特表2020-531245(P2020-531245A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-531245(P2020-531245A)
(43)【公表日】2020年11月5日
(54)【発明の名称】農業用および飲料用の塩水の処理
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/44 20060101AFI20201009BHJP
   C02F 1/72 20060101ALI20201009BHJP
   C02F 1/461 20060101ALI20201009BHJP
   C02F 1/469 20060101ALI20201009BHJP
   B01D 61/02 20060101ALI20201009BHJP
   B01D 61/14 20060101ALI20201009BHJP
   B01D 61/58 20060101ALI20201009BHJP
   B01D 61/46 20060101ALI20201009BHJP
   B01D 61/44 20060101ALI20201009BHJP
   C02F 1/42 20060101ALI20201009BHJP
   C02F 1/20 20060101ALI20201009BHJP
   C02F 9/08 20060101ALI20201009BHJP
【FI】
   C02F1/44 G
   C02F1/72 Z
   C02F1/461 Z
   C02F1/469
   B01D61/02 500
   B01D61/14 500
   B01D61/58
   B01D61/46 500
   B01D61/44 500
   C02F1/42 A
   C02F1/20 A
   C02F9/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2020-503698(P2020-503698)
(86)(22)【出願日】2018年8月20日
(85)【翻訳文提出日】2020年3月4日
(86)【国際出願番号】US2018047034
(87)【国際公開番号】WO2019040350
(87)【国際公開日】20190228
(31)【優先権主張番号】62/547,971
(32)【優先日】2017年8月21日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】513180152
【氏名又は名称】エヴォクア ウォーター テクノロジーズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Evoqua Water Technologies LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100179903
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】ゲイリー シー ガンジ
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック シー ウィルキンス
【テーマコード(参考)】
4D006
4D025
4D037
4D050
4D061
【Fターム(参考)】
4D006GA02
4D006GA07
4D006GA17
4D006JA58Z
4D006JA71
4D006KA01
4D006KA52
4D006KA53
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4D006KB15
4D006KB17
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4D025DA05
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4D061EB17
4D061EB19
4D061FA03
4D061FA08
4D061FA09
4D061FA11
4D061FA13
4D061FA16
(57)【要約】
灌漑用水として使用するのに適した第1の処理水と、飲用水として使用するのに適した第2の処理水とを、汽水および塩水の一方から生成するように構成された、電気駆動式および圧力駆動式の分離装置を含む水処理システムおよびその運転方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩水から飲用水および灌漑用水を生成する水処理システムであって、
1つ以上の1価選択膜を含み、500mg/Lから10,000mg/Lの溶解塩濃度を有する被処理水の供給源に流体的に接続可能な入口、希釈液出口、および濃縮液出口を有する電気透析装置と、
前記電気透析装置の下流に位置し、前記電気透析装置の前記希釈液出口に流体的に接続可能な入口、透過液出口、および保持液出口を有する低圧ナノ濾過装置と、
前記ナノ濾過装置の前記保持液出口および前記電気透析装置の前記希釈液出口に流体的に接続可能な灌漑分配システムと、
前記灌漑分配システムに向けられた前記電気透析装置からの希釈液の量および前記ナノ濾過装置に向けられた前記電気透析装置からの希釈液の量を変化させるように構成された分流システムと、
を備える、水処理システム。
【請求項2】
前記電気透析システムの希釈液および前記ナノ濾過システムの透過液の一方または両方は、過剰ホウ素を除去するために後処理される、請求項1に記載の水処理システム。
【請求項3】
前記被処理水の供給源と前記電気透析装置の前記入口との間で流体連通する前濾過システムをさらに備える、請求項1に記載の水処理システム。
【請求項4】
前記前濾過システムは、マイクロフィルタ、セトラー、スクリーンフィルタ、マイクロサンドフィルタ、および粗大粒子フィルタのうちの少なくとも1つを含む、請求項3に記載の水処理システム。
【請求項5】
前記前濾過システムの前に、pH調整システムおよびエアストリッピングシステムがある、請求項3に記載の水処理システム。
【請求項6】
前記ナノ濾過装置の前記透過液出口を、前記電気透析装置の濃縮区画の入口または電極流区画の入口の少なくとも1つに流体接続する導管をさらに備える、請求項1に記載の水処理システム。
【請求項7】
前記電気透析装置の前記濃縮液出口は、塩素ガス、次亜塩素酸イオン、水酸化ナトリウム、硫酸または塩酸の1つ以上を生成するための電気化学的生成システムの入口に流体接続可能である、請求項1に記載の水処理システム。
【請求項8】
前記電気化学的生成システムが、前記被処理水にpH調整剤を導入するように構成されたpH調整剤供給源に流体接続可能である、請求項7に記載の水処理システム。
【請求項9】
前記電気化学的生成システムへの前記入口の上流に、軟水化装置をさらに備える、請求項7または8に記載の水処理システム。
【請求項10】
前記ナノ濾過装置の透過液を処理して、pH上方調整、pH下方調整、塩素ガスの添加または次亜塩素酸イオンの添加の少なくとも1つを達成するためのシステムをさらに備える、請求項1に記載の水処理システム。
【請求項11】
前記電気透析装置は、1つ以上の1価カチオン選択膜をさらに含む、請求項1に記載の水処理システム。
【請求項12】
前記1つ以上の1価カチオン選択膜は、カルシウムに対するナトリウムの選択係数が少なくとも約2である、請求項11に記載の水処理システム。
【請求項13】
前記電気透析装置は、1つ以上の1価アニオン選択膜をさらに含む、請求項1、11または12に記載の水処理システム。
【請求項14】
前記1つ以上の1価アニオン選択膜は、硫酸塩に対する塩化物の選択係数が少なくとも約2である、請求項13に記載の水処理システム。
【請求項15】
前記電気透析装置は、約10未満のナトリウム吸着比(SAR)値を有する希釈液を生成するように構成される、請求項1に記載の水処理システム。
【請求項16】
前記電気透析装置は、約5未満のSAR値を有する希釈液を生成するように構成される、請求項15に記載の水処理システム。
【請求項17】
前記ナノ濾過装置は、希釈液のSAR値よりも低いSAR値を有する保持液を生成するように構成される、請求項15に記載の水処理システム。
【請求項18】
前記ナノ濾過装置は、保持液および透過液を生成するように構成され、前記保持液は、透過液のSAR値よりも小さいSAR値を有する、請求項15に記載の水処理システム。
【請求項19】
前記電気透析装置は、マグネシウムおよびカルシウムを含む2価のカチオンと、ナトリウムを含む1価のカチオンとの比が高く、イオンの総濃度が被処理水中より低い、希釈液を生成するように構成されている、請求項1に記載の水処理システム。
【請求項20】
前記ナノ濾過装置は、前記2価カチオンの濃度が前記希釈液中の前記2価カチオンの濃度よりも高く、前記1価カチオンの濃度が前記希釈液中の前記1価カチオンの濃度よりも低い、保持液を生成するように構成される、請求項19に記載の水処理システム。
【請求項21】
前記灌漑分配システムに向けられた前記電気透析装置からの希釈液の量、および前記分流システムを有する前記ナノ濾過装置に向けられた前記電気透析装置からの希釈液の量を、前記電気透析装置において生成された希釈液の量の0%から100%までの任意の量で調整するように構成されたコントローラをさらに備える、請求項1に記載の水処理システム。
【請求項22】
前記コントローラは、灌漑用水および飲用水の相対的な需要に応じて、前記灌漑分配システムに向けられる前記希釈液の量および前記ナノ濾過装置に向けられる前記希釈液の量を調整するように構成される、請求項21に記載の水処理システム。
【請求項23】
前記電気透析装置内で生成された希釈液と前記ナノ濾過装置内で生成された任意の保持液とを混合し、前記希釈液のSAR値と前記保持液のSAR値との中間のSAR値を有する灌漑用水を生成するように構成されたミキサーをさらに含む、請求項1に記載の水処理システム。
【請求項24】
前記コントローラと通信するセンサをさらに備え、前記センサは、前記電気透析装置からの希釈液および前記ナノ濾過装置からの保持液のうちの1つの1つ以上のパラメータの指示を前記コントローラに提供するように構成され、前記コントローラは、前記1つ以上のパラメータの指示に応答して前記分流システムを調整するように構成される、請求項1に記載の水処理システム。
【請求項25】
コントローラと通信するセンサをさらに備え、前記センサは、前記電気透析装置からの希釈液および前記ナノ濾過装置からの保持液のうちの1つの1つ以上のパラメータの指示を前記コントローラに提供するように構成され、前記コントローラは、前記1つ以上のパラメータの指示に応答して前記電気透析装置の1つ以上の動作パラメータを調整するように構成される、請求項1に記載の水処理システム。
【請求項26】
塩水を処理して飲用水および灌漑用水を製造する方法であって、
500mg/Lから10,000mg/Lの溶解塩濃度を有する被処理水を、1つ以上の1価カチオン選択膜を含む電気透析装置の入口に向けるステップと、
前記電気透析装置において被処理水を処理して希釈液を生成するステップと、
灌漑分配システムに向ける前記希釈液の量と低圧ナノ濾過装置の入口に向ける前記希釈液の量とを決定するステップと、
低圧ナノ濾過装置の入口に向けられた任意の希釈液をナノ濾過装置内で処理して透過液および保持液を生成するステップと、
灌漑分配システムにおいて任意の保持液を灌漑分配システムに向けられた任意の希釈液と組み合わせるステップと、
を含む、塩水を処理して飲用水および灌漑用水を製造する方法。
【請求項27】
前記ナノ濾過装置において生成された任意の透過液の少なくとも一部を、前記電気透析装置の濃縮区画に向けるステップをさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記電気透析装置内で前記希釈液を生成するステップは、約10未満のSAR値を有する処理水を生成することを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記電気透析装置内で前記希釈液を生成するステップは、約5未満のSAR値を有する処理水を生成することを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記ナノ濾過装置において前記保持液を生成するステップは、前記希釈液のSAR値よりも小さいSAR値を有する処理水を生成することを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
前記希釈液の少なくとも一部を前記灌漑分配システムに向けるステップをさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項32】
前記灌漑分配システムに向けられた任意の前記希釈液と任意の保持液とを組み合わせるステップは、前記希釈液のSAR値と前記保持液のSAR値との中間のSAR値を有する灌漑用水を生成するステップを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
任意の保持液を灌漑分配システムに向けられた任意の希釈液と組み合わせるステップは、約8未満のSAR値および約750ppmを超える総溶解固形分レベルを有する灌漑用水を生成することを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記電気透析装置からの希釈液の1つ以上のパラメータおよび前記ナノ濾過装置からの保持液の流量のうちの一つに基づいて、前記灌漑分配システムに向けられた前記電気透析装置からの希釈液の量および前記ナノ濾過装置に向けられた前記電気透析装置からの希釈液の量を調節することをさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項35】
前記電気透析装置からの前記希釈液および前記ナノ濾過装置からの任意の保持液のうちの一つの、1つ以上のパラメータに基づいて、前記電気透析装置の1つ以上の動作パラメータを調整することをさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項36】
前記被処理水を前記電気透析装置の前記入口に向ける前に、前記被処理水をあらかじめ濾過することをさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項37】
飲用水として使用するのに適した透過液を、前記ナノ濾過装置の前記透過液出口から飲用水の使用箇所に向けることをさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項38】
前記被処理水を前記電気透析装置に導入する前に、前記被処理水のpHを低下させて、前記被処理水中の重炭酸イオン濃度を低下させる、請求項26に記載の方法。
【請求項39】
制御された量の塩酸または硫酸のうちのいずれか一つを用いてpHを低下させる、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記被処理水に添加される塩酸または硫酸の量が、前記被処理水のpHと、前記電気透析装置の濃縮水回収率または前記電気透析装置の前記希釈液のSAR値との関係に基づいて決定される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記pHレベルが低下された被処理水は、前記電気透析装置内に前記被処理水を導入する前に、エアーストリッピング装置内で処理され、溶解二酸化炭素またはガス状二酸化炭素の一部を除去する、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
前記被処理水は、前記電気透析装置に前記被処理水が導入される前に、鉄、マンガン、ヒ素、または硫黄の1つ以上の元素または化合物の一部の濃度が低減されるように、エアレーションに供され、次いで濾過される、請求項26に記載の方法。
【請求項43】
前記ナノ濾過装置を通る透過液流に対する出口からの保持液流の比は、前記ナノ濾過保持液の溶解成分のスケーリング電位を制限するように制御される、請求項26に記載の方法。
【請求項44】
前記ナノ濾過透過液流または前記電気透析希釈液出口流のうちの1つ以上からの排出物は、ホウ素化合物の溶解濃度を減少させるためにさらに処理される、請求項26に記載の方法。
