(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
切断され、ヒト化されているモルモットL-アスパラギナーゼのバリアントが記載され、当該L−アスパラギナーゼを含有する融合タンパク質および急性リンパ性白血病および急性骨髄性白血病などのがんの処置における当該L−アスパラギナーゼの使用が同様に記載されている。
配列番号1と比べての少なくとも1つのアミノ酸置換が、位置7、10、23、25、48、49、52、53、54、57、58、59、60、62、92、98、101、106、108、121、122、134、147、193、198、217、233、236、237、250、257、281、301、311、340、344、360、362、363、364、365、366、367、または368、またはその組み合わせの位置である、請求項4に記載の切断されたGpAバリアント。
配列番号1と比べての少なくとも1つのアミノ酸置換が、H10R、Q23R、K25E、K48E、Q52R、Q54R、P57S、D58E、H59D、A60T、A62V、D91A、D92E、K98Q、E101K、Q108H、S121F、G122A、H134Q、R147H、K193R、C198A、C198S、C198V、D217E、N233S、H236Q、S250A、Q288E、R301Q、E344D、L360P、T362S、A363V、D364E、L365E、H366R、Q367R、またはS368P、またはその組み合わせである、請求項4または5に記載の切断されたGpAバリアント。
がんが、非ホジキンリンパ腫、白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、およびヘアリー細胞白血病から選択される、請求項18に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の詳細な記載
L−アスパラギナーゼは、急性リンパ性白血病(ALL)の処置のために使用される化学療法薬である。L−アスパラギナーゼの臨床的有効性のための主な必須条件は、このアミノ酸の血中での完全な欠乏を可能にするアスパラギンに対してのマイクロモルKmである。現在のところ承認されているL−アスパラギナーゼが、細菌起源のものであるために、免疫原性が課題となり、それはヒト酵素によって和らげられるであろう。しかしながら、全てのヒトL−アスパラギナーゼは、アスパラギンに対してミリモルのK
mを有する。低いK
mのモルモットL−アスパラギナーゼ(gpASNase1)が同定され、それはヒトL−アスパラギナーゼ1(hASNase1)と約70%のアミノ酸同一性を共有している。ヒト酵素と同様に、gpASNase1は、以下の2つのドメインを含有する;L−アスパラギナーゼ活性が存在する約360残基のN末端ドメイン、および未知の機能の約200残基のC末端ドメイン。半減期を改善するために、GpAのより短いが安定であるバージョンが探し求められた。結果的に、GpAは、活性を保持するGpAの最も短いフラグメントを同定するためにC末端で切断された。この分析は、359アミノ酸残基のN末端触媒ドメインが、SUMOタグと共に発現し得、野生型活性を保持していることを指し示した。しかしながら、SUMOタグを除去すると、タンパク質は不安定となった。切断を残基369まで拡張することは、安定および活性の両方である酵素を提供した。
【0012】
切断されたGpAバリアントの免疫原性を減少させるために、以下の2つの異なるアプローチが、酵素をヒト化するために用いられた:DNAシャッフリングおよび表面残基の構造ベースの突然変異。GpAのヒト化は、hASNase1とおよそ80%の配列同一性、野生型GpA活性、アスパラギンに対しての低いK
m値、および検出可能なL−グルタミナーゼ活性なし、を共有するバリアントを生じた。システインまたはリシン残基を導入し、PEGへと結びつけると、切断されたGpAバリアントは維持され、およびいくつかの例においては、それらのL−アスパラギナーゼ活性における増加を示した。加えて、NまたはC末端へのヒスチジンタグ、SUMOタグ、および/またはアルブミン結合ドメインの追加などの改変は、in vivoでの循環時間を増加させ得、TRAILの3つのタンデム可溶性ドメインへの切断されたGpAバリアントの融合は、固有のアポトーシスカスケードのための必要なシグナルを提供すること(L−アスパラギナーゼ)および外部からのアポトーシスカスケードを誘導すること(TRAIL)の両方によって細胞死を促進し得る。
【0013】
結果的に、本発明は、Asnの外部供給の存在に依存するリンパ腫および白血病などのがんの処置における使用のための、切断されたGpAバリアントおよびその融合タンパク質を提供する。本L−アスパラギナーゼの改善された安全性は、現在の患者集団(例として、小児ALLを有する患者)および他の患者集団(例として、成人ALL、AML、および他のがん)における長期にわたる使用に利益をもたらす。
【0014】
当該技術分野で知られているように、L−アスパラギナーゼ(L−アスパラギンアミノヒドロラーゼ、E.C.3.5.1.1)は、Asnにおけるアミド結合をAspおよびアンモニアに加水分解するアミダーゼである(Kumar & Verma (2012) Asian J. Biochem. Pharma Res. 3:197-205)。本明細書において「gpASNase1」または「GpA」と称されている、野生型モルモット(Cavia porcellus)L−アスパラギナーゼは、Uniprotのアクセッション番号H0W0T5_CAVPOおよび配列番号1の下で入手可能な565アミノ酸残基のタンパク質である。GpAは、抗腫瘍活性を示し、アスパラギンに対して低いK
m値を有し、L−グルタミナーゼ活性を欠く。しかしながら、野生型GpAは、hASNase1とおよそ70%の配列同一性のみ共有する。結果的に、本発明は、いくつかの態様においては、免疫原性を減少させるためにヒト化される切断されたGpAを提供する。特に、本発明は、配列番号1の残基1〜359と少なくとも85%の配列同一性を共有する切断されたGpAバリアントを提供する。
【0015】
「GpAバリアント」は、L−アスパラギナーゼ活性を示して、Asnに対して低いK
mを有し、L−グルタミナーゼ活性を欠いている、GpAの天然に存在しない形態を指す。これと比較して、「野生型」GpAは、天然に存在する供給源から単離されたときの典型的なL−アスパラギナーゼの形態を指す。野生型は、天然の集団において最も頻繁に観察されるものであり、したがって、任意に正常または野生型の形態と呼ばれる。野生型GpAは、およそ39s
−1の反応速度(k
cat)およびAsnに対して58μMのK
mを有する(Schalk、et al. (2014) J. Biol. Chem. 289:33175-33186)。本発明の切断されたGpAバリアントは、典型的には野生型GpA酵素の少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、または100%のk
catを示し、Asnに対して250μM、200μM、150μM、100μM、80μMまたは60μMより低いK
mを示す。
【0016】
少なくとも、GpAバリアントは、切断されている。「切断されたGpA」は、およそ206のC末端アミノ酸残基の全てまたは一部が取り除かれているGpAを指す。ある態様において、切断されたGpAタンパク質は、N末端に359アミノ酸残基の触媒ドメインを保持する。理想的には、完全長GpA(配列番号1)は、残基359と396との間の位置においてC末端で切断されている。特に、完全長GpA(配列番号1)は、位置359、367、369、374、384、392または396の位置においてC末端で切断されている。ある態様において、切断されたGpAバリアントは、位置369の位置においてC末端で切断される。例示の切断されたGpAバリアントは、配列番号3(GpA359)、配列番号4(GpA367)、配列番号5(GpA369)、配列番号6(GpA374)、配列番号7(GpA384)、配列番号8(GpA392)および配列番号9(GpA396)において提供される。いくつかの態様において、C末端で切断されたGpAバリアントは、配列番号3を含むかまたは配列番号3からなる。ある態様において、C末端で切断されたGpAバリアントは、配列番号5を含むかまたは配列番号5からなる。
【0017】
本発明の他の側面に従うと、GpAバリアントは、切断され、野生型GpA酵素と比較して、安定性を増加させる、hASNase1との配列同一性を増加させる、および/またはGpAのin vivo循環時間を増加させる、少なくとも1つのアミノ酸置換または改変(例として、ペグ化またはタンパク質融合)を含む。本明細書において示されるように、GpAの表面に位置するアミノ酸残基は、GpAをヒト化する、および/またはペグ化のために好適な部位を提供するかのいずれかのための突然変異をされた。さらに、GpAのタンパク質タグまたはトリマーTRAILへの融合は、安定性および/または増強された腫瘍細胞殺傷活性を提供する。
【0018】
結果的に、いくつかの側面において、GpAバリアントは、野生型GpA(配列番号1)と比べて少なくとも1つのアミノ酸置換を有する。特定の態様において、置換されているアミノ酸残基は、表面残基である。用語「表面残基」は、タンパク質の表面に位置している残基を指す。対照的に、埋まっている残基は、タンパク質の表面に位置していない残基である。表面残基は、大抵は親水性側鎖を含む。操作上、表面残基は、分子構造の表面にわたって転がる(rolled over)水和層(sphere of hydration)に接触する残基として、タンパク質の構造モデルから計算上同定され得る。表面残基はまた、重水素交換研究、または例として、親水性アルキル化剤などの、様々な標識試薬の到達性の使用を通じて実験的に同定され得る。特定の態様において、アミノ酸置換は、活性部位の残基、例として、Thr19、Ser85、Ser86、Thr116、Asp117、Ala142、Lys188、Asn272、およびTyr308の1つにおいてではない。
【0019】
本発明のGpAバリアントを生成するために置換され得るGpAの表面残基は、これらに限定されないが、配列番号1の位置7、10、23、25、40、48、49、52、53、54、57、58、59、60、62、92、98、101、106、108、121、122、131、132、134、147、193、198、217、221、222、223、224、225、226、233、236、250、253、257、261、281、282、283、284、301、311、340、344、345、347、352、358、359、360、362、363、364、365、366、367、または368のアミノ酸残基を含む。いくつかの態様において、GpAバリアントは、少なくとも1のアミノ酸置換を含む。他の態様において、GpAバリアントは、約1〜50、1〜45、1〜40、1〜35、1〜30、1〜25、1〜20、1〜15、1〜10、1〜7、または1〜4のアミノ酸置換を含む。特定の態様において、GpAバリアントは、配列番号1の位置7、10、23、25、48、49、52、53、54、57、58、59、60、62、92、98、101、106、108、121、122、134、147、193、198、217、233、236、250、257、281、301、311、340、344、360、362、363、364、365、366、367および368の1以上においてアミノ酸置換を含む。
【0020】
本明細書において指し示されるように、切断されたGpA369は、hASNase1のN末端371アミノ酸残基と約72%の配列同一性を共有する。理想的には、GpAの少なくとも1のアミノ酸置換は、野生型GpAと比較して、hASNase1との増加したアミノ酸配列同一性を有するGpAバリアントを生成する。結果的に、本発明の一側面は、GpAのヒト化について提供する。本発明のこの側面に従うと、切断されたGpAバリアントは、好ましくは、hASNase1のN末端371アミノ酸残基と少なくとも70%、72%、74%、76%、78%、80%、82%または84%のアミノ酸配列同一性を有する。さらに、切断されたGpAバリアントは、野生型の切断されたGpAと少なくとも85%、87%、89%、91%、93%、95%、97%または99%の配列同一性を共有する。
