントは配列番号1のペプチドに特異的に結合する能力を保持する)を有し得る。このような機能的バリアントは、配列番号8の天然に存在する、合成または合成により改善された機能的バリアントであり得る。用語「バリアント」はホモログも含む。機能的バリアントは、一般に、配列番号8の1個以上のアミノ酸の保存的置換または該タンパク質の重大でない領域の重大でないアミノ酸の置換、欠失または挿入のみを含む。
【0211】
非機能的バリアントは、配列番号1に特異的に結合しない、配列番号8のアミノ酸配列バリアントである。非機能的バリアントは、一般に配列番号8のアミノ酸配列の非保存的置換、欠失または挿入または未熟な切断または重大なアミノ酸または重大な領域における置換、挿入もしくは欠失を含む。機能的および非機能的バリアントを同定する方法は、当業者に周知である。
【0212】
ある実施態様において、(a)のTCRアルファ鎖可変領域は、配列番号1のペプチドに特異的に結合する能力を保持しながら、配列番号8のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%または少なくとも90%(または少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)配列同一性を有するアミノ酸配列を有し得る。換言すると、配列番号8の配列に比して、1以上のアミノ酸置換を有する機能的TCRアルファ鎖可変領域も包含される。上記のとおり、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換であり得る。配列番号8に比した配列の可変性は、全て、TCRアルファ鎖可変領域のCDRを形成しない領域にあり得る(すなわちバリアントは、配列番号2、配列番号14および/または配列番号15のCDRを有し、なお配列番号8に比して25%(またはそれ以下)配列可変性を有し得る)。換言すると、配列番号8のCDRの配列は、上に特定した「少なくとも75%同一性」パラメータ内で、適宜配列の残りを変えながら、維持される。同様に、パーセント同一性は、対照配列(例えば配列番号8)の全長に対する同一性のパーセンテージとして計算され得る。
【0213】
例として、(a)のポリペプチドは、TCRα鎖可変領域内に配列番号8のアミノ酸配列に少なくとも75%(例えば少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)配列同一性を有するCDR3を含み得て、ここで、CDR3は、配列番号2のアミノ酸配列を有する。この例では、TCRα鎖可変領域CDR1は配列番号14のアミノ酸配列を有し得て、TCRα鎖可変領域CDR2は配列番号15のアミノ酸配列を有し得る。
【0214】
(a)のTCRアルファ鎖可変領域が配列番号8のアミノ酸配列を有する例において、TCRアルファ鎖可変領域は配列番号9または配列番号10の核酸配列またはその遺伝的に変化した配列(すなわち遺伝暗号縮重の結果として同じタンパク質をコードする他の核酸配列)によりコードされ得る。配列番号10は、クローン1A2のTCRアルファ鎖可変領域の核酸配列のコドン最適化バージョンであることは注意すべきである(非最適化配列は配列番号9)。従って、(a)のポリペプチドは、配列番号9または配列番号10の核酸配列またはその遺伝的に変化した配列(すなわち遺伝暗号縮重の結果として同じタンパク質をコードする他の核酸配列)によりコードされ得る。
【0215】
疑いを避けるため、(a)のポリペプチドは、TCRα鎖可変領域(上に明記したとおり)およびTCRα鎖定常領域を含み得る。適当な定常領域の例は、ここで使用されるGenScriptのMP71−TCR−flexレトロウイルスベクターによりコードされる。しかしながら、本発明はこの特異的定常領域に限定されず、任意の適切なTCRα鎖定常領域を包含する。定常領域はマウス由来、ヒト由来またはヒト化であり得る。適切な定常領域を同定または産生する方法は当業者に周知であり、十分に通常の能力の範囲内である。
【0216】
単なる例として、定常領域は、マウスまたはヒト定常領域が予めクローン化された、レンチウイルス、レトロウイルスまたはプラスミドベクターなどのベクターだけでなく、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ワクシニアウイルス、カナリアポックスウイルスまたはヘルペスウイルスベクターによってもコードされ得るまたはそれに由来し得る。近年、ミニサークルもまたTCR遺伝子移入について報告されている(R Monjezi, C Miskey, T Gogishvili, M Schleef, M Schmeer, H Einsele, Z Ivics and M Hudecek in Leukemia 2016により公開されたミニサークルベクターからの非ウイルスSleeping Beauty転位(transposition))。さらに、ネイキッド(合成)DNA/RNAもTCR導入に使用し得る。例として、LV コアn et al., BioTechniques 2015に記載の予めクローン化されたTCR−CaおよびCb遺伝子を有するpMSGVレトロウイルスベクターも、適切な定常領域の提供のために使用し得る。
【0217】
ポリペプチド(b) − TCRβ鎖の成分
ある実施態様において、(b)のCDR3は、配列番号5のアミノ酸配列を有するかまたはその機能的バリアントであり得る(すなわちここで、バリアントは配列番号1のペプチドに特異的に結合する能力を保持する)。このような機能的バリアントは、配列番号5の天然に存在する、合成または合成により改善された機能的バリアントであり得る。用語「バリアント」はホモログも含む。機能的バリアントは、一般に、配列番号5の1個以上のアミノ酸の保存的置換または該タンパク質の重大でない領域の重大でないアミノ酸の置換、欠失または挿入のみを含む。
【0218】
非機能的バリアントは、配列番号1に特異的に結合しない、配列番号5のアミノ酸配列バリアントである。非機能的バリアントは、一般に配列番号5のアミノ酸配列の非保存的置換、欠失または挿入または未熟な切断または重大なアミノ酸または重大な領域における置換、挿入もしくは欠失を含む。機能的および非機能的バリアントを同定する方法は、当業者に周知である。
【0219】
ある実施態様において、(b)のCDR3は、配列番号5のペプチドに特異的に結合する能力を維持しながら、配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも90%配列同一性を有するアミノ酸配列を有し得る。換言すると、配列番号5の配列に比して1アミノ酸置換を有する機能的CDR3も包含される。上記のとおり、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換であり得る。同様に、パーセント同一性は、対照配列(例えば配列番号5)の全長に対する同一性のパーセンテージとして計算され得る。
【0220】
(b)のCDR3が配列番号5のアミノ酸配列を有する例において、CDR3は、配列番号6または配列番号7の核酸配列またはその遺伝的に変化した配列(すなわち遺伝暗号縮重の結果として同じタンパク質をコードする他の核酸配列)によりコードされ得る。配列番号7は、クローン1A2のCDR3の核酸配列のコドン最適化バージョンであることは注意すべきである(非最適化配列は配列番号6)。従って、(b)のポリペプチドは、配列番号6または配列番号7の核酸配列またはその遺伝的に変化した配列(すなわち遺伝暗号縮重の結果として同じタンパク質をコードする他の核酸配列)によりコードされ得る。
【0221】
ある実施態様において、(b)のポリペプチドは、配列番号1のペプチドに特異的に結合するTCRβ鎖可変領域内にCDR3(例えば上記で定義した配列番号5のCDR3またはそのバリアント)を含む。換言すると、(b)のポリペプチドは、特定のCDR3を含むTCRβ鎖可変領域を含み、ここで、TCRβ鎖可変領域(およびその中のCDR3)は、配列番号1のペプチドに特異的に結合する。当業者には明確であるとおり、用語「TCRβ鎖可変領域」は、TCRβ鎖の可変(V)領域(細胞外ドメイン)をいい、故に、3つの超可変領域(CDR1、CDR2および特定のCDR3)ならびに介在配列を含むが、可変鎖の一部を形成しないβ鎖の定常(C)領域は含まない。
【0222】
コードされるTCRβ鎖可変領域は、特定のCDR3に加えて、配列番号16のアミノ酸を有するCDR1またはその機能的バリアント(すなわちここで、バリアントは配列番号1のペプチドのC末端に特異的に結合する能力を保持する)を含み得る。このような機能的バリアントは、配列番号16の天然に存在する、合成または合成により改善された機能的バリアントであり得る。用語「バリアント」はホモログも含む。機能的バリアントは、一般に、配列番号16の1個以上のアミノ酸の保存的置換または該タンパク質の重大でない領域の重大でないアミノ酸の置換、欠失または挿入のみを含む。
【0223】
非機能的バリアントは、配列番号1のペプチドのC末端に特異的に結合しない配列番号16のアミノ酸配列バリアントである。非機能的バリアントは、一般に配列番号16のアミノ酸配列の非保存的置換、欠失または挿入または未熟な切断または重大なアミノ酸または重大な領域における置換、挿入もしくは欠失を含む。機能的および非機能的バリアントを同定する方法は、当業者に周知である。
【0224】
ある実施態様において、(b)のCDR1(例えばβ鎖可変領域内)は、配列番号1のペプチドのC末端に特異的に結合する能力を維持しながら、配列番号16のアミノ酸配列と少なくとも80%配列同一性を有するアミノ酸配列を有し得る。換言すると、配列番号16の配列に比して1アミノ酸置換を有する機能的CDR1も包含される。上記のとおり、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換であり得る。同様に、パーセント同一性は、対照配列(例えば配列番号16)の全長に対する同一性のパーセンテージとして計算され得る。
【0225】
(b)のCDR1(例えばβ鎖可変領域内)が配列番号16のアミノ酸配列を有する例において、CDR1は、配列番号22または配列番号23の核酸配列またはその遺伝的に変化した配列(すなわち遺伝暗号縮重の結果として同じタンパク質をコードする他の核酸配列)によりコードされ得る。配列番号23は、クローン1A2のCDR1の核酸配列のコドン最適化バージョンであることは注意すべきである(非最適化配列は配列番号22)。従って、(b)のポリペプチドは、配列番号22または配列番号23の核酸配列またはその遺伝的に変化した配列(すなわち遺伝暗号縮重の結果として同じタンパク質をコードする他の核酸配列)によりコードされ得る。
【0226】
コードされるTCRβ鎖可変領域は、特定のCDR3(および所望により上記特定のCDR1)に加えて、配列番号17のアミノ酸配列またはその機能的バリアント(すなわちここで、バリアントはHLA−A02:01に特異的に結合する能力を保持する)を有するCDR2も含み得る。このような機能的バリアントは、配列番号17の天然に存在する、合成または合成により改善された機能的バリアントであり得る。用語「バリアント」はホモログも含む。機能的バリアントは、一般に、配列番号17の1個以上のアミノ酸の保存的置換または該タンパク質の重大でない領域の重大でないアミノ酸の置換、欠失または挿入のみを含む。
【0227】
非機能的バリアントは、HLA−A02:01に特異的に結合しない配列番号17のアミノ酸配列バリアントである。非機能的バリアントは、一般に配列番号17のアミノ酸配列の非保存的置換、欠失または挿入または未熟な切断または重大なアミノ酸または重大な領域における置換、挿入もしくは欠失を含む。機能的および非機能的バリアントを同定する方法は、当業者に周知である。
【0228】
ある実施態様において、(b)のCDR2(例えばβ鎖可変領域内)は、HLA−A02:01に結合する能力を保持しながら、配列番号17のアミノ酸配列に少なくとも90%配列同一性を有するアミノ酸配列を有し得る。換言すると、配列番号17の配列に比して1アミノ酸置換を有する機能的CDR2も包含される。上記のとおり、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換であり得る。同様に、パーセント同一性は、対照配列(例えば配列番号17)の全長に対する同一性のパーセンテージとして計算され得る。
【0229】
(b)のCDR2(例えばβ鎖可変領域内)が配列番号17のアミノ酸配列を有する例において、CDR2は、配列番号24または配列番号25の核酸配列またはその遺伝的に変化した配列(すなわち遺伝暗号縮重の結果として同じタンパク質をコードする他の核酸配列)によりコードされ得る。配列番号25は、クローン1A2のCDR2の核酸配列のコドン最適化バージョンであることは注意すべきである(非最適化配列は配列番号24)。従って、(b)のポリペプチドは、配列番号24または配列番号25の核酸配列またはその遺伝的に変化した配列(すなわち遺伝暗号縮重の結果として同じタンパク質をコードする他の核酸配列)によりコードされ得る。
【0230】
(b)のポリペプチドは、それ故に上に詳述した(配列特異的またはそのバリアントにより)CDRを、CDR間に、適切な介在配列と共に含むTCRβ鎖可変領域を含み得る。
【0231】
(b)のTCRβ鎖可変領域は、配列番号11のアミノ酸配列またはその機能的バリアント(すなわちここで、バリアントは配列番号1のペプチドに特異的に結合する能力を保持する)を有し得る。このような機能的バリアントは、配列番号11の天然に存在する、合成または合成により改善された機能的バリアントであり得る。用語「バリアント」はホモログも含む。機能的バリアントは、一般に、配列番号11の1個以上のアミノ酸の保存的置換または該タンパク質の重大でない領域の重大でないアミノ酸の置換、欠失または挿入のみを含む。
【0232】
非機能的バリアントは、配列番号1に特異的に結合しない、配列番号11のアミノ酸配列バリアントである。非機能的バリアントは、一般に配列番号11のアミノ酸配列の非保存的置換、欠失または挿入または未熟な切断または重大なアミノ酸または重大な領域における置換、挿入もしくは欠失を含む。機能的および非機能的バリアントを同定する方法は、当業者に周知である。
【0233】