【請求項45】
前記ナノ濾過装置および前記電気透析装置を含むシステムは、前記ナノ濾過装置からの透過液が、飲用可能な飲用水の水質基準を満たすように制御および動作する、請求項26に記載の方法。
【請求項46】
前記電気透析装置の濃縮液流および希釈液流、ならびに前記ナノ濾過装置の保持液および透過液の1つ以上において、被処理水中の溶解ホウ素またはシリカ化合物の一方または両方の濃度が実質的に同じままである、請求項26に記載の方法。
【請求項47】
前記ナノ濾過装置および前記電気透析装置を含むシステムは、前記ナノ濾過装置からの保持液、前記電気透析装置からの希釈液、または両方の組み合わせが、農業用水に対する水質要件を満たすように制御および操作される、請求項26に記載の方法。
【請求項48】
前記ナノ濾過装置および前記電気透析装置を含むシステムは、前記電気透析装置からの濃縮液が、生成油回収操作に使用するための水質基準を満たすように制御および操作される、請求項26に記載の方法。
【請求項49】
生成油回収操作で使用する前に、濃縮液をイオン交換軟化処理の一つで処理し、2価カチオンの濃度を低下させるまたはpHを調整する、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記電気透析装置からの前記濃縮液中の2価のセレン酸塩または亜セレン酸塩イオンの濃度と塩化物イオンの濃度との比が、前記被処理水における比よりも小さい、請求項26に記載の方法。
【請求項51】
前記電気透析装置からの希釈液中の2価のセレン酸塩または亜セレン酸塩イオン濃度と塩素イオン濃度との比が、前記被処理水における比よりも小さく、前記電気透析装置からの前記希釈液中のカルシウムイオン濃度とナトリウムイオン濃度との比が、前記被処理水における比よりも大きい、請求項26に記載の方法。
【請求項52】
前記電気透析装置内の前記被処理水中に存在する亜硝酸塩の少なくとも約50%を除去するステップをさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項53】
前記ナノ濾過装置内の前記ナノ濾過装置に向けられた前記電気透析装置の希釈液中に存在する硝酸塩の少なくとも約50%を除去することをさらに含む、請求項52に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2017年8月21日に出願された“TREATMENT OF SALINE WATER FOR AGRICULTURAL AND POTABLE USE”と題する米国仮特許出願第62/547,971号に基づく優先権を、米国特許法第119条(e)の下で主張するものであり、それらの全体を参照により本明細書に援用する。
【技術分野】
【0002】
1.発明の技術分野
本発明は、作物灌漑用水および飲用水を供給するシステムおよび方法に関し、特に、許容できない溶解固形分を有する水から灌漑用水および/または飲用水を供給するシステムならびに方法に関する。
【背景技術】
【0003】
2.関連技術
気候変動は、地球の気温が上昇し、農場が作物の需要を満たすためにより多くの水を必要とするようになるにつれて、農業にとってますます脅威となると予想される。農地の灌漑による水の供給を増やすには、淡水の利用可能性が制約となる。農業は他のどの産業よりも淡水を多く消費しており、世界の淡水取水量の推定70%を占めている。多くの地域はすでに水ストレスを受けている。継続する地球温暖化は、例えば、淡水の地理的分布を変化させ、降雨の分布、量、毎年の雨季を変化させることによって、淡水の利用可能性に関してさらなる問題を引き起こし得る。したがって、不適当な水源から、灌漑目的に適した水を生産することの重要性はますます高まり得る。
【0004】
脱塩または淡水化は、(例えば水から)塩を除去する、水処理プロセスを指す。ある場合には、水源は汽水または海水であり、その脱塩技術は、飲用可能な飲用水に対する自治体の要求の少なくとも一部を提供する。淡水化技術は、通常、逆浸透技術と同様に蒸留に基づく技術を含む。脱塩水は、例えば、プロセス給水、ボイラー給水、および灌漑用水のような商業的および工業的用途においても消費することができる。脱塩水を利用し得る産業の特定の例には、製薬、鉱業、紙およびパルプ、および農業産業が含まれ得る。
【発明の概要】
【0005】
本発明の一態様によれば、塩水から飲用水および灌漑用水を生成する水処理システムが提供される。システムは、1つ以上の1価選択膜を含み、500mg/Lから10,000mg/Lの溶解塩濃度を有する被処理水源に流体的に接続可能な入口、希釈液出口、および濃縮液出口を有する電気透析装置と、電気透析装置の下流に位置し、電気透析装置の希釈液出口に流体的に接続可能な入口、透過液出口、および保持液出口を有する低圧ナノ濾過装置と、ナノ濾過装置の保持液出口および電気透析装置の希釈液出口に流体的に接続可能な灌漑分配システムと、灌漑分配システムに向けられた電気透析装置からの希釈液の量およびナノ濾過装置に向けられた電気透析装置からの希釈液の量を変化させるように構成された分流システムと、を含む。
【0006】
いくつかの態様において、電気透析システムの希釈液およびナノ濾過システムの透過液の一方または両方は、過剰なホウ素を除去するために後処理される。
【0007】
いくつかの実施形態では、システムは、被処理水の供給源と電気透析装置の入口との間で流体連通する前濾過システムをさらに含む。前濾過システムは、マイクロフィルタ、セトラー、スクリーンフィルタ、マイクロサンドフィルタ、および粗大粒子フィルタのうちの少なくとも1つを備えてもよい。前濾過システムの前に、pH調整システムおよびエアストリッピングシステムを設けてもよい。
【0008】
いくつかの実施形態では、システムは、ナノ濾過装置の透過液出口を、電気透析装置の濃縮区画の入口または電極流区画の入口の少なくとも1つに流体的に接続する導管をさらに備える。導管は、ナノ濾過装置の透過液出口を、電気透析装置の濃縮区画の入口または電極流区画の入口の少なくとも1つに直接接続してもよい。
【0009】
いくつかの実施形態では、電気透析装置の濃縮液出口は、塩素ガス、次亜塩素酸イオン、水酸化ナトリウム、硫酸、または塩酸のうちの1つ以上を生成するための電気化学的生成システムの入口に流体接続可能である。電気化学的生成システムは、被処理水にpH調整剤を導入するように構成されたpH調整剤の供給源に流体接続可能であってよい。
【0010】
いくつかの実施形態では、システムは、電気化学的生成システムへの入口の上流に、軟水化装置をさらに備える。
【0011】
いくつかの実施形態では、システムは、ナノ濾過装置の透過液を処理して、pHの上方調整、pHの下方調整、塩素ガスの添加または次亜塩素酸イオンの添加の少なくとも1つを達成するシステムをさらに備える。
【0012】
いくつかの態様において、電気透析装置は、1つ以上の1価カチオン選択膜をさらに含む。
【0013】
いくつかの態様において、1つ以上の1価カチオン選択膜は、カルシウムに対するナトリウムの選択係数が少なくとも約2である。
【0014】
いくつかの態様において、電気透析装置は、1つ以上の1価アニオン選択膜をさらに含む。1つ以上の1価アニオン選択膜は、硫酸塩に対する塩化物の選択係数が少なくとも約2であってよい。
【0015】
いくつかの実施形態において、電気透析装置は、約10未満のナトリウム吸着比(SAR)値を有する希釈液を生成するように構成される。電気透析装置は、約5未満のSAR値を有する希釈液を生成するように構成されてもよい。
ナノ濾過装置は、希釈液のSAR値よりも小さいSAR値を有する保持液を生成するように構成されてもよい。ナノ濾過装置は、保持液および透過液を生成するように構成されてもよく、保持液は透過液のSAR値よりも小さいSAR値を有する。
【0016】
いくつかの実施形態では、電気透析装置は、被処理水よりも、ナトリウムを含む1価カチオンに対するマグネシウムおよびカルシウムを含む2価カチオンの比率が高く、イオンの総濃度が低い希釈液を生成するように構成される。
【0017】
いくつかの実施形態では、ナノ濾過装置は、希釈液中の2価カチオン濃度よりも高い2価カチオン濃度と、希釈液中の1価カチオン濃度よりも低い1価カチオン濃度と、有する保持液を生成するように構成される。
【0018】
いくつかの実施形態では、システムは、灌漑分配システムに向けられた電気透析装置からの希釈液の量、および分流システムを有するナノ濾過装置に向けられた電気透析装置からの希釈液の量を、電気透析装置で生成された希釈液の量の0%から100%のいずれかの量で調節するように構成されたコントローラをさらに備える。コントローラは、灌漑用水および飲用水の相対需要に応じて、灌漑分配システムに向けられる希釈液の量およびナノ濾過装置に向けられる希釈液の量を調節するように構成されてもよい。
【0019】
いくつかの実施形態では、システムは、電気透析装置で生成された希釈液をナノ濾過装置で生成された保持液と混合し、希釈液のSAR値と保持液のSAR値の中間のSAR値を有する灌漑用水を生成するように構成されたミキサーをさらに備える。
【0020】
いくつかの実施形態では、システムは、コントローラと通信するセンサをさらに備え、センサは、電気透析装置からの希釈液およびナノ濾過装置からの保持液のうちの1つの1つ以上のパラメータの指示をコントローラに提供するように構成され、コントローラは、1つ以上のパラメータの指示に応答して分流システムを調整するように構成される。
【0021】
いくつかの実施形態では、システムは、コントローラと通信するセンサをさらに備え、センサは、電気透析装置からの希釈液およびナノ濾過装置からの保持液のうちの1つの1つ以上のパラメータの指示をコントローラに提供するように構成され、コントローラは、1つ以上のパラメータの指示に応答して電気透析装置の1つ以上の動作パラメータを調整するように構成される。
【0022】
別の実施形態によれば、飲用水および灌漑用水を生成するために、塩水を処理する方法が提供される。本発明の方法は、1つ以上の1価カチオン選択膜を含む電気透析装置の入口に、500mg/Lから10,000mg/Lの溶解塩濃度を有する処理水を向ける工程と、電気透析装置内で被対象水を処理して希釈液を生成する工程と、灌漑分配システムに向ける希釈液の量と低圧ナノ濾過装置の入口に向ける希釈液の量とを決定する工程と、ナノ濾過装置内の低圧ナノ濾過装置の入口に向ける希釈液を処理して透過液と保持液を生成する工程と、灌漑分配システムにおいて灌漑分配システムに向ける希釈液のいずれかと保持液を組み合わせる工程と、を含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、本方法は、ナノ濾過装置において生成された任意の透過液の少なくとも一部を、電気透析装置の濃縮区画に向けることをさらに含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、電気透析装置で希釈液を生成することは、約10未満のSAR値を有する処理水を生成することを含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、電気透析装置で希釈液を生成することは、約5未満のSAR値を有する処理水を生成することを含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、ナノ濾過装置で保持液を生成することは、希釈液のSAR値よりも小さいSAR値を有する処理水を生成することを含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、本方法は、希釈液の少なくとも一部を灌漑分配システムに向けることをさらに含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、任意の保持液を灌漑分配システムに向けられた任意の希釈液と組み合わせることは、希釈液のSAR値と保持液のSAR値の中間のSAR値を有する灌漑用水を生成することを含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、任意の保持液を灌漑分配システムに向けられた任意の希釈液と組み合わせることは、約8未満のSAR値および約750ppmを超える総溶解固形分を有する灌漑用水を生成することを含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、本方法は、電気透析装置からの希釈液およびナノ濾過装置からの保持液の流量の1つ以上のパラメータのうちの1つに基づいて、灌漑分配システムに向けられた電気透析装置からの希釈液の量およびナノ濾過装置に向けられた電気透析装置からの希釈液の量を調節することをさらに含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、本方法は、電気透析装置からの希釈液およびナノ濾過装置からの任意の保持液のうちの1つの1つ以上のパラメータに基づいて、電気透析装置の1つ以上の動作パラメータを調節することをさらに含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、本方法は、被処理水を電気透析装置の入口に向ける前に、被処理水を事前に濾過することをさらに含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、本方法は、飲用水としての使用に適した透過液を、ナノ濾過装置の透過液出口から飲用水の使用箇所に向けることをさらに含む。
【0034】
いくつかの態様において、被処理水のpHは、電気透析装置への導入前に減少され、被処理水の重炭酸イオンの濃度が減少する。pHは、塩酸または硫酸のいずれかの制御された量を用いて低下させてもよい。被処理水に添加する塩酸または硫酸の量は、被処理水のpHと、電気透析装置の濃縮水回収率または電気透析装置の希釈液のSAR値のどちらか一つとの関係に基づいて決定してもよい。pHが低下した被処理水は、電気透析装置に被処理水を導入する前に、溶解したまたはガス状の二酸化炭素の一部を除去するために、エアーストリッピング装置で処理し得る。
【0035】
いくつかの実施形態において、被処理水は、電気透析装置に被処理水を導入する前に、鉄、マンガン、ヒ素、または硫黄の元素または化合物の1つ以上の部分の濃度が低下するように、エアレーションに続いて濾過される。
【0036】
いくつかの実施形態では、ナノ濾過装置を通る透過流に対する出口からの保持液流の比は、ナノ濾過保持液の溶解成分のスケーリング電位を制限するように制御される。
【0037】
いくつかの態様において、ナノ濾過透過流または電気透析希釈液出口流の1つ以上からの流出物は、ホウ素化合物の溶解濃度を低下させるためにさらに処理される。
【0038】
いくつかの実施形態では、ナノ濾過装置および電気透析装置を含むシステムは、ナノ濾過装置からの透過液が飲用水の水質基準を満たすように制御および操作される。
【0039】
いくつかの実施形態では、電気透析装置の濃縮流および希釈流、ならびにナノ濾過装置の保持液および透過液のうちの1つ以上において、被処理水中の溶解ホウ素またはシリカ化合物の一方または両方の濃度は、本質的に同じままである。
【0040】
いくつかの実施形態において、ナノ濾過装置および電気透析装置を含むシステムは、ナノ濾過装置からの保持液、電気透析装置からの希釈液、または両方の組み合わせが農業用水の水質要件を満たすように、制御および操作される。
【0041】
いくつかの実施形態において、ナノ濾過装置および電気透析装置を含むシステムは、電気透析装置からの濃縮液が、生成油回収操作に使用するための水質基準を満たすように制御および操作される。濃縮液は、生成された油の回収操作で使用する前に、2価カチオンの濃度を低下させるため、またはpH調整のために、1種のイオン交換軟化で処理してもよい。
【0042】
いくつかの実施形態において、電気透析装置からの濃縮液中の、2価のセレン酸塩または亜セレン酸塩イオンの濃度の塩化物イオンの濃度に対する比は、被処理水における比よりも小さい。
【0043】
いくつかの態様において、電気透析装置からの希釈液中の2価のセレン酸塩または亜セレン酸塩イオン濃度の塩素濃度に対する比は、被処理水のそれよりも小さく、電気透析装置からの希釈液中のカルシウムイオン濃度のナトリウムイオン濃度に対する比は、被処理水のそれよりも大きい。