【0021】
好ましくは、切断されたGpAのヒト化は、野生型GpAの1以上の表面残基とhASNase1の対応する表面残基とを取り換えることによって達成される。とりわけ、切断されたGpAのヒト化は、野生型GpA残基のH10、Q23、K25、K48、Q52、Q54、D91、D92、K98、E101、Q108、S121、G122、H134、R147、K193、D217、N233、H236、S250、Q288、R301、E344、L360、T362、A363、L365、H366、Q367、またはS368、またはそのいずれかの組み合わせと、hASNase1の対応する表面残基とを取り換えることによって達成される。具体的に言うと、切断されたGpAのヒト化は、以下のアミノ酸置換の1以上を行うことによって達成される:野生型GpAに対してH10R、Q23R、K25E、K48E、Q52R、Q54R、D91A、D92E、K98Q、E101K、Q108H、S121F、G122A、H134Q、R147H、K193R、D217E、N233S、H236Q、S250A、Q288E、R301Q、E344D、L360P、T362S、A363V、L365E、H366R、Q367Rおよび/またはS368P。例示の切断され、ヒト化されたGpAバリアントは、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号64、配列番号65および配列番号86において提供される。
【0022】
L−アスパラギナーゼのペグ化は、in vivo循環時間を増加させることが示されている。用語「ペグ化された」または「ペグ化」は、L−アスパラギナーゼとポリエチレングリコール(PEG)を結びつけることを指す。「PEG」または「ポリエチレングリコール」は、いずれかの水溶性のポリ(エチレングリコール)またはポリ(エチレンオキシド)を指す。よってPEGの表現は、構造(CH
2CH
2O)
n、式中nは、2から約1000までの整数である、を含む。一般に使用されるPEGは、エンドキャップPEGであり、ここでPEGの末端の一方の端は、アルコキシなどの比較的不活性な基でエンドキャップされており、一方で他の端は、リンカー部分によってさらに修飾されていてもよいヒドロキシル基である。一態様において、キャッピング基は、メトキシであり、対応するエンドキャップPEGは、mPEGと表示される。ゆえに、mPEGは、CH
3O(CH
2CH
2O)
nであり、式中nは、2から約1000までの整数である。別の態様において、キャッピング基は、ヒドロキシルであり、対応するエンドキャップPEGは、ヒドロキシPEGである。「PEG」とこれに続く数字(下付き文字ではない)は、該数字に1,000を乗じたものとおおよそ等しい分子量を有するPEG部分を指し示す。ゆえに、「PEG40」または「PEG40K」は、おおよそ40kDaの分子量を有するPEG部分である。PEGの分子量を決定するために使用されるであろう方法の例は、限定せずに、例えば、TOF−MSなどの質量分析を含む。PEGは、例えば、日油株式会社、東京、日本;Creative PEG-works、Winston Salem、NC;およびNanocs、Boston、MAによって提供されるだろう。
【0023】
一態様において、PEG部分は、例として、OSu−活性化エステルを用いて、N末端アルファ−アミノ基上のまたはガンマ位置におけるリシン残基(単数または複数)上の求核置換(アシル化)によって取り付けられてもよい。別の態様において、PEG部分は、PEG−アルデヒド試薬およびシアノ水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤を使用して、GpAタンパク質中に存在するアミノ基における還元アルキル化によって取り付けられてもよい。別の態様において、PEG部分は、例えばPEGマレイミド試薬を使用する、マイケル付加反応において対を形成していないシステイン残基の側鎖へと取り付けられてもよい。他のペグ化方法は、これらに限定されないが、架橋ペグ化(bridging PEGylation)、トランスグルタミナーゼのペグ化、糖ペグ化(glycoPEGylation)、遺伝子工学を使用するペグ化、放出可能リンカー(releasable linker)のペグ化を含む。ペグ化方法のレビューについて、Pasut & Veronese (2012) J. Contr. Rel. 161:461-472;およびRoberts、et al. (2012) Adv. Drug Del. Rev. 64:116-127を参照されたい。一態様において、PEG部分は、リシンまたはシステイン残基(単数または複数)の側鎖(単数または複数)に取り付けられる。
【0024】
「リンカー」は、GpAタンパク質の−HN−基とPEG部分の−O−基とをつなぐ化学的部分を指す。好ましい態様において、リンカーは、GpAの活性にいかなる悪影響をも及ぼさない。リンカーは、典型的にはカルボン酸の誘導体であり、ここでカルボン酸の官能性は、アミド結合を介してGpAタンパク質に取り付けられるために使用される。リンカーの例は、これらに限定されないが、リンキングモチーフを有する酢酸部分:CH
2CO、リンキングモチーフを有するプロピオン酸部分:CH
2CH
2COまたはCHCH
3CO、リンキングモチーフを有する酪酸部分:CH
2CH
2CH
2COまたはCH
2CHCH
3CO、CO基、N−(アミノカルボニル)スクシンイミド誘導体(例えば、N−(N−プロピルプロパンアミド)スクシンイミド、N−(N−プロピルヘキサンアミド)スクシンイミドおよびN−(N−エチルプロパンアミド)スクシンイミドなど)、ペンタン酸((CH
2)
5CO)、α−メチルブタン酸(CH
2CH
2CH(CH
3)CO)、コハク酸(CO(CH
2)
2CO)、グルタル酸(CO(CH
2)
3CO)、スクシンアミド誘導体(例えば、(CH
2)
2NHCO(CH
2)
2COなど)、グルタルアミド誘導体(例えば、(CH
2)
3NHCO(CH
2)
3COおよび(CH
2)
2NHCO(CH
2)
3COなど)を含む。本発明における使用の例示のPEG分子は、これらに限定されないが、メトキシPEGスクシンイミジルカルボナート(mPEG−SC)、mPEG−スクシンイミジルカルボキシメチルエステル(mPEG−SCM)およびmPEG−スクシンアミドスクシンイミジルエステル(mPEG−SAS)を含む。
【0025】
本発明のL−アスパラギナーゼをペグ化するために使用され得るペグ化の方法は、例えば、US4,179,337、US5,766,897、US2002/0065397、およびUS2009/0054590において提供される。理想的には、ペグ化されたGpAバリアントは、約20:1〜100:1、またはより具体的には20:1〜50:1、または最も具体的には20:1のPEG:GpAの比率において、PEGと切断されたGpAバリアントとを反応させることにより、PEGのサイズに依存して産生される。いくつかの側面において、GpAバリアントは、少なくとも1のシステイン残基を有し、PEGは、マレイミドPEGであり、反応は、グリシンまたはアスパラギン酸の不在下において実行され、および反応産物は、ベータ−メルカプトエタノールを用いて処理される。他の側面において、GpAバリアントは、少なくとも1のリシン残基を有し、PEGは、mPEG−SC、mPEG−SCMまたはmPEG−SASであり、および反応は、DTTおよびグリセロールの不在下において実行される。
【0026】
本明細書において開示されるように、L−アスパラギナーゼは、アミノ酸置換によりL−アスパラギナーゼのアミノ酸配列中に導入される、1〜6システイン残基または10〜30リシン残基における部位特異的なペグ化によってペグ化され得る。例4および5を参照されたい。特に、切断されたGpA、またはヒト化され、切断されたGpAは、以下の導入によってペグ化されていてもよい:(a)位置49、52、225、257、281および/または340におけるシステイン残基;または(b)位置7、53、54、57、58、98、106、233、250、257、281、311および/または340におけるリシン残基。特定の場所におけるシステイン残基またはリシン残基の導入に加えて、内在性のシステイン残基またはリシン残基は、タンパク質長にわたってペグ化部位がより均等に分布するように突然変異されていてもよい(すなわち、別の残基と置換されている)。この点において、ある態様は、残基Cys198をAla、ValまたはSerと置き換えること、および/または残基Lys223をAspと置き換えることを含む。一態様において、Cys198は、Alaと置き換えられ、L−アスパラギナーゼ誘導体は、Cys79においてペグ化される。他の態様において、Cys198は、Alaと置き換えられ、位置49、225および340のアミノ酸の1以上は、システインと置き換えられる。ペグ化についての好適な例示の切断されたGpAバリアントは、配列番号51(GpA369−C198A)、配列番号52(GpA369−C198S)、配列番号53(GpA369−C198V)、配列番号54(GpA369−C198A+K225C)、配列番号55(GpA369−C198A+K225C+E340C)、配列番号56(GpA369−C198A+K225C+E340C+E49C)、配列番号57(GpA369−C198A+K225C+E340C+E49C+Q257C)、配列番号58(GpA369(hum)−Group1+2+3−C198A)、配列番号59、配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号65および配列番号86において提供される。
【0027】
切断されたGpAのin vivo循環時間を増加させるために、本発明は、バリアント、特に、ヒスチジンタグ(His)、SUMOタグ(SUMO)、アルブミン結合ドメイン(ABD)、またはそれらの組み合わせを有する切断されたGpAバリアントも提供する。切断されたGpAバリアントは、そのC末端、N末端および/またはGpA配列中の内部の場所にヒスチジンタグ、SUMOタグおよび/またはアルブミン結合ドメインを含み得る。理想的には、Hisタグ、SUMOタグまたはABDが、GpA配列中(すなわち、NまたはC末端にではなく)に挿入されているとき、挿入は、GpAタンパク質の1以上のフレキシブルループ中にある。実例として、切断されたGpAバリアントは、SUMO−アスパラギナーゼ−ABD、His−SUMO−ABD−アスパラギナーゼ、His−SUMO−アスパラギナーゼ−ABD、His−SUMO−アスパラギナーゼ、His−ABD−アスパラギナーゼ、ABD−アスパラギナーゼ、ABD−SUMO−アスパラギナーゼ、アスパラギナーゼ
1−225−ABD−アスパラギナーゼ
226−369、アスパラギナーゼ
1−340−ABD−アスパラギナーゼ
341−369などのNからC末端構造を有し得る。His、SUMOまたはABDをコードする核酸は、切断されたGpAバリアントをコードする核酸の5’または3’のいずれかにインフレームで挿入され得、それにより融合タンパク質を作製することができる。
【0028】
理想的には、ヒスチジンタグ、SUMOタグ、アルブミン結合ドメイン、またはそれらの組み合わせの1以上の包含は、L−アスパラギナーゼのin vivo循環時間を著しく増加させる。代替的に言えば、バリアントは、同等のタンパク質用量で投与される野生型L−アスパラギナーゼよりも長いt
1/2を有する。本明細書に使用されるとき、用語「t
1/2」または「半減期」は、切断されたGpAバリアントまたはその融合タンパク質の濃度がin vitroまたはin vivoで(例えば哺乳動物における注射後に)半減するのに必要な時間を指す。L−アスパラギナーゼの有効性が薬物のin vivo半減期に関連することを考えると、本発明の切断されたGpAバリアントは、白血病およびリンパ腫などのがんの処置に特に有用である。
【0029】
本明細書に使用されるとき、「ヒスチジンタグ」は、少なくとも1つのヒスチジン(His)残基、好ましくは6つのHis残基から構成されるアミノ酸モチーフを指す。ヒスチジンタグは、6(ヘキサヒスチジンタグ、6×Hisタグ、またはHis
6タグ)、7、8、9、10、または20のヒスチジン残基までのポリヒスチジンを含む。
