(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-532386(P2020-532386A)
(43)【公表日】2020年11月12日
(54)【発明の名称】気密封止されたトロカールの性能範囲を較正する方法
(51)【国際特許分類】
A61B 17/34 20060101AFI20201016BHJP
【FI】
A61B17/34
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2020-513522(P2020-513522)
(86)(22)【出願日】2018年9月4日
(85)【翻訳文提出日】2020年3月5日
(86)【国際出願番号】US2018049387
(87)【国際公開番号】WO2019050854
(87)【国際公開日】20190314
(31)【優先権主張番号】62/555,236
(32)【優先日】2017年9月7日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】15/972,405
(32)【優先日】2018年5月7日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】500103074
【氏名又は名称】コンメッド コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴァーナー ケネス
(72)【発明者】
【氏名】シルバー ミキヤ
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160FF48
4C160MM23
4C160MM32
4C160NN22
(57)【要約】
トロカールに空気圧を送達するためのシステムの空気圧性能範囲を較正するための方法およびアセンブリであって、所望の腔内圧を達成するためにトロカールに空気圧を供給するステップと、システムが所望の腔内圧を維持しようと試みるとき、ある期間にわたって空気圧および腔内圧を測定するステップと、測定された腔内圧および空気圧値に基づいてトロカールの性能特性を計算するステップと、トロカールの性能特性に基づいてトロカールに供給される空気圧を調節するステップと、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気圧をトロカールに送達するためのシステムの空気圧性能範囲を較正する方法であって、
a)所望の腔内圧を達成するためにトロカールに空気圧を供給するステップと、
b)前記システムが所望の腔内圧を維持しようと試みるとき、一期間にわたって前記空気圧および腔内圧を測定するステップと、
c)前記測定された腔内圧および空気圧値に基づいて、前記トロカールの性能特性を計算するステップと、
d)前記トロカールの性能特性に基づいて、前記トロカールに供給される前記空気圧を調整するステップと、を含む、方法。
【請求項2】
前記トロカールの前記性能特性を計算するための前記期間の平均空気圧値および平均腔内圧値を決定するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記トロカールの前記性能特性を計算するための前記期間のフィルタ処理済み空気圧値およびフィルタ処理済み腔内圧値を決定するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記フィルタ処理済み空気圧値およびフィルタ処理済み腔内圧値を決定するステップが、加重平均、移動平均、カーブフィッティング、加法平滑化、バターワースフィルタ、デジタルフィルタ、指数平滑法、およびローパスフィルタからなる群から選択される処理手法を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記トロカールの性能特性を計算するステップが、既知の値を有するルックアップテーブルまたはスケールへの参照を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記トロカールに供給され得る空気圧に関連して、前記トロカールの前記計算された性能特性の周りに動作限界を設定するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
空気圧をトロカールに送達するためのシステムの空気圧性能範囲を較正する方法であって、
a)トロカールに空気圧を供給して、複数の異なる出力レベルで所望の腔内圧出力を達成するステップと、