【0044】
いくつかの態様において、本方法は、電気透析装置において被処理水中に存在する亜硝酸塩の少なくとも約50%を除去することをさらに含む。この方法は、ナノ濾過装置内でナノ濾過装置に向けられた電気透析装置の希釈液中に存在する硝酸塩の少なくとも約50%を除去することをさらに含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
添付の図面は、正確な縮尺で描かれたものではない。図面においては、種々の図に示されている同一またはほぼ同一の各構成要素を同様の数字で表している。わかりやすくするために、すべての図面ですべての要素には符号を付けなくともよい。
図1】本発明の1つ以上の特徴によるシステムの概略図である。
図2】本発明のさらなる特徴による灌漑システムの概略図である。
図3】本発明のさらなる特徴による別のシステムの概略図である。
図4】本発明のさらなる特徴による別のシステムの概略図である。
図5】本発明のさらなる特徴による別のシステムの概略図である。
図6】本発明のいくつかの態様による水の特性の許容可能なレベルの代表的な範囲を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明は、その用途において、以下の説明に記載されるかまたは図面に示される構成の詳細および構成要素の配置に限定されない。本発明は、実施形態が可能であり、本明細書で例示的に提示されたものを超えて、様々な方法で実施または実行することができる。
【0047】
十分な品質の灌漑用水が不足すると作物の収穫量に有害となり、水需要の少ない作物種の選択を必要とし得る。点滴灌漑などの技術を使用して水の使用量を減らす新しい灌漑方法も、灌漑に使用された水から土壌中に塩分や不純物が蓄積されるため、持続不可能な状態を引き起こす可能性がありうる。土壌の塩分は、作物にと蒸発よる水の大部分の利用によって、灌漑用水よりもはるかに高い濃度に上昇する可能性がある。土壌を浸出させるのに不十分な水源を有する灌漑条件や土壌、あるいは不十分な降雨は、土壌の塩分を灌漑用水そのものよりも4〜5倍高くする可能性がある。さらに、土地が比較的浅い非浸透性の地層で構成されている場合には、灌漑用水が地下水位を上昇させることがある。塩分の高い地下水が作物の根の高さに達すると、その水は作物の成長に有害となる可能性がある。また、塩分を含む土壌は、土壌表面からの水の飛沫によって葉の多い作物に被害を与えることがある。また、農地が塩水で排水されると、セレンやホウ素などの土壌中の微量不純物や、硝酸塩などの肥料の使用による残留汚染物質が排水を汚染し、安全な排水管理が困難になる可能性がある。
【0048】
灌漑用水の需要は、人間にとっては飲用水、家畜や野生生物にとっては汚染物質のない水と競合している。このように、農業地域では、灌漑用水と飲用水を組み合わせた水源が必要とされることが一般的である。
【0049】
本発明の1つ以上の態様は、農業施設に適した水を供給するためのシステムおよび技術を含むことができる。本発明の他の態様は、家畜および家禽と同様に、飲用水もしくは人間の使用または消費に適した水を提供することができる。本発明のいくつかのシステムおよび技術は、非飲用水を変換するまたはその他の方法により、農業、家畜、家禽および/または人間の消費に適した提供することができる。本発明のさらに別の態様は、1以上の望ましい特性を有する生成物を提供するために、処理される流体からある種を他の種よりも優先的にまたは選択的に除去するシステムおよび技術を含むことができる。非選択的技術とは対照的に、本発明のいくつかの選択的除去態様は、追加の後処理プロセス、例えば混合を回避または低減することによって、より費用対効果を高めることができる。したがって、本発明のシステムおよび技術は、意図された用途により適した処理水を経済的に提供する。
【0050】
本発明のいくつかの実施形態において、いくつかのタイプの種は、処理流の流れの中に保持されるが、他のタイプの種は、優先的に除去される。得られた生成流体は、様々な用途で利用することができ、および/または、1つ以上の目的を満たすことができる。本発明の他の態様は、特定の目的を満たすように調整された1つ以上の性質または特性を有する水を提供するシステムおよび技術を含むことができる。したがって、本発明のいくつかの実施形態は、1つ以上の水流または水域を提供するシステムおよび技術を含むことができ、これらの水流または水域は、これらが使用される使用箇所または施設の1つ以上のパラメータに基づいて調整された1つ以上の属性を有する。
【0051】
本発明のさらなる態様は、農業、工業、商業および/または住居サービスに経済的に水を提供するシステムおよび技術を含むことができる。さらに、本発明のいくつかの特定の態様は、純度または品質の複数の要件またはレベルを満たす水を提供することを含むことができる。したがって、いくつかの実施形態では、本発明のシステムおよび技術は、混合使用施設内に1つ以上の水流または水域を提供することができる。本発明の特に有利な態様は、それぞれが異なる水質レベルを有し得る複数の水流または物体を、固体含有量の高い水源から、それぞれが異なる要件を有し得る複数の使用箇所に提供することを含むことができる。本発明のこのような態様は、例えば、非飲用水を灌漑、家畜および/または家禽が消費するため、および/または人間が消費するまたは使用するために適切および/または引用可能にする、処理システムおよび技術を提供することができる。
【0052】
本発明のいくつかの態様では、1つ以上の好ましくない種が高レベルで溶解している水を処理して、そのような種の濃度を許容可能なレベルまで除去する、または少なくとも低減することができる。1つ以上の好ましくない種は、未処理の水を特定の用途について不適切にする、任意の種であり得る。例えば、水は、土壌中の水の保持、または例えば2価または多価の種さえも含む他の種の吸着を悪い方向にまたは不必要に妨げる、高レベルまたは望ましくない濃度の1価カチオンおよび/またはアニオンを含有し得る。要件が作物灌漑に関係する場合、灌漑される土壌の浸透性質および/または浸透特性に影響する1つ以上の種を含む水は、望ましくない状態または特性に含まれることがある。例えば、本発明のいくつかの態様は、非1価種よりも1価種を優先的に除去するために水の状態を変えるまたは水を処理することを含むことができる。
【0053】
1つ以上の特定の態様によれば、本発明は、被処理水を電気駆動式分離装置に供給または導入することを含むシステムおよび/または方法に関する実施形態を含むことができる。本発明のいくつかの実施形態は、処理される1つ以上の水源および少なくとも1つの灌漑用水分配システムに流体的に接続された、または少なくとも接続可能な、電気駆動式分離装置を備える灌漑システムを含むことができる。
【0054】
本発明の他の態様は、飲用水を提供する方法を含んでもよい。本発明のいくつかの態様は、熱駆動式分離技術、高圧操作、またはユニット操作なしに、灌漑用水および/または飲用水を提供することができる。例えば、本発明のいくつかの実施形態による方法は、第1の処理水を生成するために、被処理水を提供し、被処理水の少なくとも一部を電気駆動式分離装置で処理する1つ以上の行為またはステップを含むことができる。この方法は、第2の処理水を生成するために、1つ以上の圧力駆動式分離装置において、被処理水の一部、通常は分離部分を処理する、1つ以上の行為をさらに含むことができる。場合によっては、この方法は、第1の処理水を第2の装置への供給として使用し、第2の処理水を提供して飲用水を生成するステップをさらに含むことができる。飲用水は、通常、目標または所望の総溶解固形分(TDS)含量、例えば、約500ppm未満のTDS含量を有する。
【0055】
飲用水を提供するシステムに関する本発明の態様は、被処理水源と、被処理水源に流体的に接続されたまたは少なくとも接続可能な入口を有する圧力駆動式分離装置と、を備えることができる。圧力駆動式装置はまた、1つ以上の出口、通常少なくとも1つの生成出口を処理水出口として有することができる。圧力駆動式分離装置は、通常、処理水から除去された1つ以上の種、通常望ましくない種を含む流の出口として、少なくとも1つの排出出口も有する。飲用水を提供するためのシステムは、被処理水源に、圧力駆動式分離装置に、またはその両方に、流体的に接続され得る、または接続可能であり得る、1つ以上の電気駆動式分離装置をさらに含むことができる。例えば、以下にさらに詳細に説明するように、1つ以上の電気駆動式分離装置を、圧力駆動式分離装置の排出出口に流体的に接続することができる。本発明の特定の実施形態によれば、飲用水を提供するためのシステムは、圧力駆動式装置の処理水出口および電気駆動式分離装置の生成水出口に流体的に接続されたまたは接続可能な1つ以上の入口を有する1つ以上のミキサーをさらに備えることができる。ミキサーは、1つ以上の所望の特性を有する最終生成流を形成するために、被処理水源からの流を含む1つ以上の生成流を少なくとも部分的に混合または結合することを容易にする、任意の混合ユニット操作を含むことができる。
【0056】
被処理水は、約1,500mg/L(1,500ppm)から約5,000mg/L(5,000ppm)のTDSを有する汽水、および/または高濃度の溶解固体または塩、例えば、約500mg/Lから約10,000mg/Lの溶解塩を含有する塩水を含むことができる。他の被処理水源は、浸透および/または毒性の問題のために農業施設での使用に適さない水を含むことができる。
【0057】
本発明のシステムおよび技術は、必要に応じて、その1つ以上の動作原理を容易にする前処理サブシステムを含むことができる。1つ以上の前処理および/または後処理ユニット操作を、本発明の1つ以上の実施形態において利用してもよい。例えば、本発明のシステムおよび技術は、被処理水から任意の懸濁固形物の少なくとも一部を分離または除去する、1つ以上のフィルタまたはスクリーンを含む前処理サブシステムを備えてもよい。このような前処理サブシステムは、通常、本発明のシステムの任意の下流ユニット操作または例えば灌漑装置に、損傷を与える粒子状物質を除去する。他の前処理ユニットの操作は、例えば、マイクロフィルタおよび/または沈殿物ベースのシステムを含み得、これは例えば、1ミクロン以上または10ミクロン以上の、特徴的な寸法を有する懸濁固形物を除去することができる。
【0058】
さらなる前処理操作を利用して、本発明の1つ以上のユニット操作の有効性を改善してもよい。例えば、前処理サブシステムは、分離操作の前に被処理水を冷却または加熱する冷却器または加熱器をそれぞれ備えることができる。供給されたままの流または任意の中間プロセス流の冷却は、例えば、望ましくない種の輸送を容易にするために、または処理されるストリームからの望ましい種の輸送を妨げるために実行されてもよい。同様に、加熱を行って、供給されたままの流または1つ以上の中間プロセス流の温度を、例えば、1つ以上の分離装置の経済的または効率的な操作を容易にする所望の温度まで上昇させてもよい。加熱プロセスの非限定的な例は、本発明のプロセスまたはシステムのユニット操作に関連するか、またはそのユニット操作であり得るヒータ、炉、または熱交換器を含み得る。例えば、加熱は、必ずしも本発明の処理システムに関連しない発電装置の熱交換器を通して行ってもよい。
【0059】
前処理システムはまた、1つ以上の処理ユニット操作の有効性を改善し、スケーリングの可能性を低減し、または1つ以上の処理ユニット操作で除去することが困難であり得る望ましくない種を除去するために、被処理水中の1つ以上の種を除去または濃度を低減するためにまたは代替的に使用されてもよい。例えば、被処理水のpHは、1つ以上の溶解種を沈殿させるか、または異なる形態に変換させて、例えば、濾過、沈殿、またはエアーストリッピングによって被処理水から除去することができるように、調整してもよい。使用され得るpH調整剤は、例えば、塩酸、硫酸、水酸化ナトリウム、または当技術分野で公知の任意の他のpH調整剤を含む。被処理水から除去され得る種は、例えば、重炭酸塩、鉄、マンガン、ヒ素、硫黄、セレン(例えば、2価のセレン酸塩または亜セレン酸塩)、ホウ素、またはシリカの任意の1つ以上の元素またはイオン形態または化合物を含んでもよい。他の実施形態では、前処理システムは、被処理水から硬度成分、例えばカルシウムを除去することができる軟水化装置、例えばイオン交換システムを含んでもよい。
【0060】
後処理ユニット操作によって、処理水中の1つ以上の種を仕上し、除去し、または濃度を低下させてもよい。例えば、1つ以上のイオン交換カラムを利用して、電気駆動式分離装置および/または圧力駆動式分離装置において容易に除去されない種を除去してもよい。後処理作業において、通常は除去されるか、少なくとも濃度が低下する(好ましくは、無毒および/または問題とならないレベルまで)非限定的な種の例としては、アルミニウム、ヒ素、ベリリウム、ホウ素、カドミウム、コバルト、クロム、銅、鉄、フッ化物、リチウム、マンガン、モリブデン、ニッケル、鉛、セレン、スズ、チタン、タングステン、バナジウム、ホウ素、および亜鉛などの、土壌凝集、水浸透に影響し得る、および/または植物成長に対して毒性を有する種が含まれる。ホウ素のような種を除去するために利用され得るイオン交換樹脂の例は、ダウ・ケミカル・カンパニーから入手可能なAMBERLITETM PWA10ホウ素選択イオン交換樹脂である。1つ以上の後処理操作によって扱われ得る他の種は、硝酸塩、亜硝酸塩、セレン、バナジウム、および硫化物(これらに限定されない)のような飲用水中のヒト、家禽、および/または家畜に対して有毒または不適切な種を含む。ヒトおよび/または家畜に有害である可能性がある、または灌漑ノズルを詰まらせる可能性があるバイオフィルムを生成する、コロニー形成微生物を少なくとも部分的に不活性化または濃度を減少させるために、消毒プロセスをも実施してもよい。
【0061】
代替的に、または1つ以上の仕上ユニット操作と組み合わせて、本発明のシステムおよび技術は、処理水の少なくとも一部に1つ以上の種を添加することを含んでもよい。例えば、石膏を添加して、1種以上の望ましい種の濃度を調整したり、水の特性を調整したりしてもよい。その他の添加物には、肥料、消毒剤、または水が灌漑に使用されるときに作物の成長を促進するその他の補助剤が含まれる。
【0062】
電気駆動式装置は、通常、ポテンシャル場を利用して、1つ以上の種、通常、望ましくない種だけでなく望ましい種をも含み得る標的種を、キャリアまたは流体から移動させる原動力を作り出す。電気駆動式装置は、移動中に標的種を分離しおよび/またはリターンプロセスまたはリバースプロセスを阻害する1つ以上の構成要素を利用することができる。このようなデバイスの非限定的な例は、電気透析(ED)デバイスを含み、それは極性転換方式電気透析(EDR)デバイス、同様に電気脱イオン(EDI)デバイスを含む。「電気透析」はより広い用語であり、「電気脱イオン」を含む。本明細書に開示される様々な態様および実施形態において利用され得る別の形態の電気駆動式分離装置は、二つの多孔質炭素電極上に電位差を印加することによって水を脱イオン化する、容量性脱イオン(CapDI)装置である。アニオンは水から取り除かれ、正に分極した電極に蓄えられる。同様にカチオンは、負に分極した電極である陰極に蓄積される。本明細書に開示される態様および実施形態は、ED装置を含むものとして記載されるが、しかしながら、代替の実施形態では、ED装置に加えてまたはED装置の代わりに、他の形態の電気駆動式分離装置を使用してもよいことを理解されたい。本明細書に開示される態様および実施形態は、特定の電気駆動式分離装置の1つまたは組み合わせに限定されず、処理される流体内の他の種よりも1つ以上の標的種の優先的な移動を容易にする原動力を提供する他の装置で実施してもよい。
【0063】