ある実施態様において、(b)のTCRβ鎖可変領域は、配列番号1のペプチドに特異的に結合する能力を保持しながら、配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%または少なくとも90%(または少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)配列同一性を有するアミノ酸配列を有し得る。換言すると、配列番号11の配列に比して、1以上のアミノ酸置換を有する機能的TCRβ鎖可変領域も包含される。上記のとおり、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換であり得る。配列番号11に比した配列の可変性、全て、TCRβ鎖可変領域のCDRを形成しない領域にあり得る(すなわちバリアントは、配列番号5、配列番号16および/または配列番号17のCDRを有し、なお配列番号11に比して25%(またはそれ以下)配列可変性を有し得る)。換言すると、配列番号11のCDRの配列は、上に特定した「少なくとも75%同一性」パラメータ内で、適宜配列の残りを変えながら、維持される。同様に、パーセント同一性は、対照配列(例えば配列番号11)の全長に対する同一性のパーセンテージとして計算され得る。
【0234】
例として、(b)は、TCRβ鎖可変領域内に配列番号11のアミノ酸配列に少なくとも75%(例えば少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)配列同一性を有するCDR3を含み得て、ここで、CDR3は、配列番号5のアミノ酸配列を有する。この例では、TCRβ鎖可変領域CDR1は配列番号16のアミノ酸配列を有し得て、TCRβ鎖可変領域CDR2は配列番号17のアミノ酸配列を有し得る。
【0235】
(b)のTCRβ鎖可変領域が配列番号11のアミノ酸配列を有する例において、TCRβ鎖可変領域は配列番号12または配列番号13の核酸配列またはその遺伝的に変化した配列(すなわち遺伝暗号縮重の結果として同じタンパク質をコードする他の核酸配列)によりコードされ得る。配列番号13は、クローン1A2のTCRβ鎖可変領域の核酸配列のコドン最適化バージョンであることは注意すべきである(非最適化配列は配列番号12)。従って、(b)のポリペプチドは、配列番号12または配列番号13の核酸配列またはその遺伝的に変化した配列(すなわち遺伝暗号縮重の結果として同じタンパク質をコードする他の核酸配列)によりコードされ得る。
【0236】
疑いを避けるため、(b)はTCRβ鎖可変領域(上に明記したとおり)およびTCRβ鎖定常領域を含み得る。適当な定常領域の例は。ここで使用されるGenScriptのMP71−TCR−flexレトロウイルスベクターによりコードされる。しかしながら、本発明はこの特異的定常領域に限定されず、任意の適切なTCRβ鎖定常領域を包含する。定常領域はマウス由来、ヒト由来またはヒト化であり得る。適切な定常領域を同定または産生する方法は当業者に周知であり、十分に通常の能力の範囲内である。
【0237】
単なる例として、定常領域は、マウスまたはヒト定常領域が予めクローン化された、レンチウイルス、レトロウイルスまたはプラスミドベクターなどのベクターだけでなく、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ワクシニアウイルス、カナリアポックスウイルスまたはヘルペスウイルスベクターによってもコードされ得るまたはそれに由来し得る。近年、ミニサークルがTCR遺伝子移入についてまた記載されている(R Monjezi, C Miskey, T Gogishvili, M Schleef, M Schmeer, H Einsele, Z Ivics and M Hudecek in Leukemia 2016により公開されたミニサークルベクターからの非ウイルスSleeping Beauty転位)。さらに、ネイキッド(合成)DNA/RNAもTCR導入に使用し得る。例として、本発明者らにより使用される予めクローン化されたTCR−CaおよびCb遺伝子を有するMP71−TCR−flexレトロウイルスベクターまたはLV コアn et al., BioTechniques 2015に記載の予めクローン化されたTCR−CaおよびCb遺伝子を有するpMSGVレトロウイルスベクターも、適切な定常領域の提供のために使用し得る。
【0238】
本発明の核酸分子が(a)および(b)両者によりコードされる例において、(a)のポリペプチドは、リンカー、例えば同じベクターによる2つのタンパク質またはポリペプチドを可能とするリンカーを介して、(b)のポリペプチドに結合され得る。例として、ブタテッショウウイルス−1 2A(P2A)配列を含むリンカーが使用でき、例えば、口蹄疫ウイルス(F2A)、ウマ鼻炎Aウイルス(E2A)またはA.L. Szymczak et al., Nature Biotechnology 22, 589 - 594 (2004)により公開されたThosea asignaウイルス(T2A)または2A様配列からの2A配列である。2Aおよび2A様配列は、核酸分子が転写および翻訳されたら、切断可能であるリンカーである。リンカーの他の例は、同じ転写物による2つのタンパク質またはポリペプチドの翻訳を可能とする配列内リボソーム進入部位(IRES)である。あらゆる他の適切なリンカーも使用され得る。適切なリンカーの同定は、十分に当業者の日常的な能力の範囲内である。さらなる例として、(a)をコードする核酸配列および(b)をコードする核酸配列を、デュアル内部プロモーターを有するベクターにクローン化し得る(例えばS Jones et al., Human Gene Ther 2009参照)。
【0239】
さらなる適切なポリペプチドドメインも本発明の核酸配列によりコードされ得る。単なる例として、核酸配列は、コードしたポリペプチドの修飾細胞の細胞表面膜への輸送のために提供される、膜ターゲティング配列を含み得る。他の適切なさらなるドメインは、周知であり、例えば、WO2016/071758に記載される。
【0240】
ある実施態様において、本発明の核酸配列は可溶性TCRをコードし得る。例えば、核酸配列は(a)および(b)をコードしてよく、ここで、(a)および(b)は、それぞれTCRアルファ鎖およびβ鎖の可変領域および所望によりCD3アゴニスト(例えば抗CD3 scFv)などの免疫モジュレーター分子を含む。CD3抗原は、成熟ヒトT細胞、胸腺細胞およびナチュラルキラー細胞のサブセットに呈示される。これはTCRと関連し、TCRのシグナル伝達に関与する。ヒトCD3抗原に特異的な抗体は、周知である。一つのこのような抗体は、始めてFDAにより承認されたモノクローナル抗体である、マウスモノクローナル抗体OKT3である。他のCD3に特異的な抗体も報告されている(例えばWO2004/106380;米国特許出願公開2004/0202657;米国特許6,750,325参照)。免疫動員性抗癌mTCR(ImmTAC;Immunocore Limited, Milton Partk, Abington, Oxon, United Kingdom)は、親和性モノクローナルT細胞受容体(mTCR)ターゲティングと治療的な作用機序(すなわち、抗CD3 scFv)を組み合わせた二機能性タンパク質である。他の例において、本発明の可溶性TCRを、放射性同位体または毒性薬物と組み合わせ得る。適切な放射性同位体および/または毒性薬物は当分野で周知であり、当業者により容易に同定され得る。
【0241】
ある実施態様において、本発明の核酸配列は、(a)のポリペプチド(例えばTCRアルファ鎖可変領域)が(b)のポリペプチド(例えばTCRβ鎖可変領域)および例えばCD3ゼータシグナル伝達ドメインに融合した定常領域に結合されたキメラ一鎖TCRをコードし得る。この例では、リンカーは切断不可能である。別の実施態様において、本発明の核酸配列は、(a)のポリペプチド(例えばTCRアルファ鎖可変領域)および(b)のポリペプチド(例えばTCRβ鎖可変領域)が各々CD3ゼータシグナル伝達ドメインに結合されたキメラ二鎖TCRをコードし得る。このような一鎖TCRおよび二鎖TCRの製造方法は当分野で周知である;例えばRA Willemsen et al, Gene Therapy 2000参照。
【0242】
本発明はまた本発明のペプチドをコードする単離核酸配列(および対応するベクター)も提供する。核酸配列およびベクターに関する全ての一般的記載は、等しく適用される。当業者は、ここに提供するペプチド配列に基づき、適当な核酸配列およびベクターを容易に同定する。
【0243】
ベクターおよび修飾細胞
ある態様において、本発明は、ここに記載する核酸配列を含むベクターを提供する。任意の適切なベクターが使用され得る。単なる例として、ベクターはプラスミドまたはレトロウイルスベクターもしくはレンチウイルスベクターなどのウイルスベクターであり得る。アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ワクシニアウイルス、カナリアポックスウイルス、ヘルペスウイルス、ミニサークルベクターおよびネイキッド(合成)DNA/RNAも使用され得る(ミニサークルベクターの詳細について、例えばR Monjezi, C Miskey, T Gogishvili, M Schleef, M Schmeer, H Einsele, Z Ivics and M Hudecek in Leukemia 2016により公開されたミニサークルベクターからの非ウイルスSleeping Beauty転位参照)。
【0244】
所望により、ベクターは、プロモーターに操作可能に結合された核酸配列を含む。
【0245】
ここで使用する用語「ベクター」は、操作可能に結合されている他の核酸配列の輸送が可能な核酸配列をいう。ベクターは自律複製可能であるかまたは宿主DNAに統合され得る。ベクターは、組み換えDNA挿入のための制限酵素部位を含んでよく、かつ1以上の選択可能マーカーまたは自殺遺伝子を含んでよい。ベクターは、プラスミド、バクテリオファージまたはコスミドの形の核酸配列であり得る。好ましくは、ベクターは細胞での発現に適する(すなわち、ベクターは「発現ベクター」である)。好ましくは、ベクターは、CD8 T細胞またはCD4 T細胞などのヒトT細胞での発現に適する。ある態様において、ベクターは、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクターまたはアデノ随伴ベクターなどのウイルスベクターである。所望により、ベクターは、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、カナリアポックスウイルス、ヘルペスウイルス、ミニサークルベクターおよび合成DNAまたは合成RNAからなる群から選択される。
【0246】
好ましくは、(発現)ベクターは宿主細胞で繁殖可能であり、後代に安定して伝達される。
【0247】
ここで使用する「操作可能に結合」は、下記調節エレメントの一つまたは組み合わせと一体となった互いに機能的関係にある、例えば、翻訳領域配列の発現を指示するように連結された関係の、翻訳領域配列をいう。
【0248】
ベクターは制御配列を含み得る。ここで使用する「制御配列」は、遺伝子発現を制御できるDNAまたはRNA要素をいう。発現調節配列の例は、プロモーター、エンハンサー、サイレンサー、TATA−ボックス、配列内リボソーム進入部位(IRES)、転写因子の付着部位、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位などを含む。所望により、ベクターは、発現される核酸配列に操作可能に結合した1以上の制御配列を含む。制御配列は、構成的発現を指示するものならびに組織特異的制御および/または誘導性配列を含む。
【0249】
ベクターはプロモーターを含み得る。ここで使用する「プロモーター」は、DNAにおける、RNAポリメラーゼが結合して、転写を開始するヌクレオチド配列をいう。プロモーターは、誘導性でも構成的に発現されるものでもよい。あるいは、プロモーターはリプレッサーまたは刺激タンパク質の制御下にある。プロモーターは、宿主細胞で天然にみられるものではない(例えば外来性プロモーターであり得る)。当業者は、標的タンパク質の発現に使用するための適切なプロモーターを認識し、ここで、選択プロモーターは宿主細胞による。
【0250】
ベクターは転写ターミネーターを含み得る。ここで使用する「転写ターミネーター」は、DNAのRNAへの翻訳を担うRNAポリメラーゼの機能を停止させる、DNA要素をいう。好ましい転写ターミネーターは、GCリッチ二分対称領域が前にあるT残基の連続により特徴づけられる。
【0251】
ベクターは、翻訳調節要素を含み得る。ここで使用する「翻訳調節要素」は、mRNAの翻訳を制御するDNAまたはRNA要素をいう。好ましい翻訳調節エレメントは、リボソーム結合部位である。好ましくは、翻訳調節要素は、プロモーターと相同の系、例えばプロモーターおよびその付随リボソーム結合部位由来である。好ましいリボソーム結合部位は知られ、選択宿主細胞による。
【0252】
ベクターは、制限酵素認識部位を含み得る。ここで使用する「制限酵素認識部位」は、制限酵素により認識されるDNAのモチーフをいう。
【0253】
ベクターは選択可能マーカーを含み得る。ここで使用する「選択可能マーカー」は、宿主細胞で発現したとき、該選択可能マーカー遺伝子を発現する細胞の選択を可能とする表現型を細胞に与える、タンパク質をいう。一般にこれは、宿主細胞に新規な有利な性質(例えば抗生物質耐性)を与えるタンパク質または細胞表面に発現され、故に抗体結合に利用可能であるタンパク質であり得る。適切な選択可能マーカーは当分野で周知である。
【0254】
所望により、ベクターは自殺遺伝子も含み得る。ここで使用する「自殺遺伝子」は、特定の薬物での処理により修飾細胞の死を誘発するタンパク質をいう。例として、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子により修飾された細胞でガンシクロビルを含むヌクレオシドアナログでの処理により、ヒトCD20により修飾された細胞で抗CD20モノクローナル抗体での処理によりおよび誘導性カスパーゼ9(iCasp9)により修飾された細胞でAP1903での処理により、自殺は誘発され得る(BS Jones, LS Lamb, F Goldman, A Di Stasi; Improving the safety of cell therapy products by suicide gene transfer. Front Pharmacol. (2014) 5:254によりレビュー)。適切な自殺遺伝子は当分野で周知である。
【0255】
好ましくは、ベクターはここに記載するポリペプチドの宿主細胞による発現に必要な遺伝要素を含む。宿主細胞での転写および翻訳に必要な要素は、プロモーター、目的のタンパク質の翻訳領域および転写ターミネーターを含む。
【0256】
