【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態では、この目的は、腫瘍疾患、好ましくは結腸がんの治療を必要とする対象の当該治療における使用のためのTLR−9アゴニストであって、
i.少なくとも1つの非メチル化CGジヌクレオチド(ここで、Cはデオキシシチジンであり、Gはデオキシグアノシンである)を含むオリゴデオキシリボヌクレオチドと、
ii.少なくとも3つ、特に4つの連続したデオキシグアノシンの少なくとも1つのストレッチ
と
を含み、
オリゴデオキシリボヌクレオチドのデオキシリボース部分がホスホジエステル結合によって連結されており、前記TLR−9アゴニストによる治療がCD3+ T細胞の腫瘍への浸潤を刺激する、TLR−9アゴニストを提供することによって解決される。
【0008】
好ましい実施形態では、浸潤性CD3+ T細胞は、CD4+またはCD8+ T細胞であり、より好ましい実施形態では、CD8+ T細胞である。別の好ましい実施形態では、前記TLR−9アゴニストによる治療は、腫瘍中のCD8+ T細胞集団内の細胞傷害性エフェクターT細胞(CD8+ CD69+ グランザイム(Grz)B+)の頻度を増加させる。また細胞傷害性エフェクターT細胞(CD8+ CD69+ グランザイムB+)の集団は、細胞溶解能を有する活性化CD8+ T細胞とも呼ぶことができ、すなわち、この細胞集団は、好ましくは抗腫瘍形成能を有する。
【0009】
別の好ましい実施形態では、前記TLR−9アゴニストによる治療は、CD8+ T細胞、好ましくは細胞傷害性エフェクターT細胞(CD8+ CD69+ グランザイムB+)の制御性T細胞に対する比率を増加させる。制御性T細胞は、腫瘍形成促進能を有する。制御性T細胞は、例えば、抑制性サイトカインの分泌、IL−2の欠乏により、またはそれらの表面で発現される抑制性分子(例えばCTLA−4)により、T細胞の抗腫瘍効果を抑制することができる。
【0010】
それに加えて、1つの目的は、前記TLR−9アゴニストによる治療が、CD3+ T細胞の腫瘍への浸潤を刺激するためのものであるということである。好ましい実施形態では、前記TLR−9アゴニストによる治療は、腫瘍中のCD8+ T細胞集団内の細胞傷害性エフェクターT細胞(CD8+ CD69+ グランザイム(Grz)B+)の頻度を増加させるため、および/またはCD8+ T細胞、好ましくは細胞傷害性エフェクターT細胞(CD8+ CD69+ Granzyme B+)対制御性T細胞の比率を増加させるためである。
【0011】
一実施形態では、腫瘍は、その周辺および/またはその中心、好ましくはその中心に浸潤している。
【0012】
それに加えて、1つの目的は、前記TLR−9アゴニストによる治療が、腫瘍にその周辺および/またはその中心、好ましくはその中心で浸潤させるためのものであるということである。
【0013】
一実施形態では、腫瘍は固形腫瘍、好ましくは結腸がんであり、治療される対象はヒトである。
【0014】
さらに、本発明の目的は、それを必要とする患者にTLR−9アゴニストを投与することを含む、CD3+ T細胞、好ましくはCD8+ T細胞の腫瘍、好ましくは結腸がんへの浸潤を増加させる方法であって、TLR−9アゴニストが、
i.少なくとも1つの非メチル化CGジヌクレオチド(ここで、Cはデオキシシチジンであり、Gはデオキシグアノシンである)を含むオリゴデオキシリボヌクレオチドと、
ii.少なくとも3つ、特に4つの連続したデオキシグアノシンの少なくとも1つのストレッチ
と
を含み、
オリゴデオキシリボヌクレオチドのデオキシリボース部分がホスホジエステル結合によって連結されている、方法を適用することによって解決される。
【0015】
別の実施形態では、前記方法は、腫瘍中のCD8+ T細胞集団内の細胞傷害性エフェクターT細胞(CD8+ CD69+ グランザイムB+)の頻度を増加させるのに有用である。
【0016】
別の実施形態では、前記方法は、CD8+ T細胞、好ましくは細胞傷害性エフェクターT細胞(CD8+ CD69+ グランザイムB+)対制御性T細胞の比率を増加させるのに有用である。
【0017】
本発明者らは、そのようなTLR−9アゴニストがT細胞の腫瘍への輸送の増加をもたらすことができることを見出した。それに加えて、TMEおよび/または腫瘍におけるT細胞の局所濃度が上昇し、すなわち、T細胞は腫瘍に近接して蓄積し、そこで腫瘍に浸潤する。したがって、TMEによるT細胞の制限は克服されたように見える。したがって、T細胞は、それらの抗腫瘍効果を示すことができる。したがって、本発明の特定の一態様では、TLR−9アゴニストを使用して、CD3+ T細胞、好ましくはCD8+ T細胞の効力を増加させる。
【0018】
別の実施形態では、本発明の目的は、それを必要とする対象の腫瘍疾患、好ましくは結腸がんの治療における使用のためのTLR−9アゴニストであって、