【0030】
「SUMOタグ」は、目的のタンパク質の可溶性/安定性を増強するための、SUMO(低分子ユビキチン様修飾因子)タンパク質の目的のタンパク質との融合を指す。SUMOタグの包含は、CHAMPION pET SUMO expression system(Invitrogen)、EXPRESSO T7 SUMO cloning and expression system(Lucigen)、またはpET His6 SUMO TEV LIC cloning vector(Addgene)などの既知の発現系を使用して達成され得る。SUMOタグに加えて、Ub、Rub1、Hub1、ISG15、Ubi−L(MNSF)、FAT10、Apg12、Apg8およびUrm1を含むが、これらに限定されない、他のUblタンパク質が使用され得ることが企図される(Larsen & Wang (2002) J. Proteome Res. 1(5):411-9)。US7,655,413(参照によりその全体がここに組み込まれる)も参照されたい。例示のSUMOタグが、配列番号66、配列番号67、配列番号68、配列番号69および配列番号70に記載されている。
【0031】
「アルブミン結合ドメイン」または「ABD」は、in vivoまたはin vitroでアルブミンに結合し、治療剤の血清半減期および生体内分布を増強するポリペプチドを指す。アルブミンは、任意の動物種、例えばヒト、サル、または齧歯類の動物に由来し得る。アルブミン結合ドメインは、例えば、US6,267,964、WO1991/19741、WO2005/097202、WO2001/45746、WO2013/043071およびUS2004/0001827に記載されている。さらに、US9,156,887は、本発明で使用され得る非天然のアルブミン結合ドメインを開示している。いくつかの態様において、アルブミン結合ドメインは、配列番号71、配列番号72または配列番号73に示されたアミノ酸配列を有する。
【0032】
本明細書に開示の切断されたGpAバリアントの増強された細胞傷害活性は、GpAをTRAILの3つのタンデム可溶性ドメインにコンジュゲートまたは融合させることによって、またはGpAをTRAILの安定な形態とともに共投与することによって達成され得る。その結果得られる融合タンパク質は、TRAILの3つのタンデム可溶性ドメインを欠く切断されたGpAバリアントと比較して、IC
50値の少なくとも20倍、25倍、30倍、35倍、または40倍の減少を提供し得る。結果的に、TRAILの3つのタンデム可溶性ドメインに融合される切断されたGpAバリアントは、がん、特にL−アスパラギナーゼに非感受性のがんの処置に特に有用である。
【0033】
「融合タンパク質」は、非天然の様式で作動可能に結合されたタンパク質またはタンパク質フラグメント(例として、GpAバリアント)を含有するキメラタンパク質を指す。本発明の融合タンパク質によれば、TRAILの3つのタンデム可溶性ドメイン(TRAIL
トリマー)は、切断されたGpAバリアントとインフレームで融合される。理想的には、グリシンまたはセリン残基が、TRAILトリマーのフォールディングを促進するために各TRAILリピートの間に挿入される(例として、配列番号87および配列番号88を参照されたい)。任意に、TRAILトリマーおよびアスパラギナーゼ構成要素は、配列番号81、配列番号82、配列番号83、または配列番号84に記載のリンカーによって分離され得る。融合タンパク質は、GpA構成要素が、これまでに記載されるバリアントのいずれかであり得る、GpAのC末端(GpA−TRAIL
トリマー;例として、配列番号89および配列番号90)またはN末端(TRAIL
トリマー−GpA;例として、配列番号91および配列番号92)に融合されるTRAILトリマーを含み得る。タグまたは改変と組み合わせてさらに使用されるとき、融合タンパク質は、SUMO−TRAIL
トリマー−GpA−ABD、His−SUMO−ABD−TRAIL
トリマー−GpA、His−SUMO−TRAIL
トリマー−GpA−ABD、His−SUMO−GpA−TRAIL
トリマー、His−ABD−TRAIL
トリマー−GpA、ABD−GpA−TRAIL
トリマー、ABD−SUMO−TRAIL
トリマー−GpA等の構造を有し得る。NまたはC末端にて挿入されることに加えて、ABDペプチドは、GpAバリアントの1以上のフレキシブルループ(flexible loops)に付け足され得る。一例において、フレキシブルループは、残基215〜228に及ぶ。別の例において、フレキシブルループは、GpAの残基337〜342に及ぶ。例として、配列番号94および配列番号95を参照されたい。TRAIL、特にTRAIL
トリマーをコードする核酸は、L−アスパラギナーゼをコードする核酸の5’または3’のいずれかにインフレームで挿入され得、それによって融合タンパク質を作製する。
【0034】
好ましくは、TRAILの可溶性ドメインは、哺乳動物、特に、対立遺伝子バリアントおよび/またはその誘導体を含むヒトTRAILに由来する。可溶性ドメインは、膜局在化ドメインなしの受容体結合ドメインを含むTRAILの細胞外部分を含む。TNFスーパーファミリーの他のタンパク質と同様に、TRAILは、15〜30アミノ酸のN末端部分、いわゆるストーク領域を介して膜に固定される。ストーク領域は、トリマー形成に寄与し、細胞膜に対してある距離を提供する。しかしながら、ストーク領域は受容体結合ドメイン(RBD)の部分ではない。結果的に、可溶性TRAILドメインは、ストーク領域由来の任意のアミノ酸を欠くTRAILの受容体結合ドメインを含むことが好ましい(US2015/0337027を参照されたい)。
【0035】
可溶性TRAILドメインは、ヒトTRAILに由来し得る。好ましくは、可溶性TRAILドメインは、特にアミノ酸残基115〜122から出発するヒトTRAILに由来し、ヒトTRAILのアミノ酸残基115〜281、120〜281、121〜281または122〜281を含む。ある態様において、各々のTRAILの可溶性ドメイン
トリマーは、ヒトTRAILの残基115〜281から構成される。ヒトTRAILの残基115〜281は、本明細書において配列番号80に示されている。正確なフォールディングを促進するために、グリシンまたはセリン残基が、各TRAILリピートの間に挿入されてもよい。例として、配列番号87および配列番号88を参照されたい。
【0036】
細胞死受容体結合TRAILドメインの誘導体およびバリアントはすべて企図されており、それらのアミノ酸配列を置換、付加および/または欠失/切断によって変更することによって、または、機能的に同等のポリペプチドをもたらす化学的改変を導入することによって作製され得る。任意のポリペプチドの配列中のあるアミノ酸が、ポリペプチドの活性に悪影響を及ぼすことなく他のアミノ酸に置換され得ることは、当業者に理解されるであろう。
【0037】
本明細書に開示のTRAILドメインは、開示される配列中の1以上のアミノ酸の置換を含む。当業者は、周知の技術を使用して、本明細書において示されるペプチドの好適な配列バリアントを決定し得るであろう。ある態様において、当業者は、活性にとって重要でないと考えられる領域を標的化することによって、活性を破壊することなく変化し得る分子の好適なエリアを同定し得る。他の態様において、当業者は、同様なポリペプチド間で保存されている分子の残基および部分を同定し得る。さらなる態様において、生物学的活性または構造にとって重要なアミノ酸残基さえも、その生物学的活性を破壊することなく、またはペプチド構造に悪影響を及ぼさずに、保存的アミノ酸置換を受け得る。
【0038】
3つのTRAILの可溶性ドメインは、好ましくは、1〜8個のアミノ酸残基から構成されるペプチド結合基を介して互いに連結される。同様に、TRAIL
トリマーは、1〜20個のアミノ酸残基から構成されるペプチド結合基を介してL−アスパラギナーゼに結合されていることが好ましい。用語「ペプチド結合基」または「リンカー」は、2つの異なる分子を一緒に作動可能に結合する分子架橋として作用するペプチド部分を指すことを意味する。望ましくは、本発明のリンカーは、グリシンまたはセリン、またはそれらの組み合わせから構成される。特定の態様において、各々のTRAILの可溶性ドメイン
トリマーは、好ましくは、単一のグリシンまたは単一のセリン残基によって互いに結合される。例示のTRAIL
トリマーは、3つの可溶性TRAILドメインの間に単一のセリン残基を含む(配列番号88)。TRAIL
トリマーとL−アスパラギナーゼとの間に位置するペプチド結合基に関して、このリンカーは可動性リンカーであることが望ましい。可動性リンカーは、好ましくは、1〜20のアミノ酸残基の長さ、特に6、9、12、15または18のアミノ酸残基の長さを有する。可動性リンカーは、好ましくは、グリシン/セリンリンカー、すなわち主にグリシンおよびセリンのアミノ酸から構成されるペプチドリンカーである。特定の態様において、TRAIL
トリマーとL−アスパラギナーゼとの間のリンカーは、(GGGS)
nリンカー(配列番号81)であり、ここで、nは1〜4である、または、例としてGGGS(GGGGS)
n(配列番号82)、本明細書において、nは1〜4である、を含むその順列である。ある態様において、TRAIL
トリマーとL−アスパラギナーゼとの間のリンカーは、配列番号83に示されたアミノ酸配列を有する。他の態様において、TRAIL
トリマーとL−アスパラギナーゼとの間のリンカーは、配列番号84に記載のアミノ酸配列を有する。TRAIL
トリマー−GpAバリアント融合タンパク質の例は、3つの可溶性TRAILドメインの間に単一のグリシンまたはセリン残基を、TRAIL
トリマーと切断されたGpAバリアントとの間にグリシン/セリンリンカーを含むN末端TRAIL
トリマーを有する。例として、配列番号89、配列番号90、配列番号91および配列番号92を参照されたい。
【0039】
TRAILの安定な形態は、トリマー形成を促進するTRAILの形態を指すことが意図される。特に、TRAILのトリマー形成を促進するために、小さなトリマー形成ドメインであるFOLDON配列(GYIPEAPRDGQAYVRKDGEWVLLSTFL;配列番号85)は、TRAILの安定性および生物学的活性を37℃で少なくとも48時間維持することが示されている(Kouno, et al. (2013) J. Invest. Dermatol. 133(9):2212-2220)。結果的に、FOLDONペプチドは、His−SUMOタグとTRAILのN末端との間に挿入されてHis−SUMO−FOLDON−TRAIL融合タンパク質をもたらす。融合タンパク質は発現され、細菌培養において>10mg/Lの融合タンパク質の収量が得られた。タンパク質は極めて安定しており、FOLDONの包含が、TRAILの安定な形態をもたらすことを示した。結果的に、GpAの細胞傷害活性を増強するために、TRAILの安定な形態は、切断されたGpAバリアントとともに共投与および/または医薬組成物中で組み合わせられ得る。
【0040】
本明細書に開示の切断されたGpAバリアントおよび融合タンパク質は、従来の組み換えタンパク質技術によって容易に調製され得、ここで、組み換え宿主細胞は、バリアントまたは融合タンパク質をコードする核酸分子を含む発現コンストラクトまたはベクターによって形質転換または形質導入され、組み換え宿主細胞は、好適な条件下で増殖させてバリアントまたは融合タンパク質の発現を提供し、続いてバリアントまたは融合タンパク質は単離され、任意には精製されてもよい。結果的に、本発明は、切断されたGpAバリアントまたはその融合タンパク質、ならびにそれらを含有する発現カセットおよび/または発現ベクターをコードする核酸分子も提供する。理想的には、発現カセットおよび発現ベクターは、目的の宿主細胞における発現を促進するために必要な調節配列(例えば、プロモーター、ターミネーターなど)を含有する。切断されたGpAバリアントまたは融合タンパク質をコードする核酸分子を含む宿主細胞もまた、本発明の範囲内に含まれる。宿主細胞は、真核細胞(例として、哺乳動物、真菌または酵母細胞)または原核細胞(例として、大腸菌)を含み得る。
【0041】