当業者は、(発現)ベクターの調製に利用可能な分子技術およびどのように(発現)ベクターが適切な宿主細胞に形質導入またはトランスフェクトされ得るか(それにより本発明の修飾細胞を産生するか)を十分に認識する。本発明の(発現)ベクターは、形質転換、トランスフェクションまたは形質導入などの慣用技術により細胞に導入され得る。「形質転換」、「トランスフェクション」および「形質導入」は、一般に異質(外来性)核酸配列を宿主細胞に導入する方法をいい、それ故にエレクトロポレーション、マイクロインジェクション、遺伝子銃送達、レトロウイルス、レンチウイルスまたはアデノ随伴ウイルスベクターでの形質導入、リポフェクション、スーパーフェクションなどの方法を包含する。使用される具体的な方法は、一般にベクターおよび細胞両者のタイプによる。核酸配列およびベクターをヒト細胞などの宿主細胞に導入するための適切な方法は、当分野で周知である;例えばSambrook et al (1989) Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y; Ausubel et al (1987) Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley and Sons, Inc., NY; Cohen et al (1972) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 69, 2110; Luchansky et al (1988) Mol. Microbiol. 2, 637-646参照。発現ベクターの調製およびその適切な宿主細胞への導入に適するさらなる慣用の方法は、例えばWO2016/071758に詳述されている。
【0257】
ある実施態様において、宿主細胞をベクター(例えばウイルスベクター)とインビトロ、エクスビボで接触させ、ある実施態様において、宿主細胞をベクター(例えばウイルスベクター)とインビボで接触させることは理解される。
【0258】
用語「宿主細胞」は、本発明の核酸配列またはベクターが導入(例えば形質導入)され得るあらゆる細胞をいう。核酸分子またはベクターが細胞に導入されたら、ここでは「修飾細胞」と称され得る。核酸分子またはベクターが宿主細胞に導入されたら、得られた修飾細胞はコードしたポリペプチドを発現させることが(および例えばコードしたポリペプチドをその意図する機能のために正確に局在化させる、例えばコードされるTCRを細胞表面に輸送することが)できなければならない。
【0259】
用語「修飾細胞」は、遺伝的に改変された(例えば形質転換またはトランスフェクト)細胞をいう。本用語は、特定の対象細胞およびまたそのような細胞の子孫または潜在的子孫もいう。ある修飾が変異または環境的影響により後代で生じ得るため、このような子孫は、実際、親細胞と同一ではないことがあり得るが、なお、ここで使用する本用語の範囲内に入る。
【0260】
宿主細胞(およびその修飾細胞)は、一般に真核生物細胞および特にヒト細胞(例えばCD8 T細胞またはCD4 T細胞またはそれらの混合物などのT細胞)である。宿主細胞(およびその修飾細胞)は、それが後に投与されるのと同じ個体由来の細胞を意味する自己細胞(例えばCD8 T細胞またはCD4 T細胞またはそれらの混合物などの自己T細胞)であり得る。換言すると、宿主細胞(およびその修飾細胞)は、処置される対象からの単離T細胞であり得る。好適には、宿主細胞(およびその修飾細胞)は、血液サンプルから、例えば白血球分離により単離され得る。
【0261】
宿主細胞(およびその修飾細胞)は、TCR遺伝子移入後抗腫瘍免疫を付与できるあらゆる細胞であり得る。適切な細胞の非限定的例は、自己または同種ナチュラルキラー(NK)細胞、NKT細胞、ガンマ−デルタT細胞、造血幹細胞または他の前駆細胞細胞およびTCR遺伝子移入後抗腫瘍免疫を付与できる任意の他の自己または同種細胞もしくは細胞株(例えばNK−92またはT細胞株)を含む。
【0262】
有利には、修飾細胞は、該修飾細胞がΔNPM1悪性細胞を特異的に標的とし、故にΔNPM1を有する造血器腫瘍の処置または予防に使用され得る免疫療法を提供するように、本発明の核酸配列またはベクター(例えばTCRまたはTCR成分部分)によりコードされるポリペプチドを発現できる。この使用についてのさらなる詳細を以下に説明する。
【0263】
免疫原性ペプチド
本発明者らは、ΔNPM1陽性初代AML患者のHLAクラスIリガンドームに存在する5つのペプチド、すなわちCLAVEEVSL(配列番号1)、AVEEVSLRK(配列番号26)、CLAVEEVSLRK(配列番号27)、VEEVSLRK(配列番号28)およびAVEEVSLR(配列番号29)を同定した。
【0264】
念のため、特に断らない限り、ここでの「配列番号1」への一般的な言及は、システイニル化および非システイニル化両者の形態のペプチドCLAVEEVSLを包含する。
【0265】
単離ペプチドとして、本発明は、特にアミノ酸配列CLAVEEVSL(配列番号1)を含む単離ペプチドを提供し、ここで、CLAVEEVSL(配列番号1)におけるアミノ酸システインはシステイニル化されている場合を含む。
【0266】
特定の実施態様において、CLAVEEVSLにおけるアミノ酸システインはシステイニル化されている。
【0267】
念のため、特に断らない限り、ここでの「配列番号27」への一般的な言及は、システイニル化および非システイニル化両者の形態のペプチドCLAVEEVSLRKを包含する。
【0268】
単離ペプチドとして、本発明は、特にアミノ酸配列CLAVEEVSLRK(配列番号27)を含む単離ペプチドを提供し、ここで、CLAVEEVSLRK(配列番号27)におけるアミノ酸システインはシステイニル化されている場合を含む。
【0269】
特定の実施態様において、CLAVEEVSLRKにおけるアミノ酸システインはシステイニル化されている。
【0270】
本発明は、それ故に(i)CLAVEEVSL(配列番号1)(ここで、アミノ酸システインはシステイニル化されていてもされていなくてもよい);(ii)AVEEVSLRK(配列番号26);(iii)CLAVEEVSLRK(配列番号27)(ここで、アミノ酸システインはシステイニル化されていてもされていなくてもよい);(iv)VEEVSLRK(配列番号28);および(v)AVEEVSLR(配列番号29)から選択されるアミノ酸配列を含む、単離ペプチドを提供する。
【0271】
特定の実施態様において、CLAVEEVSLまたはCLAVEEVSLRKにおけるアミノ酸システインはシステイニル化されている。
【0272】
ここで使用する「単離ペプチド」は、その天然環境にないペプチドをいう。ペプチドは、それ故に合成起源であり得る(あるいは、本来天然であるが、その天然環境から単離されている)。
【0273】
単離ペプチドは、比較的短くてよい(すなわち20以下のアミノ酸;例えば19、18、17、16、15、14、13、12、11または10アミノ酸を超えない)。ペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列(ここで、アミノ酸システインはシステイニル化されていてもされていなくてもよい)、配列番号26、配列番号27(ここで、アミノ酸システインはシステイニル化されていてもされていなくてもよい)、配列番号28または配列番号29のみからなり得る。
【0274】
特定の実施態様において、CLAVEEVSLまたはCLAVEEVSLRKにおけるアミノ酸システインはシステイニル化されている。
【0275】
単離ペプチドを、ヒト対象にΔNPM1陽性造血器腫瘍を処置または予防するために投与し得る。例えば、単離ペプチドを、対象にその免疫応答を誘発または増強するために投与し得る。該ペプチドは、それ故に対象に、対象におけるT細胞活性化(例えばインビボT細胞活性化)の誘発のために投与でき、ここで、活性化T細胞は、該ペプチドに特異的である(故にΔNPM1陽性悪性細胞を特異的に標的とする)。
【0276】
単離ペプチドを、ΔNPM1陽性AMLの処置または予防のためのペプチドワクチンとして投与し得る。単離ペプチドを、ΔNPM1陽性悪性細胞に特異的なT細胞の活性化の誘発または増強のために投与し得る。
【0277】
本発明者らは、(i)CLAVEEVSL(配列番号1)、(ii)AVEEVSLRK(配列番号26);および(iii)CLAVEEVSLRK(配列番号27)が、T細胞に結合するΔNPM1ペプチドであることを示している。これらのペプチドは、インビボでΔNPM1陽性対象のT細胞レパートリーに提示される。これらのペプチドのT細胞への結合が、ここで示されている。これらのペプチドは、それ故に、他の治療(例えばここに記載するACT)の補助剤として特に有用であり得る、個別化ワクチンの開発のためにさらに探索され得る、真実の免疫原性ΔNPM1特異的抗原を表す。これらの免疫原性ペプチドは、それ故にペプチド、RNA、DNA、樹状細胞ベースの治療および養子TCRトランスジェニックT細胞ベースの治療の形態で免疫療法として使用され得る(適当な総括について、引用文献23参照)。
【0278】
本発明者らはまたiv)VEEVSLRK(配列番号28)および(v)AVEEVSLR(配列番号29)が初代AMLの表面に提示されるHLA結合ペプチドであることも示している。
【0279】
(i)CLAVEEVSL(配列番号1)(ここで、アミノ酸システインはシステイニル化されていてもされていなくてもよい);(ii)AVEEVSLRK(配列番号26);(iii)CLAVEEVSLRK(配列番号27)(ここで、アミノ酸システインはシステイニル化されていてもされていなくてもよい);(iv)VEEVSLRK(配列番号28);および(v)AVEEVSLR(配列番号29)から選択されるアミノ酸配列を含む単離ペプチドは、それ故に免疫療法として有用であり得る。例えば、このような単離ペプチドを、ΔNPM1陽性AMLを有する、発症するリスクのあるまたは有することが疑われる対象の免疫療法として使用し得る。これらのペプチドをコードする核酸配列およびベクターもこの目的で有用であり得る。
【0280】
投与のための特定のペプチドは、対象のHLA−A状態に基づき選択され得る。本明細書の他の箇所に説明するとおり、配列番号1の配列を含むペプチドは、HLA−A02:01が陽性である対象への投与に特に適当である可能性があり、一方配列番号26または配列番号27の配列を含むペプチドは、HLA−A03:01またはHLA−A11:01が陽性である対象への投与に特に適当である可能性がある。
【0281】
本発明の単離ペプチドはまた、1個を超える上記ペプチドを含む、組成物でも提供され得る。例として、単離ペプチドは、(a)アミノ酸配列CLAVEEVSL(配列番号1)(ここで、CLAVEEVSL(配列番号1)におけるアミノ酸システインはシステイニル化されている)を含む単離ペプチド;および(b)アミノ酸配列CLAVEEVSL(配列番号1)(ここで、CLAVEEVSL(配列番号1)におけるアミノ酸システインはシステイニル化されていない)を含む単離ペプチドの混合物を含む組成物として提供(および/または投与)され得る。この組成物は、T細胞活性化(例えば対象におけるインビボT細胞活性化)の誘発に使用でき、ここで、活性化T細胞が配列番号1のペプチドのシステイニル化および/または非システイニル化形態の一方(または両方)に特異的であるTCRを有するために、HLA−A02:01が陽性である対象のΔNPM1陽性造血器腫瘍の処置または予防に特に有用であり得る。
【0282】
別の例として、(a)配列番号26のアミノ酸配列を含む単離ペプチドおよび(b)配列番号27のアミノ酸配列を含む単離ペプチドの混合物を含むペプチド組成物が提供され得る。この組成物はHLA−A03:01またはHLA−A11:01が陽性である対象におけるΔNPM1陽性造血器腫瘍の処置または予防に、これらのペプチドの両者がこれらのHLA−A血清型の何れかにより提示されるため、特に有用であり得る。
【0283】
ペプチドCLAVEEVSLと同様、配列番号27のペプチドはまた、そのシステイニル化および非システイニル化形態でワクチン接種に使用され得る。それ故に、別の例として、単離ペプチドは、(a)配列番号27のアミノ酸配列(アミノ酸システインがシステイニル化されている)を含む単離ペプチド;および(b)配列番号27のアミノ酸配列(ここで、アミノ酸システインがシステイニル化されていない)を含む単離ペプチドの混合物を含む組成物として提供(および/または投与)され得る。この組成物は、T細胞活性化(例えば対象におけるインビボT細胞活性化)の誘発に使用でき、ここで、活性化T細胞が配列番号27のペプチドのシステイニル化および/または非システイニル化形態の一方(または両方)に特異的であるTCRを有するために、HLA−A03:01またはHLA−A11:01が陽性である対象におけるΔNPM1陽性造血器腫瘍の処置または予防に特に有用であり得る。
【0284】
医薬組成物
ここに記載する核酸配列、ベクター、修飾細胞、単離タンパク質またはペプチドは、医薬組成物の一部として提供され得る。有利には、このような組成物は、ΔNPM1陽性造血器腫瘍を有するヒト対象に、ΔNPM1陽性造血器腫瘍の処置または予防のために(例えばΔNPM1標的特異的免疫応答の誘発または増強により)、投与され得る。特に適当な組成物は、本明細書の他の箇所に詳述したとおり、ヒト対象のHLA−A血清型に基づき選択し得る。
【0285】
医薬組成物は、ここに記載する核酸配列、ベクター、修飾細胞または単離タンパク質またはペプチドを、薬学的に許容される添加物、アジュバント、希釈剤および/または担体と共に含み得る。
【0286】
組成物は、常に薬学的に許容される濃度の塩、緩衝剤、防腐剤、適合性担体、アジュバントおよびサイトカインなどの補足的免疫増強剤および所望により他の治療剤または化合物を含み得る。
【0287】
ここで使用する「薬学的に許容される」は、生物学的にまたは他の点で望ましくないものではない物質、すなわち、個体に選択した核酸配列、ベクター、修飾細胞または単離ペプチドと共に何ら望ましくない生物学的効果を起こすことなくまたはそれが含まれる医薬組成物の他の成分の何れかと有害な方法で相互作用することなく、投与され得る物質である。
【0288】
添加物は、製剤の増量または最終剤形における活性成分の治療効果増強、例えば、薬物吸収または溶解度促進の目的で含まれる、活性成分(例えばここに提供する核酸配列、ベクター、修飾細胞または単離ペプチド)と共に製剤される天然または合成物質である。添加物はまた粉末流動性または非粘着性質の促進などにより関係する活性物質の取り扱いを助けるために、それに加えて、期待される貯蔵期間中の変性を阻止するなどのインビトロ安定性の補助のために、製造過程において有用であり得る。薬学的に許容される添加物は当分野で周知である。適当な添加物は、それ故に当業者に容易に特定され得る。例として、適当な薬学的に許容される添加物は、水、食塩水、水性デキストロース、グリセロール、エタノールなどを含む。