i.少なくとも1つの非メチル化CGジヌクレオチド(ここで、Cはデオキシシチジンであり、Gはデオキシグアノシンである)を含むオリゴデオキシリボヌクレオチドと、
ii.少なくとも3つ、特に4つの連続したデオキシグアノシンの少なくとも1つのストレッチと
を含み、
オリゴデオキシリボヌクレオチドのデオキシリボース部分がホスホジエステル結合によって連結されており、前記TLR−9アゴニストによる治療が、マクロファージ、好ましくはM1マクロファージの腫瘍への浸潤を刺激し、および/または前記TLR−9アゴニストによる治療が、腫瘍内のM1マクロファージ対M2マクロファージの比率を増加させる、TLR−9アゴニストを提供することによって解決される。
【0019】
それに加えて、1つの目的は、前記TLR−9アゴニストによる治療が、マクロファージ、好ましくはM1マクロファージの腫瘍への浸潤を刺激することであり、および/または前記TLR−9アゴニストによる治療が、腫瘍内のM1マクロファージ対M2マクロファージの比率を増加させることである。
【0020】
好ましくは、CD3+ T細胞および/もしくはマクロファージ、好ましくはM1マクロファージによる腫瘍の浸潤は、TLR−9アゴニスト治療なしの浸潤と比較して刺激され、ならびに/または腫瘍内のM1マクロファージ対M2マクロファージの比率は、TLR−9アゴニスト治療なしのM1マクロファージ対M2マクロファージの比率と比較して増加される。
【0021】
別の実施形態において、本発明の目的は、それを必要とする対象にTLR−9アゴニストを投与することを含む、マクロファージ、好ましくはM1マクロファージの腫瘍、好ましくは結腸がんへの浸潤を増加させる方法、および/または腫瘍、好ましくは結腸がん内のM1マクロファージ対M2マクロファージの比率を増加させる方法であって、TLR−9アゴニストが、
i.少なくとも1つの非メチル化CGジヌクレオチド(ここで、Cはデオキシシチジンであり、Gはデオキシグアノシンである)を含むオリゴデオキシリボヌクレオチドと、
ii.少なくとも3つ、特に4つの連続したデオキシグアノシンの少なくとも1つのストレッチ
と
を含み、
オリゴデオキシリボヌクレオチドのデオキシリボース部分がホスホジエステル結合によって連結されている、方法を適用することによって解決される。
【0022】
本発明のさらに別の特に好ましい実施形態では、上記で定義されたTLR−9アゴニストを使用して、いわゆる「低免疫原性腫瘍(cold tumors)」−すなわち、免疫細胞浸潤が低度の腫瘍−を免疫原性腫瘍である「高免疫原性腫瘍(hot tumors)」、すなわち、免疫細胞浸潤が中度または高度の腫瘍に変換する。「低免疫原性」および「高免疫原性」腫瘍の概念は、当業者には周知である。低免疫原性腫瘍は、通常、免疫抑制性サイトカインに富んでおり、多数のTreg細胞および骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)を有する。低免疫原性腫瘍は、通常、T
H1細胞、NK細胞、CD8+ T細胞は少数であり、機能性抗原提示細胞(APC)(例えば、樹状細胞/DC)はほとんど存在しない。対照的に、高免疫原性腫瘍はT
H1型のケモカインに富んでおり、多数のエフェクター免疫細胞(T
H1細胞、NK細胞、CD8+ T細胞)と多数のDCを有する。
【0023】
免疫細胞浸潤度は、例えば、いわゆる「Immunoscore」によって測定することができ、これはがん患者における臨床転帰を予測するために使用されている。コンセンサスImmunoscoreは、腫瘍内およびその浸潤周縁部のCD3+およびCD8+ T細胞の密度をまとめたスコアリングシステムである。例えば、Immunoscoreは、CD3+/CD8+ T細胞密度に応じて、低度、中度、高度に分類することができるが、引用文献の研究において、0〜25%密度は、好ましくは低度としてスコアリングされ、25〜70%密度は、中度としてスコアリングされ、70〜100%密度は、好ましくは高度としてスコアリングされている(Pages F.ら (2018) Lancet 391(10135):2128〜2139を参照)。低免疫原性腫瘍は、低度の免疫細胞浸潤を有すると定義され、すなわち好ましくは、低度Immunoscoreを有すると定義される。高免疫原性腫瘍は、中度または高度の免疫細胞浸潤を有すると定義され、すなわち好ましくは、中度または高度Immunoscoreを有すると定義される。
【0024】
いくつかの腫瘍タイプは、治療前であっても高免疫原性腫瘍のタイプに属し、例えば黒色腫である。これらの腫瘍は、通常、薬物、例えばチェックポイント阻害薬に良好に応答する。本発明は、これらの腫瘍におけるTLR−9アゴニストの投与によりT細胞の活性化および免疫細胞の腫瘍への浸潤がさらに増強されることを示唆している。またTLR−9アゴニストによる治療は、他の薬物、例えばチェックポイント阻害剤に対する腫瘍の応答性を増強し得る。