本発明の電気駆動式分離装置は、通常、分離現象を促進するためにイオン選択膜を利用する。いくつかの場合には、選択透過膜は、他の種と比較してある種の輸送を優先的または選択的に可能にすることができる。例えば、カチオン選択膜は、電気駆動式分離装置のいくつかの区画で利用してもよい。他の実施形態では、アニオン選択膜は、カチオン選択膜に加えてまたはカチオン選択膜の代わりに、1つ以上の区画で利用してもよい。さらに他の実施形態では、本発明の電気駆動式分離装置は、1価のカチオン種またはアニオン種の移動を選択的に促進する1つ以上の1価イオン選択膜を備えてもよい。実際、本発明のいくつかの実施形態では、本発明の分離装置は、1価カチオン選択膜および1つ以上の1価アニオン選択膜を備えてもよい。市販の1価選択膜の非限定的な例には、ネオセプタ(R)カチオンおよびアニオン選択膜(株式会社アストム、日本、東京、または株式会社トクヤマ、日本、東京)が含まれる。1価カチオンまたは1価アニオン選択膜は、例えば、約2より大きい、約5より大きい、または約10より大きい選択性を有するように選択してよい。いくつかの実施形態において、1価カチオン選択膜は、カルシウムに対するナトリウムの選択係数が少なくとも約2、少なくとも約5、また少なくとも約10であってよい。いくつかの実施形態において、1価アニオン選択膜は、硫酸に対する塩素の選択係数が少なくとも約2、少なくとも約5、または少なくとも約10であってよい。
本明細書で使用される用語として、選択性は、マグネシウム(Mg)およびカルシウム(Ca)に対するナトリウム(Na)の選択性の計算を示す次の式に従って計算されてよいが、他の元素または化合物の互いに対する分離装置の選択性は同様に計算できる。ここで、νはイオン種iのモル濃度、Δνはイオン種iのモル濃度の変化である。
【0064】
【数1】
【0065】
1価のカチオンおよび/またはアニオン選択膜は、約1,500mg/L(1,500ppm)から約5,000mg/L(5,000ppm)のTDSを有する汽水から、約20未満、約9未満、または約3未満のナトリウム吸着比(SAR)を有する処理水(希釈液)、および/または例えば約500mg/Lから約10,000mg/Lの溶解塩濃度の、高濃度の溶解固体または塩を含有する塩水を生成するように操作される、電気駆動式分離装置の実施形態を提供し得る。これらのSAR値は、電気駆動式分離装置の濃縮区画内への、2価または多価カチオンに対する1価カチオン優先的な移動によって達成し得、こうして、電気駆動式分離装置の希釈区画内の2価または多価カチオンの1価カチオンに対する比が増加する。
【0066】
圧力駆動式分離装置は、通常、1つ以上のバリアを利用して、第1の種の移動を阻止し、別の種の侵入を可能にする。分離現象を促進する原動力は、通常、処理される流体を加圧することを含む。圧力駆動式分離装置の非限定的な例は、精密濾過およびナノ濾過(NF)装置、同様に逆浸透(RO)システムを含む。NF装置は、通常、2価または多価イオンと比較して、1価イオンを選択的に通過させる。したがって、NF装置で生成された透過液は、NF装置で生成された保持液よりも、2価または多価イオンより高い1価イオンの濃度比を有し得る。したがって、NF装置内で生成された保持液は、NF装置内で処理される透過液または流入水よりも低いSAR値を有し得る。2価イオンと比較して1価イオンを通過させる高い選択性を有し、本明細書に開示された様々な実施形態で利用することができるナノフィルターの例としては、General Electric Company(ゼネラル・エレクトリック)から入手可能なSWSRナノ濾過膜、NF245ナノ濾過膜、NF270ナノ濾過膜、またはDow Chemical Company(ダウ・ケミカル・カンパニー)から入手可能なNF345ナノ濾過膜、ESNA1−LF−LDナノ濾過膜、またはHydranauticsから入手可能なHYDRACoRe10ナノ濾過膜を含み得る。
【0067】
本発明の1つ以上の実施形態は、図1に例示的に示すような水処理システム100を指すことができる。システム100は、例えば、使用箇所114に、飲用水、灌漑用水、またはその両方を提供するシステムとすることができる。処理システム100は、少なくとも1つの分離ユニット操作または分離装置110を備えることができ、いくつかの場合では、被処理水源102からの水から、1つ以上の種または種類の種を選択的に除去する。システムは、必要に応じて、処理システムの1つ以上の動作特性の指標を提供する、1つ以上の監視サブシステムを備えることができる。図示のように、システム100は、通常、分離装置110から生成された、または他の方法で処理水質の指標を提供する、1つ以上の監視センサ108を有し得る。本発明のいくつかの態様において、システム100は、本発明のシステムにおける1つ以上のユニット操作の1つ以上のパラメータを調整するように構成または構築され、および配置された、制御システムまたはコントローラを利用し得る。再び図1を参照すると、システム100は、分離装置110の少なくとも1つの動作パラメータを、通常、少なくとも1つの所望の条件に調整する、1つ以上のコントローラ106を有し得る。1つ以上の監視センサ108は、例えば信号線122を含む通信ネットワークを通して、もしくは追加的にまたは代替的に無線通信リンクを通して、1つ以上のコントローラ106と通信してもよい。1つ以上のコントローラ106は、例えば信号線124を含む通信ネットワークを通して、もしくは追加的にまたは代替的に無線通信リンクを通して、少なくとも1つの分離ユニット操作または分離装置110と通信してもよい。任意の適切な制御技術を利用して、システム100における任意のユニット操作の少なくとも1つの運転パラメータを調整して、1つ以上の所望の特性を有する処理水を提供してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、被処理水源102と分離ユニット操作または分離装置110との間に配置されたセンサ/トランスミッター(図示せず)を利用して、処理ユニット110からの汚染物質の除去または水の回収を制御するために、コントローラ106に被処理水の1つ以上のパラメータの測定を提供してもよい。
【0068】
本発明のシステムおよび技術は、処理水の1つ以上の使用箇所への輸送を容易にする、1つ以上の水分配システムを含んでもよい。例えば、分配システムは、農業施設の様々な使用箇所に灌漑用水を輸送する灌漑用水分配システムを含んでもよい。
処理水の供給を容易にするために、分配システムは、貯水池、タンク、井戸、または他の容器およびコンテナなどの1つ以上の貯蔵システムを含み得る。本発明の潅漑システムは、真上および/または地表面または地下の潅漑技術を利用して、水を指定された区域に運んでもよい。このように、灌漑システムの構成要素は、移動デバイスと同様に移動不可のデバイスを使用することができる。
【0069】
1つ以上のストレージシステムは、分配システムの一部と考えてもよいし、処理システムの補助サブシステムと考えてもよい。1つ以上の貯蔵システムは、所望の特性を有する処理水の供給をさらに容易にし得る。第1の条件または特性を有する処理水は、さらなる処理またはプロセス、例えば、別の処理済または未処理の水域または水流との混合の前に、1つ以上の貯蔵システムに貯蔵してもよい。
【0070】
図2は、灌漑システム200に関する本発明のいくつかの特徴を例示的に示す概略図である。灌漑システム200は、流体的に接続され、例示のように、例えば導管222を通して、水源202から被処理水を受け取るように配置された、分離装置220を備えることができる。分離装置220は、水源202からの水を処理し、処理水を、第1のタイプの作物として本明細書に例示されている第1の使用箇所228に、灌漑用水分配システム224を通して供給することができる。使用箇所228は作物の一部であり得、作物は例えば、作物全体の少なくとも一部とは異なる成長段階にある。システム200は、1つ以上の第2の分離装置230をさらに含み得る。分離装置230は、水源202からの水を処理し、第2のタイプの作物として図示されている第2の使用箇所238に、第2の潅漑分配システム234を通して処理水を供給することもできる。第2の使用箇所238は、例えば、第1の使用箇所228で潅漑されるものと同じタイプの作物の一部、または異なる成長段階にある第2の作物の一部であってもよい。本発明のいくつかの実施形態によれば、分離装置230は、導管または接続部244を通して、分離装置220からの処理水を補充する代わりに、および/または第1の使用点228に処理水を必要に応じて供給し得る。本発明のいくつかの実施形態は、少なくとも部分的に、段階化された処理スキームを考慮している。例えば、第1の分離装置220は、第1の水質または特性を有する処理水を提供してもよく、この処理水は、導管または分配システム242を通して第2の分離装置230においてさらに処理することができる。複数の第2の分離装置230は、処理水を1つ以上の使用箇所に提供するために、1つ以上の第1の分離装置220と共に利用してもよい。本発明のいくつかの実施形態は、分離装置の直列配置を含んでもよく、他の実施形態は、1つ以上の使用箇所の容積要件を満たすように処理水を提供するために、並列構成の分離装置を利用してもよい。例えば、水源202から被処理水は、導管または分配システム222および232をそれぞれ通して第1の分離装置220および第2の分離装置230の両方に並列に供給してもよい。しかしながら、いくつかの場合には、直列の処理経路と並列の処理経路との組み合わせを実行して、1つの以上の速度で処理水を提供してもよく、1つ以上の処理水流の各々は、1つ以上の所望の特性を有する。
【0071】
システム200は、システム200の任意の要素またはサブシステムの1つ以上の動作パラメータを制御するために、1つ以上のコントローラ(図示せず)を含み得る。図1に例示的に示すシステムと同様に、システム200は、1つ以上の動作パラメータを調整することができる1つ以上のコントローラを有することができる。例えば、システム200の1つ以上のコントローラは、任意の分離装置における印加電場の電流、電位、またはその両方を調整することができる。調節され得る他のパラメータは、例えば、システムの任意の流のTDS含量、圧力、温度、pH、流量比または任意の組み合わせを含む。
【0072】
本発明のいくつかの態様によれば、処理水流の1つ以上の特性は、使用箇所114での意図された使用に適するようにするために、任意の測定されたまたは導出された属性の生成流となり得る。例えば、水の特性は、被処理水流に対する、処理流または生成流の属性であってよく、しかしこれらに限定されない。属性またはパラメータは、水の単体の、複合の、または集合の特性であり得る。そのような属性の特定の非限定的な例は、水の伝導率または抵抗率、水中の1つ以上の特定の種または種類の種の存在、不在、または濃度、およびそれらの組み合わせを含み得る。
【0073】
本発明の1つ以上の実施形態によれば、本発明のシステムおよび技術は、所望の水属性を有する水を複合特性として表すまたは定量化することができる。複合特性は、特定の目的のための処理水の適合性の指標を提供することができる。したがって、本発明のシステムおよび技術は、1つ以上の所望の複合特性を有する水の供給を要する、または少なくとも促進する操作を含み得る。灌漑用途では、処理水の属性は灌漑用水としての適性に関連し得る。したがって、本発明のいくつかの態様は、非飲用水を処理し、その1つ以上の特性を調整することによって、その水を処理水として、1つ以上の農業施設における灌漑に適したものにすることに向けられ得る。本発明のいくつかの態様は、1つ以上の農業施設で生育または栽培される1つ以上の作物に合わせた灌漑用水を提供し得る。例えば、再び図2を参照すると、本発明のシステムおよび技術は、第1の複合特性を有する第1の処理水を第1のタイプの作物228に、第2の複合特性を有する第2の処理水を第2のタイプの作物238に提供し得る。第2の処理水は、第1の処理水の特性を補うおよび/または調整するために使用し得、逆に、第1の処理水は、第2の処理水の1つ以上の特性を調整するために使用し得る。1つ以上の特性は、例えば、1つ以上の処理水流またはその一部を、混ぜるまたは混合することによって、特定の要件を満たすように調整し得る。特定の目標特性は、混合される処理水流の比または相対量または速度を調節することによって達成し得る。処理水流は、所望の任意の比率で混合してもよく、例えば、第1の処理水の0%(混合なし)から100%まで、約10%から約90%まで、約25%から約75%まで、または約40%から約60%までを第2の処理水と混合することにより、もしくは第2の処理水の0%(混合なし)から100%まで、約10%から約90%まで、約25%から約75%まで、または約40%から約60%までを第1の処理水と混合することにより、混合してもよい。
【0074】
通常の動作の間、1つ以上の分離装置220および230の各々は、通常1つ以上の二次流を生成する。通常、1つ以上の二次流は、1つ以上の望ましくない種の許容できないレベルを含む。任意の1つ以上の二次流は、廃棄流として排出され得る。例えば、通常、分離装置230で処理される流から移送された1つ以上の種を含む廃棄流、導管または分配システム236を通して、被処理水源202へ排出または移送され得る。通常、分離装置220で処理流から移送された1つ以上の種を含む廃棄流は、導管または分配システム226を通して被処理水源202に排出または移送され得る。同様に、本発明の他の実施形態は、通常、1つ以上の下流分離装置からの1つ以上の二次流を、1つ以上の上流分離装置で被処理水流と組み合わせることを意図している。例えば、下流の電気駆動式または圧力駆動式分離装置から出力された1つ以上の流は、濃縮液補給または希釈液補給として上流の電気駆動式分離装置に戻されてもよい。廃棄流は、処理システムに直接関連してもしなくてもよい他の流れと共に排出することもできる。例えば、排出されるべき流は、例えば冷却塔からの、1つ以上のブローダウン流と混合された後に被処理水源に戻されてもよく、これは処理システムのユニット操作ではない場合がある。しかし、他の場合には、可溶性ミネラルおよび表面土壌からのカルシウムなどの塩類の浸出をもたらし得る浸水の問題を緩和するために、1つ以上の廃棄流を貯蔵し、非常に低い塩分を有する水と組み合わせてもよい。
【0075】
本発明のいくつかの実施形態では、導管236に含まれる第2の分離装置230からの二次流は、単独で、または図2に示すように導管202を通して供給される水源222から被処理水と組み合わせて、第1の分離装置220に導入し得る。
【0076】
図1および図2に示す概略的に図示されたシステムは、水の処理を容易にするユニット操作をさらに備えてもよい。例えば、分離装置220および230の上流で任意のシステムを利用して、水源202からの水中の懸濁固形物の少なくとも一部を濾過またはその他の方法で除去してもよい。被処理水中に混入した少なくとも1つの懸濁固形物の濃度を減少させるために利用してもよい前処理ユニット操作の非限定的な例には、マイクロフィルタ、セトラー、スクリーンフィルタ、および粗大粒子フィルタが含まれる。
【0077】
さらに、1つ以上のユニット操作を利用して、1つ以上の処理水流をさらに処理してもよい。例えば、仕上床は、分配システム224および234内の処理流のうちの1つ以上から、1つ以上の種をさらに除去してもよい。ホウ素、セレンおよびヒ素などの、しかしこれらに限定されない、弱イオン化されたまたはイオン化可能な種の少なくとも一部を除去するために利用し得るこのようなユニット操作の非限定的な例には、イオン交換カラムが含まれる。
【0078】
本発明の1つ以上の処理水流の後処理を容易にするさらなるユニット操作は、水流の1つ以上の望ましい種の濃度または特性を追加または調整するものを含む。後処理操作は、環境への排出に適した1つ以上の廃棄流をもたらすために使用されてもよい。
【0079】
従って、本発明の1つ以上の分離装置の下流にミキサーを配置して、1つ以上の水源から別の処理水流または未処理の水流、消毒剤、栄養素、および/または望ましい塩の取り込みを容易にしてもよい。本発明のいくつかの実施形態によれば、1つ以上の塩の供給源を処理水流に導入するように配置することができる。例えば、被処理水流から2価または他の非1価種の濃度を選択的に除去または減少させる本発明の処理または灌漑システムにおいて、分離装置を利用してもよい。このような任意の装置は、通常、処理流に導入され、その少なくとも1つの特性を調整して、水流または水域に目標条件または望ましい条件を提供し得る、比較的高濃度の非1価種を有する少なくとも1つの生成流を提供する。有益な種に富む流を有利に提供するシステムおよび技術の例には、共有米国特許第7,820,024号「Electrically−Driven Separation Apparatus」に開示されたものが含まれる。しかしながら、いくつかの場合には、例えば、カルシウムおよび/またはマグネシウム塩といった、1つ以上の他の接続されていないまたは異なる供給源を、その使用前に、処理水流の1つ以上の特性を調整するために利用してもよい。加えて、水流の1つまたは複数の固有および/または外因による性質をさらに調整してもよい。例えば、水流を冷却または加熱してその温度を調節してもよい。水流または水域のpHは、例えば、1つ以上の酸または塩基を添加して、所望のpH値を達成することによって調整してもよい。所望の性質または特性は、例えば、灌注すべき土壌のpH、灌注すべき作物の耐塩性、および場合によっては土壌の含水量を含む、複数の因子に依存し得る。したがって、本発明のいくつかの特徴は、1つ以上の所望の複合特性を達成するためのさらなる能力を提供する。
