特表2020-530513(P2020-530513A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2020-530513光配列ポリマー材料及び組成物を調製する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-530513(P2020-530513A)
(43)【公表日】2020年10月22日
(54)【発明の名称】光配列ポリマー材料及び組成物を調製する方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 20/40 20060101AFI20200925BHJP
   C08L 33/14 20060101ALI20200925BHJP
   C08K 5/101 20060101ALI20200925BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20200925BHJP
【FI】
   C08F20/40
   C08L33/14
   C08K5/101
   G02B5/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】37
(21)【出願番号】特願2020-507021(P2020-507021)
(86)(22)【出願日】2018年8月8日
(85)【翻訳文提出日】2020年3月4日
(86)【国際出願番号】EP2018071532
(87)【国際公開番号】WO2019030294
(87)【国際公開日】20190214
(31)【優先権主張番号】17185480.5
(32)【優先日】2017年8月9日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】518163910
【氏名又は名称】ロリク・テクノロジーズ・アーゲー
【氏名又は名称原語表記】ROLIC TECHNOLOGIES AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】クライン,セドリック
(72)【発明者】
【氏名】デレベール,ファビアン・グザヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】フランツ,リチャード
【テーマコード(参考)】
2H149
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
2H149AA02
2H149AB26
2H149AB29
2H149DA02
2H149DA12
2H149DB06
2H149DB15
2H149FA24Y
2H149FA52Y
2H149FA58Y
4J002BG071
4J002EH076
4J002FD070
4J002FD090
4J002FD140
4J002FD150
4J002FD200
4J002FD206
4J002FD310
4J002GP00
4J002GT00
4J002HA05
4J100AL74P
4J100BA02P
4J100BA05P
4J100BA11P
4J100BB18P
4J100BC43P
4J100CA01
4J100DA01
4J100DA04
4J100FA03
4J100FA19
4J100JA39
(57)【要約】
本発明は、アリールアクリル酸エステル基を含む光配列ポリマー材料を調製する新規方法、このプロセスによって得られる光配列組成物、液晶用の配向性層としての該組成物の使用、並びに該組成物を含む非構造化及び構造化光学素子、電気光学素子、多層システム、又はナノエレクトロニクスに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アリールアクリル酸エステル基を含む光配列ポリマー材料を調製するプロセスであって、
a.式(II)の化合物
【化29】

(式中、
環Cは、置換されていないか、又は任意選択的にフッ素原子、塩素原子、シアノ、アルキル、若しくはアルコキシで置換されていてもよいフェニレン;ピリミジン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5−ジイル、2,5−チオフェニレン、2,5−フラニレン、1,4−又は2,6−ナフチレンを表し;
Yは、C又はOのいずれかであり;そして、
YがCである場合、m=1かつR=COOR’
(式中、R’は、任意選択的にハロゲン若しくは少なくとも1つのシロキサン部分で少なくとも1回置換されていてもよい、1〜20個の炭素原子を有する直鎖若しくは分枝状のアルキレン基、又は任意選択的に少なくとも1つのハロゲン、アルキル、若しくはアルコキシで置換されていてもよい、3〜8個の環原子を有するシクロアルキル残基である)であるか;あるいは
YがOである場合、m=0である)
を式(III)の化合物
【化30】

(Mは、アクリレート、メタクリレート、2−クロロアクリレート、2−フェニルアクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、2−クロロアクリルアミド、2−フェニルアクリルアミド、N−低級アルキル置換アクリルアミド、N−低級アルキル置換メタクリルアミド、N−低級アルキル置換2−クロロアクリルアミド、N−低級アルキル置換2−フェニルアクリルアミド、ビニルエーテル、ビニルエステル、スチレン、ジアミン、アミド、イミド、シロキサン、アミド酸エステル、及びアミド酸からなる群からの繰り返しモノマー単位を表し;
は、スペーサ単位であり;
環Aは、置換されていないか、又は任意選択的にフッ素原子、塩素原子、シアノ、アルキル、若しくはアルコキシで置換されていてもよいフェニレン;ピリジン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、シクロヘキサン−1,4−ジイル、ピペリジン−1,4−ジイル、あるいはピペラジン−1,4−ジイルを表し;
環Bは、置換されていないか、又は任意選択的にフッ素原子、塩素原子、シアノ、アルキル、若しくはアルコキシで置換されていてもよいフェニレン;ピリジン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、1,4−又は2,6−ナフチレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、あるいはシクロヘキサン−1,4−ジイルを表し;
、Yは、それぞれ独立して、単結合である共有結合、−(CH−、−O−、−CO−、−CO−O−、−O−OC−、−CFO−,−OCF−、−NR−、−CO−NR−、−RN−CO−、−(CH−O−、−O−(CH−、−(CH−NR−、又は−NR−(CH−を表し、式中、
は、水素又は低級アルキルを表し;
tは、1〜4の整数を表し;
uは、1〜3の整数を表し;そして、
m、nは、0〜4の整数を表す)
及び、任意選択的に、式(IV)又は(IV’)の化合物
【化31】

と反応させる工程と;
b.任意選択的に、工程a.で得られた化合物を式(V)の化合物
【化32】

(式中、Xは、OH、F、Cl、又はIであり;
Z及びZ’は、互いに独立して、H又はハロゲンのいずれかであり;
q及びq’は、互いに独立して、0〜2の整数であり;
pは、0〜10の整数であり
r及びr’は、互いに独立して、0〜3の整数である)
と反応させる工程と;
c.工程a.又はb.で得られた化合物を有機過酸化物又は無機過酸化物を用いて重合させる工程と;
d.加熱することによって反応を停止させる工程と、
を含むプロセス。
【請求項2】
m及びnが0である場合、前記スペーサ単位はSであり、そして、少なくとも1つのm又はnが1である場合、前記スペーサ単位はSであり、そして、S及びSは、非置換又は非置換の、直鎖又は分枝状の−(CH−、並びに−(CH−O−、−(CH−O−(CH−、−(CH−O−(CH−O−、−(CH−CO−、−(CH−CO−O−、−(CH−O−CO−、−(CH−NR−、−(CH−CO−NR−、−(CH−NR−CO−、−(CH−NR−CO−O−、又は−(CH−NR−CO−NR−であり、これらは、任意選択的に、C〜C24−アルキル、ヒドロキシ、フッ素原子、塩素原子、シアノ、エーテル、エステル、アミノ、アミドで一置換又は多置換されていてもよく;1つ以上の−CH−基が、連結基、脂環式又は芳香族の基によって置換されていてもよく;そして、r及びsは、それぞれ、1〜20の整数であるが、ただし、Sについては3≦r+s≦24であり;そして、Sについては8≦r+s≦24であり;そして、R及びRは、それぞれ独立して、水素又は低級アルキルを表す、請求項1記載のプロセス。
【請求項3】
Y=Oである場合、式(IV)又は(IV’)の化合物との反応を行う、請求項1又は2記載のプロセス。
【請求項4】
Y=Cである場合、前記プロセスが工程a.で終了する、請求項1又は2記載のプロセス。
【請求項5】
が、アクリレート及びメタクリレートからなる群から選択されるモノマー単位であり;
環Aが、非置換フェニレン、又はアルキル若しくはアルコキシで置換されているフェニレンであり;
環Bが、非置換フェニレン、又はフッ素原子、アルキル、若しくはアルコキシで置換されているフェニレンであり;
、Yが、それぞれ独立して、単結合である共有結合、−CO−O−、−O−OC−であり;
m、nが、それぞれ独立して、0又は1であり;
環Cが、非置換フェニレン、又はアルキル若しくはアルコキシで置換されているフェニレンであり;
が、スペーサ単位であり、m及びnが0である場合、前記スペーサ単位はSであり、そして、少なくとも1つのm又はnが1である場合、前記スペーサ単位はSであり;
が、C〜C24アルキレンであり;そして、
が、C〜C24アルキレンであり;そして、
アルキレンが、非置換又は置換の、直鎖又は分枝状のアルキレンであり、1つ以上の−CH−基が、少なくとも1つの連結基、脂環式又は/及び芳香族の基によって置換されていてもよく;
Zが、−O−である、請求項1〜4のいずれか一項記載のプロセス。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項記載のプロセスによって得られる化合物。
【請求項7】
請求項6記載の化合物を含む組成物。
【請求項8】
− 式(I)のモノマーを含むホモポリマー:
【化33】

− と、式(I)の少なくとも1つのモノマーと、
を含む組成物
(式中、M、S、環A、Y、環B、Y、n、m、及び環Cは、上記と同じ意味を有し;そして、
Zは、−O−又は−NR
(式中、Rは、水素若しくは低級アルキル、又は式D若しくはD’の第2の基を表す)を表し;そして、
Dは、任意選択的にハロゲン若しくは少なくとも1つのシロキサン部分で少なくとも1回置換されていてもよい、1〜20個の炭素原子を有する直鎖若しくは分枝状のアルキレン基、又は任意選択的に少なくとも1つのハロゲン、アルキル、若しくはアルコキシで置換されていてもよい、3〜8個の環原子を有するシクロアルキル残基を表す)。
【請求項9】
が、アクリレート及びメタクリレートからなる群から選択されるモノマー単位であり;
環Aが、非置換フェニレン、又はアルキル若しくはアルコキシで置換されているフェニレンであり;
環Bが、非置換フェニレン、又はフッ素原子、アルキル、若しくはアルコキシで置換されているフェニレンであり;
、Yが、それぞれ独立して、単結合である共有結合、−CO−O−、−O−OC−であり;
m、nが、それぞれ独立して、0又は1であり;
環Cが、非置換フェニレン、又はアルキル若しくはアルコキシで置換されているフェニレンであり;
が、スペーサ単位であり、m及びnが0である場合、前記スペーサ単位がSであり、そして、少なくとも1つのm又はnが1である場合、前記スペーサ単位はSであり;
が、C〜C24アルキレンであり;そして、
が、C〜C24アルキレンであり;そして、
アルキレンが、非置換又は置換の、直鎖又は分枝状のアルキレンであり、1つ以上の−CH−基が、少なくとも1つの連結基、脂環式又は/及び芳香族の基によって置換されていてもよく;
Zが、−O−である、請求項7又は8記載の組成物。
【請求項10】
溶媒と、任意選択的に少なくとも1つの添加剤とを更に含む、請求項7、8、又は9記載の組成物。
【請求項11】
前記少なくとも1つの添加剤が、重合性液晶、紫外線硬化性化合物、架橋剤、シラン含有化合物、光活性添加剤、光開始剤、界面活性剤、乳化剤、抗酸化剤、レベリング剤、染料、エポキシ含有架橋剤、及び硬化性化合物からなる群から選択される、請求項10記載の組成物。
【請求項12】
請求項7〜11のいずれか記載の組成物の、液晶用配向性層としての使用。
【請求項13】
請求項7〜11のいずれかに記載の組成物に配列光を照射する工程を含む、液晶用配向層を作製する方法。
【請求項14】
請求項7〜11のいずれか一項記載の組成物を含む配向層。
【請求項15】
請求項7〜11のいずれか一項記載の組成物を含むか、又は請求項14記載の配向層を含む、光学素子、電気光学素子、又はナノ電気素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アリールアクリル酸エステル基を含む光配列ホモポリマー材料を合成するプロセス;このプロセスによって得られる光配列組成物;非構造化及び構造化光学素子、ナノ電子素子、又は電気光学素子、並びに多層システムを作製するための液晶用配向性層としての前記組成物の使用;並びに前記組成物を含む、非構造化及び構造化光学素子、ナノ電子素子、又は電気光学素子、多層システム、並びに透過光可変フィルムに関する。
【0002】
米国特許第6,107,427号には、アリールアクリル酸エステル及びアミドを含む光配列ポリマー材料及び組成物、並びにその合成について記載されている。しかし、この合成プロセスは、非常に高価な遊離体を使用する必要があり、そして、毒性の物質及び添加剤を使用する必要がある。更に、合成プロセスに時間がかかり、収率は中程度であり、そして、最終生成物を単離するのが非常に困難である。
【0003】
先行技術の問題点を克服するために、本発明の発明者らは、式(I)の繰り返し構造単位を含むアリールアクリル酸エステル光配列ポリマー材料を合成するための新規プロセスを見出した:
【化1】