本発明の切断されたGpAバリアントおよび/または融合タンパク質は、一旦生産および単離/精製されると、そのまま使用され得、または薬学的に許容し得る賦形剤を含有する医薬組成物として処方され得る。本明細書において提供される医薬組成物は、固体または液体の形態での静脈内投与用または静脈内注射用に特別に処方され得る。最適な医薬組成物は、例えば、意図される投与経路、送達形態、および所望の投与量に依存して、当業者によって決定され得る。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences(第19版、1995)を参照されたい。
【0042】
切断されたGpAバリアントおよび/または融合タンパク質は、注射可能な処方などの従来の全身投与形態に組み込まれ得る。投与形態は、必要な生理学的に許容し得る担体材料、賦形剤、潤滑剤、バッファー、界面活性剤、抗菌剤、(マンニトールなどの)増量剤、抗酸化剤(アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウム)なども含み得る。
【0043】
医薬組成物中の主な担体または賦形剤は、性質上水性または非水性のいずれかであり得る。例えば、好適な担体または賦形剤は、注射用水、生理食塩水または人工脳脊髄液であり得、場合によっては、非経口投与のための組成物に一般的な他の材料で補充され得る。中性緩衝生理食塩水または血清アルブミンと混合された生理食塩水は、さらなる例示的なビヒクルである。医薬組成物は、約pH7.0〜8.5のTrisバッファー、または約pH4.0〜5.5の酢酸バッファーを含み得、ソルビトールまたはそのための好適な代替物をさらに含み得る。本発明の医薬組成物は、所望の純度を有する選択された組成物を、凍結乾燥されたケーキまたは水溶液の形態の任意の処方剤と混合することによって、保存用に調製され得る(Remington's Pharmaceutical Sciences, Id.)。さらに、本発明の切断されたGpAバリアントまたは融合タンパク質は、スクロースまたはグリシンなどの適切な賦形剤を使用して凍結乾燥物として処方され得る。
【0044】
本発明の切断されたGpAバリアント、融合タンパク質、または医薬組成物の投与経路は、静脈内、腹腔内、脳内(実質内)、脳室内、筋肉内、眼内、動脈内、門脈内、または病巣内の経路による注射;徐放性システムまたは移植デバイスによるものを含む。組成物は、ボーラス注射によって投与され得、または、注入または移植デバイスによって連続的に投与され得る。組成物はまた、所望の分子が吸収または封入された膜、スポンジまたは別の適切な材料の移植を介して局所的に投与され得る。移植デバイスが使用される場合、デバイスは、任意の好適な組織または器官に移植され得、所望の分子の送達は、放散、徐放ボーラス、または連続投与を介するものであり得る。
【0045】
本発明の組成物は、非経口的に送達され得る。非経口投与が企図されるとき、本発明における使用のための治療上の組成物は、薬学的に許容し得るビヒクル中で本発明のスクリーニング方法で同定された所望の化合物を含む発熱物質を含まない非経口的に許容し得る水溶液の形態であり得る。非経口注射のための特に好適なビヒクルは、本発明のスクリーニング方法で同定された化合物が適切に保存された滅菌等張溶液として処方される滅菌蒸留水である。調製には、注射可能なマイクロスフィア、生体分解可能な粒子、ポリマー化合物(ポリ乳酸またはポリグリコール酸など)、ビーズまたはリポソームなどの剤との、所望の分子の処方が関与し得、これは、産物の制御放出または徐放を提供し得、次いでデポー注射を介して送達され得る。ヒアルロン酸による処方は、循環における持続期間を促進する効果を有する。移植可能な薬物送達デバイスを使用して、所望の分子を導入し得る。
【0046】
組成物はまた、吸入のために処方され得る。これらの態様において、切断されたGpAバリアントまたは融合タンパク質は、吸入のための乾燥粉末として処方されるか、または吸入溶液はまた、噴霧などによるエアロゾル送達のための噴射剤とともに処方され得る。肺投与は、化学的に改変されたタンパク質の肺送達を記載するWO1994/020069にさらに記載されている。
【0047】
本発明の組成物は、経口などの消化管を通じて送達され得る。かかる薬学的に許容し得る組成物の調製は、当業者の知識の範囲内である。この様式で投与される本発明の切断されたGpAバリアントまたは融合タンパク質は、錠剤およびカプセルなどの固体剤形の配合において慣用的に使用される担体を用いて、または用いずに処方され得る。カプセルは、バイオアベイラビリティが最大化され、腸管の(pre-systemic)分解が最小化されるときに、胃腸管中の点で処方の活性部分を放出するように設計され得る。ここで開示される本発明のペプチドの吸収を促進するために、追加の剤が含まれ得る。希釈剤、香味料、低融点ワックス、植物油、滑沢剤、懸濁化剤、錠剤崩壊剤、および結合剤もまた用いられ得る。
【0048】
これらの組成物はまた、防腐剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤などのアジュバントを含有し得る。微生物の作用の防止は、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などの様々な抗菌剤および抗真菌剤の包含によって確実にされ得る。また、糖、塩化ナトリウムなどの等張剤を含むことは望ましいものであり得る。注射可能な医薬形態の延長された吸収は、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの吸収を遅らせる剤の包含によってもたらされ得る。
【0049】
本発明の切断されたGpAバリアントおよび/または融合タンパク質は、アスパラギンの枯渇によって処置可能な疾患または状態の処置に特に有用である。結果的に、本発明はまた、処置を必要とする対象に切断されたGpAバリアントまたは融合タンパク質の有効量を投与することによって、疾患、特にがんを処置するための方法を提供する。ここで使用される「有効量」は、(a)障害の重篤度を低減すること;(b)処置される障害(単数または複数)に特徴的な症状の発症を限定または防止すること;(c)処置される障害(単数または複数)に特徴的な症状の悪化を阻害すること;(d)障害を以前に有していた患者における障害(単数または複数)の再発を限定または防止すること;(e)以前に障害(単数または複数)の徴候があった患者の症状の再発を限定または防止すること;(f)疾患または障害の発生後の死亡率の低減;(g)治癒;および(h)疾患の予防という意図された目的を達成するのに十分な活性成分の量を指す。各々の個々の場合における有効量は、当該技術分野において確立された方法にしたがって当業者によって経験的に決定され得る。本発明の文脈で使用される場合、「投与すること」は、個体へのin vivo投与、ならびに細胞または組織へのin vitroまたはex vivo直接投与を含む。切断されたGpAバリアントまたは融合タンパク質の有効量は、一般に、アポトーシスを誘導し、対象のがん細胞または腫瘍において循環するL−アスパラギンを低減させ得るものである。臨床医は、最適な治療上の効果を得るために投与量または投与経路を力価測定し得る。
【0050】
ある態様において、切断されたGpAバリアントまたは融合タンパク質は、成人および小児の両方における急性リンパ性白血病(ALL)などのがん、ならびにアスパラギン枯渇が有用な効果を有することが期待される他の状態の処置における使用のための医薬品の処置または製造において有用である。かかる状態は、血液悪性腫瘍、非ホジキンリンパ腫、NKリンパ腫、膵臓がん、卵巣がん、ホジキン病、急性骨髄性白血病、急性骨髄単球性白血病、慢性リンパ性白血病、リンパ肉腫、細網肉腫、および黒色肉腫を含むが、これらに限定されない、悪性腫瘍またはがんを含むが、これらに限定されない。アスパラギン枯渇に応答する代表的な非悪性血液疾患は、免疫システムに媒介される血液疾患(例として、HIV感染によって引き起こされるもの(すなわち、AIDS)などの感染疾患)を含む。アスパラギン依存症に関連する非血液疾患は、自己免疫疾患(例えば、関節リウマチ、SLE、自己免疫、コラーゲン血管疾患、AIDSなど)を含む。他の自己免疫疾患は、骨関節炎、アイザックス症候群、乾癬、インスリン依存性真性糖尿病、多発性硬化症、硬化性全脳炎、全身性エリテマトーデス、リウマチ熱、炎症性腸疾患(例えば、潰瘍性大腸炎およびクローン病)、原発性胆汁性肝硬変、慢性活動性肝炎、糸球体腎炎、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、およびグレーブス病を含む。特定の態様において、切断されたGpAバリアントまたは融合タンパク質は、非ホジキンリンパ腫、白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、およびヘアリー細胞白血病の処置において使用される。
【0051】
疾患を引き起こすことが疑われる細胞は、任意の好適なin vitroまたはin vivoアッセイ(例として、増殖培地がアスパラギンを欠いているin vitroアッセイ)においてアスパラギン依存性について試験され得る。よって、一側面において、本発明は、本発明の切断されたGpAバリアントまたは融合タンパク質の有効量を患者に投与することを含む、患者において処置可能な疾患を処置する方法に関する。特定の態様において、疾患はALLである。特定の態様において、アスパラギン枯渇により処置可能な疾患の処置において使用される切断されたGpAバリアントまたは融合タンパク質は、モルモット由来の切断されたGpAバリアントを含む。
【0052】
切断されたGpAバリアントまたは融合タンパク質は、1週間に約3回から1ヶ月に約一度までの範囲に及ぶスケジュール、典型的には、1週間に一度または隔週に一度、単一剤(例として、単剤治療)として、または、グルココルチコイド、コルチコステロイド、抗がん化合物、または他の剤(メトトレキサート、デキサメタゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、ビンクリスチン、シクロホスファミド、およびアントラサイクリンを含むが、これらに限定されない)を含むがこれらに限定されない化学治療薬の組み合わせの部分として、投与され得る。一例として、ALLを有する患者は、誘導、強化または増強、および維持を含む3つの化学治療の段階の間に、多剤化学治療の構成要素として、本発明の切断されたGpAバリアントまたは融合タンパク質を投与されるであろう。特定の例において、切断されたGpAバリアントまたは融合タンパク質は、アスパラギン合成酵素阻害剤と共に投与されない(例として、WO 2007/103290を参照されたい)。別の特定の例において、切断されたGpAバリアントまたは融合タンパク質は、アスパラギン合成酵素阻害剤と共に投与されないが、他の化学治療薬と共に投与される。切断されたGpAバリアントまたは融合タンパク質は、多剤化学治療レジメンの部分として、他の化合物の前、後、または同時に投与され得る。
【0053】
特定の態様において、方法には、約1U/kg〜約1000U/kgの量で本発明の切断されたGpAバリアントまたは融合タンパク質を投与することが関与する。より特定の態様において、切断されたGpAバリアントまたは融合タンパク質は、約20、50、60、70、100、200、300、400、500および600U/kgからなる群から選択される量で投与される。別の特定の態様において、切断されたGpAバリアントまたは融合タンパク質は、約1000IU/m
2〜約20000IU/m
2の範囲に及ぶ用量(例として、1000IU/m
2、2000IU/m
2、3000IU/m
2、4000IU/m
2、5000IU/m
2、6000IU/m
2、7000IU/m
2、8000IU/m
2、9000IU/m
2、10000IU/m
2、11000IU/m
2、12000IU/m
2、13000IU/m
2、14000IU/m
2、15000IU/m
2、16000IU/m
2、17000IU/m
2、18000IU/m
2、19000IU/m
2、または20000IU/m
2)で投与される。別の特定の態様において、切断されたGpAバリアントまたは融合タンパク質は、約3日〜約10日(例えば、3、4、5、6、7、8、9、または10日)の期間、単回用量で、検出不能なレベルまでAsnを枯渇させる用量で投与される。別の態様において、方法には、野生型L−アスパラギナーゼと比較して単回用量の後により長いin vivo循環半減期を有する本発明の切断されたGpAバリアントまたは融合タンパク質を投与することが関与する。
