(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-533446(P2020-533446A)
(43)【公表日】2020年11月19日
(54)【発明の名称】インクジェット用インク組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 11/30 20140101AFI20201023BHJP
C09D 11/324 20140101ALI20201023BHJP
【FI】
C09D11/30
C09D11/324
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2020-513807(P2020-513807)
(86)(22)【出願日】2018年9月6日
(85)【翻訳文提出日】2020年3月6日
(86)【国際出願番号】US2018049657
(87)【国際公開番号】WO2019051021
(87)【国際公開日】20190314
(31)【優先権主張番号】62/555,267
(32)【優先日】2017年9月7日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】391010758
【氏名又は名称】キャボット コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】CABOT CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】シュー ジンチー
(72)【発明者】
【氏名】ベイツ ジョディ エイ
(72)【発明者】
【氏名】クラーク ヘザー イー
(72)【発明者】
【氏名】リウ ティアンチー
(72)【発明者】
【氏名】パランボ ポール エス
【テーマコード(参考)】
4J039
【Fターム(参考)】
4J039AE04
4J039BA04
4J039BE01
4J039BE02
4J039BE12
4J039BE15
4J039BE19
4J039BE22
4J039BE25
4J039BE30
4J039CA06
4J039EA42
4J039EA44
4J039GA24
(57)【要約】
本明細書において開示されているのは、少なくとも1種の顔料と、少なくとも1種のポリプロピレングリコールおよび少なくとも1種のジイソシアネートを含む少なくとも1種のポリウレタンとを含む、インクジェット用インク組成物である。少なくとも1種のポリウレタンは、少なくとも1種のポリウレタンに対して少なくとも70質量%のポリプロピレングリコールを含有し、80,000以下の質量平均分子量(M
w)を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の顔料と、
以下:
少なくとも1種のポリプロピレングリコール、および
少なくとも1種のジイソシアネート
を含む少なくとも1種のポリウレタンと
を含む、インクジェット用インク組成物であって、
少なくとも1種のポリウレタンが、少なくとも1種のポリウレタンに対して少なくとも70質量%のポリプロピレングリコールを含有し、少なくとも1種のポリウレタンが80,000以下の質量平均分子量(Mw)を有する、組成物。
【請求項2】
少なくとも1種のポリプロピレン(polyproypylene)グリコールが、少なくとも1種のポリウレタンに対して70質量%〜90質量%の範囲の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
少なくとも1種のポリプロピレングリコールの数平均分子量が、400g/mol〜6,000g/molの範囲である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
少なくとも1種のポリプロピレングリコールの数平均分子量が、1000g/mol〜4,000g/molの範囲である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項5】
少なくとも1種のジイソシアネートが、式(I):
OCN−R1−NCO(I)
(式中、R1は、置換されているまたは非置換であり、C1−C10アルキレン、C3−C20シクロアルキレン、C3−C20ヘテロシクロアルキレン、C5−C20アリーレン、C3−C20ヘテロアリーレン、およびその組合せから選択される)
を有する、請求項1〜4のいずれか1項の組成物。
【請求項6】
R1が、C1−C10アルキル基およびC5−C20アリール基から選択される少なくとも1つの置換基で置換されている、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
少なくとも1種のジイソシアネートが、トルエン2,4−ジイソシアネート、トルエン2,6−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネート、2,4’−メチレンジフェニルジイソシアネート、2,2’−メチレンジフェニルジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルジイソシアネート)、m−テトラメチルキシレンジイソシアネート、およびイソホロンジイソシアネートから選択される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
少なくとも1種のジイソシアネートが、少なくとも1種のポリウレタンに対して3質量%〜29質量%の範囲の量で存在する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
少なくとも1種のポリウレタンが、少なくとも1つの親水基を含有する少なくとも1種のモノマーをさらに含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
少なくとも1つの親水基が、ヒドロキシル、カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、ポリエーテル、ならびにその塩およびエーテルから選択される、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
少なくとも1つの親水基が、カルボン酸、ならびにその塩およびエーテルから選択される、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
少なくとも1つの親水基を含有するモノマーが、ジメチロールプロピオン酸である、請求項9〜11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
少なくとも1つの親水基を含有するモノマーが、式(II):
−O−R2−O−(II)
(式中、R2は、置換されているまたは非置換である部分に結合されている少なくとも1つの親水基を含み、該部分は、C1−C10アルキレン、C3−C20シクロアルキレン、C3−C20ヘテロシクロアルキレン、C5−C20アリーレン、C3−C20ヘテロアリーレン、C6−C20アルキルアリーレンから選択される)
を有する、請求項9に記載の組成物。
【請求項14】
前記部分が、C1−C10アルキル基およびC5−C20アリール基から選択される少なくとも1つの置換基で置換されている、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
少なくとも1種のジイソシアネートと、少なくとも1種のポリプロピレングリコールおよび少なくとも1つの親水基を含有するモノマーの和とのモル比が、0.5:1〜3:1の範囲である、請求項9〜14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
少なくとも1種のポリウレタンが、0.85〜1.15の範囲のNCO/OH比を有する、請求項1〜15のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
少なくとも1種のポリウレタンが、0.9〜1.1の範囲のNCO/OH比を有する、請求項1〜15のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
少なくとも1種のポリウレタンが、10〜50mg KOH/gポリウレタンの範囲の酸価を有する、請求項1〜16のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
少なくとも1種のポリウレタンが、15〜35mg KOH/gポリウレタンの範囲の酸価を有する、請求項1〜16のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
少なくとも1種のポリウレタンが、10,000〜80,000の範囲の質量平均分子量(Mw)を有する、請求項1〜19のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
少なくとも1種のポリウレタンが、組成物の総質量に対して0.1質量%〜15質量%の範囲の量で組成物に存在する、請求項1〜20のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項22】
少なくとも1種のポリウレタンが、組成物の総質量に対して0.1質量%〜10質量%の範囲の量で組成物に存在する、請求項1〜20のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項23】
少なくとも1種のポリウレタンが、組成物の総質量に対して0.1質量%〜1.5質量%の範囲の量で組成物に存在する、請求項1〜20のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項24】
顔料が自己分散顔料である、請求項1〜23のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項25】
顔料が、少なくとも1つの有機基が結合されている自己分散顔料である、請求項1〜23のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項26】
少なくとも1つの結合された有機基が、カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、ヒドロキシル、アミン、ならびにそのエステル、アミドおよび塩から選択される基を含む、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
少なくとも1つの結合された有機基が、ホスホン酸を含む、請求項25に記載の組成物。
【請求項28】
少なくとも1つの結合された有機基が、少なくとも1つのジェミナルビスホスホン酸基を含む、請求項25に記載の組成物。
【請求項29】
自己分散顔料が、酸化カーボンブラックを含む、請求項24に記載の組成物。
【請求項30】
顔料がポリマー分散顔料である、請求項1〜29のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項31】
顔料がポリマーカプセル化顔料である、請求項1〜29のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項32】
サーマルインクジェット用インク組成物である、請求項1〜31のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書において開示されているのは、顔料およびポリマー分散体、例えばポリウレタン分散体を含むインクジェット用インク組成物である。
【背景技術】
【0002】
インクジェット用インク組成物は、典型的に、担体として機能する液体ビヒクルおよび染料または顔料などの着色剤を含有する。添加剤および/または共溶媒も、所望の全体的性能特性を達成するようにインクジェット用インクを調整するために組み込むことができる。ポリマーも、液体媒体中の顔料の分散性を改善するためまたは性能を改善するための分散剤として、インクジェット用インク組成物中に組み込まれる。例えば、エマルジョンポリマーまたはラテックスは、インクジェット用インクの印刷性能を改善するための添加剤として使用されている。しかしながら、エマルジョンポリマーとして、これらのポリマーは、ある特定の液体媒体中で可溶性でなく、これは、印刷における困難、例えば、ノズル閉塞に至ることがある。したがって、改善された印刷耐久性および信頼性など、改善された印刷特性を有するインクジェット用インク組成物およびシステムの必要が依然としてある。
【発明の概要】
【0003】
本明細書において開示されているのは、
少なくとも1種の顔料と、
以下:
少なくとも1種のポリプロピレングリコール、および
少なくとも1種のジイソシアネート
を含む少なくとも1種のポリウレタンと
を含む、インクジェット用インク組成物であって、
少なくとも1種のポリウレタンが、少なくとも1種のポリウレタンに対して少なくとも70質量%のポリプロピレングリコールを含有し、少なくとも1種のポリウレタンが、80,000以下の質量平均分子量(M
w)を有する、
組成物である。
【発明を実施するための形態】
【0004】
一実施形態において、「ポリウレタン」は、ウレタン連結、例えば、−NH−C(O)−O−によって接合される有機部分を含有するポリマーを指す。一実施形態において、少なくとも1種のポリウレタンは、ウレタン連結に加えて尿素連結(例えば、−NH−C(O)−NH−)など、他の型の連結をさらに含むことができる。別の実施形態において、少なくとも1種のポリウレタンは、ウレタンおよびエーテル連結から本質的になる。
