(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-530318(P2020-530318A)
(43)【公表日】2020年10月22日
(54)【発明の名称】天然抗菌薬徐放機能付き医療用縫合糸及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61L 17/00 20060101AFI20200925BHJP
A61L 17/08 20060101ALI20200925BHJP
A61L 17/12 20060101ALI20200925BHJP
A61L 17/14 20060101ALI20200925BHJP
A61L 17/10 20060101ALI20200925BHJP
【FI】
A61L17/00 100
A61L17/08
A61L17/12
A61L17/14 100
A61L17/10 100
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2020-500730(P2020-500730)
(86)(22)【出願日】2018年8月21日
(85)【翻訳文提出日】2020年1月8日
(86)【国際出願番号】CN2018101433
(87)【国際公開番号】WO2020015046
(87)【国際公開日】20200123
(31)【優先権主張番号】201810803473.3
(32)【優先日】2018年7月20日
(33)【優先権主張国】CN
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】518154376
【氏名又は名称】南通紡織絲綢産業技術研究院
(71)【出願人】
【識別番号】513210242
【氏名又は名称】蘇州大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】李 剛
(72)【発明者】
【氏名】賀 超恒
(72)【発明者】
【氏名】王 暁沁
【テーマコード(参考)】
4C081
【Fターム(参考)】
4C081AC02
4C081BA16
4C081BB06
4C081CA171
4C081CC01
4C081CD111
4C081CE01
4C081DA02
4C081DA03
4C081EA03
4C081EA06
4C081EA12
(57)【要約】
本発明は、天然抗菌薬徐放機能付き医療用縫合糸及びその製造方法に係り、複合構造製織プロセスを使用し、被覆担体としてシルクフィブロインを使用し、自然な抗菌薬を担持し、耐久性のある抗菌性能を備えた抗菌薬縫合糸が得られ、この縫合材料は優れた機械的特性を持ち、同時に長時間作用型の徐放性薬物の効果があり、細菌を抑制または殺すことができ、手術部位の感染を減らすことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗菌薬溶液で直接被覆され、2本以上の中空フィラメント糸で編んでなるコア糸である内コア層と、前記内コア層の外部を被覆し、シルクフィブロインに抗菌薬溶液被覆を担持した多層複合被覆であるカバー層と、を備えることを特徴とする天然抗菌薬の徐放機能付き医療用縫合糸である。
【請求項2】
天然抗菌薬の徐放機能付き医療用縫合糸の製造方法であり、
抗菌薬溶液である第1の溶液、シルクフィブロイン/抗菌薬溶液である第2の溶液、及び/またはシルクフィブロイン/抗菌薬/グリセリン溶液である第3の溶液を調製する工程(1)と、
円形、三角形または多角形の断面を持つ、ポリジオキサン、ポリ乳酸‐グリコール酸、ポリ−L−乳酸コポリマーから選ばれた任意の1種の材料である中空フィラメント糸を選択し、中空糸フィラメント糸を前記第2の溶液又は第3の溶液に5〜10分間浸し、60±2°Cの真空オーブンで30〜60分間ヒートセットし、上記の操作を3回繰り返して、被覆を有する中空フィラメント糸を取得する中空フィラメント糸被覆の製造工程(2)と、
2本以上の被覆された中空フィラメント糸を選択し、フィラメントを並列配置または第一織りプロセスによって内層コア糸層を製造する内コア層の製造工程(3)と、
第二織りプロセスによって、脱ガムシルク、ポリ乳酸‐グリコール酸、及びポリ−L−乳酸コポリマーのいずれか1つから選ばれる縫合糸を製造するカバー層の縫合糸の製造工程(4)と、
縫合糸を前記第1の溶液に15〜30分間浸し、温度を60±2°C、被覆を3〜5回、各被覆操作の終わりに脱イオン水で濯ぎ、乾燥させて、室温で前記第2の溶液又は第3の溶液に前記縫合糸を30〜60分間浸した後、前記縫合糸を脱イオン水で濯ぎ、60±2℃の真空オーブンで30〜60分間ヒートセットして、天然抗菌薬の徐放機能付き医療用縫合糸を得るカバー層の縫合糸被覆工程(5)と、
が含まれることを特徴とする天然抗菌薬の徐放機能付き医療用縫合糸の製造方法。
【請求項3】
工程(1)の前記第1の溶液は、水溶性抗菌薬粉末を脱イオン水に溶解して、抗菌薬溶液を得ることにより調製されることを特徴とする請求項2に記載の天然抗菌薬の徐放機能付き医療用縫合糸の製造方法。