【0289】
アジュバントは、製剤中の他の薬剤の効果を修飾する薬理学的および/または免疫学的薬剤である。薬学的に許容されるアジュバントは当分野で周知である。適当なアジュバントは、それ故に、当業者に容易に特定され得る。
【0290】
希釈剤は、希釈する薬剤である。薬学的に許容される希釈剤は当分野で周知である。適当な希釈剤は、それ故に、当業者に容易に特定され得る。
【0291】
担体は、用いる投与量および濃度でレシピエントに非毒性であり、かつ製剤中の他の成分と適合性である。用語「担体」は、活性成分が投与を容易にするために組み合わせられる、天然または合成の、有機または無機成分をいう。薬学的に許容される担体は当分野で周知である。適当な担体は、それ故に、当業者に容易に特定され得る。
【0292】
対象の処置
本発明の組成物は、有利にヒト対象におけるΔNPM1陽性造血器腫瘍の処置または予防に使用され得る。適切な組成物は、本明細書の他の箇所に詳述したとおり、ヒト対象のHLA−A血清型に基づき選択され得る。
【0293】
ある実施態様において、ここに記載するΔNPM1陽性造血器腫瘍を処置または予防する方法は、対象における免疫応答(例えば細胞介在応答)の誘発または増強をもたらす(例えばHLA−A限定的ペプチドを提示する悪性細胞への標的免疫応答)。
【0294】
用語「免疫応答の誘発または増強」は、処置前の免疫応答と比較して、処置中または処置後の対象の免疫応答(例えばT細胞介在免疫応答などの細胞介在免疫応答)の増加をいう。「誘発または増強された」免疫応答は、それ故に処置するΔNPM1陽性造血器腫瘍を直接的または間接的に標的とする免疫応答の、あらゆる測定可能な増加を包含する。
【0295】
本発明の組成物は、ヒト対象におけるΔNPM1陽性造血器腫瘍、特にΔNPM1陽性骨髄腫瘍、より特にはΔNPM1陽性AMLの処置または予防に使用され得る。
【0296】
ΔNPM1陽性である可能性があり、故に本発明により処置され得る造血器腫瘍を当業者は十分に認識する。同様に、当業者は、ΔNPM1陽性である可能性があり、故に本発明により処置され得る骨髄性腫瘍を十分に認識する。
【0297】
ここで使用する用語「処置」および「処置する」は、状態、障害または症状(すなわちこの場合造血器腫瘍)の病理の進展の予防または改変を意図して実施される介入を含むと解釈される。従って、「処置」は、治療的処置および、目的が標的状態、障害または症状の予防または減速(低減)である予防的もしくは防止的手段の両者をいう。それ故に、「処置」は、例えば、対象から得たサンプルで測定して、処置前の悪性細胞の量または濃度と比較して、悪性細胞の量または濃度の少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%の減少、減速または阻害をいう。悪性細胞の量または濃度を測定する方法は、例えば、対象から得たサンプルのCLAVEEVSL、AVEEVSLRK、CLAVEEVSLRK、VEEVSLRKおよび/またはAVEEVSLRなどのΔNPM1陽性造血器腫瘍特異的バイオマーカーのqRT−PCRおよび定量化を含む。
【0298】
ここで使用する用語「対象」は、記載した状態、障害または症状を有するまたは有するリスクにある個体、例えば、ヒトをいう。対象は患者、すなわち本発明による処置を必要とする対象であってよい。対象は、該状態、障害または症状について処置を受けていてよい。あるいは、対象は、本発明による処置の前に処置されていない。
【0299】
ここに記載する組成物は、注射または長時間のゆっくりした点滴を含む、任意の慣用の経路により対象に投与し得る。投与は、例えば、点滴または筋肉内、血管内、腔内、脳内、病巣内、直腸、皮下、皮内、硬膜外、髄腔内、経皮投与により得る。
【0300】
ここに記載する組成物は、上記投与方式に適する任意の形態であり得る。例えば、修飾細胞を含む組成物は、点滴に適する任意の形態であり得る。さらなる例として、非経腸注射(皮下、筋肉内、血管内または点滴を含む)に適する形態は、無菌溶液、懸濁液またはエマルジョンを含む;局所投与に適する形態は、軟膏またはクリームを含む;そして直腸投与に適する形態は坐薬を含む。あるいは、投与経路は、標的領域への直接注射または領域性送達もしくは局所送達により得る。本発明の組成物の適当な投与量の特定は、十分に当業者の日常的な能力の範囲内である。
【0301】
有利には、本発明の組成物は、患者に既に存在する免疫レパートリーに関わらず、迅速で、信頼でき、かつΔNPM1特異的ペプチド(例えばCLAVEEVSL(配列番号1)、AVEEVSLRK(配列番号26)、CLAVEEVSLRK(配列番号27)、VEEVSLRK(配列番号28)またはAVEEVSLR(配列番号29))に特異性を有する大量のT細胞を産生できるアプローチである、T細胞受容体(TCR)遺伝子移入の使用のために製剤され得る。TCR遺伝子移入の使用により、点滴に適する修飾自己細胞は数日以内に産生され得る。
【0302】
有利には、本発明の組成物は、ワクチンとして使用するために製剤され得る(例えばCLAVEEVSL(配列番号1)、AVEEVSLRK(配列番号26)、CLAVEEVSLRK(配列番号27)、VEEVSLRK(配列番号28)またはAVEEVSLR(配列番号29)から選択される1以上のペプチドを含む組成物は、ペプチドワクチンとしての使用に適する医薬組成物として製剤され得る)。適当なペプチドワクチン製剤は当分野で周知である。
【0303】
好ましくは、本発明の医薬組成物は、ワクチン、好ましくはペプチドベースのワクチンである。このようなペプチドベースのワクチンは、AMLなどのΔNPM1陽性造血器腫瘍の予防または処置のために使用され得る。
【0304】
医薬組成物は、好ましくは、対象、好ましくはヒトまたは動物対象への投与のためであり、それ故にそれに適するように製剤される。好ましくは、投与は、非経腸、例えば静脈内、皮下、筋肉内、真皮内、皮内および/または腫瘍内投与、すなわち注射である。
【0305】
好ましくは、医薬組成物は、医薬投与量単位を構成するペプチドの量を含むまたはそれからなる。医薬投与量単位は、ここでは、ある時点で対象に適用される活性成分(すなわちペプチドベースのワクチン中のペプチドの総量)の量をいう。医薬投与量単位は、対象に一体積で、すなわちシングルショットで適用してよく、または好ましくは体の別の位置に、例えば右および左肢に、適用される2、3、4、5またはそれ以上の別々の体積またはショットで適用してよい。医薬投与量の別々の体積の組成は異なってよく、すなわち活性成分および/またはアジュバントの異なる種または組成を含み得ることは理解される。
【0306】
総医薬投与量または実質的に同時に適用する複数ショットの場合その一部を含む一注射体積またはショット(すなわちある時点で一か所に適用される体積)は、100μl〜2mLまたは100μl〜1mLであり得る。一注射体積は100μl、200μl、300μl、400μl、500μl、600μl、700μl、800μl、900μl、1mL、1.1mL、1.2mL、1.3mL、1.4mL、1.5mL、1.6mL、1.7mL、1.8mL、1.9mL、2mL、3mLまたはその間の任意の数値であり得る。
【0307】
好ましくは、ある時点で対象に適用するペプチドの医薬投与量単位または総量は、ある時点で単回または複数回注射のいずれであれ、0.1μg〜20mgの範囲、例えば約0.1μg、0.5μg、1μg、5μg、10μg、15μg、20μg、30μg、40μg、50μg、60μg、70μg、80μg、90μg、100μg、150μg、200μg、250μg、300μg、350μg、400μg、450μg、500μg、650μg、700μg、750μg、800μg、850μg、900μg、1mg、1.5mg、2mg、2.5mg、3mg、3.5mg、4mg、4.5mg、5mg、5.5mg、6mg、6.5mg、7mg、7.5mg、8mg、8.5mg、9mg、9.5mg、10mg、15mgまたは約20mgまたはその間の任意の数値の量のペプチドを含む。医薬投与量単位の好ましい範囲は、0.1μg〜20mg、1μg〜10mg、10μg〜5mg、0.5mg〜2mg、0.5mg〜10mgまたはlmg〜5mgまたは2〜4mgである。
【0308】
ここに記載する組成物は、有効量で投与されるためのものである。「有効量」は、単独でまたはさらなる用量と共に、所望の(治療的または非治療的)応答を生じる量である。使用すべき有効量は、例えば、治療的(または非治療的)目的、投与経路および患者/対象の状態による。例えば、ある患者/対象のための本発明の組成物の適当な投与量は、本発明の組成物の作用を修飾することが知られる種々の因子、例えば重症度および造血器腫瘍のタイプ、体重、性別、食習慣、投与時間および経路、他の薬物治療および他の関係する臨床的因子を考慮して、担当医(または組成物を投与する者)により決定され得る。投与量およびスケジュールは、特定の状態、障害または症状、患者/対象の全体的状態により変わり得る。有効な投与量は、インビトロまたはインビボ方法により決定され得る。
【0309】
本発明の組成物は、有利に単位剤形で提供される。
【0310】
TCRを産生する方法
ある態様において、本発明は、CLAVEEVSL(配列番号1)、AVEEVSLRK(配列番号26)、CLAVEEVSLRK(配列番号27)、VEEVSLRK(配列番号28)およびAVEEVSLR(配列番号29)から選択されるペプチドに特異的に結合するT細胞受容体を産生する方法であって、本発明の核酸配列(またはベクター)と宿主細胞を、該核酸配列(またはベクター)が細胞に取り込まれ、発現され、T細胞受容体を産生する条件下で接触させることを含む、方法を提供する。
【0311】
方法は、宿主細胞上で、エクスビボまたはインビトロで実施され得る。あるいは、方法はインビボで実施でき、ここで、核酸配列(またはベクター)は対象に投与され、宿主細胞と、インビボで、該核酸配列が宿主細胞に取り込まれ、発現され、T細胞受容体を産生する条件下で接触させる。ある実施態様において、方法はヒトまたは動物身体の処置方法ではない。
【0312】
適切なインビボ、核酸配列(またはベクター)と宿主細胞を、核酸配列(またはベクター)が細胞に取り込まれ、発現される条件下で接触させるインビトロおよびエクスビ方法は、本明細書の他の箇所に記載されるとおり、周知である。
【0313】
一般的定義
ここで使用する「核酸配列」、「ポリヌクレオチド」、「核酸」および「核酸分子」は、オリゴヌクレオチド配列またはポリヌクレオチド配列をいうために相互交換可能に使用される。ヌクレオチド配列はゲノム、合成または組み換え起源であってよく、二本鎖または一本鎖(センスまたはアンチセンス鎖を表す)であってよい。用語「ヌクレオチド配列」は、ゲノムDNA、cDNA、合成DNAおよびRNA(例えばmRNA)およびヌクレオチドアナログの使用により産生されたDNAまたはRNAのアナログを含む。
【0314】
ここで使用する「単離核酸配列」は、その天然環境にもあるその天然に結合する配列と結合されているとき、その天然環境にはない核酸配列をいう。換言すると、単離核酸配列は、天然ヌクレオチド配列ではなく、ここで、「天然ヌクレオチド配列」は、その天然環境にあり、天然に結合しているプロモーター全体と操作可能に結合しているとき、そのプロモーターもまたその天然環境にある、ヌクレオチド配列全体をいう。
【0315】
ここで使用する「CLAVEEVSLに特異的に結合する」は、CLAVEEVSLペプチドへの選択的結合をいう。ある条件下、例えば、ここに記載するイムノアッセイで、「CLAVEEVSLに特異的に結合する」ポリペプチドは、このペプチドに選択的に結合し、他のペプチドに相当量で結合しない。それ故に、ポリペプチドは、対照抗原性ペプチドに結合するより、少なくとも10倍、20倍、30倍、40倍、50倍または100倍多い親和性で、CLAVEEVSLに結合し得る。選択的結合はまた、本発明の核酸またはベクターを発現する修飾細胞の状況で、間接的にも決定され得る。例えば、ここに記載するようなアッセイにおいて、修飾細胞は、HLA−A02:01の影響下でCLAVEEVSLを提示する細胞に対して特異的に反応性である(例えば初代ΔNPM1 HLA−A02:01陽性AML細胞またはΔNPM1遺伝子が導入されている何らかのHLA−A02:01陽性細胞株)。それ故に、修飾細胞は、HLA−A02:01の影響下でCLAVEEVSLを提示しない対照細胞株に対するその反応性と比較したとき、HLA−A02:01の状況でCLAVEEVSLを提示する細胞に少なくとも10倍、20倍、30倍、40倍、50倍または100倍多く結合し得る。
【0316】
選択的結合は、HLA−A02:01によるCLAVEEVSLの状況においてであり得る。換言すると、ある実施態様において、CLAVEEVSLに特異的に結合するポリペプチドは、HLA−A02:01により提示されるとき(すなわち結合されるとき)またはHLA−A02:01により提示されるときと等価な構造的形状であるときのみそうなり得る。
【0317】
矛盾する記載がない限り、「CLAVEEVSLに特異的に結合する」ポリペプチドは、(i)システイニル化形態のCLAVEEVSL、(ii)非システイニル化形態のCLAVEEVSLまたは(iii)システイニル化形態のCLAVEEVSLおよび非システイニル化形態のCLAVEEVSLの両者に結合し得る。同様に、特に断らない限り、「配列番号1」または「CLAVEEVSL」への一般的記載は、システイニル化および非システイニル化形態のペプチドCLAVEEVSLの両者を包含する。
【0318】
ここで使用する「AVEEVSLRKに特異的に結合する」は、AVEEVSLRKペプチドへの選択的結合をいう。ある条件下、例えば、ここに記載するイムノアッセイで、「AVEEVSLRKに特異的に結合する」ポリペプチドは、このペプチドに選択的に結合し、他のペプチドに相当量で結合しない。それ故に、ポリペプチドは、対照抗原性ペプチドに結合するより、少なくとも10倍、20倍、30倍、40倍、50倍または100倍多い親和性で、AVEEVSLRKに結合し得る。選択的結合はまた、本発明の核酸またはベクターを発現する修飾細胞の影響下で、間接的にも決定され得る。例えば、ここに記載するようなアッセイにおいて、修飾細胞は、HLA−A03:01、HLA−A11:01またはHLA−A01:01の影響下でAVEEVSLRKを提示する細胞に対して特異的に反応性である(例えば初代ΔNPM1 HLA−A03:01、HLA−A11:01またはHLA−A01:01陽性AML細胞またはΔNPM1遺伝子が導入されている何らかのHLA−A03:01、HLA−A11:01またはHLA−A01:01陽性細胞株)。それ故に、修飾細胞は、HLA−A03:01、HLA−A11:01またはHLA−A01:01の状況でAVEEVSLRKを提示しない対照細胞株に対するその反応性と比較したとき、HLA−A03:01、HLA−A11:01またはHLA−A01:01の影響下でAVEEVSLRKを提示する細胞に少なくとも10倍、20倍、30倍、40倍、50倍または100倍多く結合し得る。