一実施形態において、少なくとも1種のポリプロピレングリコールの数平均分子量は、400g/mol〜6,000g/mol、例えば、700g/mol〜6,000g/mol、1000g/mol〜6,000g/mol、400g/mol〜5,000g/mol、700g/mol〜5,000g/mol、1000g/mol〜5,000g/mol、400g/mol〜4,000g/mol、700g/mol〜4,000g/mol、または1000g/mol〜4,000g/molの範囲である。少なくとも1種のポリプロピレングリコールの分子量は、末端基分析によって決定することができる。
一実施形態において、少なくとも1種のポリプロピレングリコールは、少なくとも1種のポリウレタンに対して少なくとも70質量%または少なくとも75質量%、例えば、少なくとも1種のポリウレタンに対して70質量%〜90質量%、70質量%〜89質量%、70質量%〜88質量%、70質量%〜87質量%、70質量%〜86質量%、71質量%〜90質量%、71質量%〜89質量%、71質量%〜88質量%、71質量%〜87質量%、71質量%〜86質量%、72質量%〜90質量%、72質量%〜89質量%、72質量%〜88質量%、72質量%〜87質量%、72質量%〜86質量%、73質量%〜90質量%、73質量%〜89質量%、73質量%〜88質量%、73質量%〜87質量%、73質量%〜86質量%、74質量%〜90質量%、74質量%〜89質量%、74質量%〜88質量%、74質量%〜87質量%、74質量%〜86質量%、75質量%〜90質量%、75質量%〜89質量%、75質量%〜88質量%、75質量%〜87質量%、または75質量%〜86質量%の量で存在する。
【0005】
一実施形態において、少なくとも1種のジイソシアネートは、式(I):
OCN−R
1−NCO (I)
(式中、R
1は、置換されていても非置換であってもよく、C
1−C
10アルキレン、C
3−C
20シクロアルキレン、C
3−C
20ヘテロシクロアルキレン(少なくとも1個の環原子は、O、NおよびSから選択されるヘテロ原子である)、C
5−C
20アリーレン、C
3−C
20ヘテロアリーレン(少なくとも1個の環原子は、O、NおよびSから選択されるヘテロ原子である)、およびその組合せから選択される)
を有する。一実施形態において、R
1は非置換である。一実施形態において、R
1は、C
1−C
10アルキル基およびC
5−C
20アリール基から選択される少なくとも1つの置換基で置換されている。例えば、R
1は、メチルで任意選択により置換されているヘキサメチレンもしくはフェニレン、またはメチルで任意選択により置換されているシクロヘキシレン、
【0006】
【化1】
であってよい。
一実施形態において、少なくとも1種のジイソシアネートは、トルエンジイソシアネート、例えばトルエン2,4−ジイソシアネート(2,4−TDI)およびトルエン2,6−ジイソシアネート(2,6−TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネート(4,4’−MDI)、2,4’−メチレンジフェニルジイソシアネート(2,4’−MDI)、2,2’−メチレンジフェニルジイソシアネート(2,2’−MDI)、メチレンビス(4−シクロヘキシルジイソシアネート)(HDMI)、m−テトラメチルキシレンジイソシアネート(m−TMXDI)、およびイソホロンジイソシアネート(IPDI)から選択される。一実施形態において、ジイソシアネートは、トルエンジイソシアネート(例えば、トルエン2,4−ジイソシアネート、トルエン2,6−ジイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート、およびその組合せから選択される。
【0007】
一実施形態において、少なくとも1種のジイソシアネートは、少なくとも1種のポリウレタンに対して3質量%〜29質量%、例えば、少なくとも1種のポリウレタンに対して5質量%〜29質量%、10質量%〜29質量%、3質量%〜25質量%、5質量%〜25質量%、3質量%〜20質量%、5質量%〜20質量%、3質量%〜15質量%、または5質量%〜15質量%の範囲の量で存在する。
一実施形態において、少なくとも1種のポリプロピレングリコールおよび少なくとも1種のジイソシアネートに加えて、少なくとも1種のポリウレタンは、少なくとも1つの親水基を含有するモノマーをさらに含む。一実施形態において、「親水基」は、水と水素結合できる。一実施形態において、少なくとも1つの親水基は、ヒドロキシル、カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、ポリエーテル(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなど)、ならびにその塩およびエーテルから選択される。一実施形態において、少なくとも1つの親水基は、カルボン酸、ならびにその塩およびエーテルから選択される。一実施形態において、少なくとも1つの親水基を含有するモノマーは、式(II):
−O−R
2−O− (II)
(式中、R
2は、C
1−C
10アルキレン、C
3−C
20シクロアルキレン、C
3−C
20ヘテロシクロアルキレン(少なくとも1個の環原子は、O、NおよびSから選択されるヘテロ原子である)、C
5−C
20アリーレン、C
3−C
20ヘテロアリーレン(少なくとも1個の環原子は、O、NおよびSから選択されるヘテロ原子である)、C
6−C
20アルキルアリーレンから選択される、置換されていても非置換であってもよい部分に結合されている少なくとも1つの親水基を含む)を有する。一実施形態において、該部分は非置換である。別の実施形態において、該部分は、C
1−C
10アルキル基およびC
5−C
20アリール基から選択される少なくとも1つの置換基で置換されている。一実施形態において、少なくとも1つの親水基を含有するモノマーは、ジメチロールプロピオン酸(DMPA)である。
【0008】
一実施形態において、少なくとも1種のジイソシアネートとポリプロピレングリコールおよび少なくとも1つの親水基を含有するモノマーの和(後者が存在するならば)とのモル比は、0.5:1〜3:1の範囲であることができる。
一実施形態において、少なくとも1種のポリウレタンは、全てのジオールモノマー、例えば、少なくとも1種のポリプロピレングリコール単独で、または存在するならば、少なくとも1種のポリプロピレングリコールおよび少なくとも1つの親水基を含有するモノマーの和から、イソシアネート基のモル量/ヒドロキシル基のモル量の比であるNCO/OH比によって特徴付けられる。一実施形態において、NCO/OH比は、0.85〜1.15、例えば、0.85〜1.1、0.9〜1.15、0.9〜1.1、0.95〜1.15、0.95〜1.1、1〜1.15、または1〜1.1の範囲である。
【0009】
一実施形態において、少なくとも1種のポリウレタンは、少なくとも1つの親水基、例えばカルボン酸基、または本明細書において開示されている任意の親水基を含有するモノマーの量に対応する酸価を有する。例えば、少なくとも1種のポリウレタンの酸価(AN)は、以下の等式:
AN=(親水基を含有するモノマーのモル数×56.1mgKOH×1000)/(モノマーの総質量(g))
から算出することができる。
一実施形態において、少なくとも1種のポリウレタンは、10〜50mg KOH/gポリウレタンの範囲の、例えば、10〜40mg KOH/gのポリウレタン、10〜35mg KOH/g、15〜50mg KOH/g、15〜40mg KOH/g、15〜35mg KOH/g、20〜50mg KOH/g、20〜40mg KOH/g、20〜35mg KOH/g、25〜50mg KOH/g、25〜40mg KOH/g、または25〜35mg KOH/gポリウレタンの範囲の酸価を有する。
一実施形態において、少なくとも1種のポリウレタンは、80,000以下の質量平均分子量(M
w)を有する。別の実施形態において、少なくとも1種のポリウレタンは、10,000g/mol〜80,000g/molの範囲の質量平均分子量、例えば、20,000g/mol〜80,000g/mol、30,000g/mol〜80,000g/mol、40,000g/mol〜80,000g/mol、または50,000g/mol〜80,000g/molの範囲の質量平均分子量を有する。理論によって束縛されることを望まないが、ポリウレタンの質量平均分子量が大きすぎるならば、こうしたポリウレタンを含有するインク組成物の打滴能力は低減され得ると思われる。
【0010】
少なくとも1種のポリウレタンは、重縮合反応など、当技術分野において公知の方法によって作製することができる。該調製は、多ステップ合成プロセスを伴うことがある。一実施形態において、該方法は、NCOを末端基とするプレポリマー(即ち、イソシアネートを末端基とするプレポリマー)を形成することを伴い、ここで形成は、ジオールモノマーをジイソシアネートと反応させることを含む。一実施形態において、ジオールモノマーは、ポリプロピレングリコールおよび/または少なくとも1つの親水基を含有するモノマーを含むことができる(例えば、ジオールはジメチロールプロピオン酸である)。一実施形態において、プレポリマーの形成は、溶媒の非存在下で、またはアセトンもしくはN−メチルピロリドン(NMP)など、イソシアネート基と反応しない水混和性有機溶媒の存在下で起こってよい。一実施形態において、プレポリマーの形成は、室温でもしくは昇温で(例えば、少なくとも約50℃)および/または触媒(例えば、ジブチルスズジラウレート)の存在下で起こり得る。反応時間は、反応温度、モノマー濃度、モノマーの反応性、および触媒の存在または非存在などの因子に依存して、5分〜24時間の範囲であることができる。
【0011】
一実施形態において、NCOを末端基とするプレポリマーは、さらに鎖延長および/またはエンドキャップされることで、ポリウレタン分散体、例えば、水性ポリウレタン分散体を形成することができる。例証的な鎖延長剤は、任意選択により部分的にまたは全体的にブロックすることができるとともに、米国特許第4,269,748号および同第4,829,122号に記載されているものが挙げられるポリアミン鎖延長剤であり、これらの開示は本明細書に参照により組み込まれる。一実施形態において、水性ポリウレタン分散体は、NCOを末端基とするプレポリマーを、少なくとも部分的にブロックされたジアミンまたはヒドラジン鎖延長剤と、水の非存在下で混合すること、続いて、混合物を水と組み合わせることによって調製される。水との接触で、ブロッキング剤は放出することができ、結果として得られた非ブロックポリアミンは、イソシアネートプレポリマーと反応することでポリウレタンを形成することができる。ポリアミンは、芳香族、脂肪族または脂環式アミンであってよく、1〜30個の炭素原子、例えば、2〜15個または2〜10個の炭素原子を含有することができる。これらのポリアミンは、追加の置換基を含有することができるが、ただし、それらは、イソシアネート基と第1級または第2級アミンほど反応性でないという条件である。
【0012】
例証的なポリアミンとしては、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジアミンまたはIPDA)、ビス−(4−アミノ−シクロヘキシル)−メタン、ビス−(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)−メタン、1,6−ジアミノヘキサン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミンおよびペンタエチレンヘキサミンが挙げられる。ヒドラジンも使用することができる。鎖延長剤は、イオン性基、特にアニオン性基、例えばカルボン酸基をさらに含むこともできる。したがって、鎖延長剤は、例えばH
2N−CH
2CH
2−NH−CH
2CH
2−COOHを含めて、少なくとも1つのカルボン酸基を有するジアミンであってよい。アミンで鎖延長されていない任意のイソシアネート基は水と反応し、これがジアミン鎖延長剤として機能する。その上、鎖延長は、該プロセスにおいて水の添加より前に行うことができるが、典型的に、撹拌下でイソシアネートプレポリマー、鎖延長剤、水および他の任意選択の構成成分を組み合わせることによって行われる。
NCOを末端基とするプレポリマーは、エンドキャップ剤の存在下でエンドキャップすることもできる。こうしたエンドキャップ剤は、モノ−アミン、モノ−アルコール、またはその組合せであってよい。エンドキャップ試薬と反応されないイソシアネート基は、水と反応することができ、プレポリマーの鎖を延長することによって鎖延長剤として機能することができる。
【0013】
一実施形態において、少なくとも1つの親水基が酸性基である少なくとも1種のポリウレタンの形成において、少なくとも1つの親水基を含有するモノマーが含まれる場合、酸基を塩に変換するために中和剤が使用され得る。こうした中和剤としては、第3級アミン、アルカリ金属ヒドロキシルおよびアンモニアが挙げられ得る。この中和反応によって形成される例証的なカチオンとしては、Li
+、Na
+、K
+、Cs
+、および[N(R)
4]
+が挙げられ、ここで各Rは、H、C
1−C
10アルキルおよびC
5−C
20アリールから独立して選択することができる。中和は、ポリウレタンの調製中に任意の適当な時点で、例えば、NCOを末端基とするプレポリマーの鎖延長反応の前、最中または後のいずれかで行うことができる。
【0014】
別の実施形態は、ポリウレタン分散体を提供する。分散体は水性であってよい。一実施形態において、該水溶液は、50質量%超の水を含有し、例えば、水、または水と水混和性溶媒、例えばアルコールとの混合物であってよい。