【0025】
低免疫原性腫瘍は、通常、チェックポイント阻害薬などの薬剤には良好に応答しない。本発明は、TLR−9アゴニストが免疫細胞の腫瘍への浸潤を増加させ、それによりTMEにプラスに影響を及ぼすことによって、そのような応答性を改善することができることを示唆している。したがって、低免疫原性腫瘍に罹患している患者は、TLR−9アゴニストによる治療からとりわけ恩恵を受ける。腫瘍は、結果として、チェックポイント阻害薬などの薬物に対してより良好な応答性を示すことができる。低免疫原性腫瘍は、それにより高免疫原性腫瘍に変わり得る。
【0026】
この特定の使用に対して特に好ましいTLR−9アゴニストは、Lefitolimodである。
【0027】
一実施形態では、CD3+ T細胞、好ましくはCD8+ T細胞の腫瘍、好ましくは結腸がんへの浸潤を増加させるため、および/または腫瘍中のCD8+ T細胞集団内の細胞傷害性エフェクターT細胞(CD8+ CD69+ グランザイムB+)の頻度を増加させるため、および/またはCD8+ T細胞、好ましくは細胞傷害性エフェクターT細胞(CD8+ CD69+ グランザイムB+)対制御性T細胞の比率を増加させるため、および/またはマクロファージ、好ましくはM1マクロファージの腫瘍への浸潤を増加させるため、および/または腫瘍内のM1マクロファージ対M2マクロファージの比率を増加させるためのTLR−9アゴニストの使用であって、TLR−9アゴニストが、
i.少なくとも1つの非メチル化CGジヌクレオチド(ここで、Cはデオキシシチジンであり、Gはデオキシグアノシンである)を含むオリゴデオキシリボヌクレオチドと、
ii.少なくとも3つ、特に4つの連続したデオキシグアノシンの少なくとも1つのストレッチ
と
を含み、
オリゴデオキシリボヌクレオチドのデオキシリボース部分がホスホジエステル結合によって連結されている、使用が提供される。
【0028】
したがって、本発明の場合のTLR−9アゴニストの投与は、腫瘍増殖速度を低下させる。これは、以下の実施例の項目でより詳細に説明されているように、マウス結腸がんモデル(CT26)において本発明者らにより実証され得る。
【0029】
本発明の好ましい実施形態では、TLR−9アゴニストは、直接腫瘍に、すなわち、腫瘍内に、または皮下に投与することができる。皮下注射は、好ましくは、総称して皮膚と呼ばれる、真皮および表皮の真下の皮膚層である皮下に投与される。下記の実施例の項目で示しているように、ヒトにおける皮下適用を模倣するために、マウスを、接種した腫瘍の流入リンパ領域から遠位の離れた部位で皮下処置した。腫瘍内注射は、腫瘍に、好ましくは腫瘍の中心に直接投与される。
【0030】
皮下注射は多くの腫瘍タイプで可能であり、転移性腫瘍を標的とするために使用することもできる。腫瘍内注射については、腫瘍は、好ましくは非転移性であり、例えば、黒色腫または頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)に容易に利用可能である。しかし、肝転移は、腫瘍内注射により、好ましくは画像支援注射により標的とすることもできる。皮下注射は、長期間にわたり繰り返し使用することができる。腫瘍内注射は、TLR−9アゴニストが腫瘍に直接適用されるので、皮下注射と比較して低用量とすることができる。本発明のTLR−9アゴニスト、好ましくは、Lefitolimodは、ホスホロチオエートの欠如の結果、毒性が低いことから高用量で適用することができる。
【0031】
トール様受容体(TLR)は、当業者には公知である。それらは免疫系の多くの細胞に存在し、自然免疫応答に関与していることが明らかになっている。脊椎動物において、このファミリーは、細菌、真菌、寄生虫、およびウイルスからの病原体関連分子パターンを認識することが知られているTLR−1からTLR−11と呼ばれる11個のタンパク質で構成されている。
【0032】
TLRは、脊椎動物が外来分子を認識し、それに対する免疫応答を始める重要な手段であり、自然免疫応答と適応免疫応答が関連付けされる手段も提供する((Akira, S.ら (2001) Nature Immunol. 2:675〜680; Medzhitov, R. (2001) Nature Rev. Immunol. 1 : 135〜145))。いくつかのTLRは細胞表面に配置され、細胞外病原体に対する応答を検出および開始し、他のTLRは細胞の内部に配置されて、細胞内病原体に対する応答を検出および開始する。
【0033】