【0319】
選択的結合は、HLA−A03:01、HLA−A11:01またはHLA−A01:01のみによるAVEEVSLRKの影響下においてであり得る。換言すると、ある実施態様において、AVEEVSLRKに特異的に結合するポリペプチドは、HLA−A03:01、HLA−A11:01により提示されるとき(すなわち結合されるとき)またはHLA−A01:01またはHLA−A03:01、HLA−A11:01またはHLA−A01:01により提示されるときと等価な構造的形状であるときのみそうなり得る。
【0320】
同様に、ここで使用する「CLAVEEVSLに特異的に結合するRK」は、CLAVEEVSLRKペプチドへの選択的結合をいう。ある条件下、例えば、ここに記載するイムノアッセイで、「CLAVEEVSLに特異的に結合するRK」ポリペプチドは、このペプチドに選択的に結合し、他のペプチドに相当量で結合しない。それ故に、ポリペプチドは、対照抗原性ペプチドに結合するより、少なくとも10倍、20倍、30倍、40倍、50倍または100倍多い親和性で、CLAVEEVSLRKに結合し得る。選択的結合はまた、本発明の核酸またはベクターを発現する修飾細胞の影響下で、間接的にも決定され得る。例えば、ここに記載するようなアッセイにおいて、修飾細胞は、HLA−A03:01またはHLA−A11:01の状況でCLAVEEVSLRKを提示する細胞に対して特異的に反応性である(例えば初代ΔNPM1 HLA−A03:01またはHLA−A11:01陽性AML細胞またはΔNPM1遺伝子が導入されている何らかのHLA−A03:01またはHLA−A11:01陽性細胞株)。それ故に、修飾細胞は、HLA−A03:01またはHLA−A11:01の状況でCLAVEEVSLRKを提示しない対照細胞株に対するその反応性と比較したとき、HLA−A03:01またはHLA−A11:01の状況でCLAVEEVSLRKを提示する細胞に少なくとも10倍、20倍、30倍、40倍、50倍または100倍多く結合し得る。
【0321】
選択的結合は、HLA−A03:01またはHLA−A11:01のみによるCLAVEEVSLRKの影響下においてであり得る。換言すると、ある実施態様において、CLAVEEVSLに特異的に結合するRKポリペプチドは、HLA−A03:01により提示されるとき(すなわち結合されるとき)またはHLA−A11:01またはHLA−A03:01またはHLA−A11:01により提示されるときと等価な構造的形状であるときのみそうなり得る。
【0322】
矛盾する記載がない限り、「CLAVEEVSLRKに特異的に結合する」ポリペプチドは、(i)システイニル化形態のCLAVEEVSLRK、(ii)非システイニル化形態のCLAVEEVSLRKまたは(iii)システイニル化形態のCLAVEEVSLRKおよび非システイニル化形態のCLAVEEVSLRKの両者に結合し得る。同様に、特に断らない限り、「配列番号27」または「CLAVEEVSLRK」への一般的記載は、システイニル化および非システイニル化形態のペプチドCLAVEEVSLRKの両者を包含する。
【0323】
ここで使用する「VEEVSLRKに特異的に結合する」は、VEEVSLRKペプチドへの選択的結合をいう。ある条件下、例えば、ここに記載するイムノアッセイで、「VEEVSLRKに特異的に結合する」ポリペプチドは、このペプチドに選択的に結合し、他のペプチドに相当量で結合しない。それ故に、ポリペプチドは、対照抗原性ペプチドに結合するより、少なくとも10倍、20倍、30倍、40倍、50倍または100倍多い親和性で、VEEVSLRKに結合し得る。選択的結合はまた、本発明の核酸またはベクターを発現する修飾細胞の状況で、間接的にも決定され得る。例えば、ここに記載するようなアッセイにおいて、修飾細胞は、適切なHLA−Aの状況でVEEVSLRKを提示する細胞に対して特異的に反応性である(例えば初代ΔNPM1陽性AML細胞またはΔNPM1遺伝子が導入されている何らかの適切なHLA−A陽性細胞株)。それ故に、修飾細胞は、適切なHLA−Aの影響下でVEEVSLRKを提示しない対照細胞株に対するその反応性と比較したとき、適切なHLA−Aの影響下でVEEVSLRKを提示する細胞に少なくとも10倍、20倍、30倍、40倍、50倍または100倍多く結合し得る。
【0324】
選択的結合は、適切なHLA−AのみによるVEEVSLRKの状況においてであり得る。換言すると、ある実施態様において、VEEVSLRKに特異的に結合するポリペプチドは、適切なHLA−Aにより提示されるとき(すなわち結合されるとき)または適切なHLA−Aにより提示されるときと等価な構造的形状であるときのみそうなり得る。
【0325】
ここで使用する「AVEEVSLRに特異的に結合する」は、AVEEVSLRペプチドへの選択的結合をいう。ある条件下、例えば、ここに記載するイムノアッセイで、「AVEEVSLRに特異的に結合する」ポリペプチドは、このペプチドに選択的に結合し、他のペプチドに相当量で結合しない。それ故に、ポリペプチドは、対照抗原性ペプチドに結合するより、少なくとも10倍、20倍、30倍、40倍、50倍または100倍多い親和性で、AVEEVSLRに結合し得る。選択的結合はまた、本発明の核酸またはベクターを発現する修飾細胞の状況で、間接的にも決定され得る。例えば、ここに記載するようなアッセイにおいて、修飾細胞は、適切なHLA−Aの状況でAVEEVSLRを提示する細胞に対して特異的に反応性である(例えば初代ΔNPM1陽性AML細胞またはΔNPM1遺伝子が導入されている何らかの適切なHLA−A陽性細胞株)。それ故に、修飾細胞は、適切なHLA−Aの状況でAVEEVSLRを提示しない対照細胞株に対するその反応性と比較したとき、適切なHLA−Aの状況でAVEEVSLRを提示する細胞に少なくとも10倍、20倍、30倍、40倍、50倍または100倍多く結合し得る。
【0326】
選択的結合は、適切なHLA−AのみによるVEEVSLRKの影響下においてであり得る。換言すると、ある実施態様において、VAEEVSLRに特異的に結合するポリペプチドは、適切なHLA−Aにより提示されるとき(すなわち結合されるとき)または適切なHLA−Aにより提示されるときと等価な構造的形状であるときのみそうなり得る。
【0327】
「非必須」(または「重大でない」)アミノ酸残基は、生物学的活性を無くす、より好ましくは、実質的に変えることなく、野生型配列(例えば、ここに配列番号により特定する配列)から改変できる残基をいい、一方「必須」(または「重大な」)アミノ酸残基はこのような変化をもたらす。例えば、保存されているアミノ酸残基は、特に改変が受け入れられないと予測されるが、例外として、ドメインの疎水性コア内のアミノ酸残基は、一般に活性を顕著に変えることなく、ほぼ等価な疎水性を有する他の残基に置き換えられ得る。
【0328】
「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が類似側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられているものである。類似側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当分野で定義されている。これらのファミリーは、塩基性側鎖(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、無電荷極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分岐側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸を含む。それ故に、タンパク質の非必須(または重大でない)アミノ酸残基は、好ましくは同じ側鎖ファミリーの他のアミノ酸残基で置き換えられる。あるいは、他の実施態様において、変異を無作為に導入でき、得られた変異体を、活性を保持する変異体を同定するために活性をスクリーニングし得る。
【0329】
配列間の配列相同性または同一性(これらの用語はここで相互交換可能に使用される)の計算は次のとおり実施される。
【0330】
2つのアミノ酸配列または2つの核酸配列のパーセント同一性を決定するために、配列を、最適比較目的でアラインする(例えば、ギャップを第一および第二アミノ酸または核酸配列の一方または両方に最適アラインメントのために入れてよく、非相同配列を比較目的で無視できる)。好ましい実施態様において、比較目的でアラインした対照配列の長さは、対照配列の長さの少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも60%、さらにより好ましくは少なくとも70%、75%、80%、82%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%である。次いで、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置のアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。第一配列のある位置が、第二配列の対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドで占拠されているならば、これら分子はその位置で同一である(ここで使用するアミノ酸または核酸「同一性」は、アミノ酸または核酸「相同性」に等しい)。2配列間のパーセント同一性は、2配列の最適アラインメントのために導入が必要であったギャップ数および各ギャップ長を考慮して、これら配列により共有される位置の関数である。
【0331】
2配列間の配列の比較およびパーセント同一性決定は、数学的アルゴリズムを使用して達成され得る。好ましい実施態様において、2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性は、GCGソフトウェアパッケージ(http://www.gcg.comで利用可能)の GAPプログラムに組み込まれているNeedleman et al. (1970) J. Mol. Biol. 48:444-453)アルゴリズムを使用して、BLOSUM 62マトリクスまたはPAM250マトリクスおよびギャップ荷重16、14、12、10、8、6または4および長さ荷重1、2、3、4、5または6を使用して決定される。他の好ましい実施態様において、2つのヌクレオチド配列間のパーセント同一性は、GCGソフトウェアパッケージ(http://www.gcg.comで利用可能)のGAPプログラムを使用して、NWSgapdna.CMPマトリクスおよびギャップ荷重40、50、60、70または80および長さ荷重1、2、3、4、5または6を使用して決定される。特に好ましいパラメータのセット(および実施者が、ある分子が本発明の配列同一性または相同性制限の範囲内であるかどうかの決定に、どのパラメータを適用すべきか不確かであるならば、使用すべきものである)は、ギャップペナルティ12、ギャップ伸長ペナルティ4およびフレームシフトギャップペナルティ5を用いるBLOSUM 62スコアリングマトリクスである。
【0332】
あるいは、2つのアミノ酸またはヌクレオチド配列間のパーセント同一性は、ALIGNプログラム(version 2.0)に組み込まれているMeyers et al. ((1989) CABIOS 4:11-17)のアルゴリズムを使用して、PAM120荷重残基表、ギャップ長ペナルティ12およびギャップペナルティ4を使用して、決定される。
【0333】
ここに記載する核酸およびタンパク質配列は、例えば、他のファミリーメンバーまたは関連配列を同定するために、公開されたデータベースに対するサーチを実施する「クエリー配列」として使用され得る。このようなサーチは、Altschul, et al. ((1990) J. Mol. Biol. 215:403-410)のNBLASTおよびXBLASTプログラム(version 2.0)を使用して実施できる。BLASTヌクレオチドサーチを、スコア=100、語長=12で、NBLASTプログラムを用いて実施して、本発明の核酸分子に相同なヌクレオチド配列を得ることができる。BLASTタンパク質サーチを、XBLASTプログラム、スコア=50、語長=3を用いて実施して、本発明のタンパク質分子に相同なアミノ酸配列を得ることができる。比較目的でのギャップ付アラインメントを得るために、ギャップ付BLASTがAltschul et al. (1997, Nucl. Acids Res. 25:3389-3402)に記載のとおり利用され得る。BLASTおよびギャップ付BLASTプログラムを使用するとき、各プログラム(例えば、XBLASTおよびNBLAST)のデフォルトパラメータが使用され得る。<http://www.ncbi.nlm.nih.gov>参照。
【0334】
ここに記載するポリペプチドおよび核酸分子は、配列番号により特定される配列と十分にまたは実質的に同一であるアミノ酸配列または核酸配列を有し得る。用語「十分に同一」または「実質的に同一」は、第一および第二アミノ酸またはヌクレオチド配列が共通の構造的ドメインまたは共通の機能的活性を有するために、十分数または最小数の第二アミノ酸またはヌクレオチド配列と同一または等価(例えば類似側鎖を有する)であるアミノ酸残基またはヌクレオチドを含む、第一アミノ酸またはヌクレオチド配列をいうためにここで使用する。例えば、少なくとも約60%または65%同一性、凡そ75%同一性、さらに85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一性を有する共通の構造的ドメインを含む複数アミノ酸またはヌクレオチド配列は、ここでは、十分にまたは実質的に同一であるとして定義される。
【0335】
