(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
本発明は、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、及び/またはアルコール性肝疾患(ALD)などのPNPLA3に関連する1つ以上の病態を有する患者を治療するための方法及び組成物を提供する。遺伝子シグナル伝達ネットワークを変更することによって、細胞におけるPNPLA3遺伝子の発現を調整するための方法及び組成物もまた提供される。
パタチン様ホスホリパーゼドメイン含有タンパク質3(PNPLA3)関連障害を有する対象を治療する方法であって、PNPLA3遺伝子の発現を調整することができる有効量の化合物を前記対象に投与することを含む、前記方法。
前記化合物が、モメロチニブ(CYT387)、BML−275、DMH−1、ドルソモルフィン、ドルソモルフィンジヒドロクロリド、K02288、LDN−193189、LDN−212854、ML347、SIS3、またはそれらの誘導体もしくは類似体からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項2に記載の方法。
前記化合物が、アピトリシブ(GDC−0980、RG7422)、AZD8055、BGT226(NVP−BGT226)、CC−223、クリソファン酸、CZ415、ダクトリシブ(BEZ235、NVP−BEZ235)、エベロリムス(RAD001)、GDC−0349、ジェダトリシブ(PF−05212384、PKI−587)、GSK1059615、INK128(MLN0128)、KU−0063794、LY3023414、MHY1485、オミパリシブ(GSK2126458、GSK458)、OSI−027、パロミド529(P529)、PF−04691502、PI−103、PP121、ラパマイシン(シロリムス)、リダフォロリムス(デフォロリムス、MK−8669)、SF2523、タクロリムス(FK506)、テムシロリムス(CCI−779、NSC683864)、トリン1、トリン2、トリキニブ(PP242)、ビスツセルチブ(AZD2014)、ボクスタリシブ(Voxlalisib)(SAR245409、XL765)類似体、ボクスタリシブ(XL765、SAR245409)、WAY−600、WYE−125132(WYE−132)、WYE−354、WYE−687、XL388、ゾタロリムス(ABT−578)、またはそれらの誘導体もしくは類似体からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項5に記載の方法。
前記化合物が、R788、タマチニブ(R406)、エントスプレチニブ(entospletinib)(GS−9973)、ニルバジピン、TAK−659、BAY−61−3606、MNS(3,4−メチレンジオキシ−β−ニトロスチレン、MDBN)、ピセアタンノール、PRT−060318、PRT062607(P505−15、BIIB057)、PRT2761、RO9021、セルデュラチニブ(cerdulatinib)、イブルチニブ、ONO−4059、ACP−196、イデラリシブ、デュベリシブ、ピララリシブ(pilaralisib)、TGR−1202、GS−9820、ACP−319、SF2523、またはそれらの誘導体もしくは類似体からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項8に記載の方法。
前記化合物が、BIO、AZD2858、1−アザケンパウロン、AR−A014418、AZD1080、ビキニン、BIO−アセトキシム、CHIR−98014、CHIR−99021(CT99021)、IM−12、インジルビン、LY2090314、SB216763、SB415286、TDZD−8、チデグルシブ、TWS119、またはそれらの誘導体もしくは類似体からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項11に記載の方法。
前記化合物が、ACHP、10Z−ヒメニアルジシン、アンレキサノクス、アンドログラホリド、アルクチゲニン、Bay11−7085、Bay11−7821、ベンガミドB、BI605906、BMS345541、カフェイン酸フェネチルエステル、カルダモニン、C−DIM12、セラストロール、CID2858522、FPS ZM1、グリオトキシン、GSK319347A、ホノキオール、HU211、IKK16、IMD0354、IP7e、IT901、ルテオリン、MG132、ML120Bジヒドロクロリド、ML130、パルテノリド、PF184、ピセアタンノール、PR39(ブタ)、プリスチメリン、PS1145ジヒドロクロリド、PSI、ピロリジンジチオカルバミン酸アンモニウム、RAGEアンタゴニストペプチド、Ro106−9920、SC514、SP100030、スルファサラジン、タンシノンIIA、TPCA−1、ウィタフェリンA、ゾレドロン酸、またはそれらの誘導体もしくは類似体からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項13に記載の方法。
前記化合物が、モメロチニブ(CYT387)、ルキソリチニブ、オクラシチニブ、バリシチニブ、フィルゴチニブ、ガンドチニブ、レスタウルチニブ、PF−04965842、ウパダシチニブ、ククルビタシンI、CHZ868、フェドラチニブ、AC430、AT9283、ati−50001及びati−50002、AZ960、AZD1480、BMS−911543、CEP−33779、セルデュラチニブ(cerdulatinib)(PRT062070、PRT2070)、クルクモール、デセルノチニブ(VX−509)、フェドラチニブ(SAR302503、TG101348)、FLLL32、FM−381、GLPG0634類似体、Go6976、JANEX−1(WHI−P131)、NVP−BSK805、パクリチニブ(SB1518)、ペフィシチニブ(ASP015K、JNJ−54781532)、PF−06651600、PF−06700841、R256(AZD0449)、ソルシチニブ(GSK2586184もしくはGLPG0778)、S−ルキソリチニブ(INCB018424)、TG101209、トファシチニブ(CP−690550)、WHI−P154、WP1066、XL019、ZM39923HCl、またはそれらの誘導体もしくは類似体からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項15に記載の方法。
前記化合物が、アムバチニブ、BMS−754807、BMS−986094、LY294002、ピフィスリン−μ、XMU−MP−1、またはそれらの誘導体もしくは類似体を含む、請求項1に記載の方法。
前記化合物が、JAK1、JAK2、mTOR、SYK、PDGFRA、PDGFRB、GSK3、ACVR1、SMAD3、SMAD4、及びNF−κBからなる群から選択される1つ以上の遺伝子を標的とする1つ以上の低分子干渉RNA(siRNA)を含む、請求項1に記載の方法。
PNPLA3遺伝子のシグナル伝達中心に関連する1つ以上のシグナル伝達分子を変更することができる有効量の化合物を細胞に導入することを含む、前記細胞におけるPNPLA3遺伝子の発現を調整する方法。
前記1つ以上のシグナル伝達分子が、HNF3b、HNF4a、HNF4、HNF6、Myc、ONECUT2及びYY1、TCF4、HIF1a、HNF1、ERa、GR、JUN、RXR、STAT3、VDR、NF−κB、SMAD2/3、STAT1、TEAD1、p53、SMAD4、ならびにFOSからなる群から選択される、請求項31に記載の方法。
前記化合物が、モメロチニブ(CYT387)、BML−275、DMH−1、ドルソモルフィン、ドルソモルフィンジヒドロクロリド、K02288、LDN−193189、LDN−212854、ML347、SIS3、またはそれらの誘導体もしくは類似体からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項33に記載の方法。
前記化合物が、アピトリシブ(GDC−0980、RG7422)、AZD8055、BGT226(NVP−BGT226)、CC−223、クリソファン酸、CZ415、ダクトリシブ(BEZ235、NVP−BEZ235)、エベロリムス(RAD001)、GDC−0349、ジェダトリシブ(PF−05212384、PKI−587)、GSK1059615、INK128(MLN0128)、KU−0063794、LY3023414、MHY1485、オミパリシブ(GSK2126458、GSK458)、OSI−027、パロミド529(P529)、PF−04691502、PI−103、PP121、ラパマイシン(シロリムス)、リダフォロリムス(デフォロリムス、MK−8669)、SF2523、タクロリムス(FK506)、テムシロリムス(CCI−779、NSC683864)、トリン1、トリン2、トリキニブ(PP242)、ビスツセルチブ(AZD2014)、ボクスタリシブ(SAR245409、XL765)類似体、ボクスタリシブ(XL765、SAR245409)、WAY−600、WYE−125132(WYE−132)、WYE−354、WYE−687、XL388、ゾタロリムス(ABT−578)、またはそれらの誘導体もしくは類似体からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項36に記載の方法。
前記化合物が、R788、タマチニブ(R406)、エントスプレチニブ(GS−9973)、ニルバジピン、TAK−659、BAY−61−3606、MNS(3,4−メチレンジオキシ−β−ニトロスチレン、MDBN)、ピセアタンノール、PRT−060318、PRT062607(P505−15、BIIB057)、PRT2761、RO9021、セルデュラチニブ、イブルチニブ、ONO−4059、ACP−196、イデラリシブ、デュベリシブ、ピララリシブ、TGR−1202、GS−9820、ACP−319、SF2523、またはそれらの誘導体もしくは類似体からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項39に記載の方法。
前記化合物が、BIO、AZD2858、1−アザケンパウロン、AR−A014418、AZD1080、ビキニン、BIO−アセトキシム、CHIR−98014、CHIR−99021(CT99021)、IM−12、インジルビン、LY2090314、SB216763、SB415286、TDZD−8、チデグルシブ、TWS119、またはそれらの誘導体もしくは類似体からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項42に記載の方法。
前記化合物が、ACHP、10Z−ヒメニアルジシン、アンレキサノクス、アンドログラホリド、アルクチゲニン、Bay11−7085、Bay11−7821、ベンガミドB、BI605906、BMS345541、カフェイン酸フェネチルエステル、カルダモニン、C−DIM12、セラストロール、CID2858522、FPS ZM1、グリオトキシン、GSK319347A、ホノキオール、HU211、IKK16、IMD0354、IP7e、IT901、ルテオリン、MG132、ML120Bジヒドロクロリド、ML130、パルテノリド、PF184、ピセアタンノール、PR39(ブタ)、プリスチメリン、PS1145ジヒドロクロリド、PSI、ピロリジンジチオカルバミン酸アンモニウム、RAGEアンタゴニストペプチド、Ro106−9920、SC514、SP100030、スルファサラジン、タンシノンIIA、TPCA−1、ウィタフェリンA、ゾレドロン酸、またはそれらの誘導体もしくは類似体からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項44に記載の方法。
前記化合物が、モメロチニブ(CYT387)、ルキソリチニブ、オクラシチニブ、バリシチニブ、フィルゴチニブ、ガンドチニブ、レスタウルチニブ、PF−04965842、ウパダシチニブ、ククルビタシンI、CHZ868、フェドラチニブ、AC430、AT9283、ati−50001及びati−50002、AZ960、AZD1480、BMS−911543、CEP−33779、セルデュラチニブ(PRT062070、PRT2070)、クルクモール、デセルノチニブ(VX−509)、フェドラチニブ(SAR302503、TG101348)、FLLL32、FM−381、GLPG0634類似体、Go6976、JANEX−1(WHI−P131)、NVP−BSK805、パクリチニブ(SB1518)、ペフィシチニブ(ASP015K、JNJ−54781532)、PF−06651600、PF−06700841、R256(AZD0449)、ソルシチニブ(GSK2586184もしくはGLPG0778)、S−ルキソリチニブ(INCB018424)、TG101209、トファシチニブ(CP−690550)、WHI−P154、WP1066、XL019、ZM39923HCl、またはそれらの誘導体もしくは類似体からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項46に記載の方法。
前記化合物が、アムバチニブ、BMS−754807、BMS−986094、LY294002、ピフィスリン−μ、XMU−MP−1、またはそれらの誘導体もしくは類似体を含む、請求項31に記載の方法。
前記化合物が、JAK1、JAK2、mTOR、SYK、PDGFRA、PDGFRB、GSK3、ACVR1、SMAD3、SMAD4、及びNF−κBからなる群から選択される1つ以上の遺伝子を標的とする1つ以上の低分子干渉RNA(siRNA)を含む、請求項31に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0042】
発明の詳細な説明
I.序論
本発明は、ヒトにおける肝疾患の治療のための組成物及び方法を提供する。特に、本発明は、PNPLA3関連疾患、例えば、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)及び/またはアルコール性肝疾患(ALD)の治療のために、パタチン様ホスホリパーゼドメイン含有タンパク質3(PNPLA3)を調整する化合物の使用に関する。
【0043】
本発明はまた、遺伝子シグナル伝達ネットワーク(GSN)の変更、摂動及び最終的な調節制御を包含する。そのような遺伝子シグナル伝達ネットワークは、生物系のゲノムの絶縁近傍内で見出されるゲノムシグナル伝達中心を含む。PNPLA3発現を調整する化合物は、1つ以上の遺伝子シグナル伝達ネットワークを調整することによって作用し得る。
【0044】
本明細書で使用される場合、「遺伝子シグナル伝達ネットワーク」または「GSN」は、特定の遺伝子、例えば、遺伝子中心ネットワークからのシグナル伝達事象のうちのいずれかまたは全てに関連する生体分子のセットを含む。ヒトゲノム中に20,000を超えるタンパク質コード遺伝子が存在するため、少なくともこの多くの遺伝子シグナル伝達ネットワークが存在する。またいくつかの遺伝子が非コード遺伝子である範囲で、数は大幅に増加する。遺伝子シグナル伝達ネットワークは、標準タンパク質カスケード及びフィードバックループとしてマップされる正準シグナル伝達経路とは異なる。
【0045】
伝統的に、シグナル伝達経路は、標準生化学技法を使用して特定され、大部分は、カスケード中の次のタンパク質生成物により駆動される事象をシグナル伝達する1つのタンパク質生成物を有する線形カスケードである。これらの経路は、二股に分かれ得るか、またはフィードバックループを有し得るが、焦点は、もっぱらタンパク質レベルに置かれている。
【0046】
本発明の遺伝子シグナル伝達ネットワーク(GSN)は、タンパク質コード及び非タンパク質コードシグナル伝達分子、ゲノム構造、染色体占有率、染色体リモデリング、生物系の状態、ならびにそのような遺伝子シグナル伝達ネットワークを含む任意の生物系の摂動に関連する成果の範囲を考慮して、生物学的シグナル伝達を定義するための異なるパラダイムを表す。
【0047】
ゲノムアーキテクチャは、静的ではないが、本発明のGSNのフレームワークを定義することにおいて重要な役割を果たす。そのようなアーキテクチャは、染色体組織化及び修飾の概念、トポロジカル関連ドメイン(TAD)、絶縁近傍(IN)、ゲノムシグナル伝達中心(GSC)、シグナル伝達分子及びそれらの結合モチーフまたは部位、ならびに当然のことながら、ゲノムアーキテクチャ内でエンコードされる遺伝子を含む。
【0048】
本発明は、PNPLA3遺伝子に関連するGSNの結合性のより決定的なセットを明確化することによって、NAFLD、NASH、及び/またはALDを含むPNPLA3関連疾患に対処するための微調整された機構を提供する。
【0049】
ゲノムアーキテクチャ
細胞は、細胞シグナル伝達をゲノムのアーキテクチャに結合する数千のエレメントを使用して遺伝子発現を制御する。ゲノムシステムアーキテクチャは、DNA、RNA転写物、クロマチンリモデラー、及びシグナル伝達分子を含む。
【0050】
染色体
染色体は、ヒトのDNAの大部分を含むゲノムアーキテクチャの最大サブユニットである。特定の染色体構造は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Hnisz et al.,Cell 167,November 17,2016に記載されるように、遺伝子対照において重要な役割を果たすことが観察された。イントロンを含む「非コード領域」は、タンパク質結合部位及び他の調節構造を提供するが、エクソンは、非コード領域と相互作用して遺伝子発現を調節するシグナル伝達分子(例えば、転写因子)などのタンパク質をエンコードする。染色体上の非コード領域内のDNA部位はまた、互いに相互作用して、ループ状構造を形成する。これらの相互作用は、発達を通して保存され、遺伝子活性化及び抑制において重要な役割を果たす染色体足場を形成する。相互作用は、染色体間でめったに起こらず、通常は染色体の同じドメイン内に存在する。
【0051】
原位置ハイブリダイゼーション技法及び顕微鏡は、各相間染色体が、核の小部分のみを占有する傾向があり、この細胞小器官全体に広がらないことを明らかにした。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Cremer and Cremer,Cold Spring Harbor Perspectives in Biology 2,a003889,2010を参照されたい。この制限された表面占有面積は、染色体間の相互作用を低減し得る。
【0052】
トポロジカル関連ドメイン(TAD)
トポロジカル関連ドメイン(TAD)(あるいはトポロジカルドメインとしても知られる)は、哺乳類染色体構造のサブユニットである階層ユニットである。参照によりそれら全体が本明細書に組み込まれる、Dixon et al.,Nature,485(7398):376−80,2012、Filippova et al.,Algorithms for Molecular Biology,9:14,2014、Gibcus and Dekker Molecular Cell,49(5):773−82,2013、Naumova et al.,Science,42(6161):948−53,2013を参照されたい。TADは、遺伝子及び調節エレメントが生産的DNA−DNA接触を成すのを可能にする微小環境を画定する、メガベースサイズの染色体領域である。TADは、DNA−DNA相互作用頻度によって定義される。TADの境界は、参照によりそれら全体が本明細書に組み込まれる、Dixon et al.,Nature,485(7398):376−80,2012、Nora et al.,Nature,485(7398):381−5,2012に記載されるように、比較的少ないDNA−DNA相互作用が起こる領域からなる。TADは、遺伝子発現調節因子として機能する構造的染色体ユニットを表す。
【0053】
TADは、約7つ以上のタンパク質コード遺伝子を含有し、異なる細胞型によって共有される境界を有し得る。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Smallwood et al.,Current Opinion in Cell Biology,25(3):387−94,2013を参照されたい。単一TAD内の遺伝子の発現は通常相関しているため、いくつかのTADは、活性遺伝子を含有し、他のものは抑制された遺伝子を含有する。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Cavalli et al.,Nature Structural&Molecular Biology,20(3):290−9,2013を参照されたい。TAD内の配列は、互いを高頻度で見出し、一致したTADワイドヒストンクロマチンシグネチャー、発現レベル、DNA複製タイミング、ラミナ会合、及び染色中心会合を有する。参照によりそれら全体が本明細書に組み込まれる、Dixon et al.,Nature,485(7398):376−80,2012、Le Dily et al.,Genes Development,28:2151−62,2014、Dixon et al.,Nature,485(7398):376−80,2012、Wijchers,Genome Research,25:958−69,2015を参照されたい。
【0054】
TAD内の遺伝子ループ及び他の構造は、転写因子(TF)、コヒーシン、及び11−ジンクフィンガータンパク質(CTCF)、転写リプレッサーの活性に影響を及ぼす。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Baranello et al.,Proceedings of the National Academy of Sciences,111(3):889−9,2014を参照されたい。TAD内の構造は、エンハンサー結合TFが、順にプロモーター部位においてRNAポリメラーゼIIに結合する共因子、例えば、メディエーターに結合したときに産生されるコヒーシン関連エンハンサー・プロモーターループを含む。参照によりそれら全体が本明細書に組み込まれる、Lee and Young,Cell,152(6):1237−51,2013、Lelli et al.,2012;Roeder,Annual Reviews Genetics 46:43−68,2005、Spitz and Furlong,Nature Reviews Genetics,13(9):613−26,2012、Dowen et al.,Cell,159(2):374−387,2014、Lelli et al.,Annual Review of Genetics,46:43−68,2012を参照されたい。コヒーシン負荷因子Nipped−B様タンパク質(NIPBL)は、メディエーターに結合し、これらのエンハンサー・プロモーターループにおいてコヒーシンを負荷する。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Kagey et al.,Nature,467(7314):430−5,2010を参照されたい。
【0055】
TADは、調べた全てのヒト細胞型において同様の境界を有し、エンハンサー・遺伝子相互作用を拘束する。参照によりそれら全体が本明細書に組み込まれる、Dixon et al.,Nature,518:331−336,2015、Dixon et al.,Nature,485:376−380,2012を参照されたい。ゲノムのこのアーキテクチャは、なぜ大部分のDNA接触がTAD内で起こり、エンハンサー・遺伝子相互作用が染色体間でめったに起こらないかを説明するのを助ける。しかしながら、TADは、TAD内で特定のエンハンサー・遺伝子相互作用に影響を及ぼす分子機構に対する部分的な洞察を提供するにすぎない。
【0056】
長期のゲノム接触は、TADを活性区画と非活性区画とに分離する。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Lieberman−Aiden et al.,Science,326:289−93,2009を参照されたい。TAD境界の間に形成されたループは、特定の配列対の間に安定して再現性よく形成された最長範囲の接触を表すと思われる。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Dixon et al.,Nature,485(7398):376−80,2012を参照されたい。
【0057】
いくつかの実施形態では、本発明の方法を使用して、TAD中に位置する遺伝子からの遺伝子発現を変更する。いくつかの実施形態では、TAD領域を修飾して、本明細書に定義されるように、または本明細書に記載される方法を使用して定義可能であるように、非正準経路の遺伝子発現を変更する。
【0058】
絶縁近傍
本明細書に記載される場合、「絶縁近傍」(IN)は、染色体配列中の2つの相互作用部位のルーピングによって形成された染色体構造として特定される。これらの相互作用部位は、CCCTC結合因子(CTCF)を含み得る。これらのCTCF部位は、多くの場合、コヒーシンによって共占有される。これらのコヒーシン関連染色体構造の完全性は、絶縁近傍中の遺伝子ならびに絶縁近傍の近位にある遺伝子の発現に影響する。「近傍遺伝子」は、絶縁近傍内に位置する遺伝子である。近傍遺伝子は、コードまたは非コードであり得る。
【0059】
絶縁近傍アーキテクチャは、一緒になって直接または間接的にDNAループを形成する少なくとも2つの境界によって定義される。任意の絶縁近傍の境界は、一次上流境界及び一次下流境界を含む。そのような境界は、任意の絶縁近傍の最も外側の境界である。しかしながら、任意の絶縁近傍ループ内では、二次ループが形成され得る。そのような二次ループは、存在する場合、一次絶縁近傍に対して、二次上流境界及び二次下流境界によって定義される。一次絶縁近傍が複数の内部ループを含有する場合、ループは、一次ループの一次上流境界に対して、例えば、二次ループ(一次ループ内の第1のループ)、三次ループ(一次ループ内の第2のループ)、四次ループ(一次ループ内の第3のループ)等と付番される。
【0060】
絶縁近傍は、トポロジカル関連ドメイン(TAD)及び他の遺伝子ループ内に位置し得る。最大の絶縁近傍は、TADであり得る。TADは、DNA−DNA相互作用頻度によって定義され、平均0.8Mbであり、およそ7タンパク質コード遺伝子を含有し、生物の異なる細胞型によって共有される境界を有する。Dowenによれば、TAD内の遺伝子の発現は、ある程度相関しており、したがっていくつかのTADは活性遺伝子を有する傾向があり、他のものは抑制された遺伝子を有する傾向がある。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Dowen et al.,Cell.2014 Oct 9;159(2):374−387を参照されたい。
【0061】
絶縁近傍は、染色体に沿って連続した実体として存在し得るか、または非絶縁近傍配列領域によって分離され得る。絶縁近傍は、DNAルーピング領域が接合された場合にのみ定義されるように線形に重複し得る。絶縁近傍は、3〜12遺伝子を含み得るが、それらは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13またはそれ以上の遺伝子を含有し得る。
【0062】
「最小絶縁近傍」は、少なくとも1つの近傍遺伝子、及び関連した調節配列領域(RSR)または近傍遺伝子の発現もしくは抑制を促進する領域、例えばプロモーター及び/またはエンハンサー及び/またはリプレッサー領域等を有する絶縁近傍である。場合によっては、調節配列領域は、絶縁近傍境界と一致またはさらには重複し得ることが企図される。本明細書で使用される場合、調節配列領域としては、限定されないが、染色体に沿った領域、区分、部位または区域が挙げられ、それによって近傍遺伝子の発現を変更するために、シグナル伝達分子との相互作用が起こる。本明細書で使用される場合、「シグナル伝達分子」は、タンパク質、核酸(DNAもしくはRNA)、有機小分子、脂質、糖または他の分子にかかわらず、染色体上の調節配列領域と直接または間接的に相互作用する、任意の実態である。調節配列領域(RSR)はまた、GSCの結合部位として機能するDNAの部分を指し得る。
【0063】
特殊化シグナル伝達分子の1つのカテゴリーは、転写因子である。「転写因子」は、標的遺伝子、例えば、近傍遺伝子の転写を変更(増加または減少)するシグナル伝達分子である。
【0064】
本発明に従い、近傍遺伝子は、染色体に沿って任意の数の上流または下流遺伝子を有し得る。任意の絶縁近傍内に、一次近傍遺伝子に対する1つ以上、例えば、1、2、3、4またはそれ以上の上流及び/または下流近傍遺伝子が存在し得る。「一次近傍遺伝子」は、染色体に沿った特定の絶縁近傍内で最も一般に見出される遺伝子である。一次近傍遺伝子の上流近傍遺伝子は、一次近傍遺伝子と同じ絶縁近傍内に位置し得る。一次近傍遺伝子の下流近傍遺伝子は、一次近傍遺伝子と同じ絶縁近傍内に位置し得る。
【0065】
本発明は、遺伝子または遺伝子変異体の浸透度を変更する方法を提供する。本明細書で使用される場合、「浸透度」は、その変異体遺伝子の関連した特性(表現型)も呈する遺伝子の特定の変異体(例えば、野生型であるか否かにかかわらず、突然変異、対立遺伝子または一般遺伝子型)を担持する個体の割合である。いくつかの疾患の状況において、疾患を引き起こす突然変異の浸透度は、臨床症状を呈する突然変異を有する個体の割合として測定した。結果として、任意の遺伝子または遺伝子変異体の浸透度は、連続体上に存在する。
【0066】
絶縁近傍は、同じ制御機構下で遺伝子をグループ分けすることができる機能的単位であり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Dowen et al.,Cell,159:374−387(2014)に記載されている。絶縁近傍は、
図1に示されるTADなどの、より高次の染色体構造の機構的背景を提供する。絶縁近傍は、
図2Bに示されるコヒーシンによって共占有される2つの相互作用するCTCF部位のルーピングによって形成された染色体構造である。これらの構造の完全性は、局所遺伝子の適切な発現に重要である。一般に、1〜10の遺伝子は、各遺伝子内に3つの遺伝子の中央値を有する各近傍においてクラスター化される。同じ絶縁近傍によって制御される遺伝子は、DNAの二次元図から容易に明らかではない。ヒトにおいて、中央サイズが186kbである25kb〜940kbのサイズ範囲内に約13,801の絶縁近傍が存在する。絶縁近傍は、異なる細胞型の間で保存される。より大きなIN内で発生するより小さなINは、ネスト絶縁近傍(NIN)と称される。TADは、
図1に示されるように単一のINからなり得るか、または
図2Bに示されるように1つのIN及び1つのNIN及び2つのNINからなり得る。
【0067】
本明細書で使用される場合、「境界」という用語は、特徴、エレメント、または特性が終了または開始する場所を示す点、限界、または範囲を指す。したがって、「絶縁近傍境界」は、染色体上の絶縁近傍の範囲を定める境界を指す。本発明に従い、絶縁近傍は、少なくとも2つの絶縁近傍境界、一次上流境界及び一次下流境界によって定義される。「一次上流境界」は、一次近傍遺伝子の上流に位置する絶縁近傍境界を指す。「一次下流境界」は、一次近傍遺伝子の下流に位置する絶縁近傍境界を指す。同様に、
図2Bに示されるように二次ループが存在する場合、それらは、二次上流境界及び下流境界によって定義される。「二次上流境界」は、一次絶縁近傍内の二次ループの上流境界であり、「二次下流境界」は、一次絶縁近傍内の二次ループの下流境界である。二次境界の方向性は、一次絶縁近傍の方向性に従う。
【0068】
絶縁近傍境界の構成成分は、2つの境界のルーピングを容易にするアンカー領域及び関連因子(例えば、CTCF、コヒーシン)においてDNA配列を含み得る。アンカー領域におけるDNA配列は、少なくとも1つのCTCF結合部位を含み得る。ChIP−exo技法を使用する実験は、4つのCTCF結合モジュールを含有する52bpのCTCF結合モチーフを明らかにした(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Ong and Corces,Nature reviews Genetics,12:283−293,2011の
図1を参照)。絶縁近傍境界におけるDNA配列は、絶縁体を含有し得る。場合によっては、絶縁近傍境界はまた、エンハンサー・プロモーター相互作用部位などの調節配列領域と一致または重複し得る。
【0069】
本発明のいくつかの実施形態では、絶縁近傍境界の崩壊または変更は、境界における特定のDNA配列(例えば、CTCF結合部位)を変更することによって達成され得る。例えば、絶縁近傍境界における既存のCTCF結合部位は、欠失、突然変異、または逆転され得る。代替として、新たなCTCF結合部位は、新たな絶縁近傍を形成するために導入され得る。他の実施形態では、絶縁近傍境界の崩壊または変更は、境界におけるヒストン修飾(例えば、メチル化、脱メチル化)を変更することによって達成され得る。他の実施形態では、絶縁近傍境界の崩壊または変更は、境界へのCTCF及び/またはコヒーシンの結合を変更(例えば、ブロッキング)することによって達成され得る。絶縁近傍境界が調節配列領域と一致または重複する場合、絶縁近傍境界の崩壊または変更は、調節配列領域(RSR)またはRSR関連シグナル伝達分子の結合を変更することによって達成され得る。
【0070】
絶縁近傍からの発現を制御する:シグナル伝達中心
歴史的に、「シグナル伝達中心」という用語は、細胞環境の変化に反応する細胞の群を説明するために使用されている。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Guger et al.,Developmental Biology 172:115−125(1995)を参照されたい。同様に、「シグナル伝達中心」という用語は、本明細書で使用される場合、シグナル伝達タンパク質またはシグナル伝達分子(例えば、転写因子)などの定義された生体分子のセットと相互作用して、遺伝子発現を状況特異的な方法で調節する生存生物の定義された領域を指す。
【0071】
具体的に、「ゲノムシグナル伝達中心」、すなわち「シグナル伝達中心」という用語は、本明細書で使用される場合、その絶縁近傍内または複数の絶縁近傍中の遺伝子の調節に関与するシグナル伝達分子/シグナル伝達タンパク質の状況特異的複合アセンブリに結合することができる領域を含む絶縁近傍内の領域を指す。
【0072】
シグナル伝達中心は、絶縁近傍の活性を調節することが発見された。これらの領域は、ヒトゲノム中でどの遺伝子が発現されるか、及び発現のレベルを制御する。シグナル伝達中心の構造的完全性の喪失は、遺伝子発現の脱調節の一因となり、潜在的に疾患を引き起こす。
【0073】
シグナル伝達中心は、転写因子の高度に状況特異的な複合アセンブリによって結合されたエンハンサーを含む。これらの因子は、細胞シグナル伝達を通して部位に動員される。シグナル伝達中心は、相互作用して三次元転写因子ハブマクロ複合体を形成する複数の遺伝子を含む。シグナル伝達中心は、一般に、生物学的機能によって組織化されたループ中の1〜4遺伝子に関連している。
【0074】
各シグナル伝達中心の組成物は、転写因子のアセンブリ、転写装置、及びクロマチン調節因子を含む固有の組成物を有する。シグナル伝達中心は、高度に状況特異的であり、シグナル伝達経路を標的とすることによって薬物が反応を制御できるようにする。
【0075】
複数のシグナル伝達中心は、相互作用して、同じ絶縁近傍内で異なる遺伝子の組み合わせを制御することができる。
【0076】
シグナル伝達分子の結合部位
シグナル伝達分子について、一連のコンセンサス結合部位、または結合部位の結合モチーフは、本発明者によって特定された。これらのコンセンサス配列は、シグナル伝達分子の、または1つ以上のシグナル伝達分子を含む複合体の染色体、遺伝子、またはポリヌクレオチドに沿った結合部位を反映する。
【0077】
いくつかの実施形態では、結合部位は、複数のシグナル伝達分子または分子の複合体に関連している。
【0078】
エンハンサー
エンハンサーは、ヒトにおける細胞型特異的遺伝子発現プログラムを制御する遺伝子調節エレメントである。参照によりそれら全体が本明細書に組み込まれる、Buecker and Wysocka,Trends in genetics:TIG 28,276−284,2012、Heinz et al.,Nature reviews Molecular Cell Biology,16:144−154,2015、Levine et al.,Cell,157:13−25,2014、Ong and Corces,Nature reviews Genetics,12:283−293,2011、Ren and Yue,Cold Spring Harbor symposia on quantitative biology,80:17−26,2015を参照されたい。エンハンサーは、共活性化因子及びRNAポリメラーゼIIを動員して遺伝子を標的とする複数の転写因子によって占有され得る、一般に数百塩基対の長さであるDNAのセグメントである。参照によりそれら全体が本明細書に組み込まれる、Bulger and Groudine,Cell,144:327−339,2011、Spitz and Furlong,Nature reviews Genetics,13:613−626,2012、Tjian and Maniatis,Cell,77:5−8,1994を参照されたい。DNAのこれらの領域から転写されたエンハンサーRNA分子はまた、DNA及びRNAに結合することができる転写因子を「捕捉」する。複数のエンハンサーを有する領域は、「スーパーエンハンサー」である。
【0079】
絶縁近傍は、正常な遺伝子の活性化及び抑制の両方に極めて重要な特定のエンハンサー・遺伝子相互作用のための微小環境を提供する。転写エンハンサーは、20,000を超えるタンパク質コード遺伝子を制御して、全てのヒト細胞中の細胞型特異的遺伝子発現プログラムを維持する。数万のエンハンサーが、任意の所与のヒト細胞型で活性であると推定される。参照によりそれら全体が本明細書に組み込まれる、ENCODE Project Consortium et al.,Nature,489,57−74,2012、Roadmap Epigenomics et al.,Nature,518,317−330,2015を参照されたい。エンハンサー及びそれらの関連因子は、これらの遺伝子のプロモーターにルーピングすることによって、上流または下流に位置する遺伝子の発現を調節し得る。細胞識別子の転写制御と染色体構造の制御との間の関係に関する洞察を得るために実行されたコヒーシンChIA−PET研究は、スーパーエンハンサー及びそれらの関連遺伝子の大部分が、コヒーシンによって共占有されたCTCF部位と相互作用することによって接続された大きなループ内で起こることを明らかにする。そのようなスーパーエンハンサードメイン(SD)は、通常、SD内の1つの遺伝子に対してループする1つのスーパーエンハンサーを含有し、SDは、SD内の遺伝子に対するスーパーエンハンサー活性を制限すると思われる。絶縁近傍中のスーパーエンハンサー及びそれらの標的遺伝子の正しい会合は、単一スーパーエンハンサーの誤標的が、疾患を引き起こすのに十分であるため、極めて重要である。Groschel et al.,Cell,157(2):369−81,2014を参照されたい。
【0080】
疾患関連非コード変化の大部分は、エンハンサーの近位で起こり、したがってこれらのエンハンサー標的遺伝子に影響を及ぼし得る。したがって、エンハンサーに対する特異性を付与する特徴を解読することは、調整性遺伝子発現に重要である。参照によりそれら全体が本明細書に組み込まれる、Ernst et al.,Nature,473,43−49,2011、Farh et al.,Nature,518,337−343,2015、Hnisz et al.,Cell,155,934−947,2013、Maurano et al.,Science,337,1190−1195,2012を参照されたい。研究は、エンハンサー・遺伝子相互作用の特異性の一部が、エンハンサーにおけるDNA結合転写因子と、プロモーターにおける特定のパートナー転写因子との相互作用に起因し得ることを示唆する。参照によりそれら全体が本明細書に組み込まれる、Butler and Kadonaga,Genes&Development,15,2515−2519,2001、Choi and Engel,Cell,55,17−26,1988、Ohtsuki et al.,Genes&Development,12,547−556,1998を参照されたい。エンハンサー中及びプロモーター近位領域中のDNA配列は、単一細胞中で発現される様々な転写因子に結合する。これら2つの部位において結合される多様な因子は、大きな共因子複合体と相互作用し、互いに相互作用してエンハンサー・遺伝子特異性をもたらす。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Zabidi et al.,Nature,518:556−559,2015を参照されたい。