【0080】
1つ以上の性質または特性のさらなる調整は、分離装置における処理の後、使用前または使用場所への導入前、または1つ以上の貯水池における処理水の貯蔵中に行ってもよい。
【0081】
しかしながら、本発明のいくつかの態様は、一次流または処理生成流および/または分離装置に導入された流に対して、高濃度の1つ以上の溶解した種を含むこのような二次流の、有益または経済的に魅力的な属性を意図している。例えば、二次生成流は、高溶解固形分を含有していてもよく、追加の生成物を得るためにさらに処理され得るか、または少なくとも高濃度の所望の種を有する生成流を提供し得る供給流として機能し得る。
【0082】
本発明のいくつかのシステムおよび技術において利用される水の1つ以上の特性は、その水が農業用途に適していることを示し得る。例えば、水の1つ以上の特性は、総溶解塩または固体含有量、および/または導電率として、または水のアルカリ度、鉄含有量と同様に、およびpHのいずれかと組み合わせて、塩分として表し得る。ある場合には、水の塩分レベルは、少なくとも部分的に処理水によって潅漑される作物の種類と比較して考えると、選択的パラメータとなり得る。したがって、本発明のいくつかの態様によれば、水の塩分は、本発明のシステムの少なくとも1つの動作パラメータを調整するかどうかを決定する際に考慮すべき要因として使用してもよい。本発明のシステムおよび技術の他の実施形態では、特性値は、土壌を凝集または水吸着性にする傾向のある種の濃度に対する、土壌を非浸水性にする傾向のある種の濃度の比として表し得る。
【0083】
本発明のいくつかの態様によれば、特性値は、灌漑目的、人間の消費、および/または家畜もしくは家禽の使用のための水の適合性の指標を提供し得る。いくつかの実施形態において、水流または水域の特性値は、水中の2価種の濃度に対する1価種の濃度の比として表し得る。例えば、特性値は、ナトリウム吸着比(SAR)または交換可能なナトリウムの割合として少なくとも部分的に表し得る。好ましくは、水流または水域のSAR値は、その水が、あるタイプまたはある種の作物を潅漑するのに適する可能性があるかどうかに関する指標を提供し得る。したがって、本発明のいくつかの態様によれば、そのいくつかの実施形態は、使用箇所の少なくとも1つの要件から少なくとも部分的に導出される所望の特性値に少なくとも部分的に基づいて、1つ以上の動作パラメータを制御することを含み得るシステムおよび技術に関する。使用箇所が、例えば、灌漑される作物である場合、所望の特性値は、作物の耐塩性および/または土壌の1つ以上の属性または特性に基づき得る。
【0084】
ナトリウム吸着比の値は通常、次の式に従って決定される。
【0085】
【数2】
【0086】
ここで、[Na]は水中のミリ当量/リットルのナトリウム種濃度であり、[Ca]は水中のミリ当量/リットルのカルシウム種濃度であり、[Mg]は水中のミリ当量/リットルのマグネシウム種濃度である。水の他の特性値は、単独でまたはSAR値と組み合わせて利用してもよい。このように、ある場合には、水質または意図した目的への適合性の指標として働く水の特性値には、水中の総溶解固形分濃度、pH、および/または1種以上の有毒または有害種の濃度が含まれる。
【0087】
例えば、灌漑用水のSAR値の調整は、水システムの1つ以上の動作パラメータを調整することによって行ってもよい。例えば、種々の関連するSAR値を有する異なる処理ユニットからの処理水の相対比を調整して、所望のSAR値を有する生成水の複合または混合物を提供してもよい。1つ以上の分離装置を通る水流の流量を減少させること、または滞留期間または処理期間を増加させることを含む他の技術は、所望のSAR値を達成することを容易にし得る。加えて、またはそのような技術と併せて、例えば、電気駆動式または圧力駆動式分離装置を通して印加電位または圧力レベルを調整することにより、1つ以上の所望の特性を有する処理水を提供することも容易にし得る。
【0088】
本発明のシステムの実施形態は、汽水を脱塩して、土壌浸透性の程度および/または浸透の問題を回避または低減する灌漑用水を提供し得る。
【0089】
処理水の1つ以上の特性値は、水に含まれる種間の相対的な対比であってもよい。例えば、特性値は、溶解カルシウムに対する溶解ナトリウム種の比であってもよい。約3:1以下の好ましいナトリウム対カルシウム比は、土壌の分散および詰まりならびに土壌表面の細孔の封による浸水の問題の可能性を回避または低減する可能性がある。さらに、本発明のいくつかの実施形態は、灌漑用水中の1価ナトリウムの濃度を選択的に減少させ得、その結果、比較的カルシウムに富んだ水源を提供して、灌漑中の任意のナトリウム分散現象を妨げ得る。
【0090】
生成水のSAR値は約1から約8の範囲であり得る。しかし、目標または望ましいSAR値は農業施設内の1つ以上の要因に依存する。例えば、目標SAR値は、施設内で生育される作物の種類、施設内の1つ以上の作物の生育段階、および土壌の浸水率、ナトリウム度、アルカリ度などの土壌条件に依存する。灌漑用水の1つ以上の目標特性をもたらすために用いてよい特定のガイドラインには、国連食糧農業機関(FAO)によって提供されたAyers,R.S. Westcot,D.W.による出版物”Water Quality for Agriculture”(FAO Irrigation and Drainage Paper29rev.1,Food and Agriculture Organization of the United Nations,1989,1994)におけるものが含まれる。例えば、交換性ナトリウム率(ESP=交換性{(Na)/(Ca+Mg+K+Na)}×100)は、SAR値と相関し得、灌漑目的に利用される水の望ましい特性値として、および特に15を超えるESP値において、ESPが増加するにつれて土壌のナトリウム質が上昇する可能性の尺度として役立ち得る。 特に、果物、木の実および柑橘類のような、しかしこれらに限定されない、繊細な作物は、通常、最大約8のSAR値を有する灌漑用水を必要とする。豆類のような他の繊細な作物は、最大約18のSAR値を有する灌漑用水を許容する可能性がある。クローバー、オーツ麦、および米のような適度に耐性のある作物は、約18から46までのSAR値を有する灌漑用水を許容する可能性がある。また、小麦、大麦、トマト、ビーツ、およびトールウィートグラスのような、しかしこれらに限定されない耐性作物は、約46から102までのSAR値を有する灌漑用水を許容する可能性がある。本明細書に開示されたシステムの実施形態は、特定の用途に所望されるように、上記に開示された任意の範囲のSAR値を有する灌漑用水を生成するように構成された、処理ユニットまたは同様のものの組み合わせを含んでもよい。特定の種は上記のSAR値を許容する可能性があるが、作物収量はそれにもかかわらず有害な影響を受ける可能性があるため、SAR値およびESP値は上記の値よりも低い方がさらに有益であり得る。さらに、SAR値の上昇は土壌の凝集に影響し得、灌漑用水を土壌表面から流出させて作物の根系に浸透させないか、または地表面を急速に通過させて灌漑用水を作物に吸収される前に根系の下に流し得る。
【0091】
浸透の問題は通常、灌漑用水が土壌に入らず、作物に利用できなくなった場合に発生する。水の利用可能性を低下させる塩分問題とは対照的に、浸透問題は作物が利用可能な水の量を大きく減少させ得る。水の浸透は塩分の増加とともに増加し得、塩分の減少またはカルシウムおよびマグネシウムに対するナトリウム含有量の増加とともに減少し得る。さらに、例えば、約0.5dS/m(EC)未満の導電率(水中でも、または土壌のペースト状抽出物からでも測定し得る)を有する低塩分水は、通常腐食性であり、可溶性ミネラルおよびカルシウムなどの塩の表層土壌に浸出する傾向があり、これにより、土壌の凝集および構造が減少し得る。塩分を含まない土壌や塩分の少ない土壌は、細孔空間を埋め、土壌表面を効果的に密封し、水の浸透率を低下させる細粒土壌粒子として分散する傾向がある。土壌は、地下に流入する水の量を減らし、作物の発芽を防ぐことができる地殻を形成する傾向がある。したがって、本発明のいくつかの実施形態では、所望の水質はさらに、灌漑用水の塩分濃度に基づいてもよい。例えば、Ayers,R.S. Westcot,D.W.による出版物”Water Quality for Agriculture”(FAO Irrigation and Drainage Paper29rev.1,Food and Agriculture Organization of the United Nations,1989,1994)に基づく図6は、TDS濃度およびSARによって表される塩分の浸透への影響を示しており、浸透の問題を低減または回避する、灌漑用水の望ましい塩分レベルおよびSAR値を同時に提供し得る。図6において、海水性質を用いて、上記参照文献からの導電率データからTDS濃度値を導出した。特に、20°Cにおける海水の密度と塩分との相関、および塩分と電気伝導率との相関を、公表された物理的性質に基づいて決定した。これらの相関関係を用いて、上記の参照文献からの海水の電気伝導度値を対応するTDS濃度に変換し、対応するSAR値に対してマッピングして、図6に示す浸透ガイドラインを得た。
【0092】
本発明のさらなる実施形態はまた、約1,500ppm以上のTDSレベルを有する一方で約15未満のSAR値を有する、などの複合特性値を有する場合にも、適切な灌漑用水を提供し得る。
【0093】
本発明のいくつかの実施形態は、熱および圧力駆動プロセスに基づく技術などの非選択的淡水化技術とは対照的な、望ましくない種を選択的に除去する淡水化システムおよび技術を提供し得る。さらに、本発明のいくつかのシステムおよび技術は、好ましい種のさらなる添加の必要なく、生成水流を提供し得る。例えば、本発明の実施形態は、補助的な種の添加による特性値のさらなる調整を必要としない、灌漑用水を提供し得る。
【0094】
本発明のさらなる特徴および態様が図3に示されている。例示的に示されている処理システム300は、第1の分離装置304および第2の分離装置306を備え得る。分離装置304および306は、通常、1つ以上の供給源302からの流体を処理する。供給源302からの被処理水は、通常、高レベルまたは許容できないレベルの溶解種を含む。したがって、1つ以上の分離装置を利用して、1つ以上の望ましくない濃度の種を水から少なくとも部分的に除去または低減し得る。供給源302からの被処理水は、例えば、分配システムまたは導管320を通して、第1の分離装置304および第2の分離装置306の両方に並列に供給されてもよい。例示的に図示されているように、分離装置304からの処理水は、例えば、分配システムまたは導管318を通して、供給される分離装置306からの処理水と、1つ以上の混合操作またはミキサー308において組み合わされて、所望の性質および/または特性を有する処理水流を使用箇所314に提供し得る。本発明のいくつかの実施形態によれば、処理水は、1つ以上の使用箇所314において飲用水および/または浴水として使用するのに適したものとしてもよい。
【0095】
第1の分離装置304は、電気駆動式分離装置であっても、圧力駆動式分離装置であってもよい。同様に、第2の分離装置306は、圧力駆動式分離装置であってもよい。本発明のいくつかの態様によれば、分離装置304は、供給源302から被処理水中の複数の望ましくない種の少なくとも一部を除去する。
【0096】
第2の分離装置は、被処理水流から1つ以上の望ましくない種を除去し得る。いくつかの場合では、分離装置は、水から1つ以上の望ましくない種の少なくとも一部を選択的に除去して、生成水流を生成する。第2の分離装置からの生成水流が飲用水の水質要件を満たすかまたは超えることができない場合、第1の分離装置からの処理水のうち、飲用水の水質要件を超える部分を組み込むか、混合してもよい。例えば、第1の分離装置が約250mg/LのTDSレベルを有する生成水を提供し、第2の分離装置が約1,000mg/LのTDSレベルを有する生成水を提供する場合、生成水流を約2:1の体積比で組み合わせて、約500mg/LのTDSレベルを有する混合生成物を生成し得る。目標レベルは、世界保健機関によって提案された飲用水に関する1つ以上のガイドライン(例えば、WHO飲用水水質ガイドライン第四版、世界保健機関2011)を満たすか、またはそれを超える濃度であってもよい。他の水流を本発明の分離装置の1つ以上の生成物流と混合して、通常、政府の規制機関によって設定されるガイドラインまたは要件を満たすか、またはそれを超える飲用水および/または浴用水を提供してもよい。
【0097】
通常、第1の処理生成流から除去された比較的高レベルの種を含む、第1の分離装置からの1つ以上の排出流は、ドレインに排出され、1つ以上の補助的使用箇所310に導かれ、または供給源302に戻され得る。本発明のさらなる実施形態は、第2の分離装置で処理されるように、排出水流を供給源302から導管322を通して水と組み合わせることを意図している。第2の分離装置からの二次的なまたは排出された水流はまた、ドレインに排出され、1つ以上の補助的使用箇所310および/または312に導かれ、導管316を通って示されるように、供給源302に戻され得る。
【0098】
図4において全体的に400で示される別の実施形態では、処理システムは、例えば、分配システムまたは導管420を通してオプションの前濾過システム404に流体連通する汽水を含み得る被処理水源402を含んでもよい。被処理水は、約1,500mg/L(1,500ppm)から約10,000mg/L(10,000ppm)のTDSを有する汽水、および/または高濃度の溶解固体または溶解塩、例えば、約500mg/Lから約5,000または約10,000mg/Lの溶解塩の濃度、および1つ以上の他の汚染物質、例えば、約40ppmの硝酸塩、および望ましくないレベルのホウ素、シリカ、重炭酸塩、または2価セレン酸塩または亜セレン酸塩のいずれか1つ以上を含有する、塩水であってもよい。前濾過システム404は、分配システムまたは導管422を通して第1の分離装置406に流体連通していてもよい。被処理水に混入される少なくとも1つの懸濁固体の濃度を減少させ得る前濾過システム404において利用されてもよい前処理ユニット操作の非限定的な例には、軟化システム、マイクロフィルタ、セトラー、スクリーンフィルタ、マイクロサンドフィルタ、および粗大粒子フィルタが含まれる。いくつかの実施形態では、前処理サブシステムは、Evoqua Water Technologies LLCまたはその関連会社から入手可能なVACLEEN(R)ステンレス鋼自己洗浄濾過システムを含んでもよい。他の実施形態では、前処理サブシステムは、Evoqua Water Technologies LLCまたはその関連会社から入手可能なVortisand(R)クロスフローマイクロサンドサブミクロン濾過システムを代替的または追加的に含んでもよい。
【0099】
第1の分離装置406は、電気駆動式分離装置、例えば電気透析装置であってもよい。分配システムまたは導管422は、第1の分離装置406の希釈区画406Aおよび濃縮区画406Bに被処理水を供給するために分割してもよい。第1の分離装置406は、1つ以上の1価のカチオン種および/またはアニオン種の移動を選択的に促進する、1つ以上の1価イオン選択膜を含んでもよい。いくつかの実施形態において、第1の分離装置406は、1つ以上の1価カチオン選択膜および1つ以上の1価アニオン選択膜を備えてもよい。
【0100】