別の実施形態は、本明細書において開示されているポリウレタン分散体を含むインクジェット用インク組成物を提供する。一実施形態において、少なくとも1種のポリウレタンは、インクジェット用インク組成物中に、インク組成物の総質量に対して0.1質量%〜15質量%、例えば、0.2質量%〜15質量%、0.5質量%〜15質量%、1質量%〜15質量%、2質量%〜15質量%、3質量%〜15質量%、0.1質量%〜10質量%、0.2質量%〜10質量%、0.5質量%〜10質量%、1質量%〜10質量%、2質量%〜10質量%、0.1質量%〜5質量%、0.2質量%〜5質量%、0.5質量%〜5質量%、または1質量%〜5質量%、2質量%〜5質量%、0.1質量%〜1.5質量%、0.2質量%〜1.5質量%、または0.2質量%〜1質量%の範囲の量で存在する。
【0015】
一実施形態において、組成物は、非改質であってよいまたは改質されていてよい顔料を含むことができる。インクジェット用インク組成物中に使用される顔料の量は、変動することができるが、典型的に、インクジェット用インクの性能に有害に影響することなく所望の画質(例えば、光学濃度)を提供するのに有効な量である。一実施形態において、顔料は、インクジェット用インク組成物に、インクジェット用インク組成物の総質量に基づいて0.1%〜20%、例えば、1%〜20%、1%〜10%、または3%〜8%の範囲の量で存在する。
少なくとも1種のポリウレタンおよび改質顔料の相対量は、変動することができる。一実施形態において、改質顔料および少なくとも1種のポリウレタンは、15/1〜1/3、例えば、15/1〜1/2、15/1〜1/1、10/1〜1/3、10/1〜1/2、10/1〜1/1、5/1〜2/1、4/1〜2/1、または3/1〜2/1の範囲の質量比で存在する。
【0016】
適当な顔料の例としては、青色顔料、黒色顔料(例えば、カーボンブラック)、茶色顔料、シアン顔料、緑色顔料、白色顔料、紫色顔料、マゼンタ顔料、赤色顔料、黄色顔料、オレンジ顔料、またはその混合物が挙げられる。黒色顔料の例としては、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ガスブラックおよびランプブラックなど、様々なカーボンブラック(例えば、ピグメントブラック7)が挙げられる。市販されている黒色顔料としては、例えば、Cabot Corporationから利用可能なREGAL、BLACK PEARLS、ELFTEX、MONARCH、MOGULおよびVULCANの商標下(BLACK PEARLS 2000、BLACK PEARLS 1400、BLACK PEARLS 1300、BLACK PEARLS 1100、BLACK PEARLS 1000、BLACK PEARLS 900、BLACK PEARLS 880、BLACK PEARLS 800、BLACK PEARLS 700、BLACK PEARLS 570、BLACK PEARLS L、ELFTEX 8、MONARCH 1400、MONARCH 1300、MONARCH 1100、MONARCH 1000、MONARCH 900、MONARCH 880、MONARCH 800、MONARCH 700、REGAL 660、MOGUL L、REGAL 330、REGAL 400、VULCAN Pなど)で販売されているカーボンブラックが挙げられる。他の供給元から利用可能なカーボンブラックも使用することができる。別の実施形態において、顔料は、米国特許第9,388,300号に記載されている通りのカーボンブラックから選択され、この開示は参照により組み込まれる。一実施形態において、カーボンブラックは、170mL/100g以上(例えば、170〜220mL/100g)のOANを有し、160m
2/g〜220m
2/gの範囲のSTSA、少なくとも120mL/100g(または少なくとも130mL/100g)の圧縮OAN(COAN)、0.7〜1(または0.8〜1もしくは0.9〜1)の範囲のSTSA/BET表面積の比、および190m
2/g〜275m
2/g(または200m
2/g〜275m
2/g、200m
2/g〜270m
2/gもしくは200m
2/g〜260m
2/g)の範囲のBET表面積から選択される少なくとも1つまたは複数の特性を有する。
【0017】
適当なクラスの有機顔料としては、例えば、アントラキノン、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ジアゾ、モノアゾ、ピラントロン、ペリレン、複素環式イエロー、キナクリドンおよび(チオ)インジゴイドが挙げられる。フタロシアニンブルーの例としては、銅フタロシアニンブルーおよびその誘導体(ピグメントブルー15)が挙げられる。キナクリドンの例としては、ピグメントオレンジ48、ピグメントオレンジ49、ピグメントレッド122、ピグメントレッド192、ピグメントレッド202、ピグメントレッド206、ピグメントレッド207、ピグメントレッド209、ピグメントバイオレット19およびピグメントバイオレット42が挙げられる。アントラキノンの例としては、ピグメントレッド43、ピグメントレッド194(ペリノンレッド)、ピグメントレッド216(臭素化ピラントロン(Pyrathrone)レッド)およびピグメントレッド226(ピラントロンレッド)が挙げられる。ペリレンの例としては、ピグメントレッド123(朱色)、ピグメントレッド149(緋色)、ピグメントレッド179(くり色)、ピグメントレッド190(赤色)、ピグメントバイオレット、ピグメントレッド189(黄色がかった赤色)およびピグメントレッド224が挙げられる。チオインジゴイドの例としては、ピグメントレッド86、ピグメントレッド87、ピグメントレッド88、ピグメントレッド181、ピグメントレッド198、ピグメントバイオレット36、およびピグメントバイオレット38が挙げられる。複素環式イエローの例としては、ピグメントイエロー117およびピグメントイエロー138が挙げられる。顔料の他の適当な例としては、ピグメントイエロー1、74、155、180、185、213、218、220および221、ピグメントレッド254および269、ならびにピグメントブルー16および60が挙げられる。他の適当な有色顔料の例は、例えば、Colour Index, 3rd edition (The Society of Dyers and Colourist, 1982)に記載されている。
【0018】
一実施形態において、顔料は自己分散顔料であり、例えば、顔料は自己分散性である。一実施形態において、自己分散顔料は、少なくとも1つの結合された有機基を有する改質顔料である。一実施形態において、「結合された」有機基は、数時間(例えば、少なくとも4時間、6時間、8時間、12時間または24時間)の間のソックスレー抽出が、顔料から結合された基を除去しないという点において、吸着された基と区別することができる。別の実施形態において、有機基が、出発有機処理材料を溶解することができるが処理顔料を分散させることができない溶媒または溶媒混合物で反復洗浄(例えば、2回、3回、4回、5回またはそれ以上の洗浄)した後に除去され得ないならば、有機基は顔料に結合されている。なお別の実施形態において、「結合された」は、共有結合などの結合、例えば、有機基に結合または共有結合された顔料を指す。
【0019】
有機基は、脂肪族基、環状有機基、または脂肪族部分および環状部分を有する有機化合物であってよい。一実施形態において、有機基は、一時的でさえジアゾニウム塩を形成できる第1級アミンから誘導されるジアゾニウム塩を介して結合されている。結合の他の方法が下に記載されている。有機基は、置換されていても非置換であっても、分岐していても非分岐であってもよい。脂肪族基としては、例えば、アルカン、アルケン、アルコール、エーテル、アルデヒド、ケトン、カルボン酸および炭水化物から誘導される基が挙げられる。環状有機基としては、以下に限定されないが、脂環式炭化水素基(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル)、複素環式炭化水素基(例えば、ピロリジニル、ピロリニル、ピペリジニル、モルホリニルなど)、アリール基(例えば、フェニル、ナフチル、アントラセニル)、およびヘテロアリール基(イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジニル、チエニル、チアゾリル、フリル、インドリル、およびトリアゾリル、例えば1,2,4−トリアゾリルおよび1,2,3−トリアゾリル)が挙げられる。
【0020】
一実施形態において、少なくとも1つの結合された有機基は、少なくとも1つのイオン性基、イオン化性基、またはイオン性基およびイオン化性基の混合物を含む。イオン性基は、アニオン性またはカチオン性のいずれかであってよく、Na
+、K
+、Li
+、NH
4+、NR’
4+、アセテート、NO
3-、SO
42-、R’SO
3-、R’OSO
3-、OH
-またはCl
-などの無機または有機対イオンを含めて、反対荷電の対イオンと関連してよく、ここでR’は、水素または有機基、例えば置換されているまたは非置換のアリールまたはアルキル基などを表す。イオン化性基は、使用の媒体中でイオン性基を形成できるものである。アニオン性基は、酸性置換基など、アニオン(アニオン化性基)を形成することができるイオン化性置換基を有する基から発生され得る負に荷電されたイオン性基である。カチオン基は、プロトン化アミンなど、カチオン(カチオン化性基)を形成することができるイオン化性置換基から発生され得る正に荷電された有機イオン性基である。アニオン性基の具体例としては、−COO
-、−SO
3-、−OSO
3-、−HPO
3-;−OPO
32-または−PO
32-が挙げられ、アニオン化性基の具体例としては、−COOH、−SO
3H、−PO
3H
2、−R’SHまたは−R’OHが挙げられ、ここでR’は、水素または有機基、例えば置換されているまたは非置換のアリールまたはアルキル基を表す。その上、カチオン性基またはカチオン化性基の具体例としては、酸性媒体中でプロトン化されることでアンモニウム基−NR’
2H
+を形成することができるアルキルまたはアリールアミンが挙げられ、ここでR’は、有機基、例えば置換されているまたは非置換のアリールまたはアルキル基を表す。有機イオン性基としては、米国特許第5,698,016号に記載されているものが挙げられ、この開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0021】
一実施形態において、少なくとも1つの結合された有機基は、カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、ヒドロキシル、アミン、ならびにそのエステル、アミドおよび塩から選択される基を含む。例えば、結合された基は、有機基、例えばベンゼンカルボン酸基(−C
6H
4−COOH基)、ベンゼンジカルボン酸基、ベンゼントリカルボン酸基、ベンゼンスルホン酸基(−C
6H
4−SO
3H基)、またはその塩であってよい。一実施形態において、顔料表面上にイオン性基またはイオン化性基を導入するための表面改質、例えば塩素化およびスルホニル化も使用することができる。一実施形態において、結合された基は、ベンゼンカルボン酸基(−C
6H
4−COOH基)、ベンゼンジカルボン酸基、ベンゼントリカルボン酸基から選択され、顔料は、米国特許第9,388,300号に記載されている通り(および本明細書に記載されている通り)のカーボンブラックから選択され、この開示は参照により組み込まれる。
【0022】
一実施形態において、有機基は、いずれか直接的に結合していてもよいし(顔料のネイティブ原子に結合している)、または中間基もしくはスペーサー基を介して間接的に結合していてもよい。一実施形態において、中間基またはスペーサー基は、置換されているおよび非置換のC
1−C
12アルキル、C
5−C
20アリール、C
6−C
24アルキアリールおよびアラルキルから選択され、ここで「アルキル」は、N、OおよびSから選択されるヘテロ原子を含有する基によって任意選択により中断されていてよく、「アリール」は、N、OおよびSから選択されるヘテロ原子を含有する基によって任意選択により置き換えられる環炭素原子を含む。典型的に、結合された基は、顔料表面に存在する。
【0023】
有機基は、置換されていても非置換であってもよい。一実施形態において、有機基は、エステル、アミド、エーテル、カルボキシル、アリール、アルキル、ハロゲン化物、スルホネート、スルフェート、ホスホネート、ホスフェート、カルボキシレート、OR”、COR”、CO
2R”、OCOR”、CN、NR”
2、SO
2、CO、SO
3、SO
3H、OSO
2、OSO
3、SO
3NR”、R”NSO
2、NR”(COR”)、NR”CO、CONR”
2、NO
2、NO
3、CONR”、NR”CO
2、O
2CNR”、NR”CONR”、S、NR”、SO
2C
2H
4、上記で定義されている通りのアリーレン、上記で定義されている通りのアルキレンから選択される少なくとも1種の官能基で置換されており、ここで、同じであっても異なっていてもよいR”は、本明細書において定義されている通りの、有機基、例えば水素、アリール、およびアルキルを表す。
【0024】
代表的な有機基のさらなる例は、米国特許第5,571,311号;同第5,630,868号;同第5,707,432、5,955,232号;同第5,922,118号;同第5,900,029号;同第5,895,522号;同第5,885,335号;同第5,851,280号;同第5,837,045号;同第5,713,988号;および同第5,803,959号;PCT公開第WO96/18688号;およびPCT公開第WO96/18690号に記載されており、これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0025】