【0081】
いくつかの実施形態では、エンハンサー領域を標的化して、遺伝子シグナル伝達ネットワーク(GSN)を変更または明確化することができる。
【0082】
絶縁体
絶縁体は、エンハンサーが、それらの間に位置しているときに遺伝子を活性化する能力をブロックし、特定のエンハンサー・遺伝子相互作用に寄与する調節エレメントである。参照によりそれら全体が本明細書に組み込まれる、Chung et al.,Cell 74:505−514,1993、Geyer and Corces,Genes&Development 6:1865−1873,1992、Kellum and Schedl,Cell 64:941−950,1991、Udvardy et al.,Journal of molecular biology 185:341−358,1985を参照されたい。絶縁体は、転写因子CTCFによって結合されるが、全てのCTCF部位が絶縁体として機能するとは限らない。参照によりそれら全体が本明細書に組み込まれる、Bell et al.,Cell 98:387−396,1999、Liu et al.,Nature biotechnology 33:198−203,2015を参照されたい。絶縁体として機能するCTCF部位のサブセットを区別する特徴は、以前に理解されていない。
【0083】
エンハンサー、プロモーター及び絶縁体に結合するタンパク質のゲノムワイドマップは、これらのエレメントの間で起こる物理的接触の知識とともに、特定のエンハンサー・遺伝子相互作用を生じる機構の理解に対するさらなる洞察を提供する。参照によりそれら全体が本明細書に組み込まれる、Chepelev et al.,Cell research,22:490−503,2012、DeMare et al.,Genome Research,23:1224−1234,2013、Dowen et al.,Cell,159:374−387,2014、Fullwood et al.,Genes&Development 6:1865−1873,2009、Handoko et al.,Nature genetics 43:630−638,2011、Phillips−Cremins et al.,Cell,153:1281−1295,2013、Tang et al.,Cell 163:1611−1627,2015を参照されたい。エンハンサー結合タンパク質は、それらがこれらのCTCF−CTCFループ内の遺伝子のみと相互作用する傾向があるように制約される。したがって、これらのループアンカーを形成するCTCF部位のサブセットは、
図3Bに示されるように、ループの外側のエンハンサー及び遺伝子から、ループ内のエンハンサー及び遺伝子を絶縁するように機能する。いくつかの実施形態では、絶縁体領域は、遺伝子シグナル伝達ネットワーク(GSN)を変更または明確化するために標的され得る。
【0084】
コヒーシン及びCTCF関連ループ及びアンカー部位/領域
CTCF相互作用は、ループを形成する同じ染色体上の部位を結合し、それらは一般に、1Mb未満の長さである。転写は、ループ内及び外側の両方で起こるが、この転写の性質は、2つの領域間で異なる。研究は、エンハンサー関連転写が、ループ内でより顕著であることを示す。したがって、絶縁体状態は、CTCFループアンカーにおいて特異的に富化される。したがって、CTCFループは、遺伝子がループ内の中心に位置する傾向を有する遺伝子不良領域を包囲するか、またはCTCFループの外側の遺伝子密集領域を除外するかのいずれかである。
図2A及び
図2Bは、ループの線形構造を三次元(3D)構造と比較する。
【0085】
CTCFループは、それらの隣接領域に対して低減したエクソン密度を呈する。遺伝子オントロジー分析は、CTCFループ内に位置する遺伝子が、刺激への反応のために、また細胞外血漿膜及び小嚢細胞局在のために富化されることを明らかにする。一方で、ループのちょうど外側に接する隣接領域内に存在する遺伝子は、ハウスキーピング遺伝子と同様の発現パターンを呈する。すなわち、これらの遺伝子は、平均してループに包囲された遺伝子よりも高度に発現され、それらの発現パターンにおいてあまり細胞株特異的ではなく、細胞株にわたってそれらの発現レベルの変化が少ない。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Oti et al.,BMC Genomics,17:252,2016を参照されたい。
【0086】
アンカー領域は、絶縁近傍の立体配座に影響を及ぼすCTCFの結合部位である。アンカー部位の欠失は、通常は転写的にサイレントである遺伝子の活性化をもたらし得、それによって疾患表現型をもたらす。実際に、体細胞突然変異は、発がん関連絶縁近傍のループアンカー部位において共通している。ループアンカー領域のCTCF DNA結合モチーフは、がん細胞の最も変更されたヒト転写因子結合配列であることが観察された。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Hnisz et al.,Cell 167,November 17,2016を参照されたい。
【0087】
アンカー領域は、細胞発達中に大部分が維持され、特にヒト及び霊長類の生殖系において保存されることが観察された。実際に、アンカー領域のDNA配列は、絶縁近傍の一部ではないCTCF結合部位よりもCTCFアンカー領域において保存される。したがって、コヒーシンをChIA−PETの標的として使用して、両方の位置を特定することができる。
【0088】
コヒーシンはまた、ゲノムのCTCF結合領域と関連付けられ、これらのコヒーシン関連CTCF部位のうちのいくつかは、遺伝子活性化を促進するが、他のものは絶縁体として機能し得る。参照によりそれら全体が本明細書に組み込まれる、Dixon et al.,Nature,485(7398):376−80,2012、Parelho et al.,Cell,132(3):422−33,2008、Phillips−Cremins and Corces,Molecular Cell,50(4):461−74,2013)、Seitan et al.,Genome Research,23(12):2066−77,2013、Wendt et al.,Nature,451(7180):796−801,2008)を参照されたい。コヒーシン及びCTCFは、TAD内の大きなループ下部構造と関連付けられ、コヒーシン及びメディエーターは、CTCF結合領域内で形成するより小さいループ構造と関連付けられる。参照によりそれら全体が本明細書に組み込まれる、de Wit et al.,Nature,501(7466):227−31,2013、Cremins et al.,Cell,153(6):1281−95,2013、Sofueva et al.,EMBO,32(24):3119−29,2013を参照されたい。いくつかの実施形態では、コヒーシン及びCTCF関連ループ及びアンカー部位/領域は、遺伝子シグナル伝達ネットワーク(GSN)を変更または明確化するために標的され得る。
【0089】
遺伝子変異体
シグナル伝達中心内の遺伝子変異は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Hnisz et al.,Cell 167,November 17,2016に記載されているように、染色体上のタンパク質結合を崩壊させることによって疾患の一因となることが知られている。絶縁近傍の形成を干渉する絶縁近傍境界部位のCTCFアンカー領域の配列の変異は、遺伝子活性化及び抑制の脱調節をもたらすことが観察される。様々な遺伝的機構及び後成的機構によって引き起こされるCTCF機能不全は、発病につながり得る。したがって、いくつかの実施形態では、1つ以上の前向きな治療結果をもたらすために、そのような変異体駆動型病因学と関連付けられる任意の1つ以上の遺伝子シグナル伝達ネットワーク(GSN)を変更することが有益である。
【0090】
単一ヌクレオチド多型(SNP)
SNPの94.2%は、エンハンサー領域を含む非コード領域中で発生する。いくつかの実施形態では、SNPは、1つ以上のGSNからのシグナル伝達を研究及び/または変更するために変更される。
【0091】
シグナル伝達分子
シグナル伝達分子は、正準であるか、または本明細書に定義される、もしくは本明細書に記載される方法を使用して定義可能である遺伝子シグナル伝達ネットワーク経路細胞かにかかわらず、細胞シグナル伝達経路において機能する任意のタンパク質を含む。転写因子は、シグナル伝達分子のサブセットである。シグナル伝達及びマスター転写因子のある特定の組み合わせをエンハンサー領域と関連付けて、遺伝子の発現に影響を及ぼす。マスター転写因子は、特定の組織中の転写因子を指向する。例えば、血液中では、GATA転写因子が、Wnt細胞シグナル伝達経路のTCF7L2を指向するマスター転写因子である。肝臓中では、HNF4Aが、系統組織及びパターンにおけるSMADを指向するマスター転写因子である。
【0092】
転写調節は、所与の遺伝子がどのくらいの頻度で転写されるかを制御するのを可能にする。転写因子は、転写開始の条件を多少好ましいものにすることによって転写物が産生される速度を変更する。転写因子は、シグナル伝達経路を選択的に変更し、順にゲノムシグナル伝達中心によって制御される遺伝子に影響を及ぼす。ゲノムシグナル伝達中心は、転写調節因子の構成成分である。いくつかの実施形態では、シグナル伝達分子は、本発明の遺伝子シグナル伝達ネットワークのシグナル伝達を明確化または変更するために使用または標的され得る。
【0093】
参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、国際出願第PCT/US18/31056号の表22は、様々な細胞シグナル伝達経路において機能する転写因子(TF)及び/またはクロマチンリモデリング因子(CR)として作用するものを含む、シグナル伝達分子の一覧を提供する。本明細書に記載される方法を使用して、絶縁近傍内でエンコードされる一次近傍遺伝子の調節配列領域に関連する1つ以上のシグナル伝達分子の発現を阻害または活性化することができる。したがって、これらの方法は、未治療対照と比較して、治療剤による治療時に差次的に発現される1つ以上の一次近傍遺伝子のシグナル伝達シグネチャーを変更することができる。
【0094】
転写因子
転写因子は、一般に、エンハンサーに結合し、共活性化因子及びRNAポリメラーゼIIを動員して遺伝子を標的とすることによって遺伝子発現を調節する。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Whyte et al.,Cell,153(2):307−319,2013を参照されたい。転写因子は、「エンハンサー」に結合して、ゲノム全体に分散された調節エレメントに結合することによって細胞特異的転写プログラムを刺激する。
【0095】
ヒトゲノム中に約1800の既知の転写因子が存在する。リボソームRNA複合体などのタンパク質または核酸分子の結合部位を提供する染色体のDNA上にエピトープが存在する。マスター調節因子は、上記の細胞シグナル伝達及び下記のDNAを通して転写因子の組み合わせを指向する。これらの特徴は、次のシグナル伝達中心の位置の決定を可能にする。いくつかの実施形態では、転写因子を使用するかまたは標的として、本発明の遺伝子シグナル伝達ネットワークを変更または明確化することができる。
【0096】
マスター転写因子
マスター転写因子は、細胞型特異的エンハンサーを結合及び確立する。マスター転写因子は、追加のシグナル伝達タンパク質、例えば他の転写因子をエンハンサーに動員して、シグナル伝達中心を形成する。233ヒト細胞型及び組織の候補マスターTFの地図は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、D′Alessio et al.,Stem Cell Reports 5,763−775(2015)に記載されている。いくつかの実施形態では、マスター転写因子を使用するかまたは標的として、本発明の遺伝子シグナル伝達ネットワークを変更または明確化することができる。
【0097】
シグナル伝達転写因子
シグナル伝達転写因子は、それらがそうすることを可能にするタンパク質ドメインを含むため、細胞間を移動するホメオタンパク質などの転写因子である。Engrailed、Hoxa5、Hoxb4、Hoxc8、Emx1、Emx2、Otx2及びPax6などのホメオタンパク質は、シグナル伝達転写因子として作用することができる。ホメオタンパク質Engrailedは、他のホメオタンパク質において同様に存在すると考えられる内在化及び分泌シグナルを有する。この特性は、転写因子であることに加えて、ホメオタンパク質がシグナル伝達分子として作用するのを可能にする。ホメオタンパク質は、特徴付けられた細胞外機能を欠いており、それらのパラクリン標的が細胞内であるという認識につながる。ホメオタンパク質が転写、及び場合によっては翻訳を調節する能力は、パラクリン作用に影響を及ぼす可能性が最も高い。Prochiantz and Joliot,Nature Reviews Molecular Cell Biology,2003を参照されたい。いくつかの実施形態では、シグナル伝達転写因子を使用するかまたは標的として、本発明の遺伝子シグナル伝達ネットワークを変更または明確化することができる。
【0098】
クロマチン修飾
クロマチンリモデリングは、ヒストン修飾に関連する1000を超えるタンパク質によって調節される。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Ji et al.,PNAS,112(12):3841−3846(2015)を参照されたい。クロマチン調節因子は、修飾されたヒストンでマークされたゲノム領域に関連する特定のタンパク質のセットである。例えば、ヒストンは、ある特定のリジン残基:H3K20me3、H3K27ac、H3K4me3、H3K4me1、H3K79me2、H3K36me3、H3K9me2、及びH3K9me3において修飾され得る。ある特定のヒストン修飾は、シグナル伝達分子によって結合するために使用可能であるゲノムの領域をマークする。例えば、以前の研究は、活性エンハンサー領域がH3K27acを有するヌクレオソームを含み、活性プロモーターがH3K27acを有するヌクレオソームを含むことを観察した。さらに、転写された遺伝子は、H3K79me2を有するヌクレオソームを含む。ChIP−MSを実施して、特定のヒストン修飾に関連するクロマチン調節因子タンパク質を特定することができる。ある特定の修飾されたヒストンに特異的な抗体を有するChIP−seqを使用して、シグナル伝達分子によって結合されたゲノムの領域を特定することもできる。いくつかの実施形態では、クロマチン修飾酵素またはタンパク質を使用するかまたは標的として、本発明の遺伝子シグナル伝達ネットワークを変更または明確化することができる。
【0099】
調節配列領域に由来するRNA
タンパク質コード遺伝子のエンハンサー、シグナル伝達中心、及びプロモーターからの領域などの多くの活性調節配列領域(RSR)は、非コードRNAを産生することが知られている。活性調節配列領域またはその近位で産生される転写物は、付近の遺伝子の転写調節において実装されている。最近の報告は、エンハンサー関連RNA(eRNA)は、エンハンサー活性の強力な指標であることを実証した(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Li et al.,Nat Rev Genet.2016 Apr;17(4):207−23を参照)。さらに、活性調節配列領域からの非コードRNAは、これらの領域への転写因子の結合を促進することに関与することが示されている(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Sigova et al.,Science.2015 Nov 20;350(6263):978−81)。これは、そのようなRNAが、シグナル伝達中心のアセンブリ及び近傍遺伝子の調節に重要であり得ることを示唆している。いくつかの実施形態では、PNPLA3遺伝子の調節配列領域に由来するRNAを使用するかまたは標的として、本発明の遺伝子シグナル伝達ネットワークを変更または明確化することができる。
【0100】
いくつかの実施形態では、調節配列領域に由来するRNAは、エンハンサー関連RNA(eRNA)であり得る。いくつかの実施形態では、調節配列領域に由来するRNAは、プロモーター関連RNAであり得、プロモーター上流転写(PROMPT)、プロモーター関連長RNA(PALR)、及びプロモーター関連小RNA(PASR)が挙げられるが、これらに限定されない。さらなる実施形態では、調節配列領域に由来するRNAとしては、転写開始部位(TSS)関連RNA(TSSa−RNA)、転写開始RNA(tiRNA)、及びターミネーター関連小RNA(TASR)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0101】
いくつかの実施形態では、調節配列領域に由来するRNAは、長い非コードRNA(lncRNA)(すなわち、>200ヌクレオチド)であり得る。いくつかの実施形態では、調節配列領域に由来するRNAは、中間非コードRNA(すなわち、約50〜200ヌクレオチド)であり得る。いくつかの実施形態では、調節配列領域に由来するRNAは、短い非コードRNA(すなわち、約20〜50ヌクレオチド)であり得る。
【0102】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法及び化合物によって調整され得るeRNAは、以下の特徴のうちの1つ以上を特徴とし得る。(1)ヒストン3のリジン4上の高レベルのモノメチル化(H3K4me1)及びヒストン3のリジン4上の低レベルのトリメチル化(H3K4me3)を有する領域から転写される、(2)ヒストン3のリジン27上の高レベルのアセチル化(H3K27ac)を有するゲノム領域から転写される、(3)ヒストン3のリジン36上の低レベルのトリメチル化(H3K36me3)を有するゲノム領域から転写される、(4)RNAポリメラーゼII(Pol II)について富化されたゲノム領域から転写される、(5)p300共活性化因子などの転写共調節因子について富化されたゲノム領域から転写される、(6)低密度のCpG島を有するゲノム領域から転写される、(7)それらの転写がPol II結合部位から開始され、二方向に伸長される、(8)eRNAをエンコードする進化的に保存されたDNA配列、(9)短い半減期、(10)低減レベルのスプライシング及びポリアデニル化、(11)シグナル伝達時に動的に調節される、(12)mRNA発現付近のレベルに正に相関する、(13)極めて高い組織特異性、(14)選好的に核及びクロマチン結合される、及び/または(15)エキソソームによって分解される。
【0103】
例示的なeRNAとしては、参照によりそれら全体が本明細書に組み込まれる、Djebali et al.,Nature.2012 Sep 6;489(7414)(例えば、
図5aの補足データファイル)及びAndersson et al.,Nature.2014 Mar 27;507(7493):455−461(例えば、補足表S3、S12、S13、S15、及び16)に記載されるものが挙げられる。
【0104】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法または化合物によって調整され得るプロモーター関連RNAは、以下の特徴のうちの1つ以上を特徴とし得る。(1)高レベルのH3K4me1及び低〜中レベルのH3K4me3を有する領域から転写される、(2)高レベルのH3K27acを有するゲノム領域から転写される、(3)H3K36me3を有しないか、または低レベルのH3K36me3を有するゲノム領域から転写される、(4)RNAポリメラーゼII(Pol II)について富化されたゲノム領域から転写される、(5)高密度のCpG島を有するゲノム領域から転写される、(6)それらの転写は、Pol II結合部位から開始され、センス鎖(すなわち、mRNA)から反対方向または二方向に伸長される、(7)短い半減期、(8)低減レベルのスプライシング及びポリアデニル化、(9)選好的に核結合及びクロマチン結合される、及び/または(10)エキソソームによって分解される。
【0105】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物及び方法を使用して、調節配列領域に由来するRNAを調整し、本発明の遺伝子シグナル伝達ネットワークを変更または明確化することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法及び化合物を使用して、調節配列領域に由来するRNAの産生及び/または機能を阻害することができる。いくつかの実施形態では、siRNAまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドなどのハイブリダイジングオリゴヌクレオチドを使用して、RNA干渉(RNAi)もしくはRNase H媒介性切断を介して関心対象のRNAの活性を阻害するか、またはRNAへの様々なシグナル伝達分子の結合を物理的にブロックすることができる。例示的なハイブリダイジングオリゴヌクレオチドとしては、参照によりそれら全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第9,518,261号及びPCT公開第WO2014/040742号に記載されるものを挙げることができる。ハイブリダイジングオリゴヌクレオチドは、化学的に修飾されたまたは未修飾のRNA、DNA、ロックド核酸(LNA)、またはRNA及びDNAの組み合わせ、ハイブリダイジングオリゴヌクレオチドをエンコードする核酸ベクター、またはそのようなベクターを担持するウイルスとして提供され得る。他の実施形態では、CRISPR/Cas9などのゲノム編集ツールを使用して、RNAの転写を制御するか、またはRNA自体を分解する調節配列領域中の特定のDNAエレメントを削除することができる。他の実施形態では、触媒的に不活性なCRISPR/Cas9などのゲノム編集ツールを使用して、調節配列領域中の特定のエレメントに結合し、関心対象のRNAの転写をブロックすることができる。さらなる実施形態では、ブロモドメイン及び末端外ドメイン(BET)阻害剤(例えば、JQ1、I−BET)を使用して、BETタンパク質Brd4によるヒストンアセチル化の阻害を通してRNA転写を低減することができる。
【0106】
代替実施形態では、本明細書に記載される方法及び化合物を使用して、調節配列領域に由来するRNAの産生及び/または機能を増加することができる。いくつかの実施形態では、関心対象のRNAを模倣する外因性合成RNAは、細胞に導入され得る。合成RNAは、RNA、RNAをエンコードする核酸ベクター、またはそのようなベクターを担持するウイルスとして提供され得る。他の実施形態では、CRISPR/Cas9などのゲノム編集ツールを使用して、外因性合成RNAを調節配列領域中の特定部位につなぐことができる。そのようなRNAを、CRISPR/Cas9複合体のガイドRNAに融合することができる。
【0107】
いくつかの実施形態では、調節配列領域に由来するRNAの調整は、PNPLA3遺伝子の発現を増加させる。いくつかの実施形態では、調節配列領域に由来するRNAの調整は、PNPLA3遺伝子の発現を低減する。
【0108】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される化合物によって調整されるRNAとしては、肝臓細胞(例えば、肝細胞または星細胞)中のPNPLA3の調節配列領域に由来するRNAが挙げられる。
【0109】
ゲノム系の摂動
本明細書に記載されるPNPLA3に関連した遺伝子シグナル伝達ネットワーク(GSN)、ゲノムシグナル伝達中心(GSC)、及び/または絶縁近傍(IN)の1つ以上の構成成分の挙動は、そのような特徴を含む系を摂動刺激と接触させることによって変更され得る。潜在的刺激としては、小分子、抗体、タンパク質、ペプチド、脂質、脂肪、核酸等の外因性生体分子、または放射線、pH、温度、イオン強度、音、光等の環境刺激を挙げることができる。
【0110】
本発明は、より良く定義された遺伝子シグナル伝達ネットワーク(GSN)の明確化だけでなく、結果として生物系に関するより良い理解のための発見ツールとして役立つ。本発明は、潜在的な治療成果の演繹的な予測、PNPLA3関連疾患または病態の治療、毒性、不良な半減期、不良な生物学的利用能、有効性または薬物動態的もしくは薬力学的リスクの欠失または喪失などの新たな薬物または既知の薬物に関連する1つ以上の治療負債の低減または除去において実装されたことがない新規の化合物または標的の特定を可能にする方法で、遺伝子レベルでPNPLA3の遺伝子シグナル伝達を適切に定義する能力を可能にする。
【0111】
正準細胞シグナル伝達経路の遺伝子発現を変更することによる疾患の治療は、有効であることが示されている。遺伝子発現の小さな変化でさえ、疾患に対して大きな影響を有し得る。例えば、細胞死抑制に影響を及ぼすシグナル伝達経路につながるシグナル伝達中心の変化が疾患に関連している。本発明は、GSNの結合性のより決定的なセットを明確化することによって、遺伝性疾患を含む疾患に対処するための微調整された機構を提供する。疾患を治療する方法は、その疾患に関連する遺伝子に関与するシグナル伝達中心を修飾することを含み得る。そのような遺伝子は、本明細書に記載される方法を使用して明確化されることを除いて、現在は疾患に関連していない場合がある。
【0112】
摂動刺激は、小分子、既知の薬物、生物学的刺激、ワクチン、薬草調製物、ハイブリダイジングオリゴヌクレオチド(例えば、siRNA及びアンチセンスオリゴヌクレオチド)、遺伝子もしくは細胞療法製品、または他の治療製品であり得る。
【0113】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、摂動刺激を印加して、PNPLA3遺伝子に関連するGSN、ゲノムシグナル伝達中心、及び/または絶縁近傍を摂動させることを含む、PNPLA3発現の変化を引き起こす摂動刺激は、関連したGSNの結合性を通知し、PNPLA3関連障害に対する潜在的な標的及び/または治療を提供することができる。
【0114】
下流標的
ある特定の実施形態では、遺伝子シグナル伝達ネットワークの遺伝子の下流産生物を標的とする刺激が投与される。代替として、刺激は、少なくとも1つの下流標的の下流発現に影響を及ぼす遺伝子シグナル伝達ネットワークを崩壊させる。いくつかの実施形態では、遺伝子は、PNPLA3である。
【0115】
mRNA
単一の絶縁近傍に関連する、または複数の絶縁近傍にわたる単一または複数の遺伝子シグナル伝達ネットワークの摂動は、コヒーシンを含むアンカー部位の喪失に起因して、絶縁近傍の境界を変更することによって単一の遺伝子または複数の遺伝子セットの転写に影響を及ぼし得る。具体的に、GSCの摂動はまた、単一の遺伝子または複数の遺伝子セットの転写に影響を及ぼし得る。摂動刺激は、RNA発現及び/またはmRNA内の一次転写物中の配列、すなわち、エクソンもしくはスプライシングによって除去されるエクソン、すなわちイントロン間のRNA配列の修飾をもたらし得る。結果として、そのような変化は、遺伝子の遺伝子シグナル伝達ネットワーク内のシグナル伝達分子のセットのメンバーを変更することができ、それによって遺伝子シグナル伝達ネットワークの変異体を定義する。
【0116】
タンパク質
単一の絶縁近傍に関連する、または複数の絶縁近傍にわたる単一または複数の遺伝子シグナル伝達ネットワークの摂動は、単一の遺伝子またはゲノムシグナル伝達中心の一部である複数の遺伝子セット、ならびにゲノムシグナル伝達中心の下流にあるものの翻訳に影響を及ぼし得る。具体的に、ゲノムシグナル伝達中心の摂動は、翻訳に影響を及ぼし得る。摂動は、翻訳されたタンパク質の阻害をもたらし得る。
【0117】
最近傍遺伝子
摂動刺激は、一次近傍遺伝子の上流または下流に位置し得る一次最近傍遺伝子の発現を変更するために、シグナル伝達分子との相互作用を引き起こし得る。近傍遺伝子は、染色体に沿って任意の数の上流または下流遺伝子を有し得る。任意の絶縁近傍内に、一次近傍遺伝子に対する1つ以上、例えば、1、2、3、4またはそれ以上の上流及び/または下流近傍遺伝子が存在し得る。「一次近傍遺伝子」は、染色体に沿った特定の絶縁近傍内で最も一般に見出される遺伝子である。一次近傍遺伝子の上流近傍遺伝子は、一次近傍遺伝子と同じ絶縁近傍内に位置し得る。一次近傍遺伝子の下流近傍遺伝子は、一次近傍遺伝子と同じ絶縁近傍内に位置し得る。
【0118】
正準細胞シグナル伝達経路
当該技術分野において詳述される正準経路と本明細書に定義される遺伝子シグナル伝達ネットワーク(GSN)との間にいくらかの重複が存在し得ることが理解される。
【0119】
正準経路は、経路をわたってある程度のメンバーの混乱(クロストーク)を許容するが、本発明の遺伝子シグナル伝達ネットワークの(GSN)は、遺伝子レベルにおいて定義され、その遺伝子を発現する細胞、組織、臓器、または臓器系の任意の数の刺激または摂動に基づいて特徴付けられる。したがって、GSNの性質は、構造的(例えば、遺伝子)かつ状況的(例えば、機能、例えば、発現プロファイル)に定義される。また2つの異なる遺伝子シグナル伝達ネットワークは、メンバーを共有し得るが、依然として摂動の性質がそれらを区別し得ることにおいて固有である。したがって、治療的研究及び開発を支持する生物系の機能の明確化におけるGSNの価値。
【0120】
正準経路と遺伝子シグナル伝達ネットワークとの間の関連付けが、これまで行われたことがないことを意図しないことを理解すべきであり、実際に、反対も同様である。さらなる化学的洞察のための2つのシグナル伝達パラダイムをつなげるために、正準シグナル伝達経路パラダイムを本発明の遺伝子シグナル伝達ネットワークと比較することは有益となるであろう。
【0121】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、転写(STAT)経路のヤヌスキナーゼ(JAK)/シグナル伝達因子及び活性化因子を変更することを伴う。JAK/STAT経路は、多様なサイトカイン及び増殖因子の主要なメディエーターである。サイトカインは、免疫反応を調整する調節分子である。JAKは、通常はサイトカイン受容体などの細胞表面受容体と関連付けられる細胞内の非受容体チロシンキナーゼのファミリーである。哺乳動物は、4つのJAK:JAK1、JAK2、JAK3、及びチロシンキナーゼ2(TYK2)を有することが知られている。細胞表面におけるサイトカインまたは増殖因子の、それぞれの受容体への結合は、JAKのトランスリン酸化を開始し、それが下流STATを活性化する。STATは、活性化されるまで細胞質中に常駐する潜伏性転写因子である。7つの哺乳類STAT:STAT1、STAT2、STAT3、STAT4、STAT5(STAT5A及びSTAT5B)、ならびにSTAT6が存在する。活性化されたSTATは核に転位し、ここでそれらが他の核タンパク質と複合体化し、特定の配列に結合して標的遺伝子の発現を調節する。したがって、JAK/STAT経路は、細胞外シグナルを転写反応に翻訳する直接機序を提供する。JAK/STAT経路によって調節される標的遺伝子は、免疫性、増幅、分化、アポトーシス及び発がんに関与する。JAKの活性化はまた、ホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3K)及びマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)経路を活性化することもできる。
【0122】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、p53媒介性アポトーシス経路を変更することを含む。腫瘍タンパク質p53は、細胞周期を調節し、したがってがんを予防するための腫瘍抑制因子として機能する。p53は、DNA修復タンパク質活性化し、細胞周期を保持することにより細胞増殖を停止し、アポトーシスを開始することによって、アポトーシス、血管新生の阻害及びゲノム安定性において重要な役割を果たす。p53は、DNA損傷、浸透圧ショック、酸化ストレス、または他の無数のストレッサーに反応して活性化される。活性化p53は、p21を含むDNAに結合することによって、いくつかの遺伝子の発現を活性化する。p21は、G1/S移行のための重要な分子である、G1−S/CDK複合体に結合し、次いで細胞周期の停止を引き起こす。p53は、2つの主要なアポトーシス経路:外部経路及び内部経路を通してアポトーシスを促進する。外部経路は、腫瘍壊死因子(TNF)受容体ファミリーに属する特定の細胞表面死受容体の活性化を伴い、死誘導シグナル伝達複合体(DISC)の形成を通して、カスパーゼ8及びカスパーゼ3を含むカスパーゼの活性化のカスケードにつながり、順にアポトーシスを誘導する。内部経路では、p53は、Bcl−2ファミリー(例えば、Bcl−2、Bcl−xL)のマルチドメインメンバーに関与し、それと相互作用して、ミトコンドリア外膜透過を誘導する。
【0123】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、ホスホイノシチド3−キナーゼ(PI3K)/Aktシグナル伝達経路を変更することを含む。PI3K/Aktシグナル伝達経路は、代謝、増殖、増幅、生存、転写及びタンパク質合成を含む様々な細胞機能を調節することにおいて重要な役割を果たす。シグナル伝達カスケードは、受容体チロシンキナーゼ、インテグリン、B及びT細胞受容体、サイトカイン受容体、G−タンパク質共役受容体、ならびにPI3Kによるホスファチジルイノシトール(3,4,5)トリスリン酸塩(PIP3)の産生を誘導する他の刺激によって活性化される。セリン/トレオニンキナーゼAkt(タンパク質キナーゼBまたはPKBとしても知られる)は、これらのリン脂質と相互作用し、内膜へのその転位を引き起こし、ここでそれはリン酸化され、ピルビン酸ジヒドロゲナーゼキナーゼPDK1及びPDK2によって活性化される。活性化されたAktは、細胞生存、細胞周期進行及び細胞増殖の調節に関与する多くの基質の機能を調整する。
【0124】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、脾臓チロシンキナーゼ(Syk)依存性シグナル伝達経路を変更することを含む。Sykは、マクロファージを含む様々な炎症細胞に関連するタンパク質チロシンキナーゼである。Sykは、Fc受容体及びB細胞受容体(BCR)を活性化するシグナル伝達において重要な役割を果たす。IgG I、IIA、及びIIIAのFc受容体がそれらのリガンドに結合する場合、受容体複合体は活性化され、免疫受容体活性化モチーフ(ITAM)のリン酸化をトリガする。これは、様々な遺伝子を活性化し、これが単球/マクロファージ系統の細胞中で食作用を媒介する細胞骨格再配置につながる。Sykは、Fc受容体媒介性シグナル伝達及び炎症伝播において重要な役割を果たすため、関節リウマチ及びリンパ腫などの様々な自己免疫病態の阻害のための良い標的であると考慮される。
【0125】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、インスリン様増殖因子1受容体(IGF−1R)/インスリン受容体(InsR)シグナル伝達経路を変更することを含む。インスリン様増殖因子(IGF−1)は、細胞代謝、増幅、分化、及びアポトーシスなどの多くの生物学的過程を制御する。これらの効果は、それらの受容体IGF−1Rに本質的なチロシンキナーゼ活性のリガンド活性化を通して媒介される。InsR基質1及び2(IRS1及びIRS2)は、重要なシグナル伝達中間物であり、それらの既知の下流エフェクターは、PI3K/AKT及びMAPK/ERK1である。シグナル伝達の結果は、一時的な転写反応をもたらし、細胞増幅及び生存を含む広範囲の生物学的過程につながる。
【0126】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、Fms様チロシンキナーゼ−3(FLT3)シグナル伝達経路を変更することを含む。FLK2(胎児肝臓キナーゼ−2)及びSTK1(ヒト肝細胞キナーゼ1)としても知られるFLT3は、受容体チロシンキナーゼクラスIIIに属するサイトカイン受容体である。多くの造血性前駆細胞の表面上に発現される。FLT3のシグナル伝達は、造血性肝細胞及び前駆細胞の正常な発達に重要である。FLT3へのFLT3リガンドの結合は、PI3K及びRAS経路をトリガし、増加した細胞増殖及びアポトーシスの阻害につながる。
【0127】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、Hippoシグナル伝達経路を変更することを含む。Hippoシグナル伝達経路は、組織再生、肝細胞自己更新及び臓器サイズ制御において重要な役割を果たす。細胞増幅及びアポトーシスの調節を通して、動物における臓器サイズを制御する。哺乳類無菌20様キナーゼ(MST1及びMST2)は、Hippoシグナル伝達経路の重要な構成成分である。
【0128】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、ラパマイシンの哺乳類標的(mTOR)経路を変更することを含む。mTOR経路は、細胞代謝、増殖、増幅及び生存の中心的調節因子である。mTORは、2つの別個の複合体:mTOR複合体1(mTORC1)及びmTORC2中に存在する非典型的なセリン/トレオニンキナーゼである。mTORC1は、栄養素/エネルギー/酸化還元センサーとして機能し、タンパク質合成を制御する。増殖因子、エネルギーレベル、細胞ストレス、及びアミノ酸を含む多様な栄養要因及び環境要因を感知し、統合する。mTORC2は、アクチン細胞骨格の重要な調節因子として機能することが示されている。加えて、mTORC2はまた、IGF−IR及びInsRの活性化にも関与する。異常なmTORシグナル伝達は、がん、心血管疾患、及び糖尿病を含む多くのヒト疾患につながっている。
【0129】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、グリコーゲンシンターゼキナーゼ(GSK3)経路を変更することを含む。GSK3は、グリコーゲン代謝、遺伝子転写、タンパク質翻訳、細胞増幅、アポトーシス、免疫反応、及び微小管安定性を含む多くの細胞機能に関与する、構成的に活性であり、高度に保存されたセリン/トレオニンタンパク質キナーゼである。GSK3は、WNT、増殖因子、インスリン、Reelin、受容体チロシンキナーゼ(RTK)、ヘッジホッグ経路、及びG−タンパク質共役受容体(GPCR)への細胞反応を含む、様々なシグナル伝達経路に関与する。GSK3は、主に細胞質中に局在するが、その細胞内局在は、刺激に反応して変化する。
【0130】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、形質転換増殖因子−β(TGF−β)/SMADシグナル伝達経路を変更することを含む。TGF−β/SMADシグナル伝達経路は、細胞増殖、細胞分化、アポトーシス、細胞ホメオスタシス及び他の細胞機能を含む、成体生物及び発達中の胚の両方における多くの生物学的過程に関与する。TGF−βスーパーファミリーリガンドとしては、骨形成タンパク質(BMP)、増殖及び分化因子(GDF)、抗ミュラー管ホルモン(AMH)、アクチビン、ノーダル及びTGF−βが挙げられる。それらは、複数の細胞内経路を活性化する特定の受容体を介して作用し、一般的なメディエーターSMAD4に関連する受容体調節SMADタンパク質のリン酸化をもたらす。そのような複合体は、核に転位し、DNAに結合し、多くの遺伝子の転写を調節する。BMPは、骨形成、ニューロン形成、及び腹側中胚葉の特定に関与するmRNAの転写を引き起こし得る。TGF−βは、アポトーシス、細胞外マトリクス新生及び免疫抑制に関与するmRNAの転写を引き起こし得る。それはまた、細胞周期におけるG1停止に関与する。アクチビンは、性腺増殖、胚分化及び胎盤形成に関与するmRNAの転写を引き起こし得る。ノーダルは、左軸及び右軸の特定、中胚葉及び内胚葉誘導に関与するmRNAの転写を引き起こし得る。TGF−βスーパーファミリーメンバーの役割は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Wakefield et al.,Nature Reviews Cancer 13(5):328−41においてレビューされている。
