特表2020-530841(P2020-530841A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2020-530841紫外線を赤色波長へ変換するリンベースの日焼け止め
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-530841(P2020-530841A)
(43)【公表日】2020年10月29日
(54)【発明の名称】紫外線を赤色波長へ変換するリンベースの日焼け止め
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/19 20060101AFI20201002BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20201002BHJP
   A61K 8/26 20060101ALI20201002BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20201002BHJP
【FI】
   A61K8/19
   A61Q17/04
   A61K8/26
   A61K8/25
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2020-507626(P2020-507626)
(86)(22)【出願日】2017年9月26日
(85)【翻訳文提出日】2020年3月6日
(86)【国際出願番号】TR2017050448
(87)【国際公開番号】WO2019032059
(87)【国際公開日】20190214
(31)【優先権主張番号】2017/11917
(32)【優先日】2017年8月11日
(33)【優先権主張国】TR
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】520043796
【氏名又は名称】ドクズ エイリュル ユニヴェルシテシ レクトルリューユ
【氏名又は名称原語表記】DOKUZ EYLUL UNIVERSITESI REKTORLUGU
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エルテキン,カドリエ
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB211
4C083AB371
4C083AC031
4C083AC071
4C083AC101
4C083AC121
4C083AC151
4C083AC241
4C083AC251
4C083AC421
4C083AC531
4C083AC641
4C083AC841
4C083AD271
4C083AD531
4C083AD571
4C083AD621
4C083AD661
4C083BB11
4C083BB44
4C083BB47
4C083BB48
4C083CC04
4C083CC05
4C083CC19
4C083DD08
4C083DD11
4C083DD21
4C083DD23
4C083DD31
4C083EE17
4C083FF01
(57)【要約】
本発明は、皮膚用の高度に光安定性の蛍光体ベースの日焼け止め組成物に関する。一般的に、日焼け止め組成物は、酸化防止剤、ビタミン、抗炎症剤、およびそれらの混合物などの他の皮膚保護成分と共に、植物抽出物または有機的に合成された分子で構成される有効量の1つ以上のUV−BまたはUV−A/UV−Bフィルターを含む。本発明は、異なる原理で機能し、厳密なUV保護を提供するだけでなく、UV線を赤色光に変換して、皮膚にさらなる利益を提供する。本発明で利用される好適なUV保護剤には、特に赤色発光蛍光体で構成される1つ以上の蛍光体を含む。与えられる皮膚保護組成物は、任意に、酸化防止剤、抗炎症剤、および抗菌剤、柔軟剤、増粘剤、ならびにそれらの混合物などの適切な量の1つ以上の皮膚保護成分を含んでもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Eu−SmドープGdYEu(MoO4)3、MnドープMg14Ge5O24、EuドープCaAlSiN3、Euドープ(Sr,Ca)AlSiN3、Ceドープ(LaY)3Si6N11、CeドープLu3Al5O12、またはそれらのブレンドから選択される少なくとも1つの蛍光体および少なくとも1つの賦形剤を含むことを特徴とする日焼け止め組成物。
【請求項2】
Euでドープされた(Sr,Ca)AlSiN3、ならびに/もしくはEuおよびSmでドープされたGdYEu(MoO4)3、ならびにMnでドープされたMg14Ge5O24、EuでドープされたCaAlSiN3、ならびに/もしくはCeでドープされた(LaY)3Si6N11もしくはCeでドープされたLu3Al5O12、またはそれらのブレンドを含む有効日焼け止め剤が、日光に曝露されるとすぐに活性化される、請求項1に記載の光安定性日焼け止め組成物。
【請求項3】
天然油、増粘剤、乳化剤、構造化剤、および保湿剤から選択される化粧品賦形剤が、脱イオン水、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、グリセリン、セチルアルコールおよびグリセリルステアレート、オレイン酸(C18:1)、リノール酸(C18:2.パルミチン酸(C16:0)、ステアリン酸(C18:0)、リノレン酸(C18:3)(特にアルファ−リノレン酸)、パンテノール、酢酸トコフェリル、レチノール、レシチン、EDTA二ナトリウム、マスチン酸、およびタンニン、三環式、四環式、五環式トリテルペン酸、ならびにイソプロピルアルコール、スチレン、シンナミルアルコール、およびα−ピネンを含むアルコールを含む、請求項1に記載の日焼け止め配合物。
【請求項4】
不溶性紫外線吸収剤が、Euでドープされた(Sr,Ca)AlSiN3、ならびに/もしくはEuおよびSmでドープされたGdYEu(MoO4)3、および/もしくはMnでドープされたMg14Ge5O24、EuでドープされたCaAlSiN3、および/もしくはCeでドープされた(LaY)3Si6N11、および/もしくはCeでドープされたLu3Al5O12、またはそれらのブレンドである、請求項1に記載の組成物、
【請求項5】