【0054】
以下の非限定的な例は、本発明をさらに説明するために提供される。
【0055】
例1:活性である、C末端で切断されたGpAの生成
ヒトL−アスパラギナーゼ(hASNase1;UNIPROTエントリーQ86U10;配列番号2)およびモルモットL−アスパラギナーゼ(gpASNase1またはGpA;UNIPROTエントリーH0W0T5;配列番号1)などの哺乳動物のL−アスパラギナーゼは、L−アスパラギナーゼ活性が存在する約360残基のN末端ドメイン、および未知の機能の約200残基のC末端ドメインの2つのドメインを含有する。比較すると、臨床的に関係のある細菌である大腸菌およびErwinia chrysanthemi由来のL−アスパラギナーゼは、約350アミノ酸残基の長さがあり、そのようなC末端ドメインを含有しない。
【0056】
注射可能な生物製剤の治療の課題の1つは、不十分なバイオアベイラビリティをもたらす短い半減期からのものである。除去は、大部分はタンパク質分解、腎臓の濾過から、または免疫系による中和から生じる。外来配列のより大きな分子が、免疫系によって検出されるより多くの機会を有し、および系から迅速に取り除かれる。GpAのより短いが安定であるバージョンを同定することは、とくに完全長タンパク質のC末端ドメインが未知の機能である文脈において、よりよい治療を提供することを期待された。
【0057】
GpAのC末端残基の機能を査定するために、C末端で切断されたGpAバリアントを、構築し、安定性および全体のL−アスパラギナーゼ活性について分析した。hASNase1、GpA、大腸菌のL−アスパラギナーゼ、およびErwiniaのL−アスパラギナーゼ酵素の配列アラインメントおよび結晶構造解析は、残基359での触媒ドメイン末端を指し示した。GpAの残基1〜359から構成されるコンストラクト(配列番号3)を、組換えで発現したが、精製されたC末端の切断された酵素は、不安定であった。したがって、追加でC末端が切断されたGpAコンストラクトを、SUMOタグに融合して、調製した(表1)。
【表1】
【0058】
これらのC末端で切断されたGpAコンストラクトの組換え過剰発現は、全てのタンパク質が十分に過剰発現し、>95%の純度に精製されることを指し示した(SDS−PAGEによって測定された)。安定性SUMOタグを切り落とした後に、GpA367がわずか数分の内に素早く沈殿した一方で、より長いバリアントは、優れた安定性および活性を示しており、それは完全長タンパク質に匹敵した。とりわけ、余分なCys388を保有するより長いコンストラクトは、不特定のジスルフィド結合を形成する傾向があり、L−アスパラギナーゼ活性のために必要なテトラマー形態を変更した。少なくとも残基1〜369から構成されるC末端で切断されたGpAが、L−アスパラギナーゼ活性を有する安定したGpA酵素をもたらす一方で、本明細書において示されているように、残基1〜359または1〜367から構成されるC末端で切断されたGpAの安定性は、異種ペプチド/タンパク質(例として、SUMOタグまたはアルブミン)との融合または化学修飾(例として、ペグ化)によって安定化し得る。
【0059】
例2:指向性進化法によって産生されたヒト化GpAバリアント
概要。指向性進化法、または実験室内で自然の進化プロセスを模倣するプロセスは、酵素の特性を改善するための広く使用される。例として、Dalby (2011) Curr. Opin. Struct. Biol. 21:473-480;Goldsmith & Tawfik (2012) Curr. Opin. Struct. Biol. 22:406-412;Labrou (2010) Curr. Protein Pept. Sci. 11:91-100;Wang & Zhao (2012) Bioresour. Technol. 115:117-125を参照されたい。ライブラリー生成、スクリーニング技法、そして第一に自然のタンパク質の進化のメカニズムのよりよい理解における進歩を前提として、進化した触媒活性における大きな改善(開始点と比べて、および絶対k
cat/K
m値において)が得られた(Fasan、et al. (2008) J. Mol. Biol. 383:1069-80;Bar-Even, et al. (2011) Biochemistry (Mosc.) 50:4402-10)。
【0060】
免疫原性を克服するために、II型大腸菌L−アスパラギナーゼと同様の動力学的特性を有するヒト様L−アスパラギナーゼが、指向性進化法アプローチを介して生成された。DNAファミリーシャッフリングを使用して、hASNase1と高い配列同一性を有するが、gpASNase1の低いK
m特性を有する、いくつかのクローンが同定された。
【0061】
株。染色体遺伝子の欠失は、λ−redリコンビナーゼシステムを使用して実施された(Datsenko & Wanner (2000) Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 97:6640-6645)。チロシンアミノトランスフェラーゼ遺伝子tyrB、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ遺伝子aspCおよびL−アスパラギナーゼ遺伝子ansA、ansB、iaaAを、大腸菌BW25113F
−、DE(araD−araB)567、lacZ4787(del)::rrnB−3、LAM−、rph−1、DE(rhaD−rhaB)568、hsdR514の染色体から欠失させて、大腸菌BW5Δをもたらした。簡潔に言うと、プライマー対を使用して、適切なkeio株由来のカナマイシン耐性カセットにより交換された遺伝子を既知の方法に従って増幅した(Datsenko & Wanner (2000) Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 97:6640-6645)。続いて、直線状のPCR産物を使用して、BW25113の染色体上の標的遺伝子の全体のオープンリーディングフレームを交換した。正確な遺伝子欠失を含有するコロニーは、FLPリコンビナーゼプラスミドpCP20を用いて形質転換し、カナマイシン耐性マーカーを取り除いて、およびpCP20を次いで、その結果得られる株から取り除いた。大腸菌BW2Δ株は、同じプロセスに続いて、およびansAおよびansBの遺伝子の欠失の後に、得られた。
【0062】
BW2ΔおよびBW5Δ内のhASNase1およびgpASNase1のクローニング。hASNase1のコドン−最適化された配列をコードする遺伝子を、プライマーNdeI−hA_F1およびhA−BamHI_R573を使用して増幅し、プライマーNdeI−gpA_F1およびgpA−BamHI_R565を用いてgpASNase1のコドン−最適化された配列をコードする遺伝子を増幅した(表2)。BamHI/NdeIの消化の後に、PCR産物をpBADベクター内に挿入した。その結果得られるベクターを続いて使用してBW5Δ株およびBW2Δ株を形質転換し、BW5Δ pBAD_hASNase1株、BW5Δ pBAD_gpASNase1株、BW2Δ pBAD_hASNase1株およびBW2Δ pBAD_gpASNase1株をもたらした。BW5ΔおよびBW2Δをまた、空のpBADベクターを用いて形質転換し、対照として役立たせた。
【表2-1】
【表2-2】
【0063】
培地および増殖実験。M9完全培地を、0.4%グリセロール、2μMのチアミン、1mMのMgSO
4、0.1mMのCaCl
2および100μg/mLのアンピシリンを補充したM9最小塩(Sigma)から作製した。完全なM9プレートのために、15g/Lの寒天を添加した。BW2Δ株を用いた実験のために、M9培地を、NH
4Clを含まずに作製した。必要な場合に、L−アスパラギナーゼを種々の濃度でM9培地に添加した。pBADベクター内にクローニングされたhASNase1およびgpASNase1の発現を誘導するために、0.02%アラビノーズをM9培地に添加した。完全M9の寒天プレート上の増殖実験のために、最初に株を37℃で一晩中LB中で増殖して、遠心沈殿し、M9培地中で洗浄した。適切な希釈のこの懸濁液を、次いで各株について同じ数のコロニーとなるように、M9プレート上に広げた。プレートを、37℃で48〜96時間インキュベートした。
【0064】
DNAシャッフリング。DNAシャッフリングを、記載されるもの(Meyer、et al. (2014) Curr. Protoc. Mol. Biol.、Ausubel (ed) 105:Unit-15.12)から僅かな調整を伴って実施した。簡潔に言うと、hASNase1およびGpA遺伝子の等モルの混合物を、0.5UのDNase(NEB)で2分30秒間消化した。100bpと200bpとの間のフラグメントを、QIAQUICK gel extract kit(Qiagen)を使用して抽出し、PCRによって再会合し、次いでGpA遺伝子に特異的なプライマーかまたはhASNase1遺伝子に特異的なものかのいずれかを使用して増幅した。得られるシャッフルされたフラグメントを、Megawhop法を使用してpBADベクター内にクローニングした(Miyazaki (2003) Methods Mol. Biol. 231:23-28)。簡潔に言うと、100〜300ngのシャッフルされたフラグメントを、メガプライマーとして使用してpBAD_hASNase1またはpBAD_gpASNase1のいずれかを鋳型として使用して全プラスミドのPCRを実行した。DpnIを用いた鋳型の消化の後に、シャッフルされた配列を含有する20〜40ngの新たな合成プラスミドを使用して、エレクトロコンピテントBW5Δ細胞を形質転換した。パルスの後に、細胞を1mlのSOC培地中で再懸濁し、37℃で1時間振盪しながらインキュベートした。細胞を、次いで4000xgで4分間遠心沈殿し、200μLのM9培地中で穏やかに再懸濁した。0.2mMのAsnまたは2mMのAsnを補充したM9プレート上に100μLプレーティングした。プレートの37℃での4日のインキュベーション後に、2mMのAsnプレート由来のコロニーを単離し、200μLの新鮮なM9培地中にプールした。2つの希釈を連続して実行し、新鮮な0.2mMのAsnM9プレートにプレーティングするために使用した。37℃での4日および室温での追加の3日のインキュベーションの後に、0.2mMのAsnプレート上で増殖することのできるクローンを単離し、LBプレート上に画線した。
【0065】
C末端ドメインスワッピング。h
N−g
Cのクローンを組み立てるために、hASNase1のN末端ドメイン(h
N、残基1〜361)に対応する配列を、NdeI−hA_F1およびgpA360−367_Rのプライマーを使用して増幅し、およびgpASNase1のC末端ドメイン(gC、残基360〜565)に対応する配列を、hA354−361_FおよびgpA−BamHI_R565のプライマーを使用して増幅した。g
N−h
Cのクローンを組み立てるために、gpASNase1のN末端ドメイン(g
N、残基1〜359)に対応する配列を、NdeI−gpA_F1およびhA362−369_Rのプライマーを使用して増幅し、およびhASNase1のC末端ドメイン(h
C、残基362〜573)に対応する配列を、gpA352−359_FおよびhA_BamHI_R573のプライマーを使用して増幅した。プライマーを、表2中に列挙する。キメラを次いで適切なプライマーを使用して、フラグメントh
Nおよびg
Cまたはg
Nおよびh
CのPCR融合によって構築して、および次いでこれに続いてpBADおよびpETベクター内にクローニングした。
【0066】