【0131】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、核因子−κB(NF−κB)シグナル伝達経路を変更することを含む。NF−κBは、全ての細胞型において見出される転写因子であり、ストレス及びサイトカインなどの刺激に対する細胞反応に関与する。NF−κBシグナル伝達は、炎症、先天性及び適応性免疫反応及びストレスにおいて重要な役割を果たす。刺激されていない細胞では、NF−κB二量体は、κBの阻害剤(IκB)と呼ばれるタンパク質複合体によって細胞質中で不活的に隔離される。NF−κBの活性化は、IκBキナーゼ(IKK)によるそのリン酸化によって開始される過程である、IκBの分解を介して起こる。これは、活性なNF−κB転写因子サブユニットが、核に転位し、標的遺伝子発現を誘導するのを可能にする。NF−κB活性化は、IκBα遺伝子の発現をオンにして、負のフィードバックループを形成する。NF−κBシグナル伝達の脱調節は、炎症及び自己免疫疾患及びがんにつながり得る。炎症におけるNF−κB経路の役割は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Lawrence,Cold Spring Harb Perspect Biol.2009;1(6):a001651においてレビューされている。
【0132】
II.パタチン様ホスホリパーゼドメイン含有タンパク質3(PNPLA3)遺伝子の特徴及び特性
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、パタチン様ホスホリパーゼドメイン含有タンパク質3(PNPLA3)遺伝子の発現を調整することを含む。PNPLA3はまた、アディポヌトリン、カルシウム非依存性ホスホリパーゼA2−ε、アシルグリセロールO−アシルトランスフェラーゼ、パタチン様ホスホリパーゼドメイン含有タンパク質3、パタチン様ホスホリパーゼドメイン含有3、クロモソーム22オープンリーディングフレーム20、IPLA(2)ε、IPLA2ε、IPLA2−ε、C22orf20、ADPN、EC2.7.7.56、EC4.2.3.4、EC3.1.1.3、及びEC2.3.1.と称され得る。PNPLA3は、22q13.31の細胞遺伝的位置を有し、ゲノム配座は、位置43,923,739−43,964,488における順鎖上の染色体22上にある。PNPLA5(ENSG00000100341)は、順鎖上のPNPLA3の上流にある遺伝子であり、SAMM50(ENSG00000100347)は、順鎖上のPNPLA3の下流にある遺伝子である。PNPLA3は、NCBI遺伝子ID80339、Uniprot ID Q9NST1及びEnsembl遺伝子ID ENSG00000100344を有する。PNPLA3のヌクレオチド配列は、配列番号1に示される。
【0133】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、PNPLA3遺伝子を含有する絶縁近傍の組成物及び/または構造を変更することを含む。本発明は、一次ヒト肝細胞中のPNPLA3遺伝子を含む絶縁近傍を特定した。PNPLA3遺伝子を含む絶縁近傍は、位置43,782,676〜45,023,137における染色体22上にあり、およそ1,240kbのサイズを有する。絶縁近傍内のシグナル伝達中心の数は、12である。絶縁近傍は、PNPLA3及び7つの他の遺伝子、つまりMPPED1、EFCAB6、SULT4A1、PNPLA5、SAMM50、PARVB、及びPARVGを含む。絶縁近傍で特定されるクロマチンマークまたはクロマチン関連タンパク質としては、H3k27ac、BRD4、p300、H3K4me1及びH3K4me3が挙げられる。絶縁近傍に関与する転写因子としては、HNF3b、HNF4a、HNF4、HNF6、Myc、ONECUT2及びYY1が挙げられる。絶縁近傍に関与するシグナル伝達タンパク質としては、TCF4、HIF1a、HNF1、ERa、GR、JUN、RXR、STAT3、VDR、NF−κB、SMAD2/3、STAT1、TEAD1、p53、SMAD4、及びFOSが挙げられる。これらのシグナル伝達中心及び/またはシグナル伝達分子の任意の構成成分、または絶縁近傍内もしくはその付近の任意の領域は、絶縁近傍の組成物及び/または構造を変えるように標的または変更され得、それによってPNPLA3の発現を調整する。
【0134】
PNPLA3は、脂肪滴関連の炭水化物調節された脂質生成及び/または脂質分解酵素をエンコードする。PNPLA3は、主に肝臓(肝細胞及び肝星細胞)ならびに脂肪組織中で発現される。肝星細胞(HSC、類洞周囲細胞またはIto細胞とも呼ばれる)は、肝臓中の肝細胞と小血管との間に常駐する収縮細胞である。HSCは、肝線維症の過程において主要なマトリクス産生細胞として特定された。PNPLA3は、グリセロリン脂質生合成、トリアシルグリセロール生合成、脂肪生成、及びエイコサノイド合成などの様々な代謝経路に関与することが知られている。
【0135】
PNPLA3の変化は、非アルコール性脂肪性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝炎、脂肪肝、アルコール性肝疾患、アルコール性肝硬変、アルコール性脂肪肝、肝臓癌、脂質蓄積疾患、肥満及び他の遺伝性代謝障害などの代謝障害に関連する。これらの障害のうちのいずれか1つ以上は、本明細書に記載される組成物及び方法を使用して治療され得る。
【0136】
残基148におけるイソロイシンからメチオニンへの置換(I148M)をエンコードする、PNPLA3の多型変異rs738409c/Gは、NAFLD、脂肪肝、及び非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、ならびにその病態生物学的後遺症の線維症、硬変、及び肝細胞癌と関連付けられている(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Krawczyk M et al.,Semin Liver Dis.2013 Nov;33(4):369−79)。研究は、変更されたタンパク質が、肝臓中の脂肪の産生の増加及び分解の減少につながることを示唆している。PNPLA3 I148Mは、脂肪滴からのトリグリセリドの解放を損なうことによって脂肪肝を強化する(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Trepo E et al.,J Hepatol.2016 Aug;65(2):399−412)。最近のデータはまた、PNPLA3 I148Mタンパク質が、分解を回避し、脂肪滴上に蓄積することを示唆している(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、BasuRay et al.,Hepatology.2017 Oct;66(4):1111−1124)。I148M変異体は、成人及び子供の両方においてNAFLDに関連するが、男性ではなく女性において優勢である。NAFLDの発達及び進行におけるPNPLA3 I148M変異体の特定の機構は、以前として不明である。しかしながら、PNPLA3 I148M変異体が、ヘッジホッグシグナル伝達経路を活性化することによって、線維化の発達を促進することができ、これが順に、肝星細胞の活性化及び増幅、ならびに肝臓内細胞外マトリクスの過剰な生成及び堆積につながると考えられる(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Chen LZ,et al.,World J Gastroenterol.2015 Jan 21;21(3):794−802)。
【0137】
I148M変異体はまた、アルコール性肝疾患及び臨床的に明らかなアルコール性硬変と相関している(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Tian et al.,Nature Genetics 42,21−23(2010))。さらに、それはアルコール性硬変を有する患者における肝細胞癌の顕著なリスク因子として特定されている(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Nischalke et al.,PLoS One.2011;6(11):e27087)。
【0138】
I148M変異体はまた、インスリン分泌レベル及び肥満に影響を及ぼす。肥満対象において、ボディマス指数及び胴囲は、変異体対立遺伝子のキャリアにおいてより高い(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Johansson LE et al.,Eur J Endocrinol.2008 Nov;159(5):577−83)。I148Mキャリアは、経口耐糖能試験に反応して、減少したインスリン分泌を示す。I148M対立遺伝子キャリアは、より低いボディマス指数でよりインスリン耐性であると思われる。
【0139】
突然変異型PNPLA3タンパク質は、伝統的な抗体または小分子アプローチによってアクセス可能ではなく、肝細胞及び星細胞にわたるその発現は、オリゴモダリティに対する重要な送達課題につながる。本発明は、突然変異体PNPLA3の発現レベルを変更することによって、PNPLA3を標的とするための新規の治療オプションを提供する。
【0140】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、コラーゲンI型アルファ1鎖(COL1A1)遺伝子の発現を調整することを含む。COL1A1は、I群コラーゲン(原線維形成コラーゲン)のメンバーである。損傷した肝臓中の肝星細胞(HSC)の活性化は、コラーゲン(COL1A1など)の分泌及び瘢痕組織の形成につながり、これが慢性線維症または硬変の一因となる。PNPLA3の発現は、活性化の初期相中に増加し、完全に活性化されたHSC中で上昇したままである。新興の証拠は、PNPLA3が、HSC活性化に関与し、その遺伝子変異体I148Mが、増加した炎症促進サイトカイン分泌などの線維化促進特徴を増強することを示唆している。PNPLA3の低減は、COL1A1レベルを含むHSC中の線維性表現型に影響を及ぼすことが報告されている(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Bruschi et al.,Hepatology.2017;65(6):1875−1890)。
【0141】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、パタチン様ホスホリパーゼドメイン含有タンパク質5(PNPLA5)遺伝子の発現を調整することを含む。GS2様タンパク質としても知られるPNPLA5は、パタチン様ホスホリパーゼファミリーのメンバーである。本発明の方法の発明者は、PNPLA5が、一次肝細胞中のPNPLA3と同じ絶縁近傍に位置し、PNPLA3と同様の化合物処理に反応することを発見した。実際に、PNPLA3は、マウスにおけるPNPLA5と同様に定量的に発現され、調節されることを報告した(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Lake et al.,J Lipid Res.2005;46(11):2477−87)。Lakeらはまた、PNPLA3発現が、絶食条件及び給餌条件の両方でC57BI/6Jマウスの肝臓中で検出不可能であったが、ob/obマウスの肝臓中で強力に誘導されたことを観察し、肝脂質生成における役割を示唆した。
【0142】
III.本発明の組成物及び方法
本発明は、PNPLA3の発現を調整して1つ以上のPNPLA3関連障害を治療するための組成物及び方法を提供する。本明細書に記載される組成物及び方法のうちのいずれか1つを使用して、対象におけるPNPLA3関連障害を治療することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物及び方法の組み合わせを使用して、PNPLA3関連障害を治療することができる。
【0143】
本明細書で使用される場合、「PNPLA3関連障害」という用語は、PNPLA3遺伝子の発現及び/またはPNPLA3遺伝子産生物(例えば、mRNA、タンパク質)の機能に関連する任意の障害、疾患、または状態を指す。そのような障害としては、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、脂肪肝、アルコール性肝疾患(ALD)、アルコール性肝硬変、アルコール性脂肪肝、肝臓癌、脂質蓄積疾患、肥満、及び他の遺伝性代謝障害が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、PNPLA3関連障害は、NAFLDである。いくつかの実施形態では、PNPLA3関連障害は、NASHである。いくつかの実施形態では、PNPLA3関連障害は、アルコール性肝疾患を含むALDである。
【0144】
「対象」及び「患者」という用語は、本明細書において交換可能に使用され、本発明による組成物での治療が提供される動物を指す。いくつかの実施形態では、対象は哺乳動物である。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。
【0145】
いくつかの実施形態では、対象または患者は、PNPLA3関連障害、例えば、NAFLD、NASH、及び/またはALDが診断され得るか、またはその症状を有し得る。他の実施形態では、対象または患者は、PNPLA3関連障害、例えば、NAFLD、NASH、及び/またはALDにかかりやすい場合がある。対象または患者は、PNPLA3の発現の脱調節及び/またはPNPLA3タンパク質の異常な機能を有し得る。対象または患者は、PNPLA3遺伝子内または付近に突然変異を担持し得る。いくつかの実施形態では、対象または患者は、PNPLA3遺伝子中の突然変異I148Mを担持し得る。対象または患者は、PNPLA3遺伝子の1つまたは2つのI148M対立遺伝子を担持する。
【0146】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物及び方法を使用して、細胞または対象におけるPNPLA3遺伝子の発現を減少させることができる。遺伝子発現の変化は、当該技術分野において既知であり、本明細書に記載される様々な技法、例えばRNA−seq、qRT−PCR、ウェスタンブロット、または酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によってRNAレベルまたはタンパク質レベルで評価され得る。遺伝子発現の変化は、治療した細胞または対象におけるPNPLA3発現のレベルを、未治療または対照の細胞または対象における発現のレベルと比較することによって決定され得る。いくつかの実施形態では、本発明の組成物及び方法は、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、約25%〜約50%、約40%〜約60%、約50%〜約70%、約60%〜約80%、80%超、またはさらには90%、95%、もしくは99%超のPNPLA3遺伝子の発現の低減を引き起こす。
【0147】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物及び方法によって誘導されるPNPLA3発現の低減は、NAFLD、NASH、及び/またはALDの少なくとも1つ以上の徴候または症状を予防または緩和するのに十分であり得る。
【0148】
小分子
いくつかの実施形態では、PNPLA3遺伝子発現を調整するために使用される化合物は、小分子を含み得る。本明細書で使用される場合、「小分子」という用語は、5000ダルトン以下の分子量を有する任意の分子を指す。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される少なくとも1つの小分子化合物をゲノム系に適用して、絶縁近傍の境界を変更する、及び/またはシグナル伝達中心を崩壊させ、それによってPNPLA3の発現を調整する。
【0149】
小分子スクリーニングを実施して、絶縁近傍のシグナル伝達中心を通して作用する小分子を特定して、疾患遺伝子の選択群の発現を調整し得る遺伝子シグナル伝達ネットワークを変更することができる。例えば、既知のシグナル伝達アゴニスト/アンタゴニストが投与され得る。信用できるヒットは、シグナル伝達中心を通して作用し、標的遺伝子PNPLA3の発現を調整することが知られている小分子によって特定され、検証される。
【0150】
いくつかの実施形態では、PNPLA3発現を調整することができる小分子化合物としては、アムバチニブ、BMS−754807、BMS−986094、LY294002、モメロチニブ、パクリチニブ、ピフィスリン−μ、R788、WYE−125132、XMU−MP−1、またはその誘導体もしくは類似体が挙げられるが、これらに限定されない。そのような化合物のうちのいずれか1つ以上を対象に投与して、PNPLA3関連障害、例えば、NAFLD、NASH、及び/またはALDを治療することができる。
【0151】
アムバチニブ
いくつかの実施形態では、PNPLA3遺伝子の発現を調整することができる化合物は、アムバチニブ、またはその誘導体もしくは類似体を含み得る。MP−470またはHPK56としても知られているアムバチニブは、潜在的な抗新生物活性を有する経口で生物学的に利用可能な合成カルボチオアミドである。CAS番号850879−09−3及びPubChem化合物ID11282283を有する。アムバチニブの構造を以下に示す。
【0152】
アムバチニブは、それぞれ10nM、40nM、及び81nMのIC50を有する幹細胞増殖因子受容体(SCFRまたはc−Kit)、血小板由来増殖因子受容体α(PDGFRα)、及びFLT3の強力な多標的阻害剤である。アムバチニブはまた、多くの場合がんに関連するc−Kit、PDGFRα、及びFLT3の臨床的突然変異体形態を阻害する。機械的に、アムバチニブは、そのATP結合ドメインを占有することによってチロシンキナーゼ受容体c−Kitを阻害し、DNA修復タンパク質Rad51の抑制ならびにDNA損傷誘導剤と組み合わせた相乗効果を通してDNA修復を崩壊させる。アムバチニブは、GIST−48ヒト細胞株などのいくつかのヒトがん細胞株に対する抗腫瘍活性を呈する。
【0153】
アムバチニブは、現在、固形腫瘍を治療するための単剤としてまたは化学療法と組み合わせて、第1/2相臨床治験中である。
【0154】
BMS−754807
いくつかの実施形態では、PNPLA3遺伝子の発現を調整することができる化合物は、BMS−754807、またはその誘導体もしくは類似体を含み得る。BMS−754807は、インスリン様増殖因子1受容体(IGF−1R)/インスリン受容体(InsR)ファミリーキナーゼの可逆的な経口的に利用可能な二重阻害剤である。CAS番号001350−96−4及びPubChem化合物ID329774351を有する。BMS−754807の構造を以下に示す。
【0155】
BMS−754807は、それぞれ1.8nM及び1.7nMのIC
50を有するIGF−1R及びInsRを阻害する。一連の他のチロシン及びセリン/トレオニンキナーゼに対して最小効果を有する(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Wittman et al.,Journal of Medicinal Chemistry 52,7630−7363(2009))。BMS−754807は、IGF−1Rの触媒ドメインを制限することによって、IGF−1Rの可逆的ATP競合アンタゴニストとして作用する。BMS−754807は、複数の異種移植片腫瘍モデル(例えば、上皮、間葉、及び造血性)における腫瘍増殖を阻害する。BMS−754807を用いた複合研究は、複数のヒト腫瘍細胞型及びマウスモデル上で行ったところ、細胞毒性剤、ホルモン剤、及び標的剤と組み合わせたときに、相乗作用(併用係数、<1.0)を示した。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Awasthi et al.,Molecular Cancer Therapeutics 11(12),2644−2653(2012)、Carboni et al.,Mol Cancer Ther.2009 Dec;8(12):3341−9を参照されたい。
【0156】
BMS−986094
いくつかの実施形態では、PNPLA3遺伝子の発現を調整することができる化合物は、BMS−986094、またはその誘導体もしくは類似体を含み得る。INX−08189、INX−189、またはIDX−189としても知られるBMS−986094は、グアノシンヌクレオチド類似体(2′−C−メチルグアノシン)のプロドラッグである。CAS番号1234490−83−5及びPubChem化合物ID46700744を有する。BMS−986094の構造を以下に示す。
【0157】
BMS−986094は、もともとInhibitex(2012年にBristol−Myers Squibbによって買収される)によって開発されたRNA依存性RNAポリメラーゼ(NS5B)阻害剤である。それは、C型肝炎ウイルス感染の治療のための第II相臨床治験中であった。しかしながら、この研究は、予想外の心臓及び腎臓の有害事象に起因して中止された。
【0158】
LY294002
いくつかの実施形態では、PNPLA3遺伝子の発現を調整することができる化合物は、LY294002、またはその誘導体もしくは類似体を含み得る。2−モルホリン−4−イル−8−フェニルクロメン−4−オン、SF1101、またはNSC697286としても知られるLY294002は、ホスファチジルイノシトール−4,5−ビスホスフェート3−キナーゼ(PI3K)の細胞透過性広域スペクトル阻害剤である。CAS番号154447−36−6及びPubChem化合物ID3973を有する。LY294002の構造を以下に示す。
【0159】
LY294002は、それぞれ無細胞アッセイにおいて0.5μM/0.57μM/0.97μMのIC
50を有するPI3Kα/δ/βを阻害する。PI3KのATP結合部位の競合阻害剤として作用する。LY294002は、50μMにおいてもEGF受容体キナーゼ、MAPキナーゼ、PKC、PI4−キナーゼ、S6キナーゼ及びSrcの活性に影響を及ぼさない(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Vlahos,C.J.et al.(1994)J Biol Chem 269,5241−8)。LY294002は、PI3K依存性Aktリン酸化及びキナーゼ活性をブロックすることが示されている。オートファーゴソームをブロックするオートファジー阻害剤としても確立されている。PI3Kの他に、LY294002は、カゼインキナーゼIIなどの多くの他のタンパク質、及びBETブロモドメインの強力な阻害剤である。
【0160】
モメロチニブ
いくつかの実施形態では、PNPLA3遺伝子の発現を調整することができる化合物は、モメロチニブ、またはその誘導体もしくは類似体を含み得る。N−(シアノメチル)−4−{2−[4−(モリホリン−4−イル)アニリノ]ピリミジン−4−イル}ベンズアミド、CYT−387、CYT−11387、またはGS−0387としても知られるモメロチニブは、ヤヌスキナーゼJAK1及びJAK2のATP競合阻害剤である。CAS番号1056634−68−4及びPubChem化合物ID25062766を有する。モメロチニブの構造を以下に示す。
【0161】
モメロチニブは、それぞれ11nM及び18nMのIC
50を有するJAK1及びJAK2を阻害する(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Pardanani A,et al.Leukemia,2009,23(8),1441−1445)。活性は、JAK3(IC
50=160nM)を含む、他のキナーゼに対して著しく低い。JAK1/2活性化の阻害は、JAK/STATシグナル伝達経路の阻害、したがってアポトーシスの誘導につながる。モメロチニブは、IL−3刺激Ba/F3細胞中で抗増幅効果を示す。また、Ba/F3−MPLW515L細胞、CHRF−288−11細胞及びBa/F3−TEL−JAK2細胞を含む、JAK2またはMPLシグナル伝達によって構成的に活性化されたいくつかの細胞株中で細胞増幅の阻害を引き起こす。マウス骨髄増殖性腫瘍モデルにおいて、モメロチニブは、血液学的反応を誘導し、生理的レベルの炎症性サイトカインを修復する(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Tyner JW,et al.Blood,2010,115(25),5232−5240)。
【0162】
モメロチニブはまた、約20nMのIC
50を有するTYK2、ならびに100nM未満のIC
50を有するCDK2、JNK1、PKD3、PKCu、ROCK2及びTBK1を含む他のキナーゼのスペクトルを阻害することも知られている(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Tyner JW,et al.Blood,2010,115(25),5232−5240)。TBK1は、mTOR経路に関連付けられている。最近では、モメロチニブはまた、8nMのIC
50を有する、アクチビン受容体様キナーゼ−2(ALK2)とも呼ばれるBMPRキナーゼアクチビンA受容体I型(ACVR1)を阻害することが実証された(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Asshoff M et al.,Blood 2017 129:1823−1830)。ACVR1は、TGF−β/SMADシグナル伝達経路に関与することが知られている。
【0163】
モメロチニブは、膵臓癌及び非小細胞肺癌、ならびに骨髄増殖性障害(骨髄線維症、本態性血小板血症、真性多血症を含む)の治療のための第III相治験において、Gilead Sciencesによって開発されている。
【0164】
パクリチニブ
いくつかの実施形態では、PNPLA3遺伝子の発現を調整することができる化合物は、パクリチニブ、またはその誘導体もしくは類似体を含み得る。SB1518としても知られるパクリチニブは、CTi BioPharmaによって開発された経口チロシンキナーゼ阻害剤である。CAS番号937272−79−2及びPubChem化合物ID46216796を有する。パクリチニブの構造を以下に示す。
【0165】
パクリチニブは、それぞれ無細胞アッセイにおいて23nM及び22nMの報告IC
50値を有するヤヌス関連キナーゼ2(JAK2)及びFMS様チロシンキナーゼ3(FLT3)を阻害することが知られている。酵素のJAKファミリーは、JAK/STAT経路を介してサイトカイン媒介性シグナルを伝達する細胞内非受容体チロシンキナーゼのファミリーである。パクリチニブは、細胞JAK/STAT経路に対する強力な効果を有し、JAK2(Y221)及び下流STAT上のチロシンリン酸化を阻害する。パクリチニブは、JAK2依存性細胞中のアポトーシス、細胞周期停止及び抗増幅効果を誘導する。パクリチニブはまた、FLT3リン酸化、ならびに下流STAT、MAPK及びPI3Kシグナル伝達を阻害する。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、William et al.,J.Med.Chem.,2011,54(13),4638−4658、Hart S et al.,Leukemia,2011,25(11),1751−1759、Hart S et al.,Blood Cancer J,2011,1(11),e44を参照されたい。
【0166】
パクリチニブは、骨髄線維症を有する患者に対する第1相及び第2相研究において、有望な結果を実証し、症状の有効な治療を通して他のJAK阻害剤よりメリットをもたらし得る一方で、現在承認されている、また開発中のJAK阻害剤において見られるよりも、治療により現れる血小板減少症及び貧血症が少ない。
【0167】
ピフィスリン−μ
いくつかの実施形態では、PNPLA3遺伝子の発現を調整することができる化合物は、ピフィスリン−μ、またはその誘導体もしくは類似体を含み得る。2−フェニルエチンスルホンアミドまたはPFT−μとしても知られるピフィスリン−μは、p53媒介性アポトーシスの阻害剤である。CAS番号64984−31−2及びPubChem化合物ID24724568を有する。ピフィスリン−μの構造を以下に示す。
【0168】
ピフィスリン−μは、ミトコンドリアに結合するp53を干渉し、γ線に反応してマウス胸腺細胞の一次細胞培養物の急速なp53依存性アポトーシスを阻害する(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Strom E,et al.Nat Chem Biol.2006,2(9),474−479)。ピフィスリン−μは、ミトコンドリア表面における抗アポトーシスタンパク質Bcl−xL及びBcl−2に対するp53の結合親和性を低減する一方で、p53のトランス活性化または細胞周期チェックポイント制御機能に対する効果を示さない。ピフィスリン−μは、致死的な造血症候群を引き起こすγ線の投与からマウスを保護する。ピフィスリン−μは、MDM2/p53結合を阻害し、p53媒介性増殖の停止及びアポトーシスを増強する、nutlin−3によってトリガされるアポトーシスを低減する(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Vaseva et al.,Cell Cycle 8(11),1711−1719(2009))。ピフィスリン−μはまた、熱ショックタンパク質70(HSP70)と選択的に相互作用し、HSP70とそのコシャペロン及び基質タンパク質のうちのいくつかとの結合の崩壊につながる(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Leu et al.,Molecular Cell 36(1),15−27(2009))。
【0169】
R788
いくつかの実施形態では、PNPLA3遺伝子の発現を調整することができる化合物は、R788、またはその誘導体もしくは類似体を含み得る。フォスタマチニブ二ナトリウム六水和物、タマチニブフォスジウム、NSC−745942としても知られるR788、またはR−935788は、酵素脾臓チロシンキナーゼ(Syk)の経口で生物学的に利用可能な阻害剤である。CAS番号1025687−58−4及びPubChem化合物ID25008120を有する。R788の構造を以下に示す。
【0170】
R788は、41nMのIC
50を有するSykのATP競合阻害剤である、活性代謝物R406のメチレンプロドラッグである(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Braselmann et al.,J.Pharma.Exp.Ther.2006,319(3),998−1008)。R406は、マスト細胞中のT細胞及びB細胞中のB細胞リンカータンパク質SLP65の活性化のためのSyk基質リンカーのリン酸化を阻害する。R406はまた、Fc受容体シグナル伝達の免疫グロブリンE(IgE)及びIgG媒介性活性化の強力な阻害剤である。R406は、単球/マクロファージ及び好中球のSyk依存性Fc受容体媒介性活性化、ならびにBリンパ球のB細胞受容体(BCR)媒介性活性化をブロックする。びまん性大細胞型B細胞リンパ腫細胞株の大集団において、R406は、0.8〜8.1μMの範囲のEC
50値を有する細胞増幅を阻害した(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Chen L,et al.Blood,2008,111(4),2230−2237)。R788は、BCRシグナル伝達をインビボで効果的に阻害し、悪性B細胞の増幅及び生存を低減し、治療したマウスにおける生存を著しく延長することが示された(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Suljagic M,et al.Blood,2010,116(23),4894−4905)。
【0171】
R788は、Rigel Pharmaceuticalsによって開発され、現在は、関節リウマチ、自己免疫血小板減少症、自己免疫血友性貧血、IgA腎症、及びリンパ腫を含む、いくつかの自己免疫疾患について臨床治験中である。
【0172】
WYE−125132
いくつかの実施形態では、PNPLA3遺伝子の発現を調整することができる化合物は、WYE−125132、またはその誘導体もしくは類似体を含み得る。WYE−132としても知られるWYE−125132は、高度に強力なATP競合哺乳類ラパマイシン標的(mTOR)阻害剤である。CAS番号1144068−46−1及びPubChem化合物ID25260757を有する。WYE−125132の構造を以下に示す。
【0173】
WYE−125132は、0.19nMのIC
50を有するmTORを特異的に阻害する。mTOR対PI3KまたはPI3K関連キナーゼhSMG1及びATRに対して高度に選択的である。mTOR複合体1(mTORC1)のみに対するアロステリック結合を通してmTORを阻害するラパマイシンとは異なり、WYE−132は、mTORC1及びmTORC2の両方を阻害する。WYE−132は、MDA361乳房、U87MGグリオーマ、A549及びH1975肺、ならびにA498及び786−O腎腫瘍を含む、様々な腫瘍細胞株に対する抗増殖活性を示す。WYE−132は、タンパク質合成及び細胞サイズの阻害、アポトーシスの誘導、ならびに細胞周期の進行を引き起こす。
【0174】
XMU−MP−1
いくつかの実施形態では、PNPLA3遺伝子の発現を調整することができる化合物は、XMU−MP−1、またはその誘導体もしくは類似体を含み得る。AKOS030621725、ZINC498035595、CS−5818、またはHY−100526としても知られるMU−MP−1は、哺乳類無菌20様キナーゼ1及び2(MST1/2)の可逆的で強力な選択的阻害剤である。CAS番号2061980−01−4及びPubChem化合物ID121499143を有する。XMU−MP−1の構造を以下に示す。
【0175】
XMU−MP−1は、それぞれ71.1±12.9nM及び38.1±6.9nMのIC
50値を有するMST1及びMST2を阻害する。MST1及びMST2は、組織再生、肝細胞自己更新及び臓器サイズ制御において重要な役割を果たすHippoシグナル伝達経路の中心的構成成分である。MST1/2キナーゼ活性の阻害は、下流エフェクターYes関連タンパク質を活性化し、細胞増殖につながる。XMU−MP−1は、優れたインビボ薬物動態を示し、腹腔内注入を介して、1〜3mg/kgの用量で急性及び慢性両方の肝傷害マウスモデルにおけるマウス腸修復ならびに肝臓修復及び再生を促進する。XMU−MP−1治療は、ビヒクル治療された対照よりもFah欠損マウスモデルにおいてヒト肝細胞の実質的に優れた再増殖率を呈し、XMU−MP−1治療がヒト肝臓再生を促進し得ることを示す。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Fan et al.,Sci Transl Med.2016,8(352):352ra108を参照されたい。
【0176】
他の化合物
いくつかの実施形態では、PNPLA3関連障害の治療のための化合物は、他の肝疾患、障害、またはがんを治療するために使用される化合物を含み得る。例えば、化合物は、形質転換増殖因子β受容体1(TGFR1)の活性を阻害するアミノピリジルオキシピラゾール化合物などのWO2016057278A1;LY582563などのWO2003050129A1;mFLINTなどのWO1999050413A2;4,4,4−トリフルオロ−N−((2S)−1−((9−メトキシ−3,3−ジメチル−5−オキソ−2,3,5,6−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[f]ピロロ[1,2−a]アゼピン−6−イル)アミノ)−1−オキソプロパン−2−イル)ブタンアミドまたはN−((2S)−1−((8,8−ジメチル−6−オキソ−6,8,9,10−テトラヒドロ−5H−ピリド[3,2−f]ピロロ[1,2−a]アゼピン−5−イル)アミノ)−1−オキソプロパン−2−イル)−4,4,4−トリフルオロブタンアミドなどのWO2017007702A1;N−(6−フルオロ−1−オキソ−1,2−ジヒドロイソキノリン−7−イル)−5−[(3R)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル]チオフェン−2−スルホンアミド、N−(6−フルオロ−1−オキソ−1,2−ジヒドロイソキノリン−7−イル)−5−[(3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル]チオフェン−2−スルホンアミド、5−[(3S,4R)−3−フルオロ−4−ヒドロキシ−ピロリジン−1−イル]−N−(6−フルオロ−1−オキソ−1,2−ジヒドロイソキノリン−7−イル)チオフェン−2−スルホンアミド、5−(3,3−ジフルオロ−(4R)−4−ヒドロキシ−ピロリジン−1−イル)−N−(6−フルオロ−1−オキソ−1,2−ジヒドロイソキノリン−7−イル)チオフェン−2−スルホンアミド、5−(5,5−ジメチル−6−オキソ−1,4−ジヒドロピリダジン−3−イル)−N−(6−フルオロ−1−オキソ−1,2−ジヒドロイソキノリン−7−イル)チオフェン−2−スルホンアミド、またはN−(6−フルオロ−1−オキソ−1,2−ジヒドロイソキノリン−7−イル)−5−[(1R,3R)−3−ヒドロキシシクロペンチル]チオフェン−2−スルホンアミド、またはN−(6−フルオロ−1−オキソ−1,2−ジヒドロイソキノリン−7−イル)−5−[(3R)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル]チオフェン−2−スルホンアミドなどのWO2016089670A1;8−メチル−2−[4−(ピリミジン−2−イルメチル)ピペラジン−1−イル]−3,5,6,7−テトラヒドロピリド[2,3−d]ピリミジン−4−オン、8−メチル−2−[4−(1−ピリミジン−2−イルエチル)ピペラジン−1−イル]−3,5,6,7−テトラヒドロピリド[2,3−d]ピリミジン−4−オン、2−[4−[(4−クロロピリミジン−2−イル)メチル]ピペラジン−1−イル]−8−メチル−3,5,6,7−テトラヒドロピリド[2,3−d]ピリミジン−4−オン、2−[4−[(4−メトキシピリミジン−2−イル)メチル]ピペラジン−1−イル]−8−メチル−3,5,6,7−テトラヒドロピリド[2,3−d]ピリミジン−4−オン、2−[4−[(3−ブロモ−2−ピリジル)メチル]ピペラジン−1−イル]−8−メチル−3,5,6,7−テトラヒドロピリド[2,3−d]ピリミジン−4−オン、2−[4−[(3−クロロ−2−ピリジル)メチル]ピペラジン−1−イル]−8−メチル−3,5,6,7−テトラヒドロピリド[2,3−d]ピリミジン−4−オン、2−[4−[(3−フルオロ−2−ピリジル)メチル]ピペラジン−1−イル]−8−メチル−3,5,6,7−テトラヒドロピリド[2,3−d]ピリミジン−4−オン、または2−[[4−(8−メチル−4−オキソ−3,5,6,7−テトラヒドロピリド[2,3−d]ピリミジン−2−イル)ピペラジン−1−イル]メチル]ピリジン−3−カルボニトリルなどのWO2015069512A1;2−ヒドロキシ−2−メチル−N−[2−[2−(3−ピリジルオキシ)アセチル]−3,4−ジヒドロ−1H−イソキノリン−6−イル]プロパン−1−スルホンアミドまたは2−メトキシ−N−[2−[2−(3−ピリジルオキシ)アセチル]−3,4−ジヒドロ−1H−イソキノリン−6−イル]エタンスルホンアミドなどのWO2015054060A1;4,4,4−トリフルオロ−N−[(1S)−2−[[(7S)−5−(2−ヒドロキシエチル)−6−オキソ−7H−ピリド[2,3−d][3]ベンザゼピン−7−イル]アミノ]−1−メチル−2−オキソ−エチル]ブタンアミドなどのWO2013016081A1;8−[5−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)ピリジン−3−イル]−1−[(2S)−2−メトキシプロピル]−3−メチル−1,3−ジヒドロ−2H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2−オンなどのWO2012097039A1;(R)−[5−(2−メトキシ−6−メチル−ピリジン−3−イル)−2H−ピラゾール−3−イル]−[6−(ピペリジン−3−イルオキシ)−ピラジン−2−イル]−アミンなどのWO2012064548A1;4−フルオロ−N−メチル−N−(1−(4−(1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)フタラジン−1−イル)ピペリジン−4−イル)−2−(トリフルオロメチル)ベンザミドなどのWO2010147917A1;(E)−2−(4−(2−(5−(1−(3,5−ジクロロピリジン−4−イル)エトキシ)−1H−インダゾール−3−イル)ビニル)−1H−ピラゾール−1−イル)エタノールまたは(R)−(E)−2−(4−(2−(5−(1−(3,5−ジクロロピリジン−4−イル)エトキシ)−1H−インダゾール−3−イル)ビニル)−1H−ピラゾール−1−イル)エタノールなどのUS8,268,869B2;5−(5−(2−(3−アミノプロポキシ)−6−メトキシフェニル)−1H−ピラゾール−3−イルアミノ)ピラジン−2−カルボニトリルなどのWO2010077758A1;エンザスタウリンなどのWO2010074936A2;四置換ピリダジンなどのWO2010056588A1及びWO2010056620A1;1,4−二置換フタラジンなどのWO2010062507A1;二置換フタラジンなどのWO2009134574A2;突然変異体RasへのGTP結合の阻害剤としてのウイノキサリン−5,8−ジオン誘導体などのWO1999052365A1;ラロキシフェンなどのUS5,686,467A、US5,574,047A、ならびに置換インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ナフタレン、またはジヒドロナフタレンなどのUS6,124,311に示される肝線維症、肝不全、肝硬変、または肝臓癌の治療のために企図されるものから選択され得る(参照によりそれら全体が本明細書に組み込まれる)。