前記蛍光体のサイズが、100nm〜50.0μmの範囲であり得る、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記CaAlSiN3または(SrCa)AlSiN3の量が、前記全組成物の0.001重量%〜10,000重量%の範囲である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記GdYEu(MoO4)3におけるEuおよびSmの酸化状態が、それぞれEu3+およびSm3+である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記GdYEu(MoO4)3の量が、前記全組成物の0.001重量%〜1.000重量%の範囲である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記Mg14Ge5O2の量が、前記全組成物の0.001重量%〜1.000重量%の範囲である、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記CeドープLu3Al5O12またはCeドープ(LaY)3Si6N11の量が、前記全組成物の0.001重量%〜1.000重量%の範囲である、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記マスチック酸、ならびに三環式、四環式、および五環式トリテルペン酸およびアルコール、より具体的にはα−テルピネオール、p−シメン−8−オール、ミルテナール、p−シメン、リモネン、(E)−カルベオール、2−ウンデカノン、α−およびβ−カリオフィレン、カリフィレンオキシド、ならびに(E)−Meイソオイゲノールの量が、前記全組成物の0.001重量%〜1.000重量%の範囲である、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記オレイン酸(C18:1)、リノール酸(C18:2.パルミチン酸(C16:0)、ステアリン酸(C18:0)、リノール酸(C18:3)(具体的には、アルファリノレン酸)の量が、前記全組成物の0.001重量%〜5.000重量%の範囲である、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
レチノール、酢酸トコフェリル、およびタンニン三環式、四環式、および五環式トリテルペン酸を含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
油、皮膜形成剤、酸化防止剤、抗菌剤、オリエンタリススイートガムを含む増粘剤、レシチンを含む乳化剤、EDTAを含む安定剤およびpH調整剤、デクスパンテノールを含む柔軟剤および湿潤剤をさらに含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
着色クリーム、ミルク、固形スティック、ローション、美容液、またはスプレーの形態である、請求項1に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、以前に商業化された製品とは異なる機構で太陽のUV線から皮膚を保護および改善するための蛍光体ベースの高度に光安定性の日焼け止め組成物に関する。より具体的には、蛍光体ベースの有効成分は、電磁放射線のUV部分を吸収する一方、UV線を皮膚に非常に有益な赤色波長に変換する。
【背景技術】
【0002】
太陽は、紫外線(UV)、可視(Vis)、および赤外線(IR)成分を含む様々な強度で、広範囲の波長にわたって放射線を放射する。太陽光のUV部分は、太陽の全放射線の約9.0%を構成し、UV−A(315〜400nm)、UV−B(280〜315nm)、およびUV−C(100〜280nm)としてさらに分類できる。大気は、ほとんどすべての最も活発な部分;UV−AおよびUV−BではなくUV−Cをろ過する。一方、地球上に住んでいる人間は必然的に日光に曝露される。したがって、日光への曝露は広範囲に影響を及ぼす。
【0003】
UV−Aは、皮膚の上層に浸透し、メラニン色素を活性化する望ましくない光毒性効果を引き起こす可能性がある。UV−Bは、より短い波長で、主に表皮に効果的である。全体的なUV線は、コラゲナーゼのようないくつかの二次化学物質の製造、DNA損傷、中程度の皮膚熱傷、浮腫、光による老化、色素沈着過剰、および皮膚がんを引き起こす活性酸素種(またはより一般的にはフリーラジカル)の形成を含む、望ましくない短期および長期の影響を引き起こす可能性がある。したがって、望ましくない影響を最小限に抑えるために、太陽から肌を効果的に保護することが不可欠である。今日、多種多様な日焼け防止製品が商品化され、特許を取得している。しかしながら、利用可能な製品の既存の化学物質含有量の副作用を考慮して、より効率的で光安定性のある配合物を開発するには、日焼け止めのさらなる研究が必要である。
【0004】
有効な日焼け止め成分
日焼け止めは、UV線の有害な影響から光防護を提供する際に不可欠なツールであると考えられている。今日、多種多様な配合物が太陽のUV−AおよびUV−Bから皮膚を保護するために提供された。それらのほとんどは、酸化防止剤、ビタミン、増粘剤、乳化剤、防腐剤、ポリマーおよび架橋剤、ならびに製品の化粧品特性を改善するためのUVフィルターと共に他の多くの添加剤を含有する。しかしながら、日焼け止めの基本的な役割は、UVから最高の保護を提供することである。UVフィルターは、2つの主要なグループ;「吸収」有機分子、および「吸収または反射」顔料タイプの無機材料に分類できる。
【0005】
この文脈において、先行技術の多くの報告は、日焼け止め組成物の保護効率を促進するための両タイプのUVフィルターの使用を記載している。例えば、この目的に利用される「有機分子」は、主に芳香環構造またはカルボニル基と共役した縮合環を含有する。
【0006】
それらのいくつかは、p−アミノ安息香酸、オキシエチレン、p−アミノベンゾエート、2−エチルヘキシルp−ジメチルアミノベンゾエート、エチルN−オキシプロピレンp−アミノベンゾエート、およびグリセロールp−アミノベンゾエートを含むパラアミノベンゾエート(PABA)、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−4’−メトキシベンゾフェノンを含むベンゾフェノン、4−イソプロピルベンジルサリチレートをカバーするサリチレート、アントラニレート、およびカンファー誘導体、ならびにジベンゾイルメタンである。それらを除いて、3−(4’−トリメチルアンモニウム)−ベンジリデン−ボルナン−2−オンメチルスルホネート、2−エチルヘキシル4−メトキシシンナメート、メチルジイソプロピルシンナメート、イソアミル4−メトキシシンナメート、ジエタノールアミン4−メトキシシンナメートを含むシンナメート、および2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホネート、−(2−オキソボルン−3−イリデン)−トリル−4−スルホン酸および可溶性塩、3−(4’−スルホ)ベンジリデン−ボルナン−2−オンおよび可溶性塩、3−(4´メチルベンジリデン)−d,l−カンファー、ならびに3−ベンジリデン−d,l−カンファーがあり得る。