TLR−9は、細菌DNAおよび合成オリゴヌクレオチドの非メチル化CpGモチーフを認識することが知られている(Hemmi, H.ら (2000) Nature 408:740〜745)。TLR−9の天然に存在するアゴニストは、抗腫瘍活性(例えば、腫瘍増殖および血管新生)を生じ、有効な抗がん応答(例えば抗白血病)をもたらすことが明らかになっている(Smith, J.B.およびWickstrom, E. (1998) J. Natl. Cancer Inst. 90: 1146〜1154)。
【0034】
本発明のTLR−9アゴニストは、少なくとも1つの非メチル化CGジヌクレオチド(ここで、Cはデオキシシチジンであり、Gはデオキシグアノシンである)を含むオリゴデオキシリボヌクレオチドと、少なくとも3つ、特に4つの連続したデオキシグアノシンの少なくとも1つのストレッチを含み、オリゴデオキシリボヌクレオチドのデオキシリボース部分はホスホジエステル結合によって連結されている。
【0035】
好ましいTLR−9アゴニストは、少なくとも1つの非メチル化CGジヌクレオチド(ここで、Cはデオキシシチジンであり、Gはデオキシグアノシンである)を含むオリゴデオキシリボヌクレオチドと、少なくとも3つの、特に4つの連続したデオキシグアノシンの少なくとも1つのストレッチとを含み、オリゴデオキシリボヌクレオチドのデオキシリボース部分は、ホスホジエステル結合によって連結されており、ここで、少なくとも1つのCGジヌクレオチドは配列N
1N
2CGN
3N
4の一部であり、N
1N
2はAA、TT、GG、GT、GAまたはATであり、N
3N
4はCT、TT、TGまたはGGであり、Cはデオキシシチジンであり、Gはデオキシグアノシンであり、Aはデオキシアデノシンであり、Tはデオキシチミジンである。
【0036】
一実施形態では、オリゴデオキシリボヌクレオチドは、少なくとも1つのL−体のヌクレオチドを含み、好ましくは、少なくとも1つのL−体のヌクレオチドは、オリゴデオキシリボヌクレオチドの少なくとも一端の末端5ヌクレオチド以内に含まれており、好ましくはオリゴデオキシリボヌクレオチドの3’末端の末端5ヌクレオチド以内に含まれている。
【0037】
一実施形態では、少なくとも1つのL−体のヌクレオチドを含むTLR−9アゴニストは、1つまたは複数の以下の特徴を有する:
− 少なくとも3つ、特に4つの連続したデオキシグアノシンの少なくとも1つのストレッチがオリゴデオキシリボヌクレオチドの5’末端に位置しており、
− 少なくとも3つの連続したデオキシグアノシンの少なくとも1つのストレッチが2つのCGジヌクレオチド間に位置しており、
− 少なくとも3つ、特に5つの連続したデオキシチミジンの1つのストレッチがオリゴデオキシリボヌクレオチドの3’末端に位置しており、
− 3つの3’末端および/または5’末端デオキシヌクレオチドの少なくとも1つがL−体であり、
− 3つの3’末端デオキシヌクレオチドのうち2つがL−体であり、
− 第1および第2の5’末端デオキシヌクレオチドがL−体である。
【0038】
特に好ましい実施形態では、L−体に少なくとも1つのヌクレオチドを含むTLR−9アゴニストにおいて、
− 少なくとも3つ、特に4つの連続したデオキシグアノシンの少なくとも1つのストレッチがオリゴデオキシリボヌクレオチドの5’末端に位置しており、
− 3つの3’末端デオキシヌクレオチドのうち2つがL−体であり、
− 少なくとも3つ、特に5つの連続したデオキシチミジンの1つのストレッチがオリゴデオキシリボヌクレオチドの3’末端に位置している。
【0039】
一実施形態では、オリゴデオキシリボヌクレオチドは、少なくとも3つのCGジヌクレオチドを含む。
【0040】
一実施形態では、オリゴデオキシリボヌクレオチドは、一本鎖および/または部分的もしくは完全二本鎖である。
【0041】
一実施形態では、オリゴデオキシリボヌクレオチドは、2つの一本鎖ループを含み、ダンベルの形状を形成する。
【0042】
一実施形態では、すべてのヌクレオチドはD−体である。
【0043】
本発明による好ましいTLR−9アゴニストは、特にEP1196178に開示されているオリゴデオキシリボヌクレオチドであり、最も好ましくは、INN Lefitolimod下で当業者に公知の免疫調節剤オリゴデオキシリボヌクレオチドである(CAS登録番号1548439−51−5;「MGN1703」としても知られている;
図1;配列番号3を参照)。Lefitolimod(MGN1703)は、自然免疫系および適応免疫系に対して広範な免疫調節作用を有する、共有結合で閉じたダンベル様の免疫監視再活性化因子である。Lefitolimodは、現在、mCRC患者におけるフェーズ3試験(IMPALA試験)、SCLC患者におけるフェーズ2試験(IMPULSE試験)、ならびに(i)チェックポイント阻害剤イピリムマブと組み合わせにおける固形腫瘍、および(ii)HIV患者(TEACH試験)での2つのフェーズ1/2試験で評価されている。