【0177】
いくつかの実施形態では、PNPLA3関連障害の治療のための化合物は、JAK/STAT経路を阻害する化合物を含み得る。いくつかの実施形態では、そのような化合物は、ヤヌスキナーゼ阻害剤であり得、ルキソリチニブ、オクラシチニブ、バリシチニブ、フィルゴチニブ、ガンドチニブ、レスタウルチニブ、PF−04965842、ウパダシチニブ、ククルビタシンI、CHZ868、フェドラチニブ、AC430、AT9283、ati−50001及びati−50002、AZ960、AZD1480、BMS−911543、CEP−33779、セルデュラチニブ(PRT062070、PRT2070)、クルクモール、デセルノチニブ(VX−509)、フェドラチニブ(SAR302503、TG101348)、FLLL32、FM−381、GLPG0634類似体、Go6976、JANEX−1(WHI−P131)、モメロチニブ(CYT387)、NVP−BSK805、パクリチニブ(SB1518)、ペフィシチニブ(ASP015K、JNJ−54781532)、PF−06651600、PF−06700841、R256(AZD0449)、ソルシチニブ(GSK2586184またはGLPG0778)、S−ルキソリチニブ(INCB018424)、TG101209、トファシチニブ(CP−690550)、WHI−P154、WP1066、XL019、ZM39923HCl、及び本明細書に記載されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0178】
いくつかの実施形態では、PNPLA3関連障害の治療のための化合物は、mTOR経路を阻害する化合物を含み得る。いくつかの実施形態では、そのような化合物は、mTORキナーゼ阻害剤であり得、アピトリシブ(GDC−0980、RG7422)、AZD8055、BGT226(NVP−BGT226)、CC−223、クリソファン酸、CZ415、ダクトリシブ(BEZ235、NVP−BEZ235)、エベロリムス(RAD001)、GDC−0349、ジェダトリシブ(PF−05212384、PKI−587)、GSK1059615、INK128(MLN0128)、KU−0063794、LY3023414、MHY1485、オミパリシブ(GSK2126458、GSK458)、OSI−027、パロミド529(P529)、PF−04691502、PI−103、PP121、ラパマイシン(シロリムス)、リダフォロリムス(デフォロリムス、MK−8669)、SF2523、タクロリムス(FK506)、テムシロリムス(CCI−779、NSC683864)、トリン1、トリン2、トリキニブ(PP242)、ビスツセルチブ(AZD2014)、ボキシタリシブ(SAR245409、XL765)類似体、ボキシタリシブ(XL765、SAR245409)、WAY−600、WYE−125132(WYE−132)、WYE−354、WYE−687、XL388、ゾタロリムス(ABT−578)、及び本明細書に記載されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0179】
いくつかの実施形態では、PNPLA3関連障害の治療のための化合物は、Syk経路を阻害する化合物を含み得る。いくつかの実施形態では、そのような化合物は、Syk阻害剤であり得、R788、タマチニブ(R406)、エントスプレチニブ(GS−9973)、ニルバジピン、TAK−659、BAY−61−3606、MNS(3,4−メチレンジオキシ−β−ニトロスチレン、MDBN)、ピセアタンノール、PRT−060318、PRT062607(P505−15、BIIB057)、PRT2761、RO9021、セルデュラチニブ、及び本明細書に記載されるものが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、そのような化合物は、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤であり得、イブルチニブ、ONO−4059、ACP−196、及び本明細書に記載されるものが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、そのような化合物は、PI3K阻害剤であり得、イデラリシブ、デュベリシブ、ピララリシブ、TGR−1202、GS−9820、ACP−319、SF2523、及び本明細書に記載されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0180】
いくつかの実施形態では、PNPLA3関連障害の治療のための化合物は、GSK3経路を阻害する化合物を含み得る。いくつかの実施形態では、そのような化合物は、GSK3阻害剤であり得、BIO、AZD2858、1−アザケンパウロン、AR−A014418、AZD1080、ビキニン、BIO−アセトキシム、CHIR−98014、CHIR−99021(CT99021)、IM−12、インジルビン、LY2090314、SB216763、SB415286、TDZD−8、チデグルシブ、TWS119、及び本明細書に記載されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0181】
いくつかの実施形態では、PNPLA3関連障害の治療のための化合物は、TGF−β/SMAD経路を阻害する化合物を含み得る。いくつかの実施形態では、そのような化合物は、ACVR1阻害剤であり得、モメロチニブ、BML−275、DMH−1、ドルソモルフィン、ドルソモルフィンジヒドロクロリド、K02288、LDN−193189、LDN−212854、及びML347が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、そのような化合物は、SMAD3阻害剤であり得、SIS3が挙げられるが、これに限定されない。いくつかの実施形態では、そのような化合物は、SMAD4阻害剤であり得る。
【0182】
いくつかの実施形態では、PNPLA3関連障害の治療のための化合物は、NF−κB経路を阻害する化合物を含み得る。いくつかの実施形態では、そのような化合物は、ACHP、10Z−ヒメニアルジシン、アンレキサノクス、アンドログラホリド、アルクチゲニン、Bay11−7085、Bay11−7821、ベンガミドB、BI605906、BMS345541、カフェイン酸フェネチルエステル、カルダモニン、C−DIM12、セラストロール、CID2858522、FPS ZM1、グリオトキシン、GSK319347A、ホノキオール、HU211、IKK16、IMD0354、IP7e、IT901、ルテオリン、MG132、ML120Bジヒドロクロリド、ML130、パルテノリド、PF184、ピセアタンノール、PR39(ブタ)、プリスチメリン、PS1145ジヒドロクロリド、PSI、ピロリジンジチオカルバミン酸アンモニウム、RAGEアンタゴニストペプチド、Ro106−9920、SC514、SP100030、スルファサラジン、タンシノンIIA、TPCA−1、ウィタフェリンA、ゾレドロン酸、及び参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、国際公開第WO2008043157A1の表1〜3に記載されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0183】
ポリペプチド
いくつかの実施形態では、PNPLA3遺伝子の発現を変更するための化合物は、ポリペプチドを含む。本明細書で使用される場合、「ポリペプチド」という用語は、最も多くの場合、ペプチド結合によって一緒に結合される(天然または非天然の)アミノ酸残基のポリマーを指す。本明細書で使用される場合、この用語は、任意のサイズ、構造、または機能のタンパク質、ポリペプチド、及びペプチドを指す。場合によっては、エンコードされるポリペプチドは、約50アミノ酸よりも小さく、ポリペプチドは、ペプチドと呼ばれる。ポリペプチドがペプチドである場合、少なくとも約2、3、4、または少なくとも5アミノ酸残基長となる。したがって、ポリペプチドとしては、遺伝子産生物、天然に存在するポリペプチド、合成ポリペプチド、ホモログ、オルソログ、パラログ、断片、ならびに前述の他の同等物、変異体、及び類似体が挙げられる。ポリペプチドは、単一分子であり得るか、または二量体、三量体、もしくは四量体などの多分子複合体であり得る。それらはまた、一本鎖または多鎖ポリペプチドも含み得、会合または結合され得る。ポリペプチドという用語はまた、1つ以上のアミノ酸残基が、対応する天然に存在するアミノ酸の人工化学類似体であるアミノ酸ポリマーにも適用される。
【0184】
抗体
いくつかの実施形態では、PNPLA3発現を変更するための化合物は、抗体を含む。一実施形態では、本明細書に記載される抗体、抗体断片、それらの変異体または誘導体を含む本発明の抗体は、遺伝子シグナル伝達ネットワークまたはPNPLA3を含有する絶縁近傍に関連するネットワークの少なくとも1つの分子と特異的に免疫反応性である。抗体または抗体の断片を含む本発明の抗体はまた、PNPLA3上の標的部位に結合し得る。
【0185】
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、最も広義に使用され、それらが所望の生物活性を呈する限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体((例えば、少なくとも2つの無傷抗体から形成された二重特異性抗体)、及びダイアボディなどの抗体断片が挙げられるが、これらに限定されない。抗体は、主にアミノ酸系分子であるだけでなく、糖部分を有するなど、1つ以上の修飾も含み得る。
【0186】
「抗体断片」は、無傷抗体の一部分を含み、好ましくはその抗原結合領域を含む。抗体断片の例には、Fab、Fab′、F(ab′)
2、及びFv断片、ダイアボディ、直鎖状抗体、一本鎖抗体分子、ならびに抗体断片から形成される多重特異性抗体が含まれる。抗体のパパイン消化は、それぞれが単一の抗原結合部位を持つ「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片を産生する。残基「Fc」断片もまた産生され、その名前は、それが容易に結晶化する能力を反映する。ペプシン処理により、2つの抗原結合部位を有しながら依然として抗原に架橋し得る、F(ab′)
2断片が得られる。本発明の抗体は、これらの断片のうちの1つ以上を含み得る。本明細書の目的に関しては、「抗体」は、重及び軽可変ドメイン、ならびにFc領域を含み得る。
【0187】
「未変性抗体」は、通常、2つの同一の軽(L)鎖及び2つの同一の重(H)鎖から構成される約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖は、1つの共有ジスルフィド結合により重鎖に結合しているが、ジスルフィド結合の数は、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間で異なる。各重鎖及び軽鎖はまた、規則的に離間した鎖内ジスルフィド架橋も有する。各重鎖は、一方の端に可変ドメイン(V
H)を有し、いくつかの定常ドメインが続く。各軽鎖は、一方の端に可変ドメイン(V
L)を有し、その他方の端に定常ドメインを有し、軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第1の定常ドメインと整列し、軽鎖の可変ドメインは、重鎖の可変ドメインと整列する。
【0188】
本明細書で使用される場合、「可変ドメイン」という用語は、配列が抗体間で大きく異なり、各特定の抗体のその特定の抗原に対する結合及び特異性において使用される特定の抗体ドメインを指す。本明細書で使用される場合、「Fv」という用語は、完全な抗原認識部位及び抗原結合部位を含有する抗体断片を指す。この領域は、緊密な非共有結合性会合にある1つの重鎖可変ドメイン及び1つの軽鎖可変ドメインの二量体からなる。
【0189】
任意の脊椎動物種由来の抗体「軽鎖」は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、κとλと呼ばれる2つの明確に異なる型のいずれかに割り当てることができる。抗体は、それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、異なるクラスに割り当てられ得る。無傷抗体には5つの主要なクラス、すなわち:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMが存在し、これらのうちのいくつかは、「サブクラス」(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、及びIgA2にさらに分けられ得る。
【0190】
本明細書で使用される場合、「一本鎖Fv」または「scFv」は、VH及びVL抗体ドメインの融合タンパク質を指し、これらのドメインは一緒に、単一のポリペプチド鎖に結合される。いくつかの実施形態では、Fvポリペプチドリンカーは、scFvが、抗原結合のための所望の構造を形成できるようにする。
【0191】
「ダイアボディ」という用語は、2つの抗原結合部位を有する小さな抗体断片を指し、これらの断片は、同じポリペプチド鎖内の軽鎖可変ドメインV
Lに接続した重鎖可変ドメインV
Hを含む。同じ鎖上の2つのドメイン間での対合を可能にするには短すぎるリンカーを使用することによって、ドメインを別の鎖の相補的ドメインと対合させて、2つの抗原結合部位を生成させる。ダイアボディは、例えば、EP404,097、WO93/11161、及びHollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444−6448(1993)にさらに詳述されており、これらの各々の内容は、参照によりそれら全体が本明細書に組み込まれる。
【0192】
本発明の抗体は、当該技術分野において既知の方法によって産生されるか、または本出願に記載されるポリクローナルまたはモノクローナルまたは組み換えであり得る。本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に同種の細胞(またはクローン)の集団から得られる抗体を指し、すなわち、その集団に含まれる個々の抗体は、同一であり、及び/または同じエピトープに結合するが、モノクローナル抗体の産生中に生じ得る想定される変異体は除外され、そのような変異体は、一般に、少量で存在する。異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。
【0193】
「モノクローナル」という修飾語は、実質的に同種の抗体の集団から得られるという抗体の特徴を示すものであり、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするものとして解釈されないものとする。本明細書におけるモノクローナル抗体には、重鎖及び/または軽鎖の一部分が、特定の種に由来するかまたは特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一または同種であるが、鎖(複数可)の残りが、別の種に由来するかまたは別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一または同種である、「キメラ」抗体(免疫グロブリン)、ならびにそのような抗体の断片が含まれる。
【0194】
「ヒト化」型の非ヒト(例えば、マウス)抗体は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小の配列を含有するキメラ抗体である。ほとんどの部分において、ヒト化抗体は、レシピエントの抗体からの超可変領域からの残基が、所望の特異性、親和性、及び能力を有するマウス、ラット、ウサギまたは非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)の抗体からの超可変領域からの残基によって置き換えられる、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。
【0195】
「超可変領域」という用語は、抗体を参照して本明細書で使用されるとき、抗原結合に関与するアミノ酸残基を含む抗体の抗原結合ドメイン内の領域を指す。超可変領域内に存在するアミノ酸は、相補性決定領域(CDR)の構造を決定する。本明細書で使用される場合、「CDR」は、その標的抗原またはエピトープに相補的である構造を含む抗体の領域を指す。
【0196】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、抗体模倣体であり得る。「抗体模倣体」という用語は、抗体の機能または効果を模倣し、それらの分子標的に特異的に高い親和性で結合する任意の分子を指す。そのようなものとして、抗体模倣体は、ナノボディ等を含む。
【0197】
いくつかの実施形態では、抗体模倣体は、当該技術分野において既知のものであり得、アフィボディ分子、アフィリン、アフィチン、アンチカリン、アビマー、DARPin、Fynomer及びKunitz、ならびにドメインペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。他の実施形態では、抗体模倣体は、1つ以上の非ペプチド領域を含み得る。
【0198】
本明細書で使用される場合、「抗体変異体」という用語は、未変性抗体と比較してアミノ酸配列、組成物または構造にいくつかの相違を含む、構造及び/または機能において抗体に似ている生体分子を指す。
【0199】
モノクローナルであるかポリクローナルであるかにかかわらず、抗体の調製は当該技術分野において既知である。抗体の産生のための技法は、当該技術分野において周知であり、例えば、Harlow and Lane″Antibodies,A Laboratory Manual″,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1988 and Harlow and Lane″Using Antibodies:A Laboratory Manual″Cold Spring Harbor Laboratory Press,1999に記載されている。
【0200】
本発明の抗体は、それらの標的分子(複数可)、それらを生成するために使用される抗原、それらの機能(アゴニストとしてもしくはアンタゴニストとして)及び/またはそれらが機能する細胞ニッチを特徴とし得る。
【0201】
抗体機能の測定は、インビトロまたはインビボで正常な生理的条件下、標準に対して行われ得る。測定はまた、抗体の存在または非存在に対して行われ得る。そのような測定方法には、血清または血液などの組織または流体中の標準測定、例えば、ウェスタンブロット、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、活性アッセイ、レポーターアッセイ、ルシフェラーゼアッセイ、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)アレイ、遺伝子アレイ、リアルタイム逆転写酵素(RT)PCR等が含まれる。
【0202】
本発明の抗体は、結合を介して(可逆的または不可逆的に)1つ以上の標的部位にそれらの効果を及ぼす。理論に束縛されるものではないが、抗体の結合部位を表す標的部位は、最も多くの場合、タンパク質またはタンパク質ドメインまたは領域によって形成される。しかしながら、標的部位はまた、糖、脂質、核酸分子または任意の他の形態の結合エピトープなどの生体分子を含み得る。
【0203】
代替として、または追加として、本発明の抗体は、結合またはコンジュゲートされた薬物ペイロードを特定の標的部位に送達または輸送するように作用する、リガンド模倣体または非伝統的なペイロードキャリアとして機能し得る。
【0204】
本発明の抗体によって引き出される変化は、細胞中の新形態変化をもたらし得る。本明細書で使用される場合、「新形態変化」は、新たなまたは異なる変化または変更である。そのような変化は、細胞外、細胞内及び細胞間シグナル伝達を含む。
【0205】
いくつかの実施形態では、本発明の化合物または薬剤は、タンパク分解性事象を変更または制御するように作用する。そのような事象は、細胞内または細胞外であり得る。
【0206】
本発明の化合物、ならびにそれらを生成するために使用される抗原は、主にアミノ酸系分子である。これらの分子は、「ペプチド」、「ポリペプチド」または「タンパク質」であり得る。
【0207】
本明細書で使用される場合、「ペプチド」という用語は、2〜50個以上のアミノ酸を有するアミノ酸系分子を指す。特別な指示語が、より小さいペプチドに適用され、「ジペプチド」は、2つのアミノ酸分子を指し、「トリペプチド」は、3つのアミノ酸分子を指す。50を超える連続アミノ酸を有するアミノ酸系分子は、ポリペプチドまたはタンパク質とみなされる。
【0208】
「アミノ酸」及び「アミノ酸」という用語は、全て天然に存在するL−α−アミノ酸ならびに非天然に存在するアミノ酸を指す。アミノ酸は、以下のような1文字または3文字のいずれかの指示語によって特定され:アスパラギン酸(Asp:D)、イソロイシン(Ile:I)、トレオニン(Thr:T)、ロイシン(Leu:L)、セリン(Ser:S)、チロシン(Tyr:Y)、グルタミン酸(Glu:E)、フェニルアラニン(Phe:F)、プロリン(Pro:P)、ヒスチジン(His:H)、グリシン(Gly:G)、リジン(Lys:K)、アラニン(Ala:A)、アルギニン(Arg:R)、システイン(Cys:C)、トリプトファン(Trp:W)、バリン(Val:V)、グルタミン(Gln:Q)、メチオニン(Met:M)、アスパラギン(Asn:N)、アミノ酸は、最初にそれぞれ3文字コード及び1文字コードによって挿入句的に列挙される。
【0209】
いくつかの実施形態では、WO2007044411及びWO2015100104A1に示されるものなどの抗体を使用して、NASHを治療することができる。
【0210】
ハイブリダイジングオリゴヌクレオチド
いくつかの実施形態では、ハイブリダイゼーション機構を介して機能するものを含むオリゴヌクレオチドは、アンチセンス分子、RNAi構築物(siRNA、saRNA、microRNA等を含む)、アプタマー及びリボザイムなどの一本鎖または二本鎖にかかわらず、PNPLA3に関連する遺伝子シグナル伝達ネットワークを変更するために、または摂動刺激として使用され得る。
【0211】
いくつかの実施形態では、ハイブリダイジングオリゴヌクレオチド(例えば、siRNA)を使用して、PNPLA3発現を調節する経路に関与するシグナル伝達分子をノックダウンすることができ、それによりPNPLA3発現は、シグナル伝達分子の非存在下で低減される。例えば、経路がPNPLA3発現を正に調節することが特定されると、その経路の構成成分(例えば、受容体、タンパク質キナーゼ、転写因子)は、RNAi剤(例えば、siRNA)でノックダウンされ、PNPLA3発現の活性化を低減することができる。
【0212】
いくつかの実施形態では、PNPLA3発現を低減するために本発明のハイブリダイジングオリゴヌクレオチド(例えば、siRNA)で標的とされる経路は、JAK/STAT経路である。一実施形態では、ハイブリダイジングオリゴヌクレオチド(例えば、siRNA)を使用して、JAK1をノックダウンする。一実施形態では、ハイブリダイジングオリゴヌクレオチド(例えば、siRNA)を使用して、JAK2をノックダウンする。
【0213】
いくつかの実施形態では、PNPLA3発現を低減するために本発明のハイブリダイジングオリゴヌクレオチド(例えば、siRNA)で標的とされる経路は、Syk経路である。一実施形態では、ハイブリダイジングオリゴヌクレオチド(例えば、siRNA)を使用して、SYKをノックダウンする。
【0214】
いくつかの実施形態では、PNPLA3発現を低減するために本発明のハイブリダイジングオリゴヌクレオチド(例えば、siRNA)で標的とされる経路は、mTOR経路である。一実施形態では、ハイブリダイジングオリゴヌクレオチド(例えば、siRNA)を使用して、mTORをノックダウンする。
【0215】
いくつかの実施形態では、PNPLA3発現を低減するために本発明のハイブリダイジングオリゴヌクレオチド(例えば、siRNA)で標的とされる経路は、PDGFR経路である。一実施形態では、ハイブリダイジングオリゴヌクレオチド(例えば、siRNA)を使用して、PDGFAをノックダウンする。一実施形態では、ハイブリダイジングオリゴヌクレオチド(例えば、siRNA)を使用して、PDGFRBをノックダウンする。
【0216】
いくつかの実施形態では、PNPLA3発現を低減するために本発明のハイブリダイジングオリゴヌクレオチド(例えば、siRNA)で標的とされる経路は、GSK3経路である。一実施形態では、ハイブリダイジングオリゴヌクレオチド(例えば、siRNA)を使用して、GSK3をノックダウンする。
【0217】
いくつかの実施形態では、PNPLA3発現を低減するために本発明のハイブリダイジングオリゴヌクレオチド(例えば、siRNA)で標的とされる経路は、TGF−β/SMAD経路である。一実施形態では、ハイブリダイジングオリゴヌクレオチド(例えば、siRNA)を使用して、ACVR1をノックダウンする。別の実施形態では、ハイブリダイジングオリゴヌクレオチド(例えば、siRNA)を使用して、SMAD3をノックダウンする。さらに別の実施形態では、ハイブリダイジングオリゴヌクレオチド(例えば、siRNA)を使用して、SMAD4をノックダウンする。
【0218】
いくつかの実施形態では、PNPLA3発現を低減するために本発明のハイブリダイジングオリゴヌクレオチド(例えば、siRNA)で標的とされる経路は、NF−κB経路である。一実施形態では、ハイブリダイジングオリゴヌクレオチド(例えば、siRNA)を使用して、NF−κBをノックダウンする。
【0219】
いくつかの実施形態では、上記のハイブリダイジングオリゴヌクレオチドを別のハイブリダイジングオリゴヌクレオチドと一緒に使用して、同じ経路において複数の構成成分を標的とするか、または異なる経路からの複数の構成成分を標的として、PNPLA3発現を低減することができる。そのような複合療法は、PNPLA3発現を正に調節する複数のシグナル伝達分子及び/または経路を同時にブロックすることによって、付加的または相乗的効果を達成することができる。
【0220】
そのようなオリゴヌクレオチドはまた、治療薬としても役立ち得るため、それらの治療負債及び治療成果は、それぞれ本発明の遺伝子シグナル伝達ネットワークを調べることによって改善または予測され得る。
【0221】
ゲノム編集アプローチ
ある特定の実施形態では、PNPLA3遺伝子の発現は、PNPLA3に関連する絶縁近傍(複数可)及び/またはゲノムシグナル伝達中心(複数可)を定義する染色体領域を変更することによって調整され得る。例えば、PNPLA3産生は、PNPLA3を含有する絶縁近傍に関連する遺伝子シグナル伝達ネットワーク(複数可)の分子のメンバーのうちのいずれか1つを標的とすることによって低減または排除され得る。
【0222】
絶縁近傍に付随する遺伝子発現を変更する方法は、シグナル伝達中心を変更すること(例えば、CRISPR/Casを使用して、シグナル伝達中心結合部位を変化させるか、または突然変異した場合に修復/置換する)ことを含む。これらの変更は、早期の/不適切な細胞死経路の活性化(多くの免疫障害の鍵となる)、過少/過剰な遺伝子産生物の産生(可変抵抗器仮説としても知られる)、過少/過剰な酵素の細胞外分泌の産生、系統分化の防止、系統経路の切り替え、幹細胞性の促進、自己調節フィードバックループで開始または干渉、細胞代謝におけるエラーの開始、不適切な刷り込み/遺伝子サイレンシング、及び傷のあるクロマチン状態の形成を含む、様々な結果をもたらし得る。追加として、当該技術分野において周知のものを含むゲノム編集アプローチを使用して、コヒーシンネックレスを変更するか、または遺伝子及びエンハンサーを動かすことによって新たなシグナル伝達中心を作成することができる。
【0223】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載されるゲノム編集アプローチは、部位特異的ヌクレアーゼを使用して、ゲノム内の特定の位置に一本鎖または二本鎖DNA切断を導入する方法を含み得る。そのような切断は、相同指向型修復(HDR)及び非相同末端接合(NHEJ)などの内因性細胞プロセスであり得、定期的に修復される。HDRは、本質的に、相同DNA配列の存在下で二本鎖DNA切断を修復する誤りのない機構である。HDRの最も一般的な形態は、相同組換えである。それは、特定のDNA配列を切断ポイントで挿入または置換するためのテンプレートとして、相同配列を利用する。相同DNA配列のテンプレートは、内因性配列(例えば、姉妹染色分体)または外因性もしくは供給された配列(例えば、プラスミドもしくはオリゴヌクレオチド)であり得る。そのようなものとして、HDRを利用して、所望の領域における置換または挿入などの精密な変更を導入することができる。対照的に、NHEJは、二本鎖切断から生じるDNA末端を直接接合する誤りがちな修復機構であり、切断部位においていくつかのヌクレオチドを喪失、付加または突然変異させる可能性がある。得られる小さな欠失または挿入(「インデル」と呼ばれる)または突然変異は、遺伝子発現を崩壊または強化し得る。追加として、同じDNA上に2つの切断が存在する場合、NHEJは、介在セグメントの欠失または逆転につながり得る。そのため、NHEJを利用して、切断部位に挿入、欠失または突然変異を導入することができる。
【0224】
CRISPR/Cas系
ある特定の実施形態では、CRISPR/Cas系を使用して、CTCFアンカー部位を欠失し、そのアンカー部位に関連する絶縁近傍内の遺伝子発現を調整することができる。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Hnisz et al.,Cell 167,November 17,2016を参照されたい。絶縁近傍の境界の崩壊は、関連したシグナル伝達中心の適切な機能に必要な相互作用を防止する。欠失した近傍境界に直ぐ隣接する発現遺伝子の変化もまた、そのような崩壊に起因して観察されている。
【0225】
ある特定の実施形態では、CRISPR/Cas系を使用して、既存のCTCFアンカー部位を修飾することができる。例えば、既存のCTCFアンカー部位は、CRISPR/Casヌクレアーゼ及び1つ以上のガイドRNAを有するNHEJを誘導することによって突然変異もしくは逆転され得るか、または触媒不活性のCRISPR/Cas酵素及び1つ以上のガイドRNAと標的結合することによってマスクされ得る。既存のCTCFアンカー部位の変更は、既存の絶縁近傍の形成を崩壊させ、これらの絶縁近傍内に位置する遺伝子の発現を変更し得る。
【0226】
ある特定の実施形態では、CRISPR/Cas系を使用して、新たなCTCFアンカー部位を導入することができる。CTCFアンカー部位は、CRISPR/Casヌクレアーゼ、1つ以上のガイドRNA、及びCTCFアンカー部位の配列を含有するドナーテンプレートを有する選択部位にHDRを誘導することによって導入され得る。新たなCTCFアンカー部位の導入は、新たな絶縁近傍を作成する、及び/または既存の絶縁近傍を変更することができ、それがこれらの絶縁近傍の隣に位置する遺伝子の発現に影響を及ぼし得る。
【0227】
ある特定の実施形態では、CRISPR/Cas系を使用して、シグナル伝達中心結合部位を変えることによってシグナル伝達中心を変更することができる。例えば、シグナル伝達中心結合部位が、関連した転写因子とのシグナル伝達中心のアセンブリに影響を及ぼす突然変異を含む場合、突然変異部位は、供給された訂正ドナーテンプレートの存在下でCRISPR/Casヌクレアーゼ及び1つ以上のガイドRNAを使用して、突然変異またはその付近に二本鎖DNA切断を導入することによって修復され得る。
【0228】
ある特定の実施形態では、CRISPR/Cas系を使用して、絶縁近傍(例えば、エンハンサー)内の領域に結合することによって近傍遺伝子の発現を調整し、転写をブロックすることができる。そのような結合は、シグナル伝達中心への転写因子の動員及び転写の開始を防止し得る。CRISPR/Cas系は、DNAを切断しない触媒不活性のCRISPR/Cas系であり得る。
【0229】
ある特定の実施形態では、CRISPR/Cas系を使用して、これらの遺伝子のコード領域における短い欠失の導入を介して近傍遺伝子の発現をノックダウンすることができる。修復されたとき、そのような欠失は、フレームシフトをもたらし、遺伝子によって産生されたmRNA中に早期停止コドン、続いてナンセンス変異依存分解機構を介してmRNA分解を導入する。これは、シグナル伝達経路の活性化及び抑制構成成分の発現の調整に有用であり得、PNPLA3などの疾患遺伝子を含むこれらの経路の制御下で、遺伝子発現の減少または増加をもたらす。
【0230】
他の実施形態では、CRISPR/Cas系を使用して、結合ネックレスを変更するか、または遺伝子及びエンハンサーを動かすこともできる。
【0231】
CRISPR/Cas酵素
CRISPR/Cas系は、RNA誘導型エンドヌクレアーゼを利用して、特定の配列を標的とし、標的核酸を分解する細菌適応免疫系である。それらは、ゲノム編集及び/または転写調整の分野における様々な適用における使用のために適応されている。当該技術分野において既知または本明細書に開示される酵素またはオルソログのうちのいずれかを、ゲノム編集のために本明細書における方法で利用することができる。
【0232】
ある特定の実施形態では、CRISPR/Cas系は、II型CRISPR/Cas9系であり得る。Cas9は、トランス活性化CRISPR RNA(tracrRNA)及びCRISPR RNA(crRNA)と一緒に機能して、二本鎖DNAを切断するエンドヌクレアーゼである。2つのRNAを操作して、crRNAの3′端をtracrRNAの5′端にリンカーループを用いて接続することによって、単一分子ガイドRNAを形成することができる。Jinek et al.,Science,337(6096):816−821(2012)は、CRISPR/Cas9系は、RNAプログラム可能なゲノム編集に有用であることを示し、国際特許出願第WO2013/176772は、部位特異的遺伝子編集のためのCRISPR/Casエンドヌクレアーゼ系の多くの例及び適用を提供し、これらは参照によりそれら全体が本明細書に組み込まれる。例示的なCRISPR/Cas9系には、Streptococcus pyogenes、Streptococcus thermophilus、Neisseria meningitidis、Treponema denticola、Streptococcus aureas、及びFrancisella tularensisに由来するものが含まれる。
【0233】
ある特定の実施形態では、CRISPR/Cas系は、V型CRISPR/Cpf1系であり得る。Cpf1は、単一のRNA誘導型エンドヌクレアーゼであり、II型系と対照的にtracrRNAが欠如している。Cpf1は、4または5ヌクレオチド5′オーバーハングを有するねじれ型DNA二本鎖切断を産生する。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Zetsche et al.Cell.2015 Oct 22;163(3):759−71は、ゲノム編集適用において使用され得るCpf1エンドヌクレアーゼの例を提供する。例示的なCRISPR/Cpf1系には、野兎病菌(Francisella tularensis)、アシダミノコッカス種(Acidaminococcus sp.)、及びラクノスピラ科細菌(Lachnospiraceae bacterium)に由来するものが含まれる。
【0234】
ある特定の実施形態では、1つまたは他のヌクレアーゼドメインを不活化するCRISPR/Casエンドヌクレアーゼのニッカーゼ変異体を使用して、CRISPR媒介性ゲノム編集の特異性を高めることができる。ニッカーゼは、HDR対NHEJを促進することが示されている。HDRは、個々のCasニッカーゼから向けられることもあれば、標的エリアに隣接するニッカーゼの対を用いて向けられることもある。
【0235】
ある特定の実施形態では、触媒不活性のCRISPR/Cas系を使用して、標的領域(例えば、CTCFアンカー部位またはエンハンサー)に結合し、それらの機能を干渉し得る。Cas9及びCpf1などのCasヌクレアーゼは、2つのヌクレアーゼドメインを包含する。触媒部位における重要な残基を突然変異させることは、標的部位にのみ結合するが、切断をもたらさらない変異体を作成する。染色体領域(例えば、CTCFアンカー部位またはエンハンサー)への結合は、絶縁近傍またはシグナル伝達中心の適切な形成を崩壊させ、したがって標的領域の隣に位置する遺伝子の変化した発現につながり得る。
【0236】
ある特定の実施形態では、CRISPR/Cas系は、CRISPR/Casエンドヌクレアーゼまたは酵素に融合された追加の機能的ドメイン(複数可)を含み得る。機能的ドメインは、転写活性化、転写抑制、DNAメチル化、ヒストン修飾、及び/またはクロマチンリモデリングを含むが、これらに限定されないプロセスに関与し得る。そのような機能的ドメインには、転写活性化ドメイン(例えば、VP64もしくはKRAB、SIDもしくはSID4X)、転写リプレッサー、リコンビナーゼ、トランスポザーゼ、ヒストンリモデラー、DNAメチルトランスフェラーゼ、クリプトクロム、光誘導性/制御可能ドメインまたは化学的誘導性/制御可能ドメインが含まれるが、これらに限定されない。
【0237】
ある特定の実施形態では、CRISPR/Casエンドヌクレアーゼまたは酵素は、以下のうちの1つまたは組み合わせとして細胞または患者に投与され得る:1つ以上のポリペプチド、ポリペプチドをエンコードする1つ以上のmRNA、またはポリペプチドをエンコードする1つ以上のDNA。
【0238】
ガイド核酸
ある特定の実施形態では、ガイド核酸を使用して、関連したCRISPR/Cas酵素の活性を標的核酸内の特定の標的配列に指向することができる。ガイド核酸は、CRISPR/Cas酵素とのそれらの結合によって、ガイド核酸及びCRISPR/Cas複合体に対する標的特異性を提供し、したがってガイド核酸は、CRISPR/Cas酵素の活性を指向することができる。
【0239】
一態様では、ガイド核酸は、RNA分子であり得る。一態様では、ガイドRNAは、単一分子ガイドRNAであり得る。一態様では、ガイドRNAは、化学的に修飾され得る。
【0240】
ある特定の実施形態では、複数のガイドRNAは、ゲノム内の異なる部位において複数のCRISPR/Cas媒介性活性を媒介するために提供され得る。
【0241】
ある特定の実施形態では、ガイドRNAは、1つ以上のRNA分子またはRNA配列をエンコードする1つ以上のDNAとして細胞または患者に投与され得る。
【0242】
リボ核タンパク質複合体(RNP)
一実施形態では、CRISPR/Cas酵素及びガイド核酸は各々、細胞または患者に別個に投与され得る。