アボベンゾン以外のジベンゾイルメタン誘導体のいくつかの例には、(2−メチルジベンゾイルメタン、4−メチルジベンゾイルメタン、4−イソプロピルジベンゾイルメタン、4−tert−ブチルジベンゾイルメタン、2,4−ジメチルジベンゾイルメタン、2,5−ジメチルジベンゾイルメタン、4,4’−ジイソプロピルジベンゾイルメタン、4,4−ジメトキシジベンゾイルメタン、2−メチル−5−イソプロピル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、2−メチル−5−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、2,4−ジメチル−4’−メトキシジベンゾイルメタンおよび2,6−ジメチル−4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、またはそれらの混合物が含まれる[Cosmetic compositions comprising a structuring agent,silicone powder and swelling agent,特許文献1]。
【0007】
ベンゾフェノン誘導体、ジベンゾイルメタンおよびアントラニレートは、主に放射線のUV−A部分を吸収するが、シンナメート、カンファー、PABA誘導体およびサリチレートは、UV−Bを吸収する[非特許文献1]。生産者は、UV線全体に対する完全な保護を提供するために、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸、オクトクリリエ、エチルリエキシルトリアゾン、5−メチル−2−フェリルベンゾオキサゾールなどのような二機能性有機分子、または配合物中の上記の分子のその他の形態を使用することがある。
【0008】
一方、顔料タイプのフィルターの数は、より制限されており、二酸化チタンおよび酸化亜鉛がそれらの最も便利な例である。TiO2およびZnOの無機化学吸収剤のサブミクロンサイズの粒子および超微粉末は、マイクロスケールの形態に対して優れた日焼け防止能力を示す。メラニンは、生物学的日焼け止め剤として顔料形態の中でも言及されるべきである。
【0009】
今日、両タイプのフィルター(有機物および無機物)は、日焼け防止配合物の有効成分として効果的に使用されている。しかしながら、それらの長期的な副作用は、研究対象であり、今日、多くの研究が発表されている。さらに、その安全性および有効性に関して多くの議論が展開されている。したがって、効果的で非毒性の日焼け止め配合物の製造は、依然として課題であり、この方向への取り組みは、依然として進行中である。
【0010】
ほとんどのUVフィルターは、皮膚のバリアを浸透可能な化合物であり、さらにそれらは、生体蓄積性である。多くの日常使用製品におけるこれらの化合物の広範な用途のために、環境中の蓄積は、大きな懸念の別の問題になりつつある。実験的研究は、有機フィルターの皮膚吸収を明らかにする。大人がベンゾフェノン−3、4−メチルベンジリデンカンファー、およびオクチルメトキシシンナメートからなる日焼け止め配合物を適用した場合、適用後3〜4時間で、女性では、200、20、および10ng/mLの最大血漿濃度、ならびに男性では、300、20、および20ng/mLの最大血漿濃度が、それぞれ測定されている[非特許文献2]。
【0011】
高親油性日焼け止め成分の有意な濃度;4−メチルベンジリデンカンファーを、胎盤を含むヒト組織で測定した[非特許文献3]。
【0012】
4−メチルベンジリデンカンファーを繰り返し(4日間)局所適用すると、尿中濃度および血漿レベルはそれぞれ4ng/mLおよび18ng/mLになった[非特許文献4]。
【0013】
有機日焼け止め4−メチルベンジリデン−カンファーとヒトおよびラット細胞中のエストロゲン受容体との相互作用は、別の調査の対象である[非特許文献5]。
【0014】
オクチルメトキシシンナメート、ベンゾフェノン−3および−4、4−メチルベンジリデンカンファー、3−ベンジリデンカンファーおよびオクトクリレンのいくつかの有機フィルター、ならびに2つの無機フィルターの神経毒性効果;酸化亜鉛および二酸化チタンは、最近の研究で議論されている[非特許文献6]。
【0015】
動物で行われた異なる毒物学的研究は、いくつかの有機UVフィルターが有意なエストロゲンおよび抗甲状腺効果を有することを示唆している。小さなTiO2粒子は、85個の生化学的代謝産物を変化させるミトコンドリア機能に深刻な影響を与え、これらの多くは、細胞ストレス応答に関連している[非特許文献7]。
【0016】
ZnOおよびTiO2はどちらもUV誘起光触媒活性を示し、これは、活性酸素種を誘発し、ヒト細胞を損傷する[非特許文献8]。
【0017】
皮膚浸透性だけでなく、UVフィルターの光安定性も議論の話題である。UV誘発日焼け止めが、フリーラジカルを形成する分解プロセスを経ることにより、皮膚保護を低下させ、その結果、グルタチオンおよびスーパーオキシドジスムターゼの低下などの抗酸化防御機構の枯渇により皮膚の酸化ストレスを誘発するという証拠がある。この関連で、照射時の市販の日焼け止め配合物の生物学的効果を考慮すべきである。
【0018】
ジベンゾイルメタン誘導体[特許文献2:Sunscreen compositions containing a dibenzoylmethane derivative,特許文献3:Photostable sunscreen compositions containing dibenzoylmethane derivative,e.g.,parsol(登録商標)1789,and diesters or polyesters of naphthalene dicarboxylic acid photostabilizers and enhancers of the sun protection factor(spf)]、ベンゾフェノン[特許文献4:Sunscreen formulation containing triethanolamine neutralized 2−hydroxy−4−methoxy−benzophenone−5−sulfonic acid,特許文献5:Sunscreen compositions and methods of use,特許文献6:Sunscreen compositions,:Stabilization of sunscreens in cosmetic compositions]、酸化亜鉛[特許文献8:Sunscreen composition,特許文献9:Stable sunscreen compositions containing zinc oxide]、二酸化チタン[:Titanium dioxide hydrogel and sunscreen composition containing it:Sunscreen compositions for application to plants]、または酸化亜鉛と二酸化チタンとの複合形態[特許文献12:Benzoyl Peroxide and Sunscreen Agent Combination]、フェルラ酸アミド、ならびに多価金属の塩を含むいくつかの特許が譲渡されている。上記の議論に照らして、より毒性が低く、より安定した日焼け止め配合物の製造が必要である。