【0044】
本発明のTLR−9アゴニストにおいて、オリゴデオキシリボヌクレオチドのデオキシリボース部分は、ホスホジエステル結合により連結されている。これは、オリゴデオキシリボヌクレオチドのデオキシリボース部分がホスホロチオエート結合により連結されていないことを意味する。
【0045】
本発明による使用に適し得るさらに好ましいTLR−9アゴニストは、EP2655623B1およびEP2999787B1に開示されている。本発明による他のさらに好ましいTLR−9アゴニストは、
図2に示したような配列番号4および5および6〜14として開示されているTLR−9アゴニストである。しかし、本発明での使用において最も好ましいTLR−9アゴニストは、Lefitolimod(配列番号3)である。少なくとも1つのL−体のヌクレオチドを含むTLR−9アゴニストのうち、配列番号5、8、9および10の配列が好ましい。配列番号5が最も好ましい。
【0046】
本発明による腫瘍疾患とは新生物を指し、これは言い換えれば、組織の異常および過度の増殖のタイプを意味する。新生物は、良性新生物および悪性新生物を含む。悪性新生物または腫瘍は、がんと呼ばれる場合もある。固形腫瘍は、通常、嚢胞または液体の領域を含まない組織の異常な塊と呼ぶことができる。固形腫瘍は、良性または悪性であり得る。固形腫瘍の例は、肉腫、癌種、およびリンパ腫、例えば、乳癌、黒色腫、皮膚新生物、結腸癌を含む胃腸腫瘍、胃癌、膵臓癌、結腸がん、小腸がん、卵巣癌、子宮頸癌、肺がん、前立腺がん、腎細胞癌および/または肝転移である。白血病は、一般に固形腫瘍を形成しない。結腸がんまたは結腸直腸がんは、結腸または直腸の内壁から発生する悪性腫瘍である。結腸がんは固形腫瘍である。
【0047】
好ましくは、本発明の腫瘍疾患は固形腫瘍であり、好ましくは結腸がんである。他の好ましい腫瘍は、結腸直腸がんおよび黒色腫である。
【0048】
細胞、例えばT細胞またはマクロファージは、腫瘍に浸潤することができる。腫瘍浸潤は、例えばケモカインに応じた、腫瘍の外側から腫瘍組織への細胞の遊走を意味するものと理解されたい。
【0049】
細胞が腫瘍に浸潤した場合、細胞は続いて腫瘍内に存在する。本発明の一実施形態では、TLR−9アゴニストは、マクロファージ、好ましくはM1マクロファージの腫瘍への浸潤を刺激し、および/または前記TLR−9アゴニストによる治療は、腫瘍内のM1マクロファージ対M2マクロファージの比率を増加させる。本発明の意味における「腫瘍内」とは、腫瘍における細胞を意味する。腫瘍内の比率の増加は、それぞれの細胞の腫瘍への浸潤の増加、または、例えばM2マクロファージからM1マクロファージへの変換、またはM1マクロファージへのマクロファージ前駆体の分化のM2マクロファージを超える増加によって生じ得る。
【0050】
腫瘍の「浸潤周縁部」または「周辺」は、悪性細胞巣を宿主組織から分ける境界を中心とする領域を意味するものとする。腫瘍の「中心」は、残りの腫瘍領域を表す。
【0051】
本発明の意味において、細胞浸潤の「刺激」とは、腫瘍内のそれぞれの細胞型の量の増加を意味する。
【0052】
頻度という用語は、親細胞集団内の特定の細胞集団の頻度を意味し、例えばCD8+ T細胞集団内の細胞傷害性エフェクターT細胞(CD8+ CD69+ グランザイム(Grz)B+)の頻度を意味する。
【0053】
比率という用語は、重複しない2つの定義した細胞集団間の関係または比率を意味し、例えばM1マクロファージ対M2マクロファージの比率を意味する。
【0054】
腫瘍へのCD3+ T細胞の浸潤は、CD3の検出により同定することができる。CD3は、腫瘍サンプル中のリンパ球を検出に使用されてきた(GI Cancersの「Immunotherapy Doubts Fading」、2016年4月)。マクロファージの浸潤は、マーカーCD11bおよびF4/80により検出することができる。次いで、M1マクロファージ(MHC−II/CD86高)とM2マクロファージ(MHC−II/CD86低)を区別することができる。
【0055】
また腫瘍免疫浸潤は、マイクロアレイまたはRNAシーケンシングなどの遺伝子発現方法を使用して決定することができる。次いで、様々な種類の免疫細胞集団に特異的な遺伝子発現の検出を使用して、乳がんでリンパ球浸潤について明らかにされているように、リンパ球またはマクロファージ浸潤の程度を決定することができる(Bedognetti, Davide; Hendrickx, Wouter; Marincola, Francesco M.; Miller, Lance D. 「Prognostic and predictive immune gene signatures in breast cancer.」 Current Opinion in Oncology. 27 (6): 433〜444)。腫瘍内の活性免疫環境は、拒絶反応の免疫学的定数によって決定され得る場合、より良好な予後を示すことが多い。