【0243】
別の実施形態では、CRISPR/Cas酵素は、1つ以上のガイド核酸と予め複合体化され得る。次に、予め複合体化された材料を細胞または患者に投与することができる。このような予め複合体化された材料は、リボ核タンパク質粒子(RNP)として知られている。
【0244】
ジンクフィンガーヌクレアーゼ
ある特定の実施形態では、本発明のゲノム編集アプローチは、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)の使用を伴う。ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)は、DNA切断ドメインに結合している遺伝子操作ジンクフィンガーDNA結合ドメインから構成されたモジュラータンパク質である。典型的なDNA切断ドメインは、II型エンドヌクレアーゼFokIの触媒ドメインである。FokIは二量体としてのみ機能することから、ZFNの対は、対向DNA鎖上の同族の標的「半部位(half−site)」配列に対し、それら2つが触媒活性のFokIドメインが二量体化できるようにするための正確な間隔を開けて結合するように操作されなければならない。それ自体は配列特異性を有しないFokIドメインが二量体化すると、ZFN半部位間でゲノム編集の開始ステップとしてのDNA二本鎖切断がもたらされる。
【0245】
転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)
ある特定の実施形態では、本発明のゲノム編集アプローチは、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)の使用を伴う。TALENは、別のフォーマットのモジュラーヌクレアーゼに相当し、これはZFNと同様に、操作されたDNA結合ドメインをヌクレアーゼドメインに融合することによって生成され、同時並行的に作動して標的化されたDNA切断を達成する。ZFN中のDNA結合ドメインは、ジンクフィンガーモチーフからなるが、TALEN DNA結合ドメインは、転写活性化因子様エフェクター(TALE)タンパク質に由来し、これは本来植物病原性微生物のキサントモナス種(Xanthomonas sp.)において説明されている。TALEは、33〜35アミノ酸リピートの直列アレイから構成され、各リピートは、典型的には長さ最大20bpの標的DNA配列(標的配列の全長は最大40bpとなる)内で単一の塩基対を認識する。各リピートのヌクレオチド特異性は、位置12及び13にちょうど2つのアミノ酸を含む反復可変2残基(RVD)によって決定される。塩基グアニン、アデニン、シトシン及びチミンは、それぞれ4つのRVD:Asn−Asn、Asn−Ile、His−Asp及びAsn−Glyによって主に認識される。これは、ジンクフィンガーの場合よりもはるかに簡略な認識コードを構成するため、ヌクレアーゼ設計に関してはジンクフィンガーをしのぐ優位性に相当する。それでもZFNと同様、TALENのタンパク質−DNA相互作用は特異性において絶対的ではないため、TALENも、FokIドメインの偏性ヘテロ二量体変異体の使用による恩恵を受けてオフターゲット活性を低減している。
【0246】
IV.製剤及び送達
薬学的組成物
本発明に従い、組成物は薬学的組成物として調製され得る。そのような組成物は、1つ以上の活性成分、及び最も多くの場合、薬学的に許容される賦形剤を含む必要がある。
【0247】
本開示による薬学的組成物中の活性成分、薬学的に許容される賦形剤、及び/または任意の追加の成分の相対量は、治療される対象の識別、サイズ、及び/または病態に応じて、さらには組成物が投与される経路に応じて異なり得る。例えば、組成物は、0.1%〜99%(w/w)の活性成分を含み得る。例として、組成物は、0.1%〜100%、例えば0.5〜50%、1〜30%、5〜80%、少なくとも80%(w/w)の活性成分を含み得る。
【0248】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される薬学的組成物は、少なくとも1つのペイロードを含み得る。非限定例として、薬学的組成物は、1、2、3、4または5つのペイロードを含み得る。
【0249】
本明細書に提供される薬学的組成物に関する説明は、ヒトへの投与に好適な薬学的組成物を主に対象としているが、そのような組成物が、一般に任意の他の動物への、例えば非ヒト動物、例えば非ヒト哺乳動物への投与に好適であることは、当業者によって理解されるであろう。組成物を様々な動物への投に好適にするためのヒトへの投与に好適な薬学的組成物の修飾は、十分に理解されており、通常の技能を有する獣薬理学者は、存在する場合は単に通常の実験によって、そのような修飾を設計及び/または実施することができる。薬学的組成物の投与が企図される対象には、ヒト及び/または他の霊長類、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ネコ、イヌ、マウス、ラットなどの商業的に関連する哺乳動物を含む哺乳動物、家禽、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、及び/または七面鳥などの商業的に関連する鳥類を含む鳥類が含まれるが、これらに限定されない。
【0250】
いくつかの実施形態では、組成物は、ヒト、ヒト患者または対象に投与される。
【0251】
製剤
本発明の製剤には、限定されないが、生理食塩水、リポソーム、脂質ナノ粒子、ポリマー、ペプチド、タンパク質、ウイルスベクターでトランスフェクトされた細胞(例えば、対象中への移動または移植のための)及びそれらの組み合わせが含まれ得る。
【0252】
本明細書に記載される薬学的組成物の製剤は、薬理学の分野において既知の、または今後開発される任意の方法によって調製され得る。本明細書で使用される場合、「薬学的組成物」という用語は、少なくとも1つの活性成分及び任意に1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を含む組成物を指す。
【0253】
一般に、そのような調製方法は、活性成分を賦形剤及び/または1つ以上の他の補助成分と関連付けるステップを含む。
【0254】
本明細書に記載される組成物の製剤は、薬理学の分野において既知の、または今後開発される任意の方法によって調製され得る。一般に、そのような調製方法は、活性成分を1つ以上の賦形剤及び/または1つ以上の他の補助成分と関連付け、その後、必要であれば、及び/または望ましい場合、製品を所望の単回もしくは多回投与単位に成形及び/または梱包するステップを含む。
【0255】
本開示による薬学的組成物は、バルクで、単一単位用量として、及び/または複数の単一単位用量として調製、梱包、及び/または販売され得る。本明細書で使用される場合、「単位用量」は、既定量の活性成分を含む薬学的組成物の個別量を指す。活性成分の量は、対象に投与されるであろう活性成分の投与量及び/または例えば、そのような投与量の半分もしくは3分の1などのそのような投与量の便利な画分にほぼ等しい。
【0256】
本開示による薬学的組成物中の活性成分、薬学的に許容される賦形剤、及び/または任意の追加の成分の相対量は、治療される対象の識別、サイズ、及び/または病態に応じて、さらには組成物が投与される経路に応じて異なり得る。例えば、組成物は、0.1%〜99%(w/w)の活性成分を含み得る。例として、組成物は、0.1%〜100%、例えば0.5〜50%、1〜30%、5〜80%、少なくとも80%(w/w)の活性成分を含み得る。
【0257】
賦形剤及び希釈剤
いくつかの実施形態では、薬学的に許容される賦形剤は、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%純粋であり得る。いくつかの実施形態では、賦形剤は、ヒト及び獣医用途の使用のために承認されている。いくつかの実施形態では、賦形剤は、米国食品医薬品局によって承認され得る。いくつかの実施形態では、賦形剤は、医薬品グレードのものであり得る。いくつかの実施形態では、賦形剤は、米国薬局方(USP)、欧州薬局方(EP)、英国薬局方、及び/または国際薬局方の基準を満たし得る。
【0258】
賦形剤には、本明細書で使用される場合、所望の特定の投薬形態に適するように、任意かつ全ての溶媒、分散媒体、希釈剤、または他の液体ビヒクル、分散剤もしくは懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘剤もしくは乳化剤、防腐剤等が含まれるが、これらに限定されない。薬学的組成物を製剤化するための様々な賦形剤及びその組成物を調製するための技法は、当該技術分野において既知である(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,21st Edition,A.R.Gennaro,Lippincott,Williams&Wilkins,Baltimore,MD,2006を参照)。従来の賦形剤媒体の使用は、例えば任意の望ましくない生物学的効果をもたらすか、またはそうでなければ薬学的組成物の任意の他の構成成分(複数可)と有害に相互作用することによって、任意の従来の賦形剤媒体が物質またはその誘導体と両立し得ない場合を除いて、本開示の範囲内で企図され得る。
【0259】
例示的な希釈剤には、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸ナトリウム、ラクトース、スクロース、セルロース、微結晶セルロース、カオリン、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、塩化ナトリウム、乾燥デンプン、コーンスターチ、粉糖等、及び/またはそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0260】
不活性成分
いくつかの実施形態では、薬学的組成物製剤は、少なくとも1つの不活性成分を含み得る。本明細書で使用される場合、「不活性成分」という用語は、製剤に含まれる薬学的組成物の活性成分の活性に寄与しない1つ以上の薬剤を指す。いくつかの実施形態では、本発明の製剤で使用され得る不活性成分のうちの全てまたはいくつかが、米国食品医薬品局(FDA)によって承認され得るか、どれも承認されない場合がある。
【0261】
一実施形態では、薬学的組成物は、限定されないが、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2−ジミリストイル−Sn−グリセロ−3−(ホスホ−S−(1−グリセロール))、1,2−ジミリストイル−Sn−グリセロ−3−ホスホコリン、1,2−ジオレオイル−Sn−グリセロ−3−ホスホコリン、1,2−ジパルミトイル−Sn−グリセロ−3−(ホスホ−Rac−(1−グリセロール))、1,2−ジステアロイル−Sn−グリセロ−3−(ホスホ−Rac−(1−グリセロール))、1,2−ジステアロイル−Sn−グリセロ−3−ホスホコリン、1−O−トリルビグアニド、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、酢酸、氷酢酸、酢酸無水物、アセトン、アセトン重亜硫酸ナトリウム、アセチル化ラノリンアルコール、アセチル化モノグリセリド、アセチルシステイン、アセチルトリプトファン、DL−、アクリレートコポリマー、アクリル酸−イソオクチルアクリレートコポリマー、アクリル系接着剤788、活性炭、Adcote 72A103、接着テープ、アジピン酸、Aerotex樹脂3730、アラニン、凝集アルブミン、コロイド状アルブミン、ヒトアルブミン、アルコール、脱水アルコール、変性アルコール、希釈アルコール、Alfadex、アルギン酸、アルキルアンモニウムスルホン酸ベタイン、アルキルアリールスルホン酸ナトリウム、アラントイン、アリルα−イオノン、アーモンド油、α−テルピネオール、α−トコフェロール、α−トコフェロール酢酸塩、Dl−、α−トコフェロール、Dl−、酢酸アルミニウム、クロロヒドロキシアラントイン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム−水和スクロース、水酸化アルミニウムゲル、水酸化アルミニウムゲルF 500、水酸化アルミニウムゲルF5000、モノステアリン酸アルミニウム、酸化アルミニウム、アルミニウムポリエステル、ケイ酸アルミニウム、アルミニウムデンプンオクテニルコハク酸塩、ステアリン酸アルミニウム、塩基性酢酸アルミニウム、無水硫酸アルミニウム、Amerchol C、Amerchol−Cab、アミノメチルプロパノール、アンモニア、アンモニア溶液、強アンモニア溶液、酢酸アンモニウム、水酸化アンモニウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ノノキシノール−4硫酸アンモニウム、C−12−C−15直鎖第一級アルコールエトキシレートのアンモニウム塩、硫酸アンモニウム、Ammonyx、Amphoteric−2、Amphoteric−9、Anethole、無水クエン酸、無水デキストロース、無水ラクトース、無水クエン酸三ナトリウム、アニス油、Anoxid Sbn、消泡剤、アンチピリン、アパフルラン、杏仁油Peg−6エステル、Aquaphor、アルギニン、Arlacel、アルコルビン酸、パルミチン酸アルコルビル、アスパラギン酸、ペルーバルサム、硫酸バリウム、蜜蝋、合成蜜蝋、ベヘネス−10、ベントナイト、塩化ベンザルコニウム、ベンゼンスルホン酸、塩化ベンゼトニウム、ベンゾドデシニウムブロミド、安息香酸、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、塩化ベンジル、Betadex、ビバプシチド、次没食子酸ビスマス、ホウ酸、Brocrinat、ブタン、ブチルアルコール、ビニルメチルエーテルのブチルエステル/マレイン酸無水物コポリマー(125000Mw)、ステアリン酸ブチル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチレングリコール、ブチルパラベン、酪酸、C20−40 Pareth−24、カフェイン、カルシウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、グルセプト酸カルシウム、水酸化カルシウム、乳酸カルシウム、カルコブトロール、カルジアミドナトリウム、カロキセト酸三ナトリウム、カルテリドールカルシウム、カナダバルサム、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、カプリル酸/カプリン酸/ステアリン酸トリグリセリド、カプタン、Captisol、カラメル、カルボマー1342、カルボマー1382、カルボマー934、カルボマー934p、カルボマー940、カルボマー941、カルボマー980、カルボマー981、カルボマーホモポリマーB型(架橋アリルペンタエリスリトール)、カルボマーホモポリマーC型(架橋アリルペンタエリスリトール)、二酸化炭素、カルボキシビニルコポリマー、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシポリメチレン、カラギーナン、カラギーナン塩、ひまし油、セダーリーフ油、セルロース、微結晶セルロース、Cerasynt−Se、セレシン、セテアレス−12、セテアレス−15、セテアレス−30、セテアリールアルコール/セテアレス−20、セテアリールエチルヘキサノエート、セテス−10、セテス−2、セテス−20、セテス−23、セトステアリルアルコール、塩化セトリモニウム、セチルアルコール、セチルエステル蝋、パルミチン酸セチル、塩化セチルピリジニウム、クロロブタノール、クロロブタノール半水和物、クロロブタノール無水物、クロロクレゾール、クロロキシレノール、コレステロール、コレス、コレス−24、クエン酸塩、クエン酸、クエン酸一水和物、水和クエン酸、コカミド硫酸エーテル、コカミンオキシド、ココベタイン、ココジエタノールアミド、ココモノエタノールアミド、ココアバター、ココ−グリセリド、ココナッツ油、水素化ココナッツ油、水素化ココナッツ油/パーム核油グリセリド、ココイルカプリロカプレート、コーラ・ニチダ種抽出物、コラーゲン、着色懸濁液、コーン油、綿実油、クリームベース、クレアチン、クレアチニン、クレゾール、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、硫酸銅、無水硫酸銅、シクロメチコン、シクロメチコン/ジメチコンコポリオール、システイン、塩酸システイン、無水塩酸システイン、システイン、Dl−、D&CレッドNo.28、D&CレッドNo.33、D&CレッドNo.36、D&CレッドNo.39、D&CイエローNo.10、ダルファムプリジン、Daubert 1−5 Pestr(Matte)164z、デシルメチルスルホキシド、Dehydag Wax Sx、デヒドロ酢酸、Dehymuls E、安息香酸デナトニウム、デオキシコール酸、デキストラン、デキストラン40、デキストリン、デキストロース、デキストロース一水和物、デキストロース溶液、ジアトリゾ酸、ジアゾリジニル尿素、ジクロロベンジルアルコール、ジクロロジフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、ジエタノールアミン、ジエチルピロカーボネート、セバシン酸ジエチル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、フタル酸ジエチルヘキシル、アミノ酢酸ジヒドロキシアルミニウム、ジイソプロパノールアミン、アジピン酸ジイソプロピル、ジリノール酸ジイソプロピル、ジメチコン350、ジメチコンコポリオール、ジメチコンMdx4−4210、ジメチコン医療用流体360、ジメチルイソソルビド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアミノエチルメタクリレート−ブチルメタクリレート−メチルメタクリレートコポリマー、ジメチルジオクタデシルアンモニウムベントナイト、ジメチルシロキサン/メチルビニルシロキサンコポリマー、ジノセブアンモニウム塩、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、Dl−、ジプロピレングリコール、ココアンホジ酢酸二ナトリウム、スルホコハク酸ラウレス二ナトリウム、スルホコハク酸ラウリル二ナトリウム、スルホサリチル酸二ナトリウム、ジソフェニン、ジビニルベンゼンスチレンコポリマー、Dmdmヒダントイン、ドコサノール、ドクサートナトリウム、Duro−Tak 280−2516、Duro−Tak 387−2516、Duro−Tak 80−1196、Duro−Tak 87−2070、Duro−Tak 87−2194、Duro−Tak 87−2287、Duro−Tak 87−2296、Duro−Tak 87−2888、Duro−Tak 87−2979、エデト酸カルシウム二ナトリウム、エデト酸二ナトリウム、無水エデト酸二ナトリウム、エデト酸ナトリウム、エデト酸、卵リン脂質、エントスホン、エントスホンナトリウム、エピラクトース、塩酸エピテトラシクリン、エッセンスブーケ9200、塩酸エタノールアミン、酢酸エチル、オレイン酸エチル、エチルセルロース、エチレングリコール、エチレン酢酸ビニルコポリマー、エチレンジアミン、二塩酸エチレンジアミン、エチレン−プロピレンコポリマー、エチレン−酢酸ビニルコポリマー(28%酢酸ビニル)、エチレン−酢酸ビニルコポリマー(9%酢酸ビニル)、ヒドロキシステアリン酸エチルヘキシル、エチルパラベン、ユーカリプトール、エキサメタジム、食用脂、固い脂肪、脂肪酸エステル、脂肪酸ペンタエリスリトールエステル、脂肪酸、脂肪アルコールクエン酸塩、脂肪アルコール、Fd&CブルーNo.1、Fd&CグリーンNo.3、Fd&CレッドNo.4、Fd&CレッドNo.40、Fd&CイエローNo.10(Delisted)、Fd&CイエローNo.5、Fd&CイエローNo.6、塩化鉄、酸化鉄、風味89−186、風味89−259、風味Df−119、風味Df−1530、風味強化剤、イチジク風味827118、ラズベリー風味Pfc−8407、風味Rhodia Pharmaceutical No.Rf451、フルオロクロロ炭化水素、ホルムアルデヒド、ホルムアルデヒド溶液、分画化ココナッツ油、芳香3949−5、芳香520a、芳香6.007、芳香91−122、芳香9128−Y、芳香93498g、芳香Balsam Pine No.5124、芳香ブーケ10328、芳香Chemoderm6401−B、芳香Chemoderm6411、芳香クリームNo.73457、芳香Cs−28197、芳香Felton066m、芳香Firmenich47373、芳香Givaudan Ess9090/1c、芳香H−6540、芳香ハーブ10396、芳香Nj−1085、芳香P O Fl−147、芳香Pa52805、芳香Pera Derm D、芳香Rbd−9819、芳香Shaw Mudge U−7776、芳香Tf 044078、芳香Ungerer Honeysuckle K 2771、芳香Ungerer N5195、フルクトース、ガドリニウムオキシド、ガラクトース、γシクロデキストリン、ゼラチン、架橋ゼラチン、ゲルフォームスポンジ、ゲランガム(低アシル)、Gelva 737、ゲンチシン酸、ゲンチシン酸エタノールアミド、グルセプテートナトリウム、グルセプテートナトリウム二水和物、グルコノラクトン、グルクロン酸、グルタミン酸、Dl−、グルタチオン、グリセリン、水素化ロジンのグリセロールエステル、クエン酸グリセリル、イソステアリン酸グリセリル、ラウリン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、オレイン酸グリセリル、オレイン酸グリセリル/プロピレングリコール、パルミチン酸グリセリル、リシノール酸グリセリル、ステアリン酸グリセリル、ステアリン酸グリセリル−ラウレス−23、ステアリン酸グリセリル/ステアリン酸Peg、ステアリン酸グリセリル/Peg−100ステアリン酸塩、ステアリン酸グリセリル/Peg−40ステアリン酸塩、ステアリン酸グリセリル−ステアラミドエチルジエチルアミン、トリオレイン酸グリセリル、グリシン、塩酸グリシン、ジステアリン酸グリコール、ステアリン酸グリコール、塩酸グアニジン、グアーガム、ヘアーコンディショナー(18n195−1m)、ヘプタン、ヘタスターチ、ヘキシレングリコール、高密度ポリエチレン、ヒスチジン、ヒトアルブミン微小球、ヒアルロン酸ナトリウム、炭化水素、可塑化炭化水素ゲル、塩酸、希釈塩酸、ヒドロコルチゾン、ヒドロゲルポリマー、過酸化水素、水素化ひまし油、水素化パーム油、水素化パーム/パーム核油Peg−6エステル、水素化ポリブテン635−690、水酸化イオン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルピペラジンエタンスルホン酸、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシオクタコサニル、ヒドロキシステアリン酸塩、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2906、ヒド
ロキシプロピル−β−シクロデキストリン、ヒプロメロース2208(15000Mpa.S)、ヒプロメロース2910(15000Mpa.S)、ヒプロメロース、イミド尿素、ヨウ素、ヨードキサミン酸、塩酸イオフェタミン、アイリッシュモス抽出物、イソブタン、イソセテス−20、イソロイシン、イソオクチルアクリレート、イソプロピルアルコール、イソステアリン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル−ピリスチルアルコール、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸、イソステアリルアルコール、等張塩化ナトリウム溶液、Jelene、カオリン、Kathon Cg、Kathon CgII、乳酸塩、乳酸、Dl−乳酸、L−乳酸、ラクトビオン酸、ラクトース、ラクトース一水和物、水和ラクトース、Laneth、ラノリン、ラノリンアルコール−鉱物油、ラノリンアルコール、無水ラノリン、ラノリンコレステロール、ラノリン非イオン性誘導体、エトキシル化ラノリン、水素化ラノリン、塩化ラウラルコニウム、ラウラミンオキシド、加水分解ラウルジモニウム動物コラーゲン、硫酸ラウレス、ラウレス−2、ラウレス−23、ラウレス−4、ラウリン酸ジエタノールアミド、ラウリン酸ミリスチン酸ジエタノールアミド、ラウロイルサルコシン、乳酸ラウリル、硫酸ラウリル、ラベンダー花頂、レシチン、未漂白レシチン、卵レシチン、水素化レシチン、水素化ダイズレシチン、大豆レシチン、レモン油、ロイシン、レブリン酸、リドフェニン、軽鉱物油、軽鉱物油(85Ssu)、リモネン(+/−)−、リポコールSc−15、リジン、酢酸リジン、リジン一水和物、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム水和物、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、マレイン酸、マンニトール、Maprofix、メブロフェニン、医療用接着剤修正S−15、医療用消泡剤A−Fエマルジョン、メドロン酸二ナトリウム、メドロン酸、メグルミン、メントール、メタクレゾール、メタリン酸、メタンスルホン酸、メチオニン、メチルアルコール、メチルグルセス−10、メチルグルセス−20、メチルグルセス−20セスキステアリン酸塩、メチルグルコースセスキステアリン酸塩、ラウリン酸メチル、ピロリドンメチル、サリチル酸メチル、ステアリン酸メチル、メチルボロン酸、メチルセルロース(4000Mpa.S)、メチルセルロース、メチルクロロイソチアゾリノン、メチレンブルー、メチルイソチアゾリノン、メチルパラベン、微結晶蝋、鉱物油、モノグリセリド及びジグリセリド、クエン酸モノステアリル、モノチオグリセロール、マルチステロール抽出物、ミリスチルアルコール、乳酸ミリスチル、ミリスチル−γ−塩化ピコリニウム、N−(カルバモイル−メトキシPeg−40)−1,2−ジステアロイル−セファリンナトリウム、N,N−ジメチルアセトアミド、ナイアシンアミド、ニオキシム、硝酸、窒素、ノノキシノールヨウ素、ノノキシノール−15、ノノキシノール−9、ノルフルラン、オートミール、オクタデセン−1/マレイン酸コポリマー、オクタン酸、Octisalate、オクトキシノール−1、オクトキシノール−40、オクトキシノール−9、オクチルドデカノール、オクチルフェノールポリメチレン、オレイン酸、Oleth−10/Oleth−5、Oleth−2、Oleth−20、オレイルアルコール、オレイン酸オレイル、オリーブ油、オキシドロン酸二ナトリウム、オキシキノリン、パーム核油、パルミタミンオキシド、パラベン、パラフィン、ホワイトソフトパラフィン、パルファムクリーム45/3、ピーナッツ油、精製ピーナッツ油、ペクチン、Peg6−32ステアリン酸塩/ステアリン酸グリコール、Peg植物油、Peg−100ステアリン酸塩、Peg−12ラウリン酸グリセリル、Peg−120ステアリン酸グリセリル、Peg−120ジオレイン酸メチルグルコース、Peg−15コカミン、Peg−150ジステアリン酸塩、Peg−2ステアリン酸塩、Peg−20イソステアリン酸ソルビタン、Peg−22メチルエーテル/ドデシルグリコールコポリマー、Peg−25ステアリン酸プロピレングリコール、Peg−4ジラウレート、Peg−4ラウレート、Peg−40ひまし油、Peg−40ジイソステアリン酸ソルビタン、Peg−45/ドデシルグリコールコポリマー、Peg−5オレイン酸塩、Peg−50ステアリン酸塩、Peg−54水素化ひまし油、Peg−6イソステアリン酸塩、Peg−60ひまし油、Peg−60水素化ひまし油、Peg−7メチルエーテル、Peg−75ラノリン、Peg−8ラウレート、Peg−8ステアリン酸塩、Pegoxol 7ステアリン酸塩、ペンタデカラクトン、ペンタエリスリトールココエート、ペンテト酸五ナトリウム、ペンテト酸カルシウム三ナトリウム、ペンテト酸、ペパーミント油、ペルフルトレン、香料25677、香料ブーケ、香料E−1991、香料Gd 5604、香料Tana 90/42 Scba、香料W−1952−1、ペトロラタム、ホワイトペトロラタム、石油蒸留物、フェノール、液化フェノール、フェノニップ、フェノキシエタノール、フェニルアラニン、フェニルエチルアルコール、酢酸フェニル水銀、硝酸フェニル水銀、卵ホスファチジルグリセロール、リン脂質、卵リン脂質、ホスホリポン90g、リン酸、パインニードル油(Pinus Sylvestris)、ピペラジン六水和物、プラスチベース−50w、ポラクリリン、塩化ポリドロニウム、ポロキサマー124、ポロキサマー181、ポロキサマー182、ポロキサマー188、ポロキサマー237、ポロキサマー407、ポリ(ビス(P−カルボキシフェノキシ)プロパン無水物):セバシン酸、ポリ(ジメチルシロキサン/メチルビニルシロキサン/メチル水素シロキサン)ジメチルビニルまたはジメチルヒドロキシまたはトリメチルエンドブロック、ポリ(Dl−乳酸−コ−グリコール酸)、(50:50、ポリ(Dl−乳酸−コ−グリコール酸)、エチルエステル末端、(50:50、ポリアクリル酸(250000Mw)、ポリブテン(1400Mw)、ポリカルボフィル、ポリエステル、ポリエステルポリアミンコポリマー、ポリエステルレーヨン、ポリエチレングリコール1000、ポリエチレングリコール1450、ポリエチレングリコール1500、ポリエチレングリコール1540、ポリエチレングリコール200、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール300−1600、ポリエチレングリコール3350、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール4000、ポリエチレングリコール540、ポリエチレングリコール600、ポリエチレングリコール6000、ポリエチレングリコール8000、ポリエチレングリコール900、ポリエチレン高密度含有酸化鉄黒(<1%)、ポリエチレン低密度含有硫酸バリウム(20〜24%)、ポリエチレンT、ポリエチレンテレフタレート、ポリグラクチン、ポリグリセリル−3オレイン酸塩、ポリグリセリル−4オレイン酸塩、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリイソブチレン、ポリイソブチレン(1100000Mw)、ポリイソブチレン(35000Mw)、ポリイソブチレン178−236、ポリイソブチレン241−294、ポリイソブチレン35−39、低分子量ポリイソブチレン、中分子量ポリイソブチレン、ポリイソブチレン/ポリブテン接着剤、ポリラクチド、ポリオール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン1800、ポリオキシエチレンアルコール、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンプロピレン、ポリオキシル20セトステアリルエーテル、ポリオキシル35ひまし油、ポリオキシル40水素化ひまし油、ポリオキシル40ステアリン酸塩、ポリオキシル400ステアリン酸塩、ポリオキシル6及びポリオキシル32パルミトステアリン酸塩、ジステアリン酸ポリオキシル、ステアリン酸ポリオキシルグリセリル、ポリオキシルラノリン、パルミチン酸ポリオキシル、ステアリン酸ポリオキシル、ポリプロピレン、ポリプロピレングリコール、ポリクオタニウム−10、ポリクオタニウム−7(70/30アクリルアミド/Dadmac、ポリシロキサン、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート65、ポリソルベート80、ポリウレタン、酢酸ポリビニル、ポリビニルアルコール、塩化ポリビニル、塩化ポリビニル−酢酸ポリビニルコポリマー、ポリビニルピリジン、ポピーシード油、Potash、酢酸カリウム、カリウムミョウバン、重炭酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、塩化カリウム、クエン酸カリウム、水酸化カリウム、メタ重亜硫酸カリウム、リン酸カリウム二塩基性、リン酸カリウム一塩基性、カリウム石鹸、ソルビン酸カリウム、ポビドンアクリレートコポリマー、ポビドンヒドロゲル、ポビドンK17、ポビドンK25、ポビドンK29/32、ポビドンK30、ポビドンK90、ポビドンK90f、ポビドン/エイコセンコポリマー、ポビドン、Ppg−12/Smdiコポリマー、Ppg−15ステアリルエーテル、Ppg−20メチルグルコースエーテルジステアリン酸塩、Ppg−26オレイン酸塩、製品Wat、プロリン、Promulgen D、Promulgen G、プロパン、推進薬A−46、没食子酸プロピル、炭酸プロピレン、プロピレングリコール、二酢酸プロピレングリコール、ジカプリル酸プロピレングリコール、モノラウリン酸プロピレングリコール、モノパルミトステアリン酸プロピレングリコール、パルミトステアリン酸プロピレングリコール、リシノレイン酸プロピレングリコール、プロピレングリコール/ジアゾリジニル尿素/メチルパラベン/プロピルパルベン、プロピルパラベン、硫酸プロタミン、タンパク質加水分解物、Pvm/Maコポリマー、クオタニウム−15、クオタニウム−15シス−形態、クオタニウム−52、Ra−2397、Ra−3011、サッカリン、サッカリンナトリウム、無水サッカリンナトリウム、サフラワー油、Sdアルコール3a、Sdアルコール40、Sdアルコール40−2、Sdアルコール40b、Sepineo P600、セリン、ゴマ油、シアバター、Silasticブランド医療グレードチュービング、Silastic医療用接着剤、シリコーンA型、歯科シリカ、ケイ素、二酸化ケイ素、コロイド状二酸化ケイ素、シリコーン、シリコーン接着剤4102、シリコーン接着剤4502、シリコーン接着剤Bio−Psa Q7−4201、シリコーン接着剤Bio−Psa Q7−4301、シリコーンエマルジョン、シリコーン/ポリエステルフィルム、シメチコン、シメチコンエマルジョン、Sipon Ls 20np、ソーダ灰、酢酸ナトリウム、無水酢酸ナトリウム、硫酸アルキルナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、重硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム十水和物、炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム十水和物、炭酸ナトリウム一水和物、セトステアリル硫酸ナトリウム、塩素酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化ナトリウム注入、静菌性塩化ナトリウム注入、コレステリル硫酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ココイルサルコシン酸ナトリウム、デソキシコール酸ナトリウム、亜ジチオン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、乳酸ナトリウム、L−乳酸ナトリウム、ラウレスナトリウム−2硫酸塩、ラウレスナトリウム−3硫酸塩、ラウレスナトリウム−5硫酸塩、ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム二水和物、二塩基性リン酸ナトリウム、二塩基性無水リン酸ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウム二水和物、二塩基性リン酸ナトリウム十二水和物、二塩基性リン酸ナトリウム七水和物、一塩基性リ
ン酸ナトリウム、一塩基性無水リン酸ナトリウム、一塩基性リン酸ナトリウム二水和物、一塩基性リン酸ナトリウム一水和物、ポリアクリル酸ナトリウム(2500000Mw)、リン酸ナトリウム、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム六水和物、硫酸ナトリウム、無水硫酸ナトリウム、硫酸ナトリウム十水和物、亜硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ナトリウムウンデシレン酸モノアルキロールアミド、酒石酸ナトリウム、チオグリコール酸ナトリウム、チオマレイン酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、無水チオ硫酸ナトリウム、トリメタリン酸ナトリウム、キシレンスルホン酸ナトリウム、Somay 44、ソルビン酸、ソルビタン、イソステアリン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、ソルビトール、ソルビトール溶液、大豆粉、大豆油、スペアミント油、鯨蝋、スクアラン、安定化オキシクロロ複合体、第一スズ2−エチルヘキサノエート、塩化第一スズ、無水塩化スズ、フッ化スズ、酒石酸スズ、デンプン、デンプン1500アルファ化、トウモロコシデンプン、塩化ステアラルコニウム、ステアラルコニウムヘクトライト/炭酸プロピレン、ステアラミドエチルジエチルアミン、ステアレス−10、ステアレス−100、ステアレス−2、ステアレス−20、ステアレス−21、ステアレス−40、ステアリン酸、ステアリン酸ジエタノールアミド、ステアロキシトリメチルシラン、加水分解ステアルトリモニウム動物コラーゲン、ステアリルアルコール、吸入用の無菌水、スチレン/イソプレン/スチレンブロックコポリマー、サクシマー、コハク酸、スクラロース、スクロース、ジステアリン酸スクロース、スクロースポリエステル、スルファセタミドナトリウム、スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン、二酸化硫黄、硫酸、亜硫酸、Surfactol Q、D−タガトース、タルク、トール油、牛脂脂肪酸グリセリド、酒石酸、Dl−酒石酸、Tenox、Tenox−2、Tert−ブチルアルコール、Tert−ブチルヒドロペルオキシド、Tert−ブクヒルヒドロキノン、テトラキス(2−メトキシイソブチルイソシアニド)銅(I)テトラフルオロホウ酸塩、テトラプロピルオルトシリケート、テトロフォスミン、テオフィリン、チメロサール、トレオニン、チモール、スズ、二酸化チタン、トコフェロール、トコフェルソラン、完全非経口高栄養法、脂質エマルジョン、トリアセチン、トリカプリリン、トリクロロモノフルオロメタン、トリデセス−10、トリエタノールアミン硫酸ラウリル、トリフルオロ酢酸、トリグリセリド、中鎖、トリヒドロキシステアリン、Trilaneth−4リン酸塩、Trilaureth−4リン酸塩、クエン酸三ナトリウム二水和物、三ナトリウムHedta、Triton 720、Triton X−200、トロラミン、トロマンタジン、トロメタミン(TRIS)、トリプトファン、チロキサポール、チロシン、ウンデシレン酸、Union 76 Amsco−Res 6038、尿素、バリン、植物油、水素化植物油グリセリド、水素化植物油、Versetamide、Viscarin、ビスコース/綿、ビタミンE、乳化蝋、Wecobee Fs、白セレシン蝋、白蝋、キサンタンガム、亜鉛、酢酸亜鉛、炭酸亜鉛、塩化亜鉛、及び酸化亜鉛などの少なくとも1つの不活性成分を含む。
【0262】
本明細書に開示される薬学的組成物製剤は、カチオンまたはアニオンを含み得る。一実施形態では、製剤は、限定されないが、Zn2+、Ca2+、Cu2+、Mn2+、Mg2+及びそれらの組み合わせなどの金属カチオンを含む。非限定例として、製剤は、ポリマー及び金属カチオンとの複合体を含み得る(例えば、参照によりそれら全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第6,265,389号及び同第6,555,525号を参照)。
【0263】
本発明の製剤はまた、1つ以上の薬学的に許容される塩を含んでもよい。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される塩」は、開示される化合物の誘導体を指し、本化合物は、既存の酸または塩基部分を(例えば、遊離塩基基を好適な有機酸と反応させることによって)その塩形態に変換することによって修飾される。薬学的に許容される塩の例には、アミンなどの塩基性残基の好物または有機酸塩、カルボン酸などの酸性残基のアルカリまたは有機酸等が含まれるが、これらに限定されない。代表的な酸付加塩としては、酢酸塩、酢酸、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、臭化水素塩、塩化水素塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩等が挙げられる。代表的なアルカリまたはアルカリ性土類金属塩としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等、ならびに限定されないが、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミン等を含む、非毒性アンモニウム、4級アンモニウム、及びアミンカチオンが挙げられる。本開示の薬学的に許容される塩としては、例えば、非毒性無機酸または有機酸から形成される親化合物の従来の非毒性塩が挙げられる。