一実施形態において、有機基は、PCT公開第WO2011/143533号に開示されているものなど、少なくとも2個の環ヘテロ原子を含む5員複素芳香族基を含有し、この開示は参照により本明細書に組み込まれる。例えば、有機基は、式(Ib)または(IIb):
【0026】
【化2】
を有することができる。Ibについて、Xは、O、N(R
a)またはSであってよく;R
1は、H、C
1−C
10アルキル、C
2−C
10アルケニル、C
2−C
10アルキニル、C
3−C
20シクロアルキル、C
3−C
20シクロアルケニル、C
1−C
20ヘテロシクロアルキル、C
1−C
20ヘテロシクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、ハロ、シアノ、OR
b、COOR
b、OC(O)R
b、C(O)R
b、C(O)NR
bR
c、SO
3R
c、NR
bR
cまたはN
+(R
bR
cR
d)Yであってよく、ここで、R
a、R
b、R
cおよびR
dの各々は、独立して、H、C
1−C
10アルキル、C
3−C
20シクロアルキル、C
1−C
20ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールであってよく、Yは、アニオンであってよい。一般に、Yは、任意の適当なアニオン、例えば塩化物、臭化物、ヨウ化物、スルフェート、ニトレート、ホスフェート、シトレート、メタンスルホネート、トリフルオロアセテート、アセテート、マレート、トシレート、タータレート、フマレート(fumurate)、グルタメート、グルクロネート、ラクテート、グルタレートまたはマレエートであってよい。IIbについて、Xは、O、N(R
a)またはSであり;R
1およびR
2の各々は、独立して、H、C
1−C
10アルキル、C
2−C
10アルケニル、C
2−C
10アルキニル、C
3−C
20シクロアルキル、C
3−C
20シクロアルケニル、C
1−C
20ヘテロシクロアルキル、C
1−C
20ヘテロシクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、ハロ、シアノ、OR
b、COOR
b、OC(O)R
b、C(O)R
b、C(O)NR
bR
c、SO
3R
c、NR
bR
cまたはN
+(R
bR
cR
d)Yであり、R
a、R
b、R
cおよびR
dの各々は、独立して、H、C
1−C
10アルキル、C
3−C
20シクロアルキル、C
1−C
20ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールであり、Yは、アニオンであり;ただし、R
1およびR
2の少なくとも1つはHでないという条件である。
【0027】
一実施形態において、少なくとも1つの有機基は、式−[R(A)]−を含み、式中:
Rは、顔料に結合されており、アリーレン、ヘテロアリーレンおよびアルキレンから選択され、
Aは、カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、ヒドロキシル、アミン、ならびにそのエステル、アミドおよび塩から選択される。
【0028】
別の実施形態において、少なくとも1つの有機基は、式−[R(A)]−を含み、式中:
Rは、顔料に結合されており、アリーレン、ヘテロアリーレンおよびアルキレンから選択され、
Aは、水素、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルキレンオキシド(例えば、エチレンまたはプロピレンオキシド)、カルボン酸エステル、およびグリコールから選択される。
別の実施形態において、少なくとも1つの有機基は、式−[R(A)]−を含み、式中:
Rは、顔料に結合されており、アリーレン、ヘテロアリーレンおよびアルキレンから選択され、
Aは、ポリマーから選択される。
【0029】
アリーレン、ヘテロアリーレンおよびアルキレンは、非置換であってよいし、または例えば上記に列挙されている官能基の1つもしくは複数で置換されていてもよい。例証的なアリーレンとしては、フェニレン、ナフチレンおよびビフェニレンが挙げられ、例証的なヘテロアリーレンとしては、1個または複数の酸素原子または窒素原子で置換されている環炭素を有するフェニレン、ナフチレンおよびビフェニレンが挙げられる。一実施形態において、アリーレンはC
5−C
20アリーレンである。ヘテロアリーレンは、1個または複数の環炭素原子がヘテロ原子、例えば、N、OおよびSと置き換えられている本明細書において定義されている通りのアリーレンであってよい。ヘテロ原子は、環原子であることに加えて、他の基に結合されていてよい。例証的なアリーレンとしては、フェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントレニル、ビフェニルが挙げられ、例証的なヘテロアリーレンとしては、ピリジニル、イミダゾリル、ピラゾリル、チエニル、チアゾリル、フリル、トリアジニル、インドリル、ベンゾチアジアゾリルおよびベンゾチアゾリルが挙げられる。アルキレンは、分岐または非分岐であってよい。アルキレンは、ヘテロ原子によって任意選択により中断されているメチレン、エチレン、プロピレンまたはブチレンなどのC
1−C
12アルキレンであってよい。
【0030】
一実施形態において、Rは、置換されているRであり、Aに結合されている少なくともスペーサー基で置換されているアリーレン、ヘテロアリーレンおよびアルキレンを含む。一実施形態において、置換されているRは、R’−Spを含み、ここでR’は、上記で定義されている通りのアリーレン、ヘテロアリーレンおよびアルキレンから選択され、Spは、R’およびAの両方に結合できる上記に列挙されている官能基から選択されるスペーサーである。別の実施形態において、Spは、−CO
2−、−O
2C−、−CO−、−OSO
2−、−SO
3−、−SO
2−、−SO
2C
2H
4−O−、−SO
2C
2H
4S−、−SO
2C
2H
4NR”−、−O−、−S−、−NR”−、−NR”CO−、−CONR”−、−NR”CO
2−、−O
2CNR”−、−NR”CONR”−、−N(COR”)CO−、−CON(COR”)−、−NR”COCH(CH
2CO
2R”)−およびそれからの環状イミド、−NR”COCH
2CH(CO
2R”)−およびそれからの環状イミド、−CH(CH
2CO
2R”)CONR”−およびそれからの環状イミド、−CH(CO
2R”)CH
2CONR”およびそれからの環状イミド、(これらのフタルイミドおよびマレイミドを含める)、スルホンアミド基(−SO
2NR”−基および−NR”SO
2−基を含める)、アリーレン基、アルキレン基から選択される。同じであっても異なっていてもよいR”は、上記の通りに定義されているか、または水素もしくは有機基、例えば置換されているもしくは非置換のアリールもしくはアルキル基、例えば、C
5−C
20アリール基、ならびに置換されているおよび非置換のC
1−C
6アルキル基を表す。一実施形態において、Spは、−CO
2−、−O
2C−、−O−、−NR”−、−NR”CO−、−CONR”−、−SO
2NR”−、−SO
2CH
2CH
2NR”−、−SO
2CH
2CH
2O−または−SO
2CH
2CH
2S−から選択され、ここでR”は、上記の通りに定義されており、例えば、HおよびC
1−C
6アルキル基から選択される。
【0031】
別の実施形態において、Spは、カルボン酸もしくはエステル、酸塩化物、スルホニルクロリド、アシルアジド、イソシアネート、ケトン、アルデヒド、無水物、アミド、イミド、イミン、α,β−不飽和のケトン、アルデヒドもしくはスルホン、ハロゲン化アルキル、エポキシド、アルキルスルホネートもしくはスルフェート、例えば(2−スルファトエチル)−スルホン基、アミン、ヒドラジン、アルコール、チオール、ヒドラジド、オキシム、トリアゼン、カルバニオン、芳香族化合物、その塩もしくは誘導体、またはその任意の組合せから選択される反応性基を有する化合物から誘導される。こうした化合物の例としては、アミノ官能化芳香族化合物、例えば4−アミノベンジルアミン(4−ABA)、3−アミノベンジルアミン(3−ABA)、2−アミノベンジルアミン(2−ABA)、2−アミノフェニルエチルアミン、4−アミノフェニル−(2−スルファトエチル)−スルホン、(APSES)、p−アミノ安息香酸(PABA)、4−アミノフタル酸(4−APA)、および5−アミノベンゼン−1,2,3−トリカルボン酸が挙げられる。
【0032】
一実施形態において、少なくとも1つの有機基は、カルシウムを結合でき(例えば、定義されているカルシウム指数値を有する)、PCT公開第WO2007/053564号に記載されているそれらの有機基が挙げられ、この開示は参照により本明細書に組み込まれる。例えば、有機基は、少なくとも1つのジェミナルビスホスホン酸基、その部分エステルまたはその塩、例えば、式−CQ(PO
3H
2)
2を有する基、その部分エステルまたはその塩を含み、ここでQは、ジェミナル位置に結合されており、H、R、OR、SRまたはNR
2であってよく、ここで、同じであっても異なっていてもよいRは、上記の通りに定義されているか、あるいはH、C
1−C
18飽和もしくは不飽和の分岐もしくは非分岐のアルキル基、C
1−C
18飽和もしくは不飽和の分岐もしくは非分岐のアシル基、アラルキル基、アルカリール基またはアリール基であってよい。加えて、米国特許第5,672,198号、同第5,922,118号、同第6,042,643号、および同第6,641,656号は、ホスホン酸基を含めた様々な結合された基を有する改質顔料を開示しており、これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0033】
カルシウムを結合できる他の有機基としては:少なくとも1つのヒドロキサム酸基またはその塩(例えば、式−N(OH)−CO−またはその塩を有する少なくとも1つの基);少なくとも1つのOH基を有する少なくとも1つのヘテロアリール基またはその塩(例えば、ピリジニル基もしくはキノリニル基などの窒素含有ヘテロアリール基、および有機基は、ヒドロキシピリジニル基もしくはヒドロキシキノリニル基であり、ここで、ヒドロキシ基は、ヘテロアリール基上の位置にあるので、それは、ヘテロ原子に対するオルトなどヘテロ原子に対して幾何学的に近い;または互いにオルトの位置で2つのOH基を有するヘテロアリール);少なくとも1つのホスホン酸基またはその塩、および少なくとも1つの第2のイオン性基、イオン化性基または塩基性基(塩基性基は、ホスホン酸基に対してジェミナルであってよいOH基またはアミノ基などのルイス塩基である);少なくとも1つのカルボン酸基を有する少なくとも1つのヘテロアリール基またはその塩(例えば、互いにオルトまたはメタである少なくとも2つのカルボン酸基など、少なくとも2つまたは3つのカルボン酸基);少なくとも1つのニトロソ基および少なくとも1つのOH基(例えば、互いにオルト)を有するアリール基、またはその塩;少なくとも2つのOH基、少なくとも2つのNH
2基、または少なくとも1つのOH基および少なくとも1つのNH
2基(例えば、少なくとも2つのOH基、少なくとも2つのNH
2基、または少なくとも1つのOH基および少なくとも1つのNH
2基)を有するアゾアレーン基が挙げられ、式Ar
1−N=N−Ar
2を有し、式中、同じであっても異なっていてもよいAr
1およびAr
2は、アリーレン基またはアリール基であり、Ar
1またはAr
2の少なくとも1つは、アリーレン基である(例えば、OH基および/またはNH
2基は、アゾ基に対してオルトの位置に位置する)。他の基は、WO2007/053564に開示されている。
【0034】
一実施形態において、結合された有機基は、ポリマーを含む。一実施形態において、ポリマーは、少なくとも1つの非イオン性基を含む。例としては、約1個から約12個の炭素のアルキレンオキシド基およびポリオール、例えば−CH
2−CH
2−O−基、−CH(CH
3)−CH
2−O−基、−CH
2−CH(CH
3)−O−基、−CH
2CH
2CH
2−O−基、またはその組合せが挙げられる。これらの非イオン性基は、本明細書において開示されている通りの少なくとも1つのイオン性基またはイオン化性基をさらに含むことができる。
【0035】
ホモポリマーまたはコポリマーであってよい結合されているポリマーは、アクリル酸およびメタクリル酸、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、アクリルアミドおよびメタクリルアミド、アクリロニトリル、シアノアクリレートエステル、マレエートおよびフマレートジエステル、ビニルピリジン、ビニルN−アルキルピロール、酢酸ビニル、ビニルオキサゾール、ビニルチアゾール、ビニルピリミジン、ビニルイミダゾール、ビニルケトン、ビニルエーテル、ならびにスチレンから選択されるモノマーから誘導することもできる。ビニルエーテルとしては、一般構造CH
2=CH(OR)を有するものなど、カチオン重合によって調製することができるものが挙げられ、ここでRは、アルキル基、アラルキル基、アルカリール基もしくはアリール基であるか、または1個もしくは複数のアルキレンオキシド基を含む基である。ビニルケトンとしては、アルキル基のβ−炭素原子が水素原子を保有していないもの、例えば両方のβ−炭素がC
1−C
4アルキル基、ハロゲンなどを保有しているビニルケトン、またはフェニル基が1〜5個のC
1−C
6アルキル基および/もしくはハロゲン原子で置換されていてもよいビニルフェニルケトンが挙げられる。スチレンとしては、ビニル基がα−炭素原子などにてC
1−C
6アルキル基で置換されているもの、ならびに/またはフェニル基が、C
1−C