他に定義しない限り、ここで使用される全ての技術的および科学的用語は、本発明が関連する分野の当業者に共通して理解されるのと同じ意味を有する。例えば、Singleton and Sainsbury, Dictionary of Microbiology and Molecular Biology, 2d Ed., John Wiley and Sons, NY (1 94);およびHale and Marham, The Harper Collins Dictionary of Biology, Harper Perennial, NY (1991)は、本発明で使用される用語の大部分の一般的辞書を当業者に提供する。ここに記載するものに類似するまたは等価なあらゆる方法および物質が、本発明の実施に際して有用であるが、より好ましい方法および物質がここに記載されている。従って、以下に定義する用語は、本明細書を全体として参照してより完全に記載される。また、ここで使用する単数表現は、文脈から明らかに他の解釈が必要ではない限り、複数を含む。特に断らない限り、それぞれ核酸は左から右に5’から3’配向で記載し、アミノ酸配列は左から右にアミノからカルボキシ配向で記載する。本発明は、方法、プロトコールおよび試薬は当業者により使用される状況により変わり得るため、これらが記載されている特定のものに限定されないことは理解されるべきである。
【0336】
本発明の態様を、次の非限定的実施例により示す。
【実施例】
【0337】
材料および方法
試験設計
この試験の目的は、(1)初代AMLのΔNPM1からのHLAクラスIリガンドの同定、(2)ΔNPM1からのHLAクラスIリガンドに特異的なTCRを有するCD8細胞の単離および(3)遺伝子移入後初代AMLの特異的認識および溶解に介在できる、ΔNPM1からのHLAクラスIリガンドに対するTCRの同定であった。HLAクラスIリガンドームデータを、タンデムマススペクトロメトリーを使用して12の初代AMLから作成し、ΔNPM1のオルターナティブリーディングフレームにマッチするペプチドをサーチした。HLA−A02:01 pMHC四量体を一つの同定されたペプチドについて産生し、6名のHLA−A02:01陽性AML患者および6名の健常HLA−A02:01陽性個体からの特異的CD8細胞の単離に使用した。健常個体から単離したT細胞クローンを、pMHC四量体染色についてスクリーニングし、四量体陽性T細胞クローンをIFN−γ ELISAによりペプチド負荷T2細胞およびΔNPM1またはwtNPM1を伴う初代AMLに対する反応性を試験した。一つの反応性が強いT細胞クローンから、TCRを配列決定し、レトロウイルスMP71−TCR−flexベクターにクローン化した。このベクターを、2名の健常HLA−A02:01陽性個体からのCD8およびCD4細胞にTCRを導入するために使用し、TCR形質導入T細胞をフローサイトメトリーにより評価した。TCR形質導入T細胞をIFN−γ ELISAによりHLA−A02:01陽性AML細胞株およびΔNPM1またはwtNPM1を伴う初代AMLの認識について試験し、特異的溶解を51Cr放出アッセイにより測定した。
【0338】
サンプル採取および細胞培養
ヘルシンキ宣言に基づくインフォームド・コンセントと共にライデン大学医療センター施設内審査委員会(the Institutional Review Board of the Leiden University Medical Center)の承認後、末梢血および骨髄サンプルをAMLの患者および健常個体から採取した。末梢血および骨髄単核細胞をFicoll-Isopaque分離により単離し、凍結保存した。HLA−A02:01型健常個体からのPBMC単離のために、バフィーコートをSanquin(Amsterdam, Netherlands)に注文した。T細胞を、5%熱不活性化ウシ胎児血清(FBS; Gibco, Thermo Fisher Scientific, Waltham, Massachusetts, United States)、5%ヒト血清、1.5%L−グルタミン(Lonza)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Lonza)および100IU/ml IL−2(Novartis, Basel, Switzerland)添加イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM; Lonza, Basel, Switzerland)からなるT細胞培地(TCM)で培養した。野生型NPM1(OCI−AML2)およびΔNPM1(OCI−AML3)を発現するAML細胞株をDSMZ(Braunschweig, Germany)に注文し、20%FBSおよび1%ペニシリン/ストレプトマイシン含有最小必須培地アルファ(MEMα; Gibco)で培養した。初代AMLおよびT2細胞を10%FBS、1.5%L−グルタミンおよび1%ペニシリン/ストレプトマイシン含有IMDMで培養した。単球をCliniMACS CD14ビーズ(Miltenyi Biotec)を用いる磁気細胞分離装置(MACS; Miltenyi Biotec, Bergisch Gladbach, Germany)により、PBMCから単離した。単離単球を100ng/mL GM−CSF(Novartis, Basel, Switzerland)および500IU/mL IL−4(Schering-Plough, Kenilworth, NJ)含有培地で、未熟樹状細胞(DC)まで7日間培養した。最後の2日間、100ng/mL GM−CSF、10ng/mL TNF−α(Cellgenix, Freiburg, Germany)、10ng/mL IL−1β(Cellgenix)、10ng/mL IL−6(Cellgenix)、1μg/mL プロスタグランジンE2(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)および500IU/mL IFN−γ(Boehringer-Ingelheim, Ingelheim, Germany)を添加して、成熟を誘発した。
【0339】
初代AMLのHLAクラスIリガンドーム
12の初代AMLサンプルの細胞ペレットを、50mM Tris−HCl、150mM NaCl、5mM エチレンジアミン四酢酸および0,5%Zwittergent 3-12(pH8.0)中で溶解させ、Complete protease inhibitor(Sigma-Aldrich, St. Louis, Missouri, United States)を添加した。4℃で溶解緩衝液中、細胞を転回させながら2時間インキュベーション後、調節物を、10分間、1000gで4℃で遠心分離した。上清を新しいチューブに移し、35分間、13,000gで4℃でインキュベートした。上清をプロテインAセファロースCL−4Bビーズ(GE Healthcare Life Sciences, Chicago, Illinois, United States)で予め浄化し、プロテインAセファロースCL−4Bビーズ上のピメルイミド酸ジメチル(DMP)固定化W6/32抗体(3mg/ml 樹脂)を用いる免疫親和性カラムに、1ml/分の流速で付した。溶解緩衝液ならびに1M、120mMおよび無NaCl含有10mM Tris−HCl(pH8.0)緩衝液の5〜10カラム体積で洗浄後、結合したHLAクラスI−ペプチド複合体を3〜4カラム体積の10%酢酸でカラムから溶出させ、解離させた。ペプチドを、10kDa膜(Macrosep Advance Centrifugal Devices With Supor Membrane, Pall Corporation, Port Washington, New York, United States)を通してHLAクラスI分子から分離した。濾液を凍結乾燥させた。
【0340】
溶出ペプチドプールを、4μl/分で流す自家製SCXカラム(320μ内径、15cm、ポリスルホエチルA 3μm、Poly LC)を用いる強カチオン交換クロマトグラフィー(SCX)により分画した。勾配を、10分間、100%溶媒A(100/0.1 水/トリフルオロ酢酸v/v)で流し、その後直線勾配を開始して15分間かけて100%溶媒B(65/35/0.1 250mM KCl/アセトニトリル/トリフルオロ酢酸v/v/v)に到達するまで流し、続いてさらに15分間かけて100%溶媒C(65/35/0.1 500mM KCl/アセトニトリル/トリフルオロ酢酸v/v/v)まで流した。勾配を100%溶媒Cで5分間維持し、その後100%溶媒Aに再び切り替えた。20個の4μlフラクションを、20μl 95/3/0.1 水/アセトニトリル/FA v/v/vが予め入ったバイアルに集めた。ペプチドフラクションを凍結乾燥させ、95/3/0.1 水/アセトニトリル/ギ酸v/v/vに溶解し、先に記載された(38)ナノフロー液体クロマトグラフィー1100 HPLCシステム(Agilent Technologies, Santa Clara, California, United States)を備えたLTQ-FTUltraまたはeasy-nLC1000を備えたQ-Exactiveのいずれかのデータ依存的タンデムマススペクトロメトリー(MS)により分析した。ペプチドを6〜10μl/分、1,5cmカラム(100μm内径; ReproSil-Pur C18-AQ、3μm、Dr. Maisch HPLC GmbH, Ammerbuch-Entringen, Germany)にトラップし、150nl/分で20cmカラム(50μm内径; ReproSil-Pur C18-AQ、3μm)に溶出させた。カラムを、0.1%ギ酸中の0〜40%アセトニトリルの120分勾配で展開した。カラムの底をチップ(内径約5μm)に抜き出し、そこから溶離剤をマススペクトロメーターに噴霧した。フルスキャンMSスペクトルを、FT−ICRで25,000の分解能で、3,000,000の目標値で取得した。二つの最も強いイオンを、FT−ICRにおける選択イオンモニタリング走査で、50,000の分解能で、50,000の目標累積値による精密質量測定のために単離した。次いで選択したイオンを、10,000の目標値で衝突誘起解離を使用する線形イオントラップでフラグメント化した。Q-Exactiveマススペクトロメーターをtop10−modeで操作した。パラメータは、17,000の強度閾値で、MS/MSについて20ms(フルスキャン)の3,000,000/最大充填時間でAGC目標値で分解能70,000および60msの100,000/最大充填時間のAGC目標値で分解能17,500であった。Apexトリガーを1〜10秒に設定し、許容電荷は2〜6であった。Proteome Discoverer version 2.1(Thermo Fisher Scientific)をペプチドおよびタンパク質同定のために使用し、同定用マスコット・ノード(mascot node)を使用し、UniProt Homo Sapiensデータベース(UP000005640;2015年1月;67911エントリー)と共にmascot version 2.2.04を使用した。システインのメチオニン酸化およびシステイニル化を可変修飾として設定した。ペプチド割り当てをQ-Exactiveデータについて10ppmの前駆体許容性および20mmuのMS/MS断片化許容性ならびにLTQ-FTUltraデータについてそれぞれ2ppmおよび0.5Daで行った。ΔNPM1由来ペプチドの同定をその合成対応物により決定した。
【0341】
ペプチド合成およびpMHC四量体産生
ペプチドを、標準Fmoc化学により合成し、ジメチルスルホキシドに溶解した。ペプチドのシステイニル化を1mMペプチドを2mM 1,4−ジチオスレイトールの50mM 重炭酸アンモニウム溶液で15分間、50℃で処理し、続いて10mM遊離システインおよび15mM Hを30分間、RTで加えることにより行った。pMHC四量体を先に概説されたとおり産生した(7、8)。すなわち、組み換えHLA−A02:01重鎖およびヒトβ2−ミクログロブリンからなる単量体をゲル濾過HPLCおよびビオチニル化により精製した。適切なペプチドと折りたたんだ後、pMHC四量体を、PE接合ストレプトアビジン(Invitrogen, Thermo Fisher Scientific)の付加により産生させた。UV交換pMHC四量体を、UV感受性ペプチド含有ビオチニル化HLA−A02:01単量体を、システイニル化ΔNPM1ペプチド存在下366nm UV光に曝すことにより産生させた。1時間のペプチド交換後、単量体を1時間、4℃でインキュベートし、続いて4000gで10分間、15℃で遠心分離した。四量体をストレプトアビジン接合PEを上清に添加することにより産生した。pMHC四量体を4℃で保存した。
【0342】
抗体およびFACS分析
T細胞を、CD3、CD4、CD8(BD Biosciences, San Jose, California, United States)およびTCR−Vβ5.1(Beckman Coulter, Brea, California, United States)に対するFITC接合抗体、CD3、CD4、CD8ならびにマウスTCR−CβおよびPE接合pMHC四量体に対するAPC接合抗体およびCD3、CD4およびCD8(BD Biosciences)に対する抗体で染色した。細胞をBD CellQuest Proソフトウェア(BD Biosciences)を使用してBD FACSCalibur II(BD Biosciences)で測定し、分析をFlowJoソフトウェア(Flowjo, LLC, Ashland, Oregon, United States)で実施した。
【0343】
T細胞単離および培養
pMHC四量体陽性CD8 T細胞を、先に記載されたとおり(9)、AMLの患者および健常個体からのPBMCから単離した。すなわち、HLA−02:01陽性AML患者および健常個体からのPBMCをΔNPM1ペプチド含有PE接合pMHC四量体で1時間、4℃で染色し、続いて抗PE MicroBeads(Miltenyi Biotec)を使用してMACS単離した。単離細胞をCD8-Alexa Fluor 700(Invitrogen)、CD4-FITC、CD14-FITCおよびCD19-FITC(BD Biosciences)抗体で染色し、pMHC四量体陽性CD8 T細胞が、BD FACSDiva v6ソフトウェア(BD Biosciences)を使用してBD FACSAria III細胞選別機(BD Biosciences)からソートされた単一細胞であった。単一T細胞を、96ウェルU底培養プレート(Costar, Sigma-Aldrich)でウェルあたり100μl TCM中、50,000照射同種PBMC、5000照射同種EBV−LCLおよび0.8μg/ml PHA(Oxoid Microbiology Products, Thermo Fisher Scientific)で刺激した。増大中のT細胞クローンを、照射フィーダー細胞およびPHAで10〜14日毎に再刺激した。
【0344】
T細胞反応性アッセイ