【請求項4】
工程(1)の前記第2の溶液は、水溶性抗菌薬粉末を脱イオン水に溶解し、抗菌薬溶液を得て、前記シルクフィブロインのシルクフィブロイン溶液の濃度を脱イオン水で、5〜10%(w/v)の濃度に希釈し、前記抗菌薬溶液と前記シルクフィブロイン溶液を均一に混合して、シルクフィブロイン/抗菌薬溶液を得ることにより、調製されることを特徴とする請求項3に記載の天然抗菌薬の徐放機能付き医療用縫合糸の製造方法。
【請求項5】
工程(1)の前記第3の溶液は、水溶性抗菌薬粉末を脱イオン水に溶解し、抗菌薬溶液を得て、前記シルクフィブロイン溶液の濃度を脱イオン水で、5〜10%(w/v)の濃度に希釈し、グリセリンを前記シルクフィブロイン溶液に加え、グリセロールのシルクフィブロイン溶液に対する質量比は30〜50%であり、均一に混合した後、シルクフィブロイン・グリセロール混合溶液を得て、前記抗菌薬溶液と前記シルクフィブロイン・グリセロール混合液を均一に混合して、シルクフィブロイン/抗菌薬/グリセリン溶液を得ることにより、調製されることを特徴とする請求項4に記載の天然抗菌薬の徐放機能付き医療用縫合糸の製造方法。
【請求項6】
さらに、工程(3)の前記第一織りプロセスにおいて、8〜32スピンドル縦編機を使用して、ダイヤモンド織りを選択し、上織り角度は45〜60°で、大歯車と小歯車のギア比は80〜120:18〜60であり、回転速度は5〜100rpmに設定されることを特徴とする請求項2に記載の天然抗菌薬の徐放機能付き医療用縫合糸の製造方法。
【請求項7】
工程(4)の第二織りプロセスにおいて、8〜32スピンドル縦編機を使用して、ダイヤモンド織り、通常織り、及びヘグリス織りという3つの織物構造のいずれか1つを選択し、上織り角度は45〜60°、大歯車と小歯車のギア比は80〜120:18〜60であり、回転速度は5〜100rpmに設定されることを特徴とする請求項2に記載の天然抗菌薬の徐放機能付き医療用縫合糸の製造方法。
【請求項8】
工程(5)において、前記真空オーブン内でヒートセットした後、前記縫合糸をさらに50〜70℃の処理温度で、5〜10時間蒸気処理することを特徴とする請求項2に記載の天然抗菌薬の徐放機能付き医療用縫合糸の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物医学材料の技術分野に係り、更に詳細には、天然抗菌薬徐放機能付き医療用縫合糸及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
外科的移植類生物医療用紡績品としては、医療用縫合糸が知られており、創傷の縫合、組織の接続、小血管の結紮(Small vessel Ligation)など、さまざまな外科手術に広く使用されている。また、織物構造を有する縫合糸は、ギャップ内及び単繊維間に、細菌を容易に吸収・隠すため、手術部位での感染の発生率が高くなる。手術部位での感染は、創傷治癒に影響を与え、患者を苦しめ、入院期間を延ばすだけでなく、患者と社会に大きな経済的負担をかけ、術後死亡の重要な原因にさえなる。縫合糸は、細菌が手術切開部に入る通路であり、縫合糸に抗菌性があれば、細菌の吸着及び成長を防ぎ、細菌を特定の範囲内にブロックし、傷口との接触を防ぎ、発生率を減らすことができる。したがって、優れた抗菌効果と長時間作用型徐放機能を持つ抗菌医療縫合糸を開発する必要がある。
【0003】
カイコシルクは、カイコが合成・分泌する天然のタンパク質で、さまざまな供給源がある。シルクフィブロイン(Silk fibroin)はシルクの主成分であり、シルクの質量の約70%〜80%を占め、残りの主成分はセリシン(Sericin)と炭水化物などである。シルクフィブロインは、相溶性に優れ、人体に吸収される20種類のアミノ酸で構成されており、最終的な分解産物は、細胞に容易に吸収または飲み込まれ、免疫反応(immune reaction)を引き起こさないアミノ酸または小さなナノ・オリゴペプチド・コラーゲン(Nano Oligopeptide Collagen,略称OCO)である。中国の医療分野では、脱ガムされた(degum)シルクが何十年もの間、商業的な外科用縫合糸として使用されてきた。米国では、天然シルクの脱ガムによる再生シルクフィブロインは、人体内に使用される生物医学材料として、アメリカ食品医薬品局によって承認された。シルクフィブロイン材料は、薬物の徐放性担体材料として使用できることが数多くの文献で示されている。例えば、シルクフィブロインを用いて表面被覆にバンコマイシン/ポリカプロラクトンを担持することにより、表面被覆を行い、バンコマイシン放出を効果的に延長し、バンコマイシンの感染防御効果を改善できる。また、例えば、エタノールを添加して修飾する方法により、天然の抗酸化剤であるクルクミンを担持するシルクフィブロイン複合材料を調製し、これにより、薬物を徐放でき、しかも放出されたクルクミンは依然として優れた抗酸化活性を維持する。また、シルクフィブロインにナノ銀を担持して、整形外科用(Orthopedics)チタンインプラントに対して被覆を行い、その結果により、ナノ銀/シルクフィブロイン・ペイントは黄色ブドウ球菌の接着と増殖を阻害し、細胞の接着及び成長を促進する効果を有することが示された。それと共に、他の生体材料と比較して、シルクフィブロインは優れた担体材料である。