電気透析の性質として、被処理水の塩分レベルに電力コストが反比例するため、被処理水のイオン汚染物の濃度が高いと、電気透析装置における電力損失を低減し、また、より多くの流入水を使用可能な製品として回収し得る(ただし、熱力学的効率は多少犠牲になる)。濃縮区画406B内の接線流を促進するために、区画406B内の塩の濃度を増加させながら、システム406は必要に応じて、副流444の全部または一部を入口供給流に戻して406Bに再循環させ、422から流入する供給と結合する再循環システム(図示せず)を備えるポンプおよびバルブ(設定点に基づいて固定されるか、制御可能である)を含んでもよい。その結果、濃縮区画406B内の最適な流体力学的条件を維持しながら、濃縮区画をライン422からの制御可能な極めて低い水使用量で操作し得る。したがって、ライン422から給水がより少なくなると、非常に大きな割合(水回収率)の給水が制御可能な方法で灌漑用または飲用生成水として希釈区画を通って送られ、排出流430には少なくなる。さらなる実施形態で説明するように、区画406Bへの入口給水は、ライン422からではなく、代わりにライン442から全部または一部を供給してもよい。その結果、ライン442からの出口は、入口422と比較して非常に低い汚染物質レベルを有するので、高い水回収率での運転の可能性はさらに増大する。
【0101】
第1の分離装置406は、被処理水から汚染物質の大部分を除去して、第1の希釈流を生成してもよい。除去される汚染物質は、1つ以上のイオン種を含んでもよい。第1の分離装置406は、例えば、分配システムまたは導管422を通して供給される被処理水から約80%の塩化ナトリウムおよび塩化カリウム、ならびに約8%の硝酸塩を除去し得る。第1の分離装置406は、1価イオンと比較して2価イオンが多くなり得、更なる処理なしで農業用途に許容され得る、希釈液を生成し得る。農業用途に適切とするために、第1の分離装置406からの希釈液は、例えば、約20未満、約18未満、約9未満、約8未満、約3未満、または約2未満のSAR値を有してもよく、約3,500ppm未満または750ppm未満のTDS値を有してもよい。
【0102】
第1の分離装置406からの希釈液の第1の部分は、分配システムまたは導管424および分配システムまたは導管432を通して、例えば、灌漑用水システムまたは灌漑用水の保持システムなどの、農業用の使用箇所414に向けられてもよい。第1の分離装置406からの希釈液の第2の部分は、分配システムまたは導管424を通して、第2の分離装置408に向けられてもよい。使用箇所414および第2の分離装置408に向けられた、第1の分離装置406からの希釈液の相対量は、所望に応じて、約0%から約100%、約10%から約90%、約25%から約75%、または約40%から約60%の範囲の任意の量で選択してもよい。分流バルブまたは他の形態の分流システム410を利用して、使用箇所414に向けられた第1の分離装置406からの、第2の分離装置408への希釈液の量を所望に応じて変えてもよい。分流バルブまたはシステム410は、コントローラ106によって操作されてもよい。コントローラ106は、1つ以上の分配システムまたは導管432または436からあるいは使用箇所414から1つ以上のセンサ108からの、水の1つ以上のパラメータの指示を受信してもよい。水の1つ以上のパラメータは、例えば、塩分、導電率、pH、SAR値、TDS値、または他のパラメータまたは関心パラメータを含んでもよい。コントローラ106は、分流バルブまたはシステム410を調整してもよく、センサ108からの1つ以上の水パラメータの指示に基づいて、第1の分離装置406から使用箇所414および第2の分離装置108に向けられた希釈液の比率を調整してもよい。コントローラ106はまた、センサ108からの水の1つ以上のパラメータの指示に基づいて、第1の分離装置406の1つ以上の動作パラメータを調整してもよい。第1の分離装置406の1つ以上の動作パラメータは、例えば、電流、流量、水回収率、または任意の他の動作パラメータ、その他のパラメータを含んでもよい。
【0103】
第1の分離装置406からの濃縮液は、ドレインに排出されてもよく、例えば、塩素、アルカリ(水酸化ナトリウムなど)、塩素ガス、次亜塩素酸イオン、塩酸または硫酸の電気化学的製造における使用のために、1つ以上の補助的な使用箇所412に向けられてもよく、または、例えば、分配システムまたは導管444を通して供給源402に戻されてもよい廃棄流として、分配システムまたは導管430を通して運ばれてもよい。第1の分離装置406は、非常に高い水回収率、例えば、約20%から約60%または90%以上の間で動作してもよい。なぜなら、1価イオンは、沈殿なしで分配システムまたは導管430を通して運ばれる濃縮液中に高濃度で存在してもよいからである。
【0104】
第1の分離装置406からの第1の希釈流として部分的に脱塩された水は、1価の塩では許容できないほど高いまま産出され得、および/または、例えばある種の用途に対しては硫酸カルシウムおよび/または硫酸マグネシウムである2価の塩では高いまま産出され得る。したがって、第1の希釈液流の少なくとも一部は、第2の分離装置408においてさらに処理されてもよい。第2の分離装置408は、例えば膜濾過システムのような圧力駆動型の分離装置であってもよい。第2の分離装置408は、ナノ濾過膜または逆浸透膜を含んでもよい。第2の分離装置408は、低圧ナノ濾過システム、例えば、約1から約15bar、約2から約4bar、または約3bar未満の膜差圧で動作する、ナノ濾過システムであってもよい。第2の分離装置408は、分配システムまたは導管424を通して供給された水を処理して、透過液および保持液を生成してもよい。第2の分離装置408は、第1の分離装置406からの流入希釈液からの大きな割合、例えば、残りの1価イオンの約10%から約95%と、実質的に全ての2価イオン成分とを除去し、例えば約250mg/L未満または150ppm未満または50ppm未満の、非常に低い濃度の1価イオン汚染物質を有する透過流を生成してもよい。第2の分離装置408はまた、第1の処理装置からの希釈液の一部から、付加的な望ましくない成分、例えば、第1の分離装置406からの希釈液の一部からの付加的な10%から95%の硝酸塩、を除去してもよい。第2の分離装置408からの保持液は、分配システムまたは導管436を通して、農業用の第1の分離装置406からの希釈液の第1の部分と組み合わせてまたは単独で使用し得る使用箇所414に導入され得る。使用箇所414は、電気透析装置406内で生成された希釈液とナノ濾過装置408内で生成された任意の保持液とを混合するように構成されたミキサ(図示せず)を含み得、混合されると、希釈液のSAR値と保持液のSAR値との中間のSAR値を有する灌漑用水を生成し得る。
【0105】
第2の分離装置408からの透過液は、2価のイオン汚染物質および/または微粒子および/または微生物汚染物質が少ない可能性がある。第2の分離装置408からの透過液は、飲用に適していてもよく、例えばWHOによって提供されるような、認識可能な基準で定義された特性を有していてもよい。第2の分離装置408からの濾過液は、例えば、約500ppm未満または約250ppm未満のTDSレベル、少量の2価イオン、少量の金属および微量元素、低レベルの硝酸塩、例えば、約10ppm未満の硝酸塩、低レベルの微粒子および/またはコロイド状または微生物不純物、および/または低い含量の有機物を含んでもよい。第2の分離装置408からの濾過液の特性は、システム400が動作する管轄区域における飲用水の規制要件を満し得る。第2の分離装置408からの濾過液は、分配システムまたは導管426を通して、飲用水として使用するための使用箇所418に導かれ得る。
【0106】
いくつかの実施形態では、第2の分離装置408からの透過液の一部は、第1の分離装置406のための濃縮液補給として使用される分配システムまたは導管442を通して導かれてもよい。第1の分離装置406の濃縮液補給として使用される第2の分離装置408からの透過液の量および割合は、必要に応じて選択してもよい。第1の分離装置406の濃縮液補給として使用される第2の分離装置408からの透過液の量または割合は、例えば、第2の分離装置408からの濾過液の質および濃縮液補給の必要性に基づいて選択され得る。バルブまたは他の分流システム440は、第1の分離装置406の濃縮液補給として利用される第2の分離装置408からの濾過液の量を所望に応じて調整することができる。バルブまたは分流システム440は、システムの様々な部分に配置されたセンサ108または他のセンサのいずれかからの情報に応答して、コントローラ106によって操作されてもよい。第1の分離装置406の濃縮液補給として使用される第2の分離装置408からの透過液の量は、例えば、第2の分離装置408からの透過液の品質および/または濃縮液供給の必要性に基づいて選択してもよい。
【0107】
第1の分離装置406は、1つ以上の1価のカチオン種またはアニオン種の移動を選択的に促進するための、1つ以上の1価イオン選択膜を含んでもよい。第1の分離装置406は、例えば、電気透析システムを含んでもよい。他の実施形態では、第1の分離装置406において被処理水は、第1の分離装置406において1価イオン選択膜が必要とされない程度に1価イオンが十分に低い場合がある。したがって、第1の分離装置406は、当技術分野において公知の標準イオン交換膜を利用してもよい。これらの標準イオン交換膜は1価イオン選択性でなくてもよい。
【0108】
図4に示すシステムは、汽水から灌漑用水および/または飲用水を生成するための多くの代替的なアプローチよりも利点を有し得る。従来のまたは1価選択膜を含む従来の電気透析システムと比較して、図4に示されるシステムは、より高い回収率で動作し得、電気駆動式分離装置において従来の電気透析システムよりも塩除去の必要がより少なくなり得、従来の電気透析システムよりもカルシウムの損失が少ないことを示し得る。したがって、図4に示すシステムの電気駆動式分離装置は、汽水から灌漑用水および/または飲用水を生成する従来の電気透析システムよりも小型であり得、消費電力が少なくなり得る。図4に示すシステムは、流入被処理水から生成される飲用水に対する灌漑用水の制御可能な比率を提供する。このシステムは、カルシウム、マグネシウム、ホウ素、セレンおよびシリカのような種が少ない廃棄物を生成する。システムに導入された被処理水中のカルシウム、マグネシウムおよびわずかな硝酸塩の大部分は、システムによって生成された灌漑用水に含まれる。このシステムは、飲用水としての使用に適した飲用水を生成するために、圧力駆動式分離装置として、より高価で高い操作コストの逆浸透システムよりもむしろ、ナノ濾過フィルタを利用してもよい。図4に示すシステムは、従来の電気透析システム単独よりも低いSAR値を有する灌漑用水を生成し得る。
【0109】
別の実施形態では、図5の500で一般的に示される処理システムは、被処理水源502を含んでもよい。被処理水源502は、例えば、地下水井戸であってもよい。被処理水源502で被処理水は、硝酸塩(最大約40ppmの濃度)、重炭酸塩(最大400ppmの濃度)、硫酸塩(最大約2,000ppmの濃度)、鉄、ホウ素、マンガン、セレン、カルシウム、マグネシウム、ヒ素、シリカ、および/または硫黄化合物またはフッ化物混合物のような望ましくない化学種と同様に、約500mg/Lから約5,000mg/Lまたは約1,0000mg/Lの溶解塩濃度を有する汽水または塩水であってもよい。処理される処理水源502は、導管506を通してブレークタンク504に流体的に接続されてもよい。
【0110】
ブースターポンプ510は、被処理水をブレークタンク506から導管508および512を通ってエアーストリッパー514に導くように位置され、および配置されてもよい。エアーストリッパー514は、カラムおよび不活性媒体、例えば、砂利、生砂、またはビーズまたは多孔質シリカ片を含んでもよく、これらを通して被処理水は下向きに流れ、空気は向流方向に上向きに流れる。あるいは、生砂は、エアーストリッパー514から独立した、鉄およびマンガンの除去のための別個のユニットプロセスに含まれてもよい。エアーストリッパー514は、被処理水から重炭酸塩、マンガン、ヒ素、鉄および/または硫化物を除去してもよい。重炭酸塩の除去を容易にするために、酸、例えば塩酸または硫酸をpH調整剤516の供給源から導管512(または必要に応じてブレークタンク506または導管508内)に注入して、エアーストリッパー514に入る被処理水のpHを約4.2という低い酸性pHに低下させ、重炭酸塩を空気ストリッパ514で被処理水から除去される炭酸ガスへの変換することを容易にしてもよい。被処理水に添加されるpH調整剤の量は、pH調整剤注入箇所の上流または下流の1つ以上のセンサ108A、108BからのpHおよび/または流量の読み取り値に基づいて制御してもよい。鉄、マンガン、ヒ素、および/または硫化物は、エアーストリッパー514内の媒体上に吸着されてもよく、または濾過によって除去され得る酸化固体沈殿物を形成してもよい。エアーストリッパー514を通過する水の散水流は、除去された汚染物質をドレインまたはサンプ518に流し得る。電気透析濃縮液中に塩化物を濃縮することが望ましい実施例では、pHを下方に調節するために塩酸を利用することが好ましい場合がある。他の実施例、特に1価カチオンレベルに対して1価アニオンレベルが高い水では、pHを下方に調節するために硫酸を利用することが好ましい場合がある。
【0111】
被処理水は、エアーストリッパー514を通過した後、導管520を通過して、例えば約10μmの大きさの開口を有するスクリーンフィルタを含むプレフィルタ522に達し得る。プレフィルタ522は、マイクロフィルタ、セトラー、サンドフィルタ、またはスクリーンフィルタ、マイクロサンドフィルタ、または粗大粒子フィルタのうちの任意の1つ以上を含んでもよいし、または代替的に含んでもよい。
【0112】
次いで、前もって濾過された被処理水は、導管524を通って方向付けられ、電気透析装置526の希釈区画526Aおよび濃縮区画526Bに導入されるように分割され得る。電気透析装置526の濃縮区画526Bに導入される前もって濾過された被処理水は、濃縮ループ528からの再利用濃縮補給液によって補給され得る。代替として、流入水は、独占的に希釈区画に向けられ得、電極および/または濃縮区画への補給液は、ライン5554を通るナノフィルター透過液から供給され得る。
【0113】
電気透析装置526は、被処理水から汚染物質の大部分を除去して、第1の希釈流を生成し得る。除去される汚染物質は、1つ以上のイオン種を含み得る。電気透析装置526は、例えば、分配システムまたは導管524を通して供給される被処理水から、塩化ナトリウムおよび塩化カリウムを約80%、硝酸塩を約80%除去し得る。電気透析装置526は、1価イオンと比較して2価イオンが多くなり得、更なる処理なしで農業用途に使用し得る、希釈液を生成し得る。農業用途に適するように、電気透析装置526からの希釈液は、例えば、約20未満、約18未満、約9未満、約8未満、約3未満、または約2未満のSAR値を有し得、約3,500ppm未満および/または約1,500ppmを超えるTDS値を有し得る。電気透析装置526からの希釈液中の、2価のセレン酸塩または亜セレン酸塩の濃度の塩素イオンの濃度に対する比は、被処理水のそれよりも小さくてもよく(非選択的アニオン膜を用いる場合)、電気透析装置526からの希釈液中のカルシウムイオンの濃度のナトリウムイオンの濃度に対する比は、被処理水のそれよりも大きくてもよい(1価選択的カチオン膜を用いる場合)。
【0114】
電気透析装置526からの希釈液の第1の部分は、分配システムまたは導管530および分配システムまたは導管532を通して、例えば、灌漑用水システムまたは灌漑用水の保持システムなどの、農業用の使用箇所534に向けられてもよい。電気透析装置526から農業用の使用箇所534に向けられた希釈液の第1の部分は、元の被処理水よりも、ナトリウムおよび塩素などの1価イオンの濃度比が低く、カルシウムおよびマグネシウムなどの2価イオンの濃度が高くてもよい。農業用の使用箇所534に向けられた電気透析装置526からの希釈液の第1の部分は、元の被処理水と実質的に同様の濃度を有するホウ素、セレン(または2価のセレン酸塩または亜セレン酸塩)、およびシリカを有し得る。いくつかの実施形態において、電気透析装置526からの希釈液の農業用の使用箇所534に向けられた部分は、例えばイオン交換システム555を使用して、ホウ素のレベルを低減するためにさらに処理されてもよい。ROとは異なり、シリカのレベルは濃縮液中で増加しないので、シリカはシステムを通しての水の回収を制限しない。