b)前記システムが各出力レベルで所望の腔内圧を維持しようと試みるとき、各出力レベルで一期間にわたって前記空気圧および腔内圧を測定するステップと、
c)前記各出力レベルで測定された腔内圧および空気圧値に基づいて、前記トロカールの性能特性を計算するステップと、
d)前記トロカールの性能特性に基づいて、前記トロカールに供給される前記空気圧を調整するステップと、を含む、方法。
【請求項8】
前記トロカールの前記性能特性を計算するため、各出力レベルで前記期間の平均空気圧値および平均腔内圧値を決定するステップをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記トロカールの前記性能特性を計算するため、各出力レベルで前記期間のフィルタ処理済み空気圧値およびフィルタ処理済み腔内圧値を決定するステップをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記フィルタ処理済み空気圧値およびフィルタ処理済み腔内圧値を決定するステップが、加重平均、移動平均、カーブフィッティング、加法平滑化、バターワースフィルタ、デジタルフィルタ、指数平滑法、およびローパスフィルタからなる群から選択される処理手法を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記トロカールの性能特性を計算するステップが、既知の値を有するルックアップテーブルまたはスケールへの参照を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記トロカールに供給され得る空気圧に関連して、前記トロカールの前記計算された性能特性の周りに動作限界を設定するステップをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年9月7日に出願された米国仮特許出願第62/555,236号明細書、および2018年5月7日に出願された米国特許出願番号第15/972,405号の優先権の利益を主張するものであり、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、手術用アクセス装置と併用するためのガス送達システムに関し、より具体的には、気密封止されたトロカールに空気圧を送達するためのシステムの性能範囲を較正するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
関連技術の説明
例えば、同一出願人による米国特許第7,854,724号および第8,795,223号に開示された装置のタイプのような気密封止されたトロカールを、例えば、同一出願人による米国特許第8,715,219号、第8,961,451号、および第9,295,490号に開示された電気機械制御システムにより動作させる時、多くの理由から、トロカールの特定の性能特性について制御システムの性能範囲を較正することが有利であり得る。
【0004】
例えば、特定の範囲の空気圧を供給するための電気機械制御システムを較正することにより、限界を指定して気密封止されたトロカールへの空気圧の過剰供給または供給不足を防ぐことにより、安全性を改善することができる。さらに、較正により、電気機械制御システムが指定範囲内に留まることを確実にし、システムの非効率的な過出力または出力不足を防ぐことにより、システム効率を改善できる。最後に、較正により、さらなる製品開発または製品ライン拡張につながる可能性があるより正確な装置制御が可能となり、これによって装置はあらゆるタイプの気密封止されたトロカールまたはその他のエンドエフェクタに対して適切に動作することができる。これは、システムが作成されたあらゆるトロカールまたはその他の製品に対して較正することを確実にすることにより、より簡略化された製品開発プロセスを可能とする。
【0005】
設計の差異は、空気圧の要件または異なる気密封止されたトロカールの特性の変化を引き起こす可能性がある。これは、製造のばらつき、封止領域の断面積の差異(すなわち、5 mm対12 mm)、ならびにチューブセットおよび吸入器インターフェースなどのシステムの関連部品の変動性、流れ抵抗、設計および抵抗、ならびに高度および湿度などのその他の動作および環境要因による影響を受け得る。さらに、異なる気密封止されたトロカールは、動作範囲に応じて変化する挙動を呈し得る。車両/エンジンが異なる速度で燃料効率を高めることができるように、気密封止されたトロカールは、高範囲に対して低範囲で空気圧が供給されるとき、異なる感度を有し得る。