【0004】
現在、抗生物質と合成薬剤は、例えば、被覆薬であるトリクロサン、クロルヘキシジン、テトラサイクリン塩酸塩などの縫合糸に広く使用されており、縫合糸による感染症の治療に重要な役割を果たしている。例えば、ポリカプロラクトン(polycaprolactone,PCL)に、抗菌薬であるテトラサイクリン塩酸塩を担持して抗菌被覆溶液を調製して、織物構造の糸を被覆することにより、抗菌性と徐放性に優れた医療用縫合糸を得る(例えば、中国特許公開番号CN204275113U)。しかし、抗生物質の乱用を避けて細菌の薬剤耐性を低下させるために、抗生物質系の使用は国際的に厳格に規制されている。銀イオンを含む抗菌剤被覆縫合糸(例えば、中国特許公開番号CN1940168A及び公開番号CN102726448A)において、調製プロセスにおける銀イオン抗菌剤の不安定性により、酸化反応が発生しやすく、抗菌性能が低下し、これは人体の健康に良くない。漢方薬または漢方薬・西洋薬抗菌剤被覆縫合糸(例えば、中国特許公開番号CN101584878A及び公開番号CN101584595A)、アンドログラフィス、ドクダミナトリウム、シリコーンオイル、ヨウ化メチル‐P‐トルエン二酸化硫黄などの漢方薬と西洋薬の混合液で縫合糸を浸すが、このプロセスで製造された抗菌性医療用縫合糸は、薬物担持量が少なく、抗菌薬の放出時間が短く、薬物担持効率は制御し難く、生産の工業化に向かず、薬物の担持方法とプロセスをさらに改善する必要がある。
【0005】
上記の問題に鑑み、本発明は、天然抗菌薬徐放機能付き医療用縫合糸及びその製造方法を提案する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、天然抗菌薬徐放機能付き医療用縫合糸及びその製造方法を提供して、上記の問題を解決することを目的とする。
【0007】
本発明の技術的発明は、
抗菌薬溶液で直接被覆され、2本以上の中空フィラメント糸で編んでなるコア糸である内コア層と、前記内コア層の外部を被覆し、シルクフィブロインに抗菌薬溶液被覆を担持した多層複合被覆であるカバー層と、を備える天然抗菌薬の徐放機能付き医療用縫合糸である。
【0008】
本発明の別の技術的発明は、
天然抗菌薬の徐放機能付き医療用縫合糸の製造方法であり、次の工程が含まれる。
【0009】
(1)抗菌薬溶液である第1の溶液、シルクフィブロイン/抗菌薬溶液である第2の溶液、及び/またはシルクフィブロイン/抗菌薬/グリセリン溶液である第3の溶液を調製する。
(2)中空フィラメント糸被覆の製造:円形、三角形または多角形の断面を持つ、ポリジオキサン、ポリ乳酸−グリコール酸、ポリ−L−乳酸(PLLA)コポリマーから選ばれた任意の1種の材料である中空フィラメント糸を選択し、中空糸フィラメント糸を前記第2の溶液又は第3の溶液に5〜10分間浸し、60±2°Cの真空オーブンで30〜60分間ヒートセットし、上記の操作を3回繰り返して、被覆を有する中空フィラメント糸を取得する。
(3)内コア層の製造:2本以上の被覆された中空フィラメント糸を選択し、フィラメントを並列配置または第一織りプロセスによって内層コア糸層を製造する。
(4)カバー層の縫合糸の製造:第二織りプロセスによって、脱ガムシルク、ポリ乳酸−グリコール酸、及びポリ−L−乳酸コポリマーのいずれか1つから選ばれる縫合糸を製造する。
(5)カバー層の縫合糸被覆:縫合糸を前記第1の溶液に15〜30分間浸し、温度を60±2°C、被覆を3〜5回、各被覆操作の終わりに脱イオン水で濯ぎ、乾燥させて、室温で前記第2の溶液又は第3の溶液に前記縫合糸を30〜60分間浸した後、前記縫合糸を脱イオン水で濯ぎ、60±2℃の真空オーブンで30〜60分間ヒートセットして、天然抗菌薬の徐放機能付き医療用縫合糸を得る。
【0010】
さらに、工程(1)の前に、シルクフィブロイン溶液を調製することをさらに含む。即ち、カイコシルクを沸騰Na
2CO
3水溶液中で撹拌して脱ガムし、その後、脱イオン水で複数回洗浄することにより、シルクフィブロイン糸を得て、前記シルクフィブロイン糸を乾燥させ、前記シルクフィブロイン糸をLiBr溶液に溶解し、加熱して溶解することにより、シルクフィブロイン出発溶液を得て、前記シルクフィブロイン出発溶液を透析バッグに注ぎ、不純物を脱イオン水中で遠心分離によって除去し、最後に、シルクフィブロイン溶液が得られ、蒸発計量法によって、前記シルクフィブロイン溶液の質量分率を測定し、冷蔵して使用に備える。
【0011】
さらに、工程(1)の前記第1の溶液は、水溶性抗菌薬粉末を脱イオン水に溶解して、抗菌薬溶液を得ることにより調製される。
【0012】
さらに、工程(1)の前記第2の溶液は、水溶性抗菌薬粉末を脱イオン水に溶解し、抗菌薬溶液を得て、前記シルクフィブロイン溶液の濃度を脱イオン水で、5〜10%(w/v)の濃度に希釈し、前記抗菌薬溶液と前記シルクフィブロイン溶液を均一に混合して、シルクフィブロイン/抗菌薬溶液を得ることにより調製される。