【0019】
一方、フォトルミネセンス無機蛍光体の優れた吸収および調整可能な発光特性は、周知である。異なる蛍光体は、異なる発光能力を有し、紫外光または可視光で励起されると、高品質の光スペクトルが製造される。特に、希土類イオンをドープした材料は、その高いUV吸収能力およびさらなる波長での発光能力のために大きな注目を集めている。無機蛍光体の使用は、センサー技術、シンチレーター、照明、LEDおよびディスプレイ技術、レーザーならびに同様の製品における幅広い応用が見出されているが、医学研究および薬局でのその使用は、細胞イメージングの取り組みに限定されている。2012年12月のBickfordらによって発行された特許文献13は、皮膚刺激による治癒および/または再生特性に起因する近赤外(NIR)発光蛍光体の使用を開示している。蛍光体には、MgSiO3:Eu2+、Dy3+、Mn2+;Eu+2、Dy+3、Mn2+でドープしたCa0.2Zn0.9Mg0.9Si2O6;SrAl2O4:Eu2+、Dy3+、Er3+;La3Ga5Ge3O14:Li+、Zn2+、Ca2+、Mg2+、およびDy3+などの共ドーパントの有無にかかわらずCr3+;Ln3Ga2Ge4O14:Cr3+(Ln=Y、Gd、La、またはLu);LiGa5O8:Cr3+;M3Ga2Ge4O14:Cr3+(M=SrまたはCa);La3Ga5SiO14:Cr3+;La3Ga5.5Nb0.5O14:Cr3+;La3Ga5GeO14:Cr3+;Gd3Ga5O12:Cr3+;およびZnxGayGezO(x+(3y/2)+2z):共ドーパントの有無にかかわらずtCr3+が含まれる。しかしながら、与えられた配合物は、日焼け止めとはみなされていない。本発明者たちの知る限りでは、蛍光体を有効日焼け止め剤として使用した研究は報告されていない。
【0020】
日焼け止め組成物中の他の成分
皮膚軟化剤は、皮膚を柔らかくし、水分を封じ込め、表面上に閉塞性の保護バリアを作る化粧品成分である。それらは、皮膚軟化剤のエステルおよび油、ワックス材料、炭化水素、高級脂肪酸およびアルコール、ならびにシリコーンに分類され得る。
【0021】
天然由来のエステル、より具体的にはトリグリセリドおよびラノリンは、日焼け止めを含む化粧品の添加剤として広く使用されている。オリーブ油、ヒマシ油、ゴマ油、ヒマワリ、小麦胚芽、カボチャの種、アーモンド油、ホホバ油、およびココナッツ油が第1のグループの例である。オリーブ油の主要な脂肪酸は、オレイン酸(C18:1)、モノ不飽和オメガ9脂肪酸である。それは、オリーブ油の55〜83%を占める。リノール酸(C18:2)、オリーブ油の約3.5〜21%を占めるポリ不飽和オメガ6脂肪酸。パルミチン酸(C16:0)、オリーブ油の7.5〜20%を占める飽和脂肪酸。ステアリン酸(C18:0)、オリーブ油の0.5〜5%を占める飽和脂肪酸。リノレン酸(C18:3)(より具体的にはアルファリノレン酸)、オリーブ油の0〜1.5%を占めるポリ不飽和オメガ3脂肪酸。同様に、ゴマ油は、多量のオレイン酸(35〜50%)およびリノール酸(35〜50%)、ならびに少量または微量のパルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、およびエイコセン酸を含有する。さらに、皮膚に容易に浸透する。蜜蝋(セリル16−ヒドロキシパルミテート、トリアコンタニルパルミテート、ミリシルパルミテート、セチルパルミテート)ならびにカンデリラワックス(炭化水素(C31H64)およびC16−C34脂肪酸)は、蝋状物質の例である。パラファインおよびスクアランならびにセチルステアリルアルコールは、それぞれ炭化水素およびアルコールの例である。高級脂肪酸の例としては、ローリー、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、およびイソステアリン酸があり得る。グリセリルステアレート、レシチン、ポリグリセリルオレエート、グリコールジステアレート、シアバターグリセライド、PEG−7グリセリルココエート、ヒマシ油から作製されたエトキシ化ポリエチレングリコールエステル、ならびにC18ステアリルアルコールおよびC16セチルアルコールは、日焼け止め組成物の乳化剤として使用され得る。
【0022】
酸化防止剤
酸化防止剤:フリーラジカル形成は、皮膚の老化に重要な影響を与えることが認められている。「活性酸素種」としても知られるフリーラジカルは、不対電子のホストであり、脂質、タンパク質、およびDNAのような種々の細胞構造にとって有害である。太陽からのUV光は、光化学反応を形成する同様の機構を通じてDNA損傷を生成すると推定されている。酸化防止剤は、ある種の細胞損傷を防止または遅延させ得る。したがって、「酸化防止剤」は、化粧製品に広く使用されている。ここで言及した酸化防止剤は、その局所効果によりフリーラジカルと戦うものである。酸化防止剤の例には、天然由来の植物抽出物、特にフラボノイド、ブチル化ヒドロキシトルエン、カフェイン、カフェ酸、ビタミンC(アスコルビン酸)およびその安定化形態のアラニン、一部の藻類、ビタミンE(アルファ−トコフェロール)、特定のアミノ酸(アラニン、アルギニン、アスパラギン)、アントシアニジン、アルガンオイルの一部の成分、アスパラギンおよび誘導体、ベータグルカン、多糖類、ベータカロチン、キトサン、シナモン、コエンザイムQ10、クルクミン、ガンマリノレン酸(GLA)、L−システイン、グルタチオン、ヘスペリジン、緑茶抽出物、ハイビスカス(ローズヒップ)抽出物、リノール酸、リコピン、ルテイン、パームカーネルオイル、オリーブ油、プロポリス、カボチャ種子油、スピルリナ、タンニン酸、ティーツリーオイル、およびテトラヘキシルデシルアスコルベートが含まれる。
【0023】
乳化剤
化粧品製剤には、2つの非混和性液相(油および水)があり得、各相は、通常、種々の貴重な成分を含有する。乳化剤は、これらの成分を一緒にブレンドして、保有する。いくつかのスキンケアで一般的に使用される乳化剤は、グリセリルステアレート、PEG−100ステアレート、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ラウレス−23、ステアレスアルコール、セチル/PEG/PPG10ジメチコン、およびステアリン酸である。
【0024】
脂肪酸は、種々の天然油および合成油とのその混和性のため、乳化剤の重要な成分である。