T細胞認識を、IFN−γ ELISA(Sanquin)により測定した。スティミュレーター細胞(30,000細胞)を、384ウェル平底プレート(Greiner Bio One, Kremsmuenster, Austria)でウェルあたり40μl TCM中、T細胞(2000細胞)と共インキュベートした。一夜共インキュベーション後、培養上清を採取して、IFN−γ放出を測定した。ペプチド認識アッセイにおいて、T2細胞(15,000細胞)を30分間、37℃で、用量設定ペプチド濃度とインキュベートし、2回洗浄して、その後T細胞と共インキュベーションした。遮断アッセイにおいて、標的細胞(10,000細胞)を60分間、RTで、飽和濃度の抗体遮断HLAクラスI(W6/32)またはHLAクラスII(PdV5.2)とプレインキュベートし、その後T細胞を加えた。T細胞介在細胞毒性を51クロム放出アッセイで測定した。初代AML細胞を100μCi Na51CrOで1時間、37℃で標識し、洗浄し、96ウェルU底培養プレート(Costar)のウェルあたり100μl TCM中T細胞と種々のE:T比で共インキュベートした。自発的および最大51Cr放出を、それぞれウェルあたり100μl TCMまたは100μl TCMと1%Triton−X100(Sigma-Aldrich)を含む別々のプレートで測定した。9時間の共インキュベーション後、25μl 培養上清を採取し、96ウェル LumaPlate(PerkinElmer, Waltham, Massachusetts, United States)に移した。カウント毎分(cpm)での51Cr放出を、2450 Microbetaプレートカウンター(PerkinElmer)で測定した。
【0345】
TCRクローニングおよびレトロウイルス上清の産生
クローン1A2のTCR αおよびβ鎖利用を、先に記載されたとおり(9)、わずかに変えて決定した。すなわち、T細胞を溶解させ、mRNAをDynabeads mRNA DIRECTキット(Invitrogen)で単離した。TCR特異的cDNAを2つのTCR−Cβ特異的プライマー、TCR−Cα特異的プライマー、SA.rtアンカー鋳型−スイッチングオリゴヌクレオチド(TSO)およびSMARTScribe逆転写酵素(Takara, Clontech, Mountain View, California, United States)を使用して産生した。第一鎖cDNA合成中、SMARTScribe逆転写酵素は3’非鋳型ポリシトシン末端を付加し、これはTSOのアニーリングおよび第二鎖cDNA合成を可能とする。TCR増幅を、TCR−CαまたはCβ領域へのアニーリングのためにPhusion Flash(Thermo Fisher Scientific)、アンカー特異的プライマーおよびネスティッドプライマーを使用してPCRにより実施した。クローン1A2についてのTCR配列がサンガーシーケンシング(Macrogen, Amsterdam, Netherlands)およびImMunoGeneTics(IMGT)データベース(10)によりTRAV12−2およびTRBV5−1として同定された。コドン最適化TRAV12−2およびTRBV5−1配列を合成し、GenScript(Piscataway, New Jersey, United States)によりMP71−TCR−flexレトロウイルスベクター(11)にクローン化した。MP71−TCR−flexにおいて、マウスTCR−Cαおよび−Cβ領域は、TCRの選択対合および発現の促進のための、ブタテッショウウイルス由来P2A配列に連結されたさらなるシステイン残基を含んだ。構築物をパッケージング細胞Φ−NX−A(ATCC, Manassas, Virginia, United States)にトランスフェクトし、トランスフェクション48時間および72時間後のレトロウイルス上清を採取し、−80℃で凍結させた。CMV由来HLA−A02:01制限ペプチドNLVPMVATVについてのTCRをコードするMP71−TCR−flexは、Prof. Dr. T.N. Schumacher (Division of Immunology, Netherlands Cancer Institute, Amsterdam, the Netherlands)により恵与された。
【0346】
TCR遺伝子移入
2つのHLA−A02:01陽性健常個体(ドナー1および2)からのPBMCを解凍し、CD4およびCD8細胞を抗CD4 MicroBeads(Miltenyi Biotec)、続くCD8 T細胞単離キット(Miltenyi Biotec)を使用して、MACSにより単離した。CD8およびCD4細胞を照射自己フィーダーおよび0.8μg/ml PHAで、24ウェル平底培養プレート(Costar)で刺激した。刺激2日後、T細胞を、先に記載されたとおり(9、12)レトロウイルス形質導入のために24ウェル平底懸濁液培養プレート(Greiner Bio-One)に移した。T細胞の添加前、プレートを30mg/mL レトロネクチン(Takara, Clontech)で被覆し、2%ヒト血清アルブミン(Sanquin)で遮断した。レトロウイルス上清を添加し、プレートを3000gで20分間、4℃で遠心分離した。T細胞を、ウェルあたり300,000細胞でウイルス上清と共にプレートに加えた。一夜インキュベーション後、T細胞を24ウェル平底培養プレートに移した。形質導入6日後、TCR形質導入T細胞をマウスTCR−Cβに対するAPC接合抗体で15分間、4℃で染色し、続いて抗APC MicroBeads(Miltenyi Biotec)を使用してMACS単離した。TCR形質導入T細胞を、照射同種PBMCおよびEBV−LCLおよび0.8μg/ml PHAで10〜14日毎に再刺激した。分析前、再刺激TCR形質導入T細胞を上記のとおり抗マウスTCR−Cβ−APCおよび抗APC MicroBeadを使用してMACSにより富化した。
【0347】
結果
初代AMLのHLAクラスIリガンドームにおけるΔNPM1の存在
ΔNPM1ペプチドがHLAクラスIにより処理され、提示されるかを調べるために、本発明者らは12の初代AMLサンプルからHLAクラスI表面分子を免疫沈降させ、結合溝からペプチドを溶出させ、ペプチドームをマススペクトロメトリーにより分析した。表Iは、12のAMLサンプルのHLAクラスI分類およびそのNPM1の変異状態を示す。NPM1遺伝子のエクソン12への4bpフレームシフト挿入が、初代AMLの30%で生じる反復性変異である。12の初代AML中8つで、ΔNPM1の存在がPCRフラグメント分析により示された。全ての患者は、既知染色体再編inv(16)(p13q22)を担持した1AML以外、細胞遺伝学により正常核型であった。末梢血または骨髄サンプルで測定したBlastパーセンテージは、55〜98%の範囲であった。
【0348】
【表1】
ΔNPM1患者は、NPM1遺伝子のエクソン12にタンパク質のC末端でフレームシフトを引き起こす4bp挿入を担持した。
AMLの患者からの末梢血および骨髄サンプルで測定したBlastパーセンテージ。
抗HLA−A02:01抗体BB7.2を使用してペプチド溶出が実施されたAMLサンプル。
【0349】
エクソン12における反復性4bp挿入は、オルターナティブリーディングフレームで翻訳されるC末端にその野生型対応物より4 AA長い11 AA(CLAVEEVSLRK)であるΔNPM1タンパク質をもたらす。このオルターナティブΔNPM1タンパク質から、正常リーディングフレームにおける10のN末端残基、続くオルターナティブリーディングフレーム(MTDQEAIQDLCLAVEEVSLRK)における11のC末端AAに伸びるタンパク質領域を、12の初代AMLから分析したHLAクラスIリガンドームにおけるマッチングペプチドがサーチされた。これは、wtNPMを伴うAML1ではなく、ΔNPM1を伴うAMLにおける2つの8量体ペプチド(VEEVSLRKおよびAVEEVSLR)、2つの9量体ペプチド(CLAVEEVSLおよびAVEEVSLRK)および1つの11量体ペプチド(CLAVEEVSLRK)の存在を確認した(表1)。7つの初代AMLから溶出した全5つのリガンドを、マススペクトロメトリーにより合成ペプチドで検証した(図1および2)。合成ペプチドでのCLAVEEVSLおよびCLAVEEVSLRKのタンデムマススペクトルの検証は、インビトロで第一残基のシステイニル化により実施された。NetMHCpan 3.0によるHLAクラスI結合親和性の予測は、エピトープCLAVEEVSLのHLA−A02:01への結合を示唆し、一方エピトープAVEEVSLRKおよびCLAVEEVSLRKはHLA−A03:01ならびにHLA−A11:01および恐らくAVEEVSLRKについてはHLA−A01:01に結合する可能性が示唆された(表2)。CLAVEEVSLのHLA−A02:01への結合ならびにAVEEVSLRKおよびCLAVEEVSLRKのHLA−A03:01およびA11:01への結合は、単量体再折りたたみにより確認された。HLA−A02:01がコーカサス人種集団の50%で発現されるため、本発明者らは、3つ中2つのΔNPM1を伴うHLA−A02:01陽性AML(AML10197およびAML3361)で検出されたCLAVEEVSLに焦点を絞った。
【0350】
【表2】


ペプチドが溶出された初代AMLサンプルにより発現された全ての他のHLAクラスIアレルに対する予測結合親和性(nM)の下限。
N.A. 該当なし。
【0351】
初代AML上のΔNPM1のT細胞認識
HLA−A02:01制限エピトープCLAVEEVSLが免疫療法による標的であり得るネオ抗原であるかを試験するために、本発明者らは、AMLの患者の特異的T細胞を試験した。PE接合pMHC四量体をCLAVEEVSL(ΔNPM1−CLA)およびそのシステイニル化バリアントCLAVEEVSL(ΔNPM1−CLA)について産生し、これらの四量体の混合物を、化学療法後寛解したΔNPM1 AMLを有する6名のHLA−A02:01陽性患者のPBMCからの特異的T細胞の単離に使用した。pMHC四量体の一方または両方に結合するT細胞を、磁性抗PEビーズで富化し、単一四量体陽性CD8細胞をフローサイトメトリーにより単離した(表3)。
【0352】
【表3】


診断後日数。
PBMC、末梢血単核細胞。T細胞単離に使用されたΔNPM1 AMLを有するHLA−A02:01陽性患者からのPBMC数が示される。
PBMCを、抗CD8−ALX700およびCLAVEEVSLおよびそのシステイニル化バリアントCLAVEEVSLに対するPE接合pMHC四量体の混合物で染色した。選別された四量体陽性CD8細胞数が示される。
ΔNPM1−CLAまたはΔNPM1−CLA四量体について陽性であるT細胞クローン数。
【0353】
計41の四量体陽性CD8細胞を、4患者の4210 PBMCから単離し、その中で3患者からの5つのT細胞をクローン的に増殖させた。しかしながら、5つのT細胞クローンいずれもΔNPM1−CLA四量体またはΔNPM1−CLA四量体で染色されず、CLAVEEVSLに対するT細胞は存在しないかまたは検出閾値未満の頻度であることが示される。それ故に、同じ戦略に従い、6名のHLA−A02:01陽性健常個体からの多数のPBMCにおける特異的T細胞をサーチした(表4)。8〜55で数が変動する四量体陽性CD8細胞が、各健常個体から計460〜1970×10 PBMCから単離された。これらの細胞で、クローン的に増殖させた5個体からの31のT細胞および4個体からの13のT細胞クローンがΔNPM1−CLA四量体について陽性であった。これらの13クローンで、3つのT細胞クローンがΔNPM1−CLA四量体で染色できた(表および図3A)。
【0354】
【表4】


PBMC、末梢血単核細胞。T細胞単離に使用したHLA−A02:01陽性健常個体からのPBMC数が示される。
PBMCを抗CD8−ALX700およびCLAVEEVSLおよびそのシステイニル化バリアントCLAVEEVSLに対するPE接合pMHC四量体の混合物で染色した。選別された四量体陽性CD8細胞数が示される。
ΔNPM1−CLA四量体に陽性の増大中のT細胞クローン数。
ΔNPM1−CLA四量体に陽性の増大中のT細胞クローン数。
n.d. 実施せず。
【0355】
13の四量体陽性CD8クローンがその標的ペプチドに反応性であるかを決定するために、クローンを、CLAVEEVSL、システイニル化バリアントCLAVEEVSLまたは無関係HLA−A02:01制限CMVペプチドNLVPMVATVの外来性に付加したHLA−A02:01陽性T2細胞の認識について試験した。13のΔNPM1−CLA四量体陽性クローン中、2つのT細胞クローン(1A2および4A8)は、CLAVEEVSL負荷T2細胞に特異的反応性を示したが、対照ペプチドNLVPMVATVには示さなかった(図3B)。クローン1A2も、CLAVEEVSL負荷T2細胞の認識を示した。これらの結果は、四量体データに一致し、第一残基のシステイニル化がクローン4A8によるT細胞認識を消滅させることを示す。しかしながら、クローン1A2によるペプチド認識は、CLAVEEVSLならびにCLAVEEVSLに対するその特異的反応性により説明されるとおり、システイニル化と無関係であった。クローン1A2および4A8の抗腫瘍能を試験するために、T細胞反応性を3つのΔNPM1を伴うサンプルおよび2つのwtNPM1を伴うサンプルを含む5つのHLA−A02:01陽性初代AMLのパネルで測定した。T細胞クローン1A2は、種々の程度で全3つのΔNPM1を伴うAMLに対する反応性を示し、一方クローン4A8は、3つのうち2つのΔNPM1を伴うサンプルに比較的低い反応性を示した(図3C)。クローン1A2によるAMLに対する強いT細胞反応性は、初代AMLの細胞表面から溶出するシステイニル化ΔNPM1ならびに非システイニル化ΔNPM1を認識するその能力により説明される。WtNPM1を伴うHLA−A02:01陽性AML(図3C)またはΔNPM1を伴うHLA−A02:01陰性AML(データは示していない)に対するT細胞反応性は観察されなかった。これらのデータは、ΔNPM1に特異的であるTCRを有するT細が健常個体のT細胞レパートリーに存在し、これらのT細胞が特にΔNPM1を伴う初代AML上のHLA−A02:01により提示される内因性ネオ抗原としてCLAVEEVSLを認識したことを示す。
【0356】
初代AMLの標的ΔNPM1へのTCR遺伝子移入