【0006】
典型的な較正プロセスは、一つの結果(または所望の結果)が安定して保持されながら、システムの特定の測定基準の測定値が観察および記録される、制御システムおよびセンサが関与する。次に、システムが適切に動作するように(一部の既知の実体に基づいて)調整され得る。例えば、圧力ゲージは、以下の方法を通して較正され得る。第一に、圧力ゲージは密封容器に接続され、既知の圧力(例えば、5psi)が二次装置を通して密封容器に適用される。次に、測定された容器内の圧力が圧力ゲージで読み取られ、既知の適用された圧力と測定された圧力読み取り値との差が指摘される。その後、圧力ゲージの読取値が既知の圧力値と一致するように、圧力ゲージを調整することができる。この場合、一組の測定値が採用され、既知の結果が制御される。
【0007】
このタイプの較正プロセスを、上記で特定した通り、電気機械制御システムを用いて気密封止されたトロカールに転移させることが有益であるが、ここでシステムは特定の出力(例えば、腹腔内圧15mmHg)を標的とし、次いで特定のトロカールでその出力を達成するのに必要な空気圧を測定することが期待できる。当業者であれば、較正プロセスがこれらの空気圧測定値に基づき得ることを容易に理解するであろう。
【0008】
さらに、このタイプの較正プロセスを、上記で特定した通り、電気機械制御システムを用いて気密封止されたトロカールのために作り出すことが有益であるが、ここでシステムは特定の出力(例えば、腹腔内圧15mmHg)を標的とし、次いで特定のトロカールでその出力を達成するように制御されるシステムの出力と空気圧の両方を測定することが期待できる。当業者であれば、上述のように、埋め込み型電気機械制御システムと組み合わせてループコントローラを使用することを容易に理解するであろう。閉ループコントローラは、特定の出力を達成するために調整された電気機械構成要素にフィードバックを行うセンサを使用する。
【0009】
閉ループコントローラは、システムへの障害の存在(例えば、外科手術腔内からの漏出または外科医が内腔を押す時など、外部から適用された過度な圧力)があるにもかかわらず、標的を平衡に維持するように設計されている。コントローラが正常に機能するには、システムは標的出力を維持するための入力を変更できなければならない。当業者であれば、較正プロセスが空気圧測定値および出力腹腔内圧測定値の両方に基づき得、対象となる発明はこのような較正方法に関するものであることを容易に理解するだろう。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、トロカールに空気圧を送達するためのシステムの空気圧性能範囲を較正する新規の有用な方法を対象とする。方法は、所望の腔内圧を達成するためにトロカールに空気圧を供給するステップと、システムが所望の腔内圧を維持しようと試みるとき、ある期間にわたって空気圧および腔内圧を測定するステップと、測定された腔内圧および空気圧値に基づいてトロカールの性能特性を計算するステップと、トロカールの性能特性に基づいてトロカールに供給される空気圧を調節するステップと、を含む。
【0011】
本発明の一実施形態では、方法は、トロカールの性能特性を計算するための期間の平均空気圧値および平均腔内圧値を決定するステップをさらに含む。本発明の別の実施形態では、方法は、トロカールの性能特性を計算するための期間のフィルタ処理済み空気圧値およびフィルタ処理済み腔内圧値を決定するステップを含む。フィルタ処理済み空気圧値およびフィルタ処理済み腔内圧値を決定するステップは、加重平均、移動平均、カーブフィッティング、加法平滑化、バターワースフィルタ、デジタルフィルタ、指数平滑法、およびローパスフィルタからなる群から選択される処理手法を含む。
【0012】
好ましくは、トロカールの性能特性を計算するステップは、既知の値を有するルックアップテーブルまたはスケールへの参照を含む。方法は、トロカールに供給され得る空気圧に関連して、トロカールの計算された性能特性の周りに動作限界を設定するステップをさらに含む。
【0013】
本発明はさらに、トロカールに空気圧を送達するためのシステムの空気圧性能範囲を較正する方法を対象とし、複数の異なる出力レベルで所望の腔内圧を達成するためにトロカールに空気圧を供給するステップと、各出力レベルでシステムが所望の腔内圧を維持しようと試みるとき、各出力レベルである期間にわたって空気圧および腔内圧を測定するステップと、各出力レベルで測定された腔内圧および空気圧値に基づいてトロカールの性能特性を計算するステップと、トロカールの性能特性に基づいてトロカールに供給される空気圧を調節するステップと、を含む。