【0025】
それらは、オリーブ油、ヒマワリ、ココナッツ、ヤシ、穀粒、小麦胚芽などの天然油由来であり得る。それらは、薄い配合物をより粘稠にする増粘剤として、時には油および水の安定した混合物を調製するための二次乳化剤として、ならびに得られる生成物をより豪華に見せるための不透明化剤としても言及されている。
【0026】
構造化剤
構造化剤は、単に「水相構造化剤」および「油相構造化剤」として分類され得る。それらはまた、材料の発生に応じた分類を含む多くの異なる方法で、「自然」および「合成」として分類され得る。
【0027】
ヒドロキシエチルセルロース、アガロース、ヒアルロン酸、アルギン、アルギン酸、アカシアゴム、アミロペクチン、キチンの修飾型、デキストラン、カッシアゴム、セルロースゴム、ゼラチン、ペクチン、およびキサンタンゴムは、天然由来形態の例である。カルボキシメチルセルロース、アクリル酸、メタクリル酸、および混合物、アクリルコポリマー、アクリレートコポリマーおよびその架橋形態、様々なポリエチレングリコール(PEG)、ならびにポリグリセリンが、合成高分子増粘剤の例としてあり得る。水相および油相の両方の構造化剤は、同じ原理でブレンドの粘度を所望の値に増加させる働きをする。構造化剤は、光学特性の観点から日焼け止めに適切なマトリックス材料であるべきであり、配合物の他の成分と適合性がなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
【特許文献1】米国特許第7,749,524B2号公報
【特許文献2】米国特許第6,444,195B1号公報
【特許文献3】国際公開2000/057850A1号公報
【特許文献4】米国特許第3,670,074A号公報
【特許文献5】米国特許第7,001,592B1号公報
【特許文献6】米国特許第7,416,719B2号公報
【特許文献7】カナダ国特許公開2468228A1号公報
【特許文献8】米国特許第6,464,965B1号公報
【特許文献9】米国特許公開20060280702A1号公報
【特許文献10】国際公開WO1996/037560A1号公報
【特許文献11】カナダ国特許公開2741872C号公報
【特許文献12】米国特許公開20110070174A1号公報
【特許文献13】米国特許第8,852,616B2号公報
【非特許文献】
【0029】
【非特許文献1】ARC Handbooks of Cancer Prevention、Volume5:Sunscreens
【非特許文献2】N.R.Janjua,B.Kongshoj,A.M.Andersson,H.C.Wulf,Sunscreens in human plasma and urine after repeated whole−body topical application,J.Eur.Acad.Dermatol.Venereol.22(2008)456−461
【非特許文献3】I.Jimenez−Diaz,J.M.Molina−Molina,A.Zafra−Gomez,O.Ballesteros,A.Navalon,M.Real,J.M.Saenz,M.F.Fernandez,N.Olea,Simultaneous determination of the UV−filters benzyl salicylate,phenyl salicylate,octyl salicylate,homosalate,3−(4−methylbenzylidene)camphor and 3−benzylidene camphor in human placental tissue by LC−MS/MS.Assessment of their in vitro endocrine activity,J.Chromatogr.B Analyt.Technol.Biomed.Life Sci.936(2013)80−87.
【非特許文献4】N.R.Janjua,B.Kongshoj,A.M.Andersson,H.C.Wulf,Sunscreens in human plasma and urine after repeated whole−body topical application,J.Eur.Acad.Dermatol.Venereol.22(2008)456−461
【非特許文献5】Mueller SO,Kling M,Arifin Firzani P,Mecky A,Duranti E,Shields−Botella J,Delansorne R,Broschard T,Kramer PJ,Activation of estrogen receptor alpha and ERbeta by 4−methylbenzylidene−camphor in human and rat cells:comparison with phyto−and xenoestrogens,Toxicol Lett.2003,30;142(1−2):89−101
【非特許文献6】Joanna A.Ruszkiewicza,Adi Pinkasa,Beatriz Ferrera,Tanara V.Peresa,Aristides Tsatsakisb,Michael Aschnera,Neurotoxic effect of active ingredients in sunscreen products,a contemporary review,Toxicology Reports 4(2017)245−259
【非特許文献7】P.Tucci,G.Porta,M.Agostini,D.Dinsdale,I.Iavicoli,K.Cain,A.Finazzi−Agro,G.Melino and A.Willis,Cell Death Dis.,2013,4,e549.
【非特許文献8】A Liou JW,Chang HH.Bactericidal effects and mechanisms of visible light responsive titanium dioxide photocatalysts on pathogenic bacteria.ArchImmunol Ther Exp(Warsz).2012;60:267−75.,Yin B,Zhang S,Zhang D,Jiao Y,Liu Y,Qu F,et al.ZnO Film Photocatalysts.J Nanomaterials 2014;Hashimoto K,Irie H,Fujishima A.TiO2 Photocatalysis:A Historical Overview and Future Prospects.Jpn J Appl Phys.2005;44:8269−85
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