【0013】
さらに、工程(1)の前記第3の溶液は、水溶性抗菌薬粉末を脱イオン水に溶解し、抗菌薬溶液を得て、前記シルクフィブロイン溶液の濃度を脱イオン水で、5〜10%(w/v)の濃度に希釈し、グリセリンを前記シルクフィブロイン溶液に加え、グリセロールのシルクフィブロイン溶液に対する質量比は30〜50%であり、均一に混合した後、シルクフィブロイン・グリセロール混合溶液を得る。前記抗菌薬溶液と前記シルクフィブロイン・グリセロール混合液を均一に混合して、シルクフィブロイン/抗菌薬/グリセリン溶液を得ることにより調製される。
【0014】
さらに、工程(3)の前記第一織りプロセスにおいて、8〜32スピンドル縦編機を使用して、ダイヤモンド織りを選択し、上織り角度は45〜60°で、大歯車と小歯車のギア比は80〜120:18〜60であり、回転速度は5〜100rpmに設定される。
【0015】
さらに、工程(4)の第二織りプロセスにおいて、8〜32スピンドル縦編機を使用して、ダイヤモンド織り、通常織り、及びヘグリス織りという3つの織物構造のいずれか1つを選択し、上織り角度は45〜60°、大歯車と小歯車のギア比は80〜120:18〜60であり、回転速度は5〜100rpmに設定される。
【0016】
さらに、工程(5)において、前記真空オーブン内でヒートセットした後、前記縫合糸をさらに50〜70℃の処理温度で、5〜10時間蒸気処理する。
【0017】
本発明は、天然抗菌薬徐放機能付き医療用縫合糸及びその製造方法を提供する。その利点は下記の通りである。
(1)提供された抗菌性縫合糸は、手術縫合部位での感染を回避し、手術創感染による患者の痛み、入院期間の長期化と経済的負担を軽減することができる。
(2)前記抗菌成分は、優れた抗菌特性、低毒性、環境保護、及び人体に対する高い安全性を備えた天然の抗菌薬である。
(3)合成抗生物質系の使用を削減及び回避し、それによって耐性菌の生成及びその分解生成物による汚染を低減する。
(4)前記担体材料は良好な生体適合性を持ち、安全で、毒性がなく、刺激がなく、人体に直接吸収される。
(5)製造された縫合糸は、薬物の放出を効果的に遅らせることができ、それにより継続的な滅菌または抗菌効果を達成すると共に、良好な生体適合性と機械的特性を有する。
(6)提供されたシルクフィブロイン薬物含有抗菌性医療縫合糸は、手術部位感染を治療するための新型生物医学紡績材料である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明の実施形態の発明をより明確に説明するために、実施形態の説明に使用される図面を以下に簡単に紹介する。当然ながら、以下の説明における図面は、本発明のいくつかの実施形態に過ぎず、当業者にとっては、知的な働きを費やさない前提に、これらの図面に従って他の図面を得ることができる。
【
図1】天然の抗菌薬徐放機能付き医療用縫合糸と被覆されていない縫合糸の表面形態の比較図であり、そのうち、a及びcは被覆されていない縫合糸であり、b及びdはシルクフィブロイン/ベルベリン抗菌溶液被覆の縫合糸である。
【
図2】本発明による天然抗菌剤の持続放出機能を有する医療用縫合糸が、異なる製造方式で得られたシルクフィブロイン二次構造の赤外分光法(FT-IR)分析チャートであり、ここで、aは未処理シルクフィブロインであり、bはシルクフィブロイン/ベルベリンであり、cはグリセリン修飾シルクフィブロイン/ベルベリンであり、dは蒸気で処理されたシルクフィブロイン/ベルベリンである。
【
図3】本発明による天然抗菌薬の持続放出機能を備えた医療用縫合糸を製造する方法の実施例1における抗菌縫合糸の薬物徐放結果を示し、aは純粋な薬物浸漬を伴う縫合糸であり、bは実施例1で調製された複合プロセス被覆縫合糸であり、cは実施例1で調製された複合プロセス被覆縫合糸である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の上記の目的、特徴、及び利点をより分かりやすくするために、具体的な実施形態及び図面を組み合わせて、本発明を以下でさらに詳細に説明する。
【0020】
本発明は、天然抗菌剤の徐放機能を備えた医療用縫合糸を提供するものであり、内層とカバー層の2層構造を含み、内層は抗菌剤溶液で直接被覆された織物構造の中空フィラメント糸である内層コア糸であり、カバー層は、シルクフィブロインを介して抗菌薬を運ぶ多層複合被覆である。創傷が縫合糸で縫合されると、この層は薬物を効果的に放出することができるため、縫合糸には抗菌効果がある。
【0021】
内層は2本以上の中空フィラメント糸で織られており、選択される材料はポリジオキサノン(Polydioxanone,PDO)、ポリ乳酸−コ−グリコール酸(Poly(lactic−co−glycolicacid),PLGA)、ポリ−L−乳酸(Poly−L−lactide,PLLA)コポリマーなどである。前記内層織りコア糸は、優れた破断強度と破断伸び率を有しており、糸織り、手術及びリハビリテーション中に誤ってファイバが破損するのを防ぐことができる。