クローニングおよび選択的クローンの発現。単離されたクローンを培養した;プラスミドを抽出し、配列決定した。対応する遺伝子を、pETベクター(pBADベクター内にクローニングするために使用されるものと同じプライマーを使用した、His−SUMOタグを含む改変pET14b)に導入し、C41(DE3)細胞においてHis−タグタンパク質の発現を可能とした。培養を、100μg/mLのアンピシリンを補充した1Lの2YT培地において実行した。発現を、0.1mMのIPTGを用いて誘導し、および細胞を、18℃で一晩中増殖させた。野生型gpASNase1についてこれまでに記載したように(Schalk、et al. (2014) J. Biol. Chem. 289:33175-86)、細胞を回収し、溶解し、および精製した。タンパク質を、pH7.5の25mMのTris−HCl、200mMのKCl、500mMのイミダゾールのバッファー中に溶出し、およびイミダゾール不含であるが1mMのDTTを含有する同じバッファーに対して透析した。大腸菌ansB酵素の発現および精製を、これまでに記載した(Schalk、et al。(2014) J. Biol. Chem. 289:33175-86)。
【0067】
動力学的アッセイ。クローンの触媒活性を、還元型NADHの1:1の酸化を通じてL−アスパラギン酸(Asp)の生産を測定する、分光NADH依存性酵素共役アッセイ(spectroscopic NADH-dependent enzyme-coupled assay)(Fernandez、et al. (2013) Int. J. Clin. Exp. Med. 6:478-487;Hejazi、et al. (2002) Biochem. J. 364:129-136)を使用して決定した。NADHのNADへの変換を、37℃における340nmの吸光度の減少として分光光度的に測定した。全ての測定は、pH7.5の100mMのTris、0.4mMのα−ケトグルタル酸および50nMの(hASNase1、hN−gC);10nMの(gpASNase1、gN−hC、63−hC、64−hC、65−hC、SA−hC)または3nMの(ansB)酵素を含む0.4mMのNADHを含有するバッファーにおいて3回行われた。グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(Sigma)およびリンゴ酸デヒドロゲナーゼ(Sigma)は、共役酵素反応のためのヘルパー酵素であった;5および1単位を、夫々使用した。SigmaPlot(Systat Software Inc)を使用して、データをミカエリス−メンテン式に当てはめた。hASNase1の協調的な性質に起因して、この酵素は、ヒルの式を使用して分析された。
【0068】
細胞の培養。LOUCY(Ben-Bassat、et al。(1990) Cancer Genet. Cytogenet. 49(2):241-8)およびSUP−B15(ATCC CRL-1929)細胞株は、当該技術分野において記載されている。全ての細胞株は、STR(Short Tandem Repeat)によって分析され、Global Bioresource Center ATCCからの対応するSTRプロファイルデータと100%一致することを確認した。全ての細胞株は、マイコプラズマフリーであることが確認された。LOUCYおよびSUP−B15株を、10%のFBS(Hyclone)および1xペニシリン−ストレプトマイシン溶液(Invitrogen)で補充したRPMI 1640培地を使用して、湿潤雰囲気(5%CO
2、37℃)で培養した。L−グルタミンを細胞培養物に直接2mMの最終濃度まで添加した。DPBS(ダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水、Mediatech)または種々のL−アスパラギナーゼのいずれかの10μLの存在下で、細胞懸濁液の90μLのアリコート(1mL当たり5×10
5個の細胞)を、丸底96ウェルマイクロタイタープレート中で、0.00001〜0.1IU/mLの範囲に及ぶ最終濃度まで、三重で培養した。5%のCO
2を含有する加湿空気中でプレートを37℃で4日間インキュベートした後、Alamar Blue(Invitrogen)を10%(v/v)の最終濃度まで加え、プレートを追加で2時間インキュベートし、続いて、蛍光シグナルを読んだ。白血病細胞の生存率は、L−アスパラギナーゼの存在下での蛍光カウントの、DPBS対照における蛍光カウントに対するパーセンテージとして計算した。
【0069】
選択システムの開発。L−アスパラギナーゼ活性についての選択システムを作り出すために、その増殖が、酵素反応のいずれかの産物に依存する細菌株を必要とした。L−アスパラギナーゼが、AsnのAspおよびアンモニアへの加水分解の触媒作用を及ぼすために、2つの選択システムが開発され、および試験された:一方は、単一窒素源として反応産物のアンモニアに依存する細菌株を用い、および他方は、Aspについて栄養素要求性の株を使用する。
【0070】
BW2Δ株:窒素源についてL−アスパラギナーゼ反応への依存。全ての生物は、窒素源を必要とする。M9などの最少培地における大腸菌の増殖のために、窒素源は、大抵はNH
4Cl塩の形態で得られる。しかしながら、NH
4Clの不在下において、この研究で使用される大腸菌BW株が、培地中の2mMのAsnを使用して増殖し得ることが実証された。このことは、大腸菌が、その内在性のL−アスパラギナーゼの活性を通じてAsnを窒素源として使用し得ることを示している。外来性のL−アスパラギナーゼ活性によって産生されるNH
4Cl依存のBW大腸菌株を作り出すために、2つの内在性のL−アスパラギナーゼ遺伝子(ansAおよびansB)を、大腸菌BW親株から除去し、それを次いでBW2Δと称する。Asnについて極めて高いK
m値を有するために、とりわけ、第3の内在性のL−アスパラギナーゼ(iiiA)は除去されなかった。実際に、実験条件下において、培地中に2mMのAsnを含んでいてさえ、BW2Δ株の増殖は、大いに減じた。
【0071】
BW5Δ株:アスパラギン酸についてのL−アスパラギナーゼ反応への依存。大腸菌は、Asnを加水分解すること(L−アスパラギナーゼ反応)によってかまたはアミノトランスフェラーゼ反応によって、Aspを生成し得る。実際に、親BW株は、M9培地単独において十分に増殖し、Aspの補充の影響はない。Aspについて栄養素要求性の大腸菌株を作製するために、2つの関係のあるアミノトランスフェラーゼ遺伝子(aspCおよびtyrB)と同様に、3つ全ての内在性のL−アスパラギナーゼ遺伝子(ansA、ansB、およびiiiA)を除去した。これら5つの遺伝子が除去された株を、BW5Δ株と称する。BW5Δ株が、Asp栄養素要求性を獲得することを確かにするために、増殖についてAspの補充を行った、および行わなかったM9最少培地中で試験した。Aspを補充しなかった培地にて、BW5Δが増殖し得なかったことを観察した。しかしながら、Aspの補充された条件下においては、増殖を観察した。
【0072】
L−アスパラギナーゼを発現するクローンの選択のための、BW2Δ株およびBW5Δ株の使用。これらの細菌株が、L−アスパラギナーゼ活性のための選択システムとして使用され得るか否か、そして第一にそれらのK
m特性に基づいてL−アスパラギナーゼ間の識別を可能にするであろうか否かを調査するために、低いK
mを有するL−アスパラギナーゼまたは高いK
mを有するL−アスパラギナーゼのいずれかを発現するBW2Δ株およびBW5Δ株の増殖について分析した。進化させるべきであるタンパク質標的である、ヒトL−アスパラギナーゼI型(hASNase1)は、ミリモルの範囲においてAsnについてのK
mによって特徴づけられ(Karamitros & Konrad (2014) J. Biol. Chem. 289:12962-75;Schalk、et al. (2014) J. Biol. Chem. 289:33175-86)、よって高いK
mのL−アスパラギナーゼとして使用された。モルモットL−アスパラギナーゼI(gpASNase1)は、マイクロモルの範囲においてAsnについてのK
mを有すると特徴づけられ(Schalk、et al. (2014) J. Biol. Chem. 289:33175-86)、よって低いK
mのL−アスパラギナーゼとして使用された。十分に制御されたタンパク質発現を有するために、夫々のL−アスパラギナーゼをコードする遺伝子の両方を、pBADベクター中でクローニングした。
【0073】
窒素の単一源を供給するL−アスパラギナーゼ反応に基づく、第1のスクリーニングシステムにおいて、BW2Δを、pBAD(対照ベクター)、pBAD_hASNase1(高K
m酵素)またはpBAD_gpASNase1(低K
m酵素)を用いて形質転換した。形質転換された細胞を、NH
4Clを欠くが、増加する濃度のAsnが補充されたM9培地中で増殖させた。低いAsnの濃度は、低K
M酵素をコードする、pBAD_gpASNase1プラスミドを保有する細菌の増殖を優先的に促進するであろうことが予期された。結果は、pBAD_hASNase1およびpBAD_gpASNase1の両方のBW2Δの増殖が、実際にはAsnの濃度(すなわち、よりよい増殖をもたらす増強されたAsnの濃度)に依存したことを示す。しかしながら、Asnの濃度毎に、pBAD_hASNase1とpBAD_gpASNase1のBW2Δの間に有意な増殖の差はなく、例として、0.2mMのAsnにおいて、低いK
mのgpASNase1酵素を発現するBW2Δ細菌は、高いK
mのhASNase1酵素を発現する細菌よりも有意に多いかまたは大きなコロニーを形成しなかった。要するに、このスクリーニングシステムは、それらのAsnのK
m値において異なるL−アスパラギナーゼ間を区別することについては好適ではないことが見出された。
【0074】
Aspの栄養素要求性に基づく、第2のスクリーニングシステムにおいて、BW5Δを同様に、pBAD、pBAD_hASNase1またはpBAD_gpASNase1を用いて形質転換した。形質転換された細胞を、増加する濃度のAsnを補充した完全M9培地中で増殖させた。pBAD_hASNase1およびpBAD_gpASNase1のBW5Δの増殖が、Asnの濃度に依存していることが見出された。興味深いことに、モルモット酵素が、基質(K
m=50μM)で飽和し、およびヒト酵素が、部分的にのみ飽和する(K
m=3,500μM)濃度を表す、2mMのAsnにおいて、hASNase1およびgpASNase1を形質転換されたBW5Δ株は、同様の増殖を示す。言い換えれば、この相対的に高いAsn濃度において、BW5Δ株を、低いK
mのL−アスパラギナーゼを発現するそれらの細菌と高いK
mの酵素を発現するそれらとの間を見分けるために使用することができない。対照的に、基質Asnのより低い濃度において、pBAD_gpASNase1のBW5Δのみが、増殖することが可能である。実際に、hASNase1のK
mよりも十分低いがgpASNase1のK
mより高いAsnの濃度である、0.2mMのAsnにおいて、pBAD_gpASNase1のBW5Δのコロニーが、発育した一方でpBAD_hASNase1のBW5Δは、増殖することができなかった。注目すべきことに、アラビノース(タンパク質発現のための誘導物質)が、0.0002%〜0.2%の範囲で使用されたときに、増殖における変化が認められなかったために、この増殖の差は、酵素の発現レベルとは無関係であることが見出された。まとめると、結果は、最少培地プレート上でhASNase1を発現するBW5ΔとgpASNase1を発現するBW5Δとの間で見られる増殖における差は、夫々の発現されたL−アスパラギナーゼのK
mを直接的に反映していることを示唆する。
【0075】
実験のこの最初のセットからの結論は、窒素を供給するL−アスパラギナーゼ反応に基づく(BW2Δ株を使用する)スクリーニングが、高K
m酵素と低K
m酵素との間を十分に識別はしない一方で、アミノ酸Aspを供給するL−アスパラギナーゼ反応に基づく(BW5Δ株を使用する)スクリーニングは、Asnへの異なる親和性を有する酵素間を実際に区別する−低いAsnの濃度において、低いK
mのL−アスパラギナーゼを発現する細菌のみがコロニーを形成するということである。ゆえに、低いK
mを獲得しているヒトL−アスパラギナーゼバリアントを発見することを目的とした全てのさらなる選択作業を、BW5Δ大腸菌株を用いて実施した。
【0076】