本発明は、既存の製品の欠点を克服し、関連技術に新しい利点をもたらす可能性を有する、蛍光体ベースの高度に光保護性の日焼け止めに関する。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明の目的は、日光からの高レベルの保護を提供すると同時に、「有効日焼け止め成分」に関して今日知られている日焼け止めとは異なる配合物で皮膚に陽性結果を提供することである。
【0032】
本発明の別の目的は、皮膚に有害なUV−BおよびUV−A部分を吸収し、UV線を有益な赤色波長に強くかつ同時に変換することを実現することである。
【0033】
本発明の別の目的は、390〜490の電磁スペクトルのエネルギーの少ない可視領域を吸収し、赤色光を変換することであり、これにより皮膚に同様の利益をもたらす。
【0034】
本発明の好ましい実施形態は、蛍光体ベースの有効成分と同様に皮膚に有利であり得るサプリメントの使用である。
【0035】
本発明の別の好ましい実施形態は、光学的に適合性の支持マトリックス中のリンベースの光安定剤のカプセル化である。
【0036】
本発明の好ましい実施形態は、開発された複合体が皮膚と適合性があり、持続性があり、かつ美容的に好適であることである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
本発明で開発された日焼け止め配合物をより良く説明するために準備された図を以下に記載する。
図1】室温における400nmでの照射後のSr4Al14O25:Eu2+/Dy3+タイプの残光蛍光体の発光強度の時間依存性変化を示す図である(S.Demirci,S.Gueltekin,S.A.Akalin,Oe.Oeter,K.Ertekin,E.Celik,Materials Science in Semiconductor Processing31(2015)611−6172から取得)。
図2】皮膚の層における可視光および赤色光の浸透深度の概略図である。
図3】日焼け止め配合物の減衰特性を示す図である(350nmのマイクロ秒フラッシュラム、平均減衰時間31.44マイクロ秒で励起した後、マイラー基板でデータを取得した)。
図4】380〜490nmの波長で励起した際の日焼け止め配合物の発光性能を示す図である(アセチルセルロース基板でデータを取得した)。
【発明を実施するための形態】
【0038】
発明の詳細な説明
ルミネセンスは、励起後に物質が発光する異なる現象を定義する総称である。励起が光によって実行される場合、以下の室温発光プロセスは、「フォトルミネッセンス」である。フォトルミネッセンスの2つの周知の形態は、蛍光およびリン光である。どちらの場合も、光は吸収され、吸収された光よりもさらに長い波長で発光が発生する。吸収プロセスは、10〜15秒という非常に短い時間間隔で発生する。したがって、材料は励起される。より長い波長の光、言い換えれば蛍光の発光を伴う電子基底状態への脱励起は、10−9秒で発生する。この時間間隔は、「ナノ秒」とも呼ばれる。リン光材料は、エネルギーを吸収し、蛍光種に関してより長い時間、より高いエネルギー状態の励起電子をトラップする。リン光の持続時間は、ミリ秒から始まり、数分または数時間で表される時間間隔まで延長される。有機色素および無機材料のどちらも、効果的なリン光を示し得る。有機化合物または蛍光体のランタニド錯体は、マイクロ秒およびミリ秒の範囲で強い発光を示し得る。数分、数時間、または数日のようなより長い時間間隔で発光する蛍光体は、「残光蛍光体」と呼ばれる。このタイプのリンの長期発光は、利点のようであるが、経時的に発光の強度が指数関数的に低下することが測定によって証明されている(図1を参照)。
【0039】
今日、リン光体と蛍光体とのブレンドは、電子機器、LED、テレビ、および電話の画面から医療用画像ツールに至る幅広い用途で見出されている。したがって、調査は、その応用スペクトルの増加による新しい蛍光体の開発に焦点を合わせている。それらの多くは、急速に特許取得および/または商品化されている。しかしながら、日焼け止め化粧品での蛍光体の利用を示すデータは存在しない。2012年12月にBickfordらによって発行された米国特許(第8852616B2号)は、長期持続性発光材料の利用に関するものである。より具体的には、主観的発明は、身体、特に皮膚、頭皮および髪用の化粧製品に向けられており、これは、皮膚の治癒または再生特性の刺激をカバーする長期的な利点を提供するために、持続的な近赤外線(NIR)光を放射する材料を組み込む。しかしながら、本発明は、日焼け防止に取り組んでいない。
【0040】
一方、電磁スペクトルの550〜850nmの波長範囲は、赤色(RED)領域として知られている。分光学者によると、近赤外(NIR)窓は、700〜1350nmの波長範囲にある。600nm〜1300nmのスペクトル範囲は、「組織の光学窓」または「治療窓」として知られており、光は組織中に最大の浸透深さを有する(図2を参照)。メラニン、ヘモグロビン、オキシヘモグロビン、ヘモシデリン、ビリルビン、およびカロテノイドは、「赤色光」を中心とした波長を吸収できる。中IR光は、水および脂質に吸収され得る。したがって、治療窓での放射線の吸収は、コラーゲンおよび/またはエラスチンの刺激、DNA合成の強化、皮膚のきめの改善、ならびに皮膚の傷跡の修復および若返りを含む皮膚にいくつかの利点を提供し得るJournal of Investigative Dermatology,Volume137,Issue 2,February2017,Pages 466−474)、(Journal of Photochemistry and Photobiology B:Biology Volume 170,May2017,Pages197−207)。このため、創傷治癒を刺激し、皮膚のきめを改善し、毛穴のサイズおよびしわの深さを減らし、セルライト形成を減らすために、NIR領域で発光するLEDまたはレーザー光源を備えた商品化されたデバイスが開発されてきた。
【0041】
上記の考察に照らして、本発明は、有害なUV線を吸収し、次いで同時に皮膚に完全に有用であり、かつ皮膚に浸透可能な赤色波長に変えることができる配合物の構造を明らかにする。
【0042】
蛍光体ベースの成分で得られる皮膚の利点は、UV全体をカバーし、吸収に関して550nm、発光に関して550nmおよびさらなる波長まで広がる蛍光体の優れた吸収および完全な発光能力から生じる。最近の研究の結果によると、赤色光の有益な効果は、シトクロムcオキシダーゼのような細胞成分の吸収によって始まり、Ca2+およびNOレベル、ならびにATPの合成を含むミトコンドリア代謝にまで広がる[Photochem Photobiol.2015 3月;91(2):411−416.]。
【0043】