6アルキル基、アルケニル(ビニルを含める)基もしくはアルキニル(アセチレニルを含める)基、フェニル基、ハロアルキル基、および官能基、例えばC
1−C
6アルコキシ基、ハロゲン基、ニトロ基、カルボキシ基、スルホネート基、C
1−C
6アルコキシカルボニル基、ヒドロキシ(C
1−C
6アシル基で保護されているものを含める)基およびシアノ基を含めて、1つから5つの置換基で置換されているものが挙げられる。具体例としては、メチルアクリレート(MA)、メチルメタクリレート(MMA)、エチルアクリレート(EA)、エチルメタクリレート(EMA)、ブチルアクリレート(BA)、2−エチルヘキシルアクリレート(EHA)、アクリロニトリル(AN)、メタクリロニトリル、スチレン、およびその誘導体が挙げられる。
【0036】
一実施形態において、顔料(例えば、カーボンブラック)は、例えば、以下の特許において詳述されている通りのジアゾニウム処理を介して少なくとも1つの有機基で改質されており:米国特許第5,554,739号;同第5,630,868号;同第5,672,198号;同第5,707,432号;同第5,851,280号;同第5,885,335号;同第5,895,522号;同第5,900,029号;同第5,922,118号;同第6,042,643;−6,534,569号;同第6,398,858および6,494,943(高剪断条件)6,372,820号;同第6,368,239号;同第6,350,519号;同第6,337,358号;同第6,103,380号;同第7,173,078号;同第7,056,962号;同第6,942,724号;同第6,929,889号;同第6,911,073号;同第6,478,863号;同第6,472,471号;およびWO2011/143533、これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。一実施形態において、結合は、少なくとも1つの有機基がジアゾニウム塩置換基を有するジアゾニウム反応を介して提供される。別の実施形態において、直接的な結合は、例えば、開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,068,688号;同第6,337,358号;同第6,368,239号;同第6,551,393号;同第6,852,158号に記載されているジアゾニウムおよび安定フリーラジカル方法を使用することによって形成することができ、該方法は、少なくとも1つのラジカルを少なくとも1つの粒子と反応させることを利用し、ここで、ラジカルは、ラジカル捕捉できる1つまたは複数の粒子などの存在下で、少なくとも1種の遷移金属化合物と少なくとも1種のオルガノハロゲン化物化合物との相互作用から発生される。なお別の実施形態において、少なくとも1種のカーボンブラックは、米国特許第5,837,045号、同第6,660,075号およびWO2009/048564(少なくとも1つの置換基によって活性化されるC−−C二重結合または三重結合を含有する有機化合物との反応)または米国公開第2004/0171725号、同第6,664,312号、同第6,831,194合(無水物構成成分との反応)、同第6,936,097号、米国公開第2001/0036994号、同第2003/0101901号(−N=N−N−基を有する有機基との反応)、カナダ特許第2,351,162号、欧州特許第1394221号、およびPCT公開番号WO01/51566(少なくとも1種の求電子試薬と少なくとも1種の求核試薬との間の反応)、WO04/63289、WO2010/141071(H2N−A−Yとの反応、ここでAはヘテロ原子である)、およびWO99/23174の方法を使用することによって改質することができ(例えば、官能基を結合させるため)、これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0037】
ポリマー基を結合されているものを含めた改質顔料を調製するための他の方法も、例えば、第3の化学基が結合されている顔料を形成するために第1の化学基および第2の化学基を反応させることによって改質顔料を作製する方法を開示しているPCT公開番号WO01/51566に記載されている。PCT公開第WO2007/053563号は、定義されているカルシウム指数値を有する少なくとも1種の官能基を有するポリマーを含む少なくとも1つのポリマー基が結合されている改質着色剤を開示している。少なくとも1つのジェミナルビスホスホン酸基、その部分エステルまたはその塩を含む有機基を含めて、有機基の特定の実施形態が記載されている。
【0038】
ポリマー改質顔料生成物の調製のための他の方法も開発されている。例えば、開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,056,962号、同第6,478,863、同第6,432,194、同第6,336,965号、米国公開第2006/0189717号およびPCT公開第WO2008/091653号は、ジアゾニウム塩の使用を介してポリマーを顔料に結合させるための方法を記載している。開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,173,078号、同第6,916,367号、同第6,911,073号、同第6,723,783号、同第6,699,319号、同第6,472,471号、および同第6,110,994は、ポリマーおよび結合されている反応性基を有する顔料を反応させることによって、ポリマー改質顔料を調製する方法を開示している。結合されているポリマー基を有する改質顔料も、溶融物の形態でポリマーを利用する米国公開第2008/0177003号に開示されており、この開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0039】
ポリマー改質顔料は、顔料からのモノマーの重合によって調製することもできる。例えば、ポリマー改質顔料は、ラジカル重合、制御重合方法、例えば原子移動ラジカル重合(ATRP)、安定フリーラジカル(SFR)重合、および可逆的付加−断片化連鎖移動重合(RAFT)、イオン性重合(アニオン性またはカチオン性)、例えば基移動重合(GTP)、および縮合重合によって調製することができる。その上、ポリマー改質顔料は、例えば、米国特許第6,372,820号;同第6,350,519号;同第6,551,393号;もしくは同第6,368,239号に、またはPCT公開第2006/086599号、および同第2006/086660号に記載されている方法を使用して調製することができ、これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。ポリマーによってコーティングされた顔料を含む改質顔料について、これらの改質顔料は、当技術分野において公知の任意の方法、例えば米国特許第5,085,698号、同第5,998,501号、同第6,074,467号、同第6,852,777号、および同第7,074,843号、ならびに国際特許公開第WO2004/111,140号、同第WO2005/061087号、および同第WO2006/064193号に記載されているものを使用して調製することができ、これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0040】
ポリマーおよびプレポリマーを用いる表面グラフト化カーボンブラックは、N. Tsubokawa, in Prog. Polym. Sci., 17, 417, 1992、およびJ. Polym. Sci. Polym. Chem. Ed. Vol. 20, 1943-1946 (1982)に記載されており、これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。末端ヒドロキシル基またはアミノ基を有するポリマーはN. Tsubokawa in Reactive & Functional Polymers 27 (1995) 75-81に開示されている通り、カーボンブラックの表面カルボキシル基上にグラフト化することができる。
【0041】
少なくとも1つのポリマー基が結合されている改質顔料は、上に記載されているポリマー基と異なる第2の有機基をさらに含むことができる。これらは、例えば、米国特許第5,630,868号に記載されている基を含み、この開示は参照により本明細書に組み込まれる。例えば、改質顔料は、少なくとも1つのイオン性基、少なくとも1つのイオン化性基、またはその混合物を含むことができる第2の結合された有機基をさらに含むことができる。一実施形態において、イオン性基またはイオン化性基は、アニオン性基またはアニオン化性基である。本発明の改質顔料の顔料に関して上に記載されている、イオン性基またはイオン化性基、例えば、アニオン性基またはアニオン化性基のいずれかは、第2の有機基であってよい。さらに、第2の有機基は、ポリマーを含むポリマー基であってよい。上に記載されているポリマー基のいずれかは、第2の結合された有機基として使用することもできる。
【0042】
結合された有機基の量は、改質カーボンブラックの所望の使用および結合された基の型に依存して、変動することができる。例えば、有機基の総量は、窒素吸着(BET方法)によって測定された場合、基が顔料の表面積m
2当たり基が約0.01〜約10.0マイクロモル、例えば、約0.5〜約5.0マイクロモル/m
2、約1〜約3マイクロモル/m
2、または約2〜約2.5マイクロモル/m
2であってよい。本発明の各種実施形態のために記載されているものと異なる追加の結合された有機基も、存在することができる。
【0043】
一実施形態において、自己分散顔料は、例えば、当技術分野において公知の方法(例えば、元素分析)によって決定することができる3%以上の酸素含有量を有する酸化カーボンブラックである。
一実施形態において、酸化ブラックは、フェノール、ラクトン、カルボニル、カルボキシル(例えば、カルボン酸)、無水物、エーテルおよびキノンの1つまたは複数など、イオン性またはイオン化性の酸素含有基を有する表面を特色とする。カーボンブラックの酸化の程度は、こうしたイオン性基またはイオン化性基の表面濃度を決定することができる。本明細書において開示されているカーボンブラックは、当技術分野において公知の様々な酸化剤によって酸化させることができる。カーボンブラックのための例証的な酸化剤としては、酸素ガス、オゾン、NO
2(NO
2および空気の混合物を含める)、過酸化物、例えば過酸化水素、過硫酸塩、例えば過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムおよび過硫酸アンモニウム、次亜ハロゲン酸塩、例えば次亜塩素酸ナトリウム、亜ハロゲン酸塩、ハロゲン酸塩または過ハロゲン酸塩(亜塩素酸ナトリウム、塩素酸ナトリウム、または過塩素酸ナトリウムなど)、酸化性酸、例えば硝酸、および遷移金属含有酸化体、例えばペルマンガネート塩、四酸化オスミウム、酸化クロム、硝酸セリウムアンモニウム、およびその混合物、例えば、気体状酸化体の混合物、例えば酸素およびオゾンが挙げられる。一実施形態において、本明細書において開示されているカーボンブラックは、例えば、米国特許第7,922,805号および同第9,056,994号に記載されている通り、オゾン酸化を介して酸化され、これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0044】
該インクジェット用インク組成物は、最小の追加構成成分(添加剤および/または共溶媒)および加工ステップで形成することができる。しかしながら、適当な添加剤がこれらのインクジェット用インク組成物に組み込まれることで、組成物の安定性を維持しながら多数の所望の特性を付与することもできる。例えば、界面活性剤が添加されることで、組成物のコロイド安定性をさらに増強することができる。他の添加剤は、当技術分野において周知であり、保水剤、殺生物剤および殺真菌剤、pH制御剤、乾燥加速剤、浸透剤などが挙げられる。添加剤の量は、様々な因子に依存して変動するが、一般に、インクジェット用インク組成物の質量に基づいて0%および40%、例えば、0.1%〜40%の範囲の量で存在する。追加として、本発明のインクジェット用インク組成物は、色バランスを改変するとともに光学濃度を調整するための染料をさらに組み込むことができる。こうした染料としては、食品染料、FD&C染料、酸染料、直接染料、反応性染料、銅フタロシアニン誘導体を含めたフタロシアニンスルホン酸の誘導体、ナトリウム塩、アンモニウム塩、カリウム塩およびリチウム塩が挙げられる。分散体およびインクジェット用インク組成物に関する追加の詳細は、下記に提供されている。
【0045】
分散剤(界面活性剤および/または分散剤)は、組成物のコロイド安定性をさらに増強するため、またはインク、印刷用紙などの印刷基板もしくはインクプリントヘッドのいずれかとの相互作用を変化させるために添加することができる。様々なアニオン性、カチオン性および非イオン性分散剤が、本発明のインク組成物と併せて使用することができ、これらは、無希釈でまたは水溶液として使用することができる。
【0046】