【0264】
溶媒は、有機溶媒、水、またはそれらの混合物を含む溶液からの結晶化、再結晶化、または沈殿によって調製され得る。好適な溶媒の例は、エタノール、水(例えば、一水和物、二水和物、及び三水和物)、N−メチルピロリジノン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N′−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N′−ジメチルアセトアミド(DMAC)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMEU)、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2−(1H)−ピリミジノン(DMPU)、アセトニトリル(ACN)、プロピレングリコール、酢酸エチル、ベンジルアルコール、2−ピロリドン、ベンジル安息香酸塩等である。水が溶媒である場合、溶媒和物は、「水和物」と称される。
【0265】
V.投与及び投薬
投与
「投与する」及び「導入する」という用語は、本明細書において交換可能に使用され、細胞または対象への薬学的組成物の送達を指す。対象への送達の場合、薬学的組成物は、肝細胞などの所望の部位における導入細胞の少なくとも部分的な局在化をもたらす方法または経路によって送達され、それにより所望の効果(複数可)がもたらされる。
【0266】
方法の一態様では、薬学的組成物は、限定されないが、経腸(腸の中)、胃腸、硬膜外(epidural)(硬膜の中)、経口(口を介して)、経皮、硬膜外(peridural)、脳内(大脳の中)、脳室内(脳室の中)、上皮(皮膚の上に適用)、皮内(皮膚自体の中)、皮下(皮膚の下)、経鼻投与(鼻を通して)、静脈内(静脈の中)、静脈内ボーラス、点滴、動脈内(動脈の中)、筋内(筋肉の中)、心内(心臓の中)、骨内注入(骨髄の中)、髄腔内(脊柱管の中)、腹腔内(腹腔の中に注入または注射)、膀胱内注入、硝子体内(眼を通して)、空洞内注射(病理的空洞の中)、腔内(陰茎の基部の中)、膣内投与、子宮内、羊水外投与、経皮(全身分配のための無傷の皮膚を通した拡散)、経粘膜(粘膜を通した拡散)、経腟、吹送(スノーティング)、舌下、口唇下、坐薬、点眼薬(結膜の上)、点耳薬中、耳(耳の中または耳を介して)、頬(頬に向かって指向される)、結膜、皮膚、歯(1本または複数の歯に)、電気浸透、洞内、気管内、体外、血液透析、浸潤、間質性、腹部内、羊水内、動脈内、胆管内、気管支内、髄液嚢内、軟骨内(軟骨内)、仙骨内(馬尾内)、槽内(大槽小脳延髄槽内)、角膜間(角膜内)、歯冠内、冠内(冠状動脈内)、海綿体内(陰茎の海綿体の膨張性空間内)、円板内(ディスク内)、管内(腺管内)、十二指腸内(十二指腸内)、硬膜内(硬膜内または硬膜下)、上皮内(上皮へ)、食道内(食道へ)、胃内(胃内)、歯肉内(歯肉内)、回腸内(省庁の遠位部分内)、病変内(局在化病変内または直接導入)、腔内(管の腔内)、リンパ内(リンパ内)、髄内(骨の髄腔内)、髄膜内(髄膜内)、心筋内(心筋内)、眼内(目内)、卵巣内(卵巣内)、心膜内(心膜内)、胸膜内(胸膜内)、前立腺内(前立腺内)、肺内(肺またはその気管支内)、鼻腔内(鼻または眼窩腔内)、脊髄内(脊柱内)、関節滑液嚢内(関節の滑液腔内)、腱内(腱内)、精巣内(精巣内)、髄腔内(任意のレベルの脳脊髄軸での脳脊髄液内)、胸腔内(胸郭内)、管内(臓器の管内)、腫瘍内(腫瘍内)、鼓室内(中耳内)、血管内(1本または複数の血管内)、心室内(心室内)、イオン泳動(可溶性塩のイオンが身体の組織中に移行する電流によって)、灌水(開放創または体腔を浸すまたは洗い流す)、喉頭(咽頭の上に直接)、鼻腔胃(鼻を通して胃の中に)、密封包帯法(後に領域を密封する包帯によって被覆される局所経路投与)、眼部(外眼部に)、中咽頭(口及び咽頭に直接)、非経口、経皮、関節周囲、硬膜外、神経周囲、歯周、直腸、呼吸(局所または全身効果のために経口的または経鼻的に吸入することによって気道内)、眼球後(脳端の後ろまたは眼球の後ろ)、心筋内(心筋に入る)、軟組織、クモ膜下、結膜下、粘膜下、局所、経胎盤(胎盤を通るかまたは胎盤全体)、経気管(気管の壁を通る)、経鼓膜(鼓室全体または鼓室を通る)、尿管(尿管へ)、尿道(尿道へ)、膣、仙骨ブロック、診断、神経ブロック、胆汁灌流、心臓灌流、フォトフェレーシス及び脊柱などの経路を介して投与され得る。
【0267】
投与様式には、注射、注入、点滴、及び/または摂取が含まれる。「注射」には、限定されないが、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、心室内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、脳脊髄内、及び胸骨内の注射及び注入が含まれる。いくつかの例において、経路は静脈内である。細胞の送達に関しては、注射または注入による投与を行うことができる。
【0268】
細胞は、全身的に投与することができる。「全身投与」、「全身的に投与される」、「末梢投与」及び「末梢的に投与される」という表現は、標的部位、組織、または臓器に直接ではない形で投与することを指し、それにより、代わりに対象の循環系に侵入し、したがって代謝及び他の類似プロセスに供される。
【0269】
投薬
「有効量」という用語は、特定の疾患及び/または病態の少なくとも1つ以上の徴候または症状を予防または軽減するために必要な活性成分の量を指し、所望の効果を提供するための組成物の十分な量に関連する。そのため、「治療有効量」という用語は、典型的な対象に投与したときに特定の効果を促進するのに十分である活性成分を含む、活性成分または組成物の量を指す。また、有効量は、疾患の症状発生の予防または遅延、疾患の症状の経過の変更(例えば、以下に限定されないが、疾患の症状の進行を遅らせること)、または疾患の症状の反転に十分な量も含むと考えられる。任意の所与の場合について、適切な「有効量」は、当業者により、通常の実験を用いて決定され得ると理解されている。
【0270】
本発明の薬学的、診断的、または予防的組成物は、疾患、障害及び/または病態を予防、治療、管理、または診断するために有効な任意の量及び任意の投与経路を使用して対象に投与され得る。必要とされる正確な量は、対象の人種、年齢、及び全身状態、疾患の重症度、特定の組成物、その投与様式、その活性様式等に応じて対象ごとに異なり得る。対象は、ヒト、哺乳動物、または動物であり得る。本発明による組成物は、典型的には、投与の容易性及び投与量の均一性のために単一剤形で製剤化される。しかしながら、本発明の組成物の総1日使用量は、合理的な医療判断の範囲内で担当医師により決定され得ることが理解されるであろう。任意の特定の個体についての具体的な治療有効用量レベル、予防有効用量レベル、または適切な診断用量レベルは、治療される障害及び障害の重篤度;用いられる具体的なペイロードの活性;用いられる具体的な組成物;患者の年齢、体重、全体的な健康、性別及び食事;投与の時間及び投与の経路;治療の期間;活性成分と組み合わせて、または同時に使用される薬物、ならびに医療分野で周知の同様の要因を含む、様々な要因に依存する。
【0271】
ある特定の実施形態では、本発明による薬学的組成物は、1日あたり対象の体重の約0.01mg/kg〜約100mg/kg、約0.01mg/kg〜約0.05mg/kg、約0.05mg/kg〜約0.5mg/kg、約0.01mg/kg〜約50mg/kg、約0.1mg/kg〜約40mg/kg、約0.5mg/kg〜約30mg/kg、約0.01mg/kg〜約10mg/kg、約0.1mg/kg〜約10mg/kg、または約1mg/kg〜約25mg/kgを、1日1回以上送達して、所望の治療的、診断的、または予防的効果を得るために十分な投与量レベルで投与され得る。
【0272】
本発明の組成物の所望の投与量は、1回のみ、1日3回、1日2回、1日1回、2日に1回、3日に1回、毎週、2週間ごと、3週間ごと、または4週間ごとに送達され得る。ある特定の実施形態では、所望の投与量は、多回投与(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14回、またはそれ以上の投与)を使用して送達され得る。多回投与を用いる場合、本明細書に記載されるものなどの分割投与レジメンが使用され得る。本明細書で使用される場合、「分割用量」は、「単一単位用量」または全日用量の2用量以上への分割、例えば「単一単位用量」の2回以上の投与である。本明細書で使用される場合、「単一単位用量」は、1用量/1回/単一経路/単一接触点、すなわち単一投与事象で投与される任意の治療約の用量である。
【0273】
VI.定義
「類似体」という用語は、本明細書で使用される場合、基準化合物に構造的に関連し、基準化合物と共通の機能的活性を共有する化合物を指す。
【0274】
「生物学的」という用語は、本明細書で使用される場合、微生物、植物、動物、またはヒト細胞などの様々な天然源から作製された医薬製品を指す。
【0275】
「境界」という用語は、本明細書で使用される場合、特徴、エレメント、または特性が終了または開始する場所を示す点、限界、または範囲を指す。
【0276】
「化合物」という用語は、本明細書で使用される場合、単剤もしくはその薬学的に許容される塩、または生物活性剤もしくは薬物を指す。
【0277】
「誘導体」という用語は、本明細書で使用される場合、基準化合物とは構造が異なるが、基準分子の本質的特性を保持する。
【0278】
「下流近傍遺伝子」という用語は、本明細書で使用される場合、一次近傍遺伝子と同じ絶縁近傍内に位置し得る一次近傍遺伝子の下流にある遺伝子を指す。
【0279】
「薬物」という用語は、本明細書で使用される場合、疾患の診断、治癒、軽減、治療、または予防における使用のために意図され、身体の構造または任意の機能に影響を及ぼすことが意図される食品以外の物質を指す。
【0280】
「エンハンサー」という用語は、本明細書で使用される場合、転写因子によって結合されたときに、関連遺伝子の転写を強化する調節DNA配列を指す。
【0281】
「遺伝子」という用語は、本明細書で使用される場合、生物、例えば染色体のゲノムアーキテクチャの単位またはセグメントを指す。遺伝子は、コードまたは非コードであり得る。遺伝子は、連続または非連続ポリヌクレオチドとしてエンコードされ得る。遺伝子は、DNAまたはRNAであり得る。
【0282】
「ゲノムシグナル伝達中心」という用語は、本明細書で使用される場合、その絶縁近傍内の遺伝子の調節に関与するシグナル伝達分子の状況特異的複合アセンブリに結合することができる領域を含む絶縁近傍内の領域を指す。
【0283】
「ゲノム系アーキテクチャ」という用語は、本明細書で使用される場合、個体のゲノムの組織化を指し、染色体、トポロジカル関連ドメイン(TAD)、及び絶縁近傍を含む。
【0284】
「薬草調製物」という用語は、本明細書で使用される場合、植物の一部、または他の植物材料、または組み合わせを活性成分として含有する生薬を指す。
【0285】
「絶縁近傍」(IN)という用語は、本明細書で使用される場合、コヒーシンによって共占有されるCCCTC結合因子(CTCF)を含み、絶縁近傍中の遺伝子ならびに絶縁近傍の近位にある遺伝子の発現に影響を及ぼし得る、染色体配列中の2つの相互作用部位のルーピングによって形成される染色体構造を指す。
【0286】
「絶縁体」という用語は、本明細書で使用される場合、エンハンサーが、それらの間に位置しているときに遺伝子を活性化する能力をブロックし、特定のエンハンサー・遺伝子相互作用に寄与する調節エレメントを指す。
【0287】
「マスター転写因子」という用語は、本明細書で使用される場合、標的遺伝子、例えば近傍遺伝子の転写を変更(増加または減少)し、細胞型特異的エンハンサーを確立する、シグナル伝達分子を指す。マスター転写因子は、他の転写因子などの追加のシグナル伝達タンパク質をエンハンサーに動員して、シグナル伝達中心を形成する。
【0288】
「最小絶縁近傍」という用語は、本明細書で使用される場合、少なくとも1つの近傍遺伝子、及びプロモーター及び/またはエンハンサー及び/またはリプレッサー領域などの近傍遺伝子の発現または抑制を促進する、関連した調節配列領域(RSR)(複数可)を指す。
【0289】
「調整する」という用語は、本明細書で使用される場合、遺伝子産生物の標的遺伝子及び/または活性の発現における変更(例えば、増加または減少)を指す。
【0290】
「近傍遺伝子」という用語は、本明細書で使用される場合、絶縁近傍内に位置する遺伝子を指す。
【0291】
「浸透度」という用語は、本明細書で使用される場合、その変異体遺伝子の関連した特性(表現型)も呈する遺伝子の特定の変異体(例えば、野生型であるか否かにかかわらず、突然変異、対立遺伝子または一般遺伝子型)を担持する個体の割合を指し、いくつかの状況では、臨床症状を呈する、したがって連続体上に存在する突然変異を有する個体の割合として測定される。
【0292】
「ポリペプチド」という用語は、本明細書で使用される場合、最も多くの場合、ペプチド結合によって一緒に結合される(天然または非天然の)アミノ酸残基のポリマーを指す。本明細書で使用される場合、この用語は、任意のサイズ、構造、または機能のタンパク質、ポリペプチド、及びペプチドを指す。場合によっては、エンコードされるポリペプチドは、約50アミノ酸よりも小さく、ポリペプチドは、ペプチドと呼ばれる。ポリペプチドがペプチドである場合、少なくとも約2、3、4、または少なくとも5アミノ酸残基長となる。
【0293】
「一次近傍遺伝子」という用語は、本明細書で使用される場合、染色体に沿った特定の絶縁近傍内で最も一般に見出される遺伝子を指す。
【0294】
「一次下流境界」という用語は、本明細書で使用される場合、一次近傍遺伝子の下流に位置する絶縁近傍境界を指す。
【0295】
「一次上流境界」という用語は、本明細書で使用される場合、一次近傍遺伝子の上流に位置する絶縁近傍境界を指す。
【0296】
「プロモーター」という用語は、本明細書で使用される場合、RNAポリメラーゼによる遺伝子の転写が始まる場所を定義し、どのDNA鎖が転写されるかを示す転写の方向を定義するDNA配列を指す。
【0297】
「調節配列領域」という用語は、本明細書で使用される場合、限定されないが、染色体に沿った領域、区分または区域が挙げられ、それによって近傍遺伝子の発現を変更するために、シグナル伝達分子との相互作用が起こる。
【0298】
「リプレッサー」という用語は、本明細書で使用される場合、DNAに結合する任意のタンパク質を指し、転写の速度を減少させることによって遺伝子の発現を調節する。
【0299】
「二次下流境界」という用語は、本明細書で使用される場合、一次絶縁近傍内の二次ループの下流境界を指す。
【0300】
「二次上流境界」という用語は、本明細書で使用される場合、一次絶縁近傍内の二次ループの上流境界を指す。
【0301】
「シグナル伝達中心」という用語は、本明細書で使用される場合、シグナル伝達タンパク質またはシグナル伝達分子(例えば、転写因子)などの定義された生体分子のセットと相互作用して、遺伝子発現を状況特異的な方法で調節する生存生物の定義された領域を指す。
【0302】
「シグナル伝達分子」という用語は、本明細書で使用される場合、タンパク質、核酸(DNAもしくはRNA)、有機小分子、脂質、糖または他の分子にかかわらず、染色体上の調節配列領域と直接または間接的に相互作用する、任意の実態を指す。
【0303】
「シグナル伝達転写因子」という用語は、本明細書で使用される場合、標的遺伝子、例えば近傍遺伝子の転写を増加するかまたは減少するかにかかわらず変更し、細胞−細胞シグナル伝達分子としても作用する、シグナル伝達分子を指す。
【0304】
「小分子」という用語は、本明細書で使用される場合、生物学的過程の調節を助けることができる低分子量薬物、すなわち、およそ10〜9mのサイズを有する900ダルトン未満の有機化合物を指す。
【0305】
「対象」及び「患者」という用語は、本明細書において交換可能に使用され、本発明による組成物での治療が提供される動物を指す。
【0306】
「スーパーエンハンサー」という用語は、本明細書で使用される場合、細胞同一性を定義する遺伝子の発現を駆動する転写エンハンサーの大きなクラスターであることを指す。
【0307】
「治療剤」という用語は、本明細書で使用される場合、疾患を治癒するか、または疾患の症状を改善する能力を有する物質を指す。
【0308】
「治療(therapeutic)または治療(treatment)成果」という用語は、本明細書で使用される場合、GSCまたはGSNの摂動の結果として生じる任意の結果または効果(正、負またはヌル)を指す。治療成果の例には、疾患もしくは障害に関連する望ましくない病態もしくは負の病態の改良もしくは改善、副作用もしくは症状の軽減、疾患もしくは障害の治癒、またはGSCもしくはGSNの摂動に関連する任意の改良が含まれるが、これらに限定されない。
【0309】
「トポロジカル関連ドメイン」(TAD)という用語は、本明細書で使用される場合、染色体のモジュラー組織化を表し、異なる細胞型の生物によって共有される境界を有する構造を指す。
【0310】
「転写因子」という用語は、本明細書で使用される場合、標的遺伝子、例えば、近傍遺伝子の転写を変更(増加または減少)するシグナル伝達分子である。
【0311】
「治療(therapeutic)または治療(treatment)負債」という用語は、本明細書で使用される場合、望ましくない有害である、または治療法の正の成果を軽減する治療または治療レジームに関連する特徴または特性を指す。治療負債の例には、例えば、毒性、不良な半減期、不良な生物学的利用能、有効性または薬物動態もしくは薬力学的リスクの欠失または喪失が含まれる。
【0312】
「上流近傍遺伝子」という用語は、本明細書で使用される場合、一次近傍遺伝子と同じ絶縁近傍内に位置し得る一次近傍遺伝子の上流にある遺伝子を指す。
【0313】
肝疾患(例えば、NASH)の治療のためのゲノムシグナル伝達中心(GSC)または全体遺伝子シグナル伝達ネットワーク(GSN)の摂動のための組成物及び方法が、本明細書に記載される。本発明の1つ以上の実施形態の詳細が、添付の以下の記載で説明される。本明細書に記載されるものと同様または同等の任意の材料及び方法を本発明の実践または試験において使用することもできるが、好ましい材料及び方法は、これから説明される。本発明の他の特徴、目的及び利点は、その説明から明らかになるであろう。この説明において、単数形は、別途文脈が明確に指示しない限り、複数形も含む。他に特段の定めのない限り、本明細書中で使用する全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。矛盾する場合、本説明が制御する。
【0314】
本発明はさらに、以下の非限定的な実施例によって説明される。
【実施例】
【0315】
実施例1.実験手順
A.ヒト肝細胞細胞培養
ヒト肝細胞は、Massachusetts General Hospitalからの2名のドナー(すなわち、MGH54及びMGH63)、ならびにLonzaからの1名のドナー(すなわちHUM4111B)から取得した。凍結保存した肝細胞を、平板培地中で16時間培養し、維持培地に4時間移した。無血清培地上で2時間培養し、次いで化合物を添加した。遺伝子発現分析の前に、肝細胞を無血清培地上で16時間維持した。一次ヒト肝細胞を、液体窒素冷凍庫(約−130℃)の気相中で保存した。
【0316】
一次ヒト肝細胞を播種するために、細胞のバイアルをLN
2冷凍庫から回収し、37℃の水浴中で回答し、氷のかけらのみが残るまで優しく旋回させた。10mLの血清学的ピペットを使用して、細胞をバイアルから優しく分注し、20mLの冷解凍培地を含有する50mLのコニカルチューブの側面下に優しく分注した。バイアルを約1mLの解凍培地ですすぎ、リンスをコニカルチューブに添加した。最大2バイアルを、20mLの解凍培地の1つのチューブに添加することができる。
【0317】
コニカルチューブ(複数可)を優しく2〜3回反転させ、4℃で10分間100gで制動力を低減して(例えば、9のうち4)遠心分離した。解凍培地をゆっくりゆっくり吸引して、ペレットを避ける。4mLの冷平板培地を、側面の下にゆっくり添加し(2バイアルを1つのチューブに複合する場合、8mL)、バイアルを優しく数回反転させて細胞を再懸濁した。
【0318】
100μLの十分に混合された細胞が400μLの希釈トリパンブルーに添加されるまで、細胞を氷上で保持し、優しく反転させることによって混合した。血球計数器(またはCellometer)を使用して細胞をカウントし、生存性及び1mLあたりの生細胞を記録した。細胞を所望の濃度に希釈し、コラーゲンIで被覆したプレート上に播種した。細胞をゆっくり優しくプレートの上に、一度に1〜2ウェルのみに分注した。残りの細胞を、優しく反転させることによって頻繁にチューブ内で混合した。細胞を、6mLの冷平板培地(10cm)中にプレートあたり約8.5×10
6細胞で播種した。代替として、6ウェルプレートの場合ウェルあたり1.5×10
6(1mL培地/ウェル)、12ウェルプレートの場合ウェルあたり7×10
5(0.5mL/ウェル)、または24ウェルプレートの場合ウェルあたり3.75×10
5(0.5mL/ウェル)。
【0319】
全ての細胞及び培地をプレートに添加した後、プレートをインキュベーターに移し(37℃、5% CO
2、約90%湿度)、前後に、次いで左右に各々数回揺らして、細胞をプレートまたはウェル全体に均一に分布させた。プレート(複数可)をプレーティング後最初の1時間にわたって15分ごとに再度揺らした。プレーティングの約4時間後(または細胞を午後にプレーティングした場合は朝一番に)、細胞をPBSで1回洗浄し、完全維持培地を添加した。一次ヒト肝細胞を維持培地中で維持し、毎日新鮮な培地に移した。
【0320】
B.ヒト肝細胞の枯渇及び化合物処理
上記のように培養したヒト肝細胞を、24ウェルフォーマットでプレーティングし、500μLの量の平板培地中にウェルあたり375,000細胞を添加した。治療の4時間前に、細胞をPBSで洗浄し、培地を新鮮な遺伝培地(完全)または修飾された維持培地のいずれかに変えた。
【0321】
化合物ストックを、1000×最終濃度で調製し、2段階希釈で培地に添加して、細胞に添加したときに化合物が溶液から沈殿するリスクを低減し、妥当なピペット量を保証した。1つずつ、各化合物を温かい(約37℃)修飾された維持培地中で最初に10倍希釈し(初期希釈=ID)、ボルテックスすることによって混合し、IDを細胞培養物中に100倍希釈した(例えば、0.5mLの培地を含有する24ウェルプレートの1ウェル中に5.1μL)。プレートを慎重に旋回させることによって混合し、全てのウェルを処理した後、インキュベーターに一晩戻した。所望される場合、別個のプレート/ウェルをビヒクルのみの対照及び/または正の対照で処理した。マルチウェルプレートを使用する場合、対照を各プレート上に含めた。約18時間後、細胞をさらなる分析、例えば、ChIP−seq、RNA−seq、ATAC−seq等のために採取した。
【0322】
C.マウス肝細胞細胞培養及び化合物処理
雌C57BL/6マウスの肝細胞(F005152冷凍保存)を、45ドナーのプールとしてBioreclamationIVTから購入した。細胞を、0.5mL培地中200K細胞/ウェルで24時間、コラーゲンで被覆した24ウェルプレート上のInvitroGRO CP齧歯類培地(Z990028)及びTorpedo齧歯類抗生物質ミックス(Z99027)中にプレーティングした。10mM DMSO中の化合物ストックを、10μMに(1% DMSOの最終濃度で)希釈し、生物学的三重複で細胞上に適用した。20時間後に培地を取り除き、細胞をさらなる分析、例えば、qRT−PCRのために処理した。
【0323】
D.星細胞培養及び化合物処理
ヒト一次星細胞(HSC)(ScienceCellカタログ番号5300)は、もともと15歳の女性ドナーの肝臓から単離された。細胞を、2μg/cm
2PolyLLysine(PLL)(ScienceCellカタログ番号0413)で被覆された黒色透明底プレート(GREINER BIO−ONE:82050−730)上の星細胞培地(SteCM)(ScienCellカタログ番号5301)中にプレーティングした。細胞を、96ウェルプレート中に17000細胞/ウェルの密度でプレーティングし、一晩接着させた。翌日、細胞培養培地を示された濃度(複数可)の化合物で18時間補充した。全てのウェルは、1% DMSOを有していた。18時間後に培地を取り除き、細胞をさらなる分析、例えば、qRT−PCRのために処理した。
【0324】
E.HepG2細胞培養及び化合物処理
HepG2細胞を、500μLのDMEM中100,000細胞/ウェルで24ウェルフォーマットでプレーティングした。48時間後、培地を取り除き、10μMのモメロチニブまたはDMSOを含有する新鮮な培地と置き換えた。翌朝、細胞をRNA抽出のために採取した。
【0325】
F.培地組成
解凍培地は、6mLの等張パーコール及び14mLの高グルコースDMEM(Invitrogen #11965または同様のもの)を含有していた。平板培地は、100mLのWilliams E培地(Invitrogen #A1217601、フェノールレッドなし)、ならびに5mLのFBS、10μLのデキサメタゾン、及び3.6mLのプレーティング/維持カクテルを含有するThermoFisher平板培地からの補足パック#CM3000を含有していた。ストックトリパンブルー(0.4%、Invitrogen #15250)を、PBS中で1:5に希釈した。Normocinを、解凍培地及び平板培地の両方に1:500で添加した。
【0326】
ThermoFisher完全維持培地は、補足パック#CM4000(1μLのデキサメタゾン及び4mLの維持カクテル)ならびに100mLのWilliams E(Invitrogen #A1217601、フェノールレッドなし)を含有していた。
【0327】
修飾された維持培地は、刺激因子(デキサメタゾン、インスリン等)を有しておらず、100mLのWilliams E(Invitrogen #A1217601、フェノールレッドなし)、2mMまで1mLのL−グルタミン(Sigma #G7513)、15mMまで1.5mLのHEPES(VWR #J848)、及び各々50U/mLの最終濃度まで0.5mLのペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen #15140)を含有していた。
【0328】
G.DNA精製
DNA精製は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Ji et al.,PNAS,112(12):3841−3846(2015)補助情報に記載されるように行った。1ミリリットルの2.5Mグリシンを、固定細胞の各プレートに添加し、5分間インキュベートしてホルムアルデヒドをクエンチした。細胞をPBSで2回洗浄した。細胞を4℃で5分間、1,300gでペレット化した。次いで、4×10
7細胞を各チューブ内で収集した。細胞を、プロテアーゼ阻害剤を含有する1mLの氷冷Nonidet P−40溶解緩衝液で、氷上で5分間優しく溶解した(緩衝液レシピは以下に提供される)。細胞溶解物を、Nonidet P−40溶解緩衝液中の24%(wt/vol)スクロースで形成された2.5量のスクロースクッションの上に積層した。この試料を4℃で10分間、18,000gで遠心分離して、核ペレットを単離した(上澄みは、細胞質画分を表していた)。核ペレットをPBS/1mM EDTAで1回洗浄した。核ペレットを0.5mLのグリセロール緩衝液で優しく再懸濁し、続いて等量の核溶解緩衝液で氷上で2分間インキュベートした。この試料を4℃で2分間、16,000gで遠心分離して、クロマチンペレットを単離した(上澄みは、核可溶性画分を表していた)。クロマチンペレットをPBS/1mM EDTAで2回洗浄した。クロマチンペレットを−80℃で保存した。
【0329】
Nonidet P−40溶解緩衝液は、10mMのTris−HCl(pH7.5)、150mMのNaCl、及び0.05%のNonidet P−40を含有していた。グリセロール緩衝液は、20mMのTris−HCl(pH7.9)、75mMのNaCl、0.5mMのEDTA、0.85mMのDTT、及び50%(vol/vol)グリセロールを含有していた。核溶解緩衝液は、10mMのHepes(pH7.6)、1mMのDTT、7.5mMのMgCl
2、0.2mMのEDTA、0.3MのNaCl、1Mの尿素、及び1%のNonidet P−40を含有していた。
【0330】
H.クロマチン免疫沈降シーケンシング(ChIP−seq)
一次肝細胞及びHepG2細胞について以下のプロトコルを使用してChIP−seqを実施して、組成物を決定し、シグナル伝達中心の位置を確認した。
【0331】
i.細胞架橋
2×10
7細胞を、ChIP−seqの各実行に使用した。2mLの新鮮な11%ホルムアルデヒド(FA)溶液を、15cmプレート上の20mLの培地に添加して、1.1%の最終濃度に到達させた。プレートを短時間旋回させ、室温(RT)で15分間インキュベートした。インキュベーションの最後に、FAを、1mLの2.5Mグリシンをプレートに添加し、室温で5分間インキュベートすることによってクエンチした。培地を1Lビーカーに破棄し、細胞を20mLの氷冷PBSで2回洗浄した。PBS(10mL)をプレートに添加し、細胞をプレートから掻き落とした。細胞を15mLのコニカルチューブに移し、チューブを氷上に置いた。プレートを、追加の4mLのPBSで洗浄し、15mLのチューブ内で細胞と複合した。チューブを5分間、1,500rpm、4℃で卓上遠心分離機で遠心分離した。PBSを吸引し、細胞を液体窒素中で急速冷凍した。ペレットを、使用準備が整うまで−80℃で保存した。
【0332】
ii.予ブロック磁気ビーズ
30μLのタンパク質Gビーズ(反応あたり)を、1.5mLのProtein LoBindエッペンドルフチューブに添加した。ビーズを、磁気分離によって室温で30秒間収集した。ビーズを、4℃で10分間、回転器上でビーズをインキュベートし、ビーズを磁石で収集することによって、1mLのブロッキング溶液で3回洗浄した。5μgの抗体を、ブロッキング溶液中の250μLのビーズに添加した。混合物を透明なチューブに移し、4℃で一晩回転させた。翌日に、抗体を含有する緩衝液を取り除き、ビーズを、4℃で10分間、回転器上でビーズをインキュベートし、ビーズを磁石で収集することによって、1.1mLのブロッキング溶液で3回洗浄した。ビーズを、50μLのブロッキング溶液中に再懸濁し、使用準備が整うまで氷上で保持した。
【0333】
iii.細胞溶解、ゲノム断片化、及びクロマチン免疫沈降
COMPLETE(登録商標)プロテアーゼ阻害剤カクテルを、使用前に溶解緩衝液1(LB1)に添加した。50x溶液の場合、1錠を1mLのH
2Oに溶解した。カクテルをアリコートで−20℃で保存した。細胞を、各チューブ内で8mLのLB1中に再懸濁し、4℃で10分間、回転器上でインキュベートした。核を、4℃で5分間、1,350gで遠心沈殿した。LB1を吸引し、細胞を、各チューブ内での8mLのLB2中に再懸濁し、4℃で10分間、回転器上でインキュベートした。
【0334】
COVARIS(登録商標)E220EVOLUTION(商標)超音波処理器を、高細胞数についての製造元の推奨に従ってプログラムした。HepG2細胞を12分間音波処理し、一次肝細胞試料を10分間音波処理した。溶解物を清潔な1.5mLエッペンドルフチューブに移し、チューブを4℃で10分間、20,000gで遠心分離して残屑をペレット化した。上澄みを、予め結合された抗体を有する予めブロックされたタンパク質Gビーズを含有する2mLのProtein LoBindエッペンドルフチューブに移した。50μLの上澄みをインプットとして保存した。インプット材料を、使用準備が整うまで−80℃で保持した。チューブを4℃で一晩、ビーズで回転させた。
【0335】
iv.洗浄、溶出、及び架橋逆転
全ての洗浄ステップは、チューブを4℃で5分間回転させることによって実施した。洗浄ステップごとに、ビーズを清潔なProtein LoBindエッペンドルフチューブに移した。ビーズを、磁石を使用して1.5mLのエッペンドルフチューブ内で収集した。ビーズを1.1mLの音波処理緩衝液で2回洗浄した。磁気スタンドを使用して、磁気ビーズを収集した。ビーズを1.1mLの洗浄緩衝液2で2回洗浄し、磁気スタンドを再度使用して、磁気ビーズを収集した。ビーズを1.1mLの洗浄緩衝液3で2回洗浄した。全ての残留洗浄緩衝液3を取り除き、ビーズを1.1mLのTE+0.2% Triton X−100緩衝液で1回洗浄した。残留TE+0.2% Triton X−100緩衝液を取り除き、ビーズをTE緩衝液で毎回30秒間にわたって2回洗浄した。残留TE緩衝液を取り除き、ビーズを300μLのChIP溶出緩衝液中に再懸濁した。250μLのChIP溶出緩衝液を、50μLのインプットに添加し、チューブを65℃で1時間、ビーズで回転させた。インプット試料を65℃のオーブンで一晩、回転させずにインキュベートした。ビーズを含むチューブを磁石上に置き、溶出液を新鮮なDNA LoBindエッペンドルフチューブに移した。溶出液を65℃のオーブンで一晩、回転させずにインキュベートした。
【0336】
v.クロマチン抽出及び沈降
インプット及び免疫沈降(IP)試料を新鮮なチューブに移し、300μLのTE緩衝液をIP及びインプット試料に添加して、SDSを希釈した。RNase A(20mg/mL)をチューブに添加し、チューブを37℃で30分間インキュベートした。インキュベーションに続いて、3μLの1M CaCl
2及び7μLの20mg/mLのプロテイナーゼKを添加し、55℃で1.5時間インキュベートした。MaXtract高密度2mLゲルチューブ(Qiagen)を、室温で30秒間、全速での遠心分離によって調製した。600μLのフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコールを各プロテイナーゼK反応に添加し、約1.2mLの混合物中でMaXtractチューブに移した。チューブを室温で5分間、16,000gで回転させた。水相を2つの清潔なDNA LoBindチューブに移し(各チューブに300μL)、1.5μLのグリコーゲン、30μLの3M酢酸ナトリウム、及び900μLのエタノールを添加した。混合物を−20℃で一晩または−80℃で1時間沈降させ、4℃で20分間、最大速度で遠心沈殿させた。エタノールを取り除き、チューブを4℃で5分間、最大速度で遠心沈殿させることによって、ペレットを1mLの75%エタノールで洗浄した。エタノールの残余を取り除き、ペレットを室温で5分間乾燥させた。25μLのH
2Oを各免疫沈降(IP)及びインプットペレットに添加し、5分間放置し、短時間ボルテックスした。両方のチューブからのDNAを組み合わせ、各試料について50μLのIP及び50μLのインプットDNAを得た。1μLのこのDNAを使用し、Qubit dsDNA HSアッセイ(ThermoFisher、#Q32854)を使用してプルダウンDNAの量を測定した。免疫沈降材料の全量は、数ng(TFの場合)〜数百ng(クロマチン修飾の場合)の範囲であった。6μLのDNAをqRT−PCRを使用して分析して、富化を決定した。必要に応じてDNAを希釈した。富化が良好であった場合、残りをDNAシーケンシングのためのライブラリー調製に使用した。
【0337】
vi.DNAシーケンシングのためのライブラリー調製
Illumina用のNEBNext Multiplex Origos(NEB、#6609S)を使用するIllumina用のNEBNext Ultra II DNAライブラリー調製キット(NEB、#E7645)を使用して、製造元の指示に従い、以下の修正とともにライブラリーを調製した。ライブラリー調製のための残りのChIP試料(約43μL)及び1μgのインプット試料を、プロトコルの末端修復部分の前に50μLの量にした。接着プレートシール(ThermoFisher、#AB0558)で密封し、少なくとも1つの空のウェルを異なる試料の間に残した96ウェルの半スカート状PCRプレート(ThermoFisher、#AB1400)において、加熱した蓋を有するPCRマシンで末端修復反応を実行した。未希釈のアダプターをインプット試料に使用し、1:10に希釈したアダプターを5〜100ngのChIP材料に使用し、1:25に希釈したアダプターを5ng未満のChIP材料に使用した。加熱した蓋を取り外したPCRマシンで連結反応を実行した。アダプター連結されたDNAを、清潔なDNA LoBindエッペンドルフチューブに移し、H
2Oを使用して量を96.5μLにした。
【0338】
SPRIselect磁気ビーズ(Beckman Coulter、#B23317)を使用して、200〜600bpのChIP断片を選択した。30μLのビーズを96.5μLのChIP試料に添加して、600bpより長い断片に結合させた。より短い断片を新鮮なDNA LoBindエッペンドルフチューブに移した。15μLのビーズを添加して、200bpより長いDNAに結合し、新鮮に調製された75%エタノールを使用して、ビーズをDNAで2回洗浄した。17μLの0.1X TE緩衝液を使用して、DNAを溶出した。約15μLを収集した。
【0339】
3μLのサイズ選択されたインプット試料及びChIP試料の全て(15μL)をPCRに使用した。サイズ選択されたDNAの量は、Qubit dsDNA HSアッセイを使用して測定した。約5〜10ngのサイズ選択されたDNAを有するインプット試料及びChIP試料については7サイクル、及び5ng未満のサイズ選択されたDNAを有する場合は12サイクルにわたってPCRを実行した。PCR産生物(25μL)の半分を、製造元の指示に従い、22.5μLのAMPure XPビーズ(Beckman Coulter、#A63880)で精製した。PCR産生物を、17μLの0.1X TE緩衝液で溶出し、PCT産生物の量をQubit dsDNA HSアッセイを使用して測定した。5ng未満のPCR産生物を有する試料の残りの半分について、追加の4サイクルのPCRを実行し、DNAを22.5μLのAMPure XPビーズを使用して精製した。濃度を測定して、収率の増加が存在したかどうかを決定した。両方の半分を複合し、H
2Oを使用して量を最大50μLにした。
【0340】
2回目のDNAの精製は、17μLの0.1X TE中の45μLのAMPure XPビーズを使用して実行し、Qubit dsDNA HSアッセイを使用して、最終収率を測定した。このプロトコルは、20ngから1mgのPCR産生物を産生する。ライブラリーの質を、必要に応じて、製造元の推奨に基づいて高感度BioAnalyzer DNAキット(Agilent、#5067−4626)を使用し、1μLの各試料をH
2Oで希釈することによって検証した。
【0341】
vii.試薬
11%のホルムアルデヒド溶液(50mL)は、14.9mLの37%ホルムアルデヒド(最終濃度11%)、1mLの5M NaCl(最終濃度0.1M)、100μLの0.5MのEDTA(pH8)(最終濃度1mM)、50μLの0.5M EGTA(pH8)(最終濃度0.5mM)、及び2.5mLの1M Hepes(pH7.5)(最終濃度50mM)を含有していた。
【0342】
ブロッキング溶液は、PBS中の0.5% BSA(w/v)及び100mL PBS中の500mgのBSAを含有していた。ブロッキング溶液は、使用の最大約4日前に調製してもよい。
【0343】
溶解緩衝液1(LB1)(500mL)は、25mLの1M Hepes−KOH(pH7.5)、14mLの5M NaCl、1mLの0.5M EDTA(pH8.0)、50mLの100%グリセロール溶液、25mLの10% NP−40、及び12.5mLの10% Triton X−100を含有していた。pHを7.5に調節した。緩衝液を無菌濾過し、4℃で保存した。pHを使用直前に再チェックした。
【0344】
溶解緩衝液2(LB2)(1000mL)は、10mLの1M Tris−HCl(pH8.0)、40mLの5M NaCl、2mLの0.5M EDTA(pH8.0)、及び2mLの0.5M EGTA(pH8.0)を含有していた。pHを8.0に調節した。緩衝液を無菌濾過し、4℃で保存した。pHを使用直前に再チェックした。
【0345】
音波処理緩衝液(500mL)は、25mLの1M Hepes−KOH(pH7.5)、14mLの5M NaCl、1mLの0.5M EDTA(pH8.0)、50mLの10% Triton X−100、10mLの5% Na−デオキシコール酸塩、及び5mLの10% SDSを含有していた。pHを7.5に調節した。緩衝液を無菌濾過し、4℃で保存した。pHを使用直前に再チェックした。