(式中、
は、アクリレート、メタクリレート、2−クロロアクリレート、2−フェニルアクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、2−クロロアクリルアミド、2−フェニルアクリルアミド、N−低級アルキル置換アクリルアミド、N−低級アルキル置換メタクリルアミド、N−低級アルキル置換2−クロロアクリルアミド、N−低級アルキル置換2−フェニルアクリルアミド、ビニルエーテル、ビニルエステル、スチレン、ジアミン、アミド、イミド、シロキサン、アミド酸エステル、及びアミド酸からなる群からの繰り返しモノマー単位を表し;
は、スペーサ単位であり;そして、
環Aは、置換されていないか、又は任意選択的にフッ素原子、塩素原子、シアノ、アルキル、若しくはアルコキシで置換されていてもよいフェニレン;ピリジン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、シクロヘキサン−1,4−ジイル、ピペリジン−1,4−ジイル、あるいはピペラジン−1,4−ジイルを表し;
環Bは、置換されていないか、又は任意選択的にフッ素原子、塩素原子、シアノ、アルキル、若しくはアルコキシで置換されていてもよいフェニレン;ピリジン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、1,4−又は2,6−ナフチレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、あるいはシクロヘキサン−1,4−ジイルを表し;
環Cは、置換されていないか、又は任意選択的にフッ素原子、塩素原子、シアノ、アルキル、若しくはアルコキシで置換されていてもよいフェニレン;ピリミジン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5−ジイル、2,5−チオフェニレン、2,5−フラニレン、1,4−又は2,6−ナフチレンを表し;
、Yは、それぞれ独立して、単結合である共有結合、−(CH−、−O−、−CO−、−CO−O−、−O−OC−、−CFO−,−OCF−、−NR−、−CO−NR−、−RN−CO−、−(CH−O−、−O−(CH−、−(CH−NR−、又は−NR−(CH−を表し、式中、
は、水素又は低級アルキルを表し;
tは、1〜4の整数を表し;
uは、1〜3の整数を表し;
m、nは、0〜4の整数を表し;
Zは、−O−又は−NR−(式中、Rは、水素若しくは低級アルキル、又は式Dの第2の基を表す)を表し;そして、
Dは、水素;又は任意選択的にハロゲン若しくは少なくとも1つのシロキサン部分で少なくとも1回置換されていてもよい、1〜20個の炭素原子を有する直鎖若しくは分枝状のアルキレン基、あるいは任意選択的に少なくとも1つのハロゲン、アルキル、又はアルコキシで置換されていてもよい、3〜8個の環原子を有するシクロアルキル残基である)。
【0004】
該アリールアクリル酸エステル光配列ポリマー材料を調製するプロセスは、以下の工程を含む。
a.式(II)の化合物を式(III)の化合物、及び、任意選択的に式(IV)又は(IV’)の化合物と反応させる工程と、
【化2】

(式中、
Yは、CR又はOのいずれかであり;そして、
YがCRである場合、m=1かつR=COOR’’
(式中、R’及びR’’は、互いに独立して、水素;又は任意選択的にハロゲン若しくは少なくとも1つのシロキサン部分で少なくとも1回置換されていてもよい、1〜20個の炭素原子を有する直鎖若しくは分枝状のアルキレン基、あるいは任意選択的に少なくとも1つのハロゲン、アルキル、アルコキシで置換されていてもよい、3〜8個の環原子を有するシクロアルキル残基である)であり;
YがOである場合、m=0であり
環Cは、上に定義した通りである)
【化3】

(式中、M、S、環A、Y、環B、及びY、n及びmは、上に定義した通りである)
【化4】

b.任意選択的に、工程a.で得られた化合物を式(V)の化合物
【化5】

(式中、Xは、OH、F、Cl、又はIであり;
Z及びZ’は、互いに独立して、H又はハロゲンのいずれかであり;
q及びq’は、互いに独立して、0〜2の整数であり;
pは、0〜10の整数であり
r及びr’は、互いに独立して、0〜3の整数である)
と反応させる工程と、
c.工程a.又はb.で得られた化合物を有機過酸化物又は無機過酸化物を用いて重合させる工程と;
d.加熱することによって、又はラジカル阻害剤若しくはラジカルスカベンジャーを用いて反応を停止させる工程。
【0005】
式(II)の化合物と式(III)の化合物との反応は、例えば、触媒量のフェノチアジンと共に、塩基(典型的には炭酸カリウムK2CO3)及びヨウ化カリウムKIの存在下で、DMF等の溶媒の溶液中で行われる。
【0006】
前記プロセスによって得られるポリマーは、それ以上何らかの更なる精製工程を必要とすることなく、製剤化し、直接使用することができる。
【0007】
したがって、本発明の目的は、式(I)の繰り返し構造単位を含むアリールアクリル酸エステル光配列ポリマー材料を合成するための新規プロセス、該プロセスによって得られる化合物、このような化合物を含む組成物、非構造化及び構造化光学素子、電気光学素子、多層システム、及びナノエレクトロニクス素子において液晶を配列させるためのこのような組成物の使用、並びに該組成物を含む非構造化及び構造化光学素子又は電気光学素子、多層システム、及び透過光可変フィルムを提供することである。
【0008】
上に開示したプロセスは、加熱して有機過酸化物又は無機過酸化物を分解し、それによって、重合を停止させた如何なる時点でも停止させることができる。加熱は、当技術分野において公知の方法、例えば、油浴、砂浴、ジャケット付加熱システム、二重マントル容器、赤外線コンベア、マイクロ波を介して実施してよい。重合プロセスは、例えば、ポリマーが所望の長さ又は分子量に達したときに停止させてよい。更に、該プロセスは、ラジカル阻害剤又はラジカルスカベンジャーを使用することによって停止させることもできる。
【0009】
最終生成物を更に精製する必要はない。したがって、ポリマー溶液は、依然として未反応のモノマーを含有している場合がある。また、本発明の目的は、式(I)の繰り返し構造単位を含むポリマーと式(I)の未反応モノマーとを50/50比、より好ましくは75/25比、更により好ましくは90/10比、更により好ましくは>90/<10で含む組成物を提供することである。
【0010】
該プロセスから生成されるのが1種のモノマーを含むポリマーのみであるとき、このような反応の最終生成物はホモポリマーである。
【0011】
用語「連結基」は、本発明に関連して使用されるとき、−O−、−CO、−CO−O−、−O−CO−、
【化6】