【0022】
抗菌薬溶液の調製に選択される抗菌薬は、ベルベリン、クルクミン、キトサン、キチン、アロエ、コガネバナ又はスイカズラなどの優れた水溶性を必要とする、優れた臨床効果を持つ天然の抗菌薬である。
【0023】
上記天然の抗菌薬徐放機能付き医療用縫合糸の製造方法には、次の工程が含まれる。
【0024】
(一)シルクフィブロイン溶液の調製
30gのカイコシルク30gを秤量して、それを12Lの沸騰Na
2CO
3(0.02M)水溶液で30分間脱ガムし、10分ごとにガラス棒でかき混ぜて脱ガムを徹底し、脱イオン水で数回濯ぎ、洗浄されたシルクフィブロイン糸をヒュームフード内で一晩、風乾させ、乾燥後のカイコのシルクフィブロイン25gを計量し、100mLのLiBr(9.3M)溶液に溶解し、完全に溶解するために、期間中は1時間ごとにわずかに振りながら、60°Cのオーブンで4時間溶解する。溶液を取り出し(カットオフ分子量3500)、透析バッグに注ぎ、脱イオン水で36時間透析し、4時間ごとに水を交換する。透析された溶液を、毎回20分間、9000r/分の高速遠心分離機で2回遠心分離して、不純物を除去し、最終的にシルクフィブロイン溶液を得て、蒸発計量法によって、シルクフィブロイン溶液の質量分率を測定し、4℃の冷蔵庫に入れて使用に備える。
【0025】
(二)抗菌被覆液の調製
抗菌被覆液は、抗菌薬溶液、シルクフィブロイン/抗菌薬溶液、シルクフィブロイン/抗菌薬/グリセリン液の3種類に分けられる。
【0026】
前記抗菌薬溶液:抗菌薬粉末の適切な量を正確に秤量し、所定の比率に従って脱イオン水に溶解する。
【0027】
前記シルクフィブロイン/抗菌薬溶液:
適切な量の抗菌薬粉末を正確に秤量し、所定の比率に従って、脱イオン水に溶解し、脱イオン水でシルクフィブロイン溶液の濃度を5〜10%(w/v)に希釈し、抗菌薬溶液をシルクフィブロイン溶液と均一に混合する。
【0028】
前記シルクフィブロイン/抗菌薬/グリセリン溶液:
適切な量の抗菌薬粉末を正確に秤量し、所定の比率に従って、脱イオン水に溶解し、脱イオン水でシルクフィブロイン溶液の濃度を5〜10%(w/v)に希釈する。シルクフィブロイン溶液にグリセリンを添加し、シルクフィブロイン溶液の質量比に対するグリセロールの質量比は30〜50%である。混合物が均一に混合された後、抗菌薬溶液とシルクフィブロイン・グリセロール混合溶液が均一に混合される。
【0029】
(三)医療用縫合糸の内層コア糸の製造
フィラメントを平行に配列する方法を使用して、前記縫合糸内層の2本以上の中空フィラメント糸で織られており、選択される材料はポリジオキサノン(Polydioxanone,PDO)、ポリ乳酸−コ−グリコール酸(Poly(lactic−co−glycolicacid),PLGA)、ポリ−L−乳酸(Poly−L−lactide,PLLA)コポリマーなどである。使用された中空フィラメント糸の断面は円形であり、中空糸フィラメントを抗菌被覆溶液(シルクフィブロイン/抗菌薬溶液及びシルクフィブロイン/抗菌薬/グリセリン溶液)に5〜10分間浸漬し、60±2℃の真空オーブンで30〜60分間ヒートセットして、上記の操作を3回繰り返し、該中空糸フィラメントの中空度は18〜36%であり、フィラメント糸の密度は100〜200dtexである。または、製織プロセスを使用して内層コア糸を製造し、8〜32スピンドル縦編機を使用して、ダイヤモンド織り、通常織り、及びヘグリス織りという3つの織物構造のいずれか1つを選択し、上織り角度は45〜60°、(大歯車と小歯車の)ギア比:大歯車(80〜120):小歯車(18〜60)であり、回転速度は5〜100rpmに設定される。
【0030】
(四)製織法で縫合糸の外層を製造し、選択された材料は脱ガムシルク、ポリ乳酸−コ−グリコール酸(Poly(lactic−co−glycolicacid),PLGA)、ポリ−L−乳酸(Poly−L−lactide,PLLA)コポリマーなどである。製織プロセス8〜32スピンドル縦編機を使用して、ダイヤモンド織り(1/1織り込む)、通常織り(2/2織り込む)、ヘグリス(3/3織り込む)という3つの織物構造のいずれか1つを選択し、上織り角度は45〜60°、大歯車と小歯車のギア比は80〜120:18〜60であり、回転速度は5〜100rpmに設定される。
【0031】
(五)製造した縫合糸の外層を抗菌薬溶液で直接被覆し、浸漬時間を15〜30分間、温度を60±2°C、被覆を3〜5回行い、各被覆操作の終わりに脱イオン水で濯ぎ、乾燥させて、その後、シルクフィブロインに抗菌薬を担持する多層複合被覆を行う。被覆には、(1)シルクフィブロイン/抗菌薬溶液の被覆、(2)シルクフィブロイン/抗菌薬/グリセリン溶液の被覆の2つの方法がある。被覆パラメーターは以下の通りである。室温で30〜60分間浸漬し、被覆後に縫合糸を脱イオン水で濯ぎ60±2℃の真空オーブンで30〜60分間ヒートセットする。
【0032】