アニオン性分散剤または界面活性剤の代表例としては、以下に限定されないが、高級脂肪酸塩、高級アルキルジカルボキシレート、高級アルコールの硫酸エステル塩、高級アルキル−スルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、アルキルナフタレンスルホネート、ナフタレンスルホネート(Na、K、Li、Ca、など)、ホルマリン重縮合物、高級脂肪酸とアミノ酸との間の縮合物、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、アルキルスルホスクシネート、ナフテネート、アルキルエーテルカルボキシレート、アシル化ペプチド、α−オレフィンスルホネート、N−アクリルメチルタウリン、アルキルエーテルスルホネート、第2級高級アルコールエトキシスルフェート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルスルフェート、モノグリシルスルフェート、アルキルエーテルホスフェートおよびアルキルホスフェート、アルキルホスホネートおよびビスホスホネートが挙げられ、ヒドロキシル化またはアミノ化誘導体が含まれる。例えば、スチレンスルホネート塩、非置換のおよび置換されているナフタレンスルホネート塩(例えば、アルキルまたはアルコキシ置換ナフタレン誘導体)、アルデヒド誘導体(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒドなどを含めて、非置換アルキルアルデヒド誘導体など)、マレイン酸塩、ならびにその混合物のポリマーおよびコポリマーは、アニオン性分散助剤として使用することができる。塩は、例えば、Na
+、Li
+、K
+、Cs
+、Rb
+、ならびに置換されているおよび非置換のアンモニウムカチオンを含む。カチオン性界面活性剤の代表例としては、脂肪族アミン、第4級アンモニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩などが挙げられる。
【0047】
本発明のインクジェット用インク中に使用することができる非イオン性分散剤または界面活性剤の代表例としては、フッ素誘導体、シリコーン誘導体、例えば、シリコーンのコポリマー、エチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシド、アクリル酸コポリマー、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン第2級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンスチロールエーテル、アセチレンジオール、例えばエトキシ化アセチレンジオール、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、アルキルフェノールホルマリン縮合物のエチレンオキシド誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルポリオキシエチレン化合物の脂肪酸エステル、ポリエチレンオキシド縮合型のエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、ポリグリセロールの脂肪酸エステル、プロピレングリコールの脂肪酸エステル、甘蔗糖脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ならびにポリオキシエチレンアルキルアミンオキシドが挙げられる。例えば、エトキシ化モノアルキルまたはジアルキルフェノールが使用され得る。これらの非イオン性界面活性剤または分散剤は、単独で、または前に記述のアニオン性およびカチオン性分散剤との組合せで使用することができる。
【0048】
分散剤は、天然ポリマーまたは合成ポリマー分散剤であってもよい。天然ポリマー分散剤の具体例としては、タンパク質、例えば接着剤、ゼラチン、カゼインおよびアルブミン;天然ゴム、例えばアラビアガムおよびトラガカントガム;グルコシド、例えばサポニン;アルギン酸およびアルギン酸誘導体、例えばプロピレングリコールアルギネート、トリエタノールアミンアルギネートおよびアンモニウムアルギネート;ならびにセルロース誘導体、例えばメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよびエチルヒドロキシセルロースが挙げられる。合成ポリマー分散剤を含めて、ポリマー分散剤の具体例としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アクリルまたはメタクリル樹脂(しばしば「(メタ)アクリル樹脂」と記述される)、例えばポリ(メタ)アクリル酸、アクリル酸−(メタ)アクリロニトリルコポリマー、カリウム(メタ)アクリレート−(メタ)アクリロニトリルコポリマー、酢酸ビニル−(メタ)アクリレートエステルコポリマーおよび(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリレートエステルコポリマー;スチレン−アクリルまたはメタクリル樹脂、例えばスチレン−(メタ)アクリル酸コポリマー、スチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリレートエステルコポリマー、スチレン−α−メチルスチレン−(メタ)アクリル酸コポリマー、スチレン−α−メチルスチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリレートエステルコポリマー;スチレン−マレイン酸コポリマー;スチレン−無水マレイン酸コポリマー、ビニルナフタレン−アクリル酸またはメタクリル酸コポリマー;ビニルナフタレン−マレイン酸コポリマー;ならびに酢酸ビニルコポリマー、例えば酢酸ビニル−エチレンコポリマー、酢酸ビニル−脂肪酸ビニルエチレンコポリマー、酢酸ビニル−マレエートエステルコポリマー、酢酸ビニル−クロトン酸コポリマーおよび酢酸ビニル−アクリル酸コポリマー;ならびにその塩が挙げられる。
【0049】
一実施形態において、顔料は、顔料に吸着された少なくとも1つのポリマーを含むまたは顔料をカプセル化する(例えば、ポリマーカプセル化顔料)ポリマー分散顔料である。一実施形態において、ポリマーカプセル化顔料は、ポリマーが様々な架橋剤で架橋されるポリマー分散顔料を含む。ポリマー分散顔料は、本明細書に記載されている通りの天然ポリマーまたは合成ポリマー分散剤を含むことができる。顔料は、本明細書に記載されている任意の顔料、例えば、非改質もしくはそうでなければ非処理顔料、または改質(自己分散)顔料であってよい。一実施形態において、ポリマーは、インクジェット用インク組成物の総質量に対して、0.1質量%〜20質量%、例えば、0.2質量%〜20質量%、または0.5質量%〜20質量%の範囲の量で存在する。
【0050】
一実施形態において、インクジェット用インク組成物は、1〜25cPの範囲の粘度を有する。粘度は、少なくとも1種のポリウレタンの量を変動することによって調整することができる。代替として、または加えて、インクジェット用インク組成物の粘度は、以下に限定されないが、アルカリ膨張性エマルジョン(BASFからのRheovis(登録商標)ASレオロジー制御添加剤など)、疎水的に改質されたアルカリ膨張性エマルジョン(BASFからのRheovis(登録商標)HSレオロジー制御添加剤など)、および疎水的に改質されたポリエーテル(BASFからのRheovis(登録商標)PEレオロジー制御添加剤など)を含めて、様々なレオロジー添加剤で調整することができる。
【0051】
保水剤および水溶性有機化合物も、例えば、ノズルの閉塞を防止する目的のために、ならびに紙浸透(浸透剤)、乾燥の改善(乾燥加速剤)および抗コックリング特性を提供するために、本発明のインクジェット用インク組成物に添加することができる。使用することができる保水剤および他の水溶性化合物の具体例としては、低分子量グリコール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールおよびジプロピレングリコール;約2個から約40個の炭素原子を含有するジオール、例えば1,3−ペンタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、2,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール)、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ポリ(エチレン−co−プロピレン)グリコールなど、ならびにエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドを含むエチレン酸化物を含むアルキレンオキシドとのそれらの反応生成物;グリセリン、トリメチロールプロパン、1,3,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオールなど、ならびにエチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびその混合物を含めたアルキレンオキシドとのそれらの反応生成物を含めて、約3個から約40個の炭素原子を含有するトリオール誘導体;ネオペンチルグリコール、(2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール)など、ならびに広範囲の分子量を有する材料を形成するための任意の望ましいモル比におけるエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドを含めたアルキレンオキシドとのそれらの反応生成物;チオジグリコール;ペンタエリスリトールおよび低級アルコール、例えばエタノール、プロパノール、iso−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、およびtert−ブチルアルコール、2−プロピン−1−オール(プロパルギルアルコール)、2−ブテン−1−オール、3−ブテン−2−オール、3−ブチン−2−オール、およびシクロプロパノール;アミド、例えばジメチルホルムアルデヒドおよびジメチルアセトアミド;ケトンまたはケトアルコール、例えばアセトンおよびジアセトンアルコール;エーテル、例えばテトラヒドロフランおよびジオキサン;セロソルブ、例えばエチレングリコールモノメチルエーテルおよびエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチル(またはモノエチル)エーテル;カルビトール、例えばジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、およびジエチレングリコールモノブチルエーテル;ラクタム、例えば2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドンおよびε−カプロラクタム;尿素および尿素誘導体;内塩、例えばベタインなど;1−ブタンチオールを含めて、前に記述の材料のチオ(硫黄)誘導体;t−ブタンチオール1−メチル−1−プロパンチオール、2−メチル−1−プロパンチオール;2−メチル−2−プロパンチオール;チオシクロプロパノール、チオエチレングリコール、チオジエチレングリコール、トリチオ−またはジチオ−ジエチレングリコールなど;アセチルエタノールアミン、アセチルプロパノールアミン、プロピルカルボキシエタノールアミン、プロピルカルボキシプロパノールアミンなどを含めて、ヒドロキシアミド誘導体;前に記述の材料とアルキレンオキシドとの反応生成物;ならびにその混合物が挙げられる。追加例としては、糖類、例えばマルチトール、ソルビトール、グルコノラクトンおよびマルトース;多価アルコール、例えばトリメチロールプロパンおよびトリメチロールエタン;N−メチル−2−ピロリドン;1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン;ジアルキルスルフィド(対称および非対称スルホキシド)、例えばジメチルスルホキシド、メチルエチルスルホキシド、アルキルフェニルスルホキシドなどを含めて、約2個から約40個の炭素原子を含有するスルホキシド誘導体;および約2個から約40個の炭素原子を含有するスルホン誘導体(対称および非対称スルホン)、例えばジメチルスルホン、メチルエチルスルホン、スルホラン(テトラメチレンスルホン、環状スルホン)、ジアルキルスルホン、アルキルフェニルスルホン、ジメチルスルホン、メチルエチルスルホン、ジエチルスルホン、エチルプロピルスルホン、メチルフェニルスルホン、メチルスルホラン、ジメチルスルホランなどが挙げられる。こうした材料は、単独でまたは組合せで使用することができる。
【0052】
殺生物剤および/または殺真菌剤も、本発明のインクジェット用インク組成物に添加することができる。殺生物剤は、細菌成長を防止する際に重要であるが、というのは、細菌はしばしばインクノズルよりも大きく、閉塞ならびに他の印刷上の問題を引き起こすことがあるからである。有用な殺生物剤の例としては、以下に限定されないが、ベンゾエート塩またはソルベート塩、およびイソチアゾリノンが挙げられる。
【0053】