、−NR−、−NR−CO−、−CO−NR−、−NR−CO−O−、−O−CO−NR−、−NR−CO−NR−、−CH=CH−、−C≡C−、−O−CO−O−、及び−Si(CH−O−Si(CH−から選択され、式中:
は、水素原子又はC〜Cアルキルを表すが、
ただし、連結基の酸素原子は互いに直接連結されない。
【0012】
用語「スペーサ単位」とは、本発明に関連して使用されるとき、環状、直鎖又は分枝状の置換又は非置換のC〜C24アルキレンであって、1つ以上の、好ましくは隣接していない−C−、−CH−、−CH−基が上に定義した連結基によって置換されていてもよいアルキレンである。
【0013】
本発明に関連して、用語「アルキル」は、最大20個の炭素原子を有する、置換又は非置換の直鎖又は分枝状の飽和炭化水素残基であって、1つ以上の−CH−又は−CH−の基が、置換されていない場合もよく、上記少なくとも1つの上記連結基、又は/及び脂環式基、又は/及び芳香族基によって置換されている場合でもよい残基である。
【0014】
用語「低級アルキル」及び同様に「低級アルコキシ」、「ヒドロキシ−低級アルキル」、「フェノキシ−低級アルキル」、「フェニル−低級アルキル」は、上記及び下記において、1〜6個、好ましくは1〜3個の炭素原子を有する直鎖又は分枝状の飽和炭化水素残基、例えば、メチル、エチル、プロピル、又はi−プロピルを意味する。
【0015】
用語「アルキル」及び同様に「アルコキシ」は、上記及び下記において、最大20個の炭素原子を有する直鎖又は分枝状の飽和炭化水素残基を意味する。
【0016】
「アルキル」又は「アルコキシ」の置換基は、ヒドロキシ、フッ素原子、塩素原子、シアノ、エーテル、エステル、アミノ、アミド、脂環式又は芳香族の基であり、それぞれにおいて、1つ以上の−CH−基が少なくとも1つの連結基によって置換されていてもよい。
【0017】
本発明に関連して、「直鎖アルキル」は、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec.−ブチル、tert.−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノンデシル、イコシル、ヘニコシル、ドコシル、トリコシル、又はクアトロコシルであるが、これらに限定されるわけではない。
【0018】
本発明に関連して、「脂環式基」は、例えば、置換又は非置換の非芳香族の炭素環式又は複素環式の基を意味し、そして、例えば、3〜30個の炭素原子を有する環系、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン、デカリン、アダマンタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、ピロリジン、ピペリジン;又はコレステロール等のステロイド骨格を表し、置換基は、好ましくは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、より好ましくは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、そして、最も好ましくは、メチル、エチル、プロピルである。好ましい脂環式基は、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロヘキサン、シクロヘキセンであり、そして、より好ましくは、シクロペンタン又はシクロヘキサンである。
【0019】
本発明に関連して、「芳香族基」は、好ましくは、フラン、ベンゼン又はフェニレン、ピリジン、ピリミジン、ナフタレン等の5、6、10、又は14環原子を有するものを意味し;ビフェニレン又はトリフェニレン等の環集合体を形成してもよく;中断されていなくても、又は少なくとも1つのヘテロ原子及び/若しくは少なくとも1つの連結基によって中断されていてもよく;あるいは、フェナントレン又はテトラリン等の縮合多環系を形成してもよい。好ましくは、芳香族基は、ベンゼン、フェニレン、ビフェニレン、又はトリフェニレンである。より好ましい芳香族基は、ベンゼン、フェニレン、及びビフェニレンである。最も好ましいのは、フェニレンである。
【0020】
用語「置換されていないか、又は任意選択的にフッ素原子、塩素原子、シアノ、アルキル、若しくはアルコキシで置換されていてもよいフェニレン」は、本発明の範囲において、1,2−、1,3−、又は1,4−フェニレンを包含するが、特に、置換されていないか、又はフッ素原子、塩素原子、シアノ、アルキル、若しくはアルコキシで、好ましくは、フッ素原子、メチル、エチル、プロピル、ブチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、若しくはシアノで一置換若しくは多置換されている1,3−又は1,4−フェニレンを包含する。特に好ましいのは、1,4−フェニレン残基である。好ましいフェニレン残基の例は、1,3−又は1,4−フェニレン、4−又は5−メチル−1,3−フェニレン、4−又は5−メトキシ−1,3−フェニレン、4−又は5−エチル−1,3−フェニレン、4−又は5−エトキシ−1,3−フェニレン、2−又は3−メチル−1,4−フェニレン、2−又は3−エチル−1,4−フェニレン、2−又は3−プロピル−1,4−フェニレン、2−又は3−ブチル−1,4−フェニレン、2−又は3−メトキシ−1,4−フェニレン、2−又は3−エトキシ−1,4−フェニレン、2−又は3−プロポキシ−1,4−フェニレン、2−又は3−ブトキシ−1,4−フェニレン、2,3−、2,6−、又は3,5−ジメチル−1,4−フェニレン、2,6−又は3,5−ジメトキシ−1,4−フェニレン、2−又は3−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−、2,6−、又は3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2−又は3−クロロ−1,4−フェニレン、2,3−、2,6−、又は3,5−ジクロロ−1,4−フェニレン、2−又は3−シアノ−1,4−フェニレン等である。
【0021】
好ましい実施態様では、Sは、スペーサ単位であり、m及びnが0である場合、該スペーサ単位はSであり、そして、少なくとも1つのm又はnが1である場合、該スペーサ単位はSであり;
及びSは、非置換又は非置換の、直鎖又は分枝状の−(CH−、並びに−(CH−O−、−(CH−O−(CH−、−(CH−O−(CH−O−、−(CH−CO−、−(CH−CO−O−、−(CH−O−CO−、−(CH−NR−、−(CH−CO−NR−、−(CH−NR−CO−、−(CH−NR−CO−O−、又は−(CH−NR−CO−NR−であり、これらは、任意選択的に、C〜C24−アルキル、ヒドロキシ、フッ素原子、塩素原子、シアノ、エーテル、エステル、アミノ、アミドで一置換又は多置換されていてもよく;
そして、1つ以上の−CH−基が、連結基、脂環式又は芳香族の基によって置換されていてもよく;
そして、r及びsは、それぞれ、1〜20の整数であるが、ただし、Sについては3≦r+s≦24であり;そして、Sについては6≦r+s≦24であり;
そして、R及びRは、それぞれ独立して、水素又は低級アルキルを表す。
【0022】
本発明のより好ましい実施態様では、S又はSは、置換又は非置換の直鎖又は分枝状の−(CH−、並びに−(CH−O−、−(CH−O−(CH−、−(CH−O−(CH−O−、−(CH−CO−、−(CH−CO−O−、−(CH−O−CO−、−(CH−NR−、−(CH−CO−NR−、−(CH−NR−CO−、−(CH−NR−CO−O−、又は−(CH−NR−CO−NR−(式中、R2及びR3は、それぞれ独立して、水素又は低級アルキルを表す)であり;好ましくは、S若しくはSは、任意選択的にC〜C24−アルキル、好ましくはC〜C12−アルキル、より好ましくはC〜C−アルキル(式中、アルキルは、上に与えられた意味及び好ましい態様を有する)で一置換若しくは多置換されていてもよく;又はS若しくはSは、任意選択的にヒドロキシ、フッ素原子、塩素原子、シアノ、エーテル、エステル、アミノ、アミドで一置換若しくは多置換されていてもよく;そして、1つ以上の−CH−基が、連結基、脂環式又は/及び芳香族の基によって置換されていてもよく;
については、単一添字「r」は、4〜24、好ましくは5〜12、そして、より好ましくは5〜8、特に6又は8の整数であり;そして、
については、単一添字「r」は、8〜24、好ましくは6〜12、そして、特に6、7、8、9、10、11、又は12の整数であり;そして、
については、添字「r及びs」という合計は、1〜24、好ましくは2〜12、そして、より好ましくは5〜8の整数であり;そして、
については、添字「r及びs」という合計は、6〜24、好ましくは6〜12、そして、特に6、7、8、9、10、11、又は12の整数であり;そして、
及びRは、それぞれ独立して、水素又は低級アルキルを表す。
【0023】
本発明の最も好ましい実施態様では、S又はSは、非置換又は非置換の、直鎖又は分枝状の−(CH−、並びに−(CH−O−、−(CH−O−(CH−、−(CH−O−(CH−O−、−(CH−CO−、−(CH−CO−O−、−(CH−O−CO−、 特に、−(CH−O−、−(CH−O−(CH−、−(CH−O−(CH−O−、−(CH−CO−、−(CH−CO−O−、−(CH−O−CO−、これらの中でも特に−(CH−O−であり、これは、任意選択的にC〜C24−アルキル、好ましくはC〜C12−アルキル、より好ましくはC〜C−アルキル;又はヒドロキシ、フッ素原子、塩素原子、シアノ、エーテル、エステル、アミノ、アミドで一置換若しくは多置換されていてもよく;そして、1つ以上の−CH−基が、連結基、又は脂環式若しくは芳香族の基によって置換されていてもよく;そして、単一添字r及びs、並びに添字s及びrの合計は、上に与えられた意味及び好ましい態様を有し;そして、R及びRは、それぞれ独立して、水素又は低級アルキルを表す。
【0024】
、S’、S、S3’におけるアルキレンの好ましい置換基は、C〜C24−アルキル、好ましくは、C〜C12−アルキル、より好ましくは、C〜C−アルキル、ヒドロキシ、フッ素原子、塩素原子、シアノ、エーテル、エステル、アミノ、又はアミドである。
【0025】
好ましい「スペーサ単位」Sの例は、1,6−ヘキシレン、1,7−へプチレン、2−メチル−1,2−プロピレン、1,3−ブチレン、エチレンオキシカルボニル、エチレンオイルオキシ、プロピレンオキシ、プロピレンオキシカルボニル、プロピレンオイルオキシ、ブチレンオキシ、ブチレンオキシカルボニル、ブチレンオイルオキシ、プロピレンアミノ、ブチレンアミノ、ペンチレンアミノ、ヘキシレンアミノ、へプチレンアミノ、エチレンアミノカルボニル、プロピレンアミノカルボニル、ブチレンアミノカルボニル、エチレンカルボニルアミノ、プロピレンカルボニルアミノ、ブチレンカルボニルアミノ、ペンチレンカルボニルアミノ、ヘキシレンカルボニルアミノ、へプチレンカルボニルアミノ、ペンチレンアミノカルボニル、ヘキシレンアミノカルボニル、へプチレンアミノカルボニル、ペンチレンオキシ、ペンチレンオキシカルボニル、ペンチレンオイルオキシ、ヘキシレンオキシ、ヘキシレンオキシカルボニル、ヘキシレンオイルオキシ、へプチレンオキシ、へプチレンオキシカルボニル、へプチレンオイルオキシであり、特に好ましいのは、ヘキシレンオキシである。
【0026】
好ましい「スペーサ単位」Sの例は、1,6−ヘキシレン、1,7−へプチレン、1,8−オクチレン、1,9−ノニレン、1,10−デシレン、1,11−ウンデシレン、1,12−ドデシレン、9−ノニレンオキシ、11−ウンデシレンオキシ、12−ドデシレンオキシ、11−ウンデシレンオキシカルボニル、12−ドデシレンオキシカルボニル、9−ノニレンオキシカルボニル、11−ウンデシレンオイルオキシ、12−ドデシレンオイルオキシ、9−ノニレンオイルオキシ、11−ウンデシレンアミノ、12−ドデシレンアミノ、9−ノニレンアミノ、11−ウンデシレンアミノカルボニル、12−ドデシレンアミノカルボニル、9−ノニレンアミノカルボニル、11−ウンデシレンカルボニルアミノ、12−ドデシレンカルボニルアミノ、ノニレンカルボニルアミノ等である。
【0027】
特に好ましい「スペーサ単位」Sは、−(CH−(式中、rは6又は8である)によって表される直鎖アルキレン基、並びに−(CH−O−、−(CH−CO−O−、及び−(CH−O−CO−である。
【0028】
更に、特に好ましい「スペーサ単位」Sは、−(CH−(式中、rは、6、7、8、9、10、11、12である)によって表される直鎖アルキレン基、並びに−(CH−O−、−(CH−CO−O−、及び−(CH−O−CO−である。
【0029】
本発明に関連して、用語「ハロゲン化」は、アリールアクリル酸エステル基を含む光配列ポリマー材料が、1つ以上のハロゲン原子、好ましくは2つのハロゲン原子、より好ましくは3つのハロゲン原子を含有することを意味する。ハロゲン原子が全て同じ炭素原子又は異なる炭素原子に結合しているものが本発明に包含される。また、同じ分子が異なるハロゲン原子によってハロゲン化され得ることも包含される。ハロゲン原子は、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素である。
【0030】
本発明に関連して、「シロキサン部分」は、Si−O−Si結合を有する少なくとも1つの官能基を含む、いかなる置換基をも意味する。本発明に係る光配列ポリマー材料は、1つ以上のシロキサン部分を含有し得る。
【0031】
更に、好ましいのは、式(I)の繰り返し構造単位
(式中、
は、アクリレート、メタクリレート、及びスチレン誘導体であり;
環Aは、置換されていないか、又は任意選択的にフッ素原子、塩素原子、シアノ、アルキル若しくはアルコキシで置換されていてもよいフェニレン;ピリジン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、シクロヘキサン−1,4−ジイルを表し;
環Bは、置換されていないか、又は任意選択的にフッ素原子、塩素原子、シアノ、アルキル若しくはアルコキシで置換されていてもよいフェニレン;ピリジン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、1,4−又は2,6−ナフチレン、シクロヘキサン−1,4−ジイルを表し;
、Yは、それぞれ独立して、単結合である共有結合、−CHCH−、−O−、−CFO、−OCF−、−CH−O−、−O−CH−、−CO−O−、又は−O−OC−を表し;
環Cは、置換されていないか、又は任意選択的にフッ素原子、塩素原子、シアノ、アルキル若しくはアルコキシで置換されていてもよいフェニレン;あるいはピリミジン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5−ジイル、2,5−フラニレン、1,4−又は2,6−ナフチレンを表し;
Zは、−O−を表し、そして、
、D、m、及びnは、上に与えた意味を有する)
を含むアリールアクリル酸エステル光配列ポリマー材料を合成するプロセスである。
【0032】
より好ましいのは、式(I)の繰り返し構造単位
(式中、
は、アクリレート、メタクリレートからなる群から選択されるモノマー単位であり;
環Aは、非置換フェニレン、又はアルキル若しくはアルコキシで置換されているフェニレンであり;
環Bは、非置換フェニレン、又はフッ素原子、アルキル、若しくはアルコキシで置換されているフェニレンであり;
、Yは、それぞれ独立して、単結合である共有結合、−CO−O−、−O−OC−であり;
環Cは、非置換フェニレン、又はアルキル若しくはアルコキシ、好ましくはメトキシで置換されているフェニレンであり;
Zは、−O−であり;そして、
、D、m、及びnは、上に与えた意味を有する)
を含むアリールアクリル酸エステル光配列ポリマー材料を合成するプロセスである。
【0033】
式(I)の繰り返し構造単位を含むアリールアクリル酸エステル光配列ポリマー材料を調製するプロセスは、既に記載した通りの工程a.〜d.を含む。本発明に係るプロセスの工程a.は、好ましくは、Y=Oかつm=0である場合、式(IV)又は(IV’)の化合物の存在下で行われる。Y=Cである場合、本発明に係るプロセスの工程a.では、式(IV)又は(IV’)の化合物は必要ない。
【0034】
好ましい実施態様では、式(III)の化合物は、以下を特徴とする:
は、アクリレート、メタクリレートからなる群から選択されるモノマー単位であり;
環Aは、非置換フェニレン、又はアルキル若しくはアルコキシで置換されているフェニレンであり;
環Bは、非置換フェニレン、又はフッ素原子、アルキル、若しくはアルコキシで置換されているフェニレンであり;
、Yは、それぞれ独立して、単結合である共有結合、−CO−O−、−O−OC−であり;
m、nは、それぞれ独立して、0又は1であり;
Sは、上記の通りである。
【0035】
好ましい実施態様では、式(II)の化合物は、以下を特徴とする:
Yは、Oであり;
環Cは、非置換フェニレン、又はアルキル若しくはアルコキシ、好ましくはメトキシで置換されているフェニレンであり;
Xは、OHであり;
R及びmは、上記の通りである。
【0036】
好ましい実施態様では、式(II)及び(III)の化合物を、式(IV)又は(IV’)の化合物の存在下で反応させる。
【0037】
式(II)の化合物と式(III)の化合物との反応は、例えば、触媒量のフェノチアジンと共に、塩基(典型的には炭酸カリウムK2CO3)及びヨウ化カリウムKIの存在下で、DMF等の溶媒の溶液中で行われる。
【0038】
別の好ましい実施態様では、式(II)の化合物は、以下を特徴とする:
Yは、CR’であり;
環Cは、非置換フェニレン、又はアルキル若しくはアルコキシで置換されているフェニレンであり;
Xは、OHであり;
R及びmは、上記の通りである。
【0039】
好ましい実施態様では、式(II)及び(III)の化合物、式(IV)又は(IV’)の化合物を使用しない。
【0040】
式(II)の化合物と式(III)の化合物との反応は、例えば、触媒量のフェノチアジンと共に、塩基(典型的には炭酸カリウムK2CO3)及びヨウ化カリウムKIの存在下で、DMF等の溶媒の溶液中で行われる。
【0041】
より好ましい実施態様では、式(II)の化合物は、
【化7】