【0014】
本発明のこの実施形態では、方法は、トロカールの性能特性を計算するため、各出力レベルでの期間の平均空気圧値および平均腔内圧値を決定するステップをさらに含む。本発明の別の実施形態では、方法は、トロカールの性能特性を計算するため、各出力レベルでの期間のフィルタ処理済み空気圧値およびフィルタ処理済み腔内圧値を決定するステップを含む。好ましくは、トロカールの性能特性を計算するステップは、既知の値を有するルックアップテーブルまたはスケールへの参照を含む。方法はまた、トロカールに供給され得る空気圧に関連して、トロカールの計算された性能特性の周りに動作限界を設定するステップを含む。
【0015】
本発明の較正方法のこれらおよびその他の特徴およびそれが採用される方式は、下記に説明するいくつかの図面と併せて理解される本発明の好ましい実施形態の以下の可能とする記述から、当業者には容易に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
当業者は、必要以上の実験無しに、主題の発明の較正プロセスを使用する方法を容易に理解するであろうゆえに、好適な実施形態を、図面を参照しながら以下に詳細に説明する。
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の新規の較正方法を示すプロセスフロー図である。
【
図2】
図2は、腹腔内圧出力が測定される間に供給空気圧が安定に保持される、典型的な、単純な較正方法の図である。
【
図3】
図3は、腹腔内圧出力を安定に保持するために供給空気圧を変化させる、別の単純な較正方法の図である。
【
図4】
図4は、別の基本的な較正方法のグラフィカルな図であり、較正プロセスはステップ方式で繰り返され、四つの異なるレベルで供給空気圧が安定に保持され、四つの異なるレベルで腹腔内圧出力が測定される。
【
図5】
図5は、本明細書の発明に対応する較正方法のグラフィカルな図であり、アクティブループコントローラは、標的腹腔内圧出力を維持するために供給圧力を変化させ、入力供給圧力および達成された出力の両方を測定することによって較正が達成される。
【
図6】
図6は、本明細書の発明に対応する較正方法のグラフィカルな図であり、アクティブループコントローラは、異なるステップで標的腹腔内圧出力を維持するために供給圧力を変化させ、各ステップで入力供給圧力および達成された出力の両方を測定することによって較正が達成される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の詳細な説明において、同一出願人による米国特許第7,854,724号および第8,795,223号に開示されているトロカールのタイプなどの気密封止されたトロカール、および同一出願人による米国特許第8,715,219号、第8,961,451号、および第9,295,490号に開示されたシステムのタイプなどの電気機械制御システムが関与する独自の較正方法が記載される。これらの同一出願人による特許の各々は、有効化の目的で参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0019】
ここで
図1を参照すると、一般的に、本発明の新規較正方法10は、プロセスブロック20で記載した通り、所望の結果(すなわち、腹腔内圧)を達成するためにトロカールに供給される空気圧を制御する閉ループコントローラのような装置を含む環境を動作させることを含み、プロセスブロック30に記載したように、外的影響および変動する内腔圧は「不安定」状態または逸脱をもたらす。腔内圧の変動または擾乱は、外科手術機器または手術室スタッフによる漏洩や外的に適用される過圧から生じ得る。
【0020】
ステップ40で、装置は、所定の期間(例えば、数秒以上)にわたってトロカールに供給された空気圧(供給空気圧)および腹腔内圧を測定する。次に、ステップ50では、本発明の一実施形態によると、平均空気圧および平均腔内圧を使用して、測定された結果腔内圧でのトロカール特性を定義する。当然のことながら、データは平均化以外の方法で処理またはフィルタ処理され得る。その後、ステップ60では、測定された結果値から標的結果値に、トロカールに供給される空気圧を調節することによって、システムの較正が達成される。
【0021】