本発明の蛍光体ベースの成分で得られる潜在的な利点には、活性酸素種の形成の減少、結果として、DMA損傷、炎症の減少、皮膚のコラーゲンまたはエラスチンの合成および修復の刺激、ならびに皮膚のきめの一般的な改善も含まれる。
【0044】
皮膚に適用すると、製品の効果は、除去しない限り長続きする。
【0045】
残光蛍光体とは対照的に、この配合物で利用される蛍光体は、時間によるその発光強度を失わない。
【0046】
太陽のUVを吸収し、500〜1400nmで放射する毒性のない光安定性材料は、本発明の配合物に使用されていてもよい。光変換は、同時に達成されている。
【0047】
本発明により提示される日焼け止め製品は、Euおよび/もしくはSmでドープされたGdYEu(MoO4)3、MnでドープされたMg14Ge5O24、EuでドープされたCaAlSiN3、もしくはEuでドープされた(Sr,Ca)AlSiN3、もしくはCeでドープされた(LaY)3Si6N11、もしくはCeでドープされたLu3Al5O12、もしくはCeでドープされた(LaY)3Si6N11、またはそれらのブレンドが含まれ得るが、これらに限定されない。蛍光体の例は、日亜化学工業株式会社および三菱ケミカル株式会社(CASNもしくはSCASN蛍光体、もしくは1113蛍光体)またはDOWAエレクトロ二クス株式会社およびIntematixからXR6436赤色窒化物蛍光体の商標名で販売されているEuドープ(Sr,Ca)AlSiN3を含む。本発明で定義されるホストの構造中に存在するドーパントは、それぞれEu2+、Sm2+、Eu3+、Sm3+、Ce3+、またはMn4+の酸化状態にあり得る。発光は、UVまたは可視光による適切な酸化状態のEu、Sm Ce、またはMnのドーパントの励起後に発生する。利用される蛍光体のホスト構造も、吸収および後続の発光プロセスの原因となり得る。
【0048】
利用される蛍光体ベースの組成物は、非常に短い時間間隔内で、UV線を赤色波長に変換できる。図3は、この配合物で使用される蛍光体の減衰特性を明らかにしている。減衰時間関連データは、350nmのマイクロ秒フラッシュラムで励起した後、マイラー基板で取得した。図3によると、蛍光体は、3つの指数関数的な減衰挙動を示す。平均減衰時間は、31.44マイクロ秒と記述できる。図3から、利用された蛍光体がUV線を即座に赤色光に変換できると結論付けることができる。
【0049】
図4は、380〜490nmの異なる波長で励起したときの日焼け止め配合物の発光性能を明らかにしている。図4から、発光波長が少なくとも380〜490nmの間、励起光から独立していると結論付けることができる。
【0050】
本発明のさらなる態様は、リンのサイズが100nm〜−50.0μmの範囲であり得る蛍光体の寸法に関する。
【0051】
本発明の別の態様は、皮膚科学的に許容可能であり、かつ蛍光体の性能を光学的に制限しない光を吸収および発光する有効成分のカプセル化に関する。マトリックス材料は、蛍光体の発光特性を強化し得、皮膚軟化剤、増粘剤、酸化防止剤、脂肪酸などのような他の賦形剤化学物質を含有し得る。
【0052】
有効成分以外の日焼け止めでの支持材料として使用される皮膚軟化剤は、水分損失を防ぎながら皮膚を柔らかくする。これらの例には、植物油、鉱油、シアおよびココアバター、オリーブ油、ココナッツ油および脂肪酸、動物性脂肪からのラノリン、蜜蝋、エミュー油などが含まれる。より技術的には、これらの材料は、トリグリセリド、ベンゾエート、ミリステート、パルミテート、およびステアレートと呼ばれる。本発明で使用される好適な皮膚軟化剤には、飽和もしくは不飽和C6−40直鎖もしくは分岐鎖脂肪酸、または飽和もしくは不飽和C6−40直鎖もしくは分岐鎖脂肪アルコールなどの親油性材料が含まれるが、これらに限定されない。例には、オレイン酸、リノール酸、ステアリン酸、オレイルアルコール、リノレイルアルコールなどが含まれる。本発明において、皮膚軟化剤は、0.001〜30%w/w、好ましくは約0.005〜25%、より好ましくは約0.01〜20%の範囲であり得る。本発明は、55〜83%の濃度範囲のモノ不飽和オメガ−9脂肪酸「オレイン酸」を含み得る。本発明はまた、3.5〜21%の濃度範囲の多価不飽和オメガ−6脂肪酸;リノール酸を含み得る。本発明は、パルミチン酸、ステアリン酸、およびリノレン酸をそれぞれ7.5〜20%、0.5〜5%、および0〜1.5%の濃度範囲で含み得る。本発明において、ピスタシア・レンチスクス(Pistacia lentiscus)の水および/またはグリセリン抽出物は、0.01〜10%の範囲で見出され得る。エッセンシャルオイルは、日本薬局方のプロトコルに従って抽出した。日焼け止め配合物中のピスタシア・レンチスクス(Pistacia lentiscus)の必須オリスの分布は、次のとおりであり得る:α−ピネン(82%)β−ピネン(3.0%)β−ミルセン(2.0%)およびリナロール(1.5%)。微量のα−テルピネオール、p−シメン−8−オール、ミルテナール、p−シメン、リモネン、(E)−カルベオール、2−ウンデカノン、α−およびβ−カリオフィレン、カリフィレンオキシド、および(E)−Meイソオイゲノールは、日焼け止め組成物で見出され得る。E)−メチルイソオイゲノールおよびα−テルピネオールは、ピロリ菌および大腸菌、黄色ブドウ球菌および枯草菌に対して抗菌効果も示す[Nat Prod Bioprospect,v.4(4);2014 Aug227−231Chemical Composition of the Essential Oil of Mastic Gum and their Antibacterial Activity Against Drug−Resistant Helicobacter pylori,Tomofumi Miyamoto,Tadayoshi Okimoto,and Michihiko Kuwano]。
【0053】
組成物中に使用され得る構造化剤の1つのタイプは、主にスチレンならびに主成分としてより少ない量のシンナミルアルコールおよびα−ピネンから構成されるオリエンタリススイートガムを含む。
【0054】
組成物中に使用され得る構造化剤の別のタイプは、ステアリルアルコールを含む。成分は、軟化剤および安定剤として作用する。ステアリルアルコールは、長鎖脂肪アルコールであり、ヘアコンディショナー、ファンデーション、保湿剤、スキンクレンザーなどの種々のスキンケア製品に見出される。それは、皮膚表面上の潤滑剤として機能し、皮膚に柔らかく滑らかな外観を与える。
【0055】
組成物は、1つ以上の乳化剤を含有し得る。セチルアルコールおよびグリセリルステアレートが乳化剤の例である。存在する場合、乳化剤は、全組成物の約0.005〜25重量%の範囲であり得る。この乳化ブレンドは、水中油型エマルションの作製に適している。
【0056】