から選択される。
【0042】
好ましい実施態様では、本発明に係るプロセスの工程b.は、式(I)の化合物の末端がハロゲン化されたか又はシロキサン部分で置換されたとき、すなわち、
Dが、少なくとも1回ハロゲン化されているか又は1つ以上のシロキサン部分を含有するC〜C12の直鎖又は分枝状のアルキレン鎖である
である場合に行われる。
【0043】
本発明に係る式(I)の繰り返し構造単位を含むアリールアクリル酸エステル光配列ポリマー材料を合成するためのプロセスの条件は、当業者に周知である。
【0044】
更なる実施態様では、本発明は、また、上記プロセスによって得られる化合物、並びに組成物、特に、ホモポリマーとして及び/又はモノマーとして上記のプロセスによって得られた式(I)の化合物を含み、任意選択的に溶媒を含んでもよい製剤又は/及びブレンドに関する。
【0045】
好ましくは、該組成物は、溶媒、例えば、特に非プロトン性又はプロトン性の極性溶媒であるγ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン又はN,N−ジメチルホルムアミド、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、3−ペンタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、1−メトキシプロピルアセテート(MPA)、アルコール類、イソプロパノール、n−ブタノール、ブタン−2−オール、特に、1−メトキシプロパノール(MP)を更に含む。好ましいのは、非プロトン性極性溶媒、特に、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン又はN,N−ジメチルホルムアミド、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、3−ペンタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、1−メトキシプロピルアセテート(MPA)である。
【0046】
式(I)のホモポリマー又は上記プロセスによって得られる化合物は、10,000〜1,000,000、好ましくは20,000〜900,000、より好ましくは50,000〜500,000、更により好ましくは75,000〜400,000、特により好ましくは100,000〜300,000の分子量MWを有する。
【0047】
(M)は、アクリレート、例えば、
【化8】