本発明の新規の方法は、単に一つの制御された結果(すなわち、上記の例では15mmHg)を注視せず、むしろシステム制御された標的結果に近似する一連の結果測定値を注視する。動的システムが外的影響に曝された場合(例えば、密封容器の体積が動的に変更された場合)、システムに不安定性が生じる。上述の圧力ゲージの例では、既知の静的値を密封容器に適用し、較正のために一定時間保持することができる。外科的シナリオでは、これは複雑な作業となり得る。この場合、患者の動き(例えば、筋収縮および呼吸)、外科医/看護師の影響(例えば、腹腔内を圧迫する)、トロカールを通して手術用器具を通過させること、煙排出およびその他の外的影響は、システムが不安定となる原因となり得る。
【0022】
例えば、15mmHgの標的腹腔内圧は、これらの外的影響により12〜18mmHgの間で変動する可能性がある。そのため、空気圧性能を標的値に較正すると、歪みまたは不正確な結果が生じ得る。この効果は、較正されているシステムが、フィードバックループを備えた埋め込み型制御システムなど、それ自体が動的であるときに悪化する。
【0023】
静的な既知の値(例えば、5psiまたは15mmHg)だけを注視する代わりに、動的出力値を考慮することにより、システムに対してより正確な較正を達成し得る。例えば、腹腔圧が12〜18mmHgの間で変化するが、その範囲の下端により傾斜する場合、システムの空気圧を15mHgではなく14mmHgに較正したほうがよい場合がある。
【0024】
この較正方法のデータ処理は、業界および用途の範囲にわたって受け入れられる多くの異なる方法で行うことができる。本発明の一実施形態では、システムをその真の出力に較正するために、ある期間にわたる単純な平均を使用することができる。代替的な処理手法が本発明において採用され得、例えば、加重および/または移動平均、カーブフィッティング、加法平滑化、バターワースフィルタ、デジタルフィルタ、指数平滑法、ローパスフィルタ、または当業者に公知の他のフィルタ処理法がシステムを較正するための最適な出力を決定するために使用され得る。
【0025】
データ処理手法の選択は、システム内の測定ツールまたはセンサによる影響を受け得る。例えば、スローサンプリング(slowly−sampling)センサが使用される場合、異常値は過度に結果に影響を与え得るため、二つの標準偏差内の値は、その範囲外のデータよりもより大きく重み付けされ得る。
【0026】
この提案方法の一実施形態では、システムの埋め込み型制御機能が標的腹腔内圧を維持しようと試みると、平均駆動圧(空気圧)および平均腹腔圧(出力)が一定期間にわたって記録される。次に、平均空気圧値を使用して、平均腹腔内圧値でのトロカール性能特性を定義する。次に、システムは標的出力で予期されるベースライン性能特性を計算する。
【0027】
例えば、平均空気圧が50psiであり、平均腹腔内圧が14mmHgであった場合、15mmHgでのそのトロカールの予想されるベースライン性能は55psiであり得る。この計算は、いくつかの既知のルックアップテーブルまたはスライディングスケールに基づき得る。次に、動作限界が、トロカールの計算されたベースライン性能特性の周りに設定または計算され、トロカールに供給され得る空気圧において下限および上限を設定する。
【0028】
本発明の較正プロセスによって提供される、従来技術に対する利点および強みをさらに説明するために、典型的な従来技術の較正方法を含む異なる較正プロセスのグラフィック表現を提供する、
図2〜
図6を参照する。
【0029】
まず
図2を参照すると、典型的な従来技術の較正プロセスのグラフィック表現が図示される。ここでは、システムは供給力(空気圧)を一定に保持し、出力(腹腔内圧)を測定する。例えば、制御ソフトウェアは供給圧力を30psiで安定に保持し、経時的に結果的な腹腔内圧を測定する。
図2において、参照番号30で指定された破線矢印は、システムが提供し、較正プロセスの間、安定に保持する空気圧のレベルを表す。
【0030】
この基本方法を使用すると、単一の時点で較正が発生し得る。例えば、腹腔内圧はその時点t
1で測定し得る。しかしながら、プロセスは、漏洩や誰かが腹部を押すことによる過圧状態などの外的影響や擾乱を受けやすく、これは較正に影響を与え得る。したがって、より良好な方法は、ある期間にわたる腹腔内圧の平均(例えば、単純平均またはフィルタ平均)を取ることである。
【0031】
例えば、t
1からt