上記のプロセスでは、外層に3つの工程が必要である。まず、織り、次に薬溶液で直接被覆し、最後に薬物担持被覆を行い、薬物層の役割は、縫合糸における薬物の薬物担持率と薬物放出性能を高め、縫合糸に優れた抗菌効果を付与することである。
【0033】
図1を参照されたい。
図1は、天然抗菌薬徐放機能付き医療用縫合糸と被覆されていない縫合糸との表面形態の比較である。そのうち、aとcが被覆されていない縫合糸であり、b及びdは、シルクフィブロイン/ベルベリン抗菌溶液被覆の縫合糸である。
図1に示すように、被覆後、縫合糸の表面はフィルムで覆われており、薬物放出を遅らせる効果がある。他方、シルクフィブロインに良好な柔らかさ、滑らかさ、低い摩擦係数、及び縫合糸に対する良好な弾性を付与する。
【0034】
本発明の前述の目的、特徴、及び利点をより理解しやすくするために、本発明の技術発明を、添付の図面及び実施形態を参照して、以下にさらに説明する。しかし、本発明は、示した実施形態に限らず、本発明の特許請求の範囲内の他の周知の変更も含む。
【0035】
まず、本明細書で言及される「一実施形態」または「実施形態」は、本発明の少なくとも1つの実現方式に含む特定の特徴、構造、または特性を指す。本明細書の様々な箇所における「一実施形態において」は、同じ実施形態を指すものではなく、独立または選択的にほかの実施例と相容れない実施形態でもない。
【0036】
次に、本発明は、構造概略図などを使用して詳細に説明する。本発明の実施形態の詳細な説明では、説明の便宜上、概略図は普通の縮尺に従って部分的に拡大されず、しかも、前記概略図は単なる実例であり、本発明に記載の保護範囲を限定すべきではない。さらに、実際の制作には、長さ、幅、深さの3次元空間を含める必要がある。
【0037】
実施例1
本実施形態は、天然抗菌薬徐放機能付き医療用縫合糸の製造方法を示し、天然抗菌薬はベルベリンであり、複合構造縫合糸の内(コア)層の抗菌被覆の処方は、ベルベリンに対するシルクフィブロインの質量比は10:1で、ベルベリン溶液の濃度は3〜6mg/mL、シルクフィブロイン溶液の濃度は5〜10%(w/v)である。複合構造縫合糸の外層には、2種類の抗菌被覆処方がある。(1)直接薬剤被覆、ベルベリン溶液の濃度は3〜6mg/mLである。(2)シルクフィブロインとベルベリンの質量比は10:1で、ベルベリン溶液の濃度は3〜6mg/mLで、シルクフィブロイン溶液の濃度は5〜10%(w/v)である。
【0038】
フィラメントを平行配列して縫合糸内(コア)層を製造し、縫合糸内コア層は、断面が円形、三角形、または多角形である2本以上の中空フィラメント糸を使用し、中空糸フィラメントを抗菌被覆溶液(フィリン/ベルベリン)に5〜10分間浸漬され、その後室温で行われ、60±2℃の真空オーブンに30〜60分間置き、上記の操作を3回繰り返し、最後に内層コア糸に対して蒸気処理を5〜10時間行い、処理温度は50〜70°Cである。該中空糸フィラメントの中空度は18〜36%であり、フィラメント糸の密度は100〜200dtexであり、原材料はポリグリコール酸(PGA)である。本実施形態で得られる中空糸フィラメント製織糸は、400N/mm
2を超える引張強度、600MPaを超える破断強度、90°Cを超える溶融温度、及び40%未満の破断点伸びを有する。
【0039】
製織法により縫合糸の外層を製造し、本実施形態では、製織プロセスは8〜32スピンドル縦編機を使用して、それぞれダイヤモンド織り(1/1織り込む)を採用し、上織り角度は45〜60°、(大歯車と小歯車の)ギア比:大歯車(80〜120):小歯車(18〜60)であり、回転速度は5〜100rpmに設定される。原材料は脱ガムされたシルクである。抗菌被覆溶液(ベルベリン溶液)の浸漬時間を15〜30分間、温度を60±2°C、被覆を3〜5回行い、最後に、シルクフィブロイン/ベルベリン混合溶液の被覆を行い、被覆パラメーターは下記の通りである。室温で30〜60分間浸漬し、被覆後、縫合糸を脱イオン水で濯ぎ、60±2℃の真空オーブンで30〜60分間ヒートセットする。最後に、蒸気で縫合糸を50〜70°Cの温度下で5〜10時間処理する。
【0040】
実施例2
本実施例は天然抗菌薬徐放機能付き医療用縫合糸及びその製造方法を示し、天然抗菌薬はキチンであり、複合構造縫合糸の内層コア糸被覆の処方はシルクフィブロインとキチンの質量比が100:2〜10であり、黄色のキチン溶液の濃度は3〜6mg/mLであり、シルクフィブロイン溶液の濃度は5〜10%(w/v)である。複合構造の外層の抗菌被覆の処方には2つの処方がある。一つは、薬物で直接被覆し、キチン溶液の濃度は3〜6mg/mLであり、もう一つは、シルクフィブロインとキチンの質量比が100:2〜10であり、キチン溶液の濃度は3〜6mg/mLであり、脱イオン水でシルクフィブロイン溶液を5〜10%(w/v)に希釈し、シルクフィブロイン溶液にグリセリンを加え、シルクフィブロイン質量に対するグリセリンの質量比は30〜50%であり、混合物は均一に混合される。
【0041】