アクリルアミド、例えば、
【化9】

ビニルエーテル及びビニルエステル、例えば、
【化10】

スチレン誘導体、例えば、
【化11】

シロキサン、例えば、
【化12】

(式中、Rは、水素又は低級アルキルを表す)
である。
【0048】
(M)の好ましい例は、アクリレート、メタクリレート、2−クロロアクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、2−クロロ−アクリルアミド、スチレン誘導体、及びシロキサンである。
【0049】
アクリレート、メタクリレート、スチレン誘導体、及びシロキサンが、特に好ましい(M)である。
【0050】
かなり特に好ましい(M)は、アクリレート、メタクリレート、及びスチレン誘導体である。
【0051】
特に好ましいのは、式(I)の繰り返し構造単位
(式中、n=0であり、
は、アクリレート、メタクリレート、及びスチレン誘導体であり;
環Bは、置換されていないか、又は任意選択的にフッ素原子、塩素原子、シアノ、アルキル若しくはアルコキシで置換されていてもよいフェニレン;ピリジン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、シクロヘキサン−1,4−ジイルを表し;
は、単結合である共有結合、−CO−O−、又は−O−OC−を表し;
は、置換又は非置換の、直鎖又は分枝状の−(CH−、並びに−(CH−O−、−(CH−O−(CH−、−(CH−O−(CH−O−、−(CH−CO−、−(CH−CO−O−、−(CH−O−CO−、−(CH−NR−、−(CH−CO−NR−、−(CH−NR−CO−、−(CH−NR−CO−O−、又は−(CH−NR−CO−NR−(式中、添字「r」は、4〜24、好ましくは5〜12、そして、より好ましくは5〜8、特に6の整数である)であり;そして、
mは、0又は1を表し;
環Cは、置換されていないか、又は任意選択的にフッ素原子、塩素原子、シアノ、アルキル若しくはアルコキシ、好ましくはメトキシで置換されていてもよいフェニレン;あるいは1,4−又は2,6−ナフチレンを表し;
Zは、−O−を表し、そして、
Dは、任意選択的に少なくとも1回ハロゲン化されているか又は1つ以上のシロキサン部分を含有してもよい、C〜Cの直鎖又は分枝状のアルキレン鎖である)
を含むアリールアクリル酸エステル光配列ポリマー材料を含むホモポリマー材料である。
【0052】
更に好ましいのは、式(I)の化合物
(式中、M、S、m、及びnは、上に定義した通りであり;そして、
環Aは、置換されていないか、又は任意選択的にフッ素原子、塩素原子、シアノ、アルキル若しくはアルコキシで置換されていてもよいフェニレン、ピリジン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、シクロヘキサン−1,4−ジイルを表し;
環Bは、置換されていないか、又は任意選択的にフッ素原子、塩素原子、シアノ、アルキル若しくはアルコキシで置換されていてもよいフェニレン;ピリジン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、1,4−又は2,6−ナフチレン、あるいはシクロヘキサン−1,4−ジイルを表し;
、Yは、それぞれ独立して、単結合である共有結合、−CHCH−、−O−、−CH−O−、−O−CH−、−OCF−、−CFO−、CO−O−、又は−O−OC−を表し;
環Cは、置換されていないか、又は任意選択的にフッ素原子、塩素原子、シアノ、アルキル若しくはアルコキシ、好ましくはメトキシで置換されていてもよいフェニレン;あるいはピリミジン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5−ジイル、2,5−フラニレン、あるいは1,4−又は2,6−ナフチレンを表し;
Zは、−O−を表し、そして、
Dは、任意選択的に少なくとも1回ハロゲン化されているか又は1つ以上のシロキサン部分を含有してもよい、C〜Cの直鎖又は分枝状のアルキレン鎖である)
を含む組成物である。
【0053】
本発明に関連して、上記プロセスは、式(I)の繰り返し構造単位
(式中、
、S、及びm、nは、上に定義した通りであり;そして、
環Aは、置換されていないか、又は任意選択的にフッ素原子、塩素原子、シアノ、アルキル若しくはアルコキシで置換されていてもよいフェニレン;ピリジン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、シクロヘキサン−1,4−ジイルを表し;
環Bは、置換されていないか、又は任意選択的にフッ素原子、塩素原子、シアノ、アルキル若しくはアルコキシで置換されていてもよいフェニレン;ピリジン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、1,4−又は2,6−ナフチレン、あるいはシクロヘキサン−1,4−ジイルを表し;
、Yは、それぞれ独立して、単結合である共有結合、−CHCH−、−O−、−CH−O−、−O−CH、−CO−O−、−O−OC−、−CF−O−、又は−O−FC−を表し;
環Cは、置換されていないか、又は任意選択的にフッ素原子、塩素原子、シアノ、アルキル若しくはアルコキシ、好ましくはメトキシで置換されていてもよいフェニレン;あるいはピリミジン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5−ジイル、2,5−フラニレン、あるいは1,4−又は2,6−ナフチレンを表し;
Zは、−O−を表し、そして、
Dは、任意選択的に少なくとも1回ハロゲン化されているか又は1つ以上のシロキサン部分を含有してもよい、C〜Cの直鎖又は分枝状のアルキレン鎖である)
を含むアリールアクリル酸エステル光配列ポリマー材料を含むホモポリマー材料の合成に使用される。
【0054】
特に好ましいのは、式(I)の繰り返し構造単位
(式中、nは0を表し、そして、
及びSは、上に定義した通りであり;そして、
環Bは、置換されていないか、又は任意選択的にフッ素原子、塩素原子、シアノ、アルキル若しくはアルコキシで置換されていてもよいフェニレン;ピリジン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、あるいはシクロヘキサン−1,4−ジイルを表し;
は、単結合である共有結合、−CO−O−、又は−O−OC−を表し;
mは、0又は1を表し;nは0を表し;
環Cは、置換されていないか、又は任意選択的にフッ素原子、塩素原子、シアノ、アルキル若しくはアルコキシ、好ましくはメトキシで置換されていてもよいフェニレン、あるいは1,4−又は2,6−ナフチレンを表し;
Zは、−O−を表し、そして、
Dは、任意選択的に少なくとも1回ハロゲン化されているか又は1つ以上のシロキサン部分を含有してもよいC〜Cの直鎖又は分枝状のアルキレン鎖であり、Dは、特に、少なくとも1回フッ素化されており、更に特には、Dは、フッ素化Cアルキレン鎖であり、更に特には、Dは、2,2,2−トリフルオロ−エチルである)
を含むアリールアクリル酸エステル光配列ポリマー材料を含むホモポリマー材料である。
【0055】
重合については、まず、上記の個々の成分から、繰り返し構造単位を別々に調製する。続いて、紫外線照射又は熱の影響下で、あるいは好ましくはラジカル開始剤又は無機若しくは有機の過酸化物又はイオン性開始剤の作用によって、それ自体公知の方法でポリマーの形成を行う。ラジカル開始剤は、アゾ系、例えば、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビスメチルブチロニトリル(AMBN)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド(AAPH)、1,1’−アゾビス(シアノシクロヘキサン)(ACHN)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)(ACVA)、及び類似の化合物であってよい。無機過酸化物の例は、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、又は過硫酸アンモニウムである。有機過酸化物の例は、過酸化ter−ブチル、過酸化ジクミル、過酸化ラウリル、又はペルオキシカーボナートである。市販の過酸化物の例は、Luperox(登録商標)LP(過酸化ラウロイル)、Luperox(登録商標)DI(過酸化ジ-tertブチル)、又はPerkadox(登録商標)IPP(ジイソプロピルペルオキシジカーボナート)であるが、これらに限定されない。イオン性開始剤は、アルカリ有機化合物、例えば、フェニルリチウム、又はナフチルナトリウム、又はルイス酸、例えば、BF3、AlCl3、SnCl3、若しくはTiCl4である。これらリストは網羅的ではなく、そして、更に他の開始剤も本発明に関連して企図される。モノマーは、溶液、懸濁液、エマルション中で、又は沈殿によって重合させることができるが、これらに限定されない。
【0056】
本発明に係るポリマーの調製において使用される溶媒は、上に定義した通りである。
【0057】
本発明に係るプロセスによって得られる式(I)の化合物を含む組成物、又は式(I)の繰り返し構造単位を含むホモポリマー及び式(I)の少なくとも1つのモノマーを含む組成物を、他の光配列又は非光配列のポリマー、コポリマー、オリゴマー、又はモノマーと更にブレンドしてもよい。
【0058】
本発明に係るプロセスによって得られる式(I)の化合物を含む組成物、又は式(I)の繰り返し構造単位を含むホモポリマー及び式(I)の少なくとも1つのモノマーを含む組成物は、溶媒及び/又は添加剤、例えば、
−シラン含有化合物、又は/及び
−エポキシ含有架橋剤、又は/及び
−光活性添加剤、例えば、光増感剤若しくは光ラジカル生成剤、又は/及び
−カチオン性光開始剤、又は/及び
−界面活性剤、又は/及び
−乳化剤、又は/及び
−酸化防止剤、又は/及び
−レベリング剤、又は/及び
−重合性液晶、又は/及び
−硬化性化合物
を更に含有していてもよい。
【0059】
好適なシラン含有添加剤は、Plast. Eng. 36 (1996), (Polyimides, fundamentals and applications), Marcel Dekker, Inc.に記載されている。
【0060】
好適なエポキシ含有架橋添加剤は、4,4’−メチレン−ビス−(N,N−ジグリシジルアニリン)、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ベンゼン−1,2,4,5−テトラカルボン酸1,2,4,5−N,N’−ジグリシジルジイミド、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、N,N−ジグリシジルシクロヘキシルアミン等を含む。
【0061】
好適な光活性添加剤は、2,2−ジメトキシフェニルエタノン、ジフェニルメタノンとN,N−ジメチルベンゼンアミン又はエチル4−(ジメチルアミノ)ベンゾエートとの混合物、キサントン、チオキサントン、Irgacure(登録商標)184、369、500、651、及び907(BASF)、ミヒラーケトン、トリアリールスルホニウム塩等を含む。
【0062】
硬化性化合物は、有機及び無機の化合物の両方であり、そして、光配列性部分を全く含まない。表面の不均質性を低減し、表面若しくは担体の硬度をより高く、引っ掻き耐性をより高く、又は機械的若しくは化学的磨耗に対する耐性をより高くするために、硬化性化合物を使用して表面又は担体を平坦化する。このような硬化性化合物は、ポリマー、デンドリマー、オリゴマー、及び放射線又は熱のいずれかによって重合し得るプレポリマー及びモノマーを含む。好適なポリマーの分類の例は、ポリアルキレン、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリシクロオレフィンCOP/COC、ポリブタジエン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド酸、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、セルロース、及びセルロース誘導体、例えば、三酢酸セルロースであるが、これらに限定されない。モノマーの好適な分類の例は、一官能性及び多官能性の(メタ)アクリレート、エポキシ、イソシアネート、アリル誘導体、及びビニルエーテルである。
【0063】
本発明に係るプロセスによって得られる式(I)の化合物を含む組成物、又は式(I)の繰り返し構造単位を含むホモポリマー及び式(I)の少なくとも1つのモノマーを含む組成物に、硬化性化合物を添加し得ることは、本発明に包含される。また、本発明に係る配向性層の下又は上に硬化性化合物を層として加えてもよいことも包含される。
【0064】
また、本発明は、本発明に係るプロセスによって得られる式(I)の化合物を含む組成物、又は式(I)の繰り返し構造単位を含むホモポリマー及び式(I)の少なくとも1つのモノマーを含む組成物の、液晶用配向性層を調製するための使用に関する。
【0065】
更に、本発明は、液晶用配向層を調製する方法であって、本発明に係るプロセスによって得られる式(I)の化合物を含む組成物、又は式(I)の繰り返し構造単位を含むホモポリマー及び式(I)の少なくとも1つのモノマーを含む組成物に配列光を照射することを含む方法に関する。
【0066】
好ましくは、該方法は、
−本発明に係るプロセスによって得られる式(I)の化合物を含む組成物、又は式(I)の繰り返し構造単位を含むホモポリマー及び式(I)の少なくとも1つのモノマーを含む組成物を担体に塗布する工程と、
−本発明に係るプロセスによって得られる式(I)の化合物を含む組成物、又は式(I)の繰り返し構造単位を含むホモポリマー及び式(I)の少なくとも1つのモノマーを含む組成物に配列光を照射する工程と、
を含む。
【0067】
特に好ましいのは、一方が配向光を用い、そして、他方は配向光(たとえば等方性光)を用いるか又は用いない2つの照射プロセスを実施する方法である。
【0068】
用語「担体」とは、本発明に関連して使用するとき、好ましくは、透明又は非透明の、複屈折又は非複屈折の、好ましくは、ガラス又はプラスチックの基板、ポリマーフィルム、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリプロピレン、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、シクロオレフィンコポリマー(COP)、又はシリコンウエハであるが、これらに限定されない。担体は、剛性でも可撓性でもよく、そして、凹状又は凸状等の任意の形態又は任意の形状であってよい。担体は、有機層、誘電体層、又は金属層等の追加の層を有していてもよい。該層は、様々な機能を有していてよく、例えば、有機層は、コーティングされる材料の支持体との適合性を高める下塗り層としてコーティングされ得る。金属層(例えば、酸化インジウムスズ(ITO))は、例えばディスプレイ等の電気光学装置において使用されるときに、電極として使用されてもよく、又は反射体としての機能を有していてもよい。また、担体は、例えば薄膜トランジスタ、電極、又はカラーフィルタを含み得る、LCD用の基板等の特定の機能を有する光学素子又は装置であってもよい。別の例では、担体は、OLED層構造を含む装置である。また、担体は、位相差フィルム;偏光子、例えば、偏光フィルム又はシート偏光子;反射偏光子、例えば、市販されているVikuity(商標)DBEFフィルムであってもよいが、これらに限定されない。
【0069】
一般的に、本発明に係るプロセスによって得られる式(I)の化合物を含む組成物、又は式(I)の繰り返し構造単位を含むホモポリマー及び少なくとも1つのモノマーを含む組成物は、当技術分野において公知の一般的なコーティング及び印刷の方法によって塗布される。コーティング方法は、例えば、スピンコーティング、エアドクターコーティング、ブレードコーティング、ナイフコーティング、キスロールコーティング、キャストコーティング、スロットオリフィスコーティング、カレンダコーティング、ダイコーティング、ディッピング、ブラッシング、バーを用いた流延、ローラーコーティング、フローコーティング、ワイヤコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、回転コーティング(whirler−coating)、カスケードコーティング、カーテンコーティング、エアナイフコーティング、ギャップコーティング、ロータリースクリーン、リバースロールコーティング、グラビアコーティング、メータリングロッド(メイヤーバー)コーティング、スロットダイ(押出)コーティング、ホットメルトコーティング、ローラーコーティング、フレキソコーティング、電着コーティングである。
【0070】
印刷方法は、例えば、シルクスクリーン印刷;レリーフ印刷、例えばフレキソ印刷;インクジェット印刷;凹版印刷、例えば直接グラビア印刷若しくはオフセットグラビア印刷;リソグラフ印刷、例えばオフセット印刷;又はステンシル印刷、例えばスクリーン印刷である。
【0071】
担体は、光配列ポリマー材料、あるいは本発明に係るプロセスによって得られる式(I)の化合物を含む組成物、又は式(I)の繰り返し構造単位を含むホモポリマー及び式(I)の少なくとも1つのモノマーを含む組成物、及び/又は光配列性材料の堆積中に移動することができる。例えば、連続ロール・ツー・ロールプロセスで作製が行われるときである。
【0072】
本発明に関連して、用語「配列光」は、光配列性材料において異方性を誘導することができ、そして、少なくとも部分的に直線偏光若しくは円偏光される及び/又は斜め方向から配向性層の表面に入射する光を意味するものとする。好ましくは、配列光は、5:1を超える偏光度で直線偏光される。配列光の波長、強度、及びエネルギーは、光配列性材料及び光配列基の感光性に応じて選択される。典型的には、該波長は、UV-A、UV-B、及び/若しくはUV-Cの域内、又は可視域内である。好ましくは、配列光は、450nm未満の波長の光を含む。より好ましくは、配列光は420nm未満の波長の光を含む。
【0073】
紫外線は、好ましくは、光配列基の吸収に従って選択される、すなわち、フィルムの吸収は、LP-UV照射に使用されるランプの発光スペクトルと、より好ましくは、直線偏光された紫外線と重複していなければならない。使用される強度及びエネルギーは、該材料の感光性及び標的とされる配向性能に応じて選択される。ほとんどの場合、非常に低いエネルギー(数mJ/cm2)で、すでに高い配向品質につながっている。
【0074】
より好ましくは、「配列光」は、少なくとも部分的な直線偏光、楕円偏光、例えば円偏光、又は非偏光、最も好ましくは、斜めに曝露される円偏光若しくは非偏光、又は少なくとも部分的な直線偏光である。特に、最も好ましい配列光は、実質的偏光、特に直線偏光を意味するか;又は配列光は、斜め照射によって印加される非偏光を意味する。
【0075】
配列光が直線偏光の場合、配列光の偏光面は、配列光の伝搬方向及び偏光方向によって画定される平面を意味するものとする。偏光が楕円偏光の場合、偏光面は、光の伝搬方向及び偏光楕円の長軸によって画定される平面を意味するものとする。
【0076】
より好ましくは、配列光は紫外線であり、好ましくは、直線偏光紫外線である。
【0077】
したがって、選択的に面積を制限した領域において配向性層を作製するために、本発明に係るプロセスによって得られる式(I)の化合物を含む組成物、又は式(I)の繰り返し構造単位を含むホモポリマー及び式(I)の少なくとも1つのモノマーを含む組成物を塗布してよい。例えば、まず組成物を調製し、そして、任意選択的に電極でコーティングされていてもよい担体[例えば、酸化インジウムスズ(ITO)で、0.05〜50μmの厚みの均質な層が得られるようにコーティングされたガラス板]上に、スピンコーティング装置内でスピンコーティングしてよい。その後、構造体を形成するために、偏光子及び任意選択的にマスクを使用して、配向される領域を、例えば水銀高圧ランプ、キセノンランプ、又はパルス紫外線レーザーに曝露してよい。曝露の期間は、個々のランプの出力に依存し、そして、数分間〜数時間の間で変動し得る。しかし、光反応は、例えば光反応に好適な放射線のみを通過させるフィルタを使用して、均質な層に照射することによっても行うことができる。
【0078】
本発明の好ましい方法は、時間が重要なパラメータであり、特に、照射時間が重要なパラメータである、配向性層を調製するプロセス、例えば、特にロール・ツー・ロールプロセスに関する。
【0079】
また、本発明は、本発明に係るプロセスによって得られる式(I)の化合物を含む組成物、又は式(I)の繰り返し構造単位を含むホモポリマー及び式(I)の少なくとも1つのモノマーを含む組成物を含む配向層に関する。
【0080】
本発明に係るプロセスによって得られる式(I)の化合物を含む組成物、又は式(I)の繰り返し構造単位を含むホモポリマー及び式(I)の少なくとも1つのモノマーを含む組成物の、液晶用配向性層としての使用、並びに特にハイブリッド層素子を作製するための、非構造化及び構造化光学部品及び電気光学部品及びナノ電気部品におけるその使用も本発明の目的である。更に、該組成物は、透過光可変フィルムにおいて使用することもできる。
【0081】
用語「構造化」とは、偏光配列光の方向を局所的に変化させることによって誘導される、方位角配向におけるばらつきを指す。
【0082】
更に、本発明は、本発明に係る組成物を含む、光学素子、電気光学素子、又はナノ電気素子に関する。
【0083】
このような光学素子、電気光学素子、又はナノ電気素子は、光配列性物体とも呼ばれる。このような光配列性物体は、未公開の出願EP16182085.7及び公開出願WO2015/024810に記載されており、これらは参照により本明細書に組み入れられる。
【0084】
更に、本発明は、本発明に係るプロセスによって得られる式(I)の化合物を含む組成物、又は式(I)の繰り返し構造単位を含むホモポリマー及び式(I)の少なくとも1つのモノマーを含む組成物の、有機化合物又は無機化合物を配列させるための、特に、液晶及び液晶ポリマーを配列させるための配向性層としての使用に関する。
【0085】
また、本発明は、光学、電気光学、又はナノ電気の部品及びシステム、特に、多層システム、又は装置の製造における、本発明に係る配向性層の使用に関し;特に、ディスプレイ導波管、セキュリティ又は商標保護要素、バーコード、光回折格子、フィルタ、3D位相差フィルム等の位相差体、光学補償フィルム、反射偏光フィルム、吸収偏光フィルム、異方散乱フィルム補償器及び位相差フィルム、ねじれ位相差フィルム、コレステリック液晶フィルム、ゲスト−ホスト型液晶フィルム、モノマー波形フィルム(monomer corrugated film)、スメクチック液晶フィルム、偏光子、圧電セル、非線形光学特性を示す薄膜、装飾光学素子、輝度向上フィルム、波長帯選択的補償用コンポーネント、多領域補償用部材、マルチビュー液晶ディスプレイ用部材、色消し位相差板、偏光状態補正/調節フィルム、光学又は電気光学部材、輝度向上フィルム部材、光ベースの通信装置用部材、異方性吸収体を備えるG/H偏光子、反射円偏光子、反射直線偏光子、MC(モノマー波形フィルム)、液晶ディスプレイ、特にねじれネマティック(TN)液晶ディスプレイ、ハイブリッド配列ネマティック(HAN)液晶ディスプレイ、電気的に制御された複屈折(ECB)液晶ディスプレイ、超ねじれネマティック(STN)液晶ディスプレイ、光学的に補償された複屈折(OCB)液晶ディスプレイ、pi−セル液晶ディスプレイ、イン−プレイン・スイッチング(IPS)液晶ディスプレイ、フリンジ・フィールド・スイッチング(FFS)液晶ディスプレイ、垂直配列(VA)液晶ディスプレイ(上記ディスプレイタイプは全て、透過又は反射又は半透過のモードのいずれかで適用)、を調製するための多層システム、または装置の製造における、本発明に係る配向性層の使用に関する。
【0086】
光学、電気光学、又はナノ電気の部品及びシステム、特に、多層システム及び装置は、パターン化されてもよく、パターン化されなくてもよい。
【0087】
パターン化という用語は、好ましくは、複屈折のパターン化、及び/又は厚みのパターン化、及び/又は光学軸配向のパターン化、及び/又は重合度のパターン化を意味する。複屈折とは、異常光線の屈折率と通常光線の屈折率との間の差を意味する。
【0088】
したがって、本発明は、更に、本発明に係るプロセスによって得られる式(I)の化合物を含む組成物、又は式(I)の繰り返し構造単位を含むホモポリマー及び式(I)の少なくとも1つのモノマーを含む組成物を含む、光学、電気光学、又はナノ電気の素子、システム、及び装置に関する。
【0089】
好ましいのは、本発明に係る配向性層と、少なくとも1層の配向可能層、例えば、液晶層又は液晶ポリマー層とを含む光学、電気光学、又はナノ電気の素子、システム、及び装置である。
【0090】
光学部品、光学システム、又は光学装置は、電磁放射を作り出す、操作する、又は測定する。
【0091】
電気光学部品、電気光学システム、又電気光学は装置は、電場によって材料の光学特性を改変することによって動作する。したがって、材料の電磁的(光学的)状態と電気的(電子的)状態との間の相互作用に関係する。
【0092】
配向性層は、スレーブ材料、例えば、ネマティック液晶等の液晶の長軸を、好ましい方向に沿って一直線に整列させる能力を有する。
【0093】
また、本発明は、スレーブ材料を整列させるための、本発明に係る配向性層の使用に関する。「スレーブ材料」は、光配列された材料と接触したときに異方性を確立する能力を有する任意の材料を指すものとする。光配列された材料及びスレーブ材料における異方性の性質は、互いに異なり得る。スレーブ材料の例は、液晶である。このようなスレーブ材料を配向性層上に塗布する。スレーブ材料は、溶媒を用いる、又は溶媒を用いないコーティング及び/又は印刷によって塗布してよく、そして、配向性層全体又はその一部のみに塗布してよい。スレーブ材料は、熱処理又は化学光への曝露によって重合させることができる。重合は、例えば窒素等の不活性雰囲気下、又は真空下で実施してよい。スレーブ材料は、更に、等方性若しくは異方性の色素、及び/又は蛍光色素を含有していてもよい。
【0094】
スレーブ材料は、重合性及び/又は非重合性の化合物を含み得る。本発明に関連して、用語「重合性」及び「重合した」は、それぞれ、「架橋性」及び「架橋した」の意味を含むものとする。同様に「重合」は「架橋」の意味を含むものとする。
【0095】
液晶ポリマー(LCP)材料は、本願に関連して使用するとき、液晶モノマー及び/又は液晶オリゴマー及び/又は液晶ポリマー及び/又は架橋した液晶を含む液晶材料を意味するものとする。液晶材料が液晶モノマーを含む場合、このようなモノマーを重合させてもよく、典型的には、本発明に係る光配列ポリマー材料を含む組成物の光配列ポリマー材料との接触によってLCP材料において異方性が生じた後に、このようなモノマーを重合させてもよい。重合は、熱処理によって、又は化学光(好ましくは紫外線を含む化学光)に曝露することによって、開始させることができる。LCP材料は、1種類の液晶化合物からなっていてもよいが、様々な重合性及び/又は非重合性の化合物の組成物であってもよく、それら化合物の全てが液晶化合物である必要はない。更に、LCP材料は、添加剤、例えば、光開始剤、又は等方性若しくは異方性の蛍光染料及び/若しくは非蛍光染料を含有していてもよい。
【0096】
用語「異方性」又は「異方性の」は、方向に依存した特性を指す。異方性であると、異なる方向において違って見えたり、異なる特徴を有したりし得る。これら用語は、例えば、光吸収、複屈折、導電率、分子配向、他の材料、例えば液晶の配列についての特性、又は機械的特性、例えば弾性率を指し得る。本願に関連して、用語「配列方向」は、異方特性の対称軸を指すものとする。
【0097】
隣接する液晶層の平面配列、傾斜配列又は垂直配列の誘導のために使用することが好ましく;隣接する液晶層における平面配列又は垂直配列の誘導のために使用することがより好ましい。
【0098】
驚くべきことに、工程a.〜d.を含む式(I)の繰り返し構造単位を含むアリールアクリル酸エステル光配列ポリマー材料を合成するためのプロセスは、先行技術に開示されているプロセスを超える経済的向上を示すことが本発明において見出された。更に、該プロセスは、収率が改善されている。更に、重合のために毒性のラジカル阻害剤を使用する必要がなく、そして、重合工程は容易に制御可能でありかつ信頼できる。得られるホモポリマーは、高純度である。本発明に係るプロセスによって得られる式(I)の化合物を含む組成物、又は式(I)の繰り返し構造単位を含むホモポリマー及び式(I)の少なくとも1つのモノマーを含む組成物は、当業者に公知の方法によってホモポリマーとモノマーとの間の量の比を容易に制御することができる。該方法は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を含むが、これらに限定されない。該組成物は、光配列組成物として直接使用することができ、そして、更なる単離及び/又は精製の工程を必要としないという利点を有する。
【0099】
本発明に係るポリマーは、以下の実施例によってより詳細に例示される。
【0100】
実施例
実施例1:
(E)−3−[4−[6−(2−メチルプロパ−2−エノイルオキシ)ヘキソキシ]フェニル]プロパ−2−エン酸の調製
【化13】