【0056】
上記のように、T細胞はマーカーCD3によって同定することができる。T細胞は、2つの主要な集団:CD4+ ヘルパーT細胞およびCD8+細胞傷害性T細胞に分けられる。CD4+ ヘルパーT細胞は、B細胞を活性化して抗体分泌プラズマ細胞またはメモリーB細胞に分化させるために必須である。またCD4+陽性T細胞は、免疫応答を形成するために、CD8+ T細胞の分化とサイトカイン(Th1サイトカイン−例えばIFN−γまたはTh2サイトカイン−例えばIL−4)の分泌を促進する。CD8+ T細胞は、腫瘍細胞(または感染細胞)によってMHC Iのコンテキストで提示される特定のペプチドを認識し、可溶性分子(パーフォリン、グランザイム、グラニュロシン)または膜結合分子(Fas−リガンド)によるそれらの破壊を誘導する。細胞傷害性エフェクターT細胞、すなわち、活性化され細胞溶解能を有するT細胞は、マーカーCD8、CD69およびグランザイムBによって検出することができる。制御性T細胞は、マーカーCD3、CD4およびFOXP3によって検出することができる。
【0057】
CD3の代替マーカーとして、Thy1を使用することができるが、その理由は、CD3が細胞の活性化する際にダウンレギュレートされ得るからである。
【0058】
CD3+ T細胞を同定する各種方法は当業者には公知であり、それらは、例えば、フローサイトメトリーまたは免疫組織学(IHC)によって同定することができる。フローサイトメトリーは複数のマーカーを並行して使用し細胞を詳細に分析することができるが、免疫組織学的分析は、細胞の局在に関する情報(腫瘍中心/腫瘍周辺/周囲の健康組織)を提供する。したがって、IHCを使用すると、当業者は腫瘍の周辺または中心におけるT細胞の局在を同定することができる。周辺または浸潤周縁部は、健康な組織に隣接する腫瘍の境界を意味する。T細胞が腫瘍の中心に浸潤することが好ましい。
【0059】
本発明により使用されるオリゴデオキシリボヌクレオチドは、好ましくは、二本鎖ステムおよび2つの一本鎖ループを含み、ダンベルの形状を形成する。オリゴデオキシリボヌクレオチドは、好ましくは、共有結合で閉じられている。少なくとも1つのCGジヌクレオチドが一本鎖ループの1つまたはそれぞれに位置する場合に有利である。
【0060】
本開示による「ステム」とは、同じDNA分子内(次いで部分的に自己相補的)または異なるDNA分子内(部分的にもしくは完全に相補的)のいずれかで塩基対合によって形成されるDNA二本鎖として理解されたい。分子内塩基対合は同一分子内の塩基対合を示し、異なるDNA分子間の塩基対合は分子間塩基対合と呼ばれる。
【0061】
本開示の意味内の「ループ」とは、ステム構造の内部または末端のいずれかの対になっていない一本鎖領域として理解されたい。
【0062】
「ダンベル形状」は、二本鎖ステム(同一オリゴヌクレオチド内の塩基対合)および二本鎖ステムの両末端の2つの一本鎖ループを含むオリゴヌクレオチドを意味する。
【0063】
これらのダンベル形状のオリゴヌクレオチドでは、好ましくは、すべてのヌクレオチドがD−体である。さらに、オリゴデオキシリボヌクレオチドは、少なくとも50ヌクレオチド、好ましくは少なくとも80ヌクレオチド、最も好ましくは116ヌクレオチドを含むことが好ましい。このタイプのTLR−9アゴニストの2つの好ましい典型のヌクレオチド配列を
図2に示す(配列番号3および配列番号4)。
【0064】
本発明による最も好ましいTLRアゴニストは、Lefitolimod(配列番号3)である。
【0065】
L−DNAまたはL−体のヌクレオチドは、天然に存在するD−デオキシリボースの代わりに糖残基としてL−デオキシリボースを含むヌクレオチドを意味する。L−デオキシリボースは、D−デオキシリボースのエナンチオマー(鏡像)である。L−体のヌクレオチドから部分的または完全に構成されるDNA構築物は、部分的または完全に一本鎖または二本鎖であり得る。L−DNAは、D−DNAと同等の溶解性および選択性がある。しかし、L−DNAは、天然に存在する酵素、特にエキソヌクレアーゼによる分解に対して耐性があり、そのため、L−DNAは生物学的分解から保護されている。したがって、L−DNAは非常に広範囲で適用することができる。
【0066】
少なくとも1つのL−体のヌクレオチドを含む好ましいTLR−9アゴニストのヌクレオチド配列は、
図2に示している(配列番号5〜14)。配列番号5、8、9および10のヌクレオチド配列がより好ましい。
【0067】
少なくとも1つのL−体のヌクレオチドを含む最も好ましいTLR9−アゴニストは、配列番号5のヌクレオチド配列を有するTLR9−アゴニストである。
【0068】