DNAファミリーシャッフリング。DNAファミリーシャッフリングは、遺伝的多様性を生成するための代替の方法である。hASNase1およびgpASNase1のタンパク質配列は、夫々573および565アミノ酸を含有しており、アミノ酸レベルにおいて69.8%同一である(170アミノ酸異なっている)。hASNase1(配列番号35)およびgpASNase1(配列番号36)両方の合成コドン−最適化されたバージョンを取り扱うと、hASNase1およびgpASNase1をコードする遺伝子は、DNAレベルにおいて75%の同一性を示す。本明細書において言及されるように、hASNase1はAsnについて3.5mMのK
mを有し、一方でモルモット酵素のK
mは、50μMであると決定された(表3)。DNAシャッフリング方法を、モルモットの低いK
mを示すが、ヒト酵素と可能な限り同等の高さのアミノ酸相同性を有するキメラを得るために、2つのL―アスパラギナーゼを組み替えるために使用した。シャッフルされたフラグメントを、次いでpBADベクター内でクローニングした。その結果得られるキメラのライブラリーを、BW5Δ株を形質転換するために使用した。低いK
mを所有する突然変異体の存在を、上に記載の通りの選択プロトコルを使用して発見した。4つのクローン(#63、#64、#65および#SA)を、0.2mMのAsn濃度においてM9プレートから単離した。これらのクローンの配列分析は、主にN末端(すなわち、触媒)ドメインにおいて発生する組換え事象を伴うシャッフリングパターンを明らかにした;選択されたクローンのうちの1つ(#SA)は、触媒ドメインを超える未成熟な終止コドン(STOP)を導入する突然変異を保有した(
図1)。
【0077】
C末端ドメインのスワッピング。GpAに対する免疫原性を最小化するために、ヒトL−アスパラギナーゼと可能な限り同一であるが、モルモット/大腸菌II型酵素の低いK
m特性を有する酵素を探し求めた。シャッフリング実験は、モルモットL−アスパラギナーゼドメインとこれに続くヒトC末端ドメインを有するキメラが、gpASNase1の好ましい動力学的特性をいまだに残存しているが、増加されたヒト酵素との配列同一性を有していることを示唆した。
【0078】
結果的に、2つのキメラを生成した;h
N−g
Cと称されており、モルモットC末端ドメインに融合したヒトN末端ドメインを含むものが一つ、および、g
N−h
Cと称されており、ヒトC末端ドメインに融合したモルモットN末端ドメインを含むものが第二である(
図1、表3)。これらのキメラのin vitroの動力学的特徴付けは、h
N−g
CがhASNase1と同様の動力学的特性を示し、g
N−h
CがgpASNase1と同様の動力学的特性を示すという予測を検証した(表4)。
【0079】
この結果は、GpAのC末端ドメインが、L−アスパラギナーゼの触媒活性に影響を与えず、および最も重要なことにK
mに悪影響を及ばさないことを示す。gpASNase1の動力学的特性を有するが、hASNase1と最も高い配列相同性を有するクローンを同定することが目標であるために、#63、#64、#65および#SAの4つのクローンを、それらのシャッフルされたC末端ドメインとヒトC末端ドメインの正確な配列を置き換えることによって遺伝子操作した(
図1)。遺伝子操作されたクローン、すなわち63
N−h
C、64
N−h
C、65
N−h
CおよびSA
N−h
Cは、野生型hASNase1配列と夫々85.7%、91.1%、87.1%および91.6%の同一性を示した(表3および
図2A-2B)。
【表3】
【0080】
バリアントの触媒特性。63
N−h
C、64
N−h
C、65
N−h
CおよびSA
N−h
Cの詳細な動力学的特性を決定するために、これらの酵素をコードする遺伝子を、pET14b発現ベクター内にサブクローニングし、およびC41大腸菌細胞中で発現させた。精製されたクローンを、それらのL−アスパラギナーゼ活性について試験した(表4)。がん治療について承認されているL−アスパラギナーゼと比較するために、大腸菌L−アスパラギナーゼansBもまた含んだ。指向性進化法によって選択されhASNase1のC末端ドメインを保有している4つのクローンが、hASNase1と高い配列同一性(>85%)を示すが、マイクロモルの範囲のK
mを有するgpASNase1と同様の動力学的特性を示すことを観察した。クローン63
N−h
C(hASNase1の配列と85.7%の同一性)は、47μMにおいて最も低いK
mを示した。クローンSA
N−h
Cは、hASNase1と最も高い配列同一性(91.6%の同一性)を有したが、このクローンは、165μMという幾分か高いAsnのK
mを有した。これが血液Asn濃度に関係があるために、50μMのAsnにおける酵素の観察されたAsnの加水分解速度(k
obs@50μM)を比較した(Ollenschlaeger (1988) Eur. J. Clin. Invest. 18:512-6)。大腸菌ansBのk
obs@50μMは、41±0.3sec
−1であることが見出され、および野生型gpASNase1のそれは、20sec
−1であった。重要なことに、ヒト化クローンについてのk
obs@50μM値もまた、この範囲内であった、すなわちクローン63
N−h
C、64
N−h
C、65
N−h
CおよびSA
N−h
C、夫々について17sec
−1、10sec
−1、17sec
−1および6sec
−1であった。
【表4】
【0081】
ヒト化L−アスパラギナーゼクローンの細胞培養の評価。GpA酵素が、抗ALL活性を示すか否か決定するために、ヒトのT−ALL LOUCYおよびB−ALL SUP−B15細胞株を、増加する濃度のgpASNase1に露出させた。この分析の結果は、gpASNase1が、LOUCYおよびSUP−B15細胞株、夫々について0.00015IU/mlおよび0.00036IU/mlのIC
50を示すことを指し示した(表5)。とりわけ、これらのIC
50値は、大腸菌II型酵素のそれらに匹敵する。
【0082】
hASNase1およびgpASNase1のキメラを、それらの抗ALL効能についてもまた評価した。クローンg
N−h
C、63
N−hCおよび65
N−hCは、これらのクローンが最も低いAsnのK
m(夫々、35、47および74μM)を有しており、それによってgpASNase1のそれとほとんど同様の活性(50μM)を有すために、これらの実験のために選択された。65
N−hCの最も高いK
m値に起因して、このクローンは、他の酵素と比較して最も高いIC
50値を有したが、それでもなおT−ALLおよびB−ALL細胞の両方を殺傷するために極めて有効であった(mIU/mLの範囲におけるIC
50;表5)。クローンg
N−h
Cおよび63
N−h
Cは、gpASNase1と比較して、それらの細胞殺傷力において酷似していることを証明した。クローン63
N−h
Cについて、このクローンが、hASNase1へのパーセント同一性を69.8%から、gpASNase1において存在するような85.7%まで増加させたために、このことは特に注目に値する。
【表5】
【0083】
要約すると、この分析は、必要な低いK
m特性を有するGpAのヒト化バリアントを同定した。同定されたクローンのうちの2つである、63N−hCおよび65N−hCは、夫々hA−FLと85.7%および87.1%のアミノ酸配列同一性を共有したが、完全長GpAと同様のK
mを有した。これらのクローンは、完全長hASNase1と比べて、100倍-140倍増強された触媒効率を所有している。とりわけ、これらの高度なヒト様L−アスパラギナーゼは、それらのin vitroでのALL殺傷の潜在力を維持する。
【0084】
例3:構造ベースアプローチ(Structured-Based Approach)を介して産生されるヒト化GpAバリアント
DNAシャッフリングおよびドメインスワッピングの代替として、構造ベースアプローチが、GpA酵素をヒト化し、および同じものの免疫原性を低減するためにとられた。このアプローチのために、切断されたGpA369バリアント(配列番号5)を改変した。GpAの結晶構造を、検査し、酵素の表面のどの残基が、hASNase1における対応するアミノ酸に突然変異され得、およびその存在が、酵素の活性または安定性に有害ではないであろうかに関して予測がなされた。候補表面残基は、GpAの活性または安定性に対して影響を生じうる可能性に基づいて3群に分けられた(Group1、影響なし;Group2、おそらく影響なし;およびGroup3、影響のある可能性がある)(表6)。
【表6】
【0085】
Group1の突然変異全て、Group1および2の突然変異の組み合わせ、およびGroup1、2および3の突然変異の組み合わせを含有するGpAバリアントを調製した(表7)。GpAバリアントは、組み換えて発現され、および野生型の活性および安定性の100%を保持することが見出された。
【0086】
In vivoの安定性データは、GpA酵素に存在する表面に露出したループのうちの1つの潜在的な切断を示唆した。特に、データは、hASNase1に存在するようなループ1(loop1
hum、残基57〜62:SEDTLV(配列番号43))の配列を有するタンパク質と、GpAに存在するような配列(loop1
gp、残基57〜62:PDHALA(配列番号44))を有するタンパク質との間の異なる安定性を示唆した。結果的に、Group1、2および3の突然変異の組み合わせを含有するGpAバリアントを、さらにloop1
hum配列を含むために突然変異させた(表7)。さらに、Loop1GpAバリアントを、組み換えて発現させ、野生型の活性および安定性を100%保持することを見出した。
【表7】
【0087】
例4:ペグ化のための表面システイン残基の突然変異
ペグ化は、in vivo循環時間を増加させることが知られている。PEG分子は、マレイミドベースのペグ化化学によって目的のタンパク質のシステイン残基に容易に結びつき得る。GpA369およびヒト化GpA369バリアントは、5つの固有のシステイン残基、Cys79、Cys173、Cys198、Cys296およびCys299を含有する。結晶構造分析に基づき、Cys173およびCys296は埋まっており、よってペグ化の影響を受けないことが予測される。Cys299は、Cys198よりも近づきにくく、テトラマーの安定化に貢献していると考えられる。この部位におけるペグ化を避けるためにCys299をAlaまたはSerのいずれかに交換する試みは、不安定なタンパク質をもたらした。反対に、位置198におけるシステイン残基からアラニン(GpA369−C198A、配列番号51)、セリン(GpA369−C198S、配列番号52)またはバリン(GpA369−C198V、配列番号53)への突然変異は、参照GpA369酵素と比較して同等の安定性および活性のタンパク質を生じた。その上、今や単一の反応性の表面システイン(Cys79)のみを含有する、GpA369−C198A、GpA369−C198SおよびGpA369−C198Vタンパク質のマレイミド−ペグ化は、均一な産物をもたらした。
【0088】
ペグ化による生物製剤の保護の程度は、PEG剤の構造および複雑性に依存するが、多くのケースにおいて、単一部位のペグ化は、マクロ分子全体を覆うのに十分ではない。したがって、1〜5の表面システイン残基を含有する、追加のGpAバリアントを生成した。この点において、複数部位がペグ化された産物についてシステインに突然変異し得る残基の領域を同定するために、GpAの構造を分析した。有用な領域は、表面上になければならず、オリゴマー化の境界面から離れていなければならず(GpAは、テトラマーであるため、境界面に近くの残基をペグ化することは、酵素の活性に有害であり得る)、および外側を向く残基を含む。これらの基準を満たすGpAの領域を、表8中に列記した。
【表8】
【0089】
突然変異され得る可能な残基の中で(表8)、領域1からのE49、領域2からのK225、領域3からのQ257および領域4からのE340を、システインへの突然変異のための良好な候補として同定した。K225C、E340C、E49CおよびQ257C突然変異の1以上を含む、GpA369−C198およびGpA369(hum)−Group1+2+3−C198のバリアントを生成した(表9)。
【表9】
【0090】