4−ヒドロキシベンズアルデヒド 100.0g、炭酸カリウム(粉末) 147.0g、ヨウ化カリウム 12.0g、及びフェノチアジン 0.1gをDMF 500gに懸濁させる。この懸濁液に、6−クロロヘキシル2−メチルプロパ−2−エノエート 176.0gを添加する。次いで、得られた混合物を窒素雰囲気下で90℃に加熱する。90℃で6時間後、反応混合物を20℃に冷却し、そして、Hyfloで濾過する。残った固形分をDMF 100gで洗浄する。得られたDMF溶液を反応器に移す。この溶液に、モルホリン 14.3g及びフェノチアジン 0.1gを添加する。次いで、反応混合物を85℃に加熱し、そして、DMF 270g中マロン酸 170.7gの溶液を4時間にわたって滴下する。この温度で更に4時間撹拌した後、反応混合物を60℃に冷却し、そして、水 300mLを滴下する。混合物を15℃に冷却した後、固形物を濾取して、HPLC純度が>95%の黄色がかった固形物として化合物1を218g得る。
【0101】
1H NMR (300MHz) DMSO-d6 中の化合物 1: 12.05 (s, 1H), 7.61 (d, 2H), 7.49 (d, 1H), 6.94 (d, 2H), 6.35 (d, 1H), 6.01 (t, 1H), 5.65 (t, 1H), 4.09 (t, 2H), 4.00 (t, 2H), 1.87 (m, 3H), 1.72 (m, 2H), 1.63 (m, 2H), 1.41 (m, 4H).
【0102】
実施例2:
6−[4−[(E)−3−オキソ−3−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)プロパ−1−エニル]フェノキシ]ヘキシル2−メチルプロパ−2−エノエートの調製
【化14】