ΔNPM1が、初代AMLの30%で生じる反復性4bp挿入であり、HLA−A02:01がコーカサス人種集団の50%で発現されるため、本発明者らは、CLAVEEVSLをTCR遺伝子移入の理想的標的と考えた。初代AMLは、クローン1A2により最も強く認識され、このクローンからmRNAを単離し、cDNAをΔNPM1に対するTCRα鎖およびβ鎖の可変領域の配列に対して産生した。T細胞クローン1A2により発現されるTRAV12−2およびTRBV5−1のコドン最適化遺伝子配列を合成し、修飾MP71−TCR−flexレトロウイルスベクターにクローン化した。TCRα鎖およびβ鎖の優先結合および発現を促進するために、TCRの可変領域をP2A配列に結合したマウス定常領域とインフレームでクローン化した。ΔNPM1に対するTCRおよび、対照として、HLA−A02:01制限CMVペプチドNLVPMVATVに対するTCRを、健常HLA−A02:01陽性個体(ドナー1および2)からのPBMCから単離したCD8およびCD4細胞に導入した。形質導入6日後、TCR形質導入CD8およびCD4細胞を、マウスTCR−Cβに対するAPC接合抗体および磁性抗APCビーズを使用して精製した。フローサイトメトリー分析は、ΔNPM1についてのTCRで形質導入したCD8細胞(CD8ФNPM1)へのΔNPM1−CLA四量体の特異的結合を示した(図4A)。対照的に、CMV−NLV四量体は、ΔNPM1についてのTCRで形質導入したCD8細胞に結合せず、一方、CMV特異的TCRで形質導入したCD8細胞(CD8ФCMV)はCMV−NLV四量体で染色できたが、ΔNPM1−CLA四量体ではされなかった。TCR形質導入CD4細胞(CD4ФNPM1およびCD4ФCMV)について、結果はCD8細胞についてのものに類似し、ΔNPM1−CLA四量体のTCR形質導入T細胞への結合は、CD8共受容体と無関係に生じることを示した。TCR形質導入CD8およびCD4細胞は、マウスTCR−Cβに対する抗体でも染色でき、ΔNPM1についてのTCRで形質導入したCD8およびCD4細胞は、ヒトTCR−Vβ5.1に対する抗体にも特異的結合を示した(データは示していない)。
【0357】
次いで、本発明者らは、ΔNPM1についてのTCRで形質導入したCD8およびCD4細胞の機能性を分析し、CMVペプチドNLVPMVATVとの共インキュベーションではなく、CLAVEEVSLを負荷したHLA−A02:01陽性T2細胞との共インキュベーションによるIFN−γの特異的放出を示した(図4B)。IFN−γの特異的放出は、ΔNPM1を有するAML細胞株OCI−AML3との共インキュベーションでも観察されたが、wtNPM1を有するAML細胞株OCI−AML2での刺激では観察されなかった(図4C)。
【0358】
TCR形質導入CD8およびCD4細胞を、その後、9つのΔNPM1を伴うサンプルおよび4つのwtNPM1を伴うサンプルを含む13のHLA−A02:01陽性初代AMLのパネルに対する反応性について試験した。ΔNPM1についてのTCRで形質導入後、CD8およびCD4細胞の両者は全9つのΔNPM1を伴う初代AMLの認識を示したが、wtNPMを伴うAML1の特異的認識は観察されなかった(図5)。ΔNPM1についてのTCRで形質導入したCD8およびCD4細胞は、ΔNPM1を伴うHLA−A02:01陰性AMLおよびwtNPM1を有する成熟DCに対する反応性も欠く(図6)。次に、形質導入T細胞を、ドナー1および2からの単球由来成熟DCならびに強抗原処理および提示能を備えた非悪性細胞型として40のHLA−A02:01陽性第三者EBV−LCLのパネルに対する反応性について試験した。ΔNPM1についてのTCRで形質導入したCD8およびCD4細胞は成熟DCまたはEBV−LCLを認識できず、wtNPM1遺伝子の選択的翻訳が生じず、この遺伝子がCLAVEEVSLを模倣するペプチドを産生しないことを示した。要約すると、データは、CD8およびCD4細胞への遺伝子移入により、ΔNPM1についてのTCRは、ΔNPM1を伴う初代AML上のHLA−A02:01により提示される内因性ネオ抗原としてCLAVEEVSLの特異的認識をもたらす。
【0359】
最後に、本発明者らは、初代AMLに対するTCR形質導入CD8およびCD4細胞の細胞溶解能を試験した。TCR形質導入T細胞を、9時間51クロム放出アッセイで4つのΔNPM1を伴うサンプルおよび2つのwtNPM1を伴うサンプルを含む6つのHLA−A02:01陽性初代AMLのパネルで試験した。ΔNPM1についてのTCRで形質導入したCD8およびCD4細胞両者は、ΔNPM1を伴うAMLの特異的溶解を示したが、wtNPMを伴うAML1は示さなかった(図7)。結論として、結果は、CLAVEEVSLが、共受容体非依存的様式でTCR遺伝子移入により効率的に標的とされ得るΔNPM1を伴う初代AMLに発現される治療的ネオ抗原であることを示す。
【0360】
考察
本発明者らは、初代AMLのHLAクラスIリガンドームにおけるΔNPM1(CLAVEEVSL)によりコードされるHLA−A02:01制限9量体ペプチドを同定した。このペプチドに特異的なTCRを有するT細胞クローンを健常個体から単離し、このクローンの一つからのTCRは、CD8およびCD4細胞へのレトロウイルス導入によりΔNPM1を伴う初代AMLの特異的認識および溶解を示し、CLAVEEVSLが、共受容体非依存的様式でTCR遺伝子移入により標的とされ得るAML上の治療的ネオ抗原であることを示す。
【0361】
12の初代AMLのHLAクラスIリガンドームデータを使用して、本発明者らは、内因性に処理され、ΔNPM1を伴うAMLに提示されるペプチドとしてCLAVEEVSLを同定した。システイニル化の非存在下では、溶出ペプチドと合成ペプチドにマッチは見られないが、データは、非システイニル化CLAVEEVSLペプチドもAMLに提示される強い証拠を示す。TCRクローニングおよび遺伝子移入のために選択したクローン1A2は、合成CLAVEEVSLおよびCLAVEEVSLペプチド両者を認識した。本クローンは両pMHC四量体でも染色されたが、四量体とシステイニル化ペプチドの結合は弱かった。セリン置換した合成ペプチドを試験した実験で、エピトープの第一残基がクローン1A2の反応性に必須ではないことが確認された。しかしながら、クローン4A8について、結果は異なった。クローン4A8はCLAVEEVSLを認識したが、CLAVEEVSLはせず、非システイニル化ペプチドを有するpMHC四量体のみT細胞クローンに結合できた。T細胞認識のためのペプチドの第一残基の重要性は、第一残基がセリンに置換された合成ペプチドに対するクローン4A8の反応性の欠如によって確認された。顕著なことに、システイニル化ペプチドが認識できないにも関わらず、クローン4A8は、3のΔNPM1を伴うAMLの2つに反応性を示した。クローン1A2および4A8のこの反応性パターンに基づき、本発明者らは、システイニル化ならびに非システイニル化ΔNPM1ペプチドバリアントが細胞表面に発現されるが、エピトープの発現レベルはAML間で異なり得ることを示唆した。HLAクラスIリガンドームにCLAVEEVSLがない理由は不明であるが、低表面発現または溶出ペプチドのマススペクトルの品質の低さにより説明され得る。
【0362】
興味深いことに、fms関連チロシンキナーゼ3遺伝子(FLT3−ITD)における随伴性内部タンデム重複非存在下でΔNPM1を担持する患者は、化学療法後の生存が改善し、それ故に、しばしば同種幹細胞移植の必要性が回避される1, 2, 5, 13。ΔNPM1由来ペプチドに対するインビボ免疫応答は、特にΔNPM1タンパク質が、核小体から、プロテアソーム分解および続くHLAクラスI抗原提示経路による処理に感受性である細胞質に移行するため、この好ましい予後を強調する。Greiner et al.14はインビトロで健常ボランティアおよびAMLの患者における、CLAVEEVSLを含むΔNPM1由来の9つのHLA−A02:01制限ペプチドに対するT細胞応答をサーチした。CD8細胞とペプチド負荷PBMCの共培養後、9ペプチド中2個に対するT細胞応答が、健常ボランティアおよび患者両者で示されたが、CLAVEEVSLに対する免疫応答は測定されなかった。彼らは、続いてΔNPM1 AMLを有する25患者をスクリーニングし、これらの2つのΔNPM1由来ペプチドに対して免疫応答を有する患者の全生存が、免疫応答がない患者より優位に高いことを確認した15。しかしながら、この試験でスクリーニングした患者数は少なく、FLT3変異状態は決定されなかった。最近のデータは、FLT3−ITDを有する患者、特に高アレル比の変異対野生型FLT3遺伝子発現を有する患者は、NPM1変異状態と無関係に、FLT3−ITDがない患者に比して予後が悪いことを示す13。この観察は、ΔNPM1に対する免疫応答のインビボ誘導が好ましい予後を支持することを強化するが、好AML腫瘍増殖のための内因性因子の重要性およびましくない予後を有するAMLを処置するためのΔNPM1 TCR遺伝子治療の関連性を支持する。
【0363】
AMLは、数ドライバー変異のみを有する数百の体細胞変異を担持する単一創始クローンから生じる。サブクローンは、細胞に生存優位性を与えるさらなる変異の蓄積により、創始クローンから出現し得る。その結果、サブクローンにおける変異の大部分は、創始クローンにより共有され、少数はクローン特異的である。AMLのこの不均一組成は、誘導または地固め治療後の永続性または再発性疾患におけるクローン進化の機会を増やす。共有される変異から生じるネオ抗原のターゲティングは、創始クローンならびにサブクローンの根絶のための魅力的免疫療法戦略である。パッセンジャー変異から生じるネオ抗原は、T細胞による腫瘍の免疫編集の結果として容易に喪失され得て、腫瘍免疫回避をもたらす。免疫回避は、ドライバー変異により産生されたネオ抗原が標的であるとき、これらが悪性形質転換に必須であり、全腫瘍細胞に提示されるため、生じる可能性が低い16。現在まで、ドライバー変異により生じる数ネオ抗原しか同定されておらず、その中で、変異体KRASが膵臓癌の45%および結腸直腸癌の13%で発現される抗原である17。ドライバー変異により生じネオ抗原のる免疫回避の可能性は低いが、Tran et al. は、転移結腸直腸癌を有する患者における、HLA−C08:02喪失による、変異体KRASのTCR遺伝子治療からの回避を示している。なお、白血病誘発初期に生じるクローンドライバー変異としてのΔNPM1は、免疫療法の魅力的標的のままである。ΔNPM1はまた初代AMLの30%というその高変異頻度に基づき、理想的標的でもある。特徴的4bpフレームシフト挿入は、翻訳領域配列の限られた数の位置(859、860および861)で生じ、正確な4bp配列は異なり得るが、変異の大部分は、同じ11アミノ酸オルターナティブリーディングフレーム(CLAVEEVSLRK)をコードする。本発明者らは、HLA−A02:01におけるこのオルターナティブリーディングフレームの最初の9残基をターゲティングするTCRを同定した。このTCRは、ΔNPM1を伴うAMLの患者の処置のための将来的遺伝子治療に使用され得る。臨床試験は、ΔNPM1 TCR遺伝子治療の有効性および潜在的毒性およびHLA−A02:01の喪失による免疫回避が、AMLの長期寛解を妨害する重要なものであるか否かを示す。
【0364】
クローン1A2から単離されたTCRは、CD8ならびにCD4細胞への導入によりΔNPM1を有するHLA−A02:01陽性AML細胞の特異的認識および溶解に介在することが示され、該TCRが共受容体非依存的様式でAMLに免疫反応性を再指向させ得ることが示される。抗腫瘍免疫におけるCD4細胞の重要な役割は、最近数十年でより明白になってきている。伝統的に、CD4細胞はCD8細胞の補助を提供し、腫瘍排除改善および免疫学的記憶の誘導をもたらすことが知られている。しかしながら、CD4細胞がCD8細胞非存在下でも腫瘍拒絶に介在し得ることを示唆する証拠が増えている。CD8枯渇同種骨髄移植またはドナーリンパ球注入を受けた血液系腫瘍を有する患者は、非修飾幹細胞移植またはドナーリンパ球を受けた患者と類似する移植片対白血病応答を発症し、一方移植片対宿主疾患の発生率および重症度は低減した。自己状況において、HLAクラスII制限腫瘍関連抗原またはネオ抗原に対するCD4細胞の養子移植は、それぞれ転移黒色腫および胆管細胞癌を有する患者の腫瘍退縮をもたらした18。しかしながら、腫瘍がしばしばHLAクラスIIを発現しないため、HLAクラスIIに無関係な抗原−受容体を発現するCD8およびCD4細胞の混合物の投与が好ましく、優れた抗腫瘍免疫をもたらす可能性がある。実際、Turtle et al.19、20は、同じCD19特異的キメラ抗原受容体を発現する一定比のCD8およびCD4細胞の投与が、再発性または難治性B細胞非ホジキンリンパ腫およびB細胞急性リンパ芽球性白血病を有する患者の相当数で完全寛解をもたらしたことを示した。同様に、マウスで先に示されたとおり、CLAVEEVSLのようなHLAクラスI制限エピトープを指向する同一TCRを発現するCD8およびCD4細胞の養子移植は、強力な抗腫瘍免疫に至り得る。
【0365】
近年、ΔNPM1は、AMLの患者における微小残存病変を測定する信頼できるマーカーとして記載されている21。化学療法後の患者の末梢血における定量的RT−PCRにより検出されるΔNPM1転写物残存が、3年間のフォローアップ内の疾患再発と相関した。ΔNPM1の予後価値は、FLT3−ITDまたは変異DNAメチルトランスフェラーゼ3アルファ(DNMT3A)などの存在のような他のリスク因子と無関係であることが示された1、2、5、13。著者らにとって重要な知見は、診断時好ましい分子署名(無FLT3−ITDまたは変異DNMT3A)を有した患者における二回目の化学療法サイクル後のΔNPM1の存在転写物が、比較的予後が悪い患者の群を特徴付け、一方、好ましくない分子プロファイル(FLT3−ITD、変異DNMT3Aまたは両者)を有する患者における二回目の化学療法サイクル後のΔNPM1転写物の非存在が、比較的予後良好な患者で顕著であったことである21。それ故に、疾患状態のマーカーとしてのΔNPM1を使用して、alloSCTに適格な患者を選択することを可能とし、化学療法後の永続性または再発性疾患を処置するためのΔNPM1 TCR遺伝子治療のための患者の最適時機および選択を可能にする。最終的に、臨床試験がAMLが低処置関連死亡率でΔNPM1 TCR遺伝子移入により効率的に処置され得ることを示したとき、診断時の有害分子異常または化学療法後の検出可能な永続性または再発性疾患に基づき、予後不良なΔNPM1 AMLを有する患者のための標準的治療としてalloSCTにとって変わり得て、それによりAMLの患者の全生存が改善され得る。
【0366】
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【配列表】
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【国際調査報告】