【0346】
プロテイナーゼ阻害剤は、LB1、LB2、及び音波処理緩衝液に含まれていた。
【0347】
洗浄緩衝液2(500mL)は、25mLの1M Hepes−KOH(pH7.5)、35mLの5M NaCl、1mLの0.5M EDTA(pH8.0)、50mLの10% Triton X−100、10mLの5% Na−デオキシコール酸塩、及び5mLの10% SDSを含有していた。pHを7.5に調節した。緩衝液を無菌濾過し、4℃で保存した。pHを使用直前に再チェックした。
【0348】
洗浄緩衝液3(500mL)は、10mLの1M Tris−HCl(pH8.0)、1mLの0.5M EDTA(pH8.0)、125mLの1M LiCl溶液、25mLの10% NP−40、及び50mLの5% Na−デオキシコール酸塩を含有していた。pHを8.0に調節した。緩衝液を無菌濾過し、4℃で保存した。pHを使用直前に再チェックした。
【0349】
ChIP溶出緩衝液(500mL)は、25mLの1M Tris−HCl(pH8.0)、10mLの0.5M EDTA(pH8.0)、50mLの10% SDS、及び415mLのddH
2Oを含有していた。pHを7.5に調節した。緩衝液を無菌濾過し、4℃で保存した。pHを使用直前に再チェックした。
【0350】
I.ChIP−seq結果の分析
各試料から得られた全ての読み出し値を、Phredスコア≧20及び読み出し長≧30を必要とするtrim_galore0.4.1を使用してトリミングした。トリミングした読み出し値を、Bowtie(バージョン1.1.2)を使用し、パラメーター:−v 2 −m 1 −S −tを用いてヒトゲノム(hg19ビルド)に対してマップした。全てのマップされていない読み出し値、固有にマップされていない読み出し値及びPCR重複を取り除いた。全てのChIP−seqピークを、MACS2を使用し、パラメーター:−q 0.01 −SPMRを用いて特定した。ChIP−seqシグナルを、UCSCゲノムブラウザーにおいて可視化した。注釈の付いたプロモーター(RefSeq、Ensemble及びUCSC Known Geneデータベースの複合)から少なくとも2kb離れたChIP−seqピークを、遠位ChIP−seqピークとして選択した。
【0351】
J.RNA−seq
このプロトコルは、以下のプロトコルの修飾バージョンである。MagMAX mirVana Total RNA単離キットユーザーガイド(Applied Biosystems #MAN0011131 Rev B.0)、NEBNext Poly(A)mRNA磁気単離モジュール(E7490)、及びIllumina用NEBNext Ultra Directional RNAライブラリー調製キット(E7420)(New England Biosystems #E74901)。
【0352】
MagMax mirVanaキット指示書(14〜17頁の「細胞からRNAを単離する」と題されるセクション)を、培養物中の細胞から全RNAを単離するために使用した。接着細胞を含有するマルチウェルプレート(通常は24ウェルプレート)のウェルあたり200μLの溶解結合混合物を使用した。
【0353】
mRNA単離及びライブラリー調製のために、NEBNext Poly(A)mRNA磁気単離モジュール及びDirectional Prepキットを使用した。上記の細胞から単離されたRNAを定量化し、50μLのヌクレアーゼ不含水中500μgの各試料中で調製した。このプロトコルは、微量遠心管または96ウェルプレート中で実行することができる。
【0354】
80%エタノールを新たに調製し、全ての溶出を0.1X TE緩衝液中で行う。Ampure XPビーズを必要とするステップの場合、ビーズを使用前に室温にした。試料の量を最初に測定し、ビーズを分注した。セクション1.9B(1.9Aではない)を、Illumina用のNEBNext Multiplex Oligos(#E6609)に使用した。PCR富化を開始する前に、Qubit(DNA高感度キット、ThermoFisher #Q32854)を使用して、cDNAを定量化した。PCR反応を12サイクルにわたって実行した。
【0355】
PCR反応の精製(ステップ1.10)後、Qubit DNA高感度キットを使用して、ライブラリーを定量化した。1μLの各試料を1〜2ng/μLに希釈して、BioAnalyzer(DNA高感度キット、Agilent #5067−4626)上で実行した。Bioanalyzerが清浄でなかった場合(およそ300bpの1つの狭いピーク)、0.9Xまたは1.0Xのビーズ:試料比を使用して、AMPure XPビーズクリーンアップステップを繰り返した。次いで、試料をQubitで再度定量化し、Bioanalyzer上で再度実行した(1〜2ng/μL)。
【0356】
INTACT精製された核または新皮質核全体からの核RNAを、cDNAに変換し、Nugen Ovation RNA−seq System V2で増幅させた。ライブラリーをIllumina HiSeq 2500を使用してシーケンシングした。
【0357】
K.RNA−seqデータ分析
各試料から得られた全ての読み出し値を、STAR_2.5.2bを使用してヒトゲノム(hg19ビルド)に対してマップし、これが読み出し値の分割によってスプライス部位にわたるマッピングを可能にする(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Dobin et al.,Bioinformatics(2012)29(1):15−21)。固有にマップされた読み出し値を後に、参照アノテーションによってガイドされる転写物(RefSeq遺伝子モデル)中に(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Pruitt et al.,Nucleic Acids Res.2012 Jan; 40(Database issue):D130−D135)、Cuffnorm v2.2.1(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Trapnell et al.,Nature Protocols 7,562−578(2012))を用いてアセンブルした。各遺伝子の発現レベルを、正規化したFPKM(100万個のマップされた断片あたりのエクソンのキロベースあたりの断片)を用いて定量化した。差次的に発現された遺伝子を、Cuffdiff v2.2.1を使用し、q値<0.01及びlog2変化倍率>=1または<=−1を用いて呼び出した。
【0358】
L.ATAC−seq
肝細胞を一晩播種し、次いで血清及び他の因子を取り除いた。2〜3時間後、細胞を化合物で処理し、一晩インキュベートした。細胞を採取し、核を転位反応のために調製した。50,000ビーズ結合した核を、Mo et al.,2015,Neuron 86,1369−1384(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、)に記載されるように、Tn5トランスポザーゼ(Illumina FC−121−1030)を使用して転位させた。9〜12サイクルのPCR増幅後、ライブラリーをIllumina HiSeq 2000上でシーケンシングした。バーコード化されたプライマーを使用して、72℃で5分間の伸長でPCRを実施し、次いで最終PCR産生物をシーケンシングした。
【0359】
各試料から得られた全ての読み出し値を、データ分析にPhredスコア≧20及び読み出し長≧30を必要とするtrim_galore0.4.1を使用してトリミングした。トリミングした読み出し値を、Bowtie2(バージョン2.2.9)を使用し、パラメーター:−t −q −N 1 −L 25 −X 2000 no−mixed no−discordantを用いて、ヒトゲノム(hg19ビルド)に対してマップした。全てのマップされていない読み出し値、固有にマップされていない読み出し値及びPCR重複を取り除いた。全てのATAC−seqピークを、MACS2を使用し、パラメーター:−−nolambda−nomodel−q 0.01−−SPMRを用いて呼び出した。ATAC−seqシグナルを、UCSCゲノムブラウザーにおいて可視化した。注釈の付いたプロモーター(RefSeq、Ensemble及びUCSC Known Geneデータベースの複合)から少なくとも2kb離れたATAC−seqピークを、遠位ATAC−seqピークとして選択した。
【0360】
M.qRT−PCR
参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、North et al.,PNAS,107(40)17315−17320(2010)に記載されるように、qRT−PCRを実施した。qRT−PCR分析の前に、細胞培地を取り除き、RNA抽出のためにRLT緩衝液(Qiagen RNeasy 96 QIAcube HTキットカタログ番号74171)と置き換えた。RNeasy 96キット(Qiagenカタログ番号74182)を使用し、RNA抽出のために細胞を処理した。Taqman qPCR分析の場合、製造元の指示に従い、高容量cDNA逆転写キット(ThermoFisher Scientificカタログ:4368813または4368814)を使用してcDNAを合成した。qRT−PCRを、cDNAを用いて、BioRadからのiQ5マルチカラーrtPCR検出システムを使用し、60℃のアニーリングによって実施した。各標的についてThermoFisherからの以下のTaqmanプローブを使用して、試料を増幅させた:Hs01552217_m1(ヒトPNPLA3)、Mm00504420_m1(マウスPNPLA3)、Hs00164004_m1(COL1A1)、Hs01078136_m1(JAK2)、Hs00895377_m1(SYK)、Hs00234508_m1(mTOR)、Hs00998018_m1(PDGFRA)、Hs00909233_m1(GFAP)、4352341E(ACTB)、4326320E(GUSB)、4326319E(B2M)、及び4326317E(GAPDH)。
【0361】
qRT−PCRによって測定される発現の変化倍率の分析を、以下の技法を使用して実施した。対照はDMSOであり、処理は選択された化合物(CPD)であった。内部対照は、GAPDHまたはB−アクチン(もしくは別途示される)であり、関心対象の遺伝子は標的である。最初に、正規化のために以下4つの条件:DMSO:GAPDH、DMSO:標的、CPD:GAPDH、及びCPD:標的の平均を計算した。次に、(DMSO:標的)−(DMSO:GAPDH)=ΔCT対照及び(CPD:標的)−(CPD:GAPDH)=ΔCT実験を使用して対照及び処理の両方のΔCTを計算して、内部対照(GAPDH)に対して正規化した。次いで、ΔCT実験−ΔCT対照によってΔΔCTを計算した。2−(ΔΔCT)によって発現変化倍率(またはRQと省略される相対定量化)を計算した(本明細書に提供されるRNA−Seq結果によって2倍発現変化が示された)。
【0362】
いくつかの例では、RQ最小値及びRQ最大値もまた報告される。RQ最小及びRQ最大は、それぞれ試験試料中の遺伝子発現の最小及び最大相対レベルである。それらは分析設定における信頼レベルセットを使用して計算され、信頼レベルは1標準偏差(SD)に設定された。これらの値は、以下のように標準偏差を使用して計算した:RQ最小=2−(ΔΔCT−SD)、及びRQ最大=2−(ΔΔCT+SD)
【0363】
N.端部対タグシーケンシング(ChIA−PET)によるクロマチン相互作用分析
ChIA−PETは、各々が参照によりそれら全体が本明細書に組み込まれる、Chepelev et al.(2012)Cell Res.22,490−503、Fullwood et al.(2009)Nature 462,58−64、Goh et al.(2012)J.Vis.Exp.http://dx.doi.org/10.3791/3770、Li et al.(2012)Cell 148,84−98、及びDowen et al.(2014)Cell 159,374−387において以前に記載されているように実施される。手短に言えば、胚幹(ES)細胞(最大1×10
8細胞)を、室温で20分間1%ホルムアルデヒドで処理し、次いで0.2Mグリシンを使用して中和する。架橋クロマチンは、音波処理によって300〜700bpのサイズ長に断片化される。抗SMC1抗体(Bethyl、A300−055A)を使用して、SMC1結合されたクロマチン断片を富化する。ChIP DNAの部分を、濃度定量化のため、及び定量的PCRを使用する富化分析のために抗体で被覆されたビーズから溶出される。ChIA−PETライブラリー構築の場合、ChIP DNA断片は、T4 DNAポリメラーゼ(NEB)を使用して末端修復される。ChIP DNA断片を2アリコートに分割し、リンカーAまたはリンカーBのいずれかを断片端部に連結する。2つのリンカーは、ヌクレオチドバーコードとして使用される2つのヌクレオチドが異なる(リンカーAはCG、リンカーBはAT)。リンカー連結後、2つの試料を複合し、20mL量で希釈して、異なるDNA−タンパク質複合体間の連結を最小化することによって近位連結のために調製される。近位連結反応は、T4 DNAリガーゼ(Fermentas)で実施し、22℃で20時間揺らすことなくインキュベートする。近位連結中に、同じリンカー配列を有するDNA断片は、同じクロマチン複合体内で連結され、これがホモ二量体リンカー組成を有する連結産生物を生成した。しかしながら、異なるクロマチン複合体からDNA断片間のキメラ連結もまた起こり得、したがってヘテロ二量体リンカー組成を有する連結産生物を産生する。これらのヘテロ二二量体リンカー産生物を使用して、非特異的連結の頻度を評価し、次いで取り除かれる。
【0364】
i.1日目
ChIPについて記載されるように細胞を架橋する。冷凍細胞ペレットを、使用準備が整うまで−80℃の冷凍庫で保存した。このプロトコルは、6つの15mL Falconチューブ中で冷凍された少なくとも3×10
8細胞(チューブあたり5000万細胞)を必要とする。6つの100μLタンパク質G Dynabeads(各ChIA−PET試料について)を、氷上の6つの1.5mLエッペンドルフチューブに添加する。ビーズを1.5mLのブロッキング溶液で3回洗浄し、各洗浄ステップの間に4℃で10分間回転させながらインキュベートして、効率的なブロッキングを可能にする。タンパク質G Dynabeadsを、6つのチューブの各々において250μLのブロッキング溶液中に再懸濁し、10μgのSMC1抗体(Bethyl A300−055A)を各チューブに添加する。ビーズ・抗体混合物を、4℃で回転させながら一晩インキュベートする。
【0365】
ii.2日目
ビーズを1.5mLのブロッキング溶液で3回洗浄して、未結合のIgGを取り除き、毎回4℃で10分間、回転させながらインキュベートする。Smc1結合されたビーズを、100μLのブロッキング溶液中に再懸濁し、4℃で保存する。最終溶解緩衝液1(試料あたり8mL)を、50xプロテアーゼ阻害剤カクテル溶液を溶解緩衝液1(LB1)(1:50)に添加することによって調製する。8mLの最終溶解緩衝液1を、各冷凍細胞ペレット(試料あたり8mL×6)に添加した。細胞を完全に再懸濁し、上下にピペットすることによって氷上で解凍する。細胞懸濁液は、4℃で10分間回転させながら再度インキュベートする。懸濁液を4℃で5分間、1,350gで遠心分離する。同時に、最終溶解緩衝液2(試料あたり8mL)を、50xプロテアーゼ阻害剤カクテル溶液を溶解緩衝液2(LB2)(1:50)に添加することによって調製する。
【0366】
遠心分離後、上澄みを破棄し、上下にピペットすることによって、核を8mLの最終溶解緩衝液2中に完全に再懸濁する。細胞懸濁液は、4℃で10分間回転させながらインキュベートする。懸濁液を4℃で5分間、1,350gで遠心分離する。インキュベーション及び遠心分離中に、最終溶解緩衝液(試料あたり15mL)を、50xプロテアーゼ阻害剤カクテル溶液を音波処理緩衝液(1:50)に添加することによって調製する。上澄みを破棄し、上下にピペットすることによって、核を15mLの最終音波処理緩衝液中に完全に再懸濁する。核抽出物を、氷上の15の1mL Covaris Evolution E220音波処理チューブに抽出する。10μLのアリコートを使用して、ゲル上の音波処理されていないクロマチンのサイズをチェックする。
【0367】
Covaris音波処理器を、製造元の指示に従ってプログラムする(2000万細胞あたり12分=12×15=3時間)。試料を上記のように順次シーケンシングする。目標は、クロマチンDNAを200〜600bpに切断することである。音波処理断片が大きすぎる場合、擬陽性がより頻繁になる。音波処理された核抽出物を、1.5mLのエッペンドルフチューブ中に分注する。1.5mLの試料を4℃で10分間、完全速度で遠心分離する。上澄み(SNE)を新しい予め冷却された50mLのFalconチューブ中にプールし、音波処理緩衝液で18mLの量にする。2つの50μLのチューブを、インプットとして、また断片のサイズをチェックするために取った。250μLのChIP溶出緩衝液を添加し、逆架橋は65℃で一晩、オーブン内で起こる。架橋の逆転後、音波処理断片のサイズをゲル上で決定する。
【0368】
3mLの音波処理抽出物を、6つの清潔な15mL Falconチューブの各々において、SMC1抗体を有する100μLのタンパク質Gビーズに添加する。SNE・ビーズ混合物を含有するチューブを、4℃で一晩回転させながらインキュベートする(14〜18時間)。
【0369】
iii.3日目
SNE・ビーズ混合物の量の半分(1.5mL)を、6つの予め冷却されたチューブの各々に添加し、磁石を使用してSNEを取り除く。チューブを以下のように順次洗浄する。1)1.5mLの音波処理緩衝液を添加し、ビーズを再懸濁して、結合するために4℃で5分間回転させた後、液体を取り除いた(ステップを2回実施した);2)1.5mLの高塩音波処理緩衝液を添加し、ビーズを再懸濁して、結合するために4℃で5分間回転させた後、液体を取り除く(ステップを2回実施する);3)1.5mLの高塩音波処理緩衝液を添加し、ビーズを再懸濁して、結合するために4℃で5分間回転させた後、液体を取り除く(ステップを2回実施した);4)1.5mLのLiCl緩衝液を添加し、細胞を再懸濁して、結合するために5分間回転させながらインキュベートした後、液体を取り除く(ステップを2回実施した);5)1.5mLの1X TE+0.2% Triton X−100を使用して、結合するために5分間細胞を洗浄した後、液体を取り除き、1.5mLの氷冷TE緩衝液を使用して、結合するために30秒間細胞を洗浄した後、液体を取り除く(ステップを2回実施した)。6つのチューブ全てからのビーズを、1X氷冷TE緩衝液の1つの1,000μLチューブ中に順次再懸濁する。
【0370】
ChIP−DNAを以下のプロトコルを使用して定量化する。ビーズの10(体積)パーセントまたは100μLを、磁石を使用して新たな1.5mLチューブに移す。ビーズを300μLのChIP溶出緩衝液に再懸濁し、チューブを65℃で1時間、ビーズで回転させる。ビーズを含むチューブを磁石上に置き、溶出液を新鮮なDNA LoBindエッペンドルフチューブに移した。溶出液を65℃のオーブンで一晩、回転させずにインキュベートする。免疫沈降試料を新鮮なチューブに移し、300μLのTE緩衝液を免疫沈降及びインプット試料に添加して希釈する。5μLのRNase A(20mg/mL)を添加し、チューブを37℃で30分間インキュベートする。
【0371】
インキュベーションに続いて、3μLの1M CaCl
2及び7μLの20mg/mLのプロテイナーゼKを添加し、55℃で1.5時間インキュベートする。MaXtract高密度2mLゲルチューブ(Qiagen)を、室温で30秒間、全速でそれらを遠心分離することによって調製した。600μLのフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコールを、核プロテイナーゼK反応に添加する。約1.2mLの混合物をMaXtractチューブに移す。チューブを室温で5分間、16,000gで回転させる。水相を2つの清潔なDNA LoBindチューブに移し(各チューブに300μL)、1μLのグリコーゲン、30μLの3M酢酸ナトリウム、及び900μLのエタノールを添加する。混合物を−20℃で一晩または−80℃で1時間沈降させる。
【0372】
混合物を4℃で20分間、最大速度で遠心沈降させ、エタノールを取り除き、チューブを4℃で5分間、最大速度で遠心沈殿させることによって、ペレットを1mLの75%エタノールで洗浄する。エタノールの残余を全て取り除き、ペレットを室温で5分間乾燥させる。H
2Oを各チューブに添加する。各チューブを5分間放置し、短時間ボルテックスする。両方のチューブからのDNAを組み合わせ、50μLのIP及び100μLのインプットDNAを得る。
【0373】
収集されたDNAの量を、Qubit(Invitrogen #Q32856)を使用してChIPによって定量化する。1μLのインターカレーター色素を各測定1μLの試料と複合する。キットに付随する2つの標準物を使用する。ビーズのわずか10%からのDNAが測定されている。900μLのビーズ懸濁液中の約400ngのクロマチンを、qPCRによって測定されるエンハンサー及びプロモーターにおける良好な富化によって得る。
【0374】
iv.3日目または4日目
ChIP−DNAの末端鈍化を、以下のプロトコルを使用してビーズ上で実施する。残りのクロマチン/ビーズを、ピペットによって分割し、450μLのビーズ懸濁液を2つのチューブに分注する。ビーズを磁石上で収集する。上澄みを取り除き、次いでビーズを以下の反応混合物中に再懸濁する:70μLの10X NEB緩衝液2.1(NEB、M0203L)、7μLの10mM dNTP、615.8μLのdH
2O、及び7.2μLの3U/μL T4 DNAポリメラーゼ(NEB、M0203L)。ビーズを37℃で40分間回転させながらインキュベートする。ビーズを磁石で収集し、次いでビーズを1mLの氷冷ChIA−PET洗浄緩衝液で3回洗浄する(各洗浄あたり30秒)。
【0375】
On−Bead A−テーリングを、下記のようにKlenow(3′〜5′エキソ−)マスターミックスを調製することによって実施した:70μLの10X NEB緩衝液2、7μL 10mM dATP、616μL dH20、及び7μLの3U/μL Klenow(3′〜5′エキソ−)(NEB、M0212L)。混合物を37℃で50分間回転させながらインキュベートする。ビーズを磁石で収集し、次いでビーズを1mLの氷冷ChIA−PET洗浄緩衝液で3回洗浄する(各洗浄あたり30秒)。
【0376】
リンカーを氷上で優しく解凍する。リンカーを、優しくピペットすることによって水と、次いでPEG緩衝液と十分混合した後、優しくボルテックスする。次いで、チューブあたり1394μLのマスターミックス及び6μLのリガーゼを添加し、反転によって混合する。パラフィルムをチューブ上に置き、チューブを16℃で一晩(少なくとも16時間)回転させながらインキュベートする。ビオチニル化リンカーを、以下の反応混合物を設定し、試薬を1110μLのdH
2O、4μLの200ng/μLのビオチニル化ブリッジリンカー、PEG(Invitrogen)を有する280μLの5X T4 DNAリガーゼ緩衝液、及び6μLの30U/μL T4 DNAリガーゼ(Fermentas)の順に添加することによって、ビーズ上でChIP−DNAに連結した。
【0377】
v.5日目
エキソヌクレアーゼλ/エキソヌクレアーゼI On−Bead消化を、以下のプロトコルを使用して実施した。ビーズを磁石で収集し、1mLの氷冷ChIA−PET洗浄緩衝液で3回洗浄する(各洗浄あたり30秒)。洗浄緩衝液をビーズから取り除き、次いで以下の反応混合物中に再懸濁する:70μLの10X λヌクレアーゼ緩衝液(NEB、M0262L)、618μLのヌクレアーゼ不含dH20、6μLの5U/μL λエキソヌクレアーゼ(NEB、M0262L)、及び6μLのエキソヌクレアーゼI(NEB、M0293L)。反応物を37℃で1時間回転させながらインキュベートする。ビーズを磁石で収集し、ビーズを1mLの氷冷ChIA−PET洗浄緩衝液で3回洗浄する(各洗浄あたり30秒)。
【0378】
全ての残留緩衝液を取り除き、ビーズを300μLのChIP溶出緩衝液中に再懸濁することによって、クロマチン複合体をビーズから溶出する。ビーズを含むチューブを65℃で1時間回転させる。チューブを磁石上に置き、溶出液を新鮮なDNA LoBindエッペンドルフチューブに移す。溶出液を65℃のオーブンで一晩、回転させずにインキュベートする。
【0379】
vi.6日目
溶出された試料を新鮮なチューブに移し、300μLのTE緩衝液を添加してSDSを希釈する。3μLのRNase A(30mg/mL)をチューブに添加し、混合物を37℃で30分間インキュベートする。インキュベーションに続いて、3μLの1M CaCl
2及び7μLの20mg/mLのプロテイナーゼKを添加し、チューブを55℃で1.5時間再度インキュベートする。MaXtract高密度2mLゲルチューブ(Qiagen)を、室温で30秒間、全速でそれらを遠心分離することによって沈降させる。600μLのフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコールを各プロテイナーゼK反応に添加し、約1.2mLの混合物中でMaXtractチューブに移す。チューブを室温で5分間、16,000gで回転させる。
【0380】
水相を2つの清潔なDNA LoBindチューブに移し(各チューブに300μL)、1μLのグリコーゲン、30μLの3M酢酸ナトリウム、及び900μLのエタノールを添加する。混合物を−80℃で1時間沈降させる。チューブを4℃で30分間、最大速度で遠心沈降させ、エタノールを取り除く。チューブを4℃で5分間、最大速度で遠心沈殿させることによって、ペレットを1mLの75%エタノールで洗浄する。エタノールの残余を取り除き、ペレットを室温で5分間乾燥させる。30μLのH
2Oをペレットに添加し、5分間放置する。ペレット混合物を短時間ボルテックスし、遠心沈降させてDNAを収集する。
【0381】
Qubit及びDNA高感度ChIPを実施して、近位連結されたDNA産生物を定量化し、その質を評価する。約120ngの産生物が得られる。
【0382】
vii.7日目
次いで、Nextera断片化(tagmentation)の構成成分を調製する。100ngのDNAを、12.5μLの2X断片化緩衝液(Nextera)、1μLのヌクレアーゼ不含dH
20、2.5μLのTn5酵素(Nextera)、及び9μLのDNA(25ng)を含有する4つの25μL反応物中に分割する。反応物の各々の断片化を、品質管理のためにBioanalyzer上で分析する。
【0383】
反応物を55℃で5分間、次いで10℃で10分間インキュベートする。25μLのH
2Oを添加し、断片化されたDNAをZymoカラムを使用して精製する。350μLの結合緩衝液を試料に添加し、混合物をカラム中に装填して、13,000rpmで30秒間回転させる。フロースルーを再適用し、カラムを再度回転させる。カラムを200μLの洗浄緩衝液で2回洗浄し、1分間回転させて膜を乾燥させる。カラムを清潔なエッペンドルフチューブに移し、25μLの溶出緩衝液を添加する。チューブを1分間遠心沈降させる。このステップを別の25μLの溶出緩衝液で繰り返す。全ての断片化されたDNAを1つのチューブに複合する。
【0384】
ChIA−PETを、以下のステップを使用してストレプトアビジンビーズ上で固定化する。2X B&W緩衝液(40mL)を、核酸のカップリングのために以下のように調製する:400μLの1M Tris−HCl(pH8.0)(10mM最終)、80μLの1M EDTA(1mM最終)、16mLの5M NaCl(2M最終)、及び23.52mLのdH
2O。1X B&W緩衝液(40mL全量)を、20mLのdH
2Oを20mLの2X B&W緩衝液に添加することによって調製する。
【0385】
MyOneストレプトアビジンDynabeads M−280を30分間室温にし、30μLのビーズを新たな1.5mLチューブに移す。ビーズを150μLの2X B&W緩衝液で2回洗浄する。ビーズを100μLのiBlock緩衝液(Applied Biosystems )中に再懸濁し、混合する。混合物を室温で45分間、回転器上でインキュベートする。
【0386】
I−BLOCK試薬を、0.2%のI−Block試薬(0.2g)、1X PBSまたは1X TBS(10mLの10X PBSまたは10X TBS)、0.05% Tween−20(50μL)、及びH
2Oを100mLまで含有するように調製する。10X PBS及びI−BLOCK試薬をH
2Oに添加し、混合物を40秒間マイクロ波処理(沸騰させない)した後、撹拌する。溶液を冷却した後、Tween−20を添加する。溶液は不透明なままであるが、粒子は溶解される。使用するために溶液を室温に冷ます。
【0387】
ビーズのインキュベーション中に、500ngの剪断ゲノムDNAを50μLのH
2O及び50μLの2X B&W緩衝液に添加する。ビーズがiBLOCK緩衝液でのインキュベーションを終えたとき、それらを200μLの1X B&W緩衝液で2回洗浄する。洗浄緩衝液を破棄し、100μLの剪断ゲノムDNAを添加する。混合物を室温で30分間回転させながらインキュベートする。ビーズを200μLの1X B&W緩衝液で2回洗浄する。断片化DNAを、等量の2X B&W緩衝液とともにビーズに添加し、室温で45分間、回転させながらインキュベートする。ビーズを500μLの2x SSC/0.5% SDS緩衝液(毎回30秒)で5回洗浄し、続いて500mLの1X B&W緩衝液で2回洗浄し、各洗浄後に室温で5分間、回転させながらインキュベートする。ビーズを優しく再懸濁し、チューブを磁石上に置くことによって、Qiagenキットからの100μLの溶出緩衝液(EB)で1回洗浄する。上澄みをビーズから取り除き、それらを30μLのEB中に再懸濁する。
【0388】
対合端シーケンシングライブラリーを、以下のプロトコルを使用してビーズ上に構築する。10μLのビーズを、10サイクルの増幅でPCRにより試験する。50μLのPCR混合物は、10μLのビーズDNA、15μLのNPM混合物(Illumina Nexteraキットから)、5μLのPPC PCRプライマー、5μLのIndexプライマー1(i7)、5μLのIndexプライマー2(i5)、及び10μLのH
2Oを含有する。以下のサイクル条件を使用して、PCRを実施する:72℃で3分間、次いで98℃で10秒間、63℃で30秒間、及び72℃で50秒間の10〜12サイクル、ならびに72℃で5分間の最終延長の10〜12サイクルでDNAを変性させる。サイクルの数を調整して、4つの25μLの反応物とともに合計約300ngのDNAを得る。PCR産生物は、不明確な量の時間にわたって4℃で保持され得る。
【0389】
PCR産生物を、AMPureビーズを使用してクリーンアップした。ビーズを使用する前に30分間室温にする。50μLのPCR反応物を新たなLow−Bindチューブに移し、(1.8x量)90μLのAMPureビーズを添加する。混合物を十分にピペットし、室温で5分間インキュベートする。磁石を3分間使用してビーズを収集し、上澄みを取り除く。300μLの新鮮に調製された80%エタノールを磁石上のビーズに添加し、エタノールを慎重に破棄する。洗浄を繰り返し、次いで全てのエタノールを取り除く。ビーズを磁石ラック上で10分間乾燥させる。10μLのEBをビーズに添加し、十分に混合して、室温で5分間インキュベートする。溶出液を収集し、1μLの溶出液をQubit及びBioanalyzerに使用する。
【0390】
ライブラリーをクローン化して、以下のプロトコルを使用して複雑性を検証する。1μLのライブラリーを1:10で希釈する。PCR反応を下記のように実施する。Illuminaアダプターにアニールするプライマーを選択する(Tm=52.2℃)。PCR反応混合物(全量:50μL)は、以下を含有する:10μLの5X GoTaq緩衝液、1μLの10mM dNTP、5μLの10μMプライマーミックス、0.25μLのGoTaqポリメラーゼ、1μLの希釈したテンプレートDNA、及び32.75μLのH
2O。以下のサイクル条件を使用して、PCRを実施する:95℃で2分間、ならびに以下の条件:95℃で60秒間、50℃で60秒間、及び72℃で30秒間、72℃で5分間の最終延長を含む20サイクルでDNAを変性させる。PCR産生物は、不明確な量の時間にわたって4℃で保持され得る。
【0391】
PCR産生物を、pGEM(登録商標)T−Easyベクター(Promega)プロトコルで連結する。5μLの2X T4 Quickリガーゼ緩衝液、1μLのpGEM(登録商標)T−Easyベクター、1μLのT4リガーゼ、1μLのPCR産生物、及び2μLのH
2Oを、全量10μLまで複合する。産生物を室温で1時間インキュベートし、2μLを使用して星コンピテント細胞を形質転換する。200μLの500μLの細胞をSOC培地にプレーティングする。翌日、T7プロモータープライマーを使用して、Sangerシーケンシングのための20コロニーを選択する。60%クローンは、完全なアダプターを有し、15%が部分的アダプターを有していた。
【0392】
viii.試薬
10試料のタンパク質GDynabeadsは、Invitrogen Dynalカタログ番号10003Dからのものである。ブロッキング溶液(50mL)は、50mLのddH2Oに溶解された0.25gのBSA(0.5% BSA、w/v)を含有し、使用前に4℃で2日間保存する。
【0393】
溶解緩衝液1(LB1)(500mL)は、25mLの1M Hepes−KOH(pH7.5)、14mLの5M NaCl、1mLの0.5M EDTA(pH8.0)、50mLの100%グリセロール溶液、25mLの10% NP−40、及び12.5mLの10% Triton X−100を含有する。pHを7.5に調節する。緩衝液を無菌濾過し、4℃で保存する。pHを使用直前に再チェックする。溶解緩衝液2(LB2)(1000mL)は、10mLの1M Tris−HCl(pH8.0)、40mLの5M NaCl、2mLの0.5M EDTA(pH8.0)、及び2mLの0.5M EGTA(pH8.0)を含有する。pHを8.0に調節する。緩衝液を無菌濾過し、4℃で保存する。pHを使用直前に再チェックする。
【0394】
音波処理緩衝液(500mL)は、25mLの1M Hepes−KOH(pH7.5)、14mLの5M NaCl、1mLの0.5M EDTA(pH8.0)、50mLの10% Triton X−100、10mLの5% Na−デオキシコール酸塩、及び5mLの10% SDSを含有する。緩衝液を無菌濾過し、4℃で保存する。pHを使用直前に再チェックする。高塩音波処理緩衝液(500mL)は、25mLの1M Hepes−KOH(pH7.5)、35mLの5M NaCl、1mLの0.5M EDTA(pH8.0)、50mLの10% Triton X−100、10mLの5% Na−デオキシコール酸塩、及び5mLの10% SDSを含有する。緩衝液を無菌濾過し、4℃で保存する。pHを使用直前に再チェックする。
【0395】
LiCl洗浄緩衝液(500mL)は、10mLの1M Tris−HCl(pH8.0)、1mLの0.5M EDTA(pH8.0)、125mLの1M LiCl溶液、25mLの10% NP−40、及び50mLの5% Na−デオキシコール酸塩を含有する。pHを8.0に調節する。緩衝液を無菌濾過し、4℃で保存する。pHを使用直前に再チェックする。
【0396】
溶出緩衝液(500mL)を使用して、25mLの1M Tris−HCl(pH8.0)、10mLの0.5M EDTA(pH8.0)、50mLの10% SDS、及び415mLのddH
2Oを含有するChIP DNAの量を定量化する。pHを8.0に調節する。緩衝液を無菌濾過し、4℃で保存する。pHを使用直前に再チェックする。
【0397】
ChIA−PET洗浄緩衝液(50mL)は、500μLの1M Tris−HCl(pH8.0)(最終10mM)、100μLの0.5M EDTA(pH8.0)(最終1mM)、5mLの5M NaCl(最終500mM)、及び44.4mLのdH
2Oを含有する。
【0398】
O.HiChIP
ChIA−PETの代替として、HiChIPを使用して、クロマチン相互作用及び立体配座を分析した。HiChIPは、ChIA−PETよりも少ない細胞を必要とする。
【0399】
i.細胞架橋
上のChIPプロトコルに記載されるように細胞を架橋した。架橋した細胞を、−80℃でペレットとして保存するか、または細胞を急速冷凍した直後にHiChIPに使用した。
【0400】
ii.溶解及び制限
1500万個の架橋細胞を500μLの氷冷Hi−C溶解緩衝液中に再懸濁し、4℃で30分間回転させた。1500万より多くの細胞量の場合、ペレットを接触生成のために半分に分割し、次いで音波処理のために組み合えた。細胞を2500gで5分間遠心沈降し、上澄みを破棄した。ペレット化した核を、500μLの氷冷Hi−C溶解緩衝液で1回洗浄した。上澄みを取り除き、ペレットを100μLの0.5% SDS中に再懸濁した。再懸濁液を62℃で10分間インキュベートし、次いで285μLのH
2O及び50μLの10% Triton X−100を添加して、SDSをクエンチした。再懸濁液を十分に混合し、37℃で15分間インキュベートした。50μLの10X NEB緩衝液2及び375UのMboI制限酵素(NEB、R0147)を混合物に添加して、37℃で2時間回転させることによってクロマチンを消化した。より下位の出発物質の場合、より少ない制限酵素を使用し、15μLを1000〜1500万細胞に使用し、8μLを500万細胞、及び4μLを100万細胞に使用した。熱(62℃で20分間)を使用して、MboIを不活化した。
【0401】
iii.ビオチン組み込み及び近位連結
制限断片オーバーハングを満たし、DNA端部をビオチンでマークするために、37.5μLの0.4mMビオチン−dATP(Thermo 19524016)、1.5μLの10mM dCTP、dGTP、及びdTTP、ならびに10μLの5U/μL DNAポリメラーゼI、大きな(Klenow)断片(NEB、M0210)を複合することによって、52μLの充填マスターミックスを反応させた。混合物を、37℃で1時間回転させながらインキュベートした。
【0402】
948μLの連結マスターミックスを添加した。連結マスターミックスは、10mM ATPを含む150μLの10X NEB T4 DNAリガーゼ緩衝液(NEB、B0202)、125μLの10% Triton X−100、3μLの50mg/mL BSA、10μLの400U/μL T4 DNAリガーゼ(NEB、M0202)、及び660μLの水を含有する。混合物を、室温で4時間回転させながらインキュベートした。核を2500gで5分間ペレット化し、上澄みを取り除いた。
【0403】
iv.音波処理
音波処理の場合、ペレットを核溶解緩衝液中で最大1000μLにした。試料をCovarisミリチューブに移し、DNAを製造元の推奨するパラメーターでCovaris(登録商標)E220Evolution(商標)を使用して剪断した。各チューブ(1500万細胞)を以下の条件下で4分間音波処理した。充填レベル5、デューティサイクル5%、PIP140、及びサイクル/バースト200。
【0404】
v.プレクリアリング、免疫沈降、IPビーズ捕捉、及び洗浄
試料を4℃で15分間、16,100gで清澄化した。試料を各々約400μLの2チューブに分割し、750μLのChIP希釈緩衝液を添加する。Smc1a抗体(Bethyl A300−055A)の場合、試料をChIP希釈緩衝液中で1:2に希釈して、0.33%のSDS濃度を達成する。60μLのタンパク質Gビーズを、ChIP希釈緩衝液中1000万細胞ごとに洗浄した。ビーズ(プレクリアリング及び捕捉のため)及び抗体の量を、異なる量の細胞出発物質について直線的に調節した。タンパク質Gビーズをチューブあたり50μL(HiChIPあたり100μL)の希釈緩衝液中に再懸濁した。試料を4℃で1時間回転させた。試料を磁石上に置き、上澄みを新たなチューブに移した。7.5μgの抗体を1000万細胞ごとに添加し、混合物を4℃で一晩回転させながらインキュベートした。別の60μLのタンパク質Gビーズを、ChIP希釈緩衝液中1000万細胞ごとに添加した。タンパク質Gビーズを、50μLの希釈緩衝液(HiChIPあたり100μL)中に再懸濁し、試料に添加して、4℃で2時間回転させた。ビーズを低塩洗浄緩衝液、高塩洗浄緩衝液、及びLiCl洗浄緩衝液で各々3回洗浄した。500μLの洗浄緩衝液を添加し、試料を磁石に対して動かすことによってビーズを前後に2回振り、次いで上澄みを取り除くことによって、磁石上で室温で洗浄を実施した。