アセトン 150mL中の実施例に従って得られた化合物1 28gに、BHT 0.05g、フェノチアジン 0.05g、及び1,1’−カルボニルジイミダゾール(CDI) 16.4gを添加する。反応混合物を室温(RT)で1時間撹拌する。次いで、2,2,2−トリフルオロエタノール 12.7g、DMAP 1.0g、及びトリメチルアミン 13.0gを該溶液に添加し、そして、RTで更に3時間撹拌する。次いで、反応混合物をHyfloで濾過し、残った固形物をアセトン 50gで洗浄する。濾過した溶液を10℃に冷却し、次いで、水 250gを1時間にわたって滴下すると、沈殿物が形成され、これを更に1時間溶液中で撹拌する。濾過及び洗浄後、HPLC純度が>97%の白色の固形物として化合物2 25gが得られる。
【0103】
1H NMR (300MHz) CDCl3 中の化合物 2: 7.75 (d, 1H), 7.51 (d, 2H), 6.91 (d, 2H), 6.35 (d, 1H), 6.11 (m, 1H), 5.56 (m, 1H), 4.60 (dd, 2H), 4.18 (t, 2H), 4.02 (t, 2H), 1.96 (m, 3H), 1.84 (m, 2H), 1.74 (m, 2H), 1.51 (m, 4H).
【0104】
化合物2の代替的合成:
4−ヒドロキシベンズアルデヒド 400.1g、炭酸カリウム(粉末) 588.4g、ヨウ化カリウム 40.0g、及びフェノチアジン 0.4gをDMF 1600gに懸濁させる。この懸濁液に、6−クロロヘキシル2−メチルプロパ−2−エノエート 710.7gを添加する。次いで、得られた混合物を窒素雰囲気下で85℃に加熱する。85℃で18時間後、反応混合物を20℃に冷却し、そして、Hyfloで濾過する。残った固形分をDMF 400gで洗浄する。得られたDMF溶液を反応器に移す。
【0105】
この溶液に、フェノチアジン 0.6g、BHT 0.6g、プロパン二酸 727.98g、DMF 250g中の1−(2,2,2−トリフルオロエチル)エステル(2,2,2−トリフルオロエタノール及びメルドラム酸の縮合から得られる)、及びモルホリン 114gを添加する。次いで、反応混合物を窒素下50℃で撹拌する。6時間後、反応物をRTに冷却し、次いで、イソプロパノールを添加する。次いで、水を滴下して、橙色の溶液から生成物を沈殿させる。濾過及び洗浄後、HPLC純度が>97%の白色の固形物として化合物2を1080g得る。
【0106】
実施例3:
6−[2−メトキシ−4−[(E)−3−オキソ−3−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)プロパ−1−エニル]フェノキシ]ヘキシル2−メチルプロパ−2−エノエートの調製
【化15】
【0107】
上記代替的合成方法に従って、6−クロロヘキシル2−メチルプロパ−2−エノエートをバニリンと縮合させ、続いて、プロパン二酸、1−(2,2,2−トリフルオロエチル)エステルと縮合させると、HPLC純度が>97%の化合物3が収率78%で合成される。
【0108】
1H NMR (300MHz) DMSO-d6 中の化合物 3: 7.70 (d, 1H), 7.42 (d, 1H), 7.26 (d, 1H), 6.98 (d, 1H), 6.68 (d, 1H), 6.02 (m, 1H), 5.66 (m, 1H), 4.85 (dd, 2H), 4.10 (t, 2H), 4.03 (t, 2H), 3.81 (s, 3H), 1.88 (m, 3H), 1.72 (m, 2H), 1.64 (m, 2H), 1.43 (m, 4H).
【0109】
実施例4:
8−[2−メトキシ−4−[(E)−3−オキソ−3−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)プロパ−1−エニル]フェノキシ]オクチル2−メチルプロパ−2−エノエートの調製
【化16】

化合物3について記載した通り、8−クロロオクチル2−メチルプロパ−2−エノエートを4−ヒドロキシベンズアルデヒドと縮合させ、続いて、プロパン二酸、1−(2,2,2−トリフルオロエチル)エステルと縮合させると、HPLC純度が>97%の化合物4が収率70%で得られる。
【0110】
1H NMR (300MHz) CDCl3 中の化合物 4: 7.73 (d, 1H), 7.47 (d, 2H), 6.91 (d, 2H), 6.35 (d, 1H), 6.09 (m, 1H), 5.56 (m, 1H), 4.57 (dd, 2H), 4.14 (t, 2H), 3.98 (t, 2H), 1.94 (m, 3H), 1.77 (m, 2H), 1.68 (m, 2H), 1.45 (m, 8H).
【0111】
実施例5:
8−[2−メトキシ−4−[(E)−3−オキソ−3−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)プロパ−1−エニル]フェノキシ]オクチル2−メチルプロパ−2−エノエートの調製
【化17】

化合物3について記載した通り、8−クロロオクチル2−メチルプロパ−2−エノエートをバニリンと縮合させ、続いて、プロパン二酸、1−(2,2,2−トリフルオロエチル)エステルと縮合させると、HPLC純度が>95%の化合物5が収率60%で得られる。
【0112】
1H NMR (300MHz) DMSO-d6 中の化合物 5: 7.70 (d, 1H), 7.42 (d, 1H), 7.30 (d, 1H), 7.00 (d, 1H), 6.70 (d, 1H), 6.01 (m, 1H), 5.66 (m, 1H), 4.85 (dd, 2H), 4.10 (t, 2H), 3.99 (t, 2H), 3.80 (s, 3H), 1.87 (m, 3H), 1.72 (m, 2H), 1.61 (m, 2H), 1.33 (m, 8H).
【0113】
実施例6:
[2−メトキシ−4−[(E)−3−オキソ−3−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)プロパ−1−エニル]フェニル]4−(6−プロパ−2−エノイルオキシヘキソキシ)ベンゾエートの調製
【化18】