フィラメントを平行に配列する方法で縫合糸の内(コア)層を製造し、本実施形態では、縫合糸内層は2本以上の中空フィラメント糸で織られており、使用された中空フィラメント糸の断面は円形であり、室温下、中空糸フィラメントを抗菌被覆溶液(シルクフィブロイン/キチン/グリセリン混合溶液)に5〜10分間浸漬し、60±2℃の真空オーブンで30〜60分間ヒートセットして、上記の操作を3回繰り返す。該中空糸フィラメントの中空度は18〜36%であり、フィラメント糸の密度は100〜200dtexである。原材料はポリグリコール酸(PGA)である。本実施形態で得られる中空糸フィラメントの製織糸は400N/mm2を超える引張強度、600MPaを超える破断強度、90°Cを超える溶融温度、及び40%未満の破断点伸びを有する。
【0042】
製織法により縫合糸の外層を製造し、本実施形態では、製織プロセスは8〜32スピンドル縦編機を使用して、それぞれダイヤモンド織り(1/1織り込む)を採用し、上織り角度は45〜60°、(大歯車と小歯車の)ギア比:大歯車(80〜120):小歯車(18〜60)であり、回転速度は5〜100rpmに設定される。原材料は脱ガムされたシルクである。抗菌被覆溶液(ベルベリン溶液)の浸漬時間を15〜30分間、温度を60±2°C、被覆を3〜5回行い、最後に、シルクフィブロイン/ベルベリン混合溶液の被覆を行い、被覆パラメーターは下記の通りである。室温で30〜60分間浸漬し、被覆後、縫合糸を脱イオン水で濯ぎ、60±2℃の真空オーブンで30〜60分間ヒートセットする。
【0043】
実施例3
本実施例は天然抗菌薬徐放機能付き医療用縫合糸及びその製造方法を示し、天然抗菌薬はクルクミンであり、構造縫合糸の内層コア糸被覆の処方はシルクフィブロインとクルクミンの質量比100:2〜10であり、クルクミン溶液の濃度は3〜6mg/mLであり、シルクフィブロイン水溶液の濃度は5〜10%(w/v)である。複合構造の外層抗菌被覆の処方には2つの処方がある。一つは、薬物で直接被覆し、クルクミン溶液の濃度は3〜6mg/mLである。もう一つは、シルクフィブロインとクルクミンの質量比は100:2〜10であり、クルクミン溶液濃度は3〜6mg/mLである。脱イオン水でシルクフィブロイン溶液濃度を5〜10%(w/v)に希釈する。シルクフィブロイン溶液にグリセリンを加え、グリセリン質量がシルクフィブロイン質量の30〜50%を占め、混合物が均一に混合される。
【0044】
製織法により縫合糸の内(コア)層を製造し、本実施形態では、縫合糸内層は2本以上の製織糸を使用し、使用された中空フィラメント糸の断面は円形であり、製織プロセスは8〜32スピンドル縦編機を使用して、それぞれダイヤモンド織り(1/1織り込む)を採用し、上織り角度は45〜60°、(大歯車と小歯車の)ギア比:大歯車(80〜120):小歯車(18〜60)であり、回転速度は5〜100rpmに設定される。編む前に、まず、室温下、中空糸フィラメントを抗菌被覆溶液(シルクフィブロイン/クルクミン)に5〜10分間浸漬し、60±2℃の真空オーブンで30〜60分間ヒートセットして、上記の操作を3回繰り返す。最後に内層コア糸に対して蒸気処理を5〜10時間行い、処理温度は50〜70°Cである。該中空糸フィラメントの中空度は18〜36%であり、フィラメント糸の密度は100〜200dtexであり、原材料はポリ乳酸−グリコール酸(PLGA)である。本実施形態で得られる中空糸フィラメント製織糸は、400N/mm
2を超える引張強度、600MPaを超える破断強度、90°Cを超える溶融温度、及び40%未満の破断点伸びを有する。
【0045】
製織法により縫合糸の外層を製造し、本実施形態では、製織プロセスは8〜32スピンドル縦編機を使用して、それぞれダイヤモンド織り(1/1織り込む)を採用し、上織り角度は45〜60°、(大歯車と小歯車の)ギア比:大歯車(80〜120):小歯車(18〜60)であり、回転速度は5〜100rpmに設定される。原材料はポリ乳酸−グリコール酸(PLGA)である。抗菌被覆溶液(クルクミン溶液)の浸漬時間を15〜30分間、温度を60±2°C、被覆を3〜5回行い、最後に、シルクフィブロイン/クルクミン/グリセリン混合溶液の被覆を行い、被覆パラメーターは下記の通りである。室温で30〜60分間浸漬し、被覆後、縫合糸を脱イオン水で濯ぎ、60±2℃の真空オーブンで30〜60分間ヒートセットする。
【0046】
実施例4
本実施例は天然抗菌薬徐放機能付き医療用縫合糸及びその製造方法を示し、天然抗菌薬はベルベリンであり、複合構造縫合糸の内層コア糸被覆の処方はシルクフィブロインとベルベリンの質量比10:1であり、ベルベリン溶液の濃度は3〜6mg/mLであり、シルクフィブロイン水溶液の濃度は5〜10%(w/v)である。複合構造の外層抗菌被覆の処方には2つの処方がある。一つは、薬物で直接被覆し、ベルベリン溶液の濃度は3〜6mg/mLである。もう一つは、シルクフィブロインとベルベリンの質量比は10:1であり、ベルベリン溶液濃度は3〜6mg/mLである。脱イオン水でシルクフィブロイン溶液濃度を5〜10%(w/v)に希釈する。シルクフィブロイン溶液にグリセリンを加え、グリセリン質量がシルクフィブロイン質量の30〜50%を占め、混合物が均一に混合される。
【0047】