一実施形態において、インクジェット用インク組成物は、共溶媒を含む。一実施形態において、共溶媒は、少なくとも10質量%の濃度で水中に可溶性または混和性であり、水性加水分解条件(例えば、熱老化条件下での水との反応、例えば、エステルおよびラクトンの加水分解を含める)に対して化学的に安定でもある。一実施形態において、共溶媒は、20℃で約10〜約78の範囲の誘電率など、水の誘電率より低い誘電率を有する。適当な共溶媒の例としては、低分子量グリコール(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルまたはモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、およびテトラエチレングリコールモノブチルエーテルなど);アルコール(エタノール、プロパノール、iso−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、およびtert−ブチルアルコール、2−プロピン−1−オール(プロパルギルアルコール)、2−ブテン−1−オール、3−ブテン−2−オール、3−ブチン−2−オール、およびシクロプロパノールなど);約2個から約40個の炭素原子を含有するジオール(1,3−ペンタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、2,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール)、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、およびポリ(エチレン−co−プロピレン)グリコール、ならびにエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドを含むエチレン酸化物を含むアルキレンオキシドとのそれらの反応生成物など);約3個から約40個の炭素原子を含有するトリオール(グリセリン(グリセロール)、トリメチロールトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオールなど、ならびにエチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびその混合物を含めたアルキレンオキシドとのそれらの反応生成物など);ポリオール(ペンタエリスリトールなど);アミド(ジメチルホルムアルデヒドおよびジメチルアセトアミドなど);ケトンまたはケトアルコール(アセトンおよびジアセトンアルコールなど);エーテル(テトラヒドロフランおよびジオキサンなど);ラクタム(2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、およびε−カプロラクタムなど);尿素または尿素誘導体(ジ−(2−ヒドロキシエチル)−5,5,−ジメチルヒダントイン(ダンタコール)および1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなど);内塩(ベタインなど);およびヒドロキシアミド誘導体(アセチルエタノールアミン、アセチルプロパノールアミン、プロピルカルボキシエタノールアミン、およびプロピルカルボキシプロパノールアミン、ならびにアルキレンオキシドとのそれらの反応生成物など)が挙げられる。追加例としては、糖類(マルチトール、ソルビトール、グルコノラクトンおよびマルトースなど);約2個から約40個の炭素原子を含有するスルホキシド誘導体(対称および非対称)(ジメチルスルホキシド、メチルエチルスルホキシド、およびアルキルフェニルスルホキシドなど);および約2個から約40個の炭素原子を含有するスルホン誘導体(対称および非対称)(ジメチルスルホン、メチルエチルスルホン、スルホラン(テトラメチレンスルホン、環状スルホン)、ジアルキルスルホン、アルキルフェニルスルホン、ジメチルスルホン、メチルエチルスルホン、ジエチルスルホン、エチルプロピルスルホン、メチルフェニルスルホン、メチルスルホラン、およびジメチルスルホランなど)が挙げられる。これらの共溶媒は、単独でまたは組合せで使用することができる。
【0054】
共溶媒の量は、共溶媒の特性(可溶性および/または誘電率)、改質顔料の型、および結果として得られたインクジェット用インク組成物の所望の性能を含めて様々な因子に依存して変動することができる。任意選択の共溶媒は、約30質量%以下および約20質量%以下を含めて、インクジェット用インク組成物の総質量に基づいて約40質量%以下の量で使用することができる。その上、使用される場合、任意選択の共溶媒の量は、約5質量%以上および約10質量%以上を含めて、インクジェット用インク組成物の総質量に基づいて約1質量%または2質量%以上である。
【0055】
インクジェット用インク組成物のpHを制御または調節するための添加剤(pH制御剤)も使用することができる。適当なpH調節剤の例としては、様々なアミン、例えばジエタノールアミンおよびトリエタノールアミン、ならびに様々な水酸化物試薬が挙げられる。水酸化物試薬は、水酸化物対イオンを有する塩など、OH−イオンを含む任意の試薬である。例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウムおよび水酸化テトラメチルアンモニウムが挙げられる。他の水酸化物塩、ならびに水酸化物試薬の混合物も使用することができる。さらに、水性媒体中でOH−イオンを発生させる他のアルカリ性の試薬も使用することができる。例としては、炭酸塩、例えば炭酸ナトリウム、重炭酸塩、例えば重炭酸ナトリウム、およびアルコキシド、例えばナトリウムメトキシドおよびナトリウムエトキシドが挙げられる。緩衝液も添加することができる。
【0056】
一般に、インクジェット用インク印刷は、基板上にノズルを介してカートリッジから小さいインク液滴をイジェクトまたは吐出することを伴う。液滴は、サイズが50ピコリットル未満、10〜20ピコリットルまたは20〜40ピコリットルであってよい。液滴を打滴するための様々な方法が開発されている。例えば、サーマルインクジェット印刷は、気泡を形成するチャンバーの中で蒸気爆発を引き起こす小さい電気加熱素子を介して電流のパルスを走行させることを伴い、紙上にインクの液滴を吐出する。代替として、インクは、発熱素子の代わりにピエゾ圧電性材料を使用して打滴することができる。ピエゾ材料は、形状またはサイズを変化させ、これがインク中の圧力パルスを発生させ、インクの液滴をノズルから押し出す。これらの異なる方法により、インク組成物の要件は異なることもある。例えば、サーマルインクジェット印刷プロセスは、発熱素子上にコーティングの熱形成を引き起こすことがあり(コゲーション)、これがノズルの不良な噴射および不良な印刷品質をもたらすことがある。一実施形態において、本明細書に記載されているインクジェット用インク組成物は、要件の差異にもかかわらず、ピエゾインクジェット用インク組成物またはサーマルインクジェット用インク組成物のいずれかとして使用することができる。一実施形態において、本明細書に記載されているインクジェット用インク組成物はサーマルインクジェット用インク組成物である。
【0057】
その上、本明細書において開示されているのは、少なくとも1種の顔料と少なくとも1種のポリウレタンとを含む、インクジェット用インク組成物であって、少なくとも1種の顔料が、自己分散顔料、例えば、少なくとも1つの有機基または酸化カーボンブラックが結合されている改質顔料である、組成物である。少なくとも1種のポリウレタンは、少なくとも1種のポリプロピレングリコール(400g/mol〜6000g/molの範囲のまたは本明細書において開示されている他の範囲の数平均分子量を有するポリプロピレングリコールなど)、および少なくとも1種のジイソシアネート(例えば、トルエンジイソシアネート、例えばトルエン2,4−ジイソシアネートおよびトルエン2,6−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ならびにその組合せ)を含むことができる。一実施形態において、少なくとも1種のポリウレタンは、0.85〜1.15の範囲のまたは0.9〜1.1の範囲のNCO/OH比を有する。ポリウレタンは、DMPAなど、少なくとも1つの親水基(例えば、カルボン酸、その塩およびエステル)を含有するモノマーをさらに含むことができる。一実施形態において、ポリウレタンは、少なくとも1種のポリプロピレングリコール、少なくとも1種のジイソシアネート(例えば、トルエンジイソシアネート、例えばトルエン2,4−ジイソシアネートおよびトルエン2,6−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ならびにその組合せ)、およびDMPAなど少なくとも1つの親水基(例えば、カルボン酸、その塩およびエステル)を含有するモノマーから本質的になるまたはそれらからなる。
【実施例】
【0058】
略語:
TDI=トルエンジイソシアネート
TMXDI=テトラメチルキシレンジイソシアネート
IPDI=イソホロンジイソシアネート
DMPA=ジメチロールプロピオン酸
PPG=ポリプロピレングリコール
PPG−1000=約112mg KOH/gのヒドロキシル数を有するポリプロピレングリコール(Bayer MaterialScience LLCからのArcol(登録商標)PPG−1000ポリエーテルポリオール)
PPG−2000=約56mg KOH/gのヒドロキシル数を有するポリプロピレングリコール(Bayer MaterialScience LLCからのArcol(登録商標)PPG−2000ポリエーテルポリオール)
PPG−3025=約37mg KOH/gのヒドロキシル数を有するポリプロピレングリコール(Bayer MaterialScience LLCからのArcol(登録商標)PPG−3025ポリエーテルポリオール)
DBTL=ジブチルスズジラウレート
TEA=トリエチルアミン
THF=テトラヒドロフラン
BYK−348=BYK Additives&InstrumentsからのBYK(登録商標)348シリコーン界面活性剤
COJ400=Cabot CorporationからのCAB−O−JET(登録商標)400顔料分散体、黒色水性顔料分散体。
【0059】
ポリウレタンPU−AからPU−Gの調製および特性
いくつかのポリウレタン(PU−AからPU−G)をインクジェット用インク組成物に組み込み、印刷性能について試験した。ポリウレタンPU−Aは、NeoRez(登録商標)R−551ウレタン分散体としてDSM NeoResinsから市販されている。追加として、いくつかのポリウレタン試料を下に記載されている通りに調製した。使用されたモノマーおよびこれらのポリウレタンの特性は、表1に列挙されている。
【0060】
【表1】
【0061】
ポリウレタンについての可溶性試験
およそ0.5gの乾燥ポリマーを20mLのTHF(可溶性を改善するための0.06mLのトリフルオロ酢酸を含む)中に添加し、混合物をRTで24時間の間放置し、続いて、あらゆる残留の不溶性固体または膨張ゲル様ポリマーからの透明な液体を分離することによって、THF中のポリウレタン試料の可溶性を行った。開始ポリマー量に対する不溶性ポリマーの質量は、ゲル画分として定義することができる。THF中に可溶性であるポリマーは、5%より低いゲル画分を有するものとして定義されている。PU−Aについて、それのゲル画分は、およそ90%であった。
ポリウレタンの分子量の決定
実施例におけるポリウレタンの分子量をサイズ排除クロマトグラフィーによって測定した。ポリウレタンを最初に、水、トリフルオロ酢酸およびテトラヒドロフランを含有する溶媒混合物中に溶解させた。ポリウレタン溶液を次いでPLgel Mixed−Dカラムに注入した。移動相は、テトラヒドロフラン中0.1体積%のトリフルオロ酢酸であった。ポリウレタンの質量平均分子量およびそれの分子量分布を、結果として得られたデータと既知の分子量を有するポリスチレン標準物質との比較から決定した。
ポリウレタンの酸価の決定
以下の等式:
AN=(コモノマーIIのモル数×56.1mgKOH×1000)/(PPG+コモノマーI+コモノマーIIの総質量(g))
に基づいて、ポリプロピレングリコール(PPG)ならびにコモノマーIおよびIIの量を使用することによって、ポリウレタンの酸価(AN)を算出した。
【0062】
PPGの質量%の決定
以下の等式:
PPGの質量%=(PPGの質量)/(PPG+コモノマーI+コモノマーIIの総質量(g))×100%
に基づいて、ポリプロピレングリコール(PPG)ならびにコモノマーIおよびIIの量を使用することによって、ポリウレタンのポリプロピレングリコールの質量%を算出した。
【0063】
ポリウレタンPU−Bの調製
NCOを末端基とするプレポリマーBの調製:温度モニター、攪拌機、凝縮器および窒素ガスラインが備えられている1リットルの円筒型反応器に、155gのPPG−1000、8.6gのDMPA、および17.2gのNMP N−メチル−2−ピロリドンを添加した。含有物を高速窒素流下で100℃に加熱した後、高真空を適用した。こうして得られた透明な、よく混合された溶液を窒素でバックフラッシュし、次いで、約50〜60℃に冷却した。61gのTDIを次いで、混合物に滴下により、添加漏斗またはプラスチックシリンジを介して添加しながら、温度を約80℃より低く留まるようによく制御した。反応温度を次いで約95℃に上昇させ、1.5時間の間保持した。温度を約60〜70℃に冷却した後、405mLの無水アセトンを撹拌下でゆっくり添加した。プレポリマーのアセトン溶液が得られ、窒素下にて約40℃で保持した。NCO%を滴定によって4.720であると決定した。5.9mLのTEAを次いで、このバッチのNCOを末端基とするプレポリマーのアセトン溶液に添加し、続いて、約30分間約40℃で窒素下にて撹拌した。こうして得られた溶液を次のステップのために分割した。
【0064】
ポリウレタンPU−Bの調製:撹拌下にて、上記で得られた約100gの温かいNCOを末端基とするプレポリマーのアセトン溶液を、シリンジまたは添加漏斗を介して室温で、約180gの脱イオン水および0.56mLのTEAを含有する水溶液に迅速に添加した。反応混合物を終夜撹拌しながら保持し、次いで、アセトンを真空下で除去した。最終のポリウレタン溶液が得られた:17.1%の固体、およびpH8.20。
【0065】
ポリウレタンPU−Cの調製