本発明の日焼け止め組成物中に1つ以上の構造化成分を含めることが望ましくなり得る。構造化剤は、有効成分の適切なマトリックスの形成に寄与する成分である。それらは、所望の粘度を有する液体組成物を提供するのに十分な量で存在し得る。与えられる構造化剤の範囲は、全組成物の0.1〜70重量%の範囲であり得る。これらの成分は、ほとんどの場合ポリマーの形態で見られ、親水性であっても疎水性であってもよい。それらは、有効日焼け止め形態、酸化防止剤または抗菌剤、ならびにそれらの機能性および安定性を保つ他の添加剤などの有効化粧品成分のマトリックスとしての役割を果たす。構造化剤の例は、多糖類、アクリレートタイプのポリマーもしくはコポリマー、またはそれらの架橋形態、高分子量ポリグリセリン、いくつかの揮発性油およびシリコーン、不揮発性シリコーンおよび油、シリコン蝋、モノ、ジ、およびトリエステル、植物および動物源のグリセリルエステルおよび脂肪酸である。ナトリウムカルボキシメチルセルロース(CMC)は、水溶性アニオンポリマーであり、増粘剤、保湿剤、テクスチャー/ボディビル剤、懸濁剤、およびパーソナルスキンケア製品と一部の薬物との結合剤として機能する。
【0057】
中分子量カルボキシメチルセルロースナトリウムは、本発明において、発光蛍光体ベースの材料を捕捉および安定化するために使用され得る。
【0058】
本発明は、本明細書で以下に記載されるようなものを含む、追加の化粧品および/または皮膚科学的に有益な成分を含有し得る。
【0059】
スキンケア製品の血清またはゲルの形態は、一般に約1〜99%の水、および任意で約0.001〜30%の水相増粘剤を含む。典型的なスキンクリームまたはローションは、約4〜99%の水、1〜90%の油、および約0.1〜20%の1つ以上の界面活性剤を含む。本発明において、含水量は、全組成物の約1.0〜85重量%の範囲であり得る。
【0060】
日焼け止め組成物中に1つ以上の保湿剤を含めることも望ましくなり得る。保湿剤の比率は、全組成物の約0.001〜25重量%の範囲であり得る。保湿剤または加湿剤は、皮膚の層に水分子を引き付けて保持する物質である。グリセリンおよびグリセロールは、スキンケア製品に見られる最も一般的な保湿剤である。その他には、いくつかのアルファヒドロキシ酸、パンテノール、カルボン酸、ソルビトール、ヒアルロン酸のナトリウム塩、乳酸ナトリウムおよびアンモニウム、プロピレングリコール、ピロリジンナトリウム、尿素、ゼラチン、ならびに蜂蜜が含まれる。そのような糖型保湿剤の例には、グルコース、フルクトース、蜂蜜、水素化蜂蜜、イノシトール、マルトース、マンニトール、マルチトール、ソルビトール、スクロース、キシリトール、およびキシロースが含まれる。他の保湿剤の例には、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコール(PEGS)、例えば、リゾレシチン、PEG−14ジメチコン、PEG/PPG−14/4ジメチコンPEG−7グリセリルココエート、PEG−6カプリル酸/カプリン酸グリセライド、ポリグリセリル−4−カプレート、PEG−10ヒマワリグリセリドポロキサマー105、ポロキサマー182ジベンゾエート、ジメチコンPEG/PPG−20/23ベンゾエート、PEG26グリセリン、プロピレングリコール、ラミナリアデジタタ抽出物なども含まれる。それらのほとんどは、市販されており、異なる商標名で販売されている。それらの例は、リゾレシチン、PEG−14ジメチコン、PEG/PPG−14/4ジメチコンPEG−7グリセリルココエート、PEG−6カプリル/カプリングリセライド、ポリグリセリル−4−カプレート、PEG−10ヒマワリグリセライドポロキサマー105、ポロキサマー182ジベンゾエート、ジメチコンPEG/PPG−20/23ベンゾエート、PEG26グリセリン、蜂蜜抽出物である。プロピレングリコールおよびラミナリアデジタタ抽出物などである本発明で使用される保湿剤は、パンテノールおよびグリセリンである。本発明で使用される保湿剤の比率は、全組成物の約0.01〜10重量%の範囲であり得る。
【0061】
乳化剤は、混合物の動力学的安定性を高めることにより、非混和性液体の分離を維持する。セテアリルアルコール、ポリグリセリル−6ジステアレート、ステアロイル乳酸ナトリウム、ラウロイル乳酸ナトリウム、およびレシチンは、化粧品として入手可能な乳化剤の例である。それらの中でレシチンは、4つのリン脂質;ホスファチジルコリン、エタノールアミン、セリン、およびイノシトールを持つ非イオン性乳化剤である。それは、水と脂肪とを結合することができるため、温度および比率に応じて、油中水型エマルションおよび水中油型エマルションの両方に適した乳化剤である。これらの望ましい特性により、レシチンは種々の用途に理想的な選択肢となる。本発明で使用される乳化剤のうちの1つは、レシチンである。本発明で使用される乳化剤の比率は、全組成物の約0.001〜1.00重量%の範囲であり得る。
【0062】
酸化防止剤
高レベルの紫外線に曝露された後、一重項酸素、スーパーオキシドラジカル、および過酸化物ラジカルを含む異なるタイプの活性酸素種の形成が可能である。これらの形態は、用量に応じて脂質、タンパク質、さらにはDNAの細胞成分に損傷を引き起こす可能性があり、それらは、紅斑(日焼け)、皮膚の早期老化、および皮膚がんの主な理由であるとみなされている。酸化防止剤は、細胞損傷の防止に関与しており、老化プロセスを遅らせる役割もあると考えられている。リコピン、フラボノイド、プロアントシアニジン、アスタキサンチン、ベータカロチン、およびビタミンE(アルファトコフェロール)は、中でも活性酸素種と戦うための最も強力な酸化防止剤として示されている。一部の植物抽出物、バイオフロバノイド、ブチル化ヒドロキシトルエン、カフェイン、カフェ酸、ビタミンC(アスコルビン酸)およびその安定化された形態、一部の藻類、一部のアミノ酸(アラニン、アルギニン、アスパラギン)、グルカン、キトサン、シナモン、コエンザイムQ10、クルクミン、ガンマリノレン酸(GLA)、L−システイン、グルタチオン、ヘスペリジン、緑茶抽出物(アスパルテーム)、アルガニックオイルの一部の成分、アスパラギンおよびその誘導体、多糖ベータグルカン、ハイビスカス抽出物、リノール酸、ルテイン、パームカーネルオイル、オリーブ油、プロポリス、カボチャ種子油、スピルリナ、タンニン酸、ティーツリー油、テトラヘキシルデシルアスコルベートなどは、酸化防止剤の例である。
【0063】
本発明で使用される酸化防止剤は、レチオノール、酢酸トコフェリル、ならびにタンニン三環式、四環式、および五環式トリテルペン酸であり得る。本発明で使用される酸化防止剤の比率は、全組成物の約0.01〜1.00重量%の範囲であり得る。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】