2まで延びる期間にわたって平均を取り、擾乱による不正確な較正のリスクを減少させ得る。この方法のその簡略化から利益を得る一方、腹腔内圧は較正プロセスの間は制御されないため、その使用については不利益がある。したがって、異なるトロカールは、異なる腹腔内圧をもたらし、これは不満足な臨床結果をもたらす。
【0032】
図3を参照すると、典型的な、単純な較正プロセスがどのように作用するかについての別の例が示される。この方法では、ループコントローラ/ソフトウェアの設計が、標的腹腔内圧を維持するために利用される。システムは安定な出力(腹腔内圧)を保持するように努め、その出力値を生成するために必要な空気圧(供給圧力)を測定する。例えば、制御ソフトウェアは腹腔内圧を15mmHgに保持しようと努め、ループコントローラは、その標的を維持するためにそのソフトウェアアルゴリズムによる供給圧力を変化させる。
図3において、参照番号15によって識別された破線矢印は、較正中にシステムが標的化する腹腔内圧レベルを表す。
【0033】
このプロセスの間、較正は単一時点で起こり得る。例えば、腹部で圧力は時間t
1で測定することができる。しかしながら、この方法は、漏洩や誰かが腹部を押すことによる過圧状態から生じる擾乱を受けやすく、これは較正に負の影響を与え得る。したがって、より良好な方法は、ある期間にわたる供給圧力の平均読取(例えば、単純平均またはフィルタ平均)を取ることである。
【0034】
例えば、t
1からt
2に延びる期間の間で平均を決定できる。これにより、外乱による不正確な較正のリスクが低減される。
図2に示した方法に対するこの較正方法の利点は、システムが選択された標的腹腔内圧を制御できることである。これにより、より満足のいく臨床結果が得られる。一方で、この較正方法は、ループコントローラが標的腹腔内圧を達成していることを想定しており、較正のための変化する供給圧力のみを注視する。
【0035】
図4を参照すると、
図2に示した方法と本質的に同じである別の較正方法が示されるが、較正プロセスは一連の異なるステップまたは圧力レベルで繰り返される。この実施形態において、システムは四つの異なるレベルで供給圧力(空気圧)を安定に保持し、四つの異なるレベルで出力(腹腔内圧)を測定する。
【0036】
例えば、ソフトウェアは空気圧を10psiで一定に保持し、結果として得られる腹腔内圧を測定し、次いで供給圧力を20psiで安定に保持し、腹腔内圧を測定し、次いで30psi、そして40psiで再度測定する。
図4において、参照番号10、20、30および40で指定された破線矢印は、システムが提供し、較正期間の間、安定に保持する空気圧または供給圧力のレベルを表す。
【0037】
このプロセスの間、較正は個別の時点で起こり得る。例えば、腹腔内圧は、t
1、t
2、t
3およびt
4の時点で測定され得る。しかしながら、この方法は、漏洩や誰かが腹部を押すことによる過圧状態から生じる擾乱を受けやすく、これは較正に負の影響を与え得る。したがって、ある期間にわたる平均読取(例えば、単純平均またはフィルタ平均)を取ることがより好ましい。例えば、平均は、t
1からt
1’に、t
2からt
2’に、t
3からt
3’に、およびt
4からt
4’に延びる期間の間に計算され得る。これにより、擾乱による不正確な較正のリスクが低減される。
【0038】
図2に図示された方法に対するこの較正方法の利点は、この方法が異なる入力の範囲にわたって較正された挙動を提供し、システムにトロカールの挙動のより良い全体像を与えることである。一方、この方法は腹腔内圧の制御を提供せず、異なるトローカーは異なる腹腔内圧をもたらし、結果として不満足な臨床結果につながり得る。
【0039】
図5を参照すると、本発明の新規の較正方法の実施形態のグラフィック表現が図示される。この方法では、ループコントローラ/ソフトウェアが、標的腹腔内圧の維持を試みるために利用される。参照番号15によって指定された赤い破線矢印は、較正プロセス中にシステムが標的化する腹腔内圧レベルを表す。
【0040】
システムは安定な出力(腹腔内圧)を保持するように努め、その出力値を生成するために必要な空気圧(供給圧力)を測定する。例えば、システムは腹腔内圧を15mmHgで安定に保持しようと努め、ループコントローラは、その標的を維持するためにそのソフトウェアアルゴリズムによる供給圧力を変化させる。例えば、較正のために腹腔内圧が取られる時間t
1など、単一時点で較正が起こり得る。
【0041】