表9に列記したバリアントのそれぞれを、組み換えて発現させ、精製して、mPEG−10K、mPEG−20KおよびmPEG−40K(表10)の1以上を用いてペグ化した。SDS−PAGE分析によって決定されるとき、ペグ化された酵素のサイズは、活性なシステインの数とともに増加した。例えば、マレイミド−PEG10Kを使用して、GpA369(hum)−C198Aは、ペグ化後により高い分子量で移動し(PEGによって供給された追加の10KDaに起因して)、およびGpA369(hum)−C198A+R52Cは、このバリアントが2つのPEG分子と反応することができるために、よりいっそう高い見かけの分子量で移動する(酵素に結びついた2つの10K分子によって供給された追加の合計20KDaのために)。注目すべきことに、GpA369−C198A−K225C−E340C−E49C−Q257C突然変異体を調製し、発現させ、精製し、mPEG−10Kを用いてペグ化した。しかしながら、mPEG−10Kを用いたこのバリアントのペグ化は、複数種類の産物をもたらす。シャペロン60KDaは、このタンパク質と1:1の比率で存在しており、GpA369−C198A−K225C−E340C−E49C−Q257C突然変異体が、十分にフォールディングされていなかったことを示唆する。
【表10-1】
【表10-2】
【0091】
さらにバリアントのペグ化を査定するために、種々のPEG:タンパク質の比率を使用した。この分析のために、2mg/mLのGpA369−C198Aを、2倍、10倍、および20倍超過のm−PEG10Kリニア(linear)と一緒に使用した。さらに、ペグ化反応が完了した後に5mMのベータ−メルカプトエタノールを添加すること、およびペグ化反応中に10mMまたは100mMのグリシンまたは10mMのアスパラギン酸などの添加剤を含むことの効果を決定するために分析を実施した。この分析は、GpA369バリアントの完全なペグ化を確実にするために、20:1のモル比のマレイミドPEG:タンパク質が、必要であることを指し示した。さらに、ベータ−メルカプトエタノールの添加は、均一な産物を提供することが見出された一方で、グリシンまたはアスパラギン酸は、ペグ化反応において除外されるべきであった。
【0092】
直鎖状のマレイミド−PEG10Kに加えて、ペグ化され、直鎖状のマレイミド−PEG20K、直線状のマレイミド−PEG40K 二分枝のマレイミド−PEG20K、四腕のマレイミド−PEG10K、およびY字型のマレイミド−PEG40Kを用いてGpA369バリアントをペグ化した。これらの種々の型のPEGのそれぞれを用いたペグ化を観察した。とりわけ、ペグ化されたバリアントは、GpA369の裸のバリアントと比較して、L−アスパラギナーゼ活性において著しい増加を示した(表10)。
【0093】
例5:ペグ化のための表面リシン残基の突然変異
多くの従来の生物学的製剤は、リシン残基上でペグ化されており、そこでリシン側鎖のイプシロンアミノ基がPEG分子と反応する。リシンは、タンパク質の表面に存在する共通のアミノ酸である。したがって、この戦略を使用するペグ化は、しばしばタンパク質に結びついたPEG分子の可変数を有する、均一性の低い産物をもたらす。
【0094】
均一性を増加させるために、別のリシン残基とごく接近しているGpAのリシン残基(resides)を、PEGと反応しないであろう残基と置き換えた。加えて、構造的完全性に悪影響を与える可能性のある残基、よってテトラマーL−アスパラギナーゼの酵素活性を、酵素全体の表面を完全に、および均等に保護するために、表面リシン残基と置き換えた。
【0095】
表11に列記された、この戦略を使用する突然変異を有する切断されたGpAバリアントは、本発明における使用に有用であると考えられた。
【表11】
【0096】
リシン残基を介した活性、安定性およびペグ化を示すために、GpA369(hum)−Group1+2+3−C198A−R54K+A91K+K223D+S311Kバリアントを生成し、組み換えて発現させて、精製し、および種々のPEG:タンパク質比を使用してペグ化した。この分析は、GpA369バリアントの完全ペグ化を確実にするために、20:1より大きなモル比のアミンPEG対タンパク質を必要とすることを示した。DTTおよびグリセロールなどの添加材は、ペグ化反応中に除外されるべきであることもまた観察された。メトキシPEGサクシニミジルカルボナート10K(mPEG−SC−10K)、mPEG−サクシニミジルカルボキシメチルエステル5K(mPEG−SCM−5K)およびmPEG−スクシンアミドサクシニミジルエステル5K(mPEG−SAS−5K)を含む、種々のサイズおよびリンカー型を試験した。とりわけ、いずれのペグ化産物も、裸のバージョンと比較して、L−アスパラギナーゼ活性における喪失を示さなかった(表12)。
【表12】
【0097】
例6:in vivo半減期を増加させるためのタグ
L−アスパラギナーゼの有効性は、薬物のin vivo半減期に関連する;半減期が長ければ長いほど、酵素は血液アスパラギンを加水分解するようにより長く作用する。結果的に、本明細書に開示のL−アスパラギナーゼバリアントのin vivo半減期を増加させるために、タグをL−アスパラギナーゼのN末端に融合させる。かかるタグは、ヒスチジンタグ、酵母SUMOタグ;ヒトSUMOタグ;SUMOタグが、ヒトにおいて存在する4つの相同SUMOドメイン(SUMO−1、SUMO−2、SUMO−3またはSUMO−4)の一つであり得るHis
6−ヒトSUMOタグ;およびアルブミン結合ペプチドタグを含み得る。各タグは、L−アスパラギナーゼ酵素の循環時間を増加させ得る。加えて、タグの組み合わせが使用され得る。特に、SA21およびSUMOタグを組み合わせて、さらに長期にわたる半減期を有するバリアントを得ることができる。
【0098】
ヒスチジンタグ。一連の6〜9個のヒスチジン残基を特定するDNA配列は、組み換えタンパク質の生産のためのベクターにおいて頻繁に使用される。結果は、そのN末端またはC末端に融合された6xHisまたはポリ−Hisタグを有する組み換えタンパク質の発現である。
【0099】
発現されたHisタグ化タンパク質は、精製および容易に検出され得、それによってタンパク質特異的抗体またはプローブなしで組み換えタンパク質を特異的に精製または検出する手段を提供する。キットはHisタグタンパク質について市販されている。
【0100】
SUMO改変。N末端融合パートナーとしてのSUMOは、著しく改善されたタンパク質安定性および可溶性に基づいて、原核および真核の発現系における機能的タンパク質の生産を増強することが見出されている。
【0101】
融合タンパク質の発現および精製に続いて、SUMOタグは、in vitroでエンドペプチダーゼ活性を介して特異的(SUMO)プロテアーゼによって切断されて、放出されたタンパク質パートナーの所望のN末端を生成することができる。SUMOタグ発現系は市販されている。いくつかの態様では、SUMOタグは、酵母SUMOタグ(例として、Smt3(配列番号66))である。他の態様では、SUMOタグは、ヒトSUMOタグ(例として、SUMO−1(配列番号67)、SUMO−2(配列番号68)、SUMO−3(配列番号69)またはSUMO−4(配列番号70))である。
【0102】
His−SUMO改変。ヒスチジン(例として、1x−6xHis)タグとSUMO改変を組み合わせることにより、効率的な精製、増加した発現および可溶性、ならびにL−アスパラギナーゼの増加した半減期が提供される。目的のタンパク質にHis−SUMO改変を提供するための発現系は市販されている。例として、CHAMPION pET SUMO protein expression system(Invitrogen)を参照されたい。
【0103】
アルブミン結合ドメイン。ファージディスプレイを使用して複数の種に由来する血清アルブミンへと結合する一連のペプチドが、同定された(Dennis, at al.(2002) J.Biol.Chem.277(38):35035-35043;US2016/0185874;およびUS2004/0001827)。これらのペプチドの1つである、SA21と呼ばれるものが、延長された血清の半減期を有することが見出された。例示のアルブミン結合ペプチドは、SA20(QRLIEDICLPRWGCLWEDDF;配列番号71)、SA21(RLIEDICLPRWGCLWEDD;配列番号72)、およびSA31(RLIEDICLPRWGCLW;配列番号73)を含むが、これらに限定されない。かかるドメインを本明細書に開示のL−アスパラギナーゼ酵素へと融合することにより、アルブミンとの非共有結合性会合を介しての薬物動態の改善が期待される。Dennis, et al.(2002) J.Biol.Chem.277(38):35035-35043;US2016/0185874;およびUS2004/0001827を参照されたい。
【0104】
例示の様々なタグを伴う切断されたGpAバリアントを、表13に提供する。
【表13-1】
【表13-2】
【0105】
例7:TRAIL−GpA融合タンパク質
TRAIL(リガンドを含むTNF関連アポトーシス)は、アポトーシスによって細胞死を誘導するタンパク質である。結果的に、TRAIL−アスパラギナーゼ融合タンパク質は、これら2つのタンパク質の活性を組み合わせるように作製される。この融合タンパク質を使用して、L−アスパラギナーゼの構成要素は、細胞がアポトーシスを受けるようシグナルを送り、およびTRAILの構成要素は、細胞死を誘導する。実例として、3つのタンデムTRAILの可溶性ドメイン(TRAIL
トリマー)を、切断され、ヒト化された、GpA369(hum)−Group1+2+3(配列番号47)またはGpA369(hum)−Group1+2+3−loop1
hum(配列番号50)などのモルモットL−アスパラギナーゼとインフレームで融合させて、TRAIL
トリマー−GpAまたはGpA−TRAIL
トリマー融合タンパク質を生成する。
【0106】
融合タンパク質の有効性は、0.0001から2.5IU/mlまでの範囲に及ぶ最終濃度の融合タンパク質の存在下でヒト急性骨髄性白血病MV4;11細胞を培養することにより査定される。5%CO
2を含有する加湿空気中で37℃で4日間プレートをインキュベートした後に、Alamar Blue(Invitrogen)を、10%v/vの最終濃度まで添加し、プレートを追加で4時間インキュベートして、これに続いて蛍光シグナルを読み取る。白血病細胞の生存率は、L−アスパラギナーゼの存在下の蛍光カウントのパーセンテージ対DPBS対照におけるそれとして計算される。この分析は、活性融合タンパク質が、切断され、ヒト化されたモルモットL−アスパラギナーゼ単独と比較して、著しく良好なMV4;11細胞株に対する殺傷活性を持つことを示すだろう。
【0107】
白血病細胞を殺傷することについて融合タンパク質のin vivoでの有効性は、4〜10匹の6週齢の非肥満糖尿病/重症複合免疫不全γ(NSG)マウス(The Jackson Laboratory)に5x10
6ルシフェラーゼ陽性MV4;11細胞を含有するDPBS150μLを注射することによって査定される。一定の時点で、生物発光を、IVIS Lumina IIイメージングシステム(PerkinElmer)を使用して測定する。生着後(0日)に、マウスに1週間毎日15 IU/マウスの融合タンパク質を腹腔内注射で処置する。生物発光シグナルを、0日および7日に測定する。この分析の結果は、融合タンパク質によるMV4;11細胞の著しい殺傷効果を示すだろう。
【0108】
膵臓および卵巣がんなどの固形がんに対する融合タンパク質の有効性もまた決定される。Panc−1およびMiaPaca2などの膵臓がん細胞株ならびにOVCAR3およびOVCAR4などの卵巣がん細胞株を、0.0001から2.5IU/mlまでの範囲に及ぶ最終濃度の融合タンパク質またはGpA単独で、または融合タンパク質について使用されるそれと対応する濃度のTRAIL
トリマーで処置する。5%CO
2を含有する加湿空気中で37℃で4日間プレートをインキュベートした後に、Alamar Blue(Invitrogen)を、10%v/vの最終濃度まで添加し、プレートを追加で4時間インキュベートして、これに続いて蛍光シグナルを読み取る。がん細胞生存率は、融合タンパク質の存在下の蛍光カウントのパーセンテージ対DPBS対照中におけるそれとして計算される。この分析は、活性融合タンパク質が、TRAIL
トリマーまたはGpA単独と比較して、著しく良好ながん細胞株に対する殺傷活性を持つことを示すだろう。