NCOを末端基とするプレポリマーCの調製:温度モニター、攪拌機、凝縮器および窒素ガスラインが備えられている1リットルの円筒型反応器に、143.2gのPPG−2000、20.7gのDMPA、および41.4gのNMPを添加した。含有物を高速窒素流下で100℃に加熱した後、高真空を適用した。こうして得られた透明な、よく混合された溶液を窒素でバックフラッシュし、次いで、約50〜60℃に冷却した。52.3gのTDIを次いで、混合物に滴下により、添加漏斗またはプラスチックシリンジを介して添加しながら、温度を約80℃より低く留まるようによく制御した。反応温度を次いで約95℃に上昇させ、1.5時間の間保持した。温度を約60〜70℃に冷却した後、360mLの無水アセトンを撹拌下でゆっくり添加した。プレポリマーのアセトン溶液が得られ、窒素下にて約40℃で保持した。NCO%を滴定によって2.790であると決定した。14.2mLのTEAを次いで、このバッチのNCOを末端基とするプレポリマーのアセトン溶液に添加し、続いて、約30分間約40℃で窒素下にて撹拌した。こうして得られた溶液を次のステップのために分割した。
【0066】
ポリウレタンPU−Cの調製:撹拌下にて、上記で得られた約100gの温かいNCOを末端基とするプレポリマーのアセトン溶液を、シリンジまたは添加漏斗を介して室温で、約180gの脱イオン水および1.4mLのTEAを含有する水溶液に、迅速に添加した。反応混合物を終夜撹拌しながら保持し、次いで、アセトンを真空下で除去した。最終のポリウレタン溶液が得られた:24.8%の固体、およびpH7.62。
【0067】
ポリウレタンPU−Dの調製
NCOを末端基とするプレポリマーDの調製:温度モニター、攪拌機、凝縮器および窒素ガスラインが備えられている1リットルの円筒型反応器に、212.7gのPPG−3025、9.5gのDMPA、および19.0gのNMPを添加した。含有物を高速窒素流下で100℃に加熱した後、高真空を適用した。こうして得られたッ透明な、よく混合された溶液を窒素でバックフラッシュし、次いで、約50〜60℃に冷却した。26.1gのTDIを次いで、混合物に滴下により、添加漏斗またはプラスチックシリンジを介して添加しながら、温度を約80℃より低く留まるようによく制御した。反応温度を次いで約95℃に上昇させ、3時間の間保持した。温度を約60〜70℃に冷却した後、450mLの無水アセトンを撹拌下でゆっくり添加した。プレポリマーのアセトン溶液が得られ、窒素下にて約40℃で保持した。NCO%を滴定によって0.542であると決定した。6.5mLのTEAを次いで、このバッチのNCOを末端基とするプレポリマーのアセトン溶液に添加し、続いて、約30分間約40℃で窒素下にて撹拌した。こうして得られた溶液を次のステップのために分割した。
ポリウレタンPU−Dの調製:撹拌下にて、上記で得られた約100gの温かいNCOを末端基とするプレポリマーのアセトン溶液を、シリンジまたは添加漏斗を介して室温で、約180gの脱イオン水および0.56mLのTEAを含有する水溶液に、迅速に添加した。反応混合物を終夜撹拌しながら保持し、次いで、アセトンを真空下で除去した。最終のポリウレタン溶液が得られた:20.1%の固体、およびpH7.49。
【0068】
ポリウレタンPU−Eの調製
NCOを末端基とするプレポリマーEの調製:温度モニター、攪拌機、凝縮器および窒素ガスラインが備えられている1リットルの円筒型反応器に、143.2gのPPG−2000、20.7gのDMPA、および41.4gのNMPを添加した。含有物を高速窒素流下で100℃に加熱した後、高真空を適用した。こうして得られた透明な、よく混合された溶液を窒素でバックフラッシュし、次いで、約50〜60℃に冷却した。52.3gのTDIを次いで、混合物に滴下により、添加漏斗またはプラスチックシリンジを介して添加しながら、温度を約80℃より低く留まるようによく制御した。反応温度を次いで約95℃に上昇させ、1.5時間の間保持した。温度を約60〜70℃に冷却した後、360mLの無水アセトンを撹拌下でゆっくり添加した。プレポリマーのアセトン溶液が得られ、窒素下にて約40℃で保持した。NCO%を滴定によって2.707であると決定した。14.2mLのTEAを次いで、このバッチのNCOを末端基とするプレポリマーのアセトン溶液に添加し、続いて、約30分間約40℃で窒素下にて撹拌した。こうして得られた溶液を次のステップのために分割した。
ポリウレタンPU−Eの調製:撹拌下にて、上記で得られた約100gの温かいNCOを末端基とするプレポリマーのアセトン溶液を、シリンジまたは添加漏斗を介して室温で、約180gの脱イオン水および1.4mLのTEAを含有する水溶液に、迅速に添加した。反応混合物を終夜撹拌しながら保持し、次いでアセトンを真空下で除去した。最終のポリウレタン溶液が得られた:20.1%の固体、およびpH8.28。
【0069】
ポリウレタンPU−Fの調製
NCOを末端基とするプレポリマーFの調製:温度モニター、攪拌機、凝縮器および窒素ガスラインが備えられている1リットルの円筒型反応器に、116.3gのArcol PPG−3025、36.7gのDMPA、および73.5gのNMPを添加した。含有物を高速窒素流下で100℃に加熱した後、高真空を適用した。こうして得られた透明な、よく混合された溶液を窒素でバックフラッシュし、次いで、約50〜60℃に冷却した。87.1gのTDIを次いで、混合物に滴下により、添加漏斗またはプラスチックシリンジを介して添加しながら、温度を約80℃より低く留まるようによく制御した。反応温度を次いで約95℃に上昇させ、1.5時間の間保持した。温度を約60〜70℃に冷却した後、370mLの無水アセトンを撹拌下でゆっくり添加した。プレポリマーのアセトン溶液が得られ、窒素下にて約40℃で保持した。NCO%を滴定によって6.166であると決定した。25.2mLのTEAを次いで、このバッチのNCOを末端基とするプレポリマーのアセトン溶液に添加し、続いて、約30分間約40℃で窒素下にて撹拌した。こうして得られた溶液を次のステップのために分割した。
ポリウレタンPU−Fの調製:撹拌下にて、上記で得られた約100gの温かいNCOを末端基とするプレポリマーのアセトン溶液を、シリンジまたは添加漏斗を介して室温で、約180gの脱イオン水および2.24mLのTEAを含有する水溶液に、迅速に添加した。反応混合物を終夜撹拌しながら保持し、次いでアセトンを真空下で除去した。最終のポリウレタン溶液が得られた:19.8%の固体、およびpH8.31。
【0070】
ポリウレタンPU−Gの調製
NCOを末端基とするプレポリマーGの調製:温度モニター、攪拌機、凝縮器および窒素ガスラインが備えられている1リットルの円筒型反応器に、212gのPPG−2000、21gのDMPA、および42gのNMPを添加した。含有物を高速窒素流下で100℃に加熱した後、高真空を適用した。こうして得られた透明な、よく混合された溶液を窒素でバックフラッシュし、次いで、約50〜60℃に冷却した。41.8gのTDIを次いで、混合物に滴下により、添加漏斗またはプラスチックシリンジを介して添加しながら、温度を約80℃より低く留まるようによく制御した。反応温度を次いで約80℃に上昇させ、3.5時間の間保持した。温度を約60〜70℃に冷却した後、468mLの無水アセトンを撹拌下でゆっくり添加した。プレポリマーのアセトン溶液が得られ、窒素下にて約40℃で保持した。NCO%を滴定によって0.936であると決定した。14.4mLのTEAを次いで、このバッチのNCOを末端基とするプレポリマーのアセトン溶液に添加し、続いて、約30分間約40℃で窒素下にて撹拌した。こうして得られた溶液を次のステップのために分割した。
ポリウレタンPU−Gの調製:撹拌下にて、上記で得られた約100gの温かいNCOを末端基とするプレポリマーのアセトン溶液を、シリンジまたは添加漏斗を介して室温で、約180gの脱イオン水および1.12mLのTEAを含有する水溶液に、迅速に添加した。反応混合物を終夜撹拌しながら保持し、次いでアセトンを真空下で除去した。最終のポリウレタン溶液が得られた:14.2%の固体、およびpH7.41。
【0071】
インク組成物
インクを表2の配合に従って調製した。各インクのため、Cabot CorporationからのCAB−O−JET(登録商標)400顔料分散体(「COJ400」)を使用した。列挙されている量は、最終のインク組成物の質量パーセントである。顔料分散体およびポリウレタンは、固体基準で示されている。
【0072】
【表2】
【0073】
インクジェット用インク組成物をCanon iP4000サーマルインクジェットプリンターで印刷した。各インクジェット用インク組成物をCanon互換性カートリッジ(Inkjet Warehouseから利用可能)に充填し、以下のプリンター設定で印刷した:印刷品質:高;普通紙;グレースケール;および写真オプション選択せず。画像をHewlett−Packard多目的印刷用紙(HPMP)上に印刷した。結果として得られた印刷画像の印刷特性を印刷後の様々な時間で(例えば、24時間)測定した。
SpectroEye(商標)GretagまたはX−rite 938分光光度計のいずれかを使用することによって、印刷画像の光学濃度(OD)を測定した。両方の機器について、以下の設定を使用した:D65での照明、2度の標準オブザーバー、DIN密度標準、Absに設定された白色ベース、およびフィルターなし。結果は、これらの2つの紙上のOD値の平均として報告した。各紙について、OD値は、2つの隅およびページの中央で取られた少なくとも3つの光学濃度測定値の平均として報告した。
【0074】
黄色いSharpie(登録商標)ACCENT(登録商標)Yellow Highlighters #25025を以下の通りに使用することによって、ハイライトスミア試験(耐久性試験とも称される)を用いて、耐スミア性(即ち、スミア堅牢性)を測定した。紙の非印刷部分上のハイライターの単回通過または2回通過(一方を他方の上にして、2回のスワイプ)を行うことで、参照値を確立した。別の単回または2回通過を次いで、3mm離れて印刷された4つの2mm幅のストライプにわたって行った。ハイライターの各スワイプについて印刷領域に隣接する光学濃度(OD)値を、参照OD値と一緒に、SpectroEye(商標)分光光度計で測定した。参照OD値と印刷領域に隣接する測定OD値(ΔOD)との間の差異が、スミア堅牢性値であった。通常、ΔOD値を、印刷後24時間での2回通過からの試験のために記録した。
【0075】
各インクジェット用インク組成物についての打滴性能を2つの異なる試験よって評価した。
打滴試験I:Canon iP4000サーマルインクジェットプリンターを使用して、各インクジェット用インク組成物を印刷することで、10ページのベタ(即ち、100%のインク被覆)の黒色ブロック(サイズ:6.5インチ×9.5インチ)を、以下のプリンター設定で発生させた:印刷品質:標準;普通紙;グレースケール;および写真オプション選択せず。画像をHPMP紙上に印刷した。これらの10ページのベタの黒色印字を以下の通りに評価した:
良=欠落がないまたはほとんどない;
可=10ページの50%超に一部の欠線がある;
不良=10ページの50%超に多くの欠線がある、または印刷できない
【0076】
打滴試験II:各インクジェット用インク組成物について、滴質量試験も、インクジェット用インク組成物が充填されたHP45サーマルインクジェットカートリッジ上で行った。コンピューターを使用して、噴射ノズルの選択および噴射電気パラメータを制御した。インク滴を回収し、秤量した。各インクを同じ条件で約10〜50百万滴噴射させることによって、平均滴質量(ng)を得た。滴質量試験結果を以下の通りに評価した:
良=平均滴質量が30ngを超えた;
可=平均滴質量が25〜30ngの間であった;および
不良=平均滴質量が25ngより低かった。
これらのインク組成物の打滴試験結果およびスミア試験結果の両方が表3に要約されている。
【0077】
【表3】
【0078】
表3における打滴試験結果は、PU中のポリプロピレングリコールの質量%が有意な効果を有することを示した。ポリプロピレングリコールの質量%が、実施例IVおよび実施例VIIにおける通りに、70%以上であった場合、結果として得られたインク組成物は、ポリウレタンを含有しない比較例Iと同様、両試験方法に基づいて可または良の打滴性能を示した。比較として、全ての他の実施例は、不良な全体的打滴性能を示し、ここで、打滴性能は、試験Iもしくは試験IIまたは両方に基づいて不良な打滴としてランク付けされた。さらに、実施例IVおよび実施例VIIインクは、非ポリウレタン含有インク(比較例I)よりもずっと改善された耐スミア性能を呈した。これらの結果は、PU中に70質量%以上のポリプロピレングリコールを有するポリプロピレングリコールベースのポリウレタンを含有するインク(実施例IVおよびVII)が、改善された印刷性能を提供することを示している。
【0079】
「a」および「an」ならびに「the」という用語の使用は、別段に本明細書において表示されていないまたは文脈に明らかに矛盾していない限り、単数および複数の両方を包含すると解釈されるべきである。「含む」、「有する」、「含める」および「含有する」という用語は、別段に注記されていない限り、オープンエンド用語(即ち、「含めるが、限定されない」を意味する)と解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の記述は、別段に本明細書において表示されていない限り、範囲内に入る各々別個の値を個々に指す簡略な方法として働くと単に意図され、各々別個の値は、それが本明細書において個々に記述されているかのように本明細書に組み込まれる。本明細書に記載されている全ての方法は、別段に本明細書において表示されていない限りまたは別段に文脈と明らかに矛盾していない限り、任意の適当な順序で行うことができる。本明細書において提供されている任意および全ての例、または例証的な言葉(例えば、「など」)の使用は、単に、本発明をより良く明らかにすると意図され、別段に請求されていない限り、本発明の範疇に制限を設けるものでない。本明細書における言葉は、任意の非請求要素を本発明の実践に必須なものとして示していると解釈されるべきでない。
【国際調査報告】