本発明のさらなる実施形態では、TLR−9アゴニスト、好ましくはすべてのヌクレオチドがD−体であるTLR−9アゴニストを含む医薬組成物が提供され、これは腫瘍疾患、好ましくは結腸がんの治療に適し得る。この医薬組成物は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に、1mg/ml〜50mg/ml、好ましくは10mg/ml〜20mg/ml、より好ましくは15mg/mlのTLR−9アゴニストを含み、PBSはpH6〜8、特に7.0〜7.5のpHを有し、
− 6mg/ml〜12mg/ml、好ましくは8.8mg/mlの塩化ナトリウム、
− 0.1mg/ml〜0.3mg/ml、好ましくは0.22mg/mlの塩化カリウム、
− 0.1mg/ml〜0.3mg/ml、好ましくは0.22mg/mlのリン酸二水素カリウム、および
− 1.0mg/ml〜1.5mg/ml、好ましくは1.265mg/mlのリン酸水素二ナトリウム
を含む。
【0069】
特に好ましい実施形態では、PBSは、7.2〜7.6のpHを有し、
− 8.0mg/mlの塩化ナトリウム、
− 0.2mg/mlの塩化カリウム、
− 0.2mg/mlのリン酸二水素カリウム、および
− 1.15mg/mlのリン酸水素二ナトリウム
を含む。
【0070】
腫瘍内注射については、ヒト患者における好ましい週用量は、約10〜約30mg/週、好ましくは約15mg/週である。皮下注射については、ヒト患者における好ましい週用量は、約100〜約150mg/週、好ましくは約120mg/週であり、これは数回投与で、例えば約60mgを週2回、または約120mgを週に1回で適用することができる。
【0071】
上記の好ましい医薬組成物では、TLR−9アゴニストはLefitolimod(配列番号3)である。
【0072】
さらなる実施形態では、少なくとも1つのL−体のヌクレオチドを含むTLR−9アゴニストを含む医薬組成物が提供され、これは腫瘍疾患、好ましくは結腸がんの治療に適し得る。この医薬組成物は、グルコースを含む塩溶液中に少なくとも1つのL−体のヌクレオチドを含むTLR−9アゴニストを1mg/ml〜30mg/ml、好ましくは10mg/ml〜20mg/ml含む。グルコースは、好ましくは、3%〜7%の濃度、よりさらに好ましくは5%の濃度である。塩溶液は、好ましくは、0.1〜10mMのKCl、より好ましくは0.5〜3mMのKCl、よりさらに好ましくは1mMのKClである。
【0073】
したがって、少なくとも1つのL−体のヌクレオチドを含むTLR−9アゴニストを含む好ましい医薬組成物は、5%グルコースおよび1mMのKCl中に少なくとも1つのL−体のヌクレオチドを含むTLR−9アゴニストを10mg/ml〜20mg/ml含む。
【0074】
少なくとも1つのL−体のヌクレオチドを含む好ましいTLR−9アゴニストは、配列番号5の配列を有するオリゴデオキシヌクレオチドである。
【0075】
本発明の好ましい一実施形態によれば、TLR−9アゴニスト、好ましくは、Lefitolimodは、単剤療法として使用される。用語「単剤療法」とは、特定の障害または疾患を治療するための単一の活性医薬成分(API)としての薬物の使用を意味する。したがって、単剤療法では、薬物は別の薬物と組み合わせることなく投与される。
【0076】
別の好ましい実施形態では、それを必要とする対象の腫瘍疾患、好ましくは結腸がんの治療における使用のためのTLR−9アゴニストならびに化学療法剤および/またはチェックポイント阻害剤を含む組合せであって、前記TLR−9アゴニストが、
i.少なくとも1つの非メチル化CGジヌクレオチド(ここで、Cはデオキシシチジンであり、Gはデオキシグアノシンである)を含むオリゴデオキシリボヌクレオチドと、
ii.少なくとも3つ、特に4つの連続したデオキシグアノシンの少なくとも1つのストレッチ
と
を含み、
オリゴデオキシリボヌクレオチドのデオキシリボース部分がホスホジエステル結合によって連結されており、前記TLR−9アゴニストによる治療が、CD3+ T細胞の腫瘍への浸潤を刺激し、および/またはマクロファージ、好ましくはM1マクロファージの腫瘍への浸潤を刺激し、および/または腫瘍内のM1マクロファージ対M2マクロファージの比率を増加させる、組合せが提供される。
【0077】
組合せの成分、すなわち、TLR−9アゴニストならびに化学療法剤および/またはチェックポイント阻害剤は、したがって、同時におよび/または連続して一緒に適用することができる。したがって、一実施形態では、治療される対象は、別のがん治療を既に受けている、および/またはその後に別のがん治療を受ける。「別のがん治療」とは、例えば、放射線療法ならびに/または化学療法剤および/もしくはチェックポイント阻害剤の適用、好ましくは化学療法剤および/またはチェックポイント阻害剤の適用を意味し得る。