製織法により縫合糸の内(コア)層を製造し、本実施形態では、縫合糸内層は2本以上の製織糸を使用し、使用された中空フィラメント糸の断面は円形であり、製織プロセスは8〜32スピンドル縦編機を使用して、それぞれダイヤモンド織り(1/1織り込む)を採用し、上織り角度は45〜60°、(大歯車と小歯車の)ギア比:大歯車(80〜120):小歯車(18〜60)であり、回転速度は5〜100rpmに設定される。編む前に、まず、室温下、中空糸フィラメントをまず、成長因子(表皮成長因子)を含む溶液に5〜10分間浸し、60±2℃の真空オーブンで30〜60分間ヒートセットして、上記の操作を3回繰り返す。該中空糸フィラメントの中空度は18〜36%であり、フィラメント糸の密度は100〜200dtexであり、原材料はポリグリコール酸(PGA)である。本実施形態で得られる中空糸フィラメント製織糸は、400N/mm
2を超える引張強度、600MPaを超える破断強度、90°Cを超える溶融温度、及び40%未満の破断点伸びを有する。
【0048】
製織法により縫合糸の外層を製造し、本実施形態では、製織プロセスは8〜32スピンドル縦編機を使用して、それぞれダイヤモンド織り(1/1織り込む)を採用し、上織り角度は45〜60°、(大歯車と小歯車の)ギア比:大歯車(80〜120):小歯車(18〜60)であり、回転速度は5〜100rpmに設定される。原材料はポリグリコール酸(PGA)で、抗菌被覆溶液(ベルベリン溶液)の浸漬時間を15〜30分間、温度を60±2°C、被覆を3〜5回行い、最後に、シルクフィブロイン/ベルベリン/グリセリン混合溶液の被覆を行い、被覆パラメーターは下記の通りである。室温で30〜60分間浸漬し、被覆後、縫合糸を脱イオン水で濯ぎ、60±2℃の真空オーブンで30〜60分間ヒートセットする。
【0049】
上記の4つの実施例から作られた天然抗菌薬徐放機能付き医療用縫合糸については、表1、
図2、及び
図3を参照されたい。
【0051】
図2は、本発明による天然抗菌薬徐放機能付き医療用縫合糸が異なる製造方法にて得られたシルクフィブロイン二次構造の赤外スペクトル(FT-IR)分析チャートである。そのうち、aは未処理のシルクフィブロインである。bはシルクフィブロイン/ベルベリンである。cはグリセリンで修飾したシルクフィブロイン/ベルベリンである。dは蒸気で処理したシルクフィブロイン/ベルベリンである。
図3は、本発明による天然抗菌薬徐放機能付き医療用縫合糸の製造方法が、第1の実施形態における抗菌性縫合糸の薬物放出結果の図である。そのうち、aは純薬に浸した縫合糸であり、bは実施例1で製造された複合プロセス被覆縫合糸であり、cは実施例1で製造された複合プロセス被覆縫合糸である。
図2から、シルクフィブロイン/ベルベリン(b)の特性ピークの位置と、純シルクフィブロイン(a)の位置はほぼ同じであり、どちらも約1647cm
−1付近であることがわかる。上記の結果は、抗菌薬ベルベリンの添加がシルクフィブロインの分子構造に顕著な影響を及ぼさないことを示している。グリセリン修飾シルクフィブロイン/ベルベリン(c)と蒸気処理シルクフィブロイン/ベルベリンの特性ピークの位置はほぼ同じで、どちらも約1625cm
−1付近であることがわかる。これは、蒸気処理とグリセリン修飾シルクフィブロイン/ベルベリン中のシルクフィブロインが、主にβシート構造であることを示している。
【0052】
図3から、pH=6.8で、シルクフィブロイン/ベルベリン被覆縫合糸、グリセリン修飾シルクフィブロイン/ベルベリン被覆縫合糸、及び蒸気処理シルクフィブロイン/ベルベリンは、24時間での被覆縫合糸の累積薬物放出率は、それぞれ68.04±2.33%、56.45±1.56%、及び57.59±1.71%であり、168時間で、累積薬物放出率はそれぞれ79.04±1.91%、67.35±0.82%、及び69.38±2.66%である。上記の結果は、蒸気とグリセロールで処理されたシルクフィブロイン薬担持縫合糸が薬物放出を効果的に遅らせることを示している。表1に示したさまざまな被覆方式による縫合糸の静菌ベルトの幅(単位:mm)から、蒸気とグリセリンで処理されたシルクフィブロイン薬担持縫合糸がより良い持続性を達成できることがわかる。
【0053】
要約すると、本発明は天然抗菌薬徐放機能付き医療用縫合糸及びその製造方法を開示しており、複合構造で織られ、シルクフィブロインを被覆担体とされ、天然抗菌薬を担持しており、抗菌性が持続する抗菌性医療用縫合糸を得た。この材料は機械的特性が良好であると同時に、長時間作用型の徐放性薬剤の効果があり、細菌を抑制または殺し、手術部位の感染を減らすことができる。
【0054】
上記の実施形態は、本発明の技術的発明を例示するためにのみ使用され、限定するものではないことに留意されたい。好ましい実施形態を参照しながら本発明を詳細に説明したが、当業者は、それを理解すべきであり、本発明の技術的発明を修正または同等の置換を行うことができるが、本発明の技術的発明の精神及び範囲から逸脱することなく、それらはすべて本発明の特許請求の範囲に含まれるべきである。
【国際調査報告】