【0115】
電気透析装置526からの希釈液の第2の部分は、分配システムまたは導管536を通してナノ濾過装置538に導かれてもよく、必要に応じて、さらなる処理の後、ホウ素濃度をさらに低下させてもよい。使用箇所534およびナノ濾過装置538に向けられた電気透析装置526からの希釈液の相対量は、所望により、約0%から約100%、約10%から約90%、約25%から約75%、または約40%から約60%の範囲の任意の量で選択してもよい。分流バルブまたは他の形態の分流システム540を利用して、電気透析装置526から使用箇所534におよび所望に応じてナノ濾過装置538へ向けられた、希釈液の量を変化させることができる。分流バルブまたはシステム540は、コントローラ106によって操作されてもよい。コントローラ106は、1つ以上の分配システムまたは導管532または542から、あるいは使用箇所534から、1つ以上のセンサ108C、108D、108Eからの水の1つ以上のパラメータの指示を受信してもよい。水の1つ以上のパラメータは、例えば、塩分、導電率、pH、SAR値、TDS値、または任意の他のパラメータまたは関心パラメータを含んでもよい。コントローラ106は、分流バルブまたはシステム540を調節して、センサ108C、108D、108Eからの水の1つ以上のパラメータの指示に基づいて、使用箇所534およびナノ濾過装置538に向けられる電気透析装置526からの希釈液の比率を調節してもよい。コントローラ106はまた、センサ108C、108D、108Eからの水の1つ以上のパラメータの指示に基づいて、電気透析装置526の1つ以上の動作パラメータを調整してもよい。電気透析装置526の1つ以上の動作パラメータは、例えば、電流、流量、または任意の他の動作パラメータまたはパラメータを含んでもよい。
【0116】
電気透析装置526からの濃縮液は、例えば、塩素、アルカリ、塩素ガス、次亜塩素酸イオン、塩酸、または硫酸の電気化学的製造において使用するために、1つ以上の補助使用箇所546に向けて排出され得る廃棄流として、分配システムまたは導管544を通って運ばれ得る。電気化学的生成システムであってもよく、または電気化学的生成システムを含んでいてもよい補助使用箇所546で生成される酸は、例えば導管517を通してpH調整剤516の供給源を供給するために使用されてもよい。他の実施形態では、電気透析装置526からの濃縮液は、生成油回収操作で使用するための水質基準を満たし得、補助使用箇所546は、油掘削作業を含んでもよい。例えばイオン交換システム551での処理によって、電気透析装置526からの濃縮液を軟化させて、補助使用箇所546における生成油回収操作で使用する前に2価カチオンの濃度を減少させ得る。システム551は、代替的または追加的に、電気透析装置526からの濃縮液のpHを生成油回収操作での使用に適したpHに調整するための、pH調整システムを含んでもよい。1つ以上の補助使用箇所546に向けられる濃縮液の量は、電気透析装置526で生成される濃縮液の量の約5%から約10%であり得る。1つ以上の補助的な使用箇所546に向けられた濃縮液は、元の被処理水と比較して塩化ナトリウムの濃度が高くてもよく、ホウ素、セレン(または2価のセレン酸塩または亜セレン酸塩)およびシリカの濃度が、元の被処理水と実質的に同じであってもよい。電気透析装置526からの濃縮液中の2価のセレン酸塩または亜セレン酸塩イオンの濃度の塩化物イオンに対する濃度の比は、被処理水のそれより小さくてもよい。
【0117】
電気透析装置526は、非常に高い水回収率、例えば、約20%から約60%または90%以上で動作し得るが、これは1価イオンが、分配システムまたは導管544を通して送達される濃縮液中に、沈殿なしで高濃度で存在し得るからである。
【0118】
電気透析装置526からの第1の希釈流としての、部分的脱塩水の出力は、1価の塩においては許容できないほど高いままであり得、および/または2価の塩において、例えばある種の用途に対しては硫酸カルシウムおよび/または硫酸マグネシウムにおいて、高いままであり得る。したがって、第1の希釈流の少なくとも一部は、ナノ濾過装置538内でさらに処理されてもよい。ナノ濾過装置538は、低圧ナノ濾過システムであってもよく、例えば、約1から約10bar、約2から約4bar、約4bar未満、または約3bar未満の膜差圧で操作されるナノ濾過システムであってもよい。ナノ濾過装置538は、分配システムまたは導管536を通して供給された水を処理して、透過液および保持液を生成してもよい。ナノ濾過装置538を通る透過流に対する出口からの保持液流の比は、ナノ濾過保持液の溶解成分のスケーリング電位を制限するように制御し得る。ナノ濾過装置538は、電気透析装置526からの流入希釈液から大きな割合、例えば、残りの1価イオンの約50%から約95%または最大約97%までを除去し、非常に低い濃度、例えば、約500mg/L(500ppm)未満または約200ppm未満の1価イオン汚染物質を有する、透過流を生成し得る。他の実施形態では、ナノ濾過装置538は、実質的に全ての2価イオン、および約10%〜25%の1価イオンを除去して、実質的に2価イオンを有さず、わずかに削減された1価イオンのみを有する透過流を生成し得る。ナノ濾過装置538は、電気透析装置526からの希釈液中の2価カチオンの濃度よりも高いカルシウムおよびマグネシウムなどの2価カチオン濃度、および希釈液中の1価カチオンの濃度よりも低いナトリウムなどの1価カチオン濃度を有する、保持液を生成し得る。ナノ濾過装置538はまた、電気透析装置526からの希釈液の一部から追加の望ましくない成分、例えば、電気透析装置526からの希釈液の一部から追加の10%から90%の硝酸塩を除去し得る。ナノ濾過装置538からの保持液は、分配システムまたは導管542を通って使用箇所534に導かれ得、そこで農業用の電気透析装置526からの希釈液の第1の部分と組み合わせられ得る。いくつかの実施形態において、農業用使用箇所534に向けられたナノ濾過装置538からの保持液および/または電気透析装置からの希釈液は、例えばイオン交換システム557および/または555を用いて、ホウ素のレベルを低減するためにさらに処理され得る。他の場合には、電気透析供給物またはナノフィルター供給物は、水酸化ナトリウムの添加によって高いpHで操作してもよく、その結果、溶解したホウ素がイオン化されてホウ酸塩となり、次いで、アニオン膜を通じた電気透析工程中またはナノ濾過工程中のどちらかで除去され得る。酸性化およびストリッピングによる重炭酸塩除去工程の副次的利点は、電気透析およびナノフィルター装置へ、高いpHで低いスケーリング電位を有し緩衝化されていない供給水をもたらし、これによってホウ素を除去するのに十分なレベルに水のpHを増加させるために、費用対効果が比較的よい、低い量の水酸化ナトリウムが必要となることに留意されたい。
【0119】
ナノ濾過装置538からの保持液は、電気透析装置526からの希釈液のSAR値よりも低く、ナノ濾過装置538からの透過液のSAR値よりも低いSAR値を有し得る。使用箇所534は、電気透析装置526で生成された希釈液とナノ濾過装置538で生成された任意の保持液とを混合し、希釈液のSAR値と保持液のSAR値との中間のSAR値を有する灌漑用水を生成するように構成された、ミキサー(図示せず)を含んでもよい。
【0120】
いくつかの実施形態では、ナノ濾過装置538からの保持液の一部は、コントローラ106の制御下で、分流バルブまたはシステム558および導管560を通じて硫酸を製造するための電気化学的生成システム556に向けられてもよい。電気化学的生成システム556は、硫酸の電気化学的生成の前に保持液を処理するために、そこに含まれる電気化学的生成装置への入口の上流に、軟水化装置を含んでもよい。電気化学的生成システム556で生成された硫酸は、pH調整剤516の供給源に使用し得る。
【0121】
ナノ濾過装置538からの透過液は、2価イオン汚染物質および/または微粒子および/または微生物汚染物質が少ない可能性がある。ナノ濾過装置538からの透過液は、飲用に適していてもよく、例えば、WHOによって提供される認識可能な基準で定義される特性を有していてもよい。ナノ濾過装置538からの透過液は、例えば、約500ppm未満のTDSレベル、少量の2価イオン、少量の金属および微量元素、少量の硝酸塩、例えば約10ppm未満の硝酸塩、少量の微粒子および/またはコロイド状あるいは微生物学的不純物、および/または低含量有機物を含んでいてもよい。ナノ濾過装置538からの透過液の特性は、システム500が運転される管轄区域における飲用水に対する規制要件を満たし得る。ナノ濾過装置538からの透過液は、分配システムまたは導管548を通って、飲用水として使用する使用箇所550に導かれる。いくつかの実施形態において、ナノ濾過装置538からの透過液は、例えば後処理ユニット559においてさらに処理されて、pHの上方調整、pHの下方調整、塩素ガスの添加、または次亜塩素酸イオンの添加のうちの少なくとも1つを達成してもよい。
【0122】
いくつかの実施形態では、ナノ濾過装置538からの透過液の一部は、分配システムまたは導管554を通って導かれて、電気透析装置526の濃縮液補給および/または電極流として使用されてもよい。電気透析装置538の濃縮液補給として使用されるナノ濾過装置526からの透過液の一部は、導管554を通って、電気透析装置528の濃縮液再循環ループ526に導かれてもよい。電気透析装置526のための濃縮液補給として利用されるナノ濾過装置538からの透過液の量または画分は、所望に応じて選択してよい。電気透析装置526のための濃縮液補給として使用されるナノ濾過装置538からの透過液の量または割合は、例えば、ナノ濾過装置538からの透過液の質および濃縮液補給の必要性に基づいて選択され得る。ナノ濾過装置538からの透過液の質は、センサ108Fによって測定することができ、センサ108Fは、様々な実施形態において、ナノ濾過装置538からの透過液のpH、塩分、流量、イオン種、SAR値、または任意の他の所望のパラメータのうちの任意の1つ以上を測定することができる。電気透析装置526のための濃縮液補給として使用されるナノ濾過装置538からの透過液の量または画分はまた、あるいは代替的に、例えば、電気透析装置526からの希釈液の品質に基づいて選択することもできる。電気透析装置526からの希釈液の品質は、センサ108Cによって測定することができ、センサ108Cは、様々な実施形態において、電気透析装置526からの希釈液のpH、塩分、流速、イオン種、SAR値、または任意の他の所望のパラメータのうちの任意の1つ以上を測定することができる。
【0123】
バルブまたは他の分流システム552は、所望に応じて調節される電気透析装置526用の濃縮液補給として利用されるナノ濾過装置538からの透過液量を提供し得る。バルブまたは分流システム552は、システムの様々な部分に配置されたセンサ108C、108D、108E、108Fまたは他のセンサのいずれかからの情報に応答して、コントローラ106によって操作され得る。
【0124】
電気透析装置526は、1つ以上の1価のカチオン種またはアニオン種の移動を選択的に促進するための、1つ以上の1価イオン選択膜を含んでもよい。他の実施形態では、電気透析装置526において被処理水は、電気透析装置526において1価イオン選択膜を必要としないほど十分に1価イオンを低くし得る。したがって、電気透析装置526は、当技術分野において公知の標準イオン交換膜を利用することができる。これらの標準イオン交換膜は、1価イオン選択性でなくてもよい。
【0125】
上記の各システムにおいて、約66%から約95%またはそれ以上の総水回収は、低い処理コストおよび高いエネルギー効率、例えば、約2.0kwh/mの精製水またはそれ以下のエネルギー効率で可能であり得る。いくつかの実施形態において、農業または飲用に適したレベルまで精製された水のいずれも、廃水補給に使用する必要はないであろう。むしろ、電気透析システム用の濃縮液補給または電極流は、流入給水から補給することができる。これらの下流供給源からのこの補給水の供給は、記載された補給水の供給を含まないシステムと比較して、開示されたシステムの全体的な電気効率を改善することができる。
【0126】
上記のシステムで製造された飲用水は、塩分が低い可能性があり、粒子、コロイド、溶存有機物質、ウイルスまたは微生物を実質的にまたは完全に含まない可能性がある。電気透析装置からのセレンレベルが灌漑のための最低基準を満たしているが、飲用に適するための要件を超えている実施態様においては、2価のセレン酸塩または亜セレン酸塩の形態のこのセレンは、ナノ濾過工程において適切に除去されるであろう。セレンレベルが灌漑の必要量を超えている実施態様では、電気透析装置は、非選択的アニオン膜を組み込むことができ、2価のセレン酸塩または亜セレン酸塩が希釈液中で適切に減少するように動作させることができる。灌漑用給水中のセレンレベルが許容可能であるが、システムからの流出物中のセレン濃度が野生生物に有害であるような実施態様において、電気透析システムは、2価のセレン酸塩または亜セレン酸塩が濃縮区画に入るのを防ぐために、1価の選択的アニオン膜を組み込むことができる。飲用水は、例えばWHOが提供するような認識可能な基準で規定された特性を有してもよい。生産された純水のうち農業用途に適したものの留分は、高いレベルの2価イオンおよびミネラルを含むが、塩化ナトリウムまたは塩化カリウムなどの不純物の濃度は非常に低い。生産された精製水のうち農業用途に適した留分は、軟化膜による処理を必要としないことがある。上述の処理システムに流入する全水のごく一部のみを水軟化膜で処理して飲用水を生成することができるので、水軟化膜ユニットのサイズおよび投資コストおよび運転コストは、より多量の水を水軟化膜ユニットを介して処理する必要がある他のシステムと比較して、低くなり得る。また、いくつかの実施形態では、流入元の被処理水のごく一部のみが、1価イオン選択膜を含む電気透析ユニットを介して処理され、処理ユニットのサイズの減少および投資コストの減少および運転コストの減少をさらに提供する。
【0127】
いくつかの実施形態において、1価イオン選択膜を含む電気透析による2価イオンの輸送は、実質的に回避または排除されてもよい。これは、電気透析ユニットにおけるスケールの蓄積を減少させ、通常カチオンまたはアニオン選択性イオン交換膜を通るカルシウムまたは硫酸塩の輸送によって引き起こされる、pHシフトおよび高電圧を減少させ得る。
【0128】
上述の処理システムの各実施形態は、様々な実施形態の組み合わせが、給水補給および農業用または飲用の水の需要に応じて、カスタマイズされた農業用および飲用の水の生産量または品質に使用できるように、全体システム内で部分的に使用することができる。飲用水または農業用消費に適した水の量は、種々の実施形態のそれぞれを通して被処理水の流れる多少による需要に基づいて、相対的な水の回収率を変えることによって、または被処理水の塩分の変化に基づいて調節することによって、変えることができる。
【0129】
上述のように、補助システムは、後処理動作における本発明のシステムおよび技術において利用することができる。例えば、照射する(UV処理等)、酸化する、またはその他の方法で水中の微生物学的活性を減少させるような1つ以上の消毒システムを、水をさらに処理するために配置することができる。さらに、上述したように、1つ以上の貯蔵システムを使用することもできる。
【0130】
本発明のいくつかの実施形態は、1価の化学種を選択的に除去することができるので、結果として生じる二次流または濃縮流は、スケーリングおよびファウリングの影響を受けにくい。この特徴は、本発明のいくつかの分離実施形態が、非選択的技術と比較して、より高い水回収率で動作することを有利に可能とする。なぜなら、任意の二次流の容積流量は、望ましくない沈殿がない状態で、または、あまり考慮することなく、効果的に低減することができるからである。したがって、1価の化学種を選択的に分離するシステムおよび技術を利用することを目的とする本発明のいくつかの実施形態は、非選択的EDおよび蒸留ベースの分離装置と比較してより高い回収率で、さらにROおよびNFベースの分離装置と比較してより高い回収率で操作することができる。重要なことに、ROおよびNFベースの分離システムは、非1価化学種の濃度を選択的に減少させるので、これらのプロセスは、低いSAR値を有する処理水を効果的に提供することができない。