【0405】
vi.ChIP DNA溶出
ChIP試料ビーズを100μLの新鮮なDNA溶出緩衝液中に再懸濁した。試料ビーズを室温で10分間回転させながらインキュベートし、続いて37℃で3分間振とうさせながらインキュベートした。ChIP試料を磁石上に置き、上澄みを新鮮なチューブに取り除いた。別の100μLのDNA溶出緩衝液をChIP試料に添加し、インキュベーションを繰り返した。ChIP試料の上澄みを再度取り除き、新たなチューブに移した。約200μLのChIP試料が存在していた。10μLのプロテイナーゼK(20mg/mL)を各試料に添加し、55℃で45分間振とうさせながらインキュベートした。温度を67℃に高め、試料を少なくとも1.5時間振とうさせながらインキュベートした。DNAをZymo精製し(Zymo Research、#D4014)、10μLの水に溶出した。ポストChIP DNAを定量化して、ライブラリーを正しいサイズ分布で生成するために必要とされるTn5の量を推定した。これは、接触ライブラリーを適切に生成し、試料を過剰に音波処理せず、材料をストレプトアビジンビーズ上で頑強に捕捉したと推測した。1000万細胞でのSMC1 HiChIPは、15ng〜50ngのポストChIP DNAの予想収率を有していた。150ngより多くのポストChIP DNAを有するライブラリーの場合、材料を除外し、最大150ngをビオチン捕捉ステップに取り入れた。
【0406】
vii.Illuminaシーケンシングのためのビオチンプルダウン及び調製
ビオチンプルダウンのための調製のために、5μLのストレプトアビジンC−1ビーズをTween洗浄緩衝液で洗浄した。ビーズを10μLの2Xビオチン結合緩衝液中に再懸濁し、試料に添加した。ビーズを室温で15分間、回転させながらインキュベートした。ビーズを磁石上で分離し、上澄みを破棄した。500μLのTween洗浄緩衝液を添加することによってビーズを2回洗浄し、55℃で2分間振とうさせながらインキュベートした。ビーズを100μLの1X(2Xから希釈した)TD緩衝液中で洗浄した。ビーズを25μLの2X TD緩衝液、各50ngのポストChIP DNAについて2.5μLのTn5、及び水中で50μLの量まで再懸濁した。
【0407】
Tn5は、4μLの最大量を有していた。例えば、25ngのDNA転位の場合、1.25μLのTn5を添加し、一方で125ngのDNA転位の場合、4μLのTn5を使用した。正しい量のTn5を使用して、適切なサイズ分布をもたらした。過剰転位された試料は、より短い断片を有し、より低いアラインメント率を呈していた(接合部は断片端部に近かった)。過小転位された試料は、大き過ぎてIlluminaシーケンサー上で適切にクラスター化することができない断片を有する。ライブラリーを5サイクルで増幅させ、ライブラリーの転位のレベルに関係なく、深くシーケンシングされ、適切なサイズ分布を達成するために十分な複雑性を有していた。
【0408】
ビーズを55℃で10分間、合間に振とうさせながらインキュベートした。試料を磁石上に置き、上澄みを取り除いた。50mM EDTAを試料に添加し、50℃で30分間インキュベートした。次いで、試料を迅速に磁石上に置き、上澄みを取り除いた。試料を50℃で3分間、50mM EDTAで2回洗浄し、次いで磁石から迅速に取り除いた。試料を55℃で2分間、Tween洗浄緩衝液中で2回洗浄し、次いで磁石から迅速に取り除いた。試料を10mM Tris−HCl(pH8.0)で洗浄した。
【0409】
viii.PCR及びPCR後サイズ選択
ビーズを50μLのPCRマスターミックス中に懸濁した(デュアルIndexアダプター#15055289を有するIlluminaからのNextera XT DNAライブラリー調製キット#15028212を使用する)。PCRを以下のプログラムを使用して実施した。2つの方法のうちの1つを使用して、サイクル数を推定した。(1)最初の5サイクル(72℃で5分間、98℃で1分間、98℃で15秒間、63℃で30秒間、72℃で1分間)を、通常のPCR上で実施し、次いで産生物をビーズから取り除く。次いで、0.25X SYBRグリーンを添加し、試料をqPCR上で実行する。試料を指数的増幅の開始時に取り出す。または(2)反応をPCR上で実行し、ポストChIP Qubitからの材料の量に基づいてサイクル数を推定する(50ng超は5サイクルで実行するが、およそ50ngは6サイクルで実行され、25ngは7サイクルで実行され、12.5ngは8サイクルで実行される等)。
【0410】
ライブラリーを磁石上に置き、新たなチューブに溶出した。ライブラリーをZymo Researchからのキットを使用して精製し、10μLの水に溶出した。AMPure XPビーズを用いて両側サイズ選択を実施した。PCR後、ライブラリーを磁石上に置き、新たなチューブに溶出した。次いで、25μLのAMPure XPビーズを添加し、上澄みを保持して700bp未満の断片を捕捉した。上澄みを新たなチューブに移し、15μLの新鮮なビーズを添加して、300bpより大きい断片を捕捉した。AMPure XPビーズから10μLの水中に最終溶出を実施した。Bioanalyzerを使用してライブラリーの質を検証した。
【0411】
ix.緩衝液
Hi−C溶解緩衝液(10mL)は、100μLの1M Tris−HCl(pH8.0)、20μLの5M NaCl、200μLの10% NP−40、200μLの50Xプロテアーゼ阻害剤、及び9.68mLの水を含有する。核溶解緩衝液(10mL)は、500μLの1M Tris−HCl(pH7.5)、200μLの0.5M EDTA、1mLの10% SDS、200μLの50Xプロテアーゼ阻害剤、及び8.3mLの水を含有する。ChIP希釈緩衝液(10mL)は、10μLの10% SDS、1.1mLの10% Triton X−100、24μLの500mM EDTA、167μLの1M Tris(pH7.5)、334μLの5M NaCl、及び8.365mLの水を含有する。低塩洗浄緩衝液(10mL)は、100μLの10% SDS、1mLの10% Triton X−100、40μLの0.5M EDTA、200μLの1M Tris−HCl(pH7.5)、300μLの5M NaCl、及び8.36mLの水を含有する。高塩洗浄緩衝液(10mL)は、100μLの10% SDS、1mLの10% Triton X−100、40μLの0.5M EDTA、200μLの1M Tris−HCl(pH7.5)、1mLの5M NaCl、及び7.66mLの水を含有する。LiCl洗浄緩衝液(10mL)は、100μLの1M Tris(pH7.5)、500μLの5M LiCl、1mLの10% NP−40、1mLの10% Na−デオキシコール酸塩、20μLの0.5M EDTA、及び7.38mLの水を含有する。
【0412】
DNA溶出緩衝液(5mL)は、250μLの新鮮な1M NaHCO
3、500μLの10% SDS、及び4.25mLの水を含有する。Tween洗浄緩衝液(50mL)は、250μLの1M Tris−HCl(pH7.5)、50μLの0.5M EDTA、10mLの5M NaCl、250μLの10% Tween−20、及び39.45mLの水を含有する。2Xビオチン結合緩衝液(10mL)は、100μLの1M Tris−HCl(pH7.5)、20μLの0.5M、4mLの5M NaCl、及び5.88mLの水を含有する。2X TD緩衝液(1mL)は、20μLの1M Tris−HCl(pH7.5)、10μLの1M MgCl
2、200μLの100%ジメチルホルムアミド、及び770μLの水を含有する。
【0413】
P.肝細胞への投与のための薬物希釈
肝細胞の化合物処理の前に、DMSO中0.1mMのストック薬物を0.9mLのDMSOと混合することによって、DMSO中の100mMストック薬物を10mMに希釈して、最終量を1.0mLにした。5μLの希釈薬物を各ウェルに添加し、薬物のウェルあたり0.5mLの培地を添加した。各薬物を三重に分析した。5μLの薬物を45μLの培地に添加し、50μLを細胞上の450μLの培地に添加することによって、1000xまでの希釈を実施した。
【0414】
生物活性化合物もまた、肝細胞に投与した。1mLのDMSO中の生物活性化合物の1000xストックを得るために、0.1mLの10,000Xストックを0.9mLのDMSOと複合した。
【0415】
Q.siRNAノックダウン
一次ヒト肝細胞を、24ウェルフォーマット(ウェルあたり1μL)でRNAiMAX試薬(ThermoFisherカタログ番号13778030)を使用し、6pmol siRNAを有するsiRNAで逆トランスフェクトした。翌朝、培地を取り除き、修飾された維持培地でさらに24時間置き換えた。処理全体は48時間続き、この時点で培地を取り除き、RNA抽出のためにRLT緩衝液(Qiagen RNeasy 96 QIAcube HTキットカタログ番号74171)と置き換えた。細胞をqRT−PCR分析のために処理し、次いで標的mRNAのレベルを測定した。
【0416】
siRNAをDharmaconから取得し、全て関心対象の特定の遺伝子内で別個の部位を標的とするように設計された4つのsiRNA二重鎖のプールである(「SMARTpool」として知られる)。以下のsiRNAを使用した。D−001206−13−05(非標的)、M−003145−02−0005(JAK1)、M−003146−02−0005(JAK2)、M−003176−03−0005(SYK)、M−003008−03−0005(mTOR)、M−003162−04−0005(PDGFRA)、M−012723−01−0005(SMAD1)、M−003561−01−0005(SMAD2)、M−020067−00−0005(SMAD3)、M−003902−01−0005(SMAD4)、M−015791−00−0005(SMAD5)、及びM−016192−02−0005(SMAD9)、M−004924−02−0005(ACVR1)、及びM−003520−01−0005(NF−κB)。
【0417】
R.マウス研究
6マウス(C57BL/6J株)の群(雄3及び雌3)に、候補化合物を1日1回4連続日にわたって経口強制栄養を介して投与した。4日目の最後の投与から4時間後にマウスを屠殺した。肝臓、脾臓、腎臓、脂肪、血漿を含む臓器を収集した。マウス肝臓組織を液体窒素中で粉砕し、小さいマイクロチューブに分注した。TRIzol(Invitrogenカタログ番号15596026)をチューブに添加して、組織試料からの細胞溶解を促進した。次いで、崩壊した組織を含有するTRIzol溶液を遠心分離し、上澄み相を収集した。Qiagen RNA抽出キット(Qiagenカタログ番号74182)を使用して、全RNAを上澄みから抽出し、qRT−PCRを使用して標的mRNAレベルを分析した。
【0418】
実施例2.刺激された肝細胞についてのRNA−seq研究
PNPLA3を調整する小分子を特定するために、一次ヒト肝細胞を単一培養として調製し、少なくとも1つの小分子化合物を細胞に適用した。
【0419】
RNA−seqを実施して、肝細胞におけるPNPLA3発現に対する化合物の効果を決定した。摂動されていた細胞系中の発現レベルを非摂動系中の発現レベルで除算することによって、変化倍率を計算した。p値≦0.05を有する発現の変化を有意であるとみなした。
【0420】
肝細胞のシグナル伝達中心を摂動するために使用される化合物は、表1に列挙される少なくとも1つの化合物を含む。表中で、化合物はそれらのID、標的、経路、及び薬学的作用とともに列挙される。摂動シグナルとして選択された大部分の化合物は、当該技術分野において少なくとも1つの正準細胞経路を調整することが知られている。いくつかの化合物を、有効性の欠失に起因して第III相臨床評価において失格した化合物から選択した。
【0421】
(表1)RNA−seq中で使用される化合物
【0422】
実施例3.PNPLA3発現を調整する化合物の特定
RNA−seqデータの分析は、PNPLA3の発現の有意な変化を引き起こした23化合物を明らかにした(p<0.01)。これらの化合物の中で、9化合物は、−0.5の最小log2変化倍率を有するPNPLA3発現の低減をもたらすことが観察された。結果を表2に提示する。
【0423】
(表2)化合物によって調整されるPNPLA3発現
【0424】
2つの特定された化合物であるパクリチニブ及びモメロチニブは、JAK/STAT経路の既知の阻害剤である。パクリチニブは、主にヤヌスキナーゼ2(JAK2)及びFms様チロシンキナーゼ3(FLT3)を阻害する。モメロチニブは、ヤヌスキナーゼJAK1及びJAK2を特異的に阻害するATP競合剤である。この発見は、PNPLA3発現が、JAK/STAT経路によって調節され得ることを示唆している。JAK/STAT経路におけるシグナル伝達分子、特にJAK1及びJAK2を阻害することは、潜在的にPNPLA3を下方調節することができる。
【0425】
これらの結果もまた、PNPLA3発現が他のシグナル伝達経路に関連し得ることを示唆している。R788(フォスタマチニブ、二ナトリウム六水和物)は、Syk依存的シグナル伝達を選択的に阻害する、脾臓チロシンキナーゼ(SYk)の阻害剤である。BMS−986094は、C型肝炎ウイルスからのヌクレオチドポリメラーゼ非構造的タンパク質5B(NS5B)を阻害するグアノシンヌクレオチド類似体である。ピフィスリン−μは、抗アポトーシスタンパク質Bcl−2及びBcl−XLに対するその親和性を低減することによって、ミトコンドリアへのp53結合を阻害し、それによってp53依存的アポトーシスを阻害する。LY294002は、多くのタンパク質の強力な阻害剤及び強力なホスホイノシチド3−キナーゼ(PI3K)阻害剤である。BMS−754807は、インスリン様増殖因子1受容体(IGF−1R)/インスリン受容体ファミリーキナーゼ(InsR)の強力かつ可逆的な阻害剤である。アムバチニブは、c−Kit、血小板由来増殖因子受容体α(PDGFRα)及びFLT3の多標的阻害剤である。WYE−125132(WYE−132)は、高度に強力なATP競合哺乳類ラパマイシン標的(mTOR)阻害剤である。XMU−MP−1は、Hippoシグナル伝達経路に関与するキナーゼである、哺乳類無菌20様キナーゼ1及び2(MST1及びMST2)の阻害剤である。これらの標的及び/または関連経路を標的とすることは、肝細胞におけるPNPLA3発現を低減するために潜在的に有効であり得る。
【0426】
実施例4.シグナル伝達中心のゲノム位置及び組成物を決定する
多層アプローチは、シグナル伝達中心の位置または「フットプリント」を特定するために本明細書で使用された。遺伝子及びエンハンサーの直線上の近接は、常にシグナル伝達中心の3D立体配座を決定するために有益であるとは限らない。
【0427】
ChIP−seqを使用して、シグナル伝達中心のゲノム位置及び組成物を決定した。実施例1に従い、ChIP−seq実験及び分析を実施した。転写因子、シグナル伝達タンパク質、及びクロマチン修飾またはクロマチン関連タンパク質を含む67標的に特異的な抗体を、ChIP−seq研究に使用した。これらの抗体標的を表3に示す。シグナル伝達タンパク質カラムにおいて、関連正準経路は「−」の後に含まれる。
【0428】
(表3)一次ヒト肝細胞のChIP−seq標的
【0429】
一次ヒト肝細胞において、PNPLA3遺伝子を含有する絶縁近傍は、位置43,782,676〜45,023,137における染色体22上にあると特定され、およそ1,240kbのサイズを有していた。12シグナル伝達中心は、絶縁近傍内で見出された。絶縁近傍内で見出されたクロマチンマークまたはクロマチン関連タンパク質、転写因子及びシグナル伝達タンパク質を表4に提示する。
【0430】
(表4)PNPLA3を含有する絶縁近傍
【0431】
ChIP−seqプロファイルは、PNPLA3を含有する絶縁近傍が、JAK/STATシグナル伝達、TGF−β/SMADシグナル伝達、BMPシグナル伝達、核受容体シグナル伝達、VDRシグナル伝達、NF−κBシグナル伝達、MAPKシグナル伝達、及び/またはHippoシグナル伝達経路によって調節され得ることを示唆している。STAT1及びSTAT3は(両方がJAK/STAT経路に関連する)、近傍内でシグナル伝達中心に結合することが観察され、これはJAK/STAT経路を化合物で崩壊させることが、PNPLA3発現を変更したという発見と一致する。さらに、絶縁近傍はまた、mTOR経路によって調節される転写因子であるNF−κBで富化される。これらの経路のうちの1つ以上を標的化することは、PNPLA3発現を下方調節する際に有効であり得る。
【0432】
実施例5.肝細胞中のゲノムアーキテクチャを決定する
HI−ChIPを実施例1に記載されるように実施して、ゲノムアーキテクチャを解読した。場合によっては、SMC1構造タンパク質のChIA−PETを同じ目的で使用した。これらの技法は、絶縁近傍及び遺伝子ループなどの3D構造を形成するために相互作用するクロマチンの部分を特定する。
【0433】
PNPLA3遺伝子を含む絶縁近傍は、位置43,782,676〜45,023,137における染色体22上にあると特定され、およそ1,240kbのサイズを有していた。絶縁近傍は、PNPLA3及び7つの他の遺伝子を含有し、4つの遺伝子(すなわち、MPPED1、EFCAB6、SULT4A1、及びPNPLA5)はPNPLA3の上流にあり、3つの遺伝子(すなわち、SAMM50、PARVB、及びPARVG)はPNPLA3の下流にある。
【0434】
実施例6.ヒト肝細胞中の化合物及び経路を検証する
初期RNA−seqスクリーニング及びChIP−seqプロファイルは、PNPLA3発現を下方調節するために利用され得る化合物及び経路を特定した。検証研究の目的は、重要な経路から特定された化合物を試験し、他の潜在的ヒットを特定するために化合物フランチャイズを拡大することであった。候補化合物を、ヒト肝細胞中でqRT−PCRを用いた検証に供した。qRT−PCRを、候補化合物で治療した第2のドナーからの一次ヒト肝細胞の試料上で実施した。化合物を、0.01μM〜50μMの範囲の濃度で試験し、大部分は10μMで試験した。qRT−PCRを介して観察されたPNPLA3発現の変化倍率は、実施例1に記載されるように分析した。PNPLA3発現のロバストな低減を引き起こした化合物を、さらなる特性化のために選択した。
【0435】
初期RNA−seqスクリーニング及びChIP−seqデータは、JAK/STAT経路がPNPLA3発現を制御することにおいて重要な役割を果たし得ることを示唆した。RNA−seqスクリーニングから特定された2つのJAK阻害剤であるモメロチニブ及びパクリチニブ、ならびにJAK阻害剤の追加のパネルをヒト肝細胞中で試験した。予想されるように、モメロチニブ及びパクリチニブの両方が、ヒト肝細胞においてPNPLA3発現の実質的な減少を誘導した。2つの他のJAK阻害剤であるオクラシチニブ及びAZD1480もまた、PNPLA3の効率的な下方調節を示した。これは、JAK阻害剤がPNPLA3発現を低減することを確認する。10μMの選択されたJAK阻害剤で治療されたヒト肝細胞からのqRT−PCRの結果を表5に示す。各値は、3つの複製±標準偏差の平均である。
【0436】
(表5)ヒト肝細胞中のJAK阻害剤
【0437】
ヒト肝細胞におけるPNPLA3発現は、モメロチニブに対する用量依存的応答を呈し(
図6を参照)、薬物特異的作用を示す。さらに、任意の試験した濃度(0.01〜50μM)のモメロチニブでは細胞毒性が観察されなかった。
【0438】
mTOR阻害剤であるWYE−125132(WYE−132)は、初期RNA−seq実験において特定された。加えて、モメロチニブはまた、mTOR経路に連結されているTANK結合キナーゼ1(TBK1)を含むキナーゼのスペクトルを阻害することが知られている。したがって、いくつかのmTOR阻害剤をヒト肝細胞中で試験した。いくつかのmTOR阻害剤は、ヒト肝細胞におけるPNPLA3発現の阻害を示し、PNPLA3遺伝子発現制御におけるmTORシグナル伝達の役割を再確認した。1μMのWYE−125132または10μMの選択されたmTOR経路阻害剤で治療されたヒト肝細胞からのqRT−PCRの結果を表6に提示する。各値は、3つの複製±標準偏差の平均である。
【0439】
(表6)ヒト肝細胞中のmTOR阻害剤
【0440】
初期RNA−seqスクリーニングはまた、Syk阻害剤であるR788(フォスタマチニブ、二ナトリウム六水和物)によるPNPLA3発現の下方調節を実証した。したがって、R788及びSyk経路阻害剤の追加のパネルをヒト肝細胞中で試験した。10μMで、R788及び6つの他のSyk経路阻害剤は、ヒト肝細胞中でPNPLA3発現を約22%から55%に低減した。これは、Syk経路を標的とすることもまた、PNPLA3を効果的に下方調節し得ることを示す。10μMの選択されたSyk経路阻害剤で治療されたヒト肝細胞からのqRT−PCRの結果を表7に提示する。相対PNPLA3 mRNAレベルをB2Mに対して正規化した。各値は、3つの複製±標準偏差の平均である。
【0441】
(表7)ヒト肝細胞中のSyk阻害剤
【0442】
実施例7.siRNAを介して関心対象の経路を調べる
この実験の目的は、PNPLA3発現を制御している特定されたシグナル伝達経路(例えば、JAK/STAT、Syk、mTOR及びPDGFR)の相対的な役割を確認することであった。各経路の末端構成成分を、siRNA媒介性ノックダウンを介して標的化した。一次ヒト肝細胞を、以下のmRNAのうちの1つ以上を標的とする10nMのsiRNAで逆トランスフェクトした:JAK1、JAK2、SYK、mTOR及び/またはPDGFRA。48時間の治療後、標的mRNAのレベルをqRT−PCRを介して測定し、非標的siRNA対照と比較して、ノウンダウン効率を評価した(減少パーセントとして報告した)。次いで、PNPLA3 mRNAレベルをqRT−PCRを介してアッセイし、2つの内部対照であるGAPDH及びB2Mの幾何平均に対して正規化した。
【0443】
siRNA実験のノックダウン効率は、50%〜95%の範囲であった。ノックダウンはまた、高度に特異的であった。JAK1、JAK2、SYK、mTORまたはPDGFRAを各々ノックダウンすることは、PNPLA3 mRNAレベルの減少につながり、以前の観察と一致していた。しかしながら、このデータはまた、単一キナーゼの阻害が、PNPLA3を減少させるのに十分でないことを示唆する。これは、PNPLA3発現が、少なくともJAK/STAT、Syk、mTOR及び/またはPDGFR経路からの機能を含むシグナル伝達ネットワークを通して良好に調節される。siRNA実験の結果を表8に提示する。
【0444】
(表8)siRNAを介したシグナル伝達タンパク質のノックダウン
【0445】
実施例8.マウス肝細胞における化合物検証
選択された化合物をマウス肝細胞中で試験して、それらがPNPLA3を下方調節する能力を確認した。qRT−PCRを、候補化合物で治療したマウス肝細胞の試料上で実施した。化合物を、0.01μM〜50μMの範囲の濃度で試験した。qRT−PCRを介して観察されたPNPLA3発現の変化倍率は、実施例1に記載されるように分析した。PNPLA3レベルを、ハウスキーピング遺伝子ACTBのレベルに対して正規化した。PNPLA3発現のロバストな低減を引き起こした化合物を、さらなる特性化のために選択した。
【0446】
PNPLA3発現上のモメロチニブ及びパクリチニブの効果を、マウス肝細胞において検証した。モメロチニブ及びパクリチニブの両方は、マウス肝細胞においてPNPLA3 mRNAレベルの著しい低減を誘導し、それぞれの変化倍率は対照に対して10%及び13%であった。わずかな細胞毒性が10μMでのパクリチニブで観察されたが、モメロチニブは、マウス肝細胞によって10μMで十分に耐容された。
【0447】
mTOR経路阻害剤によるPNPLA3発現の下方調節もまた、マウス肝細胞において観察され、ヒト一次肝細胞におけるデータと一致していた。選択されたmTOR経路阻害剤で治療されたヒト肝細胞からのqRT−PCRの結果を表9に提示する。表中、10μMで試験したトリン1を除いて、全ての化合物を1μMで試験した。
【0448】
(表9)マウス肝細胞中のmTOR阻害剤
【0449】
実施例9.肝星細胞における化合物試験
肝星細胞(HSC、類洞周囲細胞またはIto細胞とも呼ばれる)は、内皮細胞に巻き付く収縮細胞である。正常な肝臓において、それらは静止状態で存在し、肝臓の約10%を占める。肝臓が損傷されると、それらは活性化状態に変化し、関線維症において重要な役割を果たす。PNPLA3は、星細胞ならびに肝細胞中で発現される。新興の証拠は、PNPLA3が、HSC活性化に関与し、その遺伝子変異体I148Mが、増加した炎症促進サイトカイン分泌などの線維化促進特徴を増強することを示唆している。したがって、候補化合物を、星細胞におけるPNPLA3発現に対するそれらの効果について試験した。PNPLA3の他に、Col1a1は、線維症において重要な役割を果たし、Col1a1レベルの減少が、線維症を改善することが予測されるため、コラーゲン1a1(Col1a1、COL1A1遺伝子によってエンコードされる)発現もまた、星細胞において評価した。COL1A1遺伝子は、典型的に、肝細胞中で発現されないが、HSC中ではるかに高いレベルで発現される。PNPLA3の低減は、Col1a1レベルを含むHSC中の線維性表現型に影響を及ぼすことが報告されている。したがって、PNPLA3及びCol1a1の両方のレベルを減少させることができる化合物は、NASHを治療するための追加の利益をもたらし得る。
【0450】
候補化合物を、それらがPNPLA3及びCOL1A1を調整する能力について星細胞中で試験した。星細胞を、0.1μM〜100μMの範囲の化合物の連続希釈で処理した。星細胞中のPNPLA3(またはCOL1A1)mRNAレベルの変化を、qRT−PCRで分析した。PNPLA3及び/またはCOL1A1を下方調節することができる化合物が特定されると、同じ経路で作用することが知られている追加の化合物もまた試験した。形質転換増殖因子β(TGF−β)は、インビトロでCOL1A1を含む線維性遺伝子を誘導することが知られているため、正の対照として選択した(すなわち、COL1A1発現を正に調節する)。
【0451】
モメロチニブは、星細胞中のPNPLA3 mRNAレベルを用量依存的に低減し(
図7を参照)、ヒト及びマウス幹細胞における以前の観察と一致していた。しかしながら、試験した濃度(0.01μM、0.1μM、1μM及び10μM)において、モメロチニブは、COL1A1発現を変更しなかった。
【0452】
奨励的に、mTOR阻害剤WYE−125132(WYE−132)は、HSC中のPNPLA3及びCOL1A1の両方を用量依存的に減少させた(表10を参照)。次いで、エベロリムス、トリン1、PP242、CZ415、INK−128、及びAZD−8055を含む追加のmTOR化合物を試験した。mTOR化合物の連続希釈は、HSCにおいてPNPLA3及びCOL1A1遺伝子発現に対してロバストな効果を有していた。全ての試験したmTOR阻害剤は、PNPLA3レベルを減少させ、全ての試験したmTOR阻害剤は、エベロリムスを除いてCOL1A1レベルを減少させた。HSC中のmTOR化合物治療の結果を表10に提示する。相対定量化(RQ)、RQ最小、及びRQ最大の値として表される変化倍率は、実施例1に記載されるように計算した。これらの結果は、4つの技術的複製から得られた。
【0453】
(表10)肝星細胞中のmTOR阻害剤
【0454】
驚くべきことに、HSCにおける化合物スクリーニングはまた、2つの追加の化合物であるBIO及びAZD2858を特定し、これらはPNPLA3及びCOL1A1の両方を用量依存的に中度に減少させた。BIO及びAZD2858は、グリコーゲンシンターゼキナーゼ3(GSK3)の阻害剤である。HSC中のGSK3阻害剤の結果を表11に提示する。相対定量化(RQ)、RQ最小、及びRQ最大の値として表される変化倍率は、実施例1に記載されるように計算した。これらの結果は、4つの技術的複製から得られた。
【0455】
(表11)肝星細胞中のGSK3阻害剤
【0456】
実施例10.PNPLA3突然変異体細胞株HepG2における化合物試験
候補化合物をPNPLA3突然変異体細胞株HepG2において評価して、突然変異体PNPLA3発現に対するそれらの効果を試験した。HepG2細胞は、PNPLA3中のI148M突然変異を有する。HepG2細胞におけるPNPLA3発現の変化を、qRT−PCRで分析した。PNPLA3 mRNAレベルを、2つの内部対照であるGUSB及びB2Mの幾何平均に対して正規化した。
【0457】
モメロチニブは、HepG2細胞中のPNPLA3と一致する下方調節を示した。10μMにおいて、モメロチニブ治療は、DMSO対照と比較して、PNPLA3 mRNAレベルのおよそ85%低下を引き起こした。効果は、他の試験した細胞からの結果に対応している。さらに、HepG2細胞中の突然変異体PNPLA3 mRNAレベルは、用量依存的にモメロチニブに応答した(
図8を参照)。これらの実験は、モメロチニブが、突然変異体PNPLA3発現も同様に減少させ得ることを実証した。
【0458】
実施例11.モメロチニブ作用機構研究
モメロチニブは一貫して、複数の実験においてPNPLA3の下方調節を呈したため、その作用機序をさらに調べた。siRNAノックダウン実験(実施例7を参照)は、単独または共同にかかわらず、JAK1またはJAK2をノックダウンすることが、PNPLA3に対するモメロチニブの効果を完全に要約できなかったことを実証し、モメロチニブが追加の経路を通してその活性を引き出し得るという仮説を促した。実際に、モメロチニブは、JAK1及びJAK2に加えて、マイクロモル以下の親和性を有する一連のキナーゼを阻害することが知られている(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Tyner JW et al.,Blood,2010,115(25),5232−5240)。モメロチニブ標的の一覧の中で、TBK1及びACVR1(アクチビンA受容体、I型)が特に関心対象であった。NF−κB活性化キナーゼとしても知られるTBK1は、ある特定の増殖因子に応答してNF−κB活性化を媒介し得る。ACVR1は、TGF−βファミリー下位群の受容体のメンバーであり、リガンド結合時にSMAD転写調節因子を活性化し得る。これは、PNPLA3の絶縁近傍が、NF−κB、SMAD2/3及びSMAD4を含むいくつかのシグナル伝達タンパク質によって結合されることを示したChIP−seqデータ(実施例4に記載される)と一致する。これはさらに、アクチビンならびにBMP2及びGDF2などの骨形成タンパク質(BMP)は、RNA−seq研究においてPNPLA3及びPNPLA5の最良の上方調節因子であったという観察を支持する。したがって、NF−κB経路及びACVR1/SMAD経路におけるシグナル伝達タンパク質を、siRNAを介して標的化して、PNPLA3に対するそれらの効果を試験した。追加として、PNPLA5は、PNPLA3と同じ絶縁近傍内に位置し、PNPLA3として化合物治療に対して同様に応答することが観察されたため、PNPLA5発現を第2の読み出し値として分析に含めた。
【0459】
一次ヒト肝細胞を、以下の6つのSMADタンパク質の各々に特異的な10nMのsiRNAで逆トランスフェクトした:SMAD1、SMAD2、SMAD3、SMAD4、SMAD5、及びSMAD9。ノックダウン治療を、BMP2(220nM)またはTGF−β(100ng/mL)のいずれかの存在下で実施して、SMAD活性化を刺激した。72時間の治療後、標的mRNAのレベルをノックダウン効率について評価し、PNPLA3及びPNPLA5発現に対する各ノックダウンの効果を調べた。各標的mRNAは、siRNAによって効率的にノックダウンされた。SMADタンパク質ノックダウン実験の結果を表12に提示する。データは、PNPLA3及びPNPLA5発現が、SMAD3またはSMAD4ノックダウンによって低減され得ることを示し、ChIP−seqデータと一致していた。
【0460】
(表12)siRNAを介したSMADタンパク質のノックダウン
【0461】
BMP2またはTGF−β刺激の非存在下、より長いsiRNA治療時間(36時間)にわたって実験を繰り返した。追加の標的であるACVR1及びNF−κBを、siRNA媒介性ノックダウンを介して標的化した。相対PNPLA3またはPNPLA5 mRNAレベルをGUSBに対して正規化した。結果を表13に提示する。
【0462】
(表13)siRNAを介したSMADタンパク質、ACVR1及びNF−κBのノックダウン
【0463】
上記の実験は、ACVR1、SMAD3、SMAD4、及びNF−κBが、PNPLA3発現の調節に寄与することを確認した。モメロチニブは、JAK/STAT阻害に加えて、TGF−β/SMAD及びNF−κB経路を阻害することによって作用して、PNPLA3を下方調節する可能性がある。
【0464】
実施例12.マウスにおけるインビボ化合物試験
エクスビボで検証研究において有効な下方調節を示した化合物を、マウスにおけるインビボ試験のために選択した。候補化合物を適切な用量で1日1回、雄マウス3匹及び雌マウス3匹からなる野生型マウスの群に投与した。マウスを4日目に屠殺し、肝臓組織を収集して、PNPLA3(またはCOL1A1)発現についてqRT−PCRにより分析した。PNPLA3発現は、雄よりも雌においてより高くより可変であることが観察されたため、データを各性別について別個に分析した。COL1A1を分析した場合、星細胞特異的遺伝子GFAPをハウスキーピング対照として使用した。
【0465】
モメロチニブを50mg/kgで投与し、モメロチニブの治療は、マウス肝臓において著しくPNPLA3を低減した。異なるベースラインPNPLA3レベルにかかわらず、雄マウス及び雌マウスの両方が、モメロチニブ治療に応答した(
図9を参照)。動物の体重、臓器重量、またはアルブミン、ASGR1、及びHAMP1などの多くの他の肝臓遺伝子において変化は観察されなかった。
【0466】
WYE−125132(WYE−132)を50mg/kgで投与し、WYE−125132の治療は、雌マウスにおいてより優勢にマウス肝臓中のCOL1A1発現(
図10を参照)を低減した。これは、WYE−125132がHSC中のCOL1A1 mRNAを減少させたという観察と一致する。COL1A1発現レベルの低減は、インビトロとインビボ動物との間の保存された機構を示す。
【0467】
実施例13.患者細胞における化合物試験
患者由来の誘導多能性幹(iPS)肝芽細胞において候補化合物を評価して、それらの有効性を確認する。選択された患者は、PNPLA3遺伝子中にI148M突然変異を有する。肝芽細胞におけるPNPLA3発現の変化を、qRT−PCRで分析する。結果を使用して、経路が患者細胞において同様に機能的であるか、また化合物が同じ影響を有するかを確認する。
【0468】
実施例14.マウスモデルにおける化合物試験
候補化合物を、PNPLA3媒介性肝疾患(例えば、NASH)のマウスモデルにおいてインビボ活性及び安全性について評価する。
【0469】
等価物及び範囲
当業者であれば、慣用的な実験のみを使用して、本明細書に記載される本発明による特定の実施形態に対する多くの等価物を認識するか、または確認し得るであろう。本発明の範囲は上記の説明に限定されるものではなく、むしろ添付の特許請求の範囲に記載される。
【0470】
特許請求の範囲において、「a」、「an」及び「the」などの冠詞は、特に逆が示されない限り、またはさもなければ文脈から明らかである場合を除き、1つ以上を意味し得る。群の1つ以上のメンバー間に「または」を含む特許請求の範囲または説明は、特に逆が示されない限り、またはさもなければ文脈から明らかである場合を除き、群のメンバーのうちの1つ、2つ以上、または全てが所与の製品またはプロセスに存在する、それに採用される、ないしは別の方法でそれに関連する場合に満たされると考えられる。本発明は、群のうちの正確に1つのメンバーが、所与の製品またはプロセスに存在する、それに採用される、ないしは別の方法でそれに関連する実施形態を含む。本発明は、群のメンバーのうちの2つ以上、または全体が所与の製品またはプロセスに存在する、それに採用される、ないしは別の方法でそれに関連する実施形態を含む。
【0471】
「含む(comprising)」という用語は、制約がないことが意図され、追加の要素またはステップの包含を可能にするが、その必要がないことにも留意する。「含む(comprising)」という用語が本明細書で使用される場合、したがって「からなる(consisting of)」という用語もまた包含され、開示される。
【0472】
範囲が与えられている場合、エンドポイントは含まれる。さらに、特に記載されない限り、またはさもなければ文脈及び当業者の理解から明らかである場合を除き、範囲として表される値は、文脈が明確に示さない限り、その範囲の下限の単位の10分の1まで、本発明の異なる実施形態の指定された範囲内の任意の特定の値または下位範囲をとることができることを理解する。
【0473】
加えて、先行技術内に入る本発明の任意の特定の実施形態は、請求項のいずれか1つ以上から明示的に除外され得ることを理解する。そのような実施形態は、当業者に既知であるとみなされるため、それらは、除外が本明細書に明示的に記載されていない場合でも除外され得る。本発明の組成物のいずれの特定の実施形態(例えば、任意の抗生物質、治療成分または活性成分;任意の産生方法;任意の使用方法など)も、先行技術の存在に関連するかどうかに関わらず、あらゆる理由により、任意の1つ以上の特許請求の範囲から除外することができる。
【0474】
使用されている単語は、限定ではなく説明の単語であり、添付の特許請求の範囲の権限内で、そのより広い態様において本発明の真の範囲及び趣旨から逸脱することなく変更が行われてもよいことを理解されたい。
【0475】
本発明は、いくつかの記載される実施形態に関してある程度の長さ及びある程度の特定性で説明されてきたが、任意のそのような特定事項または実施形態または任意の特定の実施形態に限定されるべきであることを意図しないが、添付の特許請求の範囲を参照して、先行技術を考慮してそのような特許請求の範囲の最も広義の可能な解釈を提供するもの、したがって、本発明の意図される範囲を有効に包含するものとして解釈される。
阻害剤を含み得る。そのような化合物は、BIO、AZD2858、1−アザケンパウロン、AR−A014418、AZD1080、ビキニン、BIO−アセトキシム、CHIR−98014、CHIR−99021(CT99021)、IM−12、インジルビン、LY2090314、SB216763、SB415286、TDZD−8、チデグルシブ、TWS119、またはそれらの誘導体もしくは類似体のうちの少なくとも1つを含み得る。
阻害剤を含み得る。そのような化合物は、BIO、AZD2858、1−アザケンパウロン、AR−A014418、AZD1080、ビキニン、BIO−アセトキシム、CHIR−98014、CHIR−99021(CT99021)、IM−12、インジルビン、LY2090314、SB216763、SB415286、TDZD−8、チデグルシブ、TWS119、またはそれらの誘導体もしくは類似体のうちの少なくとも1つを含み得る。
この実験の目的は、PNPLA3発現を制御している特定されたシグナル伝達経路(例えば、JAK/STAT、Syk、mTOR及びPDGFR)の相対的な役割を確認することであった。各経路の末端構成成分を、siRNA媒介性ノックダウンを介して標的化した。一次ヒト肝細胞を、以下のmRNAのうちの1つ以上を標的とする10nMのsiRNAで逆トランスフェクトした:JAK1、JAK2、SYK、mTOR及び/またはPDGFRA。48時間の治療後、標的mRNAのレベルをqRT−PCRを介して測定し、非標的siRNA対照と比較して、
ダウン効率を評価した(減少パーセントとして報告した)。次いで、PNPLA3 mRNAレベルをqRT−PCRを介してアッセイし、2つの内部対照であるGAPDH及びB2Mの幾何平均に対して正規化した。
本明細書では、PNPLA3遺伝子を含む絶縁近傍の上流もしくは下流近傍遺伝子またはそのRSRのうちの1つ以上を変更する1種以上の化合物を細胞に導入することによって、細胞におけるPNPLA3遺伝子の発現を調整する方法がさらに提供される。絶縁近傍は、43,782,676〜45,023,137位における染色体22上の領域を含み得る。いくつかの実施形態では、1つ以上の上流近傍遺伝子は、MPPED1、EFCAB6、SULT4A1、及びPNPLA5のうちの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の下流近傍遺伝子は、SAMM50、PARVB、及びPARVGのうちの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、細胞は、肝細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、肝星細胞である。