【0078】
当業者には、適切な化学療法剤は公知である。前臨床データおよび臨床データは、特定の従来の化学療法が免疫刺激機序を介して部分的に作用し得ることを示唆している。そのような化学療法剤が好ましい。例えば、アントラサイクリンは、制御された免疫原性細胞死(ICD)表現型を駆動し、TMEにおける免疫抑制経路を直接的に遮断する。免疫原性細胞死を誘発するか免疫抑制経路を遮断する化学療法薬は、例えば、オキサリプラチン、カルボプラチン、シクロホスファミド、パクリタキセル、5−フルオロウラシル、ドキソルビシン、エピルビシン(epirubucin)、イダルビシン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、ボルテゾミブである。
【0079】
化学療法の代わりに、または化学療法に加えて、「標的抗がん剤」、例えばチロシンキナーゼ阻害剤を使用することができる。
【0080】
放射線療法は免疫原性細胞死を誘発することが可能であり、瀕死の細胞から腫瘍抗原を放出させ、次にエフェクターT細胞の活性化を促進し、非照射の局在に対しても抗腫瘍免疫応答を追加免疫する(アブスコパル効果)。
【0081】
チェックポイント阻害剤は、T細胞などのいくつかの免疫細胞およびいくつかのがん細胞によって発現される特定のタンパク質を阻害する。これらのいわゆるチェックポイントタンパク質は、免疫応答を抑制するために役立ち、T細胞ががん細胞を死滅させるのを防ぐことができる。これらのタンパク質が阻害された場合、免疫系に対する「ブレーキ」が解除され、T細胞はがん細胞を死滅させ得る。チェックポイント阻害剤は、例えば、PD−1、PD−L1、CTLA−4、TIM−3、またはLAG3の阻害剤である。さらに、OX−40、CD137(4−1 BB)またはGITRなどのいわゆる同時刺激分子を活性化させて免疫応答を増強し、T細胞活性化を最適化することができる。当業者には、有用なチェックポイント阻害剤が公知である。好ましいチェックポイント阻害剤は、PD−1の阻害剤、例えばペンブロリズマブおよびニボルマブ、ならびにPD−L1の阻害剤、例えばアテゾリズマブ、アベルマブおよびデュルバルマブである。CTLA−4の好ましい阻害剤は、イピリムマブである。また他の抗体も使用できる。
【0082】
したがって、TLR−9アゴニストを適用する前の化学療法または放射線療法は、化学療法または放射線療法が腫瘍サイズの低減および腫瘍関連抗原の放出をもたらすので、有利であり得る。次いで、TLR−9アゴニストは、抗原提示細胞を活性化し、次に、放出された腫瘍関連抗原をT細胞に提示し、T細胞を刺激することができる。
【0083】
チェックポイント阻害剤の前にTLR−9アゴニストを適用した場合、TLR−9アゴニストの適用によりT細胞が活性化され、次に腫瘍に浸潤することができるので、有利であり得る。次いで、チェックポイント阻害剤は、腫瘍内の既に活性化されたT細胞上の阻害分子を阻害することができる。T細胞はそれにより完全に活性化され、それらの抗腫瘍効果を及ぼすことができる。
【0084】
TLR−9アゴニストの適用の前にチェックポイント阻害剤を適用した場合、TLR−9アゴニストがチェックポイント阻害剤に対する潜在的な非応答性を抑止する可能性があるので、有利であり得る。言い換えれば、腫瘍がチェックポイント阻害剤に良好に反応しない場合には、それが低免疫原性腫瘍である可能性があるので、TLR−9アゴニストは、チェックポイント阻害剤に対する応答性が回復するように腫瘍の微小環境をモジュレートすることができる。例えば、腫瘍は、T細胞上でアップレギュレートされた阻害分子によりチェックポイント阻害剤による治療に耐性を有し得る。TLR−9アゴニストによって活性化されたde novo活性化T細胞は、これらの阻害分子を発現しない可能性があり、したがって、チェックポイント阻害剤による治療に感受性があり得る。
【0085】
一実施形態では、それを必要とする対象の腫瘍疾患、好ましくは結腸がんの治療における使用のためのTLR−9アゴニストならびに化学療法剤および/またはチェックポイント阻害剤を含む組成物であって、前記TLR−9アゴニストが、
i.少なくとも1つの非メチル化CGジヌクレオチド(ここで、Cはデオキシシチジンであり、Gはデオキシグアノシンである)を含むオリゴデオキシリボヌクレオチドと、
ii.少なくとも3つ、特に4つの連続したデオキシグアノシンの少なくとも1つのストレッチ
と
を含み、
オリゴデオキシリボヌクレオチドのデオキシリボース部分がホスホジエステル結合によって連結されており、前記TLR−9アゴニストによる治療が、CD3+ T細胞の腫瘍への浸潤を刺激し、および/またはマクロファージ、好ましくはM1マクロファージの腫瘍への浸潤を刺激し、および/または腫瘍内のM1マクロファージ対M2マクロファージの比率を増加させる、組成物が提供される。