【0131】
本発明の選択的分離システムおよび技術のさらなる利点は、作物の成長にほとんどまたは全く影響を及ぼさない非イオン化種の削減または除去に関する。例えば、シリカは、通常、本発明のEDベースのシステムまたは本発明のナノフィルタベースのシステムにおいては優先的には除去されず、それによって、ROおよび蒸留装置においてシリカ含有水を処理する際に通常生じる二次流におけるスケーリングまたはファウリングの懸念を回避する。さらに、本発明のいくつかの実施形態の二次流は、通常、スケーリングが減少する傾向を有するので、本発明の分離システムおよび技術における回収率は、ROおよび蒸留ベースのシステムの回収率よりも大きくすることができる。
【0132】
ナノ濾過システムの更なる利点は、ナノ濾過器からの保持液が灌漑用水に有用となり得ることである。従って、灌漑の必要性が大きい場合には、電気透析システムからの希釈液の全てまたは大部分を、ナノフィルター、および低い水回収率で動作するナノフィルターに送ることができる。ナノフィルターが比較的低い水回収率で動作する結果として、保持液の流量が増加し、保持液の濃度が減少するため、スケーリング、ファウリングまたは高い浸透圧損失での動作が起こりにくくなる。ナノフィルターの保持液からの流出液全体が灌漑用のSARが低い水源として優れている可能性があるため、全体的な水の使用量が維持される。
【0133】
本発明のシステムのコントローラ106は、1つ以上のコンピュータシステムを使用して実施してもよい。コンピュータシステムは、例えば、Intel PENTIUM(R)型プロセッサ、Motorola PowerPC(R)プロセッサ、Sun UltraSPARC(R)プロセッサ、Hewlett−Packard PA−RISC(R)プロセッサ、または任意の他のタイプのプロセッサまたはそれらの組合せに基づく、汎用コンピュータであってもよい。コンピュータシステムは、特別にプログラムされた特定用途のハードウェア、例えば、特定用途向け集積回路(ASIC)または水処理システム用のコントローラを使用して実施してもよい。
【0134】
コンピュータシステムは、通常、1つ以上のメモリデバイスに接続された1つ以上のプロセッサを含むことができ、これは、例えば、ディスクドライブメモリ、フラッシュメモリデバイス、RAMメモリデバイス、またはデータを保存する他のデバイスのうちの任意の1つ以上を含むことができる。メモリ構成要素またはサブシステムは、通常、システム100および/またはコンピュータシステムの動作中に、プログラムおよびデータを保存するために使用される。例えば、メモリ構成要素は、動作データと同様に、ある期間にわたるパラメータに関する履歴データを記憶するために使用され得る。本発明の実施形態を実施するプログラミングコードを含むソフトウェアは、コンピュータ読み取り可能および/または書き込み可能な不揮発性記録媒体に保存することができ、次いで、通常、メモリサブシステムにコピーすることができ、そこで、1つ以上のプロセッサによって実行することができる。このようなプログラミングコードは、複数のプログラミング言語、例えば、Java、Visual Basic、C、C#、またはC++、Fortran、Pascal、Eiffel、Basicのいずれか、またはそれらの種々の組み合わせのいずれかで記述し得る。
【0135】
コンピュータシステムの構成要素は、相互接続機構によって結合してもよく、相互接続機構は、同じ装置内に統合された構成要素間の通信を提供する1つ以上のバス、および/または分離した別個のデバイス上に存在する構成要素間の通信または相互作用を提供するネットワークを含んでもよい。相互接続機構は、通常、システムの構成要素間で交換されるデータおよび命令を含むがこれらに限定されない、通信を可能にする。
【0136】
コンピュータシステムは、1つ以上の入力装置、例えば、キーボード、マウス、トラックボール、マイクロホン、タッチスクリーン、および1つ以上の出力デバイス、例えば、印刷デバイス、ディスプレイスクリーン、またはスピーカーを含んでもよい。さらに、コンピュータシステムは、システムの1つ以上の構成要素によって形成され得るネットワークに加えて、またはその代替として、コンピュータシステムを通信ネットワークに接続し得る1つ以上のインターフェースを含み得る。
【0137】
本発明の1つ以上の実施形態によれば、1つ以上の入力装置は、パラメータを測定するためのセンサを含んでもよい。代替的に、センサ、計量バルブおよび/またはポンプ、またはこれらの構成要素の全てを、コンピュータシステムに動作可能に結合された通信ネットワークに接続し得る。例えば、1つ以上のセンサ108(または108A〜108F)は、コントローラ106に直接接続される入力装置として構成されてもよく、本明細書に開示される様々な実施形態の計量バルブ、ポンプ、および/または構成要素は、コントローラ106に接続される出力装置として構成してもよい。このようなサブコンポーネントまたはサブシステムのうちの任意の1つ以上は、通信ネットワークを通してコンピュータシステムと通信するように、別のコンピュータシステムまたは構成要素に結合されてもよい。このような構成は、1つのセンサが別のセンサからかなり離れた距離に配置されることを許可し、または任意のセンサが任意のサブシステムおよび/またはコントローラからかなり離れた距離に配置されることを可能にし、その間にデータを提供する。
【0138】
コントローラは、1つ以上のプロセッサによって実行されるプログラムを定義する信号を保存することができる、読み取り可能および/または書き込み可能な不揮発性記録媒体などの1つ以上のコンピュータ記憶媒体を含むことができる。媒体は、例えば、ディスクまたはフラッシュメモリであってもよい。通常の操作では、プロセッサは、1つ以上のプロセッサによる情報へのアクセスを媒体による場合よりも高速にするために、本発明の1つ以上の実施形態を実施するコードなどのデータを記録媒体からメモリに読み込むことができる。メモリは、通常、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)またはスタティックメモリ(SRAM)などの揮発性のランダムアクセスメモリ、または1つ以上のプロセッサとの間の情報転送を容易にする他の適切なデバイスである。
【0139】
制御システムは、本発明の様々な態様を実施することができる1つのタイプのコンピュータシステムとして一例が説明されているが、本発明は、例示的に示されているように、ソフトウェアまたはコンピュータシステムで実施されることに限定されないことを理解されたい。例えば、実際には汎用コンピュータシステム上に実装されるのではなく、コントローラ、またはその構成要素またはサブセクションは、代わりに、専用システムとして、または専用プログラマブルロジックコントローラ(PLC)として、または分散制御システム内に実装されてもよい。さらに、本発明の1つ以上の特徴または態様は、ソフトウェア、ハードウェアまたはファームウェア、またはそれらの任意の組み合わせで実施され得ることを理解されたい。例えば、コントローラ106によって実行可能なアルゴリズムの1つ以上のセグメントを別々のコンピュータで実行することができ、これは1つ以上のネットワークを介して通信することができる。
【0140】
(仮想例、カリフォルニア州トランクィリティ水域)
トランクィリティ水域では、飲用水と灌漑用水の両方の需要があり、両方のタイプの水の需要を満たすことができる淡水の供給が不足している。しかし、浅部において安価な豊富で持続可能な地下水の供給を得ることができるが、地下水は塩水であり、不純物を除去せずに灌漑用水や飲用水として利用することはできない。地下水位が上昇するにつれて、他の代替的で高価なあるいは持続不可能な淡水源、例えば深い井戸からの灌漑が行われ、高価な代替純水源を使用しているにもかかわらず、地下水位が上昇して作物の根域に達し、作物収量が低下する可能性があるため、現在のこの浅部の地下水は厄介である。本発明の一実施形態は、このような問題を解決するために、非常に大量の浅部地下水を低コストで処理して、高品質の灌漑用水と飲用水の両方を持続的に提供する一方で、水位上昇の影響を低減し、野生生物に対して比較的毒性がなく、管理が容易な低量の廃棄用水を提供する。
【0141】
図4の実施形態を参照すると、そこに記載されたシステム設計は、全体として90%の水回収率での汚染物質の予想濃度を計算するために使用され、電気透析システムは、電気透析希釈液中で70%のTDS除去に制御され、濃縮液中での90%の回収率は、市販の選択性物を使用して1価の選択的アニオンおよびカチオン膜を含有し、電気透析システムへの前処理は、スクリーン型前濾過とその後の塩酸を使用したpH4.5への酸性化と、流入する重炭酸イオンおよび任意の鉄、マンガンまたは硫化物を除去し、pH5.5への上昇させるためのエアーストリッピングと、で構成される。電気透析濃縮液への濃縮液補給は、前処理流入液から取られ、濃縮区画の周囲で内部再循環される。
【0142】
トランクィリティの浅部塩水源からの水分析を以下に要約する。
TDS:3941ppm、温度68°F、供給pH6.5、イオンとしてのカルシウム240ppm、イオンとしてのマグネシウム28ppm、イオンとしてのナトリウム1080ppm、イオンとしてのカリウム12ppm、イオンとしての硫酸塩1480ppm、イオンとしての重炭酸塩(前ストリッパー)25ppm、イオンとしての塩化物(後酸性化)1076(SAR値17.6)
電気透析装置からの計算された希釈液は以下の通りである。
TDS:1209ppm、イオンとしてのカルシウム209ppm、イオンとしてのマグネシウム25ppm、イオンとしてのナトリウム140ppm、イオンとしてのカリウム2ppm、イオンとしての硫酸塩617ppm、イオンとしての重炭酸塩7ppm、イオンとしての塩化物209ppm(SAR値1.7)、この水は部分的にナノ濾過装置にも送られる。
電気透析装置からの濃縮排液の計算値は以下の通りである。
TDS27660ppm、イオンとしてのカルシウム520ppm、イオンとしてのマグネシウム16ppm、イオンとしてのナトリウム9443ppm、イオンとしてのカリウム100ppm、イオンとしての硫酸塩8630ppm、イオンとしての重炭酸塩186ppm、イオンとしての塩化物8795ppm(SAR値111)。
【0143】
このように、この希釈水はSARが1.7であり、土壌の汚染を軽減するためのアルカリ度とpHが低い灌漑用水として理想的である。そのような場合、さらに小さな電気透析システムを利用するか、さらに多くのエネルギーを節約するか、または農業での使用する用途で2価イオンをさらに多く捕獲するために、その地帯はTDSの50%または60%だけを除去し、若干高いがまだ許容可能なSAR値にシステムを操作および制御することが望まれる可能性がある。濃縮液は少量で、スケーリング電位が低く(飽和指数0.35)、流入水の10%のみがドレインに送られるか、またはさらに高濃度用途では、塩酸/硫酸、水酸化ナトリウムまたは塩素の調製のための供給として用いられるカチオンとして、主にナトリウムとなる。濃縮液はまた、例えば逆浸透圧保持によって期待されるものと比較して、セレンおよびホウ素が比較的低く、したがってより安全に廃棄できる。
【0144】
「緩い」ナノフィルターを用いて、電気透析希釈液の一部を飲用水の製造に使用する。緩いナノフィルターは、通常、2価イオンの97.5%および1価イオンの10%を排除する。供給物およびそのような排出物としての希釈液から計算すると、ナノフィルターからの透過液の計算TDS値は333であり、許容可能範囲内である。より低いTDS値が飲用に望まれる場合には、幾分「より緊密な」ナノフィルターを使用して、例えば、20%または40%以上までの1価イオンを排除することができる。ナノフィルターでは2価イオンは選択的に排除されるので、ナノフィルター保持液のSARは流入液のSAR値1.7よりもさらに低いSAR値を有することになり、したがって、保持液は単独で、または電気透析装置の希釈液と組み合わせて、灌漑用水に完全に有用となり得る。ナノフィルター装置からの回収は、内部水回収量に関係なく、保持液中の析出電位を低減するための安全係数によって厳密に決定できる。これは、保持液が灌漑用に完全に使用され得、したがって、保持液のどれもが無駄にならないという認識による。
【0145】
電気透析システムへの全DC電力は、TDSの70%のみが除去される必要があるという事実のため、3.653kWh/kgalという非常に低い希釈となる。揚水エネルギーも非常に安価であるが、それは井戸が浅く、電気透析システムは一般に低圧装置であり、ナノフィルターも低圧で動作するからである。さらに、TDSの70%がナノフィルター装置に入る前に除去されるので、浸透圧損失はナノフィルターにおいて低い。
【0146】
例示的に示された様々な実施形態は、センサを使用するものとして説明されたが、本発明は、そのように限定されないことを理解されたい。本発明は、1つ以上のシステム、サブシステム、または構成要素を改造し、本発明の技術を実施するための既存の設備の修正を意図している。したがって、例えば、既存の施設、特に農業または作物栽培施設は、本明細書で例示的に議論された任意の1つ以上の実施形態に従って、灌漑用水、飲用水、またはその両方を提供するように構成された1つ以上のシステムを含むように修正することができる。あるいは、既存のシステムおよび/またはその構成要素またはサブシステムは、本発明の任意の1つ以上の動作を実行するように修正され得る。
【0147】
さらに、本発明は、本明細書に記載されている各特徴、システム、サブシステム、または技術、および本明細書に記載されている2つ以上の特徴、システム、サブシステム、または技術の任意の組み合わせ、ならびに2つ以上の特徴、システム、サブシステム、および/または方法の任意の組み合わせに向けられており、そのような特徴、システム、サブシステム、および技術が互いに矛盾しない場合、特許請求の範囲に具体化されているように、本発明の範囲内にあると考えられることも理解されるべきである。
【0148】
請求項要素を修正するための請求項における「第1」、「第2」、「第3」等のような序数用語の使用は、それ自体では、ある請求項要素の他のものに対する優先権、優位または順序、または方法の行為が行われる時間的順序を意味するものではなく、請求項の要素を区別するために、ある名前を有する一つの請求項要素を、同じ名前を有する別の要素(ただし、序数用語を使用する場合)から区別するためのラベルとしてのみ使用される。
【0149】
当業者は、本明細書に記載されるパラメータおよび構成は例示的であり、実際のパラメータおよび/または構成は、本発明のシステムおよび技術が使用される特定の用途に依存することを理解すべきである。当業者はまた、本発明の特定の実施形態に対する等価物を、ルーチンの実験のみを用いて認識し、または確認することができるはずである。したがって、本明細書に記載される実施形態は、単なる例として提示され、添付の特許請求の範囲およびその均等物の範囲内であることを理解されたい。本発明は、具体的に記載された以外の方法で実施することができる。
【0150】
本明細書中で使用される、「複数」という用語は、二つ以上の物品または要素を指す。「備える」、「含む」、「実行する」、「有する」、「含有する」、「内包する」という用語は、明細書または特許請求の範囲等のいずれにおいても、オープンエンドの用語であり、すなわち、「含むが、それに限定されない」を意味するものである。したがって、このような用語の使用は、その後に列挙された項目およびその均等物、並びに追加の項目を包含することを意味する。移行句「からなる」および「本質的に〜からなる」のみが、クレームに関してそれぞれ限定的な、または半限定的な移行句である。さらに、水、特に処理水に関する「飲用できる」という用語の使用は、本発明の主題の範囲を制限するものではなく、消費を含む、家畜の使用に適した水を指すことができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】