化合物3について記載した通り、8−クロロオクチル2−メチルプロパ−2−エノエートを(4−ホルミル−2−メトキシ−フェニル)4−ヒドロキシベンゾエートと縮合させ、続いて、プロパン二酸、1−(2,2,2−トリフルオロエチル)エステルと縮合させると、HPLC純度が>93%の化合物6が収率76%で得られる。
【0114】
1H NMR (300MHz) DMSO-d6 中の化合物6: 8.06 (d, 2H), 7.83 (d, 1H), 7.78 (s, 1H), 7.40 (d, 1H), 7.30 (d, 1H), 7.11 (d, 2H), 6.90 (d, 1H), 6.30 (d, 1H), 6.20 (dd, 1H), 5.95 (d, 1H), 4.90 (dd, 2H), 4.10 (m, 4H), 3.83 (s, 3H), 1.77 (m, 2H), 1.65 (m, 2H), 1.44 (m, 4H).
【0115】
実施例7:
6−[4−[(E)−3−オキソ−3−(4,4,4−トリフルオロブトキシ)プロパ−1−エニル]フェノキシ]ヘキシル2−メチルプロパ−2−エノエートの調製
【化19】

実施例2に記載したのと同じ実施手順を使用して、化合物1を1,1,1−トリフルオロ−4−ヨード−ブタンと反応させることによって、化合物7を得る。HPLC純度が>97%の化合物7が白色の固形物として定量的に得られる。
【0116】
実施例8:
6−[4−[(E)−3−メトキシ−3−オキソ−プロパ−1−エニル]フェノキシ]ヘキシル2−メチルプロパ−2−エノエートの調製
【化20】

メチル(E)−3−(4−ヒドロキシフェニル)プロパ−2−エノエートを6−クロロヘキシル2−メチルプロパ−2−エノエートと反応させることによって、実施例1に記載したのと同様の方法によって化合物8を得る。HPLC純度が>97%の化合物8が白色の固形物として定量的に得られる。
【0117】
実施例9〜15:
重合プロセス
実施例2〜8において合成したモノマー化合物 25gをシクロヘキサノン(CHN) 94gと混合し、そして、完全に溶解するまで窒素下で撹拌する。次いで、反応混合物を75℃に加熱し、次いで、Luperox(登録商標)LP(過酸化ラウリル) 0.4gを一度に添加する。次いで、反応混合物を75℃で5時間維持し、次いで、温度を100℃まで上昇させる。100℃で1時間後、反応混合物をRTに冷却し、次いで、濾過して、CHN溶液中のポリマーを定量的に得る。得られたポリマー溶液を光配列組成物と呼ぶ。
【0118】
実施例9:
ポリ−6−[4−[(E)−3−オキソ−3−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)プロパ−1−エニル]フェノキシ]ヘキシル2,2−ジメチルブタノエートポリマー1の調製
【化21】

上記重合プロセスに従って、ポリマー1(Mw=151000及びMn=41800)及びそのモノマー化合物2を90.6%:9.4%の比(GPCによって測定)で含有する光配列組成物1を得る。
【0119】
実施例10:
ポリ−6−[4−[(E)−3−オキソ−3−(4,4,4−トリフルオロブトキシ)プロパ−1−エニル]フェノキシ]ヘキシル2,2−ジメチルブタノエートポリマー2の調製
【化22】

上記重合プロセスに従って、ポリマー2(Mw=138000及びMn=44600)及びそのモノマー化合物7を90.5%:9.5%の比(GPCによって測定)で含有する光配列組成物2を得る。
【0120】
実施例11:
ポリ−6−[4−[(E)−3−メトキシ−3−オキソ−プロパ−1−エニル]フェノキシ]ヘキシル2−メチルプロパ−2−エノエートポリマー3の調製
【化23】

上記重合プロセスに従って、ポリマー3(Mw=176700及びMn=39900)及びそのモノマー化合物8を91.8%:8.2%の比(GPCによって測定)で含有する光配列組成物3を得る。
【0121】
実施例12:
ポリ−6−[2−メトキシ−4−[(E)−3−オキソ−3−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)プロパ−1−エニル]フェノキシ]ヘキシル2−メチルプロパ−2−エノエートポリマー4の調製
【化24】

上記重合プロセスに従って、ポリマー4(Mw=160700及びMn=59500)及びそのモノマー化合物3を90.7%:9.3%の比(GPCによって測定)で含有する光配列組成物4を得る。
【0122】
実施例13:
ポリ−8−[2−メトキシ−4−[(E)−3−オキソ−3−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)プロパ−1−エニル]フェノキシ]オクチル2−メチルプロパ−2−エノエートポリマー5の調製
【化25】

上記重合プロセスに従って、ポリマー5(Mw=131600及びMn=53200)及びそのモノマー化合物4を89.4%:10.6%の比(GPCによって測定)で含有する光配列組成物5を得る。
【0123】
実施例14:
ポリ−8−[2−メトキシ−4−[(E)−3−オキソ−3−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)プロパ−1−エニル]フェノキシ]オクチル2−メチルプロパ−2−エノエートポリマー6の調製
【化26】

上記重合プロセスに従って、ポリマー6(Mw=212100及びMn=66100)及びそのモノマー化合物5を92.3%:7.7%の比(GPCによって測定)で含有する光配列組成物6を得る。
【0124】
実施例15:
ポリ−[2−メトキシ−4−[(E)−3−オキソ−3−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)プロパ−1−エニル]フェニル]4−(6−プロパ−2−エノイルオキシヘキソキシ)ベンゾエートポリマー7の調製
【化27】

上記重合プロセスに従って、ポリマー7(Mw=228000及びMn=32900)及びそのモノマー化合物6を99.1%:0.9%の比(GPCによって測定)で含有する光配列組成物7を得る。
【0125】
実施例16〜22:
光配列溶液の調製
実施例16:
PAS1の調製
メトキシプロピルアセテート 85重量%に光配列組成物1の15重量%を添加し、混合物を室温で30分間撹拌することによって、溶液PAS1を調製する。
【0126】
実施例17:
PAS2の調製
メトキシプロピルアセテート 85重量%に光配列組成物2の15重量%を添加し、混合物を室温で30分間撹拌することによって、溶液PAS2を調製する。
【0127】
実施例18:
PAS3の調製
メトキシプロピルアセテート 85重量%に光配列組成物3の15重量%を添加し、混合物を室温で30分間撹拌することによって、溶液PAS3を調製する。
【0128】
実施例19:
PAS4の調製
メトキシプロピルアセテート 85重量%に光配列組成物4の15重量%を添加し、混合物を室温で30分間撹拌することによって、溶液PAS4を調製する。
【0129】
実施例20:
PAS5の調製
メトキシプロピルアセテート 85重量%に光配列組成物5の15重量%を添加し、混合物を室温で30分間撹拌することによって、溶液PAS4を調製する。
【0130】
実施例21:
PAS6の調製
メトキシプロピルアセテート 85重量%に光配列組成物6の15重量%を添加し、混合物を室温で30分間撹拌することによって、溶液PAS6を調製する。
【0131】
実施例22:
PAS7の調製
メトキシプロピルアセテート 85重量%に光配列組成物7の15重量%を添加し、混合物を室温で30分間撹拌することによって、溶液PAS7を調製する。
【0132】
適用例
実施例23:下塗りコーティングされた基板の調製
三酢酸セルロース(TAC)箔に、Kbarコーター(バーサイズ1)を用いて下塗り溶液(DYMAX OC-4021、80% 酢酸ブチル中20重量% 固形物含量)をコーティングした。濡れているフィルムを80℃で30秒間乾燥させたところ、得られた乾燥フィルムの厚みは約2μmになった。次いで、乾燥フィルムを紫外線(1500mJ、窒素雰囲気下)に曝露した。
【0133】
実施例24:光配列溶液(PAS)を使用した配向層の調製
実施例23の下塗りコーティングされたTAC基板に、光配列溶液(PAS)をKbarコーティング(バーサイズ0)した。濡れているフィルムを80℃で30秒間乾燥させたところ、乾燥フィルムの厚みは約100nmになった。次いで、10〜100mJ/cm2の様々な曝露エネルギーを有する平行かつ直線偏光とした紫外線(LPUV)(280〜320nm)である配列光に該乾燥フィルムを曝露した。偏光面は、TAC基板上の参照縁部に対して0°であった。
【0134】
実施例25:配向層によって配列されたLCP層の作製
酢酸n−ブチル 80%及びシクロヘキサノン 20%の溶媒混合物 65重量%に、35重量%の
98.525% LCC1
1.00% Irgacure 907(BASF)
0.20% Tinuvin 123(BASF)
0.25 Tegoflow 300(Evonik)
0.025% BHT(Sigma Aldrich)
を溶解させ、そして、混合物を室温で30分間撹拌することによって、溶液S-LCC1を調製する。
【0135】
LCC1は、以下の構造を有する:
ペンチル2,5−ビス[[4−(6−プロパ−2−エノイルオキシヘキソキシ)ベンゾイル]オキシ]ベンゾエート
【化28】

LCP溶液S-LCC1をKbarコーティング(バーサイズ1)することによって、実施例24の配向層上にLCP層を作製する。湿潤層を50℃で60秒間乾燥させ、その後、30mW/cm2のUV-A光に50秒間曝露することによって、窒素雰囲気下において室温で液晶を架橋させる。
【0136】
配向の評価
効率的な製造プロセスのためには、配向層によって配列されるLCP層において、十分に目視で認識でき、均質な(目に見える欠陥の全くない)コントラストを達成するために、光配列層がどのくらいの曝露エネルギーを必要とするかを知ることが重要となる。作製されたフィルムを、交差している偏光子間で分析した。
【0137】
配列品質を以下の通りランク付けした:
・ ▲▲非常に良好な配列、均質な配向
・ ▲良好な配向(回位線(DL)の領域がコーティング領域の<1%)
・ ○幾つかのDL(コーティング領域の1<<5%)
・ ×DLが目視で認識できる。(コーティング領域の>5%)
・ ××不均質な配向又は配向無し。
【0138】
結果
以下の順序で光学装置を作製した:下塗りコーティングされた基板(実施例23で作製)に、PAM材料(実施例24に記載)を使用した配向層をコーティングし、そして、LCP層(実施例25に示す)を配列させた。様々な曝露エネルギーを使用して、PAM材料を配向した。結果の概要を以下の表に示す。
【0139】
【表1】
【国際調査報告】