プロセスは、漏洩や誰かが腹部を押すことによる過圧状態などの外的影響や擾乱を受けやすく、これは較正に影響を与え得る。したがって、方法は、出力圧力の平均およびある期間にわたる供給圧力の平均(例えば、単純平均またはフィルタ平均)を取ることによって改善され得る。
【0042】
例えば、擾乱による不正確な較正のリスクを軽減するために、時間t
1とt
2の間の間隔で平均を取り得る。
図2のより典型的な方法に対するこの較正方法の利点は、供給圧力と腹腔内圧の両方が較正に関与することである。入力と出力の両方がある期間にわたって平均化されるため、この方法は、システムが一つの定数を想定し、測定値をその値に較正する問題を緩和する。代わりに、この新規の較正方法を使用して、システムは二組の測定値を関連付ける。
【0043】
ここで
図6を参照すると、本発明の新規の較正方法の別の実施形態のグラフィック表現が図示される。この方法では、ループコントローラ/ソフトウェアが、標的腹腔内圧を四つの異なるレベルに維持すること試みるために利用される。さらに、システムは安定な出力(腹腔内圧)を保持するように努め、各レベルでその出力値を生成するために必要な空気圧(供給圧力)を測定する。
【0044】
例えば、ソフトウェアは腹腔内圧を5mmHgで安定に保持しようと努め、ループコントローラは、その標的を維持するためにそのソフトウェアアルゴリズムによる供給圧力を変化させ、続いて腹腔内圧を10mmHg、次に15mmHg、そして再び20mmHgで保持するように試みる。参照番号5、10、15および20によって指定された
図6の矢印は、較正プロセス中にシステムが標的化する異なる腹腔内圧レベルを表す。
【0045】
較正は個別の時点で起こり得る。例えば、各時点の腹腔内圧/供給圧力の時間t
1、t
2、t
3、およびt
4で較正のために測定され得る。この方法では、プロセスは再び、漏洩や過圧状態などの外的影響や擾乱を受けやすく、これは較正に影響を与え得る。したがって、方法は、例えば、t1からt1’、t2からt2’、t3からt3’、およびt4からt4’の間の期間においてなど、ある一連の期間にわたり、出力(腹腔内圧)の平均(例えば、単純平均またはフィルタ平均)および供給圧力(空気圧)を計算することによって改善され得る。これにより、擾乱による不正確な較正のリスクが低減される。
【0046】
図4に示された方法に対するこの較正方法の利点は、供給圧力と腹腔内圧の両方が較正に関与することである。入力と出力の両方がある期間にわたって平均化されるため、この方法は、システムが一つの定数を想定し、測定値をその値に較正する問題を緩和する。代わりに、この新規の較正方法を使用して、システムは二組の測定値を関連付ける。
図5に示された方法に対するこの較正方法の利点は、異なる入力の範囲にわたって較正された挙動が提供され、システムにトロカールの挙動のより良い全体像を与えることである。
【0047】
特に重要または、例えば小児科手術での使用など、特定の手術様式において必要とされる可能性のある安全性および性能パラメータおよび閾値を制御するために、システムの空気圧性能範囲を較正することが望ましい場合がある。さらに、使用時にトロカールの特定の特性に対する性能を較正することにより、異なるトロカールがその範囲の変化する部分を使い切ることができる幅広い動作範囲と対照的に、設計原理と一致するより一貫したシステム挙動をもたらす。較正ならびに特定の限界および閾値を適用することにより、各気密封止されたトロカールは、異なるベースライン特性を有する場合でも、類似した境界を有するように挙動する。
【0048】
トロカールの特定の性能特性に較正することにより、設計および製造プロセスにいくつかの追加的利点があると推測できる。較正プロセスは、製造コストを削減できるトロカールの製造許容範囲を広げることができる。これにより、より幅広い設計仕様範囲が可能になり、設計者やエンジニアが新製品および製品ライン拡張をより自由に設計できるようになる。これにより、新製品開発の間のより簡単な検証手順が可能となり得る。
【0049】
さらに、この方法は、任意の数の動的システムの較正に使用できると推測される。例えば、配管システムの分水、空気圧ポンプの動的出力、電気供給源、など、全てその構成要素およびサブシステムのための正確な較正を必要とする「うるさい」動的システムであり得、本発明の較正方法から利益を得ることができる。
【0050】
対象開示が好ましい実施形態を参照して示され、記述されてきたが、当業者であれば、変更および/または修正が、対象開示の範囲から逸脱することなく作成され得ることを容易に理解するであろう。
【国際調査報告】